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1967-06-09 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月九日(金曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       小渕 恵三君    加藤 六月君       倉成  正君    佐々木秀世君       齋藤 邦吉君    進藤 一馬君       菅波  茂君    田中 六助君       竹内 黎一君    竹下  登君       渡海元三郎君    中村 寅太君       野田 武夫君    廣瀬 正雄君       井手 以誠君    木原津與志君       中村 重光君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君     ――――――――――――― 六月九日  委員佐々木秀世君、齋藤邦吉君、篠田弘作君、  進藤一馬君、野田武夫君及び井手以誠君辞任に  つき、その補欠として渡海元三郎君、加藤六月  君、竹内黎一君、小渕恵三君、竹下登君及び中  村重光君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小渕恵三君、加藤六月君、竹内黎一君、竹  下登君、渡海元三郎君及び中村重光辞任につ  き、その補欠として進藤一馬君、齋藤邦吉君、  篠田弘作君、野田武夫君、佐々木秀世君及び井  手以誠君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号)      ――――◇―――――
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 再建整備臨時措置法案の第二条の「再建整備計画」についてお尋ねをしたいと思うのですが、特に「再建整備計画」の中で、一から四までの内容が本条では規定をされているわけです。そこで、「石炭生産及び販売並びに財務に関する計画」がございますけれども生産の場合には一応の計画というものが策定され得ると思うわけです。しかし販売の場合には、いわゆる政府負担増対策をしての政策的な需要と、その企業企業努力販売計画を立てなければならない部面が出てくるわけです。しかし、今日の需要状況を見ますと、自力販売をする計画は一応出るとしても、実際問題として今日の石炭の急激な後退を見ますと、計画を認定する場合に非常に問題が出てくるのではないか。この点は昭和四十五年度の場合には、自力販売する販売数量は大体七百万トンと想定をいたしておりますから、その範囲内において自力販売を認める、あるいはまたその企業計画を策定して、どうしても計画上それ以上に努力をして販売しなければならぬという場合には、弾力的にこれを受けとめる考えがあるのか、この点についてまずお伺いしたいわけです。
  4. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま岡田先生からおっしゃいましたように、生産については各社それぞれの実情に応じて比較的計画が立てやすいわけでございますが、販売面は、御指摘のようになかなかむずかしい問題がございます。しかし、私どもがこの販売計画について、再建計画の中であえてうたいましたものは、従来諸計画をつくります際に、まず企業から各社計画を求めます場合に、それを単純に集計いたしますと、特にこの販売計画においては、重複が非常に多いわけでございます。具体的な例をあげますと、電力業界に炭を売ります場合にでも、東電に殺到する、みんなが東電に売る。ところが東電需要はおのずから限界があるわけでございます。こういうような計画が往々にして見られるわけでございまして、そういったことでは非常に計画にそごを来たすもとになるわけでございますので、個別に計画をとるわけでございますが、ミクロの計画と全体の立場からの見方、そういう意味でこの計画調整するというようなことをいたしたいというわけでございます。  それからなお、販売計画については、御指摘がありましたように、特に政策需要については比較的販売計画が立ちやすいわけでございます。と申しますのは、電力につきましても鉄鋼につきましても、やはり明確に年々の引き取り数字が想定されますので、各社の従来の実績、シェア、そういうような点から比較的つくりやすいわけですが、特に一般産業用炭、これは逐年需要が減少していく計画になっておりますし、もう一つは暖房炭、これも不特定多数の需要でございますので、なかなか各社計画について――先ほど言いましたような重複販売的な、よそは売れないが自分のところだけは売れるというような形になっても、計画としては非常におかしいわけでございますので、この調整が問題になるわけでございます。この点につきましては、やはり個別の計画と、全体の各社との調和、こういうような点に特に留意して計画の樹立に当たってもらいたいというふうに考えております。  また、御指摘のありました特に暖房用炭等につきましては、販売努力によって相当程度伸びる可能性もあるわけでございます。一がいに減るだけではございません。企業努力といいますか、販売努力というもので拡大できますので、そういう場合には会社計画、について十分討論をして、当該企業におきまして暖房炭等需要拡大について十分確信がある場合には、それを認めるというような弾力的な措置考えてまいりたいと存じます。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 企業の中には、本法適用を受ける企業適用を受けない企業があるわけです。しかし、本法適用を受けない企業であっても、石炭合理化臨時措置法のいわゆる生産計画あるいはまたこれに基づく販売計画、こういうものに該当してまいりますから、結局この法律適用を受けない企業であっても、実際問題として、第一号の場合は、受けようと受けまいと同じような方法で、結局生産販売計画というものが策定されるものではないか、こう思うのですが、何か違いがありますか。
  6. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のとおりでございます。ただ私ども本法に基づきます再建整備計画をつくるに際しまして、確かにこの再建整備計画は、全企業についての計画ではないわけでございますが、現在私ども再建整備計画、いわゆるこの法律適用を受けない企業についても、全く同様の角度からの長期計画――再建整備計画とは称しませんが、長期計画提出を求めておりますので、その長期計画の中では、本法でいっておりますようなこういった各般にわたる――もちろん不良資産処分とかなんとか、こういうところまでの監査監督はいたしませんけれども、しかし特に生産販売、それから財務見通し、あるいは鉱区調整その他近代化の問題、こういった点についての長期計画提出を求めまして、全く再建計画と同じような検討企業と一緒にいたしておりますので、全体としての調整は、そういう形でやってまいりたいというふうに考えております。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 第二号の「鉱区調整石炭坑近代化その他の生産合理化のための措置」とこうございます。この計画は、大体昭和四十五年までを目途にして、当面は計画を出させる考えなのか、それとも本法適用を受ける企業については、当然返済の見通し立たなければならぬわけですが、十年なら十年にする考えなのか、この点については、いかがですか。
  8. 井上亮

    井上(亮)政府委員 再建整備計画につきましては、一応前半の五年間と後期の五年間と二つに分けて計画をつくっていただくように、ただいま指導をいたしております。前半の五年間につきましては、特に四十五年度まで、これは四年間になりますか、これにつきましては、精緻な現実の計画、これは特にお願いいたしておるのであります。それからあと四十六年以降のものにつきましては、これはいわばこういった諸計画についての長期展望というような形の計画をお願いいたしているわけでございます。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 この二号については、一号、三号、四号とは、また別な性格を持っているのではないか。それは石炭企業性格からいって、鉱区調整についても、単に五年間ぐらいの期間を想定して鉱区調整をはかるというだけでは、問題は解決しないのではないか。また近代化の方向についても相当長期を見通されなければならぬのではないか。御存じのように、エネルギー答申では、昭和六十年度まで五千万トンに、石炭は一応位置づけをされておるわけです。そういたしますと、鉱区調整、特に骨格坑道の展開、あるいは立て坑新規開さくという問題になりますと、最低二十年の長期見通しを立てて、これらは行なうべきではないか。したがって二号の性格からいって、その点は、特に長期計画あるいはそれぞれ企業要望というものを率直に吸い上げていくという姿勢がないと、実際問題としては場当たり的なことになるのではないか。その結果さらにその時点になって、再びやり直さなければならない、こういうことが想定されますので、この点については、そういう前提に立たれておるかどうか伺っておきたいと思います。
  10. 井上亮

    井上(亮)政府委員 この点につきましては、全くそのとおりだと思っております。ただおことばの中にありました二十年の長期計画というようなことになりますと、これは非常に展望的姿になりますので、一応この計画におきましては、先ほども申しましたように、前半と後半に分けまして、十年程度見通しを求めたいというふうに考えております。特にこの鉱区調整につきましてはこれは四、五年の問題ではありません。御指摘のように十年計画あるいは二十年計画性格だと思っておりますので、そのような計画を出していただくというふうに考えております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 かつて調査団増強群維持群、それから閉鎖をするスクラップ群と、こういう形で一応分類をしたことがあるわけですが、私はこれからの前向きの姿勢の中においても、石炭というのは賦存量が一定限度あるわけですから、そういう長期的な展望に立てば、ほんとうに長期的に可採炭量もある、また自分鉱区じゃないけれども、相当長期的にその地域確保は可能である、こういうところもあるでしょうし、あるいはまた二十年以内ぐらいで枯渇をする、採掘終了せざるを得ない、こういうところもあるでしょうし、あるいはまた短期に見て五年ないし十年、その時期になれば鉱区調整しても一応採掘終了するという炭鉱もあるだろうと思うのです。そういう意味においては、新たな分類といいますか、そういうものがぴしっと立てられていないと、全般的にただ一般論でものごとを考えることであっては、石炭政策というものは後手になるのではないか。そういう点でいわゆる前向きの分類といいますか、そしてそこに鉱区調整が必要なものは積極的に当初から鉱区調整をはかる、こういう考え方が打ち立てられなければならないのではないか。またそういう中で結局将来の日本の実際の出炭の実力といいますか、それはどの程度になっていくのであるか。この点はいまから十分見直して対策を立てておく必要があるのではないか。いま原料炭に偏重しつつございますけれども、私は今日の日本の炭田の状況から考えて、一般炭においてもその場合炭層の賦存状態が一応安定しておれば、新たに地域を開さくしなければならぬ、こういう状態が必ず来るのではないか、実はこういう判断をいたしているわけです。  したがって、いま炭鉱の数は非常に少くなってまいりましたから、この計画を審査する側においても、個別の条件については相当従来とは違って詳しく精査でき得る情勢にもございますから、そういう意味で従来の調査団ではなくして、そういう前向きの政策というものを打ち立てていくという場合に、保安監督員ではございませんけれども石炭の実務的な調査、こういうものがこの再建整備法成立にあたって付随的に考えられなければならぬのではないか。一体これをやる場合には審議会の中で何か指導を受けてやるのか、通産行政の中でそういう場合にはいろいろやっていくのか、どういうお考えかお聞きしたいと思います。
