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1967-06-08 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月八日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 中川 俊思君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       進藤 一馬君    田中 六助君       野田 武夫君    井手 以誠君       木原津與志君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君  委員外出席者         参  考  人         (石炭鉱業審議         会会長)    植村甲午郎君     ――――――――――――― 六月七日  石炭鉱業年金基金法案内閣提出第一四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号)  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ――――◇―――――
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、石炭対策基本施策に関連して御意見をお述べいただくため、参考人として石炭鉱業審議会会長植村甲午郎君の御出席をいただいております。  この際、植村参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。御承知のごとく、わが国石炭鉱業をめぐる諸情勢は依然としてきびしいものがありますが、本委員会におきましても、目下石炭鉱業再建整備臨時措置法案をはじめ諸法案審査をいたしており、また昨日は石炭基本施策につきまして、労使方々参考人として御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴したのでありますが、この際、石炭鉱業審議会会長として、石炭再建整備法案等を含め、石炭鉱業全般にわたる抜本策について御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは最初に概略的な御意見をお述べいただき、そのあと委員質疑に応じていただきたいと存じます。参考人植村甲午郎君。
  3. 植村甲午郎

    植村参考人 御承知のように、石炭鉱業現状というものはなかなか心配なような状況にあるようでございます。この点についてすでに石炭協会麻生会長がこちらに出ましていろいろお話し申し上げたと思うのでありますが、私ども審議会としてまだ会議を開いて検討するというようなことはやっておりませんが、多少寄り寄り意見交換をやって、これは何とかしなくちゃならぬじゃないかというふうなことを言っているという程度でございます。  考えてみますると、本来審議会におきまして、いわゆる抜本対策をきめましたときの関係から申しまして、かねがね私どもよく言っておったのでありますが、一応大筋というものはこれでできた、しかしながら、それではこれでこの制度をそのままただ予算を通していただき、また関係法案を通していただくというようなことでうまくいくかいかないかというふうな問題については、いろいろ具体問題になりますと問題を含んでおるわけでありまして、大筋としてはそれでいいといたしましても、予算編成のときにもできるだけ各般の状況を勘案して、予算の盛り方についてもやっていただきたいというふうなお願いもして努力をされて予算ができているわけであります。  さらに御承知のように、本来審議会でやりましたときも、いつからの実施になるかというふうな予想としては、できるだけ早くということで、方針がきまりましたらば、政府のやれることは、国会にかげないで済むことはこれはすぐやっていただきたいし、また補正予算だとかあらゆる機会を通じてできるだけ早く着手していただきたい。本体のほうは、これは通常国会審議されるわけであるからということでありますが、できるだけ早く上げていただいて、そして四月、五月のころには動き出すというような予想で大体考えていたわけでございます。御承知のような政治情勢関係で、それが若干おくれておりまして、いまやその関係からも金融的な関係業界としてはだいぶ困っているところが出ているということがあるわけであります。  