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1967-07-17 第55回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十七日(月曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 關谷 勝利君    理事 伊能繁次郎君 理事 塚田  徹君    理事 八田 貞義君 理事 細田 吉藏君    理事 大出  俊君 理事 山内  広君    理事 受田 新吉君       内海 英男君    加藤 六月君       桂木 鉄夫君    塩谷 一夫君       高橋清一郎君    永山 忠則君       橋口  隆君    三池  信君       村上信二郎君    武部  文君       楢崎弥之助君    浜田 光人君       村山 喜一君    山本弥之助君      米内山義一郎君    伊藤惣助丸君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         内閣総理大臣官         房臨時在外財産         問題調査室長  栗山 廉平君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         議     員 中村 重光君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 七月十七日  委員藤波孝生君、山下元利君及び米内山義一郎  君辞任につき、その補欠として永山忠則君、三  池信君及び村山喜一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員永山忠則君、三池信君及び村山喜一辞任  につき、その補欠として藤波孝生君、山下元利  君及び米内山義一郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 七月十四日  旧軍人恩給に関する請願伊能繁次郎紹介)  (第三三九七号)  同外一件(小川平二紹介)(第三三九八号)  同外四件(大久保武雄紹介)(第三三九九  号)  同外三件(仮谷忠男紹介)(第三四〇〇号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三四〇一号)  同外三件(田村良平紹介)(第三四〇二号)  同(高橋清一郎紹介)(第三四〇三号)  同(竹内黎一君紹介)(第三四〇四号)  同(竹下登紹介)(第三四〇五号)  同外十一件(千葉三郎紹介)(第三四〇六  号)  同(塚田徹紹介)(第三四〇七号)  同外二件(青木正久紹介)(第三五一八号)  同(赤城宗徳紹介)(第三五一九号)  同外一件(川野芳滿紹介)(第三五二〇号)  同外一件(小坂善太郎紹介)(第三五二一  号)  同外二件(齋藤邦吉紹介)(第三五二二号)  同外二件(竹内黎一君紹介)(第三五二三号)  同外九件(中垣國男紹介)(第三五二四号)  同(野田武夫紹介)(第三五二五号)  同(野呂恭一紹介)(第三五二六号)  板付周辺小、中学校の鉄筋改築に関する請願  (池田清志紹介)(第三五〇九号) 同月十五日  旧軍人恩給に関する請願外二件(井出一太郎君  紹介)(第三六三二号)  同(吉川久衛紹介)(第三六三三号)  同(澁谷直藏紹介)(第三六三四号)  同(田村良平紹介)(第三六三五号)  同外一件(羽田武嗣郎紹介)(第三六三六  号)  同(橋本登美三郎紹介)(第三六三七号)  同外一件(古井喜實紹介)(第三六三八号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三六三九号)  同外十件(赤澤正道紹介)(第三七四四号)  同(秋田大助紹介)(第三七四五号)  同外二十七件(荒舩清十郎紹介)(第三七四  六号)  同(吉川久衛紹介)(第三七四七号)  同(坂田英一紹介)(第三七四八号)  同(田村良平紹介)(第三七四九号)  同外十五件(谷川利穂紹介)(第三七五〇  号)  同外七件(永山忠則紹介)(弟三七五一号)  同外一件(長谷川峻紹介)(第三七五二号)  同外十七件(福家俊一紹介)(第三七五三  号)  同外一件(森田重次郎紹介)(第三七五四  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業省設置法案中村重光君外二十名提  出、衆法第八号)  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法  律案内閣提出第一四八号)      ————◇—————
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより会議を開きます。  中村重光君外二十名提出中小企業省設置法案議題といたします。
  3. 關谷勝利

    關谷委員長 揚出者より趣旨説明を求めます。中村重光君。
  4. 中村重光

    中村(重)議員 ただいま議題となりました中小企業省設置法案提案理由を御説明いたします。  中小企業省を設置し、中小企業大臣のもとに、抜本的、強力な政策が実施されることは、全国中小企業者が、長年にわたり切実に待望してまいったところであります。  現在の中小企業庁は、その機構がきわめて貧弱であるだけでなく、大企業代弁機関と化した通商産業省に完全に隷属しておるのであります。このため、従来、中小企業庁が、中小企業者の輿望をになって、せっかくよい施策を立案し、あるいは適切妥当な予算要求いたしましても、大企業立場から、あるいは通商省全体のワク内において、事前に葬られてきたのであります。これでは、中小企業者意見要望を真に反映し、その利益を擁護する機関は、現在の政府にはないといっても過言ではないのであります。今日農民に農林省あり、労働者に労働省あり、大企業者のためには通産省あり、ひとり中小企業者のみが、日の当たらないところに置かれておって、これに相応する政府機関が欠けているのであります。中小企業者中小企業省を、そして通産省と対等の立場で、中小企業政策なり、中小企業予算について、国政の最高の執行機関である閣議の場において、討議されるべきは当然のことであります。  ここに中小企業省を早急に設置し、機構を整備して、中小企業基本法にうたうところの諸政策を最も効果的に実施し、もって中小企業経営の安定と発展に寄与してまいりたいと存ずる次第であります。  これが本法律案提出する理由であります。次に、その内容概要を御説明いたします。  まず第一に、本法律案は、中小企業省所掌事務の範囲、権限を明確にし、あわせてその組織を定めるものであります。  第二に、中小企業省の任務といたしましては、中小企業者組織経営近代化振興及び助成に関する行政事務や、基本政策の樹立に関する事務等を一体的に遂行する責任を負うものであります。  第三に、中小企業省の具体的な権限といたしましては、収入、支出に関する事務、職員の人事管理等、通常の所掌事務の遂行に必要な権限のほか、事業分野の確保、設備近代化助成組織化指導助成等があります。さらにまた中小企業関係機関に関し必要な権限を有することといたしておるのであります。このため、たとえば、従来中小企業庁の所管の外にありました、中小企業退職金共済事業国民金融公庫に関することも、中小企業省権限事項と相なるわけであります。  第四は、中小企業省機構についてであります。  まず本省には、中小企業大臣のもとに、大臣官房及び振興、組合、経営指導、商業の四局を設置し、大臣官房には調査統計部を設けることといたしておるのであります。  次に、地方にも、支分部局として、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の八カ所に中小企業局を設置し、それぞれのブロックを担当して、本省所掌事務の一部を分掌せしめることにいたしております。  さらに、外局としては、中小企業者と大規模事業者等との間における紛争を調整せしめる機関として、中小企業調整委員会を設置しているのであります。  以上が、本法律案提案理由並びにその内容概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを切望いたします。
  5. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 關谷勝利

    關谷委員長 引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案議題とし、質疑を行ないます。  前会に引き続き、質疑を許します。村山喜一君。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、二点に対しまして確認を申し上げて、長官答弁をお伺いいたしておきたいと思うのでございます。  それは、第一点は、私、審議会の中では申し上げまして、答申の中にその旨を明確にしてあるわけでございますが、やはり国会速記録にこの点はとどめておかなければならない点がございますので、その点については、政府がこれからやらなければならない問題として提起をしておきたい。それは法的地位の未確定在外財産処理の問題でございます。この点につきましてはいままでも論議がされておりますが、日華平和条約等締結をされながら、御案内のように、特別取りきめもなされておりません。したがって、その法的な財産帰属権については、未処理であるということになっているわけでございます。それと、まだ日本との間に国交の回復をしない地域があることは、総務長官も御承知のとおりであります。こういうようなところの問題につきましては、この在外財産引き揚げ者等に対する特別給付金措置がなされたとはいっても、国のいわゆる請求権というものは現存をしているという立場をこの際明確にしておかなければ、今後における外交交渉の問題で国益に重大な損害を与えるおそれがございますので、この点についての確認をしておかなければならないかと思いますが、それに対する答弁を願いたいと思います。
  8. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 村山委員審議会委員でもありましたし、その主張をなさったということは、私聞いております。この際ここではっきりいまの御質問にお答えいたしまするならば、中華民国のように法的地位が未確定状態にある財産については、今度のような措置を講じたからといって、それらの財産に対する返還請求権についての国の主張は、何ら影響を受けるものではございません。この点は答申にもはっきり書いてあるとおりでございます。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 あと一点でございますが、それは三十二年の三月の七日には引揚者等に対する給付金支給に関する措置要綱閣議決定の備考の一によりまして、御承知のように三十二年度から昭和三十六年度までの五カ年間にわたりまして、それぞれ各年二十億円ずつ、合計百億円を国民金融公庫生業資金といたしまして貸し付ける決定が行なわれているわけでございます。ところが、今回の閣議決定要綱の中には、それらの措置がとられていないのは、まことに遺憾に存じます。そこで、これらの実績等について詳細に点検もいたしてまいりましたが、当時額面金額の九〇%以内で、年利六分で貸与して、総額六十七億五千数百万円の融資がなされていることは、長官も御承知のとおりでございます。そのほかにもう一つ、三十四年の三月二十五日、大蔵省告示五十一号をもちまして、引き揚げ者国庫債券買い上げ償還措置がとられていることであります。これは長官も御承知のように、生活保護を受ける者並びにこの生活保護を要する状態におちいるおそれのある者、この二つの種類につきましては、買い上げ償還措置がとられたわけであります。そこで、今回政令を定めまして、そしてこれらの措置を講じなければならないわけでございますが、その政令内容が、前回の場合と違いまして、今回は明確にされておりません。ここをめぐりまして、いわゆる基金を設けてもらいたいというような要望が出てくるゆえんだと思うので、そこで私は国民金融公庫に対しまして、すでに支給をされております農地関係のいわゆる国債がどのような割合で貸与されているのかということを調査いたしてみましたら、予算の上におきましては、融資ワクといたしまして、十億円の金額が昨年もことしも用意されておる。その中から融資されているわけでございますが、当然この法律が通ったあかつきにおいては、それよりも金額ははるかに大きいわけでございまするし、さらにまた、前回はこういうような特別の措置を講じた事例にもかんがみましてやるならば、今度の場合にはいわゆる利子付でない債券でございますが、それにしても国民金融公庫の現在取り扱いの実施要領を見てみますと、金額にしてその債券のいわゆる額面表示額の大体六七%、七〇%近くのものが、貸与できるという一つの数理が成り立っているようでございます。そういうような点から考えてまいりまするならば、当然あなた方が政令をおつくりになりまして、これらの問題の処理にあたりましては、そういうような前回処理方向というような方向のもので善処を願わなければ解決がつかない問題だと思いますが、これに対しまして、塚原長官はどのような方向で御努力をいただけるものか、答弁を承りたい。
  10. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 お尋ねの件につきましては、目下関係省——大蔵省でありまするが、折衝の段階でございます。御趣旨のほどはよくわかりました。御趣旨を体して検討いたしたいと思っております。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、終わります。
  12. 關谷勝利