  12. 井上亮

    井上(亮)政府委員 前半におっしゃいました岡田先生の今後の石炭産業再建の方策と申しますか、資源の活用の方式につきましては、これは私全く同意見でございまして、そのような、先生おっしゃいましたようなお考え方の線で今後育成をはかってまいりたいというふうに考えております。  それからさらにこの計画をつくりますに際しまして、実務的なといいますか、実際的な調査検討、これをどのようにやるかという御質問でございますが、この点につきましては、岡田先生も御承知のように、石炭鉱業実態面につきまして、特にこの計画作成に関連しましての各山の特質等調査につきましては、これはだいぶ前からやっておりまして、特にこの石炭鉱業審議会技術部会等はほとんど毎年のように主要な山々――これは毎年重複しないようにやっておりますが、現地に行っていただきまして、あらゆる角度からの調査をしていただいております。  それから鉱区調整の問題につきましても、同じく審議会の中に鉱区調整部会がありまして、これも数年前から非常に活発に議論をしまして、ほとんど全国各地について、どういう地区についてどういう鉱区調整の必要があるかというような考え方も述べられておるわけでございまして、いまやどちらかというとその実施の段階にきているというふうに考えております。もちろん今後も、この再建計画をつくるに際しましては、さらに将来に向かっての綿密なそういった技術調査等をやる必要があると思いますが、それと同時にいままでの調査に基づいて実行すべき段階にきているという面もありますので、この再建計画作成に際しましてはそういった角度でさらに検討し、実施すべきものは実施するというような体制をつくってまいりたいというふうに考えます。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際政府鉱務監督員制度、いわゆる実際の炭鉱鉱務全般について監督をする、これは保安監督員制度と似通っているわけですが、保安監督員といえどもこれは技術員が配置をされているわけです。したがって、この抜本策を打ち立ててこれから鉱業安定をはかる場合には、そういう制度をも検討しなければならぬのではないか。もちろんいまそれぞれスタッフはおりますけれども、そういうものを担当するのは一般行政の中でも特に専門的に担当させる、こういう措置というものが私は必要ではないかと思うのですが、この点については検討されたことがあるかどうか伺いたいわけです。
  14. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、今日の石炭鉱業実態、あるいは国と石炭鉱業との関係、こういうような点からいたしますと、御説のような御意見も出ようかと思います。ただ私ども実際に政府立場指導なり監督なり助成なりをしている立場からその問題を考えてみますと、今日の石炭局の各課あるいは地方通産局にあります石炭部、あるいは九州には鉱害部というのがありますが、特にこの石炭部は、先生がおっしゃいましたように特に鉱務監督官という名前を付さなくても、この再建整備法ができましたり、あるいは引き続いてお願いしております合理化法の改正というようなことで、今度の抜本策を実施する体制が整いますと、まさに先生のおっしゃいましたような体制にしなきゃいかぬ。特にこれは地方だけではありません。中央もそういう性格を持ちますし、地方石炭部はもちろんそういう性格を持つわけでございます。したがいましてその意味では、名前はつけるつけないにかかわらず、お説のとおりの体制になっていくと思いますが、ただ、私、考えますには、あんまり役人が現場に出まして、現場勤務のような形をしてやるということははたしていいかどうか。かえって企業の労使の自主性、自主的な盛り上がりということの関係もありますので、その辺になりますと、私なお慎重に検討しなきゃいかぬのではないかというふうに考えております。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 三の「不要資産処分、経費の節約その他の経営合理化のための措置」、前段の部面については問題ございませんけれども、この経営合理化という内容は非常に幅広いわけです。この場合、この再建整備法適用を受けた企業が新たに社外投資することが可能なのかどうか。たとえばいままで石炭運搬工程に所属する部分、ズリ捨てとかいろいろあるわけなんですが、あるいはまた機械の補修、そういう面については、これは工程に枝葉になって組み合わさっておるわけです。それを合理化で単独の企業にして、ある程度外注を受けて、ある程度はその炭鉱の仕事をするということは考えられますけれども、その炭鉱企業と縁もゆかりもない企業に対する投資は、一体再建整備法適用を受けた企業は可能なのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  16. 井上亮

    井上(亮)政府委員 社外投融資の問題につきましては、昨日もだいぶ御意見があったわけでございますが、私どもこの法律施行に際しまして社外投資についても監査監督をいたしたいというふうに考えておりまして、特に第十六条以降の経理監督を相当強化いたしておるわけでございますが、社外投融資につきましては、この法律にもありますように、また昨日も御質問がありましたように、抽象的に言えば、石炭鉱業存立企業存立に必要な面は認めなければいかぬ。抽象的に言えばそういうことになりますが、ただしかし、あまりそのことによって石炭鉱業自体、これが本旨でございますから、石炭を採掘する企業体制、これにまたひびが入るような社外投融資は困るという立場をとりたい。あくまでも石炭資源を守っていく企業としてふさわしい社外投融資ということにできるだけ限定してもらいたい。特に国が石炭鉱業維持のために、これは石炭資源を守るための助成措置でございますから、そういった意味から特に石炭鉱業に対してこれだけ手厚い助成措置を講じます場合に、いたずらに石炭鉱業に必ずしも寄与しない企業投資されることは好ましくないというような面から、経理監督等を厳重にいたしたいというふうに考えております。  私、今日認めていいじゃないかと思っておりますのは、たとえば先生も御承知のように、やはり今後とも経営合理化等の過程で職員整理の問題だとか、いろんな問題が出てまいります。従来もありました。その場合に、やはり関連子会社を一持って、離職者対策を兼ねてそういう企業をつくらざるを得ないということ、あるいは産炭地振興のために特に地元の要望等ありましてつくりますような場合とか、あるいは需要確保の見地から、たとえば共同火力に対しまして投資する、あるいは自家発、それによってコンビナート方式をやるとかいうような場合の投資につきましては、これはむしろ当然認めていい筋合いというふうに考えております。ケースバイケースで、石炭鉱業を今後とも健全に育てるという角度から検討してまいりたいというふうに考えております。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 その場合従来は何か一定の基準といいますか、内部的な準備といいますか、そういうものがあって、いま言われた考え方がそういうことにまとまっていて、それは照らし合わしてこれに対して応諾をしているのか、認められているのか。あくまでも単なるケースバイケースでいかれておるのか、聞いておきたいと思います。
  18. 井上亮

    井上(亮)政府委員 基本的にはケースバイケースということになろうと思いますが、しかしそれは非常に石炭鉱業存立のためにプラスになるということであれば、それは当然認めざるを得ない。そういう意味ではケースバイケースになりますが、しかし、だからといって、私どもがこれだけの助成をしておりますのは、石炭を掘る企業を守るという立場ですから、あくまでもその趣旨に反するような形になるような場合には監督せざるを得ないというふうに考えております。  ただ若干危険性が伴いましても、離職者対策のためとかあるいは地域社会の特別の要望とか、あるいは需要確保のためとかいうような場合には、若干の犠牲がありましてもこれはやはり政策的に許容せざるを得ないと考えております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 さきに石炭鉱業経理規制臨時措置法が制定されておりますし、さらに再建整備法がその上に制定されるわけですから、そういう意味ではなかなかこれは企業間においてやはり問題が出る場合があると思います。ですから、もちろんいま言われた雇用吸収のために、あるいはまた地域経済振興のために寄与する場合という点で非常に範囲も広くなっていくわけですが、ある程度のめどといいますか基準といいますか、そういうものはやはりつくっておく必要があるのじゃないか。人がかわるごとに考え方が違うというのであっては、ここまできた場合にはどうも企業間にいろいろ問題が出たり、あるいはまたその認可をめぐっていろいろ問題が出るではないか、こういう気がするわけです。そういう点で、ある程度基準を示す意向があるかどうか、聞いておきたい。
  20. 井上亮

    井上(亮)政府委員 後半の規制の問題につきましては、これは届け出制になっておりますけれども、ただいま私答弁しましたような考え方で、届け出制にして勧告をするというような体制、それで勧告を聞かない場合にはこの助成を打ち切るというような激しい規制になっております。届け出制というのは一見やわらかいようですが、罰則までいくとだんだんきつくなる体制にしております。これらの運営にあたりましては、先ほど私が答弁しましたような趣旨で、もう少しそれをふえんした形で何らかのそういった尺度は当然考えてまいりたいというふうに考えております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 届け出であっても事実上は認可だと思うのですよ、これはパスしなければならないわけですから。そうであれば、やはり届け出ではなくしてむしろ明確に認可制ということにすべきではないかという考えを実は私は持つわけです。そのほうがかえって非常に公明正大に準備をし、そして雇用吸収なり地域経済の発展に寄与する、あるいはまた経営合理化に資する、こういう点が明確になるのではないかという感じがするわけですが、ここまでくれば、いま工場の場合でも届け出制がとられておりますし、普通一般の民間が工場を建てるという場合に届け出をしなければならぬわけです。しかしイギリスやフランスでは工場をつくる場合でも公害やその他の関係があって、これは認可制になっておるわけです。そうしますと、石炭企業の場合、社外投融資の場合は認可制であるということにむしろ明確にすべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  22. 井上亮

