運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-14 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十四日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君 理事 玉置 一徳君       安倍晋太郎君    小澤 太郎君       鹿野 彦吉君    金子 岩三君       熊谷 義雄君    小山 長規君       坂田 英一君    坂村 吉正君       田中 正巳君    野呂 恭一君       藤田 義光君    湊  徹郎君       粟山  秀君    伊賀 定盛君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       島口重次郎君    美濃 政市君       神田 大作君    中村 時雄君       中野  明君  出席政府委員         農林政務次官  草野一郎平君         水産庁長官   久宗  高君  委員外出席者         水産庁漁政部長 池田 俊也君         水産庁漁政部協         同組合課長   関根 秋男君         水産庁漁政部調         査官      小関 信章君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月十四日  委員兒玉末男辞任につき、その補欠として山  崎始男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として兒  玉末男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第六八号)  漁業協同組合合併助成法案内閣提出第二九  号)      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び漁業協同組合合併助成法案の両案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。伊賀定盛君。
  3. 伊賀定盛

    伊賀委員 昨日に引き続いて質問を続行いたしたいと思います。  まず最初資料お願いをいたしたいと思います。基準共済掛け金率水準を、できれば一般型、変動型等分類してひとつお願いをしたいと思います。  そこで、昨日はこの加入条件等について具体的にお尋ねしたのですが、きょうは、保険対象領域といいますか、そういうようなことについてお尋ねしてみたいと思います。  そこで、現在保険対象から除外されている漁種等がありましたら、ないしはまた、制度としては認められておるけれども条件その他で一つ漁業種類として加入していないものがありましたら、この際ひとつ御報告願いたいと思います。
  4. 久宗高

    久宗政府委員 説明員からお答えさせていただきます。
  5. 池田俊也

    池田説明員 お答えいたします。  漁獲共済につきましては、漁家基準共済金額をとらえておりますので、特にそういうような該当するものはございませんけれども養殖共済につきましては、ある程度落ちているものがございます。たとえば、例をあげて申しますと、養殖業の中でハマチ養殖でございますが、これは小割り式ハマチ対象に入っておりますけれども、その他の築堤式のようなハマチについては対象に入っておりません。それから、たとえば、ウナギ養殖でございますとか、最近非常にふえておりますワカメ養殖というようなものは対象に入っておりません。
  6. 伊賀定盛

    伊賀委員 その入っておらないのが、最近急速に伸びたとかいうような場合はとらえがたいという場合もありましょうけれども、従来からあったものでなお全然入ってないという、その理由をどう理解しておられますか。
  7. 池田俊也

    池田説明員 ただいまあげました中で、それぞれ理由が違うわけでございますけれども、たとえばワカメ養殖でございますが、これは最近三陸で非常に急速にふえている種類のものでございますけれども、いろいろなデータその他の関係でまだ十分整っておりませんので、将来はどうかわかりませんが、現在の段階では対象に入れられない、こういう事情でございます。  それから、たとえば小割り式以外のハマチ養殖でございますが、これは一定築堤の中等で魚を養殖いたしまして、逐次成魚になったものをとる、こういうようなことでございますので、その中で魚がたとえば死んだとかいうような損害評価が実は非常にむずかしいわけございます。  それから、ウナギでございますが、これはウナギを逐次やはり成魚になりましたものをとると同時に、その補充ということで稚魚を入れるというようなことを年じゅう繰り返しております関係で、これも損害査定というようなものが非常に困難である、こういうような事情でございます。
  8. 伊賀定盛

    伊賀委員 事情はいろいろあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、これらの漁種漁家の方々からは、やはり早く入れてほしいというような要望もあるようでございますから、今後それらの資料等を調製されて早く漁業対象にされるようにひとつ努力していただきたいと思います。  それから、二番目には、きのうも論議の中にあったのでありますが、例の漁具共済が、きのうの長官説明によりますと、これもやはり資料その他の関係政府保険対象にはできないという御説明があったわけであります。しかし、資料によりますと、今度政府が責任を持つのがいわゆる損害率一三〇%ということでありますが、特にこの漁具共済の場合は、三十九年、四十年、四十一年ともに、いわゆる一三〇を上回っておる、しかも加入率は、あるものはかなり高いものがありますけれども、あるものはやはり相当低いというような事情等にかんがみまして、この漁具共済の現在の赤字、ないしは将来もこのような姿で加入率はふえないというようなことで条件が推移するならばやはり相当赤字が出てくる可能性が見込まれるわけでありまして、そうした場合における支払い不足金をどうするのかというようなことと、それから、本年は調査費を二百二十万計上しておられて、将来政府保険への一つのかまえを見せておられるわけですけれども、これらの調査にどれくらいの時期を要するのか、ないしはいつごろからこの漁具共済政府保険対象に組み入れようとするおつもりなのか、あわせてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  9. 久宗高

    久宗政府委員 漁具共済につきましては、御指摘のように、非常に加入が片寄っておりますのと、また、ある種の漁種に非常に片寄っているという関係もございまして、支払い超過関係も楽観を許さない問題があるように思うわけでございます。したがいまして、昨日もお答えいたしましたように、もう少し私どもといたしましてはこの中身を洗いまして検討いたしたいということでございますが、当面の支払いにつきましては、御承知のとおり、基金がございますので、支払いそのものに困るという形は御心配はないと思うのでございます。  そこで、改正方向と申しますか、問題点でございますが、御質問の中にもございましたように、関係予算として、四十二年度予算で二百万何がしの委託調査費を組みまして、中身といたしましては、政府保険方式の一環といたしまして、普遍的な多数の加入をはかるために、共済価額水準てん補方式等給付内容についての改正方向、これが一つでございます。それから、第二点といたしましては、給付反対給付の均衡をはかるために、危険区分方法共済掛け金率水準等共済設計内容についての改正方向、こういったところに重点を置きまして調査をいたしたいと思うわけでございますが、私どもも、一つ業務関係が脱落してまいりますのは体系としても非常に困りますので、できるだけ急いでいたしたいと思うわけでございますが、何ぶんにも、調査結果を見ましてそれを吟味いたしませんと組めませんので、時期的な関係でお約束ができかねるわけでございますが、できるだけ急いで処理に当たりたいと考えております。
  10. 伊賀定盛

    伊賀委員 ただいまの御説明によりますと、現在の赤字並びに将来の経営から来る赤字は、基金があるからその支払いに事を欠かないんだということなんですけれども、これは、基金から借りましても、利子はほかから借りるよりも多少安いようですけれども、いずれにしましても利子がかかるわけでありますし、しかも、統計資料によりますと、先ほど申し上げましたが、三十九年では一四五%の損害率、四十年には一七三%と、いずれも赤字の連続であります。そういたしますと、年々このようにして赤字が出て、しかもその赤字基金から利子のつく金を借りて支払いをしていくということになりますと、年々この赤字利子を含めて累積してくることになるわけでありまして、基金があるから赤字対策は必要でないということは、ちょっと長官説明では納得しにくい点があるのですが……。
  11. 久宗高

    久宗政府委員 御説明の手を抜きまして申しわけなかったのでありますが、申しましたのは、支払いする事務そのものに事は欠かないようにしますと申し上げたわけでありまして、御指摘のように、設計からまいります赤字そのもの処理の問題は残るわけでございます。そして、昨日も赤字全般について申し上げたわけでございますが、何ぶんにも始めましてまだ非常に期間が短いわけでございますので、一応長期的な設計でやりましたものの中で、最初の数年間に出ました偶然的な要素がいまのような形になっているわけでございます。過渡的にはもちろん料率改定その他で補足してまいるわけでございますが、漁具共済の場合には相当の危険がございますので、これは保険をつなぐとすればどういうふうにしたらいいかということを詰める段階が必要でございます。  いずれにいたしましても、当面出ております赤字の問題につきましては、今後の料率改定なり、制度改正との関連を見まして、やはり長期的な観点に立ちまして、その処理について慎重な検討が要るものではないだろうか、この段階ですぐ赤字についての処理をするのは必ずしも理論的な構成から見て適当ではないだろうというふうに考えております。また、その場合におきます事業運営につきましては、御指摘のように、赤字そのもの処理ではございませんけれども基金を活用いたしまして、支払いに事欠かないような運営をいたしたいと思っております。
  12. 伊賀定盛

    伊賀委員 いずれこの赤字の問題につきましては後ほど触れたいと思いますから、ここではこの程度にいたしますが、先ほどの漁具共済について、二百万ばかりの調査費調査をしておられるわけですけれども、大体の見通しとしてはいつごろその調査が終わって政府保険対象に組み入れる御用意か、大体の見通しがあればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  13. 久宗高

    久宗政府委員 一応私どもといたしましては、事務的には二年間くらいの調査が要るのではないかと思っておるわけでございますが、しかし、急ぐという問題と、詰めるという問題の両面がございまして、先ほど申し上げましたように、できるだけそれを詰めていたしたいと思いますけれども、やはりこれは相当突っ込んだ調査が要りますのと、それとあるいはうらはらになりますが、やはり加入関係が現在ある種の漁業種類に非常に片寄っている問題と、それから、ある種の漁業の中では取り上げておりますけれども加入しておられる方が非常に地域的にあるいはある規模に片寄っているというような問題がございますので、今回の全体の機構改革との関連におきまして、もう一度漁具共済必要性なり仕組みなり、また今後われわれが検討していく問題というもののPR期間相当要るのではないか。いまのままでかりに制度を直しましても、ちょっとあのような片寄りぐあいでは相当問題があるというふうに考えておるわけでございます。
  14. 伊賀定盛

    伊賀委員 次は、これは前の加入条件の項目の中に入れたほうが適当かとも思いますが、集団または連合契約の場合に、現在では海区のいわゆる加入区を設定しておられたのが、今回の改正で、同一海区の中でも知事が認める場合には二つないし三つについて加入できるというような加入条件緩和等がなされ、なおまた、いままでは全員または二分の一が賛成しなければならないというのが、その二分の一ないし全員のとらえ方を、実際に一年間のうち九十日以上操業するものの中の二分の一または全員ということで緩和されたわけでありますが、さらに、その海区の中で十名ないし二十名のような、たとえば任意生産組合といいますか、そういうようなものを設置して加入することができるというような形に持っていけば、さらに加入しやすいということも言えるわけでありますが、そういう方向についての農林省のお考え方をひとつ承りたいと思います。
  15. 池田俊也

    池田説明員 現在、御承知のように加入の状態が非常に悪いわけでございまして、これを改善するために、いま先生から御指摘をいただきました点についての改正を計画したわけでございますけれども、ただいまのお話にございましたように、さらに同一加入区の中で少数生産組合等を主体にして共済に入ることを認めるということができないかという御質問でございますが、これにつきましては、実は保険のほうの共済事業技術といたしましては、損害査定が的確にできるかどうかという問題が一つございます。従来やっておりますのは、たとえば同一漁協をとりまして、漁協で共販をやっておるというかっこうでございますと、その漁協について調査ができるわけでございまして、そういう意味損害評価がかなり的確にできるわけでございます。ところが、いまのような場合に、その漁協との結びつき等の関係が、はたしてそういうような条件にあるかどうかということが一つございます。それから、さらに、たとえばノリというようなものをとってみますと、損害査定——現在連合加入、それから今後集団的にノリの場合には加入もしていただくということを考えておるわけでございますけれども、これの一つ意味は、やはり損害査定関連をいたしまして、全体として損害の状況をとらえる。その中の少数の人だけをとらえるというのは損害査定が非常に困難でございますので、同一条件にある漁場の一つのかたまりをとらえまして、そこで損害の適正な評価をする。こういう点から見て、そういうような方式がどうしても必要だということがございますので、そういうような点から見ますと、ただいまのように、同一加入区の中の少数の人だけをとらえるというのは、実は技術としては非常に困難があるのではなかろうかと考えるわけでございます。
  16. 伊賀定盛

    伊賀委員 お説はもっともだと思いますけれども、それでは、現在入っておるものが適正に損害額その他を評価されておるかといいますと、これも厳密に言った場合になかなか適正だとは言い切れないものがあろうと思うわけでありまして、そのために損害評価会というようなものもちゃんと設置したわけでございますから、そう厳密にとらえなくても、まあまあという程度なら、むしろそうしたより小グループにしたほうがよくはないか。先ほど来問題になっておりますように、全般的に見まして非常に加入率が悪い、加入率が悪いから経営内容もよくないということになるわけでありますから、今後の問題として、加入条件を緩和する、あるいは加入率を高めるというような意味から、小グループによる任意団体等による加入方法について一そうひとつ検討を深めていただきたい。これは要望として申し上げておきたいと思います。  その次は、共済金の問題でありますが、今回共済金限度額率が上がるとか、あるいは基準漁獲金額の算定が、いわゆる総和平均から加重平均に変わってきたというようなことで、要するにいわゆる保険魅力を持たせるために支払い共済金を高くしたということが言えるわけでありますが、まず、いままでの限度額率の八〇とか七二とか六五とかというようなものが、おのおの九〇、八〇、七〇なんぼに上がったわけでありますが、しかし、それではこれで、いままで魅力がなかったけれども、一〇%ほど上がったから直ちに今度はこの保険魅力ができて、いままで二%しがなかったものが一挙に二〇%も五〇%も入るかということになりますと、なかなかそうはいかないと思うのであります。そういう意味で、この頭を九〇%ということで押えずに、加入者の希望により、さらにこれを、一〇〇%ということはどうかと思いますが、少なくとも九五%程度までは限度額特約によって上げる、一そう漁業者魅力を持たせるという意味特約によるさらに九五%くらいまでの限度額率契約というものを認めてもいいのではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがなものでしょうか。   〔委員長退席高見委員長代理着席
  17. 池田俊也

    池田説明員 限度額率をどこまで見るかという一つ基準でございますけれども、これは、漁民の立場から申しますとできるだけ高いほうがよろしいわけでございますが、やはり保険仕組みといたしますと、おのずから一つ限度があるのではないかとわれわれは考えておるわけでございます。それで、八〇%といい、九〇%といい、どういうような考え方でその基準をきめておるのかという問題でございますが、これは、今回の改正をいたしました考え方といたしましては、漁業をいたします場合に、いわば経費がかかるわけでございます。それで、その経費を投下いたしまして一定収入があがるわけでございますけれども、その経費というものの内容を調べてみますと、これは言うまでもございませんが、固定的な部分と、それから、ある収入に応じましてふえていく部分と、二つあるわけでございます。固定的な部分は、これは収入のいかんにかかわらずその額は必要なわけでございますが、そういう固定的なもののほかに、さらに収入に応じて一定額がだんだんふえていくわけでございますが、ある点までいきますと、その経費を償うに足る収入があげられる。それから、さらにその上にいきますと、今度は利益が出てくるわけでございます。私どもはその境を損益分岐点というようなことばで言っておるわけでございますが、その損益分岐点一つ限度ではなかろうか。それ以上になりますと、いわばそれは当該漁業者利益部分でございます。利益部分まで入ってくるということは、この保険目的からいたしまして若干問題があるのではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、その境が大体九〇%程度というふうに考えておりますので、まず一般的な考え方といたしましてはそこいらが限度ではなかろうかと考える次第でございます。
  18. 伊賀定盛

    伊賀委員 元来保険制度というのは保険理論という一つ理論に基づいてあるようですから、それは数理的にはやむを得ないものがあろうと思いますが、しかし、先ほど来たびたび問題にしておりますように、農業災害補償等に比べて漁業の場合はまだ発足間がない、あるいはいろいろな条件等から見て、やはり農災に比較して漁民側から見た場合には漁災条件が不利であります。したがって、早く保険経営を正常に持っていくためには暫定的にそういう方法をとるということも一つ方法ではなかろうかと思いますが、将来にわたって九五%ということでなしに、早く正常な保険経営に持っていくために、あるいは加入を促進するために、あるいは保険制度魅力を持たせるためにという意味で、暫定的に、たとえば今度掛け金補助率五%を当分の間ということで置いたようですが、そういう意味でこの九五%にまで暫定的に引き上げるという、そういう御意図はございませんか。
  19. 池田俊也

    池田説明員 暫定的にそういうものを考えてはどうかという御意見でございますが、実は、先ほど申し上げましたように保険仕組みというものがございますので、それを越えましてやるということの理論的な裏づけが非常にむずかしいわけでございます。ただ、従来漁民の方の不満として、共済金給付内容が非常に薄い、こういうことを私ども伺っておるわけでございますが、それの一つの原因は、ただいま御指摘いただきました限度額率の問題もあるかと存じますけれども、やはり、むしろ実際問題としては、基準共済金額のとり方につきまして従来過去一定期間総和平均を使っていたということで、特に最近のような魚価が上昇しております場合にはてん補率が薄い、こういう御意見が強かったのではなかろうか。そういう意味で、今回、最近のほうにウエートをより多くつける、こういう方式をとりましたので、実際的にはかなり給付内容は厚くなるというふうに考えております。限度額率の点では、暫定的にという御意見でございますが、これは研究はさせていただきますけれども、実際問題としてはなかなかむずかしいのではないか。ただ、実際は、先ほど申し上げましたように基準共済金額を変えますので、給付内容としてはかなり厚くなる、かように考えるわけでございます。
  20. 伊賀定盛

    伊賀委員 ただいま基準漁獲金額の話が出たのでありますが、確かに、いままでの一定期間総和平均から加重平均に転換したことは給付内容を高めるということには役立つと思います。しかし、今回改正になりました三、二、一というもの、これはいろいろ伺ってみますとどうも理論的な根拠がないようで、いわばつかみ金といいますか、つかみ数字でありまして、これをもう少し具体的に考えてみますと、安定型とか一般型なんかで比較して、スムーズにコンスタント漁獲なり魚価が上がっておる場合はいいですけれども、たとえば変動型のように、三、二、一といいますけれども昭和四十一年を三倍して、昭和四十年を二倍、昭和三十九年を一倍、これでそれがコンスタントにずっと上がっておる場合は問題はない、その目的は達せられますけれども、逆の場合、一倍ということで魚価そのものにしか見られない昭和三十九年にたいへん豊漁であった、ところが、三倍に見てもらえる昭和四十一年には全く皆無だったというような場合には、加重平均という三、二、一というものも、実はその役目を果たしておらないわけであります。したがって、これをどの種類にも全部三、二、一という加重平均を当てはめるということも、むしろ実情にそぐわない場合があるわけであります。そういう場合を救う方法については何かお考えはないものでしょうか。
  21. 池田俊也

