○
野村参考人 学術会議第二部長の
野村です。
今度の
法案につきまして、多少私
どもの
意見を申し上げておきたいと思うのですが、先ほど
朝永学術会議会長おの話の中にありましたように、第一点としましては、
学術振興会と
学術会議との
関係というものが、非常に沿革的にも歴史的にも、密接な関連があるということの御
説明があったわけです。そのとおりでございます。現在、そういうような形で
財団法人である
学術振興会の中には、
理事として、実は私
ども三人のほかにもまだ
理事が入っておりますし、
評議員としても、現在
会長を交えて十名の
評議員がおるわけでございます。
今度の
法案を見ますと、一体
学術会議と新しくできます
特殊法人との間にどういうような連関をつくれるのかということについて、
法律上の基礎になる規定が欠けておるわけでございます。その点を、先ほどから
会長も、また
江上副
会長も御心配になって、そうしてその点が遺憾である、こういうふうに申し上げたわけであります。ただ、この点についてもう少し
会長の御
説明をふえんしておきたいと思うのでありますが、
学術会議の
総会のおりに、この
政府に対して
学術振興会法に関する
申し入れを行ないました過程で論議されたことでございますが、ここには
措置を要求するという、そういうことばを使っておるわけでございます。
会長が申し上げましたように、この
措置というのは立法的
措置をも含むんだ、こういうようなことになっておるわけであります。ところが、当日の
総会のときには、この点におきまして
法律家である人たちは、やはり
法案の中に立法的な基礎を持つほうがよろしいんだ、こういう
考え方を持ちましてこの修正案を出したわけでございます。その修正案は、
法案の中に
学術会議と密接な連携を保つという
趣旨の規定を入れてもらう、こういう形でもって提案をすべきだという
考え方であった。ところが、
法律家以外の人たちは、
措置といえば非常に幅が広くなるんだ、だからそのほうがいいんではないかという、そういう
考え方をお持ちになったようでございます。そこで
措置という一般的な用語を使ったわけでございます。ところが、そのときに、その
措置というものが、単に行政的
措置というふうに
考えられては困るのではないかという
考え方がありました。そこで、当日の
会議におきまして質問が出まして、その
措置というものの中には立法的
措置、行政的
措置、ともに含むのかという、こういう発言があったと思います。それに対して答えは、立法的
措置は当然含むのだ、こういうふうなお答えがあったわけでございます。そこで
学術会議としては、一番望んだことは、この
法案の中に
学術会議と密接な
連絡がとれるような条項を加えてほしいというのが、率直に言った
意見であったわけであります。その法的な基礎のもとに行政的な
措置が講ぜられることが、この
学術振興会と
日本学術会議との
関係を将来ともに密接にしていって、そのやるところの
事業そのものに対して、私
どもやめましても、次々と出てまいります第一線の
学者たちの総意というものを代表する
考え方が反映浸透することが望ましい、こういうような
考え方を持っておったわけです。もちろん、そういうことにつきまして、
法律的
措置としては
特殊法人にはそういう例がないんだというようなことを岡野
審議官が
学術会議などで申しておりました。しかし、これは全く例のないことではございません。私は行政法
学者ではありませんので、あまりこまかいことは存じませんけれ
ども、たとえば私が気がついたものを一つあげておきますと、
日本科学技術情報センター法という
昭和三十二年四月三十日法八十四号で出ている
法律がございます。これに基づいて
科学技術情報センターができたわけでございますが、これの第二十四条を見ますと、「情報センターは、その業務を行うに際しては、できる限り、国立
国会図苫館その他の
関係機関の文献及び
資料の利用を図るほか、
関係機関と緊密に協力しなければならない。」こういうような法条が二十四条にございます。その
関係機関という
意味がどういう
意味であるかということは必ずしも明確ではありませんけれ
ども、さまざまな行政
機関も含んだそういうものであろうかと私は
考えます。そうすると、
日本学術会議とそれから新しくできようとしている
特殊法人学術振興会法との中にこの種の規定を挿入することは、必ずしも前例がないわけではないんだということをひとつ
考えていただきたいと存じます。その理由と申しましては、一つは、特に
会長の述べられましたような沿革上、歴史上の事由に照らしてそういうことが言えるのではないか、必要なのではないか、こういうことがあります。それから、
学術会議そのものは、実は
学術会議法の規定にもありますように、その前文の規定には「
日本学術会議は、
科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、
科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、
世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。」と書いてありますし、第二条には「
日本学術会議は、わが国の
科学者の内外に対する
代表機関として、
科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に
科学を反映浸透させることを
目的とする。」こういうような規定がございます。また、三条には「
日本学術会談は、独立して左の職務を行う。」として、「
科学に関する重要事項を、
審議し、その実現を図ること。」第二として「
科学に関する
研究の
連絡を図り、その能率を向上させること。」こういうような
趣旨の規定がございます。もちろん第四条、第五条にはもう少し具体的な、そういうものに対する
政府の諮問に応ずるとか、あるいはこちらから
政府に
勧告をするとか、そういうような事柄が規定してありますけれ
ども、本来の
趣旨はただいま申しましたようなところにあるわけでございます。ですから、その
趣旨から
考えても、
日本学術会議と、それから新しくできようとしている
振興会とは、
内容的にも緊密な
連絡がなければとうてい
目的は達せられないのではないか、こういうような
考え方を実は持っているわけでございます。
先ほど
科学技術情報センターのことを申し上げましたが、なぜこういう
法案の中にいまのような規定が入ったかというと、ほかの
特殊法人とは幾らかこれは趣を異にしておりまして、
科学技術の情報センターというようなものは、やはりそういうようなことを取り扱っているいろいろな学術
機関と緊密な
連絡をとっていかなければ
目的は達せられない、こういうところにあるかと思います。私も従来の経緯にかんがみまして、
学術会議と、それからこの
学術振興会とは、もちろん細部にわたっての具体的
研究はともかくとして、その方針というようなものを実現する手がかりとしては、やはりある程度の密接な、緊密な
関係を持つ必要がある、そういうことをしなければ、
学術振興会というものがもしかりに将来重要な地位を占めてきた場合に、一体
学術会議はどういうような地位に置かれるのかということを実は心配しているわけでございます。
法律的に申しますと、ただ憲法八十九条に、この公の金とか、そういうようなものはやたらと出してはならないという規定があるわけでございまして、そういうような規定に基づいて制約が憲法の上で加わっているわけでございます。一般的な
特殊法人に関する一般法というようなものは別にないわけでございますから、各
目的に応じてその
特殊法人をつくる場合の
法律というものは、それ独特におつくりになってかまわないのではないかと私は
考えるのでございます。
法律に禁止規定のない以上、それが一番効率的に能力を発揮し得るような、そういう
組織というものをひとつおつくりになるということであれば私は非常にけっこうであろう、こういうふうに
考えております。
こまかなこともまだございます。ただ、先ほどのことについて若干追加しておきたいのは、修正案が否決されたということは、普通の人の
考え方としては一般的に
措置と言ったほうが非常に幅が広いんだ、こういう
考え方であるわけです。ただ、
法律家のほうから
専門的に見ますと、やはりそういうものには法的基礎というものが必要なんだ。ところが、どうも法的基礎が必要がなく、そういうことをどうも御理解いただけなかったのか、つまり立法的
措置、行政的
措置と言うから広くなるので、そのほうがいいのではないか、そういう受け取り方があったわけでございます。ですから、
政府に
申し入れをいたしました
措置ということの中には、
学術会議会員の意向としては非常に幅の広い
措置、それを御要求申し上げておったのだ、こういうことをこの際申し上げておきたいと存じます。