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清久参考人 ただいま御紹介いただきました
大阪の
中央市場におきまして
仲買い業をやっております
清久でございます。
本日は、
生鮮食料品の
流通問題につきまして
意見を申し述べよということでございますが、私は
水産物の
仲買いの立場から
意見を申し上げたいと思います。なお、
先生方におかせられましては幅広く、また奥深く
市場の問題を御検討されておられますので、私の申し上げることは釈迦に説法というきらいがあるかわかりませんが、お許しを願いましてお聞き取り願いたいと思います。また、私は
参考人としてしんがりを引き受けました
関係上、いろいろ私の申し上げることが重複をいたす点もございますが、これまた御了承願いたいと思います。なるべく重複を避けて申し上げたいと存じております。
諸
物価の値上がりに伴いまして、御
承知のとおり
生鮮食料品の
価格が、家庭必需物資であります
関係上、大きな問題として取り上げられました。これに対するところの善処策といたしまして
流通機構の
改善をはかるべきだということでございまして、私の職場の
中央卸売市場もその
一つとして取り上げられておるわけでございます。率直に申し上げますと、ただいま江津さんも申されましたが、
中央卸売市場の機能、特に私ら
水産物の
仲買い人の職能について、御存じない方があまりにも多いのと違うか。これがゆえにいろいろな御議論がなされておりまして、私は非常に遺憾に存じておる次第でございます。
水産物の
流通機構の中で、
中央卸売市場がどんな役割りを占めておるかということでありますが、平たく申しますと、まず
生産者から
消費者に移る
経路でございます。すなわち、
漁獲されました
水産物を
消費地のお台所にいかなる
方法でお届けするかということの機能は、どういう機能が必要であるかということでございます。
生産状態また
輸送その他の点につきましては
伊藤さんから申されましたので、ここで省略いたすことにいたしまして、私が申し上げたいことは、
生産者、すなわち供給者の
生産されました
水産物を、
そのものを必要としておりますところの
需要者である
消費者へいかなる
方法でこれを持ってくるか、また取引するかということで、どういう
方法でお互いの希望を満たすかということの問題であると存じます。
その
方法の
一つとして
考えられますのが、これは取引の
場所が必要となってくるのでございまして、そこで、すなわち
市場の必要性が生まれてくるわけでございます。ところでこの
市場が、
市場での取引が
生産者のためにもなり、そうして
消費者のためにもなるというような公正な、適正な
価格で取引するにはどうしたらいいかという問題がそこに起こるわけでありまして、また、金銭上にも
信用のある
市場でなければならないということが、これが大きな問題であるのでございます。これがゆえに、一定の大きな
人口を有する都市につきましては、法律でもって監督し、規制し得るようにというのでできましたのが
中央卸売市場法でございまして、その
市場法に基づきまして、
中央卸売市場が地方の公共団体において開設され、運営されておるのでございます。
そこで、
中央卸売市場の機能はと申し上げますと、
中央卸売市場は、
生産地と
消費地の間に立ちまして、
需要と供給の調整とその公正な取引に大きな役割りを占めておるのでございます。すなわち、
中央卸売市場は、
全国の
生産者より集荷いたしました大量の、多品種な、そして
鮮度、品質、形態の不統一な
入荷品を、せりまたは入札で
価格を決定いたしまして、買い出し人の方々には、その希望に応じた必要な分量を再分割いたしまして卸売りいたしておるわけで、そして
産地に対しては、確実に迅速に
仕切り金を送付するというような機能を果しておるのでございます。いわゆる、
流通機構としての中核として大きな役割りを占めておるわけでございます。
ここでお聞き願いたいと思いますことは、
大都市の
中央卸売市場におきましては、大量の
入荷価を短時間に
処理しなければならない
関係上、この
市場に負荷せられました機能を高度に発揮するには、どういうふうな
方法がいいかというようなことになりまして、六
大都市の
中央卸売市場では、この
中央卸売市場の持つ機能を大きく二つに、卸売りと仲賢いに分業しまして、卸は集荷に専念され、
仲買いは卸の集荷されましたものをせりまたは入札によりましてこれを評価して買い取り、自己の
責任におきまして買い出し人に卸売りしておるのでございます。すなわち、
中央卸売市場の機能を卸と
仲買いとが二つに分割してやっておるわけでございます。
私は、先ほど申し上げました
水産物の
仲買い人でありますので、いま少し詳しく
水産物の
仲買い人の職能についてお聞き願いたいと存じます。