    池田説明員 ただいま御指摘いただきましたように、三、二、一というのは確かに一つの非常に荒っぽい考え方でございまして、こまかな点に入りますと、先生指摘のような問題がございます。ただ、最近毎年魚価が大体七、八%平均いたしまして上昇しているように思いますけれども魚価は、これは御承知のように漁獲量と非常に関係がございまして、漁獲量が少ない年は相当程度魚価補いがつく。全体の収入といたしましては、まあこれは平年作、あるいは豊作のときには及びませんけれども、かなりの補いがついているという事態はございます。そういうようなことでございますので、非常にこまかく入りますれば確かに御指摘をいただきましたような問題はあるのでございますけれども、なかなか全体の技術面はそこまで入り切れませんので、三、二、一というような基準を使うということにいたしたわけでございます。ただ、定置につきましては、これはかなり変動が大きゅうございますので、過去六カ年をとりまして、その最高最低の年は切り落とす、こういうようなことはやっておる次第でございます。
  22. 伊賀定盛

    伊賀委員 したがいまして、他の漁種は四年間のうちの三年、あるいは定置の場合は六年のうちの最低最高を除いてというようなことを言われておりますが、しかし、安定型の場合には三、二、一。変動の場合には、最高最低を除くということも一つ方法ですが、さらに、この三、二、一を四、二、一にする、倍、倍、倍に持っていくということも一つ考え方だと思いますが、そういう点はどうでしょう。
  23. 久宗高

    久宗政府委員 先ほど部長からお答えいたしましたように、三、二、一というのは一応のめどでやっております。したがいまして、これが妥当かどうか、やりながらさらに検討していくべき問題だと思うわけでございますが、ただ、最近までずっと魚価が継続的に上がっておりますので、また一方漁民の方々から申しまして給付内容が価格差のために非常に不十分になるということでは処理ができませんので、やむを得ずああいう三、二、一というウエートを置いておるわけでございます。これをやはり今後の全体の経済の動きなり魚価の動きと関連いたしまして——そういう形でやりました場合にまた逆にいろいろ弊害を生じ得る可能性もございますし、根本的に申せば、そういうふうに価格に若干でもスライドして設計を立てざるを得ない関係がございますけれども保険経理から申しますと、まだ価格が非常に安いころ非常に黒字が生じておって、それが価格の非常に上がったある時期の赤字によってその黒字が飛んでしまうといったようなことは、本来これはおかしいわけでございます。価格のスライドを入れますことにつきましては相当問題があるわけでございますが、現在のところでは、漁家の方々の御要望と、少なくともいま予想されますトレンドから見まして、一応三、二、一という方法をとっておるわけでございます。さらにそれのウエートをいじるかどうかは、今後の経済の動きなり魚価の動きと関連いたしましてさらに検討させていただきたいと思います。
  24. 伊賀定盛

    伊賀委員 次はノリ養殖のいわゆる三割足切りという方式でありますが、これは確かに、ノリ養殖というのが、とれる場合にはむちゃくちゃにとれて、とれないときには全然だめだというような変動が非常に激しいと見て、いわゆる保険の財源を安定させる、保険経営安定させるという意味で三割足切りという制度を取り入れたことはわからぬことではないわけですけれども、むしろこれなどは、加入率から見まして、流し網が一〇〇%でありまして、その次にノリ養殖が五六%の加入率を見せておりますが、それとてもなおまだ加入率が半分程度であります。したがって、少々赤字になったからといって、まだ五〇%しか加入を見ていないノリ養殖に三割足切りをすることがはたして妥当かどうか。ノリ養殖そのものの保険経営を健全にはするかもしれないけれども漁災保険全体の経営安定せしめるという意味からははたしてどうであろうか。もちろんこれは、一つ保険制、度である限りは、病人がそのおかげをこうむって、健康人が金を出していくというのは原則であります。したがって、いわばノリ養殖というのは、赤字がふえるとはいいながら、いわば病人でありますから、その病人に、おまえは金がかかるから、なお一年の治療を要するけれども、もう半年でしんぼうせいと言うようなものでありまして、これは、今回の漁災法がまあまあ全体的に見て前向きだと言われるにもかかわらず、この三割足切りはむしろうしろ向きだということが言えると思うのであります。したがって、この保険経営を円滑に進めるという場合にも、その保険経営を、たとえば短期的に見るか、あるいは長期的に見るかということで差が出てくるわけでありまして、短期的に見ますと、確かにノリ養殖というのは、まあどらむすこだという表現をしておられる人もあるようですけれども、いわばどらむすこ的な要素があるかもしれないけれども、長期的に見た場合に、しかも現在の五六%が一〇〇%まで加入率を見るというような時点になったときのことを考えると、何もいま直ちに急いで、病人に、おまえはもう薬は要らぬから自力でやりなさいというような残酷な措置をとる必要はないのではなかろうかと思いますが、いかがなものでしょうか。
  25. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のような御意見もあり得ると思うのでございます。私どもも内部でずいぶんこの問題につきましては議論をいたしたわけでございますが、ただ、何ぶんにも、現在のノリ養殖の実態から見まして、これは御説明するまでもないと思いますけれども、物的な経費の占める割合が比較的少なくて、自家労賃の部分の比重が高いという要素もございます上に、現行制度でございますと、三割をこえまして初めて問題になりまして、その三割の下まで全部払ってしまう、こういうことになるわけでございまして、実態から見ましても非常に件数が多くなりまして、そのこと自体がほんとうの必要な補てんになっているのかどうかという批判もあり得るわけでございます。それから、これもまた御説明するまでもないと思うのでございますけれども、いわゆる小被害が重なりまして三割、四割になり得る場合もあり得るわけでございますが、さような場合には、現行制度でございますと、あのような形をとっておりますので、それは乗らないということになりまして、てん補されない場合の不均衡が生じるという問題もあるわけでございます。  そこで、むしろノリ漁業経営自体から見れば、やはり本来は自己保険的に、カバーできるところはみずから処理をいたしまして、相当損害が実質的に経営に加わってまいりました場合に完全なてん補ができるという形のほうが本来の形ではないかというふうに割り切りまして、この段階での足切りを考えたわけでございます。  ただ、先生指摘のように、今日の普及状態なり、一般ノリ関係者が現在の段階で考えております考え方との間に若干のギャップがあって、そのことがさらに普及には問題があるのではないかということも、一部に確かにそういう御意見も実はあるわけでございます。しかし、私どもといたしましては、今回の改正によりまして一応の体制をとった上で、さらに、ノリにつきましては、いまの漁業共済の中では相当特異な形をとっておりますし、あるいは農業部面と非常に似通った部面もございますので、その辺のところを十分吟味いたしまして、必要なる改正問題につきましてもこれと並行して実は検討してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  まあ、保険技術的な内容よりは、この制度を大きく動かしていく上からその点も考えてみろという御指摘もございまして、私たちも、こういうような形の切りかえがこの段階で阻害になるのか、あるいはもっと発展的な要素になるのかという点につきましては、相当議論をいたしましたけれども、やはり保険仕組みの筋から申しまして、また、ノリ漁業の特殊性から申しまして、少なくともこの段階でこの程度改正をいたしまして、さらにその後のもう少し大きな改正問題につきましても、みんなで検討していこうじゃないかという気持ちで取り組んでおるわけでございます。
  26. 伊賀定盛

    伊賀委員 御趣旨はよくわかりましたが、いずれにしましても、前向きに進む場合はなるべく急いでおやりいただきたいと思いますし、うしろ向きになる場合はできるだけゆっくり前後を御検討いただいて、何もうしろ向きになるのを急いでやる必要はなかろうと思いますので、これもひとつ今後の課題として御検討をわずらわしたいと思います。  それから、次は概算払いの問題でありますが、これは御承知のように、この特別会計法では収支に関する規程は政令で定めることになっております。漁船保険等にはすでにこの概算払い方式が適用されているわけでありますし、特に、この連合会が代払いをする場合もあり得るわけでありますから、こういう点について概算払いができるような所要の手続等も必要かと思いますが、この点いかがなものでしょうか。
  27. 池田俊也

    池田説明員 これにつきましては、現在制度的に政令でそういう概算払いができる根拠規定がございますので、必要に応じてそういう道を開きたいと考えておるわけでございます。
  28. 伊賀定盛

    伊賀委員 以上で、当初私が申し上げましたところの、大きく大別して、一つ加入条件一つ保険対象の領域を広げる、一つ共済金のいわゆる給付内容を高めるという三つの点についての質問を終わりまして、次は、政府が果たすべき役割りといいますか、そういう分類に当てはまるかどうかは私自身あまり自信がありませんが、そういう意味でさらに質問を続けたいと思います。  その一つは、損害評価会の設置の問題であります。農災なんかの場合には、根拠法規といいますか、法的な根拠をちゃんと与えているわけでありますが、漁災は、組合の内規で規定しているから、まあ運営には支障がないのだということであります。しかし、たとえばこの委員の任命等におきましても、組合の内規ならば、まあまあというようなことになりまして、その人選等においても適正を欠く場合があり得るわけでありまして、この損害評価会というものの意義づけといいまするか、その成果を果たさせるためには一そうはっきりと法に規定する必要があろうかと思うのでありますが、どういうわけで漁災に限って組合内規にゆだねて法に明記することをお避けになったのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  29. 池田俊也

    池田説明員 これは実は、法律のほうから申し上げますと、二十三条には「組合は、共済規程をもって、次に掲げる事項を規定しなければならない。」という規定がございます。その中に、第五号でございますが、損失または損害の認定に関する事項というようなことがございまして、これが一つの根拠になっているわけでございます。これは、私どもが伺っておりますところでは補償法ができますときの国会の御修正で、その原案にはこれはなかったのでございますけれども、そういう損害評価会の根拠を置く、こういう御趣旨だと存じますが、こういう規定を国会においてお入れをいただいた、こういう経緯があるようでございますので、私どもといたしましては、考え方農災の場合とほとんど変わりないと存じますが、規定のしかたが若干異なる、こういうことだと存じます。
  30. 伊賀定盛

    伊賀委員 二番目には、この基金の問題でありますが、漁災基金の総額が五億円で、国が二分の一、府県が四分の一、連合会と組合で四分の一、こういうことででき上がっておるようでありますが、今回のこの給付内容改正なりあるいは掛け分の増額なり等によって——いままでは政府保険のない、いわば給付内容もわずかであり、言いかえますと支払い金額がわずかであったわけでありますが、この改正によって、意図するように加入率も高まりあるいはこの支払い金額も高まるということになってまいりますと、当然今度はこの基金のワクが狭くなってこようと思うのであります。そういう意味で、この際ひとつ基金の総ワクの五億というワクをもっと広げるという必要が当然出てこようと思うのでありますが、なぜ今回は所要の手続を進めながら一方において、いわばこれは車の両輪ともいうべきものでありますが、この基金の総ワクを高めるという措置をおとりにならなかったか、さらにまた、将来この五億というワクを必要量まで高める御意図があるかないかというような点についてひとつ御説明いただきたい。
  31. 久宗高

    久宗政府委員 基金につきましては、たとえば、昭和四十一年度におきます貸し付けの平均残高で申しますと一億三千三百万、最高の残高が二億二百万ということになっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この段階で、給付内容を上げたりいたしましたけれども基金の需要になってまいりますものはそう極端にふえるというふうには実は考えておらないわけでございまして、現在の基金で直ちに増資をする必要は少なくともいまのところはないだろうというめどでございます。ただ、やってみまして支払いに事欠くような事態が起こりました場合には、やはりこれば当然基金の増資を考えざるを得ないと思うのでございますけれども、いまの見通しとしては直ちに増資の必要はない。将来の問題といたしましては、実施された経緯によりまして、そう増資を必要とするような事態ば一応予想しておりませんけれども、かりにそういう事態がございますれば、その段階におきましてまた御相談に乗っていただきたいと思っておるわけでございます。
  32. 伊賀定盛

    伊賀委員 三番目は、この特別会計の問題であります。これはきのうの論議の中にもあったのでありますが、きのうの長官の御説明によりますと、公団、公社等の廃止というような行管庁からのいろいろな勧告だとかいうような向きもあったようでありますが、しかし、本来その根拠法規が任意共済と今度の漁災法は異なるわけでありますし、したがって、事業を円満に運営するためにはむしろ独立したものに持っていくべきだと思いますが、再度詳細にひとつその理由等について御説明いただきたいと思います。
  33. 久宗高

    久宗政府委員 私どもも当初全く同じように考えておったわけであります。それから、法律をつくります段階におきましても、当然特別会計でございますので全くそういうことは問題なしと実は考えておったわけでございますが、いよいよ法案をしぼります段階になりまして、公団、事業団の問題もございますが、特別会計そのものにつきましてもなるべく乱立は避けたいという方針がございまして、規模にいたしますと、四十二年度で申しますと実は一億に満たないわけでございます。平年度にいたしましてもせいぜい五、六億といったようなめどにしかなりませんので、このために特別に特別会計をつくるということは必ずしも必要ないではないかという御議論が出まして、他の特別会計の例を一応調べてみたわけでございますが、若干さような例がございまして、特別会計そのものは必要だけれども、別個につくるのではなくて、類似のものの中に、もちろん勘定は明確に区分するわけでございますけれども、同居するような形をとった二、三の例がございましたために、私どもといたしましても、何でもかんでも特別会計を別途につくれということを言い張ることができませんで、このような形になったわけでございます。これは正直なところの内幕でございます。ただ、あとで振り返ってみますと、この問題といたしましては、やはり何分にも規模が相当小さいものでございますし、それから、いわば中小漁業者に対します災害に対する補てんの問題でもございますので、同居することが非常に異例な形でもないというふうに考えられたわけでございます。ただ、この関係におきましては、従来いろいろな経緯がございましたために、漁船保険関係の方から、会計の勘定の区分なり、実質的な独立性について非常に御懸念がございまして、この点は大蔵その他とも十分御相談をいたしまして、今回御提案いたしております法案をお読みいただきましてもわかりますように、明確な区分ができておりますので、収支の混淆が起こるようなことはないということで、いわば便宜のような方法でございますけれども、私どもといたしましては、これは独立してはいけない問題とは決して考えませんけれども、さりとてこの段階におきまして全く別個に特別会計をつくるということを言い張るのもいかがかと思いまして、政府の内部の方針に従いまして、かような提案にいたしておるわけでございます。
  34. 伊賀定盛

    伊賀委員 次は事務費の国庫負担についてであります。今回予算面では事務費の国庫負担が額は増額されておるようでありますが、元来管理費ともいうべき性質のものでありますから、これは理論的に見ますと当然国が持つべきものであろうと思うのであります。たとえば農災なんかの場合は国が全額持っておるわけであります。したがって、なぜ漁災の事務費の場合には補助金として国がわずかなものを補助していくのか、特に、農災の場合には事務費は国と地方公共団体が全額を持っておるという事情等にかんがみましても、この際、これもいわゆる保険経営を円滑にするという意味からいたしまして、これら管理費に属するものは、むしろ国、または農災のように国と地方公共団体と協力して全額負担すべきだと思いますが、この点ひとつ御見解を承ります。
  35. 久宗高

    久宗政府委員 負担がなるべく軽くできれば一番いいわけでございますが、やはり私どもは、たてまえからいたしましても、また実際やってみました感じといたしましても、これらはやはり本来漁民の方々が相互に助け合うんだというのがこの制度の根幹でございまして、また、それが薄れますことによりまして制度が堕落することもございますので、あくまで、たてまえといたしましては、共済漁民の組織によりましてこういうような仕組みで相互に助け合う、そしてそれがどうしてもできない部分を国がお手伝いをする、こういうたてまえで保険につきましても政府が乗り出すということと、また、事務費につきましても、漁民の組織でみずからとるものと、それの足らず前を政府から援助申し上げる、こういうたてまえを貫いてまいりたいというふうに思うわけでございます。しかし、それが実際の問題といたしまして非常に不十分なために、制度運営がそこからくずれるというようなことがあってはならぬと考えますので、従来比較的十分でございませんでした事務費関係につきましても、今回の改正を機にいたしまして、他とのつり合いも考えまして相当改善をしたつもりでございます。もちろん多々ますます弁ずということでございましょうと思いますけれども、一応この段階ではこの程度のことに考えたいと思っておるわけでございます。  また、農業関係との比較でございますが、多少活動する分野なり活動のしかたも違いますので、人件費の部分とたとえば旅費その他の部分というようなことで直接には比較できないわけでございますが、一応私ども、この段階まで来れば、そう見劣りするものではない、また、事務に支障があるとも考えられないというふうに考えておるわけでございます。
  36. 伊賀定盛

    伊賀委員 いま長官の御説明を承りますと、あまり甘やかすとかえって堕落するのではないかというお話でありますが、私どもは、漁災制度の全体をながめて、漁民政府が甘やかしておるというほど、それほど漁災制度が完備したものとは実は受け取っておらないわけでございます。何もことばじりを拾おうとは思いませんが、しかし、基本的な考え方として、漁災制度長官のほうに——もちろんこれは事務費だけに限っておっしゃったことばだろうと思いますが、事務費とても、いまの御説明のように、まあまあ農災に見劣りがしないという程度のものでありまして、農災よりも上回っておるということになりますとこれは甘やかすということになりますけれども、やはり全体として、そういう甘やかすという意味でなしに、もっともっとこの給付内容を高めるのだという立場から考えるならば、今回の改正にいたしましても、あるいはまた事務費の国庫負担の場合にも、金があったからちいとよけいやろうかということでなしに、人件費の二分の一あるいは三分の二は国が補助する、あるいは旅費の何ぼを補助するというふうに、きちんとした事務費に対する国庫負担の基準というものを設けてしかるべきだと思いますが、いまはどうなっておりますか。
  37. 久宗高

    久宗政府委員 私の説明がつたなくて、甘やかすというふうにお受け取りになったかと思うのでございますが、これは全く逆でございまして、私の申し上げましたのは、他の制度と違いまして、政府の施策がはなはだ不十分な中で、団体としては実によくやっておられたという感じのほうが実は強いわけでございます。ただ、まさにそうあるべきでございまして、機構を完備いたしまして、その機構の力によって全体の保険をするというよりは、あとでお話が出るかもしれませんが、たとえば義務加入制をとっていないというようなことにつきましても、そういう中でほんとに保険需要を掘り起こしてこの共済制度を固めていこうということで、非常に困難な中で団体の方々がお尽くしになった努力は非常に高く評価されていいのではないかと思いますし、また、それがありますので、相当渋い財政当局におきましても、今回のような改正に、資料は不十分でございましたけれどもよく踏み切ってくれたなという感じがございますが、やはりそれがこの制度の生命だと考えますので、そういうような言い方をしたわけでございます。  ただ、そのことと事務費が十分であるか十分でないかということはまた別問題でございますので、先ほど申しましたように、これを全額国が見る、あるいは県が見るという形ではやはり筋が通らないのではないだろうか。やはり、このような組織を運営いたしますについて漁民自身に相当の負担をしていただいて、その足りないところを私どもで補ってまいりたい。その基準その他につきましては、他の類似の機関との公平感の問題もございますし、また、形の上だけではなくて、この仕事に伴います、これは県単位の活動をいたしますので、非常に活動分野が実は大きいわけでございまして、さような行動の実態を考えました補助のしかたが必要ではなかったかというふうに考えますので、事務費の補助につきましても、もう少しきめのこまかい検討は続けてやってまいりたいと考えるわけでございますが、全額見るという形はむしろとってはならないのではないか、とるべきではないというふうに考えておるわけでございます。
  38. 伊賀定盛

