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1967-06-22 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十二日(木曜日)    午前十一時五分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君 理事 玉置 一徳君       安倍晋太郎君    小沢佐重喜君       小澤 太郎君    大野 市郎君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       小坂善太郎君    坂村 吉正君       田中 正巳君    丹羽 兵助君       野呂 恭一君    藤田 義光君       湊  徹郎君    粟山  秀君       伊賀 定盛君    角屋堅次郎君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       島口重次郎君    美濃 政市君       森  義視君    神田 大作君       中村 時雄君    斎藤  実君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         農林政務次官  草野一郎平君         水産庁長官   久宗  高君         水産庁次長   山中 義一君  委員外出席者         水産庁漁政部長 池田 俊也君         建設省河川局河         川計画課長   望月 邦夫君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月二十二日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として 栗林三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第六八号)  漁業協同組合合併助成法案内閣提出第二九  号)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び漁業協同組合合併助成法案の両案を一括議題といたします。  質疑に入るに先だち、久宗水産庁長官から発言の申し出がありますので、これを許します。久宗水産庁長官
  3. 久宗高

    久宗政府委員 おとといでございますか、兒玉委員から御質問がございまして、一部新聞紙上に出ました十二海里問題と関連しまして、政府方針が変わったのかという御質問がございました。お答えを留保しておりましたので、この機会政府見解を再度明らかにいたしたいと存じます。  外国人漁業に関する一連法案の御質疑の際にも累次申し上げたわけでございますが、政府のこの問題に対します基本的な態度といたしましては、たびたび繰り返し申し上げましたように、確立されました国際慣行に基づいて考えました場合に、排他的な管轄権を行使しておるのは三海里というふうに日本政府としては了承しておるわけでございまして、したがいまして、一方的な宣言によりまして十二海里の宣言をいたしました場合にも、それは当然に第三国を拘束するものではないというのが基本的な見解でございます。したがいまして、この種の問題は、当事者間で国際的な合意がない限り、一方的な宣言によりまして相手国規制するわけにはいかないという考え方に基づくものでございます。この考え方は全然変わっておらないわけでございます。ただ、御承知のとおり、国際合意に基づきます場合に、いろいろな形があるわけでございまして、二国間でお話し合いをする場合、また多数国間で国際合意を見る場合もあるわけでございます。その可否その他につきまして、つまり、多数国間でこのような国際合意ができるかどうかという可能性の問題、またその利害得失可否といったことにつきましては、当然研究をしておく必要があるわけであります。たまたま先般一部新聞紙上に出ましたものは、外務省におかれましても、この種の問題は当然検討されておく必要がございますので、課長段階におきまして、さような多数国間におきます国際合意可能性、その可否利害得失を検討いたしますための素材整理をしておったわけでございます。この件につきましては、当然外交上の問題、水産プロパーの問題がございますので、水産庁におきましても、御連絡がありまして、担当者をきめてその問題の整理に当たっておるわけでございます。さような研究段階の問題が一部新聞紙上に不用意に出ましたために、いろいろな誤解が生じたように思うわけでございます。繰り返し申しますように、さような問題整理段階素材が誤り伝えられたものでございまして、外務省におかれましてもさような方針を決定されておりませんし、農林省ももちろんでございますし、まして政府としての方針が変わったというようなものではない点、この機会に明らかにしておきたいと思います。  なお、この種の問題が、研究段階ではございまするが、この時期に新聞紙上に出まして、一部には方針決定変更があったのではないかといったような疑点が生じましたことにつきましては、はなはだ遺憾でございますので、私ども関連する者として、このような発表の形式なり時期なりにつきまして注意を特に促したわけでございます。  以上がこの問題の経緯でございまして、あわせて、この機会にあらためて、再度申し上げておりますこの問題につきましての政府見解を明らかにしたわけでございます。今後この種の問題の検討はもちろん続けていくわけでございますが、かような誤解が生じませんよう、さらに外務省ともよく御相談いたしまして、遺憾のないようにいたしたいと存じます。
  4. 本名武

    本名委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。斎藤実君。
  5. 斎藤実

    斎藤(実)委員 漁業協同組合合併助成法案関連しまして、若干御質問申し上げます。  この法律は、沿岸漁業の適正な事業経営、そうしてまた育成を目的とする法案でございますが、私は、この沿岸漁業の置かれている立場、そういう意味から関連をしまして、今後の沿岸漁業育成についてはどうあるべきかという背景のもとに御質問を申し上げたいと思います。  御承知のように、日本漁業は、沿岸から沖合い沖合いから遠洋というふうに発展をしてきております。しかしながら、御承知のように、国際的な漁業規制等の中で漁場の開発はきわめてむずかしくなってまいりました。一方また、国内におきましては、急激な経済発展成長のために、勢い沿岸漁業者労働力の不足、あるいはまた沿岸漁業者の金利の負担の上昇等もありまして、さらに沿岸漁業は、公害あるいは水質の汚染等、非常に構造的な原因によって、多くの困雑な問題をかかえておるわけであります。私は、他産業に比べて沿岸漁業が非常におくれておる、あるいは所得の問題についても、経営の面においても、非常に政治の面から取り残されているというような感じを受けるわけです。昭和四十年の沿岸漁業者収入を都市の勤労者収入と比べてみますと、非常に少ない。約五六%ですから、半分ちょっとという収入で甘んじておるわけです。私は、このような日本水産の立場の中から、構造改善あるいは融資の面、さらにまた新漁場開設等を含めて、水産庁として、将来の沿岸漁業発展向上のためにどうあるべきかという具体的な一つの姿勢を、まず最初お尋ねをしたいと思うのであります。
  6. 久宗高

    久宗政府委員 沿岸漁業の置かれております現在の条件は、白書にも明らかにいたしましたように、いろいろな困難があるわけでございますが、ただいま御質問がございましたような幾つかの諸点があるわけでございます。また、私どもといたしましては、沿岸漁業等振興法に基づきまして方向をおきめいただいておりますので、構造改善をはじめ一連施策を進めておるわけでございます。これらの具体的な問題については、すでに数回にわたって当面の施策については申し上げているわけでございますが、御質問は、もう少し先の問題まで含めました考え方の問題のように思いますので、この際特に申し上げてみたいと思いますのは、数字にいたしてみますと、まさに白書に御指摘しましたような計数になるわけでございますけれども、どちらかと申しますと、沿岸漁業の問題は、沿岸から沖合い沖合いから遠洋といったスローガンとも関連いたしまして、ここ数年、関係者も含めまして多少関心が薄かったようにも思うわけでございます。そこで、御指摘のような数年にわたります高度経済成長の結果、労働力におきましても、資金におきましても、相当変化がございまして、やや混乱しておるわけでございます。しかしながら、沿岸の持っております可能性につきましては、一部にすでに、昨日の参考人お話にもございましたように、養殖関係その他につきまして相当画期的なものが出てまいりました。一部はすでに実施に移されておるというような可能性もあるわけでございます。私どもといたしましては、やはりもう一度沿岸をはっきり見直してみる必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。  他の産業との比較におきましては、確かに相当のおくれをしておりますけれども、同じ漁業関係でかりに日本列島周辺漁場というふうに考えますと、漁場としては世界垂涎漁場でございます。組織といたしましても、曲がりなりにも協同組合組織がございまして、そういう意味から申しますと、単にこれを第三国から見ました場合、何でこれだけ組織が整って、いい漁場を控えて、もっとできないのかという問題もあろうかと思うのであります。したがいまして、私どもは、この機会に、協同組合漁民組織を強化いたしますことを契機といたしまして、もう一度あらためて、沿岸の資源なり、流通の拡大なり、市場の拡大なりに関連をいたしまして、基本的な施策を組み立ててまいりたいと思っておるわけでございます。この際、先回も申し上げましたように、漁港関係につきましてもいろいろ問題がございまして、すでにこれの計画についても練り直せといった御意見が強く出ておるわけであります。それらのものも含めて考えますと、沿岸については、その地域の労働の移動の問題と関連をいたしまして、相当新しい形の漁業が生まれ得るし、またその可能性もほの見えておる、こういうふうに考えますので、そういったような可能性現実のものにいたします最小限度必要なものといたしまして、今回特に申し上げておりますのは、協同組合組織というものをまずできる限り固めたい。これがございませんと、いろいろな可能性が出てまいりましても、それを現実に担当するものがないということになりますので、その辺から手をつけてまいりたいと考えておるわけであります。
  7. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま長官から数点の問題について答弁がございました。私も、いまの漁業協同組合合併が、沿岸漁業を振興し、また助成していく一つの方法であるということについては異論がありません。しかし、漁港整備の問題にしても構造改善にしても、あるいは漁港周辺の道路の整備にしても、先ほど私が申し上げましたような、いろいろな要素があるわけです。その問題について、日本沿岸漁業の健全な発展のためには、たとえば漁港はいつからいつまでやるんだ、何年計画でやるんだ、あるいは構造改善はいつまでやるんだというふうな総合的な長期的な見通しといいますか、ビジョンといいますか、そういうことを水産庁として当然計画をして実施に移すべきではないかというふうに考えるのですが、長官、この点についてどうお考えですか。
  8. 久宗高

    久宗政府委員 私ども行政をいたします場合に、それぞれの段階ビジョンとまでは申せないといたしましても、ものごとのめどだけはつけておく必要があると思うのでございますが、沿岸漁業実情から申しますと、漁業自体で処理できます要素のほかに、外の関係が非常に大きく規制をいたしておるわけでございます。少しまとまった施策をいたそうといたしますと、当然他有の関係も出てくるようなこともございますので、この点が非常にはっきりしておるように思うわけでございますが、沿岸漁業の養殖事業一つ考えましても、これらの施策一つになって動き出しますのには、まだ条件が熟していないという感じがいたすわけであります。いまは経済が若干低迷期にありますけれども、もう一息これが高揚期に向かいます場合には、さらに相当労働力の流出を頭に置かざるを得ないと考えるわけでございます。そうなりますと、沿岸におきましても、いままで漁場相当蝟集しておりました就業人員につきましても、相当変化がまいると思いますし、現在沿岸漁業をささえております技術も家族経営で、この段階では三−五トン層といったものが相当の力を持っておりますけれども、これとても実はそのまま安心して考えられる問題ではないと思うわけでございまして、さような点から申しますと、沿岸漁業につきましては、本格的な一つの組み立てができますのには、まだ若干の時間がかかるのではないかと思うのでございます。しかしながら、そういうような条件が熟してまいります場合にも、何と申しましても、それを担当いたします漁民組織を、一応体をなしてそれを担当できるような体制に持ってきておきませんと、これが実際問題といたしましてそこで行き詰まってしまいますので、多少時期的には早いという御批判があるかもしれませんけれども協同組合合併はこの機会にぜひスタートを切っておきたい。それのPRを通じまして、今後の沿岸漁業におきますいろいろな試験研究上の可能性でございますとか、あるいはマーケットの拡大でございますとか、そういうようなものを下部まで徹底させまして、その上で、本格的な一つ沿岸漁業ビジョンの描けるような体制と申しますか、準備というものをまず手がけて、それから本格的な計画を組んだらどうであろうか。その場合、御指摘のございますような漁港でございますとか、そういったものもやはり施策一つ中心になって、それを中心といたしました一つ沿岸漁業の再編成と申しますか、さような問題にまで発展してくるのではないかという展望を持っておるわけでございます。
  9. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そういう長期的な見通しを立てた計画を樹立するのは、いま時期ではない、当面の目標漁業組合編成が第一だというお話がございましたけれども、私は、その組織整備することももちろんまず大事ですけれども、それ以前の問題をもっと掘り下げていかなくてはいけないというふうに感ずるわけです。いま長官お話では、どうしても他動的な感じを受けるのです。やはり日本沿岸漁業を引っぱって方向を与えていくためには、それ相当水産庁としての決意なり、あるいは腹がまえなりというものが基本になっていなくてはならないというふうに私は感ずるのです。それで、なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、いま日本漁業経営体の中で、二万二千四百ありますけれども、九六%は御承知のとおり沿岸漁業なんです。で、稼働人員も、また家族の方もずいぶんおるわけですけれども日本沿岸漁業向上発展、あるいは生産の向上をするために、先ほど私が申し上げましたような、そういう基本的な長期的な見通しに立った態度といいますか、基本方針というものを水産庁として考える意思があるかないか、その点を重ねて私はお尋ねをしたいと思います。
  10. 久宗高

    久宗政府委員 欲ばって御説明をいたしましたので、その時期ではないというふうにお受け取りになったかと思うのでございますが、そうではございませんで、もちろん私どもといたしましては、長期的な展望を持ちたい、またそれを組み立てたいということで努力はいたしておるわけでございますが、ただ、しばしば御指摘を受けますように、現在やっております一連施策を冷静に判断してみますと、確かに脈絡の欠けている点があるわけでございます。そうして、その脈絡が欠けていることから見て、それぞれの効果が十分でないという問題が確かにあるように思いますので、その点の調整をたまたま幾つかまとめて今回四つの法案を出しているわけでございます。この段階で、最小限度スタートラインとして手をつけなければならぬものをお認めいただくといたしますれば、今度はそれぞれの施策脈絡相当つけたものにいたしまして、漁港漁港組合組合という形でない形で運用できるように組み立てたい、こういう気持ちがあるわけでございます。それにはまだちょっとそこまで準備ができておりませんので、本格的なものは打ち出せないというふうに申し上げたのでございます。ただ、今日私どもの出しております一連法案にいたしましても、さような展望の一こまずつを関連させて、まあ準備行動に入ったという気持ちでございますので、若干の時間をかしていただきますれば、これらのものを基礎にいたしまして、先ほど申しましたように、可能性としては、沿岸漁業については相当いろいろな問題があるわけでございます。欠点もございますけれども、同時に可能性もございますので、これを本式に組み立てたいという気持ちを申し上げたわけでございます。
  11. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大体の長官答弁で私もわかります。それで、日本漁業の全体の中で、先ほど長官答弁になったように、沿岸漁業の問題についてはだいぶ認識を深くされているようでございます。私は、この中で、沿岸漁業の置かれておるこの不均衡をどうするか、そしてレベルアップをして日本漁業発展のにない手にするためにはどう何を正していくかということが、非常に基本問題であると思うわけです。この点についてはひとつ本気になって取り組んでもらいたいことを要望いたします。  さらに、法案の中に入りますが、この漁業協同組合指導監督についてでございます。この指導監督について法律はどういう規定をしているのかということについて、ちょっとお尋ねをいたします。
  12. 池田俊也

