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1967-07-10 第55回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十日(月曜日)    午前十時八分開議  出席小委員    小委員長 小峯 柳多君       笹山茂太郎君    西岡 武夫君       毛利 松平君    山下 元利君       広沢 賢一君    堀  昌雄君       武藤 山治君    村山 喜一君  出席政府委員         大蔵省銀行局長 澄田  智君  小委員外出席者         大 蔵 委 員 河野 洋平君         大 蔵 委 員 藤井 勝志君         大 蔵 委 員 竹本 孫一君         国税庁直税部長 奥村 輝之君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  田實  渉君         参  考  人         (全国地方銀行         協会会長)   平野繁太郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として全国銀行協会連合会会長田實渉君、全国地方銀行協会会長平野繁太郎君の両君が御出席になっております。  参考人各位には、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本小委員会は、金融に関する諸問題について調査を進めておりますが、両参考人におかれましては、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  それでは、両参考人から今後の金融制度及び金融機関あり方について御意見をお述べいただき、そのあとに質疑を行なうことといたします。  まず田實参考人、次に平野参考人、こういう順序でお願い申し上げたいと思います。田實渉君。
  3. 田實渉

    田實参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました田實でございます。  本日は、「今後の金融制度金融機関あり方について」並びに「資本自由化のもとにおける金融界立場はどうあるべきか」という二つのテーマについて全銀協会長として意見を述べるようにということでございますが、御高承のとおり、全国銀行という範疇の中には、都市銀行地方銀行といった普通銀行のほかに、長期信用銀行信託銀行も含まれております。したがいまして、金融制度あり方につきまして全銀協見解をまとめるということは、問題が問題でありますだけに、きわめてむずかしいことでございます。また、本日は、地方銀行協会平野会長も御意見を述べられることになっておりますので、私は都市銀行に身を置く者という立場からお話をさせていただきたいと存じます。また、私個人としての意見がほとんどでございますので、この点、御了承いただきたいと存じます。、そこで、話の順序といたしまして、資本自由化のもとにおける銀行立場という問題から始めさせていただきます。  昨年来問題となっておりました資本取引自由化は、外資審議会の答申に沿ってこのほど実施の運びとなったわけでございますが、私は、かねがね資本自由化という問題は、いわば町内会の寄付のようなもので、わが国先進国に仲間入りした以上、それを拒み続ければ村八分にされるおそれがありまするし、そうかといって、家庭の事情を考えずに身分不相応なつき合いをすることはできないと、こういうように考えておったのでありまするが、今回の自由化措置は、このような考え方から見ましても、まず妥当なものであったかと存じます。  しかしながら、何と申しましても、資本取引自由化影響が実際にどのような形で出てくるものか予断は許されませんし、さらに、当面はともかく、今後自由化を一そう推進せざるを得ない趨勢にございますので、私ども銀行産業界と協力して自由化に積極的に対応していかなければならないと考えております。  ところで、銀行を取り巻く資本自由化と一口に申しましても、それにはきわめて広範囲な問題が含まれておるのでございます。便宜上、これを銀行に対する直接的な影響と間接的な影響とに分けて考えてみますと、直接的な影響とは、外国銀行わが国への進出わが国銀行の株式の取得、すなわち、外資によるわが国銀行支配という問題などであり、一方、間接的な影響とは、金融市場への外資の流入が銀行へどうはね返るかという問題、それがまた金融政策にどう影響するかという問題などでございますが、当面、特に私どもが関心を持ちますのは、外資産業界への進出、すなわち、私ども取引先である企業資本自由化によってこうむる影響銀行にどう波及するかという問題でございます。  このうち、直接的な影響につきましては、将来はともかく、さしあたりまして、銀行業はその公共的な性格から外資法上の制限業種にあげられており、また、銀行法によっても外国銀行進出にはある程度制限が加えられておりまするので、銀行の受ける直接的影響は、幸いにして一般産業界よりは少ないようでございます。もちろん、そうは申しましても、銀行業に対する外資進出わが国ほどはっきりと制約を設けております国は先進諸国の中にはあまりございませんので、銀行制限業種のワク内に安閑としていてよいというわけではございません。わが国の場合、企業銀行に対する借り入れ依存度は、諸外国に比べまして非常に高いのでありまして、銀行外資支配を受けるような事態は、国民経済的な立場からも回避しなければなりませんので、いまから銀行自体国際競争にたえられるように、従来にも増して経営合理化資産内容健全化努力していかなければならないと存じます。しかしながら、現在私ども経営合理化を強く迫られておりますのは、みずからの体質改善のためばかりではなく、産業界からの要請にこたえるためなのであります。すなわち、資本取引自由化は、産業界に対しましては、いますぐにでもその波が押し寄せてくるのでございます。これを乗り切って国際競争にうちかってまいりますため、産業界企業体質改善強化を目的に、近代化合理化投資効率的に推進し、生産性を向上するため懸命な努力を続けているのでございます。  従来、わが国企業国際競争力は、先進国に比較いたしまして賃金が割り安であったということに負っていた面が多かったと存じます。しかし、最近では人手不足の激化に伴いまして、この面からの優位性が薄れてきておりますので、産業界から金利水準低下要請が今後一そう強まることは当然であると存じます。  こう見てまいりますと、資本自由化のもとにおける私ども銀行最大役割りは、産業界に対しまして金利の安い資金を豊富に供給することであると考えるのでございます。これが達成にあたりましては、これまで以上に経営合理化に徹し、コストの低減につとめると同時に、資金吸収努力しなければならないと考えております。もっとも、低利安定資金供給は、銀行にとりましては常に変わらざる責務であり、事実、これまでも鋭意努力を傾注してまいったのであります。  一例を申し上げますれば、都市銀行資金コストは、昭和三十二年の六・五七%から最近では六・一五%へと、十年間に約〇・四%低下しておるのでございます。特にその内訳を見ますと、人件費物件費などの経費率は二・六%から二%強へと、〇・六%近くも低下いたしております。一方、貸し出し金利水準を見ましても、三十二年の八%台から最近では七%へと低下しておるのでございますが、それでもなお国際的水準よりは高いのではないかとの声をよく聞くのでございます。金利水準を国際的に比較いたしますということは、御承知のとおりなかなかむずかしいのでございますが、よくわが国企業金利負担が大きいといわれますのは、金利水準そのものによりますよりも、先進諸国に比べ、わが国企業他人資本依存度が大きいことも一因となっておるものと考えられます。  そこで、御参考までにアメリカ銀行資金コストを見てまいりますと、コスト全体では四%弱と、わが国より低いようでございますが、経費率は三%弱となっており、経費率はむしろわが国のほうが低いようでございます。つまり、わが国都市銀行資金コストが高いのは、経費が高いからではなくて、預金金利が高いことが大きな原因となっていると考えられます。私は、ここで、それなら預金金利を下げろと申すのでは決してございません。わが国におきましては、貯蓄は美徳であり、国をあげて貯蓄を奨励いたしておるのでございますから、それに報いるためにも、また、資本蓄積が不足している現状からいたしましても、預金金利は諸外国より高いのも当然であると考えております。  そこで、預金金利を引き下げずに資金コストを引き下げますには、経営合理化と並んで、資金量の増加が不可欠の要因となってまいるのであります。したがいまして、私ども貯蓄増強に懸命の努力を傾注しておる次第でありまするが、貯蓄増強には、税制面から優遇を与えること、また、店舗行政等によって国民貯蓄しやすい環境を整えることも重要でありますので、この際、この点をお願いいたしておきたいと存じます。  このように、低利安定資金供給は、私ども経営合理化並びに資金吸収努力によって推進されるわけでございますが、これが私ども努力とは別の要素によって推進される可能性があるとすれば、その面からの考慮も必要ではないかと存じます。その要素一つが、金融構造金融制度あり方であると考えられますので、次に金融制度の問題に話を進めさせていただきます。  では、低利安定資金供給ということを前提といたした場合、金融構造並びに金融制度はいかに改善していくべきでありましょうか。  まず、金融構造でありますが、現下の最大の問題は、資金需要の多い金融機関に相対的にお金が集まらず、逆に、当面資金需要が逼迫していない金融機関お金が集まっていることでございます。これは一つには、国民所得構造経済の著しい発展に伴って変化し、また、財政資金の流れ方が変わってきているにもかかわらず、金融機関資金吸収体制がこれにマッチして整備されていないということが原因になっていると思いますが、また、金融制度が最近の経済変化に必ずしも即応していないことも一因ではないかと考えられるのでございます。  では、開放体制下にふさわしい金融制度を検討するにあたっては、具体的にいかに考えていったらよいのかについて申し述べます。  その第一は、金融機関相互の自由な競争をできるだけ取り入れることであると存じます。すなわち、これまでの土俵を異にする競争ではなく、金融機関が同じ土俵の上で自由な競争をしていくべきではないかと考えるのであります。もちろん、金融機関公共性の強い業種でございますので、無制限競争は、かえって国民経済的に見ましてマイナスになることもあると考えられまするが、真に必要な資金が円滑に流れるためには、きめられた共通土俵におきまして適正な競争をすることが肝心ではないかと考える次第でございます。競争原理は、産業界におきましても、資本自由化進展に伴いまして従来以上にきびしくなるのでございまして、金融界はそのらち外にあるというわけにはいかなくなるものと考えられます。  私の個人的見解といたしましては、国際化時代には金融界も再編成のやむなきに至り、同種金融機関相互や、異種金融機関相互合併集中も考えなければならないのではないかと存じます。ただ、合併集中と申しますと、独占あるいは寡占状態となって、かえって競争は排除され、低利安定資金供給という大方針に矛盾するのではないかという声も耳にするのでありますが、これは極端な仮定でございまして、再編成と申しましても、それが即寡占状態につながるとも考えられませんし、再編成が進みましても、適正な競争は十分確保できると信じておる次第でございます。また、再編成が行なわれる場合も、民間自主的判断のもとに行なわれるべきであるということを忘れてはならないと存じます。何となれば、合併最終責任当該金融機関にあり、また、経営者意思決定によってのみ成立するからでございます。  競争原理導入に続きまして、第二の問題は、業務内容充実発展ということでございます。  そもそも戦後の金融制度は、金融機関特殊化、専門化する方向編成されましたことが大きな特色でありますが、このような方向が戦後の復興期から三十年代の発展期にそれぞれ大きな役割りを果たしてまいりましたことは御承知のとおりであります。しかしながら、経済水準が高まり、産業構造が高度化してまいるに従いまして、次第に金融機関特殊性が薄れ、いわゆる業務内容同質化傾向が出てまいりまして、今回の金融制度調査会でもこれが問題となっておるようでございます。もっとも、民間金融機関同質化は世界的な傾向であるとも聞いております。たとえば、アメリカにおきましては、商業銀行相対的地位低下に対処して、民間金融機関相互の公正な競争を促進するという見地から、商業銀行に対します支店設置制限を緩和し、また、商業銀行業務内容拡大、すなわち譲渡可能定期預金銀行債発行長期貸し出しへの進出などを認めてきておるのであります。また、欧州諸国を見ますと、イギリスでは商業銀行証券業務への進出が注目されておりますし、西ドイツではアメリカ同様、商業銀行銀行債発行が認められ、さらにまたフランスでも、これまで厳格であった長短金融機関業務分野の区別を解消する方向にあるようでございます。したがいまして、わが国におきましても、時代要請に応じて業務内容を調整することは当然であると考えられますが、長期的傾向としては、業務内容拡大充実を行なえるよう、金融制度を改善していくべきではないかと考えております。そして、これが国民一般の便宜をはかることにもなり、国民生活の向上に資することにもなるものと信ずる次第でございます。  以上、低利安定資金供給をいかにして行なうべきかという問題をお話ししたのでございますが、最後に、金利機能活用という問題に触れたいと存じます。  金利機能活用は、いまさら申し上げるまでもなく、金融政策の効果を高めるための必要条件でございますが、今後、資本取引自由化進展に伴いまして、金利機能が従来以上に重要視されるものと考えられます。金利機能活用は、政府並びに民間資金を有効に配分するためにもまた必要であると存じます。  こう見てまいりますと、金利機能の作用する金融環境を整備することがきわめて大切でございますが、それには公社債市場の育成と同時に、金融市場に適正な競争原理導入して、資金の流れを円滑にすることが必要であると考えられるのでございます。  以上、るる日ごろ考えておりますことを申し述べましたが、これを要しまするに、今後、資本取引自由化進展に伴いまして、わが国金融市場も、好むと好まざるとにかかわらず、欧米諸国並み金利価格機能を重視せざるを得なくなるものと考えられますので、金融機関にもさらに競争原理導入せざるを得なくなるのではないか、また、世界の大勢と同じように、銀行業務内容も拡充、発展せざるを得ないのではないかということでございます。  しかしながら、ここで特に強調申し上げておきたいことは、本日私が申し上げましたのは、理論的に考えられる基本的方向でございますので、これが実行にあたりましては、それなりの考慮が必要であると存じます。何と申しましても、現在の金融制度には歴史的、社会的背景が強く結びついておるのでございます。したがいまして、これを単に経済合理性とか効率という理論的側面だけから軽々しく云々することはいかがなものかと存じます。  先ほど、今後自由化進展に伴いまして、金融機関の再編成もやむを得ないのではないかと申し述べましたが、これが民間自主性のもとで行なわれるにいたしましても、それに伴う影響を十分配慮してまいらなければなりません。  たとえば、当面問題になっております中小企業金融につきましても、これがすべて共通土俵競争しろということではございません。競争原理導入によって中小企業金融も円滑にならなければなりませんがそれでも、限界的には金融がつきにくい企業が出ることも予想されますので、この分野につきましては、質的補完制度強化 あるいは政府金融機関による補完も必要かと考えております。すなわち、経済的、社会的背景変化を十分洞察し、弾力的に制度の改革につとめるべきであると考える次第でございます。  以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 次に、平野参考人にお願い申し上げます。平野繁太郎君。
  5. 平野繁太郎

