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1967-07-05 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月五日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    齋藤 邦吉君       菅波  茂君    田中 六助君       野田 武夫君    広川シズエ君       廣瀬 正雄君   三ツ林弥太郎君       山口 敏夫君    井手 以誠君       石川 次夫君    細谷 治嘉君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君         建設省営繕局長 小場 晴夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         通商産業大臣官         房総合エネルギ         ー政策課長   田中 芳秋君         通商産業省石炭         局産炭地域振興         課長      飯島 三郎君         自治大臣官房参         事官      鎌田 要人君         参  考  人         (産炭地域振興         事業団理事)  堀坂政太郎君     ――――――――――――― 七月五日  委員倉成正君、篠田弘作君及び廣瀬正雄辞任  につき、その補欠として広川シズエ君、三ツ林  弥太郎君及び山口敏夫君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員広川シズエ君、三ツ林弥太郎君及び山口敏  夫君辞任につき、その補欠として倉成正君、篠  田弘作君及び廣瀬正雄君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一二二号)      ――――◇―――――
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、産炭地振興問題について質問をしたいと思うのであります。先だって全国鉱業市町村連合会の代表の方から陳情書をいただいたのでありますが、要するにいままでの産炭地振興基本計画実施計画というのは、石炭鉱業合理化に対する車の両輪であったはずであったけれども、その期待とはきわめて隔たったものがある。だからいまつくられようとしております新実施計画、いわゆる第二次産炭地振興実施計画については積極的なかまえで、しかも抜本的な対策をもって臨んでいただきたいという強い陳情をいただいたのであります。その実施計画なるものは一体現在どういうふうに作業が進められておるのか、実は新聞等で拝見しておるのでありますが、大体二月から三月にかけましてこの実施計画の動きが非常に積極的に出しまして、当時報ずるところによりますと、六月開催の産炭地域振興審議会において大体決定をして、同月中、すなわち六月には閣議決定予定だ、こういうことすら報ぜられておったのであります。しかし、もうすでに七月であります。まだ実施計画ができたということを残念ながら聞かないのであります。そこで、これについてお答えをいただきたいと思うのであります。
  4. 井上亮

    井上(亮)政府委員 産炭地振興実施計画の問題につきましては、ただいま細谷先生から御指摘がありましたように、当初の予定は六月中くらいまでにはこの策定を終えたいという意欲をもちまして検討を続けてまいったわけでございますが、会議の途中で、率直に申しますと、さらに各県から提出されました諸計画につきまして、私どもとしては、建設省をはじめとする関係各省とも中央部における事務折衝、これを相当精緻に行ないました。さらに審議会の中に小委員会を設けまして――審議会は相当膨大な、多数の関係者を網羅いたしておりますので、さらにこの計画策定についての小委員会というのを設けまして、小委員会委員長は有澤先生でございますが、これに各県の知事さんたちも入っていただきまして、それに中立的な学識経験者も入っていただき、その小委員会を何回か繰り返しまして、そうしてただいま案を練っておるという段階でございます。六月予定検討を加えておりましたが、七月末には一応産炭地域振興審議会としての最終的な結論の取りまとめができるのではないかというふうに考えております。おくれましたことにつきましてはきわめて遺憾でございますけれども、私どもとしましては、その分だけ、できるだけ時間をかけて内容を充実さしたいという意欲を持ってやりました点を御了承いただきたいと思います。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 七月末にはつくる、こういう局長からの言明でございますが、四月十三日の新聞によりますと、福岡通産局が、各県がつくりました原案というものについて数点にわたる修正を要望いたしまして、そして四月十二日に通産局としての原案をまとめた、こういうことが出ておるのであります。  そこで、七月末につくるということでありますが、各県の原案といいますか、あるいは通産局もまとまったわけでありますから、いま中央段階審議ということでありますが、それは全部そろって小委員会でいま鋭意検討をしているという段階なのかどうか、これをまず伺いたい。
  6. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お説のとおりでございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、その計画について御質問を申し上げる前に、これは福岡県の問題でありますが、通産省委託によりまして、昨年来福岡県の企画室中心にいたしまして、産炭地実態というものをつぶさに調査しておったのでありますが、それが産炭地白書という形で今年二月の下旬に発表されておるかと思うのであります。これが、これからつくります計画、第一次の実施計画基本計画もむろんのこと、実施計画誤りであったという一つの証明としてこの白書が出ているんじゃないかと私は思うのであります。その白書はお読みになっているかどうか、お尋ねします。
  8. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま資料は持っておりませんけれども、一読いたしております。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 一読いたしておるそうでありますから、ひとつその内容要点をここで明らかにしてください。
  10. 井上亮

    井上(亮)政府委員 振興課長から詳細にお答えいたします。
  11. 飯島三郎

    飯島説明員 ただいまのお話の白書と申しますのは、正確には、私のほうの委託調査に基づきまして、福岡県が、産炭地域について長期の将来にわたった一種のマスタープランといいますか、要するにいままで筑豊地域につきましてはそういう長期の構想ないしはビジョンというものが描かれておりませんでしたので、一応県の立場で自由に一つの手がかりとして描いていただけないかということをお願いしまして、福岡県の企画室中心になりまして、いろんな資料をもとに、昭和五十年を目標にマスタープランを描かれたわけでございます。  これにつきましては新聞紙上でも発表になっておりますが、内容としましては、一つの基本的な考え方としまして、従来の産炭地域振興対策実態を解明しながら将来を展望する。その解明するにあたりまして一番ポイントになりましたのは、将来をながめて、いままでの産炭地振興政策はその方向に沿っていたかどうかという観点に立ったわけです。これにつきまして、私のほらの報告によりますと、たとえば事業団がつくりました団地は非常に……。
  12. 細谷治嘉

    細谷委員 ちょっと私の質問ポイントがはずれておって、いま説明されることはもうちょっと先でまた質問するのであって、白書現状というものはどういう状態になっているかということを、要点だけをお聞きしたいと、こら思っているのです。
  13. 飯島三郎

    飯島説明員 失礼しました。  いまお話し白書というのは、私のほらで受けております報告では、現状のいろんな数字でございます。今度の実施計画の基礎になる数字としまして、いろいろ現状数字を出していただいたわけでございます。この現状数字によりますと、まず産炭地域疲弊に関するいろいろな指標、たとえば人口地方財政財政力状態離職者の数、それから生活保護者の数というような指標をいろいろとっていただいたわけです。  これをごく概括的に申し上げますと、人口につきましては依然として減少傾向にある。傾向はちょっとゆるくなっておりますが、依然として減少傾向にある。それからあと離職者の数につきましては、ピーク時よりもほぼ半減しておるという状況でございます。あと財政力指数、それから生活保護者の数、これは依然として数字自体としましては三十七、八年の状態数字があまり改善されてないという状況になっております。これに対しまして、従来行なわれてきました産炭地域振興対策関係では、たとえば進出しました企業の数の関係では、筑豊地域につきましては約二百の進出を見ているわけでございます。そのほか、事業団の造成した団地も相当規模に達しておるわけでございます。そういうことで、全体としましてはなお今後とも振興が必要であるという結論になっておるわけでございます。
  14. 細谷治嘉

    細谷委員 全体としてはなお振興の必要があるということでありますけれども、私もその白書を詳しく読んだわけじゃありませんが、地元の新聞等がまとめた筑豊産炭地白書というものを見ますと、あなたが言うのは実態から比べますとものすごい誇張と言ってもいいくらいの――まだ満足な形にいっておらぬ、もっとがんばらなければいかぬのだ、こうおっしゃっておりますけれども、そんなどころじゃないわけですよ。参考のためにその新聞要点を私が申し上げてみたいと思うのでありますが、白書は四十年の末には大体炭鉱数で二七%だ、年間出炭量というのは五七%になっておるわけですね。労務者は一一%だというのですよ。合理化の始まる前、三十二年に比べてですよ。労務者は十分の一に減っているわけですね。炭鉱数は二七%でありますから四分の一程度になっておるわけですね。人口の流出が激しいことはもう御承知のとおりでありまして、山田市のごときは、いわゆる町村合併に基づいた市ではなくてその前にできた市でありますけれども、今日では町にも満たないくらい、町にも満たないと言えばことばはあれですけれども、四万五千の人口が、二万百人くらいしかおらないですよ。  それからいろいろな商工業がありますけれども、きわめて零細だ。たとえば工業関係はどうかといいますと、県全体として工業事業所数は大体一〇%あるというのですよ。この出荷額というのは三・五%だというのです。数は一〇%ありますけれども出荷額は三・五%しかないというのです。  商店はどうかといいますと、県下全体に対して数としては二八・七%あるというのです。販売額はどうかといいますと、四・七%だというのですよ。数が二八%あって販売額というのはたった四%しかない、こういうことですね。これはやはり産炭地商工業がいかに零細なのか、したがって、いかに疲弊しているのかということを如実に証明しているのじゃないかと思うのであります。  生活保護者の数も抜群だ。こういうところに抜群ということばを使っていいかどうかわかりませんが、いずれにしましても抜群県下全体の平均は、福岡県は四割六分だ、保護率が千分比で四〇・六ですよ。この福岡県の四〇・六は、全国は二八か一七くらいでありますから、これはそれだけでもひどいのに、この四〇・六出た原因というのは何かといいますと、筑豊保護率が大体二二六・三であるということを白書指摘している。  高校進学率、きょうは産炭地教育の問題もものすごい陥没状態であるということを申し上げたいと思うのでありますけれども、時間がなさそうでありますから後日に譲るつもりで、文部省の人は帰ってしまいましたけれども高校進学率は、県下平均は七五%。筑豊はどうかといいますと五九%なんです。いやたった二〇%、一五%か一六%じゃないかというけれども、この辺はたいへんなことなのです。  それからまあ悲劇といいますか、これを読みますと、離婚はどうかといいますと、離婚、これは家庭悲劇如実に物語っておると思うのでありますが、離婚県平均の八倍だというのですよ。これはやはり炭鉱家庭はいかに乱れているかということを証明していると私は思うのであります。  それでは市町村はどういう事情かといいますと、三十六年度には自主財源が三〇・三%あったというのです。まあ三〇・三%ありますと、いまの全国平均市町村自主財源といいますと、三割あるといいほうじゃありませんけれども、まあまあというところですよ。鎌田さんおりますから、まあまあというところです。ところが四十年には一八・三%なんですよ。一八・三%という自治体は、ないことはありませんけれども府県ならとにかく――府県なら一割くらいの自主財源しか持たないところがあります。ところが自主財源が一八%しかない。一方生活保護とかなんとかというものが多いものですから、人件費等義務的経費はどうかと申しますと、三十六年には三一%であったものが四八%になっておる、こういう状態だということを白書は率直に述べております。そしてこの新聞を読みますと見出しには「斜陽の影響、死亡にも」 「離婚県平均の八倍増」、こういう見出しでこの産炭地白書は書いてあるのであります。  こういうことでありますから、あなたが言うようななまやさしいものではないということなんですよ。言ってみますと、あなたのことば認識不足からきたものだとは思いませんけれども、今日の産炭地の実情というものをあまりに美化しておる、そういうものだと申さなければならぬと思うのであります。こういう実態だということを、ひとつ政務次官いらっしゃいますし、局長もいらっしゃいますが、この白書に書いてあること、これは白書なんです。福岡県、当時社会党の知事だったが、今度は自民党の知事ですよ、状態は変わっていないのですよ。これはありのまま書いておるのだと私は確信しておる、そのとおりだと思う。事実またそのとおりなんですから。こういう白書実態だということを、課長がああいうことを言っておりますが、これは誤りだ、こういう実態だということをまず認めていただきたいと思うのですが、ひとつ次官の御所見なり局長の御所見を伺いたいと思います。
  15. 宇野宗佑

    宇野政府委員 いまの白書内容先生から詳しく数字を伺いまして、非常に深刻なことに内心驚いておる次第でございます。十二分にそういうことを念頭に置きまして、今後の産炭地振興に対する特殊な考慮を払っていきたいと存じます。
  16. 井上亮

    井上(亮)政府委員 筑豊につきましては、特に三十六、七年くらいから閉山が相次ぎまして、先生の御指摘のように炭鉱数も激減してまいったのでありますから、いままで炭鉱町として栄えていた市町村が、きわめて疲弊のどん底にあるというただいまの先生のお説につきましては、私も事実はそのとおりだと思います。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 そのとおりだということをひとつはっきりお認めいただいて、その原因は一体どこなのか、やはりその原因をつかぬ限りは問題は解決しないのだ、こういうことだと思いますから、ひとつそういう前提に立って少し質問をしてみたいと思うのであります。  産炭地振興法の十条、十一条に、そういう事情であるからひとつ補助率かさ上げをしてやろう、これは十一条、県のやるのについてはひとつ起債があったら充当率も上げてやろう、利子も補給してやろう、こういうことになってもうすでに二ヵ年の実績を重ねたのであります。昨年この委員会におきましても一年間の実績にかんがみまして、これではやはり産炭地振興とは名づけられない名ばかりではないですよ、名づげられないということでいろいろな議論をしたのでありますけれども、ひとつ政令できめる適用範囲等を事実に即するように拡大することによって一年間やってみようということで、不満ながらそういう結論で今日までやってまいったのであります。  本委員会であれだけ議論をされた後の四十一年度の一年間の実績についてどうなっているのか、ひとつ御説明いただきたいと思うのであります。
  18. 飯島三郎

    飯島説明員 まず同県に対します利子補給関係につきましては、一応実績数字を申し上げますと、産炭地域のための特別の産炭地域事業債の額が四十年度におきましては十一億三千六百万円でありまして、四十一年度は八億九千七百万円、四十二年度は見込みの額でございますが、私ども見込みの額としましては十六億円というふうに想定しております。これに対します利子補給金額は四十一年度に交付されました実績、これは四十年度事業に対する利子補給でございますが、この金額が二千五百五十三万円でございます。四十二年度に交付される額は四十年度事業それから四十一年度事業対象になるわけでございますが、額としましては八千二百七十六万二百円というものを予算化しております。  それからその次に、市町村に対します補助率かさ上げ実績でございますが、まず四十年度の実績引き上げ対象になりました市町村の数が合計九十五でございます。そのらち六条の市町村が六十七ございます。引き上げ金額としましては五億四千七百六十八万七千円でございます。そのらち六条の市町村金額は一億八千六百十二万八千円でございます。四十一年度は近く確定すると思うのですが、これは見込み金額でございますが、四十一年度の見込み数字では、引き上げ市町村は九十六、それからそのうち六条の市町村が六十五、引き上げ金額は六億八千八百二十一万一千円、そのらち六条の市町村が二億二千四百五十万四千円、以上の実績になっております。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 次にお尋ねしますが、四十年度には府県に対して二千五百五十三万円でしたね。これは起債の認証がおくれたので予算はだいぶ不用額が出ておると思うのですが、大体三分の一程度不用額になっておるのですね。三千九百二十万円の予算額のうち不用額が千三百六十七万円程度出ているのであります。  お尋ねいたしたいのは、二千五百五十三万円の利子補給をしたわけでありますが、この事業債事業費というのはどのくらいやっているのか。一年おくれでありますけれどもさいふは一つなんですね。四十一年度は四十一年。県自体産炭地振興というこの事業に対して自主財源をどのぐらい出しているのか。それに対する二千五百五十三万なんだ。そのもとのほうをひとつ説明してください。
  20. 飯島三郎

