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岡田(覚)
政府委員 お話の肉牛の問題につきまして
お答えいたします。
まず第一の
生産計画の問題でございます。実は御
承知のように、日本では牛というものは、大体において農家の労働力として、営農の補助下段として飼育されるという形態が一般的であったと思います。しかしながら、その後農業の形態が非常に変わってまいりまして、機械化が進展するというふうな形になってまいりましたので、労働手段としての牛の必要性が非常に少なくなってまいった。一方で、
国民の食生活の構造が非常に変わってまいりまして、食肉の需要というのがふえてまいりました。そういうふうなこととからみ合いまして、だんだん肉牛が屠殺されまして、資源的に申しますとかなり減ってまいったわけであります。昭和三十一年ごろまで、たしか二百七十万頭くらいであったと思うのでございますけれ
ども、それが逐年減ってまいりまして、最近は百五十五万頭
程度までに下がってまいっておるわけでございます。
そこで、先ほど申し上げましたように、食生活の構造変化に伴いまして、肉の需要が非常に増大しておるということに伴いまして、どうしても需要に応じた肉の
生産の必要があるわけでございます。一方、国際的に見ましても肉の需要が非常にふえておりますので、自由に肉の輸入ができるということは、将来なかなか期待ができないのではないか。そういうふうな点から申しまして、一そう国内で肉牛の
生産をする必要があるというふうに
考えられるわけでございます。ただ、肉牛につきましては、非常に零細な規模で
生産されておりますために、大規模
生産ということにはなかなかいかないわけでございますが、できるだけ増産をさして、必要な量を国内でまかなうというふうな点から
生産の
振興をはかっておるわけでございますが、特に草資源の豊富な地域において飼育される必要があるというふうに
考えまして、草地改良事業の推進ということをまず
考えておりますが、いずれにしましても肉牛の
生産がふえなければならないわけでございます。しかも、優秀な肉牛資源がふえなければならぬということでございますので、繁殖育成センターというものを設置させて助成をいたしまして、そこを中心にして
生産された小牛を農家で育成するというふうな
考え方を進めておるわけでございますが、一方で、何と申しましてもわが国の肉牛というものは、肉質としましては非常にすぐれたものでございますけれ
ども、肉の
生産力という点におきましては、従来労働手段として使われるという形で改良が行なわれておりましたために、肉の
生産量という点については、やや外国の牛と比べて落ちる点もございます。したがいまして、そういう点から、たとえばアメリカのアンガスだとか、ヘレフォードだとか、あるいはフランスのシャロレーというような肉の
生産量の非常に高い牛があるわけでございます。そういうものを導入いたしまして、F1と申しますか、雑種をつくっていくというふうな
考え方も一方で進めておるわけでございます。少なくとも十年くらいの間に二百五十万頭くらいの肉牛を国内において飼育をするというふうなことを目標にいたしまして、諸般の施策を進めておるわけでございます。
それから飼料の問題でございますが、御
承知のように乳牛、牛肉を問いませんが、牛というものは本来草食性の動物でございます。草を十分に食わすということが最も適当であり、家畜の生理的にも非常によろしいわけでございます。草の
生産というのは、これはもちろん国内でできるわけでございますから、できるだけ国内で草資源を開発しましてそれを与える。理想的な形態といたしましては、おおむね九〇%
程度自給飼料によるということが望ましいというふうに
考えておりまして、将来はそういうふうな形で飼料が供給されるというふうにいたしたいと思っておるわけでございますが、ただ、何と申しましても最後の仕上げの場合には濃厚飼料に依存せざるを得ないということになるわけでございます。トウモロコシ、マイロ等は濃厚飼料でございますが、わが国のような零細農家におきましては、収益性が非常に低く、反収が非常に少ないわけでございますので、外国のように非常に膨大な面積の上においては成り立つわけでございますけれ
ども、わが国のような非常な零細規模の場合には、なかなか成り立ちにくいという点がありまして、この濃厚飼料の
生産というものが、十分にわが国の農業の中に入り込んでいかないという面があるわけでございます。できるだけ合理的な
生産というものについて促進をいたしたいと思っておりますけれ
ども、必要なものについては外国から低廉な飼料を輸入いたしまして、それを供給をするというふうな
考えでおるわけでございます。
それから子牛の問題でございますが、これは先生の御指摘にありましたように、従来複雑な過程があったと思うのでございます。原則的に申し上げますと、従来の肉用牛の
流通というものは、まず最初に
生産地帯の農家から、生後六カ月くらいして産地の家畜市場において、家畜商または農協が購入しまして、育成地帯の農家に売り渡すというのがまず第一でございます。それから次に、育成地帯の農家が十八カ月ないし二十四カ月齢まで育成いたしまして、これを家畜商に
販売いたしまして、育成牛が集散地の家畜市場において家畜商間で取引されるか、あるいは市場外において家畜商間で取引されまして、肥育または飼育地帯の農家に売り渡され、それからそこで肥育または飼育されました成育牛が家畜商に
販売されまして、一部は集散地の家畜市場において家畜商間で取引され食肉市場に出荷される、こういうふうな形が行なわれておったと思うのでございます。ところが、最近になりまして非常にこの形態が変わってまいりまして、先ほど申し上げましたように、農業機械化の普及だとか飼育労働力の不足等から、育成飼育地帯が衰退をいたしまして、
生産地帯と肥育地帯というふうな二つの形に分化をしてまいってきつつあるように思われるわけであります。したがいまして、家畜の取引もその
生産地帯から直接肥育地帯に参るという形がふえておりますので、従来のような非常に複雑な過程をたどるというふうなものは、やや単純化されてまいっておるというふうに思うわけであります。ただ、その間におきましても、家畜商が入りまして途中で移動するという場合はもちろんないことはございません。ないことはございませんけれ
ども、全体といたしましては、非常に単純化をしてまいっておりますので、その
意味では、
流通過程は
合理化されつつあるというふうに
考えておるわけでございます。
それから家畜市場でございますが、
お話のように、家畜市場というのは小さいものから大きいものまで非常な種類がありまして、必ずしも合理的な形ばかりではないと見ておるわけであります。しかし、家畜の取引がこの家畜市場を中心にして行なわれるわけでございますから、合理的な
価格形成、それから公正な取引が行なわれるためには、どうしても家畜市場を整備していかなければいかぬというふうに
考えられますので、大体、おもな
生産地帯というものをとりあえず中心にいたしまして、その家畜市場の整理統合というものを毎年計画的に進めることにいたしております。四十年から大体毎年十五カ所
程度、その地域の家畜市場を整理統合しておるというふうな形で進んでおるわけでございまして、今後もそういうふうな形でさらに
合理化を進めてまいりたいというふうに
考えております。
問題は、運営の問題でございますが、従来そでの下取引だとかいろいろな形態があったわけで、これが取引の不合理を起こすもとになっておったわけでございます。そこで、家畜市場におきましては、要するに明朗な取引が行なわれることを前提にいたしまして、われわれは助成なり
指導をいたしておるわけでございますが、家畜商が中心になるわけでございますから、家畜商法という法律ができまして、家畜商につきましては一応免許制度をとっております。これによりまして家畜商の資質の向上、地位の確立ということをやっておるわけでございますが、なお、そのために必要な資金等につきましては保証基金をつくりまして、それによりまして保証をいたすということで、経済的な面からも援助をするようにいたしておるわけでございます。