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1967-03-29 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十九日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 三池  信君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 武藤 山治君 理事 春日 一幸君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    菅  太郎君       鯨岡 兵輔君    小峯 柳多君       河野 洋平君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    永田 亮一君       西岡 武夫君    村上信二郎君       村山 達雄君    山下 元利君       山下 貞則君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    只松 祐治君       広沢 賢一君    堀  昌雄君       村山 喜一君    柳田 秀一君       山田 耻目君    横山 利秋君       竹本 孫一君    永末 英一君       伊藤惣助丸君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務省経済局長         事務代理    鶴見 清彦君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省関税局長         事務代理    細見  卓君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         国税庁長官   泉 美之松君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         農林政務次官  草野一郎平君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省通商         局長事務代理  原田  明君         通商産業省公益         事業局長事務代         理       藤波 恒雄君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十九日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税の源  泉徴収臨時特例に関する法律案内閣提出第  一号)  期限定めのある国税に関する法律につき当該  期限を変更するための法律案内閣提出第二  号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案及び期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案の両案を議題とし、質疑を続行いたします。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 各委員からいろいろ質疑が行なわれまして、租税特別措置法不当性、好ましからざる点、効果の是非が明らかにできない点、これらの問題については過般各党の委員から指摘をされたとおりであります。私はここで主税局長並行線議論をしようとは考えておりません。しかし、あまり好ましい税法のあり方ではないという点については、過般予算委員会においても大蔵大臣北山愛郎氏の質問に対して答えております。特に配当所得などの優遇措置というものは好ましいとは思わない、しかし、諸般の情勢からやむを得ないんだということで答弁がありました。私はそれを了解するわけにはいきませんけれども、そういう前提に立って、きょうは少し実態を明らかにしてもらいたい。こういうつもりで質問をしてみたいと思うわけであります。  第一は、昭和四十二年の三月三十一日で期限の切れる租税特別措置、その項目別に何項目あるか、ひとつ最初に明らかにしてもらいたい。
  4. 塩崎潤

    塩崎政府委員 租税特別措置法期限の切れますものは全体で二十八項目でございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 二十八項目と申しますが、さらにその中を詳しく目まで分けた場合には三十五になるのじゃありませんか。いかがですか。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 数え方でございますから、私の計算と違うかもわかりませんが、そういうこともあり得ると思います。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは順次お尋ねいたしますが、あなたたち税制調査会に出した資料、それをもとにこれからちょっとお尋ねいたしますが、それによりますと、三十五項目にわたって期限の切れるものがずっと列記されております。  昨晩問題になった一銘柄五万円以下の配当所得についての確定申告を要しない特別措置は、税制調査会へ出した資料によると四十一年十二月三十一日期限、過般われわれが資料として要求をした租税特別措置及びその減収一覧表によると本年の四月三十日になっておる。どちらの資料が正しいのか、まず明らかにしてもらいたい。
  8. 塩崎潤

    塩崎政府委員 配当には期限の切れるものが二つございます。  一つは、ただいま御指摘でございました少額配当についての申告不要、これは昨日ずいぶん私どもは御議論をしていただきました例の十二月三十一日で切れるものでございます。もう一つは、四月末で切れるものは、御案内のように、やはり同じ時期に、昭和四十年分から始まりました配当についての源泉選択特例でございまして、源泉選択を選ぶなら一五%の特例、これは四月分で切れることになっております。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたのいまの答弁、間違いありませんね。——そうすると、この資料は間違っていますな。われわれに配ったこの資料は虚偽の資料ですな。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 どの資料でございますか。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 昭和四十一年度租税特別措置及びその減収額一覧表
  12. 塩崎潤

    塩崎政府委員 その書き方に不十分な点があろうかと思います。四月末の中に一月末を含めたつもりで書いておるかと思います。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、この資料提出責任も、おそらく委員会要求された場合には、これは主税局責任だと思うのです。十二月三十一日に期限の切れるものを四月三十日までという書き方をしてわれわれに資料を出されたのでは、ゆうべのような議論をする際にどちらがほんとうかわからぬじゃないですか。こういういいかげんな資料では、以後、主税局資料は信用できないという不信感がつのるばかりである。もしこれが間違いであったら訂正をしてもらいたい。どうですか。   〔「陳謝しろ」と呼ぶ者あり〕
  14. 内田常雄

    内田委員長 静粛に願います。
  15. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いつでも不十分な点は陳謝申し上げます。  八条の三は四月末でございまして、八条の四は四十一年の十二月末でございます。
  16. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、まことにすなおな答弁で、一応それは了承いたしますが、以後、そういう資料の際は十分ひとつ気をつけてもらわないと、いままでずっとこういう経過を知っている議員はいいですよ。しかし、初めて出てきた方はゆうべのような議論をしたときに、一体こっちの資料とどっちがほんとうなんだろう、これはわれわれをごまかすためにつくったのじゃないかという疑いを持たれますから、以後こういう点は十分ひとつ考慮していただきたいと思います。  そこで、次の問題に入っていきますが、主税局長、できればこの税制調査会に出した資料をちょっと手元に置いて……。
  17. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税制調査会といいますのは、政府税制調査会ですか。
  18. 武藤山治

    武藤(山)委員 この間結論を出した、十二月に出しましたね、あのときの七月の委員会ごろに主税局から提出をした一覧表です。——持っていませんか。持っていなければよろしい。じゃ、この三十五項目にわたる特別措置のうち、今回期限が切れて廃止になるものは、この中のどれとどれですか。
  19. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この中で廃止になるものはございません。単純に期限を延長しようというものばかりでございます。
  20. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、一体、租税特別措置創設した時期と今日とを比較をしてみて——古いのでは昭和二十七年の創設あるいは二十九年、こういうようなものがずっとありますが、これらも全部効果がまだ今後もある、また、存置しなければならないというように、税調ではきれいに一つ一つ洗ってみて、その効果とあるいは創設理由と現状というものを十分分析しているのかどうか、一つ一ついまこれから聞くつもりなのですが、分析してあったら、その分析の結果を明らかにしてもらおうと思っているのですが、そういう洗い方を一項目について全部やっておりますか。いかがでしょう。
  21. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私ども内部ではもちろん、税制調査会におきましても個々項目について御論議を経ていただいております。ただし、経済効果分析につきましては、先般来申し上げておりますように、なかなか、どういうふうに判断していいか非常にむずかしい問題がございますので、これを一つ一つ出していけと言われますと、私どもといたしましては、こういった判断でしたということくらいしか申し上げられないと思います。
  22. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、この減収額一覧表ではおもな項目だけざっと出ておるわけでありますが、その他の中に一切ひっくるめられている項目——一つ一つ聞くほうが答弁者のほうも楽だと思うのですが、具体的に聞きますと、特殊の外貨借入金等利子税率の軽減、これは本年度も続けていくわけですか。1の(2)ですね。この場合はどのくらいこれで減収になるのですか。
  23. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これはもうほとんど減収項目としては立ちません。と申しますのは、御案内のように、もう外国との間に租税条約の締結が進んでまいりまして、こういった特別措置法がなくても大体一〇%の税率になっております。適用のありますのはスイスのようなところでございまして、そういった国には適用がございますが、いまのところ、減収としては大きな金額をあげているほどのところはございませんので、減収計算はいたしておりません。
  24. 武藤山治

    武藤(山)委員 もう減収も立たない、大体租税条約ができて不必要に近いものをなぜ残しておく理由があるのか。積極的存置理由はどういう理由ですか。
  25. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは先ほども申し上げましたように、やはりそういった国との租税条約を締結しない国から金を借りるような場合、わが国はまだまだ資本の輸入国であるということがいわれておりましたのでございますが、今後におきましても、やはり先進国からは金を借りて、後進国に金を貸すというような場合を考えますと、まだ存置理由がある、こういうふうに判断しておるのでございます。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 私は、そういう理由じゃなくて、これは項目別に全部一つ一つ洗ってみたとは思えないのですよ。税調でも一項目ずつきちっと洗って、もうこれは効果がないから消してもいいだろう、廃止してもいいだろうというようなことをきちっとやっていないのじゃないですか。  たとえば、それじゃもう一つ聞きますが、七番目に開墾地等農業所得免税というのがありますね。私は免税にしておくことは賛成ですよ。賛成ですが、実際には、たとえば四十年度でもいいですが、三十九年度、四十年度でどのくらい該当税額減収額がありますか。
  27. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは、ただいま武藤委員指摘のように、農業所得が二十億円をこえる程度税額でございますので、こういった制度を置きましても、減収計算をするほどの額にならないことは事実でございます。農民の一つ刺激措置といたしまして、こういったことをやることについての特例措置を設けておる、開墾地について特殊な作物をつくる場合の特別措置は必要であろうということでこれは残しておるわけでございます。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、必要だろうという主観的判断具体的数字が出ないようなものまで特別措置として、ざっと三十五項目も残しておくこと自体に、私らは主税局姿勢——税調資料を出す場合の姿勢ですね。租税特別措置は将来合理的に廃止していかなければならぬという一応答申が出ておるわけですね。だから、合理的にこれを検討してみて、効果や何かが国会で説明できないようなものは、もう消していくべきじゃないですか。
  29. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいまのことに関しまして、私ども資料をもって検討しておりますが、適用人員は、たとえば四十年におきましては三千六百二十六人でございます。開墾地免税でございますね。それによる免税額は六千九百四十一万六千円を四十年度では見積もっておられますが、億にも足らない金額でございます。三十九年はわずか九百四十八人で、免税額は七百四十一万九千円、こういった数字が出ておりまして、武藤委員のおことばではございますけれども、私どもは、個々項目につきまして、内部からは十分検討し、さらにまた各省との間の検討を遂げ、税制調査会におきましても御検討をいただいておるのでございます。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、そういう特別措置存置してくれという陳情者ですね。利子配当をまず取り上げてみますが、利子配当制度を今後も維持し、延ばしてくれという陳情者は一体どういうところから出ておりますか。
  31. 塩崎潤

    塩崎政府委員 陳情と申しますと、それは、大きな経済政策といたしまして、私ども大蔵省内部でもいろいろな要望が出ますし、意見も出るところでございます。経済界からは強い要求があることは御存じのとおりでございます。
  32. 武藤山治

    武藤(山)委員 たとえば配当の場合に、株を買っている大衆なり一般納税者から、配当の税金はこれだけ安くしてくれというような陳情を具体的に受けておりますか。
  33. 塩崎潤

    塩崎政府委員 なかなか、消費大衆というものは、その声がまとまっても入らないのは武藤委員御存じのとおりでございます。しかし、配当の元本でございます株式、それをまた一般的に申しますと、直接投資という形で経済界から、株式について、あるいは配当について間接金融と同じような待遇をしろという声が出ていることは御存じのとおりでございます。
  34. 武藤山治

    武藤(山)委員 これもやはり主税局から出した資料だと思うのでありますが、主税局と書いてありますな。四十一年十一月四日付で税調に出した資料、ずっと一覧表を見ますと、租税特別措置に強く取り上げられている項目を見ると、大体財界要望というものが強いですね。労働組合だの、消費者組合だの、生活協同組合だの、こういうところからの陳情は、一応は書いてあっても、取り上げられない。だから、私は、租税特別措置に組み入れるか組み入れないかという判断が、主税局と一部税調内の財界代表発言、こういうものに非常に左右されているような気がするわけであります。この要望団体一覧表をずっと見てみると、どうもそういう気がしてならぬわけであります。たとえば、配当所得の場合は、証券団体協議会が一番強い要望団体として記載されているわけですね。利子所得の場合は、全国銀行協会相互銀行協会、みな銀行団体が強い要望をしている。それじゃ、なぜもうちっと庶民の末端の人たち要望というものを認めてくれないのか。たとえば消費生活協同組合等留保金特別控除、これなどは税額からしたら微々たるものじゃありませんか。しかも、物価を下げるという、いまの物価上昇気運のときにこそ消費者に直接、中間経費を減らして、できるだけ会員に安く物を売ってやって、国の施策に両々相まつような組織じゃありませんか。そういうようなものの要望というものは、厚生省も、労働者福祉中央協議会主税局要望しておるにもかかわらず今回も措置しない。片手落ちのような気がするのですが、主税局長、どうですか。
  35. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税制がどういう声に基づいてつくられるかという、非常にむずかしい御質問でございます。  私どもといたしまして、国会に提案されるまでには十分各方面の声をも伺いまして立案につとめているつもりでございます。そしてまた、この声に基づきまして、税制調査会で公正な第三者の方方の御検討をいただいておるつもりでございます。経済界要望も、さらにまた、労働者団体要望も同じようなウエートで取り上げられておる、私はこういうふうに考えております。所得税減税労働者団体の大きな声でございますし、退職所得減税もその声の反映でございます。さらにまた、内職所得というようなことも、そういった声の反映と私どもは考えていいんじゃないかと思うわけでございます。  消費生協の問題を取り上げられましたが、消費生協消費生協検討いたしましたけれども、やはり別の角度から見ましてこれは取り上げられるべきではない、やはり消費生協というものは中小企業との競争、さらにまた員外利用程度、こういった問題から見まして、まだまだ取り上げるには適当ではない、こういうふうに判断したわけでございまして、それは声といたしまして同じようなレベルで取り上げたのでございますけれども、別の理由から税制改正案の中に盛り込むには至らなかった、こういう事情でございます。
  36. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、後刻でけっこうですから、生協留保所得特例を認めないという積極的な理由文書にして、員外利用が何%くらいあって、こういう点が一般商店と競合して、片方を認めると片方片手落ちになる、農協森林組合、こういうものの留保所得に対する特例を認めている理由は一体何であって、それを比較勘案できる資料をばらっと出してください。主税局長いいですね。それまで、いまの質問はこの次まで留保しておいて、本法のときに徹底的にやりましょう。どうもいまの主税局長答弁はまことに主観的であって、客観的に森林組合農協消費生活協同組合あるいは小規模共済事業、そういうようなものとの全体の権衡というものの上に立った議論ではない感じがするわけであります。したがって、その資料を、ひとつ納得のいくように、私が、なるほど主税局長公平無私、日本の財政歳入面から担当する第一人者であると認められるかどうかというのを資料に基づいてこの次にやりますから、忘れずにその資料を出してください。きょうは時間が四十分くらいですから、あなたと議論している時間がありませんので残念ですが、いまの議論はちょっといただけません。ひとつあとでゆっくり資料を出してください。委員長資料要求しますが、いかがですか。
  37. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これはいろいろな考え方がありまして、武藤先生のおっしゃる御議論もよくわかるわけでございます。資料を出せと言われれば出してもいいわけでございますが、これは確かに、先生のおっしゃったような、一つ考え方にすぎないと言われればそうでございますが、そういった考え方文書で出して、また、いろんな御批判を仰ぐことはもちろんけっこうでございますけれども、はたして適当であるかどうか、いかがでございましょうか。ひとつ、あとでまた御相談を願いたいと思います。
  38. 武藤山治

    武藤(山)委員 最後の、あとで御相談願いたいということばの中身をぼくなりに解釈すると、それでは、ひとつじっくり武藤議員と一回詰めてみて、なるほど他との権衡上これは取り上げるべきだなと思えば、あるいは取り上げないこともないぞというニュアンスを含んだ発言なのか、それとも、先ほどの前段の答弁をそのまま、あなたの主観は変えられないという形で資料を出さないというのか、そこらをもうちょっと伺わぬと、資料を出さぬでもいいでは引き下がれませんな。
  39. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の申し上げたのは、非常に単純な事柄でございまして、こういった見解の非常に分かれることを一々文書資料として出していくことが、いわば先生方のやられますところの議事進行的な意味で、はたして適当であるかどうか、ひとつこれは理事会あたりで御検討願いたいという意味で申し上げたつもりでございます。
  40. 武藤山治

    武藤(山)委員 理事会検討するにしても、他の組織優遇措置との権衡を、われわれはしろうとでわかりませんから、やはりそれらを資料として出してもらって、理事会検討したいと思います。もう一度資料提出要求します。
  41. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、消費生協内部留保の状況とか、そういった客観的な資料提出するにはやぶさかではございません。  問題は、こういった理由でこういうふうに特例を認めないのだというようなことを、一つ一つの問題について資料として出すことが可能ではございましょうけれども、今後の法律案の審議の進め方として適当であるかどうか、こういった点を御議論願いたい、こういうつもりでございます。
  42. 武藤山治

    武藤(山)委員 適当であるかないか、国会議員調査権があるのですから、資料提出要求したら、さようか、出してやろう、われわれのやっておる仕事は公平じゃ、自信を持ってどんどん資料を出すような主税局長でなければ困りますよ。とにかくそれは出してください。  それから、主税局長は知っておるかどうか知りませんが、新聞の報ずるところや官報の掲載するところでは、やはり証券界金融機関が、時の権力を握った政党に年々かなりの政治献金を出しておることについては、主税局長御存じですか。
  43. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ちらほら新聞でそんなことを見る程度で、私、具体的にそういった事実があるということは存じておりません。
  44. 武藤山治

    武藤(山)委員 存じていないようですから、あとでゆっくり官報を持ってきて、本法のときに、これが租税特別措置法と何らか因果関係がありそうだということを具体的にお聞きします。私は、どうしても、そういう問題とこの租税特別措置利子配当の問題とはからまっておると思う。だから、こちらの片側をかちっと切れば、大蔵省のすっきりした租税公平の原則、応益の原則、能力のある者に多くの担税をしてもらうという租税原則、これがずっと貫かれると思うのです。ところが、どうもこちらのほうのじゃまのものがからんでくるものですから、もっと違うところから圧力が出てきて、国税庁長官のような通達が出てきてしまう。そこら悪循環をだれが断ち切るかといえば、大蔵官僚ぱちっとした国家的立場から、租税の今日の紊乱を食いとめる以外に食いとめようがない。国民のためにまことに不公平な税制が横行する、こう思うのであります。だからひとつ、主税局の直接の仕事の分野ではないけれども、そういう税制がいじられるときには、政治献金のからみ合いというものにもう少し大蔵省は神経を使っていいのではないか、こんな気がいたすわけであります。  本年の新聞を見てみますと、四十一年の十一月末ごろに、大蔵省税制調査会に対して利子配当優遇措置についての取り扱いを一応提案した、それには三つの案があった、当時新聞はそう報道しておりました。それによると、段階的に廃止をする、優遇措置をこのまま存続する、あるいは一年継続で廃止をする、こういうような三つばかりの案を税制調査会に、大蔵省は自分の判断を入れずに——三つということは、とのまま続けるか、廃止するか、合理的に漸次減らしていくか、あたりまえのことでありますが、それに対して、十二月十七日に、自民党幹事長経団連の植村さんが会談をして、国民協会への寄付は一体何ぼしてくれるか、いよいよ金はうんとかかるのだ、すぐ金は集まらないからということで、それはひとつ無担保で自民党に金を融資しましょう、こういうことになったということを新聞が報じておる。これは私の主観ではございませんよ。新聞がそう報じておる。おまけに、今度十二月二十日になったら、経団連は、政治献金は前年の倍額にするとそれを応諾した、同時に、同じ日に自民党政調財政部会証券小委員会を設置して、福田証券業協会連合会長に、自民党側のこれらの特別措置に対する意向を伝えた、こういうようなことが新聞に次から次へと出てきたわけですね。全くこれが無関係だとは言えないわけです。この悪循環政治献金租税特別措置、特に配当利子とのくされ縁、これをやはり大蔵省局長級になったら、もう少し冷静にここらの問題にもメスを入れて、ほんとう税体系としてこのことが好ましいことである、正当なことである、国民に対して何ら指弾されない税制であると、確信を持って主張できる税制に変えるような姿勢をやはり主税局長はとらぬといかぬと思うのです。  なぜそれでは、税制調査会が今度の延長二年間というやつを、法案には三年間になっているのですか、そのいきさつをまず明らかにしてください。税制調査会の答申では延期は二年間、それが三年になったいきさつは一体どういうわけですか。
  45. 塩崎潤

    塩崎政府委員 税制調査会は、漸進的な措置といたしまして、五%引き上げの二年間ということにいたしたわけでございます。これを政府案に取り入れる際に、私どもは純粋な立場で議論を各方面に願ったわけでございますが、その及ぼす効果あるいは税引き利回りに及ぼす影響、これらを考えますと、やはり二年間ではその影響を十分見きわめるに足りない、だから慎重に見守る必要があるということで、政府部内のほんとうに真剣な検討の結果一年延長した、こういうわけでございまして、ほかに他意はございません。純真な気持ちでございます。
  46. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、その政府部内とは一体だれなんかですか。政府部内できめたというのは、大蔵省局長級の事務当局の純粋な判断ですか、三年にしたのは。
  47. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私ども内部におきますところの銀行局、あるいは証券局を含めての大蔵省内部検討の結果でございます。
  48. 武藤山治

    武藤(山)委員 では、二年にした場合と三年、一年よけい延ばした場合と、どういう効果があるのですか。また、どういう積極的な根拠があって、二年間という答申を三年にひん曲げたのですか。何か効果があるのですか。
  49. 塩崎潤

    塩崎政府委員 やはり貯蓄者にとりまして、その税引き利回りの高さはともかくといたしまして、一年間の延長ということは一つの安定的な効果をもたらす、こういうふうに私ども判断したのでございます。
  50. 武藤山治

    武藤(山)委員 税調は、租税特別措置というものは好ましくないという立論に立っているわけですよ。だから、漸次これを整理、廃止の方向で検討するということですよね。したがって、できるだけ短い期間延長しておいて、その間に効果なり波及的ないろいろな関連を検討して、さらにまた延ばす必要があるといったら一年延ばす、こういう前提に立つことが、漸次廃止の方向、縮小の方向じゃありませんか。それを、税調が二年と出したものを御丁寧に三年に延ばすなんということは、漸進的に減らしていくという方向じゃないじゃありませんか。逆な方向じゃないですか。
  51. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもも、税の立場からの議論といたしましては、確かに、できる限り早いほうがいいということは十分言い得ると思うのでございます。主税局長でございますので、そういった点は私どもとして主張したいわけでございます。しかしながら、先般来申し上げておりますように、この特別措置というものは、一つの誘引措置として経済にからみついた根深い問題でございます。税だけの見地で判断することも問題であるということで二年間、一年延長されまして三年間になった、こういうふうにお考え願いたいのでございます。
  52. 武藤山治

    武藤(山)委員 泉さんが主税局長のときよりも後退していますね、あなたになってからのほうが。やはり税というもの、所得税というものは歳入の中の大きなウエートを占める、税体系の中では最も重きをなす存在になっておる。それは総合累進課税という体系をとっておる。これは当然あなたは専門家の本職ですから、その総合累進課税というものをとるたてまえは、所得税がそういう性格を持つのは一体どういうことをねらいとするからですか。何をねらいとするから総合累進課税という制度になっているのですか。
  53. 塩崎潤

    塩崎政府委員 原理的な御質問でございますが、私は、富の分配の促進、こういった角度から、個人に帰属する全部の所得を総合して初めて担税力が測定できる、それを基礎として分配を促進しよう、こういう考え方だと思います。これは一つ税制の基本的な考え方でございます。  なお、私は、租税特別措置につきましては、最近では最も整理が多く行なわれた時期だと思っております。過去何年間のうちに、貯蓄について税率が二十八年以降一〇%をこえたことはございません。五%になり、ゼロになったときもございます。それを私は、そういったことではどうかということで、負担公平と誘引措置との調和、これの妥協ということでございますが、そういったことで一五%にしたというふうにお考えを願いたい、こう思うのでございます。過去の経緯をずっと見ましても、私になりましてから、租税特別措置はむしろ整理した金額がとれまでにないと考えております。
  54. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは金額だけはそうであっても、姿勢がですよ。税調は二年間、その間にいろいろな角度から検討をして、合理的にだんだん縮小していく、廃止していくという姿勢を示したのに、二年間を三年間にねじ曲げて、しかもこれを大蔵省部内の局長級判断でやったと聞いては、なおさらあなたはうしろ向きだ。大臣からの命令なり、政治家の方面からの命令で、しようがない、大蔵省官僚としてそうせざるを得なかったのだと、すなおに答えるならばまだしも、あなた自身が率先して三年に延ばしたということは聞き捨てならぬのです。あなたはうしろ向きですよ。いままでの主税局長の中で、利子配当租税特別措置に一番忠実に奉仕したといわざるを得ない。いただけませんね。本来なら、われわれが多数ならば罷免提案をして首にするところですが、残念ながら少数党だから文句を言うだけで終わるわけです。まことにけしからぬ態度だと思います。  そこでもう一つ、この辺でやめますが、いまの所得税の総合累進課税最高税率七五%、これの適用を受けておる納税者は全国で何人おりますか。
  55. 塩崎潤

    塩崎政府委員 課税所得七千五百万円の方が七五%の税率適用を受けるわけでございますが、いま手元に資料がございません。おそらく何百人かのわずかな人でございましょうから、あとで調べて御報告申し上げます。
  56. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、その上のほうの、大体六〇%程度からの税率適用される人たちの人員、いいですか、その人たちが占める率、総所得金額の中で占める配当収入の金額、もしその配当が全部総合になったとしたら、配当関係の特別措置が全くなかったとしたら幾らの税金を取られ、現在の措置があるために幾らの税金で間に合っておる、また、税率が幾ら低くなっておる、そういう資料を早急に出してもらいたい。
  57. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは非常に技術的な答弁になって恐縮でございますが、現在の税務統計は、千万円というところで申告書のうちから抜き出して、これを最高級といたしまして統計をとっております。それ以上のところの区分けを出そうと思いますと、またたいへんな作業が要るわけでございまして、できる限り私はつとめたいと思いますが、しばらく時間をかしていただくことを御了承を願いたいと思います。
  58. 武藤山治

    武藤(山)委員 その一千万円超というやつの資料は出ておるのだが、いまの最高税率——大体六五%、七〇%、七五%ぐらいの、そこいらをわれわれは調べたいわけです。いかにそういう高額所得者が配当収入が多いかということがその例でわかるわけですよ、五十人や百人の数字をばんと出せば。しかもそれを、今日の配当優遇のために税率がこう下がっておることを国民に知らせたいわけだ。いかに大蔵省がこういうひん曲がった税制を押し通しておるかという一番いい証拠になる。それを出してもらいたい。
  59. 塩崎潤

    塩崎政府委員 最近の所得状況で千万円という分類では御満足をいただけるような資料でない点は、私も同感でございます。しかし、先ほど申し上げましたように、申告書の分類から——機械にかける前から分類しなければいけませんので、これからひとつ国税庁にお願いしまして、そういった統計は千万円ということじゃなくて、私はもう少し上をつくりたいと思っていますが、どの程度金額がいいかということはもう少し研究させていただきまして、今後皆さん方の御要望に沿うような資料をつくることでひとつ御了承いただきたいと思います。直ちにということはひとつ御了解願いたいと思います。
  60. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでよろしい。したがって、国税局と主税局とで、最高税率のほうの人たちの所得分布はどうなっているか、そこらをひとつ十分明らかにしていただきたい。  私、これで質問をやめますが、主税局のほうから出された「配当所得の所得階級別表」というのを見ると、あなたも御存じのように、総所得が百万円以下の所得の人で配当所得のある人は七%程度、ところが、一千万円の所得をこえる納税者の場合には、その七五%程度配当所得があるわけです。だから、配当収入のある人は、いかに高額所得者であるかということはこの表を見ても明らかです。しかも、それをさらに金額で見ていくと、なおそれが明らかだ。百万円以下の所得申告者で配当所得を得ている金額というのは、総額にしてわずか百三十四億円です。ところが、一千万円以上のわずか六千人の人たちで三百七十億円の配当所得がある。これでは佐藤内閣は、一体人間尊重なのか、お金持ち優遇なのか。お金を優遇して、人間を乱暴にしているという数字がこれで出ている、人数からいっても。これは人間尊重になりませんよ。総理大臣の大前提の施策から見ても、税制をまず人間尊重に変える必要がある。主税局長、御所見はいかがですか。
  61. 塩崎潤

    塩崎政府委員 配当所得が、高額所得者になればなるほど多くなることは事実でございます。そういった意味で、配当所得の総合課税の必要性は、私どもは前々から力説しておるところでございます。なお、これに加えまして配当控除のあり方、いろいろな問題がございます。  そういった意味で累進課税のあり方といたしましての配当所得について、重視することにつきましては私は全く同感でございます。
  62. 武藤山治

    武藤(山)委員 全く同感だということになったら、漸進的に廃止する方向で前向きに今後は検討してくださいよ。この問題は、時間に一応制約があるから議論はこの程度でやめますが、あなたがいま最後に答えたのが、主税局長としてのすなおな、ほんとうの気持ちだと私は思うのです。こういう不公平な、しかも事務を繁雑にする制度というものは、何とかできるだけ早くやめていきたいという気持ちがほんとうだと思う。それを何らかの命令や圧力で、諸般の事情を考慮し過ぎて、自分の出世の妨げになってはたいへんだなんという憶病風に吹かれてはねのけられない、ここいらにやはりガンがあると思うのです。ここいらのガンを手術するように自分でも心がけてくださいよ。そうしないと、日本の税道徳というものを根本からくずしますよ。将来たいへんなことになると私は思う。だから、租税特別措置の中で貸し倒れ準備金とか渇水準備金とか、いろいろなやつで期限定めのないものは、特別措置ということではなくて、何らか法的にきちっとした制度にして、恒久的なものへ組み入れてもいい。そういうようなものの法体系の整備だって、やってしかるべきじゃないかと私は思うのです。ほんとう特別措置的な、時限的な性格のあるものは整理の方向で検討する。どうしても長期に恒久化しなければならないというものはそれで整理する。もしそういう形で一回整理をするならば、どれとどれが恒久的なものに入る、どれとどれは漸進的に減らしていく方向に入るか、その一覧表だけでもいいから、ひとつ試案をつくってみてくださいよ。どうですか。
  63. 塩崎潤

    塩崎政府委員 簡単に試案をつくることはできないと思います。いろいろな考え方がありますので、これは慎重に検討してまいりたい、かように思います。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 国税庁長官にちょっと農業所得のことでお尋ねいたします。  農業所得は近年低迷をして、納税人員もふえないで二十一、二万程度、全国の農家全体から見たらわずかな所得でありますが、しかし、所得の算定によって地方税の所得割りが全部決定をされる、こういう問題になりますので、低所得の農家にとっては重大な問題であるわけであります。いま、農業所得の算定方法が、全国標準できめるものと市町村に一切まかしているものと、二種類に分かれている。  そこで、まずひとつ御提示願いたいのは、国が標準を作成し、それを地域におろして申告の目安にしている、そういう地域は何県と何県か。また、その標準率の内容をひとつ後刻資料で提示願いたい。いかがですか。
  65. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、農業所得は納税人員も一時に比べて非常に減少いたしております。二十三、四万という状況でございます。ただ、地方税の住民税のほうの関係ではやはり相当の納税者になっておりまして、地方の財源としてかなり大きな地位を占めております。したがいまして、昭和三十七年以降、従来国税庁及び国税局、税務署で作成いたしておりました農業の所得に対する標準課税の方式につきまして、その標準率のつくり方をだんだんと市町村に移譲するという方針をとってまいりました。現在国税庁でやっておりますのは、たばこ耕作の場合の標準率をきめまして全国的に示しておりますが、それ以外は、各国税局でやっておる場合は、市町村にまだまかせ切っていない場合の農業部門、これはごくわずかになっておりまして、それ以外はほとんど市町村が現在やっておるわけでございます。  そこで、たばこ耕作の場合の標準率につきましては、後ほどお手元に差し上げたいと存じます。
  66. 武藤山治

