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1967-05-11 第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十一日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 仮谷 忠男君 理事 倉成  正君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    小澤佐重喜君       小澤 太郎君    大野 市郎君       鹿野 彦吉君    金子 岩三君       熊谷 義雄君    小坂善太郎君       小山 長規君    坂田 英一君       坂村 吉正君    野呂 恭一君       藤田 義光君    湊  徹郎君       粟山  秀君    伊賀 定盛君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       島口重次郎君    中澤 茂一君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    中村 時雄君       斎藤  実君    中野  明君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         大蔵省関税局長         事務代理    細見  卓君         農林政務次官  草野一郎平君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省園芸局長 八塚 陽介君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省通商         局長事務代理  原田  明君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      嶋崎  均君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 五月十一日  委員赤路友藏辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十日  大分県の寒波による果樹関係被害対策に関する  請願工藤良平紹介)(第九五五号)  各種団体営土地改良事業補助率引上げ等に関  する請願櫻内義雄紹介)(第九八九号)  漁港の局部改良事業推進等に関する請願(鈴木  善幸君商会)(第一〇四二号)  生活改良普及員の増員に関する請願池田清志  君紹介)(第一〇七二号)  農業近代化に対する資金の利子補給補助金の財  源措置に関する請願池田清志紹介)(第一  〇七四号)  松くい虫防除事業の一本化に関する請願池田  清志紹介)(第一〇七五号)  甘蔗対策に関する請願池田清志紹介)(第  一〇七六号)  農業構造改善事業等に対する補助残融資の利率  引下げに関する請願池田清志紹介)(第一  〇七七号)  農道建設事業に対する補助率引上げに関する請  願(池田清志紹介)(第一〇七八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業共済基金法の一部を改正する法律案(内閣  提出第二八号)  農林水産業振興に関する件  果樹農業振興に関する件      ————◇—————
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。島口重次郎君。
  3. 島口重次郎

    島口委員 今度の関税定率法の一部改正に関連いたしまして、バナナ関税が二カ年にわたりまして一〇%の引き下げになるようでございますけれども、これを農業基本法精神から考えてみますと、まさに農業基本法精神をじゅうりんするものだ、こう理解をせざるを得ないのであります。基本法の第一条には、国民経済発展成長とともに、これに即応いたしまして、農民の自然的、経済的な悪条件を乗り越えまして、克服いたしまして、他産業との均衡のとれた農民生活を確保するということをうたっておるのであります。ところが、現時点から見ますと、農家所得の面におきましても、あらゆる面から検討いたしまして、他産業から見ますと、はるかに後退しているのであります。そのさなかにバナナ関税引き下げをいたしまして、いわゆる成長農業といわれる果樹生産者に大きな経済的な圧迫を与えることは、まさに農基法精神を無視したものだ、こう考えるのでございますけれども農林省見解をお尋ねしたいのであります。
  4. 八塚陽介

    八塚政府委員 農業基本法の定めるところによりまして、私どもあらゆる農業政策の取り進めをやっておるつもりでございます。そういうものの一環といたしまして、果樹生産についても、及ばずながらと申しますか、不十分ではありますが、努力をいたしておるつもりでございます。幸いに果樹につきましては、まさに、農業基本法の第二条にございます「需要増加する農産物」ということに一般的には当てはまっておるわけでございます。私どもの見通しによりますと、今後十年程度の先でございますが、なおミカンについては需要が三倍ぐらい伸びるであろう、いろいろ取りざたをされておりますリンゴにつきましても、なお五割ないし六割の需要増加はやはり考えられるわけでございます。一般果樹はほぼ二倍程度需要があるであろう、そういうことで、基本法にいう選択的拡大の、特に生産を増進すべき作物に入っておるわけでございます。  そういうことでやってまいっておりまして、現在も果樹生産につきましては、他の作物に比べましては、いわば状況というのは決して悪くないと思っております。しかしながら、御指摘にありましたように、農業者一般所得は、これは都市勤労者比較しましてまだ相当所得格差はございますし、かたがた比較的他の作物に比べましていいといわれておりました果樹につきましても、昨今の労賃上昇、あるいは機械等の必要な投資をしなければいかぬというようなこと等から見まして、なかなか生産費がかかってくる。そういう意味におきまして、果樹生産につきましても、油断ができない状況になってきておることはまさに事実でございます。ただ、今回のバナナ関税引き下げの問題につきましては、もちろん農林省といたしましては、果樹生産を守るという立場において、できるだけ保護水準というものが高いということは、これは一応当然でございますが、しかし、一方、国際的な関係等からいたしまして、どうしても関税率をある程度下げるということに相なりますと、具体的にその幅が問題になるわけでございます。私どもといたしましても、できるだけその幅が常識的に少ないほうがいいということで、もちろん農業基本法精神に即しながら、かつ関税引き下げの要請にこたえつつ、その妥協点として現在程度関税率引き下げということについて、農林省といたしましても、決して喜んでではございませんが、了承をいたしたいという次第でございます。
  5. 島口重次郎

    島口委員 需要伸びの面からだけ成長農業だ、こう規定することは間違いだと思います。やはり農業基本法にうたっておるとおり、需要伸びるとともに所得が増大しなければならない。そういたしてみますると、農家所得と他産業所得とがどうなっているか。これはあえて私から言うまでもなく、農業白書によりましても明らかであります。都市における労働者所得を一〇〇といたしまして、四十年度には八二・五%にしかなっておらない。こう見ますると、基本法精神目的と称するのは、他産業と同一のレベルに置くことが最大の目標だと、こう考えておるのであります。こういう面から見まして、さらに果樹市場価格あるいは生産コストの面から見ましても言えると思うのであります。市場価格から申し上げますと、三十五年度を一〇〇といたしますと、四十年度において一二五%にしかなっておらない。いわゆる二五%の値上がりであります。しかも、バナナ自由化をされました三十八年から見ますと、逆に四%の値下がりをしているのであります。これに比較いたしまして、生産費のほうはどうかと申しますと、約四〇%、四割の値上がりをしているのであります。こういたしますれば、あえて需要伸びたから、生産数量拡大したから農基法精神が徹底している、生かされておる、こういうことはできないと思うが、そういう見解はどうなんですか。
  6. 八塚陽介

    八塚政府委員 私のことばが舌足らずでございましたが、農業基本法における成長作物、あるいは選択的拡大の対象になる作物ということでは、第二条にありますとおり、果樹はやはり依然としてそうであろうということを申し上げたのでございます。それから、確かに御指摘になりますように、販売価格というものは、たとえば野菜等は三十五年を一〇〇といたしますと、四十年で約二〇〇程度になっております。果樹一般的には、それが消費者価格にいたしまして、三十五年が一〇〇で、一五六という数字もあるわけでございまして、野菜等に比べますと、もちろん伸び率は著しくないわけでございますが、しかし、まあ四十年のレベルにおきます他の作物から見ますれば、それほど特に落ち込んでおるということは言えないのじゃないか。ただ、三十五年から四十年まで順調に伸びておるということではなくて、やや三十十八年ごろから停滞的であるということは事実でございます。ただ、生産費販売価格との関係について申し上げますと、結局販売、すなわち、販売しましたことによる粗収入、それから生産費を差っ引く。生産費の中には家族労働報酬というのも一応含まれておるわけですが、家族労働報酬、そういうものを差っ引きまして、いわゆる所得——家族労働報酬というのがどのくらいになっておるかということになりますと、たとえばミカンにいたしましても、十アール当たり昭和三十一年で四万五百五十二円というのが家族労働報酬でございますが、四十年におきましては十アール当たり十万五千二百三十七円という家族労働報酬、大体十年のうちに二倍強に報酬が上がっておる。それからたとえばリンゴは、ミカンよりは非常に家族労働報酬は少ないわけでございますが、それにいたしましても、三十一年十アール当たり一万四千二百八円、それが四十年におきましては四万六千五百三十二円ということで、まあ現在の段階で、私どもといたしましては、決してこれでもって完全に都市との所得格差が解消できる——しておるというようなことを申し上げるつもりはございませんけれども、まあ家族労働報酬から見ますと、なおコスト販売価格との関係から見ましても、私どもといたしましては、やはりいわゆる成長作物ということに相なるのではないかというように考えております。
  7. 島口重次郎

    島口委員 私の言っているのは、他産業比較して所得がはるかに少ない。したがいまして、他産業比較いたしまして五対五に所得向上してこそ、農業基本法精神が生かされるのである。なるほど農基法には選択的な拡大需要拡大することも大きな目的の柱であるけれども、それよりも、農家所得拡大して、農民生活が他産業従事者均衡のとれた生活をするということが最終目的だと考えております。いまの時点から見ますと、農林省が出している統計から見ましても、労働者所得を一〇〇といたしまして、農家のほうは八二・五%にしかなっておらない。その段階でさらにバナナ関税引き下げまして、農家所得の減退するような政策をやることは、農基法精神に反するのではないか、こう言っているのであります。
  8. 八塚陽介

    八塚政府委員 私どもといたしまして、決していまの所得水準がこれで十分であるというふうには毛頭考えておりません。もちろん、比較的、他の作物をつくっておられる生産者の方に比べて、果樹生産者一般的にややいいといわれております。ある程度そういう点も事実な場合があるわけでございますが、それにしてもなおかつ、決して私どもは、果樹生産に従事しておられる方の所得について満足である、それでもう基本法目的を達したのであるというようなことは、もちろん夢にも考えておりません。今後ともコスト上昇の契機というのは、たとえば労賃にいたしましてもございますし、それから国際競争等のいろいろな激化ということもございます。あらゆる面で決して楽観すべき状況であるとは思っておりません。したがいまして、私どもといたしましては、昨年御改正をいただきました果樹振興法精神あるいはその段取りに基づきまして、今後ともその合理化近代化、したがって果樹生産者の方の所得確保ということを考えておるわけでございます。
  9. 島口重次郎

    島口委員 質問に答えてもらいたい。私はいま他産業との比較を言っております。あなたは他の作物との比較を言って答弁しても答弁にならぬですよ。あとで他の作物との検討もやるけれども、いま言っているのは、他産業との格差の問題を言っている。農基法では、他産業従事者均衡のとれた農民生活ということをうたっている。はるかに所得は少ない。少ない段階で、さらにバナナ関税引き下げをいたしますと、一そう果樹生産者を圧迫することになる。それとも、あなたの見解から申しますと、バナナ関税引き下げをいたしましても、果樹生産者影響ないというんですか。
  10. 八塚陽介

    八塚政府委員 バナナ関税引き下げましてどれくらいの影響があるかということになりますと、これはなかなか計算が簡単には出てまいりません。しかしながら、私どもといたしましては、バナナ関税引き下げれば、それなり国内果樹生産影響があるであろう、そういうふうに考えておるわけでございます。現在所得が十分であるから、あるいは他産業に追いついておるから、したがってバナナ関税を下げていいという、そこまで決して強弁をいたしておるつもりはなかったわけでございますが、そういう意味におきまして、バナナ関税を下げれば、ある程度影響はあり得るでだろう。ただ、どの程度影響かということになりますと、これはなかなか計算がむずかしいわけでございます。たとえば大蔵省計算等によりましても、今度の値下げ幅は、これは計算だけでございますが、たとえば一本二十五円のバナナということになりますと、一〇%で約一円程度値下げであるわけでございます。その一円の値下げがどういうふうに影響するかということはなかなかむずかしいわけでございます。かつまた、果樹生産全体の価格状況というのは、供給と需要その他いろいろなものと複雑にからんでおります。そういうことを考えあわせまして、どの程度影響があるかということになるわけでございますが、残念ながら、いわゆるバナナ自由化されまして、過去のいわば抑圧された形の需要というものから離れましてから期間が短いものでございますから、そういう点についてのいわば計数的な計算というのは、現在の段階でできていない次第でございます。
  11. 島口重次郎

    島口委員 他産業との比較はどうです。
  12. 八塚陽介

    八塚政府委員 ちょっといま果樹生産者についての所得についてだけ他産業との比較は手元にございませんが、先ほど先生が、一般農業者勤労者に対して八二%であるというふうにおっしゃったわけでございます。これは一般的にそうでございまして、果樹生産者といえども、そういう状態から大して変わってないということは言えるのではないかと思っております。
  13. 島口重次郎

    島口委員 もう一度その点をお尋ねいたしますが、そういうふうに所得が低い。低いのに、ただいま答弁にあるとおり、確かに、計数的な計算はしないけれども悪影響がある、こういう答弁である。そういう悪影響がある関税引き下げをなぜやるかというのです。
  14. 八塚陽介

    八塚政府委員 影響はございます。そうしてその影響マイナスであるということは事実でございます。ただ、非常に大きな影響であるか、あるいは、もちろん大きな影響というようなことではないにしても、どの程度影響であるかということに相なるわけでございますが、ただいまも申し上げましたように、今度の関税率引き下げ計算どおりまいりましても、先ほどのような計算になります。なお、私どもといたしましては、そういうことも考慮し、かつ、妥協すべき点、関税率引き下げということについてどうしてもやむを得なければ妥協すべき点としては、できるだけ現在の関税率に近いほうがいいというかっこうになっておるのでございます。
  15. 島口重次郎

    島口委員 果樹生産者が、最近における経済情勢から見て、局長がおっしゃるように、必ずしも恵まれておらない、こういう面でお尋ねしてみたいのでありますが、日本の農業としては、果樹、畜産、水田耕作と、こう大きな柱になっていると思いますが、たとえば米価の例をとります。米価の例をとりますと、三十五年度においては、百五十キロ当たり一万四百五円であります。これを一〇〇といたしますと、四十年度におきまして一万六千三百七十五円、一五七になっております。四十一年度は一万七千八百七十七円、一七〇になっているのであります。三十五年度に比較いたしますと、七割の値上げになっている。ところが、果樹のほうから申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、二五%よりも値上げをしておらない。こういたしますと、まだまだ果樹に対する保護政策をやらなければならない段階だ。こういうときに、逆にマイナス政策を進めるということが、農業基本法精神から見てどうも了承できないと思うが、その点はどうなんだろうかということであります。
  16. 八塚陽介

    八塚政府委員 米価農産物価格のいわば基本的な指標になるということは当然でございます。ただ、米価自由作物である果実というものとは、それぞれ価格が、片一方はいわば統制価格——食糧管理法というもののある一種の統制価格——一種といいますか、統制価格でございまして、こちらは自由価格でございますから、多少そういう点で異なるわけでございますが、ただ、実際には、つくっておる方にしてみれば、これはできるだけ同じ報酬を得たい、得るべきであるということは当然であろうかと思います。そういう意味におきまして、米価との比較もあるわけでございますが、たとえばミカンについて申し上げますと、大体一日当たり家族労働報酬は四十年で約三千円になっております。それからリンゴは、やや低くて千三百円等々でございまして、果実生産におきます労働報酬についても、それなり報酬を得ておるのではないかと思います。ただ、先ほど来も申し上げましたように、現在の価格水準あるいは現在のコスト、あるいは現在のいまのような家族労働報酬というもので満足すべきであるというようなことではなくて、これからもいろいろ生産費値上げ要素は幾らもあるわけでございますから、ますます合理化をしなければならないということは、もうこれは当然でございまして、そのためには、なお政府といたしましては大いに努力すべきであるというふうには考えておる次第でございます。
  17. 島口重次郎

    島口委員 果樹水稲との比較検討でありますが、なるほど水稲のほうが従来の概念から申し上げますと所得が少ない。だから値上がりの幅が大きいとも言えるのです。ところが、均衡のとれた発展均衡のとれた向上、これが安定成長政策だと思うのです。特に先ほど指摘いたしましたとおり、他産業との関係でありますが、単に統計の比率からだけ議論はできないと思うのです。農業ではめしを食えないから、他産業へ転業している方が三十五年から四十年で約五十万くらいある。これは何を物語るか。農業だけではめしを食えないから、他産業に転出をしておるのであります。あるいは年々歳々出かせぎが多くなっておる、あるいは兼業農家が激増しておるのです。これは何を物語るかと申し上げますと、やはり農業が他産業比較いたしましてはるかに低所得であるからであります。この農業というものを国際的な面から見ても、まだまだ国際的に対抗できるまで保護成長政策をとることが政府立場でなければならぬと思うのです。ところが、先ほど答弁にあるとおり、国際的な妥協をしなければならない、マイナスではあるけれども、やらなければならないという心境は、どうも理解できない。そういう点、政務次官からお答え願いたいと思います。
  18. 草野一郎平

    草野政府委員 農業基本法精神と矛盾しつつあるではないか、その時期において果樹生産に従事しておる者の所得が、他産業とはもとより、米作農業に従事しておる者との間にも格差があるではないか、まことにそのとおりでありますが、農業の内容がきわめて複雑であり、しかも高度成長経済の中における複雑な発展様相の中で、それをどう是正していくかというところに非常に大きな問題があるわけで、先ほどお話のありました所得の問題、これは率直に申し上げて、農業基本法精神最大願目でなければならぬと私は思うのであります。いわゆる所得向上をはかりながら、他産業との均衡ある生計を営むというところへ持っていくためにはどうするか。そこで、ただいまの果樹農業に従事しておる人たち所得の問題、米の値段が七〇%三十五年から上がっておるではないか、これに対して果樹のほうは二五%じゃないか、これは、ただいま園芸局長から申し上げたとおり、米作というものに対しては、これは食管制度というものがあることと同時に、一つの大きな制約があります。いかほど馬力をかけてみても、いま米作の大増産運動を起こしておりますけれども、これがにわかに生産性、いわゆる反収というものがぐんぐん伸びるような状態になってもきませんし、さればといって、作付面積を飛躍的に増大させることもむずかしい。そこで、漸進的な方法をとりながら、所得政策とのかね合いを考えて、生産者米価というものの算定が行なわれていくのでありますが、その中において、果樹というもののあり方は若干違うわけであります。違うところにまた苦労があるわけでありまして、したがって、それをなぜ認めたのか、しからば関税引き下げに対してそれでいいのかとおっしゃると、いいはずはございません。いいはずはございませんけれども、しからばそれで開き直ったらどうだ、なかなか開き直れないところに苦労があるわけで、そこが痛しかゆしみたいなところで、御質問になっておる要旨がそこにあるわけでありますが、そこが非常につらいところで、苦労しておるところだということでございます。
  19. 島口重次郎

    島口委員 私は、米の国内における自給度を確保する立場から、米価の七割の値上げをいけないというのではない。むしろもっと値上げをしなければいけないと思う。しかし、自民党政府でも言っているでしょう。高度成長政策、これが安定成長でなければならない。安定成長とは何であるか。農民でありましても、労働者でありましても、中小企業者でありましても、均衡のとれた堅実な成長安定成長だと言っておる。そういう面から、米価において七割上げましたから、果樹におきましても七割の値上げができるような対策をとることがほんとうではないか。それにもかかわらず、逆に悪影響のある、マイナスのあるバナナ関税引き下げをやることは理解できないのであるが、こういう点はどうなんですか。
  20. 草野一郎平

    草野政府委員 米価が七割上がっておるから果樹のほうも七割上げなければならないという理屈はちょっとどうかと思うのです。といいますことは、それぞれ価格というものを形成しておりまする要素が違っておりますし、米価先ほど園芸局長が申しましたように、これはもう農業生産の中での最も王座のようなものであり、しかも食糧政策という、現実の経済問題のほかに政治的な問題もあり、それが政治問題となってくるわけでありますから、したがって、これが年々大きな問題になってくるのでありますが、果樹生産のほうは、たとえば先ほども話のあったように、ミカンにいたしましても、将来なお三倍くらいの需要が見込まれる。リンゴにしてもなお五〇%くらいの増加が考えられる、そういう中において、ここで価格政策の面からいま関税問題を御議論いただいておるわけでありますが、その面はきわめて重要であります。重要でありますが、さらにその大きな背景をなすといいますか、その前提をなすといいますか、むしろその基盤になってくるような、国民のそうしたくだものに対する需要の嗜好、好み、そういったものに対するものの考え方も、これは農業基本法の中にも、需要の増大に対する方向を一つ打ち出しておるわけでありますけれども、そういうこともあわせて考えていかなければならぬので、したがって、これは総合対策として大きな問題を一つ含んでおるというふうにも考えておるわけであります。
  21. 島口重次郎

    島口委員 何を言っているのかわからぬ。私の言うのは、米価が七割を上げたから果樹も七割を上げなさい、こう言うのではないのであるが、しかし、七割と二割五分では不均衡だ、均衡がとれていない。少なくとも近い線で、均衡のとれた値上がりのできる農業政策をやることが、農業政策に一貫性があると思う。そういう面でお尋ねをしておるのです。米価を七割上げたからくだものも七割上げなさい、こう私は言っているのではない。その線に近い、均衡のとれた値上げをして、安定成長せしめることが農業政策の基本ではないかと言っておる。
  22. 草野一郎平

    草野政府委員 ちょっとうっかりしておりましたが、どういうことですか。聞いておったのですけれども、最後の急所のところをもう一ぺん……。
  23. 島口重次郎

    島口委員 米価が七割値上げをしたからくだものも七割上げなさい、こう言っておるのではないのです。均衡のとれた値上がりをしなければ、農業政策に一貫性がないじゃないか。だから必ずしも、米価は七割上がったので、その分だけ上げようというのではない。少なくとも五割なり五割五分なり、均衡のとれた値上がりのできるような農政があってしかるべきじゃないか。これがまた自民党の主張いたしまする安定成長だと思う。その点どうかということを聞いておるのです。
  24. 草野一郎平

    草野政府委員 わかりました。なるほど、さきにもちょっと申し上げましたが、米価が七割だから果樹も七割にしろと言っておるのではない、しかし、均衡のとれたという均衡は一体どこでとるのか、値段で均衡をとるのか、あるいは生産量で均衡をとるのかじゃなく、むしろ私は生計であろうと思う。それはひっきょう所得ということになるのでありますが、所得ということになってきますと、米作農家というものは、一体米作収入が生計の中でどれだけ占めておるか、あるいはまた、果樹というものの収入が生計の中にどれだけ占めておるかということにも関係してきますから、ただ価格だけを何割、何割とすれば、米価が七〇%なら果樹は五〇%くらい上げたらいいじゃないかということが均衡だとも思わないのであります。
  25. 島口重次郎

    島口委員 しからば次官、あなたの議論から言うと、三十五年度の米価でありましてもくだものの価格でありましても、不均衡だというのですか。それが不均衡だから是正したというのですか。あなたのおっしゃるように、やはり米価にいたしましてもくだものの価格にいたしましても、その裏づけと称するのは生計だ、所得だ。いかに企業が伸びましても、所得拡大しなければ何らの意味がない。需要伸びて、所得向上して、農民生活が安定するところに農基法精神があると思う。あなたの議論は何を言っておるかわからない。三十五年の米価なりくだものの価格を、不均衡であったから是正したというのですか。どうなんですか。
  26. 草野一郎平

