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1967-05-25 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十五日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 三池  信君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 武藤 山治君 理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    菅  太郎君       鯨岡 兵輔君    小峯 柳多君      小宮山重四郎君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    砂田 重民君       永田 亮一君    西岡 武夫君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    山中 貞則君       渡辺美智雄君    阿部 助哉君       只松 祐治君    野口 忠夫君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    永末 英一君       田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         郵 政 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         国税庁長官   泉 美之松君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省社会局長 今村  譲君         通商産業省公益         事業局長    安達 次郎君         郵政省貯金局長 稲増 久義君         建設省計画局長 志村 清一君  委員外出席者         厚生省薬務局企         業課長     翁 久次郎君         中小企業庁指導         部長      安岡  孝君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第八四号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松委員 私たち租税特別措置法に対して非常に強い反対の意見をたびたび申し上げてきておりますけれども、なかなかおやめになりません。これは全く一、二の例外を除いて、ほとんど大企業なりあるいは特定人々、特に、俗にいう金持ちの人々を擁護する法案が中心になって、この全部を論ずることはなかなか容易でございません。私はその中でもこの前ちょっと質問いたしましたから関連をいたしますが、交際費の問題を中心にこれを論議してみたいと思います。  そこで、まずひとつ、これは泉さんでもどちらでもけっこうですが、交際費とは一体何か。交際費税法上における厳密な定義を聞かしていただきたい。
  4. 塩崎潤

    塩崎政府委員 租税特別措置法にも交際費定義は厳密に規定されておるわけでございます。  申し上げますと「交際費接待費機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業関係のある者等に対する接待、きょう応、慰安贈答、その他これらに類する行為のために支出するもの」これが一般的な定義でございまして、ただ、昨日もお話がございましたように「もっぱら従業員慰安のために行なわれる運動会、演芸会旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除く。」とありまして、政令では扇子、手帳、カレンダー等の小額なものが除かれておるのでございます。
  5. 只松祐治

    只松委員 厳密に書いてあるということですが、厳密なようで、あまり厳密ではないと思います。まだそうじゃなくて内容にいってあとで聞きますが、交際費内容といいますのは、なかなかたいへんにむずかしい。たとえば、官庁にも交際費というのがありますね。あるいは、公益事業を行なっている会社公団等にも膨大な交際費がありますね。そういうものと、民間会社あるいは中小零細企業交際費、この交際費内容に至っては千差万別だと思います。だから、いまおっしゃったような定義ではなかなか交際費取り扱いというものは律しかねる。  したがって私は、さらに突っ込んで、そういう業種別といいますか、あるいは経営形態別といいますか、なかなかこまかくはむずかしいかもしれませんけれども官庁における交際費というのはこれは何ら営利目的とはしない。ところが、税法上通常使われる場合の営利目的とする、利潤を得る、そのために必要な諸経費だと私は思う。ところが、それではガスとか電気とか、こういうほとんど独占企業であり公営企業であって、利潤を得るための交際費というものは必要としない、こういう部面もあると思います。あるいは、あっても、そういう利潤を得るための部面がきわめて少ない。したがって、そういう業種別といっちゃ分類もむずかしいと思いますけれども官庁あるいは公益事業あるいは民間というように、利潤を得る度合いの多少、こういう分け方でもけっこうでございますが、あなたたち定義上でもいいですし、あるいは、泉さんが税法分類でもされておられれば、そういう分け方に従った定義をあらためてひとつお教えいただきたいと思います。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ちょっと十分理解できませんでしたけれども業種特殊性を考慮した交際費分類というふうに伺いましたが、その勘定科目分類のしかたでございましょうか。
  7. 只松祐治

    只松委員 勘定科目まではいかないのだけれども、実際上どういう取り扱いをしているのか、全部一律なのか、多少分けて取り扱っているのか、そこいらを……。
  8. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、おっしゃるように、税法では規定は明確に書いておりますけれども、ただ、その執行に当たりますと、はたしてそれがどのように勘定科目で整理されているかと申しますと、なかなか税法が予定しておりますように勘定科目の中に整理されておりません。したがいまして、税務執行面で、たとえば会議費の中に入っていないかとか、あるいは広告宣伝費の中に入っていないかとか、そういったところで苦労が多いわけで、その点はただいま只松先生指摘のとおりでございます。  私どもが少し大きな会社二百十五社ばかりアンケートをとりまして、費目別の区分をつくってもらいましたが、これは平林先生の御宿題の一つでもございましたので申し上げたいと思いますが、接待費交際費贈答費といって整理しているものが七六・九%でございます。これは一番わかりいい、私どもでも簡単に抜き出せるものですが、申告で特に勘定科目の中で抜き出したもの、あるいは税務署が調査によって抜き出したものはそれにとどまりません。広告宣伝費販売費の形で出ておりますものが八・四%、それから会議費の形で出ておりますのが二・七%、それから雑費の形で出ているものが六・二%、それからその他固定資産勘定に入っておりましたり、福利厚生費に入っておりましたり、旅費・交通費に入ったりしておりましたものがその他でございますが、このような勘定科目で非常に分散しておりますので、いま只松先生が申されましたように、民間会社交際費申告も、また調査も決して楽ではございません。
  9. 只松祐治

    只松委員 一会社交際費つけ方はそういうことで、あるいは今度は意図的に建設費目の中に交際費が含まれておる。この橋をかければ、この中の五分はいろいろな費用にかかる、こうやって含まれておる。あるいはビルを建てても、そこの中の何%というものは初めから含まれている。こういうことで、それまで見つけるのはなかなか容易じゃない。あるいは親会社子会社交際費を回しますね。いろいろな飲み屋の交際費自分のところでつけないで、それを子会社交際費にして、子会社が受注するときにその受注費目をちょっと上げて、随意契約の場合に落としていく、こういうことをやっておりますね。こういうのまで全部交際費として調査なさっておりますか。あるいは、見つけた場合に認められるかどうか、そういうのはどうやって調査されたりあるいは取り扱っておられますか。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは国税庁長官範囲になるかもしれませんが、始終交際費範囲で問題になりますので、今度の交際費改正の際に調査官に数名来ていただきまして、調査官苦労話を聞いたわけでございます。いまおっしゃいましたようなことで、交際費が他の勘定科目にまぎれ込みます。それを見つけるべく非常に苦労している話を伺いました。  たとえば、こんなことをよく言われました。自分会社の車を使うならば、これはお客を送り迎えいたしましても、どうしても交際費にならぬけれども、ハイヤーを使うような場合には、これは交際費とせざるを得ない、ところが、なかなかそれを見出すのが容易ではない、こんなような話もございますが、私ども一応努力いたしまして調査はいたしております。しかし、それがはたして効果のある調査になっているかどうか。調査官が非常に努力しておりますけれども、むずかしい面があることは御指摘のとおりでございます。これはやはり交際費課税がそもそもいろいろな面におきまして問題があり過ぎる。何かの形で——結局は、これはモラルの問題だと思うのでございますが、こういったトラブルのない方向に持っていくにはどうしたらいいかということもひとつ考えていかなければならない、こんなふうに思っております。
  11. 只松祐治

    只松委員 モラルということばを先にお使いになりましたが、私はそこに帰すると思う。政界でもいろいろ問題になっております。しかし私は、政界というのは、日本社会から隔離して存在するものではない、やはりこの社会一つの姿を反映しておるものだと思います。特に私たち社会党の場合は、皆さん方から見れば、いい悪いは別にして、現実の資本主義社会というものを変革しようという立場に立っておりますから、これは別個です。しかし、それでも全然この社会から疎外されては生存できません。自民党の場合は、結局いまの資本主義社会を肯定しておるわけですから、この肯定しておる社会自民党の議員が生存しておって、なおかつこの社会から疎外して生きようったって私は無理だろうと思う。私は、モラルの問題というのは、単に財界モラルということだけでなくて、日本モラルとしてこの交際費の問題をとらえていく必要があると思う。政界だけに何か清潔さを求めたりいろんなことを言っても、それは一時的にその人たちが緊張したりあるいは改めても、財界そのものがリベートを持ってきたりあるいはそういう紅灯のちまたに誘い込んだり何したり、あるいはそういうことを極度にやっておって、それである特定の面だけに清潔さなんかを求めるのは、私はそれは一時的な現象であって本質的な解決にならないだろうと思う。やはり外国なら外国経済人自分のうちでパーティーを開く、あるいは自分のうちで接待する、いろいろなことをやって社会そのものが浄化されておるように、財界日本社会全体を浄化していく、その一つの大きなウイークポイントをなしておるものがこの交際費だと思うのです。一昨年度五千六百億円になっておりますけれども、私がいま一、二例をあげましたみたいに、私は五千六百億円などというものじゃないと思うのですよ。民間建設費目はもちろんだけれども官庁のみずからやっている共同ビルディングの中における食料費あるいはそういう接待費あるいはそこの落成式やその他の宴会費用、こういうものを交際費として見るならば、おそらくこれの倍、一兆円をこす交際費が使われておるのではないかと思います。そう思っても決して無理ではないと思う。  私はこの交際費という問題を、課税上の問題は一つありますが、しかし、それはあとで順次ただしていきますけれども、いまの日本社会を毒しておる一つモラルとしてこの問題をとらえていく必要があると思うのです。それをどこで規制するか。これも私が言いますように、税法だけではなかなか規制できませんけれども、しかし、税法があまりにも交際費を寛大にしておる、あるいは交際費というよりも交際費にこと寄せた脱税に対して寛大過ぎるということが、今日のこういう社会腐敗現象をもたらしておる原因だと思います。政治の面からもありますよ。しかし、私は、主として交際費の問題をきょうは租税特別措置として論議しているわけです。  そういうことをお感じになりませんか。これはあなたたちよりも、ほんとうは大臣が来たらあとでまた聞こうかと思っているんですが、政務次官おいでなら政務次官からでもいいし、あるいは泉さんもそういう点はどういうふうにお考えになりますか、考えを聞かしていただきたいと思います。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、私ども調査いたしました五千六百億円という数字は、これは法人企業だけの交際費であります。しかも、先ほど只松委員のおっしゃいましたように、私ども調査いたしましたものでも、調査官が非常に苦労していろいろ調査いたしておりますけれども、その企業が出した交際費の全額を把握した調査になっておるかどうかということになりますと、いろんな勘定科目の中に出ておりますが、必ずしも完全な調査ができておるというわけにはまいらないと思います。しかも、法人企業だけの交際費でありますから、そのほかに非課税法人もございますれば、あるいは官庁関係交際費を出されるものもございます。したがって、そういうものを加えますれば、私どもが申し上げております法人企業交際費以外に相当多額交際費があるだろうということは予測がつくわけであります。ただ、遺憾ながら、そういったものの調査は現在どこもなされておりませんし、また私どもも、課税法人でありますとその調査ができますけれども非課税法人、あるいは官庁ということになりますと、なかなかそういった調査もできませんので、いまのところ的確な数字を申し上げるわけにはまいりかねると思いますが、お話のとおり、公表されておりまする数字より、もっと多い金額が、いわゆる交際費として社会でいろいろ使われておるということは確かだと思います。
  13. 只松祐治

    只松委員 そのとおりですが、それでは答弁にはなってないのです。私が聞いておるように、今後どうしたらいいかということと、それから推計、大体どのくらいになるか、これは小沢さんにはわからぬと思いますが、そのことも含んでお答えをいただきたいと思います。
  14. 小沢辰男

    小沢政府委員 総額の推定になりますと、これはなかなか困難だと思いますし、こういう席であまり答弁をして、それが実態に合えばいいですけれども、私は、正式な答弁としてはちょっと不適当じゃないかと思います。  交際費につきまして、おっしゃるように、私はやはり会社経営者心がまえじゃないかというふうに思います。何でもかんでも会社費用でやれというのが、戦後の風潮としてどうも強くなり過ぎているんじゃないか。昔なら、私もおやじが会社経営を二、三やったときの例を見ておりましても、ある程度のことは自分の給与の範囲内で相当やっておったように思います。それが自動車から、あるいは、いろいろな公私を問わざる交際のものを全部会社の経理におんぶしようというような風潮が強まったことは事実だと思います。  それにはいろいろな原因があると思いますけれども、やはり一面において、所得税というものの負担が戦前と比べまして非常に多くなっている、同時にまた、貨幣価値の問題からして、いまの一流の会社の重役さんも全部をまかなっていくのは、その立場から見ますとなかなか困難な実態である。そういうような点、いろいろ実態を改善をしていくといいますか、しかし、たとえいろいろな点で同情しましても、もうそろそろ会社役員等については、ある程度その辺のところははっきりけじめをつけるような方向にいくべきじゃないかというふうに私は考えており、また、そうあるべきじゃないかと思います。  したがいまして、税制全般につきましての問題と同時に、経営者心がまえというもの、同時にまた、世の中の生活の実態というものをやはりそれに即応するようなふうに持っていく、それがないのに税制だけで、おっしゃるように税制のほうから交際費のワクをうんと小さくしたり、あるいは非常に厳格な運営に持っていって、締めつけてやって直していけばいいじゃないかというようなお説もありましたけれども、元来、交際費というものは商売上のいろいろな必要な経費であるわけでございますから、その辺のところはあまり民間実態に合わないような制度を先走ってしてもいかぬような気もいたします。しかし、方向として私どもはおっしゃる気持ちは十分わかりますので、今回の改正でも一歩前進したつもりで御審議を願っておるわけでございますので、今後とも交際費の問題につきましては、十分税制の側においても検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  15. 只松祐治

    只松委員 もしあなたのほうでわからなければ、あとで経済企画庁のだれか呼んでいただいて、交際費推定をひとつお出しいただきたいと思う。それとも、あとで資料として主税局のほうから出れば別ですが……。
  16. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おそらく企画庁でもなかなかむずかしいと思います。一つ推定になろうと思います。それらは私のほうで研究いたしまして、大ざっぱな推計でがまんしていただくほかありませんが、ひとつ研究して御提出申し上げるようなことをやってまいりたいと思います。
  17. 只松祐治

    只松委員 もちろん統計は出ません。あくまで推計になると思います。しかし、国民経済の中に占めるこういう部面というものは、どの程度のウエートを占めておるか、私はその面からもぜひお願いしておきたい。  それから、そういう一般交際費の中で、いわゆる官庁交際費、これも相当多額にのぼる。しかし、官庁の場合はむしろ接待を受けるほうが多い、こういうことになるわけです。公益事業交際費、こういうものは一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  18. 塩崎潤

    塩崎政府委員 公益事業という意味は、電気あるいはガスというものを経営されておる事業という意味でございますか、あるいは、私これから調査しようと思いますのは、官庁交際費はもちろんでございますが、その他、たとえば民間各種団体業者団体、ここで使っておる交際費、これらも相当ありますから、そんなことも研究してみたいと思います。いまおっしゃいましたのは、おそらく電気ガスのように独占的な事業体であって、そんなにいわゆる過当競争に基づく交際費、相手を接待してまで売り上げをあげなければならぬというような普通の競争企業と違った面があるから、交際費は少なくて済むんではなかろうかという意図のもとに御質問であろうかどうかわかりませんが、しかし、私ども税制上の問題といたしましては、税制上の制度でございますから、また簡素化の見地から、一般的に交際費基準を設けまして、その範囲交際費ならばしかたがない——しかたがないと申しますか、当然損金算入になる、こういうふうに考えておりまして、特に税制上、公益事業会社であるとか、あるいはこれが特殊な電気会社だから特によけいな費用が要るから認めろというようなことは、三十六年前までは、ある程度基準年度思想あるいは売り上げ基準を採用していたときに入っておりましたが、それが非常に混乱しましたり、無理もかかり、恣意的な面も入りますので現在のような一本の基準になっているのでございます。
  19. 只松祐治

    只松委員 そのおもな公益事業会社の、たとえば東京大阪、近くの京葉でもどこでもいいですが、ガス会社交際費あるいは電力会社交際費、これは通産省の公益事業局長、どうですか。わからなければ泉さんのほうでもいいですが、どの程度使っているかお答えを願いたい。
  20. 安達次郎

    安達政府委員 電力会社の九電力についての集計を申しますと、四十年度に二十三億六千七百万円支出しております。それからガス会社も全国に二百数十のガス会社がございますが、そのうち大手の東京大阪東邦、この三社の合計を申しますと、支出額は八億三百万円、もっともガスの場合には会計年度の変更がございますので、東京大阪東邦、この三社とも十三カ月決算になっております。  以上でございます。
  21. 只松祐治

    只松委員 ガス三社の内訳をちょっと。
  22. 安達次郎

    安達政府委員 各社別の具体的な数字一般に公表されておりませんので、別な機会に御説明申し上げたいと思います。
  23. 只松祐治

    只松委員 公表をされておらないわけではない。あなたたち公益事業法に基づいて監督しておられ、調査されておる。それを国民の前に公表できないということはないですよ。公表しなさい。
  24. 安達次郎

    安達政府委員 東京が四億九千五百万円、大阪が二億三千三百万円、東邦が七千五百万円でございます。
  25. 只松祐治

    只松委員 大臣がおらないから、小沢さん、電力会社で二十三億円ですか、ガス会社三社で八億円、東京で四億九千万円、約五億円、大阪で二億三千万円、東邦で七千五百万円、こういう膨大な交際費が使われておりますが、一体これは何に使われておるとお思いになりますか。
  26. 安達次郎

    安達政府委員 電気事業ガス事業公益事業でございますけれども、株式会社形態で認められておるような私企業でございます。そしてそのガス事業電気事業遂行のためには、その経済的、社会的な活動のために必要な交際費というのが、やはりいろいろな方面にございます。たとえば発電所送電線変電所、そういうものの建設、あるいはダム、大規模の導管の建設とか、土地の取得その他、関連するいろいろな費用、あるいは、先ほどもちょっと御指摘ありました、そういうような新築等の御披露、あるいは、特に資本金が膨大となっております関係上、増資対策などでもいろいろな増資説明会だとか、あるいは最近とみに問題になってきております送電線下の補償とか、その他いろいろな関係でのいろいろな必要な経費、あるいは、特にまたガス工事等につきましては、労務不足等によって工事能力が相当低下してきておることもございまして、そういう工事能力の確保というようなことでもいろいろな交際費が使われておるわけでございます。  そういう意味で、公益事業ではございますけれども公益事業の十分な遂行のためには、やはり各方面での交際費的な支出が必要かと思われます。
  27. 只松祐治

    只松委員 国税庁長官、いま公益事業局長はああいう答弁をいたしました。あなたたち税法調査された面ではどういうものに使っておりますか。
  28. 泉美之松

    泉政府委員 私、個々の会社について一々交際のあれを見ておりませんけれども、先ほど公益事業局長お話のように、電力あるいはガス公益事業におきましても、相当各方面との間で交際費が使用されておることは事実だと思います。特にそういった面で二、三風評を聞いたこともありまして、調査をするように命じたこともあります。そういった事例から徴しまして、かなりそういった意味で広範囲交際費が使われておるということは確かであります。
  29. 只松祐治

    只松委員 これは私は、電力会社ガス会社だけをねらって言っておるわけじゃないですよ。大きな企業として電力ガスと、こういうものがあって、まあこれはだれが見ても、しろうとが見ても、そんなに特別に交際費がかかるのかと思うでしょう。電気を引いてください、ガスを引いてくださいといったってなかなか引きやしませんからね。それで、お百度を踏んで頼みに行かなければ引かない。ガス会社ならお客国民でしょう。東京都民埼玉県民です。市民です。その人たちが引いてもらうのですよ。公益事業局長、聞いてくださいよ。引いてくれとぼくも三回ぐらい行ったのだが、こっちが逆につけ届けを持っていかなければ引いてくれないのですよ。どこに交際費を使うのですか。交際費お客に対して、収益を伸ばすために使うものでしょう。原則はそうでしょう。そうでなくて、お客がお百度を踏んでいかなければならない。それは市町村長や何かそこいらに、あるいは線下補償とかと言ったが、そういったようなものも部分的にあります。そんなことはぼくらは知っていますよ。しかし、通常の営利を行なっておる会社が無理にお客を引っぱってくる、あるいは売り上げを伸ばす、そういう面で使っておる交際費とは根本的に違うでしょう。こういう独占企業体、公益事業体というものは、ほかに競争でできないわけですからね。これはこの前言ったように、東京との境に京葉と東京瓦斯とある。その境は、昔、町が違っていたというだけで、現在同じ町になっておっても昔の権益を主張して、片方は京葉瓦斯、片方は東京瓦斯、そこで権益争いをするのですが、絶対に一歩も入れないのです。そのくらい独占的なものです。同じ町になって、郵政宿舎で、それでもなおかつ一歩も入れないのです。双方の料金が違うのです。同じ公務員が違う料金のガスを使わなければならない。こういう状態です。何億という交際費がどこに行くのですか。あなたが言っておるようなことをそのまま認めては、逆な意味で、ぼくはあなたたちの監督監査権を別な角度で——きょうはそこまで調べてきていないから、この次調べてきて責任を追及しますよ、いまみたいな答弁をしていたら。いいですか、そんな答弁で。時間がないからあまり言わないが、きのう朝日訴訟があった。三十一年の六百円、いまだと二千四百円ぐらいの保護費しかもらえない。そこで困っておる、そして訴訟まで起こさなければならない困った人々、あるいは住宅に困った人々がある。そういう中で、ちょっと銀座へ行ってテーブルにすわれば一万円のビール、赤坂へ行けば、ちょっと座敷にすわって二万円か三万円ぽいと取られる。こういう状態で、一企業が四億円も使い、三社だけで八億三百万円も使っておる。電力会社で二十何億円、政治献金は別にあるのですよ。そうでしょう。これは交際費ですよ。こういうものを、あなたたちは指揮監督する立場からのうのうと無条件に認めておるのですか。それでこれが正しいとおっしゃるのですか。それならばぼくはあとで聞くけれども、これは税法の問題に移ってくるが、中小企業者なんかのリベートなり何なり、そういうこまかいことをほじくりなさんな。こういう問題が出てきますよ。必死になってお客をとるためのわずかなリベートをほじくり出して増差をかけている。そうして、大会社公益事業で何らの競争を必要としないところは無条件に認めて、あなたみたいな国民の代表者である通産省の役人がのうのうとそれを弁護するようなことを言って、国民がまともに税金を納める気がしますか。もっとまともに答弁しなさい。これでいいですか、どうです。
  30. 安達次郎

    安達政府委員 電気事業ガス事業につきましても、一般企業と同じように、やはりその社会的な経済的な活動のためにはある程度交際費も必要だろうと思いますということを申し上げたわけでございます。  それで、電気事業ガス事業の業務、それから経理については、やはり法令上、行政措置をもっていわゆる監査をいたしております。監査をいたしておりますけれども電気事業につきましては、大体九電力については年に二回、その他の電気事業については年に一度、ガス事業につきましては、おおむね本省直轄の十二会社については年に約一度、それからその他のものにつきましては三年に一度程度の監査を実施しております。それで、この監査におきましても、いわゆる公益事業として適切な支出なりやいなやについて監査するわけでございますけれども、何といっても件数も多うございますし、それでまた全体のいろんな支出項目の数多いうちの一部でもございますので、交際費についてはある程度抜き取り的な監査しかできないような状況になっております。
  31. 只松祐治

    只松委員 そういう答弁答弁になっておりませんよ。  では具体的に聞きますが、何人で延べ何日間、A、B、Cの会社でもいいし、東京大阪どこでもいいですが、調べた日数を言ってください。
  32. 安達次郎

    安達政府委員 大体九電力の監査におきましては、これは交際費だけではございませんけれども、上期、下期、それぞれ九電力について一社約一週間ないし十日程度やっております。そうして大体従事する監査担当官は、一回に大体三人から四人程度従事しております。
  33. 只松祐治

    只松委員 三人か四人で一週間か十日、この膨大な、電力会社の本社だけでもとてもそんなことじゃできませんが、全国にまたがっていろんなものを持っておる電力会社、これを調査できるとお思いですか。国税庁で一会社調査するんだって、私たちはそれでは不十分だと言っているんだけれども、これは国税庁の調査と雲泥の差ですよ。これはしてないということと同じですよ。しているとおっしゃるなら、私はさらに聞きますけれども、この接待費内容が何に使われておるか、課長か担当官に聞いてごらんなさい。この交際費内容が何であるかおわかりだったら、その内容調査したことがあるかどうか、まずそれをお聞きしましよう。
  34. 安達次郎

    安達政府委員 先ほど申し上げましたように、監査におきまして、交際費については抜き取り的な監査をいたしておるわけでございます。その監査の際に出てきたその交際費内容等につきましては、先ほどちょっと例示で申し上げましたように、たとえば発電所変電所その他の御披露の費用だとか、あるいはいろんな土地獲得等のために必要な地主との交渉費とでも申しましょうか、そのような費用がかかる、あるいは、ガスの場合でいいますと、工事能力確保のための費用だとかいうような項目なんかについて、従来抜き取りの場合に出てきた例示があるようでございます。
  35. 只松祐治

    只松委員 あなたたちがどこかで業者を集めてお話になるなら、その程度のお話でごまかしがききますけれども、国会でそんな答弁答弁になっていると思ったらたいへんな間違いですよ。いままでこういう面について論及したこともあまりないようですし、聞いたこともないから、あなた、そのくらいで逃げられると思っているかも知れないけれども、それで国民を代表して公益事業——公益事業というのは独占を許しているわけですから、それが監査監督する通産省のあり方だとお思いですか。それが国会における国民に対する答弁だ、そんなことで済みますか。ぼくはいま電力のほうはよく調べていないけれどもガスのほうは多少調べております。電力のほうは、いまの感じでは線下補償やなにかはおそらく交際費じゃないと思うな。交際費で出しておるかどうか知らないけれども、私は交際費じゃないと思う。これは施設費か何かに入っているはずだ。たとえばガスの場合、ガスの場合はぼくは持っておりますけれども、配管の施設や何か、全部ちゃんと入っております。さっき主税局長からお話がありましたように、この交際費というのは一応の規定がありますからね。接待費贈答費——線下補償というのは私はそれには入らないと思う。だから、ひとつそのお答えとともに分けて、何なら資料として出してくれませんか。
  36. 安達次郎

    安達政府委員 先ほど私の線下補償云々の説明は、少しことばが足りなかったと思います。線下補償とか、その他土地の交渉なんかのための地主交渉というような意味でございます。線下補償のための補償そのものの経理の扱いは別だと私も思います。  それから、ただいまの資料でございますが、先ほど申し上げましたように、どうも監査の面でも抜き取り監査程度でございますので、先ほど申し上げたような内容の例示的な御説明はできましても、統計的な資料等まとまりますかどうか、少し内部で勉強してみたいと思います。
  37. 只松祐治

    只松委員 できるだけ正確なものを、電力ガス、あなたのほうで監督しているものの資料をひとつ出していただきたいと思います。  主税局長でも国税庁長官でもいいですが、こういう公益事業において、こういう膨大な交際費が必要と思われますか。あるいは、いま公益事業局長からわかったようなわからないような説明がありましたが、こういう面にこういう膨大なものが使われておる。今度は課税の面からあなたたちはこういうことをどういうふうに把握されておりますか。
  38. 塩崎潤

    塩崎政府委員 事実は確かに只松先生のおっしゃるように使われておるわけでございます。ただ、私どもは使われた使途について価値判断をすべき役所の立場にございませんので、ただ税法に従いまして、これを認容するあるいは否認する、こういったものでございます。  なお、一般基準公益事業会社にも適用されることは少し寛大過ぎるではないかという御質問ならば、これは先ほど申し上げましたように、税法上の制度といたしましてこれはやむを得ないことだというふうに御理解願えればしあわせであります。
  39. 只松祐治

    只松委員 どうも先に先に答弁されるのでございますが、私はモラルを言おうと思ったのですが、だから私は、最終的には税法上こういう公益事業というのは——やはり官庁あるいはこういう公益事業、あるいは一般民間企業と零細企業というものの交際費のあり方というのは違う必要があるんじゃないか。ある意味では、業種によっても非常に激しいのとそうでないのとありますけれども、そこまでなかなか税法上分けられませんけれども、少なくともこういう独占企業である、むしろ郵政や電通に近いような企業体のものが、ほかの民間の競争熾烈な会社と同じような交際費の額を自由自在に使ってよろしいという事業局長のような答弁から使うべきだ、こういうことは私はおかしいと思いますね。だから、一般民間もありますけれども、こういうところに膨大なものが——これは資本金も大きいですね、それから全体の金額も大きい。したがって千分の二・五というようなことを一律に適用いたしますと膨大なものになって、さっき読み上げられたような数字になっております。これがどんどん無制限に使われます。  こういうところに私は社会一つの腐敗の現象というものが出てくるんだろうと思いますね。中小企業やなんかのおやじさんは多少飲んだりしたってたかが知れていると思うのですよ。こういうのは非常に強く否認をされておるのですよ。ところが、こういうものは調べていないのですよ。通産省も調べていないのですよ。この中身は調べておりませんと、ここではすなおに答弁をしたほうがいいですよ。私が調べた範囲内では調べていないんだから。私が言うように、おそらく税務の面からも、こういう膨大なものはたまに抜き取りくらいあるかもしれぬけれども、中身は調べていない。中小企業のおやじさんがどこで飲んだ、ここで飲んだ、酒屋に行ってまでツケをつくるようにきびしくは調べていないのですよ。だから、こうやって調べないからどんどんよけいに使うのですよ、おつかなくないから。大会社で、責任というものが経理課長にあるからどんどん重役連中が使う、こういう形になる。これが社会の大きな腐敗をもたらしておる私は一つ原因だと思うのです。このことを放任しておいて、ある一部面だけ締めあげていったり、ある一部面だけ追及していっても、そういう問題の根本的な解決にならないと思う。  だから、日本社会全体を直していくには、いろんな面はあるけれども、やっぱり一番こういう面にメスを入れる必要がある。私は一つこの公益事業というものにちょっとメスを入れていまやってみておるわけなんですけれども、こういうものにメスを入れてみると、やはり出てきますね。これはいろんなものに出てくるでしょう。きょうは私は交際費の問題だけ聞いているのですが、料金の問題から全部出てくるのですね。わがままかって、しほうだいですよ。それはもう政治家の力やわがままどころじゃない。この公益事業体やこういうところの重役連中のやり方というものは、めかけを持ちほうだい、芸者をあげほうだいですよ。めかけは例をあげたっていいですけれども、私はこういう会社を知っている。だから、こういう面は私たち政治家の責任もありますね。しかし、一番行政面の方がいまいろんな面において力を持っておりますし、この行政を担当されておる最高幹部の皆さん方がこういう面については、正すべきものは正していく、こういうことをされる必要がある。立法府のわれわれにも責任があるけれども、行政府の皆さん方は、やはり法律がこうだからといって逃げないで——法律できまっているからそれをこうするだけであって、こうおっしゃるけれども、もちろん立法府で法律をつくるわれわれにも責任がございますけれども、それを施行されていく皆さん方としても、あるいは皆さん方のつくられた法律案というものはほとんど与党に持ち込まれて、与党が私たちのほうへ押しつけてきて、それが私たちの修正を顧みないで通すわけですから、ある意味では皆さん方が一番強い力を持っておる、こういうことも言えるわけですよ。こういう面を一つとりましても、わが国の社会の腐敗、堕落の根源がどこにあるかというようなことをやはり考えていただきたい。そういうものの一つとしてあなたはモラルということばを先にお出しになりましたが、私は結論としてそこへ持っていこうと思ったのですけれども、ひとつ考えていただきたい。もう少しこういう面の調査というものを国税庁長官、きびしくやったらどうですか。どうお思いになりますか。これはどこかの社だけあげてどこの社をやれとは私は言いませんけれども公益事業調査というものをもう少し一別な角度からやる、こういうことをお考えになりませんか、どうですか。
  40. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のように、資本金六十億以上のものにつきましては、私どものほうは特別調査官が相当詳細な調査をいたすことになっております。電力会社ガス会社、これは全部ではございませんけれども、中には特別調査官の所掌になるものが相当あるわけでございます。したがいまして、特別調査官の所掌に属する問題につきましては相当日数をかけて調査をいたしております。その際に、先ほどお話がございましたが、交際費支出につきましていろいろうわさも聞きましたので調査をさせるようにいたしております。しかし、お話のように、何ぶんにも本社だけでなしに、事業所等も相当多いわけでございますので、交際費だけに日数をあまりかけて調査をしておれないというのが現状であろうかと思います。  したがいまして、御趣旨のような点につきましては、ひとり交際費だけでなしに、いろんな支出面にわたりまして十分な調査をいたすように心がけたいと思います。
  41. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんから、本法のこの問題はもう少し突っ込んでやりたいのですけれどもここでとどめますが、逆に、今度は中小企業の場合にはわずかな交際費でも非常にきびしい調査が行なわれ、あるいは否認が行なわれておりますね。また、交際費というものをきびしくするために、慣例として中小企業の場合はリベートがやりとりされておりますね。  たとえば、石屋さんにおいてお墓の石を持ってくると五分前後のものをお寺さんに出す。お寺さんですから、あまりキャバレーに行ったり芸者買いに行ってドンチャンしませんからね。お寺さんは現金の収入が少ないから、おのずから金ということになる。通常ドンチャン飲みに行けば交際費に落とせるわけですが、学校の先生や坊さんはキャバレーに行ったということになると目立ちますから、リベートということになる。あるいは、デパートの出入り商人が激しい競争の中でやはりつけ届けをしたりなんかする。初めはネクタイや洋服の生地なんかをやっておっても、それがだんだんと現金になっていく、そうすると、これは現金だから領収証を取りませんから否認される。こういう形で、慣習として税務署は相当強く否認されておりますけれども皆さん方常識でお考えになれば、皆さん方が菩提寺に石碑を建てられるときに、お寺さんを通して石屋さんに頼むと、いきなり石屋さんに頼むよりもどうしても慣習としてそこに幾らかのものが返ってくる。こういうものをいま全部否認されておりますね。いわゆる中小企業の場合はそういう交際費だから、私は一番最初に皆さんに交際費定義を聞いたのですが、これはリベートだといえばリベートだけれども、英国の慣習法を重んずるみたいに、税法にはございませんけれども、慣習という面から見るならば、私はむしろ交際費に属すべきものだと思う。事業を営むために行なっておると見たほうが妥当だろう。デパートの出入り、これは例をあげれば切りがありませんけれども、酒屋さんなんかお得意をふやしていく、そうして、たとえばビール会社だって、百四円の卸を九十八円で大きなキャバレーあたりにはおろしていますからね。これはリベートになっておりませんね。安くしているんだから、収益が少ないということで。しかし、それは百四円でおろしておいて幾らか持っていく場合もなきにしもあらず。これは公定価格というものはぴしっときまっておりますけれども、しかし、そういう民間の業者の競合の場合にはそういうものはない。こういうものは一斉に否認されておりますね。これだけでも、中小企業からは自然増収という名のもとに相当の増差ができておりますね。だから、こういうことをなさるならば、私が言う公益企業体を幾つか洗うことによって、日本の全国の中小企業者がいま非常に恐怖におののいたり泣いておるこういうことをしなくて済むと私は思うんですよ。  私はこの前大企業という問題だけを大体調べてみたのですが、こういう問題について、あまりにも不公平である、あるいは格差があり過ぎるといいますか、確かに税法上だけから見れば、リベートというものは否認されることになるかもしれない。しかし、さっき言ったように、何を使っているかわからないようなガス会社電力会社交際費から見るならば、明らかにこれは交際費範囲内です。もう少し、皆さん方はそういうものについて税の公平という面からお考えになって、交際費というものについて、定義とともに実態というものをお考えになる必要があるのではないか。どうです。
  42. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、中小企業の場合、それがリベートなりや、あるいは交際費なりやという限界につきましてはいろいろ問題があります。私どもといたしましては、リベートとして支出しておりますものでも、盆暮れのときの贈答というような形をとっておるものにつきましては、これは交際費として認めるということにいたしておるのでありますが、現実には盆暮れ以外の時期にいろいろあらわれております。そこでそれを調査していくわけでありますが、実際は相手方の企業そのものにリベートを渡すのではなくて、そこの、たとえばデパートでございますと、その仕入れを担当している人に渡す、そこで、その人の氏名を明らかにすると出入りが差しとめられる、こういったことから、だれに渡したかということをなかなかおっしゃられない、そこで私どもとしては、やむを得ず、だれに渡したかわからないような費用経費でないということで、損金算入を否認することになるのでありまして、そこにいま只松委員のおっしゃるような非常にむずかしい問題が出てまいっておることは、私どもも十分承知いたしております。これについては、相手方にできるだけ迷惑をかけないようにするから支出先をおっしゃいということを言っておるのでありますが、それがなかなか実行できにくいという商売上の実情にあるようであります。そこで、まあ、私どもといたしましては、相手方が明らかにならぬ以上、やむを得ない措置としてやっておるわけであります。  これについてはなかなか割り切れない問題があることは確かであります。今後とも、そういった意味で、中小企業のこういったリベートの調査等につきましては十分配意していきたい、このように考えております。
  43. 只松祐治

    只松委員 私は全部が全部認めろということまで言わないし、言っていないんですよ。しかし、長い間、昔からお寺から墓石を持ってくれば幾らかお礼返しをする、これは慣習だと私は思うんですよ。これをやめろと言っても、実際上なかなかやまらないと思うんですよ。しかもそれが、非常に膨大なものであれば別として、少ないのでは二分か三分、多くて一割というような範囲内——一割というのは、金額がいま多くなってきたから大体ないようですね。私がいま知っているのに、月に五十万前後リベートを出している人がいる。ぼくはそれは贈収賄になるぞということを言っているわけですね。しかし、これをしないとほかの業者へとられるというのですよ。そこまで無理してとっている。これは名前を言うとあれですけれども、やられているところもあるのですね。それだけ競争が激しいわけです。五十万出しても、結局この仕事をとれば利益が出てくる、こういうことなんですね。それだから背に腹はかえられない、とっていく、こういうことになるのですね。そういうのはやむを得ないと私は思う。しかし、石屋や、あるいはデパートの場合でも、そこの主任とかなんとか、個人が私腹をこやすわけですから、それは限度があって一定以上はいけないと思うのですね。しかし、お寺と石屋といった関係では、これは五分以上とか、たくさんになるときは別ですけれども、一定範囲内のものは、私は交際費といいますか、あるいは正規の意味交際費じゃないかもしれないけれども、慣習的なものとして何らかの形で認められないものか。これを全部否認していくということになれば、お寺と石屋の関係は、仏教界は昔ながらの封建的ですからね、非常な冷たいものになるそうです。だから、そういうものは皆さん方一挙に全部否認するという形でなくて、先ほどから繰り返すように、公益事業でもこういう膨大な交際費や何か、しかも法律できまっておるが、それは内容はわからぬ。こういうものが、事業を広めるための交際費あるいは必要経費ではなくて、そこらで飲み食いしたり、ゴルフをやったり、めかけを囲ったり何かしたり、こういう費用に全部流れているやつを、皆さん方は法律にきまっておるからということで、あるいは公益事業ということで許しており、それらに対して何らの調査もしておりません。こういう状態です。こういうことで、公益独占企業なり強いところには皆さん方非常に弱くて、最後には法律できまっていますからといってさらりと逃げる。そして中小企業、零細企業に対しては強い。石屋の一つのそれを調べるために、石屋のおやじを三回も四回も、何回も呼び出したりする。それだけやっておる税務職員のエネルギーを大企業会社調査に使えばよほど税金が取れると思う。来い、また来いといって、ぼくの知っておるところでは、税務署の職員が四回くらいお見えになっておりますね、わずかなリベートを洗うために。その石屋のおやじは何回も行っておる。また、その間に要した税理士や何かの日数は膨大なものです。それだけのエネルギーというものがそこに使われておる。そうしてわずかなリベートから税金を取られる。片一方、ガス会社あたり調べているのは三人くらいの者が一つのものに四日から一週間ですよ、大体ぼくが調べた範囲内では。それだって膨大なものが交際費という名のもとに否認もされないで、ほとんどないんだから、こういうことで課税されない。これはたいへんに私は不公平だと思う。行政をされる皆さん方としては、単に法律をたてまえとしないで、もう少し実際のそういう面をお考えになったらどうです。  こういうことをあまり言うとお説教みたいな話になりますから言いませんけれども、こういう面についてもう少しお考えになる意思はありませんか。慣習というものをどういう範囲内で認めていきますか。
  44. 小沢辰男

