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1967-05-12 第55回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十二日(金曜日)     午後三時十四分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 久保田藤麿君    理事 坂田 道太君 理事 中村庸一郎君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君       竹下  登君    葉梨 信行君       広川シズエ君   三ツ林弥太郎君       渡辺  肇君    唐橋  東君       斉藤 正男君    平等 文成君       三木 喜夫君    山崎 始男君       吉田 賢一君    有島 重武君       山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 剱木 亨弘君  出席政府委員         文部政務次官  谷川 和穗君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 五月十一日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として小  濱新次君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員小濱新次辞任につき、その補欠として有  島重武君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十二日  女子教育職員育児休暇法案鈴木力君外一名提  出、参法第一号)(予) 同月十日  心臓病子供の病、虚弱児学校学級増設に関  する請願外一件(鴨田宗一紹介)(第八九二  号)  同(和爾俊二郎紹介)(第九〇三号)  同外一件(三ツ林弥太郎紹介)(第九一八  号)  同外二件(青木正久紹介)(第九四〇号)  同(平岡忠次郎紹介)(第九四一号)  同外一件(只松祐治紹介)(第九四二号)  同(小林信一紹介)(第九七二号)  同(玉置一徳紹介)(第九七三号)  同(葉梨信行紹介)(第九七四号)  同(赤澤正道紹介)(第一〇一三号)  同外一件(板川正吾紹介)(第一〇三六号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一〇六七号)  同(村上信二郎紹介)(第一〇八〇号)  難波宮跡田能遺跡等文化財埋蔵地の保存に関  する請願長谷川正三紹介)(第九〇〇号)  心身障害児教育総合研究所設置に関する請願(  箕輪登紹介)(第九〇一号)  盲学校教材拡大複写機設備費補助に関する請  願(箕輪登紹介)(第九〇二号)  各種学校制度確立に関する請願相川勝六君紹  介)(第九一七号)  同(床次徳二紹介)(第九三九号)  同(折小野良一紹介)(第九七〇号)  同(二階堂進紹介)(第九七一号)  同(折小野良一紹介)(第一〇四五号)  学校栄養士設置に関する請願外四件(井上泉君  紹介)(第九六四号)  同外二件(田村良平紹介)(第九六五号)  同外十件(渡海元三郎紹介)(第九六六号)  同外七件(中村寅太紹介)(第九六七号)  同外三件(西岡武夫紹介)(第九六八号)  同外四件(森本靖紹介)(第九六九号)  同外一件(仮谷忠男紹介)(第九九八号)  国立大学授業料値上げ反対等に関する請願(  近江巳記夫紹介)(第九九七号)  公立高等校学設置適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律の一部改正に関する請願  (吉川久衛紹介)(第一〇六五号)  同(増田甲子七君紹介)(第一〇六六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はこの機会に、教育基本的施策につきまして若干伺ってみたい、こう思うのであります。とりわけ昨年十月に答申されました中教審後期中等教育拡充整備、これを中心に少し伺ってみたい、こう思っておるのであります。  第一に、だんだん御説明の文章が出ておるようでありますが、文部大臣といたしましては、このような中央教育審議会答申が出ましたゆえんのものは何であろうかという点を、ひとつ端的に御所信を明らかにしていただきたい。
  4. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 後期中等教育につきまして、文部大臣といたしまして中教審諮問をいたしまして答申を得たわけでございますが、義務教育段階を終わりましたいわゆる青年教育は、最近におきましては特に高等学校相当入学率を示しておるのでございますが、その他義務教育を終わりました青少年に対しまして、総合して教育をいかにしてやったらいいかという重要な問題がございますので、特にそのような問題につきまして中教審諮問をいたしたわけでございます。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この答申はかなり大きな社会的反響も呼んだらしいのでございますが、やはり教育制度に関する改革なるものは、相当重要な文教全体に影響することでございますので、したがいまして、日本の現在と将来には非常に重要な関連があると申し上げねばなりません。そこで、戦後、大きな改革が戦争直後にできておりまするが、いまに至りまして、かなり補完的とはいえ重要な改革段階にきた。そのような認識もあるようでございまするが、そういう点についてはどのようにお考えになっておりましょうか。
  6. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 学制全般の問題につきましては、またこれは私ども一つ考えを持っておるのでございますが、特に終戦後におきまして、日本経済情勢社会情勢相当急激な変化を来たしたわけごございます。特にこの義務教育を終わりました青年の層におきまして、学校教育においては、いわゆる社会情勢変化に伴いましてどういう教育をいたせばいいか、また、学校教育に入りませんで直接社会に出る青年に対しまして、社会の伸展に即応するどのような教育方針をとればいいか、きわめて重要な段階でございます。特にこの後期中等教育期間におきまする教育重要性にかんがみまして、これを特に諮問をいたしたわけでございます。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一面におきまして、社会情勢進展変化に伴い、または現在の学制の実際的な経験にかんがみまして、根本的な反省をせねばならぬ段階にもきたのではないかと思う。両者を貫きまして、いまの義務教育を終えた青少年の問題でございまするが、別の意味におきまして、社会的にきわめて重大な課題になっておることも御承知のとおりであります。こういうふうなわけでありますので、いまの時点におきましては、この教育制度の二十年間の実践経験と、そして社会変化、激動の結果起こってきたところの幾多の問題、これが青少年中心といたしましてずいぶんと大きな渦を巻いておるような面があるわけでありますから、そういう面にかんがみまして、これではいかぬというような基本的な反省の重大な点があるのではないか、これをお尋ねしておるわけであります。
  8. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お説のとおりに、青年立場といたしましてきわめて重大な段階に入っておるわけでございますから、御趣旨のような意味合いにおきまして、特に後期中等教育あり方について中教審諮問をいたしたわけでございます。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どうもわかったようでわかりませんが、それならば特に反省を要するであろうと思われる、最も重点と指摘すべきものは一体何であるか、この辺ひとつ端的に、明確にしていただきたい、こう思います。
  10. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 中教審答申にあらわれまして、いま先生の御質問でどういうことが中心になっておるかと申しますと、一つには、その前提といたしまして義務教育……。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっとお待ちください。私伺いますのは、答申内容としましてどのような点が重点にあるかということの前に、答申があらわれるに至りました各般の外部的な諸情勢、それから教育制度実践の経過にかんがみまして、両面から大きな反省を要する段階にきたのではないか、そのとおりだとおっしゃるから、それならば何がそうなさしめたのか、この点をひとつ端的に御説明願いたい、こういうのです。だから、その前提になるのです。
  12. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 一つは、後期中等教育段階年齢層青少年に対して、学校教育法に定められる学校におるといなとにかかわらず、これに対して何らかの教育的な処遇をすべしということが一点でございます。  それから第二は、その教育あり方が、従来の経験にかんがみまして、教育内容形態等個人の適性、能力、進度というものに適合するというような要請、それが十分であるかどうかということであります。  それから、いかなる教育であろうと訓練であろうとも、青少年でありますから、基礎的な人間形成上必要な普通教育というものをもう少し講ずる部面もある、そしてそのことによって個人あるいは家庭人社会人国民としての深い自覚をさらに涵養する必要がある、以上のような点が問題になっておると思います。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはりお答えは、答申内容の御説明のようにも理解されるのでございます。それならば、学校内部教育制度運用実情のほかに、社会的にそれをなさしめておる事実、それは一体何です。最も重要なことは何ですか。