    草野政府委員 これはちょっと局長から数字を先に説明してもらいますから……。
  27. 八塚陽介

    八塚政府委員 数字だけひとつ申し上げさせていただきます。  たとえば三十五年を一〇〇にいたしますと、四十年は米は一五五、これは生産者価格でございます。それから、たとえば野菜は先ほども申し上げましたように一九九、それから果実は一五三でございます。なお、果実の中にも、これはもうリンゴミカン、桃、ナシ、カキ、それぞれございますが、平均するとそういうことになっております。
  28. 島口重次郎

    島口委員 果実の一五三というのは、何からとりた数字ですか。
  29. 八塚陽介

    八塚政府委員 これは農林省統計調査部の農村物価賃金統計というのでございます。
  30. 島口重次郎

    島口委員 それでは、私は果樹、くだもの全部を聞いたらよろしいけれども、時間の関係もあるからそれを聞いておられないので、私はリンゴの産地である青森の出身でありますから、青森県の紅玉の例をとります。紅玉、国光あるいはインド、デリシャス、スターキング等であります。これは東京の神田市場でとりましたデータであります。これでいきますと、三十五年は一〇〇、三十八年は一二九、四十年は一二五となっておる。だから、先ほど申し上げましたとおり、バナナ自由化をやりましてから四%の値下がりとなっておる。この資料を見たことありますか。これは神田市場の資料なんですよ。
  31. 八塚陽介

    八塚政府委員 いまお手元の資料については、あとでもう一ぺん私のほうでも確かめたいと思いますが、傾向としては、おっしゃるようなことに相なっておると思います。
  32. 島口重次郎

    島口委員 これは傾向じゃなくて、計数が出ておるじゃないですか。
  33. 八塚陽介

    八塚政府委員 その指数を私いま伺わせていただきまして、その傾向と申しますか、その指数は、私どもの予想いたしております。あるいは考えております傾向に合うておるので、その指数は正しいというふうに申し上げ直させていただきます。
  34. 島口重次郎

    島口委員 これが正しければ、さっきあなたの答弁をした一五三というのは間違いということになるのでしょう。
  35. 八塚陽介

    八塚政府委員 私どもの資料におきまして一五三と申し上げましたのは、果実全体についてでございまして、たとえば紅玉は、同じ資料では一〇〇に対して一四四・五、それから国光は一一四・四ということで、これは明らかに全体の水準の中で低いものでございます。ものによっては高いものがあるということで、平均されると一五三・四ということに相なるわけでございます。
  36. 島口重次郎

    島口委員 紅玉が一四四、これは産地の統計ですか、市場の統計ですか。
  37. 八塚陽介

    八塚政府委員 私の申し上げましたのは、農林省統計調査部の農村物価賃金統計でございますので、産地の統計でございます。
  38. 島口重次郎

    島口委員 いまのお話を聞くと、賃金統計だというのか。
  39. 八塚陽介

    八塚政府委員 農村物価賃金統計でございますから、賃金も別の同じ統計の仕組みの中で調査をいたしておりますが、ここでは、ただいまの物価というほうの統計の中の果実の資料でございます。
  40. 島口重次郎

    島口委員 どうもそれはおかしいな。どこが賃金、どこが物価ということが、どうも明確でないようだ。それは、時間がないから、あとでその資料と私の持っておるものを対照してみましょう。  いずれにしても、他の作物比較いたしましても、リンゴ値上がりの幅が低いということはわかると思う。だから次官、もう一度あなたから答弁してもらいたいと思うのは、均衡のとれた農政、農業政策のあり方でなければならぬ、こう思いますが、その点どうなんですか。
  41. 草野一郎平

    草野政府委員 そのとおりでありますが、ただいまおっしゃること自体が、値上がり均衡ではないと思うのです。どうでしょう。
  42. 島口重次郎

    島口委員 どっちが質問しておるかわからない。(笑声)国民生活の広い視野から見ると、やはりさっき政務次官がおっしゃるとおり、それぞれの根底があり、生計費の基盤を得たものが所得になりまして、生活をしておると思う。そういう面から、所得伸び均衡のとれた伸びでなければならないと思うのです。たとえば日本の経済成長率が一一%、一二%といいましても、財界のほうは大きく伸びるけれども、中小企業なり労働者農民層の所得伸びが少ない。そういうように所得伸び均衡していかなければ、国民生活が安定したと言えない。いわゆる安定成長政策目的が生かされておらないと思うのです。したがいまして、所得伸び均衡していかなければならない、これは当然だと思います。あなたは政治家としてどう考えておりますか、政務次官
  43. 草野一郎平

    草野政府委員 そのとおりなんです。むしろ私は、いま農政の問題でありますから、均衡均衡といっていますけれども、時と場合によっては農業のほうがはるかに高い水準になって、他産業から農業との均衡をとれと言われるぐらいな農業にしなければならぬと思って馬力をかけておるのでありますが、いまのところでは、その馬力をかけておる段階で、どこに均衡をとるかとなれば、やはり所得均衡だと思うのであります。所得均衡をとるためには、やはりそこには生計というものがあり、生計一般の中には、所得もいろいろあって、農業所得もあれば、農外所得もあり、農業所得の中には果実所得もあれば、米作所得もあり、蔬菜所得もある。そういうことになってくると、ただ均衡という問題は、所得生活、そういうところでの均衡であって、それは全般的な問題であります。しかし、農業所得を高めなければならぬことは当然であり、果樹農業に従事しておられる方の所得を高めることも当然でありまして、ただいまは果樹農業に従事しておられる人々の所得伸びを議論しておられるのだと思いますが、そうなれば、果実価格の上がり幅というものをどうしていくか。上がり幅といいますか、それに対する保護政策、これは二つの面があろうと思います。生産性を高めていくということ、あるいは需要拡大していくということ、外的な問題としては関税の問題がそこへ加わってくるのでありますが、それらの問題が複合的に関係してくるところに問題のむずかしさがあると私は申し上げておるのであります。
  44. 島口重次郎

    島口委員 所得拡大、他産業のほうから農業が高いから均衡をとれというような農業政策をやりたいというのでしょう。そういうことで努力をしている。所得均衡所得均衡というけれども所得均衡させるもの、所得向上せしめるものが何であるかというならば、農業政策であります。政策のいかんによりまして所得拡大する、向上する、農民生活を安定することが決定づけられる。だから私の言うのは、農民をもっと所得拡大しなければならない段階で、なぜ農民所得マイナスになるようなことをやるんだ。この関税引き下げということは、さっき局長もおっしゃったとおり、農民所得の面から申し上げますとマイナスなんですよ。なぜマイナスになるような政策をやるかということを言っている。しかも、他の作物比較いたしましても、他産業比較いたしましても、果樹生産者のほうが所得が低いのです。果樹生産者というよりも、リンゴ生産者のほうがはるかに低いのです。この低いリンゴ生産者に、なぜ一そうマイナスになるような政策をやるのですかということを聞いている。
  45. 八塚陽介

    八塚政府委員 先ほど来も申し上げておりますが、関税率引き下げについては、もちろん影響はプラスではございません。私どもの感じとしましてはマイナスであるわけでございますが、しかし、そのマイナスの度合いは、これはできるだけ低くしてもらうということで、まあ七〇が五%、一〇%ということでございますから、少し大胆に言いますならば、それほど大きな影響ではないわけでございます。ただ、先ほど来お話に出ております紅玉、国光等についての問題に関連いたしますと、なるほど果実全体では五〇%以上の値上がりになっておりますが、そういうものでございます。これは、たとえば、いわゆる消費支出弾性というようなものを見ますと、極端に言いますと、むしろ若干マイナスになる。ところが、同じリンゴでも、いわゆる高級リンゴのほうはまだ非常に需要伸びておる。したがって価格も高い。その証拠に、結局新しい産地はどんどんそういういわゆる高級品種をふやしておるというようなことで、やはり所得均衡あるいは価格を考えます場合にも、どんな作物をつくってもそれで必ず全部所得均衡するのだということには、これはやはり自由な作物でございますから、ならないのではないか。そういうことになりますならば、やはりこれは、若干ずつではございますけれども、国光とかそういう需要伸びない、したがって値のさえない品種を、値の高く、需要の強い品種に変えていくというようなことも考えあわせながら、所得の確保ということをはかっていくべきではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  46. 島口重次郎

    島口委員 ただいま園芸局長の言ったことと神田の市場の統計を見ますると、局長の言うことが必ずしも当たっておらない。高級リンゴであろうとも、バナナ自由化後においては一円よりも上がっておらない。デリシャスにしても一円よりも上がっておらない。インドにおきましては逆に下がっている。高級リンゴだから値上がりをしておるというのは、あなたの説明どおりではない。  それから、政務次官、そういう局長だけで議論しておりましても時間がなくなりますから、結論的に申し上げますと、どうなんだ。さっきからおっしゃるとおり、まだまだくだもの生産者、特にリンゴ生産者が、他産業、他の作物比較いたしまして低所得であります。そういう段階でさらにマイナスになるようなことをやることは、農民大衆から見て、血の通いました親切な農政ではないと思う。そこで、もう一回考えまして、これを、果樹振興法対策が明確に確立をするまで延期をするというようなお考えがあるかないか、ないといたしましても、もう一回再検討してみるという御意思があるかないか、この点を承りたいと思います。
  47. 草野一郎平

    草野政府委員 果樹振興対策の問題は、これは果樹振興の方針を立てて、いよいよ各品目別、各地域別に対して方針をいま進めております。進めておりますが、それと同時に、先ほどもおっしゃっていただいておることが、私の答弁のまずさもあるでしょうが、同じととろにありますので、同じことを申し上げて恐縮なんでありますが、この問題は、やはり関税の問題、これを考え直したらどうかという御質問でなかったかと思ったのです。考え直したらどうかとおっしゃっていただいても、やはりこれは国際的な関係もあり、そこで、それから受けるところのわが国の果樹対策というものをどう打ち立てていくかという面において、ひとつしっかりした立場をつくっていかなければならぬ。そのつくっていく立場のあり方として幾つかの方法がある。たとえば生産性を増大することも必要であり、さらに生産拡大することも必要であり、あわせて、先ほど私は嗜好ということばを使いましたが、需要拡大と同時に、たとえばバナナの問題になってきましても、バナナ国民が無条件にくっついていくような考え方に対しても、私たちはもう少し何らかの方法でこれは啓蒙する必要もあるのではないか、そういうこともあわせ考えながら、こうした大きな情勢の中で対処していくのでありますが、いま考え直したらどうかということになってきますと、考え直すというその考え方をどの方向へ向けていくか。もう少し広い方向で、しかもそれをこまかく向けていかなければならぬ、そう考えておるわけなのであります。
  48. 島口重次郎

    島口委員 三月の十七日に、自民党の政調会長の西村直己さんから政府のほうに申し入れをしております。この申し入れを見ますと、「関税定率法等の一部改正に伴う、バナナ関税率引下げに関連してリンゴ輸出振興につき、左記の通り措置するよう申し入れる。一、台湾政府との間にリンゴ輸出に関する政府間取決めを行なうこと。二、バナナ輸入に関する受入態勢について、抜本的改正を講ずること。」、自民党自体がこういう申し入れをしておるのに、まだ台湾との輸出に関する取りきめができておらない、あるいはバナナの輸入態勢に関する体制の確立をしていない。現にけさの新聞どうですか。「大口脱税ずらり、バナナ輸入業者、総額六億五千万円」とある。輸入態勢も確立しておらぬ。台湾政府との政府間取りきめもない。自民党政調会長から、これをやりましてから関税引き下げをやりなさいというような勧告が出ているじゃないですか。あなたも自民党の党員でしょう。政務次官、どう考えますか。
  49. 草野一郎平

    草野政府委員 ただいま、バナナの輸入対策が確立しておらぬではないか。六億五千万円の脱税ですか、とんでもない話で、こんなものをいま時分になってびっくりしておることも間違いで、もっと早目にぴしゃっと押える方法はなかったのかと私たちは思っているくらいです。しかし、自民党から申し入れている問題につきましても、これはこういうことばを使っております。「関税定率法等の一部改正に伴う、バナナ関税率引下げに関連して」と、「関連して」でございますから、これに関連してこうした政策を取り進めていかねばならぬ、そういうことでございますので、ひとつ御了承を得たいと思います。
  50. 島口重次郎

    島口委員 台湾との政府間取りきめはどういう状況なんですか。大蔵委員会で平林委員の御質問を聞いておりますと、六月から折衝に行くというような答弁を聞いております。ところが、台湾との貿易は、そう簡単に期待するような成果が出てこないと思うのです。なぜかと申し上げますと、たくさん税金の名目がありまして、本質的には関税と称するものが約二〇〇%の課税率である、あるいはおそらく、政府の管理貿易でありますから、おのずから管理貿易というたてまえから、ドルの割り当てに制約をされる、そういう面から大きな期待ができないと思っておりますが、そういう点はどうなのでしょう。
  51. 八塚陽介

    八塚政府委員 これは各省にまたがっておりますので、あるいは私のみがお答えするのは不十分であるかと存じますが、台湾に対しますリンゴ輸出につきましては、先般、李国鼎という台湾の経済部長官がエカフェの会議に出席するために日本に来られたわけでございます。その際も、各省大臣、外務大臣、通産大臣、大蔵大臣、農林大臣はもとより、それぞれこの点について申し入れをされました。その場では、向こうのほうも必ずしも具体的な御返事はなかったわけでございます。しからば、そういうことを含めて事務レベルでもう一ぺん相談をしようということになりまして、ただいまお話になりましたように、六月の初めに多分きまると思いますが、各省の実務者が参りまして交渉いたすことになっております。もちろん、どういう数量がどういうふうな値段でどういうふうにきまるかということは、外交交渉でございますからはっきり申し上げるわけにはまいりません。あるいは申し上げるだけの客観的な事態にまでまだ行っていないと言っていいかと思いますが、それにいたしましても、先ほどのお話が逆になりまして、向こうはいわゆる官製品として国家が一応コントロールをいたしております。どれくらい買おうかということについても、政府がきめればそれだけの約束はでき得る、そういういわば民間貿易ではございませんので、そういう点につきましては、今後政府間交渉で話をする相手として、つまり、政府政府で話し合いをしたが、あとは民間がしかるべくという形ではございません。もちろん実質的には、その協定のワク内で輸出する場合には、日本の民間業者が輸出するわけでございますが、少なくとも向こうのほうの体制はそういうことになっておりますので、この成果を期待することができるというふうに考えております。
  52. 島口重次郎

    島口委員 政府間で輸出数量のワクを決定いたしましても、最後はコマーシャルベースですから価格の問題になってくる。その際、二〇〇%のあらゆる税金をかけられて、とても採算がとれないというような現象が出てくるから、おそらく大きな期待はできないと思う。  そこで、政務次官にお尋ねをいたしますけれども、台湾では二〇〇%の本質的な税をかけているのです。これを一つも台湾では下げようとしていない。下げる契約がないのです。それに日本が七〇%のバナナの課税なんです。向こうが下げないのに、なぜ日本だけが下げるということをやるのですか。
  53. 草野一郎平

    草野政府委員 これは税金の話ですから、農林省の問題でなく、大蔵省からひとつお聞きいただきたいと思うのですが……。
  54. 細見卓

    ○細見政府委員 お答え申し上げます。  確かに、台湾におきましてはいろいろなやり方をもちまして、日本から行った物が国内に流通するまでにはかなり高い価格になっておることは事実でございます。ただ、非常に違っておりますところは、国家貿易になっておりますので、先ほどもお話がございましたように、日本のリンゴの輸入がそれほど大きくない間は、どうしても差益が出るというような問題があって、それが差益になって出ておるというような面もあろうかと思います。いずれにいたしましても、日本がこういうことで——先ほど来お話を承っておりますと、非常にむずかしい問題があるにもかかわりませず、日本がいわば前向きにこういう問題に取り組むというからには、その誠意は台湾側にも十分買ってもらう必要のある問題でございます。これらの点につきましてよく話していきたい、かように考えております。
  55. 本名武

    本名委員長 中澤茂一君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。中澤茂一君。
  56. 中澤茂一

    中澤委員 大臣、非常に時間がないようですから……。実は、この果樹問題というものが、御承知のように関税定率法改正から非常に重大な問題になっているわけです。政府も、島口委員も言っているように、選択的拡大じゃないかといって基本法農民を指導しておきながら、いまになって、ミカン地帯においても年間一万ヘクタール近い増産になっていて、このままいけば果樹の危機はもう現在来ておるし、果樹農民がどうにもならない立場になってくる。そこで、消費拡大方策としてわれわれも長い間検討してみたが、いまもたいへん輸出の問題が出ておりますが、これにあまり大きな期待を果樹農民としてはかけることができない。どうしても国内で消費増大政策というものを政府がとらない限り、やがて来たる果樹の混乱を救うことはできない、こういう観点から、昨年の予算要求においても、学校給食にひとつ何とか方法を考えようじゃないか、これはかつてわれわれ農林委員会で、なま乳の大暴落のとき、何とかしてこれの消費増大をはかり、われわれの死んだあとの日本をになう青少年の体育の育成のために、この際粉乳からなま乳に切りかえようじゃないかということで、御承知のようになま乳の学校給食が採用されて、そうして、その前にあった冬場と夏場の価格差の大変動、これは集中飲用によって解消されたという経過も御承知のようにあるわけですね。そこで、何とかしてこれを学校給食として——私は政治として非常に善政だと思うのです。やはり子供の喜ぶような政治をやらないと政治ではないと思うのです。そういう面においても、学校給食というものをこの際政府がひとつ腹をきめて踏み切るべきではないか、こういうことで、昨年度の予算要求においても、政府与党としても重点施策としてとれの五千万円要求を決定してやったという御承知のような経過もあるわけです。  そこで、問題は、関税引き下げる前になぜ一体そういう政策的措置をとらないかという責任問題が一つあるわけであります。しかし、私はその責任問題を追及しようとしておるのではない。今後どうするかという問題をわれわれが考えた場合、どうしてもここで消費増大政策として、台湾輸出の政府間協定も一日も早く成立させなければいかぬ。反面においては、国内消費増大対策として、どうしてもこの学校給食に採用さしていく方法が、消費増大としてもいいし、また現にわれわれ長野県が江戸川、木所、深川、昨年は名古屋を始めましたが、非常に子供が喜んでおる。しかも、新鮮な果実が市価の三割五分から四割安く食える、こういうことで非常に子供が喜んでおる。父兄負担がかかるので、結局半分ずつ切ってくれる。学校の子供はなぜこんなおいしいリンゴを一個くれないのか、こういうことで、子供の要望としては一個食わせろ、これは現に本所、深川、江戸川の学校へ行って皆さん見ていただければわかるように、われわれ長野の県と農協が犠牲を払ってこの開拓を一生懸命でやっておるわけです。われわれはそういう実質の確信の上に立ってこの問題を提起しておる。その点について、いろいろ昨年の予算折衝においてもいきさつがあって、自民党が最重点予算要求として五千万円決定したのもついに流れた。それをやっておいて、しかる後に五%の関税を下げるのだから、農民の皆さんがまんしてくれというなら、これは私は話はわかると思う。農民もまた納得すると思う。ところが、それもやらずに、全部け飛ばしておいて、今度は不利になるとはっきり園芸局長答弁しておるような、そういう定率引き下げを一方的に政府がやるということは、これはまさに果樹農民を踏んだりけったりするやり方だと思う。先ほど島口委員の言うように、愛情のある政治じゃないわけです。どうしてもこの際そういう方向で問題を解決していきたい、こういう考え方なのでありますが、それについて、昨年の予算折衝経過もいろいろあるでしょうから、園芸局長から簡単に答弁をしてもらいたい。
  57. 八塚陽介

    八塚政府委員 果実、特にリンゴにつきまして、学校給食の対象にしたらどうかというお話が、確かにただいま中澤先生がお話しになりましたような経過で問題として提出されたわけでございます。ただ、私どもその問題に取り組みまして検討いたしてまいりますと、実はその点については、一昨日小坂先生の御質問にもお答えを申したのでございますが、制度論的にも技術的にもなかなか問題があるのでございます。もちろん、リンゴ等の果実は、これは児童の保健衛生にはきわめて有益なものでございますが、何といいましても、カロリーその他からいいまして、いわゆる日本の米、麦及びみそ汁に比肩するパンあるいは畜産物というものとは趣を異にしておる。そういう点で、かりにこういうものをそういうものと同列に並べますと、あるいは父兄負担の増加というようなことで、学校給食のほうで問題になるのではないだろうか。あるいはまたそういう保健的に非常にいいものであるということからこれを取り上げますと、その他のいろいろな物資との均衡も問題になってくる。そのほか、そういうことは別といたしましても、長野県でおやりになっておる例については、私どもさらに勉強をさせていただかなければいけないと思いますが、技術的に、たとえば一定の規格のころ合いのものを多少価格が動揺する中で安定的に供給していくというようなことにつきましては、包括的な制度的な取り扱いをするには、私どもの感じとしては、まだなかなか体勢として問題があるのではないだろうか、そういうようなことで、当時種々検討をいたしたわけでございます。
  58. 中澤茂一

    中澤委員 局長にいま一言だけ聞いておくが、努力するか努力しないか、それだけ。
  59. 八塚陽介

    八塚政府委員 事務的にあらゆる場合を想定して、特に果樹につきましては、その生産あるいは需要拡大等について、あらゆる場合にいろいろな手を打たねばならない、そういう意味におきまして、検討に努力をいたすことはやぶさかではございません。
  60. 中澤茂一

    中澤委員 いや、それはそのことじゃないのだよ。いま問題になっているのは、台湾の輸出の政府間協定の努力に、いま一つは学校給食の努力、その努力をするかどうか。努力するならする、いやそういうことはやりませんならやりません、どっちでもいいのだよ。簡単でいいのだ。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府政策の問題でございますから、私からお答えいたしたほうがいいと思います。  いろいろ御質疑がございましたようですけれども、台湾との話し合いの中では、リンゴの先方からの買い入れ量についてはさらに拡大するという約束を取りつけておるわけでありますが、それを実際に実現する方途について、さらに農林省としては努力をいたします。  それから、ただいまいろいろここで事務的に申し上げましたけれども、結論といたしましては、果実の消費が一そう普及することは、その需要拡大に資するものと思われますし、ただいまお話のありましたような青少年の体位を向上させるということにも資するわけでありますからして、学校給食を含めて需要拡大方策について、それを実施することについて政府最大の努力を払うつもりでございます。このことを私どもの考えとして申し上げます。
  62. 島口重次郎

    島口委員 いまの台湾との政府間の交渉も最大の努力をするそうでありますけれども、やはり関税定率を引き下げする以前に、政府がやろうとすればやれる対策がたくさんあったろうと思うのであります。その一つは、対ソビエトの輸出の問題であります。対ソビエトとのくだものの輸出関係がどうなっているか、通産省のほうから一応説明を願いたいと思います。
  63. 原田明

