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1967-06-28 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十八日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       鹿野 彦吉君    金子 岩三君       熊谷 義雄君    小山 長規君       田中 正巳君    中尾 栄一君       野呂 恭一君    藤田 義光君       湊  徹郎君    粟山  秀君       赤路 友藏君    伊賀 定盛君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       島口重次郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    中村 時雄君       斎藤  実君    中野  明君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君  委員外出席者         農林省農政局農         産課長     遠藤 寛二君         農林省畜産局畜         産経営課長   藤井 伸夫君         農林省畜産局牛         乳乳製品課長  松本 作衛君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   福島 量一君         食糧庁総務部参         事官      小暮 光美君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月二十八日  委員實川清之辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として實川  清之君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣提出第一二〇号)  農林水産業振興に関する件(昭和四十二年産  麦の政府買価格及び麦の標準売渡価格)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正君。
  3. 倉成正

    倉成委員 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案について質疑を行ないたいと思います。  まず、今回の改正案は、畜産事業団の行なう輸入乳製品売り渡しによる売買差益を、基盤いまだ定まらぬ酪農振興対策に積極的に活用するという趣旨のものであり、まことに時宜に適したものと思うのであります。しかしながら、かかる施策を講ずる以上は、政府において、酪農の長期的なビジョンと申しますか、酪農に対する基本的な姿勢が確立されていなければならないと思うのであります。もっと端的に言えば、国内において牛乳乳製品については自給姿勢をとるのかどうかという基本的な課題があると思うわけであります。この点については、政府を代表して草野政務次官から確たる御答弁をいただきたいと思います。
  4. 草野一郎平

    草野政府委員 最近の国民食生活高度化及び国民所得向上等の動向からいたしまして、牛乳乳製品需要が今後とも着実に増大することは確実でございます。これに対処いたしまして、生乳生産拡大をはかり、需要に応じ、牛乳乳製品安定的供給を確保するということは、まことに緊要な問題でございますので、多頭飼養推進あるいは経営基盤整備、基本問題として健全な酪農家育成につとめなければならぬことは当然でございますので、その方向に真剣な努力を続けていきたい、さように考えておるわけでございます。このために、具体的な施策といたしまして今日まで基本方針を立てて進んでまいったわけでございますが、飼料自給基盤整備あるいは家畜導入事業の拡充、子牛育成事業推進、こうした生産対策を講じますると同時に、加工原料乳に対する不足払い制度推進、あるいは学校給食計画的な拡大、さらに乳業あるいは集送乳の合理化等、諸般にわたる施策を講じておるわけでございますが、今後これらの諸施策を拡充するという方向に意を用いますことは当然であり、さらに、この諸施策を補完するものといたしまして、今回法律改正を行ないまして、輸入差益の一部を酪農振興対策に活用することによりまして、酪農経営の改善をはかりたいというのが基本的な考え方であります。
  5. 倉成正

    倉成委員 概括的にはただいま政務次官から政府の基本的な考え方を伺ったわけでありますけれども、もう少し私は具体的にひとつ畜産局長からお伺いしたいと思うのであります。  と申しますのは、あとで触れたいと思うのでありますけれども、元来、この法律案目的といたしております輸入差益そのものは、乳製品が、われわれが予想した、また政府が予想したよりも、はるかによけいに輸入されたということから生じてきたものである。裏を返して申しますと、国内における生産需要にマッチしないという矛盾から生まれてきたものであるという点であります。したがって、加工原料乳のこの暫定措置法を通過させました段階において政府考えておりました酪農見通しは、一応はずれたということを残念ながら指摘せざるを得ません。したがって、今日の段階において、酪農現状と今後の酪農経営形態あるいは牛乳乳製品生産、消費についての見通しという点を、ひとつ長期ビジョンとあわせてお伺いいたしたいと思います。
  6. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいま御質問の点、非常に広範な問題でありますが、最近の生乳生産の実情からまずお話を申し上げますと、御承知のように、昭和三十八年以前は、おおむね、乳牛頭数にいたしましても、生乳生産量にいたしましても、対前年比一〇%をこえる速度で増加をいたしておったわけでございますが、三十九年を境にいたしまして、農家戸数減少をいたすことになりまして、それから乳牛頭数生乳生産量伸び率が年々低下をしてまいりまして、特に昨年の八月ごろを境にいたしまして、生乳生産量が対前年同月比で二、三%程度伸びにとどまるという状態になってまいったわけでございます。三十六年当時までは、農家戸数もふえますし、頭数もふえるということで、外延的な拡大をしておったわけでございますが、三十六年から三十八年までは、農家戸数停滞をいたします。しかし、頭数生乳生産量ともふえるということで、内包的な動きに変わってきたわけでございます。三十九年からは、農家戸数減少するし、頭数はやや伸び率は減退しておりますもののふえておりまして、内包的に拡大するというふうな形をとってまいったのでありますが、先ほど申し上げましたように、四十一年八月ごろから急速に生産伸び低下をいたしてきておるわけでございます。  この原因といたしましてはいろいろなことが考えられるわけでございますが、まず、三十九年ごろを境といたしまして農家労働力の流出が非常に顕著になってまいりました。その結果、収益性の低い一、二頭階層の脱落が非常にふえてまいったわけでございます。一方、多頭飼育形態はふえてまいっておりますけれども、そのふえ方が、減少するものをカバーするに足りないというふうな点があるというふうに思われるわけでございます。  第二の点といたしましては、御承知のように、牛肉の価格が非常に騰貴をいたしたわけでございますが、その関係から乳牛屠殺が行なわれたというふうなこともございまして、乳牛頭数増加停滞をいたしたというふうに考えておるわけでございます。  ただ、最近におきましては、不足払い制度推進、それから市乳原料乳価格の上昇ということもございまして、屠殺率減少をしてまいりますと同時に、子牛の頭数増加をしてまいっておるわけでございまして、今後これらの増加しております子牛をいかに搾乳過程に投入するかという誘導が、きわめて大切になるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  それから、乳製品輸入の問題でございますが、四十一年度におきましては、需給の計算から、生乳に換算いたしまして五万九千トン程度乳製品不足いたしまして、輸入に仰がざるを得ないのではないかというふうに考えておったわけでございますけれども、一方で需要が非常に急速に伸長いたしたわけでございます。と同時に、先ほど申し上げましたような生産停滞というものが生じまして、その結果、生乳換算にいたしまして二十四万九千トン程度不足が生ずることになったわけでございます。このふえました原因としては、先ほど申し上げましたように、需要がふえたわけでございますが、飲用乳需要増加をいたしましたために加工乳原料となります粉乳使用増加、あるいは菓子類が非常に高度化をいたしまして乳製品を多量に使うようになってまいった、そういうふうなことが需要を特に増大さした原因であるというふうに考えておるわけでございます。  その結果、輸入量といたしましては生乳換算二十四万九千トンでございますが、輸入いたしましたもの別の数量買い入れをいたしまして売り渡しをいたしました売り渡し数量について申し上げますと、バターにつきましては九千二十トンでございます。脱脂粉乳につきましては一万六千六百八十七トン、全粉乳につきましては二千七トン、ホエイパウダーにつきましては二千百二十二トンということでございます。  今後の見通しの問題でございますけれども、先ほど申し上げましたような生産状態があらわれておりますので、今後は逐次生産拡大をしてまいるというふうに思うわけでございますが、何といたしましても、頭数増加停滞をいたしておりました関係から、ここ二、三年急速に生産拡大するということはかなり困難があろうかというふうに考えておるわけでございますが、これに対しまして、今回御審議を願います法律改正によりまして、酪農振興のために差益を使う等の措置をとることによりまして、できるだけ生産拡大いたしまして、従来きめております近代化方針に沿いまして生産拡大をはかってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  7. 倉成正

    倉成委員 ただいま畜産局長からるるお述べになりましたが、結局、需要が思ったよりも伸びた、生産は期待したよりも停滞した、したがって、そのギャップが見通しの狂った原因であるということのお話であったと思うのであります。  元来、わが国のように土地資源の貧弱な国において酪農あるいは肉用牛等生産していくということについては非常な困難があるわけでありまして、従来は、御案内のように、乳牛増加は、チラーの輸入に伴う役牛の乳牛に対する転化、また馬の乳牛に対する転化ということから、乳牛頭数がふえてきたわけでありますが、これから先の乳牛増加ということになりますと、どうしても土地資源と結びついていかなければならない非常に困難な問題をかかえておるわけであります。  したがって、お伺いしたいのは、酪農について国内自給を目途としてやるのかどうかという点と、もし自給のめどをつけてやるということになれば、今後どのくらいの期間に——まあ、そう遠い将来のことはなかなか予測がつかないと思いますけれども、どの程度生産と、どの程度乳牛飼養頭数であり、どの程度経営方式であればまあまあ日本酪農は所期の目的を達したことになるという、そういったビジョンについて、大まかでけっこうですから、お伺いしたいのです。
  8. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 近代化方針によりますと、四十六年で需要量七百九万六千トンというふうに想定をいたしておるわけでございます。近代化方針では、四十六年におきまして必要な生乳を供給する、国内自給をするという体制を立てておるわけでございます。最近の国際的な牛乳乳製品生産あるいは今後の生産状況から見まして、安易に外国輸入に依存するというふうなことはなかなかむずかしいのではないかというふうなことも考えられるわけでございます。そういうふうな意味におきまして、今後とも自給を行なうというふうなたてまえで酪農振興をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、現実的には、乳牛頭数増加停滞もございまして、この計画どおりに四十六年に達成することはやや困難であろうかというふうに考えておりますが、あくまでこの目標に従いまして実施をいたしまして、若干のずれはございますけれども、この計画を実現したいというふうに考えておるわけでございます。  なお、経営につきましては、やはり十分な所得が確保されるような経営考えていかなければならないというふうに考えておりまして、他の農業との複合経営におきましては少なくとも五頭以上の頭数、それから酪農専業経営につきましては十頭ないし十五頭以上の経営を確立するということを目標にして、施策を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  9. 倉成正

    倉成委員 昭和四十六年の目標については、御案内のように、現在の時点から考えますと、相当これは狂いが生じておる。需要についてもそれ以上のものが考えられるし、また生産についてはこの目標を達成することは非常に困難な状況であるということでありますから、やはりこの際、経済は生きものでありますからなかなか思うようにいかないにしても、もう少し実態に即した、また地域別のこまかい対策が必要じゃなかろうかと思うわけであります。   〔委員長退席仮谷委員長代理着席〕  そこで、四十六年におきます一頭当たり生産数量というのは大体どの程度に予想されておるわけでありますか、お伺いしたい。年間のです。
  10. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 搾乳牛一頭当たり四千八百キロと想定をいたしております。
  11. 倉成正

    倉成委員 御案内のように、搾乳牛生産能力については、一万キロも出すものもありますし、非常に低いものもあるということで、その技術水準あるいは飼料状況で非常に違うわけでありますけれども、これから先日本酪農対策で一番基本的な問題の一つは、やはりえさの問題であろうかと思うわけでありますが、問題をえさの問題にしぼって、少し生産対策についてお伺いしてみたいと思います。  現在外国から入れております乳用牛飼料の量はどの程度あるか、また将来においてこのえさはどの程度増加する見込みであるかということをお伺いしたいと思います。
  12. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話の点でございますが、乳用牛だけの飼料輸入としてはちょっと的確な資料がございませんので、配合飼料生産で申し上げますと、大体全生産量の中の一割程度乳用牛に使用されておるわけでございます。
  13. 倉成正

    倉成委員 飼料輸入の大部分が鶏と豚であるということは私もよく承知しております。しかし、日本酪農濃厚飼料を非常に使用しておるということから、やはり酪農向けえさ輸入ということについてもう少し的確に御調査いただいておきたいと思うのであります。  この点と関連して、牧野の改良草地改良について、農林省でも非常に積極的にお進めになっておるようでありますけれども、われわれから言わせると、まだまだ草地改良について、また草の研究については非常に不十分だ。意欲的に日本国内酪農自給体制をとるとするならば、ちょっと画期的な対策を講じない限りにおいては、なかなかえさの面で追いついていかない、外国から入ってくる濃厚飼料増加ということでそれがカバーされていくのではなかろうかと思うので申し上げておるわけであります。  わが国国土面積三千七百万ヘクタールのうち、二千五百万ヘクタールが林野であり、そのうち九割が樹林地であるということを考えてまいりますと、今後の草地改良について飛躍的な積極的な姿勢が必要だと思うのでありますが、この点についていかがお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  14. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいまお話しの点でございますが、実は乳牛については本来草食動物でございます。したがいまして、生理的な立場から見ましても、草を飼料として与えることが最も妥当であるというふうに考えられるわけでございます。そういう意味から、飼料自給率を上げまして、理想的な形態といたしましては、全国的に見ますと、平均して七五%程度は草に、良質な粗飼料によって供給すべきものであるというふうに考えておるわけでございます。そういう意味から、できるだけ飼料を草に依存するというふうなたてまえから草地改良事業を積極的に遂行いたしたいというふうに考えまして、先生も御承知のように、土地改良長期計画の中に草地改良を加えまして、草地改良としましては、四十九年までに四十万ヘクタールの草地を造成するということで、この計画に沿いまして毎年草地改良実施をいたしておるわけでございますが、本四十二年度におきましても、草地改良、国営、県営あるいは公団営事業につきまして採択基準を引き下げる等の措置をとりまして、さらに草地改良事業が一段と推進されるように努力をいたしておるわけでございます。
  15. 倉成正

    倉成委員 草地改良については、農林省においても非常に積極的に前向きに取り組んでおられるということは認めます。しかし、これから先の酪農考えていく場合に、日本乳牛耐用年数欧米先進国に比べると非常に短いということも、えさ関係から出てくるわけでありますので、一頭当たり生産量をふやすこともさることながら、やはり乳牛耐用年数をふやすという意味から申しましても、草資源の開発ということに積極的に取り組んでいかなければならない。特に、外国より輸入しますとえさの値段はだんだん上がってくる傾向にあるようですけれども、この点はひとつとくと御注意をいただきたいということを指摘いたしまして、次に進みたいと思います。  そこで、お伺いしたいのは、われわれは、一昨年、酪農現状がもうほんとうに非常にたいへんなところにきておる、特に原料乳地帯においてその問題があるということで、いわゆるただいま審議をいたしております加工原料乳不足払い法律をつくったわけでありますけれども、この制度初年度においてどのように運営されたか、また、その運用過程において、政府のきめました限度数量に対して認定数量はかなり低くなったというのはどういう事情によるのか、御説明をいただきたいと思います。
  16. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 不足払い制度運用状況でございますが、まず暫定措置法の施行とともに、昨年四月一日付で四十二都道府県において指定生乳生産者団体指定がなされたわけでございますが、その後、埼玉県及び新潟県においても指定がなされました結果、現在四十四の都道府県において生乳受託販売事業実施されておるわけでございまして、現在指定がなされていないのは、神奈川県、京都府及び東京都の八丈島の区域になっておるわけでございますが、これらの地域におきましても、指定生乳生産者団体指定がなされますように指導いたしておるわけでございます。四十一年度の指定生乳生産者団体受託販売量は約二百三十二万トンというふうに見られておりまして、これは総出荷数量の八〇%に当たるわけでございます。このうち、加工原料乳は七十四万トンということになっておるわけでございます。七十四万トンに対しまして畜産振興事業団から指定生乳生産者団体を通じまして生産者補給金が交付されまして、四十一年度の総額はおおむね三十八億五千万円ということになっておるわけでございますが、加工原料乳限度数量は九十九万三千トンということになっておりまして、認定数量は七十三万八千トンでございますので、当初きめました限度数量よりかなり下がっておるわけでございます。これは一つは、生乳生産停滞がありました反面におきまして、飲用乳需要が強かったために、加工原料乳数量そのものが前年を下回ったことと、さらに、制度の発足の当初でございましたので、指定生乳生産者団体が活動いたしまして全面的に県内の生乳を把握することがまだできなかったということが、おもな原因であるというふうに考えておるわけでございます。
  17. 倉成正

    倉成委員 ただいま不足払い制度初年度運用の概要の御説明があったわけでありますけれども、四十四都道府県において指定されておる指定生産者団体が強くなり、ほんとうに機能を発揮するようになることが酪農振興の基本的な柱の一つであると考えるわけでありますが、残念ながらまだ府県によっては弱体化団体もあると聞いておりますし、また、元来日本酪農発達過程乳業資本によってなされたという経過から考えまして、指定生産者団体強化については格段施策が必要であると考えるわけでありますが、この点について政府としてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  18. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 指定生乳生産者団体は、御承知のように都道府県における生乳一元的集荷販売機関でございまして、集送でありますとか、乳業者との取引交渉でありますとか、生産者補給金を含めた乳代金支払い等任務を果たしておるわけでございます。きわめて重要な任務を持っておるわけでございますので、指定生乳生産者団体育成強化ということはきわめて重要であるというふうに考えておりまして、この育成強化のために一そう努力をしてまいる考えでございます。このために、四十一年度におきましては、学校給食用牛乳供給事業について指定団体が重要な発言を持つような要綱を整備いたしましたほか、事務運営に要する経費を助成いたしましたが、四十二年度からは、さらにこれに加えまして、指定団体が設置いたします集送乳施設に対して助成を行なうことにいたしております。また、指定団体等が設置をいたします牛乳乳製品工場に対しまして畜産振興事業団から出資を行なわせるというようなことも考えておるわけでございますが、なお、今後畜産局施策を行なう場合におきましては、家畜導入事業にいたしましても、今回の輸入差益の活用による生産対策等につきましても、すべて積極的に指定生乳生産者団体を関与させるということをたてまえにいたしまして、生乳生産者団体強化発展をはかってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  19. 倉成正

