○平岡
委員 先回りしてのお答えでありますが、まさに私は公害問題の点から論議を進めたいと思うのであります。
御承知のとおり、公害対策基本法がすでに
政府から
提案されまして
審議中であります。こういう基本法が制定されようとするまで事態は深刻となっておると思うのであります。朝日
新聞の六月十二日の朝刊でありますけれ
ども、東京都の、正式の名前は東京都小中学公害対策研究会、これは会長さんは伊藤和という江東区立水神小学校長がなっておりますが、たしか朝日
新聞の後援のもとに、学童の健康管理の点からすでに二、三年公害問題に取っ組んでおるようであります。そして、この六月十二日の朝日
新聞の伝えるところによりますと、結局、教育環境がいいか悪いかという質問に対して、都下の――これは都心と郡部を合わせてでございますけれ
ども、中学校が四百九十一、小学校が千四十四、これにアンケートを発しまして、相当多くの学校から回答がきておる。その回答のうち、教育環境が悪いと答えておるのが五三%、低いのでは杉並の二五%というのがありますけれ
ども、とにかく悪いという。しかも、その悪い
理由のうちで公害を
理由とするものが、やはり区部の小中学校におきまして四〇%ないし五〇%、それから郡市部の小中学校におきまして六〇%、かように出ております。そして朝日
新聞は、具体的な問題として、子供の衣類で白いものが一日でもう着られなくなってしまうということ、それほどひどくなっておるということを伝えておりますし、なお、大気汚染が子供ののどを痛め、鼻をおかす結果、たん、せきの出るのが非常にふえておる。やりかぜ以外のときにたん、せきの出る子供が多いという区部の小学校は、江東区の二五%を筆頭にしまして、十五区がみなこのことに脅威を感じておるという結果が出ておるのでございます。それから郡部におきましても例外ではありませんで、平均しまして六%の学校がこの被害を訴えておる、こういうことであります。一〇〇のうち六、六%というのはたいしたことないようですが、たとえば阿賀野川の水銀化合物の問題とか、あるいは水俣の同様な問題等は何十万人に一人の被害
割合なんですね。都下の小中学校が、都心部と郡部をひっくるめまして六%もたん、せきが異常に出るというようなことを訴えるということは、これ以上もうほっておけない問題であると思います。
そこで、公害問題の焦点は何かということになろうと思うのです。今度各省のセクショナリズムの集大成としての公害対策基本法というものが出てまいりましたけれ
ども、やはり焦点がどこにあるかということを見きわめる必要があると思うのです。この
法律案それ自身について、この作成の前にお手伝いをしました大内兵衛さん等による社会保障制度
審議会が、この
政府の取り上げ方に対して気に食わぬということで、きのうあたりいちゃもんをつけておるようであります。
その
一つに、公害をどう処理するかの具体性に欠けているということを
指摘しております。そして、
産業界はよろしく公害防止を
企業経営の条件として取り入れて、公害対策に前向きの態勢を
整備すべしということをいっております。要するに、無過失責任を
企業の側で
共同でとりなさいとまでいっておるわけです。
企業にさえこういうことを要求しているのですから、いわんや、
政府とか国会とかいうものは、もう率先して、もっと積極的に公害問題を究明する必要があると思うのです。
結局、私の結論とするところは、公害問題でいろいろなことが羅列はされておりますけれ
ども、現在並びに将来に向かいましての一番大きな公害問題は、もう大気汚染に対する対策、わけても、自動車の排気問題に対する対策でなければならぬというふうに私は思っております。私が思っているのでは平岡の主観であろうという反論がありますので、実は、英国と米国の場合の私の見聞してきました点を申し上げまして、皆さま方のお心にぜひとめていただきたい、このことを申し上げたいのであります。
昭和三十九年のちょうどオリンピックのさなかに、たまたま英国の総選挙がありましたので、その要務を帯びて参りましたが、総選挙が明けまして、めずらしく英女王
政府の招待ということで、二週間ほど英国にとどまりました。無為に過ごしてはいかぬというので、阪上君という地方政治のベテランもおった