    ○原田政府委員 ソ連に対しましては、リンゴ等含めまして日本のくだものをたくさん買ってもらうように、数年来引き続いた交渉を行なっております。ただ、ソ連は御承知のような貿易構造をとっておりますために、必ずしも成績は私どもとしては満足するところにいっておりませんで、数字としてリンゴが幾ら出たということを特筆するような段階までなっていないのは残念でございます。ただ、沿岸貿易に関する附属書簡というものをつくりまして、一九六三年以来沿岸貿易に関する附属交換書簡の品目としてリンゴというものをわざわざ計上いたしまして、これをたくさん買ってくれという話をいたしております。   〔委員長退席、仮谷委員長代理着席〕 実績で申し上げますと、昭和三十九年ソ連に対して千二百二十七トン、昭和四十年二千六百八十トン、昭和四十一年三千九百二十一トンでございました。金額では昭和三十九年五千三百万円、昭和四十年一億一千万円、昭和四十一年一億六千五百万円でございました。増加率だけで見ました場合には、かなりの率に達しているようでございますが、額がまだ非常に小さそうございますので、私どもとしましては、引き続いて日本の優秀なリンゴを、需要としては潜在的にあるのではないかと思われるソ連の極東地域を中心とする方々にたくさん買っていただきたいということで努力をしたい所存であります。
  64. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの説明にあるとおり、まだまだ微々たるものであります。私は一昨年ソビエトへ行きましたが、その際、極東貿易全権であるクゼンコ氏にもお会いいたしまして、ソビエトの意向を聞いてみたのであります。ところが、御承知だと思いますが、ソビエトのリンゴと称するのは、まさに粒が小さくて、味がまずい。そこで、ソビエトにおきましては、青森県のリンゴが日本のリンゴだ、こう理解しておりまして、こんなに日本のリンゴがおいしいものであるか、たくさんほしい。ところが、御承知のとおり、ソビエトの貿易は国家管理でありますから、ソビエトのほうは、物を買ってもらわなければバーター制度による貿易ができない。そういう面から、ニシンやカズノコをたくさん買ってもらいたい、こう要請しているのである。ところが、北海道漁連の専務がソビエトへ参りまして、ニシン、カズノコを七千トン買ってもらいたいという要請をしたけれども、四千トンより買っておらない、こう説明をしておりました。そこで、聞くところによりますと、沿岸貿易に関する限りは、北海道漁連でなければ輸入権がない、こう聞いておるのであります。それで、沿岸貿易の方式としては、日本のほうが先行でありまして、日本が買わなければソビエトのほうも物を買わないという仕組みで、どうも国内におけるくだものを輸出しようといたしましてもできないのは、北海道漁連だけに輸入権があるというところに隘路があると聞いておりますが、その点はどうなんですか。
  65. 原田明

    ○原田政府委員 御指摘のとおり、ソ連はいろいろな貿易につきまして、日本にまず売って、その代金を得てからでなければ輸入をしないという政策をとっている向きが非常に多うございます。沿岸貿易につきましても、日本からの再三の申し入れにもかかわりませず、外貨というものを極東地方に渡しているのではないから、したがって、極東地方が自分でかせいだ外貨で買う分は大いに増進をしたいというようなことを申しまして、事実輸入先行と申しますか、日本が先に買わなければ輸出ができにくい傾きがございます。この点は、先生御指摘のとおり、わがほうとしましては障害になる傾きがございます。特にくだものみたいな季節的なものにつきましては、そういう制限を課されること自体がはなはだ好ましからざることでございますので、交渉において再三申し入れておりました。つい先般の日ソ交渉におきましても、この点について強く申し入れをしたわけでございます。そのときに先方が申しましたのは、輸出と輸入を少なくとも同時にやるということがいいなということくらいの原則はわかる、ただし、沿岸貿易も、これはソ連の統計でございますが、ソ連からの輸出が四百万ドルくらいに対して、輸入は六百万ドルくらいになっているような計算であるから、いわば日本のほうが出超であるので、問題はかなり解決しているはずではないかということを言っております。私どものほうでは、沿岸貿易だけで、特にリンゴあたりがどのくらいどういうふうに出ているかということがなかなか統計上つかめない点もございますが、たてまえとして、やはり少なくとも同時、あるいはこちらが先に出せるものは出せるという形に持っていきたいというように考えておりますので、引き続いてソ連側に対してそのような交渉をする予定でございます。  それから、ニシン等の問題につきましては、昔日本におきましてニシンあたりがたくさんとれておりましたころには、輸入をする必要はさほどなかったわけでございますが、次第にわが国沿海における漁獲が少なくなりまして、需要関係からある程度輸入せざるを得ないという状態になってきたわけでございます。ただ、その場合に、輸入によって日本の沿岸漁民に被害を与えるのは好ましくないという配慮から、農林省水産庁と御相談をいたしまして、その御意向に基づきまして、日本におけるニシンの漁獲地帯としての最も代表的なところであり、主力である北海道の漁民の団体の方に対して打撃がこないようなという仕組みをつくりますために、北海道の方がいま実需者としての割り当てを受けておられるという制度がとられておるという次第でございます。
  66. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの説明を聞いておりますと、日本の先行方式を改めるということができればよろしいと思います。私は、そう簡単にソビエトのほうではそれに応ずるものではない、こう考えております。一昨年ソビエトに行きました際に、貿易省に行きましてあるいは極東全権にお会いいたしまして、その見解を聞きましたら、そう容易に改めるものではないという見解を表明されています。もしそれをやるとするならば、沿岸貿易の行使ではなくて、一般協定の品目の改定をしなければ同時買い付けができない、こう説明しておりますので、そういう面から、通産省の通商局長からその点の見解をお聞きしたいと思うのであります。沿岸貿易の品目から一般協定の中に繰り入れることができないかどうかという問題、それから、ただいま答弁ありました第二点の問題ですが、北海道がニシンの水揚げ量が相当多い。確かに戦前の実績から申し上げましても、それは事実だと思います。それがゆえに北海道の漁連だけに輸入権と称するものを与えることがどうかという問題であります。なぜかと申しますと、戦前におきましては、青森県あるいは東北の地帯からもたくさんニシンとりが行ったのであります。特に日本海沿岸におきましては、北海道の独占ではなかったはずであります。そういたしますと、輸入権にいたしましても、北海道の漁連だけではなくて、特に青森県、東北等にもその恩典を与えることが当然行政的な処置だ、こう考えるのであります。ニシンにいたしましても、カズノコにいたしましても、相場の状況を見ますと、非常に高い。特にカズノコに至りましては、ダイヤモンドのような価格であります。われわれ庶民階級の食卓には乗れないような状況であります。もっと他の地域の方にもその恩典を与えまして、庶民階級の食卓にもカズノコが乗れるような政策をとることが正しいと思うのであります。そういう面から考えましても、北海道漁連に一手独占せしめるような処置はよろしくないと思うのであります。あとで聞きますと、青森県のほうにも幾らか割愛するというようなことを聞いておりますけれども、その点がどうなっているか。あるいはそういう点を勘案いたしますと、勢い国内におけるくだものにいたしましても、向こうに輸出ができる体制が確立をされてくると思うのであります。そういう面の現状と、これからの方針がどうなっているかということをお答え願いたいと思います。   〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 原田明

    ○原田政府委員 御指摘リンゴの輸出について、沿岸貿易だけでは輸入先行がなかなか改善しにくいであろうから、普通の一般の貿易協定の中に計上してやるべきであるという御意見につきましては、私どもリンゴだけに限りませず、日本の消費物資一般を含めまして、なるべくたくさん日本から買ってもらうために、貿易協定の品目に計上してもらいたいと思って交渉をいたしております。したがいまして、特に今回のごとく、リンゴ需要増大のためにはあらゆる世界の市場をさがさなければならないというような状態のもとで、リンゴ作地帯に近い地域であるソ連みたいなところにはなるべくたくさん買ってもらいたいということから、御趣旨のような方向で交渉してみたいと考えております。ただ、この点につきましても、ソ連という国の貿易構造ないし貿易政策の観点から、日本から買いたいものは、船でございますとかその他の機械類一般といったようなものに重点を置いて向こうは考えておりまして、こちらから買いますものとのバランスを非常に強く重視をしておる国でございますので、簡単にこちらの要求に応じてくれるかどうかは非常に疑問でございますが、私どもの態度といたしましては、そのように努力いたしたいと考えております。  それから第二の御質問の、北海道だけにやっているのはどうかという点でございますが、これは当初輸入をやるという状態に踏み切りましたときに、北海道がわが国のニシン漁獲の主力地帯であるということから、行政技術的な点も考慮いたしまして、北海道に割り当てがされたわけであります。したがいまして、その後の状況の変化、輸入量の増大あるいはその後の流通といったようないろいろな状態を考えまして、北海道に割り当てがいっておりましても、その割り当てというものがほかの県、ほかの地域にも自然に流れるというような形でありさえすれば、特に改める必要もないかと思いますが、しかし、それはその後の状況次第でございますので、なお水産庁とも御相談をいたしまして、検討さしていただきたいと考えております。
  68. 島口重次郎

    島口委員 ソビエトヘのリンゴの輸出の問題は、努力でまだまだ拡大される余地が多分にあると思います。ソビエトの各職場を回りまして状況視察をしたのでありますが、ただいま説明にもあるとおり、ニシン、カズノコ、魚類と称するのを日本に輸出をする、その組合だけが、見返りのリンゴが輸入されますと分配でき、その他の建設業でありましても建設職場でありましても、木材その他の職場にいたしましても、一粒のリンゴの配給もできない。ところが、その地域、その職場からは、まだまだたくさん日本のリンゴをほしい、こういう要請が下から盛り上がっておるのであります。あるいは御承知かもしれませんが、モスクワ、レニングラードに行くまでは、先ほど申しましたような粒の小さいまずいリンゴであります。どうやら日本の紅玉、国光等がとれますのはエストニアの方面であります。それからシベリアまで送りますためには少なくとも半月間かかる。日本から輸出いたしますと、横浜からで約三十時間、かりに日本海に貿易港がつくられますと、わずか八時間で行ける。非常に地の利を得ていると思うのであります。そういう面から、客観的に皆さん方のやり方がよろしければまだまだ需要拡大すると思うのであります。こういう点を政府がなぜやらないか。こういう点をやりましてから関税定率を下げるというなら農民大衆も納得をすると思いますけれども、やるべきことをやらないで、一方的に関税引き下げをするというのは、政府の総合政策の面からもすこぶる遺憾と思いますが、政務次官はどう考えますか。
  69. 草野一郎平

    草野政府委員 仰せのとおり、総合政策の観点からというお話でございます。そのとおりであります。したがって、あらゆる面においてそうした努力を続けていかねばならぬ、さように考えております。
  70. 島口重次郎

    島口委員 いかなければならないと言うけれども、三十八年度に一〇〇%から三〇%下がりました七〇%になりまして、基本関税率が三〇%なんだから、七〇から六〇、五〇、あるいは三〇まで下げるという線を出しておるのなら、もう三十九年、四十年、今日に至るまで、総合的な対策でどんどん市場の開拓なり生産コストを下げる政策をやるのがほんとうじゃないですか。そういうことをやらないでおりまして、果樹生産者マイナスになるようなことをやるのはどうも納得できない。これからやりますというのでは納得できない。なぜいままでやらないのか。
  71. 草野一郎平

    草野政府委員 御指摘のようなことは、従来ともやり続けてまいったわけでありますが、今後ももとよりやらなければなりません。ただ、関税引き下げによるマイナスを受ける分に対して、これをどうカバーしていくか、それ以上の方法もまたあわせ考える、それが総合政策だと思っておりますので、従来以上に努力はいたしたいと思っております。
  72. 島口重次郎

    島口委員 まあ、これから努力をするそうですから、これから努力しないよりも、努力するほうがよろしいと思うのです。ところが、マイナスになるような政策をやる以前に、前提として、こういう総合政策をやるのが政府のとるべき態度だと思うのです。逆なんですよ。やらなければならないことをあとにして、やってはならないことを先にするから、農民大衆に、政府といいますか、自民党といいますか、憎しみが出てくるのです。おそらくこの法案を通しますと、全国の果樹生産者が、自民党、政府に対して怨嗟の声を上げると思うのです。さっきの園芸局長のお話を聞きますると、たいしたこともないようなお話をするけれども、直接の利害関係のある果樹生産者には大きな深刻な、真剣な問題だと思います。そういう面から、再三聞くようでありますけれども、それらの総合政策が確立をいたしました後に、関税定率を下げる意思がないかどうか、もう一度お尋ねしたいと思うのであります。
  73. 草野一郎平

    草野政府委員 政府自民党に対して怨嗟などというおことばを、どうぞひとつお使いにならぬようにしていただいて、やわらかな気持ちでひとつごらんいただきたいと思うのですが、そのためには、ただいま申し上げましたように、総合政策を進めねばなりません。したがって総合政策をやってからというお話もございますが、国際的な関係のあることでもございますので、そうした問題をカバーし、さらに多々ますます弁ずるような方向への努力を一そう続けたい、さように考えております。
  74. 島口重次郎

    島口委員 あと五分か十分で終わりたいと思いますが、そこで、果樹振興対策の問題です。畜産局のほうでも、これは成長農業だと農業基本法でうたわれまして、非常に大きな伸びをして出しているようでありますが、畜産局のほうでは年間予算が約二百億、園芸局のほうではその十分の一程度だと聞いておりますけれども、そういう点はどうなっているか。もし私が申し上げましたとおりの状況であるとするならば、どうも片手落ちではないか。これは園芸局のファイトがないのか、それとも政府政策に対する情熱がないのか、こういう点を明らかにしてもらいたいと思います。
  75. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまお話がありましたように、園芸局の予算は農林省の中ではやはり小さいほうでございます。もちろん、園芸局プロパー以外にも農業構造改善事業であるとか、あるいはその他の土地基盤整備、あるいは試験場関係の予算その他を、ただいまのところ計算して持っておりませんけれども、入れば、もちろんあらわれておりますところの園芸局の予算よりは当然非常にふえるわけでございますが、それにいたしましても、それほど各局の中では多いわけではございません。ただ、これはもう御承知だと思いますが、そうして私どもがこういうことを言うと、あるいは口幅ったい言い方になるかと思いますが、決してファイトがないわけではなくて、もちろんファイトは十分にあるわけでございます。それから、これは別に大蔵省におもねるわけではございませんけれども、私どもの要求に対してもやはりそれ相当のおつき合いをいただいておるということでございます。一番予算的に小さい理由は、やはり何と申しましても、園芸行政というものが発足いたしましてから比較的期間が短い。予算の背骨になります行政というのは、これは非常に達観的なことばで、あるいは不適当かと思いますが、蓄積に年月がかかる。長年の積み上げということがやはり必要であろうと思います。そういう意味におきましては、園芸行政というのは比較的歴史が浅い。それではなぜ園芸行政は歴史が浅いか。もちろん、果樹生産者、野菜生産者は明治の初めからあったわけでございますけれども、日本の農業はやはり米麦を中心にして長い間やってきた。それはそれなりに、いわゆる固有の食糧というものが中心になって進められてきた。かたがた、果樹園芸というのはある意味で副業であった。あるいは米麦にあらざる、いわば一種の業者というもので、それほど国家の手を必要としなかった。あるいは差し述べられなかったというようなことが過去においてあるわけであります。長年そういうことがありまして、ようやく最近になりましてそれではならないということになったわけでございます。自分ではファイトがあるつもりではございますが、もちろん岩槻的にごらんになれば、園芸局は一同ファイトがないというような御指摘もあろうかと思います。そういう点については、もちろん今後も努力いたしますが、客観的にはそういう事情がやはり相当影響をしておるのではないかというふうに考えております。
  76. 草野一郎平

    草野政府委員 ただいま局長が申し上げたように、園芸局が何か上品なように見えるという事実は、私はないと思う。果樹農業振興審議会等の答申を待ちながら、むしろ非常なファイトを燃やしておると私は思う。ただ、ものにぶつかっていくような強さというよりも、静かなる力をじりじり発揮しておるというふうに思っております。
  77. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの答弁で現状説明はわかりましたけれども、これから園芸局としては、畜産局、他の局に比較検討いたしましても、まさるとも劣らないファイトを出し、予算もたくさんとりまして、果樹生産者の期待にこたえるような姿勢をとってもらいたいということであります。  そこで、昨年果樹振興法が一部改正されまして、その後、各都道府県におきましては振興計画を立ててやるようであります。その際、政府がどの程度の投資をし、補助を出すかという額は明確に表現できなくても、姿勢を説明してもらいたいのであります。たとえば、政府農業政策に対しましてすこぶる冷淡だと考えております。その一例を申し上げますと、バナナ関税収入でございますけれども、三十七年では十一億二千四百万、ところが、四十一年度におきましては百五十八億になっております。四十年度においても百五十億を突破しております。三十九年度は百三十億、三十八年度は百億であります。このくだものによる政府関税収入があるにもかかわらず、二十億程度よりも政府振興対策費を出しておらぬというのは、まさに農民大衆を欺瞞するものだと思う。バナナの輸入によるその被害者は果樹生産者であります。したがいまして、関税で入りました収入というものを全部果樹振興に投資をするような姿勢が必要だと思います。この点に関しまして政務次官はどう考えておるか、あるいは大蔵省の嶋崎主計官はどう考えておられるか、二人から答弁願いたいと思います。
  78. 草野一郎平

    草野政府委員 関税収入がこれだけあるというお話、そのとおりであります。これは関税収入の高いだけむしろ果樹農民というものが保護されておるという形にも御理解をいただきたいと思うわけであります。
  79. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 農林担当主計官の嶋崎でございます。私からお答えするのが適当であるかどうかよくわかりませんけれども、御存じのように、関税収入というのは一般収入でございますから、それぞれ租税なり関税なりの収入を何かそれに結びつけた特定の財源に使うという考え方というのは、財政運用の一般的な考え方からして問題があると思います。
  80. 島口重次郎

    島口委員 いまの嶋崎主計官のお話のように目的税のように使えというのじゃないのであります。これだけの収入があるからこれだけ果樹振興対策に考えてやることが、愛情のある政治じゃないかと言っておる。しかも、ただいまの政務次官答弁では、高いだけ国内農産物保護だ、何たる答弁だね。高い関税を取っておりましたら、そういう外国の農業と対抗できる日本農業を育成しなければならない。外国の農業と競争力を持つ農業を育成するためには、私は、ただいま申し上げましたとおり、百五十億の関税収入を全部でも吐き出して、日本の農業の基盤強化をやるべきじゃないか、これを言っておるのであります。そういう姿勢があるかないかを聞いておるのであります。さっきもちょっと申し上げましたが、バナナのほうは輸入体制が明確に確立をしておらないようでありますけれども、それにいたしましても、六億五千万の脱税があるというのは、それだけの利益が業者にある、幅があると思うのです。こういうのも取りまして、農民大衆に還元してやることが農政の基本でなければならない、こう考えるのであります。それに対する政府の御見解、姿勢がどうであるかをもう一度政務次官からお聞きしたいと思います。  それから、嶋崎主計官には、目的税のようにそれにひもをつけるというのではない、それだけの収入があるなら、日本の農民に国際競争力をつけるために投資をしてやるべきじゃないか、こういう考え方を持てないかということを聞いておるのであります。もう一度嶋崎主計官からも答弁を要請いたします。
  81. 草野一郎平

    草野政府委員 なるほど、先ほどの六億五千万ですか、脱税があったというお話、いま発見したことが何か手柄のような、そんなばかなことはないので、いままで発見しなかったことがたいへんな失態だと私は思うのです。それは業者の利益というようなものじゃなくして、これは不正を働いておるのですから、とんでもない話なんだ。やはり輸入体制というものに対して、もう少し体制を整える必要がある。同時にまた、果樹農業に対する今後の育成対策に対しても、もっとわれわれは今後さらに進めていかなければならぬという考え方は、先ほど申し上げておるとおりであります。
  82. 嶋崎均

    ○嶋崎説明員 お答えいたします。  租税収入と財政支出の関係についての一般的な考え方というのは、先ほど申したようなところにあると思いますけれども、御指摘のように、農産物の輸入によるところのいろいろな租税収入と助成との関係ということを見るならば、わが国はその方面では相当農業については思い切った持ち出しになっておるということは御承知のとおりでございます。ただ、表面的にごらんになりますと、果樹振興のための予算額が非常に小さいではないか、あるいは園芸関係の予算の伸びが小さいではないかという御指摘ではないかと思うのでございます。この点につきましては、予算書のつくり方等にも相当問題があると思うのでございます。と申しますのは、果樹振興のための予算ということで特別掲記されるものは、そういうものが頭に出てきた、たとえば果樹農業振興のための計画の作成費であるとか、あるいは先ほど来いろいろお話が出ておりましたように、リンゴの場合の品種改良のための育苗の対策の問題とか、あるいは果樹園造成合理化のためのトラクターの補助であるとか、果樹農業機械化研修施設というような、頭に果樹のついたものの予算を通常引き出されて御質問になる場合が非常に多いわけでございます。もちろん、その分野につきましても、去年は一億六千四百万に対して、ことし二億六千万つけておりますから、私は相当飛躍的に予算はついたと思っております。  それから、そういう問題の判断のほかに、御承知のように、農林省の予算というのは横割りの予算の形をとっておるものが非常に多うございまして、たとえば農業構造改善事業というような中で、果樹振興というものが相当高いウエートを占めておるということは、選択的拡大を中心に考えておるこの種の事業の性質からして当然のことでございます。さらにまた、御存じのように、開拓パイロットという制度があります。これは農業基盤整備費の中に入っておりますけれども、前の一般の土地改良予算から比べますと、倍以上の伸び率伸びております。その開拓パイロット予算の中の大部分——西日本のほうについては大部分であろうと思いますけれども、それに近いものが果樹振興対策の基盤整備費ということに使われておるわけでございます。それから土地改良の中でも、畑かんという項目がありますけれども、畑かんはほとんどがいわゆる果樹に向けられておるということでございます。さらにそういう予算的な面のほかに、融資べースの問題としまして、果樹の植栽資金、あるいは農業近代化資金、あるいは後継者育成資金の中での果樹部門にさかれる割合というようなものを考えてみますと、決して果樹の予算が十分だとは限られた財源で処理するものですから申し上げませんけれども、相当程度の予算が盛り込まれておるというふうに考えておるわけでございます。もちろん、先ほど指摘になりましたように、バナナの収入と果樹予算の関係を具体的に結びつけて検討したこともありませんけれども、それは農業の全体的な予算バランスというものを考えて、財政資金の面は検討すべきものであろうというぐあいに考えておる次第でございます。
  83. 島口重次郎

    島口委員 まあ、昨年に比較いたしまして、本年の伸びが相当大きい、二億六千万は相当な犠牲を払ったものだ、こういう理解は、根本的に見解の相違であるが、時間もないから、これを省略いたします。  最後の結論として申し上げたいのは、先ほど来私が質問いたしましたように、やらなければならない前提条件はたくさんある。学校給食にいたしましても、台湾の問題にいたしましても、ソビエト貿易の問題にいたしましても、あるいは果樹振興法の徹底普及、これらに関しましてもやるべきことが前提としてたくさんある。あるにもかかわらず、これをやらない。そういたしまして、果樹生産者には大きな犠牲を強要いたしまする関税定率を下げるということは、まさに本末転倒であり、農政のあり方として逆の方向だと考えておる。遺憾の意を表せざるを得ないと思うが、そういう面から、政府にいたしましても、できましたらもう一度反省をいたしまして、これらの前提条件である、やらなければならないもろもろの政策をやりましてから、関税定率を下げる態度をとってもらえないかどうかをもう一度お尋ねいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  84. 草野一郎平