    飯島説明員 四十年度の数字で申し上げますと、御承知のように超過負担額がございまして、その超過負担額に対しまして産炭地事業債が出るという形になっております。その超過負担金額で申し上げますと、同県全体の数字としましては超過負担額は十六億七千七百万円でございます。あとは国、それから補助金という金額になっております。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 あなたのほうからいただいた資料によりますと、実績超過負担という名の金額が四十年度において十六億七千七百万円、四十一年度において二十一億五千九百万円となっておるのであります。いま国会等議論されております超過負担というのとあなたの定義といささか違うのじゃないかという気がするので、もう少し超過負担のあなたの言っている定義を明らかにしていただけませんか。
  22. 飯島三郎

    飯島説明員 通常県負担すべき各補助金あるいは直轄に見合ら額として通常負担すべき額、これを越えている金額でございまして、それにつきまして産炭地域振興事業債というものが認められるわけでございます。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 たとえば道路をやったとしますね。十億円の道路をやったとする。大体三分の二道路に対する補助があります。そうしますと六億六千万円というのは国庫からくるわけです。通常負担すべきものというのは三億四千万円ということですね。そうでしょう。ところが現実には十億の計画を国が認証したのだけれども十二億かかったといった場合に、自治体自体が持つものは、通常負担すべき三億四千万円と、十億ではできなかった、十二億かかった、その二億とを加えた五億四千万円という負担が要るわけですね。その中で一般的にいわれておる超過負担というのは、二億円をいっておるわけですよ。ですからもう少し明らかにしていただきたい。
  24. 飯島三郎

    飯島説明員 ただいまの設例の二億、これは私が先ほど御説明しました超過負担額の概念には入れてないつもりでございまして、いわゆる継ぎ足し分ということで二億分は考えているわけでございます。
  25. 細谷治嘉

    細谷委員 そうするといまあなたのいう十六億七千七百万円というのは、通常負担すべきもの、それに継ぎ足し分というのは必ず起こるわけで、それを加えたものというのですか。
  26. 飯島三郎

    飯島説明員 補助基本額というものがそれぞれの事業にあるわけでございます。その補助基本額とそれから継ぎ足し分を除いた額、その両者の中間にあるものがここにいう超過負担額というふうに考えておるわけでございます。
  27. 細谷治嘉

    細谷委員 わからないんだね。私が言うのは、十億の基本額、十億は基本額でありますから、それの三分の二の補助がくるわけですね。継ぎ足し分は、事業をやるのに実際十二億かかったから二億が継ぎ足し分であって、三億四千万円というのはいわゆる地方負担額というものなんですね、通常負担すべき額なんですよ。この二十一億五千九百万という四十一年度の県の超過負担というのは、二億に相当する純然たる継ぎ足し分、それが二十一億なのか、継ぎ足しは必ず起こるのですから、当然負担すべきものを加えたそれが二十一億なのかということをはっきりしていただきたい。
  28. 飯島三郎

    飯島説明員 ただいまお話しのような継ぎ足し分の二億円というものは、ここで言っている超過負担額の計算の中に入れてないわけであります。これは人口だとかあるいは地域だとか投資率というもので一応標準の額を出しておりまして、その標準の額をこえるものを言っているわけです。したがいまして、いまの設例でいきますと、十億円の事業、それに継ぎ足し分が二億円ございました場合に、全国標準負担額といいますか、通常負担額というものがかりに二億円だといたしますと、あと残り補助金であるとして、補助金がかりに三分の二でございますと六七%、その六七%分とそれからいまの二億円の差額でございます。したがいまして、いまの例でいきますと補助金が六億七千万円ということになりますから、残りが三億四千万円です。三億四千万から通常負担額として考えられておりますたとえば二億なら二億という金額を引きますと、残りは一億四千万になるわけであります。その一億四千万を全部集計しましたのがただいまの数字でございます。したがって、標準負担額といいますか、通常負担額というのは全国人口だとか投資率だとか、そういうものを要素に入れてきめたのでございます。
  29. 細谷治嘉

    細谷委員 鎌田さんちっともわからないのだけれども……。
  30. 鎌田要人

    鎌田説明員 いま通産省のほうから御答弁になりましたことばの中で、超過負担ということばを使われましたので、超過負担ということばにつきまして、別途現在地方団体のほうで問題になっておることと非常に誤解を招きやすい表現になったのだろうと思うわけであります。いまこれは新産、工特でも同様でございますが、福岡県なら福岡県、あるいは福岡県の大牟田市なら大牟田市というようなものが、全国相場負担というものをするとすれば、どのくらいまで負担ができるか、これを一応目安をつげるわけです。それを標準負担額と申します。その世間並み負担ができるものよりももっと地方負担が大きいというものについては、その団体財政力が弱いからかわいそうじゃないか、その分についてかさ上げをする、こういうことであります。  いまの十億かけなければならぬことが実際は八億しか補助金額がない。いわゆる二億、俗に申しております超過負担でございますね、これはいまの標準負担の問題とは全然別ということでございます。
  31. 細谷治嘉

    細谷委員 わかりました。要するにたいへん頭がよくて、十条に基づく算式でやっているわけだ。したがって二十一億五千九百万円という超過負担というのは、これはいわゆる産炭地振興法十条に基づいた、普通の団体であれば負担するものということでありますから、そうしますと県の負担というのはこれ以上なんです。そうなってまいりますと、二十一億五千九百万円よりも相当多額を県が負担しているわけだ。そして十条の適用になっておるものが二十一億という数になっているわけですから、それに見合うものとして二千五百五十三万円の利子補給をいただいたということだな。こんなことでいまの産炭地が救えますか。先ほど私が申し上げた白書実態をですよ。産炭地であるがゆえに二十一億もよけいな負担をしておいて、産炭地振興法というのがあります。十条に基づいて特別な措置をしております。たった一・一%じゃないですか。二億五千万なら話がわかるのです。二億五千万なら干天に慈雨とはいかぬかもしれぬけれども、ほこりしめしぐらいになるかもしれない。これじゃほこりしめしになりませんよ。私は、端的に言って、こんな十条ならないほうがいいと思っているんだ。ひとつ局長にお答えいただきたい。こんな十条ならないほうがいい。
  32. 井上亮

    井上(亮)政府委員 制度の実態につきましては、先ほど来御答弁申し上げたとおりですし、確かに県に対します利子補給の額は二十一億に対して二千五百五十三万円、少ないわけでございます。しかしこれは、私ども起債額等に対しましてこの法律に基づきまして年々見ていきます場合に、予算は年々相当ふえてまいるとは思います。ただ、しかし、現在の制度がなお産炭地の実情に照らしてみましてきわめて不十分だという御叱責の点につきましては、制度としてまだ必ずしも十分ではないという点を認めたいと思います。しかしこの法律は、先生も御承知のように、いままで新産都市につきましての県なり市町村に対する財政補助措置がとられましたときに、産炭地域におきましても新産都市と全く同様な、あるいは要すればそれ以上のというようなことで、この十条関係の特別助成の制度を産炭地振興法の中でも設けたわけでございまして、確かに制度について、実態面から照らしてそういう問題はあると思いますけれども、しかし私どもかねてから細谷先生にはそういう点についての御指摘を受けてまいっております。これらに対しましては、私ども先生のおっしゃることもごもっともだという趣旨から、この制度につきまして、さらに産炭地の実情に適するような補正措置、補強措置、こういうことも及ばずながらやってまいったわけでございまして、たとえば指定されております事業等につきましても、これは特に細谷先生の御主張によって実現されたものでございますが、最近におきましても体育館、運動場、プール、都市公園というようなものの追加もその後いたしたわけでございます。  それからなお例の新産都市よりも、何といいますか例の百分の十の、これも非常な議論のあった中で、産炭地につきましては特に百分の六というようなことも、産炭地の実情に照らしまして是正してまいったわけでございます。なおこれでは不十分だという御意見もございます。私ども今後さらに実情に照らしまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  33. 細谷治嘉

    細谷委員 これをどうすべきかということは、あとでまたいま検討中の実施計画の関連において御質問し、私の意見を申し上げたいわけであります。  いまお話のありました件については、とにかく超過負担を二十一億も使わして、その年にもらった利子補給と名のつく金額は二千五百五十三万、これではほこりしめしにもならないんだということをまず指摘しておきたいと思うのであります。  次に市町村の問題でありますが、いま御説明がありましたところによりますと、四十年度の実績というのは九十五市町村、うち六条指定は六十七市町村、四十一年度の見込みはどうかといいますと、一つふえて九十六市町村補助率引き上げ対象になるだろう。そのうちの六条地域というのは六十五市町村だというのであります。  それでは補助率引き上げによって幾ら補助金がその引き上げ率に相当するものとして市町村にいったかといいますと、四十年度は五億四千七百万円、そのうち六条指定地域が一億八千六百万円、四十一年度が、引き上げに基づく金額が六億八千八百万円、うち六条指定が二億二千四百万円であります。言ってみますならば、百九十四あります十条指定の市町村のうち、大体半分弱、四九%程度対象になっておるにすぎないのであります。しかもいま申し上げましたように、その引き上げに基づく金額補助額というのはどうなっておるかというと、六条指定は金額に対して三分の一、三四%を占めているにすぎないのであります。これは四十年度であります。四十一年度になりますと、あれだけ委員会でもめたのですのに、上がったのならともかく、下がっておる。三二・五彩に下がっておる。三四%が三二%に下がっておるのですよ。おっしゃるように、確かに対象範囲を広げたことは事実。たとえば昨年委員会で体育館とか運動場とかプールとか都市公園とか、こういうものがふえたのであります。しかし実績は三四%だったのが三二だ。これが四割くらいになっておるなら話は別ですよ。本来産炭地域振興法の六条指定というのは二条指定よりももっともっと深刻な実情にありますから、この振興法では、十一条におきまして、百分の十というのを百分の六にしたいきさつがあるわけですね。してもなおかっこういう実態なんですよ。これも私が先ほど言った府県に対する起債利子補給と同様に、この補助率引き上げというのも、これは産炭地市町村から見ますと、対象になる市町村は半分以下だ。一番深刻な六条指定が、これは金額全体としても大したものじゃないです。その大したものでない金額のうちの六条指定というのはたった三分の一弱しか占めておらぬということになりますと、これも干天に慈雨なんというそんなものじゃなくて、ほこりしめしに足るか足らぬかという批評をしても差しつかえないと思うのであります。その程度の評価しかできない。私自体は、評価するということは少し甘いかもしらぬと思うのであります。こういう実態なんですよ。法律ができて一年後にチェックした、それに基づいてもう一応やってみようという形で手直しをして今日一年過ぎた、その結果がこういうことですよ。これでは、また後ほど議論するのでありますけれども、新実施計画をつくったって話にならぬと私は思うのでありますが、ひとつ、大臣来ておりませんから、率直な意見を聞かしていただきたい。これは自治省も来ておりますから、自治省、これで産炭地の――財政白書で示されているとおりですよ。自主財源は一割強しかないのですから、こんなことで産炭地実施計画というのをやれるのかどうか、第一次は失敗したのでありますから、これからできるものをどう成功させるかということは重要な課題でありますから、現状においてはこういう制度がいいのか悪いのか、ずばりひとつ言っていただきたい。
  34. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘がありました点につきましては、細谷先生から実は二、三年前から絶えず指摘され続けてまいったわけでございまして、先ほども触れましたように、政府といたしましても、御趣旨を体しましてとにかく改善の努力をしてまいったことは事実でございます。なお疲弊している産炭地の実情から見ますと、なかなかこの制度の適用が、特に疲弊している産炭地市町村に必ずしも十分にいかないといううらみがあることは御指摘のとおりでございます。ただ予算額そのものといたしましては、先生はじめ皆さん方の御努力によりまして、いろいろ適用範囲を拡大しあるいは適用すべきためにいろいろな基準を引き下げたり、百分の十を百分の六に引き下げたりというようなことのために金額的にはふえてまいりました。割合としては先生おっしゃったような点が残っておりますけれども金額的にはふえてきたということは事実でございまして、ただ御指摘がありましたとおり、なおこれで十分でないということは実態面からして言えるかと思います。  しかし、これは私決しておことばを返すわけではありませんけれども、この産炭地振興法の十条関係の特別措置につきましては、先生には釈迦に説法になりますが、やはり新産都市の助成策ができましたときに、産炭地域についても、少なくともこれに劣らない同等の制度を導入すべきだということで導入したわけでございます。そうなりますと、この趣旨といたしましては、どうしてもこの新産都市の考え方でやっていくために、事業量が多ければその多いところはその補助を受ける、事業量の少ないところは遺憾ながらこの適用の額が少ないというふうにこの体系からしますとなるわけでございます。そうなりますと、今度は産炭地のように、特に六条地域のような場合に疲弊が特に著しい。だから興すべき事業も十分できないというところは、どうしても、この補助を百分の十から百分の六に落としましたけれども、それにしてもなおまだできないというような実情でございまして、これは制度からきている問題かと思います。しかしこれは決しておことばを返す意味ではないのですけれども、やはりこれをやったことによって前進したということは事実でございます。今後の課題といたしましては、さらに実情に合うようにこの法をどう運用していくかという点が問題ではないかというふうに考えております。
  35. 鎌田要人

