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1967-07-13 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 森田重次郎君    理事 東海林 稔君 理事 中村 時雄君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       小山 長規君    坂田 英一君       田中 正巳君    竹内 黎一君       丹羽 兵助君    野呂 恭一君       藤田 義光君    箕輪  登君       湊  徹郎君    粟山  秀君       赤路 友藏君    伊賀 定盛君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       柴田 健治君    島口重次郎君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    斎藤  実君       中野  明君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君  委員外出席者         参  考  人         (全国農民同盟         中央委員)   赤羽 重太君         参  考  人         (全国農業会議         所理事事務局         長)      池田  斉君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会専務         理事)     木下 保雄君         参  考  人         (全日本農民組         合連合会総務部         長)      中村  迪君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会理         事)      吉田 義美君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 七月十三日  委員小坂善太郎君、坂村吉正君及び鈴切康雄君  辞任につき、その補欠として箕輪登君、竹内黎  一君及び中野明君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員竹内黎一君及び箕輪登辞任につき、その  補欠として坂村吉正君及び小坂善太郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 七月十二日  中小企業を圧迫する農協事業の是正に関する請  願(大村襄治紹介)(第二九八四号)  同(加藤六月紹介)(第二九八五号)  同(亀山孝一紹介)(第二九八六号)  同(竹内黎一君紹介)(第二九八七号)  昭和四十二年産生産者米価に関する請願外二十  三件(安倍晋太郎紹介)(第二九八八号)  同外三件(阿部喜元紹介)(第二九八九号)  同外二十一件(荒舩清十郎紹介)(第二九九  〇号)  同(伊能繁次郎紹介)(第二九九一号)  同(太田一夫紹介)(第二九九二号)  同(木野晴夫紹介)(第二九九三号)  同(小坂善太郎紹介)(第二九九四号)  同外一件(神門至馬夫君紹介)(第二九九五  号)  同外一件(佐藤觀次郎紹介)(第二九九六  号)  同外五件(佐藤洋之助紹介)(第二九九七  号)  同外三十件(重政誠之紹介)(第二九九八  号)  同(周東英雄紹介)(第二九九九号)  同(中馬辰猪紹介)(第三〇〇〇号)  同外三件(堂森芳夫紹介)(第三〇〇一号)  同(野原正勝紹介)(第三〇〇二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第三〇〇三号)  同外五件(平岡忠次郎紹介)(第三〇〇四  号)  同外三十二件(保利茂紹介)(第三〇〇五  号)  同外百六十九件(増田甲子七君紹介)(第三〇  〇六号)  同外二件(毛利松平紹介)(第三〇〇七号)  同(山田耻目君紹介)(第三〇〇八号)  同外三件(山村治郎紹介)(第三〇〇九  号)  同外八件(米田東吾紹介)(第三〇一〇号)  同外四十一件(渡辺栄一紹介)(第三〇一一  号)  同外二件(渡辺肇紹介)(第三〇一二号)  同(小澤太郎紹介)(第三〇一三号)  同外一件(山口敏夫紹介)(第三〇一四号)  同外三件(赤路友藏紹介)(第三〇二八号)  同外二十二件(淡谷悠藏紹介)(第三〇二九  号)  同外四件(稻村隆一君紹介)(第三〇三〇号)  同(臼井莊一君紹介)(第三〇三一号)  同外八件(小川三男紹介)(第三〇三二号)  同外二十七件(角屋堅次郎紹介)(第三〇三  三号)  同外二十六件(川野芳滿紹介)(第三〇三四  号)  同外十件(久保田藤麿紹介)(第三〇三五  号)  同外四件(神門至馬夫君紹介)(第三〇三六  号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第三〇三七号)  同外一件(始関伊平君絡介)(第三〇三八号)  同(島上善五郎紹介)(第三〇三九号)  同外七件(正示啓次郎紹介)(第三〇四〇  号)  同(周東英雄紹介)(第三〇四一号)  同(田中龍夫紹介)(第三〇四二号)  同(武部文紹介)(第三〇四三号)  同(中馬辰猪紹介)(第三〇四四号)  同外十四件(成田知巳紹介)(第三〇四五  号)  同外六件(葉梨信行紹介)(第三〇四六号)  同外四十六件(細田吉藏紹介)(第三〇四七  号)  同外一件(山村治郎紹介)(第三〇四八  号)  同(山本弥之助紹介)(第三〇四九号)  同(福田一紹介)(第三〇五〇号)  同外二件(中村庸一郎紹介)(第三〇五一  号)  同外三件(青木正久紹介)(第三〇八五号)  同(稻村隆一君紹介)(第三〇八六号)  同外十件(大野市郎紹介)(第三〇八七号)  同(太田一夫紹介)(第三〇八八号)  同(木原実紹介)(第三〇八九号)  同外二十六件(倉成正紹介)(第三〇九〇  号)  同外八件(始関伊平紹介)(第三〇九一号)  同(楯兼次郎君紹介)(第三〇九二号)  同外六件(中川一郎紹介)(第三〇九三号)  同(中澤茂一紹介)(第三〇九四号)  同外八十九件(永井勝次郎紹介)(第三〇九  五号)  同外二件(根本龍太郎紹介)(第三〇九六  号)  同(野間千代三君紹介)(第三〇九七号)  同(芳賀貢紹介)(第三〇九八号)  同外十三件(長谷川四郎紹介)(第三〇九九  号)  同(畑和紹介)(第三一〇〇号)  同外五件(美濃政市紹介)(第三一〇一号)  同外百四十二件(武藤山治紹介)(第三一〇  二号)  同(八木徹雄紹介)(第三一〇三号)  同外二件(柳田秀一紹介)(第三一〇四号)  同外三件(小沢貞孝紹介)(第三一〇五号)  同(春日一幸紹介)(第三一〇六号)  同(小平忠紹介)(第三一〇七号)  同(岡沢完治紹介)(第三一〇八号)  同(鈴木一紹介)(第三一〇九号)  同外四件(玉置一徳紹介)(第三一一〇号)  同外十件(門司亮紹介)(第三一一一号)  同(山村治郎紹介)(第三一一二号)  同外三件(赤澤正道紹介)(第三一一三号)  同(植木庚子郎君紹介)(第三一一四号)  農業協同組合農事放送施設の助成に関する請願  (佐々栄三郎紹介)(第三〇八〇号)  同外八件(周東英雄紹介)(第三〇八一号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願(黒田  寿男君紹介)(第三〇八二号)  米価に関する請願阿部哉君紹介)(第三〇  八三号)  同(森義視紹介)(第三〇八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  果樹保険臨時措置法案内閣提出第一二一号)  農林水産業振興に関する件(生産者米価に関  する問題)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  果樹保険臨時措置法案を議題といたします。  本案に対する質疑は昨十二日終局いたしております。  これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  果樹保険臨時措置法案原案のとおり可決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  3. 本名武

    本名委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決いたしました。(拍手)     —————————————
  4. 本名武

    本名委員長 この際、ただいま可決いたしました本案に、島口重次郎君外三名から、自由民主党日本社会党民主社会党及び公明党の四派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を求めます。島口重次郎君。
  5. 島口重次郎

    島口委員 私は、自由民主党日本社会党民主社会党及び公明党の四派を代表いたしまして、ただいま議決されました果樹保険臨時措置法案に対し、附帯決議を付すべしとの動議提出いたします。  まず、決議の案文を朗読いたします。     果樹保険臨時措置法案に対する附帯決議(案)  果樹農業に対する適切な災害対策確立喫緊性にかんがみ、政府は可及的速やかに本格実施への移行を図るとともに、左記各項の実現について十分考慮すべきである。       記  一 試験実施対象果樹として、かきその他果樹農業振興特別措置法適用対象果樹を追加することを検討すること。  二 保険金支払の充実を期するため、農業共済組合連合会による削減が行なわれる事態の生じないよう検討するとともに、果樹農業者の要望に即して無事戻しの実施に関する方針を明確にすること。  三 樹体保険については、早急に調査を完了し、試験期間中においても再保険その他の点において、収穫保険と同様に取扱われるよう措置すること。  四 加入者に対する交付金については、極力その交付割合を拡大し、加入を容易ならしめるよう努めるとともに、事務費については、その必要額を十分助成すること。  五 肉豚、鶏、畑作及び葉たばこに関する共済制度については、可及的速やかにその調査を完了し、制度化についての結論を得るよう努めること。  六 果実についても、その価格安定策について検討を加え、その対策に遺憾のないようにすること。  七 農業共済団体等職員給与の現状にかんがみ、その改善をはかるため事務費国庫負担の増額につとめること。   右決議する。 以上であります。  若干決議内容を補足説明いたしまするが、第二の削減の問題でありますが、できるだけ農業共済組合連合会に基金から融資をはかるようにいたしまして、運営の面におきましては再保険削減が行なわれないということを極力行政指導の面においてとられまして、かつ試験実施の段階においてその制度を明確にしてもらいたいことであります。  第三番の問題は、樹体保険につきまして、試験期間中においてできるだけ料金の算定、保険金額等の改正に関する適正な具体的な措置をやってもらいたいということであります。  その他につきましては、いろいろ申し上げたいこともありまするけれども法案審議の過程において十分明らかにされておりますので、省略をいたします。  何とぞ各位の賛同を得られますようお願い申し上げまして、私の説明を終わります。
  6. 本名武

    本名委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  ただいまの島口重次郎君外三名提出動議賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  7. 本名武

    本名委員長 起立総員。よって、本案附帯決議を付するに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま御決定になりました附帯決議につきましては、その御決議趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処いたしたいと存じます。     —————————————
  9. 本名武

    本名委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 本名武

    本名委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は、特に生産者米価に関する問題について、参考人方々の御出席をいただき、御意見を聴取することにいたします。  本日御出席参考人各位を御紹介申し上げます。  全国農民同盟中央委員赤羽重太君、全国農業会議所理事事務局長池田斉君、日本生活協同組合連合会専務理事木下保雄君、全日本農民組合連合会総務部長中村迫君、全国農業協同組合中央会理事吉田義美君、以上五名の方々であります。  参考人各位には御多用にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。目下本委員会におきましては生産者米価に関する問題について調査をいたしておりますが、本問題につきまして参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではありますが、参考人各位からの御意見の開陳はお一人おおむね十五分程度にお願いすることとし、その後委員からの質疑があればお答えいただくことにいたしたいと存じます。  まず、赤羽参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  12. 赤羽重太

