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1967-05-19 第55回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十九日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 久保田藤麿君    理事 坂田 道太君 理事 中村庸一郎君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       久野 忠治君    竹下  登君       中村 寅太君    広川シズエ君      三ツ林弥太郎君    渡辺  肇君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       三木 喜夫君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      天城  勲君  委員外出席者         参  考  人         (東京家政学院         大学学長)   関口  勲君         参  考  人         (東京大学助教         授)      今道 友信君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 五月十八日  委員木村武雄君、河野洋平君及び竹下登辞任  につき、その補欠として瀬戸山三男君、中村梅  吉君及び千葉三郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員瀬戸山三男君、千葉三郎君及び中村梅吉君  辞任につき、その補欠として、木村武雄君、竹  下登君及び河野洋平君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、おはかりいたします。  本案について、本日、東京家政学院大学学長関口勲君、東京大学文学部助教授今道友信君を参考人としてその意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 床次徳二

    床次委員長 この際、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。目下当委員会におきましては、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案について審査を進めておりますが、参考人各位より御意見を承り、もって本案審査参考といたしたいと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いいたします。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人約十五分程度で順次お述べいただき、その後委員からの質疑にお答えをお願いいたしたいと思いますので、以上お含みの上よろしくお願いいたします。  それでは、順次御意見をお述べいただきます。  まず、関口勲君からお願いいたします。関口君。
  5. 関口勲

    関口参考人 私、東京家政学院大学関口でございます。突然こちらで意見を述べるようにとのお指図でございまして、十分にまとめておりませんのでお聞き苦しいかと思いますが、十五分程度お話し申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  私、自分のいまの仕事とは直接の関係が本日の議題の問題にはないのでございますが、ただいまの、最後の名前で申し上げますと、たまたま九州芸術工科大事をつくるという地方の要望がございまして、そういう新しい内容大学大学教育として成り立つかどうか、それから、そういうものができて社会的な需要その他の関係がどうであるか、かりに、それが成り立ち得るとすれば、学部学科組織教育課程教員組織、施設、設備等はどうあるべきかというふうなことについても文部省側調査をすることになりまして、当時は国立産業芸術大学調査に関する会議という名前調査会ができました。専門家の中にまじりまして私もその委員になったのでございますが、私がたまたまその委員会でまとめ役を仰せつかりましたので、この大学内容につきましては全くのしろうとでございますけれども、まとめました責任上、若干内容を、時間の許します範囲でもって申し上げて、御了解をいただきます。私自身は、もちろん委員会でそういう結論が出まして、文部大臣にも報告をしたことでございますから、この大学の設立は、日本の現在の教育分野の上で、あるいは学問研究の上では緊急に必要なものである、こういうふうに個人としては考えておるわけでございます。  芸術工科大学と申しまして、非常に新しい名前大学でございますので、内容につきまして、必要ならばわれわれの報告書には十分に書いてございます。ことにこの大学は、そういう意味で非常にユニークな、特異な大学でございますので、大学目的あるいは学科内容、ねらいというふうなものを十分に御説明するものを残しておかぬといかぬという立場で、実は私が申しまして、全体にわたる説明書をつくって文部大臣のほうにも差し上げてありますので、こまかいことはそれをごらんいただきますと御了解いただけると思うので、十五分くらいではなかなかうまくお話ができないかと思うのでございますが、あとは御質問に応じてお答えいたしたいと思います。  デザインということばは非常に語弊のあることばでございますが、この大学目的としては、一言にしてごく簡単に申し上げますと、高い次元デザインについて研究し、教育する。だから、この大学で育成いたします学生卒業後の社会における活動は、高い次元デザイナー養成をする、こういうことにあるのであります。もう一つ言いかえますと、今日の科学技術発達や、それの現実社会に対する応用の上から考えまして、この大学で育成しようとする人間像は、多くの技術をある一定の高次立場から総合計画する、このことをこの大学では設計ということばであらわしておりますが、いわゆる通常使われる設計より、もっともっと広い、高い意味設計ということになろうかと思うのであります。  科学技術伸展によりまして、いろいろ産業分野その他の分野でもって非常に人生の利便がふえてきたことは申し上げるまでもありませんし、産業方面でもいろいろ新しい生産物が出たりして、社会に裨益していることは申し上げるまでもないのであります。その分野だけで考えましても、今日では電気専門とか機械の専門、それももちろん必要でありますけれども、それだけが個々別々に生産現場を分担しておるのではりっぱな製品ができないわけでございまして、私ども立場から申しますと、要するに、技術芸術との中間応用分野、こう考えまして、もう少し高い次元のことを考えているわけでございますけれども応用分野だけで考えましても、それぞれの特殊の専門技術個々ばらばらでは、りっぱな生産はできないことは申し上げるまでもないのでありますが、ことに産業関係では、御承知のように、このごろでは日本産業伸展に伴いまして、国内の国民の需要にもマッチしなければならぬし、海外にも輸出しなければならない。その場合には、ただ製品の精度とか機能とかいうものがいいだけでは困るので、その製品全体が、人間の嗜好ということばは悪いかもしれませんけれども心理に十分訴えていくような形でつくられることが必要である。そういう点で工業デザインということが、いろいろ現在でもいわれておるわけであります。そういう意味におきましても、応用部門だけ考えたやや低次の場合でも、総合的なことはある程度行なわれてもおりますし、それは必要でもありますが、ことにこのごろは情報伝達機能が、あるいは機関が非常に発達いたしてまいりまして、製品をつくるにいたしましても、ただそれだけではいけないので、人間生理心理、あるいは経済、あるいは社会的な事情その他のものを頭に入れて、製品をつくる場合の全体の計画を立てなければならないというふうな状況であります。この点においては、実業界の方に伺いますと、日本はまだまだおくれておるということでございます。  それから、最近問題になっておりますように、私どもそこまでわれわれの大学の使命であると考えておるのでありますけれども、時代の進歩に伴いまして、都市集中の傾向あるいはマンモス都市ができて、各種の不便がある。道路道路だけで計画する、あるいは建物建物だけで計画するというふうなことでは、各種の不便と申しますか、人間生活を圧迫することができてくることは申し上げるまでもないことでありまして、都市集中とか、あるいは工場一つつくるにいたしましても、例の公害問題というものがいろいろ起こっております。これはこの大学立場から申しますと、もう少し高次元の、私のことばで言えば設計、広い意味デザインをこなし得るような人材が乏しい。あるいはトップマネージをなさる、あるいは官庁においていろいろ御計画になったり、地方公共団体計画いたします場合、そういうふうな高い次元から総合的にあることをきめまして、これを実行するというふうな点がどうも足りないという点もございまして、そういう意味地域の開発とか、あるいは国土計画とか都市計画とか、あるいは産業の立地とかいうふうなことにつきましても、もう少し高い意味の、総合的な企画をなし得るような人材が必要であるというふうなことにも考えます。そういう意味で私どもは、近代の技術発達に伴いまして、この大学の基本的な理念といたしましては、技術の暴走によって、申し上げるまでもないことでありますけれども人間性が疎外されておる。これは単にこの大学だけの問題だけではございませんけれども、大げさに言えば人類全体の問題でございますので、技術人間を疎外する点を、基本的には技術をもっと人間化して、人間生活に最も適合するような形で技術を実施していくというふうなことが、この大学の基本的な考え方と考えておりますわけでして、狭い専門分野からだけで設計されたりいたしますと、物質面技術の点だけでもいろいろな問題を起こしますし、特に人間生活全体から考えますと、人間の福祉を阻害することもたくさん出てまいっておりますわけですから、この大学基本的理念は、いま申し上げましたように、技術人間疎外をすることを極力避けるような形で技術を駆使していくという、高い立場からそういう企画ができるような人をつくるのが必要であるというのが、この大学立場であります。  それから、技術自然科学に適用いたしまして、技術を進めるということはもちろんでありますけれども、同時に、いまのこの高次デザインをする、高次設計をするような人材に関しましては、単に自然科学的な技術学問だけでなしに――それはもちろん必要でございますけれども、それだけでなしに広く人間そのものに対する理解、心理生理あるいは歴史、経済社会その他の人文社会全般にわたります――全般と申しますか、この人材が持っていなければならないような、この大学卒業生が持っていなければならないような、高次設計者としてどうしてもなければならないような、そういう広い意味教養を与えることが必須のことでございまして、その点について十分大学は気をつけて広い教養を与え、しかも各部門にわたります技術についてもある程度の造詣を持ち、これらの多数の技術を総合企画して、先ほどのような目的に合うようなことを行なうというふうなことを考えておるわけであります。  そういう意味で、この大学は、私ども委員会でつくりました内容では四学科編成にしたい。単一の学部芸術工科大学芸術工学部という名称にいたしまして、その学科はそれぞれ四講座編成で四分科置きたい。その学科が非常に目新しいと申しますか、審議の結果、どうしてもこういうことばを使わざるを得ないのでそういうことになったのでありますけれども、こまかいことを申し上げられないと思いますので、学科名前だけ並べておきますが、まず第一の学科環境設計学科、これが先ほど申し上げましたように、地域設計とか都市計画とか、その他の問題を研究教育する学科でございます。環境設計学科は、外国流に申しますと、われわれの委員会ではエンバイロンメンタルデザイン、そういう学科考えておるのです。  それから工業設計学科インダストリアルデザイン、これも従来言われておりますように、ただ自動車の形をよくしようとする、電気器具の形を民心にアピールするように努力しようとか、そういうことでなしに、もっと高度なものをやるという考えでおります。先ほど申しましたように、経済社会芸術生活等、非工学的な要素も十分考えて、インダストリアルデザインについて、人間生活に最も適合した設計をするというふうなことをねらいといたしておるわけでございます。この点につきましては、実はこの学校内容は、いまも申しましたように非常にユニークな総合的な内容を持っておりますが、諸外国にもそうたくさんはあるわけではございません。しかし、すでにハーバード大学には設計学部というのがございますし、カリフォルニア大学には環境学部というのもございますし、その他マンチェスター工科大学ウルム設計大学イリノイシラキウス等、若干はこの種の学校教育内容の一部――一部と言うとおかしいかもしれませんが、一部にたとえば工業設計だけをもっぱらやるというような大学ができておるわけであります。日本には、不幸にしていまだこういうのがございません。つけ加えますと、いわゆるデザイナー養成は非常に最近はやっておりまして、短期大学――主として私立大学でございます短期大学あるいは四年制大学で相当そういう学科ができておりますし、国立では千葉大学工学部工業意匠学科というのがございます。それから芸術大学にもございますが、それぞれ私ども目的から言いますと、ややまだ低い次元――と言うとはなはだ失礼でございますが、というようなことでございまして、私どもとしては、先ほど申し上げましたような人間疎外の現象を避ける、あるいは高次の総合的な設計をするという立場では、もう少し考え直した学科編成が好ましいと考えておるわけであります。  第三の学科は、これまた非常にお耳に新しいことばでございますが、画像設計学科というものを考えております。これはビジュアル・コミュニケーション・デザイン、そう申し上げたほうがいいかもしれません。画像設計学科というのは、視覚の媒体による情報伝達を有効円滑に行なうための設計計画をする、そういうことを研究し、教育するという学科である、こういうふうに考えております。これは、こまかいことを申し上げるまでもなく、テレビの発達、写真その他の情報発達等で、こういう方面設計が非常に大事であるということはおわかりくださったことと考えます。これらの者の卒業後に迎えます職域については、後ほど御質問でもございましたらまた申し上げます。  それから、第四番目の学科音響設計学科、これは外国あまり類がないのでございまして、委員の諸先生お話を伺いますと、ドイツのデットモルトという大学にトーンマイスタークラッセというのがございまして、音響設計コースとでも申すのではないでしょうか、よくわからないのですが、われわれのことばでは音響設計コースというのがデットモルト大学にはあるということでございますが、比較的おくれている場面。しかし、中身は、申し上げるまでもなく、現在音響を取り扱うところの産業は一ぱいございます。また、われわれの生活環境の中でも、楽音ばかりではない、騒音が非常な問題になっておるわけでありまして、この学科としては、むしろこの楽音意味するというよりも、騒音及び電子音まで含めたあらゆる音をここで取り扱うというふうにしておりますが、しかし、音の感覚を養うには、どうしても楽音を取り扱い、耳の訓練をし、あるいは身体の訓練をしなければ音の感覚は養われませんので、今度は教育内容になりまして相すみませんですけれども、この学校では、他の三学科は主として芸術、美術につきまして相当な実習もいたしますし、理論の勉強もいたしますし、鑑賞もいたしますが、この音響設計学科につきましては、音楽について相当な実技を課し、理論も与える、そうして訓練もするというふうなことを考えておるわけであります。  以上、十分に取りまとめることができませんでしたが、この大学がどういうところをねらっておるか、また、どういう学科編成をしておるかということを一応私から御説明申し上げました。この調査をいたしました調査会議の主査として、私はもちろんこの案に非常に賛成でございまして、ぜひ日本にこういうユニークな大学ができてほしいということを考えておる次第でございます。
  6. 床次徳二