    池田説明員 漁業協同組合に対する指導監督体制でございますけれども、これは県知事と農林大臣とが、区域によって漁協を二つに分けまして分担をしているわけでございます。具体的に申し上げますと、県の区域以下の場合、未満の場合、これは都道府県の知事が監督指導をする、それから県の区域またはそれを越える区域漁協あるいは連合体につきましては、農林大臣指導監督をする。ただ、一般的な漁協に対しますもろもろ指導は、当然これは区域にかかわらず農林大臣がやるわけでございます。さらに具体的な問題でございますが、一つ問題点として、漁協の業務がどういうふうに行なわれているか、これは当然漁協自体が総会というような最高の意思決定機関を持ちまして、そこでもろもろ意思決定をする、あるいは役員といたしまして監事がございまして、自治的な監査をする、こういう体制がございますが、さらに役所のほうからいたしますと、これに対しましては検査等の措置を常時やっておるわけでございます。その検査を十分やれという御趣旨だと思いますが、水産業協同組合法規定がございまして、われわれは常例検査ということばで言っておりますけれども、年に一回は少なくとも検査をする、こういう規定がございます。大体そういうような形で行なわれているわけでございますが、具体的にはさらに、府県の中ではそれぞれ組合を直接担当する職員がもちろんおるわけでございますが、これはまあ現状の予算、それぞれの県の事情等にもよりますけれども、必ずしも十二分の体制にはできていない面があるわけでございます。農林省水産庁の中では、協同組合を担当する直接の課がございまして、やっておるわけでございますが、さらにその中に協同組合検査官というようなものを置きまして、検査をやっておるわけでございます。大体以上のようなものでございます。
  13. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これは私の調査したところでは、ある県では五人の職員で約八十七組合、内水を含めると大体百十二組合もあるわけです。この百十二組合に対して五名の職員指導監督監査をしているわけですけれども、実際にこれだけの少人数ではたして適切な監査指導というものができるのかということを不安に思うわけですが、こういう実態を御承知かどうか、お尋ねいたします。
  14. 池田俊也

    池田説明員 ただいま先生から御指摘いただきましたように、これは県によって多少事情は違うと思いますけれども、やはり一般的に申し上げますと、御指摘のような事例が非常に多いわけでございます。府県の平均的な担当職員の数は大体五名とか六名とかいうようなものが多いわけでございまして、そういうような体制からいたしますと、まことに残念でございますけれども、十分な指導監督ができているとはちょっと申し上げかねるような実情があるわけでございます。私どもといたしましては、もちろん今後これをさらに充実するように指導いたす覚悟でございますけれども、さらに団体の内部と申しますか、団体組織の中でも、いわゆる自治監査と申しますけれども、そういうような点で団体のほう自体にも機構を充実していただきたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。  農林省が直接監督いたしております団体についての検査の概況のあらましを申し上げますと、検査官がおりまして常時検査に携わっておるわけでございますが、現状ではこれも必ずしも十分ではございませんで、全部につきまして年一回の検査をやるように、目標としてはそういうことで努力をいたしておるのでございますが、実際にはなかなかそこまでまいりません。信用事業をやっております漁連につきましては、現状におきましても少なくとも年に一度の検査をやっております。しかし、その他のものにつきましては必ずしも全部そういってない場合もございます。
  15. 斎藤実

    斎藤(実)委員 この合併の問題については、人事の問題等旧来のいろいろないきさつがあり、漁業権もからんでいろいろなトラブルが起きるわけです。これはまた一つ実例ですが、非常に問題のある組合長がおりまして、組合に特別な悪感情を持って実は除名になった。本人は不服だというわけで、今度は裁判に持ち込んだ。県のほうからいろいろな仲裁員等を派遣して指導したらしいのですが、いまだに解決をしていないという実例もあるわけです。こういう問題等も、人員が少なかったために再三の相談にも乗れなかったという実例であるわけです。そういうことがあるので私はいま質問しているわけですが、今後そういった問題も当然起きるだろうというふうに私は判断するわけです。それによって事故が起きて迷惑するのは漁民だということで、この指導監督人員を増員すべきではないかと考えるのですが、この点でどうでしょうか。
  16. 久宗高

    久宗政府委員 現在やっております指導監督体制なり県の職員の問題につきましては、部長からお答えしたとおりの実情であるわけでございますが、実は、私も数年間県で実際仕事をいたしまして一番苦労いたしましたのは、やはり水産関係であったわけでございます。御指摘のようになかなか人員も十分でございませんので、指導監督も行き届かないという点は痛感しておったわけでございます。ただ、若干いま考えております気持ちといたしましては指導監督人数をふやしたならばあるいは解決つくだろうかという疑問でございます。県あたりで問題になります大部分の問題は、いい組合ももちろんたくさんございますけれども最初に申し上げましたように、この協同組合制度ができました際に、一つには漁業権問題が中心でございましたために、漁業権管理組合という形をとったということ、それから当時の一応の考え方といたしまして、協同組合のような民主的な組織でございますので、官憲の介入を極力制限する、そちらのほうに非常に重点があって、むしろ指導のほうで若干萎縮するような形もございまして、本来必要な指導を遠慮してやれないといったようなことが両方重なりまして、それがそのまま今日に続いておるように思うわけでございます。この結果、この段階におきましてもまだ旧市町村以下の団体相当あって、漁業権の管理の仕事はしておるけれども、実は経済活動はほとんどやっていないというのが相当多数あるわけでございます。したがいまして、たとえば監査をいたしましても、監査以前の問題が相当出てくる。つまり、経済行為でもやっておりますとそれなりの指導ができるわけでございますけれども経済活動はほとんどやっていなくて、漁業権の管理団体という形をとっておりますために、事柄が大体漁場中心といたします紛争問題が非常に多いわけでございます。また、昨日参考人からもお話がございましたように、漁村におきます古い一連関係から人事にいろいろな系列がございまして、それが複雑にからんで処置ができない。これがもし経済問題でございますと何らかの妥結方法があるわけでございますが、経済問題を抜きにいたしましたさような問題には、役所が介入いたしましてもなかなか解きほぐせないといったような実例が非常に多いわけでございます。そこで、今回私ども一番この法案に期待しておりますのは、合併の問題はございますけれども合併よりも、あらためて協同組合現状が見直されますと同時に、一連の惰性を切っていきたいということなのでございます。具体的には、漁業権管理の問題は本来の仕事ではありますけれども経済活動をほんとうにやってなかったなという反省が役所の側にも団体自体にもばつ然と出てきておりますので、そういう角度でこの問題を見ますと、やはり惰性を切って、経済活動を中心にしてあらためて協同組合をつくるぐらいの気持ちで処理するのがいいのではないだろうか。また、そういうことによりませんと、経済活動を抜きにいたしました従来の紛争の形を繰り返しておるだけでございますので、これはいかに人数をふやしましてもとうていめどのつかぬ問題だというふうに考えるわけでございます。幸いに全体の経済の動きもこういう形になってきておりまして、また上部団体におきましては相当強い指導力も持ってきております。役所と団体が当面惰性を切りまして、合併という具体問題を通じて経済活動の基盤をまずつくっていきたい。これができませんと、それを抜きにしました指導監督ではとても手が回らぬ、こう思うわけでございます。さような意味におきましては、この法案が通りますと、各県それぞれ組合担当者というのがございますけれども、これは固有の事務がございますので、水産課をあげて今後の漁業政策をになってまいります組織づくりのほうに全部ぶち込むぐらいのつもりでやっていただいてしかるべきではないかというふうに考えております。
  17. 斎藤実

    斎藤(実)委員 この法案昭和四十五年まで四カ年というふうになっておりますが、職員のいない組合が現在二百七十四組合あるわけです。四カ年で合併をさせるということになれば、相当努力も必要になってくるわけですが、いままでの例等を見まして非常に危惧を感じている向きもあるわけです。率直なところ、全部が全部とは私は言いませんけれども、どれぐらいの腹づもりで合併をどの程度までやっていこうという考えでいらっしゃるのか、その点ちょっとお伺いします。
  18. 池田俊也

    池田説明員 これはただいま先生から御指摘いただきましたように、現実合併というのはなかなかいろいろな障害がございます。ただ、私どもが非常に心強く思っておりますのは、最近、団体の間におきまして合併に対する機運が非常に高まっておりまして、ごく最近の事例でもかなりの数の合併があるわけでございます。それで、さらに今回こういうような法律がかりにできるということになりますと、政府のほうの援助の体制も整うわけでございますし、私どもといたしましては、かなりの成績をあげ得るのではないかと考えておるわけでございます。具体的には現在沿岸地区の漁協が約二千五百ございますけれども、その中で私どもが四年間に一応予定しておりますのは、約千三百くらいの漁協合併いたしたい。これは平均的な数字でございますが、大体三組合くらいが一つになる、こういうふうに考えますと、約四百数十の組合になりますので、残りました組合と合わせまして、大体現在二千五百のものが四年間の期間を終わった後におきましては千六百くらいの組合になる、こういうような見通し目標努力をしたいと考えておるわけでございます。
  19. 斎藤実

    斎藤(実)委員 漁業組合合併をして経済行為を活発にするという趣旨でございますが、御承知のように、漁港が非常に整備されていない。したがって、それに関連して道路も非常に悪いし、それによって出荷とかあるいは運搬等非常に困難な問題が生じてくるのではないかと思うのですが、合併関連して、そういった関連するいろいろな問題が出てくると考えるわけですが、非常に大事な問題でございますので、この漁港周辺の道路について整備をどうするのか、これは僻地の漁民から非常に強い要望があるわけです。これについて具体策があればお尋ねをしたいと思います。
  20. 久宗高

    久宗政府委員 漁港に伴います関連道路につきましては、ガソリン税の見返りの措置があるわけでございます。これの組み合わせを適切にやってまいりたいと考えておるわけでございますが、御指摘の御質問は、それよりもう少し広がった問題といたしまして、漁港中心としました魚の集配を含めた道路並びに港の機能の問題というふうに理解するわけでございます。この種の問題につきましては、当然分担上も建設省の問題になりましたり、あるいは県の県道、町村道という問題になるわけであります。従来、私どもといたしましては、漁協のほうの合併のめどと申しますか、さようなものがはっきり打ち出せませんために、十分な発言もできないし、またその関連のつけ方も非常にまずかったと思うわけでございますが、これを今度具体的にやり出します場合には、少なくとも初年度に出てまいりますものは、おそらく県でも相当前から計画しておられまして、さような一連の背後地の関連も含めた案が初年度には相当出てくるのではないかというふうに思うわけでございます。それのさらに横の伝播と申しますか、当然これは各省間の問題にもなりますし、また県との話し合いにもなりますので、そういうよい事例を頭に置きまして、さような配慮を、県で道路をつくられる場合あるいは町村道の場合におきましても、当然そういう港との関連を含めてお考えいただくように進めてまいりたいと思うわけでございます。
  21. 斎藤実

    斎藤(実)委員 農林大臣がお見えになりましたので、先ほど沿岸漁業の将来に対する施策等について長官から答弁がございましたが、私は一点だけ農林大臣に御答弁を願いたいと思うのです。  最近の日本の水産の中で占める沿岸漁業の率は非常に高まってまいりましたし、その占める率も非常に大きい。したがって、収入の面でもあるいは漁獲量の面でも横ばいになっておりますし、他産業に比べて沿岸漁業が非常におくれをとっているという現状の中で、国民経済全体から見て、水産業構造改善あるいは沿岸漁業の振興について、本腰を入れた強力な施策が必要であるというふうに先ほども申し上げたところですが、沿岸漁業の振興あるいは今後の具体的な方針というものがあれば、農林大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  22. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のように、沿岸は、その従業者の数においても、それから漁獲高においても、また、日本沿岸の比較的小さい漁村の人々を国全体の政治の上で考えてまいりますときに、たいへん大事な部門であることはお話のとおりでありまして、政府もそういうことについては十分認識を持ちまして、沿岸漁業発展について力を入れておるわけでございますが、いまお話のありましたように、近年の傾向は、その従業者の数も若干減少しておる傾向のようであります。しかし、一般の所得から申しますと、魚価が上昇いたしてまいっておりますので、所得については一人当たりの所得ではそう心配はありませんが、ただ、先ほど来お話がございましたように、私どもといたしましては、沿岸漁業も全漁連という全国的な組合があり、活発に活動もいたしておりますが、やはり沿岸漁業について特段の援助、保護を与えることによって、沿岸漁業を維持育成いたしていくことは当然であります。ここでいまお話のありましたような道路等の問題は、生産者と消費者の面でとかく問題にされます物価の問題等についても、生鮮魚介類の問題が出てまいります。そういうことから見ましても、沿岸の近代的な操業をできるだけ助けてやるということはもちろんのこと、輸送について特段の配慮をいたすことによって、適正な価格で消費者に渡るようにいたすということは、沿岸漁業を一方において助け、そうして同時に、ただいま国民の注目の焦点になっております価格安定等についてもぜひ必要なことである、そういうような考えで総合的にひとつ進めてまいりたい。全体の漁業部門の中で占めます沿岸漁業の重要性については、政府はもちろん最もその重要性を痛感いたしまして、諸施策を講じよう、こういう考えでおります。
  23. 斎藤実

    斎藤(実)委員 農林大臣から沿岸漁業の占める位置のいろいろな重要性を認識をされての答弁がございましたし、期待を持って政府施策を見守っている沿岸漁業のために、ひとつ本腰を入れてやっていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。
  24. 本名武

    本名委員長 石田宥全君。
  25. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ちょうど大臣がお見えになっておりますので、一言お伺いをしたいと思うのでありますが、漁業関係について珍しくことしは法案が四本も提出されて、政府漁業に対する取り組みの熱意のほどがうかがえるわけでありますが、しかし、大臣も御案内のように、沿岸といい、内水面といい、至るところ公害の被害が続出をいたしておるわけでありまして、沿岸のごときは漸次その漁場が縮小され、あるいはほとんど漁業が不可能になっておるような状況に置かれておると思うのであります。政府は公害基本法を提案されまして、せっかく審議をされるわけでありますけれども、原案の中でほとんど骨抜きになってしまって、総理大臣は小骨も抜かないと言っておりましたけれども、実は大骨を抜いてしまって、結局前の水質二法のように、ざる法と言ってもいいようなものになってしまっておるわけでありますが、農林大臣としては、やはり漁業を保護する立場に立って、これらの公害の問題と積極的に取り組んでいただかなければならないと思うのでありますが、それに対する基本的なお考えをまずお伺いしたいと思います。
  26. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公害基本法は、御存じのように、政府におきましても、近時ことに大きくなってまいっております公害につきまして、国としての基本的な態度を決定いたしたわけでございます。これはやはり非常に広範な範囲にわたる影響を持っておる問題でありますので、完ぺきを期してまいりますには、運用について十分な配慮をいたさなければならぬと思います。そこで、公害基本法を制定いたしますのは、もちろん最近の経済動向に従って工業生産が伸びる、工業施設が出てくる、当然それに伴っていわゆる公害が出てくることは予期しなければなりません。そこで、一方において生産活動は活発にさせなければなりませんが、よって起こるところの公害について、国としてその対処をしなければならぬ、こういうたてまえでありますが、この法案を起草いたしますときに、農林省側といたしましては、十分私どもの要望もこれに入れまして、法律案の中にもございますように、人々の食生活に影響のあるものにつきましては、それだけの特段の措置を講じなければならないというたてまえを法律の中にうたっておるわけであります。その法律の運用にあたりましては、だんだんと私どもの趣旨が貫徹できますように運営をしてまいりたい、このように思っておるわけであります。
  27. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 基本法は基本法で別の委員会で審議されますが、原案作成の途上における農林省の発言が非常に弱かったのではないか。はなはだ実は残念に考えておるわけでありますが、しかし、これは基本法でありますから、政省令にゆだねられる部分あるいはまた別途法律をつくらなければならない部分が相当あるのではないかと考えられますので、その機会には、十分ひとつ漁業並びに漁民の生活というものを配慮されるように格段の御配慮をわずらわしたいと考えます。  きょうは漁業のこの法案審議にあたりまして、実は主として水銀中毒の事件についてお尋ねしたいのでありますが、かつて熊本県の水俣において病気が発生をいたしまして、先般私、質問書を提出いたしたのでありますが、この答弁書によりましても、死者四十一名、十九名がいまだに入院加療中であって、五十一名が自宅療養を続けておるという回答を得ておるわけであります。しかるに、これが熊本大学並びに当時新日本窒素の工場の付属病院でも実験データまで出されておるにもかかわらず、これは政府の結論とするに至らなかったという、はなはだ遺憾千万なことであるし、そのことから、重ねて阿賀野川に第二の水俣病を発生せしめ、このままでいきますと、第二、第三の水俣病の発生を見るのではないかというおそれすらあるわけであります。実は熊本県における水俣病の際には、ほとんど農林水産委員会で相当期間審議をいたしたのでありますが、阿賀野川の水銀中毒事件については、本委員会においていまだ審議をしたことがございませんので、そこで、ごく概要だけをお伺いいたしたいと思うわけであります。  まず最初に、阿賀野川における水銀中毒事件の被害の状況について、厚生省境環衛生局長から厚生省所管の被害の状況、それから水産庁からは水産庁所管の被害の状況を承りたいと思います。
  28. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お尋ねの阿賀野川下流地域の水銀中毒事件につきましては、昭和三十九年八月あるいは九月ごろから中毒患者らしい患者が出始めまして、これが水銀中毒らしいとして発見いたしましたのは、翌年の五月に至りまして新潟大学の椿教授がそれを発表したからでございます。それ以後、各般の調査班が詳細に調査いたしました結果、ただいままでに患者二十六名、そのうち死者五名がこの下流地域に発生いたしております。そのほか、下流に至らない地域にわたって、頭髪中にかなり水銀量の多い人々が相当多数おる状態でございますが、患者といたしましてはいま申し上げましたような状況でございます。
  29. 山中義一