そのほかに、御承知のように審議会審議の過程におきましても、石炭需要というものの想定をいたしますときには、どうしても五千万トンを標準にしたその前後の出炭に見合う需要が予定されるかということで、いわゆる政策需要関係については、当時それぞれ電力であるとかあるいは鉄鋼と交渉しまして、あちらで受け取るもの、また受け取る条件等について大体の取りきめをやってできたものでございます。ところが、一般需要と申しますか、そういう政策需要でない方面についても、これはやはりだんだんに減じていく傾向にあるということで、一応の数字をはじいて、それを計算をし、そして大体の需給の見通しのようなものをこしらえまして、いろいろな施策基準にしていった。ところが、きて現実の問題としてあらわれるところは、いわゆる一般需要の減り方がそのときに想定したよりももっと早くまいりまして、貯炭が予定以上に、異常貯炭といいますか、これがだんだんふえてきている。これが相当の数になっております。そういたしますと、これは申し上げるまでもなく、貯炭を山が非常にかかえますと、いわば炭鉱生産をするほうの士気にも関しますしするので、生産のほらも伸びが悪いところも出てくる。生産の数量が少なければおのずから。パー・トンのコストは高くなるというようなことになるわけです。それと累増する貯炭相当量になってまいりましたから、貯炭見合い融資ということがやはり金額的に相当大きなものになってくる、こういうような状況が出ているのが現状であろうかと思います。  そこで、私ども関係をいたしますものといたしまして結論的なことを申し上げますと、金融面といたしまして具体的な交渉をやるときにいつでも、まあ予算は通りましたけれども、基本的な臨時措置法関係が、通ると思うけれども、まだ国会の御審議中である。これがはっきりしないと、いま踏み切れないと申しますか、というようなことを言われると、理屈はそういうことになるわけでありまして、ぜひひとつ御審議を進めていただいて、急速にこの関係法案というものがそれぞれあがってしまうようにお願いしたいと思います。そうしませんと、交渉の基礎が業界として固まらないというような形になるわけでございます。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、アフターケアをやはり相当考えていかなければならないということは当初から言っておったととろでございますが、この点についてただいま申し上げたような二つの状況があるわけでございます。大きく言いましても、いまの需給関係がだいぶ当初の予想と違ってきておる。それから国会解散、選挙というような形でずっとおくれたために、金融的にみんなだいぶ困ってきている点があるというふうなことをすっかり織り込みまして、アフターケアというものについていままで考えたよりもさらに、いわば腹をきめていただいてしっかりしたことをやってまいりませんと、石炭鉱業そのものの将来というものについて心配になってきたというのが率直な私の感想でございます。ただ、具体的にしからばどうやっていくかということになれば、アフターケアと申しましてもやはり予算に関連することが相当出てまいると思いますが、これはいわば国民の税金を使うわけでありますから、有効適切に効果のあるようにやっていかなくちゃならぬ。それにはどうしたらいいかというような問題になれば、これはよほどよく検討しまして、むだのないようにといいますか、方針を立てなくちゃならぬと思います。いずれにしても、これは相当のことをやりませんと、いまのような新情勢を考えますと、なかなかうまく従来考えていたような形でスムーズに移行してしっかりしたものになっていくということが、問題はなかなかむずかしいことになりはしないか。まだ一向どうも、お互いがディスカスしてある段階でございませんけれども、私、いろいろなお話を伺っていて、そういう感じを持ったというのが、率直な現段階における私の気持ちでございます。  はなはだ抽象的なことを申し上げましたが、数字その他についてはすでに協会あるいは石炭局長のほうからお話し申し上げておると思いますが、一応御趣旨としまして、私はそういうふうなことをいま感じて、非常に心配しているということをまず申し上げたいと思う次第でございます。      ――――◇―――――