    床次委員長 次に、今道友信君にお願いいたします。
  7. 今道友信

    今道参考人 私は、東京大学文学部におきまして、美学芸術学部の主任をしております助教授今道友信でございます。  ただいま関口先生から詳しいお話を伺いまして、それからその前に、私は短期間でございましたが、刷りものを拝見いたしまして考えるところがございますので、純粋に学問立場からだけ考えていることを申し上げてみたいと存じます。  まず第一に、私は、大半がこれ以上非常にたくさんつくられるということについては、多少問題があるんじゃないかということを常々考えておりますので、その点が私の意見の中に多少出てくるおそれがあるかと存じますので、その点を省きまして、純粋にこの大栄の計画だけに以下の話はしていきたいと存じます。ただ、基本方針として、今後やはり既存大学をもう少し充実さしていくほうに主力を注がれて、いろいろな意味大学が乱立するということは、日本学問、それから教育文化全般にとって問題ではないかということを、皆さま承知とは存じますが、この機会に私から一言それだけ申し上げさしていただきます。それで、問題を大学にしぼります。  まず、ただいま関口先生が御説明になりましたような新しい種類学問、並びにそれに対する研究がきわめて大切だということは、私も十分よくわかります。そして、この種の学問のためにわれわれが力を合わせて努力していかなければならないということ、これはもうあらためて申すまでもないことでございます。関口先生のおっしゃったとおりだと存じます。ただ、私は、こういう学問というのは、従来の専門分野というもののような研究のしかたとは違った形でしていかなければならないのではないかと考えるのでございます。つまり、どの学科というふうにまだ分けることのできない、いわゆる中間研究領域でございまして、あるいは総合的な研究領域でございまして、したがって、こういう学問を尊重し、こういう学問研究を推進するということが、直ちに学部創設であるとか大学創設ということに結びつき得るかいなかということは、専門家として多少私は問題にしているものでございます。したがって、ただいま関口先生お話の中にもございましたように、こういう学問についての研究は、ハーバードイリノイや、あるいはどこでございましたか、私もちょっと聞き漏らしましたが、有名な大学全部ございますが、それはすべて総合大学でございまして、そこのたとえば医学の研究者あるいは芸術研究者心理学研究者法律研究者社会学研究者、そういう者がそれぞれ集まってディスカッションをする付置研究所として発足いたしておりまして、初期の、つまり学生を、そのまま入学させるという例はまだきわめて少ないのでございます。それからウルムの例をおあげになりましたが、このウルムの場合も、これはもともと、御承知のとおりにバウハウス運動という一種の精神運動芸術運動、そういう哲学的な反省を持った人々の間から出てきたものでございまして、直ちにこの御計画にありますようなものと一致する例としてとってよろしいかどうかということは、私としては疑問に思うところがございます。  それから、こういう新しいすぐれた重要な研究領域を開拓をし、進めてまいります場合に、私ども考えといたしましては、既存のいろいろな大学でそういう関心を持っておられる方々がいろいろな形の、たとえば研究所要請とか講座要請とかあるいは学部要請とかいう形で出ておるのでございますが、そういう既存総合大学設備拡充ということ以外に、総合大学の基盤のないところにこういうものをつくるということがはたしてどうかということも、私としては問題にしなければならないことではないかと存じます。したがって、これは学問しか知らない者の夢というふうにおっしゃるかもしれませんが、かりに九州にできますのでしたら、国立なんでございますから、九州大学を増強するというか、そうして世界的なレベルにしていくための方法をとられるということも可能なんじゃないか、そんなふうに考えました。  それから、そういったことにもかかわりませず、どうしてもこういう大学を新設するということが、もうある程度基本方針としてきまっているということでございますならば、今度は第二段階といたしまして、この御計画そのものについて、私の考えておりますことを申し上げてみたいと存じます。  それぞれ私が多年尊敬しております諸先輩の方々が熱心に討議なすった結果でございますので、私の申し上げますようなことは、すでに論議の中に入っていたとは存じます。それから関口先生も、単なる職人のようなものをつくるのではない、ことばがいいかどうか存じませんが、ほんとうのこういう新しい技術社会のエリートとして指導できる人をつくりたい、そういうお考えで、そのために人間学的なものをも十分尊重した、こうおっしゃるのでございますが、その点が、私どもの目から見ますと、たとえば講座名前の中に全然出ておりませんのです。こういうことは、つまり芸術というようなものになりますと、これは何と申しましても人間の自由な精神活動でございますので、それがどんなに商業社会あるいは技術社会の中で活躍する種類のものでございましても、およそ芸術ということを研究する機関でございますならば、これは決して自分学科の権利を主張するというわけではございませんのですが、哲学的あるいは美学的、芸術学的なものを重点的に研究する講座というのは、やはり並んでなければならないのではないか。そうしなければ、ほんとうに大事なのは工学的なものでいいというような印象をどうしても社会も受け取るでしょうし、学生も受け取っていくのではないか、そういうふうに考えます。  それから今度は、芸術ということはさておいても、産業とか工業とかということばになりましても、これはもう今日の社会全体を特色づけるものなのでございまして、管理技術としての工業形態ということを考えてみますと、どうしても社会学的な研究というものを少なくとも一講座なり二講座なり、こういう工科的なものと並んで置く必要があるのではないかと存じます。これはちょうど、先ほどの御説明にございましたデザインということば、これは皆さますでに御承知であるとは存じますが、日本で受け取られておりますデザインというのは、これはジャーナリズムとか商業政策のほうから入ってまいりまして、欧米の、こちらの方面では進んでおります国々で使っておりますデザインというのとはずいぶん違いまして、デザインというのは、ただいま関口先生が御説明になりましたように設計という意味でございます。設計と申しますと、今度は建築上の設計とか、ああいうものをお考えになるといけませんので、これまた設計とも訳さないでいままで過ごしてきたわけでございますが、例をとって申しますと、たとえばこういう会議をするにはどういう採光条件で、どういう換気装置があって、どういう机の配置で、どういうことであるならば一番理想的に会議が運べるか、そういうこと全体を計画しよう、こういうことなんでありますから、ある意味計画というような意味でございます。設計よりも、もっと進んで言えば計画をするということであります。それで、そういう重大な計画ということでございますと、たとえば環境設計というような場合には、また話が前と混同いたしますが、この環境に一番大事なものは衛生とか医学とか、それから人間心理とか、社会法律上の問題とか、それから既存のいろいろな技術形態の中で、わけても美を実現していくためにはどういうふうにしていかなければならないかというような、ちょうど総合大学研究するようないろいろなことが必要になってまいりますので、どうしてもこういう大学をつくらなければならないとおっしゃるのでしたならば、その点はもう少し御審議いただいて、いわゆる人文学のものをもう少し正面にお出しにならなければ教育効果も薄れていくのではないかと存じます。  それから、何よりもこういう問題についてお考えいただきたいことは、こういう学問を推進する機関が、その土地はどこであれ、要するに全日本的というか、全国的視野と申しますか、そういう観点で十分人間も集められる、それからその設備も整う、そういうようなことにしていく。  はなはだ僭越なこともございましたでしょうが、考えて問題としておりましたので、私が考えておりますことを、先ほど委員長の方が率直にとおっしゃいましたので、おっしゃられなくても率直に申し上げるつもりでございましたが、申し上げてみました。足りないところは、また御質問がございましたら、私の知っている限りのことではお答えしたいと思います。  結論として一言申しますと、こういうものを推進するという計画自体に、私はちっとも反対するものではございません。ただ、こういう推進の具体的な方法として、私としては危惧するところが多少ある、こういうことでございます。
  8. 床次徳二

    床次委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 床次徳二

    床次委員長 次に、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。唐橋東君。
  10. 唐橋東

    ○唐橋委員 他の委員方々から御質問があると思いますので、私の質問は要約して簡単に両先生方にお願いしたいと思います。  最初に関口先生にお伺いしたいのでございますが、関口先生の主査としての現在までの御努力に対して深い敬意を表するものでございます。先生がいま申されましたように、非常に特異な、そして非常に高度なもの、現代社会の中でほんとうに必要なもの、こういうねらいの大学でございますので、私たちもそのような観点に立ちながら、十分いろいろ意見を出してみたいというような立場であるわけでありますが、ざっくばらんに申しまして、先生いままでの議論の中で、いままでずいぶんと各専門の方が討議された中で、実際これは一番困難だとか、これは一番やはり重要だ、こういう議論はどういうところだったですか。それをまず出していただきますと、私は非常に参考になると思います。一応説明書の中には、ずっと概念的なこと、全般的なことが全部記載されていますが、この全般的な、あるいはこの内容というようなものを通じながら、総括的にこの大学の性格なりあるいは今後の持っていき方として一番これが困難である、こういう点がいままで議論された中であったと思うのでありますが、それをまず出していただきますと、私たちが非常になるほどと理解できると思います。  それからもう一つは、やはりいままでの大学制度の中で新しい一つの専門大学の形になりますから、この大学研究体制、いままでの既存大学網とでも申しますか、大学組織とでも申しますか、そういうものとの関連についてはどのような、現在までの経過の中で御議論があったかということも、二番目にお伺いしたいのでございます。  それからもう一つは、このような一応の青写真ができたわけでございますが、このような青写真で全国的な観点に立ちながら、これを充実していくとするならば、新しい一つのあり方として充実していく上において、やはりそれ相応の設備、そういうものが十分かどうかということも考えなければならない問題だと思うのでございますが、そういう場合に、先ほど申しましたような大学組織の中において、やはりこういう点はほんとうに今後中心的な設備として十分金をかげながらやらなければならない、こんなような点が今後の問題として出てくるだろうと思いますが、それらの点につきまして、いままでの経過等を含めてひとつお話し願えば非常にありがたいと思います。
  11. 関口勲

    関口参考人 初めの二つはやや抽象的な御質問だったので、ちょっと私了解しなかったかもしれませんが、私の受け取った範囲で申し上げさしていただきます。足りませんでしたら、なお御質問願います。  一番困った点はどうか、困難な点はどうかというお話がございました。調査会といたしましては、この問題につきましては非常な熱情をわかして、それぞれの専門家の方に参与していただきまして、長い時間をかけて討論し、まとめ上げたわけでございます。そこで、こういう大学日本にぜひ必要であるということでございますが、困難な点は、いまも今道先生からお話がありました一つなんですが、今道先生お話は、人間形成についてもっといろいろな講座を設けてやるべきだ。ごもっともなんで、われわれのほうも全然同感なんです。ところが、ただいまの大学の基準の制度でございますと一応四年間でやることになっておりますけれども、四年間で、私どものほうでは一般教育は非常に大事であるから、できるだけりっぱな一般教育をしなければならぬという意味で、ただいま大学設置審議会から文部省のほうに出されております大学設置基準の改善でございますけれども、改善のうちの一番の問題点は何といっても一般教育でございまして、従来の一般教育ではとても新制大学の使命は果たせぬ、ある場合には一年半も二年もかかってむだである――むだとまでは言いませんが、二年間で一般教育を相当な時間を使ってやるといたしますれば、もう少しくふうがあるべきでございまして、その点のくふうは、新基準の趣旨によりましてカリキュラムの中では相当いたしておるのであります。しかし、もっとほしいのでありますけれども、四年間の中に、百二十四単位が卒業単位でございますが、この大学は、詰め込みにわたらぬ程度で百四十まではどうしてもやらないと、この大学教育の使命は果たせない。ですから、一般教育科目と基礎教育科目、共通専門科目及び専門教育科目と四段階があります。いろいろ新しい授業科目がございます。そういうものを加えましても、百四十ではどうもつらいなというのが一番の問題点でございまして、われわれ報告書のほうのごく末尾にも書いてございますが、創設する大学にすぐ大学院、研究科を置くわけにもいかないのがいままでのならいでございますけれども、もし四年間の学年進行が済みまして卒業生が出る暁になったら、どうしてもこの大学には研究科を置いて、そこでもう少し仕上げをしたり、やや不十分であった点の教養は与えなければならぬと考えております。そのことは付記してございます。その点が非常に困難な点で、今道先生からもその点を突かれたわけでございますが、われわれとしては今道先生のお考えに全然同感なんですが、そういう与えられたワクの中でやるのには、どうにもこの程度よりしかたがないというのがわれわれの苦しいところでございます。そのためには、大学で将来考えていかなければならぬと思っております。  その次に困難な問題は、当然、御承知のように教員組織の問題であります。従来もこの種の総合的な研究部面につきましては、そう人があるわけではございません。ところが、教育課程の中に新しい授業科目を相当たくさん取り入れておりますので、これに直ちに備え得る人が、大体見当はつけておりますけれども、そうたくさんはない。この供給源は、裏話を申し上げますと、いまこの種の問題につきまして学問的熱情を燃やして海外に留学している若い研究者が相当おるのだそうであります。私は直接は存じませんけれども、それらがたとえばアメリカにも相当行っておりますので、そういう方をぜひひとつ招聘したい。そういう方も招聘して教授陣容を充実したい。  それからもう一つは、何らかの財源を得て、助手クラスの人なり講師クラスの人、この方面についての研究の一端をやっております者を大学の教員といたしまして、そうして一定期間海外に留学させましてこの新しい方面研究をさせて、戻してこの大学でそういう新しい授業科目についての担当をしてもらいたいというねらいを実は調査会としては持って、文部当局にもそういうことは耳に入っておるわけなんです。これからの実行問題でございまして、それがどうなりますかは、いま文部省のほうでいろいろお考えになっていることではないかと思います。  困難と申しますとその点が一番問題点だと思いますが、調査会としては何とかそれは切り抜けられるというつもりで、そして専門先生の中には、それぞれ人についてのめどをつけていらっしゃるようでございます。  それから、既設の研究体制との関連をお尋ねのようでございます。これはこれからの問題でございまして、まだ、いま教員組織をやっておりますから、その際にそういう問題が当然起こると思います。この大学の教授科目の中には必修、選択、それぞれございます。選択科目の中には、各大学のそれぞれの専攻の先生の非常勤講師としての御協力を仰がなければならぬことが相当たくさんございますので、自然、これから、いま御指摘のような他の研究機関大学等との連携の問題が出てくるかと思います。ただいまのところは、その程度ではないかと思うのです。  それから、施設、設備のことでございます。これはもう、調査会としては、できるだけこの新しい大学目的に沿うような施設、設備がほしいことはもちろんでありまして、施設についてもこれだけの研究室、あるいは実験室、自習室等が要るという調書を報告書の中につけております。それから設備につきましても、各学科につきまして一つ一つ器具、機械、その他点検いたしまして、必要なものを計上いたしまして、たしか約六億七千万円くらい必要であるということを、われわれの考えをお出しいたしてございます。ただ、御質問ですからお答えせざるを得ないのですが、幸いにして福岡の学芸大学、いまの教育大学が統合されまして、福岡の本部がいまあいております。そこに一万六千坪の校地と、それからどのくらいございますか、二、三千坪の建物があるかと思うのでございますが、それをとりあえず使わなければならぬという問題がございます。それはある程度補修したり、増強したりすることは必要であろうと思います。ただ、これまた、ここで申し上げるのもいかがかと思いますけれども調査会としましては、できればこういう芸術技術との総合されたような学問をし、教育をするところなんだから、施設そのものもそういう情緒に訴えるような雰囲気のある、ぜいたくなんですけれども、あるような施設もほしいなと、そう言っているだけで、何も申し上げてはおりませんですけれども、これは文部省御当局が予算とのにらみ合わせでしかるべくお考えになることでありますが、調査会としては、そういうものは、望むらくは将来ほしいなという考えを実は持っております。  お答えになりましたかどうですか、一応……。
  12. 唐橋東

    ○唐橋委員 これはあとで今道先生への御質問にもなる、またお伺いしたいと思っておるわけなんですが、一番私たちが関口先生にお伺いしたいことは、いままでの計画の中で、これだけ重要な性格を持ち、そして必要性の中で誕生していく場合に、やはり最初の出発が一番大切なのではないか。どうしても、国立でございますから、やはり有形、無形のうちに他への一つの方向づけがこの中から出てくる、こういうことが常に念頭から離れないわけでございます。そういう中において出発するとするならば、もっと理想的なもの、そういうものをほんとう考えて出発していきたい、こういうような考え方の中でいま御質問申し上げたわけでございますけれども、私の心配なのは、ほんとうに高等な技術家の養成が中心になって、そして何かやはり技術だけが先行されて、もっと高次なものがねらいでありながら、実は結果的にはそれが出てこなかった、こういう大学になってはならないというのが私たちの一番の関心の的でございますが、いまの単科編成やその他単位の点を聞いてみますと、そういうような点に十分御論議が出ておった、こういうことをお聞きしたわけでございますが、やはりこれは研究科というようなものを併設しなければ、それができ上がってこなければ一応完成とは考えられませんか。いまの考え方の中から当然そういうものが出てくると思いますが、どうですか、具体的に。
  13. 関口勲

    関口参考人 再度の御質問でございますが、調査会としては、とにかく先ほど申しましたように四年の修業年限、百四十単位を標準とする、こう考えますと、先ほど来のこの大学のユニークな性格や、ことに一般教養をうんとして人間をしっかりつくっていかなければならぬ、あるいは芸術に対する理解を十分持った者をつくっていかなければならぬ、しかも専門学問も相当やらなければいけない、こうなりますと、四年ではやや不安心であるというのが委員の一致した意見でございます。ただしかし、いまの四年のワクがございますから、これはやはり新制大学としては守らざるを得ない。そうすれば、私ども報告書の中には、一応この範囲でもってできるだけの範囲のことをやって、そして卒業生をこの趣旨に沿うような者を出す、一応ということばを実は使っておるのです。その一応ということがいま御指摘になった点なんでございまして、現在の制度のワク内でできるだけのことをやる、しかし、先ほど申しましたように、そのあとに付記いたしまして、できればある時期にはひとつ大学院をつくっていく、そうでなければほんとうにこの大学目的を完全に果たすことができない、こういうふうに報告をしておるわけです。
  14. 唐橋東

