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1967-05-16 第55回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十六日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 關谷 勝利君    理事 伊能繁次郎君 理事 塚田  徹君    理事 八田 貞義君 理事 藤尾 正行君    理事 細田 吉藏君 理事 大出  俊君    理事 山内  広君 理事 受田 新吉君       内海 英男君    桂木 鉄夫君       塩谷 一夫君    高橋清一郎君       橋口  隆君    武部  文君       浜田 光人君    山本弥之助君      米内山義一郎君    吉田 之久君       伊藤惣助丸君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         人事院事務総局         管理局長    小林  巖君         人事院事務総局         任用局長    岡田 勝二君         総理府人事局長 増子 正宏君         宮内庁次長   瓜生 順良君         皇室経済主管  並木 四郎君         外務大臣官房長 齋藤 鎭男君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業省貿易         振興局長    今村  昇君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   浅尾新一郎君         通商産業省企業         局産業立地部長 馬場 一也君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 五月十六日  委員山手滿男君辞任につき、その補欠として橋  口隆君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  宮内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  八三号)  通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一七号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九号)  在外公館名称及び位置を定める法律及び在外  公館勤務する外務公務員給与に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより会議を開きます。  宮内庁法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 この前の委員会お尋ねをして、引き続き残余の質問を残しておきました問題点確めたいと思います。  今度の法律改正案の中に、十一条の一般職特別職を一括して扱う措置をとっておられるわけでございますが、この問題、他の省に関連するものはどこがあるかをお尋ねしておったわけです。宮内庁としてすでに御調査をされている点、承っておるんですが、あらためて比較検討の必要上、御答弁を願いたい。
  4. 瓜生順良

    瓜生政府委員 他の省庁の関係で、この特別職一般職関係規定のありますのは外務省防衛庁、その二つがあると思うのでございますが、その二つのところの特別職何名、一般職何名とわかるような規定にはなっております。
  5. 受田新吉

    受田委員 人事院の御見解として、規則で改正の可能の問題が提起されておるわけですけれども、特別職を直接所管しない人事院として、特別職一般職を包含した扱いの中に問題が派生しないか、御答弁願いたいのです。
  6. 小林巖

    小林(巖)政府委員 一般職法律上の差異と申しますか、身分上の差異につきましては、取り扱いが異になっておるのでございまして、一般職につきましては、御承知のように国家公務員法におきまして、任用給与身分保障、服務、そういったような人事制度の諸方面において、いわゆる近代的人事管理方式採用せられておりまして、職員の利益の保護、福祉の増進ということについては、格別の配慮がなされておるわけでございます。特別職につきましては、その職務性質あるいは内容勤務形態一般職とは異なっておりますので、先ほど申し上げましたような人事管理制度上の諸方策というものが、あるいは特別の取り扱いになり、あるいはまた部分的に準用になるというようなかっこうで、一般職とは取り扱いが違うわけであります。そういうようなわけでございますので、この両者の区別に着目いたしますと、やはり一般職一般職特別職特別職――特に国家公務員法におきましても、特別職はその二条三項で限定的に特別職の範囲を規定しておりますので、その取り扱いにつきましては、やはり一律に取り扱うというよりも、むしろその間の区別を考えて、明確にしておくことが必要であろうというふうに考えるわけでございます。
  7. 受田新吉

    受田委員 この特別職職員を三人ふやして一般職を三人減らすという措置が、このたびされることを一括して宮内庁で融通できるような措置にしようというわけですね。そういうときに、総数だけきめておいて、部内で自由に操作することになると、これから陛下及び皇族の方々のお仕事がだんだんふえてくる、民間との接触も高まってくる、海外の御旅行もひんぱんになってくる、そこで特別職はどんどん増員するが、一般職はどんどんその総ワクの中で差し繰られて減らされてくるということも予想されるわけです。そうすると、一般職職務は減ってくるわけじゃないのですから、仕事の量は従来どおり必要量がある。にもかかわらず、特別職のふえる分を一般職を食ってそれを融通するという形を自由に進行させる危険性も起こってくると思うのです。その点について御意見を承りたい。
  8. 瓜生順良

    瓜生政府委員 この一般職定員につきましては、行政管理庁の御方針もあって、最近欠員補充補充する場合も何%というようにされておりまして、常に一般職関係では、いまの状況ではすでに欠員があるのが普通のような状況になっております。いまこの表をちょっと見ますと、四月一日現在ですと、一般職のところで二十名ぐらい欠員がございます。そういうようなことでございますので、この特別職のほうをそう多数にふやすこともまあないと思われます。若干名ふやす場合においては、この欠員の分を回すということで、まず円滑に行き得ると思います。ただし、これは現在の状況で申し上げるのでありまして、たとえば宮殿でもできましたり、また東側地区の公開問題でも起きますと、それに伴います人員も相当要ります。そういう場合には増員をしなきゃいけないと思います。そういう場合には、この総数の千二百十六人を増員をするということでまた法律改正をお願いすることになると思いまするが、ごく一、二名程度の場合でございますると、普通の状況では一般職のほうがそう不自由を大きく受けないで円滑にやり得るというようなことであります。そうしますと、そのことが側近のほうの仕事関係を円滑にやる上に大きな力になりますので、そういうような点をひとつわれわれのほうを御信頼いただいておまかせいただきたいというのが、この法案をお願いする趣旨でございます。
  9. 受田新吉

    受田委員 宮殿造営措置をするための臨時職員の増置などというのは、これは特別の措置でございまするから、そういう場合は、造営部を設置したときの事情などを考えても、人員確保の新しい要求がされることは当然考えられるわけですけれども、平素の状況の中で一般職が食われて特別職がふえていくということになると、一般職職員職務の分量が減っているわけじゃないのでございまするから、その部分に食い込まれることは、一般職職員過重負担がそこで発生する危険はないか、これを私懸念しておるわけです。
  10. 瓜生順良

    瓜生政府委員 これは現在、行政官庁どこでもそうでございますか、行政管理庁方針で、定員をなるべく減らしたいということから欠員補充というような方針をとられまして、欠員がある場合その何%かは、補充できるというような方針になっております。そういうような場合になりますると、千名以上の一般職でございまするから、全体の仕事を見まして、情勢に応じてこの部分事務を簡素化して人を減らしてもやれるというようなところを減らして進めていくわけでございまして、多数の数ですとそう簡単にまいりませんけれども、数名以内ぐらいですと、そう無理なくやれるように、一般職の人が特に困るようなことでなくて、無理なくやれるというふうに考えておるわけであります。
  11. 受田新吉

    受田委員 私は他省関係をちょっとお尋ねしたいのですが、人事院のほうとして、防衛庁とか外務省とかよく似通った役所がある。そこで一般職は、いまあなたが指摘されたように、国家公務員法各種の特別の擁護政策がとられておる。特別職は、その点で比較的自由な立場扱い方をしておる関係で、一般職ほど優遇をされない。そういうものが、外務省にも防衛庁にも同居しているわけですね。宮内庁にも同居している。私は、宮内庁の場合などは、特殊の任務を持った役所であるので、一般職職務特別職という職務とがそう大きな差を持つ役所でもないと実際には思っておるのですがね。そこに種類を異にする二つ公務員が同居している。こういう形のものが正常な形として好ましいかどうか、御答弁願いたいのです。
  12. 小林巖

    小林(巖)政府委員 御指摘がございましたように外務省あるいは防衛庁、また宮内庁におきまして、一般職特別職が同居しておるということは、そのとおりでございます。そういうようなかっこうが好ましいかどうかというお尋ねでございまが、国家公務員法のたてまえといたしましては、特別職につきましては、御承知のようにその二条三項におきましてはっきりとその数を明定いたしておりまして、これ以外の者はすべて一般職だというふうに明らかにしておるわけでございます。こういうふうに特別職一般職と分けました理由は、やはりその職務内容、あるいは職務性質、あるいは勤務形態といいますものが、一般職の職とは本質的にと申しますか、とにかく根本的に違うものでございまして、その取り扱いを別にするほうが適当であるという見地から、こういうような法律上のたてまえになっておると考えるのでございます。そういうわけで、こういうような区別を廃止する、特に宮内庁におけるがごとく、その職務性質一般職に非常に近いので廃止してしまうというような御意見でございますが、しかし、宮内庁職員の中にも、やはり一般官庁職員職務と全く同形と申しますか、同じ性質のものがたくさんあるわけでございまして、一般職職員を保護する立場から、これを貫きますならば、やはり他の官庁のような事務的な一般職員一般職として残しておくということが適当ではなかろうか、かように考えるのであります。
  13. 受田新吉

    受田委員 ちょっと、これは関連事項になるのですが、防衛庁にある防衛施設庁職員一般職になっている。それから防衛庁の他のシビリアンは特別職になっておる。これは、勤務性格が決して変わっていません。一般行政事務を扱っている点においては、防衛庁施設庁関係職員も、それから防衛庁の他の部局関係職員も、同じような仕事をしているわけです。それを、施設庁のほうは一般職にして、それから他の部局職員特別職にしておるというようなことは、どう見てもおかしな現象だと思うわけです。宮内庁関連して、この現象の奇異なる姿を、どう人事院判断しておられるのか、御答弁願いたい。
  14. 小林巖

    小林(巖)政府委員 防衛施設庁部局の中のある職員につきまして、あるいはまた、ある部の職員につきまして、これが一般職になっておりますことは、これは御指摘がございましたとおりでございます。それ以外の職員につきまして特別職になっております理由は、やはり自衛官との関係から見まして、その勤務形態等を同一と申しますか、それと同じ範疇において取り扱うのが適当じゃないかという見地から、そういうふうな取り扱いになっておるのだと私は考えるのでございます。
  15. 受田新吉

    受田委員 特別職一般職区別をする基準というものが、自衛官特別職だから、それと同じところで働いている者は特別職というような、そういう判断というものは、はなはだおかしな判断だと思う。やっている仕事そのものは、自衛官がやっている仕事文官のやっている仕事というものは、はっきり相違がある。これは防衛の直接の担当者になる自衛官事務処理をする文官とが区別されないというような、つまり一般職特別職区別されないようなことは、筋合いとしてはなはだあいまいである。そうお考えになりませんか。ちょっと疑義があるとお思いになりませんか。
  16. 小林巖

    小林(巖)政府委員 御指摘のような奇異な点もないとは思いませんが、私は職務性質が、特に特別職とせられております防衛庁職員は、自衛官との一体的な運営と申しますか、そういう面から見て特別職として取り扱うのが適当だというような判断でございまして、一般職に置かれております職員は、こういう仕事内容職務内容は、他の官庁にもあるものでございまして、それらの官庁におきましては、すべて一般職でございますので、それとの関連から見て、やはり一般職というように取り扱ったのではないかと思うわけでございます。  宮内庁につきましては、特別職一般職区別は、御承知のように国家公務員法の二条三項十号におきまして明らかにせられておるわけでございます。その点、防衛庁とちょっと性格が違うかと思います。
  17. 受田新吉

    受田委員 宮内庁はその点が違う、それは私も了承しておるのですが、一般職特別職相違点というものが、あいまいもこなかっこうでなされておる役所がある。いまの防衛庁などそれなんです。人事院は、そういう性格十分前提にして、分離するときになぜすかっとお取扱いにならないかということが、私のいまの質問の要点なんです。宮内庁の場合は、侍従とか女官とかいうものが、一般職で規律さるべき性質のものでないという立場で、特別職に置いておられると思うのです。しかし、いま私が指摘したいのは、女官とか侍従とかいう立場にある方々一般職にしてどこに不都合があるかということを、逆に私はお尋ねしてみたいのです。
  18. 瓜生順良

    瓜生政府委員 侍従とか女官とか、側近奉仕仕事に携わる方については、普通の行政事務をやる学識経験の能力というようなことからくる資格だけでは判定しかねる点がありまして、側近におられる皆さんは、ちょっと秘書のような仕事になるわけでして、したがって、人柄その他について、一般社会から広い目で見てこれを選んでくる必要がありますので、一般職でありますと、国家公務員法で、学校を出て試験がどうとか、採用の場合にもいろんなむずかしい基準がございますけれども、そのむずかしい基準を経ないで、もっと広い目で見て、いい人にそういう職についていただくというようなことから、やはり特別職であったほうがいい人を得られるというようなことでございます。
  19. 受田新吉

    受田委員 私がお尋ねしておる問題点は、資格を付与するための試験、そういうものが一般職とは変わって、そういうむずかしい試験などパスしなくても、人柄でいくのだというお話でございまするが、それはそれとして、試験あるいは資格要件というようなものは、それは特例を設けることは幾らでも一般職でもやっておるわけなんで、普通そういう採用方式をやっておるわけで、試験をしなくても採用する道はあるわけです。むしろこうした職種の皆さん国家公務員法で十分擁護してあげるような立場で、特別の資格要件を満たす方法を講じて一般職として採用してあげる方法はないか、要するにそういうことなんです。
  20. 瓜生順良

    瓜生政府委員 現在の法制のたてまえから申しますと、いま申し上げたようなことでございますが、なおまた、その職につかれてからあとの待遇関係、これも一般職ですと、他の官庁一般職との均衡とか、いろいろ問題がありまして、その人に応じたいろんな待遇のやり方とか、要するに俸給表侍従女官一般職俸給表準用ですから同じですけれども、どこへ当てはめてどうとかいうようなこととか、そういう場合に、特別職であったほうが実情に即したようなふうな扱いをしていただける、他との均衡の点でむずかしい問題が少なくて済むというような点がございます。  それから、身分保障関係は、これは国家公務員法による強い保障はありませんとはいいますものの、実際はもう同じようにそれぞれやっておられまして、特に特別職だから不安を感じておられるというような実情ではございません。
  21. 受田新吉

    受田委員 特別職一般職との予算関係俸給費に伴う予算関係というものは、これは、これを一緒に合わせた場合に全然支障が起こらぬと判断されますかどうか。
  22. 瓜生順良

    瓜生政府委員 予算面では、一般職のこういうランクの人が何名とかいうように、ずっとそれぞれ基礎が出ます。それから特別職侍従の分がどう、女官の分がどうというふうに、大蔵省でいろいろ査定しながら組んでいただく場合に、こまかくその内訳は予算書には出ていくわけであります。
  23. 受田新吉

    受田委員 その予算書に出る場合に、特別職一般職とを一緒にして支障が起こることはあり得ないかというお尋むです
  24. 瓜生順良

    瓜生政府委員 宮内庁法定員を一本にしていただきましても、予算書のほうではそういうふうに分かれておりまして、支障は別にございません。
  25. 受田新吉

    受田委員 人事院のほうとして、この一般職特別職俸給は、一般職に準じて特別職を使っておるということで、いま宮内庁次長が言われたような形で、予算面においても、予算書に出るとおりで、その間に予算上の措置で問題は起こらぬと、人事院判断をされておりますか。
  26. 小林巖

    小林(巖)政府委員 予算上の措置支障がないかどうかというお尋ねでございますが、一般職につきましては、一般職職員給与に関する法律の適用がございますし、あるいは特別職につきましては、別の法律によることになっております。結局予算上、これらの両種の給与につきましては、それぞれ大蔵省のほうで予算上明らかにいたしておりまして、その点明確な区別があるのでございますので、実際上支障が起こるようなことはないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  27. 受田新吉

    受田委員 私は、もう一つ、宮内庁設置法並び施行令並びにそれに伴ういろいろな規定の中で、宮内庁職員名称の問題が一つあるのです。これは長い歴史と伝統を持つ皇室のことでございますから、特殊の名称が用いられておる。その名称の中に、一般国民にはちょっと理解のむずかしいことばがある。前にも指摘したことがあるのですが、東宮大夫、こういうことばは、国民に非常に理解がむずかしい。東宮大夫というのはどういうものであるか、この法律にも出ていることですから、ちょっとお答え願いたい。
  28. 瓜生順良