  13. 受田新吉

    受田委員 非常に時間がわずかしか割り当てられていないので、御答弁はきわめて簡明にお願いして、能率をあげる質問をしたいと思います。  今度のこの法案に盛られている内容は、在外財産問題審議会答申に基づく措置と、かように了解してよろしいかどうか、お答え願います。
  14. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 審議会答申に基づいて行なったものであります。
  15. 受田新吉

    受田委員 審議会答申の中に盛られている大事な柱が欠けていないか、お答え願います。
  16. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 この前の大出委員質問でお答えしたと思いまするが、審議会答申そのものが、私をして言わしむるなるば、抽象的なものでありますので、とりょうによりましては、あるいは御批判があるかとも存じますが、私は審議会趣旨に沿って、この立法措置を講じたつもりでございます。
  17. 受田新吉

    受田委員 審議会は、二年有余にわたりまして、あるゆる面からの検討を加えて、ここに在外財産問題の総括的、最終的処理政府要求した。その答申の第一は、在外財産問題の所在を明記して、そこにあらわれた具体的ないろいろな事象の中で、法律上の補償義務をどうするかという論議が長時間にわたって繰り返され、そして平和条約第十四条の規定に基づく在外財産賠償引き当てにされたということに対しての見解をもとにして、憲法二十九条の第三項の、公共の用に供した財産に正当な補償をするという論議意見が集中された。そして、その結果、法律論少数で敗れたような形になっておりまするけれども、その少数意見というものは、その数において決して僅少でなくして、相当な数であったということも、これは重大な問題だと思うのです。私は、平和条約第十四条について、いまここで法律論を蒸し返すことはよしますが、しかし、大事な点であるから一言だけ触れておきますけれども、長官平和条約締結するころにあなたも議員をやっておられたわけです。そのときにしばしば議論になって、例の平和条約特別委員会でも政府側からの見解がしばしば表明された問題は、この平和条約第十四条に当たる在外財産——これは当事国だけの問題ですけれども、在外財産賠償問題は、政府自身が相当真剣に国会でも発言しておる。サンフランシスコ平和条約在外財産補償条項が明記していなかったからといって、軽々に逃げるわけにいかないほど、国会論議では総理条約局長大蔵大臣在外財産賠償をしなければならないという見解を表明されており、そして、平和条約締結前には、法律論としての賠償問題がいかにも条約案に盛られるかのごとき予備的発言も、私自身も当時承っておる。ところが、実際の条約案を拝見すると、それが欠けておる。イタリア平和条約西ドイツパリ賠償協定、こういうものの中には、はっきりと在外財産国内補償規定を明記してある。ちょうどそれと同じ敗戦国で、非常に大きな相違点日本の場合には出てきたわけです。これは、法律論でかれこれ議論されて、少数法律論は否決され、敗れたけれども、政治的問題としては法律論が相当大きな力をもってここに働かなければならぬと思うのです。それはサンフランシスコ平和条約にこの問題を明記しなかった、補償条項を入れておかなかったばかりに、在外財産問題は、その後において政府の終始逃げの一手に用いられてきた。イタリア及び西ドイツと同じ敗戦国——イタリアは特別途中から変な動きが起こったわけでございますが——称してよいこの二国の間に平和条約あるいは賠償協定の中に明記してある在外財産国内補償規定日本にはなかったということ、このことに対しての政治的責任一つ日本にあると思うのです。そこに、私は、在外財産問題が世論の上で終始農地報償に対比して新聞、世論などで批判される根底も生まれてきたと思うのです。よく吟味してみると、農地報償とこの在外財産とは天地雲壌の差のある大事な問題で、すでに平和条約第十四条の(a)項による賠償引き当てにされたということは、だれが文章を読んでもはっきりわかる。これは審議会委員の皆さんの中にも、この第十四条(a)項の規定については、これは非常に多数の人が、この条項だけから見た当事国の間の問題については好意的な発言があったと承っておるのでございまするが、こう書いてある。日本国は、日本人の役務を当該連合国の利用に供することによって、これらの国に補償するということ。各連合国は、次に掲げるものと書いて、日本国及び日本国民のすべての財産権利及び利益でこの条約のもとにあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。これは明らかに在外財産賠償を支払うことが承認される立場である。日本の資源が、完全な賠償を行ない、かつ同時に他の債務を履行するためには現在十分でないから、そういうもので肩がわりしたということは、これはちょっと常識的に考えても、法律的な見解から見ても、その一点からだけ見たら、在外財産が大きな貢献をして平和条約締結されたという答えだけはわかりますね。これは法律論を抜きにしてでも、この条項から見て、在外財産がこの平和条約締結にこの一項をもってりっぱに貢献しておるということは、これはおわかりいただけるかどうか。時間が非常に少ないので残念ですけれども、大事な問題だと思いますので……。
  18. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 受田委員の言わんとすることは、私にはよくわかります。それから、答申はその点に一番関心を持って読みましたが、当時の意見をいうものは、その後各方面から承りました。しかし、国の法律上の補償義務がないというこの点、それから何らかの貢献ということばをお使いになりましたが、これは私は認めます。しかし、その具体的な裏づけが何であったかということの確証を持つことができないということ、それから、たびたび申し上げておる国民全部が戦争犠牲者であるという考え方、そういうものを含めましての政策的措置であるというふうに御理解をいただきたいと思うのであります。
  19. 受田新吉

    受田委員 いま法律論を私は論じたいところを押えて、政治的責任から見て、政府発言要求しておるわけです。私が申し上げたのは、こういう条項にはいろいろ議論があるけれども、明らかに在外財産がその賠償要求に肩がわりされたような印象を受ける一項があるということは、この在外財産があったから平和条約締結に大きな貢献をしたという、そのことを政治的な結論として打ち出されなければならない。それは、答申の最後にもそのことが盛られておるわけであります。政策的措置の段で盛られておるわけなんですが、いかがでしょうか。当時の吉田政府、あなた方の自民党の政府が、平和条約締結以前におけるあの平和条約特別委員会における発言、その後において賠償補償条項はなかったけれども、実際は国内で何らかの措置をしなければならないが、現時点においては経済的な条件がなかなか整わないので、しばらく待ってほしいという意味発言がされている。これは吉田総理も、池田大蔵大臣も、また当時の西村条約局長も、同様な政治的発言と見ればはなはだ不愉快ではありまするけれども、言いわけをしておられる。これはイタリア、ドイツを比較して、日本だけが平和条約の中に補償条項を入れなかったという、非常な自責の念にかられた発言が、あらゆる方面で飛び出しているわけです。ここをひとつ十分政治的配慮で、この機会に法案を考慮すべきではなかったかと思うのです。  それで具体的にお聞きするわけです。したがって、平和条約締結に、その平和条約十四条(a)項ばかりでなく、その他の分離地域とか、十九条の該当、済んだ分の処理とかいう問題は一応お預けにし、十四条(a)項からだけ論議しても、そこに日本国は政治的な大きな責任が負わされているというこの問題の処理にあたっては、それが次の政策的措置の中へ盛られているわけです。第三の政策的措置の中へ、つまり法律論で非常にきびしい答えを出しているけれども、しかし、平和条約締結、そしてその後における祖国の繁栄というものに大きな貢献をしたということは、これは多数の意見として認められるものであるという答えが出ておる。ところが、法律のこの目的の中にはっきりとその答申趣旨が生かされていなければならないと思うのでございまするが、前の引揚者給付金支給法、今度はそれが交付金というかっこうで切りかえられたままで、ほとんど変わらない文句としてこれが出されておる。他の戦争犠牲の問題を同時にわれわれは根本的に解決していくということについては、非常な責任を感じておる。けれども、在外財産処理は、平和条約締結貢献しておる。四百万の人々が膨大な在外財産を残したことが平和条約締結に役に立っているということは、これは他の戦争犠牲者とは非常に大きな相違点のあるものである。当時の吉田内閣平和条約締結考え方の中に、残念ながら、ダレスも、その後においてアチソンも、平和条約には盛られなかったけれども、日本国内措置として何らかの補償を期待している意味条約締結したなどと言うておることから見ても、条約締結当事者そのものが、はっきりと日本国内的な補償をするという期待をかけておるということは、これはもうまぎれもない事実であるということを考えたときに、最終的、包括的処理をするこの法案の中に、そのことを強くうたうことを忘れているということは、私は遺憾であると思う、具体的な要求、してほしかったことは、他の戦争犠牲者としての特異性——しゃべってはかりいるような気かするんですが、時間の関係でみな言うておきますが、答申の第三に掲げておる、しからばいかなる政策的措置を必要とするのであるか。法律論でなく、政策論としては、「在外財産特異性」と「在外財産喪失者としての引揚者特異性」というものが分離されている。そこで、在外財産を失った者の、引き揚げ者の特異性を特にポイントにして答申が書いてある。それは他の戦争犠牲者と変わって、そうした平和条約締結貢献したことの一カ条がある。もう一つ、これらの方々は、国策に沿って海外へ出た。そして海外でそれぞれ生活基盤をつちかって、そしてその結果、いやおうなしに祖国へ帰ってこなければ、そこにおろうとしてもおれないんだ。もう海外からどうしても引き揚げなければならぬという、せっぱ詰まった国家の要請に従うて戻ってきた。戻ってきたときには、地の縁、人縁、すべてのものが全く縁故のない——内地戦災を受けた人たちと違って、地の縁、人縁の全然ない祖国へ帰って、そこからスタートしたところに問題があるんだ。ここは「在外財産喪失者としての引揚者特異性」と、こううたっておる。つまり内地におった人は、農地開放でたんぼを取られたといっても、家がある、山がある、また地の縁、人縁がある。再建をするのにそう困難でないほどの基盤が別にある。しかし、引き揚げ者は、在外財産を全部取られ、のれんを取られ、そして生活基盤を失い、すべてを投げ捨ててまる裸で戻って、何ら縁のないところから再出発だというようなことにおいては、戦災による戦争犠牲者とは異なった特別の存在であるということが、ちゃんと書いてある。それをどうお考えになられるか。
  20. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 受田委員のおっしゃるとおり、私もそのとおり考えております。おことばを返すわけではありませんけれども、戦争犠牲者というものは国民全部であるこの点は受田委員も私と同じである、そこの貢献の度合いというところに問題があるということを、あなたはおっしゃっておる。それから、答申をよく読んでみますと、政策論として答申にうたったというのは、私は在外財産貢献というもの、もちろんそれはございますが、むしろこの審議会答申は、引き揚げ者のこうむった打撃というものを問題にするような答申であると私は読んでいる。それがあなたのおっしゃるヒューマンリレーション、生活利益、地縁、人縁の問題であると考えて、私もお気持ちはよくわかるのです。であるから、それをくんでやったわけでございまするから、どうぞひとつ誤解のないようにお願いをしたい。
  21. 受田新吉