    ○唐橋委員 今道先生にお伺いいたしますが、先生専門的な美学、芸術学の立場からこれを見られたいまのお考えをお聞きしたわけでございまして、どうしてもさっき私が申し上げましたように技術屋の養成におちいらないように、こういうような趣旨と私、理解したわけでございますが、技術屋ということばが適当か適当でないか、ことばの表現がもし語弊がありましたら私としては申しわけないのですが、どうしてもそういうような、端的に申しますとほんとう高次のものをねらいながら、いま関口先生の申されましたような年限の中でそういうものを消化していかなければならない、こういうような場合に一番困難な問題が出てくると思うのでございますが、実際専門的な立場に立たれまして、そして今道先生がいま申されましたような一つの趣旨の上に立って、この教科課程ですか、各授業科目の区分というようなもの、専門教科目というようなもの、そういうものを一応検討された場合に、どの点が学科的に見て不足だ、こういうような点がもしおありでしたら、専門的な立場からひとつお伺いしたいのでございます。
  15. 今道友信

    今道参考人 ただいまの御質問に対しましては、先ほど私が意見を述べましたときに申しましたことが、すでにお答えになっているとは存じます。しかし、念のために申し上げておきますと、例をとって申しますと、環境設計学、たとえばそれは環境計画学と言ったほうがいいくらいなものだと私、申し上げましたけれども、そういうものは、私ども考えますところでは、従来の芸術とか技術とかというのとずいぶん違うのでございます。それで、たとえば東京芸術大学などで教えております芸術というのは、それは非常に大きな作家の場合、あるいは演奏家の場合は全社会を動かすということがございますが、普通は、まずその人の内面的な要求を満たし、そしてその人がそれでもって何らかの形で社会に貢献すると同時に、実存を確保できればそれでいいという、いわば個人的なものでございます。それから従来の工学部などで教えております。また研究しておりますものも、例外を除きますと、これはやはりその人の責任においてできてくる。そしてそれの使い方というようなものに限られて、どちらかといえば個人的な色彩が強いわけでございます。環境設計学などということになりますと、これは実はその学問名前自体が、大きく言えば全人類、それから小さく言いましてもある工場全体の、生とか実存とか仕事とか全体にかかわるものでございまして、それは非常に大きな学閥でございます。ですから、私どもにしましても、それからそういうことに興味を持つ人々は、総合大学の中におきまして、各学部専門教育を受けた者が大学院でそういうものを研究するというふうな形を考える人々が多いわけでございます。初めから、十八、九なり二十くらいからそういったことをやっていくことができるかどうかということは、私はやはり疑問に思います。  それから、あと二、三分でございますが、非常にわかりやすい例で申しますと、私の研究というのは、美学、芸術学を現代の技術的な社会と相関させて研究していくということでございまして、これから申し上げますものと多少違いますが、比較美学というような研究がございます。これは東洋の美学思想とか西洋の美学思想と比べて、何か全人類にもっと基本的な示唆を与えるものはないかというようなことを考え学問でございますが、これは非常に重要な学問で、これを推進していかなければならないのでございますが、そういうふうにその学問を大切にするということが、直ちにそういう学科をつくるということと実は結び合わないところがあるわけでございます。そういうものは、たとえば東洋美術の専門課程をしっかりした者が、初めてその基礎の上に立って新しい領域の人とシンポジウムをし、ディスカッションをしながらつくり上げていく、そういうふうに考えられているわけでございます。ちょうど環境設計学なんというのは環境衛生学などよりもっと大きなものじゃないかと思いますので、かりにこういう計画が推進いたしました暁におきましては、少なくとも方向としては大学院でそういうことをやる。そうしてあとは、もう少し専門的に何かしっかりしたものをつかめるようにしたほうがいいんじゃないかというふうに考えますので、関口先生お話でも、四年間でこれだけのことをやりますのはむずかしいとおっしゃっておりましたが、全くそのとおりで、その点は、私はよほどじょうずにやっていただかないと、いろいろな意味でまずいと思うのです。お答えになったかどうかわかりませんが……。
  16. 唐橋東

    ○唐橋委員 では、私の質問はこれで終わり、他の委員の方にお願いしたいと思うのですが、結論として非常に重要性があり、必要性があるということは、私の質問はそのとおりなんですけれども、この発足にあたりまして、いま申しましたような中において全国的なレベルのものを発足させていきたい。こういうときには、先ほどのように教授の問題なり設備の問題がございますが、いまのような非常なむずかしさの中で、今道先生学問的に見られまして率直に、そういう一つの総合芸術大学を今度九州につくるというときに、全国的なレベルに立ってやはりこういう点に一番気をつけなければならないとか、こういう点を重視して出発すべきだ、こういうような点がもしおありとするならば、お話ししていただければ私の非常に参考となると思うのです。
  17. 今道友信

    今道参考人 私の考えでは、単位編成上、技術的にむずかしいことはよくわかりますが、しかし、やはり芸術を扱い、それから産業とか工業とかいうものを扱うのでしたら、これは社会を扱うと言ってよろしいのでございますから、芸術、美あるいは哲学、あるいはまた社会とか法律経済とか、そういうものについて、従来の一般教育のような形ではないものでしていただきたいというふうなことは協調したいと思います。
  18. 唐橋東

    ○唐橋委員 終わります。
  19. 床次徳二

    床次委員長 川村継義君。
  20. 川村継義

    ○川村委員 参考人方々、御苦労さんでございます。一言お尋ねをしておきたいと思います。  関口先生も御承知のとおり、この大学の設置に至るまでに、三、四年になりましょうか、皆さん方の調査専門のほうでいろいろと御検討いただき、文部省も三年か四年かにわたって調査費を出して今日にきたわけです。ところが、これの口火を切ったのは、九州の経済界、産業界の皆さん方が口火を切って期成会をつくって推進役をつとめられた、これは御存じのとおりであります。そこで、私たちもこれまで何回かそういう方々にもお会いをし、昨年も一昨年もいろいろと御意見を承っておりますが、その間やはり私たちが私たちなりに一番心配いたしましたのは、こういう新しい学問研究分野を開拓していこうということについて、教授陣が一体どうなるかということでございました。その点を今日まで実は一番心配しているわけでございます。先ほど関口先生からちょっとお話がありましたけれども、はたして十分なる教授陣が配置できるかどうか、これを非常に心配をいたしますが、いま一度その点を関口先生から御意見を承りたい。それと同時に、文部大臣から、その点は心配ないとおっしゃるのかどうか、文部省の考え方もあわせてこの際お聞きをしておきたいと思う。  それからいま一つは、ここまでに至る経過がそうでございますから、先ほど今道先生も御心配なさっておりますように、ただこれだけの学科あるいは教授科目等でよろしいか、これは大きな問題だと思います。この大学の将来を規制する重要な問題になると思うのです。文部省が最終的に一体どういう学科考え、あるいはどういう教授陣の内容を整えるか、これから非常に問題になると思いますけれども、皆さん方の総括のお話によりますと、専門学科は四学科、それから教授科目が一般教育外国語、保健体育、基礎教育専門教育、こうなっておりますが、その中で御報告によりますと一般教育外国語、保健体育を合わせて七名という教授陣の配置を考えておられるようであります。一体一般教育外国語、保健体育等で七名の教授陣でどうなるだろうか。考えなければならぬことは、今道先生のおっしゃったように、これはやはり哲学の分野であるとか、あるいは美学の分野であるとか、いろいろなものが私は一般教育の中にどうしても入ってこなければならぬと思いますが、そういう点から考えると、七名などというくらいの教授陣で目的を達するだろうか、私は非常に疑問がわくわけであります。これは将来、文部省がこの大学の高度な研究科目に対処してどのようにきめるか、課題は残ると思います。そういう点について、先生のお考えとあわせて文部省のお考えをひとつこの際聞いておきたいと思います。
  21. 関口勲

    関口参考人 教授陣、組織について、関係の皆さんも非常に御心配だということはごもっともでございまして、先ほど申しましたように、調査会でもその点は相当真剣に考えております。調査会の内部といたしましては、カリキュラムをつくりました際も授業科目をいろいろ研究の結果きめましたが、それらの特殊なものにつきましては、一応われわれ仲間では何々先生ということで目星をつけたものを持っております。しかし、それを発表するわけにいきません。どうなるかわかりません。しかし、その方に御交渉しても、来ていただけるかどうかということはこれからの問題でございまして、調査会といたしましては、一応めどを、できる範囲でつけたわけでございます。そこで、その問題につきましては、私ども調査会報告が済みましてから、時を移さず文部省のほうでいろいろお考えのようでございまして、最近は教員の選考委員会を、別に私関係しておりませんが、おつくりになって、着々その辺の研究と申しますか、準備をしていらっしゃるように伺っておるわけでございます。  それから教員数につきましては、多いにこしたことはないのでありますけれども、この大学の特殊性から申しますと、やはりやや多くあるべきなのでありますけれども、一応調査会としては大学設置基準の線に合わせたので、この程度になっておるわけでございます。
  22. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 ただいま関口先生からお話がございましたように、これは新しい学問の開拓でございますので、私らが一番心配いたしましたのは、こういう大学内容に即応するような教授陣を、はたして集め得るかどうかという問題が一番大きな課題でございました。これはいろいろ調査会の御論議の途上におきまして、そういう問題もあわせて論議をしていただきまして、いま関口先生が申されましたように、いろいろ科目について、それに相応する先生が実際あるかどうかという問題もあわせて考究していただきました。でございますので、ただいま教授の――一年間の準備期間を置きましたのは、実は普通の工業大学とか工学部とかいうような問題につきましては、本年度から設立いたしましても、直ちに先生を集めるということは必ずしも不可能じゃございません。しかし、この大学はそういう特殊な大学でございますので、開学を一年先に置きまして、一年間十分準備をする。そのための一つの大きな仕事は教授陣容を集める、教授陣容、組織をつくるということでございまして、いま選考委員会をつくりまして着々と先生の選考をいたしております。なお、新しい学問分野でございますから、これは先生自体が教授になりまして、先生として完成されました先生を初めから全部そろえるというわけにもいかない場合もありますので、これはたとえば相当の研究期間を、専門教科を始める前に外国に行きまして研究をしていただくとか、そういったような特別の措置をやはり講じていく必要があると考えております。  なお、教授数につきましては、ただいま申されましたように、大学設置基準で必要な専任教員の数をここに掲げておるのでございます。しかし、一般教養等につきましてもたくさんな科目もございますし、これは専任教授だけでございまして、相当数の兼任の教授、助教授とか、そういう方をやはりこれ以外に相当充足する予定でございます。
  23. 川村継義

    ○川村委員 先ほど関口先生のいろいろの御苦心、それから、新しい研究開拓をしていく大学の使命について話がありました。また、今道先生からいろいろ学校設立についての問題、御配慮等の話があったのですが、やはり個々の、調査会での結果報告によりまして、一般教育の科目等について、文部省が発足するまでにはもう少し、たとえば美学の分野であるとか、あるいは哲学の分野であるとか、そういうものを広くして、教育科目の中に取り入れて総合的な研究成果を発御するという、やはり陣容を整える必要が特にこの大学についてはあるのじゃないか、こう考えるわけですが、文部省としてはそういう点十分検討いただけますか、その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  24. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 答申の内容によりまして、この大学をりっぱな大学にいたすために、ただいまからもすでにその準備的なことを始めておるのでございまして、仰せのとおりいろいろな専門教科を取り入れてまいらなければなりませんので、これらにつきましては十分その研究をいたしまして、できるだけりっぱな大学に育ててまいりたいと思っております。
  25. 床次徳二

  26. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員 関口先生にひとつお願いいたしたいと思います。  大学設立の趣旨を伺って非常に緊要だということは了解するのですが、いまの教育の問題に関連して、国立の大難を設置するのに定員を百二十名ということに入学をきめた、その理由というのをひとつお聞きしたい。
  27. 関口勲

    関口参考人 普通大学学部学科をつくります場合には、一学科入学定員四十名というのが普通のようでございます。しかし、この大学は、先ほど来申し上げましたように非常に特殊な学校でありまするし、先ほど申し上げませんでしたが、理論技術以外に実習、実験ということによって体得させるという点が非常に強い点をみんなが強調されます。報告書にもそのことが書いてございます。そういう意味で、四十名が普通であるけれども少し減らして、少ない人数でしっかりした教育をしようというのが一つ。それからもう一つは、明らかな議論がなかったかと思いますけれども、とにかくこの種の職域は、先ほど来申しましたように、職人的なデザイナーはたくさん養成しておりますけれども、企業の中枢に参画し得るような、われわれのほうではコーディネーターというようなことばを使っておりますが、先ほど技術者という名前の問題がありましたが、技術者というよりは、そういうコーディネーターをつくりたいわけです。しかし、十分に高い意味デザインを理解できるような人をつくりたいわけですからして、職域の場合、就職の先のこともまだあまりはっきりいたしておりませんし、かたがた教育内容からいえば少ないにこしたことはないのでございますから、百二十名、三十名ずつ四学科、こういうことにしておるはずでございます。
  28. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員 この報告書には、非常に産業界の要望が強く、そういう学校をつくって卒業生の需要が非常に見込まれておるということが載っておりますが、日本で初めての特殊の学校をつくるので、日本全部で百二十名というのは少ないような感じがしておるわけなんです。そういうことについてはどういうふうにお考えですか。
  29. 関口勲

    関口参考人 委員の中にも大企業の責任者がおられまして、いまのように高度の計画設計ができる人が絶対に必要なんだということをおっしゃっておるわけなんです。ただ、この問題は、そういう大企業で非常に自覚したトップマネージャーたちがそうおっしゃっておられるわけでありまして、ほかにもあろうと思いますけれども、これが卒業生が出まして、ほんとうにいいということが証明されますれば需要は大いにあると思いますけれども、当初の四年後のことを考えますと、あまりたくさん出すのもどうかというふうな気持ちだったのではないかと思っております。
  30. 床次徳二

    床次委員長 有島重武君。
  31. 有島重武

    ○有島委員 ただいまお話を伺いまして、新時代に即応する新しい指導者をつくっていこうという、人間性に深く根ざして、しかも広い世界的な視野に立って、そうしてまた科学的な技術を駆使していく、そういったようなエリートをおつくりになるという、その趣旨は十分わかりました。これは一種の英才教育の形になると思いますけれども、私は、特に芸術大学なんかに関しましては、本質から考えまして、大学というものが高等学校卒業してから採るというよりも、むしろ中学卒を採って七年制にしていくべきだ、そのように考えております。この大学について、先ほど四年の年限ではこれはおそらく短いであろう、大学院設置を将来しなければならない、そういうふうな話でありました。その点も当然であると思いますけれども、さかのぼりまして、これを中学卒から採って、昔、大学予科というものがございましたけれども、そういうような形態を御検討なさったかどうか、そういった点について関口先生にお伺いします。
  32. 関口勲