    瓜生政府委員 この東宮大夫は、東宮職の長官という意味でありますが、まあこれは古くからあるその名称をずっと使用しているわけであります。終戦後、古くから使っていた名称でも、外部との関連の相当あるような部局であり、またそれを適当なことばに直せるというようなものは、直しておるわけであります。たとえていいますと、いまは主計課といって、昔ですと内蔵寮というようなふうに、あるいはいまの管理部が主殿寮というふうなことでありましたり、そういうようなのは、普通の管理部になっております。直せるものは直しておるわけであります。しかしながら、昔からずっとある名称は、やはりそういう特別の仕事名称として、特にかわるいい名前がないという場合には昔からの伝統を踏襲しておるので、これは英国あたりの例もいろいろ調べたのです。英語でも、英国あたり皇室名称は、なかなかむずかしい名前がずっと踏襲されておりまして、わが国のほうがまだだいぶそれを近代的に直しているようなわけであります。名称というのはなかなかむずかしい問題で、いま先生のおっしゃいましたような問題をわれわれは常に考えておりまして、他に何かいい名称はと考えておるのでございますが、なかなかいい知恵が浮かばないものでございますから、そのままになっておりますが、そのままでいいのだというふうにも考えておりません。改善をすべき何かいい名案が浮かべば、また考えたいと思っております。
  29. 受田新吉

    受田委員 これは職務名称だけでなくして、そのほかの皇室の独特の名称の中に、国民になじまないことばがあるわけですね。たとえば大膳課の「供進」ということばは、ちょっとわからぬ。「諸宴の配膳に関すること。」はわかるとして、「供進」というようなことばは、一体何であるか。それから「賜与」これは総務課において担当している。「賜与及び受納に関すること。」こういうことば、これは何か神秘的なものを想起せしめるようなことばが残っているわけです。一般法律用語としてはちょっと使われてないことなんですがね。これらはもっと平俗に改める必要はないかと思うのです。
  30. 瓜生順良

    瓜生政府委員 各部局職務内容なんかをきめてあります政令なんかに、ちょっとそういうようなむずかしい用語があるという点は事実でございますが、これは従来ずっとそういう、「賜与」ならばこういうことだということ、それから「供進」というのは、ちょっとおわかりにならないかもしれませんが、これはごく内部的なことで、両陛下なんかにお食事をおあげするのが「供進」でございます。それを「供進」と一言で表現されるものですから、長く使っておる。それをわかりやすくしようと思うと長くなるものですから、昔から使っておることば、しかもこれは内部の人が自分の仕事をこうというふうにわかるためのもので、外に対する関係があまりない部分でございますので、従来からのことばで、わかりやすくて簡潔であるというので使っておるものがございます。よく政令なり訓令なんかの改定をする際には、いま先生のおっしゃいましたようなことは常に頭に置いて、ときどきは、こうしたらどうだというので名案が浮かぶ場合には、名案に変えているわけで、前向きには考えているわけでございますが、まだ、いまおっしゃるような点はある程度残っております。その残っているのは、いま申し上げたような事情でございます。
  31. 受田新吉

    受田委員 国家行政組織法関係した各種法律の中で、宮内庁は独特の用語を用いておられるわけです。これでは一般国民にわからない。みんなにわかりやすいところに法律の意義があるので、宮内庁職員でなければわからないというような用語が各所に飛び出しておるし、またその職務もちょっと一般国民にはわからない。国民は、法律を見てその法律の対象になることを考えるわけですから、平俗で、そして簡明で、国民理解しやすいような用語を用いる、こういう措置をぜひ――たとえそのことばが長くなったとしても、私は国民の側から見たら納得することだと思うのです。だいぶ平俗化に努力せられている徴候を拝見するのでございますが、宮内庁は、常に国民皇室として国民全体が非常に敬愛をささげている皇室の業務を扱われる役所ですから、国民理解されるかっこう皇室を大事にするように仕向けていただきたいと要望申し上げておきます。  さらにいま一つ、私がこの前の質問のときに指摘しました天皇皇后の御旅行のことでございまするが、皇后陛下が御旅行をされる場合は、これは従来といえども、海外旅行をされる場合は問題はなかったわけであります。皇后自身単独で御旅行をされるという道も、私は開くべきではないかと思います。これはもうお年を召しておられて、あまりこれから何年も先になると、両陛下とも御旅行が困難になる。天皇が御旅行できない場合は、せめて皇后が代行せられるということが、これは私は、また女性がお一人の旅をされるということは、うるわしい国際融和をはかる上に功績が積まれると思うのですけれども、このこともひとつこの宮内庁法関係してお尋ねをさしていただきたいのです。
  32. 瓜生順良

    瓜生政府委員 従来国内の御旅行の場合でも、原則として天皇皇后陛下お出かけですが、天皇陛下だけで出かけられる場合もございます。皇后陛下だけでお出かけの場合は、日本赤十字社の会合なんかで、日本赤十字社の総裁をなさっておるという関係上、一人で国内旅行をなさることはございます。しかし、海外の場合について考えますると、もしお出かけになれば、両陛下おそろいでお出になるというのが、普通の形であると思います。何か特別の場合に皇后陛下だけでお出かけになるというようなことが、あるいは日本赤十字社関係のようなことであり得ればこれは別でございますけれども、普通はやはりおそろいでお出かけになるのがたてまえだと考えております。
  33. 受田新吉

    受田委員 これは国際親善をはかる上においても、非常に大事な意義があると思うのです。それで、特に人道的な問題などをかかえた国際会議などに皇后陛下が御単独で御旅行されるというようなことを考えていいんじゃないか。万国赤十字の会合などへお出になる、そういうことで、皇后陛下御自身は海外旅行をなさられたことはちっともおありじゃないのじゃないかと私記憶しておるのですが、この人生に一度の海外旅行もされない皇后陛下ということであれば、これは悲劇のヒロインのような感じを受けます。せめて御存命中に海外旅行という道も開いてあげるということ、両陛下一緒であればなおけっこうですが、単独にでもそうした赤十字社の国際会議などは、あるいは人道的な目的を持った海外旅行というようなことも、特に戦跡を歴訪されるというような場合は、皇后陛下単独でも――私は東南アジア等は非常に意義があると思うのですがね。そういうところも十分心づかいをされてしかるべきではないかと思うのです。
  34. 瓜生順良

    瓜生政府委員 いろいろの御意見については、われわれも敬意を表しましてよく考えたいと思いますけれども、両陛下おそろいでお出かけになるというような機会を得たいものだということを考えております。
  35. 受田新吉

    受田委員 さらに、これはもう私自身がしばしば指摘していることでございますが、皇室関係方々の市内あるいは国内の御旅行の際に、非常に警衛がきびしい。私は青山宿舎にいまおるわけです。美智子妃殿下がお通りになるときも、公式とあるいはプライベートと違うのではあろうと思うのですけれども、非常に厳重な警戒の場面をしばしば私は目の前に拝見しておるわけです。もっと皇族の方々が自由な御旅行あるいは市内の行動ができるように、市内の行動などもう少し、きびしい警衛でなくて、もっと開放された気持ちで行動されるような方法がとれないものでございますかしら。
  36. 瓜生順良

    瓜生政府委員 警護の関係は警察庁のほうでなさっていますが、その警衛のやり方につきましては、宮内庁としては常にできるだけ簡素化してもらうように、あまり厳重ですと、お出かけになるのもお出かけになりにくくなる場合もございますから、お出かけが円滑にできるようになさって、そして一般国民とも親しまれるように、警衛があまり厳重でないようにということは常に希望しておるわけでございまして、部分的にはいろいろ改善してもらっている部分もございます。しかし、ときによりますと、少し厳重だなという感じも受けられるようなときがあるかと思いますが、そういうのは、表面には出ておりませんが、いろいろな情報がある場合があるのでございます。われわれのほうには内々聞かしてもらう場合がありますけれども、やはり世の中のたくさんの方の中には幾らか精神的に異常の方もございまして、それにいま精神病院も十分じゃないものですから、そういう方が一般の町に出ておられまして、そういう方の関係からいろいろな情報がときどき入ることがあるのです。そういう場合ですと、やはりお出かけのときに気を使います。そういうときに、特に厳重とお考えになるのではないかと思いますが、根本の原則としては、一般国民とできるだけ親しまれるように、警衛はできるだけ簡素にということで警察のほうにお願いをし、警察もそのつもりでやっておられる。ただ治安上やむを得ない場合においては、必要な措置をとっておられるということでございます。
  37. 受田新吉

    受田委員 私が指摘させていただいておるのは、そうした精神異常者などが襲いかかるようなかっこうで御旅行、行動されることをあえてお願いしておるわけではないのです。しかし、一般の交通路を遮断して、あまりに特権的なかっこうで行動されるということになると、せっかく親近感を持った皇室御一家に対して、何らか特権意識をもってこれを見るという一般市民感情が起こってくるという危険があると思うのです。これは総理自身もしばしばそういうことを、猛スピードでやっているのを見て、いささか不愉快を感じておるのですけれども、せめて車中から両陛下あるいは皇太子御夫妻、常陸宮御夫妻などが自由なお気持ちで民衆の中に親しまれるような形で、しかもそれがあまり一般民衆の行動を阻止しないでいける方法が、私はあると思うのです。一般の交通規則を守りながら行動されるという、しかもある程度の警備をしてあげるという形で、方法があるのではないかと思うのですが、これは私しばしばそういう場面にぶつかって、一般市氏の一人としてこれを拝見しておるものですから、特にそういうことを感ずるわけで、何かごくふうをなさる必要があると思います。お答え願います。
  38. 瓜生順良

    瓜生政府委員 現在皇太子殿下などのお出かけの場合も、公式の場合ですと、例のゴーストップのところなんかは、普通のゴーストップでなくて、自由にずっとこうすぐに通られる、そのために一時そこを整理しております。そうでなくて非公式の場合には、ゴーストップのところはゴーストップでとまって、そして普通にお出かけになっておるわけであります。常陸宮さま、他の皇族方の場合になりますと、この場合はもうゴーストップはゴーストップで、普通の車と同じようにやっております。特別に何か御名代とかなんか公式の場合は、これはまた別でございますけれども、一般にできるだけ迷惑をかけないようにといういまの受田先生の御意見、われわれも同じ考えを持っておりまして、警察庁のほうとも常にそういう気持ちで連絡をしておるわけでありますが、いま警察庁の立場から見ると、現在の交通事情が非常に悪いものですから、もしもそこに大きな交通事故でも起きて万一のことがあってもいけないというようなことから、普通の方に対するよりも特にいろいろ気を使っているという点は、これは確かにあると思います。その気の使い方が、時によると、外から見られて何か厳重だというふうに受け取られるようなこともあるのではないかと思いますけれども、しかし、それがために皇室国民との親愛感が阻害されるということであってはいけないのでありまして、そういう点は、いまの御意見の点も、さらに今後のいろいろな連絡、打ち合わせの際には、十分また話し合っていきたいと思っております。
  39. 受田新吉

    受田委員 その点そこでおきまして、もう一つ、歴代の天皇のお墓、陵墓、これはお役所が一つあるわけです。この扱い方は、いまどういうかっこうで陵の管理をしておられるのですか。一般民衆から見て、往年のきびしい管理、監督、あるいは警戒の中に陵墓があったときとは違って、非常に平俗化ということばをしばしば使いまするが、そういう形で一般国民に親しまれている陵になっているわけです。この陵の管理を――私の郷里にも、赤間神宮の近くに安徳天皇の陵がある。そういう陵の荒廃ということをちょっと私感じるのですが、それに対しての管理はどういう形になっているか、お答え願いたい。
  40. 瓜生順良

    瓜生政府委員 陵につきましては、これは宮内庁の組織からいいますと、書陵部の中に陵墓課がございまして、そこが本部で、それから出先に陵墓監の事務所がありまして、そこに陵墓官吏がおりましてこの陵墓のお守りをしているわけでございまするが、一般の方との関係においては、一般の方が参拝になりたいと思われる場合には、普通ずっと入ってこられて参拝なされるようになっておりまして、特にそこに何か護衛官がいて、一々名前を聞くとかいうようなことはしておらないわけであります。  なお荒廃しているのじゃないかという関係、これは部分的に考えますると、予算の不十分なためにややそういうような感じの部分が現在あります。そういうことではいけないということで、昨年度全体についてずっと調査をいたしまして、全体をこの際整理しよう。予算関係でございまするけれども、七年計画というのを立てまして、ずっとそれに伴うところの予算を国からいただいて――予算の金額はたしか昨年度に比較しますると、今年度は倍以上の額になっております。それをずっと何年度かかけまして、それで整備をしていこうということに考えております。
  41. 受田新吉

    受田委員 質問を終わりにしますが、行管の方は来ておられないようでございますから、人事局長に御足労いただいておるので、一言最後に宮内庁関係した問題について御答弁願いたいと思います。総理府の人事局長は、宮内庁職員に対する法律上の権限というものは、どういうところで御所持になっておられるか。
  42. 増子正宏

    ○増子政府委員 宮内庁職員につきましては、先ほど来いろいろお話がございましたように、特別職職員一般職職員があるわけでございまが、人事局としての所掌事項からいいますと、まず一般職につきましては、服務、厚生、能率等の事項につきまして、御承知のように内閣総理大臣の権限になっておる事項がございます。これは各省庁を通じてのことでございます。そういった問題につきましては、公務員法に基づく所定の権限といいますか、そういうものを持っておるわけでございます。  それから特別職につきましては特に具体的でございますのは、御承知特別職職員給与関係でございます。この特別職給与に関することが人事局の所掌になっておりますので、宮内庁特別職職員につきましても、その点は具体的な仕事としてあるわけでございます。その他特別職につきましては、国家公務員法規定の大部分が適用ございません。したがいまして、一般職と同じような任用とか、服務等についての具体的な一般規定はないわけでございますけれども、大体は、従前の例によるというようなやり方によりまして、それらが律せられております。具体的な問題につきまして、そういったいわば基本的な方針なり、規律という問題になりますれば、人事局としてそれらの問題の調査、企画、立案ということに当たることになっております。ただ、一般的にいいますと、御承知のように特別職関係につきましては、それぞれ具体的な実定法の中にある種の規定特別職に適用せられる規定がございます。それは、ものによりましては、私ども以外の機関の所掌になっておるというものもあるわけでございます。
  43. 受田新吉

    受田委員 そこで、人事局は総括的人事所管の役所ですから、宮内庁の職種、その職務内容、それから給与、そういうものを、宮内庁だけでは従来の伝統にとらわれがちで、いま指摘したような職名の改正なども、宮内庁だけで考えるとなかなか前進しがたい、こういうときに、総理府の人事局長のところにおいて、大所高所からこれを宮内庁の古い伝統にとらわれないかっこうで考え直してあげる、その職名と職務内容等についても考えてあげるというような努力を積まれることで、宮内庁が特殊の印象を受ける役所でなくなる可能性が発生してくると思うのですね。そこをやっぱり総理府として、総理府の一角にある宮内庁の御所管をされる総理大臣の名前をもって、宮内庁に一つ新風を送る、そうした人事行政上の改善をされる必要があると思うのです。いかがですか。
  44. 増子正宏

    ○増子政府委員 御提案の内容につきましては、私まことに御同感の意を表したいと存じますけれども、具体的にお話しになりました職名とか職種等につきまして、用語の問題あるいは表現の問題というようなことにもし重点をお置きでおられるとすれば、これはちょっと私どもの権限外になるのではなかろうかというような感じがいたします。と申しますのは、これはいわば宮内庁という行政機関としての組織なりあるいは職務内容という問題も、関連してまいります。これは受田先生よく御承知のところと思いますが、そういった組織、管理という問題になりますと、これは行政管理庁の所掌事項であるというふうに私考えておるわけでございます。したがいまして、そういった職名の表現あるいは職務内容というようなことになりますと、私どもがいろいろ申し上げることは、これは権限外の事項になりはしないかという感じがいたします。ただ、一般的に宮内庁の人事行政といいますか、人事管理の面におきまして、いろいろな改善くふうということになりますれば、これは従来からも宮内庁自身からいろいろ私どもに御相談があった経緯がございます。そういう意味におきまして、私どもとして御協力申し上げるということについてはやぶさかでないと考えております。
  45. 受田新吉

    受田委員 それでは、いま行管がここに来ておられないものですから、あなたに行管の部分まで答弁してくれとは申し上げてないわけですが、いまあなたが最後に指摘された人事行政上の点を十分配慮されて、そうして職名、職種等につきましても、人事行政上かくあってほしいというときは、行管とまた御相談していただけばいいわけです。そういう全体の調整をはかる責任者が、あなたがいま一人しかおられないので、あなたにそこを十分配慮していただくことを希望して、質問を終わります。      ――――◇―――――
  46. 關谷勝利