    倉成委員 おおむねただいまの答弁で適当だと思いますが、さらに指定生産者団体強化のためには格段の御配慮をいただきたいと思います。  同時に、輸入差益の問題に触れてまいりたいと思うのでありますが、四十一年度における事業団乳製品輸入状況、それからそれに加えて、今年度の輸入見込み、また差益見込みというのをお伺いしたいと思います。
  20. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 四十一年度の輸入量は、先ほど御説明申し上げましたように、生乳換算で二十四万九千トンということに相なっておるわけでございます。その内訳を物別に申し上げますと、バターにつきましては、買い入れ輸入契約をいたしましたものが一万二千百トンでございます。これに対しまして、買い入れ済みのものが三月末現在で申し上げますと九千百四十トンということで、未到着は三千トンでございます。脱脂粉乳につきましては、輸入契約は二万トンいたしまして、三月末の買い入れが一万五千七百五十トンで、未到着が四千二百二十トンということになります。全粉乳が、輸入契約が三千五百トンでございまして、買い入れ済みが二千七トン、未到着が千五百トンということになっております。さらに、ホエイパウダーにつきまして、輸入契約をいたしましたものが四千七百十一トンで、買い入れ済みが二千五百二十九トン、未到着が二千二百トンということになっておるわけでございます。  その結果、売り渡しをいたしましたものが、バターが九千二十トン、脱脂粉乳が一万六千六百八十七トン、それから全粉乳が二千七トン、ホエイパウダーが二千百二十二トンということになっておりまして、これから生じました差益の総額は四十八億八千七百万円ということになっておるわけでございます。  四十二年の見込みにつきましては、先ほど申し上げましたように、生乳換算で四十三万九千トンというものが必要になっておりまして、その内訳といたしましては、需給の事情によりまして必ずしもバターなり脱粉を的確にいまの段階で量的にきめるということもなかなかむずかしい問題でございますので、需給の実情に応じて輸入する必要があるということにかんがみまして、現在想定をいたしておりますものは、バター一万一千三百二十トン、それから脱脂粉乳二万二千二百十七トン、全粉乳一万六千トンというふうな想定を一応いたしているわけでございます。  その結果どの程度差益が発生するかという問題につきましては、国際市況の変動等によりまして必ずしも的確な推定をするということは困難かというふうに考えるわけでございますけれども、特に最近バターにつきましては国際的にはやや需給が軟調である、脱粉につきましてはややかたいというふうな事情もございまして、全体的に見ますと、国際価格はやや値上がりぎみではないかと思っておるわけでございます。一方、昨年の経験にもかんがみまして、本年度につきましては国内の安定指標価格水準に市価を安定させるということを目途として売買をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。その結果、想定をいたされます輸入差益金としては、おおむね五十六億円程度になるのじゃなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  21. 倉成正

    倉成委員 今年度についても四十一年度以上の輸入差益が見込まれるということであります。この傾向は今後どの程度続く見込みであるかということをひとつお伺いしたいと思います。
  22. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 的確な今後の見通しにつきましては、なかなか現段階において申し上げにくいと思うわけでございますけれども、今後国内生産がどの程度伸長し得るかということにかかってくるかと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、最近乳牛屠殺率低下をいたしてまいっておりますことと、子牛の頭数増加しつつあることもございまして、これを完全に搾乳過程に投入いたしますればかなり生産が上がってくるのではないかと思われますけれども、何といたしましても、乳牛頭数それ自体を飛躍的にふやすということは、生理的な関係から非常にむずかしいわけもございまして、ここ二、三年は現在程度ないし若干多い程度輸入差益が発生するのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  23. 倉成正

    倉成委員 輸入差益は、長期の見通しははっきりしないけれども、ここしばらくは相当程度発生するであろうという御見解のようであります。  そこで、現在国内において乳製品を処理加工しておる状況と、今後、もちろん生産状況あるいは飲用乳の消費状況等のからみ合いもあるかと思いますが、これはどういう方向を示していくか、大体お見通しを伺いたいと思います。
  24. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいまの点について御説明申し上げますと、国内生産量につきましては、四十一年におきまして、バターは二万四千七百九十トン、それから脱脂粉乳が二万六千三百九十一トン、それから全脂粉乳が二万七千六百八トンということでございまして、バターについて申し上げますと、前年対比としましては、大体最近は四%程度伸びておるわけでございます。脱脂粉乳につきましては、四十年に対前年比九三%程度で経過をいたしましたが、四十一年は一〇六・六%ということで、ここ二、三年の六%台ということで進んでおるわけでございます。それから、全脂粉乳につきましては、四十一年には対前年比一〇四・七六%というふうに、従来より伸び率はやや減少をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、国内生乳生産いかんによってきまってまいるというふうに考えるわけでございます。一方で、生産されました牛乳につきましては市乳化の方向に向かっておるというふうな現状から考えますと、乳製品が飛躍的に生産がふえていくというふうなことはないと考えますが、現状程度伸び率伸びていくものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  25. 倉成正

    倉成委員 外国から輸入する乳製品輸入先ですね。おもなる輸入先、それから価格がどういう傾向——先ほどちょっとお話があったようでありますけれども、四十一年度と四十二年度と対比しまして、大体どういうことになるか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  26. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 それでは申し上げますと、バターにつきましては、オーストラリア、ニュージランドが中心でございまして、そのほか、オランダ、ノルウェー等からも入っております。それから、脱脂粉乳につきましては、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージランドが中心でございまして、そのほか、西ドイツ、ベルギー、アイルランド等からも若干入っております。それから、全粉乳につきましては、ニュージーランド、ベルギー、フィンランド、オーストラリアというところが中心になっておるわけでございます。  それから、価格につきましては、必ずしも輸入のつど価格は一定しておりませんが、たとえばバターについて申し上げますと、四十一年に入れましたものは平均してトン当たり四十七万九百二十七円ということになっております。それから、脱脂粉乳につきましては、トン当たり十七万八千三百七十五円ということになっております。全粉乳につきましては、トン当たり三十三万六千十五円ということになっておるわけでございます。
  27. 倉成正

    倉成委員 ばく大なる外国からの乳製品輸入考える以上は、やはり国内における乳製品の処理加工——もっとも、原乳の量か限られておりますから、これの総ワクは動かすことはできないにいたしましても、その処理加工についてのあり方ということもやはり問題の一つではなかろうかと思うわけでありますが、たとえば、九州乳業等におきましては、生産者を中心にして、生産から販売までということで、畜産事業団の二億の出資によって新しい方式をとって需給の調整をやっておるわけですが、こういう方式を各地において若干助成していこう、そういう意図が政府においてあるかどうか、お伺いしたい。
  28. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 九州乳業につきましては、御承知のように、九州地区一円につきまして需給調整をやろうというふうな考え方から、九州乳業に対しまして事業団が出資をいたしたわけでございます。こういうふうな考え方に基づきまして、相当広い地域にわたりまして指定生産者団体が中心になりまして需給調整を行なおうというふうなものに対しましては、事業団から出資をいたすということにいたしたいと考えておる次第でございます。
  29. 倉成正

    倉成委員 需給調整については、九州乳業の例もありますが、ひとつ積極的に考えていこうという前向きの政府の御答弁でありますから、この程度にとどめますが、やはり、現在乳価をめぐりまして、特に飲用乳価をめぐりましていろいろな紛争が絶え間ない、また、小売り店が非常に乱立しておるので流通経費が非常にかかるというふうなことから、経済企画庁を中心として牛乳調査団が設けられるというようなことも承っておるわけでありますけれども、農林省としては、流通、小売り、こういうものについての改善策についてどういう対策をお持ちであるか、お伺いしてみたいと思います。
  30. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 牛乳につきましては、消費者には安く、生産者には高くというのが理想的な形態であるというふうに思うわけであります。そこで、今後牛乳の消費は拡大の一路をたどってまいると思うわけでございますが、これが消費者までに届けられます過程における合理化の問題はぜひはかってまいらなければならないというふうに考えておるわけでございますが、特に小売り段階につきましては、従来から改善につきましていろいろな提案がなされておりまして、今回牛乳の調査団ということにも相なったわけでございますが、農林省といたしましては、この流通段階の合理化を積極的に推進するために、牛乳の流通改善の懇談会を開催いたしまして、各方面から意見を聞きまして、これに基づきまして出された意見に従って合理化を実施するというふうなことにいたしておるわけでございまして、現在人選をいたしておりますので、近く発足をして具体的な検討に入りたいというふうに考えておるわけでございます。
  31. 倉成正

    倉成委員 これからひとつ輸入差益の使い方あるいは輸入差益の性格、そういう問題に触れてまいりたいと思いますので、的確なる御答弁をいただきたいと思います。  すなわち、不足払い法を成立させました段階におきまして、この不足払いの財源は主として一般会計から求める、この輸入差益については補足的な意味であるということを、繰り返し繰り返し政府の責任者が答弁をいたしておるわけであります。私もここにその速記録の一部を持ってきておるわけでありますけれども、この基本的な考え方については変わっていないか。変わるはずがないと思いますけれども、この点についてしかと御答弁をいただきたいと思います。
  32. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 制度発足のときにおきまして、本来、不足払いの金額としましては、一般会計から支出をするというふうなたてまえにいたしておったわけであります。当時におきましては、差益というものはほとんどネグリジブルであって、これは補足的な意味であるというふうに考えておったわけでありますが、その後の実情を見ますと、非常に差益はふえてまいりました。先ほど申し上げましたように、四十八億というふうに、予想もしないような数字になってきたわけでございますが、四十三年度におきましても五十六億程度差益が発生すると予想されるという事態にあるわけでございます。そこで、補給金の勘定といたしましては、政府の一般会計からの交付金と輸入差益をもってやるということになっておるわけでございまして、今回は多額な差益の発生もありまして、これを生産対策に使うということにいたしたわけでございます。  そこで、本来的に一般会計からの交付金で不足払いをするというたてまえは、そうあるべきだというふうに私は考えるわけでございますけれども、しかし、非常に多額な差益が発生をいたしておるという現状から考えますと、この差益生産対策に使うにいたしましても、生産対策にどの程度使うべきかというふうなこともございますし、それから、差益が非常にたくさん出れば、一般会計から交付金を全部出すというふうなこともこれはなかなか困難である、その必要もないのではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、一般会計からの交付金は、差額の発生、生産対策に使用され得る限度等を考えまして、全体的に交付金の交付というものの金額を考えていくべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  33. 倉成正

    倉成委員 ただいまの御答弁ではなかなか明確でありません。ということは、どういうことかと申しますと、一般会計から入れるのがたてまえである、しかし、相当輸入差益が出たならば、それを全体をにらみ合わせて使うという御答弁のようであったわけでありますけれども、毎年毎年大蔵省との折衝において、この財源を一般会計から幾ら輸入差益から幾らというようにきめていくということは、どうも適当でない。ということは、一般会計からこの金を出すならほかの予算を削るぞと大蔵省から言われると、畜産局も、ほかのほうがかわいいものだから、折れざるを得ないということになるのが正直な実情じゃなかろうかと思うわけです。そうなれば、やはり輸入差益をこの補給金不足払いの財源に使ってよろしいというたてまえがありますから、私は使うなとは申しませんけれども、少なくともこの交付金、不足払いの財源について一般会計と補給金との比率と申しますか、そういうルールを確立しておくことが、将来のいろいろな施策考えていく上において、また畜産行政を推進していく上において大切なことであると思うわけであります。この点についてはいかがでありますか。
  34. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話のようなことも一つの方法であろうかと思うわけでございますけれども、現実に差益がどの程度発生するかというふうなことも必ずしも予測がしにくい点もございます。きめておりましても、その差益が少なければまた事情が変わってくるという問題もございますし、また、差益が非常にたくさんになれば、この残った差益は完全に生産対策に使い得るかどうかという点についても問題は出てまいると思うわけでございます。そういうふうな点から、非常に、未確定な要素が多いものでございますから、確定的にこういうふうにすべきだという方式をこの際きめておくということは、なかなかむずかしい点があるのではなかろうかというふうにも考えられまして、そのときの情勢に基づきまして最善の方法を講ずるのが適当ではなかろうかというふうに実は考えておる次第でございます。
  35. 倉成正

    倉成委員 せっかくの御答弁でありますけれども、ただいまの御答弁には了承できません。ということは、元来、輸入差益というものはそうばく大にあるべきものでないというたてまえに立っておるわけです。現に、不足払い法律をつくります際においての政府答弁をかりに今日の段階において読み上げたら、全く予想せざる事態が起こっておるわけです。また、将来においても少なくとも酪農振興ということを叫ぶ以上においては、こういった輸入差益がばく大に出てくるということはあるべき姿でないわけです。したがって、そういうことを前提にして酪農振興ということを考えていくならば、少なくとも交付金については、何も多く出たからどう、少なく出たからどうということでなくして、少なくとも、交付金の一定割り合いについては一般財源をもってまかなうというルールが確立されておったほうが、農林省としても行政がしやすいのではないでしょうか。毎年毎年総合情勢を勘案してといっても、結局は大蔵省のベースでものを考えていくということにならざるを得ないと思うわけでありまして、大蔵省と話がついていないうちに畜産局長答弁するということはできないというので、非常に苦しい御答弁をなさっておると思うのでありますけれども、この点はもう少し自信を持って進んでいいのではなかろうかと思うわけでありますが、草野政務次官から、政府を代表してその決意のほどをお伺いしたいと思います。   〔仮谷委員長代理退席、高見委員長代理着席〕
  36. 草野一郎平

    草野政府委員 自信を持ってやるということと結果とはときどき違うことがございまして、実際はそこのところに問題があるのでございますが、大蔵省のベースで事を運ぶということは本来から申せば筋違いの話で、これは農林省考え方及び日本農政のあり方という見識に立ってものをなすべきことでありまして、したがって、その方向に向かって今後努力しなければなりませんが、さればといって、ことごとにその方針で強引に押し通してしまってうまくいくかいかないかということも、またいろいろの問題が出てくるわけでございますので、事務的に申せば、先ほど局長の申したように、諸般の情勢を勘案しながらと言っておりますけれども、あまり勘案ばかりしておりますと曲げられますので、ひとつ大方針に向かって強く今後も進んでいきたいと思いますので、こうした委員会において強い御発言のあるということもまた一つの大きな力づけにもなりますので、これはありがたいことだと思っております。
  37. 倉成正

    倉成委員 政務次官のお気持ちはわかりますが、この問題は、実は不足払い法律過程において繰り返し繰り返し議論した事柄でありますので、追って、大臣の答弁を留保いたしておきます。  そこで、次に進みたいと思いますけれども、この輸入差益の使途についてお伺いしたいと思いますが、改正法によれば、輸入差益畜産事業団の行なう助成事業の財源に持ち込むことになっておりますが、具体的にどのような事業に助成を行なうか、お伺いしたいと思います。
  38. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 差益の使途でございますが、先ほどからしばしば申し上げましたように、これは臨時的な差益でございまして、将来はこの差益が発生しないということを考えるのが妥当であるというふうに考えておるわけでございます。そういうふうな状態にするためにこの差益を使うというふうなことを考えておりまして、したがいまして、緊急臨時的なものという性格をまず持っておるというふうに考えておるわけでございます。  もう一つは、先ほどから申し上げましたように、毎年どの程度出るかということは必ずしも十分な予測もできませんので、したがいまして、長期的にこの金を使用するということは妥当ではないというふうにも考えられるわけでございます。したがいまして、そういう性格のものとしてこの使途を検討してまいったわけでございますが、その結果、次に申し上げますような使用のしかたをいたしたいというふうに実は考えておるわけでございます。  まず一つは、一般会計で補助ないし助成をいたしておりますものと同じものについて使うというのは妥当ではないということと、それから補助、これは事業団からの補助でありますことにかんがみまして、補助の一般原則に従いまして、たとえば零細な補助であるとかあるいは個人の補助であるとかというものにつきましては、使用をしないことが適当であるというふうに考えておるわけでございますが、このような資金の性格にかんがみまして、画一的に一定の事業想定いたしてやりますよりは、この際、各県の実情に応じまして、各県のほんとう酪農振興するために必要な資金に使ったほうが適当ではないかというふうな考え方から、一応助成といたしましては、金額を各県に割り振りまして、これを指定生産者団体に交付をいたします。指定生産者団体からそれぞれの必要な事業に供給をする、交付をするというふうな形にしたほうが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。ただ、その際問題となりますものは、何でも使ってよろしいというふうなことになりましても問題がございますので、そこで、各県におきましてメニューをつくりまして、その事業のメニューを農林省に協議をいたしまして、協議の整ったところで実施をしていただくという形にしたらいかがかというふうに考えておるわけでございますが、なお、指定生産者団体がこの金を補助なり交付をいたします際におきましては、都道府県等との連絡を十分にいたしまして、公平妥当にこれが処理されるというふうなことを考えておるわけでございます。  ただいま申し上げましたような形で使用されるわけでございますけれども、まず県のほうから出てまいると想定されますおもなものにつきましては、当方におきまして一応モデルをつくっておきたいというふうに考えておるわけでございますが、その代表的なものといたしましては、融資の事業でございます。融資につきましては、近代化資金とか経営拡大資金があるわけでございますので、これは現行制度でございますので、このものに使うということは、先ほど申し上げました原則から必ずしも妥当ではないというふうに考えられますので、この際、新しい融資の道を開いたらどうかというふうに考えておるわけでございまして、それは酪農の施設だとか、家畜の購入だとか、それから育成であるとかというものに必要な資金を系統から借り入れました場合におきましては、三年間という期限で、利子につきましては三分五厘程度の金利でありまして、差額の補給をいたすというふうなことを考えたらどうかというふうに考えておるわけでございます。  なお、草地改良事業等につきましても、これはきわめて重要性のあることは、先ほどお話がございましたような次第もありまして、草地改良事業を国営、県営、団体営、公団営という形で進めておりますけれども、さらに小規模のものにつきましては、この資金を使うということで助成をしたらどうかというふうなことで考えておる次第でございますが、いずれにいたしましても、県から上がりますメニューを基礎にいたしまして、適切な事業に助成をするというふうなことにいたしたいと思っておる次第でございます。
  39. 倉成正

    倉成委員 三十四億という、従来の畜産の予算から考えると、かなり大量の資金を使うわけでありますから、この使途についてはやはり相当慎重に、しかも効果的に使っていかなければならないと思うわけであります。ただいま御説明のありました各府県、各地域に自主性を持たしてやるということは非常にけっこうだと思うわけです。地域地域の実情が異なるわけですから、これは農林省としては非帯に進んだものの考え方であると考えるわけでありますけれども、ただ、国の助成事業、それから今度の輸入差益の使途、それから地方競馬会の益金の問題、この相互関係というのはある程度明らかにしておく必要があるのではなかろうか。ただいまの御説明で、国の補助とダブらないという基本的な考え方はよくわかりますけれども、しかし、従来畜産の予算を編成する場合に、いろいろなものについて各般にわたって不十分であるけれども一応かっこうをつけているわけですね。ですから、それを全然避けてやるということはなかなかこれはむずかしい。ですから、たとえば従来の事業に対してさらに深度を深めるというか、厚さを増すというかそういうことも考えられていくし、融資の利子補給というのはそういう意味であろうかと思うわけですが、そういう点をひとつ的確にやはり検討しておくことが必要ではなかろうかと思うわけでありますから、この点は希望として申し上げておくわけです。  そこで、多少技術的になりますが、本法の改正の二十条の二におきまして、いわゆるこの輸入差益を法第三十八条第一項第六号の業務に必要な経費の財源に充てるため、法第四十八条第一項の特別の勘定に繰り入れるというふうになっているわけですが、畜安法のこの三十八条の第一項第六号というのは、いわゆる畜産一般についての振興ということになって、酪農だけに限られていないわけです。したがって、今後この差益酪農だけの振興のために使うのかどうかということが、この法律からは直接出てこないわけです。その点についてはどういう考え方をお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  40. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 酪農生産停滞をしておるということに基づきまして、差益の発生を見ておるわけであります。したがいまして、さしあたってこの生産対策といたしましては、酪農振興対策に使用したいというふうに考えておるわけでございます。
  41. 倉成正

