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1967-05-25 第55回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十五日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 關谷 勝利君    理事 伊能繁次郎君 理事 塚田  徹君    理事 八田 貞義君 理事 藤尾 正行君    理事 細田 吉藏君 理事 大出  俊君    理事 山内  広君 理事 受田 新吉君       稻葉  修君    内海 英男君       加藤 六月君    桂木 鉄夫君       佐藤 文生君    坂本三十次君       塩川正十郎君    塩谷 一夫君       高橋清一郎君    渡海元三郎君       橋口  隆君    稻村 隆一君       武部  文君    楢崎弥之助君       浜田 光人君    山本弥之助君      米内山義一郎君    伊藤惣助丸君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         社会保険庁年金         保険部長    網野  智君         農林省農政局長 森本  修君         運輸大臣官房長 町田  直君  委員外出席者         厚生大臣官房人         事課長     北川 力夫君         社会保険庁長官         官房総務課長  松下 廉蔵君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 五月二十五日  委員赤城宗徳君、荒舩清十郎君、井村重雄君及  び藤波孝生辞任につき、その補欠として塩川  正十郎君、坂本三十次君、加藤六月君及び渡海  元三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員加藤六月君、坂本三十次君、塩川正十郎君  及び渡海元三郎辞任につき、その補欠として  井村重雄君 荒舩清十郎君 赤城宗徳君及び藤  波孝生君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月二十二日  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第一三二号)(予) は撤回された。 同月二十四日  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第一三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号)  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一六号)      ————◇—————
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより会議を開きます。  運輸省設置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  本案に対する質疑申し出もありませんので質疑はこれで終了いたします。     —————————————
  3. 關谷勝利

    關谷委員長 これより討論に入るのでありまするが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  運輸省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  4. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 關谷勝利

    關谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  6. 關谷勝利

    關谷委員長 厚生省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  7. 大出俊

    大出委員 大臣が何かほかのほうでお見えになれぬということでございますが、旧来大臣のおるところでということになっておりますけれども、これは一昨日からの引き続きでございまして、大臣に大筋の質問はいたしておりますので、そういう意味でひとつ政務次官を呼んでありますので、技術的な点について少し承っておきたい、こう思うわけです。  例の診療エックス線技師法衛生検査技師法関係でございますけれども、冒頭にひとつ承っておきたいのは、先般の医務局長答弁からいたしますと、当面はコバルト60その他の高度なものを扱うといっても限られた範囲だから、とりあえずはこの二年制という形の法律になっておっても、その意味では大きな支障にはならぬだろう、実はこういう趣旨答弁でございましたが、非常に進歩の速い分野でございますから、そう言っているうちに急激にまた世の中が変わってしまうということになる。だからこそ、今日経過措置の面でなかなかまとまらないなどということになっているわけなんですが、そういう意味では、やはりきちっとやるべきものは、そういう現在の事情がある以上は、打つべき手は全部打っておくということでないと、先々また問題が起こる、こういうふうに考えるわけなんです。だから、今国会に間に合わない、あるいはまとまらない、こういう事情にあるという点のお話は承りましたが、しからば、厚生省として必要であることを認めている限り、将来に向かって一体どうしようと考えておられるか、その点を明らかにしていただきたい。
  8. 田川誠一

    田川政府委員 診療エックス線の問題でございますが、これにつきましては、関係団体でいろいろ意見がありますので、できるだけ関係団体意見調整しまして、できるだけ早い機会に成案を得たいと思っております。先日来申し上げましたとおり、この国会にはどうしても間に合いませんので、意見調整をできるだけ早くやっていくように努力をしてまいりたいと思っております。
  9. 大出俊

    大出委員 先般厚生省のお出しになった原案を私持っておりますが、問題はこの技師会の内部にいろいろな意見がある、あるいは調整がつかない。その焦点もこれはもうすでに論議済みなんですが、理屈はわかっているわけです。したがって、厚生省原案、これは廃案になりましたが、そういうものがある。今日やはり厚生省としては、あの原案の線でまとめるべきだとお考えなのかどうか。ないしはもう少し経過措置的な面で、二年制の学校をお出になっている既往の、あるいは現在の有資格者、この方々についていろいろの意見があるわけですから、この方々をどうするかという点について、何か特段に、もう少し厚生省原案プラス何がしかのものを考えておられるのかどうか。そこらのところはどうですか。
  10. 若松栄一

    若松政府委員 厚生省がさきの国会に審議をお願いしました原案では、いわゆる従来の診療エックス線技師というものと、新たに診療放射線技師というものの二本立てにするという案でございまして、この二本立てになった場合に、従来の診療エックス線技師が新たな診療放射線技師移行する形をどういうふうにするかということが、御質問の御趣旨の核心になると思います。この問題につきましては、三年制にした場合の三年制の最後の三年度の教育内容というものが、従来の二年制のものに比べて、数学、物理その他の方面でかなり高度な教育をしなければならぬことになると思います。そういう意味で、従来多くの身分法を改正する場合に、その経過規定として、旧制度と新制度移行の問題が常に非常に大きな問題になります。そういう意味で、この診療放射線技師診療エックス線技師との移行の問題も、これは内容的に見て、従来の各省の身分法とかなり趣も違っている点もあるかと思いますので、この点につきましては、専門学会等意向も聞きまして、真にどの程度のことをすれば移行が可能であるのか、あるいは、むしろ、移行のためには、新たな試験を受けさせるために相当な教育なり補習教育をやったほうがいいのか、そこら辺のところは、専門学会等意見を十分聞いて善処してまいりたいと思っております。
  11. 大出俊

    大出委員 そうしますと、簡単に申し上げれば、中身としては、この厚生省原案でいうところの、旧診療エックス線技師法というものを新診療放射線技師及び診療エックス線技師法というふうに改めるという案が出ていたわけですね。ところで、この経過措置の面で、当初は、診療エックス線技師という形のものが残っても、早い話が五年もあれば診療放射線技師ということになっていくのじゃないかというようなものの見方が一面あって、それでずっと進んだわけですね。ところが、途中から、どうもこれはそう簡単にいきそうもないわい、なぜならば、身分法だということになるから、ということになってきたわけですね。さてそうなると、新たな学問をする機関なり機会なりというものをつくって、そこで試験を受けるのか、はたして、じゃ受かるかということになってくると、先般私申し上げましたように、いまの開業医その他を含めたお医者さんが、医者国家試験をもう一回受け直してみろといったら、受かるか。これは簡単に受かりゃせぬじゃないか、自分の仕事を持っておって。そうなると、これはこういう形で簡単に考えてきたのだけれども、それじゃ現在の方々がそう簡単に放射線のほうに乗りかえがきかない。だとすれば、そこに何らかの打開策が必要になるというところが、一つ問題点になっているわけです。だから、そこのところで、まあ衛生検査技師法関係学会あるいは技師会方々の案と多少そこのところは違いますけれども、しかし、そこのところを何かひとつプラスするものがないと、やはり前の論議に戻ってしまう。だから、いまここで政務次官がおっしゃるように、この国会は間に合わないけれども、できる限り近い将来にとおっしゃるのだが、近い将来という限りは、皆さん気持ちの中に、技師会がうまくまとまらないか、あるいは公聴会がうまくまとまらないか、感情的なものがあるといっても何とかならないか、そうすればすっきりするのだが、ということなんだけれども、そのままでずるずるっといってしまうと、私は非常に心配になる点がある。だから、そこのところを——表舞台でこれ以上言ってもしょうがないから申し上げませんが、そこのところをもう少し歩み寄って、やはり厳密な意味でいえばいろいろあります。ありますけれども、現に放射線技師、つまり放射線を扱っている方々ですね、その方々ですから、そこのところあたりをひとつ考えていただいて、まとめるべく努力をしてきているはずですから、そこら意見を十分お聞きをいただいて、ひとつ政務次官がおっしゃるように、文字どおり近い将来、今国会でどうしても間に合わないということになれば、これは時間切れでやむを得ませんが、次期国会に出すなら出すという方針でひとつお進みいただく。単に将来と言っていると、いつになるかわからぬから、次期国会なら次期国会に出すのだということで、やはりいまから出すつもりでお進めいただかないと、しばらくぶん投げて様子を見るのだということにしておくと、これはまとまらないと思いますので、そこのところを政務次官、さっきの御答弁にもう一つちょっとつけ加えていただきたい。
  12. 田川誠一

    田川政府委員 先ほど申し上げましたように、この国会では無理でありますけれども、できるだけ近い機会にということでございますので、次の国会目途に、できるだけ意見調整をして、法案を出せるように努力をしてまいります。
  13. 大出俊

    大出委員 ところで、衛生検査技師皆さん関係ですが、これは申し上げるまでもなく、議員立法三十三年当時から比べまして、この分野もずいぶん変わってきておるように、この資料等を見ますと、受け取れるわけなんですが、有資格者あるいはそうでない方々に分けて、いまどのぐらいおいでになりますか。概略でけっこうです。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 現在資格を持った人が、約一万八千名程度ございます。実際の需要はどのくらいかということになりますと、これはどういうふうな条件で計算するかということによっていろいろでございますが、このほかに、ほぼ同数程度現実に助手と称する補助者方々があります。そういう意味で、絶対数がどれだけ足りない云々ということは、むずかしゅうございます。かなり不足してはおりますが、養成計画のほうは、かなり順調に進んでおります。
  15. 大出俊

    大出委員 これはいろいろな請願が出たりあるいはあなたのほうに陳情がいったりしていると思うので、時間の関係もありますから、かつまた、文部省学校先生をふやすほうでいろいろ申し上げているので、細部にわたっては省略をいたしますが、衛生検査技師学会なりあるいは技師会なり、その他いろいろ出ておりますが、それらを踏まえて、あなたのほうではどうすべきだとお考えになっておりますか。
  16. 若松栄一

    若松政府委員 衛生検査技師につきましても、戦前、あるいは戦後の初期におきます衛生検査内容と、現在の衛生検査内容では、格段の変化があることは、御指摘のとおりでありまして、そういう意味で、単に細菌学系統あるいは血清学系統の問題というふうに比較的限局されておりました衛生検査が、最近は、各種機能検査、たとえば心電図であるとか筋電計、あるいは脳波であるとかというような分野にまで衛生検査技師業務範囲を拡大すべきであるという意向も出ております。そこら辺のところも確かに検討すべき材料でありまして、そういうことになりますと、現行の二年間の教育では、なかなか困難であろうと思われます。そういう意味で、将来この検査技師が担当すべき業務範囲の拡大ということとあわせて、教育年限の延長というものを考えなければならぬと思います。しかし、現在のところ、衛生検査技師養成施設というものは、各大学付属のものと厚生省指定のものがございますが、残念ながら、厚生省指定養成施設の中には、必ずしも十分な、三年制にふさわしい能力を持っているかどうかということに関しては、かなり疑問がございますので、一挙にすべて三年制に引き上げるというようなことは、かなり困難があると思います。また、需要の面から見ましても、高度の病院におきましては、先ほどの診療放射線技師関係と同じように、高度の設備能力を持った施設と、比較的程度の低い施設とでは、やっぱり業務内容がかなり違いますので、需要の面から見ましても、一気にこれを三年制一本に統一するということが適当であるかどうかということについても、現在検討いたしております。これも技師会その他の意見を十分拝聴しておりますので、できるだけそういうふうに善処いたしたいと脅えております。
  17. 大出俊

    大出委員 名称規制、まあ一口に言えばそういう形になっていますね、いまの法律でいけば。ところが、お話を聞いてみると、ごく簡単なものがあるわけですね。だから、そういう分野もあるからというのがあるいは一つの理由になるかもしれませんが、技師会の諸君なり、あるいは技師学会も先般明治大学でいろいろやっておられたようですけれども、承ってみても、業務規制という方面に持っていくべきだという意見が相当強いのですけれども、そこらはどう判断されますか。
  18. 若松栄一

    若松政府委員 現在各種医療従事者身分法につきましては、大部分が業務規制でありまして、名称独占だけに限られておりますのは、現在のところ、衛生検査技師とかあるいは保健婦というようなものだけであります。衛生検査技師の場合、なぜ業務独占にまでしなかったかという一番大きい根拠は、ただいま御指摘のありました比較的安易な検査が多いからということよりは、現実に従事している職員が有資格の者があまりにも数が少なかった。したがって、これを一挙に業務独占にいたしますと、ごく少数な者にだけ独占を許しまして、補助者を除外してしまう。そうしますと、事案上機能がとまってしまうということが考慮されまして、その心配が一番大きな根拠になりまして、業務独占をしばらく延ばしているわけでございます。最近のように検査技師養成が非常に順調になりまして、十年ぐらいまでは数百名程度でありましたものが、現在は年間二千名程度養成にまで増加いたしております。したがって、このような状況を見表して、ある程度検査技師が有資格の者が方々施設でも必ず一人か二人はいるというような段階になってきますと、これは補助者補助者として、やはり業務独占という方向に考えざるを得ないと思っております。
  19. 大出俊

