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1967-05-16 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十六日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 三池  信君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 武藤 山治君 理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    小峯 柳多君      小宮山重四郎君    河野 洋平君       砂田 重民君    西岡 武夫君       村山 達雄君    山下 元利君       渡辺美智雄君    阿部 助哉君       只松 祐治君    野口 忠夫君       広沢 賢一君    堀  昌雄君       村山 喜一君    柳田 秀一君       山田 耻目君    横山 利秋君       永末 英一君    田中 昭二君  出席政府委員         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         大蔵省関税局企         画課長     植松 守雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月十三日  資産再評価法の一部を改正する法律案内閣提  出第一一四号)(予) 同月十五日  所得に対する租税に関する二重課税の回避のた  めの日本国ノールウェー王国との問の条約の  実施に伴う所得税法法人税法及び地方税法の  特例等に関する法律案内閣提出第一一九号)  (予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八四号)  印紙税法案内閣提出第三四号)  国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第九一号)  税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一  部を改正する法律案内閣提出第四六号)  石炭対策特別会計法案内閣提出第四五号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。     —————————————  租税特別措置法の一部を改正する法律案印紙税法案国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————  租税特別措置法の一部を改正する法律案  印紙税法案  国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案   〔本号「その二」に掲載〕     —————————————
  3. 内田常雄

    内田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。小沢政務次官
  4. 小沢辰男

    小沢政府委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案外二法律案について、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  初めに、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、昭和四十二年度税制改正一環として、さきに提出いたしました所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案等の諸法案に引き続き、企業体質改善促進輸出振興社会開発促進等に資する特別の措置を講ずるため、ここにこの法律案提出した次第であります。  以下、この法律案について、その大要を御説明申し上げます。  この法律案内容は、当面の政策上の要請にこたえて新たに税制上の特別措置を講ずるものと、既存の特別措置につき実情に応じて整理合理化あるいは期限延長等措置を講ずるものとの二つに大別されますが、まず、特別措置を新設したものについて申し上げます。  第一は、企業体質改善促進するための措置を講ずることであります。すなわち、資本の自由化に即応して、国内技術開発緊要性に顧み、企業試験研究費支出を増加した場合には、その増加額の二五%相当額税額控除することとするとともに、紡績業及び織布業構造改善対策並びに石炭鉱業再建整備対策一環として、それぞれ所要措置を講ずることとしております。  第二は、中小企業体質強化のための措置であります。すなわち、中小企業機械等割り増し償却について、その適用対象協業組合を加えるとともに、特定指定業種については中小企業としての従業員基準を緩和するほか、中小企業の協業化の促進中小漁業振興肉用牛緊急増産等要請にこたえて、それぞれ新たに特別の措置を講ずることとしております。  第三に、輸出振興に資するため、輸出取引に関して企業海外支店等支出する交際費否認対象から除外するとともに、輸出割り増し償却制度対象取引に外貨を対価とする測量請負等を加えるほか、輸出等証明手続簡素化を行なうこととしております。  第四には、社会開発促進をはかるため、公害防止施設都市交通緩和のための私鉄の都心乗り入れ施設等について特別償却制度を新設することとしております。  第五は、土地対策及び住宅対策の充実をはかるための措置であります。すなわち、譲渡所得課税について、収用等の場合には一千二百万円の特別控除を行ない、また、特定住宅地造成事業の場合には三百万円の控除制度を新設するとともに、特定住宅貯蓄契約に基づいて貯蓄をした場合には、その貯蓄額の四%相当額税額控除を行なうほか、従業員勤務先から受ける住宅借り入れ金に対する利子補給金について課税しないこととしております。  以上のほか、日本万国博覧会に出展する企業について出展準備金特定森林施業計画に基づく山林の伐採等について森林計画特別控除または計画造林準備金を新設する等の措置を講ずることとし、また、税制においても金融政策と並んで景気調整措置の採用が必要とされる状況に顧み、景気過熱の期間において、一定の基準により法人税延納利子税率の引き上げや合理化機械特別償却停止繰り越しを行ない得ることとしております。  次に、特別措置整理合理化適用期限延長等関係について申し上げます。  第一に、利子所得及び配当所得に対する課税特例につきましては、貯蓄に及ぼす影響等を考慮しつつ漸進的な措置を講ずることとし、それぞれ特例税率を五%引き上げて、その適用期限昭和四十五年三月末日まで延長することとし、また、この改正と関連して新たに割引債券償還差益についてもその発行時に五%の税率による所得税源泉徴収を行なうこととしております。  第二に、交際費の損金不算入制度につきましては、交際費の節減をさらに進めるために交際費が前年同期より増加した場合には、その超過額のうち前年同期の五%をこえる部分の全額を課税する一方、前年同期より減少した場合には、その減少額相当額否認対象額から控除するという合理化を加えた上、その適用期限昭和四十四年三月末日まで延長することとしております。  以上のほか、適用期限の到来するその他の特別措置については、開発研究機械特別償却制度のように新規の措置に吸収するもの、あるいはまた、航空機の国内乗客に対する通行税軽減措置のように他の政策上の必要等に基づき廃止するものを除いて、実情に応じ簡素化ないしは合理的改定を加えた上、あるいは現行制度のまま、その適用期限を延長することとしております。  なお、以上のほか、税制簡素化見地から利益処分による特別償却及び準備金の設定の道を開く等、所要整備合理化を行なうこととしております。  次に、印紙税法案について申し上げます。  政府は、今次の税制改正一環として、印紙税税負担が最近における所得及び物価水準に適合するものとなるよう、その税率及び免税点について所要調整を行ない、あわせて課税範囲整備合理化等制度全般にわたっての合理化をはかるため、印紙税法全文改正することとしてこの法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容についてその大要を申し上げます。  第一に、税負担調整合理化及び課税範囲整備合理化について申し上げます。現行印紙税法による税率及び免税点は、おおむね、昭和二十九年以降据え置かれておりますが、その後の所得及び物価水準の推移を考慮して、定額税率原則として現行の二倍とし、階級定額税率適用範囲の若干の拡大や階級区分の組みかえによる税率調整を行なうほか、免税点原則として二倍ないし三倍に引き上げること等により印紙税負担調整合理化をはかることとし、また、課税対象明確化に資するため、財産権得喪変更に関する証書、帳簿はすべて網羅的に課税対象といたしております現行法方式を改め、課税文書を限定的に掲名する限定列挙課税方式を採用することといたしております。なお、これに関連して、現行法では一通の文書で同時に二以上の課税物件に該当するものにつきましては、原則として複数の課税物件として課税することとされておりますが、これを一通の課税文書として課税することとする等、所要規定を整備することといたしております。  第二に、納付方法合理化につきましては、印紙を張ることにかえて税務署長の承認を受けて書式表示をする場合の現金納付手続を、現行事前納付から事後申告納付に改めることといたしております。  第三に、罰則整備合理化について申し上げます。まず、印紙を張らず、または印紙消し印をしない等の印紙税法違反について、現行法刑法総則適用を除外して、故意過失を問わず刑事罰対象しておりますが、これを改め、刑事罰対象刑法総則原則に従い、故意犯のみに限定することといたしております。また、印紙税国税犯則取締法による通告処分制度対象外とする一方、印紙による印紙税納付の確実な履行を担保するため、課税文書相当額印紙を張らず、また印紙消し印をしない場合には、新たに、過怠税を課することといたしております。この過怠税の額は、相当印紙が張ってない場合には、その不足税額とその二倍相当額との合計額、すなわち不足税額の三倍、消し印をしなかった場合には、その印紙額面相当額とし、いずれも最低額は五百円としております。  第四に、現在かたかなの文語体であります印紙税法全文をひらがな口語体に改めるとともに、印紙税納税地その他所要規定整備合理化をはかり、また、印紙税法全文改正に伴い、国税通則法その他の関係法律について、所要改正を行なうことといたしております。  なお、この法律案は本年六月一日から施行し、七月一日以後に作成される文書について適用することとしております。  最後に、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、最近における職員旅行実情等にかんがみ、外国旅行における日当宿泊料移転料等定額改正する措置等を講ずるものであります。  次に、改正の要点を御説明申し上げます。  日当宿泊料及び食卓料につきましては、最近における宿泊料金実態等を考慮し、法律の別表を改正して、その定額を約一割五分程度引き上げることといたしております。  移転料につきましても、職員の赴任の実態等にかんがみ、現行定額を約五割程度引き上げるほか、特に多額の運賃を必要とする場合等における現行加算割合を引き上げることといたしております。  また、旅費支給区分につきまして、内閣総理大臣等のうち「その他の者」に該当する職員の一部について、その区分国務大臣担当とするほか、その他所要改正を行なうことといたしております。  以上が、租税特別措置法の一部を改正する法律案外二法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 内田常雄

    内田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各案に対する質疑は、後日に譲ります。      ————◇—————
  6. 内田常雄

    内田委員長 次に、税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一部を改正する法律案石炭対策特別会計法案、右両案を議題といたします。  質疑通告がありますのでこれを許します。只松祐治君。
  7. 只松祐治