    鎌田説明員 産炭地域市町村府県の財政問題でございますが、現在の制度で十分かということになりますと、はっきり申しましてそれは不十分だと言わざるを得ないと思います。ただ問題は、やはり当面どうするかという問題と、それから将来の長期的な問題と分けて財政問題を考えていかざるを得ないのではないか。当面の問題といたしましては、かりに税制をどういじくりましても、経済力自身が地盤沈下しておるわけでございますので、適切な税というものは与えられないというふうに思います。したがいまして、私どもの持っております手段といたしましては、交付税と地方債ということになりますが、交付税の配分というもので、たとえば昨年人口急減補正を行ないました。これは特に産炭地域を意識して行なったわけでございますが、そういう交付税のワクの中で操作できるもの、それから起債、これは借金でございますから、将来に負担を残すわけでございますけれども、当面の問題といたしましては、やはり起債というものを、両方かみ合わせてやらざるを得ないだろうと思うわけでございます。ただ、それにいまの補助率かさ上げでございますとか、あるいは利子補給という問題があるわけでございましょうが、これはただいま通産省のほらからもお話がございましたが、基礎になる事業自身が張りつかなければ、これはかさ上げ利子補給のしようがないわけでございます。そういう意味で事業を張りつかせる。事業を張りつかせるための地元負担というものは、やはりただいま申しました普通交付税なりあるいは地方債というもので補ってやらざるを得ないだろう。将来的な問題といたしましては、やはりそこから税源も入る。こういったような基盤を整備していくということになるのだろうと思うわけでございまして、そういう面で税制なりあるいは交付税制というものをどういうふうにあらためて考えるか、こういうことになるだろうと思います。ただ当面の問題といたしまして、産炭地域振興基本計画でございますか、これも近く策定される運びのように聞いております。その際には、やはりあらためてこれに伴う地方負担というものをもう一ぺんじっくりと算定をいたしまして、それに見合う財源措置というものは少なくとも十全の措置をとっていくべきであろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 いろいろ効能書きは並べ立てたんですけれども、売薬会社の効能書きみたいなものです。十条でやっています、十条でやっていますと言うけれども、たった一%じゃないですか。二十二億もいわゆる超過負担しているのに二千五百万円程度しかこないというのですから、たった一%でしょう。あなたが交付税で見たと言っているけれども人口急減補正、それが産炭地を目途にしてやったんだ。――昨年私は衆議院の石炭対策特別委員会筑豊のどまん中の飯塚に行った。あの周辺の市町村人口急減補正をやってどのくらい助かったかというと、飯塚市の場合は三二%ですよ。行ってみますと、昭和三十五年の国政調査、昭和四十年度の国政調査、人口が急減しておるのでございます。その急減したことによって三十五年と同じ人口であった場合にはこれだけの基準財政需要額になるんだ。ところが四十年度激減しておりますから、四十年度の人口をかけますと、これだけ減る。人口によって基準財政需要が減ったのです。これは当然この地域では一〇〇%の交付税になっておるわけですが、それに対して急減補正をやりました。それは産炭地が目標でありました、こう言っていますけれども実績筑豊地帯においては一番激しいあの地域でたった三分の一なんですよ。荒尾市にも行ったのです。荒尾市がどのくらいかというと、二八%くらいですよ。ですから急減補正と名づけても、これは十条よりはちょっといいです、十条はたった一%なんだから。自治省がやったのは二八%から三二、三%くらいの間にあるんですから、これはちょっと補正したと言えるでしょう。一%じゃ補正したと言えませんよ。これは何もやらないと変わらない。そう言っているわけです。  そこで私は申し上げたいのでありますが、そもそも産炭地実態ということを承知のくせに――少しことばが荒いですよ。これから発展しようという新産、工特補助率かさ上げの方式や利子補給の方式をそのままとったところに私は通産省誤りがあると申さなければならぬ。誤りなんですよ、これは。陥没しているのですよ。事業をやろうとしてやれないのですよ。自主財源は一割しかないのですから、やれっこないですよ。義務的経費はどんどんふえていっているのですから。そういう実態を知りながら――いま大蔵省を呼んでいるのですけれども、何か知らぬ数式を法律の中に織り込んで、一般の人にはわからないようなかっこうにしておいて、そうしてその数式に満足したような実態を、さっとそれを読まないでああいう法律をつくった通産省誤りだ。誤りというのはいかぬのだ。認識不足だと申さなければならぬと思うのです。局長答えていただきたい。
  37. 井上亮

    井上(亮)政府委員 不十分だということは先ほど来申し上げております。特にこの産炭地先生も先ほど相当詳細にお述べになりましたように、きわめて疲弊している実情でございますので、その疲弊している実情に対する市町村、県等の事業に対する補助といたしまして不十分ということは私ども感じております。しかし間違いとは思っておりません。と申しますのは、やはりこれをしなければ――こういう新産都市等の考え方、諸政策、こういうものもやはり産炭地にも及ぼす、及ぼしただけでも私はプラスになっていると考えておりますし、産炭地振興対策はこれだげではございません。もちろんこの市町村等の財政援助のほかにやはり鉱害対策等の問題もありますし、あるいは産炭地振興事業団を通じての特に疲弊した地域についての国の助成策、これも逐次拡大してまいりましたし、今後も努力してまいらなければならぬというふうに考えておりますので、総合的にお考えいただけば、ただ総合的に考えてもなお不十分だというふうにおっしゃると思いますけれども、これらの点についても私どもも反省いたしているわけであります。今後とも努力していくつもりでおりますので、産炭地につきましては疲弊しておりますので、いろいろな角度からやはり国が施策を施していくということが必要じゃないかというふうに考えておりますので、現行制度で必ずしも十分でない、御指摘の点があるということは感じておりますが、なお、私どもとしましてもこの点はもちろんですが、総合的に産炭地振興について努力してまいりたいというふうに考えております。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 あなたは不十分だ、政策上誤っておらぬ、こういうことを言っている。私は誤っておらぬだろう、それはあなたの良心に訴えて誠心誠意やったのですから、私はそれは誤りだとはもう強く申し上げませんよ。しかし、不十分だということばは取り消してくださいよ。不十分にもいっていないのだから。たった一%やって、自治省が急減補正をやったのは二八%から三二、三%いっているのだから、これはまあまあ不十分でいいでしょう。急減補正をやる、しかも産炭地のためにやったのだということを広言するのならば、少なくとも六割か七割ぐらい激変緩和という形でとっているのなら、六割か七割ぐらいの急減補正が行なわれているのなら、私は自治省の急減補正も少し――鎌田さん、ここへきて産炭地のためにやったんだということを認めるにやぶさかでないですよ。しかし三分の一にも満たないで、やったやったとあまり広言できない。これは確かに不十分だ、あなたのところは不十分だと言えないのですよ、一%では。そういう点からいって、誤りだったとあやまれない、それは誠心誠意やったのですから。誤りなんということは私のほうも取り消しますけれども、少なくとも不十分と言える程度のものでなかろう、これはお認めいただかなければならないと思うのであります。先ほど自治省は、これは不十分な方式だ、こうおっしゃっておったのですから、これは自治省もそうだろうと思うのです。鎌田さん、大臣もおりますけれども、自治省として今日の産炭地の財政実態はよくつかんでおるのでしょうから、この法律ではだめだと一言言ってくれませんか。
  39. 鎌田要人

    鎌田説明員 これはまあ無理な返事をしいられているような感じでございまして、ちょっとお答えしにくいのでございます。私、先ほど不十分だと申し上げましたのは、前々から私どもの役所で申しておりますのは、新産、工特という場合は、その地域が発展していくという場合、いわばゼロから上へ上がっていくのだ。産炭地域の場合には明治以来の日本の資本主義の、何といいますか中核だったわけでございますが、その繁栄というものが衰滅に帰しつつある、ゼロ以下になりつつある。もっと刺激的な表現をもってしますと、それに伴いまして地域社会というものも崩壊の危険に瀕しつつある。そういうところで新産、工特並みの方式というものがはたしていいものだろうかという疑問を持っております。そういう角度から申し上げたわけでございますが、先ほど私当面の問題は長期的な問題とあえて分けて申し上げましたのはそういう意味があったわけでございます。  当面の問題といたしましては、しかしいまの与えられた税財政制度の条件の中でやるということになりますと、やはりこの交付税、地方債それから国庫支出金、税は別でございますが、そういうものが地方の歳入の根幹をなしておるわけでございます。現にこの六条関係市町村で四十年度、四十一年度の決算状況を見てみますと、これは北海道から熊本までのトータルでございますが、前年に比べまして歳入が五十九億ふえております。歳出が五十三億ふえておりまして、差し引き六億くらいの、単年度ではプラスになっておる、こういうのが六条関係市町村の全体の姿でございますが、五十九億の歳入の中でやはり交付税が十八億でがざいます。それから国庫支出金が十四億、こういうところが増加の大どころという形を見ましても、やはりそういった面で制度としては当面はやっていかざるを得ないのじゃないだろうか。これではいけないのだということまでは、ちょっと私どもやはり確信を持って言い切れないような気がいたす次第でございます。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣いまもおっしゃったばかりですから、大臣のかわりに局長にお尋ねしたいと思います。あなた医者じゃないだろうけれども、結核第三期の人に仁丹飲ませてなおりますか。
  41. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ちょっとむずかしいかと思います。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、いまもおっしゃったように、いまの法律に基づいてやっておること自体がちょうど結核三期の人に仁丹飲ませているに等しいのじゃないか。アリナミンぐらいならまあちょっといいでしょうけれども、仁丹を飲ましておるような姿だということをひとつ申し上げておきたいと思うのです。  そこで鎌田さん、ひょうや何か降りますね。この間も全国的にだいぶ降ったのですが、天災融資法というのが適用されますね。そういうような災害の場合はずいぶん高率な補助があるわけであります。その天災融資法などをやった場合の利子というものは一体幾らですか。
  43. 鎌田要人

    鎌田説明員 ちょっと正確なことを記憶いたしておりません。農業の場合、中小企業の場合、利率が違うのだろうと思いますが、おそらく低率であろうと思うわけでございますが、いま手元に資料を持っておりませんので、後刻取り調べさせていただきたいと思います。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 あなたの専門の地方公営企業法に基づく赤字団体に対する利子補給はどういう範囲でやっていますか。
  45. 鎌田要人

    鎌田説明員 三分五厘をこえまして、県と市の場合でございますと七分五厘まで、町村の場合でございますと八分までの間をいわゆる赤字数値によりまして差をつけておりますが、アッパーリミットはしたがいまして四分五厘あるいは四分ということになります。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 地方公営企業の赤字の場合は、三分五厘をこえたものについては七分五厘までは保障されているわけですね。あと七分五厘から八分の間はそこの赤字の状態とか財政力指数とか、こういうもので調整されているわけなのです。法律のたてまえというのは、三分五厘をこえるものを八分まで、四分五厘は利子は完全に補給されているのですよ。地方公営企業にもやっているのですけれども、それと同様にあるいはそれ以上に産炭地域の社会生活、住民生活に深刻な関係を持っておる産炭地振興に、使った金の一%に満たないような利子補給はいかんのであって、私は大体天災融資法などをやりますと、いま議論されておるのは三分のものを無利子にしようという、こういうことが議論されておるのですよ。三分なのですよ。かつて三分五厘であったそうですか、いま三分なのですよ。ですから私は後ほど振興計画について御質問をいたしますのに、振興計画が不十分ながら今度は実を上げ得るか上げ得ないか、かかってこの辺に問題点があると私は思いますので、たとえば県が産炭地振興のために実施計画に盛り込まれた事業をやる限りにおいて起債をいただいたといったときは、私は無利子にしてやらなければ、とてもとてもこれは肺病の三期の人に仁丹飲ませているようなものなのだからいくまい、こう思っておる。  もう一つは、十一条のような計算方式ではいかぬ。新産、工特のようなやり方でやらなければいかぬ。離島のような高率補助、あるいは北海道にやっている開発に対する高率補助、こういう形でやっていただいて、たとえば十分の八なら十分の八という補助はやってもらう、地元の負担は二割だ、その二割については無利子か低利で貸す、そういう形でなければとてもとても事業をやれない。ですから逆現象が起こっておるわけですね。六条地域と思って百分の十を百分の六に修正をしたと思ったらば、何のことはない事業をやる能力がないわけです。肺病三期、寝たつきり活動ができないのでありますから、当然なことですよ。ですから肺病三期の人にはやっぱりストレプトマイシンをやらなければいかぬわけですから、そのくらいのことを、いま言ったように、県に対しては実施計画で認めたものは無利子でやる、市町村に対してもひとつ高率補助をつけてあげよう、そうして地元負担についてはやはり低利のものをやってやろう、そうしてその低利のものの利子補給等については、その三分の二程度をひとつ交付税等で考えてやろう、こういうことにやらなければ、とてもとても起き上がれないですよ、私がいままで申し上げたことでなければ、実施計画をつくっても、またぞろ四十七年になったら、いまより深刻になるかもしらぬ。先ほど申し上げた産炭地白書に基づいて、これからどうすべきかという議論がしてあるのですから、それによってもっと悪くなることになると私は思うのであります。この点についてひとつ、実施計画をつくるにあたっての大前提としての通産省の心がまえをお伺いしなければ、これは絵にかいたもちになると私は思いますので、まず大臣の気がまえというか、決意のほどをお聞きしておきたいと思います。
  47. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 産炭地振興計画につきましては目下計画中でありますので、いま細谷委員のお話では結核病者で仁丹ぐらいしかやらぬということでありましたが、せめてアリナミンぐらいは出すように計画したい、こう考えております。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、アリナミンぐらいはということでありますが、仁丹よりはアリナミンのほうがたいへんいいのでありますが、アリナミンは栄養剤であって、直接攻撃をするものがなければならぬ。直接攻撃するというものは何かといったら、やはり事業をできるような起債を認めてやる、高率補助をやっていく。これがやはりストレプトマイシンであって、そしてアリナミンを飲まして精をつけてやる、こういうことが必要であろうと思うのであります。  堀坂さん参っておりますから――先ほどの第二次実施計画について、あなたの談話として、各県がつくった実施計画原案は尊重をして、ひとつ実施計画というものをまとめ上げたいということをおっしゃっておったわけです。これは新聞に書いてある。記事を持ってきているのです。頭をひねっていますけれども、そうおっしゃっているのですよ。ところが、できていないわけです。いま努力中でしょうが、この実施計画についての、産炭地域振興事業団としての取り組み方、これをひとつ、まずお尋ねしたいと思います。      ――――◇―――――
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 この際、参考人の出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、ただいま本委員会において審査中の石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、本日、参考人として産炭地域振興事業団理事堀坂政太郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。よって、堀坂政太郎君を参考人とするに決しました。      ――――◇―――――
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。堀坂参考人。
  52. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 いまの私の談話というのは、いつのことかよく存じませんが、御承知のように、産炭地域振興実施計画は、通産省がおつくりになるものでございまして、私ども関係しております産炭地域振興事業団は実施機関でございます。したがいまして、政府がおつくりになりました実施計画の中で、私どもが当然担当してやらしていただくべき事業につきましては、誠心誠意やるというのが任務であると思うわけでございます。おそらく、いまの御指摘のその記事は、御承知のように、筑豊が、いままで幾らかの企業は来たけれども、先ほど先生がおっしゃいますように、ほんとうに体質が改善するような状態になっていない。片一方に、相当の工業生産高はあがるようにはなっているけれども生活保護者や失業者がまだ非常にたくさんいる。財政力も、税収が十分伸びないので、非常に弱いという現状でございます。もっと筑豊というような――これは、一つの例として申し上げるのでありますが、そういう産炭地に、ほんとうに企業が魅力を持って来得るような、そういう環境をつくるということがまず先決問題であると私ども思っておるのでございます。そういう筑豊への企業誘致をするための体質改善をいかにやるべきかということについて、政府の諮問といいますか、委託を受けまして、私ども調査をいたしました筑豊の総合的な地域改善計画というものを報告として出したのでございます。それについて、これは今後どういうふうに扱われるかという新聞記者からの質問に対して、われわれは、こういった自分らの調査について、政府の実施計画の中に十分取り込んでいただくように努力するつもりである、そういうことが取り込まれるならば、団地造成、あるいはその他企業誘致等については最善の努力をする、というように話したことがあるように思うのでございます。そういう趣旨であると御理解いただきたいと存じます。
  53. 細谷治嘉