    伊賀委員 次は赤字の問題でありますが、きのうも簡単に長官の御説明を承りました。漁災制度が正式に発足するまでの、言いかえますと試験実施の段階赤字はすでに政府のほうで措置したということでありますが、正式にこの保険が発足してからの赤字が、この調査室の資料によりますと、連合会の事業において、昭和三十九年度で約六千万円、昭和四十年度約二億八千万円、昭和四十一年度約一億二千万円の計四億六千万円、都道府県共済組合においてほぼ六千万円、合計五億二千万円が赤字として見込まれる、こういうことになっておるようでありますが、きのうの長官の御説明によりますと、長期的展望の中で保険団体がみずからの力で解消してもらいたいと、こういう御趣旨のように承ったのでありますが、これもまあ考え方で、考え方によりますと、保険制度三本の柱がいままでは一本抜けておったわけであります。いわばこの漁災が一人前の保険として出発するのはこれからでありますから、当然、一人前でなかった当時のこれらの赤字というものは、これは国が全額措置すべきものだろうと思います。もしこのまま放置いたしますと、今回のいろいろな改正等によって加入率がふえるとかいうことでこの保険内容がうまくいけばよろしいのですけれども、私の見解では、なおここしばらくの間はむしろこの赤字が続くんではないかと見るわけであります。何となれば、政府のお見通しのように、必ずしもこれらの内容ではなかなか漁民には魅力がないから、そう急速な加入率の伸展を示すということは見込まれない。といたしますならば、この五億数千万円は、年々これは利子利子を呼び、子供が子供を呼んで累積することは明らかでありまして、そうなりますと、ただでさえ一人前でないこの漁災制度の根幹をゆるがすような一つのガンになってくる可能性というものは多分にあるわけでありまして、この際ひとつ、この漁災制度の将来の円満な発展を願うとするならば、政府は思い切って、これらの赤字というものを、すっきりとした形で借金を返して、そうしてきれいさっぱりとした気持ちで出発させることが適当であろうかと思うのでありますが、具体的に御答弁を賜わりたいと思います。
  39. 久宗高

    久宗政府委員 この赤字処理の問題につきましては、与党の御質問の中にも出ておりまして、その際にもお答えしたわけでありますが、この際何とかしたらいいではないか、また、このことが実際やってみました場合に相当実際上の障害になるのではないかという懸念、これは私どももいろんな角度で吟味いたしてみました。それで、結論といたしましては、これは一応の理屈になるかもしれないのでございますが、本制度の試験研究期間を経過いたしまして、具体的な発足をして動き出したわけでございます。これの際には、もちろん、その前の試験研究結果のデータに基づきまして、少し先の長期的な展望で料率を組んで動き出したわけでございます。その結果といたしましては若干の分野に相当赤字が出ておるわけでありますが、考え方といたしましては、やはりそれは長期計画の中の初期の一部分でございまして、ごく理論的に言えば、その設計の最終段階に至りまして、プラス・マイナスが出て、何年間でどういう均衡をしたという、そういう設計がよかったかどうかという問題が吟味されるべきだろうと思います。しかし、現実の運営の中では、さようなことではなくて、他の制度でもやっておりますように、数年たちますと、特に自然災害を相手にしております場合にはその経過的なギャップも大きいわけでございますので、料率の改定をいたしまして、その前の段階での見通しに、その後あらわれた経過から見て、この料率ではまずかろうという場合には料率をふやし、あるいは黒字が大きく出ました場合には料率を下げるということで、過渡的な調整をしながら均衡をはかっていこうとしておるわけでございます。ちょうど現在の段階では発足してごくわずかの時期でございますので、この段階におきます赤字の問題は、料率改定、あるいは保険仕組みの変更に伴います全体の経営安定化ということの中で、私どもといたしましてはそういう経過の中で慎重な検討をいたしたいというのが結論でございます。つまり、この段階で直ちに数年間の部分だけを切り放してこれをはずしてしまうということは、保険理論の組み立てから言ってもおかしいのではないかという考え方でございます。逆に申しますと、かりに黒字が出ておったという場合が予想されます。発足当時偶然に何年間かの計画の中で非常な豊漁が続きまして全く保険支払いがなかった、膨大な黒字が数年たまった、そこで制度改正が起こったという場合にそれではその黒字を吐き出すかという問題と、いわば形式的には同断でございまして、そういう場合におきましては、その蓄積をそのままにしながら、次の数年間の中でそれがどういうふうな危険の度合いになってあらわれてくるか、こういう長期的な展望の中で処理すべき問題ではないだろうかというふうに思うわけでございます。  もちろん、これをやってまいりました場合に、先生が御指摘になりましたように、加入が必ずしもこの制度改正によって十分でない、そこへさらにまた大きな災害が起こった、その額が相当な額になりまして、基金としても相当の大きな貸し出しになるし、その金利負担がさらに大きくなるといったような問題が生じました場合には、その段階におきます内容といたしまして、これを放置いたしますことが本制度の根幹をゆさぶるようなものにでもなれば、これは処理しなければいかぬと思うわけでございますが、それはまだ今後の問題でございますので、少なくともこの段階での処理はしない。しかし、私どもは、それを永久にしないと申し上げておるのではないのでございまして、保険設計も変わりましたし、経営安定がはかり得るこの段階での一応ベストを尽くした案を実施いたしまして、その経過の中で処理を考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  40. 伊賀定盛

    伊賀委員 御説明を承っておりますと、黒字の場合と赤字の場合が同じだというお考えのようでありますが、むしろ私は逆でありまして、黒字であろうと赤字であろうと、問題は漁業者をどう救っていくかというところにこの保険制度の本来の意味があるわけでありまして、もちろんこれは、保険理論としては保険組合の経営安定ということが基礎になりましょうけれども、それは保険理論でありまして、漁災制度目的というのは、保険運営を中心に考えるのではなくして、いかにして日本のおくれた漁民の生活を守るか、あるいはその生産の阻害要因を排除していくかというところに保険制度目的があるわけでありますから、黒字の場合は当然これもやはり漁民に返すべきでありましょうし、赤字の場合といえども、これは漁民の負担において解消させるということではなしに、一そう漁民にサービスするという立場から考えるときに、むしろ私は、この種赤字というものは組合に転嫁すべきものではないと思うのです。しかもそれが、保険団体がむちゃくちゃな経営をしておるとか、あるいは支出に疑うべき余地があるとかというようなことならともかくとして、少なくともこれは、試験期間の七年間と、今回のものは約三年たっておるわけで、約十年の間、密接な政府の監督のもとに、あるいは連携等も密にしながら進めてきて、なお事業経営赤字が出た、それもこの管理費でなくして事業直接から赤字が出たという分野については、むしろ私は政府が責任を持って解決すべきだろうと思います。  なお、いま長官のお話を承りますと、理論的にあるいは保険理論からおかしいということでありますが、政府がどうしても全額を解決するということができないとするならば、むしろ私は、利子だけでも相当額にのぼるわけでありますから、せめて利子ぐらいは政府が見るべきではなかろうかと考えますが、この点あわせてひとつお伺いいたしたいと思います。
  41. 久宗高

    久宗政府委員 前段の考え方といたしまして、私どもも気持ちとしては全く同じなのでございます。漁民に要らざる負担をかけたくないし、何か借金を背負って不安だという気持ちは持たせたくないという気持ちは全く同感なのでございますが、申し上げておりますのは、さっきちょっと黒字の問題を申し上げたのでございますが、黒字が出ておりましても、これから制度が新しくなるからそれは召し上げるというようなことをもしいたしますとすれば、それは間違いでございまして、その黒字は、たまたま初期の段階に出たわけでございまして、理論的には、残された長期計画のあとの部分では赤字が出るということも予想されているわけでありまして、その赤字の補てんのために、たまたまその時期に黒字になって経理の中に残っておるということでございます。ちょうどそれを裏返しますと、今日赤字が出ておりましても、たまたまこの時期に不漁が重なったわけでございまして、あるいは料率の十分でなかった点と関連して赤字が出ておるわけでございますので、長期的な設計から申せば、当然後年度に黒字の出るような時期があってそれとバランスするべきはずだ、それが不十分であれば、料率改定をしていこう、こういうような形にならざるを得ませんので、制度を変えましたこの段階で、初期の一、二年のものを直ちに処理をしてしまうというのは、これはやはり保険数理の関係から申し上げれば適当でないと言わざるを得ないわけでございます。ただ、そのことが、繰り返し申しますように、相当額がかさみまして、実際の保険運営あるいは団体運営に著しい支障を起こすようなことがございますれば、これは保険全体の問題と関連いたしますので、その段階での処理がまた必要になるかもしれません。しかし、これは、今後の保険設計も変わりましたし、これによって経営安定が一応予想されますので、その長期展望の続きの中で慎重に検討して対処していくべきものではないだろうか、少なくとも、この段階で直ちに処理しようといたしますと、いろいろな保険理論上の制約その他もございまして、私どもといたしましても、それをぜひやろうとしても、それは理論的にもできないし、実際的にもできないのではないか、こう考えておるわけでございます。  ほかにもこのような例がございまして、たしか木船保険でございましたが、やはりある時期に制度改正がございまして、その間の処理をどうするかという問題の場合にも、その段階での処理はいたさなかった例がございます。それから、たしか農災のほうでございましたけれども、やはりこの種の問題がございまして、全体の農災運営に連合会の不足金の問題が非常な大きなガンになるような段階になりまして、ちょっと先生の御指摘のございましたような金利問題を含めまして、たしかある段階での処理をいたしたという例があったと思います。  金利の問題につきましては、当初に黒字が出ておりますれば、むしろ金利がこちらにたまるという関係になりますし、赤字が偶然に初期に出ておりますれば、その部分がいわば負担になってくるわけでございますが、保険の全体の計算の中からは、いわば金利問題は除かれておりますので、計算上に入り得ない問題だと思いますので、特にこういう年々の災害を処理いたしますものの中では、実はこれが非常に問題な点で、未解明な部分があるように思います。  したがいまして、さような問題も含めまして、やはり新しい制度によって、これに先行いたしました長期計画の展望の中で料率改定をした上で実行してみまして、その経過の中でこの赤字問題の処理につきましては慎重な態度で臨みたいと考えておるわけでございます。
  42. 伊賀定盛

    伊賀委員 次は、不漁準備積み立て金の問題でありますが、これは三十九年の当委員会の附帯決議の七項目で取り上げておるところでありますが、この不漁準備積み立て金についての農林省の考えをまず承りたいと思います。
  43. 久宗高

    久宗政府委員 これは本制度の発足段階相当議論があったように承っておるわけでございますが、確かに、考え方といたしまして、農業関係でございますとか漁業関係におきまして、特に自然災害に対処しようといたします場合に、漁民ないしは農民の心理から申しまして、比較的保険になじまないという関係から見ますと、一つの非常に検討すべきおもしろい問題ではないかというふうに私個人としては考えるわけでございます。ただ、この前の論議の際にもこれはたしか大蔵大臣からお答えがございましたように、このような利益保留の準備金の設定を認めました場合に、他の関連がいろいろございまして、いわば預貯金と変わりのない形になりまするので、これらの関係漁災に限りまして取り上げようといたしましても、他の全体の金融制度なり、あるいはおそらくこれは税の関係も出てまいると思うのでございますが、さような関係から相当問題があるので、取り上げかねるというように御答弁になったようでございます。私どもといたしましては、やはり、少なくとも現在の段階におきましては、このような不漁準備積み立て金制度を組み合わせましてやっていくにつきましては、いま申しましたような他の金融制度なり税制の関連との問題がございまして、漁業の特殊性だけでこれを切り離して処理いたしますのには多少ちゅうちょを感じるわけでございます。しかし、御指摘のように、これはやはり相当漁業その他農業関係につきましてはおもしろい問題、と申しますと語弊がございまするけれども、農民心理なり漁民の心理の関連におきまして、この種の制度をうまく運営してまいりますについて、やはり相当検討してよろしい問題だと思うわけでございます。なおもう少し時間をかしていただきまして検討さしていただきたいと思うわけでございます。
  44. 伊賀定盛

    伊賀委員 ちょっとひそひそ話をしておりまして説明を聞き漏らしたのですが、税法上何か問題があるとおっしゃいますか。
  45. 久宗高

    久宗政府委員 詳しくまだ詰めておりませんけれども、その種の問題が当然出てまいる性質のものだなという感じを持ったわけでございます。税の問題は、私もいま詰めておりませんので、その程度にお聞き流しをいただきたいわけでございますが、金融制度といたしましては、やはりこのような特殊な金融制度保険の組み合わせ問題ということは、他にいろいろな問題、議論を誘発する問題がありまして、この段階では割り切れないというふうに御答弁申し上げたいと思います。
  46. 伊賀定盛

    伊賀委員 今後の課題として御検討いただくということでありますから、やむを得ぬと思いますが、こういう言い方をしてどうかと思いますが、農民と漁民の個人個人の性格を見た場合に、どっちかといいますと、漁民の場合は、宵の金をあしたに残さずといいますか、そういうような性格がありまして、豊漁のときにはわっとはでにやるが、ないときには何もないというようなことが性格的にもありますし、あるいは生活面から見ても、たとえば一枚の板の下は死の海だというようなところから、そういうせつな的な生活態度というものが出てくるのではなかろうかと思います。そういう意味から見ましても、豊漁の年に不漁のときに備えて一定のたくわえをするということは、農民の場合よりもむしろ漁業の場合の必要性のほうが、先ほど申し上げたような理由から一そう必要の度合いが高かろうと思います。そういう意味で、ひとつお考えのとおり今後の課題として、しかもなるべく早い機会にこれらの措置をおとりいただきたいと思うのであります。  ただ、この場合、不漁準備積み立て金には二つの考え方があるようでございまして、豊漁の年のものを翌年に積み立てておいて、そして年々積み立てていくわけですが、事故が発生した場合は、その積み立てたもので処置をして、その残りを共済組合が措置するのだ、こういう考え方と、もう一つは、豊漁の年の積み立て金をその翌年の掛け金に充てるのだという二つの考え方があるようであります。したがって、これらの検討にあたりましても、これらの点について御留意を賜わり、かつ、これを制度化する場合にも、あくまでも漁民の待遇をよくするというところに重点を置いてこの不漁準備積み立て金というものの検討をひとつすみやかに進めていただきたいことを要望いたしたいと思います。  次は責任分担の問題でありますが、いままでは一対九ということで組合と連合会がおのおの負担しておったものが、今回の改正に伴って、組合が〇・二で、あとの九・八を連合会と政府が責任を持つ、こういうふうに責任分担が今回分かれたわけでありまして、もちろんこれはおのおの一つ保険理論によるものでありましょうが、よく考えてみますと、なるほど、政府は連合会の一定部分以上のものを責任を持つのだといい、あるいは連合会も一定部分の責任を持つわけでありますが、これは連合会と政府のほうはいいかもしれませんけれども、今度組合の立場に立ってみますと、いわばうまみといいますか、連合会のほうにはうまみは依然としてありますが、——うまみという表現がいいか悪いかわかりませんが、せっかく一生懸命になって勧誘して回るのは連合会の人たちじゃないのでありまして、実際苦労して勧誘するのは組合であります。その組合が、責任も軽くなったかわりに組合に残る財源もわずかだということで、組合のほうがむしろ勧誘に一生懸命にならぬのではないか、こういうことも言われておりますが、この点についてはどうですか。
  47. 池田俊也

    池田説明員 連合会と組合との責任分担の関係でございますが、今回の改正におきましては、従来は九対一の関係で、連合会が九、組合が一、こういう関係になっていたわけでございますが、今回の改正では、一定のところで線を引きまして、それ以上は連合会、それ以下におきましては八対二の割合で責任を分担する、こういうふうに考えているわけでございますが、この考え方の背景と申しますか、考え方の基礎になっておりますものの考え方といたしましては、まず災害の程度の比較的浅いものと深いものとを分けて考えまして、浅いものにつきましては、先生いま御指摘いただいた考え方でございますが、より組合に責任を持たせる、そういたしますれば、加入の促進でございますとかあるいは損害査定にもより責任を持って当たれるのじゃないだろうか、こういうことで責任の負担割合を多くするという考え方でございます。ただし、こういう組合につきましては、おのずから財政的な基礎も連合会に比べると弱うございますので、あまり程度の高い災害について一定の比率で責任を持たせるということは問題があるということで、一つのところで線を引いて、上のほうは連合会、こういう考え方にしたわけでございます。ただ、そういうふうにしたわけでございますけれども、全体の責任の全部を平均合計いたしました額といたしましては、従来とあまり変わらないところに一つ基準を置いて考えたらどうだろうかというふうにしたわけでございます。大ざっぱの考え方でございますが、大体そういうふうな考え方から今回の案を作成した次第でございます。
  48. 伊賀定盛

    伊賀委員 一つ保険理論に従ったということでありますが、しかし、この問題は、やはり実施の段階になって、実施をしてみればおのずから結論が出てくるわけでありますが、いまの御説明の中に、力が弱いから、組合には小さい災害の責任だけ持たせて、大きいものは連合会が持つのだという、それはよくわかるのですが、そういう支払いの責任が小さくなったかわりに、それだけ財源も小さくなった。財源も小さくなったし、責任も小さくなったから、今度は勧誘する面についての責任も小さくなるわけで、一方で責任が小さくなって、勧誘するほうの責任は重大な責任を感じますというのは、これは正常な感覚を持つ常識としては考えられない、こういうことに私は思うのでありますが、お説のように、財源も少なくなった、支払い責任も軽うなった、だが勧誘についてはそれ以上、二倍、三倍重大な責任を持って努力いたします、こういう理論が成り立つでしょうか。
  49. 池田俊也

