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1967-05-12 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十二日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 三池  信君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 武藤 山治君 理事 春日 一幸君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    小峯 柳多君      小宮山重四郎君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    西岡 武夫君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    山中 貞則君       渡辺美智雄君    阿部 助哉君       只松 祐治君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    柳田 秀一君       山田 耻目君    横山 利秋君       永末 英一君    田中 昭二君  出席政府委員         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省関税局長         事務代理    細見  卓君         国税庁長官   泉 美之松君         農林省園芸局長 八塚 陽介君         通商産業省通商         局長事務代理  原田  明君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      秋吉 良雄君         大蔵省理財局次         長       広瀬 駿二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 黒住 忠行君         建設省道路局次         長       吉兼 三郎君         自治大臣官房参         事官      鎌田 要人君         日本国有鉄道常         務理事     長瀬 恒雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月十二日  理事春日一幸君同日理事辞任につき、その補欠  として竹本孫一君が理事に当選した。     ————————————— 五月十二日  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八四号) 同月十日  貸金営業法制定に関する請願神田博紹介)  (第八八九号)  同(内田常雄紹介)(第八九一号)  同(本名武紹介)(第九一六号)  同(足立篤郎紹介)(第九三七号)  同(西村直己紹介)(第九三八号)  同外一件(遠藤三郎紹介)(第一〇〇八号)  同(田中榮一紹介)(第一〇二四号)  バナナの輸入関税据置きに関する請願内田常  雄君紹介)(第八九〇号)  金鵄勲章賜金国庫債券即時支払いに関する請  願(森山欽司紹介)(第九六〇号)  貸金業改善に関する請願吉田泰造紹介)(  第九六三号)  邦楽器物品税撤廃に関する請願稲葉修君紹  介)(第一〇〇九号)  同外百四件(永山忠則紹介)(第一〇一〇  号)  同(村上信二郎紹介)(第一〇一一号)  同(山田久就君紹介)(第一〇一二号)  公衆浴場業所得税適正化等に関する請願(菊  池義郎紹介)(第一〇四四号)  医療法人に対する課税軽減等に関する請願(臼  井莊一君紹介)(第一〇六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  連合審査会開会に関する件  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四九号)  税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一  部を改正する法律案内閣提出第四六号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  連合審査会開会の件についておはかりいたします。  石炭対策特別会計法案について、石炭対策特別委員会より連合審査会開会申し入れがあります。  先刻、理事会で御協議いただきましたとおり、これを受諾し、連合審査会を開会するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会は、来たる十六日、火曜日、午後開会いたす予定でありますから、御了承願います。      ————◇—————
  4. 内田常雄

    内田委員長 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。村山喜一君。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 昭和四十二年度の国有鉄道公共負担見込み額を調べてみますと、八百九十億円ということでございます。前のこの委員会堀委員質問答弁をされまして、二百四十二線区のうち赤字線区がもう大部分であり、黒字を出しておるのはわずかに十一線区にとどまっておる。そういうような状態の中で、いま新線建設鉄道建設公団の手によりまして進められているわけでございます。長期負債額が一兆三千億円、利払いは一千五十億円、一日当たり三億円の借金の利子を払わなければならないという、まさに火の車の国鉄経営状態でございますが、そういうような状態の中にありながら、地元要望もだしがたく、地域開発のためと称しまして鉄道建設公団の新線工事が進められているわけであります。  そこで、この問題と地域開発という問題とを考えてまいりますならば、当然第三次長期計画との関連性の中において、同じような意味において考えられなければならない問題があると思うのであります。  たとえば、この第三次長期計画の中で、私の鹿児島地域におきましては、特急の列車速度一つを見てみましても、単線でありまするので、五十七キロぐらいのスピードしか出ない、こういう状態でありますから、現在の線路の許容量というものを拡大をすると同時に、複線化を進めていくという方向で改良工事をやらなければならないわけでございます。そこで、そういうような計画のもとにいま鹿児島本線の東市来−鹿児島間の複線化計画が進められまして、この前、起工式がございました。私もこれに出席をいたしたのでございますが、この中で、この総工事費が六十五億円でございます。このうち二十億円は地元人たち努力によりまして、利用債引き受けるということになっているわけでございます。形の上からいたしますると、この利用債引き受けというのは、地元協力会ができまして、商工会議所あたりが中心になりまして、県や沿線市町村がこれに加盟をするという形をとります。そこまで引き受け責任を持つわけでありますが、事実上は、御案内のように、この利用債応募者利回りが六分七厘八毛四糸というきわめて低い金利でございますから、どうしても地元銀行がこれを引き受けなければならないという場合には、県や市町村がこれに対して利子補給という措置をとっておるようであります。これは現実に行なわれておる措置であります。私の調べたところによりますと、千葉県の場合には、県が年八分五毛の利子補給をいたしておるようでございます。鹿児島銀行を調べてみたのでございますが、君たちは一体幾ら引き受けているのかということを聞いてみましたら、いままでは七分五厘の利子補給を受けておりましたが、これからは七分七厘四毛七糸ということに四十一年度分からいたしたいということで、とりあえず四十一年度分八億円を私たち引き受けることになっておりますということです。そこで、私は先般担当常務理事からお話をお伺いいたしまして、ことしの資金計画の中で、利用債として見込んでいるものは一体幾らなのかということをお尋ねをいたしたのでございますが、この金額を調べてみますと、大体百三十億円でございます。そういうような中身を持っております地域開発地元要望にこたえてそのような措置が既設の路線につきましてはなされておるわけでございます。  この点につきましては、自治省との間において、地方公共団体に与える影響という問題から慎重な配慮を払うべきであるというようなことで、何か取りきめがなされたやにもお伺いをいたすのでありますが、今後、こういう問題は、ただ千葉県や鹿児島県だけでなしに、いままでやってまいりました長野県でありますとか、その他の地域におきましても、利用債に対するところの府県等の、あるいは市町村等利子補給という問題が、これは非公募債でございますから、当然地元銀行引き受けなければならないという形でなされていると思うのであります。ところが一方、鉄道建設公団発行いたしますものは利用債というような形ではなくて、特別債がことし二百二十六億五千万円発行されておりますが、これも金利を調べてみますと、七分五厘から七分三厘もの、あるいはそれ以上の応募者利回りの形の中においてわりあいに条件のいい形のものが発行されるわけでございます。  そこで、私がふしぎでならないのは、この利用債引き受けなければならない地方自治団体があるかと思うと、片一方においては、これから新しく地域開発要望にこたえて新線建設する地域においては、これはそれよりも条件のいい特別債でこと足りるというような区別をしておるところに問題があるのではないかと思うのでありますが、この発行をめぐります条件の差をなぜこのような形の中で大蔵省は認め、また、国鉄はそういうような形の中で推進をしようとしておるのか。やはりここには大きな経営上の問題があると同時に、地方公共団体との関係の中において基本的に考えなければならない問題があるのではないかと思いますので、この点について、まず、それぞれの立場からお答えを願っておきたいのであります。
  6. 広瀬駿二

    広瀬説明員 ただいまお尋ねのございました鉄道建設公団特別債条件が七分四厘六毛あるいはそれ以上のものもある、それに対しまして国鉄利用債のほうの条件は御指摘のように六分七厘八毛四糸という応募者利回りになっておりますが、この条件差異いかんという御質問だったと思いますが、利用債のほうは、村山先生がおっしゃいましたように、地元要望に基づきまして、複線化であるとか、電化であるとか、あるいは駅舎改良とかいったような、地元の利害に非常に密接な関連がある工事につきまして、地元要望に基づいて行なわれる毎年の金額は、大体昨年度で百五十億円、その前が百四十億円、その前も百四十三億円というような、利用債工事といたしまして特契して行なわれておるものでございます。そういうような地元要望からしまして、国鉄地元府県との交渉にあたりまして、応募者利回りがそのように国鉄にとりましてわりあい有利な条件になっておるわけでございます。  一方、鉄道建設公団のほうの特別債のほうは、新線建設の各県の建設同盟というようなところに引き受けてもらうわけであります。これはむしろ鉄道建設公団のほうからお願いして御協力をいただくような立場になるものでございますから、これは応募者利回りは七分四厘六毛というような条件になっております。
  7. 黒住忠行

    黒住説明員 国鉄鉄道建設公団特別債利用債の点につきましては、大蔵省からいま答弁がありましたとおりでございますが、国鉄にしろ建設公団にしろ、相当な資金を要しますので、なるべくわれわれとしましては財投その他の方法でもって確保したいと思っている次第でございますけれども、膨大な資金量でありますから、地元の方々の御援助を受けて資金をお借りしているのが実情でございます。その場合におきまして、鉄道建設公団特別債は、直接当該工事にリンクしているものではなくて、国鉄利用債の場合におきましては、直接当該工事にリンクした性格でございますので、いまのような利率の差になっているかと思う次第でございます。われわれといたしましては、なるべく安い金利のものを確保していくように努力したいと思っている次第でございますが、現状はいまのようなことでございます。
  8. 鎌田要人

    鎌田説明員 自治省といたしましては、この点につきまして、従来から非常な関心を持ち、また改善努力をいたしておるところでございます。ただいま利用債、それから鉄道建設公団特別債についての御意見があったわけでございますが、一口に利用債と申しましても、もちろんみんながみんないわば地元請願設置的なものだけでもないのじゃないだろうか、利用債の中におきましても、やはり国鉄営業政策の上から見て必要だ、これははなはだ区別はむずかしいと思いますけれども地元の単なる必要だけ、こういうものだけでもないのじゃないだろうか、そういう意味合いにおきまして、国鉄地方公共団体財政負担を軽減するよう、今後利用債について工事内容によって発行条件を改定するようつとめる、こういうことを昭和四十年のことでございますが、私どものほうの財政局長から国鉄当局のほうへ申し入れをいたしまして、改善方について善処をお願いいたしておる過程でございますけれども、なおまだ満足すべき結果を得ておらない、こういう状態でございます。
  9. 長瀬恒雄

    長瀬説明員 利用債につきましては、ただいま大蔵省のほうからの説明がありましたとおりでありまして、国鉄といたしましては、第三次長期計画におきまして、通勤輸送あるいは主要幹線複線化、あるいは信号保安対策というようなことを強化をいたしておるわけでありまして、それに対する利用債工事と申しますのは、主として駅舎あるいは電化でございます。そのほか部分線増でございますが、それらの仕事につきましては第三次長期計画の後期でやるというふうに私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、利用債地元負担あるいは地元の御要望によりまして、若干工期を繰り上げるというような面がございます。したがいまして、国鉄側といたしましては、現在の財投あるいは特別債というような資金事情で、先ほど申し上げました第三次長期計画の面を進めるという点におきまして、若干そこに繰り上げの措置になっているという点がございます。さらにその点から考えますと、国鉄は受け身である、また国鉄の現在の財政事情から考えましても、非常に資金コストを下げなければならないというような面もございますし、また地元利益という点から考えますと、現在の六分七厘という利用債工事は妥当であると私どもは考えております。
  10. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは小沢政務次官お答えを願わなければならないと思うのですが、ただいま説明を聞いておりますると、差はリンクしているか、していないかという問題だけのように私は考えるのでございます。というのは、鉄道建設公団新線建設をやっている、それに基づいて黒字になる、国鉄会計上、経営プラスになる、それだけの資金を投入しても必ず取り返せるんだ、こういう立場であるならば、私はその理論は正しいと思うのです。主張は正しいと思うのです。しかしながら、大方の新線建設は、やはり地元要望に基づいてやられているのでしょうが、それをつくることによって黒字になるのですか。そうであるならば、私は問題はないと思うのですが、いずれにいたしましても、利用債にしてもあるいは鉄道建設公団特別債にいたしましても、これはやはり地元要望に沿うてなされている仕事じゃありませんか。私はそうだと思うのですが、それは違いますか。その点をまず担当者からお聞きをしたいのであります。  そのあと政務次官お答えをいただきたいのでございますが、利用債の残高がいま九百三十五億円だと聞いている。そういうような状態の中にあって、その利子補給——それは地元要請をするから駅舎の改築くらいはけっこうでしょう。しかし、その地域の発展をはからなければならないということで、非常に無理を承知の上で、地方公共団体中心になってこれを引き受けるわけです。引き受ける結果はこの利子補給をしなければならないわけです。片一方鉄道をつくってくださいということで政治運動をやる、新線建設したら何%という票が確約できる、こういうような政治的な動き等によりまして地元要請にこたえている。これには高い金利特別債で、リンクされないとはいいながら、結局資金調達が容易にできる、こういうようなことになったら私は筋が通らないのではないかと思う。この点について、それじゃ、国鉄建設公団がやる仕事は全部黒字になるという見通しがあるのだったらけっこうでありますから、それを証明を願いたい。
  11. 黒住忠行

    黒住説明員 御指摘のとおりに、建設公団のつくります新線につきましては、将来黒字を予想しているものも若干ございますけれども、線の数からいいますと、当分黒字が予想されない、すなわち、赤字のものが大部分であるかと思います。  それから新線建設の場合におきまして、地元要望もございますけれども、全体の鉄道交通網というような観点も総合いたしまして、新線法律に基づいて予定線工事線等を決定いたしていくわけであります。  なお、新線建設の場合におきましてお借りいたします特別債は、つくりました当該線黒字を予想されるというところにおきましては、利払い等も可能でございますから、いわゆる黒字を予想される、有償でもって国鉄にその線を貸し付けるところにその資金を使用している次第でございます。  それから、地方のいわゆる赤字線の場合におきましては、国の出資あるいは国鉄出資でもって、これは利子のつかない金でもって工事をやるというたてまえで現在工事をしている次第でございます。
  12. 小沢辰男

    小沢政府委員 ただいまの国鉄当局、あるいは前に私ども理財局のほうから御説明を申し上げましたように、特別債というものと利用債というものの金利は確かに違いますが、これは御承知のとおり、先ほども申し上げましたように、特別債地元にこちらがお願いをする立場で、利用債のほうは願いを受けるような立場でございますので、そこで、端的にいいまして、片一方は若干金利が安く、片一方は若干高い、こういうことになり、ただいま国鉄当局説明のように、新線建設のほうは赤字が多いと思いますけれども赤字のほうは出資金でまかない、黒字の側の工事につきましては特別債でまかなうというので、それだけの金利負担しても一応採算がとれるというかっこうでやっているわけでございますから、いわば、金利需要供給関係があるというようなことがここにもやはり出てくるのではないかと思うのです。そういう意味で御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は実は了承できないのです。なぜかといえば、鉄道建設公団工事をしているのは全部黒字になるという証明ができればけっこうだというわけです。みすみす赤字になるところもやっているじゃありませんか。それをつくることによって赤字が増大をするという見通しをつけながらも、なおおやりになっている例はありませんか。それを国鉄のほうにお伺いします。
  14. 黒住忠行

    黒住説明員 現在工事をやっております線におきましては、いわゆる地方開発線というのがございます。地方開発線につきましては、将来とも相当長期間にわたりまして黒字が予想され得ない線が大部分でございます。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 小沢さん、いま答弁したように、明らかに赤字が将来においても認められる路線があるわけです。そういうようなのも、需要供給との関係金利差があっていいのだという説明では納得できないじゃありませんか。それはやはり地元要請にこたえてつくるんでしょう。国鉄必要性に基づいてつくるのですか。私はそこに何ら差はないと思うんですよ。差はないのに、金利の上においてそのような政策的な差異をつけるというやり方は、これは間違いじゃないのか。その点は黒字であればけっこうですよ。国鉄経営プラスになる、こういう見通しのもとに全部新しい建設は行なわれております、こうおっしゃるのであるならばけっこうです。それは高い金利のつく特別債でもいいでしょう。それだけの発行条件のもとでやっても採算がとれますということが言い切れるのだったら、それでけっこう。しかしながら現実はそうじゃないじゃないですか。やはり地元要請にこたえてつくられるのだから、そういうところにはやはり高い金利のものが特別債として割り当てられ、片一方においては、地元利益のためにぜひお願いをしますということで、その地域赤字路線です。しかし、計画を早めることによってその地域開発ができる、こういうことを期待をして、片一方においては条件の悪い利用債引き受ける。私は地元開発という点から考えたら同じことだと思う。そこに金利差をつけなければならない政策上の差というものはないのじゃないか、こう考えるわけです。それはあなたの言われる先ほどの説明とは食い違ってくるわけですけれども、ただいま国鉄責任者のほうから開発線については赤字でありますという説明があった。そうなると、あなたの答弁を訂正をしてもらわなければならない。
  16. 小沢辰男

    小沢政府委員 私が申し上げた要旨は、利用債のほうは、地元要請といいますか、要望によって利用債引き受けということが行なわれていく、ところが、特別債のほうは、国鉄のほうからとにかくお願いをして引き受けてもらう、そこに大きな違いがあるわけでございますので、それがもし同じだとすれば、かえって私は、公平のようで公平でないと思うのでございます。  それから、先ほど赤字路線ということでもそういう特別債発行しているじゃないかというお話がありましたが、赤字線は必ずしも地元要請新線建設ということが行なわれるわけではありませんで、やはり交通政策といいますか、大事な、いわば国家全体の政策目的から、どうしても、たとえ地元要請がなくてもやらなければいかぬようなものもあるわけでございますので、この点、必ずしも新線建設が全部地元の陳情とか要請とかということで行なわれているわけじゃないことは先生も御承知のとおりでございます。  要は、やはり利用債引き受ける側の強い要望にこたえる場合と、それからこちらが地元に特に協力要請する場合とでは、やはり若干の金利の差があっていいのじゃないか。もしそれが同じだとすれば、かえって私は何か公平でないというふうに思うのでございまして、この点は先生と遺憾ながら見解が違うかもしれませんけれども、御了承いただければと思います。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 鉄道建設審議会がありまして、そこの中には十名ぐらいの国会議員が入って、そして盛んに政治運動をやって、自分の選挙区に誘致をしている姿、そうして、私たちが見ましても、ああいうような路線をつくっても何にもならない、むしろそれよりも道路開発をして、道路によって旅客なりあるいは貨物を輸送したほうが、国全体の利益から考えたら適当だと思われる路線地方にはたくさんあります。そういうようなところに金がついております。そういうようなことを国民は見ているわけです。だから、国鉄要請によってつくっているのではなくて、私は国全体の交通政策の中から打ち出されたものだとは受け取りがたい。にもかかわらず、そういうような路線がふえるに従って国鉄赤字はふえていくということは目に見えている。そういうような状態の中にあるにもかかわらず、それには割り高特別債を当てがっていく。ことし初めて三十六億円の政府保証債が芽を出しました。それは金利は七分ですから特別債よりもいいわけですが、ようやく初めてそういうふうに——国責任を持つとすれば、私はそういうような特別債でなしに、やはり政府保証債を、そういうような安い金利のものを充当をするということでなければおかしいじゃないかと思う。割り高の、応募者利回りが中には七分七厘以上のものがあるように承るのであります。そういうような高い金利のものを発行をさして、それによってやりましたら、ますます赤字になっていくわけでしょう。ですから、そこにはやはり政策上必要なりと考えておやりになるのだったら、もっとあなた方が国として責任を持つ体制をおとりになったらどうか、このことを申し上げているわけです。そして、利用債発行残高が九百三十五億円もある。そしてそれに対する——私は千葉県の状態をある記事で読んだのでありますが、昭和四十六年まで、複線、電化工事の分を引き受けるための県の利子補給分が、総額で三億五千万円だと聞いているので、そういうような膨大ないわゆる負担地方自治体が負わなければならないという一面が取り残されている。  私はこういうような問題を、もう少し国全体がどういうような方向で交通政策の中で開発を進めていくかという問題を、国の財政あるいは公団あるいは地方公共団体の財政という問題の中から、もう少し掘り下げた検討をして、そして大蔵省としての金融政策、財政政策というものをつくってもらいたいと思うのでありますが、その点については政務次官も同感だろうと思いますので、御答弁を願いたいのでございます。
  18. 小沢辰男

    小沢政府委員 新線建設につきまして、あるいはまた地方開発のために必要な複線、電化、そういういろいろな問題につきまして、地方の、あるいは国鉄そのものの経営が苦しい今日、政府資金等できるだけ安い金を使って進めていくべきじゃないか、あるいはまた、地方公共団体にそういう地元のためとはいいながら、相当の負担が結果的にはしいられるようなことはなるべく避けるべきじゃないか、そういう御趣旨は、私どももちろん了解をいたします。しかし、今日の国家資金供給力といいますか、そういう全体の点から見ましたり、あるいはまた財政力全般から見ます場合には、いろいろおっしゃるように他の分野におきましてもやりたいことがたくさんあるわけでございますけれども、そこがやはりおのずから制約が出まして、受益者負担的な要素が出てまいりましたりいろいろするのは、これはもう今日の現状においてはやむを得ないと思うわけでございます。できるだけ今日の、いわば国、地方公共団体含めまして、全般が非常に苦しい中から何とか開発を進めていこうという一つの苦悶のあらわれだというふうに御理解願いまして、だんだんこういうような事態が解消されていきますように、できるだけ私どもも財政力の培養というものに意を用いながら、各般の施策を進めてまいりたいと思うわけでございますので、私も先生の御意見の方向は十分理解できますけれども、現状におきましてはやむを得ない点もあることを、ひとつ先生のほうでも御了承いただきたいと思うわけでございます。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題はこれでおきますが、自治省のほうに私は要望申し上げておきたいと思います。  六分七厘というような利用債がやはりそれだけの地域開発のためにはどうしても必要だということで、これは喜んで引き受けているんじゃない、そういうような点から考えまして、やはり国鉄経営上そういうような安いコストのやつを発行したいという気持ちはよくわかります。しかし、現実の問題として、駅舎改築等、地元の全く要望に沿ってなされるこういうようなものはいざ知らず、やはり線路の改良とか電化とか、こういうような問題については、地元要請がなされたから利用債引き受けてもらったんだということでは済まされない問題だ。やはりこの問題については、ほかの電話加入債の金利等の例もありますので、そういうようなものと水準が合うような形の中で地元引き受けて、それを利子補給をしなければならないような状態の中で地方自治体にしわ寄せがされる形で進められるというのは好ましいことではございませんから、この解決のために努力をさらにしていただきたいということを要望申し上げておきたいと思います。  そこで、私がこの問題を取り上げてまいりましたのは、ことしの資金需要というものが、地方銀行におきまして約一千百億円の資金不足だということがいわれておる。それから全銀連が三月の六日に発表いたしたところによりますると、一兆一千二百億円の資金量不足だ、こういうようなことで、きょうの新聞あたりに見られまするように、金融機関が金融債を中心にする売り払いによりまして資金需要に備えようとしている、こういうようなことが記事としても大きく報道されているわけでございます。  そこで、資金計画見通しの問題についてこの際お尋ねをいたしておきたいと思うのでございますが、四十二年度の公募債発行規模総額が約二兆円だというふうに承るのであります。その中で、政府保証債が、調整年金引き受け分の百億円まで入れまして五千百億円、それから地方債の公募市場分が六百六十億円、それに電力債とかあるいは一般事業債の民間債等を含めまして大体二兆円程度だといわれておるわけでございます。そこで、消化体制の問題から、ことしあたりは証券会社に個人消化の分として二百五十億円、前年度は八十億円でございますが、それをふやしましてそれだけ持たせようということを計画されているようでございます。  ところが、先ほど鉄道建設公団の場合でも、二百二十六億五千万円の非公募の特別債発行するという計画に出ておりますように、公社、公団あるいはそれらの関係の公庫債あるいは地方縁故債、こういうようなものが非公募のものとしてあるわけでございますが、それらのいわゆる資金調達計画というものをどういうような形の中でお考えになっているのか。私の調べたところによりますると、電電公社の縁故債六百二十億円をはじめ、その他各公社、公団というようなところを調べてまいりますと、約六千億円の非公募債発行をされるというふうに見るわけでございますが、そういうような起債額の、非公募債の限度額、それから消化の見通し、こういうようなものを全体的な資金需要の中においてどういうふうに押えているのか、この資金対策の見通しについて承っておきたいのでございます。  と申し上げますのは、地方計画によりますると、ことしの計画では地方縁故債が一千三百五十億円、それから公営企業、公庫の分が七百三十億円もあるわけでございますので、こういうような消化の見通しなりをお伺いをいたしますと同時に、一体、これが国全体としての立場から、はたしてそういうような非公募債というものの発行が可能であるのかどうかというような問題にも関連をいたしまするし、そういうようないわゆる縁故債等を抱きながら、そして地方銀行あたりが中小企業などに対する資金需要にこたえ得る見通し——地方銀行側に言わせると、ことしは千百億円も不足をするというようなことを言っておりまするので、この問題はやはり今後の地方財政計画の推進の上においてきわめて重要な問題であると思いますから、これについての大蔵省としての態度をはっきりさしていただきたいと思うのでございます。
  20. 広瀬駿二

    広瀬説明員 ただいま御指摘になりました、縁故債とかその他非公募債発行が相当巨額になっているが、それについての消化等について十分見通しを持ってやっているのかどうかという御質問だったと思いますが、こういう問題につきましても、もちろん資金全体の需給という面から、私のほうもあるいは経済企画庁のほうも検討いたしまして、それで、国債八千億円あるいは政保債五千百億円というようなものを組みます際に、こういうものの総額もあわせて考えて、四十二年度として妥当な線であろうということで、四十二年度予算の編成が行なわれたわけでございますので、その辺の検討はいたしておるということはお答えできると思います。  なお詳細についてのデータは持ち合わせておりませんが、いまおっしゃいました、たとえば地方団体における縁故債一千三百五十億円というような数字をおあげになりましたが、これは地方団体の場合は、いまおっしゃったような来年度の経済情勢、地方銀行のほうにおける資金の状況がどうなるかということも見通しまして、前年度の千六百六十一億円に対しまして三百十一億円減った一千三百五十億円というふうに計画をしておるわけでございます。これはもう一つはもちろん特別事業債というような、四十一年度は地方団体の赤字対策として大きく計上されました千二百億円の特別事業債が減ったということも関係があると思いますけれども、そういうような配慮はこの辺でもいたしております。それから、国鉄、電電等におきます先ほど来問題にされました特別債なりあるいは利用債なり、そういったものについての総額につきましては消化可能な範囲に押えるということでもって財投計画を組み、あるいは国鉄、電電、公庫、公社等の予算を編成しているという事情でございます。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 非公募分が総額幾らくらいになるのですか。それと鉄道建設公団の縁故債の特別債の分を見てみましても三種類あるのですね。それで応募者利回りが七分七厘八糸というものもあるし七分四厘六毛三糸あるいは七分五厘一毛八糸、三つの種類に分かれている。そういうようなものが国鉄の場合にも数多くあります。そのほかの公社、公団等にいたしましても、それぞれの立場資金調達をするためにそういうような特別債、縁故債等を出すわけでありますが、国全体としてやはり一つの基準なりというものを持たなければ、それぞれの立場において、応募の上でそちらのほうが成績をあげるのにいいから高い金利のものを発行するということになってまいりますると、政府の金利政策というものに大きな影響をもたらすのじゃないかと思うのですが、こういうようなものに対しまして、大蔵省としてはどういう立場から臨んでおられるわけですか、この点もあわせて答弁を願っておきたい。
  22. 広瀬駿二