    只松委員 私は、常日ごろ税制近代化民主化、これはイコール政治行政への信頼、こういうものと一体をなすものである、したがって、税務行政というのは、強圧的であったりあるいは秘密的であったり不公平であったり、そういういろいろなことがあってはならないということを繰り返し申し上げてきております。それでもなおかつ現在の税務行政というのは、まだまだ非近代的なものあるいは非民主的なものが多い。したがって、強制的、命令的に傾いておる傾向が非常に強いと思う。長官は、いまの税務行政に満足しておられますか、それとも、まだまだいろいろ問題点がある、こういうふうにお思いになっておられますか。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、税務行政につきましては、特に所得税法人税相続税等申告納税制度がとられまして二十年を経てまいっております。その間、相当改善合理化がはかられたものと考えておりますが、しかし、まだまだ税務行政については多くの問題点があることは御存じのとおりであります。私どもといたしましては、これらの問題点につきまして鋭意努力して解決していかなければならない、このように考えております。
  9. 只松祐治

    只松委員 これを一挙に直すのはなかなか容易ではないことは御説のとおりでございますけれども、これは国民に対しても、あるいは子供の教育その他を見ましても、そういう原則というのはあまり変わらないわけですが、上から強圧的にやるほうがいいか、あるいは自発的に国民の自覚というものを促してやっていただくがいいか。ややともすると、行政官の立場からすれば、これを命令的、強制的ということのほうが手っとり早いものですから、どうしてもそういう傾向に流れがちでございます。しかし、民主主義社会においては、何と申しましても、国民個々人がそういう認識を深めて、意識を高めていくということが、結論的にはいい税務行政が行なわれる、税務行政政治的にもいい政治が行なわれる、こういうことになるわけでございます。したがって、公平とか応能とか、いろいろ税務上の原則がございますが、一般的に国民の自主的な、特にわが国納税制度申告制度という、そういう自主性を重んじる原則が確立されておるわけですし、私もそう思いますが、長官もそのようにお思いになりますか。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、わが国税制におきましては、所得税をはじめとする直接税のみならず、間接税についても原則として申告納税制度になっておるわけでありますから、現在の税の執行を円滑にやっていく上におきましては、何といたしましても、納税者協力を求める、納税者納税意欲の向上によって円滑な税務行政をやっていくのが望ましい、このように考えておるのであります。
  11. 只松祐治

    只松委員 そういたしますと、税務上の一つ原則秘密主義というのがございます。税務署で調査された案件等はもちろんでございますけれども税務執行する場合でも秘密通達というものがあって、なかなか一般国民が知られない、税務行政官だけが知っておる、そしてそれによって行なっていく。そういたしますと、国民は知らないで税務行政官だけが知っておるわけですから、これは当然に強制的にならざるを得ない、こういう形になるわけですが、この税務行政秘密主義というものについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 税務行政秘密主義とおっしゃいますが、問題が二つあると思います。  一つは、税務職員がその職務の執行上知り得た秘密秘守義務がありまして、これは守らなければならない、これを犯すと罰則適用があるわけであります。この点は秘密主義といわれるかもしれませんけれども、あくまでも納税者のために秘密を守っていかなければならない、こういう面でございます。  と同時に、執行の面におきましては、現在は申告納税制度でありますから、できるだけ税務執行についての解釈内容納税者に明らかにしていく、この面では、できるだけ秘密を持たないで、納税者にすべてを明らかにして、納税者に有利な面などについては進んで納税者に教えていく、こういう態度が必要だろうと思っております。したがって、その間かなりの差があるわけであります。  そういう意味では、現在はいわゆる過度の秘密通達というものはだんだんなくなってきております。課税内容解釈についての通達公開するように進めてきておるところであります。
  13. 只松祐治

    只松委員 納税者のための知り得た問題の秘密を守っていくということには、私はそれなりの必要性もあろうかと思います。しかし、後段の税務執行上の秘密というのは、本来これはなくするのがほんとうだと思います。  そこで、たとえば、十一日でしたか、何か判決がございましたね。職員執行上の秘密を漏洩した、こういうことで争いになったわけですが、判決はこれを無罪にして、本来、税務行政秘密というものはあり得ないものだ、税務行政というものは、国民にすべて明らかにすべきが本来の任務だ、こういう判決がおりておる。これに対してどういうふうにお考えになるか。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、先般、大阪地方裁判所におきまして無罪判決があったわけでありますが、その判決理由書につきましてはまだ詳細のものを入手いたしておりませんので、私どもそうした判決理由書の詳細なものを入手いたしました上でいろいろ検討いたしたいと思っております。ただ、いままではいわゆる所得標準率表所得効率表、この二つにつきましては、これを公表することが、かえって納税者を惑わしたり、適正な申告をする上において障害となるのではないかという見地からいたしまして、秘密文書ということに取り扱ってまいっておるわけであります。もっとも、この前当委員会におきまして横山委員の御質問にお答えいたしましたように、所得標準率表の中には、たとえば農業所得標準率のように公開いたしておるものもございます。あるいは、明確に公開はいたしておりませんけれども、ある程度相手方に知らせるような措置をとっておるものもあります。これは、そういった標準率表性格からいたしまして、納税者協力を得るためには公表したほうがいいと思われるものについてはある程度そうした措置をとっておるわけであります。営業の関係標準率ということになりますと、いろいろ問題がございますので現在も秘密ということにいたしておりますし、いわんや、効率表のほうは、納税者申告について税務職員がその申告適否を判断する一つの資料として使うものでありますから、これを納税者に公表すべきものではないという考えをとってきておるわけであります。  しかし、裁判所のほうの判決がございましたので、その判決理由書を十分検討いたしました上で今後のわれわれのあり方というものを考えてまいりたい、このように思っておる次第であります。
  15. 只松祐治

    只松委員 よく検討しなければわからぬということですが、もうだいぶ日にちもたっておりますし、どうですか、いまの感じとしては——考えじゃなくても、感じ程度でもいいのですが、あなたのほうで控訴するというような気がいたしますか、それとも、なるほどこれは判決が当然で、公開原則とすべきだ、こういうふうにお考えになっておるか。長官からあれなら、政治的に、政務次官からでも政府側のお考えをお聞かせいただきたい。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 まだ判決理由書を入手いたしておりませんので正確にお答えできないのでありますが、私どもといたしましては、なるほど裁判所がいうように、租税法律主義の精神からいうと、納税者との問に秘密を持つべきでないという気持ちはわかりますけれども、現在の税務行政執行段階といたしましては、所得標準率表を公表していくということについては問題があると思っておりますので、現段階におきましては控訴せざるを得ない、このように考えております。
  17. 只松祐治

    只松委員 裁判のことですから、ここで論議すべきじゃなくて、司法権のところで論議していいわけですが、いま長官も言ったように、租税法定主義という原則に立った場合には秘密というものはあり得ないというのが租税法定主義原則だろうと思う。  たとえば、サラリーマンにとりましては、これは秘密というのはないわけですね。月給も公開されておるから、とにかく明らかになっておる。それからそれに対する税率その他の点も明らかになっておる。一番主要な収入源になっておる勤労所得税源泉所得税というのは公表されておる。ここに秘密はない。あるのは結局法人税——法人税も本来あるべきではないのですが、ある。それから青色、白色の申告所得、こういう事業所得中心としたもの、この面から見ても、やはり関西のほうで裁判が行なわれております。源泉所得税は本来ああいうふうに源泉で徴収すべきでないということを中心とする違憲訴訟が行なわれておりますね。人員といい金額といい、一番多い源泉所得税勤労所得税公開されているけれども、その他のものは、いま言われたように、まだ、判決がおりても控訴をしたい、こういう気持ち、したがって課税標準なんかについては秘密を守りたい、こういうことのようです。これらはやはり同じ国民に対する不平等というか不公平といいますか、片一方勤労所得者である、片一方事業所得者である、こういうことによって不公平が生じやしないか。どうですか。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、この租税法律主義と申しますものは、課税者がだれであり、何が課税標準であり、税率幾らになっており、いつまでに幾ら金額納付しなければならないか、このことを法律上明らかにしておくことが大切だということだと私は思うのでありまして、その課税標準所得をとっておるのが所得税でありますが、その場合、その課税標準である所得計算するのに、給与所得の場合のように、定額で支給されます関係上、非常に計算が容易であるという性格のものもありますれば、事業所得のように、収入に必要な経費ということからいたしまして、収入に入るべきものの範囲あるいは所得経費として認められるものの範囲、こういったものについてなかなか計算が容易でない性格のもの、このように分かれると思うのであります。  なお、大島教授違憲訴訟を提起しておられますのは、給与所得の場合に、現在所得控除しか認めておりませんけれども、これ以外に必要経費として認めるべきものがあるのではないか、それを認めてもらいたい、御自分のいろんな経費から主張して、そういうのを認めてない現在の所得税制度違憲である、こういうような意味訴訟を提起されておると思うのであります。  したがいまして、そういうふうに、課税標準である所得計算がかなり簡単にできる場合と、事業所得のように、必ずしも簡単にできない、しかし、所得というものの範囲課税者がかなりわかっておるはずだ、そういうものにつきまして、第三者である税務官吏がその人の所得幾らであるかということを明らかにしていく過程におきまして、収入支出が明確に記帳されておりますれば簡単なのであります。そういう記帳がないという場合に、その人の所得幾らであるかということを推定して計算していく、これが非常にやっかいになるわけでありまして、その過程といたしまして効率表を用いてその申告適否を判断し、この税度施設及び従業員がおるならば大体所得はどれくらいあるのが普通である、それに比べて、この人の場合は適正な申告になっているかどうか、それを考える、その効率表から見て適正でないと思われる場合があればさらに突っ込んでいく、収入支出について検討していく、その場合、収入金額がつかめればそれに標準率適用してある程度の所得の推定ができることになるわけであります。  そういう意味効率表標準率表を使っているので、こういうものをあらかじめ公表いたしますと、かえって納税者は、それによって申告をしなければならないというふうに義務感を感じ、適正な申告納税の執行上かえって弊害を生ずることになりはしないかという心配からいたしまして、現在は公表しないという措置をとっておるわけであります。  したがって、裁判所のほうの判決理由は、そうしたものを秘密としておることの形式的な理由はわかるけれども、その秘密が刑罰をもって臨んでいかなければならないほどの秘密であるかどうかということについて問題であるということを問題にされておるようであります。しかし、私どもといたしましては、税務職員がそうした標準率表効率表を漏らすということは行政の秩序を乱すことになりますので、好ましくないと考えておる次第であります。
  19. 只松祐治

