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平林委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
関税定率法等の一部を改正する
法律案に対し、反対の意見を申し述べたいと思います。
この
法律案は、すでに御
承知のように、最近の
経済の情勢の変化に対応するため
関税率及び
関税の減免税
制度に所要の調整を加え、または旅客の通関の迅速化をはかるために、携帯貨物に適用する簡易税率の
制度、また万国博覧会の開催に備えての保税展示場
制度の新設のほか、開港、
関税罰則の
合理化のための所要の改正など、多種多様に含まれておりまして、私
どもといたしましても、大綱については特段の異論はないのでございます。それにもかかわらずこの
法律案に反対をせねばならぬという理由は、私
どもの重大な関心がバナナの
関税率の引き下げにあったからでございます。
すなわち、この
法律によりますと、現行のバナナ
輸入関税率七〇%をおおよそ二ヵ年間に一〇%引き下げることになっております。この措置によりまして国内の
消費者にどういう影響を与えるか、また、
国内産の果樹にどういう影響を与えるか、そのための対策等につきまして審議を集中してまいりましたことは御
承知のとおりでございます。
私
どもの見解によりますと、
関税率が二年間にわたって一〇%引き下げられることによって、一体、末端の
消費者にバナナは安くなるのかという点につきましては、質疑の段階において
政府の答弁は明瞭ではございませんでした。また、
政府・与党におきましても、
国内産果樹に対する影響を考慮されてこの問題を検討されたときに、バナナ
関税がこの程度の引き下げでは、流通段階に吸収されて小売り
価格の引き下げにはなるまいという見方が強く、結局、
関税の引き下げに踏み切ったと伝え聞いておるわけでございます。私
どもは、これらの経緯から
考えますと、
関税率の引き下げが、必ずしも
消費者のバナナ
価格引き下げに及ばない。したがって、この末端の
消費者に対するバナナの
価格というものは、むしろ
関税率よりは、
輸入量の増加であるとか、あるいは浜相場をはじめ、流通段階の
合理化にかかっておるものと
考えるのでございまして、この
意味では、しからば、バナナ
関税の引き下げというのは、どういう
意味があるか、どういう点を重視して
考えねばならぬかということにつきまして、国内果樹対策に十分な配慮を加えるべきものであるという結論に私
どもは達したわけでございます。これにつきましては、農林水産
委員会におきましても、果樹振興のための特別の決議がなされたと
承知いたしております。また、私
どもの大蔵
委員会におきましても、与野党の間におきまして鋭意努力を重ねまして、所要の附帯決議を取り左とめることになりました。これは、いずれ
委員会に提案される運びになると思うのでございまして、私
どもは、その努力に対しては大いに多とし、その効果をすみやかに進めまして、
国内産果樹対策を強力に進めるということを心から念願をしております。
しかし、この附帯決議のすべての内容は、今後の対策に待つものが非常に多いのでございます。たとえば、台湾に対してリンゴを輸出するという問題につきましても、どういうことになるかは、六月初めに出発をする
政府の今後の折衝にかかっておるわけであります。また、国内の学校給食にリンゴをはじめ
国内産果樹を使って、振興対策を
考えたらどうかという問題につきましても、これは関係大臣から努力をするという言明はあったように思いますけれ
ども、しかし、今後の
予算措置その他に待つべきものでございます。
このように、今後に待たねばならぬという点がかなりございます。
御
承知のように、
昭和三十八年の四月にバナナの
輸入が自由化をされましてから二年、その間、バナナの
輸入量は自由化前から比べますと現在ではおよそ約五倍というふうに広がりまして、
国内産果樹の国内市場におけるシェアにつきましては
相当圧迫されておる、また、生産者
価格の面におきましても
相当の圧迫が加えられまして、いまや、国内の果樹生産者は、従来の地位と
比較いたしますと
相当経済的な低下を来たしておる現状であります。このため、果樹生産者は、緊急の品種の改良あるいは基盤の整備、経営の
合理化に努力中の段階でございまして、五十一国会におきましても、果樹農業振興特別措置法を改正いたしまして、その振興に関する方針が出たばかりでございます。そして、この方針に基づいて国際競争に打ち勝つ体制が急がれておるという段階でございます。しかも、都道府県の段階をながめてみますと、都道府県の段階におきましては、果樹
