○三巻
参考人 私は消費科学と申しますか、自分の会の名前にその消費科学をうたいましたほど、ものごとを科学的に見ようじゃないかということをモットーにいたしまして、消費科学センターのほうは
消費者教育を、
消費科学連合会は
消費者運動、商品テストという面で働く、そして消費科学生活協同組合というものが、実際的に共同購入する場合にはそこがタッチするという、この三つの柱を立てまして、その三つの会を運営しております三巻でございます。
きょう伺いました前提といたしまして、私はあくまでもこの
物価高のおりから、
政府あげて
物価対策をしなければならないというときには、ほんとうに
国民のための食糧に近い
牛乳という問題については、あくまでも据え置いてほしいという願いでございます。そういたしますと、
生産者のほうの
乳価がきまりましたとたんに、今日の
現状というものが納得ができないという理由で、
生産者のほうももう少しほかに手があるんじゃないかということを申し上げてみたいと思います。
本日、当
委員会が
牛乳問題をお取り上げくださいましたということは、私はおそきに失したんじゃないかしらんと思いますが、たいへん敬意を表する次第でございます。安い
牛乳をたくさん飲みたいということは、私もう十三年前からこういう運動を始めまして、いろいろ言い続けてまいりましたわけでありますが、先年欧州へ参りましたときにずっと
牛乳を見てまいりましたところ、所得が
わが国に比べまして三倍、五倍と多いところで、最低値段十二円から高くて十五円だ、百八十ccに換算いたしまして。そういうふうなことを見ましたときに、やはり
牛乳はまだ商い、これには何か国の政策なり手の施しようがあるんじゃないかということを常に考えております。今度の
値上げのワクを見ますと、二円といたしまして、その
生産量から見たならば、約百億円の
消費者の犠牲においてこれがなされるということを計算するものでございます。
今度の問題は、例年になく
値上げの根拠がたいへん複雑でありまして、それは
酪農行政の不備と、
生乳の取引
価格を
決定いたします方法が、中央交渉と県一本という
団体交渉に変わって、力関係により
乳価がきまって、それがために
乳価水準をますます高くしているということに大きな原因があると思います。
ここ十年の
酪農行政を振り返ってみますと、
農林省は
昭和三十年から三十四年までを
酪農の普及期に当たるといっておりますし、三十五年から三十七年までを
経営的転換期である、三十八年から四十年は規模拡大の時期であるということをいわれております。そうして四十一年の六月からは、
加工原料乳についての
不足払い
制度が実施されまして、地域的に
加工乳地帯の保護政策がなされたわけでございます。
ところが、かえってそれにもかかわらず
生産量が停滞した。十年間の
生産量を見ましても、むしろ停滞しているということは、私たちとしてはたいへん問題なのでございます。昨年の
不足払い
制度によります
加工原料乳の国の補助は、一・八七五キログラム、一升に換算いたしますと九円七十九銭でございますが、その恩典を飲用乳にまでほしいということで、飲用乳と
加工乳との格差の不合理を理由に、
乳価闘争にたいへんに拍車がかかったということは事実だろうと思います。しかも、米価
決定の際の所得補償方式に魅力を感じ、米の一日の労賃と比較して、合わぬ
酪農という
ムードをつくり上げました。そして
酪農を放棄したり、肉牛に比較して屠殺したりすることは、
生産性の
合理化による
努力の
意欲を私はなくしているんじゃないかと思います。
このような考え方である以上、たとえことし一・八七五
キログラム当たり十二円の
値上げを認めたといたしましても、来年の
生産量の
増加というものがどれだけ私たちに保証してもらえるのかということは、たいへん疑問でございます。何年目かには、米と同じく年中行事のように、
乳価闘争によるしわ寄せが
消費者のほうにかぶさってくるということはもう現実でございまして、この悪循環をどこかで砕かなければならない。それには、現在、
消費者の自覚によって組織を固め、争うことしかなくなってきたというのが現実でございます。
その上にだれもが言いますことは、
生産費のコストを切り下げるようにしたらいいじゃないかと簡単に申しますが、
生産費の中の五〇%以上を占めております
飼料とても、ことしは容赦なく国の扱い分の
値上げをきめてしまいました。
飼料の流通段階でも相当問題があるといたしますと、なぜもっと
価格政策だけではなくて、
生産性を高める方策が考えられなかったのかということがまことに残念でございます。
酪農行政の貧弱さは、私がちょうど
昭和二十九年に十円
牛乳運動を始めましたその当時と全く条件は同じでございまして、いまもって多くの問題点をかかえております。そして最後にはいつも