    ○山中政府委員 阿賀野川の水銀問題に関連いたしまして漁業の受けました被害状況を御説明申し上げますと、阿賀野川の関係漁業組合数が第一内水面関係で五組合ございまして、組合員の数は千四百五十二名、ここでとれました漁獲高、これは三十九年の阿賀野川全水域の統計でございますが、これによりますと、百九十一トン、金額は推定が相当入っておりますが、六千万円余に達するわけであります。しかしながら、このうち、サケ、マス、アユというような海から川をさかのぼってまいります魚は、一応有毒ではなくて、食べられる漁獲の対象にいたしましたので、このものを除きますと、この残りのコイでありますとか、フナでありますとか、あるいはニゴイでありますとか、ウグイでありますとか、ナマズとかウナギとか、そういうような魚の金額は千八百万円、このものが現実の被害だと推定されるのではないかというふうに考えられます。
  30. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 環境衛生局長にちょっと伺いますけれども、三十八名の婦人が胎児性水俣病のおそれがあるという判断で、避妊の措置をとっておられた事実があったわけです。これについてどういう措置をとっておられるか、最近の状況をひとつ。
  31. 舘林宣夫

    舘林政府委員 水俣におきます水銀中毒の事例によりますと、母親が水銀中毒患者になりました場合に、生まれた胎児が特殊の脳性症を起こすという事実が判明いたしましたので、今回、お尋ねのような三十八名の婦人に対しまして、避妊をするように指導を続けてまいったわけであります。その指導をして以後懐妊したわけではないと思いますが、一名脳性麻痺様の子供が生まれております。もちろん、これが直ちに水銀によるものかどうかは判明いたしませんけれども、そのような実態がございまして、本年に至りましてようやくその危険期を脱したということで、避妊の指導を解除いたしております。
  32. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そのほか、実は先般社会党で調査団を派遣いたしまして、どうも水銀中毒患者らしきかなり顕著な症状を発見いたしまして、これを新大医学部で診断を受けさせるように県からも実は手配をさせたわけでありますが、その結果をお聞きになったでありましょうか。
  33. 舘林宣夫

    舘林政府委員 先ほど申し上げましたように、かなり多数の者が頭髪中の水銀が異常に高いことが調査上わかってまいりましたので、先般厚生省が派遣いたしました調査団が疫学的にこれらの患者の調査をいたしまして、約二百名程度が何らか水銀中毒になった場合に出てくる症状の一部を持っておるというような報告がなされておるわけであります。これらの者がはたして正確な水銀中毒患者であるかどうかということは、調査の段階で、疫学班の報告はございましたけれども、臨床班のほうでは正確にその中毒患者と思われるという発表はございませんでしたが、お尋ねのように地元でその後なお精細に調査をいたしておるということでございました。なお、私どものほうでは、その結果どうなったという報告は受けておりません。
  34. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 きょうは実は漁業関係にしぼるつもりで通産省を呼んでおりませんけれども、この間、県がいろいろ手配いたしまして水銀中毒患者とおぼしき人たちを選定いたしまして、新大で診断を受けるように手配をした。ところが、会社側が手を回しましてそれを行かせないような手配をして、県の当局はまことに困っておる。そういう状況でありますし、また専門家の話によると、一人の明らかな患者が出れば、その周辺には相当の被害者がおるのではないか、こういわれておるわけでありますが、これはあなたの所管でありますから、やはりできるだけ正確な被害の状況を把握されまして、それに対する対策をお立てを願いたいと思います。  それから次に、いまの川は全く死の川であって、六十何キロのあの大河川で全然漁獲することができない。水産庁に言わせると、四十年の七月、八月の二カ月間、海上十四キロだけ漁獲規制をしたのだということでありますけれども、漁獲規制をするしないじゃないのです。私は沿岸に住んでおるのですが、私の部落にまで、阿賀野川の魚は危険ですから食ってはいけませんよ。それから、売ってはならないということは、別の法律で売ってはならないとしておる。そうすると、六十何キロの川というものが完全に死の川ではないか。そこで、一体これを生かす方法がないかということで、漁業組合の幹部は、いまの川の魚は全部薬品で殺してしまって全滅させて、そして新たに養殖培養をすべきであるという結論を出しておるわけです。その際に、先般ほかの委員会でありますけれども局長の御答弁では、もう魚の水銀含有量というものは漸次低下をしておるから、もうしばらくお待ちを願いたいというお話でございましたが、あなたのところから受け取ったので、あなたから説明してもらえば一番いいのだけれども、時間がかかりますから私申し上げますけれども、本年の三月に六歳になる魚は九PPMのメチル水銀をまだ含有しておるという統計が出ておるわけですね。九PPMのメチル水銀をまだ持っておる魚がおるとすれば、一体いつになったならば阿賀野川の魚をとって食べることができて、食べても被害が起こらないかという見当が全くつかないので、その後さらに漁業組合では協議を重ねた結果、やはり全部殺してしまうことが一番早道ではないかということを確認しておるわけです。これは専門学者でないとよくわからないかもしれませんけれども、こういうように数値の高い含有量をことしの三月なおあらわしておるという状況のもとにおいて、この先何年たったならば阿賀野川が生きた川になるかという見当もつかない。その後何か御検討になって、新しい事実なり、あるいは学問上の発見なりがございましたならばお聞かせ願いたい。
  35. 舘林宣夫

    舘林政府委員 阿賀野川の魚につきましては、昭和四十年以来調査を続けておりますが、その結果から判断いたしますと、たとえば三歳魚を例にとって調べてみますと、多少低下の傾向を示しております。しかし、総括的に申しますと、一たん魚のからだに入ったものはなかなか出にくい状況にある。当歳魚は、他の水銀の汚染のない川に住んでおる魚とあまり変わらないような状態でございますが、二歳魚、三歳魚、四歳魚になるに従って含有量が多い。そしてお尋ねのように、六歳魚は八・九という相当量をことしの三月依然として持っておったという事実から、かなり日にちが経過しても出てくるのには限度がある、こういうように思われるわけであります。いま一つ、これは総水銀量ではかった数値でございまして、この中のメチル水銀量がどの程度あるか、つまり有毒部分がどの程度あるかということは、必ずしも的確にはわかりませんが、私どもが推定いたしておりますのは、この全水銀量の中の約六〇%がメチル水銀ではなかろうか、かような推定をいたしております。
  36. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 先般も申し上げたのでありますけれども、全水銀量の中で無機質のものが多少あったとしても、それはあまり気にすることはないと思うのですが、やはりメチル水銀が六〇%程度以上もあるということになると、そのメチル水銀の含有量がどの程度あるかということについて、早急にこれは分析をしていただきたいと思うのです。ほぼそれらの点が明らかになったところで、全部殺してしまうかどうかということを実は私としては慣重に考えたいと思うのです。これはひとつ要望しておきます。  それから水産庁でありますが、先ほど申し上げたような状況でございますので、特に通産省からは化学工業局長に依頼いたしまして、現地調査をしていただきました。私どもも重ねて現場を見てまいりましたが、アセトアルデヒドの製造は四十年の一月ごろにもう終わっておりますから、そこで、鹿瀬の昭電の工場排水の中からはメチル水銀はもう流れ出る心配はなかろう。私ども行ってまいりましたが、スラッジ、いわゆるボタ山と称するものが全部売り出されておりますから、売られて、そこからは相当の水銀が出ておるという事実も明らかでありますから、そうなれば、あとは水銀が出る心配がないということを私どもも確信をいたしております。ただ、メチル水銀は水に溶けやすい物質だということはいわれておりますけれども、どうも水コケからある程度のものが検出されておるという事実にかんがみますと、どろやその他に相当まだ残存しているのではないか、こういうふうに考えて、漁業組合の役員会では全滅説を決定をしておるわけですが、そういうものに対しては、水産庁としてはどういう御指導をなされる御方針なのか、伺いたいと思います。
  37. 山中義一

    ○山中政府委員 まだこの関係漁業組合から全滅説なるものを公式的には伺っておらないのでございますが、これを全滅さすということは一応わかるようではございますけれども、私、先ほども申し上げましたように、海からのぼってまいりますサケ、あるいはマスとかアユというような比較的値段のいい魚、これらはほとんど毒化しておりません。そういう点から考えますと、これらの魚がいないときがあれば、あるいは殺せるかもしれない、こういうことも一応考えられますが、いないときというのが、考えてみますとどうもありません。と申しますのは、冬はサケの親、それからサケの子供が生まれて小さいのがおりますし、マスもいます。アユは海へおりています。そういうようなことで、全滅というのはどうもなかなか現実的ではない。それから全滅させることそのものは、池のようなところ、あるいは水が動かないところですと、技術的にも考えられないことはないわけでございますけれども、御案内のとおり、あの川は、ずいぶん大きな川で、ずっと流れておりますし、六十キロもございますから、技術的にもほとんど不可能じゃないかというふうに考えられるわけでございます。むしろ、その値段のいい、しかも毒化がないという魚、これらを主としてとる、あるいはそれらを放すというようなことのほうが、実際問題としては役に立つのではないかというふうに考えております。
  38. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それはそういう考えもあると思うのですが、実は私は、もっと積極的な態度をとって、早く沿岸漁民に安心して漁獲ができ、漁業ができ、そうしてこれを食べることができ、またレクリエーションの場ともすることができるようにすべきだと考えている。あなたは御存じないかもしれませんが、昭和三十四年の一月には、豪雨の際はボタ山がくずれまして、六十キロの川はコイもナマズもドジョウも全滅したのです。これは完全に全滅したのです。しかし、その後アユやサケの漁獲が激減したという事実はございません。その他の雑魚ですか、そういうものは一時なくなったが、漸次ふえてきている。こういう事実にかんがみるときに、全滅させるというのが一番手っとり早いことではないかと実は考えているわけですが、公式にあなたのところに来ておらないとすればどういうことか。しかも、数回会議を開いているわけでありますので、これはひとつあなたのほうはあなたのほうなりで御検討願いたい。  それから次に、建設省の河川計画課長に伺いたいのでありますが、先般もお話し申し上げたように、どうもまだ水ゴケから水銀が発見されるというような状況では、やはり川どろその他にまだかなり付着してあるのではないか。ことに水銀の含有量の多い魚というのは、ダムの上であるとか、あるいはずっと下流の横雲橋のちょっと上のどろどめ工事をやった下の水のちょっとよどんだところ、どろがずっと積んであるようなところ、そういうところの魚のメチル水銀の含有量が多いという実情にかんがみまして、幸いにしてあそこには工場のすぐ下とすぐ上とに二つ発電所があるので、ひとつ発電にあまり大きな支障を来たさないような方法でダムのゲートを開放して、そうして漁業組合の諸君が下のほうでどろ掃除をやるというようなことで清掃をして、死の川を生かす方法が考えられるのではないかと言って、あなたは大いに検討しましょうということであったわけですが、その後御検討の結果、どういうことになったか、お伺いをしたいと思います。
  39. 望月邦夫

    ○望月説明員 ダムのゲートを一時にあけまして、その放流によりまして阿賀野川の底質土砂を掃流することができないかということがございましたが、これにつきまして、われわれといたしましては、一応河床の上の底質の材料の状態、あるいは流し得る流量がどの程度である、またこの底質の材料を流出させるために必要な流速の関係、あるいはこの流速を人工的に起こすための水の量、あるいはまた産業の安全性の問題という、大体大まかな四点から検討したわけでございますが、まず第一点の阿賀野川の下流の底質材料でございますが、これを調査いたしました結果、平均〇・七ミリというふうに相当荒い材質でございます。と申しますのは、過去の三十九年から四十一年にかけまして、いわゆる阿賀野川の警戒水位と称しておりますところの二千トン以上の洪水がたびたび出ております。三十九年の七月には三千五百トンの洪水、七月十八日には三千三百トン、四十年の七月には四千三百トン、さらにその年の七月二十一日には二千トン、また四十年の九月にも三千トン出ておりますので、汚泥と見られるものにつきましては相当流れ去りまして、〇・七ミリという荒い材質になっているのではないかというふうに考えております。また一方、揚川の河床をどの深さまで掃流する必要があるかということにつきましては、われわれとしてはわかりかねますが、この深さが五十センチなり一メートルになりますと相当な量になりますし、かつまた粒径が大きいということで、一度かき上げましても、砂の比重は二・五から六でございますので、すぐに沈降するおそれがあるということでございます。  次に、流し得る流量ということでございますが、過去の洪水の実態から判断いたしまして、われわれといたしましては、まおろしで二千トンというものが下流の無害放流量ではなかろうか。こういうふうに二千トン流しますと、横瀬で水位が一・八一メートル上昇しまして、また表面の流速も一・四メートルということになりまして、なかなか小舟の作業につきましては危険度が伴うのではないかというふうに考えております。  次に、貯水池の水量でございますが、われわれといたしましては、揚川から本名、上田まで入れまして有効に使う方法を考慮したわけでございますが、そういたしますと約四千万トンでございます。これを二千トン放流いたしますと五、六時間程度でございまして、その間におきましてやるということについても、相当作業に危険が伴うのではないかというふうに考えておりますので、いろいろ河床の問題につきましては、過去の洪水等の実情からいたしまして、人工洪水を起こしましても、それを一挙に掃流するということにつきましては、種々の点で非常に困難ではないかというのが、われわれの一応の調査の結論になっております。
  40. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういう状況を踏まえて、大臣、六十キロの大河川である阿賀野川が死の川になっておる。しかも水質基準も定められておらない。やはり農林省が、もっと積極的に川を生かす方法、また水質を汚濁させないということについての態度、対策が、あまりにも消極的であったのではないか。今後、一番最初に申し上げたように、沿岸にいたしましても、内水面にいたしましても、この種の公害が続発のおそれが十分にあるわけであります。そういうときにあたって、農林省としては、もっと積極的に漁業を保護し、漁民の生活を保護するという姿勢で、従来のような姿勢を改めてもらわなければならないと思うのでありますが、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  41. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 石田さん御存じのように、公害というのは、その態様がいろいろあると思うのです。したがって、起きた場合の原因等についてよく調査いたさなければならないことは当然でありますが、いわゆる工場の汚水が出ることによって魚介類が全滅するとばかりも限っておりませんし、なかなかむずかしいことだと思いますが、公害基本法を制定いたします政府の精神は、いま御指摘のように、いわゆる公害、その中でも人畜に被害を及ぼすようなものにつきましては、これを未然に防止することが必要であります。従来も、農林省といたしましては、そういうことにもちろん注意はいたしておったわけでありますが、今後はさらに基本法の精神にのっとって、われわれの所管いたしまする食物関係、それに対する影響を未然に防ぐように、政府部内においても研究を進めて努力をいたしてまいりたいと思います。
  42. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 舘林さん、いま研究三班の報告書に基づいて食品衛生調査会で審議が行なわれておるということでありますが、審議の状況をひとつ伺いたい。
  43. 舘林宣夫