    赤羽参考人 赤羽でございます。全国農民同盟を代表いたしまして所見を申し上げまして、先生方の御参考に供したいと、こう考えております。  なお、全国農民同盟農協と同じ方式で算定いたしました要求米価を持っております。その点、ひとつあらかじめ御了承をいただきたいと思います。  私は、本論に入ります前に、前提といたしまして、昭和三十三年ごろからの生産者米価物価の関連につきまして、私の乏しい記憶を整理いたしまして最初に御参考に供したいと、こう考えております。なぜと申しますと、朝鮮戦争以来、三十三年、四年ごろにかけましては物価並びに生産者米価もやや安定した形で推移をしておりまして、三十五年ごろから相当の変化が出てまいっておるからでございます。  三十三年に、御承知のように、生産者米価は百五十キロ当り五十銭の値上がりをいたしております。それから、三十四年は同じく百五十キロ当り十円の値上がりでございます。ここまでは、朝鮮戦争以来物価米価関係は相当安定した形で推移をしておるということが申し上げられると思います。  しかしながら、三十四年の暮れに、電気料金約一八・七二%の値上がりがございまして、これがさらに通運料金あるいはガス料金、あるいはこれが連鎖反応を起こしまして私立大学授業料大幅値上げを巻き起こしております。これに刺激を受けまして、三十五年の初めになりますというと、入浴料から牛乳、パン、みそ、しょうゆにまで物価値上がりが高い率で波及をいたしておりまして、前年度の一・三%の物価値上がりは、三十五年に至りますと一躍実に三・七%という大きな物価上昇率を見ておるわけでございます。一方、この年の米価はいかがであるかと申しますと、前年の一万三百三円に対しまして、わずかに〇・八%の値上がり、すなわち、数字にいたしまして、百五十キロ当り七十二円の値上がりにすぎないのでございます。それから一年おくれまして三十六年に、米価は六百四十七円五十銭、パーセントにいたしまして約四・八%、前年度の激しい物価上昇あとを受けて引き上げされております。  さらに、三十八年には、物価上昇率が七・八%と史上最高の記録を出したのでございますが、この値上げ中は、かえって値上げ幅は下がっております。翌三十九年に、ようやく生産者米価は一万五千円台に到達をいたしております。  また、反対に、三十九年に、御承知公共料金のストップがございまして、ここで物価上昇率は四・八%に押えられておりますが、米価値上がり幅は千三百七十四円と、前年度の値上げ幅を二三%も上回っておるのでございます。  これが昭和三十三年以降の生産者米価のたどった経過でございます。  ここで申し上げるまでもございませんが、生産者米価は、常に物価上昇あとを追いまして、わずかに手直しされてまいって今日に至っておるのがこの経過でございます。特に、三十五年から同盟あるいは農協が一体になりまして、このままではわれわれの生産は確保できないということで、この生産者米価の適正な点を確保するようにという、いわゆる米価闘争世上で呼ばれておりまするが、そのような運動が起こったのも、このような経過の中で巻き起こってまいったものと御了解をいただきたいと思うのであります。  そこで、次に本論に入りますが、私どもは、政府に対しまして、このような矛盾を解決してわれわれが安心して生産できますようにというお願いを累次毎年繰り返してまいっておりますが、その際に私どもが聞かされますことは、生産者米価というものは物価政策上きわめて慎重に扱わなければならない、したがって、諸君の要求するような形の中では生産者米価等をきめるわけにはいかないし、それは日本物価体系全般をぶちこわすことになるだろう、こういうような仰せがあるわけでございます。私どもは、広義物価政策の中では、われわれの生産米価にいたしましても、われわれも国民のそれぞれの単位といたしまして、それなりに協力してまいらなければならぬということは十分に考えております。しかしながら、いわゆる物価政策、あるいは国際比価論、あるいは需給が緩和したからというような、ことし特に強調されておるその点に関しましては、われわれはなかなか納得がいかないのでございます。  たとえば、国際比価論の問題にいたしましても、日本のわれわれの生産者米価が外米と比較した場合に約倍の価格ではないかというようなことは、これは結果から出てまいったことでございまして、日本経済体系、そこから出てまいりまする物価体系、そういうものが全部そのように一つに足並みをそろえて進行していく中では、生産者米価も結果として出てまいったことでございまして、後進地帯農業生産米価日本経済体系の中で生きているわれわれの生産者米価と、結果的に出てまいる数字をもって比較することは、その内容にきわめて矛盾があるのではないかという感じを持っております。  さらに、需給緩和論の問題でありまするが、昨年の経過は御承知のとおりであります。本年は二カ月の備蓄があるから、したがって生産者米価というものは適当に押えるべしという御議論が多いのでございますけれども、これも私どもといたしましてはとうてい納得するわけにはまいらないのでございます。なぜかと申しますれば、いわゆる指数化方式を編み出していただきました小倉先生でございますが、これは正直に申し上げまして、私どもの仲間ではきわめて評判の悪い方でございます。そこで、この指数化方式を編み出していただきました小倉先生が、一昨年某雑誌に評論を発表しております。これは米の需給論でございます。この方がどういうことを書いているかと申しますと、私はいまでもよくこれを記憶しておりますが、米の需給というものについて、いわゆる十年周期論ということを主張しておられます。たとえば、終戦直後におきまして、一億民族の生きるために、われわれ農民は一生懸命で政府指導の中で米の生産に従ってまいりました。そして、このわれわれの米の生産努力の中で一億民族の生命は保たれ、エネルギーが蓄積されまして、そしてこれが今日の日本経済の発展を見た重要な要因であると申し上げても差しつかえないと考えております。それから約十年いたしまして、世界でまっ先に日本の米の農業生産性というものを回復したということは、私どもは誇ってよろしいじゃないかと考えておるわけでございます。これが十年でございます。約十年たちまして、どうやら一億民族が食っていけるような米の確保ができた。それから約十年たちまして、昨年を頂点といたしまして、米の需給が非常に逼迫した。ですから、この関係は、お米というものは、十年たちますというと非常に逼迫する、あるいは余る、やや余裕が出てくることもあるでしょう。これを十年周期論という形で小倉先生評論を書いているのでございます。したがって、このような十年周期で大きな変動が起こる生産物でございますので、価格というものも十分に考慮して、適正なるものを考えて、そして生産を落とさないように、そういう施策が必要であるということを小倉先生は書いておるのでございます。私ども、これに当時共鳴をいたしたのでございますけれども、最近、あの先生が、その生産者米価を不当に押えるような指数化方式を編み出したということは、まことに残念でならぬのでございます。また、広義物価政策のたてまえ、これは、先ほども申し上げましたように、われわれも国民の一人として協力するにやぶさかではございませんけれども、残念ながら、いままでのわれわれの生産者米価の経緯が、先ほど前提で申し上げましたように、物価が先に上がって、これでは食えないだろうから多少めんどうを見てやろう、まあ思いつき程度手直しをしてやろうという形で、今日まで生産者米価あとをついて回っておるのでございますので、生産者米価が上がったことによりまして日本物価体系がくずれたという事実は全然ないと私は確信いたしております。  したがいまして、このような観点からまいりますと、一昨日政府から米価審議会に諮問をされましたところの指数化方式、これは時間がございませんのでこまかいことは申し上げませんが、きわめて現実に遊離したものでございまして、機械的、自動的にただ数字をはじくだけであって、生産農民努力というものは何ら勘案されておらないということははっきり申し上げられると思います。  それから、積み上げ方式にいたしましても、残念ながら私どもは、今度御諮問なさいましたような積み上げ方式はなかなか納得がいかないのでございます。これも指数化方式と大同小異の点がございまして、特にわれわれが重視しておりますところの家族労働賃金あるいは地代、資本利子関係におきましてきわめて現実に遊離したような数字が出てまいっておりますので、この点のほんとうに公正な手直しがならない限り、私どもはとてもこれに納得は申し上げられないというのがこの心情でございます。  したがいまして、今度米価審議会に対しまして政府が御諮問なさいました三方式というものは、私が冒頭に申し上げましたような前提から考えますと、何とかして低い米価で、適当に低米価にこれを押えてまいろうというお考えが背後にあって、そういうための方式ではないかと考えざるを得ないわけでございまして、これはよく世上政治米価ということを申しますけれども、私どもにいたしますれば、これは低く押えてまいろうという財政措置上の低米価を押しつけておるのでございまして、これは決して政治的に米価が不当に高くなったということにはならないと、私どもそのような判断をいたしておるのでございまして、したがいまして、この三方式ばかりでなくて、農協並びに同盟が従来から主張しておりますところの、特に昨年から主張しておりますところのいわゆる家計均衡方式、都市の労働者農民所得というものを同じに並べるような御配慮、しかも農民年間所得均衡の中で一億国民に安心して米を提供できますような、そういう生産努力を生み出すような、そのような方式をこの際本委員会におきましても決断をもって十分に御検討いただきまして、政府もしかり、それから生産者も安心していけるというような体制をぼつぼつ生み出す時期ではないか、そのような希望をもっておるのでございまして、どうぞひとつ、そのような意味合いにおきまして、本委員会で各先生方決断と勇気をもって、双方、生産者政府側納得できるようなそういう一つ方式、それは同盟並びに農協の要求している年間所得均衡方式でありますが、この点をお認めいただきまして、せっかく御検討いただきますことを心からお願い申し上げまして、私の陳述にかえたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  13. 本名武

    本名委員長 次に、吉田参考人にお願いいたします。
  14. 吉田義美

    吉田参考人 いよいよ米価問題が大詰めにさしかかってまいりまして、私どもの気持ちとしては、いま一日として落ちついておれない心境でございます。そういう中におきまして、本日、われわれの意見を聞いてやろうという当委員会のお取り計らい、まことに感謝にたえません。重複を避けましていささか所見を申し上げて、御先生方の十分な御配慮をひとつ特にお願い申し上げたいと思います。  私どもは、毎年こういった米価の問題につきまして運動をいたしているわけでございますが、特に従来の運動の結果反省をいたしまして、今年の場合におきましては、御案内のように、言論界あるいは財界方面、消費者代表の各位、その他関係方々と、中央及び地方を通しまして、われわれの主張いたしております点につきましては十分御理解がいただけるような努力も特にことしはしてまいったわけでございます。さらにまた、米価の要求ということとあわせまして、国内の食糧需給関係から見まして、あくまで、具体的には集団栽培、営農団地方式等の方途を講じまして、生産の増強にも一生懸命につとめているわけでございます。  こういうような中におきまして、私どもは、すでに各県の関係者の方々から先生方には十分私どもの主張し要請をいたしておりますこと等につきましては御高承いただいていると存じますので、あまりくどくどしいことは申し上げることを避けたいと思います。ただ、ただいま赤羽さんの御意見も出ておりましたように、いまのところ米価の決定は生産費及び所得補償方式によるということはこれは、もうすでにはっきりと各方面で統一した意見になっているわけでございます。  そこで、この生産費及び所得補償方式、さてその題目に沿う中身はと、こう申しますと、いま出ておりますのは、一つ指数化方式というのが出ております。一つには積み上げ方式というのが出ております。一つには、われわれ農業団体が言っております所得均衡方式。私は勉強が足りませんのでこれらの方式の定義をここで申し上げることはできませんが、私なりにこれらの方式を考えますときに、指数化方式というのは、あたかも元金に一プラス利率というものを乗じて元利合計を出す、その元利合計をもって米価とする、いわゆる一つの掛け算方式であると理解をいたしております。そこで、問題は元金にあるわけなんです。利率はその後の変化指数を乗じてというのですから、これは一応理解はできるのですが、元金そのものがはたしてあの三十九年のときの元金を台にしてよいものであるか、その正当性、妥当性ということについて私どもは全く納得、了解ができません。したがいまして、この指数化方式は、全くこれはちょうだいするわけにはいかぬ、こういう態度をはっきりいたしているわけでございます。  次に、積み上げ方式でございますが、これは、米を生産いたしますのにいろいろの要素がある、その一つ一つの要素を計測いたしまして具体的に数字を計算する、その数字を合計いたしましたものが、これがいわゆる積み上げ方式と言われているものだと思います。だから、指数化方式がかりに掛け算方式ということであるならば、積み上げ方式と言っておるそのことは全く寄せ算方式である、こういうふうに私どもは理解をいたしているわけでございます。  さて、いまいろいろ論議されております積み上げ方式、寄せ算方式でございますが、この寄せ算方式の中におきまして、米をつくり出します上のいろいろの各要素がある。その要素の中で私どもが非常に心配をし憂えております問題は——特に今年あたりそういう問題が若干取り上げられたかのように聞き及んでおります。ということは、あるいは付帯労働という表現であったり、あるいは間接労働であるというような表現であったりいたしまして、若干そういうものについての手直しがあるやにも仄聞はいたしておりますが、これは、米をつくりますことに若干の経験があり、あるいは農業に対しましての若干の知識を持っておいでの方であるならばどなたにも御理解がいただけるように、私どもが米をつくっております場合に、いろいろな自然現象に支配される。最近農機具等もどんどん使っておりますので、それを使って作業をいたしております上には、故障が絶無とはい言えません。損傷もあります。あるいはまた病虫害の異常発生ということも当然あり得ることです、しかし、これらの事柄はいずれも予知し得ざる不測の事態でございます。したがって、それに対しまして拘束される時間がある。われわれは待期時間ということばを使っているわけでございますが、こういうような拘束されます時間というものが、いま取り上げられております積み上げ方式の要素の中には全然入っていないのであります。直接実労働時間というものははっきり計測して出てはおりますけれども、予知し得ない不測の事態に対応いたしますいわゆる拘束される時間、待機労働時間といいますか、こういったものは要素の中に何ら考慮されておりません。しかし、実際としましては、前段申しましたように、米をつくるのにはそういう時間が要るんだということは十分御理解がいただけると私は思う。銀座の町中におる人にはわからないかもしれませんけれども、およそ常識のある人なら十分このことが御理解いただけるであろう。しかし、それを取り上げておらぬということは、それはそれなりに、それらの数値を計測するということが非常に至難である、一体どうしてそれを把握するか、こういうことになってまいりますと、はたと行き詰まる、こういうことでございます。そこで、そういう実労働時間のほかに待機する時間というものが当然に要るのだということが御理解いただけますならば、それを何らかの形で補完する、カバーする、プラスアルファをどう見積もっていくかということについての御配慮を切にお願いしなければならぬと思う。  そこで、そういうことがございますので、私ども農協といたしましては、いわゆる都市勤労者の年間所得に稲作労働を見合わしていくという所得均衡方式というものを打ち出したわけでございます。したがって、私ども所得均衡方式と申し上げておりますが、これは、一つの寄ぜ算の要素にはっきりそれを取り入れていただきますならば、いわゆる積み上げ方式にも基本は通ずるものでございます。しかし、いま取り上げられております積み上げ方式では、申し上げましたような不測のことによって起こり得るであろう拘束される時間というものを全然オミットされているからこそ、ここに当然それを補完する意味におきまして何らかの方法というと、いま私どもが主張いたしておりますようなことが農家、農村の実態、実情というものにぴったりする方式であると、いささかこの点は自負を持っておるわけでございます。  それで、生産費並びに所得補償方式という、ことばでは確認されたそのお題目に、いま並べました指数化方式あるいは積み上げ方式あるいは私どもが主張しております所得均衡方式、こう三つの案を並べてみますと、このお題目に最も近いという方式は、いささかてまえみそになるかわかりませんが、われわれが主張いたしておりますこれが最も実態、実情に即し、この方式が完全無欠だとは申しませんけれども、一番お題目に近づける算定方式であると強く私どもは信じております。  そういったこともまた素朴な生産農民所得につながっております。このことはぜひともひとつこの委員会におかれまして十分御検討いただき、いや御検討だけでなしに御配慮を賜わりまして、そうして何とか私どもの主張いたしております所得均衡方式をぜひひとつ取り上げて、ことしの場合はそれをはっきりと打ち出していただくというようなことを特にお願いを申し上げたいと思います。  その他、地代の問題もございます。あるいはまた資本利子の問題もございます。いろいろ問題があるわけでございますが、そういうことにつきまして十分関係者から皆さん方に御要請申し上げておりますので、いまここで蛇足を加える要はないかと存じます。  最後に一つお願いしておきますことは、いま申し上げました算定方式によって基本米価というものをはっきりひとつ打ち出していただきたい。そうして、政策的に奨励措置として出されております格差加算金等につきましては、あくまでこれは基本米価の外ワク、こういうことを強く私どもは期待をいたしておるわけでございますので、何とぞ当委員会におかれましては十分なお配慮を賜わりますように。  きわめて簡単でございましたが、一応意見として申し述べた次第でございます。(拍手)
  15. 本名武

