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1967-06-29 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十九日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    進藤 一馬君       田中 六助君    石川 次夫君       細谷 治嘉君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君  委員外出席者         通商産業省石炭         局産炭地域振興         課長      飯島 三郎君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     塩田  晋君         参  考  人         (産炭地域振興         事業団理事)  堀坂政太郎君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事長)   万仲余所治君     ————————————— 六月二十八日  炭鉱鉱害即時復旧等に関する請願(田代文久  君紹介)(第一九二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一二二号)  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は石炭対策基本施策に関連して御意見をお述べいただくため、参考人として、産炭地域振興事業団理事堀坂政太郎君、雇用促進事業団理事長仲余所治君の御出席をいただいております。  この際、両参考人に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。本委員会におきましては、石炭関係重要法案の審議とともに、石炭対策基本施策について調査をいたしておりますが、先週も石炭鉱業合理化事業団九州鉱害復旧事業団鉱害基金及び、電力用炭販売株式会社方々の御出席をいただき、参考意見をお述べいただいたのでありますが、この際両参考人から、それぞれの事業団業務内容について概要を御説明願い、あわせてそれぞれの立場から見た将来の業務あり方等について、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは堀坂参考人からお願いいたします。堀坂政太郎君。
  3. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 産炭地域振興事業団業務概要につきまして申し述べさしていただきます。  御高承のように、産炭地域振興事業団は、昭和三十七年の七月に発足いたしたのでございまして、石炭鉱業合理化に即応いたしまして発生いたします産炭地域の疲弊に対処いたしますために、主として企業の導入によって、産炭地域に新しい産業を導入するということが目的で発足いたしたのでございます。  昭和三十七年の出資金五億円、さらに政府よりの借り入れ金五億円、約十億円の資金で発足をいたしたのでございますが、今日におきまして資本金は、先般御議決をいただきました四十二年度出資金を含めまして百十一億三千五百万円でございます。そのうちに、ただいまお手元にお配りいたしております「事業の現況」、それをごらんいただきたいと存じますが、この一ページにございますように、五月末までに八十三億七千五百万の出資をいただいておりまして、六月に入りまして六億円の出資をいただきましたので、八十九億七千五百万というのが産炭地域振興事業団資本金でございます。なおその後事業団事業費につきましては、大まかに申しまして自己資本四割、それから政府よりの借り入れ金六割という比率資金を出していただくことになっておるのでございますが、借り入れ金につきましては、今日まで九十八億七千万円の借り入れをいたしておるのでございます。この中から十六億六千万をすでに返済を申し上げておるのでございます。  事業団事業につきましては、当初設備資金融資と、土地造成事業、この二つ事業でスタートいたしたのでございまして、土地造成事業につきましては、工業が入りやすい工業団地を計画的に造成をするというのが目的でございましたのでございますが、御高承のように、産炭地域に多発いたしました炭鉱失業者方々の中で、特に中高年齢者方々が、他の職業に転換することが非常に困難であるという事情にかんがみまして、そういう炭鉱離職者方々に主として働いていただきます場といたしまして、炭鉱地帯にございますボタ山を処理いたしまして、工業用地造成するという、ボタ山処理によるところの土地造成事業と、一般的にそういった炭鉱関係のない土地等造成をいたしまして、工場に提供する一般土地造成事業、この二つになっておるのでございます。  土地造成事業につきましては、今日まで大ざっぱに申しまして約一千万平米、約三百万坪強の事業計画について、通産省の御承認を得ておるのでございます。本年度事業費といたしましては、約四十億でございまして、そのうち二十七億円が本年度予算としていただいておるのでございまして、その残りは前年度からの事業の継続によるものでございます。  それから次に融資についてでございますが、融資はただいままで約百億の融資をいたしておるのでございまして、誘致いたしました企業者の数は約三百五十件、融資件数といたしましては四百二十八件の融資をいたしておるのでございます。この間私ども関係をいたしまして、融資いたしました企業によりますところの工場生産高は、約八十三十八億円と私どもは算定をいたしておるのでございまして、総設備投資額は、大体六百九十五億円、これが過去三十七年から今日までの間に、新たに投資が行なわれたのでございます。なお、この間に大体一万二千人の炭鉱離職者の方方、及びその子弟方々が働いておられるのでございまして、実際の総雇用人員はそれの倍以上になるのでございます。  この土地造成事業及び融資のほかに、昨年度から工業用水事業といたしまして、筑豊下流地域鉱害地にたまりますところの水、これを利用いたしまして、工業用水を主といたしまして、事業団造成した工業用地に入る企業に供給する、鞍手工業用水事業が認められたのでありまして、これにつきましては、昨年度から今年度二ヵ年継続してやっておるのでございますが、約三億五千五百万円の予算でただいま実行中でございまして、今年度じゅうにはその事業が完成をする予定でございまして、水は一日約二万トンの水を供給することができるようになる予定でございます。  それからこの工業用水事業と同時に、昨年度からまた新たにできます企業のうちに、特に産炭地資源を利用するとか、あるいは新技術の開発等を行なうことによって産炭地に新しい企業を興すものに対します出資の道を開いていただいたのでございまして、昨年度五千万の出資を認められたのでございます。これにつきましては、昨年の十  一月に、炭鉱のほうから掘り出されて堆積いたしましたボタ山を利用する軽量骨材事業に対しまして、出資をすることになったのでございまして、十一月に日本軽量骨材株式会社がスタートいたしておるのでございます。これは事業団が五千万それから民間の企業から五千万の出資を仰いだのでございまして、ただいまなお試験中でございますが、その試験の結果は非常に良好でございまして、近く工場建設に入る運びになると思います。おそらく製品は来年度からでございますが、いままで利用されてなかった炭鉱ボタ工業的利用という点に一つの道が開けるものと存じております。  このほかに、産炭地域振興事業団は、本年度から工場貸与制度を御承認をいただいたのでございまして、一億五千万の予算をもちまして、炭鉱閉山直後の、企業が非常に入りにくいような土地等工場の建物を建てて、それを長期貸与する、あるいは長期割賦払いで分譲するということによりまして、企業家投資の負担をできるだけ軽減しながら、なるべく早く問題とされた地域工場を誘致したいという趣旨で、この制度をことしから始めることになっておるのでございまして、ただいまその制度等につきまして、政府関係方面の御了解を得るよう折衝中でございます。  産炭地域振興事業団が始まりまして今日までの概要はそのようでございますが、三十七年は発足いたしましたばかりで、土地調査あるいは制度づくり等で、あまりたいしたことはできなかったのでございますが、大体企業の来方について申し上げますと、三十八年、三十九年、四十年度のこの間におきまして、当初は大体地元方々が、自分の山でたくさんの離職者を出したというようなことに関連いたしまして、その炭鉱関係者事業を始められる、あるいは地元方々が新しい事業を計画されるというようなのが多かったのでございます。したがいまして、企業も比較的中小企業が多かったのでございます。三十九年から四十年にかけまして、日本経済が非常に一時的に停滞をいたしました。この間におきまして、産炭地への企業の来方もあまり芳しくなかったのでございますが、昨年度におきましては、これが非常に活発になってまいりまして、大体三十八年、三十九年、四十年におきましては年間大体二十億程度、私ども設備資金融資をする程度のものしか企業がなかったのでございますが、四十一年度におきましては、その融資規模が四十億にふえたのでございます。なおこのときに同時に、運転資金融資も、実は先ほど申し落としましたが、始めたのでございまして、これにつきましても約五億円を融資いたしまして、昨年度は四十五億円の融資をすることができたのでございます。  また造成いたしました土地につきましての売れ行きにつきましては、御承知のようにむしろ炭鉱閉山し、あるいはその土地人々が、企業がよそに逃げなくてはならないのではないかというような状況でありましたので、そういうところに特にまた炭鉱地特有のいろいろな鉱害問題をかかえておりますようなところで、土地をつくりまして、合理的に売れるかどうかということについては、非常に憂慮されており、国会におかれましても、いろいろいままで御配慮を賜わったのでございますが、最近におきまして非常に活況を呈し始めた感があるのでございまして、三十八年から四十年までの間に約七億円弱の土地売り上げしがなかったのでございますが、四十一年度におきましてはこれが約八億円になりまして、過去三カ年分より以上を四十一年度だけで消化をいたしたのでございます。四十二年度におきましては、この六月の末までに約四億円程度土地売り上げを見るに至りまして、約五十万坪、約百五十万平米の土地が売れるようになったのであります。これは政府資金を使わしていただきまして、やはり安いコストの資金先行投資をさしていただいたということのおかげでございます。  なお、御高承のように、今日、日本全体といたしましては、労働力不足の問題が非常に深刻な問題となっておるのでございますが、産炭地に参りますところの企業にとっての最大の魅力は、やはり  働力の問題であろうと思うのであります。炭鉱からは確かに若い方々がたくさん外に出られたのでございますけれども、なおかつ相当多くの世帯が残っておられます。またその近辺の農村方面におきましても、東京や大阪、名古屋というようなところに出て働かせるのには手離したくないというような子弟等で、近隣に工場があれば、ぜひ働きたいという人がまだ相当あるということでございます。そのような事情と、それから政府のほうで準備をしていただきましたところの、この税法上の優遇措置及びこういう比較的低金利な融資ということが魅力で、だんだん産炭地へも企業が来ていただけるようになったのでございますが、さらに御承知過大都市過密化の問題に関連いたしまして、新しい工場を新設する、あるいはいままでの工場を閉鎖して他の産炭地に移るというような傾向もだいぶ見受けられるようになったのでございまして、産炭地域振興の問題が日本経済全体のこういう地域問題の中において、ある一つの地位を占めておるような感じがいたしておるのでございます。  今日まで私ども融資申し上げました企業等につきましては、先ほど申し上げましたように地元方々がお始めになる中小企業等から始めまして、だんだん今日におきましては大きな規模企業が出てくるようになりまして、最近におきましてはたとえば日本陶器というような世界的にも有名な製陶会社が佐賀県の伊万里に工場をいま建設中でございますし、さらに近く筑豊地域にも建設をする予定でございます。またプラスチック工場といたしましても、相当有力でございますところの矢崎化工というような企業が、北海道と九州のどちらもその産炭地の一番問題のある地域に相当りっぱな工場をつくっていただいておるのであります。またこの六月に決定をいたしました常磐地区への進出企業といたしましては磯原でつくっております約二十万坪の団地でございますが、そこの七万坪が完成いたしておるのでございますが、その七万坪に入ります企業はスイスの会社と提携をした新しい工場等が設置されることになっておりまして、その七万坪の上に乗っかる企業投資予定額は約三十四、五億に及ぶというような企業の出方を見るに至りまして、産炭地のお互いの努力によって何とかもっといい産業地帯になり得るのじゃなかろうかという、一るの希望を抱けるようになっているのでございます。  今日の問題といたしましては、ほんとうに炭鉱に変わった新しいコミュニティーを形成する核になるような中核企業の誘致ということが問題であるのでございますが、それにつきましては、これはいろいろな施策が伴わなければならないことは言うまでもございませんが、事業団だけの関係からいたしますならば、そういうふうな中核企業が入り得るようなしっかりした団地というものをつくり、そして将来公害等も発生しないようないろいろな施設というものを考えていくということが、この基盤づくりとして大事であろうと思います。と同時に、そういう中核企業融資に応じ得るような融資体制というものが必要であり、また産炭地において石炭等資源として使っていくような企業というような方面につきましては、できるだけ私どもの許される範囲内におきまして御協力申し上げたいと思っておるのであります。  今日までは炭鉱閉山というものがあまりにも急であり、またあまりにも深刻な問題でありましたので、それに対しましてはわれわれのほうの活動というのは非常に微々たるものでございましたけれども、対症療法的なきらいがなかったとは言えないのでございますが、これからは地域体質改善に即するような、地域開発に即するような形の土地の改良というような方面努力をいたしたいと思っておるのでございます。  一応陳述を終わらしていただきます。
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次に万仲余所治君。
  5. 万仲余所治