    舘林政府委員 食品衛生調査会ではもう二カ月近く審議が行なわれておるわけでありまして、だいぶ審議が進んでおります。実は本日もいたしておりますが、いま実は他の者の意見を聴取いたしておる段階でございまして、そういう聴取が一通り終わりますと、漸次意見をまとめる段階に入ろうと思います。当初私どもの期待いたしましたのは、六月半ばごろにはそれが終了いたしまして意見もまとまってくると思っておりましたが、本日聴取いたしておるような状況でございますので、ややそれが延びておるか、かように思っておりますが、私どもも前々からできるだけ早く結論を得るようにお願いをいたしておりますので、おそらく私どもの希望を入れて努力していただけるもの、かように期待をいたしております。
  44. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 特別部会を中心に審議を進めておられるようでありますが、いままで何回くらいお開きになっておりますか。
  45. 舘林宣夫

    舘林政府委員 こまかい打ち合わせも入れまして六回開いております。
  46. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 今度の研究三班というものは、われわれ見るところ、全国でもトップクラスの学者のメンバーだと考えます。この報告書は、なるほど臨床班、それから研究分析班というようなものは、全然別の時点で別の角度からやっておりますから、それが必ずしもぴしっと統一した結論になるということは考えられない。むしろならないのが普通だ、われわれこう考えるのでありますが、一部には、それが全部統一したものでなければならないような説をなす者もある。そこで、結論だけを伺っておきたいと思うのでありますけれども、いままでの審議の状況から見て、大臣が委嘱をされて全国でも有数のトップレベルの学者を中心として出された報告書が、修正をされたりあるいは否認をされたりするようなおそれは、おそらくなかろうと思うのでありますけれども、これは局長の個人の見解でよろしいのでありますけれども、ひとつ見解を承りたいと思います。
  47. 舘林宣夫

    舘林政府委員 食品衛生調査会の審議は、調査会自身が現地におもむいて調査をするというようなことをいたしませんで、いままでの研究班が調査をいたしました資料に基づいて審議をいたしておるわけでございまして、それに、そのほかの学者のいままでの業績あるいは見解というものも加えまして、総合的にこれを判断しておるわけでございまして、もとより、いままで調査に当たりました研究班の調査結果というものは、できるだけ尊重するという態度で御審議をいただいておるもの、かように考えております。
  48. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 本問題については、局長のほうからできるだけ審議を促進されるように御要望を申し上げておきます。  次にもう一点、これは水産庁のほうにまず伺いたいのでありますが、新潟県に糸魚川市というのがございますが、糸魚川市を中心といたしまして、青海川から早川までの沿岸におきます漁業の状況でありますが、昭和三十六年ごろから、死んだ魚や貝やエビや、あるいはまたコンニャクのような、ナマコのような凝結物がしばしば網に入ったり、見受けられたりしております。漸次漁場を変えたりいろいろやっておりまするけれども、その原因が電化工場の廃水ではないかという疑いを持たれて、今日までいろいろの交渉や経緯を経ておりますが、その状況についての概要をまず伺いたいと思います。
  49. 山中義一

    ○山中政府委員 ただいま先生御質問の、新潟県の青海町の地先の沿岸におきまする魚介類の斃死問題でございますが、これにつきましては、四十一年に厚生省、企画庁、水産庁、通産省が協力してこの調査に参りました。この魚がどの程度死んでどうこうという点につきましては、数量的な把握はできておりませんのですが、ちょうど四十年ごろからそういう事態があった。そのときには、海岸にたまたまあった道路工事その他の大量の廃止が、海岸から海の中に流れて非常に濁ったというような問題もございまして、これが工場の廃水が直接原因なのか、あるいはそれらのことがいろいろまざってその結果起こったものであるかという点につきましては、十分に結論的なものはまだ出るに至っておりません。ただ、工場の中からはところどころで、このときの調査に基づきますと、有機水銀、無機水銀が若干検出されていることは報告に出ております。  それから漁業被害は、田海工場の先が非常にひどいというような点がいわれたのでございますけれども、工場側が自分のところの製造工程に出る廃水の提供を拒んだということもございまして、よくわかりません。以上でございます。
  50. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 いま御説明で大体のことはわかったわけでありますが、今日なお明け方には、沖合いでは催涙ガスのような非常に息気の高いものが出て、目をあけておるわけにいかない。そういうような状況にあることはもう報告済みであり、また御承知だと思うのでありますが、昭和三十六年ごろから異変が起こって、昭和四十年ごろからは会社ともしばしば協議をし、話し合いをして、会社もまたその被害の責任の一部は会社側にあることを認めておる。同時にまた、いま道路工事等があってというお話でありますけれども、そうじゃなくて、これは会社の廃土が山のように海に出ておる。そしてそのことも会社は認めておるのではないですか、どうですか。
  51. 山中義一

    ○山中政府委員 会社側が認めたかどうかは、水産庁立場からはつまびらかにいたしておりません。
  52. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 水産庁というものは、漁業についての保護をし、助成をするという立場にあるのじゃないですか。それを、三十六年以来ずっと死んだ魚があった、コンニャクのような、クラゲのようなものがあって、漁獲ができなくなって漁民が悲鳴を上げておるのに、一体そういうこともまだわからないのですか。それほど水産庁というものはなまけ者なのですか。
  53. 山中義一

    ○山中政府委員 その廃土で魚が死んだかどうかという点につきましては、なかなか簡単には結論が出しにくいことではないか。それから、三十六年からということでございますが、私どもが調査いたしましたのは四十一年からでございます。
  54. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 調査は全体で十九回行なわれておりますよ、それはもうちゃんとこっちで記録を持っておるのだけれども、一体そういう状況で、しかも、その全部かどうかは別として、工場の廃止によるものであるということを工場側の代表は認めておるのですが、それはお聞きになっておるでしょうか。
  55. 山中義一

    ○山中政府委員 工場側からは何ら私どもは報告を受けておりません。漁業者はそういうようなことを言っております。
  56. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 漁業者は言っておるが、工場から報告がないと言われるが、それならば、漁業協同組合と工場の責任者である電気化学工業の専務取締役青海工場長谷口正夫という人がちゃんと覚え書きをつくっておるのも御存じないですか。
  57. 山中義一

    ○山中政府委員 水産庁は魚が死んでいるのを調査に参りまして、その点についてはいろいろと見ておりますが、その原因その他につきまして——先ほど申し上げましたように、各省、各庁で協力いたしまして出かけております。科学技術庁も入っておりますが、私どもといたしましては、そういう点で直接工場側が漁業組合とこういうことになったという点につきまして、特にわれわれのほうは報告を受けておりません。
  58. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは、経済企画庁の水資源局長はお見えになっておりますね。これは先刻来のやりとりの中で御存じだと思うのでありますが、何年何月だれとだれでどこの省とどこの省で調べたか、これはおわかりだと思うのでありますが、あなたのほうからひとつ御答弁願いたいと思います。
  59. 松本茂

    ○松本政府委員 新潟県の田海川につきましては、電気化学工業がその流域にございますので、その工場、それから田海川の流水につきまして、昨四十一年度におきまして、特殊問題調査の一つとして、経済企画庁は水質の調査をいたしました。そのときには、経済企画庁がやりますと同時に、水産庁、厚生省等々と分担をいたしまして調査をやっておるわけでございます。その結果が新年度に入りましてわかってまいったわけでございますが、それによりますと、工場の中の蒸留水でありますとか反応塔でありますとか、そういったところには若干メチル水銀が検出される。しかし、汚水処理をいたしまして工場の外へ排水されておるわけでございますが、その排水、それから田海川に入りまして後の流水、どろ、そういったものの中には、メチル水銀は検出されておらない、こういう結果の報告があったわけでございます。調査の状況は以上でございます。
  60. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それだけじゃなくて、さらに四十一年六月二十日から二十一日、四十一年十月十九日から二十一日、四十一年八月三日というふうに、かなりこれは県と政府各省庁の間で調査が行なわれておるようですが、どうですか。
  61. 松本茂

    ○松本政府委員 先ほど申しました調査は、その調査の時期といたしましては昭和四十一年度の六月、八月、十月、十二月、この四回採取いたしまして、そして分析等を行ないまして、その結果が先ほど申し上げましたような結論でございます。
  62. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 環境衛生局長、お聞きのとおりなんです。実は最近新潟県内では、阿賀野川の水銀中毒事件で先刻御報告になったような被害を出している。またもやここで無機、有機の水銀が発見されておる。私は、実はきょう特に科学技術庁やその他を呼んでおらないのは、漁業問題を中心としての質疑だからでありまして、ほかの特別委員会等で徹底的にこれは調査をしなければならないと思いますが、あなたのほうの所管として、まあ死んだ魚やカニやエビがたくさん出て、これは必要ならば、ちゃんと乾燥したものも冷凍したものもございますし、それからまた、その水の中に魚を入れておいたならばどうなるかという試験の結果もありますから、お上げしますけれども、そういう状況の中で、いま不安におののいておるわけです。第三の水俣病ができるのではないかという不安におののいているわけです。これについてはどうもまだ、有機も無機もあるということでありますが、経済企画庁も科学技術庁も十分な調査をしておらないようです。もし、どの程度の無機であり、どの程度のメチル水銀であるということがおわかりになっておれば、ひとつ水資源局長から答弁をいただきますけれども、環境衛生局長としての責任ある立場から、いつまでもこの問題を放任しておくわけにはいかないと思うのですが、これに対する対策を一体どのようにお考えになっておるか。
  63. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省としましては、阿賀野川事件がありまして以来、全国的に同じような工程を行ないます工場の排水によりまして水銀中毒患者が出ておりはしないかということで、そういう調査をいたしております。この地域につきましても、阿賀野川事件が問題になりまして以後に比較的早い時期に、新潟県自身がある程度の調査をいたしております。それから最近に至りまして、公害の見地から厚生省の公害担当の課がこの調査に乗り出しまして、はたしてこれが公害の原因になっているかということを調査いたすことになっておりまして、私の手元に今日お答え申し上げる結果を持っておりませんけれども、全国的に水銀のような中毒を起こしやすいものが排せつされまして害を及ぼしておるかどうかということは、今後ともに十分検討していく必要がある、これは人体もさることながら、やはり水産業にも影響するということで、国が制度をはっきりさせ、分担も明確にさせて、十分その検査に徹底を期する必要がある、かように考えまして、厚生省としましては、人の健康を保護する意味合いから、今後ともに調査を徹底してもらいたい、かように思っております。
  64. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこで、実は水産庁ははなはだ怠慢だと私は思うのです。一体今日まで水産庁漁業組合と会社側が覚え書きを交換しておるということがおわかりにならないということは、私ははなはだ水産庁に対して不信の念を強うするものであります。これは私、覚え書きを持っておりますけれども、私のほうからこれを読んで報告をするような事柄ではございませんので、これは早急にひとつ取っていただきたい。この覚え書きの中では、もうすみやかに補償問題は解決をする、こう言っておるのですよ、書いておるのですよ。水産庁がそれを知らないなどということでは、一体日本漁業——いま漁業四法をあげようというんだけれども、まことに心もとない限りと言わなければならない。しかもその道路工事の廃土とかあるいはカーバイドかすとか、そこには無機水銀も有機水銀も出ておるということが明らかになっておる。こういう事態の中であなた方がこの漁業四法の審議をしてくれなどということは、私はちょっとどうかと思うのですよ。そういう問題は徹底的に追及することが、漁業四法の審議よりももっと先になされなければならないことです。そして、その工場の廃土が海の中に山のように積まれておって、上から見るともう一見して明瞭なんです。いまでもなお朝方には舟に乗って歩くことができない。現在催涙ガスようのガスが大量に出ておる。行ってごらんなさい。それを調べもしないで、覚え書きの交換もわからないなんて、一体何事です。大臣、あなたの部下はそういう怠慢な部下です。そうじゃないですか。一年や二年の話じゃないですよ。もう何年もたって、あらゆる角度からこれだけの資料が出ておるのに、いまだにそれもわからぬ、全く許しがたいことだ。私は、今後かようなことがあってはならないので、大臣は、ひとつそれに対して再びかくのごとき事態を起こさない、第三、第四の水俣病は起こしません、沿岸漁業や内水面における漁業について弊害を与えるようなどんな小さな問題でも積極的に取り上げて、関係各省庁とよく協議をして、明確な対策を立てるべきであるという決意をしてもらわなければならない、こう考えるのですが、大臣の所信はどうですか。
  65. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど来政府部内の各官庁の担当者から報告がありまして、それを聞いておりましても、事実を全然知らないわけではないので、調査はいたしておる。そこで、それがどういう原因でどういうことになっておるのかということについては、おそらくまだ検討中だと思います。どういうことでどういう結果になったのだということを申し上げる段階ではないような御報告でありますが、私どものほうといたしましては、やはり原則的に、先ほど来お話し申し上げておるように、漁業を守らなければならない立場でございますので、水産庁といたしましては、もう御存じのように、新潟県のここに工場があるというだけではなくて、日本じゅう至るところで事業をやっておるわけでありますから、手の回らないところもございましょうが、こういうような問題についてはなおひとつ、政府部内の各機関にはそれぞれ技術者もおることでありましょうから、そこで至急に研究を進めまして、対策を私どもとしてどのように考えるべきであるかということを研究したいと思います。  そこで、いま会社と漁業者との間に覚え書き云云のお話がございましたが、私どもそれを存じておりませんけれども、よく事情を調査いたしまして、いま申し上げましたように、政府部内の専門家の研究と照らし合わせて対処いたしてまいりたい。なまけておるわけではございませんので、御激励をつつしんで受けますけれども、どうかひとつそういうことでお願いいたします。
  66. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 質問を終わりますけれども、大臣、日本じゅうどこにもあるからといっていいかげんにしておったならば、日本沿岸漁場も内水面の漁場も、これは壊滅しますよ。それだけに、今度は漁業四法についてお互いに真剣にこれと取り組んでおるし、また水産庁も、まあ不十分ながらもこれだけの法案を出してくれたかと、実はわれわれ喜んでおったわけです。ところが、具体的な事実を掘り下げていくと、こういうような事態になるのです。そうして、それは原因は明らかなのですが、実は農林省の発言力というものが非常に弱い。今度はひとつ大もの大臣なんだから、ほかの大臣に引きずり回されて押し切られるようなことのないように——実は私は農林省水産庁だけに問題があるとは考えておらない。ほかの各省庁、やはり通産省その他のなかなか発言力の強い役人がおるわけです。大臣ばかりではありません、局長部長なんかの中で、相当強い発言力を持っている者がある。水産庁は、いまの長官をはじめ、ちょっと気が弱いものだから、どうもいつでも押し切られて、思うように主張が通らないのではないかと考える。これについては、今後農林大臣として、こういうことのないように特別な配慮を要望しまして、私の質問を終わります。
  67. 本名武