    草野政府委員 先刻来、非常に精密な、しかもこの問題に対する真剣な御討議をいただいて、私どもとして非常に同感の意を表する部分もあり、なかなかやりにくい部分もあり、しかし、結論といたしまして、果樹振興のために総合政策を進めていく、そうして、いかなる情勢の中にあっても果樹対策が微動だもしないような方向での努力をひとつ真剣に続けていきたいと思っておりますので、どうぞひとつあたたかい気持ちで御鞭撻願いたいと思います。
  85. 島口重次郎

    島口委員 ではこれで終わります。
  86. 本名武

    本名委員長 午後一時三十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後一時五十八分開議
  87. 本名武

    本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。中村時雄君。
  88. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は、質疑に先立って、委員長に一言お願いをしたいと思っております。  先ほどいきなり農林大臣がいらっしゃって、リンゴの問題に関する学童給食という件に対する御答弁がありました。本来なれば、各政党間においていろいろ——農林大臣もいま参議院の予算委員会でお忙しいさなかだと思う。その理由もよくわかります。それから長野県を中心にしたリンゴを中心にした学童給食の問題、これも農民の姿の前に一歩前進の体系である、この点も私は大いに賛同いたします。だがしかし、もう一つ委員長に考えてほしいのは、せっかくそこまでくるなれば、もう一歩、たとえば民社党もあれば、公明党もあり、それぞれの立場で党を代表してきておる以上は、少なくともそういう関連性のもとにおいて、そういう一つの質疑のあり方をやらしていくくらいな、もう一歩前進した態度を今後の運営の中において発揮をしていただきたい。これはりっぱな農林委員長なるがゆえに、私も大いに期待するところでありますので、この点切に要望をする次第であります。この点ひとつぜひとも今後注意をされて、よりよき方向をとっていただきたい、このことをお願い申し上げます。今後やっていただけますか。
  89. 本名武

    本名委員長 御説のとおり善処いたします。
  90. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで、私は、先ほど農林大臣の答弁を聞いておりましたら、リンゴを学童給食に行なうように前向きの姿勢をとるという——リンゴという固有名詞を使われたのか、あるいは果樹という総体的な問題としての取り上げ方を今後前向きの姿としてとろうとされておるのか、そこのところが明確でなかったので、この点、農林大臣がいらっしゃいませんから、政治的な問題など多分に含んでいるので、政務次官からまずその点をお答え願いたい。
  91. 草野一郎平

    草野政府委員 お聞きいただいておったのでありますが、こういう御答弁をしておるはずであります。果実の消費が一そう普及することは、その需要拡大に資するものと思われるので、果実の学校給食の問題を含め、果実の消費の拡大について最大の努力をいたしたいと思います……。
  92. 中村時雄

    ○中村(時)委員 農林大臣がいらっしゃらないのでわからないのですが、そこで、果実というものは、そのときの案件としてはリンゴの問題が中心であったわけです。長野県のリンゴを台湾側に輸出する方式をどうとるか、あるいは学校給食に対する問題をどうとるか、これはけっこうな話だと私は思っているのです。ただ、その中に、やはり各地域におけるところの果樹振興というたてまえからいって、ほかの品種もその中に包括しながら、前向きの姿勢をとって進められるものかどうか。
  93. 草野一郎平

    草野政府委員 大臣の答弁果実という言い方をしておりますように、リンゴだけに限らず、果実というもの全体を含めてとお考えいただきたいと思います。
  94. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは事務当局のほうにお聞きしますが、農林大臣の言った趣旨というものは、非常に重要な意味を持っている。私は、実際の行政上からいったら、即日にそれが実態としてあらわれてくるのは非常に困難性があると思っている。だがしかし、そういう前向きの努力をされるという立場を農林大臣がおっしゃっている以上は、少なくともそれに関連する園芸局長でけっこうですが、園芸局長は、果実、たとえば関西においてはミカンというものが非常に大きなファクターを持ってくるが、そういうものを含めて、そういう考え方の骨子として努力してみたい、こういうお考えを持っているかどうか。
  95. 八塚陽介

    八塚政府委員 私ども果実という場合には、もう当然のことにしましてあらゆる果実、あらゆる地域にそれぞれ異なる果実生産されるわけでございます。あらゆる果実を絶えず問題にいたしておるわけでございます。当然地域によって、あるいは先ほど申し上げておりますように、果実によって需給の状況等々全部異なっておりますから、それぞれのこまかい対策になりますと、それぞれまた異なってくる場合がございますけれども、とにかく一つのものだけを取り上げて問題にするという姿勢は基本的にとっておりません。なお、学校給食に着目いたしまして検討云々という御指摘でございますが、これにつきましては、先ほど農林大臣の御答弁の前に私申し上げましたように、なかなか問題がございます。今後いろいろな検討をしなければならないと思っておりますが、その際にも、リンゴだけということで焦点をしぼって検討するというようなことは毛頭いたさないつもりでございます。
  96. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで、政務次官にお尋ねする。たとえば政治的にこれを取り上げた場合に、検討をするということは、こういうむずかしい問題がありますよということを提示することじゃない。それをどのように可能にしようかということが政治のあり方だと私は思う。その可能にするための前提の努力をどのようにされるか、口では言っているけれども、非常に困難が伴う実態だと私は思っている。それは需要と供給のバランスの上もある、価格の構造の問題もある、あるいは貿易の問題の関連が出てくる、そういう問題がからんで、非常にむずかしい問題に取っ組まなければならぬと私は思っております。真剣に考えれば。だがしかし、いま言っている事柄の重要な点は、少なくともそれをどのように可能にしていくかという努力が必要なんで、事務当局としては、あるいはこういう欠陥があるという言い方をとって、その実態を出してこられるでしょう。その実態をあなたはどのような前向きでこれを表現さしていこうとする心がまえを持っていらっしゃるかどうか。
  97. 草野一郎平

    草野政府委員 検討ということばの内容でありますが、学校給食というものを考えながらやるという言い方を大臣がいたしました以上、やるという考え方に立って、前向きといいますか、大きく前進させるつもりで検討をやる。もとより、問題のあることはただいま御指摘のとおりであります。果実、特に時期的のものでもありますし、給食というカロリーの問題もあるでありましょう。あるいは金額の問題もあるでありましょう。そうしたものをあらゆる角度から研究しなければなりません。そうした意味のことを検当ということばで言っておりまして、やろうという考え方において検討するということであります。
  98. 中村時雄

    ○中村(時)委員 非常によく趣旨がわかりました。  そこで次に、大事なことは時期であります。そこまでの決意があるならば、いつごろまでにやれるであろうという一つの目標のあり方が出てくるであろうと思う。それはどういうふうにお考えですか。
  99. 草野一郎平

    草野政府委員 そういうことも検討するのであります。
  100. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いままでのは事務当局に対する検討ですよ。あなたは政務次官ですよ。そうすると、いつごろまでにその後の資料なり材料なりその方法というものを出せということが言える立場の人でしょう。それがそれまで検討するというのなら、見当違いになりはしませんか。そういう点を、よくあなたは自分の立場と職務というものを考えてやってもらいたい。
  101. 草野一郎平

    草野政府委員 ただいま申しましたように、検討ということ自体がそれらのことを検討するのでありまして、時期とおっしゃいますが、今年度の問題はすでに予算もすべて出ておることでもありますので、今年度にやるということは一応考えられないことであろう。そうだとすれば、それに続く将来の問題として検討を進めていくということであります。
  102. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だんだん縮まってきましたが、本年度はできないというのは、基礎調査だけはできるわけです。だから、基礎調査を本年度命じ、来年度予算の中に明確にするように努力してみたい——私が答弁するわけではありませんよ。そういう検討のしかたがあってしかるべきである。もしそうでなければ、あなたのほうは答弁としては見当違いの答弁になりますよ。もっとまじめに真剣に勉強して、お互いに考えてみようじゃないですか。私はそう思う。どうなんですか。
  103. 草野一郎平

    草野政府委員 したがって、本年度中に検討を進めていくということでございます。
  104. 中村時雄

    ○中村(時)委員 くどいようだけれども、来年度の予算の中に入れられるか、入れられないか、それはわかりません、そのときの情勢ですから。それははっきりしておる。だから、来年度の予算の中に入れるべく努力をするという熱意があることによって、あなたの責任体制がはっきりするのじゃないですか。そのくらいのことは言えないはずはない。どうです。
  105. 草野一郎平

    草野政府委員 近い将来ということは、来年度を含めておりますが、来年度の予算に対してならば、入れられるように検討していくわけでございます。
  106. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その場合は、検討ではなくて、努力なんだけれども、まあいいでしょう。  次にお聞きしたいのは、この間から関税定率の問題で園芸局長からいろいろな御答弁がありましたが、私自身にこの関税定率がはっきりわからない、正直に言って。わからないことはわかったけれども、一体関税引き下げのねらいというものはどこにあるのか、その点からまず入ってみたいと思う。その前に、この原案というものは大蔵委員会にあるわけなんです。そこで、この原案に対する問題が一つの焦点になっておりますから、そういう意味関税の問題を中心にしてやっていきたいし、本来ならば、農林委員会としてはこれを契機にして、現在のバナナ行政にまで将来は発展をさせ明確にしていきたい、こう思っておりますので、近い将来にその問題はその問題として取り上げてもらいたい、これを委員長に要望しておきます。  いま言ったように、関税のねらいは一体どこにあるのか、その点をお聞きしたい。
  107. 細見卓

    ○細見政府委員 お答え申し上げます。  バナナは、御承知のように、発展途上国の非常に重要な輸出産品になっております。例をあげて申し上げますと、たとえばエクアドルといったような国におきましては、全輸出額の五七%がバナナの輸出であるというようなことがございます。そのほかの中南米諸国、いずれも二〇%あるいは三〇%ということになっておりますし、たとえば台湾をとりましても、全輸出額の七%程度バナナになっておる。そういうことで、こうした発展途上国の非常に重要な輸出産品であるわけであります。したがいまして、これらの輸出振興につきまして、こういう国々の熱意と申しますか、これに寄せますいろいろな国際世論を喚起いたすとか、あるいは関税引き下げ運動を行なうとか、そういうような運動は非常に激しいものがございまして、三十九年十月に世界バナナ特別会議というのがエクアドルで行なわれておりますが、これにおきまして、特に日本の関税も非常に高いということを触れられて、日本のこうした後進国に対する姿勢というような形で問題が取り上げられたこともございますし、その以後、ガットの場あるいは最近行なわれておりまするケネディラウンドの場等におきまして、これら後進国は、最近の外貨上のいろいろな困難を克服するために、援助よりも貿易というようなことを唱えまして、関税引き下げを強く迫っておるのが実情でございます。  なお、ひるがえってわが国の関税率の中でのこのバナナ関税のあり方を見てまいりますと、もうすでに御案内かと思いますが、大体日本の関税と申しますのは、原料品はゼロにし、半製品が大体一〇%程度関税、それから製品が普通一五%程度関税をかける、そういうのが現在の関税体系になっておりまして、たとえばわれわれにとりまして非常に奢侈品であり、また高関税がしかるべきと考えられます貴金属等におきましても、四〇%程度関税にしておるわけであります。そういう意味におきまして、日本の関税体系の中にバナナだけがいわば飛び出ておるというようなかっこうで、いろいろな国際会議等におきましても、日本のバナナ関税のところが非常に目立つというかっこうになっております。それに、非常に事柄は小さいことになろうと思いますが、若干の関税引き下げがありますれば、それに応じましてバナナの小売り価格も下がってくるというようなことも考えられます。そうしたことも含め、どちらかと申せば、国際的な日本の南北問題に対する姿勢を云々される前に、日本として、国内的に非常に困難があるから大きなことはできないが、最小限の努力をしたということを示すということが、かなり大きな要素になっておるわけでございます。
  108. 中村時雄

    ○中村(時)委員 最小限の努力じゃなくて、最大限の努力をしたんでしょう、あなたのほうは。どうもしっかり気をつけて言ってくれ。あとで訂正をしてください。間違えますよ。それはあなたのおっしゃることを開くと、たとえばケネディラウンドのような国際的な問題、その妥協案として五%、また来年度五%、こういうふうに最大の努力をされた。要するに、国際間の国際的な要求に応じて関税引き下げをやることが中心であった、これが今度の引き下げ目的である、こうおっしゃるんですね。これははっきりさしておいていただきたい。
  109. 細見卓

    ○細見政府委員 要求に対してこたえたということが、何か非常に強い要求に対してそれに屈服したというふうなお感じでおとりになっておれば、私の説明が至らなかったので、むしろ、後進国はこの問題に対しまして非常に強い熱意を持っておる。日本も今日までの状態になりまして、これらの諸国に対しまして、特に日本の場合は、東南アジア貿易が御案内のように全体の貿易額の三分の一を占めるというような実情でございますので、そうした国々に対しまして、日本はそうした国々の経済的発展あるいはいろいろな貿易伸展について好意を寄せるといいますか、できるだけのことを考えておる国だということを見せる、国の姿勢として必要なことであるという意味で申し上げた次第であります。
  110. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃ一つお尋ねしますが、バナナが七〇%の関税ということが非常にず抜けて高いんだ、それには理由があるはずです。なぜ高いその関税率をいままで堅持しておったのか。それじゃその関税率をなぜこわさなくちゃならないのか。その点はどういうふうにお考えになっているか。まあ、あなたに聞くのは少し無理かもしれないけれども……。
  111. 細見卓

    ○細見政府委員 無理だとおっしゃっておられるくらいでありますから、なかなかうまい説明はできないかと思いますが、御案内のように、自由化になる前は、関税と差益とをこめまして八〇%というような負担になっておったわけです。それが一方では自由化いたしますと同時に、こうした負担も漸次軽減して、八〇%を七〇%程度にいたしております。なお、その前の差益の状態を見ましても、貿易量の若干の増加に応じまして差益は幾らか減る傾向にあったことも事実のようでございます。そういうことを考えまして、国内に対するいろいろな影響等を配慮しながら、今日まで七〇%という関税が続いてきておったものと考えております。
  112. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃ一応それは是なりと認めて、関税を一〇%二年間で引き下げて、一体幾らの引き下げになります。一キロ当たり幾らの引き下げになります。
  113. 細見卓

    ○細見政府委員 実は答弁は一本の用意をいたしておりますので、一本で申し上げたいと思いますが、一本大体二十五、六円になっておりますが、これがCIFで七円ないし八円と考えて、五%とすれば三十五銭ということでございます。
  114. 中村時雄

    ○中村(時)委員 自分が関税引き下げ、引き上げをする場合に、一本の答弁だけで、一本が何ぼであるか、そんなばかな話は、答弁だって勉強だってあるものじゃないですよ。そうでしょう。ただおざなり的にそういうようなばかげたことは、関税定率の上からいっても、もう少しあなた方はしっかりしたものを持って、各省にわたった問題があるからこそ、七〇%という高率をもって——私も高率だと思っている。それをもってやっているのだから、それには理由があるわけだ。その理由というものをよくあなた方も農林省なり通産省とよく相談されて、そのくらいな資料を持って委員会に出てきてほしい。
  115. 細見卓

    ○細見政府委員 正確を期する意味で、資料を待っておりましたので、いま資料が手元にまいりました。これでお答えを申し上げますが、一キログラム当たり六十一円ということになっておりますので、したがいまして、二年間五%ずつということになりますと、おのずから金額は出てくるわけでございます。
  116. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、たとえばキロ六十一円と仮定します。私は、ちょっと計算のしかたがいろいろあるから、問題があると考えます。かりにそれを是なりとみなして、いずれあとで単価の問題の計算のしかたというものはお互いにきっちりとしてみたいと思いますが、それはそれとして、一応六十一円というものをもってケネディラウンドに対するところの協力である、こう言うことがあなたはほんとうにできると思いますか、わずか六十一円で。私は、キロに直したら五%引いた場合にそこまでは出てこないと見ておるのですけれども、それにしても、六十一円というものでもって、あなたは、関税引き下げということが、要するに、他の国際的な熱意といいますか、あなたは熱意とおっしゃったから、熱意と言いましょう。熱意というものに対する答えとなってあらわれると思っておりますか。
  117. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほど申し上げましたように、こうした問題は、先進国としてと申しますか、工業が発展しておる国として、それらのものに対する理解の姿勢という意味でございますので、まして御案内のように、関税引き下げるということは、それ自身が相手の国にもちろん利益になる面もございますが、どちらかと申せば、援助を幾らするとかいうようなことでなくて、それによって貿易が伸びていく、いわば間接的に効果があらわれる問題でございますので、そういう意味におきまして、日本人としての姿勢というものが評価されるだろうと考えております。
  118. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、あなたの言うことはいよいよ矛盾だらけになってくる。私が結論だけ言います。たとえば、いまの一〇%ぐらいでは——向こうの国のほうはこのバナナの輸出によって非常な利益を得る。そこで、利益を得たいから、日本のバナナ関税を下げろという運動をしかけてきておる。これは間違いないことです。ところが、実際に今年度は一〇%のところを五%下げたのですから、向こうの利益はないとあなたは断定された。そうでしょう。大した利益はないでしょう。五%となればその半分ですから。そうしたら、一体何をやったのかということになると、国際的に欺瞞をしたということになる。かえってそのことのほうが悪いという結果が出やしませんか。
  119. 細見卓

    ○細見政府委員 そういうおっしゃり方もございましょうし、たとえばこのようにいたしまして、国内で非常に激烈な討論をして、にもかかわらず、日本の政府は、国内にはいろいろそういう困難があるのを克服してよくやったというような評価もあろうか、かように考えるわけでございます。
  120. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、政務次官にひとつお尋ねする。いま言ったように、ものの見方は裏表があります。関税引き下げて、わずか一〇%やったから——関税局の立場からいえば、国際的な道義心によってやっていくんだったら、二〇%、三〇%引き下げるのがほんとうの道義だと私は思う。わずか五%ぐらいでごまかしていく、そういうような道義心というものはあるものじゃない。ただし、七〇%という高率を立てておるという理由が国内にあるわけです。そこで、ひとつお尋ねしたい。いま言った事柄を聞いておりますと、この関税引き下げた原因というもの、目的というものは、国際的道義の上からきておるということを前提にされておる。ところが、先ほど島口委員がおっしゃっているのは、意味が違っておる。自民党の中においてこの対策をやったときに、少なくともリンゴの輸出振興バナナの輸入体制整備を条件としてこの問題を取り上げる、こういう行き方をおっしゃられておる。それを肯定されておる。一体、この関連性はどういうふうになりますか、政務次官お答え願いたい。
  121. 草野一郎平

    草野政府委員 それはそれでいいんじゃないですか。
  122. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は政務次官ほど頭がよくないので、いま言ったように、その問題をもう少し明確に経過なりその内容を御報告願いたい。
  123. 草野一郎平

    草野政府委員 関税引き下げで五%引き下げることが最大限の努力であるということは、いわゆる果実振興に対する一つの国内政策としての個々のおもんばかりの差し繰りであるということなんです。したがって、それは両方から見れば、下げろという意見と、下げてはいけないという意見と、二つ出てきますから、それを一緒に議論してしまうと矛盾が出てきますけれども、それはそれで私はいいと思うのです、面が違うのでありますから。
  124. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなた頭がいいから、何とかかんとか言っているけれども、聞いているほうはあなたの言っていることがちっともわからない。一方では、ケネディラウンドによるところの関税引き下げをしておるということを明確に打ち出されておる。あなたのおっしゃっている、それでいいではないかということは、どういうことからですか。台湾へのリンゴの輸出の政策拡大をやっていこう、そこでひとつ妥協しようじゃないか、こういう考え方が一つある。だから、実際関税引き下げのねらいということは、少なくともリンゴを輸出するということがねらいなのか、あるいはいま言ったようなケネディラウンドによるところの一つの国際的な問題が中心なのか。また、先ほど大蔵省から発言のありました、あるいは低物価政策の一環として、これを引き下げた結果、バナナが非常に安くなる——ある程度安くなるとおっしゃいました。これには異論があります。ありますけれども、一応それを是なりとみなしていった場合に、そういう低物価政策に関連をさして、二年間で一〇%引き下げることによって、バナナがある程度市場に安く出回るんだというところに重点があるのか。だから、私は、関税引き下げのねらいというものはどこにあるんだということをお尋ねしているので、その点を整理してお答えを願いたい。
  125. 草野一郎平

    草野政府委員 整理をいたしますと、それでいいのではないだろうか、こういうことです。
  126. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでいいということは、何を言っているのですか。はっきり言ってください。
  127. 草野一郎平

    草野政府委員 関税を一〇%引き下げるということは、それは引き下げてはいけないという議論と、もっと引き下げるべきだという議論が、ものの見方が二つあると思うのです。したがって、それを一本にしてしまうというと、ちょっと議論の立て方がむずかしくなってくる、こう思うのであります。
  128. 中村時雄

    ○中村(時)委員 さっぱりわからない。一〇%引き下げていくというねらいはどこにあるのですか。
  129. 草野一郎平

    草野政府委員 それは先ほど大蔵省のほうから答弁のあったとおりであります。
  130. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃあなたのお答えにならぬ。片方はケネディラウンドで引き下げると言う。私の聞いているのは、台湾へのリンゴの輸出の政策としてやっていこうというのですから、それがいいというならこっちが主体であります。一体どちらですか。いろいろありますよ、引き下げるのには。もっとまじめに、正確に、明確に答弁をしてください。あなたは頭がいいと思っているのだから。
  131. 草野一郎平

    草野政府委員 引き下げることを一〇%でとめるということ、それを高いと見るか、足らぬと見るか、それによって議論が分かれてくるのであります。それがきわめて微妙なところで、おのずから考えなければならぬ政治的なものの判断のあり方がどこにあるかということになってくるのだと思います。
  132. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の質問をよく聞いておってくださいよ。私の言っているのは、バナナ関税引き下げのねらいがどこにあるのか。一〇%が高いとか安いとか言っているのではないのです。たとえば低物価政策としてこれを引き下げていくならば、バナナはいま非常に高値である、これが非常に安くなるのだ、こういう低物価政策の一環として取り上げているのか、あるいはそうでなくて、一つの大きな政策としてリンゴを台湾に渡すから、そこでリンゴを渡すかわりにこれだけのことをしてあげましょう、あなたのところも助かるでしょう、先ほど大蔵省も言っているように、ケース・バイ・ケースになって輸出もふえるでしょう、そういう考え方に重点を置いているのか、国際道義の上から、これは高いからそれで何とかしなさいということでこの関税引き下げをやったのか、その問題の本質はどこにあるのかということを聞いておる。
  133. 草野一郎平

    草野政府委員 それはただいま申し上げたとおり、低開発国に対するわが国の姿勢としてのあり方と、国内におけるところの果樹産業奨励の立場というものと——そうでしょう。したがって、それぞれ二つのもののかね合いの中でものがきまってくるということでございます。
  134. 中村時雄

