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1967-07-19 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十九日(水曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君 理事 中村 時雄君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       大野 市郎君    鹿野 彦吉君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       小山 長規君    坂田 英一君       坂村 吉正君    田中 正巳君       丹羽 兵助君    野呂 恭一君       藤田 義光君    湊  徹郎君       粟山  秀君    赤路 友藏君       伊賀 定盛君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       島口重次郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    斎藤  実君       中野  明君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         林野庁長官   若林 正武君  委員外出席者         議     員 芳賀  貢君         林野庁林政部長 木戸 四夫君         林野庁林政部森         林組合課長   片山  充君         林野庁指導部長 手束 羔一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月十九日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として栗林  三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九七号)(参議院送付)  学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特  別措置法案芳賀貢君外十二名提出衆法第二  八号)  国有林野活用に関する法律案内閣提出第一  四七号)  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三三号)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  内閣提出森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。草野農林政務次官
  3. 草野一郎平

    草野政府委員 森林病害虫等防除法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  森林病害虫等を駆除し、その蔓延を防止することは、単に森林所有者経営の安定に資するばかりではなく、広く国民経済的な観点から森林資源確保風致景観の保持、国土保全等各般にわたる森林公益上の要請にこたえる上におきまして、きわめて重要なことと考えられます。このため、昭和二十五年に制定された森林病害虫等防除法に基づきまして、森林病害虫等防除推進をはかってまいったのでありますが、現行法の制定後すでに十数年を経過し、その間に森林病害虫等発生状況、その防除状況その他社会的経済的諸条件は、著しい変化を見ているのであります。  すなわち、近年の各種開発事業進展に伴う自然環境の改変に加えて連年の異常気象条件の影響もあり、森林病害虫等被害発生地域は急速に拡大し、またその被害対象枯損老齢木にとどまらず、幼壮齢木等健全木にも及ぶ傾向が見られるのであります。  他方、御承知のとおり、農山村における労働力減少傾向に伴って、個々の森林所有者による防除実施が困難な場合が多くなっているのであります。  これらの事情に対処し、国、地方公共団体森林組合森林所有者が、相互に協力して森林病害虫等防除措置実施体制整備強化することが一そう強く要請されてきているのであります。一方、森林病害虫等防除技術、特に薬剤による防除技術は、著しい進歩を見せており、これらを利用してより経済的で有効な防除の促進をはかることができるようになっております。  このような状況にかんがみまして、最近の実情に即応した森林病害虫等防除の効果的な実施をはかるため、森林病害虫等防除法につき所要改正を行なう必要があると考え、本法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、防除命令内容の拡充であります。  現行法におきましては、農林大臣または都道府県知事は、樹木の伐倒、剥皮、焼却による防除措置を命ずることができることとなっておりますが、これらの措置のほか、樹木を伐倒して薬剤による防除を命ずることができるものとする等薬剤による防除命令範囲拡大することとしております。  第二は、緊急に防除を行なわなければならない場合の命令手続き簡素化であります。  現行法では、森林病害虫等防除命令をするには、その二十日前までに命令内容を公表することとなっておりますが、緊急に森林病害虫等防除を行なわなければならないためその公表を行なういとまがない場合には、あらかじめ公表することなく防除命令をすることができることとしております。  第三は、防除措置実施の徹底であります。  まず、防除命令をした場合におきまして、現行法では森林所有者等が行ないます被害木の伐倒の費用は補償の対象に含まれておりませんが、最近では被害木幼齢木にまで及ぶ等伐採木販売収入によりその伐倒費を回収することができない場合が生じておりますので、その回収できない分の伐倒費についても補償することといたしました。  次に、現行法では、防除命令をした場合におきまして、その受命者が指定された期間内に命ぜられた措置を行なわなかったときは、その者にかわって国、都道府県がその防除措置を行なうことができることとなっておりますが、このほかに、受命者当該期間内に命ぜられた措置を行なっても十分でないときまたは行なう見込みがないときにおいても、受命者にかわってその防除措置を行なうことができることといたしております。  さらに、農林大臣または都道府県知事は、森林病害虫等防除措置を行なう場合において必要があるときは、地方公共団体または森林組合もしくは森林組合連合会にその措置実施に関し必要な業務に協力することを要請することができることといたしております。  なお、これらの改正とあわせ、森林害虫防除員等による検査対象及び検査結果に基づく指示の範囲を拡充する等所要規定整備を行なうことといたしております。  以上が本法律案提案理由及びその主要な内容でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 本名武

    本名委員長 次に、芳賀貢君外十二名提出学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特別措置法案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。芳賀貢君。     —————————————
  5. 芳賀貢

    芳賀議員 ただいま議題となりました学校給食の用に供する牛乳供給等に関する特別措置法案について、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  昭和二十九年に学校給食法が制定され、自来今日まで、全国の大部分義務教育小中学校において牛乳学校給食実施に移され、児童及び生徒の心身の健全な発達と国民食生活改善に大きく貢献してまいったのであります。  しかしながら、他方において、この既往のこの制度のあり方に関し、アメリカの余剰農産物である脱脂粉乳がその主体をなしておりましたために、これが衛生的、栄養的見地から、また一方国内酪農振興観点から世論の強い批判を受け、その結果、四十一年度から計画的に国内産牛乳による学校給食実施に切りかえられることになったのであります。すなわち、四十年、第四十八国会において、酪農振興法改正され、国内産牛乳による学校給食計画的な実施及びその援助措置等を行なうための規定が設けられ、引き続き、この規定に基づいて四十一年四月、四十五年度を最終年次とし、全国義務教育小中学校等の全児童生徒のすべてに対し、国内産牛乳による学校給食を完全に実施するための学校給食供給目標を定めたのであります。  国は、この供給目標に従い、目下牛乳学校給食実施しておりますが、その年次ごと計画は、四十一年度十九万トン(百万石)、四十二年度二十五万トン(百三十万石)、四十三年度三十五万トン(百八十五万石)、四十四年度四十八万トン(二百五十五万石)、最終年次の四十五年度は六十六万トン(三百五十万石)とされており、四十一年度及び四十二年度はおおむねこの計画どおり実行され、あるいは実行の予定となっているのであります。  ところで、以上のように一応計画どおり実施されておりますが、最近においては、生乳生産停滞傾向による供給上の問題や、生乳生産費上昇による生産者価格引き上げ等による父兄負担増高の問題などを招き、今後必ずしも計画どおり実施されるかどうか一まつの危惧を感ずるのであります。なかんずく、父兄負担状況については、国費半額負担実行されず、百八十CC当たり平均供給価格が、四十年度十円八十銭、四十一年度十一円四十七銭、四十二年度十三円弱に対し、国の補助はいずれも五円に据え置かれているのでありまして、父兄負担が連年増大しているのであります。  そこで、日本社会党といたしましては、かかる国内産牛乳による学校給食に対しまして、この際、憲法第二十六条の義務教育費無償の精神にのっとり、かつ、学校給食制度調査会が三十六年八月答申した中において指摘しているミルクの全額無償給与を行なうことの趣旨を尊重し、今後において全額国費をもって実施することとし、さらに、これに必要な牛乳を完全に確保し、あわせてわが国酪農発展に寄与するため、特別の措置を講ずることが必要であると認め、本案提出した次第であります。  なお、これがために、学校給食法改正も必要と考え、別途、同法の一部改正法案提出し、その御審議をお願いしているのであります。  以上が本案提出した趣旨でありますが、そのおもな内容について以下御説明申し上げます。  まず第一に、国は、毎会計年度学校給食の用に供する牛乳買い入れ、公立または私立の義務教育学校設置者無償給付することとしております。  第二に、農林大臣は、毎会計年度当該年度開始前に、文部大臣と協議して、学校給食の用に供する牛乳買い入れ及び給付に関する計画を定めなければならないこととしております。  第三に、学校給食の用に供する牛乳または乳製品買い入れ価格は、毎会計年度当該年度開始前に、畜産振興審議会意見を聞いて、牛乳については、生乳生産者価格処理及び販売に要する標準的な費用を加えて得た額を基準として、農林大臣が定める価格とし、乳製品については、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法において安定指標価格が定められているものにあってはその価格、その他のものにあっては農林大臣が定める価格とすることとしております。  なお、生乳生産者価格については、生産される生乳相当部分が飲用に供される生乳と認められる地域における生乳生産費基礎とし、物価その他の経済事情を参酌し、生乳の再生産確保することを旨として農林大臣が定めることとし、この場合において、生乳生産費に含まれる自家労働の価額は、他の産業に従事する労働者の賃金の額と同一水準のものでなければならないものとしております。  第四に、国は、学校給食の用に供する牛乳買い入れについては、生乳生産者団体からの買い入れを優先的に行なうこととしております。  第五に、国は、予算の範囲内において、生乳生産者団体に対し、学校給食の用に供する牛乳供給円滑化をはかるため、牛乳処理または乳製品の製造に必要な施設の改良、造成または取得に要する経費について、その三分の二を補助することとしております。  第六に、附則において、この法律の施行を昭和四十三年四月一日からとし、そのほか、国が学校給食の用に供する牛乳買い入れる場合には、食糧管理特別会計において処理することとし、さらに、酪農振興法の一部を改正し、学校給食の用に供する牛乳無償給付についての義務づけを新たに設けること等を規定いたしております。  以上が本案提案趣旨及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。      ————◇—————
  6. 本名武

  7. 草野一郎平

    草野政府委員 国有林野活用に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  国有林野は、その面積において、わが国森林面積の約三分の一、国土面積に対しても二割余を占め、国土保全林産物の需給及び価格安定等に大きな役割りを果たすとともに、従来からも、社会経済情勢推移に即応して、地元住民要請に応じた貸し付け、売り払い、部分林共用林野設定等によって地元産業振興地元住民の福祉の向上に寄与してまいったのであります。  しかしながら、近年、わが国の目ざましい経済発展の中で、農山村からの急速な労働力の流出が見られる等、わが国農林業はきわめてきびしい条件のもとに立たされることになり、ここに、農林業の零細な経営規模拡大する等、その構造改善農山地域振興をはかるための施策を一そう強力に推進することが要請されるに至っております。  このような要請にこたえるため、この際国有林野活用を積極的に推進することとし、このため、林業基本法規定趣旨に従い、積極的に行なうべき国有林野活用内容を具体的に示すとともに、これらの活用を行なうにあたっての国の基本的態度を明らかにすること等により、国有林野活用の適正円滑な実施確保をはかることとした次第であります。  以上がこの法律案提案する理由でありますが、次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明いたします。  第一は、農林大臣国有林野管理及び経営事業の適切な運営の確保に必要な考慮を払いつつ積極的に行なうべき国有林野活用につきまして、その活用種類等を明らかにしたことであります。すなわち、その一は、農業構造改善のための国有林野活用、その二は、農業構造改善のために譲渡された土地代替地に供するための国有林野活用、その三は、林業構造改善のための国有林野活用であり、その四は、国有林野の所在する地域住民が共同して行なう部分林または放牧等のための共用林野設定のための国有林野活用、その五は、国有林野の所在する地域における公用、公共用または公益事業の用のための国有林野活用、その六は、山村振興計画に基づく事業のための国有林野活用であります。  第二は、農林大臣は、国有林野活用につきまして、その推進のための方針、適地の選定方法その他活用実施に関する基本的事項を定め、これを公表すべきこととしたことであります。  第三は、農林大臣は、国有林野活用の適正な実施をはかるため、活用の事務をすみやかに行なうとともに、その活用にあたっては、用途を指定し、買い戻しの特約を付す等必要な措置を講ずべきこととしたことであります。  第四は、農林業構造改善のための国有林野活用の円滑な実施をはかるため、そのような国有林野活用として、土地等の売り払いをする場合には、二十五年以内の延納の特約をすることができることとしたことであります。  この法律案提案理由及び主要な内容はおおむね以上のとおりであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  8. 本名武

    本名委員長 以上で各案の趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  9. 本名武

    本名委員長 次に、森林法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森義視君。   〔委員長退席長谷川(四)委員長代理着席
  10. 森義視

    ○森(義)委員 昨日、私が、わが国林業が当面している重要な課題の一つである、需要拡大に伴う国内供給力確保するために必要な労働力をどう確保するのか、こういう問題についてお尋ねいたしましたが、長官の答弁は全く不満足なものであったわけです。  そこで、林業問題全体について、たとえば生産性拡大あるいは生産基盤整備、いろいろと具体的な問題について触れたいことがたくさんあるわけでございますが、審議の日程もこれあり、なおけさほど来の理事会決定等も考えまして、そういう重要な林業をめぐる諸問題に触れておりますと、何日時間をいただいてもなかなか決着がつかないということを考えまして、きょうはいま提案をされております森林法の一部改正内容に主として触れて質疑をしたいと考えます。  そこで、まず第一に、明治三十年に第一次森林法が制定されてから、去る昭和三十七年の改正までの間の中で、特に昭和十四年の大改正と三十七年の改正、このときにおける林野庁当局森林法に対する考え方、この点を、概略の輪郭に触れながら、重点をそこに置いて、長官説明をまず最初にお伺いいたします。
  11. 若林正武

    若林政府委員 昭和十四年の森林法によりまする施業案制度の問題でございますが、この制度は、民有林全般に対しまして営林の監督を強化する手段といたしまして運用されたものでございます。その方法といたしましては、五十町歩以上の森林所有者につきましては単独の施業案をつくらせる、それ以下の者につきましては、それらを構成員といたしまする森林組合に対しまして施業案編成義務を課しまして、その施業の当否を知事が審査してこれを認可し、実行せしめるというふうな制度であったのでございます。  そのねらいとするところは、森林所有者にその定める方針に基づきまして施業案編成させて、行政庁指導監督のもとに共同して自由な伐採を抑制するとともに、造林を勧奨して森林資源維持培養をはからしめることにあったのでございます。この昭和十四年に発足をいたしましたいわゆる森林組合施業案、この事業は、昭和十八年に至りまして、戦争中でもあった関係もございまして、不急事業として中止されるに至ったのでございます。しかし、この事業は終戦とともに再開をされまして、昭和二十二年度からは、五カ年で戦時中に編成をいたしました施業案検討と、公有林施業案検討の二つの事業とともに、施業案編成地区に対しまする施業案実施検討いたしたのでございます。ただいま申し上げましたように、この制度は、編成面積につきましては成果をあげたのでございますが、森林所有者の自発的な意思が十分に反映されて計画が作成されなかったことと、戦中、戦後の社会経済事情の変動があったこと等に基因いたしまして、その実行につきましては十分な成果をあげ得なかったのでございます。  その後、昭和二十六年に森林法の大改正が行なわれたのでございますが、現行森林計画制度は、この二十六年に制定されました森林法によりまして新しくできました森林計画制度というものを基礎にいたしまして、その後におきまする数次の改正を経て今日に至っておるのでございます。  そこで、昭和三十七年度に改正いたしましたねらいその他について申し上げますと、当時のわが国経済発展に即応いたしまして、木材需要というものは伸張し、木材価格というものも一時的な停滞を得まして上昇に転じた。このような当時の事情推移に伴いまして、造林事業対象地奥地化にもかかわりませず、着実に進展をするとともに、伐採許可制度対象となっておる立木についての伐採量というものも、伐採許容限度量というものをかなり下回るようになります等、森林所有者林業経営合理化への指向がうかがえるような状態になったのでございます。  このような当時の林業の動向というものを反映いたしまして、昭和三十五年十月におきまする農林漁業基本問題調査会からの「林業の基本問題と基本対策」の答申にも見られますように、当時の森林計画制度につきましては、その性格行政庁によって作成される上からの制度たるところにある。このような森林計画制度では、近年における林産物需要構造変化林業経営実情に十分即応し得ないのみならず、行政運営上の効率から見ても問題があるという意見が出まして、森林計画制度改善あるいは合理化ということが要請されるに至ったのでございます。このような状況のもとで、昭和三十七年の森林法の一部改正森林計画制度につきましては第二次改正が行なわれたのでございます。  改正内容といたしましては、伐採許可制度につきましては、保安林等必要最小限度のものだけに規制を行なうという措置をとったのでございます。その他の伐採につきましての規制は、事前の届け出制度に改められることになったのでございます。したがいまして、森林計画制度も、従来の伐採許可制度造林義務づけを骨子とするというふうな制度から、性格が大幅に変わってまいったのでございます。都道府県知事が、全国森林計画に即しまして、森林計画別森林についての公益上の要請林業政策方針とを地域の特性を生かして具体化したものとして、この地域森林計画というものを定めまして、これを公表することとなったのでございます。一般の森林につきましての伐採許可制度届け出制への全面移行に伴いまして、従来森林区別に毎年定められておりました森林実施計画というものは、そのときに廃止をされたのでございます。こういうふうな改正によりまして、新たに地域森林計画というものに即しまして森林所有者施業をやるわけでございますが、その過程におきまして施業勧告制度を設けまして、森林計画を順守しない場合には、その是正のために都道府県知事施業改善を促すというふうな勧告をすることといたしたのでございまして、これらによりまして森林計画制度目的達成確保をはかることになったのでございます。  以上が昭和十四年及び三十七年の森林計画制度改正内容でございます。
  12. 森義視

    ○森(義)委員 昭和十四年の民有林に対する施業案を伴う改正については、その後の戦争等状況もあって、いろいろと変革を遂げた。長官のいまの説明については大体了解ができるわけですが、いわゆる現行法に至った三十七年の改正の当時、いま長官説明にもありましたように、農林漁業基本問題調査会並びに中央森林審議会から、上からの計画だけではだめだ、下からの自発的な計画がなければだめだ。特に中央森林審議会からは、個別経営計画の作成を要請する答申が出されておるわけです。ところが、三十七年の法改正におけるところの当時の林野庁考え方は、いわゆる森林計画なるものは、国の資源の保続培養、これを中心としたものの考え方公益的なものの考え方に立脚をしている。個人個別経営計画というものは、何といっても個人林業所得向上をねらいとするものである、そういう公益的な森林計画考え方と、個人個別経営計画なるものの企業利潤中心に考える考え方とは異質のものであるから、これを法制化することはむずかしい、法律の中に明示することは困難である、こういう主張をして、当時のいわゆる中央森林審議会答申なり農林漁業基本問題調査会答申に対して、林野庁はこれをけって、あの三十七年の法改正になった、こういうふうに私どもは資料の中で拝見をしているわけです。そういうふうに、いわゆる森林計画なるものは、一貫して資源の保続培養、それに必要な造林林道整備、さらには伐木の制限、そういうことに重点を置き、いわゆる公益的な森林が持つ使命、公益的任務をそのときの経済情勢に対応しつつどう遂行していくか、こういう点に重点が置かれておる、こういうふうに林野庁も考え、われわれもそういうふうに理解しておる。ところが、それを遂行する過程の中で、結局個々の林業家がその全国森林計画並びに地域森林計画にどうしても乗ってこない。こういう状態の中で、その計画自体が遂行が困難になり、その計画自体が絵にかいたもちになる、こういうことから、今回のいわゆる個別経営計画施業計画なるものができた、こういうふうに理解しているわけでございます。三十七年当時の委員会におけるところの審議の中でも、個別経営計画なるものの法制化をこの答申を受けて強く主張されておったのですが、それをけった理由、そして今回それを出してきた理由、そこらあたりの変化について、長官のほうからお答えをいただきたいと思います。
  13. 若林正武