    關谷委員長 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  47. 大出俊

    ○大出委員 今回の設置法の改正にあたりまして、第一に「企業局の産業立地部を立地公害部に改める」というのがあります。この設置法には、大まかに分けて四つの改正点があって、特許庁に審査第五部を新設するというのもございますけれども、これはこの前にこの委員会でずいぶん論議したこともございまして、私も、たとえば第三の特許庁問題などは、制度的に直していかなければ現実にどうにもならぬということを、行って見て痛切に感じている一人なんですが、大臣の時間が一時間足らずというお話ですから、おそらくこれを論議している時間がないと思う。したがって、委員長、特許庁に審査第五部を新設するという点は、きょうは抜いておきます。実はこれはどんどんふえて、五部の新設だけではできない相談で、あくまでもこれは制度改正が必要だと思いますけれども、それらも時間がないと思う。そういう点は大臣の時間が一時間ないわけですから……。
  48. 關谷勝利

    關谷委員長 一時間はいいですよ。
  49. 大出俊

    ○大出委員 いいといっても、あとの外務省のほうの関係がありますし、外務大臣はきょうは二時から本会議でしょう。そういうわけで、残った点はあとからひとつやらせていただきたいと思っております。  そこで、第一の立地公害部に改めるということについて、旧来の経緯からいきますと、今日公害にかかわりのある憲法上の各行政機関の数が十一くらいある。したがって、各省にかかわりのある問題だからというので総理府が取りまとめ役に当たっているというわけなんですが、公害行政の一元化という問題が答申の中にもあり、中間答申でも触れられているわけですけれども、それらを含めてどういう関係になるのか。つまり公害行政の一元化というものと、ここに言うところの立地公害部というものとの関連、ここらあたりをまずもって大臣からはっきり承っておきたい。
  50. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 大体御承知のとおり、通産省行政としては、公害の問題については加害者側の立場であると思うのです。公害を発生するほうの立場でございます。厚生省は公害を受ける側の被害者側のほうの立場ということで、公害というものは、どういう公害があるかということは厚生省の所管である。それに対して、しからばその公害をなくするとかあるいは公害の発生を未然に防ぐとかいうような仕事は、通産省の仕事だと思います。また、かりに公害というものが発生していろいろ損害を及ぼした場合には、それに対して責任ということも、これも企業者も責任を負わなければならぬし、あるいは国、自治体あるいは一般の住民もその責任を負わなければならぬというような場合においては、やはり企業者側という立場については通産省の所管に属するということです。そういう場合には通産省――農林省などもそういう場合がいろいろあるかと思いますが、そんなことで、そういう立場でいろいろみな立場が違いますから、これを公害対策基本法によってどこかでまとめて、そしてそれぞれの立場意見はまたそれをみな述べて、そしてそこで調整をしていくということでいくべきではないかということで、今回公害対策基本法という法律をつくることに決定いたしたのであります。その公害対策基本法の所管は厚生省でありますけれども、それについて通産省がその協議には乗るということでひとつ統一したい、まとめて公害対策を講じたいということで、今度公害対策基本法を作成することに相なったわけであります。
  51. 大出俊

    ○大出委員 ところでいまのお話によると、公害をなくする、未然に防ぐ、これがあなたのほうの所管だというわけですね。被害者側というよりはむしろ加害者側の立場だ、こういうんですね。加害があっては困る。現にある。だから、問題が大きくなって審議会が設けられて、中間答申が出て、答申が出て、そしてこの総理府の取りまとめた要綱ができて、まあ正確に言えば試案要綱ができて、それから公害対策基本法案、こういうふうに進んできているわけですね。  そこで問題になるのは、公害をなくする、未然に防ぐ、そしてまた公害が発生した場合にあるいは発生しているものについて責任を負う立場ということでの通産省だとすれば、いささかどうも話が逆になって、企業の肩を持ち過ぎて、中間答申から答申、試案要綱、公害対策基本法、こう進む過程で、次々に焦点がみんなぼけてしまった。昔のばい煙規制法のできそこないみたいなものになってきたという理由、これはあなたが一番よく御存じだと思うのですが、どこにあるのですか。
  52. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私は、ぼけてきてないように思うのです。やはり一方においては、産業の健全な発展ということも、これは国策として考えなければならぬし、その公害があるいは生命、健康に影響を及ぼすという場合には、その工場の操業を停止するというようなことは、これは通産省の仕事ですから、そういう場合にはもちろんやりますが、環境の関係をよくするとかいうようなことについては、これはやはり産業も健全な発展を遂げ、同時に環境をよくするという――環境が悪くなったためにいろいろの公害が生じた場合には、その公害を少なくする、同時に一方では産業もまた発展さすということをあわせて考えていくところに、私はこの公害対策というものがあると思うのであります。でありますから、私自身から言うと、産業公害ということについては、むしろ積極的な考えを持っておるのであって、加害者側の産業、企業者というものも相当責任を持ってやってもらうし、また公害の発生を未然に防ぐという装置なども、これから積極的にひとつ企業者にはすすめていきたいというような考えをいたしておるのであって、決して後退はしていない、私はこういう考えをしております。
  53. 大出俊

    ○大出委員 これはむずかしい問題だけれども、人体に影響を与えるあるいは害を与えるというような場合に、操業を停止するなんてあなたは簡単に言うけれども、いままで停止したことが幾つもありますか。
  54. 馬場一也

    ○馬場説明員 ただいま公害の規制につきましては、御承知のように、ばい煙に関しましてはい煙規制法、それから汚水に関しまして水質保全法並びに工場排水法という規制法がございます。ばい煙規制法のほうは、一定の排出基準法律できめまして、これの実施を各都道府県知事にまかせてあるのでございます。その法律によりますと、工場が施設をつくりまして、実際にばい煙を出しました場合に、もし基準以上のばい煙を出します場合には、都道府県知事のほうから、これに対しまして施設を改善するようにという勧告もできることになっておりますし、さらにまたその勧告に企業者がなおかつ従いません場合には、工場に操業の一時停止命令を出すというようなことができるような法体系になっております。現在、具体的にこの規制法を運用いたして数年になっておりますが、問題が多い場合におきましては、まず都道府県知事がその勧告をいたしまして、これによって実質的に改善をさせておるということで、まだ一時停止命令まで実際に法律を発動したケースはないように聞いております。勧告をいたしましてやる段階で問題は片づいております。
  55. 大出俊

    ○大出委員 そう簡単に一時停止するように法律ができていないのです。だから、世の中は呼んでざる法、ざる法というのだけれども、水質保全法なんかの場合でも同じことが言える。大臣、あなたはこっち向いてくださいよ。あなたがこっち向かなければ話にならぬではありませんか。大臣、私が質問しているのだから……。
  56. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いや、あなたの御質問に対して答弁をいま考えておるわけです。
  57. 大出俊

    ○大出委員 簡単に停止するんだと大きなことを言ったって、大臣が停止するのではない、都道府県知事がやる。そこのところあたりを、あなたはそれもわからぬで、後退していないなんて大きなことを言っている。どんな新聞でも読んでごらんなさいよ。新聞は全部後退、後退と書いているじゃありませんか。もう一回答弁してください、よく聞いてからでいいですから。
  58. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 停止を命じたということについて、私のあるいは誤解であったかもしれませんが、問題があったときに、たとえば新潟県の水銀の問題があったときに、これは工場側がみずから操業を停止しておるのであります。それは問題があったから操業を停止したのであって、そういうことで人身に影響の及ぼす場合、これはどうしても操業を停止してもらわなければならぬ。そういう場合には、こっちが勧告するとかなんとかいうようなことはやるべきだ、こういうふうに考えておる。実際はっきり人体に影響するということが分明したときには、農薬の問題なんかその一例であるかと思いますが、そういうようなことで、水銀を使わない農薬をつくるということは農林省のほうで規定しておりますが、そういうような場合を私は考えたわけです。
  59. 大出俊

    ○大出委員 だから、あなた、いまお話が出たんだけれども、そういう説明を聞いてお答えになったんだろうけれども、停止さしたなんて簡単に言うから、そんななにはないんで、いまの話でお聞きになったとおり、企業の側が停止したんであって、さしたんではないんです。だから、あなたのほうはそうなっていないんであって、そこで私が先ほどから申すように、中間答申されて答申、基本法に対する試案要綱、それから基本法というふうに移るにあたって、いろんな紆余曲折がございました。そのつど後退をしてきておる。新聞は幾つも、解説まで書いております、こういう経過で後退をしてきたというふうに。したがって、あなたの最初の答弁はたいへん威勢がよかったんで、そう簡単に、公害をなくす、事前に防ぐ、また起こった場合に責任を負う、私のほうがそうだと言ったって、そうなっていない。だから、そこで閣議でおきめになった――おきめになったのかどうか聞いていませんが、そういう手順で運んでいるわけですから、そこでこの際あなたのほうに、せっかくここに「立地公害部に改める。」という設置法をお出しになっておるんですから、それ相当のやはり決意のもとにおやりいただかなければならねので、そこで私のほうから質問を申し上げておるわけだから、そういうふうにお受け取りになって、そう安易にものを言わないで、ひとつお考えになって御答弁をいただきたい。そこで、閣議はいつきめてどうされたわけですか。
  60. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今朝の閣議で決定いたしました。
  61. 大出俊

    ○大出委員 閣議できめる前にものを言いたいと思っていたのですが、けさきめたということでやむを得ないのですが、そこで、この今日までの経過の中で、中間答申が出た段階で公害基本法構想というものがひとつ浮かんできておりまして、この中間答申の中における企業責任という問題、企業の側の責任、これがずいぶん強調されておりました。一言でいえば、無過失責任という意味ですね。ところが、これが世の中に明らかにされると同時に、経済団体連合会長の石坂泰三さんのほうから、答申に先立って政府に対してこの意見書のごときものが提出をされているわけですね。公害をおそれるあまり産業振興を忘れることは許されない。公害発生の責任は企業側にもあるが、その一切を企業に押しつけるのは誤りであるという意味の意見書が出ているわけです。この点について、ひとつけさどういうふうにおきめになったか、まだ発表されないからわからないけれども、この企業の責任、無過失責任という問題について、あなたのほうはどうお考えになっておりますか。
  62. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 無過失責任については、もともと原案にも出ておりません。
  63. 大出俊

    ○大出委員 中間答申の段階で出ているわけですよ。相談してお答えしてください。
  64. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話のとおり中間答申では出ておりましたが、いよいよこれを法制化するについては、いろいろ問題があったので、したがいまして、答申書の原案には無過失責任のことは出ていないわけであります。
  65. 大出俊

    ○大出委員 いま私は――いいですか、大臣よく聞いてくださいよ。中間答申が出た段階で企業の責任が大きく問題にされて、つまり無過失責任論という学者の見解ですよ。あなた、目を通していただければ一ぺんでわかるけれども、都市問題講座の六というところに、公害という問題が一章取り上げられております。この中に無過失責任論というものは、学者の見解としてさんざん論ぜられている。お読みになればわかるのだけれども、まさに世の中の学者の創意に類する見解ですよ。それが中間答申の中に出ている。それに対してほんとうの答申が出る前に――中間答申ですから、とたんに反響があって、経団連のほうから政府に意見書が出され、公害をおそれるあまりその産業の振興を忘れちゃ困るという意味の意見書が出た。そういうふうに私が質問しているわけです。それは一体、けさの閣議でおきめになったんだが、どういう御見解だったのか、無過失責任という問題については。あなたはそんなものは出てないと言う。あなた、そういうむちゃくちゃな答弁がありますか。私は、ちゃんと中間答申に載っておるというふうに申し上げておるんだから。
  66. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま申し上げましたとおり、中間答申にあったということは、私もいま申し上げておる。中間答申にはありましたけれども、厚生省のほうでいろいろ審議した結果、厚生省案には無過失責任のことが規定されてなかったのであります。
  67. 大出俊

    ○大出委員 だから、私はそんなことを聞いているのじゃなくて、中間答申に載っておったが、けさ閣議できめるまでは白紙なんです、いろいろな試案はあっても決定じゃないんだから。そうすると、この要綱の段階をめぐり、また閣議に提出すべく総理府が取りまとめた案をめぐる新聞論調は、無過失責任はどこにいったんだ、ずいぶんぼけてしまったじゃないか、企業責任というものはもっと明らかにできないのか、無過失責任まで論じないにしても、企業責任というものはもう少し明らかにされるべきじゃないかということが、ほとんど各新聞の論調ですよ。一体そのことを閣議決定にあたってどういうふうに取り扱われたかと私は聞いているので、明確にしてください。
  68. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 無過失責任のことは基本法には出ておりませんが、企業者の責任ということははっきり書いてあります。
  69. 大出俊

    ○大出委員 企業者の責任をどうしようというのですか。どの限度まで書いてありますか。
  70. 馬場一也

    ○馬場説明員 基本法の説明でございますので私から御答弁申し上げますが、本日閣議で決定いたしました公害対策基本法の政府案におきましては、仰せになっております事業者の責務につきましては、これはいろいろ(事業者の責務)、(国の責務)、(地方公共団体の責務)と並べてありますが、その一番最初に第三条に(事業者の責務)といたしまして、「事業者は、その事業活動による公害を防止するために必要な措置を講ずるとともに国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する責務を有する。」という規定がございます。さらに「国または地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する」というのをやや具体化した規定といたしまして、同じ基本法の第二十一条におきまして、いろいろ地方公共団体等が公害防止事業を行ないます際に、関係の事業者は、それに要する費用の全部または一部を負担をする。その負担のしかたその他具体的な方法は別途法律で定めることになっております。「費用の全部又は一部を負担するものとする。」という、そういう義務を負っておる。こういう原則が基本法に書かれておるのでございます。
  71. 大出俊

    ○大出委員 これは、そこを聞きたいわけじゃないけれども、いま出たから聞くんだけれども、二十一条の閣議提出の原案は、「国は、地方公共団体が公害の防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」と、こうありますね。
  72. 馬場一也

    ○馬場説明員 ただいま先生のお述べになりましたのは――閣議決定いたしました案では、ただいま私が申し上げましたのは二十一条、費用の負担……。
  73. 大出俊

    ○大出委員 変わったのですな。
  74. 馬場一也

    ○馬場説明員 (地方公共団体に対する財政措置)が二十二条、それから(事業者に対する助成)というのが第二十三条、一条ずつ繰り下がっております。先生の仰せになりましたのは、法案におきましては第二十二条でございます。
  75. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、二十条が二十一条になったわけですか。二十一条にいうところの「全部又は一部を負担するものとする。」というのが原案の二十条だったわけですね。これがずれて、いまあなたのおっしゃるようになった、こういうことですな。その点わかりました。  そこで、問題はいま言われる三条ですね。(事業者の責務)というところ、これについて一つだけ、この基本の問題と関連があるので聞いておきたいのです。つまりだれが一体判定をして、だれが一体企画その他をきめるのか、その点を聞きたい。
  76. 馬場一也

    ○馬場説明員 公害対策基本法は、ごらんのようないわゆる基本法、あるいはいろんなこういう公害に関する理念をきめたような形の法律でございますので、この三条におきまして、(事業者の責務)といたしまして、「事業活動による公害を防止するために必要な措置を講ずる」ということを、だれが判定をするかということにつきましては、たとえばこれに基づきまして、いろいろ必要な規制を具体的な法律で課することになるわけでございますが、その規制をやっておるかどうかというようなことは、具体的な法律で、それぞれやっておる、やっておらないということを判定することに、具体的にはなるだろうと思うのです。ただ、法律のあるなしにかかわらず、一般のきめられました公害につきまして、事業者は自分のところから、自分が生産をやっておるために出る公害を防止するためには、そういう責務を有しておるという理念規定と申しますか、そういう事業者の責務に関する基本的な考え方が、三条に書いてある、かように存じております。
  77. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、この基本法というのは、いわゆる精神条項を取りきめた、こういうことですか。
  78. 馬場一也

    ○馬場説明員 精神条項と申しますか、いわゆる基本法でございますので、事業者の責務、あるいは国の責務、あるいはいろんな対策につきましても、このようなことをしなければいかぬという、いろいろな基本的な姿勢あるいはあり方というものが、基本法の内容になっておりまして、具体的には、そういう施策を具体的にどういう方法でやっていくか。法律を要するものもございましょうし、あるいは現在ある法律改正する必要のあるものもございましょうし、あるいは国なり府県なりがそれをやりますために必要な財政措置を講ずるというような、いろいろな具体施策が、これに基づいてこれから講ぜられていく、そのような関係になるものかと存じます。
  79. 大出俊