    受田委員 そこで、援護局長、未帰還者留守家族等援護法という法律がある。海外からお帰りにならない人々のために特にこの法律をつくった。その前に戦傷病者の援護法がある。二十七年の四月一日から発足された戦傷病者の援護法には、国家補償の精神に基づいてこの法案を出すということが、目的に書いてある。ちょうど引き揚げ者と同じように、未帰還者留守家族等援護法の中には、国の責任においてこの問題を処理すると書いてある。ところが、この在外財産の問題のほうは、国家に貢献をしておる。そして地縁、人縁のすべてを失って、プライドも、また生活利益もすべてをなげうって、日本へまる裸で帰ったという特殊の事情にある。したがって、平和条約締結への貢献、そして祖国の再建への貢献、そういうものをもとにして、その在外財産というものの特別の価値、そこに別の意義を見出そうという答申がされたのでございますが、援護局長、私がいまお尋ね申し上げている、戦傷病者の援護法のほうは「国家補償の精神に基づき」とうたってあり、未帰還者留守家族等援護法の中には「国の責任」で処理するとある、それを御確認になるかどうか。
  22. 実本博次

    ○実本政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  23. 受田新吉

    受田委員 長官、この法案には、国の責任をうたうようなことは、もう同じようなことだから必要はないという御精神のようです。しかし、よく考えてみると、未帰還者留守家族等援護法というのは、戦争の終結でやむなく海外から帰れない立場の人々である。それから引き揚げ者の場合は、戦争の終結とともに、そこにおろうとしてもおれない立場の人々、地縁、人縁のない祖国に帰った人たち立場である。この点において、国の責任をもって処理するということは、答申にもちゃんとここは明記しておる、この法案の目的になぜこれを欠いたか、お答えを願いたい。
  24. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ただいま先生のおっしゃるような、答申の中に国の責任においてということばがございまするが、これは先生も委員として御審議に当たられましのでよく御承知かと思いまするが、この点につきましていろいろ問題が出まして、国の責任というのは国において行なうんだという意味でこれを入れたというふうに、私は理解をいたしております。  それから、法律にそういう文句があるかないかというお話でございまするが、これはいろいろほかの、たとえばこの前の給付金等いろいろのものと比べまして、法制局のほうでもこういうふうにするのが適当であるということの結果でございまして、お気持ちの点はよくわかるわけでございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 平和条約締結祖国の再建への貢献、これは前の答申のほうにはうたってないことです。今度、包括的、最終的処理をするという今回の答申にこれをうたったんだ。そうして国の責任ということも、今回初めてうたったのである。その高い貢献度に対し国の責任をもって処理するということを措置処理方針の中に規定してあることから見て、ここに、前の引揚者給付金支給法と今度の交付金支給法の性格が違うことを前提にして、未帰還者留守家族等援護法の中にある国の責任処理、あるいは援護法の中にある、国家補償の精神に基づく、こういうものがどこかになければ、私は前と同じような法制局の見解——荒井さんが来ておられるが、他の法律との関係といえば、未帰還者留守家族等援護法と全くよく似た法律の中に、国家責任処理のことをうたってある。これを御承知であったかどうか。そしてそれに対して政府案に法制局で賛成されたのかどうか、お答え願いたい。
  26. 荒井勇

    ○荒井政府委員 お答え申し上げます。在外財産について、わが国の平和条約締結あるいは祖国再建への貢献というものが見られるではないかという点でございますが、わが国の在外財産の約八割を占める地域との間では、平和条約締結はまだできておりません。そして、受田先生おっしゃいましたような在外財産問題審議会における少数意見であったといわれますところの、在外財産賠償引き当てられたのだという点につきましても、審議会答申にございますように、そういうことは法律的には言い得ないのじゃないかということがございまして、その八割の地域について平和条約締結というようなものがまだ見られていない、あるいはそれが賠償引き当てであるという法律論が成り立たないという段階で、その第一条に法律的に書けと言われましても、それは非常にいま困難である。その点は、総理府のほうで原案をつくられたときからございませんで、それを特に法制局の段階で法律論としてそういうものを書けということは、困難であるというふうに判断したわけでございます。
  27. 受田新吉

    受田委員 私は、法律論としてという意味でないのです。政策的措置として、国の責任措置ということばが書いてある。平和条約への貢献がうたってある。法律論を離れた議論をいましておる。それについて法律の目的の中に、政策的措置として国家の責任処理する、あるいは何らかの形で国家への貢献をうたっていくという、この文句をなぜ法制局は——いま栗山室長のお話によると、法制局の意見を徴した結果はずしたと、こう言われておる法制局といえば、荒井さんのおられるところだ。あなたのところでなぜそれをはずされたか。私は、法律論議論より、政策論でいま言っている。これは政策的措置でこの法案が出されたのですから、その政策的措置の中に、未帰還者留守家族等援護法と同様の趣旨の目的の中に、貢献とか、あるいは国家責任というのをうたっていいんではないか。十年前の審議会答申には、そういうものは書いてなかった。今度は最終的処理であるということが書いてある。特に措置処理方針の中に、所得制限を撤廃するということは、単なる援護措置でないということを、在外財産特異性というものをうたっておることに意味があるんだから、したがって、今回は最終処理としては、国家がそうした引き揚げ者の条約締結祖国再建への貢献に対して国の責任をもってこれを処理するためにこの法案を出したと、こううたうべきではなかったか。そういう法案の文句を、法制局に御意見を聞いたら、法制局は必要ないと言われたから書かなかったということですが……。
  28. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ちょっと先生、私のことばが足りなかったかもしれませんが、先ほどの問題、もう一ぺん答えさせていただきたいと思います。答申におきまして、国の責任においてという文字があるのは、先生のおっしゃるとおりでございます。そして答申におきましては、国の責任においてこの問題の解決に当たるべきである、こういっておるわけでございますが、これは審議の経過からいたしまして、国の実施する措置、つまり国の措置によってこの問題を解決処理すべきであるということを明文に明らかにしたものでございまして、この答申を受けまして、法律の条文の中に、国が措置するようにこれは書いてあるわけでございます。したがいまして、国の責任においてという審議の経過からしまして、今度の法案の条文で十分ではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから、先ほど私が法制局審議の段階でと申し上げましたのは、私のほうでこの原案をつくりまして、法制局の審議の段階でこれがそのまま通りました、こういう意味でございますので、御承知願いたいと思います。
  29. 受田新吉

    受田委員 法制局がそれを認めたわけですね。そうしたら、原案はあなたのほうがつくられた。あなたのほうは、未帰還者留守家族等援護法の中に、はっきり国の責任処理すると書いている。全く同じような性格の法案だ。前のときは国の責任をうたい、今度はうたってないという、それはどこに原因があるかをただしたいのです。
  30. 実本博次

    ○実本政府委員 私のほうの所管の、先生のさっきおっしゃいました援護法におきましては、国家補償の精神に基づいて援護する、それから未帰還者のほうは、国の責任において援護する、こういうふうにうたっておりますのは、私のほうなりに考えますと、援護法といい、それから未帰還者の援護法といい、いずれももとの陸海軍に属していた者を中心とした人々に対する援護でございまして、国が自分の使用者責任を負っている人たちを主として対象にした法律でございますので、おそらくそういうふうな文字を入れて、そして援護する、こうなったのだろうと思いますが、これはわれわれのほうのいま所管しておる法律についての考え方でございます。
  31. 受田新吉

    受田委員 未帰還者留守家族等援護法には、一般法人が主軸になっておる。決して軍人、軍属というふうに断定されたものじゃない。未帰還者留守家族等援護法のもとは、未復員者給与法というものがあった。それは復員しない者ということで、未帰還者留守家族等援護法のほうになったら、明らかに一般法人が対象になっておる。そのほうが主軸になっておる。そういうときに国の責任がうたってある。だから、性格が違ってきておる。それと同じに、今度は国家責任が相当強く出る法案なんです。長官、単なる援護措置は十年前で済んだ。今度は包括的、最終的な措置であって、所得制限を撤廃している。その在外財産特異性、価値論が、特に高い立場政策的に討議されたのが答申である。その意味からは、単なる援護法でさえも国の責任がうたってある、そこらあたりで、この答申に書いた文句を私は何かの形で生かしてもらいたかった。そのことは精神的に引き揚げてきた皆さんにも満足を与え、また一般法人、国民世論だって、決して他の戦争犠牲者との間においてかれこれ議論の発する問題ではないと思うのです。特に農地報償のごとき、最高裁の判決もだめ、審議会答申も全部だめ、学者にも賛成する人はおらぬ、地縁、人縁の豊かな祖国で、よし当時少額の農地売却の慣例はあったにしても、一応手続はもらっておるかっこうをとられておる、そういうような立場でさえも、百八十万に対して千四百六十億という措置をされた。これは筋が通らぬ。大体今度の場合は筋が通るのです。ドイツ、イタリアがさっとやっておるのだ。日本だけがやらぬという法律責任がある。条約締結者の責任がある。かつ、在外財産喪失者としての引き揚げ者の特異性を、答申は高く評価している。国の責任処理がうたってある。そういうときに、ちゅうちょなくこれを目的にうたうべきだ。怠慢であったと思います。いま政府自身として、もう一度見解を明らかにしていただきたいと思います。
  32. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 昭和三十二年度の措置、立ち上がり資金でありまするが、これも国の責任においてやったものである。今度行なわんとするものも、国の責任においてやろうとするものであります。別にうたわなかったからといって、その点が怠慢であるとは、私は申せないと思います。
  33. 受田新吉

    受田委員 いや、十年前の答申の性格は、国家財政全般の見地を考慮しながらの援護的措置であったと、これはもう今回の審議会でもうたってある。今度の場合は、包括的、最終的処置で、そして引き揚げ者に対する在外財産の特殊の価値論がうたわれておる。そこから所得制限の撤廃もされておる。したがって、これをもっておしまいなんです。あとからまた、五年か十年たって、社会保障の線でもう一ぺんやってくれという問題と違うのだ。農地報償とは性格が違う。高等裁判所の結論も、補償義務があることをうたっておる。こういうときに、未帰還者留守家族等援護法と同じ立場をとるのに、どこにやぶさかであるか。お答え願いたい。それが抜けておる。
  34. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 受田先生の御質問の第一点でございますが、今度の法律措置は、先生よく御承知のように、国家に補償義務ありという前提に立って行なうべきものではない、これはさっき先生がはっきりされた点でございます。しからば、政策的にはどうか。これもさっき先生がはっきりおっしゃいましたが、引き場げ者に対して、根こそぎ財産並びに人縁、地縁等、先生のおっしゃるものをすべて失ったというところにある打撃は、ほかの戦災やなんかと比べものにならない、質的に違うということで、政策的に、この点に着目して、国が何らかの措置をとるべきではないか、こういうことが答申の中心であったように存じます。  そこで、この点につきましてもう一ぺん考えてみますと、今度の政策をとります中心は、ただいま申し上げたとおりでございますけれども、それは国がそういう方々に対して、たとえばことばはちょっと違うかもしれませんが、何か債務的なものがある、したがって、それに対して責任をもって措置するというような点かと申し上げますと、この点はちょっと違いまして、政策的に措置をする必要があるというのは、先ほど申し上げたとおりでございまするが、さればといって、それから直ちに債務的なものが出てくる、その債務に対してどうこうというようなものではないように考えられるのでございます。したがいまして、そういう点におきまして、国が特殊な措置を従来もとって、たとえばこれはほかの省の所管でございまするが、未亡人あるいは戦傷病者の妻というようなものについて、いろいろ給付金を出しております。今度の措置の場合は、いろいろ比較、対照ということで持ち出されたということもございまするが、こういう法律につきましては、その趣旨あるいは目的のところに、今度御審議をお願いいたしまするところの引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案と同じような法律趣旨が盛ってあるわけでございまして、趣旨といたしましては、先生のおっしゃるお気持ちはよくわかるのでございますが、法律の表現としては、こういうことに、いままで申しましたような経過からさせていただいたということでございますので、御了承を願いたいと思います。
  35. 受田新吉