    若林政府委員 先ほども申し上げましたように、昭和三十七年の森林法の一部改正によりまして、国は森林計画実行確保いたしますために、森林施業に関します指導、助言の充実をはかりますほか、個別の森林所有者計画施業を促進する必要性ということにつきましては当時におきましても認めておったのでございまして、指導、普及の事業の一環といたしまして、個別経営計画制度昭和三十七年から実施をいたしてまいったのでございます。  この個別経営計画性格でございますが、これは当然森林所有者の私経済条件を重視するというものであるわけでございます。また、その当時といたしましては、林業経営の諸条件というものも恵まれた環境にあったわけでございます。こういったこと等のために、個別経営計画制度法律規定をするというところまでは当時至らなかった、またその必要がなかったということでございます。その後、御承知のような林業の動向に徴しまして、森林所有者がやはり計画的かつ合理的な施業を行なうように誘導いたす必要性が痛感されたのでございます。したがいまして、現行指導、助言あるいは勧告というふうなことだけでは必ずしも十分でない。そこで、現行のただいま申し上げましたような制度にあわせまして、森林施業計画の新しい制度化をはかりまして、森林計画の目標達成をはかることにいたしたのでございます。  さらに、もう少し具体的に、この間の、なぜ施業計画をつくるのかということについて申し上げますと、全国森林計画及び地域森林計画計画事項との対応の問題でございますが、地域森林計画計画事項というものを大別して申し上げますと、まず第一は、森林所有者が順守すべきものとしての特定林分におきまする施業方法等の事項が一つございます。それから第二といたしまして、順守することが望ましいものとしての事項、たとえて申し上げますと、標準伐期齢であるとか、あるいは植栽樹種等でございます。それから第三点といたしましては、地域として達成をはかるものとしての、たとえば伐採木材積であるとか、あるいは造林面積、こういったものがあるわけでございまして、ただいま申し上げましたように、大別いたしますと三つに分かれるわけでございます。この第一の順守すべき事項に関しては、従前からも指導あるいは助言、さらに必要があります場合には施業勧告というふうなこと等によりまして、おおむね所期の目的を達してまいったのでございますが、第二及び第三の事項につきましては、近年におきまする林業を取り巻くきびしい条件に基因をいたしまして、必ずしも十分な状態とは言いがたいものがあったのでございます。その結果、全国森林計画でいろいろ計画をいたしておりまする計画量というものに対しましても、必ずしも実行量というものが十分に達成がはかられていない、こういうふうな情勢があったわけでございます。  そこで、第二番に申し上げました標準伐期齢あるいは植栽樹種、こういった問題との関連になるわけでございますが、今回森林計画制度改正いたしまして、新しく森林施業計画というものを導入いたすわけでございますが、その第一には、計画的に、かつ適期の伐採確保するという観点からいたしまして、適正伐期の伐採による生産量の増大をはかる、こういうことによりまして林業の総生産の増大ということがはかられていくわけでございます。  それから造林の問題でございますが、計画的な造林推進をはかる。これは当然林業の総生産の増大を達成するためには、この伐採とのうらはらにおきまして造林の問題が出てくるわけでございますが、樹種または林相の改良というものを計画的にいたしまして、生産力の高い、かつ適正な齢級配置がはかれるような森林の造成を推進することによりまして、森林資源の保続をはかりながら、今後の森林生産力の一そうの増強をはかるという必要があるわけでございます。こういったねらいをもちまして、またこういうような森林施業計画の導入をいたしまして実行確保いたすことによりまして、地域森林計画なりあるいは全国森林計画の達成も確保できるようになる、かように私どもは考えておるのでございます。
  14. 森義視

    ○森(義)委員 全国森林計画あるいは地域森林計画の動脈をつくりましても、そこに血液を送っていくところの個人経営者の施業計画というものがこれに乗ってこなければ、その動脈が動かないということは当然のことです。それに対して今日までは政府の助言なり指導なり勧奨なり、そういう形でこの計画に乗ってくるような努力をしてこられたけれども、一向に乗ってこない。そういうことから今回こういう法案が提出されるに至った、こういう経緯の説明が概略として私はあったと思うのです。  そこで、世界各国の森林計画、どこの国も、こういう長期にわたる公益的な役目をになっておる林業の問題を扱っておる国々は、どういう態度で個人に対する施業計画については考え方を持ってきておるのか。私どもの資料では、全部強制されておる国はかなりあるわけです。西ドイツなりフランスなりイタリアなり。強制されなくとも、個人施業計画を出して、そしてそれに入っておらない者に対しては公的干渉をきびしくやっておる国がかなり多いわけなんです。ところが、三十七年の改正の当時、そういう問題が、林野庁考え方では、当然世界的なそういう方向に順応せずに、ひとり日本の林野庁だけが個別経営計画なり施業計画なりというものに対しての位置づけをしてこなかった、私はそこに何らかの問題点があったと思うわけです。政府が、十分地域森林計画にのっとって施業が行なわれるように指導監督してやっていけばいけるという自信が、自信過剰と申しますか、それがあったのかもしれませんが、現実にそうはならなかった、こういうことなんですね。しかし、そのことは、世界各国の林業事情を見ても明らかな事実なんです。それをあえてなお、三十七年改正の中で、強く委員会の審議の中でも要請されておったにもかかわらず、また、先ほども申しましたような中央森林審議会答申なりあるいは基本問題調査会の答申なりで強く要請されておったにかかわらず、あえてそれを入れなかった理由というものについては、まだいまの長官の答弁では私は不十分だと思うわけです。  そこで、その後林業基本法ができたわけです。御承知のように、林業基本法は、経済の合理性を追求する立場に立った、新しい視野に立った法律です。この法律と、いわゆる資源保全公益的な見地に立っておる今日までの森林法の精神と、これとの法域の限界というものをどういうふうに考えておられるのか。そして今回森林法の一部改正によって、経済合理性をある程度制限する個別施業計画を勧奨していく、こういう方向に法案を改正をしていく、そういう考え方と、いわゆる下からの盛り上がりによる林業生産性向上生産意欲の拡大、そういう方向をねらいとする林業基本法との関係、この問題について、長官から、先ほどの三十七年改正に、世界林業の動向と合わない日本の改正を行なって、今回になってこういう問題について入らざるを得なくなった経緯と、いわゆる林業基本法ができた今時点におけるこの問題の考え方、もっと端的に申し上げますならば、林業基本法の精神からいうならば、こういうものは上からの押えつけは無理なんです。林業基本法の精神からいうならば、個々の林業経営者がそれぞれの生産意欲を向上するような施策を強力に講じていって、地域森林計画全国森林計画にあたたかい血を送り込むような、清らかな血をどんどん送り込むような、そういう方向の指導のほうが、林業基本法の精神からいうならば出てくるはずです。ところが、林業基本法の精神とは、基本法が出てきてから逆行するような、森林法公益的な精神をもって、今度のこの一部改正を出そうとしているわけです。その辺のいきさつについてはどうお考えですか。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  15. 若林正武

    若林政府委員 この森林施業計画を作成をいたす場合に、義務づけてやったらどうかというお話があったわけでございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、この森林計画制度の沿革、さらに社会経済の基調等から見て、かつまた行政運営上の効率というふうな点から見ましても、問題が多いというふうに考えておるわけでございます。むしろ林業基本法の精神に基づきまして、産業としての林業をになっております。またになうべき個々の森林所有者というものが、みずから進んで計画的な施業実施するように誘導したほうが実際的でありますので、森林施業計画というものは申請によったほうが妥当であるというふうな考え方で、義務づけということは考えておらないのでございます。そういう点での林業基本法との結びつき、さらにまた、御承知のように、この森林施業計画制度自体が、適期に伐採をやる、かつまた、樹種、林相の改良等につきましては、これまた計画的に実行していくというふうなことによりまして、森林生産の保続及び森林生産力の増進をはかるために必要な計画施業というものを要請いたしておるのでございまして、森林施業計画自体は長期の観点から見ますと、本来的に個々の森林経営の目標とは矛盾しないというふうに私どもは考えておるのでございます。しかしながら、短期的には樹種、林相の改良あるいは伐採等につきまして、それぞれの施業実施につきまして一定の制約を受けるということによりまして、個々の経営というものにとりましては必ずしも最大利益というものとは合致しない場合も起こり得るかと思うのでございます。こういった点は十分に考慮いたしまして、森林施業計画に従って施業をいたします場合には、租税その他の面におきまして優遇措置というものを講じてまいることにいたしておるのでございます。ただいま申し上げましたように、林業基本法との関連におきましては、この森林施業計画というものをつくること自体が、やはり林業基本法趣旨にも合うし、地域森林計画あるいは全国森林計画との関係におきましても、この究極のねらいといたしておるのは、やはり林業基本法でうたっております政策目標を達成する、これはそのための計画でございます。したがいまして、両者はそういったうらはらの関係がございまして、私どもは、この森林施業計画制度が導入されることによりまして、林業基本法の政策目標も達成できるし、かつまた、森林法森林計画というものも達成できるというふうに考えておるのでございます。
  16. 森義視

    ○森(義)委員 私の質問の要点にちょっといまの御答弁は触れてないわけですが、森林法の精神からいうならば、私は、個別施業計画というものをむしろ強制的に出さしてもいい。ところが、そのときには、そうすべきだといういろいろな答申があったにもかかわらず、それを排除しながら、今度新しい林業基本法ができてきて、いわゆる産業の合理性を追求するという目的が出てきた。この林業基本法の精神ができてきてから後に、逆にさかのぼって森林法の精神に基づいたこういう個別施業計画を出さそうとする。ここらがどうも一貫していない。森林法の精神からいうならば、当然これは個別施業計画を出さす、むしろそれを強制する、これくらいのことがあって、初めていわゆる森林法の精神が具体的に生かされてくるわけです。ところが、その当時においては、三十七年改正にはそのことに触れられずに、今度新しい林業基本法が出てきた。林業というものが産業的見地でとらまえられ、経済的合理性の追求という異なった——異なったといえば語弊がありますが、新しい精神の上に立法化されておる。その後においてこの問題がさかのぼって出てきたという経緯はおかしいんじゃないか、こういうことを私は申し上げておるわけです。だから、今度の森林法の一部改正は、どの精神、いわゆる森林法の精神にのっとって改正するのか、あるいは林業基本法の精神を加味して改正するのか、そこらの問題がはっきりしていないわけだ。その点をいまお尋ねをしておるわけですが、どうもその点については、長官のいまの答弁では不十分だと思いますので、いま一度はっきりとお答えいただきたい。
  17. 若林正武

    若林政府委員 森林施業計画は、森林資源政策的な見地と、それから国民経済的な見地から、公的なそういった両方の面からの要請というものを受けておる性格のものでもございます。したがいまして、森林法を受けまして施業計画制度というものを考えておるわけでございますが、同時に、この林業基本法の精神というものも加味いたしまして私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、森林法改正の中で施業計画制度というものが導入されるわけでございますが、基本法との両方のいわば橋渡しをやるような役目を持っておるというふうに御理解願いたいと思います。
  18. 森義視

    ○森(義)委員 わかりました。それでは、長官のいまの答弁から、これを強制にせずに任意制にしたということが、基本法の精神を加味したのだ、本来は森林法の精神からできているのだけれども、任意制にしたところに基本法の精神を加味しておるんだ、こういうふうに理解していいんですか。
  19. 若林正武

    若林政府委員 森林法によりまする全国森林計画あるいは地域森林計画、さらに森林施業計画というものを考えておるわけでございますが、これらはいずれも、林業基本法に第十条の第一項の基本計画及び長期の見通しというものがございますが、これに即しまして全国森林計画というものが策定されるわけでございます。さらにそれに基づいて地域森林計画ができ、その地域森林計画に即しまして森林施業計画というものが新しく導入をされることになるわけでございまして、そういった面で林業基本法森林法との結びつきがあるということでございます。
  20. 森義視

    ○森(義)委員 まだはっきりいたしませんが、大臣が時間がないようでございますので、大臣に対するお尋ねをしたいわけですが、実は御質問をする前に、一言大臣に苦言を呈し、要望しておきたいわけです。  昨日、本会議場において、わが党の伊賀議員から、白書並びに四十二年度の林業施策に対する質問がございました。そのときに、私たちは、農林大臣として何か新鮮味を帯びた御答弁をいただけるのではないかという期待を持って、耳をそばだて、目を見開いて聞いておったわけです。たくさんな答弁の原稿を持ってこられました。したがって、微に入り細にわたる大臣の御所見を聞けるものと実は期待をいたしておりましたが、大臣はあの原稿を三枚ぱっとめくって一つ、三枚めくって一つ、また三枚めくって一つ、こういう答弁をしておられる。見ていると実に不愉快なんです。どこに担当大臣としての答弁の熱意がうかがわれるか。むしろ佐藤総理のほうが、林業問題について情熱を持った答弁をしておられる、私はそう受け取りました。おそらくあの答弁は実に不満足であったと思うわけです。だから、今後簡単に答弁するのだったら、ああいう原稿をたくさん書いてもらわずに、その原稿の中から自分のわかった答弁をする原稿だけ持って出てください。   〔委員長退席、森田委員長代理着席〕 おそらく大臣は林業問題についてはそう詳しくないので、大臣に落ち度があったらいかぬと思って、林野庁では実に詳しい答弁資料をつくったと思うわけです。その答弁資料をあの壇上で三枚くらいめくって一つ、四枚くらいめくって一つ答弁されたのでは、書いたところの林野庁の役人も残念だろうと思いますし、聞いておる私たちもこれでは農林大臣にわれわれが期待する答弁というふうに受け取れないわけです。だから、今後ひとつ自分で答弁する要点だけを持ってあの壇上へ出てもらうように、これは要望申し上げ、苦言を呈しておくわけです。  そこで、大臣にせっかく御出席をいただいておりますので、お尋ねをするわけですが、大臣も御承知のように、わが国の林野面積というのは国土の六四%、スウェーデンに次ぐ世界第二の森林国といわれております。ところが、最近の需要拡大に伴って国内材でこれを供給することができず、外材がどんどんとふえていって、今日すでに三〇%外材に依存しなくちゃならない。昨日、大臣は本会議場で、外材はあくまでも国内材の供給の不足分の補完的な役割りを果たす、こういうふうな御答弁でございました。補完的な役割りということならば、わが国国内材の供給計画というものがはっきりとできて、その中で、これだけ足らないからこれだけ補完的に外材を入れるんだ、これだけは国内材で確保するから、これだけ足らない分を外材を入れるということが明確にされておらなければならないわけです。ところが、いまの外材の入り方は、そういうふうな補完的なあれじゃなくて、どんどんと野方図に無計画に入っておるわけです。こういう状態で、どんどんと外材を入れる港湾設備ができ、外材を取り扱うところの商社の専用船がつくられ、そこにばく大な投資が行なわれていって、そして日本の製材業者がどんどんと外材を対象にして山元工場から臨海工場へ移りつつある。いままで山元にあった製材工場がどんどんと外材を対象にして海岸に移っているわけです。こういう体制がどんどんと整備されていっておる。一方国内の自給力増大の諸施策というものは一向に進まない。こういう状態が日本の林業の現状であるわけでございますが、日本の資源のない、たとえば石油だとか、鉄鉱石だとか、羊毛だとか、綿花だとか、こういうものを外国から輸入して、これを加工して輸出をするというならば、これは産業として当然あり得ることです。ところが、世界第二の林業国である日本が、そういう形で外材の輸入がどんどんと拡大をされていき、国内需要拡大に伴う自給率の増大が遅々として進まない、こういう状態である現状に対して、新しく農林大臣になられた倉石さんは、このような日本の林業の実態を抜本的にひとつ前向きの姿勢で解決する方法をお持ちかどうか。私はくろうとではなかなかできない問題だと思うわけです。むしろしろうとであるところの倉石農林大臣であってこそ、いまの日本のあの林業問題を解決する何らかのめどをつかめるのじゃないか、こういう期待を込めておるわけですが、ひとつその点についての大臣の所信のほど、決意のほどを承りたいと思います。
  21. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 きのうの本会議のお話がございましたが、私は十四項目ほどございましたけれども、その中で、たとえば保険の関係などは労働、厚生両大臣が呼ばれておりますし、私より彼らのほうが専門でありますから、その答弁がいいと思いましたし、それから総理も丁寧に答えられた向きもありましたので、そういうところをつまんで飛ばした。別に他意あったわけでもありませんし、しろうとでありますから、どうぞ御了承をお願いいたします。  それから、ただいまのお話、私は率直に申しまして、需要がふえてまいりますわりあいにその需要に見合うだけの供給ができないということにつきましては、決して農林省はこれを否定いたすわけではございません。そこで、林野庁といたしましては、全力をあげて四十二年度予算にもそういう希望で予算の要求をいたしましたが、まずもって林道の開発その他増産のできる施策についての足りないところをひとつこの際大いに補って増産をしなければなるまいということで、造林計画または林道の計画等にことしも力を入れておりますが、さらにそういう面で力を入れて増産対策をしなければならない。同時に、造林については、いま御審議を願っておる法律案趣旨にもございますように、これは民間の造林も政府の援助によって計画を進めて、できるだけ需要を満たすようにしなければならぬ、こういう考えでありますが、外材につきましても、よく御存じだと思いますが、たとえばパルプにいたしましても、アラスカはもはやわがほうに輸出をすることについて非常に渋ってきております。建築材にしても、たとえばヒノキをとりましても、いまのように家を建てる、りっぱな座敷をつくると、すぐヒノキ材を要望しますけれども、ヒノキの供給はそう潤沢ではありません。これを補おうとする。台湾は出そうといたしません。最近またフィリピンから政府の人が来て、彼らも話しておりますが、ラワンはそう供給潤沢ではありません。残されているのは沿海州、ああいう方面の外材はまだ見込みがあるでありましょうけれども、やはりこれを受け入れるためには港の設備からまずやらなければならぬ。わが国木材需要につきましては、その需要が伸びる、やはりその供給に追いつくだけの生産はなかなか国内産だけではもちろん困難でありますが、外材といえどもそう楽に入る計画を立てることは私は危険だと思います。したがって、全体の国内生産について需要をまかなうように努力をする、その補完的に先ほどお話のありましたように外材を充てるわけでございますが、それにしても私どもはやはり国内産生産に力を入れなければならぬ、そういう角度で林業の政策を進めてまいる、こういうのが一応われわれのたてまえであります。
  22. 森義視

    ○森(義)委員 過日三木外務大臣が、シベリア開発に協力する代償としてソ連材を大量に買い入れる、こういうことを新聞で発表しておられましたが、いわゆる外材の問題について、政府自身が、特に農林省自身が一定の定見を持っておるのかどうか。私、先ほどちょっと触れましたように、外材を中心にして日本の製材工場が臨海工場に移り  つつある。わがほうの生産体制が整ったときには、すでにそういう生産工場が海岸に出てしまっておる、こういうアンバラが生まれてくる危険性が今日われわれの非常に強く感じておる実態であります。それに、シベリア開発に協力してソ連材をその代償として入れるのだ、こういう外務大臣の所見でございますけれども、農林大臣はその問題についてどうお考えですか。
  23. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大体三分の一の外材を頭に描きましたときに、やはり先ほど申しましたような事情で、私どもは、沿海州方面の外材というものにはある程度着目しなければならないのではないか。そのためには、いま申し上げましたように、港の設備もまだ不十分である。したがって、私どもがいま林野庁木材需要の動向を見ておりますと、いま三百万立方メートルで、これがさらに倍加される程度のものが外材として入ってきても、これからの需要の動向にはバランスがとれるのではないか、したがって、沿海州の外材について、これをわが国に入れるということについて、私は一向差しつかえないのではないか、このように見ております。
  24. 森義視