    武藤(山)委員 それから国税庁長官、こういうことは検討できないものでしょうか。最近農家で、農林省の指導のもとに、選択的拡大だというのでビニールハウスが非常に盛んになってきた。イチゴ、トマト、キュウリ、ナス、こういうものの促成栽培のために非常な投資をして、収入金額ももちろん上がります。しかし、投資金額がかなり大きくて経費もかかる。税務署は最近、ビニールハウスをやっているところをみな呼び出しを始めてきた。いままでは国税に全然関係なかった百姓が、ビニールハウスをつくったために税務署に出てこいとやられるので、うちのほうでは大騒ぎになっているのです。この三月十五日前などは非常に大騒ぎをした。  そこで、来年度から青色申告が非常に簡単になる。現金出納帳をきちっとつけておけばいいということになる。そういうときを契機にして、農家の場合も、ビニールハウス部分、すなわちイチゴとか、トマトとかキュウリとかの促成栽培の部分だけ別扱いにして青色申告を認めることは検討できませんか。農業というものは、麦、米を全部ひっくるめた青色申告でしなければいけないのか、それともイチゴならイチゴ、トマトならトマトだけ、そういうものだけの青色申告というものを検討しても可能性はないかどうか、長官のひとつ御判断をお伺いしたい。
  67. 泉美之松

    ○泉政府委員 青色申告は、いまの考え方は、所得者そのものについて青色申告をする、したがって、その所得者のすべての所得について記帳をしていただくというのがたてまえになっております。したがいまして、武藤委員のおっしゃるように、イチゴとかトマトとかキュウリだけについて青色申告して、そのほかの米麦については記帳しないということでは、ちょっと青色申告になりかねるわけであります。ただ、先ほどもお話がございましたように、今回の措置によりまして、できるだけ青色の記帳を簡素化していこうという考え方をとっております。いま農家の場合には、もちろん現金収入だけというわけにいきませんので、収穫物を収穫したことをやはり記帳してもらわなければならぬと思っておりますが、しかし、昨日来お話がございましたように、農業所得者にももっと青色申告をふやすその具体的方法について今後いろいろ検討してまいりたい、このように思っております。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 農業用の耐用資産、減価償却資産、これは主税局担当ですね。——主税局長農業所得は、納税人員が年々減っているものですから、あまり関心を持たぬと思うのでありますが、農業用の減価償却資産の耐用年数は何年ごろいじりましたか。ほとんどいじってないのじゃないですか。
  69. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは、私が三十六年に改定をいたしましたときに、改定いたした経験が記憶にございます。それから、おそらく三十九年も同じバランスをとって、減価償却資産についての耐用年数を、さらに一割五分ですか二割五分ですか、短縮した際にも同じバランスをとった程度に短縮していると思いますが、ただ問題は、非常に農業所得のウエートが少ない、さらにまた、減価償却資産率のウエートも少ないというようなことで、関心の程度は比較的払われていない点もあるかと存じます。しかし、耐用年数につきましては、省令で一つの基準を示しておりますので、必要に応じまして私ども検討するにやぶさかではございません。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいまの答弁でやや満足でありますが、私の見るところでは、農業用資産についての耐用年数が他の産業と比較してみな非常に長い、したがって、これは再検討の必要がある。あなたは再検討をするのにやぶさかでないと申しますので、これは後日個々の耐用年数についてひとつ当たっていただいて、農業用が国税に関係がそうないにしても、地方税にかなり関係があって、低所得者の減税がいま及ばない状態の中では、こういう問題についても関心を持ってもらわなければならぬので、ひとつ十分御検討を願うことにして、前段の配当課税の議論については後日ゆっくりやることにして、きょうは、諸般の事情を考慮して、わずかの時間でやめたいと思います。十分御検討をいただきたいと思います。
  71. 内田常雄

    内田委員長 次に、只松祐治君。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 通産省の方、お願いいたします。  租税特別措置法の中にガス関係の減免税のことがありますので、きょうは関連いたしまして、多少方角が違いますが、ガスの問題について少しお尋ねしたいと思います。  ガス事業というのは、たいへんに公共性を持つものでございます。そこで、こういう特別措置を税法上も講じる、こういう形になっておるのだと思います。ガス事業の公共性と申しますか、あるいは事業目的と申しますか、ガスとはどういうものであるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  73. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 いま先生指摘のように、都市ガスの供給事業は、公益事業といたしまして、一般の事業に対しまして供給の義務を負っておるものでございまして、できるだけ多く良質のガスを、できるだけ低位安定した料金で供給することをこの事業運営の態度として、その目的を完遂すべくやるべきものと考えておるような次第でございまして、われわれといたしましてもそのような行政指導をいたしておる次第でございます。そういう観点から、原料でありますナフサ、重油等につきましても関税上の特別な措置等をお願いしておる次第でございます。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 そういうことで、ガス会社にはいろいろな特権があると思います。たとえば、土地収用法に準じてとか、あるいはまた一定区域内には東京瓦斯、大阪瓦斯が供給してほかのガス会社は入っていないとか、そういう顕著な特権が幾つぐらいあるか、お聞かせいただきたいと思います。
  75. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 いわゆる公益特権と称するものの中には、まず土地の使用、公共用地の使用、それから土地収用法等の適用し得る対象業種にもなっておるといったような関係があります。先生指摘のように、ガス事業法におきましては供給区域を設定いたしておるわけでございまして、そのような点がおもなる点だと存じております。
  76. 只松祐治

    ○只松委員 そのほかに、こういう租税特別措置やら何やら、いろいろあるでしょう。もう少し詳しく……。
  77. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 関税面では、原料の原油並びにナフサにつきまして特別の措置がとられております。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 そういうガス会社の数は、全国に幾つぐらいありますか。
  79. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 全国におきますガス事業者の数は、全体で、私営のものと公営事業のものを含めまして二百二十三件でございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 それに対する供給の戸数、あるいはまたガスの供給量、そういうものについて、概要を御説明いただきたいと思います。
  81. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 四十一年度におきます需用戸数は七百五十五万軒でございまして、供給量は約二十九億立方メートルでございます。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 それだけ七百五十五万戸、二十九億立方メートルも供給しております。昔は、これがほとんど石炭によってまかなわれておった。今日においては、租税特別措置が行なわれますように、重油も入っております。その原料には何々が使われておりますか。
  83. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 ガス発生の原料といたしましては、石炭、それから天然ガス、LPG、それから油——油の中には原油とナフサとございます。あと一部コークスもございますが、おもなるものは、先ほど申し上げました四種でございます。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 大体そういうことのようですが、しかし、LMG、メタンも使われておりますし、原油の中にはABC重油がそれぞれ異なっておりますし、そういう大ざっぱな分け方は大体それでいいかしれませんが、燃料としてはもう少しいろいろなものを混入しておるんじゃありませんか。
  85. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 御指摘のメタン等は、天然ガスの中に含めておるわけでございます。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 燃料は、昔は石炭だけが使われておったのですが、この数年来急速にそういう他の油、ガスというものが混入されておりますね。その混入の比率と申しますか、一〇〇%の中に占める比率が一つ、それから会社によって多少異なるようでございますけれども、ABCというか、大中小の会社に分けて、その会社がどういう原料を使っておるか、ここでわかればひとつお答えをいただきたいし、わからなければ、ある程度お答えをいただいて、厳密には資料要求いたしておきます。
  87. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 では、概略を四十一年度の数字につきまして申し上げまして、詳細につきましては、後ほど資料先生のお手元にお届けいたしたいと思いますが、四十一年度で、先ほどの四種類で申し上げますと、石炭が全国で五百二十万トン程度でございます。それから天然ガスが約四億立方メートル、それからナフサが約六十万キロリットル、それから油が原油と重油、これが百四十万キロリットルでございます。  なお、大手と中小に分けました数字等につきましては、後ほど先生のお手元にお届けいたしたいと思います。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 LPGは。
  89. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 LPGは約六万トンでございます。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 これをガスの中に混入するわけですから、トンやリットルや何かではしろうとにはわかりにくいので、資料の場合には同じ容量に換算してお願いしたい。これが一〇〇%といたしますと、そこの中に占める比重というものはどういうふうになっておりますか。
  91. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 いま御指摘の点につきましては、カロリー換算をいたしまして比率を出しまして、後ほど先生のお手元にお届けいたしたいと思います。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 おおよそどのくらいですか。たとえば、いままで一〇〇%石炭だったんだが、いまは石炭は五〇%下がっているか、下がっていないか。
  93. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 じゃ、概略だけここで申し上げておきます。  四十年の実績で申しまして、石炭ガスが約四二%でございまして、発生炉ガスその他のこまごましたものまでまぜました、いわゆる石炭系全体では四七%になっていますから、半分弱を石炭系で占めております。それから原油ガス並びにナフサガスが合わせまして四六%、LPGガスはわずかに二%でございます。天然ガスが約一%、そんなぐあいになっております。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、通常は、都市ガスを使っておる人は石炭からできたガスを使っているのだ、こう思っておるわけですね。私たちもしろうと目にそう思っておったわけですが、しかし、実際上は、こうやって石炭からとられておるガスというものは半分にも満たない、こういうことが明らかになっておるわけです。そうすると、これは燃料費と申しますか、原料費と申しますか、この原価計算の場合にたいへん大きな変化というものが当然起こってきておるわけですね。もちろん石炭もずっと下がってきておって、国が保護政策で、強制的でありませんけれども、たくさん買ってもらうようにしておる、こういうことをしなければならぬほど下がっておる。しかも、石炭だけではなくて、こうやって他のガスというものを使っておりますから、非常にコストが下がってきておりますね。いまの石炭、天然ガス、LPGあるいは油等の別における原価、それからいまの都市ガスの全体の原価、まあ、きのういただきました各会社の決算報告書等にはいろいろ出ておって、各社によって違うようですから、大中小でけっこうでございますが、ABCのひとつ原価を資料としてお出しいただきたい。あるいはここでわかれば、ほかの委員の方々にも概略の御説明をいただいておけば幸いだと思います。わからなければ、原価をひとつ資料で……。
  95. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 いまの御指摘の点、会社によりましても違いますし、いろいろめんどうな計算も必要かと思いますので、あと資料といたしまして、できるだけそういうものをお出しいたしたいと思います。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 たとえば、ABCで東京が一番大きいようですけれども、これは世界の一、二位を争う東京瓦斯とか、あるいは地方の大阪とかどこか、ここらの近くの京葉瓦斯とか、大中小の会社で違うようですから。というのは、きょうは私はガスが中心でございませんので、またお聞きしたいと思うけれども、同じ都市ガスが入っておるところで、同じ団地の中で、このエリアといいますか、その供給区域が違うために、同じ会社の人が同じ団地の中にあって、区域が違うために、東側は一リットル当たり五十円のガスを買っておる、片一方は七十円のやつを買わされておる、こういうばかげたことが、これは一つの資本主義の矛盾でもあるわけですが、あるわけですね。きょうは、私はそういうことを聞くのが中心でないから聞きませんけれども、こういうととなんですから、もうちょっと行政的にうまくやれば、都市ガスなら都市ガスを安く、東京瓦斯なら東京瓦斯を安く買うことができるわけです。あるいは片一方が高いならば、そのガスを引き下げることができる、こういうことができるわけですが、同じ会社の人が同じ地域に住んで、同じ団地に住みながら、片一方は高い、片一方は安いガスを同じ給料をもらっておる人が買わなければならない、こういう事態がありますね。あなたは御存じだと思いますけれども、きょうは私は、大蔵委員会ですから、いずれまた日を改めましてそういう問題について、その原価等をお出しになれば——私も一応原価は持っております。持っておりますが、皆さん方が出される原価というものがどの程度のものを出されるか。私は少し前にプロパンガスの課税問題を論議したときも、あなた方が出される原価と私が調べた原価とはだいぶ違っておるわけです。そういうことがありますから、きょうは、私が皆さん方の資料要求しておきたいと思います。したがって、一社だけではなかなかわかりませんから、大中小ぐらいの原価をひとつお出しいただきたい、こういうふうに思います。  委員長、二つ資料要求をしているのですが、よろしゅうございますか。
  97. 内田常雄

    内田委員長 いいですね。
  98. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 はい。
  99. 只松祐治

    ○只松委員 ついでにちょっとこまかいことを言っておきますが、たとえば、同じガスでも、A社は五千カロリーのガスを供給していますけれども、B社の場合は三千六百カロリーのガスしか供給していない。しかも、その三千六百カロリーのガスを供給しておる社のほうが値段が高い、こういうこともあるわけですね。実際そうなんですよ。だから、やはり五千カロリーに直したときの値段、たとえば昭和四十四年度になりますと、カナダからプロパンが入るようになりますね。そうすると、キロリットル当たり三円幾らかのやつが出る。それを五十円、七十円で都市ガスが売るわけですね。そういうことがいまから平気で行なわれるわけなんですから、現状の、五千カロリーと三千六百カロリーのものを供給している現在のやつ、それが一つの出し方。それから、同じ五千カロリーに換算した場合の原価、この二つをお出しいただかないと、なかなか正確な原価計算にはなってこない。だから、原価計算ですから、そういういまの正確な原価計算というものをお出しいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  100. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 先生指摘の点を考慮に入れまして、できるだけ資料を作成いたしたいと思います。
  101. 只松祐治

    ○只松委員 今度は大蔵省側にお尋ねをいたしますが、特別措置法に盛られておる「ガス製造用原油の免税及びガス製造用揮発油に係る関税の還付」ということで、ガス業者がガスの原料として使用する原油の関税を免除する、こういうことはどういう根拠に基づいて行なっておられるのですか。
  102. 細見卓

    ○細見政府委員 お答え申し上げます。  一つは、関税はもともと、それが主要な原料になっておりますようなものについてなるべく課ささないで、全体としての国の原価を安くするというような考え方が一方にございます。たとえば肥料の原料にいたします重油だとか、そういうものがございます。それからいま一つは、ガス事業におきましては、先ほど来お話がございました、石炭からどんどん原料転換が行なわれまして、原油、最近はナフサというようなところへ参りまして、これが非常に大きなウエートを占めておる、しかもそれは、原油関税が現在非常に高率になっておりますので、その結果、ガス事業の中で原油としての関税の占めるウエートが大きいという点に着目いたしております。いま一つは、ガスは公益事業でありまして、そういう意味から、なるべく安い原料が公益事業であるガスに供給されるのが至当だということで、この二点を中心に考えております。
  103. 只松祐治

    ○只松委員 そういうふうに十分な御配慮がなされておりますが、ガスはたいへんに安い、こういうふうにお思いですか、あるいは安くなってきつつある、こういうふうにお考えになっておりますか、どうですか。
  104. 細見卓

    ○細見政府委員 他の行政分野でございますのではっきりしたことはわかりませんが、ごく一市民として考えまして、いろいろな物価が上がっておりますときに、ガスだけは大体従来どおりで来ておるという意味——ガス事業におきましても、もちろん原油等の値下がりという事情もございますが、人件費等が上がったにかかわらず、現状で行なわれておる、また、新市街の開発も行なわれまして、いろいろ苦情はありますが、そうしたところにもかなりガスの供給は進んでおりますので、他の行政でありますので十分なことはわかりませんが、大体うまくいっておるだろう、かように感じております。
  105. 只松祐治

    ○只松委員 ガス会社がたいへんに利潤が大きいということは御存じですか。
  106. 細見卓

    ○細見政府委員 その点は存じております。
  107. 只松祐治

    ○只松委員 通産省のほうでもけっこうですが、東京瓦斯の本年度の利潤は幾らですか。
  108. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 四十年度につきまして申し上げますと、総計上利益が約八十四億円でございます。
  109. 只松祐治

    ○只松委員 それはあなたたち局長と論議したってしょうがないので、いずれまた、大臣なりガス会社の関係者を参考人にお呼びいたしまして、そういう問題を本格的に論議したいと思うのですけれども、いま公益だ公益だということで、こうやって関税還付まで行なう、そういう会社が八十四億円ももうかっておる。これは単に八十四億円じゃないのです。いろいろお調べになるとわかりますが、ばく大な政治献金等もこの会社は行なっておるやに聞いておりますね。あるいは、地方に行ってごらんなさい。たとえば草加市に行きますと、東京瓦斯不動産株式会社というような、そういう不動産会社にまで手を出す、これはガス会社だけじゃない。大蔵省全体としてこれは問題にすべきですが、保険会社等、本来の営業目的を離れた会社が、いわゆる重役のポケットマネーやその他をつくるために——私がいつもマンションあたりを調べろと言ってもなかなかお調べにならないけれども、マンションあたりに女を囲う、こういうことの材料として、そう言っちゃ何だけれども、正規の社長の給料ではなかなか出せないから、第二会社、第三会社をつくる、こういうことが行なわれていますね。私の草加のところへ行ってらんなさい。草加団地東京瓦斯会社用地というものをちゃんとつくっております。こういうことが平気で行なわれているのですよ。この監督官庁はどこです。八十四億円ももうけ、なおかつ——まあ、でたらめかどうかよく調べなければわかりませんけれども、自由自在に金が使われて、そういう不動産会社まででっち上げる、それでなおかつこうやって関税の特別措置を行なう、こういう必要がどこにあるのか。皆さん方もいままでこういうことを論議されることが少なかったようでございます。私たちも不勉強にしてこういうことをよく知らなかったわけですが、今回こうやって特別措置が行なわれることを契機に多少私たちが勉強してみても、そういう矛盾点というものを見出すわけです。それだけ膨大な利潤を出しておるガス会社に、他の業者には負担をさしておきながら、なおかつ特別にこういうことをしなければならないという理由というものが——こうやって原料が下がってきたのに依然として行なわなければならない。前のように、石炭がたくさん使われておって重油やなんかは少なかった、そういう段階から、多少奨励的な意味やいろいろな意味でこうやって行なわれておったことは、まあやむを得ないという面があったかと思います。こうやって石炭が半数になってきて、利潤も一会社が八十四億円ももうけておる、こういうことがあるにかかわらず、なおかつ依然としてどうしてこういう措置を独占会社に行なっていかなければならないのか。どうお考えになりますか。これは国税庁長倉のほうでも関係があると思いますが、ほかの税制一般にも関連すると思う。きょうは、さっきから言いますように、この問題だけを論議しようという気持ちは私はありませんし、大臣その他お見えになっておりませんので本格的な論議は行ないませんが、せっかく論議し始めた問題ですから、一応事務当局の皆さんのお考えを聞いておきたい。
  110. 細見卓

    ○細見政府委員 一言申し上げておきます。  先ほど来非常に利益が出ておるじゃないかというお話が出ましたのは、おおむね大手でございまして、この大手につきましては、関税暫定措置法の中にも書いておりますように、一定の石炭の購入を約束させて、それを通産省に届け出る、そのものについて原油なりあるいはナフサの免税をいたします、こういう仕組みにいたしております。そういう意味で、石炭をこれ以上減らして、ただ利益のために原油のほうに走るということのないようにいたしております。これが第一点でございます。  それから第二点でございますが、ナフサを主として使っておりますのは中小ガスでございます。これは公表資料がないので、はっきりしたことを申し上げにくいのでありますが、大体赤字ないし損益すれすれで経営いたしております。これは一定容量を供給いたしますと利益が出ますが、中小でございますので、それほどの地域にまとまって供給できないというような点がございまして、中小は赤字すれすれというような状態で、それらの人たちがこのナフサについては主として恩典を受けておるというかっこうになっております。その点だけ事実として申し上げます。
  111. 只松祐治

    ○只松委員 だから私は、ABC、大中小の会社の原価計算なり、そういうものをあと資料としていただきたいと言うのです。いまおっしゃった中で、ほんとうの零細といいますか、小さい会社、あるいは小さい会社は新しい都市に多いわけですから、そういうところでは、確かにまだ赤字が出ておるところ、あまり利潤がないとかいうところが多いですね。しかし、中小あたりでも、前に石炭を使っておったのをこういう重油や何かに転換して膨大な利潤をあげておるところもあるわけですよ。あなたがそういうことをおっしゃるならば、会社の名前をあげて指摘してもいいですよ。名前をあげてもいいが、そうすると、あなたとの本格的な論戦になりますよ。あとのいろいろな議事日程その他の都合もあるようですから、私はそこまで言わないで、きょうは主としてお聞きをいたしておるわけです。だから、あまりそういうことを言わないで、さっき言うように、ひとつ原価をお出しいただきたい、こう私は言っている。確かに一般的にはあなたのおっしゃることも一応ありますけれども、しかし、もうちゃんと軌道に乗って、原料は安くなってきて、ちゃんともうけてきておる会社もあるわけです。だから一がいに全部とはいえませんけれども、やはりこういう一般的に——特に大都市ガスのように、どんどんもうけてしょうがない、その経理も相当に放漫になっておる、こういうことは、私がここであまりそう言わなくたって皆さん方御承知なんだから、あまりそういうことの強弁をしないで、やはり何らかの形で、中部電力が電力料金を引き下げたように、引き下げを勧告するなり——物価値上げ反対ということを私たち社会党は言っておるし、いろいろ言っておるけれども、もうけ過ぎてしょうがなかったら引き下げていいのです。あるいは、こうやって行なっておる租税特別措置を撤廃して利潤を適正に行なっていく、こういう方法もあるわけです。こういうふうに特別措置を行なうならば、ある会社では完全に引き下げることができます。次に私が原価計算から全部して、引き下げることがなおかつ可能であるということは実証してみせますけれども、引き下げてもなおかつ利潤が出る、こういう会社も私は知っておりますよ。だから、もうちょっと国民の立場に立つ行政官の皆さん方  大臣や何かいないけれども、事務当局の皆さん方の御意見を聞いておきたい、こういうことを言っておるのです。  そう会社あたりの弁護ばかりをしないで、利潤が出ておる会社等があれば、また設備の近代化等を利潤が出ておる会社に見習って行なわせて、そういう面の融資は見るけれども料金は引き下げていくようにするとか、あるいは関税を引き下げていく、還付額を引き下げていくようにする。還付額というのは、ある意味では国民から出た金にもなるわけですから、そういうことをおっしゃるのが皆さん方だろうと思うし、そういう御答弁をいただきたいと思って、きょうはお答えだけいただ  いておるわけです。私の意見はあまり申し上げたくないわけですが、そういうふうに開き直ってお答えされると、私もこのまま引き下がるわけにはなかなかまいらないわけです。  確かに、一般論としてはあなたのような形もあるかもしれませんけれども、しかし、もう軌道に乗った会社あるいは大会社等には引き下げなければならない、引き下げていい、こういう事態に来ておる会社もたくさんある。これは国民のために、あるいは佐藤内閣がいま言っておる物価引き下げに——物価懇あたりに一番先にかけていい問題でもあるわけです。そういう点について私はきょうはお尋ねをしておるわけです。ひとつ正直にお答えをしていただきたい。
  112. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 先生指摘のとおり、大手のガス会社につきましては、最近数年の経理状態はきわめて良好でございまして、相当の利潤をあげております。この原因には、石炭の値下がりとか、あるいは原料転換、あるいはカロリーアップによる合理化等があったために、人件費その他の経費の値上がり要素をキャンセルしておな余りあったということなどと存じます。しかしながら、今後の見通しにつきましてはいろいろの問題がございまして、いま申し上げましたような、従来までの値下がり原因は急速に消滅していく傾向にございます一方、お話の中にもございましたように、郊外地域にもっともっと積極的に供給設備を拡充していかなければならぬという問題がございますし、また、発生設備につきましても、根岸工場の新設等々もございます。また工事の内容から申しましても、道路条件その他から見まして建設単価が上がってくるといったようなこと等々を考えあわせますと、今後長期にわたって供給を安定させるためにはやはり相当努力していかなければならない、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  113. 細見卓

    ○細見政府委員 一言申し上げておきます。  私どもも、この制度が長く続くということを望んでおるわけじゃございませんので、この制度が明年度は続くわけでございますが、これを見直すときにあたりましては、先ほど先生のおっしゃった趣旨は十分考えまして、この制度がはたしてどれだけ必要なのか、あるいは過剰保護になっておらないかというような点につきましては、十分検討いたすつもりでございます。
  114. 只松祐治

    ○只松委員 それから肥料で、一キロリットル当たり六百十六円、ガスの場合は、一般ガス事業者が五百十円、特別ガス事業者が三百八円、こういうふうに本年度提出されておりますが、たとえば、一般ガス事業者では昨年は五百三十円だったわけです。それが五百十円になった。こういうものの算出の基礎も多少御説明いただいたわけでございますけれども、こういうものはやはり国民の前に明らかにしておかないと、何かぼくたちも、そういうものを御説明いただくまで、まあ政治的な感覚といいますか、あるいは、たいした論拠もなくてこういうものが行なわれておるかのような印象を受けております。どういう算定の基礎に基づいて行なわれておるか、あるいは、さっきおっしゃったように、一応ものごとをきめるには算定の基礎があることは事実でございますけれども、しかし、これがこういうふうに一定限度、相当の会社がもう利潤をあげてきた、あるいは軌道に乗ってきたとするならば、この算定の基礎も変えて、たとえば五百十円を四百五十円なり四百円にする、こういうことも可能であるし、その算定というものは変えることができるわけですから、一応の——いま、将来にわたっては変えていく意志があるとおっしゃいましたけれども、当面する算定の基礎というものを説明していただきたい。
  115. 細見卓

    ○細見政府委員 先生に別途資料を差し上げたと思いますが、原油から重油とかあるいはガソリンとかいったようなものを取ってまいりますそれぞれの得率というものが、大体そのときそのときできまっております。その得率によりまして、さらにそれぞれのものの値段といったようなものがございます。その値段と得率との相乗で原油にかかっております関税を案分いたしますと、いま申しましたように、ナフサについては六百十六円、あるいはガソリンについては六百八十五円、あるいはC重油が五百五十一二円、石油ガスが九百十六円というような——これは石油ガスはトン当たりでありますが、ほかのものはキロリットル当たりそういうような数字が出てまいります。これはいわば技術的に出てまいりますので、政治的とかなんとかということは一切考えておりません。ですから、これを秘密にする必要は毛頭ございませんので、御要求が、あるいは発表したほうがいいとおっしゃるなら、いつでも外へ出せる数字でございます。
  116. 只松祐治

    ○只松委員 そういう算定に基づいてこの数字が出てきておるわけですが、一キロリットル当たりの数字は、これで国民にそれほど疑惑がなくて済むといたしましても、それではAという会社が一万トン使った、Bという会社が五万トン使った、その還付する数量はいかなる方法によって把握なさっておるのですか。
  117. 細見卓

    ○細見政府委員 最初に、還付を受けます会社側はそれぞれ所轄の税関長に届けておりまして、ガスの原料としての重油なりナフサなりを購入いたしましたときには、その翌月十五日までに届け出るということになっております。その表示数量が正確なものであったか、あるいは届け出られたものが実際の数字と間違いないかということは税関でチェックいたします。それに基づきまして使用実績を見て還付いたすわけでございます。
  118. 只松祐治

    ○只松委員 税関でチェックするという話ですけれども、これは私が前にビールの質問等いたしましたときに、当時の松本さんでしたか、ビールの課税は五〇%が税金ですからね。ビールの脱税というのは、結局国民から取り上げた税金を——もし脱税が行なわれておるとするならば、これはビール会社が国民の税金をどろぼうしたことになるわけですからね。普通の関税の脱税と違うわけです。そこで私が聞いたのですが、いろいろなことをおっしゃったけれども、まともな答えはなかったわけです。私はそのとき一応調査しておりました。きょうはまだ私調査いたしておりませんから、皆さん方のお答えをうのみにする以外に手がございませんけれども、保税倉庫みたいなもの、保税タンクみたいなものがあるわけですか、ガスの分かけは。それとも、そういうものはなくて、一般の中から申告したやつを検査したりチェックしたり、そういうことの程度ですか。それとも、ガスの分だけは、完全な保税タンクというものはあるわけですか。どういうふうになっておるのですか。
  119. 細見卓

    ○細見政府委員 そうしたものはもちろん設備は整っております。
  120. 只松祐治

    ○只松委員 保税タンクはあるのですか。
  121. 細見卓

    ○細見政府委員 あります。
  122. 只松祐治

    ○只松委員 一応保税タンクがあっても、それから持っていったのを、まさか横流しというようなことはないと思いますけれども、結局それだけ安くなっておりますね。あるいは、たくさん使えばそれだけ還付されるわけですからね。横に流してほかの業者に使わしておいて、そうして還付を受けるということが全然ないのか、あるのか私は知りませんけれども、しようと思えば、悪知恵を働かせればできないことではないと私は思うのですね。だから、租税特別措置そのものが必ずしもいいとは思わないし、ほかの方法があると思うのですが、それとともに、そういう抜け道が知恵さえ働かせればできる、こういうふうな場合には、よほど厳重な管理というものがなされてないと厳重な管理が行なわれておるとするならば、あなたのほうの関税係官の中で何名が——全国で二百二十三社あって散らばっておるわけですが、そこにどれだけの保税タンクがあって、どれだけの管理要員がいるか、そういうことも聞けば、皆さん方がどれだけ厳格におやりになっておるかすぐわかりますよ。それから、人員が少ないとするならば、その人たちがどこのタンクに何日出張されましたか、出張のあれをとればすぐわかるわけです。私はそこまできょうは申しませんけれども、そう厳重なものではないと思う。ビール会社でも、会社に行けば、一日置きに来ておりますというが、私が資料要求したところが、一番多いビール工場で当時一週間に一ぺん、少ないところでは十三日に一ぺんだったのです。夏場に十三日に一ぺん行ったって、一人や二人あるいは三人の職員が行ったってそんなものはわかりませんよ。一カ月たてば醸造できる。月に二回ぐらいしか来ないわけですから。したがって、厳重に管理いたしておりますとおっしゃるビールの保税でもそういうことですから、私はこれだって問題点があるだろうと思います。きょうはそういうことを論議しませんが、こういうふうに租税特別措置を行なうというような、しかも、これが先ほど一番初めに論議しましたように、公共事業につながっておるならば、厳重な管理、あるいは今後の数量の把握その他についてもひとつ配慮をしていただきたい。これは私がガス会社をいじめるとかいじめないとか、そういう問題でなくて、国民の税金を使っておる問題ですから私はこういうことを要望しておきます。これはあとの問題にも関係するような問題でございますが、ひとつ、この点だけは強く要望いたします。
  123. 細見卓

    ○細見政府委員 御要望の点、よくわかりました。
  124. 只松祐治

    ○只松委員 次に、青色申告の問題について国税庁当局にお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、青色申告者は現在何人であるか、それからここ数年来の青色申告者の増減、いわゆるキャンセルになった人と新しく加入をしてこられる人の数を資料としていただきたいと思います。
  125. 塩崎潤

    塩崎政府委員 資料として御提出申し上げます。  なお、昨日も申し上げましたように、青色申告者の数は、事業所得者のうち、現在、昭和四十年におきまして七十七万七千人、こういうふうに見積もられております。
  126. 只松祐治

    ○只松委員 これは明年から完全給与制が予定されておるわけでございますが、その完全給与制というものは、事実上の完全給与制でございますか、それとも限定的なものを何かお考えになっておりますか。完全給与制の内容についてお伺いいたします。
  127. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いずれ所得税法の改正法律案の御審議でつぶさに御検討を賜わることになるかと思います。いまおっしゃった意味に完全に適合するかどうかわかりませんけれども、私どもといたしましては、法人企業におきまして給与が費用と見られる、同様な意味において、個人事業者におきましての家族専従者について給与が支払われるならば費用と見よう、こういう考え方でございます。もちろん、支払った給与が妥当であるかどうかの判断は当然必要と考えております。
  128. 只松祐治

    ○只松委員 しかし、税務行政が通達行政といわれ、私たちがたびたび皆さん方に御批判を申し上げますように、通達によっていろいろなことがまた出るだろうと思うのですが、完全に他人を使用している場合なら、そのことがそう問題はないと思うのですが、家内従事者、それが年齢によって非常に異なるだろうと思うので、そういう問題の基準を設けるというのは実際問題としてなかなか容易ではないだろうと思うのです。そういうことについて試案があるのかどうか。また、青色申告会なり何なり、もちろん国会において論議すべきことでございますが、実際上、全国に七十七万七千の青色申告者がおるのでございますが、そういう方とお話し合いになられておるか。あるいは、今後そういうことについて話し合って、この問題についても具体的に詰めていかれる意図があるのかどうか。
  129. 塩崎潤