    小沢政府委員 御承知のとおり、法律というものは一般的、抽象的な権利の制限であり義務の付与でございます。したがいまして、これが個々に適用されるにあたりましては、やはり現実のいろいろな個々の現象に遭遇いたしますといろいろ問題が起こってくることは、これは間々あることでございます。私ども税法立場からしますと、交際費の、先ほど言いましたように六十二条で概念規定をいたしまして、これを実施官庁である国税庁、それぞれの各税務署のほうにおいてやるわけでございますから、その中に交際費として法律で定められた概念に当たらないものは、どうしてもやはり必要経費損金算入というわけにいかないのでございます。先ほども長官が申しましたように、そういう点でまさにあちこちに不満のあることは十分承知しております。したがいまして、今後の問題あるいは立法論として御議論をされる場合には別でございますけれども、現在そういうような個々の事例について、確かに長年の慣習に合わないじゃないかというような点の御批判もあろうかと思いますけれども、それにはできるだけ私どももその実態があるならば、いまの法律上差しつかえない範囲にやり方を改めてもらって、指導をして、そしてそういうようなものをできるだけひとつ交際費なら損金に落ちるような方向考えていく以外に、現実の立法論は別でございますけれども、現行法の適用ということになればやむを得ないと思うのでございます。  ただいまのリベートの問題は、私も実は三十何人か使っている中小企業を、商業関係でございますけれども一つやっておりますが、ちょっとおかしいじゃないかと思うこともございますが、しかし、経営者としては、やはり法律の範囲内において、できるだけくふうをして、経営者の責任において事業遂行するというような立場でいま運営をいたしておるつもりでございます。こういう点についてはいろいろ御意見もありましょうけれども、なお、そういう実態を、この法律の適用にあたりまして国税庁側でもさらによく検討いたしまして、善処してまいるようにいたしたいと思いますが、基本的にそういう立場があることだけは御了承いただきたいと思います。
  45. 只松祐治

    只松委員 ぼくは法解釈だけやっているのじゃなくて、事例をあげて立法論議をここでやっているのですよ。だから、それまでしないというなら、最後までがんばって、そういう特別措置法をきょう通しませんからけっこうな話ですよ。理事が何を言っているか知りませんけれども、ぼくらは反対ですからね。簡単なことですよ。ぼくは立法論議の中身として——きょうそういう租税特別措置法が採決になるんでしょう。だから片一方、そういって公益事業や何か例を引いて、全部立法論議としてすればもっと正確にできますけれども、それではなかなか国民にはわからないから、例を引いて、ガス会社電力会社が全部使っているじゃないですかと言っておる。片一方は単に法解釈で、いまあなたは秘密通達を御存じないかもしれないが、秘密通達だろうと思う。とにかく、そういうリベートを否認しなさいといって、税務行政として行なっているんですよ。それは全国一斉にやっているんですよ。これは法人の中で自然増収の一番大きなものは中小企業でしょう。所得税の伸びは別ですよ。要するに、法人税の中でわりと大きいのは交際費の否認やらリベートの否認ですよ。一番大きいのはリベートの否認です。ぼくが知っている限りでは、ぼくの管内だけでも相当ありますよ。こうやって法律だけじゃなくて、行政上の大きなウエートを占める面として行なわれておるから私は聞いておる。しかも、それが、租税特別措置に関連してまいりますからね。だから、それだったらリベートは交際費として認めるという点を附帯決議をつけてもらいましょう。それをつけなければ通さない、こういうことにいたしますから……。
  46. 春日一幸

    ○春日委員 関連して。  ただいま只松君の指摘されておりまする問題は、中小企業経営、中小企業税制、これの実態に触れる重大な問題であると思うのです。一方、租税実体主義というのがございまして、その事業を得るに必要なる経費が実在すれば、それは損金算入を認めるという大まかなたてまえになっておりますけれども、しかし、そのことを挙証することが事実上できない。それは、ただいま只松君が指摘されましたように、明らかに贈収賄になる。形式的な増収賄になる。けれども、はたしてそれが増収賄的な形態の所得になっておるかというと、それはそうではない場合が相当あると思うのです。  たとえば、建築現場なんかでは、現場の親方が下請からそういういうものを取りますね。取っても、その親方は自分のポケットにそれをしまうのではなくして、さらに現場の子方連中にこれをばらまいていく、子方の連中は残業手当だ、一ぱい飲む、盆暮れにちょっとこれ包み金、こういうことで何びとの所得にもならない。さらに、零細にこれを追及していくと、その実態は、最終の所得者は年間五万円以下というような零細所得であって、申告するに及ばざるようような細流に該当するような、いわば細流になって毛細管のような形でなくなってきておると思うのです。だから私は、租税実体主義で正確にこの問題を捕捉しようというならば、まさにこれは何びとの所得にもなっていないけれども、その事業遂行する上において、伝統的に風習的に、また実際の必要上、そういう経費をかけなければその事業遂行されていかないのですね。けれども税法上、それを通達や法律でこれを明確に区分することがなかなかできない。だから、何らかの形でこれを救済できないかというのが、只松君の言っておる趣旨だと思うし、また、そのことがされないと、出るほうでは大きいが、最終的にもらうほうでは小さなものである。だから、出るほうでは大きく否認されて、それが所得の対象となって課税されていく。実際に出ておるものを否認されて、それが二重課税になってくる。これは何ごとかの措置が講ぜられなければならぬと思うが、このような徴税現場のいろいろな陳情を長官はお聞きになっておると思うが、これについてどういうふうにお考えになっておりますか。実際に出ておるけれども、そのことの書類を取ることはむずかしい、取ることはむずかしいけれども、それは特定の個人の大いなる所得としてなっておるものではなく、次々とこれが細流的に流れていっておるのである。そのような事業を行なうに必要なるところの諸雑費として、これが潤滑油の役割り、現実に日本国民経済のために貢献しておる、こういうことでございますね。どうです。
  47. 泉美之松

    泉政府委員 お話のような事例につきましては、私もお聞きいたしております。で、これは実は税務調査におきましては、千差万別の形態があるようであります。まあ、いま春日委員のお話のような、だんだんといってしまえば非常に小さなものになってしまうという場合もございますが、同時に、非常に多額なものがある人のポケットに入っておると推測される場合もあるわけです。  したがいまして、私どもといたしましては、最終末端にいけば小額になってしまうものまで追及しようというつもりはありません。ただ、どうもその支出先が、ある一人の特定の人に渡っておって、その人の所得になっておると疑われるもの、しかし、なかなかだれに渡したかということをおっしゃらないもの、こういったものに限って追及することにいたしておりまして、最終では小さなものになるようなものについてまでは追及しないようにしておりますし、また、これは調査官調査の過程におきまして、これはどうもいまお話のようなふうに支出されているという心証を得た場合には、これはあえて否認するな、損金として認めよ、こういうふうな運営のやり方をやっております。  しかし、数多くおる調査官の中でございますから、あるいはお話のような事例もあるかと思います。そういった点につきましては、今後十分注意してまいりたい、このように考えます。
  48. 春日一幸

    ○春日委員 いまの泉長官の御答弁は、非常に柔軟性もあり、取り扱いの中では流動性のあるような印象を受けましたけれども、現実には、出るほうではあるいは何百万円、ときには何千万円になっております。けれども、それを実際にまさぐっていくと、現場がたくさんある。そうすると、それを繰り返し繰り返しやって、一年間ということになると、出すほうでは何千万円になるから証明を持ってこなければだめだという。当然だろうと思うのですね。ところが、証明を出すならば出してもいいが、そのかわり出入り差しとめだということになってくるわけですからね。それはいま只松君御指摘のとおりですね。そうするとあがったりになってしまうもんだから、ときには泣く泣く否認されて、現実に支出があるけれども否認されて、これが税の対象になるということになれば、その納税者は、それでは中小企業の場合商売が成り立たない。だから、そのような税源を捻出するためには、次の税で脱税を行なうか、あるいは商売をやめるかしなければならない形になってくる。だから、それをいかに救済を求めていくかという形になりますれば、これは私は、いかにして心証を得るかというのだが、心証といったって、この納税者の声色や目色ぐらいではなかなか心証が得られないと思うから、私は、願わくば、そういうような場合には、税務署長とか、あるいはそういうような高い地位にあって、なお秘密が守れるような信頼の置ける人が呼んで、ほんとにあんたもらったか、もらったです、その金をどうされた、子方にばらまいた、子方はその金をどうしたか、その金はメンバーにばらまいた、こういうことで、署長なりあるいは副署長なり、そういう人たちが心証を得られるものであるならば、文書上の挙証ができなくてもこれは経費として認める、法律的根拠は租税実体主義である、こういうふうにする。  それからいま只松君のおっしゃった坊主と石屋だけれども、もらったほうの坊さんがその金で境内の維持をはかったとか、あるいは本堂の修理をしたとかいうような、支出がまたそのお寺を経営するのに必要な面に支出されておれば、これはこれで認めていくというふうに、やはりその伝統、風習それから実態、こういうものをにらみ合わせて、必ずしも文書によって挙証ができないからといってこれを否認するというような法律万能主義でいっては、これは商売が成り立たぬ、国民経済が成り立たぬ。だから、そういう問題について今後何らかの適切なる措置を通達によって試みる、こういうことをひとつ御考慮願えませんか。いかがでございますか。
  49. 泉美之松

    泉政府委員 現在の通達におきましても、先ほど私申し上げましたように、何も一律に相手方がわからぬからすぐ否認してしまえというようなことは言っておらないのであります。その調査の過程におきまして、いろいろの事情から、確かに相手方にリベートとして支出されたということの心証を得れば否認しなくていい。ただそれが、先ほど申し上げましたように、確かにある人の所得になっておると疑われるにもかかわらず、それを相手方がどうしても言えないという場合に、それではあなたに課税せざるを得ないですよ、けっこうです、というようなことでいま運用いたしておるような次第でございます。しかし、確かに実質的に支出されておるにもかかわらず、経費として認容しないで否認するということについては、いろいろ問題もございます。したがいまして、こういったことはなかなか一律にまいりかねますけれども、その具体的な事情に応じたような措置を今後ともとっていくように処理いたしたいと存じます。
  50. 只松祐治

    只松委員 いま春日委員がおっしゃったとおり、こういう石屋の一、二例を話しましたけれども、こういう形を全国的にずっと進められてまいりますと、中小企業者はたいへんな目にあいつつあるのですよ。もう時間がなくなりましたから、私はこの問題はこれで終わりますけれども、ぜひひとつ、春日委員の意向もあわせて検討していただきたい、こういうふうに思います。  それから、時間がなくなりましたので具体的に結論だけ求めますが、この交際費は、一方、そうやって中小零細企業は非常なきびしい取り締まりを受け、大企業はほとんど調べられておらない、こういうことでございます。  そこで、交際費の規定を明確にしたらいいだろう。その一つは、これは他の委員も前から言っておることでございますが、領収証は公給のものに限る、それから一回における限度額を常識的な範囲内にとどめる、それから、そういうことを含んでの交際費の抽象的な概念規定ではなくて、私は規定があるのかどうか知りませんけれども、なければそういうものを設ける。ほかのものについては非常にきびしい通達があるようでございますが、交際費のほうは非常にルーズである。したがって、内規みたいな規定を設ける。それから、これは私は大臣がおいでになったら大臣に聞こうかと思っておったのですけれども、最低額を四百万円から三百万円に下げる、あるいは千分の二・五を二に引き下げるとか、もう少し——本年一歩前進はしておるわけでございますけれども、この交際費、特にさっき言っておりました公共企業体の交際費公益事業体の交際費、純民間交際費、こういうものの抜本的検討を一度おやりになったらどうかと思うのですね。確かに、皆さん方にとっては、そういういわば皆さん方が甘い態度をとっておるようなところでは皆さんに対する圧力が強いから、変えるのはなかなか容易じゃないと思いますけれども、しかし私は、日本税制の民主化のためにいろいろありますけれども交際費のあり方、それからさらに一歩進んで、日本社会全体の腐敗、堕落とかいうものをなくしていくという面から、これは非常に大きなウエートを持っておると思う。したがって、単に税制上という面からだけではなくて、そういう面の行政を担当しておる皆さん方としてこういうことをお考えになったらどうですか。そういう意思があるかどうか。
  51. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回の改正案で、交際費につきましても皆さま方の御批判で一歩前進したわけでございます。また二年間の制限がついているわけでございます。したがいまして、この二年間でこの前進しました交際費の規定がどういうふうに運営されるか、十分私ともも研究し——私はこれによって税金を上げるのが目的じゃなくて、交際費を減らすのが目的だろうと思います。そんなような関係を二年のうちに十分検討してまいりたい。さらにまた、おっしゃる点は、交際費の中身を十分調べていくというお話でございます。こんなような点につきましても、でき得る限り客観的に明白なものについては考えてみたいというふうに思っております。  しかし、いろいろな意味におきまして研究問題ではございますが、この支出金一人当たりというのは、どうも、これからの研究問題にいたしましても、税務上のモラルと申しますか、非常な手数がかかり、さらにまた常に疑心暗鬼でものを見るというようなこと、これはまたほかに脱税というような問題がたくさんあるときに、そればかりに力を入れるような税制も問題でございます。そのあたり、どういうふうにいたしましたらいいか、これから二年間、十分状況を見ながら研究してみたい、かように思います。
  52. 只松祐治

    只松委員 いろいろありますけれども、これは税源として取りやすいという面からも出てきている。私は取りやすい問題だと思うのですよ。だから、ひとつ、フランクにぼくは検討していただきたい。  それから、今度は、小さい租税特別措置としまして、これもきのう総理大臣に対する質問で各委員から出されましたけれども、心身障害者に対する段階別の控除というものをもう一歩突き進んでお考えになる、これは事務当局として意思があるかどうか。ほんとうは例を並べて、大いに意思がある、こういうことを言っていただきたいわけですけれども、時間がありませんから意向だけ聞いておきます。
  53. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回、障害者控除あるいは寡婦控除につきましては、私ども税額控除から所得控除に一歩前進さしたつもりでございます。その中で、障害者の中でも重度障害等につきましては、七万円という金額でなくて、もう少しメリットを与えたらどうかという考え方、これは十分納得できるわけでございますが、昨日もお話がありました技術的な難点、これをどういうふうに克服したらいいか。現在でも、簡単に税務署が重症の程度を判断することができませんので、障害の程度は身体障害者手帳だけでやっておりますが、それを一歩越えまして重症の者をどういうふうに判断するか、これらについてはひとつ今後検討してみたい、こういうように思っております。  なお、障害者控除、寡婦控除全般につきまして七万円というのでは、重度、軽度の問題を離れましても、支払い能力のしんしゃくの程度といたしましてはどうもまだ足りないのではないかというお話ももう一つございます。ことに寡婦の問題につきましては、過去の経緯から見ていろいろな問題がございますので、これらをあわせまして、来年度の税制改正問題にあたりましては、こういった追加的な人的控除について、課税最低限との一般的な人的な関係でどう考えるか、これはひとつ深い研究をしてみたい、そのように思っております。
  54. 只松祐治

    只松委員 特に心身重症者のおかあさん方というのは、一日つきっきりで外にも出られない、何もできない状態ですね。もしなんでしたら、どこかの署長さんでも、明日かと思いますが、浦和で埼玉の心身重症者の会がありますから見に行ってください。ほんとうに悲惨というか何というか、おかあさん方が子供につきまとってしている姿は哀れなくらいですね。こういう人にはやはり特別の控除というものは当然に考えるべきだとぼくは思うのです。そういうことも含んでひとつお考えいただきたい。  最後に、近ごろは粉飾決算が、過大粉飾ではなくて過小粉飾がいろいろ問題になってきております。大蔵省も逆粉飾についていろいろ調査するというようなことを発表しておられるようでございます。あるいは長者番付の上原さん等を見ましても、もう来年からは一番からおりる、こういうことを言っておる。これはなぜかというと、配当をしない。上原さんは自分で資本家であり経営者でありますけれども、そういう面だけではなくて、一般にこの資本主義社会——これはわれわれは否認している社会ですが、残念ながらいま資本主義社会です。その中において経営者がいろいろな会社を操作するために、あるいは株価を操作するために、粉飾というものを過小に、過大にやっておりますね。私はこれは資本に対する経営権の一つの行き過ぎだと思う。こういうこともほんとうは時間があれば論議したい。いずれ別な機会に、証券法の改正なんかありますから、そのとき論議いたしますが、私は税法上から見ても、公然と、来年度はこれを逆粉飾で小さくする、こういうことをやって株価ががたりと落ちるということがあっては、あまりにも会社を恣意的に扱い過ぎると思う。これに対するお考えだけをきょうは聞いておきたい。
  55. 塩崎潤

    塩崎政府委員 昨日でございましたか、証券局長の写真と一緒に逆粉飾の事例が出ておりまして、大蔵省も力を入れておりますが、そのときに税法上の基準が問題になっております。私は、根本的には、税法が粉飾決算の原因になっておるというふうには考えてないわけでございます。根本はモラルの問題であり、もう一つは、企業利益の計算と申しますか、客観的な計算方法がまだ確立されてない。したがいまして、そこに税法上の制度を利用視するきらいがある。私は、課税所得の計算原理が企業利益の唯一の基準とも思いません。しかし、まだ残念ながら連結貸借対照表が出るようなわが国でございます。企業利益の客観的な計算方法が不十分なときでございます。そこでまた粉飾決算が発生する。税法があまりにも引っぱり過ぎている面もございまして、これは私どもも反省しなければならぬと思います。  そういった意味で去年は、粉飾決算の還付につきましては、簡単に還付するものではないという意味で、粉飾決算につきましては、もう今後じゃないとだめだというふうに改正を加えて、御賛同を得たわけでございます。ことしの改正も、税法上の損金経理という調整を粉飾に使うというようなことも問題でございます。それがまた逆粉飾になるような傾向もございますので、これは、表示方法は税法では縛れない、租税特別措置的なものは、企業が利益を表示する場合には、税法上から表示を強制しない、そして株主に適正なる利益を表示さす、こんなふうな改正を加えまして一歩進めたつもりでございます。  私は、根本はモラルと、まだまだ会計方法が確立されてない、税法に寄りかかり過ぎておる、その欠陥だと思っております。
  56. 内田常雄

    内田委員長 次は、平林剛君。
  57. 平林剛

    平林委員 それでは、きょうは簡単な問題からお尋ねをしていきたいと思います。調子が出てきたらまたお尋ねをしていきたいと思います。  いま交際費が問題になっておりますけれども、結局、交際費というのは税法上からいうと、税金をかけられない損金の一つというような見方、あるいは同時に、それぞれの企業にとっては必要な経費と本来みなされておるのですけれども、実際上こうして国会で問題になるというのは、その額が非常に多くなってきておるということ、その額がむしろ各企業にとって配当に匹敵するくらい——最近は配当と交際費との開きがやや出てきたようですけれども、一時は配当金と交際費に支払われる額とがほぼ同じだということから、一般社会の批判をわかしてきておると私どもは認識をしておるわけであります。  それから、いま議論になりましたように、同じ交際費の認否にあたりましても、それぞれ、ほんとうに必要なところと、そうでないところと、いういろいろな中身の問題についてやはり議論が存するところだと私は思うのであります。しかし、先ほどお話がありましたように、そうした面について今後二カ年の間に実際上の問題をひとつ検討し、妥当な結論を出すようにお互いに努力をするという方向が見出されておりますから、私はこの問題についてはあまり触れません。  ただ、私がきょう簡単な問題として取り上げたいのは、租税特別措置の減収額という資料をときどき政府からいただきますし、政府のほうもこの「租税特別措置の減収額調」という書類を発表するときに、必ずこの交際費が三角のしるしをつけて登場してくるわけですね。私はこれは間違いじゃないか。いや、間違いとまでいかないけれども税法上の取り扱いから見ると、ここに書かれるのはどうかなということをいつも疑問を出しておるわけであります。私がこの疑問を出すと、一年間くらいは減収額一覧表から消して、備考のところに、ほかに交際費について大体何百億円くらいの増収があるというような付帯書きで書かれるのですけれども、しばらくこの議論をしないとまた減収額の一覧表の中に加えるわけです。これは一体どういうわけでこういう租税特別措置の減収額一覧表の中に交際費を入れているのか、私はわからないのですが、これはどういうお考えなんですか。私がこれを注意すると、それははずして備考のところに入れる年もあるのですよ。
  58. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の多年の経験では備考に入れた記憶がございませんが、何年かございましたでしょうか。ないつもりでございますが……。
  59. 平林剛

    平林委員 ちょっと聞きますが、租税特別措置を一口に表現すると、どういうことになりますか。
  60. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私はかように思っております。  負担の公平というのが租税の生命でございます  が、同一経済状態には同一負担、これに対する例外が私は租税特別措置であろうという定義一つできる。もう一つは、所得あるところに支払い能力ありということがございますが、所得があっても非課税ということも租税特別措置だと思いますが、大ざっぱに言えば、前者の概念のほうが強いと思います。
  61. 平林剛

    平林委員 あなたは専門家だから理屈が多くて長くなるのだけれども、私に言わせると、本来税金を取るべきだが、おまけしてやるのが特別措置。このほうが世間相場は通りやすいのではないですか。私はそういうたてまえからいくと、この「租税特別措置の減収額調」ということで毎年出されるものは、本来取るべきだがおまけしてやるというほうの税額の総額を提出するほうがわかりやすいと思うのです。いかがでしょうか。
  62. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもはさように考えておりません。やはり本来の税法の例外、税法で本来あるべきものに対して、何らかの政策的要請の加わったもの、つまりそれは私は負担の公平の原則の例外だと思いますが、これを全部租税特別措置考え、したがいまして、交際費も当然その中に入れるべきである。交際費は本来、もちろん巨大な金額という意味におきまして問題もございますけれども、本来は費用であるべきだ、法人税法費用に対して課税すべきでないという意味から見ますと、例外でございますので、やはり租税特別措置だ、かように思います。
  63. 平林剛

    平林委員 例外ということになればそうだが、この交際費と同じようなやつはほかにないですね。
  64. 塩崎潤

    塩崎政府委員 考え方によりますれば、これはいま租税特別措置に入れておりませんが、寄付金の制限、昔は寄付金というものは、法人の社外流出は全部費用という考え方がございました。現在は、御案内のように基準がありまして、基準内なら損金であるけれども基準を越しますと益金に算入することになっておりますが、これも、考え方によれば、私は租税特別措置だと思うのでございますが、現在のところは、多年の慣行から見まして、これは入れておりません。
  65. 平林剛

    平林委員 ほかのやつは入れてないけれども、結局、特に税金をまけてやるやつがほとんどあなたのほうの減収額一覧に出てきて、特別なやつが交際費課税なんです。あなたは専門家だから、理屈が多いものだから、その交際費もこの中に入れているのだけれども、法律上からいくと、確かに交際費はある一定の額を見て損金に算入をしない、こういうことだから増収という形で出てくるわけです。これを、ある一定のものは損金に算入するという表現になれば、また別な形になってくるわけです。私は法律のうたい方にもよると思うのだけれども一般国民の概念からいくと、政府がこの減収額一覧の中に交際費課税の特例を入れるというのは、なるべく租税特別措置で減収になっているのが少のうございますよというカムフラージュをするような形で私は受け取るわけなんですよ。そういうふうな受け取り方をされるわけです。  そこで、私はいつも前から注文していたのですよ。たとえば三十年度以降租税特別措置の減収累計額、これは一兆六千三十三億円、こうなっているのだ、膨大なものだ、こういうのだけれども、しかしその中に、交際費課税の特例で千四百五十六億円増収になっていますという書き方をするものですから、ほんとうは一兆七千四百八十九億円あるのだけれども、ちょっと少な目に書かれているようになるわけです。これは私は、やはり少し特別扱いをして注書きにするような発表のしかたをするほうが、国民の批判を受ける度合いがそれだけ多くなるのじゃないかという感じがいつもしておるわけであります。そうすると、租税特別措置、こんなに多いかい、少し整理をしなければいかぬという国民世論もまた一段と高まるという意味で、私はいいのだと思うのですけれども取り扱い上全然疑問ないですか。
  66. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、お考え方によりましては、寄付金控除のような考え方もできないこともない、私も、ずいぶん交際費課税について、皆さん方の声がやかましい理由をいろいろ考えてみるわけでございます。  一つは、私ども費用費用と言っておりますが、この費用の出し方も、相当自分の任意と申しますか、自分の判断で、どの程度出せるかきめる、そういった要素もある、やはり寄付金と同様に、そこには利益の処分的な要素もまじる面もありはしないか、こんなことを考え、そういったことが背景にあるから交際費についての批判が多い。そうなりますと、単に税法で否認したから益金になるのじゃなくて、中には、なかなか顕微鏡をもっても分析はできませんけれども支出した金額の中に、益金的な、利益処分的なものもあるという考え方もありはしないか、そうなりますと、基本税法において、寄付金と同様に将来何か考えてもいいというふうなことも言えるかとも思ったりすることがあるのでございます。そういたしますと、お話のように、何も租税特別措置的なものではない、むしろ基本的なものだからということも言えようかと思うのでございます。しかし、会計学者は、現在のところ、寄付金も損金ではないとか、あるいは、交際費でも損金だし、罰金でも損金である、こういうことを言っております。これはまだまだ、先ほど申し上げましたように、会計理論といったところの分析が精緻にいっていない、このあたりは、もう少し費用理論として研究するならば、単純に費用という面だとも言い切れない面もある。そうなりますと、税法が単純に租税特別措置だけで制限しておること自体が、政策的なものだけとも言い切れない面も出てくるという意味では、先生のおっしゃいました点も、私はうなずける点でございます。しかしながら、まだまだ、二十九年から始まった制度でございますし、基本的な税法の中にとけ込んでない制度でございます。そういった意味では、私は租税特別措置の中に入れたらいいと思います。  一方、それでは減収額になっているものの中で、これがはたして全部租税特別措置考えられていいかどうかといえば、たとえば少額貯蓄の問題、さらにまた、生命保険料控除の問題、古くからある問題でございます。この問題につきましては、かねてから租税特別措置の中身をもう少し検討してみたらどうか、非常に誤解を招くようなそしりがあるではないかという御批判も私はずいぶん聞いておるわけであります。過去には貸し倒れ引き当て金まで租税特別措置に入れてありましたが、現在は基本法の中に入れておる。これは時代時代の流れ、皆さん方の御批判、国民の世論、納税者の気持ち、会計理論、これらを考えまして、お話もございますので、今後租税特別措置の表示のしかた、これは非常に影響が多いものでございますから、研究しなければならぬ、かように考えております。
  67. 平林剛

    平林委員 だから私言ったのですよ。交際費というのは、本来は税法上は損金算入のものであるが、額が多いので批判が出てきておる。企業の必要経費と見られるものであるけれども、やはり制限をするという国民の世論ということからあらわれてきておるのだ。今度は、一面、租税特別措置というのは、簡単に言えば、普通は取るべきだが取らないでいる、おまけしてやるということで、世間の批判が、中身はいろいろありますけれども、出てきておるという総括的なことを考えますと、何か区分をする必要があるのじゃないかという感じを持っておるわけです。長い時間をかけて議論するほどの重大な問題ではないのです。重大な問題ではないけれども、何か簡単にこれを出されておるが、受け取り方はいろいろありますから、そういう点では少し検討する必要があるのじゃないか。たとえば、バナナの関税だってそうなんだな。関税特別措置による減収額一覧を出させると、バナナなんかというのは、交際費と同じようによけい取っているのだから、増収というふうに入れるわけだよ。ところが、必ずしもそういう取り扱いをしないとか、そういう点、私は研究してもらいたいということで議論をふっかけてみたわけでございまして、一時、私この問題を取り上げたときは、備考でそういうことを書いたことを私は記憶しておる。ひとつ研究してもらいたいということを言っておきます。  その次に申し上げたいことは、今回の租税特別措置法によりまして、税制上の景気調整機能の強化をはかるという改正が含まれております。つまり、これによりますと、景気過熱の期間、一定の範囲内で法人税の延納利子税率を引き上げ、また、過剰投資による景気過熱の期間、合理化機械等の特別償却制度の適用を停止して繰り越すことができることとしておることは、御承知のとおりでございます。  そこで、この問題についてちょっとお尋ねをしておきたいのですけれども、この景気過熱の期間という、その景気過熱というのは、一体どういう条件のときに景気過熱というのか、景気過熱の期間というのは、一体どういう期間を景気過熱の期間というのか、これをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  68. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず延納制度は六十六条の五に書いてございますが、日本銀行の公定歩合が引き上げられたとき、これをまず私どもは客観的な景気過熱のはしりと考えております。その中で、それだけではいつから始まったか納税者はなかなか明確ではございませんので、それを基礎といたしまして、その範囲内で、公定歩合が引き上げられた期間、そしてまた、それが終わる期間内におきまして、閣議におきまして政令できめていただく期間を私どもは景気過熱期間と考えております。
  69. 平林剛

    平林委員 最近は財政の面で景気の問題がおもに議論されておりますけれども、金融の措置で、いまお話のように、日銀の公定歩合というお話がございましたけれども、めどとしてですね。たとえば、従来は準備預金制度の問題についてつけ加えられたり、輸入担保率の問題が議論になったりしておりますが、こういうのは一体どうなんですか。私言うのは、これを発動する期間というものを相当やっておかないと、非常に恣意になるし、政治的になりはせぬかということを心配しているから、ここではっきりさしておきたいと思います。
  70. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるとおりでございます。私どもは、こういった制度、非常に大事でございますが、これがあまりに恣意に流れてはいけない、こういうつもりでございまして、そういった意味で公定歩合だけをとったつもりでございます。もちろん、輸入担保率あるいは預金準備率の引き上げ、これも一つのはしり、徴候でございますけれども、少し早目のような場合が預金の準備率の場合にはあるようでございます。その点、いろいろな政策も入るおそれもあろうかと思いますので、私ども、最も客観的と考えられますところの公定歩合を基準といたそうとする次第でございます。
  71. 平林剛

    平林委員 公定歩合がたとえ一厘でも上がったら、すぐ直ちにそれをやるのですか。
  72. 塩崎潤

    塩崎政府委員 そのあたりは、私ども日本銀行と打ち合わせていきたいと思っておりますが、政令で定める期間はもう少しゆとりを持った期間と考えていきたい、かように考えております。
  73. 平林剛

    平林委員 そうすると、すぐにやるのでなく、ゆとりを持ってやる。そして引き上げられたらずっとやっておって、一厘引き上げになってまたもとへ戻すまではそのままである、こういうことなんでしょうか。
  74. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、一厘引き上げられたら二厘引き上げるという考え方を御提案申し上げております。したがいまして、また一厘下がりますと二厘下げる。基準を一銭五厘に置くか一銭六厘に置くか——現在一銭五厘にとまっておりますが、一銭五厘というのはきわめて低目で、過去にも事例の少ないような率でございます。そこで一銭五厘が六厘に上がったときぐらいはどうか、このあたりは、日本銀行がどういうふうに考えてこの公定歩合を上げたかという点等をひとつ確かめながら、無理のない範囲と期間を定めたい、こういう趣旨でございます。  したがいまして、先生の御疑問の、上げたら上げたきりか、下がったら下がらぬではないかという御心配がないように、自動的に、公定歩合一厘引き上げたら二厘上げ、一厘下げたら二厘引き下げという形で、主観的な、恣意の入らないような方途を講じております。
  75. 平林剛

    平林委員 こういう、いつ発動するか、その期間はどうかというようなこと、あるいは延滞の税に対する利子を、現行普通二銭の場合を三銭五厘までの範囲内でやるというようなことをきめる場合には、日銀当局と相談をしてやるのですか。それとも、いまのお話だと、何か相談し、調整し、連絡し、ゆとりを持ってやるというように聞きますけれども、そういうような仕組みなんですか。
  76. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もちろん、こういった政令を発動することは非常に大事なことでございますので、その前に各方面の意見を聞くことはもちろんでございますが、閣議におきまして、それはひとつ客観的な期間といたしまして政令を公布する予定でございます。
  77. 平林剛

    平林委員 私は、こういう法律の中にこれらの措置を入れるということは、昨年あたりから税制の景気調整の役割りが重視をされたということで入ったように思うのですけれども、過去におきまして幾度か景気の変動はございましたが、従来もこれがあったとすれば、昭和何年ぐらいの時期、大体どのくらいの時期がこれに該当する、こういうお考えなんでしょうか。
  78. 塩崎潤

    塩崎政府委員 何回か、御案内のように公定歩合の引き上げが行なわれて、景気過熱の期間を通過してきたわけでございます。  最近は、三十九年の三月から公定歩合が引き上げられまして、当時一銭六厘がベースでございましたが、三十九年三月十八日一銭八厘になりまして、四十年の一月九日に一銭七厘に下がるまで景気過熱が心配されたわけであります。それから四十年四月三日に一銭六厘、四十年六月一銭五厘になった。このあたり、一銭六厘に引き上げられたり、一銭七厘くらい——あるいはもうちょっととどめるべきであったというふうに、あのときの引き締め政策が少し行き過ぎておった、あんな不況におちいったのは引き締めが少し長引いたせいだといわれておりますが、このあたりを基準として考えるべきではないか、かように思っております。  そのときの延納の状況を見ますと、延納が非常にふえてまいりました。現在四十一年の延納の率は九・九%でございますが、いま申しました三十八年から三十九年にかけますと、大法人の延納率は、三六、三八、それが四十年には利子が下がりましたので、二五・五になり、現在は九・九、ほとんど延納がないような状態であります。したがいまして、過熱期間はうんと法人に金を貸したことになります。
  79. 平林剛

    平林委員 まだ、将来どういうときに発動するかということで、私はこまかい議論をしておく必要を実は痛感しておるわけです。  いまのお話ですと、三十九年、四十年それぞれ——繰り返しませんけれども、その時期であって、ほかの時期はございませんか、ここ十年間くらいで。こういうのがあったとすれば発動したと思われる時期です。
  80. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう一回は三十六年七月から、金融引き締めと申しますか、公定歩合が上がっております。三十六年一月は一銭八厘でございます。それから三十六年七月に一厘上がりまして一銭九厘、三十六年九月に二銭、それからだんだん低下いたしまして、三十七年十月には一銭九厘、十一月には一銭八厘、こういうようになっております。第二の、例の三十六年高度成長期の最も成長率の高かった時代の引き締めでございます。そのほかには、まだまだございますが、三十年八月に二銭に上げまして、三十二年三月には二銭一厘、三十二年五月には二銭三厘、そして三十三年六月から不況に入りかけたのでございますが、二銭一厘に下げ、結局三十四年二月に一銭九厘まで下がった、こんなような三回ばかりの引き締めが行なわれたと私は記憶しております。
  81. 平林剛

    平林委員 さきに御説明になった昭和三十九年のときは、確かに大法人の月別延納税額を見てみますと、がたんと下がっておるから、この問題についてこんなときに利用するのかなという理解はできるのですけれども、二度目にお尋ねをいたしました三十年あるいは三十二年当時ですと、別にそうした変動がないわけですね。私のいただいておる資料の中ではそういう傾向は見られておらないと思うのです。特段に今回これを取り上げたという理由が薄弱のように私は思うのですけれども、いかがでしょう。
  82. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おそらく平林先生どものつくりました資料をごらんになっておるようでございますので申し上げますが、そういった傾向は確かに過去には三十八年、三十九年の引き締めのときほど顕著ではないことは事実でございます。しかしながら、ゆるやかに見ますと、三十二年は四〇・八%であった延納率が三十三年は三七に落ち、三十四年には三二・八に下がっております。このことはゆるやかに延納の利用状況が減ってきた。ところが、だんだん引き締めをやって高度成長に入りました三十五年になりますと三八・一、もっと商いときの三十六年は四一・二というふうに上がっていることを見ますと、三十八年、三十九年ほど顕著ではないのですが、延納率がこういうふうに変わってきている。これはおそらく今回の市中の利子率の低下が非常に激しかった。御案内のように、いまの大法人ならば、何も二銭の法人税の延納利子を利用しなくても、日銀を通ずれば一銭五厘で借りられる、それならば延納なんというばかげたことをやらないだろう、ところが、一たん引き締まりましてコールが三銭五厘になると、大蔵省から金を借りてやろうというふうに市中で言われておりますが、これではどうも景気調整というよりは、現在の制度が景気過熱に対して刺激を与える。私どもむしろ景気調整に逆行する要因を除こうということで、これはそんなに激しい、アメリカのような景気調整措置ではないと思っております。
  83. 平林剛

    平林委員 私はこの制度で一番心配なのは、政治的な考慮が働き過ぎて、発動の時期あるいはこれをなくす時期などについて政治的な判断が強くなっていくのではないか、そういう心配をしておるのですけれども、そういうことはどうやって保証してくれますか。
  84. 塩崎潤

    塩崎政府委員 政治的といいますか、私どもは法律でも明確に規定しておりますように、日本銀行の基準割引公定歩合が引き上げられた場合には当然これを発動するかどうかを考えざるを得ないような規定のしかたでございます。そこで、私は政治的にとおっしゃる意味が解せないので理解が不十分かと思いますが、やめておけといわれることを心配されるのかもしれませんけれども、私はそういったことはないと考えております。
  85. 平林剛

    平林委員 それじゃ、こういうような権能、つまり一定の判断を政府——政令ですから、政府に与えるということと租税法定主義という問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  86. 塩崎潤