関係ですが、公害問題をひとつ掘り下げてこようということで、自分たちでテーマをつくったわけであります。長々とそのことを申し上げるわけにもまいりませんけれ
ども、英国におきまして公害問題の現状がどうかということになりますと、これは英国といたしましても
中心的なロンドンでありますけれ
ども、水質の汚濁対策はすでに完了しております。テームズのタワー・ブリッジ付近にはマスの銀りんが見られるということはつとに報ぜられておるところであります。テームズの支流は七つありまして、本流との合流地点はろ過装置が設けられまして、それぞれ本流への流入が最終的に浄化されております。これより先、支流に入りますところの工場の廃液の流入等は厳格な処理基準によって無害なものとされておることは論をまちません。
大気汚染の防止につきましては、ロンドンが寒冷地のために、家庭ストーブによる大気汚染は従来著しかったのでありますけれ
ども、条例によりまして無煙炭以外の禁止、それから、住宅の高層化に伴う
石油ストーブの普及化によりまして石炭スモッグは解消されております。いまや皆無となっておるわけであります。工場の煙突ばい煙も、ロンドンの都心にある火力発電でもうもうと煙をあげておりましたが、これは何たることかといいますと、全部水蒸気だということですね。無害の水蒸気になっておるほど、すべて蒸気による沈下でこの大気汚染と工場の煙突ばい煙とはすでに無縁となっております。ただ
一つ残っておる問題は自動車の排気ガスであるということでありまして、さすがに英国
政府は公害対策の問題では進んでいるという感じを受けたのであります。
それから、別のおりに米国に参ったときなんですが、米国においてはどういう
状況かといいますと、水質の汚濁は解消済みでありまして、排気ガスの大気汚染だけがやはり問題になっている。米国ではニューヨークパターンとロスアンゼルスパターンと
二つに区分しましてそれぞれの対策を研究中であります。ニューヨークパターンとは、工場廃棄ガス、すなわち亜硫酸ガス対策でありまして、ロスアンゼルスパターンとは自動車排気ガス対策をいうのであります。ロスアンゼルスの場合、
日本の場合の一酸化炭素COの害悪及び不飽和炭化水素CHの害悪とは違いまして、気候が高燥だという特殊事情から一酸化窒素NO、それから二酸化窒素NO2の害悪となってあらわれている点が特徴的でありまして、まず目をやられる、それからまた自動車のタイヤに亀裂を生ずる、それから視程が悪くなるということによって交通妨害を派生するということで、別の公害と結びついておる、こういう特徴を持っているわけであります。
いずれにいたしましても、二国の例に徴しまして、水質汚濁対策は、
日本ではいまだきものとはいいながら、そう奥行きの深いものではありません。
政府のやる気だけの問題であります。
企業のやる気だけの問題であります。結論的には、二国同様、排ガス特に自動車の排気ガスに徴底的に取り組まなければならないのが、この二国の例に徴して明らかにされておると思うのであります。そして工場廃ガスの防止につきましては、抜本塞源的には硫黄分の除去についての科学的
技術開発、これがあるわけです。しかし、この硫黄を取り去るということは、もしできますればノーベル賞を受賞できるような問題でありまして、たいへんむずかしい問題と聞いています。
かたや、自動車の排気ガスにつきましては、完全燃焼装置ないしろ過装置の開発でありますけれ
ども、ここで私の意見でありますけれ
ども、最も有効なのは、ガソリン使用をやめてプロパンないしブタンガスへの転換が注目されなければならぬということであります。そういう角度から
石油ガス税の問題を視野を広げてひとつ御検討をいただきたいというのが私の質問趣旨であります。結局、自動車排気ガスの問題が今後にわたりましての公害問題の
中心課題であるということと、したがいまして、自動車燃料の転換が必要だということ、それだからこそ、ブタン、プロパンの転換ということが
政府の政策目的のうちに加えられてしかるべしということであります。
こういう点を踏まえての御研究があったのか、今後それをするのかということ、この点につきまして、ひとつ大蔵大臣からお答えをいただければ幸いです。