    倉成委員 それはさしあたってというまくらことばがついているわけですが、私は、少なくとも大臣のこの提案理由においては酪農振興に使うのだということがはっきりしている以上、やはり法律なり施行規則の中で明確にしておくことが、将来に疑義を残さないでいいと思うのですが、この点もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  42. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 これは省令をきめることになるわけでございますが、省令に酪農振興に使うということを明らかにするというふうに考えておるわけでございます。
  43. 倉成正

    倉成委員 わかりました。結局、この輸入差益酪農以外には使わないというふうに理解をいたしておきます。  そこで、この二十条の二の中にあります「農林大臣の承認を受けて、その残余の額に政令で定める割合」ということになっておりますが、「政令で定める割合」というのは、具体的に何%であるか、お伺いしたいと思います。
  44. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 八割ということを考えております。
  45. 倉成正

    倉成委員 剰余金の八割を輸入差益について使うということですね。そこで、四十一年度の輸入差益は、いつの時点でこれをつかまえるのか、お伺いしたいと思います。
  46. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 決算をした時期でございます。この法律が通りましたとき以後になるわけでございますが、四十一年度につきましては、施行の日において確定をすることになるわけでございます。
  47. 倉成正

    倉成委員 これは非常に技術的になりますけれども、一体いつの時点でとらえるかということによって、非常に大きな変化はないかもしれませんけれども、やはり議論が出てきますので、たとえばただいまちょっと局長が言われた事業団の決算が五月三十一日になっている。ですからその時期でとらえるのかどうか、あるいはどこかということをやはり明確にしておいたほうが、こういう割合をきめたり何かする技術的な法律になっておりますから、将来のために適当ではなかろうかということを御指摘申し上げておきます。  そこで、各県の指定生産者団体にこの差益を配分するわけですが、この配分の基準というのは、どういう基準を使われるか、お伺いしたいと思います。
  48. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 配分の基準につきましては、なお今後十分検討をいたしてまいりたいと思いますけれども、大体の考えといたしましては、各県の乳牛頭数なり、あるいはどの程度伸びておるか、今後どのように伸びるかというふうなことを想定をいたしまして、総合的な判断をしてきめたいというふうに考えておるわけでございます。
  49. 倉成正

    倉成委員 大体まあそういうことであろうかと思うのですが、この際、特に御要望申し上げておきたいのは、ただ現在の実績だけで配分するということになりますと、一見公平のように見えますけれども、これから日本酪農がまだまだ爆発的に伸びていく、伸び盛りの酪農でありますから、現在乳牛があるから、これから先もずっとこの伸びが続くだろうというような既成概念で考えては間違いである。やはり将来酪農の可能性ということを考えて、ほんとうに意欲のあるところには思い切って助成してやるという姿勢が必要であろうかと思いますので、これは御要望として特に申し上げておきたいと思います。  そこで、指定生産者団体にこれを配分して、県がこれを指導して協議して、実際に末端の農家にいくということになるかと思うのですが、もし県と指定生産者団体との協議がうまくととのわなかった——そういうことはあまりないでしょうけれども、かりにそういう場合が出た場合には、どういう処理をされる所存であるか、承りたい。
  50. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 指定生乳生産者団体と県とは不可分の関係で行政が進められておるというふうなことを考えますと、お話のような点はおそらくないのではないかというふうに考えておりまして、また、県の行政といたしましても、そういうふうな点がないように十分指導するように、私たちも指導をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 倉成正

    倉成委員 ただいま局長の言われたとおりです。しかし、もし意見が異なるときということは、やはり一応制度をつくる以上においては考えておかなければいけない。その際にどうするかということをもう一度お伺いしたい。
  52. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 具体的には指定生乳生産者団体がメニューをきめるなり配分をいたしますときに、委員会的な組織をつくりまして、その中に指定生産者団体はもちろん、県あるいは学識経験者等を入れまして、十分話し合いを尽くしてやるというふうな形にいたしたいというふうに考えておりますので、おそらくそこで具体的な話はついていくというふうに考えておるわけでございます。
  53. 倉成正

    倉成委員 それでは答弁になっていないのですよ。もしととのわなかった場合ということをお尋ねしているわけです。
  54. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 そういうふうなことで、非常にむずかしい問題があります場合には、農林省が指導いたしたいというふうに考えます。
  55. 倉成正

    倉成委員 最後に局長が御答弁になったように、やはり農林省として非常に積極的に指導というか、協議というか、やっていただきたいということを申し上げておきます。  それから、この制度の適用を受けた場合、具体的に畜舎や乳牛の購入あるいは子牛の育成草地改良等、融資の条件というのが出てくるわけですけれども、では具体的にどういうメリットが出るか。三分五厘資金ができてくるわけでしょうけれども、農家の立場に立って、この輸入差益でどういう恩典を具体的な項目について受けるかということを、少し例示的にもしおわかりでしたらお示しを願いたい。
  56. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話の点は、おそらくどういうふうな事業が行なわれるか、それによって効果をあげるかどうかというふうなことだというふうに考えるわけでございます。その点につきましては、どういうものが実際上出てまいりますかということにつきましては、なおこれは現在の段階のところで的確に申し上げることはむずかしいと思うわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、まず融資の問題につきましては、これは各種の団体等の要望もございますし、大方の県におきましてこういう要望が出てまいるものだというふうに考えておるわけでございます。そのほかといたしましては、たとえば草地改良事業につきまして、小規模なもので、従来補助の対象になっておる規模以下のもの、こういうものが出てまいる。あるいは施設等において助成の対象にいたしておりません施設、たとえば衛生施設だとか、そういったものにつきましての要望もあろうかというふうに考えるわけでございます。その他いろいろなものが考えられるわけでございますけれども、その県その県によりまして具体的な事情はかなり違っておるだろうというふうに思いますので、県としましては、従来やりたくても助成制度がないためになかなかやれなかったというふうなものが、この際十分可能になりまして、効果を発揮するのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  57. 倉成正

    倉成委員 末端の農家の立場からしますと、この制度が具体的にどういう恩恵というか、メリットを持つかということを知りたいわけですね。そこで、草地改良採択基準を下回るという御説明が先ほどからありましたり、あるいは県がやりたくてもやれなかったいろいろな事業、もちろん、それについても補助のやり方について縛られるわけですから、たとえば草地改良についてはどの程度までこの補助対象として認めていくのか、また、ほかの項目についても例示的に、これについては近代化資金が三分五厘で借りられますというふうに、ひとつ御答弁をいただきたい。
  58. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 まず、融資対象について申し上げますと、現在近代化資金の対象になっておりますものは、畜舎だとか乳牛の購入、それから育成、そのほか機械等が対象になっておるわけでございます。そういったものにつきましては、今回系統資金を借り入れる場合におきましては、三年の三分五厘ということで借り入れができることになるわけでございます。それから、草地改良につきましては、現在団体営の草地改良で、下限面積は一地区十町歩、一団地一町歩ということになっております。これに対しまして、例外的な措置といたしまして、山村、離島等につきましては一地区五ヘクタール、一団地〇・五ヘクタールということになっておるわけでございますが、それ以下の基準でやりたいという要請もあるわけでございます。そういうところにつきましては、この際推進していいのではなかろうかというふうに考えております。ただ、むやみに小さいものを実施するということについては問題がございますので、私たちのほうで検討いたしておるわけでございますが、おおむね一地区二ヘクタール、一団地〇・二ヘクタールという程度のものは対象にしていいのではなかろうかというふうに実は検討いたしておるわけでございます。
  59. 倉成正

    倉成委員 ただいま局長からいろいろお答えになりましたような点をできるだけ具体的に、できるだけ例示的に、これを末端の農家に知らせることが必要であると思うわけです。ということは、実際の酪農家で意欲的に酪農推進しようという人で、いろんな手続等も知っている人もありますけれども、やろうと思うけれども、どうやったらいいかわからない、どういうふうにして金を借りたらいいかわからないという人たちもかなり多数あるわけでありまして、かりに農協に金を借りにいきましても、担保であるとか、あるいは手続が非常にうるさいとか、あるいは県の認定であるとか、そういうので、もうそんな長期間かかるのなら借りないほうがよろしいというふうな人があるのが今日の実情です。したがって、この制度をつくる以上においては、できるだけ手続を簡素化して、そうして実際にこの差益金が酪農振興に使われるようにすることが必要であると思うのですけれども、たとえば農協が非常に弱体であるとか、あるいは不幸にして農協がつぶれたとかという地域もあることでありますので、そういう場合に、一体具体的にそういう農家を救う方法はどういう方法があるか、お伺いしたいと思います。手続の簡素化もあわせて御答弁ください。
  60. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 今回の資金につきましては、特別な事情によってできたものでございますので、酪農振興のために弾力的に使いたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、助成につきましても、適化法等の適用もございますので、全く自由自在というわけにまいりませんので、法律の規定に従って処置をしなければならぬと思うわけでございますけれども、その実施につきましては、きわめて手続を簡素化いたしまして、できるだけ簡単に使用できるようなことにつきましては十分配慮をしてまいりたいと思うわけでございます。なお、この問題につきましては、十分な周知徹底を末端まではかるようにいたしまして、すべての酪農家にこの資金の意味を理解していただきまして、必要に応じてこの資金の借り入れなり助成が受け得られるようなことに努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  61. 倉成正

    倉成委員 ただいま私が指摘申し上げますのは、酪農振興のためにあります現在の融資の中で、三十八年に設けられました農林漁業金融公庫の資金による畜産経営拡大資金という制度は、非常にりっぱな制度でありますけれども、その実績は、御承知のとおり資金のワクが消化されていない。これの理由は、借りたいけれども、なかなか条件がややこしい、手続が繁雑であるのでできないということで、行政管理庁からも勧告を受けるという状態。一番大きな柱がこういう状態ですから、今度は新しい制度が設けられましても、絵にかいたもちになったら、これはたいへんなことになると思いますので、とにかく思い切った手続の簡素化、そして末端の農家が、実際酪農推進しようという人たちが金が借りられるように、これは格段の配慮を、どんなにことばを尽くしても言い尽くせないくらい、熱意を持って御推進いただきたいと思います。これは御要望として申し上げておきたい。  そこで、時間もだんだん過ぎてまいりましたので、畜産振興事業団が最近いろいろな意味において新聞紙上をにぎわしたりいたしておりますし、また、今度の制度運用していく場合におきましても、一応トンネルの形ではありますけれども、やはり大きな役割りを果たすと思うわけでありますから、畜産振興事業団の運営について、農林省としてはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  62. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 御承知のように、畜産振興事業団につきましては、牛乳乳製品につきまして学校給食、それから不足払い法に基づきます交付金の交付等の事業、それから輸入牛肉の事業、それから保証業務、さらに助成業務、なお豚肉の価格安定の事業というふうなことで、畜産関係全般にわたりまして、非常に広範な事業をやっておるわけでございます。現在は豚肉の買い入れ等もかなり長いこと続いております。いろいろな事業がふくそうしておって、非常な忙しい時期でございます。そこで、畜産振興事業団が畜産行政の中において占める位置というものは、きわめて重要なものがあるというふうに考えておるわけであります。したがいまして、この事業団の業務の適切な運営によりまして、畜産行政に影響するところも多いわけでございますので、われわれといたしましては、畜産振興事業団の仕事が円滑に行なわれますように期待をいたしておりますし、また、そういうふうな指導をいたしておるわけでございます。
  63. 倉成正

    倉成委員 畜産振興事業団が行なう乳製品の放出というのは、やはりよほど慎重にやらないと国内市場を混乱させるわけでありますが、この点についてはどうお考えになっておられますか。
  64. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 乳製品につきましては、輸入をいたしましたものを原則として公開によりまして市場に放出するというふうなことをいたしておるわけでございます。そこで、本来輸入いたしましたものを放出いたしますにつきましては、安定指標価格がありまして、安定指標価格国内乳製品の市価を安定させるということを旨として放出をすることになるわけでございます。昨年度は事業団が一手買い入れをするという最初の年でもございましたし、また年度の途中から需給が逼迫してまいりまして、それに対する輸入が必ずしも円滑でなかったという点もございまして、乳製品価格を安定指標水準に安定させるということはやや困難であったわけでございますけれども、昨年度の例にもかんがみまして、また一年間の経験も積みましたことではございますし、本年度におきましてはそのようなことがないように努力をいたすということにいたしております。私のほうもそのような考え方で指導をいたすつもりにいたしております。
  65. 倉成正

    倉成委員 ついでに伺っておきますが、豚肉と競合関係にある羊肉、馬肉の輸入というのはできるだけ抑制すべきであると思いますけれども、この点はどうでしょう。
  66. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 現在羊肉並びに馬肉については自由化をいたしておるわけでございます。国内の豚が非常に下がって事業団買い入れをいたしておるという実情でございますので、できるだけ馬肉だとか羊肉の輸入が少ないほうが望ましいというふうに考えておるわけでございまして、この点については、業界等につきまして指導をいたしておるわけでございますが、特に本年の六月からJASの規格を改正いたしまして、ハム、ソーセージ等につきましては、内容であります肉の名前を表示するというふうな制度にいたしたわけでございます。こういうふうなこともございまして、最近に至りまして羊肉、馬肉の輸入というものは次第に減少傾向になっておるわけでございまして、われわれといたしましても、過剰な輸入が行なわれないように、今後におきましても十分配慮してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  67. 倉成正

    倉成委員 以上、暫定措置法の一部改正にいって、私は若干の御質問を申し上げたわけですけれども、日本酪農需要の面においては爆発的に伸びる、食生活の変化に応じて大きな成長部門であるということは、これはもう明らかなことでありますけれども、これに生産が必ずしも伴わない。わが国の自然条件その他から考えて、いろいろな困難な条件がある。その中で酪農を進めていくわけでありますから、日本のようにまだ日の浅い酪農については、相当研究しなければならないいろいろな問題また政府施策に期待するところも大きいと思うのです。先ほどは触れませんでしたけれども、草資源についてのいろいろな研究の問題であるとか、暖地の酪農についての新しい行き方であるとか、いろいろな問題がまだ残されておると思うのでありますけれども、ひとつ農林省においては、この問題については従来の既成概念にとらわれることなく、自信を持って、勇気を持って取り組んでいただきたいということを御要望申し上げたいと思います。  不足払いの財源についての農林大臣への質問を留保して、私の質問を一応終わります。
  68. 高見三郎

    ○高見委員長代理 芳賀貢君より資料要求に関する発言を求められておりますので、これを許します。芳賀貢君。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 法案の審議の必要上、次の資料を要求いたします。  第一は、昭和四十二年度畜産振興事業団の予算、事業計画、資金計画、これは法第五十条の規定に基づくものであります。  第二は、四十一年度、四十二年度の加工原料乳並びに飲用原料乳の契約価格の実態、これは都道府県別にお願いいたします。  第三は、畜産物価格安定法の施行規則第六条の二の省令案について速急に提出を願いたいと思います。  とりあえず以上を委員長からお取り計らい願います。
  70. 高見三郎

    ○高見委員長代理 畜産局長に申し上げますが、いいですか。
  71. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 いまの資料でございますけれども、実は四十二年の事業団の予算と事業計画というのは、最終的にまだ決定をしておらぬわけでございます。  それから、飲用乳の四十一年と四十二年度の各県の契約の状況でございますけれども、これは四十一年ははっきりいたしておりますけれども、四十二年につきましてはまだ交渉中のところがございまして、きまっていないというところがかなりあるわけでございます。全体としましてちょっと申し上げにくいのではなかろうかというふうに思っております。  それから、省令案につきましては、まだ準備をいたしておりませんので、考え方等につきましては申し上げたいと思いますけれども、案そのものとしてはまだ用意をしておらないわけであります。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 第一の資料の事業団の予算並びに事業計画、資金計画、これは主務大臣の承認が必要になるわけですからして、事業団からも所定の手続で出ているわけですね。まだ承認しないから出せないというわけですか。それはちょっと解せないですね。とにかくこれを要求します。  それから二の加工原料乳、飲用原料乳の契約価格については、四十一年度はこれはもう全部わかるわけですから、四十二年度分については、道府県別にすでに契約されたもの、あるいは経過的なものとか、なるたけ正確な判断のできる資料にして出してもらいたい。  三は、準備が整っていないとすれば、それに近い考え方等についてでもやむを得ないと思います。しかし、こういうものが出なければ法案の審議は進まないわけです。それは局長も御承知のことと思います。
  73. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 暫定予算等の関係もございまして、ことしは若干おくれておるわけで、現在検討しておる段階でございまして、まだ最終的に認可するというところまでまいってないわけでございます。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかく資料として案でもいいです。何もないというわけでは……。
  75. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 一応検討します。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 何も検討していなければ、事業団から出したなまのものでもしようがないですから、参考資料として……。
  77. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 それでは検討いたしまして、しかるべきものを御提出いたします。
  78. 高見三郎

    ○高見委員長代理 午後一時二十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ————◇—————    午後一時三十三分開議
  79. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は昭和四十二年産麦の政府買い入れ価格及び麦の標準売り渡し価格について質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々栄三郎君。
  80. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、三百五十万の麦作農家の代表として、明日麦価が決定をされるというきょう、大臣に質疑をいたすわけでありますが、あす麦価がきめられるというようなときに、国会の農林水産委員会に大臣がわずか一時間くらいしかおられないと言われるのは、私はまことに遺憾千万に思うわけであります。なるほど米価審議会が開催されておるということはわかりますが、一時間という時間は、それにしてもあまりに少な過ぎると思います。私もできるだけ時間をかけないように要点だけをお尋ねをいたしますから、ひとつ大臣もそうそわそわせられぬように、十分各党の意見をお聞き取りをいただきたいと思うのでございます。  そこで、これは昨日大臣から御答弁があったようにも思うのでありますが、聞き漏らしましたので、もう一度お伺いをしたいと思います。麦対策は、むしろコストを引き下げるということが大切だというような御意見、これは大臣であったか他の方であったか存じませんが、そういうことをお伺いしたように思います。私も、これはまことに一理のある考え方だと存じておるものでございます。そこで、現在、農林省が進めておりますいわゆる機械化対策、それについて詳しいことをお聞きしておると時間がかかりますので、大体どのくらいの金を四十二年度予算で組もうとしておるかということを聞きたいと思います。
  81. 森本修