    受田委員 総務長官から述べられた提案理由説明の中にも、このことが書いてないのであります。答申をすなおにうたってないのであります。いまの高度の貢献及び国家責任の問題というのは、答申にうたっておるので、それに基づいて措置するということを、せめて提案理由にでもちょっと説明してほしかった。そこらがみなはずしてある。つまり政策的措置の中に立ててある基本の柱が失われて、すらすらと提案理由説明をしておる、これではだめです。時間の関係で、私の質問の時間がなくなってしまったので、大事な問題が抜けておるんですが、そこにあなた方政府当局のあたたかい心づかいがあるならば、その文句はどこにあるか。つまり農地報償とは比較にならぬ大きな問題であるがゆえに、国民の納得を得なければならぬ。国民の納得を得るために、政府は努力しなければならぬ。国民の納得を得るために措置せよと答申にうたってある。それは世論においても、この点を理解してもらうために、うたわなければならぬ。ほかのものと性格が違うんです。国内で疎開をしたというような立場とは違うんです。その違うところがはずされておる。なぜここを怠ったか。提案理由説明にもないのはどういうことか、お聞きしたいのです。
  36. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 答申内容につきましては、もう申し上げるまでもなく、先生よく御存じでございまするが、答申の中におきましては、在外財産そのものが国のために役立ったとする点につきまして、いろいろ書いてあるのでございます。この点につきましては、役立ったから、したがって、それが国の政策に結びつくかどうかという点が書いてあるのでございます。役立ったかどうか、そのものにつきましていろいろ書いてございまするが、引き揚げ者の方たちが在外財産を失った、その在外財産というものが、大いに国の役に立った、あるいは貢献したと念ずるお気持ちはよくわかるのでございますけれども、これをもって直ちに政府政策的な特別な措置をとるということには、ちょっと結びつきません。と申しますのは、ほかの戦災者その他の方々のこうむった財産的損害その他の損害につきましても、その気持ちからいえば、その人たちの気持ちも同様であろうからということが書いてあるのでございます。そこで、では、何らか特別に国として政策をとる必要があるかどうかという点をもう一歩突っ込んで、引き揚げ者の方たちが、先ほど申されましたように、そこにおることができなくなって、強制的に内地に引き揚げさせられた、それに伴って財産はもちろんのこと、人縁、地縁すべてを根こそぎ失った、その点に着目すべきである、こういうことを書いてあるのであります。したがいまして、在外財産そのものにつきましての点は、その気持ちは答申に沿ってということではっきり入っておりますけれども、その点だけをはっきりここに出すということは問題なのではないかという気持で、答申に十分沿いましてということで御了承願いたいということでございます。
  37. 受田新吉

    受田委員 あなたは、ちょっとそこのところをことばを濁しておられる。答申の第三の政策的措置の必要性の第二項の末尾に「特別な意味と価値とをもった財産である。」ということがうたってある。在外財産は、単なる財産ではない。その引き揚げ者の喪失した財産ですよ。特別な意味と価値とを持っておるんです。したがって、在外財産問題の処置ということに、特別の措置として、交付金支給して、これに報いて、そうして「国の責任においてこの問題に終止符を打つ」、そこまでうたっておる。あなたはほかのことを答えておる。喪失した財産特異性と、特別な意味と価値とを持った財産の喪失性をどうするかということは、国の責任で最終的に措置せいと書いてあるんです。未帰還者留守家族等援護法は、一般法人が中心であると答申にうたっておる。これとどこが違っておるか。未帰還者留守家族等援護法との関係で問うておる。いかがですか。
  38. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 未帰還者留守家族等援護法におきまして「この法律は、未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、国の責任において、その留守家族を援護することを目的とする。」ということが、第一条に先生おっしゃったとおり書いてございまして、第二条に「「未帰還者」とは」ということで、もとの陸海軍に属しておって、未復員者ということが、第一に掲げられております。第二は「未復員者以外の者であって、」ということで、ソビエト地域あるいは関東州、満州、中国本土というものが書いてあるのでございますが、最初の趣旨からいいますと、どうもこれは陸海軍が中心であるというふうに書いておるわけでございます。  それからなお、今度の措置につきまして、国としてこういう法律をつくったわけでございまするし、先生のさっきおっしゃいました特別な意味と価値を持った財産を引き揚げ者が失った、この点を着目いたしまして、特別の措置でございますので、この点はこの法律全体の中ではっきりいたしてるのではないかというふうに考えまするから、先生ひとつ御了承のほどを願いたいと思います。
  39. 受田新吉

    受田委員 提案理由趣旨説明の中に盛るというくらいの配慮は、すべきものである。答申の中に盛られた大事な柱を抜かしたようなかっこうで逃げておるような冷酷な態度を批判しておる。政府の意図ははっきりいたしました。逃げようとして終始努力しておることがきわめて明白になりましたので、この問題は答申趣旨と違う措置をしておるという点において、政府答申に忠実でないという一例をいまここで示したのでございます。  もう一つ、この所得制限の撤廃がしてあるということは、重大な意義があると私は思う。これは決して前の援護措置でないというところに、したがって、所得の非常に高い人は、おそらく良心的に寄付をされるとか、あるいはこれを受けないとかいう措置をされるということも、それは私は良心に期待して、今日繁栄しておる人にもいくべきで、筋はやはり所得制限を撤廃したところに、喪失者としての海外引き揚げ者の価値を評価した。これがこの答申にうたってある。ここをひとつ十分含んでもらいたい。  時間がきたようでございまするから、私の質問をこれでやめますが、入口だけ質問したら、もう「質問停止の命令がきたようです。非常に残念でございますが、質問のはしりだけをやって、質問停止を命ぜられたわけであります。私の四十分がきて、あとは四十分で、それから十分で、一時までの間にまた時間があれば、割り当てをいただきたい。四十分、十分、二十分の処理で、あと二十分残れば、それを特に私に割り当てていただきたいと思います。  ただ、もう一つだけお聞きしておきたいことは、条約局長も来ておられるので、いろいろ問題をお聞きしようと思ったのですが、この交付金支給事務というものの中に、都道府県知事、市町村長——前の農地報償のときには「都道府県知事その他政令で定める」という立場で市町村長を入れておったようですが、今度はそれをひっくるめて地方公共団体の長と沖繩の事務所の責任者にこれを持っていっておられる。沖繩で苦労されてきて帰られた方は含まれる。これは当然内地以上の苦労をされておるのですから、当然のことであります。ありますが、その支払い事務は、十年前の給付金支給のときには、省査でもって調査その他の事務に、引き揚げの関連団体が、組織的に十分手の打てる機構を持っている団体が、役人がちょろちょろやるよりはよほど効果的な仕事をやる団体があるのだから、その団体に調査その他をさしておる。今度は、それについてこの間の委員会では、事務処理の問題はそういう団体に調査その他をやらせないのだ、こういう御答弁であったようでございますが、差しあたり三億二百万円の四十二年の予算になっている。総理府本庁のすでに通過している予算の中にも、委託費というやつが二億八千九百万円載っている。これはまだ使っていないわけです。本庁の職員の旅費、庁費が千百万円を振り当て、委託費に二億八千九百万円が振り当てられた。それらの問題もあわせて、調査その他に機能的に役人が動くよりも十分効果的な働きをする——末端には不十分な団体のところもあるけれども、整備された団体のところでは、これは十分役に立てるのだ、そういう意味で、その団体に調査その他の事務処理にあたっての一役を買わせるということを、厚生省は十年前にやらしておられれるのです。今度は総理府になると、これをやらさぬというこの間の答弁は、納得できない。ひとつお答え願いたい。
  40. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先生のおっしゃいます十年前の調査規則、厚生省令の問題でございまするが、これは昭和三十一年の五月に在外事実調査規則というものが厚生省で出まして、御承知でありましょうが、三十二年にできまする法律の前提としまして、一年前厚生省が在外事実調査というものをしたわけでございます。これにいろいろの方に調査について御協力を願ったということはございますが、ただし、この前の三十二年の引き揚げ者給付金法律におきましては、そういう厚生省令は出ておりません。先生三十一年のことをおっしゃっているのだろうと私は存じます。  そこで、この在外事実調査で非常にいろいろなことがわかりまして、今度の特別交付金支給につきましては、この在外事実調査をもとに、非常にいろいろの計画を立てさしてもらったわけでございます。それからもう一つ、今度のこの交付金支給事務にあたりましては、十年前の書類というものがそのまま役に立つものもございまするし、それからまた、その資料をもとに判断をするということで非常に恩恵をこうむる場合もあるわけでございまして、今度のこの事務の執行につきましては、特に関係団体に御委託をするという必要も、実はないというふうにわれわれのほうで考えております。ただし、団体あるいは引き揚げ者の方々がいろいろ持っておられる資料などを相互に活用されまして、お互いに助け合う気持ちでいろいろおやり願う、これは非常に望ましいことでございますから、そういう点は非常にわれわれ期待しているという点を申し上げておるわけでございます。
  41. 受田新吉

