○水田国務大臣 御
指摘のように、設備投資、在庫投資、個人消費というものはいまきわめて堅調でございます。と同時に、鉱工業生産というものもかなり伸びておりまして、やはり急上昇期にある。需要が伸び、供給が伸びている。いま経済の拡大しておることは確かでございますが、この拡大が比較的均衡を得ている。均衡拡大ということがちょうど現在の経済情勢の
一つの特徴をなしているだろうと私は
考えています。
この均衡拡大のこれからの先行きがどうなるかということが問題でございますが、たとえば、工作
機械の製造部門のごときを見ますと、二年近い受注をもうみな持っておる。フル操業だ。そこまでいったら工作
機械製造業自身が設備投資をやるかといいますと、ここらが非常に慎重でございまして、そう簡単にそういう部門からの設備投資が始まっていないということになりますと、三十六年ごろに見られましたように、設備投資が設備投資を呼ぶというような状態、過熱状態というものが見られない、いまのところ心配するような様相を呈していないということが
一つの安心材料になっております。物価がそう破綻を来たしていない、大きい変化を示していないということも、そういうところから来ておるものだろうと思います。そうしますと、国内経済は、いま国内だけで見ますと、わりあいに均衡をとった行き方をしているということが言えると思いますが、その中心が設備投資であるということになりますと、国際収支においては
輸入がだんだんにふえてくる傾向にありますし、また一方、米国経済の停滞というようなことから
輸出が伸び悩んでおることも事実でございまして、四月、五月、六月、第一四半期で大体国際収支が二億ドル、非常な
赤字を出すという状態になっていると思います。この調子で今後第二四半期、第三四半期へいくということですと、おっしゃられるようにいろいろ心配しなければならぬ点があると思いますが、ただ、いま鉄鋼業を中心として第一四半期の末ごろから
輸出意欲というものが非常に出てきておるということと、鉄鉱石、鉄鋼の原料というようなものの
輸入がピークを越えたという
事情もございますので、
輸入は増大傾向にございますが、伸び率がいままでの調子の
輸入というものは避けられるのじゃないか。
それから、一方、アメリカ経済も下期から回復されるということは、
一つの通説になっておりますし、これに伴って、私は、
輸出もいまのような
程度の伸びではない、下半期にいってある
程度の
輸出も期待される。最初政府がきめた
輸出の予想よりも、
輸出会議において多い
輸出予想を持ったということもそういう
事情からだろうと思いますが、そうしますと、この経済の拡大が外貨の資金繰りで始末できないほどのことになるかどうかというところがやはり
最後の問題でございまして、外貨の資金繰りで何とかやっていける範囲の国内均衡拡大なら、そう心配することはない。しかも、設備投資からくる一時的な国際収支のアンバランスというものは、将来、すぐにこれが
輸出増になって黒字に転換する要素を含んだ一時的なアンバランスということになりますので、これが資金繰りで切り抜けていける範囲のものであったら、そうばたばたしなくてもいいということになりますので、私
どもは、その点をどの
程度に調整するかということで、一方、国内の経済においてもその伸びをならすように、なるべく押えぎみでいくと同時に、一方、
輸出増進策を着実にとっていくというようなことで、その間に介在する
金融問題も財政政策をうまくやって切り抜けることができるのなら、今年度の経済
運営はそう心配しないでやっていけるのじゃないか。非常な楽観論といわれますが、全体の見通しとしては、いま私はそういうふうに
考えています。