    只松委員 私は、判決は一例として聞いているので、判決だけの論議をしようと思っているんじゃないのですが、そういう判決も出ましたように、税務行政全般として、俗にいえば、もう少し明るくといいますか、公開原則としたほうがいいんではないか。まだあまりに秘密というか、暗いというか、税務署ににらまれたんじゃという、こういう国民の気風が国税庁なり税務署に対して蔓延していやしないか、こういうことを言おうとしておるんですよ。  ただ私はこの判決にもちょっと気になりましたから聞いておるわけですが、きょうは税制簡素化の問題ですから、そういうものの一つ税務行政上のポイントとして、日本の税務行政で一番問題になっているのは秘密主義じゃないか。いまおっしゃいましたが、確かに、原則は、基本的な問題は法律に定められておる。ところが、それを税務行政執行する場合にいろいろ国税庁当局でおきめになっておる。私たちが、通達なり、あるいは通達だけじゃない、各署長あたりが、あとでもお聞きしますけれども、かってな、あるいは上の了解を得ているか知りませんが、署長あたりが自由に解釈するのか、いろいろな通達を出す、こういうところから、結局、国民税務署はおっかないと言ったり、何か暗いと思ったり何かしているわけですね。だから私は、そういうものではなくて、国民に納税意識というものを、これは別個の形で——昔は兵役、納税、教育という三大義務というのがありましたね。こういう形でなくて、やはり国民に対して、日本国家をささえていく基本になる納税というものに対してもっと認識を深めさしたらいいだろう。そういう認識を深めさせると同時に、もっと明るく、公開原則として、十万円もうけたらこれだけですよ、百万円もうけたらこれだけですよと、ある程度の基準でも示して、こういうふうにもうけたら、利潤があがったならこうやって納めるのですよ、こういうものを明らかにしていく。そのかわり、それに反して、大きな悪質な脱税やなんかを行なった場合には、それは厳罰でいく。こういうふうに、もっと公開をすると同時に——私はいまの罰則も軽いとは思いません。思いませんけれども、ある面ではもっと強くしてもいいかと思う。結局、いまの税務行政というのは、国民と国税序で、だましっこ、追っかけっこをやっているわけでしょう。ぼくは泉さんといえどもそれを否定はなさらないと思うのです。私たち議員だって、国民の中から選ばれてきているわけですから、たくさんの税金の相談を受けると思いますよ。私たち大蔵委員も現に受けている。そのありさまを見ておると、国税庁と国民と追っかけごっこをやっている。隠れんぼうじゃないけれども、隠しごっこをやっているわけですね。そういう形ではなくて、公開原則として、百万円もうけたらこれだけ、一千万円もうけたらこれだけの税金があるのです、所得税というのはそうなっているわけですから——ここまで単純にいかなくても、そのようにならないものか。  私は、所得税の場合でも、あるいは国会議員に例をとっても、その人によってやはり相当使い方が違うだろうと思う。それは事業者だけじゃなくて、給与所得者の場合でも——給与所得者の場合には、これは一律に引かれているわけですね。そういう理由はほとんど問わない。家庭の状況や家族の構成はほとんど問わない。あなたたちだってあるでしょう。ぼくは転勤を、七月じゃなくて四月にしなさい、こういうことを言っているのですが、三月十五日までの申告で、どうしても六月一ばいかかるから七月になる。国税庁の方が異動される、あるいは警察官が異動される場合に、家族は遠く置きっぱなしです。住宅事情が悪いですから。まして、安い国税庁の月給で二重生活をしておられる、あるいは小学生は連れてこられるけれども高校に入っている子供は急に転入できない、こういうことで、娘やむすこだけは旧任地に置いていく、こういう人々も、そうでない一家族住んでおる人と源泉所得は同じなんですよ。そういうことをいえば、給与所得者においても、大島さんが言っているみたいに、理屈というのは山ほどあるわけですよ。そういう理屈、理由は抜きにして、給与所得者の場合には一律に引かれておる。  公開されておるわけですね。片一方事業所得者の場合にはそうではない。したがって、あなたたちと秘密ごっこ、追っかけごっこをやっている。あなた方が秘密にしておるから、片方は秘密にして、どうやってできるだけのがれるかということを一生懸命に考えておりますよ。  というのは、とにかく、全部私たちのもうけを税務署に持っていかれたら、私たちは働く意欲はありません、何とかうまい税金のがれの方法はないでしょうか、こういうのが、中小企業者が私たちのところに来て異口同音に言う話ですよ。品物が売れるという話より、何とか税金を安くする方法なり、のがれる方法はないでしょうかというのが、私たちのところにくる多くの話ですね。そういう形ではなしに、やはり百万円もうけたらこれだけ納めるのだ、一千万円もうけたらこれだけ納めるのだというように、大体の目安をつけて——大体じゃなくて給与所得者と同じようにつける、こういう形のほうが長い目で見ていいのではないか。来年から青色申告が完全給与制になりますから、この面で私は相当変わってくるだろうと思う。日本の税制は、この完全給与制の実施に伴って、そういうふうに公開原則としたものにする。私たちが租税法定主義という場合に、主要な通達——省令はもちろんですが、通達まで本委員会に出して了承を求めてもらいたい、こういうことを言っておりますけれども、これも理事段階で、一般委員会にはまだ配付されておりません。  このことでまだ開かれておりませんが、少なくとも税制委員会にはこれを配付して審議するようにしたらいいだろう、私はこういうふうに思っております。  それはそれとしてあとで論議いたしますが、税制のいわゆる簡素化という面から見ても、あるいは税制の長期にわたる将来の面から見ても、もっと公開する、そのかわり国民に納税意識というものを徹底させる、進んで納税意欲を起こさせていく、それの基本は、われわれにもありますし、政治の信頼ということにつながってまいるわけでありますけれども、そういうことをやったほうが、何よりも税制簡素化というものが一番具体的に推進される道であろうと私は思うのであります。  そういう意味から、いまの国税当局にまつわっておる秘密主義というものをもっと除く努力をなさったらどうだろうか、こういう観点から一、二お聞きしておるわけです。そういう点に対してどういうお考えをお持ちになっておりますか。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、税務行政をやっていく場合に、税務職員納税者とがお互いに、何と申しますか、ことばが悪いので恐縮でありますけれども、お互いにばかし合っていこうという形は望ましい姿であるとは思っておりません。したがいまして、税務署のほうも率直に話を申し上げ、納税者の方も幾ら所得があったかはっきりさせていただく、こういう形になっていくのが望ましいと思っております。そして、営業所得者の場合、お話のように、百万円もうければ幾らの税金であるということは明らかになっておるわけでありますが、問題は、その方が百万円もうけたのか八十万円もうけたのか、そこら辺のところがなかなかはっきりしにくいところに問題があるように思っておるのであります。しかし、お話のように、そういう点でお互いにばかしっこするのではなくて、お互いにフランクに明らかにしていくという気持ちは、私今後とも進めていきたいと思います。  ただその場合に、標準率表を出すということがそういうことを明らかにしていくゆえんでは必ずしもない。標準率表というものは、収入幾らあれば、普通の状態であれば幾ら所得があるものだ、収入百円当たり幾ら所得率になるのかということの表でございまして、これは人によっていろいろ差がある、同じ業種におきましても、たとえば同じ散髪屋さんにしても、場末の散髪屋さんと町中の散髪屋さんとでは、同じ収入があっても、それに伴う所得というのは違っていくべきはずのものであります。そういう点からいたしまして、標準率表というものは必ずしも公表する必要はないのではないか、しかしながら、解釈通達でどういうものがどういうふうに解されるという内容については、納税者に明らかにしていくのでなければ申告納税はできません。これについては、通達公開いたしまして、納税者税務官庁の解釈を知り得るようにする、こういう措置はとってきておりまして、今後も大いに進めていきたい、このように思っておるところであります。
  21. 只松祐治