    塩崎政府委員 只松委員指摘のように、なかなか給与についての妥当性の判断、これはむずかしい問題がございます。私は、画一的な基準はつくるべきではないし、また地域的に、また業種においても、非常に開きのあるものについて画一的な基準ができないことは当然でございまして、やはりケース・バイ・ケースの判断だと思います。しかし、そう申しましても、税務上のトラブルはできる限り避けたほうがいいという点は、御指摘のとおりでございます。  この問題は、私は、非常に数多くの個人事業者の問題でございますので、いわゆる完全給与制に踏み切らなかった大きな原因が、只松委員指摘の税務上のトラブルがあるということが相当大きな原因をなしておることから考えますと、これはできる限りトラブルを避ける意味におきまして、納税者といたしましての協力団体であります青色申告会を通じましても、妥当な給与を支払うようにお願いしたい、かように要請するつもりでございます。ややもすると、夫婦間あるいは親子間の愛情で、客観的な労賃と違った労賃がきめられることのないように、そんなことがありますと、また完全給与制にひびが入るという意味におきまして、ひとつ、青色申告会その他商工会議所等、広く各種の団体を通じまして、このスタートにおきましては間違いのないように、サラリーマンあたりから疑惑を招かないような給与の基準をきめるようにお願いするつもりでございます。
  130. 只松祐治

    ○只松委員 実際上どういう通達なり指導をなされるかまだわかりませんが、これが実施される場合には相当の問題が起きやしないかということを考えるわけです。いまでも青色申告の中で多少の問題がありますが、その場合、私たちは、青色申告をやろうとしておる人たちだから、できるだけ大目に見て善導していったほうがいいのではないかということをたびたび申し上げてきたのですが、さて、これを完全給与制にするということになると、たとえば、中にはじいさん、ばあさんであっても給与所得者にするというようなことも、七十七万人の中ですから出てこないとも限りません。あるいは、同居しておるかおらないか、あるいは、完全独立しておるか不完全独立であるか、飯だけ家に来て食っておるか、いろいろなケースによってなかなかむずかしい問題が出てきやしないか。その場合に、いまおっしゃったように、一定の原則をきめるのもなかなか容易じゃない、といって、 ケース・バイ・ケースだけにまかせておくと、税務官吏の恣意ということが出てくる。だから、よほどこれは慎重に対処して準備をしておかないと、適用した場合に相当の問題が各地に必要以上に出てきやしないか。したがって、大体、青色申告をなさっておるような方は、税理士についておられる方が多いように私たち見受けておりますので、税理士会あるいは青色申告会——その前に皆さん方で根本方針をお立てになって、どういう形の完全給与制を実施していくかということを、相当事前に配慮をしておいていただきたい。いままでも私たちは若干いろいろ税務署に対してお願いした。これが一笑に付されるということになると相当の問題が出るように思いますので、ひとつ、そういう各方面と十分連絡した上で、事前にそういうことの御意見を十分お聞きになって、幾つかのケースならケースをつくっておいて、さもなければ、多少当面問題があっても、ほんとう意味の完全給与にして、じいさん、ばあさんであろうが完全な給与に踏み切るということにして、それから徐々に適正な方向に向けていただいて、どっちがいいのかあれですけれども、専従者に他人を雇っておるのと違う面が多いように思いますから、そういう点について御配慮をお願いするとともに、そういう各方面と重ねて懇談したり調査したり、そういう対処をされる意思があるかどうか。
  131. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御意見に沿って、税務上のトラブルをなくするよう、しかし、それかといって画一な基準で無理のいかないように、各方面とひとつこの問題の本質を語り合いながら、十分賃金の基準ができるように各方面と折衝してまいりたい、かように私は考えております。
  132. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、最高の限度額、たとえば極端な話が、法人で相当の人は二十万円、三十万円取っておりますけれども、そういう最高限度額を設けるというようなことは、いま意思はないわけですか。
  133. 塩崎潤

    塩崎政府委員 最高限度のようなものは設けるつもりはございません。
  134. 只松祐治

    ○只松委員 それから、完全給与制が施行されますと、いま七十七万人ですが、おそらく相当ふえはしないか、こういうことも予想されるわけです。いままで、ふえるのと一それで私資料要求したわけですが、また一方落としていくのとあって、多少ふえたり減ったりしても一定限度を保っておるわけですが、白色申告から青色申告に転化する希望がたくさん出た場合には、それは無条件に認める方針か、大幅に認める方針か、どういう方針ですか。
  135. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは多分に執行上の問題になるかと思いますが、税務執行上の問題といたしましては、現在のような要件に合致すれば青色申告を認めるということに尽きると思います。  しかも一方、御案内のように、青色申告者をふやしたいというのが私どもの念願でございますし、将来の理想といたしまして、昨日も申し上げましたように、税法の中に青色とか白色とか、ことに白色という屈辱的な所得種類者があるというようなことは、どうも世界各国の税制から見まして非常に恥ずかしいことでございます。全体が青色申告者になっていただくことが理想でございます。  今回はそういった意味で現金収支で所得計算ができるような青色申告の制度をひとつ広げて考えておりますので、こういったことで青色申告者を多くしてまいりたい、かように私どもは念願しておる次第でございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  136. 只松祐治

    ○只松委員 それから、専従者に対する完全給与が認められますと、当然に次には事業主に対する給与制の問題がやはり問題になってくるだろうと思います。いまもすでに問題になっておるわけなんですが、この点については御検討なさっておりますか。あるいはどういうお考えですか。
  137. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私ども国税である所得税におきましては、事業主給与ということは、私はあまり必要性がないと思っております。と申しますのは、事業主給与にいたしましても、その残りの事業所得と合算いたしまして課税する、私は、要望としてのねらいは二つばかりで、一つは、毎月の経理におきまして、給与ということで消費生活に帰属するものを明らかにする、そういった経理をとりたい、第二は、給与所得者がサラリーマンに認められておるような給与所得控除を受けたいということだろうと思います。  第一の点は、私は、計算だけの問題でございまして、別に税法上の問題でなくて済むと思っております。事業所得と事業主給与を一体に考えても、経理上だけ分けたらいいんではないかというような感じがいたします。第二点は、これは給与所得は何ぞやという問題でございます。これは事業主でないサラリーマンに対しまして、一身限り、一代限りの所得ということが大きな給与所得控除の柱となっておりますので、事業主でありますサラリーマンに対しまして、個人事業という形態をとっておる間は、事業主給与に対して給与所得控除を認めることは現在の段階では適当ではない、そういう感じがいたしますので、私どもは、少なくとも所得税の段階におきましては事業主給与は必要ではない、かように考えております。
  138. 只松祐治

    ○只松委員 外国に行きますと、くつ屋さんならくつ屋さんを親の代から何代もやっている、あるいは、洋服屋なら洋服屋をやっているというふうに、いわばその自分のうちの仕事に誇りを持って、町の庶民といいますか、仕事をしておるという例が非常に多いわけですね。日本の場合は、いまちょっとそこの商売を行なって、高校、大学にやってうちのあと取りはしない、したがって、いなかから出てきた人がくつ屋の弟子なんかになったりしてそのくつ屋の店をやる、こういう形でやっている。これはいま一つの給与制をしくかどうかということだけではなしに、いままで局長が説明されましたように、そういう面が多分にありますが、しかし私は、一つは、やはりこの給与額をしてある程度の生活の安定といいますか——これはいま言うように、給与制だけではありません。ほかの問題も関連しますけれども、考えてやる面があるのではないか。そうすると、もっといわゆる中小企業者あるいは庶民の安定した、単にその日その日の生活じゃなくて、将来性へ向かっての安定、したがって社会全体としての安定というような面も見られてくるのではないか。  そういうことと関連して、たとえば、事業主に対してのいろいろな退職金そのほかの問題ですね。これもいま事業所得で、それで利潤を積み立てていけばいいじゃないかということにもなりますけれども、それだけでは、私は経済問題は論議しませんが、こういうインフレの進んでおるという中では不安定な面もあるので、そういういわゆる社会保障制度的なもの、あるいは、そういう事業を行なっておる事業資産に対してだけは贈与を認めて、その贈与税を軽減するとか、あるいはなくするとか、いろいろもっと、単に税制という面だけではなくて——私はいろいろ悩みや訴えを人々から聞く場合に、いわゆる中小企業者なり、そういうものが、安定して、将来長きにわたって自分のうちを継いでいく、あと取りとしてやはりむすこさんがこれを継いでいくという形のものが日本にはできないだろうか、その一つの欠陥はやはり税制にあるのではないか、こういうことをよく聞くわけなんです。いつか私はこういう問題について税務当局の方と御相談をしたい、こういうことを私自身も思っておりましたが、たまたま今回宗全給与制がしかれるということに関連しても私は思い当たったわけですが、結局、完全給与制が施行されるならば、そういう面から今後青色申告関係の税金をお考えになる、こういう意図がございますかどうか、ひとつ、これは泉さんのほうからもお考えを聞かしていただきたいと思います。
  139. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に事業者の心理状態をあらわした御質問でございまして、私どもも先般来青色申告者の御家庭を訪問して経理の状況などを見てまいりますと、やはり家庭生涯と事業の面とを区別する意味におきまして、一応事業主給与という形で経理上仕訳をされているのでございます。一つのやはり生活面と事業面とを分けたことであり、それが企業の合理化にもつながることでけっこうなことだと思うのでございます。そういったことは、私は、税法以前の問題といたしまして、やられることは非常にいいのではないか。ただ、私が申し上げましたのは、税制では、サラリーマンに与えられる給与所得控除を適用する意味においての実益をねらわれるとするならば、そこには非常に問題があり、軽々にはできない、こういう意味で申し上げているわけでございます。  しかし、先ほどおっしゃられました退職金の問題、これもなかなか浮き沈みの多い小規模の事業にはあり得ることでございます。しかし、事業所得の内部に留保している間は、これを退職金の引き当て金と見ることはできませんが、今回の改正案では、御案内のように、小規模共済制度のうち、事業の廃止に備える特殊な共済の掛け金につきましては所得控除と認めていこう、いわばサラリーマンにありますところの一種の社会保険に準ずるような準強制的なものと見まして所得控除を見よう、これはいままでは生命保険料控除のワクの中に入っておりましたが、それを別ワクといたしまして、年六万円という限度は向こうのほうの定款にあるようでございまして、そういった意味で……。(只松委員「家族もですか」と呼ぶ)事業主だけでございますが、法人企業ならば役員も入っております。今度は新しく控除を認めよう、こういうことにいたしたわけでございます。
  140. 只松祐治

    ○只松委員 そういうことを数え上げればいろいろありまして、全国青色申告会総連合から税制改正に対する要望事項もお手元に来ておると思いますが、そういうことなんかがいろいろ書いてあります。  自民党中小企業者の味方だということをいつも選挙になるとおっしゃるわけですが、中小というよりも、ほんとうに零細企業者、町並みに商店を並べてやっておられるいろいろな方々、あるいは零細な機械を持ってやっておられる方々というものの安定が、さっきから言うように、日本の社会を安定さして秩序を保っていくという意味から、パリやなんかで親子何代かにわたってやっているという自慢話があるみたいなものがやはり日本にも出てくる、こういう形のものをやっていく、その一つの大きなものは税金だということはだれにもわかっておるわけです。だから、この点については、また本格論議があるときに、大臣がお見えになったときに私も聞きたいと思っておりますけれども、ひとつ、政府当局としても、こういう点についてこの青色の完全給与制の機会に一歩を進めていただきたいと思うが、いかがですか。
  141. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 来年から完全給与制を法人以外のものについても考えてまいりたいという私どもの考えは、まさに先生のおっしゃるような配慮等を十分考慮してのことでございますが、なおそれだけではなくて、おっしゃるような点について十分検討を加えろという御意見でございますが、十分拝聴いたしまして、今後さらに検討を続けてまいりたいと思います。
  142. 只松祐治

    ○只松委員 国税のほうではこういうふうに一歩完全給与制というものにまで進んでまいったわけですが、現在でも、国税のほうで二十四万円まで給与が認められても、地方税では十万円でカットされる、こういうことです。これを自治省側なり地方自治団体に言いますと、税の財源の本質そのものが違うというようなお考えのようでございます。確かに、国全体の施策からの税源、それから地方に住んでおる住民としての税の財源を見る場合に、多少観点が違うのはやむを得ないとしても、片一方が完全給与制に踏み切った場合に、依然として地方においては一定限度でカットしようということになれば、これは憲法違反だといわれておりますように、法律論争にもなってくると思うのです。  自治省のほうにおいては、本年度もこういうカットを行われているが、現行の制度についてどう思われるか、あるいは将来どういうふうに対処されていくか、お考えをお聞かせ願いたい。
  143. 松島五郎

    ○松島政府委員 お答えをいたします。  お尋ねの点、現在の問題と将来の問題と二つあるわけでございますが、現在において専従者控除額に国税と地方税とにおいて違いがあることをどう考えるかというのが第一点でございます。現在専従者控除額というものの性質はどういうものかということについては、いろいろ議論のあるところでありまして、所得税法あるいは地方税法においても、一定金額を必要経費として算入するのだということになっております。ただ、他面においては、この専従者給与というものが生計を一にする世帯に属する者同士の間の問題であるということ、あるいは最高限度額について制限がある、あるいは配偶者控除等との間で控除差額の控除ができるというようなこと、というような点をいろいろ考えてまいりますと、必要経費的な性格は持っておりますものの、他面においては所得控除的な性格もあわせて持っているのでなかろうかと考えるのでございます。そういう意味から、従来課税標準の算定におきましては、国税と地方税との間に違いがあったわけでございます。  しかし、国が完全給与制度というふうに踏み切ってまいりました以上は、私のほうといたしましても、経費性と申しますか、必要経費としての性格が一そうはっきりと規定をされたことにもなるわけでございますので、地方税についても、それを前提としてものを考えていかなければならないというふうに考えております。ただ、御指摘のございましたように、地方財政の状況もいろいろございますので、将来の目標といたしまして、そういうものを考えながら、当面は控除額をできるだけ国税との間を詰めていくという努力を払ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  144. 只松祐治

    ○只松委員 できるだけ国税に沿っていくという話ですが、一年もできるだけ、五年もできるだけですけれども、およそどの程度の月日を想定されておりますか。
  145. 松島五郎

    ○松島政府委員 専従者控除のほうは、地方税につきましては、御承知のとおり事業税及び住民税、住民税につきましては県民税、市町村民税、いわば三つの税金にわたる共通の問題でございます。したがいまして、一つだけを解決するというわけにまいりませんので、三つの問題を同一の考え方で解決していかなければならないのではなかろうかと思います。そうなりますと、かりに国税の現在の水準、すなわち二十四万円まで近づけたといたしますと、二百億円近い減収になるわけでございまして、現在の地方財政の上でこれを一挙にというわけにはなかなかいきかねる事情でございます。  したがいまして、いつまでか、いまここではっきり答えろと私におっしゃられましても、残念ながらいますぐここで何月何日からというわけにはまいりませんが、ただ、国税昭和四十三年から施行いたしますと、御承知のとおり地方税は一年おくれを課税標準にいたしますので、事務当局といたしましてはその辺を一応の目標として努力をしてまいりたいと考えております。
  146. 只松祐治

    ○只松委員 私も時間がなくなりましたので論議しようとは思いませんけれども、憲法論議がある、こう申しましたように、同じ日本国内において、国税では給与として認めておる、ところが地方税では、それは大蔵省国税庁と自治省ということに分かれておりましても、片一方はそれを給与として認めないで十万円でカットして、あとのものは事業所得と見るわけですね。したがって、同じ百万円なら百万円の収益があるのに、片一方はそれを給与所得とみなしていく、片一方はそうではなくて、給与とは認めないで事業所得とみなしておる、これはたいへんな問題だろうと思うのです。いまはそういう法律論争は争われておりませんから、それだけ詰めた論争になっておりませんけれども、本格的に、同じ財源を片一方は給与として認め、片一方は事業所得としてみなすということになれば、私は問題が相当出てくると思うのです。だから、少なくとも同じ日本の国内において、所管事項は違っておろうとも、やはり表裏一体といいますか、完全一体、同じ論理の上に立った税収というものを、たとえば事業所得として取らなければ給与所得の何らかの形で取ると九なんとか、やはり論理を合わした形でやっていく——私は安くなるほうがいいという前提に立っているんですよ。しかし、自治省のように、二百億円減るという前提に立って、その財源はなくしかくないという面から見ても、この同じ所得に対して全然違った所得とみなすということはあまりにも問題があるだろう。いままで慣習的にきていますから、皆さんのほうとしては違和感なり奇異に思われないかもしれませんが、純粋の法律論争になってくれば、私は大きな問題になると思うのです。したがって、根本的には国税と地方税とを一体化していく、国税と地方税との違っておる面や何かもう多少あるわけですが、もう時間もございませんのでそこまで触れませんが、少なくとも国が完全給与制に踏み切ったときに、いま一年おくれでという話がありましたから、私はそれを期待いたしまして、きょうはこれ以上言いませんが、ぜひひとつ、国が踏み切ったなら、その翌年までにはやはり国に準じた税体系を組んでいくという方向に大蔵省当局も——財源は大蔵省が握っておるわけですから、ひとつ話し合われまして、矛盾のない税体系にしていただきたい。特に、いま七十七万人といわれる青色申告の人が百万になったときに、それが国と地方とで違うということになれば、政治問題としても大きな問題にやがて転化してくるだろう。そこまでの問題が起こらない前に皆さん方のほうでその問題を明確にされたほうがいいのではないか、私はこう思うのです。
  147. 松島五郎

    ○松島政府委員 御指摘のとおりの問題がございまして、私どもも慎重に検討をいたしておるわけでございます。  先ほど申し上げましたようなことで、当面はできるだけ国税との差を縮めていく努力をした上で善処をしていく、こういう方向をとってまいりたいと考えております。ただ、課税標準が所得になっております関係上、これを同じにしないということについては、いろいろ御指摘のような問題がございます。ただ、税の性質によりまして、ものによっては違いがあってもやむを得ないものもあるのではないか、たとえば、先ほどもちょっと問題がございましたように、同じ所得を取っておりますけれども国税のほうでは、所得税については事業主控除というような特別の制度はないわけでございます。事業税におきましては、事業主控除というような制度があるというふうに、多少違っておる面もございます。また他面、地方税が、申し上げるまでもないことでございますけれども、たくさんの団体によって課税される税でございますので、それぞれの小さい地域単位の課税の公平という問題も考えてまいらなければならない面がございます。最近、いなかにおきましては、住民税の所得割りを納める人はほとんど月給取りばかりだというふうなことで、いろいろ現地におきます公平感を満たし得ないというような問題も一部にいわれておるわけでございます。そういった面も考えながら、先ほどお話しになりましたような線でできるだけの解決をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  148. 只松祐治

    ○只松委員 それから、これは小さい問題でございますが、こういう物価高騰、インフレに伴っていろいろな給与等も引き上げられておるわけですが、そういう中において仕出し料理が六百円から課税になっておるそうでございます。これは一例でございますが、少なくとも、いまでは何かちょっと料理屋に頼めば千円ぐらいが一つの基準になるわけですね。だから、そういう点もこれまた財源の問題になると思いますが、私は仕出し料理なんかたいした財源ではないと思いますので、そういう点は実情に合うようにひとつ改善していただきたいと思いますが、お考えはございますか。
  149. 松島五郎

    ○松島政府委員 仕出し料理につきましては、ほかのものとの均衡上、条例の定めるところによって課税をすることができるということになっておりまして、課税のしかたにつきましては、都道府県の条例にまかされておるわけでございます。ただその場合に、一般の飲食につきましては、御指摘のとおり六百円の免税点もございますので、六百円以下のものを取るということは法律上できないという解釈をとっておるのでございます。したがいまして、仕出し料理について六百円を免税点にするか、七百円を免税点にするか、あるいは八百円を免税点にするかは条例で定められることになっておりまして、いま詳しい資料を持っておりませんが、私どもの聞いておりますところでは、現実の免税点は若干一般のものより高くいっておる面もあるようでございます。しかし、御指摘の点は今後とも十分な思量をいたしてまいりたいと思います。
  150. 只松祐治

    ○只松委員 まあ、これは条例ですけれども、おおよそ皆さんのほうで内示といいますか、標準をお出しになるわけですから、多少高低はあってもそれできまっていくわけですから、これはだいぶ古くきまったようでございますが、所得税額なんか毎年更新しているわけですから、こういう点についてひとつ実情に合うように配慮をしていただきたい。  それから、そういうもの全般を含んで、やはり国税と地方税の体系を合わしていくためにも——自治省だけいじめるというか、注文しても、大蔵省のほうでなかなか財源を回さないということで、自治省のほうでお考えになっておっても実行に移せない面もあるわけですから、ひとつ、大蔵省当局も——いま時間がありませんから私は小さいこと一つ二つ聞いたのですが、そういう点も御配慮をいただきたい。たいした財源でないようなものでしから、ぜひひとつ御配慮をいただきたい、こういうことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。  次官ぜひよろしく御配慮願います。
  151. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 先生の御意見、よくわかりましたが、今後ひとつ十分研究検討さしていただきたいと思います。
  152. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時十七分開議
  153. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  154. 平林剛

    ○平林委員 まず主税局長にお尋ねをいたします。本来はこれは大蔵大臣にお尋ねするのが筋ですけれども主税局長にまず確めていきたいと思うのであります。  あなたもいろいろ税の問題については御苦労なさっておりまして、特に租税特別措置の問題については、本委員会の各委員質問を通じて国民の声がどこにあるかということはお察しになっておると思うのであります。そういう意味では、国民全般の批判が集中しておる租税特別措置、特に政策的効果も確かめることができないもの、そして、いまのわが国の税体系の中では不公平のシンボルともいうべき利子配当に対する租税特別措置、こういうものにつきましては、私はやはり一つの期日が来たならば、その期日においては安易にこれを延ばしていくというような考えをとらずに、できるならば、そういう時期にこれを縮めていくというような努力というものが続けられなければならない、こう思うのでございます。この点については私とあなたは同感だろうと思うのですけれども、まず、それを確かめておきたいと思います。
  155. 塩崎潤

    塩崎政府委員 租税特別措置は、やはり負担公平の原則を犠牲にしてまでも経済政策的要請を満たそうとするものでございますから、絶えずその効果について判断し、さらにまた、期限の切れるときにはその延長、あるいは廃止その他について厳格なる態度で私は臨むことが必要だと思うのでございまして、この点は同じ意見でございます。
  156. 平林剛

    ○平林委員 ただいま議題になっておる期限の崇めのある国税に関する法律につき当該期限を変革するための法律案の中に、特に昨日来問題がありましたところの株の配当に対する措置、あるいは銀行の利子に対する措置、こういうものをひっくるめて五月まで暫定的に延長せんとする内容になっておりますけれども、これはこの法律案の提案の理由に書いてありますように、「昭和四十二年三月三十一日に期限の到来する国税の課税の特例等を定め法律の規定について、その期限を暫定的に同年五月三十一日まで延長する必要がある。これが、この法律案提出する理由である。」こう書いてありますが、五月三十一日まで暫定的に延長するという趣旨でございますね。つまり、これはここに書いてあるすべての期限の来る法律というのは五月三十一日まで二カ月間暫定的に延ばしたい、それについての国会の意思をこれできめてもらいたい、こういう趣旨ですね。
  157. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもの先ほど申し上げました二十八項目について、五月三十一日までさしあたり期限の延長をお願いしようという法案でございます。
  158. 平林剛

    ○平林委員 さて、そこの二つを確かめておきまして問題に入るつもりでございますけれども、実は、私の承知しておる情報によりますと、ことしの三月十四日の閣議におきまして、所得税法の改正について、あるいは退職所得特別控除の引き上げについて、あるいは租税特別措置法などの期限つきの法律の改正についていろいろ議論をなさったということを承知しておるわけであります。いまお答えによりますと、利子配当、その他の特別措置については五月三十一日までである、そしてまた、それは厳格に審査をして、ただ安易にこれを引き延ばすことは適当でないという私の意見に同意されたあなたにちょっとお尋ねします。  そのときの閣議で、配当と預金利子については、これを六月の末まで三カ月間延長するというような意向を大蔵省内では検討したと伝えられておるのですが、それは真実でしょうか。
  159. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この法案につきまして、六月三十日というような意見があったということは全く聞いておりません。
  160. 平林剛

    ○平林委員 全く聞いていないというのは、あなたが聞いていないのであって、閣議の中ではそういう問題が議論をされたのではないか。聞いていないということは、閣議ではそういうことが話になかったということとは違うと思うのでございますけれども、これはどうなんでしょうか。
  161. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は閣議のことはもちろん存じませんが、この法案について六月三十日まで延長するということは、話といたしましてはないのでございます。おそらく租税特別措置法の本法律案の御審議の際——近く御提案申し上げることになっておりますが、そのときには利子所得の一五%引き上げをいつから施行するかという問題で、これは利回りその他の関係がございますから、一カ月間のゆとりをおいて七月から施行する、しかし、この際には租税特別措置法のこの法律じゃない、新しくこれから御提案申し上げる法律案におきましてなお十全の効力を有するような行き方になろうかと思いますけれども、それはこの問題とは別の問題というふうに私どものほうは考えております。
  162. 平林剛

    ○平林委員 いや、まさしく期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案で、銀行利子配当については二カ月間これを延長すると書いてありまして、われわれの意思を問うておる、これはそのとおりである。しかしながら、いまの説明によると、本法の提案のときに実施時期をかりに七月にするということになれば、従来どおりの暫定的措置を二カ月ではなくて三カ月延ばすということになりはしませんか。
  163. 塩崎潤

    塩崎政府委員 それは私は法律的に違うと思っております。この法律は単純に延長するわけでございます。新しく御提案申し上げようとする法律案では一五%に引き上げるという御提案になろうかと思います。そうなりますと、その効果はどういうふうに影響をいたしますか、これは利回りの計算、税引き利回りを確定する必要がございます。それには準備期間が要る、そうなると、特別措置法の新法の施行の問題といたしましてゆとりをおくという問題が出てくると私は考えております。つまり、この法律案とは別の角度の議論だ、こういうふうに私は考えております。
  164. 平林剛

    ○平林委員 私たちは大体見当をつけておりまして、利子配当に対する軽課措置については政府のほうもいろいろ考えて、この際五%ずつ引き上げるということを六月一日から実施するという法律案の内容にするのではないかと実は即断をしておったわけです。ところが、七月一日ということになりますと、結局それを待望しておる、全廃を待望しておるわけですが、一歩前進するという意味におきましても、さらに一カ月ずれて暫定的な措置が実現をするということになりまして、私はそこにどうも釈然としないものがあるわけであります。なぜ六月からこれを実施することができないか。これでは二カ月間と大体われわれに判断をさせておいて、それは法律のたてまえは別の本法で措置をするといいましても、実質的には私は従来どおりの措置がさらに三カ月延びるという受け取り方をするわけであります。いや、これはこっちの法律で書いてある、これはこっちの法律で書いてあるんだといいましても、この利子配当を別に目のかたきにするわけではございませんが、国民的立場、利子配当に対する批判的考えを持っている者にとっては、三カ月間延ばすんだ、こういう受け取り方をするのはやむを得ないことだと思うのです。二カ月をさらに一カ月延ばすというようなことを相談をされた理由はどこにありますか。
  165. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、この問題に限らず、全般的に常に痛感しておるのでございますけれども、公布即日施行という税法のいままでのやり方、これは非常に混乱が多いのでございます。減税ならば比較的楽でございますが、増税のときには非常に混乱が多い、こういうことを痛感するので、できましたら、変な思惑さえなくしたら、増税法案は少しのゆとり期間を置いて納税者に理解させて、これを履行していただくということが非常に適切な方法だと思うのでございます。いまのところそれは簡単に行なわれておりませんが、今度の印紙税、登録税にいたしましても、私どもはゆとり期間をお願いするつもりでございます。この措置法の利子につきましても、税引き利回りを直ちに計算することは即日施行では困難だと思います。そういった意味で税引き利回りを確定し、さらにまた各種の資産の利回りを見ていただく意味におきましては一カ月くらいのゆとりをおくほうがいい、こういう判断でありまして、これは利子配当のみならず、こういった特例措置あるいは増税措置が行なわれる際には、できる限りゆとりを与えるほうがいい、しかし、一方にまた一つ財政上の要請もございます。さらにまた、思惑というような要素が入りましても私どもは不合理だと思います。このあたりを調整いたしまして一カ月というふうにお願いしよう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  166. 平林剛

    ○平林委員 私はその点についてはやはり批判を持つわけであります。財政的な見地からいえば、こういうものは早くなくしたほうがよろしい。ですから、どんどん国民の期待にこたえて改めていくという態度、そのスピードを上げていく必要がある。そういう意味から一カ月間の期間をおくということが、ほんとうに事務上そんなに煩瑣なものでしょうか。即日施行でもそれができないほどの事務的な混乱があり得るのか。私は、それよりもむしろ一つの政治的な配慮、こういう見方をせざるを得ないのです。PRをする期間をおく、こう言いますけれども、この一カ月というのは、PRの期間ということになるのですか。それで、どんなPRをするつもりですか。
  167. 塩崎潤

    塩崎政府委員 PRの期間ももちろん必要でございますが、やはり税金が五%上がることによって、これは分離課税でございますので、税引き利回りが下がってまいります。このような準備を、金融機関あるいは配当を支払う会社がおのおのしなければならない、こういうことでございます。
  168. 平林剛

    ○平林委員 そんな支払いとかその他の準備を、実際の実務としてすぐその六月から七月の間にやるのですか。それをその期間がなければできないものですか。
  169. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは長期の、前から預けておりましたものがあり、それらにつきましては、おそらく一〇%ということで予期しているものもございます。それら等考えますと、私は、準備期間をおいて、税引き利回りを、預金者あるいは投資者に認識さす必要があり、その準備を金融機関にやらせるほうが適当だ、かように考えております。
  170. 平林剛

    ○平林委員 私はその点についてはどうも理解ができないのでありまして、そうしたことについてはいまから話をして、そして、これからはこうなりますというようなことはなぜできないのでしょうか。
  171. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、国会で御提案申し上げておりまして、これがどういうふうになりますか、十分な御審議を経た後でないと国会の御意思もきまらない、きまらないうちに行政庁が動きますと、行政の行き過ぎということで、また陳謝をしなければならないことになりますので、やはり国会の意思が確定してから各種の準備をしたほうが、誤りを繰り返さない意味で適当ではないかと思います。
  172. 平林剛

    ○平林委員 その言、まことによろしいけれどもも、私は、この問題について、一カ月間のPR期間とか手続上の措置が必要とは考えない。これはいずれ私は実際の実務というものを検討いたしまして、本法のとき再びこの問題について政府の措置を追及するつもりでございます。  いずれにしても、われわれは、この期限定めのある国税に関する法律について二カ月間延長といいながら、実質的には三カ月間の延長をねらっておるということはまことに不当であるということだけを申し上げて、との問題についてはあらためてひとつ議論をしたいと考えています。この点だけは明らかにしておきたいと思います。  次に、実はこの預金の利子、株の配当については、税利調査会のほうから、十年来にわたって、こうしたものについてはすみやかな機会に廃止する方向にいくべきである、もちろん、株の配当については、一昨年ですか新たに加わったのでございますから十年というわけではございませんけれども、しかし、長い間この問題については、漸次これを廃止すべきであると、いろいろな努力がおそらく大蔵省当局の良心において検討されてきたと私は思うのであります。そういう意味では、それを少しずつ一歩前進させたという努力は、私は買っています。買っていますけれども、買えないことがあるわけです。  税制調査会は、この預金の利子、株の配当について暫定措置を延ばすということは、かりに最近の経済情勢からやむを得ないにしても二カ年くらいにしたらどうかという試算がある。これはまだ法律案として出てまいりませんから、いまこれを議論することは適当ではないかもしれませんけれども、二カ年間ということになったなら、二カ年間ですなおにのむという態度が、私は税制調査会の考えにすなおに沿うものである、それを何とか一年でもひとつやるということは、金融界あるいは証券界の抵抗があったにしろ、この際は踏み切るべきものではないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  173. 塩崎潤