    広瀬説明員 縁故債等の非公募分の措置というお話でございましたが、これにつきましては、非公募債の中にいろいろなものがございまして、必ずしも全部一括した数字を手元に用意しておりませんが、たとえば電電公社の中にも電話加入債というような電話の加入者が引き受ける電話債というものもございますし、それから政府保証債でもって政府のほうでめんどうを見るものがあるということ、あるいはさらに、先ほどおっしゃいました非公募債ですから政府保証のないかっこうでもって縁故債を持っていただくというようなものもあるわけでございます。  おっしゃっているような趣旨の特別債なり縁故債といったものをおもな機関だけについて見ますと、国鉄、電電、鉄建公団あるいは地方団体、この四つだけについて見ますと、四十二年度三千九百八十七億円という数字になっております。四十一年度が同じ機関につきまして見てみましたものが三千六百八十六億円、このいま申し上げました数字の中には電電の利用債は含まれておりませんで、いわゆる縁故債の分だけを合計した数字でございます。でございますから、三千六百八十六億円が三千九百八十七億円、約三千七百億円が三千九百億円——四千億円近いというような数字になっております。その増加率はそんなに大きなものではない、わりあいに低目低目に押えたという感じのものだと私どもは確信しております。  それから、こういう縁故債等の条件について国鉄だけでもいろいろあるじゃないかというお話は御指摘のとおりでございます。国鉄利用債につきましては六分七厘八毛、それから縁故債の中にもいろいろございますが、共済組合の引き受けます縁故債では七分三厘、それからそれ以外の縁故債が七分五厘、そうして特別債は過去にはかなり高い七分七厘程度のものがございましたが、四十二年度に予定されておりますものは応募者利回りで七分五厘、したがって、大体三つくらいになるかと思いますが、六分七厘の利用債、それから共済組合引き受けの七分三厘の縁故債、それから特別債が七分五厘というような三つくらいかと思います。それから鉄建公団につきましては、大体先ほどの地方団体の引き受け分が応募者利回りで七分四厘、それから建設会社が引き受けます分が七分七厘で、これはかなり高くなっております。  そこで、こういったものがきわめて乱に流れるということは、御指摘のような金利政策という面から非常に問題がございますので、こういった非公募債発行につきましても、それぞれ主務大臣、鉄建の場合でございますと運輸大臣でございますが、運輸大臣の認可を得ることになっております。そして、運輸大臣はこれを認可する場合には大蔵大臣と協議するというかっこうで、その辺のチェックを行なうことにしております。そこで、その辺はわれわれのほうと運輸省とも御相談し、国鉄当局とも御相談をしまして、決して乱に流れないように、たとえば非公募債、縁故債、その辺は慎重に見て、できるだけ低目に押えたいという感じで処理しております。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま四つほどの大口だけをあげられたと思うのですが、やはりこれは全体的な資料をお出しをいただきたい。中には日本住宅公団の宅地債券などは昨年も用意されたのですが、九割も発行ができないような状態になっておる。それは土地の値上がり、それと造成費の値上がりによって発行ができない状態になってしまっている。そういうような状態のものもあります。これはやはり特殊な事情でありますけれども、そういうような金融機関がほとんど受け持たなければならない利付の金融債等にいたしましても、やはり資金全体の流れをつかまえるのには必要でありますから、私はそういう意味において、そういうような縁故債なり特別債のほかにもそのような債券関係発行条件というようなもの、これらについてもやはり全体的にとらえる必要があると思いますから、これを一ぺん大蔵委員会に資料をお出しを願いたい。その中において全体の資金的な流れをつかむ立場から、場合によれば、国債の八千億というものの消化も容易でないといわれておる時代でありますから、そういうようなものとのかね合わせの問題として論議をしなければならないかと思いますので、その点を要請申し上げておきたい。この問題はこれでとどめておきます。  次に、先日質疑が行なわれました新道路整備五カ年計画の問題に対するいわゆる閣議了解をめぐる解釈の問題でございます。  この閣議了解には、市町村道の財源措置をどうするかという問題に関連をいたしまして、地方における特定財源の確保等について弾力的に実施するものとするという覚え書きがついておるわけでございます。これをめぐりまして、小沢政務次官の御説明によりますと、ことしは六兆六千億円という道路整備五カ年計画を推進をしていくのにあたって、この市町村道路に対する財源措置というものはこれを見ないのだというような説明のようにこの前お伺いをいたしたのでございますが、私たちがいままで聞いておりますのは、秋ごろ計画全体が確定する、そのときに使途、財源の内訳については別途にはっきりした確定をするのだから、この閣議了解というものはやはり生きているのであって、市町村道路財源の問題についてどういうふうにするかということについてはそのときに確定をする、こういうように承っておるわけでありますが、自治省大蔵省建設省の間においてはどのように了解をされているのか、この際承っておきたいと思うのであります。と申し上げますのは、住民自体にとりましては、自分たちが住んでいる生活環境というものがよくなることを歓迎をするわけであります。あれは国道であるから早くしてもらいたいとか、あるいは県道で、しかもそれは主要県道だから早く整備をしてもらいたいとかいうふうに考えるのではなしに、自分たちが住んでいる地域社会がそれだけよくなることを歓迎をしている。そういうような意味において、国道は全面的に改良され舗装をされてよくなったけれども、われわれの住んでいるところはいつまでたってもほこりにまみれてさっぱりじゃないかというのが偽りのない住民の感覚だと私は思うのですよ。そういう意味において、市町村道路の整備という問題はいままでほとんどなされていない。  そこで、新しいこの道路整備計画をつくるときにあたって、やはり市町村自体にもそういうような財源を付与して、市町村自体で必要に応じた工事ができるようにやらしてもらいたいという要望が出てくるのは当然だと思う。  そこで私は、一体どういうような形で市町村道を整備をしているのか、いろいろ地方を見て回りました。これは場所は申し上げるわけにはまいりませんが、こういうようなのがあります。農林漁業金融公庫の中に農道簡易舗装という土地改良資金として貸し付ける分があります。これは三・五%の年の利率で、貸し付け期間は二十五年以内、据え置き期間が五年以内、これはコンクリート舗装してもいいし、あるいは砂利敷きにしてもいいわけです。現在あるものを舗装してもいいし、新設をした分についても、農道簡易舗装であるならば認めます、金を貸してあげますというものです。これを利用いたしまして、市町村道を農道に格下げをします。格下げをして、農道を整備をしまして簡易舗装をして、そして今度は、でき上がってから市町村道に編入をする。こういうような苦肉の策をやりながら——これは会計監査のほうからいったらおこられるわけですが、しかし、そのようなことでもしなければ住民の期待にこたえられない、また生活環境もよくならないというので、やらざるを得ないというふうに追い込められている実情というもの——私は、やはり小沢さんもそういうようなものは知っておられるだろうと思う。これは会計法上きわめて遺憾な方法だということで、しゃくし定木に押さえつけることも私は問題があろうかと思う。というのは、それだけ必要性があるにもかかわらず放置されていることを現実的に処理する方法としては、こういうような措置もとられているという事実を考えていただきたいと思うのであります。  そういう立場から、ひとつ、この市町村道の整備の問題について、考え方をそれぞれの立場から説明を願いたいのであります。
  24. 吉兼三郎

    ○吉兼説明員 道路整備五カ年計画の確定に関連いたしまして、御指摘市町村道の整備促進をどういう形で進めるのかというお尋ねかと存じますが、率直に申し上げまして、私どもは、道路整備五カ年計画の具体的な計画の確定にあたりまして、市町村道の問題は非常に大きな問題の一つであるというふうに認識をいたしております。むろん国道等の幹線の整備、高速道路、そういったものもございますけれどもお話がありましたように、国民の生活に直結いたします生活道路的な市町村道をどうして整備してやっていったらいいかという問題につきましては、これからの道路政策の一つの大きな問題であるというふうに認識をいたしております。  しかしながら、この市町村道は、御存じかと存じますが、全国の道路網の中の八、九割まで占めております。八十三万キロでございますが、この市町村道をどういう形で進めていくか、ことに、財政的な問題にからめてどういう方法がいいかということについてはいろいろ意見があろうかと思います。  そこで、私どものほうは、与えられました道路整備についての特定財源といいますか、道路整備特別会計におきますところの与えられた財源の中で、これを国道、地方道等々につきましてどういうふうに配分していったらいいか、配分してやったほうが効率的であるかというような観点からこの問題を考えているわけでございまして、そういう観点に立ちました際に、道路財源の中で市町村道に対する考え方として、その財政授与の方法が二つあろうかと思います。  一つは、御指摘のような政治特定財源を譲与いたしまして、自主的に市町村道の整備をしてもらうということ。もう一つは、国のほうから補助事業形式でもって財政援助でやっていくというような方法、この二つがあろうかと思います。  結論を申し上げますと、私ども市町村道につきましては、ここ当分の間は、やはり国の施策に関係のある重要な市町村道につきまして重点的にその整備を進めていく、これがために国が積極的に財政援助をしていく、補助事業方式で当分対処していくべきではなかろうか、それで、目下地方道の重点は、たびたび申し上げておりますように府県道でございまして、府県道の整備がまた非常におくれております。そういうところは全国的普遍的にこの整備を重点的にやっていく、その次の段階におきましては、市町村道を全国的普遍的にやっていくという時期が必ずまいります。そういう際にあわせてこういう財源の付与といったような形でもってこの問題に対処していきたいというふうに理解をいたしておるわけでありまして、五カ年計画の配分の際におきましても、そういう観点から、まず市町村道の実態等を十分調査してこの実態を把握し、そういう関連におきまして検討を加えてまいりたい、かように考えております。
  25. 鎌田要人

    鎌田説明員 自治省としての考え方を簡単に申し上げますと、市町村に対しても国や府県と同じように道路の目的財源を与えるべきである、また与えなければならないという考え方でございます。  と申しますのは、同じ道路でございまして現在市町村道の整備率というものは非常に悪い。改良のほうの率にいたしましても一〇%余りでございますし、あるいはまた、舗装率にいたしましてもわずか三、四%というところでございます。現在、地方団体、市町村に対しまして、特に住民の不満が強いのは、サラリーマンが朝晩通勤に利用する道が、ちょっと雨が降ればすぐ水が出る、あるいは、中小企業の経営者が原料の仕入れや製品を納めに行く、そういういわゆる日常生活道路というものの整備が非常に悪いということ、これが住民の不満の大きなものでございます。それに対しまして、いまお話がございましたような道路の整備は、国からだんだんに府県道、市町村道、こういう順番でございますと、これはいつになっても市町村道の整備は行なわれない、住民の不満というものも解消されない、こういう考え方を持っておるわけでございます。したがいまして、現在、市町村に対しましてもこの道路目的財源というものを付与して、市町村の自主的な判断のもとに道路の整備というものを行なわせてまいりたい、こういうことで、地方制度調査会の答申もいただきながら、特定財源の確保ということで、ことし、額は非常に少ない額でございますけれども、二十五億円の第二種の臨時特例交付金というものを創設いたしまして、これをもとにしながら道路特定財源を充実してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  26. 小沢辰男

    小沢政府委員 大蔵省の意見というお話がございましたのですが、ただいまお聞きになりましたように、建設省のほうは、市町村道の整備につきまして、やはり国の補助事業というようなことで当面進めてまいるほうがいいんじゃないかという意見でございますし、自治庁のほうは、自主財源をもらいまして、そして、これはやはり住民のための環境の整備というものをそれぞれ市町村がはかっていく、こういうことのほうがいいんだという主張でございます。したがって、先生からしますと、おまえ、最後に立った以上は、どっちかに軍配を上げろ、こう言われるかもしれませんが、実はまだ軍配を上げるという——もっとも大蔵省がそういう機能を果たすべきかどうかも議論はありますけれども、どうもまだ時期的に内容が固まらぬ点がたくさんございます。六兆六千億円——ども今年度の予算編成で道路整備五カ年計画を、まだ前の五カ年計画の終わらない最終年度に改定をいたしたわけでございますが、その中で、市町村道を一体どの程度、どういうように整備をするのかというような点もこれから煮詰めていかなければならないわけでございます。そうした点をいろいろ関係各省の間で協議を進めながら、また、それがコンクリートになりましたときに、これをどういうような形で処理をしたほうがいいのかという点を決定したいと思いますので、今後いろいろ、大蔵省大蔵省立場で、また各省それぞれの立場で十分検討が行なわれていくものだと思います。それまで、いま私どうも、どちらがいいんだ、大蔵省はどういう考えなんだということを申し上げるわけにはいかないわけでございます。そこで当面、そういうようなことを言いましても、やはり非常に強い地方団体、自治省要望もございますので、四十二年度の地方財政の編成にあたりまして、大蔵省市町村道路の財源分として交付金をとりあえず二十五億円計上いたしたというのが実情でございます。
  27. 村山喜一

    村山(喜)委員 端的にお伺いします。ことしの秋ごろ計画が確定をするときに、市町村道に対する目的財源を与えるかどうかということについては、そのときにきまりますか。もうことしはそういうようなことは考えていないのですか、来年度からですか。その点を明確にしていただきたい。
  28. 小沢辰男

    小沢政府委員 財政措置の問題は、ことしの、市町村道整備財源としての交付金二十五億円で、財政措置としては変更する意思はございません。しかし、四十三年度の予算編成がもうじき迫るわけでございますが、まだ六兆六千億円の中身で、こまかい点について詰めなければいかぬ点が相当ございますので、それらの詰めをやる段階で、また当然、主管庁でございます建設省の意見、自治省の意見等が政府部内でいろいろと調整をされていくだろうと思いますので、そういう意味では、今日、来年からかくかくにはっきりするんだということは、六兆六千億円のこまかい点がまだ協議がととのわない以上は、いまここで申し上げる段階ではないわけでございます。  いずれにしましても、今年度の交付金二十五億円は予算措置として、これがさらに、たとえば中身が詰まってきたからすぐ四十二年度の補正で直すとか、そういうような考えはございませんし、またその点は各省の間で問題になっているわけでもありません。この点は御了承いただいておきたいと思います。
  29. 村山喜一

    村山(喜)委員 私も二十五億円そのものに対しましても非常に問題があると思っております。もっとやはり地方の自主財源というものを付与してもらわなければ、先ほど申し上げましたような、ああいうようなやり方以外には方法がないのですから、そのような緊急な措置をとらざるを得ない自治体があるということも御認識願っておきたいのであります。  そこで、道路整備五カ年計画の六兆六千億円の問題は、四十二年度だけの問題ではないわけですから、将来に対するところの影響——この秋ごろに計画が確定をするときには、四十三年度以降の分もこの中に織り込んでいかなければならない。そのときにはやはり地方制度調査会が去年の十二月に市町村に対する財源措置を軽油引取税の中から回すべきだというような見解等も出しておるわけでありますので、そういう問題や、建設省の考えもわからないでもありませんけれども、しかし、それはひもつき補助金とかあるいは格上げ方式というようなものでやるよりも、この大体九十八万キロのうち八十三万キロが市町村道だという実態からまいりますると、これ全体を建設省で全部把握するということさえも私は非常にむずかしいと思うのです。そういうような点から考えまして、これはやはり自主財源措置というものを講ずる中で、その地方自治体の実情に応じた措置をとらせるように、それだけのワクというものを持たせることが自治体の意向にも沿いまするし、また、全体的な国土開発の上からいいましても、住民の期待にこたえる意味からも、私は必要だと思っておる。そういうような面において、この問題については、計画を確定されますときにその財源措置の問題等もあわせて——この要求というものが、たった二十五億円程度ではどうにもこうにもしようがないのです。せっかく芽を出したのでありますから、これはいいといたしましても、今後これが拡大をされる形の中で解決されるように要望申し上げておきます。  それからもう一つ、特別事業債の元利償還の取り扱いの問題でありますが、ことしは四十二億円が措置されておるわけであります。それに特別事業債の元利償還分は交付団体の分五十三億円が措置されておりますが、この中で、私は、やはり臨時措置としてこれが措置されたということについては問題があり過ぎるのではないかと思うのです。本会議等において、地方公共団体に迷惑をかけないという説明もなされておるわけでございまするから、この問題については、今後やはり約束をしたものは守ってもらわなければならないというふうに自治団体でも考えておると思いますから、これについては、大臣の答弁でなければぐあいが悪かろうと思いますが、政務次官のほうから、これを単年度限りの臨時措置とした理由、そして今後はこれをどういうふうに改善をしようとしておるのか、お聞かせを願いたいのであります。
  30. 小沢辰男

    小沢政府委員 一昨日も申し上げたわけでございますけれども、私ども四十二年度の地方財政の検討にあたりまして、四十一年度がああした非常に財政の悪い状況でございました。その後、日本経済全般の好転によりましてだいぶ健全化する見通しもついたわけでございますけれども、なおその事後処理というような面もございます。そういうようなことから、特に自治省要望にこたえまして、四十二年度に昨年の特別事業債の元利補給問題について御承知のような措置をとったわけでございます。そこで、あくまでも臨時の、今年度限りの措置でございますので、当然この措置は今年限り、こういうことで一昨日も答弁申し上げた次第でございますが、しかし、そのために四十三年度以降において地方財政に迷惑をかけるようなことになっては、これは申しわけないから、地方財政の実情に応じまして、地方の公共団体に迷惑をかけないように四十三年度以降におきましても所要の措置を検討する考えでございますということを申し上げたわけでございます。  しからば、迷惑をかけないような所要の措置とは何だ、大体迷惑がかかるということは、地方財政の実情が来年度以降それだけどうなるかということで、迷惑がかからないならば所要の措置は必要ないわけでございますし、迷惑がかかるという場合には、この迷惑がかからないように措置をするというのですから、文字どおり、私どもまたいろいろな観点から考えまして必要な措置をとらなければいかぬと思っております。  要点は、地方財政が四十二年度以降どうなるかという基本的な問題、それからこういうような措置をする場合に、交付税の基準財政需要額のうちに、どの程度、どういう形で織り込むのがいいのか、その財源について特別な措置がはたして必要かどうかというような点、基準財政需要額に織り込むといたします場合には、元本のみとするのか、利子をもあわせ考えるのか、あるいは利子のみと考えるのがいいのか、あるいは税源の配分問題との関連はどうかというような、いろいろな点を検討の材料にいたして、今後地方財政に迷惑のかからないということを基準にいたしまして将来は考えていく、こういうことになるわけでございます。
  31. 村山喜一

    村山(喜)委員 おとといからきょうにかけましてあなたの説明を聞いておると、あまりにも幅が広過ぎるのです。迷惑をかけないという問題が、全体的な地方財政の事情を勘案しながらということに結論的にはなる。だから、そういうような迷惑をかけないという意味じゃないと私は思う。約束をしたことは約束として守ってもらわなければ困る、だから、単年度限りの臨時措置としてすべきものではないじゃないかというのが、われわれの基本的な考え方です。その点は三十九年度ごろから地方財政が財政構造の上において非常に弾力性を失ってきて、その中で給与改定分等につきましては両年度にわたりまして地方交付税の基金から前借りをしなければならないという実情です。しかも、それは昭和四十七年まで引き続いて返済をしていかなければならないという、そういうような事情というものも、ことしは地方財政については非常に明るい展望でありますけれども、そういうような過去の累積した赤字が存在しているのだということもお忘れにならないように、そういうファクターも入れながら考えておいていただきたいと思うのです。  ここで、私はやはり自治省にもお尋ねしておきたいのは、第十一次の地方制度調査会が二三%方式の答申をいたしました。これについて私はふしぎに考えておりますのは、いわゆる交付税率の三二%との関係を、これをあまり論議されていないように思うのであります。政府のほうでは、この二三%方式の答申によります、五百四億円を自治省がことし要求した、これについては四十二年度はたな上げをされて、何ら見るべきものがないわけであります。その理由としては、二・五%を四十一年度に交付税率を引き上げて三二%にした、こういうようなことから、この二三%方式はとらなくてもいいという考え方をとっているのじゃないかと推察をしているわけでありますが、一体、第十一次の地方制度調査会の二三%方式と交付税率との関係は、自治省としてはどういうふうに考えて要求をしたものか、また、これを受けて立った大蔵省としては、これをどういうふうに今後において生かそうとしているのか、これだけ承りまして私の質問を終わりたいと思うのですが、その点を明らかにしておきたいと思います。
  32. 鎌田要人

    鎌田説明員 第十一次地方制度調査会の答申の基本といたしましては、御案内のとおり、国債発行下の地方財政の計画的な運営を保証する、こういうところにねらいがあったわけでございまして、二三%方式論というものもそういう構想の中から出てきたものだ、こういうふうに私ども理解をいたしているわけでございます。  地方制度調査会の答申の基本的な考え方といたしましては、国税の減税によって交付税に自動的な減収を生ずるというものについては、交付税率のはね返しというものによって措置すべきだ、全体といたしまして、国から地方団体に交付される交付税、譲与税、あるいはその他の特別交付金的なものがあると思いますが、そういった財源移譲の額の交付の総額が、国税プラス国債の二三%程度の額、こういうことが骨子でございます。  そこで、交付税率の引き上げの問題についてどうだったのだということでございますが、国債の発行自体がいわゆる当分の間の措置、こういうことでございまして、国債発行という財政措置が恒久的な措置であるということにはなっておらないわけでございます。片や、交付税率の引き上げをもって措置するということになりますると、これは恒久措置ということになる、恒久的ならざる事態のもとで恒久的な措置を講ずるということはいかがであろうかということが一つございます。それから第二は、実際上の問題といたしまして、前年度二・五%の交付税率の引き上げというものが非常に大幅な引き上げであるというふうに考えられるわけでございまして、景気の好転によりまして税収あるいは交付税収というものに相当程度の自然増収が見込まれるときにおいて、さらに交付税率の引き上げという形で持ち出すということは、私どもといたしましてはあえていたしませんで、そこで特別交付金、国債発行下における地方財政特別交付金的なものとして五百四億円を要求をいたしたわけでございますが、この二三%方式論自身につきまして、大蔵省のほうで基本的な疑問を持っておられるのでありまして、途中の経過、詳細のやりとりその他の経過は省略をさせていただきますが、結論的には二三%というのが二一・五%の額に落ちついた、こういう経過でございます。  なお、この二三%方式論というものにつきましては、私どもかねがね申しておりますように、毎年毎年各省各庁の予算要求を査定をされると同じような形で地方財政の財源不足額というものをはじいて査定をして財源措置を講じていく、こういう形でございませんで、そういう方式とあわせていまの国と地方との間の大まかな財源配分のめどをつける、こういう意味で、考え方に一つの新しい行き方を示したものだというふうに理解をしておりまして、この方向に沿いまして、なお私どもといたしましては、明年度以降にも大蔵省に対して要求を続けてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  33. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 ただいま自治省鎌田事官からるる御説明がございましたが、大蔵省といたしましては、問題は二つございます。  一つは二三%の問題と、それからもう一つは、三税の減税による交付税率のはね返しと、この二つの問題が大きな問題ではないかと思います。したがいまして、この二つにつきまして、私といたしまして要約して御答弁を申し上げたいと思います。  この二三%論の問題でございますが、私ども地方制度調査会の答申につきましてできるだけ尊重いたしたいという基本的精神についてはもとより変わりはないのでございますが、この二三%の問題につきましては、やはりいろいろ問題があるのじゃないかという点がございます。と申しますのは、二三%と申しますのは、これは国税の収入と国債の収入とを分母といたしまして、それに対する分子は交付税あるいは譲与税、足らないのを特例交付金、こういった形でその二三%をめどにするということに相なっておるわけでございます。したがいまして、その基本となるものは、国税と国債収入をいわば同一に論断するというところに基本的な問題があろうかと思います。そこで、国債の場合は、そういった措置をいたしますと、国は国債の償還をしなければならないのでございますが、地方は償還の必要がないということになりますと、これは国と地方の財政の運営としては非常なアンバランスになるのじゃないかという問題がある、大蔵省といたしましてはそういう感じを持たざるを得ないわけでございます。  それから、やはり国と地方の財源配分あるいは税源配分の問題というのは、単にそういう問題だけをとらえて議論をするのは若干片手落ちの面もあるのじゃないか。たとえて申しますと、専売の納付金という国の収入がございますが、これに対しまして、たばこ消費税という面がございます。そういった国の収入とかあるいは地方のその他の地方税あるいはたばこ消費税、そういった収入の面もあわせてはじいて初めて税財源の配分という問題が全体的に把握されるのではないかという問題がございまして、やはり二三%の問題はいろいろ議論のあるところじゃないかということで、今回本年度のような結果に相なっておるわけでございます。  それから、三税の減税に伴う交付税率のはね返しという問題でございますが、これは御案内のように、地方交付税法におきましても、地方財政事情が著しく悪化して、それがなお将来引き続くという場合に限って交付税率の引き上げということが法律上うたわれているわけでございます。あくまでも、ただ減税があったから、そのはね返しという限界部分だけをとらえて議論をするのはおかしいのであって、地方財源全体の事情がどうなっておるかということが基底をなしているのではないかということを私どもは考えておるわけでございます。  以上のような観点からいたしまして、本年度は二三%あるいは交付税のはね返し分につきましては自治省の御要望に沿いかねたのでありますが、しかしながら、地方財政の一そうの健全化をはかるという趣旨からいたしまして、御案内のように、たばこ消費税の税率につきましては二四%を二八・四%に引き上げると同時に、さらに臨時地方財政交付金といたしまして百二十億円の措置を講じまして、一そう地方財政の健全化に資してい  るわけでございます。
  34. 村山喜一

    村山(喜)委員 全体的に二三%が二一・五%になった。そういうことで最近付加価値税の新設の問題等が出てきているんじゃないですか。それとの関連性はないのですか。これは税制調査会のほうでそういうような方向も出しているので検討を始めたわけですか。その点はいかがですか。
  35. 鎌田要人