  14. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 これは国民のすべてが、その能力に応じてその素質を伸ばし得るように、それぞれ社会的な地位を得て、そして働けるということであろうと思います。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは答弁にならぬのです。大臣にお尋ねしたいのですが、それでは答弁になりはしません。そんなことなら、答申を読んだりしているだけでもう十分です。しかし、答申の御説明を願うというなら、この問答は要らぬのです。なぜ答申を出さねばならなくなったのか、それは内部教育の問題もあろうし、外部の青少年実情もあろう。それならば、端的に言うて、重要なことは一体何ですかと聞いておるのです。  それならば別の角度から伺ってみますが、勤労青少年を例にとってみます。勤労青少年問題を教育角度から考えて、一体いま何が一番欠けているのか、何が一番教育として大きく要請されているのか。問題点は何でございますか。――ちょっと大臣答弁しなさいよ。そんな事務だけではいかぬですよ、基本方針ですから。
  16. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 御質問になっておりますところが、私どもにはなかなか的確につかめないものですから、答弁が食い違いになると思いますが、いわゆる戦後の教育におきまして、民主主義国家としてだんだんと進展をしてまいりました。しかし、真に民主主義国家一員として要請された人間としましては、はたしてその教育体系なり勤労青年に対する教育的環境がいままでのとおりでいいかどうか。ここにやはり新しい国家と現在の段階において、この教育的な取り扱いについて基本的に反省をいたしてみるべきときがきているのではないか、こういうような意味後期中等教育人間完成の最後の場でございます青年に対しまして、現在までとってまいりました教育でいいかどうかということを反省すべきときがきておるのではないか、こういう考え方でございます。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点はいいのですが、それならば、また別の角度で伺ってみますと、一体国民はどういう事実に基づいて何を訴えるのか。いまのことばは、教育行政者立場からする答弁です。受ける国民立場からして――青少年立場からして、親として、父兄として、社会人として、事業者として、一体国民立場からして何を訴えるのか。だから、教育制度をかくしてもらわねばならぬ、その前提になる事実ですよ。こういう事実に基づきまして、たとえて例をあげて言うなれば、非行少年に対する法制度改正の問題にしましても、非行少年が横行するから法改正の必要がある、それをどう改正するか、それが答えです。その前提になる基本非行なり乱行なりの事実がどうなのか。私の聞かんとするのはその前提関係です。外の関係です。客観的にはだんだんこういう事実が出てきたので、これをどうしなければならぬかということを伺っておるのです。どうも私自身の問いがへたですから、十分にお聞き取り願えないのかもしれませんが、そういう趣旨にほかならぬのです。
  18. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 学制を変えまして約二十年でございますが、現在の社会情勢におきまして、真に青少年社会の形式の一員として、はたして正しい教育がなされてきたかどうか、特に社会情勢の変換に伴いまして、相当青少年非行問題が問題になってまいっておりますし、また、民主主義国家一員としての責任とか自覚とか、こういったような問題について相当いまの青少年は欠けてきておる点があるではないか、こういうような点におきまして、教育の面におきまして、この状況をいかにして立て直すことができるか、こういうふうな面から、この後期中等教育というものがきわめて重要な段階に立ち至っておると解しておるわけでございます。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 教育実践の場として、学校もありましょう、社会もありましょう、あるいは家庭もありましょう。この点につきまして、最もいま重要と思われるところ、もしくは欠陥、あるいは改善、反省をしなければならぬ面は、その三者と仮定すればどこだと思いますか。
  20. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これはまあいずれが――三つありまして、三つともやはり相総合的に考えていかなければならぬ問題だと思います。もちろん学校教育は、六〇%以上の者が高等学校に進学いたすのでございますから、その大多数の者を収容する学校教育あり方について反省をするということも重要でございますが、しかし、社会に出まして勤労青年として働いておる者に対しましても、教育的な考慮をいたすべきこともまた重要でございます。また、青年不良化とかいうような問題を考えますと、これは単に学校教育とか社会とかいうだけでなしに、まあ家庭学校社会もあげて、そういう問題につきまして、総合的に青少年に対しましてやはり考えていかなければならぬというふうに考えます。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 とりわけ最近の社会風潮といたしまして、家庭面教育の場としてかなり軽視されておるようなふうにお考えになりませんか。
  22. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 私どもも、この点につきましては、十分そういう点を感ずるものでございます。でございますので、文部省といたしましては、家庭学級と申しますか、家庭対象といたしまして、やはり正しい家庭養成と申しますか、そういうことに特に力を入れまして、昭和四十二年度の予算には相当これを重点的に、いわゆる家庭学級というものを重要視いたしまして、家庭人として、やはり家庭向上と申しますか、そういうのを目ざして家庭教育的に立て直していくということの必要を痛感いたしておるのでございます。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 家庭社会学校総合的に教育の場として協力していかねばならぬ、そういうお考え方はごもっともだと思います。しかし、家庭問題が、家庭教育の場として重要であるとしまするならば、単に学級制度によって手を差し仲べるというようなことではとても間尺に合わぬ。もっと本質的な根本問題といたしまして、そして総合の実をあげるためには抜本的に家庭教育の場として取り組まねばならぬ、こういう重大な段階にきておるというふうに御認識になりませんか。
  24. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 これは、まあ家庭対象にいたしまして、抜本的に教育をし直していくことは非常にむずかしい問題でございまして、成人教育でございますとか、家庭教育でございますとか、そういったようなものを通じまして家庭向上と申しますか、をいたしていく。はなはだ回りくどいようでございますが、現段階ではそれよりほかに方法はないのではないかと思います。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 家庭の問題は、そう中途はんぱにはできないものと私は思います。また、後期中等教育ほんとうに完備する、完成するという場合におきましても、家庭が重要であるとしまするならば、後期、すなわち青少年後期段階におきまして、卒然とりっぱな教育を施し得るものではないと私は思うのです。それならば、やはりそういう行き方をしましたら、木に竹をついだようなものができるのではないだろうか。青少年あり方にしても、また青少年に期待することにしましても、さらに、青少年幼年のとき、あるいはまた母の胎内の胎児にまでさかのぼっていくというところまで深い配慮がなければ、一貫した教育にならぬではないだろうか、こういうふうにさえ考えるのです。そこまで掘り下げた家庭教育というところまで進んでいかなければ後期中等教育は完全にならぬ、こういうふうに思うのですが、どうです。
  26. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 もちろん、後期中等教育対象といたします家庭教育と申しますか、この後期中等教育青年のバックになっております家庭を突然として教育をしていくということは、これははなはだ至難のことでございますし、また、効果もないと思います。でございますので、家庭学級を私どもやっておりますのは、大体小中学校の過程におきまして、その小学校の一小学校区域におきましてこの家庭学級をつくることを原則としまして、その小中学校の時代から、やはりその家庭教育小中学校教育に伴って行なっていこうというのが大体私どものねらいでございます。それがだんだん子供が成長しまして後期中等教育段階に入っていく、やはりそういう順序を追っていく必要があると思います。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、国務大臣としての文部大臣に伺ってみたいんですが、やはり教育はきわめて重要な根本問題でございますし、また、教育行政なり教育課題が、学校制度、それから社会教育活動家庭教育というふうに連なって総合的にせにゃならぬものとするならば、これはやはり内閣といたしまして、行政府といたしましては、他の省とも横に総合施策といたしまして教育の一貫的な、つまり私に言わせるならば、やはり胎児教育から成人教育に至りますまで教育の範疇に入れて、そして内閣内部的に、総合的に相協力していくという体制をとっていくべきが、教育完成の道ではないだろうか。それすることなければ、これはばらばら行政になって、ちょうどちょん切って後期後期前期前期少年少年幼年幼年、いやこちらは教育や、そちらは保育や、胎児は医者まかせということになって、みんなばらばらですね。だから、それはほんとう教育にはならぬ。あなたの深憂されておる、将来の期待されておる青少年がりっぱになるという目的を達せないのではないだろうか、こういうふうに思うのですが、そういう総合的な施策こそ教育基本的なあり方であろう、教育行政基本的あり方であろう、こういうふうに思うのですが、どうです。
