○長
谷川(正)
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております
政府提案の
公立高等学校の設置、
適正配置及び
教職員定数の
標準等に関する
法律の一部を改正する
法律案につきまして、反対の立場から討論をいたしたいと存じます。
今日、科学の進歩、文化の進展に伴いまして、後期中等教育の重要性というものは、非常に世界各国ともこれを重要視しておることは御
承知のとおりであります。わが国におきましても、今日、
国民の高等
学校に対する
要求というものは日増しに高まりまして、すでにその進学率も八〇%をこえようとし、遠からず準義務制あるいは義務制にしてもしかるべき段階が来ておると思います。しかしながら、また顧みますと、本法が
昭和三十六年に制定されまして以降、御
承知のベビーブームの波がちょうど高校期に差しかかりまして、そのために一教室に五十五名あるいは実際には六十名以上も詰め込む、あるいはパイプ教室を急造して、まことに劣悪な条件の中でこうした
要求にこたえて急場をしのぎ、子供たちも苦労をし、また、特にこの教育に当たる教職員は、乏しい施設と定員の中で非常に苦労をしてこの時期を乗り切ってきたのであります。今日高校生徒の減る時期を迎えまして、この長い間の苦労を解消し、冒頭申し上げた後期中等教育の重要性の認識に立ちまして、飛躍的に高等
学校の整備拡充、普及をはかるということが大きく期待されておったと思うのであります。
国民も、また直接教育に当たる教職員も、この機会に抜本的な改正が行なわれるものとして多くの期待を寄せておったところであります。
政府もまたこの観点に立って、今回この法案を出してまいりまして、そこに若干の改善の
あとの見られることにつきましては敬意を表するのでありますけれ
ども、しかしながら、その
内容をしさいに検討いたしますと、本
委員会においても各同僚
委員から質疑を通じて明らかにされましたとおり、後期中等教育の飛躍的な拡充という面から見ますと、まことにお粗末と言わざるを得ません。おそらくこれは、文部当局の真意と申すよりも、国全体が後期中等教育の重要性に対する政策においてなお欠くるところあり、
財政上の制約、そうしたものからこの程度にとどまらざるを得なかったというのが実情ではないかと察するのであります。その意味では文部当局の苦労に対しまして、私
どももいたずらにこれを非難するつもりはございませんけれ
ども、残念ながら、今後五年なり七年を期して高等
学校教育を充実させていくという立場から見ますと、このままでこれを承認するということはできない。
日本の文化あるいは経済の発展、そうした面から
考えましても、この際われわれは大事な曲がり角に立って十分な施策をどうしても行なう必要がある、こういう観点に立ちまして、
日本社会党といたしましては、本法案の廃止を前提としての、かわる
二つの法案を提案いたしてまいったところであります。しかし、今日この討論を終結しなければならぬ段階に立ちまして、私
どもは、右二法案を提案した精神に立ちまして、次の諸点を
指摘して反対せざるを得ないのであります。
第一に、改正案の学級編制基準は、一学級の生徒数は四十人以下とすると指定している高等
学校設置基準にも達していないこと。さらに、教員定数の算定基準について、規模別補正によって教頭、主事、生徒
指導担当教員等の配置をはかっていますが、一学級当たりの教員数は現行法とほとんど変わらず、教職員の労働条件、教育効果の向上という面からは、ほとんど改善されていない点であります。いたずらに
管理体制を強化いたしまして、ほんとうに教職員が十分
研究時間を持ち、また生徒一人一人の個性を見詰め、行き届いた教育をしていくには、あまりにもお粗末な
内容であるということを
指摘せざるを得ないのであります。
第二に、養護教諭、実習助手、事務職員の配当については幾ぶんか改善されたとはいえ、これも高等
学校設置基準には遠く及ばず、さらに技術職員、用務員など、現業
関係職員の定数の標準は規定されておらず、教育
関係者の切実な要望が無視されておるのであります。これが反対の第二の理由であります。
第三に、高等
学校の教育多様化のための
教職員定数加算の
措置を政令に委任していますけれ
ども、現在、後期中等教育のあり方をめぐりまして教育界には大きく
議論が巻き起こっておる現段階で、また多様化の
内容も、先般来の質疑を通しましてもきわめて不明確でありますのに、一切を政令に委任するということにはきわめて重大な問題があると
考えるのであります。今日、安易な局校の多様化ということがほんとうの高校教育の本旨からはずれ、安上がりな職人養成のようなあさはかな施策にもし流れるとすれば、文化の進展に伴って、でき上がったときには、役に立たない部分品をつくったようなかっこうになることをおそれるのであります。今日、
日本の産業が非常な発展を遂げた陰に、高等
学校の教育あるいは大学における基礎的な修練というものがどれほど役に立っておるかということは、少しくこの問題に洞察を持つ方の一致した
意見であります。そういう意味からも、この多様化の
内容が明らかにされぬうちに政令に委任されるということに、危惧を感ずるのであります。具体的な方針が立ったときに、そのときどきに明確に年次を追って御提案いただけばいいことであると思うのでありまして、この点も反対の理由であります。
さらにまた、この
法律の施行にあたって、五年ないし七年という長期にわたる移行期間でもって、しかも毎年度政令をもって
経過措置を規定するという方法は、依然として劣悪な教育条件を残存させ、教育効果、教育水準の向上を抑制、するものと言わざるを得ません。
政府、
文部省の御説明によりますと、これによっても交付税の対象等については増額をされる。だから、決してそういう心配はないといわれるのでありますけれ
ども、従来の苦い経験にかんがみて、一たびこうした
法律が施行されますと、逆に今日の苦しい地方
財政の現状の中で切り下げられるという場合すら憂慮されるのであります。ことに特殊教育の問題につきましては、
東京はじめ先進的な都道府県でいろいろとくふう、創意をもちましてその充実向上をはかっておりますが、本法の施行によって逆にこれが切り下げられることが、現場教師の大きな憂慮の種となっておるのであります。この点についてかなり詳細な質疑が繰り返されましたけれ
ども、依然としてその心配が払拭できないのであります。
以上申し上げたような理由におきまして
政府提案の本法に反対し、
政府がすみやかにこれを撤回されるか、本
委員会において否決し、社会党提案の二法を可決されるよう強く要望をいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)