    関口参考人 審議の経過のうちには、そのことは意識的にはあまりのぼりませんように私は記憶いたしておるのであります。四年制大学をつくるということを中心にして考えましたので、中学から入りますということになりますと、いま高等専門学校、高等学校三年、大学に当たる期間二年の五年制度ができておりますね。そのワク以外にはもう現在の学校教育の制度の中にワクがございませんから、そこまでは実は調査会としては考えておりません。その点は、私がお答えするよりかも、あるいは文部御当局の問題ではないかと私は思います。少なくとも調査会では、そこまでは意識的に審議はなされませんでしたことを率直に申し上げます。
  33. 有島重武

    ○有島委員 今後の審議の中にそういったことをお考えになる余地があるかどうか、その点伺います。
  34. 関口勲

    関口参考人 私、主査をいたしておりますけれども、個人的に何とも申し上げかねると思います。私が個人的に考えますと、芸能的な素養を与えるのには年が若いほうがよろしい。ですから、お説のようなもう少し下に下げて、入学者の年齢を下げるということは考えられるかもしれません。しかしまた、学問的な素養を与えるということになりますと、必ずしも年が若ければよろしいということにならぬかもしれません。その辺をかみ合わせて考えなければなりませんから、もし必要ならば、調査会でそういうことはあらためて審議しないといかぬことではないかと私は思うのであります。
  35. 有島重武

    ○有島委員 私の申しましたのは、芸術大学をあげましたのは一例でございまして、一種の英才教育という見方、そういう前提から申し上げたのであります。現在義務教育制は大体完成しておりまして、それに適しない、能力の非常に低い者、また一般の教育では少々自分の個性を出し切れないような優秀な生徒、そういったことがかなり今後の教育の重大な問題となると思うわけであります。そして、この種の指導者をつくっていく大学を前提といたしまして、そういったことを下のほうにも延ばしていくということをひとつ考慮に入れていただきたいと思うわけであります。よろしくお願いいたします。
  36. 床次徳二

    床次委員長 小林信一君。
  37. 小林信一

    ○小林委員 お二人のお話を承りまして、こういう学問の必要と、そしてこれを完成するための問題点というようなものが私たちにもわかったわけです。  お二人の先生に御意見を承りたい点は、まず最初に関口先生のほうにお伺いするのですが、高い次元デザイナー養成である、人間像としてはたくさんな技術を高い程度で総合する人間である、そして技術芸術中間で、しかもそれを応用する、こういうように要約をされたお話を承ったのです。これは、私の質問することは非常に幼稚な質問になるかもしれませんが、そのことばから受け取るとすると、いわゆる芸大等で専門的に芸術を専攻する程度でなくとも、芸術の面はいいんだ、技術の面も工業大学等で研究するものよりも低くてもいいんだ、とにかくその中間だというような、こういう見方もあるし、それから芸術の面でもできるだけ高度の状態で、技術の面でも高度の状態で、そしてそれを総合するとか、あるいはそれを応用するという人間もほしいんだとか、希望するのだとかいうようにも考えられるわけなんですが、これは非常に型にはまった質問のようですが、その点をお伺いして、私の問題をこれから御提示申し上げようと思うのです。
  38. 関口勲

    関口参考人 非常にむずかしいことでございます。私、一番初めの説明のときに少しことばが足りなかったのです。そういう点につきましても調査会では相当議論がされました。私が冒頭に申し上げましたのは、芸術科学技術との中間の領域で芸術応用部門、それから技術応用部門、こういう立場がある。どちらかにウエートを置くことが自然になりましょうけれども、そういう立場がある。しかし、そのところは、私ことばが足りませんでして、そういう考え方もあるが、われわれの調査会としては、そういう中間に、ただ応用部門というだけでそれぞれ独立しているような形ではそれはいかぬのだ、ことばは、言うことはやさしくて、実際はむずかしいことと思いますけれども、われわれのほうの調査会立場は、芸術技術の両領域についての知識、センスを十分持った、それらを総合したもう一つ上の立場の、芸術技術を総合した立場を持った者の養成をしよう、こういうふうに考えているわけなんです。そこで、率直に申し上げますと、当初は、芸術技術半々ぐらいに昭和四十年の第一次の中間報告では考えておりましたけれども、諸般の事情や実際大学を構成するときのことその他を考えまして、現在の芸術工科大学という字が示すように、やや工学のほうに傾斜をしたということになっております。したがいまして、いま御質問に出たところの芸術科をつくるのではないのでありまして、芸術的なセンスを持ち、かつ、技術についても実技を相当体得した、すなわち、総合される多くの技術を、結局、中身については自分もある程度技術を持ち、しかもそれが十分理解できるというふうな卒業者ができるということになろうと思います。この四年の中で、芸術技術をそれぞれ工学部あるいは芸術学部と同じようにやれるということは考えられない。その辺、これからのこの大学のむずかしいところがあろうと私は思うわけであります。それはこれからの問題でございますが、調査会としては、そういうふうに技術芸術を寄せ集めたのではなしに、それらを総合した立場での人間をつくる、こういうふうに考えているわけです。そういうふうに答申もいたしております。
  39. 小林信一

    ○小林委員 私もヨーロッパへ行きましたときに、日本教育を批判されまして、日本教育は非常に盛んだ、しかし、そのアイデアを、いわゆるデザインを売るというふうなところまで日本教育はいってないじゃないか。たとえば自動車のボディーにしましても、これほど日本教育が進歩し、産業伸展をしておるとはいっても、あらゆる自動車のボディーは外国に注文をして、それがボディーになって日本では売り出されておるというふうな点を考えても、あるいはイタリアあたりは生糸は生産されておらない、しかし、染色とかあるいはそのデザインとかいうようなもので、イタリアの絹織物は世界的なものになっておる。日本は生糸も生産しておる、しかし、イタリアのような高度の技術というものが出ておらぬじゃないか。したがって、日本教育というのはどこかに欠陥があるんじゃないか、こういうことを指摘されたことがあるんですよ。要するに、いま文部省が着想し、先生方が御苦労なすったこの教育のしかたというものは、私はそういう点でもって外国からも指摘をされ、日本でも要望されておる点だと思うのですよ。しかし、そこで問題は、いまの芸術という面とすれば、とにかく芸大に入るのに、音楽家たらんとすれば、とても普通の状態で高等学校を終えて、芸大に入学するなんということはできない。かなり専門的な領域にまで達しなければ、芸大の音楽というものに入学できないような、それほど芸大というものは高次なものを持っている。はたしてそういうようなものがここで芸術方面で要望されるのか、こういうふうな点を考えれば、そこら辺の目標は非常にむずかしいと思うのです。いま大臣が参議院のほうへ行かなければならぬそうでございますので、これから話をしてまいりますと長くなりますから問題点だけ申し上げますが、そういう中で、私は学校教育でそういうむずかしい問題を日本が完成をすべきであるか、あるいは業者がもっと理解を持って――問題点を申し上げてきましたが、とにかく先生のいま申されたようなものを満足するために、いま六億ということをおっしゃったのですが、施設、設備に相当金をかけなければいけないと思うのです。そして時間も、ただ四年間に何単位取ればというふうなものでは、この問題は私は満足できないと思うのです。あるいは研究科を設けるとか、それ以上のまだ研究する機関も、そうしてその勉強する人たちも、いまのような学生の財政事情で、アルバイトをやりながら研究をするようなことをやったらだめだと思うのです。そうすれば、この理想を実現するためには、学校という組織の中で課程でやるならば、やはり基礎的なものであって、それを完成するためには、日本の業界、事業家というものは、もっと日本技術伸展させる方向に刮目しなければいけないと思うのです。そういう点では日本の業者はきわめて利己主義であって、ほんとう日本のこういう技術、こういうデザイナーのようなものをつくるところに意欲がないと思うのです。だからこの学校の使命は、先生たちがお考えになったものを、ただ文部省のいまのような程度考え方で進めていったのでは、絶対にこれは満足できるものじゃないと私は思う。弊害に終わると思うのです。これをどういうふうにもつと社会全般が生かすかということが問題だと思うのです。だから、こういう学校をつくることも必要であるけれども、こういう分野は、日本の金もうけをしようという、日本産業を云々しようという人たちの大きな責任であって、そういう点を啓蒙することも非常に私は重大ではないかと思うのです。そういう点について私は一つの考えを持っておったのですが、両先生に何か御意見があれば、お聞きしたいと思うのです。
  40. 今道友信

    今道参考人 基本としてはお話のとおりだと存じます。これからデザインに限りませず、学問の進展によりまして中間領域の研究が非常に要求されてくると思うのであります。そして、非常に新しい学問名前が出てまいります。ですから、そういうことを研究していく上におきましては、やはり本来から申しますと、中間領域が十分研究できる学者ができてから実は学校とか何かも開設されていったほうがよろしいと存じますので、そういう方向に向かえば、ただいまの御質問の御趣旨がそのまま満足されていくようになるのじゃないかと存じます。そのことは、これから文科系にもありますでしょうし、法律社会学あるいは自然科学、いろんな方面にそういう新しい学問が盛んに出てくると思います。その新しい学問を要求するほんとうの学者たちは、実はそういうものを研究する機関がほしいので、その学問が目鼻がついてから教育にも進みたいというのがほとんどの学者の意見でございますから、そういう意味で、学者側の要請というのも今後文教委員方々もなお一そうおくみ取りいただければ、私は日本学問のために非常によろしいのじゃないかと存じます。そしてそれが、ただいまの御質問学問の側からある意味で支持するお答えになるのじゃないかと思います。
  41. 関口勲

    関口参考人 社会全般がこういう新しい領域の学問教育についてはもっと協力すべきであるということは、全然同感でございます。それから、現実には、御承知のように、地元の産業界の方々が、この大学ができればある程度財政的な援助をしようという団体をおつくりになっておられることも事実ございます。ただ、私望むらくは、そういう御熱意がありますのですから、大学ができることがきまりますと、ややともいたしますと、社会全般のいままでの経過を見ますと、その御熱意がさめることがあり得る。さめるどころじゃない、私どもとしては、いよいよいまお話しのようにこのユニークな大学をもり立てていただくように、社会のほうからも特に財政的な御援助をいただきたいということを心から私も感じておるわけでございます。
  42. 小林信一

    ○小林委員 やっぱり私は、学校の領域の中でこの大きな目的を達するということは不可能だと思うし、また、それはしなくていいと思うのです。どっちかといったら、もっと事業家のほうがこういう学校がほしいのなら諸設備をし、あるいは自分たちの研究の中でこういうものに投資をするという、そういう体制が日本のこれからの産業を発展させるもとだと思うのです。とにかく工業芸術を接触させる、これは絶対必要条件ですが、それはもっと産業界が刮目しなければいかぬ。そういう点にもっと学者の先生方も、学校をつくれということよりも、そういうふうに業界に刺激を与えるようなことをやってほしいと私は思うのです。とにかく、このことについても私たちは反対するものではありません。  そこで、先ほど私はちょっと芸大に入学するという問題で御質問申し上げたのですが、とにかくいまの芸大に入るということは、一応芸術家の領域に入らなければ入学できない。そして高度の日本芸術家が養成されていくのですが、そういうものを考えますと、一体芸術工科大学というのはどんな形式で、どんな方法で入学試験がなされるのか、一般的な大学と同じような形でもってやるのか、ここら辺は非常に問題だと思うのですが、これについてのお考えがありましたら、お聞きしたいと思うのです。
  43. 関口勲

    関口参考人 再三申し上げますように、芸術技術の総合された新しい一つの立場をつくる人ということでございますから、いま申し上げましたように、芸術的な理解、センスを持つことは絶対に必要である、それを持たせるのにはやはりある程度実技を通すことが必要であるということがたしか調査会の皆さんの御意見で、そういうことを延長いたしますと、結局入学試験については、芸術家を養成するのではありませんから、それほど熟達した芸術的な技能を試験することはなくても、ある程度の実技を入学までに身につけておるということをテストする必要があるのではないかという議論はしばしば出ております。ただ、報告書の中にはそのことまでは書いてはございませんし、それから伺いますと、入学試験の費用もこの法案が成立いたしますれば予算の中に盛られるということでございますから、これから新しくこの大学の準備に当たる諸先生方の一つの問題であると思います。調査会としてはいまの議論が非常に出ました。そのことをお伝えいたします。
  44. 床次徳二

    床次委員長 参考人方々には、たいへんお忙しいところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本案につきましては、引き続き唐橋君の質疑を続けるわけでありますが、この際、午後二時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ――――◇―――――    午後二時十八分開議
  45. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案について、質疑を続行いたします。唐橋東君。
  46. 唐橋東

    ○唐橋委員 この前の質疑に引き続きまして質問させていただきます。  午前中、参考人を呼んで今度の大学に関する御意見等もお聞きしたわけでございますが、あのように、今後いろいろ充実するためには重要な問題を含んでいると思います。したがいまして、それに対して、現在までありました調査に関する会議というものを土台にするか、あるいは別に本年度、新しく何らかの今後充実するためのそのような性質の会議または何か審議会的なもの、そういうものを設けるのか、あるいはまた、現在までの調査会議でもういいんだ、その趣旨に従ってそれに対処し、来年度を迎えるのだというような、やはり本年度で当面充実のためになすべき、諮問機関までいかなくとも、やはり諮問的な機関が大臣のもとになければならないのではないかというようなことを、午前中の参考人意見を聞きながら私は感じたのでございますが、それに対して本年度の計画等がありますれば、お示し願いたいと思うのでございます。
  47. 天城勲

    ○天城政府委員 基本的な芸術工科大学の構想について調査会から御意見をいただきまして、私たち、いよいよ実施の段階にかかるという前提で、去年の秋から九州芸術工科大学の設置の準備会というのを設けております。ここでは何を主として考えるかということでございますが、けさほどの参考人の御意見の中にも出ておりました幾つかの非常に重要な問題がございます。それを中心に出そうと思っておりますが、大体三つの専門委員会を設けます。一つは、教官の選考のための委員会でございます。それから第二は、教育課程をつくるための専門委員会、それから第三番目が、施設、設備、建物とか教育の設備関係を検討する委員会、この三つの専門の部会を設けるつもりでございます。教官の選考が非常に重要な問題でございますので、第一段階の教官の選考の委員会は、すでに何回か会合を開きましていろいろな角度から選考いたしておりますが、きょういろいろ参考人からも御意見がございましたように、教育課程の問題も実は教官と離して考えられない点もございますので、教官の選考がある程度目鼻がついた段階で、この教育課程の、教育内容のほうの御答申の線を基本にしながら委員会の仕事を進めてまいりたい。それらの構想がきまって施設、設備の委員会をつくりたい、こう考えております。  なお、けさほどのお話にもございましたけれども、非常に特殊な学校でございますので、入学試験、入学選抜の方法も、かなり独自に考えなければならないのではないか。有島先生からもお話しのように、もっと若い時代からの素養ということも非常に大事でございますが、とにかく大学が発足いたしますので、その学校の性格に向く学生をどうやって選ぶというような点も中心になろうかと思いますので、これもその準備会の中の一つの大きな仕事と考えております。
  48. 唐橋東

