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1967-03-24 第55回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十四日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 毛利 松平君 理事 吉田 重延君    理事 平林  剛君 理事 武藤 山治君    理事 春日 一幸君       足立 篤郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    菅  太郎君       小峯 柳多君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    砂田 重民君       永田 亮一君    西岡 武夫君       村上信二郎君    村山 達雄君       山下 元利君    山中 貞則君       渡辺美智雄君    阿部 助哉君       只松 祐治君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       柳田 秀一君    山田 耻目君       横山 利秋君    竹本 孫一君       田中 昭二君    広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         大蔵大臣官房財         務調査官    近藤 道生君         農林漁業金融公         庫副総裁    佐竹  浩君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 三月二十二日  委員竹本孫一辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員鯨岡兵輔君、西岡武夫君及び永末英一君辞  任につき、その補欠として川崎秀二君、荒木萬  壽夫君及び竹本孫一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員荒木萬壽夫辞任につき、その補欠とし  て西岡武夫君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税の源  泉徴収臨時特例に関する法律案内閣提出第  一号)      ――――◇―――――
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年分の給与所得等に係る所得税源泉徴収臨時特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 まず最初に、課税最低限についてお伺いをするのですが、先年私がここで、田中大蔵大臣でありましたか、学校を出たてのほやほやに税金をかけるとはけしからぬというて強く迫ったことがございます。今回の課税最低限、平年度独身者で二十八万円何がしですね。二十八万円何がしですと、大体高校卒業生全員所得税がかかるということなんだと思うのでありますが、独身者の場合においてはどういう計算をもってそこに課税最低限を設けたのか、何を根拠として二十八万円が課税最低限であるのか、その数字並びにその方針をまず伺いたい。
  4. 塩崎潤

    塩崎政府委員 独身者課税最低限につきまして、先年来横山委員のような御批判が多々あるわけでございます。私どもはそのような御批判も十分考慮いたしまして、これまでは、夫婦子三人の課税最低限中心といたしまして考慮いたしておりましたが、今回におきましては、そのようなお考えも十分考慮いたしまして、給与所得控除を四万円、これまでになく大幅に引き上げた次第でございます。  二十八万円が何と対比させるべきかという問題になりますけれども、これは、やはり何と申しましても、沿革的な課税最低限、これが基礎となりまして二十八万円になるということが第一でございます。  第二には、これも私ども参考までに申しておりますところの生計費との関係、これから見ましても、過去におきまして生計費の点から見て、改正前の現在の課税最低限でもゆとりがあるということになりますと、今回の改正でもある程度ゆとりが残るということは十分認められますので、そういった点を勘案いたしまして課税最低限をきめてお願いしておる次第でございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 何を言っておるかわかりません。あなたの言っておるのはきわめて抽象的です。私が聞いているのは二十八万円の算出根拠です。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 過去におきまして課税最低限が適当であるかどうか、これは御存じのような標準生計費と申しますか、主税局が算定いたしまして一つ参考資料といたしております標準生計費との比較におきましてきまっておりますところの課税最低限が妥当であるかどうか、こういったことで参考にきめたことは事実でございます。それを申し上げたつもりでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 過去における標準生計費が妥当であるかいなかは別として、その標準生計費をもってすれば、独身者は二十八万円が課税最低限として、最低死活に妥当である、こういう御意見でございますね。
  8. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これについての見方はいろいろございましょうけれども、私どもの過去においての一つ検算資料として見た場合、私どもは過去におきましても、これまでにおきましても決して無理があるというふうには考えておりません。
  9. 横山利秋

    横山委員 過去においてもこの課税最低限、その基礎となる最低生活費、その基礎となるマーケットバスケット方式等については、わが委員会は超党派で関心ただならざる関係にあり、調査をしたのであって、何回もわが委員会はそれで議論をしておるのですが、今回この二十八万円ないしは七十三万円何がし、この課税最低限について、客観的科学的な資料を例年によって提出ができますか。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは内部的につくっておりましたものを、先年来御要求に基づきまして提出した次第でございます。いろいろな論議があったわけでございますが、これは一つ検算の手がかりだと私は思うのでございます。私は、四十二年の改正のように課税最低限引き上げの幅が多いときには、たとえば食料費幾ら、あるいはそれをエンゲル係数で逆算いたしました生計費幾らというようなことを比較することはあまり意味がないような気がするわけでございますし、全体としての消費者物価値上がり、これらを考慮いたしまして、大きく対比する程度でどうかと思っておりますが、もしもどうしても出せとおっしゃるならば、過去のようなやり方計算いたしまして提出することは可能だと思っております。
  11. 横山利秋

    横山委員 ことばじりをつかまえるわけではないのですが、過去のようなやり方計算してということは、計算ができているわけではないのですか。計算ができておって、それによって課税最低限をきめたわけではないのですか。
  12. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、消費者物価値上がりが四十一年度は五%、四十二年度は四・五%ということから見まして、平均一六%のような課税最低限引き上げならば十分入り得るというふうに判断いたしました。計算も大ざっぱにはやっていないわけでもございませんけれども、詳細にいたしましても、おそらくこれは当然この中に入り得ると考えております。
  13. 横山利秋

    横山委員 そこのところがふしぎに思うのです。課税最低限というものは、最低生活費課税せずという原則に基づいて行なわれておるのであるから、最低生活費としてはどのくらいかということが、大蔵省において、あるいは税制調査会において確立をしておって、その計算に基づいて最低限をつくられたと当然常識上判断できるのだけれども、いまのあなたの話によれば、いや、大体できますから、これでつくりましょうということでは、非常に意外千万な話です。そのあとのほうですか。あとからくっつけて適当につくってもだいじょうぶだ、できるはずですからつくりましょうということでは、きわめてこれはばかにした話だと思うのです。しかし、それにしても、そんなことを言っておってもしかたがないから出してください。  委員長にお願いしますけれども、これは本委員会にすみやかに課税最低限に関する科学的な資料提出されるようにお取り計らいを願いたい。いかがでございますか。
  14. 内田常雄

    内田委員長 了承しました。
  15. 横山利秋

    横山委員 では、その次にお伺いしますが、課税最低限とそれから徴税人員とは直接関係はございませんけれども、やはり戦前、私の資料を見ますと、八、九十万人のときがあった。今回の平年度化をいたしましても約二千万人くらいの納税人員ですね。この二千万の納税人員が、課税最低限をさらに引き上げることによって、この徴税機構並びに徴税人員簡素化というものはずいぶん飛躍的に変わると私は思うのです。  泉長官にお伺いいたしますけれども、いま徴税コストというものはどんなものでありますか。この間何かの機会にあなたがおしゃべりをしているのをちょっと見たのですが、徴税コストは歴年どういうふうに推移をし、それはどういう原因をもって徴税コストが移動しておるのか、この辺、行政実態から説明をしてもらいたい。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 徴税コストについてのお尋ねでございますが、あまり古いところから申し上げるのもいかがかと思いますが、昭和二十五年当時は税収百円当たり二円七十九銭であったわけでございます。それがだんだんと経済発展につれまして税収もふえてまいりましたので、徴税コストが一番安くなりましたのは三十六年の一円六十五銭でございます。それが最近は四十年、四十一年と御承知のような経済の情勢でございますので、税収伸びがやや伸び悩みまして、四十一年度は一円九十五銭、四十年度は一円八十七銭、こういうふうに相なっております。
  17. 横山利秋

    横山委員 長官として、この百円当たり二円七十九銭からいま一円九十五銭だというのですが、この徴税コストはどういう原因で移動するか。一番大きくコストが引き下げられる、あるいはふえるという原因は、どういうものによって変わっていくかという点をお伺いしたいのです。なるほど、いろいろな要素がそこに働くかもしれないけれども、この課税最低限を思い切って引き上げたときには非常に変わるのではないかという感じがいたすのでありますが、どうでございますか。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 徴税コストのうち一番大きなものを占めますのは、御承知のとおり、国税庁五万の職員人件費でございます。この人件費につきましては、年々人事院勧告によりまして給与改定が行なわれます。したがいまして、その部分の伸び率、これは定期昇給ベースアップと両方入ってくるわけであります。その両方の伸び率と、それから税収伸び率、これによって徴税コストが動いていくわけでございます。人件費につきましては、横山委員承知のとおり、大体定期昇給分が四%程度ベースアップ分が六%に若干端数がつくといったようなことでございます。したがいまして、それを上回る税収がございますと徴税コストは下がっていく、逆に減税をしたり、あるいは経済発展といいますか、経済伸びが低くなりまして、税収がそれを上回らないと徴税コストは高くなっていく、こういう関係にあるわけでございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 大蔵省並び国税庁として、税制簡素化というものが非常に大きな課題として取り上げられておるのでありますが、この簡素化の一番の中心になりますものは、一つは、課税最低限引き上げること、それからもう一つは、租税特別措置法にメスを入れて、わかりやすい公平な税制を取り上げること、そのほかにもいろいろございましょうが、大きな問題としてはこの二つだと思っておるわけであります。  長官に重ねてお伺いしますが、徴税機構の理想的な姿、きわめて抽象的な聞き方で恐縮でありますが、徴税機構は、いま歴史的なものがあるけれども、将来どういうような方向に持っていきたいとお考えになっておられるのでありましょうか。今日の徴税構機につきましては、納税者の立場から言うならば、税制をどう変えても、どういう減税が行なわれても、やはり窓口によってずいぶん違うという考えがあるわけであります。それはもちろん税の制度が複雑であるということもありましょうし、いろんな原因が手伝っておるのでありますが、徴税機構の理想的な姿、たとえば適正規模それから課税最低限、それから今日のさまざまな問題から考えて、大口所得者問題等考えますと、徴税機構については思い切った刷新があってしかるべきではないか、私は常日ごろそう考えておるのであります。今回の予算の編成に際して、若干、国税庁内部の人間の配置とか、増員とかということが考えられておる片りんが多少は見えておるのでありますが、基本的に、国税庁として国民に愛されるとはいわぬけれども、しかしながら親切でそしてわかりやすく、機動的な国税庁のあり方としては、将来どういう構図を持っておられるのか、伺いたいのであります。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、簡単にお答えしにくいのでございますが、お話のように、税制をわかりやすくして、納税者がだれでも親しみやすいものになるということは、これは私どもが先ほど申し上げましたような意味での徴税費と違いまして、国民の側の手数を合わせました国家全体としての、いわば徴税費が安くなる、こういうことだと思います。私が先ほど申し上げましたのは、税務官庁としての国税庁、国税局、税務署におけるコストがどれだけである、そのほかに納税者のほうとしても、税の申告、納付の過程におきましていろいろ手数を要するわけでありますが、税制簡素化されますれば、その手数が省けるという点におきまして非常な利益がある、これはおっしゃるとおりだと思います。  そこで、徴税機構の理想的な姿と申しましても、やはりこういうものは歴史的な沿革による点が多いのでございまして、突如として理想図を描きましても、なかなかその実現は容易でなかろうかと思いますが、ただ、いま私どもが痛切に感じておりますことは、職員の数と納税者の数からいたしますと、いま少し納税者の数が少なければ、職員納税者に対するサービスの点もより向上することができるのではないかといった感じを持っておるわけでございまして、そういう意味からいたしますと、今回のように、所得税の相当大幅な減税が行なわれるということになって、負担の合理化がはかられてまいりますと、われわれ徴税行政に従事する者といたしましては非常ないい結果を生むというふうに感じております。
  21. 横山利秋

    横山委員 実は、私のきょうの質問の力点になっておりますのは、国税庁職員の努力とかあるいは仕事ぶりは一般的な問題として扱って、仕事担当というものに一生懸命になればなるほどどうしても税務職員は下を向いて歩く。なかなか身近な問題から取り上げていくのですから、自分のうちから税務署へ行く、常に日常周辺の問題に目を光らせる、どうしてもそういうことになりやすいものだ。お役人――皆さんお役人を前にして恐縮でありますが、お役人はどうしても、いい意味においてもなわ張り根性というものが強いから、自分仕事担当だと思えば目を光らせる。その担当というものが、中小企業なりあるいは労働者なりの担当なら、担当がふえればふえるほどその仕事に夢中になる。上のほうの仕事担当すれば、また上のほうに一生懸命になる。また、そうさせなければだめなんですが、そういうような仕事実態から考えますと、放置すればするほど税務行政というものは下を向いて歩く。常に留意をして、上を向かせるというよりは、上の仕事をやらせるように、上のほうの仕事を充実するように、だんだん下のほうの仕事簡素化し、あるいは課税最低限引き上げて、そしてその意味での公正公平を期さなければだめだ、こういう考えが私に常にあるわけであります。  その意味合いにおいて、これからひとつ、労働省婦人少年局長も来てみえますから、女と税金という問題について少し例を引いてお伺いしたいと思います。  今度妻の相続税を三千万円まで無税にするという法案が出ますね。妻は夫が死んで三千万円程度遺産を相続されるという人はどのくらいのベースの人でありましょうか、その減税は平年度でどのくらいでありましょうか、主税局として推算をしている人員はどのくらいでありましょうか。
  22. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回の改正によりまして、平年度相続税は二十五億円ばかり減収を見込んでおります。三千万円超の遺産額は、全体といたしまして五千五百九十六人の被相続人のうち、これは相続件数考えられてよいわけでございますが、千六百程度ございます。三千万円をこえるところが千六百ぐらいでございますから、約四千は三千万円以下の遺産階級に属しますから、その分の方々は、配偶者が取られます法定相続分につきましては全免になる、こういうことでございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 全日本のすべての妻の数からいいますと、四千ないし五千の人たちというものはきわめて微々たるものであります。これは、私は決してそれが悪いと言っている意味ではありません。しかし、これだけの遺産相続を受けられる人が最重点に租税が全くただになるということは、きわめて善政というか、また別な面からいいますと、一部特定の有産者であるというか、こういう感じがしてならぬのでありますが、なぜこういうふうにするか、その理屈はどういう理屈でございますか。
  24. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは種々理屈がございます。  現行、すでに妻の法定相続、妻と申しますか、配偶者法定相続分につきましては半額控除ということがあるわけでございます。今回これを全免に進めましたのは、この考え方を進めたことをまず御理解願いたいと思うのであります。  第二には、配偶者相続財産の形成に対する寄与、これが第一の理由でございます。昭和二十五年から相続税取得者課税になりました際に、配偶者の取り分につきましてその半額財産価額として控除するということが行なわれたのでございますが、昭和三十三年の根本的相続税改正の際には、半額財産控除では、非常な金持ちが上積みで落ちるという意味で税額で半分として、また三千万円という頭打ちが始まったのでございますが、この考え方を徹底いたしましたのが今度の全免でございます。これが第一でございます。  第二は、相続税にはもう一つ大きな考え方があることは、横山先生御存じのとおりでございます。相続税一つゼネレーションから別のゼネレーション、おくれた後代のゼネレーション財産が移る際の課税として考えるのがいいのではないか、同じゼネレーション間は、配偶者でありますれば数年ならずして死ぬということになります。そうすると、直ちに課税になってまいります。そのようなことの救済のためには、現在相次相続控除というようなことがあるわけでございますけれども相次相続控除というようなことでは十分な救済にならぬ場合がある、こういうことを考えますと、いっそのことゼネレーション間の課税については、特にまた配偶者でございまするから、課税を緩和するということも十分理由があることだと思うのでございます。その他いろいろな理由がありますが、今回二つばかり大きな理由を進めまして、一定の限度を置きながら、配偶者法定相続分につきましては全免、こういう改正をお願いしておる次第でございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 ですから、私は必ずしも悪いとは言っていない。しかし、妻の税金を全般的に考えますと、この間対照的に私の注意を引きましたのは、いろいろな新聞にも掲載されましたが、妻の内職の問題であります。  この間新聞に載りました主婦の会の第三回内職全国大会で見ますと、内職をやっている人の夫の平均勤続年数が十七年八カ月くらいである、家族構成平均四・四人である、月に手取りが大体四、五千円である、職業民間並びに官公労のサラリーマンである、大体全国的に百五十万世帯奥さん内職をしておる、こういう統計であります。したがって、平均勤続年数十七年八カ月といえば、これまた、おとうさん手取りは月に五万円から三万六千円、もうちょっと下もあるようでありますが、大体普通のサラリーマン家庭内職をしておる。もっと給料の少ない人、全くのニコヨンとか、そういうような人たちは共働きをしておるわけですね。子供学校へやってから一日に平均五、六時間内職をやる人たちであります。何に使っているかというと、教育豊に使っているというのが一二%、おかずやおやつに使っているという人が三一%、衣料が一二%、耐久消費財が二・九%、その内職の金をレジャーに使っているという人はまさに一・五%しかない。少なくとも内職でもうけた金の八〇%は生活の足し前にしておる、こういうわけです。私の得た数字はこういう数字でありますが、婦人少年局長、この内職の状態の労働省全国的な統計はございましょうか。
  26. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 いわゆる家庭内職実態につきましては、これは御存じのように、把握がきわめて困難な点が多々あるわけでございますが、一応労働省として把握できております限度でお答え申し上げます。  一つには、全国家庭内職に従事する者の数でございますが、これは季節等によりまして非常に異同があるようでございますが、臨時家内労働調査会が把握いたしたものによりますと、全国で六十七万の者が、主として主婦でございますが、家庭内職に従事しているという数字が出ております。また、私どもが都道府県に設置いたしております内職公共職業補導所で扱っております内職者、その補導所に登録されている者の数は、現在十二万六千人でございます。  これらの者の内訳について申し上げますと、先生も御指摘のように、世帯収入階級別層で見ますと、やはり二万円から四万円台の者の数が一番多いようでございます。あるいはまた世帯主職業別で見ますと、いわゆる雇用労働者世帯が一番多い、また内職をする理由等も、やはり世帯収入を補助するということが一番大きな理由になっております。
  27. 横山利秋

    横山委員 そこで、塩崎さんでも泉さんでもいいですが、内職によって得た収入税金は一体どういうことになりますか。その内職だけに税金の特別の措置がいまないように思うのです。どういう仕組みになりましょうか。
  28. 塩崎潤

    塩崎政府委員 横山先生御存じのように、内職で得た収入所得でございますので、所得として計算される、ただ、おっしゃるように、扶養親族の場合には、現行法では所得五万円以下の場合には、これは扶養親族控除が別に認められる、配偶者ならば配偶者控除が別に認められる、こういうことになっておりますが、今回は資産所得以外の事業所得あるいは給与所得につきましては、十万円までは、所得は少額と見まして、同じく配偶者控除あるいは扶養親族控除を適用する、こういう改正を御提案いたすことになっております。
  29. 横山利秋

    横山委員 内職を一生懸命にやって、しかも、これらは団地だとかあるいは庶民的なサラリーマン家庭で、子供を三人、おとうさんが十七、八年役所なり民間工場につとめているその奥さんですから、大体四十歳前後ないしは五十歳くらいになっておるかもしれない。そういう人たちがせっせと一日六時間も働いて得た内職の金について、今度は十万円ですか、十万円以上であれば、税金をかける、そうして十万円以上になれば配偶者控除がはずされるというわけですね。配偶者控除がはずされるならば、今度はおとうさんの頭に平年度で十五万円が課税されるということになりますね。そういうことは、ぼくはきわめて人情知らずといいますか、まことに非情なことだと痛感をするわけです。  私が特に内職を取り上げましたタイミングとしては、二つ理由がある。一つは、三千万円まで相続税無税にするという一つの今日的な問題であります。もう一つは、四十三年から、今回提案されるのですが、個人企業の専従者給料の支払いが行なわれるという時点であります。つまり、とうふ屋さん、八百屋さんの奥さんはこれから給料をもらえるわけですね、来年の一月から。いままでは、青色の場合、専従者控除として年間二十四万円しか給料がもらえなかった。ところが、月に三万円出しても四万円出してもいいよということになれば、サラリーマン奥さんだけが、私の推算としては百五十万世帯労働省の公式な統計をもってしても何十万という人たちが、夫に弁当を持たして送り出す、子供学校にやってから夫や子供が帰ってくるまで一日せっせと内職した者と、三千万円の遺産をもらう奥さんとおとうふ屋さん、げた屋さん、八百屋さん、これから給料をきちんともらえる税法上の恩典を受ける奥さんと、どういう違いがあるだろうか、まことにこれは不均衡はなはだしいものがあるのではなかろうか、私はそう考える。  政務次官、私のいままで言ってまいりましたこと、おわかりですね。あなたは愛妻家だと聞いておりますが、あなたの奥さん内職をやっておるとは思いませんが、しかし、お互い政治家の女房というものは、ある意味では専従者ですから、私は青色専従者控除を適用してもいいくらい――これは政治家の奥さんを世間の人は何かかんかと言いますけれども、これはお互いに身にしみてわかるように、女房の働きというものはたいへんなものです。しかし、私はそれを言いたいんではない。けれども、世の働く妻の税金というものについては、いま一番気の毒な、子供のおやつだとか衣料費だとか、あるいはおかずの代金のくめんに内職をしておる人たちに対する税制上の恩典はいささかもないではないか、三千万円の遺産相続をただにするくらいなら、なぜそれをやらぬのですか、こういうことを私は言いたい。人情豊かな政務次官からまず伺いたい。
  30. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 先生のおっしゃることは私もよくわかるのでございますが、相続財産につきまして、その財産形成に妻が長い間非常に大きく寄与しているという面を特に重要視いたしまして私ども相続税配偶者に対する措置というものをきめていったわけでございます。いまおっしゃいましたように、日常の生活、それに必要な収入、並びにそれについての税というものを考えます場合には、確かに先生おっしゃるように、内職までして働いている人、それが十万円以上になると税金がかかるというようなことについては、将来とも大いに検討していかなければならぬ、したがいまして、そういう考えもありましたから、今回、いままでの最低限をうんと引き上げていくような努力をしたり、あるいは配偶者控除引き上げるような努力をしてきているわけでございまして、これが足りないとか、もっと上げるべきだという議論――もちろん、その減税の場合には各種のそれぞれの項目について御議論があろうかと思いますが、やはり私ども減税全体の規模の中でそれぞれのバランスを考えながら逐次努力をしてまいりたい、こういうふうに考えてきたわけですが、しかし、おっしゃることはよくわかりますので、できるだけ今後もお説のような線で努力をしてまいるべきだと私ども考えております。
  31. 塩崎潤

    塩崎政府委員 補足して御説明申し上げたいと思います。  先生、非常に巧みに相続税減税と専従者給与を引きながら比較されておりますけれども、私は比較すべきものが違っておるような気がいたします。現在の内職所得についての取り扱いは、また別の見地から考えるべきだ、かように私は考えております。  まず第一の相続税の、配偶者の取り分に対する減免の問題、これは先ほど申し上げましたような論理でございます。何もいま取るんじゃなくて、子供にいくときに徴収するという考え方でございますから、別に、内職課税と比較すべき必要はない、こういうふうに私は考えます。  それから第二に、専従者給与も、これはいつもよく横山先生からお話がございますような経緯もあることからきましたところでございます。これは、一つの個人企業の中で生産的な労働に従事したならば、それに対価を支払うのは当然ではないかというお話、したがいまして、それが客観的に見て正しい給与ならば給与として取り扱うということにして進めようとするわけでございます。これは、おっしゃるように、確かにサラリーマンと違いまして、個人事業者の配偶者あるいは扶養親族は就職の機会が楽でございます。自分の事業の中にすぐ使われるということで、おっしゃるように、内職と比べまして労働条件も違うという意味がございましょうが、そこは給与によって判断できるんではないか、かように私は考えております。  それから、もう一つ考えてみますと、内職と共かせぎの区分、内職というのは、確かに生活費の一つの補てんという意味で言われるのでございましょうが、学校先生が夫婦共かせぎしておるような場合、これはいわば内職といえば内職、しかしながら独立の労働といえば労働というふうにも考えられます。そこは所得の金額で区別すべきではないか、そういった意味で、今度の所得税法の十万円、これはいろいろな批判がございましょうが、給与所得にすれば二十万五千円までいけるということで私は判断できる。これは独立の世帯主が二十万五千円をこえればいかぬということじゃございません。扶養親族だけ、配偶者についてだけの特例でございます。御要望のございますような例の給与所得者の年五万円までの所得、これも古い時代にきめたものだからこの非課税限度も上げたらというようなお話がございますが、これは独立の世帯主のことでございます。それと今度の措置とは違ったものと見ていい、それは一つ内職を数量的――なかなか内職の定義というのはむずかしいのでありますが、配偶者控除、扶養控除の適用を排除しないようになることにひとつしていこう、こういう趣旨であります。
  32. 平林剛