    塩崎政府委員 できる限り政府の裁量が少いほうがいいことは当然だと思うわけでございます。租税法律主義は何かという問題でございますが、基本的には納税者、課税標準、税率、納期、これが法律できめられるのが租税法律主義の大きなねらいだと思います。しかしながら、近代国家ではもう少し進みまして、安心させる意味におきまして、延納にいたしましても特別償却にいたしましても、租税法律主義ということの適用を受けさしたほうがいいということでだんだん進んできたように思います。そういった意味で、当初の意味の租税法律主義よりもう少し租税法律主義というものが広がり、イギリスの租税法律主義以上に私ども日本では租税法律主義が徹底しておると思うわけでございます。  そこで、景気調整措置を講ずる場合に、はたしてこの租税法律主義がどうなるか。租税法律主義を厳密に適用いたしますれば景気調整措置はできない——全く突発的に起こるようなことでございますので、できないわけでございますが、しかし、そうかといいまして、税率とか課税標準とかあるいは納期というものを変えますと、租税法律主義の基本に関する問題だと思います。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 今回お願いいたしておりますのは、一定の日本銀行の公定歩合の引き上げという客観的な範囲内におけるという期間内に限定をいたしまして、それが終われば自動的に終わるという措置でございます。これが第一の理由でございます。第二の理由といたしましては、いま申しますように、延納というようなこと、あるいは特別償却というようなことは、基本的なことよりか、むしろ税法が与えた納税者に対する特典だと思うのでございます。本来納期どおりに納めてもらうべきであり、特別償却は、先生たちが攻撃されておりますように、普通償却を越える一つのおまけでございます。こういった一種の特典あるいはおまけといったものは景気過熱期間中はひとつ遠慮していただくというようなことを講ずること、これは私は租税法律主義に違反するものではない、こういう気がいたすわけでございます。  いろいろな理由がございましょうが、そういった意味におきまして、私どもの景気調整措置はほんとうの意味の景気調整措置、アメリカのように定率法の償却を制限したり、そういった基本的なものに触れるものではないのでございますから、そういった意味では租税法律主義に矛盾するとは考えておりません。
  87. 平林剛

    平林委員 いずれにしても大法人——これは特に大法人に限らず、税金延納というのは中小法人にもあると思いますけれども、この納めるべき税金をある時期によっては延納してみて経理内容をよくするとかいう考え方自体があまり正しいものではない。そういう意味ではこうした景気調整機能ということでこれをチェックしていくという考え方は、私は悪いことではないと思いますが、一面、やり方によっては、私の言う非常に政治的な配慮というものが加わってくるおそれがあると思うのでございまして、むしろ経済政策としてそのつど行なうべきではないのかなという感じが実はしておるわけでございます。これはいつこんなことになるか、われわれとしてはそういうことを好むものではございませんけれども、実際上の運用を見て、またこれは議論をしなければならない時期がくるかもしれません。  いずれにしても、きょうは将来に備えて少しばかり質疑応答をしておく必要を感じましたので政府の考えをお尋ねしたわけでございます。  次に、私どもが今回租税特別措置法改正の中でも特に重視しておりますのは、利子所得及び配当所得に対する課税の特例の問題でございますが、今回の法律改正によると、これは三年になっておるわけですね。若干国民の批判にこたえて、また私どもの追及をあらかじめ予期いたしまして少しばかり進歩のあとは見られますけれども、これが三年になっておる。たしか、税制調査会は二年になっておったように思いますが、これを三年にした理由は何ですか。
  88. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この利子及び配当所得の特例は、租税特別措置中の一番むずかしい部面でございます。  これも先日申し上げましたけれども税制調査会の答申は二年でございましたが、改正案では三年を御提案申し上げておるわけでございます。  三年といたしました理由は、第一には、ことに利子所得が中心でございますが、一五%という税率は昭和二十八年以来初めての税率でございます。昭和二十八年に源泉分離一〇%が行なわれまして以来、ゼロになり、あるいは一〇になり、あるいはまた五になり、種々の曲折を経てきておりますけれども、一〇%を上回った時期はございません。それだけにこの五%の引き上げの影響は大きいと見ざるを得ない。税制調査会の答申では、やはり租税の立場を重視し、さらに他の特別措置とのバランスを考えて二年間ということにいたしておりますが、やはり経済全般の角度を考えますと、このような大きな引き上げのときでございますので三年程度、そして様子を見ようというのが第一の理由でございます。  第二の理由といたしまして、源泉分離の制度というものは、納税者が非常に税引き利回りがわかりやすいわけでございます。今度一五%という率でその税引き利回りが新しくできるわけでございますが、この税引き利回りの率は少し納税者にも習熟してもらう、そして種々の答申に対する判断をしていただく、そういう意味で三年程度の期間をお願いしておる次第でございます。
  89. 平林剛

    平林委員 よく芸能人に腹話術というやつがありまして、もし塩崎さんがこっちに腹話術の人形を持っていたら、それとは別の答えが出てくるんじゃないですか。あなたはいまそう言っておるけれども、こっちの腹話術の人形さんのほうからは、いや二年を三年にしたのはそれとは違いますよという声が出やしませんか。  そこで私は少しお尋ねしておきますが、この前この大蔵委員会に税制調査会を代表いたしまして責任者の方、松隈さんがお見えになっておりまして、いよいよこれから本格的に法人税の将来のあり方について取り組みたい、その結論はなるべく来年の八月までにはつけたいという意思表示をなさったわけでございます。そうなりますと、私は、これを二年から三年に延ばしてしまったということが、そうした新しい法人税のあり方に移行する場合の支障になりはせぬか、あるいはまた、非常に長い期間置いておくものですから、非常にそれが長い間の習慣としてなじんでしまうというようなことになりはせぬか。税制調査会は過去何回も答申を出しておりますが、いずれも利子、配当についてはやめろと言っておるのですが、どういう風の吹き回しか、昨年あたりからちょっとゆるんだようなかっこうになっておるわけでございまして、私は批判を持っておるわけでございます。それを、政府のほうがさらに二年から三年に延ばすということになりますと、国民は、それに対する批判というものから、それだけやはり政府に一つの不信感を抱いてくるというようなことに相なろうかと思います。新しい法人税のあり方が、少なくともせっかく努力をして来年の八月に出るときに、このほうは三年も置いてあるということになりますと、新しい法人税の移行というものが、法人擬制説から実在説に移るという方向が示唆されているだけに、その移り方のテンポがおそくなるのではないかということを私は心配するのです。こういうことについて、私はもう少し税務当局のほうは抵抗を示すべきであったと思うのですけれども塩崎さんの御所見を承りたい。
  90. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も利子、配当の課税方式がもう法人税の性格とも基本的に結びついていることは否定できないと思いますし、そういった意味で、根本的に解決していただくことは非常にけっこうなことだと思います。松隈会長代理がどういうふうな趣旨で言われたか私も存じませんが、来年の八月——それはおそらく利子、配当の期限が切れる前の年であろうかと思いますが、そういった意味では——八月であるかどうかは存じませんが、前の年であることは事実でございます。そういった意味では、やはり法人税の性格とあわせて検討するには適当な時期ではないかという気がいたすのでございます。  しかし、いずれにいたしましても、法人税の性格の問題は非常に根深い問題でございますので、これから徐々にPRしながら、私がいつも申し上げております企業、それから企業経営者、投資家、これらに十分理解できるようなことをいまからやっていって、そして何年かゆとりを置いて、もうこういうものだという認識を持って施行するということでないと、またシャウプ勧告のような失敗をおかすと思います。そういう意味で、もう少し時間をかけて利子、配当を研究することも私は十分考えられることだと思うのでございます。
  91. 平林剛

    平林委員 この国会で、予算委員会におきましてわが党の横路委員が総理並びに大蔵大臣質問をしたとき、総理並びに大蔵大臣は、いろいろ議論はあるけれども法人税の方向税制調査会において検討中であるから、これとあわせて、その結論をまって新しい方向考えたい、こういうことを述べておるわけです。税制調査会がもしかりに来年八月、一つ方向を打ち出したとすると、今回二年を三年に延ばしたということは、新しい方向に移るにいたしましても、私は少し時間を置き過ぎるのではないだろうか、そういうことを考えますと、かりにその期間内でありましても、税制調査会の答申が出れば、そこで改正をしていくというような心がまえを持っておかなければならぬじゃないかという感じがするのです。  そこで、これは大蔵大臣にも少し言っておかなければならぬ点だと思いますけれども、あなた方にもやはりそうしたことに支障のないような、国民の期待にこたえる新しい方向を打ち出してもらいたいということを注文しておきたいのです。  そこで、その法人の新しい利潤税という方向が打ち出されたときに、私たちかねがね、法人税にはある程度累進税率を導入したらいいじゃないかという考えを持っておったわけでございますが、利潤税というような考え方になったときに、税制調査会では、その累進税率は、現在の考え方からいくと、思想とか理論というのは見当たらないということで、否定的な考え方を示しておるのですね。しかし、あまり否定的でもないのですね。思想や理論は見当たらないようであると、こう書いてあるので、あとで見当たればその累進税率をある程度採用していく方向が打ち出されてくると思うのです。私は、法人実在説というようなことになってきて、少なくともその利潤というものを対象に考えると、当然ある程度累進税率は導入すべきだと思うのですけれども塩崎さん、いかがお考えですか。
  92. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点につきましては、これは何回も御答弁申し上げておるのでございますが、いろいろな考え方ができまして、平林先生のおっしゃいましたような考え方も可能でございます。過去には超過所得税ということで、法人税について法人実在説時代に累進税率をとっておった時代がございます。しかしながら、その結果を見、また諸外国の実例から見ましても、非常に弊害が多いということを気がつくわけでございます。  第一は、法人の超過累進税率をとるといたしますれば、何をもって基準とするか、その超過の程度でございます。個人の所得税の累進税率というのは、個人の背後にあります消費及び貯蓄、これが基準となるわけでございますが、法人にはもう貯蓄そのものでございましょうし、また所得の大きさは資本の大きさに比例いたしますから、必ずしも利益の絶対額が累進税率の基礎にならないと思うのでございます。そうなりますと、資本金基準——過去の超過所得税はそれでございましたが、資本金基準でやりますと、どうも結果として見ると、中小企業に対して税負担が高くなっておりまして、非常な問題だったわけです。御案内のように、中小企業利潤というものは資本だけではなくて、むしろ中小企業主の労働から生まれるような面が強いわけでございます。したがいまして資本収益率が高い、こんな面で、むしろ超過所得税は中小企業の負担になっておったというのが、私の過去の経験でございます。  第二は、これは御案内のように、企業利潤というのは、何べんも言っておりますが、好況、不況で非常に変動いたします。個人の所得と違いまして、安定したものではない。ことに欠損がときおり生じますが、そうなりますと、現在では繰り越し欠損という形で過去の税金を還付する、あるいは将来に繰り越す、こういうことになりますけれども、超過累進税率をとりますと、繰り越し欠損制度に制限を置く以上、税金が取り過ぎになります。私は企業の存続期間全部を通じて適当な負担となるべきだと思うのです。それがうまくいかない、これが第二の理由でございます。  それから第三の理由は、これは考え方でございますが、法人課税というのは、個人の所得課税と違いまして——これは主観的だ、おまえだけの考えだといえばそれっきりでございますけれども、諸外国の実例から見てもうなづけると思うのですが、そんなにむずかしい原理があるのではない。応能的な原理で、富や所得の分配の促進をねらった税金というよりも、むしろ利益のあるのは社会の恩恵あるいは社会費用をかけておるから利潤のうちから納めておきなさいというような一種の応益的な原理のほうが強いのではないかと思うのでございます。そうなりますと、累進税率は向かない、どこの国でも比例税率をとって、そうして個人に分配されたときに超過累進税率をとっておる、こういった実証的な事例から見ても、どうも超過累進税率あるいは累進税率は法人にはとれない。できるといたしますれば、大企業と中小企業との間の競争、社会におけるところの支払い能力、富の蓄積能力を勘案した、大法人とか大企業あるいは中小法人とか中小企業との間の支払い能力を勘案するような何らかの形の——私は現行の制度ぐらいがいいと思うのでございますが、そういった形の税率構造をとるほうがいいのではないか、こういう気がいたしておりますので、いつも同じ答弁で申しわけありませんが、法人税の税率論につきましてはこんな考え方を申し上げておるのでございます。
  93. 平林剛

    平林委員 きょう交際費の問題で議論をしたときも、同じ交際費がかかり過ぎるといっても、大企業と中小企業立場では、私ども考え方にも少し幅があることは事実です。同じように法人税といいましても、大きな企業と、それから何でも法人成りをした小さな事業体との間には、おのずからどういうのが応能原則に基づいて、どういう税率が妥当であるかということは、もう少し研究をしていかなければならぬということは事実だと私は思います。それから租税特別措置のようなものがありますから、実効税率の面において、大きな企業と中小企業に開きがあるということも厳然たる事実です。こうした複雑化した現在の税負担の現状が、国民全般に不公平感というものを与えているのでございまして、そういう意味では、単に法人税の中に累進税率を設けると簡単に言うことが両刃の剣のようになる場合があるわけでございますから、われわれもそんなに単純に、法人税の中に累進税率を導入せよと言っているのではないのです。  しかし、いまのように中身を検討してまいりまして、それぞれの税負担の現状から考えて、公平な課税という形をもって税制をつくっていくという場合には、さしあたり大きな企業に対しましては、私はその超過利潤に対してやはり累進税率をかけていくという考え方をとるべきだと思っておるわけでございます。同時に、一定期間の経過措置ももちろん必要でありますけれども、それを前提として法人税率に法人比例税とか超過利潤税というような思想を持ち込んでいくことが、今後のあり方としてどうしても必要だという感じを持っておるわけでございますから、これはきょうはあなたの考え方を少し聞いておいて、いずれこの次には陣容を立て直して、理論的にも現実的にもあなた方が、ああ、そのとおりだというようにさせていきたいと思っているわけであります。税制調査会では、現在そういう思想や理論が見当たらないようであると書いてあるけれども、そのうちに、やはり見当たったということにいたしまして、新しい法人税の方向の中についても税負担の公正が期せられるという時代をぜひつくっていきたいということをこの機会に申し上げておきまして、この辺で質問を終わることにいたします。
  94. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四分休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  95. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。永末英一君。
  96. 永末英一

    ○永末委員 租税特別措置法関係について質問申し上げます。  租税特別措置法ができましてからたくさんの租税特別措置がございますが、主税局長、その項目は何項目くらいあるのですか。
  97. 塩崎潤

    塩崎政府委員 分類のしかた、いろいろございますが、私どもが御提出申し上げております資料では三十九項目でございます。
  98. 永末英一

    ○永末委員 三十九といたしまして、その中で期限の定めのないもの、期限の定めのあるもの、分けてください。
  99. 塩崎潤

    塩崎政府委員 即座の計算で、間違っているかもしれませんが、十八が期限はございません。ただ、租税特別措置法は、全体といたしまして「当分の間」ということが一条にございますので、そういった意味の不確定的な期限はついてございます。
  100. 永末英一

    ○永末委員 当分の間というのは、二、三年も当分だし、十年も当分だし、あるいは二十年も当分だということになりますと、これは大問題でございますから伺っておるのでありまして、三十九項目のうち十八が期限のないものといたしますと、あと幾らですか、大体半々になりますか、二十一が延長したもの、延長を重ねてきたもの。その延長を重ねてきたもので、二年を限度とするものあるいは三年を限度とするもの、五年というようなものがあったと思いますが、一番延長を重ねたのは何ですか。
  101. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の見るところ、利子所得の分離課税の特例だと思います。
  102. 永末英一

    ○永末委員 この期限は何年としてつくられましたか。
  103. 塩崎潤

    塩崎政府委員 二年あるいは三年という、そのときによって違っておりますが、大体二年という期限が利子所得については多うございます。
  104. 永末英一

    ○永末委員 租税特別措置法第一条にはまさしく「当分の間」と書いてございますね。そこに「当分の間」と書いておいて、その中で期限を二年と切った、こういうことになりますと、この立法されるときには、当分というのはそんなに長くない、こういうわけで二年と区切った、こう普通のものなら解釈をいたしますが、あなたのほうでは、第一条に「当分の間」とあるが、二年ないしは三年、あるいは五年と区切る場合には、やはり当分というのは非常に短い期間だということを頭に置いてそういう法文をつくられたと思うのですが、どうですか。
  105. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もちろん当分ということばの意味するところでは長い期間ではございません。二年、三年という、あるいは五年という期間の意味でございますが、いろいろございます。この間に政策目的を達しようというものもございますれば、あるいは二年くらいの期限を腰だめでつけておいて、一応その効果を見てまたその判断をしよう、こんなような意味もあるかと思います。
  106. 永末英一

    ○永末委員 利子分離課税は七回だ、二年であっても十四年ということになりますね。あと回数をたくさん重ねたものを言ってください。
  107. 塩崎潤

    塩崎政府委員 毎年毎年やっておるものはございます。たとえば米穀所得課税の特例、これは単独立法でございますが、毎年毎年の特例であります。それから私の覚えておりますのは新築貸家住宅の割り増し償却、これも二十七、八年ごろできたと思いますが、いまだに期限の延長を重ねております。それからけさほど来御論議がありました交際費課税の特例も昭和二十九年以来二年間の期限をもって何回も延長になっております。
  108. 永末英一

    ○永末委員 租税特別措置法には原理上いろいろ問題がある。当委員会でもいろいろ議論がございました。私はそれを、立法の趣旨というところからこの問題の本質を一ぺん伺ってみたいと思います。  そこでいまのように伺いましたのは、いつもいわれておりますように、租税におけるいろいろな原則、特に公平の原則というものを、この租税特別措置法で特例を設けておるのだということにはある一定の政策目的がある。その政策目的遂行するためにこれがつくられておるとするならば、年限ということには非常に意味があってしかるべきである。あなた腰だめだと先ほど言いましたが、初めから十年なんというとぐあいが悪いから、二年にしておいて五回延長するのだということであっては二年という意味がないのだ。二年とか三年とかきめる以上はやはりここで政策目的を達しようという——主税局範囲ではありません。その政府がそういう特例をやったならば、その年限の間にそれによって実行されるであろうところの政策をやるのだということが合わなければいけません。そうでないと、毎年毎年主税局長は法案をつくってわが委員会に提出して基礎工事をやる、それは義務の懈怠です。そんな気がしますが、あなたはどうですか。
  109. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、期限をつける意味は、一定の計画あるいは政策目的に合わせまして、その政策目的を達成する期間にも合わすのが理想でございます。大体そのような趣旨でございますが、なかなかそこは、政策目的の達成期間という見方につきまして、いろいろな見方ができます。さらにまた、やはり情勢の変化ということも将来考えますれば、単に政策目的達成の期間だけに合わせることも適当ではない。さらにまた、税の負担の公平の関係からいっても、やはり期間は短くして、そのための効果をもう一ぺん反省するということも、これは租税負担の公平の原則から許されるものではないか、そういった意味では、二年二年継続しているのならもう少し長目にしてはどうかという御意見が出るかもしれませんけれども、私どもは、そういった意見よりもむしろ租税負担公平の見地から短目にすることも許されるということだと思います。
  110. 永末英一

    ○永末委員 それは逆で、二年と区切ったら二年で政策目的をやはり実現するというのが政府の役割りなんで、あなたの役割りではない。ところが、政府がその役割りを果たさないから、二年二年と七回も延長したり、五回も延長したりしてやらなくちゃならない。たとえば毎年毎年やっているような問題、これは、一体なぜそんなものを毎年毎年やらなくちゃならないか、毎年ほんとうにやるというのがその政府の、たとえば自民党政府の政策目的なら、本法の中に繰り入れたらどうですか。つまり、本法はこうだとやっておきながら、時限を区切りながら延長しておるというところに、まさにあなたのことばを借りるならば、公平を旨とする税制に対する国民の不信感を植えつけている。なぜそれらのものだけ年限が来たのにどんどん延びていくのか、こういういわば不公平感を醸成する大きな刺激済になっていると私は思うのです。あなたはそんな気はされませんか。
  111. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃいますように、そんなに長くやるならば本法に入れたらどうか、これはごもっともな御意見でございます。租税特別措置内容は、私は、やはり所得あるところに課税すべきである、あるいはまた所得に課税すべきであって、費用課税すべきではないというようなことから、たとえ本法に入れましても、租税特別措置の性格は変わらないと思います。現に所得税法に入っておりますところの少額貯蓄の利子の非課税制度、これは本法に入って期限もついておりませんけれども、これはやはり所得税の原則から見まして、課税最低限を越える所得があっても非課税だという租税特別措置の性格を備えたものと私ども見ておりますので、やはりそこは形式にはとらわれないで、租税特別措置はやはり本質的には存在するものだ、こういうふうに考えますので、私はその問題よりも、むしろ何年何年継続すること、期限を延長すること自体の可否を御論議願いたい、こういうように思うわけでございます。さらにまた、本法に入れることの可否、その意味をひとつ御検討願いたい、こう思います。  なお訂正いたしますが、十八項目と申しましたが、若干見方がありまして、計算いたしますと十五項目のほうが正確のようでございますので、三十九項目のうち十五項目と御訂正願いたいと思います。
  112. 永末英一

    ○永末委員 いま二点ほど主税局長のほうが私に問題を出されたのでありますが、一つは期限のないものであります。この期限のないものは、本法を立てた場合に、なるほどまくらとしては「当分の間」となっております。「当分の間」ということが措置法の頭にあって、しかも期限がないものが十五あるというお話ですね。本法は本法として立ててある。一体どういう考え方ですか。それは本法はこうあるけれども、当分の間やるということは、当分の間が過ぎたならば本則に戻るという考え方が、何といっても特別措置法でありますから特別措置の本質ではないか。だといたしますと、期限を定めずして当分の間やっていくということは、その当分の間の判定は政府がやるのでしょうが、それでいろいろなことを目標としておるけれども、その目標が実現せられたならば本則に返る。これでなければ特別措置法というものはあり得ない。もしそうでなくて、たまたま本法の中に入り得ないようなことを書いておくということだったら、本法に一項目つけるなりなんなりしなければ、期限のないものをどうしてこの中でぴしゃっとつくっておるのか。それを一方につくっておるから、たとえ二年と期限をつけようと三年と期限をつけようと、期限のないものもずっといくのだということに引っぱられつつ、やはり期限延長を安易にやっておるのではないか、そう思われるが、この二点について伺いたいのです。
  113. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にむずかしい問題の提起でございます。期限のないことの意味でございますが、これもまたいろいろな意味があってむずかしいのですが、たとえば生命保険料の控除という問題がございます。これは所得税法に入っておりますが、なぜ貯蓄の中で生命保険料だけ所得から控除するのか、これのねらいは長期貯蓄の奨励といわれております。なぜ長期貯蓄だけを奨励するのか。その他の短期貯蓄を継続していくような場合にも全く同じような効果を生むのです。そんなところから考えますと、生命保険料の控除が本法に入っております意義は、非常に長い期間の生命保険の制度でございますから、やはり所得税に入れまして安心して控除する、こういう意味があるかと思います。また、租税特別措置に入れますと、技術的に法文の体裁がやっかいである。しかし、引くということ自体を考えてみますと、普通の所得税の理屈から出てこない。こんなような意味もありますし、一がいになかなか、期限がないからこれはもう本法に入って、しかも租税特別措置でないとも言えないような気がするわけでございます。
  114. 永末英一

    ○永末委員 租税特別措置の中には、大体本法の中でやれるようなものもあると私は思うのです。つまり、本法の法文の立て方上、あなたが最後に言われた体裁というのは、どうもそこにそういうものを入れると、一つのシステム、体系として本法が何かゆがんだように見えるというので、それを別途特別措置という名前でやる。しかし、これをもし未来永劫やるのだということになると特別措置にならないから、「当分の間」とまくらをかぶせてあるのだ。こういうものは、私は実際にあると思う。しかしながら、同時に、この特別措置には、ある一定の圧力団体のためにやはり便宜をはからっておるようなものもあると私は思う。圧力団体ということばが悪ければ、日本国民の中の一部分の社会層の人々に利益を与える。それはいいことばで言えば、政府の政策目的である。そういうものが明らかにあるわけです。  ところが、租税特別措置法全体としては、何人も異議がないような、そういうものが横にあって、そういうものがくっつきながらこういうものをやっておる。そこに問題があると思う。だから、われわれが特別措置法はけしからぬということになると、いや、特別措置法の中にもかくかくのいいものがあるということが出てくる。それは認めますよ。しかし、いいものを引き合いに出して悪いものに耳をふさいでいるというようなことは遺憾である。その意味で、私は、期限の定めのないものの性格をやはり分類して、そのシステムとしては多少おかしいかもしれないけれども、当分の間ではいけないのであって、その中で、当分の間といっても二十年もたってくれば、これは一ぺん再検討し、本法に入れるものは入れる、特別措置は特別措置として整理をする、そうして年限を何年も何年も重ねてくるものについては、もう一ぺんそれははっきりと判断をして、年限というものの性格を法律上厳格に解釈する、こういう方向にいかなければ、のべつまくなしに、何が書いてあってもどんぶり勘定でだらだらいくのだということであるならば、当初申しましたように、こ  の特別措置法が含む全体について国民が不信の念を抱く、このように思いますので、お考えをお聞きしたい。
  115. 塩崎潤

    塩崎政府委員 けさほども交際費課税を特別措置に入れることについてどうかというお話がございました。いま永末委員のお話は、もう少し広い範囲で特別措置の内容を再検討する、それは期限のあるなしにかかわらず、根本からやり直して、本法と租税特別措置との間に区分けを厳然としたらどうかというお話でございました。私どもも、そんな点非常に悩みもありましたが、過去のいきさつがいきさつで、こういった姿で何年間も——減収額を一覧表にして提出してございますが、そのあたりに連続性の問題でやかましい御批判が出るかもしれませんが、せっかくの御意見でもございますので、税制調査会におきましてもひとつ検討してまいりたい、かように思います。
  116. 永末英一

    ○永末委員 大蔵政務次官、御答弁を願います。
  117. 小沢辰男

    小沢政府委員 御承知のとおり、租税特別措置は、経済政策等のいろいろの目的と、それから税制の基本的な目的との調和をはかりまして、経済情勢を見ながら流動的に改廃をしていくというものだと思います。そこがまた重要な点でございますので、したがいまして、特別措置の内容につきまして、私は、いみじくも「当分の間」と書いてあるのではないかと思います。むしろ二年なり一年なり三年なりというような期限を、もちろん永久にということは、これは特別措置ですからないわけでございまして、経済情勢等を見ながら流動的に考え直していかなければならぬものでございますので、したがって、私は、やはり法律のしょっぱなに「当分の間」とあるのは、その意味であるのじゃないか、むしろ二年なり三年なりというように期限を切ることのほうが、かえってどうも特別措置というものの実態に合わないのじゃないだろうか、しかしながら、やはりその中でも、あくまでも特別措置でございますので、したがって、税本来の基本的な政策目標といいますか、目的から見て、あくまでも臨時的な考えでいかなければならないという立場から、これはひとつ二年後にはもう一ぺん振り返ってみようじゃないか、あるいはまた、三年後には振り返ってみようじゃないか、あるいはまた、二年なり三年なりの期間を設けて、その間にこういう特別措置が必要ないような事態を——ひとつあらゆる産業政策の上で努力しようではないかという意味で期限がついてきているのではないかというふうに、私はしろうとでございますが、思うわけでございます。  おっしゃるように、今日の時点で特別措置法の内容をいろいろ見まして、もう本法に入れてもいい、あるいはまた本法ずばりでなくて、本法の附則あたりで処理をすべきようなものも相当あるような感じを持つわけでございますが、いずれにいたしましても、この特別措置につきましては、いま局長が申し上げましたように、税制調査会にもはかりまして、私ども調整、整理といいますか、そういうようなものをやらなければいかぬ面があろうかと思いますので、御趣旨も十分わかりますので、今後ひとつ大いに検討してまいりたい、整理してまいりたいと思います。
  118. 永末英一

    ○永末委員 大蔵政務次官の後段のほうの御意向はそれでけっこうです。  前段のほうは、私どもはあなたの言われるようには考えていない。租税の法律なんというものは、本法でも当分の間なんです。こんなものが未来永劫に妥当であるわけはないんです。社会変動とともに変えるのがあたりまえです。それが法律の根本的性格です。だから、租税特別措置法に「当分の間」と書いてあるのは意味があるとは私は思いません。租税本則そのものが当分の間を妥当とするというのが頭にあるから、われわれは国会でこれをつくっておるのであって、こんなものが未来永劫に続くわけではないのである。そういう本則に関係して考える場合に、この租税特別措置法に「当分の間」をつける場合には、私は、やはりたてまえとしては、ある年限を付すのが考え方としてあたりまえじゃないかと思う。しかも、その年限を付するというのは、政府に対して、その年限を付してある一定の利益をある者に与える、それをやはり実現していく、こういう義務づけを与える。租税特別措置法というのは、国民のある一部分の階層に利益を与えているだけだ、こう思われておるから、みんなこれはいかぬというのですよ。この特別措置法にはいろいろ項目がある。これは主税局長も申しましたけれども、おれらのほうにこういう利益を与えろという要求がこの租税特別措置法に盛られておると思うのです。あなたは政治家だ、考えてほしいのは、租税特別措置法によって拾われていない国民の多くの部分、これがこれをどう見ておるか、これが政治です。拾い上げたところだけ見ておっては間違う。山に入った猟師は山も見えなければ林も見えない、そうではないである。したがって、その意味合いで、もし本則というもので租税が国民とともに約束すべきいろいろな原則を満たしていこうとするならば、私は租税特別措置法というのは、まさにその例外規定だという意味合いを国民にも訴え、これに拾われていない国民の他の多くの部分に対してもこれを納得してもらう、こういうことでなくてはこんな法律は通らない。租税特別措置法に対する考え方、これをひとつお考えを願っておきたいと思います。もちろんこればかりやっておるわけではございませんから次に進みます。わが党はそう考えておるということであります。  国税庁長官に伺いたいのですが、昭和三十七年あたりから、ちょうどこの国会で問題になります政府管掌国民健康保険関係も赤字が出てまいりました。これに近年国庫負担も出す。財政的に見ますと、国民の税金の中から、たとえばこういうものに国庫負担金を出していくということになりますと、やはりいろいろ財政の立て方の問題、一体これが社会保険であるのか社会保障であるのか、こういうものの考え方も問題になってまいると思います。そういう問題点があるということを考えつつ、国税庁長官に伺いたいのは、おりしも、そういうたとえば政府管掌健康保険で、赤字が出てきたその三十七年に起点を置いて、お医者というものの所得というものは一体どうなっておるか、医業をやっておる人の所得は一体ふえてきておるようになっておるのか、そうして、その基準を高額所得者——あなたのほうは五百万円以上は高額所得者というのでありますけれども、高額所得者の線から上に上がった医者の数並びに全体の金額、あなたのほうで決定された所得金額、それをちょっと教えてください。
  119. 泉美之松

    泉政府委員 いまお話の保険医療の方の三十七年分以降の所得五百万円超の方の人数を申し上げますと、三十七年が五百七十七人、三十八年が千百六人、三十九年が二千三百三十四人、四十年が四千三百六十人、こうなっておりまして、五百万円超の総人員に対する比率でいいますと、三十七年が二・五%、三十八年が三・七%、三十九年が六・二%、四十年が一〇・六%、このように傾向値からいたしますと、三十七年以降だんだん所得の多い人の割合が他の所得者に比べてふえてきておる、このように見えます。  いまこの人たちの総所得は幾らかというお話でございますが、その総所得はちょっと合計したものがございませんので、後ほど調製いたしまして御提出いたしたいと思います。
  120. 永末英一

    ○永末委員 いま数字を伺いました。これは医師と歯科医師との合算ですか、医師だけですか。
  121. 泉美之松

    泉政府委員 これは医師も歯科医師もあるいは助産所、施術業といいますか、あんま、マッサージ、指圧師なども全部入った数字でございます。
  122. 永末英一

    ○永末委員 健康保険に関係のある——なるほど施術師も健康保険でやることになっておりますが、しかしながら健康保険に関連さして所得を一ぺん見てみたいというのが趣旨でございますから、医師と歯科医師と分けてください。  それからもう一つ。薬剤師というものはどうなっていますか、お調べになりましたか。
  123. 泉美之松

    泉政府委員 日本標準産業分類によりますと、医療業には、病院、一般診療所、歯科診療所、助産所、療術業(あんま、マッサージ、指圧師等)、看護業、歯科技工所、その他の医療関連サービス業を含む、こういうことになっておりますが、薬剤師の方は入ってないと思います。別の範疇だと思います。
  124. 永末英一

    ○永末委員 あなたの言われる産業分類表とは関係なしに、健康保険問題に関係のあるのは薬剤師があるわけなんで、あなたのほうはお調べになればわかると思うのです。医療担当者並びにこれに類するものは、いま伺いました。その中で、やはり医師と歯科医師と分けてお聞きしたい。それから薬剤師といわれる所得層、これもひとつお知らせを願いたい。これはひとつお願いしておきます。  もう一つお知らせ願いたいのは、三十七年以来製薬会社と称するもの、これは法人がみんなでありましょうけれども、その所得は一体どうなっていますか。それから資本金とからめれば利潤率が出てきますね。それはどう見ておられるか、お伺いしたい。
  125. 泉美之松

    泉政府委員 永末委員よく御承知だと思いますが、製薬会社は厚生省の所管になっておりまして、大手十二社というのが製薬会社のうちの代表的な会社とされておるわけでございます。その大手十二社全部を平均した数字が出ておらないので、ちょっと恐縮なのでございますが、私のほうでとれるものについて調べたのでありますが、これによりますと、必ずしも三十七年以降今日まで一定の傾向というわけにまいりませんで、ふえたり減ったりいたしておりまして、少し複雑でございます。これは税のほうだけかと思いまして日銀の主要企業経営分析、これは大蔵省の証券局へ届け出ている有価証券報告書から統計をつくっているわけでございます。それから調べたのでありますが、それによりましても、必ずしも一定の傾向はとっておらないようでございます。たとえて申し上げますと、医薬品製造業の総資本収益率は昭和四十年上期が一〇・九四%、昭和四十年下期が九・二八%、四十一年上期が九・六〇%、こういったぐあいで四十年上期はよかったのでありますが、下期に減って、また四十一年上期に若干上がっておるといったような傾向にありまして、このことは私どものほうで課税の実績、十二社についてのあれから調べてみますと、税のほうでは総資本収益率を出しておりませんで、売り上げ高純益率で示しておりますが、純益率によりましても、医薬品製造業は四十年上期が二〇・〇四、四十年下期が一〇・七九、四十一年上期が一一・一〇、こういったような数字で、傾向としましては有価証券報告書の数字と変わらないような傾向を示しております。四十年以前のものにつきまして、課税資料を基礎にして見ましても、やはりいろいろ違っておりまして、十二社についてみますと、先ほど申し上げました売り上げ高純益率でありますが、これが三十七年以降減る傾向にあるのが八社、それから若干ではありますが、ふえる傾向にあるのが四社、こういった状況になっております。それからなお十二社のうち一社は近年ずっと欠損状況にあります。
  126. 永末英一

    ○永末委員 厚生省の薬務局の方、おられますね。  いま、国税庁長官からは、主税当局にわかった程度の大手十二社に関する傾向を伺ったのでありますが、あなたのほうで見ておられて薬屋さんはもうかっておるのですか、もうかっておらぬのですか。
  127. 翁久次郎

    ○翁説明員 製薬会社が全般的にもうかっているかもうかっていないかという判断でございますが、一般的にはもうかっているほうに属すると思います。
  128. 永末英一

    ○永末委員 あなたのほうが資料を提出して保険局で薬価基準出すわけだけれども、大体においてもうかっておるということになりますと、それは一般のほかの企業と比べてもうかっておるのかどうなのか、どういう判断ですか。
  129. 翁久次郎

    ○翁説明員 ただいま申しました医薬品と比較いたします他の化学工業、これに比べましてもうかっているほうである、かように考えております。
  130. 永末英一

    ○永末委員 もうかっている原因の中に、現行健康保険法があるとあなたは思いますか。
  131. 翁久次郎

    ○翁説明員 製薬会社がつくります薬は、御承知のように薬局店等を通じまして一般に大衆薬として販売される面と、それからお医者さんが使われる薬としてつくっております面と、両方あるわけであります。その両方の中で、大衆向けの医薬品と一般向けの医薬品は生産額として半々くらい使用されておるわけであります。そういった点で、必ずしもどちらのほうがもうかっておるということは言いにくうございますけれども、おしなべて平均的には両方ともいままではもうかってきているほうではないかというように考えております。したがいまして、健康保険法の関係は、もうかっているうちの一部に該当しているということは言えると思います。
  132. 永末英一

    ○永末委員 いずれまた国会で健康保険法を審議しますから、そのときの基礎資料でもあるわけですが、特にまた医業の方面では租税特別措置法関係ありという説もあるわけでありまして、私どもそういう点でいま所得をお伺いしたわけであります。ひとつ、要求しました資料をあとで御提出願いたいと思います。  ちょっと国税庁長官にこの際伺っておきたいのでありますが、このごろ各業種にわたって青色申告を非常にすすめられてやっておられる。青色にすれば、俗なことばで言えばある部分はかんにんしてやるというようなすすめ方が行なわれておるのでありますが、その中で、歯科医師の件について一つ伺っておきたい。  従来まで白色申告をしておる歯科医師に対して青色申告をせよとすすめられる。問題は、健康保険法によって保険診療をやっている部分と自由診療部分とあるわけで、保険診療部分は白と明白にわかるわけだ。ところが自由診療部分はよくわからぬというところがあるので、あなたのほうではその保険診療部分のはっきりわかる部分に根拠を置いて自由診療部分を推定する、こういうことをやっておるらしいのです。そこで、一体保険診療を一〇〇とすれば自由診療はどれくらいあると国税庁はお認めになってすすめておられるか、お伺いしたい。
  133. 泉美之松