    大出委員 たとえば最近では、横浜の鶴見の大黒町というところに肉市場ができた。そこにも衛生検査技師有資格者が四人いるわけですね。最近はずいぶんふえてきているわけですよ。だから、私は先ほどそういう理由づけをされはせぬかという意味で例をあげましたが、仰せのとおり、本来ならば明確に業務規制という形にして、足りなければ足りないようにその間過渡的にどうするかということを考えられてしかるべき躍ろう。たとえばいま保健婦をおあげになりましたが、たとえば補助看護婦の問題、看護婦だって、じゃ副看護婦法律的にどこに当たるか、それはないのです。法律改正しない限りはない。ところが、これは副看護婦という名称をつけちゃいけないということになっていないから、いわくそう言っているわけですから、そうなると、圧着なら正看の資格を持っている方が幾らいるか。小林さんが厚生大臣のときに私質問してみたときに、四十何万かおって、稼働しているのが二十何方で、じゃ一体劇看護婦幾らいるか、十万幾らいるわけでしょう。やはり問題は、そういう点は残ると思うんですよ、どっちいったって。だから、基本になるべきものは業務規制になるのかどうなるのかという点で、いまのお答えのように業務規制でいくべきなんだというのだとすれば、それを基本に置いて、今日の実情に即して将来に向かってどう経過的なものを考えるかというふうに、私は持っていくべきものじゃないかという気がるすのです。何よりも、衛生検査技師方々目標に置いていたのは、診療放射線あるいはエックス線、こちらのほうの関係がどうきまるかによってわれわれの分野もきまってくるからということで、成り行きを見ていた、あるいは待っていたというのが、実情だと思うのですね。ところが、片一方のほうがさっぱりどうも巻まりそうできまらないということになると——厚生省だって九九%通るだろうと思っておっただろうと思うんですよ、厚生省原案が通ると考えてお出しになったはずなんだから。文部省設置法のところで私が質問した。三浦さんいわく、九〇%以上通るものだと思っておりました。だから、文部省管掌のほうの学校先生も、三年制ということでふやしていただきたいと思って用意してきたんだ、こういう答弁でしたよ。だとすると、衛生検査技師方々も、診療エックス線のほうがそうならば、わがほうも右へならえに類するかっこうがいやでも出てくる、こう思って待っていたわけですね。片一方は延びちゃった。だから、こっちのほうがいつになるかわからないでは、衛生検査技術のほうは、議員立法でも何でも表へ出さなければしょうがないじゃないかというわけですから、そこらのところをあわせて考えてみて、もう少し何か目標を与えていただかぬと、厚生省としてどのくらいの目途でどう検討してどうするというところをひとつ出していただかぬと、片一方の側としては待ち切れぬ問題が出てくると思うので、そこらのところをさらに承りたい。
  20. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま主として診療放射線技師あるいは衛生検査技師関連においてお話がございましたけれども、こと問題は、私どもはいわゆるパラメディカルと称せられる医療関係従事者全般の問題として実は脅えております。看護婦高校卒三年であり、放射線技師が二年、衛生検査技師が二年、これをさらに三年にしていく。さらに後にできましたいわゆる理学療法士作業療法士というものが、それぞれまた高校卒三年ということになっておりますし、そのほかに短大もあれば大学もあります。また将来に向かっては、たとえば言語療法士であるとか、あるいは聴覚の療法士であるとか、あるいは視の療法士であるとか、あるいは臨床心理関係とか、いろいろのパラメディカル職種が将来も予想されております。したがって、そういう。パラメディカル職種養成教育というものにある程度統一的なものを与えたいという気持ちもございますので、将来の起こることも予想いたしまして、将来の妨げにならず、将来のためにはさらに進歩の第一歩になるようにというような考え方で検討しておりますので、一挙にほんとうは解決したいところでございますけれども、なかなかむずかしければ、やはり順を追って、その大きな筋の線の中で解決していきたいと考えております。
  21. 大出俊

    大出委員 いまの段階でこれ以上こまかく御質問しても無理があると思いますから、おそらく軍門の八田先生から御質問炉あると思いますので、いまの点は私のほうからは、一生懸命衛生検査技師という立場医療業務に携わっておる方々立場というものもひとつ十分お考えをいただいて、その方々一つ目標というものを早く与えてやっていただいたほうが、日進月歩する分野ですから、国民医療という面から見てもいいことだろう、こう思いますので、そういう面で極力ひとつ御努力をいただいて、早く問題の解決に当たっていただくというふうにお願いを申し上げたいわけですが、いかがですか、次官。
  22. 田川誠一

    田川政府委員 衛生検査技師にいたしましても、診療放射線技師、それからエックス線技師、そういう方々におき産して、最近非常に仕事範囲もふえておりますし、一生懸命医療に従事しておられますので、それらの方々希望を与えるように、われわれとしても努力をしなければならないと思っております。御希望に沿うように、できるだけの努力をしてまいるつもりでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 あと簡単に。いまの医療関係のほうはこれで終わりますが、厚生年金関係について、設置法との関連がちょっとありますので、簡単に数点ひとつ承っておきたいと思うわけであります。  この設置法との関係で、何か認定関係の部門においてたしか七十名くらいの人がふえるようになっておったのですが、いま設置法ちょっと置いてまいりましたが、どういう関連でふえるのかという点を——この設置法参考資料の中には何もございませんので、皆さんのほうから御説明をいただきたいわけでございます。
  24. 松下廉蔵

    松下説明員 現在厚生年金受給権者を確認いたしますいわゆる裁定は、全国で二百二十六カ所でございます社会保険事務所において行なっておりますが、この記録は、現在保険庁の年金保険部業務課に全部保管いたしておりまして、事業所移りかわり等もございますので、一度社会保険事務所から業務課のほうに照会いたしまして、その回答をもらって保険事務所できめるという手続になっておりまして、本人の手に渡りますまでに二カ月ないし三カ月というようなことでかなり時間がかかっておりますので、それを短縮いたしまして、なお正確を期するというような合理化を目的にしまして、今回業務課で全部その裁定業務を行なうということに本年度から切りかえることにいたしております。そのために要します本庁の人員の増員でございます。
  25. 大出俊

    大出委員 厚生年金、これは出発当初は名称は違いますが、昭和十六年にできて十七年から実施したはずですね。だから、三十七年からですかね、二十年になるわけでありますね。いま現在までのところ、支払い件数その他、どのくらいありますか。
  26. 網野智

    網野政府委員 その前にちょっと申し上げておきますと、支払い関係は全部、ただいま総務課長お話ししましたように、私のほうの高井戸にございます業務課で、直接本人に向けまして、銀行払い、あるいは郵便局払いということで、年四回払っておるわけでありますが、四十二年二月現在の支払い状況を申し上げますと、総額で件数が六十万七千件ございまして、金額で百十五億ばかり支払っておるわけでございます。そのうちおもなものを申し上げますと、老齢関係が二十四万件、通算老齢関係が百六十三件、あと障害、遺族、遺児関係の支払いを行なっておるわけであります。
  27. 大出俊

    大出委員 これは、件数は年々相当増加する見込みですか。どのくらいになりそうですか。
  28. 網野智

    網野政府委員 昭和四十一年十一月末が、年金を受給しておる者が六十四万六千五百人おるわけでありますが、この数は年々急激に増加する見込みであります。これは推定でございますので、あるいは見通しが違うかもしれませんが、たとえば昭和五十年におきましては、老齢だけについて申し上げますと、八十八万人くらいになるであろう。あるいは昭和九十年について見ますると、厚生年金関係の老齢では七百八十万人くらいになるであろう、こういう推計をしておるわけであります。
  29. 大出俊

    大出委員 厚生年金給付裁定事務の集中化に伴う増七十九ですね、それから、社会保険事務機械化に伴う増九、計八十八。凍結の欠員の解除に伴う減が十八、差し引き七十、中身はこういう内訳なんですね。いまのお話を聞きますと、これは電子計算機か何かでやるのでしょうけれども、保険だの貯金だのもやっていますから、同じようなことをやるのだと思うのですけれども、それにしても、いまの件数がそれだけふえるとすれば、将来に向かってなお相当な人員増が見込まれると思うのですが、この業務は。
  30. 網野智

    網野政府委員 電子計算機の能力が、最近非常に三倍あるいは四倍というような能力の機械を入れることにしておりますので、そういう関係で、急激に老齢年金の受給者がふえるということによりましても、それほど多くの人員は急速に必要ではないと考えております。
  31. 大出俊

    大出委員 これは先般四十六国会で流れて、四十七国会そこらで通ったのですね、調整年金等の関係は。そうですね。これは四十六国会では、厚生年金保険一部改正案は通らなかったわけですね。だから、その後、昨年ですか、一昨年ですか、通ったわけですね。そこでちょっとここで承っておきたいのは、積立金の運用と関連がありますので、承りたいのですけれども、これは一定数以上の被保険者を使用する事業主は、単独でまたは共同で厚生年金基金を設立することができる、こうなっているわけですね。この基金設立は、今日この法律通って以来、改正案が通ってから、どのくらいですか。
  32. 伊部英男

    ○伊部政府委員 五月一日現在におきまして、百八十五基金でございます。
  33. 大出俊

    大出委員 ところで問題は、この資金運用部に預託をしている現在の時点における厚生年金積立金ですね、金額どのくらいございますか。
  34. 伊部英男

    ○伊部政府委員 昭和四十一年度末におきます積立金累積見込み額は、厚生年金保険一兆八千五百五十八億円、国民年金二千五百四十二億円、合計二兆一千百億円でございます。
  35. 大出俊

    大出委員 これは新規増に対する被保険者側、つまりこれは労働者側からいろいろ言ったのだけれども、還元融資その他を含めてワクがたしか二五%になっておったと思うのですが、そのワクは変わっておりませんね。
  36. 伊部英男

    ○伊部政府委員 昭和三十六年以来、還元融資のワクが二五%になっております。ただし、国民年金につきましては昨年法律改正が国会通過をいたしまして、この一月から施行されております。その関係で昨年五億円、四十二年度十億円の特別ワクが認められておるわけであります。
  37. 大出俊

    大出委員 ところで、これは還元融資の内訳ですが、旧来病院、住宅、休養施設、保健体育会館、養老施設などがありましたね。いまはこれに何と何が加わっていますか。厚生省の資料の中に、勤労者厚生年金資金運用額というのを調べたのがございますね。いま、つまりこの融資対象と言ったらいいと思うのですが、融資対象は、これはここのところ古いので、社会保障の講座の第一巻ですが、これは重宝なんだけれども、資料が古いので、いま何と何になっていますか。
  38. 伊部英男

    ○伊部政府委員 還元融資の対象といたしましては、年金福祉事業団から事業主に対しますものといたしまして、住宅、厚生福祉施設がございます。そのほか、年金事業団の中から日赤等の療養施設、あるいは社会事業、社会福祉施設に対する融資が、昨年度まであったわけでございます。それから特別地方債といたしましては、住宅、生活環境関係及び病院、厚生福祉施設、ただいま先生指摘のは、大体厚生福祉施設に入るかと思いますが、そのほか清掃、簡易水道、下水道が対象になっておるわけでございます。この年金福祉事業団、特別地方債を対象といたしまして、このほかに、たとえば社会福祉事業振興会あるいは公害防止事業団等に全部または一部を貸し付け金として出しておるということでございます。
  39. 大出俊

    大出委員 最後にいまお話が出ました年金福祉事業団ですね、あそこの取り扱いの本年度のワク、だいぶこれは拡大されていると思うのですが、並びにその返済方法、あれはたしか内規みたいなのがありまして、たとえば種類によって違いますけれども、給食センターなどというものが十年以内になっておったわけですが、実際には、当初六年とか、それを限度一ぱい延ばすとかいう措置がありましたが、幾つか私も手伝ってつくった経験がありますけれども、いまの運営状態を見ていると、やはり返済期間を相当長期にしていかないと、運営内容が非常に苦しい状態にあるように見受けられるわけです。そこらのところは、現在どのくらいになっておるか。将来に向かってさらに延長する必要があると私は思っているのです。そこらのことは詳しく申し上げればいろいろございますけれども、時間がありませんから、簡単に聞くのですが、御答弁願います。
  40. 伊部英男

    ○伊部政府委員 御指摘の共同利用施設に対しましては、お話しのように、昨年六月に貸し付け準則等の取り扱いを改善して、据え置き期間を、従来は一年以内を三年以内、及び貸し付け期間五年以内を十年以内というふうに延長いたしております。なお、厚生年金福祉事業団全体といたしましては、昨年度に比し今年度十億円の増で、三百八十億円でございます。しかしながら、実は昨年度の需要の伸びが、前半景気その他の影響によりまして若干横ばい的傾向でございましたので、今年度は十億円の増にとどまったのでございますが、その後急速にふえております。六百億を上回る状況でございますので、今年度はさらにこれを上回るだろう。したがいまして、今年度におきましても種々の工夫をこらしますとともに、来年度におきましてはさらに急速な増加をはかりたい。なお、条件等の改善につきましても、引き続き努力をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  41. 大出俊