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ただいまの御意見について質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 お忙しいところ、貴重な参考意見を聞かしていただきまして、まことにありがとうございます。若干御質問を申し上げたいと存じます。  いまお話もありましたように、電力用炭引き取りがまだ順調にまいっておりませんから、六百万トンをこえる貯炭がすでにあるわけです。貯炭になるということは、御存じのように少なくともトン当たり三百円程度貯炭経費がかかることは、これはもう常識的なわけです。しかし一方、各電力貯炭状況を見ますと、そのスペースからいって貯炭引き取りは可能であるわけです。ですから決済は別にしても、私はこういう石炭の置かれておる現状から考えれば、九月に決済しようと、一応貯炭はやはり一定量引き取ることになっているわけですから、電力会社が大体引き取り計画に基づいて一応貯炭を認める、こういう方法がとられれば、トン当たり三百円程度というものは浮いてくることは間違いがないと思うわけです。この間電力会社石炭側のいろいろな問題点もあろうかと思うんですが、これからも私はこういう傾向はある程度毎年続いていくものと考えられますから、この点はやはり審議会のほうとしても十分検討されて、むしろこういうむだな貯炭経費をかけるということは解消すべきではないか、こういう点について御検討されておられますか。あるいはまた見解を承れれば幸いと存ずるわけです。
  6. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点は、つまり電力会社のほらとして物理的にはまだまだとれる、しかし経理関係その他から考えて引き取りをしていないというふうなものでありますれば、これはやれるということは相手のあることですから申し上げることはできませんけれども、何らかひとつ電力側努力をしてもらうことをお願いをする、これはやるべきことであるし、またできることだと思うのです。物理的に詰まっていますと、これはまた無理な話になるわけです。この点相当余裕があるのかどうか、一ぺんこれは調べてみないとはっきり申し上げられないわけで、数字はそういうことになるのではないかと存じます。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に法案が提出されている間で貯炭が激増してきたという点と、もう一つ炭鉱に働く労働者賃金問題が今年特に問題になったわけです。先般の炭労、全炭鉱石炭協会側との交渉は、最終的に七・四%程度で妥結を見たわけです。もちろん政府としても、この炭鉱労働者賃金については、春闘相場あるいはまた今後消費者米価、物価の値上がり等から考えて、七%は一応のめどであって、これを弾力的にやはり考えて対処しなければ、炭鉱における労働力の確保、こういうものはむずかしくなるであろうという見解を示しておったことも事実なわけです。しかし実際問題として、五千万トンにセットされて、賃金先年率アップということで再建計画が組まれますと、どうしてもこれにかたくなに固執をする。そして客観的な情勢、そのときのいろいろな要因というものを十分理解ができても、これに目をおおう、こういう傾向がどうしても私は強いと思うわけです。一方、しかし労使間に紛争が起これば、その紛争のもたらす結果、再建計画遂行にいろいろ支障を来たす、こういう両刃の関係に実はあると思うのです。私はそういう意味において、この特殊な政府の大きな援護を受けている石炭産業労使、しかも客観的に変動がある場合における賃金決定、こういうものはやはりある程度、もう少し双方の立場が消化できるような運用、こういうものが私は必要ではないかということを非常に痛切に感じたわけです。中労委解決等もいろいろ話し合いをされましたけれども、結果的に第三者、中労委機関にかけることも一応放棄をして、不満ながら自主的に解決をした、こういう経過があるわけですが、もちろんこの審議会でも七%は単なるめどである、こういっても経理審査会があって、厳密に審査してこれにオーケーを与えるわけなんですから、これはめどといっても、実質上相当きびしくセットをされてくる、こういう点について非常にむずかしい問題であろうかと思いますけれども、ある程度、やはりそういう計画を出され、しかもそれにオーケーを与えている審議会としては、これに対応する弾力的な態度というか、そういう面がどうしても必要ではないか、こういう感じがするのですが、この点についての見解を承っておきたいと思います。
