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藤谷参考人 私、ただいま御紹介いただきました
藤谷でございます。突然のお呼び出しにあずかりまして、特別の準備らしい準備もいたしておりません。大ざっぱな私の感想という
程度でお聞き取り願いたいのであります。
私、本日の公述にあたりまして、実は本
年度の
地方財政計画につきまして一言申したいと
考えておりましたのでありますが、先ほど来お話がいろいろ出まして、特に
小沢さんのほうから相当詳しくお話がございました。また時間の
関係もございますので、この点は割愛させていただきたいと思います。ただ私の申し上げたかった点を申しますと、一般に本
年度の
地方財政計画は昨
年度に比較して相当明るいものだ、そういうかなり楽観的な
見方が多いように見受けるのであります。私は、なるほど表面上の数字を前
年度と比較しますと、そういう結論が出るかもしれませんけれ
ども、少し
内容に立ち入って見ますと、決して簡単に楽観できる
内容のものではないのではないか。その理由を申し上げなくてはなりませんけれ
ども、ただ一点だけ申しますと、これも先ほどどなたかお触れになりましたけれ
ども、
地方税の大幅な増収が見込まれておるのであります。非常にけっこうなのでございますけれ
ども、そういう増収を見込んだ原因はどこにあるかといいますと、御
承知のように
景気の好転、
景気がよくなったということをその要素にしておるようでございます。しかしこの
景気の動向がはたして今後どうなるか、そういう見通しはなかなかつけにくいのではないか、やはり
景気の動向に必ずしも簡単な楽観的な期待を持つことができないのではないか。そういう
意味で不安定であると思います。
もう
一つの点は、そういう増収は具体的には法人
関係の
地方税、これは特に
景気の
影響を受けるものでございますから、さっき申したことと深い関連がございます。もう
一つは個人
関係の
地方税、特に
住民税あるいは固定資産税の増収が見込まれておるのでありますが、これも御
承知のように、たとえば
住民税をとってみますと、
負担は非常に重くなっている。
負担の過重が訴えられておる段階であります。こういう状況で、ただ増収が見込まれるということで簡単に楽観してよろしいかどうか。やはりそこに不安定な、あるいは不健康な要素が含まれているのではないか、こういうことを
考えるのでございます。その他の点につきましては、
地方財政計画につきましては一応割愛させていただきます。
そこで、本日の議案に関しまして簡単に申し上げたいのでございますが、今回の
地方交付税法の改正案、それから四十二
年度における
地方財政の
特別措置に関する
法律案、これは御
承知のように、四十二
年度に見込まれました
地方財源不足額七百五十億円というものを、別途
財政投融資
計画におきまして処理されますところの
地方債の増額とあわせまして
措置されるわけでありまして、その
金額の大きさ、規模から申しまして、またその
措置内容から申しましても、これは私の主観かもしれませんが、私としましては、今度の
法律案の
内容につきましては特に取り立てて大きく問題とするほどのことはない、あるいは少ないのではないかというふうに
考えます。ただ、しいて今回の
措置内容から注目すべき点を拾い上げてみますると、第一に、四十一
年度におきまして、国、
地方ともに非常な
財源難にあいまして、その結果、異例の
措置としてとられた
特別事業債につきまして、四十二
年度には旧に復して、
一般財源措置がとられましたことが注目に値します。また、この
特別事業債の償還費が
基準財政需要額に算入されることになった。これも重要な点ではあると
考えます。しかし、この点につきましては、それが四十三
年度以降におきましても引き続き恒久的に
措置されるかどうか。これは先ほど来もお話が出ておりますけれ
ども、やはり本
年度限りという
臨時措置でなくして、引き続き恒久的に
措置される必要があるということを
指摘いたしたいと思います。
第二に注目に値すると思いますのは、
市町村道の
整備のための
目的財源といたしまして第二種交付金が交付されることになった点でございます。この問題につきましては、今日までにずいぶん紆余曲折があった模様でございますが、私
どもしろうとから見ますと、二十五億円という
金額はあまりにも少ないというふうな、ふしぎなような感じがいたすのが率直な
考え方でございます。しかし、これが本
年度限りでなくして、いわばこういう新らしい制度の道を開いたということでありますれば、それはそれで
意味があると思うのでありますが、税制調査会や
地方制度調査会におきまして出されました答申にもございますように、
市町村道の
整備ということは今日の急務となっておるわけでございます。そこで、
道路整備五カ年
計画、そういうものとの関連におきまして、早急にやはりこの
措置を恒久化する必要がある、同時にその
財源関係を明確にする必要がある、またその
金額もさらにさらに増大する必要があるように
考える次第でございます。
直接本日の議案に関連したことは以上にとどめますが、もう少し時間を拝借いたしまして、この
機会に、やはり本日の議案に
関係はございますが、やや広くといいますか、やや離れて、今日の
地方財政の問題、
地方財政制度の問題につきまして、できるだけ簡単に触れてみたいと思うのでございます。
まず第一に、今日の
地方財政制度、あるいは