    ○平林委員 関連して。  ただいまの内職収入の問題については、昨年も少し議論をいたしまして、いまお話があったように、昭和四十二年分、つまり四十三年三月十五日の確定申告には十万円までは少額不追及の限度を少しふやした、こういうことでありますけれども、いま横山さんが質問なさっている内職収入で家計の補助をしておる主婦の数は、いまお話しになったような程度の数ではない。もっと多い。私が昨年申し上げたときには、東京都の全世帯の四分の一は少なくとも内職収入によって家計の補助その他を行なっておるという東京都の資料をあげて申し上げたことがございます。そういう意味ではかなり大きな数にのぼるものだと考えておるわけであります。それが五万円以上内職収入があれば、三月十五日に、いま過ぎましたが、確定申告をしなければいかぬということになっておるわけであります。最近の内職収入平均がいま四千円から五千円というお話がありましたが、もっと高くなっておる。六千円から七千円くらいの平均になっておるんじゃないか。そうすれば、三月十五日には、本来からいえば税務署に申告しなければならぬという立場にある。しかし、少額不追及主義ということからあまり厳格におやりにならぬというのが国税庁の趣旨だろうと思う。当然だと思うのです。  そこで、いま主税局長は、今度は十万円までに上げた、こうおっしゃるのですけれども、それは昭和四十三年三月十五日になって初めて家庭主婦が胸をなでおろして、今度は十万円になったというだけにすぎないのであります。五万円以上あれば申告をしなければならぬという義務を課しておるのは、昭和三十三年にきめた。それから昭和四十三年、十年間この五万円でずっときた。ということは、物価の上昇あるいは家計の膨張などから考えて、内職収入の占めるウエートということから考えますと、十年ほうりっ放しにしておいたことは非常な間違いである、すみやかに直すべきであるということで主張してきたのでありますが、来年からそうなる。来年からそうなるということだが、こういうことはもう直ちにできないものかどうか。改めるに別にちゅうちょする必要はない、こういうことこそすみやかにやることが善政である。いま議題になっております源泉徴収の問題も、暫定措置で六月から税金が少し安くなる。そういうことは早目に及ぼそうというお気持ちがあるならば、こういうものこそ、昭和四十三年三月十五日でなければ生きてこないというようなやり方でなくて、直ちにこれをおやりになるようなことをやってもらえないかどうか、これが一つ。  それからもう一つ、大体昭和三十三年にきめた五万円を四十三年までほうりっ放しにしておいたことは間違いなのでありまして、十年間に一度直すなんということは間違いである。ですから、これからは一体どうするのか、たびたび変えるというのは煩瑣でございましょうけれども、少なくとも十年間ほうりっ放しておくということは間違いでありますから、どういうお考えをもって今後臨まれるか、この二つをひとつお答えいただきたい。
  33. 塩崎潤

    塩崎政府委員 所得税法は四十二年分の所得から適用する改正になっておりますので、平林先生のおっしゃるようなことが法律上はできないことは当然でございますし、いままでの税法は税法としての正しさを持っておったと私は思いますし、さらにまた税法の遡及効の弊害を考えますと、税法は税法として、改正法は改正法としてひとつ施行すべきではないかと第一に思います。  第二の、五万円は三十三年にきめたものだから、現在の物価事情あるいは所得水準から見ても引き上げるべきではないかというようなお話でございますが、この点は、これまた横山先生におしかりを受けるかもしれませんけれども、もう一つ、バランスから見ますと、扶養親族所得があるのはいいほうで、扶養親族あるいは配偶者所得のないことを考えますと、まさしくその方が一番みじめではないか、こういうふうに考えられます。したがいまして、過去には、扶養控除額から扶養親族が持っております所得を引いた後を世帯主所得から控除する、これが最も理論的ではないかといわれたことがございます。あるいは、扶養親族あるいは配偶者所得世帯主所得に合算してからフルに扶養控除あるいは配偶者控除を認めるほうがより理論的であるということもいわれてございます。これは行政上の見地からバランスはそれが一番いいと思います。これは税の冷徹な論理かもしれません。あまりにも税にとらわれ過ぎた論理かもしれませんけれども、完全な税のバランスをはかるとすればそういうことになります。そうしますと、この五万円というのは、まさしく行政上からきました少額のものは――そんなことはわかった人だけがつかまる、あるいは、わからない人はそのままでいける、そういったことを考え行政上の見地からきたところの少額不徴収の制度でございます。これを上げるのはよほど慎重に持っていかなければならぬ、今度十万円といたしましたのは、そういった点を考慮し、さらにまた、いつも申し上げておりますように、資産所得のように分割可能な所得考えますと、まさしくアンバランスが激しくなりますので、内職所得、これを数量的につかまえまして、十万円はこれは別扱いにしよう、こういう考え方でございます。
  34. 平林剛

    ○平林委員 いま税法上の問題をあげて、これは前にさかのぼってやることはできないというお話がございましたが、税法上そうした問題はさかのぼれないというたてまえは私は承知しています。それなら、税法上でおやりになるというならば、家庭主婦内職をやっておるのは、いま平均だけあげても六万円以上になっておる。国税局はそれについて五万円までは不追及主義で追及しないが、六万円、七万円になったら追及します、税法をたてにとってそうおっしゃるならば、どっちかしっかりしなさいということになる。しかし、現実にはそんなことはできません。そんなことをやったら政府はたいへんなことになるし、国税局は家庭主婦の恨みでもって一日だって暮らせない。そうなると、そこで主税局長は税法をたてにとってさかのぼれないということをおっしゃるけれども、少額不追及主義という五万円の限度を十年間おっぽり出しておったということを考えれば、そこは法律のたてまえはそうだが、実際上の取り扱いについて、善政は一日も早くこれを実施すべきだという私どもの気持ちも理解をしてもらわねばならぬ、そういうことはいかがであろうかということです。
  35. 横山利秋

    横山委員 平林君が言ってくれたものですから、結論に近づいておるのですが、ぼくが内職を取り上げましたのは、あなたは冷徹な税法論理だとか、巧みな説得力だとか言っておりますけれども、まず第一に内職ということについてもう少し同情したらどうかということが一つ、それから第二番目には、実際問題として、いままでは少額不追及主義ということで、あまり国税庁税務署として言ってこなかったけれども、現実的には、税理論から言うならば、これは脱税です。けれども国税庁はやっていない。この現実の矛盾というものをどうするのか。国税庁は不追及主義でいい、あなたのほうは取るのがほんとうだとここでは言う。その矛盾を一ぺん解決しなければいかぬではないかというのが第二番目です。  平林君の言うように、取るのがほんとうだけれども、取っておりませんでは済みませんぞ。あなたも主税局長として現状をよく見て、取るのがほんとうだけれども、取っておらぬでは済まぬから、そこを直すべきだ、直すについては、内職についてもう少しあなたもあたたかい思いやりのある答弁をしたらどうだ、そういうことなんですよ。  それで、私どもの基本的な考えとしては、内職にもそれはいろいろありますよ。あなたが言いたそうなことはわかるのです。しかし、内職というものは、定義をしてできないことは絶対ない。だから、定義をして、その内職からは税金を取らないというようにすることと、それから、したがって配偶者控除なり扶養控除をはずすというようなやり方は避けたほうがよろしい。これらの方向において一ぺんひとつ検討してもらいたい。検討せぬというなら、きょうはいつまでもやりますよ。
  36. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう、今後検討することは当然でございますし、去年の御論議の結果このような改正案を提案した次第でございますので、その間の私どもの苦心は十分買っていただけると思っております。内職につきましても、私はあたたかい気持ちを持っておりますが、税制上これをどういうふうに取り扱うか、やはりなかなかむずかしい問題がございます。そういった意味では、今後の検討問題として十分検討してまいりたいと思いますし、実際の扱いをどうするかということは、いまここで主税局長あるいは国税庁長官にいたしましても、どういうふうにしたらどうなるとかいうことを言わないほうがむしろいいくらいなことではないかというような気がいたしますが、あたたかい気持ちで見ることは私は当然だと思います。
  37. 横山利秋

    横山委員 高橋さんにお願いしておきたいのですが、労働省で、婦人問題として、婦人と税金という点については、少し私は検討が不十分なような気がするのです。いま私が例をあげました相続税だとか、あるいはうどん屋さん八百屋さんの奥さんの給与だとか、あるいはいまの内職税金だとか、最近、年々歳々私どもの努力で婦人の地位、奥さんの税法上の地位を相当高めてきたような気がするのですけれども、そういう点では、一番主管のあなたのほうで、もう少し国税庁なり大蔵省にひとつけんかをやって、あの塩崎さんという冷徹な人間を少しあたたかくさしてやらぬといかぬと思うのです。もう少し御努力をお願いいたしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  38. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 どうも、たいへんあたたかいお励ましのおことばをちょうだいしたのでございますが、実は、私どもも婦人の地位の向上というその政策目標から、かねて婦人の税金につきましては関心を払ってまいったわけでございます。特に妻が夫の財産形成に対する寄与ということがなかなか評価されない、財産と申しますと、大きな財産のようでございますけれども、そうではなくて、サラリーマン収入も同じであります。  そのような意味で、妻に対する税制上の特別な優遇措置ということをかねてから考えておりまして、また先生方のお力を得たりあるいは所管の大蔵省国税庁とのお話し合い等で相続税あるいは配偶者控除等につきまして格段の進展が見られたことをたいへんに喜んでいるわけであります。将来につきましても、もちろん一そうそのような観点から婦人の地位の向上及び実質的な実りを持たせる意味で、税制につきましては大きな関心を払って研究していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  39. 横山利秋

    横山委員 泉長官にいささか苦言を呈したいと思いますが、先ほど冒頭で言いましたように、ほかっておけばだんだん下を向いて歩くようになる、だから、庶民の相当の税務職員をもっと上に切り上げて、そして大企業なり、相当ハイクラスのところにもっと人員を配置がえをしたらどうか、そしてまた課税最低限引き上げなり、そういう少額不追及主義なんというばかな――ある意味ではばかな言い方ですよ、これは税法どおりやっていないのですから。そういうことが現実に行なわれなくてもいいような仕組みにしなければならぬと思うのです。  特に私がそれを最近痛感しましたのは、先年もここでやったのですが、東京においてはそば屋の業種別指導、それが全国にいまや評判の種になっておりまして、いわゆる業種別指導方式というものが蔓延をしておるような雰囲気であります。同僚諸君もどこかでそれを聞いておられると思うのですが、簡潔に私の承知しておる業種別指導の実際的なやり方は、まず、ある業種の役員なりあるいは特に脱税をしておるという人をモデルに調査する、そして、中小企業の中には多少やはり帳面の間違いなんかもあるんだから、それを取り上げて、そして今度は組織全体に対して、この業界は脱税が大体このくらいあると推算をする、場合によれば業界の総会を開かして、税務署が行って、いんぎんにそこで話をして、そして修正申告を期待するというムードをふりまき、修正申告をしないところだけ調査をするというムードをまたふりまく、業界は大あわてにあわてて、修正申告をするかしないかで大論争をする、修正申告をしないところがあると、そういうところにはまた、特に全部はやらないにしても、一カ所か二カ所抽出をして調査に入る、それによって効果的な盛り上げをする、こういう業種別指導がいま全国に蔓延をしておると私は見ています。私の名古屋におきましても、やれふろ屋である、やれうどん屋である、やれ床屋である、やれクリーニング屋である、こういう状況であります。クリーニング屋がそれによって、いろいろな事情がありましたけれども、自殺をいたしましたことは去年ここで御披露を申し上げました。この業種別指導方式というものは本来いかなる理由をもってあなたのほうがおやりになったのか。私はかかるところまではおそらく想像もされなかったと思うのであります。業種別指導というからには、このそば屋ならそば屋に、前向きに、ひとつこれからこうしてくださいよという意味の業種別指導ではなかったかと思うのです。ところが、一たん税務職員が手をかけますや、どうしてもうしろ向きの業種別強制修正申告方式というものになりやすいものであります。あなた方がするなと言ったところで、一般の中小企業のところに入ってやれば、過去の問題が一つ二つはおそらく出てくる。出てきたものを、第一に悪いことは、結局はうしろ向きにやっておるということ、第二番目には、一つ二つのモデルの商売屋をさがして、それによって全体に脱税しておるかしておらぬかは別としまして、脱税をこの業界はしているものなりという先入観を持って措置をするということ、第三番目に、修正申告を具体的な証拠がないにかかわらずやらせる――強制的にやらせるのではない、しかし、ムードとしてやらざるを得ないようにしむけるというやり方がいかぬということ等々、この業種別指導方式は各局、各税務署、各地において逐次成果をあげておるというような感覚をもってびまんしつつある。しかも、これは徴税行政において非常な成果を別な意味で確かにあげている。確かにあげるけれども、それによって税務署に対する、税務に対する感覚というものはきわめて悪化をしておる。いわんや、今日の森脇であるとか、吹原であるとか、田中彰治だとか、こういう問題が大きく出ておる今日においてはよけい感覚的に悪化しておると私は痛感せざるを得ないのであります。私は業種別指導方式が決して悪いとは言わない。けれども、前線において行なわれておる業種別指導方式の結果というものは、きわめて重箱のすみっこをつつくようなやり方である。  かつて、あれは福田さんでありましたか、本委員会で東京のそば屋について私に答弁をされました。調べたところ別に無理なことをしておるのではないと思いました。私がいま言った言い方においても、冷静に客観的に私は言っておるのですが、このやろうとか、出せとか、そういうことを言ったのではない。けれども、これはまさに真綿で首を締めるようなやり方だ。したがって、大臣があなたに聞かれたか、だれに聞かれたか知らぬけれども、報告する、そう報告すれば、これは無理はない。けれども、下部の実態は、この業種別指導方式が中小企業、特に零細企業に及ぼしておる影響は心理的にきわめて強い。  私はふろ屋さんの例を聞いたのでありますが、ふろ屋の前にカチカチというやつを持っていって立っておる。ふろ屋の前にカチカチを持ってやっておれば、もう絶対にのがすことはない。中には手ぬぐいをポケットに入れて、カンカンも持たずに入った人もある。あれは何か、あれはうちの親戚が相談に来たんだということだったかもしれないが、それでもやはりカチですよ。ふろ屋の店先でカチカチやれば、これはもう全く見そこなうことはない。いわんや、今度はふろ屋の電気代、メーターとかあるいは給料だとか何か、支出はふろ屋はきわめて簡単なものです。きわめて簡単なものですから、カチカチやればもう全く――何のアローアンスがないといえば語弊がありますけれども、他の業種、他の中小企業に比較すればもう全く間違いがない。それをあなたのほうは水に流すことは絶対にしませんからね。そこで、ふろ屋の前に立ってカチカチまでやらなければならぬほど必要性があるかどうか。そんなに人がおるのか。しかも、ふろ屋のカチカチを二、三軒やり、それをモデル――効率表、標準率表を基礎にして全部のふろ屋がこうだといって、そうして修正申告をしろというやり方、さっきの少額不追及主義ですか、そんなものがあったかなと私は思うくらいですが、このやり方については、間違っておるとは私は言わぬけれども、力点の置き方が、業種別指導方式か何か、東京のそば屋でもってある程度の成功をしたということで各地においてこの方式がとられるのあまり、全く実質上の徴税行政の不公平というものが端的にあらわれておる。私が何ぼ声をからしても、この点については、泉さんの最初業種別指導ということを考えたときの感覚といまとは違う。何としてもこれは少し考え直してもらいたい。私はこの業種別指導のいろいろな問題点という具体的例を持っておりますけれども、私はいまそこの一つの業界をどうこうしてくれというのではない。満天下の中小企業、特に零細企業に対するやり方というものはこれではいかぬと痛感をいたしておりますが、いかがでしょうか。
  40. 泉美之松

    泉政府委員 所得税及び法人税の調査にあたりましては、お話のように、できるだけ大口の脱税者を追及するということに重点を置いてやるようにということを特に昨年以来私強調いたして、国税局及び税務署に申しておるわけでございます。したがいまして、最近はそういう意味で大口脱税を追及する体制にだんだん移ってまいっておりまして、先生の言われるように、そうこまかいものいじめをするといったような色彩は薄らいできていることと思います。  ただ、いまお話のございました業種別指導につきましては、これはどの局どの署がどういう業種についてやれというようなことを国税庁が言っておるわけではもちろんございませんけれども、現実に各業種間の課税の権衡をはかる一つの手段としてやっておるのでございます。ただ、その際におきまして、いま御注意のありましたように、すべての業者が脱税をしておるのだというような先入観をもって当たるとか、あるいは具体的な根拠なくして修正申告を慫慂するとか、そういうようなことにつきましては、今後十分注意いたしてまいりたいと思います。ただ、もう横山委員も御承知のように、よく世間で九・六・四だというようなことを言われておりまして、給与所得者に比べまして、事業所得者あるいは農業所得者の所得の把握が低いというようなことがいわれます。私は決して現在の課税の実情がそういうふうになっておるとは思いませんけれども、しかし、ときに調査いたしますと、脱漏所得が相当割合を占める場合がございますので、そういった場合におきましては、過去にさかのぼってでももちろん不正を追及せざるを得ない場合があるわけでございます。ただ、そういうことをいま先生のお話のような業種別指導という形でやることにつきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろ問題もありますので、今後十分気をつけてまいりたいと思います。
  41. 横山利秋

    横山委員 ここでお約束を願いたいのですけれども、修正申告というものは納税者の自発的意思によってやるものですね。ですから、税務署から業界全般に対して修正申告をしてもらいたいというのは、私は逸脱行為だと思う。こういう暗示にしても何にしても、そういうことはやめさしてもらいたいと思うが、いかがですか。
  42. 泉美之松

    泉政府委員 この点は、もちろん、修正申告は納税義務者が自発的に提出すべきものでございますけれども税務行政の実際におきましては、先ほど申し上げましたように、納税人員に対しまして従事職員が非常に少のうございます。できるだけお互いの手数を省くという意味で修正申告を慫慂しておる場合があると思います。まあ、修正申告を出さないからすぐ更正決定だということになりますと、ぎこちないことになります。そこはお互いにそういう点を注意しながらやっていけば、修正申告を出すこと自体は私は悪いとは思いません。ただ、その修正申告を慫慂するしかたに問題があるということだと思います。したがいまして……。
  43. 横山利秋

    横山委員 違うのですよ。ちょっと待ってください。あなたの答弁が違うのです。あなたの先ほどの話では、ここに問題があるという場合において修正申告という話だった。ぼくの言うのは、業界全般に対して修正申告を暗示したり強要するようなことはやめよ、こう言っておるのです。ぼくの言い分は二つあって、一つは、いずれにしても、問題のあるところに対しても、修正申告は納税者の自発的意思である、だから強要すべきものではない、いわんや、業界全般に全部が脱税しておるという根拠もない言い方をして修正申告をしろ、しなければ調査に入るとか、更正決定をするという言い方は、これは明らかに違法行為である、こう言うのですよ。
  44. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、過去に調べました業種の内容によりますと、やはり脱税の手段としてとられておる方法がもう非常にきまっておる。したがって、業界同じようにやっておるというような例もございますので、すべての業種について、そういう業界に修正申告を出させないということは言い切れないと思います。ただ、いまお話のように、修正申告の出し方について、これを強要するとか、あるいは具体的な証拠なしに言うというようなことにつきましては、十分注意してまいりたいと存じます。
  45. 横山利秋