    ○森(義)委員 需要拡大をする、ところが、国内材がこれに伴わない、したがって、外材を入れても木材価格全体には何ら影響を来たさないのじゃないか、そういう見地からいま大臣は御答弁をしておられるわけです。しかし、本会議における答弁は、あくまでも外材は補完的な立場でという明確な答弁をしておられるわけです。そうすると、かりに沿海州の外材を入れるとするならば、わがほうの需要とそれに対する国内材の供給計画というものがあって、そしてその足らないものを入れるということが前提にならなければ、私はそう簡単に問題の解決はできないのじゃないかと思うわけであります。現に各商社が船会社と契約をして、どんどんと外材専用船をつくっている。これらの問題がやはり経済的合理性を追求する立場から、どうしても回転率というものを継続をしていく。そうなってくると、これは需要拡大に伴う国内材のこれに対する生産がついていかない、そういう中で、外材が商社を中心とする役割り、果たす地位というものがますます大きくなっていく。こういう点において、通産省と農林省との間の、これからの日本の木材需要拡大に伴う国内材と外材とのそれぞれの持ち分、それぞれの果たす役割りというものについての意思統一ができておるのかどうか。農林省のほうは何でもかんでも年限の非常に長い、のんびりしたものの考え方をしておる。ところが、通産省は国際商売で生き馬の目を抜く機敏性を持っておる。そういう通産省のこれから入れてくる外材対策と、農林省のこれから国内材の生産を増強していく対策と、しかも外材を補完的に考えておる立場との調整というものが、どういう段階でどういうように行なわれておるのか、この点について大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  25. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私が申し上げております外材は補完的に用いるのだという趣旨は、ちっとも変わっておらないわけであります。  そこで、大体これから先行きどんなような需給の関係に立つか、その中において外材がどういう程度の役割りを占めるか、およその見当をつけております。あとで林野庁長官から申し上げますが、いまの外材輸入につきましては、常時通産省と緊密な連携をいたしまして、そういうことについての政策上の考え方は一致いたしております。
  26. 森義視

    ○森(義)委員 外材の輸入の問題について、これほど外材がたくさん入ってくるという段階の中では、私は林野庁の中に経済部を置く必要があると思う。日本の需要木材の三割も外国木材に依存しなくちゃならない。そうすると、外国木材と日本木材のこれからの競争もいろいろ出てくる。こういう状態の中で、いままでのように国土保全的な、資源保続培養的な、そういう見地に立った林野庁の役人の頭では、私はこの問題の処理に当たるには適当でないと思うわけであります。したがって、林業基本法ができて、日本の林業産業として、また経済的な合理性を追求するという立場で、これから林業を見ていく場合に、林野庁の中にそれを担当する経済部が置かれておらないということについては、私は、通産省との話し合いは対等の話にならないと思うのです。したがって、林野庁の中にこれからの流通機構の問題、外材の問題、日本の木材価格の問題、そういう問題を考えて、それを取り扱う経済部を設置する意思があるかないか、これは大臣からお答え願いたい。   〔森田委員長代理退席、高見委員長代理着席
  27. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、林野庁には事務系統の者と技術系統の者とがおります。いまお話しのように、林野庁のただいまの運営が必ずしも国土保全森林の育成というふうなことばかりではございませんで、それはいろいろ状況に応じて部内においても検討しておるわけでありますが、農林省全体として、御存じのように、非常に国際的な問題が多い役所であります。したがって、いま農林行政を時代に即応してやってまいるためには、国際関係についてどのように対処すべきであるか、そういう方向のもとに機構の改革についていろいろ検討いたしておるわけであります。同時に、そういう中には御指摘のような点も加味をいたしまして検討してまいりたいと思っております。
  28. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、林業問題については大臣そう詳しくないので、これはこまかいことをお尋ねしようと思いませんが、大臣は労働問題については非常に詳しいベテランであります。自民党の中で労働問題といったら倉石だ、こう第一に数えられる人です。そこで、林業問題に関連をして、労働問題について大臣に聞きたいわけですが、大臣は先ほど、当面何といっても日本の需要拡大に対応して生産拡大していかなければならない、このことをお答えになりました。生産拡大をするために必要な生産基盤整備、いわゆる林道の問題やあるいは造林の問題、機械化の問題、いろいろおっしゃいました。しかし、それを稼働さすものは労働力であります。ところが、御承知のように、林業労働力というものは年々流出をいたしております。農村の都会に対する流出よりももっとスピードは早いし、量も大量であります。このような形で林業労働力がどんどん都市へ流出をしている。そして白書にありますとおりに、平均年齢がどんどん高まり、質的には低下を来たしておる、こういう状態であります。そういう状態の中で、いわゆる生産性を高めるための生産基盤整備にも、あるいは生産そのものにも、必要な労働力確保をどのようにお考えになっておられるか、いま日本の林業労働者の中で特に民有林労働者は社会保障では労災保険ただ一本であります。失業保険も健康保険も適用されておりません。しかも労働災害が頻発しておる業種の筆頭にあげられておる業種であります。しかも、天候に左右され、雪が降れば山に働けない、雨が降れば働けない、一年を通じて大体百五十日から百七十日くらいしか働けない。その働けない問の副業というものは、山村でありますから、近くに何もない。こういう状態の中で林業労働力が減少していくのは当然だと大臣もお考えだと思います。そこで、日本の林業が当面しておる生産拡大の最大のにない手である労働力をどう確保していくかということについて、昨日私は長官にいろいろとお尋ねいたしました。しかし、長官のほうからは、確たる御回答を得ることが残念ながらできませんでした。そこで、大臣は労働問題のベテランでありますので、民有林の、いわゆる社会保障から全く放任をされ、危険な産業に働き、文化的にもあるいは教育的にも、いろいろな面からも、格差の一番最低辺に置かれておる林業労働者をどう確保するかということについて、大臣にこの際労働問題の権威者として御答弁を願って、そのことが着々実現されることによって、私は日本の林業生産の基盤ができると思うのです。林道一つつくるにしても、これは労働力が必要であります。撫育から伐採すべて労働力にたよらなければならない産業林業であります。それだけに、労働力がどう確保されるかということが、将来の日本の林業拡大する需要国内材の供給で満たされるかどうかのかぎを握っている。そういう重要な労働問題について、大臣はかつて労働大臣をしておられたときに、この林業労働者の問題についてお考えになったことありますか。いまこそ、農林大臣という立場に立って、今度は、もし考えておられなかったとするならば、新しい視野で、この問題の解決について大臣は積極的に取り組んでいただきたいと思うわけです。その点についての大臣のお考え方と取り組み方についての具体的なものがあるならば、大臣の決意のほどをお聞かせ願いたい。
  29. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 林業だけでありませんで、全体の一般農山村の労働力が流出すること、私はしばしば申しておりますように、そのこと自体は、国全体の経済発展のためには決して悲しむべきことではないわけであります。そこで、労働力を必要とする面から抜けられるということについては、抜けられていくほうはたいへんこれは問題がある。しかし、それを抜いて補充していかなければ一定の生産性をあげることができない面が他方面には存在いたしておる。そこで、私どもとしては、その抜かれるほうの立場に立って考えなければならぬ、こういうわりの悪い位置に私どもは存在しているわけであります。  そこで、これを補うためには、やはり経営を近代化する、あるいは機械力をできるだけ用いる。森さん御存じのように、私はいまここに数字で御説明申し上げる資料を持っておりませんが、たとえばアメリカのきこりの一人の生産量と日本の生産量とでは、数字を見ておって間違いではないかと思うほど、わがほうの生産力は低いわけであります。なぜそういうふうになるか。やはり御存じのように、非常な機械力を用いている。私どもアメリカに行ってそういうものを見せられて、同じような山地帯でありますから、ほかの国でも適用のできないはずはない。そこで、できるだけ私どもは、そういうことによって生産力をあげるということは必要だと思う。こういう点については、山を持っておる国有林の管理者もそうでありますし、民間の山持ちもやはりそういうことについては研究すべきではないかと思う。そうしてその機械力を用いる一人の人については、もっと生産性があがるのでありますから、待遇の改善は当然できるはずであります。アメリカの一人のきこりの労働賃金と日本の賃金とは、これも目を疑うほどの所得の格差がございます。われわれはそういうことについて根本的に再検討する必要はありますが、なかなかそこまですぐにはまいりません。  そこで、私どもといたしましては、現在すぐ目の前のもとで何を考えるべきか。もちろん、これはいま御指摘のように、私の選挙区などは半分以上山でありますが、ここの山で働いておる人々に、山を離れてくれるな、まずひとつ生産をあげてくれと言うには、第一には経済的な保障が必要であります。ところが、これは一般の農業でもそうでありますが、生産性が低いために所得はどうしても低い。しかも、その比べて所得の高い職場がじき目の前にあるわけでありますから、どうしてもそのほうにあこがれる。私どもとしては、できるだけその所得の分配について多くできるようにしてやらなければなりませんが、それは山の経営それ自体にもうすでに他産業に比べて低いところがあるので、これはやむを得ないとしても、その働いている従業員に対してできるだけ魅力を持たせるためには、いろいろな施策が必要でありましよう。  いま保険のお話がありました。保険につきましては、昨日の本会議でも厚生大臣も労働大臣もお答えいたしましたが、わが国の保険は、ああいう一人が日雇いとして出ておるときに、まだ十分な保険はヨーロッパの諸国のようにはいっておりません。これはやはりできるだけ早く充実すべきものでありますが、山に働いておる人々の所得をどのようにしてふやすかということは、山の経営それ自体の問題でありますから、私どもは、その山の経営ができるだけ所得を増強できるような方向にひとつ持っていってやらなければならぬ。  今度御審議を願っております施業計画などでも、やはり究極は、そういうことで生産をあげていき、その計画に参画してもらうためには、先ほど林野庁長官も申し上げましたが、やはり税その他の面でできるだけめんどう見てあげることによって生産を増強していこう、こういう趣旨でありますので、すぐに効果を発揮するということはなかなかむずかしい問題でもありますけれども、大体いま申し上げましたようなことを総合的にやってまいりたい。基本的には、やはり近代化、機械化というものにわが国も十分に追いつくように早くすべきではないか、こう思っております。
  30. 森義視

    ○森(義)委員 今度出されている法律生産性をあげていく役割りをになうんだ、こういう大臣のいまの答弁ですが、これはそうじゃないですよ。この問題はあとで触れますが、これは供給力をどう正確につかむかということが主点であって、生産性をあげるためのものじゃないです。そのもとは触れませんが、大臣はいまこういうことをおっしゃいました。農山村から労働力が都市へ流れ出していくということは、わが国全体の経済発展の見地から見ればたいへんうれしいことだ、反面、流出されるほうの側に立てばたいへん苦しいことだ。しかし、私は、農林大臣という立場から、そういうものの言い方は、かりに心でそう考えておられても、あまり言われないほうがいいと思うのです。まあ気持ちはわかりますよ。気持ちはわかりますけれども、もっと中心になって考えなくちゃならないのは、いわゆる格差の解消というのが今日国の政治の重点施策です。そういう観点から問題を考えていかなければならないのに、片方に労働力、人間が集中するということは、どんどん格差が拡大していくから、片方に集中するのです。そういうものをそのままにしておくことが日本の経済発展の見地から見て頼もしいというふうなものの言い分は、国の重点施策に対してはあまり大臣から言われないほうがいいんじゃないか、こう思います。  そこで、大臣は、機械力によって日本の労働者のいわゆる不足分を補っていく、あるいは機械力によって生産性を高めることによって労働者の生活の向上をはかっていく、これを米国の例と比較していまお述べになりました。それでは大臣は、日本の林業生産について、機械力のこれからの発展について、活用についてどのような計画を持っておられるのか。いわゆる平地林業における機械力と、日本の山岳林業における機械力という問題について、どういうふうにお考えになっておるのか。大臣はおそらくアメリカで使っておるマッカラーのあのチェーンソーを使われた経験はないと思います。国有林の中で使っておる日本の小さなラビットとマッカラーを比較してみますと、これはもうたいへんなものです。あの傾斜三十度、三十五度の山岳林業の中にあのチェーンソーを実際使ってみて、労働者が肉体的に耐え得るかどうか、たいへん重労働であります。しかも傾斜地でありますから危険性を伴います。平地林業における機械力を想定して、日本の林業に直ちに機械力が導入をされ、そのことによって日本の生産性が高めていかれるというふうなしろうと的な考え方で、日本の労働力の問題が機械力の導入によって補えるような考え方を持っておられるとするならば、これは認識不足です。実際日本に入っておる機械力というものが、確かに、集材機あるいは架線設備の問題について、いろいろな設備については従来の木馬方式とはだいぶ変わってまいりました。その点においては大きな前進であります。しかし、植林から撫育、栽採に至る労働力の一番重要な作業過程の中で、日本の林業に機械力がどれだけ入り得るのか、この点について、大臣は長野県ですから、山はたくさんありますので御存じだと思いますが、政府が出しておる統計資料によりますと、チェーンソーが何ぼふえた、集材機がどのくらいふえた、こういうふうに書いてあります。しかし、電気のついていないところに電気冷蔵庫を何ぼ持ってきたってそれは価値がないわけです。集材機が何ぼふえましても、チェーンソーが何ぼふえましても、それが実際に生産性に役立つ立地条件でなければ効力を発揮いたしません。生産性向上には役立たないわけです。大臣は、日本の山岳林業における機械化についてどのような構想をお持ちであり、それに対する計画を現に考えておられるならば、日本林業の機械化についての抱負があるならば、まずそれをお聞かせ願いたいと思います。
  31. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、そういう面ではまだ全くのしろうとでありますが、さっき機械力の話をいたしましのは、一例を申し上げただけでありますが、急傾斜地のようなところでやっております。御存じのようにたとえばドイツでもそうであります。こういうものはやはり研究をする価値があるではないか。ことにわが国は、昭和八十年になれば、遺憾ながら今日の情勢でいけば人口は低減してまいります。何としても経済の国際競争力を維持していくためには、われわれはやはり無から有を生ずる勉強をしなければならぬのであります。そういうことから考えてみますと、今日ただいま、日本のあらゆる社会において労働力を非常にむだに使っているのではないか。これは将来必ずだれもうなずかれることだと私は思うのです。したがって、そういう面では、いま宇宙開発が行なわれておる時代でありますから、もっともっと労働力をセーブすることについては勉強すべきではないかという例で、いまのアメリカの機械力、私は自分で見てびっくりいたしたものでありますから、そういうことを申し上げました。しかし、ごらんのとおり、森さんもごらんになったでありましょうが、たとえば一つの木材伐採する、あの瞬間に大木を切り倒す、ああいう機械はわが国では遺憾ながら使用されておりません。そういう一例を見ただけでも、セーブされるものはかなりあるのではないか。こういうことについて国も民間の方も一生懸命で研究する必要があるのではないかということを一例に私は申し上げたのでありますが、当面の問題としては、生産を上げるためにはやはり経済的な魅力を持ってもらうように、あらゆる角度から、保険もそうでございますし、生活環境についてもできるだけのことをして、そして地元に労働力がとどまってもらうように努力をすべきものである、このことについては引き続いて努力をいたしてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  32. 森義視

    ○森(義)委員 林業に機械力を導入するという問題は、確かに重要な課題です。私ども決してそれを否定するものじゃないのです。ただ、トラクターでやっておる平地林業——わが国の山岳林業の中に直ちに機械化が導入されて、それが労働の生産性を高めるという、そういう期待を持っておったのではまずい、こういうことを言っているわけです。確かに、機械化を進めていただくための抜本的な施策を考えていただきたいということは強く要望しておくところであります。しかし、現実に機械化を進めなくとも、機械化を一方で進めながら、当面やろうとすればやれる問題がたくさんあるわけです。その問題がなおざりにされておるということなんです。私の奈良県は民有林のパイロット県です。林業労働者の災害の問題については、五年間災害を受けなかった者を表彰するという形で労働者が自発的な組織をつくって警戒し、努力をしているわけです。それでおいてすら去年一年間で千三百人負傷者を出しておるわけです。七名死んでおります。そういう労働災害の問題について、これはもうたいへんな問題です。林野庁はおそらく全国の災害の資料を持っておられると思いますが、産業別にはかなり高い位置にランクされておると思います。いわゆるハッパをやっておる土建の一時的な災害を除けば、恒久的な災害では、林業が現在の災害の中で一番高い水準にあるのではないか。こういうかたわになり、あるいは負傷する、そういうけが人の労働者、公務で負傷した労働者が、仕事ができなかったら失業保険がもらえない。こういう状態の中で解決しようとすれば、失業保険制度を政府の施策で実施できるじゃありませんか。そんなに金のかかる問題じゃありません。失業保険を民有林労働者に適用されておりますか。だから、アメリカの林業を見てきて、夢のような話をここでしてもそれは通らない。そういう方向で展望を持ちながら大臣が努力をされることについては、私ども決して反対するものじゃありませんが、当面やらなければならない、やれる問題について一つもやっておらない。老後の保障の問題についても、たとえば林業で四十年、五十年働いてもう働けなくなった、この方々の老後の生活保障という問題について、何にも施策がないじゃありませんか。失業保険しかり、健康保険しかりであります。健康保険はようやく国民健康保険に各地で入っております。私どもの奈良県のように労働組合をつくっておるところは、日雇い健康保険法の適用を受けております。しかし、いずれにいたしましても、政府が山村に労働力確保しようとする場合に、国の法律でつくられた労働者に対する社会保障制度が、山村の労働者だけあるいは農村だけが放任をされている。このことで労働力確保できるはずはないわけです。今度政府から提案されました失業保険法の改悪を見てごらんなさい。さらにその条件がきびしくなっております。六カ月を通じて八十四日、毎月十四日稼働しなければ日雇い失業保険法の適用給付を受けられない、こういうきびしい改悪が行なわれようとしておるわけです。しかもその日雇い失業保険法の適用すら、いま民有林労働者の中で完全に実施されているのは奈良県だけであります。そういう状態の中で、政府がやろうとすればやれる。また、労働問題のベテランであった倉石さんは、当然農林業労働者をどうその位置に安定させ、そして農林業発展に役立つにない手としてこれを育成していくかという立場に立ったならば、私はこの問題はできると思うわけです。そういうやれる問題をまずやっていただきたいと思います。その問題について、私は、農林大臣というよりも、労働大臣という感覚であなたに聞きたいわけです。あなたはそのほうのベテランです。実情を御存じないなら、もっと詳しく言えというなら、幾らでも詳しく言えます。しかし、私は、当面失業保険の問題、健康保険の問題、厚生年金の問題、この三つの問題について、林業労働者にどういう施策をいつ実施するかというくらいのことを大臣の口からお答えいただきたいと思って、きょうは大臣の答弁を心から期待をして待っておったわけです。ひとつ大臣から確たるお答えを願いたいと思います。
  33. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへん大事な問題でございますが、保険は御承知のように、保険をもらう対象が、いまのところでは、適用されているものは使用者と被使用者、それから政府、そういう関係でありますので、おそらくその被保険者の対象をつかみにくいということだろうと思います。しかし、今度は事業所となれば五人未満も失業保険を均てんされるようになってまいりますから、かなりのところまではいくと思いますが、そういうところからはずれる階層の人がかなりあるわけです。そういう人が実際はたいへんお気の毒なことでありますが、国民全体として、いまお話しのありましたようなことはきわめて大事なことでありますので、われわれもひとつ関係省と相談をいたしまして善処いたしたい、こう思っております。
  34. 森義視

