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広瀬(秀)
委員 私は、ただいま
議題となりました
国債整理基金特別会計法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
日本社会党を代表して、
反対の討論をいたしたいと存じます。
第一に、私
どもは、
政府が今日行なっております
公債発行政策そのものについて
反対であります。
財政法第四条は、
原則として、国の歳出について、
公債、借り入れ金以外の
歳入をもって
財源とすべきことを期待しておるわけであります。もちろん、
公共事業費あるいは出資金、貸し付け金等の
財源については、
国会の議決を経た
金額の範囲内で
公債の
発行、借り入れ金ができることになっております。しかし、その
趣旨は、
社会資本の充実、公共投資の立ちおくれを理由にいたしまして、使い道が特定されないような形で、
一般会計の中で無責任な放漫無
計画で
公債が
発行されることを許す
趣旨ではないはずであります。
公債は、国の
国民に対する借金であります。いずれは
国民の税金で返済されなければならないものであります。今日、公共投資、
社会資本の充実の名において、独占資本に多くの利益をもたらすような財政投資が盛んに行なわれておりますが、
国民の真に要求いたしております生活環境の整備、向上であるとか、あるいは大衆の健康をそこなう公害、こういうものに対する防止の施設などについては、非常に軽視をされておるのが現状でございます。そういう
財源の調達を、
建設公債の名において合理化し、将来の
国民大衆の
負担を無制限に増大をすることは、
負担公平あるいは応益
負担の
原則に照らしても納得ができないところであります。
第二に、
政府がいかに
答弁されようとも、
公債発行はインフレを助長する結果となります。特に今年のごとく、製造業はフル操業、フル生産の状態にあり、いわゆる設備投資主導型の好況局面を迎えた際に出される
公債は、いわゆる資源、資金の完全な
消化がされている状況における
公債発行でありまして、これはインフレに必ずつながるといってもよいのであります。さらに、
財政法の四条二項の
公債だから
建設公債だというわけでありますが、
一般会計で
発行される
公債は、それがどの建設に投ぜられ、どのように生産的あるいは収益性のある面に使用されたか裏づけることはできないわけであります。したがって、
一般会計における
財政需要の増大に対して
歳入が不足をしている、そういうことを補うために
発行されるしょせん赤字
公債だと言うこともできるわけであります。もちろん、赤字
公債でも、経済の不況期に出される場合には若干生産的効果は期待される。しかし、好況局面の資金、資源の余裕のないことしの場合においては、全くインフレにつながる
公債発行であると言わなければならないわけであります。このようにして
発行されるものに対して私
たちは
反対なのであります。
第三には、このようにして
公共事業に投資する
公債は資本支出だから、そして
公債にその
財源を求めることとしますと、
公共事業に対する
財政需要は強いのです。これは年々限りなく増加の傾向をたどります財政の中に
公債が完全に組み込まれてしまって、
公債の元利の
償還というようなことを通じて財政の硬直化をもたらす大きな要因にもなるわけであります。したがって、そういう状態になりますると、四、五年先には何とか見直す、あるいは
公債を
発行しないような状況にしたいという願望は申しておりまするけれ
ども、そういうチャンスをつかむことはまずできないであろう、とめ
どもなくやはりこの種
公債が、
社会資本の立ちおくれを是正する公共投資だという名前はつけながら、累増の一途をたどらざるを得ないではないか。こういうような状態の中で累増する
公債は、昭和四十六年度あたりには五兆円をこえるでありましょう。しかも、借り入れ金を合わせれば、四十七年度における元利の
償還は二千五百七十七億円、四十八年度には七千四百五十七億円、四十九年度には九千十八億円というような巨額にも達するのであります。これは
政府が出した
財政法二十八条による
償還年次表というものにそういうことが書いてあるわけであります。まさに、このような実態に備えて、今回、もはや放置することができないということで、
国債整理基金特別会計法の一部を
改正して、前年度首の
国債残高に対して百分の一・六の定率繰り入れをやろうというのが今回の
改正点であります。しかし、これは