    ○万仲参考人 雇用促進事業団理事長を仰せつかっております万仲でございます。  私どものあずかっております雇用促進事業団仕事は、炭鉱だけではなくて、一般産業に対する雇用促進離職者援護という意味合いのことが主でありますが、その中の一つ炭鉱離職者援護という仕事が含まれておる。  形ではこういうことになっておりますが、沿革的に申し上げますと、私ども事業団ができましたのは三十六年の七月でございます。その一年半ばかり前に炭鉱離職者援護会という特別の組織ができまして、それを収容いたしました関係上、いまのように仕事のうちの一部ということになっております。雇用促進事業団全体の仕事といたしましては、労働省外郭団体といたしまして、職業安定所雇用をするという事柄が決定した人々に対していろいろの手当を差し上げたり、あるいは住宅のない、もしくは困っておる人々に一時的に住宅の供与をしたり、また特別な別の仕事をやろうという人に職業訓練をしたり、また中小企業が大企業就職条件を同じゅうするための一つの方法として、私どものほうでレクリエーションのいろいろな福利施設等をつくりまして、これを貸与してあげるというような事柄をやっておるのであります。  本日は炭鉱関係事柄について申し上げるのがお呼びをいただいた趣旨と存じまするので、その点を特に申し上げたいと存じます。  お手元に「炭鉱離職者援護事業概要」というのを差し上げておりますが、これは説明を申し上げるのに不十分なような書き方になっております点は恐縮に存じますが、これに従って一応申し上げます。  炭鉱離職者援護関係のお仕事は、三ページにずっと細目を出しております。その内容が四ページ以下に書いてございます。いろいろこまかいことが書いてありますが、ごく簡単に大局的に申し上げますと、第一番目には、離職して就職した人に移住資金を差しあげる。この移住資金は第一種移住資金と第二種移住資金になっております。もともと私ども事業離職をした人々、特に炭鉱に関しましては、炭鉱離職した人々に、炭鉱近所ではなく相当以上の遠距離で別の仕事に従事していただくということが目的でありますので、移住資金というものを、こういうふうに旅費とか家族手当というようなものをまぜまして差し上げるということにしたのであります。それが第一種なんでございますが、だんだん炭鉱状況が変わりまして、単に遠距離のよその事業に従事するということだけではなくて、ある炭鉱をやめた人でも別の炭鉱へ行って就職していただきたい、またそれを勧奨すべきであるというような状態ができましたので、その後第二種移住資金というもの、四ページの下のほうに書いてございますが、これは移住距離二十キロメートルというのは、あんまり近所ということでは困るというようなこともありますのでしょうが、ある距離以上、二十キロ以上の距離の別の組織炭鉱へ行ってお働きを願いたい、そういう場合にも移住資金を差し上げます、こういう制度でございます。  支給金額は、第一種移住資金予算的には一人当り約九万円となっております。第二種のほうは近所でありますのと、必ずしも近所でなくても、旅費という点は別といたしまして、ほかにいろいろと同じ炭鉱へ行かれるというようなことがありますので、実績的には半分程度になっております。  五ページに入りまして、二番目に雇用奨励金支給というのがございます。雇用奨励金は、これは家族を持ってよそへ就職なさった場合に初めからある程度の収入がないと困る、しかし雇うほうではおれのところの仕事に対する能力は初めはそんなにない、そういう誤差が出た場合にその誤差に対して国からある奨励金をあげる、これが雇用奨励金支給の原則でございます。初めは金額誤差というようなかっこうでありましたが、その後改正いたしまして、中ほどに書いてありまするように、年齢によりまして月額六千円、七千円、八千円というふうに差し上げるようにいたしております。  三番目は再就職奨励金支給、これは御承知のように就職手帳を持ちまして約三年間に就職するというような年限がございますので、早く就職されるほどこれは両方とも好都合でありますので、早く就職された方に再就職奨励金を差し上げる。手帳を得てから一年未満就職された方には就職促進手当の七十五日分、一年以上一年半までの方には五十日分、それから三十日分というように、早いほどよけい差し上げるという意味の奨励金であります。  第四番目は、職業講習の委託、これはいろいろな意味合い地方公共団体講習を委託するような場合があります。そういう際に、一人当たり幾らというお金を差し上げていろいろなことをおまかせしてお願いするというやり方でございます。  五番目の労働者住宅確保奨励金支給金額にはいろいろな条件がございます。四つの種類になっておりますが第一種と申しますのは、自分の金もしくは自分で借りた金で住宅を建てられる場合には、入られる人一人当たり二分の一の費用を持つというたてまえで、最高二十万。第二種と申しますのは、私ども事業団お金を貸す制度がございます。あるいは住宅金融公庫、年金福祉事業団などからお金を借りて、それで労働者住宅を建てられるという人々につきましては、最高十万円の奨励金を差し上げる。第三番目は、自分の家とかあるいは借り受けた家なんかを改造もしくは増築する、そういう場合には、家賃は入れませんで、最高三万円まで差し上げる。第四種というのが、これが家賃のかわりを差し上げるようなことになります。他人から住宅を借りた場合に、毎月の家賃の額に応じまして一ヵ年間だけ、こういう段階をつけて、二千円、三千円、四千円、五千円を差し上げるという、こういうやり方をいたしております。  八ページにまいりまして、住宅関係、これは宿舎となっておりますが、これは住宅のことであります。住宅関係につきましては、ここに移動宿舎貸与あるいは労働者用簡易宿舎貸与及び管理と書いてありますが、ここに書いてない事柄一つ大きな、私どものほうで移転就職者用宿舎というものの貸与というものをやっております。これはたまたま会計一般会計で、普通のところになっておりますので、ここのところに書いてありませんが、炭鉱離職者援護会時代から、遠距離に行って住宅に困られる人に対しては、臨時的にお入りなさいということで建て始めたのでありまして、初めは炭鉱労働者離職者用でありましたが、事業団に合併しましてからは、一般用にもやりますので、現在は経理的には一般会計になっておりますので、ここに特にあらわれておりませんが、住宅公団が建てられますものと内容的にはほとんど変わりはありません。そういうものを建てまして、一ヵ年間を限度として、その間に事業主もしくは御当人が特定の住宅をお求めになる、あるいはお買いになる、その間ここへお入りなさいという住宅であります。これは最初は年度に千戸、二千戸というふうにつくっておりましたが、最近は毎年一万戸をつくる予算をちょうだいしております。すでにこの五月の下旬に三万戸ができ上がって、だれでも入れるようになった状態のものが三万戸を突破いたしております。五月末現在では三万七百戸ぐらいになっております。もうすでに三万一千以上になったでありましょう。そういう住宅貸与いたします。初めてつくりましたときは、いろいろ建築費も安いし、いろいろな関係等もいまほど便利にできておりませんので、二千七、八百円の家賃、最近は四千円ぐらいの家賃でお貸ししているというのがございます。その約三万できておりますうちで、炭鉱離職者かどれだけ入っているかといいますと、四八%、一万五千ちょっと未満の者が入っております。この住宅につきましてはよく世間的に問題になりまして、住宅はつくったけれどもちっとも入ってないじゃないかというようなお話がございますが、これは私どものほうでいろいろと条件を考えますはかに、むろん労働省安定所でも考えますが、県当局にもいろいろとお考え願って、そうして県と労働省と私どものほうと三つの意見が合致したところに建てるわけでありますが、たまたまできたあとすぐに人が入らぬというような状況のところもありまして、現在の実情は、この三万戸のうち、全体的に比率を求めますと、八五%ちょっと、コンマがつきますが、約八五%入っております。ただ、これはできた翌日のものも入れておりますので、できてから六ヶ月間にだんだん入りますということで、できてから六ヵ月たったものだけを勘定いたしますと九三%、五月末現在では九三%入っております。これは別の面から言いますと、常時一〇〇%、常に入り切りでありますと、新しく住宅に困った方にここにお入りなさいというのに、その余裕がない。どんどんどんどんつくれるものならいいのですけれども、そうはまいりませんので、理想的に言いますと、逆の意味ではありますけれども、幾らかの余裕がいつもあったほうがいいのですけれども、その幾らかの余裕というものがあまり多くては困る。そこでいろいろ問題になるということでございますが、現在は全体で八五%余り、六ヵ月たったものを勘定しますと九三%すでに入っております。これは移動しますけれども、大体その率が続いているということでございます。それはここに書いてございません。ここに書いてありますのは、貸すのではありますけれども、どこへでも移動できるように組み立て式の住宅をつくります。そういうものは、最初それをやったのでありますが、だんだんだんだんといまのように住宅公団と同じようなものを建てるようになりましたので、今日ではそれはほとんど使われないようになっておりますけれども、こしらえたものは千戸ばかりのものを持っております。  それから簡易宿舎貸与というものも、これも一時的にたくさん離職者が出て遠距離に行くという場合に、これは五戸もしくは十戸をこしらえて、これは簡単に移動できませんけれども、パイプハウス式のものをつくりました。これも千戸ばかりつくりまして、これは東京の近郊、大阪の近郊、名古屋の近郊などに持っております。これなどもだんだんそのほうの利用がなくなり、いまの大きなほうの住宅公団と同じようなものを利用するということのほうが多くなってまいっております。  それから今度は、炭鉱離職者職業訓練であります。職業訓練は、私どものほうでは総合職業訓練所と申しまして、原則的には二年間訓練をする。職業訓練所を現在各都道府県に一つは必ず持っております。二つ、三つあるところもありまして、ことしの四月現在、五月でもようございますが、六十三カ所持っておる。そこのうちの炭鉱地方に関係のあるところ、たとえば岩見沢であるとかあるいは荒尾であるとかあるいは内郷であるとか小野田であるとかというようなところは、主として炭鉱離職者を収容するというやり方をいたしております。それに対して、九ページですが、所内訓練とかあるいは県もしくは事業所に委託して訓練するという場合もございます。  その場合に、訓練関係のいろいろな手当を出します。その手当も一〇ページ、一一ページに書いてございます。  それから十番目は、一二ページの下のほうに職業訓練宿泊施設の管理、これもこういうような炭鉱関係の特殊なところには炭鉱関係独自の住宅をつくって、そこに炭鉱離職者に入っていただいておるというようなこともやっておりますわけでございます。  それから最後の一三ページでありますが、簡易生活補導施設の運営及び炭鉱離職者家族の生活指導、これは若い子供さんたちの悪化するのを防ぐためにも、福岡県で三ヵ所ばかりつくっておりますが、そのほか家族の女の方にいろいろな指導をするとか、あるいは裁縫その他を教えるとかというようなレクリエーション的なものもまぜまして、福岡県では香春にもつくっております。ここには四つ書いてあります。  そのほかには、最近この七月から始めようと思いますのに、開業資金の債務保証ということを新たにやろうと考えております。また自営で商売その他をおやりになる場合には、その支度金を支給する。開業資金の債務保証というのは、原則的には百万円まで確かな方々に対してはお貸しする。場合によってはそれ以上になる場合も必要なときには考えるというようなことになっております。  きわめて簡単に、しかもあちこちはしょりましたが、一応御説明申し上げました。  御質問に応じてまたお答えしたいと存じております。
  6. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これにて参考人の御意見の陳述は終わりました。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより参考人の御意見に対する質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。石川次夫君。
  8. 石川次夫

    ○石川委員 実はきょう、総合エネルギー政策全体の立場から、石炭をどう位置づけるかということについて、政府としては相当慎重に検討を続けてきたのでありますが、石油がほとんど全部中東に依存しているという問題、原子力の見通しは、ことに科学技術委員会のほうに所属しておりますが、有澤さんあたりと話をしても、原子力の見方が少し片寄り過ぎるのではないか。これはいろいろな点で問題にしなければならぬと思います。そういう点で、日本の国のただ一つのエネルギーである石炭をどう位置づけるかということを再検討しなければいかぬという気持ちがあるわけでございます。そういう点から質問したかったのでありますが、たいへん私、自分かってなことで申しわけありませんが、十二時の汽車でどうしても出かけなければならぬ用件がありますので、きょうは簡単に一つだけ、参考人の方が来られておりますので、御質問したいと思います。  それは、いま私はちょうど建設委員会理事をやっておりまして、土地収用法の改正案があしたあたり委員会を通過するかしないかというせとぎわになっておるわけであります。  先般常磐炭鉱へ皆さんおいでになって視察願ったわけでありますけれども、そのとき、磯原地区という産炭地域振興事業団がやっております団地造成が進んでおりまして、それに対して説明を受けましたときに、公共用地の対象として土地収用の対象の中に入っておらぬ、これは何とか公共用地の対象の中に入れてもらわなければ困るという陳情を実は、バスの中でいただいたわけであります。私もたいへんうかつではあったけれども、今度土地収用法の改正のときにこの問題を取り上げていただければたいへん好都合ではなかったか。しかし、いまからではちょっと時間的には間に合わないと思いますので、一応御意見だけ伺っておきたいと思います。そうしていつかの機会に、これが妥当であるということになれば、ぜひ御協力をしたい、こう思って質問するわけであります。  実を言いますと、いまの改正法律案というものは、われわれとしてはほんとうは賛成しにくい点がたくさんあります。これは地価が非常に上がるから、ごね得をなくしたい、事業認定のときの値段で土地収用を全部やってしまおうということでありますから、地価対策の一環としてはなるほどもっともらしく聞えるのでありますけれども、実はごね得によって地価が上がるということはそう大きな要素になっておらないわけでありまして、かえって土地収用の強権を強化するという結果だけに終わって、肝心な地価対策は並行して行なわれておらぬではないか。したがって、今度は改正法によるところの対象としてはあまり範囲を広げたくないという気持ちが実はあるわけであります。そういう気持ちはありますけれども、しかし、産炭地域振興というものは、国としてはきわめて重要な緊急の課題であるということも否定はできないと思うのであります。したがいまして、産炭地域振興事業団としては、土地収用をいたします公共用地の中に、産炭地域振興事業団の行なうところの土地造成事業、こういうものを含めたいという気持ちを持っておると思いますけれども、これについて御意見があったら、承りたいと思います。
  9. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 ただいま石川先生の御質問の土地収用法の適用の問題でございますが、事業団の今日までの土地造成につきましては、実はそのような法律的な権限をうしろにして土地の取得はできたいようになっております。  実際やっておりまして、何万坪あるいは何十万坪の土地をつくりますときにも、百人あるいは数十人の地主の方がおられまして、その九〇何%の御賛成をいただいても、あと数人はなかなか御賛成をいただけないという例がございまして、一つのまとまった団地をつくる上において相当の困難があったことも事実でございますが、先ほど申し上げましたように、中核的企業の入りますような団地等を計画的につくる場合等におきましては、そうした問題が深刻な問題になってくると思うのであります。団地の中の一番肝心なところの土地の所有者、特に地元の人でなく、他の地域の人が土地を持っておるというような場合等におきましては、なかなか応じてもらえないというのが実情でございます。  しかしながら、私ども、実は土地収用の問題について一番痛感をしておりますのは、いま石川先生が御指摘のように、何か権力を背景にして土地を強制的にわれわれのほうの事業に向けていただくということを希望していることが主ではないのでございまして、公共事業土地を提供されました場合におきましては、土地収用法があるということによりまして、税法上の非常に大きな優遇措置があるわけであります。産炭地域におきましては、先祖伝来の土地——たんぼや山林を持っておられるわけでありますが、われわれが個々のボタ山をくずして、そのあと地をされいに使えるようにしたいし、あるいはそれを鉱害地に埋めて、それも使えるようにしたい。そうすれば、両方が生きてくるんだというような場合等におきましても、もしそこにかりに道路ができるとか、その他の公共事業、すなわち土地収用法というものが背景にあるような事業土地の所有者が土地を提供されました場合においては、実は税が非常に安くなるわけであります。私どものほうの事業土地を売っていただきました場合においては、これは町の不動産業者にお売りになったのとちっとも違わない措置になるわけでございまして、一番疲弊した土地におきましての地主、特に農民の方々にとりましては、事業団に売った場合においては、結局手取りが少ないということが非常に大きな不満になっておるわけでございます。そのような環境の中において土地を提供していただくということは、私どものように地元の振興というものを土台にして仕事をしなければならないものにとりましては、実は非常に苦痛でもございますし、また地元方々にとって非常に御迷惑なことであろうと思うのでございます。  先ほど申し上げましたように、今後の産炭地域の振興のあり方の問題といたしましては、地域の生理を変えるような、そういう地域の総合的な利用計画というものを立てて、最も合理的な開発をしていくべきであるという方向で、いま産炭地域振興実施計画を策定されようといたしておるのでありますが、そういうような事業の方向に即応して私ども事業をいたします場合には、非常に困難な問題になるということでございます。
  10. 石川次夫