    池田説明員 先ほど御説明申し上げたわけでございますが、一定のところで線を引きまして、上と下で組合が関与する考え方を変えたわけでございますが、全体といたしましては、組合の手持ち責任あるいは掛け金におきましては従来とほとんど変わりがないわけでございます。したがいまして、組合といたしましてはうまみがなくなったと言われますが、われわれといたしましては、そういうことはむしろないのではなかろうかと思っております。災害の程度が低い場合におきましては、これはむしろ発生の頻度も多いわけでございますので、そういうものについては組合としては二割の責任を持つ。したがいまして、それに相応する掛け金を持つわけでございますから、特に組合が負担の割合が軽くなってうまみがなくなったということはないのではなかろうかと考えるわけでございます。  一つ補足いたしまして御説明申し上げておきたいと思いますが、こういうようにいたしました一つ考え方の裏には、農業の場合でございますと、これは過去長い間の実績もございまして、掛け金の算定等もかなりデータがあるわけでございます。それに対しまして、漁業の場合には、比較的年次も少のうございますし、御承知のように加入率が非常に低いわけでございますので、そういうようなデータの点から、農業に比べるとかなり条件が悪いわけでございます。したがいまして、過去のそういうデータを基礎にして料率の算定をいたすわけでございますけれども、必ずしも実際の被害のあらわれ方がそれとマッチをしない場合もかなりあり得るわけでございます。そうなりまして、非常に程度の高い災害が、かりに特定の加入率の低い組合におきましてあらわれてきますと、これは非常にその組合の存立の基礎をあぶなくするような問題になりますので、先ほど申し上げましたようなことにしたほうが組合の財政的な基盤という点から申しましてもよろしいのじゃなかろうか、また、むしろ程度の低い災害におきましては組合の責任は多くなるわけでございますから、先ほど御指摘をいただきました加入の促進等にもむしろ好影響があるのじゃなかろうか、かように考えるわけでございます。
  50. 伊賀定盛

    伊賀委員 むずかしい数理の計算等はわかりません。いずれにいたしましても、私は、むしろその他の分野では、まあ連合会にしましても、いわゆるそのうまみといいますか、条件がよくなったけれども、いまの御説明によりますと、組合は前と同じであります。先ほど私は、支払い責任も小さくなったが財源も小さくなった、こう指摘したのですが、いやそうじゃない、前と同じなんだ、こういう御説明なんでありますが、前と同じだとするならば、連合会にしましてもその他はよくなったが、組合は前と同じだ、しかも責任だけが、一そうその責任を痛感して任務を果たさなければ漁災制度そのものの加入率その他の面から見ましても発展しないのだということで、一そう責任が重大になってきたわけであります。そういう意味で、実際実施する段階ではたして所期のように組合が一そう精励をするかどうかということについては私は疑問を持つのでございますが、しかし、お考え方がそのようならやむを得ません。今後組合が一そうこの漁災制度発展のために努力するように、なおひとつ御検討をわずらわしておきたいと思います。  それから、その次は、これもきのう問題になったのでありますが、任意共済と今回の漁災を一緒にしたらどうかという点でありますが、最初に、再度この問題についての考え方を承りたいと思います。
  51. 久宗高

    久宗政府委員 これは、いろいろな発足の経緯から申しまして、そろそろこの段階で一緒にしたらどうかというような御意見もあり得るわけでございますが、端的に申しまして、私どもといたしましては、一番根幹になります漁災制度そのものが、発足のいろいろな経緯によりましてはなはだ不十分な形で実施に突っ込んでおりますので、何と申しましても、この柱をまずしっかりさせたいという気持ちが先に立つわけでございます。今日のような加入状況でまいりますと、まことに中途はんぱなことにもなりますので、この機会に、保険制度ないしは給付内容の改善あるいは掛け金補助のアップといったようなものの組み合わせをいたしまして、全く初めてこの制度に取り組むくらいのつもりで、本格的に加入の説得でございますとかそういう形をいたしまして、なるべく最近の機会に保険制度としての体をなしたい、これに集中的に努力をつぎ込みたいと実は考えておるわけでございます。  ごく理論的に申し上げれば、いまの自然災害を対象といたします漁災のほうでやっております内容と、いわゆる任意共済の問題とは性質が違いますので、一般の損保その他のほうにおきましてはこれの兼業を禁止されておるような実情でございます。農村なり漁村におきましては事情が違うと私は思いますので、ある適当な段階において考えるべき問題かと思うわけでありますが、少なくともこの段階におきましては、まず本体のほうを完ぺきにいたしまして、その上で考えたいという気持ちでございます。
  52. 伊賀定盛

    伊賀委員 いまお話しのとおり、法的根拠も違いますし、本法のほうに重点を置くという御趣旨はわかるのですが、先ほど、この特別会計の問題では、いま漁船保険に特別会計があるので、これと一緒にしよう、しかもそれは、公団、公社等の設立をできるだけ押えるんだという趣旨からも、それが一つ理由になっておったわけであります。そうしますと、もし公社、公団の設立を押える、ないしは統合していくんだという方向ならば、理論的には多少無理がありましても、この際、任意共済とこの漁災を一緒にすることが、公社、公団の廃止または統合の線に沿うわけであります。もう一つは、本来のこの漁災制度の充実に力を注ぐということでありますが、たとえば、人的な資源といいますか、あるいは事務所とかその他、いまの任意団体が持っておる機構なりあるいは組織なり、資金——資金の問題については問題がありますから、いま資金は言いませんけれども、そうした任意共済が持っておる余力というものを本法の発展に寄与せしめるという意味からいたしましても、しかも、この漁災法というものがいままではいわばびっこで歩いておったわけですけれども、それが一人前になって歩き出したのでありますから、この際お考えになるべきではないかと思うのです。適当な時期にと言われましても、その適当な時期というのは、一体どういう条件が整った場合が適当なのか。そういう条件があるならば、これこれの条件が整った場合がいわゆるこれを一緒にする時期であるというふうに言われないと、ただばく然と、当分は本法の実施に一生懸命になりまして、その後ゆっくり考えましてということでは、本来やる意思がない、こういうふうに考えてもいいのではなかろうかと思うのでありますが、そこら辺をもう少し具体的に御答弁いただきたいと思います。
  53. 久宗高

    久宗政府委員 先ほども申し上げましたように、漁災制度の本体のほうと、いまの厚生共済、これはもちろん御説明するまでもなく非常に長期的な設計のものでございますし、また、その意味で、お預かりするものにつきましても、加入者保護、一般の金融問題とも関連いたしまして、非常に厳密な経理の要るものと考えられるわけでございますが、それを受けとめます本体のほうが何ともじくじたる形でございますので、これをまず確実に受けとめられる体制をぜひしきたいというのが、私どものこの段階での気持ちであるわけでございます。  実際問題といたしましては、御指摘のように、両方の関係者が事実上同居しておりましたり、あるいは相助け合ってやっておりまするのが実情であると思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、そういう関係もございますので、少なくともこの段階におきましては、本体のほうの加入に全力投球をいたしまして、それのめどのほぼついたところで次の問題を考えたらどうかということでございます。  したがいまして、どういう条件とか、またいつごろということは、ちょっとこの段階で私は申し上げかねるわけでございますが、ただ、私どもの気持ちを率直に申し上げれば、いつまでもただ理論の上でこれは違うんだという形でほうっておく性質のものではない、適当な時期に、それこそ団体の関係の方が本体のほうにも相当の自信を持ち、この段階になればもういいだろうというお気持ちがいわば下から十分な形で盛り上がりました場合に考えてよろしい問題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。根本的には、私は、いけないとか、そういう性質のものでは必ずしもないだろうというふうに考えておるわけでございます。
  54. 伊賀定盛

    伊賀委員 どうもいまの御説明では少し的確を欠くように思うのであります。たとえば、先ほど私は、これこれの条件があったら、こう申し上げたのでありますが、その条件には主体的条件と客観的条件があるわけでございまして、長官はその条件を一々御指摘になりませんから、少しはっきりしないのですけれども、たとえば、主体的条件というのは、いま任意共済をやっていらっしゃる人的要素、いま漁災をやっていらっしゃる人的要素、そういう主体的な方々が、合併はいやだ、こう言うのか、あるいは、主体的要件としては、そういう人たちは一生懸命やろうと言っておって整っておるけれども、客観的条件としてこうこうこういう障害の条件がある、こういうことなら私は納得ができるんですけれども、どうもいまの長官の御説明では、とにかく本法が受け入れられる体制になったらとおっしゃるわけですけれども、本法が受け入れられるという意味がどういうことなのか、もう少し具体的に御説明いただかないとわかりませんけれども、たとえば、事務所とかあるいは人的要素というものを含めて任意団体のほうの事務所に行ってもいいわけでありますし、あるいは漁災の事務所に行ってもいいわけであります。あるいは、人的なものにいたしましても、それは交流したらいいわけでありますし、そこら辺どうも具体性を欠いた抽象的な御説明でありまして、私といたしましては少し理解いたしかねる点がありますので、もう少し具体的に御説明いただきたいと思います。
  55. 久宗高

    久宗政府委員 農林省におきましても、この種の問題で他の分野で非常にむずかしい問題が一時ございまして非常に困難した経緯があるわけでございますが、幸い、漁業関係におきましては、さような問題ではございませんで、先ほどの御質問で申しますと、むしろ後者の問題両方の間に確執その他はないので、ただ時期の問題というふうにお考えいただいてよろしいというふうに思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、漁災制度そのものが、たびたび申し上げますように、現状のような形でございますので、これに没頭いたしまして、まずこれのめどをつけた段階におきまして、あらためて御検討いただいたほうがよろしいのではないか、また、団体のほうにおかれましても、さようなことを頭に置きながら御検討いただいたらよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  56. 伊賀定盛

    伊賀委員 まだ、私は納得しかねるのでありますが、いずれにいたしましても、推論いたしますと、要するにいまの漁災が充実してからということのようです。主体的条件も整っておる、いざこざはありません、客観的条件というのは、いまの本法の漁災が充実してから、こういう御趣旨のようであります。  そこで、これは、中央では分かれておりますが、県段階なんかになってまいりますと、同じ事務所で同じ人がやっておるというような事実があるわけであります。したがって、もし早急に任意共済漁災制度を統合することが困難であるとするならば、いうところの漁災制度の充実発展を一そう助長するためにも、そうした任意共済漁災が同じ屋根の下で同じ人間がやって、しかも対象が同じだ、こういういまの状態ですから、たとえば事務の委託であるとか、あるいは加入手続といったようなものがスムーズに行なわれるような措置といいますか、手続等に必要なところがあれば所要の改正とかいうようなことは早急にやる必要があろうかと思うのでありますが、その点はどうでしょう。
  57. 久宗高

    久宗政府委員 御質問を私は正確に理解しておるかどうか……。すぐ制度的にはできないとしても、その事務を委託したらどうだろうかという御質問でございましょうか。おそらくそういう御趣旨ではないかと思うのですが、私どもといたしましては、繰り返し申しますように、いわば主体的にはいろんなむずかしい問題はあまりないと思うのでございます。ただ、客観的に見ました場合に、ごく端的に申し上げれば、それも大事だろうけれども、まず本務をしっかりやりなさい、そして、それがしっかりできるようなら何も問題は必ずしもなかろうといった評価が第三者からもできる程度の体制を整えてやるべきではないかというふうに全般的には考えておるわけでございます。したがいまして、この段階でかりにそういうことを予想する場合に、現在の任意共済関係をそれでは事務を委託してやってみるのはどうかという御意見も実はあり得るわけでございますが、これはやはり協同組合の原則に基づきました体系としての共済事業として位置づけられておりますので、協同組合がその事務の一部を他に委託するという一般問題との関連がございまして、あるいは法律改正の必要もあろうかと思いますし、そういう形式上の難点がございますのと、時期といたしましては、制度的に解決するかあるいは委託するにいたしましても、この段階で同時にそれをやるということにつきまして若干のウエートの置き方を変えまして、やはり本務を固めました上でそのような仕事を取り込んでいく、それが主体的にも整い客観的にも外から見てなるほど妥当だというような体制になりまして完結すべきものではないかというふうに、この段階では私どもとして考えておるわけでございます。
  58. 伊賀定盛

    伊賀委員 御説明を承りますと、主体的条件は整っておる、客観的条件としては、はたから見てまあまあということだということで、客観的条件の具体性がないのですけれども、もう少し私のほうから申し上げますと、たとえば、現在時点における漁災加入率の平均が三〇%しかない、したがって、この加入率がまあ五〇%以上になった時点とか、あるいは七〇%以上になった時点とか、あるいはまた、経理内容から見て、約五億の赤字を抱えておるので、この赤字がなくなった時点であるとかいうような、そういう具体的なことでないと、まあまあはたから見て任意共済と一緒にしてもいいんだという、まあまあではちょっと理解しかねるのでありまして、先ほど申し上げましたように、本法の漁災を一そう充実するんだという場合に、府県段階ではもう御承知のとおり同じ事務所で同じ人がやっておるわけで、むしろ一緒にしたほうが、本法のこの漁災制度の充実の近道ではなかろうか。ただ、長官は、この際政府保険の実施と同時にやるということについて何かこだわっておるといいますか、ことばの上で拝承いたしますとそういう面が見えるのでありますが、もしそうであるとするならば、主体的条件が整っておるのだし、しかも、赤字とはいいながら、その赤字は長期展望の中で解決できるんだというお見通し長官は持っておられるのですから、そういたしますと、残る問題は、まあ政府保険で一人前になったこの時点で吸収するというのはどうもかっこうが悪いから、ひとつ早急に整備していきましょう、こういうふうに受け取ってもよさそうな感じを長官の御答弁から受けたわけでありますが、どうでしょう。   〔高見委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 久宗高

    久宗政府委員 主体的条件が整っていると申したのでありますけれども、少しことばが足りませんので、内部におきましては、いわゆるけんかと申しますか、取りっこと申しますか、そういうものがないという意味を申し上げたわけでございます。そういう意味の困難性はないわけでございますが、私どもといたしましては、先ほど現在の本体のほうが体をなしてないと申し上げたのでありますが、全国的に見ますと、たとえば、ある種の漁業は何十%加入がございますとこう申しましても、その内容をさらに地域に落として見ますと、非常に局部的な地域に片寄っておりまして、全国的に見ますと相当加入率がいい漁業種類におきましても、地域的な片寄りが非常に極端な形で出ておるわけでございます。したがって、ごく正直に申し上げますれば、ある種の漁業ではある地方では全然手がついてないというような状況であるわけです。みんながまんべんなく何%までは加入できていてそれが不十分であるというようなものではございませんで、厳密に分析いたしますと、ある県では全然手がついてない、極端な表現をいたしますとそういう事情でございますので、その根っこのほうの、しかもこれは全国漁民を相手にした制度でございますので、その辺の現在の本体のほうの体制をまず本格的に一歩一歩やりだしまして、そこで初めて共済制度がある点では事実上始まるというような実態でございますので、その際に決して片方のほうが必要でないとかあるいは上下をつける問題ではございませんけれども制度といたしましては、やはり根幹の制度をまず進めまして、それに支障のない時期に組み入れていったらいいのではないだろうかと思うわけでございます。もちろん、関係者がある県で同居をしておりまして仕事を相互に手伝っておるというような事情は十分承知しておりますけれども、その努力があり得るとすれば、この段階では本体のほうにフル投球していただきたい。そこが固まりませんと、うかつに受け入れることは、全体の制度としてもあぶないし、第三者の御批判にもたえないであろう、こういうふうに思うわけでございまして、また、その判断につきましては、これを実施担当いたします団体の中で一番実情を知っておりますので、そういうものを外に向かって要求いたしましたりあるいは国会で御審議いただきますのについて、われわれ自身が、団体も含めまして、じくじたるものなしに、いよいよこれをやりたいのでやらしていただきたいという段階において御判断いただけばというふうに思うわけでございます。
  60. 伊賀定盛

    伊賀委員 そうしますと、最後にこの問題についてお伺いしておきたいのですが、行政の姿勢といいますか、行政指導の点であります。いまの御答弁によりますと、おのおのの団体は、いわゆる政府、農林省以外の団体でございますから、もちろん一つの独立した人格でありますけれども、少なくとも、独立した人格とはいいながら、農林行政の一翼をになっておるわけでありまして、農林行政における主体的役目というものは農林省、特に水産庁が持っておるわけでありますから、水産庁の行政指導の姿勢というものが大きくこれらの団体に影響することは当然であります。その場合におけるこの問題に対する行政指導の姿勢というものはどういう姿でこれからお進めになるのか、御説明いただきたいと思います。
  61. 久宗高

    久宗政府委員 私どもとこの種の団体との関係は、まあいわば水くさくないのでございまして、政府としての考え方をはっきり申し上げれば完全にわかっていただけると思うわけでございます。したがいまして、展望といたしましては、事務の便宜その他からいたしましても、当然あるべき姿だなというふうに思いますので、問題は、その時期の点でどうやって努力いたしまして第三者の方にも御納得いただけるような形で完成するかということだというふうに理解しておりますし、また、さような意味で指導してまいりたいと思っております。
  62. 本名武

    本名委員長 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時五十四分開議
  63. 高見三郎

    高見委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、質疑を行ないます。伊賀定盛君。
  64. 伊賀定盛

    伊賀委員 昨日の与党の方の質問にもあったのでありますが、義務加入制について考え方を承りたいと思います。
  65. 久宗高

    久宗政府委員 義務加入制につきましては、前回もお答えしたわけでございますが、一番基本的な考え方といたしましては、農業災害補償制度のような場合、ああいう態様の災害に対応しようといたしますと、全体の構構をああいう形で組みまして保険設計を立てる、そういう形でないとおそらく設計が立たないという性質の問題だと思うわけでございますが、漁業共済の場合におきましては、もちろん、一番いい形は、全部の方が加入して、したがって保険仕組みといたしましても非常に大きなプールの中で考えれば一番運営はよくいくはずでございます。しかし、漁業経営内容保険の性格から見まして、そういう機構にたよって全体の仕組みを考えますよりは、どちらかと申しますと、やはり保険需要は農業より強いのではないかと考えられますので、むしろそのような漁民の方々の保険需要を積極的に掘り出しまして、それを中心に制度を固めていく、こういう形のほうが漁業のほうにはぴったりするのじゃないかという考えが基本にあるわけでございます。したがいまして、ただ保険の便宜の関係から義務加入ないし当然加入という形で仕組みをつくってその中に取り込んでくるというよりは、積極的に漁業者保険需要を喚起しながら、それに従った設計で組み立てていくほうが、この制度の将来性から見ましてむしろ本格的ではないかという基本的な考え方があるわけでございます。  そこで、もう少し技術的な問題で申し上げますれば、一つには、これが農災のほうと違いまして、価格関係を織り込んでおるわけです。漁獲高と価格をかけ合わせまして全体の保険設計にいたしておりますので、そういう形にいたそうといたしますと、農災の場合には、被害があればただそれについての事故発生の通知程度の義務づけを一般的にすればよろしいわけでございますが、御承知のように、漁業共済におきましては、加入者の義務といたしまして、操業状況でございますとか、あるいは、これをチェックいたします意味で、販売先でございますとか販売金額といったようなものにつきましても定期的な御報告をいただかなければ処理ができませんので、相当経営内容に立ち入った義務を、この保険に進んで入られる方には課しておるわけでございます。こういうことを当然に一般の人に課してよろしいかどうかという問題につきましては、若干法制上の疑義があろうかと思います。  それから、もう一つのテクニカルな問題でございますけれども漁獲金額の把握の非常に困難な方があるわけでございまして、こういう方も加入はできないわけでございますが、あらかじめどういう方がさような意味漁獲金額の把握困難な方であるかということを制度的に予定することができない。そうなりますと、加入の義務を負う方の範囲をあらかじめ確定できないということから、そういうことを前提にした全体の設計が困難であるという、これは保険設計上の技術的な困難でございますが、そういう問題があるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、やってみた便宜的な考えから申しますと、義務加入制というような形でどんどんすそ野が広がっていくほうが保険経営としてはやりいいように思いますけれども、それはある意味でこの制度の一番基本になりますような精神なり性格なりにひびを入らせる問題もございますし、先ほど申しましたような、ごく技術的な問題でございますけれども、乗り越えがたい若干の困難もございますので、義務加入制という形にたよってこの制度を拡大するという形はとらないという考え方を持っておるわけでございます。
  66. 伊賀定盛