    ○森(義)委員 保険の関係は、被保険者と使用者、保険者との関係が確立されれば、こんな問題はないわけです。しかし、日雇い健康保険法、日雇い失業保険法というのがあるわけです。いわゆる使用者が日々かわっておっても保険の適用を受けられる制度があるわけです。そうでしょう。だから、山の林業労働者の場合、この日雇い健康保険法、日雇い失業保険法を適用しようとするならば、当然できるわけです。また現に奈良県では三十八年からやっております。日雇い失業保険法の特例給付でやっているわけです。これは使用者団体、いわゆる森林組合、林産組合との間に契約を結んでやっているわけです。したがって、具体的にわれわれがみずからの努力で、何としても山を愛し、山に残って日本の林業を守ろうとする労働者はそういうふうに努力をしている。ところが、政府はそういうものをくみ上げるのではなくして、そのものを助長して援助するのではなくして、あれは特別だという形でほうっておる。もちろん、森林組合課長が、そういう問題について、奈良県ではこういう方法でこういう社会保障の面についての対策をやっているという通達を各府県にいろいろと出しているということを聞いております。しかし、農林省全体として、特に林野庁全体として、この問題について全国的に取り組む姿勢がなければならないと思うわけです。その指令を出すのは大臣です。だから、資料を集めるとか集めないとか、そういう段階ではないのです。現にやっているのです。全国でどこもやっていないのではないのです。奈良県はやっているのです。三十八年度からやっているのです。もう四年やっているのです。そういう例があれば、全国にこれを一斉に適用する、こういうことは、そんなに時日のかかる問題ではありません。大臣がやろうという決意さえあるならば、それを指令さえされるならば、法律的には違反ではありません。できるわけです。だから、大臣のいまの検討してとかいうふうなことではなくして、そういう実績があるならば、全国がその水準にまで高まる方途を大臣の責任において講ずるという答弁を私はいただきたいわけです。いかがですか。
  35. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よく実情を調べまして、そういうことは非常にけっこうなことですから、実現のできるものかどうか、関係省ともよく相談をいたしまして、できるだけそういう方向で努力いたしましょう。これは、私がさっき申しましたように、一番零細な小さいところの人が、個人でおるときに恩典に浴することが非常に少ないのが今日の日本の制度ですから、そういうところに盲点があるわけです。したがって、その人々が、いま奈良県の例をお引きになりましたが、従業員ということで一つの組合をつくりますならば、もうすでにそこで適格性を持ってきております。ところが、そういう関係でなくて、個人個人で雇われておるような人々に向かって、どういうことでその対象にし得るかということは、私もいま知識を持っておりませんので、大事なことでありますから、十分検討さして、そういう方向に努力をするようにいたしたいと思います。
  36. 森義視

    ○森(義)委員 林野庁の森林組合課長来ておりますか。奈良県の実態を言ってください。そうしたら大臣はここで答弁できるはずです。調べなくても実態があるのですから……。
  37. 片山充

    ○片山説明員 奈良県の失業保険の適用状況について御説明申し上げますが……。
  38. 森義視

    ○森(義)委員 大臣、よく聞いてください。私は知っているのですから……。
  39. 片山充

    ○片山説明員 御承知のように、日雇い失業保険の適用をいたしますには、まず、その労働者が雇い入れられます事業所が失業保険の適用事業所になっておる必要があるわけでございます。ところが、林業は、今回の改正でもそうでございますが、任意適用ということになっておりますものですから、雇い入れます事業所がすべて適用事業所になっておるとは限らないわけでございます。その辺に問題がございまして、労働省のほうと昔から折衝があったわけでございますが、奈良につきましては、日雇い労働者だけを雇い入れられるような事業所については、適用事業所であるかどうかという認定の基準その他によって分ける作業があるわけでございますけれども、それをやらないで、初めから適用事業所にしていこうという話し合いができまして、それで、奈良県下につきましては、日雇い失業保険法の適用が、ほかの府県に比べまして非常に高くなっておるわけでございます。  林野庁は、その直後にその状況全国長官名で通知をいたしまして、こういう方法があるから、各県それぞれの担当の事務局と折衝するようにという話をいたしております。なお、その後、われわれのほうで、労働省と並行的に接触を続けておったわけでございますが、労働省のほうの意向としては、実は奈良でこういうふうなことを認めたのは、その後検討したところだと若干問題があるので、これを全国的に広めるについては、もう少し検討させてくれないかという御希望がございました。その辺につきましては、私どもとしても、意見は実は持ってはおりますけれども、労働省のほうのお立場もあるわけでございますので、その日雇い失保が奈良のようにスムーズに適用される基盤をまずつくることが必要であろうということで、引き続き接触を続けておる次第でございます。
  40. 中村時雄

    ○中村(時)委員 議事進行。  先ほど東海林君が言ったように、さっきの理事会において、この森林法の一部改正を上げてもらいたいんだというくらいの熱意をもってあなた方はおっしゃったのです。そうしてきょうはお経を読ましたのです。ところが、実際言っている本人たちはどうなんですか。国有林払い下げの問題がお経が読まれれば、こういうかっこうになっておると言われてもしかたがないでしょう。これはともかく一応理事会を開いて、これを明確にしておいていただきたい。いま呼びに行かれるというから、私たちも黙って見ておった。会期の期日がもうきょうあすに迫っている。どういうためにこういうことをやっているのですか。
  41. 高見三郎

    ○高見委員長代理 もうしばらく待ってください。
  42. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いや、それに伴って委員長としてどういうふうに考えられるか、ちょっと聞きたい。
  43. 高見三郎

    ○高見委員長代理 いま手配していますから、しばらく待ってください。
  44. 中村時雄

    ○中村(時)委員 手配はもうすでに十分、二十分ですよ。
  45. 高見三郎

    ○高見委員長代理 いま呼びにやっていますから、ちょっと待ってください。  森君、質問を続けてください。
  46. 森義視

    ○森(義)委員 ちょっと質問を待ってください。それに対するはっきりした態度を示してください。
  47. 高見三郎

    ○高見委員長代理 いま手配をしておりますから、それでも集まらないようなら善処いたします。森君、質問を続けてください。
  48. 森義視

    ○森(義)委員 大臣、いまお聞きのとおりでございます。  そこで、私は、大臣に期限つきで——これは調査をして、そうして実施できるように努力をしようという大臣の先ほどの答弁でした。そこで、労働省、厚生省とも話し合って、この問題はいま突然起きた問題ではありませんので、私は話し合いをすればそう期間はかからないと思う。したがって、いつごろまでにこの問題についての結論を大臣からお聞かせ願えるか、御答弁をいただきたい。
  49. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大事なことでありますから、ひとつ関係当局ともよく相談をいたしまして、なるべく早く大ぜいの人に均てんのできるようにいたしたいと思いますが、奈良県の実際のところは私よく存じません。よく実情を知っておる者に逐一私が聞けばすぐ頭に入りますが、そういうやり方が全国的に行なえるかどうかということについても判断をしなければなりませんが、できるだけ広げていくほうがいいと思う。ただ、私がここでそういうことをやる、やらないという発言をする能力はありません。保険についてはそれぞれの担当閣僚がおるわけでありますが、しかし、趣旨としては、私は、腹の中に、できるだけ大ぜいの人が社会保障に均てんできることが望ましいのでありますから、そんなにいつまでとかなんとかおっしゃらないで、私どもを激励していただいておれば、私は、実際のととろみなに喜ばれるようにできるだけ早くやっていきたいと思っています。
  50. 森義視

    ○森(義)委員 私は、倉石大臣に、林業問題については、実はまことに失礼な話ですが、期待を持っていないわけです。ところが、あなたの農林大臣をしておられる間に、少なくとも林業労働力の問題については、抜本的な何らかの前向きの解決をしていただけるという期待だけは強く持っているわけです。このことは、日本の林業全体について重要な問題であり、根本問題であるからであります。したがって、あなたは、林業の木は何本植わってどんなふうになっている、こんなことは知らなくてもいいのです。日本の林業のにない手である労働力をどう確保するか、このことを解決しただけで、あなたは農林大臣として林業問題に大きな功績を残したことになるわけです。私は、それだけはぜひ農林大臣に期待をしたいわけです。  それから、私は山村のいわゆる労働者の問題を中心にして申し上げましたけれども、いまなぜ青年が山村に住みつかないのか、この問題は単に労働者のそういう社会保障だけの問題ではありません。御承知のように、教育の問題があります。奈良県においては単式、複式の教育、いわゆる先生一人に生徒五人、こんな学校がたくさんあるわけです。この教育問題が解決されなければ、おれたちは山で生まれたからやむを得ないけれども、自分の子供を再びこのような環境に置くことは困るということを青年はみな言います。したがって、青年は山に住みつかないわけです。山で生まれたからといって、これから社会へ出てもハンディをつけずに対等に取り扱われるのであって、それに対して特別な待遇をしてくれるわけではありません。そういう教育しか受けてこなかったからやむを得ないといって、山村出身の青年に対しては試験の点数をまけてやるというようなことはありません。あんな教育を受けて、子供にまたああいう教育を受けさせなければならないということについて、若い人々は一そう山村を離れる原因の一つに数えておるわけです。  そこで、私は、この解決方策として、林道をどんどん整備される、そうなりますと、国費でスクールバスを充実して学校を統合してやれば、普通の平地における教育と同じ体系がとれると思われるわけです。そういう教育問題をまず考えなければ、青年が住みつく地盤というものは山村には生まれないわけです。その点について、前国会におきまして山村振興法がつくられました。しかし、あのような微々たるもので解決される問題ではありません。国が山村に人を住まわそうとする場合に、住まわせるに必要な公共的な施設というものをどうつくり上げていくか。林道さえ整備されるならば、スクールバスは幾らでも走ります。そうなりますと、学校を統合して、いまの複式、単式の教育をある程度是正することができると思うわけです。そういう点について、これは文部大臣でありませんから、農林大臣からどうするという確たる回答はいただけませんけれども、そういう方面について文部省とも話し合って、山村教育振興の問題について、大臣としてやはり要請をしていただく必要があると思うわけです。そうでなければ山村労働力の流出を防ぐこともできませんし、確保もできません。山に残って働こうとする人はたくさんあるわけです。今日のような都会のスモッグの中でからだをこわすよりも、美しい空気の中で緑をながめながら、きれいな清冽な水のもとで働きたいという人がいるわけです。しかし、いまのような環境の中ではどうしても残ることができない、こういう状態です。したがって、その教育の問題について、農林大臣はどうお考えか、ひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  51. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 全く同感でございまして、私どももどちらかといえば山村のほうの出でございますから、山はよく知っておりますが、いまお話のございました道路、ひとり山だけの関係でなくて、日本の産業は将来比較的平均に分散されるということを考え、もう一つは、やはり兼業農家というものが家を離れずに兼業をやれるというような見地からも、私は、地方のすみずみまで道路の舗装をすべきだということを長い間主張してきた一人でありますが、今度の四十二年度予算及び八月に四十三年度予算の要求になるわけでありますが、林野庁長官も特にこの林道について非常に力を入れようといたしております。これは御理解いただけることだと思いますが、森林の開発も一つの目的ではありますが、山村の開発、しかもいまお話しのように、子供たちがスクールバスでレベルの高い勉強ができるように、そういうようなことを考えますと、林道の開発は、いろいろな意味において私は非常に効果があるものだと思っております。そこで、教育の機会均等、それから、いま申しました兼業をできるだけ有利にさせるという意味において、林道の開発、それから町村道をりっぱに整備するということは非常に必要だと思います。ことに農林省は生活改善については特段の力を入れていく。農山漁村における若者たちが、やはりテレビその他が普及して生活が都会化してきておりますから、そういう方々にもできるだけ平均化した生活が営めるように生活改善に力を入れてまいりたい。したがって、教育についても同様な趣旨を持っているわけでございます。
  52. 森義視

    ○森(義)委員 視点がちょっと違いますが、最近、たとえば電源開発、こういう形で山村でどんどんダムがつくられてきます。そこで、実はダムがつくられることによって山村がいろいろな変貌を遂げていくわけなんです。山村がどういう変貌を遂げていくか、これは大臣ここで詳しく説明をせぬとわかりませんが、時間が足りないからその問題は触れませんが、山村の労働者の問題についてぜひ聞きたいわけですが、ダムがつくられることによって水没する家屋の補償があります。その補償要綱は閣議で決定された基準があります。その基準は一つの基準としてありますが、ダムがつくられるという話が出てまいりますと、林業家は木を切りません。造林をやりません。あるいは撫育をやりません。そうなりますと、そこにおる労働者は失業するわけです。ところが、それに対しては何ら補償がないわけです。補償要綱の中に入っていないわけです。大体ダムができるという話が出てまいりますと、林業家に対する補償は立木一本に対する補償ですから、一本の木の手入れ切ってあろうとなかろうと同じなんで、賃金を出して手入れをしたら損なわけです。ところが、ダムがつくられるという話が出てから実際に工事にかかるまで、たいてい四、五年かかるわけです。その間に林業家が林地の手入れをしない、植林をしない、伐採をしないために、その地域における林業労働者が半失業の状態に長期にわたって放置されておる。その問題について補償要綱の中にはないからということで、その失業が補償の対象にならない。そうなりますと、補償の金をもらう前にもう山から逃げ出していかなければならないという状態に林業労働者は置かれるわけです。こういう問題について大臣御存じですか。まず御存じかどうか、先に答弁していただきたい。
  53. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 あまりよく知っておりません。   〔高見委員長代理退席、倉成委員長代理着席
  54. 森義視

    ○森(義)委員 農林省は方々でいわゆるかんがい用ダムの建設をやったはずであります。ところが、そのダムは、その話が出ると同時にすぐ補償要綱が解決をして工事に入るものじゃありません。御承知のとおり、ダムの建設については、水没者との間の補償の問題について、ずいぶんいろいろな話し合いが長期にわたって行なわれるわけです。現実に大体四、五年かかるわけです。四、五年の間、この水没家屋の労働者は自分たちの仕事がなくなってしまって、もう前借りをするわけです。補償でもらう金を前借りをしなければ生活ができない。そうなりますと、もうそこに住みつこうとしても住みつけなくなってくる、こういう状態が起きてくるわけです。この問題を第一に大臣に知っておいていただきたいと思うわけです。したがって、閣議で決定になった補償要綱の中にそういう実態というものを考えて組み入れられていないこと自体が問題がある。これは、農林省から出られた補償要綱決定に参画した人が、そういう実態を知らないためにそういう形になっておるんじゃないか。いま奈良県では農林省のダムとしては大迫ダムが建設に入ります。これは話が出ましてから五年たっております。この問題について近畿農政局と話し合って、ようやく一人について十五万円のその間における失業補償を私は交渉でとりました。事実そういう損害を受けているんだから、出さざるを得ないわけです。しかし、それはずいぶん長期にわたって、全国各地の林業の山村におけるところの労働者が、ダムができるということによって水没する補償だけではなく、その以前の長期にわたる失業に耐えられなくなって山村を抜け出していっている、こういう実態であるわけでありますから、農林省がダムをつくる場合においては、ぜひそういう問題を補償の要綱の中に加えることを考えていただきたいと思うわけです。  そこで、いま労働力確保の問題について、社会保障の問題、それから環境整備の問題、そういう問題について、当面農林省がやろうとすればできること、そのことについて、大臣に期待を込めて私は御質問を申し上げたわけですが、私の持ち時間はあと五分しかございません。そこで、最後にお願いをしておきたいわけでございます。  先ほども申し上げましたとおりに、私はあなたに林業の問題について期待を持っておらない。しかし、生産基盤である、生産のにない手である労働問題についての大きな期待を込めておりますので、いずれ大臣もそう長い期間大臣をしておられるのではないと思います。こんなことを言ったら失礼でありますけれども、任期中にこの問題についての解決をされて、全国林業発展のために、林業労働者が山村に喜んで住みつけるような環境をつくる素地を倉石はつくったという一つ功績を残していただきたいことを特にお願いを申し上げまして、持ち時間が参りましたので、大臣に対する質問を終わります。  なお、長官に対する質問を留保して、私の質問を終わらしていただきます。
  55. 倉成正

    ○倉成委員長代理 本会議散会後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後三時五十分開議
  56. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  森林法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。神田大作君。
  57. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣が来る前に、事務当局にまずお尋ねをいたしたいと思います。  この森林法の一部を改正するにあたって、いままで森林経営計画施業計画というものを行なってきたのでありますけれども、今度改正してはたしていままでとどのような違いができるか、この点につきまして長官にお尋ねをいたします。
  58. 若林正武

    若林政府委員 現行森林計画制度について申し上げますと、林業基本法の第十条第一項にございまする基本計画及び長期の見通しというものに即しまして、農林大臣全国森林計画というものをつくります。これに基づきまして都道府県知事が、全国に二百五十三の森林計画区がございますが、この森林計画区単位に地域森林計画というものをつくります。これに即しまして、それぞれの森林所有者というものが施業をやっておるのでございまして、この間必要に応じまして勧告あるいは指導助成、こういうふうな措置を現在とっておるわけでございます。  今回改正しようと考えております点は、地域森林計画に基づきまして、森林所有者が自分で所有しておりまする全部の森林につきまして、森林施業計画というものを策定をいたしまして、知事のほうで公的にこれを認定するという制度を導入したいというふうに考えておるわけでございます。この森林施業計画内容でございますが、これは森林施業をいたします場合に、適期に伐採をする、また樹種、林相の改良等につきましても、これまた計画的にやってまいる、こういうようなことによりまして、森林生産の保続と生産力の増進をはかってまいる、こういうふうな計画内容になっておるのでございます。
  59. 神田大作

    ○神田(大)委員 農林省は、森林計画といいますか、施業計画といいますか、そういうことを長い間やっておったわけです。各都道府県にもこれを流して、そして計画に基づく伐採あるいは植林を指導してきたのでありますが、しかもそれには相当膨大な予算も使っておるわけであります。しかるに、今日外国から相当の外材を輸入しなければやっていけないような、こういう状態におとしいれた責任はいずこにあるか、私は重大な問題だと思うのです。私は、このようなずさんな施業計画を今日まで見のがしておった責任はのがれられないと思うのでありますが、これに対して長官はどのように考えておられますか、お尋ねします。
  60. 若林正武

    若林政府委員 ただいま先生からお話のございましたように、外材の輸入量というものは逐年増大をいたしてまいっております。なぜこのように外材がふえてきたのかということでございますが、これは一つには、提出いたしました参考資料でおわかりになると思うのでございますが、日本の森林資源の現況に一つ問題がございます。御承知のように、戦争中に過伐、乱伐ということが行なわれまして、その後、森林計画制度によりまして、伐採制限なりあるいは造林義務づけというようなことをやってまいったわけでございますが、そういうようなことに伴いまして、戦後そういったあと地の造林というものが急激に伸びてまいりまして、大体昭和三十一年前後に戦争中の伐採あと地というものは全部造林を終わったというような状態にもなったのでございます。したがいまして、二十年生未満の山あるいは四十年生未満というような若い山が、日本の森林の約半分くらいを占めているという資源上の実態がございます。それから、それ以外の伐期に到達している山等につきましても、まだ奥地等にこういうものがございまして、これから林道を入れまして開発をしてまいるということになるわけでございます。この森林計画でいろいろ計画をいたしておりますのは、そういうものを前提にいたしまして計画数量というものを出しておるのでございまして、ただ、ここ一、二年、外材が私どもが想定いたしましたものよりも非常によけい入ってまいっております。これは国内生産停滞をしておるというふうな原因もございますが、こういった見通しにつきましては、短期的な現在の変動であるかどうかということについて私どもは検討いたしておりまして、これが社会経済事情の基調の変化であるというふうなことであるといたしますれば、今後こういった面での計画の改定というようなことについても検討すべきではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  61. 神田大作