    本名委員長 次に、木下参考人にお願いいたします。
  16. 木下保雄

    木下参考人 私は消費者団体側の意見を申し上げることになるわけでございますが、消費者側というのは、消費者米価にはずいぶん関心を持つのでございますけれども生産者米価には勉強が足りませんのであまり十分でないかと思います。同時に、消費者側といいましてもやはりいろいろな意見がございますから、私どもだけでどうというふうにも言えないかと思っております。日本生活協同組合連合会がいろいろな関係でこの問題に触れております場合のものの考え方でございますが、生産者米価のただいまの問題には幾つかの疑問は持っておりますけれども、どういう種類の疑問があるかということについてはあとで時間があれば申し上げるといたしまして、基本的にはどういうふうに考えるべきかということを、ややそろえたつもりでございます。  そういう考え方の中では、基本的に、米の生産を償うだけのことはしていただかなければいけないのじゃないかという考え方を持っております。  そういう考え方を持ちますゆえんは、私ども実は都市において消費者の生活をどう守るかということに触れております経験からいたしますと、このところ農村におかれても非常に大きな変貌があるのではないか。農村の生活の非常な変貌というものがいろいろな角度で説明をされておりますけれども、特に、数字の上から言いましても、兼業農家が圧倒的にふえていて七八・五%というような数字が出ておるところを見ますと、かつての農村と都市といったような関係からはよほど変わったものになってきておりますし、同時に、特に都市の労働者を中心として、私どものような運動の中では、たとえば経済のあり方におきまして非常に大きなひずみを感ずるのでございますが、農村の様子が非常に大きく変貌するということは必ずいろいろなひずみが生じてくるというふうにも感じますので、そういう点をきちんとして農業政策は立てていただかなければならないのではないか。  もう一つ、そういう点を別の角度から考えましても、私ども消費者として、国民の一人として、自分たちの主食をどこに生産を仰ぐかということについてはかなり関心を持つわけでございます。ですから、消費者団体の中においては、あるいは価格のいかんによっては外国から米を取れという声が幾つかございますし、あるいは私どもの周辺でもそういう声がなくはないのでありますけれども、私どもの団体が機関として話し合いました場では、むしろそういうことは日本の皆さんによって自分たちの主食をつくってもらうことが基本ではなかろうかということをごく平凡な意味で考えたわけでございます。そのことは、たとえば国際的な農業機構の中の数字を見ておりましても、国際的に食糧の生産がだんだん鈍ってきているのじゃないかということも考えますと、日本日本なりに、かなり高い価格であっても、主食をつくってもらうということをこわれない形にしてもらわないと、私ども国際的に食糧をよそに仰いでいるということになりますと他日ものが言えない形になってしまうおそれがあるのじゃないかということを心配いたしまして、いろいろな問題はあったにしろ、やはり同じ国民の中で米の生産に励んでいただくということが続けられるようにしてもらいたいということを消費者として率直に考えるものでございます。  そういうふうに考えますけれども、実際問題としましては、過去数年来——数年来と言ってはいけませんが、何回かの間、消費者米価生産者米価のズレが常に消費者米価の中でもって解決されるということがございますので、むしろ私どもとしては、そういう問題は農業政策の一つの大事な問題として、二重米価制といいますか、食管会計の中できちっと処理されるような政策を伴った中で農村のそういう問題が処理されていかなければならないんじゃないかと考えております。  こういうものの考え方はたいへん安易にものを考えているんじゃないかというふうにおぼしめすかもしれませんが、必ずしも価格差補給金というものは日本だけの問題ではなくて、英国におきましても、先生方すでに御存じのように、日本円換算で一兆七千億ぐらいの農産物に対して一千七百億円ぐらいの補給金を出しているというふうに私は聞いておりますし、アメリカの加州米が日本へ着く場合におきましても、トン当たり六万円という価格は、それじゃアメリカを出るときに五万何千円かというと、そうではなしに、アメリカにおけるところの価格差補給金をもらった後の価格でございますから、この辺は日本のお米の価格というものはまさにそういうような価格差補給金との関係において比較も考えてみなくちゃならないから、そういう点においては、日本日本なりの価格差補給金制度というものはやはりきちんとしていただいて処理されるべきではないかということが消費者側の考え方でございます。  したがって、ただいま申し上げましたような、たとえば生産費を償うようなことが必要だということにつきましては、やはり、生産関係だけの問題ではなくて、国民全体の、その意味においては消費者側の消費者米価というものにも関連したところの問題の処理なりとらえ方ということが前提となって私ども意見を申し上げているということでございます。  したがって、日本のたとえば工業生産というものと農業生産というものとのズレというものは、必ずしも日本だけではなくて、先進国の中にもあることでございますから、そうでありますれば、たまたま日本が置かれているいまの農産物価格云々という問題については、まさに農政のための費用というようなとらえ方でもって先生方に御配慮がわずらわしたい、こういう考え方を私どもは持っております。そのことは、たいへん卑俗な言い方でございますけれども、かぜを引いて熱を下げなきやならぬ、かぜ薬を飲むと腹が悪くなるといったようなことではいけないので、まさに熱も下げるが胃も悪くせぬような方策というものが今日薬品の場合でも考えられている。それと同じような意味において、私は、生産者米価というものだけを切り離し、消費者米価というものだけを別に考えるというような政策では、もはや今日はいけないのではないか。同時に、それは欧米においても行なわれていることであって、いまや日本においてもそういうときが来ているのではないかというふうに考えて、日本生協連の中におきましては大体が家庭の主婦の意思が非常に多いのでございますが、そういうような考え方をもって、ぜひお互いの主食なりあるいは生活というものが守られることを期待しておるのでございます。  にもかかわらず、前段で申し上げましたように、私どもがいままでなされておりましたところの問題に主婦は主婦らしいいろんな疑問を持っておりますことも申し添えたいと思います。  そのことは、消費者のごく素朴な疑問でございますから、あるいは皆さま方におかれては笑いごとになるかもしれませんけれども、たとえて言えば、私どもがいま申し上げましたように二重価格でもって措置をせねばならぬと言いながらも、生産費としておつくりになった価格と、よってもって出てまいりましたいろんな諸経費を乗せた、実質的に行なわれる前の本来出てくるところの消費者米価というものとの差というものは、いわばその点においては諸経費の上乗せをしたものでありますが、そういうものはそのまま全く額面どおりでけっこうでございますというつもりで言っているのではございません。したがって、その間における諸経費の圧縮とでもいいますか、あるいは節約といいますか、そういうふうな御措置は、過去にいろいろあったにかかわらず、もっともっと御検討を願ってよろしいのではないか。そのことは、いままでのいろんな御発表の中には、こういう数字でこういうふうに金がかかるというふうには書いてあるのでございますが、存外、家庭の主婦側から見ますると、そういう形式的な発表だけではちょっと満足しがたい、ちょっとふに落ちないという疑問を持ちますので、むしろそういう中間経費に関する処理というものは、もっとはっきりと、どうなんだ、しかも中間経費の出てくる制度的なものについてはどうなんだということをはっきり御措置をいただいたほうが願わしいということは、家庭の主婦でも感じておるということを一つ申し添えます。  それから、たとえばもう一つ生産量の問題におきましても、日本の米は千二百万トンだ、政府がお買い入れになるのは七百万トンだ、そしてあとの残りは備蓄になりますか、あるいは生産農家が食糧として使われますか、さらにはそれは別のルートで出てまいりますか、そういうところは、生産者側の御努力にかかわらず実際流通している状況からすれば、消費者側はたいへん苦々しい感じを依然として持っております。政府側とされては、いろんな御苦心があろうとは思いますけれども、そういう問題をきちんとした軌道に乗せるといいますか、御措置といいますか、そういうものがきちんと整った上で、ただいま生産費がどれだけであり、あるいは流通経費がどれだけになるということをおっしゃっていきませんと、何か足りなければ外国から持ってくるぞ、持ってきて百貨店で売ったけれども売れなかったというような、そういうような一面的なとらえ方ではいけないのではないか。したがって、日本の米の千二百万トンというのはどういうふうになっているのか、たとえば、加工米を抜いたといたしましても、一般的には六百万トンぐらい農家以外の人が消化しているとすれば、あとどういうふうになるのかということについては、家庭の主婦といたしましてはごく素朴な疑問を感ずるところでございます。そういうことにつきましても、今後はやはり、ほおかぶりしないで、きちっとしたとらえ方なりあるいは表現というものがあって、よってもって生産者価格はこれである、消費者価格はこれであるというふうなものの説明がなされていくことが大事なので、そうでありますならば、私どもとしましても、前段で申し上げましたようないろんな疑問があるにもかかわらず、そういう疑問を先生方のお力で解明していただきます中で、ただいま申し上げましたような生産者のためにやはり償うだけの、そして日本生産ががた落ちになったりしませんだけの施策というものは、これはとらなければならないものではなかろうか、しかもそれは生産者価格と泊費者価格というものを一連の問題としてとらえていただいた農業政策あるいは社会政策というものの中で消化していただかなければならないものではなかろうか、こういうのが私どもの一連の考え方でございます。  以上でございます。(拍手)
  17. 本名武

    本名委員長 次に、中村参考人にお願いいたします。
  18. 中村迪

    中村参考人 全日農の中村であります。生産者米価が決定されるこの非常に重要な時期に私ども米価についての考えを述べることのできる機会を与えていただきましたことを、心から感謝申し上げます。  これは当然米価の問題として一定の計算をしなければならない価格でありますから、そこで、計算方式というものが非常に重要な意義を持ってまいるわけであります。そういう観点から、ここでは私ども米価の計算方式について日ごろ考えておりますことを簡単に申し上げて、諸先生方の深い御配慮をいただきたい、こう思います。  私が申し上げるまでもないことでありますが、米価の計算方式というものは、たとえば代数の式のように抽象的にあるものではないわけでありまして、そこに計算方式を組み立てるために一定の目標が必ずなければならないわけであります。この目標というものが米価の計算方式の一番の前提になるいわゆる米価の算定目標というものであります。この算定目標に従って、その算定目標を計算するための一つの道具として米価の計算方式というものが組み立てられるわけでありまして、したがって、こういう観点から考えますと、よくジャーナリズムなどで、国会で御審議される米価問題などについて政治米価だという批判のことばを述べるようなことがございますが、もともと一定の算定目標を置きまして計算する米価である以上、そこに政策的な観点が入るのは当然のことでありまして、政治米価ということは統制価格のもとにおいては当然のこととしてわれわれは考えております。したがって、この政策米価、さらに広く言うならばこの政治米価をどういう内容のものとして組み立てるかという観点から、私たちは算定方式を日ごろ考えておる次第であります。  そこで、私どもはしからばどういう立場に立った算定方式の実現を望んでおるかと申しますと八〇%バルクラインによる生産費及び所得補償方式によって米価をぜひおきめ願いたいと長い間お願いしてまいっております。この方式につきましてはいろいろの問題もあることは承知しておりますが、三十九年まで農協のほうも、われわれがいま考えておりますのと同じ算定方式米価を計算されて、米価要求の運動をされてきたわけであります。この算定方式をとります私ども米価の算定目標をどこにおいておるかという点について、すでに御承知の諸先生方を前に置きまして恐縮でありますけれども、簡単に申し上げさしていただきたいと思います。  今回の米価審議会に配付されました農林省の米の生産費に関する資料を拝見いたしますと、四十年産米の石当たり生産費を見ますと、平均が九千八百四十七円となっております。この石当たり生産費九千八百四十七円でかりに米価をきめるといたしますとどの階層の農家にとって償う米価になるかということを同じ資料で考えますと、この九千八百四十七円で償う階層およそ一ヘクタール以上の耕作農家であることが農林省の資料によってはっきりと出ております。したがいまして、かりに平均生産費で米価をきめるといたしますと、一ヘクタール以下の農家 すなわち、一ヘクタール以下の農家といいますと米販売総農家の約七八%を占めております。これも農林省の資料でございます。そういたしますと、平均の生産費で米価をきめるといたしますと、米販売農家の約七八%にとっては赤字米価、つまり、再生産所得を補償されないという結果が出てまいるわけであります。さらに、この問題を米の販売量によって農家にあてはめてみますと、五十俵以下の販売農家は総販売農家の約七八%で、これも資料にございますが、この五十俵の線で切ってみましたときに、先ほど申し上げました平均生産費九千八百四十七円で生産費を償い得る農家は、五十俵以上の販売農家になって初めて再生産をこの平均生産費で補償される、そういう計算になっております。  私どもがここでぜひお願いいたしたいことは、零細農家、日本の農業の零細性の問題についてはいろいろ問題がございますが、当面われわれの眼前に生きて働いて米をつくっておる農家、特に規模の小さい農家に対しても再生産所得を補償できるような米価をぜひ実現していただきたい。これが、私たちが長い間政府にもまた国会にもお願いしてまいっております米価算定の具体的な目標でございます。  この目標に立ちまして、八〇%バルクラインによる生産費及び所得補償方式米価をきめていただきたいという願いなのでありますが、この立場から若干今回米価審議会に出されております政府の三つの諮問の基礎になった算定方式について触れさせていただきたいと思います。これにつきましては、私の前の参考人方々からいろいろ御意見が出ておりますので、重複しないように申し上げたいと思います。  やはり、一番私たちが反対しなければならないのは指数化方式でございます。指数化方式というのは、もう御承知のように、非常に間接的な手法を用いた計算方式であります。これは、この方式を提唱された小倉さん自体が、三年後にはこの指数化方式によって算定される米価が適切かどうかについてはあらためて検証する必要があるということをはっきり申しておりますように、こういう間接手法で算定される価格というものは、それが生産費と所得を償っておるかどうかを毎年あらためて検証する必要が出るわけであります。この検証の材料になりますものが、生産費と所得を補償すべき米価であります。したがって、検証されなければならないようなそういう算定方式から導き出される価格というものは、基本的にそういった弱点を持っております。この指数化による指数の問題もございますけれども、私が口はばったく申し上げるまでもなく、諸先生方承知のところでありますので、省略させていただきます。  それから、積み上げ方式と言われるものに二つ出てきておりますが、この積み上げ方式の中身を見てみますと、政府がいろいろ苦心をしておることはわかりますけれども一つ重要な問題をこの積み上げ方式では見のがしておると思います。それは、農民の米をつくる労働生産性の成果をどのように農民に帰属させるかという観点が全く欠けておりまして、非常に残念でありますが、小作料改定、具体的に申し上げますと、法定小作料を増額する方向に道を切り開くおそれがあるかと思われるような形で地代評価の問題を打ち出してきておるという点であります。私たちは、そういう計算の方法ではなくて、考え方ではなくて、あるいはそういう政策的な立場ではなくて、いままでいろいろ、私たちから申し上げると問題がありますけれども、農業の近代化ということで、あるいは構造改善政策あるいは自立経営農家の育成というような方向で農業の生産性向上のために農民努力をしてまいったその成果を、やはり米価を通じて農民に配分するという観点から考えていただきたいと思うわけであります。この点は、農林行政としては、農業の一環でございますけれども、葉たばこの収納価格のきめ方よりはるかにおくれておる点でございます。と申しますのは、葉たばこの収納価格をきめる際には、労働の生産性の向上分の半分は農民に返すという観点に立って収納価格をそれだけ引き上げる措置をとっております。生産性の向上 これは労働者の賃金も同じことでありますが、生産性向上に見合ってその労働所得を引き上げていくという立場に立てば、新積み上げ方式というような私たちにはなかなか理解し得ないようなそういう算定方式ではなくして、農民の自家労賃の評価を高めることが労働の生産性を農民に帰属させるということになりますので、そういう方向で算定方式の改善をぜひお願いいたしたいと思います。  この観点においても、満足させるものが、私どもの見解といたしましては、八〇%バルクラインによる生産費及び所得補償方式であると考えております。この考えに立ちまして、全日農では、ことし一俵一万一千円の米価はぜひ実現させていただきたいとお願いしておるわけであります。  以上であります。(拍手)
  19. 本名武