    ○中村(時)委員 だから、あなたのおっしゃったのは、片一方のほうの、台湾のバナナが実際のところリンゴと交換になるようなかっこうになるということがプラスアルファに出てきた。一方の言っていることは、ケネディラウンドによって云々ということを大蔵省が言っておる。大蔵省の言っていることの影響が——大蔵省の言っていることは、先ほど言ったように、ケネディラウンドによって国際道義の上から云々だとおっしゃった。ところが、あなたは政務次官として、それだけではないのだ、結局台湾との関連性の問題が出てくるので、それでその問題を加味しているのだ。これは国内需要の問題です。そういう面が出てくる。その需要の問題が出てくるからこそ、七〇%という高率がいままであったわけです。そこではっきりしてくるでしょうが、そうでしょう。違いますか。
  135. 草野一郎平

    草野政府委員 前回申し上げたのでいいのじゃないですか。
  136. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の言うのは、七〇%が高率だから下げる、国際的な道義心があると大蔵省が言っている。ところが、それだけではないのだ。七〇%というのは理由があるのだ。その理由は何かというと、国内保護という問題が一つ出てくるわけなんです。その保護という問題が、たまたま具体的には台湾との貿易になってあらわれておる。だからこそ、その高率というものを維持しておったわけでしょう。違いますか。
  137. 八塚陽介

    八塚政府委員 あるいは差し出がましいことであるかと思いますが、要するに、七〇%の従来の関税率をこの際引き下げるということについての主要な理由は、先ほど大蔵省の細見調査官から話があったわけでございます。ただ、それだけの保護が従来あったのは、これはやはり国内産業がそれ以上に下げると困るという国内果樹産業の事情があったわけでございます。そこで、従来七〇%であったわけでございますが、なお、その後の国際的な環境の推移から見て、もう少し下げなければ国際的にぐあいが悪いということになった際に、なおかつ、やはり国内果樹産業保護はしなければいけない。そこで、多少のマイナスの効果はあるかもわからないが、しかし、できるだけそういうマイナスを少なくするという立場と、国際的なそういう要請、あるいは国際的にいろいろ申し開きをする調和点として、今度の法案のような数字になったのだと思います。しかし、そうきまりました——これはまだ国会で通っておりませんけれども、きまります過程、あるいはきまりました暁においては、できるだけそういうことに対処するいろいろな方策を講じなければいけませんけれども、そのうちの一つとして、台湾に対するリンゴの輸出等も政府としてはひとつ大いに努力をしなければならないということで、台湾に対するリンゴ輸出だけが国内果樹産業保護と考えておる、それで取り引きをするということではないというふうに私は理解いたしております。
  138. 中村時雄

    ○中村(時)委員 草野政務次官、よくわかりましたか。あなたのおっしゃることもそう言いたいんだろうと思うのです。ただ、ことばが足らずしてそういう問題が起こったんだろうと思うのです。だから、二つに分けられるものじゃない。これは二つのものが一つになって、もう一つ大蔵省のおっしゃっている、二年間で一〇%下げれば少なくともある程度バナナ価格も安定して消費者が助かるんじゃないか、これも一応の常識論としては出てくるでしょう。しかし、現実の問題としては、私は、このいまの問題は出てこないと思う。なぜなれば、これは関税局、大蔵省のほうに聞きたいのですけれども、あなた方、バナナというものの原価をどういうふうに見積もっていますか。
  139. 細見卓

    ○細見政府委員 私ども海の向こうのことはわかりませんので、こちらへ入ってきた過程から先をとらまえて考えてまいりますと、先ほど申し上げましたように、四十年でございますと、全部のバナナの総平均がキログラム当たり六十一円、台湾ものは六十二円になっておるようでございますが、それに輸入価格やその他の経費、関税がかかりまして、消費者価格は大体二百十七円ぐらいになっております。四十一年で申しますと、これが五十六円になりまして、台湾ものは一円ばかり高くなって五十七円になっておりますが、これに関税その他の諸掛りがかかりまして、消費者価格は二百九円、その間に、その差額というのはいろいろな意味での中間的なものになろうかと思いますが、それが四十年におきましては百十三円、それから四十一年におきましても百十三円というような数字を私どもは承知いたしております。
  140. 中村時雄

    ○中村(時)委員 取引の単位というものを幾らに考えているのか。大体普通一般にいわれているのは、一かご幾らで取引をしている。大体四十キロ。だから、それによって計算をしてみると、たとえばCIF価格、輸入税あるいはずっとそういうものをいろいろ計算されて、現行が一体幾らになるのか。その中には、もちろん現行の浜相場、あるいは卸売り業者手数料、あるいは加工業者の諸経費、加工業者の利益、そういうものを含んで一体幾らになるのか。それにもってきて、小売り業者の利益を一体何%と踏んでいるのか。そういうような計算の上で四十キロ当たりが幾らになるか。これが普通の出し方。それに対して、今度五%引き下げた場合に、それを換算してみると、一体キロ当たり幾らの相違が出てくるのか。それを明確にしてもらいたい。——時間の関係もあるから、私のほうで計算したのを出してみましょう。それによってあなたのほうで検討してみてください。  大体CIF価格、これが七ドルといたしまして二千五百四十一円、輸入税が一千七百六十四円、これはCIFに持ってきて七〇%をかけてみました。それにもってきて、基本料金百十六円、冷暖房費が十三円、検数料が十円、それに郵送料が八十銭、検定手数料が一円、クレーム証明書が四円、それにもってきて、上屋の使用料が二十五円、信用状開設費が六円三十銭、同上通知電報費が七円五十銭、それにポステージが三円、保証料が二円二十六銭、それにユーザンスの利息が十六円七銭、輸入担保金利息が二円六十一銭、営業諸費が二百二十六円、合計して四千七百三十八円五十四銭です。わかりますか。これは一応あとでお渡しします。これが一般に原価を出していく一つの基本料金となってあらわれている。それへもってきて五%の関税ということになりますと、百二十六円引くわけです。それに営業諸費というものを二百二十六円を引きますと、四千三百八十六円五十四銭となってまいります。これが五%引いたところの経費としてあらわれてきます。ところが、現行のほうからいきますと、現在の浜相場というものが四千九百円、これはきのうの建て値であります。それに卸売りの手数料が二百円、加工業者の諸経費が七百九十円、加工業者の利益が二百十円、合計いたしまして六千百円、それに、これは一般的にいわれておるのですが、小売り業者の利益金というものを大体三〇%とみなしていって千八百円、合計額が七千九百円、一キロ当たりにしますと百九十七円五十銭、こういうかっこうになってまいります。一方、五%を引いてみますと、一キロ当たりが百九十四円六十銭になってまいります。それを差し引きますと、キロ当たり二円九十銭の相違が出てくるわけです。二円九十銭の相違が出てくるが、しかし、実際には、それじゃいま小売り価格は一キログラム幾らで売られているかというと、百七十円から二百円ぐらいです。そうすると、五%引いても百九十五円前後になってあらわれてくる。五%引いても、実際の小売り価格には影響がないという結論が生まれてくる。こういうことを言おうとして私は出してみた。そうでしょう。私は、そういうふうな計算上——計算上からですよ。計算上から見た場合には、五%によってあなたの先ほどおっしゃった、小売り値がある程度は下がるんじゃないかという甘い見通しは、この中からは生まれてこないんじゃないか、こういうことを言いたくて言ったわけです。これは特に農林省のほうではそういう資料をきちっとしていると思うが、あなたはどういうふうなお考え方を持っていらっしゃるか。
  141. 八塚陽介

    八塚政府委員 私どもいまの数字につきましては、また検討いたしますが、大体先生のお話しになったような数字になるのではないかと思います。バナナの小売り価格が、関税率が下がっただけそれだけ下がる——たとえば先ほど細見調査官から、一本につき三十五銭であるとか、そういう計算を申し上げました。私も午前中それに似たようなことを申し上げたのでございますが、それは計算上のことであって、現実にそういうふうに小売り価格に響くかどうかということは、もっと他の条件が加わらなければならないと思います。たとえば、もちろんその流通機構の整備というようなことも必要でございますが、他面、たとえばバナナそのものについても、供給量が多ければ、そういうものに響きやすく相なりますし、幾ら関税を下げましても、輸入量が少なければ、それには関係なしに上がるということにもなると思います。それからバナナ価格は、もちろん需要があってなかなか強いわけでございますが、しかし、いろいろなケースから見ますとミカンであるとかその他のものの需給価格等によってもやはり影響があるというようなことで、一般的に計算がすぐ最終小売り価格にあらわれるというためには、そういう事情が重なって、そういうことが出てくる。ただ、昨年の傾向を見ますと、やはりたとえば台湾のほうでも従来八ドル、七ドルと、御承知のように二通りあったわけでございますが、七ドル分のウエートが比較的大きくなってきた。大体それに見合う形で、浜相場というものも形成されつつある。最終小売り価格につきましては、まだそういうふうなきれいな形ができておるかどうか、ちょっと資料は検討いたしておりませんが、そういうことは言えるのじゃないかというふうに考えております。
  142. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いま言ったように、大蔵省のものの考え方、その下がるという意味は、五%下げても実際は下がるのです。計数上からいったようになるのです。それは国内の流通機構の取引上の整備ができたときにおいて、初めてその効果が出てくる。いまの浜相場の一つのシステムをもってやっているときには、おそらく五ドル下げても十ドル下げても、それはおそらくインポーターが利益としてふところに入れるでしょう。消費者には出てこないでしょう。そういう問題は、将来逐次問題にして明確にしていきたいと思っております。  そこで、もう一つその証拠を出してみましょうか。なぜ消費者に下がらないかということは、概念的に見てもわかる。昨年の一月にハドルから七ドルに下がった。そのときの浜相場の値段は一体幾らになっておりますか。これは通産省がよく調べておるはずです。通産省のほうでひとつ答えてもらいたい。
  143. 原田明

    ○原田政府委員 四十年の一月で六千九百九十九円しておりました浜相場が、四十一年の一月、ハドルものにつきましては五千二百十五円、それからその後七ドルのものが出てまいりまして、二月、五千三百六十一円、それから四十二年に入りまして、一月で八ドルものが五千九百四十七円、七ドルのものが五千四百五十四円でございました。これが一月、二月、三月と品薄のときはかなり値が上がったような状態が現出いたしまして、三月、ハドルものについては五千九百五十二円、七ドルの高雄もののほうが品質がよかった関係もありまして、六千十七円と上がったようでございますが、四月二十日ごろ現在で、ハドルものが五千三十五円、七ドルものが四千九百九十七円と下がってまいっておるようでございます。
  144. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いまちょっとお聞きになってわかるように、五千円をちょっとオーバーした前後のところを低迷している。ただ、五千九百円から六千円という値段を呼んだときは品薄のときなんです。高雄ものがなく、暴風にあって、その結果非常に困った。それで、それが一挙にぐっと上がった。そこで、グローバルとして中南米を入れたはずです。そういう状況下にあって実際に一ドルを下げてみても、浜相場というものはたいして影響がなかった。正常な取引としてはたいして影響がなかった。実際の消費者の価格のほうがそれでは下がったかというと、決して下がっていない。そうして下がるのは、こういうような問題で下がってくるというよりも、数量を多く入れれば下がる。これはばかでもわかる。そうでしょう。ところが、数量を多く入れるということは、特に農村自身としての立場をとっている現在の農林行政の立場から見た場合に、そのことが果樹農村に非常に大きな影響を及ぼすというたてまえがあるからこそ、台湾ものに対するある程度の数量制限をしているのでしょう。私はそう見ているのですが、政務次官、そうじゃないのですか。
  145. 草野一郎平

    草野政府委員 そのとおりであります。
  146. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ということは、いま言ったように、五%の引き下げは、輸入利益というものがほとんどインポーターに吸収されるという傾向が生まれてきているということが、はっきりこの中で出てくるわけです。  そこで、いまの浜相場に対して、これは農林省の管轄に入りますが、農林省としては、いまの浜相場のあり方というものをこのままの状態で将来とも認めていこうとされておるかどうか、この点お聞きしておきたい。
  147. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまも政務次官からお答え申し上げましたように、バナナの輸入量につきましては、農林省としてははなはだ重大な関心があるわけでございます。したがいまして、これはいわゆる完全な自由競争になかなか簡単にまかせるわけにいかない、そういうことがあるわけでございますが、特に台湾のバナナにつきましては、これはもう御承知のように、向こうが強い管制と申しますか、統制をした輸出をいたしております。それに対しまして、国内のほうのいわば加工業者というのは、これは完全な自由な企業でありますから、輸入業者と加工業者が相対しまして、そうして値段をきめるという場合には、現在の状況では、私どもの見るところでは、やはり加工業者が比較的弱い立場にあるのではないか。ただ、これは浜相場の従来の経緯からいたしまして、少なくとも従来はそれなり意味があり、かつ積極的な意味も果たしてまいっておる。現在の段階でどうかといいますと、私どもとしましては、もう少し輸入組合に対峙する加工組合というものを強くしたほうがいいのではないか。ただ、申し上げましたように、加工業者というのは、これは自由な企業でございますから、統制的にどうこうということはいたすわけにはまいりませんが、気持ちとしては、できるだけ加工組合というものを育成いたしまして、そうして国内、つまり、水ぎわにおける第一線に立っておる人たちの発言権を強化する、これがまあ国内の流通行政の少なくとも第一歩ではないだろうかというふうに考えております。
  148. 中村時雄

    ○中村(時)委員 いまの答弁で、概念的なばく然たるものであるけれども、市場のあり方に対する一つの批判が私はその中から生まれてくると思うのです。それと同時に、いま言ったように、現在の割り当ての輸入制度と、こういう業者が一つになって行なっておる浜相場制度というものは、これが存続する限りは、関税引き下げが直接消費者に影響するとは正直に言って考えられないのです。そこで、関税引き下げの効果を発揮するためには、輸入及び国内販売制度というものをやはり考えなくちゃならぬのじゃないか。そこにやはり焦点が一つ明確にあらわれてくる、こういうふうに考えられるのですが、いま園芸局長がおっしゃった発言の中で、これは少しオーバーになるかもしれませんけれども、もう一ぺんこれは検討の余地があると思うのです。それはどういうことかといったら、需要者の発注方式をとってみたらどうか、こういう意見が一つ出てくると思うのです。これは少し行き過ぎになるかもしれません。だがしかし、そこまで発展してくれば明確な線が生まれてくるのではないか。たとえばあなたが先ほどおっしゃったように、在来の自由化におけるところの問題、それはそれなりに一つの意義があった。確かにあるのです。しかし、意義のある反面、非常に悪い面もあった。先ほどだれかほかの委員が言いましたように、たとえば脱税の問題が出てきたりする。そういうような方向の基本が明確にされていないから、いろいろなそういう問題が出てくるのであって、それがいま言ったように、たとえば需要者発注方式のような問題が取り上げられるようになれば、そういう問題は明確に解消されていくんじゃないか。私の言っているのは一つの例ですけれども、そういうような考えもあるのですから、ひとつ政務次官どうですか。あなたは事務当局にこうしなさいという命じ方ができるわけですから、その問題の内容をもっとよく検討されて、一つの前向きの体制を整えるように、せめてあなたの手腕でこの際考えてみられたらどうですか。内容の意味がわかりますか。
  149. 草野一郎平

    草野政府委員 意味はわかるのですが、この輸入関係は、通産の所管が大きななにを持っておりますので、やはり通産のほうでひとつこれは……。
  150. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういうことを私があなたに言っているのは、通産の政務次官がいまおるわけでも何でもない。あなたは政務次官ですよ。政党から出ているのですよ。大自民党を代表してのりっぱな政務次官ですよ。そうでしょう。政務次官会議もやっているのですよ。だから、こういう意見が農林委員会で出たのだから、通産のほうでもひとつこれは検討してみようじゃないかということが前向きの姿勢なんです。これは私の所管ではありません、それでは役人と同じようなことになってしまう。自分の所管以外のことは一切知りません、これじゃ話にならぬ。
  151. 草野一郎平

    草野政府委員 そういうお尋ねならば非常によくわかりました。これは農林省という立場でなく、もう少し広い政治全般の問題として、あらゆる機関にはかりながら進めていくべきだと思っております。
  152. 中村時雄

    ○中村(時)委員 政務次官、あなたはそういう立場政務次官になっているのでしょう。そういう立場でなってないのだったら、農林省の役人になりなさい。向こうが雇うか雇わぬか知らぬけれども……。だから、政治家という立場をいつも背骨に持って、まじめにしっかりと前を向いて、そういう事柄を一つ一つ研究し、検討し、善処していく、こういう立場のために、あなたを期待して政務次官にされたのではないのですか。私は、おそらく内閣総理大臣佐藤榮作氏は、それだけの期待を持ってあなたを政務次官にしておると、そう思っておる。そういう意味であなたを善意に見ておる。ところが、私はここからの所管は知りませんよ、なるほどそう言われてみればその立場はわかります、しかし、それでは話にならぬ。もう少し前向きに真剣に深く考えてもらいたい、こう思うわけなんです。だから、そういう立場を堅持してやってもらいたい。どうです、それならやれましょう。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕
  153. 草野一郎平

    草野政府委員 そうおっしゃっていただきますと、非常に気持ちが楽になってまいりました。やり方にも熱意が入ってきますので、これは大きな問題でありますから、政治家という立場において、これは皆さんの御協力を得なければなりませんが、ひとつ馬力をかけてやってみましょう。
  154. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次に、台湾のリンゴの輸入というものが、昨年日本から一体幾らいきましたか。
  155. 八塚陽介

    八塚政府委員 十二万箱、約二千五百トンほどであったと思います。
  156. 中村時雄

    ○中村(時)委員 韓国からはどのくらい入っておりますか。
  157. 八塚陽介

    八塚政府委員 もし間違いましたらあとで訂正させていただきますが、韓国は同量であったのではないかと思います。と申しますより、ここ数年、台湾は日本のリンゴの輸入をする数量の考え方は、韓国を第一優先、少なくとも韓国と同じ程度というところまでようやく近づいてきたというふうに了解いたしております。
  158. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、いまおっしゃったように、昨年は日本から十二万ケース、韓国から十二万ケースで二十四万ケース、一昨年はたしか日本から八万ケースだったと思うのですが、韓国からは十万ケースで十八万ケース、このように記憶しておりますが、ともかく韓国を中心に輸入拡大をはかっている事実は、あなたのおっしゃったとおりだと思うのです。  そこで、問題は、この五%という関税引き下げの代償として、先ほどからリンゴの輸出ということが盛んに言われましたが、どの程度輸出拡大をあなたは期待されておるのか、それをお尋ねしたい。
  159. 八塚陽介

    八塚政府委員 ちょっとお答えする前に討正をさせていただきます。  一九六五年の日本からの台湾に対する輸出数量は千六百九十三トン、韓国が千九百八十四トンということで、若干韓国のほうが多いようでございます。これはいろいろ統計の取り方がございます。私どもとしましては、昨年十二万箱であったわけでございますが、十二万箱が少ないというのは、これはもうはっきりした私どもの考え方でございます。それゆえにこそ、もっと買えということを言うわけでございますが、ただ、台湾のほうはどういう数量を、どの程度の単価のものを買うか、それに対応して、日本からその程度のものはどれくらい出せるかという問題はございます。私どものほうとしましては、多々ますます弁ずということでございますが、一方、そういうものを輸出するためにはたして集め得るか、産地あるいは輸出業者の希望、感触というものを聞き合わせまして、いま関係各省でその数量を調整といいますか、検討を進めておる段階でございます。
  160. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、いままだ調査を進めておる段階だとおっしゃるのですね。そうすると、調査を進める段階の内容だけでもけっこうですが、一体台湾側がどういうシステムでもってリンゴを輸入しておるか、それをお教え願いたい。これは通産省のほうでもいいですよ。
  161. 原田明

    ○原田政府委員 台湾におきましては、まずリンゴの輸入関税はもちろんございます。このほかに、防衛関係の税金、港務局税といったようなものが非常にたくさんございまして、ジェトロの報告によりますと、輸入税は輸入価格に二〇%を加えたものの六〇%、防衛税は輸入税の二〇%、港務局、港でございますが、港務局税は輸入価格に二〇%を加えたものの三%となっております。これらを合わせて輸入価格の九〇%になっております。このほか、台湾はリンゴの輸入につきましては中央信託局の扱いになっておりまして、信託局がこれを入札によって国内販売をいたしておりますので、この口銭がかなりとられるかっこうになりまして、合わせて輸入価格の二〇〇%近くになっているといわれております。したがいまして、台湾にリンゴを輸出しようといたします場合に、このように高い関税を課せられておっては、なかなか入りにくいのではないかという状況もございますが、そのくらいかかっておっても需要としてはあるのに、なおワクでこれを制限しておるという二つの問題が出てまいると思います。したがいまして、私どもは今回台湾に対してリンゴをできるだけたくさん売りたい。わが国がバナナを買っている量に比べますと、向こうにリンゴを買ってもらっておる量などというものは微々たるものでございますから、その意味でも、もちろん日台間の貿易のアンバランスというものはございますが、国内果樹への影響等も考えまして、この際、できるだけ輸出余力の許す限りたくさん売るように努力をいたしたい。これにつきましては、こういう台湾側の制度についてもいろいろただしました上で、とにかく輸出できる量を買ってもらえるようにということに主眼を置いて交渉してまいりたい、かように考えております。
  162. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、大体あなたのおっしゃったように、二〇%に加えて三〇%といったのですか、まあそのパーセンテージはいいです。それよりも、そのパーセントで計算をして、台湾側の因みずからがこれを行なっておるのだから、十二万かごに対して、国庫に納入される金額は一体幾らくらいになりますか、その。パーセントにして。
  163. 原田明

    ○原田政府委員 いま計算をした数字は持っておりませんが、これはすぐ計算すれば出るわけでございますので、後刻提出させていただきたいと思います。
  164. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは日本リンゴで大体——私の計算で間違いがあるかもしれませんから、あとであなた方も計算していただきたい。いま言ったように、日本のほうから十二万ケースいった。十二万ケースという問題を取り上げてみますと、大体五億円前後の収入を上げるのではないか。というのは、韓国側のリンゴというものは、品質が悪くてほとんどその対象にならない。そこで、日本のリンゴだけに重点を置いてこれをやっておる。大体FOBで二ドル五十セントであれば、十二万ケースで三十万ドルのもので、すなわち五倍近い国家収入を台湾政府はあげているはずであります。しかも、その輸入関税は、FOB価格に運賃諸掛りを加えて、さらに事前の入札のプレミアムを加えたもので、そうすると、六〇%以上の輸入の課税となって対象としては行なわれている。その輸入のコストに対しては、あなたは二〇〇%とおっしゃいましたけれども、おそらく五〇〇%以上になるのではないか、そういうプレミアムから全部含めてみると。そういうものを国庫の収入として台湾側はあげているわけであります。だからこそ、高い関税であっても、いま言ったように十二万ケースのものがはける。これをもしもそのことをゼロにして、向こうの関税を安くして、そして日本のリンゴをどんどん輸入するという将来への見通しが立つかどうか、これは政治的に非常に大きな問題になってくるわけなんですが、その点であなた方は甘く見ていはしないか、私はこう思うのですが、通産局はどうですか。
  165. 原田明