    横山委員 ともかく業種別指導の方式については再検討をしてもらいたい。各地の状況をあなたはあまり御存じない。局長なり税務署長が言うことと、実際にどういう方法で行なわれておるか、それを納税者がどういう感覚を持って受けとめておるかということについて、泉さんは少し認識が足りないように思います。これは必要があれば、私具体的例をもって御説明をいたしたいと思うのでありますが、きょうは時間がございません。この問題については、私はこの国税庁のあり方について十分追及をするつもりでございますから、格段の御調査を願っておきたい。  それから、銀行局長にお伺いをいたしますが、先年本委員会並びに法務委員会で、私が東京大証をはじめ各地の問題について追及をいたしまして、先日ある大学の講師が森脇さん以上の脱税をしておるということがわかりました。この前法務委員会だったと思うのですが、あなたに、この今日の全国の金融業の実態というものを御存じないので、それで済まされるかと言いましたところ、あなたは、ごもっともだから、さしあたり全国の町の金融業の実態について調査をいたします、こういうお答えを一年くらい前にいただきました。どんな調査をされたかと思って私調べてみたのです。そうしたら各都道府県へお手紙を出しなすって、都道府県はそれを業界にお出しなすった。そうして結論として、あいまいになっておるらしいのですね。大蔵省としては、どうもこの金融業については相互銀行から信用金庫まではやっておるけれどもあと五万だとか六万だとかというあの町の金貸しは手に余るというようなことで、どうも熱意がない。国会では調査をすると言うだけで逃げてしまって、あと何にもやっておらぬ。怠慢だと私は思っております。  古い統計ではありますけれども昭和三十九年警察庁保安課の調査によりますと、件数として、三十九年で二百九十四件、人員として二百八十件、これは金融事犯の刑事問題として扱われた問題であります。私ども大蔵委員をやっておりますと、町のいわゆる高利貸しなり金融業、特にその中でいわゆる暴力金融ということでずいぶん被害者から相談を受ける場合が多いのであります。表で刑事犯となりました以外に、どのくらい町の金融業によって、ある意味では高利、ある意味では暴力、中には三国人も含んで、この町の金融によって庶民、特に中小企業者、零細企業者が被害をこうむっておる数というものは、表と裏と合計するならば、実に枚挙にいとまがないと私は痛感するわけであります。これは一体何たることであろうか。しかも、その実態を見てみますと、たとえば大きな手形割り引き業者は、実際問題として、いい、悪いは別として、と言っては語弊がありますが、今日の経済社会においては必要不可欠といいますか、そういう経済社会の中で一定の役割りを果たしておることは私も認める。また認めざるを得ない。現実問題として、それが中小企業のために一定の役割りを果たしておるわけであります。その役割りを果たしておる町の金融業に対して、暴力金融や三国人金融や、こういう刑事犯をしておるからといって、一律的に白い目で見るということもいかがなものであろうか、こう考えますと、どうしてもこの金融業に対して、政府の積極的な指導あるいは監督が今日としてはなければならぬことだと思っております。  一方、税の面から見ますと、全くこれが野ざらしにされておる。したがって、大学の講師ともあろう人が数億円の、これに限って手形の売買で脱税をしておるということも、税の面から見ましても、これは放置することが許されないことだと思います。  したがって、私は、きわめて簡単な乱暴な議論かもしれませんけれども、源泉を課すべきだと思う。その講師が名前を匿名にして手形割り引き業者から手形を買い、売り、そして確定申告の際にしなかったということで本人に確定申告をしろと言ったところで、これはちょっとむずかしいだろう、捕捉もむずかしいだろう。先般の場合においては、セールスマンが、それらのお客さんは私のお客さんだから死んでもその人の名前は言えないと言ったそうでありますから、そういうようなスタイルの中で、徴税を的確にするといっても、これは困難であろう。したがって、これは法律の改正なり何なりを待たなければいかぬではないか。しかし、私は、ただ徴税の面ばかりでなくて、今日一定の役割りを果たしておる業界なんだから、この業界を、当たるべき日を当てて、そして監督すべきものは監督し、徴税すべきものは徴税のルールをつくって、そして庶民金融の町の金融機関、相互銀行、信用金庫でどうしても守り切れないものたちに対してもその利用が公正に行なわれるようにすべきではないか、こういうことを考えるのでありますが、これは銀行局も主税局も怠慢きわまる問題として私は考えておるわけであります。  まず、澄田さんから、何もしなかった弁解の陳述を承りたい。
  46. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいまお話の、いわゆる金融業あるいは貸し金業についてのことでございますが、まず最初に、きわめて個人的な弁解を申し上げますが、昨年の当時は私ではございませんでした。しかし、それは同じ銀行局長でございますので、別にそれを言いわけにするつもりは毛頭ございません。  貸し金業が非常に規模が小さく、ほとんどが個人営業でありまして、そうして数がきわめて多いという実態は、いまお話のとおりでございます。そうしてまた、いま貸し金業が営んでいるような行為が国民経済の中ではやはり必要な機能を果たしているとおっしゃる点も、やはりその点は私どもも全くそのとおりだと考えます。ただ、これは、いわゆる性格的には自由な営業というようなことで、届け出というような形で現在行なわれておりますが、非常に数の多い、しかも零細なものも多く、極端に申しますと、毎月開業したり休業したり、そういうようなことがある業界で、監督という点におきましては非常にむずかしいものだと思います。そうして、さらに、こういう業界からも、あるいは立法をして、そうして認可営業というようなことにしてほしいというような意見も間々あるわけでございますが、なまはんかな形で法的な規制をいたしますと、逆に、こういう営業については、これは政府の免許を受けている、あるいは大蔵大臣の免許を受けているというようなことを看板にいたしまして、それで一般の信用に訴えてそういう宣伝をする、こういうことによってかえって弊害を起こす、こういう場合もあるわけであります。そういうようなことで、この行政的な取り扱いについては、現在のわれわれのほうの行政能力等と考え合わせてみまして、非常にむずかしい問題があることは御承知のとおりでございます。  信用組合は現在やはり都道府県知事に委任をいたしております。その都道府県知事に委任をしておる信用組合まで入れましても、銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合というものの数は千百くらいでございますのに対しまして、いわゆる貸し金業、これは都道府県知事に委任をして届け出を受けさしている、届け出を受けるという規制だけをいたしているわけでございますが、その後届け出を受けている業者の数が、現在のところで、四十一年三月末でございますが、六万三千九百、六万四千件ある、非常な違いでございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 こういうような実情と、それから、本来自由営業的に取り扱って、これに対して最小限度の規制をするというような形の届け出ということで営まれております現状というようなものと、そういう点をいろいろ検討して、今後どうしていくかということを考えなければならないことだろうと思っております。現行の制度になります前に、一時これを認可制度にしておったことがございますが、結局それで把握し切れないで届け出制度にかわっておる、これは二十年代の話でございますが、そういう経緯がございまして、現在の貸し金業のような取り扱い、こういうことになっておるわけでございます。  そういうような事情でございますので、怠慢のおしかりでございますが、非常にむずかしい問題でございますので、その辺をわれわれも考えまして、今後とも検討をいたしていきたいと思っております。
  47. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう、横山先生の御指摘を待つまでもなく、私どもは、脱税に対しましては、常日ごろ税法上で対処すべきことは言うまでもないところでございまして、私どもずいぶん研究してみたところでございます。しかし、二つばかりの観点から、どうも技術的あるいはもう一つ税制的にもむずかしいというのがいまの結論でございまして、もう少し研究さしていただきたいと思います。  第一は、源泉徴収ということがなかなか技術的にむずかしい。ただいま御指摘のように、大体幾らで買って幾らで売ったのかということがなかなかつかめない、そこでまた、それを満期まで持っていってもうけた差額がどれくらいであるかということは、なかなかつかみ得ないところでございます。せいぜい見当のつきますのは、しっかりした割り引き業者と申しますか金融業者が、帳簿ががっちりしておりまして、幾らで買ってきて、これをだれかに幾らで売った、そのときに満期までの利子を見積もって課税をするのがせいぜいであろう、つまり、源泉徴収というのは、支払い者の数が少なくて受領する人の数がきわめて多いというときに一番有効な手段でございますが、先ほど来銀行局長からお話のありました六万四千件という金融業者の数が、なかなかこれは数が多いものでございますし、さらに、金融業者だけを通って手形が売買されるものでもないということは御案内のとおりであります。転々流通する数段階のものでございますので、どうも技術的に源泉徴収がむずかしいのであります。償還差益のほうは、しっかりした金融機関の発行で、発行価額と最後の償還価額は明瞭でございますので、利子所得に準ずべきような所得というものは計算できる、こういった点の違いが多々ございまして、これはひとつ、源泉の問題は技術的にもう少し研究をしたい、こういうふうに考えております。  第二に、税制的にも問題がございますのは、先ほど横山委員御指摘のように、非常に大きな金額が所得金額になってあらわれるわけでございます。そういたしますと、源泉だけでは対処できない、どうしても総合しなければならぬ、こういうことになるわけでありますが、言われておる趣旨は、利子所得と同じようなものだから、源泉分離にして、取り切りにして一〇%、今度の改正案ならば一五%ぐらいにしてくれ、それがまた金融業者の声でもあるような気もするわけであります。相手の名前はとても言えないから、源泉取り切りでこの所得に対する所得税はかんべんしてもらいたい、こういうことにもつながりますと、これは預金利子あるいは償還差益のような生産的な面に相当役立っておる利子とも違いまして、税制上、はたして分離にするかどうか、これは大問題でございます。非常に残念でございますが、現在のところは、やはり納税者の申告、それがなかなかむずかしいことでございましょうから、大きなものにつきましても、税務調査の面から資料をいただいて、申告をひとつしていただくというふうに持っていくしかないというふうに考えております。
  48. 横山利秋

    横山委員 両者とも手はないようなお話でございまして、まことに遺憾千万に存じます。こういう状況のもとで、まじめにやっておる人たちと、それから悪徳業者、もぐり業者、それによって刑事犯が続出をしておる実態というものは何としても放置することが許されないと私は思うのであります。  したがって、ここでは税という立場において取り上げるわけでありますが、本質的に言えば、もう、そういう業界というものには、何も金融業ばかりではなくて、いろんな業界にいま問題点として両方から指摘されたことがあり得ることなんです。いま重点業種として国税庁が十ばかりあげられておるわけでありますが、その中でも金融業と同じような業種は幾らでもあるわけです。  ですから、まずもって必要なことは、銀行局が、いろんな問題はありましても、この金融業についてどうあるべきかという骨格をつくるべきだと思うのです。そして一つの方向をきめて、その方向に合っているものと合ってないもぐり業者というものをやはり区別をして、業界として切磋琢磨させるようにし、業界を通じて税制の普及をし、そしてそれが法制的にかなうような役割りなり方向をとらせる。くどいようでありますが、少なくとも町の金融業というものは、今日の経済社会において一定の役割りをしておるのでありますから、その役割りをしておるものを、わしゃめんどうだで知らぬ、わしゃ税制上きめるのがむずかしいからしばらく知らぬというようなことで御答弁を願っておったのでは、これは百年河清を待つようなもので、私は厳重に御両者をしかりおきたいと思います。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕 こんなことをいつまでも続けておいてよいものではない。何かすみやかに根本的な考えをまとめて、そしてわれわれの前に提示さるべき行政的責任があると考えますが、澄田さん、いかがでございましょうか。決意のほどを披瀝してもらいたい。
  49. 澄田智

    ○澄田政府委員 貸し金業等の行政監督のあり方につきましては、臨時行政調査会でもちょっと触れたことがあります。臨時行政調査会の答申におきましては、これはむしろ公安委員会、警察系統の取り締まりでいくべきではないか、こういうことが答申に触れられております。これに対しては、必ずしも警察当局は賛成ではございませんで、それは困る、こういうような意見でございます。いろいろな事情もございます。そして、先ほどもちょっと申し上げましたが、なまはんかに行政監督をしているということで、これは十分金融検査も受けておる、内容もしっかりしているというようなことで一般の方がこれを信用するというようなことになりますと、これはまたかえって弊害もある、こういう面もございます。ただ、御指摘のように、経済社会的な機能を果たしておりますこういう営業についてどういう行政監督が最も適当であるか、そういう点は、狭い意味大蔵省ということでなしに、前述の行政機構全体の中でどう考えるかというような問題としては、当然それは検討をしていかなければならない問題かと存ずるわけでございます。  おしかりはおしかりとして伺いまして、今後われわれのほうでも検討さしていただきたいと存じております。
  50. 横山利秋

    横山委員 主税局長にちょっと聞いておきたいのですが、四十三年一月一日から、先ほど例に引用しました中小企業者の個人企業の青色の専従者控除が二十四万円の制限を撤廃されるということになる模様でありますが、これはもちろん個人企業でありますから農家も入ると思います。あらゆることについてそうでございますね。  それから、その次はこの理論的な根拠。私からこういうことを聞いては何ですが、理論的にどういう理論でそれに賛成をされたのか、それを聞いておきたいと思います。
  51. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この問題は、ここでもうすでに理論的に私はいつも究明を受けておりましたので、私から申しますと逆のような感じがいたします。なぜ二十四万円の限度を置くのかということで、さきに非常なおしかりを受けた立場でございますが、私のほうは、あのとき申し上げましたように、二つばかりの理由から申し上げたわけであります。  第一は、個人家計と企業との分離の間に、夫婦間あるいは親子間、たとえ生産的労働に対する報酬といえども、これは純粋の給与を見がたい、多分に扶養義務の履行的な、あるいは財産贈与的なものが相当あるように見受けられる、そういたしますと、完全な給与と見るのも行き過ぎではないだろうか、したがいまして、そこには何らかの限界が必要であるというのが第一の理由でございます。  第二は、行政上の理由でございますが……。(横山委員「賛成したではないか」と呼ぶ)これからだんだん申し上げます。第二は、行政上、給与につきまして、はたしてどの程度の給与がいいか、トラブルが起こるということの点も申し上げたつもりでございます。そこで、この二十四万円についての反省が行なわれたわけでございますが、なかなか二十四万円では、成年男子が個人事業者のもとで働いておって、これが家族専従者という理由ではどらも世の中の人が納得しがたい。いつも言われております、東京都のアパートに入るにも、所得証明に二十四万円と書かれたのではアパートにも入るわけにいかぬというような話が盛んに主張されるわけでございます。概括的な二十四万円という控除理由はそこに限界がございます。さらにまた、配偶者が六割もおるような家族専従者の状況でございますと、はたしてこの限度をいまのように行政上の便宜だという理由だけで上げていくことも、むしろ家事労働のほうが多い配偶者については、その議論ももちろん出てきます。こんなことを考えますと、ひとつ、この機会に思い切っていわゆる完全給与制をとったほうがより実情に即し、個人事業者の実態に即するじゃないか。現に、法人企業につきましては、もうすでに家計と企業が完全に分離したと見まして、同族中小会社といえども、言うならば完全給与制を認めておるわけでございます。その給与の多寡について税務ははたしていいかどうかを見てきたわけでございます。その数は非常にふえまして、税務上非常なトラブルがございますけれども、現在のように限度を置くことよりは、むしろそのほうが進歩の方向であり、さらにまた弊害をなくする方向だと思いまして、思い切って踏み切った次第でございますが、四十三年からにいたしましたのは、これはやはり行政上の理由で、お互いに、納税者のほうも、給与についての適正な基準、私どものほうにいたしましても、税務においてこの準備を十分してからトラブルのない方向で進みたい、こういう意味で四十三年からいわゆる完全給与制を採用する、こういうことにいたした次第でございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 たいへんけっこうな反省がされていると思うのですが、いま聞いたあなたの理屈から言うと、白色だけはいかぬという理屈はなさそうですね。そうじゃないですか。――いや、それは言い直さぬでいいですよ。あなたの言ったことは速記録に載っている。これは青色だけは完全給与制を認める、白色だけは認めないという理屈になりませんね、いまのお話では。だから、私は、私の理屈は別として、あなたがどういう点で反省なさったかといって聞いたら、会社だって家計と会社と分離しておるじゃないか、そうして、いま青色とおっしゃいませんでしたよ。個人企業はやはり二十四万円ではえらいから実情に合わせるようにするというなら、白色だけこの完全給与制を認めないという理屈はないですね。そこはあなたの弱いところだと思うのです。どうして百尺竿頭一歩を進めて――こんな、あなた、白色だけ完全給与を認めないといったって、理屈が通らぬ。そこまでいったら、妙なところでふんばらずに、白色も認めなければ、あなた理屈屋らしくないじゃありませんか。
  53. 塩崎潤

    塩崎政府委員 もう私が申し上げておる理屈で尽きておるのではないかと思います。私が申し上げましたのは、完全給与制ができるということは、やはり個人の家計と企業との分離、企業と申しますか、事業との分離だと思います。これをどこに求めていくか、現行法では、法人には、法律形態だけの差でございまするけれども、家計と企業の分離を認めてきたわけでございます。個人事業につきましては、家計と事業との分離、これは濃淡さまざまございまするけれども、現在のところ青色申告は白色と法人との中間的なものだというふうに見ておりましたけれども、私どもは、昭和二十五年からの青色の普及状況、さらにまた、私どもの奨励過程におきましては、これはやはり事業と家計との分離の一つのあらわれ――法律形態は法人形態をとらないにいたしましても、適正なる帳簿によりまして家計と企業とは分離する、私どもの青色申告の精神はそこにあると思います。そういった意味で、今回は青色申告は法人と同じような個人を家計と企業との分離の一つの基準と見たらどうか、そして、いわゆる完全給与制をここまで持ってきたらどうか、こういうつもりでございます。  さらにまた、横山委員御存じのように、青色申告制度につきましては、今回税制簡素化の一環といたしまして非常な簡素化をいたしていこう、個人事業者等につきましては現金収支でも所得計算する、むずかしい発生主義の理論あるいは実現主義の原則、こういうことを振り回さないでも青色になっていただく、そうしてこの専従者控除の適用をしていただこう、こういうふうに考えております。  なお、白色者につきましては、確かに個人事業全体としてつかまえれば、先生のおっしゃったような疑問も出てくるかと思いますが、現在までに法人企業形態につきまして認められましたことを一つ進めた、こういうふうに御理解願いたい。  さらにまた、青色申告制度につきましては、白色から全部青色申告になっていただくような方法を私ども考えておるような次第でございます。
  54. 横山利秋

    横山委員 えらい、ここを先途と弁解をされておられるんですけれども、あなたの言うように、青色は家計と企業とが完全に分離しておるという理論は、少し牽強付会の弁だと思うのです。これは、こういう質問だから、ここでやっていかぬとくずれるというようなお考えだと思うのですが、私の意見をもってすれば、ここで個人企業の完全給与制を踏み出したということは、まさに一つの革命的な問題である、そこに腹をきめてもらわなければ、ちょこっと前に出て、そこで踏みとどまろうと思ったってだめだ。よくぞ決心した。決心したら決心したように、それに付随する問題もあわせて結論づけていかなければならぬじゃないか。きょうはそれで済むかもしれぬけれども、あしたはそれでは済みませんぞということを言いたいのです。また、それに伴って、所得税法の五十六条でしたか、五十六条も考え直さなければいかぬし、親族間の金銭貸借だとか、あるいは土地の貸し借り、そういう問題にもこれは波及しています。だから、あなたのおっしゃるように、青色だけ個人完全給与制を認めて、そこで何らの論理的な矛盾もないということは、これは胸に問い、腹に答えてみれば、それはおかしいですよ。あなたは本来的にこれに反対だったかもしらぬと私は思うんです。どうしてあなたが賛成なさったのか、私は賛成をさせるように一生懸命努力してきた人間として、それはけっこうなことだと思うけれども、そこに踏み切られたら、妙なところで固執をなさらぬように、筋を通すなら筋を通すように、あちらこちらもきちんとしてもらわなければいかぬ、こういうふうに私は考えるわけです。いずれまたこれは本案のときに十分議論を尽くしますから、それまでに、なるほど横山の言うとおりだ、少しはここも譲らにゃいかぬなという幾つかの点を御勉強を願いたい、こう考えておるわけであります。  実は、まだたくさん残っておるわけでございますが、与野党ともそれぞれ予定があるそうでございますから、一応私の質問はこれで終わることにいたします。
  55. 内田常雄

    内田委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後一零時三十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時一分開議
  56. 内田常雄

    内田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広沢賢一君。
  57. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 新しく選出された広沢委員です。  法案審議の前提となる租税特別措置そのものについて、具体的に問いただしたいと思います。きょうの質問は、いわば租税特別措置の総論にわたるものです。この質問数字的にきょうお答えにならぬ問題については、文書で後日回答していただいて、その上で再質問さしていただきたいと存じます。  まず第一番目に、昭和四十一年十二月、税制調査会の「長期税制のあり方についての中間答申」の中で租税特別措置のあり方について書いてございますが、それについて御質問いたしたいと思います。  配られた税制調査会の文書、二五ページですが、「経済政策と税制との調和――租税特別措置のあり方」について一応お読みします。「租税特別措置は、特定の政策目的を達成するための手段として租税の傾斜的誘引効果を期待しようとするものであって、経済政策の一環としての意味をもつものであるが、その反面、負担の公平を阻害し租税の中立性を害する等の欠点を伴うことから、従来整理縮減の方向に進むべきものと指摘されている。」と書いてありますね。それから、あと二、三行飛ばしまして、「その場合強調されなければならないことは、経済政策の名の下に安易に税制を利用しようとする態度から同工異曲の特別措置を誘発して税制の大木をくずし、いたずらに税制を複雑化する結果を招くことのないよう厳に留意することである。このような観点から租税特別措置については、個々の政策目的の合理性の判定を厳格に行なうことはもちろん、特にその効果について不断に検討を加えることにより制度の流動的改廃を行なうこととし、特別措置の既得権化ないしは慢性化を排除することが肝要である。」このように書いてあります。これは以前からの税制調査会の答申とほぼ同精神だと思われます。そこで、私は、ここに書いてある「個々の政策目的の合理性の判定を厳格に行なうこと」、それから「流動的改廃を行なう」という問題について、原則的な問題をお尋ねいたします。  もともと、税制調査会のメンバーについては、直接働く者の代表や農民、中小企業の代表が入っていないので、私は、この案について十分納得する点と納得しない点とございますが、しかし、この調査会の答申ですらこういっているということ、租税特別措置は、一般的にいって租税公平の原則を害している、税制体系を乱しているということをここに書いてあると思うのですが、流動的改廃を行なうべきである。したがって、流動的改廃ということばがあいまいですが、将来、いつ、どういうように流動的改廃を行なうのかということをまず御質問いたします。
  58. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点につきましては常日ごろ留意いたしまして、昨年度におきましては、たとえば新規重要物産免税の廃止、今年度におきましては、預貯金の利子所得の分離課税その他につきまして前進的な改善を行なう、このような改廃を加えておるところであります。
  59. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、前から税制調査会がいっていた、いまの流動的改廃の問題について、それだけではきわめて不十分だと私は思うのです。したがって、もう一回念を押しますが、流動的改廃というのは、状況に応じて将来やめていくということ、少なくとも数をふやしたり、それ以上これによる減収をふやしたりすること、つまり強化することは今後ないとお約束できますか、どうですか。
  60. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは、流動的改廃は文字どおりでございまして、決して数がふえてはならないとか、あるいは減らなければならないということではなくて、やはりそのとき、事情に応ずる改廃、必要ならば追加、不必要な場合には廃止というようなことを意味するわけでございます。したがいまして、金額的に減少する場合もございますれば、また経済情勢の推移において必要な場合もあろうかと思います。
  61. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 流動的改廃というのは、いまさっき私が申しましたのは、租税特別措置は税体系を乱していけないのだ、しかし、やむを得ないからだという意味だと思うのですよ。そうすれば、ふやしたり、追加したり、やめたり、いろいろなことをして、あるいは状況によってはずっとふえていくのだというような答弁では、これは全然精神が違うと思うのですが、どうですか。
  62. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まん中ごろにありますように、必ずしも全般的に絶対に不適当という意味ではございませんで、「税制の誘引機能を高く評価し、個々の政策目的との調和を図りつつ弾力的な措置を講じて行くべき」であるというような意味は、やはり特別措置経済政策としてやらなければならぬ場合があるし、また、その効果も期待してしかるべきではないか、こういう意味だと思います。
  63. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その弾力的措置と流動的改廃の関係ですがね、どちらに重点が置かれるか。やはり流動的改廃が重点に置かれるという文面ですね。どうですか。
  64. 塩崎潤

    塩崎政府委員 弾力的措置を講じていくのと流動的改廃を行なうのとが、同じようなウエートになっているのではないか、私はこういうふうに想像いたします。
  65. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それは違いますね。この文面、お読みになったらよくわかります。租税特別措置というのは、負担の公平を害して、今後だんだんと整理縮減の方向に進むべきものと前から指摘されている。したがって、これはだんだんとやめるべきである。だんだんとやめる中で、ジグザグはあっても将来やめていくという方向には変わりないのでしょう。
  66. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、過去におきましてそれが非常に強調されたようでございますが、この文面は、「指摘されている。」というふうに、わりあい客観的に書いてありますのは、その意味が少し違ったような感じが出されておるのではないか。問題は、ここにもありますように、経済政策の名のもとにつくられた特別措置が、これが効果を達した後でも、あるいは効果がないにかかわらず、既得権として、あるいは慢性化するというようなことのほうがより危険であるから、常にそれを反省し、流動改廃を行なわなければならぬ、こういう意味だろうと思います。
  67. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、やはりいろいろ合理性の判定を厳格に行なって、そしてだんだんやめていく方向にいく、ただし、その中で経済情勢に応じて必要なものがある、国民生活上必要なものならいたし方ない、こういう意味に解していいですか。
  68. 塩崎潤

    塩崎政府委員 その表現、非常にデリケートでございますが、私は、必要に応じて特別措置があってしかるべきものだし、不必要ならばやめてしかるべきである、あるいは縮小されてしかるべきものである、こういうふうに思います。
  69. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 大体その方向にいくのが私は本旨だ思います。これを一番初めにお聞きしたかったのです。  次に、やめていく上についての合理性の判定の問題です。  毎年毎年、祖税特別措置によって恩典に浴する人は正確にどのくらいか。人員、法人数がどのくらいか。国民の大切な税金の中でどれだけ恩典に浴するのか、その人員とそれから法人数、その範囲――階層的範囲でもけっこうです。その政策的効果の判定と確認が大事だと思います、減収はたいへんなお金ですから。したがって、すでにこの問題についてはここに書かれているとおりで、合理性の判定を厳格にやれと書いてあるのですから、大蔵省としては十分やっておられると思うのですが、それについて具体的にお聞きしたいと思います。  その前に、そういう資料は十分整っているかどうか、お聞きしたいと思います。
  70. 塩崎潤

    塩崎政府委員 毎年毎年、この国会に租税特別措置による減収額を御提出申し上げております。四十二年度もいずれ御提出の要求がございますと思いまして、私どももいま着々その内容を整備中でございます。いま御要求がございましたので、その特別措置の減収額はいずれ御提出申し上げたいと思います。  なお、法人数というお話でございますが、確かに法人も適用を受けておりますけれども、この租税特別措置は、たとえば農民もございますれば、お医者さんのような例もございますので、お医者さんならば五万とか、こういった数もございます。法人も、たとえば中小企業の貸し倒れ引き当て金ということになりますれば、これは何万という数にもなります。大企業と中小企業を分けましてどの程度出したらいいのか、法人数と納税者数をいままで出したことはございません。これはどういうふうに御利用なされるか、わからぬこともございませんが、私どもは出したことがございませんので検討してみたいと思いますので、検討の結果、先生の御了承を得て、出せるか出せないか、そのときにきめていただきたいと思います。
  71. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それは具体的にいろいろ調べてみますと、やはり簡単に減収額が出せるのと、それから根拠がなかなかつかめないものとがあると思います。税額でも同じことです。人員でも同じだと思いますから、これから具体的に一つ一つ、おもなものについてお聞きしたいと思うのです。  その前に、言うまでもなく、これは特別措置で期限のついた法律ですから、ここに書いてあるとおり、制度化してはならないとあるのですから、慢性化、制度化してはならない。言いかえますと、一つお聞きしたいことは、立法化されたときの経済的な条件――いろんな条件がございます。その条件とその後の経済情勢の変化を比較検討して改廃していくべきである、こういうことについては御異存ないと思いますね。いいですね。
  72. 塩崎潤