    ○石川委員 いまのようなお話を聞きますと、なるほど千二百万円までは、今度事業認定を受けた対象になりますから、ことごとく免税ということになりますから、この対象になった場合とそうでない場合とでは税法上たいへんな違いが出てくる。したがいまして、強権をもって土地収用をするということとは無関係に、この対象になれば実際にやりやすいということは事実であります。  ただ、私が先ほど申し上げましたように、これは強権を強めるということは間違いないわけです。対象を拡げていくことがいいかどうかということは、にわかに党の立場としては、そう簡単に独断はできないわけです。私個人の意見としては、考慮の対象にすべきではなかろうかという程度なんでありますけれども、今度の土地収用法の改正を契機に、石炭局としては、このことに気がついたのかどうか、気がついて何らかの交渉を進められたかどうか、その経過がありましたらお聞かせください。
  11. 飯島三郎

    ○飯島説明員 石炭局としましても、土地収用法の改正案につきましては、建設省との御協議によりまして、改正の経緯は承知しておりました。今回の土地収用法の改正とは直接関係ないとしましても、産炭地域振興事業団の指導性の円滑な施行という観点から、何か土地収用法あるいはそれに見合う税法上の恩典措置というものは検討すべきじゃないかという考え方は前からございます。実は、そのために新政策として、問題を提起しまして、法制局とか関係のところと御相談申し上げた経緯もあるわけでございます。その際に一番問題になりました点は、産炭地域振興事業団の行ないます土地造成は、事業団が買いまして造成して、これを個々の企業者に売るということになっております関係上、これがいわゆる公共用のものであるかという点で、法律解釈上いろいろ論議があったわけでございます。そんなような経緯もありまして現在に至っておるわけでございます。  先ほど参考人の方から御説明ありましたように、今後の産炭地域の振興のあり方としまして、何らかの形でそういう面の強権を伴うか、あるいは伴わない場合におきましても、そういうメリットという面で何らかの方法が考えられないかということで今後とも検討していきたいというふうに考えております。
  12. 石川次夫

    ○石川委員 一応の交渉を進められた経過は大体わかるのですが、これは法制局関係なんかは相当ほかとの関連もあって、むずかしいことではないかということはわかるのです。したがって、法理論的にどうのこうのということを言いますと、これはなかなか対象の中に入れるということは不可能に近いと思いますけれども、ただ、産炭地振興というものの事業が今日的な政治的な課題として相当緊急を要する問題だということで、政治的に解釈をすれば、これは必ずしも対象の中に入らないものでもないのじゃないかという感じがするわけです。ただ、これはあくまでも私個人の意見でありまして、私、常磐炭鉱の視察に行きましたのはごく最近でありますから、いまから採用したって、これはとても間に合うことではありません。したがって、この次の早い時期に、もしそれができればその対象にするということも考慮できるのではないかという気が私どもとしてはしているわけです。したがって、これは法理論的な解釈ということではなしに、この産炭地振興というものは、各産炭地区にとっては非常に緊急、そしてまた至急やらなければならぬ問題であるということを政治的に判断をしてもらって、これは各党に働きかけていただいて、われわれもこれは十分検討します。これはすぐいいのだということは言い切れませんけれども、私はやっていい性質のものでなかろうかという感じがするものですから、次の早い機会にぜひこれを対象にするということで、ちょっとやっかいな操作にはなると思いますけれども、ぜひお願いしたいと思っております。そのときに受けてわれわれとしても十分考慮したい、こう思っておるわけでありまして、あとの質問は次回でひとつごかんべんを願いたいと思います。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 大橋敏雄君。
  14. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 まず最初に産炭地域振興事業団に関してお尋ねいたします。  私は九州出身でありますので、どうしても話がそちらのほうにいくと思いますけれども、福岡県の産炭地振興につきまして、第二次産炭地振興五ヵ年計画というのがすでに通産省に提出されました。これは四十二年から四十六年の五カ年の筑豊を中心とした県内産炭地振興対策のまとめであるということでありますが、通産省のほうも、大体六月一ぱいまでにこの福岡県計画案を中心に最終計画をまとめたいということを聞いておりましたけれども、これがどの程度まで具体的に進んだかということをお尋ねいたします。
  15. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいまお尋ねの産炭地振興につきます今後の計画でございますが、御承知のように、先般来第二次産炭地振興五カ年計画というようなものの審議を続けてまいっておるわけでございますが、まず私どもといたしましては、関係の県が中心になりまして、地元の市町村を含めた各広範な地域振興計画、これの取りまとめをお願いいたしました。それを中央に御提出いただいておる、その原案をもとにいたしまして、ただいま建設省、運輸省等いろいろ関係各省ございますので、関係各省と中央におきまして、その地元から提出されました計画をさらに検討いたしまして、それをまたもとにいたしまして、ただいま私どものところにあります産炭地振興審議会でいま検討を続けている。これはたしか先週もありましたが、今週もまたやる、また来月もやるというようなことをいたしまして、六月中にはと思いましたが、大体七月下旬ころにこの計画が一応まとまるのではないかという見通しであります。
  16. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そこでこれに関係しまして、問題点と思われるのは、福岡県から提出されております案は、北部地区と南部地区と大きく色分けしている、ここに特色があるのですが、産炭地域振興事業団のほうで考えているのは鞍手、遠賀を拠点としているところに食い違いがある、その考え方に食い違いがあるということでありますけれども、その相違点の大きな問題点はどこなんでしょうかね。
  17. 飯島三郎

    ○飯島説明員 ただいまお話しの福岡県の関係としまして二つございます。  一つは今回の産炭地域実施計画の改定のための原案といいますか要望案といいますか、これが正式に通産省に提出されておるわけでございます。この原案とは別に、四十一年度に私のほうの委託調査によりまして、とにかく筑豊地域につきましては、長期の将来にわたりまして、あの地域がたとえば産業配置の面やあるいは地域のいろいろな条件の面からいきましてどういう姿になるであろうか、あるいはどういう方向で振興していったらいいであろうかということを、県の立場で自由に絵を描いていただけないだろかということをお願いしたわけであります。このお願いした調査に基づきまして出てきております報告書、これが大体十年後を目標にいしておるわけであります。自由な立場で検討して描かれた報告書、県からはこの二つのものが出ておる。一方事業団のほうにおきましても、事業団の立場でそういう長期の将来にわたった姿を描いていただけないだろうかということで、やはり調査をお願いしました。いま御指摘の点は、おそらくこの委託調査に基づきます事業団と県の報告書の食い違い、これの点だろうと思います。これはいま御指摘のように、そのものを直接的に見れば食い違いがあるようでございますが、事業団のほうはたしか昭和六十年を目標にしておるわけであります。非常に長期の、二十年くらいの長期の姿を予想しておるわけであります。一方県のほうは大体十年後を目標にしておるということで、目標の時点の違いというのが一つあるわけであります。  それからもう一つは、いま御指摘の点では、県のほうの報告書では直方の周辺というものに振興の重点を置くというような形になっておるわけでありますが、事業団のほうの報告書は県のほうの御意向も織り込みながら、しかもその将来を長く見て、もう少しフレキシブルにあの地区の地域を狭く限定するのではなくして、やはり広い立場でもう少し弾力的に考えたらどうだろうかというようなお考え方に立っているようでございます。そういうことで、事業団のほうとしましても、県の報告は参考にしながら織り込んでいるということでございますから、基本的な違いはない。あと問題は具体的な地点を考える場合にどこにするかということでございまして、これはそれらの報告書を背景としながら、今後さらに具体的な調査を進めまして、県あるいは事業団のほうで、それぞれの立場で御相談しながらきめていくということになっております。
  18. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまのお話では、福岡県の計画案は十年後を目途としているようなお話ですけれども、私が聞いたのでは、五ヵ年計画で、四十六年までにこうしたいという案らしいのですが、御承知のとおりに、筑豊産炭地域方面は想像以上に疲弊しておりますし、長期というよりも、長期の中でもやはり五カ年程度で、ある具体的な振興策が現実しなければならないのではないか、このように考えております。  そこで、五カ年計画案の中に財政的な負担額が約五百億円見込まれているようでありますが、こういう予算的な面について、やはりお話も相当進んでいるかと思いますけれども、通産省あたりではこれをどういうふうに受けとめているだろうかという点もお願いします。
  19. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま予算のお話が出ましたが、まだ審議会で検討しておる段階でございまして、予算のところまでは進んでおりません。いまはむしろ各地の、何と言いますか、総合開発と言いますか、長期の開発計画、この志向すべき方向の問題とか重点の問題であります。たとえば、まず基盤整備、これが重点だと思います。この基盤整備の問題について重点的にどうするべきかというような話し合いの最中でございますので、予算の問題等はやはり最終段階というふうに考えております。
  20. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ雇用促進事業団に関連して一、二問お尋ねいたしますが、訓練種目の中に自動車整備工とかあるいは自動車運転がありますが、これは地元で聞いた話でありますけれども、その訓練所に行く人はあらかじめ卒業後の就職先がはっきりときまった者でなければ入れないというようなことで、事実形式的にでも経営者等にお願いをして雇ってもらえるような証明書を持っていくとか、非常に骨を折っている話を聞きましたけれども、こういうことが許されるものでしょうか。
  21. 万仲余所治

    ○万仲参考人 私がもし知らないならばたいへん恐縮でございますけれども、私はたいがいの訓練所、六十幾つありますが、二回目半くらい回っておりまして、訓練所へ行ったとき、もしくは訓練所を通じて聞いておる限りにおきましてはそういうことはないと思います。
  22. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは、きょうは資料を持ってきておりませんけれども、確かにそこで訓練を受けている人から聞いた話でありますので、事実です。筑豊方面ですから、ひとつしっかりと調査していただきまして、そういうことのないように、ひとつ手を打っていただきたい。
  23. 万仲余所治

    ○万仲参考人 私は寡聞にして知らなかったかとも思いますので、十分に調べまして、もしそういうことがありましたら、よく吟味いたして、適正に処置いたしたいと思っております。
  24. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一つお願いします。  私はとにかくしろうとでありますので、ほんとうに笑われるような質問かもしれませんが、要するに、移住資金内容の中で、「公共職業安定所の紹介により炭鉱離職者を雇い入れる事業主」こういう条文がありますが、これは他産業のほうから炭鉱離職者を雇い入れるために家を建てた、そのときもやはり同じ条件お金が出るのかどうかということです。  それからまたもう一つは、他の炭鉱経営者が同じ炭鉱労務者を雇い入れる場合家を建てた、そういうときも同じような条件お金が出るのかどうかということです。
  25. 万仲余所治