    伊賀委員 いろいろいま御説明を承りましたが、農業と漁業を比較した場合に、漁業の生活の安定の度合いと農業の生活の安定の度合いと、いずれが安定の度合いが高いかということを考えますと、これは常識的にも言えることでありまして、明らかに農業のほうが安定の度合いというものは高いわけであります。漁業が農業に比較して安定の度合いが低いということは、とりもなおさず、漁業それ自身、漁民の力ではどうにもしようのないものがあるわけです。災害の発生率も農業よりも高いわけでありますし、当然そこに、漁業者みずからの力だけでは救い得ない、立ち上がり得ない、与えられた条件というものがあるわけですから、したがって、保険経営そのものから考えても、漁民の生活の安定を保障するという意味から考えても、私はむしろこの際義務加入制をとるべきだと思うのです。いろいろ理由はありましょうけれども、義務加入制をとるべきだと思うのです。  したがって、いま長官からいろいろ困難なことの御説明があったわけでありますが、それらの困難は、今後調査等を一そう進めることによって、それらの困難な条件というものは克服できるのではなかろうか、むしろ、それらの困難な条件があるとするならば、一つ一つその困難な条件を克服する方途というものをいま直ちに具体的に研究をして、そして近い将来義務加入制に持っていく、こういう姿勢が少なくとも必要であろうと思うのでありますが、いかがですか。
  67. 久宗高

    久宗政府委員 漁民と農民の災害に対する抵抗力ないしは現在の経営なり生活水準の比較の問題はあると思うのでございますが、私が申し上げましたのは、そういうことではございませんで、農業と漁業の操業の態様と申しますか、そういう違いにむしろ着目して申し上げたわけでございます。農業の場合には、どちらかと申しますと土地に緊縛されておりますから、ある土地である台風が過ぎると、当然そこで災害が起こる、こういう問題が一番基本的な形だと思うのでございますが、漁業の場合におきましても、やはり地域的な制約を自然災害の中で受けますけれども、もう少しこちらは機動性があるわけでございます。そこで、農業の場合には、たとえば米というものにつきまして全体としての生産を維持しようといたしますと、個別的には相当問題がございましても、ああいう非常に大きな当然加入というような形をとりまして、それに伴うふぐあいな点は、掛け金率でございますとか、あるいは無事戻し制度でございますとか、災害が結果において若干片寄りますので、そういう措置で補いながら、機構にたよって、ということばは語弊がございましょうけれども、選択的に人が入ってくるという形ではそもそもああいう大規模な保険は成り立たないだろうと思うのでございます。水産におきましても、もちろん結果から見れば、全漁民の方々がそれぞれ必要に応じて入っていただけば、非常にプールが大きくなることは間違いないと思うのでございますけれども、そういう形でいきなり全部が加入して、そういう機構にたよってやろうといたしますと、保険需要という点から見ますと、商品経済の中に相当食い込んでおりますし、また、農業ほどある地域に限定されない、機動性があるという問題もございますので、保険仕組みといたしましては、いやがる方も全部入れてしまって、それでプールを大きくして、それによってやるというやり方よりも、やはり、保険需要に従って、給付内容をできるだけ個別化いたしまして、進んで入っていただくのを中心にしてだんだん制度を固めていくということのほうが、どうも漁業には適しておるのではないだろうかというふうに思うわけでございます。農民と漁民の生活水準の違いでございますとか、ただそういうことによってこちらでは義務加入制はとらないというのではなくて、漁業の態様そのものとこの保険仕組み、つまり価格まで織り込んだやり方という問題も含めました保険設計上の問題というふうに考えておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、漁業種類のある部分につきましては、個別の取り扱いよりは集団的な取り扱いが適しておるものもございますし、また、養殖漁業の一部におきましては農業と非常に似通った問題を持っておりますものもございますので、おっしゃる意味は、いずれにいたしましてもプールを思い切って拡大するほうを考えたらいいのじゃないかということであるといたしますれば、そのような角度で私どもとしましては研究は進めてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  68. 伊賀定盛

    伊賀委員 私がただいま申し上げたことと長官の御理解が多少食い違いがあったようでありますが、いずれにしましても、私はこの問題だけで甲論乙駁を重ねようとは思いませんが、いま長官から、保険設計漁業は義務加入制にはできないのだ、あるいはしにくいのだ、あるいは保険需要の観点からむしろ義務加入制でないほうがいいのだ、あるいは、農業の場合は非常にその対象が膨大だから義務加入制でなければいけないけれども漁業の場合はそうではないから、漁民の需要に応じて、すなわち保険需要に応じて保険設計を考えるべきだ、こういうふうに御説明をいただいたように思うのでありますが、農業は保険対象が膨大だから義務加入制が必要で、それに比較して漁業のほうは対象人口にしましても従事者にしても少ない、あるいは所得においても少ないわけでありますが、だから、いまのように、任意といいますか、そういうような姿でいいのだということは、むしろ逆なんでありまして、少なくとも保険というのは、危険分散、危険の責任をより多くの人が分担するということによって個々の人たちの負担責任額というものが低下するわけで、その対象が小さくなればなるほど個人の負担責任というものは大きくなるわけでありますから、むしろ私は長官のお考えとは逆に、農業のほうは対象が大きいのだから、それは任意加入の姿でもいいけれども漁業のように規模が小さいものは、その漁業に従事する全員が危険負担をすることによって、一人一人の受ける負担というもめは少なくなっていくのであって、私はむしろ逆に考えております。  それから、この漁業と農業の操業その他の態様からとおっしゃいました。農業の場合は、風が吹いたら土地をどっかに持っていくわけにはいきませんから、風が吹いたらいやおうなしに災害を受ける、ところが、漁業の場合は、船さえ出なければ災害を避けることができるじゃないか、こういう意味だろうと思うのでありますが、まああまり具体的になってもどうかと思いますけれども、確かに、可能性から言いますると、おっしゃるとおり、台風が来るということは、このごろ気象通報等の機関がかなり整備されてまいりましたから、あらかじめ予知することができますけれども、しかし、現実にそれではその可能性がすべて満たされるかといいますると、なかなかそうはまいりません。いずれこの災害等についてはあとで美濃委員からお話があるようでありますから、私はその災害の具体的な問題には触れませんけれども、たとえば、一例をあげますと、私は兵庫県の但馬でありますけれども、あそこは中型漁船というのがカニなんかをとっております。これなども可能性としては、そういう気象が予報されて、あらかじめ出漁することを取りやめれば災害を逃がれることができる。ところが、先年水産庁のほうで、御承知の気象観測所というのですか、試験所といいますか、いままでこれは農林省の直営であったものを、今度は漁業者団体に払い下げといいますか、そういうようなことになってきております。このようにして、この漁業の場合は、災害を受ける可能性が農業に比較して少ないんだということは可能性としては言えるけれども、現実には、それではその可能性を満たすだけの諸条件というものが完備されておるかどうか、あるいはこの船が全部それらの気象観測所からの通報を受け得る装備が整っておるかといいますと、必ずしもそうではないわけです。そういうことになりますと、災害から逃がれる可能性はあり得るけれども、現実には漁業のほうが農業よりも災害を受ける可能性というものは強い、こう判断をしなければならないと思うのであります。そういう意味で、私はやはりこの義務加入制をとらせるべきではなかろうかと思うわけです。  それから、もう一つ、先ほど長官は、私の申しました農業と漁業との必要性のところを、そういう観点ではありませんとおっしゃいましたけれども、もう一つ私が申し上げたいのは、これは兵庫県の場合でありますが、生活保護を受けておる者、これを千分比で申し上げますと、たしか昭和三十八年の統計だと思いましたが、兵庫県の場合、平均が十四人。ところが、兵庫県の中の淡路島に洲本という市があるのでありますが、ここが二十一人、それから、私のほうの但馬の浜坂町という町が十七人、こういう高い比率であります。それをさらに具体的に検討してみますと、なぜ浜坂町と洲本が兵庫県下で一番高い生活保護の比率を持っておるかということを検討してみますと、たとえば、洲本の場合に一例をとりますと、あそこに由良地区という旧村でいまは洲本市になっているところがありますが、ここだけが二十四人という高い比率を示している。それは洲本市全体にすると二十一人に下がってくるのでありますが、とにかく二十一人で、兵庫県下で最高の度合いである。この由良地区がなぜそんなに二十四人と高いかというと、これは一本釣り漁業がその村の半数以上を占めているという事実がある。浜坂町は兵庫県で第二位の十七人ですが、この浜坂町の中の漁業とか農業とか商業とかといったものをつぶさに検討してみますと、やはりこの浜坂町も一本釣りがそのほとんどを占めておる、こういう統計があるのでありまして、したがって、これは一例でありますけれども漁民の生活の態様といいますか、生活の水準といいますか、そういうような面から考えても、やはり義務加入にすべきものではないかと思うのです。もちろん、ただいま御指摘保険設計の問題であるとかあるいは需要ということになりますと、これは本人が望むか望まないかという問題もありましょう。しかし、私は、これらの生活にあえぐ漁民ないしは農民の水準というものを高める、それが政策の基本でなければならないと思うのであります。そうしますと、需要のいかんにかかわらず、むしろ農業に比較して生活水準の低い漁業のほうこそ、たとい漁民がそれをきらおうとも、義務加入制に持っていくべきではないか。しかも、その比較する農業も、他産業に比較するとさらに生活水準なり文化水準その他すべて低いわけでありますから、したがって、私は、保険設計上の問題は別にいたしましても、この際義務加入制に踏み切るべきだ、こう考えるわけでありますが、いかがなものでしょうか。
  69. 久宗高

    久宗政府委員 たいへん突っ込んだ御意見でございまして、私どもの内部でもずいぶんこの問題につきましては甲論乙駁した問題でございます。その際、御指摘のような問題もいろいろ出たわけでございますが、多少前に御説明したのがことばが足りませんで誤解があってもいけないと思いますので、若干ふえんさしていただきますと、御指摘のように、いまの漁民の生活、これは非常に幅の広い生活でございますので、最底辺におられる方の所得水準なり漁業経営内容から見ますと、非常に手厚い何らかの措置が必要だということは、私どももよくわかるわけでございます。ただ、農業の関係であっちは大きいからと申し上げましたのは、少しことばが足りませんで、むしろ個々の農民生活の問題よりも、共済制度の出てまいりました経緯を見ますと、発足当時におきまして、やはり小作制度のあった時代にすでに、むしろ小作料保険という形でそういう体制を維持せざるを得ない一つ仕組みといたしまして発足したように聞いておるわけであります。それが戦後自作農主義に変わりました際にも、当時特に食糧供給といった一連の問題と関連いたしまして、これを組み直しまして現在の補償制度ができたわけでございますので、やはり、国民経済的に米の生産を維持いたしますのに、どうしても制度的にあのような災害に対しまして裏打ちのできるような体制というものが、いわば構造的に必要だったのではないかというふうに思うわけでございます。そういう取り組みをいたそうといたしますと、個々の方々の保険需要を一つ一つ説得してやっていくような時間的な余裕もございませんし、また、制度といたしましては、結果から見ましてもやはり常襲災害地といったような問題がどうしても問題にならざるを得ない、そういう中で先生指摘のようにプールを大きくしようといたしますと、どうしても全体に網をかぶせなければならぬ、この矛盾に非常に苦しみながら今日まで来ておりますのが農災制度であろうと思うのでございます。したがいまして、一応の設計といたしましては、共済保険、再保険という形で保険的な設計を立てておりますけれども、本質的に考えました場合に、保険的に処理でき得るのかどうか若干の疑問があるのではないか。ただ、災害が起こりますれば、米の生産を維持しなければなりませんし、また、個別に災害を受けられた農家の方に個別に補償する必要がございますので、そういう体制を年々の予算でやるわけにまいりませんので、一応保険設計によりました長期の計画を立てて、それを年々ああいう形で、被害の起こりました場合に個別の方にも金が回りますような体制をとっているというふうに考えられるのではないかと思うわけでございます。  それに対しまして、漁業のほうでは、もう少し商品経済の中にはっきり組み込まれておりますし、そのような保険の擬制と申しますか、フィクションと申しますか、そういうたてまえではなくて、ほんとうに内容がよければ、保険内容を示してそれを売る、漁民の方もそれを買うという形でやっていける性質、つまり、もう少し保険になじむ問題ではないかというふうに考えられるわけでございます。そこで、そういうことになりますと、もちろん先生の御説のように、プールが大きくなれば大きくなるだけ、それだけ入った方の負担も少ないし、保険としては安定いたしますし、それがいいわけでございますが、その手段に、いわばことばが適当でないかもしれませんが、その手段にたより過ぎて、機構上業務加入でいきなりプールが大きくなる、ところが、関係者の方は必ずしも十分中身を御存じないし、本質的にはそういう保険需要があるにかかわらず、いやいやお入りになるといった形でこの制度が数年を過ごしてまいります場合には、やはり機構といたしましてはそういうところから実はくずれてくるおそれが十分あるのではないかというふうに私は思うわけでございます。  幸か不幸か、この問題につきましては政府は非常に消極的でございまして、長い試験研究の期間を過ぎまして、その間にいろいろな漁民の方が組織を通じまして非常な苦労をされましてだんだん組み立ててきたもので、やってみるとやはり相当保険理論が適用されるものであるし、やりよういかんによってはそれ自体として相当伸びられる性質のものだ、こういう自信が関係者にほぼつきかけているように思いますので、私どもといたしましては、そういうことになれば、従来それらの機構上の欠陥でございました保険制度を加えますとか、今回御提案しておりますような保険内容を充実いたしまして、やはりお入りになったほうが得だということをあくまで説得して、漁民の方が自主的に入ってくるものを基礎にして逐次固めていくということで、拙速で考えますと私どももここまでくれば義務加入制ということもやってみたいという誘惑に実は非常にひかれるわけでございますけれども、もう少しがまんいたしまして、もう少し保険内容を充実すれば、十分説得して入っていただけるし、そのようなプールの逐次拡大に沿った保険の安全性というものも、今度のような政府保険が加われば、全国的な危険分散で十分やっていけるなという一応の自信を得ておりますので、一番大事な、いわば漁民の方がやはり自覚して自主的に入っていただく、こういう制度の基幹的な部分というものはやはりもう少し貫いてみたい、こう思うわけでございます。  しかし、その結果といたしまして、どうしてもプールが十分でないという場合に引き続き検討せよというお話でございますが、漁業種類の中でも、ものによりましては、やはりそういうような形である程度多数の方を規制したほうが全体のためにはよろしい、こういう漁業種類もあろうかと思いますけれども、全体として漁業共済をいま義務加入制に踏み切るということは、いままでるる申し上げましたような事情から、私どもとしては、やはりいまの体制というものをもう少し整えまして、そして義務加入制でなくても必要な程度にプールが拡大するような努力を続けたい、こう思っておるわけでございます。
  70. 伊賀定盛

    伊賀委員 よくわかりました。そうしますと、さっきの客観条件云々ではございませんが、強制的なものにたよることによってこの保険制度が失敗に終わる可能性もある、そこで、もっと保険制度の妙味といいますか、うまみといいますか、よさというものを一般漁民にPRして、理解をして自発的にこの保険制度を利用するようになる時期を待ってやる、したがって、これを的確に申し上げますと、本来この漁災制度というものは義務加入制であるべきだ、しかし、もろもろの諸条件が整っていないので、いまの段階では、このような義務加入制でなく、いわば任意加入といったようなかっこうになっておるわけですが、そういう姿でいく、また、漁業のあるものについては、すでに義務加入制的な強制をとるものも中にはある、こう理解し、かつそういう方向で水産庁としては今後この漁災制度というものをさらに検討を深めていく、こういうように理解していいわけですか。
  71. 久宗高

    久宗政府委員 本来あるべきかどうかというところまでちょっと踏み切れないのでございますけれども、プールが大きければ大きいほどよろしいということもよくわかるわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、これは政府とそれぞれの団体の組織を通じて実施いたしますので、従来まで組織を通じていろいろやりました施策の中で、手段にあまりウエートを置きましてやった場合に、その本来の制度の一番根幹的な大事な部分が結果において抜けたという例がございますので、この漁業共済のようなものにおきましては、たまたま、ここまでの古い経験によりまして、これはやれば相当やれるということがほの見えてきたものでございますだけに、その一番大事なものを、便宜とかあるいは非常に急いでプールを拡大しようということと引きかえに失ってはたいへんだ、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、保険内容を充実しまして、そのプールをできるだけ拡大していきたい、そして、いわば手段として若干危険の要素を持っておりますものは、この際は避けていきたいということでございます。
  72. 伊賀定盛

    伊賀委員 御承知のように、今日の日本の農業、農民は、それは何だかんだ言いましても、米の価格支持というものが今日の日本の農民をささえておるいわばバックボーンになっておると思うのです。漁業の場合を考えてみましても、日本の魚に対する需要と供給のバランスから見ましても、まだまだ日本の漁業は日本の国内の需要を満たすまでにいっていない。たとえば、農業の中で、先日来新聞をにぎわしておりまする豚なんかのように、これがいいというのでわれもわれもと豚を飼いだして、豚が余ってしまってどうにもならぬということになりまするとまた問題になるかもしれませんけれども、少なくとも魚の場合は日本の国内の需要を満たすに至っておりません。そうすると、こうした漁業災害補償法というようなお互いの相互扶助的な制度でなしに、むしろ農業における米と同じように、魚の価格支持までいかなければ日本の漁業というものは安定してこない。しかも、価格支持をしても、決して魚がとれ過ぎて豚のように困るというような事態の発生することはあり得ない。というのは、漁船等を規制をしたりしておりますから、だれでもかれでも漁業をやるというわけにはまいらない。その点、農業の場合には、豚がいいというと豚、鶏がいいというと鶏、卵がいいというと卵というかっこうで、野放しの生産でむしろ需要を供給が上回るということもありますけれども漁業に関する限りは供給が需要を上回ることはまず考えられないとするならば、むしろ漁業こそ価格支持までいくべきだと思う。そして、その価格支持の上に立って、なおこのような保険制度というものがそれをささえていく。そのささえていく場合に、任意加入というような、あるいは自由だとかいうことでなしに、むしろ危険分担が大きければ大きいほど、本人の負担が軽くて受益の部分の多い義務加入制の方向に持っていくべきではないか。しかも、漁業と農業との態様から考えても漁業のほうがその需要が大きいというふうに考えるときに、長官のお話では義務加入制に持っていくというところまでは踏み切れないということでありますけれども、むしろ、基本的方向としてはそういう方向をとるのが正しいのであって、ただ、その正しい方向にいま直ちに踏み切れないのはこれこれの条件がありますから踏み切れません、こういうふうに、少なくとも水産庁の方針というものはそこら辺に置くべきだと思うのでありますが、もし間違いがあればひとつ御指摘をいただきたいと思います。
  73. 久宗高