地方財政問題を見まして、第一に疑問に感ずる、あるいは不満に思いますのは、
臨時措置の繰り返しということでございます。昨年、
地方財源に関する
臨時措置が行なわれましたが、これは、はたしてそのすべてが
臨時措置が必要かどうかということがまず問題でございますが、それはそれとしましても、本
年度におきましても、やはり一部分は恒久化された部分がございますけれ
ども、やはり
臨時地方財政交付金という形で、これは必ずしも恒久化の保証のない制度が
臨時措置としてとられておる、こういう点がなぜ、つぎはぎと申しますか、その場限りの応急
措置にとどまって年を重ねるのか、こういう点をやはり私は疑問視いたすわけでございます。
それから、第二の問題は、
地方交付税制度についてでございます。特にこの制度のあり方につきましての感想を申し上げてみたいのでございます。これは御
承知の数字でございますが、
昭和四十
年度の
普通交付税の交付状況を見てみますると、町村の九七%、市の八五%、これが
交付税の交付団体となっております。特に、従来富裕団体と見なされてまいりました大
都市、今日六大
都市となっておりますが、四十
年度におきましては、この六大
都市の全部が交付団体になっております。また、都道
府県におきましても、四つの都
府県を除きまして、残る全部が
交付税の交付団体になっているようでございます。このように、都道
府県、
市町村を通じまして、圧倒的な部分が
地方交付税の交付団体になっておる。こういう姿ははたして正常なと申しますか、あるいは望ましい形であるかどうか、この点が検討を要することで、私は疑問を抱くわけでございます。これをどういうふうな形で解決するか、どういう方向へ持っていくのが妥当な姿であるかということは、またいろいろ議論が分かれるところであろうと思いますけれ
ども、それをもし是正すると申しますか、交付団体の数をもう少し減らす方向へ策を講ずるとしますと、当然のことながら、国のほうから
地方に大幅な税源の
移譲をするということは当然
考えられなければならぬと思うのであります。なお、この点につきましていろいろ問題があるかと思いますが、一応割愛さしていただきます。
第三に問題といたしたいのは、府
県税と
市町村税との
関係についてでございます。先ほど
甲府の市長さんからもこの問題に触れられたように存じますが、御
承知のように、シャウプ勧告は、
地方財政につきましては
市町村優先主義をとったわけでございます。
地方税制につきましても、こういうふうな考慮のもとにつくられたと思われるのでありますが、最近の状況は、むしろ府
県税収入のほうが相対的には優位を占めまして、特に収入の弾力性という点につきましては、府
県税と
市町村税は格段の相違があることは御
承知のとおりでございます。これも、はたしてこういう形でよろしいかどうかという問題になると思うのでありますが、特にこういう
市町村の、特に
都市、とりわけ
財政需要が非常に急激にふえておりますところの大
都市におきましては、いまの弾力性の欠除ということが非常に顕著にあらわれておりますし、
財政の
運営にも非常な支障を来たしておるのであります。この点の解決のためにも税源の
移譲、特に国と
府県と
市町村、この三つのレベルの間でどういうふうに税源を
配分すべきかという問題が出てくるわけでございます。そういった問題につきましても、具体的な方策は簡単には出ないかと思いますけれ
ども、私思いますに、まあそういう弾力性の欠除とかあるいは府
県税と
市町村税との、アンバランスということばははなはだ適当でございませんけれ
ども、府
県税のほうが優位に立っておる、そういう
関係をもし是正するといたしますと、
一つの問題になりますのは、法人所得課税というものを注目する必要があるのじゃないか。弾力性あるいは税収の豊富な点、検討の一課題として、法人所得課税というものを国と
府県と
市町村でどういうふうに
配分すべきかという問題が
一つその中にあるのではないかというふうに
考えるのであります。
私、申し上げたいことは大体以上のとおりでございますが、御
承知のように、今日、
地方財政の領域におきましては、解決の必要の迫られておりますところの問題、懸案が非常にたくさんございます。
地方税制に限って見ましても、たとえば国の所得税の一部を
住民税に
移譲する、そういうことがいいか悪いか、あるいは
事業税を改組いたしまして、その中に付加価値税の要素を導入することのよしあし、あるいは土地課税というものにつきまして根本的にどういう方針をとったらよろしいか、いろんな問題が山積していると思うのであります。そういった場合に、これは問題が困難なせいもございますけれ
ども、とかく
地方税制の一部分のみを取り上げてその解決を
考えていく、あるいはその応急的な改正にとどまるというふうな傾向が多く見られるのではないかと感じるのでございますが、こういう際に
地方制度調査会あるいは税制調査会におかれまして、当面の
措置にとどまらず、長期的な展望のもとで、たとえば三年先の
昭和四十五
年度に実現を期するというふうな目標を立てまして、しかも総合的な――税制だけでなく当然ほかに関連いたすわけでございます。税制、補助金の問題、交付金の問題、さらには
行政にも
関係いたすであろうと思いますが、そういう総合的な、そして根本的な対策を、当面とか明
年度さしあたり実施を要するということでなしに、少し長期的な目標をはっきり立てまして、検討され、そこに具体的な案を示されるように私は期待いたしたいのでございます。
これをもちまして終わらせていただきます。