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天城政府委員 私から、いま
文部省で考えております点を御説明申し上げたいと思います。
私から申し上げるまでもないことがたくさんあるわけでございますけれども、一言で申しまして、
学術の進歩ということが
学術自身の命題でもございますし、また、国民生活あるいは諸種の経済的な
関連から見ましても、外からも非常に大きな要請がございます。ところが、
学術の
関係が、最近は科学技術の発展ということを言われまして、従来科学と技術というものにかなり距離があった
考え方でございましたが、今日、時間的にも、また
研究の
体制からも非常に密着してまいりまして、特に最近は実施技術の開発というようなことから、科学への
要望が外からも非常に強くなってきております。ただ、そういう中で、われわれ
学術行政を預かっておる者の
立場から申しますと、いかに科学技術の開発が必要だとは申しましても、やはり基本的に
基礎科学がどうしてもすそ野を広げて、奥深くいたしておりませんと、言われている技術の開発もできませんし、特に
研究者を十分持っておらないと、このことができないわけでございます。そういう、やはり単に科学と技術が密着してまいりましても、
基礎科学技術の基本的な
研究を
振興するのが、われわれの最大の使命だと考えております。それと一方、
学術の発展の方向が従来の伝統的な、何と申しますか、分類と申しますか、ディシプリンを越えまして、いわゆる境界、領域とか、全然考えられなかったところに出てまいりますので、
学術の
研究体制というものをかなり弾力的なものにするというか、未知なものも十分こなし得るような
学術体制というものを常に頭に置かなくちゃいけない。それは大学の大学院の問題にも、
研究所の問題にも
関連いたしますが、
体制をかたくななものにしてはいけないのじゃないかということを基本的に考えております。そういう点で従来の
研究所の
あり方、あるいはもっとすそ野まで参りますれば、学部の
あり方まで考えなければならぬ段階に来ているのじゃないかという気もいたします。そのうちの一番極端なものが人文、自然科学といわれておった従来の分け方に対して、必ずしも人文だけではいかない、自然科学だけではいかない、協力しなければならない分野も出てきております。それから一方、
学術研究が非常に共同化してまいりますと同時に、大型化と申しますか、
規模が
拡大してまいります。その
規模の
拡大は、
一つには
研究上の技術の発達と申しますか、あるいは
研究機器が非常に発達いたしましたために、相当高額の
研究機器を使わなければ
研究が進まないという分野が非常に出てまいりましたので、したがって、その逆転とかに要する人、経費というものが非常に多額になってくる。それに、従来の考えでいきますと、別の分野だと考えられた方々が共同してやるということで、科学が精密化していくに従って大型化していくという傾向が出てまいっております。その大型化していくということに対しては、その経費の問題が一番でございますけれども、これはどこから出てもいいわけでございますけれども、現時点で
基礎科学の
振興を考えますと、どうしても国費を投入しなければこれはできないという面が非常に多くなっております。これは各国とも同じ傾向でございまして、
学術行政に対します国費のシェアというものが非常に大きくなってきておりまして、
民間の技術、科学技術の革新ないしは発展に対しましても国費の
分担が全体的に大きくなってきております。そういうようなことを考えますと、やることが非常に多いのでございますけれども、基本的には、それらの点を考えて、私たちこのたび国会の御承認を得ました
文部省の
組織の改正によりまして
学術審議会という制度を設けまして、基本的に
学術の発展に対する、いま申したもろもろの問題をも考えてまいりたいと思っておるわけでございます。個々に申しますと、
研究者の養成に対して大学院の
あり方、育英会の問題、あるいは処遇の問題から、あるいは
研究所の
規模とか、科学
研究費をどれだけ増すとか、あるいは
国際交流のための経費を出すとか、いろいろな現実的な課題が出てきておりますけれども、基本的には、ただいま申し上げましたような
考え方のもとに、
学術審議会で
関係の方々のお知恵を拝借しながら、新しい行き方を考えていかなければならない、これがわれわれのむしろ切実な願いでございまして、その辺のものの
考え方と新しい
体制ができませんと、いたずらに従来のものに対して、ただ
予算をつけて手を加えるという部分的な
性格に終わってしまうことを心配しておりまして、いまそういう気持ちで
学術審議会を中心にこの問題を考えていきたいと思っているわけでございます。