    久宗政府委員 間違いがあるとは思いません。また、いろいろ私どもの内部におきましても、いまの義務加入制の欠陥はこの段階にあるとしても、考えていいではないかという議論もございます。ただ、先生の御質問にもございましたように、漁業におきます価格の安定ということが諸般の事情でなかなか困難でございまして、価格をいわばほぼ一定な形に持っていくことが非常に困難であるわけでございます。したがいまして、この漁災制度におきましても同時に価格を織り込みました形で設計をいたしておるわけでございます。そういうような観点から申しました場合に、私どもといたしましては、プールの拡大という観点に立ちました場合におきましても、現在のここまでまいりました制度にはいろいろな欠点がございましたので、この内容で当然入ってしかるべきではないかというほど、いやがる方にでも結果においてあなたのためによろしいのだというかっこうで強制してしまうほど、内容が必ずしも充実していたとは思いません。したがいまして、このたびの改正によりましてほぼ道具をそろえていただきました上で、関係漁民に十分な説得をしてみて、なおかつ数年、相当の時間を経過いたしましても依然としてプールが十分でないという場合におきましては、御指摘のような問題をもう少し本格的に考えなければならぬかなという感じもいたします。しかし、現在の段階では、どうも私どもといたしましては、保険理論というよりは、実際の制度でございますので、それぞれそれを担当している団体もあり、また、それの関係者というものを見ました場合に、今日までの苦しい経過の中で、これをほんとうに漁民に対して説得しても獲得できるという自信がほぼ出てまいりましたので、やはりその線はこの種の制度の生命といたしましては非常に大事ではないかという気がいたすわけでございまして、もう少しこういう形で努力を続けさしていただきたいと思うわけでございます。しかしながら、御指摘のように、これはやはりプールの大きさとも関連いたしまして施策の内容もきまってまいりますので、私どもの経験はまだごくわずかな時期しかないわけでございますので、もう少しやりながら、場合によりましたらそういうことをあるいは考えなければいかぬかと思うわけでございますが、これは相当この保険制度の性格に関するものとも思われますので、慎重に検討さしていただきたいと思うわけでございます。
  74. 伊賀定盛

    伊賀委員 価格をつかみにくいというお話で、それがやはり義務加入制に踏み切る一つの隘路になっている、いまこういう御説明があったのですが、私が考えるところによりますと、価格がつかみにくいということは、おそらく、大体漁業協同組合の出荷機構というものに乗っておれば価格はつかめるけれども、その出荷流通機構に乗らず、言いかえますと漁業協同組合に売らずにやみでどこかに流してしまうというようなことをさしておられるのではなかろうかと思うのであります。  しかし、およそ制度として考えた場合に、御承知のように、戦時中には日本の経済は統制で、すべての物資に統制がしかれたわけですけれども、それではあらゆる日本の物資というものがすべて政府の行なった統制の機構の中に織り込まれたかといいますと、いつの場合でも、どんな制度でも、必ずその制度からはみ出るものがあるのはやむを得ないわけであります。もしこの価格がすべて掌握できるまではやれないのだとするならば、これはまさに百年河清を待つにひとしいことになるわけでありまして、方向としては正しいならば、それを制度化する、その制度化の中にはみ出るものがあるとするならば、それをできるだけその制度の中に送り込むような努力をしていくべきであります。原則と例外というものは間違うべきじゃないのでありまして、いわゆる正しいものが原則で、その原則からはみ出す例外的なものはありまするけれども、例外を原則に持ってきたのでは、これは本末転倒のきらいがあります。  したがって、価格がつかみにくいということは、言いかえますと、漁業協同組合を通した流通機構の中からはみ出たものがあるから価格がつかみにくい。しかし、これはあくまでも例外であります。したがって、機構としては、制度としては、もろもろのそういう悪条件があったといえども、それは例外として、今後それを軌道に乗せるような方途を講ずればいいのであって、私はやはり、義務加入制に持っていくべきだ、こう考えるわけでありまして、これはいままでのお答えの中から長官の御意図はほぼ察知できます。ただし、その察知のしかたも、私は、先ほど長官は打ち消されましたけれども、やはり義務加入制に理論的には持っていくべきだ、また現実的にもそのほうが好ましいのだ、しかしそれに持っていくためにはもろもろの条件があるので、その条件の整備を待ってその方向に持っていく、こういうお考えが長官のお考え方だ、こういうように理解をして、この問題に関しては終わりたいと思います。  もし長官のほうで御答弁がいただけますならば……。
  75. 久宗高

    久宗政府委員 不用意なことばで価格がつかみにくいと申し上げたのでありますが、言わんとする意味は、御存じのように二つ問題がございまして、いろいろやりましても、水産物の価格をある幅の中に安定するということは非常にむずかしいわけでございまして、どうしても価格のアップ・ダウンというものはある程度避けられないという感じがするという問題が一つでございます。それから、もう一つは、最近の特別な経済の発展との関連によりまして、いわば価格の水準が棒上がりに上がっておるわけでございます。そのことが、漁家が自分の経営状態を錯覚いたします相当大きな原因になっているのではないだろうか。つまり、実質的には、災害その他によりまして、もし価格関係を捨象すれば相当の被害でありまして、当然そういう被害をカバーするためには保険というような制度によらざるを得ないということなんでありますが、異常な形で価格が年々上がってまいります過程におきましてはそのような問題が捨象されますために、保険の本質的な需要があるにかかわらず、まあ何とかなるといった感じがございまして、これがやはり、ほんとうの保険需要になって、こういうものに入っていかなければいざというときはあぶないのだという感じを持ちにくくしているのではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。また、そういうことが急速に改善されるということもあまりはっきり申し上げかねますので、そういう段階におきましては、やはり、それだからといって、直ちに義務加入制という形で受け入れ体制のほうを先につくってしまいまして、その中に漁民を引き込んでくるという形では、どうもこの制度の大事な精神が抜けてしまいまして、いずれの日か義務加入制にたよってくずれていくおそれがあるのではないだろうか。他の種類の産業におきましては万やむを得ませんのでそういう制度をとられたところがございますけれども漁業におきましては、やり方いかんによりましては、やはり保険の実態をくずさないで、これを説得によって拡大していく可能性相当あると思いますので、それはやはりぎりぎり追ってみたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  76. 伊賀定盛

    伊賀委員 いまいろいろ承りましたけれども、手段方法には、やはり次元が最高のものから二次的、三次的と順次おりてくるわけでありまして、私は、第一次的には義務制であるべきだが、しかし、いま長官の御説明になったのは二次的な意味で、義務加入制にすることによって保険制度がくずれるかもしれないと言う。しかし、これは、やってみたらむしろそうでなしに、くずれるかもしれないではなしに、一そう強固になるということも言えるわけでありますから、くずれるかもしれないという長官のお考えも、これは将来の見通しでありますから、まあここら辺になりますと見通しの違いということになろうかと思いますが、この問題は見通しの違いという問題で片づけられるべき問題ではなくて、むしろ基本的な問題だろうと私は思うのであります。  そういう意味で、しつこいようでありますけれども、今後やはり義務加入制というようなものはひとつ一そう真剣に御検討をいただくように要望をいたしまして、この問題については打ち切りたいと思います。  最後に、それとも関連してくるわけでありますが、これもきのうの与党委員の御質問の中にありましたが、いわゆる異常か通常かという問題でありまして、これは、義務加入制の問題ともからみ、それから、いままで私がずっと昨日来御質問申し上げておりましたことともからむわけですが、すべてを総括して、この異常か通常かということと関連しつつ最後の締めくくりをしてみたいと思います。  これも、保険設計上一三〇%、いわゆる掛け金の一三〇%までは組合と連合会で負担して、それ以上のものは政府が負担をするのだ、こういうことでありまして、これも保険設計上そうなったのだと言われますと、それでは、いまここで保険設計の基礎数字を一々明らかにして、その計算を全部ここで明らかにしていただきたいところでありますが、そういうわけにもまいりませんから、保険設計上そうなったのだというならば、これもやむを得ないわけでありますが、しかし、昨日来いろいろ申し上げておりますように、農業災害に例をとりますと、これは的確な数字ではありませんけれども、農業災害の、たとえば米とか麦とか、あるいは畜産等によって違うようでありますけれども、大体一一五、一一六、一一七というようにいろいろありまして、平均して農業災害の場合は大体二八%がいわゆる限界で、それ以上のものは大体政府が負担をしていくということになっているようであります。ところが、今回は、その限界は一三〇%にいわゆる底上げされているわけであります。しかも、先ほど来申し上げておりますように、その規模から言いましても、農災に比較してはるかに漁災のほうは小さい。そうすると、この一三〇という限界というものは少し高過ぎはしないか、こう考えるわけでありますが、そこら辺についての御見解をひとつ承りたいと思います。
  77. 久宗高

    久宗政府委員 専門的なことになりますので、御説明が十分できにくいかと思うのでありますが、お聞き取りいただきます前に、私どもがこの制度に取り組みましたときに、前に農業保険に多少関係しておりましたのでそれとの比較がどうしても頭に来るわけでございまして、ちょうど先生のいまの御質問のような疑問を持ったことがあるわけでございますが、非常に大きく違います点は、たとえば通常の被害、異常な被害というものにつきまして、その内容をどう考えるかという問題が一つあると思います。  農業の場合には、先ほどの御議論でも出ましたように、形としては、戦闘で申しますと要塞戦みたいなものでございまして、全部要塞をつくっておりまして、そこへ被害が来るという形でございますので、全部の仕組みをそういう形で形づくられるわけであります。したがって、たとえばデータにいたしましても、改正前は、あれは県単位で一つ設計をいたしましたし、その後直しましたのではたしか組合単位になっていると思いますけれども、あるデータを集めまして、そこで、ここまでが通常の被害、ここ以上が異常な被害と、被害の中身そのものをそういうふうに仕分けることをやっているわけであります。はたして理論的にそういうふうに分けられるかどうかは、私がこの前も申し上げましたように若干問題があるわけでございますが、これはやはり、全体を当然加入といたしまして、全部を入れて組み立てているということから、そういう中で許されるべき問題ではないかということで、いわゆる異常の内容、通常の内容というものを具体的にきめまして、そういう仕分けができるわけでございます。  漁業の場合には、そうではございませんで、あらかじめこれが通常、これが異常というものを分けるようなデータの仕組みになっておりませんし、かりにそのようなデータがありましても、そういうふうな分け方をして、そして危険分散をしなければできないわけではないのでございまして、今度のやり方でやっておりますように、県の保険共済組合、それと全国の連合会というところでまずできるだけのプールをいたしまして、そういう全国的なプールしてもなおかつ負担し得ない線をきめまして、それを国が保険する。全国の連合会と一本の保険政府が結びついているという非常に異例な形をとっておりますのは、農業の共済の立て方と根本的に違うわけでございます。つまり、私ども関係では、まず全国的なプールをいたしましたものを保険するという形になります点で、農業の場合のように、県単位あるいは最近の改正後でございますと単位組合におきまして、異常災害と通常災害そのものを、災害の種類と申しますか、度合いによって一線を画してしまいまして、それを通常、異常と言いながら全体の仕組みを組む、こういうのと根本的に違うという点、これをぜひのみ込んでいただきたいと思うわけでございます。データがそういう形ではないということが一つと、かりにデータがございましても、そういう形でなければ危険の分散ができなくはない。今度のようなやり方によりましても、結果は、同じように、団体としてプロパーでは負い得ないものを政府保険する仕組みはできるわけでございますので、決して農業のやり方よりもまずいとか、あるいは手を抜いているとか、そういう問題はないわけでございます。  いずれにいたしましても、漁業災害をこういう形で受とめました場合には団体プロパーでは負い得ないものを引き抜きまして、これを政府保険する。その結果、個別の漁業者の受けられる利益というものは同じである。要するに、やり方の手段が違うわけでございまして、考え方は根本的には、その団体プロパーでは負い得ないものを政府が見る、こういうことでございます。この点がまず第一の問題でございます。  なお、中身に入りましての問題でございますが、しばしば御質問に出ますので一部申し上げますと、一三〇というのが農災制度のほうでは一二〇になっているではないかというお話がよく比較問題として出るわけでございますが、私どもが一三〇という数字を出等しおりますのは、主として、一つには保険の事故の発生の頻度、それから第二には、同種の共済保険制度におきます共済団体の支払い超過限度、これを越える事故の発生の頻度、こういうものを頭の中において考えておるわけでございます。それから、さらに、かりに全部の保険区分につきまして保険事故となる深い事故が発生しました場合に、連合会が負担することになる支払い資金の不足の額がどの程度になるか、こういった幾つかの吟味をいたしまして一三〇というめどを出したわけでございます。これとの関連で、よく、農災の場合におきましては全国平均で一二〇なのに、こっちは一三〇以上しか見ないのはおかしいじゃないかというお話が出るわけでございますが、一二〇と申しますのは全国の平均でございます。したがいまして、もちろん単位組合で考えますと一二〇を実際にオーバーしてしまっているものも当然あるわけでございます。たとえば、水稲の場合におきますと、最高二〇〇%というような結果になっておるものもあるわけでございます。それから、農災制度の中で根幹的な部分を占めております水稲関係でございますが、水稲について具体的に調べてみますと、政府の受けとめる保険事故の発生の頻度は百分の四十五程度でございます。つまり百分の五十以内にとどまっておるわけです。これがしばしば農災の全体の平均で一二〇という数字が出ますけれども、そうではございませんで、一番具体的な問題で申し上げますれば、水稲について申し上げますと、いま申しましたように、政府保険事故として受けとめなければならぬようなものの発生します頻度は百分の四十五で、百分の五十以内にとどまっておるわけでございます。  さらに、御承知のように、農業共済の場合には市町村段階でございますので、市町村段階でございますだけに、それだけプールが小さいのと、それから、共済のもとの種類も非常に限定されたものでありますのに対しまして、漁業共済の場合には、御承知のとおり、これは全国の段階でございまして、それぞれの保険区分について十分な対象がございますし、資金繰りの面から見ても経営上のゆとりが大きいという事情を考えて比較いたしますと、県単位、町村単位によって一二〇という問題と全国単位で一三〇という問題の違いがあるわけでございますので、一二〇より一〇高いというふうに直ちに比較できるものではないというふうに思うわけでございます。  私ども関係では、やはり、異常と申します以上、二年目に出てくるといったような形では客観的な説得力がございませんので一三〇というふうにいたしましたけれども、この平均発生率の限度は百分の四十二というふうに見ておるわけでございます。これをかりに一二〇にいたしますと、百分の五十五というようなことになりまして、相当ひんぱんに起る。それを異常だという形で、それについての特別な措置をお願いすることはまずいではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つの問題といたしましては、全国段階でございますが、これをかりに一二〇というふうにいたしました場合には、当然それだけ負担の度合いが少なくなりますと同時に、掛け金の保有の割合もそれだけ少なくなるわけでございまして、全国段階で考えますと相当大きな金額になるわけでございまして、全国連合会のそれ自体の経営問題といたしましても相当大きな問題ではないだろうか。   〔高見委員長代理退席、委員長着席〕 これは本筋の話ではございませんけれどもそういう問題もあるわけでございまして、私どもといたしましては一三〇でなければならぬとは考えませんけれども、一応今日まで新しい仕組みによりまして御経験の深い担当者あるいは学者の方の御意見も聞きまして、一応のめどとしてこの一三〇というものを出したわけでございますので、直ちに農災との比較で農災よりも保護が薄いというふうにお受け取りになっていただいては困るというふうに思うわけでございます。
  78. 伊賀定盛

    伊賀委員 まあ一三〇か一二〇かということでありまして、これについての御説明は、一三〇というのは全国プールでの一三〇で、農業の場合は市町村単位の一二〇なんだ、こういう御説明があったわけでありますが、しかし、いずれにしましても、農業の場合には市町村単位の一二〇がずっと全国に——もちろん個々の町村によってはお説のように一五〇のところもあるかもしれぬけれども、しかし、平均してやはり一二〇ということだけは間違いないわけで、一二〇か一三〇かということは、掛金のトータルがかりに百万円として、災害の支払いは百二十万円まで連合会か保険組合が持つか、百三十万円まで持つかということでありますから、保険組合が市町村単位であろうと全国単位であろうと、いずれにしても、掛け金の全額が百万円しかないのに、とにかく百三十万円まで責任を持つということは、もちろん頻度という問題とも関連してまいりますけれども、それだけ掛け金が高くなるといいますか、担保険料能力というものが漁民の場合は重くなるということだけは言えるわけでありまして、こういう点から考えて、私は保険理論の専門家ではありませんからあまり詳しいことを言われてもわかりませんけれども、全国段階であろうと市町村段階であろうと、保険掛け金に対する負担割合というところから見ますと、やはり漁業のほうが農業に比較して重くなるということだけは言えるのではないかと思うのであります。そこらはまだこっちはしろうとですから、もう少し御説明していただいてもそれはわからぬかもしれませんが、ともかく、そういう一つの疑問だけは残るわけであります。そこで、一三〇がいいのか悪いのかということにつきましてはこの辺で終わります。  これを全体的に言いますと、ただいま御説明の中にありましたけれども、連合会の保有高云々というお話もあったわけでありまして、それともからみ合わせまして、今度の漁災法の一部改正によってもろもろの条件が変わりましたが、総括的に申しまして、いわば今度の改正というのは、これは漁民のほうから言いますと、なるほど共済金がよけいもらえるようになったんだという点で一つだけよさそうに見えるところがあります。しかし、そのかわりにちゃんと掛け金は上がっておるということでありますから、漁民のほうから言いますと、大していいとは思えないわけであります。それから個々の共済組合から言いますと、先ほどの論議の中にありましたが、いままで一対九のものが〇・二対〇・九八になったのだから云々という指摘に対して、部長さんのお話によりますと、いやそれは悪くなったんじゃない、よくなったんだということでありますから、組合のほうもよくもならないし悪くもならない。よくなったのは連合会がよくなったとも言えるわけでありまして、政府のほうも、なるほど今度の漁災法の一部改正というものを全般的にながめますと、確かに、いままではかかしではないけれども二本足で歩いていたものが、三本足で歩き出したのだから、安定の度合いが高くなったということで、いわゆる形式だけは整ったが、一三〇以上のものは政府が負担するのだというけれども、ちゃんと一方でその財源は政府のほうが掛け金で取っているわけですから、政府のほうも特別よけいこの共済制度のために国費が投入されたとも言えぬわけであります。率直に言いますと、たへいん表現がまずいかもしれませんけれども、これは頼母子講に、それではかっこうがつかぬから国のほうでちょっと補助金をつけるというかっこうにしておこうかい、こういう極言ができるのではないかと思うのであります。  また農災に例をとりますけれども、これは少々根拠が違おうと何しようと言えるわけでありまして、農業災害の補償制度に対して、昭和四十年度に例をとりますと、農業総所得が一兆九千五百七十八億円に対して、農災に対する国の予算額が二百五十七億円でありまして、これは一・三%に相当しております。ところが、同じく昭和四十年度の漁業の総所得が三千百七十八億円に対して、漁災に対する国の予算総額は十四億円でありまして、〇・四七%。したがって、その総所得に対する災害制度に要する国の予算というものは、農災の場合は漁業の三倍の比率を示しておるわけであります。だから、今回の改正によって四十二年度は予算額の%も多少ふえるかもしれませんけれども、そう大きなふえ方はしておらないと思うのであります。  こう考えてみますと、結論的に言いまして、先ほど申し上げましたように、形だけは整ったけれども漁民にはあまり関係のないことで、これも表現がえらく当たらぬかもしれませんが、水産庁長官のひとりよがりみたいな感じを受けるわけであります。先ほど来私は、無事故戻しだとか、掛け金率だとか、掛け金に対する補助金の問題だとか、いろいろなことを申し上げてきましたけれども、それはもう少し高い次元で見ますとちゃんとバランスがとれておるのでありまして、いろいろと、手厚い保護をしたのだ、補助率を上げたのだ、共済金限度額率も上げたのだと言うけれども、これにつきましてはちゃんと取っておるわけであります。何とならば、補助金が上がったと言うてみたところで、総ワクにおける漁業総所得に対する漁災に出す比率は依然としてわずかに〇・五%でありまして、農業に比較して問題にならない、こういうふうに私は理解するわけであります。これに対して長官はどういうお考えを持ちますか、ひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  79. 久宗高