    ○原田政府委員 御指摘のとおり、台湾の政府にとりましてもかなり重要な国庫収入の財源の一つになっていると了解しております。したがいまして、私どもも、台湾政府のこういう制度を直ちに大幅に改変させるということによってリンゴの輸入をふやさせるということは、さほどやさしいことではないというふうに考えております。さしあたりは、当方の輸出余力というものと見合ったところで、できるかぎり輸入の量、金額の増大という実績をあげて実効をあげるというふうにやっていくのが、一番手っとり早い方法ではないか、かように考えております。
  166. 中村時雄

    ○中村(時)委員 原田君のおっしゃったように、はるかにそれで現実化してきたわけです。ただ、自民党さんのほうで、先ほどそれでいいじゃないかとおっしゃった政務次官の問題がひっかかってくるわけです。リンゴの輸出振興という問題の一項目は、いま言ったことでおわかりのように、台湾側としては、私はちょっとおいそれとそれほど簡単なものではないと思うのです。また、数量をふやすにしても、いまの関税をゼロにしていった場合には、おそらく百万ケースぐらいにしかとどまらないんじゃないか。いまの人口、台湾の土地の条件からいって、少なくとも全部をフルにして最高度に発揮してみても、それくらいにしかならないんじゃないかと思うのですが、どうですか。それ以上になるという見通しがつきますか。どうですか、政務次官、あなたのところでやられたことですから……。私は、それ以上のことは最大限度にして百万ケースと見るのですが、どうですか。
  167. 草野一郎平

    草野政府委員 百万ケースはなかなかたいへんなんじゃないですかね。
  168. 中村時雄

    ○中村(時)委員 たいへんですよ。だからこそ言っているのです。
  169. 草野一郎平

    草野政府委員 だから、そう一気にどえらいことにはならぬと私は思いますが……。
  170. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたの答弁は、なるべくなら痛いことを言われたくない、何とかぼかしてわからぬように答弁しておいたら済むじゃないかということですが、そういうことはやめよう。ほんとうに熱心に質疑しておりますから、どのくらいほんとうに納得がいくか、真剣に考えてみようじゃないか。そこで、いま十二万ケース出ておるが、それにプレミアムや何かで、実際は五〇〇%以上の国庫収入になっておると考えておる。だから、国内的な税制の改正をするにしてもたいへんな問題だと思う。リンゴを向こうのほうへ少しやるから、関税を五%ずつ二年にわたって一〇%引き下げたらいいではないかという安易な気持ちで関税定率をやってもらったら、たいへんなことになるのではないかと思うので、それで言っておるのです。だから、台湾側の実情をよく見るときに、十二万ケースのある程度のオーバーは期待することができるかもしれない。もちろん産地の問題もありますよ。産地の問題もありますけれども、しかし、いまかりに最高度にほんとうにみんながそういう協力をして、日本のものを取り入れてみても、十二万ケースが百万ケースにはならないのではないかと思うわけです。そうすると、日本の国内生産としての果樹のほうとの対比ということのほうが、この輸出の振興よりも大きなファクターになりはしないかということがその裏にあるから、このことを聞いておるわけですが、どうですか。
  171. 草野一郎平

    草野政府委員 先ほども微々たるものだというお話が出ました。なるほど数字から見ますと、こちらの買っておるものと向こうに売っておるものを比較いたしますと、おそらく十分の一以下になると思うのです。したがって、それをうんと上げていくということになると、これは向こうさんの国内的ないろいろななにがありますから、そう簡単なことでもございません。しかし、それと国内における果樹振興対策というものをも含めて考えるのでありますが、それだけにものをしぼって考えておるのではないのでありますから、それも一つの方法ではあるが、それをだんだん高めていきながら、むしろ国内における果樹振興をやりながら、そうして国内需要拡大をやりながら、そういうことをやっておるわけなんであります。
  172. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それだったら、先ほど島口委員が言ったように、自民党の政調会長から申し出ておるところのリンゴの輸出振興という問題は、それほど期待はできないという結論になってしまう。これはどうですか。あなたのおっしゃっておる答弁とそれとは、大きな食い違いが結論的にここに出てくるわけです。
  173. 草野一郎平

    草野政府委員 そう即断してしまってだめではないかというふうに見てもらわずに、これはやはり台湾政府との間にリンゴ輸出に関する政府間取りきめを行なうことという言い方をしておるのです。そこにも希望をつなぎながら、非常に全体を高めていくことを考えておりますから、そこだけを見て、だめじゃないか、だめじゃないかと言ってもらわずに、ひとつこれも希望をつないでいただかなければならぬと思うのです。
  174. 中村時雄

    ○中村(時)委員 出ておるのは二項目です。リンゴの輸出振興の問題と、それから輸入体制の整備を条件としてという二項目ですが、そのうちの一項目をあなたの言うあたたかい目で私も見ます。あたたかい目で見ますけれども、いままでの質疑応答の中で、あなた方が大きな期待をしておるようなものではないという結論がここに生まれてきたということです。ただ、あなた方の期待があまりにも大き過ぎるから、そういう期待ではなくて、正常な方法がもっとほかにあるのではないか。そのためには、いまの一〇%という問題は、そういう体制ができ上がるまで待ってはどうかという問題がその中から関連して生まれてくるわけだ。一〇%負けてやるからおまえさんのところはリンゴをこの際とってくれ、こういう安易な交渉のしかたよりも、もっとほかに方法があるのではないかということを私は言いたいのですが、どうですか。
  175. 草野一郎平

    草野政府委員 このバナナ関税引き下げの問題は、リンゴとの交換条件という問題から出てきたのではないのであって、したがって、先ほど大蔵省のほうから話があったように、これは対外的な低開発国に対する姿勢の問題として出てきておるのであって、そこで、これはお持ちいただいておると思うのですが、この改正に伴うところのバナナ関税率引き下げに関連して、この際、こういう二つの問題に対して努力点を見つけてみろという党の要求でありますから、大きな期待ができないではないかとおっしゃられるかもしれませんが、やはりそれは大きな希望を持っていくべきだと私は思うのです。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 中村時雄

    ○中村(時)委員 大きな希望を持つのはかってです。希望だけなら幾らでも持てますよ。しかし、向こうには人口の限度もあれば、領土の範囲もきまっておるんですから、百万ケース以上はどのようにして希望が持てますか。それ以上になったら夢ですよ。だから、それほどの期待をかけてこの問題に取り組んだらえらい間違いを起こしますよという忠告を私はしておるのです。  しかも、もう一点は、先ほどからリンゴの輸出振興ということが言われておるが、きのう小坂委員リンゴを中心にしておっしゃっておるけれども、あなたもそこにいらっしゃったでしょう。もう一つ聞きたいのは、輸出されておるリンゴは、どこの県のが台湾に輸出されておるんですか。政務次官、あなた、そこまで知っておるのだったら言ってごらんなさい。
  177. 草野一郎平

    草野政府委員 先ほど申しましたように、大きな期待が持てないではないか——それは台湾はあれだけのところですから、とにかく山より大きなイノシシは出ぬということですから、そう大きなことは考えられませんけれども、とにかく台湾に対してわれわれが努力を拡大していくということは必要なことであって、この機会にそれもやれという政調会長の申し出というものは妥当であり、それに向かってわれわれが努力することはまた当然だ、さように考えておるわけなんであります。
  178. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そのことはそれでいいです。努力することは大いにけっこう。希望を持つことも大いにけっこう。しかし、私の忠告は、言っていることほどの期待が持てませんよ。それと、私の質問しているのは、一体リンゴリンゴと騒いだけれども、いままで台湾にいっているリンゴというものは長野県のリンゴじゃなくて、入っているのは全部青森県のリンゴなんです。そうすると、長野県のほうで、リンゴを貿易振興で一生懸命やってくれといって小坂委員は一生懸命やっていらっしゃった。やりましょう、それはやることはけっこうです。長野県のリンゴもそれに含んでの交渉の過程に入っているのかどうか、それも聞きたい。
  179. 草野一郎平

    草野政府委員 小坂委員質問は、長野県の選出としておっしゃったんではないと私は聞いております。
  180. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それはいいですよ。だから、いままであったのを具体的に言っておる。青森県のリンゴが台湾のほうに出ている。ほかの県のやつが出てない。そこで、リンゴ全体として取り上げてその交渉の過程に入っているのかどうかをお聞きしておるのじゃないか。とぼけることをもって答弁のよしとすることはいけませんよ。
  181. 八塚陽介

    八塚政府委員 確かにお話のとおり、従来は青森県のリンゴであったわけでございます。また、青森の知事さんも、そういうこともあって再々台湾と交渉された。台湾においても、戦前からの嗜好等あるいはしにせということでありましょうか、日本リンゴというより、青森リンゴという感じで、青森について少なくとも従来は非常に一種の特殊なあこがれと申しますか、市場を形成しておったわけでございます。ただ、私ども立場といたしましては、もちろん、青森のリンゴあるいは長野のリンゴあるいは岩手、山形のリンゴというようなことで、それぞれの地域によって品種の構成が違いますし、市場価格その他いろいろ違ってまいりますから、現実に集まる場合、これはまたいろいろあろうと思います。それから台湾側の希望もやはりあるだろうと思います。しかし、姿勢としましては、どこの県のものというふうな形で仕事を進めようというふうには、少なくとも農林省としては考えていないのでございます。
  182. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の希望を申しましょう。農林省としては、いま言ったリンゴならリンゴという全体の地域のことを考えて、果樹振興という基本に基づいてものの解決をはかろうというお考え方だ、こういうふうに私は了解すべきだと思っておる。ところが、現実の問題としては、台湾のほうは、青森のリンゴというものが、在来の取引の関連からいっても実際のファクターが非常に大きい。そこで、いろいろ果樹組合も各県にあるわけですが、各県のほうでも、長野県がそれに突っ込んでいきたいという気持ちはよくわかります。青森県のほうとしては、これができれば自分のところがいじられるのではないかという考え方もあるでありましょう。それはあなた方の考えておる政策に基づいて、現実の行為としてほんとうに食うか食われるか、それぞれの果樹地帯としてはそういう考えを持つのです。また、そういう立場で行動もとる。そういうような立場国内的な問題が相殺され、あるいはそこで問題が起きないように、今後とも十分なる注意と努力をしておっていただきたい。そのことを条件に前向きの姿になっていただきたいということをお願いしておきたいと思いますが、いかがですか。
  183. 草野一郎平

    草野政府委員 もちろん、そのとおりであります。
  184. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで、次に、輸入の問題にちょっと関連して。もちろん、きょうはバナナの問題を言うわけではないのですから、関税定率に対する問題だけにしぼっていきますけれども、昨日園芸局長答弁の中で、バナナの輸入が、これは何年ですか、私ははっきりわかりませんが、一〇%前後というものを毎年比例して増加させても、たいして国内果樹生産者には影響はないのではないか、こういう御答弁があったと思いますが、それをもう一度明確にしておいていただきたい。
  185. 八塚陽介

    八塚政府委員 昭和九年は果実合計は百四万四千トン、それに対しまして当時のバナナの移入量だと了解いたしておりますが、これが十万一千トンで約一〇%、十年、十一年、十二年ということで、十二年が、その割合が二二%になっております。なお、ちょっと果実合計と申し上げましたが、ただいまのパーセンテージは国内果実生産量に対してでございます。同様の計算をいたしますと、もちろん、自由化前の三十六年当時は二%あるいは三%ということでございますが、四十年、四十一年とそれぞれ、たとえば四十年は三百九十九万四千トンの総果実量のうち、バナナの輸入量が三十五万八千トンということで、総果実量に対する割合は八%というようなことでございます。先日も申し上げましたように、バナナの輸入の国内果実に対する影響というのは、これはなかなか計数的に出てこない。特に価格その他もございますが、数量の計数がなかなか出てこない。そこで、めどとして戦前の比率を一応考えておる。したがって、もしそういうめどとして考えております計数によっても、なおいろいろな波乱——波乱と申しますが、影響があろうと思います。ある場合には、極端に言えば寡少であって、どうもバナナの値段が高くなり過ぎる、あるいは少しその程度でも入り過ぎるであろうという傾向が出てくるかもわかりません。そういうものはやはり注意深く農林省立場としてはながめながら、しかし、現在の段階では、一応そういうものがめどとして考えられておるということを申し上げた次第であります。
  186. 中村時雄

    ○中村(時)委員 めどとしての次元を戦前にとるということも、これも問題があると思うのです。というのは、たたき売りをやっておった当時の私たち子供のころの意識を思い出すのですが、そういう時期といまは違うのです。だから、戦前のある一定の時期をめどとして、それを目安にして問題の解決をはかるだけでは、この問題は解決しない。もう一つの問題は、要するに、農林委員会の本委員会というものは、あくまでも農政の根拠というものを私たちはこう考えておる。やはり生産者農民をどのように擁護し、どのように向上さすかということが、私たちは骨子であろうと思う。ただ、それを間違えると、非常にバナナが高いからけしからぬ、こういうたたき方もあるでしょう。しかし、それも一方的な見方をすれば、そちらに主体を置けばそういうことになってきます。それが非常にむずかしい問題の取り上げ方だから、値段を安くしようとすれば簡単です。輸入数量をうんとふやせば確かに安くなる。それは国内保護政策という一つのあり方と相反する問題が出てくる。その調和点をどこにとるか、すなわち、適正価格をどういうふうに取り上げるか、これが非常に大きな問題になってくる、私はこういうふうに取り方を真剣に考えてみなければならぬ、こう思っておるわけです。そういう立場であるからこそ、通産省が一方的な台湾の輸出のあり方に対して、日本の窓口を一本にして、一つの正常な貿易の立場をとろうとする心がまえになったのだろうと思います。しかし、まだその内容が十分充実しないし、その中におる人たちが昔のバナナでもうけた夢を持って、夢よもう一度というので、まだまだ多岐にわたって解決点が残っておるのではないかと思います。  それはそれとして、そこで、昨年度が七百八十万かご、こういうふうに私きのう承ったのですが、それでいいですか。昨日の御答弁で、昨年度の台湾のバナナの輸入が大体七百八十万かご、ところが、実際には台風やいろいろなものが起こって、七百三十万かごしか入らなかった、こういうふうに私は記憶しているのですが、それは間違いがないでしょうか、その点通産省のほうにお尋ねしたい。
  187. 原田明

    ○原田政府委員 昨年の輸入は、台湾からは七百四十万かごと承知いたしております。
  188. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、七百四十万かごとしますと、本年度が一割内外というのを是なりとみなして——私は是なりとは思っていませんけれども、一応是なりとみなして、大体一割前後の輸入量をふやしてもいいのではないかということで、大体八百十四万かご、こういうことになりますね。七百四十万かご昨年度入ったのですから、その一割としたら七十四万かご、そうすると八百十四万かご、いいですか、大体その程度のものを本年度は輸入するというお考えなんですか。
  189. 八塚陽介

    八塚政府委員 先ほども申し上げましたように、一割というのは、国内生産量に対して一割ということで、前年の一割アップでずっといくということではないわけでございます。大体昨年は国内果実四百五十万トンぐらいと記憶しておりますが、大体それの一割、それを含めて、たとえばバナナ四十一万トンでございますと、それを含めますと約一割、そういう見当でございます。
  190. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これはまた農林省とあとでこれを明確にしていかなければならぬと思っているのですけれども国内果樹生産量の伸びと、その伸びに対する一割を輸入するということになれば、国内生産量というものが非常にまた問題が起こってくる。こういう観点が出てくるわけですが、これはまたあとの問題として、そこで、通産省にお尋ねしたいのですが、大体昨年度が七百四十万かご。そうすると、本年度は大体どのくらいの予定で考えていますか。
  191. 原田明

    ○原田政府委員 仰せのとおり、輸入量というものが価格に非常に関係があると思われますので、どのくらいが妥当かという量については、私ども非常に慎重に検討しているところでございます。ただいまの状況では、去年の十月からことしの九月までの一年間に、台湾からのバナナ八百八十万かごというものを割り当てベースで予定をいたしております。
  192. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、当初昨年立てました計画が実際には七百四十万かごしか入らなかったのが、台風の関係もあり、中南米のグローバルとして、実際に三十七はいですか入った記憶がありますが、そういうふうにして考えていった場合に、少なくともいまこれから現実の問題に入ってくるわけですが、本年度のグローバルというものが、実際には中南米を中心にして、一体昨年度、本年度をどのように見られていますか。
  193. 原田明

    ○原田政府委員 去年台湾から七百四十万かご入りましたときに、台湾を含めまして全体の輸入は九百十七万かご入っているようであります。ことし八百八十万かごもしさきに申し上げました期間で入りました場合に、どのくらいよそから入るかという予想でございますが、現在は他地域からのバナナの輸入は自由化されております。したがいまして、明確な計画というような数字は非常に困難でございますが、台湾からのバナナの輸入がある程度ふえてまいります早さと、それから国内需要伸びというものとを比べまして、そのギャップを埋めるという形で入ってくるかっこうになるかと思います。ただ、最近、他地域からのバナナが、やや品質の改善等々の状態がございまして、いままでよりも台湾バナナに対する競争的立場が強まるという傾向がございますので、そういう点も勘案いたしますと、去年は台湾バナナが全体の中で八割、八一%ないし八十数%入っておりますが、ほぼ台湾バナナはやはりその程度の比率にとどまるのではないか、かように考えております。
  194. 中村時雄

    ○中村(時)委員 昨年度、そういうような立場で中南米か円、これは伊藤忠と全日青が中心でやっておるようですが、それが一体どの程度船団として入りましたか。大体それをお聞きしておきたい。
  195. 原田明

    ○原田政府委員 たいへん恐縮でございますが、正確な数字は私覚えておりません。昨年度は、いわゆる全日青といわれるグループがかなり入れておりましたのが、今度、先生御指摘の新しいグループがかなり、三十四対十七でございましたか、数字は正確でございませんが、その程度の船の隻数を雇用をいたしまして、もしこのまま船が全部バナナを一ぱい積んで入れば、少しバナナとしては余りぎみになるのではないかということを業界で心配しているようでもございます。私どもとしましても、そういう状況が現出をしないように業者の間の話し合いがうまくいって、秩序ある輸入が現在自由化されております地域についても実行されるようにということで見守っておる状況でございます。
  196. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私もその点が非常に心配なんです。というのは、農林省のほうで、台湾バナナが日本の国内産の果樹生産量の約一割前後というものを是認したとしても、おそらく台湾側から来るものは、いま言ったように規制をされますから、ある程度の方針の打ち出し方は、LCやいろいろなものできちっときまってくるでしょう。しかし、グローバルとしては自由化であります。自由化というのは、昨年度よりも中南米バナナが非常に多く入ってくるのではないか、こういう懸念が多分に出てくるわけです。ところが、これを規制するだけの方法がないわけでしょう。規制がないとなれば、それが一挙にどっと入ってくる。たとえば、すでにある会社では十四はいという手配をしている。一方では全部で三十ぱいくらいになるとか、へたをすると少なくとも四十ぱいになるのではないかという過当競争の時代が、いまの状態からいけば私は必ずくると思うのです。そうした場合に、国内におけるところの果樹生産者に対する影響が今度は明確な姿となって、この関税どころの騒ぎじゃない騒ぎとなってあらわれてくることを私はおそれるのです。それに対して農林省としてどういうお考え方を持っているか。
  197. 八塚陽介

    八塚政府委員 確かに、御指摘になりましたように、台湾以外は完全に自由化されております。さらにお話がありましたように、関税率水準ももちろんでございますが、輸入数量というものが、国内果実に対する影響がきわめて大きい。まあ、現在までは少なくとも台湾産バナナに対して相当日本の嗜好が強くて、台湾産バナナに対するコントロールの手がかりがあれば、大勢を制することが一応できておったと思いますが、今後はそういう状況についての変化というのが当然考えられるわけでございます。そういう問題につきましては、私どものほうといたしましても、できるだけ国内果実保護立場から、正直に申しますと、いまのところはまさに自由な状態でございますけれども、今後また通産当局ともよく打ち合わせをいたしまして、種々検討してまいりたいと思っております。
  198. 中村時雄

    ○中村(時)委員 政務次官、いままでの答弁をお聞きになったと思う。聞いておりますね。そこで、今度はあなたの一つの明確な線を打ち出してもらわなければいかぬ。それはどういうことかといったら、いま言ったように、台湾産のバナナはある程度規制ができるけれども、グローバルは自由なんだ。これからフィリピンを目ざしていけば——商社だっていろいろな競争をやります。ほかの地域において開発に入るでしょう。そういうような姿から見ると、近い将来において、おそらくこのグローバルとしての自由化の線からくる輸入が非常に膨大なものになることは、既成的な事実になってあらわれてくると思う。そこで、その場合に、国内生産者保護するというたてまえをとるなれば、いまのままで放任をしておくと、将来の問題が生まれる。ところが、これを規制しようとするなれば、おそらくいまの関税定率と同じように、国際的な問題としての視野から非常に困難な問題にぶつかってくると思う。そういう点に対して、あなたは国内生産者を擁護する立場をとって、この点を明確にしていこうという努力をなさるか、あるいは国際的な一つの視野のもとにこの問題をやろうとされるのか、一体どちらに重点を置かれるかということをお聞きしたい。
  199. 草野一郎平

    草野政府委員 今後そうしたことの懸念されることも当然でありますが、国内における需要それ自体が、国民の好みというものとどういう関係をしていくかということも、非常に注意深く見ていなければなりませんが、そうしたことに対応しながら、わが国の国内におけるところの果樹農業というものに対する一つの育成の方法、しかも国外的に対抗し得るところの一つの品質であるとか、量産であるとか、あるいはさらに、嗜好は相当変わっていくと思われますから、その変わっていく嗜好に応ずると同時にまた、嗜好を誘導する方向もいろいろ考えながらいくという、いわゆる果樹農業振興対策というものが非常に重要になってくる、さように考えるわけであります。
  200. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたの答弁を聞いていると——シコウもゴコウもないですよ。私の質問は一点ですよ。いま言ったように、一つのオーバーワークになってあらわれてくることは間違いない。そこで、生産者農民を擁護していく立場をとるのか、あるいはそういうような事柄に手をつけていけば国際的な問題に必ずなってきます。自由化というものをうしろ向きにしようとするんだから。そういう場合に、一体どちらの方向に重点を置くべきかと私は言っている。少なくとも農林委員会は、あるいは農林省というものは、生産者農民を擁護する立場に立ってものの判断をつけていくべきじゃないか。いろいろな問題はあります。あるけれども、基本的な問題はそこに置いて、それからあらわれてくる派生的な問題を別の角度から取り上げていくべきが至当な行き方じゃないかという考えを持っているのだが、あなたは一体どちらをお考えになっているのかということをお尋ねしている。だから、シコウもゴコウもないのです。いとも簡単です。
  201. 草野一郎平