    ○森本政府委員 麦だけの生産対策といたしましては、御指摘がございましたように、主として機械化が中心でございますが、それは約二億五千万円ということになっておるわけです。あと麦並びに米ということで、いわゆる穀作を通じましたものは、高度集団栽培あるいはその他各種の種子対策等共通のものがございますが、全体をひっくるめた予算はいま調べますから……。
  82. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私が調べたところを申し上げますと、麦生産対策費として二億五千百万円、その他高度集団栽培事業補助金、生産流通合理化モデルプラント設置費補助金、あとの二つは米が主で、裏作の麦も恩恵を受けるというわけですが、それを合計いたしましても六億四千万円余です。そこで、今日小さなビル一つ建てましても、五億や六億の金はかかるわけです。大臣も御承知の社会党の社会文化会館、この近くにありますが、まことに貧弱な建物でございます。あれにしても四億から五億の金がかかっております。麦の生産の機械化という問題について、小さなビル一つ建てるくらいのお金を出して、機械化をやるんだ、こう言われるのですが、一体これは何百年計画で立案をしておられるのか、それを私はちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  83. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、麦につきましては、できるだけ麦の生産を確保するという趣旨で、昨年の予算でお話のように予備費で二億五千万円、四十二年度はいまお話のありましたように本予算で二億五千万円、けれども、麦全体のことにつきましては、食管で二百三十億円ほど支出をいたしまして、麦の保護のために、また麦の増産を継続することのできるために、あれだけの負担を国としていたしておるわけでありますが、私ども麦のことを考えますときに、いまのままで増産ということにつきましては、これは率直に考えましてなかなかむずかしいと思います。しかし、麦がある程度自給度を維持してまいる必要のために、ことしは管理政策の新しいものを出しまして、いわゆる契約栽培という方向をとって、そして需要供給の関係を安定させようということに乗り出したわけであります。それと同時に、私どもは、先ほど農政局長がお答えいたしましたような趣旨のもとに、さらに継続して麦の増産対策をやってまいりたい、このように考えておるわけであります。
  84. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ただいまの私の質問に対して、質問しなかったことまでお答えになりましたが、与えられた時間が非常に少ないので、どうか質問したことだけをお答えをしていただくようにお願いします。  機械化対策について非常に政府の予算が少ない。ビル一つ建てるくらいしか金を出しておらない。これでは麦作の生産力を上げてコストを引き下げるということはとうてい不可能だ、こう考えておるわけです。結局のところ、麦の価格を上げないためにそういうような言いわけをやっておるようにしか私には考えられないわけでございます。私は、こういうような機械化であるとかあるいは土地基盤整備について今日政府がやっておるやり方は、まことに手ぬるいと思っております。いつも政府は、外国の食糧に対して日本の米、麦の相場が非常に割り高であるということをよく言われるのでありますが、これはよくひとつお考えをいただきたいと思います。日本の食糧が外国に対して割り高であるというその根本的な原因がどこにあるかというならば、日本の農業が非常に非近代的であるというところにある。日本の農業がなぜこういうふうにおくれたかということをさらに掘り下げて考えてみました場合に、私たちが思い当たるのは、日本の農民、日本の農業というものは、今日まで搾取され続けてきた。すなわち、明治時代以降の小作料あるいはそれ以前の年貢、戦中戦後の強権供出、こういうような搾取によって、資本の蓄積が全くできなかった。そのために農業の近代化ができなかったわけであります。これが今日日本の農業と外国の農業とを比較いたしました場合に、日本の農産物の価格が非常に高いという基本的な原因です。したがって、それは農民の責任ではなくて、政治の責任であります。そういたしますならば、農業の近代化に対して政府はもっともっと財政的な投資を行なわなければならない責任が当然あると思うのです。政府がよく言い、また一般の人もよく言う、外国から入れたら安いじゃないか、こういう言い方というものは、日本の農業が今日まで政治の犠牲になってきたことを忘れ去った議論なのです。私はそうしたものの言い方に非常に不満を持っておるものでございます。そういう点から申しまして、いま申し上げたように、何百年計画かもわからぬような土地基盤整備あるいは機械化というようなことについて、そんな手ぬるいやり方でなしに、もっと思い切った財政投資をして、生産力が増強するような方途を講じるべきだと思うのです。同時に、私は、こういうような方法、こういうような政策を一方でとるとともに、これは一朝一夕に実現することでありませんから、これに合わせまして、同時に、麦作農家がやっていけるところの麦価の実現というものを一方においてやっていく必要があると思うわけです。大体大臣は、麦をつくって農民がどれだけの赤字を出しておるかということについて、どれだけの認識を持っておるか、ひとつ大臣の御意見、御見解をお聞きしたいと思います。
  85. 小暮光美

    ○小暮説明員 昨年御決定をいただきました麦価との関連で、生産費調査と引き合わせてみますと、小麦の場合で申し上げまして、二十俵以上販売農家につきましては、おおむねパリティ麦価で生産費調査の示しますものはカバーいたしております。
  86. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 平均生産費と、ことしの買い入れ価格を比較しました場合に、どれだけ赤字が生じておるか、どれだけのカバー率になるかということを聞きたいと思います。
  87. 小暮光美

    ○小暮説明員 本年の麦価につきましては、まだただいま御審議をいただいておるところでございますが、昨年の麦価に比較いたしまして、これからの御審議の経過にもよりますけれども、四%台の引き上げをお願いすることになるのじゃないかというふうに考えております。生産費はまだ昨年の生産費調査しかございません。先ほど申しましたことと大筋においてはそう変わらないのじゃないかと思います。
  88. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私から申します。四十一年度は小麦が六百三十三円の赤字であります。大麦が五百十七円の赤字でございます。裸麦が一千六百十三円の赤字でございます。ほかに三十九年、四十年の資料もありますが、カバー率は北関東で小麦で九〇・九%、北九州で九六・三%、大麦はもっとカバー率がありません。それからあわせて申しますが、一日当たりの労働賃金は、小麦が田で二百四十二円、畑が六百四十九円、大麦が四百十九円、裸麦が百八十四円、これは失対労働者の賃金にもならぬような低賃金でございます。農民が麦作というものに熱意を起こさない、耕作放棄をするというのは、これはきわめて当然だと思います。したがって、私は、先ほど申し上げたとおり、一方においては農業の近代化を進める政策を講ずるとともに、せめて生産費を償うだけの価格は補償しなくちゃならぬ、こう思うわけなんですが、大臣の御見解を聞きたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、ただいま麦は法律によりまして、パリティを割らない、それより以上で決定しなければならぬ、こういうわけであります。そこで、パリティのことだけに、その線をだけ守っておるということになりますと、なかなかむずかしい問題もございましょうけれども、私どもといたしましては、やはり御承知のように、米と違いまして間接統制でありますから、そこで、政府は無制限に買い上げるということによって、麦の生産者生産は全部買い上げてしまうわけでありますが、それを今度は需要家に流します場合に、先ほど来お話のありましたようないろいろな影響によって、たとえば外麦の圧迫等によっても製品等において影響を受けるでありましょう。そういうことを考慮して、その間に立って麦作というものを維持増大いたしていくにはどうしたらいいかということが、われわれの一番の悩みであり、またやらなければならぬ大事な問題であると思います。そこで、私は、先ほど何年かかるかわからぬというお話でありましたが、やはり生産費をできるだけ調整してまいるためには、盤の整備をやるとか、あるいは規模拡大をやるとかいうふうなことをして、麦が普通の需要供給の関係において妥当な価格で流通ができるように仕向けてやる必要がある。そのためには、先ほど来いろいろお話がありました財投のことも必要でございましょうし、それから省力のために機械化をやる、それに対する助成もする必要がございましょう。そういうようなことで、ひとつぜひ麦の生産を維持してまいりたい、こう思っておるわけであります。
  90. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そういうお答えは、私の質問したことに答えられておらないわけです。私は、生産費をカバーしないこの麦の価格について、一体どう思うかということをお聞きしたわけです。それからあわせまして、いまのお答えの中には、依然として機械化とかなんとか言っておられますが、それは先ほど私が言ったとおり、何百年もかかる予定でなくちゃいまのようなやり方じゃできない、そういうやり方をしておる、こう私は言いたいのであります。しかし、この問題についていつまでもやっておると時間がありませんので、次の問題をお尋ねします。  それは今度の指数の問題でございます。今度の新指数によりますと、三・一三%しか上がらない。それで、前年度が七%ございましたか、この中間をとって——中間か何か知りませんが、とにかく修正をして、四・五二%、こういうような諮問案になっておるようでございます。そこで、私がお伺いしたいのは、四・五二%と三・一三%との差が一・三九%でありますが、この一・三九%というものが一体いかなる性質のものであるか、あるいはこれは食管法第四条の二にいうところの生産事情を考慮したものであるか、再生産の確保を考えたものであるか、そういう考慮に基づくものであるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  91. 小暮光美

    ○小暮説明員 本年特にパリティ指数について調整係数といったような考え方を米価審議会におはかりしておりますので、非常におわかりにくいと思いますが、いま御指摘のような形で、食管法四条の二に「生産事情其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」という規定がございますけれども、そういった政策的な配慮からの参酌をすると申し上げるよりは、むしろパリティ指数のウエートの改正をいたしますにあたりまして、昭和三十年代の後半五年、三十五年から四十年の五ヵ年についてのウエートの改正でございます。御承知のように、非常に経済事情の変動の激しかった時期にちょうど期間があっておりますので、ウエートの改定をいたしますと、かなりの指数上昇率の差が出てまいるわけでございます。したがいまして、その指数の改定にあたって、新指数に移行します際、ちょうど生産者の方からお考えになると、過去一年間にどれだけパリティ指数にかかわる諸式の値上がりがあったかという実感がおありだと思うのです。その実感は、新たに算定いたしました新しい指数での昨年の五月からことしの五月にかけての上がりが実感である。これが実は四・五二%でございます。そこで、昨年麦価の決定をお願いいたしましたときの、当時使いましたパリティ指数と、今度新たな算式で求めましたパリティ指数と直に比較しますと、昨年のが修正が行なわれておらないわけでございますから、昭和三十五年時代のウエートに基づくものでございますから、指数理論上はやや高目に指数が出ておったということでございまして、そのやや高目に出ておったものと本年のものとを直に比較しますと、三・一%になる。そこで、過去一年間の値上がり率を四・五二というものを使いまして、昨年の五月の指数をことしに伸ばすということをいたすために、全くの指数取り扱い上の配慮というふうに御了解をいただきたいと思います。
  92. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 要するに、純粋な結果として出た数字では現状に合わないから、まあそこでいじってみたということだろうと私は思うのです。そういうように解釈するよりほかにしかたがないと私は思います。そこで、私が申し上げたいのは、このパリティ指数というものは、必ずしも絶対的に合理的なものであるとは考えられない。それは早い話が、二十五年、二十六年の基準麦価というものが絶対的に正しいかというと、これは問題でしょうし、その後の品目なりあるいはウエートの取り方なんかも、これは検討すれば幾らでも検討できるし、一つ間違えばまた結果がうんと間違ってくるというものであります。いつまでもこのパリティ指数にこだわって、これを中心にして修正をやるというようなとらわれた考え方というものは、一面これは最低価格をここで保障するというのでありますから、その点で意味がありますが、やはりいま言われたように、純粋の指数でなく、他のものを加味したということ自体を考えてみましても、これ一本では私はいけないと思うのです。そこで、私は、この第四条の中にあるところの「麦ノ生産事情其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ麦ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシ」というこのことばで、そういう不完全な指数というものを合理的にしていく、補完していく、修正していくということが私は必要だろうと思うのです。そういう点から、戦後今日までこのパリティ指数による価格に対してやってまいりましたことを考えてみますと、食糧の不足しておりましたときには、これは御記憶のとおり追加払いが行なわれました。それからまた、生産奨励のために特別加算や減収加算なんかも行なわれた時代がございます。こういうことを考えてみますると、やはり数字で出た結果について、いまあなたは生産事情を考慮したというようなものではない、そう言われたが、私は考慮すべきであると思うのです。生産事情を考慮し、今後十分生産が上がっていくようなそういう数字に——このパリティ価格制度というものを維持する限りは、そういうようなことによって、初めてこの死んだ数字というものが生きた数字に、生きたものになってくる、こういうように私は考えておるわけです。ところが、なかなかそういう考え方をせられぬように思われます。  そこで、お尋ねをしたいのですが、政府は、ただいま私が申し上げた生産事情を考慮する、経済事情を考慮する、再生産の確保をはかるというたてまえから、いま出しておられる数字をさらに修正する意思があるかないかということを大臣にお伺いしたいと思います。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 麦の政府買い入れ価格は、麦の再生産を確保することを旨として定めること、御指摘のとおりでございます。これは政府買い入れ価格によって、麦の生産のために投下されました費用が回収される、同時にまた、さらに麦をつくろうとする場合はその生産に支障を来たさないであろうと認められる額を念頭に置いて、政府買い入れ価格が定められるべきであるということを申しておるわけでございまして、本年諮問をいたしております指数及び価格につきましては、いまこれを政府は変えようという意思は持っておりません。
  94. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 時間がまいりましたので、今日の質問はこれで終わります。
  95. 本名武

    本名委員長 神田大作君。
  96. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は非常に時間がないそうでありますから、私のほうから端的に御質問申し上げますので、大臣のほうからもひとつ簡明にお答え願いたいと思います。  まず第一に、いま麦価が米価審議会において諮問されてきまろうとする非常に大事な時期でございますので、私は、まず大臣に、今日日本の麦が非常に減産をいたしまして、外国からたくさんの麦が輸入されておる、膨大な外貨を使っておる、このような現状に対して、日本の麦作農業に対しましていかなる考えを持っておるか、お尋ね申し上げます。
  97. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 麦の作付の減少が、基本的には、経営の面において麦作の地位が御承知のように従属的である、したがって、その経営はきわめて零細的であるということ等でございますが、これにはどうしても私どもとしては規模を広げてコストを下げることに力を入れなければならないと思います。が、麦のつくり方は神田さんもよく御存じのように、日本では大体間、間に他の作物を植えておる畑が多いわけでありますから、ああいうところで機械化いたしてまいるということは非常に困難であります。したがって、われわれは表、裏作を通じて機械化を促進いたしたいと思いますが、やはり麦についてはなかなか困難な問題もあります。そこで、私ども、やはり基盤整備、構造改善等によって麦の生産を集約的にして能率をあげるということが必要ではないか、そういうことで、先ほどもちょっとお話もございましたように、昨年の予算、また今年の予算等において、そういう対策費を投下することにいたしておりますが、根本的には、やはり価格をある程度維持するために需要供給の関係を安定させるという方式が必要ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  98. 神田大作

    ○神田(大)委員 日本の麦の生産状況がいまのようなままでよいということではないように聞こえるのでありますが、しかしながら、現実においては、いまのような麦価、あるいはまたいまのような政府の麦対策では、ますます麦作というものは減少いたしまして、日本における輸入量というものは非常にふえてくる。現在において四百万トンというような膨大な麦が輸入されております。金額にいたしますと二千億をこえるのでありましょう。このような膨大な輸入をいつまで日本外国にたよっておるのか。自給体制を確立して、何とかこれらの日本の麦作農業と農家を守る施策をやる気があるのかないのか。農林大臣はいろいろ施策をしておると言うけれども、予算を見ましても、わずか二億円程度の麦作改善の施策をしておるようでありますけれども、こういうことではとうてい非常に重大な危機に立っておる日本の麦作の振興をはかれないと思うのであります。その点について、もっと確たる政府考え、麦作農業振興に対する政府考えをはっきりと示してもらいたい。これが一番の基本であろうと思う。麦作を守って増産する気があるのか、それとも、もうどうにもならぬから外国から輸入する、これ一本で行くのか、その点をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  99. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 二億五千万円がたびたび出てまいりますけれども、二億五千万は、先ほども申し上げましたように、それぞれの施策をいたします予算でございますが、佐々さんにもお答えいたしましたように、政府は、米麦ともに大事な主食であって、ぜひこの自給度を高めたいという原則的な考え方でございますので、食管会計においても麦のために二百三十億も出しているわけであります。しかし、ここでいいかげんなことを申しておってもいけませんが、大体麦の増産ということを考えたときに非常に困難が伴ってくるということは、神田さんもよく御存じだと思います。そこで、私どもといたしましては、需要の最も多いような麦をぜひひとつ確保しなければならぬ。ことに日本人の欲しております特殊な主食の中に大事な部分を占めておる内麦でございますからして、これを保護して助成いたしてまいるためにどうしたらいいかということが一つ。それはまあ、契約栽培等によって需要供給の関係を安定させようという考えを持っておることは、政府は米審にも御相談しておるわけでありますが、もう一つは、やはり先ほどお話しの能率をあげてまいりますためには、機械化その他基盤整備等に力を入れなければならない。そういうことで、私どもは、麦はどうなってもいいんだ、全部外麦にたよれというようなことは考えておりませんし、農業全体として考えてみますと、私は、麦でどうしても休閑地をつくられるようなところにおいては、麦をおつくりにならないで遊ばしておくならば、むしろ、やはり同じような目的である畜産等の方面に力を入れていただくために、飼料作物に転換していただくということも一つの方法でありましょう。そういうようにして休閑地をできるだけ遊ばせないように努力をいたすと同時に、農業全体の所得をふやしてまいることを考える。同時に並行して、やはりあとう限り麦の生産確保に力を入れてまいる。そういうことでさらにその政策を続けてまいりたいと思っております。
  100. 神田大作

    ○神田(大)委員 農林大臣から、麦作を守るのだ、輸入にはたよる気はないのだ、そういう言明を受けて、われわれも一応その方針を了承するのでありますが、しからば、この麦作を増産するためにはいかなる施策をしてこれを増産するかということになりますと、毎年毎年米価審議会等においても麦作改善の上申書を受けておる、あるいはまた各方面から麦作改善の方法を要望されておりますが、予算の面においても、あるいはまた施策の面においても、効果があがってない。口先だけで、実際に思い切った施策を施しておらない。そのために、年々麦作は、輸入を押えるというようなことと逆に、だんだん減っておる。  この現実を打開するためには、少しぐらいの予算や少しぐらいの施策では、これはどうにもならぬと私は考えるのです。今日、外麦に対抗するだけの日本の麦の生産性を高めるためには、基盤整備等につきましても、たとえば北海道とかあるいはその他の相当広範な地域があるのでありますから、それらに対しまして、大型機械化をして、そしてカナダ、アメリカに匹敵するような合理的な麦作経営に乗り出す。そのための方法としては、共同経営をやるとか、あるいはまた大農機具センターを設置するとか、金と知恵とをしぼれば、私は、いつまでも外国の麦に依存しなければならないというような体制を転換できると思う。  いま一つは、飼料作物に転換していく。たくさん輸入しておるところの飼料作物を日本自給できる体制に対して、何ら努力のあとが私は見られないと思うのでありますが、これらに対して日本自給体制強化するというならば、もっと実際的に仕事をやるべきだと私は思うのでありますが、農林大臣は、いままでそういう仕事をやっていると思っているのですか、それとも今後やるつもりであるのか、どうでございますか。
  101. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど佐々さんのお話の中にございました、いまあなたのお話にもございましたが、作付が年々減ってきておる。しかし、よく考えてみますと、日本では土地生産性は決して劣っていないわけですね。労働生産性のほうが著しく落ちている。こういうことを見ますと、私は、やはり設備が非常におくれておる、前近代的であるといったようなことも言えるのではないかと思います。したがって、いまお話しのように、やはりできるだけ早く基盤の造成、それからまた機械化、そういうことによって生産性を上げるということにうんと力を入れなければならぬと思っております。なるほど十分とは申しませんけれども、四十一年度予算も四十二年度予算も、いま私が申し上げましたような方向に大いに農林省が力を入れていることは、数字の上でも明らかでございますが、今後も、皆さんの御協力を得てさらに大いにそういう面で施策を進めてまいりたいと思いますから、どうぞ来年度予算では大いに御援助をお願いいたします。
  102. 神田大作