    井上(亮)政府委員 一応そういう御意見もあろる。ところが、今日はその企業炭鉱企業からもうかと思います。ただ、この法律におきましては、そこをはっきり観念を分離して考えておるわけでございまして、たとえば第十二条、ここは利益金処分について規制を加えようという考え方になっておりますが、この再建会社利益金処分に関しましては通産大臣認可を必要とするという形をとっておりますが、一三条で、この社外投融資あるいは重要な財産処分というようなものについて届け出制度ということにいたしております。これはやはり経理規制と申しましてもすべて同列のきびしさではなくて、やはり石炭鉱業自体利益金処分というものは非常に強い規定でございますが、しかしこれはその会社そのものがやはりこれだけの助成を受けているというような立場から、当然国民的な立場で要請されなければならぬというような意味で、利益金処分について非常に強い許可制度をとったわけでございます。ついて、利益金処分について強烈な規制を加えるというような立場をとります場合には、あと資産処分だとかいうようなものについて、これを禁止的な立場で取り扱うのはどうかというような考え方から届け出制を一応とり、しかし、届け出制だけではきわめて罰則的に弱い規制力になりますので、さらにこれにつきましては、勧告制度という一応ワンクッションを置きまして、それをきかない場合にはこの助成策の打ち切りというような厳しい規定段階を踏んでやっていくというようなニュアンスを持たして、この条文を構成いたしておるわけでございます。ほとんど実質的にはもう認可に近い形でございますが、やはり事柄の性質上、ケースバイケースでいく必要があるというような角度、それから特に悪いことだということも断定できないというような意味で、段階を踏んだ規制方式をとった次第であります。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 第六条には「利益を計上した場合の納付金」について厳格に定められておるわけですが、実際問題として、これからの再建整備会社が大きな利益を計上できるということには、なかなかならぬのではないか。むしろいま考えている以上の新しいファクターというものも出てくるのではないか。だから利益金処分というものは、実際問題として非常に厳格に定められておりますけれども、私に言わしめれば、実態としてはあまりたいした問題にすべき事項でもないんではないかという気がするわけです。問題は利益金の出し方なわけですから、会社経理の方法なんですが、その場合に、たとえば減価償却費あるいはまた退職積み立て金、法定準備金引き当て金、これらは法定を基準にしておるのか、それとも、それは一般的な社会通念の場合も想定されておるのか、そういう一応のめどというものがいままで経理規定もあるわけですが、その点はいかがですか。
  24. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、この第六条の「利益を計上した場合の納付金」の規定は、石炭鉱業の今後の見通しからしますと、そういう利益がこのような企業がそんなにたくさんあるのかというような御疑問でございますが、確かに今日の段階ではそういう見通しもありますが、私は、これに該当するような企業も――再建整備の予備審査をしています段階で、相当程度こういう可能性のある企業も出てまいるわけでございますので、またこれも一応国民的立場から、国の助成との関係における公平の概念から国への納付の規定を書いたわけでございます。ただこの基準、計算方法につきましては、いわゆる従来通常の損益、公表損益というような形の計算をいたしませんで――もちろん公表損益が土台になります。あくまでも土台になりますが、それをやはり適正な減価償却を行なうということ、それから退職金の積み立て等についても十分に行なうというような修正要素を加えました計算を行なって、そういう形をとってもなお利益を計上するような場合に、納付金を国庫に納めさせるという措置、配慮をいたしたい。こういうふうに考えております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここでひとつ、問題の観点を変えて、需要の問題について質問しておきたいのですが、いま御存じのように、電炭会社があって、電力用の代金はここで決済されておるわけです。ただこの場合には、炭鉱会社が直接電力会社に納めるものと、それから商社が納めるものとがあるわけです。私は今日の石炭産業の安定を考えれば、政府政策需要のための資金を出しているわけで、しかも炭鉱は、それぞれ再建整備計画もしくは石炭合理化法に基づく計画を出し、生産計画を立て、販売計画を立てているわけですから、したがって、それぞれ電力会社に対して納付するについては、割り当てが当然行なわれてくると思うわけです。そういたしますと、炭鉱会社から直接電力会社にまず第一点として納める。いわゆる電炭会社に納めていくという形が明確にとられる必要があるのじゃないか。いわゆる商社を経由する必要は今日もはやないと思うわけです。そういうややこしい需要関係にはないわけですから、これを英断を持って第一点としては改めるべきではないか。  それから第二の問題は、電力会社の場合には長期引き取り協定があるわけです。長期引き取り協定の場合には、当然電力会社は時間のずれはあっても引き取るわけですから、この面の改善をはかると同時に、今日の貯炭等の現状を考えてみますと、むしろ大体四半期ごとかあるいは半期ごとか定めて、電力会社にその調整的な機能を付与する、こういうことがむしろ必要ではないか、そこまで踏み切るべきではないか、こう思うわけですが、この二点について承っておきたいと思います。
  26. 井上亮

    井上(亮)政府委員 まず第一点の商社を使う問題でございますが、確かに御指摘のように、電力用炭あるいは鉄鋼用の原料炭につきましては、これは政策需要でございますし、特に大手の企業につきまして商社を使う必要性というのはほとんどないんではないかというふうに、私個人も考えております。しかし中小炭鉱等あるいは大手につきましても弱い企業になりますと、やはり、何といいますか、営業職員の節約、これは一種の企業合理化にも通じますが、販売に対するいろいろな諸経費、これをみずからの危険負担でやらないで、商社にやっていただくとか、あるいは商社から貯炭金融の便を仰ぐというような面も、中小炭鉱についてはあろうと思いますので、全企業について岡田先生のおっしゃるとおりにすることは困難かと思いますけれども、少なくとも相当大きな大手炭鉱につきましては、基本的には岡田先生おっしゃるとおりだと思います。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 この問題は、本委員会でも歴史的に長い議論を実はしているわけです。したがって、電炭会社が生まれる場合についても、本委員会で附帯決議も出ておりますし、また委員会の決議もあるわけです。特に流通合理化の促進のためにはこの電力用炭販売株式会社を拡充強化すべきだ、そうして需給調整並びに貯炭業務を加える、そういう中で今後の石炭産業の安定をはかるべきではないか、しかもそれは流通合理化の一助にもなる、こういう点が決議され、附帯決議もされ、そのたびに議論されておるのですが、一向にこの面の政策は前進していない。にもかかわらず、現在は貯炭が激増している。しかも電力会社自分のほうの都合でもって、引き取り時期を一方的にきめる。どうしても力関係が弱くなっておりますから、そういうことになっているわけです。私はこれでは結局流通を複雑化し、しかも将来は三千万トンの石炭電力一般炭に向けられる残りは七百万トンだということになれば、当然この面について改善が加えられなければならぬのではないか。これをやらないで放置しておくことは、結局頭だけ押えておるけれども、胃腸のほうの消化がなかなか十二分にいかないという奇型的な、内臓的疾患を持ったまま石炭産業の安定をはかるというにひとしいのではないか、こう考えざるを得ないわけであります。もちろん石炭企業を見ましても、ある一定の時期には年間百五十万トンも生産していた。そうして百五十万トンのうち百万トンは電力会社に納めていた。それは納炭の権利である。ところが、今日はその企業炭鉱企業からも撤退をしてほとんど見るべきものを持っていないにかかわらず、電力会社には従来一定のワクの炭を納めている。それは流通経費の面からいっても問題がございますし、むしろストレートにしたほうが手取りもよくなるし流通関係も安定してくるわけです。この面を解決しないで石炭企業の安定をはかるということはちょっとさか立ちしているんではないか、こう私は考えざるを得ないわけですね。ですからこの電炭会社調整機能というものは当然持たせるべきではないか。しかも計画で、年率で定められて長期引き取り協定があるわけです。これに対して一年間の一定の時期のずれがあるわけですから、むしろ企業に融資をするよりも、それに対して引き取った形式にして融資をしたほうが、これは安全かつ事務的にも非常に煩瑣な方法をとらなくてもいいんではないか。またできれば電力会社の貯炭場のスペースがある場合には、そこを一応借りても引き取っておく。そうするとトン当たり三百円程度の貯炭経費というものが浮いてくる、こういう点をきめこまかくやらないで石炭を安定させていくと言っても、どうも一本抜けておるような気がするわけです。この点はやる意思があるのかないのかこの際はっきり承っておきたいと思います。
  28. 井上亮

    井上(亮)政府委員 電力用炭販売会社に貯炭機能を持たせるとかあるいは需給調整機能を付与するとかいうような考え方につきましては、私個人といたしましても第一次調査団当時からそういう問題を検討の材料として提起しまして、議論に議論を重ねて今日に至っておるわけでございます。その過程で電力用炭精算会社というものをまず最初につくり、精算会社というようなことでは十分に価格維持等の目的も達成できないということで、電力用炭販売会社というものに改組いたしまして今日に至っておるわけでございますが、御指摘のように、これは率直にいいまして私の力足らずから今日のそういう岡田先生おっしゃるような貯炭機能を持たせるというようなところまでは至っておりません。ただ電力用炭販売会社が、石炭鉱業の今日の大きな過剰貯炭に対する融資の機能、貯炭融資についての機能はある程度果たしておるわけでございますが、融資でなしにさらに需給調整的な貯炭機能というところまで至っていないことは遺憾でございますけれども、これにつきましてはいろいろな考え方がありまして、今日まだ力足らずで実現していないと率直に申し上げたいと思います。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 現状を見ます場合に、ある一定の炭鉱ではものすごい貯炭があり、ある炭鉱では貯炭が少ないというアンバランスもあるわけです。しかし需給計画というものは定められてくるわけで、その一年間の納炭の量というものはほぼ確定してくるわけですから、その内数の引き取り、こういうことについては十分可能だと思うわけであります。本件は合理化臨時措置法にも関連がありますから、合理化臨時措置法の場合に十分議論をしたいと思いますので、この点石炭局も詰めて、その場合に考え方を述べていただきたいと思います。  もう一つお聞きしておきたいのは直売の点ですが、たとえば雪印とか、あるいは砂糖会社の場合には直売が多うございますけれども、それ以外の中小企業工場は間接販売の形式が相当あるわけです。しかしこれはいずれも五年以上長期契約を結ぶこととは私は可能だと思う。ですから五年なら五年の長期引き取り協定といいますか、販売契約といいますか、そういうものを結んだ場合には、これはすべて直売でやるべきではないか、こう私は思うのです。そのことによって単価についても考慮できる面もあるでしょうし、しかも販売会社の場合には総合燃料会社ですから、石炭だけを売っている会社ではないわけです。また炭鉱が相当赤字でも販売会社の場合には油とかプロパン、そういうものを扱っておりますから、相当利益をあげておる、そういう実績ははっきり出ておるわけです。もちろんこれをすぐ取り上げてしまうということになりますと問題があろうかと思いますが、一定期間をおいて三年ないし五年長期引き取りの協定を結ぶ場合については、直売で価格についてもある程度下げる、こういう政策が伴ってこなければならぬのではないか。そうすることによって買うほうも安定するでしょうし、またいずれの工場においても電力用炭の炭代等の趨勢から考えて、炭価引き下げの交渉がずいぶん出ているわけです。直売の場合は別にして間接の販売の場合についてはそういう改善をする余地が十分あると思うのです。ですから一年ないし二年の一定期間をおいてこの三年ないし五年以上の長期契約を結べる場合については直売で処理をすべきだ、こういう点が政策として確立されなければならぬのではないか、こう思うのですが、この点はいかがですか。