    細谷委員 三月三十日の新聞で、「筑豊にニュータウン」ということが見出しで、「産炭地振興事業団の構想」という記事があり、その記事の中に、堀坂理事は、「福岡県の構想も加味しつつ、事業団の最終構想を早急に作成したい」と語っているわけですよ。いま、あなたがまだ見えないときに、石炭局長から、大体六月一ぱいに閣議決定する予定だったけれども、おくれているので、七月一ぱいには第二次実施計画ができる、こういうお話でありますから、その実施計画事業団一つの柱になっていることは間違いないわけですね。柱になっていることは間違いないわけですよ。そういうことでありますから、加味しつつ事業団としての最終構想をまとめたいということだと思うのですが、そういうふうに進んでいらっしゃるのですか。
  54. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 先ほど申し上げましたように、これは事業団の構想というふうになっておると思いますが、これは、事業団としてはこういうふうにあることが望ましいという意味で書いた構想でございまして、その場合におきましては、福岡県の事務当局が検討された事項というのも十分に取り入れて、その構想として政府のほらに提出をしたいということでございまして、そのような委託調査に対しますところの構想の報告は、すでに政府のほうに出しているのでございます。
  55. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、最終的にはこれは通産大臣がきめることになるわけであります。そこで、私は、九州地区に限ってたいへん恐縮なんでありますけれども、たまたま私の持っている資料が、九州地区の産炭地域振興実施計画検討についてのものでありますから申し上げたいのでありますが、福岡通産局がまとめられたとお聞きしております原案通産局もいろいろ文句というか、指摘をいたしまして、つけたのでありますが、こういうことのようでありますね。筑豊地区は、第二次実施計画の最終年度であります昭和四十七年度の工業出荷額というのは千五百九十億円である、昭和三十九年度に対して三・七五倍、大牟田地区は千五百十億円だ、三・〇一倍、有明地区は、これは熊本県でありますが、七百十四億で、九・六五倍、佐賀地区は四百七十二億円でありまして、七・一五倍、北松地区は九十億円で、七・五倍、佐世保地区は四百四十四億円で、一・五倍、天草地区は六十一億円で、二・三五倍ということが、大体通産局が最終的にまとめて、いま議論されている内容であろうかと思うのであります。  そこで、その工業出荷額内容といたしまして、いわゆる重点業種といいますか、中核産業といいますか、そういうものといたしまして、筑豊地区には、自動車工業、電子工業、有明地区には、石炭化学と電力多消費型のアルミニウム工業というのを導入しよう、伊万里地区には石油の基地と石油コンビナートを形成しよう、北松地区には石油の基地化をはかろう、こういうのが柱になっておるようであります。  私のお尋ねいたしたい点は、こういうふうな大体通産局がまとめた原案に対して、一つは前回の実施計画というのは、これは中央官庁の人も大体のペーパープランじゃないか、どこへ行っても石油コンビナート、どこの産炭地計画を見ても石油コンビナートだ、やれ酪農工業だと、大体同じような計画内容だというわけですよ。私がそういうような第一次の実施計画の反省の上に立って、失敗ということを言うと局長がまた少し目じりを上げるから、失敗ということばは使わないけれども、こういうような中核産業というのが、一体この計画の中で実現の見通しがあるのかないのか、これが一つであります。  第二に、わずか五年で工業出荷額が七倍も八倍もなるということは、どうもこれはペーパープランくさいのじゃないかというふうに私は思うのであります。そんな簡単に七倍も八倍も工業出荷額がいくはげはないのですよ。ですから、これを見ただけでも、私は少し計画自体に問題があるのではないか、こういう気がいたすのであります。そういう点について、私が申し上げた、こういう計画内容について、通産省としては大体こういうようなものなのかどうか、あるいはいま言ったような諸点について、一体責任が持てるのかどうか、この辺のことをお伺いしておきたいのであります。
  56. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま先生から御指摘のありました産炭地域振興実施計画内容の問題でございますが、御指摘がありましたように、筑豊地域につきましては自動車工業、これが中核企業としては一番中堅的なものになると思います。これを誘致したいとか、あるいは伊万里地区あるいは長崎地区に、例の石油基地を考えたい、あるいは特に大牟田周辺、ここには三池の炭を利用いたしますコンビナート方式を考えてみたいというような構想が、ただいま産炭地振興審議会の中で議論されておりますことは事実でございます。まだ最終的に審議会としての意見も取りまとめられておりませんので、いまここで私確信はできませんけれども審議会の中で議論がまとまりますときには、御承知のように審議会には関係各省も入って討論していただいておりますので、さらに大臣にも御報告申し上げ、閣議にも御報告申し上げるというような手順を踏んでまいりたいと思いますので、まとまりました内容につきましては、政府としても最大限の努力をして実現をはかっていく決意でおります。  それからなお七倍ぐらいに工業出荷額がなるかというお尋ねでございますが、県から出されました資料によりますと、二・二倍程度になる、こういうような数字が出ております。もしこの数字だとしますならば、私はなお先ほど言いましたように、いろいろな諸問題、むずかしい問題はありましょうけれども、そう飛躍的なものではなくて、達成可能な数字ではないかというように考えております。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 せんだって来との石炭の特別委員会におきまして、通産省が考えております四十二年度の予算の中に盛られました工場貸与制度とか、こういうものをもっともっとやはり拡充しなきゃならぬのじゃないか、こういうようなお話がございました。しょせん私は、今日この段階において、いわゆる経済ベースでいくということはないと思うのですよ、よほどのてこ入れがない限りは。そうしてやっぱりそういうところへ企業誘致をすることということで、みずからが工場立地としての条件をつくり上げていくこと以外に私はないと思うのです。そういう点におきまして、中核産業なり、あるいはこの工場貸与制度等というのは、先ほど来議論しましたように、県や市町村では手に負えるものではありませんから、何と言ってもその土台というのは、この実施計画に基づいて県や市町村に対して財政的にもいろいろな点において国が指導し、てこ入れすると同時に、振興事業団というものも一つの柱になって、そうしてやはり大きな土台というのは国、いわゆる通産省が主体となってやっていく以外にないと思うのでありますが、九十もある、あるいは百九十四もある市町村全部なんということはできないと思う。それでこの基本構想の中にもあらわれておりますように、やはり拠点主義という形がとられておりますね。たとえば飯塚と田川と直方と結ぶ三角点、そういうものを拠点にいたしまして、どこかにひとつどかんと中核産業を置き、その周辺に中小企業を誘導するという形――あっちにも中小企業団地、こっちにも中小企業団地、しかも金がないのに、若干でも、無理しておれの市でやるのだ、おれの町でやるのだという形の分散主義ではなくて、拠点主義というのが私は必要であろう、そういう拠点が中心になってだんだんその外へ広げていく、こういうことが必要だろうと思う。  筑豊を例にとりましても、この計画の中でも瀬戸内海がどう発展しようとも、筑豊には絶対波及効果が及ばないのだということを指摘しております。私はそうだと思うのです。これは北松にも及ばないのです。そうなりますと、何らかの形で、独自の形で起き上がるだけの土台というようなものは、やはり拠点をつくることによって育てる。その役割りは国の非常に大きな責任においてやる、あるいはこの事業団が積極的に取り組む以外にない。あっちこっちの市町村でやるという総花的分散主義では私はだめだと思うのであります。佐賀と長崎県は、そういうことに思いついたようであります。二つが協議会をつくって、この北松地区なり、あるいは松浦地区等のあれについて取り組む体制ができたと承っておるのでありますが、私はこれは非常に大切じゃないかと思うのであります。そういう点で国も県も市町村も相協力して、やはりどうしても国が主体となって推進していく、そういうまた構想のもとに基本計画をつくる以外に私はないのじゃないかと思うのであります。でありますから、ひとつ第二次のこの実施計画というのは、残念ながら第一次計画は失敗ではありませんけれども、仁丹の役にもならなかったのでありますから、ひとつ実施計画は基本においてやり遂げるのだ、何が何でもやり遂げるのだ、そういう条件はひとつ田がつくってやろう、こういう形で文字どおり実施可能な、そうしてまた実施しなければならぬ計画をつくり上げていただきたい、早急にやっていただきたい、早急にひとつすべり出していただきたい、こう私は思っております。  時間が来ましたから、きょうは産炭地域における住民の生活と教育の問題について少し質問したかったのでありますけれども、時間がありませんから、委員長、いずれ次の機会にまたお願いすることにいたしまして、きょうは一応終わります。
  58. 井上亮

    井上(亮)政府委員 産炭地振興につきましての態勢の、何と言いますか、非常に現地の実情を踏んまえた御意見を承ったわけでございますが、私は御意見の趣旨には全面的に賛成でございますので、先生おっしゃいましたような方向に沿いまして、しっかりした産炭地振興基本法をつくってまいりたい、またそれを推進してまいりたいというふうに考えております。
  59. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 産炭地振興についていろいろ御心配になっておられる点はよくわかりました。そういう点については、通産省といたしましても十分考慮して計画を立てることと存じておりますから、ひとつできるだけ皆さまのほうもまた御協力をお願いしたいと思います。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 石川次夫君。
  61. 石川次夫

    ○石川委員 いま細谷委員のほうから産炭地振興の実情に徴しての非常に適切ないろいろの御質問があったわけでございますが、実は茨城県並びに福島県にまたがりますところの常磐炭田、これはそれぞれの県で将来どうなるのだということが最大の課題になっておる、焦眉の対策を必要とする大きな事件になっております。これはいまさら申し上げるまでもないのでありますけれども、私はきょうは実は総合エネルギー関係で詳細に質問したかったのでありますが、午後の委員会にどうしても出なければならぬ関係がありまして、結論的に質問していきたいと思っております。したがって、答弁のほうもひとつ簡明直截にお願いしたいと思います。  その前にちょっと一つだけ、この前の委員会で申し上げたことなんですが、私建設のほうの委員会に出ておりますが、昨日本会議で土地収用法が通過したわけであります。この前の委員会でもちょっと質問いたしましたけれども、その公共用地の対象として産炭地振興事業団のやっておりますいわゆる土地造成事業というのは対象に入っておりません。今度の土地収用法の改正案というのはいろいろ問題がある。これはごね得をなくする、そのことによって地価の高騰を防ぐというけれども、地価高騰はごね得だけではないので、この法案だけでいうと、単に公権力を強めるだけではないか。したがって対象を広げるということについては賛成はできないと思います。しかし、この深灘な産炭地振興のための造成事業だけは、法理論とか、あるいはまたいろいろ法制局あたりでもこれは公共用地であるかどうかということについての問題が多いと思います。私たちの党の立場としても、この範囲を広げるということについていいか悪いかということは検討を要する問題であるけれども、しかし産炭地振興という焦眉の急務というものを打開する一つの方法として、公権力を強めるというのではなくて、千二百万円までは免税になるわけですから、地主としても非常に協力しやすい態勢になるという意義を強く認めることによって、この産炭地振興事業団の造成事業というものは、公共用地の土地収用の対象にするということは一考を要する問題ではないかと思うのです。したがって、通産大臣はその点について推進をはかるべき責任があるのではないか、こう思うのですが、それをひとつ御答弁願いたいと思います。
  62. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 土地収用法の内容について、私あまり詳しいことは存じませんが、いまお話の件については十分ひとつ私のほらも研究してみたいと思います。
  63. 石川次夫

    ○石川委員 次に総合エネルギーの問題ですが、これは申し上げると相当時間もかかる問題でありますけれども、御承知のようにエネルギーの需要といろのはどんどん飛躍的に伸びておるわけです。しかも日本では残念ながらエネルギーの資源というものがないということは言うまでもないわけであります。石油は中東に六三%依存をしております。今度の中東問題で、これの紛争が長引けば一体入手がどうなるのか、絶対量が確保できるかどうかという問題と、石油が相当高騰するのではないかという問題がすぐに日本にはね返ってくる。しかも中東は今後も政情不安が非常に予想されるわけでありますから、どうしても石油開発事業団というものを通じて、日本自体が海外で探鉱をやらなければならぬというような必要性が出てくるわけであります。しかしこれは言うべくして非常にむずかしい問題であろうと思うのです。  そういう中で総合エネルギーの大体の見通しを言いますと、昭和四十年で石油に五八%依存したものが、五十年以降は七三、七五%というふうに大量に依存をする。これは一次エネルギーの場合でありますけれども、石炭のほうは昭和四十年の二七%が昭和五十年が一六%、昭和六十年が一頭をもたげて割って入りまして、昭和五十年では二%、現在はゼロですけれども昭和六十年では一〇%までこれを伸ばしていくという構想を立てております。もちろん長期構想でありますから、なかなか予定どおりにいきにくいということはわかっておりますけれども、そういうような見通しを現時点では立てておる。それから石炭の場合ですが、将来のエネルギーの需要から言いますと、石炭は現在七%のものが五十年以降は一%足らずというような状態にまで落ち込んでくるわけであります。もちろんこれは電力のほうに回るものがあるわけですけれども。それで、一般炭というものが毎年減少をして、いわゆる流体革命ということによって、昭和六十年は四百六十満トンで、大体昭和四十年の実績の四分の一程度に一般炭の需要というものが落ちてしまうであろうという、非常に悲観的な見通しを立てておるというのが実態であります。  ところで、その中で中東に依存しなければならない石油の問題は、これは非常に不安定なものであるということは言をまたないわけでありますけれども、原子力の場合、昭和六十年、いまから二十年たったら一〇%一次エネルギーとして供給ができるんだというような見通しになっておりますが、エネルギー政策課長さんは、この点について何らの不安もお感じになっておらないのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  64. 田中芳秋

    田中説明員 ただいまお話のありました点につきましては、具体的な展望と申しますか、エネルギーの長期的な見通しを踏まえて対策検討する必要がある、こういうことで各種エネルギー資源につきまして、調査会で検討を続けております。これを具体的に実現してまいります施策といたしまして、調査会では主要な施策につきましてはいろいろ提言をされておりますけれども、なおこまかい具体的な施策につきましては審議を残しておる、こういうことが答申にも書いてあります。この点につきまして、確かに不安がないかという点につきましては、なお私どもといたしましても検討しなければならない点が多々残っておると思っておりますので、引き続き調査会で御検討をお願いする、こういう形で現在考えておる次第でございます。
  65. 石川次夫