    ○万仲参考人 初めのお話は、他産業でありましょうが、何でありましょうが、炭鉱離職者を入れるということでありますれば、条件に適合するわけでございます。  第二にお話しのような場合は、それはだめなんでございます。
  26. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実はきのうも先輩から話を聞いたところでは、いまの炭鉱の労務者が他産業にどんどん流れていっておる。むしろ炭鉱事業主のほうにこういう措置を十分与えるべきではないか、自動車工業界だとか、鉄鋼界からいまものすごい勢いで炭鉱労働者のスカウトがある。そういう立場から考えた場合、これは法改正の必要があるのじゃないかという話を聞いたのですが、その点どうお考えでございましょうか。
  27. 万仲余所治

    ○万仲参考人 法改正の必要ありやいなやということになりますと、私どもの個人的な意見を申し上げるのはどうかと思いまするが、ただ実際問題といたしましては、住宅という問題に限りますれば、多くの炭鉱自分のところでどんどん住宅を建てねばならぬ状態ということではございませんで、きたない住宅かもしれませんけれども、むしろ住宅には幾らかの余裕があるというような状態なものですから、炭鉱離職者がよその炭鉱へ行く場合に、そこで住宅がないから困るという実情は私はあまりないのじゃないかと思います。
  28. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では、もう少し私も研究いたしまして再度お尋ねいたします。これで終わります。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 岡田利春君。
  30. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 産炭地振興計画が今度五ヵ年間延長されていくわけですが、大体資料によれば、今月中くらいには一応できるのだ、こうめどを立てられておりますが、いつごろできるわけですか。
  31. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先ほど大橋先生の御質問にお答えいたしましたが、ただいま県当局のほうから計画が出まして、それを中央の関係官庁といま打ち合わせをいたしまして、それと並行しましてただいま産炭地振興審議会におきまして最後のまとめの審議をいたしておる段階でございます。ただいままだ小委員会を毎週のように継続しており、先週もやりましたが、今週もやります。最終的には七月末ぐらいになろうかと思います。
  32. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 産炭地振興法による対象企業の問題で、御存じのように鉱工業ということに限られておるわけです。そこでいままでの産炭地振興事業団として進められてきた経過からかんがみて、この対象企業というものをある程度広げる必要があるのではないか、こういう議論もずいぶんあるわけです。もちろん等という読み方があるわけでございますけれども、どうもそれではやはりウエートが乗らないというような面で、振興事業を進める上に私は何か制約めいたようなものを強く意識せざるを得ないのではないか。いうなれば、農業あるいはまた商業活動についてもそうでしょうし、場合によっては観光の問題についても対象にしていいのではないか、こう判断されるのですが、この対象企業についてどういう見解を持っておられるか、お伺いしたいと思うのです、
  33. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 お答え申し上げます。  ただいま岡田先生の御指摘の鉱工業等の範囲の問題でございますが、これは発足当時におきましては鉱工業等についての解釈は非常に広く解釈できるものであるけれども資金の実情あるいは炭鉱の経営者が離職者のための事業を準備しているものに対して資金量が十分になかったというような事情等からいたしまして、いわゆる工業も相当  格な範囲にしぼっておったのでございます。その後だんだん資金をふやしていただきましたので、たとえば採石業でございますとかあるいは炭鉱事情にかんがみまして、炭鉱でけがをされた方々が養鶏でございますとか畜産をやられますような場合におきまして、農業の分野ではあるけれども、残念ながら農林関係の優遇された融資は受けられないというような分野につきましては、これは融資を申し上げるというように拡張いたしてきたのでございます。その後観光事業について融資をしてほしいという御要望があったのでございますが、これにつきましては、観光事業というものについては、常識的にいきまして、非常に広い範囲があり過ぎますので、これの取り扱いにつきましては非常に慎重でなければならないということば常磐炭鉱でハワイアンセンターというのができておりますが、このハワイアンセンターそれ自体を考えました場合に、これは明らかに他の地域におきますところの一つの観光センターとあまり違わないような性格のようでございますが、これは炭鉱離職者の方ばかりがほとんど一〇〇%近く働いておるということ、炭鉱の排水を温泉として利用されるというような点等を考慮いたしまして、特に大衆に向けられる施設の部分についてだけ事業団融資をさせていただく。たとえばホテル等の部分は、これはひとつ他の金融機関にお願いしてくださいというような形で、総所要資金のうちわずか一〇%に満たない程度でございますが、いわゆるヘルスセンターを中心にした融資をさせていただいたという例があるのでございます。また私ども今後の問題といたしまして、産炭地の実情を考えました場合に、鉱工業だけにしぼった場合には方法がないという点が非常に多うございますので、先ほどのように第一次産業の分野に属するものだけでなくて、その地域に、これは景色がいいところだから、ほんとうに健全なレクリエーション施設等をつくられるような場合においては、これも県知事等の御推薦を得たものに限ってやりますというような条件を、実は一つつけておるのでございます。  なお、その観光の範囲の問題については、たとえば杵島炭鉱ボタ山を処理いたしましてゴルフ場にいたしておるのでございます。これはそのボタ山の危害防止にもなりますし、美化にもなるし、特に中高年齢者方々仕事場として非常にいい仕事場であると思うのでございますが、あれをやられます当時は、私どもは観光事業はまだ対象にいたしてなかったときでございますので、現在もそのゴルフ場については融資をいたしておりません。  ただ今後の問題として、たとえばボタ山の処理をして、これを牧場なりあるいはゴルフ場なりにで、いろいろ政府方面の御指導を得ました上でこういうやり方をしておるのでございます。たとえしたほうが土地の利用にも有効であり、あるいはまたなかなか他に移住できない中高年齢者方々に非常にいい施設になるというふうなものが私はあるんじゃないかと思うのでございますが、これ等につきましては、私どもやはり公共機関の御見解を聞いた上で対象にするかどうかについて柔軟な態度で臨みたいと思っております。  それから商業につきましては、私ども実は非常に困難であるのではないかと思っておりまして、われわれのほうの金融能力といたしましては、資金的にも非常に脆弱でございますので、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等の政府の機関がございますので、そういう方面で特に産炭地について御配慮を願うことが望ましいのではないかと思っております。
  34. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 事業団の場合設備の新増設に対しては所要資金の四割、しかも年六分五厘の利率で十年間、三年たな上げ、こういう形で出しているわけですが、今日の産炭地の現状にかんがみて、もちろんこれは政府の系統金融の関係もございますから、金利もこういうぐあいになっているわけですが、これではなかなか実効があがらぬのではないか。どうしても無理をして企業を誘致をするということなんですから、この点はむしろ大幅に利率を下げるとかあるいはまた四〇%の比率を六割に上げるとか、こういうもう少し思い切った措置をしなければ実際問題としてはむずかしいのではないか。それが私は産炭地域における実情ではないか、こう理解しておるのですが、この点はいかがですか。
  35. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 岡田先生の御指摘のとおりであると思います。実際の運用につきましては、実は原則として四割であるということでございますので、私どもの現在の運用の例を一、二申し上げさせていただきたいと思いますが、たとえば三井美唄の閉山に伴いまして、あそこで事業を始めるというようなものについては、初めから企業に来てくださいというお話をするときに、四割にはこだわりませんということで五割以上融資をいたしております。さらにまた美唄対策が十分でないということで、政府の閣議了解等に基づいて発足された美唄釜業等につきましては、これは約九〇%に近い融資を実はいたしております。このような特殊な例につきましては、政府方面とも十分に御了解を得ながら実はやっておるのでございます。  今後の問題といたしまして、やはり同じ産炭地であっても企業が来やすいところと来にくいところ、それから閉山後早く何かしていただきたいところ、あるいは災害等に伴って早く企業を誘致しないと人心が安定しないというようなところの運用につきましては、私どもはいままでもそうでございましたが、今後なお一そう、その六割程度は少なくともお貸しすべきであるというふうに思っております。  先生の御指摘のように、産炭地に新しく企業を興すということはやはり企業家にとって相当勇気が必要でございまして、政府資金のほかに自己資金が十分にない場合には、これはなかなか出にくいわけでございますので、そういう目的に沿いまして融資率を適正に運用していきたいと思っております。  それから金利の問題につきましては、一般的に金利が一昨年でございましたか下がったのでございますが、そういうふうな事情にかんがみまして、将来たとえば産炭地で石炭を便って、そして石炭の消費を拡大し、あるいはそれに基づくエネルギーを使うような産業というものが興るということになれば、かたがた石炭の需給対策にも貢献することでもございますし、また産炭地として一番望ましいことと存じますので、そうしたようなもの等については、やはり金利上優遇されることが望ましいという見解を私は個人的には持っておるのでございます。
  36. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この点通産省としてどうですか。特に産炭地振興の戦略的な企業というものの誘致が盛んなわけです。それが呼び水になって企業が進出するということが可能なわけですから、全般的に及ぼすということは、いまの場合資金量とかいろいろな面から無理かもしれませんけれども、そういう点についてはこの比率の問題あるいは金利の問題等について思い切った施策を講ずる、そういう方向で今後の長期計画が立てられ運用されなきゃいかぬと思うのですが、見解はいかがですか。
  37. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 全体としての御趣旨につきましては私ども全く賛成でございますが、本年度から実はその融資の割合の問題につきましては、特に中核企業融資につきましては、先ほど四割が原則になっておりましたという話が出ましたけれども、本年度から中核企業のものにつきましては六割ということを一応原則にいたしたいというふうに考えておりまして、政府といたしましてもできるだけ産炭地振興の実をあげるという意味から、これらの問題については弾力的に配慮してまいりたいというふうに考えております。
  38. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 出資対象事業ですね。これは軽量骨材はすでに会社が設立をされて、今度は活性炭工業会社が設立をされるわけですが、この出資企業というものはいまの場合二つ会社が想定されるわけです。今度の新たな五ヵ年計画の中に、さらにこういう出資企業というものが考えられておるかどうか、あるいはまた振興事業団として特にいままで検討された中でそういう問題点があればお聞かせ願いたい。
  39. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 御高承のように、政府関係のこういう機関が出資事業をするということにつきましては、従来からいろいろな御批判がございまして、なかなか産炭地の問題につきましても、地元関係方面からの御要望はございましたが、困難な状態であったのでございます。いま運用いたしておりますのは、やはりなるべく産炭地資源をひとつ活用する、あるいはいままで利用されていない、あるいは開発されていない技術を企業化するということで、なかなか日本企業家自分のリスクだけでやろうとしないようなものについては、ひとつ出資を認めるという考え方の前提で、しかもなおかつその技術等について相当われわれのほうで消化をいたしたものについて出資を御認可をいただいたという経過に、実はなっておるのでございます。この範囲を非常に広げるということも、実際問題として、非常に困難であろうと思っておりますので、今の趣旨のような範囲内をあまり逸脱しないところで、ひとつテーマを強勉していきたいということで実はきておるわけでございます。  そういたしますと、実はなかなか困難だということが実際でございますが、今後の問題といたしましては、先ほど岡田先生のおっしゃいました石炭を活性炭に活用するという問題と同時に、いまやはり北海道で問題になっておりますところの札幌等の公害の原因になっております有煙炭の燃焼等をできるだけ少なくするような意味において、微粉炭を活用した一般炭の製造というような技術、これにつきましては国立の北海道工業開発試験所が相当研究を進めておりまして、ほぼ企業化していい段階にきつつあるのではないかというふうに思っておりますので、これは研究所の研究者のほかに、こういうプラントメーカー等のお知恵も借りながら、企業化案をつくっていきたい、こう思っておるのでありまして、これはまだこれから先の問題でございますが、当面の問題としてはそれでございます。
  40. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きのう特別委員会で議論をしたわけですが、御存じのように吸着剤として汚水処理に微粉を使う、こういう技術開発が行なわれておるわけです。広義に考えれば産炭地域の振興にもなるし、特にこれは公共事業団体がやるわけですから、大体人口二十万から三十万以内くらいの都市がこれをやる。その場合単なる起債でやるということは非常に問題があると思うわけです。私はこういう政策というものはやはり産炭地振興にもなりますし、石炭産業の政策として前向きの政策でありますから、こういう点はある程度積極的に取り上げて、その個所を一応選定をして、自治省とも十分連絡をとりながら、これに踏み切っていく、こういう姿勢も非常に大切ではなかろうか、こう考えてきのう議論したわけですが、こうにならないというお考えですか、あるいはまたそういう点について考えられていますか。
  41. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 私どものいま出資をいたします条件といたしまして、それはやはり企業として採算性を持ち得る事業でなければならぬというのが、一つの原則であろうかと思うのであります。いま岡田先生がおっしゃいましたような事業で、いま私が申し上げましたような、これはもうける、もうけないの問題は別問題として、いわゆる採算性が実は取り得る事業であるかどうかという点につきまして、私まだよく理解ができるような事業をよく存じませんので、的確なお答えができないかと思いますが、やはり法律によって公共性を持って設立された事業でもございますので、御指摘のような事業で何かいいものがございますれば、私ども勉強させていただく気持ちは十分ございます。
  42. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 問題は熱源処理の関係でそれに付随するものができれば産炭地振興になると思うのですね。この点は技術開発も進んでおりますから、十分ひとつ御検討願いたいと思うわけです。  それと地方公共団体の場合土地造成をして売る。この場合事業団では融資を行なっておるわけですが、たとえば地方公共団体炭鉱離職者もしくは未亡人対策、あるいは身体障害者、こういうものを対象にして公共団体が何かやる、採算のほうは問題がないわけです、公共団体がやるわけですから。それで市民の福祉のために何かやる場合に、未亡人を採用するあるいは身体障害者を採用するあるいは高年齢者の炭鉱離職者を採用する。そしてたとえば子供の遊び場でもけっこうでしょう、そういうものをやることが考えられた場合、普通一般起債で地方公共団体融資の道はあるわけですが、内容によってはなかなか対象になりにくい問題もあるわけですね。しかしいま言った趣旨で積極的にやるという場合には、ある程度考えていいのではないか、こう私は思うのですが、こういう点については何かいままで問題が出ておりませんか。
  43. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 いま御指摘のような問題について、何か産炭地振興事業団から金を貸してもらえないかというようなお話があったことは二、三ございます。ただわれわれお金をお貸しいたしました場合は、返済という問題が実はあるので、返済もそういった人であれば相当長期であって私はいいと思うのであります。たとえば先般、これは宇部でございますが、小児麻痺の方々とかあるいは精神薄弱児の方々等を収容して、その方々にある仕事を教えた。非常に単純な労働を教えたら相当使えるのだ。そうして長期的に見ればちゃんとこれが回転するのだ。それで普通の収容施設というようなことではなくて、そういう作業施設というようなもりについて金を貸してもらえないかというようなお話も実はあったのでございます。これは金を貸すかあるいは工場を貸してくれるというようなことにならないかというようなお話があったのでございますが、私どもは、これはどこら辺まで政府のほうでお許し願えるかというような問題があろうと思うのですが、気持ちとして何とかなる限りにおいては、やはり社会政策的な意味が相当強いものであっても、これはいいのではないか。そこが利潤を上げてどうこうするという、いわゆる株式会社でなくてもいいのではないかと思っております。ですからこれは非常に限界がむずかしいところで、全面的にそういうふうにいたしますというふうにお答えすることはどうかと思いますけれども、そういう考えを持っております。
  44. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この問題は事業として成り立つ、成り立たないという問題でなく、社会政策の面が地方公共団体の場合強いと思うわけです。しかも議会で議決をして、その地方自治団体がこのお金を貸すわけですから、倒産をするおそれもないわけですね。そういう面では確実なわけです。ただ問題は、私がいま申し上げておりますように、炭鉱というものが一社会のような役をして、しかも未亡人が滞留するあるいは身体障害者が滞留する。なかなかほかにも行けない。そしてまたそういう炭鉱の周辺で適当な人口が存在する個所も指定区域の中にたくさんあるわけですね。そういう面から考えた場合に、やはり産炭地域一つの振興にもなるわけですから、またいま申し上げました効果も出るわけですから、この点はぜひそういう場合には、もちろん資金には限界があるでしょうけれども、ある程度取り上げてもいいのではないか、こう思うのですが、通産省としてはこういうような問題はどうですか。
  45. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 若干問題があろうかと思いますけれども、しかしだからといいまして、これは先ほど来お話が出ましたように、当初の運用よりも逐次その対象につきましても拡大をしてまいってきております。要は産炭地振興事業団が非常に疲弊した地域のためにどう寄与するかという問題でもあります。ただ、しかし特に金融の問題になりますと、産炭地域の振興のための金融は単に産炭地振興事業団だけでなしに、開発銀行もありましょうし、あるいは中小公庫等他の政府機関との関係もありますので、他の政府機関にも当然これは応援していただかなければならぬ。要は国の政策として産炭地振興のために産炭地振興事業団融資といい、あるいは開銀融資といい、政府関係金融機関がみんな産炭地振興を重点としてやっていただくという体制をつくることが一番大事だと思いますので、そういう問題は残ります。残りますけれども、しかしひとつ研究してみる価値があると思いますので、御指摘の点についてもさらに検討させていただきたいというふうに考えます。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 次に雇用促進事業団にお尋ねしますが、炭鉱離職者援護業務が先ほど説明あったように各般にわたって進められておるわけです。私は今日の炭鉱の実情から考えますと、単に離職者援護するという姿勢から転換すべき時期に来ているのではないか、こう実は思うわけです。万仲参考人も御存じのように、現在炭鉱では炭鉱の労働者を確保することが非常にむずかしい。しかもこれは相当優秀な大手の炭鉱でも安定的な雇用を確保することは非常にむずかしくなってきておるわけです。しかも炭鉱同士で引き抜き合戦が行なわれる、こういうことも非常に顕著になってきているわけです。今度の国会には炭鉱労働者に対する特別年金が法案として出されております。これもやはり安定的雇用を確保するというために行なわれるわけです。従来ですと、鋭角的な合理化が進められる、そのためにとにかく滞留する労働者をどんどん工業地帯に出していく、ここに重点を置いて民生の安定をはかろうという趣旨でこれだけの各般の政策が行なわれてきたわけです。もちろんこれからもそういうことはあると思うのです。ですから、いままでの援護措置が全部変えられるべきだというのではなくて、炭鉱の労働者を炭鉱雇用することが今日最も望ましいのではないか。長年炭鉱に働いて技術を持っておるわけですから、その炭鉱の労働経験のある者がその山が終山になっても次の炭鉱に行って働くということが望ましい時期に実はなってきているわけです。こういうふうに趨勢というものが変わってきておるわけですから、これに対応して、広く離職者だけでなくて炭鉱労働者雇用全般の問題という面で雇用促進事業団でも受け取っていかなければならぬ時期に来ているのではないか。もちろんこれは労働行政の問題もございますけれども、そういう点について御意見を承りたいと思います。
  47. 万仲余所治