  30. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、直売の問題でございますが、先ほども答弁いたしましたように、私は中小炭鉱等につきましてはやはり商社を活用しなければならぬというような経済的な必要性が相当あろうと思いますけれども、相当大きな大手企業につきましてはいわゆる政策需要と申しますか電力、鉄鋼等につきましてはもちろんでございますが、それ以外のものにつきましても相当まとまった単位で長期のそういった販売契約が確立されているというような場合には、それは私もできる限り直売であるのが本筋だと思います。  私もよく業界と流通面の合理化対策等について懇談いたしますときに、いまの岡田さんと同じような考え方で業界を指導しておるわけでございますが、何と申しますか、率直に言いまして日本企業というのは石炭産業に限らずわりあいに商社を使う例が因襲的に多い欠陥があると思います。私、かつてアメリカに行きましたときに、アメリカの大きな鉄鋼メーカーの販売経路を調べてみましたらほとんど大部分が直売というような形態をとって、商社を使っておらない。日本では商社を非常に使っておる。これはどうも石炭に限らず各産業共通の宿弊があるのではないかというふうに思っておりますが、石炭についてはそういうのんきなことは許されませんので、少しでも合理化に役立つ、コストダウンに役立つというようなことであれば、勇敢に今後も指導してまいりたいというふうに考えております。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 局長、これは古い因襲じゃないですよ。古い困襲といえば古い因襲かもしれないけれども、操作があるわけですよ。たとえば炭鉱会社がいま貯炭をかかえて貯炭融資を受けるといってもなかなか融資は受けられないわけですよ。ところが販売会社ならば別会社ですから、総合燃料でもあり銀行に信用があれば販売会社が引き受けた貯炭に対してはこれは融資が行なわれるわけですよ。ここが問題なんです。たとえば一年間何千トンと販売会社が引き受ける。それに対しては融資が伴うわけですよ、会社が別なんですから。炭鉱のほうでは全部貯炭をかかえてこの融資を仰ぐといっても、現在の場合非常に無理なわけです。ですからどうしても販売会社に対してはある一定のそういう有効な売り先も認めていかなければ、貯炭もまたかかえてもらえないわけですね。こういう関係にあるところに一番問題点があるわけですね。またこれがそういう負担をかけなくともいいというような点が改善されれば、三年ないし五年以上の長期に、工場に売る石炭は百トンであろうと二百トンであろうと直売で売ることが可能なはずです。ここなんですね、問題は。これが改喜されないと、言うことは簡単でも実際に実行する面になるとなかなかできないということになるわけです。販売会社が一年間持つ貯炭の量というものはどの程度あるかということは調べればすぐわかるわけですね。ですから、ここの改善がないとなかなか問題があるわけです。これが改善をされていけば、炭価についてもある程度サービスもできる。一般需要についても確保できる。やはり直売すれば安いわけです。間接経費が伴わないわけですからね。間接販売の場合には、値段は平均では下がっていないわけです。人件費も上がる。あるいはまた貯炭をすれば貯炭の金利もかさんでいく。ですから、実勢価格を見れば、千二百円の炭価引き下げの中でも、販売価格の売り値というものはそう下がっていないわけです。特に小口になればなるほどそれが顕著であることは明らかなわけです。ですから、ここを解決しなければならぬわけです。この点も、いずれ検討する合理化法のときにもう少し詰めて検討したいと思いますので、十分ひとつこの点の検討をしていただきたい、こう思うわけです。  次に、いま北海道で問題になりますのは暖房用炭です。業者の場合は、サービスセンターもつくったようでありますけれども、ものすごい立ちおくれで、石油の攻勢が販売宣伝に相当経費をかけて進めておりますから、漸次石油に押されてきた。もちろんそれ以外の要因もございます。しかし、実際問題としては、北海道の暖房用炭は値下がりをしていないわけです。千二百円の引き下げをして、さらに三百万円の引き上げをしましたけれども、実勢価格としては引き下がっていないわけです。ここに一つの問題があると思うのです。ですから、北海道のような場合には冬は暖房用炭をたかなければならぬわけです。しかも、国家公務員にも石炭手当を出しておるわけです。何も石油手当を出しておるわけではない。燃料手当ではない、石炭手当ということで出しておるのです。そう考えていきますと、この面の改善の方法はあるのではないか。しかし、これは業者からも積極的な案を出させる必要があるでしょうし、また各官庁、民間の場合においても石炭手当は出しておるわけですから、そういう面で総括的に暖房用炭の確保をはかっていく方法は、もう少しダイナミックにものごとを考えていけば必ずその方法はある。そのための対応策をとればいいのではないかと思うわけです。一応北海道自体としてもそういう問題がいろいろあったわけですけれども、なかなかそれが前進をしない。しかし、世帯数が漸次細分化されていますから、北海道の人口はそうふえないけれども、世帯数はものすごくふえておるわけです。それは燃料消費が漸次拡大されていくことを意味しておるわけです。従来まではあまり努力しなくても五%程度くらいの需要増があった。社会増があって、ある地域は、大体年率一〇%の需要増が見られたのが、今日では横ばいの現象になっておる。これは従来のシステムに安住している結果にほかならないのではないかと思うわけです。この点の改善についても十分考えるべきではないか、検討してみるべきではないか。ですから、私がいま申し上げました一連のこの流通関係の改善を実施していけば、相当合理化されていく、そうして消費者と生産者との利益がその面で確保される。これをやらなくては石炭政策は終わらないわけです。  きょうは時間もありませんから、合理化法のときにこれに関連する資料を出してもらって議論したいと思いますので、検討方を要望して終わりたいと思います。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 午後は零時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時六分開議
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  石炭鉱業再建整備臨時措置法案に対する質疑を続行いたします。岡田利春君。
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 午前中若干需要の問題について触れたわけですが、特にこの際通産大臣に見解を承りたいわけです。昭和四十五年度の一般炭需要は、御存じのように電発、九電力で三千万トン、したがってあと七百万トン程度、それぞれ企業努力でこの販売を行なう、こういう想定に立っているわけです。そういたしますと、電力用炭の場合には、その大宗が各電力会社にそれぞれの一般炭が割り当てられるわけですから、したがって現在の電炭会社の場合には、私どもとしてはそれに調整機能を持たしてはどうなんだろうか。たとえば中小炭鉱でもいま八十よりないわけです。したがって中小炭鉱が従来のようにその石炭を商社に売って、商社から電力会社に納める必要はもはやないと思われます。どこどこの炭鉱の出炭規模はきまってくるわけです。そうして昭和四十五年には三千万トン電力関係に振り向ける、こうなってまいるわけですから、間接的な流通関係のむだなことをやめて、直接山から電炭会社を通して電力会社に納める。そうしてすでに電炭会社は貯炭融資等の機能を若干持っているわけですから、大体長期取り引の契約のうち、上期、下期もしくは四半期ごとに、その八割程度は電炭会社が受けておいて、そして各電力会社に供給をする、こういう体制をとることによって、非常に一般炭需要の面は安定してくるのではないか、こう私ども考えるわけです。  なぜこう申し上げるかといいますと、いまの出炭規模の中に、私の判断によればこれは雑炭が含まっておると見るわけです。そしてそれが普通本来であれば雑炭であるが、商社の手に渡り、商社はある炭とこれをミックスしていって、五千なら五千カロリーの炭をつくり上げるわけです。そういたしますと納炭の場合は、精炭として納炭されるわけです。実際これは行なわれておるわけです。しかしいま申し上げましたように、三千七、八百万トン程度のうち、三千万トンは電力にたくんだ、政策需要であるということになれば、せめてこの間だけでも流通を合理化するという線が出てまいりませんと、肝心かなめのところには政策が何ら及ばない。しかも本委員会ではしばしば問題になり、またこれについては本委員会の決議もありますし、また歴代の大臣からも、この面については積極的に進めるという力強い答弁があることは、議事録で明らかになっておるわけです。これはほんとうにやる気を起こさなければいつまでたってもできませんし、若干のそういう商社の問題もございますから、時間を要する面はわれわれも理解できるわけですが、問題は、やるという設定をして、やることに着手するかどうか、ここに私はかかっておると思いますので、この点大臣の見解を承っておきます。
  35. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 岡田委員のお尋ねは、流通機構の一元化と申しますか、簡素化と申しますか、そういうお尋ねかと思いますが、この石炭の流通機構については、伝統的にいろいろ複雑な系統が今日までに発展してきた、こう思うのでありまして、この流通機構を一元化したほうが、あるいは簡素化したほうが、もちろん石炭を消費する人の側にとってもいいし、また炭鉱経営者にとってもいい点があると思います。しかしまたこの流通機構の中に関係しておる人々も相当少なからずあるのであって、それによって生活しておる人もありますから、したがってこれが整備ということは、言うべくしてなかなか困難なことじゃないかと思うのでありまして、理想としてはこれを簡素化し一元化するということが理想でありますけれども、これを解決するについては、やはりそう短年月解決するということは困難ではないか、私はこう考えておるのであります。しかし御承知のとおり、これは一般炭の消費という立場あるいは生産という立場からこれを簡素化するということは絶対必要条件であるということは私たちも認めておりますから、今後はこういう問題についてもむしろ積極的に臨むべきじゃないか、こう考えております。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 私がいま質問しておりますのは、まず電力用炭に限って話をしているわけです。ですから、四十五年には一般炭は、三千万トンが電力用炭に納まる、そしてあとの七百万トン程度はそれぞれの企業努力をして販売をするということなんですから、しかも大手の場合には、電力会社に直売ですよ。ただ中小炭鉱とかいろんな面があって一あるいはまた従来は大手が炭鉱経営しておった。百五十万トンの生産もあった。ところがスクラップ・アンド・ビルドの政策炭鉱はほとんどない。しかし権利というものはあるわけですね。これはそうむずかしい問題ではないわけです。伝統というのは変わっていくわけです。従来と違うわけなんです。ですから三千万トンの電力用炭に限って、これは完全に流通は合理化はできますし、簡単です。問題は、やる気があればできると思うのです。ただ、いま大臣が言われておる中で、一般の企業努力で売る場合にはいろいろあります。またこれからもさらに新たに需要開拓で努力をしなければならぬ面もあるでしょうし、あるいは北海道のような暖房用炭の場合には、夏場かかえて需要期に売る。このために貯炭としてささえなければならない、こういう問題もあるわけです。しかし私は、電力用炭に限っては、これは当然改革をすべきだと思いますし、そのことによって混乱は起きないと思うのです。どうして混乱が起きるのかわからないわけです。実際は、行なわれておるのは、中小炭鉱の炭が、その権利を経過して、トン当たり百円くらいの、まあ権利料ですか、こういうものを払ってやはりまっすぐ電力会社石炭を納められておるわけですよ。政府がこれだけの政策を出して石炭企業というものを近代化し、安定化しようとするならば、しかも三千万トンの政策を、需要をつけて安定させようとするのでありますから、その中身もやはり当然改めるべきものは改めてしかるべきではないか。その場合には混乱は起きないと思いますが、いかがですか。