    ○神田(大)委員 どうも大臣のそういう構想、予算の面においても、あるいはまた施策の面においても、大臣答弁とは非常にかけ離れておる。まことにこれは残念なことでありますから、大臣がそういう考えであるならば、ひとつ思い切った施策をとって、そして外麦の輸入をできるだけ押えていくという方向をとってもらいたい。  次に、私は、麦の生産振興させるために非常に大事なウエートを持つところの麦価でございますが、ただいま政府が米価審議会に諮問しておるのを見ますと、非常にわずかな百三十何円か小麦の場合で上がっておる。パリティ指数で四・七五とかいうようなことでありますが、こういうようなわずかな金額を上げたところで、生産農家からしますとスズメの涙ということで、生産意欲を高揚するわけには絶対いかないのであります。食糧管理法によってパリティ指数を採用し、それを最低限として経済的情勢に応じて麦価をきめるということになっておりますが、先ほど佐々君も言われたとおり、大体六百円から七百円の赤字を来たしておる。しかも、今日労働賃金が上昇しておりまして、農家におきましても労働者に農業のための労賃を払うというのは容易なことではない。一日千円から千五百円というように、麦を刈るためにも人を雇わなければならぬので、賃金のウエートが非常に上がっておるときに、単なるパリティ指数によってこれをきめるということ自体が矛盾を来たしておるのではなかろうかと私は考える。こういうことではとうてい麦作を振興するわけにはいかぬ、価格の面においてもいかぬと思うのですが、こういう点について農林大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  103. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 パリティ指数を下回らない程度に麦価をきめなければならぬ、それはいまお話しのとおりであります。そこで、ウエートのとり方につきましては、先ほど政府委員からお答えいたしましたように、過去五年間のものでは現状に合わない面がたくさんあるということで、ここで新しく四十年を取り上げたわけであります。そこで、このウエートの修正をいたしました計算でただいま米価審議会におはかりいたしておるわけでありますが、そういう面で、私どもといたしましては、いま米審の御意見を承りながら、その趣旨に沿うて麦価を決定してまいりたいと思っております。
  104. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、ことしは四十年度の新しいパリティ指数によりまして、このような算定方式で麦価をきめることはやむを得ないと考えておられるようでありますが、これでは今日の農民の要求する麦価と約八百円から千円の開きを来たしておる。また、生産費からいっても、六百円から八百円、農民はこの価格では赤字になってくる。だから、いかに日本の麦の増産を願っても、実際においてはますます農民は麦をつくらぬということになってくる。大臣の考えと逆行することになるのですが、このパリティ指数はパリティ指数として計算してこの価格を出すが、そのほかに、農民が、やむを得ないだろう、われわれもひとつ麦作の振興努力しようというような考えを持ってやっていけるような何らかの方策は考えておらないか。
  105. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 価格価格でございますが、麦の生産を維持、拡大してまいるということについての方策はやらなければいけないと思います。したがって、政府は、先ほど申し上げましたように、麦対策について全力をあげて対処いたそう、こういうことを考えておるわけであります。
  106. 神田大作

    ○神田(大)委員 しかし、大臣はそう言っても、実際問題としては、予算の面におきましてもあるいは施策の面におきましても、何ら見るべきものはないのであるから、これは増産にならぬ。たとえば麦一反歩当たりに対しまして耕作奨励金を支給するとか、何らか麦作農家を保護する立場に立ってこれを行なわないと、いつまでたっても日本の麦作の振興ははかれないと思うのですが、そういうことについてはお考えはありませんか。
  107. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 麦の生産を維持、拡大いたしてまいるために、私どもとしては、積極的にいろいろなことを考えなければならぬと思っておりますが、そういう点については慎重に検討してまいりたいと思います。私どもは、ただいま米審にも御相談いたしておりますようなああいう取り扱い、つまり、地方の農協を通じて、麦をつくっておられる方々との間に契約栽培ということが始まるといたしますならば、その面においては需要供給の関係は安定するわけでありますから、今度の施策というものでかなり麦は安心してつくられることになるのではないか。事実上やってみないとその成果はよくわかりませんけれども、そういうことについて大きな手助けになる施策であろうと考えております。
  108. 神田大作

    ○神田(大)委員 それは今度製粉業者との関係において契約栽培をして、それに対して六十キロ当たり四十円の奨励金を製粉会社から出させるというような話だろうと思うのですが、これについては私はいろいろ問題があると思うのです。これは一つの方法として考え出したので、その考え出したことに対しまし七はわれわれは敬意を表するのでありますけれども、わずか一俵四十円ぐらいの製粉業者からの奨励金というもので、いわば業者の好む道へ農家を引っぱっていくというような意図も見られるわけでありまして、これは非常に問題のある施策である。しかし、やらないよりもいいのじゃないかというような考えがわれわれにもあるものですから、これについては大臣に質問してもしようがないので、あとで事務当局に御質問申し上げたいと思っております。ただ、そうでなしに、政府自体が、麦作奨励として共同作業とか、あるいはまた農協等を通じて麦作農家を反当たり何百円とか一俵当たり何百円というような奨励措置をとって守っていかないと、現段階においては麦を増産する道は見出せないと私は思うのです。そのくらいの国家的な資金を出しても、日本の麦作農業を守る上においてはやむを得ないのじゃないかとわれわれは考えておるのですが、そういう政府自身の奨励措置考えておらないのですか。
  109. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府が麦作農家に対して直接補助金を出すということは考えておりませんが、その営農の上において生産を上げ、経営ができるだけやりやすくなるような施策は進めていかなければならないと思っております。
  110. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういう直接の奨励措置はできないというならば、せめて私は、本年度の麦は三十五年のきちんとしたパリティ指数によってこれを算出いたしまして、幾らかでも麦価を農家に有利にしてあげるというような考えを持つべきであろうと思うのであります。今度は四十年度を基準に改定して計算をしたようでありますが、このように日本の麦作が非常な危機に立っておるときに、なぜわざわざ低い価格になる四十年度の基準に直したのか、お尋ねをいたします。
  111. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ことしこれを修正いたしませんとなると、かりに一年延びるといたしますと、来年になればよけい実情に合わない点が広がってまいりますから、来年改定するということになれば、落ち幅はさらにがたんと大きくなるので、やはり実情に合うようになるべく修正してまいることが妥当ではないか、こういうことでございます。
  112. 神田大作

    ○神田(大)委員 事務当局の考えはそういうことでしょう。しかしながら、政治的には、もっと麦作を守るという立場に立てば、そういうことは私は理屈にならぬと思うのです。パリティ指数の物品のとり方等においても、私ら詳しい資料はないのでありますが、これは食糧庁のほうでどういう物品のパリティ指数によってやったか、三十五年度の百二十品目というのはどういうものであるか、四十年度のやつはどういうものであるかを詳しく、ひとつ資料として御提出願いたいと思うのですが、このとり方等においても非常に差異が出てくると思うのです。私が先ほど言ったように、現在においては農家労働力というものが生産費の中で非常に大きなウエートを占めておりますから、これらの考えを順守するならば、わずか百三十五円や六円の上昇ということではないと私は思うのであります。このパリティ指数における品目のとり方によって相当の開きが出てくるのでありますから、これらについては、時間がありませんからここでの議論はあと回しにしますが、そういうことを考えてみますと、大臣は政治的な考慮の上に立って、できるだけ麦価を上げるという観点に立ってやれば、何もわざわざ今年度になって三十五年の基準を四十年に直す必要はない。これらのパリティ方式のことにつきましても、われわれは、大体麦の価格をパリティ指数だけできめておるということに疑問を持っておるものでありますからして、それらのことだけで三十五年から四十年にきめたということでは納得がいかないと思うのでありますが、再度お答えを願いたいと思います。
  113. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私がさっき申し上げましたように、いろいろ検討して考えてみましたけれども、実情に合わないものをいつまでも置くと、さらにその実情の合わないのが翌年に尾を引いて、よけい実情に合わなくなりますので、今回改定するほうがいい、こう思いまして、その趣旨で米審にお問い合わせをいたしているようなわけであります。
  114. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、なぜ三十五年のパリティ指数を五年間も改定しないで、五年たってから改定するようなことをするのですか。これは、そうすれば毎年毎年改定すべきだと私は考える。五年間ほうっておいたのでありますから、これは大臣の言うように、ますますひずみができるから直さなければならぬと言いますけれども、五年でも六年でもたいした違いはない。それよりも、五年間もそのままにしておいて、そして非常に麦価が問題になっていることしになって、わざわざ安くなるところで変えるということは、生産者として納得できないのでありますからして、ぜひこの点は前の三十五年度の基準によって算定していただくよう、これはわれわれの最低の要望であります。これは大臣に答弁してもらってもいま大臣の言うとおりであろうから、私は答弁を求めませんが、あす米審が答申になられるのでありますが、米価審議会等におきましても十分論議の上、この点は、もとの三十五年度におけるパリティ指数によって決定するように御努力を願いたいということを強く要望します。  次に、現在のような麦価のきめ方あるいは米価のきめ方が、今年度は国会議員を入れてやっているようでありますけれども、一体、このような米価審議会のあり方で米価や麦価をきめるということに対して、われわれは疑問を持つのです。たとえば審議会のようなものは、米価審議会はともかくといたしましても、ほかの国会議員の入っていない審議会というものばいわば御用機関になって、政府の隠れみのになるおそれが十分あるのであります。こういう大事な米価、麦価をきめるにあたって、いまの審議会方式でいいのかどうか、その点をお尋ね申し上げます。
  115. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 審議会につきましては、私は私なりに個人的に意見もございますけれども、ただいま農林省がお願いをして米価審議会が開催のまっ最中に、審議会のことについてとかくの論評をいたすことは御遠慮申し上げたい。とにかく朝から晩まで非常に御熱心に討議していただいて、心から感謝いたしておる次第でございます。
  116. 神田大作

    ○神田(大)委員 この大事な米価審議会に対してはやはり国会議員を入れてやることが、国民の総意並びに国会の意思というものが伝わることでありまして、非常にけっこうなことだとわれわれは考えておるのですが、大臣は、国会議員を審議会に入れるということに対して今後どうお考えになっておりますか。
  117. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、考え方がまことに簡単なんでありまして、政府の諮問機関であります臨時行政調査会というのがありまして、そこが答申を出しました。それを受けて、行政管理庁は内閣総理大臣に向かってこれを尊重してもらいたいということを強く言っているわけであります。その中に、行政府審議会などには国会議員をわずらわすべきではない、国会議員は国権の最高機関たる国会の構成員であるから、行政府などの小さなことにわずらわすべきではない、こういう趣旨を書いております。それともう一つは、公団、事業団等の整理をせよ、こういう二つでありまして、その二つのことについて内閣総理大臣から各閣僚に厳命がありまして、この臨調の精神は着実に実行せよ、こういうわけでございまして、それを受けてまことに忠実にやっているだけのことであります。
  118. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういうことばかり忠実に守って、ほかのことは適当に尊重するというようなことは、われわれはどうも納得できないのでありますが、これはあとの機会にまたよく議論することにしましょう。  大臣に重ねて強く要望することは、麦の生産対策を口先だけじゃなしに実際に行なって、予算面においても施策面においても行なって、そして外国に負けないような麦作の日本農業にしてもらいたい。それから価格の面において、それをアップするために、援護するためには価格対策が一番大事でございますから、この価格対策をいつまでもパリティ指数などということではなしに、農民の再生産を守り得るような価格にしてもらいたい。この点をひとつよくお考えになってこの麦価を決定してもらいたいということを強く要望しまして、私の質問を終わります。
  119. 本名武

    本名委員長 斎藤実君。
  120. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 農林大臣にお尋ねをいたします。  いま各委員に、麦の自給度を高めることはなかなか困難であるという農林大臣のたびたびの答弁がございました。いろいろ困難な事情もあると思いますし、いろいろな原因もあると思いますが、その困難な事情をやはり把握してからでなければ将来の具体的な計画というものが生まれてこないのではないか、このように考えるわけです。大臣の答弁では、なかなか困難だという再三の答弁がございましたけれども、困難な原因を端的にひとつ大臣からお伺いしたいと思うのです。
  121. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大体畑作、ことに裏作を放置される傾向というのは、あなたも御存じのように、わりあいに引き合わない麦などをつくっているよりは、ほかの産業に出て賃金をとるほうが、農家全体の所得としてはそろばんに合うという考えを持つ者がたいへん出てきていることはいなめない事実であると思います。そこで、政府が一生懸命でいろいろ援助をする施策をいたしましても、やはり外麦は三万円そこそこ、内麦は五万円というふうな状態で、こういうところでさらにこれを現状のままで生産拡大してまいるということについては、率直に申して、たいへん困難だと私は思います。おそらくいろいろな方の御意向を伺ってみてもそうですか、これは現状程度のものというのは、これはなくてならないものでありますから、これはひとつ何とか確保してまいらなければならぬ。同時にまた、農政全体としては、もしそろばん的に引き合わない、あるいは手間がないということで休閑地に放置されるならば、そういうところを活用して草地の造成等をやって、あるいはまたわりあいにそろばんの合う飼料作物等に転換することによって、一方においては畜産を助け、一方においては所得を幾らかでも増加をしていくということで、休閑地をなくするような努力政府は続けなければならぬと思っておりますが、大体さらに増産を進めてまいることはなかなか困難であるということは、農業政策だけの問題でございませんで、国全体あるいは国際的な関係に立っていまの日本の経済を見ましたときに、そういうふうな感じをわれわれは持たざるを得ない、こういうふうに思うわけであります。
  122. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 政府が昨年から麦の作付の拡大とかあるいは品質の改善、さらにまた種子の生産、供給安定等を重点にして施策をしておるわけですが、以上の政府のいまやっております麦生産対策が、地元で十分に消化をされていない向きも実は私は伺っているわけですが、いま私が申し上げましたような、政府が現在施策をしているこの方針を将来続けていくのかどうか、その点大臣から御答弁をお願いいたします。
  123. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大体農林省がいままでやってまいりましたことは、農業基本法のたてまえにのっとりまして、やはり先ほど農政局長が佐々さんにお答えいたしましたときにも予算のことで申し上げましたが、これは麦だけのこと、これは米だけのことというわけでなくて、やはり構造政策等、その他表裏作を通じて農業生産の増大をはかることの結果を招来するために、いろいろな施策をいたしておるわけでございますが、私は、そういう方向は間違ってない、いままでやってまいりました政策というものは、やはり基本法に差し示す方向に従って努力はいたしてまいったつもりであります。
  124. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 麦の自給率低下については各委員からも指摘がございましたし、輸入も相当毎年毎年増加もしておりますし、さらにまた、輸入の麦が非常に値段も安い、こういう現状で、したがって、農家の作付面積等もだんだん減っておるということから推して、私は、現在の麦対策について、もう一ぺん新しい構想でこの原因を究明し、また政府として麦対策に本腰を入れ、新しい角度から考えるべきではないか、このように考えるわけですが、大臣どうでしょう、この点について。
  125. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省が麦対策についてあまりやっておらないようなお話でございますが、私は率直に申して、一〇〇%大いに御期待に沿っておるとうぬぼれては決しておりませんが、大体斎藤さんもよくおわかりのように、第一には、そろばんに合わないからやめる、こういう考えがかなりあると思うのです。そのためには何をなすべきであるか。先ほどたぶん佐々さんに対するお答えだったと思いますが、いなかの麦畑を見ますと、大体麦だけでなくて、麦の間に桑を植えたり、イモを植えたりいたしております。ああいう小さな畑で、零細な、しかも経済的に見て従属的な立場に立っておる麦畑に、機械化というものは口では言えるけれども、非常にむずかしいと私は思うのです。したがって、農林省がいままで考え、また実行を着々いたしてまいりました主産地形成をやりまして、そして機械力を用い得るような、そういう主産地を形成していくということが必要ではないか、そういう方向でやってまいりますために、着々といままでもやってまいりました。これからもできるだけそういう方向で進めてまいりたい。第一、さっきちょっと申しましたように、土地の生産性は低くないのに、労働生産性がうんと他国に比べて低いという数字を見れば、いかに日本の小さな畑の麦をつくっておられる方々が前近代的な経営であるかということがわかるわけでありますから、この点を除去して労働生産性を引き上げていくということが、われわれに与えられた職責であると思いますし、先ほど来お話のありました二億五千万、大きい小さいは別として、そういうことについて力を入れております農林省考え方というものは、私は、やはりこの方向をさらに拡大していくことがいいのではないか、こう思っておるわけであります。
  126. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣の答弁は一応わかりました。私はケネディラウンドの妥結で外麦の価格が値上げされるようになると思うのですが、これが内麦の価格にも大きな影響を及ぼすのではないかというように心配しておるわけですが、この点はどうでしょうか。
  127. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ケネディラウンドはまだ大筋だけきめまして、細目の協定は取り結ばれてはおりませんけれども、大体御承知のように、いままでカナダのマニトバ一号というものが基準でありましたのが、今度はアメリカのハードウインター、その基準が変わりますと同時に、価格の安定帯というものを引き上げました。ところが、その価格の安定帯を引き上げたその中間のところに、現在の取引している外麦の価格が存在しているわけでございますから、ケネディラウンドがああいう状態で妥結いたしましても、直ちにわが国の麦価に影響を持ってくるとは考えられません。したがって、そういう意味では、私は、このケネディラウンドの妥結というものは、そのまますぐに日本の麦に影響してくるとは考えておりません。
  128. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 政府の麦の生産対策について二億五千万の補助金が出ているわけですが、これは麦作農家に対してどれくらいの農家が対象にされているか、お尋ねいたします。
  129. 森本修