    平野参考人 ただいま御紹介をいただきました地方銀行協会平野でございます。  本日のお尋ねは、今後のあるべき金融制度金融機関あり方についてというのでございますが、問題がたいへん大きく、かつ、むずかしい問題でございまして、はたして御要望に沿ったことがお話し申し上げられるかどうか、たいへん危惧いたしておるのでありますが、地方銀行といたしまして率直に意見を申し述べたいと存じます。  ただいま全国銀行協会田實会長さんから都市銀行立場を中心に御意見の御開陳がございましたので、私は、主として地方銀行立場からお話を申し上げたいと存じます。  私ども地方銀行は、すでに御承知のとおり、現在六十三行ございまして、普通銀行としての一般的な性格を持ちながらも、営業地盤地方的であるということと、規模的に、中小普通銀行という点におきまして、そこにおのずから都市銀行とは異なった性格を持っておるわけであります。今後の金融制度の問題を考えます場合にもこの点は非常に重要な点でありまして、このような意味合いから、まず、地方銀行現状というか、その特殊性について御説明申し上げたいと思います。  地方銀行と申しますのは、明治の初めから半ばにかけまして、全国各地に多数の設立を見まして、その後のたび重なる経済恐慌、あるいは、戦時経済下の一県一行主義といった過程を通じまして整理統合され、今日の基礎を築いたのであります。また、戦後は各地銀行設立の機運が高まり、十二の銀行が新しく設立されまして、現在の六十三行の姿となっているのであります。  このような歴史的な発展を通じまして、常に一貫してとってまいりました地方銀行経営の特徴と申すべきものは、地方経済地方産業とともに生き、ともに育つということでありました。事実、今日までの地方銀行は、地方経済地方産業と、いわば運命共同体として不即不離の関係にあったのでありまして、この基本的な関係は、今後も変わることのない地方銀行の姿であろうと存じます。  今後の日本経済を考えますと、中央発展と並びまして、地方の成長がきわめて重要であると存じます。わが国には、伝統的に、何事によらず中央偏重考え方が強く、地方的なことは第二義的に考えられてきたことは否定できないのでございますが、これからの日本経済は、中央地方とがバランスをとって成長することがきわめて重要であると存じます。地方銀行は、地方経済と密接な関係にありまして、そこに地方銀行都市銀行とは違う特殊性を持っておる理由があると存じます。  地方銀行地域社会との結びつきは、まず都道府県指定金融機関として機能を果たしておりますことによくあらわれておると思います。地方公共団体指定金融機関制度は、遠く明治三十三年に始まりました県金庫制度に端を発するものでありますが、そのとき以来の深いつながりがございまして、現在、全国四十六の都道府県のうち、地方銀行が四十一の府県におきまして、県財政資金の保管と収納、あるいは調達の役割りを果たしており、地方財政の円滑な運営に御協力を申し上げておる次第であります。  このような地方公共団体との緊密な結びつきと同時に、地方銀行地方産業に対しまして、その需要に応じ、で奉る限りの低利かつ長期資金供給するように日夜努力しております。  ちょっと数字で申し上げますと、現在六大都市所在県を除きます地方四十県で、民間金融機関から約十兆円の融資がなされております。地方産業向け融資は約十兆円だとお考えいただいてけっこうではないかと思いますが、このうち、地方銀行融資額はその半分の五兆円でございます。半分と申しますと、何か少ないようなお感じをお持ちになるかと存じますが、全国銀行はもとより、相互銀行信用金庫、農協までを含めての話でございますから、五割というのはたいへんなウエートでありまして、地方銀行地方産業との結びつきの大きさを御認識いただけるかと存じます。  このような地方銀行地方経済との結びつきは、一般金融制度上の分け方であります大企業金融中小企業金融、あるいは長期金融短期金融といった考え方のほかに、ことばが熟しませんが、大都市金融に対する地方金融とでもいいますものを私ども地方銀行が担当しているということではないかと存じます。  以上のように、地方銀行地域社会との結びつきが深いことから、その経営方針営業活動の上に特別な行動とか、いろいろな制約がありまして、必ずしも経済合理性金融効率化のみで経営を考えられない場合が多いのであります。これは私たちの主たる営業地盤構造からくる当然の要請であり、制約でありますが、そこに地方金融を担当する地方銀行存在意義があるものと考えております。  地方企業、いわゆる地場産業と申しますものは、そのほとんどが中小企業であります。私ども地方銀行金融を担当しております場合、好むと好まざるとにかかわらず、それは中小企業が対象となってまいります。  地方銀行の総貸し出し先数は現在百四十万件でありますが、その百四十万件のうち、九八%に当たる百三十七万件が中小企業向けであります。金額にいたしまして三兆六千億円でありますが、この融資額は、都市銀行ばかりでなく、中小企業金融専門機関であります相互銀行信用金庫をも上回っておりまして、中小企業金融の二四・二%を占めているのであります。なお、中小企業向けの一貸し出し先当たり金額は二百六十万円となっておりまして、地方銀行普通銀行でありながら、比較的小口の融資を担当しておりますことも御理解いただけることと存じます。  地方銀行中小企業金融につきまして、もう一つ申し上げておきたいのは、総貸し出し中に占める中小企業向け貸し出しの比率が五四・七%という数字になっておるということであります。この数字は、ここ数年来、むしろ幾ぶん低下するような傾向を示しております。このことは、中小企業向け五四・七%以外のほとんどが大企業向け貸し出しであるということではありません。これは統計上、中小企業の区分からはみ出してしまった企業に対する貸し出しが大部分でありまして、いわば、地方銀行が育て上げた地元の中堅企業に対する貸し出しなのであります。最近、地方銀行貸し出し分野では中堅企業の比重が大きくなりつつあります。金融制度を論議いたします場合にも、以上のような実情を十分考えあわせますと、単に中小企業金融専門機関にまかせればそれでうまくいくということではないと存じます。  以上申し上げましたように、地方銀行は、一貫して地方経済地方産業に全力を注いでまいったのでありますが、このところ、地方経済は急速に変貌いたしております。一口に、地域経済広域化とか、あるいは広域経済とかいわれるのでありまして、これに件い、地方銀行営業地盤にも大きな変化が見られるのであります。一県一行といわれるこれまでの伝統的な営業地盤は、いずれも行政単位に合わせて考えられたものでありましたが、行政圏すなわち経済圏といった過去の姿は次第にバランスをくずしてまいりまして、各地広域経済圏が見られるのであります。これら広域経済圏開発のための社会資本の必要は、予想以上に膨大なものでありまして、このような社会開発資金には、巨額で、しかも安い、長期資金が必要とされるのであります。このような地方経済の変貌と多額な地方開発資金需要にどう対処していくかは、これからの地方銀行にとってきわめて重要な課題となると存ずるのであります。  以上、地方銀行の概況と特殊性について申し上げたのでありますが、わが国金融制度全般を考えますと、戦後すでに二十年余を経まして再検討の時期にあると存じます。資本自由化など、新しい時代に即応しまして、十分研究すべき問題だと存じております。現在の中小金融制度がほぼ形を整えましてからすでに十数年を経ておりまして、この間に、わが国経済は著しい成長を遂げ、私どもを含めました中小金融機関の成長もまた目ざましいものがあったのであります。この結果、金融制度におきまして、制度と実態がかけ離れ、当初想定されました金融機関の姿がだんだんと実態にそぐわなくなったことにつきましては、だれしも異論はなく、その限りにおいては、検討すべき時期に来ていると存ずるのであります。  しかし、中小企業金融制度と申しましても、それは全体の金融制度の中の一環であります。すなわち、普通銀行制度長期金融制度、農林金融制度政府金融制度等といったものが、中小企業金融制度に深いかかわりを持っておるのでありまして、ひとり中小企業金融制度を取り出して論じますときに、論議の錯綜がどうしても避けられないように感ずるのであります。また、中小企業金融と申しましても、ウエートの置き方によりましては、その中に零細企業金融中小企業金融、中堅企業金融といった観点の相違が見られるのでありまして、しかも、それがお互いに関連を持っているのであります。したがって、中小企業金融制度自体を、現在の検討段階において、根本的に大幅な変更を加えますことは得策とは申しがたいと思うのであります。当面必要とする改善事項にとどめまして、その他の問題につきましては、金融制度全般の検討とあわせて、その位置づけをすることが適当であると存じます。  地方銀行について見ましても、新しい時代に即応しまして、検討すべきところは少なくないと存じます。先ほども申し上げましたように、すでに地方経済広域経済となり、経済圏は県という行政単位では考えられなくなっております。  こういう点から銀行間の強力な業務提携あるいは銀行資力の集中ということも考えられることでありまして、それぞれの地方の事情に即しながら、かつ、将来の目標となるべき予想像により考えていくべきではないかと思います。  また一方では、多額の地方開発資金需要に対処していくために、資金の新しい調達手段として、あるいは長期の預金制度のごとき、あるいは安定した税源の地方移譲等につきましても十分検討に値する問題があるだろうと存じます。  最近、各方面におきまして金融の再編成ということばを耳にするのでありますが、今後の経済環境を考えますときに重要な問題でありまして、私ども金融に携わる者といたしましては、謙虚に耳を傾ける必要があろうかと思います。産業の再編成に即応して金融界も再編成すべきであるという大筋には、私も決して反対するものではありません。しかしながら、今日の金融機関は、それぞれ歴史的な背景と、それぞれの営業基盤の上に発展してまいったわけでありますから、それに急激な変化を与えることは、かえって金融の秩序を混乱におとしいれる可能性なしとしないのであります。また、当事者の了解なくして、当事者の意思を無視した銀行集中合併が、いかに長い間その禍根を残すかは、かつて多くの地方銀行が体験したところであります。金融制度の問題は、将来のビジョンと同時に、その緩急を考えて、しかも、当事者の意思を尊重しながら、前向きに検討してまいりたいと存じております。  次に、金融機関あり方について述べたいと思います。  今般の資本自由化に伴いまして、各業界とも再編成、体質の強化に真剣に取り組んでおりますが、金融機関も例外ではございませんで、経営基盤の強化が一そうの急務となっております。  申し上げるまでもなく、銀行経営の理念は、サウンド・バンキングということでありまして、その内容は時代要請とともに変わってはまいりますが、銀行経営が健全でなければならないということ、これは不変のプリンシプルであると確信しております。この不変のプリンシプルであります健全経営と、時代要請からくる金融機関としての社会的責任との調和、これが私ども地方銀行の志向しておりまする経営の根本的態度であります。このたびの資本自由化を迎えて、地方銀行といたしましても、従来にも増して体質の強化、同時にまた、潤沢良質な資金供給をはかってまいらなければならないと考えております。そのためには、資金コストの引き下げが何よりも重要であり、目下、各銀行におきまして、経営合理化によるコスト引き下げに努力を続けております。また、現在、地方銀行全国的組織でありまする全国地方銀行協会におきまして、地方銀行六十三行の総力をあげまして、銀行業務のすべての点にわたりましてコスト低減の方策いかんを検討中であります。  御参考までに申し上げますと、地方銀行の預金コストは、この五年間に六・四九%から六・二五%まで、すなわち〇・二四%の低下を見ております。預金コスト低下は、申すまでもなく、良質な資金供給の基礎であります。また、貸し出し金利のほうも漸次低下をいたし、四十年一月以降本年五月まで二十九カ月間にわたって日歩一厘四毛六糸低下して、現在、地方銀行の平均約定金利は日歩二銭八毛四糸となっております。  銀行コストに関連いたしまして一言つけ加えておきたいと存じますのは、この十年間、いわゆる高度成長経済下におきまして、銀行業務の内容や仕組みが大きく変わってまいったことであります。端的に申しますと、銀行の事務が多様化し、かつ、事務量が急増いたしたのであります。これは、広くわが国経済構造と深いかかわりを持つものでありますが、一口に銀行の大衆化時代といわれ、銀行取引の内容が実に多彩なものになってまいりました。たとえば、これまでは預金者といえば、その取引は預金の受け払いだけで済んだのであります。ところが昨今は、各種の自動振りかえ制度、各種の消費者ローン制度の普及によりまして、一人の預金者と何種類ものお取引をいたすわけであります。しかも、一口当たりの預金金額は御想像以上に小口化しており、個人預金総額三兆八千億円に対しまして、口数は三千九百万口、ちょうど一口当たり十万円にすぎないのであります。これに伴う事務量の増大はたいへんなものでありまして、今後ますますふえていく傾向にあるこの種のコスト増を、他の面でのコスト低減、たとえば、生産性の向上、事務の合理化経費の節減といったことで吸収してまいらなければ、とても時代要請にこたえていくことはできないのであります。  御承知のように、金融機関コストの六割は預金者への利息支払いであります。したがいまして、残されたコストの四割をいかにして圧縮していくか、その上でいかに安い資金供給していくか、これが今後の金融機関に課せられた最も重要な課題であろうと思うのであります。私どもは、金融機関の体質強化に今後も経営努力を重ねてまいる所存でございますが、金融機関の体質強化のもう一つのポイントである預金環境の整備ということにつきましては、税制の面、物価の面等を通じまして、預金環境づくりに特段の御配慮をお願い申し上げたいと存ずる次第であります。  終わりに、以上、日ごろ私が感じておりますことを率直に申し述べましたが、今後金融機関の責務は一そう重要となり、また、その経営環境は一そうきびしくなることが予想されております。その場合重要なことは、金融機関の協調体制ではないかと存じます。金融機関における自由競争の場は、その業務の性質からいってもきわめて限られておるように思われます。よく適正な競争ということばを耳にいたしますけれども、適正な競争と過当な競争をどのように区別すべきかはきわめてむずかしい問題であります。銀行がその内容の堅実さを競うということは、経営努力として当然なことであります。金融機関競争というものが過当競争へとつながっていく性質を内存している以上、私は、自由なる競争とともに、協調が重要なことではないかと思うのであります。  これをもって、私の申し上げることを終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 これより質疑に入ります。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    ○堀小委員 ただいまいろいろな御意見を承りましたが、まず最初に、いまお述べになりました御意見についてちょっとお伺いをして、あと、私が日ごろ考えておりますことについて、少しお伺いをいたしたいと思います。  田實参考人にお伺いをいたしますが、実は私、資本自由化の問題の中で、おっしゃるように、間接的な影響のほうが大きいと思います。間接的な影響としては、外資の入ってまいりました会社は、おそらく外国銀行からの資金供給をされてくることになるだろうと思います。先ほどお話のとおりに、確かに、外国銀行といえども、表面的な金利の問題としては、私はそんなに大きな差はないと思いますけれども、いまお述べになったように、わが国企業の借り入れ金に依存しておる程度と、外資会社の借り入れ金に依存しておる程度が著しく違いますから、当然そこでは金利全体としてみれば、やはりどうしても競争上は金利を下げていかなければならぬということになってくると思うのであります。しかし、いまのお話を聞いておりまして、やはり合理化と申しましても、ものには限度がありますから、そんなにいまの物件費人件費その他を下げていくわけにはまいらないと思います。やはり人件費等は、当然物価の増高なりいろいろな問題がありますから、これは機械化によって置きかえるといたしましても、本来はふえていく性格のものではないだろうか。ですから、いまおっしゃったように、片面ではもう限界にきておるとすれば、一面では預金金利という問題にならざるを得ないのじゃないか。いまのお話では、しかし、預金金利を下げると貯蓄影響するだろう、こういうふうなお話になっているわけです。ですから、そうすると、どうやってこれから預金の金利水準が下げられるのか。お話だけを聞いておりますと、どうも、もう下がりにくいのじゃないかという感じがするわけですが、下げる方法が、まだこれからあるのかどうか。ないとすれば、やはり預金金利が下がらないとだめなのか、まだもう少し合理化の余地があるのか、そこらをちょっと最初にお伺いをしたいと思います。
  8. 田實渉