    只松委員 これは申すまでもなく、いまの税法がたいへん繁雑であるし、膨大なものである。したがって、これは皆さん方自体でも一おそらく泉さんでも詳しく知らないと思うのですが、弁護士さんだって六法全書全部知っておるわけではありませんが、税理士さんでもあの税法をよく知らない、こういうことを言っておりますね。そういう面から、いまおっしゃったように——もっと時間があれば、昨年度税制調査会の税制簡素化特別部会で論議されましたようなことをもっと掘り下げて、すみやかにこういうことをすべきだと思いますけれども、そこまでの論議の時間はありませんが、いま一番税務行政上問題になっておる秘密、これはこんなことを言ってはちょっと変な話にもなりますが、たとえば、泉さんが国税庁長官という肩書きをのけて、浦和なら浦和の警察にすっと行ってごらんなさい。それから浦和の税務署にすっと行ってごらんなさい。どちらが明るいか。  いま税務署のお役人のほうがしかめつらをして、暗い顔をしております。おいでになればわかりますけれども、警察官のほうが、特に、新しく講習を受けて出てきた若い警察官のほうは、坊ちゃんというとなんですけれども、非常に明るい顔をしていますよ。ところが国税当局の人のほうは、仕事も数字をいじったりなんかして、まゆにしわを寄せるような仕事になりまして、交通信号をやったりなんかと違いますからそういう顔になるのかもしれませんけれども、非常に暗い顔をしておりますよ。だから、そういう問題は、私はそういうことまであまり引き合いに出そうと思っていないのですけれども、個々の問題を出せば一ぱいありますけれども、もっと根本的な問題として、特に事業所得者の青色申告者は来年度から完全給与制に切りかえられる。これはある意味では抜本的な改革だと思うのです。給与所得が認められてくると事業所得というのはほとんどなくなってくる。  そういうときに、ぜひ、税調の特別部会の報告を十分尊重されて、公開原則とする明るい税務行政というものを立てるよう努力をしてもらいたい、こういうふうに思います。  それから次に、社会機構が複雑化し、あるいは膨大化する。会社にいたしましても、たとえば、八幡製鉄は世界第三位ですか、非常に膨大な独占企業が出てくる。こういうものに対応して、どうやって完全なこういう大会社の利益を把握するかということはなかなか容易でないだろう。一昨年、木村さんが長官のときに私はいろいろそういう問題を聞いたのですが、その後、私も言いませんけれども、ほかの委員の方からもあまりこういう独占企業、こういう膨大な企業の税の調査状況というようなものに対するきびしい追及といいますか、調査の方法について質問が少ないようでございますけれども、このごろ、よくバナナの脱税であるとか、せんべい屋の脱税、そば屋の脱税というて、ときどき新聞に発表になります。国民はある面で、脱税したやつがおる、こういうふうに感じて、胸がすっとするような気もあるようでございます。しかし、これは私たちから見れば、額としては一億だ、三億だ、五億だという額になっておりますけれども、これは何十軒、何百軒のそば屋さん、バナナ屋さんの問題であって、一軒ではない。一社で膨大な脱税をしておる、あるいは独占企業体の中においてそういう利潤を隠蔽しておる、あるいは粉飾決算をしておる。私のところにも、いま関西のほうのある電機会社の粉飾決算の投書が来ております。これは別の機会に私は質問をしようと思っておりますけれども、こういう複雑化した社会機構、あるいは膨大化した経営機構に対する税の調査というのはどういうふうに行なっておいでになりますか、お聞きしたい。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 御承知だと思いますが、現在、おおむね資本金六十億円以上の大法人につきましては、これはその所在いたしております国税局に特別調査官という制度を設けまして、その特別調査官の調査によってその内容を把握する、こういう制度をとっておるのであります。特別調査官につきましては、もちろん多年税務に習熟いたしました優秀な職員を充てまして、そしてこの特別調査官が部下の職員相当数連れまして調査に臨みます。  御承知のように、大法人になりますと、本社だけでなしに、工場、支店などが全国各地にある、こういうことでありますので、本店だけの調査で必ずしも十分でない、支店においてどういうふうな経理が行なわれ、会計処理が行なわれているか、こういうことまでも突っ込んで調査する必要があるわけであります。したがいまして、そうした特別調査官の所管の大法人につきましては、かなり長い日数をかけて調査をいたしております。  もっとも、こうした大法人になりますと、内部建制組織が発達をいたしておりますので、その税務の調査によって、こういう会計処理はこうすべきだというようなことを指示いたしますと、それに従った処理が行なわれますので、そういった点については、一回調査をいたしますと、あとはそういった点は直ってくる、こういうふうな点がありますので、最初調査をいたしますときは、相当日数、半年以上もかけまして調査をいたしますが、あとはそう長く日数をかけなくて、一月程度で調査を終了するようにいたしております。それにいたしましても、他の法人に比べますと、調査日数は相当かかる、これは結局会社が膨大でありますし、その経理書類等も非常にたくさんになっておりますので、そういった調査をするのに日数がかからざるを得ないということになるわけであります。しかしながら、そういうふうな特別調査官の所管で調査をいたしておりますと、一、二回徹底的な調査を行ないますと、そのあとでは、いわゆる期間損益の点について問題がときどき起こる程度でありまして、そうたいした問題は起こらないというような状況になってまいっております。当初調査をいたしました場合には、こういった大法人におきましては、かなり増差所得が出ておりますけれども、二回目、三回目になりますと、だんだん更正増という金額は減ってきておるようであります。
  23. 只松祐治