    ○石川委員 石油の問題は常識化されておりますからここではあえて申し上げません。したがって、石油が非常に不安定であればやはり石炭というものを見直さなければならぬという問題が当然出てこざるを得ないと思うのであります。ところが、石油というものがもし安定をし、原子力が安定をすれば、石炭というものはこれだけでいいんだというふうな結果が出ておるわけでありますけれども、実は原子力の問題は、アメリカと三十年の長期契約をやって、濃縮ウランでこれだけ潤沢に供給されるんだという前提で、原子力というものは昭和六十年の時点で二千四百四十億キロワット時、大体四千万キロワットの容量のものを日本で据えつける、こういうことになっております。これは私は有澤さんともいろいろ話をしておるのですが、実は重大な誤りをおかしておるということを言わざるを得ないと思うのであります。ということはどういうことかと言いますと、これはほとんどアメリカの軽水炉を導入するということになっておるわけであります。ところがこの軽水炉というのは、四千万キロワット導入するということになれば、日本におけるところの原子力の技術者を全部それに注入をしなければこれだけのものを持ってこられない。したがって日本の自主開発という道は全然閉ざされてしまうという危険をおかさざるを得ないという状態になるわけであります。ところが濃縮ウランというのは御承知のように現在のところはアメリカから全面的に購入せざるを得ないというときに、全面的に軽水炉に依存する、しかも日本の技術陣のほとんど全力をそれに注ぐということを避けんがために、今度は動力炉開発事業団というものを新たにつくり上げる予定はされておりますけれども、実はそのことによって日本の自主開発という道が全然閉ざされてしまうのではないか、こういう危険性が出てまいっておるわけであります。われわれとしては全面的にどんどん外国の導入炉というものを持ってくればいいのだというようなことでいって、はたして日本のエネルギー源というのはアメリカに全部死命を制されるという点は問題ではないか、こういう点が一つ大きく問題になると思うのであります。  あと一つは、世界のウランの需給関係というものを見落としているのではないか。私は専門家にいろいろ調べさした資料を持っております。これはここで申し上げますと時間がかかりますから申し上げませんけれども、ざっくばらんに結論を申し上げますと、アメリカのこれからのウランの需要の趨勢というものを見てまいりますと、大体一九七五年で満ぱいです。アメリカはそれでもう自給自足が手一ぱいです。もうほかの国に濃縮ウランを提供するような余裕はとうていないであろう、こういうことがはっきり数字の上で出ております。したがって、日本でもしこの濃縮ウランをアメリカから入手しようとすれば、どうしても天然ウランを提供しなければならぬというようなところに追い込まれるわけであります。そうすると、天然ウランはこれからの問題でありまして、もしこれから海外で探鉱し、それからそれを製錬をし、そして濃縮ウランまで持っていくというふうなことになりますと、いま直ちに着手をいたしましても十年はかかります。そうなりますと、アメリカはいまのところは商売ですからどんどんつくってあげましょうというふうなことを言っておりますけれども、アメリカ自身がもう一九七五年以降は濃縮ウランを輸出するという余力があるとはとうてい思えません。そうなりますと、その原料面が全部アメリカに依存せざるを得ないということにかてて加えて、との濃縮ウランの供給源というのは、日本が簡単に考えているようなそう甘いものではないというようなことで、将来二〇三〇年から二〇五〇年ごろになりますと、高速増殖炉というものが完成することが予定されておりまして、そうなりますと、燃料サイクルというのは自動的に回転をしますから、燃料の補給が要らないという革命的な発電炉というものが完成するのではないかというふうに思われておりますけれども、これは二〇三〇年から二〇五〇年です。遠い将来の話であります。そうなりますと、現在の技術をもってするところの原子力に基づくところの動力炉、これを四千万キロワット日本に導入するというのは、日本の自主開発というものをおくらせるということと同時に、実際にそういうような濃縮ウランというものは導入され得るかどうか、導入され得るといたしましても、これは全部アメリカに首の根っこを押えられる、こういうことにならざるを得ない。日本の自主開発で実際に動力炉が、新型転換炉あるいは高速増殖炉ができるのは、昭和六十年あたりではとうていこれは見込みはありません。ちょっと不可能だと思います。そうなりますと、どうしてもこの原子力に一〇%依存をする、四千万キロワット依存をするというような計画というものは、根本的に考え直さなければならぬじゃないか、こういうことが予想されるわけであります。しかもエネルギーの需要というものはどんどんどんどん増大をしてまいるわけでありますから、そこで石炭というものは、一般炭は年々減少をして、昭和六十年になったら昭和四十年の実績の四分の一程度に落ちてしまうのだということを見通した計画を立てて、ただそれだけ維持できればいいのだというような消極的な石炭の見方でいいのかどうかということが大きく問題になるのではないかと思っております。  したがって、これは遠い将来にわたっての石炭の見通しというものは、現在の総合エネルギー計画の中ではどう考えても原子力あるいは石油に非常な不安があるということになれば、国内のただ一つの資源としての石炭というものを見直して、これにもつと力強い位置づけをしてやらなければいかぬ。いまのように五千万トンをやって、一般炭はどんどん減って、昭和六十年は昭和四十年の一般炭の四分の一くらいになってしまうのだ、やむを得ないのだというようなことで済ましてはたしていいのかどうかという大きな問題が提起されざるを得ないと思うのであります。この点についてひとつ通産大臣の所見を伺いたいと思うのです。
  66. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 総合エネルギーの問題に石油の問題、原子力の問題、これが将来重要性を帯びてくるということはお説のとおりであります。そこで、それに引きかえて石炭の問題でありますが、石炭は安全保障あるいは外貨の関係あるいは石炭産業を維持するというような立場から、五千万トンは確保するという方針を立てておるのでありまして、これはどうしても五千万トンは確保したい、こう考えております。したがいまして、問題は、原料炭のほうは、鉄鋼が盛んであればまた原料炭の消費は十分できますが、一般炭のほうは、これはだんだんと消費が滅ってくることは事実であります。でありますからして、この一般炭をやはり需要せしめるように考えなければいかぬ。それについて考えたのが御承知の政策需要でありまして、電力会社なりあるいは電源開発に石炭によって火力発電さすという方針を立てて、それでもちろん経済的には損しますから、国家がそれを補償してやるという政策をとっておるのであります。でありますからして、この政策需要を確保して、どうしても五千万トンは確保するということで、この政策需要を将来ともやはりこれを増大して、そして五千万トンは確保していくという考え方でいきたい、こう考えておる次第であります。  しかし、お説のとおり石油という問題がだんだんとエネルギー資源においては重要視されてきます。中東の問題についてはいろいろ御心配になっておる点がありますが、今度は石油開発公団を設けまして供給源を各方面から求めるということで、政府はこれについては必要な資金は出すという方針で今後はいきたい、こう考えておりますので、したがいまして、石油については今後の日本の努力によることはもちろんでありますが、十分に必要な石油は確保したい、またその石油を確保することが日本の産業の発展上絶対条件でありますからして、その石油の確保についての必要な資金というものも確保したいということで、そういう方針で今後いきたいと考えております。  それから、原子力の問題についてもいろいろお話がありましたが、今度また科学技術庁のほうで動力炉の事業団を設けたのも、結局自主的に原子力の発電をやりたいという政府の方針でありまして、政府もできるだけの援助をするのでありまして、これは今後の技術の発展によってどうなるかわかりませんが、結局これは高速の増殖炉にまたなければならないということになると思うのでありまして、その点についてはできるだけ技術の開発をやって、そして増殖炉を一日も早く活用できるようにしていくことによって、私は今後原子力の発電を確保したいというように考えておる次第であります。結局将来は原子力、石油、石炭、これらの三つが総合エネルギーの資源でございまして、石炭だけはそのうち五千万トンは是が非でも確保するという国の方針で今後いくつもりでありますからして、ひとつさように御了承をお願いしたいと思います。
  67. 石川次夫

    ○石川委員 核燃料の供給源のことですが、これは場所が違いますからあまり申し上げませんけれども、オーストラリアは非常に有望ですが、輸出はいたしません。南アメリカも全然これは輸出はしないというのが国策できまっております。アメリカは、いま申し上げたように、一九七五年以降になりますと輸出をする供給能力というものは失われる。ということになりますと、カナダと南アフリカだけがわれわれとして考え得る開拓すべき土地だということになるわけであります。そしてカナダとそれから南アフリカも、現在軍需生産というものはだいぶ減っておるものですから、ウランに対する需要が減っているということでだいぶ生産力が減っております。いまはウランとして二万トンくらいであります。この生産の減っている、いまやめているところを再開発をさせる、それから新たに開発をするということを予定いたしまして、大体一九七五年、昭和五十年ころになりますとどうやら三万五千トンくらいまでいくかどうかというような見通しであります。ところが、現実にはこの世界のエネルギーの需要というものは急上昇をいたしますから、とうてい需給のバランスがとれない。高速増殖炉が完成した暁についてはちょっと事情は違いますが、これは先ほど申し上げましたように、二十一世紀に入って中ごろにならなければそういう状態は想像できないということになりますから、そうなると核燃料の導入ということはそう手放し楽観はできないというのが実情であります。私の質問にちょっと通産大臣は適切にお答えになっておらないように思うのでありますけれども、この日本の自主開発の道が、軽水炉を四千万キロワット入れるということになって、相当阻害をされてしまうというおそれがあるわけであります。この点はこの点でまた別な問題としてとらえなければならぬ問題ではありますけれども、民間のいわゆるユーザー、電力会社は、日本の自主開発なんかやっていたのではまどろっこしくてしょうがないから、何といっても軽水炉を持ってくればいいじゃないかという意向が非常に強いようであります。自主開発よりもそのほらが強いようであります。ところが御承知のように原子力というのは、原子力商船の問題にも出ますように、日本が有力な世界における競争相手だということを予定をいたしまして、優秀な技術は日本になかなか提供しないという問題もそこにからんでくるということも一つありますけれども、とにもかくにも原子力は手放しで、このような総合エネルギーの長期計画に見られるような状態で日本にもたらされるかどうかということについては大きな疑問があります。  私が申し上げたいのは、石炭だけが唯一のエネルギー源である。したがって五千万トンは何とか維持したいということではなくて、五千万トンではたしてその位置づけが正しいかどうかということを一回見直さなくてはいけないのじゃないか。石油というものも非常に不安定で、相当努力はされるようでありますけれども、何しろ昭和六十年になりますと四億七千六百万キロリットルというような膨大な数字になるわけであります。そう簡単にこの導入ができるかどうかという点については問題が残りますけれども、これは一応おくといたしまして、この石炭が一〇%程度、原子力に一〇%依存をするという一次エネルギーの供給というものについて、石炭の一〇%というものを見直していかなければならぬような状態にならざるを得ないのではないか。これは総合エネルギーではたいへんな専門家がみな集まりまして、これだけのものを粒々辛苦の末つくられたもので、いま私が申し上げて簡単に直るとは考えておりませんけれども、どう考えても、原子力に関する限りの見通しというものは私は間違っておると思うのです。そういう点で通産大臣はあと一回この石炭の位置づけというものを見直す、考え直すということで、ひとつ腹をきめて対処してもらいたい、こう思うのでありますが、その点の見解を伺いたいのです。
  68. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 問題は、石油の供給が困難であるかどうかということが前提条件だと思うのです。御承知のとおり石炭と石油とを使用する立場からすれば、みな一般使用者は石油を使用するのであります。すべての点において石油が経済的であります。この石油の供給が困難であれば、あるいは石炭も使わなければならぬという場合も起こるかもしれませんが、いまの見通しでは石油というものはあちこちで油田が開拓されておりまするし、いままでなかった北アフリカにおいても油田が開発されましたし、ソ連などにおいても油田が開発されて、日本へ売りたいということをいうておりまするし、また中国などでも、かつて日本が中国を支配しておったときには、中国には石油がないということが満鉄の調査の結果発表になっておるのでありますが、今日は中国では各地で石油が開発されておりますし、また私が行ったときには、将来日本へ石油を輸出したいということまで向こうの政府当局者が私どもに言っておったのであります。したがいまして私は、油田というものはまだ開発すればあると思うのです。日本も今日石油は出ませんけれども、日本ももっと深く掘れば石油が出るのじゃないかということで、通産省のほうではそれだけの予算もとっておるのであります。でありますから、石油が獲得できるのであれば石油を獲得するということでいきたいが、しかし安全保障というようないろいろな立場から、五千万トンだけは石炭は確保しておきたいということで、今後の日本のエネルギー対策を進めていきたい、こう存じておる次第でございます。
  69. 石川次夫

    ○石川委員 これは長い間の懸案で、五千万トンが常識化したようなかっこうになっておりますけれども、それはそれなりに非常な検討の結果、こういう結論が出たと思うのですが、日本のただ一つの安定したエネルギー資源としての石炭というものは、五千万トンがもう精一ぱいだ、五千万トンを何とか維持していこうということでなくて、五千万トン、あるいは先ほど申し上げたような、非常に不安定な中東に六三%も依存しなければならない石油、それにまた原子力の見通しというものも、私の見るところではそう安易なものではないというようなことからして、石炭というものを見直すという態勢で、ひとつ今後エネルギーの総合計画の見通しというものについて対処してもらいたいということを申し上げたい。これ以上は水かけ論になりましょうから申し上げませんけれども、ただ一つのエネルギー源だ。しかも世界の情勢の中で日本の原子力の見通しなんかも非常に不安定な中で、石炭だけは何としても前向きで確保しなければならぬという意欲をもって取り組んでもらわないと、何からしろ向きにこれを何とか維持していくのだというふうに、非常な消極的な姿勢になっているということが、私は非常に残念だ、こう思うので申し上げたわけであります。  それからあとは非常にこまかい問題ですが、実はこの委員会がほかとちょうど重複しているものですから、私も欠席がちで、質問申し上げることがいままで申し上げたことを繰り返すような形になるのではないかとおそれておりますが、石炭鉱業審議会が四十年六月にできまして、四十一年七月に答申が出まして、いま申し上げたような五千万トンという結論が出て、その生産体制を整備をするという条件がついておるわけです。大ざっぱに言うと、鉱区の再編と調整をさらに強く進めるということが一つ。それから炭層の探査と坑道の掘進を大々的に進める。それから優秀鉱区に新鉱の造成を促進するというような条件をつけながら、この五千万トンを維持するという結論になっておるわけであります。  ところで、これは言い古されたことではありますけれども、常磐炭田には、これは北海道でも九州でも同じことであると思いますけれども、この鉱区の再編と調整をさらに強く進める。これは第一条件のように書かれておるわけで、常磐地区なんかでも、あれをおいて私はほかに起死回生の道はないと常々考えておるわけであります。この鉱区の再編と調整というものをさらに進めるというこの審議会の答申の案に沿って、実績をいままで示しておったことがあれば、ひとつ教えてもらいたいということが一つ。  それから、鉱区というのは所有権ではないと私は思っておるのであります。もちろん鉱区を持っておる人はこの鉱区を手放すということについてはなかなか困難な事情があるということは、私は間近によく知っております。知っておりますけれども、鉱区というものは所有権ではないわけでありますから、絶対不可侵ではないと思うのです。これは政府が許可をして認めておるということにすぎないのであって、したがって鉱区を譲るということになれば、その鉱区に対しいままで鉱区税を納めたというようなことはあるでありましょうが、その鉱区といういうが所有権でない以上は、相当程度の強い力をもってこれを譲り渡せというだけの力が政府にあってもいいのじゃないかと私は思うのです。所有権とは違うのであります。その点を通産大臣はどうお考えになっておるか。  それから、この鉱区の調整ということについて実績がいままでありましたら、ひとつ教えてもらいたい、こう思うのです。
  70. 井上亮