    塩崎政府委員 本来そういうふうにあるべきだと思います。
  73. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、今度も、同じく二四ページでございますが、このように書いてあります。最後のところに、「合理化機械等の特別償却制度は、景気後退期には投資を刺激する効果がある反面、景気過熱期にはいたずらに投資刺激要因として作用するほか、税収の弾力性を小さくするという傾向がある。」という指摘がございます。今度の答申においては、景気調整政策という問題と税制の問題とを非常に重要視しているし、本会議のいろいろのお話でもそうでございました。したがって、景気調整作用とこの特別措置の問題ですが、まず第一番目に、この特別措置ができた一番初めはシャウプの勧告のときだと存じます。このシャウプの勧告というのは、いまから考えると、私どもは大資本の利益を非常に擁護した税制改正だと思いますが、しかし考えますと、戦後のたいへんなインフレを収束していく場合に、補助金という竹馬をどんどん切ったですね。そのかわりに、経済の復興、企業自立ができるようなそういういろいろの考え方から、イギリス方式にならって特別償却というか、その他の特別減税措置ができたんだ、こういうふうに思います。それはよろしいですか。
  74. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この合理化機械の特別償却は、シャウプ勧告ででき上がったものではございません。昭和二十七年に、近代化の要請に応じまして、講和条約発効後でございましたが、日本独自の税制に対する考え方で、主としてドイツの制度を参考といたしまして入れられたものでございます。
  75. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ここに書いてあるのは――少し私の説明が足りませんでした。ここに書いてある合理化機械等の特別償却制度というのは、私は全部総称して租税特別措置全般についての意味で、これを言うのを忘れました。そうすると、おわかりと思いますけれども租税特別措置全体が、いろいろの学者のことや何か引用するとあれですが、つまり、好況期にあって法人の税負担を軽減し、企業の資金余力を強めて、過剰投資、ひいては景気の過熱を促進する役割りを果たす、租税特別措置全般ですよ。つまりビルトイン・スタビライザーの反対だと思いますね。大体税負担を軽減するわけですから、いまの時点では景気過熱の時代ですから、したがって、特別措置で大資本を非常に優遇する。それから、もしくは自己資本の、たとえば資本構成の是正のたいへんな額が入っていますね。ここに九十六億とか、そういうことをやる必要はないのではないかというのが私の結論なんです。  その前に、シャウプの税制改正のことを私言いましたが、そもそも租税特別措置ができたとき、あのときは企業の自立や復興をはかるために特別にやったんだ。そうすると、現在の時点とは違いますね。現在の時点は、工業力が世界で第三位になった。企業に相当余力があって、いま景気過熱が心配されておりますが、設備投資は、これは企業の自己資金でやるという空気が非常に強い。したがって、シャウプの税制改革の租税特別措置のときと現在とは違うのではないか。これをひとつまずお聞きしたい。
  76. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私、シャウプ勧告が出されました当時ちょうど法人税関係の事務官をしておりましたのでよく存じておりますが、シャウプ勧告は、特別措置といいますか、誘引的措置を、税制との関係について本質的な勧告はいたしておりません。むしろ、一例でございますけれども、利子所得を総合課税といたしましたところから見て、やはり総合課税と申しますか、税本来のたてまえのほうをより強く見た感じがある。しかし、一方、日本のそれまでの課税所得計算は非常に弾力的でないというようなことで、貸し倒れ引き当て金というような制度が設けられたことがございます。しかし、新規重要物産免税制度が当時はございましたが、当時は気がついてなかったようでございます。こういうような関係から見まして、シャウプ勧告が、現在の税制の数多くある特別措置原因になったというふうには見られないと思います。
  77. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 つまり、その後いろいろ改廃が行なわれて変わってきた、こういう答弁だと思いますが、それではその改廃を行なって、その後いろいろと出てきましたね。ここにあるとおり、一ぱい出てきましたが、この特別措置の中で、私が見ていると、相当、先ほど申しました資本構成の是正なり内部留保の充実で四百億使っておりますが、四百億減収があります。去年、四十一年度ですよ。それから産業の是正でも、主として大きな会社に対して特別にいろいろと資本構成の是正、いわゆる資本充実、内部保留という項目のもとでもっていろいろやっておりますが、これは、たとえば、大蔵大臣がこの間大蔵委員会において所信表明を行ないました。そこにこう書いてありますね。「これは、財政支出をはじめ、個人消費、設備投資、在庫投資など、経済のすべての分野における需要の増大によるものでありますが、昭和四十二年度においては、設備投資の増勢が一そう強まり、その他の需要も引き続いて増加することが予想されます。」で、各種の新聞は景気過熱ということを非常に心配している、つまり民間設備投資が多くなり過ぎるのじゃないかと。「このような情勢を反映して、企業の操業度は顕著な上昇を見、市況の回復と相まって、利潤率も向上し、減価償却の増加もあって、企業の自己金融力は増大いたしました。」これはさっき申しましたが、大蔵大臣が言っておるわけです。というと、もう情勢が、改廃をした、ことに四、五年前の不況のときに非常に資本減税が強かったという情勢と現在とはずいぶん違っているのではないか、それはお認めになりますか。
  78. 塩崎潤

    塩崎政府委員 合理化機械の特別償却等につきましては、長期税制の中間答申がいっておりますように、おっしゃるような景気情勢にはむしろマイナスに働く面があるといたしますれば、それはできるだけ早く何らかの景気調整措置をとれということでございまして、そういった意味で近く御提案申し上げる租税特別措置の中に、これは特別償却の過熱の期間等における停止、こういったことを御提案申し上げておるわけでございます。そういった意味では、情勢に応じて特別償却の停止を考えようというわけでございますし、一方、景気が、たとえばスランプになったような場合には、その適用の範囲を広げるというようなことも景気調整措置として考えておるところでございます。
  79. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、合理化機械の特別償却の縮小、こればかり非常に書かれているわけですが、その額は大体わかりますか。
  80. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは各年におきまして、利益と密接な関係がございます。そういった意味では、先生のおっしゃったように、利益の多いときには特別償却がうんとふえてまいりますし、そこで四十一年度は、合理化機械の特別償却は九十億円くらいの減収が生じておるであろう、こういうふうに見ております。しかし、そのうちに中小企業関係が四十億円ばかりございまして、その他大企業分が五十億円ばかり、こういうふうに見積もられております。
  81. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、合理化機械の特別償却だけでも、もちろん今日の景気調整の絶対的役割りを果たすことはできないと思うのです。これは一つ考え方。これを租税特別措置法の全般に及ぼせば、これは相当の額になると思うのですよ。たとえば貯蓄の奨励で約千億円ありますね、それから生命保険料の控除とか損害保険料の控除を除けば千億円ある、その他全部で、先ほど申しましたように、ほぼ見積もって二千三百億円くらいの金がいろいろと操作をされれば、ほんとうに景気調整の意味をなす、だから、ここに合理化償却のことだけが書いてあるのは一つ考え方を出したと思う。私はさっき考え方と言ったのですが、租税特別措置全般にわたってこういうことを考えることが必要なんではないか、このように思いますが、どうですか。
  82. 塩崎潤

    塩崎政府委員 広沢先生御指摘のように、所得税、法人税自体に、ビルトイン・スタビライザーといわれて景気調整機能があることは当然でございます。さらにまた、したがいまして、租税の各仕組みが、全部そういった景気調整とは密接な関係があることは言うまでもございません。しかし、たとえばいま少額貯蓄を御指摘になりましたが、景気過熱時にはむしろ貯蓄が必要だというようなことに逆になるわけでございます。そういった意味で、過去におきましては、過熱時には税率を五%にしたような時代もございます。そういったような弾力的な運用を答申はいっておると私は思いますが、だんだん過熱時期になりますと、むしろ輸出奨励のために国内消費を節約する意味において貯蓄の奨励が必要になる、そういった意味では、この特別措置をもっとふやせというような御議論になるかもしれぬのであります。しかし、そういったことはやはり税負担との関係から見て適当であるかどうか、そういったことを考えてみますと、景気調整としてはこういったものは選ばないほうがいいのではないか、これは私どもがこういった答申の背後の思想を探ってみますと、こういったことだと思うのでございます。日本の景気過熱は、多分に企業の、これまででございますけれども、投資が行き過ぎて国際収支の危機を来たした、こういったことが金融引き締め政策の原因になっておるかと思います。外国のように、消費が行き過ぎて、金融引き締めをやらなければならぬというようなことにも見えない。したがいまして、わが国では、アメリカのように所得税を上げて景気調整をやる、あるいはイギリスのように売り上げ税、仕入れ税を上げて景気調整をやるということは適当ではない、むしろ企業、その企業のうちでも代表的な法人企業をつかまえまして、しかもそれが現在の日本でございますから、非常に底の浅い、企業の蓄積の乏しいときでございますから、景気調整の施策をとるにいたしましてもあまり大規模にもできない、むしろとるといたしますれば、現在の景気調整にマイナス的な要素になっております特別償却あるいは法人税の延納、これは一つの恩典的なものでございます。こういった恩典的なものが過剰投資の原因となって景気過熱となる、金融引き締めのときにはひとつ遠慮していただこうということが、現在のわが国では適当な景気調整措置ではないか、こういった意味で、二つの仕組みが景気調整措置としてねらわれておる、こういうことだと思います。
  83. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、景気調整のためとか、それから、ここに書いてありますが、資本蓄積を奨励するためとか貯蓄奨励のためとか、将来おそらく資本自由化に備えてといういろいろな理屈がついてくると思うのですよ。  それで、お伺いしますけれども、効果の問題です。貯蓄奨励と申しましたけれども、それでは利子の税金の優遇措置をやって、それを強化したら貯蓄がふえたか、それから、もしそれをゆるめたら貯蓄が減ったかという相関関係についての数字的説明はできますか。
  84. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点につきましても、税制調査会の答申がたびたびお示ししているところでございまして、過去の趨勢を見ますと、貯蓄の増加というものは、国民所得伸び、増加の著しいときが大きい、いわば可処分所得が増加するときが最も大きい、そのときにとられました税制が逆な方向に行きましても、貯蓄がふえ、あるいは貯蓄が伸びなかったということでございます。なかなか、税制上の措置で端的にそのものを抜き出しまして、効果を見つけ出すのはむずかしい、同じ時期におけるところの経済情勢により密接な関係がありますし、それを取り出して評価することはなかなかむずかしい、こういうふうに見られるのであります。
  85. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、租税特別措置経済的な効果の数字的な問題での確認ということはなかなかできない、これは重要な問題ですね。できないですね。たとえば、ここに書いてある「合理性の判定を厳格に行なうことはもちろん」、これはあたりまえのことです。大事なことです。二千億円余りの減免税なんですからね。非常に大衆は困って、先ほどの横山委員質問にもあったとおり、たいへんな苛斂誅求を受けておる。あとで私は国税庁長官質問したいと思うのですが、そういう苦しみにあっているときに、これだけの税金が合理的な判定の基準がなくて、答申案にはそう書いてあって、それで貯蓄の問題――ずいぶんたいへんな額です。これはあとの各論でほかの委員の方々おやりになると思うのですが、そういう問題について全然判定がないというのでは――これはどうして書かれて、どうして大蔵省はそれについていろいろ判定の基準を示してやるのかという点について伺いたい。
  86. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、合理的な判定の基準がないという意味で申し上げたのではございません。ほかの経済的な要因と結びつきまして、税制だけを取り出して判定することがなかなかむずかしいということを申し上げたのでございます。しかし、全体として大きな目で見れば、おそらく常識的な判断のもとで効果は相当見られる。しかもまた、世の中の常識的な判断には、これに対する租税特別措置の各種のいろいろな仕組みについての評価がございます。たとえば、輸出振興につきましては、これだったらやはり輸出に対するインセンティブが落ちる、これはしかし、これなくしても輸出は落ちるかもしれませんけれども、あることによって輸出が伸びておる、それがまたそういった刺激を受けておるということで、輸出がふえていると見てしかるべきであると見ておるのでございます。そういった意味で、多分に経済的な情勢と一体で抜き出せませんけれども、大きな意味において、その数字も見ながら、判断は常識的な判断できまるというふうに私は考えております。
  87. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、いま言われたことは常識的な判断できまる、数字的な効果はわからぬ、こういうことですね。
  88. 塩崎潤

    塩崎政府委員 数字的も、たとえば貯蓄がずっと長い間の趨勢で増加していることも、私はこれとの関連があると思います。それから輸出振興措置につきましても、輸出が伸びておるということは全く関係がないということも言えないと思うのでございます。
  89. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、経済全般、全部関係があるのですから、それだったならば、ここで貯蓄奨励としてこれほどのたいへんなお金、一千億円近くの金がやはり減税されている。しかも、後日これは実証されると思いますが、多くは高額所得者ですね。そういう方々にこういう問題が向けられているということ、そうすれば、これはとてもとても国会としては認められないのです。なぜならば、全然経済的効果も数字的効果もわからないからです。  もう一つ、たとえば株の問題ですが、株なんというのは、利子配当の配当税金が安くなったからといって、全然それは関係ありませんね。たとえば株を買ったら得だという状況、株が値上がりするというときには、税金が高くなろうが何だろうが、さっとそちらにお金はいきますよ。貯蓄性向はいきます。だから、そういうようにはっきりわかっているのは子供でもわかる。株の上下によってそういうことがある。その株に対してこれほど過分な優遇措置を講じておるということは、先ほど私が聞きますと、いろいろな理由が出ておるけれども、その経済的効果は、それ自体については一つも確認されていない。自然科学で見れば、抽出検査をするからこういうのは一ぺんでわかりますね。確認されてなくて、ばく然とした言い方でこれが認められるということは、国会として許されないことだというふうに思います。したがって、もっと確かないろいろな根拠をお示し願いたい。
  90. 塩崎潤

    塩崎政府委員 株式の譲渡所得の非課税を言っておられるのか、配当所得の源泉選択その他の特別措置を言っておられるのかよくわかりませんが、確かに、税の問題以前に、株価の高騰というようなことで投資がそちらに流れることは大きくあると思います。しかし、一方、非常に高い税であるがゆえに、税がこういった面に全く影響がないというようなことは言い過ぎだろうと思うのでございます。やはり投資家の心理といたしまして、日本の納税者の心理がまだまだそこまでいっていないことが大きな原因かと思うのでございますけれども、やはり税の点をきらいまして投資が鈍るということはよくいわれておりますし、そういった現象が見られるわけであります。  昭和二十八年から、有価証券の譲渡所得課税は、そういったことを理由に、さらにまた、技術的になかなか調査あるいは把握しにくいというようなことで有価証券の譲渡所得の非課税も行なわれておりますけれども、そのかわりに、有価証券の取引税を取るというようなことで代替しておるわけでございますが、これはやはり、所得税というようなむずかしい制度がその中にもぐり込むことは、なかなか投資家の心理に微妙な影響を来たす、私は、分離課税の制度でも、多分にそういった貯蓄者の心理状態と密接な関連があろうかと思うのでございます。そうしてまた、全体的には、貯蓄の伸びから見て、現在の制度が決してこれに対して働きをしていないというようなことは言えないのではないか、かように考えております。
  91. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、よその大きな経済的要因、そういうものが大きく作用するときに、株式の投資家と高額の預貯金者という方々にだけ一千億円もの減税をして、それで効果が十分あらわれなくてもそれをやるという、それほどの比重は、政策的にあると思いますか。
  92. 塩崎潤

    塩崎政府委員 少し技術的になりますが、千億千億と言われておりますけれども、少額貯蓄、利子の非課税といった特別措置も入っておるのでございます。四百億円ばかりはそれでございます。これは、御案内のように、現行制度では一店舗一種類の貯蓄について百万円以下、つまり、利子ならば定期預金で五分五厘、五万五千円の利子につきまして一〇%の分離課税はしない、あるいは一〇%の分離課税をしないのみならず、所得税を課さないというシステムでございます。そういったものがはたして高額所得者にいっておるのかどうか、その措置はいたしますが、非常にやかましく税務署に届け出をしていただいておるわけでありますが、これはひとつ、国民大衆の貯蓄に対するインセンティブというふうに考えてみたらどうかというような感じがいたしております。配当の源泉選択、貯蓄の分離課税の中には高額所得者のもございましょう。しかし、それにはいろいろな理由がございまして、たとえば預金につきましては、なかなか総合というものが利子をつかまえてやること自体むずかしいというようなことや、あるいは、そういった利子についてそういった特例を設けるなら、投資のバランスから見て、配当についてこういった総合課税制度だけをやることが、はたして直接投資、間接投資の問題のやかましいおりからどうであろうかというようなことででき上がった経緯もございます。一がいになかなか簡単な判断もできないものではないかと思っております。
  93. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私は各論に深く入るつもりはないのです。総論としていろいろお話をしているわけですから、あとでまたこの問題については深く話しますが、ただし、少額貯蓄利子の非課税が零細な方々の貯蓄を奨励しているのだということは、これは受け取れませんね。なぜかというと、これは分散をして税金をのがれる、高額所得者が税金をのがれる一つの方便としてやっておるのじゃないかということは、だれでも言われておるのです。そういう意味で、文字づらが少額貯蓄といったって、百万円といったらたいへんなものです。私どもはそういうふうに受け取っておりません。これはいろいろ議論があると思います。  したがって、これはあとで議論するとしまして、産業の助成についての問題ですが、約三百二十一億円減税されていますね。このうち中小企業関係のあるものを除いて、産業助成というのは本来補助金的性格のものじゃないか。そうすれば、たとえば一番初め、もとに戻りますが、租税体系を乱す、だから、これは本来は非常にいけないのだということがこの答申案に書いてある。そういう趣旨からいって、助成金なら助成金、そういうものをはっきりしたほうがいいと思いますが、いかがですか。
  94. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、税制上の特別措置と補助金による助成とは、効果ないし影響が違ったものだというふうに考えております。補助金だといたしますと、やはり行政上の干渉が入ってくることになりまして、現在の体制におきますところの自由というようなものが、あるいは創意といったものが、行政上の干渉によって相当そこなわれる、こういうふうに考えております。租税の特別措置は、大部分法人税がその中心でございますけれども租税によるところの誘引措置はまた別な効果がある、補助金と違いまして、非常に自由な、企業の自主性がそこなわれないものである、過去の税法によりまして申告しなければいかぬ、申告を提出することによってその利益が当然均てんできる、所管省のような監督を受けるものではない、ただ、税の見地だけの検査が行なわれるだけでございます。  さらにまた、法人税は、御存じのように利益課税でございますから、利益のないものは恩典が受けられないという意味におきまして、補助金と違った効果があります。しかし、利益のない企業にも与えろといった場合には与えられないということにはなる、一方、利益が一つの生産性があがったことの象徴だといたしますれば、これまた、利益をあげれば特別措置の恩典が受けられるということにおいて、また一つのよさもあろうかと思われます。そういった意味におきまして、どこの国でも税制上の誘引措置があり、補助金と区別して設けられておる、これはまた大きな意味があろうかと思っております。
  95. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その中で、そういう創意性に立ったいろいろな補助的措置だと思うのですが、たとえは合併の促進――合併の促進は、これは産業の助成ですね。この合併の促進に二十九億円減税になっていますね。そうすると、現在は独占禁止法が骨抜きになっておるかどうかということで大騒ぎになっており、独占価格というものが非常に大きな問題になっておる。そういう問題のときに、やはり合併の促進ということでもって産業を助成する。それが創意性を発揮するということは、私はちょっと受け取れないですね。こういう問題については、たとえば、企業でもってやたらに合併――日産、プリンスや何か、合併したらそれで能率があがっていくのだと一がいに考えているのかどうか。それから、独禁法や何かとの関係をどうするのかということについて、大蔵省考え方をお聞きしたいですね。
  96. 塩崎潤

    塩崎政府委員 独禁法は、私は専門家でございませんけれども、私の理解しておる限りにおきましては、合併の結果競争を不当に拘束するような場合において、独禁法上問題とされるだけではないかと思うのでございます。そういう条件に該当しない場合は、合併するということは、資本の自由化を控えました現在におきましては、日本の小さい企業の規模を大きくする意味におきまして望ましいというふうに常識的にいわれておりますし、私どもも、そういった点を税制上応援することは、決して現在の情勢におきまして不適当とは考えていないわけであります。むしろ企業減税をいたしますれば、法人税の税率の引き下げというようなことよりも、こういった形の応援のほうが将来を考えるとより効果があるのではないか、かように考えております。  さらに、第二に、創意くふうの尊重ということを申された点でございますが、この仕組みも、たとえば合併後の増加利益を基礎といたしまして減税額が出るような仕組みをとっております。したがいまして、合併によって合理化された、そして利益がふえたということを一つのメリットと考え、その額が大きければ大きいほど減税の額がいくように、しかしながら、財政上の理由から考えまして、もちろん一定の限度を置いてございますけれども、そういう形で補助金に見られないような一つの仕組みを考えてこの中に取り入れておる次第でございます。
  97. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、いまの答弁は、私は全体の関連がないと思うのです。なかなか苦しい答弁だと思います。常識的に考えてみまして、もう一つの問題は、たとえば資本自由化に備えてと、いま言われました。資本自由化に備えて、大きな企業をどんどん助成していけばいけるほどいいのだという考え方だと、たとえば、いま日本の中小企業というのはどんどん倒産しておる。大きな企業は、水田大蔵大臣が言っておるとおり、もう自己金融力を増大して設備過剰がとっとと進もうとしておるのです。そうして、資本自由化の波は、化粧品にも来ますし、医薬品にも来るし、中企小業にもずっと押し寄せるのです。中小企業に助成するならわかるけれども、合併を促進して大企業をどんどん伸ばしていったって、工業力としては、造船なんというのは世界で一番じゃないかと思うのです。そうすると、広範な中小企業に対する助成ではなくて、こういう問題が相当あるということについては――これはもちろん、産業の助成の中でも中小企業関係が三つあります。あと航空機から油から、全部これは大企業だと思うのですが、そうすると、大企業に偏重になって、中小企業に対してのいろいろな助成その他が薄いというのが全体の租税特別措置法の性格だと思うのですが、そういう点はどうですか。
  98. 塩崎潤

    塩崎政府委員 租税特別措置は、大企業のためでないことは御存じのとおりでございます。私どもは、中小企業と大企業とをどこで区分したらいいか、一億円という資本金を基準にいたしまして租税特別措置の内訳を区分したことがございます。そういたしますと、むしろ中小企業に向けられておる特別措置のほうの割合が大きいという計算が、私どもでは出てまいるのでございます。大体四十一年度におきまして大企業向けの割合が四五・五%、中小企業向けが五四・六%程度、こういうふうになりますと。御案内のように、法人税の税収は一億円を基準といたしますと、大体大企業分が六割でございまして、中小法人が四割ぐらいでございますが、租税特別措置の減収額を、企業分だけを取り出してみますと、割合は中小企業分――これは中小法人を一億円と見ておりますが、五四・六%です。したがいまして、これは五五対四五、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
  99. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これについては数字的な根拠が必要だと思うのです。先ほど申しましたように、今度の審議の憲法――憲法ではないですが、答申案に、合理的判定を厳密にやると書いてあるのです。だから、これをやるのが国会並びに大蔵省国民に対する義務だと思うのです。したがって、私は資料を要求します。  いま言われた大企業に四五・五%、中小企業に五四・六%というからには、特別措置法の中の各個条ごと四十七項目にわたって、これはどのぐらいの程度――さっき私が階層と言ったのはそのことなんです。どのくらいの程度の法人にどういうふうになっているかということを、ずっとあげていただきたいのです。それでなければ、やはり合理的な判定ができないわけです。したがって、できればこの次の委員会までに、全項目にわたっての、わかるところは数字的効果、それから階層別に恩恵を受けておる人について、はっきり文書でお示しを願いたい。
  100. 塩崎潤