    泉政府委員 いま私どものほうで青色申告をおすすめいたしておりますのは、青色申告をすれば少々くらいのことはというような意味でおすすめしておるのではございません。申し上げるまでもなく、青色申告をしていただけますればいろんな税法上の特典があるわけであります。あるいはこの点は当然だとおっしゃるかもしれませんけれども、今回の所得税法の改正によりまして、昭和四十三印からは専従者に対するいわゆる完全給与制も実施されるわけであります。そのほか貸し倒れにしましても、価格変動にいたしましても、いろんな税法上の特典があるわけであります。それゆえに、青色申告になさっても、それによって負担がふえることはないし、むしろ税の本質からいって、青色申告でやっていただくのが一番いいのではないかという意味でお願いしておるわけであります。  いまのお話の歯科医師のほうでございますが、私どものほうは、保険診療と自由診療は人によって非常な差異があるのでございまして、これを一律に保険診療は何十%で自由診療は何十%というようなことはとうていできません。したがって、また保険診療が幾らになっているから自由診療は幾らだというような推計もできないわけでありまして、そのようなことはいたさないようにしております。自由診療につきましては、カルテなどを拝見してその枚数から自由診療分が幾らというふうなことを推計する以外に手はないわけでありまして、したがって、できれば青色申告していただいてそれによってやっていただくのがいいのではないか。青色申告でやっていただければ、保険診療のほうは経費率はきまっておりますから、収入のほうをきちんとしていただければいいわけであります。自由診療の部分は収入と支出とそれぞれきちんとしていただければいい。ただ問題は、経費につきまして自由診療にかかるものと健康保険なりその他の保険診療にかかるものと両方に共通の経費があります。この経費の案分の問題が実は非常に課税上むずかしい問題になっております。常識的に言いますと、収入金額に案分して経費を割り掛けるというのが正しいやり方かと思います。そういった面では、しばしばトラブルが起きておるようでございます。しかし、これらについては、何といいましても、記帳がありますことが一番課税上お互いにトラブルを少なくすることができるゆえんだ、このように考えております。
  134. 永末英一

    ○永末委員 この二月ごろある歯科医師について保険診療の七割を自由診療部分と認めるという第一次決定をやっている。それからいろいろやって下がってきましたよ。そこで、この前問題になりましたあなたのほうのとらの巻に、保険診療を一〇〇とすればこれぐらいだというようなことが書いてあると、これはたいへんな話であります。おっしゃるとおりいろいろ千差万別。私どもも青色申告にすべしと申している。青色申告をやればそれに対する反対挙証責任は国税庁、国税局側にある。これはたてまえですね。白色申告のほうはあなたのほうが更正決定をやってくれば、それがいかぬという挙証責任は納税者側にある、青色申告はそれを逆転しているところに実は一番大きい意味があると思うのですよ。そうですか。そこのところをちょっと伺っておきたい。
  135. 泉美之松

    泉政府委員 挙証責任の問題ということになりますと、これは裁判上の問題になってまいりますので、そう簡単にどちらに挙証責任があるということは言いにくい、裁判官の心証をどういうふうにしたら得やすいかということになってこようかと思います。ただ、青色申告をしておりますときには、永末委員もよく御承知のとおり、税法におきましては、税務署長が更正するときには、その帳簿を検査した上でないと更正できない、しかも更正にはどういう理由で更正するか理由を付記しなさい、こういうことになっているわけであります。したがって、それだけ青色申告の場合には、税務当局のほうで十分帳簿について調査をし、しかもその理由があって初めて更正できる、こういうやり方になっておりますので、それだけ税務当局のほうに課せられた負担といいますか、当然のことでありますが、それだけ慎重に扱う、こういうことになるわけでございます。
  136. 永末英一

    ○永末委員 法律上のことばで挙証責任と申したのではなくて、あなたがおっしゃったように理由があって初めてやる、その理由をさがす努力を税務署長の側がやるというところが白色と青色の大きな違いだと思うのです。そこでいま申し上げた点については、各県歯科医師の間にちょいちょいトラブルが起きておりますから、やはりそこの歯科医師会がその地域における保険診療、自由診療の部分というものは相当精査しておろうと思いますので、実情に即してトラブルをあまり起こさぬようにやってください。  次に移ります。今度の租税特別措置法で協業組合ができるについては税制上の特別措置をつけよう、こういうことが入りました。しかしながら主税局長、この協業組合の税制上の優遇措置というのは、協同組合、企業組合と比べてどの辺が恩典ですか、ちょっと言ってください。
  137. 塩崎潤

    塩崎政府委員 簡単に申し上げますれば、協業組合は企業組合と同じふうに考えております。
  138. 永末英一

    ○永末委員 この提案の中に協業組合に入る法人について現物出資した場合圧縮記帳の経理を認める、したがってその評価益の相当部分はこれは損金に算入する、こういうことになっておるのでありますが、法人についてその圧縮記帳を認めておきながら、個人は一体どうなるのですか。
  139. 塩崎潤

    塩崎政府委員 個人につきましても、現物出資を行なう場合には譲渡所得税が発生をいたします。そのときには、現在企業組合についてあるいは協業について認められておりますところの延納制度を認めることにいたしております。
  140. 永末英一

    ○永末委員 個人には譲渡所得として扱って延納でしょう。税金は延納だ。法人の場合にはともかく圧縮記帳を認める、これは同じ扱いですか、取り扱いが違いますか。
  141. 塩崎潤

    塩崎政府委員 取り扱いは違います。
  142. 永末英一

    ○永末委員 どっちが有利です。
  143. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは考え方でございます。個人をこういうふうにいたしましたのは、帳簿が非常に不完全である。したがいまして、圧縮記帳という制度がきかないわけで、圧縮記帳という方法がございません。延納ということで対処する。法人のほうはやはり帳簿ががっちりしておりますし、バランスシートに計上される。よってそれを圧縮記帳といたしまして、その後にまた取り返すということでございます。その後の値上がり等を考えますと、どちらが得か一がいに言いかねます。
  144. 永末英一

    ○永末委員 中小企業庁のほうに伺いたいが、同じ協業組合の組合員として法人も入り個人も入るといった場合に、いま主税局長は将来の値上がり等を考えればどっちが得かわからない、こういう話でございましたが、さしあたりこの協業組合に入ろうとする場合の判断、法人として入るお方、それから個人として入る者、これが一体この点について有利か不利か考えるわけですね。願わくは、われわれとして、同じ組合に入っていく構成分子でございますから、同等の取り扱いをするのがいいのではないかと思いますが、中小企業庁、これを取り扱うほうとしてはどう思いますか、ちょっと伺います。
  145. 安岡孝

    ○安岡説明員 法人の場合の圧縮記帳と個人の場合の分割納付の関係は、対象が違いますので、具体的なケースも違ってまいると思いますので、具体的にどちらがどうということははっきり申し上げることはできないかと思いますが、感じといたしましては法人のほうが有利なような感じを持っております。
  146. 永末英一

    ○永末委員 両方ともふわふわとした五分五分みたいな話であります。しかし判断する個人にとってはこれはたいへんな問題で、協業組合がうまくいくかいかないかという一つの要素、もっとも機械を持たなければいけませんが、この点に一つの問題があるとわれわれは思います。  もう一つ、機械の割り増し償却の特例が書いてあるのでありますけれども、これは租税特別措置法全体のかまえからいきますと、中小企業近代化促進法による指定業種のみにこれが使われる、こういうことになっておる。そうしますと、中小企業近代化促進法の指定業種になっておるものはするするとあちこちの条文が適用されますが、近促法の指定業種になっていないものが協業組合をつくろうという場合にはこの割り増し償却の特例は働かぬ、こういうことになりますか。
  147. 塩崎潤

    塩崎政府委員 さようでございます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 このいわゆる近代化促進法は近代化促進法の別の角度で考える、そこで指定業種になりたいといういろいろ運動があってふえてまいりました。しかしながら、協業組合というものは、近代化促進法の指定業種もそうでないものもやはり別の角度からできてきたと思う。ところがそうであるにかかわらず、またこの中では色分けしておまえは近促法キャリアだ、こっちはそうでないのだというのはどうでしょうか。これは主税局長でなくて、今度そういうことを受けて実行する中小企業庁のほうの御答弁をひとつ願いたい。
  149. 安岡孝

    ○安岡説明員 近代化促進法の目的といたしますところは、国民経済的に早急に近代化を進めなければいけないという業種につきまして、特別の税制上のメリットを認めるという趣旨でつくられました税制であるというふうな性格を持っておるわけでございます。一方、協業組合は、先生御承知のように中小企業者を協業せしめるということが現在の経済情勢からきわめて必要である、そのための適当な入れものを用意するという意味合いにおきます政策的な必要性というものも一つあるわけでございまして、その間の調整につきましては主税当局とも十分連絡をとって研究いたしたのでございますが、一応現在のような形におさまったということでございます。
  150. 永末英一

    ○永末委員 近促法というのは、つまり近代化にいろいろ内容がございますけれども、そういうものがなし得るような業種、いろいろなものを考えながらつくられてきた法律だと私は思う。協業組合はまた別の理念に従ってつくられてきた法律だと思う。協業組合をつくらせようということがいわゆる協業組合法の本旨であるのなら、私はその法律の中でやはり平等に取り扱うのが協業組合を発展させる上に非常に必要な考え方ではないかと考える。ところがいざということになりますと、なるほどたくさんの業種が近促法の指定業種になればなるほど、これに入らぬものは、また機械を持っておっても割り増し償却はないのだということになって、何ら協業組合になっても税制上の特典はふえないのではないか。協業組合に参加するならば近促法に認めておると同じような償却制度をなぜ認めないのか。主税局長ひとつ答えてください。
  151. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これはもう永末先生御承知のとおりでございます。やはり租税負担は公平の原則だと考えますと、企業を営む者が、それがたとえば中小企業に該当いたしまして、その形態が株式会社であろうと、あるいは株式会社が合併いたしました合併後の会社であろうと、あるいは協業組合であろうと、企業組合であろうと、私は同じふうに取り扱うのがほんとうだと思うのでございます。それ以上に取り扱うとすれば、またそれなりの政策的理由がなければならぬと思うのでございます。一般の中小企業会社には合理化機械の特別償却がございますけれども、近促法にいうところの指定業種になれば——三分の一の特別償却というようなものは近促法に指定を受けなければならないわけでございます。私は協業組合も同じ立場であっていいと思うので、そういった意味で現物出資あるいは協業の場合の最初の圧縮記帳、こういった形で協業組合をつくる最初の過程において援助すればまずまず足りるのではないか。その後は企業体といたしまして、普通の企業と同じような税制の適用を受けるということで足りるという考え方から近促法だけに限定している、こういうふうに考えております。
  152. 永末英一

    ○永末委員 二手に分けて、協業組合は最初巷間宣伝せられたときには、何かそのことによって特別の税法上の優遇措置があるのではないかという期待感を抱かせたわけですね。出てくると、この点についてはいまのように近促法でくくっておる。そうすると、近促法の指定業種でないものは——いわば税制上の優遇措置らしくやっておるけれども、本質は近促法とのバランスをとっただけであって、近促法そのものの優遇措置をやったのではないと私は思うのですね。近促法でやられておるからこういうことをやったということであって、言うならば近促法の水増しをやっておる。だといたしますれば、指定業種でないものはこの点についても当然優遇措置を受けない。とにかく近促法の指定業種になりなさい、そのような援助をやるけれどもあとはかってにせいというふうにならないとも限りませんか、中小企業庁。
  153. 安岡孝

    ○安岡説明員 協業組合を制定いたしました経過につきましては、先生御承知のとおり中小企業政策審議会の中で相当審議せられたわけであります。その際に税制上あるいは金融上のメリットについても十分考慮するようにという意見がつきまして、それを受けまして私どもいろいろと研究いたしました結果、主税当局とお打ち合わせ申し上げたわけでございますが、さようなことになったというのが現状でございます。
  154. 永末英一

    ○永末委員 どうも税制上の優遇措置をやったように見せかけておるけれども、中身においてはあまり優遇措置がないような気がする。  もう一つ伺いますが、事業協同組合が協業組合になっていく。そうすると、ある一定の期限をしてなったものは、三年間事業協同組合と同じような、つまり軽減税率というやつ、これは三年間で切られる。先ほど期限の話を思い起こしつつ、なぜ三年で切ったか。
  155. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは激変緩和の意味だけでございます。
  156. 永末英一

    ○永末委員 そうすると、事業協同組合と協業組合を比べて、最初はその税率の面においては事業協同組合と同じ低い税率でいいのだ、こういうことで三年間。ところが、それならば事業協同組合から協業組合になったものは、たてまえ上は当然高い税率で払うべきだ、こういう考え方が基礎にあるわけですね。そうすると、事業協同組合でやっておる——これはいろいろございますよ。事業協同組合はそもそも外向きに営利行為はしないという話もございますが、実態上そういうふうに動いておるものが、協業組合ということばにメリットを求めてそれになっていくと、三年たつと罰せられる、こういうことになりますね。どうでしょうか。そういうようなものですか、協業組合というのは。先ほど近促法に関連させ、あまりメリットはなさそうだということを申しました。今度事業協同組合でこれを振りかえればということですが、振りかえたら三年たてば税率がばっと上がってくる、こういうことになると足踏みしますよ。これは中小企業庁のほうにお考えをお聞かせ願いたい。
  157. 安岡孝

    ○安岡説明員 現在、先生も言われますように、事業協同組合形式で相当協業の程度が進みまして、今回法制化をお願いしております協業組合とほぼ同じような形になって成長しておるというのがございます。ところで、今回協業組合をつくりまする趣旨は、事業協同組合は経営体として必ずしも適切でない面が相当ございます。それらの面を改善するということにいたしまして、経営体として必要な判断の機敏性あるいは企業性あるいは資本の充実をはかるといったような観点を相当可能にしようというような組織でございますが、事業協同組合が税制上のメリットを認められておるという状況から考えますと、なかなかに協業組合にそういう組織上のメリットはあるけれども税制上のメリットはないということで乗り移りにくいということになりますと協業も進まないということでございますので、三年間に限りまして、さような意味合いにおきまして事業協同組合並みの税制上のメリットを認めるということにして移行をすみやかならしめる。あとは組織、制度上のメリットで動いていくということを現在期待しておるというのが実情でございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 きょうは協業組合の税法上の優遇措置の面だけを聞きまして、協業組合そのものについてはまたほかの委員会でやらなければなりません。  時間もまいりましたのでやめますが、大体税法上の優遇措置ということをやる場合には、これは租税特別措置の本質に関する問題でありますけれども、つまりこれでやるという場合にはそれにひっかからないもののことも十分考えてしなければならない。やるやると見せかけているけれども、ふるいにかけて実はちょっとしか残らなかった、こういうのは優遇とはいえない。しかし、今日の資本主義経済——私は資本主義ではない、社会主義者でございますけれども、資本主義経済下においては、あまり税金で企業の形や企業の運営をつらないようにしていくというのが資本主義社会における企業の競争力なり自立心を養成する根本ではないか。その意味においては租税特別措置法みたいなものがなくなるように、せっかく自民党内閣は御努力願いたい。われわれはまた別のことを考えます。  質問を終わります。
  159. 内田常雄

    内田委員長 横山利秋君。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 交換、譲渡の特例のところから入るのですけれども、どうも現場でかわりの土地、建物を買うのが一年以内、今度は二年以内という関係もございますが、かわりの土地、建物を買った時期というものは、一体どういうふうに見るべきでありましょうか。私もときどき困惑するのですけれども、これから建てるという場合には一年以内に着工する時期か、竣工した時期か、権利を建設業者から取得をした時期か、あるいは金を払った時期なのか、簡単に法律は一年以内二年以内にかわりの土地、建物を取得したといっておるのですが、どうも前線で区々にわたっておるのではないかと見られる節があるのですが、どういうことが正当なのか、お伺いをいたしたい。
  161. 泉美之松

    泉政府委員 交換財産の取得とおっしゃいますが、居住用財産の取得のように承りましたが……。(横山委員「事業用もある」と呼ぶ)もちろん事業用の場合もございます。われわれが見ておりまして一番問題なのは、居住用財産の買いかえ、これが一番問題のようでございます。と申しますのは、人間住んでおらなくちゃなりませんものですから、自分がいままで住んでおった家を売ってそして新しく家を取得してそこへ住むということになる過程におきまして、すでに家が建っておりますものを買うのですと、これは簡単なことになるわけです。これはもう家屋の引き渡しを受ければそこで取得したということになるのですが、ただ、新しく土地を取得してその上に家を建てる、こういうことになりますと、いつをもって居住用財産を取得したことになるかということで、これは第一線におきましてもいろいろ問題を生じまして、私どものほうとしてもいろいろ苦労いたしております。  ただ、私どものほうの現在の扱いといたしましては、まず一年以内に土地を取得する、これが絶対要件である、そしてその土地の上に建築を始める、そしてそれから一年以内にその建築が完了して居住するようになる、こういうことでいま運用をいたしております。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 つまり、あなたの答えは、完全にうちが建って、完全に住んでおらなければいかぬという意味ですか。
  163. 泉美之松

    泉政府委員 一年という期間内に完全に住むというわけにまいりません。一年以内に居住用財産とする目的で土地を取得して建築に着工する、それからさらにもう一年以内に、つまり、初めからいいますと二年以内ですね。二年以内に家屋を取得してそこに居住するようになる、こういうことで運用いたしておるわけであります。事業用資産の場合ですと、事業目的によりましていろいろ形態があるようでありますが、これは概して居住用財産のときのような問題はほとんどありません。したがって、取得というのは本来その土地を引き渡しを受けることであるというふうに解しております。それによってトラブルが起きているようなことはあまり聞いておりません。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 どうもそこまでいっていいかどうかわかりませんけれども、居住用財産でも、たとえば中高層のようなもので、下が店舗で上が住宅、従業員も入っておるという場合、どうもあなたのほうの窓口は買いかえの問題が大きければ大きいほどゆとりがあるようです。どうもそんな感じがする。個人の住宅の買いかえは非常にシビアーだが、大きければ大きいほどどうも弾力性があるような気がしてしかたがないのであります。これは取得の時期がいつかという点については、あなたが端的にお答えになったような通達ではないような私は気がするわけであります。  そこで、買いかえの時期ですが、いまどうしても収用で土地を取られる、これは時間的な問題である。それから一生懸命買いかえの土地をさがす。さがした。それだけの金はまあ収用だからある程度取れるにしても、それからうちを建てる。それが二年以内という点については、そうとんとんといきやせぬのであります。だから、いまのお答えのように、土地が一年、その上に建てるものが二年ということは、実はぼくも初めて聞いたのでありますけれども、取得の時期の判定については、中間的な要素が明白であるならば少し弾力性を全体的に持ったらどうかということをかねがね思っておるのでありますが、長官のお耳にはそういうことはあまりこないですか。
  165. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、居住用財産の買いかえという場合、途中でいろいろの事柄が起きまして、まあ、土地を買う約束はできたけれども、相手方がついにその履行をしなかったとか、あるいは、建築に着手したけれども、どうも設計が気に入らないので設計変更した、そのために家屋の完成がおくれた、いろいろな事例が起きてまいります。これはもうよくあることであります。  それから、先ほどは交換によって取得する建物が大きければ大きいほどゆとりがあるようなお話がございましたが、これは結局、それだけ大きい建物を建てるだけに、建築を何カ月間という予定でやりましても途中でいろいろな事柄が起きて、その期間中に必ずしも建築が完了しない。そこで税務署長に、こういうやむを得ない事情で着工はしたのだけれども建物の完成がおくれる、こういうことを届け出て、その事実を確認して、なるほどやむを得ないなということでまあそれを認めざるを得ない、こういうのが実情であります。大きいからゆるやかにしておる、小さいからきつくやっている、こういう問題ではございません。ただ、まあいろいろな事情が建築して取得する過程において生じがちで、大きい場合にはそういう事柄がよけいに生じがちだ、こういう事情によるものだと思っております。  いずれにいたしましても、居住用財産の取得につきましては、通達で一々なかなか処理できません。結局、その調査を担当する者の良識にまつよりほかはないというような実情にあります。
  166. 横山利秋

    ○横山委員 まあ、半ばお認めになったように、大きいところについてはそういうような、こういう事情だから延ばしてくれと言えば、税務署長もある程度延ばす、こういうのがあるのであります。  そこで、第二番目に、私がくどく言うのでありますけれども、買いかえの特例というものが、大きいものはよう知っておるけれども、小さいものはあまり知らぬのであります。そこで、居住用財産の買いかえの問題については、実際買いかえの特例というものがあるのを知らぬのが普通なのであります。知らずにおって、あとで税金がきてから気がつくということなのであります。何とかそれを税務署長の誤謬修正で善処してやってもらいたいと私は常に言うておるわけです。しかも・その事態が明白である、脱税の意思は全然なかった、忘れたことによって他に得することも何もなかった、ただ、その期間までに買いかえの特例の申請を、知らなかったか何かでしなかっただけのことである。ところが、その違いというや、天と地みたいな違いで、ゼロか数百万円——まあ数百万円はいかぬでしょう、小さいやつですから。これは勤労者や町の零細企業ではたいへんなことですよ。だから、何べんも私言うようだけれども、横山利秋がこうも言うんだから、ほんとにこれは考えてやるべきじゃないんですか、どうなんですかね。(笑声)いま笑った人は、非常に賛成したお笑いのしかたであります。
  167. 泉美之松

    泉政府委員 横山委員のおことば、私もよくわかるのでございます。ただ、現在におきましては、居住用財産を買いかえる場合に、課税上の特例があるということを御存じない方は、まあ大体いらっしゃらないのじゃないかというふうに私ども考えておるのであります。税務署におきましても、そういったことの周知徹底につきましては、十分努力いたしておるのでありまして、もしそれを知らないというのは、よほどうかつな方ではないかと思うのであります。もちろん、どういう事情によって知らなかったかということになりますと、その事情を十分調査してみないとわかりませんけれども、ただ知らなかったと言いさえすれば、何でも認めるのだというわけにまいりかねる事柄でありますから、したがいまして、どういう事情であったか、こういったことをとくと調べた上でないと、簡単に、期限がおくれてもよろしゅうございますということは、なかなか申し上げかねるのであります。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 税務署長の誤謬修正というものの権限の範囲が限定されておるから、税務署長も気の毒です。私に権限があればともかく、そういう問題は権限がない、絶対条件になっているからこれはだめなんですということなんです。ですから、あなたのおっしゃるように、また私の言うように、ほんとうに忘れておった、知らぬ人である、そういうようなことがわかった、忘れておったことによって何か他に得があったかというと、それもない、どう考えてみても、これは単純な知識不足であるという場合に、救済の手がいまあるかというと、ないではないかというのです。誤謬修正は含まれる、そういうことをおっしゃるならそれでいいです。納得します。だから、長官のお話はやや弾力性があるようで、実は何もないじゃないかと私は言いたいのです。
  169. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり、この買いかえの特例といったようなものは租税上の特典でありますから、まずその特典を受けようという者から申請してくるたてまえになっておるわけであります。その申請がなければ特例は認めない、これが税法の趣旨であるわけであります。居住用の家屋を買いかえたらだれにでも認めるのだということにはなっておらないわけであります。したがいまして、知らなかったということは、法の不知をもって抗弁することができないということだろうと思うのでありまして、したがって、私どもとしてできますことは、知らなかったからそういう適用の申請をしなかったという人が出ないように、十分広報を徹底いたしまして、そういった事態を生じさせないようにする、こういうことだろうと思います。
  170. 横山利秋

    ○横山委員 政務次官、論争の焦点はおわかりですね。あの人は、納税者というものはみんな買いかえの特例を知っているのだという前提に立ってものを言っておる。私は、そんなことを、買いかえの特例を、世の中の納税者ほとんどとは言わないけれども、まず知らない人が相当部分あるという前提に立っている。あの人は、知らぬのが悪いのだという立場です。ぼくは、知らぬのは善意の過失だという立場です。それで、こういう点については厳密な制限をつくられてもやむを得ないとぼくは思っている。しかし、本人の知らざる過失があるということも考えなければいかぬから、絶対いかぬというのは、納税者に親切であれと言っておる国税庁としてはいささかいかぬじゃないか。それは、納税のいろいろな知識のパンフレットやビラも出ています。けれども、その買いかえをするなんてことは庶民は一生に一回かそこらですよ。そんなことをそう一々勉強してはいませんよ。ですから、ほんとうにそれは知らなかったのだということが客観的にも立証され、そうして申告しなかったことによって得があったということもない、そういう場合においては、まあ誤謬修正の中に含まれるのだという考え方をとってもいいではないかと私は言っておるのですが、あなたはどう思いますか。いや、悪い返事ならせぬほうがいいのですよ。あなたが立つならいい返事をしてください。
  171. 小沢辰男

    小沢政府委員 ここで横山先生の御質問に私がなるほどもっともでございますと、こう言うわけにはなかなかまいりませんし、また、しかし、そうは言いましても、横山先生のおっしゃることも、私はまあ常識で見るとわかる点もあるように思います。しかし、また一方、国税庁長官立場になりますと、公のこの国会の席上において、適宜、適当に処理しますというようなことも、これは私は税を預かる者としては言えないものと思う。しかし、ここまで専門家の横山先生がいろいろおっしゃったことですから、おそらく国税庁長官は、法の運用にあたっては、先生のそういう御意見のあったことを十分頭に入れておくものと私は信じて、ひとつ答弁にかえたいと思います。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 政務次官が政府を代表してそうおっしゃったことを、私は当面は了といたします。しかし、将来にわたっては、もうお互い私ども大蔵委員をやっておれば、庶民よりは多少税の知識が多いのであります。そういう私どもが痛感をいたしますのは、税を知らぬ人間が、もう少し知っておれば得であったということが幾らもあるわけですね。その点については、かねて私が申しましたことをお取り上げくださったか、年々歳々の国税庁から出される指導方針には、納税者に得になることは進んで教えてよろしい、教えてやれと言っておるのですね。ところが、実際はそうやっておらぬのですよ。ですから、ほんとうに善意の間違いというか、うっかりしておって届け出をしなかったということについては、税法は救済措置を、かりにきびしい制限をつけようとも、救済措置を私はとるべきだという持論を毎年繰り返しておるわけであります。本日はそのとびらをいささか政務次官がお開きくださったことに対して感謝をいたし、国税庁長官は拳々服膺してその実践をされんことを当面要望し、誤謬修正の問題については、いずれ塩崎局長が次期法改正の場合においては善処せられるであろうということを私は確信をいたします。いやだというなら、立って答弁をする。よろしいというなら、答弁要りません。
  173. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にむずかしい御意見でございますが、私も国税局長を三年ばかりやっておりまして、法律の不知の問題で非常な苦情が出、それもまた零細な人たちの苦情であるだけに悩んだ事例がたくさんございます。買いかえは、私は横山先生と同じく経験したものでございまして、この特例の適用といいましても、なかなか事業用資産の譲渡のような偶発的なものは、普通の所得についての納税者と違いますから、徹底がむずかしい面がある、そこで私は、去年の改正では、もう買いかえの制度にかえて控除の制度に直したらどうか、小さな譲渡所得はもう申告も何も要らず、それを上回る所得だけ課税というような提案もしたわけでございますが、これもなかなか問題があるということで、収用法の一環の改正でございましたので、今日までまだ実現を見ておりません。私は、今度この土地問題全般の改正の問題といたしまして、このような買いかえの制度はどういうふうに持っていったらいいか、ひとつ、これは本来恩典的なものであるか、あるいは譲渡所得の本質からくるものであるか、ここらあたりから根本的に考えてみたい、さらにまた、先生のおっしゃる、なお広い問題としての申告要件がはたしてすべての税制に適合するかどうかの問題として、ひとついまの買いかえの問題を含めてもう少し広い範囲で検討してみたい、かように思います。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 次は、きょう「税のしるべ」を見ますと、今回のわれわれがいま審議をしておる問題に関連をいたしまして、たとえば、一例をあげてみますが、飯田市の中央自動車国道と国鉄中津川線との対比であります。中央自動車国道は特定公共事業である。中津川線はその他の収用関係事業である。そこで、両方ともひっかかったという場合、「中央自動車国道の用地に五百万円の補償金をもらうと、全額特別控除で非課税になるが、国鉄中津川線の場合には、収入金額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡益を五百万円とすると、百十七万五千円が課税対象になる。」こういう話であります。  それで、今回の改正は、この区別がなくなるわけですね。それはたいへんよろしい話でありますが、いつからなるのか。だから、国鉄線にこの適用が実際されるまでは地主は売らぬと言うてがんばっておる。したがって、国鉄からたのまれた長野県はたいへん往生をしておるということになっておるそうであります。「税法上買取りの申し出のあった日から六カ月以内に譲渡することを建て前としているので、改正法の適用の可否とからんで、買収の委託を受けている長野県がいつ買取りの申し出をするかが問題となっている。」もしも、長野県がいま買い取りの申し出をしたならば、六カ月以内に譲渡することがたてまえだから本法は適用されぬということになるわけであります。「この申し出の日と改正法の施行日によって、一挙に売却側に有利に問題解決か、その大きな不満を残したまま強引に土地を収用するかの決定的瞬間を迎え、関係者は緊張して注視している。」これは新聞ですが、確かにこう書いてある。確かに、これはいままででも問題の焦点でありました。名古屋におきましても、どういうばかなことだという議論があったわけであります。それで、この法律の立案をされますときに、この種の現状について考えなかったのであるかどうかという点はいかがですか。
  175. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう横山先生御案内のように、措置法の附則十条で、新法は土地収用法の改正法律施行後のこれらの収用法に基づく規定による譲渡、これに適用することになっております。私も先生と同じく、例の特公について七百万円ができましたときに、大阪の国税局長でございましたので、新幹線の収用にあたりまして、ごね得の方が七百万円、早目にオーケーした者が十五万円ということで、いろいろなトラブルがあったことを十分存じておるのでございます。そういう意味では、今度の改正も同じような問題が起こらざるを得ないと思います。そこはひとつ私は建設省にお願いいたしまして、この収用法の運用をうまくやっていただく、さらにまた、国税局現地におきまして、これらの扱いについてはひとつ非常な不公平感を抱かせないような方向で国税局において適切なる指導をやっていただく、こんなことを期待しておるのでございます。
  176. 横山利秋

    ○横山委員 建設省がうまくやればいいだろうと言うのですが、この法律は一月一日ですか。
  177. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一月一日を一応予定しております。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 法律を施行する場合に、もうすでに一月一日を予定したために、一月一日までにひっかかるものは、長野県は実際問題として仕事ができないということが明白なんですから、こんなことならなぜもう少し現状の矛盾に合わせた立案ができなかったものか。これだけわかって、あなたも苦しんだなら、もう少し現状に合わせるようなやり方ができなかったものかなというのが私の質問の趣旨であります。
  179. 塩崎潤

    塩崎政府委員 なかなか収用法の改正も非常に問題でございますし、事業認定時の価額で収用するという非常に大きな改正でございます。したがいまして、これを新しい収用法の施行前の時日にまでこれを適用するということは問題でございましょうから、やはり新収用法施行後の事業認定時の価額ということを基準として考えざるを得ないであろう、こういうことが私どもの立法趣旨であろうと思うのでございます。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 建設省来ておりますね。  今度の土地収用法の一部を改正する法律案を見ますと、非常な改革でありますが、土地に関する補償額の算定時期を、原則として事業認定告示時の価額とする、そうして、あと物価の変動に応ずる修正率を乗じた額とする、こういうように、今度の改正は非常に画期的で、これはこれなりの、一つのごね得の弊害を整理する意義があるのでありますが、そうすると、常識的に私ども考えるのでありますが、収用されたところの土地よりも、収用されたところの周囲の土地の人たちが非常にもうかるという感じがするわけでありますが、その点はどうお考えでございますか。
  181. 志村清一

    ○志村政府委員 御質問でございますが、事業認定時の価額を一応基準にして考えていくというたてまえでございます。それに対応いたしまして、事業認定をいたしたならば、地主さんは直ちに補償金の前払い請求ができるという制度にいたしております。したがいまして、事業認定時の近傍類地の価額をすぐにくれといいますと、もらえることになるわけであります。さような意味におきましては、従来の裁決時価額、裁決時の近傍類地の価額というような規定でございましたけれども、それは裁決のときでなければもらえなかったわけでございますので、裁決時の価額評定にあたりまして、事業認定時の価額を基準にするということにいたしたかわりに、補償の前払い請求ができるということでカバーいたしておるということでございます。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、いわゆる俗称開発利益といわれておるもの、ごね得というもの、そういうものはないけれども、前払いをしてすぐに銀行にでも預ければ、利息だけでももうかる、その利息がそれに対する代替だとでもおっしゃるわけですか。前払いをしてもらうのだから、その金を運用すればある程度利益があるのじゃないかという理論ですか、あなたの意見は。
  183. 志村清一

    ○志村政府委員 事業認定をいたしますと、起業地が確定いたしまして、その土地は収用を運命づけられるわけであります。したがいまして、近傍の土地がたとえ上がりましても、たとえば道路ができるというので、近傍の土地が上がりましても、道路用地のところはもう道路に運命づけられておるわけでございますから、本来一般の近傍の土地と性格が違うわけでございます。その意味におきまして、事業認定時価額を基準にして考えようということにいたしたわけでございます。
  184. 横山利秋

    ○横山委員 私の言ったことにどうも歯車がかみ合っていないようですね。私の言うのは、これだけ収用をされる、この収用される人は認定告示期の価額に、それから裁決時までの期間は物価変動に応ずる修正率を乗じた価額と言われるから、これが、ある意味では押えられた、ごね得はもうない、この周辺のところがフリーなんだから、開発利益はこちらのほうはもらうじゃないか、この比較をきわめて常識的にどうなんだという質問をしたら、あなたは、この人は認定告示のときに前払い金をすぐもらえばいいじゃないか、先にもらって銀行に預ければ利子がふえるから、これらの費えは利子でもうけるのかと私は聞いておるのです。つまり、収用された周辺の人々の開発利益は、この収用された人よりも利益が多くなる矛盾はどうなのかというのが、私の質問なんです。
  185. 志村清一

    ○志村政府委員 前払い請求を受けまして前払い額を払う、それを受け取りますと事業認定時の近傍類地の価額をもらえるわけでございますから、その付近の土地を買おうと思えば一応は買えるというかっこうになるわけでございます。その状況は現在の収用法の体系であります裁決時の価額でもって裁決額がきまる、採決時の近傍類地の価額でもらう。そのときに近傍の土地を買って、その後の値上がり等を得るというような可能性があるということと同様であると考えております。
  186. 横山利秋

    ○横山委員 故意に私の質問にすなおに答弁しないのか、あるいは知っておって答弁がしにくいのか、どっちですか。横山さんの言うことはもっともだがしようがないと言うのなら、私もすなおにしようがないと思っておるのかと言うことになる・のですが、どうも持って回ったような答弁をなさるからいま質問を重ねておるんだが、どういうつもりなんですか。
  187. 志村清一

    ○志村政府委員 持って回ったつもりはございませんが、説明がへたなものでございますからあるいはさような誤解を招いたかと存じます。  先ほど申し上げましたように、事業認定時の価額を基準として事業認定がありますと、すぐにでも前払いの請求ができてそのお金が入るわけでございますから、その意味におきましては、もし土地がほしいということならば、そのお金でふさわしい土地を買っていく、そうすると、その買った土地が値上がりをすれば、その利益は享受できるということでございます。
  188. 横山利秋

    ○横山委員 こんなことに時間をとりたくないのだけれども、まん中の収用の人が銭を先にもらってすぐに開発利益が一番多い周辺の土地を買えればいいですよ。ところが、周辺の人は売らない。だから、銭をもらったら、よそへ行ってあまり上がりもせぬところを買わざるを得ないのです。そうでしょう。だから、この周辺の人は収用されないで開発利益が非常に多い、まん中の人は押えられるから損するということを言っておるわけなんです。あなたは金をもらったら買えばいいじゃないか、また、そこでもうかるじゃないかと言うが、周辺を買うといったって、だれが売るものですか。おわかりですか。それでしようがないですか。
  189. 志村清一

    ○志村政府委員 一般の土地利用による譲渡所得あるいは土地売買による利益がどうだというふうな問題に関連するかと存じますが、その点につきましては税制でいろいろ細工をいたしておるわけでございますので、収用法自体の問題とはちょっと体系が違う、かように考えております。
  190. 横山利秋

    ○横山委員 かみ合わないですな。  次に、建設省にお伺いをしたいのですが、最近月賦で建物をつくる仕組みが非常に発展していますね。電建だとか、太平ですか、田中角榮さんが社長をやっておったあれですか、ああいうのが非常に発展しているのですが、あれは一体どこが監督しておるのですか。ああいう業界は何業界というのですか。あなたのほうが監督しておるのですか。監督の責任局はどこですか。
  191. 志村清一

    ○志村政府委員 宅地建物取引業者としての登録を必要とする者は、宅建業者の登録あるいは免許が必要でございますから、そういった宅建業者としての免許をもらっている場合には私どものほうの監督を受けるわけでございます。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 月賦で掛け金をかけ、ある一定時期になったら私の会社で建物をつくりますというやり方については、純粋な宅地建物取引業といえるかどうか。宅地建物取引業というのは、宅地、建物の売買のあっせん業者と見るべきでしょう。こういう業界に対する特別な監督制度があってしかるべきではないかと私は思うのですが、こういう業者に対する特別な監督というものはいま法律も何もないのですね。
  193. 志村清一

    ○志村政府委員 ちょっと私、その実態をつまびらかにしておりませんけれども、いわゆる建て売り業者的な要素も入りまして、家を建ててやって、それを分譲してあげます、そのためには一定の積み立てをしなさいという場合、建て売り業者になりますと、いわゆる一般宅建業者的な要素が出てまいります。そうして家を建てるとなると建設業者的な要素が出てまいりまして、それぞれ家を建て、あるいは建物の売買のあっせんをするということになりますと、宅建業法なり建設業法の監督を受けるということになろうと存じますが、お尋ねの業界がそのどれをやっているかにつきまして、私いま詳細に存じていないわけでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 固有の名前をあげるとなんですが、たとえば太平住宅だとか日本電建だとか殖産住宅だとかいうような業界であります。その問題について私がかねがね心配をいたしておりますのは、サラリーマンに対して、家を建てるからというわけで建物給付契約書ですか、こういうものを締結して、毎月毎月金をもらって、ある一定時期になりますと建物が建って、また月賦で返済をしていくという仕組みであります。この仕組みの欠陥は、計算してみると、金利が非常に高いということです。それから、契約を自発的にサラリーマンが解除をいたしましたときに、非常に損失があるということであります。この種の業界に対する野放しな状況であると思うのであります。それから、こういう業界が実際自分で建てる場合と、事実上一括して下請にやらしている場合とがある。だから、建ててもらうほうは、その太平なり電建なり殖産なりと契約をしておっても、家をやってくれる人は一括下請、トンネルに入ってきた小さな建設業者と話をしておって、ここが違うじゃないか、あそこが違うじゃないかと言っても、直接の交渉相手じゃないということがずいぶん多いのであります。いやになって、もうやめたと言うと、いままでかけた掛け金が原則として返らぬとか、多くは減殺されるとか、こういう状況が枚挙にいとまがないのであります。  私はそういうものは何か規制の措置があると思っておったら、どうもないようでございます。これは所管としては建設省の何局に当たりますか。
  195. 志村清一

    ○志村政府委員 ある会社が建物を建てるということをお客と契約をいたしまして、それを小さな業者に一括下請をさせるというような事態になったといたしますと、業者は当然建設業法の登録を得なければいかぬ、もし登録を得ないとしますと、業法違反になりますし、また、一括下請をいたしましても建設業法違反でありまして、部分下請は別でございますけれども、一括下請は禁止となっておりますので、それぞれの規定の適用はあろうと思います。  ただ、お尋ねの問題につきましては、住宅政策の一環というふうな意味建設省の住宅局も関係がございましょうし、あるいは、宅地建物取引という面で私のほうにも関係ございましょうし、あるいは、貸し金と申しますか、預け入れ金と申しますか、さような意味で大蔵省にも、あるいは、月賦というふうなことで通産省にも関係あるんじゃないかと存じます。
  196. 横山利秋