    田實参考人 ただいま堀委員からのお話でございますが、私は、合理化の余地もまだあるのじゃないかと思っております。御承知のとおり、預金金利を下げませんと貸し出し金利も下げられないのじゃないかというお話で、ごもっともでございまするが、それにつきまして、先ほど業務内容拡大ということを申しました。それから、各銀行間の同質化ということ、銀行金利を下げますについては、業務内容拡大によること、それから同質化によること、さらにその上に、再編成ということ、そうして、これは結局合併とかそれから協調とかいうことになりまするが、合併等によりますと、これは少なくとも非常に経費の節減になるということ、店舗経費だけでも簡単に減るのじゃないか、たとえば、大銀行の大店舗が隣合って二つ並んでいるというような状態は、やはり全体的におかしいのじゃないか。そういう点から見ましても、もう合理化はできないということではなしに、まだまだできるのじゃないか。  預金金利の点でございますが、やはり全体として銀行資本がまだ足りないわけでございます。したがいまして、銀行にいたしましても、もう一つ資本力を充実しなければならない。それに関連しましても、これはやはり預金者の預金はどうしても拡充しなければならない。日本全体の預金の金利と申しまして、すべての金利がやはり国力に反映するものでございまして、産業的に、経済的に見ましても、まだ米国並みに金利を下げるというところまでいっていないのじゃないか、そういうふうに考えておりまして、結論を申しますと、まだまだ合理化の余地があるし、またそれについては、業務内容の拡充、再編成同質化というようなことでやっていけるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  9. 堀昌雄