    大出委員 これは五月の十日ごろでしたか、皆さんのほうで、年金事業団の取り扱い、その他の関係を、たとえば市中銀行の窓口等を通じて申し込む。旧来は四月ですか、それまでに申し込んで、六、七月ごろでしたか、ワクの決定をする、こういうふうな手続であったわけですね。これを今度は年間通じてやれるようになって、しかも銀行窓口等でやれる。かつてわれわれは、山本さんが年金局長時代にこの問題を強く指摘をして、何とかそうしろという言い方をしてきたことがあるのですが、最近そういうふうに変わったように見受けるのですけれども、そこらのところを……。
  42. 伊部英男

    ○伊部政府委員 御指摘のように、その点逐次改善をされておるといってよいかと思います。特に昨年度におきましては、中小企業に対するPRに重点を置きまして、年金福祉事業団の職員及び社会保険庁の職員が保険料徴収その他で参りましたときに、かような施設をPRすることにつとめるとともに、従前は比較的年度のややおくれた時点でないと諸般の決定を見なかったわけでございますが、今年度はすでに四月分として相当額の決定を見ている状況でございまして、つとめて資金を効率的に、すみやかに、需要者の期待に沿うように努力したい、かように考える次第でございます。
  43. 大出俊

    大出委員 実は、世の中の諸君が知らないわけです。きわめて知らない。だから、これはもっと利用させるべきだ。たとえば中小企業の諸君が自分の店舗を改造をして鉄筋ビルを建てるといった場合に、三階、四階に職員住宅をつくろうという考え方が最近ある。ところが、これは申し込みのワク内に入るのだけれども、ほとんど知らない。だから、取り扱いが変わったことも知らない。また、返済期限なんかも変わってきていることも知らない。だから、私は先ほど資金事情を聞いたのだけれども、資金事情が豊かになってきているわけですから、減った、減ったと言わないで——減ったというのは、たとえば工業団地をつくるようになっても、不況だというので移らない。会社、工場は横浜なんか二十三社来ることになっていたが、十七社にとどまったりする。そうすると、そこに給食センターをつくろうと思っても、なかなか思わしくないなどということがありました。ありましたが、全体的にもっと需要はあるはずです。ところが、それがPRされていない。つい最近変わって、銀行の窓口へ行けば申し込み書もあって、話も聞けて、皆さんを集めて説明しているわけですが、それらが伝わっていない。それをぜひ皆さんのほうでもう少しPRをしていただいて、年間、期限を切らずに受け付けるのですから、時には予定ワクをオーバーする場合が当然出てくるはずですよ。その場合には、そのワクをあまりこまかくきめないで、厚生年金の性格から、需要のあるものはやはりそれだけの資金融通はするというふうに運んでいただくのが筋ではないか。単なる財投ばかりに持ち込むのは筋ではない、こう思いますから、そこのところを、ぜひひとつ皆さんのほうで御努力願いたい。この点だけ申し上げたいわけです。
  44. 伊部英男

    ○伊部政府委員 先生指摘のとおり、PRの不足ということをわれわれとしても痛感いたしておるのでございまして、昨年前半、需要の伸びが比較的横ばい的である。横ばいではございませんが、伸びが少ないということで、事業団の幹部以下、先ほどお話ししましたように、大いにPRにつとめたわけでございますが、景気の上昇もあったかと思いますけれども、PRの影響もまた幾分かはあったろうと思うのでございます。それで結局、一・七倍の需要量が出てまいった状況でございます。その意味におきまして、一そうPRの必要があるということを痛感をいたしたのでございます。  また、御指摘のように、還元融資の最も本来的なものは、年金福祉事業団を通ずる還元融資であることは当然でございますので、需要がふえてまいりますれば、最も優先的にこの分野をふやしていくという考え方で努力してまいりたい、かように考えております。
  45. 大出俊

    大出委員 還元融資の問題については、石田さんが労働大臣をやっているいにしえから、私どもずいぶん努力してきたつもりなんです。せっかくここまできたのですから、どうしてもこれはやはり皆さんの責任で徹底的にPRをしていただいて、広くこれが行き渡るようにしていただきたい。そうしないと、厚生年金ができ上がった性格から、社会保障的に変わってきて、調整年金の方法までついてきたという流れがあるわけですから、その筋が通りませんから、ぜひひとつ御努力願いたい。この点だけ申し上げて、終わります。
  46. 關谷勝利

    關谷委員長 受田新吉君。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 今度の厚生省設置法改正案の骨子は、環境衛生局に公害部を設置することである。御存じのとおりに、新しい部をつくるということは、行政機構の簡素化をはかる上においては逆コースである。ところが、公害対策という、国民的規模における高度の要請にこたえるという意味で、この部をお置きになるわけでございます。この間、通産省のほうにも一つ名称を変えた部が出ておる。あなたのほうは、今度は加害者でないほうの被害者の立場からの公害部を設置する。加害、被害の区別を問わず、公害対策の基本的問題を処理する機関として、別に総理府などに公害庁のようなものでもつくって、より高い次元の公害対策を講ずるほうが筋が通る。そこへ加害者、被害者をひっつけてやっていく。各省別のこうした断片的な処理でなく、基本的な、広範囲かつ高度の処理をする機構改革のほうが筋が通ると思うのですけれども、国務大臣としての御見解を伺いたいのです。
  48. 坊秀男

    ○坊国務大臣 最近の公害というものは、起こるであろう公害につきましては、これは防止をしていかなければならない、予防もしていかなければならないし、それから起こった公害についての善後措置もしていかなければならない、非常に重大なる問題だと思います。この公害につきましては、いま受田さん御指摘のとおり、加害者側の立場と被害者側の立場と、これはそういうふうに役所がなっておりまして、厚生省は被害者的の立場でございまして、できるだけその被害者の傷が浅いように、また傷が起こらないようにする、こういうことでございます。これに対して加害者側の立場、これは積極的に、意識的に加害を起こそうというつもりはもちろんないでございましょうけれども、その与えられましたる事業活動をやることに付随いたしまして、どうしても必然的に加害が生じてくる、こういうような立場にある役所でございますが、そういった役所と、それをとってきて一つの役所にしてやっていくということも、私は一つ考え方かと思いますけれども、そういったような関係省の責任者というものが一つのポストに集まりまして、そうして総理大臣というのは、これは加害者とか被害者とかいうようなことでなしに、それを総括するといったような立場にあるのが総理大臣でございますが、その総理大臣を会長といたしまして、そして関係の加害者側、被害者側が集まりまして、そうしてそこで一つ会議体におきまして諸般の意見を進めていくとともに、また加害者、被害者といったような立場の者の意見をそこで調整をしていくということも、私は一つ考え方であろうと思いまして、今度はそういったような後者の総理大臣を長としたところのそういう会議というものを最高機関としてやっていくということでございまして、私は、考え方はそれはどっちがいい、どっちが悪いということでなしに両方あろうと思いますが、今度出発するにあたりましては、ともかく後者の態容、後者の行き方というものをとったのでございます。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 加害、被害というものは、互いに因果関係があるわけです。これを加えることによってこういう被害が起こるということが、分離されてはいないわけなんです。常に密接不離です。したがって、やはりいまあわてて公害部というものをここでつくり、また通産省にも名称をかえた部をつくる。産業立地部を公害部という名称でこれをうたおうとしているわけでございますが、そういう基本的対策がまだ立たない前に、こそく的に加害者と被害者のそれぞれの立場でこういう部をつくってやるというより、現在の機構のままで十分努力を積むことによって対策はできるはずだと私は思うのです。それができないと判断するかどうか。私には基本的問題を公害対策基本法などができて、それに伴う機構を一緒に取っ組むというのは、そう遠くない目前に迫っておると思うのですが、それを当面部に昇格せしめて、加害と被害のそれぞれの立場でこれを担当するという行き方が、是か非かという議論なんです。そこをいまの制度で公害対策は不可能であるという判断ではないと、私は思う。部をいま急いでつくるまてもなく、基本問題解決のときまでもう時間がかからないのだから、それで集中して対策を立てたほうがいいんじゃないかという意味質問ですが、閣僚としての高い判断から、御判断の結果を御説明願います。
  50. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、加害と被害とが二つあるというようなものでは、これはございません。一つの事象と申しますか、一つの行為を加害者側の立場と被害者側の立場と、これはいわば一枚の紙の裏表といったような行為でございますことは、いま御指摘のとおり。そこでいま受田さんのおっしゃいましたこと、いまの段階においては公害部というものをつくらなくてもいいではないかという御趣旨……(受田委員「もっと大きいものをつくれ、公害庁のようなものでも総理府の外局としてつくって」と呼ぶ。)私は先ほど申しましたが、公害対策会議というものがありまして、そうして現実の問題といたしましてそこの仕事もだれかがやる、また公害対策基本法という法律を主管をして、これの立案等に当たるといったようなことをやるために、厚生省の中に公害部というものができたということでございまして、おっしゃるとおりです。この公害対策をこれから漸次推進していっておる問には、あるいはそういうような、受田さんのおっしゃられるようなところに持っていかなければならない事態が起こってくるかもしれませんけれども、現在のスタートにおきましては、ひとつ厚生省における公害部というような程度のことで、まず初めからばっといくこともさっきから申し上げておるとおり一つ考え方ではございましょうが、現在はこの程度で持っていって推し進めていくということが、現実の問題としては適当ではなかろうかと思うのであります。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 私は総体で十分で質問を終わりますが、もう一つ定員増の対策で、厚生省の定員内の凍結数はどのくらいあるのか、そしてそれに対する対策はどういうことになっておるのか、今度の増員との関係をお答え願いたいと思います。
  52. 坊秀男

    ○坊国務大臣 事務当局からお答えさせます。
  53. 北川力夫

    ○北川説明員 凍結の数でございますが、本年度の予算編成の際におきます凍結は三百七十七名ございまして、その凍結を解除いたしました分が三百六十六名であります。それからその後凍結はやはり制度が続いておりますからふえておりますけれども、その後の数字は、いまのところ的確な数字は申し上げられません。予算編成の際における数字は、そういうことでございます。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 この増員を凍結で清算する手はないですか。
  55. 北川力夫