    ○森本政府委員 四十一年度予備費でありましたのが実行をされておるわけであります。関係農家がどの程度かということはまだわかっておりませんが、各種の機械の補助をいたしておりますが、それを受け取りました農家、補助をいたしました個所数でまいりますと、約四百ヵ所ぐらいにいま申しましたような機械が補助されるということになっております。
  130. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは四十一年度でございますね。昭和四十二年度は……。
  131. 森本修

    ○森本政府委員 昭和四十二年度は、実はいま手続中でございますので——予算金額としては、大体規模としては同じでございますから、ほぼ同程度の地区に配られるもの、そういうふうに予想しておるわけです。
  132. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 麦作農家の何%に当たるのですか。
  133. 森本修

    ○森本政府委員 ちょっと関係農家数ははっきりしないのですが、いま申しましたようなことで、大体措置としては一部落ないしは二部落というふうな形になっております。
  134. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いまの麦の生産対策は、昭和四十一年度では大体四百ヵ所というお話もございまましたし、これは将来どれぐらいまで増加をしていくつもりですか。その計画があれば御答弁をお願いします。
  135. 森本修

    ○森本政府委員 はっきりどうこう、将来何年度にはどういうふうということは必ずしもいま出しておりませんが、当面こういうふうな対策が必要である期間につきましては、種々検討をいたしまして、大筋としては、先ほど大臣からお答えがございましたような考え方で麦作対策一つとしてやっていきます。
  136. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 先ほど私が御質問したときには、大臣から十分責任を持ってこの計画を進めていくという答弁がございましたが、いまの答弁では何か自信のないような答弁ですが、もう一ぺん御答弁願います。
  137. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これから進めてまいることは、皆さん方に御審議を願う予算の問題でございますし、予算を来年度どういうふうに要求するかということにつきまして、いま農林省部内で検討中でございますので、事務当局からはお答えいたしかねたと思いますが、私どもその計画をどういうふうにするかということについては、まだいまは来年度予算の要求について検討中でございます。ただ、方向としては、先ほど私がお答えいたしたようにやってまいりたい。
  138. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 だいぶ大臣も時計を見ながら答弁しておるようでございますから、私の質問はこれで終わりますが、ひとつ麦の生産対策については十分力を入れて施策をしてもらいたいことを要望して、私の質問を終わります。      ————◇—————
  139. 本名武

    本名委員長 引き続き、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。美濃政市君。
  140. 美濃政市

    ○美濃委員 ただいま議題になっております件について質問をいたいしたいと思いますが、まず最初に、過般提案理由の説明が行なわれましたが、その中で、酪農振興施策を講じてきたが、成果があがらないという表明をみずからされているわけです。この分析、あるいは今後、どういう点が悪くて成果があがらないのか、どうすれば成果があがるか、まず、その点に対する見解を承りたい。
  141. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 酪農につきましては、昭和三十九年まではかなり著しい発展を示しておったわけでございますが、三十九年から頭数伸び率停滞をしてまいったわけであります。  その理由といたしましては、まず第一点といたしまして、農家労働力が都市に流出するという現象が非常に強く起こったわけでございます。その結果、一頭、二頭階層の非常に収益性の低い階層から脱落が生じまして、酪農を放棄するという形が出てまいったわけであります。一方、五頭階層以上の層につきましては、かなり増加をいたしてまいりましたけれども、その増加減少を吸収するに十分でなかった、こういう点が第一点だと思っております。  第二点といたしましては、牛肉の価格が騰貴いたしまして、その結果、乳牛屠殺が行なわれた。こういうふうな結果といたしまして、酪農停滞をしたというふうに考えております。
  142. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、そういう局長の見解のような点も確かにあると思いますが、それ以外に、酪農停滞する理由というものが、かなり制度的に、政策的にあるわけです。その点に言及をされないわけです。単に少頭数飼育農家のいわゆる廃転によって起きた現象である、それらの牛が肉が高いから屠殺された、それのみを主原因としてこれからの酪農政策を進めるというのであれば、かなり問題があると思うのです。もっとこれは掘り下げて検討しなきゃならぬ。以下私のほうから意見を出す前に、局長のほうから、それだけが主原因とお考えになっておるのか、それだけの原因を追求してこれからの政策を進めれば、酪農対策は十分だと考えておるかどうか、伺いたい。
  143. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいま申し上げましたのは、その原因としてどういうふうなものであったか、主原因が何であったかということでございます。今後対策を立てるといたします場合には、いろいろな角度からこの対策を立てることを考えなければならぬわけでございますけれども、停滞をいたしました原因ということでわれわれが検討いたしました結果、おもなる原因はそういうものでなかろうかというふうに実は考えておるわけでございます。
  144. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは次に、同じく原因の問題についてしばらくお尋ねをしたいと思いますが、まず第一に、今回出されましたこの政策というよりも、いわゆる提案理由説明の中で、三つの政策があげられております。その第一点は家畜導入事業の飛躍的拡大、それから第二点は草地事業の拡充、第三点は加工原料乳生産者補給金制度推進、この三つを一応酪農対策の柱として説明をされたわけです。しかし、考えてみますに、家畜の導入事業、これはいわゆる頭数が充足した農家から新しくあるいは頭数増加しようとする農家への流動を促進するわけですから、この施策は私は大切だと思います。必要だと思います。しかし、その前に、今回きめられております酪農近代化政策、これを四十六年までに達成するんだという政策の意図に基づくということになれば、国内たらい回しの導入事業の飛躍的拡大のみで、その政策のみをもって、ほんとうの基本対策なしに乳牛頭数増加するということはあり得ないわけですね。そういう基本政策が欠けておると私は思うわけです。どうすれば乳牛頭数を充足することができるのか。基本政策なしに進めようとするところに問題があるのではないか。一応政策を承ると、理論があり、問題点は一応解明しておるけれども、しからば、その問題点の上に立ってかくかくこうして、必ずこういう計画を立てた場合にこの計画を実行するという真の政策がないのが、私は日本農政の欠陥でないかと思うわけです。御意見を承りたい。
  145. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 政策と申しましても、いろいろな段階の政策があるわけでございまして、私たちが考えておりますものとしては、今後の酪農振興をはかってまいりますためには、何と申しましても安定した経営をふやしていく。そこで、乳牛をふやしていくことを考えなければならぬというふうに考えておるわけでございます。そこで、近代化方針でも明らかにいたしておりますように、複合経営におきましては五頭以上の階層、それから専門的な経営におきましては十頭ないし十五頭以上の酪農家、こういうものを育成するということを旨といたしまして、そこにおいて必要な乳牛頭数が飼われるということを考えておるわけでございます。そのために、家畜導入事業というふうなことも、その一つの手段として政策的に取り上げておるというふうに考えておるわけでございます。
  146. 美濃政市

    ○美濃委員 私は前段に申し上げておりますが、導入事業が悪いと言っているわけではない。この事業も大切であると言っておるわけであります。しかし、一番欠けておるものがある。この対策で私は新しく計画をしなければならぬ点があると思うのです。それは私から申し上げるまでもなく、日本酪農全体の中には、非常に割高に売れる地域育成等が非常に困難な地域、あるいはいま局長の言う、そういう大規模の十頭以上も飼育する体系が非常に困難で、中規模で——まあ一頭、二頭という小規模は今後考えるべきでないと思います。中規模で、比較的大都会の周辺で、割高に乳牛が売れて、その形態をやろうと考えておる酪農形態がある。はなはだしきは、牝牛が生まれても育成する意思がない。それを育てようという意思がない。特にはなはだしきは、一乳期しぼったら肉に売って、そうしてまたはらみ牛を買ってくるという考え方の飼育形態もある。こういう要素の中で、一体四十六年までに二百万頭の計画を立てた場合、この二百万頭に充足する——いわゆる導入計画ではだめなんです。当時問題になった、牛を国貸だ道貸だといって、多少予算をつけて買いやすいようにして、その牛の移動を生産者が売ろうとする考え方と買おうとする考え方の意欲が順調にいくように促進する政策は、それは頭数増加にはなりませんので、それは頭数増加とは違うことですから、国内におる牛のたらい回しなんです。これもやはり酪農振興上大切なことです。私はいけないとは言っていないのです。大切なことではあるが、基本的に牛をどの地域に——たとえば放牧地のある、あるいは面積の広いところで、どの地域で基本的な乳牛育成をして、いわゆる日本乳牛資源をどこで生産して、それからまた、そういう消耗率の高い乳牛頭数は何ぼあって、それらの地域はどことどこであって、その乳牛生産、いわゆる卑近なことばで言えば乳牛基地ですね、乳牛基地の県はどことどこである、それらの県で何頭確実に育成牛が育成され、年度別には何頭頭数増加していくという計画がなければ——その計画だけではいけません。それに伴う放牧地、いわゆる草地開発、あるいは条件に適応した大規模草地推進をしている件数もかなり多いわけです。これがことし、昭和四十二年度予算でも、ほとんど一部予算がついただけです。どうしてもこれらの計画をするには——これをやらなければならぬという地元なりあるいは県なり旺盛な意欲があるにかかわらず、それが達成されないというところに問題があると私は思う。そういう計画を強くそれに打ち出してこない。ただいわゆる導入事業の飛躍的拡大という表現で、前段に打ち出した先ほど申し上げた三つの柱が、これは私が言っておるのではなくて、ここに書いてあるのですが、そういう基本政策が全く欠けておる。それを今後どういうふうにするか、その構想を承りたい。
  147. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 家畜導入事業というのは、二つの意味を持つと私は考えております。一つは、経営拡大するために必要な乳牛を導入していくというのが一つで、第二は、育成過程にあります乳牛がつぶされるというふうなことを防止して資源を維持する意味があると思う。根本的に申しますと、まさに先生のお話のように、家畜導入事業は、国内の家畜の位置を変更させることにすぎないというふうな意見もあると思うのでございますけれども、現実には、育成過程の牛が相当殺される、それから経営拡大というふうな方向に向かわないような形で乳牛が処理されておるという点もあるのでございますから、そういう点は、この家畜導入事業によりまして私は解決する問題ではないかというふうに思うわけでありまして、国内にあります資源をフルに活用する、しかも合理的に活用するという意味におきましては、家畜導入事業というものは、非常な有意義なものではないかというふうに考えておるわけであります。そこで、問題になりますのは、育成過程の問題でございまけれども、これは非常に育成過程収益性が少ないということもありまして、従来育成過程が必ずしもうまく個々の経営の中に入り込んでいっていない。そこで、牛を経営の外に出すというふうな形が行なわれておるわけでございます。本来的にいえば、自分の経営の中で育成をして搾乳過程に入れるというのが通常の形態であろうかと思うわけでございますけれども、日本のように土地が狭隘で、しかも所有の草地なり耕地が少ないという場合におきましては、なかなか育成がしにくいという問題があると存じます。そこで、育成のためには、経営外において公共的な性格を持った育成牧場というものを設置いたしまして、この育成牧場で育成するということが合理的であろうかと思うわけでございます。そういう意味で、草地改良事業に合わせまして、夏季放牧なり重放牧の形で育成過程にてこ入れをいたします。育成牧場を設置するということに特に重点を置いてやってまいっておりますが、今後もそういうことでさらに拡充をしてまいりたいというふうに実は考えておるわけであります。
  148. 美濃政市

    ○美濃委員 いまのお話を聞いておると、育成収益性が少ない、こういうのですが、この酪農体系の中でもとをなすのは育成でありますから、私は必ずしも育成というものが収益性が低いとは現時点では考えておりません。確かに過去においては低い時点もありました。しかし、現時点で判断するときには、育成というものは、決して収益性が低いとは考えていないわけであります。これは経済動物ですから、そのときの状態によって変動が起きてまいります。そこで、育成牧場を設置する、こう言いますけれども、別に私は、大規模の育成牧場が、これだけの計画を五ヵ年間で達成する体制が動き出したとは見受けられぬのです。局長のアイデアとしては承っておきます。ほんとうに政治的に予算的に信念の入った——四十二年度はやむを得ないとしても、四十三年度には四十六年までにこれだけの牛が充足される、いま局長の構想の開発が起きるような状況に動いてきたというふうには考え得ないわけだ。ただ局長のアイデアだけを承っておっても、アイデアではならぬわけです。現実にそれが政策化され、あるいは予算化されて動いていかなければならぬ。その見通しははっきり間違いないと言い切れるかどうか。
  149. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 最近の統計によりますと、東京、神奈川、大阪等の例外的な県を除きまして、育成牛率は非常に高まりつつあるように思われるわけでございます。育成の条件はよくなっておりまして、さらにこれを促進していく必要があると思っておるわけですが、大規模草地開発というようなものを一方で進めておりますけれども、地域によりましては、そういうふうなことでなかなか困難であるというような条件もあるわけでございます。やはり中なり小なりという規模のものが必要なところもあるわけでございますから、そこで、県営なり団体営という形でそれに応じた規模を考えておるわけでございますけれども、それだけでは必ずしも十分でないところもあるわけでございます。そこで、今回の差益の使用によりまして、そういうような小規模のところでもできるということにいたしたいというふうに実は考えておるわけでございまして、極大から極小に至るまで、必要なものは大いに促進してまいろうというふうに考えております。
  150. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、五ヵ年間の過程の中では、確かに小さいものも必要だと思いますけれども、おそらく日本酪農対策、都市周辺酪農の要素というものは、そう五年、六年たっても、その先行き条件というものが大幅に変わってくることはなかろう。これは自然条件あるいは立地条件であります。そうすると、これはもう急速に頭数をふやさなければならぬ過程においては、そういう対策も必要であります。しかし、これらの頭数が充足されて、最近の豚肉のように乳牛が余ってどうにもならぬほど生産するということは考えなければならぬことであります。需給量と見合った頭数がこれだけとすれば、その頭数に達したときは、そういう自然条件に恵まれた地域育成された牛で、育成が足手まといになる地域の補充というものをまかなえると思うのです。二百万頭五ヵ年でする過程では、いわゆる牝牛の生まれたものは全部屠殺するようなことではいけないけれども、この目標頭数に達したときは、たとえば本年度が六十何万頭というのでありますから、半分雌が出たとしても三十万頭出るわけであります。その中から四〇数%、多い年は五〇%牝牛が出ておりますから、三十万頭出て、それが育成されれば、かなりの補充率があるわけです。   〔委員長退席倉成委員長代理着席〕 いわゆる全国的に補充することができる。これは北海道の地域に限らず、全国的には牧野創設の可能性がある地域があるわけですから、そういう可能な地域でこの計画に達した後の補充率は維持できる。乳牛頭数の補充率は、飼育困難な地域で高い乳牛をつくって、一面草も少ない、あるいは条件の悪い中で育成すると、それは先ほどお話があったように、育成のコストが非常に高いということになる。育成の問題はあとからちょっと触れようと思いますが、そこで、そういう体系をいまから考えておかなければならぬ。いまお話のありましたように、補給金のいわゆる使途の一部の中に、当面の措置として、そういう措置を講じていくこともけっこうでしょう。しかし、将来の体系のときには、この頭数が充足されて、そうしていわゆる循環補充率ですね、二百万頭の乳牛日本のスタイルになる。その循環補充に入った場合は、きわめて条件困難なところで無理をして育成牛を持つことばかえって当該酪農家はマイナスなんだというところは、無理せぬでやれる体系は私はできるんじゃないかと思う。頭数が循環体制に入れば、乳牛のほうで補充率は上がるわけですから、一部に購入補充の飼育体系が一部の地域にあっても、それがその地域酪農に最も合致しておるんだ、当該酪農する生産者収益性に一番合致するというのならば、あえて無理して育成を条件の悪いところでしなくてもいい、こういう考え方をいまから出して——いまそういうことは言えません。いまは局長さんの答弁のような現実ですから、それも必要です。しかし、将来に向かった展望は、そういう基本方針をいまから立てて、それを進めるべきでないか。基本体系ですね。基本構想としてはそういう基本構想をつくって、大規模牧野の創設なり、あるいは将来の全国に対する乳牛の補充基地なり、こういうものに対する具体的な政策をいまから進めていかなければいけない。いわゆるいま困るんだからといって、この補給金で当面二、三年おやりになることについては、私は悪いとは申しませんし、それをどうこう言うものではない。しかし、いつまでもこういうことをやらぬでも、将来のやはり展望、ビジョンというもの、将来に対する体系をつくって——一時的には採算の低い無理なことをやっても、将来は広いところで十分ある程度採算のとれる中で、自然条件の中で育成が行なわれる、それがそういう地域の補充率もまかなっていく、こういうことを私は導入事業の前に——導入事業は大切なんですよ。ただ、導入事業はあとであって、その前にいま申し上げた政策を立てるべきである、こう思うわけです。
  151. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話のように、育成が必ずしも適当でない経営というものもある地域もあるわけでございます。そういうことで、大規模な育成牧場のあるところに預託育成をするということも可能であり、また、育成牧場そのもので買い取りをして成牛にして売却するということもあるわけでございます。まあ、いずれの方法によりますか、その地域地域の実態に即しまして、そういうふうな形がとられるべきであるというふうに考えておりまして、いま先生のお話のようなことも、これは十分考えていくべきことである、かように考えております。
  152. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは意見が一致したようでありますから、ぜひその政策をできるだけ立てるようにしていただきたいと思います。  それからその次に、いま非常に牛が高騰しておるわけです。これが酪農振興の阻害要因になる。まあ牛が高いということは、一面生産したものを売る立場に立てば、これは当該農家の経済性のためにはよろしいわけですが、酪農全体のためには非常に牛が高過ぎる。いま普通乳牛は、そのところによって違うでしょうけれども、普通乳牛は二十万円、こうなるわけです。そのことが牛乳生産のコストにかなり悪影響になってまいるわけです。そこで、そのいま二十万円する牛を直ちに政治的にどうこうと私は言うのではないがこれは市乳はいろいろ違っておりますが、加工原料乳生産の中で、一体あの生産体制の中で、いわゆる乳牛償却経費の分類が全部できておりますか、その乳牛償却費の限度内における乳牛価格というものは何ぼであると計算していますか。私は私なりに計算しております。計算を承りたい。
  153. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 数字はあとで申し上げますが、一ころ肉の価格が非常に高かった、そのために乳牛屠殺されていくというふうなことがございます。したがいまして、やはり乳牛をふやしていくためには、肉の価格とのバランスということも考えなければいかぬと思うわけでございます。もちろん、非常に乳牛価格が極端に高くなるということは問題であると思いますけれども、肉の価格なり乳の価格ということで、バランスがとれた価格が最も望ましいというふうに実は考えておるわけでございまして、最近やや乳牛価格が高くなっております関係から、肉としての屠殺率が非常に減ってまいって、育成意欲というものが非常に出てまいっておるというふうに考えるわけでありまして、その意味におきましては、必ずしもいまの状態が非常に問題があるというふうにも考えてないわけでございます。——数字は、いま計算をしたところで、およそ十六万程度になっておるように思います。
  154. 美濃政市

