○武藤(山)委員 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
租税特別措置法の
改正に対し、見解を述べ、政府の反省を促し、反対の討論をいたすものであります。
今回の法案の中でわれわれが最も強く反対するものは、政策効果を疑う高額預金者の利子分離
課税、株式の配当所得の優遇措置を三カ年間延長するという点であります。
不労所得がべらぼうに優遇されている株式を売買して、たらふく利益を得ても
所得税は取られない実情にある。株の売買利益は年間五十回以上売買をしない限り一銭も
所得税がかからないのであります。年間五回、十回の株の売買で相当な利益をあげても税金がかからない現行
制度は、べらぼうな不労所得者優遇であって、まさに金持ち天国と言わざるを得ない。しかも、そのように株式の譲渡所得の
非課税で優遇をしておきながら、さらに源泉徴収税率本則二〇%を一五%に軽減し、さらにおまけをつけ加えて、源泉分離
課税確定
申告免除による軽減と、まことに至れり尽くせりの優遇をしているのであります。
この優遇措置に賛成するということは、正義感が強い政治家にはできないのではないかと思うのであります。われわれが強く不満を持ち、反対する理由は、この不労所得優遇にあるのであります。
第二に、
所得税の体系を乱し、総合累進
税制をねじ曲げ、公平、応能の原則を破壊している点であります。
所得税は
国民の所得格差を調整し、富を再分配する機能を発揮すべき税であり、所得の多い者からは多くの税金を取る性格の税であります。個人に帰属する所得を指標としてその担税力を把握するもので、累進税率を適用する
基準となる
課税標準にはすべての所得を総合することが本則であり、原理であります。しかるに、利子、配当所得を総合し税率を累進にすることを見のがし、
租税特別措置で保護まで行なう現政府の姿勢は、近代国家の重大な原理を踏みにじるものと断ぜざるを得ません。
生活水準の低い、所得の少ない者には過酷な
課税を行ない、能力のある資産所得者に軽い、不均衡、不公平な利子、配当の優遇は
国民大衆の不満を増大し、納税道義を低下させ、風格ある
社会とは逆の
方向に
国民を誘導することになるのであります。いつの日か、この
制度を続ける勢力は、
国民の鋭い指弾を受け、没落するであろうことを予言をしてはばからないのであります。いまこそ公平で能力に応ずる税金を実現する
税制実現のため、水田蔵相は特にひとしからざるを憂うると、為政者としての気持ちを委員会で発言したからには、すみやかに公平なる
税制実現をはかる責任があると思います。
第三に、政策効果のない
財界とのなれ合いの
税制であるからであります。
政府は貯蓄の奨励に必要だと主張してまいりましたが、はたして貯蓄増強にどう因果
関係があるか、利子所得
課税の過去の優遇をわれわれはあらゆる点から検討いたしました結果、預金と貯蓄との因果
関係はほとんどないということが立証されているのであります。しかるに、かかる特別措置を何ゆえに強行するか。それは金融界あるいは証券界と政府が密着をいたし、癒着をしてかかる恩典を与えることによって、彼らの業界の利益を促そうとする以外の何ものでもありません。私は寡聞にして利子、配当
課税の減免措置について
一般国民大衆からの陳情書を見た覚えがありません。これらの業界が常に政府に働きかけ、政府はこれらの無理な施策を推進していると言わざるを得ません。
したがって、わが党が反対をする第三の理由は、かかる
財界との癒着による政府・
自民党の党略によるかかる措置に対しては、すみやかなる撤廃を強く要求をするものであります。
最後に、しからば、今回の
改正にあたって、われわれはかく改革を提案をいたしたいという一、二の点について申し述べたいと思います。
一つは、利子分離
課税の延長及び少額貯蓄免税の適用
範囲の拡大に伴い乱用さるるような点が起こる心配があるので、この際、
税法の適正な
執行のためにも、預金における架空名義の
取り扱いを廃止するよう、政府はすみやかなる検討をすべきであります。
第二に、配当に伴う措置の延長に伴い、健全な投資の促進に資するため、短期の有価証券譲渡所得につき
課税を行なうものとすべきであります。
第三に、
交際費の
損金算入にあたっては、飲食費については公給領収証を添付するものに限り、おおむね一人当たり五千円程度を限度とし、
贈答品についても一件一万円以内とする等、質的に
国民の納得し得る限度にとどめるよう適切な措置を講ずべきであります。
なお、
法人における
交際費と同様の性格の概算控除等を個人零細
事業所得者にも認めるよう努力すべきであります。
第四に、
課税の公平の原則にかんがみ、特別措置の効果を具体的に判定し得る方策をすみやかに検討するとともに、利子、配当等の、
国民感情によりその廃止を強く要求されているものについては、すみやかに廃止するよう格段の努力をすべきであると強く要求をいたし、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
租税特別措置法に反対の意見を述べるものであります。
なお、修正部分につきましては、先ほど提案の趣旨説明がございましたが、私
たちは、政府がすでに閣議において、四十二年三月十三日、「
社会開発の推進」の項の中で「消費者保護および消費者教育の推進にあたっては、消費者自身の自主的組織活動に期待する面が大きいので、消費生活協同組合等
民間の消費者組織の効果的発展をはかる
方向で適切な措置を検討する。」との決定が行なわれております。したがって、かかる物価が上昇する段階においては、消費生活協同組合を通じてできるだけ消費者の価格が高騰しない配慮をすべきであるので、特に時宜を得た適切な措置であると賛意を表するものであります。