    ○横山委員 要するに、野放しになっておる。各局が部分部分を受け持っておって、全体的にこの種の業界の監督規制が行なわれていないためにたいへん町で被害が多い、こういうことを私は痛感しておるわけであります。  ここに一つその建物給付契約書を手に入れてまいりましたが、これによりますと、事実上建設費は三百七十五万円、そして、この契約をいたしました業者に対して三十万円、だから四百五万円の建設費である。三百七十五万円はトンネルで、事実上その下請に一括いってしまっておる。これは事実上というのですから、調べれば事実上、名実ともにそうだということがわかるかもしれないが、名前は一括下請ではないことは、まあうまいことをやっておるわけですね。実際としては、四百五万円のうち三十万円は元請が取って、そして三百七十五万円は下請にいくようになっておる。そして、この人は毎月掛けていなかったので、本来ならばいかぬということになる。けれども、いま直ちに契約し、直ちに家をつくられるならば、そのほかに四百五万円の三割から四割の金をくれ、なぜだといったら、前から掛け金をしておるならば、それが利息が高利で運用されるから、その分だけあなたは出さなければならぬ、こういうわけです。その理屈はもっともだけれども、三割から四割だといいますと、三割で約百二十万円くらいであります。こういう計算をしてみると、その元請の言うのがほんとうであるならば、家をつくろうとする人は、利息計算からしてみると、実に高い金利で家を建てるということになる。しかしながら、普通のサラリーマンがすぐに数百万の金があるわけではないので、便利な方法であるから、どうしてもこういうものが発展をしていく。しかしながら、この契約の方法その他について、建設省は野放しではないか。もう少しサラリーマン住宅をめんどう見るならば、この種の業界のあり方について規制を加えるべきではないか、こう私は考えておるのでありますが、どう思いますか。
  197. 志村清一

    ○志村政府委員 民間住宅の建設を促進せねばならぬというたてまえにおきまして、民間業者の養成と同時に、さような監督についても大いに意を用いねばならぬことと存じますが、今後とも検討させていただきたいと思います。
  198. 横山利秋

    ○横山委員 この種の業界に大きなのもありますし、まことに小さいのもあるわけです。だから、私の言うておるのが全部そうだというわけではないのですけれども、だんだんそういう傾向が増大をしておって、事実上建設業法違反を行ない、そして高利のものを使い、そして、何かの形で月賦が払えないようになった場合の契約解除のときのとほうもない損失というものは見過ごすわけにはまいらないのでありますから、建設省としては十分その点を検討してもらいたいと思うのです。  ついでに、いま国会に出ております宅建業法の改正案について、恐縮でありますが、この際伺っておきたいと思います。  土地の売買に宅建業者がほとんど多く参加をしておるわけでありますが、今回法律として提案されておりますこの改正案は、むしろ登録をされておる業者、それに対する規制であって、登録をされてない、もぐりの業者に対する規制には事実上なっていないのではないかという感じがするわけであります。一体、建設省としては、土地の売買に伴うもぐり業者をどういうふうに今後規制をしようとするのか、その行政的な方法について一ぺん伺いたいと思う。
  199. 志村清一

    ○志村政府委員 宅建業法におきましては、無免許事業は禁止されておりますので、もぐり業者は新しい改正案に盛られたいろいろの監督規定の適用はもちろんないわけでございます。営業できないのでございます。もし無免許で営業いたしました場合には、相当な罰則の適用があるということになっております。  これらにつきましては私どもといたしましては、業界自身におきましても、場合によってもぐりの業者を使うというようなこともないわけではないようでありますので、さようなことのないように、業界自身の自粛、規制ということをつとめさしておると同時に、片や、検察関係にも無登録業者というものの摘発をお願いいたしておるわけでございます。昭和四十年におきましても、無免許あるいは無登録で営業した方、百四十八が検挙されておるというような状況でございます。
  200. 横山利秋

    ○横山委員 もぐり業者はどのくらいあると推定していますか。
  201. 志村清一

    ○志村政府委員 数は私ども見当がつかないのでございますが、相当数あることはわかっておりますが、正確な、どれくらいというような数ということはわかりかねます。
  202. 横山利秋

    ○横山委員 この法律を改正して、社会世論であります、こういう宅建業者に対して規制をするということは、当然のことではありますけれども、しかしながら、実際問題として、社会的信用のある宅建業者がどえらい広告をしたり、インチキをしたり、うそを言ったりするよりも、もぐり業者の存在のほうが問題だと私は思っておるわけであります。そういう点について、やってはいかぬことになっておる、やったら監獄にほうり込むということになっておるというだけであって、実際行政行為として、この監督が結局野放しになっておる。お目付役がない。それは警察の所管で建設省の所管でないとでも言いそうなお顔に対して、ぼくは非常に不満を持っておるわけであります。この点については、特別な行政機構というやり方、あるいは摘発機構というやり方が、警察でなくて行政の中に存在をして、お目付役が存在をしなければ意味がないと思いますが、そういうことをおやりになるおつもりでございますか。
  203. 志村清一

    ○志村政府委員 各府県におきまして、第一線の監督を行なっておるわけでございますが、府県の建築関係の部局において大体宅建業法の監督を行なっておるわけでございます。これらにつきましても、累次人員の増強なりあるいは指導、監督の方法等について打ち合わせをいたしまして、かような無免許営業の少なくなることにつとめておるわけでございます。
  204. 横山利秋

    ○横山委員 それから、あわせて聞きたいのですが、営業保証金が十万円ということになっていますね。ネコもしゃくしも十万円ですね。大きなといいますか、相当の宅建業者も十万円、それから始めて、ちょっとした人も十万円。私は、これはちょっとおかしなことだと思うのであります。資本金だとかあるいは取引実態だとかいうふうなものに相呼応して営業保証金というものは多少格差があってもいいではかということと、一体、営業保証金というのは何に使うのだ、悪いことをやったらそれが没収されるということだけなんですね。これは宅建業界というものを健全に育成をするならば、営業保証金的なものは、業界でもってこれを運用するということのほうがむしろ望ましいのじゃないか。いま宅建業界というものは、だんだん統一をされてきましたが、決して弁護士会とかあるいは税理士会とかいうようなものほど団結があるわけではありません。何か呼び水をしなければ——あなたのおっしゃるような相互規制、牽制をさせる、自発的に発展をさせるというような呼び水がなければうまくいかないのじゃないかという感じがしておるわけであります。だから、もし、国あるいは県が営業保証金を取るというならば、それについては実態に合わせたような格差をつけるべきである。むしろ、半分ぐらいは業界でそれを積み立てて、そして相互保証に使うというならば、それも特別な意味があるのではないか。その辺は少しくふうすることが今日必要ではないかと思いますが、どうですか。
  205. 志村清一

    ○志村政府委員 この改正法案を提出するにあたりまして、宅地審議会で宅建業関係の専門部会を設けまして検討いたしたのでありますが、その席上におきましても、ただいま先生からお話のあったような議論も出たわけでございます。ただ、宅建業界の事業の性質によって分けるということにつきましては、いろいろな議論がございまして、必ずしも事業の性格によって分け切れないという問題等がございまして、今回はこの保証金に関しては手を触れないという結論に達したわけでございます。今後とも十分検討せなければならぬことかと存じております。  また、この保証金をただ供託しておくだけでなく、これをお互いに、何と申しますか、活用いたしまして、保証基金にするというふうなことは考えられないかということも議論にのぼったのでございますけれども、この点につきましても、まだ十分な確信が持てない段階でございますので、さようなことも前向きで十分検討しようということにいたしたわけでございます。
  206. 横山利秋

    ○横山委員 長官にお伺いしますけれども、何か国税庁としては不動産業と称しておられるようですが、不動産業をはじめ、十ばかりの業界はどうもインチキが多い、だから、重点職種として選んでおるというお話を、私は税関係の新聞で見たことがあるわけですが、そういうお考えでございますか。
  207. 泉美之松

    泉政府委員 考えといわれますとあれでございますが、私ども立場からいたしますと、不動産関係の場合には所得の脱漏が比較的多いようであります。したがいまして、税務職員の数と納税者の数からいたしまして、なかなか全部を実調することができませんので、できるだけ重点的に調査をするということにいたしておりますので、そういう意味では、そういった増差所得の多そうな部類に入るものであります。
  208. 横山利秋

    ○横山委員 その重点職種は不動産業以下何と何でございますか。
  209. 泉美之松

    泉政府委員 これはちょっと申し上げかねます。
  210. 横山利秋

    ○横山委員 申し上げかねますといったって、不動産業種は重点職種だとおっしゃったのでありますから、不動産業種は申し上げられるけれどもほかは申し上げかねるというのは、どういう意味ですか。
  211. 泉美之松

    泉政府委員 私は不動産業者が重点業種であるということを申し上げたつもりはないのであります。不動産業者の場合には比較的増差が多いことが多いということを申し上げたのであります。
  212. 横山利秋

    ○横山委員 多いことが多いという職種は、どうしても言わぬというなら、それはしいて聞きませんけれども、この譲渡所得という問題は、確かにあなたの御指摘のように、長年われわれ大蔵委員をやっておりまして、実務を体験してみて、問題が多いということは私も痛感をしておるわけであります。しかし、これは何とかくふうできないものかということを私ども立場でも考えておるわけであります。  といいますのは、それは商売でやっておる人は別としまして、一般の納税者にとっては一生に一度でございますから、それは家を買った、土地を売ったとなりますと、すぐ何だかわからぬけれども税金でぴんとくる。それで、もう一年じゅうわくわくして、いつ税務署がそう言ってくるか、言ってきたらどうしようどうしようといって、知恵もない頭をしぼって、税務署にどう言ったらうまいこと言えるだろうかというような雰囲気であることは事実であります。このまま推移するのでは策がなさ過ぎると思うのであります。たとえば譲渡所得のあり方についてもっと簡易な方法をとるとか、あるいは、あなたのほうの重点的な仕事であるならば、ここが他と比べて一番人員も不足であるならば、機構を整備するとか増員するとか、何かそういうくふうがなければ——土地の売買、家屋の売買について常にやはり納税者の心理が一般の常識とは別なところに動きやすい状況について、くふうがなくてはならぬ。私は決して過酷に取れということを言っておるのではありませんよ。もっとわかりやすく親切に、そして問題のないように指導する方法が、行政的にも立法的にも何かないかという意味で言っておるわけであります。
  213. 泉美之松

    泉政府委員 その点につきましては、まず根本は譲渡所得に対する税制——これは私から申し上げるのはどうかと思いますけれども税制が非常に複雑であります。本則の所得税のほかに租税特別措置法でいろいろな特例がございます。その内容がわかりにくいし、しかも、先ほど主税局長からお話がございましたが、買いかえというようなことでいきますと、税務署のほうにおきまして取得価額の引き継ぎというようなことをいたしましても、長い間そういう取得価額の書類を保存しておくということが、実際問題としてなかなかできにくいといったような点もありまして、まず何としても税制簡素化していただくことが根本だろうと思います。  そのほかに、いまお話のような納税者の方は営業のような場合と違って、年々税務署と接触するわけではございません。一生に一度とか、まあきわめてまれな回数しかそういう問題について税務署と接触しないわけでありますから、そういった人たちにわかるようによく説明する。最近は、譲渡所得につきましてのパンフレットを相当たくさん用意いたしまして、何かの会合のつどそういった方にお渡しするし、また、税の相談日におきましても、譲渡所得についての相談が一番多いといったような状況になっておるわけでありますが、そういった広報、宣伝ということを十分やっていきたいと思います。  それからまた、先ほどちょっと申し上げましたように、譲渡所得につきましては人手不足の状況にあります。したがって、税務機構全般につきまして、事務官の定員の再配分あるいは国税局間の定員の再配分も実施していきまして、そういう必要な部面により多く職員を配置する、こういったこともせっかく努力いたしております。また、来年におきましても、ぜひ定員の再配置を行なって、そういった実情に合うようにしたい、このように考えておるところであります。
  214. 横山利秋

    ○横山委員 まあ、主税局お答えならずとも別に異存はありませんね、いまのこと。  それで、時間がございませんから、ひとつ主税局長に別な角度でお伺いしたいのでありますが、われわれがくどく言っております問題に、租税特別措置法の現実的効果の念査の方法がないという点であります。これは私どもは野党でございますし、大体租税特別措置法というものはきらいなんですから、まあ、売りことばに買いことば的な議論がよくここでも行なわれるわけでありますが、なるほど立法の趣旨はわからぬではない。けれども、それが実際効果をもたらしておるのかどうかという点について、私の承知する限りにおいては、あなたのほうは念査の機構がない、またやっておらない。たとえば、配当の税金を下げれば、利子の税金を下げれば、これで株が売れるようになる、銀行の預金がふえるようになるといったところで、実際問題としては、だれもそれによってこれだけ上がったということを調べようがないのです。ですから、改正するときに、なるだろうということだけでやっておる部面が非常に多い。いろいろこの特別措置法を審査をしてみて、なるほど交際費をこうすれば、海外支店の交際費をまければ貿易がふえるだろうというだけの話です。何とか特別措置を、現実的効果はどうであったかという念査をする方法はありませんか。
  215. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にむずかしいことをいま横山さんるる申し述べていただきましたが、私も全くそうだと思います。私は外国でもこの問題の研究はこれからの問題だと思います。したがいまして、外国でも種々の経済成長促進のためのいろいろな措置をやっておりますけれども、それが経済成長の中でどの程度の効果をあげておるか、厳密な分析は、経済成長全体としてあらわれますので、ないようでございます。しかし、その特別措置ということはインセンティブということばであらわしておりますが、多分に刺激であり、それからまた心理的なものであろうと思うのであります。あるいはまた、大きな経済政策をとるときの心理的なささえといったような意味であろうと思うのでございます。そういった意味の評価もひとつぜひしていただくということと、それからまた、数字的な念査は、全体の中でどういうふうな効果を見出すかというのは、今後の研究問題としてまだまだむずかしい要因がございますけれども、研究すべき過程にあると思っております。
  216. 横山利秋

    ○横山委員 私は、結局そういう意味合いではあなた方を信頼したいのですが、特別措置ということについて本来的に反対をされる立場でなければならぬし、反対していらっしゃると思うのです。けれども、政治的に与党が言えば、政府が言えば、ほかの省が言えば、ある程度は聞かんならぬ場合もあるだろうと思うのです。どこでそういう理屈をもってそれに抵抗をするかという点について、私は何かの方法で、この現実的効果というものの理論、その実績をもって抵抗をしてもらうべきではないか。それが要求側と同じベースで議論をしておるから、特別措置はあなたがたの本能と背馳をして、ふえるばかりである。だが、私はあなたを信用しておるのですよ。本来的には社会党の主張に賛成で、特別措置はないほうがいいと思っておる。あなた方自身というよりも、主税局なり国税庁はそういうところだと思っておるわけです。だから、こういう点では、何かこの租税特別措置というものに対する抵抗理論、抵抗実績、かぎのかけ方というものが不足しておるのではないかと思うわけです。あなた方を信頼しておりますから、これから大いにひとつがんばっていただいて、こういうものがないように、長官がいまいみじくもおっしゃったように、複雑過ぎてあかんのだという点をひとつお考えを願いたいと思っております。  それから、最後の一つは、例の景気調整ですね。利子二銭を景気調整に使うということですね。  結論から申し上げれば、この間も言ったんですけれども、こんなあほらしい、よう心臓強く景気調整ということばを使うねと私は思っておるわけであります。けれども、法案となって出てくれば、審議する価値がないというわけにもまいりませんので、一、二伺っておきますが、だれが、どういう条件でこの条文の発動をするわけでありますか。
  217. 塩崎潤

    塩崎政府委員 その前に、いまの特別措置の問題で若干申し上げたいと思います。  私どもは、特別措置をふやす一方だけでないことは、もう御案内のとおりでございます。大正二年からできました重要物産免税制度も、種々の経緯を経た結果、昨年度の税制改正では廃止になったわけでございます。それが一つの効果の判断であり、また特別措置に対する世論の大きな批判の結果だと思うのでございます。免税という制度は非常に絶対的な免税であるし、それにまた新規重要物産免税制度というものは特定企業に片寄る、そういったことから見まして、私は新規重要物産免税制度も、効果という面から見れば、もう少なくなってきたということで、その座を特別償却のほうに譲ったと思うのでございます。それからまた、特別償却の中でも、たとえば鉄鋼は、この間まで高炉が特別償却の対象になっておりましたが、現在ではもう用を果たした、これはたいていの人が認めるところでございます。通産省といえども、この点は私どもの主張をいれて、高炉というものは特別償却の対象からはずしておる、こういった努力は重ねておりますので、そういった意味で私は特別措置の効果も絶対的に判断できないものでもない、こういうことだけをひとつ申し上げておきたいと思います。  なお、六十六条の景気調整のための「延納に係る利子税の特例」でございます。これはおっしゃいましたように、これが調整策として非常な効果があるというようなものではなくて、午前中も申し上げましたように、金融引き締め期間中は金を貸さないということならば、同様に法人税も貸さない方向でいこう、したがって、市中の利子と同様な過程をたどるような延納利子率の引き上げを行なうというものだけでございまして、確かに、調整というよりもむしろ景気過熱を刺激するような要因を税制から取り除こう、こういうものでございます。  そこで、だれが判断するかの問題でございます。法律では、まず日本銀行の公定歩合が引き上げられますと、ここに書いてございますように、法人税の延納利子税率を引き上げるかどうかの判断が必要となってまいりまして、そうして政令で定める期間内にはこの措置が発動されるわけでございますが、その政令は閣議で決定される、政府が決定する、こういうことになります。
  218. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと「当該基準割引歩合の引上げに応じ、」というのですから、裁量の働く余地なく引き上げたら引き上げる。時期的には、引き上げたら二銭も引き上げる。それから裁量の働く余地は「百円につき一日三銭五厘の割合の範囲内」のどのくらい二銭を引き上げるかについては裁量が働く、こういう意味ですか。
  219. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、公定歩合を一厘引き上げますれば、延納利子率は市中と同様に二厘程度引き上げれば足りると思っております。その最高限が、ここにありますように三銭五厘まででとどまるということになっております。一方、一厘上がったところからまた公定歩合が下がりますれば二厘下がる、そういった、先生のおっしゃいますような——また児戯に類すると言われるかもしれませんが、機械的に上下する仕組みとなっております。
  220. 横山利秋

    ○横山委員 法文の書き方で恐縮なんですけれども、これはその引き上げに応じて上がるというので、引き下げに応じて下げるとは書いてないのですね。これはどういうことなんでしょうか。この法文の書き方は、基準割引歩合が下がったらまた下げますということを暗に含んでおると解するのですか。なぜこういう書き方をしたのですか。
  221. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これの書き方は、御指摘の点もございますが、「政令で定めるところにより、」ということで、その利子率の引き上げ、引き下げは書くつもりでございますけれども、基本的には割引の割合に応じ一定の基準からスタートする意味におきまして、たとえば現在一銭五厘でございますが、一銭五厘からだんだんと上がっていきます、そういったことを念頭に置きまして「引き上げ」と書いたんでございますが、それが二銭三厘に上がってこれが二銭に落ちれば、まただんだん落としていく、こういうことは政令で書こう、こういうように考えております。
  222. 横山利秋

    ○横山委員 まだちょっとわからぬ。現状の公定歩合をいまの二銭と結合さしているわけですね。現状の公定歩合をいまの二銭と結合して、こっちが上がったらそっちを上げるというのでしょう。現状から公定歩合が下がったら下げないのですか。
  223. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは一銭五厘と、これは過去から見ても最低のところでございますが、二銭とは大体見合っておるというふうな考え方、もう少し高いところで見合っておると見てもよいわけでございますが、一銭五厘が下がるということはあまり考えられませんけれども、それはまた別の問題として、いままで一銭五厘より下がったことは過去に一ぺんもございません。そういった場合には、先生がいつもおっしゃるように、二銭はどうかあるいは二銭というよりも四銭ということを言っておられたと思いますが、そういった低金利時代が出ますれば、延納利子率の問題はこういった景気調整措置とは別に考えるべき問題ではないか。現在のところは、私は一銭五厘というものが平常状態の金利であり、二銭もまたそれと見合っておる、こういうふうに考えてもいいのではないかと思います。
  224. 横山利秋

    ○横山委員 そうして結合しておるやつが上がればこちらも上げる。上がっておった公定歩合が今度は旧に復した場合のことが書いてない。
  225. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほども申しましたように、一銭五厘をスタートにしまして、それから上がった場合にこういうふうに上がっていくのだという趣旨で、こういうふうに一般的に「引上げに応じ、」と書いてあるわけでございまして、それが下がりますればまた下がるけれども、一銭五厘がベースでございます。一銭五厘から見れば上がっておる、そういった意味の「引上げに応じ、」と、こういう意味でございます。
  226. 横山利秋

    ○横山委員 私は、法文作成上おかしかないかと言っておる。
  227. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、もうこれで十分理解できる表現だと思います。上げ幅という意味でこういうふうな表現をとった、こういうところでございます。
  228. 横山利秋

    ○横山委員 それはあなた少し牽強付会の説をなしておる。どうですか。これはあなたも率直におかしいと言ってもらわなければ困る。一銭五厘と二銭とがいま結合しておるとみなす。公定歩合一銭五厘が上がれば、文章は、引き上げに応じてこの二銭も上げると書いてあるだけだ。上がっておった公定歩合が旧に復したら、この二銭に返るとは書いてないと私は言うのです。いま、一銭五厘が下がる場合、二銭、すなわち元金も下げるという考えなら、景気調整機能として、一銭五厘と二銭の問題として理解をする、これなら私が譲歩してもよろしい。けれども、法律の書き方として、上げ幅は引き上げに応じて上げると書いてあるだけであって、この三銭五厘との弾力性は、引き上げたり引き下げたりする、最低線が二銭、こういう書き方をしなければいかぬではないかと私は言っているのです。
  229. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に法制通でございますので、私が申し上げてもどうかと思いますが、上がった場合のことが書いてありまして、一銭五厘と見合うところの二銭は当然下がる、こういうふうに解していいのじゃないか、これは、もう何回も申し上げてくどいようでございますが、一銭五厘以上に公定歩合が上がったときの規定でございます。それは先ほど申し上げましたように、基準割引歩合の引き上げに応じまして三銭五厘の範囲内で上げ、また下がったときには下げる、こういうわけでございます。そういった引き上げのときでございまして、もとに復したときには、自然に復すると申しますか、これは別問題だ、こういうふうに考えていただければいいと思います。
  230. 横山利秋

    ○横山委員 まあ、やり方はわかったけれども、法文の書き方は拙劣であるという意見の表明をしておきます。  政務次官にお伺いをするのですが、景気調整機能というものが税金の利子に取り入れられた。そのことは、私に端的に言わせれば、こんなことで景気調整機能とはおこがましい。税制を複雑にするばかりであって、何の価値もない。こんなことで景気調整機能が働くなんということはあり得ない、ぼくはそこまで極言してもいいと思う。ただし、政府が景気調整機能としていろいろやっておる中の一環であるというならばまた恕すべき点もあるが、それとても、こんなところに手をつける必要はないと思うのです。  私があなたにお伺いしたいのは、政府の景気調整機能は今年度予算及び法律で何と何と行なわれ、これはその一環であるのかということが第一でございます。  第二番目には、今度は塩崎さんに聞くが、この六十六条というのは、まあ入り口にちょっと入ってみた。これから税制に景気調整機能を拡大をする意思をもってこれは設置された。拡大をするとするならば、どういう点に景気調整機能が予想されるかという質問であります。
  231. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど、その他の制度で政府が景気調整措置を講じているものがあるかというお話でございます。国債発行規模あるいは財政の調整的な運用は行なわれることは当然のことであります。私の知るところでは、その他の法律によりまして景気調整あるいは景気調整措置の権限を留保したものはあまり見当たらないような感じでございます。この措置は一つの新しい調整措置の一つとして考えられるものだと思います。  いろいろな御意見が出されたわけでございますが、外国税制でも、まず法人税、特に所得税でございますが、所得税自体に景気調整措置があるのではないか。非常に景気がよくなって、所得がふえたときに累進税率が働いて、いわゆるビルトイン・スタビライザーの機能がある、税制の本来の調整機能が直接税にはある、これだけでも足りるのではないかという議論さえあったわけでございますが、最近の税の趨勢では、それだけでは足りぬのだ、もう少しやるべきだということで、御案内のように非常に広範にやりかかっておるのが現状でございます。しかし、私が見るところ、わが国ではなかなかそう簡単でもなかろう、景気調整を起こしますところの経済の状況の原因が、多分に投資過剰から起こってくるような日本でございますから、アメリカのように所得税の増税というようなことはなかなか容易でもない、ことに消費が原因でないような場合には、消費税をもってこれに対処するということもいろいろな意味で御批判がございましょう。  そういった意味で、大幅な景気調整措置は、現在の日本のような資本蓄積の乏しい国、あるいは景気過熱の原因が設備投資にありがちな国である場合には、一般的な制度としてあまり適当ではないのではないか。それをまた、法人企業原因だといいましても、アメリカのように定率償却の限度を削減するというようなやり方も強過ぎますし、そういった意味では非常に限局される。やはりこういった特別償却あるいは延納というようなものを、恩典的なものと考えて恐縮でございますけれども、こういったものを圧縮して、景気調整に逆行するような要因は、少なくとも排除するのが適当ではないか。これが今後またいろいろな経済情勢の変更がありまして、また新しい行政が出ますれば、もう少し税制で大きな施策を施さなければならぬ。ことに最近のように、企業の内部留保、特に減価償却の幅が大きくなってまいりますと、外部資金への依存度が少なくなる、そうしますと、外国のように金融引き締めだけで効果を奏しないかもわからない、こんなこともいわれておりますので、今後の景気調整措置をどう講ずるかは、これからの経済情勢、さらに経済政策のあり方いかんによろうか、私はかように思っておりますが、現在のところ、これが程度ではなかろうかと思います。  なお先生は、延納の問題にしろ、特別償却にしても、効果はないと言われますけれども、御案内のように、四〇%近くの延納率が現在では九%、その前では二五%というふうに、延納の利用のしかたが非常に違うことから見ると、これはやはり相当金利を高くすれば、しかたがない、これはもう即納していったほうが得だということになれば、法人税は貸し付けずに済むという効果も出ようかと思います。しかし、一般的な税率の引き上げあるいは償却の削減ということに比べますれば、効果は薄いかもしれない、決してこれがマイナスとかあるいは全く効果がないというのも言い過ぎのような感じが、私はしております。
  232. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろおっしゃったけれども塩崎さんのことばを私流に解釈すれば、本条項を設定をする積極的な意義がないと言わぬばかりの話と私は承ります。私がこれを必要悪として認めるにしても、これは糸口であって、今後税制の中に景気調整機能が拡大をされる前提としてこれが設定された場合、あるいは他の法案、他の政策あるいは予算の中で本年度景気調整機能がいろいろ出ておるから、それの見合いとしてこれが行なわれる場合、この二つの場合には、まあある意味ではかなり意義があると言えるが、しかし、これだけが独立して景気調整機能でございますと言うには、税制を複雑にするばかりで何の効果もないと私は思うのであります。  どうですか、政務次官、これをやらなければならぬという積極的な意義がないと思うが……。
  233. 小沢辰男

    小沢政府委員 私は、先生のおっしゃるように、どうも無意味だとは思わないのでございます。やはりそれなりの役割りは果たし、また効果があると思っております。ただしかし、どうもそれにしてはあまり看板がりっぱといいますか、大き過ぎるじゃないかと言われるような趣旨は——何も私どもこれで景気調整を全部やるんだと言っておりません。ただ、たまたま項目の表題で景気調整のための課税の特例ということでこう書かざるを得ないわけでございますし、先ほど来局長が説明を申し上げたように、私はやはりこれなりの意義があると考えております。  ただ、そのほかに景気調整について政府はどういうようなことをやっているか、それとの関連においてならわかるがと言われますが、先ほども申し上げましたように、法制上の問題で特別私もいま気がつかないのでございますけれども、ただ、予算編成にあたりまして、私どもは景気調整に対する考え方をいろいろそのつど考慮に入れて編成をいたしております。たとえば、昨年の予算編成では、御承知のように三千億にのぼる減税をやりまして、あるいは公債発行というもので景気回復の政策の一つにしておったわけです。今度は非常によくなってきた。したがって、本年度は減税の幅もある程度所得税中心を置きまして、その幅についても、そういうような経済全般の見通しを考えて、一定の規模に考えていくような姿をとっておりますし、また、公債発行につきましても、すでに四十一年度の公債発行について、年度末に御承知のように六百五十億円ですか相当減らしまして、公債発行の弾力的な運用によって、それぞれの景気の動向いかんに対処していった。こういう考えは当然今年度も財政全般の弾力的な運営によりまして、景気調整の役割りをある程度果たしていきたいということをあちこちで申し上げておるようなわけでございますから、特別にこれに関連するような制度としては、ほかの法制なりその他の措置でとってはおりません。ただし、私は、延納にかかる利子税の特例については、先生のおっしゃるように全然意義がないというふうには考えていない。また、局長も意義を申し上げておるわけであります。  ただ、少し看板が大き過ぎるじゃないかというようなことになりますと、これはおっしゃるように何もこれで全部やるつもりではありません。しかし、それじゃそのほかの書きようがあるかと言いますと、やはりこれは景気調整の関係で、日銀の公定歩合が引き上げになる、そういうようなことをとらえてやるわけでございますから、やはりこの表題はこれでいいのじゃなかろうかというふうに私は思うのでございます。
  234. 横山利秋

    ○横山委員 長官並びに主税局長、どちらでもいいのですが、私の意見を申し上げてお返事をいただきたいと思うのです。  一銭五厘と二銭と直結するということはいま初めてお伺いしたのですが、二銭なら延滞を含めて四銭、これはずっと前からきまっていますね。合計して四銭をきめておる年月を考えますと、公定歩合一銭五厘という時期ではないですね。少なくとも、いま低金利の時代に入っておりますから、過去における二銭ないしは四銭という時代と見合うためには、むしろいまの二銭ないしは四銭なりが高過ぎるんだ、それをまた高くすることばっかり考えているという気が私はするわけなんです。これは国税の収納歩合をふやすということが、実は隠された意味である。そうなら私はそれなりに話がわかる。いま延納の場合は銀行から銭を借りてでも税金を払ったほうが安いですね。ですから、税金が払えぬ、税金を払うために銀行に銭貸してくれとは言えぬけれども、延滞税が加算されるとえらいから、金利をかせぐためにも、何とかして銀行から無理して銭を借りて税金を払う、こういうしかけなんです、いまのしかけはね。あなたのほうはおそらくそういうことを考えて、私が四銭を下げろと言っているのに抵抗をしてみえる。だから、収納歩合がふえていく、滞納は減少していくということかもしらぬけれども、いささかこすいではないか。税金を払う銭がない、それなら銀行から借りてこいと言わんばかりの話ですよ。これは少し現状で過酷ではないか。だから、一銭五厘を二銭に直結をするという塩崎理論は不当である、けしからぬ。本来は、四銭として長年通してまいりましたときの公定歩合がどのくらいだったか知らぬけれども、その平均値と直結をするのがほんとうで、二銭ないし四銭を下げて、利子税、延滞税を少し利率を下げて、そこから出発をするなら話はわかるけれども、景気調整なんてうまいことを言っているが、これは実は隠された滞納処置の方法である、こう考えておる。税金を滞納させずに集めるというくふうは、それは収税官吏としてごもっともではあるけれども、それならそうで、もっとはっきり言ったらどうです。それを何と、誇大広告のように景気調整機能なんてことはおこがましい。私はそう思う。もしも私の言ったことに心中じくじたる思いがかりにでもするとするならば、二銭ないし四銭を下げて出発をすべきである。まさに正々堂々の私の意見にあなた方は反省をすべきではないか。
  235. 塩崎潤

    塩崎政府委員 景気調整措置からまた日ごろの御持論に返ったようで、私もなかなか答弁がむずかしいのですが、先生いつもの御持論でございますけれども、延納と滞納との間の限界を、御存じでありながらわざと区別しないで申されているような気がするわけでございます。  言うならばこの二銭のほうは約定利息であり、滞納の場合の延滞金の四銭は遅延利息でございます。しかも、公的な税金を納めさす意味においてのペナルティーを含みました四銭でございます。堂々と法律上認められる期限の延納の場合の二銭、これは御案内のように、中小企業は現在二銭で借りられるところはないと思います。あるいは二銭二厘あるいは二銭四厘、それでまた歩積みが積まれるというのが、ここで伺っておる皆さん方の御意見のようでございますが、それから比べると、二銭というのはむしろ延納利子としては安いのではないか。そこでもう一方、滞納した場合、これは私どもはやはり納期限内に納めていただかなければならぬ。延納する場合について一定の要件を満たす場合の納期限の延長でございますから、これは二銭でいいのですが、堂々と理由なく遅延する場合には四銭、しかし、これは二銭にプラス二銭で、決して私は現在の滞納の場合の制裁を含めての遅延利息としては高いものだとは考えておりません。過去には、横山先生の御指摘があったわけでもありませんが、六銭を現在四銭に下げている。これは過去の終戦後の高い金利のときから、金利が正常化された現段階を反映しておると思うのでございます。そういった様相は十分見ておりますが、現在の日本の資金蓄積の状況で金利の状態をずっと考えてみますと、私は二銭はむしろ安過ぎる、四銭も私は決して高いとは思っておりません。
  236. 横山利秋

    ○横山委員 長官、滞納の数字は手元にありますか。数字はここ数年来どんな動きをしているか伺いたい。
  237. 泉美之松

    泉政府委員 滞納の数字は、昭和三十八年から三十九年にかけまして、税額では、減少いたしましたが、四十年、四十一年と若干ずつふえてまいっておるのであります。四十一年十二月末現在の滞納総額は約八百四十六億円でございます。四十年十二月末は約八百五億円でございます。一年間に約四十一億円ほど増加いたしております。
  238. 横山利秋

    ○横山委員 どうもありがとうございました。これで終わりにいたします。
  239. 内田常雄

    内田委員長 次は、田中昭二君。
  240. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 まず、特別措置法につきましては悪名高きものもありますし、いまから私質問申し上げる中においてはいままで言われてきたこともあるかと思いますが、ひとつ、要をとって簡潔にお答えいただきたい、このようにお願いします。  長官のほうは国税局長会議をやっているようですが、よろしゅうございますか。私のほうは大体いいと思いますので……。  まず初めに次官にお尋ねいたします。  利子配当の特別措置についてでございますが、今回の改正で、ほぼ税制調査会の答申どおり利子配当所得に対する特例税率の引き上げが実現いたそうとしております。しかしながら、この利子配当に対する特別措置の不公平に対する不満は最近とみに強く、国民の大きな世論となっておりますが、この事実をどのようにお考えになっておるのか、その所信を伺いたいのでございます。
  241. 小沢辰男

    小沢政府委員 いろいろ御批判があろうかと思いますが、私どもは、これは貯蓄奨励政策からしてどうしても必要だと考えておるわけでございます。ただし、いろいろな御批判もまたありましたり、あるいは税制調査会におきまして議論もございまして、今日のような三年間暫定的に税率を五%上げるということで御納得をいただきたい、こう思って改正案を出しているわけでございます。
  242. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 利子、配当所得の特別措置で約千億の減税、この中にはもちろん少額貯蓄の非課税による減免も含んでおりますが、この減税を行なっていることはほんとうに驚くべきことであります。金持ちに千億の補助金を出して、そのためにどうして高校を出たばかりの初任給に税金をかけなければならないか。これは再度例をあげて申し上げますれば、配当所得の場合には標準世帯で二百二十六万円までは税金がかからない。また、これを給与所得に例をとれば、三十万円ぐらいの所得税と住民税まで加えますと四十万円ぐらいの税金になる。そうするならば、むしろこの利子配当の特別措置を廃止して、その分だけ給与所得の減税に回すべきではないか、このように思いますが、まず、この点についてお答えをお願いしたい。
  243. 塩崎潤

    塩崎政府委員 給与所得税の減税の必要なことは言うまでもないことだと思うのでございます。しかしながら、利子所得につきましての特例あるいは配当控除の問題、これは源泉分離という意味ではございませんが、非常に長らく沿革を持ちました制度でございまして、これに急激な変革を加えますことは貯蓄者の心理に非常な影響がある、やはりこれは漸進的な方法を講ずることによって、減税財源といたしまして給与所得税のほうの減税に回す、こういったことが現実的な政策としては適当ではないか、こんなようなことで、今回も利子、配当の軽減措置の特例を少し制限いたしまして、三百億円ばかりの財源を生み出して給与所得税の減税に充てた、こういう次第でございます。
  244. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次官にお願いしますが、そのことで租税負担の公平の原則からはどのようにお考えになっておるか、一言だけお願いします。
  245. 小沢辰男