    鎌田説明員 付加価値税の検討の問題は、二三%の問題と直接の因果関係はございません。税制の問題として別途検討いたす、こういうことでございます。
  36. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのほかに私はことしは新しい問題が出てきていると思うのは、小沢政務次官も御承知のように、地方公共団体のほうから零細な補助金はやめてくれという要請が出てきています。これに対して、零細な補助金をたくさんかかえている主管官庁が、そういうようなことを地方公共団体が言うのはけしからぬと言って今度は押しつけていますね。  そこで、この問題については、そういうような零細な——五十万円以下が零細ということに基準がなっているようですが、そういうようなひもつきの補助金でより中央官庁の行政での指導性というものを誇示しようという考え方が官僚の中には私は非常に強いと思う。こういうようなものについては、地方の自治体の行政能力というものを信用をしてもらって、もう政策的に見て、明らかにあまりにも零細であるがゆえにその効果というものが期待ができないようなものは、どしどし地方に委譲をしていくという形を大蔵省としてもお認めを願いたいと思うのですが、こういうような声が上がってきているのに対しまして、今後どういうような方向で地方公共団体の自主性というものを認めようとしておられるのか、その基本的な態度だけでけっこうでございますから、政務次官からお答えを願いたいのでございます。
  37. 小沢辰男

    小沢政府委員 もう方向は先生おっしゃるとおりだと思っております。今年度もその趣旨で進めてまいりましたのですが、何しろ、ただそれぞれの官庁のなわ張り根性だけではない、実際にそれぞれの住民なりの強い要請があるもので、また例外措置として、知事会でもそれは例外でけっこうなんですというようなものにつきまして、若干当初の私どもの査定案が後退したようなこともございますけれども、基本方針は、あくまでも先生おっしゃるように、零細補助金の整備をし、地方団体の自主的な方針が貫かれるようにしていくということの方針は、私ども決して反対だとか賛成だとかいうような立場ではございません。
  38. 村山喜一

    村山(喜)委員 終わりますけれども、やはり最近の公社、公団等の設立等を見る中におきましても、行政管理庁が行政改革の推進の中で打ち出した方向のものとは全く違うような、そして、地方公共団体責任を持たせるべきものまでまた新たにそういうような公社、公団までつくって、それが中央官庁の肩がわりをしながら地方行政の分野まで進出をしていくようなものが最近は非常に数多く出てきていると思うのですよ。そういうようなものは、やはり国全体の政策の中で正していかなければならないのですが、それを財政的に承認をするというのはやはり大蔵省で、行政監理委員会のそういうような答申等も十分考えながらチェックしてもらわなければならない点だと思いますので、これは要望として申し上げておきたいと思うのです。  以上で終わります。
  39. 内田常雄

  40. 竹本孫一

    竹本委員 最初に交付税のことについてお伺いいたします。  交付税は人口をもって地域行政費等算定の最大の因子としておると思いますけれども、人口数の把握という問題についてどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  41. 鎌田要人

    鎌田説明員 人口は国勢調査人口を使っておるわけでございます。したがいまして、現在の交付税でございますと、昭和四十年度実施の国勢調査の人口を使っております。ただ、その国勢調査の人口を用います結果、実情に合わないものが出てまいります。一例が、いわゆる人口急増団体でございますとかあるいは人口急減団体でございます。人口急増団体の場合でございますと、毎年の住民登録人口の前年に対する増加率というものを基礎に用いまして補正を行なっておる、こういうわけでございます。
  42. 竹本孫一

    竹本委員 世帯単位を考えるということはどうですか。
  43. 鎌田要人

    鎌田説明員 世帯の場合も同様国勢調査の数値を用いております。
  44. 竹本孫一

    竹本委員 特に人口の減少する場合が問題だと思いますけれども、いまお話しになったような補正のしかただけで十分にいっておるというお考えでございますか。
  45. 鎌田要人

    鎌田説明員 人口減少団体の場合でございますと、これは一つの議論になるわけでございますが、交付税の算定の基礎の数値に人口を用いておる、結局、いわば人口に比例的にと申しますか、人口の多寡に応じて行政の規模というものはきまっていく、こういう前提に立つわけでございますが、そうしますと、人口が減ったところはその減ったなりに、それだけ行政の規模というものも縮小されてしかるべきものであるから、したがって、ふえていくほうだけ考えていけばいいじゃないか、こういう御議論もあるわけでございます。ただ、これは現実に合わない。また、実際問題として、人口が減ったから急に施設を減らす、職員を減らすということもできがたいことは御案内のとおりでございますので、現在行なっておりますのは、昭和三十五年の国勢調査の人口、昭和四十年の国勢調査の人口、両方あるわけでございますが、四十年の人口を用いて計算しますと著しく激減をするところにつきましては、三十五年度の国勢調査人口というものを用いて計算したものの一定割合を保証する、こういう形をとっておるわけでございまして、もちろん、交付税総額が十分かどうかという議論からあるわけでございますので、これで人口減少団体というものが十二分にめんどうを見ていかれておる、こういうふうには考えておりませんけれども、激減の緩和には役立っておる、こういうふうに理解をいたしております。
  46. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、交付税については先ほど来議論がだいぶありましたけれども、例の三二%の問題でございますが、これからさらに引き上げるという将来の見通しでございますけれども、引き上げられるべきものであるか、また、引き上げる余地があるものであるか、そういう点についてお伺いしたい。
  47. 鎌田要人

    鎌田説明員 ちょうど交付税昭和二十九年でございますか、平衡交付金制度から交付税に移り変わりましたときの交付税率と申しますか、国税三税に対する率は一九%、約二〇%でございました。で、今日まで十三年ぐらいの間に三二%まで上昇してまいっておるわけでございます。これが将来引き上げの余地があるかないかという点につきましては、これは一つの考え方といたしまして、広い意味での国と地方との財源配分の問題でございます。それで、交付税制度自身が、毎々御説明申し上げておりますように、どのような地方団体にも必要最小限度の財源を保証するのだ、こういう機能を持っております以上は、そういう最低限度の財源保証というものを果たすために必要な限度の額というものは当無与えられるべきである、そういう意味におきましては、率というものを将来とも上げてまいるということは、私ども当然のことだと考えておるわけでございます。特に国税におきまして大幅な減税というものが行なわれる、そういうものに対応いたしまして、これを交付税率にはね返すというようなことは、将来として当然考えられてしかるべき問題ではないだろうかと考えるわけでございます。  ただ、その場合に一定の限度というものがあるかどうかという点につきましては、国の財政、地方の財政あるいは国の仕事地方仕事、こういったものを総合判断しながらおのずから定まっていくのではないだろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  48. 竹本孫一

    竹本委員 事務の再配分、それに伴うまた財源の再配分をしなければならない、これもよくわかった話でありますが、実際はいつ行なわれるかということについてほとんどはっきりした見通しはありません。それから、いまお話の必要最小限度のものは保証しなければならぬ、これは初めからわかりきった話であります。  そこで、いま、将来の見通しの問題として三二%をもっと上げるということについては、財政上の制約からくる限度があるのではないかというお話がありました。それも確かに一つの大きなワクでありますけれども、私は、いわゆる地方自治の本旨にかんがみてやはり一定のワクがあるのではないかと思いますが、その点について自治省はどのようにお考えでありますか。
  49. 鎌田要人

    鎌田説明員 地方自治の本旨ということのお尋ねがあったわけでございますが、地方自治の本旨というものと地方財政あるいは地方財源というものを考えてまいりますと、一つの極といいますかに考えられる考え方といたしましては、すべてが自まかないができる。いわゆる自主財源というもの、もっと申しますと、税で自まかないができる、こういうのが、ある意味で一つの理想であろうと思うわけでございます。あるいは、この地方自治の本旨ということをもちまして、いわゆる自治運営、行政運営ということの自治性というものが保証せられるならば、この自主財源というものが高いことをもってイコール地方自治が非常に高まっておるのだ、こういうふうに考える必要はないのだという、最近におきまして一、二の学者の御意見もあるわけでございますが、そういう考え方の中間におきまして、いまの地方自治の本旨というものとこの交付税というものを考えてまいりますれば、やはり結論的には私どもは自主財源というもののウエートを高めていく——交付税というものにつきましては、表現があるいは若干誤り伝えられるかもしれませんが、いわゆる補完的な補正的な機能を持つものだ、こういうふうに考えるべきではなかろうかと思っておる次第でございます。
  50. 竹本孫一

    竹本委員 ただいまのお説、そのとおりと思いますけれども、しからば、地方自治の本旨にかんがみ、地方の自主財源を強化するということについて自治省が当面考えておるような方策はどんなものですか。
  51. 鎌田要人

    鎌田説明員 たいへんむずかしい問題でございまして、実はこの点につきまして、先般来この委員会でも議論があったわけでございますが、私どもが現在考えておりまする方向といたしましては、一つはやはり地方税の中に所得課税というものをもっと導入してまいったらどうであろうか、そういう意味合いにおきまして、いわゆる住民税の問題がからんでまいりますけれども、所得税の地方移譲あるいは消費課税の問題といたしましては、当面の問題といたしまして道路財源の地方移譲、こういったものをさしあたっての実現目標といいますか、という形で考えておる次第でございます。
  52. 竹本孫一

    竹本委員 ことばだけで言うのは簡単でありますけれども、いま地方自治の危機に臨んでおる段階において、地方の自主財源を強化するということについてはもう少し真剣に考えなければならないと思います。特に二つありまして、まあ方法がどういう方法をとるかという問題と、それから地方において一体どれくらい思い切って自主財源を確保する方法を考えればいいのか、それについて一つのめどをお持ちでございますか。たとえば金額について、ただ所得税の課税の問題だとか、いまお話道路財源とかいうプリンシプル、あるいは一つの政策を言ってみても、金額的に見てどのくらいのものを地方に一ぺんに与えれば、地方の自治が活を入れてもらってひとつ生々発展ができるという態勢になるか、その辺についての量的なめどというものもなければ、私は本筋にならないと思いますが、どうですか。
  53. 鎌田要人

    鎌田説明員 おっしゃるとおり、量的な問題とそれから質的な問題と、両方あるわけでございます。量的な問題ということになります場合に、歳入の中で、たとえば地方税の占める割合というものに一応の目安を置きまして、先般、昭和四十年の税制調査会ではそういう試みが一つあったわけでございますが、その歳入の中に地方税の占める割り合いを五〇%までに持っていくということを目途にいたしまして、当時のベースで二千八百億円の税源移譲ということが議論になったことがございます。これも一つの行き方かと思います。いろいろこれに対しましては、事務というものの国と地方との配分というものを考えないで、ただ歳入面だけで、歳入の中で税の占める割合というものを一定の割合に持っていく、こういうことだけで量の問題を議論するのは行き過ぎではないだろうか、こういう議論もあったわけでございますが、事務配分の問題まで入ってまいりますと、正直申しまして、八幡のやぶ知らずになってしまう、こういう面も一つございまして、実現可能な案としてはそういうめどをつけるということも可能ではないだろうかというふうに考える次第でございます。
  54. 竹本孫一

    竹本委員 事務の再配分なんということはやるべきことだと思いますけれども、具体的に、いつ、どの程度にできるかということについて、いまお話のように、これはそんなものに巻き込まれていると結論が出てまいりません。端的に申しまして、地方の自治については、やはり少なくともこれで三千億前後の財源を確保するというような思い切った手を打たなければ、継ぎはぎ継ぎはぎのパッチワークを幾らやってみても、問題はほとんど解決されない、こう思うのです。  念のためもう一度伺いますが、その程度の金くらいは、ここで思い切って確保するというか、補給するというか、移譲するというか、要するに財源措置を考えるのでなければ、地方自治の本旨に従ったような地方自治のあり方を打ち出していくことは不可能である。あとはただごまかしということは、ことばが悪いかもしれませんが、単なる思いつきを積み重ねる程度にしかすぎないのじゃないか。やはりどうしても三千億前後の財源を思い切って一時にまとめて地方に与えるのでなければだめだと思いますけれども、これについては、自治省大蔵省、両方のお考えを承りたいと思います。
  55. 鎌田要人

    鎌田説明員 そういうことにいたしました場合に、一つの問題といたしまして私どもが考えますのは、結局三千の団体の平均値でございますから、中には行き過ぎと言ってはちょっと語弊がございますが、偏在の問題が出てまいるわけでございます。片方におきまして、最近の社会、経済の変動というものに伴いまして、地方団体の姿というものにもいろんな姿が生じてまいっております。いわゆる過疎、過密、こう言われておるわけでございますが、そういう団体ごとの財政の需要に応じた財源というものがそこでうまく配分ができるかどうかという問題がございます。それから、やはり過疎的な現象を示しておりますところは税源も多く与えられないというのが大体通常の現象でございますので、やはり交付税あるいは地方債、あるいは広い意味の国庫支出金ということになるのでありましょうか、そういったほかの財政手段との組み合わせの問題というものも出てまいろうかと思うわけでございまして、その辺のところを、何というか、一応組み合わせたいろんな形というものを考えながら、現在地方制度調査会も当面の措置の答申を終わりまして、こういう基本的な問題に取り組む段階に相なっておりますので、地方制度調査会の御意見、御答申もいただいて実現に移してまいりたい、こういうふうに自治省としては考えておる次第でございます。
  56. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 ただいま自治省のほうから御答弁ございましたように、いろいろむずかしい問題があります。  特に私どもが感じますのは、問題がいろいろぶつかるのは、国庫補助金制度との関係が一番大きくぶつかると思います。国庫補助金制度、つまり国庫支出金でございますが、それをやめて、すべて地方の自主財源にしたらどうかという問題までいろいろ議論が発展するかと思いますが、そういった税源の偏在とか、これに伴う交付税制度とか、あるいは国庫補助金制度をどう見るかといういろいろ基本的な問題にぶつかってくるわけでございまして、いずれにいたしましても基本の問題でございます。今後とも十分自治省とも御相談いたしまして、慎重に検討してまいりたいと思っています。
  57. 竹本孫一

    竹本委員 両省の御答弁聞いておりますと、こういう問題に本格的に取り組むべき段階であるというところはよくわかりましたけれども、また基本的に重要な問題であるというところはわかりましたけれども、とにかく、当面地方自治の充実強化という立場で財政的な面からどういう措置をしようとしておられるのか、その辺がまだ一向わかりませんが、私の聞いているのはそのほうなんです。たとえば、いまの偏在の問題等にいたしましても、与えるというたてまえに立ってこれを与えていこうと思うのだけれども、この場合にはこういう偏在の問題が出るとか、あるいは他の税の一般のものとの取り組みの関係が出てくるとかいう一つの方向があって、その方向に伴ういろいろのフリクションならフリクションを考える、こういうことでなければならないと思う。こうもやりたいがこういう問題もある、ああもやりたいがあれもありそうだという程度の、はっきりしない考え方にいままださまよっておられるのか、あるいは、この隘路を打開していくためにこういうふうに取り組んでいきたいのだ、こういう問題をいま取り上げて研究しておるのだ、そういう点はないのですか。
  58. 鎌田要人

    鎌田説明員 たとえば、先ほど申しましたような非常に簡単な、自主財源の点で申し上げますと、地方の歳入の中に占める税の割合を五〇%まで持っていくのだ、そのために税源移譲が先ほどお話に出ました三千億なら三千億だ、そういういわば基本的な方針というものをセットいたしまして、それに基づいて、たとえば行き過ぎるところ——行き過ぎると言っては語弊がございますが、いわゆる逆交付税の問題をどうするか、こういったような基本的な問題がきまりまして、それについての議論をする、こういう段階にはまだとうてい至っておらないわけでございまして、どの道を歩くかということについて現在検討いたしておる。その方向というものを、ある程度政府部内におきましても調整がつきます段階では、やはり地方制度調査会にこの問題を取り上げていただきます段階におきましては、そういう大まかの方向での調整というものはつけなければいかぬだろうと思っておる次第でございます。
  59. 竹本孫一

    竹本委員 あまりにも積極的、具体的、建設的なプランがないような感じがいたしますけれども、それでは、地方自治の充実あるいは地方の自主財源の充実強化といったような問題はここ当分解決の見通しはない、努力しようという気持ちはあるけれども、具体的な見通しとして近い将来にそれが解決されるという見通しはほとんどないということになるような気がしますけれども、どうでしょうか。
  60. 鎌田要人

    鎌田説明員 申し上げ方が足りなかったのか、あるいは私、非常に慎重な表現をとりましたためにそういう誤解を与えておるのかもしれませんが、もうすでに舞台はでき上がっておるわけであります。舞台と申します意味は、地方制度調査会でございます。そこでこの問題を取り上げて検討しようということになっておるわけでございます。したがいまして、地方財源の充実というものがまだほんとうにあやふやな段階だということではございません。ただ、いまどういう形でその舞台に乗っけてまいるかということについてせっかく検討中である、こういう趣旨で申し上げた次第でございます。
  61. 竹本孫一

    竹本委員 調査会に名をかりて責任のがれをやるというのはよく議論になる問題ですから、私はこれ以上触れませんけれども、やはり調査会にはかるにしても、とにかくいまから三年なら三年のうちにこういう問題の方向を具体的に示して、それで取り組んでいこうと思うがどうだ、このくらいの積極性がないと、あれだけ地方自治の危機が叫ばれておるいまの段階においてほとんど役に立たないのではないかと思いますので、もう少し前向きにかつ具体的にこの問題に取り組んでいただきたいという要望を申し上げておきます。  なお、私どもの民社党では、たばこの専売益金をまず地方に移したらどうか、かれこれ二千億円くらいは出るのじゃないかという考えを持っておりますが、この考え方について、大蔵、自治両省からの御意見をひとつお伺いいたします。
  62. 鎌田要人

    鎌田説明員 たばこ専売益金につきましては、現在たばこ消費税の問題がございます。昨年の二百四十億円のあと始末の問題といたしまして、たばこ消費税率を今度四・四%引き上げたわけでございます。したがいまして、後ほど大蔵省のほうから計数的な御説明があると思いますけれども、現在たばこ専売益金に関しまする国と地方の財源配分は地方団体のほうが若干多くなっております。これでは日本専売公社じゃなくて地方専売公社じゃないか、こういう実は御意見もございまして、このたばこ専売益金をどの程度の割り振りにしたらいいかということについても一つの疑問があるわけでございます。たばこ専売制度というものとの関連から説き起こした関連の議論がおそらく出てくるだろうと思いますけれども、私どもといたしましては、現在の専売益金の収入の中で地方団体に配分する分が半分を若干上回っておるという状態は現在の制度の中ではある程度満ぱいと申しますかの状態ではないだろうかというふうに考えております。
  63. 小沢辰男

    小沢政府委員 先生ほぼ半分ぐらいは地方へやったらいいじゃないかと言われるのですが、いまのところは比率にしまして五一・四%も地方にやっているような状況でございます。
  64. 竹本孫一

    竹本委員 全部をやれというのです。
  65. 小沢辰男

    小沢政府委員 これは国家の専売でございますので、全部を地方にやれということは、それは私ども全然考えたことはございません。なお、先生の御高見はよく伺っておきますけれども、どうもちょっと考えたこともございませんので、ここで私はお答え責任を持ってできません。
  66. 竹本孫一

    竹本委員 この問題につきましては、また機会をあらためて論議を深めてまいりたいと思います。  私は予定がありますので、あと最後に一つだけ伺いたいと思いますが、公債発行下における地方財政の問題は、先ほど来の交付税やその他の問題とまた角度を変えて考えなければならぬ問題ですが、政府としてはどういうお考えを持っておられるのであるか。いままでのように、自然増収を国が中心でやっている場合には、御承知のように地方もおこぼれがありますから、七割程度あるというのだから、それでまかなえた。これを今度は公債で事業をやった場合には、地方は新しい財源はそれによって得られないで、むしろマイナスの負担だけふえるというようなことになる。先ほど来御議論を聞いておりますと、公債発行は当面の一時的な問題であるというような認識の上に立ち、特別事業債についても、あるいは今度の特別措置についても、いつも、去年もことしも四十一年度限りである、四十二年度限りの特別措置であると、こういうような継ぎはぎ継ぎはぎの措置を講じておられますけれども、われわれの考えでは当分公債発行がやみそうにもない。そうしてみると、公債発行下における地方財政のあり方は一体どうすればいいかということについて、毎年毎年思いつきの積み重ねでなくて、この辺でこれこそまた本格的な取り組み方をしなければならぬと思うが、どういうお考えでおられるか、その点について伺いたいと思います。
  67. 鎌田要人

    鎌田説明員 先ほど村山委員の御質問お答え申し上げたところと関連するわけでございますが、この第十一次地方制度調査会の昨年十二月八日の答申が、まさにただいま仰せになりましたような国債発行下における地方財政の安定的な計画的な運営というものを保証するための方策ということに相なっておったわけでございます。そういう考え方から、一つの試みといたしまして二三%方式という意見もあったわけでございます。  私といたしましては、やはり先ほど来から御議論がございますように、国が国債を発行する、一方において所得税、法人税の減税を行なう、他方におきまして、国債の財源というものを引き当てにしまして建設事業というものを拡大してまいる、あるいは回り回って社会保障関係の経費というものを拡大してまいる。そうしますと、地方の歳入においては交付税が減になる、歳出の面におきましては、建設事業費でございますとか、社会福祉系統の地方負担というものが増になる。こういう形で、俗に申しますと、ダブルパンチを受ける、こういうかっこうになるものでございますから、何らかやはりそういう安定的な財源保証と申しますか、財政の計画的な運営というものができるような財源措置というものを確立をいたしたいという気持ちを持っております。ただ、そこにございます二三%方式というものが意見の一致を見ませんために、ことしにおきましても臨時地方財政交付金的な形のものに相なっておるわけでございますが、この点につきましてはなお努力を重ねてまいりたいと思っておる次第でございます。
  68. 竹本孫一

    竹本委員 これで終わりますが、私がいま特に問題にしておりますのは、その二三%方式がいいとか悪いとかいうことではなくて、問題は、公債は四十年度から出ている。去年も出た、ことしも出た、また来年も出る。こういう情勢の中で、公債発行下における地方財政の取り組み方が具体的に立ちおくれているのではないか。調査会でこういう議論がありましたということでは何ら具体的な解決にはなりません。それは大学教授がどこかで講義をしているようなものだ。それより一歩進んでいるかもしれませんけれども、具体的に実際の役に立たない。現実には公債が出ている。この間のギャップをどうするのか。いずれにしても、政府としては公債をこれだけ一方において出しておきながら、自治省として、あるいは政府として、公債発行下における地方財政のあり方について具体的な方針というものがきまっていない。だからこそ、毎年、今年度限り今年度限りの臨時措置を講じてやっている。そこの矛盾を指摘しているわけですから、その点については、もう少し真剣な、具体的な取り組みを行なうべきであると強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  69. 内田常雄

    内田委員長 堀昌雄君。
  70. 堀昌雄

    堀委員 この間、資料の要求をいたしまして、そのものの資料が出てまいったわけではございませんでしたが、大体、自治省のほうの資料を拝見してみますと、やはり私が予想をいたしておりましたように、最近住宅公団その他の大きな団地がある地域にできますと、その地域地方自治体、市は、その住民税によってはペイできない財政上の負担が起こるということが大体明らかになったようでありますが、自治省側として、現在皆さんが考えておる段階では、非常に正確な調査ではないでありましょうが、一世帯ふえることによって、人口の大きさ等はそちらで設定をしていただいていいけれども、一体、当分の間は——これは正確な数字は答弁しにくいでありましょうが、目安としてはどのくらい市の負担になるのか、ちょっとお答えをいただきたい。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  71. 鎌田要人

    鎌田説明員 一世帯ふえることによってどれくらい地方団体の持ち出しがふえるかということにつきましては、現実にこの団体でこうふえたという資料は実はなかなかつくりにくいわけでございまして、いわば一種のモデルをつくってみたわけでございます。  私ども全国の大体一千戸以上の団地を設置いたしております市町村について、おおまかな調査をいたしました結果を抜き取っての標準と申しますか、世帯三千戸のところで、施設といたしましては、学校、幼稚園、消防分署、それから市役所の支所、診療所、それからごみ焼却場、公園、遊園地、都市計画道路、その他の市町村道、上下水道、こういうものを全部拾ってみまして、一応の設定をしてみまして、一般財源が二億六千万円要る、こういう形でありますから、大体、一世帯ふよることによって八万六千円ぐらいふえるというのが、一応理論計算として出るということでございます。
  72. 堀昌雄

    堀委員 実は、みなさんのほうの地方財政統計年報を少しこまかく調べてみたのでありますけれども、確かに、衛星都市と申しますか、大都会に近接をしておるところの人口増加はたいへん目ざましいものがありまして、私どもの周辺で申しますと、昭和三十五年と四十年の国勢調査の人口で見ましても、尼崎市が約十万、豊中市も約十万、その他西宮市が約八万ぐらいというようなことで、いずれもたいへん人口が増加しております。東京周辺のほうを見ましても、やはりこの間に十万人ぐらいの増加をしておるものは、ほとんど大都市の周辺の地帯に見られるわけで、その他地方都市においては、この間の増加は、これの二分の一以下あるいは三分の一以下というのが現在の実情であります。  そこで、みなさんのほうのいろいろな計算を見ておりますと、非常に長期的には、いつかはそれがペイをするときがくるようですが、それが次々と——これはみなさんのほうは一つの団地として考えておられるようでありますけれども、団地であろうと、普遍的に人口がふえようと、どちらにしたって、その地域に五年間に十万の人口増加が起こるということは、これはやはり地方財政が、そういうことを予想をして、当初から税制なり、交付金なりいろいろなものの仕組みができておるとは私は思っていないのですが、その点についてどうでしょうか。
  73. 鎌田要人

    鎌田説明員 こういう急激な人口増加というものに対しまして、いまの地方交付税制度というものが、適応力と申しますか、順応力があるのかどうかということに相なるかと思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、たとえば、人口というものを交付税の配分基礎に使っております。この人口というものは、最近における国勢調査の人口を使う、こういうことに相なっておるわけでございますから、五年ごとでないと、人口の、基礎になる数値というものの置きかえができない、こういう形になっておるわけでございます。そういった現象に対応いたしまして、人口急増補正というものを設ける、人口急増補正というものを設けることによりまして、毎年度の住民登録の人口の増加率というものに応じまして、増加割合の高いところに対しましては数値の置きかえをやり、あるいはまた、施設でございますと、建物とか港湾とかいうものにつきましては、いわゆるできたものといたしまして、減価償却方式をとって、単位費用に計算いたしております。ところが、こういうところにつきましては、新しくどんどんつくっていくわけでございますので、建設費というものを見てやらないと現実に合わないわけでございます。そういう意味での投資割り増しという制度を導入いたしまして対応いたしておる、こういう姿でございます。
  74. 堀昌雄