    ○大出委員 そこで承りたいのですが、答申の中身からすると、厚生、通産、運輸、経済企画、自治省等を含めて、公害に関係のある官庁というのは十一に及んでいるわけですね。そこで、総理府がこの公害対策連絡協議会なるものを今日まで設置してきているわけですね。この公害行政の一元化という意味で、たとえば公害行政委員会というふうなものの考え方、つまり公害行政を何とか一元化しようという考え方がとられていたと私は思うわけであります。これがこの基本法なるものに形づけられるにあたって、どういうふうに一体生かされているのかという点。それからもう一つ、公害の範囲の問題ですね。試案のほうからいきますと、この新聞で見る限り、公害対策基本法案、けさおきめになったという案との大きな違いとして、「相当範囲にわたる」、こういう表現が、試案になかったもの、要綱になかったものが入ってきているわけですね。そうすると、公害の種類は、今回この試案から原案に至るまでに、五つぐらいに大別してきめましたね。範囲はきめておるのですから、それはもう申し上げません。そうすると、その範囲について、「相当範囲にわたる」という意味の表現が、法文上入っていますね。これはけさの決定で抜けておりませんね。そうすると、世の中一般的に見ると、どうも試案の段階から基本法案に受け継がれるにあって、ここでもまた大きくたががゆるんだというか、相当範囲ということになると、たとえば横浜の磯子に電源開発の第二号機なら二号機をつくるという場合に、磯子のあの地域だけに公害が発生したというと、そう相当な範囲ではないですね。範囲はきわめて狭い。相当な範囲というと、どうも高島町からこっち、横浜の駅のほうまでということになると、常識上相当な範囲ということになるだろう。まさにばい煙じゃないが、ぼやかされてしまったという感じがするのですね。この二点について、基本ですから、どのようにお考えになっておるか。さっき大臣は後退ではないと言うのですが、それでは後退ではない理由をひとつとりあげていただきたい。
  80. 馬場一也

    ○馬場説明員 お答え申し上げます。最初に先生仰せになりました行政委員会というものを、公害行政をやるについてこの基本法でつくるべきではないかというのは、厚生省がつくりました試案要綱では行政委員会構想というのがございました。この行政委員会構想をどう考えるかということで、この法案を各省、十一の省にわたる連絡会議でいろいろ検討いたしました結果、先ほど大臣が申し上げましたとおり、いろいろな公害行政、たとえば規制をやるとか、あるいは公害防止のために、いろいろな社会資本の充実をはかるとかいうような具体的な対策は、各省のそれぞれの行政分野に広くまたがっておりますので、これはむしろ各省それぞれ持ち分に応じまして、規制を担当する省、あるいは社会投資を担当する省、あるいはいろいろな財政問題をなにする省、各省がそれぞれの持ち分でこの基本法の精神にのっとって公害施策を推し進める。ただ、各省ばらばらではいかにもバランスがとれませんので、それを総合調整いたしますために、総理府に総理大臣を長とする対策会議というものをつくりまして、ここに関係行政機関の長を集合いたしまして、各省でやっておる施策を総合調整をするという形がいいのではなかろうかという各省の結論になりまして、この最後の基本法案では、対策会議を総理府に置くという形になった、そういう経緯でございます。  それから、第二点の先生仰せになりました定義のところで、各種の大気汚染その他について、「相当範囲にわたる大気の汚染」云々とある。当初の要綱におきましては、たしか大気汚染、水資の汚濁、騒音、振動その他のものが地域的に環境を汚染しておるというような表現であったかと記憶しておりますが、法制局で法文化の段階におきまして、地域的にというその「地域」という表現を「相当範囲にわたる」という表現に法文上整理をしたということでございまして、私どもは、当初の案にございました地域的に汚染しという表現が、相当範囲にわたると変わりましたことは、非常に範囲が広いものでなければ公害と呼ばないのだというふうに、範囲がぐっと広まったというふうには必ずしも考えておりません。むしろ地域的に汚染しというのを、法律上の文言表現として相当範囲にわたるというふうに変えただけでありまして、内容的には同じ実体をあらわしておる、かように私どもは考えております。
  81. 大出俊

    ○大出委員 この試案も、全く法律のしろうとがつくった試案だとは思えない。私持っておりますが、どこを見ても、別にしろうとがつくった法文ではない。すると、法律上の用語として相当な範囲にしたとあなたはおっしゃるのだが、法律上の用語としてどれだけ違うか。「地域的に汚染をし」を法律上の用語に改めたというと、法律上の用語ではないような気がするが、読んでみれば法律用語ですよ。そこはどう違うのですか。
  82. 馬場一也

    ○馬場説明員 この法案は、決定いたしました試案要綱、法案要綱に即しまして、これを基本法という法律の条文に、これは関係各省、特に厚生省が中心になりまして、最後には、むろん法律でございますから、法制局の審議を経て条文化されておるのでございますが、ただいまの点は、当初大気汚染その他のものが地域的に環境を汚染しという表現になっておりましたのを、法制局で条文化する際に相当範囲にわたるというふうに書き改められたということでございまして、これは地域的というのを相当範囲ということに改めることによりまして、非常に広い公害でなければ入らないのだ、またそうしなければいけないのだという、実体を変えてそうしたというふうには、われわれは理解しておりません。地域的にという表現と相当範囲にわたるというのは、法律的に文言としてどういう相違があるのか、私もつまびらかにはいたしませんが、実体的には地域的に汚染するという実体を、相当範囲にわたるという表現に改めたという、単にそれだけの法文上の整理であるというふうに、われわれは了解いたしております。
  83. 大出俊

    ○大出委員 私は調べてもみたし、聞いてもみたのです。あなたの言うように、その表面ぼかしてもしょうがない。地域的にというのは、さっき私は磯子の例をあげましたが、磯子の埋め立て地域の一画であっても、そこが二号機なら二号機の設置にあたって汚染を生ずるとなれば、それはこの法律にずばり該当する。ところが埋め立てを離れた地域、こちらのほうに及ばないとなると、相当範囲となるとぼけてしまう、そういうニュアンスの相違がある。だからこそこの表現は、どこの新聞をながめてもそうだけれども、あなたも新聞を読んでないことはないと思う、十二日の新聞ですけれども、読売新聞を私は持っているけれども、この中でもこまかく解説している。私も質問してみているけれども、せっかく試案になったそれを、相当範囲に及ぶ、こう変えたということは、ますますもって公害に対する規制という意味における責任範囲をぼかしてしまったということになるというふうに解説をしております。だからあなた、そう言いのがれてもしようがない。  そこでもう一つは、先ほどあなたが言った二十条、つまりこの新聞に発表された二十一条か二十何条かに移りましたね。その中で全部かあるいは一部という意味の公害に基づく企業者の費用負担、これは別な法律できめる、こういうわけなんですが、何かそこに別な法律についての、こういうふうなものであるという構想がなければ、精神条項にしても、基本法なんですから――原子力基本法の場合だってそうです。原子力損害に基づく賠償に関する法律と契約に関する法律がありますが、基本法ができるときには、それなりの構想が立てられて基本法がつくられている。だとすると、別の法律できめるというんだけれども、この程度の責任は負わせるんだということがなければ、基本法でこういう精神条項がうたわれたが、別な法律になってみたら企業責任はなくなっていた、あるいはなくなっていくんだろう、かつてのばい煙規制法や水質保全法に類するように。こういうことになりかねませんから、そこのところをせっかくあなたも口を出しておられるんだから、これからそういう意味でいろいろ論議していかなければいけませんので、出発にあたって、あなたのほうからひとつ答弁をしていただけませんか。大筋として考えて、基本になるべきものを、「全部又は一部」というふうに規定をして、残りを別な法律にゆだねる。別な法律についての大きな構想としてはこうだというくらいのことが明らかでなければ、基本法の審議はできないでしょう。そこのところはどうなんですか。
  84. 馬場一也

    ○馬場説明員 第二十一条の第一項におきましては、事業活動による公害を防止するために、国または地方公共団体が実施する事業についてということで、どういう事業について負担をさせるのかという事業の性格が、防止するために国または地方公共団体が実施する事業である、こういうふうに規定をされておるのでございます。先生の御質問は、具体的に、それではそれについて法律を出すというが、どういう事業を考えておるのかという御質問かと存じますが、これにつきましては、まだこれから各省で相談をしてきめるということになると思いますけれども、この国または地方公共団体が実施する事業と申しますと、およそ一般にいわゆる公共事業といわれておるような事業が目に浮かぶのでございますが、たとえばこの基本法の第十一条でございますが、ここに(公害防止に関する施設の整備等の推進)という、その新聞の条項ではおそらく一条ずつずり下がっておりますから、あるいは十条であったかもしれませんが、整備等の推進というタイトルの条項がございまして、ここで、「政府は、緩衝地帯の設置等公害の防止のために必要な事業及び下水道その他公害の防止に資する公共施設の整備の事業を推進する」云々というふうに、政府あるいは府県も入ると思いますけれども、そういう政府または府県の行なういろんな公共事業を、公害に関し、ましては、直接、関接というふうに二つの範囲に大まかに分けて書いております。この二十一条で、費用負担の対象として具体的な法律ができます際に考えられます事業は、この十一条等を参酌いたしますと、直接に公害防止のために役に立つ、たとえば下水道を整備し、あるいは道路を拡張するという普通の公共事業も、公害の防止に大いに間接的には寄与するのでございますが、そういうものは、直接に公害の防止をやろうということでやる事業ではございませんので、間接に公害防止に寄与するというような公共性の強い事業は、おそらくこの二十一条の対象にはなりませんで、直接、たとえば緑地帯をつくるとかというような、公害防止そのものを直に目的としたような事業の中で幾つかのものが費用負担の対象になる事業ではなかろうかと、私どもは考えております。
  85. 大出俊

    ○大出委員 私は、けさの閣議できめられてしまったということになるとすれば、これはあらためてまた論議をしなければならぬと思うので、できるだけ長い質問を避けたいと思っていま聞いておるのですけれども、ただしかし、幾つかは明らかにしていただかないと、ここでいうところの産業立地部を立地公害部に改めるという設置法が出ておるわけですから、あわせて厚生省の側からも出ておるわけですから、そういう点で私ははっきりすべきものははっきりさすべきだと思って聞きたいのですが、そこで公害の責任の所在というものが企業にあるのか、国にあるのかという点、大企業、中小企業あるいはその他の零細企業等もありますが、たとえば捺染工場なんというものは、これも一種の公害を周辺に与えております。五十万や百万の資本で、公害対策をやろうといったってできっこない。そうなると、どこかでいわれていたような公害基金みたいなものをひとつつくるべきではないか。諸外国の例まで申し上げませんが、いろいろありますけれども、そういうところまで考えなければならぬと私は思う。そういう意味で、第一次責任といわれるようなもの、これは一体どこにあるかという点ですね。ここらのところをまず……。公害防止と産業というものとの調和ということがうたわれておるわけだけれども、それがどこにあるかということが明らかにならないと、何を原則に調和をはかるということになるのか。これではあまりにも無責任な法律だということになる。そこのところをどう考えておられますか。
  86. 馬場一也

    ○馬場説明員 企業の責任あるいは国または府県等の責任というのは、たいへんむずかしい問題だと思いますが、私ども考えておりますのは、事業者は何と申しましても、先ほど大臣も申しましたように、自分の生産活動からいろいろな大気汚染なり汚水なり、いわゆる公害の発生源としてそういうものを出すわけでございますから、企業者はやはり自分のところから出す公害につきまして、しかるべき施設をし、しかるべき処置を講じまして、そういうものにつきまして、技術的、経済的に可能な限りできるだけのことをする。そういう身の回りのことをしっかりやるという個々の責任は、企業にあろうかと存じております。しかしながら、現在のわが国の状態を見てみますと、各人が非常に模範生のようにしっかりやっておりましても、工場がたくさん集まり過ぎるとか、あるいはたとえばそこの地域における都市計画なり、工場なり、住宅との関係が、非常に近接をしておるというような配置になっておりますような場合には、やはり公害というものは集合体でございますからなくなりませんので、ほんとうに公害を少なくする、なくするということのためには、事業者がめいめいのことについてはできるだけのことをするということと、同時に事業者が一人一人では考えつかない、あるいは企画できないような全体としての、たとえば道路を広くする、あるいは緩衝地帯をつくる、あるいは土地利用を合理的にするというような問題、あるいは企業がふえ過ぎることを全体の立場から防止をするというような、全体的な仕事までもこれに並行してやるということを、国または府県がやるという、両両相まちまして公害が現実に片がつく、こういう関係ではなかろうかと考えておるのであります。
  87. 大出俊

    ○大出委員 したがって、第一次的な責任というものは企業にあるということですね。これはだれが考えても、常識的にもそう見られるのだし、学者の意見にしても、大体そういうことですね。それを産業振興という面で、どこまで国なり県なり自治体なりがこれを助成できるか、そういうたてまえになると思うのです。さらにここで聞きたいわけですけれども、企業能力という面で、やりたくてもできないというところ、日本の今日の中小企業金融、あるいは中小企業対策、各般に及んではきておりますけれども、私どもが見る限りは、あるいは皆さんが見る限りは、非常に不満足な点が多い。これは通産省所管の大きな部分を占めておる。したがって、わかり過ぎるくらいわかっておられるわけですね。中小企業庁もかかえておられるし……。してみると、そういうものに対する手当てがなされなければならぬ。その点は、基本法の面からどう判断されるわけですか。
  88. 馬場一也

    ○馬場説明員 事業者が第一次的と申しますか、自分のところから出すいろいろな公害につきまして、十分なことをする責務があるという問題に対しましては、大企業でございましょうと、中小企業でございましょうとも、特に変わりはないものかと心得ますが、先生も仰せになりましたように実際に、それじゃそれに応ずる防止施設をつくるということは、たいへん力の弱い中小企業にとりましては、実際上やる気持ちがあり、やる姿勢がございましても、困難だという現実はございます。そこで、先生も仰せになりましたように、特に力の弱い中小企業がそういう責務を果たしますのについて、国が各般の助成をするという必要につきましては、確かに公害防止上一番大事なことかと存ずるのでございまして、この公害基本法におきましても、特に中小企業というふうには明記をしておりませんが、先ほどの第二十三条(事業者に対する助成)という条文がございまして、ここで「国又は地方公共団体は、事業者が行なう公害の防止のための施設の整備について、必要な金融上及び税制上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。」という考え方が出ておるのでございます。
  89. 大出俊

    ○大出委員 公害防止の行政を担当する機構の設置と、それから被害者の救済措置という意味で、企業と国が分担する分野というものはおのずから明らかにして、そこでこの公害基金などというものをつくったらどうかという意見等が旧来からあるわけですね。これらの点は、いまきわめて概括的にぽんと――私のこれからいくと、さっき申し上げた二十一条ですか、けさおきめになったのとは一条違いますけれども、これらの構想について、どういうまとめ方でこっちの条文のほうに移ったか。つまり公害基金の構想などというものは、将来ともに顧みられないのか。つまりそこまでは今日の日本の経済力で負担し切れないんだ、そういう何か理由があったと思うのです。そこらのところは、どういう理由なんですか。
  90. 馬場一也

    ○馬場説明員 これもいろいろ各省で話をしておりましたときの経過になるのでございますが、先生のお述べになりました、公害が起きてしまいました場合の被害者の救済というのについて、どういう制度がいいか、あるいはどういうものを考えるべきか、いろいろ仰せになりましたように、たとえば基金のようなものをつくってはどうか、あるいは一種の保険制度というようなものも考えられないかといったような、いろいろな構想は厚生省からも出ておりますし、私どものほうでも、いろいろ構想につきましては、従来から検討いたしております。しかしながら、何ぶんにも新しい問題でございますので、基金をつくるにしろ、あるいは保険制度をつくるにしろ、それをどういうふうにして具体的につくるか、企業がどのように寄与し、あるいは国なり自治体がそれにどういうなにをしていくかというよう構想を具体的に詰めるのは、今後必要な制度の整備を行なうものとするという精神にのっとりまして、これから具体的に各省で考えていこう、こういうことでございまして、したがいまして、その制度の整備を検討していくんだという姿勢といいますか、理念を示す意味で、最終法案では、第二十条でそのことに触れてある、こういうことでございます。
  91. 大出俊

