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八田委員 その点ひとついまのこの
答弁のとおり作業を進めて、早急にやってもらいたいと思います。
それから、時間もありませんから、
大臣にちょっとお伺いしたいのですが、阿賀野川の中毒事件ですね、これについてひとつお伺いしたいのです。私は産業公害対策特別
委員会でちょっと
政務次官に
質問したのですが、
厚生省の扱い方ですね、これははっきり申しますと、非常に私は解せないのですね。というのは、「阿賀野川中毒事件
報告書の今後の取扱いについて」というのを
厚生省で
出しておられるわけです。まず第一が、「本日阿賀野川の水銀中毒事件に関し、臨床班、
検査班、疫学班より夫々の専門的研究の結果の報告が提出された。」こういうことが一に書いてあります。二に、「
厚生省としては、
昭和三十一年九州に発生した水俣病の病因調査の場合の前例に従い、食品衛生調査会にかけて
意見を徴することとする。」、こういうふうに書いてある。第三番目に、「その際は、臨床、
検査、疫学以外に水産、化学
関係等の学者も加えて総合判断を求め、これによって
厚生省としての
意見をとりまとめ、科学技術庁に報告する。」四番目に、「国としての結論は、科学技術庁において
関係各省の
意見が総合され、出される予定である。」こういうふうに今後の取り扱いについて
厚生省は報告されておりますね。一体こんな回りくどいことをやって事件解決になるのですか。私は、
厚生省の態度は実におかしいと思うのです。実際、「新潟県水銀中毒事件の原因究明に対する研究班報告概要」というものを見せてもらいましたが、これはほんとうに違うんですね。臨床班、
試験班、疫学班、全部違うんです。ある人に聞きましたら、疫学班というのは、八卦見の易学ですかという人もおりました。そういうことを言うくらいなんです。エピデミオロジーでなくて、八卦見の易学だろう、こういうふうに感じた人があるのですね。それくらいに研究に対して私は疑問を持ちます。まず第一に申し上げますと、疫学班と臨床班との間に上流地区有症者及び水銀保有者に関し
意見の相違があった。もう
一つは、疫学班と
試験班との間には、水ゴケその他につき
意見の相違があった。これは大きな点ですよ。そうしますと、一体これは
調整がつくんだろうか、食品衛生調査会なんかに頼んでみて。しかも、第二の水俣事件というのは、繰り返しがきかないものなんですよ。繰り返しのきかない実験については結論を出さない、こういうことが
学会の
一つの定説になっているんです。ところが、食品衛生調査会にかけて
意見を聴取した。総合的には、精神科学
関係者をみな集めて、そうして
厚生省の総合判断というものをまとめるんだ。政治家の態度として、
学会論争を政治の場に持ち込んで、一体どうなるんだろう。
学会論争があるということは、その学問が揺籃時代なんです。仮説もできない、定説もできないというのは、赤ん坊のような未発達の状態をいうんです。それを
国会とか行政の場に持ち込んで、一体どっちに軍配をあげるのですか。そういうふうなことで、結論を出す、出さないといって、じんぜん日を延ばされて、被災者は一体どうなりますか。この点が、私らは厚生行政において非常にいかぬと思うのです。
大臣はたぶん知っておると思うのですが、アメリカで、「サイレント・スプリング」、「沈黙の春」という本を書いたカーソン女史という人がおられます。この人は農薬の害を説いたんですね。これはベストセラーになったわけなんですが、これを読んだケネディは、すぐに取り上げて、「農薬の安全使用に関する特別
委員会」というものをつくって、有機塩素剤の使用禁止をやったんです。政治家というのはそういうものでないかと思うのです。
学会論争の結論を調査会にゆだねて、その上で総合判断をやって、そうして政府としての結論をまた
出しましょう。一体どういう結論が出るんですか。結論が出っこないですよ。被害者は、そのままのんべんだらりと待ってなければならない。政治家は、まず被災者を救うことです。そうして学者にうんと研究費を
出して原因を追究する。わかったら、初めて発生原因となった責任者に対して補償を求める。これが一番正しい態度じゃないでしょうか。全然被災者はそのままほっておかれるのですよ。補償らしい補償ももらっていない。そして四十年に起こったやつが、まだまだ今日になっても結論が出ない。結論なんか出っこないのです。
大臣、こういうところについて、被災者の身になってください。まず国でやるべきです。原因なんかわからぬのです。どっちに軍配をあげるというような、また結論が得られるというふうに思っておられることが、私は非常におかしいと思うのです。真実をつかんでいない。この点ひとつ
大臣いかがですか。この問題早急に解決してもらいたい。