    堀委員 いまの、対応しておるということですけれども現実には、私ども東京周辺の事情よくわかりませんから、われわれの住んでおる阪神間、大阪を中心とした衛生都市の状態というのは、大体どこでも何によってこれをカバーをしておるかというと、どうもギャンブル収入がかなり大きな比重でこれらの人口増加をカバーしておるということに、結果としてはなっておる。やはり地方自治体というようなものが、競輪だとかあるいは競艇だとか、そういうばくちのテラ銭を入れなければその地域における行政水準が維持できないなどというようなことになるのは、これは本来の地方行政のあり方から見て望ましい姿だとは思われないわけです。ですから、その点を是正したいと考えても、しかし、片方では人口急増のために、どうしてもその間のギャップはカバーができないというふうに現在これらの大都市周辺地帯はなっておるわけです。現実になっておる。  そこで、ちょっと大蔵省側にひとつお伺いをいたしたいのですけれども地方自治体における水準が、その他の非常に低いところでなくて、ある程度高く維持しておるところが人口増加をすると、いまの自治省の計算をしたいろいろな形の上では、地方交付金のようなもので処置ができますということになっておるだろうけれども、不交付団体の場合になるとこれは全然そういうものはきかないことにもなってくる。しかし、それなりの高い行政水準でいろいろなものの処置が行なわれておるのを、人口がふえたからそれで減らすというわけにはいかぬというたてまえになっておるときには、これは何か長期的に見て、——これらの都市も無限に人口がふえることはない。ある一定のところまでくれば、これは頭打ちになる。ちょうどわれわれの阪神間で見ますと、芦屋市というのが、もうともかく家は一ぱい建ってしまって、人口は過去十年くらいほとんど変わらぬ。建てようにも、人口が増加しようにも増加のしようがないというところに、やがては大都市の周辺もなるでしょう。しかし、現在は依然として、農地がそれらの人口増加を可能にする形で相当に残されておるということになっておると、その間はやはり何か国としても考えてみる余地があるのではないか、こう考えるわけです。この問題はあとで触れるのですが、要するに現在の地方税の仕組みにも一つ関係があるように私は思うのですが、しかし、地方税の範囲だけでは、いずれも窮屈な範囲のことですから、国の側として考える余地があるかないか、その点についてちょっと大蔵省側の考えを伺いたい。   〔吉田(重)委員長代理退席、藤井委員長代理   着席〕
  75. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 たいへんむずかしい重要な問題の御提案でございますが、先ほど鎌田事官が触れましたが、人口急増補正、確かにその金が参りますのは交付団体だけに限るかと思います。もちろん不交付団体になる際のもととしては人口急増補正を入れまして計算はするにいたしましても、御指摘のとおり不交付団体にいかないということになろうかと思います。  そこで、それでは、それ以外の国の歳出面で何らかの措置を講じておるかという例でございますが、あるいは満足な答弁ができないかとも思いますが、たとえて申しますと、大規模住宅団地、ベッドタウンができる際にいろいろ関連公共施設を市町村はしいられるわけでありますが、それにつきましては、住宅公団あるいは住宅金融公庫の立てかえ施工をしておるわけであります。これにつきましても、過去四十一年度までは、たしか義務教育施設のみに限って立てかえ施工をしておったかと思いますが、それ以後はいろいろの利便施設、幼稚園も入れますし、あるいは保育所も入れる、あるいは道路、都市公園あるいは下水道、そういったものまで対象を拡張いたしまして住宅公団の立てかえ施工をしておるわけであります。そして、地元負担の増大をなるべく避けるという意味からいたしまして、従来割賦償還と申しますか、そういったものについては三年を原則としておったかと思いますが、これにつきましても、補助金とかあるいは地方債がいかない分野の、いわゆるほんとうの純然たる単独事業もあるわけであります。そういったものにつきましては、これは、あるいは所管でございませんから、私の答弁が間違っておるかとも思いますが、たしか十年まで万やむを得ないものについては割賦償還期限を延ばすという措置を本年度以降講ずるというふうに私は承知しておるわけであります。そういった場合に、そういったベッドタウン、大規模住宅団地につきましても、国の歳出面の施策といたしましては、そういった十分な配慮を講じておるものと私ども考えておるわけであります。  なお、地方税の問題につきまして、いろいろ国と地方との税源の配分はどうかという基本問題もあろうかと思います。また府県税と市町村民税の配分の問題というのも、また問題があるのじゃないかと思います。あるいは市町村ごとの広域行政、なるべく合併という、そういう広域行政のほうでこういった問題を解決するなど、いろいろな施策もあろうかと思いますが、何せ大きな問題でございます。重要な問題でございますから、なおことばが足らなかった点については、自治省のほうから補足説明してもらえれば幸いだと思います。
  76. 堀昌雄

    堀委員 確かに、いまいろいろな形で手は打たれておるのだということだと思います。何もしてないということではないでしょう。しかし、現実にはこれらの地域における市がギャンブル収入に依存しておる高が、たとえば尼崎市では最近は年間に十四億円というような巨額な資金をモーターボートのテラ銭によっておるということになってきておるわけです。私ども四年前にこのモーターボートの問題を取り上げた。これは競輪なんかと違いまして非常に大きな騒音をその周辺にもたらす。たいへん周辺地帯の住民にとっては好ましくないことであるし、さらに、そのために、これはどこの競輪場でもあるいは競馬場でもそうでありますけれども、要するに、必ずしも正常ならざる集団といいますか、これは不特定多数でありますが、そういう人たちがその地域に、そういうギャンブルが行なわれる日には集中をしてやってきて、その人間の集中によって付近の住民がまたいろいろな予測せざる被害を受けるという問題が、実はこのギャンブルの関係の問題にはつきまとっておるわけです。  われわれとしては、なるたけこういうものをやめていきたい。西宮市というのは、文教都市ということで、確かに環境もいいし、そして教育の問題について熱心に考えておる地域でありますけれども、競輪場が二つもある。全国の地方自治体の中で、一つの市の中で競輪場が二つもあるというのは、おそらく私は西宮くらいじゃないかと思うのですが、自治省、一つの市で競輪場が二つあるというところはほかにありますか。
  77. 鎌田要人

    鎌田説明員 寡聞にして存じませんが、おそらく珍しいほうであろうと思います。
  78. 堀昌雄

    堀委員 ですから、おそらく私ないだろうと思うのです。そんなものがなぜ西宮市だけ二つも認められたのか。これは所管が通産省だったんじゃないかと思うのですが、そういうことを認めておること自体、非常に私はおかしいと思うのです。しかし、これを撤去しようと思っても、これがまた単にその市だけの問題ではなくて、これに財源を依存しておるところの周辺の市全部が一緒になって反対をする、こういう関係があるのです。かつて兵庫県では、私どもの仲間であった阪本知事のときに県営競輪だけは全部やめましたけれども、しかし、残念ながら、この市がやっておりますところの競輪は依然として継続せざるを得ない、こういうことにいま実はなっておるわけであります。(発言する者あり)  いまちょっとそこから雑音が入りましたからはっきりしておきますが、尼崎市になぜ競艇ができたかというと、あそこは実は大庄地帯といって、たいへん大きな低湿地帯があった。そこで、この低湿地帯を何とかしなければこの地域の衛生条件改善ができないというので、当初の目的は、あそこにモーターボートをやって、その財源でもペイしたらこれをやめるというのが、実は当時の阪本市長の考えだった。阪本市長がずっとやっておればやめられただろうと思うけれども、残念ながら阪本市長は知事になってしまった。しかし、その後は、まだいまから五年くらい前は市の収入は三億円程度であったものが、どういうことか、最近だんだんモーターボートの収入が増加をしてきて、今日では年間十四億円、こうなってきておるものですから、ここまでくると、取り除きたいけれども、この十四億円が占めておる市の財政の中における比重はそう簡単なことではない、こうなってきておる。ですから、これはもう私どものところだけでなく、周辺地帯すべてがこれによってバランスをとっておるということになっておるので、私どもは、こういうものは漸減していくことがやはり国の政策としても必要ではないか。これは全国の問題だと思いますけれども、そのためには、根本的には、さっきから議論がされておりますが、行政の事務の配分と税源の配分というものが根本的に行なわれる中で処理をしない限り、現状でのいろいろな継ぎはぎ方式では、いま地方自治体とギャンブル問題というものはなかなか解決できないところまで癒着をしてしまっておると考えるわけです。しかし、私は、政府としても、いつまでも地方自治体がこういうギャンブルの収入にたよっていくことが望ましい姿だとは考えていないと思うのです。やはり方向として、どうしてこれを漸減して、こういうものの負担によらずして地方自治体が一応運営できるかということについては、財政当局も自治省も一応真剣に考えてみなければならぬ課題ではないのか。単に府県税と市民税との相互移管とか、そういうことも多少は調整能力を持つだろうと思いますが、その程度で解決をする問題だとは思われないわけです。  だから、この人口急増の問題と、ギャンブルにささえられておるところの地方財政というものをどうするかということについて、皆さん方のほうに考えがあるのかどうか。なければ、何もありませんと答えていただいてもよろしいし、あるのなら、大蔵省自治省ともにその方向をひとつ答えてもらいたい。
  79. 鎌田要人

    鎌田説明員 人口急増団体と申しましてもいろいろあるわけでございますが、大都市あるいは大都市周辺の市町村、こういうところで人口の急増しておるところ、それから、既成市街地であって再開発を必要とするところ、それから、急に人口がふえてきてこれから合理的な町づくりをしていかなければならないところ、他方におきまして今度は、どんどん人口が流出いたしまして自治体としての社会的な基盤というものも失われつつある農山漁村というものもあるわけでございます。私ども自治省立場におきましては、これらの、一口に申しまして過密・過疎それぞれの団体にそれぞれの財政運営というものが保証できるような財源というものを確保することが私どもの任務でございます。  任務はそういうことでわかり切っておるわけでございますけれども、どういう形でこの財源を確保していくかということになりますと、限られた結局国と地方の財源の中で、新しく税源を起こすといえば別でございますけれども、限られた国と地方の財源の中でこれを考えてまいるということになりますと、大都市の再開発なりあるいは大都市周辺という場合におきましては、もちろん先ほどから申しておりますような所得課税なりあるいは道路財源といったような、当面実現の可能性のある税源の移譲という問題をひとつ考えてまいりたい。  第二といたしましては、地方債の活用と申しますか、地方債というものを考えてまいりたい。今度の地方計画におきまして、一般単独事業債の中に過密対策その他の起債といたしまして新しく六十億円ほどセットいたしましたり、あるいは公共用地の先行取得債をセットいたしましたのはそういう考え方に基づくものでございまして、地方債というものによって、こういう地域におきましては将来償還財源というものも期待できるわけでございますので、そういう地方債の充実というものをひとつ考えてまいりたい。  それから、第三には、先ほど秋吉主計官からも御説明申し上げたわけでございますが、そういう中で特に集中的に短期間に金がかかりますようないわゆる大規模団地、戸数二千戸以上の大規模団地につきましては、立てかえ施工——住宅公団あるいはそのほかの公的な住宅の供給主体、造成主体というものに立てかえ施工をやってもらう、学校でございますとか、保育所でございますとか、上下水道等でございますとか、それに対しまして年賦で償還をしてまいる、こういう方法。  それから、現在ございます制度といたしまして、地方交付税の中でいまの人口急増補正、これは去年百四十五億円でございましたが、ことしそれを百二十億円ふやしております。そういったような形で、現在の交付税の中でできるだけ適応さしていく、こういうことを考えておるわけでございます。
  80. 堀昌雄

    堀委員 いや、私はそういう一般論を聞いているのじゃないんですよ。要するに、ギャンブル収入がすでに地方財政の中に癒着し切っておる状態を、これはあなた方もそのままでいいとは思っていないのでしょう。どうです、そこから聞きましょう。これはギャンブル収入に地方財政がたよるのは当然であって、それは望ましい姿であると思うかどうかですね。そこから、じゃちょっと。
  81. 鎌田要人

    鎌田説明員 これは望ましいと考えておるわけでは毛頭ないわけでございます。こういう収入に依存しなければ財政運営ができないということは、私どもといたしましては、やはり正常であるとは考えておりません。
  82. 堀昌雄

    堀委員 そこで、それじゃ、正常でなければ、それを正常に戻すためにこれまで皆さん何かやってきたか、いまやろうという意欲があるのかどうか、もうあきらめ切っているのかどうか、そこらをちょっとはっきりしていただきたい。
  83. 鎌田要人

    鎌田説明員 現在、収益事業の収入、収益金といたしまして全国で四百八十三億円あるわけでございます。四百八十三億円という額になりますと、これはちょっと大きな額でございまして、これを財源措置を講じないでやめてしまうということは、これは、先ほど仰せになりましたように、尼崎の場合一つ例にとりましても、たいへんなことでございます。したがいまして、何らかそれは当然財源を付与するという形でこれをやめてまいらなければならないということになるわけでございます。  そこで、収益事業というものを一ぺんにやめられるかという問題は、いまの財政収入の問題のほかに、これは施設に働いておる職員の問題もございます。それから施設の転換の問題等もございますので、これはこれといたしまして、収益事業の将来をどう考えるかという点につきましては、私どもも、当面、たとえば来年の三月一ぱいで競馬法の附則の規定が失効するわけでございますので、もうすでにある意味においては足元に火のついた問題もございます。そういった問題との関連で考え方を明らかにしてまいりたいと思っておる次第でございます。  基本的には、一般財源を充実しながら収益事業に依存する割合を減らしていく、これは当然の方針であろうと思うわけでございます。
  84. 堀昌雄

    堀委員 いま伺うと四百八十億円ぐらいですか、そんなにべらぼうに大きい金額じゃないですね。しかし、これはなるほど一ぺんにはいきませんけれども、どうでしょうね、皆さん、ことし全国統一地方選挙をやりまして、各地とも市長はほとんど新しくなっているわけです。中間で選挙をやっているところも少しございましょうが、まあおおむねやっている。合併町村なんというやっているところは少ないと思いますから、大体統一地方選挙で新しい市長もできて議員もできたと思うのですね。やはり、この人たちが思いを新たにして、今後市政を住民のためにやっていくというために、向こう四年間ぐらいの計画を立てて、四年計画の中でひとつどこまでいけるか——これはまあ相手のあることだし、いまのように四年するとまた四百八十億円ぐらいがふえてくるということに実はなるのですね。だから、四年先の問題を見通して、過去における伸び率その他から勘案しなければならぬと思うのですけれども、一応ひとつ、今後四年間を目途として、これに対してどういう処置をしたらこれがいまのギャンブルにたよらずしていけるか、これを検討してみてはどうか。いまあなたのお話のように、中につとめておる人たち、いろいろ問題もありましょう。しかし、中につとめておる人たちその他の問題は、今後日本全体として見れば労働力が足らなくなる段階ですから、それはまた考えようは別途に十分あろうかと私は思うのです。だから、それよりも問題は、一番重要なのは、このギャンブル収入がもうすでに地方財政の中で不可欠な要素になりつつあるというところに問題があるわけですから、これはやはり財政的な考え方で処置をする以外にこの問題は手がない、幾らやめたいといっても、それは希望的なことで、実際を考えてみると、それを裏づけるものがない限りやめることができないという段階に追い込まれておる。もう少し皆さん方がこの問題については熱意を持って、そうして計画を立てて検討してみてはどうか。これは私は簡単にただ国が出したらいいというだけの問題だとも思いません。あるいは地方税制の中で何らか新しく起こし得る財源というものを考える余地もあろうかと思う。  たまたまこの前私横浜の飛鳥田市長と雑談をしておりましたときに、飛鳥田さんがこういう新税の話をしました。住民の人たちといろいろ懇談をしておるときに、こういう税を取ったらどうかというのが一つ出ました、なるほど非常におもしろいと思いましたといって飛鳥田さんが言いましたのは、お葬式のときに、関西ではわれわれはシキミと言うのですが、お供えした花木ですね、東京のほうは何と言うのかよく知りませんが、大体いま千円、千五百円というようなところでお金を出して、名前を書いていろいろな方が出しておる、あれ一本から百円ずつ取ったらかなり財源になるんじゃないか、ああいうものを出せる人は担税力も十分にあるし、もし百円取られるからやめるといえば、やめるなら虚礼廃止になっていいことだし、これは税源として非常におもしろいなというふうに思っていますというお話。これは別に横浜がすぐ取るということではないでしょうけれども、なるほど私も、全国であれから百円ずつ取れば、これはいまの四百八十億円にはならぬにしても、そういうものがいまのギャンブル収入を補てんするための新税源になるということなら、これも一つの考えではないか。これはわれわれあまり増税賛成論者じゃないけれども、もし税がかかるのがいやだというなら、これはやめたっていいことですよ。あれが並んでなければならぬことはない。ところが、日本人というのは、そういうところにはかなり無理をする。特に政治家の諸君は大いにみな無理をして出す。私ども出したことはないけれども、いつも相当出ておるというのが実情ですね。  だから、こういうように、地方税の問題も、少し頭をひねってみると、やはりそういうギャンブル収入を補てんするためなら、そのくらいはいいじゃないかという財源もないわけではないような気がするわけですね。どうかひとつ、そういう点で、国の側もお考えを願いたい。もうこれは地方税にだけまかしておけばいいのだということではないのだと思うのです。ギャンブル収入に地方自治体がたよっておるというのは、きわめて大きい問題です。  それで、どうでしょうかね、自治省に伺いたいのですが、ギャンブル収入にたよって地方自治体の運営が何とかできておるというのは外国にもあるのでしょうかね。ちょっとそこを、あなた方調べたことがあるのかどうか。
  85. 鎌田要人

    鎌田説明員 私も無学でありまして、あまりよくその点を調べたものはございませんが、諸国においてもそういう例はあるようでございます。
  86. 堀昌雄

    堀委員 日本は各国に大使館をずいぶん置いておるのですからね。これ一ぺん自治省から——自治省の出先はおらぬかもしれぬけれども、外務省を通じて一ぺん調べてもらいたいのです。要するに、私はそれはいろいろあるだろうと思うのですよ。しかし、日本ほど普遍的に地方自治体がこの財源によっておるところもあまりないのじゃないか。  それと、もう一つ、私が不公平な感じがするのは、同じ地方自治体の中で、そういう財源のあるところとないところがあるんですね。これは私は地方自治体として非常に不公平な問題があると思うのですね。しかし、そうだからといって、いまさらそんなところに競輪場や何かをどんどん認められる情勢でもないこともまた間違いないのです。  だから、この問題は、これまでこういう問題の提起がされたことがあるかないか知らないけれども、いまの人口急増地帯の問題を含めてですけれども、これは自治省大蔵省も一ぺん真剣にこの問題を取り上げて、ひとつ年度計画によって——これは、一年や二年でやれなんていったって、できないことは私は要求する意思はありません。四年でやれなければ八年でもよろしい、とにかくある一つのめどをきめて、やはり地方自治体のあるべき姿に向かって持っていくというのが、これが私は政治として責任のあることじゃないか、こう思うのですが、大蔵省事務当局——ひとつあとで小沢政務次官にお伺いをいたしますが、事務当局としては、これに対して何らかやる方法があるかどうか。いま考えてないかもしれないけれども、何かあればひとつ大蔵省側から答えてください。
  87. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 いわゆるギャンブル収入等によって地方自治体の財源をまかなうという問題ですが、先ほど来先生の御議論を聞いておりますと、そういうものをなくしてしまったら非常に財源が減っていく、そこで、行政水準はかなり高い、普通の交付税の配付で補おうというとそれは補われないという場合にどういうふうになるかという御議論があったかと思うのでございます。そういうものとも関連いたしまして、私らもこういうようなギャンブル収入が自治体の財源になるということは必ずしも非常にいいことだとは思いませんけれども、しかし、外国等にも例がありますように、全然いかぬということで廃止するかどうかということは、これはやはり自治体の御判断であって、われわれ自身がそういうところまで、絶対やめるというふうに言い切っていくのは、なかなかむずかしいのじゃないかと思います。やはり自治体でよく御判断をいただいて決心をしていただく問題じゃないか。  そこで、そういった場合に、先ほど申しましたように、財源が減るわけでございます。減っていくと、現在の交付税の算定方式でいけば、ある行政水準のものしか確保できない。そうすると従来の行政水準が落ちていく、そうなる場合に、行政水準というものはそれではどういうものをいうのかということが問題になるわけでございまして、いろいろございます。学校もございましょう、教育もございましょう、あるいは水道とか電気とか、いろいろなものがあると思いますが、そういうものについてかりにそういった財源が非常に減っていくという状況になった場合、これはギャンブル収入が減ったからそうなったという場合だけではなく、先ほどお話がありました、人口がふえていくためにそういうような状況が織り込まれるという場合も含めまして、私らは、先ほどいろいろ議論がありましたけれども、できるだけ実態に合うように見ていきたい。先ほどは議論がございませんでしたが、たとえば、ことし初めて水道の補助金というものをつけました。これは、先行性というのに着目をいたしまして、どうしても将来のために水道を——現にあるのだけれども、人がふえるからつけなくちゃならぬというためには、特に補助金をつけてふやしていこうという形をとるとか、さっきの公共用地の先行取得の地方債の問題とか、いろいろな点についてできるだけの配慮はしたい、こういうことで考えております。
  88. 堀昌雄

    堀委員 いまのように、競輪、競艇をやめるかどうか、確かに地方自治体の判断だと思います。ただ、地方自治体の判断なんですけれども、実はやめたいという地方自治体はかなりあると思うのですよ。しかし、やめたいけれども財源の問題でどうにもならぬというのが、またこれも実態だろうと思うのです。  そこで、私は、もし地方自治体が、これはぜひやめたいのだ、しかし財政的にこういう問題があるということで、何らか一つそういう手をあげたら、それに基づいて何らか国の側として考えてやるべきだと思うのです。これはまるまる全部見てくれというわけにはもちろん私もいくとは思いませんが、そうだからといって、これは何も見てやらぬ、周囲が何も見てやらないということならば、これまた地方自治体の現在の力ではどうにもならない。たとえば、いまの尼崎市というような市を一つ見ておると、いまから十年か十五年かたつと、いまの芦屋市のように人口飽和状態になる。人口飽和状態になりますと、もう新たにやることは非常になくなってくるわけです。水道も全部ついちゃっている、道路も一応はできちゃっている、学校ももうできちゃって、その時期ぐらいになると今度は逆に学校は余るぐらいになってくる。要するに、いろいろな点で飽和点に達すれば、そこからあとは新規投資というものはほとんど要らなくて、それを運営していくだけの経常的、消費的経費が主たるものになってくる。しかし、人口がどんどん伸びている間は投資的経費をどうしても不可避的にそこへつぎ込まなければならぬ。こういう問題がそこへかぶさっておる間は、やはり国の側として何らかの配慮が必要だろう。その配慮のしかたは、何も全部を補助金ということでなくて、これまた長期的に考えれば、あるいは二十年なりすれば、大体そこで飽和点に達して、それ以上になるというのは、今度はまた新しい都市開発の高層化になるというような段階が来るでしょうが、しかし、それまでに、一応そこまでくれば一応の到着点になるということになるならば、そういうものに対する特別の起債をある程度考慮しながら、その起債についての協力をするとか、ものによっては、さっき私が言ったような府県税と市税の間の配分を考慮をして問題を考えるとか。要するに、人口増加分だけがなければ、そういう地帯だって私は何もその十四億円に依存しなければならぬことはないと思うのです。やはり人口が増加をすることが新たな投資をどうしても誘発するし、たとえば小学校を一つ建てるにしても、私昨年文教委員会でこの問題を提起をしたわけですが、人口が急増しておるけれども財源がない、先行投資必ずしも十分に認められていなかったものだから、私どもの北部の地帯で競馬場のまん前に小学校を建てるという問題が実は起きてきた。昨年の八月ごろのことですけれども、私ども、これはいかようにあろうとも現在の学校教育法その他から見て認めるわけにいかないというので、市長に話をしたりいろいろして、ここをやめさせることにした。そのやめさせることにした坪の単価は三万五千円ぐらいなんです。ここをやめてしまうと、あとに敷地を買おうとすると、  一坪が五万円、六万円です。ともかく、何千坪かの小学校を建てるということになれば、これは市としてはたいへんな負担になるわけです。しかし、学校を建てなければ、もう人口はそこへ急増しているからどうにもならぬ。だから、私は、そういう意味では、都市周辺地帯における地方自治体は人口急増のためにたいへんな負担になる。いまあなたが単純に計算なさった一世帯あたり八万六千円という問題ではないのですね。そういう土地の価格の高騰によるはね返りなりいろいろな問題のために非常に苦しいところに立たされておるというのが現在の実情ですから、そのためにはやはり、不可避的に競艇収入にたよる以外にはそういう問題の解決の方法がないというところに追い込まれておる地方自治体のあり方を、私どもはあるべき地方自治体の方向へ戻す。戻していくためには、やはり、大蔵省としても自治省としても、これからひとつ真剣に、このいまの人口急増地帯におけるこの問題と、ギャンブル収入に依存せざるを得ないような条件に置かれておる問題をどのような方途でやっていけば解決できるかということを考えていただきたい。だから、これはいますぐの問題ではありませんから、ひとつ来年度予算を組む前に私は当委員会でこの問題について宿題として皆さんにお願いをしておきますから、それまでに向こう六カ月、きょうは五月ですね、そうすると秋どうせ臨時国会があるでしょうから、秋の十月か十一月の臨時国会までに、自治省大蔵省、このギャンブル収入の関係の問題といまの都市急増対策の問題について何らかひとつ答案を書いてもらいたい、こう思うのです。  そういうことに対する政務次官の見解を最後にお伺いをいたしまして、同時に、各省のいまの私の宿題に対するそのお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  89. 小沢辰男

    小沢政府委員 ギャンブル収入にたよらなければいけないような地方財政が不健全であることは確かでございます。したがいまして、そうした不健全要素を取り除いて、なおかつ地方自治団体が健全な地方自治団体としての財政を運営し得るような方向で政府としても考えていくのが私は筋だと思います。ただ、たいへんめんどうな問題でございます。したがって、いま先生は、来年度予算編成までに明快な答案をということで、何か宿題というようなお話もございますが、はたしてそう簡単に答案が出るものかわかりませんが、十分ひとつ真剣に研究を進めてまいりたいと思います。
  90. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 先ほど来お話いたしましたように、いろいろな対策を講じてもおるわけでございますが、なおかつ根本的に改正をするような名案があるかとおっしゃいますと、これはちょっと私も頭が悪いのであまりいい名案は持っておりませんが、できるだけ検討はしたいということでございます。
  91. 鎌田要人