    受田委員 栗山さん、今度はできるだけ早く処理をしなければいけない。お役人の業務というのは、何にもしないお役人がごそごそ動いて長い年数をかけるようなへまをやっちゃいけないわけです。やはりそこには組織的な団体というものが何らかの形で力をかすことによって、その支払い業務というものが非常に早く進んでいく。年が七十をこえた方々、もうよわい幾ばくもないような方々が、たくさん控えておられるような問題です。これは人道的問題です。その人道的問題をかかえてのらりくらりと役人にやらして、長い年月かけるような処理よりも、すかっとちゃんと名簿を持って、組織的に実態か把握されておる——されていない小さい町村もままあると思うけれども、そういうところは、市町村の役人がやればいい。あとは団体が手伝うことによって、協力することによって十分能率があがるということを、実態を把握してひとつ御判断を願いたい。これは政治的な配慮が要るわけですから、これは総務長官から答弁を伺いたいのですが……。
  42. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 受田先生のおっしゃる、人数も非常に多うございますし、お年寄りの方も非常に多うございまして、非常に早くというお気持ちは、私はよくわかります。したがいまして、一番の責任のありまする地方公共団体に、もう法律が提案になっておるわけでございますから、前々からいろいろ内々的にお願いを申し上げておりまして、府県のほうからも、非常に積極的にわれわれのほうに打ち合わせに上京しておいでになっておられます。内部の、要するに人員の整備、それから部屋の確保その他が、これからいよいよ事務をやりまする段階になりますと非常に大事なことになりますので、そういうふうに非常に張り切って、できるだけ早くしたいということで臨んでおりますることを、御了承を願いたいと思います。
  43. 受田新吉

    受田委員 栗山さん、そういう意味事務を進捗せしめるという意味では、非常に役に立つ機関がある。それを生かすということは、これは政府としてはまことによりどころになると思うのです。そういう意味で、政令委任の対象にすることは抜きとして、一応何らかのかっこうで協力を求めていくという態度を政府自身が持っておらぬと、事務は非常に停滞します。よわい幾ばくもない方々に、もうなくなって後にこれをお渡しするということは忍びない。早くお渡しするという意味で、そういう機構の整った団体を最高に活用するという精神、これを長官から御答弁願って、私の質問を終わります。  なお、時間が少し余ったらください。
  44. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 この間も栗山君からお答えいたしましたが、法律事務を民間団体におまかせするということは、これはやれないと思いますが、非常にいろいろな抽象的な問題で、答申そのものもそうでありましたし、今後いろいろな問題で情報というか、われわれとしても参考にしなければならないような問題も多々あると思いまするので、必要がある場合には、団体の方々の御意見を十分承りたい、このように考えております。
  45. 關谷勝利

    關谷委員長 鈴切康雄君。
  46. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非常に審議の時間がないので、もう少し時間をほしいのですが、その点は一応お話し合いになっておりますので、簡単に総務長官からお聞きしたいと思います。  戦後二十二年、政府は戦後処理として幾つかの施策を講じてきているわけでありますが、いわゆる戦争犠牲者への措置に対しては、どのような基本的態度で今日まで臨んでこられたか。それをお伺いしたいと思います。
  47. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 たびたびこの委員会で申し上げておりまするように、あのいまわしい大戦、戦いにおいて日本は破れましたが、日本人全部が戦争犠牲者であるという基本的な考え方から、受けた打撃についての処理政府は当たってまいったわけでございます。
  48. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その中でも、いわゆる政府戦争犠牲者の範囲をどの程度まで考えておられるか、具体的に御答弁願いたいと思います。そしていままで講じてこられた処置についてお伺いしたい。
  49. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ただいま総務長官からお答え申し上げましたように、戦争犠牲者というものにつきましては、全国民が多かれ少なかれその一人であるという基本的な態度があるわけでございますが、その中で特に措置をしなければならないということで政府がとりました措置につきまして、簡単に申し上げます。  直接戦争に関係のあるところの軍人、軍属といったような方たちに対しましては、恩給法あるいは援護法といったようなもの、それから戦傷病者の援護法もございますが、そういうような一連の法律によりまして措置をしているわけでございます。それからまた一般の戦災者につきましては、戦時災害保護法というものがございまして、そういう法律によりましてやってきたというわけでございます。それから先ほどお話がありましたような、まだ帰ってこない未帰還者というのがございます。それには、未帰還者の留守家族に対する援護法というようなものがございます。それから占領中の占領軍による被害者に対してまして何らかの措置をとるということで、連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律というものがございます。それからさらに引き揚げ者に対しましては、この十年前に引揚者給付金支給法といったような法律、その他応急援護の措置が講じられておるのでございます。さらに、これは戦争犠牲そのものと言えるかどうかちょっと疑問でございますが、やはり関連したものといたしまして、御承知のように農地被買収者等に対する給付金支給に関する法律、こういったようなものがあるわけでございます。  大体荒ごなしでございますが、こんなところが大筋でございます。
  50. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦災者並びに強制疎開者、これは、私の考えでは中途はんぱになっていると考えます。また防空法、これも権利保留というような状態で所管が不明だというように聞いておりますが、その点いかがでしょうか。
  51. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 防空法の点につきましては、戦後内務省の解体に伴いまして、まだ所管がはっきりいたしておらないというのが、現状でございます。
  52. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理並びに長官は、戦後処理という問題は引き揚げ者等に対する特別交付金支給をもって終わりたい、このように言われているわけでありますが、そのほかは、どういうふうに今後されていくつもりでありますか。
  53. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 戦後二十二年、まだいろいろな問題が残されておることは、私もよく承知いたしております。この委員会でもいろんな論議がありました。しかし、この問題で戦後のこの種の処理というものは私は終わりたいという発言をいたしておるのでございますが、しからばその他残された問題はどうか。これはそれぞれの所管省において、社会保障の充実、拡充ということによって処置してまいることが適当であると考えております。
  54. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当然残された戦争犠牲者に対して、いま長官が言われた、社会保障の充実というおことばがあったわけでありますが、社会保障の充実ということになれば、具体的にどういう案をもって今後社会保障の充実に当たっていくのか、その点をお伺いしたい。
  55. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 その点につきましては、所管である厚生大臣とも、いろいろな問題が提起されましたたびごとに、私は打ち合わせをいたしております。あるいは予算措置もあるでしょう、援護措置の強化もあるでしょう、あるいは立法措置もあると考えておりますが、これは政府全体の大きな政治問題として考えていかなければならない重要な問題であると考えております。
  56. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、戦争犠牲者に対する措置という問題について、政府考え方としては、財政や国民経済の配慮は当然のこととして、最も重要なことは公平化でなければならないと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  57. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 そのとおりであります。先ほどから繰り返しているように、国民全部が戦争犠牲者であるという観点から、公平化ということは第一に考えなければならない問題であると思います。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その点について政府に強力な働きかけ、影響を与えることのできないいわゆる未組織戦争犠牲者は、まだまだ置き去りにされている現状であります。力のある団体等を先にやって、あとは社会保障の拡充でやっていくということだけでは、公平という面においては好ましくないと思いますが、その点いかがですか。
  59. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 いわゆる圧力云々によってわれわれは政策を行なっているわけではございません。その点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。それぞれの審議会が一番いい例であるかもしれませんが、その線に沿って解決していく、そういう筋の通った解決を今日まではかってまいりましたし、今後もその考えは変わってはおりません。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現在原爆被害者等は、財産より生命と言って援護法制定を要求しているが、こういった問題についてはどのようにお考えになっていますか。
  61. 実本博次

    ○実本政府委員 原爆被爆者につきましては、その被爆者の中から最も要望の強い医療措置、健康管理ということにつきましては、すでに昭和三十二年に原爆被爆者の法を制定いたしまして、その医療、健康管理について万全を期しておるわけであります。それ以外の援護につきましては、最近実態調査を原爆被爆者二十何万についてやっております。その実態調査の結果を見まして、世論の動向から必要であるかどうかということを調査いたしまして措置いたしたいというような考え方を、厚生省としてはいま持っておるところでございます。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 援護局長に伺いますが、現在原爆被爆者に対する措置は十分に行なわれているかどうかという問題、これについて……。
  63. 実本博次