  28. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 ごもっともでございまして、教育行政といたしまして文部省行政の範囲に入ってまいりますのは、特に幼児教育でございます幼稚園教育から入ってくるわけでございますが、それ以前におきまして、いま乳幼児対象といたしますのは大体厚生省のほうの保育園とか、そういう関係になります。そこで、この保育園等におきましても、厚生省の施設におきましても、これはやはり教育的な観点に立ちまして、単に幼児を預かるというだけでなしに、教育的な取り扱いをしてほしいということで厚生省とも十分打ち合わせまして、一貫した教育的な取り扱いについてずっと連絡をとってまいっておるわけでございます。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はやはり、家庭教育の場として考えましたときに後期中等教育ほんとうに完全なものになる、こういう観点に立ちまして――まあ大臣のような善行に富んだ人はあまり御承知じゃありませんけれども、たとえば最近は三歳で幼児キッスごっこをしておることは御承知でないと思います。それからまた、たとえば定時制就学者が三割は脱落しておるようであります。これは文部省労働省も認めておるようでありますが、こういう実情にあります。反面から見まするというと、定時制に通いましてとかくの素行、それが授業場などへよからぬ風潮を持ち込むおそれがある、こういったような非難めいたことすら風聞するのであります。こういうように考えてまいりますと、やはり定時制後期中等教育を完成さすという角度から問題と取り組んでみましても、外の関係を軽視するわけにはいきませんです。さらにまた、家庭関係をおろそかにするわけにまいりませんです。  どうして、それならば両者一貫して総合的にお互いに教育目的に相協力し得るか、そういう風潮をどうして馴致し得るか。それは、それこそ抜本的な反省改革への志向が持たれなければなるまい段階でないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  30. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お説のとおり、青少年不良化とかそういうものに対しまするのは、学校とか、そういう教育的な場だけではとうていできませんので、これは総合して、国の行政機関総合的に協力してまいらなければいかない問題だと思います。そういう意味におきまして、家庭に対する行き方につきましては、家庭生活問題審議会内閣に置きますし、また、青少年対策としては青少年局内閣に置きまして、各省と十分な連絡をとりまして、青少年不良化防止ということに政府をあげて努力をしていくという態勢に入っておるわけでございます。特にこの青少年不良化等につきましては、社会環境の浄化と申しますか、現代社会環境青少年不良化に導く要素が非常に多いのでございまして、こういう問題も、やはりだんだんと社会環境を浄化していかなければならぬ。というのは、単にこれは文部省だけではできませんので、青少年不良化防止につきましては内閣青少年局を設け、各省十分連絡をとりまして、こういう問題に総力をあげて集中してまいらなければならぬと思いますし、その方向に施策を進めておるわけでございます。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第二点は、これはまあ日本だけではないのかもしれませんけれども日本において特にひどいようでありまするが、学歴偏重の弊風であります。これがまた、むやみやたらに、たとえば短大などの続出になりまして、そして学歴をてらう、こういうことにもなっております。これはひとり風潮だけではなくして、制度もそうなっておるのではないかと思うのです。これをためるということは、一面、後期中等教育を完成せしめる上におきましても、非常に大事な、関連のある点であろうと思うが、これはどうです。
  32. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お説のとおり、私もまた、日本ほど学歴を形式的に偏重している国、日本ほど高いところはないと思います。これはやはり、特に社会的にも学歴偏重風潮がございますのを是正しなければならないと存じますが、ことに後期中等教育におきましては、この学歴偏重ということから相当たくさんな者が上級学校に入っていこう、こういう非常に強い傾向にあるのは否定のできない事実でございます。しかし、私どもといたしましては、正規の高等学校に入らなくても、あるいは定時制でございますとか、あるいは通信教育でございますとか、あるいはその他の職場におきまする技術修練方法でございますとか、そういったような人間つくり学校以外の場におきまして、そういう教育機会を与えてやるということが、現代におきましてきわめて重要な施策であると思いますし、後期中等教育におきましては、特にその点に重点を置いて、今度施策としてやってまいるつもりでございます。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういうことは、単に一片の希望だけでは、とても是正するわけにはまいりませんです。これは非常に重大なことでありまして、その弊害の及ぶところは、はかりがたいものがあると思うのです。たとえば、隗より始めよで、公務員の採用にしましても、人事院の試験をパスしたときの学歴偏重なんかも、一体これ、どうでしょうね。たとえば大学を卒業いたしましたら、これは七等級の二号ですか、それから高卒の場合は八等級ですか、短大など出ますとまあ中級のようでございますが、試験自体を厳格にしておくならば、これは義務教育を終えた者は一切試験にパスし得る、こういうふうにでもしなければ民主的な社会情勢は実現しないのじゃないか、こう思うております。やはり一つのワクをきめて、高等学校を出た者、短大を出た者、大学を出た者、そういうふうな差別をすること自体が、学歴偏重一つの根源になるのではないだろうかというふうにも考えるのです。これは、大臣としまして、こういう点もあわせて相当強い決意をもって臨むのでなければ、学歴偏重を一片の風潮祝するようなことではとうていどうにもならぬ。弊害の及ぶところ、はかり知れないものがあります。人間の浪費も膨大です。施設の浪費も大きいです。あらゆる面におきまして競って日本人が利己的、個人的なものにおちいっていくのではないかとさえ考える。いかがでしょう。
  34. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 お説のとおり、日本のあらゆる面におきまして、学歴によって採用とかそういうものが決定しております制度は、相当基本的には、かたいような制度になってきておるのでございます。実際問題としては、これを根本的に実力主義、能力主義によって変えていかなければならぬと思いますけれども、これはなかなか、現段階におきまして、私ども実際そういう実力主義に社会情勢を転換していくことは非常に困難な事情でありますけれども、やはりこの問題は国をあげて考えていかなければならぬ問題だと思います。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういう面を抜本的に改革することの容易でないことはわかっておりますけれども、少なくともやはり教育行政の首長といたしましては、やはり青少年に向かって、将来学歴偏重のとりこにならぬように、そういう教育をせなければ教育の成果はないといわねばならぬ。だから、容易なりません、たいへんな問題で、それはどこか次代の人が解決してくれというふうになってきてはたいへんでありますので、これはひとつ御警告申し上げねばならぬ、こう思うのであります。  それから、勤労青少年教育機会を均等せしむる、保証するという問題でありますが、実はこれは言い得て容易なことではないと思うのであります。さっきもちょっと触れましたが、事実上定時制三割脱落者ありという問題は、いいかげんにお聞き取り願いたくないのであります。一体それをどう補完するか。それならば勤労青少年に対する後期中等教育の施設を、行政を、指導を、そういったものを、政府としましても、また民間の要請といたしましても、十全の成果をあげるということにはどうすればいいのだろうか。これも重大な問題であるから、ぼつぼつなしくずしにやりますというようななまぬるいことでは、これはとてもらちがあかぬのです。だから、これこそいま直面しておる、ぶつかっておる最大の課題であるというふうにも考えてもらいたい。大体後期中等教育と申しましても、全部親のすねかじりで行っておる全日制の青少年と、自分で汗をして、労苦をしながら高等学校の学業を終えたいというけなげな青年とは、その置かれている地位は雲泥の違いがあるのです。だから、後者に対しましては相当思い切った施設をここに行なうのでなければ、これは文部大臣としまして、この問題にこたえたとは言えない。ことに、この間の基本的な所信表明におきましても、この点を強くあなたは御指摘になっておる。具体的に、抜本的に対処する施策は一体何であろうか、こういうふうに伺いたいのです。