消費者の犠牲において
値上げされ、その
値上げ分を
酪農、
メーカー、小売りと三者で分配しているのが常でございます。ところが、
物価対策として各所で流通問題の改善策がいろいろと考え出されてまいりましたときで、流通のパイプを太く、短く、効率的にするためにどうやって改善したらいいかということを寄り寄り考え中であるそのときに、
生産意欲を持たせるにはとにかく
乳価を上げなければ、このほかの方法はないのだというような
価格押し上げをしてしまったということも、私は納得ができません。その上に
小売り価格の指導
価格が廃止になりまして、これまた何らの対策もないままに組織の弱い
消費者には、野放しを宣言されたのも同じでございます。まことに不利な条件で一方的に価上げへ押しやられているというのが、いまの現実ではございませんでしょうか。
消費者価格の二円の
値上げを、もはや印象的に
一般的に大きく植えつけてしまったのでございます。指導
価格をはずすことが自由競争を意味し、
消費者自身の行動力が必要である販売形態へ変わったということを、もっとPRを早くしてほしかったということが、いかにも片手落ちで残念でなりません。
農林省は
価格の抑制を、流通改善モデル
事業費五百万円予算に計上いたしましたことで逃げていますが、これとても九十三億という
農林省の
酪農予算に比較いたしましたならば、パーセントにも当たらない微々たるものでございます。これとても
消費者の
努力がなくしてはできないはずでございまして、九十三億円をどう使うのかいろいろ分け前はございますが、増産効果の期待は私は望めません。要するに
酪農振興対策を単に農家保護だけに終わることなくして、最終
消費者価格の安定と消費拡大とに結びつけていかなる方法を講ずるかということを、私は早くしてほしかったのであります。当
物価委員会におきましては大いにこの点を御
批判いただきまして、要所要所におきましてこれを十分にお取り上げ願いたいと思います。
次に、
牛乳の品質規格について申し上げてみます。
牛乳には
加工牛乳、
普通牛乳、乳飲料とありまして、
普通牛乳だけに厚生省の成分規格がございますことは御
承知のとおりでございます。昔を思い出してみますと、この
加工牛乳ができたいきさつは、たしか原料乳の供給過剰を乗り切るために特定の客に脂肪分を〇・何%かわずかずつでも入れて高く売ろうという、品質とマージン
改定を考えた商魂だと聞きました。余ってしかたのないときには安くして多く
普通牛乳のまま飲ませてほしいというのは当時私たちが主張したところでございますが、現在のように
不足してまいりましたときこそ、脂肪分をもとへ戻した
普通牛乳一本にしてはどうかと思います。
次に、昨年私は流通視察のために欧州へ行ってまいりましたが、各国で
日本のような色のついたものを売っているところはどこもございません。フランスではビタミンの添加すら、医者が子供にビタミンを飲ませる基準が立てられないと言って、ビタミン添加を禁止しております。思い切ったことのできない
日本の役所は、今度技術革新のもとに無菌
牛乳をつくりましたが、それすら理屈をつけて
加工牛乳としていることでもよくおわかりと思います。事ごとに担当局と厚生省の
立場の違うことをたびたび見受けますが、厚生省は一体
国民のために行政をするのか、業者のほうを向いているのか、
理解に苦しむ点が多いのでございます。
もう
一つの問題は、食品衛生法で
普通牛乳の成分規格を脂肪分三%という基準にいたしましたのが
昭和二十五年でございますが、これがためにいまの
消費者は、水っぽい
牛乳という汚名を着せております。この基準をもう少し実際的に合わせて、
加工乳分のその分をこちらに合わせて三・二ぐらいにその基準を上げていただくならば、もっと実質的な
価格引き下げになるということでございます。
このほか農林規格の
生乳取引規格が、一等乳で脂肪率二・八から三・二という取引の基準がございますが、これとても幅がたいへん多うございますし、
農林省の基準と厚生省の基準が、目的は違いますが、品質の向上を妨げているという点がたいへんに見受けられます。現在三%すれすれの
普通牛乳が市販されておりますことは、私が三十九年から四十一年まで三年問続けて、夏場に三回末端の販売
牛乳を買ってまいりまして、東京都の衛生研究所へ持ってまいりまして分析いたしました結果、五十五点中二・九%が一点、三%が二十七点、三・一%が十七点、三・二%が十点、いかに厚生省規格すれすれの線でつくられているかということがおわかりでございましょう。
公取では
値上げの方法につきましていろいろ