    草野政府委員 それはやはり重要な関係があるのでありまして、農林省としては、もちろん国内生産者をいかにして擁護していくか、そこへ努力をどうして向けていくか、これが重点であります。
  202. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間の関係もありますので、最後に一点だけお尋ねしておきたい。  御承知のように、バナナ国内的な機構の整備、そういうような問題は次の機会に取り上げるとして、現在台湾側のやっている方式、たとえば組合をつくっていったのは、少なくとも通産省の意図を私はお尋ねをしておきたい。今度組合ができました。そのでき上がった組合をつくっていった意図、それはどこにあったか。
  203. 原田明

    ○原田政府委員 これは先生よく御存じでございます。先生の御指導によってつくったと言っても過言ではないような点かと存じますが、もちろん、輸入組合の設立された動機は、過当競争によってわが国が不当に外貨損失を行ない、健全な貿易を阻害するということがないように、輸入秩序を確立するという点に主眼を置きまして、国内果樹産業への影響を十分に考慮いたしながら、流通の合理化その他とあわせて、バナナ価格の安定と貿易の発展というものをはかるというところに主眼があったと存じております。
  204. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私も、組合の設立は、国内におけるところの野方図なこの過当競争、それを通じてこれを整備し、そうして価格の安定をし、消費者の安定の方式を打ち出せる、これが一つの目的であり、外に向かっては貿易を正常化していく、この二点がその骨子であったと思うのです。また、そうしなかったなれば、いままでの台湾側の思いどおりにされるような、貿易が一方的な方向に進められていく。そのためには、ドルというものをプレミアムをつけてやっておるのですから、当然どぶに捨てるのと同じじゃないか。そういう立場をとって、こういうような問題の提起をしていったつもりでおります。ところが、実際にはどうかというと、台湾側にいたしましても、依然としてエクスペディエンシャルに、問題の解決もしていない。しかも最近では、四半期に分けての輸入をしておる。その四半期に分けての輸入ということは、どういうことかといえば、台湾側が港の指定権を持っておる。そこで、日本のどこの港につけられても文句の言いようがない、あるいはまた、ただ向こうのほうへ行って、そうして取引ができれば、すぐにLCを組んでしまう。そして積み荷に対するところの検査の監督、そういうような問題の解決すらもできていない。そこで、台湾側は——これは商社ですから、どうしたってもうけたいということもよくわかる。だがしかし、その結果が、いまLCを一ヵ月ごとに組み合わせながら、何とかそれを均衡化しようとするあなた方の努力はわかるけれども、これを結局短期間に、たとえば一ヵ月のうちに十日なら十日にぱっと輸出をしてしまう。そうすると、その後期においては、これは足らなくなる。そうすると、そこで高値を呼んでくる事実、先般は、浜相場では六千五百円以上になっていたはずです。これはだれがもうけるか、ほとんどが輸入業者がもうける。そういうところから、ペーパーであるとかダミーであるとか——そういうものをどのような形で退治するか。退治と言うとおこがましいのですが、そういうことをなくそうという努力、あなた方もやっておったはずであります。その結果が、いろいろな調査方式となってきたわけであります。だがしかし、私たちがよく言ったように、そういう事納が、現実の問題として脱税だとかいろいろな問題にあらわれてきておる。私も非常に被害をこうむった。そういうような立場で、そういう事柄を考えてみて、十分にあなた方がこの組合の中において——この組合の中におる人たちがグローバルの中心になって、輸入をしておるのです、現実には全日青にしても、だから、そういうような関連性を十分監視しながら、せっかくここまできておる組合をどのような正常な方向に育てていくか、そのことがいろいろな問題として出てくるわけです。そのためには、昔の夢を持っておる人たちは、あくまでもこれを排除しようという考え方を持ってくるに違いない。これはあくまでも断固として、あなた方は正常な立場から、今後そういうことのないように努力をしてもらいたい。そういう意味において、通産がしっかりしてもらわないと——窓口なんです。それを農林あるいは大蔵もバックアップして、ひとつ事のないように十分注意しながら進めておっていただきたい。このことを要望し、その決意をお伺いしておいて、私の質問は、本日の関税定率の問題に関しては終わることにし、バナナ行政、政策の点は今後また別の機会に譲ってやらしていただきたい、このように考えて、終わらしていただきます。
  205. 原田明

    ○原田政府委員 バナナの輸入につきましては、年来非常にたくさんの問題が山積しておりまして、世の批判も浴びておりますことは、まことに私どもとしても遺憾と存じておるところでありまして、このところ最も努力を集中いたしまして、先生が御指摘になりましたような貿易並びに国内流通のあり方の正常化、健全な発達というものに向かうように努力をいたしておる次第でございます。  台湾の問題につきましても、配船は現在船を向こうが持って、どちらかといいますと、こちらが不利な立場に立っておるようでございますが、ただ、配船の日程その他の計画だけは両方の合意によって行なっておるようでございます。しかし、まだ御指摘の検査その他かなりの問題が残っておると思います。これも今後業界同士の話し合いはもとより、必要ならば、政府レベルにおいて、今度行なわれます会談等も通じまして、改善のほうに努力してまいりたいと考えております。  また、いわゆる輸入業者がもうけ過ぎておるという先生の御指摘につきましては、今回割り当てをいたします際にも——割り当てを行なっておりますのは、輸入秩序維持のためにやむを得ない制度でございますので、決して輸入業者に割り当てという利権の上にあぐらをかいて不当な利益をもうけてもらうという趣旨ではありませんので、特に個々の輸入業者に要望をいたしまして、そういう世間の批判を浴びることがなくて、輸入業者として流通業者としての自覚に徹して、正常な貿易並びに国内販売を行なうよう強く要望した次第でございます。ただ、なお問題は山積しておりますので、今後も私どもとしても十分努力して一そう正常化につとめてまいりたいと考えております。
  206. 本名武

    本名委員長 斎藤実君。
  207. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 園芸局長に率直に御質問いたします。  バナナ関税定率の引き下げによりまして、消費者は相当バナナが安くなるだろう、こう考えていると思うのです。で、先ほど答弁を聞いておりますと、流通機構の問題をどうするとか、あるいは輸入量をどうするとかというお話もございましたが、この点、引き下げによって小売り価格が安くなるのか、消費者が安いバナナを手に入れることができるのかどうか、明確に御答弁をお願いします。
  208. 八塚陽介

    八塚政府委員 先ほどもお答えを申し上げたわけでございますが、バナナ価格が、この関税定率法改正云々を別にいたしましても、とにかく著しく供給量がふえて価格が下がれば、これは国内果実に対する影響があるわけでございます。一面、国際的には相当高い水準関税率であるということから下げざるを得ない。かたがた、せっかく関税率を下げたからには、それなりの末端消費者価格に対する恩恵がなくては意味がないではないかということで、農林省といたしまして、つまり、国内生産者保護するという立場、あるいは国内の消費者に生鮮食料品を適正な値段で供給するという行政をやっておる立場としては、たいへんむずかしい問題でございます。ただ、私どもは、生産のほうは、やはりこの問題だけではなくて、あらゆる面で近代化をし、合理化をしてコストを下げていく、需給を改善していくという努力を並行してやりながら、今度の関税率引き下げによる価格の恩恵と申しますか、影響を若干でも小売り価格に反映させまして、消費者のためにならせるようにしなければならない。ただ値下げ幅から申しますと、先ほど中村先生の御指摘等もあったわけでございますが、かなりデリケートな程度値下げ幅でございます。  それから、価格がそういうふうに響くのは、単に関税率だけあるいは原価だけの問題じゃなくても他の果実の供給量、価格等々も密接にからんでおりますので、そういう複雑な状況の中で、かつ相反する要請の調和点を求めながら、せっかくの関税率引き下げということでございますから、それなりの、つまり、生産者に迷惑のかからない範囲で、消費者に対してできるだけの利益をもたらすというころ合いをねらって、ひとつやりたいと思っております。
  209. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 先ほど答弁で、流通機構を改革する必要があるという御答弁がございましたけれども、具体的に流通機構をどのように改革するのか、承りたいと思うのです。
  210. 八塚陽介

    八塚政府委員 先ほどは、私の記憶で誤りがなければ、浜相場に関連してそういう話があったんだと思います。御承知のように、浜相場は、輸入業者と、それから国内の輸入業者から青いバナナを引き取りまして、そこでいよいよ国内向けに加工して、国内向けへの流通の第一歩を押し出すという役目の業者がございます。それが従来は、やはりバナナの輸入数量が国内需要量に見合わないというとなんでございますが、やはり見合わなくて、相当需要が強い。したがって、輸入業者のほうが立場が強い、そういうこともありまして、杉の上では輸入業者と加工業者が相対して公正な値段を物に即してつけておったのでありますが、加工業者が乱立をし、かつ数が多いというようなことで、実際上は、私どものほうのあるいは偏見かもわかりませんが、若干問題があるのではないか。そういう意味で、多くの加工業者がなるべく一つにまとまった形で、輸入から物を国内へ引き継ぐ第一線の役目をするということが、一つの望ましい方向ではないかというふうに申し上げたわけでございます。  なお、流通機構といいますのは、そういうところから始まりまして、末端のくだもの屋、八百屋さんの段階まですべてを含むわけでございます。これにつきましても、もちろん、現在の流通機構が完全であるとか、これで十分であるとかいうことではないわけでございます。だんだんに消費者物価の問題はやかましくなってまいりますし、流通機構が必ずしも近代的でないという批判があるわけでございますから、これはこれで大いに合理化をいたさなければなりませんが、ただ、これはバナナに即してバナナの部分についてだけということにはなかなかまいらない。例を申しますと、大体リンゴにいたしましても、ミカンにいたしましても、バナナにいたしましても、たとえば小売り屋さんの小売りマージンというのはそれほど変わりがない。もちろん、非常に高価なくだものと、それから比較的大衆的で安いくだものと、それぞれ違いますけれども、やはりこれはバナナだけの特例の流通合理化というのは国内ではあまり考えられない。やはり広くは生鮮食料品、やや狭く言えば青果物についての流通機構全般の改善とともに進めなければならないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  211. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 バナナの流通機構はあまり考えられないというような御答弁でしたけれどもバナナの輸入業者と加工業者が、これは評価委員といいまして、この二者で価格操作をしているわけですね。まあ、別なことばで言えば、自由に価格をきめている。これが私は小売り価格に響いてくるのじゃないか、こう思うのです。ですから、この加工業者、輸入業者のはっきりした体制、さらにまた、こういうふうじゃなくして、せり制度を採用すべきじゃないか、こう考えるのですが、この点についてどうでしょうか。
  212. 八塚陽介

    八塚政府委員 バナナについての流通機構に関する整備というのは考えられないかのように私が申し上げたといたしますれば、これはたいへん言い方が不十分であったと存じます。青果小売り商あるいは卸段階等々は、バナナだけという特殊な改善の方法という余地は比較的少ないという点は申し上げたわけでございます。バナナに特有な加工、これにつきましては、これは先ほど来も申し上げておりますように、いろいろ改善すべき点がございます。ただいま御指摘になりましたような浜相場を全体としてどうするかという問題もございます。あるいは浜相場を是認して、浜相場の中でどういうふうにより一そう合理的な取引ができるかという問題もございます。これはもちろん浜相場というのは、先ほども申し上げて御存じのように、輸入業者と国内の加工業者の出会いの場所でございますから、これにつきましては、輸入業者についての監督は通産省がおやりになっておる、加工業者については私どものほうがやっておるということでございますから、両省よく相談をいたしまして、その間の合理化をはかっていくという基本的な態度でございます。農林省といたしましては、いまの段階で浜相場をより合理的に運用するには、輸入業者の体制の確立と並行して——と申しますのは、輸入業者に対します世の批判に対しまして、かなりな程度にいろいろ行政指導等で体制が整えられております。それに対応いたしまして、加工業者のほうもそれなりの体制を整えていくというふうに考えておるわけです。そういうことをやめて、この際せりにしたらどうかというお話もございます。そのせりも、中央卸売り市場へ全部持ってくるという意味のせり、あるいは浜相場の過程におけるせり等もございます。そのあたりにつきましては、なお今後通産省ともよく御相談の上で、検討を進めたいと思っております。
  213. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 バナナ需要の増大につれまして、日本の果樹産業に大きな影響があるということは、これは斯界の常識でございますが、先ほど答弁の中で、将来の日本の果樹産業の増産のためにいろいろな答弁がございましたけれども、今日まで政府が日本の果樹生産対策として具体的にどういうものをやってこられたのか、今後の具体策について御答弁をお願いします。
  214. 八塚陽介

    八塚政府委員 バナナは、その輸入が比較的多いために、国内果実との競合の問題というのがなかなか問題になるわけでございます。ただ反面、バナナはそのものが国内生産をされておりませんから、そういう意味で、いわば間接的に影響がある。ただ、これは朝から申し上げておりますが、どういうふうな代替関係にあるか、どういう影響があるかということは、なかなか一がいに言えないわけでございますが、私ども決して影響がないなどと申し上げることはないのでございます。しかし、私どもといたしましては、そういう外国産果実の輸入の影響も当然考慮をいたさなければなりませんが、果実生産自体が、どちらかといいますと、過去におきましてはかなり順調でございまして、他の作物をつくっておる人から見ますれば、一種のうらやましいという状況にあった時期があるわけでございます。特に昭和三十年代の初め、適地適産、あるいは農業基本法の発足以来需要拡大にこたえる作物である、そういう意味におきまして、果実についての生産の伸長という問題が一そうクローズアップされてきたわけでございます。とにかく、朝申し上げましたように、くだものの価格はやはり相当上がっております。と申しますことは、需要が相当強い。と申しますことは、やはり供給をもう少ししなければならないという時期があったわけでございます。そういう意味におきまして、政府といたしましては、過去におきまして、植栽のために、あるいは育成のために公庫融資をする、あるいは災害の場合にはもちろん災害に対する融資をする、あるいはまた農業構造改善事業、これはもちろん果樹だけのためではございませんが、しかし、千五百幾つのうちの三分の一以上は果樹を主幹作目にしている。あるいは開拓パイロットであるとかその他のいわゆる土地基盤整備事業、これも最近においては相当果樹のウエートが多い。もちろん園芸試験場等の充実、それによります新品種の育成というようなこともここにおいてやってまいったわけでございます。ただ、最近と申しますか、ここ二、三年来、どうもこの調子でくだものを植えろ植えろということを言っておってはたしていいだろうかという感じが、特に当業者と申しますか、果樹生産者の間で起こったのでございます。  端的に申しますと、私どもの見通しでは、今後とも果樹は全体として需要はふえるであろう。中には相当ふえるものもある。もちろん、中にはもうあまりふえないものもある。しかし、全体としては相当ふえるであろう。したがって、作付面積的にも、生産量も多くする必要はまだあるとは思っておりますが、それよりも、より必要なことはやはり生産合理化であろう。消費者価格というものが安ければやはりたくさん売れます。しかし、安ければ、それなり生産費でやっていかなければなりません。それには、やはり従来のような生産構造ではどうもコストがかかり過ぎる。しかも、今後労賃その他は上がっていくであろうということは明白でございますから、そういう意味におきまして、需給の見通しについてもこの際あらためて見直す。それから生産の体制についても、この際、俗なことばでございますが、ふんどしを締め直して歩み出すという時期に立ち至っておる。そういう意味におきまして、昨年果樹振興法改正がございましたが、これを契機にいたしまして、昨年度中におきましてはそういう観点の基本方針を出し、ただいま各府県に府県ごとの果樹振興計画というものを、濃密生産団地等を織り込みましてつくっております。そういうものをスタートにいたしましてと申しますか、骨子にいたしまして、今後の果樹行政の体制をさらに組み立て直して前進してまいりたいというふうに思っておる次第であります。
  215. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いろいろ御答弁がございましたが、バナナの輸入は、昭和三十七年の自由化から四十一万数千トン、約五倍に増加しております。したがって、この五倍に増加したということによって、国内産の果樹の消費の面あるいは価格に大きな影響を与えてきておる。さらに消費の面から見ましても、消費割合は、バナナは一七・三%から三〇・九%、リンゴは二二・四%から一四・四%、リンゴは逆に下がっております。また、ナシ、ブドウ、カキ等も三〇・八%から二三・一%、これも下がっておる。ミカンも横ばいだ。つまり、消費増加伸びバナナが一番大きい。したがって、国内果実の消費拡大で圧迫を加えられているということは、これは事実でございます。したがいまして、先ほど答弁ありましたように、本腰を入れて、国内果樹産業発展のためにほんとうに、あなたの話ではございませんけれども、ひとつふんどしを締めて本格的にやってもらいたい。これは要望でございます。  さらに、時間もまいりましたから、簡単に通産省に御質問しますが、けさのいろいろな新聞紙上で、バナナの輸入業者が軒並みに脱税をして、六億数千万円という脱税をしておる、これが明らかになったわけです。これについて通産省はどうお考えになっておるか、お答えを願います。
  216. 原田明

    ○原田政府委員 先ほども申し上げましたように、輸入業者が輸入割り当てを受けておりますということは、輸入本来の機能を効率的に果たして、消費者及び国民経済、貿易の発展のために寄与してもらうためでありまして、輸入業者がもうけて、しかも脱税をするなどということはもってのほかのことと存じまして、新聞にありましたような事実が出ましたということは、はなはだ遺憾でございます。現在国税庁におきましては、輸入業者の納税状況についてなお調査中であると聞いております。したがいまして、私どもも、調査が完了いたしまして、その結果輸入業者につきまして脱税の事実が確定をしました場合には、その調査結果を参照いたしまして、悪質なものにつきましては、将来輸入の取り扱いにつきましても検討して善処したい、かように考えております。
  217. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま御答弁がございましたが、あくまでも輸入業者の申請許可は通産省でございます。この問題については、数年前からいろいろなうわさもありましたし、また国会でも論議になりました。少なくとも今年に入りましてから、政府でも輸入業者をペーパー、ダミー等を整理して、六百数十社から二百幾らにするというふうにも報道されております。政府バナナ業者に対してはそういう本腰を入れているというふうに私ども判断しております。いままでこのような事実があったわけですが、今後ともいままでのような通産省の腰の入れ方では、また再びこういうことが起きるじゃないか。その点についてどうですか。
  218. 原田明

    ○原田政府委員 御指摘のような点につきましては、私どもも深く反省をいたしまして、今回割り当てをするにあたりましては、個々の輸入業者に対しまして、次のような要望を強くいたしております。  輸入の割り当てをいたしますということは、いわゆる実績の上にあぐらをかいて不当な高利潤をあげることを認める趣旨ではなく、輸入業者各位がみずからその本来の機能を生かして、適切かつ効率的な生鮮バナナの輸入を行なうとともに、輸入したものの国内販売にあたっても、正当な加工卸売り業界の意見や物価対策上の観点を十分考慮に入れ、不当なマージンを取ることなく、適正な価格及び合理的な配荷の確保につとめ、十分流通業者としての社会的機能を果たされることを期待します。  輸入割り当てを取得しながら、自主的な経営体としてみずからの責任と計算において輸入業務を行なうことをせず、輸入割り当て証明書の転売などにより不当な利益を得ることは、輸入割り当ての利権化として好ましからず、世論の批判を受けることとなりますので、そのようなことのないよう十分御留意ください。  当省としては、今後必要に応じ、輸入業務の運用状況、輸入品の国内販売状況等について、関係者から随時必要な報告をお願いすることがありますので御了承ください。  こういう御要望を申し上げております。  ただ、実態はなかなか把握困難でもございますし、一片の要望書によって問題が解決するとはわれわれも考えておりません。したがいまして、なお今後こういう実態調査をやり、国税庁とも十分御連絡をいたしまして、このよう事態が起こらなないように十分注意をいたしますとともに、そういう脱税、法律違反等の事実が確定をいたしましたものにつきましては、悪質なものは、先ほど申し上げましたとおり十分善処してまいりたい、かように考えております。
  219. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま答弁がございましたけれども、これは一片の通達でございます。私も二、三の実例は知っております。時間もありませんから、この委員会の席上では申し上げませんけれどもバナナ業者に対する通産省の本腰を入れた——いままでも、ずいぶんこの問題は国会で黒い霧等で問題になりました。いまだにまだそういう実例があるというふうに私は調査をしております。一片の通達ではなくして、本腰を入れてこの問題に取っ組んでもらいたい、よろしゅうございますか。  それからもう一つは、この事件に対して、一体通産省はどういう責任をとるのか、これを明らかにしていただきたい。(「責任をとれよ」「取り消しだよ」と呼ぶ者あり)
  220. 原田明

    ○原田政府委員 御指摘のとおり、私どもとしても深く反省をいたしておる次第でございます。この脱税の事実も、過去数年間にわたる事実の中から国税庁が今回非常に苦心をされましてさがし出されたところでございます。私どもとしても、今後深く反省をいたしまして、再びかようなことが起こらないように注意してまいりたい、かように考えております。
  221. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 重ねて質問しますが、現在まだ二百四、五十社の業者がおるわけですけれども、この業者が今後再びこういうことがあり得ないというふうにあなた断言できますか。決意のほどをひとつ表明していただきたいと思います。
  222. 原田明

    ○原田政府委員 脱税ないし法律違反というような問題は、非常にむずかしい問題でもございます。行政庁といたしまして力の及ぶ限り、行政手段の許します限り、そのような事態の起こらないように努力をいたしたいと思っております。もし不幸にしてそういう事態が起こったという場合には、やはり先ほどからお声もかかっておりますように、割り当てのある程度の取り消しといったようなものも含めまして、もちろん妥当な法律的根拠があってやり得るという範囲においてでございますが、十分善後の措置を検討いたしたい、かように申し上げておるわけでございます。
  223. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で私の質問を終わります。
  224. 本名武

    本名委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  225. 本名武

    本名委員長 では速記を始めて。      ————◇—————
  226. 本名武

    本名委員長 おはかりいたします。  果樹農業振興に関する件について、本委員会の決議をいたしたいと存じます。  すなわち、本件につきましては、先般来各党間において御協議を願っていたのでありますが、ただいま各党間の協議がととのい、その案文がまとまりました。便宜私が案文を朗読いたします。     果樹農業振興に関する件(案)   政府は、最近に於ける我国果樹産業の実情にかんがみ、国内果樹農業者の生産意欲を阻害することのないよう生産者保護立場を堅持し、次のような措置を講ずべきである。  一 国産果実生産および流通の合理化を図るため、農道等の基盤整備事業、生産近代化施設、選果場等流通近代化施設並びに品種更新に対する国の助成を拡充すること。  二 外国産果実およびその加工品の輸入に当つては、国産果実生産および消費を阻害しないよう輸入調整の方途につき充分配慮すること。  三 国産果実に対する需要の喚起を図るため、学校給食その他消費の拡大に努めること。  四 国産果実の輸出振興についての施策を拡充強化すると共に特に中華民国に対するりんごの輸出について政府間交渉を行ない、速やかに協定の締結に努めること。  右決議する。  以上であります。  ただいま朗読いたしました案文を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、ただいまの決議について政府の所信を求めます。草野農林政務次官
  228. 草野一郎平

    草野政府委員 ただいま当委員会から御熱意を込めての御決議がありました。その御趣旨を深く体しまして、実行方法につきましては、十二分に研究を遂げて善処いたしたいと考えております。
  229. 本名武