  36. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 御承知のとおりに、定時制学校及び通信制等におきまして相当の脱落者が出ておることは事実でございます。この脱落者の出ますいろいろ原因がございますが、本人の特別の事情、それから家庭の事情とか勤務先の事情とか、いろいろあると思いますが、これらの事情によりまして脱落をしなければならない者に対しまして、できるだけそれを脱落しないで済むようにいたしますのが、私ども一つの仕事だと思います。こういう意味におきまして、まず第一に、定時制高等学校におきましては夜間において通学をいたしますので、その夜間の学生を引きつけると申しますか、学びやすいような形にする意味におきまして、十分ではございませんけれども、ある程度の施策をやってまいっておるのでございます。特に夜間学生に対します給食でございますとか、あるいは運動場に対しまして夜間の照明をやりますとか、あるいはそういうものの対象といたしまして、いろいろな通学をしやすいような援護措置とか、こういったようなものをやらなければなりませんけれども、一番問題になりますのは、病気でございますとか、あるいは勤務先の勤務状況によりましてやはり定時制に通いますのを妨げるような勤務条件、たとえば居残りをいたしますとか時刻におくれて参る、こういうような問題につきましては、やはり雇用主のほうにできるだけの了解を得まして、そういう人の通学を使用者側におきましても認めるようにできるだけ働きかけまして、脱落者を少なくし、教育を受けます機会を確保してあげるような方策をやっていかなければならぬと思います。しかし、現段階におきまして決して十分とは思えませんが、私どもも、この面につきまして将来とも十分意を注いでまいりたいと思っております。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 労働省の四十一年四月一日現在の調査によりますと、定時制の在学者が五十一万人、通信制の在籍者が十二万人、こういうことになっております。大体男女おのおの二分の一らしいのであります。ところで、その膨大な数字ですね、五十万以上ありますものが三割も脱落するということは、ともかく軽視することはできません。五十万をこえるこの定時制の生徒は、これは考えようによりましたならば日本の宝です。御承知のとおりに、世界的に有名ないろいろな人が政治、学界等から出ておりますけれども、やはり苦難の中で学校を出たというような人、もしくは学校を出られなくて学問をしたというような人の中から、ずいぶんとそのような人類に貢献した人が出たわけでございますが、こういうことをあれこれ考えてみますると、言うならば教育の世界の谷間にある青少年なんですね。この谷間にある青少年に対する抜本的な救援の対策といいまするか、教育の責任を果たすという国家の態度を明白にするということは、これこそ私は、現在の教育基本施策の最も重要なものの一つであろう、こう考えるのです。ですから、これは相当思い切った施策をしなければならぬ、こう思うのですが、具体的には一、二あげられておるようでありまするけれども、何をしようとするのか、これは事務のほうからひとつ報告をしてもらいたい。
  38. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 定時制の生徒が通いづらい一つの要因として、勤労青年の生活の実態に合わないような教育が行なわれている、その一面がございます。先ほど大臣が申されましたように、勤務の実態で、夜、毎日通うというのは困難な人もございます。これは都合がつけば、昼間行ってもいいし夜行ってもいい、あるいはその一部を定時制で、一部を通信制でやったほうが、より就学がしやすいという方もございます。また、学校の営み自体についても、従来の全日制の学校のようではなくて、一種の社会教育で行なっております青少年の施設の機能というものを、学校の中へ取り入れてやるというようなことも必要でございます。そういう意味で、従来の全日制の高等学校を主にして付設しましたような定時制高校では、十分それに対応できないだろうということが一つございまして、本年度は、わずかでございますけれども、モデル的にそういうタイプの定時制と通信制を合わせた独立校をつくっていこうということを本年度からやってみようということで、それに対しましては従来の施設、設備のワクを破りまして、かなり新しい角度のものにつきましても施設、設備の助成をして、そうしてそういう者を育てていきたい。これは全部の解決ではございませんけれども一つ問題点だと私ども考えております。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはいまの答申の第2の3の(1)の、いわゆる「別種の恒常的な教育機関を設置する。」ということに該当するのかとも思いますが、それも悪くはありませんです。悪くはありませんけれども、私の指摘しておりまするのは、やはり問題の重要性です。度合いです。度合いの認識が若干違います。いまのその流儀でいきまするならば、これはたとえば定時制の昼間使える独立の学校を全国で三カ所つくるとか、定時制と通信制を併置するというようなこと、食堂を幾らつくったとかいうようなことがありますが、これは要するに将来の問題でございますので、もっと抜本的に、五十万をこえるこの定時制の生徒に対して、国はどういう施策をしようという抜本的な、基本的な態度がこの段階では必要でないか、こう思うのです。大臣、この点相当思い切って施策をなさるということは、社会は絶賛しますよ。思い切った施策ということは、文部省だけではできません。おっしゃるように、民間の協力を得なければいけません。民間の協力を得るということは、財政その他あらゆる角度からこれは総合的に協力をし合わねばならぬと思いますけれども、しかし、指導的官庁は何といっても文部大臣でありますから、文部大臣は、この夜間等に通うところの定時制の生徒に対しまして十二分の基本施策を持って臨む、こういうふうにしなければこの問題は解決しません。これが解決するということは、あらゆる面に非常に明るいものをもたらすものであろうとさえ私は考えるのです。抜本的施策につきまして、さらに大いに前進もしくは飛躍するというような態勢でひとつお進め願えませんでしょうか。いかがでしょうか。
  40. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 勤労青年教育はきわめて重要でございますし、また、働きつつ学びます青年に国が援助の手を抜本的に伸べてやらなければならぬじゃないかというお説につきましては、全く同感でございます。ただ、その具体的な方法につきましては、相当文部省だけの施策ではまいらない点もございますし、いま、われわれとしましては、これに対しましてできるだけの援助をいたそうとして施策をしてまいっておるわけでございますが、なおそれではまことに不十分でございますので、今後、御説のとおり相当重点的に力を注いでまいりたいと存じております。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと中間に、労働省の婦人少年局長が参議院へ行かれるらしいので、簡単に一点だけ伺っておきます。  いまの問題に対処するために、労働省の一局といたしまして、婦人を含めまして青少年学校施設外の職業訓練につきまして、学校と同一内容のものとは言いませんけれども、しかし、事業所内部の施設にしろ、あるいは公共施設にしましても、後期中等教育を補完するという趣旨におきましても、相当思い切って青少年を守っていくというふうにしなければ、いまのような単純な職業訓練だけでは、とてもこれはいわゆる本式の教育ではございませんので、単純な教育にすぎません。ですから、抜本的にその点は教育を補完する、こういう趣旨から充実していって、施設あるいは資格あるいは一切の指導の方針、こういったものをぐっと大きく押し上げることが、若い青少年、女子労働者を守り、ないしは男子の青少年の勤労者を守るゆえんではないか、こういうふうに思うのですが、その点はそうであるかどうか、また、これに対する何か施策を今後進んでやろうとなさるかどうか、そこらについて、ひとつお考え方を聞かしておいてもらいたいと思います。
  42. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 勤労年少労働者と申しましょうか、十五歳から十八歳までの者で職場に働いております者が百五十万ほどおるのでございますが、この君たちは、その年齢から申しましても、人生のきわめて重要な段階にいるわけでございますので、労働省といたしましては、これらの年少労働者の労働条件あるいは労働環境の整備ということと同時に、これらの年少者が人間として健全に成長し、また、将来一人前の社会人として生活を営んでいくことができるような準備段階という意味で、教育訓練の機会をこれらの者に享受させるということはきわめて重要なことであると考えております。そのような観点から、従来も学校教育機会、あるいはまた、職業訓練の機会をこれらの者に十分に享受させますようにいろいろと努力をしてまいったところでございます。特にこれらの者が、仕事との関係教育機会を十分に得られないということが起きませんように、使用者に対しまして特に啓発活動を行ないまして、事業資格あるいは事業所内訓練あるいは公共職業訓練等でこれらの者を参加させるように指導いたしますとともに、また、その参加のための時間的便宜の供与等をはかりますように啓発をして、行政指導をしてまいったところでございます。今後もこのような方向で一そう進めてまいりたいと思っておりますが、先生御指摘の、訓練内容という点につきましては、それを一そう充実して、特に教養面等につきましても充実していくことがきわめて肝要なことと存じますが、その細部につきましては、これは訓練局のほうが所管いたしておりますので、私といたしましてはその辺しかお答えできないのでございます。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、訓練局とあなたのほうとは所管別になっておるかしれませんけれども、たとえば婦人にしましても、婦人の年少の勤労者をほんとうに守ろうとしましたならば、これはやはり将来のために家庭を守ってもらわなければいけませんので、相当重要な教育面をお考えいただかぬといけないのじゃないか。たとえば高校の女性が、家庭知識はほとんど皆無ですよ。こう言うと失礼ですけれども……。また勤労少年女性にしましても、それはよほど注意しなければ、男か女かわからぬような、そんな女性になる危険がございます。したがって、これは将来の、期待されるべき人間像としての女性かもしれませんけれども、いずれにしましても、若いけなげな青少年の勤労少年女子、この女子と教育を結んだときに、よほど深甚な御注意をなさっていきませんと、これは将来家庭一つの柱になるのですから、いろいろな角度から見ましてもきわめて重大な課題と思うのです。かりに数は少ないとしましても、男性に劣らない重要性を持って、これはあなたのほうと訓練局と手を組みな、文部省と協力しな、あるいはその他と協力しな――それはどちらでもいいです。しかし、政府の責任の一環としましては、やはり勤労青少年のうち女性につきましてきわめて重視して、教育との関係をつかまえてもらいたい、取り組んでほしい。こういう角度から尋ねてきておるのです。だから、そういう趣旨でひとつ御理解願いたい。その点もほんとうに大きく浮かび上がろうとしておるのですから、強く取り組んでもらいたいことをひとつお願いします。どうでしょう、それでいいですか。