    ○堀小委員 いまそういうお話を承って、たいへん前向きの御意見だと私も思います。  そこで、私ども常に、いまおっしゃったように、たいへん店舗がずらっとこう軒並みに並んでおることについては、当委員会ではしばしば実は意見を述べてきておるわけです。ただ、先ほども承っておりますると、資金量の増加のためには、一つは、税制の問題、一つは、店舗行政の問題を考えてもらいたいとおっしゃる問題も片方に出ておるわけです。税制の問題については、私どもこの委員会でもずいぶん申してきておりますけれども、確かに、貯蓄は大事だと思うのですが、それと同時に、やはり税の公平の原則を守るということもきわめて大事でございますから、その点は、ちょっと皆さん方の御希望に必ずしも沿い得ない私たちの基本的な考え方がありますが、店舗行政の問題は、私は、やはりいまの日本の全国における各都市銀行地方銀行相互銀行信用金庫を含めた店舗の数から見ると、新しく開発をされた地域は別として、もう大体十分な店舗があるのではないか。ですから、いまの店舗を内容的に高めるためには、確かに再編成のほうが、私ははるかに合理的だと思います。  ただ、ここで私ちょっと申し上げておかなければならないのは、再編成の問題の中で、とかく金融の問題というのは、金融機関サイドからの問題が非常に比重が高くて、地域といいますか、地域における企業なり預金者なり、いろいろなそういう銀行を利用する側の立場というのが、金融行政その他の面では比較的比重が軽いというふうに私は感じておるわけです。かつて私、河内銀行と住友銀行合併をするという問題が起きましたときに、当委員会でかなりこの問題を取り上げて、きびしい条件をつけさしていただいたことを覚えておりますけれども合併をしてしまうと、合併をした側の都市銀行の利益という形でこれが吸収されて、店舗がある程度要らなくなったから、それはリプレースに使うとかなんとかということになりますと、これはやはり問題がある。ですから、非常に長期的な期間の中に自然のかっこうでなることについては私は問題ないと思いますけれども、そういう意味では、この再編成とかいろいろな問題というのは、もちろん合理化の側面も重要でありますが、そういう地域性との関連もにらみながら、かなり長期的なプログラムというものをそろそろ考えられていいのではないか、これは短期的にやろうと思ってもなかなかむずかしい問題ではないのか、こう私は思うのであります。  その点では、先ほどお話のありましたように、異種金融機関間の合併が当然あっていい——同種のものもあってもいいけれども、異種のものもあってもいいのではないか。同種のものがやる場合にも確かに効率化ができますけれども、異種のものを含めれば、国全体としての金利水準という面から見れば、非常に合理化をされるメリットがあるわけでありますから、私は、そういう意味では、実は現在金融制度調査会がやっておられる中小企業金融専門機関的な発想その他よりも、まずマクロの問題が当委員会では重要だと思ったわけであります。  その再編成について、自然になるとおっしゃるのですが、自然になるのが一番望ましいと私どもも思います。しかし、自然にならざるを得なくなってからなるということは、かなりそこでは無理が起こる可能性も十分あるのではないか、やはりある程度経済の見通しの上に立って、そういう合理性長期的に考えるというプログラムが必要なんじゃないだろうか、私にはこういう感じがするわけです。その点について、ひとつお伺いいたしたい。
  10. 田實渉

    田實参考人 再編成の問題について堀委員からお尋ねがございましたが、お尋ねの趣旨は、再編成については、銀行と他の産業その他、取引先というものの両方について、合併する大銀行のほうが、その地域の経済その他に不便を与えるのではないかということが一つでございます。それからまた、住友銀行と河内銀行お話がございましたが、合併するほうが、合併されるほうを多少犠牲にして、自分に都合のいいようなふうにするんじゃないか、こういうお話でございます。それについて、もっと長期的にものごとを考えて、目先のことでなしに、合併の場合も処理すべきではないか、こういう三つの点がおもなお尋ねのようでございました。  まことにごもっともと存じます。そのとおりであると思います。元来、合併をいたしますと、どうしてもこれは大きなものが小さなものを犠牲にしやすい、これがいままでの合併に見られる例でもございますし、そうして、このこと自身がしばしば合併、再編成をはばんでおる大きな理由でございます。  したがいまして、私の考えといたしましては、いつも申しておるのでございますが、合併をいたしますときには、兄のほうは、必ず弟に譲らなければならない。これはてまえのことを申し上げてたいへん失礼でございますが、三菱銀行が第百と合併いたしますときに加藤会長がわれわれに申しましたことは、嫁さんには自分の娘よりも美しい着物を着せるのだぞ、必ずいい着物を着せるのだ、こういうことをわれわれに申したわけでございまして、われわれは常にそれを考えておるわけでございます。必ず、持てる者が持たない者に譲る、兄は弟に譲るということが、合併の一番必要条件ではないかと存ずるのであります。したがいまして、店舗を締めますときにも、もし合併で店舗が競合して締めるような場合でございましても、十分に、その小なるもの、弟に当たるもののことを考慮しまして、そして、その取引先やその地域を考慮いたしませんと、長い間に結局合併の効果があがらないということを考えるわけでございます。  そういうわけで、仰せのとおりに長期的にものを考え、当面のことで、特にその地区の取引先とかなんとかに非常に不便をかけないようにするのが、合併当事者、経営者の非常な責任だと存じております。おっしゃることに何の異論もございません。
  11. 堀昌雄

    ○堀小委員 その次は、業務内容の拡充と同質化という問題にお触れになっているのですが、これはちょっと抽象的でございまして、わかりにくいのです。  そこで、業務内容の拡充とか同質化というのは、具体的にはどういうことか。たとえばの例ですが、銀行勘定、銀行業務と信託業務を、かつてのように一本にするとか、少し具体的に御説明をいただきたいと思うのです。
  12. 田實渉

    田實参考人 業務内容の拡充というのは、先ほども申し述べましたが、結局、同質化にも通ずることでございまして、広い、非常にたくさんの、ここで数え上げれば切りがないほどあると思います。たとえば、アメリカのCDのようなものとか、ある意味では、銀行にも一証券を扱わせるとか、申し上げるといろいろございます。  そういう意味で、非常に抽象的でございますけれども……。商業銀行で短期資金を扱っております。これもある程度長期もやっていいのじゃないかというようなこととか、いろいろ大銀行として受けている制約以外にまだまだやれる業務がたくさんある、そういうことでございます。
  13. 堀昌雄

    ○堀小委員 私も、いまのお話を承りましたが、御承知のように、信託と銀行業務の問題というのは、たしか大月君が銀行課長くらいのときから、大蔵省の基本的方針として長短期金融の分離、専門化という方式が打ち出されてきた。しかし、私は、たまたま大月君が銀行局長のときに、それでは、現状都市銀行というのは一体短期金融に割り切れているのか、なるほど、表面上は商手の割引なら割引のようなものができるようになっているけれども、現実にはどうなんだろうという議論を一回したことがあります。同時に、今度は信託銀行のほうを見ますと、けっこう商手の割引も行なっておるし、銀行業務もかなりなものになっておるし、どうもものごとというのは、頭の中に絵をかいたようにはなかなかいきにくいものだというふうにそのときに感じたわけでありますけれども、いまのお話を承りますと、必ずしもそこまでのことではないように承ったのです。たとえば、例の六十五条の問題とかCDの問題とか、確かにございますが、この点は、当面はまだそういうふうなところまではお考えになっていない、こう理解してよろしゅうございますか。
  14. 田實渉

    田實参考人 そういうふうに御理解願いたいと思います。
  15. 堀昌雄

    ○堀小委員 わかりました。  ただ、いまの同質化の問題を同じ土俵で、こういうお話がございましたけれども、実は、私前々から、銀行では当然のことであったのかもわかりませんが、われわれの目からは非常に異常な問題のように目についておりますのは、期末のときに預金が激増いたしまして、貸し出しも同じくふえる、預貸並進ということばが一般的に使われているようでありますが、われわれから見ると、一体、預貸並進というのはどういうことなんだろうか、何もないところに数字だけが出てくるという感じがいたすわけであります。  少し調べさしていただいたわけですが、依然として——たいへん御努力をいただいておるようでありますが、まだかなりこの状況が残っておるわけでございます。特にこれは地方銀行のほうに最近だんだんこの状況が強くなりつつある。資料でちょっと申し上げますと、昭和四十年の三月期には二千二百九十六億円という預金の増加がございました。ところが、それが四月になりますと四百三十五億円の減、こうなります。それから四十一年には三千三百八十九億円の預金の増加があった。これを比率で申し上げますと、四十年は三・八%、それが四十一年には四・九%、四十二年には金額で四千百二十一億円、比率は五・二%、だんだん期末の預金のふえ方が大きくなりまして、そして、今度は四月に入りましての預金の減が、ことしは一千百六十三億円ということで、マイナス一・四%、これは私は、銀行業務の中における過当競争一つのものさしのように実は見ておるわけでございますが、いろいろなところに出てくる店舗の出方も、われわれ過当競争一つのものさしだと思いますが、計数的に一番はっきりしておりますのは、期末における預金の増加、その翌月の預金の大幅減、同時に、これは貸し出しのほうにも同じような影響が見られる、こうなっておるわけであります。ですから、土俵を同じくすることは——適正な競争をしてもらいたいというのが私どもの強い願いでありますが、ややもすると、どうも過当競争になっておるというのが現在の金融機関であります。都市銀行都市銀行同士、地方銀行はおそらく地方銀行同士だろうと思うのですが、そういうことが行なわれておるのでありますが、これについての皆さんのお考えと、そして、過当競争を除いて、適正な競争をするためには一体どうしたらいいのか。これは経営者のモラルの問題なのか、制度上に問題があるのか、機構上の問題なのか、そこを含めて、ちょっと承りたいと思います。
  16. 田實渉

    田實参考人 ただいまの堀委員の期末残高が非常に膨張するというお話、まことに痛いお話でございます。そのとおりでございまするが、これにもやはり長年の歴史があるわけでございます。昔は、私ども銀行でも、ほんとうにお客さまの預金を断われと言われた時代もあったわけでございます。それが戦後になりましてこういう状態になりました一つの理由は、やはり日本銀行貸し出しその他が、預金量によっていろいろ差があるというようなことも一つの理由でございますが、期末残高、これは一種のウインドードレッシング、これが行なわれたわけでございます。  しかし、大体三十年ごろから見ますと、見かけ預金——粉飾預金と申しますか、見かけ預金は、大体どうやっていたしますかということを見ますと、小切手の保有率を見ますと大体見かけ預金の程度がわかるわけでございますが、それが大体三十年ごろは二〇%程度でございました。毎期できます預金残高の保有率を見ますと、一九%ということでございました。それが大蔵省の絶えざる御指導もありまして、三十四年以降は一五%にとどめろということで、一五%以内になったわけでございますが、これがまた現在のところは一二、三%、堀委員もおっしゃいましたように、あまりよからぬことではありまするが、だんだん好転しておるわけでございます。  一体どのくらいが適正かということは、非常にむずかしいのでございまするが、これは昔、私の経験から申しますと、戦前において、こういうウインドードレッシングなんというものは一つもなかった時期、そのころの期末の預金はどうであったかと申しますと、これは大体期末が十二月と六月でございまして、何もそういうドレッシングなんということばもないときでございましたが、期末になりますと非常に預金が膨大になりました。そして、翌月の一月の四日に落ちる、それも非常によけい落ちる。これは、ドレッシングがあるとないにかかわらず、あったわけでございます。これは経済状態が非常に大きくなってまいりますと、期末にいろいろな点で一度に決済しておこうという点で非常に預金がふえる。一応うちにあったものを持っていっておこうということでふえるわけでございます。いまは期末が十二月から三月に大体移っておりますが、やはりドレッシングもございますが、そういう状態も、ある程度はひとつ御参考までに申し上げておきたいと思います。  それから、どうしたらこれを正常化できるかというお話でございますが、実は、先ほども申しましたが、戦後は、どちらかというと、非常に質よりも量をみなたっとんだ時代がございますが、銀行経営のほうも、だんだんと量ではなしに質のほうになってまいります関係上、やはりドレッシングというもの自身、あまり意味がないものだという傾向になりつつあるのじゃないか。そのほかに、非常にこまかいことにはなりますが、たとえば、日本銀行の預金準備金というのは、あれは預金高の平均残高の合計でもってやっておりますので、したがって、からの預金をつくるということは、現実に損害を与えるというようなことで、われわれも指導しておるわけでございます。  これを制度上どうしたらいいかということでございますが、これは強制的にこうしろ、ああしろという方法は幾らでもあることと存じますが、やはりこれは漸進的にここまでまいっておりますので、この保有率を今度はどのくらいにしたらどうだということでやっていけるのじゃないか、そしてまた、その程度の銀行経営者のモラルも御信用いただければと考えるわけでございます。
  17. 平野繁太郎