  8. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまお話しの点は、やはり私ども非常に心配している点でございます。いわば炭鉱労務者のほらの関係から破綻を来たす、これは待遇その他についてあまり悪い場合にはそうなるおそれはあるわけでございます。ただ問題は、七%で一応の計算はしているわけでありますが、これは平均的なめどであることは確かであります。ただ先般私どもがたいへんなことになってはいよいよこの際困ると思ったのでありますが、労働組合側も十分に了解をして、御不満ではあったろうが、とにかくストライキというふうなことは回避できたということはたいへんよかったと思います。業者側としまして、使用者側としていま非常に苦しい立場に入っておりますから、ここはまたどうもちょっと何とかできないかと思っても、いまはイエスということを言おうと思っても言えないというところに追い込まれておりまして、いわば金融関係からいって非常な苦労をしているわけでありますから、したがってこの際としてはやむを得ない。何とかひとつがまんをしてくれということで、その事情を了承せられて、不満足であるけれども、まあしかたがないということになったのだろうと想像いたしますけれども、どうしてこの炭鉱に働く人を引きとめるかという問題、これはなかなかむずかしい問題だと思います。  本来ならば地下労働、ことに坑内の労働というのは申し上げるまでもなく特別なことでありますから、相当いい条件でなければなかなか人が集まらないというのはあたりまえだと思うのであります。しからば石炭鉱業現状において、これを何とかひとつ確実なものにしていくという点からいいますと、そちらのほらでなかなか満足したことができないというおそれは多分にあるわけでございます。そこで特別年金制度が考えられて、これもまあ一つ方法プラスX方法にはすぎないかもしれませんが、いわば私考えてみますると、これにも程度がありますが、労働条件の端的な目先のものとしては必ずしも満足できないけれども、まあここでちゃんと働いていけば、あと自分の生活としてはある程度設計ができるというような形で、安定した職場であるという点をつくっていくよりしようがないだろうし、これには居住の条件だとかいろいろあるわけであります。それから勤めている炭鉱そのものがちゃんとしなければ困るという基本的な点もありますが、年金制度で少なくともその相当部分というものを特別に配慮をされて、そしてそういうふうなことがあるので、老後の関係その他についても設計がどうやら立つ、その点はいいしするからひとつやるか、そういうところにいってもらえれば一番ありがたい、そういうことでありますが、ほかの条件もございますから、一がいにそれだけでいいはずだなんて申し上げる次第ではございません。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱労働賃金というのは、他産業に比べて非常に複雑なわけです。たとえば完全に定額給ですばらしい能率をあげておる炭鉱もあれば、前時代的ないわゆる丸請負といいますか、そういう形態賃金を支払っておる会社もあるわけです。それ以外に、賃金形態からいえば、基準外基準外賃金、諸手当、他産業に比べれば非常に複雑な賃金体系であることは、賃金を扱う専門家も大体認めておるところなんです。私は将来石炭産業というものを安定させていくという場合に、労働の安定なくして石炭産業の安定がないとするならば、炭鉱労働賃金についてもある程度検討しなければならぬのではないか、こういう気が実はするわけです。特に今度の経験からかんがみて、こういう点について、単に一カ月幾らあるいはトン当たり幾ら労働賃金であるということではなくして、炭鉱賃金は時代の要請に従ってどういったものであるべきか、こういうものをある程度見出していく必要があるのではないか。何といっても、毎月、毎日もらう賃金魅力であります。もちろん年金についてもこれは魅力でありましょうし、また中小炭鉱からいままでは他に流出した者が炭鉱に今度は戻る、こういう方々年金のために多くなっていくのではないか、こう私は考えるわけですが、何といっても賃金でありますから、この点について特に今後審議会でも十分ひとつ御検討願いたいということを要請いたしておきたいと思います。  次に、いま金融の問題で、実はきのうもそれぞれの代表から意見が述べられて、非常に逼迫をしてきた。これは御存じのように、当初審議会では答申がなされて、その答申によれば安定補給金を出す、いろいろな説がありまして、炭田別にやるとか、あるいはまたそれぞれの企業の実態、こういうものを考えてやるとか、しかも答申趣旨安定補給金というような趣旨であって、それが一応中小炭鉱再建炭鉱に限られて掘進補助金になったわけです。この掘進補助金は確かに前向きであるし私も賛意を表するわけですが、しかし実際問題として負債がたな上げになったとしても、掘進補助金というのは、これは半期ごとに決算すれば、九月末、三月過ぎなければ実績主義で支払いがなされないわけですから、それを見返りに市中銀行から金融を受けるといっても、はたしてでは掘進が計画どおり順調にいくかどらかという保証が実はないわけですし、炭鉱はまた出水、災害等の事故も多いわけですから、そういう点から考えますと、私は安定補給金のほらが企業としては非常に弾力的に運用できるのではないか、こういう実は気がするわけです。こういう点について、今後アフターケアの中で今度の政策検討されて、さらにそういう面について検討を進められる用意、そういうお考えを持たれておりますかどらか、この際承っておきたいと思います。