調査しているそうでございますが、期待するにはいかにもおぼつかない感じでございます。私はいま方々の聞き込みをしていますが、監視の必要もわからないではありませんが、証拠がつかめないのが
実情ではないかと思いますので、何らか打つ手はないものかということをお考え願いたいと思います。
最後に、先ほど小売り屋さんは生活権云々について力強くおっしゃいましたが、私も長くやっております経験上わからぬわけではございませんが、電話帳を見ましても、十軒も次々と支店を持っているような大きい
乳業者もいますし、最近
牛乳屋さんの前を見ますと、あきびんが山ほど積んであるのを見まして、これだけ
消費者が飲んでいるから
牛乳屋さん保てるのだと私も思いますが、かねてから
牛乳を完全
栄養食としていろいろと取り上げてまいりました関係上、
牛乳におきましては栄養と
価格と安全という三つの角度から
牛乳の供給の
実情をつかまなければなりません。
牛乳を実際に
配達しております住宅公団の団地の人たち三十六
団体の方を集めまして、せんだって
値上げに関して
牛乳会議を開いたのでございますが、
法律で統制のできないいま、いろいろとビラをつくりまして、お手元にお配りした袋の中にございますが、何も知らない
消費者に、「
牛乳の
値上がりをくいとめよう」、「
牛乳店に値下げ交渉をしましょう」、「店まで取りにいけば
配達賃だけ安いのは当然」、「
加工乳は損
普通牛乳に切りかえよう」、「集団購入で安くさせましょう」というように、いろいろと知恵を働かせまして
消費者の啓蒙宣伝をしておりますが、これとても宣伝が行き渡るとも思えません。
おまけ作戦ということで、自由競争になったんだから力強く発言してほしいということを申しますが、何ぶんこれがどのぐらい効果があるかその辺はわかりませんが、私の最後の
お願いとして、小売り業者の方にどうしても聞いてほしいことは、店まで取りに行った
牛乳が
配達された
牛乳よりも値段が高いという不合理は、どうしてもこの際直していただきたいと思います。
配達賃が
人件費の暴騰によりまして高いのは当然でございまして、これから先、家にじいっとしているものの値段と店に買いに行きますものの値段の差ははっきりとつけなければならない時代になりましたのに、それが
現状では、むしろ店に買いに行ったほうが高いのでございます。この際店頭に張り紙をいたしまして、店頭に買いに来た方には
現状、いやそれ以下に据え置きますというようなことをはっきり書いていただけませんでしょうかということを、
乳業メーカーの社長さんにお会いしたときに申してまいったのでございますが、ある社では、それを引き受けましたとおっしゃる方もあるし、ある社では、八割ぐらいまでは引き受けましょうと、
メーカーの宣伝費をもとにしてそれをするようなことも承りましたが、どちらにしても、
消費者にもっともっとPRしなければならないことでございます。
それと、私たちが
牛乳会議をしておりましても、大口で取りながら、その町の
小売り店を経由するあまりに、たとえば十一円五十銭でもらっていた
牛乳が十三円で入っていたというような例が多うございます。要するに、小売り業者が町でそれぞれ組織しておりますだけに、
メーカーにとっては、小売り業者を抜きにして直接その大口のところに持っていくということがなされていないのが多うございます。こういう際には、少しでもパイプを短くするために、直接
メーカーが持っていって安く提供することがなされなければ、ほんとうの
合理化ではないと思います。いろいろと配給改善を控えまして
努力していただかなければなりませんが、
小売り店は過剰なサービスを要求されるあまりコスト引き下げができないのか。先ほどいろいろとおっしゃいましたけれ
ども、あるお客さんは、晩に朝に好きなときに持ってこいというような、ずいぶん過剰サービスを要求するお客もございます。しかし、それを一々引き受けての過剰サービスをした基準コストで
経営をしようとなさるのか、店頭販売等までする、
配達は自分の足でいたしますというような積極的な
消費者を主にしての
経営コストを基準にきめられるのか、この際すべての
物価の高騰のおりから、そういう点を大いにお考え願いたいと思うのでございます。
いろいろと申し上げましたが、
物価対策の実際的な効果があがるということは
国民の刮目しているところでございまして、政治不在の汚名をこの
牛乳で負わないように、この
委員会におきましてもどうぞ
国民的
立場に立って、先頭に立ってPRするところはPRする、つくべきところはつく、
合理化すべきものは
合理化する、国の予算を取らなければならないときには早く取って、そしてほんとうに
価格ばかりを上げて、また来年もこういう結果がくるというようなことのないように、大いに
合理化する面についての解決策を急いでいただきたいと思います。(拍手)