    小沢政府委員 配当、利子所得者が一般の給与所得者に比べまして、いわゆる課税最低限の問題が議論されまして、その点から見て不公平じゃないかという御意見については、私どももわからぬことはございませんけれども、ただ、この利子、配当の特例という点は、貯蓄奨励なりあるいは投資市場の育成等いろいろ考えまして、他の高度の政策目的といいますか、そういうものから見てどうしても必要じゃないか、そういう意味で、私どもは先ほど来申し上げておりますように、そうした経済政策全般の面から、特にこの特例を実施しているわけでございまして、なお、今回の改正によりまして、これがいま申し上げました経済政策目的というものにどういうような影響を与えていくかということについて、慎重にその推移を見まして再度また三年後には再検討をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  246. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、このたびの改正で、償還差益に対する源泉課税についてお尋ねいたしますが、従来割引債の償還差益は法律上利子にあらずということで、雑所得とされております。利子所得と同様の源泉徴収が行なわれなかったのでありますが、今回の改正でその償還差益に発行時に五%の税率による所得税の源泉徴収を行なうことになったが、この改正案の出ました経過並びに理由についてお伺いしたい。
  247. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう田中先生御案内のとおりで、私どもは税負担の公平の見地から、同じく源泉分離課税といいましても、税引き利回りがひとしくなるような課税でなければならぬ、そういう意味で預金利子の源泉分離課税、これは税の筋から少し離れた制度でございますが、課税を受ける、しかし、償還差益は雑所得であるからということで申告納税だということでありましたが、申告納税であるといいましても、結局、わが国の納税水準では、御案内のように申告が出たためしが一件もございません。したがいまして、実質的には償還差益は非課税ということで投資家の間に歓迎されておったわけでございますが、これはやはり一〇%の源泉分離課税を一五%に上げるようなときでございます。利回りからいいましても、割引金融債は六分二毛二糸の利回りでございますが、銀行定期預金あるいは国債は六分七厘九毛、国債で一割五分の源泉課税を受けますと五分八厘であります。割引金融債は一年で国債は七年でございますが、どうも課税をしないと非常に税引き後のアンバランスがはなはだしくなる、そういったことで、多年の問題でございましたが、一〇%を上回るような非常に高い税率を引き上げるこの際でございますので、割引債も理論にとらわれないで負担公平の見地から税引き利回りを同じくするような姿で、バランスのとれるような見地から償還差益についても源泉課税の適用をするようにお願いしておる次第でございます。
  248. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 割引債の償還差益が経済的には実質利子であるということは何人も認めております。この利子所得としての課税は当然であるし、またこの課税がおそ過ぎたのではないか。今回の五%だけの税率で済ませて、しかも分離課税が行なわれるこのような中途はんぱな改正になっておると思いますが、今後この問題はどのように考えられまして処置をされていくものかお伺いしたいと思う。
  249. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃいましたように、いままでこの問題が意識されながらここまで来たったわけでございます。私どももここに提案いたしまして、ある程度のところまでいったこともございます。何といっても、割引債は、銀行あるいは金融機関が所持している間は、法人税の問題といたしまして、企業でございますし、ことに金融機関でございますので、比較的帳簿で載っておりますし、その割引償還差益は法人税の課税を受けておったわけでございますが、だんだん個人消化が進んでまいりますと、これは放置することができなくなった、これが私は大きな原因だと思うのであります。  さらに、これまでは商工中央金庫あるいは農林中央金庫、これは政府機関まではいっておりませんけれども、特殊な目的を持つような機関が割引債を発行しておったような経緯もあったということで、これはもう大正年代から非課税であったことが多分に惰性といたしまして残っておったのが私は原因だと思います。  御指摘のような点、非常に私ども反省させられる点でございますが、今回は一五%の大幅な引き上げを契機に、ぜひひとつ実現したいと思いまして御提案申し上げている次第でございます。  将来の問題でございますが、これは期限は三年ついておりますが、三年期限が経過いたしますと雑所得に戻り、また申告納税だということになります。申告納税が完全でいくという自信がございますれば、そのほうがむしろ総合課税という見地からすぐれるわけでございますが、おそらくそれもなかなか問題でございましょう。三年間の経過を見、そのときの状況で判断してみたい、かように思います。
  250. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、輸出振興のための措置についてお尋ねいたしますが、まず輸出の交際費取り扱いであります。輸出の取引に関しまして、海外の支店等におきまして支出する交際費を新たに交際費否認の対象から除外するということになっておりますが、この改正の理由はどこにあるのかお伺いしたい。
  251. 塩崎潤

    塩崎政府委員 二つばかりございます。  第一は、輸出競争というものが非常に熾烈なんでございまして、そういった意味で海外諸国の企業との競争でございますので、海外諸国も税制を持っておる、その税制は、交際費を規制しておる国と規制してない国がございます。規制をしてない国とも競争しなければならない日本でございますので、そういった見地から見ると、海外交際費だけは排除したほうが適当であろうというのが第一の理由でございます。  第二の理由は、言うまでもなく輸出振興は大事でございます。日本の、資源の乏しいわが国におきまして、輸出というものは大事な政策でございます。この二つから排除いたしました。  なお、付随的には、今回交際費全般につきまして少し強化をと申しますか、適正化をはかっております。こういった機会だけに、なお海外との競争を考えますと、海外交際費をはずしておいたほうが適当であろう。なお、海外交際費を規制の対象といたしております国といたしましては、先ほどもお話が出ましたが、イギリスは、交際費は全部否認いたしますけれども、海外交際費だけは全く無条件に損金に算入する、こういうことにいたしております。
  252. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、やはりこの交際費でございますが、これを、たとえば国内で支出しても海外で支出しましても、輸出の取引促進の接待には変わりないはずではないか、いまさらこのような制度を設けた理由はどこにあるのだということが一つ。海外支店等の接待が、輸出のためのものか、輸入のためのものか具体的にはっきりしない事実がありはしないか。国内の本店から出張した者のために使用されたものかどうかもはっきりしないのがありますが、この判定をどうするのか、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  253. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるような多分に海外交際費というのは何かというむずかしい問題がございます。これにもいろいろな考え方ができましょうが、やはり国内におきまして交際費を制限せざるを得ない、さらにまた、今度の改正案のように交際費を増加したような場合には全額を益金に算入するというような強化をはからざるを得ない今日、いかに輸出関係商社といえども、国内でどんな接待をしても、これは輸出でやったから無条件に損金算入してもいいということはどうもバランス上おかしい。それから外部から見ておりましても、あの会社は国内でどんなところで接待しても無税であるということはおかしいという気がいたすわけであります。そういった非難を防ぐ意味におきまして、やはり海外で日本社会で目に見えないところで使われました費用、つまり、簡単に申しますれば、海外のたとえば企業に支払って海外の企業から受け取りが出るような交際費非課税になるというふうにお考えいただければ簡単かと思うわけでございます。
  254. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大体この輸出交際費の特別措置というものができたことが、輸出の促進につながるかどうか。また、この交際費の問題をはじめ、輸出の振興のためにはいろんな税制の措置が相当幅広く講じられております。とすれば、輸出すればどうしてそのような形で税金を軽減されるということになっていくのか、そういう点についてもう一回。
  255. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう田中先生御案内のように、輸出振興についての税制上の措置は数多く設けられておるわけでございますが、大きく分けまして、海外市場開拓準備金制度、それから輸出割り増し償却制度、この二本が大きな柱でございます。  これは何からきたかと申しますと、西独の措置をならいました輸出所得控除制度からきたわけでございますが、輸出所得控除制度は、御案内のようにガットにおきまして補助金に類するという非難があり、それが変わりまして海外市場開拓準備金制度と輸出割り増し償却制度に改められたわけでございます。つまり、輸出をするならば、輸出取引割合に応じまして償却を増していく、理論的には問題もございますが、海外との競争をする場合に非常に激しい陳腐化の事実が起こる、そういった機械設備につきましては、輸出割合に応じて償却を割り増ししていこう、償却でございますから、ガットの言う輸出補助金という非難も少なくなる、さらにまた、もう一つの海外市場開拓準備金も、海外市場開拓の種々の費用が要る、これはいま支出するわけじゃない、しかし将来支出するということを考えますと、いまから積み立てておく、しかし、五年たてば五分の一ずつ繰り戻して益金に算入する、これも一種の準備金でございますから免税ではない、したがってガットの非難もない、こういうふうな考え方の上に二つの制度がございます。  先生のおっしゃいましたこれがどの程度輸出に寄与したか、先ほど来議論に出ておりますように、特別措置の効果の直接的な評価の方法がいまのところは発見されてないその一つの例証だと思うのでございますけれども、わが国の経済にとりまして輸出が大事なことは言うをまたないところでございます。過去におきましての輸出の伸長は、十年間どこの国よりも高く、一五%、一六%の年率で伸びてきたことは事実でございます。したがいまして、見方によれば、こういった制度もその一環をなしたといえるかもしれませんが、それがはたして、このために輸出が直接何%伸びたということは関係がない、むしろ私は、ともかくもむだをなくし、国内における設備を近代化し合理化し、直接輸出に対する奨励措置を与えるよりも、減価償却の増大、こういった形で近代化し、大量生産を行ない、コストを下げて、コストの面から競争するのが大事な輸出振興策ではないか、こんなことを言ったことがございます。いま申されました御質問に対しましては、こんなふうな見方をしております。
  256. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次は、土地対策及び住宅対策についての特別措置でございますが、いまの横山委員の質問と少し重複するところがあると思いますが、ひとつわかりやすく、簡潔に要領よくお答えいただきたいと思います。  まず、土地収用法の改正に伴う譲渡所得の課税の特例でございますが、譲り渡しが、買い取り等の申し出があった日から六カ月以内にされたときも、その譲渡所得に対する所得税または法人税の課税にあたっては千二百万円の特別控除がなされることになっております。つきましては、まず、現在の収用ぶくれというような批判がきびしいさ中にあって、しかも、かつ千二百万円という多額なる譲渡益金に対する非課税をする趣旨が、そういう税制のあり方としましても、少し政策の走り過ぎではないか、このようにも思われますが、この点についてはどうでございましょう。
  257. 塩崎潤

    塩崎政府委員 収用待ちとかあるいは収用もうけと申しますか、収用によって得をしたという方の声もよく聞きますし、おっしゃられます点は、収用に対する大きな御批判だと思うのでございます。  しかし、基本的には収用は、御案内のように、自分の意思にかかわりない、自分がもうけようと思ってもうけた利益ではございません。自分の意思に反してと申しますか意思によらない収用である、しかも場合によりましては、先祖伝来の土地を移らざるを得ない場合、これはどこの国でも、強制的な転換につきましては税は徴収しないというような仕組みをとっているのが各国の例だと思うのでございます。そういった点は、私は全部が全部受け入れられる理論とも思いませんけれども、税の原則を立てるにあたりましては考えなければならない要素だと思うのでございます。  第二は、これは御案内のように、今回はいままでと違いまして、事業認定時の価額で収用することにいたしてございます。これまでは収用時の価額でございますから、事業認定があり、事業の細目の公告がありいたしますと、だんだんとその土地が上がってまいります。いわゆるごね得ということが起こってくるわけでございます。ところが、今度はもうごね得をなくそうという収用法の大きな改正、その一環は事業認定時の価額、こういったことを考えますと、収用を受けた者と、収用を受けないでその後の開発利益——先ほどもお話がありましたが、開発利益を受けた人とのバランスを考えますと、これはやはり税制上の相当なしんしゃくをしないと不公平感がますますつのるではないか、収用を受けたために、その後の開発利益というものを全く受けなくて、先祖伝来の土地を離れてどこかの土地を求めて行かざるを得ない者に対しては、やはり相当な税制上の恩典を与えざるを得ない、こういった二つの点が、今回の土地対策としての収用法の改正のねらいでございます。  なお、先生お聞きのように、それじゃ、そういえば収用だけなぜそんなことをするか、収用でもいま申し上げましたような収用もうけ、収用待ちというようなことがたくさんあるというお話でございますが、それはともかくといたしまして、民間の宅地造成も大事だということで、なおそのほかに、半公共的な大規模の宅地造成事業にあたりまして土地を売った方に対しましては、年三百万円の控除をやる、こういうような改正案を御提案していることは御案内のとおりであります。
  258. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 また重複するようでございますが、今回の収用価額の算定も、これまで言われたようにごね得した者とのバランスの上からもそれ以下に下げられずに、結局、これまでのごね得分が収用価額の形成にあずかっている事実等からすれば、だれが考えても、千二百万円という特別控除は一般の庶民からすれば法外な価額であります。しかも、この特例の代価は国民から支払われる税金に相当する部分でもありますし、それにおんぶしたようなことも考えられるわけです。税負担の公平の原則からはなはだしくその趣旨を阻害しますし、土地を持った人だけを利益するだけで一般大衆を苦しめるものである、このように思うのです。この点がまず一つ。  それからまた、現在政府には収用を実行する実力がないことを証明しておるようなものではないか、このようにも思いますが、この点についてお考えをお願いしたいと思います。
  259. 塩崎潤

    塩崎政府委員 第一の御質問は、千二百万円というものは少し法外ではないかというようなお話でございます。千二百万円の見方はいろいろございますが、私どもは、譲渡所得の性格から見、さらにまた今回の収用法の改正から見て、まあまあ妥当なるものではないか。すでに現在におきましても、先生御案内のように、特定公共事業につきましては七百万円という特別控除がございまして、これは個人にも法人にも適用がある、こういうことになっております。今回は収用法が一段と強化されまして、先ほど申し上げました事業認定時の非常に早目の安いときの価額で収用する、こういった犠牲を考えますと、私は、相当な金額の控除をしないと、その他の収用を受けなかった者の開発利益と比較いたしましても酷に当たる、こういう気がするわけでございます。  なお、譲渡所得の金額は、御案内のように取得価額が昭和二十八年の相続税評価額でございますので、非常に大きな金額があることは御存じのとおりでございます。そういった意味で千二百万円は決して不当ではない、これは普通の所得の課税最低限と比較すべき金額としてではない、こういうふうに考えております。
  260. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次は、住宅を買う場合に支払う借り入れ金の利子については、たとえば勤務先から補給金を受けて、その補給金には所得税を課さない、このことから判断しますと、給与所得や退職所得の支給を普通に受けて、しかも、その上に住宅に関する経済的利益やその支給を受けた場合にはその分には課税しないが、逆に、給与所得、退職所得をもってその犠牲で住宅をつくった場合には税金がかかるということになりますが、この理由はどのように、また今後どういうふうに処置していったらいいのか、そのことについてお伺いいたします。
  261. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これも政策的な措置でございます。その政策と申しますのは、勤労者の持ち家奨励という政策からきたものでございます。昨年の改正でも、御案内のように二十九条の一項ですが、企業が社宅、というよりもだんだんと持ち家制度に移しておる企業が多いわけでございますが、そこで企業従業員に金を貸して家を建てなさいと、家を建てる場合に金を貸し付けることがあるわけです。そのときに私どもは、これまでは五分の利子を取らないとその五分分までは給与と見る、こういうふうに見ておったわけでございます。しかしながら、そういったこと自体、帰属所得と申しますか、現物的ないわゆる金は受け取ってないのに所得と見る点になかなか非難もございましたし、第二には、いま申しました持ち家奨励政策から申しますと、こういったところまで利子を認定して課税するのもどうかということで、去年の改正では、企業従業員に持ち家奨励のために金を貸し付けまして利子を取らなくても、あるいは低い利子を取りましても、五分まで認定しないというようなことをしたわけでございます。そうなりますと、今度の改正でそれがまた尾を引いてまいるわけでございますが、銀行から従業員が金を借りましても、銀行に対しては利子は免除してくれないわけでございますから、正規の利子を払っていく、その場合に、企業自分のところは金を貸さないのだけれども、銀行が貸してくれるならば、その銀行に払う利子の一部は補助しようということが行なわれるわけでありますが、それはよく考えてみると、企業みずからが銀行から金を借りて直接従業員に金を貸せば、その差額は去年の改正で所得と見ない、給与と見ないということになっておりますから、その考え方を・推し進めますと、従業員の支払い利子に対しまして企業が補助いたしましたものを給与と見なくとも、十分去年の改正から推し進められて成り立つであろうし、また、持ち家奨励政策から適当ではないか、こういった見地で三項を新しく設けた次第でございます。
  262. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次は、特定の宅地造成事業の用に供するために土地を譲り渡した場合、その譲渡所得に対する所得税には三百万円までは特別控除を行なっておる。この点まずお尋ねしたいわけでございます。  次に、現在宅地造成事業者は、私鉄等の交通会社に多いようでございます。これらの事業者は周辺地の山林を比較的安く多量に買い入れて、それを造成して相当な利益を得ておる。この制度の適用者はむろん土地を提供する者であるが、そのはね返りの利益が造成事業者に及ぶことは言うまでもないのであります。すなわち、土地購入の価格も買いたたかれる。それによって現在でも相当もうけている企業をますますもうけさせることになる危険性があると思いますが、この点はどのようにお考でしょうか。
  263. 塩崎潤

    塩崎政府委員 田中先生、三十八条の十三の「特定住宅地造成事業に係る譲渡所得の特別控除」の御指摘だと思うのでございます。この制度自体、いま申し上げましたように、なかなかむずかしい制度でございます。この制度の趣旨は、先ほどちょっと触れましたけれども、まだまだ住宅政策におきますところの公共的なウエートよりも民間部面のウエートのほうが高いわけでございます。民間の自力住宅建設にかかっている面が多い。ところが、今回の改正のように、収用だけで非常に恩典がふえますと、民間の宅地造成事業はかえってやりにくくなるという一方の欠陥が出てくることも、これは事実でございます。そこで、今回三十八条の十三の三項にあります一定の要件に該当するような場合、たとえば大規模の面積、しかもその中の道路、公園その他の公共の用に供する空地の面積が全体の四分の一以上ある、それから学校その他の公益的施設の敷地が確保されている、こういった公共的な部面を含んでいる、さらにまた先生の御心配の非常にもうけてくることのないような意味において、しかも予定価額が一定金額、これはもう私はもうけのない金額を考えておるわけでございますが、こういった要件を満たせば、そういった事業者に買われる土地の個人については三百万円の控除をしていく、そうして民間企業の宅地造成を援助しよう、こういう趣旨でございまして、先生御指摘のことは十分わかりますし、考えなければならぬことでございますので、一応の制限はもうけておるつもりでございます。
  264. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 また最近土地の提供者の多くは、周辺地の山林地主として相当大きなのが目立つわけです。そうしますと、これらの大地主に三百万円の控除を認めなければならないという理由は一体何であるか、それが一つです。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕  それから、大きな山林所有者は、農地の解放も受けずに、昔のままで巨大な地主になっていることが少なくないわけです。そういう状態において、まさにぬれ手にアワというようなぼろもうけをしておると思うのですが、その者に対してはどのようにお考えになりますか。
  265. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど申し上げましたように、山林の場合も多いかと思います。宅地造成でございますから、そういった事例が多いかと思いますが、すでに収用法の場合でも、住宅公団が購入する土地につきましては、収用法の適用がございますので、山林の持ち主が収用法の適用を受ける場合がございます。そういたしますと、千二百万円の控除がある。何か住宅公団のような公共的な機関から収用を受ける場合にだけ千二百万円、その他は全部三十万円ということも少し懸隔がはなはだしい、しかも、先ほど申し上げましたように、大団地の中の四分の一以上は道路であり公園であり、中には学校もあるといったようなときには、あまりにも公共優先的な色彩が強くて、民間に重点だけ置かれながら、宅地造成事業に対しましての援助措置が少ない。あるいは、買われる地主にとってみれば、どっちに買われようと同じでございます。そういった意味で、千二百万円との関係考えまして三百万円、こういうふうに考えている次第でございます。
  266. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 この問題の最後に、土地の問題、住宅問題が重要な課題であることは言うまでもないわけですが、その解決のために従来から種々の措置が講ぜられてきたわけでございます。しかし、そのいずれを見ましても、税制面の措置に関する限り総花的であります。問題の根本的解決には至っておりません。元来税制措置というものは、補完的なものであることは宿命でありますが、税制で何らかの促進をしようとするならば、取るものを取らぬというその間接的手段によるものであるから、その効果は直接的に影響がない、それがいかにも直接手段であるかのように錯覚するところにすべての誤りがあり、根元があるのではないか、このように考えます。むしろ抜本的に、空閑地に対する課税を真剣に検討するとか、また固定資産税の重税、また譲渡所得の重税というような手段によって、投機的な土地所有者それ自体に魅力を失わせることが問題の基本的解決の道であると思うのですが、そのことについてはどういうようにお考えになるか。  また、その観点からすると、現在の改正はその逆方向に進み、ますます土地の値上がりに拍車をかけていくと思いますが、以上の二点につきまして最後にお願いしたいと思います。
  267. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃいますように、私どももこの複雑なる譲渡所得税だけで、しかも、いまのような改正だけが根本的なものとは考えておりません。むしろ私は、今後税制調査会の特別部会でも、土地対策問題をひとつ税制上でどういうふうに考えるべきかということを少し深く専門家の方々に御検討いただきたいと思っております。そういった意味では田中先生と同じ考え方を持っております。  なお、こういった制度は土地の投機的利益を助長するだけではないかという御心配、これは私も無理からぬ感じがするわけでございます。土地対策問題を税制上どう処理するか、これはなかなかむずかしい問題でございますが、現在の譲渡所得税が、売ったときに取るという意味において、簡単に投機利益を押えることができない。先生から固定資産税の御指摘もございましたが、そういった広い角度の税を考えないと、所得税法人税の土俵の中で相撲をとることも、これは御指摘のように問題が多過ぎるわけでございます。そういった意味で、私は今回の税制は、むしろ収用法あるいは特定の大規模団地のような場合のいろいろな特例というものを通じまして、私はむしろ値下がりの方向にいくような、安く買えるような方向だと思うのでございます。そういったことは、しかしまだまだびほう的であることは間違いがございません。なおもう少し広範な角度から思惑的な需要を押え、しかし、一般的な正常な供給は促進するような税制上の措置を、広い角度から、国税の土俵のみならず、いろいろな角度の税金も集めて考えなければならぬ、かように思っております。
  268. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 もう一つの別な面でございますが、このたびの改正では、航空機の通行税の特例がはずされておりますが、これはその財源的需要から行なわれたものであるように承っております。航空会社の空港整備とかいうようなものにつきましては、政府の金も補助金という形で出ておるようでございますが、そういうものが現在の航空機の発達並びに庶民の受けます感じ、そういうものから、またそれがひいては航空料金の値上げというものは当然行なわれると思いますが、そういう点につきまして、改正の行なわれます根本的理由と、今後の政府のお考えをお聞きしたい、このように思います。
  269. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう先生御指摘のように、今回の航空機に対する通行税の税率五%から一〇%への引き上げは、地方空港整備という、例の松山の空港事件以来非常に世間の関心を集めました空港整備の問題につながっているのでございます。  御案内のように、現在、通行税は基本が一〇%になっておりますが、国鉄の汽車ならば一等しか課税してない、しかし、航空機は全般的に課税になっておる、しかしながら、税率は五%というふうに軽減されております。これはたしか二十八年から特別措置が設けられたと思います。その当時は、税率は二〇%でございましたが、航空機だけは一〇%にしようということで一〇%になって、その後通行税が一〇%に引き下げられたときに、やはり五%、半分にされたという経緯があります。しかしながら、この航空機に対する通行税が汽車の半分になっておりますゆえんは、もう御承知のように、航空機が戦後再開したそういった最初の事業に対するしばらくの間の助成、古い国鉄に対処いたしますには非常に苦労が要る、新規産業助成的な意味であったわけでございますが、これがもはや十四年もたった今日、その必要は私は考えなくてもいいということが第一の理由だと思います。  第二は、いま申し上げました空港整備の必要性から考えますと、航空機の乗客も、地方空港の整備のためには通行税を少し多目に支払うこともお互いの地元負担と申しますか、受益者負担と申しますか、そういった意味では適当である、こういうことが考えられるわけでございます。  なお、国鉄の一等と航空機の料金との間には非常に密接な関係がございます。相互に競争しておるわけでございますが、今回の改正後は、この間のバランスは通行税に関しては得られる、かように思っております。  ただ、値段の問題がどうなるかという非常に御心配の御質問でございます。これも大問題でございますが、本来通行税は現在がぎりぎりのコストで計算ができておりますれば、当然値上げになろうかと思います。しかしながら、聞くところによりますれば、これはしばらく航空会社はがまんしていこうというような話がございます。これは施行は七月一日というふうに一カ月ゆとりをもっておりますので、その間航空会社がみずからの判断できめるのではないかと考えております。
  270. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 最後に、この措置法で一番問題のある、またいままで委員の発言の多かった利子、配当に対することにつきまして、もう一回最後につけ加えまして終わりたいと思うわけでございますが、たとえば配当所得に対します世界の各国の状況を見ましても——配当所得に対してはもちろん法人税の問題もございます。だけれども、この配当所得に対する特別控除は即刻やめていただきたい。大体、配当そのものが、個人的に見た場合には、その配当をもらったときに収入という感じしかないわけです。そこでは源泉徴収もされておりますし、当然ほかの勤労所得と比べては資産的な所得としてそういう性格を持っておることは、私ここで述べる必要もないと思います。アメリカにおきましても総合課税で、源泉徴収はしなくて百ドルまでの所得控除を行なう。イギリスにおいてもしかり、配当控除もありません。四一・二五%の源泉徴収、そういうことを行なって総合課税であり、西ドイツにしろ総合課税である。フランスも総合課税であります。イタリアもそうであります。このような各国の状況から見ましても、ここであえてわが国がこの優遇措置を続けていかなければならないということに対しましては、いま私の述べた程度では迫力もないようでございますけれども、何といいましても、この点につきましては、ひとつ、政府のほうでも十分お考えになっての末とは思いますけれども、私どもとしましては、この措置はあくまでも国民の納税意識、また政府に対する信頼感も失うのではないか、その点を心配するものでございます。最後に、次官からその点につきまして一言お願いしたいと思います。
  271. 小沢辰男

    小沢政府委員 田中先生が税制の長年の専門家としての御意見でございますし、また、先ほど来諸先生からもこの問題については御意見がございました。本会議でもいろいろと御所見を承りました。やはり一つ考え方だと思います。しかしながら、今回若干の前進といいますか、それを示した考え方を私どもはお出しいたしておるわけでありますが、三年間といわずに、午前中も申し上げましたように、税制調査会におきまして法人税の税制のあり方、すなわち、擬制説から実在説に移るというようないろいろな基本的な問題の見解が、おそらく来年の秋までくらいにはまとまってくるのではないか、そういう際には当然この問題をもう一ぺん振り返りまして十分検討していきたいと思っておりますので、今回のこの改正案につきましては御了承をぜひいただきたいと思うわけでございます。
  272. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 以上で終わります。
  273. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  274. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 速記を始めてください。堀昌雄君。
  275. 堀昌雄

    ○堀委員 今回の租税特別措置法に基づきまして、政府は、私どもが常々反対してまいりました利子及び配当の特別措置について、五%の源泉税率を引き上げるということによって向こう三年間この制度を延長しよう、こういう措置がとられておるわけであります。さらに、前回所得税法の改正の中で、御承知のように、少額貯蓄免税につきましては、これまでは一行当たり百万円という形で非課税の処置がとられておりましたものが、これが合計額で百万円までは少額貯蓄免税を認めるという方向改正が行なわれることになりました。  かつて私どもは当委員会で、納税貯蓄組合という名前のもとに各種の預金がそれを利用いたしまして、貯蓄組合の貯金の口数が人口の何倍にも及ぶというような事態を招いたのが、実は今日少額貯蓄免税制度をもたらした最大の原因であったわけでありますが、ややその方向にまた逆行しようとしつつある現状は、まことに遺憾であると思うのであります。これらに関連いたしまして、実は私がかねてからこの分離課税の問題は、なるほど第一点としましては、所得の累進総合課税の原則を破るということで、まことに課税の公平の原則を乱す非常に大きな問題があるということを一つ指摘をしておりますが、もう一つの側面としては、脱税をされた資金の隠匿場所としてこれが利用されることが、われわれ正直な納税者にとっては許しがたいことであるということを指摘して、当委員会で何回か論議をしてまいったわけであります。  これに関連をいたしまして国税庁長官にお伺いをいたしますが、最近の犯則事件を調査した中で、この別途預金の中に占めるところの無記名の預金及び架空名義の預金の実情は一体どういうことになっておるのか、ひとつ、国税庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  276. 泉美之松

    泉政府委員 私どものほうで調査いたしましたところによりますと、これは全部の調査ということがなかなかできませんので、査察事件に関連いたしまして処理いたしました三十三件についてサンプル調査をしたわけでありますが、それによりますと、預金合計のうちで仮装名義のものが五四・八%、無記名のものが四二・八%、実名のものが二・四%となっております。これはそういった調査したものの内容からいたしまして、どうしても仮装名義、無記名のものが多くなる傾向は避けられないことだと思っておりますが、いずれにいたしましても、この査察の点からいたしますと、こういった架空名義、無記名のものがかなり多い状況のように見受けられます。
  277. 堀昌雄

    ○堀委員 いま比率を伺ったのでありますが、三十三件ということでありますけれども、いまの別途預金の預金額の総計と、その中に占める仮装名義及び無記名、実名の金額は一体どの程度であったのか、お答えをいただきたいと思います。
  278. 泉美之松

    泉政府委員 別途預金総額は二十九億二千七百万円でありまして、そのうち仮装名義のものが十六億三百万円、無記名のものが十二億五千二百万円、実名のものが七千百万円、こうなっております。
  279. 堀昌雄

    ○堀委員 皆さんもいまお聞きになりましたように、わずか三十三件ではありますけれども、別途預金として隠匿されておりましたものの金額は二十九億二千七百万円と、たいへん大きな額であります。その中で仮装名義が十六億三百万円、無記名が十二億五千二百万円と、いずれもたいへん大きな金額を示しておるわけでございます。  私は、いまのこの問題は、一般の健全なる市民であるならば、銀行に預金をいたしますときに、何も好んで仮装名義を利用する必要はありませんで、当然自分の名前か、奥さんの名前か、家族の子供たちの名前を使うというのが最大限の問題であろうと思うのであります。ですから、この脱税によって犯則事件として処理された三十三件のように、当初から脱税を意図するものでなければ、仮装名義の預金をつくる必要はないのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。  現在、御承知のように所得階層別で預金の実情を分布として調べてみますと——これはひとつ銀行局長から答えてもらいましょうかね。所得二百万円以下のところで一人当たり一体どのくらいの預金をしておるのか、階層別でお答えがいただければけっこうだと思います。
  280. 澄田智

    ○澄田政府委員 私どものほうの調査には、所得階層別の預金というような調査をいたしておりませんので、そういう数字は手持ちをいたしておりません。
  281. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局は調査をしなくても、総理府統計局の貯蓄動向調査というような資料があって、所得階層別に預貯金の現状は、郵便貯金であれ、銀行預金であれ、信託であれ、ちゃんと区分けにして出ておるはずです。私が知っておるくらいですから、当然銀行局長は御存じないはずはないので、お答えをいただきたい。
  282. 澄田智

    ○澄田政府委員 ここにございます資料でとりあえず当たってみますと、これは収入階級別ということになっておりますが、所得と同一の概念と思ってよろしいかと思います。二百万円以下の世帯によりまして全体の預金のうちに占める構成比で見ますと、二百万円以上が九・一%でございますので、九〇・九%というようなことになるかと思います。
  283. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも私の希望するような数が出ませんから、ひとつ主税局答弁してもらいましょうかな。あなたのほうの試算の結果でけっこうですが、二百万円以下のところでは一体どうですか。どうせ推計でしょうけれども、一ぺんお答えをいただきたいと思います。
  284. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私が申し上げます資料は、いま澄田銀行局長が申されました資料とそんなに変わりないかもわかりませんが、私ども推計では、百万円から二百万円の間の貯蓄の保有高は八十一万三千円、七十万円をこえまして百万円までが四十七万二千円、七十万円までが三十二万二千円、五十万円までが二十四万二千円、三十万円までが十五万三千円、こんなような一世帯当たりの保有高が推計されております。
  285. 堀昌雄

    ○堀委員 いま主税局長の答弁がありましたように、私、ほかの資料で当たってみましても、大体二百万円の所得というところまでは預金の総額が実は百万円をこえないのです。世帯数で見るならば、二百万円超の世帯数というのは三十五万九千世帯しか実はないのです。あとの二千六百万世帯は実は二百万円以下の所得なんです、日本の場合には。そして、その二百万円以下の所得の者は、今度の少額貯蓄免税というものが、百万円まで各行別に処理がされることになれば、これはもう何もしなくても非課税になることになるわけですから、仮装名義などを使う必要は全然ないということが、実はこれで明らかになっておるわけです。  そこで私は、かねてから銀行界の皆さんに、仮装名義というものは脱税を助けるだけであるからこれをやめてもらいたい、こういうことをたびたび申してまいりましたら、金融界の方がおっしゃるのには、しかし堀さん、政府がやっておる郵便局でも仮装名義が行なわれておるではないですか、郵便局で仮装名義のようなものが行なわれないということになれば、われわれも当然考えなければならぬことです、こういう話があったわけです。  そこで私、きょうはお忙しい中を郵政大臣にも来ていただいてお伺いをしたいわけでありますけれども、最近の資料、というのは、おそらく四十一年三月末でございましょうが、この四十一年三月末における実際の郵便貯金の口数は一体どういうことになっておるのか、金額は一体どういうことになっておるのか、これは事務当局のほうでけっこうですから、ひとつ郵政省側でお答えをいただきたいと思います。
  286. 稲増久義

    ○稲増政府委員 口数は一億四千八百八十八万七千口、金額は二兆七千二十五億四百万円、これは四十一年三月末でございます。
  287. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのは口数の総計でありますが、これはやはり性格が通常貯金と定額貯金と、いろいろ分かれておるんだと思うのです。ですから、その点を少し区分けをして、要するに私が聞きたいことは、現在の郵便貯金はやはり多少仮装名義はあるだろうと思うのですが、口数の関係からして常識的な判断としてどうなるかということを伺っておるわけですから、通常貯金、それから定額貯金、積み立て貯金、こういうふうな形でひとつお答えをいただきたいと思います。
  288. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの昭和四十一年三月末で通常貯金が一億九十二万口、おもなものは、これといわゆる定額貯金の三千六百四十六万九千口、こういうふうになっておりますが、通常貯金の中でいわゆる睡眠貯金というものが非常にいまでもたくさん出ておりまして、大体現在活動しておるのは二千八百四十万口くらい、こういうふうに考えております。したがって、これを金額にいたしますれば、いまのこの通常貯金がここで九千七百六十四億円、全体でこういうようなものでありますが、現在活動をしておるのを累計いたしますと、八千八百億円、こういうふうになっております。それから定額貯金のほうは、これがいまの三千六百四十六万口座の中で総額が一兆五千四百六十億円、こういうかっこうになっております。これはいま申すようにこの口数が総額で一億四千八百八十八万七千口、こういうふうになっておりますが、このうちの約七千万口は大体睡眠をしておる、こういうふうなことに相なっております。
  289. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことですと、いま全国の世帯数が二千六百万世帯でありますから、全部の世帯のものが郵便貯金しておるとは思いませんけれども、おそらくこういう貯金というのは一口当たりの金額もわずかでありましょうし、当然これは奥さんが貯金をしたり子供が貯金をしたりということが相当あるんだろうと思うので、ここでひとつ郵政大臣にお考えいただきたいのは、私は、やはり郵便貯金というのは国がやっております事業でございますから、当然そういう国のやっておる事業がもし仮装名義というようなことで脱税の手助けをするなどということはまことに望ましくないことでありますし、この際は郵便貯金については家族のだれでもよろしいけれども、実名預金にするということを、ひとつ原則として処置をしていただきたい、こういうふうに希望をいたすわけでありますが、郵政大臣のこれに対するお考えをひとつ承りたいと思います。
  290. 小林武治

    ○小林国務大臣 郵便貯金は、御案内のように一人百万円までが免税になっておる、こういうことでありまして、いまの通常貯金にいたしましても、その動いておる貯金は平均して三万円しかない。定額貯金などにいたしましても平均して四万二千円しかない、こういう状態でありますから、われわれとしては、隠す必要などは郵便貯金にはない。したがって、実際問題として架空などということはほとんどない。少なくとも家族の名義等によっておるのでありまして、むろん高額の預金者がないからさような必要はない。したがいまして、私どももさようなことはあるべきではないと思いますが、また、ないようにひとつ注意をいたしたい、こういうふうに思っております。
  291. 堀昌雄

    ○堀委員 いま郵政大臣がおっしゃったように、あるべきではないと思うのです。  そこで、ひとつそれはそうでありますが、この際私は、民間の金融機関に、これから大蔵大臣等にもお願いするわけでありますけれども民間の金融機関もそういうことをやってもらいたくないというのが私の希望でありますから、この際ひとつ、郵政大臣としてないと思うけれども、特にそういうことのないようにひとつ下に指示をおろしていただいて、あわせて、郵政監察その他を行なわれる際に、こういう問題について、それがはたして実際ないのかあるのかの点についてひとつトレースをしていただきたい、こう考えるわけでございますが、いかがでございましょう。
  292. 小林武治

    ○小林国務大臣 私どももさようなものはないと思いますが、なお十分念には念を入れる。また、御注意の点もありますので、いままでも気をつけさしておりますが、これからも特に必要によっては、預入の際には住民登録票とか、必要な証明書の提示等も求める場合がある、こういうようなことでひとつ注意をさせたい、かように考えております。
  293. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣の非常にはっきりした御答弁をいただきまして、たいへんありがとうございました。  これはやはり国民課税上の問題としては、まず税が多い、少ない、分離課税になって税金を取られないものがあるということで、不公平もさることながら、ある一つ制度が脱税を助けておる。さっきの国税庁の調査によりましても明らかなように、わずか三十三件で十六億円も仮装名義で預金が行なわれているというような現状は、まことにわれわれ税を論議する当大蔵委員会として許しがたいことと考えておりますので、その点をひとつ大蔵大臣、いまの郵政大臣の非常にはっきりした御答弁あとでもありますからして、あなたも姿勢を正したこれに対する御答弁をお願いします。
  294. 澄田智

    ○澄田政府委員 多少銀行の実情というようなこともありますので、私からとりあえずお答え申し上げます。  先ほど税のケースとして、査察で告発されたというような場合の三十三件の例がございました。その中で架空名義あるいは無記名というものが非常に金額も大きかったというのは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、はなはだ遺憾でございますが、ただこれは非常に極端な例でありまして、銀行全体の預金の中でとりますと、架空名義といいますのは一体どれだけあるのかというのは、その事柄の性質上、どれが架空かということがわかりませんので、架空名義の割合というようなものはわかっておりませんが、無記名預金につきまして見てみますと、これは全体のうちでは非常にわずかでございます。口数で申し上げますと一%にもならない、〇・九%台であり、金額では七%程度でございますが、そういうような状況でございます。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕  架空名義が一体どのくらいあるかということを銀行について聞いてみますと、これは銀行の感触でございますが、主要な銀行についての感触を聞いてみますと、無記名の割合か、あるいはそれより少ないくらい、口数でやはり一%以下、金額で五%程度である、こういうような感触のようでございます。そのくらいのものが架空名義ということで、全体から見ればごくわずかな割合である、こういうことになると思います。  そこで、もし架空名義をはっきり否定をして、真実の名義であるということを証拠をもってはっきりさせるというようなことになりますと、やはり銀行に預金に来た場合に何らかこれを証明するもの、住民票であるとか米穀通帳であるとか、あるいは健康保険の保険証とか、いろいろなものがあると思いますが、そういうようなものを呈示させるということになりますと、銀行の取引においてこういうようなことをやらせるというようなことは、従来から、銀行のいままでの慣習から申しましても、ちょっと一ぺんにそういうことをやらせるということは非常に飛躍ではないか、こういうふうに考えるわけであります。金融機関の取引ということの性質からいいまして、ちょっとそういうような義務を義務づけるということはむずかしいのではないか、架空名義というようなものをできるだけ自粛をさせる、そういうふうなものを弊害がないようにというようなことで指導をしていくということは、当然考えていかなければならないことだと思いますが、これを義務づけるというようなことになりますと、なかなかいろいろむずかしい問題があるのではないか、こういうふうに考えております。
  295. 堀昌雄