  10. 植村甲午郎

    植村参考人 アフターケアの内容につきましては、実はこれは相当甲論乙駁のある問題だと思います。したがいまして、いかなる方法をとってやるのが一番効果的であるか、また将来のためにもいいかというふうな点になりますと、まだちょっとその方法論を申し上げる段階に至っておりませんですが、いまの安定補給金が一律的なのはいいか悪いかということになると、これはやはり相当問題があるだろうと思います。全体に考えましても、それから山の何といいますか、本来の性格として、山そのものは変わっていく性格があるわけであります。つまり掘り上げればそれはやめて、そして新しいところが今度は生まれてくるというような形になるのでありますから、そういうふうな点も考えて、どうするのが一番効率的で将来労務者関係からいっても安定した職場がきちっとできているかという点がございますから、そういう点いろいろな議論があると思いますが、まだちょっと私はこう考えるというだけのあれを持っておりませんけれども、概括的な感じを申し上げてちょっと恐縮ですが、その程度であります。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 きのう実は麻生参考人も参りまして私申し上げたわけですが、政府石炭産業というものを安定させるために抜本策答申を受けて一応これだけの政策を具体化してまいったわけです。それだけ企業側に対する国民の要求、こういうものも非常に私は強いと思うのです。それにまた自主的に業界はこたえなければならない重大な責任というものがあるのではないか。たとえば、鉱区問題については、最近緊急なところは調整をされておりますけれども、残る山はほぼ明確になってきたわけですから、二十年、三十年のフィールドの決定をして、そこで鉱区調整をしなければならぬものはすでにしておる。そうすることによって坑道展開設計等も長期的な展望に立って合理的な坑道設計が可能である、こういう問題もあるでしょうし、あるいはまた福利厚生施設配置等についてもそういう前提に立って計画的に組まれていくのではないか。そういう意味では、いまその鉱区調整が必要だからそれを調整すればいいのだというような考え方では、これはもうおそいのではないか。むしろ業界側もそういう積極的な姿勢を打ち出す必要があるのではないか。言い出したほうが値段が高くなるから言い出したいけれども言い出せない。それができないとすれば、これは合理化法の改正か特別立法を講じて、ある程度の強制を伴わざるを得ないのではないか、実はこういう意見を述べたわけです。  また流通機構の問題についても、もちろん大きい問題はこれからの原料炭の運送あるいは運賃補給等の問題も出てくるでしょうし、あるいはまた小さいところは二次売店までの流通機構体制についての再検討も、問題をしばしば今日まで提起されてきたわけです。そして、石油に押される。押されると言いながら依然石炭販売というものは従来のままの体制で、一応配炭会社はいまや総合燃料店として石炭も、油も、ガスも扱うという状態にあるわけです。私は特に暖房用炭関係をずっと検討してまいりますと、石炭というのはカロリーとか灰分だけでその持ち味が決定されるものではなくて、粘結性もあるでしょうし、あるいはまた非常にたきいいし、火持ちがいい、つきがいいか、悪いか、こういういろいろなファクターが実は暖房用炭の場合にはあるわけです。しかし、ある炭鉱の炭と、また別の炭鉱の炭をミックスすると非常に使いよい炭になることもこれは事実なわけです。しかし、その古いいままでの売買シェア関係からずいぶんこの点についてもお互いに主張して譲らず、この合理化ができないという状態に私はあると思うのです。しかし実勢価格というものがすでに存在いたしておるわけですから、ある程度地域末端については、これは消費者が使いいい炭を供給する、こういう面の自主的な調整というものがなされるべきではないか。これもなされないとすれば行政指導を上回る何か強い指導といいますか、規制までいきませんけれども、そういうものも必要ではないか、こういう実はこれからの問題として判断せざるを得ないわけです。  