  37. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまのお話の電力会社が購入するということは、購入先が確定しておるということでありますから、したがって流通機構の簡素化というものは、あるいはほかの一般炭販売よりもよりやすく望めることだと私も考えます。しかし石炭の流通機構のことについては、私は全く無知でありますので、どういう状態でやっておるのか知りませんが、とにかくいまのお話のとおり、電力会社で使う石炭については、それはもう少し前向きに考えていくべきではないか、こう私も考えております。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 特にこの点については九州、北海道の出炭量というものが変わってまいりますから、これは原料炭においてもしかりです、一般炭においてもそうでありますから、そういうバランスを、ぜひひとつそういう面について御検討願いたいと思います。  総理が参られましたので、さっそく総理に質問をいたしたいと思いますが、総理は石炭に非常に関心を持たれておると私は思うわけです。特に最近中近東動乱が発生しまして、わが国のエネルギー問題についてもさらに検討を深めるという必要感を私どもも感じておるわけです。また御存じのようにエネルギー答申もすでに出されておるわけですから、これは単に石炭という問題ではなくして、エネルギー答申が出され、エネルギー全般についていろいろ施策を具体的に積極的に展開しなければならぬのではないか、このように私は考えるわけです。そういう意味で、今日の内閣の中にいわゆるエネルギー関係の閣僚会議等を設定して、すみやかなものはすみやかな対策を立てていく、長期的なものについてもエネルギー答申にかんがみてこの具体化の方向を示していく、こういう積極的な姿勢が、高成長を遂げつつあるわが国の経済、産業体制の中ではどうしても必要ではないか、かように考えるわけですが、総理の見解を承りたいと存じます。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま御提言が一つあったようですが、同時に私どもの基本的な考え方についてどう考えるかという御懸念からかとも思います。私も岡田君が苦労をされたように、石炭対策にずいぶん長い間苦労してまいりました、大蔵大臣、通産大臣、さらにまた今度は総理として、過去の答申があるたびに私が関係しているようなことでもございます。したがって石炭産業のあり方、また現在当面しておるきびしい情勢下に置かれておることもよくわかったつもりでございます。そういう立場石炭産業を見ておりますが、ただいまお話がありますように、エネルギー源としての国産のエネルギー、その意味石炭、こういう意味政府は、特に産業が困っておるというだけでなしに、そういう立場で何か積極的な考えがあってしかるべきじゃないか、こういうような発想からのお尋ねだと私思います。ものの考え方といたしましてそれは当然のことであります。今度の中近東問題が起こらなくても、最近のエネルギーの変遷、石炭から石油に、さらに原子力、こういう方向にどんどん進んでおる、その趨勢下においてどういうようにこれと取り組んでいくか、そういう場合に、国外のもの、国内のものといろいろあるが、石炭にやはりウエートを置いてしかるべきではないか、私も実はさように思うのであります。しかしいま御提案になりましたような、具体的な何か委員会でも設けてどうこうするかといわれると、ただいままだしばらく考えさせていただきたいというような気がするのであります。しかしエネルギーそのものが非常に大事であり、国産、国外、さらにまたそのエネルギーの種類によってそれぞれ対策を立てなければならない、かように考えますので、民間の協力を得ての総合エネルギー部会などもすでに発足しております。各方面の意見を伺って、政府は施策の当を得るようにということでせっかく努力しております。もちろん各省に関係するものでありますから、必要があればただいま岡田君の御提案のような方向で考えるべきだ、かように考えます。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭答申が行なわれて、政府はこの答申に基づいて石炭政策の抜本対策として予算及び関係法案を提案されておるわけです。ただ残念なことにはこの答申が行なわれて政策の具体化まで約二年近くズレが生じているわけです。したがって、この政策でいまの石炭産業が一応想定する方向でスムーズに安定していくことは、やはりズレがありましたから、非常に困難が伴ってきているのではないか、こう私どもは判断せざるを得ないわけです。しかし、政府は、これだけの思い切った施策で石炭産業の安定をはかろうという決意を示されておるわけですから、その意味で、四十五年を目標にして石炭産業長期的な安定の基礎というものをつくり上げるんだということであるならば、当然その間必要なものについてはアフターケアを進めるべきではないか、そういう積極的な迅速な手段をとらなければ、あとから相当大きな手直しをしなければならない、こういう状態に追い込まれてまいると私は思うわけです。そういう意味で、この答申の具体化がおくれておるという点で、そういうアフターケアを行なう場合には、年度途中であっても行なっていく、そういう積極的な御意思をお持ちになっておるかどうか、それをお伺いしておきたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 岡田君の言われるように、ものの考え方として、その時期よろしきを得ればあまり大きな出血をしなくて済む、これはそのとおりだと思います。したがって、今日この石炭産業再建方向、これは確立されたと私は思っております。特に特別会計をつくったことなどは大英断だ、みずからつくりながらみずからほめておるような次第ですか、しかし、同時、にまだまだ非常に衰弱した石炭産業、これにただいまのような施策だけではどうもカンフルの効果があがらないのじゃないか、こういう懸念もある。今回の春闘などについていろいろ模様を見ましても、まだまだ十二分に効果があがった、かようには私は見ておりませんので、そういう意味で、いま言われるように、いまこういう手を打てばより効果があがる、こういうものがあれば、私どももそういうものを採用するにやぶさかではございません。  ただ考えていただきたいのは、やすきについては困る。しかし、十分の根拠を見つけて、そしてりっぱな理由がある、こういうものを取り上げていくということについてはやぶさかでございませんから、石炭産業の育成強化、さらに後継者等の問題もかかえておる今日でありますから、これは国内エネルギー源としてどうしても確保したい、かように思いますので、名案があれば、予算の途中におきましても、年度の途中においても、そういうものと取り組む、そういう心がまえでおります。
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま総理からもお話がございましたけれども石炭産業の安定には雇用の安定ということが不可欠であることは御承知のとおりであります。しかも、今回の春闘についても総理が非常に関心を示されたことについて私どもも尊敬を実はいたしておるわけです。しかし、その結果、労使の間できまったのは七・四%、管理炭鉱の場合には三・五%の賃上げで妥結ぜざるを得なかったわけです。しかもこれは労使間で自主的に解決をした、こう申しますけれども、今日石炭産業の置かれておるきびしい条件の中で、できるだけ紛争は避けなきゃならない、こういう意思が短時日で解決に導いたと私は思うわけです。しかし、今日の客観的な情勢等を判断いたしますと、これでいいというぐあいにすなおに喜んではおられないのではないか。そういう意味では、年金等もできて、将来中小炭鉱から閉山になっても炭鉱に再び就職をする人も出てまいるでしょうけれども、何といっても雇用の安定は、客観的にほぼ妥当な線に近い賃金を保障する。地下労働なるがゆえに、特にこの問題は大事であると思うわけです。  そういう点で特に総理の、雇用安定、労働力の確保という面について、この再建計画が示している七%、三%について、めどではございますけれども、もう一歩客観的な趨勢に合わして弾力的に受けとめていく、こういう点についてぜひひとつ理解を賜わりたいし、御見解を承りたいと思うわけです。
  43. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 今回の春闘は、他の産業に比べまして石炭関係は労使双方ともたいへん苦しい実情にあったと思います。しかし、両者が話し合いによって妥結したことは、とにかく私はたいへん喜ぶべきことだと思います。しかし、他の産業に比べてみて、かつての第一、二というようなところであった産業であるだけに、今回の落ちつきについては私もほんとうに同情しておる次第です。  ところで一番問題になりますのは、現に成績をあげた炭鉱、非常な出血までして労働者の協力を得て生産の実があがった十分余力のあるところ、またせっかく努力はしたが、まだ置かれておる地理的な条件あるいは炭層その他の条件で、思うように生産あるいは成績をあげ得ないというような炭鉱もあるわけですね。そういう努力が大きいが、それに報いられておらないというものもあるように見受けるので、この辺は一様に石炭産業のあり方が今日の状態だと言ってみるわけにいかぬと思うのですよ。  そこで今後の方向として、雇用の安定をはかる、また待遇の向上をはかる、そのためにどうしても要求されるものが経営合理化だろうと思うのです。そういうことを、経営者ばかりの責任でなく、労使双方がほんとうにいま炭鉱業の置かれておるその立場に十分の理解を持って、相互に協力することが一番必要じゃないだろうかと思うのです。  私は、春闘自身がおさまったことは、労使双方がその立場において相互の理解がもたらしたこの春の成績だ、かように理解しておるので、そういう意味ではたいへんけっこうだと思うのです。今後も長い苦しいそういうような関係が続いていくのではなかろうか、かように思います。したがいまして、政府自身が、雇用の安定をはかり、労務者の福祉向上、さらに賃金の向上等に努力をしていくということだが、その基本においては、労使双方がさらに成績をあげる、いかにして近代化をはかっていくか、いかにして能率向上をはかるかという、そういうところで合理化努力してもらいたい、実はかように思うのです。この点は私は別に理屈を申すわけあるいは議論するつもりで申すのではございません。ことに春闘がああいうような成績でおさまったことが、そのりっぱな労使双方の理解のもとに、合理化の方向で努力するということであれは解決ができたのだ、かように思いますから、これでもう多くを言う必要はないと思いますけれども、しかし、いま石炭業が置かれておるその状況考えると、今後の長い努力を必要とするのではないだろうか。そういう場合に、政府が、この両者に対してあたたかい思いやりでどういう施策をするか、また政府の責任も果たさなければなりませんけれども、三位一体となってこの窮境を打開すべきじゃないか、かように私は思うのであります。