    ○美濃委員 十六万になりますか。私の計算は十六万にならないわけです。
  155. 松本作衛

    ○松本説明員 御説明申し上げます。  四十二年度の保証価格の計算にあたりまして、乳牛の償却費は百キログラム当たり三百二十九円に見ております。この乳牛一頭当たりの搾乳量は年間で約四千八百キロ余と見ておりますので、それを掛けますと、年間の償却費、いわゆる年間の一頭当たりの償却というのは一万六千円ほどになります。で、耐用年数を約八年と見ておりますので、八倍いたしますと、約十三万円ほどになるわけでございますが、残存部分を二割と見ておりますから、八分の十ということにいたしますと、約十六万ということでございます。
  156. 美濃政市

    ○美濃委員 それは計算上八年はいいですよ。日本乳牛の平均耐用年数は八年ですか。これは計算上は八年とすれば八年、十年とすれば十年になりますけれども、日本のいわゆる初産からの平均耐用年数は、私の調べでは六年というふうになっておる。六年ちょっとですね。いわゆる先進国の北欧諸国では八年、わが国酪農では六年ちょっと、まず六年と言っていいと思うのです。八年の平均耐用年数はないわけです。これにも一つの問題があるわけです。
  157. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 生産費計算上の基本的な考え方といたしましては、八年ということをとっておるわけでございますが、これは残存価格との関係がございますから、したがいまして、耐用年数の見方によりましては、また残存価格も変わってくるということになろうかと考えております。
  158. 美濃政市

    ○美濃委員 そういうことが単に計算数字ならいいけれども、いわゆる牛乳生産する経済にはもう基本的になってまいります。単に役所のテーブルで計算する数字ではないわけです。現実にその計算の基礎によって生産が行なわれていくわけですが、同じく私どもが見ると、あの乳価の中で、キロ当たり七百円余の副産物収入を引いておりますから、そういう点から考えますと、残存価格を直接控除方式をとった償却であるというけれども、それも十三万何ぼですから、いま二十万すれば、かなり償却費は不足する、こういうことになるわけです。そういうことが、どうしても酪農をやった結果収支償わないでやめていくという原因になるわけですね。まず第一点。  それから、その解決をするにはどうすればいいか。いま私どもが計算しておるのは、先ほど申し上げた大規模草地等をつくって、自然条件にマッチしたところで牛をつくった場合、私の計算では、九百日で十三万五千円、一日飼育労働賃金を含めて百五十円で十分飼育できる。それ以下に、いわゆる牛の育成を十三万五千円以下に切り詰めることは、ちょっと現況では無理であろう。しかし、そういう体制はつくることができるし、また、それで十分牛乳生産すると同様の経済性を持って育成をすることができる、こう私は計算をしておるわけです。そこに二十万円か十三万五千円かという問題が出てまいります。六万五千円という差が牛乳価格に出てまいります。これは重ねて申し上げておきますが、流通を促進する導入事業とは根本的に性質が違うわけであります。そういう基本政策に大幅に国の予算を投入する、あるいはそういう対象事業収益性のあるものに対する金融の体制、まずそういう体制をつくらなければ、基本的に日本酪農が軌道に乗ってこない、こう思うわけです。  それからその次は、こういう政策を進めていく中において、非常に私どもが不快に思うことがあるわけです。それは、これは国民のきげんとりをするのか、最近北海道開発庁が意見を出しておるわけですね。これを見ると、どういうことを言っておるかというと、二十頭以上の飼育体系は赤字である、一頭当たり千何百円の赤字とまで書いてありますが、二十頭以上の飼育体系は赤字である、それから酪農の近代化を進めるにあたっては、低利、長期の資金を要する、それがなければ——これは北海道の地方の道新に出ている記事ですが、酪農近代化は絵にかいたもちだという表現をしているわけです。同じ国家の機関の北海道開発庁は、新聞にこういうことを堂々と書いているわけです。そこで、こういうことを開発庁が言ってみても、開発庁そのものは実行機関ではないわけです。一部実行機関を持っておりますが、この種のことは農林省が実行機関である。開発庁は北海道の計画推進する機関でありますが、実行機関である農林省は、同じ国の機関である開発庁がこういうことを発表するわけですが、これは北海道に限らず、全国共通の問題です。  そこで、前にも一ぺん言っておりますが、資金、年限についても検討するという答弁もあったわけですが、さっき大臣も、今日もうそろそろ明年度予算を検討しております。こう言っておるのですから、四十三年度予算検討の中で、一体この二百万頭の酪農近代化を五年間で進めるについて、総体の資金は何ぼ必要とするか、またその資金は、利子条件、年限は、これも先ほど申し上げたので、皆さん計算されておると思いますが、償却と同じように、一応加工原料乳を対象として考えた場合、あの中に占める建物費、建物償却が出ておりますから、それから逆算した年限、資本利子から逆算した金利体系、これは何年の何分でなければ合致しないのかということを御説明願いたいと思います。
  159. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 先ほど、北海道開発庁が、二十頭以上は赤字であるというふうな発表があったというふうなことでございますが、私たちのほうではそういうことは全然聞いておりません。私たちのほうの生産費調査によりますと、規模が拡大するにつれまして、家族労働報酬というものは飛躍的にふえるというふうに出ておりまして、少なくとも昭和四十年の生産費調査によりましても、二十頭から二十九頭層は千五百三十七円というふうな形に出ておりまして、全国平均の倍に——平均が六百二十二円でございますが、二十頭以上、二十九頭までになりますと千五百三十七円ということで、非常に規模の利益というものが明らかに出ておるように考えておるわけでございます。したがいまして、多頭飼育ということにつきましては、今後とも推進をしてまいる考えでおります。  それからその次に、御質問のありました金利、年限等の問題につきましては、現在、今後金融問題をどうするかということで検討いたしておりまして、まだここで申し上げるという段階になっておらないわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  160. 美濃政市

    ○美濃委員 二十頭以上は赤字、これは、いまの御答弁は、局長の見解は酪農に非常に精通していない間違った答弁をされておると思います。私は現場へ行って全部掌握しております。なぜ開発庁が二十頭階層は赤字だ——四段抜きですからね。いやしくも新聞に四段抜きで、責任ある開発庁が二十頭以上は赤字と断定して発表したからには、原因があるわけです。決して局長が言うように多くなればなるほど黒字だというものじゃありません。これが正しいのですよ。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、私の聞いておるのは、保証乳価の中の建物費、この償却を逆算した——償却年限あるいは資本利子から逆算した金利体系、この計算を聞いておる。その計算が皆さん方頭のいい人ができぬというはずはない。どうするか、こうするかという政策は、これは大臣でなければわからぬでしょう。金利を何ぼにします、年限を何ぼにしますということを、ここで政策が煮詰まらぬうちに局長に答弁を求めるわけじゃないのです。皆さん方は保証乳価をきめた作業をやった方なんですから、政策よりも、保証乳価から逆算した場合どうなるかということを聞いている。
  161. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 その点いま計算をいたさせますので、しばらくお待ちを願いたいと思うのでございます。  第一の点につきましては、北海道開発庁にもよく尋ねまして、どのようなことになっておるのか調べたいと思いますけれども、北海道庁自体が、近代化方針につきまして、飼養頭数規模は平均経産牛頭数十七頭以上にする、こういうような計画を立てておるわけでございまして、こういう点とも矛盾をいたします。そういう点から考えまして、どうも私としては、何かの間違いではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  162. 美濃政市

    ○美濃委員 参考までに私の調査を申し上げておきますが、これも同じく皆さん方がおつくりになった保証乳価から逆算すれば出てくるのです。あの飼育時間、それから粗飼料をつくって飼うとした場合、百キロ当たり三・三時間、この時間を三百日、二千四百時間で逆算をいたしますと、そして先ほど言われた乳量で計算をいたしますと、男子一人一労働で年間飼育できる頭数は六・五頭ということになる。これは道庁が基準農家を対象にして調査しているわけです。この状態がどうかということは、私は個別経営よりも共同経営のほうがなおよくわかると思いまして、二日間にわたりまして、私のところの地元の共同経営の牛舎に入って、作業日誌から綿密に調べてまいりました。労働時間というものがどうなんだ、保証乳価を逆算すると、大体六・五頭となるわけですね。一労働単位で年間——これは三百六十五日でございませんよ。時間割りでいきますから、二千四百時間、三百日の八時間、六・五頭、実際に農民はどうやっているかということも検討しました。その結果は、大体十時間労働の三百日労働をやりまして、夫婦二人共かせぎで十一頭程度ということです。十一頭ないし十二頭、これは乳牛ですよ。育成牛は除きます。それに三頭なり四頭なり育成牛がおりますが、乳牛頭数としては、これはもう労働の限界である。そこで、二十頭飼うことはいいが、それはたまたま安い年間雇用労働でもあればけっこうですが、そういう体系はない。あるいはまた農家の構成でありますから、わりかた後継者がかなりの年齢に達して、親が健在である。労働力は親を含めて三人おるというような形態の中では、二十頭飼育は可能であろう。そこで、開発庁が出しておるのは、いわゆる普通農家で夫婦二人で子供が小さい農家ですね。普通農家経営基準で二十頭以上飼ったら赤字になるという警告を発したのです。私はこのとおりだと思う。とても管理ができないから、病気が起きてくる、粗放管理になりましてえさはよけいかかる、収支は伴わぬ、労働条件が伴わぬということ、結局赤字になっておるのです。これは事実なんです。ですから、開発庁は、多頭飼育もけっこうだが、普通労働単位の農家——普通労働単位というものは、いま次三男おりませんから、労働計算からしても、二十頭以上飼ったら赤字になるとはっきり言っておるのですよ。こういう点が、これからの酪農政策の進め方で最も大切だと私は思うのです。それを局長は知らないんですね、よけい飼えば黒字になると言うのだから。そこを担当している局長よりも、開発庁がよく覚えておるということです。こういう政策のズレでは困ると思うのです。ほんとう酪農問題を政策立案するときに、開発庁の見解が畜産局の見解を上回っておるのじゃ、こういう跛行した行政の体系ではちょっとまずいのじゃないかと思う。御意見を承りたい。
  163. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 酪農経営をやります場合には、労働と資本とが要るわけでございますから、したがいまして、労働が幾らであるかというふうなことと経営の規模というものは、もちろんかかわり合ってくるわけであります。したがって、不十分な労働で巨大な経営をやるということは、私は無理であるというふうに思うわけでございます。近代化方針では、基本の指標といたしまして、大体夫婦二人といった場合に十頭ないし十五頭以上というようなことの専門経営考えておるわけでございまして、それには労働時間がどうであるとか、飼料自給率がどうであるというふうな指標を想定いたしまして考えておるわけでございます。したがいまして、巨大な経営になりますと、それに必要な労働なり資本というものが必要になってまいることは当然なことではなかろうかというふうに私は考えておるわけでございまして、もしも北海道開発庁の場合に労働力関係で言われたとすれば、それはあり得ることだというふうに思うわけでございますが、少なくとも統計調査部の生産費調査によりますと、それぞれの規模についての家族労働報酬を調べた場合におきましては、規模の利益というものは確実に出ておるというふうに考えておるわけでございます。
  164. 美濃政市

    ○美濃委員 さっきの計算出ませんか。
  165. 松本作衛

    ○松本説明員 先生の御質問の趣旨とあるいは必ずしも一致しないかもしれませんが、実は保証価格の計算にあたりましては、一応生産費調査の際の実態と約束に基づきまして、酪農家の資本利子につきましては、借り入れ比率を九・二四%というふうに見まして、それで、その借り入れ部分につきましては年利率七分四厘五毛、自己資本比率につきましては五分五厘というふうに計算をしておるわけでございます。なお、借り入れ資本のうちの流動資本につきましては、回転を年六回というふうに考えまして資本利子の計算をしておるわけでございますので、実態として、個々の酪農家によりましてこのような借り入れ比率に必ずしもなっておらないというふうな場合には、お話がございましたように、この計算よりも苦しい利子の負担が出てまいるというようなことがあろうかというふうに考えます。
  166. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの利子は酪農の設備投資ですから、もちろん私は土地は除きますが、乳牛は入りますね。資本設備に牛は入れないのですか。
  167. 松本作衛

    ○松本説明員 固定資本の中に入っているわけです。減価償却の対象になる部分につきましては、乳牛につきましても資本の対象として考える。
  168. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、合わないのですね。たとえば償却から見た十三万五千円、これは現況は二十万であっても、それは別として、減価償却基準から計算すれば、乳牛一頭十三万五千円、設備を合わせますと、自己資本部分は五分五厘、それから借り入れ金は七分五厘というような金利が、その保証乳価の中で計算されておるとはちょっと思われない。私の間違いかもしれませんが、私の計算ではそうならない。
  169. 松本作衛

    ○松本説明員 一応計算といたしましては、いま申しましたように、減価償却部分は減価償却として見、一方資本につきましては、要しました資本といたしまして固定資本部分、流動資本部分を対象にしまして、それをいま申しましたような自己資本部分と借り入れ資本部分に案分をして計算をしておるわけでございます。
  170. 美濃政市

    ○美濃委員 その計算の取り方その他はあまりこまかい問題ですから、ここでこれ以上しません。しかし、償却の見方その他で変わってきますが、それがその次の質問に関係があるわけです。同じくこの開発庁は、共同化がうまくいかないと書いてある。一体共同経営がうまくいかない最大の原因はどこにあるか。
  171. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話のように、酪農経営としては、共同化というものはあまり進展をいたしておりません。事実そういうふうな実態にあるわけでございますが、われわれが考えてみましても、その原因としてあげられるものは、一つは、やはり技術的に高度の熟練性を要するという点があります。したがいまして、人によって非常に違う点があるということと、第二の点は、利益の配分ということがなかなかむずかしいという問題がございます。第三の点としては、土地をなかなか拡大できないというふうな問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 美濃政市

    ○美濃委員 これは局長の認識がだいぶずれておるようです。私がさっき申し上げたように、四つ、五つと百頭以上飼っておる共同畜舎を私みずからがずっと回って見たわけです。その中で、一番共同化で苦しんでいる。生産性は個別経営より上がっております。それからまた合理的です。生産に対する機械の台数、どれを調べてみても合理的なんです。うまくいかなければならないのがうまくいかない。これの最大の原因が、五分五厘、七分五厘というけれども、共同化などを始めると、一番先に大型畜舎——導入資金等かなり借り入れ金で大型化をやりますから、それがおおよそ近代化資金である。ところが、この利率は、七分五厘、五分五厘というけれども、これは償却年数を中間でつかまえて、だいぶ古い畜舎でやっているんだろうという想定に基づいて計算をすれば、安い評価になります。しかし、共同畜舎あたりで新しくつくりますと、安い費用じゃなくて、現実に畜舎をつくって借り入れるわけです。償還金利に追われて、夫婦共かせぎでまっ黒になって十時間三百六十五日働いて、五十万円賃金がもらえないという状態、これが最大の原因です。そこで、開発庁がさっき言ったように、北海道の冷害根絶対策——あるいはこれは全国ですよ。これは北海道が新聞に出ているから例としてあげるのだが、全国的に酪農の近代化を進めるためには、どうしても新しい資金で、牛乳価格の中で払える制度をつくらなければ無理だと言っているのです。たとえば先ほど言ったように、今日乳牛は二十万かかるわけですから、これを無視するわけにはいかない。二十万かかる牛は確実に二十万かかるわけです。しかし、牛の二十万円は別として、いわゆる畜舎をつくって牛を一頭入れると、三十万円その施設にかかるわけです。それに対する百キロ当たり二円八十一銭というもの、四千何百キロで計算すると、これも計算が出るわけです。その面で計算すると、三分五厘ちょっとでございます。まず一口に三分五厘です。三分五厘資金で新設価格でいけば、四十年百キロ当たり七十八円ですよ。乳牛一頭当たり、これは畜舎償却ですから、牛は除きます。除いて十五万円に対して三千百円ということになれば、これは新設畜舎で四十年償却ということになります。そこに最大の原因がある。共同畜舎を調べたら、新しくつくって全く償還金利に苦しんでいる。片や乳価を調べてみたら、新しくつくった新設のものに対する投下資本に対して金利計算をすれば、三分五厘しか乳価の中に金利は見込まれていない。償却は四十年償却である。それだのに十五年の六分資金、近代化資金を借りてやった。しかも百頭牛舎ですから、千五百万、千八百万、二千万という借り入れをするわけです。金利年利償還というものはばかにならぬ。それに追われてしまって、共同経営がうまくいかないという原因がそこにある。そのネックをとってやったら、いまの北海道地域の共同経営——内地にもあるのではないかと思いますが、内地のことは私はそう詳しくない。ほんとうに喜ぶ共同経営こそ、これから先機械の合理性、作業の一貫性、生産性の向上ということで全部の——直ちに全部とは言いません。これは時期の問題もございます。だけれども、共同経営というものが進んで、その中から機械化、一貫した作業体系、生産性の向上がはかれるのであります。その最大の要因は、いわゆる金融体系が不十分である、これを言っているわけです。局長さんが説明するのと開発庁がここで解説しているのとは違うわけですね。
  173. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 共同経営につきましては、内地の場合におきましても、できましたものが解散するとか、またつくるとかいうふうな過程があるわけでございますけれども、なかなか伸展をしないわけであります。先ほど申し上げましたように、いろいろと聞いてみますと、そういうふうな私が申し上げましたような事情も大いにあるというふうに考えているわけであります。金融の問題というのは非常に重要な問題でございますから、先般もお答えいたしましたように、われわれとしましても十分検討いたしまして、改善に努力をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  174. 美濃政市

    ○美濃委員 金融問題、これはどうでしょうか。できるできぬは、これは片や大蔵というところがあるわけで、農林省だけの責任で答弁はできないのですが、いま申し上げているいわゆる金融体系というものは、やはり農林省の意識としてはそうなければならぬということを肯定しますか。何も畜産局長はここで意識を肯定したからといって、できるできぬは、日本全体の政策の問題である。あなた個人の責任ではないわけです。意識をお伺いしたい。
  175. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 生産費の問題は、平均生産費をとっておるわけでございますから、したがいまして、いまここの場合は違うわけです。それから融資の場合につきましては、近代化資金もありますし、経営拡大資金もあるということで、いろいろなものがあるわけでございまして、そこで融資の体系というものが一方ではあるわけでございます。そういうふうな問題とからみ合わせてよく検討しなければならぬ問題だというふうに私は思っておるわけでございますが、いまのお話もございましたけれども、われわれのほうといたしましても、これは十分検討してやるべき問題だというふうに考えておるわけでございます。
  176. 美濃政市

