○塩崎政府
委員 資本の自由化に備えて、
企業の体質、特に
中小企業の体質の改善は、私も
広沢先生の御指摘のとおりだと思っております。
税制も昭和二十七年から種々の特別措置が入りまして、特に特別
償却を通じて日本の設備の
近代化が行なわれてきたわけであります。ただいま御指摘の鉄鋼業の特別
償却などは、むしろ私
ども圧縮ぎみでございます。現在残っておりますスペックと申しますか、特別
償却の機種は二種類しかない。これまでは高炉、たとえば、いわゆる上吹き転炉は特別
償却を認めてきたわけでございますが、昨年の改正以来、高炉については特別
償却を認めない、こういった特別
償却はむしろ
中小企業のほうに向けたいといことで、合理化機械の特別
償却は、一
中小企業の体質の改善の
意味でも進めてきましたことを
一つ申し上げたいのでございます。そのような
意味で、鉄鋼業の今回の申告では、特別
償却の金額は多くなかったわけでございます。これは、過去の新設いたしました高炉についての特別
償却の権利がまだ残っておったために、このような特別
償却が実施できた。今後おそらくこれは減ってまいりまして、むしろ特別
償却は
中小企業のほうに多く回ってまいるであろうと思うのであります。
私は数字を見てまいりましたが、昭和三十六年には資本金一億円未満の
法人の合理化機械の特別
償却はわずか四十四億円、一億円以上の
法人の合理化機械の特別
償却は二百二十四億円、こんなような格差があったわけであります。四十年について見てみますと、資本金一億円未満の
法人の特別
償却額は百五十億円と三倍以上になっております。資本金一億円以上の
法人のほうは逆に減りまして、百六十三億円、八〇%になっておる、こういったことが、私
ども皆さん方の声を反映いたしまして、とにかく
中小企業を
税制上におきまして非常に
評価しておる、こういうように御理解願いたいのでございます。
そこで、
お話のいわゆる擬制説的な
法人税から実在説的な
法人税にかえること、そうしてまた、
中小企業の体質改善の
意味におきまして、特に累進税率を用いて、大所得のものについては高く、中小所得のものについてはもう少し低い累進税率を設けたらどうか、こういう御意見でございます。この点につきましても、先般所得税法、
法人税法の改正案の際にも、私
どもは、私見と申しますか、税についての見解を申し上げたのでございますが、これは非常に主観的な意見といわれてもしかたないかと思います。
しかし私は、
法人税は所得税と少し違った課税原理を持つものではないか、かように思っております。個人所得税は、まさしく支払い能力原則に基づいた最も大事な税金でございますので、累進税率が最も適応すると思うのであります。
企業のほうは、そういった富あるいは所得の分配の促進という
理由よりも、むしろ社会費用を分担さす、あるいは
企業の受ける
利益に対して
企業が納めるものとしての税金でございます。そういう点で見ると、累進税率よりもむしろ比例税率のほうが適当である、私はこういった考え方を持っております。先般、日本
経済新聞に宇田川先生と私の小文が「私の意見」という形で出ておりますが、そういうふうに考えております。
しかもまた、所得といいましても、大
法人はたくさんの株主の資本が集まったものでございますし、中小
法人の資本というものはむしろ株主が少ない、これをどういう大きさで
評価するか、これはまたなかなかものさしがむずかしいと私は思うのであります。さらにまた、累進税率の弊害は、
企業利益というものが非常に変動するわけでございます。八幡製鉄といえ
ども赤字になることがございます。むしろ中小
法人のほうが安定するような
傾向を持つのであります。そういたしますと、欠損の繰り込み、繰り戻しという危険が生まれておる不十分な現在の仕組みでは、非常に大
企業に対しまして酷な結果になっている、こういう
企業利益の変動性の
理由からも累進税率はとれない。過去に超過所得税というような
制度をやってみました。結局は、これはむしろ中小
法人に対しまして自由化された結果になった、こういう危険があることを私はいつも申し上げております。外国の実例を見ましても、私はそういったことを反映したものだと思いますが、
法人税につきまして累進税率をとっておる国はないと言って過言ではございません。あるといたしますれば、二段階程度の非常になだらかな税率、私は、これが最小限度の、現在世界各国が
法人税に考えておる
税制ではないか、かように思います。
もちろん、いろいろな考え方がございますので、検討はしなければならぬと思うのでございますが、そういった
意味で、私
どもは
法人税率というものはやはり比例税率のほうがいい。しかしながら、現行の中小
法人の問題は大事でございますので、所得の三百万円以下の軽減税率は考えられる
制度であろうと思います。しかし、現在の配当軽課法は、これも「私の意見」の中に書いておきましたが、支払い配当を重視するという見方は、結局は中小
法人に相対的な不利という結果を招きます。このあたりは、どの程度の軽減税率を設けたがいいかは今後
税制調査会で慎重に検討していただこう、かように考えております。