    塩崎政府委員 中小企業と大企業の区分をどこに求めるか、私どもは、税制の軽減税率の仕組みにおきましては一億円というところを基準にいたしておりまして、それをもとといたしまして、私どもは、法人税のみならず租税特別措置法につきまして、中小企業に属する部分か大企業に属する部分かということを推定いたしております。その推定はなかなかむずかしい面もございますが、一応私ども根拠を持ちましてやっておりますが、これをまとめて出せたら出してみたい、かように思います。  なお、個人の分をいま言っておられたのだと思います。私はいま企業だけ申し上げましたが、個人の分もあるわけで、ことに貯蓄等は個人が多いし、さらにまた、その金額は企業分よりも多目でございます。これを階層別にやることはまだいたしておりませんが、階層別にどういうふうに見ますか、今後少し時間をかしていただきまして、検討させていただきたいと思います。
  101. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 時間をかしてといいますけれども、たとえば、いろいろの法案が来週ぐらいか、とにかく審議されますね。このときに、この問題についてちゃんと階層別にわからなければ、これは全然判定の下しようがないのです。したがって、なるべく早く、法案審議に入る前にその問題についてめどをつけなければいかぬと思うのです。だから、いままでこの問題について、そういう問題についてのきちっとした基礎がなくて、これほどのたいへんな、国民があげていろいろ疑問を持っている、たとえば新聞記事をお読みになるとわかりますが、新聞記事で悪評さくさくですね。悪名高い租税特別措置についてはとか、それから、不公平な優遇措置について税制調査会内部には廃止すべきだとする意見もあったが、金融界の圧力や自民党の反対などにあって押し切られたとか、それから、大蔵省のお役人さんは反対だった、筋を通したかったのだ。では、どこからか曲げられたんじゃないかということになるのです。それと、これほど重大な問題がやはり十分数字根拠がなくて審議されるのでは、国民に済まないと思うのです。したがって、この資料をなるべく早く、不備な点があったら不備でよろしゅうございますから提出していただいて、その上で十分討議しなければならぬ、このように思うのです。
  102. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 資料要求しておきますが、大体広沢議員の知りたいと思う点は、いまの質疑応答で主税局長はわかったと思う。  そこで、従来出しておいたこの一覧表と同じような項目別に、広沢さんがいまおっしゃったように、従来これができてから今日までの総計も一応入れてもらう。何年からできて、年々減収になった額を積算すると幾らになるかということを二番目に入れてもらう。同時に、一億円以上しかわからぬということになると、一億円上と一億円下の恩恵の階層の大体の金額を出してもらう。それから、広沢さんがもう一つ言っておる効果ですね。効果については、判定がむずかしいものは率直に判定ができない、できるものはこういう効果があった、そういうものを一覧表にして二十八日の委員会が始まるまで――そうしないと、われわれは次に租税特別措置の問題の審議に入れませんから、それだけは、委員長、厳重にひとつ資料要求しておきます。
  103. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御要望の線に沿ってできる限り努力したいと思います。しかし、なかなか判定が、あるいはその他数字もありませんし、また、これまでの累積の減収ということ自体、景気変動その他によりまして必ずしも適切な数字にもならない場合がございますので、そのあたりは適当に取捨選択さしていただきまして、出さしていただきたいと思います。
  104. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連して、ひとつ主税局長にお伺いをいたしたいのですが、税制上は、中小企業を一億円以上の資本金ということで線を引いておるとおっしゃったわけです。中小企業基本法では五千万円という一つの基準があるわけです。現在そういう中小企業というものをどうとらえるかということについて基本法ができているのに、なぜ税制だけ一億円以上にするのか、そういう現在の法体系にそぐわない数字をなぜとるのか。こういう点は、いま広沢議員が追及したように、中小企業に対するメリットが、租税特別措置法で非常に少ないということをカムフラージュするためにそういうことをやっているのじゃないか、それ以外にはとりようがないわけです。税制上一億円未満を中小企業にしているということを、どうやって合理的な説明をされるのですか、その点をひとつこの際、はっきり聞いておきたいと思います。
  105. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点は、広瀬委員昨年いらっしゃいませんでしたので御存じなかったのだと思いますが、御審議の際にずいぶん問題になった点でございます。私どもはこういうふうな説明をいたしておりました。  中小企業基本法も問題があろうかと思います。基本法のみならず、各方面で定義が違っている面もございますが、現在の過小資本の状況のもとでは、私は、やはり五千万円といったような基準は低いという感じがいたします。そこで、基準がないから、中小企業基本法に従ったらいいじゃないかという御意見になりましょうけれども税制はやはり税制自体の仕組みからまた判断されるべきであろう、で、去年はこういうことにいたしたわけであります。  これまでは、大法人のみならず、中小法人も全部軽減税率は所得だけで限定しておったわけでございます。したがいまして、課税所得が三百万円以下は三一、課税所得が三百万円をこしますと三七といたしておったわけでございます。これは、私そもそも考えてみますと、課税所得三百万円以下を六%も違えておる、わずか十八万円でございますけれども、大法人に恩典を与える必要はないじゃないか……。これは、事の起こりは昭和三十年からでございますけれども、むしろ中小法人を優遇する意味であった、したがって、軽減税率の制度は、中小法人だけに適用しようというふうに考えたわけでございます。さて、そのときに資本金基準をどういうふうに持っていくか、むしろ五千万円では非常にきつ目に働いてくるわけでございます。私は数も調べてまいりましたが、一億円で区切りますと、大企業というのは四十年度で四千件、これは法人数であります。あとは七十五万でございます。しかも税収の割合は、四千の法人が六〇%納めて、七十五万の法人が四〇%納めているような状態でございます。どうもそういった意味では五千万円という基準よりも一億円の基準ということがいいのじゃないか、こういう基準をもちまして、貸し倒れ引き当て金も一億円以下の法人については二割増し、一億円超は普通のとおりというような基準を設けてやったのでございます。それにまたこの法律上の制度でございます。中小企業のほうはむしろ金融上の制度を考えて、より小さい人によりたくさん貸したいということで、中小企業基本法はより有効であると思いますけれども、政府はそういったことより税負担ということを考えますと、こういったほうがいいという判断、これが私は採用の原因だと思います。  それからまた、法律上の制度でございますから、増資を抑制してはいかぬと思うわけであります。増資によりましてだんだん大法人になっていくわけでありますから、増資を抑制するということも適当ではない、そういった意味では、中小企業基本法の定義が違ってもこれはいいのではないかということで、一億円にいたしました。  第三に、過去に特別償却をつくります際に、もうすでに税制では昭和三十二年に、私は税制一課長でございましたが、一億円ということで中小企業合理化投資を促進しようということで、税制はすでに基本法と違いまして一億円という基準がございましたので、そういったこともあわせ考えまして一億円にした、こういう経過でございます。
  106. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 だんだん持ち時間が足りなくなってきたので、いままでのを総合する前に、もう一つあるのです。交際費の問題です。  交際費は、今度のことを見ますと、減収額一覧によりますと四百億円の増収になっています。これは今度の法案の大要を見ますと、交際費のあまり露骨な非課税については、恥ずかしいのか、だんだんと少しずつ後退してきています。しかしながら、まだまだたいへんなことだと思いますよ。それはどういうことかといったら、一番初めにお聞きしたいのは、交際費は全体としてどのくらいですか。よく統計で一九六五年は五千七百四十九億円というが、大体当たっていますか。
  107. 塩崎潤

    塩崎政府委員 過去の実績が一番確かでございますが、昭和四十年度の法人企業の税務調査では五千七百四十八億円と見られております。これは実績でございます。一番かたい数字でございます。税収上は、四十二年度は六千五百億円ばかり見ております。
  108. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そのうち課税されているのは、どのぐらい課税されていますか。
  109. 塩崎潤

    塩崎政府委員 課税されておるといいますか、現在の仕組みは御存じのとおりでございましょうから申し上げますと、否認割合は四十一年度では一九・七%くらいでございます。四十二年度は二三・二%になる見込みでございます。
  110. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この交際費というのは、今度の予算で社会保障費とほぼ同額ぐらいですね。これはよく言われるのですが、大蔵省にとっては心外だと思いますが、いろいろの本にも書いてあるのです。それから新聞にも出ていますが、これは公社用族のキャバレー遊び、待合遊びを奨励しているようなものだ。税法がそれを保証しているような、こういうような間違った腐った状態であれば黒い霧も出てくるだろうし、それからいろいろと政財界の腐敗という、国民の政治に対する不信が生まれてくるもとだから、やはりこれは道徳上からも、もっと交際費に対しては、特に大きな会社の高い交際費に対しては規制すべきであるという意見があるのです。もちろんこれは心外だと思いますが、交際費というのは、どういうところにどのくらい使われているのかということが明らかにされていないからそういうことになると思います。そういう内容がわからなければ、私どもは大衆に向かって、やはり待合遊び、キャバレー遊びというわけです。したがって、交際費の内容ですね。どういうほうにどのくらい使っているのかということを大蔵省ではつかんでおられますか。
  111. 塩崎潤

    塩崎政府委員 内容という意味をもう少し詳しくお聞きしたいのです。
  112. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 交際費が各会社にある。そうすると、扇子を配ったりするのは宣伝費だけれども、外国のバイヤーや、お役人さんを招待していろいろなことをやるというときには交際費に入れるとか、何かいろいろあるのですね。そのことです。
  113. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは企業の全体的な交際費はつかんでおりませんけれども、個々の、どういうところに使用したかということは、税務職員調査に行った際に調べるだけであって、全体的な集計をいたしましたものは持っておりません。
  114. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、交際費課税の強化というのは今後も行なっていかなければならぬ問題ですから、したがって、これについてはもう少し研究をされまして、どのくらいまでこれを強化していけばどういう会社に経済的効果が生まれるかというような問題について、検討をしていただきたい。できたら、そういうことについての資料、われわれがどのくらいまで交際費にかけたらいいかというめどをつけるための資料を、今後、そう早くなくてもいいからいただきたいと思います。  もう一つ、これに関連しまして、広告費についてです。広告費については、大体どのくらいの額が使われているか御存じですか。
  115. 塩崎潤

    塩崎政府委員 最初の御要望、できる限り考えてみたいと思います。  まず第一に、今度の改正案は、交際費はふやした企業には重くする、減らした企業はむしろ減税をするという形で、交際費を減らす方向に持っていきたい、これがただいままでの私どもの交際費課税を通じての検討の結果でございます。さらにまた、交際費課税は足切り等がございまして、御案内のように、大企業がほとんど交際費の否認を受けているのが実情でございます。したがいまして、七十五万の法人数がございますが、二万八千ばかりしか交際費課税の適用を受けていない、大部分大企業だと考えていいことだと思います。  次に、広告費の額でございます。これも昨年から問題となっておりまして、私どもも、広告費については交際費と密接な関係があるけれども、それは趣旨は違うというふうに申しておりますが、四十年度の実績では、三千四百四十億円の広告宣伝費の支出が見られたという統計を私ども持っております。
  116. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この広告費については、今後課税をいろいろ考慮されて、研究はしておりますかどうですか。
  117. 塩崎潤

    塩崎政府委員 研究いたしました結果、私ども課税しないほうがいいという結論を持っております。
  118. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その理由は、どういう理由ですか。
  119. 塩崎潤

    塩崎政府委員 言うまでもなく、広告費は市場開拓、売り上げの維持とかいう意味の事業経費と私ども考えております。これが第一点でございます。  第二点は、交際費の課税につきましては、個人消費あるいは個人所得等から支払われるべきものが社用消費にかわる、こういった点の非難、いわゆる先生のおっしゃる飲み食いといいますか、享楽、こういった面の非難が多分に交際費課税の背景になっておりますが、広告費はやはりそういった面から見ると性格が違っておる、個人の所得あるいは個人消費と見られるものは、広告費には私はその要素としてはないのではないか、かように思います。  第三には、広告費は、宣伝する企業はいろいろな関係にもよりましょうが、企業によって非常に違いましょうし、特に問題になるのは、新しく市場に入っていくような企業は、より広告費を要するようなものもある、そんなことを考えますと、やはり課税といたしましては、同じ経済状態のもとの同じ負担という意味では交際費も私は同様だと思うのでございますが、広告費も適当な租税形態ではない、むしろ政策に応じてやっておるだけであって、適当なるものではない、やはり純益にかける法人税がより公平なものだ、こういった意味で広告費課税はとるべきではない、こういうふうに私どもは結論として持っております。
  120. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 時間がないですから、この問題に十分深く立ち入ることはできないのですが、何しろ金額は大きいです。三千四百四十億円です。その広告費の判断については、まあ、たとえば新聞なんかに入ってきたのはみんな見ないで捨ててしまうとか、非常に浪費が多いし、広告過剰ですね、いまの時代は。したがって、これほどの問題については、金額も多いし、いろいろ課税考えてみるべきだと思いますし、私どももいま聞いた御答弁に基づいていろいろと研究してみます。  最後に、租税特別措置そのものについて、いまいろいろ熱心な御答弁がございました。けれども、私としては、この租税特別措置ができたときから、それから、たとえば不況のための企業減税といわれたときから、現在は、大蔵大臣の言っているとおりに、非常に企業に金融力ができて景気過熱が心配されておるときに、これほど優遇措置を――二千億に余る優遇措置をとる必要はないという点では、十分納得のいく答弁が得られませんでした。  なお、その政策的効果については、先ほど言われましたとおり、個々のいろいろの受益件数、階層別人員数ですね。それからもう一つは、政治的効果のその範囲について、数字もしくは簡単な注釈で一覧表が出るそうですからそれに基づいてもっと十分検討したい、こういうふうに思います。その一番冒頭に、やはりこれは合理的に改廃していくんだということが御答弁で認められました。やはり、今後こういう税体系を乱すものは中間答申案の趣旨に沿って漸次改廃していくべきである、そのためには与野党協力して努力すべきである、こういうふうに思います。  最後に、国税庁長官に伺いたい。  先ほど申しました二、三のこれほどの優遇されたいろいろの措置が行なわれていながら、一方、中小零細企業の方々には、たいへんな人道上の問題としての税金に対する過酷な問題が出ているのです。それについて一つ具体的なことを申し上げますから、お答え願いたいと思います。  それは、浅草の税務署で起こった問題ですが、この管轄下に魚屋さんで、青色法人をやっておる魚屋さんがございます。これは青色法人ですから株式会社、小さな会社ですね。この支店三軒を調べて、貸し金があるかないかについて、なければ一筆書けと言って書かせる、それから、子供さんからお孫さんまでの預金を全部銀行から調査する。それでその人の言うことには、全くおどかし、恐喝同様の態度でもって、子供から孫――お孫さんはアルバイトをしておるかもしれない、そういう郵便貯金まで全部調べ上げた。それは銀行から通知が来たそうです。そのほか、店先に始終すわっている。だから行って問いただしたところが、ある課長さん――名前はわかっていますが、ある課長さんは、民商の人がそばについているなら話をしないことになっている、こういう話です。一体民商でも何でも、そういう固有名詞の人が行ったならばもう話をしない、受け付けないというようなことを税務署長もしくは課長がおやりになっていいのかどうか、いいことになっているということならば、そういう内規があるのかどうか、お聞きしたいと思うのです。そういう問題について今後も相当文句が出てくると思います。私の同僚議員もみんなそういうことをずいぶん聞いていると思いますが、ひとつ、この問題についてお答え願いたいと思います。
  121. 泉美之松

    泉政府委員 浅草の某青色申告法人につきまして、民商の人がそばにおるから話さないというようなことを言ったかどうか、事実を調べてみたいと思いますが、別にそういう内規をつくっておるとかどうとかいうことではございませんで、むしろ、私ども税務職員納税者所得調査に参りますと、民商会員でございますと、民商の人が来られまして、自分らが立ち会わないと調査させない、それから、場合によりますと、帳簿がこの店にはない、民商の事務局にあるのだというようなお話がございました。納税の事務は、御承知のとおり、納税義務者と税務官庁であるわれわれとの間で処理すべき事柄でございまして、それ以外に税理士の権限のない人が途中に入ってきて、自分らが立ち会うのだとか、自分らが一緒におるのでなければ調査させないのだとか言われては困るわけであります。むしろ、私どものほうが納税者の方とお話し合いして調査したい、それを民商の方が妨害する、こういうような形になっておるのでございます。したがいまして、そういう妨害をされる状態では調査ができない、こういうことになっておるわけでございます。
  122. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その場合は、税務署の中で起こったことです。したがって、民商の人かだれか知りませんが、付き添っていった人はじゃましたり何かしたわけでないんですね。それをよくお考えになっていただきたい。それで、その人とは話をしない、そういうような封建時代の代官さまみたいなことを言わないように御指導を願いたいと思うのです。一ぱい出てくるのです。  もう一つあるのですが、ずかずかと人の店先に入ってきて――警察官もちゃんと令状を示してやるのにもかかわらず、ずかずかと入ってきて、あそこをあけろ、これは強盗みたいだとよくいわれるんです。だから、やはり調べるなら調べるにしても、警察官もできないようなことをやるような、そういう特権的な形でなくて、親切な指導が望ましいと思います。  以上で私の質問は終わります。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと委員長、どうもたいへん出席が悪いから、委員長のほうでも御配慮願います。
  124. 内田常雄

    内田委員長 山田耻目君。
  125. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 運輸大臣、お忙しいところをせっかくお見えになりましたので、運輸大臣に関係のあるところから先にお伺いいたしたいと思います。  実は、運輸大臣も御存じと思いますが、さきの委員会におきまして、これは前国会の委員会でございますが、通行税は日支事変のときにできた戦費調達の特別立法であったから、こんなものはもうやめていただきたいということで、本委員会でいろいろ議論をいたしました。いろいろやりとりはございましたが、どうしてもやめるというわけに結論がまとめ上げられないのなら、ガソリン税と同じように目的税にこれを置きかえて、一般会計から国鉄あるいは航空、船舶に返してやったらどうか、しかも、ガソリン税を道路の整備に充てますように、最近、陸、海、空のいろいろな輸送産業では多くの事故が起こっている。特に、陸上交通では昨年一年で一万四千名近い死者を出しておるし、四十九万五、六千名の負傷者を出しておる、しかも、そのうち三分の一程度は頭を打っておりまして、不具、後遺症を残しておる、こういうふうな状態になりまして、世間では交通戦争といっておるのですけれども、日清戦争の死傷者より多い。かなり国民の中でも交通政策に対する批判の声が大きく出始めてきたところです。だから、こういう通行税という戦時中の遺物をこの際廃止できないものなら、目的融資をしたらどうか。まず、航空には航空の整備、船舶には航路標識などの整備、あるいは鉄道には踏切道の立体交差などしていくことが一番いいのじゃないか。どうしても廃止できないというのならそういうふうにしたらどうかという議論をいたしたわけであります。そのときに、主税局長にいたしましても、大蔵大臣にいたしましても、それは検討しよう、しかも、かなり濃度の強い発言に基づいての検討であったと私思っているわけです。そうしたことが、その後理事会で御相談いただくというふうなことにもなっていたかと思いますけれども、結果はそこまで進んでおりません。今度の予算提示を見ますと、そういう措置というものは原則として見つけ出すことができません。ただ航空に関しては、これは運輸大臣の所管でございますが、通行税を五%程度減じておったのをもとに戻して、平年度十八億円ぐらいの増収を見込んで滑走路等の整備強化に充てる、こういうふうなことが決定されたように見受けられます。  そこで、この国会では、総体的にそれらを受けて交通安全対策特別委員会を院の中に設置をしたわけですが、そういうところからも、必ず予算を伴なう事柄が多うございますから、意見が出てくると思いますが、この際やはり今年度税制を議論する中で、一応検討という約束がされております立場もございますし、この際ここで一応明らかにしておくことがよかろうかと思いますので、まず運輸大臣のお気持ちからひとつお伺いをして、以下、大蔵関係にもお聞きしたいと思います。
  126. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 通行税の取り扱いについての御意見でございまするが、これにつきましては、従来から政府部内において十分に検討を加えるということになっておるわけでございます。明年度の予算の編成にあたりましても、特に国鉄の予算につきまして主計局との間にいろいろ折衝をいたしておったのでございまするが、現在の国鉄の財政状況は、今後のことを考えまするとなかなか困難な問題が多数伏在いたしておりまして、これについてはどうしても根本的な検討を加えまして、将来にわたってしっかりした対策を立てなければならぬということが明らかに相なった次第なのでございます。  そこで、大蔵、運輸両省間におきましては、来年の予算までには必ず国鉄の財政問題について十分に再検討を加えようという申し合わせができておりまして、ことに、その検討すべき重要項目といたしましては、一つは、国鉄に対する一般会計からの出資の問題でございます。明年度の予算編成にあたりまして、国鉄当局からは相当多額の政府出資の要求があったのでございますが、将来の財政計画を十分検討した上で結論を出そうということになりまして、この出資の問題は将来の検討にゆだねられることに相なったのでございます。  それから、そのほかにも国鉄の財政の問題につきましては重要な研究課題等がございまして、これら、先ほど申し上げましたるごとく、すべて明年予算編成までに両省協力して結論を出そうということにいたしてございますので、この検討にあたりまして、運輸省といたしましては、この通行税の取り扱いにつきましてもあわせて検討を加えていく、そして来年の予算までに結論を出したい、こういうふうな考えでおりますので御了承を賜わりたいと存じます。
  127. 塩崎潤

    塩崎政府委員 昨年の委員会におきまして山田先生からも通行税について種々御批判がございましたことは、御指摘のとおりでございます。廃止論から目的税論まで出たわけでございますが、私どもといたしまして、目的税にすることについては、主税局長でございますので、むしろ課税根拠のほうばかり考える立場でございますので、目的税にすることについての資格はないわけでございます。やはり、これは性格から見まして、別にそれについては一等の乗客からだけ課税していく、いわば負担力のある消費税と考えられる、それはどうも一般会計に入れられまして自由に使えるほうが適当なのではないかという考え方を持っております。
  128. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 運輸大臣は来年度予算でひとつ――来年度は四十三年度でしょうが、来年度予算でじっくり考えていきたいと言われ、大蔵省のほうはそっけない、この前検討しようというときとはそっけない話になってきておる。検討しようということは皆さんたちの常用語かもしれませんけれども、しかし、実際には、今度の通行税の問題で、飛行場の関係は、それを値上げすることによって措置をするということが新聞なんかにも報道されておりますし、そういうことも、通行税というもののたてまえからいって、それは塩崎さんのことばを適用するわけにはいきませんからね。だから私は、やはりこの税制というものは少なくともそこにおいては統一的にものごとを解釈していきませんと、あれはあれ、これはこれというように、同じようにサギをカラスと言いくるめてみても、それはやはり不愉快な思いだけが残るのです。そういう点から、通行税そのものが、今日いわれているように、これは戦時中の遺物なんであって、残そうとする理屈はいろいろお考えでしょうけれども、まず廃止をしてほしいという党の立場というものは、今日まで再々申し上げておるわけです。  しかし、それがどうにもならないということになれば、それでは今日の交通災害をどう防いでいくか。それぞれの企業には、おっしゃっているようになかなか財政的能力がない。そこで航空機の場合はそういうふうな形に流れていったのでございましょうが、交通災害等の関係を見ると、これは船舶にも鉄道にも陸運関係全般を通して非常に多くなってきておる。それがやはり財源的に困難だからということで放置されておるというところに問題があるわけです。だから、たまたまガソリンと道路の関係、あるいは今度の飛行機の通行税と飛行場整備の関係、こういうものがからまって国民の中に一つの波紋を投げておりますから、やはりこの際、鉄道の立体交差などをつくることによって今日の交通事情を緩和していく、こういうためにやはり通行税を措置していくということは、これは先般来からの検討の約束ですから、その検討の中身をひとつ大蔵省のほうで申してもらわぬと、いまのような御答弁ではなかなか承知しがたいことになりますからね。
  129. 塩崎潤