    ○大出委員 つまり十二日の読売新聞の基本法案の全文が発表された「健康と経済調和」という見出しのこれを読んでいきますと、最後のところにある「総理府の試案要綱が出されたときでさえ、」国民の健康保護に重点を置く厚生省案や自治省案に比べれば、「「企業側の責任が軽すぎる」という批判が強かった。法案は、その要綱からさらに後退したわけだが、これはもっぱら産業界の意向をくんだ通産省などの押しが通ったという見方が多い。」こう書いてある。そこで私は、さっきここで例を申し上げたように、中間答申がぽかっと出てきた。とたんに経団連から政府に対してがしゃんと意見書が出た。さて答申になったら、今度は中間答申からぐっとぼけている。これは、世の中の見方はみんなそうです。この解説を読んでもそうですよ。ところが、にもかかわらず、大臣は、冒頭に、公害をなくする、未然に防ぐ、その責任を負うのが通産省である、こう大みえを切られたわけです。そこで発生したらどうするのか、これを停止させるのだ、いまのやりとりはこういうことなんだけれども、どうにもつじつまが合わないやりとりになってくるわけだ。大臣の冒頭からの答弁と、流れてきておる経過と、あなたの答弁と合わせてみると、これはどうにもつじつまが合わない。私はその責任を云々しない、閣議できめたのだから、しませんけれども、先ほど原子力基本法でお活をしたように、契約法という法律も後ほどつくった、あるいは原子力損害に関する賠償法をつくったり、いろいろしてきたのですね。そういう形の法律を幾つもこれに関してつくらなければならぬことになる。したがって、私は、再びやはり通産省の押しが通った流儀のことはしていただきたくない。せっかく大臣が、その意味において、公害をなくする、未然に防ぐという点について、企業というものを相手にしておる通産省なんだから、加害者の側なんだから、そういう意味で公害をなくする、未然に防ぐということでわれわれのほうは責任を負うのだ、こう言っておられるのですから、そのことをこれはうそだと私は言わない。だから、そういう点は、大臣は――どうも私は大臣がぼんぼんかわっちまうから困っちゃうのだが、かわっちまうものだから、一々相談しなければならぬということになっちまうのだけれども、もうちょっと、大臣であるなしにかかわらず、通産省の行政長官に籍を置かれたわけだから、そういう点はひとつ御勉強をいただいて、今回の国会における最重要法案の一つといわれておる公害対策基本法なんだから、私は、そういう点で、やはりおっしゃったことについては責任を負っていただきたい。そういう点だけを最後に私は大臣に申し上げておいて、御答弁があれが承ります。
  92. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私は、大臣に就任したときに公害問題のことに言及いたしまして、今後公害問題に取り組んでいこうということを申し上げたわけでございまして、それは企業者側からいろいろ意見があるかもしれません。しかし、そんなものを一々われわれ聞くわけにはいかないので、通産省としてどういうふうにあるべきかという態度をきめていくべきであって、公害をなくするというこの基本方針に向かっていくという態度でいくべきであるということを私言ったのでありまして、現在でもそういう気持ちであります。でありますから、公害をなくするということをひとつ中心にして通産行政をやるのだ。それも決してそれから退いちゃいかねという考えでおります。この基本法も、私はそういう意味に解釈しておるのであって、ここで企業者の責任もはっきりしておりますし、また損害賠償のことも書いてありますから、したがって、これによって企業者側の責任、立場というものがはっきりしたのじゃないか。それでないと、こういうことを規定していないと、企業者側は逃げる危険もありますから、したがって、これは日本全体の公害をなくするという立場で、進んで企業者側も責任などをはっきりすべきだという意見を持っておるわけであります。幸い今度の基本法には、それも規定されておりますから、私はいま、一応この基本法で進んでいくべきではないか。なお、お話のとおり、いろいろ問題が起こると思います。またそれは、その場合にはひとつの法律でいろいろ規定していくということでいくべきである。また、今度職制のほうでも公害部というものを設けたのも、そういう積極的に通産省が乗り出すのだという意味で公害部というものを設けたのでありまして、いままでのように、一課でやっておったのじゃいかぬということで公害部というものを設けたのであります。そこらにもわれわれが積極的な態度をとっておるということを示しておるつもりでありますが、そんなことで私自身は事足れりという気持ちは決してありませんので、この際企業者側が責任をとってもらいたいということは、私たちもはっきりしておるのであって、それは企業者側からいろいろのことを言うてくるかもしれませんが――私は経団連から言うてきたことは知りません、私の手元にまだきておりませんから、どんなことを言うてきたのか知りませんけれども、企業者側は企業者側でいろいろ意見があるでしょうが、しかし、通産省としては、それははっきりした態度で臨むべきであるという考えで進んでおるわけであります。
  93. 大出俊

    ○大出委員 立地公害部をこしらえて、これから産業の肩を持ってうしろ向きこ進まないように――また大臣があまり言い過ぎると方々からおこられるから、これは気をつけてもらったほうがいいと思うのですが、うしろ向きに進まないように、どうするかということを政治的にお考えになることが、政治家である行政長官の菅野さんの責任になってくる、そういうふうにひとつお願いしたいのです。  そこで、「得られぬ市の了承十九日、政府の調整審議会議題にできない」、これは電源開発磯子火力発電所の第二号機の増設に関する問題なんです。これはこのあと東電のやつもございまして、市の了解を得にいろいろ来ておられますが、ところでこれは一号機の設置の状況から見て、住民の間にたいへんな不安があったわけですよ。火力発電、これは何を使うか、あらためて申し上げませんけれども、亜硫酸ガスその他の発生原因になりますので、そこで七月の下旬に、いまのところ二十日から二十七日を予定いたしておりますけれども、ここで厚生省と共同で大気拡散調査というようなことを横浜市がやるわけです。そしてこの一号機の結果を市民の皆さんに公表をして、そうしてかくのごとく公害のおそれがないんだというところに持ち込んで、政府の皆さんの御協力も得て、公害対策に万全を期していこうということなんです。これは一つだけでなくて、その後そのほかのほうの横浜市大その他の学者も入れての公害に関する各種の調査も進めておりますけれども、私は、公害基本法というものがいままさにでき上がらんとする、国会に顔を出そうとする段階なんですから、かつての四日市の例等もございますので、各自治体にかかわるこの種の問題についても、皆さんのほうでむしろ積極的に公害防止という観点から、単に企業活動の面のみを急ぐということでなくて、そういう面から――火力発電というのは、石炭との関係での閣議決定ですからね。したがって、そういうふうな点についても、これは逆のほうに皆さんのほうが走らぬように、急いでやってくれとかいうのではなくて、やはりこの辺は入念にひとつ防止をしていく、そういう立場に立ってもらいたいものだと私は思うのです。そこらのところの御見解はいかがですか。これは火力発電というものは、本来閣議できめたのですからね。
  94. 馬場一也

    ○馬場説明員 先生仰せになりました磯子火力一号機をつくりますときに、いろいろ地元のほうで公害のおそれのないようにということで企業のほうにも御注文になりますし、通産省のほうにも申し入れがございまして、検討いたしました上で設置の許可を出したわけであります。今度二号機をつくるにあたりまして、また先生仰せになりましたいろいろなだめ押しと申しますか、そういうチェックをやって、安心をして建ててもらうということで、地元の横浜市御当局とお話し合いを進めておるわけでございます。われわれといたしましても、先生おっしゃいましたように、この火力をつくるということにつきましては、一日も早くそういう問題をクリアいたしまして、なるべく早くつくりたいという気持ちでございますけれども、同時にまた、公害について地元に御不安のないようにやってまいりたいと存じております。
  95. 大出俊

    ○大出委員 ちょうど四十五分から始まりましたから、これでいま四十五分間なんですよ。さっき大臣の都合を聞いたときに、委員長、あなたは一時間いいんだとおっしゃったけれども、三木さんおいでになったので、まさかここで十五分待たせるわけにもいかぬ。したがって、お約束どおり――まだ私は、この設置法の例からあげれば、特許庁のほうだとか、先般三木さんが通産大臣おやりのときに私が御質問申し上げたベトナム特需の問題とか、ボランタリーチェーンの問題とか、これはいま大きな問題ですから、これらを質問しようと思っているわけです。そうすると、今度本会議との関係で三木さんのほうの時間がなくなってしまうと、これまた困るので、委員長、あなたのほうでさばいてください。
  96. 關谷勝利

    關谷委員長 それなら外務省を先にやりましょう。通産省はもう一回やるようにいたします。      ――――◇―――――
  97. 關谷勝利

    關谷委員長 外務省設置法の一部を改正する法律案、及び在外公館名称及び位置を定める法律及び在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  98. 大出俊

    ○大出委員 きのうの参議院の予算委員会でも御答弁をいただいておるようですけれども、昨日第七回目の日米安保協議委員会が開かれたようであります。そこで、どうも私気になるので冒頭に承っておきたいのは、ベトナム戦争というものについて日本の立場というのは一体どういうことになっているのかという点、これは前に椎名外務大臣のときにも私こまかく承ったことがあるのですけれども、時間の関係であんまりこまかく申しませんが、安保条約のたてまえというものが一つあるわけですから、それに立脚をして、一体ベトナム戦争に対する日本の立場というのはどういうことになるのだろうか。全く中立だということになるのか、そうではないのか、一体どういうことなのかという点を、まずもって明らかにしておいていただきたいのです。
  99. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ベトナム戦争に対する日本の基本的な立場は、一日も早く和平をもたらしたい、こういうことで、あの戦争に使っておるエネルギーを平和建設のために使えるようなことに一日も早く持っていけないか。早期な平和の回復ということが、基本の方針であります。安保条約という点は、これはベトナム戦争が起こる前から安保条約はあったわけですから、何もベトナム戦争が起こって安保条約を結んだわけでないので、安保条約による日本の条約の義務は果たさなければならない。これはやはりベトナムのずっと前からでありますから、そういうことで積極的に日本がベトナム戦争に介入しておるというような感覚は、私ども持っていないのであります。
  100. 大出俊

    ○大出委員 私も、安保条約がベトナム戦争以前にあったことは百も承知なわけです。私がここで念を押したいと申し上げるのは、安保条約があるという前提に立ってベトナム戦争が起こっているわけでありますから、そうなると、地位協定その他を含めて基地提供義務その他が日本にある。椎名さんのかつての私に対する答弁は、中立という立場ではないと言い切りましたがね。なぜならば、安保条約というものがあるという前提に立っているからだ。こういうことで、ここでもって多少条約論争をしたのですが、藤崎さんの見解もそうだった。そうなると、気持ちの上ではあなたがいまおっしゃるように、何も日本は積極的に協力をするということではないと言われるのだが、条約の義務という点からいけば、消極的も積極的も、ともかく条約上義務づけられているわけでございますからね。そうなると、日本の立場は、明らかに中立ではなくて、安保条約のたてまえ上、アメリカに基地を提供しなければならないし、地位協定の規定その他に基づく協力は当然やらなければならぬということになる。私はこういうものの考え方だろうと思うのでありますが、いま大臣が言われた、何も日本は積極的に協力云々ということではないというようなこと、そこらの相関関係をどうお考えになっておりますか。
  101. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは日本は中立とは言えないですよ、アメリカとの間に安保条約を結んでいるわけですから。しかし、その安保条約とベトナム戦争との関係は、いま申したように前から安保条約はあるわけで、これは条約を結んでおる以上は、この条約の義務は当然に履行しなければならぬわけですね。したがって、日本がアメリカとの間にこういう防衛条約を結んでおる以上は、日本の国際的立場を中立であるというふうには私も考えないわけです。ただしかし、ベトナム戦争に対しては、基地の提供といっても、日本の基地がベトナム戦争の作戦基地としては使われていないことは御承知のとおりです。そういう意味において、あるいはまたマニラ等における参戦国会議などもありましたが、そういうときに日本は参加する意思はないということを明らかにしたり、なるべくベトナム戦争というものに日本が深く介入したというようなことを積極的に――条約の義務は別ですよ。そういうことを避けようとする日本の政府の態度というのは、おわかりのとおりだと思うのです。それはなぜかといえば、これはほかの国々と違って日本はアジアの一員でもあるわけでありますし、自分の周辺でああいう戦争がいつ果てるともなく続いているということは、国民が心を痛めておるわけですから、そういう点で、日本が何か早期な平和回復ということに役割りを果たせないかということも、頭にあるわけであります。しかし、安保という前からあるこの条約上の義務は、果たさなければいかぬ。そういう立場に立ちながら、日本は平和回復のために働ける余地はないかというのが、政府のいまの立場で、どこの国でも、ベトナムの早期和平のために動いている国は、みなそれぞれ立場があるですよ。イギリスだって、ウィルソン首相が日本よりももっと積極的だと言えるけれども、それは北大西洋条約においてアメリカとの間に非常な深い関係を持っているのですから、どうしても国際関係というものは時間が違ってきますから、その前にある条約から受ける制約というものはやむを得ない。ベトナム戦争の調停をしたいから安保条約を破棄する、そんなことは考えていませんし、そういう置かれた立場の中において最大限度に平和のために努力をできないか、これが政府の基本的な立場でございます。
  102. 大出俊

    ○大出委員 安保条約を前提とする限り、日本が中立的立場ではないということ、これは明らかにしていいですね。したがって、精神条項は別として、安保条約の義務については、これは果たさざるを得ない。ただしかし、冒頭大臣言われるように、積極的に協力云々ということではないという、何も積極的に協力しようとしているのではない、こうおっしゃっているわけですから、したがって、義務は義務として、今日外務大臣としてお考えになっているのは、積極的協力ということではないことになるのですね。そこで、新聞の取り上げ方を見てみますと、日米安保協議委開くということで、途中で戦いやめない米、ベトナムへ決意表明、こういうわけですね。日本でこれは第七回安保協議委を開いて、ベトナム戦争に関する説明を相手方にさせたか、受けたか知りませんが、そういうことが行なわれて、日本の新聞は、安保協議委開く、これは日本とアメリカとたいへんなことをやっているような印象で、途中で戦いやめない米、ベトナムヘの決意表明――何も日本に来てベトナムヘの決意表明、戦いやめないなんていって力んでみたってしようがない。ほんとうはしかし、これは私は考えなければいかぬことがあると思うのですよ。いま大臣が言われるように、中立的立場ではない。してみると、アジア太平洋圏外交なるものを推進されようとする。それがムード外交といわれようと、踊りを踊っているのだといわれようと、とにかく椎名さんのしいた路線に乗っかってあなたは進んでおられるわけだから、そうだとすると、なおかつ日本の立場としては、かつてこれはどういう意図で総理が横山特使を派遣されたかわからぬけれども、少なくとも平和への努力をしようといまもおっしゃっているとすれば、あえて日本の国内で第七回安保協議委が開かれて、途中で戦いやめないだとか、いま申し上げたような形の受け取られ方、これは国際的にも流れるわけですから、これをどうしてここまでアピールするような形を――むしろ積極性をとっていると私は残念ながら見ざるを得ないわけだけれども、そういう立場、そういう舞台回しを大臣はおやりになるのかという点が、私はわからぬのですけれども、これはどういうことですか。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは舞台回しを私がやっていたわけではないのです。これは毎年ひんぱんというか、毎年一回開くというような約束というか、そういうふうな大体了解であったわけですね。それがその後二年近く開かれないのです。これは一年八カ月ですか、開かれてないから、やはり一年に一回くらい開いたらいい、これは私の意見です。これは何も安保条約というものを結んで、極東、日本を含めての安全に対してアメリカとの間に条約まで結んでいる国ですから、いろいろな極東の情勢に対して説明を聞いたり日本の考えを述べたりすることは、必要ですよ。だから、これから一年ごとに開いたらいいと私は思っている。長いこと開かないでこういうふうに開くから、いかにも何か意味ありげな受け取り方をしてくる。それは事実として、その会議内容からすれば、非常に意味があったというわけではないのですよ。こういうことをぐずぐず延ばすことは、私はきらいです。やはり一年に一回開くということなら開いたらいい。それから新聞にそういうふうな表題が出ているのですが、アメリカがきのう繰り返し述べておったことは、ハノイの政府というものは、アメリカは転覆させたりする意思はないのだ。これは絶対にそういう考えはないのだ。だから、ハノイはハノイで自分の好きな政権で、政治形態でやればいいので、それをつぶそうという考えはないのだ。しかし、南のほうについては、アメリカの言い分からすれば、三代の大統領にわたってアメリカはベトナムの独立を守るための要請を受けてやっているのだ。南ベトナムの独立さえ保障できるということならば、戦争はすぐ終わるのだ。北へわれわれは何らの関心を持ってないんだ。しかし、それをこの段階になってきて、アメリカが途中で世界のいろいろな世論もあったりということで、こういう現在の状態ではアメリカはあとへ引けないのだということだけはハノイにもよくわかってもらいたいと、いろいろなルートを使ってそれをハノイに伝達をするような努力はしておるけれども、まだ手がかりはないんだ。それで、何かやっておるうちにアメリカが敗退してしまって、兵を引き揚げてしまうのではないかということでハノイが戦争を継続しておるということならば、アメリカの真意を誤解するものだということを、きのうの会議で言ったんですよ。それが新聞に何か表題は非常にセンセーショナルに出ておるのですけれども、それはいまのアメリカの気持ちとしてはそういうふうな気持ちであるということをわれわれに説明したわけであります。日本がとやかく言う性質のものではないと、私は思って聞いたわけでございます。
  104. 大出俊