    塩崎政府委員 平林委員指摘のように、特に利子につきましては、昭和二十八年以来の初めて一〇%をこえるような大きな変革でございます。税の見地からは、いまおっしゃるように、私は早くやめたほうがいい、二年といわず即座でもいいわけでございますが、やはり何といいましても経済にとけ込む期間、これはやはり見なければならぬ、かように思うのでございます。それも、いま申し上げましたように、二十八年以来初めて一〇%をこすような大きな変革でございますので、しばらく効果を見守る必要があろう、こういう意味で、税制調査会の二年を一年間延長いたしまして三年にしよう、こういうふうに御提案申し上げまして、いずれまたこの点につきまして御審議を仰ぐ予定でございます。
  174. 平林剛

    ○平林委員 先ほどは、一〇%から一五%に上げることを、ただいま審議している法律では二カ月だが、あとに提案される法律案を加えますと三カ月延ばそうとする。それから、ただいまは、私が指摘しておりますように、預金の利子並びに株の配当について、税制調査会はこの際二カ年程度という答申にかかわらず、さらにこれを三カ年間に延ばそうとする。私は、これはもはやこうなると政策的な論争になってくると思うのであります。これは大臣とでも議論しなければならぬ問題で、ここまできて、さらにこの一〇%から一五%のやつも二カ月を何とか一カ月、PRが必要だとか事務的手続があれだとかいって、三カ月にしようとする。税制調査会のほうも、二カ年間ぐらいの延長というふうに述べておるのに、これも三年間に持っていこうとする。まあまあ私たちの目の見えないところで必死の抵抗が行なわれておるという姿を、国民はおそらく承知するだろうと思うのであります。  いまの経済は非常に流動的です。去年まで不況のどん底かというようにいわれていた。ところが、ことしになると、景気は過熱でして、手のひらを返すように変わっていく、いまの設備投資中心の経済動向から見ると、このまま一年や二年はずっとある程度は経済が拡大していく方向になっていく、そういう意味では、二年程度が適当なんですよ。それを、どういう抵抗があったか知らぬが、三年間に延ばそうとする考え方というのは、また国民のそれに対する批判を増大させるだけでありまして、どうも納得できない。政務次官、いかがでありますか。
  175. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 ただいま主税局長がお答えを申し上げましたように、税だけの立場からいいますと、こうした利子配当課税の特例措置ということにつきましては、できるだけ早い機会に廃止をするというような考えが、税だけの面から考えますと妥当だと思うのでございますが、御承知のとおり、これが設けられました趣旨、貯蓄増強、資本市場の育成というようなことを、税だけでない、もっと別な面からの経済政策全般の観点から立ちましてこうした制度が設けられまして、しかも十四年ばかり一〇%で来たわけでございます。これを私どもとして一歩進めまして、今度五%の引き上げをやることにいたしたわけでございます。  先生もるるいろいろお話がありましたように、相当のいろいろな面からする抵抗といいますか、経済政策全般から見て、むしろまじめな議論としても、相当強い反対があることは、先生も御承知のとおりでございます。そういう中にありまして大蔵省がこの五%引き上げに踏み切ったという前向きの姿勢だけは、ひとつぜひ御理解を願って、そうして、これが、もちろん二年間と三年間の問題はありましょうけれども、その辺のところは大臣なり私ども、やはり政治的な判断も要せなければいけないところもございますので、こういう点で御理解をぜひいただきまして、むしろ基本的に前向きであるということを、ぜひ御理解をいただければありがたいと思う次第でございます。
  176. 平林剛

    ○平林委員 私たちは、この銀行利子、株の配当について、単に税の立場だけで議論しているのではないのです。これはひとつ政府においてもしっかり御理解をいただかなければならぬ。われわれはこれを目のかたきのようにして、単に税の面の不公平だけから議論を進めているのではないのです。われわれは当面の経済政策の面においても、この措置はなくしたほうがよろしいし、それから自由主義経済というたてまえから見ても、これは特に株の配当のようなものを置いておくということは理屈にも合わない。そしてまた、その他の事情があるといいまして、十数年間やってきたと言いますが、十数年間税の問題あるいは経済の問題全般から検討する税制調査会は絶えず反対をし続けてきているのです。批判し続けてきている。それをほおかぶりして十数年間続けてきたのが政府なんでございまして、そういう面から考えますと、一日も早くなくすほうがよろしい。それをまた二年から三年に延ばすという考えは間違いであるから検討してもらわねばならぬと考えておるわけであります。もちろん、この間の事務当局や若干の当事者の苦心は私認めますが、されば、それが前向きであるかというと、私は心ずしも前向きとは見ない。十数年間もいろいろなものから、この程度のことはしなければならぬような国民の批判が高まってきたから、一〇%から一五%になったという理解もできるわけであります。私は、前向きと言うなら、この機会に全部なくしていくということで前向きということばを使っていただきたいわけでございまして、政務次官のこれからの辞書には、前向きと言うときは、ひとつそういうときにお使いになるようにお願いをしておきたいと思うのであります。  それからもう一つ主税局長にお尋ねしますけれども、昨日来議論しております俗に源泉法——源泉徴収、退職金などについて期限を六月に実施すべきものを四月からやろうという法律案については、これは私はすみやかにその減税効果を、その減税が満足すべきものであるないにかわわらずすみやかにやることは、次善の策として、その措置は必ずしも絶対反対というものではございません。われわれの主張は、所得税については五人世帯において百万円というものをすみやかに実施すべきものであるということでございますから、そういう意味では、それが実現しないことは不満ですけれども、一応しかし、多い少ないは別にして、なるべく早く減税効果を、特に退職金のような問題については社会党が主張してきたことでございますから、これを早くやるということについては特段に議論があるわけではございません。そういう措置を、この昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案ではとろうとしております。しかるに、この期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案のほうでは、一日延ばし二日延ばしじゃない、いや二カ月延ばし三カ月延ばしにいままでのものを温存していこうと考えておる。  政務次官、前向きということばを使いたかったならば、この期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案とともに、銀行利子配当についても一〇%から一五%にする。それならば国民が喜ぶ。これは大半の国民が喜ぶ。一部の人は顔をしかめたり、一部の利害関係者は猛烈な反対をするでしょうけれども、しかし、一〇%から一五%が前向きであるというならば、これを源泉のほうのものと同じ思想で、暫定的にも一五%に持っていくという考え方をなぜ取り入れなかったのでしょう。私は、そういうときに初めて、政府のおやりになっていることは多少前向きだなと評価ができるのでありまして、それと全くあべこべの形になっておる。これはいかがでしょう。
  177. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 実は、期限定めのある国税の三月三十一日に切れますものをいま差しあたって二カ月間延長するということでございますし、一〇%から一五%に引き上げるという問題は、これは当然本法のほうで御議論願わなければならないわけでございます。本法のほうの御議論を短期間にこまかく委員会あるいは本会議等で願うということもできませんので、したがいまして、いまのような結果に相なった。どうせ上げるなら四月から上げたらいいじゃないかとおっしゃいますけれども、これは本法全体の御審議を国会で十分の時間をかけて願うという点からいきますと、三月三十一日に切れますものを、それまでの短期間で御審議を願うということはとうていできません。それともう一つは、先ほど主税局長が御答弁いたしましたようないろいろな準備期間というものを考えますと、お説のようにはなかなかいかなかったわけでございます。  したがいまして、この期限定めのある国税の差しあたり二カ月延長という延長法案と一応切り離してお考え願えればありがたいと思います。
  178. 塩崎潤

    塩崎政府委員 補足して御説明申し上げます。  確かに、所得税法の本法とあわせて源泉の臨時特例法案を出すならば、措置法の本法とあわせて期限延長法案も一五%というような考え方は論理的にまさしくそうだと思います。しかしながら、全体として国民一人も悲しまない、全部が喜ぶ法案は早める、一人でも悲しむ、増税となる法案は慎重に御検討していただいたほうがいい、こういう意味で延長法案と所得税臨時特例法案はできている、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  179. 平林剛

    ○平林委員 主税局長が政治家みたいなことを言ってもらっては困るんです。そういうのは政治家が言うことばです。それは一言多かった。  そこで、私は、いまあげておりますように、もしこの配当利子の問題について、一〇%から一五%にこれから改正していくというものならば、そういうふうにするということの必要性を感じたからやったのでしょう。一〇%から一五%にこの際引き上げることが適当であるという判断があったから政府はそういう措置を国会提出しようとしたのでしょう。それならば、早くやるということは国策に沿うということになる。そういう理解でないと、私はどうもその裏のことをいろいろ勘ぐりたくなるわけでございまして、それが筋なんですよ。あなたが前段に言ったように、やはり首尾一貫して、源泉のほうを早目にやるならばこれもやるという態度が、ほんとうは首尾一貫した形でもあるわけです。それがこちらは東、こちらは西という形のところに複雑なるものがあるということを私は言いたいのであります。  これだけじゃないと思うのです。この間私がこの委員会指摘いたしましたように、銀行の利子、株の配当は、いずれにしても、近く分離課税を一〇%から一五%に引き上げる措置に関連して、政府部内においては郵便局の金利の引き上げの問題が議論された。これは私はこの間郵政大臣と大蔵大臣に申し上げまして、あきらめてもらいました。政府においてもこれはあきらめていただいたわけでありますが、しかし、近くまた少額の預金の非課税制度の緩和が出てくる。こういうものも私は近く定められようとする銀行利子、株の配当の見返り措置として見ておるわけであります。この見返り措置として見ることは間違いでしょうか。銀行や証券界のほうは、一〇%を一五%にすることを押しつけられたそのいろいろな見返りを方々でとっている。二カ月のものを三カ月になるべくしてくれ、それから二年のものは、税調で二年としたけれども、三年にしてくれ、それからまた、郵便局の利息については何とかできぬか。内閣総理大臣まで、ひとつ郵政大臣、これを検討してみぬかということを閣議で述べる。そうしてそれがだめになると、今度は少額貯金の非課税制度の緩和をやる。いろいろな手が動いているように私ら感ぜられるのでございますが、これはそういうふうに見るほうが間違いなんでしょうか、いかがですか。
  180. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、全く純粋な気持ちで考えております。  少額貯蓄制度につきましては、前々からいろいろな意味においての批判があり、その実効につきましては疑問が出されておった状況でございました。ただ、先生が何か見返りだというような御印象を受けられる点があるとすれば、一〇%が一五%に上がった機会に、不測の事態と申しますか、本来課税すべからざる人が課税になるおそれがあり、少額貯蓄制度の、非常に非弾力的、あるいは条件がきびし過ぎるということがあったならば、これは税制上から見ましても不合理でございますので、こういった機会にこそ反省すべきだ、こういった意味で、一五%に上がった機会に少額貯蓄制度の要件を緩和しようと思うのでございます。機会が同一になりますので、そういうふうにお感じになるかもしれませんけれども、私どもの改正の意図は全く純粋な気持ちで税制上の論理を貫こう、こういう気持ちでございます。
  181. 平林剛

    ○平林委員 きょうは主税局長、大臣がいないものだから非常に政治的な答弁ばかりに終始するのを、私はまことに遺憾に存じます。少額貯蓄制度の緩和については、また改めてこれはやりますけれども、これも私は一つの例として申し上げているわけです。政府においても、私の批判的質疑をじっくり胸の中に入れてもらいたいのですよ。これだけではありません。もう一つある。  実は、去年十二月ごろですか、株の配当についていろいろ議論がございまして、税制調査会も開かれて、いよいよこの問題についての最終結論をつけなければならぬという場面がございました。そのころ、大蔵省としては、私の承知しているところでは、この株の配当については、さすがに大蔵委員会におけるいろんな批判、追及がございましたから、何とかせにゃいかぬというようなお考えがあったんでしょう。そこで、大蔵省の中にも、この際こうした優遇は廃止しようとする議論があったことは、私は知っておるのです。それからまた、一ぺんに廃止はむずかしいから段階的に廃止——今度の措置が段階的廃止というならば、段階的廃止の方向にいくべきだという議論、それからもう一つは、一年程度はこの際継続するというような幾つかの案がありまして、結論を出さず、税制調査会にげたを預けた、こういう経過があるのでありますけれども、その経過があったことを、ひとつ国民の前にも明らかにしておいていただきたい。
  182. 塩崎潤

    塩崎政府委員 午前中にも御質問がありましたように、税制調査会には三つの案が提案されまして、おっしゃるような経過がございました。廃止案と、暫定的に延長いたしますが、若干税率を引き上げるという案、第三案は、御存じのように一年程度延長する、この三つの案があったことは事実でございます。
  183. 平林剛

    ○平林委員 税制調査会がまさに結論を出そうとするこの問題について、大蔵省三つの案を預けた。その後において、これは、私は事実かどうか知りませんけれども、日本における一流の新聞の正月号に掲げられた記事を見ると、やはりこの配当、また銀行利子の軽課措置をなくしていくためには、かなり政界のほうも苦労があるし、大蔵省のほうもなかなか苦心があるところだなということを実は感じたのであります。  それをちょっと御紹介いたしますと、ただいまのような三案が提出をされて、げたを預けた。その後大蔵省案を税制調査会に出すというと、これはびっくりするのは何といったって証券業界であるわけなんです。証券業界の表情が複雑であるということもまた想像できるわけであります。そしてまた配当金に対する課税優遇措置廃止をちらつかせると、やはりいろいろ政界のほうから要望がある、あまり変な顔もできないという立場で、いかに度胸で勝負をやる相場師といえども複雑な心境になるという観測は、私は十分想像できるわけであります。これは十年来のこの動きを見まして、なるほどなと感じられるわけです。そこへもってきて政府・与党のほうから、今度の選挙は少し助けてくれという話があれば、これは強いものと弱いものでありますから、そこに証券界のほうも、こうした問題について結局応ぜざるを得ないという事情が生まれるだろう、こういう観測も私は無理がないと思うのであります。そうして、最終的には結局税制調査会配当優遇措置廃止ということは見送りにして、二年というようなことでそれまで延ばす、こういうようなことになった。この記事を書いた新聞記者の諸君は鋭い批判力があったのでありましょう。私もそれを正月の一日に読みまして、なかなか鋭い批判力を持っておる。これは隠れたる国民の気持ちを代表するものであるわい、こう思ったのであります。たとえば、解散、総選挙の空気が強まる中で、たまたま時期が一致したとしても、大蔵省改正案——廃止を含む三案が提示され、そうして、その中に政治献金の増額を要求する動きがある。そうしてそのあとから配当収入優遇措置が据え置きとなる、こう結びつけて考えると——正しいかどうかは別ですよ。結びつけて考えると、ぽんぽん次々につながりのあるのがくると、はてなと首をかしげたくなる、こういう記事であります。私は、これはやはりある程度国民全般が抱いておる日本の政治不信と結びつけますと、ああこれは間違っておる、これはたいへんな見当違いだと、こういうことを否定するだけの勇気のある人たちはおそらくいないだろうと思う。  それで、今度の問題につきまして、この株の配当利子配当につきましては、こうした国民が抱こうとする疑惑は、納税思想にも悪い影響を与えます。政治不信に対しても決していい結果をもたらさないということを考えますと、税の面だけではない、経済全般から見ても、そろそろこの辺でこうした問題については、廃止の方向にお互いが進まなければならぬ時期が来ておるということを私は痛感するわけであります。  そこで、ほんとうを言えば、この辺で大蔵大臣に所信を聞かなければならぬところでございますけれども、私はその意見を述べて、政府において十分われわれのこの批判を胸に手を当てて考えて、次の措置を誤りのない方向でとられんことを要望します。  これをもちまして、私の質問を終わります。
  184. 内田常雄

    内田委員長 横山利秋君。
  185. 横山利秋

    ○横山委員 最初に、おそらく同僚諸君とも関心ただならざる問題であります政治家と税金の問題について意向をただしたいと思うのでありますが、先般来国税庁並びに当院の事務局から、「所得の種類と計算について」と、その参考資料なるものが回りました。この点につきまして、ずいぶん私どもも同僚とともに議論をしたわけでありますが、どうも実はしっくりしない。私ども自分の問題として、大蔵委員会税制検討しておる者として、納税の的確を期するのは当然であり、かつまたその納税が筋の通るやり方であることを願わなければならないのも当然であるわけであります。しかしながら、今回出ておりますものについて、どうもしっくりしないという感じがしてならないのであります。そういうことを、われわれの問題だからというて議論をしないで適宜にまかしておくということも、私個人としても感じがよくないから、この際、こういうものを出されました趣旨並びにその解釈、現状等について二、三承っておきたいと思うのであります。  まず第一に、かかるものが出ましたのは、田中彰治事件だとか、あるいはそのほか著名な政治家の中で脱税ないしはその疑いがあったということに基づいて社会の批判が起こったからだと思うのであります。多くの政治家がそのような一部の不心得な人々のために社会から疑惑の目で見られておるということは、まことにわれわれとしても心外千万であります。問題は、むしろその糾弾の焦点になった人たちの税金が一体どういうことになったのか、徴収されたのかどうかという点こそまず明らかにされ、そして、われわれがそれに対して、また社会もそれに対して納得をするということが先決問題でありますが、それらはどこか消えてしまって、世間が、政治家一般がすべてそうであろうというような感覚をそのまま援用いたしましてこういう通達その他を出すというのは本末転倒ではないかと思われる。  したがって、まず田中彰治、それから別な角度でありました吹原だとか森脇だとか、そういうような者の課税は一体幾ら課税されたか、徴収状況は一体どのくらい徴収されたか、今後の見通しはどうなっておるのか、それらを承りたいと思います。
  186. 泉美之松

    ○泉政府委員 いろいろお話がございましたが、まず田中彰治前代議士につきましては、現在、本税及び加算税を合わせまして五億三千万円の滞納税額になっております。これが徴収のためには不動産、貸し金、動産、有価証券等を差し押えいたしておりまして、一応それらの差し押え財産は滞納税額を上回る金額となっておりますので、今後徴収手続を進めることによって徴収をし得るものと考えておりますが、ただ、差し押え財産の中には抵当権者あるいは第三者などの権利を主張するものがおります。引き続きそういうものとの間に訴訟によって解決しなければならぬといったような問題がございます。現実には進行中でありますけれども、その滞納税額を完納し得る日取りについては、現在のところは明らかにすることができかねます。なお、収納済み額は、現在までのところわずかの金額でありまして、二百十四万円になっております。  次に、森脇文庫につきましては、すでに本院で申し上げましたように、本税、加算税、延滞税等を合わせますと、国税だけで八十二億円にのぼる税額になっておるわけであります。そのうち現在までのところ二十六億四千六百万円を収納済みになっております。収納未済額が五十五億六千五百万円に相なっております。これにつきましては、それぞれ不動産、債券等を差し押えいたしておりまして、これらの差し押え財産の評価額の合計額は一応滞納税額を上回る金額となっておるわけでございますが、差し押え財産の中には相殺を主張する相手方あるいは債務不存在を主張する相手方などもございまして、これらの異議の処理がそれぞれ裁判を経て解決しなければならないということでございますが、これまた現在相当額を徴収いたしましたけれども、今後なお徴収しなければならぬ金額とその手数は相当骨が折れるものと思っております。  それから森脇将光氏個人につきましては、現在二億四千万円の滞納になっております。これは収納済み額は千八百十四万円に相なっておるわけでございますが、なお二億三千万円ほどの収納未済額になっております。これにつきましても、それぞれ不動産及び債券、有価証券を差し押えいたしておりまして、その差し押え額は、評価におきましてはいまの滞納税額を上回っておりますが、これまた訴訟中のものなどがございまして、これの収納に急いでおる次第でございます。
  187. 横山利秋

    ○横山委員 全くたいへんな未納額があるわけですね。八十二億円のうち二十六億円しか納まっていない。五十五億円の未納がある。田中彰治は五億三千万円のうち二百十四万円しか入っていない。そういうようなけたはずれな問題が、十分な措置が行なわれないままに、世間は、政治家すべてがそうではなかろうかと考えておる。国税庁までがその気分に乗って、政治家の税金についてこういう書類をお出しになった。ところが、この書類は、あらゆる面できわめて矛盾があると私は思うのです。  一、二伺っておきますが、これを拝見しますと、たとえば必要経費について、新たに設定をされたこの必要経費というものは、歳費以外、まあいろいろあるのですが、雑所得の必要経費というたてまえをとられておる。それは税法上私も正しいと思う。ところが、雑所得とは一体何であるか。本来、私どもが政治に志し、オーソドックスに政治活動をしておるものとして、本来的にいうならば、雑所得があるべき筋合いではない。テレビやあるいはまた雑誌に寄稿したとか、そういう場合は別ですが、ここで言わんとする雑所得は、何かオーソドックスな政治活動をして国民のために働いたらお礼をもらうとかいうような意味のことをここで暗示しておるような気がするわけであります。本来そういうものがあるべき姿ではないと私は思うのであります。かりに万一あったとしても、その必要経費とは一体どういうものが想定されるであろうかということになる。ところが、この通達というか、参考資料を見ますと、必要経費と称せられるものは、たとえば政見発表会のための会場費については、会場の借り料のほか人件費、資料の印刷費あるいは一部の私設秘書、常設秘書の給料とか、通信交通費、自家用車経費とか、こういうものは雑所得がない人、歳費だけでやっておる人であっても当然にかかるものなんですね。そこに私は非常な矛盾を感ずる。何か、あなた方が言うところの雑所得が多ければ多いほどオーソドックスな必要経費が引かれる。理想的な政治家として、一銭もそういうものは受け取らぬという人については、いま言ったような理想的な政治活動をやっておるその必要経費を差し引くことをあなた方はちゅうちょしておるような感じだ。これは本末転倒しておるのではないか、こういうことを私は一人の政治家として痛感をするわけであります。ここに税法上の論理と、それから政治家としてのあるべき姿の立場と非常に矛盾がある。あなた方は今日の税法上のたてまえを中心として考えるのあまり、われわれに対して、何かおかしな立場を税法上つけようとしておるのではないか。もちろん、今日やみをやっても、所得には税金がかかる、あるいはまた、どろぼうしても、所得であるならば税金をかける。それは私もわかっている。わかっていますが、私どもはそういうことをしておるのではない。一部の政治家は別といたしましても、多くの皆さんがオーソドックスな政治活動、それを願い、それに対して精進をしているつもりであります。したがって、そういう歳費だけで政治活動をしておる人にすなおにその必要経費を引くということであるならば、私もまたその方向で議論をいたしたいと思います。私のこの矛盾というものを、あなた方はこういうものを立案なすってお感じにならなかったであろうか。これは誤解を生ずる感じがしてならないと私は思います。
  188. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 政治家に対する課税問題、私も実は昨年の八月に就任をいたしまして早々、御承知のとおり参議院の決算委員会から始まりました共和製糖事件、その他田中彰治先生等のいろいろな問題についてお話が出たわけでございますが、同時に、御承知と思いますけれども、その審議の過程で、参考資料というような形で、とりあえず政務次官、大臣の所得の申告状況というものの資料をとられたわけであります。それ以来、実は政治家の所得とそれに対する税金の問題が世論として非常にやかましくなったわけでございます。  そういうような客観情勢がございますので、私ども大蔵省といたしますと、政治家の課税について正しく申告もし、また、私どものほうでそれを正確に把握するというようなことをいろいろな面で明確にしていく必要があるのじゃないかということから今回の措置をとるような考え方になりまして、しかも、一般にもそういうことがわかってくるということのほうが、いままでばく然とただ疑惑を持たれておったものが、今度は正しい申告で、正しく納税されておるということがむしろ国民に一そう徹底いたしまして、私ども政治活動をやる者にとってもかえっていいことになるのではないか、こういうふうに考えたのが一つでございます。  ただいまお尋ねの具体的な点で、雑収入、雑所得というものに対して申告をしてもらいたい、それについて必要経費は差し引きます、必要経費はとういうものを考えておりますというようなことにつきまして、一体、それじゃ雑所得のない者、自分の給料なりあるいはいろいろな正規の普通の所得というもので、その範囲内でまさに清廉な政治活動をやっておる者は、その必要経費を引くということが全然出てこないじゃないか、そういう点について明らかに考え方が矛盾じゃないかというような具体的なお尋ねも含まれておったわけでございますが、私ども政治家の課税のあり方として問題にされておりますのが、御承知のとおり二つございまして、一つは、政治献金を行なう者に対する税制、つまり政治献金を、寄付をいたしました場合に、寄付金控除の対象とするかどうかという点、それが第一点でございます。第二点は、この問題は、御承知のとおり政治資金規正法のいろいろな考え方がまとまってこないと結論が出てとないと思いますが、いまお尋ねの現実の点は、政治献金を受ける政治家がどう納税するかという問題、これがあるわけでございます。したがって、政治献金を受けておられた方がそれを雑所得として申告をされまして、その所得に対して、当然これは政治活動に使われておるのだろうから、その政治活動に使われておる面を、常識上考えられる政治活動、これが当然政治家の経費として考えられるものということで、雑所得に対しまして所要な経費を引くという考え方質疑応答の参考までにお配りした中に書いてあるわけでございまして、およそ一般のそういう政治献金を受けてないその他の所得で、これは政治家といえども普通の人と同じようにやはり必要経費あるいは控除額についてはきめていかなければならぬ、これは政治家だから特別に必要経費についての制度といいますか、そういう法的なものは現在のところありません。  したがいまして、先生おっしゃるように、何か少し矛盾のようには考えられますけれども、そういう面からいきますと、私どもが考えておりますのは、要は、政治献金というものが個人の財産の取得なりあるいは個人の消費に使われていなければいいのでございまして、もしそれがあったとすれば、その財産の増加の面あるいは個人の所得の面についてやはりひとつ適正な納税をしていただこう、こういう考えでございます。その点を御了承願っておきたいと思って私が先に答弁したわけでございます。
  189. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃる経過はそれなりにわかるけれども、あなた自身もおそらくお感じになっていらっしゃるのじゃないかと思うのです。私も政治献金はもちろん受けます。受けますが、大体選挙のときの資金というものは政治資金規正法、公職選挙法等によって届け出をしておる。それら以外のときに政治家としてそういう誤解を受けるようなものはいただくべきではないというのが、基本的な私どもの立場でなければならぬと思うのであります。かりに受けたとすれば、届け出る。それもよろしい。よろしいが、そのときに経費を引いてあげようというと、その受けたお金に要する経費ならわかるというのです。ところが、そうでなくして、それの経費なんか実際問題としてありはしない。実際ここで経費として見られておるのは、日常ふだん、朝から晩までわれわれが普通のとおりに仕事をしており、朝電話をかけ、自動車に乗り、そうして政見演説会をやるなどのオーソドックスな経費が、経費として引かれるというならおかしいじゃないか。しかし、別な角度でそういうオーソドックスな経費を引くというなら、これは筋が通る。歳費の中からそういうオーソドックスな、政治家として模範的な演説会をやり報告会をやり、あるいはあちこちに電話をかけ電話賃を払い、秘書が足らぬから秘書を一人採用し、その秘書の給料を払う、そういうような経費を政治家に見ようというならば、それはわかる。それは全然別の問題ではないか。雑所得を得たという問題と全然別の次元の問題ではないか。それを混同するところに誤りがある。むしろオーソドックスな必要経費を計上するというならば、これは歳費というものの性格、議員というものの収入、支出について、これは性格が違うのだという立場に立たなければならぬではないか。三月十五日直前に、何をあわてられたか知らぬけれども、かかる文書をわれわれの目にとまるように配付をされて、そしてあと三月十五日まで全くわずかの時間の間では、これの解釈に困る、また質問が殺到する。私は社会党の代議士会で私のいま言ったような所見を申し上げて、そして、確定申告はぜひしてください、経費についてはいろんな疑問がございますから、これはまあ消極的に解するということを言うたのでありますが、本来ならば、こういう必要経費を見てくれるというなら、どんどんやりなさいというのが普通かもしれませんけれども、いささか個人的にも心中じくじたる気持ちがした、それは大蔵委員であるからであります。  そういう点で、あなた方もかかる文書検討されるならば、百尺竿頭一歩を踏まえて、一体、議員歳費とはいかなる性格のものであるか、政治家とはいかなる仕事をしておるのか、本質に立ち返って税制はいかにあるべきかということをお考えなさるべきではないか。中途はんぱなことをしたために、かえって混乱が生じ、また疑惑が免ずるおそれはないかということを私は心配するものであります。どうでございますか。
  190. 泉美之松