    ○万仲参考人 お説はまことにもっともなわけで、かねがねからそういう話が出ておりましたのですが、たまたま私どものやっておりますのは離職者を対象とする仕事であるということで大きく範疇がきまっておりますので、その範囲内でできるだけのことをやりたいということから、第二種の離職者移住資金をつくった。これもいままでの考え方だけからいきますと何だかおかしいのではありますけれども、しかしかくのごとき状態は時勢に沿って考えねばいかぬということのあらわれの一つと考えておりますので、将来はさらに何らかの意味でお説のようなことが可能になるようなことは私どもも考えていかなければいかぬと思っておりますけれども組織、法体制の考え方からマッチするような方向に行かねばいかぬという点を考えながら行きたいと思っております。お説たいへん賛成でございます。
  48. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま触れられました第二種の移住資金の問題ですけれども、これはいわゆる移住距離二十キロメートル以上、こうなっているわけです。しかし炭鉱地帯というのは点々とそれぞれの炭鉱が存在しているわけですね。ですから機械的に二十キロといわれても、この趣旨からいえば若干無理な面もあるのではないか。たとえば極端なことを言いますと、美唄の炭鉱をやめて赤平ですか、近いところでもいいわけですね。雇用確保がたいへんなわけですから、労務闘争が起こる可能性をいま強めているわけです。そういう意味ではむしろ普通一般の一種と同じように、距離その他によっては額は違ってくるでしょうけれども、むしろ積極的に炭鉱から炭鉱に移住してもらうというほうが現実的ではないか。特に中高年齢層対策というものは非常にむずかしいわけです。しかも炭鉱の労働者の平均年齢が常磐で三十六歳、ほかでは四十二歳だ、こういわれておるのですから、そういう方はあと十年なり八年炭鉱に働いてもらう技術を持っておるわけですから、このほうが望ましいのだ。そういう意味においては移住資金なんかについてももう少し実情に合った政策をとる。設立なり経緯からいえば、これは無理してできた一種なのですが、今日の状態は徐々に大きく変わっておるのだ、こう私は思うわけです。これもいずれ労働省とも詰めなければならぬ問題ですけれども、そういう点では雇用促進事業団のほうも雇用促進事業団ですから、現状を分析してそれに適合する施策、中高年齢層が炭鉱に行くのが一番いいわけですから、これからの雇用促進事業の面においても、そういう前向きで思い切った転換といいますか、質的な発展といいますか、そういう方向をむしろとるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  49. 万仲余所治

    ○万仲参考人 御承知と思いますが、私は炭鉱の現場に長くおりました者で、私個人としては御説には非常に賛成な点がございますが、実際にこれをやります手順その他につきましてはいろいろの面がございましょうので、承りまして私個人は非常に賛成でございます。ということを申し上げておきます。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 労働省はその点どうですか。
  51. 塩田晋

    ○塩田説明員 ただいま岡田先生からお話がございました点につきましては、情勢の変化を十分に勘案しまして検討していきたいと思います。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 なお職業訓練が行なわれておるのですが、これも離職するための職業訓練離職者をほかの産業に再雇用するというための訓練を行なっておるわけです。いま言ったことからいいますと、炭鉱になかなか人が来ないわけですから、炭鉱に来るためにむしろ逆に訓練をする、こういう時期に私は日本炭鉱は来ていると思うのです。ですからそういう意味では、私も先般法案審議のときに労働省にも質問をいたしておるのですが、坑内労働は満十八歳という特殊な労働でもございますから、むしろ中学を出て一定期間訓練、養成をして、そうして技能を身につけて若年労働者を採用する、こういうことを炭田別に切り開くべきではないか、それをいまそれぞれの炭鉱でやれといってもむずかしゅうございますから、雇用促進という業務の考え方の中で消化をしていい問題ではないか、こういう指摘を実はいたしておるわけです。あるいはまたある中核炭鉱ではこうした学校をつくり、あるいはまたある程度の訓練所といいますか、そういうものをつくって若年労働力の確保に努力している企業もある。そういう点についてはむしろ炭鉱の若年労働力の確保、いわゆる労働の質的な若返りをはかるという重大な命題があるわけですから、むしろ助成措置をする。所内訓練のような場合には、ほかの場合にはいろいろそういう助成もあるわけですから、むしろ逆にそういう炭鉱施設に助成する、こういう形でいかないと若い労働者の確保はむずかしいと思うのです。万仲参考人は非常に炭鉱経営の経験が長くて、また今日の炭鉱事情についてもおわかりだと思うのですが、こういう点について、訓練関係についても、現状の炭鉱の置かれておる実態に合わした施策ということもやはり必要ではないかと私は思うのですが、この点いかがでしょう。
  53. 万仲余所治

    ○万仲参考人 お説も私個人は非常に賛成でございます。ただ職業訓練という面から見ますと、この職業訓練は炭山の現場である特殊の訓練、一般的な職業訓練というのとは違う訓練をしなければいけないというような点がございますので、方法論的にはいままでの職業訓練の観念とは違ったやり方をしなければいかぬ。その意味では、むしろ訓練所自体はその炭鉱もしくは炭鉱の集合体がやるというようなことで、経済的な面で国はそれに援助するというようなことが考えられてしかるべきじゃないかとも思いますけれども、これも私どもとしても御指摘によりまして検討したいと思っております。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 結局、雇用促進事業団趣旨というのは、雇用したい、なかなか労働力が集まらない、それに訓練を施して労働力を充足する。炭鉱に限っては合理化の経過もありましたから、これは外に出すということをやってきたわけです。現状は足りないわけですから、一般産業と同じように、炭鉱労働力を今度は確保する政策が、離職者対策と別個にどうしてもとられなければむずかしいですね。いま生産量が落ちておる地点などを見ますと、やはり不安定な雇用状態にある。なかなか労働力が集まらない。来ても安定しないという面があるわけです。こういう点で労働省なんかの場合には、雇用対策の面から考えれば、炭鉱の労働力を今度は確保しなければならない状態なんですね。何か具体的な検討をされていますか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  55. 塩田晋