    平野参考人 どういう事情ですか、いまちょっと簡単にお答えがむずかしいだろうと思いますが、考えられますことは、ただいま御指摘になったような、過当競争の結果がこうなったのじゃないかと思っております。  それから月末は、地方は三月期ですと国の経済との関係が相当あるだろうと思っております。国の経済の支払いが早いときとおそいときがいろいろあろうと思いますし、そういういろいろある決済上の問題がからんでいると思いますが、しかし、とにかくこういうことがあるということはおそらく過当競争じゃないかと思っております。これにつきましては、いま田實さんからもお話がありましたが、例の小切手その他で月末は小切手集めが非常に盛んになります。これはほんとうに一日だけの小切手でございまして、支払い準備金はそれによってやらなければならないという問題がありますので、もう前から集金はやめる——ある一定以上の時間はやらないというようなことまでやって、お互いにこれはやめていこうじゃないかということになっております。  それから、地方で多少違いますのは、小切手保有量だけで見ましても、地方でやりますのは、ほんとうに寒村にいきますと、全然ありません。ゼロであります。消費地に行きまして、商業取引の盛んなところでありますと、月末の支払いその他によって小切手をたくさん持ってくるというところがございます。それから、金が地方で詰まれば、現金払いがみんな小切手になってくる、これが月末になりましてなかなか集まらない、そうなりますと、普通、月平均で五日払いとか十日払いでやっているうちはいいのですが、だんだん金が詰まってまいりますと、中間には商業手形が出ない、あるいは小切手もみんな月末に重なってくるということになりまして、最近はそういうような問題が出てきているのじゃないかと思いますが、なお詳しくはよく調べましてお答えいたします。
  18. 堀昌雄

    ○堀小委員 先ほどの田實さんのお話のように、私もこれはゼロになるとは思いません。期末はいろいろな問題がありましょうから。ただ、この前私、日銀総裁にある会合でお目にかかったときに、もう少しこのドレスの問題はどうにかならないものでしょうかと言いましたら、日銀総裁も、堀さん、それはなかなかむずかしいですね、こういうお話でしたけれども、私は、いつも問題をお願いするときには、漸進方式でけっこうだと思います。ただ、漸進方式というのは、必ず何%かずつは改善されていくのだ、そうして、あるところで、まあまあこれが人為的なドレスのないところ——自然な形態で起こる問題でありますから、私もゼロになるという問題とは絶対に思っておりません。これは年末と一月を見ましても、これは日本的慣行でこういうことは計数の上で見ましても起きておるわけです。そういう企業側の決算上の問題として起こる問題は、これは銀行側としては不可避的なものでありますが、銀行側としてはそのドレスという意味でやっておられる部分がなくなるように、ひとつ地方銀行も含めて、銀行協会として御検討をいただきたい。  たとえば、向こう五年間なら五年間を設定して、その間に毎年このぐらいずつはお互いに自粛をして、五年先にはそういうドレスは日本の銀行からひとつ取り除こうじゃないかというようなお考えでも伺えたら私ども非常に幸いだと思っておりますが、いかがでしょうか。
  19. 田實渉

    田實参考人 どうも全くそのとおりなんで、私ども何とも申し上げられないのであります。いい、正しいことをやろうというときに、正しいことも、ある時期においてはやむを得なかったというようなこともありますので……。これはやはり歴史とか、過去からいままでどうしてそうなってきたかということも十分研究いたしまして、これはやはりどうしても私も減らすべきだ、あるべき姿ではないというふうに考えております。  しからば、現状はどうかと申しますと、現状は、おっしゃるとおり、なかなかそういかないのでございます。いろいろこまかいことを申しますが、おそらく経営者もこういうのはだんだん減らすのがいいのじゃないかという考えをみんな持っておるのでございます。また、これは各銀行が、多いのは何百という支店を持っておりますから、その支店になかなか考えが浸透しないというようなこともあるかと存じます。平野会長もいま申されたとおりです。だんだんにこれは減らしていく、しかし、これは五年に幾%やれということは、またなかなかむずかしいことで、これはよく大蔵当局、日銀当局とも御相談しまして考えていき、その面に努力をする、それから、実際の姿が何%なんだかということもよく見きわめませんと、これはきめられないことでございます。御指示に沿いまして、できるだけの努力をする、そうして、われわれもそうしたいのだということをひとつ御認識願いたいと思います。
  20. 堀昌雄

    ○堀小委員 私は、できるだけ適正な競争をやっていただきたい。そのためには、やはりその過当競争部分を排除することが適正な競争になるんだと思いますので、その意味ではおまかせいたしますから、ひとつ、全国銀行協会として自主的に改善の方向をお立てをいただきたいと思います。  それから、いまお話しになった最後のところの金利機能の問題、これが実は私、また非常に大きな問題だと思っておるわけです。私、大蔵委員会に参りましてからもう八年ばかりになるわけですけれども、ほとんど八年間、社会党ではございますが、金利自由化されるべきものではないのかといって今日まで言い続けてきて、今日、依然として自由化されない。この間、たまたま宇佐美日銀総裁が公社債の問題にもお触れになっておりましたけれども、私は、一体金融界はオープンマーケットをほんとうにつくる気があるのかないのか、これを阻んでおられるのはどうも金融、要するに銀行の皆さんのような感じがしてならないわけです。  そこで、金利機能活用——確かに、国債の発行に対して自由なプライスメカニズムが働けば、当然調整がそこに自然にされるべきはずのところですが、されないところに私は問題があると思いますので、この金利自由化といいますか、金利機能活用という問題は、私は特にこの国債を発行する段階では、これがなければ、いまのような強制割り当て的なことにならざるを得ないんじゃないか、こういうふうに思いますが、この点は少しはっきりした御返事がいただけると幸いであると思います。
  21. 田實渉

    田實参考人 金利自由化と申しますか、弾力性があるほうがいいということについては、われわれも申し述べておるわけでございます。先ほどもこの公述の中で、金利機能についてそういう意味のことを申し述べたかと思いますが、これもまた同じような議論になりますけれども、やはり徐々にやっていかなければいけないんじゃないか、自由な競争をもっていかなければならないという競争原理をここで先ほど申し述べました。やはり金利も例外ではないわけでございます。本来、それが理想の型だと私も思います。それじゃそれをどういう方法で、いつまでにということになりますと、これはいろいろ方法もございますが、根本の御趣旨については間違いないと思いますが、これは私がここで申し上げますよりも、むしろ日銀総裁、銀行局長のほうが目下検討していられる問題でございますので、あまりはっきりしたことを私がここで申し上げることはひとつ御容赦を願いたい、こういうように思います。
  22. 堀昌雄

    ○堀小委員 いまのは公述なすったことについてのあれですが、ちょっとその中にもお触れになっておりますけれども、私はあと二、三点だけお伺いしたいわけです。  この中でも信用補完の問題をお触れになっておりますが、私もこの前の委員会で、この信用補完制度がもっときちんとすれば、いまの中小企業までは都市銀行なり地方銀行なりやっていらっしゃるでしょうが、零細企業というのは、どうもやはり信用金庫とか相互銀行とかあるいは信用組合とかというところにまかされている。だから、そういうものを含めて、やはり資金を潤沢に出していただくためには、どうしてももう少し信用補完制度を、国も責任を持ってきちんとしたものにしたらいいと思うのですが、現状の信用補完制度について、皆さんのほうで、こういう点はこういうふうに改められないだろうかというような、何か具体的な御意見があれば、承りたいと思います。
  23. 田實渉

    田實参考人 信用保証の問題でございますが、結論から申しますと、おっしゃるとおり、現在の段階においても、もう少しこれは拡大したほうがいいというふうに考えております。また、全体の中小企業貸し出しに対する保証債務の割合でございますが、四%ということで、これは非常に少ないわけでございます。いま中小企業お話がございましたが、普通銀行が取り扱っておりますのはそのうちの六割でございますが、これだけを見ましても、もう少し拡充したほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。  これについては、実際には保証料が高過ぎるとか、それから、これは法律上でできるのかできないのかわかりませんが、もう少し低利融資ができたらいいんじゃないかということ、それから信用保険公庫でございますか、これに対する政府資金をもう少し潤沢に回したらいいんじゃないか、そういうようなことがございます。と同時に、この保証制度があるということの徹底をもう少ししたらいいんじゃないか。まだこういう制度の徹底がもう少し足りないのじゃないかというふうに、これは私の感じでございますが、感ずるわけでございます。おっしゃるように、まだまだこの制度が未熟でございますので、これからいろいろなことでこれを前向きにやったほうがいいんじゃないかというふうに考えます。  と同時に、最後の点で一つだけ懸念いたしますのは、あまり保護と補完が過ぎますと、中小企業企業意欲と申しますか、経営態度に多少ゆるみが出てもいけない。その点はひとつかね合いということでやったらいいんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  24. 堀昌雄