    ○北川説明員 いま申し上げましたように、三百六十六名は凍結の解除によって増員をしたわけでございます。(受田委員「いまの残りの分は」と呼ぶ)残りの分は、これはまた非常に技術的な話になりますけれども、わずか十一名でございますから、増員をいたしましてもこれはわずかな数でございますが、これは凍結の解除でございますから、事実上私どもの省のようにたくさん付属機関を持っておりますものは、付属機関ごとに零細な凍結がございまして、そういう凍結を全部洗い出しまして増員をいたしますと、機関ごとに減員が事実問題として生ずるわけでございます。そういう意味で、機関ごとの、極言すればいわば行政整理のような減員を防ぐために十一名は残しまして、三百六十六名の実態的にはほとんど全部を増員の一部に充てたわけであります。それ以外に純粋の増員として、お手元の資料にございますような増員があるわけでございます。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 これは私、ちょっと議論をしてみたいところがありますが、おきます。  この法案に直結する二つの大事な問題のほかに、厚生問題として一つだけきょうは指摘して、あなたの御所見を伺いたい。  それは人口問題です。厚生省には、付属機関として人口問題研究所がある。そこで世界の人口と日本の人口の増加をどういう形で見ておるか。昨年太平洋学術会議の重大な議題として、爆発的人口を包蔵する太平洋地域の問題が取り上げられ、それに対する食糧危機が訴えられておる。一七〇〇年時代にただ七億五千万の世界人口が、一九〇〇年、われわれの生まれる直前にはすでに十五億になっておる。今日、一九六〇年には三十一億以上に相なっておる。紀元二千年には八十億をこえるであろうという推測をされておる。そういうときに、日本は非常に人口制限している。医学の進歩で乳幼児の死亡が減り、長命を保ち、衛生状況がよくなっておるということでありますと同時に、妊娠中絶等によるところの人口増加が防止される政策がとられておるわけです。日本だけは、わずかに一年一%の増加率にしかなっていない。戦後のわずかの期間に、世界でも出生率が著しく低下した国になってしまっておるわけです。これは、この形をあなたはそのままとることを目標とされるか。人口を押えている大きな力が、優生保護法に基づく妊娠中絶という制度である。その中には、身体、精神等の個人の事由と、医学的な事情、もう一つ経済的事情等によって、妊娠中絶が自由にできるようになっておる。妊娠中絶による百万をこえるといわれる堕胎数というものを考えたときに、この人口問題は国の政治の根本問題だと私は思う。厚生省基本問題だと思うのです。これに対する厚生大臣の御所見を承って、雄大な構想をお示し願いたい。
  57. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御意見のとおり、私は人口の問題というものは、民族にとっては一番基本になる重大問題だと思います。そこで、戦後における日本の人口動態というものは、御承知のとおり非常に変わりまして、一方におきましては人間の寿命が非常に延びてきた。これはまことに私は喜ばしいことだと思います。他面におきまして、いま御指摘になったように、人口の再生産率と言うておるのでございますが、それがどうやら一を割るといったようなことに相なっておる。このまま放置いたしておきますと、やがて老人がますますふえてくる。人口構成の中における老人の占める割合が、ますますふえてくる。それからまた出生率が少ないものでございまするから、老人を養う立場にあるところの青壮年といったようなものが、だんだん人口の中に占める割合が減ってくる。こういった、奇形といえば奇形でございますが、そういったように民族の人口の構成がなってくるということは、これは私は重大問題であろうと思います。それからまた、世界の人口をいまおっしゃいましたが、これはどんどんふえていっておる。日本は二十一世紀になって、いまよりある程度ふえまして、一億をちょっとこえる。それがやがて、いまの調子でいきますと、どんどん減っていくといったような事態にあるということは、いろいろな関係もありまして、私はこれは非常に重大視しなければならない問題だと思う。人口の問題は、ひいて生産、雇用、それから労働力といったような問題にも関係いたしてまいります。そうなっていきますと、これはまた、ひいて日本の経済といったようなことにも関係してくる。つまり民族の総合力というものがこれに関係してくるということでございまして、こういったような傾向にあるということについては、大きな問題をはらんでおりますので、厚生省といたしましては、私は私なりの意見も持っておりますけれども、御承知のことと思いますが、非常にデリケートな関係もありますので、先般、人口問題審議会に、かかる傾向にある人口に対する対策をいかにいたすべきかということを、大問題として御諮問を申し上げておるというような次第でございます。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 諮問を申し上げておる次第ではだめなんです。これは当面取っ組まなければいかぬ。世界の人口増加趨勢と、日本の場合は非常に違ってきておる。日本は人口抑止政策みたいなかっこうになっておる。優生保護法を改正して、少なくとも経済条件という分は、戦後のあの混乱のときの規定であったが、もう今日は経済の事情というようなことで自由に妊娠中絶ができるようなことをやめてしまうように、あの条項を廃止して、そして悲惨な人命軽視の堕胎などということをその点からは認めないような政策をおとりになる——マルサス人口学説じゃないが、食糧危機が必ずくると訴えられておるわけですが、日本の果たす役割りは、逆の現象になっておる。これを優秀な民族としてどうわれわれがささえていくかという国務大臣としての抱負経綸——個人の御意見があるが、いま当たりさわりがあるので差し控えるということでしたが、これは国策の基本になることです。あらゆる問題はこの人口問題に派生する問題になってくる。そうじゃないですか。マルサスが死んで二百年になる。妊娠中絶とそれから避妊と混同するような立場で迎えた避妊の大家サンガー夫人が、なくなられてまだ一年たっていない。これは非常な先覚者の記念すべき時期がいまであるわけなんですが、これをひとつ優生保護法を改正し、避妊を奨励して、まじめな人口増加をはかっていく、こういう指導を一これはお役所も二つに分かれておって、そういう受胎調節のほうの指導と、妊娠中絶の処理と、厚生省は二つの局で担当が違っておるけれども、総括的なお立場大臣に御答弁を願い、補足説明局長からお願いしたいと思います。
  59. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃいました人間のモラルに触れるといったような、堕胎がそういう色彩を持っておるといったようなことは、私はその御意見のとおりだと思う。しかし、一方におきまして、正常なる家族計画といったようなことも、にわかにこれを否認してしまうべきものでもない。そこに私、先ほど非常にデリケートな関係と言いましたのも、それだけではございませんが、そういったような問題が派生してまいりますので、これは非常にこの問題を重大視するとともに、相当デリケートに扱っていかなければならない、かような考えでもって、そんな審議会にまかすといったようなことではだめだというおしかりを受けておりますけれども、現段階におきましては、一応この審議会で御審議を願うということで、しかし、お説のように非常に人倫、モラルに反するといったような行き方は、私はきびしく、しかもできるだけすみやかにさようなことのないように指導もしてまいりたいし、そういったような仕組みも考えてまいりたいと思っております。
  60. 中原龍之助

    ○中原政府委員 人工妊娠中絶の問題でございますが、これは優生保護法の中の第十四条に記載されておるところであります。この人工妊娠中絶は、あくまでも主体は母体の健康をそこなうようなことがないようにするということでございます。精神はそういうことでございますが、実態においてややこのものが軽視されるというような傾向にあるということも、いなめないことでございます。それで、私どもといたしましては、現在はこの人工妊娠中絶よりも、受胎調節を奨励していく、そして人工妊娠中絶の乱用ということを極力押えていくという方向で進んでおります。人工妊娠中絶の数も、最近は徐々にではございますが、やや落ちております。それから受胎調節のほうにつきましては、だいぶふえてまいりまして、そういう観念も一般に徐々に普及しつつありますので、好転していくというふうに私どもは考えておるのでございます。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、これで質問を終わりますから……。局長のなにもあるのですが、あなたから世界人口問題として、日本の立場から人口問題と食糧問題とを一緒にひっつけた立場から、国連などでこの人口問題を検討する機構をつくって、世界人口問題を国連のもとに検討しようじゃないかというような提案でもひとつされて、アジアの燈台といわれる日本国のモラルを含めた人口問題の国際的視野に立つ大研究をするという、閣僚として御提案をされませんか。
  62. 坊秀男

    ○坊国務大臣 非常に雄大なるアイデアでございまして、これは単に厚生大臣という問題ではございません、日本政府という問題でございまするから、機会を得まして、これは閣議とかいろいろな機会がございますので、そういったいまの受田さんの構想について、これを御披露を申し上げて、その上のことにいたしたいと思います。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 ひとつ御披露申し上げてください。それを要求して質問を終わります。
  64. 關谷勝利

    關谷委員長 八田貞義君。
  65. 八田貞義

    八田委員 時間もあまりございませんから、簡単に問題点をしぼりまして二、三御質問申し上げたいと思います。  まず第一は、今度の厚生省設置法の一部改正につきまして公害部を環境衛生局に設置する、こういうことでありますが、この法律案の提案理由を拝見いたしますと、公害防止ということが掲げてありますね。中には「公害防止行政」ということが書いてある。どうして公害防止行政ということばを使っているのですか、公害衛生行政ということばを使わなかったのですか。この点をひとつはっきりしてください。
  66. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省の所管をいたしております公害対策というものは、基本はあくまでも国民の健康を守るということでございますが、同時に今回、本国会に提出をいたしました公害基本法の目的にもございますように、公害を防止する目的は、国民の健康を守ると同時に生活環境を保全するということにあるわけであります。その際、もちろん生活環境を保全するという配慮は、あくまでも健康な衛生的な生活環境を保持するということでもございますけれども、さらにその考えを広めまして、快適な、気持ちのいい生活環境を保っていくというように、従来の狭い意味での衛生という分野を乗り越えたかなり広い意味での生活環境を保持するという意味合いがございまして、今後の公害対策をここまで広げて、国民の快適な生活を保持する努力をするということでございまして、その分野も含めて厚生省の公害対策の目標としてまいりたいということから、公害防止という広いことばを使ったわけでございます。
  67. 八田貞義

    八田委員 いまの説明でちょっとよくわからないんですがね。公害という問題は、発生源と生体とがあれば、初めてそこに公害というものが発生する。防止ということになると、公害をなくすることですか。
  68. 舘林宣夫

    舘林政府委員 公害防止は発生いたしました公害を排除いたしまして、公害のない状態にすることがきわめて大きな分野仕事であることは、御指摘のとおりでありますが、同時に公害の発生しないようにあらかじめ各種の措置を講ずる。たとえば都市計画からしてすでに考えていくというような措置、あるいは公害防止のための各種の調査研究を進める、技術者の養成をしていく、それらのものを全部包含いたしまして、公害防止、かような広い意味合いに私どもは考えておるわけであります。
  69. 八田貞義

    八田委員 そういうふうにことばをはっきり解釈していきませんと、間違いが起こります。公害基本法をつくった実際の目的は、公害から国民の健康と生活環境を守る、こういうのが基本になるわけですね。公害の発生源をなくすことが防止になってくるのですか。発生源をなくすることはできないでしょう。だから、この問題を私は政務次官にお尋ねしたいのですが、今度の朝日訴訟事件なんかを見ましても、社会保障ということばですね、これは実際はソシアルセキュリティを日本の学者が社会保障というふうに訳した。ところが、実際はソシアルセキュリティということばは社会安全と訳すべきなので、それを社会保障と訳したために、コンペンセーションの補償と誤解されてくるのです。今度の朝日訴訟事件なんかも、そういったような誤解があるんですよ。コンペンセーションという感じがある。ですから、ほんとうにはっきりと国民の健康、生活環境を公害から守るんだという趣旨に立つならば、厚生省の場合は何も公害防止行政なんということばを使う必要はないですよ。公害衛生行政でいいです。こういったところが、厚生省考え方は私はいろいろな点においてそごを来たしておるのではないかという感じがするのです。実際、この提案理由を見まして、公害防止行政とあるが、厚生大臣の提案理由の説明としてはちょっとわからないのです。公害衛生行政というのが厚生省としては正しい、私はこう思うのですが、いかがですか。
  70. 田川誠一

    田川政府委員 いま局長からもお話がありましたように、防止ということは発生したものに対する処置ということももちろんあるのですけれども、やはり発生源を除くという計画をやっていくことも、防止ということであります。そういう意味から、私は防止ということばが適当ではないかというふうに思います。
  71. 八田貞義

    八田委員 政務次官、あなたは通産省の側の政務次官のような話をされている。そういうことは通産側でやるのです。あなた方は国民を守るのです。だから、衛生です。ですから、その点ははっきりしてもらいたい。
  72. 田川誠一

    田川政府委員 防止ということは、やはり国民の健康を守るということが一番でございますから、そういう意味で防止というふうに私は解釈しておるわけでございます。
  73. 八田貞義

    八田委員 まあここで論争してもしかたがないですから……。考え方は衛生ですよ。衛生を守るということです。こういう考え方でやっていただかなければならぬ。なぜかと申しますと、この公害に対する考え方は、これは通産側と国民の健康を守る側の厚生省とは、意見の食い違いがたくさんあるんですよ。通産側のほうは、産業の振興は国民の福祉向上に役立つ、こういうふうに考えておるんですね。ところが、これでもって押し切るかと申しますと、地域住民の福祉に直接つながるかどうか、ここの問題なんですよ。産業を振興すれば国民の福祉というものは向上するんだ、こういうふうにだれでも考えます。しかし、地域住民ということから考えますと、そういった地域住民の福祉向上と産業の振興とは直接つながるか、そこに問題があるんですよ。ですから、公害基本法の趣旨を体して厚生省がいろいろなその対策を講ぜられていく場合、この点が一番大切なんですね。国民の健康と生活を守るんだ、そういうような信念に立っていくならば、衛生行政でやらなければならぬ。こうしたものと全然違うんです、はっきり申しまして。衛生ということばがあるんですから、それをことさらに避けて、通産側で出すようなことばを厚生省が使うということは、ちょっと地域住民と全国民の利害の相反するところですね、この点について掘り下げ方が非常に少ないんじゃないか。この点を一番憂慮するのです。だから、この点についていろいろ申し上げますと、たとえばこの提案理由を見ますと、「大気汚染、水質汚濁等」として、二つだけあげられて、あとのほうは「等」は何も対象があがっていないですね。この中には何があると考えているのですか。
  74. 舘林宣夫

    舘林政府委員 少なくとも今回の公害基本法の定義の中にございますような騒音、振動並びに地盤沈下等も公害の対象でございますし、公害基本法で取り上げないその他の公害、たとえば日照あるいは光による障害というようなものも、当然公害部が扱うべき公害の対象である、こういうように考えております。
  75. 八田貞義

    八田委員 騒音、振動とか、生活環境とか、そういったものが入っているんでしょう。だから、こういうところに、公害衛生行政というものは、みんなこういうものをはっきりと厚生省の場合には書いておかなければならぬと思うのですね。そういう点が、非常に私はこれを拝見しまして遺憾にたえないということ。それからもう一つは、「公害問題に対処していくためには、総合的な公害防止施策を策定するとともに、ばい煙、水質汚濁等に対する規制を強化し、また、公害監視体制を整備する等、公害防止のための諸施策を充実強化することがきわめて必要となっているのであります。」そういった策定は、一体どんなふうにしてされるのですか。
  76. 舘林宣夫