    ○塩田説明員 この労働力確保につきましては、炭鉱雇用状態がかなり変わってきておりますので、労働組合、業者団体等から最近いろいろな要望がございます。こういったものも現在検討しておるところでございますが、何といたしましても炭鉱離職者の対策を十分やるということが、これまだ炭鉱労働力の確保に非常に役立つものであるという考え方でいままできておるわけでございます。なおこの考え方は今後とも続けていきたいと思っておりますが、これとあわせまして、新たな情勢に対応いたしまして十分慎重に検討したいと考えております。
  56. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これと同じ考え方を展開しますと、もう一つ問題があるわけです。先ほど大橋委員が質問しましたけれども住宅の問題ですね。これは御存じのように戦後炭鉱住宅をどんどん建てた。いわゆる炭住を建ててきたわけです。しかし戦後それ以来二十年以上経ておるわけですから、もうかしがってしまって、ある炭鉱に行くと、何か納屋のような感じを受ける。あるいはまたスラム街が炭鉱であるというような感じを受ける炭鉱も非常に多いわけです。しかし施業案あるいは採掘計画等を検討しますと、六十年は優に炭量もあり、安定的な炭層が保有されておる。したがって今日の石炭施策の展望からいっても、長期的に炭鉱自体としてはやり得る条件を十分備えておる。しかし現状は福利施設には全然手が回らない。ですから荒れほうだいというようなことなんです。特にスラム街対策などについては、いろいろ国でも厚生省予算でも政策が伴っておるわけですが、炭鉱についでは住宅はあるのだという観念がどうも支配的なわけですね。しかし、これは魅力ある炭鉱として雇用の安定をさせるためには、ある程度常識的な質のいい住宅を確保しなければならない、こういう問題が、これは炭鉱の場合には絶対不可欠の要件なわけです。  それと同時に、炭鉱の場合には、起業工事をやりますから、御存じのようにある一定の組夫はどうしても使わざるを得ない。しかも組夫の雇用の問題も非常にむずかしいわけです。ある程度はどうしても安定的に確保しなければならぬのが、いまの炭鉱の宿命なわけです。組夫の場合にも住宅があると安定するわけです。住宅がないと移動率が非常に激しくて、雇用を安定的に確保することはむずかしい。こういう問題が実はある。私はそういう意味において、住宅の面についても、普通一般産業はいま労働力が足りないですから、むしろ何もなくともぜひ来てくださいという企業はたくさんありますよ。しかし、制度がありますから、お金をつけて、うちを建てるといえば二十万円なら二十万円をあげます、あるいは雇用促進手当もあげます。至れり尽くせりのかっこうになっておるわけです。しかし、いま言ったように石炭産業の現状は大きく変わっているわけですから、さっき言った趣旨からいえば、逆に一般産業向けのこういう優遇措置炭鉱にしたほうがいいんじゃないですか。そのことによって組夫をはじめ直轄の従業員の雇用の安定をはかる。特に四十歳過ぎた者で炭鉱に働き、炭鉱で暮らしていた者は、炭鉱で働き得れば一番いいわけですから。働く場所は今日あるわけですから、むしろそっちに向けるほうが政策として一番いいのじゃないか。炭鉱労働力の安定確保という面では、出すことばかり考えないで、もう変わってきているのですから、現状に合わして、むしろ確保する側にそろそろお金を向けていいのじゃないか。大体離職者も逐年減ってまいってきておるわけですから、そういう意味では、この時期を契機にして、もう一度炭鉱に戻すというような意味で、これらの住宅問題等を含めて検討されてしかるべきだ、こういう考えを実は私は持っておるわけです。  日本の大きい炭鉱はすばらしい住宅を建てておりますけれども、最近は福利厚生にはなかなか手が回っていない。このまま放置しておきますと、中小炭鉱なんかスラム街、スラム炭鉱になりますよ。外見だけは、坑内は石炭を出さなければならぬから近代化資金を入れてやる。ところが福利厚生関係は手が回らなくて、正面の選炭機はりっぱだけれども住宅はスラム街である、こういう炭鉱になってしまうのじゃないかと私は思うのですね。こういう点についても先ほど申し上げたと同様の趣旨なんですが、万仲参考人はよく炭鉱を回られておるようですけれども、そういう現状認識についてはいかがでしょうか。
  57. 万仲余所治

    ○万仲参考人 おっしゃるとおりでございまして、先刻大橋先生ですか、お尋ねいただきましたときには、物はある。非常にきたないだろうけれども物はあるだろうというお答えをしたわけなんですが、いまおっしゃるように、物はあったってほとんど使い道にならぬ。しかもあんなところへはだれが来るかというような関係のところはそのまま残ってまいります。私どももその点は非常に考えねばならぬと思っております。現に雇用促進融資と称しますさっきからお話がありました融資関係では、われわれはできるだけ拡張解釈をいたしまして炭鉱雇用促進融資をいたしております。ここに北海道では実績が幾らかございます。これは私はいまのような意味合いででき得る限り——法規をさらに改正すればまたよいのでございますけれども、改正しない前にも、でき得る限り拡張解釈でやりたい。すでに現実に北海道では数炭鉱やっておりますので、たいへん賛成でございます。
  58. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 三原朝雄君。
  60. 三原朝雄

    ○三原委員 時間がありませんので、二点簡単にお尋ねをいたしたいと思うのですが、まず産炭地振興事業団なり石炭局長に「お尋ねをいたします。  それは自由企業下の現在でございますので、なかなか意のごとくは進まぬと思いますけれども産炭地において、特に対象企業になっております鉱工業あたりを考えてみましても、特に市町村において希望」ておりまするのは、基幹産業を何とか誘致できないかという問題が常にいわれる。ところがなかなか現在の市町村の態勢なり県の段階においては、そうした誘致はきわめて困難であるという実情でございます。そういう点から、先ほど来お話の出ておりました産炭地振興審議会等において、あらかじめ総合的な立場で計画が検討された時点において、あの産炭地にはどういう企業を誘致することが可能であるか、また必要であろうかという、国全体の産業の構造から見ていろいろな意見がおそらくかわされていると思いますが、ひとつそうした審議会の段階において、第二次五ヵ年計画等が立案される現時点でございますので、それらのメンバーにそれらの産業陣営の方も入れながら、責任を持たせて審議会の答申がなされる。その計画を検討される時点においてそうした政治的な配慮が必要ではないか。これはかねてからそういう点も論議がなされたことがあるわけでございますけれども、そういう産業経済界のお知恵をかりながら、みずからが産炭地振興という政策に協力するというような方向で審議を進めることがどうであろうかということでございますが、そういう点を考慮しながら審議が進められておるかどうか、地元の意向等が、常に陳情の趣旨はそういう点にあるようでございますので、たとえば自動車産業であるとか、あるいは伊万里地区のようにすでに国が企図され、事業団が企図されて、あるいは石油コンビナートがよかろうとか、それに従って将来の大陸との交易で港湾等の建設も必要である、そういう見地からなされる事業というものが考えられるわけであります。そういう方向で進んでおる。それと同様に、各地における産炭地域においてそうした構想でお進めいただきたいと思うのですが、現在そういうことが審議会には取り上げられ、またそういう配慮のもとに進められておるかどうかということをお尋ねいたしたい。
  61. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先ほど申しましたように、ただいま第二次産炭地振興五ヵ年計画を審議いたしておるわけでございますが、審議会におきましては、各県からやはり先生おっしゃいましたような相当具体的な計画等も中に盛り込まれておりまして、そういう問題につきましては、まだ不確定のものももちろんございますけれども、相当話題をにぎわしておるような具体的な事例も中に入っております。先ほど御指摘のありました長崎県と佐賀県両県が、伊万里湾を中心として石油の基地をつくりたい、貯蔵基地等をつくりたいというような構想も両県からすでに意思表示がございますし、それからまた福岡県等におきましては、機械工業を中心とした産炭地振興事業をぜひやりたい、しかもそれは単なる中小企業的なものではなくて、中核企業あるいは大企業の誘致をしたいというような希望も出ておるわけでございまして、したがいまして、そういうことも審議会の中では議題になって検討されている。ただしかし、いずれもまだ、何と申しますか、特に企業誘致の場合につきましては、まだ相手企業との話し合いが十分ついていないというのが現状でございまして、ただ地元当局といたしましては、ぜひそういう形で企業誘致をいたしたいという強い希望が表明されております。そこで、審議会といたしましては、やはりそういう企業を誘致しますためにも、やはり基礎になりますのは、特に筑豊等の場合におきましては、まだ道路の整備も十分ではありません。現在計画されております道路につきましても、これはいわばきわめて一般的な道路の建設でございます。審議会的な構想といたしましては、むしろいまの道路に数倍するような、二十年先を見た、もっと大きな構想で道路計画についても取り組むべきではないかという意見も出されておりまして、こそくな計画でなく、五ヵ年計画といっても、二十年先まで見たような展望、そういった中でこの当面の五カ年計画はどうあるべきかというような見地で見るべきだというような意見も出ておりまして、そういう基盤整備とともに、具体的にはただいまおっしゃいましたような大企業あるいは中核企業の誘致というようなことをやるべきだというような意見が出ております。  ただ、やはり問題は、何と言いましても、誘致の対象になる相手企業、これとの話し合いがまだ十分ついていないというのが現状でございます。私どもとしましては、やはりこれはできるだけ、審議会というよりはむしろ地元が中心になりまして、政府が——政府といいますとこれは広くなりますので、私ども、やっぱり産炭地振興を一応推進いたしております通産省が、地元に協力いたしまして、できるだけ具体的にそういう話し合いを進めていくような努力が必要じゃないかというふうに考えております。
  62. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 審議会の関係につきましては、井上局長さんよりお答え申し上げましたので、私のほうの関係でちょっと申し上げますと、実は審議会でいまのような業界の方の入った一つの合目的企業の選定という点は非常に困難な面もございますので、私どもといたしましては、石炭局から一昨年来、たとえば筑豊に一番向く企業はどういう企業であるかということのテーマのもとに、実は調査を委託されまして、その委員会を持っておるのでございます。それには、いま先生の御指摘のような自動車工業界でございますとか、あるいは機械工業界でございますとか、あるいは石油関係方々も委員に入って、実は検討していただいたわけであります。これをやりました場合に、非常に私どもが当面いたしました問題は、やはり企業というものは、とにかく自分が独立性を持っておるものであって、自分の一番利益になるところを選択するという動きをどうしても本質的にするという問題が一つあるわけであります。それともう一つは、筑豊が、たとえば自動車工業であるとかあるいは重機械工業であるとかいっても、そういうものを受け入れをしていいような環境にまで整備されていないという根本問題が実はある。したがって、われわれは、そういうふうな委員会の検討をやっておりますうちにおいて、やはり戦略産業としては、自動車工業というものがいわれるわけですが、そうしたものをひとつ頭に置きながら、その自動車工業であるとか、あるいは重機械工業、電子工業というものの入り得るような環境というものを実は早く整備しなければ、どうもそういうことを呼びかけても企業家が十分興味を示してくれないということになりまして、先ほどちょっと御質問もあったような、筑豊の体質を改善していくための基盤整備はどういうふうにあるべきかというところに、実は昨年のテーマをしぼったわけでございまして、われわれはやはり筑豊というようなところにそういうような企業が入り得るような環境をまず整備する。それが地価の面で十分でなければ、これは政府のほうの施策によって、何か地価を引き下げるというような方法も講じていただきましょうし、あるいはさらに望むらくは、そういうところに工場を立地するように、通産行政なりあるいは政府施策の面において勧奨していただくなりというようなことが必要になってくるのだろうというふうに実は思っておるのでございます。したがいまして、私どもとしましては、いままでの検討の中において、それぞれの地区について、ある程度までのいわゆる戦略的な産業と申しますか、こういうような企業に来てもらったならばこの地域がよくなるであろうというような産業を一応想定して、それに向かってどういうふうに整備していくか、その整備がある程度つくという目安がつけば、今度はどういうふうにして企業に来てもらうかという方法論の問題が確立していかなければならない、かように実は思っておるのでございます。
  63. 三原朝雄

    ○三原委員 構想はよくわかりましたが、そこで幸いにして、今日の日本産業経済の上昇態勢というようなものが、地元県、市町村にも一つの空気をつくりつつあると思う。中央のそうした構想もある程度受け取られておるようでございますし、ひとつ積極的にそういう基盤整備なりあるいは中央の戦略的なそうした企図等を浸透さしていただいて、地元の強い要請というようなものとマッチさせながら、産炭地振興と取り組んでいただきたいと思うのでございます。  そこで第二点をお尋ねしたいのでございますが、立地条件の現在の段階においてもきわめて恵まれた態勢のところでは、実は産炭地振興事業団団地造成されても、なかなか使用が行なわれず、ある地域にはペンペングサもはえるというような状態であったのが、今日においては団地をひとつぜひ分割願いたいというようなうれしい悲鳴が現実に起こっておるというような地域も局部的には出てまいりました。  そこでお願いをいたしたいのは、先ほどどなたかからの質問にもあったように、事業団団地造成されるについて、一応の企図としては二年なりおそくとも三年ぐらいで団地造成いたしたいというような規模団地を次々につくっていきますけれども、それが計画どおりに前進をしない地域があった。それは多く先ほどの一部土地収用、買収というような点がなかなかうまくいかなかったというような事情もあるようですが、それは苦労しながらも収用法とかいうものにかけず、何とか御相談をされて今日の団地造成が行なわれておることはよく承知いたしております。そこで私どもといたしましては、企業がこう前進をしてまいりますと、ひとつ未完成の団地であってもぜひ分割して払い下げを願いたいという要請が次々に出ておるようでありますが、そういう点について、しかしなかなか国の事業だし、個人の売買のようには簡単にいかぬようでございますけれども、そういう点についてひとつ特段の配慮を願いたいと思うのです。要するに事業家というのは非常に早期解決を希望いたしている。ところが国のそうした事業というのは、申し込みをいたしましても、半年ぐらいはかかるというような状態になると、次々に事業は進展をし、変貌していきますし、事業家としては困った情勢にあることを承っておりますので、何とかそういう点をひとつ早期に、完成しなくても分割ができるよう、しかし総合的な立場からいろいろな計画は事業団においてもあろうと思いますけれども、そういう点はそれなりにケース・バイ・ケースで御処置願いたいと思いますが、この点を特に要望し、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  64. 堀坂政太郎