    塩崎政府委員 検討問題であることはもう事実でございます。今後とも私どもは検討をしてまいりたいと思っておりますけれども、目的税として固定化するということについては、これは主計局の所管でございましょうけれども、非常に問題があることは御存じのとおりでございまして、今回の航空機の通行税も、目的税という趣旨のものではなくて、一般財源としての地方空港の整備、それに充てる財源を大きな意味において考えたということだと思うわけでございます。そういう意味においての目的税といわれるならば、また一つ考え方だと思いますけれども、現実の意味においての目的税としては考えていない、こういうように考えております。
  130. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 福田前大臣大臣が――私はとても正直ですから、それは確かにそういうことも考えられるし、まじめに検討しよう、こういうお返事でありましたから、私はやはりまじめに検討してもらっておるもの、だと思っておりましたが、必ずしもそうでないので、きわめて不愉快に思っております。しかし、そういう面を含めて、総合的に、海、陸、空の交通については、運輸大臣おっしゃっているように、四十三年度には総合的な検討を運輸省と大蔵省でおやりになるということでございますから、そういうことはひとつ万々間違いのないように具体的に含められて操作されていきますように、通行税についてはまたあらためて党の立場で議論を深めていきたいと思っておりますから、一応この問題はこの辺にしておきたいと思います。  それから、運輸大臣がお見えになりまして、飛び火をしてたいへん済まないのですけれども、実はきょう委員長にもお願いをして、公労協というのがございますが、そこの主婦の代表がお見えになりまして、そしてちょっと時間をさいて陳情を受けていただいたのですが、御存じと思いますけれども、公労協の中には国鉄もございます。先般、十八日、二十日の本委員会でも大蔵省所管になる給与準則等の問題についていろいろと議論があったようでございますが、きょうたまたま国鉄関係の主管大臣である運輸大臣がお見えになっておりますから、そういう面から少しただしてまいりたいと思います。ただ、大橋さんは日本の労働問題のベテランでございまして、日本の労働法なり公労法なりについては神さまのように詳しい人でありますから、そういう意味で、きょうはひとつすっきりした返事を、これは検討でなくて、お答えいただきたいと思うのです。特に、昭和三十九年からあなたとILOを一緒にやってきましたし、その当時からのいろいろな話がございましたし、三十九年の予算委員会では三公社五現業の責任者まで呼びまして、大蔵、運輸、労働三大臣にも見解を述べていただいて、公労法上の問題点と当事者能力、そうして、大蔵省として措置すべき問題については一応法律上の解釈は統一をされた感があったわけです。しかしながら実際運営について具体的な措置がなされていないために、あれから二年、いろいろと三公社五現業の職員の労働に関する幾つかの労使関係が混乱を深めておる、こういう事情でございます。  そこで、少し中身について入っていきたいと思うのでありますが、今日、三公社五現業が経営者を相手に団体交渉をいたしております。団体交渉をいたしておりますけれども、全然前進をしない。なぜ前進をしないか、当事者能力がないからである。中身は何か。それは給与準則――それぞれ事業法の中にございますが、給与準則の中で、国会で議決を受けた人件費総額をこえて支出してはならない、こういうことになっておるから賃金要求については回答ができません、これは当事者能力がないのだ、こういうことで団体交渉が実際進まない。ところが、公労法八条には、賃金その他の給与については団体交渉をしなさい、まとまったものは労働協約を締結しなさい、こういうふうに書いてありまして、それが公労法のずっと先にいきまして十六条あたりになりますと、資金上、予算上不可能な労働協約は、その趣旨を付して国会の承認を経なさい、こういうふうになっている項――正しく解釈できる項と、当事者能力がないから団体交渉はそこで行き悩むから、調停申請をして、調停申請で紛争がなお解決できる調停案が示されなければ仲裁に移行する、仲裁の結論は両当事者を拘束し、資金上、予算上不可能なものは国会の承認を経るのですよと、この二道があるのです。  ところが、長い間の紛争の中では、当事者能力という給与準則が災いをいたしまして、あとのほうの道筋を追ってきたわけです。団体交渉はほどほどに、調停、仲裁申請をし、その結論が出て国会での承認を得る。前のほうは全然忘れ去られていたわけです。ところが、おととしくらいからこの問題が出てまいりまして、前の分もやり方があるじゃないか。  そこを少し意見として御説明申し上げておきますと、団体交渉で行き悩み、あっせん、調停を受ける。あっせん、調停の段階で結論が出たものは両当事者を拘束いたしませんし、そこで、あっせん、調停の段階で出た結論は労使双方に示して、合意に達したら労働協約を締結する、ここで初めて民法上の保証が出るわけです。このあっせんの段階、そうして労使双方で合意をし、労働協約を締結する、この二つの場合も想定できます。しかし、その場合に行き悩むのが、資金上、予算上不可能な場合の労働協約は効力を持たない、これは調停の段階でも団体交渉の段階でも同じでございます。その調停の段階、団体交渉の段階で資金上、予算上不可能な労働協約を締結した場合には、国会の承認を経て効力を発するとなっております。その手続を一度もとったことがない。  そこで、この種の賃金問題というものは、これは労使間の信頼と自主的解決の中にこそ健全な発展があるのだ、これが労働法でも公労法でも憲法でもいっている精神だと私は思っております。その自主的に解決する道を閉ざしたところに、今日の現業官庁職員の労使関係の不健全な姿が生まれてきておるのでありますから、この際ひとつ、法律的にも許されておる労使間ないしは調停の段階で、その基礎は労使が自主的にまとめ上げていくという、労働協約によって予算上、資金上の承認を国会へ求める手続をとらしたほうが自主的でよろしいじゃないかという思想が、この二、三年ずっと伸びてまいりました。私が言っていることは、これは労働法学者の説も、今日の公労法を正しく理解してもそのとおりであります。それを当事者能力がないからといって、全然団体交渉にも応じてこないところに問題が出てきておるのでございますから、昭和三十九年の予算委員会などで、あるいは昭和四〇年の社会労働委員会でも四十一年のこの委員会でも、関係各大臣なり関係当事者から、それはそうだ、そのことは可能であるから、そういうことについてひとつ具体的な相談を進めてみようじゃないか、それが昨年の本委員会における総理府総務長官の、公務員制度審議会でも審議をしておるから、何とかうまいことまとめてみましょうという返事だったのです。ところが、公務員制度審議会は今日開店休業でしょう。ところが、生きている労働者はめしを食っていかなければならぬし、物価は上がるし、賃上げはやらなければならぬ、そうしてまた、ここで、団体交渉がどこにも伸びずにそれぞれの企業体の中でいまくすぶっておるという状態です。こういう状態を、ページをめくっていきますと、どこに一番の問題点があるかといえば、それは大蔵省なんです。大蔵省が過去において、給与準則をびた一文こえる協定を結んでも、おまえたち承知せぬぞ、こういうふうに三公社五現業をおどかしにかけた歴史があるのですよ。そういうことから、当事者能力は全くないという錯覚に三公社五現業の経営者がおちいってしまった。それが労働運動をいびつなものにしてしまった。大蔵省が一番根っこにあるのだから、災いをまき散らしたんだから、ここでひとつ大蔵省のほうから、よろしい、給与準則をこえて労働協約を結んだら労働法上にいう所要の手続をとってくれ、こういうふうなものの言い方をされれば、この問題はある程度解決をする、いまの団体交渉が壁にぶち当っておるのも道が開けると思うが、ここらあたりについて、ひとつ大蔵省側の見解を、給与課長がお見えになっておったらいただきたいと思うし、また、ベテランであり、特に国鉄をかかえておられる運輸大臣として見解をひとつ述べていただきたいと思います。
  131. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 山田さんは、三公社五現業に対する当事者能力云々の問題につきましては、非常な専門家でいらっしゃいますから十分御承知のとおりでございまして、確かに、いまおっしゃいました点が基本的な問題点であろうと思いますが、私どものほうで、この当事者能力がなぜ完全にないかということを考えてみますと、御承知のとおり、三公社五現業、いずれも非常に高い公益性を持つものでございますし、完全な国有の法人であるか、あるいはまた国営企業でありまして、収支そのものが国家の財政あるいは国民経済全般と非常に密接不可分の関係にある、そういうものでありますために、その運営につきましても、国会の議決を経て定められた予算というものに当然基づいて行なわれなければいけませんし、それに拘束される、そういう制約のもとにあることはもう御承知のとおりでございまして、また、これは現行制度においてはやむを得ないところでございます。  そうなってまいりますと、これらの公共性、特に私が最後に申し上げた予算の国会審議権というもの等から考えまして、予算の国会審議権というような基本的な問題にどうしてもこれが触れてくるわけでございます。抵触してくる。そこで、もちろん現在のままで、三公社五現業の、いわゆる労働法で規定されておりますいろいろな理想的な方向に、調停や仲裁に持っていかないで、国会の承認を得るような道をとるという御議論もありましたけれども、どうしても、この予算の国会審議権というものなどから考えますと、その点は私ども大蔵省としてだけでよろしゅうございますという回答ができるものではないのじゃないかと私は思うのでございます。したがって、過般ILO条約の承認が行なわれ、批准が行なわれましてから、それに関連する国内法の整備、それによって設けられました公務員制度審議会で取り上げてもらって、ひとつ広い視野から根本的に検討され、審議されるということが望ましいので、それを私どもとしては待たないうちに、ただ、財政を預かる大蔵省が予算面からして、まあいいから君らだけでやれというわけにはちょっといかない問題じゃないかと考えておるわけでございます。
  132. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 山田委員の仰せられました、公労法の解釈として、予算上、資金上不可能な支出を内容とした協約も場合によってはあり得るというのが公労法の趣旨じゃないかという点でございますが、私は法律の趣旨はまさにそのとおりであると存じます。ただ、いま大蔵政務次官も言われましたように、現実にはそういう運用がなされておらない。この点は山田委員もやはり御指摘になったとおりでございます。それにつきましては、いま大蔵政務次官から説明されたような財政当局としての御見解が、現実に政府部内で事を運ぶについての方針になってきておる。これは、各省は予算を大蔵省に要求する立場でありますし、大蔵省が結局予算については最終的な決定の力を持っておられますので、どうしても金に関する問題については大蔵省の見解にリードされざるを得ない。これは法理ではなくて、行政の現実でございます。そういう法理と現実との矛盾を解決する方法といたしまして、公務員制度審議会が具体的な方式をきめようというので、現に審議をしておられるようなわけでございますので、私どもといたしましては、できるだけすみやかにその矛盾を打開するような方式をこの公務員制度審議会がお出しくださることを待つのが一番いいのじゃないか、こういうふうに思うのでございます。しかし、それも、差し迫ってことしの春闘にその結論が間に合うような状況ではないようでございますので、今度の春闘の取り扱いについて一体どうすればいいだろうかということで、目下その問題につきましてまとめ役を引き受けておられます総理府総務長官とも、いま関係大臣がいろいろ相談をいたしておるような段階でございます。その結果、御希望のような結論が出ますものやら、あるいは御期待に反するような結論になりますやら、いまにわかに予言はできませんが、私どもといたしましては、できるだけ法理に沿うたような運用が可能になるように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  133. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 法理上は私が言った解釈どおりであると私も信じております。ただ、実際の行政上のあり方として、さいふのひもをみんな大蔵省が持って各省を振り回しておるという現実が、こういうふうに日本の非常に多くの働く勤労者、国民を含めてたいへん苦しい目にあわしておる、こういう行政組織に対していろいろとこれからメスが加えられていくものだと思います。ただ、これは大橋さんもILOに造詣の深い方でございますから御理解いただけると思いますが、こういうことが予算の審議権を侵すということはやはり一つの論点になる、しかし、そういう法律をつくったのも国会である、こういう議論がILOではされておりまして、そういう法律をつくって、国際連合憲章あるいはILO憲章に承知をして参画した国々は、いまの例に直しますと、予算審議権を侵すからという理由で実施を不可能にするものであってはならないと結論を下しておるわけであります。だから、いまの小沢政務次官の、あるいは運輸大臣も多少補足をなさいましたけれども、予算審議権を侵すという言い方は自然発生的に生まれてきておるものじゃないのです。その道を慫慂しておる法律を国会でつくっておるわけです。それが現実の公労法なのでありますから、やはりそういう立場の力説はかえってこれから事態の解決を混乱させますから、私はそういうものの言い方は慎んでほしいと思います。それは今日この問題だけが争点になってILOで一つの方向が出ておるのでございます。やはり、当事者能力等の解決については労使懇談の中を通して平和裏にというドライヤーの報告まで出ておるのでありますから、そういう紋切り型の言い方はかえって事態を混乱させるから、私は慎んでいただきたいと思います。  それからいま一つは、政務次官のお話の中にございましたが、それぞれの公社、現業は予算規模も違うし、裕福なところも貧しいところもある。それらが企業の労使関係のみで協定しては国会に持ち込んでくるというふうになったら、あるいは過去にいわれておりましたようにアベックになってしまったり、あるいはいろいろとバランスがくずれる可能性もある。私はこのことについては、必ずしも否定はいたしません。しかし、それが法理の中にある労使対等の原則を否定させてもいけないと思うのです。  そこで、私が前回も申し上げましたが、調停委員会で三公社五現業が共同提訴するのですから、そこで統一的にチェックできるじゃないですか。そこでチェックできたものが調停案でございます。この調停案は労使双方を拘束する。当事者能力がないからといって、いままで調停案で労使紛争を解決しようと努力しなかったのが政府であり、大蔵省側の立場でございましたでしょう。だから、あなた方が、企業間のある意味ではアベックになったり、いわゆる不統一になったりすることが理由であるならば、その調停委員会でチェックできるじゃないか。その調停委員会でチェックしたものを効力として発生させるには、労使間に持ち帰って労働協約を締結するのが原則なのですから、そこに返ってきますと、最初に申したことと同じことになるわけである。労使双方でまとまったものを国会へ出しなさい。そこにチェックの機関として調停委員会を設けて、そこで審議されて措置されれば、懸念される点は解消されていくではないか。だから、いま三公社五現業の諸君が言っておりますのは、おそらくこの月末に一斉に調停委員会へ提訴するでしょう。一斉に提訴いたしまして、調停委員会で労使双方、公益を含めて相談をいたしまして、そこで出た結論はチェックされたものだというふうに理解をしようじゃないか、そして、それはそこで結論を出させるように政府関係各省が指導なさいましたら、私は結実すると見ています。その方向をひとつお約束願えないものだろうか。いまあなたに御答弁いただきましたことを全部整理をしていけば、そういう結論に到達するが、賛成いただけるかどうかということです。
  134. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたるごとく、法理と現実の運用との間の矛盾を、さしあたり当面する今年の春闘においてどういう形で解決するか。この点につきましては、先ほど申し上げましたるごとく、公務員制度審議会と切り離してただいま閣内で相談中でございます。その相談の結果が、御期待のような結論になるか、あるいはいままでどおりの御期待に反するような扱いになるかは、ただいま私予言をすることは困難でございますが、しかし、できるだけ前向きの方向で努力をいたしたい、こういうことを申し上げた次第でございまして、この程度のことでひとつ御容赦をいただきたいと思います。
  135. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私も現実はなかなか安易でないと思っておりますが、よその国のことじゃなくて、日本の国家公務員の現業のグループの三公社五現業ですから、十分、関係閣僚会議では前向きでひとつやるということでなくて、いま私が言ったようなことが将来に向かっての一番いい解決の道ですから、そのとおりひとつ御努力をいただくということで、いまの大臣の答弁を私はそのように理解いたしますが、よろしゅうございますね。  それから、小沢政務次官、やはり関係大臣の相談の中では大蔵省が一番たちが悪いのです。この点については、いまあなたが御答弁なさいました趣旨に基づいて、私がまたお尋ねをした趣旨に基づいて、いま運輸大臣がおっしゃったことばを十分銘記していただいて、やはり大蔵省関係の態度もそのような方向でひとつおとりまとめをいただくということをお約束いただけますか。
  136. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 私も、山田先生承知のように、山田先生と一緒に社会労働委員会ではずいぶん長く労働問題その他を議論してまいった一人でございますが、しかし、お考えおき願いたいのは、私ども大蔵省は、おことばではございますけれども、一番悪者になっているようでございますが、これはなぜ悪者になるかといいますと、やはり三公社五現業というような大きな、しかも、場合によっては、その収支というものの改善のために国民経済全般から見て相当大きな影響を持つようなもの、あるいは国民に相当大きな負担がかかってくる場合のことも考えなければいけない、やはりそういうような点を考えてきますと、御承知のとおり、給与総額というものを増加するには、たとえ流用であっても、あるいは予備費の使用によってまかなえるようなものでありましても、給与総額全体を増加するような必要がある場合には、当然予算上、資金上不可能というようなことにいまのたてまえではなっております。そうなれば、それはいかに団体交渉といいますか、当事者間においてそういうようなことをやろうと思いましても、それはやはり国民経済あるいはまた国家財政全般に及ぼす影響の非常に大きな場合には、国民経済なり、国の予算を審議をする国会の予算上の審議権というものとのからみ合いにおいて、私どもとしては、ただ単に大蔵省の、政府としての立場でこれを簡単に云々するわけにいかないと思うのでございまして、そういう点から考えますと、私はお立場もわかるし、言うこともわからないことはないのですけれども、ただ、ここで大蔵省がおっしゃるように、十分前向きにあなたのおっしゃる線に沿って、その限りにおいては、従来と違ってあまりチェックしないで、大いにひとつ尽力をいたしますというようには、私はどうもその勇気が出ないわけでございまして、これは大蔵省が持ちます責任といいますか、そういう立場上やむを得ないものと御了承願いたいのでございます。  ただ、もう長い間この点がかかって論争点になっておる点でもございますから、そういう点は十分理解をしているということだけはここで申し上げますけれども、いま運輸大臣がおっしゃったようなものまで――私も、もちろん最高責任者でもありませんので特にそうかもしれませんが、十分問題はわかるという程度で御了承願いたいと思います。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 関連して。  政務次官は、この間私が大蔵大臣に質問をしたときは同席しておられましたか。そのことからちょっと。おいでにならなかった……。
  138. 小沢辰男

    ○小沢政府委員 はい。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 おられなかったですね。――この間私、この問題を大蔵大臣とやりまして、まあ、ちょっと適切でない表現もありましたけれども、大蔵大臣はこういう答弁をしているわけです。これは大橋さんにも問いていただきたいのですけれども、私、昨年実はこの問題を当委員会でやりまして、当時の橋本官房長官とそれから大蔵大臣と、そのときは郡郵政大臣にもおいでいただいてちょっと議論をしたのですが、まず、ずっと見ておりますと、調停の段階で私は話ができてもいいと思うのですが、実際はいつでもできないのです。その結果、仲裁へどうしても持ち込むというのがいまの公労協の現実です。仲裁ということになると、これはもう労使間の話し合いの問題ではなくなってしまうわけですから、本来的には労使間の話し合いのどこかで結論が出るほうが私はやはり公労法のたてまえからして望ましいと考えておるわけでありますが、何とか調停の段階で問題が解決できないかというのが実は私の趣旨なんであります。そこでは、確かに、実は各企業の経理内容がいろいろ違いますから、単に団体交渉ということだけではやはりなかなか各企業間における問題も出てきましょうからむずかしい問題もありましょうけれども、調停段階で、ある程度その企業間の経理を含めて煮詰まってきましたものに対して、公益側の意見というものがそこへ出て、そして調停でまとまる、そういう公益側の意見をもとにして、労使間がそこで折り合って話をするということが、私は調停という問題の取り扱い上の問題ではないのか、こう考えておるわけです。そこらを含めて、実は大蔵大臣に対しては少し改善をする余地があるのじゃないかという問題提起がしてあるわけであります。そこについては、ちょっと表現が適切でなかったのですが、当初どのくらいルーズにすることができるかという点を含めてひとつ検討しようということで、実は十八日の大蔵委員会で大蔵大臣は約束をいたしておるわけでございます。  ですから、私は、やはり現実の行政上の問題として、確かに国鉄なり電電なり郵政なり――まあ、ことしを見ますと、昨年値上げをいたしておりますから郵政は七・二%の財源があるということを当委員会で昨年郵政大臣がお答えになっているわけです。七・二%の原資が三年間あります、こう答えておるわけですが、しかし、それは三公社五現業いろいろ経理内容が違いますから、そういうことになろうとは実は思いません。ですから、そこらはやはり大蔵省が公益側とも相談をしながら、公益側として仲裁で出るであろうものを、公益側の意見として調停段階に出され、それに関して労使が歩み寄りをして、そして調停で話ができるということは、現実の行政運営上の問題としても行ない得ることじゃないのかという考え方に立って、取り扱い上ひとつ考えてもらいたい、こういうことを大蔵大臣に申し上げているわけでございます。そうしたら大蔵大臣は、検討しましょうということをお約束をしていただいておりますから、まあ、小沢さん、そのときおいでにならなかったからそこまでいってないというふうに御理解であったと思うのですが、その点は実は総務長官も御出席の上で議論がしてございますので、ひとつ運輸大臣も関係閣僚会議の中で、何とか本年段階でも、そういう調停の際において、公労委の取り扱い上の問題ということで少し前向きに考えていただければ、私は、公労法の法意も体しながら、行政上もあまり無理のないかっこうで、そして財政当局としての大蔵側の意向も反映でき、公益委員の側の意見も反映ができる問題の処理のしかたがあり得るのではないかと考えておりますので、その点、ちょっと申し上げておきますから、ひとつ十分御配慮の上、本年度の問題については善処していただきたいと思います。
  140. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いま堀さんのお話で、小沢さん、よく気持ちはわかるが、なかなかむずかしいというけれども、事情がよくわからなかったというふうに御理解いただけたと思うんです。調停の段階で、やはり労使双方の意見が出るところで仲裁段階のようなまとまりが生まれることが一番いい、そういうことで、調停段階でひとつ労使双方が円満にまとまりながら、資金上、予算上仲裁と同じような措置を受ける、こういう段階の作業を、特にことしの場合に生まれていくように、運輸大臣も前向きで行くべきものだとおっしゃっているのですから、大蔵省も、大臣がそれに対して検討を約されておるし、そこらあたり、それを含んでいただいて、この月末ごろ一斉提訴されますから、できるだけ早い時期にそういう具体的な問題を御相談いただいて、申し上げたような趣旨でことしは前進をしていくように特段の御協力をお願いしておきたいと思います。大臣、ありがとうございました。  所得税関係に入りたいのでございますが、時間もあまりございませんので、小さな問題でございますから、一つだけ農林漁業金融公庫の関係についてお伺いしておきたいのでございます。手続の簡単な問題だけでございますから、ひとつ、簡潔にお答えいただきたいと思います。  実は、構造改善事業がずっと僻地山村に進んでおりまして、かてて加えて土地改良事業がずっと進んでおります。これに対して金庫のほうから貸し付けをしておるわけでございますが、地方で問題になっておりますのは、金庫からの金を借りる場合に、土地改良区あるいは農協が受ける場合は農協理事が連帯保証人でいいんだ、こういうふうになっておるようでございます。ところが、実際の運営では受益者全員が連帯保証人にならなければなかなか許可がおりない、こういうことで実際の作業の進捗がはかばかしくない、こういうことで若干トラブルが出ておるようです。一体どういう行政措置をなさっているのかお伺いしておきたいと思います。
  141. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいま山田先生の御指摘の、いわゆる土地改良事業をいたします場合に、土地改良区でございますとか、そういう団体の役員、理事でございますか、理事の債務の保証を実はとっておるわけです。実際問題としてなかなか物的担保というわけにまいりませんので、現在では土地改良関係はほとんど九五、六%ぐらい保証のみで貸しておる実情でございます。  そこで、保証のとり方でございますけれども、ただいま先生御指摘のとおりに、理事の保証でもって足るというのが現実にはもうほとんど大部分でございます。ただ、ところによりましては、理事の保証のほかに、受益者の代表と申しますか、それぞれの地区のいわば代表的な人がおります。それぞれ資産あるいは信用のある人を若干とるというケースもございます。しかし、受益者の全員を保証人にとらなければ貸さないというようなケースは、もうほとんど――むしろ希有の例でございます。中にはその土地改良区のそれぞれの事情によりまして、あるいは場合によってはそういう形をとらざるを得ないケースもあると思いますが、しかしながら、これは決して好ましいことでは実はない、できれば理事の保証のみをもって足る、私どもとしては大体そういう方向で実は業務の運営を指導しておるわけであります。したがいまして、先生の御心配になりますようなケースは、よほど例外的なケースであろうかと思いますが、これも実情に応じて極力そういうことなしにいければそれにこしたことはない。それはケース・バイ・ケースで、よく実情に即して処理をしてまいりたい、かように思います。
  142. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 好ましくない、希有のことだというお話ですが、実際にはチェックする出先が、岡山と、九州は小倉ですか、ありますね。小倉あたりの指導の中にもかなり多くあるようでございます。それはある意味では、御存じないかもわかりませんが、たとえば市なり町の段階で、町が償還の助成をやるのだという町なり市の議会の決議をつけて出しても、受益者全員判をつけ、保証人になれ、こういうふうな何か事情があるかもわからないというふうなことに受け取りやすいほどのきびしさですが、別に何もないようなお答えのようですが、これらは一ぺん岡山なり小倉あたりの出先を調査いただきまして、また御返事をいただいたらけっこうだと思います。そういうことをひとつ行政の中で的確に生かしていただきたいということをお願いしておきます。
  143. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまのお話では、九州は実は福岡に支店がございます。中国筋は岡山でございますが、そこで現実にケース・バイ・ケースで見ていく場合に、たとえば町あるいは市の損失補償契約がついておるという場合もままあると思います。ただ、これはいわゆる純粋の元利補給契約をしておるところは非常に少ないわけでありまして、すなわち、本来の受益者が負担すべきそういう分担金なり何なりというものを、まるまる元利合わせて町が負担してあけます――一種の補助金でございますね、そういう契約をしておるところは実際に非常に少ないので、むしろ損失補償契約で、万一払えないときには町なり市が見ましょう、そこはやはりあくまで受益者が負担すべきものである、ところが、いろいろな事情があって、受益者が一〇〇%負担し得ないというケースがあるから、そこは村や町が最後の後詰めとしてめんどうを見ましょうという仕組みのものが大体多いわけです。したがって、そういう場合には、やはり本来の受益者として納めるべきものは納めるという体制はとらなければなりませんので、それに応じた仕組みはこちらとしても考えていかなければならない、ただ、おっしゃるように、それがあまり行き過ぎになって、そのために本来進めなければならない土地改良事業そのものの運営に支障を来たすというようなことがあっては、これは言ってみれば仏つくって魂入れずということになりますか、たらいで赤ん坊を洗って、たらいの湯を流したら赤ん坊も流れた、こういうことではいけないと思います。そういう意味で、先生の御指摘は、十分現地につきましても調査をさせていただきまして、いろいろそういう行き過ぎのことでももしあるようでございましたら、それは十分改善をしてまいりたい、かように思います。
  144. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 実際には私も調査をしてみようと思いますけれども、かなり行き過ぎが出ておるようですから、岡山と福岡の関係調査をしておいていただきたいと思います。  それから、これは償還はいま十年以内でございますね。
  145. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 土地改良の分でございますか。――土地改良はいま非常に長期になっておりまして、ちょっといま私もはっきり覚えておりませんが、二十年近いものでなかったかと思います。――土地改良は二十五年以内でございます。大体二十年から二十五年の間において契約をいたしておる例が大部分でございます。
  146. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 わかりました。  所得税関係に入るひまがなくて時間が切れたのですけれども、二十八日に……。
  147. 内田常雄