    ○実本政府委員 私、直接の所管局長ではないものですから、若干僭越になるかもしれませんが、原爆の被爆者の最も欲しておられます医療上の援護あるいは健康管理の問題につきましては、昭和三十二年から相当力を入れてまいっておるところでございまして、必ずしも客観的に見て一〇〇%充足しているとは考えられませんにいたしましても、かなりのところまで充実してまいっているというふうに考えておるわけです。
  64. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 引き揚げ者に対する特別交付金支給をめぐって、政府はいま話がありましたとおり、戦後処理を終わりたい、かように言っておるわけです。しかしながら、国民の中には、戦後処理はまだ終わっていないとする問題がいまだにくすぶっている現状にかんがみ、その原因はどこにある、そのように長官はお思いになりますか。
  65. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 われわれの味わったことのないこういう大きい敗戦でありますから、すべて予想して云々なんということができる問題は一つもないわけであります。ですからケース・バイ・ケースというような批判があるかもしれませんが、しかし、私が申しておりますように、今後起きてくる問題は先ほどから申すような方法で解決するといたしまして、戦後二十二年たった今日でありますから、処理についてはこの辺でピリオドを打ちたいという気持ちであります。
  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、いまその問題がいまだにくすぶっている原因は、三通りある、そのように思うわけです。一つは、国民に納得のいく説明措置が講じられていないということ、すべての補償問題について場当たり的な解決をやっているということが一つ、それから政府は、政策的解決によって力の強いほうに引っぱられがちで、公平を欠いているということ、補償問題に対して政府は一元化して取り扱わず、大所高所に立って戦後処理という形がとられていないと思うのですが、その点、長官いかがですか。
  67. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 おあげになりました三つ、私はこれを否定するものではありません。確かに、世論指導というか、国民の納得のいく形の措置というものもとられなかったことは、こういった問題が出るたびにマスコミの扱い方を見てもわかるわけであります。それからさらに、私先ほどケース・バイ・ケースということを言いましたけれども、その批判があることも、私はこれは率直に認めます。それからいま一つ、おあげになりました第三の理由も、私はこれを認めます。思いもかけないこういう敗戦ということでありますから、万事納得のいく形で云々ということは、これは期待するほうも無理であろうと思いますが、そのおっしゃることはよくわかりますので、今後の処置にあたりましても、十分その意を体して考えていかなければならない重要な問題であると私は考えております。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、この法案についてでありますが、提案理由説明によりますと、「在外財産問題審議会答申にのっとり、」とありますが、当然これは審議会答申を尊重したと、そのように受け取ってよろしゅうございますか。
  69. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 そのとおりであります。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 答申によれば「引揚者の当時の年齢および在外居住年数に配慮することとし、一定の年齢に達していなかった者および在外居住が一定年数に達していなかった者は除外するとありますが、今回の法案で一定年齢に達していなかった者を一年未満としたことは、何も年齢制限というのでなくして、一年以上居住している者の居住制限をつけたほうに含まれるのではないか、その点いかがですか。
  71. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ただいまの答申に沿っているかという問題の御質問でございまするが、今回の講じまするこの法律措置は、引き掲げ者が、この前の終戦に伴いまして、従来の居住地に居住すること自体が許されなくなったということによって、それまでの生活をささえていたもろもろのもの、つまり財産、人間関係生活利益等、すべてを失ったという特異性に結びつけまして講ぜられるものであって、これは御承知のとおりであります。そこで、いわゆる財物としての経済的な財産だけを目的としているのではないとということも、これも御承知のとおりでございます。そこで、この措置の対象者としまして、答申は、いま仰せのごとく一定年齢未満のものを除外するのが適当だというふうに述べておるわけでございますが、政府は、その答申の意図するところが、その前にございますように、財産の形成能力及び生活利益の状況等を考慮してという点がございまするが、この財産の形成能力という点だけを考えますると、確かにある一定年齢以下の者を除外するということはあるいは適当かと存じますけれども、なお、ただいま生活利益の状況といったようなこともやはり考慮するように答申は申し述べておるわけでございまして、さらに答申の最後のページの(1)、(2)、(3)とありますところに、最後のほうに世帯のことが申し述べてあるわけでございます。世帯を支給額算定の単位とすることがやはり合理的ではないかというふうにされておるところから見まして、年少者に対しましても若干の交付金を追加して支給するということが、さらにこの答申の上にプラスアルファといいますか、この点をもう少し加えたほうがいいのではないかということで、今度の措置を講じたわけでございます。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまあなたが言われましたけれども、答申は世帯を基準として考えたらいいじゃないか、そのようにいわれておるわけですが、その点、世帯ではなくして個人に、個々に支給されるようになったわけです。そうしますと、いまあなたが言われました、当然に財産形成や生活利益の状況を考慮するというその問題、当時二歳や三歳の子供にこれを適用されるということは、だれでも疑問に思うわけであります。この点について、一年程度で財産形成や生活利益というものがどの程度得られるか、長官のお考えを伺いたい。
  73. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 答申に、世帯を単位として云々、世帯ごとということばがあります。世帯ごとでこの問題の解決がはかれれば、これは一番手っとり早い方法だと私も考えておりましたが、この間の委員会でも申し上げましたように、なるほど九十五万四千世帯という推定の数字はございますけれども、これがはっきりした、いま戸主はだれである、その九十五万四千世常にこれを全部配分するという処置のとられない現状であることは、鈴切委員もおわかりいただけると思うのです。したがって、世帯単位で支給することを頭に置きながら、さて現実の支給方法となれば、やはり個人を対象としなければならないというところに、立法過程において非常な苦労があったわけでございます。  それから、なお、いまの年齢制限の問題でございまするが、おっしゃること私もよくわかります。しかし、生活権の一環として、生活利益として、また世帯を単位として云々という答申の書き方を読んでみますれば、いま言ったような一歳以上の方に若干のお金でもお渡しすることが、答申の線に沿う道であろうと思って、こういう措置をとったわけでございます。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 年齢制限の点で、大蔵省は二十歳以上、総理府は十三歳以上という線を打ち出したように聞いております。長官のほうから、総理府としては十三歳以上という線を打ち出しておるわけですが、どうしてこれらの案はいれられなくて、そうして一歳未満以外の、要するにそれ以上の年齢に落ちついたかという点についてのいきさつ……。
  75. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 財産を形成し得る能力は一体何歳なりやという議論は、だいぶいたしました。昔の徴兵検査で満二十というのを大蔵省は考えたのでしょう。あるいは戦後の……(鈴切委員総理府の十三歳を……」と呼ぶ)私自身の考えたものも、みな申し上げます。児童福祉法あるいは労働基準法等によれば、今日では十八歳というものが一つの対象になっておる。さらに、元服という、ちょっと厳粛になりますが、十五歳というものも、当時としては考えられる年齢であったろう。高等小学校卒業——私が満十三歳というのは、満州開拓義勇軍を対象としたわけではありませんけれども、当時非常な熱意を持って外地に渡った者が、小学校、義務教育を終了して行かれた方々もたくさんありましたということが、私の念頭にもありましたし、海外雄飛の気持ちに燃えた若人が十三歳であったということから、そういう線も出たわけでございます。しからば、それがどうしてこういうふうになったかというお尋ねでありまするが、これは先ほど申しましたように、世帯を単位として支給すべしという答申の線に沿ったこと、それから生活権の一環として家族構成というものを考えようとしたこと、まあ広く言うならば、政策措置ということもその中に含まれてくるというふうに御了承いただけばいいのじゃなかろうかと思っております。
  76. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 八年以上の居住者に対して一万円が加算されることになっておりますが、この算出根拠は何ですか。
  77. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 長期加算の問題でございますが、一般的に言いまして、外地における財産形成とかあるいは生活利益等の状況は、ほんとのことを言いますと、在外居住年数の長さに応じまして考えるのが普通ではないかというふうに答申の線からも考えられます。しかし、外地におけるこういう居住年数の長い者ほど優遇するという点を事務的に考えてみますと、なかなかこれはむつかしい点でございまして、とても事務上のネックになるのではないかというような点からしまして、そういうこまかい作業はいまとてもできないという実務上の問題から、一応日華事変が始まりました昭和十二年というものを基準にして、それ以前の者に対しまして加算をするというふうに考えていたわけでございます。
  78. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま日華事変を基準として、少なくとも八年以上の居住者に対して加算されるのがわずか一万円ということなんですが、その点について私は少ないというように思うのですが、その点いかがでしょう。
  79. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 今度の法案内容をごらんいただけたと存じまするが、なるべく年長者、つまり中年以上の方に重きを置くようにという答申趣旨に沿いまして、三十五歳以上につきまして、五十歳未満が十万円、五十歳以上が十六万円という法案内容になってございます。これは、中年以上の方を重んずるようにということの中には、さらにその意味といたしまして、やはり長くおった方に相当の優遇措置を与えるように——長くおった方というものは認定がなかなかむずかしいというので、これに中年以上の方を含めるというような意味もあったように考えておるわけでございます。しかし、この十万、十六万という措置にしましても、現実には全部が全部の方が完全に八年以上おられたかどうかということは、これは別問題でございます。そういう意味では、一般的な抽象的な考え方からそういうふうになったわけでございまして、個々の方にとってみますと、やはり短い方も中にはおられるわけでございます。そこで、その辺のことも考えまして、八年以上の方に一万円といたしましたのは、一番最後の、先ほどからいろいろ御質問に相なりましたところの年少者の方々、この場合には、今度は二十歳未満の者が一番少ない額でございますが、これが二万円でございます。これよりもやはり今度の加算といたしましては少ないということが常識ではなかろうかということで、これよりも少ない一万円というふうな考え方をいたしたわけでございます。その点ひとつ御了承願います。
  80. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 支給の方法についてでありますが、終戦時五十歳の人は現在すでに七十二歳となっております。政府案の十年間の交付公債だとすると、全額支給されるまでには八十二歳になってしまう。常識的に、日本人の平均寿命から考えても、何とか高齢者に対する特別な配慮が必要じゃないかというように考えるのです。  なお、生活保護者に対しては、支給する特別交付金は収入として認定しないような考慮も必要ではないかと思うのですが、その点についていかがですか。
  81. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 高齢者に対して、もうすでにいいお年になっておられるから、早く償還をするようにしたらどうかという御趣旨が第一点だと承りましたが、高齢者に対しましては、先ほどから申し上げましたように、最低年齢の者の八倍というような高額のものが出ることになっておりますので、償還の期限につきましては、この際はそれをもっと短縮するというような案は持ち合わせておりません。ただし、第二点に申されましたように、生活保護を受けておる方、あるいは生活困窮者保護を受けておるまでには至っておらないけれども、それに近いような困窮の方という方々に対しましては、国で買い上げるというような措置、あるいは生業のための融資というような措置、そういう点につきましては、十分考えさしていただきたいというふうに存じております。
  82. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる第二次審議会答申に従って昭和三十二年に給付金支給されたが、その性格は何ですか。在外財産に着目したのか、立ち上がり資金として支給したのか。昭和三十二年は給付金、今度は特別交付金といっているが、この相違は何か。また、今回提出された法案との関係はどうなっておるか。この点について……。
  83. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 十年前の引き揚げ者給付金支給でございまするが、これは今度の答申にもはっきり書いてございますように、引き揚げ者がそういう打撃を受けて国に帰ってまいりまして、国内社会に復帰する、つまり、簡単に申し上げますと、立ち上がりの資金、それの援護資金というふうに了解されておるわけでございます。  今回の措置につきましては、先ほどから何回も申し上げましたように、引き揚げ者が海外におきまして強制的に引き揚げをさせられたということに伴って物的な財産あるいは人縁、地縁といったような生活利益その他のものを一切根こそぎ失った、その失ったことに着目いたしまして講ずる特別な措置である、こういうことに相なっておりまして、政府もその意をくみましていたしておるわけであります。
  84. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 提案理由説明の中に、四ページの終わりから三行目ですが、「引揚者は、終戦に伴い、長年住みなれた社会の中で居住すること自体が許されなくなったことにより、通常の財物としての財産のほかに、それらの物の上に成り立ち、また、それらのものがそこから生まれ出る資本でもあったところの人間関係生活利益等、生活を営むうえで、最も基本となる支えまでも一切失ったという点において他と異なる特異な実情にあることにかえりみ、このような単なる財産ではなく特別な意味と価値とをもった財産の喪失に対し、国が特別の政策的措置として引揚者交付金支給しこれに報いることこそは、」とここにあるのですが、この意味は私にはよくわからないわけです、実に回りくどくて何を言っているか。おそらく小学校の一年生だってこんな変な国語は書かないと思うわけですが、この点についてよくわかるように説明していただきたい。
  85. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 この「引揚者は、終戦に伴い、長年住みなれた社会の中で居住すること自体が許されなくなったことにより、」、これは御承知のように、強制的に引き揚げさせられたという要素、つまりそこに住むことができなくなったということによりまして、ということでございます。「通常の財物としての財産のほかに、」と申しますのは、いわゆる普通の財産、経済的な財産、物的な財産というふうに考えていただいていいと思います。そういう財産を失ったことはもちろんである。しかし、そのほかに、そういう財産の上に成り立ち、あるいはまた、「それらのものがそこから生まれ出る資本でもあったところの人間関係、」、ちょっとややこしい書き方でございますが、たとえば、そういう財物を非常におためになって、社会的な地位がその社会で確固とされておる、あるいは、財物はそうなくても、いままでの行動といったようなところから、その人に非常に社会的な、人間的な信用がついておる、要するに、あの人間は大したもんだというような、その社会に通用する人間関係が出てくるわけでございます。そういうものがそれらの物の上に成り立ち、またそれらのものがそこから生まれ出る資本でも元手でもあったところの人間関係といったような意味でございます。「生活利益」と申しますのは、長年そこで商売をしておりますと、のれんといったようなものが生じますし、それから、取引関係その他においても、その人の人格が反映いたしまして、単なる経済的な問題以外のいろいろのその人の持ち味といったようなものが、社会に非常に反映されるというような、すべてそこに長年住んでおられることによって出てくるところの対人間関係、社会関係、その人の持っておられる生活のプラスといったようなもの、「生活を営むうえで、最も基本となる支え」、そういったものが、いま申し上げたようなものであります。要するに、そこの社会において持っておられたところの物的なものはもちろん、それ以外の、その社会に根をはやしておられたいい意味の根拠といったようなものが一切なくなった。これは単なる戦災等によって家を焼いたあるいは品物を焼いたというような事情とは異なるのであるというふうな意味で、それが特別な意味と価値とを持った財産といいますか、宝といいますか、そういうものの喪失である、これはほかと比べることができないものであるから、したがって、それに対しまして国は特別に何らかの措置をやってよかろう、こういうのが大体の意味でございます。おわかりいただければ幸いだと存じます。
  86. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おわかりにならないのです。よく意味が。全くこういうふうな提案理由説明ということは、私も初めてでありますのでよくわからないのですが、「国が特別の政策的措置として引揚者交付金支給しこれに報いる」というその「報い」るということはどういうことなんですか。何に報いるのか、財産の損失に報いるのか、また、財産が国家に何ほど貢献したかということに報いるのか、あるいは海外から引き揚げた御苦労に報いるのか、その点の「報いる」ということについての説明を……。
  87. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先ほどからくどくど申し上げました文句といいますか、文言といいますか、このことばそのものは、御承知のごとく、答申に書いてあるものをそのまま実は引用させてもらったわけでございます。ただいま御質問の「特別な意味と価値とをもった財産の喪失に対し、国が特別の政策的措置として引揚者交付金支給し、これに報いることこそは、」の「報いる」という点でありますが、これは答申にもこのとおりあるわけでございまして、答申意味といたしましては、引き揚げ者が、先ほどから申し上げましたように、一切を根こそぎ失ったというそのことに対して政策的に報いる、こういう意味でございます。
  88. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、要するに引き揚げ者が一切のものを失ったという、その失ったものに対して報いるのは、財産の損失なのか、それとも財産が国家に何ほど貢献したのか、あるいは海外から引き揚げてきた御苦労に報いるのか、その点がはっきりしないのです。
  89. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 中心をなすものは、あくまでも、先ほどから申しましたように、財産のみならず、人間関係生活利益等、一切の生活を営む上のささえを失ったというので、単なる財物だけではないことは、先ほどから申し上げたとおりでございますが、こういうことを失った、要するに、社会から根こそぎ追い出されて、すべてのものを置いてきたということもいえるかと思いますが、非常に打撃が大きかったであろう、その打撃に対して国が報いるということでございまして、苦労、あるいは帰ってきてからまた立ち上がるのにたいへんだったというようなことに対する、立ち上がりのほうの御苦労であったというような点につきましては、立ち上がり資金として十年前のあれができておるわけでありますから、こういう財物のみならず、特別な意味財産といいますか、宝を失ったという、その失ったことに対して御苦労でございますという、まあ報いる意味でございます。
  90. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま生活利益を失ったという、生活利益ということはどういうことですか。
  91. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先ほども申し上げましたが、そこに住んで、そこで生活をしておられることによって生じてくる生活上の——生きるあるいは社会に生活をしていく上においての利益ということでございまして、具体的に申し上げますと、たとえば商売をしておるお方につきましては、のれんといったようなものがその人の信用から生じてくる。それから、金融機関等にも、あの人はなかなかしゃんとしたいい人だということで、単なる品物があるかどうかじゃなくて、人間的な商売上の信用というようなものが生じてくるといったような、そこにおいて生活を営まれていることによってその人に生じてくるところのプラスといったようなものを申しておるわけでございます。
  92. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 財産の喪失プラス生活利益というふうに考えていいですか。
  93. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 プラスと申されますとちょっとあれでございますが、要するに、そういうもの一切含めたものを引き揚げ者の方々は失われた、それに対して国が報いる、こういうふうにお考え願ったらいいのじゃないかと存じます。
  94. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 憲法策二十九条の三項に該当するものであるとして、現在裁判の判決は出ておりませんが、第二審判決によれば、政府補償義務あり、しかし手続法がないから請求はできないといっているが、今回のものは手続法としてのものであるかどうか。
  95. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 ただいま裁判の話がございましたが、いまおっしゃいましたように、裁判関係は、いわゆるカナダ裁判と称されておりますが、最高裁判所で目下審理中でございまして、最終的結論は出ておらないわけでございます。したがいまして、裁判上まだ確定的なものは出ていない以上、これに対してどうこうということは、政府としてはいたす限りでございません。そこで、今度のこの法律措置は、それとは別に、審議会におきまして、法律的な義務についての検討の結果、それはなし。そこで、しかし、政策的にやる特別な措置が必要かどうかということの検討の結果、先ほど申し上げましたような着眼の上で、政府として、措置をとる必要があるということでございますので、裁判との直接の関係はございません、こういうふうに御了承願います。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 西ドイツ等の外国の例を見ても、戦後処理に対しては行政の一元化がはかられておると思います。ところが、いま私の手持ちのいろいろないわゆる戦争犠牲者に対する措置としては、各省間にまたがってばらばらに行なわれておる状態でございます。たとえば総理府の恩給局、防衛施設庁本部、厚生省、外務省、大蔵省並びに郵政省、運輸省、所管不明、以上の点についていろいろ所管がわたっているということについて、私は、いまからでもおそくないと思うのですが、このばらばらな面を一切含めて、今後もいわゆる戦争犠牲者の問題についての行政の一元化ということが必要ではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  97. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 総理府は、各省のいろいろな問題点について総合調整をする役所でありますだけに、内閣審議室というものがありまして、各省でそうそうたる連中が一人ずつ来ておりまして、内閣審議室を構成いたしております。そこを中心として大体総合調整の役割りを果たしておりますが、いまの鈴切委員のおっしゃったような問題について新たなる機構を設ける考えは、いまのところはございません。その審議室を中心といたしまして、それぞれの所掌事務を扱う諸官庁において問題の処理に当たることがよろしいと考えております。いま鈴切委員のお話もございましたので、なお考えさせていただきたいと存じます。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後に、それでは長官質問をいたします。  いろいろ質問を重ねてまいりましたが、法案内容、性格等は、納得のいかない点も多々あったようであります。政府は、これで戦後処理は終わりだというのでなくして、いわゆる戦争犠牲者が未処理のままになっておるという状態を考えれば、これらの人々にもあたたかい政治の手を差し伸べるのが妥当であると考えるが、今後どのようにこれらの人に措置されるか、もう一度お伺いいたしたい。
  99. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 基本的措置、あたたかい措置、これをとることはもちろん大事なことでございます。何回も繰り返しておるのでありますが、社会保障の充実等によって、援護の強化、未処理の問題の処理に当たってまいりたい、このように考えます。
  100. 關谷勝利