    舘林政府委員 今回の公害基本法におきます公害の取り上げ方は、公害はただに厚生行政のみでなくて、主として企業の監督をしておる通産省、あるいは都市計画その他の計画あるいは下水道を建設する建設省、そのほか水質汚濁防止法を所管いたしております経済企画庁、あるいは航空機、自動車等の所管をいたしております運輸省、各省にまたがっておるわけであります。したがいまして、総合計画そのものは、これらの各省の調整が行なわれた上で国としての施策がきまるわけでございますが、それの総合施策の範囲その内容におきまして、たとえば新しい新産都市を建設する、その新産都市を建設した場合に、SO2の濃度はどの程度であるか。それが人体に影響するのはどの程度まで及ぶかというような、大量のものでございますと、人間の健康を守るという観点から厚生省が測定し、それに基づいた計画を立てる、かような主役を演ずることになります。そのような意味合いから、厚生省の所管をいたしております範囲での公害対策の計画を立てる、かようなことを意味しておるわけでございます。
  77. 八田貞義

    八田委員 厚生省の所管する公害というのは、一体何と何ですか。
  78. 舘林宣夫

    舘林政府委員 人の健康を守り、同時にまた快適な生活環境を保持するか、かようなことでございまして、もちろんそのような観点からすれば、農林関係の障害を除けば、すべて厚生省に所属するものでございます。ただ、具体的な計画を立てるに際しましては、やはり各省所管の行政にまたがるものでございますから、厚生省が中心になって進めるという気持ちは持っておりますけれども、具体的な検討を進める場合には、各省と十分連絡をとっていく必要がある、かように考えております。
  79. 八田貞義

    八田委員 政務次官、いまお聞きのとおりです。非常に具体的な政策を推進する場合に、各役所にばらばらに分かれておるのですよ。そうして今度厚生省は、国民の健康と生活環境を守らなければならぬという大きな役目を持っておりますね。そうしますと、まずこういった総合的な公害対策を立てなければならぬという前提があるのです。ところが、この前提については何もここに触れられておりませんが、政務次官も御承知のように、公害審議会が中間答申を出しましたね。そこには、前提として公害衛生の学問的内容の充実と対策に従事する高度の専門技術者の供給が必要だ、こう出ておる。政務次官、私は、今度の役所の公害部の設置なんかを見ておりますと、役人だけつくって、専門技術者をちっとも考えていない。はっきり申しますと、よく言われることは、遠いようで近いのは男女の中である。しかし、近いようで遠いのは親戚とか、あるいは役所と研究所だ、こう言われておるのです。専門技術者を養成する機関がないのですよ。だから、こういった点に対して、厚生省としてどのような、公害審議会の答申に訴えるような——前提としてはまず専門技術者の供給だ、養成だ、こう言っておるのですよ。これに対してどういうような対策を立てられるのか。これまでの公害対策は、既存の他の部門への知識の応用ないし利用にとどまっておりまして、特に公害衛生を目的とした見地に基づいたものは少ない。これらの部門で得られた知識と経験の利用は、すでに限界に達しておる。公害衛生行政に従事する技術行政官も、いままでの公衆衛生専門技術者の転用ではその責務を全うするのが不可能だとなっておる。高度の専門技術者を充てなければならぬ、こういう状態になっておるわけですね。いままでのような公衆衛生の専門技術者では、大切な公害対策をやっていけないんです。専門技術官を供給しなければならぬ。しかも公害審議会からその答申で出ておる。厚生省としては、専門技術者の養成についてどのような処置をやられたか、この点をひとつお願いしたい。
  80. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ちょっと初めのところをお聞きしておりませんので、あとで私お答えいたします。
  81. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お尋ねのように、公害行政は新しい分野がたくさんございます。従来の技術者ではとうていこの新しい科学の研究調査に応じきれない部門が、非常に多いわけでございます。この点は、ただにわが国だけに限らず、世界的にそのような傾向にございまして、わが国の現在実施しております公害に関する調査研究が世界の注目の的となり、またその結果が各方面で援用せられておるという事実からも、想像できることでございます。全く、今後の公害行政を科学的に、しかも足が地についた行政として推進するためには、どうしても専門の技術者の養成をはかる必要があるということは、御指摘のとおりでございます。これに対しましては、従来は国立公衆衛生院におきまして、約一カ月足らずの短期コースを二、三十人のグループでやっておったわけであります。そのほかに、環境衛生センターにおきまして、速成栽培的に一、二週間、五十人程度のものを対象に年に一、二回、あるいは特別調査をする場合に、全くどろなわ式にその調査のための職員を訓練させるために一週間程度講習をやるというようなことをいたしておったわけでございます。これでは、公害基本法を設けて公害に基本的に取り組むということには不適当であるということから、今年度国立公衆衛生院に公害衛生部を設けることにいたしました。この公害衛生部の中に三室を設ける。大気汚染と水質汚濁、その他、こういう三室を設けることにいたしまして、この三室が公害に関しまする教育上必要な範囲ではございますが、かなりな程度の調査研究も行ないますし、同時に公害関係の職員の訓練をするということで、一つは三カ月コース、一つは六カ月コースをやる予定でおるわけでございまして、大体一クラス三十人程度考えておるわけであります。対象といたしましては、大学あるいは旧高専卒業程度の者をやる予定でございます。そのほかに、従来と並行しまして、同様に環境衛生センターにおきまして、一、二週間の入門コース、あるいは特別調査のための準備講習会、あるいは衛生関係、あるいは産業関係者の話し合いのゼミナーというようなものも、やっていくことにいたしております。将来は、これでは八田先生指摘のような、ほんとうの公害に対する技術者の養成には不十分でございまして、やはり国立公衆衛生院におきますコースは、一、二年の大学院に見合うようなものに発展さしていく必要がございますし、また大学ないし大学院のコースの中にも、公害関係のコースを漸次充実していく必要がある、かように考えておる次第でございます。
  82. 八田貞義

    八田委員 大臣、いま局長答弁がありましたように、専門技術者を養成する、これが一番大切なんですよ。たとえば公害衛生に関する教育訓練業務の新設、これを充実強化していかなければならぬ。そうしなければ、幾ら公害対策だと文章に書いてみたって、やる手足がないんですよ。ところが、ただいま局長答弁しましたように、これは非常に貧弱なやつが公衆衛生院の中にできた、一部三室でしょう。ところが、この三室の内容を見ますと、いま局長は触れなかったが七名ですよ。各室に二名、部長が一名、七名の人で専門技術者を養成教育しよう、こういうんですね。ところが、この大気汚染にしましても、水質汚濁にしても、騒音振動にしても、これは全然違うんですよ、学問としては違うんです。違う学問を一緒にして一体何ができるかというんですな。これは役所と違うんです、研究は。役所としては、これはちょっと人を集めればいいでしょう。しかし、研究の場合は、対象が全然違っている。全然学問として別なものを一緒くたにして、一体そこで何ができるか。人員もこれだけでは少ない。いうならば、これは準備時代ですね。こんなことでほんとうに公害衛生行政が完ぺきにやっていけるだろうか、こういう心配を持つのですが、大臣、この問題について一番力を入れていかなければならぬと思うんです。本省に役所をつくったから、これで公害対策の策定ができるんだと思ったら、これはとんでもない間違いです。私はいつも言うんです。遠くて近いのは男女の仲、近くて遠いのは親戚とかあるいは役所と研究所の仲だ、現在こんなふうな状態になっているのです。大臣、主務官庁の大臣として、公害衛生行政というものをほんとうにやっていかなければならぬ、この教育訓練施設ですね、これは一体どのようにして充実強化されていくか、これをひとつ大臣のお考えを率直にお聞かせ願いたい。
  83. 坊秀男

    ○坊国務大臣 非常に専門的、学問的な八田君の御質疑は、私は御意見のとおりだと思います。いまの公害を防止するといいましても、今日まで日本の学問にしても、技術にいたしましても、たとえば河川がはんらんするからはんらんを防止するといったような場合には、あるいは築堤をするといったようなこと、これは土木工業に属することかと思いますが、そういったようなことにつきましては、相当学問的に研究も進められておりましょう。ところが、いまあげられておりまする、この公害基本法でもあげられておる公害、たとえば騒音にいたしましても、また悪臭にいたしましても、それからいろいろでございますけれども、そういったようなものを一般的に防止する——そういった悪臭にいたしましても、振動にいたしましても、騒音にいたしましても、これはある工業をやっていく際に、ある生産をやる、ある工場を動かしていくという際に、そういったようなものが一種の悪い副作用として出てくることでございまして、会社が、工場がその自分の本来の活動をしていくために、自分がいかにしたら効率的に目的の商品を生産されるかといったようなことで今日まできておる。ところが、いまやそういうことでは——たくさんそういったような工場なり生産なり事業活動というものがふえてまいりましたために、それらのものが競合して、そうしていわゆる公害という副作用が重なり重なって公害というようなところまで来ておる。この公害を防止し、あるいは予防するといったようなことについては、私は今日までは、御指摘のとおり、学問的研究と申しますか、調査と申しますか、そういうことも立ちおくれておったのではないかと思うのです。とにかく生産にウエートを置いて、生産第一主義ということできておりますから、その副作用防止のための研究、調査ということが立ちおくれておるんじゃないかと私は考えます。さような意味におきまして、いやしくも役所が公害防止のために基本法をつくって、そして本腰を入れてやっていくんだということになった以上は、研究とか、あるいは役所の仕組みといったようなものについては、これはほんとうに全く画期的な考え方でもって進めていかなければならないと存ずるのでございますけれども、それならおまえいま具体的にどういうことがあるか、こう言われますと、いまのところ、これを具体的にどういうふうに受けとめてやっていこうかという用意もないのでございますけれども、ただ気持ちを申し上げれば、以上のようなことでございます。
  84. 八田貞義

    八田委員 大臣のお気持ちはよくわかるのですが、結局企業者の納得できるような環境基準をつくるということが、一番大事なんです。環境基準は、権威あるものでなければならない。権威ある環境基準というものをつくるためには、どうしても専門的な技術者というものがいなければならぬ。そういった養成施設がなければならぬ。その養成施設ですね、それを私は大臣にお伺いしているのです。今度初めて四十二年度予算で、公衆衛生院に一部三室と公害衛生研究所ができた。こんなちゃちなものでは、とても環境基準なんかできてまいりません。そういたしますと、どうしても権威あるものをつくるためには、これを充実強化していかなければならない。施設設備を整えていかなければならない。そうしますと、この点に対する大臣のお考えはどうであるか。四十三年度において——四十二年度においてはちょっと顔を出すことができなかったけれども、四十三年度においては、こういった大気汚染とか、水質汚濁とか、騒音、振動、こういったものは、もう学問的にみな違うのですから、これを三室つくって充実強化する、整えていく、そういった、自分は考えであるということを、ここでひとつ決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。そうしませんと、せっかく公害基本法をつくって、厚生省が主務管庁となって、大いに国民の生活と健康を守ると言ったって、それはただ国会答弁に終わってしまう。国民は全然喜びません。その点をひとつ、一番大切な問題ですから、お聞かせ願いたい。
  85. 坊秀男

    ○坊国務大臣 全くお説のとおりだと思います。そこで、公害防止に当たるべきベテランというようなものを——これは役所としても人間をふやすということはいまいろいろ制限されておりますけれども、しかしながら、とにかく公害防止という一つの大きな仕事に取り組む以上は、やはり現実に人がいなければどうにもならないということでございますので、何とかいたしまして、そういう陣容を整えなければならない。ところが、さような陣容を整えていくために、それなら早急に、一カ月や二カ月で、そういった——何でもいい人ならこれは幾らもありますし、あるいは事務をやる人は幾らでもありましょうけれども、この仕事に専門家として当たってもらうというような人は、これを集めるということは非常に困難でございますけれども、私はできるだけ、そういったような人に集まってもらうべく努力もいたしてまいりたい。それから、最初のうちは、なかなか役所の中へ専門家としてきていただくわけにはあるいはまいらないかもしれませんけれども、いろんな事項について、あるいは委託をするとか、あるいはまた、どうせ公害対策基本法の中には審議会といったようなものも設置せられるということに相なっておりますので、そういうようなところにも衆知を集めて、やがて一歩一歩と機構、陣容等の充実をはかってまいりたい、かように考えております。
  86. 八田貞義