    ○美濃委員 検討を聞いておるわけでないのです。そういうことを聞いておるわけでないのです。開発庁はこういうふうに打ち出しておるわけですから、農林省としてどう考えるか。できるできぬは、日本全体の金融の問題であり、大蔵省もあることだから、畜産局長限りでどうするこうするという答弁をしていただこうとは思わぬが、体制としてはこうなければならぬというお考えはどうかと聞いておる。近代化資金はだめだと書いてあるのですよ。近代化資金はだめです、合わないのですから。新しいスタイルをつくる。近代化資金の十五年六分資金でいわゆる多角飼育、大型の畜産経営の施設をつくった場合、これは償還できません。参考のために近代化資金でやれる範囲を申し上げておきます。これは新しい設備をつくる場合、いま申し上げたように、償却あるいは乳価の中に含まっておる、加工原料乳生産する農家に近代化資金でつくらす場合、これは新施設で計算すると三分五厘でございます。償却を古いもので計算すればそれは五分かもしれませんけれども、新しい設備で乳価計算をいたしますと三分五厘、償却年限は四十年でございますから、いずれも三分の一以内の借り入れ金ということになります。そこで、一面、農林中金が、関連融資等と言っていろいろ失敗いたしまして、酪農近代化をやるというものだから、利子かせぎしようと思って目をつけて、十五年の八分三厘——いままで八分だったのです。これは十五年の八分三厘を積極的に進めるためです。十五年の八分三厘なんかの資金を借りさして、うっかり酪農設備なんかやらしたら、農民を殺してしまうのです。払えぬのですから。払えなかったら、金融をやっておるものは延滞利子と称して、延滞部分は日歩四銭となる。農民を殺すということです。間違った施策を進めておる。かえって、なまかじりより、小さいけれども、しろうとで集約経営をさせておいたほうが、まだ無難なんです。農業構造改善を進めておる中に、そういうことがあるじゃないですか。補助金を出す、あるいは構造改善推進資金を出す、なまじっか指導して構造改善をやらしたことによって、当該農家経営は苦しくなる。借金が払えなくて、構造改善をやらなければやらなくてもよかったのに、農業構造改善をやったおかげで、負債整理のために農業をやめなければならぬ。売っ払っても借金が払えなかったという例がぼつぼつ出てきておるのです。そういう政策では困るのではないか。農業基本法に基づく農業構造改善事業、その中で、経営基準の指導の取り違えというものがかなり目立ってきておるわけです。農林省自身も、これは局長さん担当じゃないけれども、この問題を追及するなら明日でも——明日は法案じゃないですが、次の日程の中では、私はその担当に来てもらおうと思う。そういうことをあくまでそういうあいまいな政策で進めていくというなら、私は承知できないのです。
  177. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話の金融の問題でございますが、現在の近代化資金なり拡大資金が十分でないということはわれわれも考えておるわけでございます。そこで、金融をどうするかということを現在具体的に検討いたしておるのでございますが、なお、その構造改善推進会議農林省全体として持ちまして、構造改善を研究しておるわけであります。その中におきましても、資金の問題につきましては総合的な検討をいたすことにいたしておりまして、十分検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  178. 美濃政市

    ○美濃委員 資金関係あるいは農業構造関係につきましては、本日はおられませんので、次の私の質問の時間に経済局長、所管局長さんの出席をお願いいたしたい。これは非常に重要なことであります。本日は畜産局長さんでございますから、この問題はこの程度にしておきたいと思います。  その次に、草地開発の関係でお尋ねいたしたいと思います。これは全国計画によれば、都道府県からいわゆる計画を立てる。これは私どもも他の方面まで手を伸ばしておりませんが、関係する私どもの近隣の町村長の意見を聞いておりますが、酪農の近代化計画というものは、道からある程度慫慂があってあげたけれども、議会でも問題になった。そんなことで、一体町村長、そんな頭数を出してやれるのかやれぬのかと、かなり議会でも問題になったという町村が、北海道地域におきましても多いわけです。そういう内容でありますが、先ほどから申し上げておりますけれども、特に北海道、東北のような従来気象条件が悪い地帯におけるこの計画は達成したいというのが私の考えなんです。この計画どおり、たとえば北海道であれば六十万頭にしたい、これを前提として私はものを言っておるので、これが悪いなどという意識で質問しておるのではない、意見を言っておるのでないということをまず認識しておいていただきたい。私の考えはこうしたいということなんです。こうするには隘路があるということなんです。いまの制度でこんなことをやらしたら農家を殺してしまう。思い切った制度改正、思い切った安定、あるいは場合によっては、価格問題に及んでまいります。乳価にも関連を生じてまいります。そうして特に全国的に見ても、畑作地帯は、御説明のありましたいままでの需要動向、国際的需給関係から見ても、どうしても自給率を高めなければならぬということ、これは農業をやる者としては非常にけっこうなことなんですね。もう貿易自由化で国内生産はどうでもいいといわれる者から見たら——国内需給の関係その他からどうしても国内自給度を上げなければならぬという政策が農政の中に出てくるということは、農業を愛する者、農業に従事する者の立場から言えば、非常に喜ぶべきことなんです、しかし、喜ぶべきことだけれども、安易にやっていった場合には、先ほど申し上げたように、農業改善事業においてすら、やらぬほうがよかったという結果が出るようなことではどうにもならぬ。なまじっかそんなことをやらなければ、負債も増加しないし、苦しまぬでもよかったのだ、やったことによって経営が悪化する、一体これはどういうことなんだということなんです。それにははっきりとした原因があるわけです。原因を私は申し上げているわけです。  そこで、草地の問題ですが、先ほどちょっと申し上げましたが、そういうことができないという原因の裏にはいろいろ問題があるわけです。町村の議会や何かでいろいろなことを道へ陳情してみても、一体そんな短い年限でいまの倍、三倍に牛はふやせるのか、架空計画でどうでもいいということならいいのですけれども、信憑性を問われる、こういうことが多いわけです。なぜそうかというと、資金の問題は先ほど申し上げましたが、次の問題としては草地の問題が出てまいります。この計画では、意見として二十万ヘクタールの草地を開発しなければならぬ、こうある。ところが、この計画を立てても、本年度の予算から見た草地開発の計画というものは、五年間で二十万ヘクタールの草地を開発するという政策の立案ができていない。たとえば、ほかのことであれば、公共関係の高速道路をつくるにしても、計画が立てば、きちっと一〇〇%の予算を裏づけて計画が発表される。農業だけは、アイデアだけはうまいことをいうけれども、実際に実行できる内容の裏づけをしないで、口先だけで太鼓をたたいて農民を踊らしておるのです。そこに農業のみじめさというものが私はあると思うのです。うまいことをいって、アイデアだけで農民を踊らして、ほんとうにやれるかやれないかというと、やれない要素がたくさんある。それを解決しないで、ただ計画だけを立てて農民を踊らしておるのです。間違って踊ったらひどい目にあうわけです。間違って踊ったら、踊らぬほうがよかったという問題がぼつぼつ出てくるわけです。そこで、草地開発はどうなるか。四十六年までに二十万ヘクタール。どの県で——どの県まではいいですが、できればあとから資料をいただきたいと思います。この計画に基づく草地開発は、必ず予算獲得をして裏づけができるのかどうか。
  179. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話しのように、四十六年で二十万町歩の草地の開発をする計画を立てておるわけでございますけれども、御承知のように、国営、県営、団体営、公団営というふうな四つの型があるわけでありまして、これに構造改善等に伴います草地改良事業というものもあるわけでございます。草地改良事業につきましては、相当高率な補助率をもって措置することにして、現在この計画推進いたしておるわけでございまして、今後におきましても、この長期計画に基づきまして努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  180. 美濃政市

    ○美濃委員 これもちょっとしつこいかもしれませんけれども、これは前段に申し上げているように、どうしてもやりたいのが私の意思であります。だから、努力答弁ではなしに、一応農林省で明年度予算で要求するもの。これは平均すると、二十万ヘクタール、これは各都道府県から出ておる意見ですから、大体県別にできておりますね。もし県別にできておれば、あとから資料でいただきたい、こういうことなんです。この計画が、近代化計画案では二十万ヘクタールと書いてあると思いますが、そうすると、五年で割ると四万ヘクタールということになりますね。大体私は、計画は別としても、これだけの頭数をふやすということになると、新たに二十万ヘクタール要るということを考えなければならぬと思うのです、出てきた計数もさることながら。これは私の見解ですから、多少の見解の食い違いも出てこようかと思いますが、とにもかくにも町村から計数をあげて、これだけの草地開発はぜひ必要だ——これは草地なしに牛の頭数だけをふやしてもどうにもならぬわけであります。たとえば二十万ヘクタールとすれば、一年間に四万ヘクタールということです。積極的にやっているつもりであっても、実行する予算はそれだけ。たとえば十五万ヘクタールとしても、三万ヘクタールをやっていかなければならない。だから、たいへんなことになるわけです。その裏づけなしに——どうしてもこれは反すう動物で草は要るわけで、濃厚飼料だけで飼える動物ではないのですから、豚と違うわけですから……。
  181. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話しのように、草食動物でございますから、できるだけ草を食わしたほうがよろしいということで、自給目標というものを七五%ということに置いて計画を立てているわけでございますが、お話しのように草地開発はきわめて重要でございますので、私のほうでも土地改良長期計画の中に面積の計画を立てているわけでございますから、毎年この計画に従いまして予算要求をするということにいたしているわけでございます。今後そういうことで、計画どおり実行できますように努力をしたいというふうに考えているわけでございます。
  182. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、草の質の改善についてお尋ねしたいと思います。  牧草の質というものによっては、日本酪農は非常に落ちるわけです。たとえばルーサンのように、枯れ草にしてたん白の高い草を供与しませんと——あるいはまた日本の寒地においては、凍上のために根が切れてルーサンがうまく育たないという問題があります。しかし、そういう地域を歩くと、野生ルーサンは育っているわけです。あの野生ルーサンにたとえば改良ルーサンの品種配合をやる。寒地向けのルーサンをつくるということは農民はやれないわけです。先ほど来耐用年数の問題が出ましたが、耐用年数日本の牛は少ないという原因は、現在供与している濃厚飼料の過多にある。先ほど来いろいろ乳価の問題を引っぱり出して申し上げておりますが、いわゆる百キロ当たり九百円という購入飼料、これは私の調査の結果は、購入飼料の見積もりは大体適正である。適正ではあるが、乳牛一頭当たり五千キロとした場合に、百キロ当たり九百何がしでありますから約四万五千円、これを計算いたしますと、確かに草食乳牛の体質の許容限度を越えているわけです。日本の牛の個体そのものは北欧にそう劣りません。また生んでしぼる乳も、日本人は勤勉ですから、三べんもしぼると、そのしぼった場合の一頭当たりの乳量というものは、北欧よりもよけいしぼっておる。ただ、乳牛頭数に対する乳量が低いのはなぜかというと、空体なんですね。はらまない牛が多いわけです。はらまない原因は何かというと、粗飼料が悪くて、濃厚飼料過多で、脂肪体質にして不妊原因をつくっておる。これがやはり日本酪農の特徴であります。この原因を解消しなければならない。その原因を解消することによって、必然的に耐用年数が二年くらい延びるわけです。二年くらい技術員が治療し、獣医師の洗浄を受けて、毎月人口授精してみても、とまらなければしかたがない。いい能力の牛だけれどもとまらなければ、乳をしぼらなければ経済性がないわけですから、やむを得ず屠殺にやってしまう。これは肉が高いだけの原因でもないわけです。それのみが原因ではない。日本乳牛屠殺が多いのは、もちろん肉高原因も一面ありますけれども、不妊によってやむを得ず屠殺という原因もあるわけです。そうして耐用年数が二年短いという。たとえば二十万の牛で耐用年数が六年か八年かということは、耐用年数からくる乳牛償却だけで一万何千円ですから、牛乳百キロとすると三百円か四百円というコストの違いが二年の間に出てくるわけですね。そうして、濃厚飼料を多く食わしておる。それで飼料コストは草よりも高いというわけです。これらを計算すると、私の計算では、北欧のいわゆる生産性から見た場合、大体牛乳一升で、飼育労賃は別として、十円高いわけです。これだけの計算で、濃厚飼料が多くて、粗飼料が少ない。耐用年数が二年短い。牛乳一升のコストが十円高い。このダウンをこの近代化計画に合わせてすることが、やはり私はこれからの日本酪農政策でなければならぬと思う。十円コストをダウンすれば、農民の所得にすれば十円乳価が上がったと同じことになるのであります。そうすると消費者にもいい。牛乳を上げて酪農が安定するのじゃないのですから。技術開発によってコストをダウンして農民の所得を上げるという政策が、私は一番正しい政策だと思うのです。それでなおかつどうにもならぬときに、乳価を上げて農民の所得を確保するという手段に訴えるべきです。まだまだ技術改革によって生産費をダウンして酪農農家所得を向上し、経営の安定をはかれる余地があるにかかわらず、それに対する対策、政策というものが、全然やっていないとは言いませんけれども、真剣の姿勢がない。たとえば試験場を歩いてみると、危険だからやめなさいと言う。豆の試験は、農林省の直営の試験場、十勝にもあります。これもけっこうですよ、十勝は豆どころですから。寒地を歩いてみて、極限地だから米をやめろ、豆も危険だから少し反別を減せと言う。その試験研究は、昔の食糧増産のときから続いている試験研究だからいいのですけれども、それは依然として力を入れてやっておるけれども、新たに発展する方向の技術改革の試験は、全然しておらぬとは言わぬけれども、過去の実績に基づきそろそろ転換しなければならぬという農作物の試験研究のほうは、まだまだ人員的にも経費的にも設備的にも力が入っていない。私はここに問題があると思うのです。やはり千年の歴史は大切だと思います。私は、日本の米というもの、今日世界農業の中で一反から人間が食べるカロリーを生産する中では、日本の米というものは高単位の生産をしておると思います。これは日本の水稲の千年の歴史だと私は思うのです。千年の主食としての歴史がある。北欧地帯あるいはアメリカの酪農とでは、日本酪農はそういう非常に欠けた面があるわけですね。欠けた面は、やはり政策によって、技術開発によって、追いついていかなければならぬ。ただ日本乳製品が高い高いという、あるいは牛乳が高いという。それをさも日本の農民の生産性が悪いからだというような変な意識で乳価を論じるときに、そういう点に対する政策の手を打たないで、また、打ったとしても不十分で、そういう点は依然として短い年度で解決してやる。この政策あるいは自給度を高めるという考え方にならぬと、何か日本の農業の生産性が特に低いのだ——先ほどからの麦価の問題、麦の問題だって、欠けておる点がたくさんあるのです。日本の農民は勤勉ですよ。外国と同じ生産体制に政治が努力したなら絶対負けません。そうならない原因は何かということなんです。政策の違いがあるのですね。そこを私どもは言いたいわけです。農政の上で、政策の違い、そういう大きなはっきりした違いがあるものを、全然それを技術的に解決してやろう、開発してやろうということをしないでおる。ただ外国から買えば安いのだ、日本の麦は高い、日本の乳は高い、こういう理論でいったとしたなら、そういう考えだけでは私はいけないと思う。そうして、農政を論ずれば、二口目には、努力します、何とかしますと抽象論で片づけてしまう。それではものごとは済まないのですね、具体的にきちっとしていかなければ。  私は、先ほど麦の問題で大臣の答弁を聞いておっても、私は残念に考えて聞いております。ああいう抽象論で一体日本の農業問題が解決できるのだろうか。努力するということはだれでも言えます。抽象論ではだめだと私は思うのです。やはり具体性と、政策に力が入ってこなければ。政策が具体性があり、力が入れば、私は農業問題は解決できると思うのです。同じ条件を与えれば、私は、日本の農民は世界のどこの国の農民にもそう落ちないと思います。特別有利だといって誇大にいばることもどうかと思いますけれども、日本の農民の質が世界のどこの国の農民の質よりも落ちるとは決して考えておりません。  それがなぜみじめなんだ、なぜそういうことをいわれなければならぬのか。ある一面においては、戦時中、終戦直後の、日本のあの困難な時代から今日の繁栄をもたらした原動力は農業でしょう。昭和二十五、六年、あの苦しみの中で、衣料品もない、事前割り当て、強権供出で、真に日本の復興の一定年限は農業が基本となって努力し、今日になったらどうでもいいようなことをいわれるのだから、これはたいへんなことだと思うのです。これは根本的には思想を悪化する問題にも続いてくると思います。そういう悪政をやると、思想問題にも発展してくるわけです。ですから、私は、ただいま申し上げておる数項目の問題は、どうしてもこの機会に解決をしなければならぬ、こう思うわけです。御意見をさらに重ねて承っておきたい。
  183. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話のように、経営の合理化の余地は、私はまだあると思います。これはやはり日本酪農が発展をいたしますにつれまして解決していかなければならぬ問題だというふうに考えておるわけでございます。そのためにはやはり指導を適切にやるということが必要だと思う。私から言うまでもございませんけれども、日本酪農の発展は非常に日が短い。そういう意味におきましては、ヨーロッパ各国の非常な先進酪農国に比べますと、劣っているところが非常に多い。また、立地条件的にも、諸外国のタイプと非常に違っておる、困難性があると思う。しかし、わが国といたしましては、必要な牛乳乳製品自給するという態勢でこれは進んでいくべきものである。できるだけコストの安い牛乳をつくっていくということに努力をしなければならぬというふうに思っておるわけでございまして、そういう意味で私が畜産を担当いたしますについても、自給飼料の増産をやり、草地拡大をやるということが、酪農振興における最大の問題であるというふうに考えておるわけでございます。  なお、品種改良の問題につきましては、これは御承知のように、草の研究というものが非常におくれておるわけでございまして、出発が非常におくれておるということもあっておくれておるわけでございますが、昭和三十四年からは飼料作物の育種研究体制整備いたしまして、全国の各畜産試験場におきまして、また畜産部におきまして、それぞれその地帯の適品種というものにつきまして鋭意研究をいたしておるわけでございますが、昭和四十二年度からは各県ごとに奨励品種の選定調査ということも実施をすることにいたしておるわけでございます。なお、種子が必ずしも適切なものでないのが流通するという実態もあるわけでございますので、この際、種子の保証協会というふうなものもつくりまして、種子の検査をいたしまして、適切な種子が流通するということにも十分意を用いていきたいというふうに考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても、自給飼料の問題につきましては最大限の努力をいたすつもりでおるわけでございます。
  184. 本名武

    本名委員長 次会は、明二十九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会