    ○唐橋委員 私からの要望をつけまして、この件に関する質問を終えたいと思うのでございますが、いまのような考え方の中に進められるというなら、ざっくばらんに申しまして、文部省内のあまり事務的といいますか、官僚的といいますか、そういうような形のワクにとらわれることなく、いまのような一つの充実の過程の中で、広くやはり学術会議あるいはその他、いわば大学関係のいろいろいままで御審議をいただいた方等も含めながら、広く各界の意見を網羅した中で、やはり最初の出発が非常に重要だと思いますので、あまり事務的にならない中において、広い意味の十分なる準備を本毎度中にやっていただきたいということを要望しまして、この件の質問を終わらせていただきます。  次には、研究所の設置についてお伺いするのでありますが、この研究所の問題で、提出されております資料にもありますように、新潟大学の脳研究所あるいは金沢大学のがん研究所、京都大学の霊長類研究所、東京大学の医科学研究所、あるいは京都大学の胸部疾患研究所、長崎大学の熱帯医学研究所と、こういうように各大学における研究所は、それぞれ学問的に、あるいはその他社会的に必要に応じて年々出てくると思うのでございますが、この研究所が国全体の立場に立って、それを元締めをしている文部省の立場に立って、来年はこの大学にはこういう研究所が当然設置されるべきであるとか、あるいは三年後にはこういう点についてやはりこの大学にはこの研究所を当然設置すべきであるとかいうように、毎年各大学の自主性の中から出てくることは当然だと思いますが、それらを総合して、実際五年計画とかあるいは七カ年計画というような大きな一つの計画的なものを持って、それで足りない部面はやはり文部省のほうから指導してやるし、あるいはまた、当然大学側から出てくるものは出てくるものとしてその中で消化していくというように、研究所全体をとらえた場合の年次的なものは当然必要だと思うのでございますが、それらの計画はあるのですか、そしてそれらの計画に基づいた、いま出されておるこの各種研究所が、年次的な意義の中で位置づけられているものなんですか、これをひとつお聞きしたい。
  49. 天城勲

    ○天城政府委員 研究所の新設あるいは改組充実、これらの措置につきましてどういう方針かということを申し上げたいと思いますが、この研究所の中には、いわゆる各大学あるいは専門研究者の共同利用の研究所のタイプのものが一つございます。それから特定大学について、制度的には特定大学研究所というものがございます。それから大学の中に研究施設という形で学部付属の研究部門がございますが、この部門が発展してまいりまして研究所に昇格すると申しますか、大きくなってくるものがございます。これらによりましてそれぞれ取り扱いが違ってまいります。それから一方、そういうものと同時に、とにかく結論として、研究所になる場合には関連の学部あるいは学会、それから講座数がどういう関係になっているか、それが研究所として当然必要だ、あるいは研究所でなければならないというような観点を考慮しながら、研究所の新設とか改組に入るわけでございますが、最初の共同利用の研究所につきましては、これは慣行上、学術会議からの勧告がたくさんございます。これは法律上そうなっておるわけではございませんけれども、関連の学者の共同利用研究になるものですから、毎年学術会議でもっていろいろな分野の検討の結果、こういう共同利用の研究所を設置してほしいという勧告が政府にございます。大体共同利用の研究所は、それをもとにして考えるというやり方をいたしております。それから大学の、たとえば本年お願いしております霊長類研究所、これはそのタイプの共同利用研究所でございます。  それから、新設の場合には、先ほど申したように新しくするものもございますし、それからいろいろな形で根っこがございましたものが発展していくというのがございます。本年医学関係研究所を二、三お願いいたしておりますが、たとえば脳の研究ですとか、ガンの研究ですとか、そういうものはかなり横並びに検討ができるものですから、ガン研究の全体の動きの中で、どこの研究所が現在どういう特色があってこれは拡大すべきだとか、今度もお願いしておりますが、結核研究所とそれからガンの研究所が一緒になりまして胸部疾患、これはガンを中心にした新しい学問分野に入っていくというような転換をいたしているものもございます。  そういう考え方で全体を見ておるのでございますが、最初にお話しのございました五カ年なら五カ年の計画ができておるかということでございますが、大学のいろいろな要望が絶えず出てくるもので、はっきりした五カ年計画という形でではできておりません。しかし、学問の発展が非常に早いのと、それから境界、領域と申しますか、従来の分野考えられておった以外のところに新しく出てくるものがかなりございますので、別途文部省設置法でもお願いしておりますが、本年から学術審議会という諮問機関を設けまして、その学術関係の基本的な方策、考え方、そして、できますれば一定の期間を限っての将来の計画というものをはっきりつくっていこうという考え方でございます。
  50. 唐橋東

    ○唐橋委員 学問分野でございますが、それぞれの水準から見ても、非常に高度の位置を占める先生方もおいでになるというようなのが大学の現在の姿だと思います。したがいまして、それを何か通り一ぺん的な一つの計画の中で押しつけていくということは、やってならないことだし、できないことだと思いますが、しかし、全体学術研究の中で、総元締めとして、足りない部面はやはり研究費なり研究所なりを設けていって振興させなければならないだろうし、また、研究が高度に必要なところは、それ相応に文部省として取り上げていかなければならないであろうし、そういう点は非常にむずかしいかと思うのでございますが、全体の研究体制がおのおのの自主性を持ちながら、総体的には欠陥のない、大穴のない、そういう研究体制をつくらせていく任務こそが文部省の任務でなければならないのではないか、こういうことを私は平素考えておるわけでございます。そういう考え方の上に立って、研究所の整備というものが、現在まであまりにも、何か自主性というとうとい姿の中で――ことばは悪いのですが、自然発生的なものが多かったのではないかというような感じを持っているわけでございます。これらの点に対して今後十分検討して、いま私が申し上げましたような方向が学会のほうにおいても受け入れられるとするならば、やるべきじゃないか。こんなような現在の大学のあり方について、それに対する文部省の一つの立場について申し上げているわけでございますが、これらについて、ひとつ大臣の考え方をお伺いしてみたいと思います。
  51. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 非常にごもっともな御意見だと思います。いま問題になっておりますのは、御承知のように、学術会議が勧告をしました科学技術基本法の問題がございます。科学技術基本法は、やはり学術の研究面につきまして、一定の計画に基づいてこれを振興していくという趣旨だと思いますが、ただいま、科学技術基本法につきましてはいろいろ内部で論議がございまして、まだ成案に至っていないのでございます。しかし、この研究機関のあり方等につきましては、やはり自然発生的に、ただ大学が要望するからそれをつくっていくというのではいけないので、全体の研究面の組織から考えていかなければならない。それで現に、実際大学の要望によりまして、その大栄にふさわしいかどうかということでその研究所等をつくってまいっておるのでございますが、しかし、おのずからそれは一定の全体的な計画の中においてやってまいる必要があるかと思います。それで、たとえばこれは研究所ではございませんけれども、北海道と九州に今度歯学部をつくりましたが、こういう学部の設置につきましても、相当地理的な関係でございますとかその地方関係というものを考慮して、たとえば研究所にいたしましても、その地理的な、その地方におきます研究として適当であるかどうか、そういったものをやはり十分考慮してまいる必要があると思いますが、ただ、先ほども局長が申し上げましたように、画然としたいま計画性というものが欠除しておるのは確かだと思います。これは、将来におきましては、なお十分に、各大学研究所の設置等につきまして、一定の計画性を持たせるということがきわめて必要であると感じております。
  52. 唐橋東

    ○唐橋委員 直接法案に関係はありませんので、その点についての議論は別の場でしたいと思いますが、この研究所の一つの体制と、問題はやはり研究費の問題かと思うのでございます。研究費については、いろいろいま議論になっておるアメリカ軍からの研究費の支出というようなことは、やはりこれは非常に国民の心理に対しても異常なほどのショックを与えた問題でないか、こういうことを私は考えておるわけでございますが、研究所のいま申しましたような年次的な一つの計画、それに伴う研究費の十分なる体制ということが一緒にならない限りは、やはり研究の効果はない、こういうことでございますが、多少法案からは横道にそれるかもわかりませんが、いまのアメリカ軍からの研究費の援助というようなものに対しての基本的な考え方、そうしてそれと同時に、いまの研究費の今後の文部省としてのあり方という点について、ひとつ明確な所見をお伺いしたいと思います。
  53. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 米国陸軍から各大学に対しまして相当の研究費が援助になっておるのは事実でございます。この内容等を調べてみますと医学部が非常に多いのでありますが、その講座におきまして、教授が研究いたしておりますのについて米国にこういう援助の方法があるというのを聞いて、それに申請をいたしまして、許可をもらって援助を受けておるというのでございまして、これは大学研究費が十分に、そういう外部の援助を受けないで済むような状態であれば、こういうのを受けないで済んだのではないかと思います。ただ、文部省といたしましては、終戦後この大学研究費の増額については相当努力をしてまいりまして、戦前の研究費に相当する程度までは復活してまいったと思います。ただ、学問研究が、最近におきまして非常に新しい科学の研究が要望されてまいっておるのでございますので、実際の要望に即応するように十分な研究費を大学に配分するということは、なかなか追いついていけない実情でございます。ただ、今後も、こういう米国の援助をもらいました実例にも徴しまして、私どもとしましては、将来の問題としてそういう援助を受けなくてもできるように、文部省として十分努力する責任を痛感いたしております。
  54. 唐橋東

    ○唐橋委員 この件について、国民の疑惑といいますか、感じといいますのはこうだと思うのです。やはり研究費を文部省なら文部省に要求した、だが非常に足りなくてもらわれない、足りない場合に、しかたがなく米軍から研究費をもらったような性質のものか、それとも文部省のほうに要求はしているのに、アメリカ軍のほうからこれを研究してくれというようなことで出た研究費なのか、この二つの点は非常に性格が違うと思うのですよ。そういう点がうやむやであれば非常にいろいろな疑惑が出てくると思うのでございますが、この研究費を出すときのかまえといいますか、姿勢といいますか、それと、いまのようにその間にあった文部省のとってきた処置といいますか、それが非常に問題だと思うのでございますが、それについてはどうなんですか。
  55. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 いま講座研究費といたしまして、実験講座につきまして年々その金額を増額して研究費をつけてきておるのでございますが、これはいわゆる普通の研究費でございます。それから、一定の科学テーマを見つけまして、これの研究をいたします場合には必ず研究費の配分をいたしておるのでございますが、科学研究費の配分につきましては、四十二年度で四十一億くらいな金額を計上いたしておりますけれども、その要望に対しましては全部の要求を満たしていないのでございますが、その範囲内において配分をしておるという実情でございます。今度の米国の援助を受けました内容を調べてみますと、その中で旅費、いわゆる国際会議に出張いたしますための旅費の支出でございますとか、あるいはある特定の研究材、資材でございます機械とか器具とか、そういったものの現物を寄付したのだ、こういうものもございますが、普通にずっと調べてみますと、その講座の教授が科学研究費といたしまして要求をいたしましたものについて、多少内容は違うかもわかりませんが、ごく類似なようなテーマについて申請書を出して、許可を受けて援助を受けている。おそらくこういうのは、その研究についてそれだけでは十分でないので、こういう制度があるからというので、それではこれを申請してみようというのでその援助を受けた。ですから、その意味におきましては、科学研究費の配分が十分でなかったということは言えると思うのでございます。でございますから、将来問題としては、この科学研究費の配分につきまして、ある研究をいたしますならば、それにやはり十分な研究のできる程度研究費の配分をいたす必要がある。その意味において、やはり研究費を増額することがこういう問題を避ける一審いい方法じゃなかろうか、そう考えております。
  56. 唐橋東

    ○唐橋委員 この問題については、この場で議論するよりは、もっと別の機会があろうかと思いますのでこれだけでとどめますが、要は、今後の問題として、自主的に申請をして金をもらっていく、こういうような中にあらせたほうがいいのか、それともそういうアメリカ陸軍からの金でございますから、そういう場合には、文部省としてはこのような形の中でいろいろ手順をはっきりときめまして、そして今度やはり出してもらって、たとえばいまのような器具なら器具というふうなものならば、これはもう出してもらってもいいというような何か基準的なものがはっきりしないと、やはりこれは非常に問題だと思うのですが、今後研究費を大きくしてそのような傾向を防ぎますと言うだけでなしに、もっと何か、はっきりした具体的なこれに対する処置が明確にならない限りは、やはり国民として何かしら割り切れないものが残ると思うのでございますが、その点についてお答え願いたい。
  57. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 先ほど実は参議院の予算委員会におきましてこの問題がだいぶ長く論議されました。それで、私どもとしましては、この研究費を外部から受けます場合においては、国立学校特別会計をつくりました際において、その研究費が大学教授に対しまして外部から寄付があり、それによってその研究費の補充をいたす場合においては、特別会計の中に奨学寄付金というのを一項目設けまして、四億五千万のワクをつくっておるのでございます。これに入れまして、その国費と同じ経緯によりまして研究寄付を、指定寄付でございましたら指定された教授に渡す、こういう方法を講じておるのでございまして、できたらそういう方法でいきたいと実は思っておるのでございますが、米軍からもらいましたものは特別会計ができる前からずっと続けられておりまして、今日までそういう方法がとられていなかったのでございます。この問題につきましては、やはり私ども、いやしくも外国の国家機関から日本の国家機関に対して、政府というものを通さないで、政府に何らの通報もなしに直接に外国からくる方法がいいのかどうか、これは先ほども外務大臣が答弁されましたが、再検討してみなければならぬ、こう申しておりました。実際はそういったような問題が起こらないようにする。もし寄付を受け入れますなら、いま申されたように一定の基準を設けまして、この程度のものなら受け入れてよろしい、こういうことはいかぬというようなものをぜひ設けたい。ただ、この研究はいままで、これからもそうでございますが、あくまで学者の良識によりまして、私どもとしては、学問研究内容は自主的に行なっていただいて、政府が何らの関与もしないというたてまえにございます。でございますから、今後各研究費の使い方等につきましては、私ども大学当局におきましてやはりこの際再検討していただいて、その筋を通すような方法を大学でも考えていただく、そうしてこういうふうにという一つの方式を私どもとしても研究をいたしまして、その間における筋を通していきたい、さように考えておるわけでございます。
  58. 唐橋東

    ○唐橋委員 法案の内容に入りまして、脳研究所の問題でございますが、現在の交通事情からくる傷害による脳や神経の障害というものは非常に大きいと思うわけでございます。したがって、これの研究所の設置というものは前々から非常に要望されたものであり、あるいは学術的にも非常に大切なものでないかと考えましたときに、これらの今後の充実に対して非常にやはり期待感があると思うわけでございます。したがいまして、いまこの交通事情等に伴うこれら脳神経の疾患に対して、今後学術的にあるいは医学的に、相当全国的な組織網の中で充実しなければならないということは当然考えられておることだと思うのでございます。したがって、これらの今後の充実というような意味合いに立ちまして、現在の法案審議の中というわけではなくとも、何か委員長のほうで適当な機会にひとつ取り上げていただいて、やはり今後これだけ脳神経の充実が必要だという観点の中で、ほんとう専門的な立場に立っておられる方の御意見も聞きたいと思いますので、理事等にはかっていただいて、適当な機会にひとつそのような取り扱い方をお願いしたいと思います。
  59. 床次徳二

    床次委員長 ただいまの御意見に対しまして、いずれ理事とはかりまして御相談申し上げます。
  60. 唐橋東

    ○唐橋委員 それから養護教諭の養成所の問題についてお伺いしたいのでありますが、現在までに五つ、今度三つ、合わせて八カ所の養護教諭養成所ができるわけでございます。そういたしますと、やはりここの説明にもありますように、年次的にこれは計画されておるものであり、今後とも年次的に充足していかなければならない問題だと思うのでございますが、これまた今後毎年、これを何カ年間かもう少し続けていくんだ、こういう計画の中における今次の措置なんですか、それとも大体ことしでこの程度なのか、こういう点をひとつお伺いしたい。
  61. 天城勲