    ○神田(大)委員 このように前から相当な予算を使い、相当な施策を施しながら、所期の目的を達しておらない。今度この法律案を一部改正いたしまして、はたしてこのような施業計画が実際に役立っていくかどうかということに対しまして、われわれは大きな疑問を持つものでありますが、これに対して長官はどのような見通しを持っておられるか、お尋ね申し上げます。
  62. 若林正武

    若林政府委員 森林施業計画制度というものを新しく導入をいたしますと、短期的には、森林所有者にとりまして、伐採の時期の選択性の問題なりあるいは造林の時期の選択性の問題というものが、ある程度制約を受けるといろことになるわけでございます。そういった面で若干不利益というふうな問題が出てこようかと思いますが、こういった問題に対しましては税制の面で、すなわち、所得税、法人税あるいは相続税、こういった面で優遇措置を講ずることにいたしております。また、小規模の森林所有者等に対しましては造林の補助金のかさ上げというふうなことも考えておりまして、これら一連の優遇措置によりましてカバーをしてまいりたいという考え方でございます。長期的に見ますと、こういうふうな森林施業計画を立てて森林所有者施業等もやってまいるということになりますと、森林所有者が所有いたしております森林資源の構成あるいは資源そのものが充実をしてくるということで、生産の保続なりあるいは生産力の増大ということがこれによってはかられるのでございまして、森林所有者としても非常な利益になろうか、かように考えております。したがいまして、これが制度化されました暁におきまして、相当な森林所有者というものが申請に応じてくる。また応ずるように私どもは指導してまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  63. 神田大作

    ○神田(大)委員 そのような優遇措置を行なっても、とうてい現在の経済情勢においては引き合わないという山が私はあると思う。植林をしても、山奥等におきましては、かえってそれをそのままほうっておいたほうが経済的に損をしないというような状況民有林が相当あって、これらの民有林を放置しておるのをわれわれはよく見かけるのでありますが、どのような措置をとられるか、お伺いいたします。
  64. 若林正武

    若林政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたような森林につきましては、現時点におきましては、まだ森林生産基盤整備というものが十分に行なわれてないということによることだと考えております。したがいまして、今後積極的に林道を入れてくるとか、あるいは造林等につきましても、実はこの四十二年度から新しく団地造林制度というようなものも導入いたしておりますし、林道につきましても、補助体系というものを今年度から整備をいたしまして、選択基準の緩和、その他いろいろな施策を総合的に進めておるのでございまして、それらの生産対策なりあるいは構造対策というものがこれらに並行して行なわれることによりまして、そういった残された奥地等の森林の開発ということも可能になってくるというふうに考えております。今回提案申し上げております森林施業計画というものも、そういった地域においてそういう計画をつくるということになりますと、計画的な施業というものがこれから行なわれるわけでございまして、それに伴いましての林道の開設なりあるいは造林事業なり、さらにまた労働量を計画的に確保するというふうな問題、これらの一連の施策というのが、総合的にこの計画制度の導入によって可能になるというふうに考えております。
  65. 神田大作

    ○神田(大)委員 いままでも林道の開発とかその他の施策は行なっておったわけでありますが、それでもそういう欠陥が随所にあらわれておったわけでありますが、今後一部改正法案が通って、それが飛躍的に増大するとは考えられないわけでありますが、それらについて、それでは予算的処置を思い切ってとるつもりがあるのかどうか、これをお尋ねいたします。
  66. 若林正武

    若林政府委員 林道の開設等につきましても、全国森林計画というもので私ども一定の計画量を持っているわけでございます。こういうものを前提にいたしまして予算措置を考えてまいっているのでございまして、今後におきましても、この予算の獲得ということにつきましては積極的に努力をしてまいりたいと考えております。
  67. 神田大作

    ○神田(大)委員 租税特別措置法並びに相続税法等においてこれを優遇措置を講ずると言われますが、それの詳細について御説明を願います。
  68. 若林正武

    若林政府委員 税制上の優遇措置について申し上げます。  まず、所得税でございますが、森林施業計画に基づきまして山林を伐採または譲渡いたしました場合には、現行の植林費特別控除というものがございますが、これにかえまして、山林所得の金額の計算上収入金額の二〇%に相当する森林計画の特別控除というものを行なうことにいたしているのでございます。  法人税につきましては、森林施業計画に基づきまして山林を伐採または譲渡した事業年度に一定額の計画造林準備金というものを積み立てますときに、当該積み立て金額の損金算入を認めることにいたしております。  相続税につきましては、立木に対応いたします部分の延納税額の納付方法森林施業計画に即応するように改善をいたすことにいたしているのでございます。  以上でございます。
  69. 神田大作

    ○神田(大)委員 次に、森林計画を行なう場合に、森林所有者がその施業に従わなかったというような場合は、これはどのような考えでこれに対処するか、お尋ねを申し上げます。
  70. 若林正武

    若林政府委員 知事が認定をいたしました森林施業計画に従って森林所有者施業をやらなかった場合は、これは認定の取り消しをいたしますと同時に、一連の優遇措置、こういうものにつきましてもやらないということになるわけでございます。
  71. 神田大作

    ○神田(大)委員 この所有者が森林施業計画を作成することによって、どのような利害得失を得られるか、これについてお尋ねいたします。
  72. 若林正武

    若林政府委員 先ほども申し上げましたように、短期的には伐採あるいは造林の時期等につきまして選択の自由がなくなるわけでございます。そういった面で若干不利益な面が出てくる場合もあり得るということでございます。しかしながら、長期的には、所有いたしております森林内容というものが改善されるわけでございまして、森林所有者としては、そういった面で大きな利益になるということでございます。
  73. 神田大作

    ○神田(大)委員 一番問題なのは、この森林計画に基づく施業が行なわれるかどうかということをわれわれは一番心配しているわけであります。先ほど申されたいわゆる租税特別措置法によるところの所得税とか、相続税等の優遇措置あるいはその他の施策等を行なっても、日本の山林は現在の経済情勢からして、植林をすることによって利益がもたらせないという実情にあるところが多いのではなかろうかと思うのでありまして、これらのことについて根本的な対策を立てない限り、これは空文になるおそれがあると思うのでありますが、これはひとつ大臣もお見えになったようでありますから、大臣から御答弁を願うと同時に、長官からもこれらの実際の問題等について御答弁を願いたいと思います。
  74. 若林正武

    若林政府委員 森林施業計画それだけでは問題の解決にならないと思うのでございます。私どもといたしましては、林業基本法の政策目標というものを達成いたしますために、生産、流通、構造、労働、こういった対策を総合的に講じまして、初めて林業基本法が意図いたしております目標が達成できるというふうに考えておるわけでございます。この森林計画制度の問題につきましては、その生産体制の中の森林施業の面で考えておりまして、そういった面から林業基本法の意図いたしておりまする目標へ寄与してまいる、こういう考え方でございます。
  75. 神田大作

    ○神田(大)委員 話がわからぬが、それでは長官にお尋ねしますが、長官は日本の民有地の詳細な面積とか所有者別の確実な状態というものをつかんでおるか、お尋ねします。
  76. 若林正武

    若林政府委員 民有林面積は約千七百万ヘクタールでございます。蓄積は約九億立方メートルでございます。その中で一般の私有林でございますが、これは戸数にいたしまして約三百万戸、大体九割くらいのものが五ヘクタール以下の非常に零細な所有者が多いのでございます。その他、民有林の実態等につきましては、私は私なりにいろいろと承知をいたしておるという考えでおるのでございます。
  77. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは一体、こういう面積の調査は、いつしたのを基準にしておりますか。何年にやりましたか。
  78. 若林正武

    若林政府委員 民有林面積等の調査でございますが、御承知のように、昭和十四年の森林組合施業案のときもそうでございますし、その後の森林法に基づきまする森林計画制度の中で、都道府県知事地域森林計画というものを策定いたしますときに、民有林面積あるいは蓄積、こういつたものを詳細に調査をいたしておるのでございます。それと別に、現在この森林計画というものが五年のローテーションで編成をやっておりまして、その切りかえのつど全国調査、これはサンプリングでやっておりますが、航空写真等も使いまして、その精度の向上をはかっておるのでございます。
  79. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは大蔵省所管の登記に記載されておる面積とはどのような関係があるか、お尋ね申し上げます。
  80. 若林正武

    若林政府委員 土地台帳に記載されております面積と実際の面積との違いでございますが、これは場所によりましては、実際の面積土地台帳面積より少ないというところもございますし、一般的には、台帳面積よりは実際の面積のほうが大きいというところが多うございまして、ところによりましては五十倍、百倍というふうな違いのあるところもございます。
  81. 神田大作

    ○神田(大)委員 このような違いを知っておりながら、日本では何十年という間これを放置しておるわけでありますが、これらのことを解決せずして、正確なる森林施業計画とか、そういう森林計画とか、あるいは施業が行なわれると思うかどうか。
  82. 若林正武

    若林政府委員 私どものほうで森林計画を立てます場合使います面積の数字は、全部実測をいたしたものを使っておるのでございまして、土地台帳面積というものは使っておらないのであります。
  83. 神田大作

    ○神田(大)委員 しかし、それはいまあなたが申したとおり、実際の面積と台帳の面積とがはなはだしく異なっておるような状態で、はたしてこの森林計画というものが行なわれると思うかどうか。これは私はふしぎなことだと思うのです。これらについて政府が何らの処置も講じないというような不公平きわまる行政は私はないと思うのですが、これは大蔵省の関係者を呼んで話さないとなかなかわからぬと思いますけれども、しかしながら、林野庁といたしましても、民有林指導監督をしておる立場に立って、これをいつまでも放置しておるということに対してどのような考えを持っておられるか。これは大臣にお尋ね申し上げます。
  84. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは所管が大蔵省のことでありますが、実際に仕事をする場合には、いま林野庁長官がお答えいたしましたのが実際のことだと思いますが、神田さんも御存じのように、大体山の売買をやっても、大っぴらにこれは実測幾ら、台帳面積幾ら、これで今日までけっこうやっておるのです。これをひとつ整理する必要があるということは、私もそうだと思いますが、大蔵省とよく相談いたしてみたいと思っております。
  85. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは非常に重大な国政だと私は思うのですが、歴代内閣もこれに手をつけず、知らぬふりをして見のがしておりますけれども、正しい森林計画をする上において、そのように大きな違いがあったのでは、正しい森林施業は行なわれがたいと私は思う。机上の空論になってしまう。帳面の上あるいは図面の上ではこうであるけれども、実際はこれだというような、そういうずさんなことを何十年となく続けておるというようなことは、行政の立場に立っておる行政庁なり政府の重大なる責任問題になると思うのですが、大臣はこれらのことについての適切なる措置をする考えがあるかどうか、まずお尋ね申し上げます。
  86. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、大蔵省ともよく相談してみます。
  87. 神田大作

    ○神田(大)委員 それではこれは私の質問を保留いたしておきまして、後刻大蔵省関係も呼んで、近いうちに適当なる言質を皆さんからいただくことにいたします。  次に、いまゴルフ場がだいぶできておりますけれども、一体これらのゴルフ場は幾つあって、しかも面積はどのくらいの面積を持っておるか、お尋ねを申し上げます。
  88. 若林正武

    若林政府委員 私どものほうで調査いたしました数、字でございますが、ゴルフ場の数が四百八十カ所でございます。これは観光便覧の統計数字であります。面積にいたしまして五万五千ヘクタールでございます。
  89. 神田大作

    ○神田(大)委員 これらゴルフ場の敷地は民有地並びに国有林の払い下げなんかも入っておるだろうと思いますが、これらの土地が流用されておるようでありますが、私は何もゴルフを悪いと言うわけではないが、日本のこのような、外材を三〇%も輸入しなければならぬ、あるいはまた森林計画に基づいて国土の利用を行なわなければならぬ、あるいはまた農業方面から申しますれば、飼料の自給とか、あるいは国内の食糧をまかなわなければならぬというような重大な段階にあるときに、むやみやたらにあらゆる民有地をゴルフ場等に転換さしていくということに対して、大臣はこれらに対してどのような考えを持っておるか、お尋ねを申し上げます。
  90. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まあ、ゴルフ場のある場所もいろいろでありまして、ほかのものがほとんどうまく育たないようなところを使っているところもありますし、ごく平坦な畑を使っているところもありますが、アメリカでもヨーロッパでも、大体このゴルフ場というのは、いざというときにミサイル基地に活用のできるようなことを非常に深く検討いたしておるところもあります。それぞれ国によって事情が違うでしょう。飛行機が不時着できるために計画を立てている模様もあるようでありますが、わが国は狭いところですから、できるだけ生産の上がるところにすることがいいと思います。
  91. 神田大作

    ○神田(大)委員 はっきりした答弁が得られないようでありますが、人口、国土あるいは国の富等から比較して、識者は、日本にこのようにむやみやたらに無計画にゴルフ場が各地にできる、りっぱな民有地がつぶされていくということに対しまして、大きな関心と非難を浴びせておることを私は聞いておるのであります。ミサイル基地にするというようなことは、これはもう夢みたいな話で、今日においてわれわれはそういうことを考えるべきじゃないと思いますが、こういうように無計画にりっぱな民有地、国有林その他の国土がむやみやたらにこのような状態になっておることに対して、大臣はどう考えるかということをお尋ねしておるのです。御答弁願います。
  92. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たいへんむずかしい問題でございますが、ゴルフをやる人口によって、ゴルフ場というのはそうたくさん私はふえていかないと思います。大体ゴルフ人口というのは、ふえてもそうたいしたことはないのでありまして、まあこの辺が限界ではないか、こう推察しているのでありますが、なるべく生産の上がる仕事をやるほうがいいと考えます。これはいまのお話のように、主として民有地で、そしてその地主たちが土地を出し合ってクラブをつくってゴルフ場を経営して、ほかのものをつくっているよりは所得が多い、そういうようなことで始まるのじゃないかと思いますが、いまも申し上げましたように、なるべく土地というものは生産の上がるものをつくってもらうほうがいい。まあ、日本は戦争はやらない国でありますから、もうそういうことを考える必要はありませんが、ヨーロッパなぞへ行ってゴルフ場の話をいろいろ聞きますと、あれは芝を保全するために非常に肥料を何べんかやってあるものですから、ゴルフ場というのは非常に地味が肥えているわけです。したがって、一たん緩急ある場合には、作物を植えて、一番繁茂する。そういうような効果なども、これは日本じゃないですが、ヨーロッパ人はその効果を言っておりますが、それにしても、私は、やっぱり生産の上がるものをわが国では植えるようになるべくおすすめをいたしたいと思います。
  93. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、いまのようなりっぱな民有地あるいは国有林がこのようなゴルフ場とかその他の不生産的なものに転換していくことに対しまして、何らの規制をも考えようとしないのかどうか、このまま放置して自然の成り行きにまかせていいのか、その点をお尋ねします。
  94. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 個人の所有地についてわれわれは何とも処分について申すことはできませんが、国の方向としては、いま申しましたように、生産の上がる仕事をやっていただくほうがいい。さっきも申しましたように、大体もう限界にきていると私は思います。それで、現に計画をしながらも、うまくいかないで、やめているところもありますので、これを何か法律等で規制するということはむずかしいことだと思っております。
  95. 神田大作

    ○神田(大)委員 次に、五ヘクタール以下の小山林地主がたくさんおりますが、これらの施業計画に対してはどのような考えを持っておるか、長官にこれはお尋ねいたします。
  96. 若林正武

    若林政府委員 小規模の森林所有者が今回の新しい制度でありまする森林施業計画というものにはなかなか乗りにくいということは、これは事実でございます。そこで、私どもは、何人かの森林所有者が共同で施業計画をつくる、あるいは森林組合——御承知のように、最近非常に協業化ということが進んでまいっておりますが、そういう中で、一つの協業体としてまとめた形で森林施業計画をつくらせるというふうなことを考えておるのでございます。
  97. 神田大作

    ○神田(大)委員 共同による施業というようなことだと了解しますが、このような共同の森林施業計画というようなものは、従来の農業の共同化その他のことから考えても、非常にむずかしい問題だと思うのですが、実際問題として共同で施業計画をやっていけるかどうか、これに対して長官はどのような自信を持ってこれに対処するのか、お尋ねいたします。
  98. 若林正武

    若林政府委員 御承知のように、最近、施業の協業化と申しますか、民有林におきまして全国的に非常に進んでまいっておりまして、こういったものを今後積極的に伸ばしてまいるということで、相当なものが申請に応じてくれるのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  99. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはなかなかむずかしい問題であって、これらに対しては特別な何らかの対策を立てない限り、何百町歩と持っておる大きな森林所有者と五ヘクタール以下の小さな山林地主とを同じ施業計画の中に入れてやっていこうとするところに、私は問題があると思うのであります。これは必ず実際においていろいろと問題が出てくると思うのでありますが、その場合に、特別な対策をこの小山林地主の施業計画には考えないと、これは取り残されていくおそれがあるし、そうなると、全体的な森林計画というものが阻害されるおそれがあると思うのですが、これについて長官はどういうふうに考えますか。
  100. 若林正武

    若林政府委員 零細規模の所有者に森林施業計画を積極的につくってもらうということを促進いたしますために、税制の面では所得税、それから相続税の優遇措置、さらにまた造林の面につきましては補助金、これは現在私どものほうで点数制でこの助成をいたしておりますが、造林の補助金を二十点かさ上げしよう、こういうふうなことを考えておるのでございます。
  101. 神田大作

    ○神田(大)委員 小所有者に対する対策は、今後なおひとつ御研究をさらにしていただきたい、そういうことを私は特に要望をいたす次第であります。  次に、私は、いま薪炭林の需要供給の面において、非常に需要が少なくなってきている。ために、薪炭材というものは二束三文で、ああいうものを植えても、大体十年に五千円、一年に五百円程度、その程度の収入しかない。それじゃどうにもならぬというので荒廃しておるが、あべこべに、今度は用材というものの需要はふえておるわけであります。薪炭材から用材への山林の切りかえということは非常に大事なことであると思うし、これを積極的に何らかの措置でもって推し進めることによって、日本の森林情勢というものは変わってくると思うのです。これらについて長官はどのように考えておりますか。
  102. 若林正武

    若林政府委員 先生からただいま御指摘のございましたように、薪炭林というものの拡大造林、これは非常におくれておるわけでございます。そこで、こういった低開発地帯の広葉樹の山というものを積極的に人工林、用材林に切りかえてまいりたいということで、今年度から新しい制度を一つ設けたのでございます。団地造林制度と称しておりますが、こういったおくれた地帯、私どもの推定で、大体全国で百万ヘクタールほどございますが、こういうものを対象にいたしまして造林の補助金、これを五十点加算をいたします。と同時に、そういった雑木を伐採して出す、あるいはまた造林をするということに作業道が必要でございます。そういうものもこの中で補助対象に入れるということで、先生からお話のございましたような山をなるべく早く積極的に人工林に切りかえてまいるように取り進めておるところでございます。
  103. 神田大作