    ○泉政府委員 まずお断わり申し上げておきたいのは、先ほど政務次官から、この「所得の種類と計算について」及びそれの参考資料としての印刷物を皆さま方にお渡しするようにいたしました経緯については申し上げたところでございます。  私どもといたしましては、別段、先ほどお話がございましたように、田中彰治前代議士の事件があったからどうこうということではございませんで、世間で、政治家の方がやはりきちんと申告をしていただく必要があるというようなことを申しております。また、その申告書の内容を拝見いたしますと、ケアレス・ミステークに基づくような点が多いのでありますけれども、意外と議員さんの方が御自身の税金についてはあまりよく御承知でないような面も見受けられます。もちろん、大蔵委員であられる方は別でございますけれども、そういう面もございましたので、そういった点から、議員さんがそれぞれ正しい申告をしていただくようにということをこいねがいまして——このようなことはもう実は大蔵委員の方には不必要なのでございます。しかし、そういうことを御存じない向きもおありのようでございますから、これをお渡しして御参考に供したいというのが趣旨でございます。  それから、先ほど横山委員のおっしゃるように、これは急いでこういう書類をつくりましたために、いろいろ問題がございます。確かに、現在の税法は、所得税法第九条第一項二十二号とそれから相続税法のほうの規定とで、公職の候補者が選挙運動に関して個人または法人から受け取ったもので公職選挙法の規定によって届け出たものは、所得税あるいは贈与税は非課税であるという規定があるだけでありまして、それ以外について何らの規定がございません。したがいまして、政治家としてのいろいろな収入、支出——まあその収入の内容も昔と今とではいろいろ違ってきております。ところが、税法そのものは昔のままでございます。その間に現実の姿と税法として考えておる姿とが必ずしも一致しておらない、これは横山委員よく御承知のとおり、昔は法人からもらうのは一時所得だ、個人からもらうのは贈与だ、こういう考えでおったわけでございますが、しかし、それだけでは片づかない現実の問題が出てきているように思われます。そこから、私どもとしましては、個人あるいは法人からもらわれたものでも雑所得の収入として見、それに応じて必要経費を控除する必要があるのではないか、こういうような考えをいたしてきたのでございます。しかし、税制のほうでそういった点が必ずしも明確でございませんので、こういう書類をつくる過程におきまして私どももいろいろ悩みました。したがって、最終的には税制でもって議員歳費の考え方なり何なりを明確にする必要があるものと考えております。
  191. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいま横山委員から、非常に適切な、歳費の性格とは何ぞや、あるいは政治家の所得とは何ぞやということを考えていかなければ本質を見失うのではないか、こういうお話がございました。私は全く同感でございます。  ただいま長官も申されましたように、現在の税法は、最近にいわれておりますような事態を全く予定してない税法でございまして、そういった意味で、国税庁が苦労されまして雑所得という概念を打ち出したのだと思います。私は、本質的に所得というものは個人に帰属しました財産、あるいは個人が消費したもの、それが暦年中に実現したものだ、こういうことに尽きると思うのでござい・ます。したがいまして、先生のおっしゃるように、一部の費用をつかまえまして、これが費用になるか、あるいは消費であるかというような議論は枝葉末節の問題で、政治家の所得といえども、私は、個人に帰属する財産、あるいは個人が自分の所得の自由な処分として消費したもの、これをともかくも良心に従って申告をしていただく、これに尽きるのではないかと思っております。したがいまして、現在の税法では、分類所得税以来の定義で所得種類の分類ということに終始しておりまして、本質的な所得概念は不十分でございます。そういった欠陥を先生は盛んについておられると思うのでごごいます。これは、ひとつそういった機運に私どももぜひ乗せていただきまして、根本的に検討したい、かように思っております。  歳費とは何ぞやという性格も、確かに私どもの悩みであります。私どものような給料ならば、先生のような費用も要らないと思います。しかし、費用と申しましても、自分の選挙のやり方に関する多分に所得の処分的なものもからむような、あるいは過当選挙運動を応援するようなことにも、無制限にやると欠陥を生ずるようなことにもなりかねない非常にむずかしいものであります。先生案内のように、大島教授が訴訟しておりますが、給与所得者には十八万円ということで費用の頭打ちをしておるじゃないか、これは憲法違反じゃないかというような非難がございます。これは私は所得税法の基本的な問題といたしまして考えなければいかぬことだと思うのでございます。給与所得者の中にも費用のかかる者もおれば、費用のかからない者もおる、それを税務執行上の見地、あるいは概括的な見地から十八万円ということでまずまず大体社会的な必要性は満たされるということにしておるわけでございます。こういうこともまた許されると思うのでございますが、これはやはり考えていくべきものが相当あるかと思うのでございます。これは立法論でございます。事業所得者、たとえば職業野球の選手などは給与所得であるか事業所得であるか、不分明な点がございますが、現在費用が非常にかかるという点に着目いたしまして、事業所得として、これあたりも非常に限界線すれすれの問題でございます。こういった悩みをひとつ解決しなければならない、しかし、税務の執行の面におきまして、証明のうまい方、あるいは声の大きい方、あるいは力の強い方の費用を多く引いてもらうということになりましても不公平なことにもなります。このあたりをどういうふうに考えていったらいいか、私は、政治家の所得にもそういった問題が多分にあろうかと思いますので、これは少し時間をかけまして、特に先生方のお知恵を拝借いたしまして、世間の一般の方々が見て公平な負担であるということを税法の上に実現していきたい、こういうふうに考えております。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 かつて、私、四、五人の国会議員と語らい合いまして、ちょうど歳費問題のときでありましたか、私ども四、五人の生活費を公開したことがあるのであります。その平均値を見ますと、国会からもらうときに大体三分の一がなくなっておる。一番上のもらうべき収入総金額と、それから現ナマが入っておる一番下の金額と比べますと、三分の一がなくなっておる。もっとも、その三分の一は税金やいろいろなものを含みますから、全く損金にはならない、経費にはならないような問題もございますけれども、いずれにしても、三分の一くらいが中央における政治家としてまず使われる金、それからあとの三分の二のうちの半分、 つまり三分の一が大体家計費であります。あとの三分の一が、地方において私どもが日常やらなければならぬ仕事として、小はお葬式の花だとか、そういうところから、大は会合費、演説会費を含めて、大体そういうことになるなという気がいたしたことがございます。それから推算いたしてみましても、一体われわれの歳費が給与所得として見るにふさわしくないのではないか。事業と言われると、何か抵抗は感じますけれども、しかし、いずれにしても給与所得として見ることに問題があるのではないか。その上このような必要経費で——それは経費だとあなたのほうから言われるならば、まさに歳費は給料じゃないと断定されたようなものだ。それを断定しっこなしに、横っちょから入っていって本体をつかまえておるというばかげたことは何かという感じがするのであります。  でありますから、すみやかに、われわれのことをあなた方におまかせするつもりはありませんが、あなた方の立場として、こういう矛盾したあり方について、やはり判断を的確にされて、本体を正しくつかまえて、そして世間に納得のいくような筋の通った政治家の課税水準、方式についてお考えを願いたいと思います。  政務次官、先ほど経過についてお話をいただきましたが、私の意見についてどうお考えになりますか。
  193. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 政治家の収入がどういう性質のものであり、また、給与がどういう性質のものであり、また、政治家の必要経費をどの程度正確に見ていかなければいけないのか、いま主税局長が言いましたように、大蔵省としても真剣に今後先生方検討も十分にお伺いいたしまして、徹底をしていかなければならぬ将来の問題だと思います。  ただ、今度国税庁が、何といいますか、広い世論のいろいろなきびしい批判というものを考慮いたしまして、いろいろ先生方にお願いをいたしておりますのは、もっぱら政治献金を受け取る政治家が、その政治献金というものを政治活動に御利用していただいている面は、私ども追及する考えはないのでございます。これが個人の消費に回ったり、あるいはまた個人の財産の形成に回ったりというような場合に、これはひとつ所得として私どもは課税の対象に考えさせていただきたいというだけでございますから、政治献金につきまして、いわゆる雑所得としての計上をお願いして、これが政治活動に使われていますならば、たまたま質疑応答の例を例示として先生方にもお手元に届くようにはいたしましたけれども、この点は、それぞれの方々が良心的にお考えくださって申告をしていただければけっこうなんでございまして、要は、ポイントは、政治献金というものが個人財産の形成なり、あるいは個人の消費に回っていなければいいいわけでございまして、この点だけでございます。  なお、おっしゃいますように、先生質問に答えまして国税庁長官なり主税局長が申し上げましたように、根本的な政治家の所得並びにその必要経費ということにつきましての研究は早急に進め、確定をすることによって、公正、明朗を期していきたいという考えでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 次に、勤労学生控除のことについて端的に伺いたいのでありますが、時間の関係からこちらから問題を提起いたします。  全国に幾十万の勤労学生がおりますか、昼間働いて夜勉強するとか、あるいはまた夜働いて昼間勉強するとかいうように、多くの青少年がいまほとんどといっていいほどアルバイトをいたしておるわけであります。この勤労学生につきましては、現在、所得額から六千円控除されておりますが、その勤労学生は「所得以外の各種所得の金額が十万円以下であり、かつ、合計所得金額が二十五万以下であるもの」とされ、そして「学校教育法第一条に規定する学校の学生、生徒又は児童」であり、また「国、地方公共団体又は私立学教法第三条に規定する学校法人若しくは同法第六十四条第四項の規定により設立された法人の設置した学校教育法第八十三条第一項に規定する各種学校の生徒で政令で定める課程を履習するもの」となっています。  私が問題を提起いたしたいのは、ここにありますように、全国でずいぶん多い各種学校のうちで法人しか認められないという点にあります。今日、法人と個人と比べてみまして、なるほど相対的にいえば、法人のほうが一つのていさいを備えているし、平均値としても規模が大きいことは言うまでもありません。しかしながら、こういう各種学校というのは、かりに法人でありましても、組織的なていさいを備えておるのみなのがほとんどであります。しかも、各種学校というものが個人的色彩の強いものであります以上は、個人で一つの学校長の人格を持って形式をされる学園の雰囲気、学校の雰囲気が非常に強いのであります。でありますから、一がいに、学校法人だから勤労学生の控除をしてあげる、個人の学校であるからこれは勤労学生控除をしてやらないということは、これは各種学校の状況を知らざるもはなはだしいのではないか、こう痛感されるのでありますが、どうお考えでございますか。
  195. 塩崎潤

    塩崎政府委員 各種学校の学生を勤労学生控除の対象にいたしましたのは昨年からでございます。それまでは、御案内のように、学校教育法に規定いたしますところの一条学校に限定しておったわけでございます。その各種学校の中にも、学校教育法第一条の学校に匹敵するものがあれば、これを認めるべきである、こういった考え方が昨年から採用されたのでございます。確かに、各種学校の中には、まだまだ各種学校の制度に十分とけ込んでいないものがあるので、私も、長らく贈与税あるいは法人税で各種学校の形態を見てまいったのでございますが、その不十分さは十分存じております。しかしながら、一つの目安といたしましては、やはり一条学校に準ずるような法人学校、各種学校、これをつかまえたい、そうなりますと、もろもろの個人設立の学校は、その基準からいってむずかしいのではないか、一種の外形的な基準でございますが、しかし、これは文部省とも打ち合わせ、また、学校法人の申請は自由でございますので、そういったところからスクリーンされましたものでありますから、そういうところでひとつ御納得いただけるのではないかということで、学校法人あるいは準学校法人に限定している次第でございます。
  196. 横山利秋

    ○横山委員 文部省にお伺いをいたしますが、こういう各種学校の適用を法人だけに限定したということについては、ずいぶん私は問題があったと思うのであります。問題があったけれども、まあひとつとっかかりをつけるために、第一段階として、私はそういうやり方に賛成はしませんけれども、おやりになると思うのであります。もう全般的に個人立というものは広く信用なり学校ていさいがないと一がいに言うてしまうことは、非常に危険な考えである。もちろん、その辺のたった四、五人の生徒を擁してやるようなところもあるし、また個人として非常にすぐれたる学校教育をやっておられるところもあるわけでありますから、一がいには申しませんけれども、個人立の中で、勤労学生たくさんを擁して、当然この勤労学生控除を受けるべき資格のあると思われるものが実に多いと考えておるのでありますが、文部省の御意見はどうでしょうか。
  197. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいまの先生の御意見、まことにごもっともな点もあると思います。今度勤労学生控除の対象となるものにつきましては、各種学校につきましては、ただいま主税局長から申し上げたとおりでございます。  御案内のとおり、各種学校という制度が、学校教育法に一条しか規定がございませんで、たいへん範囲の広いものになっております。そこで、勤労学生控除をいたしますにつきましても、ある程度各種学校につきまして外形的な要件というものが必要じゃないかということを考えるわけでございますが、ただいまの各種学校制度があまりにも範囲が広いものでございますから、ただいま私どものほうで、各種学校制度を改めまして、ひとつ、もう少ししっかりしたものにつきまして今後これを各種学校というふうにしようじゃないかということで、法案なども準備しておるような次第でございます。そうなりますと、いまよりもしっかりしたものが各種学校ということになるわけでございますが、また、そういうことになりました場合には、やはり勤労学生控除をそういう範囲に広げていただくということも大蔵省にお願いしやすいのじゃないかというふうに考えておるような次第でございます。
  198. 横山利秋

    ○横山委員 問題を広げて学校教育法の改正までいきますと、問題が発展していろいろ錯雑した問題が出てきますから、この問題にしぼってお尋ねをするのでありますが、私の承知しておるところによりますと、地方自治体が認可するものと、そうでなくて適当にやっておるものとありますね。少なくとも地方自治体が自分のほうで——私の持っておりますのは愛知県の各種学校規程施行内規でありますが、これらを見ますと、少なくとも県知事が認可をし、適当な各種学校であって、教育目的、計画、そのほか各種学校として適当であると一定の基準をもって認めたものは、これは法人のものと同じように勤労学生控除をすぐにでも適用してもしかるべきではないか。検討した結果、こういう意見を持つのでありますが、どう思いますか。
  199. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 先ほども申し上げましたように、ただいま各種学校制度の改正ということを考えておりますので、私どもといたしましてはその線でやりたいのでございますが、御指摘のございましたように、各県で認可をいたしておりますが、しかし、各種学校というのは、非常に範囲の広いものでございまして、各種学校の基準というのもなかなかつくりにくいということで、ただいま各種学校の基準ができておりますが、これもはなはだ雑と申しては恐縮でございますけれども、きめにくい基準になっております。  そこで、私どものほうといたしましては、各種学校制度を根本的に考え直しませんと、政府からいろいろな恩典を与えるとか、あるいは、いまのような税制上の特別の考慮を払うとか、そういうことがむずかしいのじゃないかということで、ただいま法案の改正に着手しておるわけでございます。できましたら、そういう新しい制度を設けました後にやってまいるつもりでございます。
  200. 横山利秋

    ○横山委員 御両所とも勘違いをしてもらっては困るのです。私は各種学校のためにやってくれと言っておるわけではないのです。そこへ通って、昼間働いて一生懸命勉強しておる青少年のためにやってもらいたいという意味なんですから。おんぼろの各種学校であっても、働きながらそこで勉強しておる子供の気持ちはまたいちずなものがあるわけであります。学校がいい悪いというよりも、生徒が働きながら勉強しておる気持ちに立てば、そんなにしゃくし定木な、あの学校は銭があるから、先生がいいからとばかり言うておれないし、言うておるべきでないのではないか。問題は、法人の学校なら、大したことではないけれども税額の免除がある、個人のところでは税額の免除がないということで子供が納得するだろうか。そう思いますと、いま少しそのしゃくし定木な考え方を変えて、働く青少年のために、一律とは申しませんけれども、働きながら勉強しておるというならば、このワクを広げて、もっともっと青少年励ましのための施策をとっていいのではないか、こういう気持ちで申し上げておるのでありますから、その気持ちをくんでひとつ改善してもらいたい。  いかがですか、塩崎さん、あなたはこういう人情論でいくと非常に弱い人であると私は思っているのですが、ここまで言うてもあなたは心を動かさぬですか。
  201. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も横山委員と同じように、生徒の所得の問題だというふうに理解しております。  しかし、この問題は、御案内のように、私どもから見まして、特殊な恩典と申しますか、同じ所得でありながら、勤労学生ならば減税を受けるという特典が与えられておる、いわゆる特別措置でございます。そういうことになりますと、やはりそれだけの要件を備えたものにならなければならぬ、こういうふうに、論理上なり、その要件といたしまして、先ほど来申し上げております学校教育法第一条学校に準ずるような各種学校、これがやはり勤労学生としての要件、つまり、ほんとうの学生と申しますか、世の中から六千円の税額控除を与えられてしかるべき学問をしながら働いている人ということに——これは外形的な基準とも言われましょうけれども、そういう基準をとるのもやむを得ないのではないか、かように思うのでございます。  しかしながら、先ほど来文部省の官房長の言われておりますように、各種学校については多々問題がございますし、これはできる限りいい方向で拾い上げまして、こういう働く学生のために要件の許す限りにおいての拡大については、私は別に反対するものではございません。
  202. 横山利秋

    ○横山委員 本委員会で一番中心になりますいまの法案は、とにかく、どれだけ配当をもらっても一〇%で済ませる法案がこの委員会をうならせ、与党の諸君から早く通せ早く通せと言われておる大問題でございます。その過程の中で、年額六千円の税額控除を子供にしてやらぬかと言うと、なかなかうんと言わない委員会であります。一年で五万円の内職をやっておる百五十万世帯の奥さんに何とかしてやらぬかと言っても、なかなかいいことを言わない委員会政府答弁であります。私は非常に残念でならないのです。あなたがおっしゃったように、大きな声をする者、政治力のある者は、そういうようにどれだけもらっても一〇%だ。今度、よくあなたがいばって一五%だと言うけれども、全く矛盾撞着きわまる話だと思う。心してそれだけのことをおやりになるならば、いや、それは悪かった、そんな働きながら勉強しておる子供に対しては、忘れておったって、それならすぐやろうか。内職して働いて、子供におかずを買い、げた、くつを買ってやる奥さんのためにひとつ何とかしてやろうか。なぜそれが出てこないのでありましょう。いますぐやろうかといったって、すぐこの法案を出すまでにせっかちにやってくれということを私は言うつもりはない。けれども、この委員会で一番大きな問題である法案というものは、証券業者やあるいは金融機関がどうやってあなた方にせっついたか知らぬけれども、たいへんな金額の問題である。一方においては、ほんとうに社会の中で昼はひねもす働いて、夜は勉強する、おやじや子供を学校や会社に送り出してせっせと内職をする、あるいは未亡人の皆さんが子供をかかえて一生懸命働いておるという層の人たちに対して、何とまあ歯切れの悪い答弁であるか。そうして、私どもにはわけのわからぬような政治家の税金を押しつけて、それで自分で困っておるというようなことで役割りがつとまりますか。  私は、時間がないのでやめてくれぬか、しかも、お前の言うことは全くようわかったという与党の諸君が、いささか胸を打たれたような顔をしておりますからこの辺でやめますけれども政府側としては、少しくこれはうかつで、証券会社、銀行にわあわあ言われたためにそういうことを忘れていた、申しわけない、これはいいことを聞いた、ぜひこの次にそれらの人に対して格別の努力をしたいと、最後に政務次官がおっしゃるべきだと思う。それをおっしゃれば、私も時間の関係がありますからこれで引き下がらざるを得ぬところでありますが、それを言ってもらわぬと、私はすわるにすわれぬ。
  203. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 働きながら勉強する学生に非常な御同情で税の問題につきましてお尋ねがございましたのですが、私ども先生のおっしゃることやお気持ちはよくわかるわけでございます。しかしながら、何ぶん学校の態様といいますか、そういう点がはっきりしてこなければいけませんし、また、文部省のほうでは早急に明確な基準をつくりまして、それをいたすと言っておりますので、そういう態様ができることを私どもはひとつ期待をいたしまして、その際においては前向きに検討いたしてまいりたい、かように申し上げておきます。
  204. 内田常雄

    内田委員長 永末英一君。
  205. 永末英一

    ○永末委員 昨日、利子配当の分離課税関係につきまして資料要求をしておきました。その資料が出てまいったようでございます。それで、その資料に関連させながら、留保いたしておきましたもののみ質問をいたしておきたいと思います。  一つは、貯蓄と特別措置との関係を判断し得る表をお願いいたしましたところ、全国銀行一般預金の残高、十二月末におけるものが三十七年から四十一年まで出てまいっておりますが、あとございませんから、おそらくこれで判断をしろということではないかと思います。ところが、これで判断をいたしますと、三十九年、四十年、四十一年と一般預金残高は増大をいたしておりますけれども、別段特に増大したということは認められない。特に増大したということが認められなければ、四十年度におけるこの措置が貯蓄を増大せしめる作用を果たしたとは見られない、このように判断をいたしますが、いかがですか。
  206. 塩崎潤

    塩崎政府委員 四十年におきまして行なわれました措置は、御案内のとおり、主として配当について特別措置が増加されたという点でございます。利子所得につきましては、御案内のように、五%の税率であったものが一〇%に引き上げられましたが、一方、少額貯蓄制度が五十万円から百万円に引き上げられました。こういうことでございまして、むしろ四十年は利子から生ずる税収入はふえたのではないかというふうに見られておるのでございます。
  207. 永末英一

    ○永末委員 四十年度は三十九年度と比べて二つの点が変わった。変わりましたけれども、増加率から見れば、その前三十七、三十八、三十九年の上がり方と三十九、四十年の上がり方は、わが国の国民経済の伸び率と比較するとちっとも変化がない、このように見ますか。
  208. 塩崎潤

    塩崎政府委員 たびたび申し上げておりますように、税の変化よりもGNPと申しますか、国民総生産との対比においての預貯金の伸びが大きいことは事実でございます。しかしながら、たびたび申し上げておりますように、税だけの効果を引き抜くことはできませんので、その点は効果がなかったともいえない、かように考えております。
  209. 永末英一

    ○永末委員 いままで税制調査会でもいろいろお調べになっておるようでございますが、あったというなら、あったと判断できる数字というものがなければ、あったのだと判断できない。結局、いろいろな要素について今国会でも御答弁がありましたけれども、あったかなかったか明示する数字はないが、あったと思いたい、こういうようなことですね。われわれの入手いたしました数字からは的確に影響があるという判定は下し得ない、こういうことになるのですが、どうですか。
  210. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、私も確たる答えができるかどうかわかりませんが、ともかく、長年間にわたりまして利子に対します税率の動きと預貯金の伸びを比較したものもございますけれども、なかなかむずかしい読み方になろうかと思います。  そういった意味で繰り返す答弁になるかもわかりませんけれども税制だけの効果を抜き出すのは非常にむずかしい、しかし、これが効果がなかったとは言えない、むしろ伸びに対しましていい影響があったということは言えるかと思います。
  211. 永末英一

    ○永末委員 私もそういう統計数値を扱ったことがございまして、世論調査というのをやっていまして、なかなかむずかしいわけです。しかし、世論調査の場合には、自分が収集いたしました見本の見本処置をした数値から一体何が判定できるか。数値を離れてはなかなかできない。ただ、なまの数値からいろいろの条件を勘案しながら、モディファイしてやることはございます。したがって、もしいい影響があったろうと思うのなら、やはりそういう数値を示していただかなければ判定するわけにはまいらぬ。もしこれがぱさっとここで切れまして、預貯金の分離課税というものを切っちまって、下がったから影響はあったと逆にやれるかもしれませんが、一ぺん切ってみたらいいのじゃないか、そんな感じがいたします。  しかし、これはその程度にいたしまして、次は、これまた株価と特別措置との関連を明示するような資料をお願いいたしましたところ、昭和三十八年から四十一年にわたる逐月の「東証株価平均指数(ダウ平均)の推移」というものを一応いただきました。これで見ろということでございますが、これは配当でございますから、これが問題になりました四十年三月以降の動きのととろが一番影響があるかと思ってにらんでみましたところ、四十年の二月のダウ平均が千二百四十一円六十六銭から、三月になりますと千百七十五円十四銭と下がって、自来八月に至るまでずっと下がっておる。それ以後になりますと千二百円台以上でありますが、八月までは千二百円台ではない。そうなりますと、配当源泉選択分離課税を行なったから株価が下がってしまった、この数字だけからはそういう判断が加わる。そうすると、株のためにやりたいというようなことを当時の田中大蔵大臣が言っておったような気がしますけれども、結局のところ、これは租税特別措置とは関係なしに、株価はそのときの各企業の力、その利益率、そういうものによって変わっておるのであって、租税特別措置は影響がないという判断を下さざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  212. 塩崎潤

    塩崎政府委員 証券局長もおられますので、いずれ補足的な御答弁があろうかと思いますけれども、確かに、株価に及ぼすものといたしましては、永末先生おっしゃるように、税以外の要素が多いことは間違いございません。そういった意味で、源泉選択制度がとられながらこういった株価の趨勢をたどったということもいなみ得ないところでございます。  しかしながら、全体といたしまして、租税特別措置は相当長い目で見ていただくことも必要かと思うのでございます。そういった意味で、私は、短期に見るということも危険な面がありはしないか、そういうふうに租税特別措置を見ておるのでございます。
  213. 永末英一

    ○永末委員 いま重大なことを局長言われましたね。租税特別措置は長い目で見ろ——私は永末でございますけれども、それなら一体時限立法でやっておるのは長い目でやるつもりか、こういう疑いを抱くわけですね。二年とか時限を区切っておられるのは、ともかくいまこれをやらなければ効果が出ないのだ、二年だけひとつ、税体系を乱すかもしれないが、やりたい、こういう政府の趣旨で時限立法になっておると私ども思うのですが、それを長い目で見よと言われますと、一体どう見るのか、こういう感じがいたします。
  214. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私のことばが足りませんでしたが、こういう意味でございます。  御案内のように、租税負担公平の原則を破ってまでもこういったフェーバーを与えようとするものでございますから、私はやはり期限をつけまして、その内容を期限の切れるごとに吟味していただく、こういう意味でございます。そしてまた、そのときに、はたしてもう効果がないということならば、またこれは廃止するということに私はちゅうちょしてはならないと思うのでございます。しかしながら、これは利子との関係、あるいは自己資本との関係、そんなような関係でもう少し存続すべきだというのなら、その限定、あるいは拡張、あるいは縮小、そういった税負担の公平の犠牲とのバランス、比較考量のもとにおいて、また存続、廃止、こういうような検討を続けるべきじゃないか、かように思うのでございます。
  215. 永末英一

    ○永末委員 証券局長お答えを願います。
  216. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 お配りしました資料は、ただいま御指摘のとおり、この四十年の四月、五月あたりからちょうど株価は下がっておりますけれども、株価は大体企業の収益状況に対応して動いておるのでございます。ちょうど四十年あたりが、これも御指摘ありましたけれども、企業の収益状況が極端に悪化した時期でございます。  しかし、われわれが政策的に配当分離——完全分離じゃございませんけれども、これを要請しました趣旨は、決して株価対策として要請したわけではございません。むしろ企業に対する直接の資金の供給、直接金融と間接金融、預金、貸し付け金という形の企業へのそういう資金提供に比べて、どうしても政策的配慮が不十分である、そういう意味で、少なくとも税制上は同一の待遇を与えてもらいたい、こういうことでこれを強く要請して今日までまいっておるわけでございます。決して単純に株価対策というような意味合いで要請いたしておるわけではございません。
  217. 永末英一

    ○永末委員 株式市場における資金需要——株式市場というよりは日本の企業ですね。その場合に、直接金融と間接金融があって、証券局長の窓から見ていて、間接金融にのみ特別措置があって、直接金融に特別措置がないのはいかぬので、間接金融と同じ措置をとれ、こう言いますけれども、一体、企業の資金需要の面から見れば、この二つは競合する面が多いのですね。あなたの面からいきますと、利子のほうはやめてしまって配当特別措置だけ残せ、こういうことになりますか。
  218. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 直接金融のほうに特別に傾斜をつけてもらいたいというところまで要求はいたしておりません。少なくとも実質的に同等の待遇を与えてもらいたい。残念ながら、それでもなおかつ企業の自己資本の状況は顕著な改善のあとを示しておりません。まだまだ不十分である、かように考えておるわけでございます。
  219. 永末英一

    ○永末委員 企業の自己資本比率というのは、片々たるこれら特別措置によってきまっているのではなくて、もっと違った、日本の経済の体質やら、それから日本の——どもから見れば政府のとっておる財政金融政策のほうに原因があるのである。ほんの一部分のこんなもので自己資本比率を高めようなんというのは、隴を得て蜀を望むがごとし、こう思いますが、いかがですか。
  220. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 おっしゃるとおり、税制だけがこの問題に対する有効な手段であるというふうには私考えておりません。少なくとも税制が資本の蓄積に対して政策的配慮をする場合には、直接金融と間接金融とにアンバランスがないようにわれわれ願っておるのでございます。
  221. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、資本の蓄積の速度あるいは分量とこの特別措置との関連を示す表というのを見たい、そういう気がするわけです。しかし、私が要求したのは株価だけでございますから、これはなかなか——まあ相関は出るかわかりませんが、これはひとつ本法までにそういうものがわかるのなら一ぺんお知らせ願いたいと思います。  しかし、私ども判断としまして、あなたも当初言われましたとおり、特別措置そのものがこれらの目的に大きく作用しているのではない、このような表現をされたように思うのです。その点だけちょっとお伺いしておきたい。要するに、特別措置が日本の企業の資本蓄積に対して大きく作用したかどうかです。
  222. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 私ここで答え得るのは、税制面からする措置というものは、どちらが誘導効果が大きいかということで判定するよりしようがないわけであります。税制のいかんということが個人の貯蓄形態について影響を及ぼし得ることは事実でございます。その場合に、間接金融に比べて直接金融のほうが不利な税制になっております場合には、個人の貯蓄性向というものが間接金融に向かいがちである、こういうふうに言わざるを得ないと思うのでございます。
  223. 永末英一

    ○永末委員 あなたは貯蓄の話をされましたが、大体、貯蓄性向なるものは、たとえば利子の分離課税、あるいは配当のこういう源泉選択分離課税、そこに重点が置かれているのではなくてそうであるならば、一体われわれ国民の貯蓄部分というものはどこから出てくるのか。むしろ、消費性向とにらみ合いながら出てくるのである。消費性向と貯蓄性向との判断につきましては、もっと違った経済の流れというものから規定づけられてくるのですね。その中で、貯蓄部門に回ったものの中で間接金融と直接金融、これがその次に起こる問題ですが、私は、いま配当の問題で、配当のこの措置を行なったがために貯蓄そのものが向上するというというのは、一段階飛び越えた議論ではないかと思いますが、いかがですか。
  224. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 おっしゃるとおり、私がお答えいたしましたのは、一定の貯蓄が行なわれる場合に、その税制のいかんによっては、直接金融と間接金融に対する貯蓄性向というものが変わり得る、こういうことを申し上げたわけでありまして、貯蓄総量による性向については、主税局長のほうからたびたび答弁がありましたとおりであります。
  225. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、貯蓄の前に税金を取られるわけです。消費をして残って貯蓄ができる——残るというのは別ですが、まず税金を取る、ところが、その税金の中で、残しておいてやればそれがいまのような特別措置によって間接金融や直接金融に回り得るだろう、こういうことでありますが、しかし、それは大きく見れば国家の財政政策の一部門をなすのであって、それをやるのと、税金で取って別の国家目的を果たすのとどっちがどうだ、この辺の判断がこの特別措置にかかっていると私は思います。  その角度からながめますと、資料要求いたしましたもう一つの部分、じゃ一体わが国の納税人員、いろいろ分数がされておりますけれども、その中で配当所得を持っている人員というのはどういう部門を占め、所得の中でどの程度の比重を占めているか、こういうことの資料提出をお願いいたしました。これまたいただきました。これはけさ質問があったのでございますが、私が知りたいと思いましたのは——この資料で、国税庁で税務統計でやっておられるのは一千万円超のところでとどめておる、そういうのがいままでの仕事である、こういうお話でございましたが、私のお願いしたいのは——これは小所得の階級区分でございまして、所得税法における累進税率の課税所得区分ではございませんから、違います。違いますが、私が知りたいのは、まさしく一千万円以上の課税所得部分に見合えるような、そういう所得者あるいは所得階層が配当所得というものをどのくらい一体持っておるだろうか、どういう所得構造になっておるだろうか、そういうことが知りたかったのでございまして、きょうは間に合わぬと思うのでありますけれども、もし主税局長のほうで推算がつきますならば、たとえば三千万円とか六千万円とか−六千万円超で累進税率は天井になっておりますが、六千万円超の人は一体配当所得がどのくらいあるとお考えですか、この辺ひとつ伺っておきたい。
  226. 塩崎潤

    塩崎政府委員 午前中御論議がございましたように、確かに私どもの所得分類は、配当所得等を着目してみますとおっしゃるように千万円では低いような感じでございます。全体として見れば八千人の所得者ということになりまするけれども配当所得だけを考えてみますと、おっしゃるように、高額所得者になればなるほど配当所得の総所得中に占める割合はふえてまいります。  たとえば、これは私どもの試算でございますが、一億円以上の方々の所得中に占める配当所得を見ますと九九%が配当所得であることは、常に高額所得者の番付の中へあらわれる方々の所得のうちから集計してみまして、言えることでございます。つまり、所得税税率の相当上の部分は配当所得に対して適用があるというふうに考えていただいてもいいわけでございます。しかし、これは一億円という非常に限定された数字でございますので、仰せのように、今後はもう少し刻みを変えまして、上のほうの所得階層の所得のうち配当所得の占める割合が推測できるような資料をつくってまいりたい、かように思います。
  227. 永末英一

    ○永末委員 その資料一つ本法を審議する場合には必ずわれわれに御提示を願いたいと思います。  そこで、いただきましたこの表でちょっと伺いたいのですが、納税人員の面で、三十九年には配当所得のあるものとお考えになりました者は四十五万五千人、四十年度には三十一万二千人と減っておるわけですね。減っておる理由は何だと考えておられますか。
  228. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これはもう御案内のように、四十年に改正になりました申告不要分が出てきたことと、源泉選択制度が認められたせいでございます。
  229. 永末英一

    ○永末委員 いまおっしゃったように、私どももそう思うわけでございまして、それが所得でいきますと、まさしく経済の流れから見ますと、おそらく配当所得は上がったであろうと思いますけれども、税務署でつかまえた配当所得は三十九年が千六百十三億円、四十年が千二百六十九億円と減っておるわけです。  そこで、減っておる分がどうなっておるだろうかというのが、注のほうで、源泉選択に関する配当所得部分が二百九億円、申告を不要だとしている部分が二百九十億円、合計四百九十九億円、こういうものだと推測をしておられるわけですね。そうしますと、これを合算をいたしますと千七百六十八億円というものが、四十年度に会社法人が取得した配当所得は別として、一応あらあら個人の持っておる配当所得部分として考えられる。そうなると、なるほど三十九年よりは四十年のほうが配当所得を個人がもらった部分はふくれておる、こうなる。景気と似ておるわけですね。  ところで、問題は、源泉選択制になりあるいは申告不要だというたところで、五百億円程度のものが、あのころは一〇%ですが、一〇%で切り捨てになって浮いてしまっておる、こういう現象をこれで読んでいいんでしょうな。
  230. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三十九年から四十年にかけまして、申告面では御指摘のように三百四十四億円ばかり配当所得で申告されたものが減少しております。私どもは、申告書が出ませんし、また支払い調書が出ないことになっておりますので、推測になかなか困難をいたすわけでございますが、おっしゃるように、二百九億円が源泉選択分であり、二百九十億円は申告不要分であろうというふうに想像しておるわけでございますが、五百億円ばかりが、おっしゃるように別な制度で課税を受けておる、あるいは別な制度で申告不要になっておる、こういうふうに考えていいかと思います。
  231. 永末英一