    ○大出委員 たとえばLST問題なんかでも、三回目ですね、この間なくなられた方というのは。かと思うと、チャーター機が羽田あたりに山ほど入ってきているという。私もあの機数まで調べてみましたが、相当な数になりますね。それがまた月々ふえてきているわけなんです。これは浅尾さんでもおられれば、あのときついて一緒に行ったのですから承っておきたいと思うのですが、千八百機をこす台数に一月、二月、三月とだんだんふえてきておるわけですね。かと思うと、自衛隊と一緒に演習をしていた軍艦がソ連の軍艦と接触するなどという問題が出てくる。また、北爆もどんどん拡大される。ウ・タント事務総長ではございませんけれども、第三次大戦をいま生きている人間はながめているにひとしいのだという警告を発することまで言い出す。中国は周恩来氏が新たなるベトナム参戦などへの決意を表に出してくる、アメリカは抗議文の応酬をする、こういうことでしょう。そういうたいへんなことになってきているというふうに世の中が感ずる時期に、二年以上も開かれていなかった第七回安全保障協議委員会が開かれるということは、これは大臣は開くべきものは開くのだ、こう言うけれども、なかなかそう簡単に受け取れない面が、世の中の見方として出てこざるを得ないのですよ。そうしてみると、あなたがいましきりに進められているアジア太平洋圏云々ということも、何か知らぬけれども、一昨年になりますが、四月七日のジョンズホプキンズ大学における大統領演説が、十億ドルのそれらの問題とからんでございましたね。どうもすなおに受け取れないということになる。こういう一連の全体をながめてみると、あなたは局部的に、日米安保協議委というものは、年に一ぺん開くことになっているのだ、そんなものはすなおに開いたらいいじゃないかといって開いただけだ、こう言われるけれども、その調子で今日まで三木さんはアジア太平洋圏ということを言われてきたけれども、その背景をながめてみると、そう簡単にいかない。私はきのうの問題を質問しようと思って質問通告をしていたわけではないのだけれども、どうしてもこれに触れざるを得ないという気持ちに私自身なるわけなんだが、あなたはしきりにこういう時期に開いたというのは、単に開くべきものを開いたということで、偶然皆さんがそう受け取りになるので、たいへんこういうセンセーショナルな見出しをつけたというけれども、いまの時期だからそう書くのだ。あなたはそうでないと言うけれども、そうでしょう。そうじゃないと言いつつこう書かせているということになるとすれば、これはそれこそ衣の下によろいが見えることになるのだけれども、つまり私はどうもその衣の下によろいが見えるほうに受け取らざるを得ない。一連のあなたの動きを見ていると、そういうふうに感ぜられる。そこで念を押しているわけです。くどいようですけれども、あなたは意図的に云々ということではない、こうあくまでも言い切られますか。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 もう出た本人が言うのですから、たいした会議ではないのです。ただ私は、こういうことを考えている。国際的に約束したことは、履行したほうがいい。それはベトナム戦争が続いているのですから、一年ごとに開くというのは――戦争が片づかなければこれが開かれぬといえば、これは何年先のことかわからないですからね。そうやって一ぺん開こうといったことは、ベトナム戦争があるからこれを開いたら誤解されるだろう――ベトナム戦争でない、日本の安全ということについて日米の間に条約があって、いろいろな方法で極東の情勢を話し合うということは、そういう内容であって――その会合の内容が、ベトナム戦争に対して日本が積極的に介入してどうということなら問題ですよ。しかし、重点を日本の安全というものに置いて日米両国が話し合うということで、そういう約束をしながら、ベトナム戦争があってぐあいが悪いといって延ばすようなことはよくない。一ぺん約束したら、そうしたら、それはその内容というものはたいしたことではないのだということを政府自身が国民にわかってもらう努力をすればいいので、その自分の努力をしないで、そんなものを開かぬほうがさわらぬ神にたたりなしという考え方は、私はとらぬところでございます。だから、内容は出席した本人がたいしたことではなかったです、こう言うのですから、御信用を願いたいと思います。
  106. 大出俊

    ○大出委員 念を押してみたかったわけですが、たいしたことじゃなかったという。たいしたことではないとすると聞いてもたいしたことはないのだけれども、そうかといって、あなたはたいしたことはないということを明らかにして、皆さんにたいしたことはないと思ってもらわなければ困るとあなたはおっしゃる。そうなると、あなたのほうは、そういう意味では説明をしなければならぬことになる。そこで承りたいのですが、この中身について新聞の報ずるところによれば、このベトナム戦争に関するあるいは紛争に関する相手方の説明があって、そして外務大臣のほうからは安保条約をめぐる各種の論議等についての説明をして、増田さんのほうからは第三次防についての説明をして、いずれも概要説明でしょうが、これはしかしそのほかに何かあるかということになると、原子力艦の寄港の問題ですね、それから沖繩問題等についても話し合われると新聞に書いてあるのですが、そうしますと、大体新聞の報ずるような内容であったということになりますか。
  107. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはどの新聞か知りませんが、原子力艦隊の日本寄港、まあエンタープライズといわれる、それは全然話に出ませんでした。
  108. 大出俊

    ○大出委員 沖繩問題はどうなんですか。
  109. 三木武夫

    ○三木国務大臣 沖繩問題というものは、極東全般のいろいろ説明をした中に、沖繩という問題は話の中に出ることは当然であります。いま言ったエンタープライズの問題は出なかった。沖繩一つの問題を取り上げて論議したことはないのですけれども、極東の全体の問題の中に、沖繩というような問題も、これは出ることは当然であると思います。
  110. 大出俊

    ○大出委員 そこで、長い説明は要りませんが、簡単に承りたいのですけれども、安保条約をめぐる諸説といいますか、いろいろなものがございますね。外務大臣も講演をいろいろ方々でやっておられますね。あの中身をいろいろ調べてみましたが、なかなかりっぱなことをおっしゃっておられると感心しておるのですが、ついては外務省の見解、たとえば自動延長論などというものが椎名さんの時代ございましたが、あるいは佐藤さんの言う申し合わせ方式などという考え、またこれは総理がかつて言われた再締結論、あるいはまた賀屋さん等がしきりに言っておられた限定改定論、あるいは期限付改定論などという問題、あるいはこれは今回席はありませんけれども、保科さんとか岸さんがおっしゃっておられた全面改定論とか、このほかに有事駐留論などが出ておりますが、昨今の外務大臣がおっしゃっておること等からいけば、おそらく腹のうちは固まっておって、こういう機関で論議をさせるんだというようなことに党のほうではやっておられるようだけれども、大体その辺のところで説明はされたんだろうと思います。そこで、たいしたことじゃない会議だそうだけれども、それだけにあけっぱなしに言ってもらったっていいんだろうと私は思うので、そのたいしたことのない会議であなたがこの点に触れられた中心は、何を一体重点に安保改定問題を考えておられるか、どういう方式を重点に考えておられるかというようなことについて、この際明らかにしておいていただきたい。
  111. 三木武夫

    ○三木国務大臣 自民党にいろいろ論議があることは、お説のとおりです。いま自民党も委員会で安全保障の問題の検討を始めておるわけですが、  これはやはり自民党に限らず、各党も、安全保障  の問題というものは現実の具体的な課題として検討する風潮が出ることは、いいことだと思います。これはたいへんなことですから、安全ということは第一義的な国の問題点でありますから、こういう事情で自民党も検討を始めておる。結論的なことは何もまだ申し上げる段階ではない。自民党もいろいろな議論があって、これで党としての方針をきめる。ただ言ったことは、自民党は今日の国際情勢のもとにおいて安保条約というものの必要性に対しては、これをだれも、一九七〇年がきても、そのときの国際情勢が安保条約を不必要にするであろうというふうに考えておる者は一人もない、自民党はこの安全保障条約というものが持っておる日本の安全に対する価値というものを高く評価しておる、この考え方は――いろいろどうするかということについては検討しておるけれども、安保条約そのものを堅持していこうという考え方は、自民党の今日のやはり基本的な方針であるということを私が述べたのでございます。これが私の述べた中心点でございます。
  112. 大出俊

    ○大出委員 方法論については述べなかったというわけですか。
  113. 三木武夫

    ○三木国務大臣 述べなかった。
  114. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、ますますもってたいした会議じゃないということになるのですね。これは説明にとどまったわけですか。向こうから何がしかの意見はございましたか。
  115. 三木武夫

    ○三木国務大臣 安全保障条約をめぐる国内の動向については、向こうは主として聞き役です。ただジョンソン大使が、安保条約十条のあの規定ですね、あの規定は期限というものがついておるようには思わぬというような発言はありました。向こうはいろいろな意見を述べて、これに対して質問応答という形ではなくして、日本の意見を聞くというのが、この会議内容でございます。
  116. 大出俊

    ○大出委員 そこで、出なければ出ないでいいわけなんですが、いましきりに三木さん御自分で主張しておられるアジア太平洋圏外交、こういう行き方が世の中で伝えられております。そこで、先ほどちょっとお話がありましたが、参戦国会議等にも出なかった、こういう言い方なんですけれども、いろいろな資料をつき合わせてみると、出ないほうがいいというものの考え方、これはアメリカの側にもあるし、日本の側にもある。そのほうが仕事がしいい、私はこういうことだと思うのです。したがって、いましきりに幾つもずっと会議を重ねておられますね。たとえば例の四月六日の東南アジアの開発閣僚会議、あるいは四月十六日のアジア太平洋閣僚会議、あるいは日韓条約の締結を過ぎて、印パ紛争が終わり、それから東南アジア連合、ASAの復活問題、それからインドネシア・マレーシア問題の解決、ずっと続いてきて、ことしに入ってから大臣が就任をされた。こう動いてきたわけなんですが、いま動いておる限り、なかなかわからない。だから、世の中は、砂上の楼閣ではないかとか、いろいろ言っているんだけれども、これまた簡単でいいけれども、一体何があなたのアジア太平洋圏外交といわれるものの中心なのか、まずそこから御答弁いただきたい。
  117. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私の頭の中にあるものは、やはり戦争と平和の問題です。これはたいへんなことです。しかし、それと同時に、平和というものが先進国の中からくずれるとは、私は見てない。むしろ低開発諸国の中に問題を含んでいる。ベトナム戦争でも、ずっと根源にさかのぼれば、これはやはりベトナム自体の持つ貧困、停滞というものが、そこに根ざしていると思うのです。ゴ・ジン・ジェム政権でもあまり世の中がよくならなかった。反政府運動が起こってきて、北からそれに対して援助する形があらわれて、ベトコンというような勢力になったわけですから、根源はそうだと思う。世界の最大の問題というのは、いつまでたってもなかなか停滞から抜け切れない低開発諸国をどうするかという課題が、人類最大の課題だと思う。これがまた戦争と平和の問題とも結びついておると思う。そうなりますと、世界が総がかかりになって、そして先進国の義務だと考えるよりほかなくなってくるのではないか。それは日本だって、国内でやりたいことは一ぱいあります。それをやってからということでは、こういう世界の要請にこたえられないのではないか。どうしても、やりたいこともあるけれども、またその一部をさいてでも、低開発諸国というものに対する援助をしなければならない。これが先進国の国際的義務だという観念になりつつあります。国民所得の一%というもの――まだ強制はされませんよ、しかし、大きな世界的潮流です。一%はさこうではないかということは、UNCTADでもTACでも、これはいろいろな決議をして、だんだん義務的なものに変わりつつある。そういう場合に、日本の場合を考えてみても、日本はどこもかしこもという、そんな国力はないのです。しかし、やはりアジアです、アジアの一員である以上は、周辺の国々がよくなっていくということは、日本の安全にも、日本の繁栄にも結びついてくるものですから、そういうことを考えてみると、この地域的に近い国々というものは、遠い国よりも影響し合っている。そういう形で今日の世界を見たときに、アジア・太平洋というのは、一つの共同社会ではないか。現に豪州でも、ニュージーランドでも、このごろの感覚は、コモンウエルズの感覚よりも、アジアの一員という感覚ですね。日本は自分でやらないで、肩がわりのために私は言っておるのではない。やることはやらなければいかぬ。国民をできるだけ説得しようと思う。やりたいことはあるけれども、やろうじゃないかということを、私は説得しようと思います。やっても、日本のやることには限度がある。国力の限界を越えるわけにはいかない。そうなってくると、それは戦争であれ、平和であれ、その国の停滞であれ、発展であれ、一番影響し合う国々は、太平洋に面しているアジアの国々です。だから、もう少しそういうアジア・太平洋という広さで、一つの共同社会でものを考えられないか、幸いそういう空気が起こっているんですから。そういうことで、――いまアジアに対する援助は、一番少ないのです。アフリカ、ラテンアメリカの半分です。これではアジアというのはエアポケットになりつつある。こういうことは、日本としても困る。自分もやることはやる。自分もやったという実績の上に立って、アジアの先進諸国を説得しようと思う。そういうためには、一つのものの考えをアジア・太平洋という広さで考えようじゃないか。豪州の外務大臣が来ても、私が力説するのはここなんです。そうでなければ、豪州だってアジアの動向というものに非常な影響を受けるわけですから、みなでひとつ協力して、みなでアジア・太平洋における先進諸国が協力し合って、もっと援助を――援助というものは金だけではない。技術もあれば、経験もある、こういうものでアジアの進歩、向上というものに対して助け合っていこうじゃないか。いまそういう一つの下地をつくるための努力が、私のアジア・太平洋外交の中心をなしておるわけです。民間でもいろいろな団体も生まれつつある。太平洋経済委員会、いい傾向だと思う。こういう傾向は助長したいと思う。しかし、私の一番の目標は、アジアの開発です。アジア・太平洋という広さでアジアの開発を考えていこうというのが、この外交の一番ねらっておる点でございます。それは何か形をこしらえて、みなこういう機構に入ろうというようなことでは、私は成功するとは思わない。いまはお互いの連帯的な意識、お互いに協力しようというお互いの歩み寄り、その素地をつくる時代ではないか。そういう国々は、何といってもアジア人ではないのです。日本は、アジアと一方において太平洋先進諸国の接点に立つわけです。この役割りというものは、軽々しく見るわけにいかない。いろいろなことを言っておるようですけれども、私は意に介さない。それ以外に道はない。アジアの開発は、西欧諸国といっても、遠いのです。そこで、どういうことを言われようが、こういう外交は、私は推進していきたいと思っておる次第でございます。
  118. 大出俊