    ○神田(大)委員 これらの政府の方策は、われわれから考えると、非常になまぬるい。これだけ木材需要が逼迫しておって、外材を輸入しなければならぬというときに、あまりゆっくりとしたこういう施策をやっておることをわれわれ国民としても手ぬるく考えておるわけであります。この点、ひとつ適切なる指導によって、国土を有効に利用する方向へぜひ向かってもらいたいと思う。  次に、大臣に、最後に一点お伺いしますが、国土の総合計画というものを立てて、一体山林から農地にはどの程度これができる、山林として、用材としてはどの程度、どの辺にやっていくかというような、あるいはその他都市計画ともからんで、この国土の総合計画というものができていなくちゃならぬと思うのです。それに基づいて森林計画というようなものも行なわれなくちゃならぬと思いますが、これらについて大臣はどのような考えを持っておるか、現在日本の政府においてなしておるこれら国土総合計画等について、見解をお尋ね申し上げます。
  104. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいままでは、いわゆる総合的な土地利用の計画というものは、あまり明確ではないように感じられます。神田さんも御存じのように、最近都市計画法案が出ました。ああいうところでも、やはり市街地区域とその周辺に行なわれる調整区域との間でする建設省的なものの考え方でおやりになるのと、さらに指定された区域外の農業地について農林省と意見の調整をするのに時間が非常にかかりましたのは、やはりそういうところに農地をつぶして若干でも市街地の進出を見るということは困るというようなことが熱心に論議をされましたような次第でありまして、私は、かねがね、この全体の狭い国土の中で、いまお話のありましたような土地利用区分というものは、機械的にあるいは算術的にきちんとやることは困難かもしれませんけれども、やはり食糧の自給のめどをつけ、そしてまた、国民の必要とする森林等の将来の展望等もあわせまして、国としてやはり一貫した国土の利用計画というものは立てるべきである、そういうことは地方における農村の人々の熱望でもあるわけでありまして、政府はそういうことに思いをいたしまして、ただいま企画庁を中心にいたしまして、今般の市街地法案等の機会に、さらにいま申しましたような全体の土地利用区分についての——これは困難ではあるが、計画を策定していこうということに踏み切ったわけでありまして、これにつきましては、いまお話のように、森林面積あるいはまた水田の面積、畑地の面積、いろいろ出てくるでありましょうが、そういうことで、これからその土地利用区分について十分な検討をして立案をいたしたい、こう思っておるわけであります。
  105. 神田大作

    ○神田(大)委員 非常に大事な国土利用計画の問題でありまして、これはぜひともすみやかにこれが計画を達成し、それに基づいて森林計画なりあるいはまた農地の開発なりを行なうことをすみやかに実施するように御努力を要請いたしまして、私の質問を終わります。
  106. 本名武

    本名委員長 中野明君。
  107. 中野明

    ○中野(明)委員 大臣が見えましたので、細部はまた林野庁のほうにお尋ねするとしまして、二、三点基本的なことをお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、わが国国土は六〇数%が森林でございまして、これは世界でも屈指の森林国であるということは言を待ちませんが、日本が深刻な木材の不足と同時に価格の高騰に非常に悩んでおります。これは森林国として非常に残念なことだと思うわけであります。これにはいろいろ原因もありましょうし、あれもありますが、特に物価の問題については非常に世論もきびしく騒いでおる最中に、木材の値上がりというのは、特に考えてみますとけたはずれに上がっております。こういう現状に対して、大臣として今後の日本の林業をどういう方向に持っていこうとしておられるか。基本的なことなんですが、まず第一番に、需給のバランスでございますが、このバランスをとるために外材を輸入しておられます。この外材の輸入は、わが国需要量の約三割を占めておりまして、まだ増加するような傾向にあります。貿易の品目で見ましても、石油、鉄鋼に次いで第三番目の輸入をしておるような現状であります。そういう点を考えまして、まず第一点、この国内木材の自給率をどの辺に押えようとお考えになっているか、この点をお尋ねしたい。
  108. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話ございました森林の状態、それからまた、これからの見通しにつきましては、御存じのように、森林資源に関する基本計画、これを政府は出しておりますが、それと、重要な林産物需要並びに供給、そういうことに関する長期の見通しをいまの計画に盛っておるわけであります。今後もやはりその方針に沿うてやってまいるわけでございますけれども、最近経済伸展が著しくありまして、そのために、やはり需要が非常に増加をいたしておる。その結果、いまお話しのように、国内産材では不足を生じまして、大体三分の一程度外材に依存いたしておるわけでありますが、私どもといたしましては、これについて国内材というものを主として供給することに全力をあげなければいけないということで、いろいろ計画を立てております。  なお、四十二年度予算でも御審議を願いましたように、いままでのそういう計画を進めてまいりますのに一番にネックになっているのは、やはり林道の未開発であるということで、林道をできるだけ開発いたすことによって、奥地の森林も開発できるように、同時にまた、国有林においては、御存じのように大体伐採のあとにはそれぞれの植林が行なわれておりますけれども、民有地におきましては、なかなか政府が考えておるような状態ではございませんので、今回御審議をお願いいたしておりますような改正も行ないまして、われわれは、政府の立案いたします計画に賛意を表して、そうして造林等につとめていただく施業計画をやっていただく方には特段な保護措置を講じて、そうして増産計画に協力してもらうようにいたしたい。そのようにいたしまして、需給はできるだけ国内産をもってまかないたい。その補完の意味においてはどうしてもやはり外材を入れざるを得ない、こういうのが基本的な考え方でございます。
  109. 中野明

    ○中野(明)委員 もちろん、外材の特徴もございますし、外材の非常にいい面は私も認めますけれども、いま私がお尋ねしておりますのは、大臣として、将来外材と内材の比率、それをどの程度で押えようとなさっておるか、一番妥当な線はどの辺ということを目標にして今後林政をとっていかれようとするか、その点をお聞きしたいわけです。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げました計画計画どおりうまくいきますならば、だいぶ先でありますが、昭和九十年までにはその需要国内産をもって九〇%はまかない得るようにいたしたい、そういう方向で、そのめどに向かって全力をあげて計画を進めてまいりたい、こう思っております。
  111. 中野明

    ○中野(明)委員 林野庁からいただきました資料によりましても、外材の輸入について長期の計画を一応立てておられたようですが、それも、国内事情変化によって、すでに五十年に予定しておったのが、本年でその目標を達成しているというふうな状態なんでありまして、いま大臣も計画どおりにいけばという前提のもとにお話しになったようでありますが、一刻も早く、ほんとうにいまではおそきに失するというような声もありますが、いずれにしても、策を施さなければ、いつまでたってもこの問題の解決はないわけですから、極力全力をあげて国内木材中心に運営できるような方向に努力していただきたい、これをお願いしておきます。  それから、先ほども論議がありましたが、労働力不足について、これは非常に日本の林業の大きな問題になっております。山林労務者を確保する、山林労務者の減少を食いとめて、そうしてわが国の山林並びに最近問題になっております災害、これなんかも間接的に防除できるわけでありますから、その辺の対策につきまして、もう一度大臣のほうから、こういうふうに考えている、こういうふうな施策をもって労働力の減少を防ごうとしておるという、その方向を示してもらいたい。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話しのように、材木として供給するばかりでなくて、国土保全という意味でも、森林は非常に重要な役割りを占めておると思うのでありまして、皆さんヨーロッパにおいでになりましたときに、ドイツに行って非常にうらやましく思われる方が多いのでありますが、やはりいろいろな意味で森林を愛さなければならぬと思っております。ことに、わが国のように周期的に台風の参ります国においては、ことさら、森林保全というものはそういう意味でも大切であると思いますし、かたがた、日本経済が伸びるに従って需要が増加いたしていくものを、これだけの森林国であるのでありますから、この位置を確保することには全力をあげなければなりませんが、そこで、先ほどの森さんのお話にもありましたように、ほかのほうの産業が著しい勢いで伸びてまいりますために、その労働力の給源を農山村に求められた。その結果、労働力が流出してまいる。これを補うためには、一方においてはできるだけ近代化して、そして労力の節約をはからなければなりませんが、もう一方においては、ああいうりっぱな美しい天然資源を相手にして働いておられる山村のあと継ぎたちが、誇りを持ち、楽しみを持って父祖代々の仕事に従事してもらうようにしむけていくということは、いろいろな意味において私は国家として非常に大事だと思います。したがって、こういう人々に魅力を持っていただくためにはいろいろ考えなければなりませんが、まずやはり他産業に比べてあまり劣らない所得が受けられるようにしなければならぬ。同時にまた、社会保障制度も全般的に均てんされるようにしなければなりません。さっき私は森さんの御質疑にお答えいたしまして、そういうことについてはとくとひとつ研究いたしたいと申し上げましたが、これは私どもの考えておるいわゆる福祉国家の趣旨に沿うてもまいるわけでございますから、これも一つやらなければなりません。同時にまた、何と申しましても、最近はテレビジョンの影響などもありまして、農村の生活もやはりだんだん都会化してまいっております。農家のあと継ぎがお嫁さんをもらって生活していくのに、やはり何百年来の家屋に住むよりは、何となく近代的というか、そういう生活が好まれるようになる。あたりまえのことであります。そこで、農林省はいわゆる生活環境改善のためにいろいろ御相談相手になって、そういうことの貸し付けなどもいたしておりますけれども、そういういろいろな手だてを講じまして、そして山村を守っていただくようなふうにひとつ努力をいたしたい。骨が折れることではありますけれども、これは私は政府としては至上命令ではないだろうか、かように考えております。来年度の予算などにはぜひそういうことにも一段の力を入れてまいりたい、こう思っております。
  113. 中野明

    ○中野(明)委員 最後に、ただいまの問題に関連いたすわけでありますが、現在の山林所有者の九〇%を占めるのがいわゆる五ヘクタール未満の零細な山林所有者です。ところが、この零細な山林所有者に対しての保護対策、こういう点についても根本的にもっともっと力を入れなければならないと私は思うわけですが、今回の森林法の一部改正を見ましても、これは当然法案審議の中で論議したいと思いますが、どう見ても大山林所有者に非常に有利に、その人たちが守られるような法律であるとしか私たちいまのところ理解できません。それで、そういう点につきまして、五ヘクタール未満の九〇%を占める人たちに対して今後どういうふうな対策を持っておられるか。優遇策あるいは保護対策を考えておられるか。結局これが山林労働者の流出を防ぐ根本的な対策になるのじゃないか、このように考えるわけであります。その点、最後に大臣から所見をお伺いして終わりたいと思います。
  114. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一番大きな割合を占めております小規模山林所有者につきましては、非常に大事なことでございます。そこで、いまお話の小規模森林所有者に対してどのようなことを考えているかということでございますが、先ほど来長官から御説明申し上げておりますような森林施業計画、これの認定制度目的達成のためには、小規模森林所有者の積極的な参加が必要でございますから、御承知のように、知事の認定をいたしますときに、そういうことについてよく中央政府は連絡をいたすわけでありますが、この小規模森林所有者森林施業の実態に即しましてできる限りの措置を講ずるようにいたしたいと思っております。森林の規模に応じた認定の基準を設けることといたしましたほか、森林所有者の委託を受けて森林組合計画を作成することと、それから小人数のものは数人の者が共同して計画を作成するという道を開く。そういうふうにいたしまして、小規模森林所有者がこの制度に参加していただけるようにひとつしむける。こういうふうにして、一番大多数の小規模経営者がこの考え方に均てんできるようにつとめてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  115. 中野明

    ○中野(明)委員 これは森林法の一部改正の細部にわたっての論議になりますので、時間もございませんので終わりますが、いま大臣がおっしゃっているように、なるほどことばの上ではそういうことは言えるわけですが、この実施にあたりましては非常に問題があるようですし、同時に、どうしても大規模が税金の上においても有利なような状態になっておりますので、これは法案審議の中で長官のほうに特にその点を確かめてそれから審議を尽くしたい、このように出やえておりますので、またに譲りまして、本日の大臣に対する私の質問は以上で終わりたいと思います。
  116. 本名武

  117. 森義視

    ○森(義)委員 それでは午前中の質問に引き続いて、長官にお尋ねいたしますが、午前中の質問では明確に理解できなかったわけですが、私はこの森林法の一部改正の重要なポイントになると思いますので、あらためて午前中の質問に関連してお尋ねしたいわけです。  昭和三十九年に林業基本法が制定されました。御承知のとおりであります。その考え方は、個々の森林所有者生産意欲を高めて、至上課題である需要拡大に対応さすための生産の増強というところにそのねらいがあったわけです。ところが、森林法の精神というものは、これは性格が異なっております。いわゆる公益的な使命というものに重点を置きながら、木材経済需要にどう対応していくか、重点が違うわけなんです。そこで、この改正というものが、基本法ができた後に出てきたということはおかしいのじゃないか、こういう午前中の質問を私はしたわけですが、この一部改正というものがどこに視点を置いておるのか。林業基本法が制定された時点における日本の林業構造の中で、考えられておる諸要素に対応していけるめどがこの一部改正の中にあるのかどうか。私は、この一部改正は、日本の木材供給の正確なものをつかみたいというところに重点があるのであって、生産の増強にはこの一部改正の果たす役割りというものはほとんどないと思うわけです。今日まで、森林計画制度の中で、いわゆる地域森林計画勧告、助言その他の指導を行なってきたけれども、なかなか実態がつかめない、いわゆる供給力の現勢というものはつかめないということから、こういう制度によって供給力の現状をつかもう、こういう意図だと思うのですが、今日までの森林計画制度の中でそういう実態を運用面においてつかめなかったのは、どういうところに欠陥があったのか。その点さえ直すならば、あえて林業基本法の精神に逆行するような形で、個々の生産意欲にある程度制限を加えるような、こういう上からの押しつけの施業計画はつくらなくてもいい、私はこう思うわけなんです。   〔委員長退席、高見委員長代理着席〕 そういう点について、計画制度の運用において実際の供給力の把握ができなかった点は、どういうところに欠陥があったのか、こういう点について、まず第一点お伺いします。  第二点、個々の施業計画をつくらすことによって、実際にこれからの供給の現実性というものがつかめると考えておられるのかどうか、これが第二点。  それから第三点は、基本法にいうところの生産性の増強とどう結びつくのか、これが第三点。この三つの点について、まず午前中の質問の締めくくりとしてお尋ねしたいと思います。
  118. 若林正武

    若林政府委員 御承知のように、森林施業計画は、資源政策の面及び国民経済の面、こういった面からの公的な要請、こういう性格も持っておるわけであります。また、森林生産の保続及び生産力の増進ということで、森林所有者にとりまして、所有いたしております森林の質的な充実ということがはかられてまいるわけでございまして、そういった面での森林所有者としての究極的な利益ということもあるわけでございます。今回の考え方は、この林業基本法の第十条の基本計画及び長期見通し、こういうものを前提にいたしまして全国森林計画ができ、地域森林計画ができる。それを受けまして森林施業計画というものが策定されるわけでございますが、と同時に、森林所有者が所有いたしております全部の森林につきまして長期の方針を立てまして、それに基づきまして具体的な施業計画というものを森林所有者が立てまして、認定の申請をやって、認定基準に基づきまして知事のほうでこれを公的なものにする、こういうふうな考え方でございます。  したがいまして、お尋ねの第一点の、現行制度供給力の把握ができなかったのはなぜかという点でございますが、実は過去にやっておりました伐採の許可制のときには、これは全筆その許可を与えたものにつきましてのあと地の調査をやっておるわけでございます。その後、許可制度がはずれまして、届け出制というふうに変わってまいったのでございますが、そういうふうな制度改正に伴いまして、現在やっておりますのは、サンプリングによりまして調査をやっておるわけでございます。そういうことによりまして、伐採量供給量というものを現在つかんでおるわけでございます。今後もつかめるかどうかという点でございますが、今後におきましては、森林施業計画制度というものが運営をされてまいりますと、事前に伐採個所あるいは伐採量、こういうものがはっきりしてまいりますし、また、実行計画につきましては届け出も出てくるというふうなことによりまして、従来に比較いたしまして、より正確につかめるということになろうかと思うのでございます。  この施業計画が基本法と一体どういう関連を持っているのだという第三点のお尋ねでございますが、これにつきまして、具体的に申し上げてみたいと思うのでございます。この森林施業計画の認定制度というものがねらいといたしておりますことの一つに、樹種または林相の改良と適期の伐採等によりまして森林生産力の増進をはかることでございますが、これによりまして林野の林業的利用の高度化が促進されるわけでございます。したがいまして、施業計画制度というものが推進をされるということになりますと、林業基本法の第三条第一項にいろいろと国の施策というものが掲げられておりますが、こういったもの、あるいは第十一条の林業生産に関する施策というものがございますが、こういうものに即しまして国が講じてまいりまするいろいろな施策の一環をなしてくるということになろうかと思うのでございます。さらに森林施業計画に従いまして、合理的な、かつ計画的な施業実施するということになりますと、結果といたしましては、健全な森林構成を持った、しかも生産力の高い森林の造成というのが達成されるわけでございまして、林業経営の近代化と健全な発展のための生産基盤が強化をされることになるわけでございます。その意味におきまして、本制度推進するということにつきましては、林業基本法の第三条の国の施策、あるいはこれを受けまして第十二条の林業経営の健全な発展、及び第十三条の協業の促進、こういったような規定をいたしておりますいろいろな施策ということにも寄与してまいることになるわけでございます。  以上でございます。
  119. 森義視

    ○森(義)委員 林業基本法が論議されましたとき、当面する需要拡大に対応するために生産をどう拡大していくかという論議の焦点になりましたのは、それぞれの林業家の個々の生産意欲をどう自発的に高めさせるか、そのために必要なバックグラウンドを政府はどう整備していくか、こういう論議であったわけです。いわゆる生産性向上というのは、上から計画制を押しつけたもので向上するのでなくして、林業象自体の自己の生産意欲を助長するために必要なバックグラウンドを政府が整備していく、林道なり造林なり、いろいろな問題でより生産基盤整備をしていく、そしてあくまでも生産増強のにない手は林業家自体の生産意欲に待つ、こういう論議であったわけです。上からのいわゆる計画的な押しつけで施業計画をつくらせたところで、そのこと自体が林業基本法でいわれる生産の増強に結びつかない、こういうふうに思うのですが、長官はいまの答弁では、林業基本法のねらいとする生産増強にも結びつく、こういうふうに言われたわけですが、一体個々の施業計画を任意制で出すことによって、どれだけのものが出てくるというふうに現在お考えになっておられるか。そして階層別にどういう階層が出てくるとお考えになっておるか。
  120. 若林正武

    若林政府委員 私どものほうで、この森林施業計画制度というものが導入されました場合に、今後十カ年周で一体どれぐらい達成できるかという見通しを一応立てておるのでございます。これについて申し上げたいと思います。  私有林につきまして、三十ヘクタール未満でございますが、これは四〇%、三十ヘクタールから五百ヘクタールにつきましては八〇%、それから五百ヘクタール以上につきましては同じく八〇%、以上が私有林でございます。それから公有林につきましては、都道府県有を除きました市町村有林及び財産区有林でございますが、五十ヘクタール未満が一〇〇%、五十ヘクタール以上も一〇〇%でございます。それから都道府県有林につきましては、これももちろん一〇〇%、一応こういうふうな見通しを立てておるのでございます。今後におきましても、運営を適正にいたしまして、達成率というものの向上をはかってまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  121. 森義視