    ○永末委員 これはきっちりと計算が出ておりませんけれども、ともかく一千万円超——先ほどは一億円超の人で配当所得が構成している所得部分が九九%だ、こういうことでございましたが、一千万円超で八千人という数なんですね。これが二千万円なり三千万円というような、それから上を考えると非常にりょうりょうたる数になる。しかも、この配得所得の総所得に対する比率を見ますと、五十万円以下なんていうような人は、実に四十年度で配当所得が総所得に占める部分は〇・七%にすぎない。百万円以下も同じく〇・七%、まあこんなことであって、二百万円以下で二・七%、ちょびっと配当をもらっておる。ところが、上がってきますと、一千万円のところで四十年度では二三・四%という配当所得が所得形成の中に寄与しておる。上がってくると、いまおっしゃったように一億円以上は九九%、そうしますと、配当分離を認めて、そうして、これは全部が全部そうなっておるとは思いませんけれども、分離を認められておる部分が正確に捕捉できるならば、いまおっしゃったような相当な減税部分——減税というか、税を取らなかった部分のおかげはだれがこうむっておるかというと、まさしくこの数千人の人がこうむっておる、このように判断してよろしいな。
  232. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一億円の数字は九九%までないので、もう少し検算さしていただきたいと思います。非常に不正確な数字を申し上げますと誤解を起こされますので、いま検算さしていただきますが、おっしゃるように、高所得層になればなるほど配当所得の占める割合はふえるわけでございます。しかしながら、源泉選択制度は一五%、この一五%の率に配当控除の一五%を足しました三〇%——先般も申し上げましたように、課税所得百五十万円をこえるところで三〇%でございますから、それを上回る所得階層にとって有利なことになります。しかしながら、御案内のように、一会社から受ける配当金額が五十万円以上の方は除くとか、あるいは保有限度五%以上の株式を持っている人は除くというようなことで、まあそういった制度のせいで、現在のところ配当所得は特に高額所得者ではそんなに源泉選択制でいっていない、有名な会社経営者の方々は、多分に会社経営上の理由ということで大きく株式を持っておられる、したがいまして、配当所得は非常に多いわけでございますが、税法上の制限の理由源泉選択制度でいっていない、したがって、源泉選択制度を採用しておられる方々、選択しておる方々は、市場から浮動株式を買いまして自分の上積み税率が三〇%をこえるような方々か、あるいは、先般も申し上げましたが、扶養親族の合算される配得所得について源泉選択を受けておる、こういう方々が多いようでございまして、そういった面では、まだ私は、配当についての総合課税の制度は相当維持されておる、かように考えております。
  233. 永末英一

    ○永末委員 国税庁長官、いま主税局長が言いましたように、大会社の経営者は自分の会社をうっちゃらかすと経営権に差しつかえますから、これは持っておると思うんです。ところが、この制度をとって、一会社、一銘柄五%以内なら分離ができるんだ、選択はできるんだ、どういうのでねらってそのように株の配分をやって、そうしてこの特別措置のおかげをこうむろうというようなことを考える人がなくはないと思うのです。これは株のことをよく知っている人なり、あるいはまたそれができ得るような者ならできると思うのですが、国税庁長官としてそんな人がどの程度あると思いますか。
  234. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、配当金額が年間五十万円以下の配当金額になることと、それから同時に保有株式が全株式の五%以内ということでありますと源泉選択ができるわけでございます。しかし、実際株を持っている人をいろいろ調べてみますと、どうしても自分が株を持って自分の支配する会社にしておかないと会社経営上困る、こういう方が多いのでありまして、事業経営をやっておられて株を持っている人は、比較的そういうふうな選択を利用することができない、むしろ、資金の余裕があって株式に投資するという人の場合には、銘柄数をできるだけこまかく分けまして、市場から適宜買っておきますと源泉選択の道が選べる、そういう意味では、そういうことを目当てにしてやっておられる人はかなりおられるように見受けます。私どもいろいろ主税局とも相談して推計いたしておりますが、そういう意味源泉選択をしておる人は二十八万人くらいおるのではないかというふうに思っております。
  235. 永末英一

    ○永末委員 いまおっしゃった二十八万という人は巧妙なる人ですね。一般の納税者というのは、たとえば、その大半を占める勤労所得者、給与所得者、これはのがれられない。九・六・四の九というのですが、九じゃなくて十でしょう。のがれられない。一般の事業者にしましても、六なんていわれておりますけれども、これは一たん自分のふところに入ってからやられるわけでございますから、その被害感はきわめて高い。ところが、巧妙に制度を利用して、法律に合致した合法的な手段でやれば、きわめて低い税金でやれる。それが国税庁長官のお見込みでも二十八万人もおるというようなことになりますと、これは国民に税組織税体系というものに対してきわめて不信の念を抱かせる原因になっておるのではないかと私は思うのです。自分のほうはぴしゃっとつかまえられる、ところが金を持っておってうまいことをやるやつはのがれておる。この事実を、のがれられぬ、もう月給袋をもらったときに天引きされている者から見ますと、どうも日本の国では、金を動かし得るやつがうまいことをして、われわれ一生懸命額に汗して働いている者は、もう税務署からぎゅっと握られておる、これでいいんだろうかということで、何とかして全力を尽くして税金を払わぬ方法を考えるのがあたりまえじゃないか。こういう税金に対する不信の念が、この制度をとっておることによって、国民のうつぼつたる欲求不満として心の底に波立っておると思います。あなたはそう思いませんか。
  236. 泉美之松

    ○泉政府委員 サラリーマンの方の中には、そういった先生のおっしゃるような意見の方もございますれば、まあ、ある程度小金ができたらうまく株を買って、それによって軽減を受けることもできる、こういってその措置を歓迎している向きもあるようでございます。とにかく一がいに簡単に言いにくいと思います。  ただ、私が最近陳情を受けておりますのは、こういう制度をやりますと、いわゆる中小企業の経営者は、どうしたって株の五%以上は持っていなければ、中小企業の経営を侵されると困る、そういう意味で五%をこえると選択の余地がないというのは中小企業いじめではないか、こういうようなことを言われる向きがございます。
  237. 永末英一

    ○永末委員 その一銘柄五%というのは、どういう意図でつくられたかわかりませんけれども、なるほど小さな企業主は、自分の企業を自分がやっていくためには、五%じゃえらいことになりますから、これはもうどうしたって、いろいろな人をかき集めても過半数の株を持たなくてはならぬ。そういう人々は金の動きはわかるわけですね。ところが、片一方横を見ると、あなたが推測せられたように、二十八万人のうちの何人かが目について、それはうまいこと株を分散して、そうして税金を安くやっている。そうすると、中小企業の、自分の経営を守るために過半数くらいの株を支配しなくてはならぬ人は、どうもこの面についても何かうまいことをやる方法はないか、こう思うのが人情だと思う。しかし、その人情は、もう少し違う角度から見れば、税というものに対して、初めから何とかしてこの税の体系からはずれていこう、はずれるのがおれの生きる道だ、こういう感じを持つということになると私は思うのですが、いかがですか。
  238. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、そういう点から税に対する公平性について疑いを持つ向きが出てまいりますと、いろいろ問題になるわけであります。しかし、それが租税特別措置租税特別措置たるゆえんだろうと思います。これはもう今朝来いろいろ論議の繰り返されたことでございますから私から申し上げる必要はないと思います。
  239. 永末英一

    ○永末委員 そこで主税局長、資本主義社会で個人に所得が帰属するのはあたりまえだというたてまえになっている国でも累進税率をとるのは、やはり所得の再分配という機能を持たさなければ、その資本主義社会そのものの基礎がゆらぐのだ。それはわが国のように、秘密平等の選挙権、それに基づいて国をつくっている限りは、一般の所得の少ない人にもこの国の法制を守らせよう、これはやはり累進税率がその大きな柱の一つだと思う。その意味合いで、いまの質問応答を通じて明らかになりましたように、上のほうでこれがくずれておるというような感じを抱かせる——これはいま国税庁長官が言われましにように、租税特別措置はそれだ、こういうことでございますが、租税特別措置なるものは、したがってこの種のものについては、やはり時間というものが限られておるのだから何とかがまんしてくれというような意味合いから時限立法、こういうことになるのではないかと私は思うのです。しかし、これがだんだん二年また三年と続いていきますと、累進税率そのものを一体日本の税務当局はくずすつもりかという疑いを持たれる。そうしますと、それは民主主義の根本、いまの資本主義社会を危うくささえておる税務のほうから、累進税率そのものを上のほうでくずしていくと思うのです。あなたはその日本の税務を守る張本人でありますから、わが国の民主主義体制を守らなければならぬという角度から、そんなに上のほうで累進税率がくずれていいものかどうか、どうお考えになりますか。
  240. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も、確かに累進税率税制の基本であり、所得がだんだん大きくなるにつれまして分配機能を発揮させる意味においての効果は大きく評価するものであります。しかし、この累進度がどの程度であるべきか、いろいろに意見が分れておりまして、各国の累進税率がなかなか一致した姿を示しておらないことは御存じのとおりでございます。そんな意味で、累進税率は、やはり所得税制が近代税制の基本である以上、また大きな要素をなすものであるのでございます。  そういった意味で、私は現在所得税を見てまいりまして、そんなに累進税率がゆがめられているとは思わないのでございます。先ほどの株式配当につきましては源泉選択制度ができました。できましたけれども、幸いにいたしまして、五十万円あるいは五%というような制限のせいで、まだまだ高額所得者につきましては配当所得はほとんど累進税率適用を受けておる、こういった意味で、所得税制の基本はほとんど守られておるということでございます。  なお、四十年の一億円以上の所得者のうち、配当所得の占める割合は九九%と申しましたが、これはちょっと間違いまして、七〇%というふうに御理解を願いたいと思います。  なおもう一点、配当につきましては、御案内のように配当控除という制度がございます。これはまた別な累進税率との関係に問題があることは御存じのとおりでございます。これは別途にまた検討すべき問題だと考えております。
  241. 永末英一

    ○永末委員 いまの主税局長の御答弁の中で、幸いにしてということば——なかなか気持ちはよくわかる。あなたの気持ち、よくわかります。  最後に、国税庁長官にひとつ伺っておきたいのは、あなたの傘下にはたくさんの徴税職員がおられますね。これはむずかしい仕事で、徴税職員というのは税金を収めさせなくちゃならぬ。ところが、たまたま納税者に知識があって——税法は国会でつくっていると思っていない、税務署がつくっていると思っています。その税法によってやっているけれども、金持ちにはこんなに安くて、何でおれのところにそんなにやってくるのだ。個人所得、白色の事業者などというのは、何といたしましても、いろいろな方法で修正申告を出すとか、あるいはまた更正決定をするということで、あちこちで争いがあるわけです。青色申告でも争いがある。争いがある場合に、納税者のほうから見ますと、そういう文句の一つも言いたくなる。やはりはっきりとした資料がない場合には、お互いに見解が違ってくる。その場合に、税務署のほうの判断が有権的な決定、こうなってまかり通るわけでありますから、その場合に、今度税務署の職員のほうが、自分が一生懸命職務に忠実であろうと思いましても、この税法を見た場合に、この特別措置を見た場合に、おれは一生懸命公務員としてやっていこうと思うけれども、なぜ一体こんな特別措置をして、何で上のほうだけ優遇しているんだろう、国家財政の全般というような言い方がストレートに職員の方々の頭に入るかどうか、この点について疑問があるのではないか。つまり、税務職員の徴税意欲というものに対してきわめて有害なる作用をこの特別措置は果してはいまいかと私は思うのでありますが、国税庁長官のお考えをお聞かせ願いたい。
  242. 泉美之松

    ○泉政府委員 租税特別措置、いろいろございますので、必ずしも大資産家だけの措置というわけではございませんけれども、ただ、税務職員が、いま非常に御同情あることばをいただいてありがたかったのでございますが、納税者に接しまして賦課徴収の仕事をやっていきます場合、納税者の方からいろいろまあ批判を受けるわけでございます。そのときに一番つらいのは、やはり自分らのような中小企業をいじめて、ああいう大所得者を放置しているのはどういうことか、こう言われますと、ほんとうに税務職員としてはつらいということをよく私にも申しております。私もそういった職員の立場に非常に同情いたしておる次第でございまして、したがって、何といいましても、税の執行を公平にしていく上におきましては、税制そのものがやはり国民の公平感によってささえられておるということが必要であろう、このように考えております。
  243. 永末英一

    ○永末委員 国税庁長官のお考えもよくわかったように思います。したがって、質疑はこれをもって終了いたします。
  244. 内田常雄

    内田委員長 堀昌雄君。
  245. 堀昌雄

    ○堀委員 一九六二年でありますか、それから始まったケネディラウンドはいよいよこの四月三十日をもって、どちらにしても終結をするということになっておるようですが、これについては、現在政府の事務当局の責任者がジュネーブに行っていろいろと今後の問題について協議をすることになっておりますので、これに関連をして、少なくとも私は、このケネディラウンドのいろいろな問題を調べてきた中で、現在日本が置かれておる状態というのが、はたしていまのようなままでいいのかどうかという問題についてはいろいろな点で実は疑念があるわけです。私どもは、そういうことで、政府としてもう少し態度をはっきりしていい問題が少し多過ぎるのではないかという感じがいたしますから、それについてちょっとお伺いいたします。  まず最初にお伺いしておきたいことは、一九六三年の五月の閣僚会議でこういうことが決議されておると思うのです。関税以外の通商障壁、特に特定品に対する差別的待遇の問題及び関税引き下げの効果をそこなうか、または無効にするような措置の取り扱いについて検討することをきめて、その後検討がなされているのだろうと思うのですが、この経過について、どこでもいいですから、一体、この非関税障壁の問題の取り扱いというのは今日時点でどこまで進捗しておるのか、ちょっと明らかにしていただきたい。
  246. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 非関税障壁の問題に関しましてお答えいたします。これは先生御承知のとおり、一つは米国、一つは欧州における対日差別の二つに分けて考えていただきたいと思うのであります。  米国におきましては特にASP制度というものがございます。これは御承知のとおり、アメリカン・セリング・プライスでございまして、向こうの価格によってこちらから輸出したものに関税を賦課するという形でございます。これに対しましては、現在極力非関税障壁を取るべくケネディラウンドのワク内におきまして交渉を進めておるわけでございますが、現段階では、アメリカといたしましても、これが非常に自分に都合がよ過ぎるというので、何か改善をしなくちゃならないのじゃないかということで、現在では実効税率に換算をしようというふうに考えておりまして、おそらくこのASP制度というものは廃止される見込みが強いのではないか、こういうふうに考えております。  二番目には米国の関税法の四百二a条でございます。これは御承知のとおり、米国の商品価格あるいは外国の商品価格、いずれか高いほうへ基準を置いて税をかければよろしいという、まことに米国にとりましては都合のよい制度でございまして、これの廃止に関しましては米国の関税委員会で報告書を作成いたしまして、目下上院で検討中の模様でございますので、何らかの改善がなされるのではないか、こういうふうにわれわれといたしましては考えております。また、特にわが国から輸出されます壁タイル等に適用されるかもわからないというようなおそれのある、御承知のアンチダンピング制度でございますが、この制度に関しましては、国際コードを作成することが交渉されておりまして、まとまる見込みが強い、相当程度の改善が行なわれるものと期待されておるわけであります。  次に、欧州における対日差別でございますが、これもケネディラウンドの交渉と同時に、極力各首都におきましていま話し合いを進めさしていただいております。しかし、これに関しましては必ずしも楽観を許さない状況である、こういうことでございます。
  247. 堀昌雄

    ○堀委員 たいへん楽観的な報告ですけれども、アメリカン・セリング・プライスの問題は、いま上院でこの問題がかかっておるし、アメリカの関税委員会もこれはまあ廃止したらいいというようなことを伝えておると新聞は伝えておりますけれども、私はどうもそう簡単にそれがはたして実効税率のようなことで落ちつくのかどうか、最近のアメリカの保護貿易の傾向からして、そう簡単ではないのではないか。非常にあなた方のほうが楽観的なのは、ちょっと私としては意外でありました。  それから、通商拡大法四百二条のa項で、いまあなたのお話では、国内価格と輸出国の価格と高いほうということですが、これは輸出国の価格とFOB価格との高いほう、こういうことじゃないですか。
  248. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 そういうことです。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことでしょうね。ということで、これも何だか非常にうまくいきそうなお話ですが、これは日本のほうでは強く要求をしているんでしょうけれども、見通しとして、確実にいまのようになりますか、その点ちょっと。私、いずれも話を聞くと甘い話で、そうなるならたいへんけっこうだと思うんですよ。しかし、甘い期待感ばかり持っていて、実際にはならなければ、もうこういうものをこのままに置いておいて、ケネディラウンド片一方だけを進めていくというようなことでは、問題は私は前進しないと思うので、ちょっともう少しはっきり詰めて聞いておきたいのです。
  250. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 いまの四百二条a項でありますが、先ほど申し上げましたとおり、目下上院で検討中の模様で、何らかの改善がなされることを期待いたしておりまするが、現時点におきましては、まあ、一応廃止の様相、見込みというものはきわめて薄いのではないかということであります。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 薄いんでしょう。だから私は、やはりケネディラウンドという問題が出てきた発想は一体どこにあるかというと、アメリカのナショナルインタレストを前に押し出す一つの方法だと見ているわけです。これは穀物協定によってわれわれにいろいろなことを押しつけてきておる。それはあらゆるものを見ても、一体、ほんとうにそれが公平に世界の貿易の拡大だけに役立つ、要するに、輸出国も輸入国も同じ形でメリットとデメリットがあるというならいいと思うんですよ。しかし、この問題の提起は、まさに、アメリカにとってはきわめて好都合な問題提起であるし、同時にそれは、それを受ける側にとっては、形式的にはあるいはいい面もあるかもしれませんけれども、こまかくこれをメリット、デメリットを計算して、はたしてどうなるかという点は、ケネディラウンドだけのワクの中以外に、こういう非関税障壁の問題をやはり全体として見なければ、私はこのメリット、デメリットというものははっきりしないのじゃないか、こういう感じがしてならないわけです。  だから、アメリカの態度の中には、例外品目の中に、スタートする前からちゃんとリザーブしてあるものがあるわけですからね。それはリザーブしておいて話を出してきた中でこれだけが例外品目だという形で出してきても、エスケープ・クローズなり国家安全保障法によって除外されておるものは足せば二〇%ぐらいにもなるというふうに、やり方全体を見てみると、自分の国にプラスするような非常に巧妙なやり方があらゆる段階でとられておる。私は、やはりそういうものを十分差し引きをして考えてみる必要があると思う。  いま政府は、どうもケネディラウンドをやることに非常に熱意があるようで、それはやること自身は私はけっこうだと思うのですけれども、日本のナショナルインタレストという問題から見て、あとでその穀物協定にも触れますけれども、はたしてそうアメリカの言いなりにならなければならぬのかどうかという点は、私は非常に大きな疑問がある。これはもちろん政治的な判断の問題ですから、本来大臣にお聞きしなければならぬところであるのであります。  そこで、これは、いまその当面の責任は外務省が責任を負ってやっているわけですね。だから、外務大臣のかわりにひとつ田中さん、一体、このケネディラウンドの総括的なメリットとデメリットでちょっと明らかにしてもらいたいと思います。
  252. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 ただいま宇野通産政務次官からお話がございましたと思いますが、ケネディラウンドにつきましては、もう前からできるだけ早い機会にこれを取りまとめをするようにという空気がございまして、わが国の経済を拡大するためには、現在最恵国待遇の原則に基づきまして関税の障壁をできるだけこれは除きまして、同時にまた、わが国の関税につきましても、できるだけ輸入に便宜を与えるというようなことで最大のメリットを護得いたしたい、こういう点、それから同時に、現在こうした関税上のいろいろな障壁がございますために、今後日本が貿易を他の地域において伸展させる上におきましても、この点が今後の置場の伸展にも非常に支障を来たすというような場合も往々あり得るわけでございまして、そのほか、経済、貿易の伸展にいろいろの条件を持ら出されたり、そういうようなこともございます。  と同時に、わが国の国内の産業につきましては、鉱工業製品の生産その他につきましても相当重大な影響を及ぼす、ただ手放しに輸入を自由にするというわけにもまいりませんし、また、農業生産の面におきましても生産者に相当大きな影響を来たすという点もございますので、こういう点を十分に慎重に考慮をしながら、輸出の拡大をさらに一方において考える、こういう点で、相当政府部内におきましても、関係方面と慎重に検討を従来重ねてまいりまして、相当結論は出るところまで参っております。近く国際会議がございますので、こうした結論をひっさげて国際会議においてわが国の主張をひとつ十分に果たしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもあまり私の要求した答弁になっておらぬ。メリットとデメリット、やはりこれはこういうメリットがあります、しかし、これについてはこういうデメリットがありますと、二つ並べてものを言ってもらわなければ、あなたのような希望的観測を幾ら述べてもらったってこれは役に立たぬのです。  前のやつの締めくくりをひとつしておきたいと思うのですが、いまアンチダンピング法の問題ですけれども、いろいろな国際コードができるとかなんとかいう問題もありますけれども、そういう問題の前に、実は日本では、御承知のように、自主規制が強制されているものが相当あるでしょう。その自主規制が強制されるようになった経緯というものは、一体それはどういうことになっているのか。これはひとつ通産省でお答えを願いたい。
  254. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 自主規制の中には、自発的自主規制と、いま申し上げましたような非関税障壁のためにやむを得ずやっておる自主規制と、こう二つあるわけでございます。  もちろん、自発的ということに関しましては、現在わが国の輸出高の三分の一がアメリカであるということを考えました場合に、やはり輸出秩序というものを維持しなくてはなりませんので、そうした意味合いで、業界内における過当競争を防がなくてはならない、このようなたてまえで自主規制ということを行なってまいりまして、これに関しましては相当な効果をあげておると思うのであります。  ところが、関税障壁、非関税障壁等を考え、あわせてまた大統領が持っておりますところのエスケープ・クローズといったような権限発動等がもしもなされました場合にはたいへんである、やむなく規制をやっておるというような面もございまして、この点は輸出国のわが国といたしましてもはなはだ遺憾な点でございますから、今後極力お互いに相互改善ということを原則としてやっていきたいと思っておる次第でございます。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 私は抽象論を聞いているのじゃなくて、要するに、あなたのほうから資料をいただいた品目でもずいぶんあるわけですね。この資料をいただいたものは、私は全部強制的に行なわれておる自主規制だと思うのですが、通産省、自主規制品目の「対米輸出実績推移表」というものをもらったのですが、これは全部そうでしょうね。どうでしょうか。
  256. 原田明

    原田政府委員 ただいま宇野政務次官から申されましたように、アメリカに対しまして、秩序を維持するという目的で輸出をみずから規制しております品目の中で、そちらに差し上げました表に載っております品目は、少なくとも私ども日本側の見解としましては、単に自分がやりたいからやっているという自主規制ではございませんで、アメリカのほうでエスケープ・クローズを発動する、あるいはダンピングの容疑でひっかける、あるいはまた、その他いろいろな形でボイコットをするとか、こういう形の輸入制限運動がかなり熾烈になりまして、もし日本である程度の自粛というものをやらない場合には、そういう一方的な輸入制限運動というものを発動されるということになりますと、これはかえって日本の輸出が制限をされるということになりますので、やむを得ず、半ば防衛的な意味から自主規制をやっております。したがいまして、その意味においては、われわれは一般的には強制された自主規制と呼んでおりまして、この辺もケネディラウンドその他二国間交渉、多くの場所におきまして、日本に課せられた関税でない貿易障害の重要なものであるというふうに考えております。もし今回のケネディラウンド等におきましても、こういう自主規制、それから先ほどお話のございました四百二条のa、ASPなどの非関税貿易障壁が改善され、または廃止されるというのでないならば、それに見合うわがほうの関税引き下げないし改善というものは行なう気がないというのがわがほうの立場でございます。  四百二条のaにつきましては、先ほど見込みが薄いというような一応の観測は申し上げたわけでございますけれども、現在は交渉の最終段階でございます。われわれとしては、あくまでこれはやめるなり改善をしていただく、もし改善をされないなら、こちらもそれによって適当な措置をとらせていただく、したがいまして、私どもは、まさかアメリカはこういうものの改善をされないはずはないという確信を持って交渉に臨んでおるわけでございますので、今後ともそういう点は強力に推し進めまして、一般的な観測とは別に、これはぜひ解決をしていただきたいという覚悟で臨んでおる次等でございます。
  257. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、こういう自主規制という形もあります。こう一つは、この前私、三木さんが通産大臣のときにも一回取り上げましたけれども、日米綿製品協定のようにはっきりとワクをきめてくる、もうこれなどは明瞭な輸入制限ですよ。だから、関税で話をするならば、貿易というものは輸入制限がないという前提でなければ、幾ら関税を下げようがどうしようが、片一方はもうワクが締めてあるのなら、関税の効果なんか全然及びはしないわけですからね。要するに、土俵の上に上がらないで勝負をしようという姿勢のあるものに、私どもはあんまりぺこぺこして、こっち側が協力をする必要はないのじゃないか。やはり相対的にに、土俵の上にお互いが上がった上でフェアにやるということにならなければ、こういう問題をあまりこちらが自動車を例外品目からおろしましょう、二重品目をおろしましょう——品目をおろすことよりも、まず相手方が何を出すのか、まず非関税障壁をおろしてきたら出しましょうという姿勢でなくて、いまの日本のそういう——私は新聞で承知をしている範囲ですからわかりませんけれども、どうも姿勢が少し低過ぎる。それは確かにアメリカが日本の一つの主要なる貿易市場であることは間違いないでしょう。しかし、私がこうやって資料をいただいてみて、これらのいわゆる自主規制品目について見ても、それではその前に比べて非常に急激にふえているかというと、資料で見ると、そんなに爆発的にふえているわけでも何でもない。にもかかわらず、さっきのようなエスケープ。クローズをやるぞ、ダンピング法でやるぞ——実際は、ほうっておいてもやるかとうかわからないのですよ。しかしやるぞと言われると、日本の場合にはすぐに縮こまって自主規制になる。私はこの前アメリカに行ったとき綿製品協定の話を聞いたときにも、何もこっちがやっているのじゃないのだ、日本のほうでかってに自分で減らしているのだから、どうこう言うことはないじゃないかという姿勢をとられておるということを在外公館では言っておるわけです。われわれとしてはまことに心外なことなんです。だから、この点については、やはり交渉の態度としては、何もぶちこわしにかかることは必要でないけれども、これは日本だけじゃないんですよ。イギリスだって同じ立場にいるでしょう。EECだって同じだと思うんですよ。だから、まずお互いに非関税障壁——これはEECだってわれわれに対して三十五条を援用したり、いろいろなことをしているのだから、いろいろあっちもこっちもあるのだけれども、まずケネディラウンドということを議論する場合には、私がさっき申し上げた一九六三年の閣僚会議できめた非関税障壁というものは取り除こう、これを前へ進ませないで、ほうっておいて、そうしてただ期限がうしろへ来ているからやろうやろうというアメリカの態度に追随しておるということは、われわれとしては、日本のナショナルインタレストがそこなわれつつあるのじゃないか、こういう感じがしてならないわけです。  そこで、ちょっと伺っておきますけれども、この自主規制品目は、いつまでもそういうことでなしに、もう少し何とかできないのですか。いま自主規制でも少しずつは量がふえてはいますけれども、もう少し何とか計画的に、もちろん急激に持っていけばまたあれですけれども、徐々に徐々にもう少し計画的に、自主規制品目となっているけれどもこれをふやしていく、やはり行動の中で少し問題を前進させてみるという方法がないのかどうか、この点ちょっとお答えいただきたい。
  258. 原田明

    原田政府委員 御指摘のとおり、現在私どものほうで強制された形に近いと考えておりますものだけでも、そこに差し上げましたように、綿製品のほか約二十品目程度あります。ところが、対米輸出の構造が雑貨、軽工業品が多かった関係もございまして、こういう強制された輸出というものの占める割合がかなり高かったけれども、十年くらいの間にだいぶ比率は下がってまいっております。しかし、依然としてそういうものが残っております。ただ、最近におきましては、むこうの業界におきましても、いたずらなる輸入制限運動というのはかえって得策じゃないということが若干わかりかけつつある節もございます。また、日本の業界におきましても、かなりそういう機運がみなぎってまいりました。対米だけで規制を行なっておる、しかも、数量、価格、品質、デザインといろいろございますが、もしそういうものを全部入れますと、約百余りの品目につきまして、現在これは私どもとしての秩序維持という観点から自主規制を行なっております。  それからまた、自主規制を行なった品目につきましても、なぜ行なわざるを得なかったかという点につきましては、向こうの見解では、日本の輸出が一年で五倍になった、二年で十倍になった、こういう見解を申し述べる者もございますが、私どものほうの見解では、もとが少なかったから伸び率は問題じゃないのだというように、いろいろな見解の差がかなり出ておる。しかし、最近はそういう点についても彼我の間においてかなり見解の近づきが見られるようになってまいりました。まあ、この程度になると、アメリカの産業としても相当騒がざるを得ないような状態にありそうであります。日本のほうといたしましても、その程度で騒がれたのでは困るが、日本の輸出として伸びるべきところは、これを主張するのは当然でありますが、あまり伸び過ぎては向こうに騒がれて、かえって問題を紛糾させるおそれもありますので、その辺で自粛しようという空気が出てまいっておる向きもあります。しかしながら、伸びるべきところを主張するのは当然であって、私どもとしましても、言われさえすれば、むやみに自主規制をしてへりくだるというような態度は断然改めたいというふうに考えております。
  259. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり何といっても、日本の場合には、ともかく貿易をふやしていくということでなければ、これはもう国際収支のあれが下がってくるわけですから、どうしても輸出ということはきわめて重要な日本の政策の一つでありますから、その輸出の障害をするものについては、これは私は政府は全体となってもう少し真剣さがあっていいんじゃないかという気がしてならないわけです。  特に、今後のケネディラウンドの中で、いま日本の最も主力となる輸出商品である鉄鋼の問題が全然前へ話が進んでいない。ちょっと一番最近の経過を先に伺っておきますが、これらももう少し日本としてせっかく重化学工業に比重をかけようということできておるときに、結局今度のケネディラウンドの結果として出ていくものは依然として労働集約性のもののほうに比重がかかるというようなことでは、これは日本の将来の産業構造の問題から見てもいろいろ問題が残ってくるわけですから、いまの鉄鋼のケネディラウンドの問題についての最近の情勢はどういうふうになっておるか、伺いたい。
  260. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 この問題につきまして、最近の状況を御説明申し上げたいと存じます。  鉄鋼につきましては、堀委員前々御存じのとおりに、ケネディラウンドにおきましては、二国間のいろいろな交渉のほかに、産業の種別によりまして、たとえば鉄鋼あるいは綿製品あるいはアルミ、紙、それからもう一つは化学製品でございますが、そういういわゆるセクター別の多角的な討議の場がございます。  これで従来非常に問題になっておりましたのは、鉄鋼の関税を五年間に五〇%下げるのが原則でございますが、問題はその下げる前の現在のベースレートと申しますか、それがそれぞれの関係国ででこぼこになっております。したがいまして、そのでこぼこのところをまずならしてそれから下げないと、結果としてまたでこぼこになる、そういう問題がございますので、鉄鋼のセクターでもってその討議をずっと続けてまいっておったわけでございます。  特に、そのでこぼこの調整の面におきまして一番問題になりましたのは、E面Cの中にございます石炭鉄鋼共同体、ECSCというわけでございますが、それとイギリスとの関係、大体のところで申し上げますると、イギリスの現在の鉄鋼の平均的な関税の高さというものが約九%ぐらいでございます。それからECSCを中心といたしましたEECのほうが、当初は自分のほうで一四%、実際にはそれより低いわけでありますが、ベースレートは一四%からスタートするのだということを言っております。したがいまして、イギリスとEECとの間に格差がございますから、その間でいろいろ議論が出てくる、また、最近御存じのとおりに、イギリスの鉄鋼の国有化の問題も出てまいりましたので、特にその違いがございますと、イギリスとしては非常に困るということもございまして、問題が非常に先鋭化してきておる、そのイギリスとEECとの間の問題がずっと長く尾を引いて、ごく最近になりましてだんだん煮詰まってきまして、若干EECのほうもベースレートを下げていく、その上で五〇%なら五〇%というふうに傾向としては出てまいっております。  試みにアメリカの場合、大体平均的な鉄鋼関税は約七・五%でございますが、それに比較しまして、日本の場合約一五%で、大体高いわけでございます。そういうものを全部にらみ合わせまして、関税のこれから引く前の、現在の平均的なレベルをなるべく同じようなことにしようという動きがずっと続いてまいりまして、完全なる成功にはおそらくまいらないと思います。そのために、最近ときどき新聞紙上にも伝えられますように、イギリスとECSCとの話が十分つきませんと、現在のベースレートのレベルが同じようにならない、そうしますと、イギリスの関税引き下げというものがあるいは五〇%にならないかもしれない、また、先ほど申し上げましたように、アメリカが七・五%くらいのレベルでございますから、それを五〇%下げますともっと低くなる、したがって、これも五〇%引き下げにならないかもしれないという動きが若干出てまいりました。まだ本日からトップレベルの会議がございますので、そういう段階でそういうものもさらに煮詰まってまいるだろうというふうな状況になるかと思っております。
  261. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、見通しとしてはどうですか。結局いまのお話のように、ECSCでは、前の関税率のようなものを持ってきて並べておるような状態になっているし、そこらが、私ども見ていますと、お互いに非常にかけ引きも外交交渉ですからあるだろうと思うのですけれでも、おのおの自分たちのナショナルインタレストをかなり露骨に前に出しているわけですね。どうも日本のやり方というのは、そういった日本のナショナルインタレストを前に出してやるというよりも、何か気がねしながらこっちが譲歩するほうが先に立っているような気がしてしかたがないのです。それは私の感じかもしれないけれどもそこらの全体的な動きというものは、あなた方も現地でやってこられたのだろうと思うけれども、一体どうなんですか。そういう姿勢は日本はないのですか。よそはみんなともかくナショナルインタレストを非常にむき出しで前へ持ってきている。日本はどうも少しその点が逆なような気がするのです。
  262. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 その点につきましては、日本ももちろんナショナルインタレストを前に出しておるわけでございまして、先ほど来先生の御指摘になりました非関税障壁の問題を特に出しましたのは日本でございます。ケネディラウンドで関税を下げても、いわゆる輸入制限でクォータその他がございますれば、関税を下げた効果というものはほとんどゼロになる、したがって、ケネディラウンド交渉をする場合に、関税以外の障壁、これを撤廃あるいは改善しなければならないということを強硬に主張しまして、一九六三年五月の閣僚レベルの会議の際に採択をさせましたのは日本でございます。これを見ましても、日本といたしましては、ナショナルインタレストというものを前面に押し出しまして、その問題はそれぞれのナショナルインタレストを突き出しまして、結局最後にはその調和という形になるかというふうに考えます。
  263. 堀昌雄