あるいは一千億以上の負債元利均等償還をする。普通であれば、その場合にはスクラップ・アンド・ビルドだけではなくして、企業合同編成というものが、本来歴史的に見れば、いずれの企業、いずれの産業の場合にもそういう傾向が取られてきたと思うのです。石炭だけはその面では無傷でこれからもいこうといたしておるわけです。特に中小炭鉱を見ますと、どうしても企業合同を積極的に考えなければならないのではないか。そのことが、長期的に炭鉱が安定することによって雇用も非常に安定すれば地域経済も明るくなる、こういう幾多の問題があるのではないか。あるいは大手の場合でも極端な例は、あるところでは二千メートル離れているところでものすごい投資をして立て坑を掘っている、掘る層は一枚の原料炭の炭層だ、こういう地域もあることは御存じのとおりでございまして、こういう点についてこれからやはり一歩進めていくべきではないか、こういう問題点が私はあると思うのです。  さらに需要の問題につきましては、今年、来年が一番苦しいのではないか、四十四年度に入っていけば漸次供給構造も変わってまいりますし、電発、火力等も非常に変わってくるのではないか、そういう意味で今年、来年二年間の需要対策として貯炭融資ができないとするならば、ある一定引き取りのきまっている量についてはささえるという需給調整の措置が必要ではなかろうか。  大体以上のような問題がこれから大きなポイントとして、考えられるのではないか、かように存ずるわけですが、この点についてお考えをお聞かせ願えれば幸いだと思うのです。
  12. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまおっしゃったところはみんなこれから検討すべき重要点だと存じます。ことに一番初めの鉱区調整の問題でございますが、本来ならばおっしゃったとおりにいくのがほんとうだと思うのです。ただ強制力を用いなければならぬということはちょっと残念なような気がするわけで、その前の段階において相当調整ができれば一番いいと思いますし、それからその内容として将来のその地域の出炭全貌を考えて、効率的にどらやって掘っていくのが一番いいかというようなことまで考えてやるべきであるというお話も、これはそのとおりだと思います。これらの点について一段とわれわれとしましてもまた審議会の場におきましてもディスカッションをしまして、いまもしきりにやっていますけれども、勉強すべき点だと存じます。  それから販売の問題ですが、これはあらゆるくふうをして石炭需要確保をやらなくてはなりませんし、いまの暖房炭ですが北海道が相当大きな需要であったのでありますが、どうもこのごろはそう簡単に売れないような点もあるようで、何とかして寒い地域の暖房炭についてはもうちょっと売れるような商品的な研究を進めることをほんとうにやるべきだと思います。  この企業合同関係は普通の企業と少し違うと思います。それぞれ引っ越しのできない職場でありまして、これをただ合同しただけでぐあいよくいかない場合もありましょう。しかし将来を考えて経済的な効果が出てきて、両者ともいわばぐあいよくいく道であるということになりますれば、四囲の状況によりますが、やるべきことの一つだと思います。ただちょっと違う点があるだろう。  需給関係につきましても、大きな日本全域のことを考えてみましてもやはり問題があるわけであります。つまり炭鉱が少し年をとってきたという地域と、それからまだ若い地域とでいわば出炭増は若い地域のほうへよけいいき得るわけであります。しかしそうなりますと、細長い日本列島で端から端までそこから送るのがいいか悪いか、そうしますと輸送費の問題とからんで必ずしもしからずという問題も出るのではないか、そういうような点も需給関係としては十分に検討してまいりませんと、全体としてのほんとうのこれならというところへいかないのではないかという点もあるだろうかと思います。いろいろ御指摘のところはわれわれとしてさらに努力して検討すべきところだと思うのでございます。  それからいまの、私たまたま経済会におりますが、できれば自覚して業界でやってもらいたい。行政指導で実際の実情を十分話をつけて、干渉するといいますか、どうですかというところまででいいんですが、法律で強制するというところへ行かないうちに何とか問題が解決するようにしたい、当然私の気持ちとしてはそういう気持ちでございます。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 どらもありがとうございました。  時間がありませんので、最後に特にお願いをしておきたいと思うのでありますが、これから長期的に再建計画が出され、この遂行が問題だと思うのです。そのにない手というのは経営者のみならず、炭鉱で働いている労働者だと思うのです。普通一般の就業規則であれば、労働者意見も付されて出されるわけですね。私は骨格については労働者意見も付されて審議会に提出される、こういうことがより望ましいのではないか、こう思われますので、この点はぜひひとつ研究していただきたいということだけを申し上げて終わりたいと思います。