    堀坂参考人 土地をつくっておりますうちにその造成中に御要望があるような非常にしあわせな団地もあるわけでございますが、私どもやはり今後の問題といたしまして、造成した団地についてそれぞれに向いた産業に入っていただくようなことが望ましいという一つの理想はあるわけでございます。何でもいいから来てほしいという気持ちはいまも変わらないのですが、何でもいいから、どこでもいいからということではなくて、こういった種類はこういったところに立地していただくとその後のその土地の管理なりあるいは道路の整備なりその他が非常によくなる、あるいは排水の処置もうまくいくというようなことがございまして、こういったところにはなるべくよごさないような企業をというような一つの目標、これは必ずしも明確ではなかったと思うのでございますが、若干そういうふうな問題がございます。こういった点を土地を利用される方にもっとはっきりわかるように早くから明示をしていきたいということが第一点でございます。  第二点としまして、造成中であっても、これはもう使えるようになるという状態のときにはすぐ希望者に分けるようにせよという御趣旨、これはまことにごもっともでございまして、そうした点については従来も造成中に仮契約というような形で実はやっておりますのがございますが、なお一そうその事務的な点は改善をいたしてまいりたいと思います。  こういう政府関係仕事でございますので、ここに入った企業が途中で転売されたらいかぬというような実はいろいろな心配があるために、ややその事務が停滞をしているような点があろうかと思いますが、この点につきましては十分に注意をいたしまして改善いたしたいと思います。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  この際、両参考人にごあいさつ申し上げます。  本日は御多用のところ、本委員会に御出席くだされ、それぞれのお立場から事業団業務並びに今後の施策について貴重な御意見を述べていただき、政策立案上非常に参考になりました。厚く御礼申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次に内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。大橋敏雄君。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は石炭鉱業合理化事業団に関しまして若干お尋ねをいたします。  合理化事業団の働きは石炭産業の盛衰のかぎを握っているといっても言い過ぎではない。その使命は重大でありまして、その運営面における良否というものはまたきわめて大きな影響をもたらすものと考えております。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、合理的生産体制の基盤を確立し、その定安をはかる意味からもきわめて重要な課題とされている鉱区の調整についてであります。従来必ずしも十分に行なわれていたとは言いがたいと審議会の答申の中にも述べておりますように、鉱区の調整の重要性が十分認識されていながらも実施の段階では進行しない。現実問題に立って考えますと、先般も常磐炭鉱の視察をいたしました際に、所長さんのお話の中で、鉱区の調整については人間関係やあるいは利害関係等が複雑であってなかなか困難だという話がありましたが、政府といたしましてこの問題点について今後どのように取り組んでいかれるのか、具体的な対策を示していただきたいと思います。
  68. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 鉱区調整の問題につきましては、御指摘がありましたように今後石炭産業を合理的に開発していきますために最も大事なことの一つだと思います。そこで私どもといたしましては、石炭鉱業審議会の中に鉱区調整部会というのを設けまして、昨年来特に熱心に御審議をいただいております。  かつては鉱区調整の問題につきましては、なかなか解決が困難だった点が非常に多いわけであります。困難な理由といたしましては、これはやはりもらうほうと鉱区を差し出すほうとありますから、もらうほうは非常に熱心でございますけれども、鉱区を分割して譲渡するあるいは全部を譲る一譲る側に立ちますと、遊休鉱区の場合には比較的簡単でございますが、遊休鉱区ではなくて現に稼働しておるという場合には、やはり少なくとも炭量については二十年、三十年の長期の炭量を持ちませんと、そこで働いている労働者も将来に対して不安を抱く、安定した気持ちで炭鉱に従事するわけにいかないというような点がございますので、なかなか言うべくして簡単ではないわけでございます。しかし隣の山では炭量が少ないから、どうしてもその鉱区を分けてもらわなければやっていけないという事情はありますが、それを安易に受けて立って譲りますと、今度は、それは十年や十五年や二十年は譲るほうもやっていけるかもしれませんが、率直に言えば、これは十年や十五年の寿命では炭鉱労働者というものは必ずしも安心できないわけでございますから、したがいましてそこに鉱区調整のむずかしさがあるわけでございます。ですから鉱区調整に反対する側は、譲るほうが反対します場合には労使ぐるみ、働く労働者が絶対反対を唱えるというのが実情でございまして、そういった点が基本的にこの鉱区調整のむずかしさでございます。ただ、そうは申しますけれども、昨年来各企業ともに、いわば石炭産業自身が共同体というと語弊がありますが、運命共同体的な気持ちになりまして、比較的隣接鉱区の困った企業に対して譲る機運が相当高まってまいっております。特に遊休鉱区の場合には昨年度も相当な実績をあげておりまして、遊休鉱区の譲渡という実績があげられております。  今日問題になっておりますのは、ただいま御指摘がありました常磐地区と、率直に言いまして北空知の問題があるのですが、この北空知の問題はそう簡単ではありません。先ほど私が困難だと言った事例に類するものでございます。常磐の問題はそれほどむずかしいとは思いませんけれども、これまたやはりなかなかそう簡単ではない、それに類する問題がございます。ございますけれども、しかしこれはただいま私ども間に立ちまして、何とかうまい解決方法はないかということで善処いたしております。結局ケース・バイ・ケースで、実情を見て、要すれば私どもが間に立ちましてあっせんの労をとるというようなことで解決していく以外にないというふうに考えております。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま部会で検討しているという話を聞きましたが、部会のメンバーは大体どういう方々なんでしょうか。
  70. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 鉱区調整部会の部会長は、東大の名誉教授をやっておられます青山秀三郎先生がやられまして、それに東大の伊木先生、これは採鉱の先生でございます。それから早稲田大学の同じく採鉱の大家でいらっしゃいます中野教授、それから合理化事業団理事長の出口さん、それから北大のこれまた採鉱の権威でございます佐山先生、それから九大の山田先生、それから開銀総裁の石原さん、それから日本経済の円城寺先生、大体以上でございます。大体中立委員で構成しております。
  71. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 鉱区調整についてはすばらしいメンバーで審議がなされているように聞きましたけれども、理論的にはなされても、実質的には人間関係や利害関係でなかなかむずかしいということですので、実施の段階においては、やはり相当の政治的配慮も必要になってくるのじゃないか。そういう点から考えまして、現在合理化事業団に一任されているような形だと思いますけれども、これをもっとさらに力強いバックアップといいますか、そういう態勢が必要でないのかという考えを持っておりますが、それはどんなものでしょうか。
  72. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 お説のように、私どもも、積極的にやはり鉱区調整につきまして政府努力しなければいかぬというふうに考えております。ただ先ほど申しましたように、なかなか鉱区調整、譲るほうの側になりますと、将来の自分の働く場所をその分だけ失うわけでございますから、必ずしも容易でない問題がございます。これは事実です。しかし少なくとも遊休鉱区につきましては、これは私ども積極的に間に立ってあっせんいたしたいというふうに考えております。
  73. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 さらに審議会の答申の中に、地域内における企業の合併、集約化を促進することが石炭鉱業合理化を著しく有効ならしめるものだというようなことが書いてありますけれども、この企業の合併、集約化について政府の見解をお尋ねいたします。
  74. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 これはほんとうを言いますと、なかなかむずかしい問題でございます。しかしそこに書かれてありますのは実は私の持論でもありまして、できますれば鉱区調整に伴いまして企業の統合とか合併とかということがより好ましいという気持ちでおるわけでございます。たとえば常磐地区等におきましては、でき得べくんば、全社が単一会社なる、特に常磐炭鉱という中核炭鉱があるわけですから、その中核炭鉱のもとに統一したらどうだろうというような考え方を持ちまして、実は昨年の夏ごろにも常磐の関係者の方々に共同研究をお願いいたしまして、やはりこれは何と言いましても、政府が押しつけたというより、各企業が自発的に、自主的にそういう気持ちになっていただかなければならぬわけでございますから、共同研究をお願いし、共同研究の結果について御報告いただいて、政府としてなすべきことがあれば善処したいというふうな話を申したことがあるわけです。遺憾ながら、先ほど来申しましたように、鉱区調整という問題は、やはり企業にとって生命の問題であります。それからもう一つは、統合いたします場合にでも、なかなか各社の労務事情、労働情勢、こういうものも違いますし、それから特に現下の情勢では、経営成績のいい企業と経営成績のきわめて悪い企業というのが混在いたしておりますので、経営基盤の非常にしっかりした企業と、膨大な借金をしょっている企業との合併には反対でございますというようなことがありまして、なかなか簡単にいかないというのが実情でございます。
  75. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 企業の合併、集約化は石炭局長の持論でもある、いろいろ話を聞いておりますと、これはどうやら国営化といいますか、それに一歩近づいているのだと私は考えるのですが、先般の参考人のお話の中にも、国有民営論も出ておりました。やはり将来はこういう姿になっていくのが理想だと私も考えるのですけれども局長さんのお考えはどうでしょうか。
  76. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 持論で実践いたしましたところ、必ずしも成功していないというのが実情でございまして、なかなか企業の合併問題というのはむずかしい問題があるわけでございます。ですから、これをやりますには、やっぱりやるだけの準備と体制づくり、これが必要でございます。私はむずかしい問題が多いんじゃないか、簡単にやるわけにはいかないのじゃないかというふうに考えております。  将来の石炭産業の持っていき方の問題でございますが、これはいろいろ御意見がありましょう。国営論を言われます方もあるし、それから先日参考人の方のお一人で、国有民営論を言われたお方もありましたし、いろいろあるわけでございます。私は、いろいろのがありましょうけれども、いざ国営ということを実施いたします場合には、それなりの大問題がこの産業につきましてはあろうと思うのです。したがいまして、そう言うべくして軽々にできるものではないというふうに考えております。この国有民営論というのはやや虫のいい議論のように思うわけでございまして、悪いことは全部国が背負う、もうけは自分がいただく、こういうのは私はこの産業の実情からして、必ずしも妥当かどうか疑問だというふうに思います。したがいまして、私はやはり私企業の長所を利用してやっていただくという体制が、当面特に必要ではないかというふうに考えております。
  77. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 さらに石炭局長の聡明な頭脳で、ほんとうに日本の石炭産業を興隆せしめるべく体制を確立していただきたいと要望しておきます。  次に移りますが、生産体制の合理化、近代化についてでございます。現在スクラップ・アンド・ビルド政策が実施されているわけでございますけれども、スクラップのほうは予想外に進行している。その反面ビルド対策のほうにおいては、相対的に立ちおくれてきたのじゃないか、私もこう考えるのでありますが、もろもろのビルド対策の拡充強化について、特に問題点となるものあるいは留意をしなければならないところがあれば説明していただきたいと思います。
  78. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 お説のように、ビルド面の対策につきましては、私ども今日までずいぶん重点を置きまして、いろいろの諸対策を進めてまいっております。しかし今日の炭鉱の実情からして、特に炭鉱経理が非常に健全な状態にある場合には、国の役割りもそれほど必要ない場合もありますけれども、今日の炭鉱の経営の実情からしますと、なおただいま程度の国の助成策では必ずしも十分でない面もあろうかと思います。私は制度としては相当完備されておるというふうに考えております。しかし、この制度の運用とか、実際国がその制度について助成する幅の問題というような問題につきましては、なお今後とも検討せねばいかぬ点があるんじゃないかというふうに考えております。  今後ビルド対策を実施いたしますときには、やはり第一の問題としましては、近代化資金を活用していくという問題がございます。近代化資金というのは合理化事業団から無利子の設備投資設備融資をいたしておる制度で、これがやはり一つ柱になりますので、ことしから、そのうち坑道掘進も一つ設備投資になりますので、坑道掘進につきましてはこれは特に保安上の見地からいたしましても、どうしても坑道掘進を急がなければならぬ。これは将来の安定出炭をしますためにもどうしても坑道掘進をしなければならぬ。保安と安定出炭の両面から坑道掘進というのは非常に大きな大事な問題でございますので、これにつきましてはことしから坑道掘進補助体制というものが、近代化資金融資ですから、近代化資金融資と並んでこの補助制度と並んでこれが今後の坑内の構造の近代化の柱になっていくんじゃないか。これに炭層探査等あるいは埋蔵炭量の調査とか、こういうような将来の安定出炭のための助成策をやはり強化していく必要があるという、ふうに考えております。  なお中小炭鉱等につきましては機械貸与制度、これは現在わずか予算額にいたしましても数億でございます。これをもう少し大幅に拡大をしていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。  それから最後に、特に大事だと思いますのは、原料炭の新鉱開発、これをやはり国が相当重点をあげてやっていくことが特に将来の鉄鋼産業の成長の度合いともにらみまして必要ではないかというふうに感じております。
  79. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは炭鉱機械化の促進関係でございますが、先ほども岡田委員の質問の中にもありましたように、新鋭機械が炭鉱に取り入れられてくる、そういう技術面に対しての訓練所等、今後も必要になってくるんじゃないかというふうに考えるのですけれども、そういう点では何か具体的な考えがあるのでしょうか。