    ○堀小委員 最後に、国税庁、実は私、前から一つ問題にしてまいっておりますのは、貸し出し金償却をもう少し大幅に認めたらどうだろうか、こういう問題なんです。  資料を見ますと、都市銀行では最近だいぶ認めるようになってきております。三十八年下期が十五億二千五百万円、三十九年上期六億六千九百万円、下期十億九百万円というのが、四十年には上期三十億六千八百万円、下期四十七億八千三百万円と、確かに貸し出し金償却はふえてきているのですが、今度銀行局のほうで御承知の統一経理基準の問題が一般的に広がってくる中で、私は、やはり有税でこれを償却させるなんという必要はあまりないんじゃないか。一回償却しても、もし返ってくれば税金が取れるわけですから、その点では銀行間であまり貸し出し金償却をたくさんすると、何か自分のところは不良貸しばかりしていてまずい——これまたつまらぬ競争意識があれば別ですが、この際、やはりさっきお話のように、量より質という問題になるのならば、できるだけ身ぎれいにして処理をしていくことが、私は今後の銀行経理の処理の上でも非常に重要じゃないかと思うのですが、この前から私、国税庁長官にはたびたびこの問題について私の意見も述べていますし、銀行局にも意見を述べていますが、銀行側としては、いまの私が申し上げた問題、貸し出し金償却は、銀行でもっとたくさん出したいのが、私は、どうもまだ税務当局で否認されているという点もあるんじゃないかと思うのですが、私は、もっと大幅に落とすべきものは落として、それが取れたら、それはまたそのときに税金を払えばいいので、何ら問題がないことですから、そういう慣習を打ち立てていったらどうだろうか、こう思うのですけれども、ひとつ田實参考人からお伺いしたい。
  25. 田實渉

    田實参考人 まことに当を得た御質問でございまして、銀行といたしましては、お説のとおり、できるだけ無税償却をふやしたいわけであります。これは銀行だけがそういう特別の恩恵と申しますか。保護を受けるという問題になるかと思いますが、私どもといたしましては、できるだけ償却を多くして、すっきりしたものにしたい、健全経営立場から申しましても、それがほんとうの姿ではないか、返るか返らないかわからないものをいつまでも残しておくということ、ほとんど返らないとわかっておるようなものを残しておくということは、私は経営上非常に不満なわけでございます。したがいまして、できるだけ無税償却を多くしたい、これが私の考えでございますが、それにつきまして、結局、そういう償却を多くしたいということになりますと、銀行だけがそういううまいことをするというようなこともあるわけでございます。しかし、私の考えといたしましては、今後もっともっと償却をよけいにしたい。先ほど申しました銀行だけがという問題になりますと、結局ほかの企業はどうなるんだといういろいろな問題が起きますけれども、やはり銀行特殊性、これはここでお話すると非常に長くなると思いますけれども、何も税金の問題でなしに、一つは未収利息とか未払い利息の処置の問題もございますが、できるだけ健全性という意味から、もっと出したいというわけでございます。
  26. 堀昌雄

    ○堀小委員 国税庁、どうですか。私は、税金を取る側からすれば、いま銀行局ですか、日本銀行かが債権のランクをつけてますね。A、B、C、Dですか、四つぐらいランクをつけているようです。まあ、ほとんど回収不能だと目されるようなものは、これは銀行局と十分話し合って、もう少し無税償却を認める、そのかわり、入ってきたら取ればいいんですからね。何も特別扱いをするわけではないと私は思うのです。銀行にしたって、無税償却がたくさんあるのが自慢じゃないわけですからね。やはり貸し出し態度は当然ある程度慎重になるでしょう。やはりさっきの側面としては、あまりこういうことがきちんとできないために、リスクのほうばかりに気をとられて、中小企業金融なんかがつい十分にいかないという問題も、私は側面的にあるんじゃないかという気がするのでありますが、そういう問題を考えると、私は、国税庁はこの問題については、銀行局と話し合ってもらってのことでいいですが、もうちょっと積極性を出すべきじゃないかと思いますが、国税庁、ちょっと答えてください。
  27. 奥村輝之

    ○奥村説明員 金融機関金融機関としての健全性の問題、これは確かにあろうかと思いますが、ただ、私どもとしては、一般の法人と銀行との間の扱いを実質的にバランスをとるという必要もあるわけでございます。したがって、いまおっしゃいました問題は、一般の法人をも含めてどうするかということでやはり検討していかなければならぬ問題じゃないかと思います。最近いろいろと私どもの聞いておるところでは、一部償却の問題、これはかなりいろいろと御要望もあるようでございます。いまはわりあいに固定的な条件に従って処理をしているわけでございますが、もう少し弾力的に範囲が広げられないかというようなお話もございますので、そういう問題として現在検討中でもございますが、今後銀行局とも、あるいはほかの一般の法人の立場も頭に置きまして、何か改善する余地がございましたならば、そういう方向で勉強いたしたいと思っております。
  28. 堀昌雄

    ○堀小委員 私は、他の産業といいますけれども、金貸す業務とその他の産業と、ちょっと違うと思うのですよ。それを一律に考えようというのは、私は、ものの考え方としては少し粗雑だという気がします。ほかの仕事というのは、要するに、金貸しているんじゃない。商売上の取引の関係で、焦げつきだけの問題で、だから、本来はこれは金を貸す問題とは違うと思う。こっちは金を貸すのが業務だし、片一方は金を貸すのは業務じゃないのだから、商売上の結果として起きる問題だから、その点はちょっと違うと思うのと、私がその点を特に言っているのは、いま言ったように、できるだけやはり幅広く零細なところにも、多少のリスクはあっても貸してもらいたいということです、裏返して言えば。言うならば、ともかく銀行は貸し倒れが一つもないというのは、私は、確かに預金者に向かってはいわゆるりっぱな銀行だと思うのですよ。しかし、裏返していえば、多少のリスクもやってもらわなければ、それは借りる側から見たら、ともかく銀行というものは、もう資産内容は健全で、心配ないところだけしか貸さないのだということになりますから、これは私は、いろいろ程度の問題もあるし、片一方、行き過ぎれば安易な経営になる、そんなことがいいというんじゃないけれども、まあ、程度の問題、その問題は銀行局と十分内部的な話をしてもらえばいいことで、まあこれまでに比べれば少しよくなったなと思うんですよ。これはこの前長官とある場所で話をして、十億しかない、とんでもない話だと言っていたら、それは年間七十億くらいになったからだいぶ改善のきざしがあらわれていると私思うけれども、それでいいのかどうかという点では、まだ私は多少問題が残っているのではないかと思いますので、これは国税庁としても、銀行局と十分よく話し合って、もう少し処置してもらいたいと思うのです。  あと、私はどうも最近都市銀行の株式の保有がどんどんふえてくるような感じがしまして、これは、資本自由化対策なるものの中で、安定株主工作というようなことで銀行に株を買ってもらう一どうも、銀行も一好んで買っているのじゃないと思うが、こういうことがはたしていいのかどうか。株を買っちゃうものだから、どうも金融債は少し断わりたいということにもなりかねないんじゃないかというような気もちょっとするわけです。ちょっとそれだけをお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 田實渉

    田實参考人 おっしゃるとおり、最近、自由化を控えて、株の買い占めを防ぐという意味から、企業銀行に対して株を持ってくれという話が多いことは事実でございます。しかし、都市銀行についてみますと、昨年五月から本年四月までの一年間、株式の保有の増加額は全有価証券の額の三分の一を占めているわけであります。この計数から判断いたしますと、株式保有の増加でございますが、都市銀行金融債とか債券を大量に売却いたしまして、そして御承知のとおり、それでもって株をまた買ったということは事実でございます。しかし、特に買いたくて買っているというわけでもないわけでございまして、一時的な現象も入っているわけでございます。株式の保有の率が少し上がってきたというが、実は、金融債その他を売却いたしまして、有価証券の保有額については、全体としてはそう変わっておりません。株式が特にふえたということについても、これは一時的なこともございます。それから買い占め、つまり、安定株主という意味で金融機関が非常にそういうところに使われているということも、決してないことはないのでございますが、このほうも、そういつまでも続くということでもないかと思います。われわれも、十分に有価証券保有について、経営の面から注意いたします。御了承願いたいと思います。
  30. 小峯柳多

    小峯委員長 武藤山治君。
  31. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 大体堀委員から八点にわたって詳細な質問がなされましたので、大半の問題点については指摘されておりますから、重複を避けて二、三点お尋ねをしてみたいと思います。  一つは、金融制度調査会がいま中小金融あり方についていろいろ検討されているわけでありますが、先ほど地銀の平野さんから、再編成は原則的には賛成だけれども、長いいろいろな歴史的な経過、背景があるので、これは当事者のそれぞれの事情や意見を十分聞いてやってもらわぬと困るという意思表明もあったわけですね。そこで、金融制度調査会は、この秋までにいろいろ検討の結果を答申するといっておりますが、現在末松さん、川口さん、滝口さんなどの試案が出されている。こういう試案に対しまして、地銀側では、大体この程度の議論で満足しているのか、それとも、いまの制度調査会の審議のやり方があまりにも馬車馬的な幅の狭い議論でけしからぬという御意見なのか、まあまあこれでとりあえず中小金融の問題だけどんな形か答申を出させてみて、それから金融界全体の問題を討議すればいいんだと考えているのか、それとも、逆に考えているのか、その辺、少し地銀側の意向を聞かしてもらいたいと思います。
  32. 平野繁太郎

    平野参考人 いまの御質問でありますけれども、毎回金融制度に出ておるのでありますが、いま御質問のありましたとおり、最初のうちは各協会の利益代表のような意味で、自分の関係のものの立場というものが中心になって、その間に各業界の理解を求めるというようなあり方でずっと進んできたわけであります。いまお説のように、議論も大体尽きたようであります。中小企業金融だけから考えたら、この程度じゃないか。先ほど一般公述で申し上げましたとおり、全体にもこれは関連がないわけじゃないのでありますから、一応中間報告としてはあの程度でやって、それからあとの問題と結び合わせたときにまた変えなければならぬことがあったら、変えたらいいだろう、また、一度ちょっと問題になりましたのは、政府機関が中小企業金融機関に対するいわゆる補完の作用ということになっているのが、そうでない面にも多少いっているんじゃないだろうか、だから、中小企業金融機関を完備するためには、政府機関のあり方についてももう少し考えたらどうだろうかということは言っております。しかし、これはまたあとの段階でやったらどうだろうかということで、まず、現在の中小企業金融機関だけの問題として大体結論がついたんじゃないだろうか、こう存じております。  この点については、われわれ地方銀行といたしましても、最初あの席で申し上げたことを大要申し上げますと、今度の中小企業金融機関としての相互銀行、信金その他について問題があった、これを拡大していこうじゃないか、取り扱い金額拡大という問題も出ておりますし、資本金の問題も出ておりますので、こういうものをやりますれば、だんだんに、問題になっている同質化の問題として地域に対する依存性とか、あるいは多様化によって上位企業にすることになってくると、中小企業に対する取り扱いの密度が粗になってきやせぬだろうかという点がありますので、もし、どうしても金額を大きくするということであれば、経済環境から見て大きくなるのが当然だということになりますれば、新しく続々と出てくる中小企業あるいは零細企業というようなものをどうして救っていくか、現在の中小企業金融機関ができたときの状態を今日の状態から見ますれば、全体はどんどん進んできている世の中でありますので、新しく生まれ出てくる中小企業あるいは零細企業に対しては、あの当時いまの中小企業金融が必要だったと同時に、今日はもっと必要なものが出てくるんじゃないだろうか、こういうことを考えなければ、ただ目先の取り扱いを大きくすることが中小企業のプラスになるとは考えられないわけであります。  これを要約しますと、政府機関の補完作用というものをもっと完全にやっていただけたらばよほど救われてくるんじゃないかということと、それから、いまの中小企業金融が大きくなるということは、それだけ中小企業にこれから生まれ出てくるものに対する取り扱いの密度が非常に薄くなってきやしないか、そうすると、政府でお考えになっていることの結果としては違ってくるようなことがありやしないか。だからわれわれはこれを大きくするということであって、中間金融に対する特別な機関が要るということであれば、また新しく出てくる中小企業、零細企業のためにこれを救う新しい機関が必要になりやしないか、こういうことを申し上げているわけなんです。
  33. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 田實さん、この間新聞か雑誌に、都市銀行同士の合併があったっておかしくないじゃないかということで、笑い話のような記事が出ておったのですね。だいぶ合併、合同の話は出るのでありますが、具体的に、地方銀行相互銀行とかあるいは信用金庫とか、あるいは地銀同士の間で合併をして、ひとつコストダウンをはかり、合理化をやろうじゃないかというような具体的なうわさ程度でも出ている、そういうことがあるのですか。金融機関同士の合併しようという動きというものは、全くないものなんですか。実態はどうなんでしょう。
  34. 平野繁太郎