    本名委員長 次に、池田参考人にお願いいたします。
  20. 池田斉

    池田参考人 先ほど御紹介にあずかりました全国農業会議所の池田でございます。本日は、当委員会におきまして、われわれに参考人として意見の開陳の場を与えていただきまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  さて、先ほど来いろいろお話がすでにございまして、農業会議所も、農業団体の一員といたしまして、農協に統一米価の要求ということで今日皆様方にいろいろお願いを申し上げておるわけでございまして、考え方は全く同じでございます。ただ、米審等で議論が今日いろいろ展開されておりますけれども、米審の中の議論を聞いておりますと、政府自体がわれわれの団体の考え方を採用しないで、ほかの考え方に立って、御承知のように指数化方式あるいは積み上げ計算方式というような形で諮問をされ、これをめぐりましていろいろ議論がされております。特に、中立系の委員を中心として、指数化方式を堅持しようという空気がかなり強く、議論が行なわれておることを実は聞き及んでおるわけでございます。われわれは、どうしてもこの指数化方式には正面から反対をしなければならない、こういう立場におるわけでございまして、先ほど中央会の吉田理事からもるるお話があり、またその他の方々からもお話がございましたので、あらためてこれに対する問題は申し上げる必要はないと思いますが、農業会議所といたしまして、米をめぐる最近の論争点、そういう問題につきまして、われわれの考え方をお手元に資料として差し上げてございますので、あとでいろいろ御参考にお読みを願いたいと思います。  特に、この指数化方式につきましては、三十九年度の米価を基礎として、これに稲作の生産の変化率をただ機械的にかけていく、こういうことで簡単に米価を出そう、こういうことでございまして、われわれは、三十九年の米価そのものの基礎が非常に問題である、こういう立場から、この問題につきまして昨年もいろいろ指摘をし、そういう点に対する考え方を批判をしてまいったわけでございます。本年も同じような考え方がもしまかり通るということになりますと、これは、稲作の生産の姿ということを全く理解しない形で、強引にただ掛け算で押し切ってしまう、こういうことに相なるわけでございまして、その辺の問題につきましては、皆様方のところでも十分御検討を願いたい中心の問題点でございます。  それならば、積み上げ計算方式はどうかという議論に相なるわけでございます。  これにつきましては、先ほど日農の方からお話がございましたように、昭和三十九年までは、考え方は政府とはかなり食い違っておりましたけれども、同じような問題を整理しながら、毎年これらの問題につきまして、特に国会の先生方各位の御努力を背景として、改善すべき点は改善をしてまいった。そういうことが三十九年の米価方式であり、水準になっておったわけでございますが、そのこと自体に問題がある。  そこで、本年米審に出されておる積み上げ方式の中身を見ますと、その中に昨年とは若干違った変化が出ておることは、すでに御案内のとおりでございます。一つは地代の問題であり、一つは付帯労働の問題でございます。  地代につきましては、農業団体は、すでに皆様方にお願いを申し上げておりますように固定資産税の評価額を売買の実際に修正をいたしまして、それに農協の利子をかけてはじく、こういうことをお願いをいたしておるわけでございますが、その一部を採用いたしまして、地代につきましては、若干従来の考え方を捨ててもいい、特に積み上げ計算方式では捨ててもいい、こういう片りんがあらわれておるわけでございます。お手元の資料に、地代の問題につきまして若干数字的なことを入れまして差し上げてございますので、それをごらん願いたいと思うわけでございますが、われわれの考え方でまいりますと、この試算1、これが農業団体の主張でございます。この中にありますような、いわゆる正常売買価格に修正する、こういう問題を採用しないで、固定資産の評価額そのものに利子をかけて、それで資本利子という形で地代を出す、これが目下政府が米審に出している考え方でございます。  われわれは、地代というものについてもう少し客観的にものを考えてまいりますならば、農地の売買の調査というものは農業会議所も行なっておりますし、また不動産研究所も行なっておることは御案内のとおりでございます。それの新しい数字の過去三年をとりまして、その中庸点を考えますと、その試算2にありますように、二十一万六千二百十七円、これは不動産研究所の第三者の数字をとりましてもこういう数字があることは御案内のとおりでございまして、これで具体的には水田の売買が行なわれているわけでございます。しかし、これにつきましては、いわゆる買い足しと申しますか、全体の農場単位での売買というものがわが国において行なわれていないというような実態との関係におきまして、これをいわゆる農場単位の売買というような形での考え方に修正をするというようなことになりますと、十一万八千九百十九円、こういう数字になるわけでございます。これに利子をかけて出しますと、ここに試算が出ておりますように、石当たり千九百五十五円。私どもは、きわめて客観的にものの売買というような筋からこの地代の問題も考えますと、千九百五十五円というのが正当であると思います。しかしながら、こういう数字の基礎につきましていろいろ議論も出てまいるというような観点から、地代につきましては、少なくとも自治省という政府が固定資産というものをはっきり評価をしておる、政府が権威があるとは思いませんけれども、少なくとも政府がそれをきめている、そこで、この数字を正常売買価格に直して、これに利子をかける、こういうような考え方で地代の問題を本年は何としても取り上げていただきたいということを特にお願い申し上げたいと思います。  これで試算をいたしますと、この面だけでもわれわれの要求に一つ近づくわけでございまして、かなりの金額がこれで上乗せになるというようなことが実現できるわけでございます。この点は特に御要望を切に申し上げたい一点でございます。  それから、農業団体の中で昨年から、実際は一昨年からでございましたけれども、特に昨年から労賃の計算につきましていろいろ議論があったというような立場におきまして、少なくとも最も明快にわかりやすいというような意味におきまして、都市の労賃と生活費と所得と、稲作から出る所得、これから逆算をして労賃の評価を出す、こういう考え方をわれわれは強く打ち出しておるわけでございますけれども、この問題につきましてなかなか御理解が得られない、労賃の舞台におきましてもまだそういう議論が中心になって展開されないということで、非常に残念に考えておるわけでございますが、それならば、いわゆる政府が考えておる指数化方式は論外といたしまして、少なくとも積み上げ方式の中で一体労賃問題をどういうふうに捕捉しようとして努力しているかというような一、二の例といたしまして、実はお手元に資料として差し上げてあるわけでございます。  ことしは、付帯労働という形で一・五時間というものが米審の資料の中に新しい要素としてあらわれていることは御案内のとおりでございます。  しかし、これは、いわゆる共同作業をするとか、あるいは農薬の共同撒布をするとか、そういう場合の一部の打ち合わせの時間というようなものだけをとりまして、農業団体の調査では、その他いろいろな管理労働に含まれまする問題があるわけでございます。そういうものは全部オミットして、一・五時間というわずかなものだけをちょこっと頭を出している。こういうようなことでは絶対に了解ができないわけでございまして、特に農業会議所がことし調査をいたしまして、そういう問題が一体どういう実態であるかということ、これもお手元に一応御参考のために資料として差し上げてございますので、それをひとつごらんを願いたいと思います。一番うしろの付表でございます。なお、これに対する調査は、お手元に調査調査表も差し上げてございます。われわれは良心的にこの調査をやったつもりでございまして、これに基づきますと、その資料にもございますように、石当たりにいたしまして、五百八十八円、こういう数字がいわゆる付帯労働、管理労働として出てくる。われわれが五百九十五戸の農家につきまして詳細に調査をした集計でございまして、これは時間にいたしますと、手元にございますように、五・七四時間ということに相なるわけでございます。これだけのものがあるにかかわらず、その中の一・五時間ぐらいだけを政府は一応ちょこっと出してきた、実はこれが現状でございます。特に、われわれの調査では、付帯労働は、単に時間がかかるということではなくて、付帯労働に伴ういわゆる物財費というものがあることは常識でもわかるわけでございまして、たとえば、集会に参加するということになりますと、それに伴う交通費も要ります。また、簿記の記帳をするということになりますれば、簿記の帳簿も要るわけでございます。また、技術研修に行くということになれば、当然旅費も要り、また、オートバイで行く場合にはガソリン等も要るというようなことが当然あるわけでございまして、この際そういう問題につきましては物財の面も実は調査をしてみたわけでございます。そういたしますと、十アール当たり、物財のほうでは三百八十二円、こういう数字が具体的に出ておるわけでございます。それらを含めますと、試算の結果としては、五百八十八円、実はこういう数字が石当たり出るわけでございますが、政府はその中の一部しかとっていない。しかも、話を聞いてみますと、政府は管理労働につきましては本年は調査をやらなかった、昨年の調査数字をことしそのまま置きかえている。われわれ従来ずっと長い間この調査をやっておりまして、特に本年は補完調査という形でさらに詳細にやったわけでございます。その経過を見ますと、毎年付帯労働というものは、やはり農業の生産の構造その他の相違との関連におきまして、年々これが増加をしてきておるというのが、われわれの数字からも実はあるわけでございます。政府は、ことしはそういうことをやらないで、昨年の数字の中からちょびっと一部のもの出した。こういう問題を一つ取り上げてまいりましても、政府積み上げ方式、特に労賃の計算の名におきますところのそういう問題につきましては、まだまだ問題がたくさん残されておるということが御了解できるのではないかというふうに思うわけでございます。なお、会議時間等につきましても、どういうふうな調査をしてみたらいいか、いろいろ研究はしておりますけれども、これは調査そのものがなかなかむずかしいということで、実は農業団体のほうもそこまでは入っておりません。  そういうことを考えてまいりますと、労働の捕捉というものは非常にむずかしい問題である。内容なりその意義は十分了解されても、そのこと自体をどういうふうに捕捉するかは非常に困難である。付帯労働につきましては、正確に捕捉すると政府調査とはこれだけの食い違いがあるというような問題等も含めまして、その辺もひとつ十分御勘案の上、いろいろと御検討を願いたい思うわけでございまして、そういうような意味合いにおきまして、われわれは今後ともそういう調査の面におきましては努力はいたしますけれども、この段階におきましては、われわれの労働に対する考え方は、やはり、いろいろ議論はあると思いますけれども、直截的に捕捉できるわれわれの所得均衡方式に基づくべきものであって、それ以外に、労働の捕捉というものをこまかにいろいろ分析して捕捉する努力はいたしますけれども、なかなかこれは困難である。付帯労働一つだけとりましてもこういう問題があるということをひとつ十分御認識を願いたいと思うわけでございます。  なお、米価を取り巻くいろいろの論争の背景等につきましては、これは釈迦に説法でございますので申し上げませんけれども、そういう諸点につきましてはいろいろとこれに書いておきましたのであとでごらんを願いたいと存じます。  特に最後に申し上げたいことは、こういう価格問題につきまして、われわれが毎年これらの問題について先生方にいろいろな御心配をかけなければならぬ、そういう一つの問題が起ってくる原因につきましては、しかも、消費者なり、いろいろな理解の足らないマスコミなり、そういうところからいろいろ批判を受けることにつきましては、われわれは非常に残念に思うわけでございますが、そのことは、農民の立場から言いましても、できるだけコストを下げて安い食糧を国民に提供する、こういう考え方は常に持っておると思うのであります。しかしながら、そういう基本的な、いわゆる構造政策的なものがおくれている。そういうことに国がもっと積極的になって、そういう金を十分つぎ込んでいく、しかも、できるだけ早い期間にそういう構造を改善し、つくり直す、こういうような政策がおくれているがために、われわれはどうしても価格問題で毎年勝負しなければならぬ。こういう農民の立場も十分御了承願いまして、米価問題ではひとつわれわれの考えを何とか十分に御配慮の上取り上げていただくと同時に、一面、そういう政策的な面で、日本の農業の構造が外国に比してもそう劣らないようにするためにどういうふうに仕上げたらいいかというような問題に中心の政策を強くお進め願いたいというふうに考えるわけでございます。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
  21. 本名武