  44. 岡田利春

    岡田(利)委員 本年度中小炭鉱及び大手炭鉱再建炭鉱に対しては、安定補給金も出すことになり、すでに石炭会計で予算が決定されているわけです。一応このめどはトン当たり百二十円ということで二十五億円が計上されておるわけですが、しかしその対象になる炭鉱の出炭総数等から考えても、これは弾力的に運用できるものと考えるわけです。したがって、この安定補給金については二十五億円を財源として弾力的に運用される御意思でおられますかどうですか、この機会に承っておきたいと思うのです。
  45. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは、もうすでに一度具体的にこの問題と取り組んだように、私思い起こすのであります。したがいまして、百二十円ということにくぎづけすることはなかなか困難な状況のようにお見、受けしております。しかし、ただいまきまったその二十五億円というそういうものが、予算が決定した後でございますから、それをふくらますということはなかなか困難かと思いますが、しかし百二十円そのものについて、これは弾力的に考えてしかるべきだ、かように私は考えております。
  46. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、このワク内で百三十円になることもあれば百四十円になることもある、こういう意味ですね。
  47. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 そういう点は担当事務当局が十分心得て指導するようでございますから、ひとつ事務当局の……。どうも総理がそこまでやれませんので……。
  48. 岡田利春

    岡田(利)委員 これからの石炭政策の方向でありますが、私は特にこれからの石炭政策の中で、政府が取り上げて重点施策として考えられなければならぬ問題が、まず第一点には鉱区調整問題があると思うのです。これもずいぶんいままで手をかけてまいりましたけれども、まだ不十分な面があると思います。しかも長期的な一定のフィールドを決定をするということになりますと、思い切った鉱区調整をすべきではないか。もしそれが困難であれば、ある程度強制を伴う措置をしても鉱区調整をはかるべきではないか、これが第一点の問題だと思うわけです。  それから第二点の問題は、中小炭鉱及び大手の一部ではその採掘個所の合併、あるいは中小企業の場合には、企業が合同することによって長期的にしかも計画的に石炭の採掘ができ得る個所もあるわけです。ここまで政府抜本策考えられたわけですから、こういう企業の合同もしくは協業といいますか、こういうところまで踏み切って長期的に安定させることによって、地域経済に貢献する度合いというものは非常に高まってまいると考えるわけです。  それから第三には、需要確保については政策需要をつけておりますが、この流通関係合理化する。もう第三者を入れて石炭を掘らなければならぬ時代は過ぎたのでありますから、電力は三千万トン、原料炭は鉄鋼関係政策需要としてつけられたわけですから、これが山元から直通で電力会社あるいは鉄鋼各社に供給をされ、そうしてそれが相互信頼の上に保障される、こういう点の積極的な施策というものがこれから進められてまいらなければならないのではないか。  それから第四点については、流通機構の合理化問題であります。いままでずいぶん取り上げられてまいりましたけれども、さらに一そう原料炭部面で見れば一千万トン程度は北海道で原料炭が産出をされる。したがって、原料炭産出の九州、北海道の比重が逆転をするわけであります。北海道の原料炭は中国の水島までおそらく供給しなければならない、そのことによって炭価が下がり、運賃が増大をする、こういう新しい問題がこれから出てまいるわけです。したがって専用船の問題、この運賃の補給等の問題を一体どう対処するか、こういう問題がこれから私は出てまいると思うわけです。それと同時に石炭企業努力による末端流通機構の協業化とか、できるだけ簡素化をしていく、こういう企業努力というものが吸い上げられてこなければいかぬのではないか、こういう流通機構の改善ということが、これから第四点として重点施策になってまいると思うわけです。  さらに第五点としては、炭鉱は御承知のように非常に自然条件が急速に変わる性格を持っておりますから、ビルドの安定している山といえども、ある一定の地域に参りますと石炭がなくなる、断層が新たに出てくる、そのことによって生産体制というものがくずれていくという、こういうことがしばしばあるわけです。ですからそういう安定的な山においても、実際の採掘計画を立てるためには、どうしても坑道探査を強化する、実際に二、三年後の地域のボーリング等をして炭層状態を精査するということが、炭鉱経営の安定、生産の安定のためにはどうしても私は必要であると思うわけです。  大体、この五つの点が、これからの政策として考えられなければならぬのではないか、このように考えるわけでありますが、この点は細部にわたりますので、総理からは総括的にお答え願って、原則的な面については大臣、石炭局長から御答弁願いたいと思うわけです。
  49. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 岡田君から、さすがに苦労されているだけに現実の問題として幾つも具体的にあげられました。私どもの耳にしばしば入るのは、その第一に言われました鉱区調整の問題であります。これがもう世論にもなってきたんですから、業界そのものも自主的な調整に乗り出しておるようです。しかしこれで満足ではない、いま示唆されるように、時に強制力をも国が持ってやるべきじゃないかという、こういうような点は今後のひとつ検討に待ちたい、またまかしていただきたいと思います。  またその他の問題で需要確保の問題、これなどはいまも五千万トン以上の出炭という、その点から原料炭をはじめその他の燃料炭につきましても、特別な確保方策をとっておりますから、そのために必要な、たとえば山元発電その他のことも考えられておるようですが、そういうこまかな点も具体的にどんどん進めていかなければならぬだろうと思います。  もう一つは、新しい石炭山を発見する、その意味の探鉱をひとつ積極的にやれ、これなども私は当然考えなければならぬだろうと思いますし、また五つばかりについて御指摘になりました、そのいずれもが最も大事なことだと思います。今日当面する石炭産業の今後のあり方について、私どもこういういま御指摘になりましたような点を前向きに取り組んでいく、そういうことでなければならぬと思います。そういう意味で、さらに政府も御鞭撻をいただきたいと思いますし、何をするにいたしましても業界の積極的な協力を得るようなそういう方向で二分問題を掘り下げていがなぎやならぬ、かように私は思っております。  いろいろ産業自立ができない場合に国が補助しておる、そういう例は幾つもございます。今回の石炭産業に対する国の補助も、私はずいぶん大きいと思います。しかし他の産業を見れば、あるいはもっと手厚い保護をしておるじゃないか、こういうことも考えられましょうが、しかし何よりもぜひとも国内エネルギーとして確保しなければならぬものだし、同時にまたその方々がみずからまず第一に自立しよう、こういうことで立ち上がるその意気込みがなければならない。私は幸いにして、いま石炭業界はそういう方向に行っていると思いますので、政府がさらに力をかすべきだ、そういうことだ、かように思います。  一々こまかな点についてお話しいたしませんけれども、御指摘になりました点はいずれも重要な事項でありますので、前向きにひとつ積極的に取り組むことにいたしたいと思います。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、終わります。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  52. 田畑金光

    ○田畑委員 二点総理に承りたいと思います。時間がありませんので、私の質問したい二つの点だけを申し上げて総理のお答えをいただきます。  石炭産業の安定は私は今日の時点で見ますると需要確保以外にない、こう見るわけです。昨年の七月の答申を受けて政府は昨年の八月石炭政策についての閣議決定をなされたわけでありますが、その閣議決定の中には、石炭需要については五千万トン以上確保する、こういうことを明確にうたっておられるわけです。その後しかしまだ一年も経過しておりませんが、本年の三月の貯炭を見ますると、業者の手持ち貯炭だけで六百万トンをこえておる。消費先の貯炭まで入れますとかれこれ千二百万トンあるいは千三百万トンの貯炭があるというのが現在の実情です。いまお話にもありましたように、原料炭は特に今日景気の好況、鉄鋼需要の増大のために需要がふえてまいっておりますが、問題になりますのは一般炭需要の著しい減退ということです。昭和四十一年度一般炭需要減は二百五十万トン、四十二年度は二百六十万トン、四十三年度も二百五十万トンの需要減ということが政府見通しとして出ておるわけでありまして、こういうようなことでは石炭産業の自立安定ということはとうてい期待できない、このようになろうと思っております。  そこで、需要確保の唯一の道は、やはり一般炭については電力その他政策需要確保する以外にないわけでありまして、でありますから昨年八月の閣議決定においても電発の石炭専焼火力の二基を急速に建設に入ることをうたっておりまするし、また昨年六月のこの衆議院特別委員会における三党共同決議案の中でも、電発の火力専焼八基建設を強く打ち出しておるわけです。ことに、私は常磐炭田におりますが、常磐炭田にとりまして、これはかつて総理が通産大臣をやられたころいろいろ手がけられたものと思いますが、常磐共同火力の問題であります。昨年の十一月から十七万五千キロの第六号機が操業に入りまして、年間常磐共同火力一社だけで百八十五万トンの消費になっておるわけです。さらに二十五万キロ一基増設すれば、おおよそ常磐炭田における石炭の需給の安定ははかられるのじゃないか、こういうことになっておりますが、私は一例を常磐地域にとったわけでありますが、このような産炭地に電力をさらに増強する、揚げ地発電を増強するという一とが今後の需要確保の大きな道だと考えておりますので、この点についてひとつ総理の見解を第一に承っておきたいと思います。  時間がありませんのでこの際まとめてお尋ねしておきますが、第二に石炭産業安定の抜本策は、申すまでもなく、いま申し上げましたように昨年七月の答申に基づいていまいろいろな予算なり法律なりがこの国会で審議され、あるいは成立を見たものもありまするし、審議途上にあるものもあるわけです。しかし、政府抜本策の必要を認められて石炭鉱業審議会に諮問されたのは一昨年の六月、三木通産大臣のときです。そこで石炭鉱業再建整備臨時措置法という法律もやがて成立を見ると思いますが、このような法律が成立を見て実際に個別企業にそれぞれの政策効果が出るのは本年夏以降、したがいまして、政府の諮問案を出されてから実際政策効果が出るまでには二年の時間が経過しておるわけであります。そこにやはり政府の施策が常に手おくれになっているということ、後手後手になっておるということはいなめない事実です。  