    八田委員 大臣、その答弁では満足できないですよ。大臣は、審議会とか、いろんな専門家などにお願いしてというふうに言われておりますけれども、主務官庁としての厚生省としては、そういうお考えでは、なかなか責任を持った政策はできないと思うのです。やはり公害審議会、公害部を役所につくるのも必要だけれども、まずその前提となるものは何だ。それはすなわち公害衛生の学問的内容の充実と対策に従事する高度の専門技術者の養成だ、こう言っておるのです。ところが、大臣は他人のふんどしを借りて相撲をとろうというようなお考えでは、審議会の答申を尊重したことにならない。公衆衛生院から出ておる計画を四十三年度に実施する、そういうような意気込みでないと、この問題は、なかなか国民が要望するような公害対策は出てこないと思うのです。アメリカなんかは、実際もうすでにパブリックヘルスなんかには公害センターというものを置いて、そうして、NIH、国立衛生研究所、これなどは環境衛生科学センターを置いて、有機的に、総合的に活用していく、そうして公害対策を出していこう、こうなっておるのですよ。ところが、日本はこれはなかなか問題であって、アメリカなんかは衛生科学技術がすぐに衛生行政の中に入ってくる。ところが、日本の場合には非常にその点がおくれております。というのは、こういった点があります。日本にセクショナリズムというものがありますね。そのセクショナリズムの弊害についていろいろ論ぜられておりますが、その中で、私は各機関の間に見られるところの活動の重複よりも、各分野の境界にある問題が忘れられておる。検討することもなおざりにされておる。いわゆるグレンツゲビートの問題が等閑にされておる。重複しちゃいかぬ、重複しちゃいかぬ、わが国ほどこういうように神経質なくらいまでに重複を問題にしておる国はない。同一課題であっても、研究者、技術者が違えば、また別な新しい結果が得られるということがしばしばあるのですから、重複するなというようなことは、全然考える必要はないのです。だから、それを有機的に、総合的な結果が得られますように、そのためには、やはり専門技術を身につけた人に公害対策の中心になって働いてもらう、これがまず一番必要なんですよ。役所をつくるよりも、研究技術者をつくってもらわなければならない。笛吹けど踊らずなんです。ですから、大臣、もう一回意気込みのほどをお聞かせ願いたいのです。
  87. 坊秀男

    ○坊国務大臣 全くお説のとおりだと思うのです。私が先ほど申し上げましたのは、この出発当初——だんだんとひとつこれは強化してまいりますが、出発の当初におきましては、私の申し上げたようなことで、しかしできるだけすみやかに専門家そういったものについての経験もあり、勉強もしておる専門家という方々をこれは活用しなければ、もちろんこの所期の目的を達し得ない、かような意味におきまして、私はここではっきり何年度にどうとも申し上げかねますけれども、四十三年度以降の問題といたしまして、できるだけすみやかにいまの御意見のような機関と申しまするか、そういった仕組みと申しまするか、立てて、ほんとうに本格的に公害に取り組んでいくということでなければならない、かように考えております。
  88. 八田貞義

    八田委員 大臣、それくらいにしてとどめますが、研究技術陣——専門家、専門家とおっしゃっても、日本に非常に数少ないのですよ。そういった数少ない専門技術者では、この公害問題の環境基準ができないのです。たくさんの手足があって、真剣に働く専門技術者がなければ、営業者をして納得させるような環境指導はできない、こういうように感じまするが、大臣のいまの四十三年度以降極力——こういった学問の違うものを一緒くたにしたと言ってはまことに申しわけないけれども、今後こういったものを学問別に研究技術陣をつくって、そして公害環境基準というものを早急にりっぱなものをつくり上げる、こういうようにお考え願いたいと思うのです。どうぞその決意をぜひとも四十三年度予算に何らかの形であらわしていただくようにお願いする次第でございます。
  89. 坊秀男

    ○坊国務大臣 仰せ非常にごもっともでございますので、四十三年度以降におきまして、私も大いに努力をいたします。ただ、問題は予算の問題でございますので、今日ここではっきりと確約申すわけには参りませんけれども、私は全力をあげてさような方向に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  90. 八田貞義

    八田委員 次に、衛生検査技師の問題について質問いたしたいと思います。  衛生検査技師法ができましてから、もう足かけ十年くらい近くなります。その間のいろいろな移り変わりによりまして、非常ないろいろの法律的に不備な点が出てまいりました。先ほど大出委員からも御質問がございましたように、この衛生検査技師の問題は、パラメディカルの中でも上番大切なもので、これを急がなければこの法律に内蔵されたいろいろな矛盾点が、そのまま日本のいろいろな公衆衛生の面にはね返ってくるじゃないか。これは早急にこの矛盾点を解消していく、衛生検査というものを完全に施していく、これが一番大切だと思うのです。私は、ここでは多くを申しません。ただ、これを今後パラメディカルの中でも早急にまとめなければならない。今国会は間に合わないとおっしゃったんですから、次の国会に、法案を整備して、ぜひとも政府提案してやりたい。先回の法案は議員提案だった。しかし、今回は政府提案で、ぜひとも内容の充実したものを出していきたい。それも名称制限であってはいろいろと問題があるので、矛盾点解消にならぬから、業務立法に変えていこう、こういうようなお考えがあると思うのでありますが、一体これらの法律改正についての先の見通しですね、どういうふうに作業を進めていくのか、担当局長から御答弁願いたい。
  91. 若松栄一

    若松政府委員 衛生検査技術者というものが、特に戦後におきまして非常に需要が増大してまいりました。しかも、その検査業務の内容が、非常に複雑高度化してきていることは、御指摘のとおりでありまして、これに即応するために、技術者の資質の向上並びに人員の充足というものを急速になさなければならぬということは、御指摘のとおりだと思います。そういう事実に即応しまして、現在の時点におきましても、法律改正にすでに先行いたしまして、民間におきましても、衛生検査技師の資質の向上、あるいは民間における独自な立場における認定制度等も、すでに行なわれております。こういう実情は、やはり役所の側の法律改正その他の手続が、若干遅れているということを如実に物語ることであろうと思うのであります。そういう意味で、御指摘のような時勢に即応した法改正というものを、私どもも考えております。その内容につきましても、ただいまお話がありましたような、この衛生検査技術者の単なる名称独占というものから、業務独占ということに、そろそろ進んでいい状態であろうかということも考えておりますが、業務独占の問題につきましては、先ほど大出委員の場合にもお話ありましたように、衛生検査技術者が非常に多い、その中で有資格者は非常に少ないという状態であったために、むしろ業務独占にすることによって現実的な支障を起こすおそれがあるという配慮から、しばらく業務独占を避けたという事態でございまして、業務独占そのものに本質的な疑義を持ったわけでは、決してございません。そういう意味で、時勢がだんだん変わってまいりまして、技術者も相当数充足されてまいりました。また、今後の充足の見通しも、先ほどのパラメディカル職種に比較いたしまして、かなりテンポが早いということも予想されますので、御指摘のありましたような趣旨で、できるだけ早い機会にこの制度の問題に手をつけたいというふうに考えております。
  92. 八田貞義

    八田委員 その点ひとついまのこの答弁のとおり作業を進めて、早急にやってもらいたいと思います。  それから、時間もありませんから、大臣にちょっとお伺いしたいのですが、阿賀野川の中毒事件ですね、これについてひとつお伺いしたいのです。私は産業公害対策特別委員会でちょっと政務次官質問したのですが、厚生省の扱い方ですね、これははっきり申しますと、非常に私は解せないのですね。というのは、「阿賀野川中毒事件報告書の今後の取扱いについて」というのを厚生省出しておられるわけです。まず第一が、「本日阿賀野川の水銀中毒事件に関し、臨床班、検査班、疫学班より夫々の専門的研究の結果の報告が提出された。」こういうことが一に書いてあります。二に、「厚生省としては、昭和三十一年九州に発生した水俣病の病因調査の場合の前例に従い、食品衛生調査会にかけて意見を徴することとする。」、こういうふうに書いてある。第三番目に、「その際は、臨床、検査、疫学以外に水産、化学関係等の学者も加えて総合判断を求め、これによって厚生省としての意見をとりまとめ、科学技術庁に報告する。」四番目に、「国としての結論は、科学技術庁において関係各省の意見が総合され、出される予定である。」こういうふうに今後の取り扱いについて厚生省は報告されておりますね。一体こんな回りくどいことをやって事件解決になるのですか。私は、厚生省の態度は実におかしいと思うのです。実際、「新潟県水銀中毒事件の原因究明に対する研究班報告概要」というものを見せてもらいましたが、これはほんとうに違うんですね。臨床班、試験班、疫学班、全部違うんです。ある人に聞きましたら、疫学班というのは、八卦見の易学ですかという人もおりました。そういうことを言うくらいなんです。エピデミオロジーでなくて、八卦見の易学だろう、こういうふうに感じた人があるのですね。それくらいに研究に対して私は疑問を持ちます。まず第一に申し上げますと、疫学班と臨床班との間に上流地区有症者及び水銀保有者に関し意見の相違があった。もう一つは、疫学班と試験班との間には、水ゴケその他につき意見の相違があった。これは大きな点ですよ。そうしますと、一体これは調整がつくんだろうか、食品衛生調査会なんかに頼んでみて。しかも、第二の水俣事件というのは、繰り返しがきかないものなんですよ。繰り返しのきかない実験については結論を出さない、こういうことが学会一つの定説になっているんです。ところが、食品衛生調査会にかけて意見を聴取した。総合的には、精神科学関係者をみな集めて、そうして厚生省の総合判断というものをまとめるんだ。政治家の態度として、学会論争を政治の場に持ち込んで、一体どうなるんだろう。学会論争があるということは、その学問が揺籃時代なんです。仮説もできない、定説もできないというのは、赤ん坊のような未発達の状態をいうんです。それを国会とか行政の場に持ち込んで、一体どっちに軍配をあげるのですか。そういうふうなことで、結論を出す、出さないといって、じんぜん日を延ばされて、被災者は一体どうなりますか。この点が、私らは厚生行政において非常にいかぬと思うのです。大臣はたぶん知っておると思うのですが、アメリカで、「サイレント・スプリング」、「沈黙の春」という本を書いたカーソン女史という人がおられます。この人は農薬の害を説いたんですね。これはベストセラーになったわけなんですが、これを読んだケネディは、すぐに取り上げて、「農薬の安全使用に関する特別委員会」というものをつくって、有機塩素剤の使用禁止をやったんです。政治家というのはそういうものでないかと思うのです。学会論争の結論を調査会にゆだねて、その上で総合判断をやって、そうして政府としての結論をまた出しましょう。一体どういう結論が出るんですか。結論が出っこないですよ。被害者は、そのままのんべんだらりと待ってなければならない。政治家は、まず被災者を救うことです。そうして学者にうんと研究費を出して原因を追究する。わかったら、初めて発生原因となった責任者に対して補償を求める。これが一番正しい態度じゃないでしょうか。全然被災者はそのままほっておかれるのですよ。補償らしい補償ももらっていない。そして四十年に起こったやつが、まだまだ今日になっても結論が出ない。結論なんか出っこないのです。大臣、こういうところについて、被災者の身になってください。まず国でやるべきです。原因なんかわからぬのです。どっちに軍配をあげるというような、また結論が得られるというふうに思っておられることが、私は非常におかしいと思うのです。真実をつかんでいない。この点ひとつ大臣いかがですか。この問題早急に解決してもらいたい。
  93. 坊秀男

    ○坊国務大臣 阿賀野川の事件によりまして、非常に犠牲者が出ております。犠牲者は非常にお気の毒なことでございまして、さような意味におきましても、これに対する何らかの措置を早くとりたい。いまのところ、地元の地方団体におきまして、これはもちろん十分ではございませんけれども、ある程度のことはやっておりますけれども、御承知のとおり、これはわずかなものでございます。そこで、これに対してどうしたって何らかの補償といいますか、そういったようなことをやらなければならないことでございます。そのためにも、原因者というものをはっきりつかまえなければならない。そこで、原因者をつかまえるのに、学問的研究をやっておってもきちっとしたものが出てきっこないぞ、こういう御意見、それも私はわからぬではございません。学問の意見は何説、何説といって対立し始めますと、これが統一されるというようなことはなかなか私も困難であろうと思います。がしかし、先般疫学を初め臨床、分析三班が、それぞれの立場において、いまも八田さん仰せられたように、ばらばらのものを厚生省が答申として受けております。厚生省といたしましては、それぞれ独立いたしまして学問的に調査したものをいただきまして、この三つのものに対してどれが正しいんだというようなことを判定するものもございませんが、しかしながら、できるだけ真相に近いものにしていきたい、真実に近いものにしてまいりたい。そんなことをしておったならば、被害者がこのままではいつまでたってもかわいそうじゃないか、こういう議論がもちろん一方にございます。そういったように、真相を必ずしも正確に近いような点において把握せずにやればいいじゃないかということと、それからもう一つは、とにかく将来のためもございますし、こういったことが起こったという真実、いま起こった事態をよく調べて、これの真実をつかまえるということも、これは大事なことであろう。いつまでのんべんだらりとやっておるということは話にならぬことでございますけれども、被害者のためにできるだけ早くということと、またできるだけ真実をつかもう。そのためにはできるだけ急ぎますけれども、できるだけ真実に近いところで押えたいという二つの要請があるわけです。しかし、それでは食品衛生調査会で、これこそ完全な間違いのない意見だといったようなものを期待することも、私はできまいと思う。しかし一方、そういった真実に近いものに、研究をすれば近づいていくということも、絶望ではないと思われます。さような意味におきまして、いまとにかく食品衛生調査会のしりを引っぱたきまして、できるだけすみやかに答申をいただきたい、こういう態度をとっておるわけであります。
  94. 八田貞義