    ○森(義)委員 大体林野庁のいままでのいろいろな長期見通しの計画数字というのは、全部合ったことがないので、これは天気予報よりもまだ悪いのですが、おそらくこの計画も——十年間に大体公有林は一〇〇%ですね。私有林の場合においては、三十から五百ヘクタールのいわゆる林業の中堅的な規模の経営者、これが八〇%これに乗ってくる、こういう見通しを持っておられるようでございますが、実際問題として、この法律が通過をいたしまして、それからの具体的な指導コンサルタントはどういうふうに配置をし、どういうふうにしていこうと考えておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。  実は、この前、入り会い林野の近代化法案が通過しました。コンサルタントを配置して、いわゆる個別私権化を確立する意図を持ってあの入り会い林野の近代化法案が通ったわけです。ところが、あれからの進行状態というものは、いまだ報告を聞いておりませんが、私の知る限りにおいては、ほとんど効率的には前進をしておりません。したがって、今度のこの問題についても、税金をまけてやるからこれを出せ、こういう形で、いわゆる中規模以上の林業家に対する税金をえさでつる方法、そういう方法で私はかなりついてくる面があると思います。ところが、先ほどからたくさん議論が出ておりますように、メリットのない零細五ヘクタール以下の林業家というのは、こんなのに乗ってこない。そうすると、森林法の一部改正というものは、大森林家に対する税金をまけてやるための隠れみのである、こういうふうにうがった見方をしている人もあるわけなんですが、そういうふうな考え方も、あえて私は当たっておらないとは言えないと思う。その点について、はたしていま考えておられるような計画を遂行するうちに達成できるとするならば、どのような方法で、指導あるいは助言、勧告、いろいろな形で行なっていかれると思いますが、それをやられる意図を持っておられるのか。そして年次計画をどういうふうに考えておられるのか。十年ということでございますが、年次計画をどういうふうに考えておられるのか。これもあわせてお伺いしたいと思います。
  122. 若林正武

    若林政府委員 この新しい制度をどうやって細部末端まで通していくかという問題でございますが、都道府県計画を担当いたしております職員がございます。さらにまた、各地区に、御承知のように、林業改良指導員というものも都道府県のほうで設置をいたしております。こういうふうな県の職員あるいは森林組合、さらに市町村、こういうものを対象にいたしまして指導啓蒙いたしまして、軌道に乗せてまいりたいというふうに考えているのでございます。  それから第二点のお尋ねの、年次計画はどうかという問題でございますが、面積で出ておりますので、ちょっとお聞き苦しいかと思いますが……。
  123. 森義視

    ○森(義)委員 パーセントで言ってください。
  124. 若林正武

    若林政府委員 パーセントでちょっと出ていないのでございますが……。
  125. 森義視

    ○森(義)委員 それではパーセントであとで資料として出してください。
  126. 若林正武

    若林政府委員 では、後ほど資料として提出させていただきます。
  127. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、この法案の第十一条の五項ですね。施業計画知事が認定する場合、第十一条の五項に「都道府県知事は、第一項の規定による認定の請求があった場合において、当該森林施業計画内容が左の各号に」云々と書いてありまして、「森林施業計画対象とする森林の規模に応じ、森林生産の保続」云々と、ここで認定を下す、都道府県知事の裁量があるわけなんです。この基準はどういうものをさしておられるのか。これはあらかじめこちらのほうから、この法ができますと、これを遂行するについての具体的な施策のいろいろなものが細則という形で出される計画を持っておられるのかどうか、もし持っておられるとするならば、この都道府県知事の裁量にまかされる認定の要件を満たす諸条件をどう考えておられるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  128. 若林正武

    若林政府委員 認定基準の考え方につきまして御説明申し上げます。  一、樹種または林相の計画的改良がはかられていること。二、適正な林齢で立木の伐採計画されていること。三、収穫の保続がはかられていること。四、伐採したあと地の更新と、更新した森林の保育が十分にはかられていること。  以上でございますが、この認定基準を適用いたします場合に、面積で三十ヘクタール未満と三十ヘクタール以上とに分けて考えておるのでございます。ただいま四点について申し上げましたのは、三十ヘクタール以上の認定基準でございます。三十ヘクタール未満のものにつきましては、先ほど申し上げました第三番目の収穫の保続がはかられていること、この要件につきましては考えておらないのでございます。したがいまして、一、二、四の要件を満たしておれば、三十ヘクタール未満のものはよろしい、こういうような考え方でございます。  三十ヘクタールで線を引いた理由でございますが、今後の森林資源の基本計画というものを前提に考えました場合に、昭和九十年におきまして人工林率が約六〇%ということになるわけでございます。したがいまして、三十ヘクタールの中で約二十ヘクタールぐらいは人工林になるであろうという一応想定をいたしまして、この二十ヘクタールが連年伐採ができるという、一つの保続ができるという考え方に立っておるわけでございます。ということになりますると、毎年〇・五ヘクタール伐採するということになるわけでございますが、機械化の生産方式の最小の作業単位が〇・五ヘクタールというふうに私ども考えておりますので、そういう意味合いからいたしまして、三十ヘクタールというところで一応線を引いて、収穫の保続がはかられるかはかられないかということをそこで区別をいたしておるのでございます。
  129. 森義視

    ○森(義)委員 ちょっとその説明ではなかなかわからないのですが、要するに、規模と言われるのは、三十ヘクタール以上と以下で認可条件の満たすべき条件が違う、こういうことのような説明であります。そこで、県はそういうものを認可するということになりますと、かなり事務量が増大すると思うわけですが、どのくらいの事務量が増大し、その事務量の増大に伴う事務費の問題については、どういうふうに考えられておるわけですか。
  130. 若林正武

    若林政府委員 事務量の増減の関係でございますが、森林施業計画を立てる者に対する指導、援助、あるいは森林施業計画の審査及びこれの実行の確認等の業務というものが新しくふえるわけでございます。しかしながら、指導、援助及び実行の確認につきましては、従前から森林計画樹立事業及び林業普及指導事業等といたしまして、類似業務を行なっておりますので、これらの業務が直ちにそのまま業務量の増大というふうにはならないわけでございます。また従来から実施してまいっております公有林の経営計画整備事業というものが、今後は廃止をされるわけでございます。したがいまして、森林施業計画制度にこれが吸収されるということ、さらにまた、森林調査業務というものが、空中写真の利用等によりまして効率的に実施されつつあること等の、業務量の減少要因というものもございます。この結果、この制度実施によりまして、全体としての若干の業務量の増大が見込まれますが、これに対しましては、今後におきましても業務の合理化等を検討いたしまして、都道府県の負担にならないように配慮をしてまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  131. 森義視

    ○森(義)委員 若干の事務量の増大でこれができますか。かりに個別施業計画を出す場合に、森林家は全所有山林を出すわけですね。それがはたして全所有山林であるかどうかということを調べるだけでもたいへんですよ。現状は大山林地主になるほど隠しをたくさん持っておるわけです。それがはたして全所有山林の施業計画であるか、施業案であるかということを調べるだけでもたいへんなことになる。あなたはいま航空写真の発達等によってと申しますが、現在税務署ですら大山林地主の所有面積を押えていない。それだけ大きな規模の民有林所有者がいるわけです。しかもそれが二県にも三県にもまたがる。その場合には国でやると言っておりますけれども、それぞれの府県にあるところの民有林の所有面積というものは県がやるわけなんです。そういう場合に、事務量の若干の増加でやれるというふうな考え方だったら、私はたいへんなことになると思います。もちろん、指導だとか援助だとかいう問題は、いままでの計画制度の中で、地域森林計画のあれでやっておるということでございますけれども、新たに法律ができてこれが認可制度になりますと、この法律の各条文に適合したところの審査を完全にやろうとすれば、たいへんな事務量の増加になると思うのですが、その点について何か具体案を持っておられないようないまの答弁であったわけですが、具体案はありますか。どのくらいの事務量の増大になって、どのくらいの補助をやらなければいかぬだろうかということがあれば、再度お答え願いたい。
  132. 若林正武

    若林政府委員 先生も御承知のように、都道府県地域森林計画というものを策定いたします場合に、森林調査を実施いたしております。五年のローテーションでやっておりますので、五年置きに再調査をずっと行なってまいっておるわけであります。それが森林簿という形で残されておるわけでございますが、これには所有者ごとの、また地番ごとの森林資源内容あるいは面積その他詳しく調査をいたしたものがあるわけでございます。今回の森林施業計画というものを策定いたします場合には、当然こういう調査資料というものをもとにいたしまして施業計画編成してまいるということになるわけでございますので、そういった面で特にその事務分量がふえるというふうなことはあまりないというふうに考えております。
  133. 高見三郎

    ○高見委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  134. 高見三郎

    ○高見委員長代理 速記を始めて。
  135. 森義視

    ○森(義)委員 審議に協力するという意味で、いろいろのことをお尋ねしたいのですけれども、要点をしぼってお尋ねしたいと思うわけですが、この法第十二条で、施業計画を変更をせねばならぬということが生じた場合に、実際問題として、本人がそういう意思でなくても、労働力の不足だとかあるいは林道が計画どおり進まないとか、そういうことで施業案を心ならずも変更せざるを得ないという場合も生じ得るわけです。そういう場合においてはどういうような処置をとられるか。本人が提出した施業案が、完全に遂行したいという意思を持ちながら、労働力の不足だとかあるいは自然の天候、気象の影響、あるいは林道の計画がスムーズに進まないとか、いろいろな他動的な条件が生まれてくる場合があると思うのです。そういう場合における施業計画の変更の場合においては、一般の変更と同じような、いわゆる恩恵的なものを取り消すということだけで終わるのですか、どういうふうにお考えですか。
  136. 若林正武

    若林政府委員 お話のような場合におきましては、一般の変更と同じような手続をとるということになるわけでございます。
  137. 森義視

    ○森(義)委員 一般の変更と同じような形ということになれば、要するに、施業計画を遂行したときに受ける恩恵をはずされてしまうわけですね。
  138. 若林正武

    若林政府委員 お話のような場合におきましては、認定された施業計画どおり施業をやらなかったということで認定を取り消すということにはならないのでございまして、必要に応じて施業計画の変更をやるということでございます。
  139. 森義視

    ○森(義)委員 それから、共同で行なう施業計画ですね。これは先ほどから質問に出ておりましたが、実際問題として、五ヘクタール以下の零細規模の森林所有者、これは平時においても林業経営をしてない人ですね。いわゆる財産保全的に持っておる。こういう方々が共同して施業案を出すという場合には、具体的にほどのような方法で共同施業案をつくるのですか。たとえば散髪屋さんがあるところに三ヘクタール持っておる。その近くに違った町の銀行家が持っておる。自分の生活をささえる主たる収入源がほかにある。そういう方方が財産保全的に山を持っておるわけですね。そういう方々が共同して施業案を出すというようなことは不官能に近いと思うのですが、そういう場合にはどういうふうな指導をやられるのですか。
  140. 若林正武

    若林政府委員 共同で施業計画をつくるということになりますと、お互いの森林所有者同士というものが、それぞれ施業計画の作成なりあるいは認定されたものの実行という面につきまして責任を持つわけでございます。したがいまして、ただ単にそこに山があるからということで、一緒にくっつけて共同の施業案をつくらせるというふうな指導はいたさないつもりであります。
  141. 森義視

    ○森(義)委員 したがって、いわゆる零細規模の森林所有者は共同して施業案を出すというのは、ごく限られた特定の条件が整ったところだけだ、こういう意味ですね。そうでなければ、零細規模の森林所有者には所有地が一定してないというところが多いわけです。一定してないというよりも、その地域に固まってない場合が多いわけです。したがって、零細規模の施業案は共同で出すというのだけれども、事実問題として、そういう場合はごく限られた地域においてしかできないと思うのですが、その点はどうですか。
  142. 若林正武

    若林政府委員 私どもといたしましては、なるべく協業化を促進いたしたいという考え方を持っておりますので、共同で施業計画をつくってもらうように指導してまいるつもりでございます。どうしても共同でできないというふうな場合におきましては、単独で施業計画編成するということもあり得るわけでありまして、両々相まちまして零細規模の施業計画というものも促進をしてまいりたいというふうに考えております。
  143. 森義視

    ○森(義)委員 そういうことが実際問題として私は不可能に近いことだと思うので、おそらく十年たっても、先ほどの報告では四〇%しか出てこない、六〇%漏れていくというのは、そういうものをさしておられるのだろう、こういうふうに理解をいたしております。  それから、零細規模の森林所有者に対する恩恵というのですか、メリットというのですか、そういうものが非常に乏しい。こういうことについて先ほど長官から答弁がございました。私は、この際、零細規模の人たちの共同施業案に対して伐調資金を活用してはどうか、こういうふうに思うわけですけれども、おそらく林野庁当局でも、この法律改正で特別の恩恵を受けるのは、一定規模以上の林業家が恩恵を受ける度合いが非常に高い、こういうようにお考えになっておるのは当然だと思います。しかしながら、零細林業家にもこの法案の施行に伴うメリットというものを何らか考えなければならぬというふうにお考えになっておると思います。そういう場合に、当然伐調資金を使ったらどうかという意見も出たように聞いておりますが、この伐調資金が使えないという結論が出ておりますが、どういう点で使えないのか、その点について説明していただきたい。
  144. 若林正武

    若林政府委員 優遇措置につきましては、大面積所有者であるがゆえに特に優遇するというふうな考え方をとっておらないのであります。御承知のように、零細所有者の優遇措置につきましても、税法上では所得税あるいは相続税の面におきまして優遇措置を考えておりますし、さらに造林の補助金の面におきまして、これは零細規模所有者だけでございますが、補助金のかさ上げということも考えておるのでございます。  そこで、ただいまお尋ねの伐採調整資金の問題でございますが、御承知のように、伐採調整資金は、昭和二十六年の普通林の伐採許可制度実施に伴いまして発足をいたしまして、昭和二十九年に保安林が貸し付け対象に含められ、昭和三十七年に普通林の伐採許可制度が廃止されましたために、現在では貸し付け対象として残っておりますのは保安林に限られておるのでございます。このように、伐採調整資金の貸し付けは、公益的な要請に基づきまして国により一方的に伐採を制限された森林の立木維持の実をあげますとともに、このような個人財産に対する一方的な制限を代償する措置といたしまして講ぜられてきたものでございます。一方、この森林施業計画制度につきましては、森林資源の保続培養森林生産力の増進のための諸施策の効果的な実施をはかるために、経営主体ごとの自主的な森林施業計画につきまして認定の措置を講じようとするものでございます。森林施業計画に従いまして施業する森林所有者は、そうでない者と比較いたしまして、伐採の任意性というものは確かに制約を受けるのでございますが、その制約は保安林制度におきまするような伐採の制限等に比べまして、国の一方的な規制に基づくものではございませんし、また結果として、自巳の所有いたしておりまする森林経営改善に資するものであるという観点からいたしまして、趣を異にいたしておるのでございます。さらに、現行伐採調整資金の融資の実績は、資金ワクといたしまして大体毎年二億準備をいたしておるのでありますが、現実には四千万前後という貸し付けの実績になっております。したがいまして、そういった実績の面から見まして、この森林施業計画の認定を受けました中小規模の森林所有者につきましても、この種の資金に対する必要性というものは、さほど大きくはないのではなかろうかというふうにまあ考えておるのでございます。また、かりにそのような資金需要が出てまいりました場合におきましても、その多くは現在ございまする林業経営維持資金の貸し付けによってもある程度対処できるのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。  以上申し上げましたような現行伐採調整資金の沿革、森林施業計画制度趣旨等にかんがみまして、当面森林施業計画の認定を受けた中小規模の森林所有者伐採調整資金を貸し付けることは考えておらないのでございますが、今後の取り扱いにつきましては、この新しい制度実施状況等を考慮いたしまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  145. 森義視

    ○森(義)委員 何とかして貸さぬでおこうと思って理由をつけようとすれば、いま長官のおっしゃったような理由になろうと思います。確かに保安林と同じように取り扱うことはできないと思うのです。しかし、少なくとも国から法律規制された施業案を出して、個人経済的合理性が制限されるのに対して、それに対する見合いのものはないというのは私はおかしいと思うのです。この伐調資金ができたのは、先ほど説明がありましたように、伐採許可制度ですね。そのときには、たしか昭和三十五、六年ころは十八億くらいあったわけです。十八億か十九億かあった。これが許可制度がなくなって、今度保安林を対象とするようになりましてから二億くらいに減ったわけです。それは三十七年からです。確かに、それは使われている金というのは、その中で、保安林のほうは三千万から四千万くらいしか使われておりません。しかし、私は、この伐調資金というのは、そういうふうな個人経済的合理性を制限する代償として出されているという精神、その精神からくむならば、国の計画施業計画をつくって乗り出してくるというのは経済的な合理性じゃないですよ。そこが問題なんです。きょう午前中から論議をしておる。林業基本法の精神にのっとったところの、個人のいわゆる経済合理性に基づいて施業案を出すんじゃなくして、国の森林計画制度に基づいたところの施業案を出すわけなんです。さすれば、個人施業案というものは、個人経済的合理性を追求するために出すんだ、結果としてそういうものが出てくるでしょう。しかし、この施業案をつくる場合においては、最初からそういう趣旨でつくられるものじゃないのです。国がこれから助言、指導監督をしていく場合には、全国森林計画地域森林計画、そしてその計画に従わせるところの個人林業家に計画を出させていくわけです。したがって、自分の切りたいときに切れない。少なくとも施業案にのっとった場合においてはそれに従っていかなければならぬ、こういう半強制的な、やはり経済合理性を制限する結果を招来するわけなんです。さすれば、私は、伐採許可制度のときにおいて生じたこの伐調資金というものをこの法案の成立と同時に活用することを考えて当然だと思うのです。先ほど申しましたように、この森林法の一部改正では大林業家の税制がどの程度になるのか。私も資料をいただきました。ずいぶんと安くなるわけです。大きな林業家はこの施業案を完全に遂行した場合においては、ものすごく税金が安くなるわけです。ところが、零細林業家においては、相続税だとか所得税で減免措置があるが、相続税や所得税のたいしてかからない小さな林業家には、そんなもののメリットというものはもう知れているわけです。恩典というのは知れているわけです。だから、しかも日本林業の九〇%を占める五ヘクタール以下の林業家をもこの全体的な計画にのせようとするならば、そこに何らかの政府として施策があってしかるべきなんです。何もこれは金をやれといっているんじゃないのです。貸すわけなんです。だから、伐調資金はあとで考えるというのではなくして、当然、林野庁の内部におけるこの法案の論議の中で、零細規模の林業者に対して、この施業案を完全に遂行する人々に対する恩恵的な措置としてどうするかということは、当然論議されていいはずです。ところが、先ほどの答弁を見ますと、かなり論議されたようです。論議されたけれども、どうして出さないでおくかということで論議されているような形にしか私はくみ取れないわけです。これは当然私は出していただきたいと思うのです。また法律的にも出せると思うのです。この金融公庫の伐調資金制度の目的と意義というのを読んでみますと——ちょっと長くなりますのであれですが、精神は、今度の施業計画を出した者に対して当然貸し付けられるところの精神がうたわれてあります。この点について検討されたかどうか。いわゆる伐採調整資金の融資制度の目的と意義というものを検討して、今度のこの個別施業計画案を完全に実施した人々に貸し付けた場合において、その精神に反するかどうかということを林野庁のほうで検討されたかどうか、まずそれをお聞きしたい。
  146. 若林正武

    若林政府委員 検討は、林野庁内部はもちろんでございますが、関係方面等ともこの点につきましては十分協議をいたしたのでございます。その結果、現行伐採調整資金ということでは無理であるということになったのでございます。
  147. 森義視