  44. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 先ほどは特に職業訓練との関係でお答え申し上げましたために、御指摘のような御注意をいただいたと思いますが、組織的な職業訓練以外にも、いわゆる施設外の、あるいは社会教育的な教育と申しましょうか、そのような場におきまして、労働省といたしましては、年少労働者の健全な育成のための努力をいたしておるのでございます。健全な余暇活動を行ないますような福祉施設をつくりましたり、また、やはり使用者に呼びかけまして、特に女子の年少者に対して生活訓練、あるいはいろいろな教養講座のようなものを設置するような指導をいたしましたり、あるいはまた、私どもの出先を通じての活動によりまして、年少労働者の福祉がそこなわれないための各般の指導を、民間の有識者にもお願いいたしまして行なっている次第でございます。なお一そうその点を……。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、大臣に伺いたいのですが、定時制の問題に戻るのですが、あなたの省で御発行になっております四十二年度の要覧によりますと、定時制の高校の生徒の父兄負担というものが、平均しまして年間二万八千二百二十一円ということになっております。これは三十九年から四十年三月にかけてであります。でありますから、今日はもっと大きいのであろうと思います。そこで、この勤労青少年定時制学校に通い、もしくは時間をさいて通信教育を受けるということは、他面から見ますると、やはり働いて給与を家庭に入れねばならぬ、学校に行って勉強もせねばならぬ、職場において厳格な規律の中で生産をあげていかねばならぬ、あるいはまた、それぞれの余暇の何かはほしい、こういう中で定時制教育を受ける境遇の人です。ですから、この人ら、青少年に対しまして、いまのような負担が平気で課せられておるということについては一考をすべきではないだろうか。言うならばこれは五十万余りでございますが、この一覧表によりますと、直接支出と、それから間接支出に分かれておるようでございまして、だんだん事務当局からこの内容なるものを聞いてみたのでございますが、それは直接でも間接でもどっちでもよろしゅうございます。どっちでもいいんだが、少なくとも純家庭負担というもの以外は、相当な分はこれは公費負担とするような切りかえでもしまして、五十万の青年定時制学校の仕事を終えさすようなことはできぬものだろうか。どのくらいの経費が要るものかは若干積算もしてみたのでありますけれども、こういうふうな点までひとつ考慮すべき重大な施策じゃないかと思うのですが、いかがでございましょう。大臣、どうでしょう。基本的ななにでよろしいです。そういう手も打つことを考えてみたらどうですか。閣議の御協議にでも、ひとつのぼしてみたらいかがですか。
  46. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 定時制高等学校には、就学につきましての父兄負担、これの軽減の措置をやらなければならないのはごもっともでございますが、ただいままで大体定時制について施設をいたしておりますのは、その学校の施設とか、そういうものに対するものでございまして、お説のとおり個人には特別の援助はしていないのでございます。この問題につきましては、定時制高等学校でございますから、教科書その他無償とか、そういったような問題はいたしておりませんが、しかし、特にこの勤労青年に対しましてはそういった問題をぜひ考えていかなければならぬと思っております。ただ、高等学校通信教育等につきましては、通信の教科書でございますとか、そういったものにつきましては援助をいたしておるのでございますが、定時制のほうには、個人的なものは現在のところございません。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 現在の段階では個人的には何も援助しておりません。だから、根本的に援助、救援しなさいと実はおすすめしておるのであります。たとえば間接費にしましても、授業料を取るわ、寄付は取るわ、PTAの経費は取るわ、給食費も取るわ、あれも取るこれを取る、何やかや取りまして、結局約三万円ほど要るということになるのであります。でありますから、かりにこれを二万円としましても、二万円として五十万とすれば百億円で済むわけなんです。そのくらいの金をもって全国の五十万の定時制の生徒が、明るい約束を国がしてくれたということになりましたら、それはどれだけ大きな福音になるか私はわからぬと思うのです。ですから、そういうことは国策です。だから、国務大臣としまして、あなたの文教国策の基本施策としてひとつお考えになってはどうでしょうか。きょうはやっておりません、それもよろしい。やっておってもやっておらぬでもよろしい。個人には何もしておりませんでもよろしいから、個人には何をどうとかいう意味よりも、国策の重要な問題としてひとつお考えになってはどうですか、こういうふうに申し上げておるのであります。ひとつその辺は、総理とも御相談になってはいかがでしょう。
  48. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 重要な御意見でございますので、私ども真剣に考えてみたいと思います。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから、定時制の場合に一番大事なもう一つのことは、たとえば事業場の事業主の協力でございます。事業主があたたかい目、態度をもって定時制の生徒の勤労者に臨むということになりましたら、どれだけ肩が軽くなるかわからぬと思うのです。そこで、これはしろうとのほんの思いつきにすぎないのでありますけれども、私は、身体障害者のいまの勤労青少年の場合、それから身体障害者の場合はそれ以外も含みたいのでありますが、特に感じたのでございますが、勤労青少年の場合には、やはり事業主、雇い主に向かって国の財政的な援助の手はないであろうか。したがって、これは税制の面はないであろうか。国あるいは地方税等におきまして何らかの方法はないであろうか。ただいま勤労青少年の所得者に対しましては特別な控除ができております。これは本人自身にでございますが、できておりますけれども、そうじゃなしに、雇い主に向かってあるいは法人税、所得税等において特別の措置はできぬものであろうか、こういう点も一考を要すべき問題点でないか、こう思うのです。これはひとつ事務的に御研究になってはどうかと思いますが、事務当局の方はどうでございましょう。
  50. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 御指摘の点につきましては検討もし、それからそれを扱っている当局とも折衝したことはございます。たとえば給料を有給のまま勤務時間を欠いて行く場合の、その事業主に対する税制的な措置ということを折衝したことはございますけれども、実は給料自体が損金に入るのであって、その分の補てんを二重にやることはきわめて困難だというようなこと等がありまして、これは課題になったまま、どういう形があるかということにつきましては実はまだ結論を得てないもので、税制上は損金に給料はしているのだから、それをさらに引くということはむずかしいということが現在までの経緯でございます。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さっき婦人少年局長に伺っておった点なんですが、女性に対する後期中等教育につきまして、家庭科尊重ということも言われるのでございますけれども、何か知らぬけれども、間尺に合わぬ家庭知識しかない。もう少し家庭人としての、つまりたとえば、ここにいわれる期待さるべき人間像とうたっておるような家庭人としましての女性を教育するということにつきまして、もっと積極的な施策が要るのではないだろうか。こういうように思うのですが、これは教育者、施設、受けるほう、まあいろいろな関連におきまして一種のむずかしい問題であろうかと思いますけれども、その点は、いまの実情等から見ましてきわめて不十分だと思うのですが、いかがでございましょう。