  80. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 機械化の問題としましては、何といたしましても、やはり当面は機械化したくても機械を買えないという問題がありますので、機械を買いやすいようにするための近代化資金融資をするとか、あるいは政府銀行である開発銀行の融資を増ワクするとかいうようなことを従来やってまいったわけでございます。それから先ほど言いました機械貸与制度というようなものを考えておるわけでございますが、あと訓練に関連いたしましては、やはりこれは訓練所があればなおけっこうでございます。なおけっこうでございますが、特に新鋭機械につきましては、これを炭鉱に入れても直ちにそれが一〇〇%の能率をあげ得るものではございません。やはり半年くらい鉱員が習熟してから、機械になれて能率をあげていくというようなこともありますので、これはやはりそういった研修というようなことが行なわれればより好ましいというふうに思います。  ただしかし、これは先ほど万仲さんもおっしゃっておりましたが、訓練所やなんかという問題ではなくて、炭鉱自身がやはり訓練するということになると思います。といいますのは、山は一般の機械工業や製鉄業と違いまして、自然条件がみな違うわけです。急傾斜の山もありますし、わりあい平たんに掘っていく山もありますし、いろいろございます。炭質も違います。かたいところもあればやわいところもある。いろいろありますから、山によってそれぞれ使う機械が違うわけであります。違うというよりは応用があるわけでございますから、したがってただ平板的な、訓練と言いましてもやはり山によって山の特質に合った訓練ということになりますので、そういう配慮の訓練が必要ではないかというふうに考えております。
  81. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは新鉱開発につきましてお尋ねしますが、審議会の答申の中に「今後の新鉱開発については、石炭需給の動向をも勘案し、炭量、煙質等からみてとくに優秀な鉱区に対象を限定し、これを重点的に促進することとすべきである。」こううたっております。実は私も中小炭鉱の経営者からじきじき聞いたのですが、新鉱開発については非常にきびしい規制がある。そのために自由に開発ができないで、生産面からも保安の上からもマイナス面が多い、もっと自由に開発できるように法規を改正する必要があるのではないか、このようなことを聞いたのですけれども、この点についてはどうお考えなのでしょうか。
  82. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 その答申でいっております大規模開発の問題、これは特に原料炭等におきましては、これは将来の需給の動向からいたしましても日本の国内で足らぬわけでございます。重油と競争いたしております一般炭は需給の今後の動向も違ってまいっておるわけでございまして、御承知のように需給の動向というのは絶えず重油との間で相当の価格差があるわけであります。この一般炭につきましてはどうしても政策需要をやっていかなければならない事情があるわけでございますが、原料炭につきましては、重油との競合関係は全くないわけでありまして、海外から同じ原料炭を入れなければならぬということでございます。しかも海外のソースがなかなか安全供給という意味から言いまして、やはりこれは原料でございますから、何かの都合で入らないというようなことになりますと、日本の製鉄業、ガス業界としては困るわけであります。どうしてもそういう安全保障の見地からいっても長くより多く原料炭の山を維持していかなければならぬというふうに私は考えております。ただその場合に、特に国が助成しようという場合には、原料炭の場合には小山というものはあまりないのです。したがいまして、大体有望炭田の開発というのは小規模でやりますよりも大規模で開発して、能率も月百トンぐらい、今日平均では四十トンぐらいですが、そういうような高能率でしかも相当な規模にしたほうがコスト的にも有利だという点もありますので、特にそういう開発について助成をいたしたい、こういうことを申しております。  おそらく先生に陳情されました方は原料炭の業者ではなくて、一般関係の方ではなかろうかと思います、原料炭の中小というものはあまりございませんから。一般炭につきましては、何も私石炭局長としてまま子にするつもりは毛頭ございません。だから一般炭につきましても長期に安定的に出炭ができるような体制の開発であれば、私は開発銀行の融資等についても応援してもいいのではないかというふうに考えております。しかし、これが五、六年ぐらいしか炭量がないとかいうような場合には、今日の一般炭の需給状況等からいたしまして、非常に余っている実情でもありますので、これははたしてどうかというふうに考えます。ただ非常に長期的に有望な資源である、有望な炭量を持っているというような場合には、私は援助して差しつかえないのではないかというふうに考えております。
  83. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは炭鉱整備業務についてお尋ねいたします。  これも私実は勉強不足でよくわかりませんのでお尋ねするわけですけれども、採掘権者等から徴収するいわゆる納付金と政府の補助金でまかなわれている。この負担割合は、政府補助金が八〇%で納付金が二〇%である、このようにしてまかなわれているということを聞きましたけれども、この割合について、実態に即してどうなのか、適当であるかどうかということをお尋ねいたします。
  84. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 今日石炭鉱業が非常に苦況にあるというような点からいたしますと、業者負担が二割、国が八割補助というこの割合は、業者のほうから見ますと、わずか二割の負担であっても苦しいということは私は事実だと思います。しかし、一方ひるがえって考えてみますと、昭和三十五、六年ごろにはこの割合は、業者負担が六割、国が四割というような時代がありました。もっとさかのぼれば、ほとんど大部分が業者負担。これは要するに同業共助の精神で、とにかくよその山がつぶれた場合には、たとえば需給関係一つ取り上げてみましても、その分だけ他の産業が利益があるというような形がありますので、同業共助の精神でスクラップ・アンド・ビルドをやるというような思想がスタートでございますので、さかのぼればさかのぼるほど業者負担が多かった。しかし炭鉱の実情が非常に苦しくなってまいりましたから、この業者負担を逐次軽減して、今日では八割国が負担するというような制度にいたしております。私は、今後もやはり石炭産業は相当苦しさが続くとは思いますけれども、しかしこの割合は、まあこれがこの制度としては最高限度ではなかろうか、それでもなお苦しいという場合には、私はむしろ他の助成策をもって考えていくべき筋合いじゃないかというふうに考えております。
  85. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 よくわかりましたが、普通納付金が昭和三十九年度まではトン当たり二十円であった。ところが、その後値上げされましてトン当たり三十円に改定されたと聞いておりますが、四十一年七月現在において未収になっている金額で三億九百五十四万円ですか、この未収納付金のうちの八〇%が中小炭鉱であると聞いておるわけですけれども、トン当たり三十円というのは中小炭鉱ではこれは相当無理しているのではなかろうか。それからまた、石炭鉱業年金法が今度成立することになっておりますが、これができればトン当たりまた四十円程度の負担がかかるのじゃないか。こうなってくれば、安定補給金が今度かなり出ているというような話を聞きましたけれども、御破算になるのじゃないかという感じを受けるのですけれども、この点について……。
  86. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 お説のような事情は一応業者のほうから見ますとあろうかと思います。ただ、ことしからトン当たり三十円が四十五円になります。またおしかりを受けるかもしれませんが……。十五円値上げになります。しかし、かりに四十五円になりましても、中小炭鉱を例にとりますと、年間出炭十万トン程度の中小炭鉱の負担は四百五十万円。ところが閉山いたしますときには平均的に見ましてトン当たり二千四百円出すわけでございます。私は閉山を考えて納付金を納められるわけではないと思いますけれども、しかし炭量の少ない中小炭鉱等におきましては、やはり閉山したときの交付金の引き上げ等につきましては従来から非常に熱望しておられた点でございます。  中小炭鉱があの抜本策をとりましたときの要望に三点あったわけです。三点のうちの一つは、この閉山交付金の引き上げというようなことを特に強く要望された経緯もあるわけです。ですからそのあとで受ける利益等を考えますると、私は決してそんなに割り高とは思いません。それだけまた費用もかかるわけだというふうに考えます。ただ、大手炭鉱もそうですか、中小炭鉱において納付金の負担だとか、あるいは年金の負担というような問題がありますから、これは相当安定補給金をもらっても必ずしも楽でないという実情はよく理解しております。
  87. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 最後にもう一つお尋ねしますが、運賃の延納措置は昭和三十六年、昭和四十一年の国鉄運賃の引き上げに伴っての暫定的措置といわれて、当初の目的を達成されたということで廃止にされたということでありますが、これは実質的にいわゆる当初の目的が達成されたのかどうか、私は達成されていないのじゃないか、こういうふうに諸般の環境から勘案して考えるのですけれども、そういう点はどんなものなのですか。
  88. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 運賃の延納問題は、御指摘のように二度延納しておるわけでございます。昭和三十六年度に運賃が一五%上がりましたときに半額延納というのをいたしております。それから四十一年に値上げになりましたときに、値上げは一七・五%ですが、これは全額延納という措置をお願いした。これは要するに炭鉱資金経理面の苦しさがありましたので、この値上がりを急に払うわけにいかないということで延納をお願いし、その間にいろいろ石炭対策を拡充いたしまして助成策を強化する、その助成策を強化した中でこういう資金が払えるようにという配慮で延納いたしたわけでございますが、中小炭鉱の延納というのは額は非常に少ないわけでございまして、事業団が債務保証しておりますが、事業団の債務保証した延納が三十六年度の延納措置のときは二億九千万円、四十一年度には事業団の債務保証は一億九千万円という程度金額でございます。ですから、ことしから一応解除いたしましたけれども、この程度の運賃延納は今度のいろいろな助成策をもってすれば一応やっていける数字ではなかろうか。ただ、やっていけるといいましても、私言いますのは、一般論でございます。個別的にとらえてみますと非常に苦しい企業も中にあることは当然だと思います。
  89. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その運賃の延納廃止に関連いたしましてちょっとお尋ねしますが、ある意味では輸送面での技術開発の総体的立ちおくれが石炭産業のじり貧を招いた一要素ではないだろうか。そういうことからこの石炭輸送の合理化を積極的にはかるために政府としてどのように考えられているか。たとえば輸送技術の開発の代表的なものは、鉄道輸送力の大型化にあるということも聞いておりますけれども、そういう点についてお願いします。
  90. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 輸送の問題につきましては、やはり積み込み施設の問題、まず坑内から引き込み線に積み込んでいく積み込み施設の近代化の問題が第一にあげられる。あとは国鉄輸送の、いまおっしゃったような大型化の問題もありましょうが、同時に今度積みおろして回送いたします場合には、さらにその荷役の問題というような問題があるわけでございますが、私ども特に各積み出し港等につきましては、共同貯炭場とかあるいはその他の積み込み施設の近代化、こういうようなことに政府からも近代化資金融資をする等いたしまして、できるだけその近代化につとめておるわけでございます。
  91. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまアメリカにおいては大型ホッパー車ですか、あるいは水上輸送に対してはスチールバージなどや、またそのほかスラリー輸送等の計画が積極的に進められている。わが国においてはこれらの輸送方式に対してどのような計画があるのかということですが、米国では大型ホッパー一両当たり七十から百トン積むらしいですね。さらに百五十トンから二百トンほどのものを考えているそうですけれども、現在日本内容を調べてみましたら、三十トンだ、連結車両も米国は百から百二十両だ、そして一連行当たりが一万五千トンというのに対して、日本は室蘭本線で石炭専用車が約五十両連結、わずかに千六百何トンですか、アメリカに比べたらけた違いの内容ですね。私はコストの引き下げはアメリカよりもむしろ日本の国が重大な意義を持っておるのだ、こう考えるわけでございまして、こういう点についてどの程度真剣に考えているか、お願いします。
  92. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 御指摘のように、アメリカは非常な大型化をやっておるわけでございますが、これは輸送量も違いますし、それから鉄道の軌道その他の大きさ等も違いますので、一がいに日本の場合に直ちに日本の国鉄路線に対しましてそういう施策ができるかどうかという問題はあろうと思いますけれども、いずれにしましても、御指摘のような点については、私どもも今後とも研究していかなければいかぬ問題だと考えております。同時に専用船、スラリー輸送等につきましても、専用船につきましてはすでに二十九隻、三、四年の間に建造してまいりました。ことし一年休んでおりましたが、これも原料炭の増大とか輸送の円滑化等のために、ぜひこの専用船については第二次専用船計画をつくって実施するようにいたしたい。それからスラリー輸送については、これは私どもも非常に従来関心を持っておりまして、これにつきましても、まず試験的なスラリー輸送の建造をやってみたいというふうに考えております。
  93. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 水上輸送はたいへん成功したということも聞いておりますが、スラリー輸送ですか、これは現在世界的だ、米国やフランスあるいはソ連等でも積極的にこれが行なわれているということを聞きましたが、わが国ではいま北海道の赤平−苫小牧間百四十キロの間を輸送する計画を立てられているということを聞いたのですけれども、具体的にどの程度進められていて、これが本格的に実施される段階というのはいつごろになるのだろうかということです。
  94. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 スラリー輸送の問題は、これはまだ検討段階でございまして、米国では御指摘のように実用化している、逆に鉄道が脅威を受けてスラリー輸送をやめてくれれば運賃を下げるなんという話が巷間伝わってきたくらいに実用化していると聞いております。わが国においてはまだ研究段階、米国のそういったスラリー輸送の実情等も関係者が見学したりして検討いたしております検討段階でございますから、いつごろから実現するかということは、いま直ちには申し上げられませんけれども、そろそろ私ども試験成績が非常にいいという報告を聞いておりますので、何か試験的な実験的な措置を考究してみたいというふうにいま考えておるわけでございます。
  95. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 積極的にやって石炭産業の振興にひとつつとめていただきたいと思います。  以上で終わります。
  96. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次会は明三十日午前十時三十分から委員懇談会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十五分散会