    八田委員 大臣、ちょっと政治家としてポイントが違うじゃないですか。これは大臣——五月二十一日の読売新聞に出しておりますが、「新潟県の阿賀野川有機水銀事件を刑事事件として取り扱うかどうかが注目されていたが、新潟地検は同事件の資料を検討した結果、業務上過失致死傷事件として起訴できるだけの証拠がそろわない、また、捜査に乗り出しても、業務上過失致死傷の時効が成立する事件発生後三年以内にメドのつく見通しがない」、こういうことをいって、地検は捜査不適切と結論、結局刑事事件としては扱わない。だから、政治的に解決するのが妥当だ、こういう結論を出しているというのです。これはもうわかっているんじゃないですか。大臣、われわれ政治家としては、いま苦難の道を歩いておられる遺族、患者、そして漁業権者に対して、早く光明を与えてやっていただきたい。学界論争でもってこの問題は解決しません。われわれ政治家が理解できるような、しかも軍配を振れるような道を早く見出して、これは大臣も、被災者に対して国のほうでまず金を出すべきですよ。そうして真実をしっかりつかんでもらう。私は、事の順序はそこにあると思うのです。事を処理する場合に、真実をつかむのだ、真実をつかむのだといっても、この事件は繰り返しのきかない実験なんですよ。結論を出せないんです。繰り返してやれるんなら結論を出せます。しかし、繰り返しのきかない実験です。それに対して結論を持って、それからおもむろに患者、遺族、漁業権者に対する手当てをしていこうということは、これは日暮れて道遠しです。私は、こういうことは政治家としてやるべきじゃないと思う。大臣も言われているとおり、もうわかっているんですから。まずケネディがやったように、カーソン女史が有機水銀は人体に非常に害があるという結論を報告されましたら、すぐにそれを禁止した、これが政治家としての一番の態度じゃないでしょうか。大臣、政治家としてまずやるべきポイントは何だというと、まず患者、遺族、漁業権者に対して光明を見出せるような方法をやるんだ、そのためには国が肩がわりをして補償していこう、これなんですが、大臣できますか。
  95. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は、その被害者のお気の毒なこと、これはもう重々はだえで感じております。そこで、加害者、原因者というものを追求しておる、探求しておるというようなことは、これは政治家としてとるべき態度じゃないんじゃないかという……(八田委員「それはとってもいいですよ。しかしまず……」と呼ぶ)しかし、まずそれより先に国家として何らかの補償なり処置に出るべきじゃないか、こういう御意見、それはあろうと思いますよ。それはあろうと思いますが、もう一つ裏からも考えてみなければなりませんことは、これからこういった公害が、これだけにとどまるわけではない、多く起こってくる、そういったような場合に、原因がはっきりつかめない、つかめないからそのつかむまでに国家なり政府なりがこれに補償していくということになりますと、結局その原因者、責任者というものが、わからぬなりにあるにきまっておる、そのある人間が、非常に肩の荷が軽くなってしまう。これでは私はいけないと思うのです。一方において、被害者というものはできるだけ早くこれに対して何らか救済の措置、賠償の措置というものも考えなければなりませんが、他方において加害者が必ずなければ、そういうことにならない。国家が賠償してしまうのだ、国家が補償するのだというて、そういった人たちが肩の荷をおろすというようなことに、かりになりますと、これは私は非常によろしくない。それだから、最後の最後まで原因者を探求するのだとは私は申しませんけれども、そこいらの間に、やはり政治家として私は相当デリケートな考え方をしていかなければ、ただ一方からだけ見ていくということも——将来の公害をいかに処理していくかということについての一つ考え方ではなかろうかと思っております。
  96. 八田貞義

    八田委員 大臣、そういう答弁をされると何回も同じことを言わなければなりませんけれども、私は政治家としての大臣の見解をお伺いしておるのであって、事の処理にあたっては、順序を書くように、序に従ってやる。序という字が示すように、興奮してもならないし、功をあせってもならぬということなんですよ。その場合に、大臣が真実をつかむために一生懸命今後努力するのだと言われてみても、これは繰り返しのきかない実験なんです。学界でも論争があるのだ。しかし、その結論が得られるかどうかわからぬのに、じんぜん待っていなければならぬ。患者、被災者が、それを一体どうしてくれるのだということですね。結局最後になって結論が出なかった場合、どうなるのですか。その場合、被災者に対してどうされますか。
  97. 坊秀男

    ○坊国務大臣 学問的にはっきりとした答えは、これは一つあって、一つに限るといったような、そういったような答えにはなかなかならないかもしれませんけれども、私はできるだけすみやかに、一〇〇%的を射たということでなくとも、いま三つの調査班がそれぞれ違った答申をしておる、そういうようなことでなしに——この三つの調査班も、調査の過程におきまして、連絡だとかあるいは相談だとかしたことはないと思うのです。そういうようなことでできた答申でございますので、そこで何とかばらばらなものを調整いたしまして、厚生省としての意見というものをまとめるということは、じんぜん日を過ごすとおっしゃいますけれども、私はじんぜんではない。近いうちには答えが出てくるということを期待して、また、それを確信いたしております。
  98. 八田貞義

    八田委員 もう時間がありませんからこれでやめますけれども、大臣、私は間違いが多いと思いますね。厚生省というものは、国民の健康と生活環境を守るのでしょう。被災者が出た場合に、原因がわかるまでおれのほうでは知らないということでは、通らぬと思うのです。まず私は、そんな学界論争が繰り返されるというのは、まだ揺籃時代の学問であるから、そういう学界論争が起こってくるのだ。仮説も出ない、ましてや定説なんて出やしないんです。そういう揺籃時代の学問の論争で、一体結論が出るだろうか。結論が出るまで待っていようなんということは、被災者を守る行政じゃありませんよ。まず国でやって、それから真実を探究するいろいろな手だてをやる。学者にうんと勉強しろといって研究費も出す、そこで初めて真実はこうだった、こういうふうになるのでしょう。それを、それまで患者に待てということは、私は厚生行政としてはちょっと違っておるのじゃないか。まず人を救うことですよ。これをまず厚生行政としてやってもらいたい。  それと関連して、先天性の異常児について、ダウン症候群という精薄患者があるのです。これについてちょっとお尋ねしたいと思うのです。時間もありませんから、ダウン症候児について簡単に申し上げますが、このダウン症候児というものは、大臣説明を聞いておられるかと思うのですが、厚生省がこれに対して見解が非常に種々変わっているのです。医療対策がなっていないのですよ。ダウン症候群というのは、これはあとで事務当局から大臣にちょっと簡単に説明しておいてもらいましょうか。——ダウン症候児について、それじゃちょっと説明を願いたいと思います。
  99. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 精神薄弱児になる原因につきましては、かくかくいろいろと理由があるというふうに学者の中では言われているわけでございますが、その中でダウン症候群、ダウン症候精神薄弱児という種類があるわけでございます。これはその理由と原因となりますのは、染色体の数が一般の人と違いまして、第二十一番目の染色体が三つに分かれているというふうなところによりまして、そういった原因によりまして代謝作用が変わってまいりまして、したがいまして精神薄弱の症候を呈する、こういうふうにいわれておりまして、一八八〇年代に英国のダウンというふうなお医者さんによってその事実が指摘されたのでございまして、一種の精神薄弱の症状が原因であろう、こういうふうにいわれておるのであります。
  100. 八田貞義

    八田委員 大臣、いま御説明のように、蒙古症と一名呼ぶのですが、これは日本に相当たくさんおるのです。潜在性の患者を入れると、六万名くらいいるだろうといわれておるわけです。こういった病気は、世界各国にあるのです。それで、アメリカでターゲル博士というのが薬物療法を考えまして、非常に医療の進展を見ている。日本でもこれを取り上げまして、ターゲルの処方を使ってそれの治療実験をやっており、非常に効果があらわれてきているのです。それで、初めはダウン症候群に対して健康保険を適用したのですが、ついに精神衛生法の三十二条によりまして、精神障害者ダウンの公費負担申請をしまして、これも適用されたのです。ところが、こういうふうな制度になってまいりますと、どんどん患者もふえてまいりまして、当時十一件くらい、みなこの精神衛生法第三十二条適用をやったのです。それでこういった非常に悲しい十字架を背負った子供さんを持った父兄は、非常に明るい光明を見出したわけですね。ところが、精神衛生課のほうで、あるいは保険局の医療課あたりから、蒙古症は療養の給付として認められないということを言い出してから、法律違反だということになって、これは中断しているのです。ところが一方、ターゲルの処方に基づくUシリーズというのですが、日本では製薬会社が開発しまして、これをMD散といっているのですが、これが完全にストップしてしまっているのです。これは一体どういう意味なんだろうか。先天性異常児に対して、しかもこれは非常に気の毒なんです。身障者に対しては障害者手帳を出しいる。精薄児に対しては手帳を出していない。しかもようやく開発された薬物を使って光明を見出したところが、精神衛生法三十二条適用違反だ、だから、これはやめなさい、療養の給付の対象にならぬ、こう言ったのでは、私はどうも厚生行政が間違っていはせぬか、こう思うのです。一体、これはどうして、精神衛生法の三十二条に——一回は適用したというふうに言っているのです、四十六件のうち十一件もやっておったのですが、今度は違うのだと言っている。そこで、厚生省の意思統一を求められているのですが、厚生大臣どうされますか。
  101. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 米国のターゲル博士が発明いたしましたUシリーズという薬がございまして、これはビタミンとか、あるいはミネラル、あるいは心臓、肝臓の甲状線の薬とか、消化剤とか、約四十種類にわたります薬品を調合されたもの、こういうふうになっておりまして、わが国におきまして、こういったUシリーズと同じようなもので現在MD散というものが研究されておるわけでございますが、現在のところ、私どもに入りました報告では、名古屋市医大あるいは大阪市医大、そのほか四つの大学におきまして、それぞれこのMD散についての研究が行なわれておるわけでございます。私どもが手に入れました報告によりますと、現在のところ、約四十例ぐらいにつきまして、そのうちの五〇%の二十例ぐらいにつきまして知能指数の上昇が見られておる、こういうふうなことでございました。したがいまして、このMD散自体につきましての薬価基準の登載というふうな点につきましては、まだ検討がさらにされておるところであるわけでございます。  なお、先ほど先生がこれが一部適用になったというふうなお話でございますが、これは総合剤としてのMDではございませんで、おそらくこのMD散の中に含まれておりますビタミンとかミネラルとかあるいは消化剤とか、こういうふうな薬自体が薬価基準に登載されておるわけでございますので、そういった意味で適用があったというふうにも考えられるのでございますが、いずれにいたしましても、現在このMD散につきましては、いま申し上げましたような四十症例というふうなことでございまして、今後さらにこういった点の学者における臨床実験等が進む、その結果によりまして検討しなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  102. 八田貞義

    八田委員 もう時間がありませんから最後に一問にとどめますが、実際そういう事務的な答弁では、さっき申しましたように救われないのですよ。症例が少ないから、まだ研究途中だからというようなことでは、困っておる者を救う厚生行政の上からいって、私は納得できないのです。今日の医療の問題で一番問題なのは、病気を見て病人を見ないということです。大臣、病気をなおしても病人をなおさなければ、その病気はまた再発するのですよ。そういうところにこの医療の問題があるのです。病気を見て病人をなおさない、病人を見ないということです。現在ある先天性異常児に対して、症例があまりありませんからとかなんとかいうのは、病気ばかり見ておるのです。これでは厚生行政として全然いけませんよ。大臣、こういった点をどうしますか。大臣、これはさっそく適用する——じゃありません、適用しておったのです。それを、そんな変な理屈をつけて適用していないと言うところに厚生行政の冷たいところがある。人を見ないと言われるのですから、大臣、これはさっそくもとに戻す、こういうふうに御答弁願いたい。
  103. 坊秀男

    ○坊国務大臣 まことに不敏にして、私もいま八田さんからお聞きしたところでございまして、どうするかといういまの御意見は、私も非常に重大なる御意見だと思います。いま事務当局からお答え申し上げましたが、調査を早急にいたしまして、何らかの措置をやりたい、かように考えております。私も、非常に不敏にしてはっきりとまだ事態をつかまえておりません。よくつかまえたいと思います。
  104. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  105. 關谷勝利

    關谷委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  厚生省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  106. 關谷勝利

    關谷委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 關谷勝利

    關谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  108. 關谷勝利

    關谷委員長 農林省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。八田貞義君。
  109. 八田貞義

    八田委員 倉石農林大臣に対して、農政の今後のあり方についてお願いいたしたいのでありますが、私は、今日の農業は、農業だけでは解決できない、そういう前提の上に農政というものを進めていかなければならないと申し上げるわけであります。その点について大臣の御見解をひとつお漏らし願いたいと思います。
  110. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、わが国の経済は、高度成長以来いわば片寄った成長をいたしておりました。ことに、御承知の農業基本法を制定いたしました当時に予測いたしましたよりも、ほかのほうの産業が急テンポで発展をいたしました結果、そのあおりも食っております。たとえば農村に労働力の給源を求める、そういうようなこともありまして、低生産性部門であるといわれておる農業、中小企業等が若干立ちおくれておるわけですが、私ども政府といたしましては、基本的にはやはり農業は、少なくとも農産物の自給度は、現状より落としてはならない、こういう見地に立って、急速にその効率化をはかって生産を上げていかなければならないのでありますが、それには、御承知のようにいろんな多くのネックになっておる問題もあります。そういうことについて、ただいま農林省では鋭意私が申しましたような方針に追いつくように、全力をあげて努力をいたしておるわけであります。
  111. 八田貞義