    ○森(義)委員 現行伐採調整資金で無理だということならば、それに類似する方法で、その個人の任意時に伐採できない、いわゆる経済合理性を制限することに対する裏づけを何らかの方法で考える意図があるかどうか。たとえば、施業計画を出して施業をやったけれども、子供が嫁にいく、いま金が要る、切らなくちゃならない、この場合切れない。他と共同で出しておりますから、他にも迷惑をかけますから、自分は切れない、どこかで金は借りなければならぬ、その場合に高利の金を借りなければいかぬ、こういうことが出てくるわけですよ。現実に共同で出した場合に、その一人の個人が変更することで全体の計画が狂ってくる、そうでしょう。そうすると、たいへん迷惑を及ぼすわけですね。そういう場合にどこかで金を借りなければいかぬでしょう。共同施業案を出したために、自分の財産を持ちながら必要なときに必要な金が得られない、こういうことが起きてくるわけなんです。そういう場合に伐調資金が使えない、借りられないとするならば、ほかに何らかの方法で金を貸せるようなことを検討したかどうか。
  148. 若林正武

    若林政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の伐採調整資金の実績等も考慮いたしましたし、いま先生からお話のございましたような場合の救済策といたしまして検討いたしました結果、現在ございまする林業経営維持資金というものをこれに充てたらどうかということで現在考えておるわけでございます。
  149. 森義視

    ○森(義)委員 それではこの法律にちょっと賛成しかねますね。私のほうで調べましたこの法案による租税特別措置法の税制上の恩典ですね。この恩典によりますと、現行の税制で、五百万所得の人に対して三十六万五千二百六十五円。ところが、今度のこの租税特別措置法のあれを受けますと、十一万六千二百六十五円安くなる。私たち国会議員は年間五百万の所得で毎月七万九千円、年間百万円くらい取られているわけです。ところが、林業税制というのは非常に優遇を受けているわけです。この三十六万五千円が二十四万九千円、約十二万安くなるわけですから、これが一千万くらいのものになってまいりますとずいぶん差が出てくるわけなんです。そういう大森林家は租税特別措置で非常に優遇を受けているわけです。今度の施業計画を完全に実施した場合は。ところが、いま言った零細規模の林業家が国の計画にのっとって協力しようとして共同して施業案を出した場合、途中で金の必要が臨時に起きた場合、自分の持っておる財産の山を切ることはできない。むすこの嫁をもらおうと思って一つの離れを建てようとしたときに、高利の金を借りなければならないということになってくる。そういう具体的な事例を勘案して、なおかっこの零細の林業家に対しては何らの恩典も与えることを考えていないということはおかしいのです。それは、この森林法の一部改正は、大森林家の税金をまけるためにつくった法律としか言えないわけです。大森林家は、こういうものをやらなかったところで、今日やはり合理的な自己の森林経営をやっているわけなんです。これを出すからといって、そう大きな作業量が要るでも事務量が要るでもないのです。ただそのことがこの法律に適合しておるというだけでそれだけの恩恵を受けるわけです。ところが、小規模の林業家というのは、一代、二代、三代くらいで山を売買するだけなんです。その人がたまたまそういう伐期が来ておるときにそういう場面に遭遇して金が要るというときに、その金がこの計画にのったために借りられない。こういうことに対して何の恩典も考えてないということでは、まさにこの法律は大森林家の税金まけの法律としか言えませんよ。それでは賛成しかねます。もう一度考え直してください。
  150. 若林正武

    若林政府委員 所得税の問題でございますが、御承知のように、今回の森林法の一部改正に伴いまして、所得税につきましては森林計画の特別控除二〇%ということになっておるわけでございます。これは定率で、大きいものも小さいものも一緒なことになるわけでございますが、課税の最低額、これが引き上げになるということで、零細所有者はそういう面で非常に救われると考えております。  それから、いま先生も例をあげてお話しになりましたが、私どもも一応この試算をいたしたものがございます。たとえば収入金額が百万円あったという場合でございますが、所得税の恩典がなかった場合、その場合の税額と、今度の森林計画の特別控除を適用いたした場合の税額を比べて、その比率を出してみたのでございますが、百万円の場合には五六%、二百万円の場合は六七%、五百万円の場合は六八%、一千万円の場合は六六%、こういうことで、むしろこの率から申しますと下に厚いということになるわけでございます。  それから、お話しの伐採調整資金でございますが、今後実施状況も見ながら十分に検討をやってまいるつもりでございます。
  151. 森義視

    ○森(義)委員 長官知っておられるとおり、二百町歩以上の林業家というのは、毎年大体五十年一周期として四百ヘクタール切っていけるんですよ。毎年この税金の恩恵に浴するんですよ。五ヘクタール以下の人というのは三代に一回ですよ。五十年というのは親子三代かかるのです。それに一回しかひっかからないわけです。だから、私の言うのは、二百町歩以上の大林業家というのは、五十年伐期で切っていけば四町歩ずつ切れるわけですから、毎年租税特別措置の恩恵に浴せるわけです。五ヘクタール以下の人というのは、何十年目かに一回のあれなんです。それしかこの恩恵に浴さないわけです。だから、一回が違うのですよ。だから、こういう零細規模の林業家に対して、この施業案に全部をのせていこう、しかも共同計画でのせていこうとする場合には、何らかのそういう経済的な貸し付け金、それを唯一のたよりにむすこの嫁の財産にと思っていた人が、この計画に一緒にのっていこうという気持ちを明らかにし、政府のいわゆる国内木材の自給計画に協力しようという姿勢を示してきておるのに、それに対してそんな所得税や相続税で若干のメリットがあるからということだけでは、私は、あまりにも大林業家に対する処遇と零細林業家に対する処遇との間に格差があり過ぎると思うのです。  それと、しかも伐調資金がわずか三十万円でしょう。この三十万円、五分の金を活用できないというようなことはないはずなんです。やる気があればできます。法制的にどこができないというのですか。ほかと相談したとおっしゃいますけれども、林野庁外部のどこができないというのか。林野庁がその気になるならばこれはできる問題だ。またやらなくちゃならない問題である。この森林法の一部改正で、大森林家と零細林業家の協力をしようとする皆さんとの間に、あまりにも恩典において格差があり過ぎる、こう思うわけなんです。いまの長官の答弁では、さらに伐調資金の活用について検討する、こうおっしゃっていますが、林野庁以外のどの機関と相談されてこれはいけないということになったのか。その点、先ほどおっしゃったが、もう一回答弁してください。
  152. 若林正武

    若林政府委員 部内の関係方面でございます。
  153. 森義視

    ○森(義)委員 農林省部内だけですか。先ほどは外部の関係筋ともというお話でしたが、いま、部内だけの話し合いで貸せない。私はどうもそれが合点がいかないわけなんです。少なくともこういう法律を出して、そしていろいろな恩恵的な措置を裏づけにしていく場合においては、常に零細林業家のことを最優先的に念頭に置きながら問題の処理を考えてもらわないといけない。ところが、この中に出てくる具体的な事例というのは、毎年三百万、四百万の所得をずっと続けておる大林業家はこの租税特別措置でずいぶんと恩恵をこうむりながら、一生涯において一回あるいは二代において一回しか切れない零細林業家について何の恩典もない。何の恩典もないと言えばあるいは語弊がありますが、たいした恩典もない。こういうことでは困ると思うわけです。したがって、これはどうしてもここで長官が答弁ができなければ、附帯決議として私たちは早急にこの伐調資金が活用されるような方向に努力をしたいと思いますけれども、長官、その点、庁内での、どうしてもこれを使うことができないという法的根拠をもう一回はっきり言ってください。法的にどうしても伐調資金を活用することができない、私はどうしても納得いかぬわけです。それだったら、調整資金の目的と意義について、これを一ぺん読みますよ。これを読んだら使えますよ。もう一回、どういう理由で伐調資金を使えないか、言ってください。
  154. 若林正武

    若林政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、伐採の制限の内容が違うわけでございます。保安林等国のほうから一方的に制限をいたしておるわけでございまして、そういった制限の内容が違うということで、現在の伐採調整資金の適用は不可能であるという結論でございます。先ほど申し上げましたように、関係方面とも協議をいたしまして、最終的に私どももそういうふうな結論になったのでございます。
  155. 森義視

    ○森(義)委員 非常にくどいようですが、確かに制限の内容が違うということは私も先ほどから認めておるところです。しかし、伐調資金ができた最初のあれは、いわゆる伐採許可制度に対してできたわけでしょう。少なくともそれは完全実施しようとすれば、一応伐採許可制度に準ずるものになるわけです。だから、私は、現在の保安林に伐調資金を使っておる性格と、今度の施業計画を完遂することに対する性格とは違うことはわかります。しかし、この伐調資金が生まれてきた精神というものは、いまの施業案を完全に遂行した人たちに対して貸し付けられるところの性格を持っておるわけです。だから、もし百歩譲りまして、伐調資金という形では貸すことはできないけれども、そういう施業計画の途中で臨時出費がある場合においては、低利の資金を限定して貸し付ける制度を別に設けるというならば、それでもよろしいのですよ。あなたは伐調資金、伐調資金と言って、伐調資金は使えないとおっしゃるけれども、伐調資金と違った——名前はどんな名前でもいいです。要するに、施業計画を出して、国に協力しようとした零細林業家が臨時に金が要る場合に、別な融資制度を考えるということならば、それのかわりとして、何も伐調資金という名前がついてなければいかぬというのじゃないのですよ。要するに、金利が五分ぐらいで、二十五年から三十年、金額は違いますが、大体長期にわたる金が借りられる、そういうものを貸すことができるとおっしゃるならば、私はそれで譲りたいと思います。いかがでございますか。
  156. 若林正武

    若林政府委員 林業経営維持資金の適用を考えております。金利等は伐調と同じように五分でございます。償還期限は二十年でございます。
  157. 森義視

    ○森(義)委員 伐調資金の問題についてはまたあとで論議をしますけれども、一応それにかわるべき資金を零細林業家に対して貸し付けることを考えておるということでございましたので、その点についてはこれで終わります。  いろいろ質問したいこともありますが、時間の関係がございますので、審議に協力するという意味で、きょうはこれで終わります。
  158. 高見三郎

    ○高見委員長代理 中野明君。
  159. 中野明

    ○中野(明)委員 先ほど大臣に質問したときに、細部にわたっては質問を残しておりましたので、時間も非常におそくなって皆さんに御迷惑のような気がするのですが、結論だけは出しておきたいと思いますので、二、三質問いたします。   〔高見委員長代理退席、仮谷委員長代理着席〕  いまも森委員からいろいろと質疑が行なわれまして、私のお尋ねしたいところも同様のところなんですが、政府の施策に協力した零細な山林所有者が途中でいろいろなことでお金が要るようになったときに、いま長官の答弁では、それについて考えておるとおっしゃっておりますが、伐調資金のようにちゃんとそれを借り入れする。手続その他非常に複雑なものがあればこれは何にもならぬわけですが、その点、私たちは、伐調資金にかわるものとして安心して責任を持ってそのお金は貸せるのだ、借りられるのだ、そういうことをもう一度確認しておきたいのですが、それさえ一点はっきりしてもらえば次の質問に移りたいと思います。
  160. 若林正武

    若林政府委員 私どものほうでいま考えておりますのは、林業経営維持資金の適用でございますが、手続その他につきましては伐採調整資金と変わっておりません。
  161. 中野明

    ○中野(明)委員 次に、先ほども大臣にちょっと申し上げましたが、もう一度確認のためにお尋ねしておきますが、現在山林所得者の中で税金を納めておる人は、何戸のうち何戸あるのかということをお尋ねしたいのです。
  162. 若林正武

    若林政府委員 一九六五年の中間農業センサスによりますと、昭和四十年におきまする保有山林がある農林家数は、〇・一ヘクタール以上五ヘクタール未満の階層が約二百十万戸でございます。それから五ヘクタール以上五十ヘクタール未満の階層が約二十三万六千戸、五十ヘクタール以上の階層が六千五百二十戸でございます。総数で二百三十四万三千戸でございます。この年の山林所得に対します所得税の納税者の数ということでございますが、約一万八千八百人でございまして、農林家一戸当たりの納税者を一人と推定いたしますと、農林家総数のうちに占める納税者数の割合は〇・八%というふうに相なっております。
  163. 中野明

    ○中野(明)委員 そうしますと、租税特別措置の恩恵を受ける人は、結局全体のわずかに〇・八%ということになるわけなんですが、私がお尋ねしたいのは、五ヘクタール未満の人たちがこの森林法が一部改正されることによって受ける恩恵、魅力というのですか、それはどこにあると長官自身お考えになっているか。結局、今回の一部改正によって五ヘクタール未満の山林所得者でもこれこれの恩恵があるのだということをはっきり教えてもらいたいのです。
  164. 若林正武

    若林政府委員 零細森林所有者が今回の制度改正に伴って受ける恩典でございますが、まず税の面におきましては所得税、相続税、さらに、これは零細所有者だけでございますが、造林の補助金の二十点加算、こういうふうな措置を考えておるわけであります。
  165. 中野明

    ○中野(明)委員 零細な人たちは、税に関しての恩典というのはほとんど感じない人が多いと私は思うわけなんです。ですから、税以外のことで、これが一部改正されることによってその人たちが恩典を受けることは、先ほど大臣にも私聞いておりましたように、結局今後のわが国林業を盛んにならす始まりになるのじゃないか。そういう点で少しもの足りないというよりは、大山林所有者に非常に有利であって、零細な山林所有者は不利じゃないか、この点を強く私感じておるわけなのです。その点もう一度、税以外で、ほんとうにこのように利点があるから、だから政府の施策に協力をして、そうしてがんばってほしい、こういうふうなことがほしいのですが……。
  166. 若林正武

    若林政府委員 税以外につきましての直接の恩典につきましては、先ほども申し上げました造林の補助金の問題でございます。それ以外に、こういった零細な森林所有者施業計画をつくります場合に、単独でつくりますと、生産力その他の問題からいきましてやはり問題があるわけでございますので、私どもといたしましては、共同で、一つの協業経営というふうな形態で施業計画をつくってもらおうというふうな指導をいたすつもりでございます。
  167. 中野明

    ○中野(明)委員 その程度の恩典でしたら、三十七年のときに改正があったようですが、現在その方針どおり指導したり、あるいは勧告、助言をして、現状の制度でそのままやっていけるんじゃないか、わざわざ一部改正する必要はないんじゃないか、そういうふうな考え方を私は持つわけです。大半の人たちが喜んで、自分の利益にもなる、同時に国策にも協力できる、そういうふうな制度、そういうふうな法の改正こそ望ましいのじゃないか、このように私ども常日ごろ思っておるわけなのですが、そういう点について、ことさらに改正される根本的な理由、これにちょっと私薄弱なような気がするわけですから、重ねてお尋ねしているわけですが、現状のままでやることができないか、そういう点、長官としてどうお考えになっておりますか。
  168. 若林正武

    若林政府委員 現状におきましては、この森林施業をいたします場合に、必ずしも適期——森林計画のほうでは標準伐期齢というのをきめております。これは地域別に、樹種別にきめておりますが、必ずしもそれに基づきます伐採が行なわれていない。また、造林等を行ないます場合、あるいは樹種、林相の改良をやりますような場合に、必ずしも計画的にこれもまた行なわれていないという実態があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、こういった零細所有者におきましても、適期に、しかも計画的に伐採をしてもらう、あるいは樹種、林相の改良等につきましても、これまた計画的に進めてもらう、こういうことによりまして、零細な森林でありましても、その森林資源内容というものは、それに伴いまして充実をしてまいるわけでございまして、そういった面で、森林所有者自体におきましても非常にメリットがあるということになろうかと思うのでございます。
  169. 中野明

    ○中野(明)委員 関連して、もう一度伐調資金の問題について確認をしておきたいのですが、三十七年の改正で、伐調資金が、農林漁業金融公庫法ですか、十八条に規定されておることから、保安林だけになってワクがはずされたのですが、今回また考え方をもとに戻されたわけですから、この点、伐調資金のほうも復帰させる、こういう議論も省内で出ておると思いますが、将来そのような考え方を持たれているかどうか、そうでないと片手落ちになるのではないか。三十七年のときには、わざわざ国会内でそういう議論があったにかかわらず、このままで改正して、指導または勧告でいくんだ、そのためにはずされたわけなのですが、それをこのたびまたもとに戻すわけですから、伐調資金のほうもちゃんともとどおりになるように考えられるべきが親切じゃないか、そう思うわけなんです。将来、その点復帰させるお考えがおありかどうか、お尋ねします。
  170. 若林正武

    若林政府委員 ただいまのところ、私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、伐採調整資金にかわりまして林業経営資金の適用を考えておるわけでございますが、今後この新しい制度実施の過程におきまして、その成果等も十分考慮しながら、必要があれば伐採調整資金というふうなものの制度化ということについても考慮をいたしてまいりたいというように考えております。
  171. 中野明

    ○中野(明)委員 それじゃ、時間もございませんから、最後に、認定の問題についてお尋ねして終わりたいと思いますが、都道府県知事が認定するわけですね。ところが、当人たちは善意で努力をしていこうという熱意を持っておっても、事実施計画実施段階に移らないような事態のときに、この認定を取り消されるということも起こり得るのではないか、このように私ども心配するわけです。この認定の権限を都道府県知事が持っているようですが、この認定を与える場合、あるいはまたその認定の取り消し、こういう点について、実情をよく見た配慮がどの程度されているか、あるいはまた認定を受けた人たちが施業計画を遂行していく上において、いろいろの点でどのような対策を持ってこれらの施業計画を遂行するように守ろうとなさっているか、それをお尋ねしたい。
  172. 若林正武

    若林政府委員 この全国森林計画の変更及びこれに伴いまする地域森林計画の変更を行ないました場合、これが直ちに地域森林計画内容あるいは個々の森林施業計画との内容不統一を招くかどうかということにつきましては、いろいろ問題がございまして、むしろこの森林施業計画に及ぼす影響というものは、内容的には少ないのではないかというふうに判断いたしております。したがいまして、そういった場合の計画変更というものはあまり出てこないだろうと考えておりますが、労働力の需給事情なり、あるいは林道開設の状況等に起因いたしまして、施業計画というものが順守をしていくことが不可能だというふうな事態が起きました場合等におきましては、私どもといたしましては、この認定を直ちに取り消しをするのだということではなくて、変更を行なうように指導いたすことにいたしておるのでございます。変更の手続や内容等についても極力簡易なものといたしまして、森林所有者の意欲というものをそこなわないように配慮をしてまいりたいというように考えております。
  173. 中野明

    ○中野(明)委員 最後に、要望を兼ねて申し上げておきたいのですが、私から申し上げるまでもございませんが、山林の所得というのは相当長期にわたって考えていかなければならない性質のものですから、先ほどから論議になっております零細山林所有者に対しての融資の道を林野庁も最高に努力をしていただいて、その人たちが喜んで国策に協力し、先ほども申し上げましたように、間接的には今度のような災害防止にも役立つ山林のことでございますので、その点特に力を入れていただいて、今後九〇%を占める零細山林所得者に重点を置いた施策、そしてまた態度を持って運営に当たっていただきたい、このことを要望を兼ねてお願いしておきますが、その点、一言だけ長官のほうから今後の決意をお願いしたいと思います。
  174. 若林正武

    若林政府委員 十分努力してまいりたいと考えております。
  175. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 次会は、明二十日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会