産業振興計画の実施は大体四十三
年度になっておるのでございます。それに伴うところの濃密生産団地形成の成果というものも、それ以後にかかっておるわけでございます。こういう
意味では、
国内産果樹振興という
国策、そしてまた、それに必死の努力を続けておる生
産業者の運命というものは、まずここ一、二年にかかっておる。この段階でバナナの
関税率を引き下げていくことが、一体どういうことになるのか。果樹振興の基本的な
考え方に水をさすことになりはしないか、また、
関税というものが国内の
産業を保護するというたてまえから見ますと、相反するものになりはしないか、こういうことを
考えますと、私は、この際バナナ
関税を引き下げるという措置には賛成しがたい。つまり反対をしなければならぬ理由の
一つでございます。
それから第二の理由は、それではバナナの
関税率は七〇%というのは高いかどうかという点でございます。確かに、他の品目から比べまして、七〇%は高率であることは間違いございません。
しかしながら、いま
国内産果樹の対策として、台湾にリンゴの輸出を試みようといたしておりますけれ
ども、台湾におけるリンゴに対する
関税率はどうであるかというと、まず一般の
輸入にあたりましては六〇%の税率がかけられるのであります。しかも、それだけではなくて、防衛税と称しまして一二%がかけられる。また港務局税という税金の
制度がございまして、三%がかけられる。差益金、つまり調整金という
制度がございまして、およそ一〇〇%程度の特別の措置がとられる。合計いたしますと二〇〇%にわたる税を取られる勘定になっておるのであります。バナナの国内に対する
輸入の対象は台湾であります。台湾が八〇%以上を占めておるのであります。台湾から
輸入するバナナ
関税率が七〇%、もし国内から台湾にリンゴをもっていく場合には二〇〇%の
関税率
——関税ではございませんけれ
ども、税率が課されるということになっておるのでございまして、相対的に
考えますと、私は七〇%必ずしも高いという
議論だけにはくみすることはできない、こういうことを
考えるのでございまして、ここ一、二年はなお据え置きたいという気持でございます。
それでは、この段階でなぜ
関税率を引き下げるか。この点につきましては、バナナ
業界における黒い霧が、先回の総選挙の段階におきまして大いに喧伝をされ、
国民必ずしもすっきりした気持ちを持って、バナナ
業界をながめていないことは、皆さん御
承知のとおりでございます。同時に、私は、昨年のバナナ業者の陳情書をいま手元に持っておるのでございますけれ
ども、バナナ
業界が、バナナの
関税率七〇%を引き下げてもらいたいという
趣旨の陳情の中を見ますと、バナナの
関税が七〇%になっているために
業界は四十三億円にわたる損害をこうむったというような
趣旨で
関税率を引き下げるべしという
主張がなされておるのであります。詳細なことは申し上げませんけれ
ども、とにかく
関税率が七〇%であるがゆえに四十数億円の損害を受けた。この
考え方が私は必ずしも妥当であるとは思いません。妥当であるとは思いませんけれ
ども、逆にこのことばを引用すれば、こういう税率が一〇%引き下げられることによって
輸入業界は
相当の
利益を得るという勘定となるわけでございます。
私は、これらのことを
考えますと、バナナ
業界における黒い霧などから
考えまして、今度の
関税率の引き下げの背景につきまして、実は十分な
資料を持ち合わせず、自信がないのでございます。同時に、最近、バナナ
業界における脱税の問題で国税庁が手を入れまして、おおよそ三億数千万円にわたるところの使途不明のお金があるという話も新聞が報道しておるとおりでございます。
私は、そういう
意味から、いまここで税率を七〇%から二年間にわたって一〇%引き下げる措置の表の理由はともかくといたしまして、裏の理由につきまして、今日までの審議の段階におきましては、公党として十分責任を持って賛成をするという
立場にまだ到達いたしません。これらはしばらく成果を見る必要があるという
立場から、実施の時期につきましても多くの注文を発したいという気持ちでございます。
いずれにしても、これらのわれわれの気持ちが満足せない段階において採決の段階になりましたので、以上の理由をもちまして、反対をするということにいたした次第でございまして、私
どもが、この
関税定率法全般について、特段の異論がないにかかわらず反対の意思を表明せざるを得ないという理由を申し述べまして、私の反対討論を終わりたいと思います。