    只松委員 まあ、一会社としてはそういうことも言えるかと思うのですが、私は、時間がありませんからいろいろ説明はいたしておりませんが、たとえば膨大化、複雑化というのは一会社だけではなくて、その系列会社というのがたくさんできておりますね。系列会社に、たとえば中小企業ですと、私がいま相談にこられておるのもそうですが、一つの会社でほかに融資をしておったというような——その融資もあまりいい方法じゃないのですが、それが税務署にばれた。これは大会社に至っては私は山ほどあると思うのですし、私が知っておる相当程度の会社ですけれども、やはりそういうことをやっておりますね。これはどっちも普通の製造会社ですが、そうでない、私がときどき引例いたしますように、この前も東京ガスの問題をちょっと話しました。結局、東京ガスが不動産会社をつくる。ゴルフ場はどこのものか知りませんが、おそらくその不動産会社がゴルフ場をつくっておるのじゃないかと思いますが、公益事業を行なう会社がゴルフ場をつくっておる。あるいは生命保険会社などが、その会社としては変な経理ができないので、やはり土地会社をつくったりしておる。ほとんどの会社が土地会社をつくっておりますね。そしていろいろなことをやっておる。  十万円の土地を五万円にすれば多少わかりますけれども、六万円、七万円、八万円にすると、これはごまかしがつくわけです。したがって、この生命保険会社としてはいろんな資金の操作ができないけれども、土地会社においてはそういうことがすぐ操作ができる。また現にしておる。そういうものが会社重役のマンションや何かに一千万円、二千万円の費用を出してめかけを囲う、こういう費用に転じていく。そうでないと、いかに大会社といえども、三十万円や五十万円の俸給だけではああいうマンションは買い切れないのですよ。ああいうところを調べてみると、野球の選手とか女優とかいうものはのけて、大体そういう例が多いのです。これは都会に咲いた悪の花の一例ですけれども、そういう枝葉ではなくて、そういう大会社の経理内容というものは非常に複雑化しておるのです。自分の会社はあれだけれども、銀行から第二会社なり第三会社なりに借りさせて、その利潤はとって、自分の金は無記名の定期預金に入れるというような形でいろいろなことをやっておるわけですね。証券関係のほうから、傍系会社の資産の一覧表というのもいま問題になっておりますけれども、私は、こういうふうに複雑化したり膨大化してきた場合には、国税庁も、税制の面からもそういう傍系会社なり関連会社の一貫した調査というものを行なわないことには、一社だけとっていっても——税法上なかなかむずかしいところだろうと思いますけれども、しかし、完全にそういう大会社の収益を捕捉しよう、したがって課税を正しく行なおうとするならば、私はそこまでのことをやらなければなかなかできぬと思う。大きな会社へ行けば税理士さんを何人も雇っておりますし、公認会計士も雇っておりますし、あなた方が行けばおとなの話をして、わかりましたということで、商店のようにきゃあきゃあ、かみついたり何かするわけではない。そしてサロンでゆっくり話をして、わかりましたということにしていく、そうすると、話は大体ついたということになる。  しかし、いま言いますように、第二会社、第三会社をつくったり、そういうようなことをいろいろやっておる。あるいは、私がある会社に行って、ここの工場長さんいないか、こう聞いたら、この人はいません。守衛さんがぺらぺらめくるのを見たら、何百という関係会社があるのですね。それはもちろん超一流の会社ですから傍系会社はある。いや、ここにありました、いまはここの工場長ですよとこういうことで、結局、ある傍系会社の工場長になっておる。会社の名前は全然違うのですけれども、同じ会社の傍系会社をぐるぐる回っているのですね。人事までそういうことをやっているぐらいですから、そういう収益の関係なんかもほとんど一体化しているようなものもあります。だから、こういう複雑化、膨大化というのは、一社だけの問題ではなくて、特にいま会社合併をあなた方促進させようとなさっていらっしゃいますけれども、完全に一本の会社になる場合もあれば、そうでなくて、重役も何人か残したりして、第二会社をつくったりいろいろしておりまして、そういうものの捕捉というものはなかなか容易ではないと思うのですね。これを昔のままの税務行政なり、昔のままの税務官僚の感覚でそういうものを調べようと思っても無理だと思う。  アメリカあたりにおいては相当そういう面の調査研究が行なわれておるようですから、どういうふうにして海外派遣なんかなさっておるか知りませんけれども、そういう面の税務行政の外国における研修その他だったら、自衛隊あたりがアメリカにミサイルの一個小隊も一個大隊も実地訓練に行く、そういうばかなことをやめて、十人でも二十人でも何十人でも税務署の人をアメリカでもあるいは英国にでも連れていってマスターしたらいいだろう。そういう面の税務行政近代化、こういうものをはかっていかないことには、いまの複雑化したり膨大化していくこの社会情勢に税務行政が立ちおくれてついていけない。結局中小企業者だけをいじめている。これは昔の感覚、昔の技術でいきますから、そば屋のそばの仕入れからしょうゆの仕入れから何から、ずっと調べさえすればぱっといきますよ。薬屋でも、昔の、間口が幾らあるか、店の坪数が幾らある、店員を何人使っている、そうすると、大体君は幾ら出してこい。  さっきの秘密標準規定じゃないけれども秘密じゃなくて、課税する場合にはある程度明らかにして、浦和あたりでも、薬局に対して全部出してきなさいといって、いま修正申告をだあっとやっていますね。やっているでしょう。そういう形で中小企業や商店あたりにはやっている。それで薬屋が一億円脱税した——修正ですから脱税には取り扱わないと思いますけれども、バナナ屋が幾ら脱税した、こうやって、だあっとやられるわけですね。しかし、これは大会社から見たら、額にすればスズメの涙みたいなものだとぼくは思う。こういうことはいいことじゃないけれども、そういうことじゃなくて、もっと根本的に、日本の経済そのものが高度経済発展をしてきて独占化をしたというときには、税務行政というものもそれに対応していかなきゃならぬ。私は大蔵委員会に三年有余おるわけですけれども、そういう面ではほとんど対応しないで、私が電子計算機のやつを持ってきて、木村さん、これわかるかと言ったら、たぶん電子計算機のものでしょうというぐらいな話だった。その後電子計算機の読めるのが何人かできたようでございますけれども、操作技術なり何なりがどの程度進んでいるか知りませんが、日本では電子計算機でやっているのが大幅に二百社をこえているわけですね。そういうものを、昔のままの税務官では、そば屋や薬屋はいじめることはできても大会社の調査はできない。だから、そういうふうにもっと近代化に対応すべきだと思うのです。そういう点に対する努力を現在までどういうふうになさっておりますか、あるいは今後なさるおつもりですかを聞いておきたいと思います。
  24. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、大会社の場合は、その大会社一社だけでなしに多くの系列会社があります。したがって、その大会社一社だけを調べたのでは不十分でありまして、その系列会社の先でどういう企業がどういう事業をやり、あるいはどういう不正行為をやっているかという点まで調査しなければならないことはお説のとおりであります。私どもといたしましても、現在そういう系列会社についてまで徹底した調査、そして同時に、その重役の所得についてもあわせて調査をする。こういう態勢に持っていくようにいたしております。その点についてまだまだ十分でないとは思いますが、そうした努力は大いにしなければならぬというふうに思っているわけであります。  なお、お話のように、現在電子計算機をもって会計処理をいたしております大会社が約三百社ほどできてまいっております。電子計算機で処理する場合、これは実例があったわけでありますけれども計算は電子計算機であるから間違えることはありません。ただ、そのデータを与えるときに、そのデータにちょっとした細工をされますと、計算として一見きちんといたしておりますので、税務職員がよくごまかされやすいところが出てくるわけであります。そこで、そのデータについてよく検討していくと、そういったごまかしも見抜くことができるわけであります。しかし、それについては、職員がそうした電子計算機の機構と原理というものをよく承知しておらないと、なかなかそういうことを見抜くことができ得ないわけであります。  したがいまして、国税庁に昭和四十年の二月から電子計算機を入れておりますが、これにつきまして、職員に電子計算機の機構と原理をいろいろ教え、そして、会社が使っている電子計算機も国税庁のものと違ったいろいろなのを使っておる会社もありますので、そういったそれぞれの会社の電子計算機の特徴等も教えていく、こういう必要があるわけであります。そのために、先般そういった勉強をさせるために田代調査査察部長以下をアメリカに派遣したような次第であります。何と申しましても、電子計算機はアメリカのほうで発達いたしておりますので、そういったことを勉強させる、それを今後徹底していく必要があろう、このように考えております。
  25. 只松祐治

    只松委員 そこで、四十一年度はまだできておりませんか。できておらなければ、およそでもいいですが、四十一年度の局と署別に脱税摘発件数と摘発額がわかり産したら、きょうでなくてけっこうですから資料としてお出しをいただきたい。  ついでに申告の修正件数と金額、わかりましたら、大要でいいですから、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。  それから、具体的な問題について、一、二お尋ねをいたします。  これも税制簡素化のためにこういうことをなさったのだと思いますが、東京の管内の税務署で税理士さんに対して、その関係先の会社や何かを報告しろということで、四月二十八日までに報告してもらいたい、こういう通達をお出しになっていますね。いままでもこういう類似なものがあったようでございますが、これなんか見ると、ちょっとひどいですね。依頼事件、それから依頼者の氏名、それから性別、生年月日等々から始まって、事件の内容、会計の内容、それから会計担当者の氏名、全く警察の調書以上にこれは詳しいですね。こういうのをおとりになっておりますが、これは簡素化のためですか、どういう目的ですか。
  26. 泉美之松

    泉政府委員 これは東京国税局長が傘下の税務署長通達いたしまして、御承知のとおり税理士法によりまして国税庁が税理士の指導監督ということをいたしておりますが、その際に、従来の事例からいたしますと、いわゆる税理士の名義貸しといいまして、本来税理士の資格のない者に税理士の資格のある者の名義を貸して税理士の業務を行なわせたりする、あるいは、税理士の事務所は原則として一カ所、許可を得た場合に複数の税理士事務所を設けることができるようになっておりますが、その許可を得た税理士事務所以外の場所において税理士業務を行なったりする、こういうような事例がありますので、そういった点からいたしまして、従業員の名簿、これは御承知のとおり、税理士は従業員についていろいろ指導監督していく必要があるわけでありますが、その税理士の従業員の方が何人おられ、名義貸しなどの疑いがないようになっているかどうか、こういう意味で税理士の従業員の氏名、住所、年齢等を知らせていただくと同時に、その税理士の方がどの程度の関与先を持っておられるかということを承知する意味で関与先名簿というもの、この二つを出していただくようにしておるのだと思います。ただ、その内容につきましては、私こまかいことは承知しておりませんが、本来の趣旨はそういう趣旨で出していただいておるものだと思っております。
  27. 只松祐治