    内田委員長 次に、広瀬秀吉君。
  148. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最初に、主税局長にお伺いしたいと思うのです。  昭和四十二年度税制改正によりまして約八百億円の減税がある、こういうわけでございますが、これは私は非常に少ない数字であろうと思うわけでありますが、この点どうお考えですか。
  149. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、昭和四十二年度だけ見ますれば、自然増収と比べまして減税のほうに向けられた割合は少ないというふうに見えるわけでございます。  御案内のように、減税の趨勢というものは、私は昭和二十五年から三十年ぐらいまでは非常に高かったと思うのでございます。自然増収のうち減税に充てられた割合は、六三%ぐらいは三十年ぐらいから充てられたわけでございます。しかし三十年からだんだんと歳出に対しますところの要請が強くなってまいりまして、三十一年から四十年度までは大体二八%が自然増収のうち減税に充てられた割合でございます。三十五年でございましたか、税制調査会が自然増収の二〇%を回せと言ったのは、二十五年度から三十五年度前の情勢を反映したかと思います。このような関係できたのは、御存じのように、歳出の需要が強くなってまいりまして、減税よりも強い要請になってきたことを示すものだと思うのでございます。それ以前は私は減税のほうがより魅力ある政策であったと思うのでございますが、だんだんと所得税の負担が平常化してまいりますと、歳出増加に対する要請が強くなってくる、こういうことが言えるかと思います。しかし、それでも、今年度こそ自然増収の割合のうち一〇%でございますけれども、昨年度は、当初予算におきます自然増収の千百九十億円に対しまして、国税におきましては二千九十億円減税いたしました。言うなれば、自然増収以上の減税をしたわけでございます。その割合は一七五・六%になりまして、四十一年、四十二年度を合わせてみてどうであろうか、そういった意味で見ますと、三四%ぐらいが自然増収に向けられる、したがいまして、去年は自然増収はないにかかわらず、公債発行を契機といたしまして減税が行なわれた、その関係減税が多かったのでございますが、今年度はそのお返しをしたような結果減税が少ない、こういうふうに見られるわけでございます。しかしながら、それでも、広瀬先生八百億円と申されましたが、所得税減税中心として考えますと、租税特別措置、これは社会党が一番言っておられますように、これも増収の要因に入っておりますために、差し引きがされ、あるいは印紙税、登録税が調整されたというために八百億円になったのでございます。減税規模としては千百三億円と考えるべきではないか、かように考えております。
  150. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省から出た資料でいま説明されたことはわかるわけなんですが、そうしますと、去年は自然増収千百九十億円に対して二千九十億円やった、ことしは去年やり過ぎたからそのお返しで足りないのだということにしか聞こえないわけであります。今日までの軽減割合が三十二年度からここにずっと数字が出ていますけれども、いわゆる経済全体についてどういう背景があるからことしはそういうことにしたのだというものなしに、ただ、去年少しよけいやったからということではないだろうと思うのですね。経済全体の見通し、これからの経済財政政策をどうすべきか、そういう政策意図というものがやはりこういう数字にあらわれていると思うのですが、そこらあたりひとつ説明してもらいたい。
  151. 塩崎潤

    塩崎政府委員 減税の規模がこういうふうにきまった背景を言っておられると思いますが、先ほど歳出増加を少し強調いたしましたが、そのほかに、いつも私どもの大臣が言っておりますように、最近の情勢のもとでは公債を減らすべきであるということがもう一つ考えられるわけでございます。そういった関係で公債を減らしたことからまた減税が少なくなったということも言えるかと思います。さらにまた、景気情勢から見て、減税経済を刺激するという面も考慮すべきである、こういう点も減税の規模を決定する要因になったことはいなみ得ないと思います。
  152. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣がお見えになりましたから、いま主税局長にことしの減税規模は非常に小さいではないかという質問をしたのですが、大臣の考えはいかがですか。七千三百五十三億円自然増収を見込みながら総体ではわずかに八百三億円、所得税では一千億円程度減税だということですが、これは非常に規模が小さいではないか。いま主税局長は、所得税は一千億円になっているじゃないかということを言われたわけでありますが、所得税ほど今日国民大衆にとって重いんだと言われている税金はないわけであります。みんなそういう点で所得税はもっと課税最低限引き上げてもらいたいというような要求が非常に強いわけですが、それにもかかわらず、十万円程度課税最低限引き上げたということはありますけれども、そんなことではまだまだ所得税が高い、重い、こういう感じ国民大衆は全般的に持っているわけであります。しかも、これだけ自然増収が見込まれている中でそういう程度であったということは、どういうように説明されるのですか、それを伺いたい。
  153. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 どうしても所得税減税は私どもはある程度やりたいということで、いま局長が言われましたように、どの程度減税をやるかという減税の幅はやはり公債の発行額ともからむ問題でございますが、ことしの自然増収がもっと多く見込まれるんじゃないか、まずそういう問題でございますが、昨年のこの減税のはね返りが一千億円くらいはございますので、事実上七千三百億円の自然増を見るということは、もし去年のあの減税をやらなければ八千億円以上の自然増があるということになりますので、そういう点から考えましても、あの程度の自然増が期待される最小限というわけにはいかぬかもしれませんが、大体妥当な自然増の数字だろうということになりますと、このいまの公債をこういうときに多く発行するか、減税の幅を大きくするかということを考えますと、私は私自身の考えは、こういうときはあまり減税をすべき時期ではないというふうに実際は考えておりましたが、しかし、所得税は確かに高いので、こういう時期であっても、所得税減税はあのくらいのことはしなければならぬということからこの減税の幅をきめたわけですが、ほんとうなら、私はことしは減税の年ではないという考えを持っておりました。
  154. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 経済企画庁にちょっとお伺いしますが、国民総生産は四十二年度は四十一年度に比較して大体どのくらい伸びると想定されますか。
  155. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 四十二年度国民総生産は、先般閣議できめました四十二年度経済見通しによりますと、名目で一三・四%アップと見込んでおります。
  156. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 四十二年度予算編成の当初に見込んだ数字幾らですか。
  157. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 十二月段階におきましては、一二、三%ということで幅をつけて見ておりました。
  158. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 民間設備投資はどのくらい伸びるという、予算編成の基礎になった数字と現在の見通し、それから鉱工業生産の伸び率、これをいまと同じように二つの時期であげてください。一番新しい、たしか三月十三日だと思いますが、そのときに発表したものと、一応予算編成の基礎になった数字のズレというものを明らかにしてください。
  159. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 御承知のように、この見通しにつきましては、十二月段階で一応閣議了解を得、さらにその後の数字を見まして、最終的な数字は三月の十三日に閣議決定したわけでございまして、いま言われましたものは、民間の設備投資につきましては、十二月段階では一二%程度というふうに見ておりましたのを、閣議決定の段階では一四・八%という数字に直しております。それから鉱工業生産のほうは、十二月段階では一三・五%という数字を一四%というふうに直しております。
  160. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま経済企画庁が明らかにした数字を前提にしてみますと、これは自然増収七千三百五十三億円というのは、やはり十二月の予算編成の当初の見通しでそうなっていると思います。そうではないですか。最も新しいものが加味された数字ですか。
  161. 塩崎潤

    塩崎政府委員 最も新しい数字による見通しでございます。
  162. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省の見通しは、それではそういうことで七千三百億円の自然増収を見通したといたしましても、現在、当初予定した経済指標というものを大幅に上回るというような状況になって、経済雑誌などをあれこれ調べてみますと、あるいはまた民間の銀行筋だとか企業筋等で予定をしております数字などを見ますと、これは企画庁がいま発表した数字よりも、民間設備投資でも、あるいは鉱工業生産の伸びでも、国民総生産の伸び率ども、非常に大きい数字が出ているわけです。そういうような事態を考えますと、この最も新しい数字を実は使ったと言っておられるけれども、おそらく七千五百億以上の自然増収というものは、これはもう出ているのではないか。ある調査によりますと、一兆円はおそらく伸びるのではないかというようなこともいわれておるわけであります。そういう中において、いかにも今度の減税幅が小さいわけでありまして、大蔵大臣が、減税はことしはやるべき年ではなかったということを言えば身もふたもない話になってしまうわけですが、そういう点で、これは将来の見通しでありますけれども、これを絶対こえない、自然増収はこえない、こえるような事態はあり得ないと確信をもって答えられますか。その点、はっきりお伺いしたいのです。
  163. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、先ほど申し上げましたように、企画庁の最近の経済見通しの数字によりまして租税及び印紙収入予算の見積もりを立てております。私どもは、これが決して過小とも思いませんし、過大とも思っておりません。適正なものだと思っております。しかし、見通しでございます。いつも特に当初予算とその決算とは相当開きが出てくることはもちろんでございますが、その原因の大部分は、いま広瀬委員御指摘のような経済情勢の変化でございまして、経済情勢の変化がかりに見通しどおりにいかなければまた違った数字にもなりましょう。したがって、それによって変わってくるかと思いますが、いまのところでは私はこれが唯一のよるべき方法ではないか、かように見ております。
  164. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣にお伺いしますが、この七千三百五十三億円という自然増収見込みは、少なくとも五百億円なり一千億円なりという数字で上回るようなことになれば、減税規模をもっとふやす考えがありますか。もしそういう事態があったとしたらば、そういう気持ちがありますか、年度の途中であっても。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の考えは、ことしのような経済情勢のときは、いま申しましたように、なるたけ減税をやらない、そして公債の発行額を切るということが本筋ではないか、こういうふうに思っておりますので、途中で若干の自然増があるからといって減税の幅を広げるということは、ことしはやりたくないと思っております。
  166. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 ことしのようなということを言われるわけですが、ことしのようなというのは、どういう意味でございますか。
  167. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、不況克服のためにフィスカルポリシーを行なった、その効果がやはり出てきて、経済の基調が非常に強くなってきた。その年でございますので、今度はこれを行き過ぎないようにするというためにはどういう政策をとったらいいかと申しますか、経済をできるだけことしは刺激しないで安定成長をさせようということであらゆる方策をとるべきときだと思います。そういう意味から申しますと、ことしは公債をたくさん出して減税を多くするという年ではない、こういうふうに私は考えております。
  168. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 フィスカルポリシーの年だというようなことを言われたわけでありますが、景気過熱を心配しなきゃならぬというような事態、そういうことを意味するわけですか。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 経済の基調が非常に強いということは、あらゆる経済指標によっても明らかになっているときでございますから、私は、ことしはやはり財政運営を相当警戒してかかるという必要があるんじゃないかと思っております。
  170. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題は、将来の見通しの問題ですけれども、自然増収がもっと上回る可能性は十分にあるということと、それに比べて、例年になく減税規模というものが少ない、国民はこういう減税では納得をしない、こういうことだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、いまその国債との関連というのは絶えず答弁の中でも出てくるわけでありますが、去年から、厳密にはおととし、四十年度の補正予算から公債発行に踏み切られてきたわけですけれども、国債発行と税金、この二つがいまのところ財政資金調達の一番大きいものでございますが、この国債発行下における税制、国債と税制というものはどういう関連にあるか、そういうことについてどうお考えでしょうか。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたような関連でございまして、私は、もし自然増というものが予期したよりも多くなったというときには、これは減税ということではなくて、自然増が多くなった分はむしろ公債の発行額を削減するというふうな形でこの中立的な財政運営をやりたい、そういうふうに思っております。
  172. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国債発行と企業の資本蓄積という関係はどういうことになりますか。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 資本の蓄積の中から、公債という形でこの蓄積を活用するということでございますので、これを日銀引き受けにさせるというようなことだったら問題あると思いますが、市中消化という原則を貫くのなら、これはそれでいいんじゃないかと思っております。
  174. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最後のところがよく聞きとれなかったのですが、やはり国債を発行するということは、日銀引き受けということを前提にしなければ――そして市中消化、企業の余裕金といいますか、そういうもので買わせるという、いまそういうことでいくんだという説明を絶えずなさっているわけですけれども、そういう方向でいけば、企業にとっては、資本蓄積という立場から考えれば、公債を発行していくということは、資本蓄積に対しては阻害条件になる、こういうように理解してよろしいですね。
  175. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、資本の蓄積が公債発行によって阻害されることはないと思います。
  176. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これはとにかく紙を買うわけでありますから。これは考え方によっては、やがて将来にわたって国債も企業が手持ちすれば、当然資本の一形態にはすぎないかもしれぬけれども、いわゆる資本という面では、中山さんあたりも指摘しているように、これはやはり資本蓄積にとっては、これに対して水をかける機能を持つというように言われているわけですが、その点、どういうふうにお考えですか。質問の趣旨がわからなかったかと思うのですが、そういう趣旨でいかがですか。
  177. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ちょっと申しわけございませんが、もう一ぺん……。
  178. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もう一ぺん申し上げますが、いま、もう国債と税制というのは、国庫歳入を考える場合に切り離せない形になっている事態が今日出ているわけです。国債の財政歳入に占める比率が大体二八%、あるいは一六%をこえるというような事態になっている。この問題と、税制の機能と国債の機能というようなものを、経済学的にといいますか、財政学的に考えた場合にいろいろある。しかし、これはあとで聞こうと思っていたのですが、税制全体は、特に特別措置等において、いま資本蓄積ということを非常に重点に考えられているわけですね。そのことと、今度は、国債はやはりそういう面では、市中消化をはかるというような形を通じて、逆に資本の蓄積を妨げるといいますか、妨げるという強いことばで言っていいかどうかわかりませんけれども、少なくとも企業にとって、その資本蓄積という立場から見れば一つのマイナス要因になる、ストレートに日銀引き受けをやらない限りはそういう形になるのではないか、そういうところの矛盾をどう調整するかというようなところに、今度の減税規模の問題なんかも出てきたんじゃないかというように思うわけなんですが、その点いかがですか。
  179. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 民間の蓄積資本を公債という形で活用する、そうして、これを公共投資に用いるというようなときに、もし国の公債を多く発行して、民間資金の蓄積を国のほうが多く吸収し過ぎて民間の必要な資金を圧迫するということになったら、民間の企業の発展を阻害するという問題は出ると思いますが、そうでなくて、この民間資金の吸収のしかたが節度を持っているという場合には、これは別に民間の企業の資本蓄積を阻害するということにはならぬだろうと思っております。
  180. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国債を、昭和四十年度あるいは四十一年度というのは、不況に対する景気刺激というようなことで、財政主導型の経済成長をはかろうというような立場からやったと思うのですね。そういうものが昨年の性格だとすれば、今度の国債発行というものは、それじゃどういう性格を持つのか、こういう点がいまの大臣の答弁では疑問になってくると思うのですが、いかがですか。
  181. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度の公債発行の意義は、日本の経済成長の不均衡というものを是正するためには、おくれた公共投資、社会資本のおくれというものを取り戻すためにある程度の資金投入をしなければならぬという財政上の需要を一応私ども考える。で、その需要を満たすための方法として、これを税の増収だけにたよるかどうかということを考えますと、さっき申しましたように、やはり所得税あたりの減税の必要があるという以上は、この必要な財政需要を全部税収で実現するということはできない、やはり国民の蓄積を活用するという、公債発行という手段にある程度よらざるを得ないというふうに考えて、その発行額をどの程度に調整するかというのが問題であったわけでございますが、すでに昨年のように公債を発行してこれでやってきました以上は、今年度急速にこれをやめるということは実際上の問題としてできない。必要な財政需要を全部税負担で実現するということはできないということから、今年度も引き続き国債発行の必要があるということを考えて公債発行をするということでございます。
  182. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 公債発行というのが、これはここ二、三年来のものに限って見れば、当初は公共事業に対する建設投資のためには必要なんだというようなことを言い出したわけであります。しかし、たとえば昨年七千三百億円出したときにも、それじゃ公共事業費がどれだけふえたのかというようなことを考えてみると、千億かそこらしかふやしていない、それにもかかわらず七千三百億円出している。あとの六千三百億円は一般財源調達の方法としての税金の問題と当然かかわり合いを持ってきて、一般経費にさかれているじゃないか、こういうような理論も当然成り立つわけだし、ことしの予算においてもやはりそういうことが言われるわけですね。そうなってくると、一体これからの財源調達の方法というものが、公債発行をどんどんふやしていくのか、それとも適正な、公平な税制を通じながら税金収入によってほとんどをまかなっていくんだという健全な姿でいくのか、そこらのところがどうなんだという疑問に当然ぶつからざるを得ないわけですね。建設だ、建設だ、だからその建設したものが償却されるころまで長期にわたって返済すればいいんだ、それも一つの筋かもしれないけれども数字的にはそういうふうになっていないではないか。  そうすれば、これからの方向として、国債をどんどんふやして、減税財源なんかまでそれからやるのか、あるいは、やはり税金中心に運営するのかという、そういうような方向というのは、一体どっちなんだということが問われなければならぬと思うのです。そこらのところはどういうお考えでしょう。
  183. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは経済情勢そのほかによることであると思いますが、原則としては、適正な税制を通じて公債の依存度はもう年々減らしていくという形で運営すべきだろうと思います。
  184. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 公債発行はできるだけ減らしていく、これは絶対間違いないですか。
  185. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう当然そうすべきだと思っております。
  186. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 五時半ごろまでということですから、時間があまりないので、したがってその問題はこれ以上ここでやりませんが、いま答弁された方向というものをはっきり確認しておきたいと思います。  今度はこまかい問題で主税局長にお伺いをいたします。  租税負担率の問題ですが、ことしは国民所得に対してどのくらいになっていますか。これを旧指数の場合と新指数の場合でお答え願いたいと思います。
  187. 塩崎潤

    塩崎政府委員 新指数と申しますと、おそらく国民総生産の新しい計算のしかただと思いますが、新指数で私ども計算いたしまして、四十一年は補正後は一八・三%、四十二年は減税後でいまのところ一八・五%というふうに見ております。
  188. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 旧指数ではわかりませんか。
  189. 塩崎潤

    塩崎政府委員 旧指数では四十二年はやっておりませんが、四十一年は旧指数で二〇・二%でございます。
  190. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 かつて税制調査会で、租税負担率は二〇%程度が適切ではないかという答申があったわけですが、この租税負担率というものを大体尊重をしていく立場に立ちますか、その点いかがですか。
  191. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この点につきましていろいろと御論議がございますけれども、長期税制のあり方についての税制調査会の中間答申では、所得がだんだん伸びてまいりますと負担率も若干は上がってもやむを得ない、こういった考え方が示されております。しかし、現にとっております減税計画では、そんなに上がるようなことにはなっておりませんし、やはり所得税減税についての努力が行われますればそんなに上がるようなことはない、現在よりも二ポイントぐらい上がるというのが、少なくとも五年間ぐらいの減税後の計画を実施した場合の見通しでございます。
  192. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 二ポイントというのは、大体二二%ぐらいまでなるだろう。その場合の所得水準はどのくらい伸びると見ているのですか。
  193. 塩崎潤

    塩崎政府委員 毎年一二%ずつぐらい伸びていく計算でございます。
  194. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これは将来の見通しですから、これ以上論争はいたしません。ただ、租税負担率の問題は、一般論として、所得水準が上がれば若干は上がることもやむを得ないだろうというようなことにはなるけれども、やはりこの二〇%というものはかなり重要な意味がある。したがって、これから所得水準が一二%ずつはたして上がるかどうかもわかりません。そういうようなことで、これはやはり一つの重要なめどとしていっていただきたいということだけこの際申し上げておきたいと思います。  次に、こまかい問題でお聞きしたいのですが、所得税課税最低限を七十三万九千円何がしということできめられたわけですが、これの根拠をひとつ言っていただきたい。
  195. 塩崎潤

    塩崎政府委員 けさほども横山委員から、独身者についての課税最低限根拠とおっしゃられたのでございます。課税最低限ということは、生計費に密接な関係はございますが、生計費だけできまるものではない、多分に、この程度所得階層から上の方々から所得税のような分配機能の強い税金を徴収するという一つの目安だと思うのでございます。  私どもはその根拠といたしまして、生計費と密接な関係があるということから、既往におきまして、いわゆる基準生計費とか標準生計費とか申しまして、私どもの内部だけで、これがはたしてどのような関係になるかということを計算してみたことがございます。それが昭和四十年でございましたか、例の一日百六十七円四十八銭ということで騒がせまして、去年も同じような方式でやりますと百八十六円八十七銭、これは成年一日二千五百カロリーの飲食量を摂取する場合の食料費でございますが、こんなような検算をもとにして計算したことがございます。しかし、それが唯一の根拠ではございません。けさほど、それでは従来の方式を踏襲して七十三万九千五百円がいいかどうかひとつ検討するから出しなさいというお話がございましたので、近くこれを出す予定でございます。そういった意味でひとつごらんいただけばけっこうでございます。
  196. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 百六十七円四十八銭というのを実は頭に置きながら質問したわけですが、今度これをきめる場合には、これをどのくらいに修正してやったかということについては、その試算はしてないと了解していいのですか。
  197. 塩崎潤