    ○堀委員 いま銀行局長がたいへん巧みな答弁をいたしました。と申しますのは、無記名はなるほど口数で——実は個人の預金の口数の総計は七千二百九十五万口ぐらいです。これに対して無記名の口数は確かに七十三万六千七百十八口ですから、これは一%ぐらいです。ところが、金額で見ますと、これは七兆円というのが大体個人の預金でありますが、それに対して六千百五十七億円というものが無記名定期の金額です。要するに、口数では一%、預金額では一〇%というのが正確な数字です。私、これは日本銀行の資料で言っていますから間違いはございません。  そこで、いまあなたのお話のように、ごくわずかな口数、六十九万の口数は、仮装名義もそれと同じだと仮定をしても、たいしたあれじゃないんですよ。百人に対して一人しかそういうことはないわけですから、やめさせる努力はそうむずかしいわけではないんです。  さっきの仮装名義の問題のところでも、これはちょっと泉国税庁長官に伺うんだけれども、これは三十三件にしては口数が非常に多くなっておると思うのですよ。それでは仮装名義、無記名の口数をちょっと言ってください。
  296. 泉美之松

    泉政府委員 口数は、全体が千三百八十九口でございまして、そのうち仮装名義のものが七百五十七口、無記名のものが五百七十八口、実名のものが五十四口、こうなっております。
  297. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きになりましたように、仮装や無記名というのは全体の中で非常に小さい、一%ぐらいしかない。ところが、これを脱税に使用するものは、これをさらに何口にも分けて利用しておるというのが現在の姿なんです。当初から脱税を予期せざるものは何も仮装名義にする必要はない。無記名を私はやめろと言っているのではないのです。無記名定期はそのまま残してもよろしい、仮装名義というようなことはやめるべきだ、こう言うのです。  この間大阪のほうで新聞を読んでおりますと、ある町のある番地のところで、銀行から、あなたの預金が満期になりましたので取りに来てくださいという手紙が来たというわけです。ところが、その人はその銀行で預金した覚えはないわけです。そこで、私はその銀行に預金した覚えはないということが町の話題になって、新聞に出た。おそらくその近所のだれかがその人の実名を使って仮装預金をした。ところが、これは銀行側との連絡がうまくいっていなかったので、銀行は、定期が満期になったから直接そこへ出したら、預金を全然していない人間のところへポンと来た。そうなったら、実際に預金した人間は、新聞に出た以上は取りに行けません。それは私の金でしたということで取りに行けない。これは非常に大きく新聞に実は出ているわけですね。  私どもはこう考えてみると、現在の仮装名義の預金というのは、これは脱税を主として考えるべきである。特にこの際金融機関に姿勢を正してもらいたいのは、私どもが犯則調査の中でいろいろ聞いておるのでは、銀行側で三文判を使って、それではひとつこういう名前でやりましょうといって、銀行側が指導をして仮装名義をやらしておる例が相当あるわけです。だから、こういう金融機関が脱税の手助けをしておることを、幾ら銀行局長といえども、大蔵省の立場でこれを守るわけには私はいかぬと思う。だから、ここで私が申し上げておきたいのは、これから銀行調査をやるときには、ひとつ架空名義の状態がどういうものであるかを銀行の検査の一項に取り入れて、そして、そういうことが顕著な銀行については、私は何らかの処置を加えるべきだと思う。銀行といえども、ともかく国民の納税意識について、それに反する行為をすることは許されない、私は社会的責任が当然あるものだと考えております。  だから、ひとつここで大蔵大臣、あなたも仮装名義があっていいとは考えておられないと思う。ただ、取り扱い方法として、それをチェックするのはなかなかむずかしい。むずかしいけれども、銀行検査をやる、あるいは犯則調査をやったところが、そこで仮装名義が非常にたくさん出てくるような金融機関——たまにあるのは、これは私は作為だと思いません。脱税を意図したものは必ず相当多数にあるからですよ。一人で何十の口にも分けて仮装名義をやるというのは、これは常套手段です。これは国税庁長官が答えたとおりのかっこうが行なわれておるわけです。そういうものの検査やあるいは犯則調査で明らかになった場合には、当該金融機関に対して何らかの責任を追及する形をとってもらいたい、こう思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  298. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえばスイスの銀行みたいなものは、預金の秘密は絶対に守るというようなことで、預金者は安心しておるわけでございますが、預金者としますと、預金の秘密性というものを保ってもらいたいという気持ちがあると思いますので、問題は、脱税の意図を持つのと、そうでなくて、他人にできるだけ自分の貯蓄高を知らせまいというようなことと、そういうようなことから架空名義預金というものができていると思うのですが、それにしましても、そうしなければならぬという実益というものがやはり乏しい。むしろそれがあることによって脱税のあれになるというような弊害のほうが多いということでございましたら、これはやはり実益の特にない以上は、銀行預金の秘密を保つという制度をもう少し銀行側が徹底させると同時に、こういうものをなくしていくことをすべきだと思いますので、そういう方向の指導はしたいと思います。
  299. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、いまの預金のそういう秘匿性の問題については一いま一ぺんに無記名定期までやめろと言ってはいないわけです。要するに、仮装名義だけまずやめましょう。無記名は、いまあなたのおっしゃるように、銀行が知っていても、ともかくもよそがわからぬようになっている、そういう制度が片方にあるから、まず第一段階としては仮装名義をやめましょう。これは無理な要求ではないと思いますね。いまの大蔵大臣お答えで、あなたはどっちに実益があるのかとおっしゃったけれども、私は無記名定期は一応残しましょうと言っている。無記名定期も問題ですよ。問題だけれども、これは預金の秘匿性の問題で残しましょう。制度としては一応残しますが、架空名義はやめましょう、こう言っておる。これは無理のない常識的な提案だと思いますので、これについて、もうちょっと明快な御答弁をいただいてこの仮装名義の預金の問題は打ち切りたいと思うのですが、大蔵大臣、もう少しはっきりしておいてください。
  300. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう方向への指導をしようということでございます。
  301. 堀昌雄

    ○堀委員 どうかひとつ、大臣もそういう指導をしようというお考えでございますから、これは税制当局においても、犯則調査の際にはこの点をちゃんとしていただいて、ひとつ来年度に——当委員会でおそらくまた税の問題をやるわけでありますから、向こう一年間の調査の間に、全国における犯則調査を、この仮装名義、無記名、実名預金の状態に照らして、これを全部集計をしたものを来年度の通常国会に出していただきたい。そうすると、いまからのことですから、銀行局の指導その他がどういう成果があがったかということが来年度の委員会で明らかになることでもありますから、ひとつ国税庁長官、その点、犯則調査をしたときにそこだけをちゃんとチェックして集計すればいいわけで、そんなにむずかしいことではありませんから、その点について来年の当委員会に資料を提出してもらうということでひとつお願いをしたいのですが、よろしいですね。
  302. 泉美之松

    泉政府委員 お申し出の資料は作成いたしたいと思います。  ただ申し上げておきますが、私どものほうで査察調査をいたします事例は、処理が終わりませんと出てこないわけであります。その処理が来年の三月末日までに終わるというのは、もう大体いまごろ査察調査に着手したものでございますから、銀行局の指導の結果はまだあらわれてこないのではないか、このようなおそれはございます。
  303. 堀昌雄

    ○堀委員 けっこうです。来年出してもらって、再来年また出してもらえば、その差ははっきりいたしますから。私は当分大蔵委員をしておりますから、この点は十分トレースをして、問題の成果があがるまで——私は、御承知のように一回問題を取り上げたら、締めくくりは必ずつけるというのが私の方針でございますから、この点については、きっちりした締めくくりがつくまで何回かやらしていただきたいと思います。  この件に関しては終わります。郵政省、ありがとうございました。  厚生省入っていますね。——それでは、よその省の方の関係のあることを先にやって、だんだん帰っていただきます。  実は昨日、同僚の武藤委員が総理大臣に障害者控除の問題についてお尋ねをいたしました。本日はまた同僚の只松君も伺ったわけでありますが、私はもう少し具体的に詰めてこの問題を考えてまいりたいと思います。  そこで、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのですけれども、一体、この障害者控除というのはなぜ設けられているのか、これからお答えをいただきたいと思います。
  304. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税の技術的な根拠でございますので私からお話し申し上げますが、ともかくも、一般的な人的な控除で足りない追加的な控除を認める必要があろう、つまり、多分に普通の人に比べまして所得を稼得するに費用がかかるであろう、これはおそらく障害者が所得主である場合に言えることであると思います。  もう一つは、扶養親族の中に障害者がいる場合には、普通の人に比べてよけいな世話費がかかるであろう、これは家計費でございまするから追加的な費用とはいえませんが、家計費としてしんしゃくする必要があろう、この二つが障害者控除の大きな柱だろうと思います。
  305. 堀昌雄

    ○堀委員 いま局長が二つ答えたわけですが、私はどうも障害者控除が確かに所得の稼得に関係がある。これはひとつ厚生省のほうでお答えをいただきたいのですけれども、私がちょっと調査をしてみたところでも、大体就業の状態というのが身体障害者の場合には事業主のほうが多くて、そして被雇用者のほうが非常に少ない。これは一般的な労働省の労働力調査等で見ると逆になっておる、こういうような実情もあるわけですし、賃金等においても非常に差があるように思うのですが、その点、ひとつ厚生省のほうからお答えをいただきたいと思います。
  306. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 お答え申し上げます。  全体としまして就業の状況を申し上げますと、身体障害者、これは十八歳以上だけをとりますと百四万八千人ということでございますが、就業が四十一万二千人、三九・三%、それから不就業が六十三万六千人で六〇・七%、四十万と六十万、こういうことになるわけで、就業の状況は身体障害者は三九・三%というふうに非常に低いというのが状況でございます。  それから、先生おっしゃいましたいわゆる従業上の地位というものにつきましては、一般の就業者につきましては、たとえば業主というのが二一%というのが、身障者の場合には四四・七%、もう倍くらいになっております。それから普通の常用、人に使われて働くという者が、一般は五二%が、身障者の場合には二八%、半分になっておる、こういうふうな状況でございまして、これはいずれも人に使われて普通の工場、事業場で立ち働くのは非常に困難である、したがって、いわゆる小さな販売業とかあるいは手内職みたいな手仕事というふうなものが業主というかっこうになってあらわれている、一般労働市場が非常に困難である、こういう状況かと思います。
  307. 堀昌雄

    ○堀委員 賃金も格差があると思うので、平均賃金のことをちょっとお答え願います。
  308. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 これは三十年、三十五年、四十年と五年ごとに調査をやっておりますが、たとえば一般労働者、常用労働者三十人以上というふうな場合に、三十年九月は一般が一万八千円というのが、身障者の場合には九千三百円、約半分くらい、三十五年におきましては、一般が二万四千円というのが一万四千円、四十年七月におきましては五万一千円というのが二万四千円、大体半分、こういう状況になっております。
  309. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いまお聞きになったように、就業の状態も身体障害者は非常に狭められておるし、また就業しても賃金は半分以下だというような状態になっておるわけです。ですから、そういう意味ではまず第一点の、要するに所得の稼得の面においてはかなり顕著な開きがある、こういうことがはっきり言えると思います。その次に今度はいまの家族にある場合、これが実は同一になっているわけですが、これはものの性格が違うのです。だから、ものの考え方としては世帯主、いわゆる所得者が身体障害者である場合と家族が障害者である場合は同じことだというのは、ちょっと私理解に苦しむわけです。考え方としてはこれは一応別途であっていいのではないか。特に、やはり所得者が障害者である場合、これは障害の程度にももちろんよりますが、障害者としてある程度の所得を得るということは、いまの例からお聞きになってもたいへんな努力を要しておることだと私は思うのです。このたいへんな努力を要しておることを、単に今度の税制でも扶養者が一名多いだけの取り扱いしかしないというのは、これは私、税制上としてもう少しやはり配慮があっていいのではないか、第一点ですね、こう考えるわけです。  第二点は、今度は家族に障害者がいる場合の問題ですね。そこで、現在の税法ではこういう規定が行なわれております。所得税法施行令第十条、障害者の範囲「法第二条第一項第三十号(障害者の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。一 心神喪失の常況にある者又は児童相談所、精神薄弱者更生相談所、精神衛生相談所若しくは精神衛生鑑定医の判定により精神薄弱者とされた者」これが一です。これは精神病関係及び精神薄弱者を規定したものです。「二 身体障害者福祉法第十五条第四項(身体障害者手帳の交付)の規定により交付を受けた身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている者」これが二番目。三番目「前号に掲げる者のほか、戦傷病者特別援護法第四条(戦傷病者手帳の交付)の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている者」これが三番目。四番目「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」これが四番目。五番目「前項各号に掲げる者には、」ここはちょっと問題があるのです。「老衰により当該各号に掲げる者となった者を含まないものとする。」——まことに老人をきびしく扱っておる税法だと思うのですね。いいですか、「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」であっても老衰でなった者は身体障害者として税金は見てやらない。これは今後日本が老齢者がだんだんふえていこうというときには、この規定はちょっと私ははずすべきだと思うのです。老衰であろうと何であろうと、少なくとも「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」は、ほかの病気ならいい、結核で寝込んでいて介護を要する者、あるいは脳卒中で寝ている者はいい、しかし、老衰はいけない、これは私はおかしい規定を設けたものだと思うのですね。  まず最初に、この規定について大蔵大臣、これは施行令ですから、ひとつあなたのほうで老人尊重という意味からも、この五番目の規定だけ除いてしまえば、老衰であろうと、いまの前項に該当すればいけるわけですから、大蔵大臣、どうでしょう。
  310. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、今度は寡婦の問題もそうですが、この障害者の問題もそうです。この控除を従来は税額控除になっておった。これを一応所得控除に変える。変える場合には、むろん減税になるようにいたしました。いたしましたが、他の世帯との均衡から見ますと、もう少しこれを考える必要があるというふうに私ども考えておりますので、今回は一応こういう措置をしましたが、寡婦控除においても、来年はもう少しこれを考えるということを優先的にやろうと、すでに参議院の委員会でも私は約束してしまったところでございまして、同様にこの問題もこれと関連して考えるべきものである。ただ、この控除額に差等をつけるという問題は、技術的にいろいろ非常に困難な問題があろうと思いますが、全般として、ただ税額控除を所得控除に直したというだけでは少し足らないということを認めますので、これは来年度、この点も優先的に検討するようにしたいと思います。
  311. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いまおっしゃること、たいへんけっこうなんです。私のほうの提案を申し上げますと、大蔵大臣が先にさっと答えられたから申し上げますけれども、実は、精神障害者でも身体障害者でも、あるいはここに掲げる戦傷者でも、五号の「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」、これは各種疾病が入るのだと思いますけれども、障害者が家族の中に一人いて、一人で用の足せる障害者というのはあるわけです。要するに、全盲の人ではちょっと介護を要する場合があるでしょうけれども、しかし、視力は非常に弱いけれども自分で何とか用が足せるという人もあるわけですが、介護を要する者と要しない者というのがおのおののジャンルの中にあると私は思うのですね。そうすると、たとえば重症身体障害児のようなものは、場合によっては一日じゅう母親がおぶって仕事をしていなければならぬ、もしおろしておけば、弟や妹にいろいろと迷惑なことをする一この間も、読売新聞でしたかの相談欄に出ておりましたけれども、もうどうにもならぬ、親子心中をしたいという投書が実は出ているわけですね。全く私ども気の毒なことだと思うのですが、そういうふうに重症の者は、御承知のように現在の厚生省の取り扱いで一級から六級までのうち一級と二級であります。時間を省くために私のほうから申し上げますけれども、一級は十五万一千三百人、二級が二十万八千七百人、これが大体重症と称せられておる。一応こういうふうなところに限って、要するに一人でやれない、介護をどうしても要するという問題については、やはり何らかの措置が必要になるのではないか。  ですから、いま申し上げた所得者が障害者である問題が一つと、それから障害者で、その中に重症の者とその他という問題を一応検討の課題にしてもらいたいと思うのです。ただ、私が最初に大蔵大臣に伺ったのは、これは法律でなしに、要するに所得税法の施行令ですから、政令ですから、政令は法律じゃないんだから、いまから皆さん検討していただいて、閣議で決定すれば処置ができるわけですから、それで私が提案しておる「老衰により当該各号に掲げる者となった者を含まないものとする。」というこの一項は施行令から除いてもらいたいということなんですね。それは老衰の判定がどうかという問題があるかもわかりません。あるかもわかりませんが、それならば、ほかのものだって、中風で寝ているというのの判定はやっぱり同じことなんです。心配なら、行ってみればいいのですよ、税務署員が。だけれども、老衰でうちのおじいさんも寝たっきりです、おばあさんも寝たっきりですと言っておるのを、一応信用していいんじゃないか、日本人を。脱税するために架空預金をやる連中のことを思ったら、これは天と地ほどの違いですよ。大蔵大臣、これは確認の方法は、税務署員がそこへ行ってみればいいのですから、何でもないのだから、だからひとつ老衰だけをこれから除外するのは政令から取りはずしてもらいたい。老人に対して自民党政府もあたたかい手を伸ばしているということをひとつ示してもらいたいと思うのですが、大蔵大臣、どうでしょう。
  312. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に技術的な御質問でございますので、私からお話し申し上げたいと思いますが、いまの障害者につきまして、障害の程度に応じまして、また、それが所得者であるかあるいは扶養親族であるかどうかにつきまして、もう少し支払い能力と申しますか、担税力と申しますか、追加的な費用をしんしゃくしたらどうか、これは私は非常に研究問題だと思うわけでございます。今般は私は減税は一歩進んだと思っておりますけれども、まだまだ税額控除の六千円をずっと長らく据え置いたのを直した程度、しかしそれを、税率が上になりますにつれて減税が大きくなる意味におきまして、これは私はある程度進んだと思っております。この後は範囲の問題として、なおきめこまかい配慮をしたらどうかという点の御提起だと思います。そういう点の研究は私は大いにしなければならぬと思うのです。  ただ問題は、これも何べんか改正してまいりまして、一番問題でありました。きのうもここで議論が出ました。さて、障害者の認定というものがどうかという、その実質判断を税務署にまかされますと、非常にトラブルが多い、あるいはアンバランスに流れるとか、いろんな御批判もありますので、去年の改正では、手帳本位というような、きわめて形式的な別な機関の認定が一つ基準にしてあるわけでございます。そこでまだ残っておりますが、四号の「常に就床を要し、複雑な介護を要する」、これは非常に認定を要し、各人の判断が大いに入る問題でございますので、それを排除する意味で、この二項の老衰の問題が一つの排除規定——これは排除というのはおかしいではないかといわれるかもしれませんが、少なくとも老年者は老年者控除というのが別にあるではないか、したがいまして、これは障害者控除の範囲からは適用除外してもいい、これは二つ適用することをいたしておりませんので、その思想が一つあります。  もちろんそこは、おそらく直ちに扶養親族の場合おかしいではないかというお話が出るかと思いますが、少なくとも所得者については、老衰、おそらくそれは老年者控除の適用で十分まかなえる、さらにまた、冷たく申せば、老衰というような場合、だれでもおちいらなければならない場合には当然予定もできることを考えますれば、障害者控除という範疇で担税をしんしゃくすることもどうかという配慮があって、これは長らくできてある規定だと思います。  確かに問題もございますけれども、しかし、この四号の「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」という認定が非常にむずかしい、これに弱り切っておるのが現状だと思うのでございます。  そういった意味で、私は堀先生の御提案、非常に研究に値すると思いますけれども、その認定をどうするか、だれが認定するか、こういった税務行政上の能率化の見地をも加味して研究してみたいと思います。
  313. 堀昌雄

    ○堀委員 それならば、これはひとつ厚生省に伺いますけれども、身体障害者手帳には何級というのが入っておりますね。だから、身体障害者手帳を持っておる百四万人については、一級、二級はすぐわかるわけだから、これは問題ありません。そうすると、精神病、それからいまの「常に就床を要し、」だ。これはやはり医師の診断書を持っていけば——医師が証明をして、常に就床して介護を要しておりますという診断書を出して、それによって処置をする。もしあなた方が不審ならば、調査をすればいいのだから、何でもない。税務署が判断する必要はない。医師はこういうことを判断するのを業務としておる。免許を受けてやっておる。あなた方、今度印紙税、登録税を取ろうとしている。税金をたくさん取るなら、やはりそれだけの評価をしなければいかぬ。だから、そういう意味で、これは医師が判断したらいい。  それと同時に、いまあなたのことばでちょっとひっかかるのは、老年者控除と老衰の関係ですね。老年者控除というものの主体は、これは大体所得者が老年者であるものを考えておるのが主体なんですよ。だから、これは扶養親族のほうに比重がかかっておる制度ではないわけです。ところが、その扶養親族の中で、老衰であれ何であれ、「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」であれば、それを老衰だけを除外するというのは、私は血も涙もないやり方だと思う。きょう医師会の大会に行ったら、健康保険法改正に対して、血も涙もない自民党と書いてあったけれども、こういうことを残しておくとやはりそういうことになるから、この際ひとつ与党の諸君も、これは老衰について、私、反対ないと思うのだ。これを除くことを政令からはずすことは問題ないと思う。どうですか、皆さん、老衰について、みな賛成でしょう。こんなものを除く必要は私はないと思うのだ、常識的に見て。大蔵大臣、ひとつ意のあるところをくんでいただいて、これは政令事項ですから、血も涙もある処置をお願いをしておきたいと思います。  大体これで身体障害者問題は来年の検討事項として大蔵大臣も約束をしていただきましたから、この間武藤君が言った独身者についてひとつ考える、それからまた山高さんが寡婦控除、私も身体障害者でひとつ考えてもらう、こういうことで、たいへん来年の課題が多くなったので、これは水田さん、留任してもらわぬと、わしはそういう約束をしたことがないという大臣が出てきても困るし、しかし、まああなた、これを水田個人が言ったわけではなくて大蔵大臣が言ったわけですから、この点はひとつ大いにそういうことで理解をしておいていただきたいと思います。  厚生省御苦労さまでした。けっこうです。  これからは大蔵省のワクの中だけだから、あまり人のおるところでは大蔵省のあれは言えぬから、よそは帰ってもらってやることにします。  ちょっと利子所得の問題について、私どもが配付を受けておる資料の面から少し問題を提起をしておきたいと思うのです。  昭和四十二年度の租税特別措置及びその減収額一覧表というのの試算を大蔵省からいただいております。また、昭和四十一年度租税特別措置及びその減収額一覧表というのも昨年もらっておるわけです。そこで、この欄に、利子所得の分離課税及び税率の軽減として、昭和四十一年度は二百七十億円の減収が立っておるわけです。そして、今年度はこれが二百三十億円の減収が立つ、こういうことになっておるわけです。そこで、この差は実は四十億円、今度は減収が減る、要するに昭和四十二年度は増収になることになっているわけです。減収が四十億円減るわけですからそれだけふえることになっているわけですね。これ、四十億円ふえるのでしょうかどうか、そこをひとつ主税局長にお伺いしたいのです。
  314. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもはこういう計算をしております。  四十一年度に出しました減収見込みでは確かに二百七十億円特別措置のために減収する、しかしながら、御案内のように、預金利子は預貯金の増加につれましてふえていく、それが増加となって、ほうっておきましても減収がふえる計算が出てまいります。それが一つでございます。それからもう一つは、私どもは、よく洗ってみますと、四十一年度は相当少額貯蓄のほうを少なくて見ておりました。少額貯蓄が、一店舗一種類という制限が働きまして比較的少なかったわけでございます。したがいまして、逆にいうならば、一〇%の分離課税を受けるほうの部面が多い、こういうことになりました。それをひとつ総合いたして計算いたしますと、四百十億円の減収計算が立つわけでございます。これを今回の五%引き上げによりまして百八十億円整理できる。したがいまして四百十億円から百八十億円を引きました二百三十億円、したがって、今度の措置後の減収見込み額の去年の減収見込み額の差が四十億円、こういうことになろうかと思います。
  315. 堀昌雄

    ○堀委員 実は皆さんのほうが昭和四十二年度の税の何とかという資料でお出しになっておる利子の増収というのがありますね。これで見ますと、所得税の源泉分が三十七億二千六百万円、それが法人税で七億八千五百万円が引けて合計二十九億四千百万円が今度は増収になる、こういうふうに実は出ているわけですね。そうすると、さっきの百八十億円の増収といま四十億円と言われたのですか——四百十億円立つというのは、これはあとでちょっと伺いますけれども、ここの関係はどうなるのでしょうか。
  316. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にはしょって結果だけ出しておりますのでそういう疑問を持っておられるのももっともだと思います。  詳細に御説明する機会をいただきましたので御説明申し上げますが、おっしゃいますように、百八十億円整理いたしました。しかし、一方、少額貯蓄のほうに今度の数種類数店舗の主義でふえる、したがいまして、これによる八十億円がむしろ特別措置による増収額と出まして、差し引き、利子につきましては百億円の整理になる、これを平年度と見まして、これを初年度に割り振りまして——これはいずれも私のいま申し上げましたのは完全に個人分だけの計算でございます。法人はまずまず通り抜けと見まして、控除でも完全に何ら影響を受けないと見ておりますので、初年度には増収の計算としておりますが、平年度は全くなくなるという計算が、その結果でございます。
  317. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、平年度でお伺いをいたしますが、平年度の預貯金額の推定は幾らになっているのですか。平年度分の預貯金の根っこですね。個人所得の根っこは幾らになっておりますか。
  318. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは預貯金残高を一応基礎といたしますから、利子でずっと計算しておりますが、利子でいいかどうか、お許しをいただきますれば、利子で申し上げます。——四十二年度の改正後でございます。個人分を三千九百四十一億四千七百万円、少額非課税分を七千七億二千五百万円、こういうふうに見まして、全体といたしまして一兆九百四十八億七千二百万円、こういうふうに見ております。法人分は省略いたします。
  319. 堀昌雄

    ○堀委員 利子ということになりますと、ちょっと扱いにくいのは、根っこのほうの預金と無関係に利子が動くわけではないわけですから。そうすると、一体この預金に対する利子は幾らの率ではじいてあるのですか。
  320. 塩崎潤

    塩崎政府委員 前年の実績利子に対しまして、伸び率を推定いたしまして私どもは見ております。この伸び率は約一五%というふうに見ております。
  321. 堀昌雄

    ○堀委員 ずっと利子だけで計算をしてもらってはやっぱり困りますね。現実にはどこかでやっぱり預金の実際の数字が出てくるわけですからね。だから、一応預金の実際の数字と過去における実績と、これは一ぺん割り戻してみれば平均利率が出てくるはずですね。どこかで平均利率をとってないのですか。そうして割り戻せば預金と合うようにならなければいかぬのだ。
  322. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるように、そういった検算も私もしてみなければならぬと思いますが、実はそこまでまだ——私ともの計算では、申しわけないのですけれども、支払い利子に対して一〇%かけるという計算で足りるわけでございますから、税務署の報告をもとといたしまして、利子をもととして計算しているのが実情でございます。なお、非課税その他法人分があったりいたしますので、元本の計算も必ずしも容易ではございません。はなはだ恐縮でございますが、利子だけでいままでのところは計算しておるのが慣習でございます。
  323. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、利子だけでやっておるということは、どこかで確認は——そうすると、利子の実績は必ずあるわけですね。そうすると、あなたのほうでこうやって推計をしてきたあとでトレースをして——預貯金の伸びというものは必ずしもいつも一五%じゃありませんから、経済の情勢によっていろいろ異なってくるわけでしょうが、トレースをして、その誤差はどれくらいですか。
  324. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは四十一年度の利子の伸びを一五%と見ておりましたが、実績では二〇%くらい伸びるのではなかろうかというふうに見積もられております。そんなような誤差がときおり出てまいります。
  325. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、大臣にちょっとお聞きをいただきたいのでありますけれども、世界の中で日本ほど貯金をするところはないわけですね。この間村山君も本会議で申し上げたと思うのですが、貯蓄性向が要するに二〇台にあるというのは日本だけなんですね。大体先進国は一〇以下なんですよ。ちょっと簡単に申し上げますと、アメリカは一九六四年に八・五%、イギリスはやはり一九六四年に八・一%です。西ドイツがちょっと高いのですが、一九六四年に一二・六%、フランスが一九六四年に一一・九%、貯蓄性向はこの程度なんですね。日本は非常に高い。実はなぜ貯金をするか。私は最大の原因はやはり日本人が貧乏だからと思いますね。  今度は、さっきからお話し申し上げておるように、私どもは利子の分離課税についてどうしても納得できないのは、二百万円以下の所得者は、平均すると二百万円から百万円までの間でも八十一万円くらいしか実は貯蓄がないのですね。これはもう実は私何回もやってきましたけれども、株の場合も同じことなんでして、二百万円の所得者というのはこの分離課税というのは意味ないのですよ。何ら恩恵に浴さないのですね。そうすると、さっき私がちょっと触れましたように、世帯数として、二千六百四十六万世帯の中でわずか三十五万九千世帯のために実は一五%の分離課税というものが残ってくるわけです。その他の者は少額貯蓄免税の恩恵をみんな受けることになるわけですね。これはやはり税制上の問題として非常に問題があるのではないのだろうか。  身体障害者控除のところでも私はちょっと納得できないのは、今度の所得控除になったことで、本来なら低所得の者が身体障害者がいたらたくさん減免してもらいたいのですよ。要するに、低所得九%の税率のところは七万円の控除によって六千三百円ですよ。ところが、これが五〇%のところへ行きましょうか。そうすると三万五千円控除を受けるわけですね。しかし実際には、五〇%の上積み税率の人たちは身体障害者が一人くらいいたってあまり家計負担にならないのですね。その人のほうは三万五千円控除してもらって、ほんとうに切実に控除してもらいたい人はこれまでの税額控除の六千円に三百円上積みになっただけだ。これは実はさかさまにしてもらいたいのです。一番下が三万五千円、五〇%のほうは六千三百円でちっとも差しつかえないと思うのです。税というものは累進税率をとっているものだから、こういうことにならざるを得ない。逆に、分離課税が総合所得でないために起こる問題も、同じように、上へ行けば行くほど一五%といまの上積み税率の差額は結局みんな——大蔵大臣、ちょっと考えていただかなければならぬのは、この委員会で議論しておりますときに、減税というと、何かまけてやったという感じがするのですね。これは角度が違うのだと思うのです。  減税というのは、実は国が補助金をやっておるわけなんですよ。要するに、本来なら全部取ることですからね。特別措置でしなければ全部本来取るやつを、まけてやったのじゃないですよ、金をそこへやったと同じことなのです。一ぺん取っといて返したことと事実は同じなんですよ、取らなかったということは。私は、税金を安くしておる、特別に一般的な減税の議論をしているわけじゃありません。特別に安くしているということは、要するに、二百万円以上の所得者に対して、わずか三十五万九千世帯に対して本年度は二百七十億円まけてやったのじゃない、補助金を出してやったのです。大蔵大臣、わかりますね。持てる者に補助金を出して、持たざる者はいまのようなかっこうであまり恩典に浴さないという問題があるわけですね。この考え方、ひとつ大蔵大臣どうでしょうね。三十五万九千世帯に二百七十億円、ちょっと割り算してみてください、一世帯一体幾ら補助金を出したのか。
  326. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一世帯当たり七万円の補助金——七万円でございます。
  327. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、二百万円以上の人たちには、今度の税制改正によって向こう三年間毎年七万円ずつ補助金が出してあると同じに理解をしていい。そんなに持てる者のところに何も上積みにしなければならぬ理由はないのではないか。ですから、所得税の累進構造の中でどうしてもこれは排除をしてもらわなければならぬ問題ではないのか。二千六百万世帯のうちから引いたら幾らですか。二千六百四十六円世帯ですから、二千六百万対三十五万。民主主義の世の中でこんなことが通るというのはどうでしょうね。ちょっとうしろを向きたくなるけれども、皆さんも二千六百万の人たちから投票を受けた人たちで、三十五万の投票を受けた人もいるでしょうが、幾らもないわけです。これは私は、国民の名においてもう少し考えなければならぬのではないか、こう思うのですが、これについて、いま三年と言っているのだけれども、大蔵大臣の今後の考え方をひとつ伺っておきたい。
  328. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 特別措置を、すぐに特定の金持ちを助けるとかなんとかいうふうにとることが、いつも言っているように間違いでございます。日本の資本の蓄積が少ないこのときに、蓄積をどう奨励して、そうして日本産業の発達に役立たせようかという一つの政策的なことから早くから採用されて今日まできている措置であるということで、こういう措置の持つ機能というものをどう評価するかということでわれわれはこれを改廃すればいいのであって、こういう措置が特定個人に幾ら利益されているかじゃなくて、利益を与えてもなおかつ日本の貯蓄がふえるということが、どういう経済の作用を持つかというところへ着目しているのが特別措置の意味でございますので、そういう意味で私はやはり検討しなければいけないだろうと思います。  そういう意味ですから、私は個人の人の不平というようなものを取り上げるわけじゃございませんが、私どものところへ言ってくる——やはりこういう問題でいろいろ投書がございます。これは私の意見ではございませんから聞いていただきたいと思いますが、一千万円所得を持った人は大体六百万円くらい税金を払うでしょう、地方税を入れて。その人があと残った中から百万円の貯金をするということはなかなかたいへんだ、これをもし十年やって一千万円の貯金ができたという場合には、一千万円の貯金をつくるためにはいまの税制で六千万円くらいの税を国に払っているのだ、で、ほんとうを考えたら、ばからしいことであるが、それだけの税金を払いながらまだ貯蓄を敢行するということは、自分一身のものじゃない、やはりこの金が社会に役立つだろうと思うから払っているのだが、その貯金を見て、背後の自分たちの税を払っているということの評価はどうしてくれるか、もしこういうことをつつくなら、われわれは勲章をほんとうはもらいたい、そういうことを言ってきている人がいるのですが、そういうようなことで単に金持ちを助けると言うのか、やはりそういう問題がある。私はそれだからその人を助けるというのじゃないのですが、そういう人たちはそこまでのあれをやってもなお日本産業に役立つことをやったんだと思っているのでございまして、思っていることは、その点はやはり政策の一つ目的を達しているんだということも考えられますし、こういう特別措置をただ単に個人を助けるというふうな観点からの批評というものは、私は間違いじゃないか、こういう気がいたします。
  329. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき銀行局長も答えましたし、主税局長も答えましたけれども、昭和四十一年三月末で個人の貯蓄の残高は十六兆あまりになっているわけですね。この中でいまの課税対象になっておるもので二百万円超の金額は七千四百六十四億円ですよ。金額としても七千四百六十四億円です。一人当たりが、平均すると二百七万九千円くらいの預金になるわけです。だから、いまの課税対象の八兆二千億円の中で、比率にしますならば九一%、ほとんど九割というものは、要するにいまの少額貯蓄免税の二千六百万世帯が貯金しているのですよ。それで少額貯蓄免税ということで貯蓄の増強の目的は私はほとんど果たされていると思うのです。わずか三十五万九千世帯の人たちがいま残高で七千四百六十四億円、一人当たり二百万円の貯蓄をさせるために課税上累進総合課税の原則をここでこういうかっこうで処理することは、これは税法の原則からいってみても——あなたはこの間そうおっしゃったじゃないですか。ひとしからざるを憂うという色紙を書くと言ったですね。ひとしからざるを憂うというのは二千六百万世帯のほうに比重を置いてものを言うべきじゃないですか。三十五万九千世帯のためにひとしからざるを憂うじゃないでしょう。おそらく民主主義の原則は、二千六百万世帯にひとしきを考えるのが政治の常道だと思うのです。それは私は、いま何も個人のことを言っているのじゃないですよ。制度ですから、制度として公平なものにしていくことが望ましい。今度源泉徴収を五%高めましたからいいようなものの、いまあなたがいみじくもおっしゃったように、一千万円の所得では上積み税率が五十何%かになるわけです。本来ならば五十何%というのが一五%で済んで三五%はともかくいまの七万円を相当額として国が補助金を与えたと同じ効果になっておる。こういうことを考えると、さっきから話が出たけれども、一千万円の人には勲章をあげたっていいですよ。勲章をあげたっていいから、ともかく税金は公平にしろという方向でひとつ考える必要はないでしょうか。大蔵大臣、どうでしょう。
  330. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、もう長い間の慣習ごとになっておるものですが、徐々にこれをかえていこうということで五%というのですから、これは現行の一〇%に対しては五割の増税ということになるのですから、漸進的といっても、幅としては私は相当なものだと思います。こういう形で漸進的に解決していくのがやはりいいというので、今回の改正をいたしたということでございます。
  331. 堀昌雄

    ○堀委員 それなら、今度五%上げますね。これは三回目ですけれども、五%を一〇%に上げて貯金が減らないかと言ったら、貯金はふえております。今度は一〇%が一五%になって貯金がふえるのか減るのかはっきりしましょうか。そうして、これが減らなかったら、これまでと同じように伸びているんだったら、この次は二〇%、本法所得税法で二〇%ですからね。本法に返しても問題はない。この三年間の預金の伸びをひとつ大いに期待をしながら見ていきたいと思う。あなたもあと三年先までは大蔵大臣でないだろうけれども、政調会長くらいでまだがんばってもらって、ひとつ大いにやってもらいたいと思います。三年先までは私も予想できない。佐藤内閣が第一続かぬじゃないだろうか。  次は、今度は同じように配当所得の問題であります。配当所得に関する税の減収の問題でありますけれども、これまたちょっと疑問があるのです。というのは、三十九年のところですか、そこらのほうがいいんじゃないかと思うのですけれども、四十年でも大体けっこうです。支払い配当がたしか六千七百九十一億円ですね。そこで、これから法人分を差し引いてもらって、個人の配当所得というのは一体幾らだったのか、ちょっとそれを最初に答えてもらいたい。
  332. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いろいろの推定法がございますが、六千七百九十一億円の五二%、つまり三千五百三十一億円が個人に支払われた配当と推定されます。
  333. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、皆さんのほうの資料で、四十年には源泉選択によるものが二百九億円、申告不要が二百九十億だというのをこの前資料でちょうだいしているわけですね。これを足して、それからもう一つ申告分として千二百六十九億円申告されたというのを、あなたのほうの資料でもらっているわけです。この合計が千七百六十八億円です。あなたのいまお話の三千五百三十一億円からこの源泉選択による分、申告不要分、申告分あわせて千七百六十八億円引きますと千七百六十三億円というのが残る。これは一体何ですか。
  334. 塩崎潤

    塩崎政府委員 無申告分と、それから還付されたものでございます。
  335. 堀昌雄

    ○堀委員 還付は一応申告をして申告分の中に出ているんじゃないですか、所得としては。所得としては出ているけれども、還付は税で返しているんだろうから、所得のところでは申告分の中に還付は入っていなければおかしいでしょう。
  336. 塩崎潤