    ○堀委員 日本の場合は——うしろから声があるのでちょっと代弁しておきますが、輸入のウエートの中に占める無税品、免税品が非常に実は多いわけですけれども、交渉するのには実は非常に不利な立場になっているわけです。ところが、そういうものがあるからこそ、やはり非関税障壁のような問題はきちんとしろという要求がもっと筋が通ってこないといけないのではないか、私はこういうふうに第一考えておるわけです。それは皆さんが努力をしておらぬというのじゃありません。ありませんけれども、どうもわれわれが受ける感じは、日本人というのは敗戦以来そうなったのかもしらぬけれども、やや卑屈であって、どうも向こうの連中のほうが胸を張ってやっていく感じがしてしかたがない。だから、それはああいう戦争はよくないし、負けたこともある意味では意味があるけれども、それはそれとして、現在の段階ではやはり対等に問題を処理するというかまえがどうしても必要だ、どういうふうに考えておるのであります。  そこで、例外品目の交渉の問題にすでに入っておるのだろうと思うのですが、日本が幾つこれから例外品目をおろすのかは別としても、アメリカがリザーブしているものを、それは議論の中に入らないのかどうですか。要するに、例外品目というのが表向き七%くらいですか、結局エスケープ・クローズだとか、国家安全保障法だとか、いろいろなものでリザーブしているものが大体一三%ぐらいある、こう言われておるわけだけれども、これら向こうのリザーブリストの中にあるものは、もう向こう側としては全然交渉に応ずる意思はないのかどうか、ここらの点をちょっと明らかにしておいていただきたい。
  264. 原田明

    原田政府委員 米国は先生指摘のとおりにエスケープ・クローズその他国会の承認がなければ政府としてはできないというので、最初から強制的な例外と称しまして除外をいたしております。さらに、そのほかに経済的な理由からできないというような例外も設けてございます。しかし、これは米国側がそういう理由をつけておるだけでございまして、私どもといたしましては、同じようにそれは例外として計算をいたします。アメリカがその程度の例外をとるならば、わがほうとしてももちろんそれに見合う例外をとる、こういう態度でございます。したがいまして、向こうの例外、こちらの例外、それから向こうが引き下げをするといって申し出てきました品目のウエートと、こちらが引き下げをしてきました品目のウエート、さらにまた、先ほどから御指摘がございました非関税貿易障壁の改善、撤廃、こういう一切のものを勘案をいたしまして、お互いに引き合うというところで手を打つというかっこうでおさめるのがわれわれのやるべきことであるというふうに考えております。
  265. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣お見えになりましたから、ひとつ、やはりあなたは関税協定の一つの重要な責任者だからちょっとお伺いをいたしますが、このケネディラウンドで、これをやることによって日本としてメリットとデメリットがあるのですが、そのデメリットのほうをちょっとどういうものがあるか言ってもらいたい。
  266. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、今度の関税協定は日本にとってメリットはあっても、さしあたってデメリットはないというふうに思っております。
  267. 堀昌雄

    ○堀委員 また、たいへん楽観的な答弁で、まあ、これはそういうあれを聞けば向こう側はたいへんけっこうである。日本は押せば押すだけみんなメリットだから、押して押して押しまくれということになるのではないか、これは私はたいへん重大な答弁だと思うのですがね。
  268. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうではございません。御承知のように、関税外の貿易障壁というものもございますし、この交渉を中心にして、そういうものを日本で相手に要求させ得るものはさせるという方針で、私のほうはいまむしろ失うものがなくて、この交渉を通じて私のほうは取るもののほうが多いという状態になっていますので、そういう意味で、この交渉がデメリットになるということは、さしあたりないというふうに考えています。
  269. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのあなたの答弁は、デメリットのないようにやりたいということですな、大体。まあ、それはあたりまえのことで、そんなことは聞かなくても、交渉する者はデメリットが生ずるように交渉するはずはないのですよ。  ただ、私がいま聞いていることは、あとに穀物協定の問題がありますが、要するにアメリカが問題提起をしてきているしかたというのは、おまえさんのほうの都合のいいことばかりではありませんよ、こうなっているわけですよ。なるほどこれによってあなたのほうはメリットもありますよ、しかし、デメリットも覚悟しなさい、こういう問題提起がされてきているのではないですか、実際には。そういう理解の上に立たないでこの問題に臨むわけに私はいかない。本来なら、関税協定というものと穀物協定なんというものが一緒にくっつく性格のものではないのじゃないですか。ケネディラウンドというものの本来の目的というものは五年間に五〇%関税を減らしましょうというのが主たる目的なんでしょう。違いますか。だれか答えてください。
  270. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、いま私のほうはいろんなものは全部がんばっておりますし、また、日本だけじゃなくて、各国と共同歩調でアメリカにいろんな問題で迫るものは迫っておるという状態でございますから、この結論として、結局まとめたほうがいいというのでいま努力していますが、まとまった姿は、いままでの状態と比べて私は非常に日本のためにはいい方向でまとまるのじゃないかと思っております。
  271. 細見卓

    ○細見政府委員 一言事務的に補足申し上げます。  先ほど大臣が申し上げましたのは、確かに交渉ごとでございますから、こちら側に一方的に有利になるわけでなく、向こう側もそれに見合って何かを取りたいという話になるわけで、それは今後の交渉の問題であります。したがってわれわれといたしましては、にもかかわりませず、貿易に大きく今後とも依存していかなければならない、しかも、われわれの国は、先ほどの非関税障壁の問題はございますが、原則的な貿易の型として、加工品を輸出して原料を輸入する、原料はどういたしましてもやはり安いほうがいいわけですから、関税は実際上かかっておらないというのが日本貿易の形、なお、アメリカをとりまして向こう側の利益で考えますと、加工品を買って原料を売っておるわけです。したがって、このケネディラウンドというものが飛躍的に世界の貿易の拡大になるということであれば、原料品の面についても、彼らのほうが何らかのメリットを得たい、あるいはまた、全体として世界貿易が拡大する方向に行きたい、それは片貿易ではいかぬので、原料品の輸出国と製品の輸出国がそれぞれのメリットを受ける、そういう形でありたい、そういう意味で、世界小麦協定として別の協定があった穀物につきましても、カナダとか豪州という国が、このケネディラウンドに参加してくるとしますと、それらの国が穀物を輸出しなければならぬわけであります。その穀物の輸出国をこのケネディラウンドの中に大きく抱き込むというためには、穀物協定もケネディラウンドの一環として考えたほうがいいじゃないか、もちろんその中で、アメリカがいろいろ言っております条件の中には、われわれ日本としてのめない、あるいはのみたくない事柄はたくさんございます。しかし、これは商品の売買でありますから、われわれ日本国は輸入国としてできるだけ安く買いたいということで終始するつもりでありますし、向こう側は輸出国としてできるだけ高く売りたい、これは今後の交渉ごとだ、かように思います。
  272. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの答弁で、それはわからぬではないのですよ。わからないではないのですけれども、私は五〇%五年間関税率を下げましょうというのが、一番主たる目的だと思う。そこへもってきて、アメリカはだいぶいま余剰農産物も減ってきたですけれども、余剰農産物をたくさんかかえておった当時としては、同じそうなるなら、やはり自分たちの農産物のはけ口なり、それが高く売れるにこしたことはないですから、それは売り手、買い手だから、向こうが高く売りたいといえばこっちは高く買わなければならないわけだから、はっきりいえばこれはデメリットですね。だから、この穀物協定の問題なんというのは、私がさっきから触れておるように、本来日本とすれば、なければ一番いいのですよ。そうじゃないですか。穀物協定の問題がなくて関税率だけの問題なら、そのほうが非常にけっこうなんで、そういう意味で、メリット、デメリットの問題として、まず客観的にメリット、デメリットを置いてみる必要があるのじゃないのか。そうして、そのデメリットを、なおかつメリットが非常に大きいから、ある程度のところをがまんしようということで相殺をしているのではないのか。さっきの大臣のように、けっこうづくしのような姿勢では私は困るというのはそこなんです。だから、やはりデメリットはデメリットとして認める、しかし、ものはそろばんだから、メリットのほうが非常にあるのなら、ある程度のデメリットをがまんしようというのが交渉の段階でしょう。  だから、非関税障壁だって、私はおそらく、何だかんだいっても、結局かなり残るのだと思うのですよ。だから私は、結果として見たときに、あなたが言うように、ケネディラウンドは日本にとってデメリットがないかっこうで終結しましたなんということになろうとは、事実は思っていない。日にちは三十日しかないのだから、また五月の委員会ではもう一ぺんとっくりと、今度は現地に行っている諸君から詳しく聞いて、はたしてその交渉がほんとうに日本のナショナルインタレストを貫き通したのかどうかということについて、ここで一回点検をさしてもらうつもりでおりますけれども、少なくとも、そこまでの過程の中における政府姿勢というものは、国民を背に負っているのだから、やはりそれなりの責任を明らかにしながら、向こう向きでものを言ってもらわぬと、こっちへあなた方が向いてものを言うのでは、何もこんなことを取り上げる必要はないのですよ。そうじゃないですか。大蔵大臣、どうです。
  273. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはそのとおりだと思います。ただ、日本が現在受けておる非常な不利益、そういうようなものから考えますと、この交渉によってできる結果は、私はいまよりはよくなるというふうに見ております。
  274. 堀昌雄

    ○堀委員 それは、交渉がどこへ落ちつくかによって、よくなったか悪くなったかということはトレースできるわけですから、それはもう一月すればはっきりするからいいですけれども、私はそう簡単じゃないと思っているわけです。  さっきあなたが来られる前に触れている非関税障壁の問題でも、アメリカン・セリング・プライスの問題だって、私ははたして片づくかどうか多分に——アメリカだってケネディラウンドをやっている最中だから、関税委員会が上院に勧告をしたり、いろいろなことをやるでしょう。しかしそれは、やったからそれでそうなるようなものだと私は甘くは見ていないのですよ。やはり向こうだって自分たちの利益はできるだけ守っていこうということでしょうし、いまの四百二条のa項の問題にしてもそうだし、もちろん、アンチダンピング法の問題にしても、ひっかけもしないで調査だと称して関税率をストップして、事実上輸入はできないようにするとか、あの手この手でこれだけやってきているのだから、私はこういうものが全部取っ払えるとしたならば、あなたの言うことに賛成したいと思うのです。取っ払えないと思う。いまの私の観測では、アメリカというのはそんなに甘くないと私は思う。ところが、いまのようなかっこうで、これはともかくプラスだなんというようなことになるかならないかは、先のことですからもうしばらくして伺いますけれども、私はそう簡単ではないと思う。  そこで、ひとつ農林省にお伺いをいたします。  いま穀物協定で向こうが出してきておる問題は、大体三つですね。  要するに、値段を上げなさい、これが一つでしょう。それから自給率をきめて、ともかく買い入れ量を大体出せという問題、もう一つは、その自給率をこえて自国内の生産があったら、その分は買うのを減らすのではなくて、買うのは約束どおり買って、余った分は低開発国援助へ回せ、この三つが穀物協定の主たる問題点でしょうね。どうですか。
  275. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 輸出国から出てまいりました案は、大体いま先生がおっしゃったようなことになります。  つづめて申し上げますけれども、国内生産の規制と、価格の大幅引き上げと、それから後進国に対する食糧援助でございます。これは輸出国の意見でございますから、先ほども大蔵省から話のありましたように、売りと買いの交渉でございますから、私どもそのとおりには受け答えはいたしておりません。まだ交渉の途中でございますから詳細お話するわけにはまいりませんけれども、当初の輸出国の案としては、たとえば穀物の国内価格を規制するというようなことで出てまいりましたけれども、私どもは、現在の農業の情勢から見て、国内価格を規制するというようなことはいたしません。したがいまして、自給率等の約束ということもできるだけ避けて、私ども需給上から考えて差しつかえない程度の輸入はするという程度のことでこの問題の処理をいたすように努力をいたしておるわけでございます。  それから、輸出国から出てまいりました大幅な価格引き上げにつきましては、私ども承服はいたしておりません。これも交渉ごとでございますから、最後の落ちはどうなるか予断はできませんけれども、輸出国がいっておりますような大幅な価格の引き上げ、あるいはEECが妥協的にその中ほどのことをいっておりますけれども、そういうことにもならないように現在努力をいたしておるわけでございます。  食糧の後進国に対する援助につきましても、当初の出だしは非常に大幅な案をいってまいったわけでございますけれども、その点についても、議論すべき場所が違うではないかということで、現在応酬をいたしておる最中でございます。
  276. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは穀物協定というかっこうで問題が出ていますからね。私が、いまの話、さっきの細見財務調査官の話を聞いてよくわからない点があるというのは、要するに、われわれが応ぜられないような話になったら日本は穀物協定には入らない、こういうことになるのか、穀物協定に入っておる以上は一定のワクの中に拘束をされるから、売り買いだって、価格は向こう側によって規制をされるのか。ここらのところはちょっとはっきりわからないのですが、その点をはっきりしてください。
  277. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 先ほどの御意見で、穀物協定がケネディラウンドの中に入ってきたのはいかにもおかしいではないかという議論がございましたが、簡単に御説明いたしますと、形式から言うと確かにおかしいようでございますが、アメリカが五カ年、五〇%の関税の引下げ案をいってきまして、工業品についてはそういう原則がとれても、農産物については、EECはじめ日本その他、一律に農産物について五カ年で五〇%関税引き下げするということはおかしいではないか、農産物については特別の接近のしかたがあるではないかということをずいぶん長いこと議論をいたしまして、その議論の過程において、大体農産物については三つの取り扱いがあろう、一つは、関税の引き下げでございます。それから第二番目は、関税問題ではなくて、むしろ貿易量の確保ということから国際協定をすべきではないか、第三は、関税あるいは国際協定以外で、輸入制限その他の関税以外の貿易障害を除くことができないかというふうに、おおむね三つの農産物についての取り扱いがガットでできたわけでございます。  そうして、協定でいくべきものとしては、穀物以外に、たとえば食肉品でありますとか酪農品でありますとか、そういうものが問題になりましたけれども、食肉あるいは酪農品等につきましては準備不足ということがございまして、おそらくといいますか、確かに、ケネディラウンドがまとまるまでにはそういう穀物協定以外の国際協定はおそらくできないであろうと思います。そういう形で穀物協定がケネディラウンドの中に入ってきたわけでございてす。私は、ケネディラウンドの中に穀物協定が入ってきたのは、それなりに理由があったことであろうと思います。  それで、私ども、いま国際穀物協定に入るとか入らないとかいうことを申し上げることもはなはだいかがかと思うのでございますけれども、たとえば、国際穀物協定できまります価格というものはあくまで上限価格と下限価格でございますから、現実の輸出入はそのワクの中で行なわれるリアルな価格でございますから、かりに穀物協定の下限価格なりあるいは上限価格が何ほどか上がったといたしましても、それがすぐさま現実に日本の穀物の輸入価格がそれだけ上がるというふうにも考えられません。これは当然国際的な穀物の需給事情によってきまる問題でございます。  私ども、日本がとうてい受諾できないような案でこの協定が推移するというふうには、現在のところ考えておらないわけでございます。
  278. 堀昌雄

    ○堀委員 価格の問題は、確かにいまのように需要供給の問題もありますから、必ずしも上限を上げなくても、供給が減ってくれば価格は上がりますね。これは当然ですけれども、もう一つの問題の、自給率をきめるとか輸入量をきめるとかいう問題は、日本のいまのトレンドから見ると、ある程度方向は少しはっきりしてきておるように思うのですよ。  ちょっと国内小麦の買い入れの状態を過年度にわたって調べてみたけれども昭和三十八年度はともかく百三万トン国内小麦の買い入れをしておったのが、だんだん減ってきて、四十二年度の予算ベースでは六十四万トンになっていますね。だから、この間国内小麦というものはおそらく約六割に減ってきたんだと思うのです。これはおそらく食管で全部買い上げておることでしょうから。今度の輸入小麦の買い入れのほうは、昭和三十八年には二百四十万トンであったものが、ちょっと私もここが非常に問題があろうかと思うのは、四十一年は二百六十六万三千トンで、この四年間は二十五万トンしか実は買い入れはふえていないわけです。ところが、四十二年度はいきなり三百十六万四千トンを実は買い入れることに予定がされておる。この間の伸び率は五十万トンですね。これが私は、今度のケネディラウンドで向こう側が輸入保証の問題を出してくるということに見合ってこういう予算が組まれておるとすると、これは足元を見透かされる問題になるのではないかと思うのです。  価格の問題もこの点について調べてみると、昭和三十八年を一〇〇としては見れば、昭和四十二年の買い入れ予定価格というのは一一四・三ということになるのです。この間の伸び率が四十一年と四十二年の間で約一〇ポイント上がるということになってきて、数量と価格の双方を両方で考えてみると、これは大体四十一年と四十二年の間で三〇%実は買い入れ価格はふえることになる、こういうことになっているわけですね。どうもこれは、こういう問題に関連して予算が組まれておるということだとすると、こっちで幾ら言ってみたところで、もう向こうは、それだけ買う予定にしておるんだということならば、それは問題があるのじゃないか、私はこういうような感じがしてならないわけです。そこらは一体どういうことなのか。  一体、四十一年から四十二年に対して、なぜ五十万トンも買い入れがふえるのか。国内小麦が四十一年は七十二万トンの買い入れで、四十二年の予定が六十四万トンですから、この差は八万トンしかない。国内小麦の買い入れは八万トンしか減らない、それをカバーするほうは五十万トン。ちょっと私はおかしいと思う。これはどうですか。
  279. 大口駿一

    ○大口政府委員 小麦の国内生産並びに国内の買い入れ量の数量は、ただいま先生指摘になりましたように、年を追うて国内の生産量が減っております。したがって、政府の買い入れ予定量現在の食糧管理法に基づいて国内の流通量のほとんど全量が政府に入っておりますので、政府の買い入れ量が国内の流通量と御理解していただいていいと思います。  ところが、麦全体の消費量の最近の状況はいかがかと申しますと、まず主食としての小麦の地位は、一ころまでは米の代用食という意味で、米の豊凶と小麦の消費量の消長がやや裏返しの状態になっておった時代があったわけであります。最近、経済の成長に伴い国民の所得水準が非常に高まりましたことに伴って、日本国民の食生活の構造がほとんど——ほとんどと言うと、ことばが過ぎるかもしれませんが、非常に変わってまいりまして、小麦が米の代替的な地位から独立して、小麦そのものの消費として確立をしたというふうな状況にこの数年来なっております。したがい、まして、米の豊凶にかかわらず、小麦の消費というものは毎年一定の率で着実に伸びているというのが現状でございます。  それからもう一つは、これも食生活の高度化に伴いまして、畜産の生産が飛躍的に伸びておりまして、現在わが国は畜産用にふすまの供給のための小麦の買い付け並びに粒飼用の小麦の買い付けもあわせてやっておりますので、単に国内生産の減った分だけを輸入するという状態ではいかない状態で、小麦の輸入量は毎年非常にふえておるのが現状でございます。  したがいまして、ただいま国会で御審議をいただいておりますことしの食管特別会計の予算の基礎になっております小麦の需給関係なるものは、このケネディラウンドの妥結の内容を見越した配慮が加わっておるかおらぬかということは、全くそういう配慮は加えておりません。これははっきり申し上げておきます。
  280. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、三十八年と三十九年の間の小麦の減産量は十三万トン、輸入のほうは、三十八年から三十九年に対して十一万トン実は減になっておる。いいですか。ここからちょっと説明をしてもらいましょう。要するに、国内小麦のほうは十三万トン減ったのに、輸入のほうもここでは十一万トン減っている。これは一体どういう理由でこういうことが起きておるのか。ちょっとそこらから……。それから次々毎年度聞きます。
  281. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま御比較になりましたのは、三十八年と三十九年の比較の数字と思いますが、確かに御指摘のように、三十八会計年度と三十九会計年度は、小麦の輸入数量で比較いたしますと、あとの年度のほうが実数として減っております。  ところが、これは私いまここで考えてみまするに、昭和三十八年というのは、わが国の麦の生産が有史以来の不作の年であったと思いますので、その年はわが国の麦の生産減というものを補ったファクターが輸入に反映しておったのが、三十九年は平年化したための減少だと思いますが、こまかい数字でもう少しいま突き合わせてみますので、御了承いただきたいと思います。
  282. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私が申し上げたように、三十八年は未曾有の減産ではないんです。三十八会計年度は百三万トン国内小麦を買い入れた。三十九年は九十万トンに国内小麦の生産が減ってきた。減ったほうは十三万トン減った。この間、普通ならば、輸入小麦がふえるのが当然であるのに、輸入小麦のほうも、三十八年に二百四十一万三千トン輸入しておったのが、三十九年は二百三十万四千トンに減っている。十一万トン減っている。その次の三十九年から四十年に対しては、九十万トンから七十四万トンに国内産は減っている。また十六万トンここで減った。十六万トン減ったのに対して、輸入は二十二万二千トンここでふえた。四十年から四十一年に対しては二万トンまた減ったのです。四十一年は七十二万トンになったんです。ところが、ここでまた十三万七千トン実はふえてきた。  こういうように五年ほどとって少し調べてトレースしてみるとそういう関係にあるのに、四十一年七十二万トンから四十二年六十四万トンに、八万トンしか国内小麦の買い入れ量は減らないとあなたは見ている。にもかかわらず、一挙にここで五十万トンふえる。四十二年のこの輸入が三百十六万四千トンというのは、あなたのほうはちゃんと特別会計で出している。ここのところで十一万トン一挙に減って、二十二万トンふえて、十三万トンふえて、その次が五十万トンにふえる理由は、いまのあなたの説明では納得できないんです。
  283. 大口駿一

    ○大口政府委員 いまの小麦の食糧管理特別会計の年度間の需給計画というものは、それぞれの年度における内麦の買い入れ数量と需要数量と持ち越しその他の関係で、必ずしも内地麦の減産分とそれからその年の輸入量とを完全に比較をして説明するということはむずかしいかと思います。御理解願えると思います。  それから、四十二会計年度のふえ方が非常にふえているので、その点といまの穀物協定の交渉と何らかの関係があるかというふうな趣旨のお尋ねと思いますが、先ほど繰り返しお答えいたしておりますように、小麦の需要量というものが主食用並びに飼料用とも非常にふえておりますので、また機会を得ますれば、小麦の四十二会計年度の需給計画の基礎になりました需要のふえる見込み数量の算出基礎等につきましては御説明をいたしたいと思いますが、これは需要量から、はじきまして、買い入れ量並びに持ち越し量等を基礎にしてはじきました需給計画上の数字でございまして、そこに何らかの作為を加えて特に輸入量を多く見積もるというような計算はいたしておらないのでございますが、本日、たまたまあまり詳細な資料を持ち合わせてきておりませんので、需要量のはじき方の計算の詳細等についてこの場で御説明することは、若干の時間的余裕をいただきたいと思います。
  284. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ、あなたのほうがここでケネディラウンド見込みで予算計上されておるということについては、そうではない。私も、そうでないと、足元を見透かされるわけで困るから、そこのところははっきりしておきますが、それはそれとして、いいですか。ともかく四十一年の輸入小麦買い入れの予算は七百九十億八千万円ですよ。今度は一千三十一億円と飛躍的にここでふえておるわけですね。これは予算上からしても、必要がないのにこんなに予算を組まれてはわれわれとしては困るわけだ。だから、やはりここにいま常識的にあなたがいろいろなキャリーオーバーの問題などいろいろあると言われるが、それはそういうことが出るだろうと思うから、私はちゃんと五年とってある、そういうことでひっくり返されぬようになっているわけだ。だから、いま私の話を聞いた人で、五十万トンと出てくるのはおかしいと思わない人はいない。しかし、これをいまここで詰めていったのでは、与党の理事もやきもきしておられるから、この問題は一応ここにして、後日の委員会で詳細にひとつわれわれが納得できるものを出してもらいたい。これは予算委員会で当然ここらははっきりさしておかなければならぬ問題だと思います。  その次に、かりに今度ケネディラウンドがうまくいく——これはかりの話ですから、全部うまくいったとした場合における日本の今後の輸入、輸出のあり方の問題ですね。これは要するに、関税が下がれば、関税障壁が全然ゼロになったと仮定するならば、当然輸出はふえるでしょうね。関税が安くなれば、向こうよりは競争力はふえるわけだから、輸出がふえる。また、国内のものでも関税を下げなければならぬから、向こうから入ってくるものは、国内との競争力で入ってくるものもあるだろう。要するにこの出入りですね。これをひとつお答えをいただきたい。これは推計の問題になるけれども、大体どの程度の問題になるか、一ぺんちょっとお答えください。
  285. 細見卓

    ○細見政府委員 これは非常にむずかしい計算でございまして、たとえば、関税が下がりますことによって、相手国でそのまま関税が下がっただけ価格が下がったということにいたしまして、それぞれの国の弾性値などを使いまして計算をしておらないとは申しませんが、非常に不正確な数字でございまして、これをこの場で申し上げるだけの自信のある数字ではございません。ただ、そういういろいろな推計をいたしました結果、おっしゃるような非関税障壁とかあるいは自主規制とかいう問題にも若干の改善をいたしますとすれば、その場合におきましては、わが国のほうが、貿易構造からいたしまして減るところが多くなることは間違いのないことだ、その意味で大臣も先ほどお答え申したのだと思います。
  286. 堀昌雄

    ○堀委員 実はその点で私ちょっと気になる点があるのです。  というのは、これはまあ細見君は知っておる資料だけれども、その資料に基づいてこれが正しいという——正しいか正しくないかわからない、いろいろな仮定が置いてあるけれども、一応その計算をした人がいるわけだから、それは正しいということで前提を置いて考えてみると、工業製品であっても労働集約性の高いもののほうが日本は輸出が伸びる、こういうことになってきているわけですね。それから輸入の場合には、重化学工業品のほうが輸入がふえる、こうなっているわけです。これはやはり私は今後の日本の労働力の需給状況から見ると、非常に大きな問題点があると思うのですよ。なるほど、いま日本は時計だとかあるいはカメラとかあるいはトランジスタだとかテレビだとか、これは確かに日本の一つの主要商品です。これはいずれも、何といっても労働集約性は非常に高いですよ。だから、これはある段階までくると、いまのような若年労働のかっこうではなかなか供給ができない時期がくるのは明らかなんです。先に対して労働集約性のものは非常に競争力が弱くなることは、もう間違いがない。そこへもってきて、今度は逆に重化学工業品のほうは、今度のケネディラウンドで下げた結果としてばっと入ってくる、こうなると、日本がいま全体として重化学工業にウエートをかけてやっていこうというところに向こう側から流れ込んでくる、こういう問題が出てくるわけだから、こういう全体の状態から見ても、さっき大蔵大臣が言っておるような、そうは甘いものではない。日本経済全体の将来の展望の中で、一体ケネディラウンドのこまかい分析をしてみた場合に、要するに、出さえすればいいのだということではないのです。やはり将来的な展望の中でプログラムがちゃんと考えられていなければならぬのだから、そのときに労働集約性のものがケネディラウンドで出やすくなってきたところで限界がある。やがては限界があるのです。どうしても重化学工業品が出るようなかっこうに工業全体を持っていかなければならぬという一つの日本の主要な方向が私はあると思う。そういう問題を踏まえてみても、この点には少し問題があるのではないかという感じが——これは私が計算したのじゃないが、計算した人があるわけだから、それをもとにしての話で、その計算が間違っていたというなら話が別だけれども、それを前提としておる。
  287. 細見卓

    ○細見政府委員 やや学問的な話とか、あるいはやや理屈っぽい話でありまして、非常に恐縮でございますが、ハーバードにレオンチェフという先生がおりまして、この先生がアメリカの輸出品を調べたわけです。その結果、アメリカは御承知のように重工業国であります。重工業が重点の国、ところが、アメリカの輸出品はもっと手間のかかった労働集約的なものでありまして、重化学工業のような労働力を省いたものが実は輸入になっておる。これが俗に逆説といわれまして、それの真偽はわかりませんし、そういうものがかりに真実であるといたしますと、重工業が重点になったアメリカが——だれも重工業が重点になっていない国だとおっしゃられぬでしょうが、そういう国の貿易構造もそういうことになるというような面もございまして、将来の予測だからわかりませんし、まして、学者の話だからわかりませんが、そういう面もあるということを学者の話としてお話し申し上げておきたいと思います。
  288. 堀昌雄