    平野参考人 ただいまのところはそういうことを、寡聞にしてわれわれまだ伺っておりません。これは先ほどちょっと申し上げましたように、合併といいましても、業態そのものの合併といいますか、吸収といいますか、買収といいますか、いろいろ形はあるだろうと思いますが、なかなか外界の事情だけで、こういう目的のためにすぐ合併というところまでいくということは、かなりむずかしいのじゃないかと思います。ことに、いままでは行政区画と経済圏というものは大体一致しておって、各行政圏内に一つということで、一県一行ということでいままでやってきて、何となく県の関係が非常に密接になってきておりますので、いま行政圏を越えての合併というようなことがかなりむずかしくなっていくのじゃないか。まだ、いまもって地方銀行同士の合併というようなことはうわさにものぼっておらぬと思います。
  35. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 そういたしますと、先ほど御両者の御意見は、合併するにしても合同するにしても、やはり自主的な機が熟さなければ無理なんだ、そういう意味の御発言があったわけなんですが、制度調査会で、相互銀行信用金庫、あるいは信用組合というもののあり方を何か法改正をやって、一ぺん合併や合同のしやすいような法整備をやる、そういう体制ができさえすれば——たとえば、普通銀行でも預金量が百億円程度の小さい銀行もある、あるいは相互銀行で一千億円、二千億円という預金量を持っているところもある、そういう預金量だけから見るならば、大小の形が、普通銀行相互銀行とだけを比較してみても、相互銀行のほうが優位に立っている機関もあるわけですね。そういうような状態から、豊富に安い資金供給できる体制に一歩進むために合併が望ましいことになって、法改正というものを大蔵省が指導するならば、具体的にその線に沿って合同というものは進まれるものだろうか。そういう法律はできても、やはりそれぞれの長い歴史と伝統があり、そんな簡単に合同や合併なんというものは行なわれるものじゃない、そういう認識に立たれるのか。事実、情勢というのはどういう情勢にあるのですか。法律ができさえすれば、合同、合併は促進されるかどうかという点、そこはどうですか。
  36. 平野繁太郎

    平野参考人 いまのお話でありますが、これはもう何とも申し上げられぬのじゃないでしょうか、そのときの心持ちは。いまそのことをしいて申し上げれば、五分五分だと申し上げていいんじゃないでしょうか。いまお話のありました合併、たとえば、法律改正その他によって合併ができるような環境になったらどうか、これは私は、そういう法律環境がそうなったというよりも、これは一つの促進のめどにはなるかも存じませんが、実際は、環境がそういうふうになって、自由にそういうふうになっていかないと、ちょっと進めかねるのじゃないだろうか。これはいろいろな点から考えられるだろうと思いますけれども、自然の姿において合併を余儀なくされるということは、たとえば、経理基準の問題がだんだん進んでいくとか、あるいは取引先環境が非常に変わってきたとかで、今後健全経営をやるためには、どうしてもそこへいかなければならぬ、こういうふうに周囲がずっと縮まってくれば、自然にそこへいくんじゃないだろうか、しかし、大勢は、皆さん先ほどからお話のあるとおり、だんだん環境から見たら、方向としてはそういうことが考えられるかもしれませんが、しかし、具体的に言うとどうかというと、現在はまだその時期には達しておらぬのじゃないか、こういうふうに感じております。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 先ほど田實さん、同質化の問題でアメリカ商業銀行の例を引用されたわけでありますが、同質化という傾向が望ましいということは、たとえば相互銀行の具体的例でいう場合、いま資本金の一〇%、もしくは五千万円の低いほうが貸し出し限度額ということで頭打ちになっていますね。しかし、相互銀行の場合は、相互銀行の業務が普通銀行と変わらないような異質な業務に発展してきているわけですね。ところが、普通銀行に頭打ちがないのに、相互銀行は五千万円という頭打ちがある、これはどうも不公平じゃないか、そこで同質化方向だ。普通銀行のような業務ができるようにそういうワクはみんな取っ払っていく、あるいは日本銀行の取引も、貿易手形だけは適格手形として相互銀行のも取引を認めるが、中小企業の手形担保は認めない、こういうような制限が今日ある、そういうものもみんな取っ払っていって、銀行同士がお互い組合組織以外のものは、もう相銀以上ぐらいのものは自由に競争できるような体制まで想定をして同質化という概念を使っているのかどうか、そこらをちょっと聞かしていただきたいと思います。
  38. 田實渉

    田實参考人 同質化ということでございますが、先ほど平野会長に御質問になりました銀行の実際の異種のほうの合併というような問題と共通な問題があるかと思います。私がこの間申しておりますのは、これはいわゆる将来のビジョンでございまして、将来はこうあるべきだ、そういうことを希望するということなんでございます。したがいまして、ビジョンがないということは、全然実行にも入れないわけです。あくまでもこういうことが望ましいんだ、こういうふうに考えるわけです。  したがいまして、いまお話同質化による相互銀行信用金庫というような問題でございますが、実際にいま、これは御承知のとおり相互銀行の量から申しますと、相互銀行の最も大きなものは当然地方銀行よりも上位になり、あるいは、都市銀行の一番最低のものよりも預金量において多いんだ、こういう非常にアンバランスと申しますか、ライト級とウエルター級とヘビー級が何か錯綜しているというような感じがあるわけでございます。しかし、これはどうしても不自然でございますので、こういうものもビジョンの一つとしてはやはり何とかすべきではないか、こういうふうに考えております。したがいまして、相互銀行とか信用金庫土俵をできるだけ少なくしまして、一緒にやっていける範囲は一緒にやっていったほうがいいんじゃないか、それが競争の原理も導入できるんじゃないか、こういうことでございます。非常に理想的なビジョンを強調しているようでございますが、そういうふうに考えております。
  39. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 あとの質問が控えているようですから、もう一点だけにします。  大蔵省が経常収支率の改善をしていこうということで、統一経理基準の問題を協会側のほうに提示していろいろ検討しているようですが、大蔵省は、何か九月ころをめどに実施に移したいということで急いでいるようであります。協会のほうでは何か難色を示していたというような新聞報道などもちらっと見たのでありますが、現在この統一経理基準の取り扱いについて協会ではどういうような意向に一応まとまりつつあるわけですか。それをちょっと明らかにしてください。
  40. 田實渉

    田實参考人 結論から申しますと、別に難色を示しているということではございません。目下研究中というのが実情でございます。当局ともよくお話をしたいと存じて、目下その検討中でございます。ただ、ここで先ほどの話になりますが、銀行の経理というのには、これは長い伝統がございます。われわれが銀行へ入りましたときに、銀行というものはほかの企業と違うのだということを再三言われました。また、当局もわれわれを指導されるときに、相当ほかの企業とは違った、非常に保護的な指導をしていただいたと思っております。しかし、これは時代が進むにつれて、銀行あり方、経理のあり方も当然時代に即応した変化をしていかなければならない、そういう意味で、経理基準ということにつきましては、前向きで考えておるわけでございます。目下、これは検討中ということであります。  しかし、長い間の指導方針がここへきて急に変更になった。これについては、私個人意見でございますけれども、やはり銀行というのは公共性が非常に強い企業でございますので、保護を要求すると同時に、経営者自身もやはりもうかったからよけいどんどん配当していいんだ、どんどん経営者が分け前を取っていいんだ、そういうようなものでは銀行はないのでありまして、それだけに、当然公共性ということについて、経理基準についても他の企業と全く同一にという考え方については、私はどうも賛成いたしかねる、しかし、時代がこういうふうになってまいりまして、経理基準について検討する、そして、当然不明瞭な方法その他は除去していくということにつきましては、私としては賛成したいと思っております。まだ検討中でございますので、私の申しましたことは、あくまでも個人意見でございます。
  41. 武藤山治

    ○武藤(山)小委員 最後にちょっと、長期銀行が、あるいは金融債を発行している銀行が一年ものの金融債を出す、都市銀行普通銀行は一年もの以上の定期預金を出してはいけない。長期のものが比較的短い金融債を出す、こういう問題ですね。それからもう一つは、銀行と信託業務の分離を大蔵省は指導して、ずっと皆さんのほうはその言うことを聞いて分離をしたと思うのですが、分離をしない金融機関がまだあると思うのですね。そういうような問題について、協会はどういう整理を——お互い意思の交換をやって、スムーズに分離ができるように、その銀行にも、協会としてもひとつお互い話し合って指導する、そういうような努力はしてないのですか。いまやっているのは、かまわず、その一行だけは信託と銀行両方兼営もやむを得ない、力があってしょうがないんだ、こんな考えなんですか。内部からも直そうとしているのですか。大蔵省の指導とだいぶ違っている銀行があるような気がして、前の委員会でも私質問して、ちょっと大騒ぎしたことがあるのですが、協会としてはどうお考えですか。なかなか答弁がむずかしいと思うのですが……。
  42. 田實渉

    田實参考人 たいへん私の返答のむずかしい御質問を受けましたのですが、実際問題といたしまして、協会でその問題について最近あまり論議されたことがないわけであります。もう少し論議したらいいじゃないかというお話があればそれまででありますが、事実、いままでそのことをあまり問題にのせておりません。まだ当局のお話も承っておりませんので、私の答弁はこの程度にしていただきたいと思います。
  43. 小峯柳多