    ○天城政府委員 実は現在の国立の養護教諭の養成所の設置につきましては、当初八ブロック、八カ所をつくるという計画を立てまして、三カ年でこれをつくり上げるという計画を立てました。過去二カ年で五カ所できまして、四十二年度で残りの三カ所をつくる、こういう計画で進んだわけでございます。この養護教諭の養成所の問題につきましては、広く養護教員の養成全体の中で、この養成所の位置づけをどうするかという問題と関連がございますので、もっと場所をふやすという御希望もございますし、あるいは年数を延ばせという面の御要望もあったりいたしますので、一応現在第一期の八カ所の計画がこれで終わりますので、今後の問題については、いま申し上げておるような観点を含めて、あらためて計画をつくり直すつもりでおります。
  62. 唐橋東

    ○唐橋委員 そのような計画の中における第二次の年次計画という御説明でございますが、定員が四十名しかの中で養成されていっている。しかし、各学校短期大学や、あるいは文部大臣の指定する養成機関というような機関における養成と合わせて見ても、養護教員の充足数というものの計画を制定する中で、この養護教諭の現在の需要に対して、どれぐらいいまのところ養成機関が満たしているのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  63. 天城勲

    ○天城政府委員 養護教諭の養成は、一言で申しますと、この国立の養護教諭養成所以外にもいろいろございます。また、資格が複雑でございますので、基礎資格の上に一定の教育を受けると養護教員になるというような方法もございますので、ソースがいろいろ多方面にわたっております。現在、これは公立義務教育学校の定数の基準の法律がございます。この基準法を前提に考えまして、四十三年度までに五千人の充実をはかるということが三十九年からの計画でございましたので、この線に基づきまして、この養護教諭養成所その他県立などの養成機関修了者、あるいは課程認定の大学、短大等をあわせてこの方向で充実するように、いま全体の計画を定めて努力している実情であります。
  64. 唐橋東

    ○唐橋委員 養護教諭の充足を考える基礎になっておる、いまお聞きしました必要推定数ですが、この場合の出し方というか、一つ非常に問題があるわけでございます。と申しますのは、学校なら学校の生徒数なら生徒数に対して何人、こういうような出し方だと、実際いま人口が非常に減ってくる地域のいわゆる小規模学校というものは、ほとんど養護教諭が少なくなってくるという現実論がこの中で非常に出てきております。私のお伺いをしますのは、やはり各学校単位に養護教諭というものを考えていかないと、単に生徒数からの充足を考えていくと、実際三校、四校で一人というのでは、今度は小規模校には置けなくなってしまうわけです。三つ合わせた学校に一人置いて、あとの二つは養護教諭が巡回するというわけにもいかない。やはり学校単位で児ないと、どうしても充足しないというような非常な問題がありますので、これを大臣にお伺いしたいのでありますが、やはりこういう養成機関の充実と同時に、充足数というものを十分検討する場合、充足率を出す場合に、一番基本となっておりますいまのような実態というものを十分御検討願って、国立あるいは公立その他私立の養成機関をあわせながら充足いたしていくという考え方でなければならないと思うのでありますが、この養護教諭の一番基礎になっております配置基準の問題に対して、はっきりと検討していただかなければならないと思うのですが、これに対してどう考えるか。
  65. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 御承知のように、小中学校につきましては、ただいま四十三年までの計画で定数表をつくりまして、その実施をいまやっておる中途になっているわけであります。その定数表の中に、そういう基準を定めて教員数の算定をやっておるのでありますが、一応その定数表におきましても養護教諭の充足状況がまだ十分でない状況でございます。もちろん、特に先生のお説のように、実際養護教諭の必要性は、大きい学校でなしに僻地等の学校に非常に必要性が強いと思います。それで、現在のところは四十三年で一応この定数表の年次は終わりますので、これが終わりましたら、ひとつあらためて新たな観点で、養護教諭の養成等の新しい計画とあわせまして、定数も、いわゆる養護教諭の配置の問題を新たに立案し直す、計画を立て直すということも考えている次第であります。
  66. 唐橋東

    ○唐橋委員 終わります。
  67. 床次徳二

    床次委員長 有島重武君。
  68. 有島重武

    ○有島委員 文教関係の諸法案の審議に入る一つの前提として、教育の基礎理念について触れていきたいと思います。  今国会の予算委員会の第二分科会におきまして、文教政策の基本理念についての論議がかわされました。当文教委員会におきましても、あらためてこれを再確認してきたわけであります。その第一が、教育基本法の第一条、教育目的、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」とございます。この文の中で、一番に、人格の完成、二番、真理と正義を愛する、三番に個人の価値、以上の三つの語句につきましては、しばしばその見解に異論を生じて、文教政策の運用の上に混乱を生ずる場合が多い。そこで、文部大臣は昭和四十三年中に、この三点を交えたアンケートをつくって、一つには文部当局、学識経験者、二には教職員、三には父兄、四には青少年、学生、生徒、児童、以上の四者各層にわたって、その見解を調査することを約束されたわけでございます。それは間違いございませんですね。
  69. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 間違いございません。
  70. 有島重武

    ○有島委員 なお、このときに、今年昭和四十二年度には、青少年に限ってのこの種のアンケートを考慮されておる旨のお話がございました。いまここでは、今年度のそのアンケートの原案、それから調査の対象、調査及びその整理の方法等をお尋ねしておきたいと思います。
  71. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 これは文部省の広報のほうの関係の係でやっておりますが、必要であればいま呼んでもよろしゅうございますが、その計画をいたしておると思います。
  72. 有島重武

    ○有島委員 では、近日中に御提出いただきたいと思いますが……。
  73. 床次徳二

    床次委員長 資料はできますか。――これは追って調査してから答えさせます。
  74. 有島重武

    ○有島委員 基礎理念の第二番目の問題でありますが、現在政府並びに文部当局が青少年教育の目標としておられます中央教育審議会答申の「期待される人間像」の第二部第一章第五項に、「生命の根源に対して畏敬の念をもつことである。」とありまして、このことがこの答申全編の一番のかなめであり、前後の各項は、みんなこの生命の根源に対し畏敬の念を持つことから生ずる派生的な事柄であるように述べられております。このことばにつきましても、はなはだ異議の生ずるところであることを分科会でもって認めたわけであります。これにつきましての提案でございますが、「生命の根源」の一句につきましては、古今東西の哲人、科学者等の代表的な見解を列挙して、時宜に適した客観的な判断の助けになるように調査報告を試みられましたらどうか。文部大臣としても、また中央教育審議会といたしましても、その責任があるのじゃないかと思うわけであります。いかがでしょうか。
  75. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 さようにひとつ研究をいたしてみます。
  76. 有島重武

    ○有島委員 これは文献からの列挙でありますから、それほど手間はかからないと思いますので、これも近日中にお願いいたします。  本日の議題国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を審議するにあたりまして、本日は主として大学院の設置に関しまして質問いたします。  昭和二十四年の大学院基準に関する第二、基準といたしまして、「五 大学院を置く大学は、その課程に必要な施設並びに講義、演習、実験等の授業を用意しなければならない。」、「六 大学院を置く大学は、その目的使命を十分に達成し得るような大学教員組織を用意しなければならない。」とございますが、法案にあります帯広畜産大学、愛媛、宮崎両大学に設置する大学院の規模並びに教員組織をお尋ねしたいと思います。
  77. 天城勲

    ○天城政府委員 いま御指摘のような大学院としての要件がございますが、帯広畜産大学は畜産学研究科で、学生定員修士四十六名でございます。それから宮崎大学は、農学研究科でございまして、学生定員は七十二名でございます。  それから、国立大学の今度の場合でございますが、一般にもそうでございますが、従来、帯広畜産大学には大学院はございませんで、学部だけでございましたが、その学部を基礎にいたしまして、先ほど先生も御指摘になりましたような条件に該当する教育組織、教官の充実ができておると認められまして、大学院の設置ということになっておりますので、あらためて教官定数がどうというのではなくて、ここにあります教官が大学院を担当するだけの資格があるかどうかという認定をした後に設置いたしますので、大学院を設置するためにあらためて教官の増加をするというやり方をいたしておりません。
  78. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、その三つの大学においては、現在では大学の教授は十分である。そして講座を予定どおり行なうことができておる、そういった前提でもっての処置でございますね。
  79. 天城勲

    ○天城政府委員 さようでございます。そのような前提でやっております。
  80. 有島重武

    ○有島委員 実際に私はこの学校調査いたしましたところ、これはいま現在において、教官の不足を嘆いているわけであります。特に帯広畜産大学、これは講座ごとに教授一名、助教授一名、助手二名という規定になっておりますけれども、現在の学部で十名近く足りないのだ。それでこれに大学院が加わりますと、非常に教官不足である。そういった事実を知っているわけでありますけれども、その点については、十分調査をなさった上のいまのさようでございますというお話でございますか。
  81. 天城勲

    ○天城政府委員 実地の教員が不足を伝えておるという実情につきまして、私たち、要するに、定数上の問題と現実の欠員の問題と両方あると思っております。もちろん、大学院を設置する以上は組織として整っていることが前提でございますし、また、現に大学院の研究を指導する教官がいるかどうかという個々の問題について考えるわけでございますから、少なくともいまの帯広の例でございますけれども、それだけの条件が整っているという前提で修士課程を設置しよう、こう考えたわけでございます。
  82. 有島重武

    ○有島委員 いま、現実の問題と違うとおっしゃるが、これは国民の立場といたしますと、現実の問題が一番大切なわけでございます。そして向学心のある学生たちが十分に受けることができない、学校当局もそれをいま悩んでおる。それを定数の上からこうであるからということだけでもって処置していらっしゃるというのは、これは少々当局としてはまずいじゃないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  83. 天城勲

    ○天城政府委員 大学院を設置いたしますときの、先ほど先生も御指摘になった基準がございまして、その基準に該当しなければ大学院の設置はできないわけでございまして、現に他の国立大学から大学院の設置の要望があったところもございますが、しかし、いまの基準に照らして、現時点においてはそれらの条件を満たさないというので、設置を認めていないところもございます。帯広の場合には、現時点においては、それだけの条件に見合うだけの水準の教官と教官数があるという前提でやっているわけでございます。ただ、全般的に、現在大学が労働がかかっているから、教官の増加を希望しているとかという問題は、もちろん大学によってかなりあろうかと思っておりますけれども、いまの基準に関する限りは私たちは合うという前提でやっておりますけれども、同時に、大学全体の教官の増加という問題につきましては、これは別の面から見ましても、一般教育の負担増加があるとか、あるいは若干講座の不完全講座という形で、教授、助教授はあるけれども助手が欠けているというような姿のものもございます。そういうものにつきましては当然埋めていくつもりでおりますけれども、基準に関する限りは、帯広の例でございますが、十分該当するという前提のもとに設置をきめたわけでございます。
  84. 有島重武

    ○有島委員 ここで水かけ論のようなことになってもむだでございますので、実際をよくお調べの上に、実質的な教育効果があがるように、ひとつ適宜な措置をおとりになったほうがよろしいのじゃないかと思うのであります。  次に、大学院と申しますと、一般の国民から言うと非常に高ねの花と申しますか、象牙の塔と申しますか、遠いところにあるような感じがいたしますが、国民が大学院に期待するところは一体何か。これが大学院基準の第一、趣旨というところには、「二 修士の学位を与える課程は学部に於ける一般的並びに専門教養の基礎の上に、広い視野に立って、精深な学識を修め、専門分野における理論応用研究能力を養うことを目的とする。」、「三 博士の学位を与える課程は、独創的研究によって従来の学術水準に新しい知見を加え、文化の進展に寄与するとともに、専攻分野に関し研究を指導する能力を養うことを目的とする。」このように明示されておりますけれども、現時点において、特に大学院の設置拡充を求められているというこの必然性を、納税者である国民各層にわかりやすく、共感を得られるようなPRを行なうべきではないか、そして大衆の支持の上に思い切った措置をとるべきではないか、そう思うわけでありますが、文部大臣、現時点における特に大学院の設置拡充を求める由来をひとつ……。
  85. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 だんだん学術が進展してまいります現時点におきまして、一審大事な問題は何かと申しますと、優秀なる学術研究の指導者の養成ということが一審重要な問題ではないかと思います。実は経済界がだんだん発展し、好景気になってまいりますと、相当優秀な者が大学卒業すると同時に実社会に出る者が非常に多くなってまいりまして、学問研究の指導者になる者の養成ということが、非常にむずかしくなってまいっております。そこで、私ども、今年の予算においてもそうでございますが、将来の学問研究の重責をになう真に優秀なる学者を養成していくために大学院をぜひ拡充してまいりたい、そういうことを念願しまして、施策としましても、大学院に相当の重点を置いて今度予算的措置をやったわけでございます。その一番の一つのあれは、大学院に残ります者が、修士課程は二年でございますが、博士課程は五年以上おらなければならぬ。そうすると、一般の学生社会に出て相当な収入を得てまいるわけでございますが、大学大学院に残る者については、経済的におきましても非常に不利な状況になるわけでございます。そこで、十分ではないのでございますが、日本育英会から大学院の学生につきましては相当の、育英会としては最高の育英資金を貸し付けまして、将来その方が卒業し、そして実際の研究者になりました場合には、育英会の学資返還を免除するという方法を講じまして、優秀な者が大学院にできるだけ残ってもらうということをただいまやっておるわけでございます。  なお、大学院の問題については、大学院の内容設備等の充実とか、大学院を置きます大学の教授の研究費等は、その他の大半とは相当差をつけまして、大学院の充実ということに努力をいたしておるわけでございます。
  86. 有島重武

    ○有島委員 ただいまのお話は、個々の学生に対しての援助というような点についてのお話だったと思いますが、私が申し上げておるのは、国民全般に、日本の将来のためにこうした大学院を設置していくことがどうしても必要なんだ、そういう共感を得られるようなPRが必要なんじゃないか、そう申し上げておるわけであります。その点はいかがでしょう。
  87. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 それはお説のとおりでございますが、具体的に申しますと、私どもも、機会あるごとにそういうことを、国民の共感をいただくようにあらゆる手段をやっておるのでございますが、現段階におきまして、それが国民全般に行き渡って共感を得るというのは、現状におきましてはまだ非常に不十分だと思います。十分努力をしてまいりたいと思います。
  88. 有島重武