    塩崎政府委員 前からの慣習で、配当所得の申告したものは配当控除後税額が残るものを配当所得者として、ここに提出してあります階級別表はそれをあらわしてございます。
  337. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは還付は幾らですか。
  338. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一応、私ども推定は五百三十億円あると見ております。
  339. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、五百三十億円が還付とすれば、あと千二百三十三億円というのは無申告だ。  国税庁長官にお伺いをいたしますが、一体一年間に配当所得のうちで千二百億円もの配当所得が無申告でそのままになっているんですね。現在五万円までの配当支払い調書の関係の者はここへちゃんと二百九十億円と出ているから、国の税金の中で配当所得が千二百億円もみな無申告でそのままに放置されておる。配当した者はちゃんとわかっておるわけですから、これは五万円以上のところなんだから、これを一体どうしてこれまで放置しておるのですか。
  340. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この全部の仕組みでございますが、ちょっとお話し申し上げたいと思いますが、無申告の中にも、さらにまた申告不要分の中にも多分に含まれておりますが、これもここで批判になりました配当控除一五%、この一五%の実効税率のかかる人は申告が要らないということになります。したがって、いろいろな脱税の分もございましょうし、ほんとうに意識的な無申告分もございましょう。申告しても税額が残らない、家族に分散した、そのまま税務署に行って還付の申請をする、またいろいろな意味合いにおいて贈与税の追及とかいうようなこともあるかもしれない、こういったことで、また調べてみましても、配当控除の結果、追徴さるべき所得税がないというものが相当あろうかと思います。それともう一つは、配当の資料の提出限度の問題、御案内のように、支払い調書の提出は、先般の改正で年五万円までは提出が要らなくなったわけでございます。そういたしますと、三十八年には九百二十五万枚の提出資料が出ておりましたが、四十年度では百六十五万枚しか提出がされておりません。つまり六分の一程度に減ったわけでございます。株主数はむしろふえぎみでございますが、大体横ばいでございまして、千九百万ばかり個人分は推定されておりますけれども、こういったところから、支払い調書が出ない、なかなか申告が出ないという現在の税務環境、さらにまた、支払い調書がないと税務署もまた追及ができないという現在ですね。さらにもう一つは、いま申しました配当控除ということで追及しても、取るべき税額が出ない、相当少額なものである、こういったことをひとつ考えていかなければならぬ、もちろん国税庁をおとがめでございましょうけれども、そういったメカニズムをぜひ御理解願いたいと思うのでございます。
  341. 堀昌雄

    ○堀委員 それは、理屈としてはそういうものが考えられるということは私もわかりますよ。しかし、それは確かめたわけじゃないでしょう。実際そうなっておったかどうか、これは実施当局である国税庁側が調べた結果わかることで、百億や二百億というなら別ですけれども、年間にともかく千二百三十三億円というものが、要するにあなたのほうの計算から出た残りとして、ともかく何だかわからないものがある。あなたのほうでは、ちゃんと源泉選択というのは二百九億円だ、五万円までの支払い調書を出さないということによるところの申告不要分が二百九十億円だ、それから申告をしたのが千二百六十九億円、ちょうど申告をしたのと、ともかく申告を全然しないで脱税の疑いのあるものが同額であるというばかなことが一体許されますか。だから、これは国税庁、ともかく五万円までの支払い調書以外に調書の出されているものについては、全部一ぺん洗ってもらって、それでいまのような結果になったことを当委員会に報告をしてもらいたいと思うんですよ。一体どれが配当控除によってプラス・マイナスであったから、実際上申告をしていなかったけれども課税上としては国が損害を受けていないもの、あるいは、やはりいろいろな形で脱税の意図を持って無申告であったもの、これはいろいろなものがあると私は思うんですよ。金額が百億とか五十億ならともかく、千二百三十三億円というのは巨額な金額ですからね。この点については、今後の税務調査の中で一つの大きな柱としてこれをひとつ措置してもらいたい。国税庁長官、どうです。
  342. 泉美之松

    泉政府委員 配当のうち千二百三十三億円というものが無申告の状態になっておる、これはもう堀委員も——昭和四十年の税制改正のときに、当時私、主税局長で申し上げた数字でありまして、その当時から、一体その千二百三十三億という数字がどういうものか、まあ考えられることは、先ほど主税局長が申し上げたようなことでありまして、源泉徴収で一〇%徴収いたしておりますものですから、あとでそれを調べてみましても、結局配当控除一五%であって追加納税する必要はなくなってくるという人が相当おるわけです。そのために税務署のほうでも、いろいろ調べていっても、結局は配当控除で追加納税の必要がなくなってくるというので調べないというようなことも重なってきておるかと思うのです。  ただ、先ほどもお話がありましたように、最近は支払い調書の提出限度というのが五万円に上がりましたから、その分についてなら調査はできると思います。しかし、おそらく千二百三十三億円のうちで相当部分は支払い調書の出ないものではなかろうかと思います。しかし、いずれにしてもそういう点についてはもっと実態を解明する必要があることは確かです。
  343. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、お聞きのとおりでありますから、ともかく私どもはこのままでは済まされないと思うのです。やはりこれはどういうことであったか。いま私が申し上げたように、調べてみたけれども、これはやはり税としては控除でパアになるものもあるでしょうし、脱税もあるでしょう。いろいろあるでしょうけれども、これは一ぺん十分調査してもらって、そうして、それは一体どういうことであったかということは当然当委員会に報告してもらわなければ、これは困る問題だと私は思いますから、この点はひとつ十分申し上げておきたいと思います。  そこで、その次の問題は、大蔵大臣は現在証券市場不振——どっちかというと、あまりぱっとしませんが、あなたは、投資態度としては、投機的なやり方がいいのか、投資を本則とするのがいいのか、その点ひとつお答えいただきたい。
  344. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 現実の市場における取引のうち、一体どの部分のものが投機的取引であるか、また、どういった内容のものが投資的取引であるかということは、実際問題として区分することはなかなか困難でございます。しかし、いわば信用取引は投機的取引と一応考えられております。しかし、実物取引の中にも当然投機的な取引があり得ると思うのでございますが、信用取引には日銀資金をバックにして特別な政策的な制度金融としての配慮も加えられておるということは、これはやはり流通市場としての機能を果たすためには、正しい意味の投機的な取引は当然歓迎されざるを得ない、こういう面があるわけでございます。したがって、いずれが好ましいかということは、個々の家庭の事情において、非常に投機に走って家庭の幸福を破壊するということがあれば、これは当然一種の社会問題として問題になりますけれども、市場の機能を期待するという面からいいますと、投機取引はあながち好ましくない取引であるというふうに一がいに否定することはできないと思うのでございます。
  345. 堀昌雄

    ○堀委員 証券局長にお伺いをいたしますが、ニューヨーク取引所における株式の年間回転率と日本の取引所の年間回転率は幾らですか。
  346. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 最近の回転率はかなり——ちょっと出来高が動いておりますので、かつて一〇〇%といわれたことがあるのでございますが、ニューヨークは、大体ニューヨークでもフランスでもそうですが、一五%から大体二〇%、一五%よりニューヨークは少し上がってきたようでありますが、おそらく日本は、全国取引所全部を集計してみなければわかりませんが、六〇%から七〇%が現状ではないかと思うのでございます。  ただ、この数字を比べます場合に気をつけなければなりませんのは、ここに一つ別な問題があるのでございます。ブローカーである証券会社自身の自己売買がそこに含まれておる、大体これが半分を占めております。したがって、これはかりに通り抜けと見ますと、半分、要するに、顧客の注文に基づく取引だけの回転率でいきますと、三〇%から四〇%、それにしても外国の、特にニューヨークの例に比べますれば約倍くらいの回転率になっておる、こういう状況でございます。
  347. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、私がいま回転率を言っていますのは、要するに、資本主義のいろんな条件では、アメリカというのはやはり前進国だと思います。ですから、アメリカの証券取引所における回転率が一五から、実際は二八から一七くらいのときが多いのですが、そういう形になっておるのに、日本では高いときは一〇〇くらいになる。要するに、一つの株が一年間に必ず一回売買される、こういうことですね。  この回転率が非常に高いということは何を示しておるかというと、株式保有の期間が大体は短いということです。私どもは健全な資本市場ということを考えていくためには、短期的な目先によって株を買ったり売ったりするということは、それは資産のある人はいいかもしれない。資産の非常にある人は五年くらいだったら置いておけということはできるでしょうが、日本の場合は、さっき申し上げたように、所得階層別で見れば、ともかく二百万以上の所得者がわずかに三十五万九千世帯しかないという非常に低所得の多い状態、しかし株主数はいま相当広範に広がっておるわけでありますから、われわれとしては安定した投資というものがどうしても必要なのではないか。考え方としては、できるだけ短期に目先で売ったり買ったりすることは避けたほうがいい。ところが、証券会社の側からいいますと、手数料収入というのは、売ったり買ったりしてもらわないと収入にならないというわけですね。そこで、ともかく顧客のところへ行って、上がりそうですからといっては——いまは別ですけれども、これまでは上がりそうですといっては買わせ、下がってきたら、ああ下がりました、早く売りましょうといっては売らせ、売ったり買ったり売ったり買ったりさせて、そうして投資家は損をして証券会社は一応もうけたけれども、やはり投資家の利益を守らなければ、それは必ず証券会社に戻ってくるわけでありますから、現在たいへん証券界はまずいことになっているわけですね。  それを助長しておる問題の中に、現在の証券の譲渡所得非課税の問題というのが一つの問題としてあるのではないかと思います。現在の法律は、証券の譲渡については、一年間に五十回以上の売買をして、さらにその売買の数が二十万株以上であるものについては税金を取る、こうなっているわけです。そこで、一体この税金をどのくらい取られておるのか、ひとつ国税庁のほうからお答えいただきたい。
  348. 泉美之松

    泉政府委員 堀先生から御紹介がありましたが、過去におきまして三十五年、六年当時課税したことは私も覚えておるのでありますが、最近の統計はまだ手にいたしておりません。  株の譲渡の場合、御承知のように三種類の課税があるわけでございます。事業譲渡類似の場合と、それから買い占めの場合、それからいまおっしゃった五十回以上、二十万株以上ということですが、そのうちの五十回以上、二十万株以上に該当するということになりますと、その数は、課税の実績はわりあい少ないと思います。
  349. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり今後の国の政策として重要な問題の一つとして、いま盛んに安定株主操作というのが資本自由化対策ということでいろいろ行なわれておる。そういう株主安定操作ということで、実はどんどん法人に株をはめ込んでおるわけですね。私は、ほんとうに安定株主操作になればいいと思うが、一たん不況になってきますと、法人というのが一番最初に法人売りということを出してくるという苦い経験を日本の証券界というものは十分知っておるはずだと思うのです。だからその点では、そういういろんなメリットの中で安定投資をしておる人にメリットを与えることについては、いまの資本市場のいろんな状態から見て、私はある程度やむを得ないと思うけれども、片方で、税制上短期のそういう取引を含めて、ともかく非課税などということは、やはり方向としては少し検討を要する問題ではないか。だから、そういう意味で、短期に売買がされることは結局——投資家から税金を取ろうというのじゃないですよ。いいですか、税金を取るために売っているのじゃなくて、できるだけそういうものを避けるためには、あまり短期の取引をすると税金を取られるということになったほうが、株のあり方としては安定投資の方向に進むのではないか、私はこう考えるのですが、ひとつ証券譲渡所得の問題について、大臣の政治的見解を承りたい。——大臣に聞いておる。事務当局ではだめですよ。
  350. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 一応証券局の考えておるところを申し上げます。  これは主税局考え方を聞かなければわかりませんが、現在譲渡所得については、各国いろいろありますけれども、問題になっておるところは日本ばかりではございませんけれども日本は、特別に多いものは別といたしまして非課税になっております。これは、一方でキャピタルゲインが発生すると同時に、キャピタルロスも発生してくるということ、それから、有価証券の取引税というものが個人の場合は一万分の十五課せられておるようになっております。税執行面でのキャピタルゲイン、キャピタルロスを確実に把握する前提で、完全にこれを課税の対象にした場合と現行の制度と比べますと、はたして国の得るところ、どちらが一体得であるかということを考えますと、これは一がいに何とも言えないと思うのでございます。  そういうことで、一応有価証券取引税ということでごめんこうむっているということで現在の税制はでき上がっておるわけでございますが、この短期の投機取引というものを証券市場あるいは証券行政の立場からどう評価するかということになりますと、一がいにこれは何とも言えないのでございますが、現在信用取引制度全般について、信用取引だけが必ずしも投機取引ではございませんけれども、信用取引の残高ということが内部要因化して短期的に非常に激しく動く可能性があるということをわれわれは注視いたしまして、取引所側とよく相談しておるのでありますが、できるだけいまのいろいろの仕法を改めて、短期的な取引から長期化しやすい方向へ改善しようというふうに考えております。しかし、だからといって、短期的な取引自体を、これはいけないというふうに排除していいものかどうかという点については若干考えなくてはならない。日本の市場の持っている環境、特殊性があるわけでございますが、大体一銘柄の単位、スケールからいいましても、日本の場合は、ニューヨークに比べれば、大体一銘柄の単位が上場株では二十分の一くらいの非常に小さい単位でございます。したがって、全く実物的な売りと買いが投合だけで市場を形成するということは非常に困難なわけでございます。一体そんなものから上場を認めていいかどうかという問題も今日あるわけでございます。それから、一株当たりが大体向こうは五十ドルいたしておりますのに対して、こちらは額面では五十円ですけれども、いま百二十円くらい、そういう意味で、市場が非常に浅く狭いという点を考えますと、仮需給というものを相当入れなければ市場の機能が果し得ない、こういう点を考えますと、一方で非常に金利が高い、配当利回りが低いということを考えますと、投資家としては、かりに投機取引をする場合にも、短期に手じまいをして金利負担を免れたいという、そういう仕法が働くということも考えなければならないと思いますが、いずれにしましても、与えられた状況の中でできるだけ信用取引自体も長期的な取引が可能になるような方向で改善を加えていきたいということで、業界といま相談をして改善を考えている最中であります。
  351. 堀昌雄

    ○堀委員 信用取引の改善の問題については、業界はいま三カ月を六カ月にする、継続手数料を取らないようにしようということ、それはいいことだと思うのですよ。いいことだと思うのですけれども、その発想のもとは、できるだけ短期のスペキュレーションではなくて、経済の見通しその他の上に立った処置をしようということなんでしょう。方向としては私の言っている方向ではないかと思うのです。私は、かねてから、信用取引というものは、しろうとがそこへ入ってきてけがをする人が多いですから、これについてはやはり証拠金を引き上げて、十分資力のある者がやってきて、もし下がった場合には現物が引けるだけの能力があれば大きな被害を受けなくて済むということで、そういう主張をずっとしてきておった。そのことの限りにおいてはいいけれども、私がいま言う短期のものはできるだけ避けるほうがいいということは、やはり証券投資としては被害を少なくするということになるのではないか。だから、私が言っていることは、やはり健全な投資家を守る方向税制考えられていいのではないかということです。  主税局長にお伺いをいたしますが、アメリカでは証券の譲渡の所得はどうなっておりますか。イギリスではどうなっておりますか。
  352. 塩崎潤

    塩崎政府委員 アメリカはキャピタルゲイン課税のあることは御存じのとおりでございます。特殊な課税方式でございますけれども、六カ月保有を基準といたしまして、六カ月をこえるものはキャピタルゲイン、六カ月以下のものは、これはもう普通所得といたして、株式についてのキャピタルゲインについては課税しておらぬことは、御存じのとおりであります。イギリスも長らく課税しておりませんでしたが、保有期間を一年を基準といたしまして、一年以下は普通所得として課税する、一年をこえますものは長期キャピタルゲインといたしまして、たしかフラットの税率を三〇%であると思いましたが、分離課税をしております。
  353. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、お聞きのとおりですね。アメリカでもイギリスでも短期なものからは税金を取るというたてまえになっておることは、短期の六カ月以内で売買が行なわれるものはキャピタルゲインじゃないのですよ。これはスペキュレーションなんです。だからそういう点でそういう税が取られておるわけです。だから、私がいま申し上げておるように、私は譲渡所得を全部取れということを言っておるのではないのです。短期のものからは取るようにしたらどうか。せめてアメリカがやっておるように、短期のものからは取るようにして、六カ月から先、あるいは一年先というように、そういう処置をすることが、私は日本の証券を正しい方向に持っていくことであると思うのです。アメリカもやっている、イギリスでもやっている。これはあなたも十分ひとつ参考にして考えてもらいたいと思います。  だから、いま私が証券問題について感じることは、まず何よりも大事なことは投資家をいかにして守っていくかということでないと、これはもういまの証券の低迷はなかなか解決はつきません。残念ながら、証券界はその方向についてはもう一つ私は不十分な点が見受けられるわけでありますから、方向としてはいま努力をしておると思いますけれど、なお不十分だと思っておるわけです。そういう際には、私は短期の譲渡所得の問題は今後の懸案としてひとつ検討してもらいたいと思うのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  354. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは懸案としては検討いたしますし、方向としては、堀さんの言われている方向はいいのですが、投資家保護のために、いままだ日本の証券業界には改革すべき問題がたくさんあって、私どもは来年度の免許制をきっかけにして今後いろんな証券市場のあり方についての改造をやろうとしておるときでございますので、そういうものが一応軌道に乗ってからならよろしゅうございますが、いまの現状において株式の譲渡所得の問題にすぐに手をつけることは、まだ少し時期が早過ぎやせぬか、私個人はそういう感じがしております。十分研究します。
  355. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、交際費課税の問題について、だいぶ同僚の諸君が申してまいりましたが、主税局長にお伺いをいたします。  一体、アメリカでは、この交際費についてはどういう取り扱いをしておるのか、イギリスでは一体どういう取り扱いをしておるのか、ちょっとアメリカとイギリスの交際費課税についての処置をひとつお伺いしたいと思います。
  356. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  アメリカの交際費取り扱いは、基本的には個人所得から支払われるものが企業経費にまぎれ込むことを非常にやかましく言っておることが第一点でございます。それは多分に事実認定の問題にからみますので、その立証が非常にやかましい、これが第一点。第二点は、一人当たり年二十五ドル、つまり九千円以上の贈与は交際費としない、損金に見ない、これがアメリカの交際費の制限の態様でございます。イギリスは、交際費は輸出交際費を除きまして、全額否認ということが第一の柱であります。第二は、いまのアメリカの二十五ドルに相当するものが年一ポンド、千円でございます。
  357. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり私どもは税の問題については同じような資本主義の国がとっておる税制にはおのおの意義があると思うのです。  そこで、日本の問題について私この間、大臣おいでにならないところで少し議論をしたのですけれども、私はこういう提案をしたいわけです。アメリカではいま二十五ドル、イギリス一ポンド、日本のいまの通貨状態では幾らにするがいいか。私は大体いまの交際費の中身は接待費贈答費がおそらく九〇%くらいになっておるだろうと思うのです。国税庁長官・そんなところですか。
  358. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど主税局長から申し上げましたように、接待費贈答費で七七%でございます。
  359. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、交際費の中で接待費贈答費で七七%、そこで、まず贈答費についてはイギリスは一ポンド、アメリカは二十五ドル。私は、日本は少し甘く見て、一人当たり、一件当たり一万円という上限を設けたらどうか、会社からプレゼントするにしても、五万円も十万円ものものをプレゼントするということは、会社の金だからということになるわけでして、個人として行なうならおそらく一万円くらいのところが日本国民感情として納得のできるところではないのか、こう思うのです。だから、一万円まではいい。しかし、一件当たりで一万円をこえるものについては、これは損金には認めない。アメリカもイギリスももっと低いですよ、二十五ドル、一ポンドですから。私はそれらの約十倍くらいを提案しておるわけですが、ひとつこれは大蔵大臣、どうでしょうか。私が申しておるのは、今度の改正の中で皆さん方は量的な方向では努力しておられることは私はいいと思います。それはあまり顕著に効果が出ないかもしれませんけれども、私も努力のあとは認めます。しかし量だけの問題じゃないのですね。いまの交際費に対する非難の一つは、質の問題だと思うのです。国民が普通の個人としては行なうことができないことを社用に名をかりて行なう。きのう総理もおっしゃっておりました。社用に名をかりて特権的に行なっているこの行為に対して、国民は強い反発をしておると思うのです。ですから、やはり国民の常識の範囲のことにしてもらえば、私は、量もさることながら、質の点では問題がだいぶ片づくのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、この点ひとついかがでしょうか。
  360. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 量的な規制のほかに、今度私どもは質的な規制もある程度考えたいと思っておりますが、その場合に、いま言ったような、金額制限というようなことは、実際上はそれだけの受け取りが明瞭でなければならぬし、それがほんとうであるかどうか、これは二万円になった場合は、別口にして一万円ずつやる、二枚つくればいいとか、いろいろなことがございますので、これをほんとうに精細に調査しようということになりますと、いろいろなトラブルも起こるでしょうし、はたして実効のある方法であるかどうかということを考えますので、抜け穴のある金額制限というよりは、はっきりした性格によって、これはいけないという質的な別個の規制のことを考えるほうが有効じゃないかと私は考えます。
  361. 堀昌雄

    ○堀委員 国税庁長官に伺いますが、アメリカ二十五ドル、イギリス一ポンドという規制をしているのですね。アメリカやイギリスでやはりそういう金額制限をやっていけるというのは、これは主税局長に聞いたほうがいいのか、どっちがいいかわからないが……。
  362. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、先般申し上げましたように、やはり税務行政とそれから納税者の納税協力は、その国その国でひとつ御判断願いたいというふうにここで御陳情申し上げたいと思います。  アメリカでも、そういった交際費があるために、ホテルあるいはレストランで相当接待しているときは、写真をとって税務署に出す、したがいまして、写真屋が非常に繁盛した、こんなことがいわれております。どうも、そういったことはあまりにもむだな力も入るような気がいたしますし、アメリカの税務環境は日本よりもいいと思うのですが、それですらそういったことがありますと、さて、日本でそういった一人当たりの制限を設けた場合に考えられますトラブルを考えますと、もう少し実行可能な方法、堀先生のお気持ちはよくわかりますので、何か実行可能な方法をひとつ考えてみたい、こんな気持ちでございます。
  363. 堀昌雄

    ○堀委員 この間提案しましたが、いまのその問題と、ひとつ公給領収証をきちんとそろえさせたらどうだろうかという、実は二つ提案がしてございます。会議録にも出ておりますし、塩崎君も聞いておったことでございますから、ひとつ、大蔵省としては、いまの量もさることながら、交際費の問題は、いろいろ私の提案した問題そのとおりであることを私は要求しておるわけではありませんけれども、意のあるところによって、国民から疑惑のないような処置を十分してもらいたいと思います。公給領収証をそろえることは、遊興飲食税がきちんと入ることを地方財政の面からも促進をすることでありますから、私は当然公給領収証を添付されてしかるべきであろう、こういうふうに思いますから、そこらは、一応通達によって、各企業に対して今後の交際費の措置については、ひとつ公給領収証を添付するものとするということでやってもらえれば、これだけでもずいぶん違うんじゃないかと思いますので、そこらを含めて、交際費課税についての前向きの検討を要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  364. 内田常雄

    内田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  365. 内田常雄

    内田委員長 速記を始めてください。  本案についての議事を進めます。     —————————————
  366. 内田常雄

    内田委員長 本案に対して、村上信二郎君外二十一名より、自由民主党提案にかかる修正案が提出されております。     —————————————
  367. 内田常雄

    内田委員長 この際、提出者の趣旨の説明を求めます。村上信二郎君。
  368. 村上信二郎

    ○村上(信)委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提出者を代表して、その提案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案の案文はお手元に配付してありますので、朗読を省略いたしますが、修正案の骨子は、租税特別措置法第六十一条の農業協同組合等の留保所得の特別控除に関する規定を改正して、この特例を特定の消費生活協同組合及び同連合会にも適用することにいたそうとするものであります。  申すまでもなく、消費生活協同組合は、消費者の自発的な生活協同組織でありまして、その健全な発展をはかることは、物価抑制の見地からも、また消費者保護の立場からも緊要な政策措置であります。  わが党としては、去る三月十三日閣議決定された、経済社会発展計画の中にも「消費生活協同組合等民間の消費者組織の効果的発展をはかる方向で適切な措置を検討する。」とありますので、消費生活協同組合に対する具体的助成措置について検討いたしておりましたところ、本件に関しては、社会党からも熱心な同趣旨の御提案がありましたので、この修正案を提出することにした次第であります。  したがって、その健全な発展をはかるためには、内部蓄積を充実させて、その資金的基礎を強固にすることが必要であり、税制上からもこれを助成することが適切と考えられますので、この際、農業協同組合等と同様、その留保金額が出資総額の四分の一に達するまでは、各事業年度の留保金額の二分の一を損金に算入することを認めることにいたしたのであります。ただし、消費生活協同組合の事業活動は中小小売り商の事業活動と競合し、これに重大な影響を及ぼすことが少なくありませんので、この点も十分考慮する必要があるのであります。  そこで、中小企業基本法では、商業については、資本または出資総額が一千万円以下の会社等を中小企業と定めていることにかんがみ、これとの権衡を勘案し、特定の消費生活協同組合に限り、この特例を適用することにいたしたのであります。  しかしながら、この特例の適用により、現在の消費生活協同組会の九割以上が内部蓄積を充実することができるようになり、その効果は大きいと考えるのであります。  なお、消費生活協同組合の員外利用が二割をこえるときは、農業協同組合等の場合と同様、この特例の適用を受けられないことにしております。  以上が、この修正案の趣旨及び内容の概要でありますが、何とぞすみやかに満場一致の賛成あらんことを希望いたします。
  369. 内田常雄

    内田委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  本修正案について、内閣に御意見があれば、この際お述べを願います。水田大蔵大臣
  370. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案による消費生活協同組合等の留保所得の二分の一損金算入は、政府としてはやむを得ないものと考えます。
  371. 内田常雄

    内田委員長 これにて本案並びに修正案についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  372. 内田常雄

    内田委員長 次に、本案並びに修正案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  373. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法改正に対し、見解を述べ、政府の反省を促し、反対の討論をいたすものであります。  今回の法案の中でわれわれが最も強く反対するものは、政策効果を疑う高額預金者の利子分離課税、株式の配当所得の優遇措置を三カ年間延長するという点であります。  不労所得がべらぼうに優遇されている株式を売買して、たらふく利益を得ても所得税は取られない実情にある。株の売買利益は年間五十回以上売買をしない限り一銭も所得税がかからないのであります。年間五回、十回の株の売買で相当な利益をあげても税金がかからない現行制度は、べらぼうな不労所得者優遇であって、まさに金持ち天国と言わざるを得ない。しかも、そのように株式の譲渡所得の非課税で優遇をしておきながら、さらに源泉徴収税率本則二〇%を一五%に軽減し、さらにおまけをつけ加えて、源泉分離課税確定申告免除による軽減と、まことに至れり尽くせりの優遇をしているのであります。  この優遇措置に賛成するということは、正義感が強い政治家にはできないのではないかと思うのであります。われわれが強く不満を持ち、反対する理由は、この不労所得優遇にあるのであります。  第二に、所得税の体系を乱し、総合累進税制をねじ曲げ、公平、応能の原則を破壊している点であります。  所得税国民の所得格差を調整し、富を再分配する機能を発揮すべき税であり、所得の多い者からは多くの税金を取る性格の税であります。個人に帰属する所得を指標としてその担税力を把握するもので、累進税率を適用する基準となる課税標準にはすべての所得を総合することが本則であり、原理であります。しかるに、利子、配当所得を総合し税率を累進にすることを見のがし、租税特別措置で保護まで行なう現政府の姿勢は、近代国家の重大な原理を踏みにじるものと断ぜざるを得ません。  生活水準の低い、所得の少ない者には過酷な課税を行ない、能力のある資産所得者に軽い、不均衡、不公平な利子、配当の優遇は国民大衆の不満を増大し、納税道義を低下させ、風格ある社会とは逆の方向国民を誘導することになるのであります。いつの日か、この制度を続ける勢力は、国民の鋭い指弾を受け、没落するであろうことを予言をしてはばからないのであります。いまこそ公平で能力に応ずる税金を実現する税制実現のため、水田蔵相は特にひとしからざるを憂うると、為政者としての気持ちを委員会で発言したからには、すみやかに公平なる税制実現をはかる責任があると思います。  第三に、政策効果のない財界とのなれ合いの税制であるからであります。  政府は貯蓄の奨励に必要だと主張してまいりましたが、はたして貯蓄増強にどう因果関係があるか、利子所得課税の過去の優遇をわれわれはあらゆる点から検討いたしました結果、預金と貯蓄との因果関係はほとんどないということが立証されているのであります。しかるに、かかる特別措置を何ゆえに強行するか。それは金融界あるいは証券界と政府が密着をいたし、癒着をしてかかる恩典を与えることによって、彼らの業界の利益を促そうとする以外の何ものでもありません。私は寡聞にして利子、配当課税の減免措置について一般国民大衆からの陳情書を見た覚えがありません。これらの業界が常に政府に働きかけ、政府はこれらの無理な施策を推進していると言わざるを得ません。  したがって、わが党が反対をする第三の理由は、かかる財界との癒着による政府・自民党の党略によるかかる措置に対しては、すみやかなる撤廃を強く要求をするものであります。  最後に、しからば、今回の改正にあたって、われわれはかく改革を提案をいたしたいという一、二の点について申し述べたいと思います。  一つは、利子分離課税の延長及び少額貯蓄免税の適用範囲の拡大に伴い乱用さるるような点が起こる心配があるので、この際、税法の適正な執行のためにも、預金における架空名義の取り扱いを廃止するよう、政府はすみやかなる検討をすべきであります。  第二に、配当に伴う措置の延長に伴い、健全な投資の促進に資するため、短期の有価証券譲渡所得につき課税を行なうものとすべきであります。  第三に、交際費損金算入にあたっては、飲食費については公給領収証を添付するものに限り、おおむね一人当たり五千円程度を限度とし、贈答品についても一件一万円以内とする等、質的に国民の納得し得る限度にとどめるよう適切な措置を講ずべきであります。  なお、法人における交際費と同様の性格の概算控除等を個人零細事業所得者にも認めるよう努力すべきであります。  第四に、課税の公平の原則にかんがみ、特別措置の効果を具体的に判定し得る方策をすみやかに検討するとともに、利子、配当等の、国民感情によりその廃止を強く要求されているものについては、すみやかに廃止するよう格段の努力をすべきであると強く要求をいたし、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法に反対の意見を述べるものであります。  なお、修正部分につきましては、先ほど提案の趣旨説明がございましたが、私たちは、政府がすでに閣議において、四十二年三月十三日、「社会開発の推進」の項の中で「消費者保護および消費者教育の推進にあたっては、消費者自身の自主的組織活動に期待する面が大きいので、消費生活協同組合等民間の消費者組織の効果的発展をはかる方向で適切な措置を検討する。」との決定が行なわれております。したがって、かかる物価が上昇する段階においては、消費生活協同組合を通じてできるだけ消費者の価格が高騰しない配慮をすべきであるので、特に時宜を得た適切な措置であると賛意を表するものであります。
  374. 内田常雄

    内田委員長 次に、河野洋平君。
  375. 河野洋平

    ○河野(洋)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、政府提出の原案並びに修正案の双方に対し賛成の意見を表明するものであります。  わが国における最近の経済成長は目ざましく、世界の驚異とされておりますが、これに伴い、特に国際化の進展と都市化の傾向には急激なものが見られるなど、わが国内外の諸条件の変化は著しいものがあります。かかる情勢に対応して、わが国が名実ともに先進国の一員としての地歩を築くためには、これに対処すべき十分な施策を急速に講じなければなりません。政府原案は、税制上の見地から、これら政策上の要請にこたえようとするものであります。  まず、新規の特別措置としては、企業の体質改善、中小企業の基盤の確立、輸出の振興、社会開発の促進、土地及び住宅政策の推進、景気調整の機能強化等のため、まことに時宜を得た措置を講じております。この中には、国産技術の開発、石炭産業の再建整備、繊維産業の構造改善、中小企業における協業化の促進、公害の防止、都市交通の緩和、住宅貯蓄の奨励等、種々特筆すべき政策を推進するための特別措置が織り込まれているのであります。  次に、既存の特別措置については、政府原案によれば、第一に、利子、配当の特例税率を五%引き上げて漸進的な措置を講じ、第二に、交際費課税を合理化し、その増減に応じて、課税の強化、軽減をはかり、第三に、航空機の乗客に対する通行税の軽減措置を廃止するなど、実情に即した整理合理化をはかっております。  言うまでもなく、租税特別措置は、本委員会における総理の答弁にもあるように、税制は、租税負担公平の原則と現実の財政経済政策との調和が常に保たれることが必要であることから考え、その時点において最善の経済効果が発揮されるよう不断の検討を加え、制度の流動的な改廃を行なっていくことが当然でございます。この意味において、利子、配当課税の特例は、資本不足のわが国の現状からすれば、資本市場の育成、貯蓄奨励等に及ぼす効果がきわめて大きいのであります。  しかし、政府原案にもこの際修正を加えるべきものと考えられる点が一つあります。  すなわち、修正案の内容をなす消費生活協同組合に対する留保所得の特別控除制度の適用であります。  この修正案は、ただいま趣旨説明がありましたとおり、最近においていよいよ事業の重要性を増しつつある消費生活協同組合につきまして、一般中小企業との競争関係にも配意しつつ、特定の組合及び連合会に対して、現在農業協同組合等について設けられている留保所得の二分の一損金算入制度を適用しようとするものであります。われわれは、この修正案に対し、まことに有意義な措置と認め、賛成の意を表するものであります。  以上、自由民主党といたしまして、政府原案並びに修正案のいずれに対しても賛意を表明して、討論を終わります。
  376. 内田常雄

    内田委員長 次に、竹本孫一君。
  377. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民社党を代表しまして、ただいま議題になっております租税特別措置法改正案に対して反対の討論を行なわんとするものであります。  もちろん私どもは、特別措置一般に反対するものではありません。事実、今回の改正案に出されております試験研究費や繊維工業の構造改善、あるいは石炭鉱業の再建、協業組合、中小漁業者の合併、あるいは社会開発、輸出の振興、万国博覧会等につきましてのそれぞれの臨時措置につきましては、われわれは賛成であります。  また、ただいま修正案が出されました消費生協の内部留保に関する案文は、他の協同組合と消費生協を区別する何らの理由もありませんし、また、消費者保護の見地から考えましても、きわめて妥当なものであると思いまして、賛成をするものであります。  しかしながら、私どもは、特別措置のあり方につきましては、先般来討議もいたしましたように、この一部に片寄ったこうした特別措置ではなくして、いま一番苦しい立場に立っております、たとえば中小企業のために大きな思い切った特別措置を考えるべきではないかと思います。大資本のシェアの競争に対して、また資本の自由化のあらしの前に一番苦しい立場に立たされようとしておりまする中小企業のためには、その内部保留の蓄積の問題その他に対しては、この際、思い切った特別措置が必要であることを私どもは強調いたしたいのであります。  しかるに、そうした問題はさておきまして、利子所得、配当所得に対する特別措置、あるいは交際費に関する損金算入の問題等、一部の階層や一部の人々にだけ不当に恩恵を与えるような、しかも、その政策効果がはなはだ疑問でありますところの措置につきましては、私どもはあくまでも反対であります。この利子所得、配当所得等に関する租税公平の原則に反するやり方に対しまして、われわれはきびしい批判を加えたい。その意味におきまして、今回の改正案には反対であります。
  378. 内田常雄

    内田委員長 次に、田中昭二君。
  379. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しまして、反対を表明し、討論をいたすものであります。  この租税特別措置法は、戦争とインフレーションによって失われた資本の蓄積を租税の軽減免除を通じて取り戻すことを目的として昭和二十六年以降設けられたものであり、財政経済両面においてその政策的効果を期待する措置であり、流動的に改廃を行なうべきものであります。  しかるに、現在においては、その根本的趣旨に反して、ほとんどが大企業や金持ち擁護のものと成り下がっております。税制調査会も昭和三十二年租税負担の公平の原則の見地から、特別措置の整理合理化の方針を打ち出しているが、政府にあっては、積極的に実行せず、今回の改正においても前進は見られず、多数の国民から多くの疑問を持たれているのであります。  いまさら述べる必要もないとは思いますが、特に利子、配当所得に対する特別措置は、国民の多くの不満を買い、その声は最近とみに強く、いわば国民の世論となりつつあります。  一例をあげるならば、配当所得者の場合、夫婦子供三人の標準世帯で二百二十六万円まで無税であります。これを給与所得者に例をとるならば、二百二十六万円の所得があると約三十万円の所得税が、かかるのであります。何ゆえにかかる不公平が存在し、許されるのでありましょうか。  公明党は、この税負担不公平の象徴ともいうべき利子、配当の特別措置には反対し、即刻廃止し、総合累進課税制度をとるべきであることを主張いたします。  その他の措置として、繊維工業に対する設備廃棄の措置、石炭鉱業に関する措置、土地対策、住宅対策の具体化等々があり、中には建設的なものもありますが、その措置が当初の目的に即した効果を生んでいるのかどうか、何らの確証もないのであります。  税制によって特定産業に優遇を与えるというしかたは、傾斜生産方式をとった戦後の異常な条件のもとにおいては納得もできたかもしれません。しかし、経済の正常化が言われ出して長期間たっております。にもかかわらず、税制が一向に正常化されず、旧態依然たる措置をますます多く採用されつつあるということは、一体何ゆえなのでありましょうか。  元来、税に対する特別の恩恵は、利益ある者だけが利用できる仕組みになっております。利益のない者はもともと税金に縁がなく、したがって、利益が多ければ多いほど特別措置の効果は生きてくるのであります。  かくのごとき租税特別措置法の基本的矛盾を考慮し、政府はより効果的な措置を講ずべきであることを主張し、公明党は、今回の租税特別措置法の一部を改正する法律案には反対を表明するものであります。  ただいまの修正案に対しましては、賛成をするものでございます。
  380. 内田常雄

    内田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて、採決に入ります。  まず、村上信二郎君外二十一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  381. 内田常雄

    内田委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の 諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  382. 内田常雄

    内田委員長 起立多数。よって、修正部分を除く原案は可決し、本案は修正議決いたしました。  この際、一言申し上げます。  本案につきましては、本案の審査中、各委員から取り上げられましたいろいろの御意見、なかんずく、   一、利子及び配当についての特別措置の延長及び少額貯蓄免税制度の適用拡大に関連して、金融機関等に対する反則防止の指導、健全投資の促進に資すべき政府の対策   二、交際費の損金是認の範囲について、国民経済的見地及び国民感情を十分考慮した適切なる措置、また、法人企業と個人企業における交際費是認範囲の均衡ある措置   三、租税特別措置全般についての課税公平の原則と特定の政策目的の効果を考量した再検討  以上の諸点につきまして、今後、政府においても十分検討を続け、適切なる措置を講ぜられんことを望みます。(拍手)     —————————————
  383. 内田常雄

    内田委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  384. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  385. 内田常雄

    内田委員長 次回は、明二十六日、金曜日、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時三分散会