    本名委員長 これにて参考人の御意見の開陳は一応終わりましたが、吉田参考人から、先ほどの御意見に補足して発言いたしたいとの申し出がありますので、これを許します。
  22. 吉田義美

    吉田参考人 まことに相すみませんが、実は、御案内いただいております先生方も多数いらっしゃると思いますが、さきに私どもは、全国四百六十数万人の者から、国会に対しまして、米価の問題と食糧需給政策の問題につきましての請願手続をいたしておるわけでありまして、まさに米価が大詰めにまいっておりますときに、当委員会におかれましては、ひとつこれを一刻も早く御審議いただきまして御採択いただけるような御配慮を特にお願い申し上げます。     —————————————
  23. 本名武

    本名委員長 引き続き参考人に対する質疑に入るのでありますが、吉田参考人には所用のために早目にお帰りになりたいとの申し出がありますので、つとめて吉田参考人に対する質疑を先にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正君。
  24. 倉成正

    倉成委員 私は、ただいま非常に貴重な御意見をいただきましたので、ごく簡潔に三つの点について、主としてただいまお話のありました池田さんと吉田さん、そのほかの参考人からも御意見があればお答えをいただきたいと思います。  第一点は、米価のきめ方が食管法に基づき生産費、所得補償方式によってきめられる、すなわち、再生産を確保するという意味で米価がきめられるわけでありますけれども米価の算定の基礎となっておりますいろいろなやり方について、たとえば都市の勤労者の賃金と評価がえするというような問題は、いずれもその大目的のための手段にすぎない、元来稲作労働という異質のものと都市の勤労者の賃金と比較するというところに非常に無理があるという点が、先ほどからいろいろ御意見のあった中にも見えていると思うのでありますが、私どもの立場からしますと、農業はやはり、土地を持ち、自由な自分の企画で農作業をやる、他の産業とはいろいろ異質のものがありますけれども、結局は企業として自己の責任において農業を営んでおるというのが、非常に大きな他の勤労者と違った面があるかと思います。もしこれを是認いたしますと、企業として農業を考えてまいりますと、どうしても利潤という問題が出てくるかと思うわけでありますけれども、利潤のない企業というのはあり得ない。利潤を生み出すことによって、やはり再生産を確保し、さらに拡大生産の道を選んでいくということが筋道ではなかろうかと思うわけでありますが、これについてはどういうふうなお考えをお持ちであるか、両参考人を中心としてお伺いしたいと思います。
  25. 池田斉

    池田参考人 実は、農業基本法の精神等とも関連いたしまして、当面は自立経営が目標でございますが、将来は企業的な農業というようなところまで日本の農業が発展をしていかないと、先ほど申しましたような外国の農業との対比、競争力というような点について一つの問題がございますが、特に最近、われわれの会合におきましても、米の問題との関連におきまして利潤問題を取り上げるべきではないかという議論がかなり強く出ております。われわれはそういうことが究極の目標であるわけでありますが、今日の段階では、これは非常に控え目な私は要求だと思うのでございますが、せめて都市の勤労者並みの生活を享受したいものだ、そこまで米価水準を上げる、それを土台にして次の利潤論に入っていくというような段階を踏まざるを得ないのではないか、こういう考え方を持っております。しかしながら、特に生産性の向上のメリツトの還元等につきましては、少なくともそういうものに将来つながるものとして、一部はメリツトを農業者に返す、こういうようなこともひとつ政策としては十分お考えを願いたい、こういうふうに考えております。
  26. 倉成正

    倉成委員 吉田さんも同じですか。
  27. 吉田義美

    吉田参考人 はい。
  28. 倉成正

    倉成委員 利潤の問題についてはいろいろな理論的な問題があろうかと思いますので、短時間で御質疑することは無理かと思いますが、御趣旨のように都市勤労者の賃金と置きかえるということになりますと、いわゆる工業における生産性の向上のメリツトがこの賃金の中に入ってくるわけですね。したがって、農業生産性の向上のメリツトの問題を考えます場合に、工業生産のメリツトを受けながら、今度は逆にもう一つ農業の生産性のメリツトをさらに受けるという理論的な問題等が出てくるでありましょうし、また、いろいろな付帯労働費の計算にいたしましても、利潤の概念を入れてまいりますと、おのずからやはり考え方が変わってくるということが考えられますので、将来の研究課題として、十分理論的に解明できるような意味でひとつ御検討いただきたい。  第二の問題。先ほどからお話もありましたが、三十九年度の米価を基準としての指数化方式、これは、三十九年の米価が、いろいろなわけのわからない加算金であるとか、あるいはいろいろな不合理な要素を持っており、これをもととして伸ばした指数化方式であるから、これは適当でない、私どももまたそう思っております。しかし、もしことし皆さん方が主張しておられる方式を採用されたとしました場合に、毎年毎年同じようなこういったお米の騒ぎを繰り返すというのは非常に私はばかげたここだと思うのですけれども、かりにことし、基本的な考え方が一致して、そうして、全部の人の納得を得るということはできないにしても、大部分の人が大体これならばという方式が採用された場合には、指数化方式ということばが適当でないかもしれませんが、やはり一定の変化率をかけていく、未来永劫にということはどんな方式でもだめですけれども、少なくとも三年間くらいの間は大体こういうことでいこうということで、こういう毎年毎年の米価騒ぎをやめていったらどうかと思うのですけれども、この点についてはいかがお考えになっておるか、お伺いします。
  29. 吉田義美

    吉田参考人 ただいまの御質問でございますが、これは、私ども一つの組織を持ちまして、特にことしの算定要領につきましては前年の暮れ以来もうたびたび会同いたしまして、そうしていろいろな検討をして、組織としまして一応こういう方式を確認をいたしまして、それぞれお願いしている、こういうことなのでございます。したがいまして、この算定方式というものをもし変えるとかどうとかということになりますと、一応これは組織全体でさらに検討をいたしました結果でなければ、それに対して責任のある御回答を申し上げることができぬのであります。  しかし、私個人としましては、むしろそういう基本価格というものが、かりに今年の場合で申しますれば八千九百三円というものが確認されますれば、そういうものを土台にしてその後の変化指数というものを乗じてということも一応あり得るというふうに、私個人としましては考えます。
  30. 倉成正

    倉成委員 私も、いますぐこれに御回答を要求するのではなくて、やはり、そういう基本的な考え方が一致すれば、やはり毎年毎年議論の種を起こしていくということは、これはある程度やむを得ないかもしれませんけれども、なるべく避けるのがベターじゃなかろうかという意味で御質問申し上げました。  そこで、時間がありませんから第三の点。お米の産地がいま御承知のようにだんだん北のほらに移ってまいりまして、いま日本で一番稲作面積の広いのは北海道です。新潟をはるかに追い越した。反収は低いけれども稲作面積の一番広いのは北海道ということで、地域・地域の実態によって、稲作の、また米価農民経済に及ぼす影響は非常に違うと思うのです。したがって、全国一律の米価、これはもちろん大きな意義がありますけれども、その地域・地域によって受け取り方が非常に違う。そういうことを考えてまいりますと、先ほど池田参考人から御発言がありましたように、米価と構造政策というのを全然切り離して考えていくということは、やはり非常に間違いではないか。やはり、米価決定の際に、構造政策というか、もっと生産費を安くし、またいろいろな農業用資材が値上がりしないような施策というのをあわせて考えていくということが、ほんとうに農民経済にプラスするゆえんのものであろうかと思うわけでありますが、米価と同時にそういう構造政策についての提案もなさっておるようでありますけれども、さらに、米価決定の要素の一つにそういう構造政策を入れていくというお考えはないかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  31. 池田斉

    池田参考人 御質問の趣旨がちょっとのみ込めない点があったのですが、米価決定の中に構造政策の要因を入れる、こういう御質問ですが、米価は構造政策とからみ合う問題で、先ほど申し上げましたように、できるだけコストを下げて、それほど高い米価を要求しないで済むような生産構造が早くできる、そういう国の基本的な政策というものをおそらく生産農民はみな待望していると思います。したがって、それがなかなか追いついてこないといういまの現状におきまして、これだけの米価は最低限要求しなければいかぬ、こういう要求に変わっておりますので、その米価の中にそういう要素を——それじゃおくれている分をどういうふうにある程度加味するか、こういう御質問かと思いますが、それは確かに政策論としては十分お考えになってしかるべき問題でないかというふうに考えますが、そうなりますと、昨年のように五十億をまた別にとか、こういう議論に発展する危険がございますので、私は、そういうことではなくて、やはり農民が率直に要求している米価そのものでこの問題を解決していただきたい。これは私個人の意見になるかもしれませんが、そういう考え方でございます。
  32. 吉田義美

    吉田参考人 倉成先生の御質問でございますが、私どもは、おっしゃることはよくわかります。ただ、当面の問題としまして、はこの米価ということにしぼってやっているわけですが、農政問題が米価問題だけであるという考えはちっとも時っておりません。その点は先生の御意見と私ども全く同じ意見を持っておりますが、そういう問題につきましては、いま十分気がついているわけでございますので、今後さらに、全体的なよりよき農政の確立ということにつきまして、また十分先生方にお願いを申し上げまして、御配慮いただかなければならぬと思っております。
  33. 本名武

    本名委員長 東海林稔君。
  34. 東海林稔

    ○東海林委員 各参考人からたいへん貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  御意見の中に一部ありましたように、これまでの米価のきまり方が一体どういう理屈でどういう経過をたどって決定されたかという点が国民にあまり明らかでないために、いろいろと国民から米価に対する不満あるいは協力が足らないというような面が出てくるというふうに私どもは考えているわけです。御承知のように、いま米審の意見を聞いて政府の責任できめるわけですが、米審も先般来秘密会になりまして、せっかくの論議が国民に明らかにされておらない、こういうようなこともあって、はなはだ残念なのであります。私どもは、米価というものは国民全体の生活にとって非常に大事な問題でありますし、また米作農家にとってもたいへんな問題である、また国の予算にも関係するという問題からしまして、基本的にはこれは国会できめるべきだという主張を持っておるわけでありますが、直ちにそういう法制的な措置が不可能であるという現在におきましては、せめてやはり国会の場においても十分各方面の意見も出していただき、また政府意見も出していただき、また国民の代表である議員の意見も十分出し合って、そうして政府生産者も消費者国民もほんとうに納得できるような米価をきめるという努力をすべきであるという観点からしまして、いままではそういうことがなかったのでありますが、今国会から、鬼瓦価については二日、米審の開かれる前に米価について一日、政府を呼んでいろいろと論議をしたわけです。本日皆さんにおいでいただいて、また各方面の御意見を伺ったわけでありますが、そういう観点で、きょうは皆さんの御意見たいへんありがたかったと思うと同時に、こういう機会を持つことを言い出した一人でございますので、特にその点深く感謝したいと思うわけでございます。  そこで、私はごく簡単な御質問を一、二申し上げたいと思います。  まず木下参考人にお伺いしたいのでありますが、先ほど参考人は、生活協同組合の組合員である多くの主婦の意見として、いろいろと米価について疑問を持っておるという点を具体的にお話しになったわけでございます。そこで、これはきわめて端的な、また幼稚なお伺いで恐縮なんですが、多くの主婦は、ほかの物価との関連においていまの米価を一体高いと考えておられるだろうか、安いと考えておられるだろうか、どういう感じを持っておられるだろうかという点を、もし把握されておりますれば、ひとつお話しいただきたいと思います。  それから、第二の点ですが、これは赤羽参考人あるいは池田参考人のどちらでも、あるいは吉田さんがお帰りにならなければ吉田さんに伺いたいのですが、皆さんの支持されている所得均衡方式、これは、いまの農業基本法の中でも農家と他産業従事者との格差をなくして生活を同じようにするということが最大の目標に掲げてあるわけでありますから、米価決定にあたってもそういう立場から所得均衡方式というものが出てきたのじゃないかと私は推察するわけです。そこで、お伺いしたいのは、これは多くの国民の中の素朴な疑問でありますが、農政の立場から言うと、百姓を一生懸命やったらほかに出かせぎや兼業などしなくても食えるような農政というものが大事なんじゃないか。ところが、皆さんの算定方式からいきますと、いわゆる都市労働者農民所得均衡方式ということで、策定方式としては、農家の総所得の中からまず他産業の兼業所得を差し引き、さらに米作以外の所得を差し引いて、その残りから今度は米価をはじき出したというような算定のように伺っておるわけです。どうも兼業を是認するような形で——確かに兼業は現実としてありますが、農政の方向としてはそれをなくするような方向でなければならないのじゃないか。そこで、その兼業を前提と見られるようなこういう算式は一体どういうことなんだろうかという疑問があるわけです。私もその疑問を持つ一人でございますので、その点を御説明いただきたいと思うわけです。  次に、中村参考人にお伺いしますが、中村さんのほうは、農家の労働に対する報酬と都市労働者の報酬というものは同じでなければならぬ、こういうような立場のように伺いますが、実は、農産物価格の場合に、米をはじめ畜産物、いろいろとありまして、その場合にも、具体的にはどの程度の都市の労賃というものが農業と見合う労賃として一体適当なのかということで、いろいろ議論があるわけです。また、政府現実に採用している農産物価格の自家労賃の算定につきましても、いろいろと差があるわけですね。そこで、中村参考人のほうとしては、現段階においては米に関しては一体どの程度の都市労賃というものを適当と考えておられるか、その点についての御説明をお願いしたいと思います。  以上、三点であります。
  35. 木下保雄