    井上(亮)政府委員 鉱区調整の実績の点につきまして御説明申し上げます。  御承知のように石炭鉱業審議会の中に鉱区調整部会というものがありまして、これは部会長は青山秀三郎博士がやっておられます。ここで大きな事案を取り扱っておるわけでありますが、四十年から四十一年度にかけまして相当大きな懸案の事項が相当程度解決してまいっております。かつてはこの鉱区調整の問題につきましてはなかなか困難な事情があったことは、先生も御承知のとおり。特にこの鉱区を譲り渡すほうの側に立ちまして、自分の将来の職場をそれだけ減らすことになります。したがいまして、これは労使ともに生命線でございますから、そう簡単に自分の将来の職場を譲り渡すということはできないという立場をとっておったわけですが、しかし単にそういうものだけでなしに、中には遊休鉱区もあるわけでございますので、この遊体鉱区につきましては私どもも当事者の間に立ちましてあっせんの労をとってまいっておるわけでありますが、鉱区調整部会におきましてもそういった問題につきまして全国的な視野に立ちまして、いろいろ調整の必要な地点、内容等について審議をいただいておるわけでございます。  四十年、四十一年度に解決を見ました大きな事例を申し上げますと、まず第一には三井の砂川、これは北海道でございます。これが隣の北炭の空知鉱の一部の遊休鉱区を譲渡を受けた。それから第二点は北炭の夕張が三菱の大夕張の鉱区の一部を、これは資源の合理的調整というような立場から譲り受けを受けております。さらに第三といたしましては、明治鉱業の本岐、これもまた北海道でございます。これが隣接いたします三菱の阿寒鉱区、これは相当広範な鉱区でございます。この譲渡を受ける話し合いが成立いたしております。それから第四点といたしましては、住友の赤平と隣接の北炭の空知、この間の鉱区調整も完了いたしております。もう一点、御承知のように九州の日炭高松、この再建計画をつくりました際に、隣接いたしております宇部鉱区の鉱区調整、これは私どもが間に立ちまして、あっせんの労をとったわけでございますが、これも解決をいたしております。  それから鉱区調整部会で懸案となり、検討中のものが二点ございます。一つはやはり空知周辺、雄別、茂尻等との関係。それから第二は、先生もよく御存じの常磐炭鉱の茨城鉱区と隣接いたします宇部鉱業の鉱区、この二つの問題がただいま懸案になっております。  特に常磐の問題につきましては、これは私の見通しでございますが、遠からない機会にできるだけ円満解決をいたしたいといいふうに考えております。
  71. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 鉱区は所有権ではないことは、これは御存じのとおり鉱業権ですから。したがいまして、いま申し上げましたとおり政府のほうではできるだけ行政指導で鉱区の整理をやっておる。それから坑道掘進についても相当の予算を計上いたしておりまして、新しい有望な鉱区を発見して、できるだけ多く採掘したいというような方針をとっておる次第でございます。
  72. 石川次夫

    ○石川委員 それでは、そのことはぜひいま言ったような考え方で強力に推進をしてもらう。強権発動というと語弊がありますけれども、そうでなければもう起死回生の方法がないというところがたくさんあるわけです。いまの常磐の例と、いま一つは大日本炭鉱がいまのるかそるかというふうなせとぎわで、従業員が一時間短縮というような趨勢に逆行して、一時間延長する、賃上げもしないというような悲壮な非常な決意で最近努力しておりますが、ここなんかもおそらく私は鉱区調整というような方途を開かないと、なかなか打開の道はむずかしいのじゃなかろうかと思うのです。したがって、たいへん御苦労でありますけれども、この常磐炭鉱あたりは非常に小さな炭鉱が多くて、なかなか大炭鉱のように話のわかりがよくないかもしれませんが、それだけ困難性があるかもしれませんが、非常にたくさんの山が鉱区調整をしなければどうしても更生できないというところがたくさんありますので、そういう点については積極的に指導してもらいたい。強権発動とまでは言いませんけれども、それに近い決意を持ちながら鉱区の調整をはかってもらいたいということをお願いしたいと思うのであります。  それから御承知のように、政策需要をひとつつくり上げるということで、火力発電の問題も何回も質問をいたしておるわけでございますが、実を申しますと、この電力のワクは二千三百万トンということになっておるわけであります。二千三百万トンのワク内ならいいけれども、ワク外では困るというふうな事情もあったんでありまして、なかなか火力発電の問題もそう簡単に軌道に乗るわけではありませんが、しかし常磐炭鉱地域は火力発電をつくらなければどうにも需要が維持できないというのが実態でございます。したがって、どこの炭鉱に行きましても、炭鉱の経営者、労働組合へ行きましても、火力発電をつくってもらいたいということが、どこの炭鉱に行っても聞かれる第一の切なる要望だということは、石炭局当局も御存じだろうと思うのであります。  たいへん狭い地域に限定をした話で恐縮でありますけれども、常磐炭田地域に共同火力でもけっこうでありますが、具体的に話がどう進められているか、これもすぐに何とか軌道に乗せて来年度あたりから着工できるという見通しがないと、その前に倒産する炭鉱が相当出てくるのではないか、こういう懸念を感じますだけに、たいへん地域に即した話で恐縮でありますけれども、これは切実な要求でありますので、この点についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  73. 井上亮

    井上(亮)政府委員 常磐地区につきましては、特に炭の性質もありまして、また立地条件もありまして、特に地元に発電所をつくりたいという希望はかねてから非常に熾烈にあるわけでございます。私どもも地元のそうした要望にこたえまして、ただいま通産省内部におきましては関係部局とこの件についての検討、話し合いを進めております。ただ共同火力の場合にはやはり相当業界もあることでございますので、通産省内部で十分検討を遂げました上で、関係業界とも話を進めまして、何とか需要確保に遺憾のないように努力してまいりたいというふうに考えております。
  74. 石川次夫

    ○石川委員 たいへん恐縮でありますけれども、これは非常に急を要する問題だと思うのです。話のケリがつくのは一体どれくらいになるお見込みですか、できるだけひとつ早く……。
  75. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま申しましたように、現在通産省内部でいろいろ検討を進めております。お説のように需要確保の問題については焦眉の問題でございますので、私どもの決意といたしましては、一日も早く話し合いがうまく運びますように努力しているわけでございます。いつまでということはただいま明言できませんが、少なくとも石炭局といたしましては、この実現ができるだけ早くできるようにこということで検討を急いでいるという実情でございます。
  76. 石川次夫

    ○石川委員 この質問は当然また重複することになると思いますけれども、坑内水の問題です。この間、私も常磐炭鉱のほらをずっと石炭対策特別委員会の皆さん方と一緒に回ったわけでございますけれども、どこへ行ってもこの問題が出てくるわけです。陳情書をいろいろ拝見しますと、福岡県の山野炭鉱ですが、これなんか見ますと、毎年三・三三立方メートルのものが年に四千二百三十万円ぐらいの排水の費用がかかっておったものが、昭和四十一年には周辺の閉山の水がどんどんそこへ集中的に流れてくることによって約四倍、一三・三九立方メートルの排水費が一億三千六百万円というふうにかかっているわけです。それから昭和四十三年以降はさらに六倍ぐらいにふくれ上がって一九・三六立方メートルで二億円ぐらいかかる。炭鉱が正常な状態でやっておられるときならばいざ知らず、のるかそるかという非常な危急存亡のときになっているわけでありますから、そういうときにこれだけのものが自分の責任ではなくて、休山、閉山の多いためにその水を全部自分のところでしょって排水しなければならないために、このようなよけいな負担がかかるということになるとたいへんなことだと思うわけです。したがって坑内水の排水の費用というものに対しては適切な援助といいますか、補助というものをどうしてもやってやらなければたいへんな問題になる、たいへんな負担になっている、こう思うのであります。常磐あたりの実情を見ますと、いわき市の中の湯本、元の常磐市でありますけれども、そこは百二十の炭鉱が隣接して立ち並んでいる。それが現在は十四しか残っておらないわけであります。したがって百二十のらち十四が休廃山をした山の水を全部しょわなければならぬということになって、排水の費用というものは非常に膨大なものになります。ますます今後ともふくれ上がっていくだろう、こういうような状態になっているわけでありますけれども、坑内の排水に要するところの費用というものについては、やはり適切な援助、適切な補助がどうしても必要であろう、こう思うのでありますが、この点についてひとつ石炭局の見解並びに大蔵省あたりとの折衝が行なわれておると思うのでありますけれども現状は交渉は進んでおるかということをひとつお聞かせ願いたい。
  77. 井上亮

    井上(亮)政府委員 周辺の炭鉱が閉山いたしましたために、残存しております稼働中の炭鉱の地下水がふえてくる、そのために湧水費が御指摘のありましたように増高してきておる、そのために経営がきわめて圧迫されておるというような事例があるわけでございます。これらについて国が何らかの助成措置を講ずべきだという御議論があるわけでございますが、私どもは、本件につきましては、これは通常の助成策ではなかなかむずかしい点がございます。国の助成の考え方として、率直に言いまして、なかなかむずかしい点がございます。しかし実情は、先生もおっしゃったような実情でございますし、それからなお、私ども、政策的に考えまして、先生からも先ほどエネルギー政策で御指摘がありましたように、石炭を長期に安定さしていく、それから石炭資源を長期に確保していくという国の大きな政策目的があるわけでございますので、この周辺炭鉱の地下水の増加とこれによる費用の増加、経営の圧迫ということのために、ばく大な炭量を失う、将来の資源政策あるいはエネルギーの安全供給というようなことに支障を及ぼすというような、そういった政策目的にこの周辺炭鉱の地下水の増加が相当悪影響を及ぼすというような場合に限りまして、補助政策を考えてまいりたいというふうに考えております。
  78. 石川次夫

    ○石川委員 これは大蔵省との折衝はなかなかむずかしいと思うのですよ。むずかしいとは思いますけれども、これは自分の責任でそういうふうになったわけではない。ほかの休廃山の水を自分のところでしょわなければならないというふうな新しい事情が加わって、しかもなお炭鉱の経営状態というものは非常に苦しい現状に置かれておる。しかも国策としては、先ほど申し上げましたように五千万トンというものを維持する、もっとふやしていくというふうなことを考えますと、何とかこの経営を軌道にのせるということのためには、非常にむずかしい事情はあるかもしれませんけれども、何としてもこの助成策を考えてもらわなければ、炭鉱の円滑な運営というものは不可能だ、こう思うのであります。いま大蔵省のほうとの折衝はどういうふうになっておりますか、ちょっとお知らせを願いたい。
  79. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大蔵省とは、まだ具体的には私話し合いを進めておりません。先ほどお答えいたしましたのは、これは石炭局長としての考え方であります。しかしこれは、私先ほど申しましたように、資源政策というような角度から見まして、膨大な資源をこのことのために失うということは、国としてやはり一大損失でございますし、石炭の持っております安全供給、安全保障というような国の政策目的からいたしましても、やはりそういった資源は今後とも確保していかなければいかぬわけでございますので、私は、そういう意味合いから国の助成が必要であるというふうに考えておりまして、大蔵省にもそういう線で今後折衝してまいりたいというふうに考えております。
  80. 石川次夫

    ○石川委員 これはぜひ委員長にも要望しておきたいのですが、委員会として、この点はおそらく超党的に意見は一致するのではないかと思うのです。したがって、この委員会全体の決意表明なり一致した意見として、強力にひとつ働きかけてもらいたいということをお願いしたいと思います。  あと二点ばかり、これは非常に簡単な問題でありますけれども、原料炭については、新鉱開発ということを積極的にやるということを、石炭鉱業審議会の生産体制の整備という要望事項に沿って、ことしも予算化されておるわけであります。ところで、話は飛躍するようでありますけれども、最近ビッグサイエンスの中で海洋何とか開発ということをやらなければいかぬということで、日本は非常に立ちおくれております。おそらく海底の所有権というふうなものも今後大きな問題になるであろうというのに、日本はたいへんおくれておりますけれども、その最も卑近な問題としては、海底における炭層を探査するということをやっていく必要があるのじゃなかろうか。ところが、これは民間の企業でやろうとしても、海底の炭層の探査ということはなかなか困難であるということで、どうしてもこれは政府自体がやっていただいて、これは一般炭ではありますけれども、何とか新しい優秀な炭層というものを開発していくという意欲を持って取り組んでもらいたいと思っております。これはぜひ来年度あたりの予算からはこれを実現させて、エネルギーの確保ということのために、海底の炭層の探査というものをぜひひとつやってもらいたい、こう思うのでありますけれども、通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  81. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 海洋をこれから――いままでは宇宙開発ということが世界の注視の的でありましたが、これから、海洋開発ということが次の舞台になったと思います。したがいまして、その炭層の問題なども、おのずからその海洋開発の一部門として当然考えられる問題だと考えておりますが、政府も、科学技術庁のほうでは昨年海洋開発については予算を取ったはずでありますから、今後日本の技術開発として海洋開発のほうにこれから相当の資金を出すべきである、こう考えておりますから、そのときにはひとつ炭層の問題もあわせて研究したいと思います。
  82. 石川次夫

    ○石川委員 海洋開発の問題と炭層の探査とは直接には結びつかないのですよ。これは一つの例として私は申し上げたわけなんですけれども、海洋を自分のものにするというふうなことが、世界各国どこでも積極的に働きかけておるので、海洋開発の一環としての炭層探査ということではないのです。これは陸地に続いているところをどう炭層を見ていくかということで、これはなかなか民間では調べられない。海洋開発と直接の関係ではなしに、石炭局自体で海底炭層というものを探査するということをぜひやっていくべきじゃないか、こう思っておるわけです。その点について御答弁願いたいと思います。
  83. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私どもやはり資源確保という観点から、特に陸地続きの海岸線あるいは相当な海洋の部分に及ぶわけでございますが、埋蔵炭量が相当あるとおぼしき地点に対しましては、今後とも埋蔵量調査につきまして、あるいはそれの今後の採掘の可能性、こういうような調査を今後とも努力してまいりたいと思います。
  84. 石川次夫