    關谷委員長 山内広君。
  101. 山内広

    ○山内委員 総括的にお尋ねしたいと思いますが、時間がございませんので、率直に要点だけをお尋ねしたい。  この法案の第七条四項に、政令で定めるとありますけれども、この政令内容はどういうことをお考えになっておりますか。
  102. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 七条四項、つまり国債の問題でありますが、「第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」この政令内容といたしましては、いま考えておりますことは、第一に、譲渡する場合は国に対して譲渡、つまり国が買い上げ償還をするという場合が一つであります。第二は、担保権でありますが、この担保権の設定は、従来ほかの例と同じように、国民金融公庫において担保を設定する場合にはけっこうでございます、こういう内容を盛るつもりでございます。
  103. 山内広

    ○山内委員 同じ五項にあります大蔵省令の中身はどういうふうになりますか。
  104. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 これは大蔵省のあれでございますが、名称とか額面とか、そういう非常にこまかな交付の手続、国債の種類、額面によって種類が何種類かできるわけであります。名前を記入するとか、そういう交付の手続等も、いろいろ印鑑や支払い金の場所の届け出とかいう発行上のこまかいこと、手続上のこまかいことが書かれるわけでございます。
  105. 山内広

    ○山内委員 そのほか、この第七条に「譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」とありますけれども、同じ内容のことが十条にも規定されております。この七条と十条の禁止事項の内容はどう違うものですか。
  106. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 七条は、読んで字のごとく、名前の書き込まれた国債そのものの規定でございます。もらった国債について、先ほどお話しのような譲渡や担保についての制限がついているわけでございます。  十条になりますると、これは特別交付金支給を受ける権利、つまり、まだ国債になる前に、本人が、たとえばちゃんとした引き揚げ者である。それから引き揚げ当時何歳であって、ちゃんと権利がはっきりしており、まだ請求はしておらないというもとの基本的な権利でございます。そういう自分で請求する権利、そういうものを請求する前にだれかに譲り渡したり、あるいはそれをすぐ担保に入れてしまうということはできません、「ただし、」ということでございまするが、その権利を有する引き揚げ者が、その請求前に、その者の奥さんなり、おやじさんなり、あるいは子供または父母で、この支給を受ける権利を有する者、それに譲渡する場合はこの限りでない、これは大体実行上の問題としましては、同じ世帯の方がだれかに譲りまして、代表して請求する手続簡素化の意味も入っておるわけでございます。
  107. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、これは親子とか兄弟とか、そういう人を意味するのであって、第三者にはこういうことはできないわけですね。
  108. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 そのとおりでございます。十条に書いてございまするのは、その者の配偶者、子または父母であって、しかもそのお方たちがこの法律によって特別交付金支給を受ける権利があるという場合に限る、こういうことでございます。
  109. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、これは別に法人なんかをつくりまして、そこに委託する、そういうことはできないわけですね。
  110. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 この法律規定からはだめでございます。ただし、別の法律でまたお設けになるならば、それはそれでまた別の問題でございます。
  111. 山内広

    ○山内委員 よくわかりました。  それから十三条の二項に「当局に委託」とある当局というのは、だれをさすものですか。
  112. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 これは国債をもらった方にお金を払うという事務のことが書いてあるわけでございます。支払いの事務でございますが、沖繩におきましては日本の郵政省のあれがないわけでございまして、沖繩の琉球政府のそういうことを扱う当局にお願いする以外ない、郵便局と同じ機構を有するところにということでこれを書いておるわけでございます。
  113. 山内広

    ○山内委員 この間も話が出たのですけれども、非常に回答が明瞭を欠いておりますが、いま提訴されておりまして、最高裁で国の責任において支払いの義務があるという判決が出た場合、いまこの法律によって支給されておる全額は控除されるものですか。それとも二重に支払って差しつかえないものですか。その点いかがですか。
  114. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 最高裁の判決がどういう内容で出まするかにもよりまして、必ずしも、どうもはっきりお答えするわけにはまいりませんが、答申趣旨その他からくみまして、いわゆる最高裁の司法の判決と行政上のこれとは一応別であるという考えを事務的には持っておりまするので、そのためにどうこうという響きはないものであろうと私は個人的に考えております。
  115. 山内広