  14. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点につきましては、審議会のメンバーに各組合の代表の方がおられまして、相当の議論がいつもあるわけでありますが、できるだけそういう方々の議論ももちろん反映されてきまっていくべきだ、こう思っております。時に、うっかりごもっともだと思って賛成と言いたいけれども、ちょっと委員長をやっているとそう簡単に言えないというふうな場面もございます。いろいろいい御意見がございますから、できるだけ反映するような形でまいることは当然だと考えております。
  15. 多賀谷真稔

  16. 中川俊思

    中川(俊)委員 具体的な問題につきましては、岡田委員からいろいろ御質問があってお答え願ったのでありますが、重複を避けまして、私は一歩高度な点からお尋ねをいたします。  まず植村さんにお尋ねいたしますが、日本における石炭政策がここ数年来非常に問題になっております。しかし国会におきましても、またあなたが会長をしていらっしゃる審議会におきましても、いろいろ慎重に御審議になっておるのですが、にもかかわらず、この問題は依然として尾を引いておる。一体どういうところに原因があるとお考えでございますか。まずその点をお伺いしておきます。
  17. 植村甲午郎

    植村参考人 なかなかむずかしい問題でございますが、一つは、やはり石炭産業そのものでございます。ほかの経済とのからみ合わせにおいての地位といいますか、この関係が、なかなか相手方のエネルギー諸源というものの力が強いわけであります。御承知のように、イギリスにおいてもドイツにおいてもフランスにおいても、みんな石炭対策をやったわけであります。これがやはり新情勢においてまたちょっと手直しをやらなければならぬというような問題がそれぞれ起きております。ただアメリカは、なお産地によりますと、まだまだ油とけんかしてだいじょうぶだというところも残っております。これは自然条件、立地条件がよくて、大量に安く出て、それを使っておる、これは幾らかあります。ソビエトはまだ石炭増産時代で、非常に熱を入れてやっております。したがって技術的にもほんとうの研究をやっておるから、いろいろな機械をこしらえてやっております。それから先般ポーランドから製鉄用炭を買ったわけです。これはちょうど粘結炭がどうしても必要なところで、条件が合らものですから買ったわけですが、ポーランドとしますと大きな国策として石炭の開発をやっておるわけです。ただ難点は、港にそんなに大きな船が入らない。あそこのパルテック海はあまり深くない。通るところも少し狭くてあまり大きな船が入れません。石炭専用船くらいのところなら……。二十万トンのタンカーというわけにいきません。ということですが、非常に条件のいい、そして質のいい石炭が多く埋蔵量があるものですから、開発にしても少し手伝おうという状況がある。したがいまして条件の非常にいいところは世界市場相手にしてもやれるわけだと思います。しかしそうでない普通の場合はなかなか守勢であって、国の安全保障の意味から、あるいは石炭鉱業そのもののある限界のものはぜひ守っていきたい。それぞれ多少の違いはありますが、同じような意図でそれぞれ政策をやっておる。これはどうも防御的である。イギリスなんかにしても、北海のガスが有利に飛び出してきた。そうなると将来の問題としてはそういうことをマークしてどうするか。新しく手を打たなければならぬというふうな、外界の条件が違ってきますと、手を打たなければ、漫然としていたらだめですから、そういうようなことでどうも守勢に回る形になるのはやむを得ない、こう思っておるわけです。
  18. 中川俊思