    只松委員 これはそういうことだけじゃないのですね。報酬額から何から、相当いろいろなものを報告するようになっているのですね。だから、これは一つは税理士の身上調査みたいなものですよ。これだけを持っていけば税理士事務所について全部わかりますね。この税理士事務所はどれだけの件数を持ち、どういう会社の内容であるか、事務員を何人持ち、年報酬額はどれだけあるか、これは全部把握できますよ。だから、こういうのはどうですか。片っ方税務署は、さっきの話ではないけれども秘密を守る、税理士のほうは全部洗いざらい出しなさい。書いてないのは、税理士さんの家庭の女房子供のことぐらいじゃないですか。あとは仕事上のことはおそらく全部報告することになりますよ。こういうことは今後も出さなければならないですか。これはいまおっしゃった程度なら、関与している件数なら件数とか、あるいは事務員なら事務員だけの報告を出してもらいたいとか、そういうことで、税理士個々人ではなくて、税理士会を通じてなりなんなり話し合って出してもらいたい。それは弁護士だつて、インチキ弁護士や何か——いまそれほどではなくなってきているようですけれども、弁護士から、弁護士事務所のものを関係先から何から何までずっと出せというのと同じだ。弁護士だって、裁判所に行って調べれば弁護人になっているのもあるわけですね、わかっているわけでしょう。税理士さんだって、大体そこで税理士さんがつくって持ってきますから大体わかるわけでしょう。立ち入り検査その他をやるときは、税理士さんのところに通知をする、そういうことになっているわけですからね。こういうものをことさらにとる必要はない。税理士さんに対して多少別の目的なり意図があるのだ、私は去年多少問題にしました身上調査をして、ブラックリストをつくる、こういうことのためにこういうことをやっているのだ、こういうことを税理士さんは言っているわけです。さもなければこんなに厳密に調査する必要はない、あなたが言われた程度のいわゆる税制簡素化の大きな一環として、税務行政をできるだけスムーズに、円滑に行ないたい、こういうことならばこれだけのものは必要ないと私は思う。それで、もっと税理士会と話し合った上で、税理士のほうから反発を招かないように話し合った上で、こういう点はどうだろう、こういうふうに出してもらえないかということで話し合いをなさったらいいのだろうと思うのです。一方的に、署長通達で、何日までに出せという命令の形で出さなくてもいい。  おっかなびっくりで出した人もあれば、出せない人もいろいろあるわけでしょう。こういうのは、私がさっき言いましたように命令的な態度ではなくて、裁判所と弁護士会じゃないけれども、もっと話し合いというものを深めていく中で、税務行政というものを明るくしていくし近代化をしていく。明るくとか近代化とか民主化ということは簡単なようですけれども、すべてこういうものに通じてくると私は思うのですね。だから、これを最後まで、二十八日までですから多少過ぎているわけですが、強行しないで、もう少しこれは話し合って、いまおっしゃた程度のことを税務署は聞きたいのなら聞きたいのだということを、話し合いの中からやったらどうですかね。そういうものを、納税者等ともそうですし、納税者との間に立つ税理士が——国税当局にウェートを置くか納税者にウェートを置くか、よく論争のあるところですけれども、そういうことは別にいたしまして、その中に立つ税理士さんにせよ、こういう感情を持たせないように、少なくとも税理士さんとは話し合っていく、やはりこういう税務行政を行なわれることが大事だと私は思うのですけれども、今後そういうふうに善処されますかどうですか。
  28. 泉美之松

    泉政府委員 お話の点につきましては、税理士のブラックリストをつくるというような趣旨でないことは、この前横山委員にそういった税理士との関係について御注意を受けておりますので、私ども毛頭そんなことをする考えはございません。  ただ、先ほど申し上げましたように名義貸しがあったりあるいは税理士の従業員の中に不正なことを働くような者があったりなどいたしますので、その指導監督を行なうという目的のためにそうした従業員の名簿を出していただく、それから税理士の方がどの程度の会社あるいは個人に関与しておられ、その報酬がどの程度になっているかという実態を把握するために関与先名簿というものを出していただく、こういう趣旨で通達が出ていると思います。  ただ、いまのお話でございますと、その通達の趣旨からいたしますと、いかにも詳し過ぎるような資料を出せというようなことになっているようでございますが、この点につきましては、お示しのように、税理士会と話し合いをすることが望ましいと考えておりますし、東京国税局長の話でありますと、東京税理士会の幹部の方とはお話し合いをして、決してこれはブラックリストといったようなものでないということで御了解を得ておるというようなことでございます。おそらく国税局長の通達と、それからそれをさらにふえんした税務署長のほうで一そう内容が詳しくなってまいったのではなかろうかというような推測もつくところでありますが、そういった点につきまして、今後十分注意してまいりたいと思います。
  29. 只松祐治

    只松委員 これは、大幹部の一人の人が持ってこられたのです。まだほかの人も持ってこられたけれども。だから、国税庁からいえば、税理士さんはおっかないんだから、ええ、ということで聞くかもしれませんけれども、そうじゃないわけです。税理士さんとしても、もし話し合いをしたのなら、だらしないと思いますが、私はそういうふうに聞いておりません。ひとつぜひ注意してもらいたい。  今度は具体的な問題をお聞きしますが、昨年からプロパンガスの課税がなされまして、順調に税金が伸びていっておる。去年課税するときも、山中議員や私たちも付帯条件や意見をつけて、いろいろその善処方を要望してきたわけでありますが、何ぶん初めてで、これが完全にされると相当酒税よりも高い税率をとる。しかも、これがメーカーやあるいは蔵出しではなくて、中間の小売り業者だけが一方的に徴収されて納める、こういう立場を負わされるわけです。本年に入ると百億ぐらいになるということでございますが、まあ特別優遇措置というようなことまでは言いませんが、突然にこういうものを一方的にしょわされるということに対しては、やはり何らかの恩典なり優遇措置というものを与えてやる必要がある。単に命令だけではいけないと思う。命令だけじゃなくて、たとえば、いま延納が認められておりますが、延納する場合に銀行保証が必要だ。銀行保証ですと、全部その支店から本店の頭取の何かはんこを必要とするそうですが、そういたしますと、その月の月初めに出しましても、二十五日か月末ぐらいにならないとだめだ。大体平均二十日以上かかっているそうですね、支店に着くのに。  そういうことで、業者の人も銀行の人も非常に繁雑をきわめておる。何とかこれをもっと具体的に、なかなか手形ではむずかしいようでございますけれども、そういう類似なものなりなんなりで簡単にする、いわゆる税制簡素化じゃございませんが、簡単にする方法はないだろうか。これの御研究をひとつ私はお願いしたい。  それからいま一つは、したがって、そういう団体で一、二何か滞納している人があるようでございますけれども、業界全体としても、もしそういう人があれば、私の知っておる限りでも、できるだけ早く納めるように、あるいは滞納しないように、お互いに密告までしてないけれども、お互いに牽制し合ったりあるいは注意し合ったりして、業界内部全体としては納税に非常に協力しているようですね。そういう実績その他も考えられて——突然できたということ、それからいまの納税の状況、実績というものを考えられて、もう少しこれを納める業界自体の団体が、まあ私は一番最初、酒造組合のような形にしたらどうだというような意見を言ったわけですが、そこまでは容易でないようですけれども、何かお考えになったらどうだろうか。これは私が何もプロパン業界に初めのとき関係したということだけではなくて、一般の税務行政から見てこれだけの高い税率を納めるということになってまいりまして、まあ年じゅうけんかしていますね。自動車業界は高いの安いの、納めるの納めないのといって、それで二ヵ月も三ヵ月も納めなければ、その間に国税当局から早く納めろというわけですね。業者は非常に苦労していますね。ずっとコストが下がってきていますし、しかし一方、税金は三ヵ月以内に納めなければならない、こういう形になっていますから、ひとつ皆さん方のほうでそういう点について御研究をお願いしたい。きょうはそのことだけを申しておきたいと思います。どうですか。
  30. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、プロパンガスにつきまして石油ガス税として課税が行なわれるようになりまして、この業界ではスタンド業者が納税義務者ということになっておりますので、常に、御承知のように経過的に税率が上がっていくと、購入者のほうでそのガスの料金を高く払ってくれないと納税上非常に支障を来たすわけであります。ところが、購入者のほうでその高い料金を払わぬというようなことでいろいろ苦労を重ねてきておられるようであります。これらの業者におきましては協同組合などをつくりまして、お互いの共同事業として円滑にやっていこうというような話し合いも進められておるようであります。まだその協同組合の基礎が十分できておりません。これは業界としてそれほど長い歴史を持っておらないということにもよりましょうが、そういう関係がございますので、この業界につきましては、通産省のほうとも協力いたしまして、この業界が円滑に税が納められるように業界を指導していく必要があろうというふうに考えております。  ただ、延納の担保といたしまして、現在は銀行保証に限っておりますのは揮発油税と地方道路税だけでありまして、そのほかの間接税につきましては必ずしも銀行保証に限っておりません。したがって、手形でも、普通の手形は困るわけでありますけれども、銀行の引き受け手形であるとか、銀行の保証しておる手形でありますと、これは延納の担保にとるということは考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、こういう業界は零細な業者が多いわけでありますので、その納税が円滑にいく方向につきましては今後とも十分検討いたしたい、かように考えております。
  31. 只松祐治

    只松委員 商業協同組合は開店休業になって、確かにそのとおりですけれども、それは初めもうちょっと別の意義があったわけで、それがそのとおりにならなかったので開店休業になっている。  だから、いまスタンド協会でそういうことを取り扱っておるという形になっておる。国税庁当局でスタンド協会なりあるいは協同組合なりどっかでそういう責任を持つという明確な団体ができれば、あるいはそれだけの財産があるところができれば、自分のほうでも考慮するということならば、協同組合でもスタンド協会でもそれだけの資金準備なりその他をする、こういうことなんですね。だから、そういう点一ぺんひとつ話し合いをしていただきたいと思いますね。そういうことを要望しておきます。  それから、このごろよくバナナとかなんとか、中小企業者の脱税がいろいろ騒がれておりますが、さっき言いましたように、大企業の脱税はあまり摘発されておりません。ところが「宝石」という雑誌に「石油業界の大脱税を摘発する」ということで、梶山季之ですか、署名入りで、百億円の脱税がある——このことに関して専門家に聞いてみましたら、まああり得ることだ、こういうことをこの石油業界の専門家は言っておりましたね。あなたのほうでお取り調べになっておりますか、あるいはこれをどの程度御存じでありますか。
  32. 泉美之松