御存じのごとく、卸売り人が
全国より集荷されました大量の、多品種の
入荷品を、私たちは朝四時過ぎより
市場に参りまして、そうして
産地、
鮮度、品質等を十分に下見しまして、そうしまして、前日の
入荷量がどうであったか、また前日の
入荷量に基づいて
値段がどうであったか、また売れ行きがどうであったかということを頭に置きまして、そうして当日の
入荷量と市況というものを判断いたしまして、そしてまたその当日の
入荷品の
鮮度、品質、形態等をいろいろ勘案しまして、そうしてからせりに立ち会い、または入札で、七の品物を適正な評価をして買い取るのでございます。以上のようにして買い取った品物を、自己の
責任におきまして敏速に買い出し人または大口
消費者の方々に、お好みに応じたところの品種、品質、形態及び
数量に分荷しまして、そうして卸売り販売いたしておるわけでございます。
その販売先はと申しますと、区域内はもちろんのことでございますが、区域外や地方の方々にも取引申し上げまして、そうして送荷いたしておるわけでございます。御
承知のごとく、私らの取り扱い品は時間を争う
商品でございまして、また取引先が商売人、すなわち専門家であります
関係上、私らの
仲買い人の職能というものは非常に専門的な技能を必要とするものでございます。また、他の商売と違いまして、私らの商売はいわゆる商三労七と申しますか、商は三分で
労働力が七分それに加わっておるというような職業でございまして、これを機械的に片づけるとかどうしようというような、そういう職業ではないのであることをお知りおき願いたいと存ずる次第でございます。
次に、代金決済のことについて申し上げたいと存じます。私ら
水産物仲買い人の代金決済でございますが、卸売り人よりせりまたは入札で買い取った
商品の代金は、
中央卸売市場の
業務規程に定められておりまして、原則としては即日現金払いということになっておるのでございますが、現実は、いろいろ話し合いの末四十八時間日ないし七十二時間目に、
仲買い人の団体が代払いをするかまたは支払い保証というような制度のもとで支払っておるのでございます。一方、買い出し人の方々には、都市によって多少の差異はございますが大体二十日から二十五日間というようなことでございまして、この間の金融は私ら
仲買い人の
責任で金融の役目を果たしておるということをお取り上げ願いたいと存じます。
以上、
仲買い人の機能について申し上げたのでありますが、卸は集荷に努力されまして、その取り扱い高によって手数料をいただいておられるという仕組みになっておるのでございますが、私ら
仲買い人は、先ほど江澤さんが申されましたように
生産者との中間に立つ、どちらかといいますと
消費者側のほうに近いという立場に立ちまして、その日の
入荷の増減や売れ行き等を
考えながら公正な評価をして買い取っておりまして、そうして先ほ
ども申しましたように、自己の
責任において買い出しの人の方々に希望に応じた分荷と販売をし、また金融をいたしておるわけでございまして、事情のおわかりにならない方は、
仲買い人という名称よりくるところのイメージで、先ほど江澤さんが申されましたように、これはブローカーということと間違われて、ここで
仲買い人が要らぬのと違うかというような、
仲買い人不要論が出るということは大きな誤りでありまして、これは、実際
市場の事情を知らない方の申されることで、もし私がいま申しましたような、
仲買い人の機能はこういうものかということをよく御検討になり、ほんとうによくそれをお知りくださいますれば、
大都市の
市場では、その
仲買い人不要論ということが、
仲買い人という名称が不適当であるという論にお変わりになるように私は信じて疑わないものであります。
私はここで強く申し上げますと、もし
市場の機構の中で
仲買い人が不必要とか不要ということでございますれば、ただいま私が申し上げました
仲買いの果たしておるところの重大な職能を、一体だれが果たすのかということに相なるわけでございます。事
水産物に対しましては、小都市の小
市場というようなことでございますれば、これはあるいは
仲買い人の果たしておる機能の一部を卸売り人がやり、また買い出し人の方々がその一部の機能をやられるというようなことがやれるかもわかりませんが、
大都市の、特に六
大都市の大
消費地の
中央卸売市場というようなところでは、こういうことは全然不可能なことでありまして、また、非能率もはなはだしいというよりほかはないのでございます。そういう見地から、六
大都市の
中央卸売市場では、公共の機関であるところの開設者の監督のもとに、卸と
仲買いとが
市場の機能を二分して行なっておるのでございます。
以上私が申しましたので、中央卸売前場というものの機能と、特に
仲買い人というものがどういうことをやっておるか、決して