    本名委員長 なお、ただいまの決議の関係当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 本名武

    本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  231. 本名武

    本名委員長 農業共済基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。美濃政市君。
  232. 美濃政市

    ○美濃委員 ただいま議題になりました案件につきましては、昨日来質疑がかわされておりますので、三、四点につきまして御質問をいたしたいと思います。なお、質問の要旨につきましては、できるだけ趣旨に沿って御答弁をいただき、できるだけ早い時間で終わらせたいと思いますので、御協力をお願いいたします。  まず第一点として、さきに改正されましたこの制度は、昨日の審議の中にもございましたが、いろいろの状態から、組合の保有限度というものをかなり高く引き上げて改正されております。したがいまして、このことを直ちにどうこう言うのではございませんが、その保有限度の中から、不幸にして災害が発生をいたしますと、かなり組合の共済金支払いが多くなってまいります。この関係から、今回この基金が組合まで適用されるようにすることが妥当である、また組合からの要請も強いわけですが、この点についてどのようにお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  233. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 共済組合が相当大きな責任を背負うことになりましたけれども、それに見合いまして組合の保有する掛け金は相当大きなものになりまして、制度改正前に比べて大体四倍ないし五倍くらいになっております。したがいまして、水稲に例をとって申し上げますと、収穫皆無になりましたところでも、共済掛け金と組合の持っている責任との差は、一つの組合につきまして四十万円を欠けるぐらいの小さな金額でございます。私どもできるだけ削減を避けることが望ましいことはもとよりでございますけれども、大体の組合におきましてはこの不足分に見合う以上の特別積み立て金を持っております関係で、大体削減をしなくても済むのが実情でございます。  最近の例で申し上げますと、相当被害の多かった年におきましても、多少削減をした組合はもちろんございますが、全体の組合の支払いました共済金に比べますと〇・五%という状態でありますことは、昨年も申し上げたとおりでございます。したがいまして、削減を避けるために基金から組合に対して融資をするという必要は、事実上それほど多くはないというふうに私ども現在判断をいたしております。しかし、これも共済基金の資力が充実し、あるいは今後削減ということはできるだけ避けるに越したことはないわけでございますから、将来の問題として、削減を避けるために組合に対して基金から融資をすることの可否につきましては、十分研究させていただきたいと思います。
  234. 美濃政市

    ○美濃委員 北海道について申し上げますが、昨年大体組合の支払い額九億円と私聞いておるわけです。その中で、いわゆる積み立て金の関係から削減払いをした実例があるわけです。五%と言いますけれども、やはり発生する地域は、その財務の関係その他で一定の地域に起きますから、国全体から見れば五%であっても、その発生する地域はかなり削減払いが多くなるわけです。もう一つの問題は、削減払いの問題とあわせまして、特にいわゆる集中豪雨等によって被害が起きた場合、その被害額を急速に立てかえ払いをして、特に二毛作地帯等で立てかえ払いによって次の再生産をする再生産資金を確保する、いわゆる被害認定、正規の共済金の支払いには手続や期間を要しますから、そういう関係の、いわゆるこの基金から組合資金の運用ということをぜひやるべきだと思うのです。二つの目的があるわけです。一つは削減払いを解消する方策、一つは集中豪雨等によって被害が起きた場合、共済金の認定、支払いに期間を要しますから、その間に立てかえ払いができる措置、この二つの目的があるわけですが、その方法についてお伺いをいたします。
  235. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私が先ほど申し上げました削減払いをいたしました例で、組合の支払う共済金に比べて削減をした額というのは、五%ではございませんで、〇・五%でございます。北海道について申し上げますと、四十年の水稲の組合の支払いました共済金は六億六千二百万円ほどでございまして、削減の額は大体千四百万円程度であったと記憶いたしております。したがいまして、北海道のように相当集中的に被害の起こりました地域においても、大体六、七億のところにおきまして千四百万円ほどの削減額でございますから、これを非常に少ないというふうに申し上げるとまた語弊がございますけれども、そう大きなものでないことも事実でございます。  それから、削減以外に、できるだけ早く共済金の支払いをするために融資をしてはどうかというお説でございますが、これもきのう申し上げましたけれども、たとえば水稲を例にとりますと、早場米につきましては、年内に支払いをすることに昨年もおととしも成功いたしましたし、それから被害が非常に多く起こりましたような場合は、最終の支払いの前に仮払い的なこともいたすことができるわけでございますから、私も、将来の検討問題としては、基金からの融資ということも一つの課題として検討いたしますけれども、さしあたりの問題としては、削減の面からも、あるいはできるだけ早く若干の金が農家に届くということからいいましても、いまの制度の運営をうまくすることによって大体問題は解決するのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  236. 美濃政市

    ○美濃委員 これは検討するということでありますから、ぜひひとつ早い機会に検討して結論を出していただきたいと思います。  次に、同じく鶏あるいは豚についての法定伝染病の問題でありますが、最近、申し上げるまでもなく、多頭飼育あるいは多羽飼育で、経営構造を大きくするというのが農業の構造改善の一つとして進められております。自家用的にあるいは副業的に飼われておる場合は、経営の中に占める部分が少ないですから、被害はあったとしても、他の収益でカバーできる面が多いわけでございますけれども、専業的に行なって、法定伝染病にかかった場合、殺処分についてはある程度の殺処分手当が出るにいたしましても、動物個体の損害は殺処分手当である程度カバーできますけれども、大きな設備をして多頭飼育をしておるわけでありますから、その過程におけるいわゆる収益上の損害、これはなかなか殺処分手当等では埋まらない。そのために、経営自体が非常に破壊される、あるいは将来需要が高まるといっておるこの肉の生産に対して、そういう面で農民生産拡大に対する一まつの杞憂を感じて、いわゆる構造改善あるいは生産体制がその杞憂の中から進まないという面も一面あるわけであります。したがって、この法定伝染病に対する、それを対象とした共済をすみやかにやるべきでないかと私は思うわけです。いわゆる鶏、豚に対する全般的な共済は、昨日答弁のあったように、しばらく検討の期間を要するということでもやむを得ないと思いますけれども、法定伝染病を対象にする制度確立はすみやかにやるべきである。これは肉資源確保と合わす対策としてぜひやるべきであると思いますが、その検討はどうなっておるか、またお考えはどうなっておりますか、お尋ねいたします。
  237. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私も鶏あるいは豚の飼育、特に多頭飼育等にあたりまして、法定伝染病の問題が経営上の大きな脅威であるということは、そのとおりであろうと思います。したがって、できるならば法定伝染病についての共済を進めることが私は望ましいであろうと思います。ただ、法定伝染病だけを取り上げて、共済をやるにいたしましても、きのう申し上げましたように、鶏あるいは豚というのは、どの鶏、どの豚かということの特定がなかなかできない性格の動物でございます。これは乳牛等と非常に違う点でございます。共済にかけても、どの鶏をかけたかということがなかなかわかりずらいようなものでありますことに加えて、日本の農業も特に畜産においていま非常な変革の過程にあるわけでございますから、経営の内容が、地方により、また大きさによってきわめてまちまちでございまして、それをどういうふうに一つのいわば固定した方式でほめて共済にかけられるかということは、一つの被害率をとりましても、なかなか地域的なあるいは経営的なものがつかみにくい状態でございます。私も法定伝染病につきまして共済を取り上げることの意味が十分あると思いますし、それから共済を行ないます場合にも、法定伝染病が中心であろうと思いますけれども、必要であるからといってすぐそれを取り上げるにしては、どうもあまりに私どもの材料がまだまだ積み重ねが足らないというふうに痛感をいたしておるわけでございます。したがいまして、昨日も申し上げましたけれども、鶏あるいは肉豚の共済についての資料を現在十分集積といいますか、積み上げ検討中で、なおしばらくの時間の御猶予をいただきたい。私ども、なかなかむずかしい問題でございますけれども、今回果樹共済の一つの実験的な実施に踏み切ろうとするわけでございますが、それに比べてもまだまだ鶏と肉豚についての問題が多過ぎるというのが実情でございます。
  238. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの説明の中で、どの鶏、どの豚という表現が出ておりますが、これはどの鶏、どの豚という共済のしかたでなくてよろしいと私は思うのであります。たとえば農作の場合、どの稲、どの部分ということなしに、起きた被害額で算定できるわけでありますから、こういう種類の共済になってまいりますと、大体総体から見た被害率、この算定でよろしいと思うのです。名称もなければいわゆる特徴もないわけでありますから、どの個体に対する共済などということを考えるべきでない。  もう一つは、今度、ことしから初めて改正して行なうのでありますが、将来この共済につきましては、いわゆる事務費が非常にかかるわけです。たとえば生命において十万円の生命保険を募集したとするならば、それはもう赤字です。十万円の生命を維持するということになれば、現在の生命共済の中の事務費部分では維持管理ができないという内容であります。したがって、その共済というものは非常に事務経費を要するわけでありますが、将来は、いま直ちにという表現ではございませんが、将来大動物においても、どの牛というものを避けて、たとえばこれから乳牛等の多頭飼育が進んできた場合、二十頭であれば二十頭を包括して共済にする、どの牛が死んでも一頭限度の額で包括して共済をする、そこまで共済というものはいかなければ、とても八万円や十万円の限度の共済、個別認定に基づく共済のかけ方あるいは事故の認定のしかたでは、掛け金よりも事務費が非常に高くなるという現象が起きてきて、べースに合わないという問題が出てきます。そういう方法で進めていくと、たとえば二十頭、三十頭という大動物の飼育体系になりますと、その掛け金部分を収益の中からいわゆる自己共済で、たとえば積み立て貯金ですか、自己共済的にその共済総額を積み立てておけば、一年に一頭くらい死んでも、共済に加入するよりも、そのほうが負担が少ないという、はっきりした経済現象が起きてくるわけです。ですから、共済というものは、これから先の改正については、そういうどの部分というようなことをできるだけ的確に認定できる方法、そういう改正に向かって検討が進められるべきだと思います。特に豚や鶏について、どの鶏、どの豚という認定方式に基づく共済などということは、加入方式として考えるべきでない、こう思うのですが、いかがでしょう。
  239. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私が鶏あるいは豚について、どの鶏、どの豚か把握がむずかしいというふうに申し上げましたのは、鶏、豚の固体についての共済をすべきであるというふうに申し上げたのではございません。私ども四十二年度から家畜共済を変えますけれども、引き受けの形式を、一頭一頭の個別引き受けから、包括引き受けに変えようとしておるわけでございますから、鶏あるいは豚についてまた個別共済に戻すべきだというような議論をやっておるわけではございません。どういう形で引き受けるかがもう一つの問題だということを申し上げたいために、そういう例を使ったわけであります。これは引き受けの方式として、鶏、豚について個体引き受けをすることがいいとか悪いとかいうふうに申し上げたわけではございません。これはお説のとおり、私どもも家畜共済においては大体そういう方向でものを現在考えております。
  240. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、畑作共済についてお尋ねをいたしたいと思いますが、これはすでに質疑の終わっております部分は除きまして、特に北海道の冷害とあわせまして畑作共済の要請をしておるわけでありますが、この検討はいまどうなっておりますか。特にことしの予算の中にも、若干実験共済の予算がまことに二階から目薬にも足らぬくらい予算化されておりますが、これらの検討とあわせまして、いつごろの時期にどういうふうに進めようという考えでございますか。まず最初に構想をお伺いいたしたい。
  241. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私は率直に申し上げて、畑作共済というのは、共済の中でどうも一番むずかしいのではないかと思います。これはそういう畑作共済に対する要請は、当然豆とかあるいはなたねとかいう個別の共済ではなくて、大体畑作経営としての共済ということで御要請があるわけでありますけれども、現在畑作共済についての要請がありますのは、北海道とそれから南九州の一部でございます。したがいまして、作物保険の立場から申し上げますと、全国を地域として、ある地方に被害がありましても、他の地方には被害がないという形で、全国的にプールできることが保険の成立の大きな前提でございますから、いまのように要請が北海道と南九州の一部に片寄っておりますと、なかなか作物保険が成立し得ないという問題が一つございます。   〔委員長退席、仮谷委員長代理着席〕  それから畑作物の特徴といたしまして、ことしたとえば豆を三反、ジャガイモを一町つくるといいましても、来年はまたその作物の構成が非常に変わるわけでございまして、米あるいは麦についていいますと、地域的に豊凶が相殺される上に、年によって一町とか二町とかあるいは五反とかいう作物の経営の規模が一農家について変わっておりませんから、十年なり二十年なりの間にいわば年次的に豊凶の調整がとれるというのがたてまえでございますけれども、畑作物におきましては、どうもそういう年次的な調整もむずかしい。地域的な調整がむずかしい上に、年次的な調整がむずかしいということで、作物保険を考える場合に、どうもなかなか前提が満たされないという難点があるというふうに私は思います。しかし、できるならば、私どもこれもはなはだ乱暴なことを申し上げて恐縮でございますけれども、現在水稲について一筆一筆ごとの保険でございますけれども、できるならば経営経営についての保険ということが望ましいことであることは当然でございまして、それは私ども技術的に不可能でございますから、いま一筆についての保険をやっておるわけでありますけれども、畑作物につきましては、若干経営的な保険という意味が含まれるわけでございますから、いま申し上げました年次的あるいは地方的な調整ができないけれども、何か手がかりになるめどがないだろうかということは思案検討中でございます。具体的に申し上げましても、四十一年から三ヵ年の計画で北海道と南九州について相当綿密な実態調査をやっておりますし、それから最近、北海道において御自分で幾つかの町村を選んで、畑作の試験実施をやっておりますから、それらの結果が出ましたときに、私どもの調査は四十一年、四十二年、四十三年でございますが、それが出ましたときに北海道のデータも相当積み重ねられるわけでございますから、それらのデータに基づいて、ほんとうに畑作の保険というのは可能であるかどうか、あるいはどういうやり方であればとにかく接近できるかということについて、まじめに検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  242. 美濃政市

    ○美濃委員 この損害共済あるいは保険には、もちろん大数の法則というものは当然必要になります。この大数の法則は、単年度収支を広い地域で均衡をとろうというシステムに基づくときに大数の法則が必要になると思います。しかし、災害は毎年起きるものではないわけでありますから、大数の法則の広さは、こう上へ十年なら十年という年限に見て、もし試験共済が発足した近い年限に災害が発生した場合、これはいわゆる共済基金なり利子のかからない金で一応始末をして、それで縦の年限の中でこれは災害が起きなければ積み立てもできるわけです。縦の年限の中で大数の法則に合わない共済をつくるという方法は私はあると思うのです。横だけを考えるのではなくて——単年度収支を考えて、その安全性をとるといえば、これは大数の法則による横の広さが要るわけです。横の広さを、たとえばいまの御説明のように、畑作共済は九州と北海道に大体限られるだろうというのであれば、この地域を合わした縦の年限の中で共済を考えていく、このシステムはとれるのではないかと思うのです。毎年凶作になるものではないのです。そういう点はどのようにお考えになっておりますか。
  243. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私も単年度で勘定が合うものであるというふうには思いません。それは当然御指摘のように、単年度で勘定が合いませんでも、十年、二十年の間に勘定が合えばそれでいいわけでございますから、北海道と南九州という地域に限られても、十年、二十年の間に豊凶が見合って、それでとんとんになるという、そういう保険数理がはじけますれば、私はそれでけっこうだろうと思います。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、作物の変化が非常に多いものですから、年次的にもとんとんになるという計算がなかなかしづらいということを申し上げたわけでございます。水稲とかあるいは麦とかいうふうに固定をした作物ではございませんから、畑作農家は相当中身が動くわけでございますから、個別の作物をとってそれで保険をつけるということでは、畑作保険の意味があまりないので、むしろ畑作物全体をまとめて保険をつくるというところに意味があるだろうと思います。そういたしますと、全国的、地域的な調整もなかなかむずかしい状態てあるし、年次的な調整も現在のデータではなかなかむずかしいということで、なお今後多少の時間をかけて、私どもある場合には一〇〇%見通しが立ちませんでも、大体いいところであれば、今回の果樹保険のように試験実施に踏み切るということもあるわけでございますけれども、相当乱暴に見切り発車をするつもりでも、まだそれだけのデータがないというのが、畑作保険についての実情でございます。
  244. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、いま実験共済を通じておおよそその可否検討は、これは見通しですから多少違ってもやむを得ないと思います。たとえば実験共済を昨年もやっておりますが、この実験共済等のデータに基づいて、おおよそいつまでに可否の検討が行なわれるか、見通しをお伺いしておきたい。
  245. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私どもの北海道と南九州に関する実態調査は、先ほど申し上げました四十三年度で終わるわけであります。四十一年、四十二年、四十三年の三ヵ年でございますから……。それから、そのころまでには、現在北海道がとにかく机上計算ではなくて、金の出し入れをして数ヵ村について実験をやっているわけでございますから、そのデータは大体そろうだろうと思います。したがって、四十三年までにそろいましたデータに基づきまして、その時点でもう一度検討するということでございます。それから、まあ私どもそこでとてもこれは望みないというふうになりましても、なお検討をやめるべきではなくて、さらに検討を進めるべきだというふうに思いますけれども、とにかく四十三年までの実態調査等の資料をもって、それから間もない時点において一応の結論を出したいというふうに考えているわけでございます。
  246. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、家畜診療の充実強化についてお尋ねいたします。  この中で特にお伺いいたしたい点は、昨日の質問にもございましたが、これから畜産を伸ばしていく上において、いわゆる家畜の事故防止と診療は非常に重大な業務になってまいります。これは非常に農民自体も期待をしておるが、家畜診療という仕事が、まあ診療所が赤字になる、昨日の質疑で出ておりますような状態が現地に起きておることは、私も承知しておるわけであります。それで、その原因の中で、本日お伺いしたいのは、これは特に政務次官にお伺いしたいわけですが、加工原料乳不足払い、この中で、いわゆる基準取引価格、国が乳価を保証する体系の中で、乳業会社に補導費、いわゆる事故防止的な経費を製造販売経費に合わせて、それを国の政策の中で認めておる。この認めておる体系が非常に共済組合の事業と競合するわけであります。片や流通経費の中で価格体系、いわゆる乳製品の指標価格と原料乳との間に、そういう技術経費を国は認めておるわけです。これが流通販売経費にかかりますから、その技術体系はもちろん無償となります。   〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕 この無償という行為が、たとえば共済組合は無償ではできないわけです。しかもまた、その見込んでおります体系が、共済組合の技術の一点単価よりも高い水準で見込んでおるのでなかろうかと思うわけであります。ということは、そういう乳業で獣医師を採用する場合、大学を出まして、共済組合では雇えないような高給で雇い入れをするわけであります。だから、いい獣医師はそういうほうへとられる。一面、末端の農家では、乳業は無償で技術サービスをする、共済組合にかかったら金がかかる。こう言う。それが真に無償であればいいのですけれども、何もそれは無償ではないわけです。国が保証しておる価格体系の中で、いわゆる基準取引価格というあのような制度で、きちんと乳業の経営からその製品販売価格を保証した体系の中に、そういうことができるように経費を見込んでおるわけですね。これは非常に私は問題があると思うわけです。一面、その経費体系の中で、農民に乳業が無償で技術サービスができるということ、これは一面考えようによっては無償だからいいじゃないかという考えになるかもしれませんけれども、片や共済組合は無償ではできない仕組みになっておるわけです。そこに矛盾が起きるわけです。そこで、私の考えは、こういうことではいけないから、この技術補導経費というものは、いわゆる製造販売経費、乳業の経費からはずして、そして補導費の分、たとえばそれが一キロ五十銭とするならば、五十銭は基準取引価格を引き上げて、ほぼ乳価は同じでありますから、不足払いのほうに技術補導経費をつけて、そしてこれを一体化すべきである。末端の農家の技術体系を一体化することによって人員と質とが向上できる。そして真の事故防止、それから診療、畜産体制の指導ときちっとしたスタイルができると思うのです。いまの技術体系はそういうふうなことで、そして片やこの乳業の設置しておる技術というものは、決して、共済組合の行なっておる真に農家の家畜をよくしよう、あるいは災害を直そうという技術でなくて、無償供与の技術体系を一応形をつけて、牛乳集荷を有利にしようというセールス手段でございますから、その意図と目的がかなり違うわけです。ですから、ただ見てくれるから、金がかからないから、農民は喜んでおるけれども、共済組合の獣医師と同じ診療料金を取られるということになると、これは問題があるのです。無償という形ですから、ただ見てくれるのだからいいわという考えでおります。そうすると、そこに診療体系と、そういういわゆる国が保証しておる体系の矛盾と、末端で技術がそういうふうに二本立てになっておるところに、技術体系が完全にならないという一つの矛盾があるわけです。この政策はどのようにお考えになっておるか、これは政務次官にお尋ねします。
  247. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 これは乳業振興といいますか、酪農振興農業保険とのいわば接点で、なかなかむずかしい問題であろうと私は思います。乳業会社が独自のサービス事業としてやっておりますものと、それから家畜共済にかかっている乳牛について共済関係の診療所をやるものと、必ずしも機械的に一緒になれるものではございませんから、これを一本の制度でやるということは、私はなかなか実際問題としてむずかしいと思います。ただ、御指摘にございましたように今後家畜共済の制度をうまく運営するために家畜診療所をどういうふうに運用をしていくかという問題については、私もあまり知識はございませけれども、今後検討してまいりたいと思います。ただ、御指摘のように、ずばり二つのものを一本にできないかということについては、これはちょっとむずかしいというふうにお答えする以外はございません。
  248. 美濃政市

    ○美濃委員 私の尋ねておるのは、特にまずそういう体系を農民も希望しておりますし、ひとつつくっていかなければならぬと思うのですが、乳業会社、そういうものが任意で行なっておる地帯については、いわゆる調整はめんどうだと思いますけれども、加工原料乳地帯ですね、これは政府の保証乳価の中で、そういう経費をあの畜産振興事業団を通じての乳製品の保証体系の中で見ておるんですから、これはあなたのほうで見るべきだという質問をしておるわけです。それがまず第一点。それを足がかりにして、全国をでき得ればそういう体系に、そうしていわゆる畜産技術の診療と事故防止体系の二重構造を一元化していく、その最初のスタートに、国が保証しておる加工原料乳地帯はぜひそうすべきである。これは国の政策で改められるのですから、それを改める御意思がありますかどうかということを聞いているのです。
  249. 草野一郎平

    草野政府委員 非常にむずかしい問題であることは御指摘のとおりであります。それだけに家畜診療の質にも相違が出てくるし、結論的に国が金を出しておるじゃないかということになってくるのでありますが、これは現実の問題といたしまして、同じ農林省の中ではありますが、畜産局と経済局にもまたがっておる問題ですから、両方がこれはひとつよりより、逃げことばの検討でなく、両者の間で話を進めてみて、なるべく御指摘のような問題についての努力を続けていくべきだ、さように考えておりますので、やってみようと思います。
  250. 美濃政市

    ○美濃委員 以上で終わります。
  251. 本名武

    本名委員長 ほかに質疑の申し出がないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次会は、来たる十六日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会