    久宗政府委員 さような御批判もあり得ると思うのでありますが、少し酷過ぎるのではないかと思うわけでございます。これが水産庁でいろいろやりまして頭ででっち上げたのでございますれば、さような御批判も甘受せざるを得ないと思うのでありますが、実際問題といたしましては、試験実施をいたしました過程からあと、特に非常に変則な形で十分な制度的な裏打ちのない中で困難な本格実施に入った経過を見ずと、今回の改正につきましては、前回の本委員会におきまして相当突っ込んだ御議論がございまして、条文の附則にも注文がつき、また、それぞれの項目について与野党をあげましての附帯決議がついたわけでございまして、そういうものに励まされまして、段階といたしましては、困難なこの実施過程におきまして、ほんとうにぎりぎり困った問題を詰めまして、今回の改正案の内容になっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、今回の改正につきましては、いわば役所がでっち上げたものということではなくて、ほんとうの実践の中から出てきた問題というふうに考えまして、意あってなに足らずと申しますか、もう少しやりたい問題があるわけでございますが、ただ、いろいろな資料の不足その他もございまして、財政当局の必ずしも納得できない問題もございまして、さような点で今回の改正をこの程度にとどめたわけでございますが、内容につきましては、まさに、これを担当しておりました団体でしかも非常に苦労した方たちの積み上げである点、これをまず御了承いただきたいと思うわけでございます。  したがいまして、個々の漁民、それから共済組合、連合会、国がこの改正によってどういう立場になるかという問題につきましても、実は相当な吟味がなされたわけでございます。こういうかたい制度でございますので、個別的な処理は非常に困難でございますけれども、やはり、立案いたしました感じといたしましては、何と申しましても十分な制度でございませんので、ほんとうの普及がはかれない、迫力をもって普及できないということが、私どもはもちろん、団体でも一番苦慮しておった問題でございますので、何と申しましても、第一義的に漁民の有利であること、これを念願にしたわけでございます。それから、制度の中におきましては、一番第一線に立ちます共済組合がほんとうに活動できるような体制にしようではないかという考え方で一本貫いておるわけでございまして、先ほど負担関係の問題が出たわけでございますが、おわかりいただいたと思うのですけれども、結局、給付反対給付の問題がございます。つまり、単位組合として無理のない責任、ほんとうに経営をうまくやればそこを切り抜けてやっていけるような形に置こうというのがこの制度改正でございまして、前回は、たとえば一割しか責任がなかったと申しましても、その中には本来どうも負い切れない性質のものまで含んでおったように思いますので、そういうものを国が保険することによりまして、形の上はパーセントが大きくなっておりますけれども、それは、組合が本来こなせるはずのものを組合に持たし、そして、そのできないものを連合会が引き受けて、その組合と連合会が東になってもどうしても処理できないものを国が引き受けましょうということで、一枚国が加わっただけ、単位組合なり連合会なり、また漁民の福祉のほうにその分だけがいくということになるわけでございます。もちろん、政府といたしましても、それをやるだけの必要な保険料はいただくことになるわけでございますが、これはやはり保険のたてまえから当然のことでございまして、余分なものをいただいているつもりはございませんし、したがって、連合会におきましても、これが制度のいわば核と申しますか、一番中心になりますので、単位組合のことばかり考えてそちらに全部ウエートを持っていってしまえば、連合会自身の経営にも問題がございますので、この辺はとも吟味で、政府、連合会、単位組合と、ともども詰めましたのが今回の負担区分の関係になっておるわけでございます。  御質問の中にございました一三〇の問題につきましても、実に長い期間これについて論議をかわしました結果、一応これをめどにしてやってみようということで、私どもとしては一三〇でなければならぬということではございませんで、これはやはり試行錯誤の中で検討してみたいというふうに思っておるわけでございます。  以上のような次第でございまして、一応いろいろな御批判もあり得ると思うのでございますけれども、私どもといたしましては、今回の御討議の中でいろいろ出ましただめを頭に置きまして、何度も申し上げますように、これは試行錯誤を重ねて固めていくべき制度だと思いますので、御注意のございました問題につきましては、運用の中でも常に頭に置いて、何とかこれを軌道に乗せてまいりたいと思っておるわけでございます。
  80. 伊賀定盛

    伊賀委員 先ほどはたいへん失礼なことを申し上げましたけれども、実は、確かに御指摘のとおり、この保険制度というものは、試験期間の七年を含めて十年間の長きにわたる、日本の漁民のいわば渇望でもあったわけでありまして、それがここに、石の上にも三年ということわざがございまするけれども、十年にしてようやく一人前の保険制度の態様が整った。中身が整ったとまではまだ言い切れないと思いますが、形だけは整ったということが言えるわけで、その間における関係団体ないしは農林省の方々のその御労苦は心から多とするものであります。したがって、こいねがわくは、ただいま私がたいへん失礼な言い方を申し上げましたけれども、これが単なる杞憂に終わるように、近い将来、できるだけ早い機会に、ただいまいろいろ申し上げましたたとえば義務加入の問題でありますとか、あるいはまた、当面の団体の運営に支障があると私は見るわけでありますけれども相当赤字をかかえたものをどうするとか、こういう点について善処を望むわけです。あるいはまた、保険設計上やはり一三〇でいいんだ、こういう御説明でありましたけれども、しかし、この保険設計上ということばにもむしろからくりがあるのではないかと私はひそかに思うわけでありまして、というのは、赤字を何とかこの際政府が解消すべきではないかと指摘いたしますと、それは長期的な観点に立ってひとつ自主的に連合会で解決してもらいたい、こういうふうに長官は御説明になっておるのでありますけれども、いうところの保険設計というところでは、保険設計を長期的にながめるならば、むしろ一三〇なんていわなくても、もっともっと、一二〇なり一一五あたりで見るべきではないか、これを短期的に見ると、連合会の赤字なりあるいは組合の赤字というものは、これは予想できるわけですけれども、もっと長期的にながめるならば、この一三〇というものはやはりおかしいではないかという感じがするわけであります。したがって、連合会の持つ赤字を長期的な観点で解消していくんだという自信があるならば、保険設計においても、長期的な観点に立って設計するならば、一三〇という一つ限度はもっと低くても保険設計はできるはずだ、私はこういう感じを持つわけであります。  しかし、いずれにいたましても、ただいまいろいろと申し上げましたが、要は、ただいまお話のありましたように、組合も大事だし、連合会の保険会計の運用も大事だし、もちろん、国がこの漁災制度に使うべき予算にしても、親方日の丸ではないわけでありまして、やはり限度があります。しかし、何と言いましても、この漁災制度の本来の趣旨というものはあくまでも漁民にある。したがって、漁民の立場に立って、その上で、組合がどうあるべきか、連合会がどうあるべきか、国がどうあるべきか、ここに一切の基点というものを置いて、今後一そうこの漁災制度の発展並びにひいては日本の漁民がこの漁災制度によって生活からはみ出ることのないように、ひとつ御精励を賜わりたいと思う次第であります。  最後に、次官に一つお尋ねしたいと思うのでありますが、ただいま私は、義務制の問題あるいは赤字解消の問題、その他を申し上げましたけれども、これらに対して次官としてのお考え方を承っておきたいと思います。
  81. 草野一郎平

    ○草野政府委員 非常に御熱心な御審議をいただいて感謝いたしております。終始漁民の福祉というものを考えながらの御質問でございますので、まあ気温はこれだけ上がっておりますけれども、涼やかな気持ちで拝聴いたしておったわけでございます。  義務制の問題につきましても、長官が繰り返し御答弁申しておったように、漁災そのもののあり方、さらに漁業それ自体の非常に複雑な実態、そうした中において、この問題をいま直ちにそうした方向で進めるということでなく、幅広いながめ方をしながら進めていきたいという方向、したがって、制度それ自体の前進ということをやはり基本的に考えていかなければならない、そう思っております。  さらに、赤字対策の問題につきましても、これも長官が何回か立って繰り返し申しておりましたように、わが国の漁業という問題と、さらに、漁民の立場をどう向上させるかという長い観点の中で、射程の遠い——短期的なせっかちな問題ではなくして、ひとつじっくり考えていって、しかも目的を達成するように努力していきたい、そういうふうに考えておりますので、先段申しましたように、非常に御好意に満ちた御審議をいただいておりますことを非常にうれしく思っておるわけであります。
  82. 本名武

    本名委員長 美濃政市君。
  83. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、ただいま議題となっております漁業災害補償法の一部を改正する法律案、主としてこれについてお尋ねをいたしたいと考える次第であります。  その前に、漁業全般にわたる災害の問題で若干お尋ねをいたしたいと思うわけです。  水産問題を検討してみますと、ただいままで質疑をかわされた中におけるこの法律の一部改正の問題にいたしましても、あるいは災害を誘発するような許可条件の問題、こういう問題を取り上げて検討いたしてまいりますと、地方の実情から見て水産行政というものは物理的に科学性に非常に欠けておる、そういう受け取られ方がしてならぬのでありますが、この点どのようにお考えになっておるか、まず最初にお伺いしたい。
  84. 久宗高

    久宗政府委員 漁業につきます一連の災害につきましては、漁獲物の共済のほかにいろいろあるわけでございますが、もっとそれを科学的に処理しろとおっしゃる御意見には、私どもも同感でございます。
  85. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは、長官も同感のようでございますから、以下一、二お尋ねをいたしたいと思いますが、今回太平洋水域におきましてサケ・マス流し網漁業の操業中かなりの人命を失う災害が起きたわけです。これを調べてみますと、許可基準が非常にこういう人命災害を誘発しておるのではないか、私はこういう疑念が晴れないわけであります。私は現地にまいりまして現地の海上保安部その他の意見も聞いておりますが、どうして、こういう沿岸漁業の許可基準というものが安全とか装備とかいう問題の物理的、科学的な検討をおろそかにして、単にこういう許可基準で縛っておるか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  86. 久宗高

    久宗政府委員 御質問が抽象的でございますので、ちょっとお答えしにくいのでございますが、おっしゃっておられる意味は、許可制度があるために海難が起こるのではないかという問題のようにも思われます。  ある角度から見ますと、そういうような受け取り方もあり得ると思うのでございますが、私ども、最近に頻発しております一連の災害、この犠牲者の方にはまことに申しわけないと思うのでございますけれども、どうも単なる許可制度あるいはトン数の制限とかいうことではございませんで、根本的に経営者のものの考え方ということに触れざるを得ないという感じを強く持っておるわけでございます。
  87. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの御答弁は、これは経営者の考え方の問題だというふうな御答弁でございますが、私の調査した範囲では、許可にかなりの問題がある、こういうふうに現実に調査をしてきたつもりであります。そうすると、現実から見た場合、いまの長官の答弁では、今回海難の対象になりました漁業の実態について少しく認識が欠けておるのではないかというふうに思うわけです。  したがいまして、わからぬようでございますから、私も短時日の調査でございますから多少緻密性に欠けておる面があるかとも思いますけれども、一、二お尋ねいたしたいと思います。  その第一点は、御存じのように、北洋サケ・マス漁業の太平洋水域は、A区域、それから四十八度線以南のB区域、さらに沿岸漁業に対して指定海域と、三つの海域に区分いたしまして、それぞれの基準で許可が行なわれているわけですが、その中で、特にこの七トン未満の操業について問題があるというふうに私は感ずるわけであります。指定海域と申しますけれども、指定海域の中で一番遠いところは、釧路あるいは根室の港から大体三百海里、キロ数にいたしますと五百五十キロくらいの海上になります。それを七トン未満の船での操業でございますから、大体時速十二キロないし十三キロの速力でございますから、一番遠いところに出漁するとき、漁場に着くまでに四十八時間あるいは五十時間を要する。そこで三日、四日操業して、またそれだけの時間がかかるというのであります。したがって、あの太平洋の荒波の中でそういう遠距離に出漁して操業するときには、海難上の問題から、これはいまの近代的漁法ということになればレーダーなりあるいはロランなり、こういう近代機械の設備をして船の位置を的確に陸地に連絡をする、こういう装置が私は必要だと思いますけれども、これら小さい船には、いわゆる短波の受信機はつけておりますけれども、こういう科学的な設備に欠けておる。  また、もう一つは、今回起こりましたいわゆる低気圧による突風が八日に起きておるわけであります。この長期的高波注意報が十二時間くらい前に測候所から出ておるようでありますけれども、十二時間前に予報が出たとしても、帰ってこれないのであります。それで、地元の新聞の切り抜きを持っておりますが、いずれも帰港中の遭難と、こうなっております。  したがって、そういういわゆる太平洋の荒波の中でこの種の操業を開始するにあたって、ただいま申し上げたようないわゆる船の装備の問題があるのと、もう一つは、七トン未満でございますから、海上で三日も四日も寝る、あるいは航行が四日にわたるというような、全日数は一週間ないし十日という操業の中で、毛布にくるまって、足を伸ばして寝る場所もない、こういう状態で操業を続けておりますから、いかに健康な漁船員であっても、心身ともに一航海でかなりの疲労をしてくる。したがって、海難はこの種の船に最も多いわけでありまして、今回の海難のみにとどまらず、疲労から起こります岩に衝突する問題、あるいは方向が不明確でございますから、全くそういう大きな荒波の中を船頭の勘で走っておるのでありますから、座礁したり、設備の不十分からいろいろの海難事故が起きまして、昨年の海上保安庁の調べによりましても、釧路海上保安部の取り扱った海難事故件数の中でサケ・マス流し網だけで三十五名死亡しておる。これは、従事したいわゆる漁民の数に割りますと一%をちょっとこえる死亡率でございます。  こういう高い死亡率が起きる裏に、いわゆる七トン未満で許可を縛っておるという問題がある。現地の漁協の専務あるいはおも立った人の意見では、少ない日数で全般の意見も聞けませんでしたが、隻数を圧縮して船を大きくしてもらいたい、こういう意見が非常に高まっております。なぜそういうことをしないのか。ただ依然として七トン未満で縛って、そしてこういう事故の多発する不完備な装備で操業を行なわしめるということ、これは私は、考えようによっては、許可基準が死亡事故を誘発しておると言っても過言でないと思うのです。  こういうことに対して、この種の漁業は知事の許可でございますけれども、これは私も道議会にもおりまして覚えておるのでありますが、サケ・マスについては北海道知事の全く任意に基づく許可ではないというふうに私は承知をしておるわけです。いわゆる水産庁と協議の上で許可基準というものが設定されておる、全く北海道知事の独断に基づく許可基準ではないというふうに承知をしているが、どうしてこういうものをこのまま放置しておくのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  88. 久宗高

    久宗政府委員 御承知のとおり、日ソの関係におきまして総漁獲数量が規制されておりますので、これを現実の経営にどう当てはめるかという問題につきましては、いろいろのやり方があり得ると思うのであります。ただ、私は先ほど非常な乱暴なお答えをしたわけでありますが、この種の問題の経過をずっと見てまいりました場合に、許可あるいはそれぞれの施設についての規制におきまして、何トンでなければいけない、あるいはどういう施設をしろという問題は、いわば、交通規則で申し上げれば、どこにシグナルをつけて、赤のときにはとまって青のときには動く、こういうような問題であろうと思うのでございます。ところが、実際には、経営される方が、さような規則の前提になっております当然経営者として守らなければならない常識を越えまして動きます場合には、どのように交通規則を整備いたしましても、赤のときに飛び出すといったような状態、あるいは歩いているうちにちょうど青が赤になるといった判断を誤るような風潮がございますので、この関係は、私はやはり、今度のような経験によりまして、相当根っこから直しませんと、これは規則をどんなに厳重にいたしましても、許可制度をいかに精緻にいたしましても、起こり得るのではないかという心配を実は持っておるわけでございますので、さような御答弁を申し上げたわけでございます。  本来、この七トン未満の漁業は、もう御説明するまでもないと思いますが、北海道におきまして、ごく最近まで、届け出制のもとで、ほんとうのごく沿岸のものとして動いておったものでございまして、それがいまのような形でずれ込んで動いておるわけでございます。これをかりに大型にしたらよろしいではないかという問題でございますが、災害があるから大型にしろ、大型にいたしますと、またその基準に達しないものが出てまいりまして、またそれを大型にしろ……。こうい戸悪循環の基礎をなすものは、やはり本来規則で守るべきものと——当然経営者として人命にかかわる部下を使うわけでありますので、ある規制というものを前提にした制度でございますので、その辺の問題をもう一回、何と申しますか、根本的に話し合いをし直さなければならぬとすら私は考えておるわけでございます。
  89. 美濃政市