    本名委員長 本会議散会後再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後四時二十二分開議
  68. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続いて質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  69. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本会議終了後というたいへんおそくなってからでありますので、今日までいろいろ当委員会で真摯な御審議を続けられてまいりました漁業災害補償法の一部を改正する法律案と、新たに漁業協同組合合併助成法案の二法案について、最終的な締めくくりの質問を簡潔にいたしたいと思います。大体漁業災害補償法の一部改正に重点をしぼってお尋ねをいたします。  この漁業災害補償法の問題は、お隣においでの長谷川さんが三十九年に審査小委員長で、最初与党の仮谷さんと私の間で修正の話し合いをいたしまして、最後に長谷川さんにも入っていただいて、約二十日間以上かかったかと思いますが、そういう経過の中で最終的に政府のほうもある程度修正に応じ、そして多くの附帯決議をつけまして発足をしたことは御承知のとおりであります。ただ、私は、質問に入ります前に、あの当時、三十九年五月二十六日の衆議院農林水産委員会においてつけた漁業災害補償法案に対する附帯決議、この附帯決議の内容は各委員承知でありますが、第一項の政府の保険事業の実現、それから第二項の全水共当時の赤字処理、これについては、第一項は今回政府の保険事業実施法案として出してきておりますし、第二項については、すでに赤字について誠意を持って処理をいたした。ただ、第三項の任意共済の問題について、本法に基づく共済事業にするという点については、後ほど若干触れますけれども、まだ今後の懸案事項に残されておる。第四項の共済契約の締結の緩和の要望事項については、具体的に措置されてきておるというふうに承知をいたしております。第五項の共済掛金の補助率の引き上げあるいは事務費に対する補助金の増額問題、これは後ほど若干今後の問題として触れますけれども、この附帯決議に基づいてある程度の前進を今日までやってきておる。第六項の、今日これから問題にしますけれども、再保険事業実施までの間における赤字の問題、約五億二千万円といわれるこの問題は、第六項の附帯決議とも関連しますけれども、これは国の財政で措置することというふうな最終的な締めくくりの附帯決議になっているわけですが、これが本委員会でもいろいろ議論されてきたことは御承知のとおりです。第七項の不漁準備積み立て金制度についての検討、これは審議の中でも議論されてまいりました。第八項の地方税及び印紙税についての免税措置の問題については、ある程度の前進が出てきた。いずれにしても、国会の院議をもってきめられました与野党一致の附帯決議については、三項、六項、七項という今後の問題を除いて、第一項、第二項、第四項、第五項あるいは第八項という点について政府が前向きに努力をされてきたことについては、敬意を表したいと思います。そういう前提で、この附帯決議の中で、本委員会でもわが党の同僚委員からもいろいろ御質問のありました点にお答えがありましたけれども、若干簡潔に触れてまいりたいと思います。  まず第一は、任意共済の問題であります。水産庁長官の御答弁によりますと、いわゆる漁業災害補償法でやっておる事業の関係の中に全水共の任意共済の事業を入れるということについては、両者の間に基本的にそう問題があるわけではない、ただ、水産庁としては、まず漁業災害補償法が今回の改正を通じてがっちりと体制整備ができた状態と見合って、なるべく早い機会に任意共済の事業をこの事業の中に加えたい、こういう趣旨のように私ども答弁を承ってきたわけでありますが、ただしかし、この点は、昭和三十二年から試験実施がなされて、昭和三十九年から漁業災害補償法が成立して受け継ぐか受け継がないかのときに、例の一億六千万円程度でしたか、赤字の問題がこれありということで、あの時点では両者を合体させなかったという経緯もありますし、また、私ども承知しております水産庁長官お話から言っても、これは来年か再来年かという早い機会に、いずれにしても本漁業共済事業の中に含めて運営して差しつかえない、そういう問題だと思いますが、その点、時期的な問題についても今日までいろいろ委員との間にやりとりがなされてきましたけれども、私は、任意共済事業の問題については、ここ一年なり二年なりの間に入れても差しつかえない、両者の間においてもそう問題がない事業であろうというふうに思いますが、いかがですか。
  70. 久宗高

    久宗政府委員 全く同感でございまして、時期もはっきり申し上げかねたわけでありますが、ただ、私の申し上げたかったのは、現在の制度の加入率その他が、かねて申し上げておりますように、非常に貧弱な数字でございます。しかも、全国数字でそうでございますが、各県ごとに分けますと、はなはだ御説明に窮するような数字でございますので、せっかくここまで制度を固めていただきましたので、少なくとも体をなすようなことをまずやりまして、その段階で受け入れるのが一番適当ではないか、こう思うわけでございます。団体内部におきましてもさような心がまえがございますので、時期的には私もなるべく早い時期に考えております。
  71. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この点、与党とのこれからの話し合いの中では、任意共済もそうでございますけれども、漁船保険についても、やはり水産業全体の災害補償体制のたてまえからすれば、歴史的な成立の時期のずれはありますけれども、漁船保険、その後にできた漁業災害補償、この両者を早晩やはり一緒にしてやるべきものだろうというふうに基本的には考えておるわけです。何といったって、漁船の場合は、漁船に搭載した漁具一つを見ても、搭載中のものは漁船保険のほうで見る、操業中のものは漁業災害補償法で見るというようなことで、どうせ水産業は多くの場合船に乗って漁獲をしていくという一連の作業の問題でございますから、漁業全体から見れば、理論的に見ても現実的に見ても、早晩やはり漁船保険と漁業災害補償については一緒にすべきではないか。現段階においては、両団体間で統合問題についてはいろいろ議論もあるようですけれども、将来の問題としてはこれをやはり一緒にすべきものであろう、こういうふうに基本的に思います。その点いかがですか。
  72. 久宗高

    久宗政府委員 この問題はいろいろな経緯がございまして、確かに理論的にはさような考え方もあり得ると思います。ただ、私どもこの段階で特にその問題に触れないでまいりましたのは、何ぶんにも現在の補償法制度がかたわでございまして、保険関係を含めまして今度のような改正をしていただきますれば、ほとんど新しく仕事を始め直すくらいのつもりでやらざるを得ないことだと思うわけでございます。そこで、純理論的に申し上げればお説のような考え方もあり得ますし、また過去におきましてさようなことが現実に課題になって一連の動きがあったこともございますが、今日の段階で卒然とこの問題を出しました場合に、両団体はそれほどの心がまえもございませんので、それがいわゆる団体問題というような形になりまして混乱いたしますことは、両制度にとって適当でないと思いますので、特別会計の問題がございましたけれども、経理区分は明らかにするということで双方に一応安心していただきました上で、本制度がもう少し進みました場合に、それぞれの漁民組織におきまして将来の帰趨を考えてさようなお考えがまとまってくる過程におきましては、当然問題になってよろしいのではないかと思うわけでございます。この段階では、あまりそれを予見して云々することは避けたいと思うわけでございます。
  73. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは、過般与党の仮谷さんの質問の中でも、特別会計を双方一緒にしてつくったけれども、将来とも一本に絶対にしないかどうかというふうなことで議論が行なわれました。それやこれやから判断をいたしますと、やはり漁船保険と漁業災害補償法関係をすみやかな機会に一本にするという理論的な問題は別といたしましても、現実問題としてそれを一本にするという点については、与党内でも議論が存するであろうという判断は私自身いたします。いたしますが、やはり水産業全般の立場から、漁船といい、あるいは漁業共済といい、これらのものをいかに効率的に総合的な効果を発揮せしめるかという点については、単に団体間の事情ばかりでなしに、もっと高い視点から、水産庁としても前向きな検討というものを今後やはり続けてもらわなければならぬだろう、こういうふうに思います。  いまの長官の御答弁からいたしますならば、任意共済については、近い機会に実現することにそう難関はない、しかし、漁船との問題をどうするかということについては、これはまだ今後漁災自身の体制整備と、そしてまた団体間の問題、あるいは第一線における漁業団体あるいは漁業者等のこの両者に対する受けとめ方の意思統合の問題というふうな経過を経なければ、今日時点でそれを見ることはなかなか困難であるというふうに理解をしてよろしいわけですか。
  74. 久宗高

    久宗政府委員 そのとおりでございます。慎重に扱いたいと考えております。
  75. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの御答弁で、任意共済については、なるべく早い機会に一元化の方向を考えたい、漁船保険の問題は、検討素材としては考えてもらわなければなりませんけれども、いま一元化という前提に立ってということについてはまだ答弁として踏み切れない、こういうことであろうかと思います。  第二点は赤字問題であります。これは同僚委員からもお話がございましたし、与党のほうからも御質問が出ておりました。また、参考人招致の際にも、漁済連の関係の代表として伊藤さんのほうからも、数点の要望の中で、特に重要な項目の一つとして赤字問題の処理が出ておりました。私はこの問題についてあまり多くのことを申し上げる必要はないと思う。本委員会でも十分論議された問題であります。同時に、この点については、仮谷さんと私が修正案の話をしましたときにも、御承知の百九十五条の三項というのは、特に私の注文でこの条文を新しく新設をしたわけです。つまり、共済、再共済、これはできることになるけれども、国の保険事業の一本の柱が欠けて出発をする、そういうことで、災害の態様いかんによっては相当な赤字が出る可能性がある、そういう場合に漁業共済基金もあるけれども、しかし、それは借金で借りるだけであって、赤字としては依然として残っている、利子も支払わなければならぬということであろうから、やはり三本柱のきっちりした体制に至るまでにできる赤字については、支障の起こらないためには、百九十五条の三項のところで、「国は、前二項の規定による補助のほか、漁業共済団体が行なう事業の円滑な運営に支障を生じないよう適切な措置を講ずることに努めなければならない。」、法律に書くとこういうことなんですけれども、この特に加えました意味は、三本の柱のできるまでに赤字の出る部分については、この条項で処理できる道を立法的に開いていこうという私自身の強い気持ちもあったわけです。同時に、先ほども附帯決議について蛇足でございましたけれども、若干触れたのは、今日までの段階で、誠意を持ってやってきた部面も相当ありますけれども、残っておる部面が相当ある。その中の第六項のところで、「国の保険事業が実施されるまでの間において漁業共済団体の共済金の支払及び漁業共済基金の貸付金に不足を生じたときは、国の財政で措置すること。」、文章上は措置という形で書いてありますけれども、とにかくこの意味は、いずれにしても、三本の柱を二本で運営していくということは、両三年にしろ一両年にしろ、国が保険事業を実施するまでに赤字を生ずるものを、附帯決議でも、立法的にも、きちっとしていこうという気持ちであったわけです。そういう経過の問題もございますし、同時に、これは参考人の意見でも出ておりましたし、同僚委員の意見の中でも出ておりましたが、いよいよこれから三本柱が出発をするときに、漁業共済団体が五億二千万という借金を背負って出発をしている。これは保険理論からするならば、相当長期の中ではカバーされていくだろう、そういう設計をするものだということですが、そういう設計のたてまえとしては全面的に否定することは困難かと思いますけれども、しかし、これから加入の件数も必ずしも十分でない、地域的にも普遍的でない、これから三本柱になった機会に大いに本格的にやっていこうというときに、負った荷物が重過ぎるということではどうか。しかも、この漁業共済基金からの利子だけでも、たしか八百五十万くらいの利子になると思います。これは事業部門でなしに管理部門からこれを出しておる。この利子分もどうするかという問題も、もちろんわれわれ含めて考えておるわけですけれども、いずれにしても、そういう負った荷物の重さで、これから積極的に普及の拡大体制整備ということをやろうとする、そこにつまずきを生じてはいかぬ、こういう老婆心、親心もありまして、しかも、国会の法制定の経緯等から見まして、私の率直な気持ちから言えば、単年度で五億二千万ずばり処理するということはあるいは御無理かもしれぬ、しかし、少なくとも二年ぐらいの間にこれを処理してしまうということだけは、最低限誠意を持って考えてはどうかというふうに思っているわけです。これは予算関係の問題でありますから、一挙に単年度で処理できればけっこうでありますけれども、二年にまたがることがあるかもしれぬ。これは、全水共の赤字の問題も、一挙にはいかなくても、これは清算の問題もありましたけれども、両年にまたがったという経緯もございます。そういうことは考えていいだろう、現実に母体の漁業共済団体も存在しておるわけですから、これは考えていいだろう。赤字問題については、従来の水産庁長官答弁は、これは長期に見て、どうしても処理をしなければならぬということになれば考えたいという、息の長い答弁のニュアンスが相当強かったように思う。私どもはそれでは了承できない。これは法制定の経過並びに今日までのお話ししましたような立場から見ても、それではちょっと了承できない。すみやかな機会にこれを処理するということでぜひ考えてもらいたい。われわれは、漁業者、漁業団体の諸君が心から喜ぶようなことは、無理でない限りは聞いてやるというのがわれわれの政治の立場だろうと思う。そういう意味から言っても、これについては、負った子の荷物の重さをなるべく除いてりっぱな体制整備してもらいたいという気持ちから言ってもそう思うのです。その点はどうでしょう。
  76. 久宗高