  52. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 その点につきましても、女子が将来主婦となり、母となるということが約束されておりますのですから、その青少年期から家庭人として家庭の機能、家庭の地位というものをよく理解し、また、家政を担当する技術、教養というものをもっと充実しなければならないという点の問題としては、御指摘のとおりでございます。この点につきましては、すでに家庭科等を扱っております産業教育の審議会からも、家庭科の教育の充実等が問題とされております。この問題は、これは単に学科のいかんを問わず、すべて女子の生徒に対して将来の家庭人としての教育をどう充実するか、これは教育課程の改善の一つの重要な課題となると思うわけでございます。  ただ、いま御指摘になりました点は、もう一つ高等学校の学科の種類としての家庭科の問題というものと、それから他の普通科その他の問題、実態としていまどういうふうになるかということがございますが、私どもは、この家庭科のそれぞれの機能というものを、現在問題がありとすればどう再編成するか、どういう分野に力を入れたらいいかということも、学科の組み立てについていま検討の最中でございます。それからいかなる学科を通じましても、女子教育観点から家庭教育をどう実施するかということも検討してまいりたい、かように存じております。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣に伺いたいのですが、生徒の適性能力、進路に対応すべく一種の教育内容の多様化ということが強く打ち出されておりますね。非常に大事な点だろうと思うのでありますが、こういう点はいかがなものでございましょうか。  私は常に疑問に思っておるのでございますが、最近は新幹線ができて、私も東京-大阪間を三時間で行っております。人は、たいへん便利になりましたなと言ってうらやましがるのであります。三時間で行きまして便利になるようですけれども、仕事というものは何ぼでもふえるのでございまして、からだというやつは、ともかく肉体と精神には限界がありますが、仕事の限界はない。そうすると、早く運んでもらうのはけっこうですけれども、うんと早く運ぶことになると、今度は超音ジェット機が入ってきますと東京-大阪間三十分だそうですね。ニューヨーク-羽田間は三時間だそうです。そうすると、地球をくるくると何回も回ってきて、そして一日が済むという時代がくるかもわからない。人間が機械に使われているのやら、機械が人間を使っているのかわからぬということで、ちょっと疑問に感じておることが実はあるのでございます。そこで私は、青少年が、時代の進運、技術革新のそれ、科学の進歩等に対応し、適応して、自分の適応性を発達せしめていくということが、よほど指導が適切でないと分裂しはしないか、総合的にこれを掌把することができなくなってしまわないだろうか。そうしますと、そこに自己不信、不安といったようなものが、青少年を迷わす一つの重大な契機になりやしないだろうか。私は非行少年問題を若干研究したことがございますが、いろんな方に聞いてみますと、どうも不安というようなものが伴ってくると欲求不満もできる、こういうことになるのは一つ非行少年の契機になるということをちょっと聞くことがあるのでございますが、対応性はけっこうですけれども、同時に総合性ということも重視すべきではないであろうか。総合性というようなものは基本教育でちゃんとやりますといえばそれまでですけれども、しかし、そうではなくて、もっと文化発達、技術進歩、革新のそれを総合していって、自分の一種の適応ですか、そういうことへの施策が必要でないか。私は教育に全くしろうとでございますので、そういうことを常に疑問にするので実は大臣にお尋ねするのですが、万事総合的に把握し、掌握し、適応していくということの自己を見つけていくことが必要でないかと思うのでございますが、これはどんなものでございましょうか。
  54. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 いまのお尋ねの前に、例の勤労青年定時制高等学校にやる場合に、使用者に対して援助をしたらどうかという問題がございました。現在の勤務時間をさいて参りますことに対する、会社側に対する免税措置とかいろいろなこと、考究はしてみたようでございますが、ただ、これは実際上の問題としてどの程度まで実現できるかわかりませんけれども、例の石炭対策で炭鉱労務者を新たに採用いたします場合に、採用する会社のほうに一人当たり幾らという補助を出しておる例があるように思います。そういうのからまいりますと、何らかの方法も、もう少し研究をいたしますれば打開の道があるのではないかと存じますので、この点はもう少し私も研究をいたしてみたいと思います。  それから、後期中等教育におきましては、その能力及び社会の非常な伸展に伴いましていろいろ変わってまいりましたので、その社会実情に応じ、また能力に応じて後期中等教育の多様化ということを申しておるわけでございますが、また一面、あまり多様化ということを強力に申しますと、申されますように総合的な人間教育と申しますか、これが欠如する面がなきにしもあらずと思います。ですから、いわゆる後期中等教育におきましても、やはり総合的な人間形成という面につきましては、相当重要な課題といたしまして重視してまいらなければならぬ。その上に立って、適性に応じました高等学校教育の多様化ということを考えていかなければならぬので、その基本を忘れてはやはり後期中等教育目的に背反すると考えますので、気をつけてまいらなければならぬと思います。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから事業所内と公共施設としての職業訓練、これも現在の実情は、私がいろいろ調べたり伺ったところによりますと、どうもまことに不十分であります。あるいは中途はんぱのところもずいぶんございます。ほんの若干技能を習得するにとどまるようなものさえあるのでございます。労働省がやっている何とか大学でも、大学の名にふさわしくないと私は見ておるのでございます。そうでありますので、このところは、ひとつ文部省は言うならば教育行政の主管庁でありますから、そこで教育の見地から見て訓練も一種の教育なりとして、これはもっと労働省との間に総合的に行政をやるという見地に立ちまして、何とかやはり大臣として、文部省からあるいは協力するとか、あるいは文部省式な学校施設式な充実した合理性を与えるとか、何かその辺をもっとやらなければ、非常に素朴な未発達の状態のものが多いと見ておるのです。したがって、そういうところへは、第一、それがもし中小企業的なものであるならば若干優秀労働力はもう寄りませんです。地方団体がなけなしの金を出して何か設備しておるのもございますけれども、これとても不十分でございますので魅力はございません。ですから、そういうことから考えて、何かやはり政府全体としまして、そこは被教育者のために、勤労青少年のために、訓練を受けておる者のために、もうこれは何とか充実する必要があるのじゃないか。充実する上におきまして文部省と横の連絡をとって、総合施策の一貫として推進する、こういうふうにそこは大胆にお話し合いになってしかるべきだと思うのですが、ひとつ大臣としましての御所見を伺っておきたい。
  56. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 働く青年教育の問題でございますので、一番密接に関係がございますのは労働省でございます。なおまた、農村青年等は農林省とも関係があると思います。私どもといたしましては、十分各省とも今後連絡を――いままでもできるだけの連絡はいたしてまいっておるのでありますが、今後も十分に連絡をいたしまして、働く青少年教育については十分の力を入れてまいりたいと存じます。
  57. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あと一点で終わります。できるだけ簡単にいたしまして……。  そこで、ずっと最初に戻るのでございますが、私がやはり非常に大事な点を何としてもくるくる回りまして考えることは、家庭教育と、それから社会教育活動と、学校教育と、この三者で総合関連性を持って進めていっていただくことがきわめて重大なことでございます。これらにつきましては、これは単に文部省だけで解決できる問題ではございませんので、政府全体の責任であろうと思うのでございます。特に社会教育活動なんかに至りましては、これはもう一そうの国民の決起的な協力を要請するというところまでいきませんと、それは担当者の自治的な形式的な運動に終わる危険がございます。これとてもきわめて重要でございますが、これは取り上げようによりまして、扱いようによりまして、国民の協力のしかたによりましては、社会教育活動というものは相当成果があがるものだというふうにも考えられますので、これらにつきまして、三者がもう重大な国策としまして相協力していく。三者という意味は、教育の場としての家庭と、社会と、それから学校であります。これをどうしても総合的に把握するところに立って、教育行政を推進していただくことを特に強く御要望して、私の質疑を終わります。      ――――◇―――――
  58. 床次徳二

    床次委員長 次に、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保田藤麿君。
  59. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 時間の関係考えますので、ごく簡単に要点だけを伺っておきたいと思いますが、第一の問題は、大学入試にからんで、急増対策として、四十一年でしたがピークであって、一時的な関係にこれを見ておられるのか。ことしはむしろ逆に、高等学校の場合とこれは違いますので、大学の場合は単なる一時的な現象として押える考え方は間違いだ、こう思っておるのでありますが、これについて文部省としてどんなふうにお考えになり、御処理をしておられるのか、端的にひとつ御説明いただきたいと思います。
  60. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 大学の入学志願者につきましては、いま申されましたように、昭和四十一年から急激に増加をしてまいりまして、四十二年及び四十一年までは相当の数の増加を見ます。統計上から申しますと、四十四年になりますと多少減少の傾向になってくるということになるわけでございますが、しかし、一面において志望者の率が相当増してくるというので、単に統計的な考え方から、四十四年以降は減少すると言ってはおれない問題があると思います。それで現在、四十三年までの分に関しましては、国立大学及び私立大学とを入れましてこの受け入れ態勢を相当増加していったのでございますが、現在までの増加いたしましたのがなお不足するかどうかということは、四十四年以後にならないと志願者の数によりますからわかりませんけれども相当増加の傾向にあるということは言えると思います。