    鎌田説明員 検討をいたすことにやぶさかではございませんが、一つだけ、あるいは釈迦に説法になるかもしれませんが、申し述べさしていただきますと、現在の地方財政の仕組みといたしましては、交付税の基準財政収入に、いわゆる先生のおしゃいますテラ銭収入というものを見込んでいないことは御存じのとおりでございます。したがいまして、自治省立場といたしましては、全国的に見て、いわゆるナショナルミニマムを確保することについての必要な財源は交付税その他の一般財源で得る、テラ銭収入というものはいわば付加的な経費というものをまかなうための財源だ、こういう考えで割り切っているわけでございますので、このテラ銭の収入を奪っちゃうから一般財源のほうを何とかせよという結論になるのかどうか、その点をもう少し詰めて考えさしていただきたいと思いますので、えらい歯切れの悪いことで恐縮でございますが、そういうことを含んで検討さしていただきたいと思います。
  92. 堀昌雄

    堀委員 それはあなたのおっしゃるとおりです。おそらくあなたのほうは、テラ銭収入を財政収入の中に組み込んでいるなんて言ったら、これはたいへんなことですよ。国として責任問題に発展してしまう。さっき主計局のほうで言っておりますが、行政水準の問題ですね。われわれでもこういうことなんですよ。一ぺん生活レベルが上がりますと、上げるのはそんなに問題がないのですが、これを下げるということはたいへん苦しいことなんですね。いままで五万円の収入であったものが、会社をやめて二万五千円で暮らせと言われても、これはたいへんなことなんです。だから、そういう意味では、現実には下げられない。そういう現実のあることもやはりあなた方に考えていただかないと、いろいろな条件のもとにここまで来ておるわけですから、それを下げないで解決することを自治省は前向きに考えていただかなければならない。  私がいま答案を書けと言ったのはどういうことかというと、要するに、もう一ぺん再分析してもらいたいということです。さっき私が外国の都市のことを聞いたら、あまりつまびらかではなかったが、外国のほうでもしやっておるとしたら、どういうことになって、どんなふうになっておるかということも調査していただきたいし、日本の自治体の中のいろいろな行政にもどの程度それが役立っておるか、過去から今日までの五年間に、それがどういう比重を占めてきて、それはその地方自治体の中ではどうなってきたか、今後これをこのまま放置しておけばどうなっていくか、そういうような現状の分析と将来の見通しを含めたこの問題に対しての調査を第一段階でやってもらいたい。そういうものの上に立って、自治省なり大蔵省なり両方でひとつ相談していただいて、もしこれを四カ年でやめるとすればこういうことになる、財源措置はなかなかむずかしいということになれば四年でなくても八年でもいいが、八年間にやめるにはこれをこうしてこうやっていけばというふうにして、そして、さっきのように、財政的にはやめられるのだということが明らかになってくると、地方自治体の側も、それに対するところの取り組み方が出てくると思うのです。いまはどこからもだれも助けてくれないので、地方自治体だけでやれと言われてもなかなかできない。しかし、地方自治体もやめたいことは間違いないし、皆さんだって歓迎してないことはだれもわかり切っておる。しかし、やむを得ずやっておるということでしょうから、そういう意味でひとつ検討していただいて、分析をして、見通しを立てて、そうしてそれに代替できるものはこういうものがあるだろう、あるいは起債をしたらどうなるか、こういう税源配分をすればどうなるか、新しい税源を起こすとすればこういうことになるだろう、こういう問題についての案をひとつつくってもらいたい。そうして、でき得ることならばその案が昭和四十三年度からスタートしていくということになれば、地方自治体の側においてもおのずからそれに対処する心がまえを持ってこれからの財政運営に臨めるのではないかと考えるわけですから、ひとつ、私の意のあるところをくんでいただいて、こまかいことまで申し上げませんから、ひとつ事務当局側としてこの問題に真剣に取り組んでいただきたい。そうして、秋の十月か十一月の臨時国会でまた私は質問させていただきますから、そのときには、皆さん方が調査検討した結果をひとつ明らかにしてもらう。四十三年度予算に向けてどういうふうにしていくかということについてもまたひとつ議論させてもらいたいと考えるわけですので、よろしく検討してもらいたいと思います。
  93. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 本会議散会後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時二十七分休憩      ————◇—————    午後三時五分開議
  94. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  理事辞任の件についておはかりいたします。  理事春日一幸君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  引き続き、理事補欠選任を行なうのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。  それでは、竹本孫一君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  97. 内田常雄

    内田委員長 税制簡素化のための国税通則法酒税法等の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。横山利秋君。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 長官、お急ぎのようでありますから、最初二つばかり長官にお伺いするのでありますが、一つは、先年私が本委員会で取り上げまして、標準率表、効率表というものは納税者に公開すべきだということを言うたことが二、三回ございます。しかるところ、今回大阪地裁におきまして、この効率表、標準率表を部外に漏らした大阪税務署直税課員だった岡田被告は、漏らしたことによって首を切られたわけでありますけれども、この効率表、標準率表は、これは秘扱いにすることは正しくない、正しくないものを秘扱いにし、これを漏らしたことによって首にしたことは無効であるとして、無罪になったわけであります。もちろん、国税庁がそれに対しまして控訴するかどうかはまだ聞いておりませんけれども、最終判決がかりにないといたしましても、私どもがかねて言っておったことが、地方裁判所において証明されたように私は考えるわけであります。  本判決につきまして、国税庁はどうお考えになっておりますか、まずそれを承りたいのであります。
  99. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず、事実関係につきまして申し上げておきたいと思います。  いま、横山委員から、被告岡田禎勝君を首にしたという御発言がございましたが、これは刑事起訴を受けましたので刑事休職になっておるのでありまして、まだ首になっておるのではございませんことを御了承願いたいと思います。  さて、お話のように、標準率表及び効率表につきましては、先年横山委員からお尋ねがありまして、私もいろいろお答えいたしたのでございます。昨日、大阪地方裁判所におきまして、岡田被告に対する無罪の判決がございました。その無罪となった判決の理由につきましては、まだ実は詳細な判決の内容を入手いたしておりませんので、いずれその判決文を入手いたした上で、詳細な検討をした上で申し上げたいと思っておるのでございます。  ただ、昨日各新聞に出ましたところによりますと、これは新聞によりましてかなりニュアンスが違っておりまして、私もどれがほんとのことか判断に迷っておるのでございます。ただ、大阪局からの報告によりますと、岡田被告が無罪になりましたのは、国家公務員法による秘密を守る義務は、形式的な秘密であるのみならず、実質的にそれが秘密でなければならない、で、形式的な秘密であることについては疑問の余地はない、ただ、標準率表、効率表が実質的な国家において秘密として守らなければならないものであるかどうか、この点について判示されたように思われるのであります。その点につきまして、裁判所は、この標準率表あるいは効率表というのは実質的な国家の秘密ではない、したがって岡田被告は無罪である、こういうような判決のように見受けるのであります。  私どもといたしましては、しかしながら、多年、標準率表、効率表を秘密文書ということで扱ってまいっておるのであります。その裁判所が何ゆえに実質的に秘密でないといわれるのか、その判決の詳細を入手いたしました上であらためて検討しなければならぬ、このように思っておるのでございます。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 私は、同僚諸君のお許しを得まして、この委員会の討議が、私と向こうと話をしているだけでは、皆さんがお聞きになっていない場合があるし、その判断が適当でない場合があるので、こちらを向いて、皆さんと相談をしながら質問をいたしたいと思います。  諸君が御存じのように、標準率表、効率表というのは税務職員のとらの巻ですね。そいつを税務署の職員がポケットに入れながら床屋さんに行って、あなたのところは安い、あなたのところは高いと言うわけですね。何で高いかというと、とにかくそれは高い。それはポケットに標準率表、効率表があるから、それを目安にしてものを言っておるわけです。私は、それを公開をしなさい、それよりも安く申告する場合もあるし、高く申告する場合もある、納税者になぜとらの巻を出さないのだ、こう言って積年主張しておるわけであります。  しからば、標準率表、効率表というものはどうしてできるかというと、結局、税務職員が脱税をしてないところをモデル調査、基幹調査と称してやって、そこをてこにして、おまえのところは大体このくらいはもうかっていると推計して、モデルをつくってポケットに入れておるわけです。したがって、そういう税務署の推計した標準というものを業界に示してもいいじゃないか。それを示さずして、最近皆さんが御体験のように、業種別指導方式といって、親分だけぎゅっとやる、そして、全部が脱税しておる、修正申告しろ、修正申告しない人だけ調査をする、こういうどうかつ的なやり方をしておるわけです。これはそば屋の話から始まって、おそらく諸君の選挙区においても業種別指導の問題が大問題になっておると思うのです。私は、このとらの巻というものを公開をして、裁判長の言うように——いま長官は形式的には秘密になっておるという。私もそれはもちろん認める。しかし、形式的秘密というのは、税務署長が、これは秘扱いであると判こを押しても形式的秘密ですね。課長が秘扱いの判を押しても秘密、それが形式的秘密なんです。ここに裁判長が判示をしたのは、秘密漏洩が国家の安全に重大な影響のあるものでなければならない、こういうものがほんとうの実質的秘密だと言う。そこの判断が、税務署長や課長が秘密だと判を押した、それを課員が漏洩した、おまえはけしからぬ、そんなことを一々やられたら、全くめちゃくちゃじゃないかというのが裁判長の言っておることで、何かのよりどころがなければいかぬというのが実質的秘密なんです。私は、この標準率表、効率表が、これを漏らしたら、国家に、また納税に重大な影響をもたらすものとは考えぬわけです。もっと税務行政が民主的に、そして納税者が納得するようにいたしますためには、この際、判決を機会にして、この標準率表、効率表を公開したっていいじゃないか。  実は、皆さん御存じかもしれませんが、標準率表、効率表を秘密印刷して売っておるところがあるのです。そこに渡辺税理士がいらっしゃるけれども、おそらく渡辺税理士も開業中この標準率表、効率表を持っておったと思うのです。こんなことはわかっておる話なんです。秘密だ秘密だと言っておったって、ないしょで印刷して売っているところもある。千五百円か二千円くらいです。税務署のちょっとした人はみんな持っておる。そんなことをやっておって、漏らしたら処分だというばかばかしいことはやめたらどうか。それが漏れることによってどんな影響があるか、納税上どんな問題があるかということを私は言っておるわけです。  同僚諸君、全く賛成でしょう。どうです。お顔色を見ても大体わかるように、同僚諸君の賛成を得て質問しておるのですから、そのつもりで御答弁願いたい。
  101. 泉美之松

    ○泉政府委員 標準率表、効率表は、お話のように、税務当局におきましてモデル的な調査をいたしまして、その調査の実例に基づいてでき上がっておるものでありまして、先ほど横山委員は、その調査したものから推計したようなお話でございますが、推計はいたしておりません。いろいろな実例を集めまして、その実例のうち極端なものをはずしまして、標準率表でございますと、売り上げ百円当たり幾らの所得がある、そのほかに標準率表以外の特殊の経費を見て、そして課税標準を導き出すようにいたしておるのでございます。  それから、効率表につきましても、同様にモデル調査をいたしまして、そうした調査実例を集めまして、そのうち極端な実例をはずしまして、中庸を得たものを効率表といたして使用することにいたしておるのでございます。  これを公開すべきかどうかという点につきましては、私どものほうといたしましては、従来から、これを公表すると、青色申告をするためにきちんと記帳しておる人が、効率表より高くなるような場合には、意識してそこまで下げることになっては、かえって青色申告の正しい申告がしにくいことになりはしないか、そういったようなことからいたしまして、かえって脱税を誘発することになっては好ましくない、こういった考え方を持っておりますとともに、この効率表などのごときは、特に業者自身が経営をやっていく場合におきまして、いろいろ考えて経営をやっておられるはずで、業界自身もある程度のことはわかっておられるはずのものでございますので、したがって、それとわれわれのといろいろ論議することが必ずしも適当でなかろう、こういうことから公表いたさないでまいっておるのであります。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、昨日大阪地裁の判決がございましたが、私ども、その判決につきまして詳しい理由をまだ承知いたしておりません。それを承知いたしました上で今後いろいろ問題を考えていきたいと思っておるのでございます。  とりあえずといたしまして、国税庁といたしましては、従来の標準率表、効率表につきまして、もう少し科学的なものができないかどうかという点につきまして、外部の学者にも依頼いたしまして、もっと正確な標準率表、効率表というものを、科学的な批判に耐え得るようなものをつくりたい、このように考えまして、せっかく努力いたしておるところでございます。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 もう一ぺん同僚諸君の賛成を得たいと思うのですが、われわれが大蔵委員をやっています一つの任務は、税法を改正すると同時に、徴税行政の民主化にあると思うのであります。民主化の方法につきましては、私の意見と違う同僚諸君もあろうかと思うのです。  しかしながら、いずれにしても、納税者が一つのよりどころ、確信をもって税務署と交渉する機運をつくらなければならぬと思います。その機運というものは、何かのときに一歩を乗り越えなければならぬと思います。標準率表、効率表というものをほんとうは一ぺんここへ出して、皆さんとともに討議するといいと思うのでありますが、これはいまおそらく承知されないと思うのでありますが、少なくとも、たとえば床屋の場合、いすが何台あって、小僧が何人おって、そして何がこうあって、化粧品をこれだけ買っておれば、大体この床屋は年間所得何万円くらいだろうという推計の基礎ができているわけです。したがいまして、それをポケットに入れておれば、それより低く出したものは高くする、高く出たものは知らぬ顔をしておる、こういうしかけになるわけであります。それを、標準率表、効率表を業界が知り、あるいは納税者が知ったところで、いまの徴税機構であるならば、こういうモデルであるけれども、あなたのところはかかる事情によって架空名義もあるし、何々もあるからそうはいきませんよとは、自信をもって税務職員が言えるはずだと思います。また、納税者が高く出したならば高く出しただけの理由があるだろうから、これは税務職員としても納得ができると思うのであります。  ですから私は、われわれの任務が徴税行政の民主化であるという意味においては、この際、この裁判所が、判決を出して、かかる標準率表、効率表のごときものは、形式的秘密ではあるけれども、いわゆる人を処分するほどの秘密ではない、徴税の中で重大な影響をもたらすものではないと判定をいたしましたことは、全く私どもとしては同感だと思っておるわけであります。この際、同僚諸君の御賛同を得まして、われわれとしては、客観的判定が出たこの機会にこの標準率表、効率表を公開すべきだと私は確信しております。ただいま長官がおっしゃるように、公開する以上は、公開という意味において、もう少し検討を加える必要があるという点は、私もそれもよかろう、しかし、いずれにしても、税務職員が秘密秘密としてポケットに入れて、知らぬ納税者だけがそれだけ高く取られる、知っている納税者あるいは税理士さんたちはこれは秘密でなくなっているというばかばかしい状態というものは改善の必要がある、こう考えておるわけでございまして、大かたの同僚諸君は御賛成を得られたと思うのですが、もし御意見のある方はこの際私ともども質問をしていただきたいと思うのでありますが、ございませんか。もし私の意見に反対とかあるいは異議があるというお方は、この機会に、関連をして御質問をしていただきたいと思います。
  103. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私は反対というほどでもないのですが、標準率表を現在の段階で公開するということは、納税者に対して非常な誤解を与えるんじゃないか。つまり、標準率表はどこまでもそれは標準的なものですから、かりにそれが政府の名において発表すると、それほどもうけていない人もその標準率表どおりに申告をしなければならないというような心理的な圧迫を受けてもこれは困ります。だから、自由な立場で申告をさせるという立場から、やはり公のものとして発表するということについてはどうかと私は思うのです。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 ですから私が言ったのです。長官がもう少し科学的なものにしたい。つまり、私の意見も、いまは秘密のものとして作製されている、しかし、秘密であってはならぬと判断をした。しからば公開する。公開する以上は、渡辺委員のおっしゃるように、これがすべてそのとおりに申告すればいいというものではないという標準率表、効率表の作製のしかたがあるだろう。また、もう少し、他に見られても国税庁としても恥ずかしくないようなくふうをこらしたつくり方があるだろう。したがって、発表ということに伴う問題がもしあるならば、それは十分検討をして、そうして発表すべきだという点については、私は、渡辺委員の御心配は、発表する場合における方法論として配慮できると思うのであります。いかがでございますか。よろしゅうございますか。
  105. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これを発表することは決して悪くないというようなお話なんですが、現在でさえも、発表しないで、これは標準率ですよということで、税務署の職員にはこのとおりやれという指示は与えていないと思うのですね。それにもかかわらず、税務職員の中には、少し足りない——少し足りないと言っては語弊がありますが、少し思い違いをして、標準率表でなければならないというふうに、それは拘束性がないにもかかわらず拘束性があるように、自分の調査能力を補うために、あるいは時間的なむだを補うために、能率をあげるために標準率表を適用してすみやかに事案を処理するような傾向にある。したがって、これを発表して、正式なものだというようなことにすれば、むしろ標準率表で強制する弊害のほうが現在の段階では出る危険性があるのではないか。したがって、発表すること自体よりも、標準率表はどこまでも標準なんだということで、とにかく、どこまでもそれを適用して、それで所得を出させなければならないのだというような考えをまず税務職員から除くことが先決問題ではないかと思うのですがね。よろしゅうございますか。
  106. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの渡辺委員の御発言でございますが、税務職員が足りぬために標準率表によって調整を行なっておる、このような発言に聞き取れましたが、それは、皆さんがおっしゃっていることは、あまりにも税務署の実務を知らなさ過ぎると思うのです。実際、税務職員が、申告指導におきまして標準率で相当の課税をし、その申告を促す、そういう事実があります。そういうものを——私はいままで両方の立場もあろうと思って黙っておりましたが、そのような税務職員五万に対して、足りないとかいうような発言は、私は穏当でないと思います。この問題につきましては、私も質問の機会がございましたらまた後ほど関係の方にお尋ねをしようと思っておりましたが、いまの発言は、あまりにも私は五万の忠実なる税務職員に対して穏当でないと思います。戦時中におきましては、私も職場におりましたが、千八百円給料をいただいて五百円の下宿代を払って、一升二百円の米を五升買ったならば、その給料でもって食っていけないというときがあった。そういうときにも私は税金を納めてきました。そういうことを具体的に申し上げればたくさんございますが、いまの発言につきましては、私は穏当でないと思います。事実、五万の税務職員にそのことを知らせたならば、国税庁長官もどのようになるものかおわかりだと思います。それを憂うるものであります。以上。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 本論のほうは賛成ですか。
  108. 田中昭二

    田中(昭)委員 標準率を公開しても同じではないですか。ほとんど公開してあると同じでございます。標準率の中には公開しているものもございます。農業標準は公開しております。また、税務署が申告指導をする場合におきまして、税理士にはある種の標準率は知らせております。また納税者にも知らせております。そういうことを言えば、私はどれだけでも申し上げられます。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  109. 横山利秋

    ○横山委員 いまこの付近の同僚諸君から、非常にいい意見であるからこれは別途小委員会において、というわけでありますから、委員長、ひとつお含みを願いまして、小委員会で十分討議をするようにお取り計らいを願いたい。  それから、国税庁にお願いしたいのは、判決文を同僚諸君に配付できるようにお手配を願いたい。以上であります。
  110. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 承知いたしました。
  111. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど横山委員のおっしゃる徴税行政の民主化ということ、これは私どもといたしましてもそのように心がけているつもりでございます。ただ、その徴税行政の民主化ということばの中で、何を民主化と考えるか、それにつきましてはいろいろ意見があることでございます。  特にこの標準率表につきましては、先ほどいろいろお話がございましたが、あくまでも標準でございまして、必ずこれによって申告しなければならないというように納税者の方が誤信されても困ります。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そういった点もあると同時に、それから本来、いま標準率表、効率表で処理しておりますものの中で、営業所得者につきましては、これは収入、支出につきまして記帳ができるわけでありますから、私どもといたしましては、そういう人たちは青色帳簿——今度それを非常に簡素化することをいま考えておるわけでありますけれども、そういう簡素化された帳簿によって記帳をやっていただく、その記帳に基づいた申告をしていただくというのが理想の申告納税の姿であろうと思うのであります。そういった帳簿の記帳ができやすい人について、標準率とか効率ということでやっていくのは、税務行政の理想からいうと、好ましい姿ではない、ただ、世間にはそういう帳簿をなかなか記帳しにくい業種、所得があるわけでありますから、そういう業種の人、あるいは所得の人につきましては、ある程度標準率なり効率でやっていかなければならないようになると思うのであります。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、科学的な批判に耐え得るような内容のものにいたしてまいりたい、このように考えておるのでございます。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 次はバナナの脱税の問題でありますが、新聞の伝うるところ、また参議院におきまして国税庁長官説明をしておられたようでありますが、この際、本委員会で関税定率法ですでに取り上げたところでありますが、本委員会の審議に資するために、バナナの脱税問題のあらましをひとつ御報告を願いたいと思います。
  113. 泉美之松

    ○泉政府委員 御存じのように、わが国にバナナを輸入いたしますと相当の利益があるということからいたしまして、バナナの輸入をめぐっていろいろ問題が起きておるようでございます。  私どもといたしましては、昨年六月以来——承知のとおり、昭和三十八年四月からバナナの自由化が行なわれたわけでありますが、その前後を通じて、輸入しましたバナナから得た利益につきまして適正な申告がなされているかどうかということにつきまして調査を進めてまいったのでございます。  その調査の対象といたしましたのは、台湾産バナナの輸入業者でありまして、これにつきましては、現在日本バナナ輸入組合というのができておりまして、その加入業者六百七十軒あります。そのほかアウトサイダーが十九軒あります。合計いたしまして六百八十九軒あるわけでありますが、そのうち、今回調査の対象にいたしましたのは、これを六十四の系列グループに分けまして、それぞれその系列の中心企業を中心といたしまして調査をいたしたのであります。現在はまだ調査が完了いたしてはおらないのでありますが、去る三月末現在におきまして、六百八十九軒のうち六百五十六軒について一応の調査をいたしたのであります。  その調査見込みによりますと、昨日国会で申し上げましたように、そのうち二百軒程度におきまして申告に脱漏があるということが判明いたしました。その脱漏の所得顔は十六億円であります。その脱漏所得十六億円のうち、詐欺その他不正の行為によって申告を漏らしておったいわゆる不正所得分が七億円程度ある、こういうことになっておるのでございます。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、一つ、二つ伺いたいのでありますが、伝うるところによりますと、その脱税をいたしました所得の中から、相当部分が政治献金に、ないしはお役人へのおまじないに使われておる。これはあなたのほうの調査ばかりでなくて、バナナについて政界に伝わるうわさはここ数年来絶えないところでありますが、その政治献金並びに役人、官庁に対する問題はどうでありましたか。
  115. 泉美之松

    ○泉政府委員 昨日も参議院の予算委員会で申し上げたのでありますが、この私どもの調査いたしました中におきまして、使途不明の出金が、約五十業者につきまして二億円ほどあるのでございます。これは使途不明でございますので、どういう先に支出されましたものか、現在の調査の段階では明らかでございません。一部に、政治家その他といったような御発言があるようでありますが、私どもといたしましては、その支出されたことは、手形その他からいたしましてある程度推測がつくのでありますが、その支払い先がどこであるかということがわからないということで、その使途不明の支出につきましてどういうふうに処理するかということを目下考慮いたしておるという段階にあります。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、問題が二つあるわけでありますが、使途不明が二億円あると言う。使途の明らかなうちに、政治家とかあるいは官庁に対するつかいがあったのかなかったのかという問題が第一であります。  それから第二番目は、いまお話がありましたが、使途不明の金というものは、税法上扱いをどういうふうになさるおつもりでございますか。
  117. 泉美之松

    ○泉政府委員 使途の判明いたしておるものの中には、オファー権を取得するために支出した、その支出した相手方はこれこれであるというふうになっておるものも相当ございます。これの中には、言われるような政治家の名前とかいうようなものは出てまいりません。主として台湾の業者あるいは個人に対して、そういうオファー権を取得するために支出したというような資料が出ております。  使途不明のものにつきましては、これはもう横山委員承知のとおり、私どもといたしましては、できるだけその経費の支出先の解明につとめたいと思いますけれども、あくまでもその支出先が判明いたしません場合は、原則といたしまして、それを経費として損金に認めない、そして、それに対して支出したところで課税する、こういうことにならざるを得ないわけであります。しかしながら、事実支出されておることがわかるのであれば、そこら辺に処理上いろいろやっかいな問題が起きてまいるわけであります。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 告発はなさるおつもりでございますか。
  119. 泉美之松

    ○泉政府委員 この点につきましては、目下なお調査いたしておる段階にありまして、現在お答えを申し上げかねます。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 この六百八十九社でありますか、それが今度整理をされて二百数十社に、ダミーやペーパーを整理したわけでありますが、その整理をしても、まだ私どもは、ダミー、ペーパーが、名前は消しておっても温存しておると推定をしておるわけであります。つまり、私がかりにペーパーだといたしますと、この際、それじゃ横山という業者は名実ともになくなるんだというて、その権利を本物に売る、しかしながら、それは表向きのことであって、裏向きには、結局この売買のつど、輸入のつどにないしょの金が横山にもう一ぺん還元されていくという方法になると思うのでありますが、あなたのほうとしては、この実態論に触れて課税されていくと思うのでありますが、この種のダミーないしペーパーに対する課税はいかように扱っておられるのでありますか。今日まで、それから今後。
  121. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、バナナの輸入につきましてはペーパー業者あるいはダミー業者というのが相当おるということでございます。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、今回の調査にあたりましては、バナナ輸入業者六百八十九軒のうち六十四の系列に分けまして、その系列の中心企業を核といたしまして、それの周辺にあるペーパー業者、ダミー業者というものについて調査いたしたのであります。  その結果の処理といたしましては、ダミーの業者につきましては、その本来のものに課税する、名目的に名前だけ使われておるものにつきましては、本来実質的な所得を得ているものに課税する、こういう処理をいたしました。いわゆるペーパー業者につきましては、輸入権を譲渡いたしておるわけであります。その譲渡の収入金額に対して当然課税をするということになるわけであります。  私どもの調査はまだ完了いたしておるわけではございませんが、いずれ完了いたしました上は、これらの実態につきまして通産当局とよく連絡いたしまして、通産当局におかれまして、バナナの輸入につきまして業者の中に妙なことが起こらないようによく指導されるような資料を通産当局に提供いたしたい、このような考えでおります。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 最後の点、私も多少痛しかゆしと思っておるわけでありますが、つまり、国税庁が知り得た資料というものの扱いの問題であります。国税庁に対しまして、司法当局あるいは警察当局、そういうものが国税庁が知り得た実態について調査を求める、報告を求め、協力を依頼いたします場合が乱用されてはならぬというのが私のかねての主張であります。  ただ私は、この間、バナナの問題につきまして、これはバナナを完全に自由化するということは国内産果実業者に対する問題もあるのであるから、完全に自由化し、関税定率を大きく下げるということについては、これは国内事情があってどうにもできないとするならば、バナナの輸入につきましては、どうしても潜在的に不正あるいは脱税あるいは汚職、そういう要因が潜在的にある、したがって、通産当局にも農林当局に対しましても格段の努力を望んでおるわけであります。それは一つの政治的な必要性があると思っておるわけでありますから、いまの長官のお話のように、バナナの脱税に関連をいたしましてあるところの欠陥、今日かくのごとき状態ではいかぬという意味において、通産並びに農林両省に対しまして改善をおすすめになるということは、バナナに限っては私は妥当なことだと思うのであります。ただ、それは常にひとつ十分トップレベルにおいてなさるべきことであって、下級税務職員が窓口においてかってなことを、今後これを例にしてもらっては困る、こういう考えでありますが、その点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  123. 泉美之松