    久宗政府委員 現在の制度の立案のときに直接御参加いただいておりますので、この制度の欠点と申しますか、よく御存じで御質問になっておられますので、私のほうも端的にお答えいたしますが、私どもは、この時点ですぐ処理できないということだけを申し上げておるわけでございまして、確かに、御指摘のございましたように、加入の状況から申しましても相当無理があるわけでございますし、保険制度も新たにできたというようなことでございますので、他の制度におきましても、こういう切りかえをいたしました場合に、あとで十分その要因を分析できました場合にいろいろな措置をとっておるわけでございます。さような意味から申し上げますと、この赤字を背負って今後いきました場合に、赤字の出ました要因の分析も若干の時間をかければ相当はっきり出せると思いますので、私は時期について的確に申し上げられないわけでございますけれども、おっしゃる意味のような、この赤字が実際団体運営に非常に支障になるような事態ははっきり避けてもらいたいと思うわけです。ただ、何と申しましても、一応の保険の理論から申し上げれば、この段階であらかじめこれを除いてしまうということはどうもいかがかと思いますので、あとに問題を残さざるを得なかったわけでございます。おっしゃっております意味は私どもよくわかりますし、また、さような意味で、運営上もこの赤字の出ました要因の分析も並行していたしまして、特にこの制度におきましては、末端のほうが十分整備されてないので、上からできているような形もございますので、場合によりますと、この赤字のウエートというものが中核になり、連合会なり組合にとって想像以上に大きな支障になり得ることも考えられますので、さような観点に立って処理に当たりたいと思うわけでございます。決して、この段階では、これはもう処理しないとか、そういうことを申し上げておるのではございません。適当な時期にやはり、団体と申しますか、保険制度全般の運営上支障があるようなことのないように措置を考えてまいりたい。赤字処理もその一環としての問題であろうかと考えるわけでございます。
  77. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの答弁も何だか息の長い答弁のように思われる。私は、この赤字問題については、今度の政府の保険事業のたてまえを昭和三十九年でもし最初からスタートしていたものとして、試算を少ししてみたのです。これは、漁獲共済、ノリ共済、あるいはノリ以外の養殖共済、こういうようなものの三十九年、四十年、四十一年の過不足を見ますと、私のいただいている資料の中では、漁獲共済の関係は三年間で差し引き計算二千六十三万三千円の剰余になっている。ノリの関係で五億百七万一千円の不足が三年間で出ている。ノリ以外の養殖共済では千六十六万七千円の剰余が出ている。漁具共済の関係は、今度保険事業として残念ながら同じようにスタートしませんけれども、これは九千二百三十四万四千円の不足が出ております。それで、計算上、保険事業のたてまえをとりました赤字の一番大きいノリに焦点を合わせてずっと計算をしてみます。私は、一三〇、一二〇の問題については若干議論してみたいと思いますけれども政府が出しております一三〇、こういう係数の問題でずっと計算をしてまいりますと、いまの赤字の部分のうちで、政府が保険事業をやっておれば背負ったであろう金額というものが四億三千百五十八万九千円という形で数字が出て、団体側が赤字として残るであろうものが六千九百四十八万二千円という数字が出てくる。時間の関係で私はこまごました数字には触れませんけれども、いずれにしても、そういうノリならノリについて、政府の保険事業というものが昭和三十九年からかりに実施されておった、与えられた与件というものは同じである、そういうことでずっと保険事業をやれば、当然政府に納める保険料で共済組合の手持ち金が少なくなる、その手持ち金の保有量の一三〇の係数、こういうことになるわけですけれども、それらを全部当てはめてみて、いま言ったような数字になる。だから、何にしても、最初は二本柱で出発して、残念ながら三本柱の体制がとれなかったこと等も、この赤字の大きい要因の中に計算上出てくる。私たちの気持ちとしては、あまり負った子の荷物の重さによろめかないように、せっかく出発する以上はこれからしっかりした足どりでやってもらいたいという気持ちもあります。赤字問題については、なるべく来年、再来年ぐらい、せめてこの二年ぐらいの間に、私は利子も含めて満ぱいという気持ちがあるわけですけれども、しかし、もう大半のものはそういう形で荷を軽くするというふうにぜひしてもらいたいと思うのです。これは長官の息の長い答弁では私は困りますので、同じ政治の立場にあります大臣の立場として、ひとつこれらの問題についてのわれわれの気持ちも——これはわれわればかりでなしに、与党のほうからも赤字問題の処理は出ておりましたし、また、参考人の伊藤さんのほうからも重要な陳述の一つとしてこの問題は出ておりました。ひとつ前向きに対処していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  78. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いろいろ保険の過去の赤字のことのお話がございましたが、保険というのはなるべく息の長いほうが——大事なことでありますので、そんなに長くするつもりは長官のお答えにもないはずでございます。御承知のように、共済とか保険事業というものは、しばらくやってみないとよくわかりませんけれども、いずれにしても、その間に十分検討して、われわれの趣旨も同じでありますから、そういうことに努力いたします。それからまた、この制度の健全な運営と漁業者の幅広い加入、いままでと違いまして、今度なるべく多く加入を確保するということになり、今度政府の保険事業を行ないますのもそういうことにあるのでありますが、共済限度額率の引き上げであるとか、あるいは補助の強化等をいたしまして、この保険の基礎を強化することにつとめてまいるわけでありますから、先ほど長官がお答えいたしましたそういう趣旨で、なるべく早く赤字を解消して吸収してまいりたい、こういうことで努力をいたしてまいるつもりでございます。
  79. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 赤字の解消という面は、やはり別途財政的措置ということも含んで考えなきゃならぬ、こういうふうに思いますが、その趣旨は含まれておりますね。
  80. 久宗高

    久宗政府委員 先ほどたとえばということでおっしゃっておられましたが、かりに保険制度があったらといったような問題でございますが、これはかりに何らかの意味でこういう問題を処理いたします場合には、当然一つ問題になる項目でございまして、それぞれの要因分析をいたしまして、かりにこのままの赤字をしょっていった場合に、制度自体の運営に支障があるという場合には、当然何らかの措置が必要であるわけでございます。特に政府といたしましても、今度は保険事業としてこれに参加するわけでございますので、同じ保険経営については重大な関心がある立場ででもあるわけでございます。適当な時期にさような要因分析が明らかになって、これが明らかに全体の制度の運営上支障があるという判断をいたした場合には、要因分析をはっきりいたしまして処理をすべきだろう、こう思っております。また、他の制度におきましても、発足の時点では処理をいたしませんでしたが、あとになって要因分析が相当はっきりいたしました場合に、具体的ないろいろな措置をとっておる例もございますので、私どもといたしましても、まずそのようなことで、非常な大きな赤字の処理について大問題を起こすようなことでない処理が一番望ましいと思いますけれども、いずれにいたしましても、団体の保険運営に支障のないような具体的な措置を考えてまいりたいと思います。
  81. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれは与党とお話をしまして、まとまったところで注文をつけたいと思います。  三本柱の二本で発足したときに、法律の附則で検討事項というのをつけたわけですね。その中で、なるべく早く政府の保険事業をやれという注文を、附帯決議ばかりでなしに、附則の中でもつけました。それに基づいて今度改正案が出てきたわけですが、私ども承知しておるところでは、この政府の再保険事業の検討は、成城大学の教授であります高木尚文さん、ここのほうに委託をいたしまして、そしていわば水産庁法案をつくる場合のたたき台をつくってもらおう、こういう経過でやられたわけでしょうが、いわゆる政府の保険事業の検討というのを具体的にどういうふうにやったかということを簡潔にお答え願いたいと思います。
  82. 池田俊也

    池田説明員 ただいま御指摘のございました高木先生等にも御相談をしたわけでございますが、政府が再保険をいたします場合に、従来のいろいろな例がございます。たとえば農業共済の場合のように、通常災害あるいは異常災害というような区分をいたしまして、そして通常災害については団体が責任を持つ、異常災害については政府が責任を持つというような形をやったこともございます。今回の私どもの考えました方式は、そういう方式では実はございませんで、団体のほうから見まして、その手元に入ります掛け金の一定額をこえるような災害が出ましたときに、それに対して政府が全面的に責任を負う、こういうような方式でございまして、なぜそれならば従来農災等でとっておりますような方式をとらなかったかということでございますが、これは非常に簡単に申し上げますと、農災の場合でございますと、当然加入というような方式で、水稲でございますと、水稲栽培している一定の農家が全部当然この事業の対象になるということで、保険の対象になります集団が非常にはっきりしている、そういうようなことが非常に大きな原因になっていると思いますが、私どものほうの漁災の場合におきましては、任意加入でございまして、しかも現在までのところ加入率がきわめて低いわけでございます。したがいまして、そういうような保険の仕組みを考えます場合の集団の広さというものが非常に少ない。それから、従来やっております試験実施を含めまして、期間が非常に短いというようなことで、同じような方式をとるだけの十分な資料がないわけでございます。それで、これはやや別の観点の方式になったわけでござますが、農災でございますとかその他の保険制度においても、同じように結果的には出てまいるわけでございますが、いわゆるロスレシオ、損害率というものをとってそれを基準にする、その場合にどういう水準にしたらよろしいかということは、他のいろいろな事例とか、あるいは団体におきますその責任の負い方等をいろいろ考えまして、結論を出したわけでございます。  大体以上でございます。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 高木さんの「漁業共済における被害率の年変動等に関する調査報告書」 「漁業災害補償制度における再保険方式について」昭和四十二年二月、水産庁からの資料として出ておりますけれども、これをずっと目を通しました。ただ、たとえば高木さんの検討資料を見ましても、私非常に残念だと思うのは、一三〇というやつがもう固定して前提条件でとっておるわけですね。一二〇の場合、あるいは一二五の場合、あるいは一三〇の場合と、こういう考えられる幾つかの係数について、せっかく電子計算機もあるわけですから、検討するならば、われわれが国会自体検討する場合に、一二〇の場合、一二五の場合、一三〇の場合、こういう場合の係数的な検討はこういうふうである、そうして最終的にかくかくの——一三〇をロスレシオの限界値として採用したというふうなことであるならば、それは適当であるかどうかという疑問が出てくるわけです。私ども学者でありませんから、みずから一二〇の資料もつくる、一二五の資料もつくる、一三〇の資料と合わせて比較検討するということは、これはなかなかできにくい。半年以上かかっておるような検討の内容を短期間のうちにそう簡単にできるものじゃございません。やはり水産庁がこういう問題の検討を命ぜられる場合は、一三〇を固定してやられた、それから限度額率についても、現行の改めない——今度改めましたけれども、改正前の限度額率をそのまま採用する、こういう二つの前提に立って、ずっと検討がなされております。ずっと目を通しましたけれども。そういうことであるだけに、たとえば高木さんのはしがきのところを見ましても、「本報告は委託調査「漁業共済における被害率の年変動等に関する調査」の結果をとりまとめたものである。その真の目的は、再保険の必要性の検討とその方式いかんということにある。この問題はこの制度の今後の性格を規定する重要な問題であるにも拘らず課せられた期間は僅か八カ月である。このため顧みて意に満たない点、残された未解決の問題(例えば漁具共済の再保険の問題等)が多々あって慚愧に堪えない。」、こういうことで、やはりこういうたたき台を出したけれども、なお意に満たない点あるいは今後検討を要する点がいろいろたくさんあるということを述べておりますし、最後に「むすび」のところでも、「この調査においては現行の漁業共済制度の仕組みを、その純共済掛金体系を含めて、それを前提としてその枠内において再保険方式を考えたわけである。これは、必ずしも現行の共済制度の仕くみが最善であることを意味しない。もし再保険方式が何等かの形で実施された暁には、そのときの共済制度と加入の状態等をにらみあわせて、前進的に、より有効な再保険方式が考案されなければならない。」、こういうふうにも「むすび」で言っておる。つまり、いま漁政部長は、たとえば異常、通常に分けるという農災でとっておるような方式というものは、義務加入でない任意加入の形態の場合には、なかなか過去の統計の資料その他いろいろなものから見ても、非常にむずかしい点がある——むずかしいというのは、できないことじゃないけれども、これは制度の問題として言われるのだろうと思う。いずれにしても、しかし、その点については、たとえば「漁獲共済の改善に関する検討」、昭和四十二年三月ということで、全国漁業共済組合連合会でも、水産庁承知のように、再保険の問題についても具体的な——これはたしか五百万ばかり金をかけたのでしょうか、電子計算機も使い、そうして具体的な資料をずっと使って、水産庁の資料を使ったり、全水共、漁済連の資料を使ったり、あるいは第一線の統計数字まで活用して、検討の結果を出しておられる。そうしてまた、これに基づいてのいろいろな討議というものが出ております。これは単に異常、通常の区分に関する論議ばかりではなしに、基準漁獲金額のウエートのとり方についても相当綿密な検討がなされておる。あるいは上昇、あるいは安定、あるいは一般、あるいは変動、こういうもののウエートのとり方いかんによって、どこに一番効果があり、どこの面では必ずしも効果が出ないかというふうな問題まで、実に綿密に検討がなされております。これもずっと目を通しました。目を通しましたし、また実際に異常、通常に分ける場合、都道府県別に通常標準被害率を設定することについての検討、あるいは漁業共済組合群ごとに通常標準被害率を定めることについての検討等、海区その他の問題も含めて、漁業共済団体としても相当前向きの検討をなされております。もっとも、これは限度額率については下が七五で、八〇、九〇、こういう形の限度額率を前提にしながら検討がなされておりまして、両者をぴしゃっと前提条件を合わすわけにいきませんけれども、そういうふうになされておりますから、私はこまごましたことは触れません。触れませんが、やはり異常部分については国がめんどうを見よう、通常部分については元請機関が責任部分としてめんどうを見るのだ、やはりこういう異常、通常の区分によるところの全体としての災害補償体制というものについては、どうしてもやはり検討していかなければならぬ問題だと思うのです。その点は異議はないと思うのですが、いかがですか。
  84. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のとおりの問題がございまして、たとえば一三〇の問題にいたしましても、やはり試行錯誤の過程の問題と思われるのであります。ただ、先生も御承知のとおり、これは全部計算してみなければなりませんものですから、一つの前提で全部を一回やってみるということになりますと、相当の時間がかかるわけでございます。それから私ども準備の過程では、結果において今日まで三年かかっておりますけれども、私どもが一応駆使できます数字というものは、一年半くらいの数字しかないわけでございまして、そういうような点で、決して私どもこの一三〇が絶対正しいのだという考え方ではございませんで、一応これをめどにしてやってまいりたいということでございます。ただ、一応の吟味といたしましては、農災その他の関連も見まして、一応一三〇といたしておりますのは、この種のやり方でやりました場合の保険事故の平均発生率が、一応私どもの計算で見ますと百分の四十二程度になるわけでございます。二年に一回よりはもっと多い形になるわけでございますが、かりに百分の二十といたしますと、百分の五十五といったような保険事故の発生率になりまして、二年に一度そういう事故が発生する。それよりも低い場合におきましては三年以上の問題になりますので、一応の区分といたしましては、この辺のところで、逆の吟味でございますけれども一つ考え方ではないだろうか。それからさらに水稲との比較もしてみたわけでございますが、農業共済の場合には大体全国平均一二〇くらいになるわけでございますけれども、中には二〇〇をオーバーしたものもございますし、水稲プロパーで計算してみますと、百分の四十五というようなことで、やはりこれも百分の五十以内に結果においてはとどまっているわけでございます。これはもちろん、御承知のとおり町村段階の問題でございますので、保険対象も限定されております。それに対しましてわがほうでは全国段階段階でもございますので、一応このようなことで、逆の吟味からいたしますと、そうとんでもなくおかしいというわけではないという判断に一応立っておるわけであります。しかし、先生御指摘のように、これでまず私どもはやってみますけれども、絶対一三〇は動かさないのだ、これでなければいけないのだというふうには思っておりませんし、今後の被害の出方、保険経理にどういう影響を持ってくるかというようなことを考えながら吟味を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、さらに御指摘のございました通常、異常というふうに、いま私どものやり方はロスレシオをそのまま適用いたしまして、全国段階の連合会のを一本で保険する形をとっております。これも一つのやり方だと思うわけでありますが、もう少し資料がふえてまいりましたら、いわばロスレシオではなくて、被害率そのもので通常、異常というような分け方ができるかどうか、これも続けて検討してみてよろしいのじゃないかと思うのでございます。ただ、保険の組み方が、農災のように当然加入という前提に立ちまして、そうしてこれから、ずっと積み立ててくる形でございませんので、どうしてもアンバランスが若干出ますし、はたして通常、異常という形をどこで切るか、農災の場合でも厳密に申しますと、通常、異常の区分につきましては、若干無理な計算もしているように思うわけでございますので、はたしてそういう形がとり得るかどうか。ただ、それは非常にわかりいい問題でもございますので、今後の実績がだんだん出てくる中で、引き続いて通常、異常というような区分ができないかどうか、そういう設計で全体を組み立てたらどうなるかという問題につきましても、続けて検討させていただきたいと思っております。決してそれは適当でないというふうに考えておるわけではございません。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、政府の損害率の限界というものを一・三〇でとったということそれ自身に疑問を持つのです。これはかりに損害率の限界を一・二〇とした場合の異常損害の発生頻度というのを見てみますと、いま長官お話のように、一・三〇の場合には〇・四二一という形でありますが、一・二〇の場合には〇・五四九、したがって、それだけ発生の頻度が高いということは、保険の適用される事故の回数が多くなるという頻度をあらわしておるわけですけれども、問題は、漁業共済全体を一・三〇でやるのか。あるいはこの中で損害率が非常に大きいもの、あるいは平均的なもの、あるいはそれ以下のものというようなものもございますから、たとえばノリならノリ、あるいは定置の関係、いろいろなそういうものについて一律一三〇でなくて、ケース・バイ・ケースで、あるものには漁種によって一二〇を適用する、あるものには一二五を適用するというふうな運営のしかた、つまり、漁業者の共済運営上のことからくる負担というものが過重にならない形というものを前提にして設計をしていく必要があるだろうと思う。全部合わして一・三〇という形でやるかどうかにも私は疑問がある。要するに、漁獲、養殖、漁具、それぞれ今日までの実績から見ても、災害の頻度、深さあるいは広さ、いろいろなものにおいて違いがある。そういうものをやはり具体的に検討して、より地についた、より漁民立場から見てプラスになる、そういう前向きの検討と、それに基づいた——これは政令事項になるのでありまして、立法事項には直ちに関係のない問題であります。そういう点はぜひ前向きに考えていただきたいというふうに思うのであります。私は資料として見ておりますのでは、農災の関係は、昭和二十九年から三十八年の平均で、発生の頻度は〇・五七一というふうになっております。そういう点から見ても、異常、通常に分けるという意味の検討、そういうものが十分自信のあるものならばそれを採用するという問題、それ以前の問題としては、いま言った一・三〇そのものに私は疑問を持っておりますけれども、やはり今後の問題では、一・三〇画一主義でなしに、それぞれの適当な損害率というものを適用していく、そういう形のきめこまかい考え方が必要であろうと思う。もちろん、この場合に再共済掛け金と保険料との割合問題で、団体の持ち分あるいは政府に保険料として吐き出す分、こういう手持ちの関係というのは変化してまいります。これはこまかい数字がありますが、これには触れませんけれども、そういった問題でいけば、漁業共済団体の連合会の手持ちをする金額というのは、一・三〇から一・二〇に下げてくれば、保険料として吸い上げる分があって少なくなるということは事実そうです。そうですけれども、全体として政府が財政的に措置する分がふえればふえるほど、漁業者全体としてそれだけプラスになるということであろうと思う。今後の問題として、結論として申し上げますと、一三〇そのものを抜本的に一二〇にダウンしたい、こういう気持ちを私は持っておりますけれども、これは純立法的に改正の内容を含むものですから、そこまではあとの与党との話で踏み切れるかどうかという問題がありますので、意見として申し上げますならば、もっときめこまかい形にする必要があるのではないか。これは政令の問題でございますからまだ不可能なことではない、そういう点については、一三〇一本でなくて、もっときめこまかい形で政令をきめていくということをぜひ検討してもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  86. 久宗高