    木下参考人 いま東海林先生のおことばでございますが、高いか安いかというとらえ方にはいろいろあろうかと思いますが、一つの考え方でこれを主婦がきちっととらえて、粉食と粒食とどちらなんだというようなことでいきますと、私は、存外粉食のほうがずいぶん金がかかるようになってきているということを主婦は感じておることと思います。パンだけ食うというわけにはいきませんから。ですから、そういう意味においては、家計簿の活動なんかずっとしております関係では、やはり金がなくなって粒食にしてきたという傾向は幾つかございますし、そういう意味では、粉食と比べる上において、米を中心としたものを食い方の中ではどういうふうに評価しているのかということの一つのあらわれかと思います。  しかし、もう一つ別の角度で、米の価格が特に消費者米価というほうへ今度は影響してくる、これが家計をどういうふうに圧迫するかということにつきましては非常に強い関心を持っておる。これは、米がほかのものでかえられないものであるということも事実でありますが、同時に、これが中心になって他の物価へ影響を及ぼす性格を多分に持っておりますので、そういう意味において、絶対値というよりは、生活費の中において占めるウエートというものにおいては非常に高いということを感じますので、主婦としてはその点は非常に鋭敏にとらえるものであるというふうに考えます。  ですから、お答えにはなりませんが、絶対値の高低ということではちょっととらえにくい問題かと存じます。
  36. 赤羽重太

    赤羽参考人 東海林先生の御質問にお答え申し上げますが、先生の御指摘どおりでございます。われわれは、専心農業を経営いたすことによりまして家族を含めての生計が立つように、そういうことでかねがね要望してまいっておりますけれども現実は、日々刻々に兼業の形が進みまして、都市近郊におきましては、私は長野県でございますが、すでに八十数%というような形が出ております。これはすでに米価の算定の中ではなかなか解決しがたい問題である。ですから、これは、総合農業政策の中ではっきりした新しい農業政策が確立されまして、その中で食糧自給政策も含めまして解決されることを心から希望をいたしております。ただ、この際そういう情勢の中でそれを兼業の関係まで含めまして要求してまいりますことは現実的ではない、きわめて控え目に現実的に一歩一歩解決をしていただきたいということで、それは差し引いてございます。
  37. 中村迪

    中村参考人 お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、私どものほうでは、農家の稲作の自家労働は、都市の製造業規模百人以上の男子賃金で評価していただきたいという主張を持っております。これについて若干御説明させていただきたいと思いますが、先ほど倉成先生の御質問の中にもありましたように、農民の稲作労働と都市の労働者の労働の質が違うことは私たちも十分承知しております。その質の違う労働を相互に比較して、その比較の上に立って農家の稲作労働を評価するということは非常にむずかしい問題を含んでおりますが、この点について私どもは次のように考えております。  まず、百人規模をとりましたことは、先生方承知かと思いますけれど、政府の三公社五現業の現場労働者の賃金をきめるにあたりまして、一昨年政府は民間の製造業規模百人以上の労働者の賃金を基準にしてきめております。この基準にわれわれはのっとったわけでありますが、なぜのっとったかというその理由につきましては、およそ二つございます。  一つは、政府関係機関で働く実際の労働者政府がその程度の労働賃金を保障しようとするならば、食糧管理法によって政府に米を売るように義務づけられ、その食糧管理法の堅持に協力しておる農民にも、政府がそのような労賃算定の基準をとったのであるならば、せめてその程度の労賃は農民にも米価を通じて実現していただきたいというのがその第一の考え方でございます。  もう一つには、労働の質の問題に入りますけれど、この質の問題、非常にむずかしいわけでありますが、御承知のように、労働科学研究所というところがありまして、その労働科学研究所で、これは相当以前の調査でありますが、農業労働、特に稲作労働のその激しさについて調査した結果、稲作労働は都市の製造業と匹敵する熟練度と強度を必要とするということが、およそ労働科学研究所の調査結果から出てきております。その点を私ども一つの基礎にいたしまして、まず製造業の労働が稲作労働と比較して同じ強度と熟練度を持つというようにとったわけであります。この場合、しからば質の問題はどこに入ってくるかと申しますと、われわれの考えでは、その熟練度というところに質の問題が入ってくる、こう理解しております。と申し上げますことは、釈迦に説法で恐縮でございますが、稲作労働のようなあの熟練度を必要とするそういう労働の質を都市の労働に求めるならば、これは都市の製造業である。製造業で質の高い労働が要求されておるわけでありますから、それに比準し得るのがやはり稲作労働であるというぐあいに考えまして、そこで、質の問題を労働科学研究所の調査の上に立って私たちは考えている、そういう立場でございます。
  38. 本名武

    本名委員長 中村時雄君。
  39. 中村時雄

    中村(時)委員 きょうはまた参考人にはお忙しい中を、しかも米価の決定を目前に控えて御出席願い、いろいろ高邁な御意見を承りましたことは、党をあげて深く感謝する次第です。  そこで、私、四、五点にしぼりまして、個々の項目という問題はまた何かの機会にお教え願うとして、概念的な問題についてお尋ねをしてみたい、こう思うわけです。  まず一番に吉田さんにと思ったのですが、吉田さんがいらっしゃらないので、池田さんにお尋ねをしてみたい。  先ほど倉成委員からもおっしゃいましたが、毎年毎年定期的にこの大会をつくっていらっしゃる。この大会の意義、なぜ大会をつくらなくちゃならないのか、そういう観点に対してどういう考え方を将来持っていらっしゃるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  40. 池田斉

    池田参考人 これは吉田参考人のほうにお聞きを願ったほうが適切だと思いますが、われわれの農業会の系統におきましても、毎年やはり大会を、それほど大きくはございませんがやっております。この問題は、先ほど来いろいろ申し上げましたように、現在全国の農家で稲作農家が圧倒的に多いし、また、稲作収入に依存をして生活をしている農業者が圧倒的に多い。そういう意味では、農業政策の中で何と申しても一番これは関心のある問題であり、また、下からの非常に切実な要求が強い問題である。それに対応して政府は必ずしも十分な納得する米価を——いまの食管法のたてまえでこれは自由販売でございませんから、そういう形におきましては、どうしても政府にその不満を含めて実態を理解してもらうという形でああいう大衆的な動きというものが起こってくるのはやむを得ないと思います。しかし、先ほど倉成先生からお話がございましたように、こういう問題について、ほんとに十分納得のできる米価水準というようなもの、これがはっきり農業者側にも納得できる、こういうことが一たびはっきりいたしますならば、おそらくこういう運動というものは今後は変わった形におきまして出てくるのではないか、われわれ中央の農業団体がそういう役割りをになっていろいろやればいいのであって、何も大衆動員をするようなことはしなくても済むのではないかというふうに考えますが、いまの段階ではこれはやむを得ない一つの形ではないかというふうに理解しております。
  41. 中村時雄

    中村(時)委員 ということは、米価の決定に不満があるという一語に尽きると私は思うのです。それを非常に言いにくそうにおっしゃっているだけだ、こう思っておるわけです。  そこで、そういうことで、たとえば米価の決定において所期どおり目的を達したとしても、少なくとも現在の農地の配分状況というものは、北海道あるいは四国、九州、おのおの違うわけなんですね。そうすると、一方においては都市の労働者と農村との均衡をはかっていく、労賃の適正化ということを唱えておきながら、実際にはいまのままの形態でいくと農民自身の中に階層分化が起こってまいります。一方は所得が多くなり、あるいは保有米だけ持っておる農家は所得がない。私が言うのは農家ですよ。農家の階層としての分化がおのずから起こってくるという考え方が出てまいりますが、それと米価とを結びつけた場合に、どういうふうに農家の前向きの姿勢がとれるか、そういう問題を一点お聞きしておきたい。たとえば具体的に言いましたら、北海道では三町歩、四国では五反歩となりますと、米価だけを焦点に合わせますと、一つの階層分化になってまいります。その場合に、少なくとも農業会議所あるいは中央会において、農家というものを前向きにするところの基本的条件というものがあるはずであります。それに対してどういう考え方を持っていらっしゃるか。
  42. 池田斉

    池田参考人 なかなかむずかしい御質問で、簡明に申し上げるようなことばを持ち合わせないで恐縮なんですが、お話しのように、農家の階層分化が、北から南にわたってかなり様相が違い、また、東北地帯におきましても最近階層分化が起こってきている。そういうものに米価の水準をどう合わせば農家の気持ちが納得されるか、そういう米価の問題点の御指摘だと思いますが、この点につきましては、確かに稲作の比重がそう大きくない農家、それから単作地帯のように稲専業の農家、こういうことによって、米価に対する農家の要求の度合いというものはおのずから違うと思います。たとえば、われわれの大会あるいはその後の運動にいたしましても、やはり何と申しましても米作地帯が一番たくさん東京に集まってまいります。また、熱気を含んでおる。これは事実、現実でございます。ただ、地域別にそれほど分析しておりませんから、わかりませんが、やはり先ほど高度成長のことを申し上げたけれども、たとえば東北地帯におきましても、一町五反から二町といえば、十分ではないが、一応農業にある程度専業しなければなりません。しかし、さらに農業の規模を減らしてほかに転業するというような環境はなかなかない。むしろ、そういう層が米価に対する要求が一番強いと思います。新潟県におきましてそういう調査をいたしました場合に、結局そういう階層をどういうふうに政策としてささえていくのか、あるいはもっと専業的なものに伸ばしていくのか、あるいはもう農業についてはある程度あきらめるが、そのかわりにほかの職業があるか、そういう点の政策というものが、やはり米価問題のエネルギーの一つの問題になっておるというふうに私は考えておりますので、お答えになりませんが、その辺のところにこの米価問題のほんとうにきびしさがあるのではないか、こういう感じを持っております。
  43. 中村時雄

    中村(時)委員 あなたのようなお考えで進めていくと、ただ上げていただきたい、どうか努力してもらいたいというお願いばかりになって、本質的なものが隠されてしまうのではないかというふうに思うわけなんです。たとえば、先ほどあなたが農家労働賃金の問題の点を強調されました。ところが、農家労働賃金にいたしましても、都市の労働賃金に見合うところの農家の労働賃金となりますと、都市においては御承知のように年に二回の昇給をやっております。ところが、実際の農村のほうでは、農家というものは周期があります。一年に一回しかとれません。そうすると、片一方のほうは上がっていくが、片一方はかりに予定どおりに達したとしても、そのあとを追っていくようなかっこうになります。そこには格差が生まれてきます。その格差に基づいてこれを農家に還元させていくような場合には、どういうふうなお考えを持っておりますか。もう一歩深く突っ込んであとお話ししてみたいと思いますので、その点から伺ってみたいと思います。
  44. 池田斉

    池田参考人 だんだんむずかしくなりまして、弱るのですが、なるほど米価は労賃の一年あとを追いかけているというようなところに、非常に政策的な配慮を十分見てもらわなければならぬというのが、われわれの主張の立場にも相なっております。特に、ことしの春闘の相場は少なくともことしの米価にははね返ってこないということが現実でございます。これは計算上いろいろ数字を出すために間に合わないというようなことから、やむを得ずこうなって、過去一年の最も新しい時点、特に春闘等が十分反映していない。こういう問題こそ政策的に配慮——私は政治米価ということは、ことばとしてはあまり好みませんが、少なくとも政策的に配慮をする一つの要素である、これこそ国会の先生方に十分御配慮を願って、適正な米価をきめていただく、こういう問題点だと思います。
  45. 中村時雄

    中村(時)委員 そうなりますと、だんだん煮詰まってくるのですが、非常に大事なことなんで、要するに、そうなってくる焦点は、労賃の問題がやはり重点になってくる、私はそう思うわけなんです。労賃ということになると、中村さんにもお尋ねしたいのですが、私は労働の価値だと思う。農業は労働と資本と土地といわれておりますが、そのうちの労働の価値というものは、労働の生産性に伴うところの投下労働に対する適正なる価格をきめていく、こういうふうに考えられてくるわけです。そうなってさましたら、いままでの農業労働賃金というものを考えた場合に、昔におきましては地主がその労働賃金のほとんどを小作料でとっておった。その後、パリティ計算によって政府が肩がわりしてとっておるだけである。そういう意味において、私は米価闘争の根拠というものは、労働賃金、それは家族労働と言ってもいいでしょうね、労働賃金を適正に農民の中に、悪く言えば返してこいということだろうと思う。そのことが基本になってこそ、私は米価闘争の基本が生まれてくると思うのです。すなわち、そのことによって、ほかの農産物価格にまでも労働投下に対するところの労働の適正なる賃金を要求する一つのあり方が生まれてくるのじゃないか。そのことは、すなわち、労働組合におけるところのベースアップと同じことだという観点があるからこそ、私は、この大会というものが意義を持つのではないか、こういうふうに思っておったのですが、私の考え方が間違っておるのか。ただ大会をやってお願いしますということだけで事を終ろうとするのか、そこらの根拠をやはり明確にお答えを願っておきたい、こう思うわけです。
  46. 池田斉