仲買い人というその名称からくるような
仕事をしておらないということを、十二分に御理解いただけたと私は存じておる次第でございます。
次に、
水産物の
価格の問題でございますが、これはいろいろ
先生方もまた
政府当局の方も御善処願っておって、御審議になられておるようなことでございますが、この
水産物の
価格ということにつきましては、先ほ
ども申されたごとく、あくまでもこれは需給のバランスによって生まれるものでございますれば、
市場機構の
改善等によって
価格問題が解決できるんだというようなお
考えでありますれば、私は少し違うのと違うか、かように思うのでございます。卸も経営の合理化につとめられておられます。私
ども仲買い人といたしましても、
現状に甘んずることなく体質の
改善を行なっております。また、
仲買いの大型化、法人化、協業化ということも進めてまいりまして、薄利多売の
方向に指導いたしておるのでございますが、買い出し人の方々の体質ということも、先ほど申されましたように近代化推進協議会のほうでいろいろ御考慮願っておりますが、そういう買い出し人の方々の体質も考慮しながら、それに合わすように私らの体質
改善を着々と進めておるのでございます。
しかしながら、先ほ
ども申しましたように、
物価問題になりますと、
卸売市場内においての卸の手数料は五分五厘でありまして、私ら
水産物の
仲買い人の平均マージンは約五分くらいであります。そういうことでありますれば、先ほ
ども私るる説明いたしましたように、
中央市場の機能が
流通機構の中でどうしても欠くことのならぬところの必要な機能であるということでございますれば、どこの内部の機構を変えていただきましても、決定的な
物価の引き下げということに影響は薄いのと違うか、それはむしろ
関係がないのと違うか、私はこういう感じがいたすものでございまして、
価格はあくまでも需給のバランスによって毎日毎日でき上がっておるということを御了承願いたいと存ずる次第でございます。
また、
価格安定の問題につきまして、コールドチェーン等の問題がいろいろ御研究されておりますが、事
水産物に関してのコールドチェーンということにつきましては、私は相当な疑念を持っております。先ほ
ども申されましたが、
水産物も同じことでございまして、この
水産物の
価格は、
生産者の方々は少しでも高いほうがいいということを望んでおられますし、
消費者の方は何ぼでも安いものを買いたいというふうに
考えられておられますので、この点につきまして、私らはどちら側についたらいいかというようなことになるのでございますが、これはその中間に立ちまして、公正な、適正な
値段を立てておるのでございますが、いろいろな問題につきましても、こういう点につきましてはなはだむずかしい面があるのでございます。
水産物は生鮮三品の中でも農産、畜産と違いまして、その
生産事情が
計画生産とかまた技術の
改革とかいうようなことで、
生産性を向上しようということが非常にむずかしい
商品でございまして、また同じ魚でも、
遠洋漁業でとれた魚と近海
漁業でとれた魚との格差がございますし、なおまた生
鮮魚と
冷凍魚、
加工魚の相違がございまして、なかなかこの点がむずかしいのでございます。こういうむずかしい条件がたくさんありまして、ほかの
商品、農畜産物と同じような扱いができぬということでございます。それがゆえに、
市場に一点的に大量に集中集荷いたしまして、そうしてそこで適正な
価格の形成を要求されるゆえんでございます。そこにおいて
中央卸売市場の使命、機能が要求されるわけでございます。
結論的に申し上げますと、重ねて申し上げることになるわけでございますが、
水産物の
価格は需給のバランスによってでき上るものでございまして、この辺のことをよく
消費者の方に御理解を願いまして、大漁貧乏ということばがよく使われますが、魚がたくさんとれますと、とれても
値段が安いのでかえってそれが間尺に合わないというようなことに
生産者の側が立たされておるのでございますから、こういうときには、
消費者の方もどうか同じ魚を毎日食うというように、いわゆる料理法を
考えていただきまして、そうして、それを毎日いただいていただきますと、
生産者のほうに大漁貧乏というようなことが少なくて済むのと違うかというようなことになりますし、また、特に不漁のときに、魚の
値段が高いというようなときには、ちょっと敬遠してもらいまして、そしてはたの
生鮮食料品で間に合わしてもらうというようなことに、
消費生活の上におきましてごくふうを願えれば、この間において
価格の安定と申しますか、そういう点について非常に効果があるのと違うか、かように思うわけでございます。
以上、いろいろ重複を避けてやりました
関係上、お聞き苦しい点があったかと存じますが、私の公述といたします。(拍手)