    ○泉政府委員 申し上げるまでもなく、税務職員は、法人税あるいは所得税の調査によって知り得た秘密は漏らしてはならないという秘守義務が課せられておるのであります。したがって、本件のような場合に、私が先ほどのような発言を申し上げましたのは、その秘守義務にかかわらず、あえてバナナの輸入につきまして明朗を期したいということから、トップレベルにおきましてそういう措置をとりたい、こういう気持ちから申し上げておるのでございます。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 農林、通産両省から来ておるそうでありますが、農林、通産両省は、皮肉を言うわけではありませんけれども、どうしても業界との提携、円満な協力という意味におきまして、むしろ実態というものは、横から見た国税庁の実態というものが私は実態に触れるという感じがいたすわけであります。このおそるべきバナナの脱税の実態を十分に調査をされて、今後かかることのないように十分御注意をいただきたいと思います。
  125. 平林剛

    ○平林委員 ちょっと関連して国税庁長官お尋ねをいたしますけれども、いまのバナナの輸入業者の脱税の問題で、本委員会で関税定率法の審議が進められておりまして、それでお伺いをするわけですけれども、結局、バナナの関税率が今度五%ないし一〇%下げられるということになりまして、その審議をめぐっていろいろな検討が行なわれておるわけでありますが、私どもの検討の中に、バナナの輸入業者が、浜相場を立てるときでもあるいは輸入をする場合でも、非常に利益率が高いのでないだろうか、そうして、そのために、加工業者に渡り、それから小売り業者に渡り、そうしてまた一般消費者にいくまでにおきまして、どうも中間の利益が高いために消費者が安いバナナを食えない、こういう一つの素朴な国民の疑問があるわけであります。幸い、国税庁におきましては、バナナ輸入業者を中心に調査を進められたのでありますから、そのときにわれわれの参考になる資料が得られるかどうかということなんです。  たとえば、バナナの輸入業者というものを今度お調べになったのは、大体六十四の系列グループに分けて、その中心業者というお話ですけれども、その中心だけでもけっこうですけれども利益というものは大体どのくらいあるものか、それからその利益率というものはどのくらいになるのか、一般のいわゆる企業と比べまして高いのか低いのか、こういう点を、常識的でもいいですから知りたいのです。できれば、バナナの関税率の審議の一つの参考にするために、中心系列業者の利益利益率というような一覧表のようなものがまとめられるかどうか、もしそれができるならば提出してもらえないか、こういうことなんですけれども、いかがでしょう。
  126. 泉美之松

    ○泉政府委員 今回調査いたしましたものはバナナの輸入業者でありますが、同時に、バナナ以外のいろんな物資も輸入いたしております。したがって、今回の調査は法人税あるいは個人の所得税という形で調査いたしましたので、必ずしもバナナだけでなしに調査をいたしておりますので、もしその中からバナナについての利益あるいは利益率ということになりますと、もう少し時間をかしていただかないと、そういうバナナに限っての利益及び利益率というものが出てこないかと思います。先ほど申し上げましたのは、そういう輸入業者の全体の輸入でありまして、もちろんバナナが相当大きなウエートは占めておりますけれども、バナナ以外の輸入による利益もあるわけでございます。したがって、もしそういう資料が御入用でありますれば、多少時日をかしていただかないとできにくいかと思います。
  127. 平林剛

    ○平林委員 この問題は、政府の提案によると、一政令の定める時期から関税率を低下させる、それから二年後に一〇%下げるということでありますから、これからも、私どもとしては、浜相場の立て方とか、あるいはバナナの輸入から消費に渡るまでの間の利益の吸収などについては関心を持たざるを得ません。ですから、時間をかしますので、ひとつこの機会に、私どもの審査に利するためにそうした一覧表をまとめてほしいということを希望しておきたいと思うので、よろしくお願いしたいと思うのです。  それからもう一つ、先ほどの御報告によりますと、使途不明のものが五十社で約二億円というお話がありました。バナナの業界をめぐる黒い霧というのは、かなり前から、バナナだけに限らず、ノリだとかコンニャクだとか、いろいろ議論されておりまして、これはかなり一般の注目するところだろうと思うのです。そこで、こうした問題につきまして、この機会にもう少し明らかにして、それがきれいに粛正されていくということは必要なことでないかと思います。  そこで、いまお話がありましたのは、使途不明が五十社で二億円、しかし、使途が明らかになっておるものでありましても、たとえば政治献金のようなものにつきましてはあるのかないのか。つまり、使途不明二億円というと、使途不明の中に政治献金だとか官庁に対するものであるとか、あるいは、先ほどのお話ですと、権利を取得するために台湾関係との問題であるとかいうようなものがあるようなお話がありましたけれども、使途が明らかになっているものの中にも政治献金というものがあるのかないのか、こういうことは、なかなかちょっとここでは説明できないかもしれませんが、どうなんでしょうか。
  128. 泉美之松

    ○泉政府委員 使途が明らかになっているものの中に、政治献金と目されるものは入っておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、オファーの権利を取得するために、台湾の業者、法人、個人を通じてでありますが、それに支払ったというものは出ておりますが、これは別段政治献金というべきものではなかろうと存じます。
  129. 平林剛

    ○平林委員 それじゃ、さっきの確認だけしてください。時をかしますから……。
  130. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほどの御要求の資料につきましては、時間をかしていただきまして、提出するようにいたしたいと存じます。
  131. 横山利秋

    ○横山委員 長官、お急ぎですか。
  132. 泉美之松

    ○泉政府委員 まだいいでしょう。
  133. 横山利秋

    ○横山委員 いま聞きましたら、直税部長も査察部長も御出張中で、うっかりして、長官がいなければ次長を呼んでこいと言ったら、次長は欠員だそうで、いまさら気がついたことでありますが、歴代、次長がいらっしゃるのに、泉さんが大ものらしいのですが、次長はいつまでも置かないおつもりでございますか。こういうことを一体だれに聞いたらいいのか——これはやはり大国税庁でございますから、適当な機会に次長をお置きになるべきじゃないかと私は思うのでありますが、人材がいないのか。政務次官は、これは御存じの問題でございますか。どういうお考えでございましょうか。
  134. 小沢辰男

    小沢政府委員 鋭意人選中でございます。
  135. 横山利秋

    ○横山委員 さっそく人選を完了されて、ひとつ、長官がいなくても次長が答えるようにしなければ、国会審議に差しつかえますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  次は税制簡素化の問題であります。  私、この簡素化についての第一次答申を熟読いたしました。そしてつくづく考えたのでありますが、この税制簡素化の基本的方向として三点を示しています。一つは納税者の便宜である。二つは理論的に緩和をするという考えである。三つは税や財政上の影響をなるべく少なくという考えであります。  私はかねてから税制簡素化がわれわれ大蔵委員の非常な主要な任務の一つであると主張してまいりましたから、簡素化について税制調査会が取り上げたことに対しまして心から歓迎をいたしておるのでありますが、この税制調査会の第一次答申を見まして、この基本的方向の三つを考えてみて、きわめてぬるま湯な基本的方向だと痛感をしたわけであります。まだ税制簡素化というものが税制改正の中で大きなウエートを占めていない。あんまり税金がこれによって軽くなったり、財政上にあんまり影響をもたらさないようにしようじゃないかというようなものの考え方で——税制の問題で最も国民の中で主張されるのは、要約いたしますれば、私は三つだと思う。  それは、高いということである。もう一つは不公平だということである。そして最後がわからないということなんです。納税者が最も苦情を言いますのは、要約してみますとこの三つに大体分類ができる。高いという問題はわれわれが普通取り上げる。不公平だという問題については、租税特別措置で常に意見の分かれるところである。しかし、わからない、つまり税法がわからないという点が比較的なおざりになっておるときに、この税制簡素化の方向がオーソドックスに取り上げられたということは心から歓迎にたえないのだが、その基本的方向となっております三つの問題の設定のしかたがぬるま湯である。これは大蔵省なり、大蔵大臣なり、政府がこの問題について本腰を入れてない、そういうような感じをももたらすわけであります。簡素化するために、税の軽減や財政上の影響があっても、これは大いにウエートを占めるべきものだというふうに考え直すべき性質のものだ。したがって、以下この答申に盛られておりますこと並びに提案されましたことは不十分きわまることだと私は思う。こんなことぐらいで税制簡素化を答申した、そして国会を通過した、これによって政府に、また大蔵大臣に、税金が簡単になりましたなんということをおめおめ言わせては断じて相ならぬ。こんなものは何だと私は言いたいのであります。私の意見につきまして、あなたの御反省の弁を伺いたい。
  136. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 非常な御激励を賜わりまして、私どもも心から感謝申し上げる次第でございます。  私どもは簡素化に本腰を入れているつもりでございます。御案内のように、税制調査会で簡素化部会という特別部会が設けられたことは、過去にもございませんし、簡素化についての特別法案を提出したことは、私は戦後初めてのことだと思うのでございます。ただ、これで十分かといえば、私も、おっしゃるように十分だとは思いません。今後ひとつあらゆる方の御意見を承り、さらにまた、私どもがこの簡素化に取り組んでみますと、なかなか簡単に主税局だけの考えでまいらない点がございます。  その一例といたしましては、財政上の問題も御指摘ございましたが、もう一つはやはり法律の成文上の問題種々あるわけでございます。さらにまた、税務執行上のこれまでの慣習と非常に関係がございます。これらをひとつ、いまの御激励のことばにこたえまして、もう少し本腰を入れて今後進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  137. 横山利秋

    ○横山委員 私が考えますのに、この税制簡素化を取り上げる視野が狭い。あなたもいまおっしゃったように、この簡素化というのは、めんどうな手続を簡単にするとか、あるいは入り組んでいるところを整理するとか、そういう視野から行なわれているのではあるまいか、それでは視野が狭いと私は言うのです。  そんなら横山はどんな視野を持っておるのかという点で、一、二の例を申し上げます。  簡素化をするためには、基本的に、たとえば課税最低限を思い切って引き上げるという点を簡素化の立場から十分に検討すべきだ。それから、租税特別措置法を整理するということも簡素化の大方針の中に入れるべきだ。それからもう一つは、先ほど塩崎さんもお聞きになっておったのでありますが、私がよく言うのでありますが、上を向いて歩く習慣を徴税行政の中で取り上げるべきだ。たとえば、業種別指導のような重箱のすみっこを洗うようなやり方から、人員の配置転換から、機構の整備からというような徴税行政を、もっと集中的に上に向けるというやり方にしていって、零細企業など、やりやすいところをあんまりやらぬようにするというやり方にすべきだ。これは心がまえであると同時に、機構の問題、人員配置の問題である。そういう仕組みをしないといかぬ。  こんなことを申し上げて恐縮でありますが、私この間法務事務次官の部屋へ行ったのであります壁に色紙がかかっておる。どういう色紙かといいますと、「爾の俸爾の禄、民の膏なり民の脂なり、下民虐げやすく、上天欺きがたし」と書いてある。これは法務事務次官の部屋としてはおかしいと思ったが、私は、いいことばだから、これを色紙に書いて税務署長に渡した。誤解をされてはいかぬからといって、税務署長に語源を説明したのでありますが、東北のある大名が代官に対してそれを渡した。つまり、おまえの給料も、おまえの手当も、全部これは民のあぶらをしぼったものだ、そう腹を据えよ、上の人間は、権力関係からなかなか欺きがたいものだ、しかし、民、農民は欺きやすいものだから、奪いやすいものだから、ほかっておくと、おまえは常に職業柄、人民の膏血をしぼるような性格になる、だからくれぐれも注意をしろという文句であります。私はそれを二、三の税務署長に差し上げて、皮肉であげるのじゃありませんよ、ひとつこの気持ちは大事な気持ちですと、こう言ったのであります。税務職員も前線にたくさん配置をすれば、やはりそれはどうしても職業柄そうなるものであります。ですから、税務機構並びに税務の人員、それらは、たとえば調査、査察なり、あるいは大法人なりへ人間を振り向けて機構を集中しておけば、私は上を向いて歩くようになると思う。こういう仕組みをとることによって、この機構から、いろいろな面から簡素化がある。私が言うのは、第三は、上を向いて歩こうではないか。たとえばでありますが、この三つの点を、税務、税制の簡素化の中の大方針にしなければ、表現がややこしい、字がややこしいからこれを軽くしようとか、あるいは、向こうの法律とこっちの法律と矛盾しておるからこれを整理しょうとかいうような視野といっては、税制調査会の研究せられた諸君には失礼ではあるけれども、大体、大蔵省が出したものの考え方がそうではなかったか。だから、そういう方向に追い詰められて、こういう大局的な税制簡素化の方針を——間違ってはいないにしても、重箱のすみっこをつつくような簡素化になってしまっておる。ものの見方、提示のしかたを考え直さなければならぬ、こういうわけであります。
  138. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私も全く、税制簡素化を単に技術的にとらえることは間違いだと思いますし、横山先生のおっしゃったように、確かに、納税者がみずから納税協力を進んでやるような税制、これに持っていかなければならぬと私は思うのでございます。そんな意味で、まだまだ私どもの御提案申し上げることは不十分かと思います。さらにまた、その原因が非常に多いかと私は思いますが、さらに根深い原因が多々あると思うのでございます。先ほども申されましたような点、税務執行の面においてのこれまでのいきさつ、これが非常に大きな影響があると私は思うのでございます。それがあるだけに、なかなかこの問題もうまく進まない。  かりに私はこんなことを言っております。現在の税法は非常に複雑でございますし、私自体、全貌をつかめないくらい複雑多岐にわたっております。しかし、これはやはりいままでの税務執行に原因をしております。たとえば課税所得の計算原理でも、私は有価証券の取得価額なんという規定はほとんどなくて済むのじゃないか、そして、税務官吏が、企業が、あるいは納税者が幅広く解釈されるところで、あるいは社会慣行的に確立したところで認められる方向に従っておるならば、これはもう税法に書いてなくても当然な所得計算原理ではないか、こういった考え方に一これは先生の言われる上を向いて歩こうということになるのかもしれぬのでございますが、こういったことでも足りる、そうなると、ほとんど法律の規定、政令の規定をなくしても済むのではないかと思うのであります。しかし、いままでの経過は、納税者はそういう規定がないと非常に心配であるとか、あるいは税務官吏の恣意が働くとか、あるいは、こういった場合に疑問を持つのでこれはどうだとか、こんなことが積もり積もって、法律になり、政令になり、無数の通達になっておる、これを根本的に先生の言われるように上を向いて歩こうというまで直すには、よほどの、これは法律の面だけでなくて、納税者の心理あるいは税務官吏の教育、これまで考えてみなければいかぬと思うのであります。  そんなような点を、十分ひとつ皆さま方の御意見を拝聴しながら——私は今度の第一次答申で簡素化が終わったものとも思いませんし、さらにまた、まだまだおっしゃる点、技術的につかまえ過ぎた欠陥もあるかと思うのであります。そんな点を十分注意しながら、もう少し大きな線の簡素化——簡素化というものは単に仕組みだけの簡素化ではないと思います。心の入りました、納税者が自発的に協力できるような民主的な税制、これを打ち立てることだと思うのでございます。
  139. 横山利秋

    ○横山委員 あまり私に賛成すると私が文句が言えぬのですけれども、今度はひとつ政務次官に、良識豊かなところで意見を聞きたい。  簡素化とはちょっと違うのですけれども、これはあなたの常識的立場から返事をもらいたい。同僚諸君にも聞いてもらいたいのでありますが、いまの税制は、たとえば、税務署は、納税者がごまかしている、脱税しているときは、大体三年ないし五年までは遡及して更正決定をすることができることになっておりますね。ところが、納税者が、おれは少し多く申告し過ぎた、だから減額修正をしたいというときには二カ月しかいけない。私は前に塩崎さんともずいぶんこれで議論したのでありますが、何で納税者だけ二カ月だ。税務署の更正決定は、いついっても、しかも何回いってもいいんですよ。前の担当者がやったのが間違っておったからまたいった、担当者がかわったからまたいった。三年の間に何回でも更正決定ができる。少なくとも五年まで遡及する場合がありますが、通常三年ですね。なぜ納税者だけが、減額修正、おれが間違っておったから直してくれというのが二カ月しかいかぬのかと言いますと、税務署の言い分は、いや、それは税務署長の誤謬訂正でできますと言う。誤謬訂正というのは、何も納税者の権利じゃないです。お情けで税務署長がかってにやってやるというわけです。納税者の権利がなぜ守られないのか。税務署が三年ないし五年なら、納税者も三年ないし五年、間違っておったから直してくれという権利があってなぜいけないのか。これは塩崎氏が答弁を待ちかまえておるようでありますが、理屈の問題よりも、常識的に政務次官の良識をひとつ——あなた、相談せぬでもいいから言いなさいよ。
  140. 小沢辰男

    小沢政府委員 どうもたいへん技術的な点でもありますし、先生お尋ねによりますと、従来塩崎局長とは何回も議論したのだとおっしゃいます。その議論を私聞いておりませんので、いま一度局長からあらかじめ答弁をさせまして、その上で判断をいたしたいと思います。
  141. 横山利秋

    ○横山委員 理屈はいろいろ立てられる。立てられるけれども、ぱっと聞いた瞬間に、納税者がなるほどと思うような税制でなければ、ほんとうの税制とは言えないですよ。理屈を聞いて、ああそうか、うん、そんなこともあるのかでは、やはりわかりやすい税制とは言えないです。税務署がいつ何回いっても、三年ないし五年までは更生決定できるなら、納税者もいつ何回でも減額修正ができたっていいじゃないかということは、きわめて常識的じゃありませんか。政務次官、どうですか。あなたの答えが間違っておっても、あとで文句は言いませんよ。まずあなたの答弁——あなた、大政務次官ですよ。大蔵政務次官といえば、副大臣で、各省次官のうちで最も筆頭なんじゃないですか。あなたの良識ある答弁をひとつ期待します。
  142. 小沢辰男

    小沢政府委員 横山先生がおっしゃいますように、非常に私の発言が重大なればこそ、影響がまた大きければこそ、慎重にしなければいかぬわけでございますので、どうぞひとつ、先に局長から事務的な答弁をいたさせましてお答えしたいと思います。
  143. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この問題、昨年国会で一カ月の期限を二カ月に延長いたしましたときにずいぶん御非難があった点でございます。  理由は、先ほど横山委員指摘のとおりでございます。申告納税のたてまえにおきまして、みずから計算して申告する、その際に、私どもといたしまして、財政上の見地から、税額の確定、これは一定の期限の前に確定する必要があります。そのために、過去には一カ月、現在は二カ月というところで線を引いておるわけでございます。それとまた、先ほど申し上げました通則法による誤謬訂正という単独の行政処分によって修正される可能性があるというところでございます。この点につきまして種々の御意見がございますけれども、これは租税収入の特殊性、さらにまた、こういった長らくの税務行政のいろいろな理由のむずかしい点が多々あるかと思います。こんなような点は、ひとつ税務行政の進歩あるいは納税意識の向上、これらとまって直していくべきじゃないか、こんなふうに考えております。
  144. 足立篤郎

    足立委員 関連で意見を申し上げます。  横山君は、もう税制のベテランだし、頭のいい方で、百も承知して言っていると思うけれども、納税者がみずから計算をして申告したものが過大申告であったということは、納税者自身がすぐわかるんです。逆に、税務署のほうは、過小申告を受け取った場合、よく調査しなければわからないから三年なり五年という遡及の規定があると思うのです。しかし、二カ月というのはちょっと短過ぎるように私は思うのです。というのは、病気その他で修正ができなかったという場合の救済措置が講ぜられておるかどうか。だから、少くとも、それは税を確定する必要がありますから、その年度くらいは余裕を見てもいいじゃないか。しかし、税務署が三年のあれがあるから同じように三年認めろというのは、横山君も無理は承知で言っているんだと私は思います。意見です。
  145. 横山利秋

    ○横山委員 原則的に私の意見に賛成をされました。足立委員、どうもありがとうございました。  ただ、足立委員の意見の誤謬は、こういうことなんです。二カ月のあとでも誤謬修正の余地があると言っているんです。つまり、正確なことであるならば、三年間でも事実上の減額修正ができるということなんです。だから、塩崎さんの言う財政的な影響があるという理屈は理由にならぬ。これは無意味です。理屈にならぬ。二カ月のあとでも、誤謬修正によって、ほんとうのことであるならば直せるんだから、財政上の負担、影響いかんという論は成り立たぬ。  それから、足立委員のおっしゃる二カ月はいかぬが一年ならいいという理屈はどこにありますか。一年ならいいが二年ならいかぬという理屈はない。納税者というものは、なるほど税は安ければいいに違いないから、なるべく低目に出すという心理があることは間違いない。しかしながら、おれは明らかにこれが間違ったと思ったときに、客観的な証拠があるのに、二カ月たったら受け付けぬということはおかしい。だから、納税者とそれから徴税機構との対等の立場というのがわれわれの理想とするものなんだから、こっちが三年ならこっちも三年ということが私は正しいと思う。
  146. 足立篤郎

    足立委員 私の名前が引き合いに出たから、多くは申し上げたくないが、いずれまた小委員会でもできますから、そのときにフリートーキングをやったらいいと思う。さっきの何とか標準のものもそうだけれども、横山君も承知だと思うが、一方の税務署が三年の追及権があるから、納税者のほうも、これは自主的な納税ですから三年を認めろというのは、かえって悪平等なんで、どうもおかしな意見だ。私は基本的には賛成できない。納税者のほうは、自分で計算してやっているんだから、過大申告したかどうかということは自分でわかるわけです。税務署のほうは、納税者が過小申告したかどうかということは、後々よく調べないと、税の公平を期する意味からいっても万全が期せられない、こういうことなんだから、三年程度の余裕を認めるということは、私は当然だと思う。ただ、二カ月は、病気その他の事情で、明らかに本人にわかっておりながら手続ができないという場合もあり得るから、多少余裕を見たらどうか、国の歳入の確定ということもあるので、その年度くらいの幅を持たしたらどうかという意見を申し上げたので、あなたの基本的なものに養成したわけじゃない。
  147. 横山利秋

    ○横山委員 足立委員が、小委員会に移せ、的にはおれも賛成だからというわけでありますから……。
  148. 堀昌雄

    堀委員 関連。  いま横山委員が言いました、税務署長が誤謬修正ができる期間は一体幾らあるんですか。そこのところをちょっとはっきりしていただきたい。
  149. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 五年でございます。
  150. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、実効上は五年間修正ができる。実効上五年間修正ができるなら、塩崎君の言う財政上の問題というのは、ちょっと筋が通らないことになるのではないか。形式的には二カ月だ。しかし、あとは裁量によって税務署によってできる、そのできる範囲は、それが真実に間違っていて、納税者のほうが間違っていて、あとから申し出たことが正しかったということが確認をされたという幅だと思います。そのことが幅になっておる限りは、五年間は認めるということになれば、これは実効上はあなた方も表裏で見ているのではないのか。ただ、そこに表現の方法として、要するに、納税者の権利と税務署側の裁定だということ、この問題の本質は、ここが違うのではないか。  それならば、私は、修正申告にしたところで、これを最終的に認めるかどうかということは、依然として税務署長の判断だ。税務署長の判断が、修正申告と誤謬修正とどこが違うのか、判断に相違があるかどうか、そこをお答えいただきたい。
  151. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この二カ月の問題は、先ほど、私がその原因といたしまして、財政上の理由と申し上げました。財政上の理由と申しますのは、財政収入の確定、つまりその背後には、一つの更正決定という税務署の行為が、申告を出してから始まるわけでございます。それがいつまでも不安定のままでは、更正決定あるいはその前提とする調査も進まない、そういった意味で、二カ月で打ち切って、その後は税務署の調査を始め、それから更正決定に移る、こうなった意味においての確定、それが同時に財政上の収入の確定に連なる、こういう意味でございます。  しかし、一方、税務署の裁量でそれができるのでは、財政上の収入の確定ということも無意味ではないかということに対しましては、いま申し上げました行政上の調査、更正決定権限の発動、この点が発動し得る態勢になりますれば、これは財政収入上の影響も少なくて、誤謬訂正の形でその問題を片づけ得る、こういうつもりで申し上げたつもりでございます。
  152. 堀昌雄