    池田参考人 中村先生のおっしゃるとおりの問題が焦点だと私も思います。ただ、労働の対価を正確に米価の中で要求をする、そういう問題のほかに、先ほど申し上げましたように、地代だとか、そういうほかの要素も毎年含まって解決しておりませんので、そういうこともひとつ実態とあわせて、労働の対価をどういうふうに正当に確保するか、これがやはり基本だと思います。
  47. 中村迪

    中村参考人 中村先生がおっしゃいましたとおり、私どもも、農民米価要求は、農民が自分の労働に対する正当な社会的な評価を得たいという、そういう要求から出た運動である、このように考えておりますし、実際農民米価要求の運動は、初めからそういう方向づけで現在まで進んできておるし、また農民の意識の中にも、出かせぎその他を通じて自分の農業労働に対する評価を適正にしてもらいたいという意識が高まっておると、このように考えております。
  48. 中村時雄

    中村(時)委員 そこで、ひとつ、それであったら、今度は農協と農業会議所にお願いしておきたい。そうなると、いま言ったように、労働に対するところが焦点になる。ところが、地元に帰ってみますと、わしは地主だ、組合長をしておるのだ、そういう労働者の感覚とは違うのだというようなものの感度を持っていらっしゃる方もたくさんおるように見受けられるのですよ。そういうことは、やはり一つの組織を持っていらっしゃる中でいろいろ検討して、話をつけていただきたい。あるいはまた、そういうような考え方があれば、一町歩を持っておるところと一反歩を持っておるところに同じ農機具を売っていくようなことをおそらく今後はなさらないと思いますが、これはお願いであります。そこで、そういうふうな観点があれば、今度の米価の労賃の問題でもはっきりしてくる。たとえば投下労働に対して日数が限定されてきております。しかるに、生産量は昨年度よりもわずかながら上回ってきておる。そうすると、それは技術の向上であります。生産性に伴うところの報酬であります。やはりそういう観点を明確にして、ひとつぜひとも御努力を願いたい。もちろん、これはもう一つの柱であるところの地代の問題、これにまで発展するのですけれども、きょうは時間がありませんので、いずれいろいろ御意見を伺いたいと思っておりますが、ぜひとも皆さん方も努力をしていただきたい。私たちも適正なる立場に立って、わずかな人間でありますけれども、下からの突き上げでは全精力をかけて努力していきたいと思っておりますから、がんばっていただきたいと思います。
  49. 本名武

    本名委員長 神田大作君。
  50. 神田大作

    ○神田(大)委員 非常に時間がないようでございますから、私、簡単に二、三お尋ね申し上げます。  まず第一に、農業会議所の池田さんにお尋ねをいたします。  現在、米価審議会でもって非常な努力をされて、米価の算定方式を中心といたしまして論議をしておりますが、このように毎年毎年米価審議会で論議をすること自体については意味があると思うのであります。しかしながら、効果的にはもっと米審のあり方に対して検討すべき点があるのではなかろうか、米価を決定する方式としてもっと適切な方法はないものかと思います。われわれも非常に悩んでおるようなわけでありますけれども、これらに対して、中央会並びに農業会議所としては、米審のあり方についてどのようなお考えを持っておるか、お尋ねいたします。
  51. 池田斉

    池田参考人 米審のあり方につきましては、いろいろ議論がされておる。われわれの内部におきましてもいろいろ議論があった問題でございます。農協のほうとは若干ニュアンスの違う点がございましたが、結論は、食管法で、生産者米価と消費者米価が、先ほどお話がございましたように、切り離された形で規定されておる。しかも制度の上では米審を開かなければならぬ、こういうことに相なっておる。そういたしますと、米審におきましては、生産者米価を審議する場合には、必ずしも消費者代表的な方はこれに参加しないでもいいじゃないか。いわゆる生産者と学識経験者を中心としてやればいいんじゃないか。ただ、その場合に、これは特に政府に対する注文になりますが、どうも中立委員というものはほんとうの意味の中立なのか、その辺の人選が必ずしも適切じゃないという感じをわれわれは持っておるわけであります。そういうような考え方での米審のあり方——消費者米価の場合には必ずしも生産者の代表は出る必要がない、われわれの組織の中ではそういう意見が出ておりますので、御参考までに申しておきます。
  52. 神田大作

    ○神田(大)委員 いろいろ申し上げたいことがあるわけですが、いま米審の開催中で、少なくともああしてやっておることでもございますから、これはこの次に私も大臣を前にして検討していきたいと思います。  それで、次に、木下さんにお尋ね申し上げますが、いわゆる食管赤字の問題について、消費者の皆さんの認識が足りないというわけでもないが、いわゆる政府の宣伝に惑わされておるのではないかという点があるわけです。千五百億円からの赤字があるといいながら、実質的な赤字は百九十億円。これはこの間の委員会で、買い上げ価格と消費者米価とのほんとうの差額は幾らかというと百九十億円、あとの費用は、食糧庁の人件費、保管料あるいは運賃、そういう諸雑費でもって一千億円からある。それを政府が赤字だ、赤字だと誇大に宣伝したものだから、米価が上がるとまた物価が上がるというような認識を与えられておると思うのであります。そういう意味合いにおいて、もっと生産者と消費者が話し合いをする場をつくって、なるほど生産者米価はこのくらいの価格でやむを得ないんだというような認識を深める意味において、そういう御努力をされておると思うのですが、そういう点について、消費者の皆さんは食管赤字の内容を知っておるかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  53. 木下保雄

    木下参考人 先生のおっしゃいましたように、多くは知っておらないと思います。しかしながら、ただいま私どもがこういう考え方でございますということで整えておりまするようなものは、実はそういうふうに勉強したからこそ、これはこういうものではなかろうかというふうに考えておりますし、特に、前でございましたが、生活協同組合側の代表者で、たしか米価審議会にも加わっておりまして、なくなりました藤田さんという人がおりましたときには、いま先生がおっしゃる問題は、食管会計の中で処理すべきものであるかどうかということは、長年私ども主張しておりました。実は、そういう性格そのものも問題としておりますけれども、一般的にそういう点で、マスコミとかいろいろな御議論の中で、赤字だ赤字だとおっしゃると、案外簡単に主婦はそうかなと思うものですから、非常に心配しておることは事実でございます。先生が最初におっしゃいました、よってもって生産者と消費者がもっと話し合わなきゃいかぬじゃないかということは、私どもも願っております。  一例を言いますと、お米のことだけでございませんで、牛乳の問題が出ましたときでも、乳価についての消費者の希望というものは、どういうようにあれがきまってくるのであって、どういうわけでこうなるのかということを非常に聞きたがっておりますし、むしろ飼料の管理価格なんかにも問題があるのではないかということは、心ある消費者は存じておりますが、そういうことは話し合わないとお互いに理解できませんので、私どもも中央では手を振って、独占企業がやるのとは別に、農業団体が自主的にやっておる、乳価の問題については消費者にここまで手を握ろうじゃないかということで、現地では話し合っております。したがって、米ではそういう場がございませんから、勢いこういう席だとか米価審議会にお願いするほかありませんが、いま先生が言われますように、実現することを期待してやみません。
  54. 神田大作

    ○神田(大)委員 最後に一点だけお尋ねいたしますが、いつでもそうですか、地代の問題とか労賃の問題が大きな問題点になっておりますが、この中で、今年は、私は米審の資料を見まして考えたことは、特に賃金において男女の賃金差が非常に開いてきている。政府の出した資料は、今後日本の農業では婦人の労働が相当のウエートを持ってくる上において、この開き方は不当である、このように考えなければいかぬ。それについて赤羽さんにお願い申し上げます。  いま一つ、先ほど中村さんのほうから、労働の生産性が評価されておらない、労働の生産性に対する農民努力が賃金に反映していないということを言われましたが、私も当然だと思う。これから機械化、近代化する上において、働けば働くほどそういう点においてはマイナスになってくるということでありまして、これを何らかの形で評価できない限り、正当な労働報酬というものは積み上げられないと思うのですが、その点について中村さんにお尋ねいたします。
  55. 赤羽重太

    赤羽参考人 御指摘のとおりでございまして、今回政府米価審議会へ諮問をなされました内容を私どもが逆算してよく検討してまいりますと、男女の労働賃金の格差は約四〇%という形であらわれております。これはきわめて現実に合わない計算のしかただと思っております。  御承知のように、農村に参りますと、先ほど中村先生も御指摘になりましたが、兼業化して、ほとんど女、子供がやっておる状態でありまして、都市の近郊に参りますと、婦人労働中心で農業経営がされているということが実情でございます。したがいまして、婦人の現在の地位は農業経営の責任者である。労働にいたしましても、きわめて激しい労働に耐えて、精神的な緊張の中であえて苦しい労働をやっておるわけですから、これは決して男の労働に質においても量においても負けないものを持っております。それがなぜ四〇%も格差をつけなければならないのか、きわめて前近代的な感じを持つわけであります。私から申し上げますならば、農村における男女の労働賃金の格差は、現状におきましてはすでに一〇%である、最低二〇%である、こう考えております。特に、先ほど申し上げましたように、婦人の労働力は、その質においても、その量においても、男性に負まけておりませんし、特に田植えというような技術を要する問題になりますれば、男性の労働賃金よりも実質的によけいいただいておるというのが現状でございます。御指摘のとおりでございまして、ぜひこの点は労働賃金の算定の中で絶対に改善をしていただかなければならぬ問題だと考えております。  それから、立たしていただいた機会に、もう一つ申し上げたいのでございますが、先ほど中村先生、神田先生からも御質問がございました、米価審議会をどう思うかという問題でございますが、実は私、長野県の一単協の組合長をやっております。長野県農協の組合長会の会長もやっております。一番強いといわれております長野県の農協米対本部の本部長もやっております。そういう立場で私の私見を申し上げさせていただきたいと思いますが、米価審議会のいまの構成というものには、農民は全然期待を持っておりません。特に中立委員の存在というものは、全然私どもの評価外になっております。学者先生で、理論は非常にりっぱでございますが、現実を少しも御存じないということで、少しも期待をかけておらないわけでございまして、ぜひこの米価審議会のあり方をもっと飛躍させて、生産者の代表と政府が率直にお話し合いをするというような、そういうルール、団体交渉と申しますか、中央交渉と申しますか、そういうような形こそ、現在の事態においては最も望ましいということを考えております。と申しますことは、お米の場合には全量集荷でございます。全量集荷である以上は 当然生産者納得するような話し合いの中で米価が出てくることが必要である、これが基本的な事実であろう、こう考えております。ぜひそういうようなルールができまして、さらに意見が合わないときに、中労委と申しますか、ああいうような性格をあるいは持ちますか、そういうところに中立委員の調整団体がございまして、そこでもって調整が行われるような、そういうルールをこの際本委員会におきましても検討してしかるべきではないかというような感じを持っております。これは参考までに申し上げるわけでございます。
  56. 本名武

  57. 中野明

    中野(明)委員 どうも参考人の皆さんには、お忙しいところ御苦労さんでございます。先ほどから各委員の方がお話しになっておりますので、重複を避けまして、一、二点お尋ねしたいと思います。  いま問題になっておりまする審議会のことですが、審議会の内容、構成について、木下参考人の見解を一言承っておきたい、このように思います。
  58. 木下保雄

    木下参考人 審議会につきましては、実は、いまもお話がありましたように、ちょっと機能がなかなかうまく発揮できない形になっているのじゃないか。そういうことは、いろいろな問題が含まれますから、私は、中立委員のことで二、三御発言があったことは、よく存じておりません。ですから、おっしゃることは、そうかなと思いながら、消費者側から見ますと、消費者代表というときに、存外一人一人ぽこぽこと抜いて、あれが消費者代表だ——そういえばだれでも消費者でございますから、消費者代表ということはじきにつけられるのですけれども、そういう場合の消費者代表というのは、やはり何か組織なり、そういう意味での生産者代表と消費者代表というか——それは労働組合などがそういうものでありましょうが、そういうふうに話し合えるような資格の場でないと、大きな問題を小さいところで話し合ってまとめていくということは不適当ではないか。ですから、中立委員と申しますか、学識経験者のような方も当然必要だと思いますけれども、むしろ大事なところは、そういう中立委員だけの問題ではなしに、委員の人選その他についても、何か思いつき的にぼこぽこっとやってしまうということも、うまくないというのじゃないかという感じを私どもは持っておりました。  それから、そういうことは、たとえて言えば、米価審議会というものなしで、——法律できまったから法律でやらなければならないので、きまっていなければなしで済むかという御意見も実はございましたが、中村先生がおっしゃいましたように、何かやはりこういう問題は、私どもからいたしますると、物価そのものが安定しておれば、あるいは都市労働者なりとも賃上げ云々というものはおのずから別のスタイルになってくるだろうと思いますが、根本的には、物価が安定していないで生活が安定していないというところに、都市と農村とを問わず、問題が起こってくる要素があるのではないか。そういうことがありますれば、長期的な話をここでやりましても、結局経済が安定していなければ画餅に帰するので、むしろ話し合いの場が大事ではなかろうか。安定してきてさえすれば長期の話し合いができるのでありますから、むしろ私どもからすれば、短期に話し合いをしなければならぬようないまの経済情勢ではないかと思いますがゆえに、それが米審でありましょうとも何でありましょうとも、この種の機関というものはいまのところ必要ではないか。構成については考えるとしても、いまの場合では必要ではないかと考えております。
  59. 中野明