    八田委員 大臣の御答弁にありましたように、日本の農政の進め方について、私は非常に考えていかなければならぬと思います。というのは、いろんな人口の流動状態から考えまして、日本の農業の伸展をはかっていくためには、機械化こそ生産性向上の最高の手段だ、こういうふうな即断した見方をした議論が多いのです。しかし私は現在の農民をつかまえてみますと、明治年間は、いわゆる自給自足型の営農をやっておりました。もの言わぬ農民であった。ところが戦後になって、農業基本法ができる時代になって、初めて考える農民になった。ところが、先ほど大臣の御答弁にありましたように、青年がどんどん他産業に動いていく。そうすると、いまや農村に残っておる青年は、行動する農民だというふうになってきておる。ところが、行動する農民となってきておるけれど、実際に農村の青年に会っていろいろ話してみると、創造的くふうというものがやられていない。もちろんそういった努力を払う農村青年も多く見られるのです。いろんな農業の諸施策が、しっかり行動する農民のような状態になっておるにかかわらず、地方末端まで伸びた役人の組織によって、かごの鳥化されてしまっておる。そうして役人の組織によっていろんな生産が指令され、きのうは増産、きょうは減産というようなことになってきている。そうすると、行動する農民でありながら、かごの鳥になっておるのですから、あした何をつくったらいいんでしょうかというような役人依存の農民が出ておるのです。そうすると、これは今後の農業制度を幾ら変えてみても、私は、ほんとうに創造的な意欲あふるるような農村青年をつくり上げていかなければだめだというような感じがしておるのです。こういつたような点について、ひとつ大臣のお考えをもう一回お伺いしたいと思います。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもは、先ほど申しましたような基本考え方から、生産対策、それから流通対策、そういうようなことについて努力をいたしてまいるわけでありますが、従来やっておりましたことにつきましては、私は、基本法に定めてあります考え方というものは、やはりああいう大筋というものは、わが国の農政にとって大切な方向ではないかと考えておりますが、それにもかかわらず、生産がとかく渋滞しがちであるということについては、多くの理由を発見いたすわけです。しかし、何と申しましても、いま八田さんがおっしゃったように、意欲を持って農業を守り、増産をしていこうという考え方を多くの農民にほんとうに持ってもらうためには、一体何をすべきであるかということが、一番大切なことだと思います。そこで、政府が四十二年度予算にも申し上げておりますように、まず第一に、われわれは今日の一般世界的傾向といたしましては、貿易の自由化、資本の自由化が叫ばれ、またそれに即応して対処していくことが大筋としては必要なことでありますが、農産物というのは、御承知のように、十文字の風の吹きさらすまっただ中でほんとうに野放しにさせられましたならば、太刀打ちのできないものがかなりございます。しかしながら、われわれは一方において、農業の使命というものは、生産を増強いたしていって、そしてそれに伴って農業従事者の生活をよくするということも一つ仕事ではありますけれども、反面においては、やはり作物をつくっておらない一般国民、消費者に向かって妥当な価格で農作物を供給してあげるという義務も、並行して持っているわけであります。そういうことを考えますと、いま申しましたように国際競争のまっただ中にほうり出すというわけではありませんけれども、たとえば果樹あるいは野菜、そういうものにとりましても、国際価格に比べてわが国のそういう果樹や野菜類が結局コストにおいて対抗のできるように生産費を引き下げるということが、大事だと思います。そういうことのためには、どうしても規模を大きくいたして、所得も増大いたすということを考えなければならない。その前提には、農林省も申しておりますように、土地改良はぜひ必要である。したがって、長期土地対策を推進いたしてまいっておるわけでありますが、そういう前段に立って、もう一つはやはりそのあとを受けて構造政策を進めてまいる、構造改善を進めてまいる。必ずしも私どもは省力のために機械だけを用いようというわけではありませんで、やはり必然的に他産業の伸びていくほうに労働力を吸収される、そのこと自体は、私は日本産業の伸びていくためにはけっこうだと思うのです。しかし、それがゆえに農業の生産性を低下させるというふうなことであってはならないので、省力のために機械力を用いることも当然でありますけれども、その他生産性を上げるためには、いま申し上げましたように土地改良、構造政策を進めてまいって、そしてなるべくエッセンシャルのいい収穫を得るようにいたしてまいりたい、こういう方針できておるわけであります。
  113. 八田貞義

    八田委員 農業経営は、土地と資本と労力の組み合わせによって成り立っているわけであります。しかし、わが日本は山地が七割くらいを占めておって、平野地が非常に少ないのです。省力技術あるいは機械化農業ということが進められる個所は、平野地帯だけなんですね。山寄り地帯は及びもっかないのです。だからできないのです。そして土地改良とか圃場整備というような、今日やられている構造改善事業は、決して間違っているというのではないのです。非常にりっぱな政策で、一そう強力に推進してもらいたいのです。ただ、これは私に言わせれば、農政の外科学なんですね。ひっくり返して、いろんなふうに圃場を大きくする、医学にたとえれば、いわゆる農政の外科学、医学はやはりそれだけではいけない。どうしても内科学が必要なんですね。農政の内科学はないのですね。農政の内科学は何だというと、土壌の問題です、土地の性質の問題です。大臣も御承知のように、日本の土壌は火山灰土壌です。酸性土壌です。しかも年間二千ミリの雨が降る。雨が降ると珪酸、燐酸が溶ける。残るのはアルミナだけです。アルミナは、農作物に対して直接、間接の害作用を持っております。こういった農政の内科学というような土壌改良の問題を、まず農政の中に取り上げていく必要があるのではないか。ただ、現在の人口減に伴う省力技術だけでもって、機械化農業だけでもってやっていくということは、できなくなったのです。そういった機械化農業で大きな圃場でもってやれるという農家は、全農家の大体二割か二割五分です。七割五分はもう兼業農家です。しかも第二種兼業農家がどんどんふえていくのです。もう近き将来には半分以上になりましょう。そういう場合になってくると、こういった第二種兼業農家に対してどういうようなビジョンを与えていくのかというのが、私は農政として、あるいはわれわれ政治家として、一番必要だと思うのです。その場合に、まず必要なのは、農政の内科学として土壌改良というものをやっていかなければならぬ。そうしますと、たとえば土壌改良をやっていく場合には、日本の土壌は酸性土壌だから、PHを六・八くらいにするように炭カルを十分に散布する。しかし、それだけではだめだ。深く二十センチか三十センチくらい客土する。あるいは酸性を中和していくためには、どうしても堆厩肥を加えていかなければならぬ。ところが、もう堆厩肥を加えるような農家は、ほとんど見当たらないのです。金肥ばかりにたよっておるから、だんだん地力が低下してくる。そうして非常に生産性のあがらない状態になってきておる。平野地帯には、あるいはトラクターが入り、コンバインが入り、あるいはヘリコプターが飛んだりして、そういった大型農業ができましょうが、山寄り地帯ではそれができない。また、山寄り地帯と平野地帯に共通しているのは、土壌の問題です。土壌改良というものをやらなければならぬ。アメリカでは、あの広大な地域で土壌選択制は自由に許されておるのです。ところが、あのアメリカでさえ、土壌保全法というものがあるのです。日本にはそれがないのです。大臣、そこに私は日本の農政の中に農政内科学というものがないと言いたい。これが一番大切なんです。それが等閑に付されているということは、非常に問題だ。日本の土壌の宿命に対する自衛手段と生産手段とが巧みに組み合わされた旧来の農法を老農技術として蔑視し、機械化こそ生産性向上の最高の手段と即断したところに、私は今日の農政の問題点があると思うのです。大臣、どうですか、土壌改良法という法律をお出しになるようなお考えはございましょうか。
  114. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 八田さん、ときどき送っていただきますところの論文等もいつも拝見していろいろ教えられるところが多いのでありますが、農林省でも、たとえば米作などにつきましても、昨年は佐賀段階といわれるようなああいう集団的な耕法をとられて、非常に反当収穫を上げました。やはりあそこでは非常に熱心に種子の改良をいたしております。さらに、これからわれわれが取り組むべきことは、いかにしてこの農業に科学力を入れるか。いまお話しのように、日本の地力は最近とみに化学肥料が多量に用いられるようになりましたことと、もう一つは、労働力がだんだん欠乏いたしてまいりましたことから、肥料要素もだいぶ少なくなったことは、御指摘のとおりでございます。そこで、農林省では御承知の耕土培養法という法律はございますが、この法律によっても、あるいはまたさらに新しい研究に基づいて、地力の培養については並行して最善の努力をいたしてまいりたい。私は、予算委員会の合い問に、ときどき地方の試験場に行って、専門技術家の話を聞いて、たいへん興味深く感じておるのでありますが、御指摘のように、狭い国土で、そして反当収穫を上げ、しかも品質のよいものをつくっていくためには、土壌に力を入れる技術というのは、非常に大事であると思っております。幸いに各地の研究所におきまして、御趣旨のような趣旨でいろいろ研究をいたしておるわけでありますが、なおこれからも地力の培養につきましては、力を入れてまいりたいと思っております。
  115. 八田貞義

    八田委員 先ほども申しましたように、アメリカでは、いわゆる土壌保全基本法というのができているのです。これは土壌改良のための技術援助と資金の補助を与えています。土壌選択の自由を持っておるアメリカでさえ、土壌保全基本法というものができておるのです。ところが、先ほど申し上げましたように、日本は火山灰土壌であって、石灰分に富んでおって、珪酸分に非常に乏しいのです。石灰分は膠質学が教えるように、年間二千ミリをこす多雨気候によって洗い流されつつある間、珪酸分も溶けてまいりまして、最後には作物に対しまして直接、間接に種々の害作用をするアルミナに富んだ土壌に変わってしまう。ラテライトを熱帯土壌の死骸というならば、日本の火山灰土壌こそ温帯土壌の死骸にほかならない、こういうふうな状態になっているのです。欧州土壌と比較して、日本のそれは、牧野、原野、畑地、開拓地を問わず、そのままでは作物をつくれる土とはいえないのです。こういうことを考えますと、どうしても私は農政の内科学として、アメリカのように土壌保全基本法というものを早急におつくりになるように持っていっていただきたいのであります。しかもまた、私は先ほど堆厩肥の問題について地力をつけるということを申し上げましたが、その前提となるのは、どうしても有畜農業です。有畜農業を伸展さしていくためには、どうしても国有林の開放ということに結びついてまいるわけです。国有林開放については、われわれ議員の間で非常な熱望を持っておるわけですが、大臣、これについて政府提案のお見通しなどについて、お漏らし願えれば非常にありがたいと思いますが、いかがでございましょう。
  116. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 堆肥の必要なことは、私ども痛感いたしております。また、有畜農業と申しますか、御承知のように、日本の食糧全体から考えてみますと、畜産関係が比較的脆弱である、こういうことに対して全力をあげてその需要をまかなうようにいたさなければなりませんが、そういうことで、昭和四十二年度予算で、全国の四カ所を指定いたしまして、営林局がみずから経営をすることによって肉牛の養成をいたしていくことを試験的に始めることにいたしまして、予算についても御審議を願っておるわけでありますが、同時にまた、そういう面からも考えまして、国有林のあり方についても農林省は検討を続けてきておるわけでありますが、国有林の問題については、機会あるごとに私どもは各方面の御意向等を尊重しながら、やはり森林を守っていくということ、保安林を守っていくということの重要性ももちろんゆるがせにすることはできませんが、里地に近いような方面においては、やはり必要なる牧草を培養して、そしていまお話しのような国民の需要をまかない得るような粗飼料をみずから生産をしていくことに全力をあげ、そして輸入飼料をなるべく少なくしてまいる、こういうような方向から、国有林の活用についてのことを政府も考えております。でき得べくんば私どもの考え方を明日の閣議で決定いたしたいと、そのように準備をいたしておるわけであります。
  117. 八田貞義

    八田委員 大臣から非常に希望の持てる御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。私は時間の関係できょうはこれだけにとどめますが、従来の農政は言うならば農政の外科学だ。どうしても土壌の改良を考える農政の内科学というものに持っていかないと、ほんとうの農政というものは伸展していかない、こういうふうに考えるのであります。どうかひとつ大臣、農政の内部のためにいろいろな施策を講じていただきまして、アメリカのように土壌保全基本法なんかもおつくりになるような御努力を賜わりたいと思います。
  118. 關谷勝利

    關谷委員長 次会は、明二十六日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十六分散会