    泉政府委員 そこに出ておりますお話は軽油引取税に関連いたしまして、これが引き取り課税になっておるものですから、製油所を出まして卸売り業者が引き取った段階で、それを小売り、消費者に販売する過程におきまして軽油以外のものをまぜて販売するということが行なわれているんじゃないかということであるようであります。これにつきましては、御承知のとおり自治省のほうの所管の税になっております。したがって自治省のほうで注意されておることと思いますが、必ずしも、軽油に他のものを販売過程でまぜたということがすぐ脱税にはならない。これはあるいは、軽油としての品質が悪いものになりますから、詐欺という問題は起こるかと思いますが、すぐ脱税という問題にはなるまいと思います。  ただ、これに関連いたしましてよくいわれますことは、黒い揮発油といいますか、品質の粗悪な揮発油がときどき出回ることがあるわけであります。これにつきましては私のほうも十分注意いたしておりまして、揮発油税の徴収に間違いがあってはいけないということで注意いたしております。最近の事例によりますと、本来品質粗悪で揮発油としての使用にはたえないけれども、比重だけからいたしますと、揮発油の比重を持っておる粗悪な油を揮発油にまぜて販売するというような行為がありまして、これにつきまして摘発した事例も若干ございます。これは引き取り課税でございませんで、製油所を出る段階課税いたしますので、そこで直ちに脱税になるということで調査して、現在処理を進めておる状況にあります。
  33. 只松祐治

    只松委員 まあ私も詳しくは調べておりませんので、同じ自動車が、片一方は正規のガソリン代を払う、片一方は混入されて、その分だけ、百億円になるか幾らか知りませんが、とにかく税額を脱税する、これは国民にとって不公平である。  これの小さいことは、たとえばさっきのLPGでも、いまトラックなんかに使われて、よく三輪車のわき腹にかかえておりますね、固定式じゃなくて移動式のもの、あれは家庭用の燃料のボンベを積んで走ることができますね。これはあなたの論理に従えば、陸運局の管轄であって自分たちの責任ではない、こういうことになるか知りませんけれども、プロパンを自動車に使えば、自動車税としてかかるわけです。ところが、国定式じゃありませんから、注入じゃなくてボンベをかかえて走っておるわけですから、あれは家庭燃料のやつで走れるわけですね。たとえば、ある県のある陸運事務所で調べたら、トラック一台も登録がないのですね。しかし、その県には相当数のオート三輪あるいはトラックがボンベを積んで走っておる。しかしその陸運局には一台も届け出がない。  これはLPG、石油ガスの脱税にもなると同時に、危険なんですね。そのことだけで二件くらい事故を起こしていますね。トラックの事故というのは、固定式じゃなくてボンベを積んで走っているやつが事故を起こしておる。これは保安上も危険なわけです。だからこれは、石油の脱税の場合も、脱税上の問題もあるし、それから保安上の問題もある。LPGの場合でも同様にそういう問題があるわけですね。単に自治省やあるいは陸運局ということではなくて、税法上の問題もあります。したがって、関連の自治省なりあるいは陸運局等とも連絡をとってLPGの税金を取るようになったならば、トラックその他の分も、家庭燃料ではなくて——いまスタンドも非常に多くなっておりますから、スタンド価格をきめる、こういうことをする必要が、これは国の行政上必要だろうと思います。ひとつ、関係各省に連絡をとってそういうふうに進めていただきたいと思いますが、どうです。
  34. 泉美之松

    泉政府委員 石油ガス税は私どものほうの所管でございますが、それにつきまして、いま只松委員のおっしゃいましたように、普通の乗用車でございますと、ボンベが固定式になっておりますが、トラックの中には固定式になっておらない場合があるのであります。ただ、固定式になっておらなくとも、私の聞いておりますところでは、自動車用に使うには家庭用のボンベでは適当でないということで、自動車用の特別のボンベができておる、したがってそのボンベに詰める段階課税するということに現在なっておるわけであります。ただ、なるほどやりようによっては家庭用のボンベでもあるいは自動車は動くのかもしれませんが、これは非常に危険なことになると思います。したがいまして、お話のように、そういった点につきましては、陸運当局ともよく連絡をとりまして、課税漏れがないようにすると同時に、そういったことのために保安上、災害が起きたりなどすることがないように処理しなければならぬ、このように思っております。
  35. 只松祐治

    只松委員 それじゃ終わります。
  36. 内田常雄

    内田委員長 次に、平林剛君。
  37. 平林剛

    ○平林委員 私は、石炭対策特別会計法案につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  午後からは大蔵委員会と石炭対策特別委員会の連合審査会が予定されておりますから、こまかい専門的な問題につきましては、その機会にまた質疑が行なわれると思いますけれども、私はちょっとここで総括的な問題についてお尋ねしておきたいと思うのであります。  今回、石炭対策に関する政府の経理を明確にするために特別会計が設置をされることになったわけでございますけれども、この歳入の総額というのは一体全部で幾らになりますか。
  38. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 特別会計の歳入につきましては、四十二年度におきましては関税収入の額を一応想定いたしたわけでございまして、間税収入額としましては四百七十五億円程度、それからさらに一般会計からの繰り入れとしまして四十六億円ほど入れまして、合わせまして五百二十一億円の規模ということになっております。
  39. 平林剛

    ○平林委員 ただいまの歳入総額の中から、歳出としては石炭鉱業合理化事業団に対する出資金及び補助金あるいは坑道展開の効率化、保安の確保、鉱業技術の開発その他石炭鉱業の生産の合理化をはかるための補助金をはじめ各種石炭対策に必要な支出が行なわれるということに相なるわけでございますけれども、この会計の中で、まず初めに私がその歳出としてお尋ねしておきたいのは、幾つかの歳出項目の中に電力、鉄鋼用炭の需要確保のための増加引取交付金及び電源開発株式会社の石炭専焼発電施設の建設資金に充てるための出資金というのがあるわけでございますけれども、これは一体どういうものであるか、それをひとつ御説明いただきたいと思います。
  40. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 特別会計の歳出の中には、これは石炭対策を比較的広義に見ておりますので、特に当面石炭政策として大きな問題は、需要確保をどうしてはかっていくかという点が石炭対策の大きな焦点でございます。そういった意味から特に電発の石炭火力の建設は石炭政策の大きな需要確保の柱になっておりますので、そういった意味合いで、電発に従来三基の建設をお願いしておりますが、本年度から追加二基お願いいたしまして、合計で五基建設するということにいたしておるわけでございますが、それに必要な電発出資二十億円というものが計上されておるわけでございます。  それからなお、需要のもう一つの柱としましては、電発以外に、電力業界、鉄鋼業界等に対しまして、負担増対策の一環としての予算も計上いたしております。
  41. 平林剛

    ○平林委員 そこで、電力業界、鉄鋼業界が要請にこたえて石炭を使用したというときに、石油関税の還付制度というのが従来あったと聞いておるのでございますが、この実情を少し説明をしていただきたいと思うのでございます。
  42. 岩瀬義郎

    ○岩瀬説明員 お答えいたします。  原重油還付制度というのは、実は石炭の増加引き取りに対しまして過去において——四十二年度から実は方式を変えたわけでございますが、四十一年度までは一般還付特別還付というのがございまして、わかりやすく申し上げますれば、一般還付につきましては、電力と鉄鋼につきまして、石炭対策に協力しております企業に対しまして、三十七年四月の原重油関税の引き上げの際に、関税引き上げ分に相当するものを還付するという制度をいたしております。その後特別還付制度というのが新たに加わりましたのですが、それは、先ほど申し上げました一般還付制度に対してさらに一定額以上に石炭を引き取ったところの電力、鉄鋼業界に対しまして、長期引き取り契約ベース以上の石炭の増加引き取りということでございますが、それに見合う額に対して特別の原重油関税の還付をいたしておったわけでございます。  ところが、この還付制度につきましては、実は一つの問題がございまして、石炭を増加引き取りをいたしますと、その分だけ石油の消費が減るわけでございますが、その減るほうの分についての石油の関税の還付ということになりますと、そこに石炭を増加して引き取った分にその還付が見合わないという問題が生じておったわけでございます。そこで、四十二年度からは、石炭の抜本対策をやりますに際しまして、いわは石炭の増加引き取りに見合ったものとして、石炭の引き取りを増加すれは、その引き取りに対する交付金というようなものが行なわれて、初めて、石炭の引き取りと比例したことが対策として考えられる、こういうことになりまして、実は石炭の増加引き取り分と、石油を消費いたしました場合に生じますところの価格差というものがございます。いわば、石油のほうがずっと安くつくわけでございますから、その価格差に対しまして、石炭を引き取った分に見合うその価格差を、還付と申しますか、増加引取交付金として電力、鉄鋼に交付してやろう、こういう制度に変えたわけでございます。
  43. 平林剛