    中野(明)委員 次に、農地の問題でございますけれども、最近の傾向といたしまして、町の近くの良田がどんどん転用されて住宅、工場になっていく。このままでいけば、将来、食糧の上においても、農業生産の上においても、非常にバランスがくずれてくるのではないかと私どもは非常に心配しているわけであります。こういう点につきまして、どういう御意見をお持ちになっているか、池田参考人と、それから中村参考人にお尋ねしたい、このように思うのです。
  60. 池田斉

    池田参考人 非常に重要な問題で、おそらくこれは農政の今後の基本に触れる問題ではないかと思います。御案内のように、今国会にも都市計画法の改正案が出ております。また、通産省方面では、工場地域を確保するというための法案を準備をしているというようなことも聞いております現在、農村の中で長期にわたって農業経営を安定させようというような面からは、いわゆる優良なる農地が虫食い状態の形で今日放置されているものをどういう形で守るか。言うならば、国土の全体の土地利用計画、その中で都市計画法を策定しなければならぬし、あるいは工場の問題もそうだと思います。したがいまして、農業の側が何か常に守勢に立っている、こういうことに今日なっておるので、われわれとしましては、農業の地域というものを立法の上でどういうふうに守っていくか、こういうものを含めた総合的な土地利用計画が立たないと、現在のように都市に集中した政策が行なわれ、そこの地価が上がり、それが農地にまで反映して、非常な高地価の中で農業経営をどう営むかという非常にむずかしい問題に逢着しているので、やはり物価問題の基本に触れると思いますので、その辺をひとつ勇断を持って政策を確定していただく。特に、土地利用計画、国土の総合利用計画、そのための農地の位置づけ、こういう問題をぜひともお願いいたしたいというふうに考えております。
  61. 中村迪

    中村参考人 お答えいたします。  非常に大切な問題でありますが、それについては、私たちは、まず食糧は、特に米は主食でありますので、国内自給度を高める、わが国の食糧は、わが国の農民がつくる米によって自給できる方向をいまこそ強く打ち出していただかなければならない時期にきているのじゃないか、こう考えます。そういたしますと、必然、御質問にありましたように、農地の問題がありますが、これについては次のような考えを持っております。都市近郊で良田が虫食いのごとく荒らされていくと同時に、もう一つには、これは価格政策が大きく影響していると思いますが、山間僻地等における耕作放棄が非常に進んでおります。これは、農林省の生産調査資料における生産費の分布を見ましても、その傾向が近年非常に早いテンポで進んでおります。したがって、この食糧の増産政策とともに、農産物価格、特に米価では、立地計画と同時に、限界農家でも生産費が償えるような価格政策をここで拡充いたしまして、山間の僻地といわれるところでも、良田とする努力が行なわれるならば、必ずいい農作物ができるわけでありますから、そういう総合的な立地計画を立てた上で農地問題も解決していっていただきたい、このように考えます。
  62. 赤羽重太

    赤羽参考人 私は、長野県の松本市の農協の組合長をしておりますので、実際を御説明申し上げながら、お答えいたしたいと思います。  御承知のように、あそこは新産業都市に指定になりまして、いろいろな施策が進んでおります。そういう中で、松本市の管内の農地で一年間に壊廃されるものが、通常年間五十ヘクタールございます。これは主として住宅敷地になっております。それから、その住宅に通うところの道路とか、そういうような状況でございまして、そのほかに新産業都市施策としての住宅団地、あるいは商工団地というようなもので、大体昨年一年間でも百ヘクタールがつぶれております。  都市の人口集中は避けられないということがいわれておりますが、日本経済が工業を中心として発展していく、そういう中で、これはやむを得ない傾向だと存じます。ただしかし、工業と農業をどう調整するか、こういう施策が現在全然とられておらないところに重大な問題が発生しておる。たとえば農地を壊廃するにいたしましても、計画的に土地利用計画という根本に立ちまして、りっぱな壊廃をしていただければよろしゅうございますけれども、御都合によっては、あそこに行ったところが、一農民が反対したからこっちへ行くというふうに、一夜に変わってしまう。そしてその付近の農家は、住宅地だから豚を飼っちゃいかぬ、あるいは鶏を飼ったらくさいぞ、こういうような悲劇が続出しております。なおこういうような経営を続けようとすれば、行政的な圧力でこれがつぶされる、これが現状だろうと思います。全国各地でこういう状態が起こっております。これは池田さんと同じように、この狭い島国の土地をどうやって利用していこうかという意味合いにおきまして、基本的な土地利用計画というものができませんと、将来重大な問題を招来するんじゃないか、こういうことをつくづく考えさせられるわけであります。
  63. 中野明

    中野(明)委員 最後に、参考人方々参考までに御意見をお伺いして、終わりたいと思います。  生産者米価と消費者米価を同時に決定しろ、そういうような意見もあるようでございますが、これに対してどういうお考えをお持ちになっておるか、お聞きして、終わりたいと思います。
  64. 池田斉

    池田参考人 わが国は法治国家でございまして、生産者米価と消費者米価は、御案内のとおり、食管法でそれぞれきめる基準が変わっております。したがいまして、これを関連づけて同時に考えるということは、特に物価問題が、何か農業側が敵であるというような感触がマスコミその他でかなり強い、こういう段階におきましては、これは絶対に同時決定をするという方式はとるべきではない。やはり食管法のたてまえに従って、生産者米価生産者米価、消費者米価は消費者米価、こういう形でさい然と分けてきめていただきたい、こういうふうに考えております。
  65. 木下保雄

    木下参考人 これはいま池田さんがおっしゃいましたように、もしもそういう考え方がみんなにあればこれは間違いなんです。だから、何も生産者と消費者が敵だというようなことをむしろ言わないほうがいいし、また言うべきでないし、そういうような、いわば食管会計が赤字だ赤字だというようなものの表現がよくないと思っております。  先生の御質問は、一緒にきめたほうがいいか、別々がいいかということは、時間の問題ではないでしょうか。だから、一緒にきめろとおっしゃることは、同じ席で時間的にやらなければいかぬぞよ、とかくあとに問題が残るからという御配慮はよくわかるけれども、必ずしも時間がどうということよりは、むしろ考え方を一致してやってくださいというのが私どもの希望でございますから、こちらでやったときは、こっちは別の座敷で考えるのだ、よって一四・四%は底上げしてくれるよりしかたがないという考え方でなくて、時間は別でもいいから、考え方は一つの統一的な筋金を持ってやっていただきたいということを希望いたします。
  66. 中村迪

    中村参考人 食糧管理法の第三条と第四条、あの根幹が堅持されておる限りという前提がありまするならば、同時決定も、私は一向何ら問題はないかと思いますが、しかし、この第三条と第四条の関係が事実上いまなしくずしにくずされていくという政策的な状況のもとにおいては、私は、別々に切り離して、その時点における諸条件のもとでそれぞれの米価を決定するほうが妥当ではないか、このように考えます。
  67. 赤羽重太

    赤羽参考人 食糧管理法の精神は、現在の法律どおりにぜひ守っていただきたいと思いますし、生産者米価と消費者米価の関連というものはごっちゃではないはずでございますので、それぞれさい然と区別して御検討をいただくのが至当ではないか、こう考えております。
  68. 中野明

    中野(明)委員 これで終わります。
  69. 本名武

  70. 森田重次郎

    ○森田委員 私は、中村さんにちょっとお尋ねしたい。と申しますのは、あなたの会ではいつも非常に高い評価をいたしておる。これは、きょうのあなたの議論の運び方を聞いておりますと、なかなか論理的に明快なんですよ。しかし、どうもちょっと——どういうところでこんな差異ができるのだろうか。やはり農民諸君の見方から見れば、そういう見方もある。さっきあなたのなにによると、一俵一万一千円という計算のようですね。そうだと、ちょうど一石になると二万七千五百円になる。ところが、池田さんあたりの計算だと二万二千円台ということになる。片一方、またほかのなにによると、それと相当開きがあるというようなことで、ここいらにやはり一つの迷いが生ずる種になるのではないか。何回も私は、あなたのほうではどういう計算でこんなことになるのかなと思っておった。百人の労働者のあれを標準にした、これは相当開きがあるもとになるだろう。これはよくわかるのです。  次は、さっきあなたのお話だと、山間部の実際小面積の耕作条件の非常に悪いもの、そこで理論からいえば、限界効用説からいえば、戦時中に食糧を絶対に確保しなければならないという絶対条件のもとに無理に経営した場所があるわけです。ところが、現在のような世の中になりますと、実際採算がとれない経営になるのは、限界効用説でもあなたよくおわかりのとおりだと思う。そうなると、一体どの限界で耕作面積——いろいろ条件がありますけれども、きょうは耕作面積について特にお伺いしたい。一戸当たりの耕作面積がどの程度の農家を温存して、これを育成して農村の中核体にするかというところに、若干時代の流動性の上から考えてみて、非常に大事な争点がひそんでいるように、実はあなたのお話から感得いたしたので、その点にちょっと疑問を持ったのです。そういう国際競争、いま赤羽さんのおっしゃった工業化の傾向、それと農村、それといまの限界効用説の点が入ってくる。そうすると、日本の農村がある程度流動する。第一種兼業、第二種兼業、それでももちろん生活がある程度確保されておる分には、私は、それも一つの生活の方法じゃないか、もっと大きく考えていいように実は考えていたのです。そこで、最後に、もう一ぺん同じことを繰り返すようでありますけれども、この面積限度のものはどこまでも中核体として育成していきたいというこの基準の立て方に、私は非常に問題があるように前から考えておったのです。あなたは非常に理論的に研究なさっておいでのようでありますから、これの見通しについて、ひとつ御意見を聞いておきたい。ただ現状維持論で、農村でいまの農業をやっている人は令部米価によって生活安定を得ようということだと、なかなか簡単に割り切れない問題があるように私は考えているのですが、なかなかあなたにお会いする機会がないので、きょうはお会いする機会をつくっていただいたということで、これらの点だけ御見解をお伺いいたしたい。
  71. 中村迪

    中村参考人 非常に基本的な問題についての御質問をいただきまして、恐縮しておりますが、私のお答えできる限りお答えいたしたいと思います。  いろいろ御質問の点がございますので、うまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、御質問の一番の焦点である、一体それではどの辺の規模の農家を押えようとされておるのかという御質問、これは米価との関係でいえば、おそらく一体どの辺の規模の農家を対象として米価補償をしようとしているのかという御質問になるかと思います。  そういう理解でお答えいたしますと、これはどこで線を引くべきかという現実の政策上のきめ手もなければ、理論的なきめ手もないのではないかと思いますけれども、やはりここできめ手ということを考えるならば、政策上の目標というものが一番のきめ手になるかと思います。反対側のほうからお答えするようになって恐縮でございますが、たとえば自立経営農家というものを育成するという観点からの目標で米価を決定しようとすれば、おのずからそれによって米価補償の対象となる階層農家が大体どのくらいの面積かということは出てまいろうかと思います。その自立経営農家の規模をかりに二町五反なら二町五反といたしますならば、そういう農家が育成されるような米価というものが考えられるかと思います。  私への御質問の中で、おまえたちの要求米価は毎年高い感じがするがという御質問でしたが、これにつきましては、私どものほうでは、政府がいま食管法によって米を農家から全量買い上げるという仕組みなっております。したがって、極端な表現で少し無理かと思いますが、そういう制度下においては、一俵でも政府に米を売り渡す農家、そういう農家に対して政府生産費と所得を補償してやる政策上の義務がある、私たちはこう考えます。しかし、一俵が妥当かあるいは五俵が妥当かということについては、いろいろまた政策上の立場の違いによって議論があろうかと思います。この場合、御承知かと思いますけれども、農林省は現在五俵以上政府に米を売る農家を対象にして作業をしておるようであります。われわれは、これについては一俵以上というように理屈の上では考えますけれども、ただ、いまのところ、そういう詳しいデータがわれわれの手元にはございません。したがって、やむを得ず、生産費でいわゆる八〇%のバルクラインを引きまして、八〇%以上の農家にとっては生産費と所得を償うような米価にしていただきたい、そういう立場に立って毎年計算しておる次第であります。それが高くなりますのは、御指摘のありましたように、一つには労賃評価の問題でございます。この労賃評価については、私が先ほど申し上げたような観点に立っております。もう一つ高くなる要因といたしましては、御承知かと思いますが、八〇%のバルクラインをとるということが、われわれの要求米価が相対的に高いという感じを与える数字が出てくるというふうにわれわれは考えております。そういたしますと、またさらに、御指摘のありました生産性の問題がこれにからんでまいりますが、私、先ほど中野先生の御質問にお答えした中で、限界農家がだんだん変わってきているということを申し上げましたけれども、このバルクライン問題を考えましても、農林省の生産費の分布をよく見ますと、バルクライン農家だからといって、いつでも生産性が低いわけではございません。毎年生産費の分布を見まして、八〇%バルクライン農家に相当する線を見ましても、毎年毎年、わずかずつではありますけれども生産性は上昇してまいってきております。そこにやはり農民努力を見ることができると同時に、こういう農業近代化がいろいろ進められておる中では、バルクラインという問題も次第に農業の動きに応じて変化してまいりますので、われわれの米価の算定のしかたも、それに応じた変化は取り入れておるつもりでございます。  抽象的で、御質問に十分お答えできなかったかと思いますけれども、ただいま早急に頭に浮かんだお答えとしては以上でございます。
  72. 森田重次郎

    ○森田委員 ありがとうございました。御意見については、若干私も議論したい点もありますけれども、いずれまた個人的にお会いしてお伺いするということにいたしまして、時間がありませんから、この程度で終わります。
  73. 本名武

    本名委員長 以上をもって参考人の御意見に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