    ○石川委員 最後に、これはたいへん地域的なことで恐縮なんでありますが、常磐炭田は、何とか起死回生の道を講じたいというので、火力発電ということを一面どうしてもやってもらわなければならぬと思っておりますけれどもあと一つは、これは大臣にぜひ記憶しておいてもらいたいと思うのは、筑波学園都市というのがこれからつくられることになります。あそこには御承知のように、石炭火力というものを中心としたセントラル・ヒーティングというものを設けるということで、新たな需要をつくりたいというのが炭田地帯の全体の要望でもあると同時に、茨城県の非常に強い要望でもあるわけであります。これは石油を使らということもあるわけでありますけれども、石油については、御承知のように、公害の問題もあるわけです。したがって、これは何とか常磐炭というものを主体としたところのセントラル・ヒーティングということを通じて需要の喚起というものをもたらしたい、こういうことを考えておるわけでありますから、ぜひこれはお含みおき願いたいと思っております。  それから、あと一つ、たいへん小さな具体的な問題で恐縮でございますが、いままで山はつぶれておりませんけれども、どんどん離山をしているという山が、中小炭鉱では相当多いわけであります。それにはほとんど退職手当は払っておらないという実態があるわけです。ところで、今度負債の肩がわりという問題が出ましたときに、そういうところの労働組合といいますか、従業員の連中は、おそらく負債の肩がわりがあれば退職手当のほらがそれでもって補てんされるであろうという期待を持っておるわけであります。しかしながら、御承知のように、この負債の肩がわりというのは、純然たる金融機関からの残高というものを対象としてしぼっておるわけであります。赤字とかなんとかいうこととは別な形でこれは考えることになっているわけであります。ところが、このことが、非常に期待をかけておりますものですから、もし残高に焦点をしぼって、そういう赤字というものとは無関係なんだ、こういうことになりますと、この離山の傾向というものは、なおさらいや気がさして、もう退職手当ももらわないのだ、これはケリがつかないのだ――これは別な問題になるかと思うのでありますけれども、相当深刻な問題になっておるのであります。現在残っておる炭鉱でも、そういう炭鉱がかなりあるわけであります。そういう点の対策を一体どうしたらいいかということについて、これはいきなり答弁を求めるといっても、なかなか簡単にはいい回答は引き出せないことはわかっておりますけれども、何か御意見がありましたら、この際伺っておきたいと思います。
  85. 井上亮

    井上(亮)政府委員 何と申しましても、やはり炭鉱労務者の定着性を確保するということが今日非常に大事なことであると思うのであります。しかしそれをそうさせるためには、基本的にはやはり石炭鉱業みずからが安定した見通しを打ち立てるということが一番大事ではないか。自分の働いている企業の将来性についての安定感ということが一番大事だと思いますので、やはり基本的には石炭鉱業の安定対策ということが必要であるというふうに考えております。なお具体的には、さらに端的には、引き続いて御審議いただきます予定になっております炭鉱年金制度の創設問題、あるいは福利施設についてのさらに充実をはかっていくというような施策が必要かと思いますが、やはり何といっても根本的には石炭鉱業を安定させていくという基本的な対策が一番大事じゃないか、その上に立っていろいろ労働条件の改善とか年金問題等の解決をはかっていくことが必要だと考えております。  肩がわりは御指摘がありましたように、ただいま各企業が再建整備計画というのをつくっておりまして、これを石炭鉱業審議会審議いたしまして、最終的には通産大臣がその個別企業の再建計画を認定いたしまして、認定を受けた企業がこの元利均等償還の国の助成策の恩典を受けるということになるわけでございます。そのときに元利均等償還、この助成策は肩がわりといいましても、いわゆる異常債務の肩がわりというような意味じゃなくて、元利均等補給金を交付する、もっと平たくいえば元本の一部について補給金を出す、もう一つ利子補給をするという助成策でございますので、先ほどお尋ねになりました社内預金とかあるいは退職金の未払い分とかいうようなものに直ちに元利均等補給金がいくわけではないことは、御指摘のとおりでございます。ただ今日石炭鉱業は金融機関から膨大な負債を借りておりますので、これが今回の元利均等補給計画によりまして相当部分軽減されますので、そのことによりまして企業の金融力がついてまいりますし、あるいは手元資金等につきましてもこれに基づきまして若干のゆとりが出てくると思います。そういう面からいろいろだだいまお尋ねのような労働条件、あるいは社内預金の引き出し等にも応じ得る体制ができていくのではないかというふうに考えております。
  86. 石川次夫

    ○石川委員 それでは、私はまだあることはあるのですが、常磐炭鉱地帯の炭鉱はどこもかしこも、ほっておけばほとんど全滅をするのではないかというような実態であります。それに伴って付近の産炭地というのは――生活水準は茨城県は全国的に見てもたいへん低いほうですけれども、その国民所得を調べてみますと、産炭地地域というものは陥没地帯にはっきり統計上も出ておるわけですね。このままほうっておいたのでは生活安定上もたいへんなことになるし、将来もこのまま続いてさらに倒産というものが相次いでいくということになりますと、抜き差しならない社会的な問題に発展するということで、県としても福島県、茨城県を通じて最大の課題になっておる。かてて加えて、安定エネルギーというものを確保するという観点から石炭をどうしても確保していかなければならないということを考えますと、たいへん困難な問題でありますけれども、いま私が申し上げましたような点について十分な配慮をして、積極的に対処をしてもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 午後は二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時九分開議
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。三原朝雄君。
  89. 三原朝雄

    ○三原委員 営繕局長にお伺いをいたしたいわけですが、福岡市に現在中央各省の出先機関がありまして、その総合庁舎がすでに建設計画決定し、その準備にかかっておられる時点だと思います。多少時期的には時期はずれの感もいたしますが、特にお願いをいたしたいのは、御承知のように石炭政策を強力に国において進めていただいておりまして、特にその中でも需要対策というものを一つの政策として目下積極的にこれに取り組んでおる。この際、お願いいたしたいのは、福岡県自体が石炭生産県でもあるし、特に今日まで石炭産業の中心的な立場に立ってまいりました。そこに中央の出先機関の総合庁舎ができます。それで今回準備をされておる総合庁舎の暖房用の炉には、ぜひ石炭を専用願うような暖房炉に設計をお願いいたしたいということでございます。これは、局長も御承知のように、福岡市における各ビルなど、われわれがいままで積極的にそういう交渉をしなかった点もみずから責任を感じておりますが、将来はひとつ総合庁舎をモデル的な建築体制にしてもらいまして、今後建設されるビルにはそういうことをお願いしようと思います。そういう意味においてまず近く建築にかかられる総合庁舎に対しましては、ぜひひとつそういう設計に――もしも設計が重油をたかれるようになっておるとすれば、ぜひ設計変更を願って、石炭専用炉にお願いいたしたいと思います。この点についての局長の御意見をひとつ承りたいと思います。
  90. 小場晴夫

    ○小場政府委員 お答え申し上げます。  実は、福岡地方合同庁舎、本年度予算約九億八千六百万、国庫債務を含めてでございますが、そういうふうな予算がついておりまして、全体計画といたしましては十五億ほどの建物でございます。入ります官庁が約十六官庁というようなことで、予算が昨年度からついておりましたので、ことしの二月ごろから工事にかかっております。すなわち工事にかかります以上、設計は一応終えて進めておったわけでありますが、政府関係の建設のボイラーに石炭をつかうといろことにつきまして、かつて閣議決定があり、あるいは対策審議会の答申の中にその旨がうたわれ、閣議において尊重するというような閣議決定がなされましたことも承知いたしております。さかのぼりますのですが、札幌に地方合同庁舎、やはり同じような規模かと思いますが、建てました際には、お打ち合わせの上石炭だきにいたしたわけでございます。福岡の場合については、率直に申し上げまして、重油でボイラーをたくという設計をしておったわけでございます。  その理由でございますけれども、実は先ほど先生がおっしゃいましたように、福岡市内に建っておりますビル、これは民間のビルから、あるいは郵便局あるいは駅、こういうようなビルを含めまして、いろいろ調べてみたわけでございますが、天神ビル、これは重油規制がございましたときに建てたピルでございますが、それ以外の建物はみな重油だきでやるというようなこと、あるいは筑豊地区におきます田川の市庁舎、あるいは飯塚の市庁舎、直方の市民会館、こういうような建物のボイラーがやはり重油だきになっておる。こういうような状況承知いたしておりまして、九州地区におきます石炭問題というものは非常に重要だということは十分承知しておりましたが、やはり地元におきましても積極的にこういう市街地におきます建物は、やはり重油だきのほうがいいのだ。これは御説明申し上げますと、建設コストは重油だきのほうが若干安い。ランニングコストが非常にかかるわけです。このほかにメインテナンスのためのボイラーマン、それから灰出し作業、こういうようなものを見込みますと、相当のランニングコストになるというようなことで、そのために、われわれは地元におきましても重油だきにしておるのじゃないかというぐあいに判断いたします。また特に御注文といいますか、お話もございませんでしたので、地元のほうからも、あるいは本局のほうからも特別にお話もございませんでしたので、設計を重油だきといたした次第であります。  最近になりまして、このことについて福岡知事からのお話もございましたし、その他石炭局長からもお話がございまして、切りかえてほしいというような正式のお申し出があったわけでございます。それで、われわれいま十分検討しておりますが、いまちょっと御説明申し上げましたように、建設コストが若干かかるということで、予算に若干の影響がある。それから建て上がりましたあと、メインテナンスというのは国有財産局とも非常に関係がございます。あるいは入居官庁が十六ございまして、その入居の十六官庁のいわゆる管理費と関係もございまして、そこらの方々とも、意見調整をしなければいけないというようなことで、大蔵のほらと意見を調整しながら、重油だきから石炭だきへの転換ということを検討いたしたい、こう思っております。  なお、ここにおきまして先生からいまのようなお話がございましたので、前向きでいろいろ検討いたしたいと思うのですが、重油をたきましても公害という点もあるかと思うのですが、石炭だきにおきます公害の問題がやはりあるかと思います。駅から約二百メートルくらい離れておりますのですが、今度の博多駅のすぐ側でございまして、建物は八階建てというように非常に高い建物でございます。ここから黒い煙をあげるということはいかがかというようなことを考えております。石炭局長からは、いや、黒い煙をあげないで白くすることもできるのだというようなお話がございますので、そこらをいろいろ検討したいというように思います。  以上、状況の御説明を申し上げました。
  91. 三原朝雄

    ○三原委員 いろいろ事情もあるようですが、現在におきまする石炭政策については、局長承知のとおり、なお公害問題等の御懸念があるようですが、これはひとつモデル的な、石炭を専用して、公害は出さないぞというように、石炭局長のほらに大いに研究していただいて、そういう点は、特にそういう体制ができますと、かえっていい意味のモデスケースをつくることになると思いますので、ぜひひとつ前向きの体制で石炭を専用するという方向でお進め願いたいということを強く要請をいたしまして、質問を終わります。
  92. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  93. 田畑金光

    ○田畑委員 私、金融の問題について局長と大臣に二、三お尋ねしておきたいと思います。  この委員会で六月七日に参考人を呼んでいろいろお話を承ったわけであります。石炭局長もじっと聞いておられたので、よく御存じのことでありますが、石炭協会の会長をやっておられる麻生参考人の話の中にこういうことばがあるわけです。「石炭生産業者の持っております手持ち貯炭は、昨年三月末の三百四十一万トンが、現在五月末をとりますと六百七十万トンにふえております。このために、先般とりあえず、つなぎ資金対策としまして返済猶予措置がとられております。目下のところ、そういう関係で最悪の事態はどうにか回避されておるわけでございますが、最近になりますと、大手の中でも、資金調達難のために行き詰まりかけておる――と申したほうがいいかもしれませんが、会社も出ておるような状態でございます。」それから中小炭鉱を代表して参考意見を述べられた植田参考人の話の中にも「対策の実施が大幅におくれているため、石炭鉱業は資金的にも非常な苦境に立ち至っており、中小炭鉱の中には対策の実施まで持ちたえられないで脱落閉山のやむなきに至った炭鉱も出ている現状でございますので、」「早急なる対策実施をお願い申し上げるとともに、それまでの間のつなぎ資金対策並びに越盆資金の確保につきましても、特別の配慮を願いたい」ということばがあります。また同じ日の舟橋参考人のことばの中にも「中小炭鉱の金融対策について申し上げますが、早急に実施するようお願いいたしたい。すでに市中金融機関は肩がわり等の問題から非常に窮屈になっていることは御承知のとおりであります。」このように金融の問題について、とにかく何らかの措置を講じてくれということが強く要望されておるわけでありますが、この点についてその後通産省として、あっせんなりあるいは政府関係金融機関との話し合いなり何らかの措置などがとられておるならば、その内容などについて承っておきたいと思います。
  94. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまお話がありましたように、大手炭鉱におきましても中小炭鉱におきましても、今日やはり抜本策の体制整備が少しおくれてまいりましたために、特に金融の問題につきましては各社相当な苦境にございます。しかし政府といたしましては、そういう情勢に対処いたしまして、実は先生も御承知の金融懇談会というものを昨年設けまして、この金融懇談会を中心に市中銀行、政府金融機関との打ち合わせを随時いたす体制をつくっておるわけでございますが、今年の四月ごろにこの金融懇談会をやりましてこの上期の金融対策について協議いたしたわけでございます。法案の関係その他がありまして抜本策の実施がどうしてもこの七月以降になるというような情勢でございましたので、とりあえず、この上期の金融対策についてはつなぎ融資体制をお願いしたいというような話し合いをこの懇談会においていたしました。金融機関におきましても、すでに政府の予算の方針もほぼ固まったわけでございますので、この線に協力しようというようなことになりまして、実は本来ならば四月から、この再建整備法が通りまして再建計画ができたあとに、政府の例の千億の肩がわり措置、これを実施いたすわけでございますが、四月にさかのぼりまして元本だけについては返済という措置を金融機関との間で話をつけていま実施していただいておるというのが実情でございます。ただ利子までは、やはり実際の実施ができないと、利子たな上げというようなふうにまいらないというようなことでございますが、金融機関も相当程度の協力をいたしております。  なお貯炭対策につきましては、電力用炭販売株式会社というのがありますので、ここを一応中心にいたしまして貯炭金融をいたしております。  なお中小炭鉱につきましてはこれからちょうどシーズンになるわけでございますが、越盆資金の問題が近くあります。これはいつも大体八月中旬くらいまではおそくとも中小の越盆資金対策を講ずることにいたしております。私ども早急にこの中小の金融対策につきまして、関係の中小企業金融公庫等とも打ち合わせまして、善処してまいりたいと考えております。
  95. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長の御答弁の中で、特に中小炭鉱の越盆資金というお話がございましたが、これは何年間か継続して政府がその時期になればあっせんしてこられた沿革があると思いますが、ことにことしは貯炭の増加であるとか賃金の上昇あるいはいまお話のように夏期手当の支給、非常に資金のやりくりが困難だと聞いておるわけです。したがって念を押しておきたいのは、石炭局としては中小企業金融公庫などとの話し合いはこれからなされるのか。またなされるとしたならばいつごろにめどがつくのか。またどの程度の資金を予定されておるのか、この辺明らかにしてもらいたいと思うのです。
  96. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御承知のように、ただいま石炭鉱業審議会の経理審査会が中心になりまして再建整備計画検討を急いでおります。この再建計画検討はだいぶ進んでまいりまして、私の見通しでは今月いっぱいで大体石炭鉱業審議会審議のめどがつくのではないかというふうに考えております。それらを通じまして、大手につきましてもあるいは中小炭鉱につきましても、今後やはり不足資金はどの程度あるかという実態が把握されますので、こういった点も合わせて参考にしながら必要な資金の確保計画、これをつくりたいというふうに考えております。  なお、再建計画をつくらない中小炭鉱もございますので、これにつきましては中小の各団体がございますので、ただいま各中小の団体中心になりまして、傘下の各企業についての資金需要をただいま集計中でございます。おそらくこれは七月中旬過ぎますと大体出そろうのではないかと思いますので、私ども関係方面と折衝いたしますのは七月の末ごろになるのではないかと思います。しかしこれは早ければ早いほうがよろしいと思いますので、できるだけそういう事務を急いでまいりたいと考えております。
  97. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほど局長の答弁の中にありました、元本については四月からすでにたな上げなされておるというお話しでしたが、利息について法律も通ったし、すでに再建整備計画が実際に実行するという段階に入ってきておる今日であります。当然金利についてもたな上げ措置あるいは肩がわり措置ということがなされるわけでありますので、これはどういうことになるのか、さかのぼって金利についても適用されるということに当然なるのかと思いますが、これはどのようになるのか。  それからもう一つ、貯炭融資については電力用炭販売株式会社を通じてやっておられるというお話でございますが、貯炭といっても相当たくさんの貯炭をかかえておるという問題、この間からこの委員会指摘されたように、三井、三池の場合が二百万トンとか、こういわれておるし、あるいは常磐炭田の常磐炭礦なども二ヵ月分を優にこす貯炭をかかえておるわけでありますが、先般、たしかこの委員会で電力用炭販売株式会社の副社長で参考人として述べられたのは、一カ月程度でしたか、貯炭融資については電力会社としても協力しておるというような話がございましたが、この程度の貯炭融資の協力で当面する危機が乗り切れるのかどうか、資金的な処理ができるのかどうか、この点はどのように見ておられますか。
  98. 井上亮