  61. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 大臣高等学校と違ったふくらみ方だということについて十分御配慮のようでありますが、私は、もう一つ強くお願いしたいのは、これは非常に長期的に見ておかないと、現に浪人がたまっていく、学校を選択していくという、いわば見方によってはぜいたくな注文でありますけれども、現実にはそうであって、それが非常な社会不安にまで発展しておるのじゃないか。質的にいえば学力の低下というようなこともかなり心配されておりますし、私もそうした面が多分にありはせぬかと懸念しておる一人でありますので、長期的にひとつ計画を立てていただくことと同時に、その質的な整備を考えていただきたい。何かこれについてお考えがありましたら、特にその質的な問題についての御配慮を伺っておきたいと思います。
  62. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 大体昭和四十三年までは、質的低下を来たさない考慮において学校施設なりを拡充し、受け入れ態勢を拡大していく。四十四年以降におきましては、実際上はそう減らない傾向にあると思いますが、統計的には、拡大をしてまいりますよりも内容を質的に充実していく時代が四十四年以降には来る。それは単に入れものの増加だけでなしに、今度は、四十四年以降において長期的な計画で内容の充実に努力してまいりたい、こう考えております。
  63. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 第二の質問は、九州に芸術工科大学をつくられる計画、私も、地方にそうした大学がもっと分散されていかなければいかぬ、地域的な配置ということは非常に大事なことだと思っております。この大学をつくられることに大いに敬意を表しておる人間でございますが、これらの内容が、特に芸術工科大学という意味合いと、私がいただいた資料からの感じでは、どうも少し工業技術型に過ぎておるような気がするのでありますが、これは芸術工科といったようなことに対する文部省の特別な考えがそういうところにあらわれておるのか、あるいは九州の特殊性がこうしたものを考えさせておるのか。ここらの点、基本的に今後地方の文化化というような意味から見てかなりな意味合いを持つように思いますので、その辺のお考え、いままでの御判断というようなことを伺いたい。
  64. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 最近の工業技術の振興は非常に急速な進歩をしてまいったのでございますが、その工業の技術の中におきまして、単に技術的な面だけでなしに、相当芸術的なセンスと申しますか、こういったものを取り入れなければならないような世界的な一つの傾向だと思います。そういう意味において工業技術だけでなしに、そういった工業の技術に芸術的センスを取り入れていく、こういう特殊の学問のあり方ということにつきましてその必要性を感じて、文部省では三年ばかり前から特別の委員会をつくりましていろいろ研究を続けてまいりました。学問の内容が全く新しい方向でございますので、その学科内容、教授方法、教授の範囲、これらは非常にむずかしい問題でございましたが、ようやくその結論を得ましたので、今度芸術工科大学として昭和四十三年から発足しようということでこの設置法をお願いをし、今年度はその準備をいたしていくということにいたしております。
  65. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 考え方として私も全く賛成でありますが、この数なんか見ておりますと、あまりにも小さいというか、小規模のような感じがしますのと、たまたま九州がそういう地域的に非常にぐあいがいい、私も大賛成でありますが、むしろもう一つあるいは北のほうというか、多少そうした文化面の弱いような感じのする地帯にも、こうしたものを考えてやっていただくことができないものか。後ほど高専のことをちょっと伺おうと思っておりますが、それらとの関係もございますので、九州で一ぺんやってみてというお考えなのか、いやいや、こういうことは絶対必要なので、ぜひひとつ日本国内に幾つかこういう姿のものを生み出したいんだというお考えなのか、まだ固まっていないというのであれば、それでもけっこうでありますが……。
  66. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 実は、この学科の内容は、いまお尋ねではございませんけれども、環境設計と工業設計、構造設計及び音響設計、これらの設計の四学科を置きまして、一応各学科三十人で計百二十人という定員で始める予定でございますが、この学科が、いま申しますように、芸術的なセンスにおいて設計等にセンスを取り入れた設計をやる、こういうことになりますと、実は一応学科内容、それから教科内容等、につきまして研究はいたしたのでございますが、それにはたして適合する先生があるのかどうか、これがいま一番大きな問題でございます。そこで、今度の予算でこの準備を始めさしていただきまして、その一番大きな仕事になりますのはそれに適合する先生をどうして集めていくか、これが現在の非常な課題でございます。これはただいまもいろいろ研究をいたしておりますが、現在ある優秀なこの方面に向く先生について、ある場合によりますれば新しい先生のほうであるいは外国に留学をいたしますとか、あるいは特別の研究をいたしまして、そうしてそれに相応する先生をまずつくり上げていくという状況でございまして、一校だけでもなかなかこれはむずかしい。そこで、これを一応つくってみまして、また社会的需要その他を見まして、なお必要であれば――また、これは必ず一大学でなければならぬという考え方でつくっておるわけではありませんが、欲をいって幾ら多くつくろうとしても、一つができた場合、はたしてりっぱなものができるかどうか、これはよほどの努力が要ると思いますので、将来の問題としては考えられますが、現段階においてはまず一つを完全に完成することが重大な問題ではないか、こう思っております。
  67. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 実は私が、大臣のおっしゃった教員論を、少しむずかしいのじゃないかという角度から申し上げるつもりだった。逆にやられてしまいましたから、これはこれで終わります。  次の問題は、一般の医師、歯科医師、この関係でありますが、今度の御案によりますと、四十年に東北、新潟、広島でありますか、四十二年度に北海道、九州といったところに歯科関係のこうした問題が配慮されておるようでありますが、同時に、医学部についても、文部省厚生省の折衝の経過が、私の知っております限りでは、お医者さんはもちろん余っておるというのではありませんが、それほど足りないのではないという見方で、わりあい楽観された姿が出てきており過ぎておったのと違うか。ところが、今日の歯科医、一般の医師のほう、それぞれの畑を見ておりますと、一人のお医者さんが一人の店といいますか、医局をかまえてやっておるという医院などというものは、このごろほとんどない。相当数の専門、同時に相互援助といったような形の医局を構成しなければ相ならぬということになってきておるのが実態であります。厚生省との間に、数的な需要関係がどんなふうになっておるのか。いままで私の聞きましたところでは、まあまあの数字だからというのではっきりと歯科医のほうはこれだけの増員計画、したがって、その必要さというものが一応はかり出されるように見受けられますけれども、医師のほうは、いま文部省考えておられる数字の点は、私立学校に多少まかせておるというのでしょうか、あまりはっきり医師の需給関係についての御方針なり、また、その必要性をこなしていくという姿のように見受けられませんので、これらについての厚生省との見方、厚生省がどうあるにかかわらず文部省はどう見ておるのだ、したがってどうすればいいのだという点を明確に教えていただきたいのであります。
  68. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 今度四十二年度の予算にございますように、北海道と九州に歯学部を二つ増設いたしまして、歯学部につきましてはやはり歯科医師の社会的需要の関係でございますが、このほうは厚生省とも相談いたしまして、まだ日本におきましては歯科医師が不足しておる実情でございますので、二学部につきましても、これは需要に応ずるという要求において必要な学部だと思います。特に北海道と九州につくりましたのは、歯科医師の養成機関がほとんど現在におきましては東京と京阪地区に集中しておりまして、そういう意味において北海道とか九州というところにやはり一歯学部が必要である、地方的な需給関係から申しましても必要だというのでつくったわけでございます。  医学部のほうにつきましては、御承知のように、終戦後大体今日まで、医学部におきましても定員を約千名だけは増加してまいったのでございますが、医師の養成については、厚生省のほうも大体いまの程度でいいという方針であったようでございますが、最近に至りまして、医師のほうも相当――ある程度不足を来たしておるということが厚生省でも言われてまいっておるのでございます。でございますから、今後この医師の養成という問題については十分厚生省とも相談をいたしまして、必要があればある程度これは増加していかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  69. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 歯科のほうの関係については、ここでまた私も、厚生省なり文部省なりが見ておられる見方にまあまあという感じがするのですが、お医者さんのほうは、いま大臣の話しぐあいだと、歯医者さんのほうよりはもう少し必要度が薄いような印象を受けたのでありますけれども、私の承知します限りにおいては、むしろいままでは、一人のお医者さんが一つの医院というか、あるいは単位をこなしていくというような考え方でよかったように思います。