減債制度の名に値しないものであるというように
考えられるわけであります。すでに定率繰り入れの対象となっている
公債は、今年度末には二兆円になんなんとしております。しかも、
財政制度審議会の答申にもありましたように、
政府の
公債発行に対するいわゆる節度ある
発行が可能なために
減債制度の充実というものが要求されたはずでありますが、このような低率な繰り入れによっては、いわゆる
公債発行の歯どめというようなものにも全く寄与しないものであろうと思うわけであります。昭和四十六年度には五兆円をこえるそういう累積が予想される
公債の
償還財源として、今年度八十億円
程度の定率繰り入れだというようなことは、まことにおざなりの、お義理一とおりのものにすぎません。決してこれが財政の健全化、
国債の
信用維持、そういう面に役立つものとは思われないのでありまして、また、
財政法の精神に沿った
国債整理基金の
あり方についても、いまこそ、より真剣な
立場で検討が行なわれなければならないと思われるにもかかわらず、そういう面で根本的な検討を怠ったものと言わなければならないのであります。最近における
国債の市中価格が値下がりを続けているというようなことも、この
一つの反映ではないかというように
考えられるわけであります。
整理基金特別会計においては、容易に
公債の借りかえができるようにそのことが予定をされ、しかもそれが、日銀引き受けということが行なわれるたてまえになっている。しかもそれは、
財政法違反ではないのだ、こう強弁をされるわけでありますが、
財政法の
原則というものをしっかりと踏まえ、その精神に従って真に国の健全財政を打ち立てていく、そしてまた、長期にわたって安定した経済の姿を維持していくというような
立場から見まするならば、今回の改善策は、まことにびほう的な、当面を糊塗するものでしかないわけであります。しかも、借りかえ借りかえでいく、しかもそれが、日銀手持ちの限度において日銀の引き受けになっていく、こういうようなことが許されていくといたしますならば、より一そうインフレ助長の要因になりかねないわけでありまして、この面についても十分な危惧を表明いたさなければならないわけであります。
次に、
財政法第四条二項の、
公債を
発行する場合はその
償還計画を
国会に提出しなければならない。また、同法の二十八条で、
償還年次表を
国会に提出すべきことが命ぜられておるわけであります。そういうことになっておるわけでありますが、
政府は、
国債償還計画を少なくとも
銘柄別にその
財源を示し、
償還年次
計画の額、あるいは
方法等を示したものを出さなければ
償還計画というものに値しないと
考えるわけであります。
財政法二十八条による
予算参考書類として
国会に
償還年次表が出ておりますが、七年
満期のものの
国債の支払いの時期は、
発行年から七年経過したら支払います、これだけの額でございますというだけでございまして、これはいわゆる
償還計画を出したのだというようなことには全くならない。七年目の期限をつけた
公債が七年目になったらこれだけの額でございます
——それは一体何の
意味があるかというようにすら思うわけでございます。
財政法四条二項で求めている
償還計画としては、全く
国会に提出をされてない、こう断言せざるを得ない状況にございます。このようなことが許され、今後も財政違反が続けられて、正確な
償還計画が示されないままに長期にわたる巨額の
国債が
発行されるならば、そして百分の一・六の非常に低い定率繰り入れを主とした
減債制度で運営をされていく、こういうことになりまするならば、
日本の国家財政はいよいよ不健全な姿となって、インフレを推し進める結果となり、
国民経済、
国民の生活に重大な結果をもたらすでありましょう。私
どもは特にこのことをおそれるわけであります。
このような
政府の
公債発行に対する態度、
公債発行に節度を求める
一つの有力な
方法であるべき
減債制度をこのようなことでお茶を濁すやり方、こういうものを
考えます場合に、
政府の
公債発行が、いつの間にか
社会資本の充実だ、あるいは公共投資の場、こういう名によって、やがては第三次防衛
計画、あるいはそれに引き続く軍事
予算の増大のための軍事
公債にいつ何時転化をしていくかもわからない、
国民を
戦争のどろ沼に追い込むような状況がこれらの面から出てこないとは何人も保障し得ないのではないかと思うわけであります。すでに軍事
公債の犠牲を身をもって味わった
国民の大多数を代弁しながら、法案に
反対するものでございます。