    ○平林委員 私も大点あらましのことはお話を聞いておりますから承知しておるのですけれども、とりあえず、その問題についてもう少し詳しく知るためにお尋ねしますけれども、鉄鋼が重油を使わないで石炭を使うと、石炭の価格と重油の価格との価格差が出てくるわけですね。それで、政府から石炭を使いなさいと、こう言われるから、国策に協力する意味で、要請にこたえてやる。それに対して還付制度がしかれておった、この趣旨は私わかるのですけれども、実際問題として、それでは、いままでの実績で八幡とか富士とか、あるいはいろいろな鉄鋼の企業があるのですけれども、そのそれぞれの企業には、どのくらい還付されておったでしょうか、これは実績の問題なんですけれども、そういう石油関税を収入とするところの還付金はどのくらい渡されておったのか、そこのところを企業別にもしおわかりになっておりましたらちょっとお話をいただきたいと思います。
  44. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 大蔵省のほうから還付制度の実態につきましてはただいま御説明されたわけですが、この還付につきましては、九電力と鉄鋼業界に対しまして還付制度を実行いたしております。  金額を少し申し上げてみますと、過去の実績でございますが、昭和四十年度におきます九電力の還付額は、合計で三十六億七千万円になるわけでございます。なお、四十一年度の見込みは、これは今日の段階では見込みでございますが、大体四十億円程度ではなかろうかというふうに考えております。それから、鉄鋼につきましては、あれこれ合計いたしまして十億一千万円ほどの還付が四十年度になされております。四十一年度は見込みでございますが、十三億円程度、これが大体九電力と鉄鋼業界に還付された実態でございます。それからなお個別会社につきましては、これをそれぞれの会社の消費によって配分されておるというのが実態でございます。
  45. 平林剛

    ○平林委員 九電力に対しては昭和四十年度三十六億円、四十一年度が大体四十億円の見込み、鉄鋼の企業に対しては、四十年度が十億一千万円、四十一年度が十三億円の見込みということです。  そこで私の聞きたいことは、いま電力は一応差しおきまして、鉄鋼の各企業において、大体どのぐらい還付の実績があるのかということを知りたいのです。
  46. 植松守雄

    ○植松説明員 四十一年度の見込みを申し上げますが、八幡製鉄が三億四百万円、富士が一億九千八百万円、日本鋼管が一億四千六百万円、川崎製鉄が一億六千百万円、それから住友金属が二億三千三百万円、神戸製鋼が一億六千八百万円あとはその他であります。
  47. 平林剛

    ○平林委員 ただいま四十一年度のお話がございましたが、四十年度の実績をちょっとお示しいただきたい。
  48. 植松守雄

    ○植松説明員 四十年度の発生ベースと実際の還付のベースと違っております。それで、四十一年度に返した金額は正確に幾らかというのは、いま数字はございません。ただ、四十年度に重油を使いまして、その重油を使用したことに伴ってまた還付を受けられるといういわゆる発生ベースの数字がございますので、これを申し上げますと、八幡が二億二千六百万円、それから富士が一億六千二百万円、日本鋼管が九千五百万円、それから川鉄が一億二千万円、住友が一億五千六百万円、それから神戸が一億一千百万円、あとはその他でございます。
  49. 平林剛

    ○平林委員 そこで、たとえば八幡製鉄の場合を一つ例にとりましょうか。八幡製鉄の場合に、石炭を購入し、国策に協力する、そしていまの関税収入による還付制度によりますと、三十六年当時の基準量をこえた分について一定の積算をしてお金を還付する、こういう制度であると私は承知しておるんですけれども昭和四十年度において八幡製鉄がそうした積算のもとによって石油の価格と石炭の価格の差益で負担増加になるのがどのぐらいになるかというと、一億九千六百四十一万八千円という数字が私の手元にあるわけであります。これに対し、いま、四十年度の発生ベースで、私、専門的なことは知らないですけれども、二億二千六百万円還付されているわけですね。ということは、この数字の比較におきましては、実際に負担を増加したものよりも、約三千万円以上が還付金として返された。同じような計算で、富士製鉄の負担増が一億三千五百八十三万五千円に対し、一億六千二百万円の還付が行なわれた。これも実際に、この試算が適当かどうかは別にして、それよりも約三千万円ほど多い。同じく住友においても、負担増加は一億一千五百七十万六千円の計算が出ておるのに対し、一億五千六百万円と約四千万円ほど多い。こういうようなことはどういうことで起きてくるのでしょう。
  50. 植松守雄

    ○植松説明員 いま申し上げました数字は、特別還付と一般還付の合計でございます。そこで、その内訳をいま申し上げます。  四十年度の八幡製鉄の特別還付は一億四千八百万円、それから一般還付は七千八百万円、総計、先ほど申しました二億二千六百万円でございます。それからその次に富士もついでに申し上げますと、特別還付が一億六百万円、それから一般還付が五千五百万円、その合計が先ほど申し上げました一億六千二百万円でございます。以下、同様でございます。  そこで申し上げますと、この価格差はいま平林委員がおっしゃったとおりの数字でございます。そこで、その価格差の補てんに充てられるものが、制度的には特別還付がそれに当たるわけでございます。そういたしますと、この特別還付はもとよりこの負担増額をこえることはございませんので、富士、八幡にとってみましても、大体補てん率は七五%から七八%くらいになっていると思います。  しからば、その一般還付とは一体どういうものかということになるわけでございますが、これは先ほど主計局から説明がありましたように、昭和三十七年に原油関税が四%引き上げになったわけでございます。そういたしますと、この鉄鋼業界あるいは電力業界もそうでございますが、石炭を使うと同時に非常に大口の重油の消費者でもあるわけです。しかも、この石炭の長期引き取り契約に参加しているという関係で、その場合には石炭を使うことと重油を使うこととの価格差という観点ではなくて、重油の大口消費者であり、石炭対策に協力しているという立場において、その四%の負担増自体を負担せしめないように還付しようというのが一般還付でございます。そこで、この両者を合算いたしますと、おっしゃるように還付額はこえるわけでございますが、制度的には特別還付と負担増額とを見合わせて考えなければいけないということでございます。  しかし、ちなみに申し上げますと、いまおっしゃいました三社だけが合計をして負担額をこえておるということでございまして、それ以外のものは、両方一緒にしましても、この負担増額に及ばないという形になって、かつ、各社によって非常にアンバランスがある、これはおかしいというのが今度の改正理由でございます。
  51. 平林剛

    ○平林委員 次に、負担増額に比較して還付の金額が少ない企業が、例をあげれば、鋼管であるとかあるいは川鉄であるとか神戸とかいう部類にありますね。これも私は一つ疑問であったわけです。しかし、少ないほうは別にいたしましても、実際の負担増の計算よりも多いというのはいかがなものなんでしょうかという私は素朴な疑問であります。あなたはそれは一般還付と特別還付だ、こう言う。その部類ができた歴史的な過程はある程度承知していますけれども、しかし、石炭の購入、国策に協力して石炭を使用する1特別還付も一般還付もそんなものは歴史的な過程ででき上がった区分けにしかすぎないのでありまして、私はこういうアンバランスがあるというのはどうしてもふしぎでならない。そうしてまた、いまのようにそれは直すということになっているけれども、従来こういう経緯が出てきたということはどういうわけなんだろうか。いままで間違っていたというわけなんでしょうか。ただこの企業同士の不合理を直すということだけでは、私は国民の立場としてはちょっと承知できないんじゃないかと思うのです。石炭の使用がいま国策として必要だということは私も十分承知していますけれども、さればといって、いま四十年の実績を示しただけでございますけれども、おそらく、時間があれば三十九年度、三十八年、三十七年、それぞれこまかく調べてまいりますと、こうした問題があったのじゃないだろうかと思うのです。  私が聞きたいことは、特別還付とか一般還付とかということがございましても、実際に石炭の使用したことによるところの価格差以上の還付が行なわれたということ、これはどういうわけですか、これをひとつ答えてもらいます。
  52. 植松守雄

    ○植松説明員 制度的な説明は先ほど私が申し上げたとおりでございます。それでやってきているわけでございますが、その場合に、まず各社ごとにアンバランスが生じますのは、各社における石炭の消費量と重油の消費量が一定のバランスで行なわれておらないということでございます。  そこで、制度としましては、各社ごとの事情はさておいて、全体のマクロでながめて、全体がどうなっているかということでやらざるを得ないので、そこでいま申しましたような形のアンバランスということから各社によって補てん率が違うということになっておるわけでございます。しかし、これは考えようによっては非常におかしいわけでございます。そこで、今度の補助金から支出する場合の考え方は、その辺は一般還付と特別還付ということもなくして、それですべて補てん率というものをもとに、価格差というものをもとに考えていくというやり方にする、それ以外に、制度的にこれを調整するとしても、実際調整の方法がない。一方においてこういう企業があると同時に、非常に補てん率が少ない企業があるという形でございまして、われわれもこの制度自体に非常に矛盾を感じておったわけでございます。幸いにして今度予算に移行するという形になりましたので、その辺はすべてきれいになるということでございます。   〔「定足数不足だ」と呼ぶ者あり〕
  53. 内田常雄

    内田委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後六時五十五分開議
  54. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  次回は、明十七日、水曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十六分散会