    ○美濃委員 これは、私の考えでは、全部の船が小さいとも考えませんが、たとえば、先ほど申し上げたいわゆる測候所の長期予報で十二時間で予報を傍受して帰ってこれる距離、いわゆる百二十キロぐらいでございますか、そのくらいの海域では四トンあるいは五トンぐらいでの操業もあり得ると思うわけですが、しかし、この指定しておる海域、ここまでは行ってもよいときめておられる海域は、ただいま申し上げたように、最長の距離へ出ていけばかなりの遠距離になる。これはそれを越えて出ていく船です。これはやはり、ここにも地元新聞を持っておりますが、四トンの船で出ていって、八日に、漁穫した魚を待避するために全部海に捨ててしまい、そうして大きな僚船に守られながら帰ってきたのが十日を過ぎておるというのでありますから、やはり四トンの船で二百数十キロ出ているわけであります。こういうものは、いわゆる地元の希望もあるのだから、隻数を寄せて、たとえば百二十キロというのはここでは例を申し上げておるので、そういうことをもっと深く検討して、いわゆる現在の気象観測によって的確に高波を予報できる、的確な時間の範囲にそれを短波で受信して陸地に帰ってこれる範囲の距離で考えるべきではないか。四トンあるいは五トンという船でその範囲の距離であれば、たとえばそれが百二十キロであれば百二十キロまでの出漁はいいと思うのでありますけれども、それを越えて二百キロ、三百キロ、四百キロと出ていくのでありますから、これはやはり、そういう船の位置を的確に陸地に知らせるロラン装置あるいはレーダー装置、こういったものを装置した大型の漁船であって、十トンないし十五トン程度の規模の船で安全操業をさせることが海難を少なくするゆえんではないか。これは海の上ですからいろいろの海洋状態というものが起きてくるわけでありますが、しかし、そうすることによって、少なくともこの種の海難をある程度、少なくとも五〇%ないし七〇%こういう死亡事故等を減少することができるということがはっきり言えると思います。そういう点について、話し合いもけっこうでありますけれども、どのようにお考えになっておるか。これをいたしませんと、海難は続くと思うのであります。  それからまた、私も不十分でございますが、日本の産業あるいは世界の産業の中で、それに従事しておる者が一年間に百人に一人以上事故で死亡しておるという業種があるかどうか。この死亡事故というのは世界的に一番高水準でないか。交通事故やその他の比でないわけですね。しかも、人命にはもちろん老若男女の軽重はありませんけれども、社会悲劇としては、働き盛りの人が海難で死ぬわけでありますから、残った家族の生活という社会問題が発生するわけであります。
  90. 久宗高

    久宗政府委員 私どもも、これは人命に関する問題でございますので、非常に苦慮しておるわけでございます。また、許可のしかたなり、それの調整のしかたにつきまして、できるだけそれが危険と結びつかないような配慮はいたしたいと考えるわけでございますが、最初に申しましたように、これは、そういう意味で、個々の経営主が一応正常な判断を持つということを前提といたしましてものを考えるのが一応普通だと思うのでございます。これがもしそういう正常な判断がないといたしますと、たとえば、どの海域まで出てよろしいという場合に、最悪な事態が出ておって暴風雨警報が出ても飛び出していくというような心得違いの人がいるという前提でものを考えなければいかぬということになりますと、おそらく漁業は成り立たないと思うわけでございます。さような非常識なこともできませんので、一応の御判断ができて、人命を預かって船で出ていかれる方の出漁の指図でございますとか、装備の問題でございますとか、あるいはどの程度の積み荷をしたらいいかといった問題につきましては、私どもといたしまして、外から見てこれを規制して十分効果のあがるものはできるだけやってまいりたい。たとえば載荷基準といったものを考えておりますのもそういうことでございまして、そういうものと、最終的には、先ほど申しましたような漁業経営者の判断、こういうことになろうかと思うのでございます。  どうも、最近に多発しております事故の中には、さような意味で、制度の上のどういう手段を尽くしましても、非常識な判断をされて、非常識な積み荷をされる場合におきましては事故が防げないという問題に非常に近いものがあると思いますので、先ほど申しましたように、さような意味の指導につきまして、もう一度あらためて注意を喚起したいと思いますし、また、御指摘のような許可制度との関連でそれが悪用されるような問題がございますれば、さらにまたその点につきましても検討したいと考えておるわけでございます。
  91. 美濃政市

    ○美濃委員 どうも私、長官説明を聞いておりまして、漁民の非常識をすごく主張されるのですが、これは一面無理をして操業しておる、こういう問題もあろうかと思いますが、しかし、たとえば、今回釧路海上保安部の意見も聞いてみましたら、指定海域を外に出る場合もあるわけですね。このような場合は、指定海域ですから、指定海域外に出たのは直ちに操業中止をする、操業を停止さす、こういう規制措置は強くとっております。ところが、その指定海域内においては、許可基準は七トン以下で、装備の指定もなければいわゆる取り締まりをする方法もないわけです。任意でいい、話し合いでいいというなら、日本の他の社会秩序を維持する問題の中においても、それらの従業員の人命保護とかその他について、そういう間違った考え方やあるいは危険をおかしてやっておるものを何も規制する必要はないと思うのでありますが、他のそういう部面では規制しておるが、この面の規制が足りないのではないか。もう少し許可基準を明らかにして規制すれば、海上保安部によって監督もできますし、それを逸脱した場合には操業停止もできるのでないかと思うのです。全くそれらのことはできないという解釈に立って、いわゆる漁民が悪いのだという解釈のようですが、なるほど一面、危険をおかして、だれが考えても非常識な出漁、これに対する漁民の責任がないとは私は言いませんけれども、そういうものを明確にしていないいわゆる行政上の責任、これをどう考えておるかということをお尋ねしておるわけです。  それからまた、寄せ船をして、隻数を寄せて大型にしたいという希望、こういう希望に対する許可基準の変更、それから、そういう機械装置なしに沖合いへ出るものは、先ほど申し上げたように、百二十キロというのは例として申し上げておるのですが、長期予報によって大体的確に予報できる範囲内の時間で帰ってこれる距離数、それを沖合い出漁の許可制限とする、それを越えて行くものには、やはり先ほど申し上げた十トン以上という許可、あるいは機械装置も許可条件に入れる、そうして海難を少なくするという方法についてお尋ねしておるわけです。そういう検討をなされたことがあるかどうか。今後そういう検討をしようとしておるかどうか。それを、漁民と相談してみなければと言うけれども、相談してみなくても、漁民の代表はそうしてくれと言っておるのです。希望しておるのですよ。それがなかなかいろいろの問題がありまして通らないというのであります。故事来歴とか、いわゆる漁獲高とかで。しかし、漁獲高は、たとえばこの海域内における沿岸漁業、流し網漁業はいま四千四百トンですか、このトン数をふやせとかふやすなとかいう問題には触れていない。とにかく安全操業の問題です。だから、隻数を圧縮するということは前提条件になるわけです。一千二百数十隻という隻数を圧縮して、遠くに出る船だけ規制する。遠くへ出ないで、サケ・マスは百二十キロなら百二十キロの安全海域内でやって、あとサケ・マス以外の裏作をほんとの近海で安全操業をやるものは、それ以上出ないのだから、小さい船でやるというものばそれでよかろう。どうしても出るという船はそういうふうにしたらどうかということを聞いておるわけなんです。
  92. 久宗高

    久宗政府委員 装備だけを考えますと、隻数を制限して装備をよくしてということも考えられるわけでございますが、日ソ交渉の長い経験によりまして北海道の漁民の方々はよくよく御存じだと思うのですが、数量の制限に伴いまして隻数の問題が入りますと、これがどのような不利な交渉問題になるかということは、いまその隻数を制限してもっと大きくしろと言っておられる漁民の方が一番よく知っておられるのではないかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、今回のお話の中で、この災害と関連してもっと大型にしろという御意見が出てきているところを見ますと、どうもやはり、これはあの種の漁業の個々の経営の方とあの種の漁業全体の問題というものをもう少し位置づけて議論してみる必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、最初申し上げましたように、対ソの問題を考え、日本側の規制の条件を考え、そして、それぞれの経営を考え、もう一つそれに安全という問題を加えました場合に、絶対的な安全を考えますと、特にいまのような一部の間達った考え方漁民の方が全く能力を越えまして非常識な積み荷をして事故にあうということを繰り返してまいりました場合には、その個々の経営のみならずあの種の漁業全体の問題にならざるを得ないのではないか、私はこう思うわけでございます。そこで、すぐにそれを政府の責任なり制度の欠陥というふうにして取り上げて、許可制度内容の問題としてこれを処理しようといたしますと、私は、実は問題はそうではなくて、その問題で検討すべき問題もございますけれども第一義的には、そのような問題を誘発するのについて当然漁民経営者の側であるリミットをもってお考えになるべきものであって、いろんなルールがきまっているのを、そのルールをお破りになりました場合には、かりに許可なりその他の制限にいたしましても、正常な経営をする方にとっては耐えられないような非常に非常識な規制をせざるを得ないのではないだろうか。これはやはり本来おかしいのでございまして、このような事故が多発し、しかもそれが御指摘のような内容をもって七トン前後のところにもし集中しているといたしますと、この問題を一体個々の経営者の方あるいはその七トンの方全体がどう考えておられるのかという問題につきまして、もっときびしい規制をほんとうに欲しておられるのかどうか、これも私は問題だと思いますので、もう一ぺんよくお話を聞いてみたいと思うわけでございます。  いずれにしても、許可制度だけの問題ではございませんで、かりに許可制度をいじるといたしましても、少なくとも漁民の側として、この種の人命にかかわる問題につきまして、規則がこうだからとか、許可があるとかないとかいう以前の問題ではないかという点を強調したいと思うわけでございます。
  93. 美濃政市

    ○美濃委員 さらに、このことは、ことしの春氷に閉じ込められたニシンあるいはタラ、こういう北洋漁業全般につきまして、あるいは沿岸漁業だけでなく、たとえば日ソ漁業協定の中にあります四十八度線以南のB海域、この地点へ七トンで出ていっておるわけです。これらも非常に危険が高いわけですね。さらにこの指定海域を越えて外に出るわけですから。七トンという船は、海上何百キロと出た場合は木の葉のようなものだと思うのです。そういうことを、ただ漁民と相談してみなければならぬ、漁民の意思、意見を再び聞きたいという。何かそこには過去の歴史の中で——長官みずからが考えても、やはり無謀な操業だと言われておる。それを行政指導や何かでと言われますが、それはもちろん直接漁業をやっておる人と話し合いの必要もあろうと思うけれども、それだけに転嫁して、あるいはそこと重要な相談をしなければ判断がつかぬという姿勢、これは、相談をするとまた利害相反する問題が出てくるわけであります。この安全を取り締まる法律などというものは、たとえば労働基準監督署できめております陸上における労働基準の問題にいたしましても、意識的にはもっとゆるめてもらいたいとかいうことがあっても、陸上におけるいろいろな安全が確保できないという面は、法律の規制がなければ私は派生すると思います。それで、他の面はやはり法律をつくって規制しておるんですよ。当初私がちょっと疑問を持ったように、海上だけはどうしてそういうことになるのか、危険だということがわかっておりながら、積極的にそれを科学的にあるいは物理的に検討して、危険なものは危険なものとして安全基準を示すことができないのか。陸上ではかなりきつい姿勢でやっておる。あるいは、これは交通事故とはちょっと事態が違いますけれども、交通事故は人に危害を与える、この問題は危険であれば自分で死ぬんだという感覚で、それで済まされる問題であるかどうか。どうもこの点が、水産問題を検討するにあたって、いまの長官説明を聞きながら私には理解できないわけです。どうしてそういう姿勢しかとれないのか。もっと前向きにこの問題を検討して取っ組むという行政上の指導あるいは規制措置、規制措置までに入る必要もあろうかと私は思うのです。なぜそれを漁民との話し合いにゆだねて、危険だとみずからが判断しながら放置しておくのか、どうもそれが私には理解できないわけです。他のほうの行政指導は、危険だと考えたときには、きのうも本会議で提案されておりますが、いろいろの規制措置、安全なり秩序なりを保つ規制措置の法律というものを、その度合いによってつくっていくのですよ。それを、一々相談してみなければいかぬ、向こうがだらしないのだという解釈に立つ。もっともそれはいろいろの場面にそういう問題が出てくると思いますけれども、どうもその点がわからないわけです。
  94. 久宗高

    久宗政府委員 過去三週間にわたりまして水産問題が議論されました際に、すでに災害問題につきまして役所でやっております具体的な施策、またやろうとしております問題につきましては政府委員として具体的なお答えをしたわけでございます。たまたま、今回の御質問におきましては、先般来多発いたしました災害との関連におきまして、私どもの気持ちをまず最初に申し上げたわけでございます。私どもは、御指摘を受けるまでもなく、安全の問題でございますので、できるだけのことをいたそうとしておるわけでございます。また、漁業におきましては、経営問題に相当一般的に申せば問題がございますので、一ぺんに処理ができない問題がございますので、一歩でも二歩でもそのような合理化につきまして努力をしたいということは、るる申し上げておるわけでございます。たまたま、今回起こりました一連の問題につきまして、これは従来からも、この種の漁船の災害が起こりました場合に、直ちにそれは政府の責任であって、施設が十分でない云々という問題だけが論議されるわけであります。確かに、その点につきましては、施設その他で不十分な点がございますので、できるだけ充実さしてまいりたいと思うわけでございますが、どうも私どもは、その種の取り上げ方が、一般の新聞紙上におきましてもこの種の問題が取り扱われました場合にその点だけの指摘がございまして、施設、処理ができて、あるいは制度の運用よろしきを得ればそういうことは起こらないというふうにもしお考えだとすれば、それはだいぶ事実と違うということを申し上げたかったわけでございます。特に今回の北洋におきます若干の問題につきましては、私はやはり、制度以前の問題に相当大きなウエートがあるし、報道機関におきましてもその点まで取り上げていただいてしかるべきだという感じを持っておりますので、あえて申し上げたわけでございます。  また、特に、今回の問題と関連して、大型化の必要をもし唱えるといたしまして、これはどういう方がどういう理由でそれを言っておられるのか、私にはある程度わかるような気がするわけでございまして、このような災害が起こる、そしてそれを大型化する、また小型がふえる、こういう悪循環は、やはりそれが単なる制度問題としてだけ取り上げられることによってむしろ促進されているのではないだろうかというふうに思うわけでございます。これは、もちろん私どもでいたすべきことは徹底的にいたしますけれども、やはり根本的には、今度のような災害におきましては、最小限度漁民の方が常識的に守るべきらちを越えて、しかもそれが大型化の可能性と結びつくような論議というものは避けるべきではないかというふうに思うわけでございます。
  95. 美濃政市

    ○美濃委員 どうも何回説明を聞いてもわからないのですが、そうすると、長官の言われておるのは、海難の原因は、ただいまの指定海域内の操業、特に私が先ほど指摘いたしました点について、船を大きくするなどということはむだだとお考えなんですか。いまのままでいいということですか。三百海里あるいは四百海里、四トンか五トンの船で出漁している。これが、船が大きくなって、たとえば十トン以上になれば、乗り組み員数はかなり多くなります。また、機関長にしても、その生産性が高まりますから、かなり優秀な機関長をつけられます。この四トン、五トンの船においては、ほとんど焼き玉エンジンを使っておって、いわゆる漁船員と乗り組み員をかねた、単に運転手である。これは新聞にも出ております。地元新聞の切り抜きを持ってまいりましたが、機関の故障を起こしたからという連絡を受けて巡視船があわてふためいて救助に行ってみると、これはこの場合と違って平常の場合ですが、行ってみると、故障というものではなくて、ちょっとささやかな部分が悪くて機械がとまっておる。普通の一人前の免許ある機関士であれば十分それを直して運航することができるのに、行ってみたらこんなことかというものも、わからない。単に順調に動けば運転手であるけれども、どこかちょっと機械の故障があってとまった場合、すぐ海難救助を出す。こういう点で、やはりそう遠くへ出られないような乗り組み員の質的問題あるいは装備の問題の一連がこの地元新聞にも非常に非難され、最近の道新では、これは人災だと書いてある。全部がそういう見方をしておるわけです。それに対して、いまの長官の認識というか説明が、私の聞き取り方が悪いのか、そういうことを考える必要はないのだ、漁民が何かのエゴイズムでそんなことをやっておるのだから、そのエゴイズムの意識を変えぬ限り、船の装備や何かと問題は違うのだということのようですが、そういう御見解ですか。
  96. 久宗高

    久宗政府委員 たびたび申しますように、災害に対する政府としての施策の一連の問題はすでにお話ししてあるわけでございますので、たまたま今回の問題と関連して国会で御質問がございましたので、一般にいままで強調されてない部分を特にこの際申し上げたいと思って申し上げたわけでございます。  要は、もちろんこの制度の問題といたしまして若干の関連がございます。全体の数量がきまっておりまして、それを隻数制限に持っていくことが日本全体として有利かどうかという大事な問題とからんでおりまして、この点は北海道の漁民の方々であれば一人一人おわかりのはずだと思いますので、詳しい説明はいたしませんけれども、そういう問題と、直ちに大型化しなければいかぬかという結論の間には、飛躍があるのではないかということを申し上げたかったわけでございます。いずれにいたしましても、漁民が悪いという言い方を申し上げたのではなくて、この種の問題を防ごうといたしました場合に、制度的な関与だけでは処理できない問題だということの認識の点において、最近サケ・マスの漁業の実態から見まして、私は少しそのらちを逸脱しているのではないかという感じを持っておりますので、たまたま御質問がございましたので申し上げたわけでございます。ある現象の一部をとらえまして、それと制度とを直ちに結びつけて結論をすぐ出すことは私は危険だと思いますので、今度の問題につきましては、北海道庁ともう少し具体的に、どういう事情であるのか話してみたいと思いますし、また、御遭難になりました経緯、そういうことにつきましても、もう少し、単なるどこでどうしたという問題以外に、その経営中身に立ち入った分析をしてみる必要があるのではないか、こう思うわけでございます。そうでございませんと、この種の問題が、許可条件その他を相当きびしくいたしましても、やはり御懸念のように繰り返し起こる心配があると私は思いますので、この際水産庁といたしましてはもう少し中身に入ってこの種の問題の根絶の糸口をつかみたいということを申し上げたわけでございます。
  97. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、この問題は、ただいま道庁とも相談するということですから、いろいろ検討されると思いますが、本日は時間の関係もありますので、いずれその検討された時期等を見て、後日別の一般事項の日程の中でさらに質問いたしたいと思います。何ぶんにも、急にああいう海難が起きて、少数意見でございますから、どういうことがあるのか、私みずからももう少し検討したいと思っております。      ————◇—————
  98. 本名武

    本名委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  ただいま本委員会で審査中の漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び漁業協同組合合併助成法案の両案について、参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選出頭日時及びその手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次会は、明十五日、十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会