    ○有島委員 あらゆる手段を講じておるのだけれども不十分だというお話でございますが、あらゆる手段でなくてもいいから、一つでも二つでもそうした方向に、一つの具体的な国民生活に密着した例を交えるということは可能であると思います。一つのタンカーをつくった、その裏には数年前からこのようなことが研究され、用意されていたんだということなど、あげられるわけであります。冷蔵庫一つとっても、私たちの日用品を一つとっても、そうしたことは取り上げようによっては幾らでもPRすることができるんじゃないか、そう思うわけであります。これをひとつぜひお考え願いたい。そうして、やはり国民の実感の上でもってそれを背景としていけば、かなり思い切ったことが今後も進められていくんじゃないか、そう思うわけでございます。  次に、今後の問題といたしまして、一つには、すべての大学大学院を設置していくか、二つ目には、少数の大学にこれを集中するか、三番目には、大学院だけの大学を設けるか。大臣としてはこの第二番目を考えておられるように伝えられておりますが、その点はどうでしょうか。
  89. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 大学院にも段階がございまして、例の修士課程までは、相当その学部が充実してまいりますと、ある程度ふえん的に置いていいんじゃないかと思います。なぜならば、その程度まで置きますことが大学自体の研究力を高める上において有効ではないかと思いますが、博士課程と申しますか、いよいよ研究指導者の養成ということになりますと、相当高度の大学内部の教授陣容でございますとか、教授の施設でございますとか、そういう高度のものを要求されてまいると思います。これをまんべんなく全国の大学に置くということになれば、これは全く、事実上においてはそういう優秀な先生を集めるということも非常に困難でございますし、設備もそこまで行き渡らない。それよりも、やはりある程度集中的に優秀な大学院をつくりまして、その大学だけじゃなしに、すべての大学から卒業者を広く受け入れまして、そうして優秀な大学院をつくっていく、こういう方向にいくべきではなかろうか。ただし、私の申し上げます場合におきましても、大学院の考え方はやはり学部の充実が先決でございまして、大学院だけを置く大学というのではなしに、学部という足を持ちましてその上に大学院を持つ大学、しかもその大学は、ある程度学部のほうの学生定員は少なくいたしまして、大学院に重点を置いた大学というのがあっていいのじゃなかろうか。これは制度の問題でございますし、私がそう言ったからといって直ちにできるとは考えておりませんけれども、私の考え方はどうかとお尋ねになれば、私は現在そういう行き方が最善ではなかろうかと考えております。
  90. 有島重武

    ○有島委員 その際に、特に学閥の悪弊が起こらないように、これを憂慮するわけであります。その点、ただいまどこの大学からでも学生を求める、そういうようなお話ございましたけれども、その他の処置でもってその悪弊を極力排除していただきたい、そう思うわけであります。  次に、文科系の大学院と理工科系の大学院とは、性格上分けて考える必要があるんではないかと思われますが、いかがでしょう。
  91. 天城勲

    ○天城政府委員 大学院と一言で申しましても、御指摘のように、最近学問分野によっては大半院に対する考え方がずいぶん違っております。同じ理工系と申しましても、理学部と工学部における大学院に対する考え方が同一じゃないと思います。まして人文科学系あるいは社会科学系においては、工学部と違った考え方が確かにございます。先ほど来お話がございました大学院の充実ということ、それから大半院を中心とした充実の方法につきましても、やはりそれぞれの分野の違いというものを十分考慮した上でやらなければいけないのじゃないかとわれわれは考えております。
  92. 有島重武

    ○有島委員 文科系のほうはおもに私立のほうに重点を置いて、国としては理工科系の大学院に重点を置くべきではないか、かように考えられますが、いかがでしょうか。
  93. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私学の場合におきましても、理工科系の大学院が置けないということはないと思います。優秀な私学でございまして、大学院を置くにふさわしい私学も決してないことはないのでございます。しかし、国立の場合におきましては、理工科系の大学をまんべんなく置くというわけにはいろいろ国費の状態からもまいりませんので、理工科系については幾つかの大学に選ばれて博士課程をつくるということになると存じますが、私学のほうでそういうふうに十分大学院を置く大学にするということは、理工科系については非常に困難ではないか。ごく少数の大学以外は非常に困難であろうと思いますので、理工科系統になるとどうしても国立の場合が多くなる。それに対しまして文科系統となると、これは教授陣容を整えてまいりますれば、まだほかの条件もございますけれども、大体私学におきましても可能な大学も相当あるというように考えます。
  94. 有島重武

    ○有島委員 今後の社会情勢のことを考えましても、特に理工科系の大学院については、国立という名にふさわしい充実したものをどうしてもつくっていかなければならないと思うわけであります。大学院の問題はどこで審議、立案するのでしょうか。
  95. 天城勲

    ○天城政府委員 御質問の趣旨をあるいは間違ってとっておるかもしれませんが、大学院の充実に関しましては、もちろん文部省が中心に考えますが、今後の大学院のいろいろな発展する姿を考えて、大学院の基準と申しますか、基準の改定というような作業になりますれば、私たちのほうに、大学設置審議会の中に基準分科会というものがありまして、制度的にはその基準分科会を通じて大学院の基準の改定という作業はいたします。別の御質問だったかもしれませんけれども……。
  96. 有島重武

    ○有島委員 そのような手続上の問題もあるでしょうけれども、これからますます繁雑をきわめていくと思いますそういった学術上の最先端を行かなければならない大学院の問題でありますから、それをどのようにしていくかということについては、これは相当権威ある審議のメンバーがおらなければならないのではないか、そう思うわけであります。そうしたことについてはお考えがあるのでしょうか。
  97. 天城勲

    ○天城政府委員 大学院の問題につきましては、たとえば国立大学でございますと、国立大学協会の中で今後の大学院問題についてやはり専門研究会を開いておられますし、私立大学におきましても、もちろん各大学考えると同時に、それぞれの団体あるいは機関考えておられます。また、学術会議あたりでも、大学院のあり方についての御検討が進められております。また、大学基準協会というような機関でも、大学院の将来の問題を研究されております。ですから、いろいろな分野大学院の問題が議論されておりますので、私たちは十分こういうところの御意見を聞いているわけでございまして、それを吸収しているわけでございますが、最終的には、先ほど申したように文部省がやる場合にはそういう機関を通って仕事が進められる、こういうことが考えられます。
  98. 有島重武

    ○有島委員 あちらこちらでやっているその意見大学局のほうでいままとめておられる、そういうお答えでございますか。
  99. 天城勲

    ○天城政府委員 まとめていると申し上げたつもりじゃないので、いろいろなところでそれぞれの立場から御検討は進められております。私たちもその声は十分お伺いいたしておりますということを申し上げたのですが、学校制度という考え方で最終的にどういうところで文部省で議論するかと申しますれば、中央教育審議会という機関もございます。それから、具体的に基準という形の作業になってくれば、先ほど申した大学院の基準を検討する分科会というのがございます。ということを申し上げたわけでございます。最終的には文部大臣が中心になって、文部省としてどういうふうな方向に持っていくかということを、これらの御意見を聞きながら、あるいは審議会に御諮問をしながら方向を考えていくということになろうかと思います。
  100. 有島重武

    ○有島委員 ただいま、国立という名にふさわしい、特に重点的には理工科系の大学院の話が出ておりましたけれども、そういった問題に対してはあらゆる衆知を集めて、そうしてこれを審議していかなければならないのじゃないかと思うわけであります。いまのそうした体制でもって十分かどうか、その点についてはどうでしょう。
  101. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 実は大学院の基準の問題でございますが、終戦後におきまする大学制度の考え方としては、大学自体が集まりまして基準協会というのをつくって、そして基準協会でいろいろ大学のあり方及び大学院の基準というものをつくっていこうということで一応考えておったのでございますが、現在、基準協会の活動状況が必ずしも最初に予期したようなわけにいっておりません。それで、いま申しますように、各方面でこれを研究しておるというのが実情でございます。そこで、私といたしましては、実は先般もここで申し上げたと存じますが、文部省としての最高の諮問機関は中央教育審議会でございます。中教審におきまして、現在の学制を、幼児教育から大学に至るまでを一貫して総合的に、かつ長期的にこれを再検討してもらおう、こう考えておりまして、やはり中教審におきまして大学院の今後のあり方、また基準、それらのものも加えまして基本的に考えてもらおう、この検討を開始しようと実は考えておる次第でございます。
  102. 有島重武

    ○有島委員 ただいま中央教育審議会のお話出ましたけれども、この審議会のメンバーの中では、大学院の、特に理工科系の大学院問題のエキスパートはどなたでしょうか。
  103. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 ただいま実は専門的な方のお名前を申す前に、中央教育審議会のほとんどの方の任期がまさに切れかかっております。それで、これは新たに中教審のメンバーを委嘱しなければならぬときが来ておりますが、ただ、中教審だけで各般にわたります専門家を網羅するわけにはまいりません。でございますから、その中教審に専門委員を相当多く委嘱しまして、そうして問題ごとに分科会をつくったり、また総合的に総会をやるということをいたして、できるだけの人員が各方面の問題に取り組むような組織をつくってまいりたい、かように思っております。
  104. 有島重武

    ○有島委員 最終的には大臣がこうした問題を統括していらっしゃるわけであります。これは当然でありますけれども、世界における主要な理工科系の大学院と申しますと、これは十指に満たないわけであります。アメリカのMIT、カリフォルニア大学とかスタンフォード大学とか、ヨーロッパではベルリン大学、ウイーンの単科工業大学、それに国立材料試験場のEMPAというのを持っております。チューリヒのETAというのがございます。ソ連ではモスクワ大学、こういったものがあげられるわけでございますけれども、大臣みずからこれを視察なさってはどうか。これも将来の日本工業のことを考えますときわめて緊急な問題じゃないかと思うわけでございますけれども、どうでしょう。
  105. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 まあできますならばぜひ私もそうしたいと思っておりますが、なかなかその機会が与えられるかどうか……。
  106. 有島重武

    ○有島委員 これは総理も、今期国会の施政方針演説の中で、「われわれ日本国民はすでに戦後の目標を達成し、いまや新たな歴史の創造に取り組む時期にまいりました。国家と民族の発展の基礎は人にあります。」このように言っておられますね。そして新しい時代をこれから開拓していくその最先端に立つべき文部大臣としては、やはりその責任がおありになるのじゃないか。こうした文教政策のいろいろむずかしい問題もございましょうが、優秀なスタッフが大ぜいいられるわけでありますから、大臣がみずから大きい問題と取り組んでいらっしゃるのがよろしいのじゃないかと思うわけでございますが、閣議のほうにそういう話をお出しになってはいかがでしょうか。
  107. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私も国家興隆の基礎は文教にあると確信しておりますけれだも、私自身がそのような重大な信任を得るだけの値打ちがないものでございまして、はなはだ申しわけないのでございます。まあしかし、その気持ちを持ちまして一生懸命やってまいるつもりでございます。
  108. 有島重武

    ○有島委員 閣議にそういった問題をお出しになるかと聞いたのです。
  109. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 なかなか心臓が弱いものですから、閣議の発言はなかなかむずかしいかと存じます。(笑声)
  110. 有島重武

    ○有島委員 これは笑って済ませる問題じゃないと思うのですよ。そういう確信がないならば、これはこれからの大切な日本を背負っていく人材を育てる文部大臣としては、私は不適当であるからという表明をなさったほうがいいのじゃないか、極端に言いますればそういうことになりますが、心臓がお弱いそうですけれども、ひとつ勇気をお出しになって閣議にこれを出すということは、やはり一つの歴史をつくることになるのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  111. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 ただ、真剣に考えておりますことは、今度中教審で学制の基本的な再検討を始めます場合におきましては、あらゆる方面におきましてできるだけの努力をしてまいりたい。その意味におきまして、各国におきまするただいま申されました優秀な大学でございますとか、また各国の学制の実情でございますとか、これらは、あとう限り文部省の機能をあげまして調査研究をしてまいりたいと思っております。
  112. 有島重武

    ○有島委員 次に、先ほど問題になりましたけれども大学付置研究所のことにつきまして、国立大学に付置されておりますところの研究所の総予算額、先ほど四十二億というように言われましたでしょうか、この総予算。それから本年度の増について伺いたい。
  113. 天城勲

    ○天城政府委員 建物の経費は、学校と病院、研究所一本でございます。ちょっと分けられませんが、それ以外の経費で申しますと、大学研究所の四十二年度予算額、お願いしておりますのが百七十七億九千五百万円でございます。
  114. 有島重武

    ○有島委員 増は……。
  115. 天城勲

    ○天城政府委員 前年度の予算との関係で申しますと、二十八億二千六百万円で一八・八%の増でございます。
  116. 有島重武

    ○有島委員 現実にはどれだけのものが必要なのか。そして、これだけの予算を組まれたわけでありますが、ほんとうは、現実にはどれくらい不足なのか。
  117. 天城勲

    ○天城政府委員 あるべき価額と比べてどれだけ足りないかという御質問でございましたならば、ちょっといま数字的に申し上げるだけのあるべき数字というものが出せませんので、数字的にちょっとお答えしかねると思います。ただ、本年度の百七十七億という研究所の予算の中には、たとえば研究所の新設がございますと、これは当然計画的にそれぞれ計画を持っておりますが、完成までに何部門をつくるとか、あるいは過去の研究所もなお拡充計画を持っておりますものは、今後においてどれくらい積んでいく必要があるかというような部分的なものはあるわけでございますが、また、今後研究所の新設ということも毎年予想されます。また、拡充改組ということも予想されますので、先ほどの質疑にもございましたように、私たち、少なくとも大体の傾向として五カ年計画ぐらいにどのくらいの規模が考えられるかというようなことは、別途研究いたしたいと思っておるわけです。
  118. 有島重武

    ○有島委員 先ほど話が出ておりました米陸軍から各大学に資金が出ている。これに基づくいまいただきましたこの資料、九十六件、総額三億八千七百五万八千三百二十円、こうなっておりますけれども、これは一体いつから行なわれていたんですか。
  119. 天城勲

    ○天城政府委員 一九五九年からでございます。
  120. 有島重武

    ○有島委員 この事実を文部当局は御存じであったのでしょうか。
  121. 天城勲

    ○天城政府委員 残念ながら存じておりませんでした。
  122. 有島重武

    ○有島委員 いつ知ったんですか。
  123. 天城勲

    ○天城政府委員 国会で質疑がございまして、私たち正式に米軍当局と接触し、また関係機関に連絡いたしまして事実がわかったわけでございます。
  124. 有島重武

    ○有島委員 国会の質疑で初めて御承知になったわけですね。そういたしますと、この種の問題がまだ知られずに、あるということも予想されませんか。
  125. 天城勲

    ○天城政府委員 大学研究費の扱いの問題でございますけれども、現在国費で行なっております研究費以外に、外部からの研究費の番付を受ける場合がたくさん過去にもございますし、また実態としてもございます。それらにつきまして、私たち、大学として受け入れます場合に、特別会計の中に奨学番付金制度という別の袋をつくっておりまして、その中で受け入れて正規の国費と同じような扱いをする道をつけているので、その制度に入る限りは、外部からの研究費の実態というものがわかるわけでございますけれども、今回の米軍研究開発局からの研究費はこのワクに入っていなかったものですから、了知できなかったわけでございます。したがいまして、現にそういう制度があるのに入っていない経費があるということから申しますれば、他にないと私どもは断言できないわけでございます。
  126. 有島重武

    ○有島委員 そういうことについて調査を開始されましたか。
  127. 天城勲

    ○天城政府委員 実は、特別会計制度ができましてから、従来外部の研究費の受け方についてまちまちでございましたので、そういう奨学寄附金の受け入れの制度を設けてございまして、受け入れた金の総額が使えるような制度をつくってきておりますので、毎年それに入ってくる件数、金額はわかっておりますので、私たちは実は――それで外国の財団からもみんなそこに入っているわけでございます。ですから、いままでは入るという前提できたわけでございますが、今回はからずもそういうことがわかったわけでございますので、個々の大学の会計の扱いの点については、もう一ぺんいろいろの点について調査をし直して、明確なものにいたさなければならぬということは考えております。
  128. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、きょういただいたこの資料でありますが、これにはいまの奨学寄付金制度のワク内のものも入っているわけですか。そのルートを通したものもまじっているわけですか。
  129. 天城勲