    塩崎政府委員 去年も私どもが、世帯構成別にいわゆる基準生計費といいますか、それと課税最低限との関係を比べまして、余剰もあるということから、今回のように課税最低限平均一六%、独身者につきましては二一%というふうに上げてまいりましたような場合には、そんなに厳密な計算をしなくても上回ることは必至だろうということで、厳密な計算はいたさない、また、すること自体、いろいろな意味におきまして――主税局国民生活のメニューをつくるというようなことで御非難も受けたことでもございますし、私は大ざっぱな計算で事足りる、こういうふうに考えておりましたので、つくっておりませんが、いままでどおりやるならばこういうことになる、消費者物価の四十一年、四十二年度の上がりを推定いたしますれば、その関係では出ますので、そういうラフな計算方式で、先ほど御要求になりました横山委員資料提出してみたい、かように思っております。
  198. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 昭和四十年の段階で百六十七円四十八銭を出した、この考えはやはりいまでも残っているのじゃないかと思います。  それでは、七十三万九千円というものの理論的根拠は一体何なんだ。やはり基準生計費というようなものを一つの――これはあの段階において確かに悪評さくさくたるものであった。刑務所の給食費に近い数字だとすらいわれたわけであります。私どもは年来、標準家族においては百万円までは税金を取るなということを主張してきておるわけです。自民党の諸君の中にだって、今度の選挙を通じてその公約をしてきた人がたくさんいますよ。これは現に早期実現のためにということで、すぐにでもやるようなことを言っておった人もあるのです。これはやはり国民大衆がそういうことを望んでいる。一番捕捉率の高い、のがれようのない、特にサラリーマン給与所得者、こういうものにとっては、当然そのくらいのものがなければ息もつけないというようなことであって、特に生活必需物資の値上がりというものは、これは消費者物価指数にあらわれないもっと大幅なものであって、エンゲル係数なんかも去年も上がった。ことしはまあ〇・一か二ぐらい下がったと言っているけれども、そんなものは数字でどうにでもなるのであって、そういう点で主税局長にもう一ぺんお伺いしますが、理論的な根拠というものはない、主として財政的なやりくりからこういうものに押えた、こういうように了解していいのですか。
  199. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、私ども検算資料といたしまして、生計費は当然頭に置いて考えております。そういった意味におきましての生計費、これは非常にいろいろな考え方がございますけれども、この間までやった方式で考えてみましても、その後の消費者物価の上昇を織り込みましてもゆとりがあると考えておりますものですから、例の厳密なる一日二千五百カロリー、昼からイカのさしみであったというような献立までつくってこの課税最低限をいま吟味する必要はないという意味で、私どもは特につくっておらないという状況でございます。
  200. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この七十三万九千円をとにかくきめられたわけですが、その中で生計費というものは一体どれくらいに見ているのですか。ラフなものであってもいいから、どのくらいに見ているのだ、そしてどれだけの余裕がこの中から出てくるのだと見ておるのですか。
  201. 塩崎潤

    塩崎政府委員 いずれ資料を御提出申し上げることになりますけれども、四十一年度税制改正に出しましたいわゆる基準生計費、これに四十一年の消費者物価の上昇を考え――これは四十年でございましたから、四十一年度消費者物価の上昇率と四十二年度消費者物価の上昇率の見込みがございます。これをかけてみまして出しますと、六十三万七千七百七十八円になります。改正案による課税最低限の金額は七十二万一千八百九十九円でございますから、差額が七万四千百二十一円ということに一応見られるわけでございます。
  202. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この六十三万七千円何がしというのは、どこから数字をとられたのですか。
  203. 塩崎潤

    塩崎政府委員 これは四十年の家計調査の消費支出調査から見まして、その金額をとりまして、その献立は例の百八十六円八十七銭といわれたもの、これをもととして食料費を出し、それを四十一年のエンゲル係数で逆算いたしまして、消費支出金額を出しましたものをもとといたしまして、これに先ほど申し上げました四十一年度消費者物価の上昇率、それに四十二年度で上昇する見込みの四・五%をかけましたものでございます。
  204. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、やはり基礎はこの前出したあの百八十六円八十七銭という、あれが一つ基礎になっている、こういうことは言えますね。それを答えていただきたいことと、それからもう一つは、四十一年の物価上昇率をどれだけに見たか、四十二年度の物価上昇率をどれだけに見たか、この二つを同時に答えてください。
  205. 塩崎潤

    塩崎政府委員 検算資料といたしましては、おっしゃるように百八十六円八十七銭を採用していることは間違いございません。  それから第二に、昭和四十一年度消費者物価の上昇率は五・一%であり、四十二年度の上昇率の見込みは四・五%でございます。
  206. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この五・一%なりあるいは四・五%、こういう数字も、これは途中で指数のとり方を改正しましたね。これを改正しなければ、当然に旧指数の方式を用いれば大体ワンポイントは上がるというのが、これはもう経済学者の常識になっております。そういうような点でも、まさに経済企画庁の見通しどおりにやられることは、これは官庁としてはしかたがないと思いますけれども、やはりそういうものもあるということも十分考えていただかなければならぬと思います。私どもは、所得税は、現在の物価情勢というものを基礎にして、少なくとも標準世帯で百万円までは免税する、これでやると、ほんとうに働く大衆の生活というものが減税によって豊かになるという面が出てくるし、また、最低生活費には課税しないという原則が貫徹されるだろう、こういうように思うのです。  そこで、もう一つ減税規模の問題で、所得税を一千億減らした――たいへんいばったわけでもないでしょうけれども、いや八百億円じゃない、一千億円だ、こういうことなんですが、物価上昇率というものが四・五%におさまるのかどうかという面ではかなりに危惧がある。この問題は経済企画庁にも伺っておきたいのですけれども、米の値段が十月から一四・四%上がる。このことによって国民の負担増というのは大体千二百億円にも及ぶだろうといわれておるわけですね。そうしますと、この減税一千億円というのは、大体において所得税減税とかなんとかに関係のない所得の低い人たち、こういう人たちが非常に多いわけですけれども、そういう人たちにとっては、まさにこれは増税みたいなものになるわけだし、相対的に考えましても、一千億円の所得税減税をやると、一千二百億円の負担増がある。もうそれだけで――政府管掌の健康保険の問題を考えれば、さらに約五百億円、四百九十五億円くらい負担増がある。こういうようなことになりますと、この減税規模というのは、たいへんな減税効果なんというものはほとんど見られない。そういう点で、物価上昇という――これはあとの議論にいたしますけれども、とりあえず物価上昇によって減税額というものが、いわば相殺されるといいますか、スポイルされる限度というのは何%くらいになるか。たとえば四・五%でもけっこうです。四・五%の物価上昇ということで、この減税の、八百億円がそのまま額面どおり八百億円減税になるという姿がどれだけ制限されるかという問題についてお答え願いたい。
  207. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一番最後にお尋ねの、消費者物価の上昇によって所得税減税がどの程度相殺されるかという問題でございます。  これは見方はいろいろございますが、私どもの見方では、消費者物価が上がることによって課税最低限を上げる必要があろう、生計費に対する圧迫ということを考えますと、四・五%として換算いたしますと、約三百億円ばかり減税しなければならぬことになります。しかし、減税規模は千億円をこしておりますので、そういう意味では実質減税ということが言えるかと思います。
  208. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 八百億円というものは――現実に、一千億円という所得税減税は、物価上昇によって三百億円はやはりマイナスされるという形になるわけですね。そういうことでしょう。そうすると、これは総合的に減税額というのは八百億円といいましても、その面ではやはり三百億円くらい減らして、実質的にはもう五百億円になった、こういうふうに了解してよろしいわけですね。
  209. 塩崎潤

    塩崎政府委員 八百億円と申しますのは、広瀬委員御指摘の租税特別措置の整理、たとえば、利子配当については七十億円の整理がございます。それからまた交際費等についての租税が百七十億円ばかりございます。あるいは金融機関の未収利息による増収が六十億円ばかりございます、といったようなことを差し引いたためになるわけでございます。したがって、それは所得税納税者にとって、むしろ減税が多目になった。ただ、八百億円といっておりますのは、ネットの、国民全体として見た場合の減税規模をあらわしておるだけでございまして、所得税納税者から見れば、千八十億円ばかり、千百億円ばかりの減税と見るのが至当でございます。それから消費者物価の影響を考慮いたしますれば、それから三百億円引いた約七百八十億円を私ども所得税の実質的な減税考えたほうがいいと思います。
  210. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまのお答えでいいんです。一千億円減税であるが、三百億円程度は物価のいわば調整分で、一千億円というのは実質的には七百億円に減退をしているように考えるわけであります。  それから、大蔵大臣に今度は別の方向で聞きたいのですが、租税特別措置の問題で、先ほど広沢委員からいろいろ政策効果について質問があったわけなんですが、この政策効果について大蔵大臣は具体的にどういうようにお考えですか。特に、企業の内部留保の充実とかそういうことで、準備金、引き当て金あるいは特別償却とか、いろいろ制度があるわけでありますが、いずれも資本蓄積を援助し、強化するという政策意図があると思うのでありますが、その効果があらわれていると見られますか、それとも数字の上では証明できないという御見解ですか、どちらですか。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は効果はあらわれていると思います。(「数字的に具体的に説明できるか」と呼ぶ者あり)具体的にこの効果がどのくらいあったというこの分析はむずかしいと思いますけれども、しかし、経済政策上必要だという分析に応じて次々にこしらえた措置でございますので、これはそれだけの必要があって措置を置いた以上は、その効果は当然発揮していると思います。
  212. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 わかったようなわからないような答弁をしているわけですが、これらの問題は、通産省あたりから、企業を代表して、特に企業の要請というものがあってこういうものが次々に織り込まれてきたと思うのです。通産省としては、政策当局としてこれがどういうように――特に日本の企業にとって致命的な欠陥は自己資本比率が非常に低いことだということがいわれ、そうして、それを改善するという大きな意図がこれらの制度にはあったわけですが、この制度を実施して以来、自己資本比率というものが――単にそれはかりではないかもしれぬ、そして、その側面からのアプローチだけではないかもしれぬけれども、具体的にどういうように自己資本比率というものが改善されてきたか、そういうことをひとつここでみごとに証明をしていただきたいと思うのです。どうぞひとつ。
  213. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 先生承知のように、開放経済を迎えまして、日本の企業と外国の企業を比較した場合に、一番おくれている点は自己資本比率の問題であろうと思います。もちろん、この改善策といたしまして、税制ばかりにたよるわけではございません。これを改善いたしますためには、秩序立った設備投資をする、効率的な設備投資をするということも非常に大事でございます。そういう意味で、通産省といたしましては、御承知のような資本自由化を控えまして、この点には非常に関心を持っておるわけでございますが、先ほどお話がございました、しからば税制でどれだけの効果があったかという問題でございますが、御承知のように、相当設備はしなくてはならぬというようなことで投資がふえておりますので、三十九年までは自己資本比率は下がっております。その間税制によってどういう効果があったかということは、残念ながら数字的にはつかんでおりません。しかし、特別償却その他の面におきまして合理化投資が大いに進んだということは、確かに効果があった、かように思います。
  214. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまのお答えだと、とにかく必要があり、そうして、これだけの措置をすればこれだけの効果があがるというような、はっきりしたものを国民に示さない限りは、これは単に一種の補助金だ。先ほど主税局長は答弁の中で、この特別措置は大企業ばかりではない、もうすでに中小企業には相当部分、五〇%近くも恩恵がいっているというふうなことを言われましたけれども、それは資本金の五千万円か一億円かという点で問題のあるところですけれども、いずれにいたしましても、この制度というものが設備投資を促進したという答えですか。そういう面では、設備投資がふえたということは数字にあらわれるから、では設備投資を促進するためにこういうものをやったのだ、これが理由になりますか。
  215. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 先生承知のように、通産省といたしましても、税制でいたずらに漫然と設備投資を促進するという考え方は持っておりません。これを特別償却などやりますのは、技術の進歩が非常に早い、あるいは特段な合理化施設、こういうものをある程度促進する、これで世界の経済に対応できるような形へもって行く、こういう意味でやっているわけでありまして、漫然とやっておるわけではございません。そういう意味の効果はあった、私はそのように考えております。
  216. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういう点で、数字では証明できないが効果はあった、こう言われるわけでありますが、しかし、内部留保の充実ということで八つか九つありますが、特に準備金制度、あるいは引き当て金とか、資本構成の是正というようなことですね。いま局長が答えられたのは、特別償却だけにしぼって答えられたようなものですが、こういういま申し上げた準備金とか引き当て金とかいうようなものは、やはり自己資本比率を是正するという、そういうものがあっただろうと思うのですよ。そういう提案が常にいままでにそのつどなされてきたわけですよ。ところが、現在では逆に自己資本比率が非常に落ちているという傾向すら見られるのではないですか。そうだとすれば、その政策効果というのは、税制以外のもっと有効な政策というものにたよるべきであって、租税公平の原則というものを非常に大きくゆがめながらやって、はっきりした証明がつかないようなものであるということでは、国民が納得をしない。まさに最も税制をゆがめ、まさに悪名高き租税特別措置法ということになる。  それから、いま企業局長が言われたような問題点、これは投資を促進することに役に立った。それは景気が好況期で、投資を促進しようという政策意図があるときも続いたし、それから投資を押えたいというときも続いたし、そういうようなことではやはり継ぎはぎではないでしょうか。そういう点をどう説明されるか。
  217. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 私が申し上げましたのは、一般的に、投資を促進するとか、あるいは投資を押えるという意味で申し上げたわけではないのでありまして、先ほど申し上げました部分から申し上げますと、どうしても中小企業とか、あるいは大企業であっても、やはり合理的な投資はせざるを得ない、そういう面の促進、こういうことを申し上げたのであります。  それからもう一つ、特別償却だけの問題ではないんじゃないかという御指摘でございますが、それはそのとおりでございまして、この中には、市場開拓準備金とか、あるいは中小企業構造改善の積み立て金とか、さらに四十一年から始めました資本構成を是正した場合の税額控除等、いろいろあるわけですが、四十一年から始めました税額控除については、われわれのところでまだ実際の実績をつかまえておりません。そういう意味で特別償却の点を申し上げたわけであります。
  218. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣にお伺いしますけれども、どうもこの答弁では私ども納得できないわけです。いわば先ほどの企業局長の答弁からいえば、これはまさに隠れたる、税制に名をかりた補助金を企業に出したと同じことですよ。しかも、それは政府の政策意図で、ことしは引き締めていきたい、過熱を押えて安定成長にのせたいというようなときでもどんどんこれが出ていたというような点を考えると、政策意図から言ったって矛盾があるじゃありませんか。そういうおかしなものを何のためにやっているかといえば、これは大企業に補助金を出すのだという以外の理由はなくなるじゃありませんか。そういうものをいつまで置いておく。ひとつ大臣、整理の方針をここではっきり出してください。
  219. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政策的効果のなくなったものというのはすぐに廃止すべきであって、また新しい政策的な必要に迫られるもので順次新しくしていくという形で、この特別措置というものはどんどん更新されていくのがいいと私は思っています。しかし、いままでの効果があったかなかったかはっきりしなくとも、たとえば資本構成がいま悪い、効果なかったのじゃないかというのですが、これだけの措置をしておってもまだこれくらいの資本構成だということになりますと、これはこういう措置がなかったら、まだいま以上に悪化しているということも考えられます。むろん税だけで言うわけではございません。税以外のいろいろの要素があってのことでございますが、少なくとも税制においてそれだけ見ておるのに現在程度ということでしたら、この措置がなかった場合はもっと悪い状態であったろうということも考えられます。  それからもう一つは、いま矛盾ではないかと言われたことは、私もそう思います。それにはやはりこういう税制には非常に弾力性があっていい。外国ではこういう状態のときは、政府の政令でこれをきつくしたり、ゆるめたり、いろいろする、そのために産業政策というものがあるのだ、日本ではこれがあまりに固定化しておって、弾力的な産業政策がないのだという批評まで受けておりますが、私は、むしろこういう特例措置というようなものは、情勢に応じて政府の力でやめたり、すぐに強化したりする権限を与えるくらいの弾力性があっていいのじゃないかというくらいの気がするのですが、今後はやはりそういう方向にもわれわれ考えるべきじゃないかというふうに考えています。
  220. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣の発言はたいへん問題だと思うのです。それは、これが今日まで続いてきた経過と産業政策全体で、成長政策を強力に進めようという場合と、それから押えようという場合とが、これは波を打ってきたと思うのです。そういうときに、それではこれを弾力的に、押えようとしたときに減らしたか。減らしてないじゃないか。そういうことをやらないでおって、弾力的にやりたい、やりたいと言っても、弾力的どころか、もはや完全な硬直性を持っているじゃありませんか。それでずっとこれが既得権のような形で続いているということは、やはりこれは不当な補助金政策と同じことだということを言わざるを得ないし、それからここではっきりしたことは、やはり政策効果というものは国民に証明することができない。消極的な立場としては効果があったと思うというようなことでは国民全体は納得することは当然できない、こういうことを申し上げなければならぬし、租税法定主義をきめている日本の憲法違反に類するようなことを、たとえ希望であっても言うというようなことは、いささか放言に過ぎるのではないか、こういうように思うわけです。  この点の論争はまたあとで各論に入った場合にやりたいと思っていますが、きょうはっきりしたことは、その効果はわからぬ、証明できないということだけ、責任者がはっきりしたということだけ確認して、大蔵大臣も忙しいところを出席したわけですから、ひとつ大蔵大臣にきょうの収穫として一つ聞いておきたいのですけれども、百万円まで標準世帯無税にする、これは国民の、特に給与所得者を中心にして、二千万に近い、あるいはそれをこえる二千何十万ですか、所得者の数がありますが、もうみんなこれを望んでおるわけです、標準世帯で百万円まで減税してくれというのは。これはどこへ行ってももうそういう声が聞かれる。そういう時期まで来ている段階ですから、けちな、三年計画で八十五万円までしますなんてことじゃなしに、一体いつごろになったら百万円減税をやる気があるのかということを、おおよその時期でもけっこうですから、ひとつこの際御明示をいただきたいと思います。私の気持ちとしては、ここらあたりにはこのくらいにしたいというそのめどをつけていただきたい。
  221. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どものめどは、昭和四十五年までにこの百万円を課税最低限とするということを実現したいと考えております。  それから、さっき放言と言われましたが、もう一ぺん申し上げておきたいと思いますが、私はこれは放言じゃないと思うのです。ということは、かつて私は通産大臣をやったことがございますが、あのときに私が考えたのは、どうも日本では産業政策を通産大臣がやりようがない、大蔵省に一切の産業政策を握られているようで、どうもやりようがないということを非常に痛感したことがございまして、やはり通産大臣が産業政策をそのときどきにおいて適宜に執行するために、たとえば償却についても、これを自分の判断において縮めたりゆるめたりするくらいの力が政府にあったほうが、私はほんとうにいい経済政策を打てるということを考えておりましたが、これはおっしゃるとおり、なかなかこういう委任立法というものはむずかしい問題で、これはむずかしい問題だということは承知していますが、やはりこういうことは今後国会としても考えていいのじゃないかという気がしますので、これは放言ではないと私は思っております。
  222. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最初の答えの八十五万円ということから、それを百万円まで四十五年を目安にしてやりたいという希望を表明されたことには敬意を表しておきます。しかし、これは一年でも早くやるべきであるということを、同時に要請をいたしておきます。  ただ、後半の問題点につきましては、これはやはり通産省自身の政策の貧困といいますか、そういうものを単に税制にだけおっかぶせているということ、それから、あまりにも経済成長のテンポというものを早めているというようなことから、これはなんぼやったって、いまのような高度経済成長をやるからには、そしてまたそれがはね返って、逆に自己資本比率がまた低下をするという、そういう構造的なものの中にもあるのであって、そういうものに対する抜本的な産業政策というものを本格的にやらないで、そして異常な高度経済成長をどこまでも貫くということを前提にして、税体系を大きくゆがめていくような、公平の原則というものを全く無視した隠れた補助金というものを出しながら、いわゆる税制の中での隠れみのを着ながら、そのしりぬぐいを税制にさせているということで、かろうじて現在程度の自己資本比率――これでも国際水準からいえばまるきりべらぼうな状況というものにしている、こんなことではだめなんだ、こんなことをへたにやるから、本格的な産業政策自体をゆがめて、本格化しない、やりたいこともやれないというようなことにもなる、こういうことも当然言えるわけです。したがって、そういう点でいいかげんに本格的な対策をぼかしてしまうようなことをおやめになって、そうして、本格的な産業政策を通産相時代にやりたかったならば、そのことがちゃんと受け継がれているはずですから、そういうものを強化するという立場でこの問題を処理すべきであって、税制の中でこれをやるということは、これはあくまでわれわれは反対なわけです。その点ひとつはっきりしておきたいと思います。  それから最後に、国税庁長官を呼んで何も質問しないとあれですから、もう予定時間を過ぎたのですが、予定した質問は脱税の問題なんです。  ここのところにきてだいぶ脱税問題が新聞紙上をにぎわしております。カネツの脱税があったと思うと、今度は週刊誌のサンデー毎日ですか、脱税博士がどうのこうのということで、これはやはり七億の脱税だ。こういうようなきわめて大口な脱税――これはそれだけに限りません。田中事件も入っているし、森脇の問題も入っているし、いろいろなこともありますが、こういう脱税問題について一体国税庁長官はどのようにお考えか。この脱税問題は、庶民大衆が零細な乏しいふところの中から税金を取られているという感じと、そういう脱税が一方にあるのかという点が非常に大きい問題です。これについてどうお考えかということをお聞きしておきたいと思います。
  223. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、一昨年森脇文庫の脱税事件が起きまして以来、国税庁当局がいま少し検察庁で別件逮捕される以前に調査を徹底して脱税の絶滅を期すべきではないか、こういうような世論が生じてまいりました。私どもといたしましては、そういう点は深く反省いたしまして、特に最近脱税の摘発に力を入れておるわけでございます。その結果、最近は相当大口の脱税を発見し、国税庁当局の手でみずから処理をいたしておるつもりでございます。しかし、そういう大きな脱税がありますということは、まじめな納税をしておられる一般の納税者の方に対しましては、まことに申しわけないことだと思っておりますが、そうした脱税は絶滅を期して私ども努力すべきだと思って、せっかく努力をいたしておるところでございます。しかし、世の中にはなかなか脱税の手口がいろいろございまして、必ずしもわれわれの努力だけでは減っていかない、やはり国民の納税に対する観念がよりよくなって、そうして脱税が犯罪であるということの意識がもっと徹底していく必要があろう、このように思っておるわけでございます。
  224. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これだけで終わりまして、あと脱税問題については、きょうはいろいろ他の行事のことも考えまして、皆さんにそう御迷惑もかけられないと思いますので、きょうのところはこれで終わりたいと思いますけれども、脱税は、いろいろああいうことがぼつぼつ出てくるということは、ほかにも国税庁の手の届かない、また査察やその他の及ばないような大口の脱税というものが非常にあるのじゃないかということを疑わしめるに十分なものがあるわけであります。そういう問題について、これは小さな魚屋さんをぎゅうぎゅう言わしてみたりすることなんかにはかなり熱心だけれども、そういう大口脱税の捕捉というようなことについては比較的手が届いていないんじゃないか、こういうような疑いがあるわけです。そういう点で、そういう問題に対処する方法その他の問題等につきまして、いずれまた個々のケース等につきましても御質問をいたしたいのですが、きょうは時間がございませんので、また次に持ち越しをさしていただきたいと思うのです。  きょうはこれで終わります。
  225. 内田常雄

    内田委員長 次会は、来たる二十八日、火曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとして、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十分散会