ところが、最近の病院、ことに小さな、必ずしも大きいと言えない町の医院なり病院なりにおけるお医者さんの実態を、ここで長く時間をかけるわけにもいきませんけれども、簡単に申し上げますと、少なくとも非常に専門化しておるということ、それから薬というほうの面が、従来の見方とかなり変わってきておること、それから病院の中の施設、むしろ人間が患者にさわるというよりは、機械が患者にさわるといった面のほうが非常に多いといったようなことが要素になって、あるいは歯科医の場合よりももっと切実にお医者さんの不足をむしろ病院が、したがって、その結果を受けるのは病院に世話になる患者とまではいかないまでも、お互いだといったような感じがいたしますので、ぜひひとつ医者の数、医者の質あるいはその後の医者に対する扱い方、これらについて特別な配慮を文部大臣のほうにもひとつお願い申し、文部省のほうから厚生省に向かって、だいじょうぶか、これでいいのかといった一つの態度を示していただくことがぜひ必要じゃないか、こう考えます。これはあえて答弁を求めませんが、もう一つ、お医者さん方のこの問題に関係して、国家試験をインターンの人が拒否しておるといったような問題で、いまきっと文部省でも頭を痛めておられることだと思いますが、この考え方に、これは医学教育の一環なんだからインターンというものが必要だという意味合いと、また、お医者さんが医学部を卒業してからあと、いろいろな意味での研修の考え方に置きかえるというか、インターンそのものもそれなりに考えながらではありますけれども、お医者さんという特別な職業あるいは勉強を必要とする性質の仕事から考えて、このインターン問題を文部省としてはどんなふうにお考えになり、厚生省との間の話し合いを進めておられるか、伺いたいと思います。
  70. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 医学部の学生の国家試験の拒否は、ほかの理由もありますけれども、主としてインターン制度の廃止ということを要望してそういう問題が起こったことは事実でございます。医育機関として終戦後、大学を卒業してまた一年間インターンをやる、しかる後に国家試験を受けて医師等の免状を得るという制度は、アメリカの制度にならった制度であろうと思いますが、しかし、インターンのあり方につきましては、率直に申しまして相当これは当初から意見のあったところであります。私自身は、これは文部省考えということを申し上げると語弊があると思いますが、私はやはり、医学教育で大学をやる限りにおきましては、大学を卒業しますときに、免状をやるときに、一人前の医者になり得るところまで医育機関において責任を持って養成すべきではないか。大学を出てもまだ一人前の医者になれないで、インターンを一年やらなければ医者の国原試験を受けることができないという制度は、全く大学のあり方というものについての一つの矛盾であるように私は思います。まあこういうことは別としまして、インターン制度については非常な批判があり、また学生もこれに対して非常な不満の意を表明しておりましたので、まあ大学卒業後のこの医療研修のあり方につきまして厚生省文部省と相談をいたしまして懇談会をつくり、至急これに対しまする一つ考え方のとりまとめ方を依頼いたしまして、そうして本年の二月にこの中間答申が出まして、インターンはこれを廃止すべきものである、しかし、大学を卒業しますと国家試験を受けさせ、しかも国家試験を受けましていよいよ開業するとか、一人前の医者になるのにはまだどうしてもやはり診療研修は必要とするから、診療研修のあり方は今後十分早急に研究をするけれども、大体においてインターンは廃止し、その後の研修の方法については懇談会において早急に結論を出すということになりまして、まあ厚生省のほうでもそういう意味で、研修のやり方の適当な方法考えられればインターンを廃止しようということに厚生省も踏み切ったようでございまして、近く研修に関しまする最終答申が出てまいります。それに基づいて今国会中にどうしても改正法律案を出そうというところに来ておるようでございます。  ただ、現段階におきましては、私は、医学教育については相当基本的に考えなければならぬ問題がある、さしあたりインターンの問題を解決しただけでは医学教育あり方基本的な解決にはならぬと私は思います。特に無給医局員とか、こういう問題が大学の非常なガンとして今日あるわけでございます。私は、これは要するにいまの日本の非常に特異な状況であって、医者の免許状だけではだめで、いわゆる医学博士の称号を持たないと開業その他ができないので、どうしても医者の免許状を持って、しかも学位を取るまで大学なり研究機関の中におるというこの実情、これがやはり基本的には医学教育の今日の非常な問題点ではなかろうか。それで私どもは、やっぱりアメリカなんかの制度から申しますと、専門医の制度というものが相当発展しておるようでございまして、いわゆる実力主義というか、専門的なのには非常に専門医としての能力があるという表示こそ大事であって、いわゆる基礎医学で学位を取って内科の医学博士という看板でやるという状態が、今日の医者のあり方として日本あり方の誤りである。ですから、私は、医学教育についてもっと基本的に、もう一回日本の医学教育あり方について再検討をするときが来ておるのではなかろうか、そういうふうに今日考えております。
  71. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員 お医者さま方のこの問題について、私も相当意見がありますので、もう少しやらしてもらうといいのですが、時間がこんなですから御遠慮申し上げますが、要は、先ほど来お話しの、せっかくの委員会とか何かでインターンの問題をおやりになったが、結果はまだ十分出ておるわけではないそうですから、それ以上は言えませんが、むしろ医学教育全体のそこに何かもう一つ考えないと、従来の、一人のお医者さんが自分一人でもって医者的な活動をやっておった時代と、だいぶお医者さんの立場というものは変わってきておる。いわゆる医院でなしに、病院的な動きになってきておる。そういう物理的な動きになってきておるといったような幾つかの問題がございますので、いま大臣がそうした問題について格別研究したいとおっしゃっておることだけで一応打ち切りますが、せいぜいひとつ文部省として、この問題に厚生省がどうあろうと、ともかく教育、人を養成するという意味合いから、強い御研究を要望さしていただきたいと思っております。  もう一つ、最後に高専の問題でございますが、商船が今度工業のほかに加わって、高専というふうな性格が幾らかはっきりしてきたように思いますが、短大との関係もまだまだ不明確なような気がいたしますし、ことにこの高専をつくる持分に描かれた  これは文部省が別に文章でうたわれたわけでもありませんし、世間に宣伝されたわけでもありませんけれども、私どもが十分その当時受けさせられた印象としては、先ほど来青少年の問答がかなりあったようでありますが、この青少年に特別な夢を与えたということだけはどうも争えない。本年度若干の卒業生が出まして、これはそれらの就職ぐあいなどの数字だけでありますし、まだ必ずしも実態を綿密に調べたわけではありませんけれども、需要のほうの側からその値打ちを非常に買われたということは争えないのでございます。そこで、この高専についてもっと拡充をなさるのか、あるいは短大との関係をどんなふうに考えておられるのか。そうしたような角度から、この高専のビジョンをもう少しはっきりさせていくことが、この高専の値打ちといいますか、一面、先ほど来論議になっておりました働くか少年に対する大きな光明を、いわばここに求めることの一つの手段じゃないか。たいへんむずかしいことだけをかれこれ注文するよりも、幸いにここに一つの光明が見えるということは、これは争えないのでありますから、ここらにひとつ腰を入れていただいて、将来こういう高専というものをどんなふうに考えていき、ここらにどういう値打ちを持たしていくといったような文部大臣の御所見なり、また御期待なりを伺いたいと思います。
  72. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 御承知のように、高専制度をつくりまして工業だけをやりましたが、これは社会的の要望に基づきまして、現段階では四十三校でございますが、そこまで拡充設立をいたしました。そうして、これはまだ全部が完成しているわけではございませんけれども社会からは相当歓迎された制度として認められてきていると思います。この工業高専を今後どの程度までふやすかという問題が一つあると存じますが、大体一府県一校ということでやってまいって、まだ数県高専ができていない県がございます。しかし、これは一定の限界がございますので、そう極端にこれを増加していくということもどうかと思います。ことしの四十二年度から商船高専の制度を認めてもらうということにいたしているのでございますが、工業及び満船のみならず、その他の学科についても高専を相当認めたらどうかという意見も相当あるようでございますが、これはやはりどういう学科が高専に適当であるか、それから短期大学等との関係をどうするか、こういう問題がいま残っておりますので、実は四十二年度の予算でこの問題について調査研究をして、その大体の外郭、どのような程度にまで高専制度を拡充すべきかという点を一応輪郭を得るために、その調査研究のための経費を実は四十二年度の予算に計上しております。予算が通過いたしました際には、ひとつこれに真剣に取り組んでみたい、そうして大体の、高専に適応すべき、将来やるべき高専の範囲、種類、これを一応輪郭を出してまいりたい、ただいまそう考えております。
  73. 床次徳二

    床次委員長 次会は、来たる五月十七日、水曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五分散会