○村田
政府委員 先生御承知のとおり、サバンナ号が一九六二年から動くようになりまして、今日までずっとヨーロッパ諸国、十二カ国を訪問航海しておるわけでありますが、いずれ極東方面にも来るだろう、こういう予想は前々からいたしておりまして、そのための規制法の
改正等も一昨年行なったわけであります。もっとも、その規制法
改正を行ないますにあたっては、先ほど御
指摘ございました一九六〇年の海上人命安全条約が発効するという事態に備えての国内法の整備という立場で行なったわけであります。その際に、海上人命安全条約に定められております
原子力船の安全性の問題、これを
法律の中に取り入れまして、そうして実際には同じように安全
審査をいたすわけでございますが、その際に提出される資料等は、海上人命安全条約に定められた安全
説明書というものの提出を求めることになっております。これにつきましては、実はサバンナの運航者から相当以前に技術資料を送ってきております。で、私どもそういうものを、わが国の原子力第一船の建造計画もございますので、いろいろ利用して
関係者は勉強してまいったわけでございますが、先般、三月の十三日でございましたか、このサバンナ運航委託を受けておりますファースト社という会社から、わが国水域への立ち入り許可の申請が正式になされたわけです。これはもちろん総理
大臣あてになされたわけでございまして、規制法の定めるところに従い原子力
委員会に
諮問され、原子力
委員会では、直ちに原子炉安全専門
審査会に安全
審査を依頼された。三月の十七日であったと思います。その後、原子炉安全専門
審査会で約一カ月の間に非常に熱心に、かつ慎重に、送られました技術資料を
審査しまして、その結果、距離等についての若干の条件を付しておりますが、安全性については問題ない、こういう
答申を原子力
委員会になされたわけであります。そこで、先ほど申し上げましたように、原子力
委員会ではその安全性について、原子炉安全専門
審査会の見解を一応再チェックいたしますが、あわせて運航者の技術的能力あるいは経済的能力というもの、並びに
原子力商船の場合には、これは国際間を動くものでございますから、もう
一つ原子力
関係の特色でございます万一の原子力損害の際における賠償
措置、これについての国際約束というものが取りかわされておる。この内容が、原子力損害がかりに起こりました際にも、それを
措置するに足る国際約束であること、このことの確認を原子力
委員会がされる、こういうことになっておるわけでございます。そこで、この申請がありますと同時に、
外務省を通じまして、米国側、これは米国
政府でございますが、これに必要な国際約束の折衝をしていただいたわけでありますが、その結果、だいぶ経緯がございましたけれども、途中省略いたしますが、米国側としましては、私どものほうで原子力
委員会にも御相談しまして、こういった条項を盛り込んでほしいという国際約束の案に対しまして、いま直ちにそれを調印することは困難である。その理由は、米国
政府としては、その中に米国議会の承認を得なくてはならぬことが入っておるということで、直ちに調印することは不可能である。ということは、この国際約束というものは、いわゆる行攻べースでの協定という形では結べないということが明らかになりました。他方、米国
政府がこれを入れては困るという条項は、わが国の原子力損害賠償法に定めますプリンシプルからしますと、わが国
政府としてはぜひ入れてほしいということでございましたので、協議は結局不調に終わりました。その結果、原子力
委員会としましても、現在、日米間でこれならよろしいというところまできておるものでは足りると見られないということに相なるわけでございまして、残念ながら安全性の点では一応よろしいということであったわけでございますが、損害賠償
措置のほうで条件が相整わなかった、こういうような次第でございます。