    久宗政府委員 おっしゃっておられる意味はよくわかりますし、確かにそういうような検討も必要かと思うのでございますけれども、実は私ども異常、通常というような形をとらないで、最終的なロスレシオによりまして、全国段階をさらに国で保険するというところで最終的な形のロスレシオをそのまま保険の区分にしておりますので、おそらく先生の御指摘のそのきめこまかくという場合に必ずしもこまかくないのでございますけれども、私どものいまの制度の中で申しますと、限度額率をそれぞれ漁業種類によって違えておるわけでございます。限度額率を違えますことによりまして、この結果として、一つの保険区分の中の、たとえば漁業種類によって二十トン未満のいろいろな漁業がございますけれども、そういう形をとりまして、それを全体として一三〇というロスレシオでくくったということでございます。したがいまして、そういうような形をとっております際に、さらにロスレシオをこの制度の中で個別にいじるということは、少し軸が二つになりまして、保険の設計上混乱するのではないかというふうに思うわけでございます。この一三〇そのものの水準についての御指摘の問題はあると思うのでございますけれども、そのような体系をとりながら、さらに個々についてロスレシオをいじっていくということになりますと、ちょっと私はめどがつかなくなるのじゃないかと思いますが、その点はさらに検討させていただきたいと思うわけでございます。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は一二〇、一三〇という問題を言うのは、御承知のたとえば農災の場合でいえば、水稲一一八、陸稲一〇四、麦一一四、春蚕が一一九、夏秋蚕が一一四というふうに、一〇以上の係数には必ずしもなっていない農災の場合の係数もございます。そういうところを比較検討してこまごまとやる時間的ゆとりはございませんから、いずれにしても、その一三〇というのは、われわれが今度この国会で無条件に認めるようなそういう形の認識ではありません。一二〇という私ども気持ちもありますけれども、一二〇にしろ一二五にしろ、あるいは一応一三〇をとるにしても、今後の問題としては、さらにそれを漁業種類別に分けるという場合の結果はどうなるか、そういうふうないろいろな問題は、これは保険の問題ですから、試行錯誤をやりながら、しかも高木さんも言っておるように、今日のやつで検討した結果がこれが同じ結果が出るということは必ずしも言えない。したがって、それは絶えずチェックされなければならないというように言っておるように、そういう点から見ても、この一三〇をそのまま無条件に認めるわけにはいかぬ。私としては異論がある。これはそういう点で今後とも十分に検討してもらいたいと思う。  そして、いま長官は、上昇、安定、一般、変動等についての区分の問題について、変動係数の問題に触れられた。これもあまり時間はとりませんが、御承知のこの変動係数については〇・一二未満、これが従来であれば百分の八十のいわゆる変動類型別のものに使われておる。それから〇・一二以上〇・二五未満というのは百分の七十二に使われておる。〇・二五以上というものが百分の六十五に使われておる。これは契約状況で調べてみますと、大体上昇、安定が三〇・六、一般が三七・五、変動が三一・九という洗い方をして、おそらく最初この区分については、大体三等分できるような見当で変動係数を仕分けしてみた場合に、おおむね〇・一二、〇・二五というふうなところに区分がなされたのではないかというふうに見るわけですけれども、この変動係数の区分のしかたについても、先ほど申し述べました漁済連の検討の中では、この変動係数の取り方について問題提起をしておるわけです。これは変動係数の問題について、最初の〇・一二に該当するのが〇・二四、それから〇・二五に該当するのが〇・三九というふうな形で変動係数というものを考えてまいりますと、いわゆる安定、一般、変動型のそれぞれの契約のウエートというもの、総件数の中のウエートというものは変化している。私は、いま政府がきめておる変動係数そのものが適切であるかどうか、変動係数の問題についてもやはり検討する必要があると思う。変動係数によって区分をし、それによって安定とか一般とかあるいは変動というのがきまりますと、これは今度限度額率として出ますと、九〇、八〇、七〇という掛け算が行なわれて、いわゆる共済限度額がきまる。これとの関連で、毎年の漁獲金額というものの間で事故が起きるかどうかという根本の問題ですから、したがって、この安定、一般、変動に分けるその変動係数の取り方が、具体的にこれでいいのかどうかということについても、これは設計上当然検討の問題です。いかがですか。
  88. 久宗高

    久宗政府委員 今度の改正におきましては、この保険制度が実施されました経緯とその後の進捗状態を見まして、何と申しますか、保険をこれに付加するというところに最重点を置いて、しかもそれが外に出しましても一応の御説明ができる体系をつくりたいというふうに考えましたので、これをつくっております。個々の素材についても実はいじりたい問題があったわけですけれども、それを一々いじっておりますと全体の設計ができないという問題がありまして、御指摘のような個々の素材の中で、しかも内容に重要な関係のあるところで吟味し切れなかった問題が実は相当あるわけでございます。それをまた一応現状のような形で前提といたしませんと、先にこうやりました場合、どういう形になるだろうという御説明の軸すらできないという問題がございまして、だいぶいろいろな御指摘がございましたけれども、こまかい点で、やっと保険ができましたので、それも含めて運用して、しかも加入がもう少しふくらんだ形におきまして今後吟味したい問題が実は一ぱいあるわけでございます。ただいま御指摘のございました変動類型の分け方でございますとかその他につきましても、まことに試行錯誤の過程でございまして、これでもって絶対的にいいのだというようなものでもございませんし、実施しながら手直ししていかなければならぬ部分が相当あると思いますので、御指摘のような問題につきましては、私ども一応この体系をつくって押し出していただきました上で、この実行のときに、加入が何としてももう少し出ませんと、係数の問題でございますので、実は計算そのものもできないというようなこともございますので、考え方といたしましては、さような細部の問題につきましても、従来御指摘のありました点、あるいは今回この設計をいたします場合にも直接担当していただきました学者の方がやりながら疑問に思っておられる点、こういう点もわりにはっきり出していただきまして、運営の中で考えてまいりたいと思いますので、少なくともこの段階では、これでもってまずスタートさせていただきたいと思うわけでございます。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 加入形式の問題について、義務加入の問題についてもいろいろ議論したいと思いますけれども、時間の関係もありますから……。  いまとっているのは、集団契約、それから小型連合あるいは大型連合、単独契約、こういうシステムをとっているわけですが、私ども昭和三十九年に出した法案の中では、義務加入のものを出しておるわけですね。漁業の場合は、それは、すべてを義務加入という考え方はわが党はとっておりません。集団、小型、大型あるいは単独というものもそれぞれ道を開いて、それぞれの漁業実態に応じた契約方式がいいであろう。同時に、やはり義務加入というものを適当な業種について導入していく必要がある、こういうふうに思っておったわけですが、義務加入の問題について触れる前に、単独契約の問題、私はこれほどまでに単独契約がウエートを占めておるとは必ずしも思わなかったのですけれども、資料をいただきますと、単独契約というのは契約総数の中で千二十八件、一七%、それから共済金額では実に三四%を単独契約が占めておる。現実に御承知の国の掛け金に対する助成ということになりますと、大体単独契約には道が開かれていない。しかし、現実漁業災害補償制度の中において契約件数あるいは共済金額の中において占めるウエート、こういうものの現状も見、また連合加入をやりたいと思っても、必ずしもそうもいかない、そういう場合に単独契約を認められたものが入ってくる、そういうものの件数は相当にあるという現実を見てまいりますと、将来はやはり集団なり連合契約なりあるいは場合によっては義務加入なりに向けていくにしても、当面出ていく加入の普遍化で、そういうものが全然国のそういう財政的な恩典に浴さないという点については、やはり問題があると私は思う。そういう点について、単独契約についても、掛け金その他の問題と関連をして助成の問題というものを考えてはどうか。あるいは加入奨励金という形になるかどうかは別だけれども、私は、四分の一、それもちゅうちょするというなら五分の一とかという形の最初のスタートでもけっこうだと思うけれども現実にいま単独契約の占めておる件数が一七%であり、共済金額の中に占める比率が三四%であるという状態、行政指導として他のほうにこれは逐次持っていくにしても、これだけのウエートを占めておる問題で、共済掛け金等の助成はナッシングであるということはいかぬと思う。これはどういうふうにお考えですか。
  90. 久宗高

    久宗政府委員 これは一番痛いところなんでありますが、端的に申し上げますと、これは平均いたしまして、たとえば件数では一七、共済金額では三四という形になっておるわけでございますが、何ぶんにも現在の制度がほとんどびっこのような形でございますので、そこへ持ってまいりまして、この種のものが入ってまいりました場合、端的に申しますと、これは共済金額が非常にウエートを持っておりますので、先生もびっくりなさったのではないかと思うのであります。その意味では非常な危険をはらんでおるわけでございます。そこで、先生の御指摘は、この前のときにもございましたように、階層分化しているし、中小企業関係についてもどんどん入れてくるのが本来ではないかというお説が背景にあるだろうと思うのでございます。私どももさように持ってまいりたいと思うのでございますが、何分にもそれを受けとめます一番基盤のところが、今まで保険制度もございませんでしたし、今度の改正でお願いしておりますようなところが抜けておりましたために、非常に片寄った加入で、しかも現実に各県の組合員に対してみますと、全国水準でさらに開きがございまして、非常に弱い形になっておりますので、その際に、私どもとしては、まず基盤のほうを、多少とも受け入れ態勢を整えた上でございませんと、そこへ現在入ってきております中小企業の方の場合には、相当一件当たり大きな共済金額を持っておられまして、その方の被害でも出ますと、一ぺんに組合が飛んでしまうというような問題になりますので、この際はやはり別個のほうを固めまして、そうしてこのような保険需要のある方を受け入れてもやれるような形になってから思い切ってやりませんと、いますっかり入っていただくということになると、逆に大きな危険をはらんでこの発足のところでつまずいてもいかぬという気持ちが、実は正直に言うとあるわけでございます。さような事情でございますので、特に加入の補助をいたしまして、どっと思い切って入れてしまうというところまでは私どもは実は踏み切れないでおるわけでございます。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 答弁を簡単にしてください、こちらはわかっておるのですから。質問はどうしても勢い余ると長くなりますけれども……。このいわゆる共済金額の支払いの方程式で、例の一つ要素になる付保率の問題です。付保率の問題を調べてみると、これは共済限度額に対する共済金額の割合になるわけですけれども、この付保率を見ますと、案外付保率が全体として低いですね。三四%。したがって、共済に加入しても、もらう金は掛け算でそれだけ引かれますから三四%。採貝・採そうが五三・三%でまずまずですけれども、漁船の状態をずっと見ていきますと、二十トン以上の大型漁船が二〇%。いずれにしても、全体としては付保率が三四・二%。これはもう少し行政指導の面も、共済団体としてもそうかもしれませんけれども、中には、共済限度額に対して親分衆とか何とかいうのは顔を立てておつき合いに加入する。したがって、付保率を見ると数パーセントにすぎない。件数としては一見上がっておるけれども、実際はそれはもう顔を立ててのおつき合い。だから件数だけをずっと見ておって、相当普及したのかと思うわけには必ずしもいかない。付保率等の問題が三四・二%というのはいかがであろうか。何といっても限度額率とかいろんなものを実情に合わせて直していく、なるべく魅力ある共済にしていこうということでやるわけですけれども現実に幾らの共済金額を掛けるか、つまり、付保率がどれだけであるかということを見ますと、掛け算の方程式でそれだけもらうのは少ないということであるから、やはり低いところは今後どうなるかわからないですが、魅力があるか魅力がないかということは、こういう付保率が一つのバロメーターになってくるのじゃないかという感じがするわけです。付保率がこういう現状にあるのをどういうふうに行政指導されるのか、これからどうされようとするのか、その辺のところはどうですか。
  92. 久宗高