なるほど本年度石炭対策特別会計には五百二十二億の予算が計上されて、これによって石炭施策も相当前進すると思いますが、先ほど指摘されました再建資金の問題を見ましてもあるいは安定補給金を見ましてもあるいは電発出資などを見ましても、通産省の当初要求した予算が相当後退しておるわけです。この事実は否定できないと思うわけです。かくて今日個別企業においては、つなぎ融資の問題なり、貯炭融資の問題なりあるいはまた中元融資の問題などで非常にいま苦労しておるわけであります。幸いに今回設置された石炭特別会計の財源は申すまでもなく重原油の輸入関税を基礎にしておるわけでありますが、この財源が、ことしは四百七十五億、来年は五百五十九億、あるいは四十四年は六百十九億、四十五年は六百七十九億と大蔵省の試算によれば計算が出ておるわけでありまして、したがいまして、私特に総理にひとつ考えておいていただきたいことは、今回のこの国会で審議されておる予算や法律の一連の施策によって石炭政策が一応これで事足れりという気持ちで取り上げられては非常に問題だと思います。したがいまして、今後、いま申し上げたような諸般の事情を考慮しまして、石炭施策についてはさらに積極的に前向きに、単にアフターケアというような意味だけでなく、もっと積極的な意味においてこれに取り組まれることを強く総理も念頭に置かれて善処されたいと思いまするが、総理の見解を承りまして、私の質問としておきます。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 先ほども岡田君にお答えし、いわゆる五千万トン以上の出炭確保といいますか、そういう点から見れば、政府需要を喚起しなければいかぬ、こういう基本線はとっておるわけです。いままでも山元発電をいろいろ計画をし、そうしてそれが実効をあげておる。したがいまして、ただいま言われますように、さらに需要確保の面においてわれわれが努力するとすれば、火力発電、そういうものを計画することだ、かように思います。一般的に私はそれを申し上げるのでございまして、具体的には十分ひとつ経済条件に合うようにまたいろいろくふうもしていただきたい、かように思います。  問題は、先ほどもお尋ねがありましたが、やっぱり他のエネルギー源と比較したときに、政府が補助いたしましてもどうも思うようにいかないという場合がある。そういうときにはあきらめてもらわなければならぬと思いますが、この政府の補助をも勘案してただいまのような必要な需要を喚起するということに一そう努力する、こういう考えでございます。  第二の問題として、政府対策はどうも後手後手になっているとたいへんおしかりを受けました。これは岡田君からもおしかりを受けたと思うが、実は与党からも絶えず政府が鞭撻されておるのであります。そうして、ことに石炭産業はただいま当面しておる非常な苦しい状況にある。それは、先ほど岡田君が指摘されましたように、打つ手その時期よろしきを得ればその十の努力が十二の効果をあげるのじゃないか、こういうような意味で与党からも絶えず鞭撻を実は受けておるのであります。したがいまして、ただいまのお話もそういうような意味に私は伺いまして、今後とも積極的にこの問題と取り組むということを御了承いただき、政府を御鞭撻賜わりたいと思います。  また、たびたび石炭対策審議会を設けて各界の意見を聞き、同じようなことを実は三回もやる、実はほんとうに恥ずかしいことでございまして、そのつど、今回が最後だ、最後だ、こう言っている。それは抜本的対策だから、もう重ねてこういう問題が起こらないようにというので対策を立てたのであります。しかし、世の中の進み方、変化は私どもの想像以上でありまして、そのときはりっぱな画期的な対策だと思ったものが、もうその後数年たたないうちに時期おくれというようなものになっておる。したがいまして、今回の対策にいたしましても、これで安んずるような気持ちは毛頭ございません。この産業の持つ意義、価値等を勘案いたしまして、政府は絶えず前向きにこれらの産業の育成強化に努力する。ただいま御指摘になったとおり、私も同感でございます。  また、これはどうもこの際にこの委員会を通じてさような点を申しては誤解を受けるかわかりませんが、この石炭産業に取り組む各党の態度を見て、ほんとうに超党派的に結論を出そうというように見受けます。そういうことでございますだけに、政府もこれに積極的に取り組まなければならぬ、かように思っております。ありがとうございました。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十二分休憩      ――――◇―――――    午後三時十五分開議
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  本案については、他に質疑の通告もありませんので、これにて質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。て、本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。三原朝雄君。
  58. 三原朝雄

    ○三原委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、石炭鉱業再建整備臨時措置法案について賛成の討論を行なわんとするものであります。  御承知のごとく、わが国のエネルギーの現状は輸入の依存度がきわめて高く、今回の中近東の紛争を見るまでもなく、有事の際におけるエネルギーの確保が憂慮されるところであります。したがいまして、国産エネルギーの確保によって、エネルギーの安全保障をはかることは、近代国家においては至上の国策となっております。わが国におきましても、かかるエネルギーの安全保障の見地からばかりではなく、国際収支、地域経済など、国民経済的観点からも、国産エネルギーの大宗であります石炭確保し、国の安全保障をはからなければならないことは言うをまちません。  しかるに、わが国の石炭鉱業は世界的ともいえるエネルギー革命のあらしを受け、そのさなかに急激かつ大規模な閉山を行なうなど、各面にわたる合理化を行なったのでありますが、その経営基盤の悪化は、きわめて憂慮すべき状況に置かれており、崩壊の危機にすら直面いたしておるのが現況であります。  本案は、叙上の観点に立ちまして、国産エネルギーであります石炭確保を行なわんとするものであり、昨年の石炭鉱業審議会の答申を基調とし、まず企業経営基盤の回復をはかるため、異常債務について元利補給金に関する制度を設け、その適用を受ける会社について、経理の適正化をはかるための措置を講じ、石炭対策を強力に推進しようとするものであり、時宜を得た画期的な法律案であると思うものであります。  われわれといたしましては、本法律案が一日も早く国会を通過し、施行されることを心から念願をし、簡単ではありますが、賛成の討論とするものであります。(拍手)
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 渡辺惣蔵君。
  60. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私は今日まで審議が続けられてきた石炭鉱業再建整備臨時措置法案質疑の終了にあたって、日本社会党を代表して、本案に対する反対の討論を行なうものであります。  本法案は石炭鉱業審議会の第三次答申に基づいて、昭和四十五年度を目途として、その抜本的確立をはかろうとする意図のもとに、いわば政府としては、石炭政策に対する最終的ともいうべき方向を打ち出したものであって、この特別国会に提出されている石炭特別会計法、合理化法、離職者法、鉱害法、労働者年金法等々の一連の関係法律案の骨格をなすものとされておりますので、私どももまた前後十七回の長時間にわたって、あらゆる角度から慎重なる検討を加えてきたのであります。  石炭関係法律制定を歴史的に考察してみますと、昭和三十年八月十日に施行された石炭鉱業合理化臨時措置法の制定以来、数次にわたる合理化のあらしに対処するために、次々と法律が制定され、鉱山保安法等の関係法律を合すれば、本国会提出関係法案とともにまさに二十なんなんとしているのであります。一産業に対する関係法律の多いこと、その管掌の分野と施策が多岐にわたっていること、予算が大量に投入されていることは、私企業に対する国の産業政策上からも異例に属することであります。それにもかかわらず、今日まで数多く制定されてきたこれらの法律のほとんどが、石炭産業合理化再建を指向しながら常に現象のあとを追いかけ回してアフターケアに終始し、前向きの対策はいつも後手に回り、せっかくの努力にもかかわらず焼け石に水のように、実効をあげることができぬままに石炭産業を今日の危機的段階に追い込んでしまったことを、この際政府並びに関係機関に対して深い反省を要求するものであります。  本案については四月二十八日の本委員会において菅野通産大臣はその提案理由の説明の中において、「その中でも最も重要かつ画期的な施策といたしまして、石炭鉱業の過去数年にわたる急激かつ大規模な閉山合理化過程において発生した過重な負担を軽減するため、約一千億円の借り入れ金を財政資金により肩がわりする措置を講ずることとしております。この肩がわり措置は、現在の石炭鉱業の危機が特に資金経理面の悪化に集約的にあらわれており、過去の資金経理面における過重なる負担を取り除かない限り、石炭鉱業経営基盤の回復は不可能であり、将来の再建もあり得ないことに着目いたしまして、このような思い切った措置をとることといたしたのであります。」と述べておられることによっても、政府としては本法案によって石炭産業再建のために画期的な思い切った施策を打ち出したと考え、これに石炭産業の命運をかけている姿勢をうかがえるのであります。  この通産大臣の説明にも明確に示されているとおり、本法の任務は石炭資本に対する債務の肩がわりによる整理救済とその指導監督に終始しているものであって、緊急やむを得ない処置であっても、それは明らかに石炭企業に対するアフターケアであり、再建整備法の名に値する前向きの積極政策の姿は全く失われているのであります。ことにこの一千億に及ぶ財政資金による肩がわりの恩恵は、そのほとんどが大手炭鉱会社に占められ、全国八十を数える中小炭鉱の中でこの法の適用を受け得るものは十五社程度とされ、北海道では二、三社にすぎないだろうと言われているのであります。すなわちこの再建整備法石炭産業における個別企業の救済であって、いわゆる産業政策とははるかに縁遠いものであります。言いかえますならば、石炭産業の自立経営の確立の名目のもとに、炭鉱労働者に不当にして過重なる犠牲をしいながら、石炭産業の将来を指向するよりも、当面する石炭資本の金融難の打開を口実にして、実質的には借入金のこげつきによって金融を拘束しようとする、いわゆる金融資本の救済策に利用される危険を持っていることを見のがすことができません。これをもって石炭産業に対する最終的な抜本的ないわゆる再建整備と称することは断じて了解することができないのであります。  本委員会においては、本法並びに関係法律案の審議の過程において、石炭産業再建に関する長期見通し、特に昭和四十六年度以降における五千万トン生産体制維持とエネルギー総合計画における石炭の位置づけ、その長期展望見通しについて、各委員からきわめて熱心にあらゆる角度からの質疑が行なわれましたが、それにもかかわらず、月余にわたる審議を通じて何らの具体的な見通しについての責任ある答弁が得られなかったことは、おのずから再建に対する本法の限界を示すものであり、いわゆる再建整備の過程と実施後の将来に対してぬぐい切れない多くの不安を残すに至ったことは、はなはだ遺憾とするところであります。  ことに石炭答申においては、昭和四十五年度を目途に五千万トン体制を押しつけながら、一方総合エネルギー答申においては何らの具体策も示さないままに、昭和六十年度においても依然として五千万トンの自立経営出炭規模を掲げておることであります。  