    ○大出委員 さきのジョンソン演説、ラスク演説、昨年七月十二日の太平洋国家であるというものの言い方、これは一つの背景になっておるわけです。椎名さんがマニラ会議で提唱するところの過程というものは。だから、意に介さぬと言う人にものを言っても、意に介さぬ限りしかたがないけれども、それだけにいろいろな意見か出てくるのはあたりまえである。  そこで、私は、そうなれば具体的に伺いたいわけですが、アジアと、こう一言におっしゃる。インドあるいはパキスタンなどというようなところ、あるいはビルマなどもアジアに間違いない。アジア人です。そうなると、いまカンボジアがオブザーバーで出てきた、幾つかそういうのがありますが、参戦国七カ国会議というものもあるし、それとは明確に違うということをPRをしたい、それが真意であるかもしれぬし、そう言われておるけれども、つまりアジアというものを二つのグループに分けてしまっては困るという気持ちが、私どもにはある。そういう意味で、いま動かんとする、あるいは下地をつくっておる段階から先に向かって、もしその二つのグループに分けていく方向になってしまうとするならば、それが目的だというならば成功でしょうが、それが目的というのでなければ、それは逆に失敗です。いま三木さんの言われるように、平和の問題を前提にしてお話しになっておられるけれども、分けてしまうということになれば――これはアジアということばを冠するにしても、二つのグループに分けるという結果になるとするならば、これは必ずしも平和の方向にプラスにならない、こういうふうに私はなると思う。ここにいま動いている方向、これは世の中にいろいろな見方、批判、あるいは意見が出ています。しかし、それは意に介さぬと言われる。出発の段階だから、多くは申し上げたくない。  ただ、二、三点聞いておきたいことがある。将来に向かってあるいはインドとかビルマが出てこないという――どの程度あなたのほうは見通しとして、下地をつくっておる段階で、アジアということを冠する限り、どのくらいのことを考えておられるか。いまの集まった国の数はわかっておりますけれども、将来に向かって、それが出てこないということ、その他を含めて、どういうふうにしていこう。そのために日本の国力は、あるいは十分でないかもしれぬけれども、何がしかの援助はしなければならぬ。金も貸さなければならぬ。技術的な援助もしなければならぬ。つまり目的があってついてくるものがあるのですから、そういう意味で聞きたいのです。その前段として、どういうところまでお考えになっておるのか。
  119. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、いまアジアを二つに分けないほうがいいという意見もある。アジア開銀なんかもそうですよ。これは日本は非常に熱心ですよ。アジア開銀というものは、全体のアジアをみな入れておるわけですからね。東南アジア閣僚会議、農業開発基金などは、東南アジアというのはみな農業国で、食糧をほとんど輸入しているのですから、これはやはり日本の将来農業開発基金に寄託すべき基金は、できるだけ東南アジアを中心にしたいと思っているのです。アジア・太平洋構想というものは、東南アジアだけに限ったものではないのです、アジア開発ということが目的ですから。したがって、これはやはり日本だけの力で、たとえば農業開発基金だけで、アジアが、農業が救われるわけではないですから、いろいろな国際機関と協力したらいいと思うのです。アジアの開発に関係する国際機関とは全部やはり協力し合って、国際的ないろいろな機構がありますから、これと手を握って、ここまでは入る、ここは入らぬのだという、そういうアジアを分けて考えることはよくないということは、私はいま御意見のとおりに考えております。
  120. 大出俊

    ○大出委員 考え方は、いまお答えになった限りわからぬわけではないのですが、そこで問題になるのは、援助と、こう一口に言われるのだけれども、いまアジア開銀の話も出ましたけれども、これはもともと岸さんの時代に、東南アジア開発基金構想という構想を打ち上げられたのですね。佐藤さんになってから、とたんに今度は東南アジア開発銀行構想と言ったわけですね。日米間におけるいろいろな折衝の場面でいつも出てくるのは、アメリカが一体どれくらいの金を出すのかということだったのですね。ところが、さっき申し上げた、四月七日、ジョンズホプキンズ大学の演説のときに十億ドルを認めましたね。急速にこれは煮詰まってまいりましたね。ところが、この後いろいろな制約があって、それは万全なものではないように見受けられるのだけれども、アジア開銀を使おうとされるならば、そこにおける資金構想というものは――いまリッチクラブみたいに、太平洋の金のあるところばかり集まって相談されるクラブみたいなものをつくっておられる。クラブというと言いぐさが悪いかもしれないけれども、それらの会議の様子とあわせて、どの程度のものを――取りあえず年間二十億ドルくらいのものが要るのじゃないかとか、いろいろなことを言われますが、援助資金の面でどのくらいのことを考えておられるか。
  121. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは国連などの統計でもあるのですけれども、国連の統計というものは非常に大きなもので、そういうことで理想的にいえば非常に多額の資金を要するのでしょうが、いまこれだけアジア開銀などもできて、今後開発のプロジェクトなどをいろいろ検討しますから、やはりそういう累計の上に立つことが必要だと思います。これは、この間も渡辺総裁もマニラに行って、非常に専門家などをたずね、各国とも精力的に回って、いろいろな開銀の事業、プロジェクトを検討しなければならぬわけですから、そういうもっと地についた統計が出る必要がある。ただばく然として幾らということでなくして、もう少し数字はやはり詰める。外務省にも数字はありますけれども、しかし、私は、その数字というものは、具体的なプロジェクトによってもっと検討し直す必要があると考えております。
  122. 大出俊

    ○大出委員 先ほど非常に積極的に一%という意味のことをおっしゃった。私がこの数字を見ますと、アジア、こういうことで人口二億人という試算をして、一人当たり十ドル、だから年間域外資金として二十億ドルくらい要るのだという数字が一応出てきていますね、いい悪いは別として。そうでしょう。あなたの言われるのは一%だ、こう言う。そうなると、その面についても、五カ国会議などを開かれておるけれども、はたして一体どれだけ国力があるか知らぬけれども、こんなとんでもない金はどこまで持てるのかという問題がまず出てくる。一%というけれども、各国はいまどのくらい出しているのか、あるいは予定しているのかということになると、スペシャル・インタレストみたいな形でくっついている特殊な関係にある国だってたくさんあるわけですから、そこが一%をちょっとこえて出しておるからといって、つまり純粋な意味の援助になっているかどうかという問題もある。だから、そこから先は、言っておられることはいろいろあるのだけれども、何かぼやっと言っておられるのだけれども、どうなるかという具体性に欠けるところに、三木さんの言われることがどうもそっくりそのまま受け取れない。砂上の楼閣ではないか。本来外務大臣を二回お断わりになったいきさつからいって、中国の革命云々という大騒ぎが起こっておるから、中国問題はしばらく遠ざかっているからいいだろうとか、次期総理を考えておられるいまの立場から、手をよごさないで済むだろうとか、だから国内的にしきりにスタンドプレー的に踊っておるのだとか何とか、一国の外務大臣をこういう批判の中に置いておくわけにはいかない。そこで私は質問をする気になったわけだけれども、いま具体的なところを言っていただかないと、一体何をやっているのだということになるので、そこのところは、外務省としてどこまでどう考えておられますか。
  123. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国連の統計なんかは、それは十年間に五百億ドルも要するという統計が出ておりますからね。実際問題として、アジアの調査というものは十分できていないのです。そういう点で、もう少しアジア開発というものを、ああいうアジア開銀などもでき、あるいはまた農業開発基金などができれば、具体的な問題としてそういう点は詰める必要がある。十分なアジア開発に要する資金、域内の資金はどれくらいになるか、海外の援助はどのくらいになるかということは、これからもう少し詰める必要がある。外務省でももっと詰まったものがあるとは、いまの段階では申し上げられないのです。ただしかし、アジアというものは、世界の援助、第二世銀なんかでも、ほとんど東南アジアは来ていないのですよ。そういうことで、やはり東南アジアなどの農業開発基金などに対してわれわれが関心を持つということは当然のことであって、いまは国民にもアジアの開発というものは協力せざるを得ないのだということをわかってもらい、また一%というのも、それは国民所得の低い国もあり、高い国もあって、ヨーロッパ諸国は植民地をたくさんアフリカに対して持っておって、植民地の関係もある国もあって、一%ということが一律に同じような条件ではないですけれども、日本だって四億八千万ドル、〇・七三くらいまではやっているのですからね、これは延べ払いも入れて。そういうふうなことを入れて一%の当面の目標、これは世界的にいろいろ決議をしたり勧告を受けたりしておるのですから、そういうことにいますぐにというわけにはいかないけれども、近いうちにそこに持っていこうということを当面の目標にすることは、私はいいと思っているのです。アジアの開発というものは、膨大な資金を要するのです。それをどの程度、もっと有効な開発というものはどこから手をつけていくかという具体的なプランというものがないと、数字というものは非常に架空な数字になる。そういうことで先進国がみなアジアの開発に対して関心を持っていくし、それがまたアジア開銀なんかの有力なメンバーでもありますから、これをもっと具体的な問題として今後取り上げて検討を加えていく必要な時期に来ていると、私は思っております。
  124. 大出俊

    ○大出委員 そこまでいくと、さっぱりわからないのです。これから先のことになるだろうと思うのですが、いまのお話を聞いていると、構想としていろいろ言っておられるけれども、中身はさっぱりわからない。外務省でも確たる数字があって、こうしたいというなら出てくるはずですが、何も出てこないところを見ると、そうでしょう。そうなると、世の中が何をやろうとしておるのかという疑問を持つのは、あたりまえです。何かきれいなことをおっしゃっておるけれども、何もないだろうという。メコン川流域で何かそんなことをやっていれば、東南アジアにしても、それが生きてくるのは二十一世紀じゃないか。三木さん、そこまでとても生きちゃいない。してみると、いまのうちに何かもう少しかっこうのつくことを先にやったらどうか。そうなると、太平洋の五カ国会議じゃないけれども、実際にはこっちのほうにウエートを持っていくのだということになると、何かそれらしいことをやっているのだけれども、どうも竜頭蛇尾というよりは、裏と表は全然違うのだということになりかねない。そうなると、ぜんじ詰めていくと、向こうで言っておることの地ならしをやっていることにしかなっていないのじゃないかということになる。そこらのところが、いま行なわれていることからいうと、さっぱりわからぬわけですね。御本人にもそこから先のところは、いまのところ見当がついてないのじゃないかという気がするのですけれども、そこのところはどうなんですか。
  125. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは推理小説みたいにいろいろお考えになる人もおりますが、私はやはりものごとをすなおに受け取りたいのです。アジアというものを考えてみれば、国際問題というものは、みなアジアに移っているわけです。アジアの開発を何とかしたいというのが、私の考えの出発点です。そのためには、いろいろアメリカが言ったからといって――アメリカだって、ボルチモア演説は、私は忘れないで覚えておこうと思っている。いまベトナム戦争があるからおかしいけれども、やはりあの演説は私の記憶の中にちゃんととっておこうと思う。やはりアメリカだって、アジア開発に対しては非常な貢献をしてもらわなければならぬ相手だし、そういうことで――どうも日本人はせっかちですから、こんな大きな構想が、一日のうちに計画ができて、そうしてこうだ、金はもうこれだけ要るのだ、日本がこれだけ出して、そういうふうなものではないと思う。EECなんか生まれるにしても、チャーチルなんかが言い出してから何十年もかかったですからね。やはりみながそういう気持ちにならなければ、機構をつくったって機構は動かないですからね。アジア問題をこういう広さで考えようではないか、アジアの開発こそが戦争と平和に一番関連する問題だということで、みなの気持ち、足並みをそろえさすということは、やはり外交的な日本が果たさなければならぬ大きな役割りだと思っているのです。それはやはり太平洋の先進諸国と日本は違うのですよ、アジアに対する感じ。ベトナム問題に対しても、われわれの持っておる感じというのは、もっと違ったものがあります。そういうことで、大出さんも、何かいろいろ書いておっても、そのなにに乗らぬように、これはやはり必要なことだ、知恵が足らなければ知恵を貸してやろうということでやろうじゃないですか。平和政策といったって、お経で平和、平和といったって、平和は達成できるものじゃない。平和をくずしていく条件を一つ一つなくしていこうという努力がなければ、平和、平和と、ポスターや演説会でできるわけはないのですから、そういうことで、ひとついい知恵があったら、外務大臣、どうも知恵が足らぬようだから貸してやろうというくらいのあれが――私だって、少し長い目で見れば、こういう形でアジアの開発をやるよりほかないのじゃないか。ないとすれば、それを最も有効に、そういう努力を結集できるような方法を考えるということは、外務大臣として当然のことであって、だから、どうかやはりこれに対して一緒に、これこそ野党も何もなしに、アジアの問題というのは平和に通じているのですから、御協力を願いたいと思うのでございます。
  126. 大出俊

    ○大出委員 いろいろ勘ぐってものを言ったような形になりますが、いまあなたが言われることからすれば、この間あたりからしきりに超党派外交を言っておられるその気持ちを言っておられるのだと思うのですが、私も実は東南アジアを含めて五回ばかり歩いていますし、フランスの時代のサイゴンにも二回ほど行っておりますから、全く知らないわけでもないのですけれども、ただそれだけに、一つ間違うと、これは日本とアメリカの皆さん方とどうもあまり仲がいいから、ひょっとすると非常に妙な受け取られ方になって、二つのグループなどをつくり上げる結果になるとこれは事だという逆な心配を――質問している理由は、実はそれを確かめておきたいという気持ちなんです。ただ、そこから先が明らかにならぬとすれば、本体がいまの段階では明らかにならぬのだから、いたし方がないと思うのです。その点は先を見なければわかりませんから、この際あと五、六分で、具体的に幾つか問題をぽんぽんと承りたいのです。  そこで、まず一つは、例のチャーター機問題です。これは私のほうの設置法とからんでおりまして、定員とのからみ合いが非常に強い。したがって、羽田に入ってきておるチャーター機が、四十二年の一月が千八百十機、四割三分九厘ですね。それから二月に入って千八百二十機、四割八分六厘、三月に入って千八百五十五機、こういうふうにふえてきておるわけです。ところが、安全保障課長は、去る四月運輸委員会方々について一緒に調査に行かれた。そこで新聞発表をされておる中身からすれば、これ以上ふやさぬということを米軍の側が言っておる。これは明らかに新聞に出ておることなんです。そうすると、そこらあたりは、相手の意思いかんで、こちら側から規制できる筋合いではないと私は思っておるのだけれども、そこらのところを外務省としてこれ以上――ベトナム戦争との関係でほかの基地は一ぱいですから、羽田がふえる一方です。ますます忙しくなるのだから、ますますふえる。そこに浅尾さんがそういうことを言うとすればそれは次の場面で運輸大臣を相手に質問をしなければならぬのだが、これは四月の段階で今日まで一体どうなっておるかということと、言えないかもしらぬけれども、相手とどういう話になっておるのか、そこらのところをはっきりしておいていただきたい。
  127. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これははっきり申し上げることができますから、機数についても調べがついておりますから、政府委員からお答えをいたします。
  128. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 ただいま御質問の件でございますけれども、四月の中旬に私どものほうからアメリカ側に対しまして、なるべく他の軍用の飛行場を使ってほしい。第二点は、羽田を使う場合には、なるべく羽田のすいております時間、午前十一時から午後の六時、その時間を使ってほしいという申し入れをしております。直ちにアメリカ側から日本側の希望に沿うようにいたします、こういう返答がございました。四月は、中旬にその申し入れをした関係上、若干ふえておりまして、三月が約二百機、四月は二百三十くらいと記憶しております。五月は、私どものほうであらかじめアメリカ側が羽田をどのくらい使うのだということを聞きまして、百七十六機ということで機数が減っております。実際の使用の時間も、午前十一時から午後六時までということになっております。
  129. 大出俊

    ○大出委員 それではいまの点をもう一つ聞いておきたいのですが、相手方との話し合いの場所というのですか、合同委員会か何かのかっこうの中で定期的に話をする、そういう取りきめまであるのですか。
  130. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 これは特に取りきめはございませんけれども、こちら側といたしましては、運輸省から要請もございまして、合同委員会を通じて申し入れて、ただいま申し上げたような回答を得た次第であります。
  131. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから詳しくは聞きませんが、チャーター機のほかに、羽田を使わない、つまり上空を通るという形のものが、これを見ると、大体月に、多いときには五百十何機で、少ないときには二百二十七機というふうに、こうあるのですね。したがって、一つ間違うと、兵員あるいはその家族あるいは物資などというふうなものですから、そうなると、たいへんなことになりかねない。したがって、先行きの問題として、現地の業務量が倍以上にふえておって、人員のほうが極端に少ないわけですから、そういう意味で、国際通信局あたりで把握しておる内容からいきますと、通報担当者等々の数からいきまして、いま非常に危険な状態にあるというのが、現場のやっておる諸君の私どもに対する言い分なんです。したがって、この点はいまの程度ではなくて、先行きもっと管制その他ができるようなぐあいに、現実に即してやっていただかなければならぬ筋合いだと私思っておるのですが、もう少し、単に申し入れてこうしてもらいますというだけでなくて、そこのところを詰めて相手側と話し合いをするという意思はありませんか。
  132. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 ただいま私たち運輸省から承っておりますのは、一番問題は駐車場の問題であります。管制あるいは滑走路の問題は、現在の機数でも十分対応できるというふうに聞いております。問題は、駐車場が特定の時間に非常に混雑する。したがって、それをなるべく混雑を避けてもらいたいということでございますから、現在のところ、駐車場の問題さえ解決できれば、目下のところは問題はないというふうに思っております。
  133. 大出俊