    久宗政府委員 いままでのところは別といたしまして、加入がおつき合い、かような形ではまずいのでありまして、付保率をできるだけ高い形に持ってまいりたいと思うのです。たとえば、先ほど申し上げたように、若干順序がございまして、基盤が非常に弱いものでございますので、どこから重点を置いていくかというと、多少のステップを踏ましていただきたいと思っておるわけであります。
  93. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 非常に重要な問題であります。基準共済掛け金率が今度設計変更することによって非常に倍率の上がるものがある。基準共済掛け金率がストレートでなくて国の補助率を差し引きしても、なおかつ、たとえば採貝・採そうの安定については二倍になる。あるいは上昇型については二・三倍になる。あるいは漁船漁業の問題についても、二十トンから四十九トン、これになりますと、安定で一・八倍、上昇で二・〇倍、あるいはまた五十トン以上になりますと、安定で二・一倍、上昇で二・四倍、以下ずっと数字はありますが、たとえば定置になりますと、安定で二・五倍、上昇になりますと二・八倍、こういうふうに、国の補助を差し引いても、いわゆる漁民の負担する割合というものが従来の二倍であったり、あるいは一・八倍であったり、場合によっては二・八倍という最高の数字も出ておりますが、こうなりますと、設計上は計算をするとこうくるということで説明するのでありましょうけれども、われわれ政治の舞台で議論をする場合に、抜本改正をした、内容もよくした、さて従来入っておった掛け金が、今度新しく継続して入ろうと思うと、二倍になる、あるいは二・五倍になる。内容がよくなったのだからといって、そう簡単にはいかない。これは現実の問題だと思う。そういう意味では、国の補助率という点についても、たとえば採貝・採そうの場合には五〇%の補助率を六〇%に引き上げをして、当分の間ということで五%つけておる。この当分の間の五%というのをやはり今後の問題として、あるいは基本的に六〇%というのをもっと上げる。水産庁は三分の二の助成ということで折衝したけれども、うまくいかなくて、六〇プラス五、当分の間の五がついたというように承っておりますが、いずれにしても、掛け金が二倍にもあるいは二倍以上にも上がってくる。それ以下の値上がりのところもずっと具体的にありますけれども、これはやはりわれわれ直接こういう委員会で審議をして、さて今度はよくなったといって帰ると、先生、あれ今度は掛け金が倍になりますよと言われると、いや、あれはあれでいいのだと言うわけにはいかない。これは長官お話しをすれば、設計上こうなりますということかもしれませんけれども一つは国の補助率の引き上げということを基本的に考えなければならぬという問題と、やはり急激な上昇については暫定的措置が必要である、率直にいってこういうふうに思う。これはきのう、おとといでしたか、参考人の中でも、掛け金率の問題についても、急激な増高については特に国の財政その他で考慮してもらいたいという強い要請がございました。これは直ちに響く問題なんです。これは大臣、計算上ばかりでいきませんので、漁民の苦衷も考えて、具体的にどういうふうにされますか。
  94. 久宗高

    久宗政府委員 もう御専門ですので、あまり詳しく申し上げませんが、確かに倍率にいたしますといまのような問題が一部の漁民にございます。同時に、倍率が減っておるのも相当あるわけでございまして、それらの全体の組み合わせの問題になろうかと思うのでございますが、やはり基本的には給付の内容が相当よくなっておりますので、それとの関連でお考えいただくよりほかないのではないかと思うわけでございます。ただ、私どもといたしましては確かに数字上もこれはきついなと思うものにつきましては、できるだけ国庫補助の内容をそれに振り向けるようにいたしまして、最終的な形がいまお読みいただいたような問題になっているわけでございますけれども、決してなまの数字をそのままぶつけていることでもございませんので、今度のように給付内容がよくなったといたしますれば、少なくともある種の漁業種類について若干料率が上がるのはやむを得ないと思います。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は時間の関係上、あなたのほうからもらったこの一覧表を全部は読まないで、ちょっと注目を引くようなところをずっと読みましたけれども、いずれにしても若干というわけにはいかない。しかも、それは安定とか上昇とかいって、本来ならば安定しておれば共済事故のチャンスは理論的にいえば比較的少ないだろう、そういうところもどんどん入ってもらって、全体としては加入の普及化をはかりたいというところで、今度掛け金が相当な増高を示すことは、基本的にはやはり問題だと思う。大臣、せっかく来ているのだから、黙ってすわっておるわけにいかないでしょう。これは金の問題だから、わかるでしょう。
  96. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 保険というのは、御承知のように、受益者がとる金がふえてくれば、掛け金も幾らかふえるのはあたりまえだと思うのですが、こういう漁業のような比較的低生産性の仕事でありますから、掛け金の負担についてはなるべく軽減するように努力するのが当然だと思います。
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ここは農災と漁災を直ちに対比することに問題があるし、私がいまからあげる数字そのものも、数字の立て方によって違うかと思うのですが、たとえば農業と漁業における災害補償制度に対するところの予算の比率なんというものも、少し数字を引き出してみたら、農業災害補償制度の場合に、農業の総所得、それと農業災害補償の国の予算関係というものを比較してみると、私の手持ちのやつでは、昭和四十年度の数字ですけれども、一・三%を占める。漁業の場合の漁業の総所得、それと、私の場合は漁災だけではなしに漁船も含めて、四十年度でいくと十四億近くになるのですが、それで対比をしてみますと〇・四七%。ところが、水産庁にそれを言ったら、なるほどりこうな数字を出してまいりまして、少し見劣りはするけれども、もう少し努力すれば近づくという数字をこの間説明を受けたのですが、これはどちらをどうとるかは別として、何といっても、農業と漁業とのバランスということも、一つのめどとしては考えていく必要があると思います。  補助率についても、比較をこまかくすれば具体的な数字を持っておりますし、あるいは漁船の保険と漁災との関係というのも比較したのを持っておりますけれども、こまごました数字は触れませんけれども、何にしても、掛け金の増高の問題とも関連するのですが、国の補助率全体について、単独契約の助成の問題を私は問題提起をしましたが、それらの問題も含めて、やはり国の補助率は、もっと零細漁業漁民の負担を軽減して、沿岸漁業中心にした漁業全体の振興については、漁災を通じてでも、なるほど親心が出ているというものをもっと見せてもらいたいと思います。そういう点では、具体的な問題として、抜本改正がなされた、りっぱになった、具体的に契約するときになったら掛け金が倍になった、こういうのでは話がしにくいので、これはぜひとも大臣、ちょっと御答弁がございましたけれども、われわれとしては、このままの形で法案オーケーですというわけにはまいりません。  それから、先ほど若干問題に触れかけてやめましたけれども、加入形式の問題で、義務加入の問題なんです。これは適当な早い機会に義務加入を検討に基づいてとるというお考えは水産庁にあるのだろうと思うのですが、いかがですか。
  98. 久宗高

    久宗政府委員 全体の体系を義務加入に持っていくという考え方はいまのところ持っておりませんが、御指摘のように、ある種の漁業種類について義務加入を検討していい問題もあるのではないかと考えております。
  99. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 掛け金の問題と関連をして、安全割り増しというのをやっていますね。この安全割り増しとか、あるいは逆選択割り増しとか、こういうことを具体的にやる。今度は、政府が保険事業をやる場合に、そういうものも含めて連合会から上に上げるという気持ちですか。それとも、逆選択割り増しとか安全割り増しは除いて、あとの基準共済掛け金率といいますか、それを基本にした形の本来のもの、それを上に上げていくという考え方ですか。そこをはっきりしてください。
  100. 池田俊也

    池田説明員 政府の保険料の中には安全割り増しを含むわけでございます。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは、漁業共済組合あるいは漁業共済組合連合会の内部まるまる上げないかどうかというのは、議論すれば若干議論があるかもしれませんけれども、本来基本的な料率で出てくるもの、それを政府の保険事業との関係においては関連をつけておいて、逆選択割り増しないしは安全割り増しというふうなものを同じように取り扱って、上にぽんと保険料の関係では計算して上げるということ自身にも、私は問題があるというふうに思っている。これは、漁業共済団体経済的な力をつける、そういう運営の力をつけていくという立場から見ても、あまり冷酷な保険の理論で重箱のすみまでほこりをとっちゃうというのではなしに、やはりそこはもっと血の通った形で、保険料で考える場合の計算の基礎の要因というのは、これとこれについては満ぱいでとるか、何割でとるかというような議論はあると思いますけれども、逆選択割り増し、安全割り増しを全部同じにとるかということについては、これはぜひ検討願いたい。われわれから言えば、そちらは別にしておいてもらいたいというふうに思うわけですが、どうですか、検討されますか。
  102. 久宗高

    久宗政府委員 いまの料率の計算のしかたの技術的な問題も含めまして、安全割り増しは当然組まざるを得ないわけです。その場合に、いわば保険事業が、農災のように全部すそ野ができておりましてその上に構築されるという形でございませんので、しかも保険事業を裏打ちしなければ安全な体系ができない、したがって、加入も促進できない、こういう逆の立場になっておりますので、一応私どもといたしましては、そういうような形に現在ございます。漁災の実態に即して安全割り増しをつけざるを得ないわけでございます。その場合、もちろん団体の利益、保険事業としての国の利益の問題、利害関係の問題もございますけれども、しかし、それを一貫いたしまして、やはりこの体系でやっていけるという体制をとらないと、保険事業のほうがかりにがたがたにくずれますと、全体にくずれるということになりますので、さような意味で、御指摘のような問題も、もっとこまくやればあるいはできるのかと思うのでございますけれども、少なくともこの段階では、やはり保険事業を裏打ちしたことによってこの制度が強化されて、しかるが上に加入が促進されるという論理を追っていく形にも相なりますので、それをそのまま正直にこの中に盛り込んだわけでございます。したがいまして、安全割り増し、政府の保険料の勘定にも当然これは入ってくるという体制をとっているわけでございます。
  103. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 それから、保険の料金の中にはもちろん入るけれども政府と保険契約をするときの吸い上げるものに一〇〇%満ぱいで含むかという点は、やはり十分検討してもらいたい。われわれから言えば、そちらを除いてもらいたい。というのは、これはさらに触れてまいりますと、たとえば共済団体の事務人件費、あるいは機動力、あるいは普及宣伝のための予算、こういうこれからの重要な問題を検討してまいりますと、たとえば漁業共済組合職員の人件費というものの実際にかかっておる金額の何割を国がめんどうを見ておるかというものを見ますと、漁業共済組合の場合の人件費は三八%、事務費については一八%、平均して三一%、三分の一くらいしか漁業共済組合については事務人件費でめんどうを見ていない。あるいは漁業共済組合連合会の場合に、人件費で三三%、事務費では一五%、ならしてみて二五%。いずれにしても、こういう事務人件費等が全体として二割五分かせいぜい三割までという状態になりますと、これはやはり漁業共済組合あるいは漁業共済組合連合会自身が漁業者からしかるべくとらなければならぬということ等もございます。さらに宣伝啓蒙の費用についても、もう時間がありませんからこちらから触れますと、水産庁からもらった資料を見ておりますと、金額として必ずしも十分ではございません。印刷、製本から広報費等合わせましても、たいした金額ではございません。これに会場とかあるいは旅費というのは若干つきますけれども。これから抜本改正をやって、加入についても、全体的に加入件数あるいは加入の地域の普遍化、こういうものをやっていこうとすると、漁業共済組合、同時に全国の漁業共済組合連合会自身の事務能力、そういうものを充実しなければならぬ。たとえば普及であるとか、統計調査関係であるとか、いろいろなところでオートバイあるいは調査用のライトバンの自動車とかいうのが逐年相当充実される傾向にありますけれども漁業共済組合の県の段階組合においても、三カ年計画あるいは五カ年計画で、必要な県から、最初七、八台なのか九、十台なのか知りませんけれども、ライトバンくらいは置いてはどうか。あるいはそこまで至らざるところにおいても、オートバイを総人員のうちの三分の一なり四分の一なりの者にとりあえず与えて機動力を付与するというふうなことも考えてはどうかというふうな点まできめこまかく考えてまいりますと、まだ発足早々三年目ということではございますけれども、事務人件費等についても、さらに他の同種のものと比べて充実しなければならぬ問題が相当あると思います。その点いかがですか。
  104. 久宗高

    久宗政府委員 いままでがいままででございますので、私どももこの改正にあたりまして、できるだけ事務人件費のいままで出ているような難点を少なくするように努力いたしたつもりでございますけれども、まだ十分だとは思っておらないわけでございます。いまの施設関係、たとえばオートバイその他の問題も御指摘がありまして、いろいろ調べてみたのでございますが、県の段階組合でございますので、各個の態様も多少違うので、こういうものがほしいという形が団体から必ずしも出てきてないのであります。そこで、私どもといたしましては、このような制度改正をしていただきましたについて、少ない人数で高能率的にいきますように、事務人件費その他につきましても、さらによく実態を考えまして、できるだけ補助を増加していくようにいたしたいと思いますが、施設関係はいま申しましたようなことでございます。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 実は議論としては、漁業共済組合連合会と漁業共済組合との例の共済の持ち分の問題は、連合会と組合との一定の水準までが〇・二と〇・八、それ以上は連合会自身が持つという今度の新しい分け方、私どもはその点については、全部一本にして組合が〇・二、連合会が〇・八という形で、なるべく末端の組合経済的といいますか、掛け金のストックといいますか、もちろん支払うときは出すわけですけれども、末端にある程度のそういうものを持たせてやるということ、加入さしておけばそういうものの何割かが手持ちになる、それが励みになるということでもありましょうし、また、そういう支払いの権限を持っておるということが、業務を伸ばそうということにつながってくる。一体どの程度県段階の共済組合が持つか、あるいは連合会がどの比率のものを持つかということは、絶対的にこのほうがいいという理由はないと思っても、農災では、御承知のように、末端の農業共済組合になるべく比率をおろそうとする改正を数年前にやった、あの思想をやはり今後の問題として検討していかなければならぬ。むしろ今度の場合は、比率としては、全体としてみれば従来と一・九の関係は変わらないようにという説明をしておりますけれども、はたしてそうなるのかどうかは、こまかく検討は私どもの手元ではできませんが、そうじゃなしに、従来よりはなるべく県段階の共済組合にウェートを高める前提に立って、具体的にはどうするかというふうな気持ちになってもらったほうがいいと私は思う。この辺のところは、今後の方向の問題はどうなのですか。
  106. 久宗高

    久宗政府委員 どうも先生は生みの親なので、欲が深いのではございませんでしょうか。非常に強いものに育ったようにお考えのようでございますけれども、実はそうでございませんで、末端の組合がそこまでの負担を負うのにはまだ危険ではないかと思いますので、もう少し大事をとってまいりたいと思うのでございます。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これで終わりたいと思いますが、最後に、えらい問題提起ばかりいたしましたのは、何か今度漁業災害補償法の抜本改正をやって国の保険事業もできた、掛け金率の助成も若干ふえる、あるいは事務人件費も若干ふえるというので、どうも政府のほうとしては、ありがた経で下部に宣伝しようとする。ところが、やはり下部の実際の漁業組合漁業者になると、そうありがた経ばかりではなかなか来ない。内容をよく調べてみると、今度は内容はよくなったというけれども、掛け金が倍になりそうだ、あるいは限度額率を若干修正した、あるいは漁獲率の基準漁獲金額を出すときに、三年の場合は三、二、一のウエートをつけるとか、あるいは定置の場合は少なくとも——長官答弁間違っております。私から答弁を訂正しておきますけれども、六年間の最高最低ということで誤解を招きましたけれども、これは六年間の古いやつから、二年を一、あとの二年を二、最後の最新時のやつを三と、こうとらなければならないのに、答弁間違っていましたから、この機会に直しておきたいと思います。いずれにしても、そういうふうにこの現実に即したように改正をしようというその方向は、私も好感を持って迎えますけれども、一三〇か、一二五か、一二〇かといういろいろな具体的な問題、先ほど問題提示をいたしましたけれども、なお漁業者のためになるように、ひとつ前向きに水産庁長官としてもやってもらいたいと思います。それがないと、任意加入方式によって加入率をどんどん高めていこうということは、笛や太鼓だけでは加入してこない。現実に入ってきたことによって、再生産確保の道はこの道で開かれるという具体的なものがなければいかぬと思います。後ほど与党の方々とも相談をして、政府に注文をつける点については注文をつけることにいたしまして、質問はこれで終わらしていただきます。
  108. 本名武

    本名委員長 他に質疑申し出もないようでありますので、両案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次会は、来たる二十七日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十一分散会