国内原料炭の不足を補うためにばく大なるドルを放出して、オーストラリアその他はるかなる海外からの千二百万トンに及ぶ大量の原料炭の輸入を継続しておるのであります。そうしてその対策としての国内粘結炭の増産は遅々として進まず、ようやくわずかに大夕張、有明開発にお茶を濁し、海外からの原料炭輸入の長期計画を不動の体制として再建整備計画の推進としておることは、われわれにとってどうしても納得しかねる問題であります。   一般炭においてはさらにはなはだしい現状に放置されております。現在の時点において六百万トンの貯炭をかえて苦悩する石炭産業を目前にしながら、電発、電力会社の引き取りや貯炭対策を示さず、その異常貯炭の重圧は、千二百円引きさせている今日、さらにダンピングのおそれなしとしないのであります。しかもその流通部面において、石炭銘柄は今日なお二千余に分類され、その輸送面においては北海道の石炭が九州へ、九州の石炭が東京へと、多額なる輸送費をかけて交錯し、市場の争奪戦を展開し、無秩序な販売合戦が続けられておるのであります。これでは再建整備計画はざるで水をすくうようなものになるのであります。  政府石炭鉱業に一千億円もの大量投資を行なおうとしながら、何ゆえにこの明白なマイナスを処理しようとしないのか、何ゆえに流通機構整備に対する抜本策を講じようとしないのか、全く理解に苦しむところであります。  この政府石炭鉱業再建整備が推し進められておる過程において、政府の熱心な施策にもかかわらず、各所に労務倒産の声が起こっております。一千億円の財政投資をしながらその半面において労務倒産の声が聞かれるのは、この法案が金融資本の救済に力点が置かれて、石炭産業のにない手である労働者の現実の生活や欲求を無視しているところにあるからであります。他産業労働者が一三、四%、四、五千円のベースアップが行なわれておる今日の世代に、ひとり炭鉱労働者だけがわずかに七・四%程度しかアップしないのであります。ウナギ登りに上がる物価高の渦中に、低賃金と重労働、過度の継続的な残業、相次ぐ災害に生命の危険さえ感ずる炭鉱に働いて、その最低生活さえ保障されないで、どうして炭鉱再建のエネルギーを期待することができましょうか。石炭産業に従事する熱意を失なわせ、当初の予測に反して若年労働者の他産業への大量流出が行なわれ、現実の山は平均年齢四十二歳という中高年齢層のみとなって、その悪盾環が反復して、さらに生産の低下と労働災害を誘発する結果となっているのであります。  かつて合理化法制定直後の昭和三十二年には一十九万八千人を数えた炭鉱労働者が、現在では九万六千人に激減しているのであります。その反面、石炭生産は当時の五千二百万トンから今日五千三十万トンの体制にあり、まさに一人当たりの出炭率は一四・六トンから四三・九トンにはね上がっているのであります。この現実を見ても、炭鉱労働者にいかに過酷な負担と犠牲が加えられているかを知ることができるのであります。  再建整備計画は、過去のあと始末だけに追い回されてアフターケアだけに足踏みすることなく、積極的に前向きの姿勢に切りかえて、炭鉱労働者が安心して石炭産業再建に挺身することができるような、せめても他産業レベルの賃金と、その労働政策を同時並行的に打ち出すことこそ当面の最も緊急なる課題であります。  石炭産業がこれほどの危機に直面しながらも、いまだに政府炭鉱経営者も目前の利害のみにとらわれて、これを文字どおり抜本的に解決しようとする危機意識に欠如していることは、私どもの大きな不満とするところであります。  石炭産業が当面しているいま一つの最大の危機は、鉱区が分散化されて思い切った整理総合がほとんど行なわれていないことであります。鉱区が分散し、私物化されて統合調整が行なわれないために、わずか直径十二キロくらいずつしか離れていないところに各社がばらばらに何十億円もかけて立て坑を随所に建設し、目前に豊富な鉱脈をながめながら手が出せずに、モグラのようにあちこちを迂回して採掘しているような日本石炭鉱業の現状をそのままにしておいて、再建整備計画を立てようとすることは、経済合理性の上からも木によって魚を求めるにひとしいものだと言わなければなりません。  この矛盾を取り除くためには、資本の不要にして不当なる競合を排除する以外にはありません。そのためには鉱区の全面的調整を強力に推し進める以外にはないのであります。日本の国土の上に設定されている石炭鉱区の中で、わずかに一八%だけが開発されて、残余の八二%の膨大な鉱区はいたずらに鉱区権の名のもとに地下に眠っているのであります。国の責任において鉱区調整を行ない、未開発鉱区の積極的開発を行なうことこそ国家資源開発の上からも緊急の課題であると言わなければなりません。ことに、私企業とはいいながら、この危機段階にあって国家のばく大な財産資金を受けながら再建能力を失いつつある炭鉱企業が、いたずらに競合して共食い争いを続けている時代ではないのであります。また許すべきではないのであります。  過日の参考人の陳述の際においてさえ、経営者代表みずから発言して、国有民営論が堂々と主張されているのであります。私ども石炭鉱業の終局的な再建方策は、イデオロギーの問題ではなくて、最も現実的な政策としても国有、国営以外にはないと考えるのでありますが、そこまで一挙に実施に踏み切れないとしても、この際石炭企業の統合を促進して、北海道、九州、常磐等に各一社ずつの数社に統合することや、全国一社案さえ今日まじめな話題になってきているのであります。この際、政府関係機関の勇断を切に希望するものであります。  たまたま本法案、審議の最終段階においてはしなくも中東戦争が勃発いたしました。国連安保理事会の必死の努力によって戦争の即時停止の決議が行なわれ、三次にわたって即時停止の勧告が繰り返されてきました。この中東戦争の勃発にあたって、アラブ連合、イラン、イラク、ヨルダン、クウェートなどの石油多産関係十一カ国は、すでにイスラエルを支持する米英諸国に加担する国家に対しては石油の輸出を禁止する、場合によっては輸送パイプラインを破壊するという強硬態度を示しております。けさの毎日新聞の報道によれば、ペルシヤ湾で日本のタンカー二隻が立ち往生していると伝えられております。エネルギー資源として重油の輸入を海外に九七・八%も依存している日本経済にとって、万一のことを考えますと、その国民経済への脅威ははかりしれざるものがあるのであります。エネルギー資源に乏しい日本においてこそ、その安全保障のためにもエネルギー政策を強力なる国策として不動の体制を確立することの急務を迫られていること、今日ほど切実なものはないのであります。特に政府並びに関係機関に対してさらに一段の熱意と勇断を要望する次第であります。  本法案の討論を終わるにあたりまして、本法案を策定し、きわめて誠意と善意をもって、あらゆる障害の中にありながら、石炭政策をここまでよく推進してこられた政府並びに関係機関の方々に対しては深く敬意を表します。  それにもかかわらずあえて日本社会党が本法案に反対せざるを得ないのは、本法案の持っている今日的な私企業再建の限界を乗り越えて、国有化政策を推進する以外に抜本的対策の確立はでき得ないと判断しているからであります。  これをもって私の討論を終わります。(拍手)
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  62. 田畑金光

    ○田畑委員 私は民主社会党を代表し、ただいま議題となっております石炭鉱業再建整備臨時措置法案に賛成の意を表するものであります。  これから政府のやろうとする石炭の抜本的安定策の中核をなすものは、第一には政策需要の増量を中心とする需要確保対策であり、第二は、肩がわり措置、安定補給金、炭層探査及び坑道掘進補助金による経理改善対策であります。  しこうしてただいま議題となっております石炭鉱業再建整備臨時措置法案は、炭鉱経理改善対策の柱をなすものでありまして、私が本法律案に賛成する第一の理由は、一千億を限度とする今次の肩がわり措置は、答申の趣旨を忠実に生かした施策であるということ、またこれが個別企業に具体的に適用される暁には、ことに赤字に悩む石炭企業にとっては、相当程度経理改善に寄与するであろうこと、さらにその他の助成策と相まつならば、石炭産業全体の安定に応分の役割りを果たすであろうことを期待するからであります。  ただし、私はこの際、法案審議の過程で問題点として指摘された一、二について希望意見を付しておきたいと思います。  第一は、本法律案の適用に際し、最も重要である再建整備計画の認定が受けられるかどうかの基準となる財務状況及び掘採可能鉱量などはあげて省令にゆだねられていることです。また、この法律の骨格ともいうべき元利補給契約作成にあたり、個別企業の肩がわり金額をきめるにあたって採用される借り入れ残高に乗ずる率などは、すべて省令にゆだねられておるということであります。したがって政省令の内容基準のとり方いかんでは、企業死活のかぎを握ることにもなりますだけに、運用にあたっては十分中小炭鉱の実情に沿うよう配慮されることを強く望んでおきます。  第二に、政府に希望しておきたいことは、金融についてであります。今回の肩がわり措置により個別企業の金融は円滑に確保されるであろうというのが政府の見方、見通しでありますが、さきに私が質疑の中で指摘しましたように、ことに市中金融機関は元本十年のたな上げ、金利補給五分以上は切り捨てということでは、肩がわりを契機に、かえって石炭企業に対する融資は消極的態度になることを私はおそれるのであります。この際政府は、金融懇談会などを通じ、つなぎ融資、貯炭融資、中元融資など強力にあっせんの労をとられることを希望します。  その他、質疑応答の中で提起された諸点を政府はしかと念頭に置かれ、今後の石炭施策に反映されるよう強く希望申し上げて、私の賛成討論を終わることにいたします。(拍手)
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 大橋敏雄君。
  64. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました石炭鉱業再建整備臨時措置法に対しまして、賛成の意を表するものであります。  わが国の石炭産業はエネルギー革命の潮流の中にあってきわめて憂慮すべき状況にあります。公明党はこうした石炭産業の現状と、わが国経済における重要性から見て、その国有化ないしは公営化を提唱するものであります。  すなわち、国家的、社会的な立場から、計画生産計画需要を適合させて、国内エネルギー源としての確保をはからねばなりません。その際当然のことではありますが、国有化、公営化に伴う保障は、公正にして犠牲のない対策の上により根本的な諸施策が講じられなければなりません。  しかるに今回の再建整備法は、一千億円の累積赤字に対する肩がわり措置内容としたものであり、現今の石炭産業の逼迫した実情に照らせば、この程度措置ではとうてい根本的な救済にはなり得ないことも明瞭であります。しかし合理化に次ぐ合理化過程において、特に資金経済面において過重な負担がかかっております。何はともあれ、現段階においてこれを除去しない限り、石炭産業再建のめどもなく、崩壊も目前と思われます。これが救済のためにはやむなくこの措置を認めざるを得ないのであります。  わが国の石炭産業は近き将来において国有化あるいは公営化に踏み切り、真の安定をはかるべきであります。  今回の一千億円肩がわり措置もその方向への足がかりになることを思量して、一応賛成の意を表するものであります。(拍手)
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これにて討論は終了いたしました。  これより石炭鉱業再建整備臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十一分散会