    堀委員 時間が制約されておりますからこれで終わりますが、いまの問題は、確かに法律の書き方の問題です。だから、いまあなたのおっしゃったように、一応申告が二カ月たてば確定しますね。確定をしたら、それに基づいて調査し、更正をするんだ。これはもちろんそれでいいと思う。一応そこで確定をするということと、減額修正という問題とは、私は別に考えていいのではないのか。二カ月たったところで一応は確定をします。それを土台にして処置をしてよろしい。しかし、処置をしていって、更正をするときには、当然中身をこまかく調べるんだから、その時点で誤謬修正と同じような効果が出てこなかったら、何のために税務署は調査したかわからない。  さっきの泉君の話を聞いていて心外なのは、標準率を表へ出したら、青色申告者がそれを上回って青色申告をすることをやめるようになるだろう、だからそういうのを出してはいかぬというのだが、冗談じゃないですよ。あなた方のほうで、ある業種の一定の幅の中で、両側を切ったもののまん中の部分を具体的に調査をして、それの標準的なものをもし出しておるとするならば、まず大体そこらがその所得の標準だということになっておるときに、青色申告の人がそれを参考としながら、その範囲の中で多少考えたって、私はそうたいした問題ではないと思う。要するに、税務署のほうは、申告した者からできるだけたくさん取りましょうという感触が、いまの答弁の中でも私は感じられるわけですよ。だから私は、真実を求めるのが税務行政の本来だろう。真実が求められるならば、本人が多過ぎたという前に、あなたがたのほうが更正をして、調査をしたときに、あなたの申告は多過ぎたですよというものが出てくればいいわけです。そうすれば、その際に修正申告をなさい。あなた方のほうは、少なかったほうに対しては、多いほうの修正申告なら何回でもさせるのじゃないですか。それならば、多過ぎたものに対して、少なく修正申告をする余地が三年間なきゃおかしいんじゃないですか。だから私は、実効上の問題として、いまのような処置が行なわれるのなら、私は、申告確定の問題と減額修正の問題とは別の問題として考えるべきがこの問題の筋ではないか、こう思うのです。  きょうはここまでにして、税小ででもやりましょうか。
  153. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、もう一つだけ、問題の提起にとどめますが、申し上げたい。きょうは、たいへん同僚議員の御協力を得まして、問題がよくわかるのですが、もう一つ、これはお答えにならなくていいのですが、問題提起をしておきます。同じような問題です。  納税者が知らなかったために、期間を過ぎてしまって税法上の恩恵が受けられなかった問題であります。たとえば交換譲渡の特例なんかですね。そのほか幾らもあります。納税者がその期間中に手続をすれば、合法的に税金が安くなるのにかかわらず、納税者がそれを知らなかったために期間を過ぎた、しかも、客観的な証拠はきわめて明白であるという場合の救済の方法がないのです。これはもちろん誤謬修正としてやってやれないことはない。けれども、どう考えても、これもおかしいと私は思うのです。  納税者というものは税法を知っておるのがあたりまえだという考えはいけない。客観的事実というものが明らかにあって、そうしてその期限を過ぎたから、もうおまえは納税者としての権利を喪失するという考え方がおかしい。これは、その期間内に事実があるならば、後日においても認めるべきだという私の提議です。これもいろいろな議論が発展をいたしますが、納税者というものは大体において税法を知らないと見るべきのがあたりまえで、知っておるはずだから、おまえが知らぬのが悪いのだというきめつけ方は、税法として適当でないという考え方です。これもまた小委員会で出ましたら、十分同僚諸君の御意見も伺いつつやりたいと思います。  こういう問題は私の覚え書きの中にずいぶん多いのであります。こういうことは、塩崎局長が少し視野を変えれば——あなたのほうが私よりもはるかに知っているのだから、ちょっと視野を変えれば、どれほど税制の簡素化なり、あるいは納税者に対して利便を与えるか、はかり知れがたいものがある。視野を少し変えなさい。あなたは渦の中に回っておって、自分が渦に回っているということを知らなさ過ぎるのではないか。主税局長としての年功を経られたのでありますから、もうこの辺であらためてひとつ視野を広くして、別な角度でものを考えるということを一ぺんなさることをおすすめをいたしまして、本日の質問を終わることにいたします。
  154. 内田常雄

  155. 竹本孫一

    竹本委員 税制の簡素化について、簡単に一、二伺ってみたいと思います。  今度の法案の要旨を拝見いたしますと、たいへんけっこうでありますが、主税局長の言われる財政上のプラス、マイナス、これはどんなものですか。
  156. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先ほど横山委員からお話がございましたが、私どもの簡素化は、課税最低限の引き上げというようなことは簡素化の中に考えておりませんので、今回の簡素化と考えられるもの、つまり、税制調査会の簡素化部会の答申にかかるものの減収額は、きわめて少額でございます。
  157. 竹本孫一

    竹本委員 大体どのくらいですか。その金額について。
  158. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 平年度におきまして十億円くらいでございます。
  159. 竹本孫一

    竹本委員 十億円程度の犠牲で事務が非常に簡素化されれば大いにけっこうだと思いますが、この機会に、これに関連して二つほど伺いたいと思います。  一つは、税の一般の領収証の問題ですけれども、これを統一領収証といったようなものを考えて、一方からいえば脱税ができないように、一方からいえば税が簡素に納められるように考えるということはどうですか。
  160. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 税目ごとに色が変わっているだけのようでございますが、様式は告知書、納付書、いずれも統一された形になっておりますが、先生おっしゃった意味はまた別な意味があるかもしれませんが、なお御示唆をいただきまして御返答申し上げたいと思います。
  161. 竹本孫一

    竹本委員 台湾等ではすべてのあれが統一されているというので、事務の簡素化には非常に役立っているというような話もちょっと聞いて、私もまだ資料を十分検討しているわけでもありませんが、すべて統一領収証というような考え方でいけば、事務の簡素化には大いに役立つ面が、まだくふうの余地が残されていないものか。これは御検討いただきたいと思いまして、要望いたしておきます。  そこで、最後にもう一つだけ伺うわけですけれども、これは農協の問題です。農協ということよりも、直接的には今度所得税法の改正で問題になってまいります少額貯蓄非課税制度の実際の運用についてでございますけれども、今度一種類一店舗の要件を緩和するということに、所得税法の改正でなるようですが、百万円までの貯蓄については税はかけないのだということで特別な考慮が払われておるわけでございますけれども、それの実際の運用の面でいろいろの矛盾や不便があるのではないか。その点はどういうふうに考えておられるか。
  162. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 今回少額貯蓄の改正案を御提案申し上げておることは、ただいま御指摘のとおりでございます。預金者から資料をとりまして、銀行を通じまして税務署に出すことにつきまして、若干手続上の繁雑さもいわれたことがございますが、今後できる限り簡素化の方向で研究していきたい、かように思っております。
  163. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、実は最近いろいろと聞くのでありますが、百万円をこえた場合、こえておるけれども銀行等がごまかしておるというか、事務上やむを得ずか、実は利子に税金をかけていないという場合があるのかどうか、その点お尋ねいたします。
  164. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘のように、条件に適応していないために少額貯蓄の要件からはずれまして、そのはずれました預金の利子に対する税金を金融機関から取る例は間々ございます。
  165. 竹本孫一

    竹本委員 私の伺っているのは、百万円で、少額貯蓄の要件を持っていないので税をかけなければならないけれども、金融機関がかけない場合がある、あるいは、かけないがために国税庁から追及されているといった例が最近ありますかどうですか。
  166. 泉美之松

    ○泉政府委員 最近、ある県で農協を調査いたしまして、その結果について報告されたところによりますと、農協に対する預金につきましては、元本百万円以下であれば少額貯蓄としてその利子に対して非課税の措置がとられるわけでありますが、その農協の場合におきましては、少額貯蓄非課税につきましては、まず金融機関でありまする農協に対しまして非課税貯蓄の申し込み書を出すわけであります。それからそのあと非課税貯蓄の申告書を出さなければならないということになっておるわけであります。百万円以下の預金でありながらその非課税貯蓄の申告書が出ていないものが約二〇%ほどある。それから、これは農協のほうの事務の処理があるいは不適切であったのかと思うのでありますが、その二〇%のうちの約八割は非課税貯蓄の申し込み書もなかったということで、非課税貯蓄の申し込み書のほうは金融機関のほうの処理が不手ぎわであったと思われますので、これはあとで補完することを認めますが、非課税貯蓄の申告書の出ていないものについて非課税の措置をとることはできないというような処理をするというような報告を受けております。
  167. 竹本孫一

    竹本委員 泉さん、もう結論を先に言われましたけれども、その前に、いまの銀行の場合に、そういう課税をしなければならぬけれども課税されてないものがどの程度あるという見通しであるか、また、現実にそのことのために問題を起こした例があるのかないのか、その点をまずお聞きします。
  168. 泉美之松

    ○泉政府委員 金融機関につきましては、先般御報告申し上げたと思いますが、非課税貯蓄の制度が昭和三十八年四月にできまして以来、四回にわたりまして調査をいたしました。ただ、その調査の結果によりますと、一人一店舗という原則が従来とられておったのでありますが、それが二店舗にわたっておったり、あるいは自分の家族以外の名義を使って預金をしておったりというようなことで、非課税貯蓄の要件に該当しておらないにもかかわらず非課税の少額貯蓄という処理をされておった、そのために、金融機関に対してその是正を求めて、金融機関から税額を追徴したという例はかなりございます。先般当委員会で申し上げたと思いますが、かなりございます。そういった場合に、金融機関としてその税金を預金者から徴収することが困難な場合におきましては金融機関が負担するというようなことから、いろいろ問題が起きておることはございます。
  169. 竹本孫一

    竹本委員 次に、いまの農協の問題に入りたいのですけれども、農協は所得税法第十条にいう金融機関ということになっておると思いますが、事務能力等の問題からとかく金融機関として取り扱うということについて、大蔵省はしぶい立場をとっておられるというふうにも聞きますが、その辺はどうでございますか。
  170. 泉美之松

    ○泉政府委員 農協が金融機関としての性格を持っておることは申し上げるまでもないわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、非課税貯蓄の制度につきましては、手数の点は確かにございまして、その手数を今後簡素化する方向をいろいろ検討しなければならぬとは思うのでございますけれども、現在までのところ、非課税貯蓄の申し込みと非課税貯蓄申告と、この二つは非常に重要な要件でありまして、それを欠くということになりましては、非課税貯蓄としての処理がなかなかできにくいということになります。したがって、これらにつきましては、関係方面とも打ち合わせまして、農協のそうした事務能力の向上、こういったことをはかりながら、同時に税のほうの手続の簡素化とあわせてやっていくべきものだろう、このように考えております。
  171. 竹本孫一

    竹本委員 長官のおっしゃるとおりだと思いますが、そこで、いま所得税法第十条にいう申し込み書と申告書の問題ですけれども、われわれちょっと聞いてもなかなかわかりにくいのですが、きわめて簡単に、申し込み書と申告書について、ひとつ長官の御説明を願いたい。
  172. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 十条の一項、二項に書いてあるわけでございます。その繰り返しになるかもわかりませんが、まず非課税貯蓄を選びまして——非課税貯蓄は三種類ございます。預金形態、有価証券、社債形態と申しますか、それから信託形態、三つございますが、このいずれかを選びまして、これを申告書と私どもは呼んでいるわけでございます。これに基づきまして非課税貯蓄申し込み書を金融機関に提出をいたします。こういう仕組みになっております。
  173. 竹本孫一

    竹本委員 その申し込み書と申告書が、何だか二重で、たとえば事務能力の問題が確かにありますが、それにしても、農協あたりで、先ほどお話のように申告書を出していない、それが二〇%ある、また、そのうちの八割までは申し込み書を出していないというのが、これは農協自体の事務能力の不足という点もあるでしょう。しかし、同時に、それこそこの法のたてまえが、あまりにも複雑怪奇とは言いませんけれども、複雑過ぎて、ちょっとしろうとに理解しにくいではないか。特に、前にありました貯蓄組合ですか、そういうような例もありますから、非常にこれは誤解を招いておる。農協の事務能力を一応別にいたしまして、そういう誤解を招き、錯覚におちいって、八割まではうっかり申し込み書がなかった、こういうような気の毒な事情があるのではないかと思いますが、その点はどういうふうに見られますか。
  174. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 過去の国民貯蓄組合の非課税貯蓄、これが非常に批判があり、場合によっては乱用された、こういった経過がございます。それが世間の非難を受けましてこの十条の少額貯蓄にかわったわけでございます。そんなような点で、その趣旨が十分徹底しなかった面があろうかと思いますが、そんなような面、これからどんなふうにすれば徹底し、あるいはまた乱用のできない範囲においての簡素化、これはひとつ今後の問題といたしまして研究してまいりたい、かように考えております。
  175. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、結論的な問題になりますけれども、徹底の問題はあとであれしますとして、とりあえず、現実にあちこちで農協では問題を起こしておると思うのですけれども、先ほど泉さんから御答弁が一通りありましたけれども、もう一度よく伺いたいのです。  申告書を出していないものが二割、申し込み書を出していないものがそのうちの八割、そのどちらも出していない場合、それから一方だけを出しておる場合、それに対していま国税庁がいろいろ追及をされておるらしいのだけれども、結論的にいえば、それぞれの農協が県段階等において国税局等と話し合いをするという形でおさまるものか、あるいは、これは国税庁が全国的規模において解決の方法を指示すべきものか、どういう態度をとっておられるか、お伺いいたします。
  176. 泉美之松

    ○泉政府委員 この件につきましては、現在そういう事実が判明いたしておりますのは、ある国税局の管内だけのようでございます。したがいまして、現在の段階におきましては、その事実の発生しております地域を管轄いたしております国税局と当該農協との間で話し合いをして処理をしていただければいいんではないかと思うのであります。もし、ほかの国税局にもそういう事例があるということでございますれば、これは国税庁として取り上げなければならぬかと思いますが、現段階ではその国税局で処理できる事柄であろう、このように思っております。もちろん、その国税局で処理するにつきましては、国税庁と十分打ち合わせた上で処理しなければならぬと思っております。
  177. 竹本孫一

    竹本委員 問題は、ある国税局だけならばいいのですけれども、考えてみるのに、その農協の人たちが、ことに窓口がややこしい。二段がまえを誤解しているというようなことは、決して特定の地域だけに限られることじゃなくして、おそらく、まだ問題が発展してないだけで、私は、やはり全国の農協で同じような問題が同じようなケースについて出てくると思いますので、これはもちろん、国税庁と当該国税局で今度きめられる一つの方針というものが全国的なものになるわけでしょうけれども、やはり全国的な規模における解決について考えていただきたいと思います。これが一つ。  それからもう一つはその内容ですが、解決の方法は、ただ、おまえたちの事務能力が足りないんだ、おまえたちの不注意だということだけで、きわめて法律一本やりの立場で解決をされるのか、あるいは、少しは政治的考慮も加えたような、現実に即した——そういう誤解を招くということはきわめてあり得ることなんだから、この際は第一回目ですから、第一回というとおかしいが、とにかく少し調整の方法を考えられるのか、その辺についての方針はきまっておるのですか、きまっていないのですか。
  178. 泉美之松

    ○泉政府委員 これらにつきましては、先ほど申し上げましたように、事実をとくと調査いたしまして、どういう事情によってそういうことが発生したか、その事実を探求いたしました上でそれぞれ適切な処理をはかりたい、このように考えております。
  179. 竹本孫一

    竹本委員 これは事実を調査してからということになりましょうが、全国的な規模で、しかも現実に即した——特に今日簡素化の問題がやかましくなっておるときですから、それは一つやったら全部済んでおるつもりでおったら、もう一つやらなければいかぬのだと言われると、われわれも、なるほど常識的に判断して、えらいややこしいという感じを持ちますので、農協の事務員がそこまで気がつかない。もちろん農協の指導の問題もありますけれども、気がつかないのは情状酌量すべき要素が相当多いんじゃないかと思いますので、ぜひひとつ妥当な解決をしていただきたいと思います。  なお、これと関連しまして、この簡素化ということから考えた場合に、この制度自体を間違えたものを一体どう取り扱うかという問題のほかに、先ほど主税局長がおっしゃったけれども、何か根本的に再検討する方法はないのかどうかという点についてはどうですか。
  180. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 少額貯蓄の制度につきまして今回御提案申し上げている案は、現在の元本百万円以下一種類一店舗主義を数種類数店舗でもいい、こういうふうに広げようという案でございます。  そもそも、少額貯蓄の百万円の非課税というのは何かという問題でございますが、国民の大部分の方々がたいていの方は貯蓄をされておるわけですが、元本百万円くらいまでの所得利子あるいは貸付信託の収益になるかもわかりません、それは課税所得に算入しないという一つの貯蓄奨励の形態だと思うのでございます。そのような見地から見ますと、現在のように一店舗一種類に限定するということは、現在の日本人の貯蓄の慣行から申しまして、はたして百万円の貯蓄ということの奨励に対して適応するかどうか、この点を考えまして、数種類数店舗にしたわけでございます。貯蓄につきましては、先生のおっしゃるように、なお簡素化の面も考えてみたいと思います。  なお、このような案を越えまして、もう少し根本的に少額貯蓄について非課税を簡単にする方法はないか、こんなような御意見かと思います。この点、なかなか研究しなければならぬ点だと思うのでございますが、現在の貯蓄に対する課税あるいは貯蓄のしかた、これの関連から見まして、なかなか技術的に見出すのはむずかしい。たとえば郵便貯金の利子のように、郵便貯金は元本が百万円までという限定があるから簡単にできるわけでありますが、受け入れがまず禁止されておる、あるいはまた郵便貯金をする人の階層から見て、その利子については野放しに非課税にしておってもそんなに弊害はない、こういう非常にラフな方法をとっております。そのために、複雑な手続という問題は要らぬわけでございますが、それを離れまして、私的な金融機関におけるところの貯蓄について、大ざっぱな方法で簡単に非課税にするということは、いまのところなかなか容易ではない、過去の国民貯蓄非課税の経過がこのことを示すのではないか、かように私は思います。  しかし、なおお説に従いましてこの簡素化の方向は十分検討してまいりたい、かように考えます。
  181. 竹本孫一

    竹本委員 免税点といったような考え方でいったらどうですか。
  182. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 免税点にいたしましても、私は同じようなトラブルが起こるのではないかと思います。
  183. 竹本孫一

    竹本委員 もう少し詳しく言ってください。そういう取り扱いにした場合にどういう点で矛盾が出てくるのですか。
  184. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 まず、免税点にいたしますと、第一に不公平の点が非難があろうかと思います。百万円までならば免税、百一万円になると元から利子が課税を受けるといった、簡素化の問題を離れてのわずかの差におけるところの不公平、この問題が出てまいると思いますし、さらにまた、手続的には、免税点百万円にいたしましても、百万円であるかどうかの心証、この問題の確認が、確かに、控除に比べまして、あるいは他の預金があるかどうかに比べましての格差があるかもわかりませんが、同じように起こるのではないかと思います。  しかし、唐突の御質問でございますし、なお十分この問題も検討してまいりたいと思います。
  185. 竹本孫一

    竹本委員 少額配当の控除みたいな意味で、またそれに対する反論みたいな意味での反対が考えられる。いまの不公平の問題もありますが、百万円と百一万円の差でなくて、みな九十万円くらいのところで預けてしまうという、そのほうの心配は大してないのですか。そのほうの反対ではないのですね。
  186. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 同様に分割の弊害は確かにございますが、現在でも百万円までならば数種類数店舗に分けてもいい、しかし、それは一々申告書を出していただきます。それによって総合の可能性はございますからでき上がる、したがいまして、免税点にいたしまても、百万円という限度を固執いたします限りは同じく申告書という問題が付随してくるのではないか、かように思いまして、そんなにその問題を根本的に解決するというふうにいまのところ考えられないと思う、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
  187. 竹本孫一

    竹本委員 これは農協の事務能力だけの問題でなくて、一方からいえば、貯蓄奨励の問題、一方からいえば、そういう事務処理能力の問題、両方の面から必ずしもその点が一番いい方法だという意味で私も申し上げたわけじゃありませんので、いずれにしましても、いまの第十条の一項、二項の規定は、われわれ法律になれておる者が見ても、普通に考えて、二段がまえというのはややっこし過ぎる、あるいは聞いた場合に、一方八割が忘れておる。これは八割のものについては、故意にしないやつもあるかもしれませんけれども、まあ気がつかないというのか忘れておるというのか、きわめて同情すべき立場だろうと思うのです。ということは、裏から言えば、この規定自身が現実に即していない。あるいは、少なくとも簡素化が叫ばれておる今日の段階において再検討を要するということを意味しておると思うのです。そういう意味合いにおいて、どの方法がいいか、今日直ちに結論を出すわけにまいりませんが、十分御検討をいただくようにお願いしまして、質問を終わります。
  188. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 確かにお説のとおりでございます。私も、少額貯蓄のみならず、税法上の手続が非常に詳細過ぎまして、さらにまた、この点法律に規定されておるだけに、その改正がいろんな意味におきまして固定化したり、むずかしいというような事情になっておる、少し行き過ぎた面があるように思うわけでございます。弾力的な改正ができるような点を主張するにはどういった法形式がいいか。これは先ほど横山委員お話しになりました手続だけの欠缺のために、実態には適応しておるが、税制上の特典が利用できないといった問題、多分に私はこういった税法の規定のしかたに関連しておるわけだと思います。そんなような意味から、ひとつ広い角度で——先ほど横山委員から角度を変えてというようなお話がございましたが、いまの問題もあわせまして検討したいと思います。
  189. 内田常雄

    内田委員長 田中昭二君。
  190. 田中昭二

    田中(昭)委員 私も大蔵省に席を置きまして国税庁にお世話になっておったこともございますし、かつては上司の方ばかりでございまして、心から尊敬もしております。事実、このような尊敬と信頼の中であるならば、私としましては、もう少しここだけの話でなくて、国民の皆さまに聞かせて、なるほどそうだというようなお互いの納得のいく話し合いをなすべきじゃないか。これは話し合いということば自体はあまりにも形式的であるかもしれませんけれども、これは私もここに参りまして痛切にその点は感じております。そういう面につきまして、きょうは標準率の問題もございましたし、私もその点についてはお尋ねもしてみたいと思っております。小委員会にまかせるというような話もございますし、小委員会でどういうことをお話なさるのか、どういう結末になるのかわかりませんが、この問題に触れますならば、質問も簡単にしていってもいいんじゃないかというふうにも思っております。しかし、一応委員長も小委員会にまかせる、また、ほかの委員の方も賛成のようでございますし、税務の簡素化の問題につきましてまずお尋ねするわけでございます。  税制の簡素化は、このたびの改正を見ましても、なるほど納税者のためにもなり、端数切り捨ての問題、税務官吏のほうにしましても多量なる事務量をかかえて困っておるというような問題、多々改正されておるようでございますが、その改正は、あくまでも納税者も税務官吏もともに喜べるような簡素化にならないものだろうか。  この前国税庁長官に予算分科会のほうでお尋ねしましたときには、私は最後に一つ長官にお願いをしておきました。税務執行につきましては、納税者に要求するよりも、まず税務執行者のほうからほんとうにサービス的なことをやるべきでないか、こういうこともお尋ねしておりましたし、それとも関係ございますが、そのような双方とも簡素化されたためにほんとうによかったというような簡素化はなされていない。なぜかならば、簡素化はいままでも何回も行なわれましたが、同僚職員もおりますし、いろいろ話を聞きますと、ほんとうに事務量はふえて、かえって簡素化になっていない、そういうのが偽らざる税務官吏の方の立場でありまして、納税者のほうは納税者のほうで、長官がいつもおっしゃいます近づきやすい税務署というような表現でございますが、これは納税者の心理といたしまして、近づきやすい税務署にしなければならないということはわかるんですけれども現実に税務署に近づいていくかどうかという問題、こういう問題もございますし、まず長官に、この前予算の分科会でお尋ねしましたあの問題につきましてはどのようにお考えになり、またどのような処置をとられたか、それに対して、ほんとうは大蔵大臣にもお聞きしたいわけでございますが、政務次官が来ていらっしゃいますから、政務次官から、そのことに対して今後どのようにしていくんだという方向だけでもけっこうでありますから、まずお尋ねしたいわけでございます。
  191. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、国税庁、国税局、税務署という機関は、納税者に対してサービスを提供する機関である、したがって、単に国税の賦課徴収という権限を行使する機関としてだけでなしに、サービスを大いに提供することによって、本来国税庁が所期しておるところの近づきやすい税務署に持っていくべきだ、この御意見は先日拝聴いたしまして、まことにごもっともだと思っております。  また、国税庁といたしましても、そういうふうに、納税者が税法を知らないために、納めなくてもいい税金を納めなくちゃならぬようになる、あるいは手続をとらなかったために、納めなくてもいいものを納めなければならぬということになる、そういったことのないように、納税者に税法の内容及びとるべき手続につきまして十分情報を提供していくべきだということを平素から心がけております。私も、国税局長会議あるいは部長会議、課長会議のつど、それぞれの面におきましてそういう納税者に対するサービスを忘れないようにということを指示いたしておるのであります。それと同時に、これは長官が幾ら言っても、実際に税務職員がそういう気持ちになってもらわないといけないのであります。したがって、そういうように局長会議、部長会議、課長会議を通じてそれぞれ徹底をはかっておる次第でございます。  この点につきましては、最近は税務署がそういう面で非常にサービスが改善されてきた、ことに、先般の所得税の申告書の提出の際におきましては実によくサービスしてくれたというようなおほめのことばをいただいております。たいへん喜んでおるような次第でございます。  しかし、お話のように、こうした努力は、幾ら努力いたしましてもそれで完全ということになりません。まだまだ不十分な点が多いと思っております。私どもといたしましては、そういう点につきまして、五万の職員が一致してそういう趣旨に徹するように今後とも鋭意努力してまいりたい、このように考えております。
  192. 小沢辰男

    小沢政府委員 税制の簡素化という問題は、これは納税者の方の立場をやはり何としても第一義に考えてやらなければいけないわけでございますが、一方、税務に従事する職員は、先生も御承知のように、実は仕事が何十倍ふえておるにもかかわらず、私の聞いたところによりますと、たしか過去十年以上も定員が増加いたしておりません。非常に少ない人員でよくさばいていってくれているわけでございます。したがって、そうした職員の事務がかえって複雑になったり、あるいはまた苦労がよけいになったりするようなことでありますと、これは中央で考えたことが、税務職員にとりまして非常に仕事をやりにくくするようなことにもなりますので、こういう点がもしあるとするならば、私どもは十分気をつけてやらなければいけない。そのためには、長官を中心にしまして、各国税局あるいは管内の税務署長が中心になって、職員との意思疎通を十分はかり、事務の執行に容易であるような、常に行政事務のやり方については反省を加え、打ち合わせをしていかなければならないと思っております。またそれを実行しておると私信じておるわけでございます。  要は、対人関係におきまして信頼度が基礎になるかならぬか、ほんとうに相手を信用し、それが事実守られていくようなことであれば、まさに法律は法三章でよろしいわけでございますが、なかなかそうもいかないところに非常なめんどうなところがございます。愛される税務署といいましても、取られる側からいいますと、一番いま税務署はきらわれ、いやがられ、またおそれられているような相手でございますから、そういう点を考えますと、一そう法律方面におきましても行政面におきましても、簡素化をできるだけひとつ徹底をしまして、納税者が納税義務を国民として果たしていただけることがスムーズにいくように、税務署の側もできるだけ納税者の立場になって仕事を進めていくようにということで、こういう基本方針で今後ともまたいろいろ御意見を拝聴いたしまして進めてまいりたいと思います。
  193. 田中昭二