    ○大出委員 時間がなくなりましたからもう一つだけ聞いておきますが、LST問題で何べんか横山委員その他と論議されておりますね。横浜は私出身地なものですから、横浜にはたくさんそういう場所がございますから、乗っておる者がおり、いろいろ問題がある。ここで、どうも感心しないのは、LSTの乗り組み員は米国政府との間に徴兵法などによる義務関係を有していないので、戦争に参加していることにはならないという答弁が、外務省の側からありましたね。大臣、どうもこういう答弁のしかたというのは、現実にあまりにも離れ過ぎている感じがする。ベトナム戦争といい、あるいは紛争というが、現実的に宣戦布告しているわけではないから、純法律的にいえば戦争とは言えないかもしれない。しかし、現実には戦闘状態ですね。そうすると、LSTの問題は、答えておるように、乗り組み員は米国との間に徴兵法などによるそういう意味の義務関係を有していないので、戦争に参加あるいは協力しているというふうには考えられないという言い方になっているわけですね。ここらのところを、ひとつこの席でもう一ぺん明らかにしてください。
  134. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは個人の契約によってやっているのですから、これを戦争参加だということは、私も言えないと思うのです。何も義務によってやっておるわけじゃなく、個人の契約で雇われて行っているんですから、戦争参加ということばは、少し事実に反するのじゃないでしょうか。私もそのように考えております。
  135. 大出俊

    ○大出委員 それからもう一つ。LST乗り組み員が、この危険な状態についてそれほど危険な状態にあるとは判断していないという答弁がもう一つあるのですが、現に死んでいる人もあり――三人目ですね。問題はそれに対する外務省皆さんのものの判断、すでに三回もあるのに、そんなに危険な状態にあるとは思われないという言い方なんですね。ところが、横浜で現に乗っている人にいろいろなことを聞いてみると、いろいろな制約がある中で私どもに答えているのだと思うけれども、ずいぶん極端なことを言っておりますよ。したがって、まずどんな状態に置かれているのか、そこのところをお聞かせ願いたい、あなた方が危険でないと判断されているのならば。
  136. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一人でも日本人の生命がそこなわれるということは、これは全然問題がないというわけではありませんが、まあいままでわりあいこういう事件は――きのうも私シャープ太平洋司令長官とこの問題を持ち出して話をしたわけです。いままでこういう事件がなかったのに、最近はこういう事件が起こって、まことに残念に思っている。しかし、アメリカとしても、これは向こうから撃ち込んでくるのですから、なかなかこれを防ぐといっても、アメリカとしての生命の保護というものに対しては限界もあるが、できるだけわれわれとしては気をつけるようにしようと言っておったわけです。だから、これはどこまでなったらどうだということを具体的にここで申し上げることは、非常にむずかしい問題だと思います。そういうことで、今後こういうものがどういうふうな被害の状態になっていくかということは、われわれとしても注意深く見守っていきたいと思っております。しかし、いまのところでこれに対して何らかの制限を加えるということは、私はする考えは持っていないのであります。
  137. 大出俊

    ○大出委員 これで終わりますが、いずれにしても旅券交付をしておるわけですね。そうすると、その結果として生命に危険がある、あるいは死んだ人間が出てきたということなんですね。それをたいした危険がない――危険があると言えば、なぜそういう許可をするのかということになるから、危険がないと言うのだと思うが、それをいまの段階では見守るだけでいたしかたないという答弁は、私はいかがなものかと思うのです。現に三回もこの種の事件が起こっておる。してみると、これは日本人なんですから、しかも前段で御説のように、参加はしていないというのですから、だとすれば、この種の問題について、職業の選択は、自由だからなどと、この国会でものを論議しておるのですから、そういう答弁はないと私は思う。だから、一体どうこの安全を保障するとか、あるいはそのためにはどういう措置をとるとか、具体的に死んだ人間もある中で、そういう安全の措置なり方法なりというものを明らかにしないという手はない。無責任だと思う。その点どうですか。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは最初申し上げたように、一人でもなくなるということ、これは無関心ではいけないわけですが、個人の契約によってやっておるものですから、いま三人なら三人の犠牲が出た。全部この契約は許さない――この許さないというほうも、なかなかやっかいな問題があると思います、具体的に考えると。そこでいまのところ、そういうことでちょっと私どもはしようとは思っていないのですが、今後この被害がどういうふうな状態をたどるであろうかということは、これはわれわれとしてもずっとこの状態というものを注意をいたしてこの推移を見ようと考えておるわけですが、いまはこのことで、いままでの御指摘になった被害だけで、これはとめさそうという考えはないですけれども、今後どういうふうになっていくかということは、これはわれわれとしても注意深く見守っていきたいという考えが、正直ないまの心境でございます。
  139. 大出俊

    ○大出委員 いまのお話の中に、太平洋司令官のシャープさんですか、どこから撃ち込んでくるのかわからないのだから、そういう意味の保障はできないと言ったという意味の答弁がありましたが、相手方、つまり直接契約を結ぶ相手方が安全の保障ができないと言い切っているのに、あなたのほうではそれでもやるのですか。
  140. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは何も保障できないと言ったわけではない。なかなかむずかしい点があるが、できるだけの注意をいたしましょうと言ったので、どこから飛んでくるかわからないので保障はできませんよということを言ったわけではないのです。なかなか困難な面もあるけれども、まあ生命を守るということについてはできるだけのことをしてくれと、こちらは言ったわけです。それに対して、向こうもそのようにいたしましょうということで、それは初めからそんなことは不可能なことだというような発言ではなかったわけでございます。
  141. 浜田光人

    ○浜田委員 ただいまのLST問題について関連質問を行ないますが、さきの予算委員会でも、確かにいま大出委員から言われたように、二十一日に運輸大臣も外務省と協議をして、それらの経過を調べると言っているのですが、昨日もお話をしたということですが、確かにいまの日本の状態を見ますと、ああして国内ではいろいろな戦闘地図をつくったり、日本海のあの演習の状態、加うるにこういうようなLSTの乗員の死亡、負傷、そういうことを考えると、非常にいま戦争に対する危機感といいますか、そういう戦争という黒い霧に国民は何か非常な逼迫感を感じておると思うのです。そういうときに、私はいまさっきから出た関連ですが、さっきも三木大臣は、安保条約というものは先にあったのだ、こう言われる。そうすると、行政協定にかわった地位協定、この中では雇用関係――いまのような直接雇用でやって、旅券発行で出すから、身分保障もできない、つかまえることもできないという点があるわけですね。ですから、かつて英連邦軍は、長い間かかって、無協約時代でも、あのときに直接雇用しておったが、これはいかぬというので、間接雇用、政府雇用に切りかえたわけですね。そういう前からある条約なり地位協定に基づいて、なぜそれを間接雇用にやっていかないのか。これは私は、地位協定の中にちゃんとここの面もあると思うのです。それらがどうしてやれないのかと思うのです。十二条にきちっとある。そういう点について、いまのLSTの船員の問題、これらの安全の保障、それから法の適用、そういう点についての見解を聞きたい。
  142. 三木武夫

    ○三木国務大臣 条約局長からお答えさせます。
  143. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 地位協定の規定の解釈の問題でございますが、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」とあるわけでございます。この地位協定を交渉いたしました当時、日本側としては、全面的に直接雇用を間接雇用に切りかえたいということでやったのでございますけれども、アメリカ側のほうでは、どうしてもそうできないものがあるということで、こういういまの第四項の規定のような形で妥協ができたわけでございます。この意味は、要するに、原則は間接雇用であるけれども、直接雇用のものを全面的に排除するという趣旨ではないという意味合いの規定でございます。
  144. 浜田光人

    ○浜田委員 実際いま間接、直接と二つあって、その中でも直接船長とか機関長というのは外国人がやっておるLSTもあるわけですね。そういう乗り組みの状態の船もある。したがって、そういう直接、間接の差異と、そして、なお直接雇用の場合でも、日本人ばかりの船員の場合、そして外人が指揮して船長、機関長がおって、そのほかの乗り組み員は日本人を使っておる場合、こういうときの差異というか、具体的にいえば、ベトナムに行って日本人のみ乗り組みのLSTは、むしろ危険な個所へでも命令に従って行かなければならぬ、行かされておる。ところが、アメリカの船長や機関長が乗り組んでおるLSTは、比較的そういうところじゃないところに配置される、航行命令を出される、こういう点があると乗り組み員も言っておる。したがって、これがそういう混乗の場合、そして日本人だけの場合、いろいろ形態を持っておるわけです。したがって、それをつかまえるためにも、直接雇用だから――もっと掘り下げると、船員法では船員手帳を持たなければ船員じゃないでしょう。ところが、いまこの直接雇用は実際旅券だけで、極端にいえば、ぐれん隊の諸君でも船員になって乗らして行っているでしょう。  週刊文春読んでみなさい。千人余りの応募者の中で二百人は、あとで調査したら前科持ちだといっている。三十何犯というような人が応募をしておる、こう言っておる。そうしてみると、私は、国際信用から見ても、こういうことではますますたいへんな問題だと思う。そういう意味からも、間接雇用にすれば当然チェックできるのだ。それを旅券だけで、しかも特殊な技術の必要な船員を乗せていくという、こういうところに問題があると思うのですよ、船員法からいって。それから安保のいまの十二条でも、英連邦軍は、アメリカの言うことを聞かぬでもいいんだ、おれたちは独自のやり方をやるのだ、こういっておった国ですらも、やはり日本は、日本人を保護するためには間接雇用でなくてはいかぬというので、ついに五、六年たって間接雇用にした。松平さんのときにはずいぶん骨を折られてやったでしょう。ところが、こういう危険にさらされておる船員を、私はまだ旅券はとめる意思はないのだ、こういうことを言われるが、だれがそういう船員の生命を守るのか。そういう点について、いまのただ十二条でそれは妥協したのだというのじゃなくて、現実に起きておる問題ですから、雇用形態を変える考えがあるかどうか。
  145. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど申し上げましたように、直接雇用をアメリカがやるのをとめるだけの力は、この十二条第四項の規定にはないわけでございます。したがいまして、もしどうしてもとめたいということだったら、これ以外の方法によるよりほかないと思います。
  146. 浜田光人

    ○浜田委員 それ以外の方法があれば、知らしていただきたい。
  147. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これは国内法のことになるかと思いますけれども、とにかく地位協定上はそういう手だてはないということです。
  148. 浜田光人

    ○浜田委員 地位協定の十二条の五項では「労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」と規定づけられておるのですよ。そうすると、船員として乗せるなら、船員法の適用を受けるわけでしょう。船員法の適用を受けるなら、船員手帳というものを五十条でぴしゃっと規定づけているでしょう。なぜそれによってチェックしてやらぬのですか、こういうことになる。全部船員手帳を持っておりますか、LSTの直接船員は。
  149. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 実態のことはよく存じませんが、みな旅券で行っておりまして、船員手帳は持っておらないそうでございます。
  150. 浜田光人

    ○浜田委員 予算委員会での答弁は、「運輸大臣と同じく、いままでもあるいは今日からもむろん検討いたします。」と、こうなっているんだが、すでに一月近くたっているんです。こういう実態を把握せずして、何をもって対処されるんですか。そういうことは、向こうの状態、そういう雇用形態、それから法の保護、こういうものをずっと調査して積み重ねなければ、手は打てないじゃないですか、手を打つと言っているが。予算委員会で答弁してすでに一月近くなっているんだよ。そのうちに何回となくそういう死亡者が出てきている。口では言っているが、幾らも日本人を保護しておらぬということだ。
  151. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いままで将来の問題として検討したいという趣旨は、やるという方針をきめて、法律上のどういう措置を講じ得るかという問題の検討というよりは、現実の事態の進行を見きわめて、何らかの措置をとる必要があるかどうかということを今後の決定にゆだねたいという趣旨に、私は了解いたしております。
  152. 浜田光人

    ○浜田委員 事実問題として起きておることは、大臣もしばしばそういうことが起きたのではたいへんだ、こう言って心配しておられますね。ですから、そういうことは一日も早く防ぐように努力せなければいかぬと思います。それを防ぐための努力は何をするかというと――いまのことを積み重ねていくと防げないのです。それを、やはり旅券は停止するつもりはないんだ、いままでどおり出していくんだ、こう言われる。一体どこがチェックするかということになる。やはりチェックするのには、日本人を守るためには、そういう間接雇用に切りかえていく。そうすれば、私は、おのずから法が適用されると思うのです。法の適用をされれば、そこでチェックもできるわけですね。そして危険なところへどうかこうかということは、話し合って行かさぬようにしなければいかぬ。あの朝鮮動乱のときはどうですか。ずいぶん問題になりましたですけれども、そのときには、直接あちらには派遣せぬということで、船舶運営会というものが中に入ったんですよ。それから十何年もたってから、今度は逆な、自由自在に連れていかれるような直接雇用をやるということは、これは日本人を本質的に守る手段じゃないですよ。これをほっておったら、今日間接雇用にあるところの船員が、逆に直接雇用に切りかえられて、自由自在にどこへでも軍の指示どおりに派遣されるという危険性が生まれてくると思うのです。そういう点でも、私は、今日、生命を守る点から、雇用形態の問題をきちっと確立すべきだと思いますが、それに対する意見を聞きたい。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは船員のは運輸省がやっておるわけですから、そういう答弁もありますから、運輸大臣に、これは日本人の生命にも被害が起こっておるわけですから、実態の調査というものはできるだけ促進するように連絡をとって一いまこれを根本的に変えようという考えは政府にはないのです、この雇用の形態を。しかし、その範囲内においてできる限りの処置を講じて、その処置というものにはいろいろ問題を含んでおりますが、研究をいたしてみることにいたします。
  154. 浜田光人

    ○浜田委員 大臣に誤解してもらっては困るのですが、私が問題点指摘するのは、やはり地位協定十二条の――さっき申し上げた国内法を守る、そういうところから出発するわけです。そしてたまたまそこから、法を守らすなら、いまの船員法の五十条の問題が出てくるんじゃないか、こういうことになるのです。外務省関係の問題ですから、そこはよく理解されて手を打っていただくよう希望しておきます。
  155. 大出俊

    ○大出委員 いまのLSTの問題で、英国の昨年十月二十一日の「エコノミスト」誌の記事を引用したものがここにありますけれども、LSTの日本人船員を「名誉ある雇い兵」と評し、「これらの日本人が乗り組んだLSTはベトナム沖で第七艦隊とともに行動している。補給物資やしばしば兵員を輸送し、ベトナム沿岸の港湾や河川をさかのぼって米軍戦闘陣地まで達している」という記事が載っている。となると、これはどこから撃ってくるかわからないという先ほどのお話もありましたが、ここまで行く、そういう仕事をしているのだとすれば、だれが考えたって、これは生命の保障はできませんよ。それはたくさんいる人の中で三回目で一人や二人というような言い方になるかもしれないけれども、私はそれでは済まぬと思う。だから、条約局長が先ほど言っているように、私が答えたのは、今後この種のことを変更する措置をとるかどうかということを検討したいということを言ったのだ、何とかするということを前提にして相談するのではなくて、さっき大臣が言ったと同じ意味の、いまのところはそっとしておく、ながめている、あるいは慎重に見ている、そして先行き何とかする場合もあるし、しない場合もある、こういう言い方になるわけですよ。私は、それでは済まぬと思う。だから、きのうのどういう会議か知らぬけれども、少なくとも爼上に載せて話が出たとすれば、事実戦闘陣地まで達していること等についても、これは乗っていった人間に聞いてみたってわかることなんで、実態を知らぬということでなくて、もう少し調査をしていただいて、そういう種類の輸送形態その他を含めてあらためて検討していただかぬと、次に起こって四回目だからもうしばらく、そういう無責任な政治というものはないと思う。ここのところをひとつ最後に答えてください。
  156. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も、三回くらいならいいとも考えていないわけです。一人でもいけないわけですから、これは十分実態の調査はいたします。
  157. 關谷勝利

    關谷委員長 次会は、来たる十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十四分散会