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横山委員 泉長官にいささか苦言を呈したいと思いますが、先ほど冒頭で言いましたように、ほかっておけばだんだん下を向いて歩くようになる、だから、庶民の相当の
税務職員をもっと上に切り上げて、そして大企業なり、相当ハイクラスのところにもっと
人員を配置がえをしたらどうか、そしてまた
課税最低限の
引き上げなり、そういう少額不追及主義なんというばかな――ある
意味ではばかな言い方ですよ、これは税法どおりやっていないのですから。そういうことが現実に行なわれなくてもいいような仕組みにしなければならぬと思うのです。
特に私がそれを最近痛感しましたのは、先年もここでやったのですが、東京においてはそば屋の業種別指導、それが
全国にいまや評判の種になっておりまして、いわゆる業種別指導方式というものが蔓延をしておるような雰囲気であります。同僚諸君もどこかでそれを聞いておられると思うのですが、簡潔に私の
承知しておる業種別指導の実際的な
やり方は、まず、ある業種の役員なりあるいは特に脱税をしておるという人をモデルに
調査する、そして、
中小企業の中には多少やはり帳面の間違いなんかもあるんだから、それを取り上げて、そして今度は組織全体に対して、この業界は脱税が大体このくらいあると推算をする、場合によれば業界の総会を開かして、
税務署が行って、いんぎんにそこで話をして、そして修正申告を期待するというムードをふりまき、修正申告をしないところだけ
調査をするというムードをまたふりまく、業界は大あわてにあわてて、修正申告をするかしないかで大論争をする、修正申告をしないところがあると、そういうところにはまた、特に全部はやらないにしても、一カ所か二カ所抽出をして
調査に入る、それによって効果的な盛り上げをする、こういう業種別指導がいま
全国に蔓延をしておると私は見ています。私の名古屋におきましても、やれふろ屋である、やれうどん屋である、やれ床屋である、やれクリーニング屋である、こういう状況であります。クリーニング屋がそれによって、いろいろな事情がありましたけれ
ども、自殺をいたしましたことは去年ここで御披露を申し上げました。この業種別指導方式というものは本来いかなる
理由をもってあなたのほうがおやりになったのか。私はかかるところまではおそらく想像もされなかったと思うのであります。業種別指導というからには、このそば屋ならそば屋に、前向きに、ひとつこれからこうしてくださいよという
意味の業種別指導ではなかったかと思うのです。ところが、一たん
税務職員が手をかけますや、どうしてもうしろ向きの業種別強制修正申告方式というものになりやすいものであります。あなた方がするなと言ったところで、一般の
中小企業のところに入ってやれば、過去の問題が
一つや
二つはおそらく出てくる。出てきたものを、第一に悪いことは、結局はうしろ向きにやっておるということ、第二番目には、
一つ二つのモデルの商売屋をさがして、それによって全体に脱税しておるかしておらぬかは別としまして、脱税をこの業界はしているものなりという先入観を持って
措置をするということ、第三番目に、修正申告を具体的な証拠がないにかかわらずやらせる――強制的にやらせるのではない、しかし、ムードとしてやらざるを得ないようにしむけるという
やり方がいかぬということ等々、この業種別指導方式は各局、各
税務署、各地において逐次成果をあげておるというような感覚をもってびまんしつつある。しかも、これは
徴税行政において非常な成果を別な
意味で確かにあげている。確かにあげるけれ
ども、それによって
税務署に対する、税務に対する感覚というものはきわめて悪化をしておる。いわんや、今日の森脇であるとか、吹原であるとか、
田中彰治だとか、こういう問題が大きく出ておる今日においてはよけい感覚的に悪化しておると私は痛感せざるを得ないのであります。私は業種別指導方式が決して悪いとは言わない。けれ
ども、前線において行なわれておる業種別指導方式の結果というものは、きわめて重箱のすみっこをつつくような
やり方である。
かつて、あれは福田さんでありましたか、本
委員会で東京のそば屋について私に答弁をされました。調べたところ別に無理なことをしておるのではないと思いました。私がいま言った言い方においても、冷静に客観的に私は言っておるのですが、このやろうとか、出せとか、そういうことを言ったのではない。けれ
ども、これはまさに真綿で首を締めるような
やり方だ。したがって、大臣があなたに聞かれたか、だれに聞かれたか知らぬけれ
ども、報告する、そう報告すれば、これは無理はない。けれ
ども、下部の
実態は、この業種別指導方式が
中小企業、特に零細企業に及ぼしておる影響は心理的にきわめて強い。
私はふろ屋さんの例を聞いたのでありますが、ふろ屋の前にカチカチというやつを持っていって立っておる。ふろ屋の前にカチカチを持ってやっておれば、もう絶対にのがすことはない。中には手ぬぐいをポケットに入れて、カンカンも持たずに入った人もある。あれは何か、あれはうちの親戚が相談に来たんだということだったかもしれないが、それでもやはりカチですよ。ふろ屋の店先でカチカチやれば、これはもう全く見そこなうことはない。いわんや、今度はふろ屋の電気代、メーターとかあるいは給料だとか何か、支出はふろ屋はきわめて簡単なものです。きわめて簡単なものですから、カチカチやればもう全く――何のアローアンスがないといえば語弊がありますけれ
ども、他の業種、他の
中小企業に比較すればもう全く間違いがない。それをあなたのほうは水に流すことは絶対にしませんからね。そこで、ふろ屋の前に立ってカチカチまでやらなければならぬほど必要性があるかどうか。そんなに人がおるのか。しかも、ふろ屋のカチカチを二、三軒やり、それをモデル――効率表、標準率表を
基礎にして全部のふろ屋がこうだといって、そうして修正申告をしろという
やり方、さっきの少額不追及主義ですか、そんなものがあったかなと私は思うくらいですが、この
やり方については、間違っておるとは私は言わぬけれ
ども、力点の置き方が、業種別指導方式か何か、東京のそば屋でもってある
程度の成功をしたということで各地においてこの方式がとられるのあまり、全く実質上の
徴税行政の不公平というものが端的にあらわれておる。私が何ぼ声をからしても、この点については、泉さんの最初業種別指導ということを
考えたときの感覚といまとは違う。何としてもこれは少し
考え直してもらいたい。私はこの業種別指導のいろいろな問題点という具体的例を持っておりますけれ
ども、私はいまそこの
一つの業界をどうこうしてくれというのではない。満天下の
中小企業、特に零細企業に対する
やり方というものはこれではいかぬと痛感をいたしておりますが、いかがでしょうか。