    ○天城政府委員 きょう国会に出しました資科には、その金は入っておらないわけでございます。
  130. 有島重武

    ○有島委員 それでは、そのワクを通じて入ってきた総額というものは、さらにさらに大きくなるわけですね。
  131. 天城勲

    ○天城政府委員 これは正規の制度になっておりますが、大体、毎年四億から五億ぐらいの金が入っております。それには日本の国内の民間からの寄付金ももちろん込めてございます。
  132. 有島重武

    ○有島委員 その五億円の金のどのくらいが外国から入っているのでしょうか。
  133. 天城勲

    ○天城政府委員 いまこの奨学寄付金の中における外国の寄付金は幾らかということは、手元にこまかい資科がございませんので申しかねますが、調べればわれわれのほうでわかります。たとえば、ロックフェラー財団から受けた寄付金などというのはわかっております。ちょっといま手元に資料がございませんので、あらためて御報告申し上げます。
  134. 有島重武

    ○有島委員 あとで提出していただくことにいたしまして、ここに示されておりますこの米軍からの資金でございますが、これもその正式のルートさえ通せば文部省当局としては文句はない、そういうことになるわけでしょうか。
  135. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 先ほど参議院の予算委員会でもこの点論議されたのでございますが、このロックフェラー財団とか、そういう民間の研究助成団体からもらうとか、あるいはまた学者の交流でございますとか、そういったので外国から金が出る場合もございますけれども、この金は正規にアメリカの政府機関から入った金でございます。政府機関から政府機関に――いわゆる大学もやはり政府機関でございますが、それに直接に入る際において外務省も文部省も通じないで直接に入るという姿について、それでいいだろうかということについて私ども非常な疑問を持っておりまして、外務大臣も、これについては早急に政府部内におきまして再検討いたす、すなわち、そういう形で外国の政府の機関から直接に、政府を通さないで下の国立学校に直接にいくという姿につきましては、少なくともやはり国家間におきまして何らかの了解を得るとか、話し合いがつくとか、あるいはこういうものについては受けてもいいとかいう一定の基準を考えるとか、そういうことが必要ではなかろうか、そこでこれはぜひひとつ再検討してみたい。いまにわかに、この正規のルートで奨学寄付金の中に受け入れればいいというふうには断定できないと思っております。
  136. 有島重武

    ○有島委員 再検討なさるというお話でございますが、再検討中はこうした問題がなお続行して行なわれるのか、直ちにこういった問題についてはストップされるのか、その点はどうでしょうか。
  137. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 実は今日まで援助を受けましたもののリストはそこに全部出しておるのでございますが、このリストに載っておる以外におきまして、新たに申請しているものが現に進行中であると思われるのでございます。これの取り扱いについて直ちにストップをさせるかどうか、これはもう少しちょっと私ども考えさせていただきませんと、たとえば前年度におきましてもらった研究のいわゆる途中にあるものもあるかもしれませんし、これを一律にストップをさせるということにつきましては、いままでのたてまえが、大体、大学研究につきましては大学自体の自主性にまかせまして、そしてわれわれといたしましては研究に対して国家的な統制を加えない、これは全く学問研究の自由という立場から、大学の自主性にまかせておったのでございますから、こういう問題について大学自体がこれをどう考えるか、これは私はむしろ、この問題について大学はどう考えるかということを大学に問題として提起いたしまして、その結論については、私は大学の自主的な判断にまかせるほうが現段階においては正しいのではなかろうか、こういうふうに現在においては考えておるのでございます。ただ、受け入れにつきまして、やはり直接の姿で、アメリカの陸軍から直接大学に受け入れるということがいいのかどうか、これについて再検討いたしますので、その結論が出ましたら、このことにつきましては大学のほうにも連絡いたすつもりでございます。
  138. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、いま検討している間はストップはかけないのだ、そういうことですね。
  139. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 ストップをかけますか、しばらくそれについて申請を保留しておくか、早急に大学のほうにその態度を決定してもらおうかと思っております。
  140. 有島重武

    ○有島委員 その通達はいつ出されるんですか。即刻に出されるわけですか。それが出されるのがおくれれば、これはずるずるとそのまま持続されるわけであります。いかがでしょう。
  141. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 直ちに連絡するつもりでございます。
  142. 有島重武

    ○有島委員 いまのお話で、半分アメリカの金をもらっちゃったから、その成果が出るまで、あと半分もらわないと義理が悪いようなお話がございましたけれども、この考え方はどうなんでしょう。多少疑問があるんじゃないかと思います。それからまた、直接入ってきたものについては、これは規制しなければならない、考え直せと大栄に通達するのだ、間接なものならばこれはもう防ぎようがないというようなお話に聞こえましたが、では、アメリカのほうで、向こうでも一つの日本学術援護振興団のようなものをつくってやればそれでよろしい、そういうことになりますか。
  143. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 そのもらいました金の中で、たとえば問題になりました半導体の国際会議に対しまする分の援助がございます。それから、このリストの中に載ってあるのでも、国際会議に出ます場合に、国際会議のほうから招聘を受けましたが、それは正規の旅費がないというので、その旅費の援助を受けたというのがございます。研究を委嘱するということでなしに、その金の中から旅費だけを支給を受けた、援助を受けたというような場合がございますが、これらの問題までも全部ストップをかけるかどうか、これは内容によりまして相当検討してみなければならぬのじゃないかと思います。たとえば半導体の会議におきまするのは、委員会を設けまして、その寄附金を受くべきかどうかということを委員会におきましていろいろ考究の結果、これは向こうから来る人の旅費だけを援助したので、日本人はそれの恩恵にあずかっておらぬわけです。そういったようなものだから、これは受けても会議の自主性をそこなわないという判断のもとにやったのがございます。こういうものにつきまして、やはりアメリカのほうから援助を受けたから一律にいかないと言い切るかどうかということは、非常に私どももう少し考えませんと、一切それをやめてしまうということにいたしますことによってまた逆の面も出てくると思いますので、もう少し考究さしていただきたいと思います。
  144. 有島重武

    ○有島委員 どうしてこのような事態が起こったのか、この原因につきましては、先ほど予算が足りなかったんだということがありましたけれども、これは今後はかなり大幅に増額されますですね。
  145. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 いろいろ起こった原因はあると思います。ただ、やはり金が足りなかったということは一つの原因であったにいたしましても、外国から金をもらうということについての判断でございますが、これは私どもとしましては、研究費が足りませんでも、その金の出どころが正しいと、いわゆる確認をする考え方があれば、相当これについてはもらっていいかどうかは研究をしておったであろうと思います。ところが、あるほうで、こういうのが便利がよくて、ただずっと申請すれば金をくれるぞということを言い伝えられまして、そうしてだんだん申請者が多くなってきているというのが現状でございます。もう少し私は、やはり学者の態度におきましても、私ども干渉する気はございませんけれども、学者自体がこういう問題については十分良識ある判断をしてほしい、その意味において、多少ものの判断について甘い考え方をしておられたのじゃなかろうかと思います。
  146. 有島重武

    ○有島委員 その点については了解いたしましたけれども、いま伺っているのは、来年度予算においては研究費についてかなり大幅に増額されるかどうかです。
  147. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私、できるだけの増額を努力してまいりたいと思います。
  148. 有島重武

    ○有島委員 いまお金の問題もございますけれども、米軍といたしましては、お金をこれだけ出していくその裏に、やはり一つの意図がかなりはっきりしているように思われるわけであります。それで、これについての問題は、またこれはすぐ改めることにいたしましても、今度は日本として、私たち日本人としても、ただ金をこれだけ分配するというようなことでなしに、この問題だけは、これはもう日本の将来にとって大切な研究課題なんだから、このことについては絶対に日本の金でもってまかなっていくんだ、そうしたような一つのお金を出す上について、やはりそこに意欲と申しますか、一つの大きな基本方針というか、そういうものが弱かったからアメリカのほうに巻き込まれているのではないか、そういうような要因も考えられるわけであります。今後この分だけはもう絶対に日本でやるのだ、そういったことを明確にして、かなり意欲的にこれを扱っていくべきじゃないか、そう思うわけであります。  それからまた、大学院の問題に戻りますけれども、こうしてますます学術が進むにつれて、大学院及びその付置研究所なんかの予算が膨大になると思います。これをほんとうに適正に配分して運用をするための施策、先ほどの学術振興会ですか、そういったようないろいろな施設はあるようでありますけれども、糸川博士のような、あの問題を再び繰り返すことのないように措置を講じなければならないと思うわけです。これはたびたび論議されましたけれども、そういった措置については、もうすでに具体的なことをお考えになりましたか。
  149. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 東大の宇宙航空研究所におきます例のロケットの打ち上げに関しまして、いろいろ経理上の問題につきまして会計検査院の御注意を受けました。また、ああいう研究過程におきまして、製作と研究とが同時に並行して行なわれなければならないような事態におきましては、経理上におきまして非常に困難な問題がございます。これにつきましては会計検査院とも十分お打ち合わせをいたしまして、どのようにこの経理を改善するかという契約の方法その他につきましても十分研究をいたしますし、また、経理上の実際の能力につきましても、相当の人員を常置いたしますとか、あらゆる面におきまして、再びああいう問題を起こさないように最善の努力をいま続けておる次第でございます。
  150. 有島重武

    ○有島委員 これは、実際にはかなりむずかしいことになるのじゃないかと思います。問題は、いろいろな制度、それからそうした規則をつくられますけれども、それを運営していく人にやはり問題があるのじゃないかと思います。まず学問の自由を妨げることがなく、しかも世界史的な大きい視野に立って学術上の深い理解を持って、しかも財政的及び経営の才のあるような、そういう人材をどうしても見出していかなければならない、そういうような時に来ていると思いますが、これと思うような人物がおりますか。
  151. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 糸川さんがおやめになりました原因は、いろいろ言われておりますけれども、本人の意思は十分表明されておるわけでございますが、私どもは、その真意は、あとに続く新たな若い研究者が相当出てきておる、ですから、いまやそういう若い研究者に対しましてこの研究をおまかせしていく時が来たという御自覚のもとに、御退職になったと聞いております。また、事実相当優秀な若い学者がいまあとを継いで出ておるのでございまして、これはロケットの研究でございますが、その他の部面におきましても、やはり新しい科学について続々若い研究者の優秀な者が出てまいる。これが一面、私は大学の使命でもあろうと思いますし、また、日本学問研究の場におきまして、そういう優秀な人が相当たくさんいま育ちつつあると私は確信をいたしております。
  152. 有島重武

    ○有島委員 いま申し上げているのはその問題ではなくて、そうした若い人たちをこれから育成していく上に、これはお金がからんでくるわけであります。それですから、深い学術的な理解と、しかもその上に経営の才、財政の責任の持てるような、そういったような人物が、どうしてもこれから設けられる、ないしはいままでの施設の上にいなければならない、そう思うわけであります。そうした人事面にここで立ち入っていいのかどうかわかりませんけれども、そういうような人物がおられますでしょうか。
  153. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 私の接触いたしました限りにおきましては、ただいまの研究所長の高木先生は非常にりっぱな方だと思いますし、研究的に申しましても、またこの研究所の運営にあたりましても、全く真剣にいま取り組んでいただき、いままで多少外部に対しまして不名誉な問題も起こりましたし、またロケットの研究にも失敗を重ねてまいりましたが、これを何とか取り返そうと非常な御決意を持ってやっておると存じますので、私は高木所長に非常に大きな期待をただいまかけておる次第でございます。
  154. 有島重武

    ○有島委員 もしこの点において誤りますと、やはり非常に大事な時期であると思います。百年の悔いを歴史の上に残すようなことにならないように、慎重に御配慮願いたいと思うわけであります。  時間も来ましたので、最後に、学生急増対策について、これは結論だけ申します。  国立大学を二部制にする考えはないか。私どもは、二部制にしたらばいいんじゃないかと思っておるわけであります。これにつきまして伺います。
  155. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 一番端的に申しまして、理工系統の学部につきましては、これは二部制は非常に困難ではないかと思います。ただ、地方国立大学の工学部におきまして、夜間を利用しまして夜間の短大を併設いたしまして、その入学者の吸収を幾らか助けておるわけでございますが、もしやるとすれば文科系統、いわゆる人文科学系統ならば二部制もやればできないことはございませんけれども、今日までの段階におきまして、一応私学との関係も考慮しなければなりません。特に夜間部を国立大学で設けるということにつきましては、大学自体の将来の問題もございまして、いま急増対策のために人文科学だけに夜間を設けるかということになりますと、将来学生が今度減ってきた場合にその夜間部を廃止するというような問題が起こってまいりまして、大学の入学の募集を停止すればいいじゃないかと申しましても、やはりたくさんな教授を配置いたしますし、そしてその教授の処分をしなければならぬとか、いろいろな問題が起こってまいりますので、できますならば二部制を避けて、何とかワクのほうを広げていきたい、現在ではさような考え方を持っております。
  156. 有島重武

    ○有島委員 新しい大学を増設して、しかもこれが、いまのそうした学生がふえていく傾向がもし下降の傾向をたどったときには、さらにやりにくい問題になるのではないか、そう考えられますので、それで申し上げたわけであります。いまのお答では全然その考えはない、そういうお話ですか、それともその方向をさらに検討するというお話でしょうか。
  157. 天城勲

    ○天城政府委員 国立大学でも夜間部を開いている大学は十二、それから短大で二十二くらい現在ございます。それを全面的にということは、ここで一ぺんにやることは無理でございますが、もちろん地域の事情、大学の希望によって出てくるところというように、条件はいろいろありますが、私どもも広げておるわけでございます。ただ、夜間に二部を開設するということは、何か現状のままで学生がすぐ入れるというわけではございませんので、一定の設備を整え、一定の教官を整えなければ夜間部は開設できませんから、やはりそれ相当の一連の準備をいたさなければなりません。それから、地域によっては希望するところがあるかもしれませんが、地域によると、むしろそういうことの無理なところもございます。また、学部によりますと、学年が進行するに従って、四年の卒業研究等、専門になってまいりますと決して昼間だけではございません、夜までもやっております。大学院を持っておる大学は、ほとんど夜間まで研究室を使っておるような状況で、教官の問題、施設の問題から――ただ、夜間についてはいろいろな見方がありますが、勤労青年のために夜間を開けという趣旨もございましょうし、何か施設が夜あいているから使えというような議論もあるのでございますけれども、そう簡単にいかないのではないか。勤労青年には勤労青年のために、そういう前提で必要なものは必要なように整えていかなければならぬし、それぞれの事情に応じて考えていきたいと思っておりますが、夜間の教育の問題につきましては、先ほど申しましたように、私たちも、考え方としては、やれるところはやるという考え方を持っております。
  158. 有島重武

    ○有島委員 結論としては、今後ともその方向を考えていらっしゃる、そう受け取ってよろしいわけですね。
  159. 天城勲

    ○天城政府委員 いろいろ申し上げましたが、いま基本的には、そういう考えのもとにやれるものはやるように考えていきたい、こう思っております。
  160. 有島重武

    ○有島委員 以上で終わります。
  161. 床次徳二

    床次委員長 次回は、来たる五月二十四日、水曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会