    田中(昭)委員 おことばを返すようで申しわけございませんが、まず長官にもう一回お願いしたいのですが、私が予算分科会で申し上げたことにつきまして、それはいまいろいろお聞きしました、近づきやすい税務署にするというのは、これは私のほうから申し上げたのではなくて、長官のほうからそういう方針でやるのだ、そういうことばは何回も、私も税務署におりましたし、聞いておりますし、自分もそのことに対して努力もしてきましたし、それで、そういうわかり切ったといいますか、そういうことよりも、実際に納税者という国家の収入のもとになる人たちに対しては、やさしいことばで、また、あたりまえのことばで税務官庁側からサービスをする、サービスというが、そのサービスも、形式よりも、いま長官もおっしゃったように気持ちの問題、気持ちがまず通じていくならば、少々形式があっても問題がないというのが世間の常識じゃないかと思うのです。  ところが、どうして長官のお考えになることが末端においてそれができないかといいますと、そこにはまた複雑ないろいろな状況が加味されていると思います。ですから、それを排除するためには、簡単に、私のほうから答えを申し上げるわけではございませんけれども、この前、予算分科会で申し上げましたように、税金を取るというようなことばはなくしていこうじゃないか、このようなことを長官が税務職員に対して御指導なさっても無理なことではない。ことばを改める、納税者の人を尊重していこうじゃないか、そういうことが、形式をどのようにサービス的に持っていくことよりも大事ではないか。このようなことを私が申し上げなくてもおわかりになると思うわけでございます。そういうことをお聞きしたかったわけでございます。  また、次官に対しても申し上げましたとおりそういう方向に長官として当然していきなさい、当然そのような職員の質——質といいますか、質よりもみんなでやっていこうというようなあたたかい気持ちが、まず形式を一〇〇%にも二〇〇%にも効果をあげていくことじゃないか。ですから、その国税庁長官のお考えに対して、大蔵省としては、それはいいことじゃないか、じゃ強力に進めていこうというようなお答えができないだろうか、こう私は思うわけでございます。何も、こういうところだからといって、何かしらぬ、いままでの委員会における一つのことばの話し合いの型にはまらずに、そのようなことは言っていいんじゃないか、このように私は思うわけでございます。それは、いろいろ措置法の問題につきましても、いままでのいろいろな議事録を見ましても、主税局長のほうも、長官のほうも、またきょうも本会議であれだけの総理も答弁をしたことに対しては、だれが見てみてもあれはいろいろな問題がございます。そういうことを繰り返すのじゃなくて、実効のある、またわかり切ったことでございますから、そういうことについては、ここで、私はこう思う、こういう方向に行くべきである、これはいままで心には思ったけれども、実行できなかった面もあるのだ、そういうようなことをおっしゃっていただいて何も差しつかえないことじゃないか、私はこのように思いますから、もう一ぺん、簡単でよろしゅうございますから御答弁お願いしたいと思います。
  194. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、国税庁の職員五万が一人一人そういうあたたかい気持ちを持って納税者に接する、これが一番大切だと思います。それによって、納税者の方も進んで正しい所得を申告していただける、こういうことになろうかと思います。お話のように、そういう点の心がけをやっていくように、そして、税金は取るものでなくて納めていただくものだ、こういう気持ちをよく植えつけていきたい、このように考えております。
  195. 小沢辰男

    小沢政府委員 先生のお気持ちはよくわかりました。ただいま長官が申し上げましたような趣旨で、ほんとうにひとつ、率直に税務職員と私どものほうが気持ちの上で一体になりまして、名実ともに愛される税務署という方向で私どももできるだけの努力をしたいと思います。
  196. 田中昭二

    田中(昭)委員 少しまだ不満でございますけれども……。  次官に申し上げておきますが、いま簡略化というようなことで、たとえば税務官吏のほうの立場をとってみますと、実際現地においてはそのような事務量が多くなっておるということはないと信じられる、そのようなおことばでございますが、それは税務署に行って中堅幹部の人に聞けば、だれが見てもそうなっておるということは事実でございます。そんなことがわからないような行政組織といいますか、ポイント、ポイントにおります立場の人が、こういう席上で、それをしいて事務量が多くなっており、困っておるというようなことをおわかりにならないということは、これはどうかと思います。それを一つつけ加えておきます。いま申し上げましたことも、本年度の国税庁の方針としましても、効率的な執務というようなことが四十二年度方針に載っておったようでございます。そういう面からいきましても、これは私たちから言うのじゃなくて、当然皆さんがおわかりになっておることなんでございますから、進んでこういうことはしてもらわなければいけない、こう思うものでございます。  次に、標準率の公開の問題でございます。  標準率の公開ということについて、秘密性があるという問題でございますが、実際、これまた秘密にしている。また、税務職員も秘密の書類であるということは十分考えながら、その実際の適用につきましては、相当の標準率を適用して納税者に申告を促しておるということも事実なんです。もしも、このことが新聞に報道されておりますように、租税法定主義に違反し、憲法に違反するものであるということになりますれば、具体的なその事実を考えてみた場合には、私はこれは大きな問題であると思うのでございます。  当初、長官の答弁では、まだつぶさに、その判決に対する要旨なりそういうものを入手してないというようなことでございましたが、新聞の報道する中にもその判決の要旨というものが出ておりますし、それを読みますれば、租税法定主義という憲法に記載されたものにも違反するかどうかということについては重大問題である。これは当然、税の最高の責任者であられる長官はそれをお読みになったのか、入手しないというのは、それに対する解釈がどうなのか、そういう点を私は感じたわけでございます。  まあ、この問題につきましては、一つ一つ言えばたくさんありまして、これはほんとうを申し上げますと、何時間時間があっても切りがない、このように思いますが、いずれにしろ、いま申し上げましたように、このたびの事件におきます標準率というもので課税しました現在までの実態に対して、率直にどのようにお考えになっておるのか。長官並びに局長、次官、それぞれ簡単でけっこうでございますから、お聞かせいただきたいと思います。
  197. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、標準率表効率表というものは税務職員が仕事をやっていく上におきまして非常に重要なものでありまして、これは秘密ということで公開しないようになっておりますけれども、一部におきましては、むしろ相手方に知らしめたほうがいい場合もあります。先ほど田中先生からもお話がありましたように、農業所得の標準率のごときは現に公開をいたしておるのであります。それ以外におきましても、相手方に知らしめて、それによって申告をしてもらったほうがいい場合もあるわけであります。しかし、同時に、それが公にされることによって、正しく青色申告の記帳をいたしております者が、それと自分の記帳の内容と見比べて、どうもこれでは自分のほうが所得が多くなりそうだから少し手かげんをしようということになりましては、これはその青色申告の本来の趣旨に反するようになってくる、そこに非常にデリケートな問題があるわけであります。非公開ということで秘密にいたしておりますけれども、ある程度は知らされたほうがいい、それは、したがって、ものによってそこにむずかしさが出てくるわけであります。それだけに、私どもといたしましても、この標準率表、効率表につきましては、今後いろいろ検討していかなければならない問題が多いことと思っておるのであります。  それから、先ほどお話がございました新聞にははなはだ不正確にしか伝わっておらないようでありますが、その後、大阪国税局からの報告によりますと、裁判におきましては、標準率表、効率表を公開しないということが租税法律主義に反するのだということは言っておられないようであります。租税法律主義には反していない、しかしながら、租税法律主義の精神から言えば、課税標準をきめる上において非常に重要な意義を持っておる標準率表、効率表については、納税者に知らすのがむしろ適当であって、したがって、これを国家秘密として、実質的に刑罰をもって保護しなければならぬとするには値しないものである、こういうふうな判示と聞いております。したがって、その点だけしか報告がございませんので、詳細は、なお判決理由を取り寄せました上で検討いたしてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、標準率表、効率表につきましては、いろいろ問題がありますので、今後十分腰を落ちつけて取っ組んでまいりたい、このように思っております。
  198. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 釈迦に説法のような感じがいたすわけでありますが、私は、所得税法に規定する所得あるいは法人税法に規定する所得、これはいずれも納税者の個別的な問題だと思います。標準率表やあるいは効率表によって計算されるものではないと考えております。したがいまして、この制度は法律にも全く規定されてない。納税者個々の人が個々の収入、個々の費用、これによって千差万別の所得が計算され、それに基づいて税金を納めていただく、こういうことだと思うわけでございます。  ただ、標準率表、効率表があるというのは、これは多分にわが国のおくれた記帳あるいは納税慣習、これに基づきまして、現在やむを得ない方法としてあるものだ、かように私は考えております。  私は、アメリカでもこの標準率表、効率表があるような感じがいたしましたが、どこの税務署あるいは国税局に行きましても、そんなものはないというような話でございましたし、もちろん法律もございません。ドイツにおきましては、この制度は法定化されておりますが、しかし、これは帳簿のつかない、帳簿をつけることの不向きな人たちには若干不利でも、こういった標準率に基づいて申告あるいは納税することができるという、いわば帳簿のつけない人に対しての手続上の繁雑さから解放する小規模事業者に対する救済的な例外措置でございます。私どもは、税法の理想からいたしまして、やはり納税者の個別計算、納税者の個別的な事情に応じた所得計算を推奨する意味におきまして、将来、できる限り早くこういった標準率表あるいは効率表が問題になるような時期をなくしたいというような気持ちは持っております。そういった意味では、判決がどういうふうに言っておるか存じませんけれども、現在のところは、標準率は、先生がおっしゃいましたように、農業のように、現在の段階では帳簿のつかない方方にとっては、これがむしろ問題のない、あるいは手数の簡便な納税方法であると思うわけでございます。それから自由職業者のように、帳簿等をつけましても、家計と自分の職業部面との厳密なる分界ができないような場合にとっては、平均的なところで所得を求めることも、これは一つのやむを得ない方法かとも思うわけでございます。そんなような意味で、納税者にとって利用される価値はあろうかと思うわけでございます。しかし、これとても理想的な姿ではなく、だんだんと個別的な事情に応じて帳簿をつけて、自分の個別性を反映した所得が計算ができるような方法を何らかの形で考えていただくということが理想ではないか。一方、効率表のほうは、私は現地におりまして直税部長もし、国税局長もいたしておりましたから、これは税務官吏の、所得が正しいかどうかを検査する一つのよすがだと思うわけでございます。まだまだ納税倫理、納税意識が十分でない方々も相当おる中で、こういった効率表で簡単にその適否を判定することも一つの能率的な行政の方法でございます。  こんなような趣旨でございますが、この二つが納税者の所得をきめる唯一の方法であるというようなことを考えるということは、税制上不合理なものだ、こういうふうに考えております。しかし、いま申しましたように、いろいろな沿革的な理由が税制の中にも、税務執行の中にも残っておりますし、納税者がこれによって安心して納税したという面も私は軽視してはならないと思うわけでございます。こんなような角度からこの問題を解決すべきではないかと私は考えております。
  199. 小沢辰男

    小沢政府委員 私は、行政をいろいろ進めていく場合に、現在やっている方法といいますか、そういうもの、それから今後こうあるべきだという議論、これをいろいろ現在やっていることには、実はそれなりの長い行政上の実際の必要性から出てきたものが大部分じゃないか、しいて実はそこに何かこうえらい行政権力が、特に自分の側の立場からして恣意的につくり上げたというよりも、長い間税務署の方々が税というものを取り扱っているその経験上からも、どうしてもこういうものが必要だということであるのではないかと思うのです。しかし、それが、世の中がいろいろ進んだりあるいは経済状態なりいろいろな実態が変わってくるときに、いつまでもそのままにほうっておかないで、毎年毎年振り返っては、さらに、それではあるべき姿はどうなんだということを常に考えていかなければいかぬと思うのでございまして、いろいろ本日行なわれました議論をお伺いしておりまして、私自身はしろうとでございますから、聞いておった感じでは、わずか五万人の職員で、年々増加する納税事務をさばいていかなければならぬとなると、やはりそこに標準率表なりあるいは効率表というものの効果があるのじゃないだろうか、また、納める側も、実はみんな個々にそれぞれ所得というものが違うわけでございますから、千差万別の所得なり態様だと思うので、そういう場合に——またその中には、先ほど申し上げましたように、全部が正直に自分の納税というものを、意識を非常に高く持ってやってくださる方であればいいですけれども、まじめな方もあれば、そうでない方もあったり、いろいろしますと、やはりその必要性からこういうものがあったのじゃないか。しかし、あるべき姿として、今後さらに反省を加えて直さなければならぬ点があるのじゃないかというようなことになりますと、これは当然、私ども行政官庁はいわば効率表のもとに行政を進めているわけでございますので、国民を代表する国会の先生方の議論をいろいろお伺いいたしましたり、また、第一線に従事しておられる職員の方々の実際の経験、意見というものを常に謙虚に聞きまして、そうして、先生が最初におっしゃいましたような最も正しい税務行政であるようなことを常に心がけながらやっていかなければいかぬ、私、しろうとながら、きょうの議論を聞いておりましてそういう感想を持ったわけであります。
  200. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま長官のお話、お聞きしましたが、それは長官、あれじゃないですか、判決の要旨は来ておらないかもしれませんけれども、きのうの夕刊を見ますと、判決の要旨もここに出ております。そういうのを私いまここで読み上げて、それに対してまたどうしようと、そんなことは思いません。長官もお読みになったと思います。この夕刊を見て、一番心を痛めているのは税務職員じゃないかと私は思います。痛めておるといいますよりも、動揺しているといいますか、何か心配があるといいますか、自分たちは以前より比べれば給与もよくなった、こうやって仕事をやっているが、その仕事に対して不安があり、そうして、その仕事に対して意欲をなくすようなことであるならば、これは両方にわたって、先ほどから何べんも言いますように、納税者にも税務職員にも大きな影響があると私は思うのです。おことばを返すようでございますが、標準率を公開することによって、青色申告した人が所得を下げるだろうと言われる。それはかりにあるかもしれませんけれども、青色申告というのは、帳面をつけておりまして、帳面をつけておったものを、それじゃ標準率ができたから、高所得になったからそれをつけ増ししょうとか、経費をつけ増ししようとか、そういうような状況のもとに、そういうことを想定して、青色申告した人が損をみることにはならない。それは先ほどからも議論がありましたように、租税の適正化、真実に課税するという問題であれば、私はそう問題はないのじゃないかと思うのです。またここでそういうことを繰り返しておりましても、長官も十分おわかりになっておると思いますから、この次の議論の段階におきましては、そういうことはもう少し具体性のある御答弁でなければいけないのじゃないか、私はこのように思います。  また、主税局長からも、大体お話の方向は、標準率をなくしていきたい、そういうような姿で進んでいく、このような点を私は強く感じたわけでございますが、私は、一がいに標準率をなくせというようなことも危険性がある、このように思います。ただ、税務行政の実際に行なわれている姿というものは、その標準率によって、例を申し上げれば、不動産収入の所得については標準率によってほとんど申告も慫慂し、また、ほかの所得がある場合には合算して更正決定もなされております。ある年とったおばあちゃんが家賃収入による申告に来た場合、その標準率によってこれだけでございますよと言った場合に、納税もできない、実はことしはたくさん修理もしましてこういうふうに要りました。だけど、それに対して税務官吏は、標準率を作製されましたその趣旨をるる説明しまして、こうなんですよと言って納得させますけれども、時と場合によってはそのようなお年寄りには納得できない場合がある。そのような場合でも、何とか税務官吏はそれに努力し、そうして標準率によって申告させるというのが現状ではございませんか。そういうものに対して、いままでやったことに対しては、これはもう少し時間をかけて、その具体的な事実を取り上げて、いままで税務行政の中で標準率で更正決定した件数は何件か、不動産所得についてはほとんど標準率を適用し、それから特別経費を認めるというのは税理士さんか特別の経験のある人だけなんです。極端なことをいえば、負債利子を控除するというときには、控除できないような負債利子をつけて控除しておっても、標準率の何分の一かの所得で認めておる事実もあります。ですから、そのようなことを、少しよく現実の姿を知って、そうしてそういう問題をここで、悪いものは悪い、こういうふうに将来はよくしていきたい、このようなお話ができないものか、私はこう心ひそかに思うわけであります。  また、次官の御答弁については、実務の経験もないし、特に税法につきましては、先ほども話があったように、一般の納税者が税法を知っておるという立場では、なかなか問題が起こってきてできないのじゃないか、こういうことも思いますが、次官のお話の中で、この税務職員がそういうことによりまして仕事の意欲を失っておる現実の姿というものをお知りにならないのじゃないか。それは確かに給与はよくなりました。しかし、話をすれば、まだまだ給与をよくしてくれという話も、行きました場合にはしょっちゅう出ます。ところが、それでは税務官吏の中堅幹部が、十五年、二十年つとめた人で係長にもなれないでどのようなことを訴えておるか、どのようなことを心に思っておるか。それは、税務官庁の中で上役に言ったり、そういうことを訴えるところがどこにもない。ほんとうに御存じでしょうか。その点につきまして、もう一ぺん長官にお尋ねしたいと思います。
  201. 泉美之松

    ○泉政府委員 田中委員もよく御承知のように、税務職員は、戦後地方自治という関係からいたしまして、それまで国税の賦課は国の機関で行ないますけれども、徴収を市町村に委託しておったのが、市町村ではそういう徴収事務をやらないということになりまして、急激に人員を増加いたしました。その際相当多数の職員を三、四年間というごく短期間に採用いたしております。その職員が、現在採用後だんだん二十年とか十八年とかいう年数に達してきております。ところが、その職員の数が非常にたくさんでありますために、いわゆる係長というような役職のポストにつくことがなかなかできない、そこでいろいろな不満を抱いておるという事実、これも確かにおっしゃるとおりだと思います。私どもといたしまして、いわゆる中ぶくれ層の問題につきましては非常に頭を痛めておるところであります。  私どもといたしまして現在考えておりますのは、いわゆる係長ということになりますと、部下職員がおらないと係長ということにはどうしてもなかなかいかないというような事情からいたしまして——税務職員は本来専門職なのであります。国税、所得税なり法人税なり、あるいは酒税なり物品税なりにつきまして納税者が申告書を提出する、その提出するについていろいろ相談にあずかる、同時に、提出された申告書を調査いたしまして、その内容の適否を判断して、いや、これは十分でないから、この申告については更正する、あるいは、本来申告すべきものを申告しておらないから決定をする、こういったような非常に専門的な仕事でございまして、本来専門職でありますので、そういう意味では、従来の係長制度よりも専門職としての調査官、徴収官という体制に持っていくのがいいんじゃないかという考えをもちまして、現在そういった専門職で充実していく、そして、それによっていわゆる中ぶくれ層の人たちの不満を解消していくようにしたい、このように考えて鋭意努力いたしておるのであります。しかし、これも予算を伴うことでありまして、なかなか容易でございませんが、そういった方向で解決するよりほかはないものと思っております。
  202. 小沢辰男

    小沢政府委員 私、実は昨年参りましてから一番驚きましたのは、税務署の職員がわずか五万人の職員でほんとうによく今日このような大事な仕事を、しかも非常に膨大な事務量を処理しておるということを、初めて入った役所でありますので、まず驚きました。一方、その待遇につきまして、ただいまちょっとお話もございましたけれども、一般行政職との間に、たしか前にはある一定の差を設けておったものがだんだん縮まってきておるような現実もあるようでございます。また、二年で大体交代、転勤をするという例が多いわけでございますが、その場合の子弟の教育あるいは生活あるいは住宅問題というようなことで、その点につきましては、大蔵省部内の予算にもありますけれども、今後大いにできるだけの協力をしてやらなければいかぬなということを、私非常に痛切に感じました。幸い、先生のような税務署の職員の方々のことをよく御心配くださる先生方が今度はだいぶ出ておいでになりましたので、ぜひひとつ、先生方の御協力を得まして、待遇改善なり事務の改善なり、税務署の職員がもっと喜んで働ける体制をつくり上げるように今後とも一そう努力したいと思います。たいへん職員を思う貴重な御意見を承りまして、心から感謝を申し上げる次第であります。
  203. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま標準率の問題から職員の待遇の問題に入っていったわけでございます。  長官にお願いしておきますが、その中ぶくれの問題については、長官が十分お考えになって御心配なさっておる、このように思っております。しかし、中堅職員のほんとうの腹の底からの叫びは、まだ別な問題がある。御存じのとおり、係長になりますとあまり実際の仕事にタッチしませんが、そういう問題、それから実際執務しておりますその状態といいますか、これはたいへんなものでありまして、ほんとうにそのような執務に対する意欲という問題が一番大きく影響しておるのではないか、このようなことをつけ加えておきます。  それで、税務の事務簡素化につきまして、いろいろな税法が現在難解である、また、通達等も多いというようなことにつきまして、まず所得税、法人税、相続税につきまして通達というものはどれだけあるのか、これはあとで資料でもけっこうでありますから提示していただきたいと思いますが、御説明いただけるでしょうか。
  204. 泉美之松

    ○泉政府委員 各税につきましては、公開通達は通達集というのがございまして、それを差し上げたいと思います。
  205. 田中昭二

    田中(昭)委員 それではそれをお願いしておきます。  それから、税務署関係と納税者の両方の間で一番問題になっております銀行調査の問題があると思います。銀行調査に対してはどのような見解があるか。また、所得税法、法人税法によってきめられました提出すべき支払い調書というものもございますが、このようなものはどのようになっておるか。不備なものもあるようにも思われますし、その支払い調書の提出によって納税者からのいろいろな苦情もあるかと思いますが、その二点につきましてお尋ねするわけでございます。
  206. 泉美之松

    ○泉政府委員 銀行調査につきましては、田中委員承知だと思いますけれども銀行預金の秘密性という点を考慮いたしまして、現在におきましては、銀行預金を調査いたしますときには、税務署長が一々の調査件数ごとに銀行調査を行なう職員の官職、氏名を書きまして、これを相手方金融機関に渡して、そうして銀行調査を行なうという手続をとっております。  これにつきましていろいろ御意見があろうかと思いますが、税務職員だから、いかなる場合にもどこへ行って調査してもいいではないかというような御意見もあろうかと思います。しかし、やはり預金者というものの心理を考えますと、そうむやみやたらに金融機関に預金をしておる内容を調査されるということも適当ではないと思います。現在のように、税務署長が一々の調査事件ごとにそういう書類を発行して調査に行くということはやむを得ない措置であると思っております。  ただ遺憾なのは、そういう書類を持ってまいりましても、金融機関側の協力を得ることがなかなかできない場合が多いのであります。私どもは私どもとしてルールを、きめたことを守っておるのでありますから、金融機関の側におきましてもそのルールを守ってやってもらいたい、そうして、そういった書面を持って調査に参りました場合には十分協力してもらいたい、こういう気持ちを強く持っております。このことにつきましては、金融機関にそのつど申し入れをいたしておるような次第でございますが、まだなかなか協力を得られない事例がありまして、非常に困っておるような次第であります。今後もそういった事態の改善をはかっていきたい、このように思っております。
  207. 田中昭二

    田中(昭)委員 長官は何か用事があるようでございますから……。
  208. 内田常雄

    内田委員長 田中委員に申し上げますが、参議院が予算委員会を開会中で、参議院の予算委員会から実は長官を二度目に借りてきてここへ来ていただいておりますが、再三、早く戻ってくるようにという要請がありますので、御了承願います。
  209. 田中昭二

    田中(昭)委員 それでは、国税庁長官はけっこうでありますから、主税局長にいまの問題で聞いておきたいと思います。
  210. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 支払い調書の問題でお答え申し上げますが、もう田中委員指摘のとおりでございます。私は、申告納税が納税者のみずからの自覚によって完全申告納税がされるならば、支払い調書の提出といったような仕組みは要らないと思います。しかしながら、もう御案内のように、まだ支払い調書が出ないと完全に申告していただくということも言えないような場合が相当あるようなわが国の税務環境でございます。そういった点で、私どもは支払い調書の提出の問題は、制度といたしまして非常に重視しております。しかしながら、納税者あるいは源泉徴収義務者、関係者の方々の手数はできるだけ省略したい、こういう気持ちで、今度の簡素化の方向を議論する際に考えまして、特に今回は給与の源泉徴収の支払い調書につきまして、これをいままでの利用状況から見まして、できる限り簡素化したい、こういうふうに考えております。  なお、利子や配当につきましての支払い調書は、御案内のとおりでございまして、利子は源泉分離でございますので調書は出ておりませんし、配当につきましては、一回の支払い金額年五万円までは取らないというような制度がございまして、こういった面は簡素化されておりますが、一方、給与等につきましてはまだ簡素化する余地があると考えまして、今度はそんな方向で検討いたしております。
  211. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの銀行調査の件につきましては、長官の御意見で一応意思はわかりました。また、支払い調書もそのとおりでございます。  ただ、それに一つつけ加えてお願いしておきたいのは、銀行側の、金融機関の協力を得られないという問題でございます。これに対しましては、脱税というようなものが予想されるならば、私は、金融機関の協力とかそういう問題ではなしに、当然調べるべきである、そういう点について、税務署も金融機関に行くのはほんとうに何かしら足が重い、また反面、秘密性のために高額所得者が優遇されているのじゃないか、そのようなこともちまたで聞くわけでございますから、この点については今後の改善お願いする次第でございます。  もう一つお尋ねしますが、これも簡素化に関係があるかと思いますが、確定申告をやる場合に、最近その申告をするために地方税も国税も一緒に申告を済ませるという問題がございます。これは地方税のほうがおもにその恩典には浴しておる。また、納税者のほうもほんとうに助かることで、画期的なことだと思いますが、税務執行上の簡素化はどうであるのか。また、この問題につきましては、簡素化ということは、あくまでも仕事の形式の簡素化だけではなくて、効率的といえば、使用する経費の節約、仕事の能率、はっきり言いまして、合同の確定申告のために、どれだけ税務署のほう、国税のほうは経費も節約できて能率が上がったか、地方税のほうも経費が節約できて、どのように能率が上がったか、こういう問題については、当然、いままでの経過を見て、具体的にその事実をはっきり出すべきじゃないか、このようにも思いますが、このことにつきまして、主税局長のお考えを承りたい。
  212. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘の、国税と地方税の申告が一通の申告書で足りるということにいたしましたのは、ことしの申告からでございます。簡素化の方向は多々ございましたが、大衆の最も喜びました点は、この所得税と住民税と事業税の申告が一通で済むというところでございました。そういった意味では、税務署あるいは地方団体に若干手数がふえましても、この問題は納税者のために、ひとつ大いに進めるべきである、しかしながらその手数は今後の研究に待つべき点が多々あるかと思います。あるいはまた、税法の統一の問題、やはり地方税のために特別な欄をつくりまして申告するようなことにつきましても、今後大方の御批判を得ながら簡素化して、できる限り手数を省略する方向に進めたい、今回初めてのことでございますし、現在まだ完全な結果の集計は見ておりませんが、いずれまた、この集計についてどういうところが問題であったか、どういうところに手数がかかったかということを御報告申し上げる機会を得たいと思っております。
  213. 内田常雄

    内田委員長 次回は、来たる十六日、火曜日、午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会