    井上(亮)政府委員 まずお尋ねの第一の点でございますが、元利均等償還の問題でございますが、これは実際には、いろいろな法令の手続を経て正式に書類として審査されますので、現実にこの金が出ますのは九月以降になろうと思います。しかし、実際問題としては、この再建計画が一応石炭鉱業審議会の中立委員をもって構成しております経理審査会でただいま審議中でございます。これは私の見通しでは相当テンポを早めておりますので、今月中には見通しを得られるのではないかというふうに考えられますので、そうなりますと事実上の審査は今月末には終わっておりますが、こうなりますと、金融機関も、やはり利子につきましても当然猶予措置をやってもらえるという確信を持っております。実は金融機関からも四月に懇談会をいたしました際に、そのとき私どもは元利ともにたな上げしてくれ、いずれ近い将来に均等償還契約を結ぶわけですからという要求をしましたのに対しまして、元本だけはよろしい、利子につきましては実態的な再建計画ができればそのとき考慮します、こういう話し合いになっておりますので、やはり現実に金が出るのは秋以降になろうと思いますけれども、事実行為としてこの経理審査会の審議が終わりますれば、金融懇談会を開きまして、さかのぼって適用さしたいというふうに考えております。  それから次に貯炭と金融の問題でありますが、確かに貯炭につきましてはなお万全と言えない節があります。しかし最近は一般的に炭のさばけがよろしくなってきておる。ただ問題は三池の炭、それから常磐の炭、これが異常貯炭の傾向を持っておりますが、三池につきましては三井銀行等が特別配慮をしておりますし、常磐につきましても問題はありますが、これは個別的に対策を立てていく。電力用炭販売会社を通じての金融機関融資というのは一般的なものとしてやっているわけでございます。ですから、一般的な対策と個別的な対策ということでただいま善処いたしております。  なお、常磐の炭は最近東北が渇水でございますので、東北電力等石炭がなかなか足りないというような現象もあって、常磐の炭は最近好調にさばけております。
  99. 田畑金光

    ○田畑委員 昨年の七月の答申の資金対策の強化の面については、特に再建資金融資制度を強化すること、さらに無利子化をはかることという答申を受けて、今回の合理化法の一部改正になったと見ておりますが、そういう点で通産省石炭局が答申を尊重なされて一つ一つ政策的な具体化措置をはかってこられたことについては、私としても敬意を表するわけでありますが、特に、この答申の中でも指摘されております中小炭鉱金融措置として、中小炭鉱に対しては日本開発銀行及び石炭鉱業合理化事業団からの融資のほか、中小企業金融公庫資金について融資限度の弾力的運用をはかる等、特別な配慮を加えることとなっておりますが、この点について何か格別の努力をなされて実績を上げておられる内容があるのかどうか、これを承っておきたいと思うのです。
  100. 井上亮

    井上(亮)政府委員 開銀からの融資とかあるいは事業団からの融資につきましては先生も御承知のとおりでございますが、中小炭鉱の融資限度の引き上げの問題につきましては、これは毎年越年資金、越盆資金のつど問題になっておりまして、そのつどこの限度の引き上げを大体千円程度行ならとかいうような措置を続けてまいっております。
  101. 田畑金光

    ○田畑委員 再建資金の内容について少しお尋ねします。融資条件というのは通産省令で定めるということになっておりますね。そこでその内容というのはどういう基準に基づいておるのか、その辺を少しく御説明いただきたいと思います。
  102. 井上亮

    井上(亮)政府委員 主として融資条件の問題でございますが、融資条件は一応二年据え置き、その後三年償還というような考え方でやっております。  なお、再建資金の運用につきましては、これは石炭鉱業審議会の再建計画――再建資金をもらいたいという企業についての再建計画につきましては、石炭鉱業審議会の意見を聞いて、その上で再建資金を出すということに相なっております。ただいま申しました融資条件のほかに、特に再建資金というのは異例の措置でございますので、やはり資源確保の見地から特に大規模炭鉱がたとえば何かの事故を起こすとか、あるいは経営が何らかの事情によって急激に悪化をして立ち上がり資金さえあれば長期に安定できるというような場合に限って再建資金を出そうという運用方針になっております。特に地域社会に甚大な影響を及ぼすというような炭鉱についても同様趣旨で審議会におきまして審査をして、融資額をきめるというようなやり方をやっておるわけでございます。
  103. 田畑金光

    ○田畑委員 今度の予算措置によれば出資五億、これで出資という形にして、これからの貸し付けについては無利子にしたということになるわけですね。たしか当初石炭局で予算要求なされたときは十五億で大蔵省とは折衝なされたと記憶しておるのです。それが五億になったということですね。ここにこの制度は非常にいいが中途はんぱで所期の効果を上げ得ないという面があろうと見ておるわけです。したがって、この再建計画の資金等についても、できれば来年度予算を待たずして補正予算などで善処なさることが、当面の石炭の企繰りの圧迫を解除する大きな解決策の一つではなかろうかと見ておるわけでありまして、そういう点について石炭局としてはその用意があるかどうか、このことをお聞きしたいと思うのです。  通産大臣にもぜひ御努力をお願いしなくちゃならぬと思っておりますが、通産大臣からも見解を承っておきたいと思いますし、この間来この委員会でも杵島炭鉱の問題がいろいろ取り上げられたわけでございますが、あの災害を起こして当面七億かあるいは八億近くの資金繰りが必要だ、こういうような話がございましたね。ああいうような場合などについても、私はこういう再建資金などというものがもっとワクが大きくて、もっと有効に活用できるということになれば、杵島炭鉱の問題処理にも相当大きく貢献なし得るのではないかと判断したのですけれども、ねらいはいいが、せっかくのいいことだが、さて運用するにはワクが少な過ぎる、こういう感じを強くするわけで、この点について今後補正予算の中ででも処理したいんだという気持ちがあるかどうか、石炭局長からまず承り、通産大臣としての見解も承っておきたいと思います。
  104. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お話がありましたように、再建資金は本年度予算に五億を計上いたしております。これが今日の情勢で金額が少ないんじゃないかというような御指摘がしばしばあるわけでございますが、この点につきましては、やはり再建資金の性格はなかなか予断を許さないものがあります。たとえば、非常に堅実な経営をやっておる企業であっても、不幸にして何か大きな事故が起こった、そのために、それがきっかけで立ち上がり資金に苦しむというような場合が往々にしてあるわけでございまして、年度を通じて十分な予算措置ということは、今日の予算の立場で、必ずしもここにのみ余裕金をたくさんつけるというわけにまいりません。したがいまして、必要最小限度の予算を組みまして、それから必要があれば補正予算で追加をお願いするという立場で、お説にありましたように、今後弾力的に運用してまいりたい、必要があれば補正でとるというつもりでおるわけであります。
  105. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま局長が申しましたとおり、この再建資金の増額については極力努力いたしたいと考えております。
  106. 田畑金光

    ○田畑委員 もう一つ承っておきたいのですが、合理化事業団の融資のことです。合理化事業団を通じて近代化の設備資金であるとか、流通合理化のための設備資金であるとか、開発資金、あるいほ整備資金、あるいは経営改善資金のための債務の保証、あるいはいま問題になっている再建資金の貸し付けなど、合理化事業団を通ずる融資措置というものは非常にきめこまかく、しかも石炭の実情に即して展開されておりますね。これは政策融資という面において当然のことであるけれども、まことに適切な措置だ、こう思っておりますが、ここまでくれば、この合理化事業団を通じて運転資金までめんどう見るということは考えられないものかどらかということは、この間の石炭特別委員会に出てこられた中小炭鉱の代表の舟橋参考人の意見の中に、たしか合理化事業団を通じて運転資金のめんどうを見てもらうような措置を講じてもらいたいということを強くどこかで述べておるのです。これもなるほどなという印象を私は受けたわけですが、先ほど来局長からもいろいろ中小炭鉱の金融措置について中小企業金融公庫その他の話が出ましたが、しかし、なかなかこういう政府関係金融機関との話をつけることも容易ではないような見方を私はしておるのです。やはり一番手近な、しかも確実な、しかも実際的なのは、この合理化事業団を通ずる融資措置ではなかろうか、こう思っておりますが、この点については御検討の気持ちがあるかないか、また運転資金を融資するということについて、何か制度上の壁があるのかどうか、承っておきたいと思います。
  107. 井上亮

    井上(亮)政府委員 政府機関の形で運転資金を融資いたしますということは、原則としてないことでございます。開発銀行にしましても、あるいは中小公庫にいたしましても――中小公庫は一部長期運転資金というのはやっておりますけれども、本質は設備資金でございます。その他いろいろな機関で、いわゆる通常の運転資金については市中機関でやる、政府は特別の政策目的を持った設備資金等について融資をするというのが、今日の金融政策の太い柱になっております。  ただ私ども石炭関係で見まして、御承知産炭地振興事業団におきましては、昨年度から、特に当時の三木通産大臣が産炭地の企業誘致に関連いたしまして、なじみのない中小企業等が産炭地に誘致されるわけでございますが、地元の金融機関ともなじみが薄いというような意味で、どうしても運転資金については産炭地振興事業団からの融資の道を開きたいということで、これは大蔵省あたりから見れば、異例の措置であったわけでございますが、今日その運転資金については融資をやっております。一般論としては、運転資金は、やはり市中機関にお願いする、政府は政策金融とうことになろうと思います。  もう一つ、石炭で運転資金がありますのは、ただいま御質問がありました再建資金、これが一種の運転資金であります。しかしこれはそれなりの目的を持ったものでございまして、一般論として、合理化事業団からこの運転資金の融資ということは、ちょっと当面実現がむずかしいのではないか。ただそのかわり、私どもといたしましては、合理化事業団が、炭鉱が市中から金を借りますときに融資保証をする、八割保証をするという制度をいまやっておるわけでございます。当面私は、この程度が限度ではないかというふうに考えております。
  108. 田畑金光

    ○田畑委員 まあ私はその答弁もわからぬでもないわけでありますが、局長の答弁の中にもありましたように、産炭地振興事業団を通じて運転資金を貸しておるわけですね。やはりこれも政府資金になっておるわけです。またいまの最後のお答えにもありました再建資金の貸し出しを見ましても、これは運転資金なんですね。したがって、政策金融だから、これは設備資金にしか貸せないのだという確たる制度上の問題ではないと思うのです。また石炭の場合については、もっと弾力的に考えてもいいのじゃないかという気持ちがあるわけです。なぜなれば、設備資金というのは、元来長期の資金ですね。運転資金というのは、言うまでもなく短期の資金だ。国家の資金を有効に活用するという点から見ますならば、短期資金というのは、元来危険性の少ない性格の資金だと思うのです。長期に寝かす、設備を固定するという資金は、やはり長期であるだけに危険も伴う資金の性格を持っておるわけです。したがって国家の財政という立場から見た場合、運転資金なるがゆえに政府機関を通じてやることは適当でないという議論もいかがか、こう思っております。この点は、ここでいま直ちにいい答弁をもらうということもむずかしいかもしらぬが、ひとつ十分石炭局におかれましても御検討を願いたいと思うのです。通産大臣にもこのことを強く要望しておきたいと思うのです。  とにかく今日の石炭産業安定のためには、金融措置に待つこと一番大きいものがあるので、特に私は、当面の金融措置などについては、通産大臣、石炭局は、できるだけ全力をあげて前進することを強く望んでおきます。  以上で質問を終わります。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 他に質疑の通告もありませんので、これにて本案に対する質疑を終了するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のととおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 この際、三原朝雄君外六名から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。まず、提出者に趣旨の説明を求めます。三原朝雄君。
  114. 三原朝雄

    ○三原委員 ただいま提案されました四党共同提条にかかる附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。 まず、案文を朗読いたします。 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、再建資金の融資に当たつては、本制度の趣旨にかんがみ、企業の緊急事態に対処し得るよう弾力的に運用すべきである。 再建資金制度は、本来石炭の供給を確保する上からも必要であり、かつ、地域に及ぼす影響の大きい炭鉱であって極度の経営不振に悩む炭鉱を再建するための制度であることは、御承知のとおりであります。よって、再建資金の運用は、時宜に適した機動性が強く要請されるゆえんであります。政府は、この点特に留意し、再建資金の貸し付けにあたっては弾力的な運用をはかることが必要であるということが提出の趣旨であります。  各位の御賛同をお願い申し上げます。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより本動議について採決いたします。  三原朝雄君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、政府の所見を承ることにいたします。菅野通産大臣。
  117. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、御希望に沿うように運用に努力いたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  118. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次会は、明六日午前十時三十分から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十三分散会