    ○山内委員 その表現、私ちょっと受け取りがたいわけですよ。なに、二重にやるならやらしていいと思うのです。これは別のもので、何も裁判の判決とは関係ないから、そういう事態ができても、これはすでに支払ったものだから、これは差し上げます、そういうずばりとした御回答があればいいと思うのです。
  116. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げましたように、最高裁の判決がマルと出ますか、バツと出ますかにもよりますが、ただ、マルと出ましても、そのマルの内容がまたいろいろあろうかと存じます。したがいまして、もし二重に払うのが適当だというふうな最高裁の判決がはっきり出ますれば、それはそうしなければならぬと存じますけれども、たとえば、今度の高裁の判決なども、その他の施策を全部見渡してといったような、非常に難解な内容の立法をするにあたっては、あらゆるものを見てということになっておりますので、その表現の内容によるかと存じますが、先生のおっしゃるようなことをはっきり書いてございますならば、当然そうなるかと存じます。
  117. 山内広

    ○山内委員 そういう事態ができましたら、そのときまた議論することにして、その点はやめておきますが、この支払いの事務は市町村を通じて都道府県に委託されるわけです。これは当然のことで、私はけっこうだと思うのですね。それは三十二年ですか、給付金も出しております。先ほどの回答でも、資料もあるのだという話ですが、行政秩序を乱さないように、やはりそういう国でできないものは、都道府県に委託してやられるのが筋だと私は思います。そのことはいいのですが、これは委託費を都道府県や市町村にどれだけ交付されますか。
  118. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 委託費は、実行する場合におきまして、いまいろいろ積算の基礎を出しまして、執行につきましてこれから大蔵省と折衝をするわけでございますが、予算としましては二億八千万円ほどでございますけれども、支給事務の始まる期間等によって、これはまたちょっと伸縮いたしてまいります。主として府県市町村において仕事に従事されまする人件費が主でございます。中央におきまするものは申請書等の印刷費が主でございまして、委託のほうは、府県市町村におきます人件費がほとんどの部分でございます。したがいまして、いつから始めるかということによりまして、内容はまた違ってくるわけでございます。
  119. 山内広

    ○山内委員 長官にお願いしておきますけれども、とかくこういう仕事というのは都道府県に押しつけてしまう。いまのお話では、人件費は見るというお話で、けっこうだと思いますけれども、それでなくても、地方は赤字で非常に困っているときに、仕事だけぶっつけて、それに要する費用を見ないということは、国の非常に悪いいままでの慣習でありまして、そういうものは、ぜひ十分な委託費を見て、そうして仕事も円満に早く十分にやれるような措置を考えていただきたい。
  120. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 よい御注意を賜わりましたので、十分御趣旨に沿うように努力いたします。
  121. 山内広

    ○山内委員 この間の委員会でも出ておるし、いまも話が出ましたが、戦後処理はまだたくさん残っておる。そこで、たくさん出ましたが、私は一つだけ具体的な例を申し上げて、長官の御判断をいただきたい。  それは四、五日前にテレビを見ておりましたら、武蔵野市緑町の岡田という方の庭先から一トンの爆弾が出ておるわけです。これは自衛隊の手で一週間もかかってようやく庭先から掘り出して処理された。これが発見されたのが今月の七日のことです。この一トンの爆弾が、もし不幸にして爆発をしたらたいへんな威力があるというので十分な警戒をした。これはなぜ申し上げるかといえば、こういうケースがまだたくさん日本に残っておるということであります。防衛庁が出した統計でも、この統計の中身が私には明瞭にわかりませんけれども、処分されたのが五千九百六十発ですか、それから未処理と考えられるものが五千百二十発残っておる。これは統計から見ると非常に少ないと私は見ておるのですが、これは終戦のときに軍が海に全部捨てて解体してしまった。それがいまになって出てくる。あるいは、船が接岸するときに爆発して船に損害を与えた、こういうケースで、至るところにこういう事件が出ておりますけれども、これはみな見舞い金ということで、十万か二十万のお見舞い金で処理されておる。そして戦後処理ではない。この中にはアメリカが空襲して、それが不発でまだ海に残っておるものも相当に出ておる。いま武蔵野の例はその一例だと思うのですが、そういうことで、最近最も悲惨な例は釧路に起きた事件であります。これは四十年の十月五日の事件でありますけれども、小学校の生徒が海辺へ行って炊事をやった。ところが、そこに爆弾が埋まっておったので、それが爆発しまして、これによりまして死んだ人が四名、重傷者が十四名、それから軽傷十八名、三十六名の被害者であります。入院して両眼とも目が見えなくなった非常に気の毒な犠牲者が出たわけであります。しかも、小学校の子供ですから、死亡した人がわずか八十万円の見舞い金、それから、けがをした人がわずか二万一千円くらいの見舞い金で終わっている。長官、これは戦後処理だとお考えになりませんか。こういうものをほうっておいていいのですか。また、今後、これからこういう戦後処理が、これから爆弾が——五千何ぼすらもわかっているのですから、こういうものが不幸にして爆発して被害者が出たらどういうふうに処理されますか。
  122. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 まことに嘆かわしい事件のお話でございましたけれども、私の知る範囲では、これは扱う法律というものが、いまのところ私は承知いたしておりません。いま八十万というお話がございましたけれども、それはあまりに低過ぎる、やはり予算措置、財政措置によって処理しなければならない問題だ。いまこの場で、これがどういうふうなことになっておるか、はっきりお答えできないことは残念ですが、さっそく関係省と御相談いたしまして、ひとつ批判の出ないような処置を、また、こういったことが未然に起きないような、事前の措置をとるということに努力したいと考えております。
  123. 山内広

    ○山内委員 長官がお認めになっているとおり、これには適用する法律がない。見舞い金といっても、総理府から総理大臣のポケットマネーで見舞い金を出した、こういうケースだと思うのです。そういうことで、こういう戦後処理の問題でたくさん問題が残っておりますから、こういうものが次々出るとか、いろいろな問題について戦後処理の基本的な法律をおつくりになって、それでもって処理するようなお考えはお持ちになっておりませんか。
  124. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 いまのところ立法措置までは考えておりませんけれども、今後そういう予想される問題もございますようでありますから、よく関係省庁と御相談いたしたいと考えております。
  125. 山内広

    ○山内委員 先のお話の中では、もう戦後処理はやらないのだ、あとは社会保障という観点に立って、各省にそういうケースのものをやらせるという御答弁でしたが、これは各省動きませんよ、悪い話ですが。それで、私、驚いたのは、これは長官の耳にまだ入れておりませんが、ある関係の人には私お願いしておるけれども、まだ実現しないのですが、あの八月十五日の終戦の直前に、樺太から時の樺太庁の長官の命令で、子供もおとなも全部強制的に引き揚げさした。その船が三隻魚雷にあって留萌の沖合いで沈んでしまった。ほとんど大半が死亡しております。その船はまだ四十メートルかその辺で、船体が見える浅いところにある。これは何とか引き揚げられぬかという御相談もしましたけれども、それは外務省へ行けとか、厚生省が所管だとが、あるいは総理府だ、防衛庁だ、そういうことで、地元から陳情に来られた人の取りすがっていく窓口すらもきまっていないのですよ。そうして、とうとううやむやになって、いまもってこれが捨てられておる。こういうことは、私はやっぱりよくないと思う。ですから、長官のところでは、総理府なんですから、そういう社会保障という考え方処理されることもけっこうだと思いますけれども、かない強い命令といいますか、あなたが陣頭に立って、こういうものの処置を号令しませんというと、各省みな逃げてしまって、どこでも取り上げないのです。こういうことでは、私、戦後処理というものは何年たっても解決しないと思う。その点についての長官考え方を承りたいと思います。
  126. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 沈船の問題については、さきに受田委員からも御質問を受けまして、それぞれの省に命令してということを申しましたが、いま山内委員のおっしゃったように、各省が何もやらぬという、これはやや早合点ではなかろうか、私の政治力の云々にもよるでしょうけれども、あのときお答えいたしましたように、私としては新たなる機関は設けないけれども、現在置かれている審議室を中心として、各省の総合調整をはかりながら、それぞれの省に強い指示と命令を与えて、こういった問題の解決に当たっていきたいと考えております。
  127. 山内広

    ○山内委員 今度の交付金をいただいた人から、生活保護法の適用を受けている人の、この国でやっていますこれは、控除されるのですか、どういうことになりますか。
  128. 実本博次

    ○実本政府委員 生活保護法は、先生御承知のように、最低生活の維持がすべての収入をつぎ込んでできないという場合に保護するわけでございますから、したがいまして、どういう種類のお金でも全部を収入に認定するということがたてまえでございます。ただし、この給付金につきましては、前回給付金と同様の取り扱いで、その交付金が現実にその人たちの立ち上がり資金として使われるということがはっきりしておりますれば、そのものにつきましては、収入と見ないということにいたす予定でおるわけでございます。
  129. 山内広

    ○山内委員 いまのお答えだと思うのですが、そのただし書きがつくのが、どうも私、気になるわけです。そういうのが末端に下がっていきますというと、どうしてもこれは差っ引かれることになる。それじゃ、せっかくいままで何十年も苦労してわずかこれだけの見舞い金なんですから、それは何とか政令や何かですっぱりずばり出して、これは対象外にされたほうが、私は、せっかく行政がここまで配慮していながら、そういう生活の困っている人の生活を見ないということは、かえってあだになると思いますよ。
  130. 実本博次

    ○実本政府委員 三十二年に設けられました給付金の例にならいまして、そういう先生方の御心配が全部なくなりますように施行したいと考えております。
  131. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  132. 關谷勝利

    關谷委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  133. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  134. 關谷勝利

    關谷委員長 この際、伊能繁次郎君外三名より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。伊能繁次郎君。
  135. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 ただいま議題となりました自民、社会、民社、公明、四党共同提案にかかる附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    引揚者等に対する特別交付金支給に関する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の実施にあたり次の事項について配慮するよう要望する。  一、生活困窮者等に対して買上償還等の措置を講ずること。  二、本法第七条第四項の規定による担保権設定についての政令を制定する場合には、特別交付金支給趣旨にそうよう善処すること。  なお、原爆被爆者等の援護措置については、其の緊急性にかんがみ、特段の配慮をするよう要望する。  右決議する。  本案の内容は、先般来の当委員会における質疑を通じてすでに明らかになっていると思いますので、よろしく御賛同をお願いいたします。
  136. 關谷勝利

    關谷委員長 本動議について採決いたします。  伊能君外三名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  137. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付するに決しました。  この際、塚原総務長官より発言を求められておりますので、これを許します。総務長官
  138. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 御趣旨に沿うように努力いたします。     —————————————
  139. 關谷勝利

    關谷委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 關谷勝利

    關谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  141. 關谷勝利

    關谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後零時五十三分散会