    小峯委員長 広沢賢一君。
  44. 広沢賢一

    ○広沢(賢)小委員 先ほど武藤委員が質問した点でちょっと重要というか、これを深めなければならぬと思う点、二、三御質問します。銀行協会連合会会長に御質問します。  一つは、銀行同質化してきた、そこで先ほど言われたとおり、共通土俵で適正な競争を行なう——私は、武藤委員が聞いた範囲では抜本的な非常に大胆な提案をされていると思うのです。ところが、いろいろ考えてみますと、中小企業金融機関、相銀とか信用金庫経営者の人たちからいうと、先ほど触れた点ですが、貸し付け限度も、出資金とか預金の割合による制限を受けている。それから銀行局長がいるからあれですが、五千万円以下で、それ以上は貸してはならない。それから都市銀行はオーバーローンを日銀からできるけれども中小金融機関信用金庫はオーバーローンは受けられない、したがって、資金は非常に零細なものをどんどん集めてこなければならぬ、したがってコストが高い。それから人数でも、貸し付け先は限定されているということになると、最近大きな相互銀行とか信用金庫とか、そういうところでは、中堅企業のいい貸し付け先があってもそこに貸せないという悩みがある、したがって、資金は余らされているので、余っているのじゃないのだ、余らされているから、したがってコールその他でかせがなければならぬ、それは中小金融のためにならないという悩みを非常に切々と訴えているわけです。  そうすると、いま銀行協会の会長さんが言われました共通土俵で適正な競争を行なうと、さっき触れられましたが、そういう問題については、結局、そういういろいろな制限、手かせ足かせについて、やはり異種の金融機関でも同質化してきているのだから、そうすると、そういうものは取っ払う、さっき言われましたが、そういう一つ一つについて取っ払って差しつかえない、こうお考えになっているかどうか。この点をお聞きしたいと思います。
  45. 田實渉

    田實参考人 ごもっともな御質問でございます。  私が、自由な競争原理導入したい、同じ土俵でなるべく競争をしたいということを申し上げたのでございますが、なるほど中小金融機関、大銀行は、はっきり申しまして、いろいろそれぞれに違った役目を持っておるわけでございます。本来、金利の点で申しましても、実は一番困っているところのほうが金利が高いというような問題も一つかと存じます。そういう点につきましては、やはり中小企業というものとそれぞれの他の企業というものと、信用度、力と申しますか、銀行側からいえば危険性、いろいろ違いがあるわけでございます。これを一度にルールを取っ払ってやりますと、これはまた先ほど申しましたように、ヘビー級とライト級と同じところで競争させてしまうということになりますので、それにはそれに応じたやはり一定のルールがあっていいのじゃないかと思います。しかし、理想といたしましては、だんだんにそういうワクを取りのけて、そして中小金融機関というものもだんだんレベルアップをしていく、同時に、その対象になる取引先もレベルアップをする、そういういい意味での競争原理を私は申し上げておるわけであります。にわかに取っ払っていくということではないのでございまして、だんだんにひとつそういう方向にいったらいいのじゃないか、かきねを取っ払うということでございます。すぐ取っ払って、両方出入りをしていいということじゃなしに、徐々に取り払っていったらいいじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。
  46. 広沢賢一

    ○広沢(賢)小委員 もう一つ、徐々に取り払っていくという場合に、そうすれば、やはり取り払う順序に従って、たとえば、中小企業の方は非常に資金が不足している、それから一時的ですけれども、現在大きな銀行は借り手をさがしている、これは一時的な現象だと思います。そういう場合ですから、中小企業金融を大切にするという意味から、たとえば、先ほど言われましたけれども政府関係機関の資金、安い利子の資金相互銀行とか信用金庫とか、そういうところに取り扱わせる、なるべくそういうところに流してやる、信用補完制度と相まってそういうことにする、一種の優遇措置ですね。こういう段階で、だんだん取り払っていくに従ってそういう優遇措置もしてやって、一方、こうなっているんですから、公平を欠くということになるから、漸次やっていくということについて、それじゃ、中小企業金融機関についてはこういうことをしてやる——先ほど私が申しましたとおり、そういう形はどうでしょうか。
  47. 田實渉

    田實参考人 つまり、先ほども申しましたとおり、中小企業については、やはり脆弱性とか資金不足とかということがございますので、そういう点につきましては、やはり信用補完制度その他、公共的なものでこれを保護するというようなことはぜひ必要じゃないかと思います。また、ぜひそうあってほしいと感じております。
  48. 小峯柳多

    小峯委員長 村山喜一君。
  49. 村山喜一

    ○村山(喜)小委員 平野参考人には時間をお急ぎでございますので、私、この際一言だけお尋ねをすると同時に、要望申し上げておきたいと思う点がございます。  それは最近銀行都市銀行地方銀行信託銀行相互銀行などで反郵便局で連合戦線というような形の中で、田實談話で攻撃開始というような新聞の記事を見たわけでございますが、これは郵便局が集めるいわゆる資金量というものが最近非常に伸び率がよろしい。まあ、一番切実な悩みを持っているのは、地方銀行なりあるいは相互銀行なりというところが問題があるのだということを新聞あたりで報道をいたしております。それで、私もこの問題は、やはり大蔵省のやっております店舗行政にも関係があると思うし、また一つは、地方銀行なりあるいは相互銀行、さらに信用金庫あたりとのいわゆる協調的な形における対策というものが立てられなければならないのじゃないかと思う点があるのでございます。  というのは、私の選挙区内に一つの島がございますが、そこは人口二万くらいの二つの町が存在をする島でございます。そこに商工会のほうから、どうしても金融機関としてわれわれの専門的な金融機関を設置してもらいたいという要望がある。ところが、いや、そういうようなところでは金融サイドの面から見たら採算がとれないんだから、あなた方のところに設けるわけにはまいりませんというようなことで、人口二万人もおるようなそういう島の中に、民間金融機関がないのであります。そこで商工会のほうとしては、何とかして政府の系統資金のほうのそういうような低利資金等も融通を願うという便利もありまするし、何とかしてもらいたいということで努力をしておるけれども、なかなか金融機関はそこに寄りついてこない。したがって、そこにあるのは農協と郵便局しかないわけであります。郵便局は、本局だけでなしに、だんだん簡易郵便局等も設置をいたしまして、そして、その地方にあります資金量の確保に精力を集中をしてまいる。そういうようなところから、大都会においては、人口と資金集中をしていく過密地帯ができてきておる。片一方においては、農村地帯においては、過疎地帯が生まれてくる中で、金融機関の店舗というものも同様な傾向があらわれている。そういう状態でありながら、なお民間金融機関は、郵便局が金をたくさん集め過ぎるという不平を漏らすというのは、私はそこら辺にも——ひとつ、どの金融機関でもよろしいからぜひ来てください、そこに支店を設置できなければ、出張所でもよろしいからやってくださいというのだけれども、なかなか採算分岐点の上から乗り込んでおいでにならない。そこら辺は、もう少し実情に合った、いわゆる預金者の便という面から、あるいは利用者の便という面から、民間金融機関は、それらの地方産業と密着していく中でともに成長していくという姿を打ち出さなければならないときであるのではないかと思うのです。そういうような面が、お互いに譲り合いをしておられるのかどうか知りませんが、私のところにおいては、残念ながら、地方銀行にいたしましても、あるいは信用金庫にいたしましても、相互銀行さんにいたしましても、乗り込んでひとつやろうという意欲がないわけですよ。  そういうところに私は一つの問題点があると思いますので、これらは金融機関の協調性の中で、みずからの問題として解決をしてもらいたいと思うのでありますが、そういうような問題は、特に切実な悩みを持っておられる地方銀行側として、今後の対策というような方向で、住民の期待にこたえるというような意味の金融機関としてのあり方の上から、お考えをお持ちであるならば、この際、平野さんからお聞かせをいただきたいと思うのです。
  50. 平野繁太郎

    平野参考人 たいへん実際的なお話でありますので、よく承っておったのでありますが、ただいまお話のようなことも各所で起こっているのではないかというような感じもいたします。  たとえば、ぜひお考えをいただきたいと思うことは、こういうふうな二万なら二万というような人口のところに、一体幾つの金融機関があったらいいだろうかというような、いわゆる金融機関の健全性といいますか、金融機関機能を十分発揮させるためには、ある一定の限度は持たなければいかぬじゃないか。ちょうど私の自分の体験からいきますと、こういうふうな二万なら二万の人口のあるところ、そこで信用金庫相互銀行、郵便局、農協、それに銀行、それである一定の金額を取り合いますと、みんな存立ができなくなってくる、そうすると過当競争、無理なことをやらなければならぬというようなことのために、いろいろなマイナスの面が起こってくると思う。むしろ、私どもいま考えておりますことは、そういうことになったら、みんなで話し合って、どれとどれと残ろう、そして、正当な普通の取引をやっておったらば、それならば皆さん生きていけるということを考えることが、それが即大衆の中にも密着して、そうして便宜を与えていくということになるのではないか。それをただ、先ほどもお話があったように、一支店を減らすことは預金額が減るからいけないとかいって、そういう数字の問題にまでこだわりますと、どんな競争をしてもそこへ設置をしておかなければならぬというような問題が起こりますので、できるならば、いまお話のように、各金融機関が話し合って、それでは、その地方ならば今後どれだけ経済力が伸展するから、何年の間にどれくらいの金融機関を置いたらばみんなやっていけるだろうかというようなことを話し合った上でやる、その間に、相互銀行が適当なら相互銀行が出る、銀行が適当なら銀行が出る、こういうような方向でいくことが一番実際的ではないかという感じがいたしますが、いかがなものでございましょうか。
  51. 村山喜一

    ○村山(喜)小委員 現在あるのは、民間金融機関というのは農協が一つあるだけなんです。あとは郵便局がある。その人口二万の島に、ほかの金融機関一つもないのです。ぜひ来てくださいといって盛んに陳情するのだけれども、おいでをいただけない。その間に簡易郵便局は二つも三つもふえていった。そういうようなところから、農協に資金を預けておきましても、制度金融の道はつかないのです。中小企業の人たちはつかないのですよ。だから、非常に困りながらも農協と郵便局に預金をせざるを得ないのです。そういう実情を放置しておいて、大都会には百メートルおきぐらいにどんどん店舗を増設をしてもらいたい、これでは私は、大衆とともに生きる金融機関ではないという印象を受けますので、ぜひそういうような面は、地銀だけでは解決つかない問題もありましょうし、信用金庫とかあるいは相互銀行だけでも解決つかない問題がありますから、そこら辺は十分話し合いをしていただきまして、特にまた、大蔵省の行政的な措置とも相ともに連携をとりながら、善処方を要望を申し上げておきたいと思います。
  52. 小峯柳多

    小峯委員長 これにて、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ、長時間にわたりまして御出席をいただき、かつ、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  次会は、公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十二分散会