    ○堀委員 アメリカが重化学工業品を輸入する問題というのは、アメリカ経済というのはわりに安定的に発展をしておるから、要するに、限界輸入の必要が生じてきたときには当然重化学工業品がどんどん入ってくる。いま日本が鉄鋼をアメリカに輸出しておるのは私は限界輸出だと思っておるわけです。それは競争力のある面もあるでしょうけれども、私は、基本的にアメリカに日本の鉄鋼がいっておるのは限界輸出だ、こう見ておる。そういう意味において、アメリカにおける輸入と輸出の問題というのは問題があるのではないか。アメリカ自体市場が非常に大きいということに実は問題があるだろう。ちょっと日本の場合とアメリカとを並べては議論ができないわけです。日本の場合には、将来出していくものが重化学工業品だけになっていかないと、やはりこれは問題になる。どうしても資本集約的なものがどんどん出るような経済政策そのものを、日本経済の今後の発展の柱として立てていかなければならないのじゃないか。要するに、かつて日本が綿製品をやつだ時期から、今度は日本はそういう労働集約的な工業製品、軽工業製品というものが非常に出てきた。しかし、この軽工業品というものは、労働集約性のものを持つその次のクラスの国がやがてはとってかわるに相違ない。私はもう世界の歴史のとおりだと思う。日本がいま綿製品で香港なりインドなりから追い上げられておる。要するに、日本自身がそれではいかなくなってきたと同じような段階が、労働力の価格の問題という形からして当然出てくる。となれば、日本としては資本集約的なものが出ていくということにならなければならないのであって、それはレオンチェフか何か知らぬけれども、アメリカの話を日本へ持ってきても、それは私はストレートには理解ができないところです。  これは大蔵大臣、政策の問題で、あなた何かそこで一生懸命やっておられるけれども、ちょっととこで大蔵大臣にお伺いして締めくくりをしていきたいと思いますけれども、いまの私の話について、あなたはどう思いますか。
  289. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、そういうことは、やはりあり得るというような気がいたします。
  290. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、あり得るということになると、さっきの話のように、あまり手放しでケネディラウンド、まことにけっこうですということだけでは私はいかぬのではないかと思うのです。私はいまケネディラウンドをやめろとか、どうこうしろと言っているのではないのですよ。ともかく、日本としてのナショナルインタレストを前に出して、日本は失うものを少なく、取るものを多くしろ、こう言っているだけのことだから、その範囲においては間違いはないのだけれども、その交渉する過程の中で、例外品目の問題なり、いろいろな関税率の動かし方の問題一つにしても、やはり多少これを考えておかないと、せっかく日本の重化学工業に投資をしていくときに、向こうから重化学工業品がどかっと入ってきて、資本財その他をばたばたと押えられたのでは、実際勝負にはならぬわけですよ。だから、やはりそこのところは、今後の交渉の過程の中では腹に置いて問題を処理していかなければならぬ問題だ、こういうふうに私は考えておる、その点、どうですか。
  291. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 むろん腹に置いて、こちらは損にならないような交渉をするという原則で努力している最中でございます。さっき心配ないようなことを言ったというのは、そういう意味じゃございませんで、貿易の自由化にしましても、また、資本の自由化にしましても、いままで日本がいろいろ直面してきた問題と私どもは取り組んできましたが、デメリットのほうを考えて、そのために私どもが後退するというようなことがあったら、これは日本経済のためになりません。全体としてこういうメリットがある限り、それと取り組んで前進することによって私どもは不利を克服し、また、不利と思われることが、こういうことを通じて、逆に日本の経済の技術の面からいいましても、どこからいいましても、これが日本の合理化の一つの誘因になっていることは間違いございませんので、そういう克服の点を考えますと、プラス、マイナスにおいて私は今回の場合もマイナスになる部分は少ない、プラスのほうが多い、こういうことを言ったわけでございます。
  292. 堀昌雄

    ○堀委員 最後にちょっと。  この前の一般質問のときに、あなたは、鉄鋼のような基幹産業の設備は二〇%くらいの余剰力があるのはあたりまえだという発言をなさっておいて、あくる日だったか、予算委員会で高田君の質問に答えて、あれはことばが足らなかったといって、あそこで釈明しておられましたが、ちょっとことばが足らなかったということではあれですから、ことばのある間じゅうあなたの真意をもう一ぺん言っておいてください。私の前ではああ言って大みえを切って、予算委員会ではとたんに、あれはことばが足りなかったので、そういう真意ではなかったというのでは、私は、大臣としてやはり発言責任を持ってもらいたいと思う。私がテレビで見ていたら、あなたが私に言ったことと全然違う。冗談じゃない。
  293. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実際に違ったわけではありません。私も過去のいろいろな経験から、この間お話いたしましたように「過熱といいますのは、必ず鉄鋼部門からくる、過熱という問題は鉄部門から起こって、そのために日本は鉄の急遽輸入をやるというようなことからいろいろな対策を立ててきたというのが例でございました。したがって、こういう鉄みたいな基幹産業、この部門にほんとうの生産力の余剰が若干あるという状態でないと、経済の均衡的発展というものを安心してやれないということを申したわけで、特に鉄鋼の場合もそうであって、そのくらいの余裕がほしいのだ。では、それをどうしたらいいかといったら、こういうものは、やはり昭和四十年なら四十年の不況といわれたようなときにこういう設備投資をやる計画が立てられて実行さるべきであった。そういうものが怠慢にされておって、こういうときにきて一度にそういうものが重なってくる。設備投資は必要でありますが、必要な設備投資が一度に同じ業種に重なってくるというようなことはあまり感心しない。だから、時期的にこれをずらすとか、いろいろなことが考えられても、基幹産業部門のこういう設備投資というものは怠ってはならぬのだということを私が言ったわけでございまして、予算委員会で言ったのと、こちらで言ったことはちっとも変わっておりません。
  294. 堀昌雄

    ○堀委員 それではいいです。あなたはあそこではっきり二〇%の余力と、こうおっしゃったのです。二〇%の余力というのは、どこがスタンダードなのですか。そこからちょっと詰めさしてもらいたいのです。
  295. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 はっきり二〇%余力という計算はむずかしゅうございますが、これは鉄鋼業者に聞いてくだすったらとでも思いますけれども、大体そのくらいの余力はなければならぬということは、業界自身も言っておることでありますし、また、昨年不況対策をわれわれがやり出すときも、あるいは三〇%以上の生産余力は持っておったはずでありますが、わずか一年の間にこの余力はなくなるということを考えてみましても、三〇%は極端であったにしても、やはり二〇%程度の余力というものがなかったら、日本経済の現状からは安心した成長政策というものはできないのじゃないかと思います。
  296. 堀昌雄

    ○堀委員 私が聞いておるのは、二〇%の余力というものはどこかにスタンダードがなければ——ここのスタンダードから二〇%の余力というので、スタンダードなしに二〇%の余力ということばは出ない。そうすると、一体どの時点がスタンダードなのか。過去の鉄鋼の状態——あなたは政調会長をやっておられたから大蔵大臣御存じだろうと思いますが、要するに、昭和三十八年に粗鋼減産を一ぺんやって、二回粗鋼減産をやっておる。私が予算委員会で、粗鋼減産はやめろ、在庫はすでに減っていると言っても、政府は聞かない。そして粗鋼減産をやらせて、在庫が極端に減るまでほっておいて、そうして、あわてて十五万トンの緊急放出という形になっておる。あなたのおっしゃることは、在庫との関係でものを見なければ、そんなものはどこにスタンダードを置くか、どこが適正在庫か、どこが正常な状態なのかということが日本の経済で言えますか。日本の経済というのは、いま上がったり下がったり、上がったり下がったりですよ。とにかく全然安定しないじゃないですか。それに対して二〇%の余力というのは、どこの時点——粗鋼減産をやっておるときの余力ですか。減産をやってないときというのは、過熱にならないときでも、過熱をやったらすぐ粗鋼減産、これが鉄鋼行政じゃないですか。あなたは通産大臣じゃないのですから、あなたにその御議論をしてみてもしようがないが、そういう現実を踏まえておる中で、あなたの発言というものはきわめて無責任だと思う。一体どこがスタンダードかということを答えなければ、一国の大蔵大臣として、鉄鋼の設備投資は二〇%の設備余力が必要だという発言はうそを言ったことになります。どこがスタンダードか、一ぺん答えなさい。
  297. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 単に二〇%と言ったわけではございませんが、二〇%程度と言ったことは、生産丈から見て二〇%の余力、需要に対してそのくらいの設備の余力を持つということが余裕ということでございます。この余裕は在庫にもあらわれることがございましょうし、操業率にあらわれてくることもございましょうし、要するに、需要に対する生産余力ということでございます。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 需要に対する生産ということは、需要自体が相当に変わるわけですからね。たとえば、いまの場合の二〇%というものをかりに想定した場合に、いまの場合の二〇%というのは、もし少し輸出が減退をしてきたらどうなるのですか。一ぺんに三〇%の余力になるのですか。  私はこの議論を特にはっきりしておきたいと思うけれども、なぜかといえば、日本は借り入れ金が非常に多いから、そこで損益分岐点が高くなっておる。少し減産をしたらすぐに赤字になる、あるいは赤字になりかけるから、そこで財界は何を言うかというと、政府に対して、需要を喚起しろ需要を喚起しろと言うじゃないですか。そして昭和四十年、私が言ったように四・八%の実質成長率があったときすら公債発行をやれということで問題が出てきておる。日本の財務比率の面から見て、そういう点で、きわめて減産に対して抵抗力のない日本の企業が、いまのような場合に二〇%もの余力を持つようなことになったときに、一体抵抗力があるのかどうか、いまの日本の対米輸出というものがこのままでどんどん伸びるとわれわれは実際は考えませんよ。これはやはりいまのベトナム戦争に大きな関係がある。それはなるほど競争力はありますよ。競争力はあるけれども、私がさっき言うように、限界輸出です。アメリカだって現在どんどん設備投資をやってきているわけだから、そう簡単なものではない。  だから私が言いたいことは、要するに、あなたが二〇%という数を明示をした以上は、責任がある発言なんです。程度と言ったって、数をはっきり言った以上は、それに対してあなたは責任を持たなければならぬわけです。だから、その点で私がこの間聞いておったら、いや、あれはちょっと説明が不十分であった、こういう言い方であったから、これはおかしいと思ってきょう確認をしたら、そのことは間違いないのだということになると、これは日本の今後の政策の上ではなかなか重大な問題だと思う。  あなたはいま日本の鉄鋼が現在何万トン生産しておるか御存じですか。それを御存じで言うておられるなら、もう一つ多少私も考える。現在幾ら生産しているのですか。うしろに聞かずにひとつお答えください。それはあなたがいまの需要——それはうしろに聞いたのではだめだ。聞かずに言わなければだめだ。それなくして言えるはずない、二〇%なんて。
  299. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 五千万トン、それでまだ足らなくて輸入を始めているところでございます。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 五千万トンというと、二〇%といったら、施設としては一千万トンですからね。よろしゅうございますか。一千万トンの余力があるのがいい、こういうことになるわけです。  時間をせいていますからきょうはここまでにして、もう一ぺんじっくり、今度は通産大臣も入ってもらってやりますから、いまの問題はそこで一応とめおくことにして、最後にひとつ、ケネディラウンドの問題については、どうかひとつ、外務省もいいかっこうをするだけが能ではありませんから、国民の利益をしっかり守るためには、やはりそのつもりでやってもらわなければ困るし、大蔵省、通産省、農林省もいずれもばらばらでやってもらっては困るわけだから、ともかく国民の利益を守るという一点においては、各省とも一本でやってもらいたいということを強く要望して、私の質問を終わります。
  301. 内田常雄

    内田委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  302. 内田常雄

    内田委員長 昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案について、議事を進めます。  討論の通告がありますので、順次これを許します。広沢賢一君。
  303. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 本委員は、日本社会党を代表して、昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案に反対の討論を行ないます。  まず、わが党の基本的立場に立てば、今回の所得減税は、税の自然増収が五千億円から七千三百五十億円以上に見込まれているとき、わずか八百億円程度減税、平年度七十四万円、初年度七十一万円までの控除では、物価が際限なく上がっている今日、きわめて不十分であります。どうしても五人豪族、年百万円までは無税としなければならないということであります。このことは、民社、公明、各野党も同じ意見でございます。三党政策協定において要求しておりますが、現に、大蔵省が出した七十四万円控除の基礎資料では、一日一人生計費二百五円二十四銭、一食わずか六十八円四十一銭であります。  ここにおられる各位に伺いたい。いまどきこうした食事をだれが行なっていますか。七十四万円控除では、勤労者の日常生計費に税が重苦しく食い込んでくることは明らかであります。たとえば、物価上昇に伴い税の自然増収がふえていくのに正比例して、そのたびに所得税を納める人が広範な無産大衆に広がっております。今日では高等学校を卒業した子供たちまでが税金を取られている、こういう現状であります。しかも、大蔵大臣は、ことしは景気過熱のおそれがあるから減税は行なわないのだと答弁しておりながら、その反面租税原則税体系を乱してまで、大資本偏重の租税特別措置という企業減税を二千億円余り行なっているということは、全く大資本偏重の片手落ち租税政策といわなければなりません。  しかしながら、全体として不十分であっても、今回の特例法は給与所得並びに退職所得減税に関する法律案であります。特に退職所得税の減税は、一月一日までその効果がさかのぼるように深い配慮がなされた部分があり、これらについては、わが党大蔵委員が多年にわたって力説したことを大蔵省が取り入れたのでありますから、最初わが党は、この労を多として賛成の態度をとってまいりました。  ところが、当委員会の審議の中で、物価上昇の昨今、あと二、三年後には当然最低、年百万円まで無税にすべきが常識であるという圧倒的な意見が出てまいりました。おそらく与野党委員通じて、この考えには基本的に賛成であったと存じます。また、自民党も、かつて野党三党が自民党政府に政策協定を要求した際、それは個々に考慮するという幅のある態度をとっておられたはずであります。その結果、同法案の不十分な点を補強するという建設的な態度に立って、わが党は、三党政策協定の趣旨に基づいて次のような附帯決議をつけることを提案いたしました。  源泉課税減税法附帯決議案。  実生計費には課税しないとの原則に基づいて、消費者物価上昇の現況と納税者増加傾向にかんがみて、おそくとも四十四年まで、夫婦子供三人、計五人、月百万円までは所得税控除をする。このように提案いたしました。  しかるに、自民党期限をつけることを拒否いたしました。なぜでしょうか。御承知のように、いままで何回となく、なるべくすみやかにという抽象的なことばで、常に野党、勤労大衆要求が無視される名目に使われていたという苦い経験にかんがみて、ここでわが党は自民党政府に激しい反省を求めるために、同法案に対しては、わが党は当初の基本的立場に立って反対の意思を表明するものであります。  民社党、公明党、ともにこの趣旨を了とせられて、反対の意思を表明されました。さらに、与党委員各位においても、だれでもが内心当然あたりまえの常識と思っているこのわが党の提案に対して、少なくとも三年後、四十四年に至るまで、所得税五人家族百万円無税の実現のため、今回三党の努力に御賛同くだされ、さらに、今後ともに今国会中においてこの附帯決議案が実現するよういろいろ努力をしていただきたいと、このことについてお願いをして、反対の討論といたします。
  304. 内田常雄

    内田委員長 次に、西岡武夫君。
  305. 西岡武夫

    ○西岡委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案について、賛成の意を表する次第であります。  当法律案に対するわが党の考え方について、まず申し述べます。  現在、減税に対する国民の最も大きな期待は、所得税減税に寄せられております。したがって、減税にあたっては、所得税減税に最も優先的な配慮がなされるべきであります。  所得税は、控除と税率の組み合わせによる累進構造を通じて、所得再配分の機能を最もよく果たし得る近代的な租税といわれますが、他面、納税者にとっては最も負担感が強く、その負担の度が過ぎれば、勤労意欲や事業意欲を減退させ、国民の活力を失わせる等の問題を伴うことは、周知のとおりであります。  わが党は、以上の観点から、連年所得税に最重点を置いて減税を実施してきたのでありますが、ゆとりのある家計を育成し、経済の健全な発展を期するためには、今後とも、中小所得者を中心に所得税の負担の軽減を進めていくことが必要であり、財政経済の事情の許す限り、できるだけ早い機会に、夫婦子供三人の給与所得者の標準世帯について、その課税最低限を百万円に引き上げることを、当面の租税政策の最大の目標とするものであります。  昭和四十二年度の税制改正においては、以上の目標への第一歩として、所得税の課税最低限を七十四万円程度に引き上げることを目途として、基礎控除等の各種控除の引き上げを行なうほか、永年勤続者の退職所得の課税最低限を五百万円に引き上げるよう、退職所得特別控除の引き上げを行なうことが予定されていますが、本年は、例年と異なり、その改正のための税法の施行期日がおくれるという事情にあります。  本法律案は、以上のような事情により、昭和四十二年度の所得税改正のうち、給与所得者に対し、昭和四十二年四月一日から改正税法が施行されるまでの間に支給される給与所得及び退職所得減税効果をすみやかに及ぼすため、各種控除の引き上げ等を基礎として計算した源泉徴収税額表により、所得税源泉徴収を行なおうとするものであり、所得税減税に対する国民の大きな期待にこたえるものとして、時宜を得た緊急措置であると認められます。  以上、賛成討論を終わります。
  306. 内田常雄

    内田委員長 永末英一君。
  307. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております臨時特例法案に対して反対をいたします。  以下、その趣旨を申し上げます。  もともと、この臨時特例法案には、退職手当に関する部門等につきましては前進であるとわが党は認めました。しかし、この臨時特例法案は、やがて来たるべき四十二年度全部をカバーする本法の柱をなすものでございまして、その意味合いで、少なくともその低額所得者部門につきましては、標準世帯百万円までの免税、これについて、政府がこれまで言明してきましたとおり、昭和四十五年度より実施するということについて前進させるべく、社会党、公明党とともに努力をいたしてまいりました。ところが、この点につきましては、ついに政府はその誠意を片りんだに示すことがございませんでした。  一体、百万円免税というのは、いまの物価水準において必要だということをわれわれが判定したのである。政府昭和四十五年度から、こう申すのでございますが、現在の物価上昇の速度を見ておりますと、本年度、政府は別途予算案の説明のときに、いわゆる消費者物価の値上がり、健康保険料の引き上げ等を提案いたしてまいりました。だといたしますと、総理大臣が申しましたような、本年度は五%以内の物価上昇におさまるという見込みは、わが党はきわめて疑わしいと存じます。六%程度以上の値上がりがあるのではないか。大体、ここ三年間六%程度物価上昇があるといたしますと、昭和四十五年度の百万円の購買力は、本年度の物価に換算をいたしますと、約八十四万円の購買力しかないのでございます。したがって、百万円の線まで免税せよというのは、いまの物価水準において要求しておるのであって、これを三年引き延ばすことは、いわばごまかしておる、このようにわれわれは判断をいたします。私どもが低所得者に対する免税点を引き上げよと言うのは、すなわち、その生活水準の現時点においてもっとゆとりのある、家計を、文字どおりのそれを実現せよと迫るのであって、三年後の免税点の引き上げを予約しておることは、何のことはない、片一方政府がとっております物価上昇政策、これの調整を行なおうという以上に出ないものと判断をいたしました。このようなごまかしのコースに、われわれは断固として反対をいたすものでございます。  このような意味合いから、われわれ民社党は、社会党、公明党とともにこの法案に対して反対をいたします。
  308. 内田常雄

    内田委員長 広沢直樹君。
  309. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私は、公明党を代表しまして、昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案に反対の意見を申し述べます。  本法律案は、予算が六月一日から施行となるために、昭和四十二年四月一日から同年五月三十一日までに支払われる給与及び退職手当等にかかわる所得税源泉徴収について、減税効果をすみやかに及ぼすため、すなわち、早く減税しようということはよいのでありますが、しかし、本案の成立は、政府提案の所得税の一部改正による所得税課税最低限七十三万九千五百四十六円を妥当とすることに相なるのでありまして、現状にかんがみ、わが党がすみやかに百万円まで免税点を引き上げるべきであるとの主張を無視するものであります。  そこで、反対の理由は、今回の税制改正による減税程度では、とうてい現今の諸物価の高騰に追いつくことができず、一般勤労者、中小所得者は一向に軽減されないのであります。  政府は、今回の所得税法の改正によって、初年度八百三億円、平年度九百四十億円の減税を行ない、また、諸控除の引き上げによって、標準世帯である夫婦及び子供三人の給与所得者の場合、課税最低限は六十三万一千六百二十四円から七十三万九千五百四十六円に引き上げ、中小所得者の負担は大幅軽減されると主張しているのでありますが、その裏づけとして、大蔵省はマーケットバスケット方式によって試算し、基準生計費と課税最低限の比較から七万余円の余裕があるとしています。しかしながら、その試算によりますと、基準生計費のもととなる一人一日当たりの食費は、昭和三十九年度の国立栄養研究所の献立表によって四十年度の基準生計費を計算されたものであり、以後四十一年度、四十二年度物価上昇の予定を乗じて試算した二百五円二十四銭となっております。これは現実の国民の生活、さらに、いま申し述べました試算過程に見るように、全く現状に即していないことは明白であります。大蔵大臣の見解もほぼこのように受け取れるのでありますが、憲法に保障されている健康で文化的な生活に照らし、また、最低生計費には課税しないという今日の税制のあり方から見ましても、税制改正による減税国民経済生活の実情に即していない。よって、すみやかに課税最低限を百万円まで引き上げるべきであると主張し、本法案に対して反対するものであります。  以上、反対討論を終わります。
  310. 内田常雄

    内田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて、採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  311. 内田常雄

    内田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  312. 内田常雄

    内田委員長 次に、期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案について、議事を進めます。  討論の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  313. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私は、期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案について、日本社会党を代表いたしまして、反対の意向を明らかにいたします。  本年三月三十一日及び四月三十日に期限の切れる特別措置法のうち、貯蓄の奨励の項に該当する部分につきまして、期限の延長を断固として認めることができません。すみやかに廃止すべきものであることを明らかにいたしたいと存じます。  その理由一つに考えられますのは、本措置によりまして優遇を受けるものは、租税公平負担の原則を侵すことを例外的に認めるにふさわしい要件を備えていなければなりません。しかし、今日利子配当所得を中心とするこれらの優遇措置は、明らかにこの要件を失っていると判断されるのであります。このことの例証は、こうした幾つかの特別措置についてどれだけの効果があがっているのか、どういう念査がなされてきたのか、本委員会などにおきまして今日までしばしば追及されてきたところでございますけれども大蔵省自身がそのことのむずかしさを立証しているのであります。もちろん、国民もこうした事態を決して容認いたしません。税負担の不公平をのろう声がきわめて大きいものと判断いたすのであります。これが一つ目の理由でございます。  二つ目の理由は。減収額がきわめて大きくなってきたことであります。三十七年度から四十一年度の五年間に、減収総額は一兆十九億円の巨額にのぼっておるのであります。しかも、その利子配当などで、貯蓄奨励の項に該当するものは五千六百六十九億円で、全体で五六%にも相当いたしておるのであります。額が大きくなってくれば、当然既得権の主張は利害と結合し、ますます固定化の方向に進むことは明らかであります。  三つ目の理由といたしまして、財界や高額所得者に多くの受益を保障する利子配当を中心とするこの優遇措置は、政府自民党との不明朗なる結びつきがあるのではないかという国民の疑惑の目が、だんだんと強まってきたということであります。  昨年の暮れ、租税特別措置法第八条の四が期限切れとなります前後から、福田自民党幹事長と植村経団連副会長との政治献金倍増の懇談、あるいは福田証券業協会連合会長との懇談、この中で政治献金の倍増がきめられていっているという報道が流されております。株式配当の所得に対する優遇の措置が据え置きという方向が示されたのも、この時期であったと報道が伝えております。国民の疑惑は、こういう一連の動きの中でますます強まってきておるのであります。しかし、これらの疑惑を裏づけるかのごとく、昨晩、本委員会におきまして、八条の四に基づく期限の失効があまりにも明白であるにかかわらず、国税庁長官の一片の通達によってその措置が依然として生きているという事態を生んでいる事実を見るにつけまして、私たちは、きわめて遺憾な状態をこの審査の中で明らかにすることができました。  この際、政府は、思い切って、病める盲腸の摘出手術をするような立場に立って、期限切れという絶好のチャンスを迎えておりますだけに、税の公平負担の原則を貫く立場から、国民の求める税制を確立する立場から、また、政府自民党自身の潔白を証明されるという立場から、英断をふるって廃止に踏み切られることを強く要望いたしまして、反対の意見を申し上げます。
  314. 内田常雄

    内田委員長 大村襄治君。
  315. 大村襄治

    ○大村委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案について、賛成の意を表する次第であります。  本法律案は、租税特別措置法及び関税暫定措置法に規定されている特別措置のうち、昭和四十二年四月三十日に期限の到来する配当所得源泉選択課税のほかは、いずれも本年三月三十一日までに期限の到来する特別措置について、今後の存続、内容の改正等を織り込んだこれらの改正法の施行が例年よりもおくれる関係上、それまでに期限の到来するものについて、とりあえずその期限を本年五月三十一日まで延長しようとするものであります。  これらの特別措置は、いずれも経済政策その他種々の政策上の要請にこたえて設けられているものであります。もとより、これらの特別措置のあり方に関して種々の議論があることは、私もあえてこれを否定するものではありません。しかしながら、これらの措置は、産業の助成、輸出の振興、設備の近代化、貯蓄の奨励等の重要な施策の一環を形成するものとして、経済の現実に広くとけ込んでいるものでありまして、これらの措置について急激な変更を加えることについては、十分慎重を期する必要があるということは言うまでもないところであります。  また、かりにこの法律案が成立するに至らず、これらの措置が現行の期限の到来とともに適用されなくなる事態を想定すれば、たとえば、利子配当に対する源泉徴収税率、新築住宅等に対する登録税、給食用脱脂粉乳、農林漁業用重油等に対する関税など、たちまち各方面において不測の混乱を招くに至ることは明らかであります。  わが党は、特別措置のあり方に関して、要は、経済政策等と税制とをいかに調和させるかという観点から、その合理化をはかるにいたしましても、諸般の影響を考慮しながら漸進的な措置を講ずることとするのが最も現実的な方法であると考えるものでありますが、政府においても、これらの特別措置については、たとえば利子配当所得に対する課税の特例等について、実情に応じ、合理的改正を加えつつ、別途提出するそれぞれの法律改正案により所要の改正を行なうことといたしているのであります。  したがいまして、今後の存続あるいは内容の改正等については、それぞれの法律改正案により十分審議を尽くすこととし、さしあたり期限の到来する特別措置について適用期限を五月末日まで延長することはやむを得ない措置であり、また適当な措置であると考える次第であります。  以上、簡単ではありますが、ただいま議題となりました法律案の内容は、この際必要かつ妥当な措置を講ずるものと確信し、私の賛成討論を終わるものであります。
  316. 内田常雄

    内田委員長 永末英一君。
  317. 永末英一

    ○永末委員 私は、ただいま議題となっております租税特別措置に関する期限を変更するための法律案に、民主社会党を代表いたしまして、反対をいたします。  そもそも、この法律案の中身はいろいろと含まれております。しかし、その中には、理由のあるものも私どもはあろうと思う。しかし、特にこれらとからませつつ利子配当の軽減措置を含めておるこの一点について、われわれは断固として反対をいたすものであります。  すなわち、利子配当の軽減措置は、すでにその当初設けられた目的を喪失し、しかもまた、わが国の税制体系にきわめて異常な混乱を来たしておるからであります。  第一に、これが設けられました第一の理由は資本蓄積のためという理由でございましたが、本委員会の審議を通じて、それでは、はたしてこの特別措置が貯蓄と関係があるか、あるいはまた、資本蓄積、あるいはそれを象徴的に示す株価との関係があるかということを審査してまいりましたが、いずれともこれは関係がないと私どもは判定をいたしました。したがって、これが設けられました資本蓄積のためというにしきの御旗は、いまやどろにまみれたものとなったと考えます。  第二に、この特別措置を存続せしめることは、高額所得者に合法的な脱税のチャンスを認めることになることであります。すなわち、今回の審議に際しましても、たとえば配当につきましてこの新しい措置がとられました昭和四十年度以降の傾向を見ましても、源泉選択をとったもの、あるいはまた申告不要分になったもの等をとりましても、人員また課税所得、それぞれ激減をいたしております。その金額はおおよそ五百億円になんなんとしておるのであります。これはすなわち、その分だけ取るべかりし租税をわが政府は取らなかった、こういうことでございまして、この点だけ、私どもはこの配当なり利子なりの所得者分布が低額所得者よりは高額所得者に大きく分布されている実情から考えまして、高額所得者に合法的な脱税のチャンスを与えるものと断ぜざるを得ません。  さらに、このようなことを認めますと、ただ単に所得税のみならず、相続税等、他税の面におきましても取るべかりし租税を取らない、こういう門戸を開くものであって、これらの点につきまして、私どもは、たとえ二カ月でございましょうとも、変わるものはこの際廃止をして、これを延期すべからざるものと考えます。  さらに重要なのは、わが国政府が一貫してとってまいりました累進課税の体制、これを乱している事実であります。これは先ほどの法案の討論にもございましたように、累進課税率は、自民党も所得再分配の機能を通して国民の経済社会に対する政府の機能をうまくやっていくものだ、こういう意見を自民党も持っておられるようであります。ところが、これがくずれておるのでございます。すなわち、たとえば、納税人員にいたしましても僅々八千人程度の人のために、さらにまた、これらの人のために、その税率におきましてはいまの場合約一〇%程度配当におきましてはもう少し上がるのでございますけれども、その程度で、高額所得者の税率を、いわばこの一点において、総合所得であれば課せられるであろう高度累進率から引きおろして、きわめて優遇したやり方をとっております。これらの点は、われわれとして断じて見のがし得ないものであります。  このような状態が、はたしてわが国の租税体系に好ましい影響を与えているかと考えますと、断じて与えてはおりません。  これらの点について、われわれ当委員会における質問に対して、税務当局は苦渋に満ちた面持ちで説明をされました。その面持ちを察しても、この特別措置がどこから一体発せられたかということを考えまするときに、私は、日本の政治の体質そのものが、この一つ特別措置に集中的に表現せられていると断ぜざるを得ません。  このようなことであればこそ、国民は日本の税制全体系に対して不信の念を持ち、さらにまた、税務職員の士気にも重大な影響を及ぼすものがあると考えます。  これらの諸点よりいたしまして、わが民社党は、かかる期限を延長する法案は、百害あって一利なし、断固として反対いたすものであります。
  318. 内田常雄

    内田委員長 広沢直樹君。
  319. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私は、公明党を代表いたしまして、期限定めのある国税に関する法律につき当該期限を変更するための法律案に反対の意見を述べます。  税負担の公平の原則は、洋の東西を問わず租税の基本精神であります。また、近代民主国家をささえていくモラルでもあることを考えるならば、税公平の原則に全く反しているからであります。  たとえば、サラリーマンの場合をとってみますと、給与に対して課税される所得税、市町村民税などの住民税、固定資産税等、直接に負担しているもののほかに、さらに酒、たばこ、砂糖の消費税、電気ガス税、物品税、入場税の形で間接的にも多額の税金を負担しているわけであります。したがって、選挙権のない学校卒のサラリーマン、または生活保護世帯、失業者に対してまでも完全な大衆課税となっております。特に所得税は、累進的構造のため、税負担は所得の伸びを上回って急速に累増する傾向が強く、日常の経済活動、国民生活は苦しめられている現状であります。  給与所得者の課税最低限は、今回五人世帯で七十三万九千五百四十六円となるのに対し、配当所得の場合は、特別減免措置によって二百二十六万円まで課税されないというように、資本蓄積という名目のもとに、大企業や資産所得者は特別な措置がとられているのであります。  この問題については、税制調査会も税負担公平の原則に照らして整理すべきことを勧告しているのでありますが、逆にふえる傾向となっております。このように、わが国の税金は、課税負担が不公平なのと重税が特徴となっているのであります。  したがって、公明党は、このような税負担の不公平を改め、大衆福祉の立場から、所得税の実情にかんがみ、利子分離課税の特例配当所得に対する優遇措置廃止し、総合累進課税制度をとるべきであると主張するものであります。ゆえに、この利子配当所得期限切れに伴う延長法案に反対するものであります。  以上、反対討論を終わります。
  320. 内田常雄

    内田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて、採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  321. 内田常雄

    内田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  322. 内田常雄

    内田委員長 ただいま議決いたしました両法律案に対する委員会報告書の作成等につきましては、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  323. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  324. 内田常雄

    内田委員長 本日は、この程度にとどめ、次会は、追って公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後五時四十二分散会