    中川(俊)委員 ちょっとはっきりしないのですが、イギリスもドイツも日本に比べますと、わりあいに石炭政策はよくいっておる。しかし日本は石炭の埋蔵量は相当私はあると思うのです。日本における唯一のエネルギー資源です。それがうまくいかない、どういうところに原因があるか。いまお尋ねしたことに対して、最初のほらにちょっとおっしゃいましたけれども、石油の圧力というか、これは今日世界の情勢がそういうことになっておる。しかしそれならば、石油の圧力に対して石炭政策はどうあるべきであるか。石炭だけを取り上げて、日本のエネルギー対策を扱っておるところに間違いがあるのではないだろうかと私は思います。石油もあるし、今日は石油がいばっておっても、さらに何年か後には原子力に追い回される時代が来ないとも限らない。それらを勘案して、いわゆる総合エネルギー政策というものが私ほ必要ではないかと思う。そういう柱を立てないでただ石炭ばかりいじり回しておるところに、石炭政策がいつまでたってもらまくいかないところがあるのじむ、ないかという考えを私は持っておるわけです。  そこで、植村さんは石油のほうにも御関係なさっておるだろうと思います。石油審議会であるとか鉱業審議会、それから石炭鉱業審議会、これらの審議会審議の過程において、そういうような問題は論じられたことはございませんか。
  19. 植村甲午郎

    植村参考人 石油審議会の場ではそういう問題は出ません。ただ総合エネルギー調査会、これはおっしゃるようなことを全部集めてやっておるわけであります。ここではもちろん出ておるわけでございます。結局組織的にどこまでいっておるかということが問題でありますけれども、あそこでは調査会でやりますが、総合的に考えていただく、いわゆる石炭の位置づけといわれる部分につきましても、あそこでいろいろやりまして、まず五千万トン程度のものを持っていくことが、総合エネルギー政策としてもしかるべきではないかという結論を得たわけでございます。あそこじゃやっておるのであります。
  20. 中川俊思

    中川(俊)委員 五千万トンというのは、たとえば総合エネルギー政策のたてまえから、向こう何カ年間くらいは五千万トンである、あるいはその次はこれをふやすべきか、あるいは減らすべきかというような意見も、私は出ておるのじゃないだろうかと思います。そういうような、いわゆる総合政策というものが出ておる以上は、それをひとつ強力に推進をしていただきたいと思います。ただ審議会で議論をされて、一片の答申だけでなく、御承知のとおり、政府答申じゃなかなか動かないのですよ。ですからそれを、植村さんなんか相当お力があるのですから、あなた方のお力で、ひとつうんとこれを推進していただきたい。私はこれをいつでも言うのですが、そういうことを申しちゃはなはだ失礼ですけれども、おえら方は政府から頼まれれば、ひとつ審議会委員になってやって、そこでお茶を濁しておけばいいわいというような、植村さんはそうじゃございませんけれども、そういうような方が多いのじゃないかと私は思うのです。せっかくそういういい意見が出ましたならば、これはひとつ国策の面に及ぼす努力をしていただきたい。むろん私どももしなければならぬし、政府もしなければならないのですが、政府というのはなかなか動きません。石炭局長はここにおりますけれども、幸に石炭のほらは井上局長という名局長がおりますからうまくやっておりますけれども、なかなか動かないのです。ですから、そういう点をひとつうんと私は推進していただきたいということを方々お願いしておるのですけれども石炭というのは御承知のとおり日本は無尽蔵ですから、石油は、いまちょっと中近東でごたごたしておりますが、あれがもし、けさうまくまとまったようなニュースがちょっと入っておりますが、拡大でもしまして、この前のスエズ運河のような問題になりますと、日本は石油が来なくなったらどうしますか。あのときも御承知のとおり大騒ぎをした。ですから、そういうたてまえから言ったら、日本における唯一のエネルギー資源である石炭というものを、石油に追いまくられるからまま子扱いするのだというようなやり方は、私はよろしくないと思うのです。政府でもそういう考えを持っておる者がおりますから、ですからそういう点に対して植村さんあたりは経団連にたてこもっていらして、全く高度な日本のあらゆる政策に関与しておられるのですから、そういう点をひとつうんと推進していただきたいと思うのです。ひとつ御決意のほどを承っておきたいと思います。
  21. 植村甲午郎

    植村参考人 お答えしますが、大体ただそろばん、純経済性からいきまして、相当責められます。それはそのときになればちょっと開き直って防御体制をとるわけでありますが、そうかといって、それでは非常に高いコストになる石炭を掘るか、それだけは海を越えて持ってくるか、そうも言えないわけなんで、そこでまず五千万トンというものを需給関係から考えまして、一応策定されて、その線を守って一生懸命やっておるというわけでございます。調査会でありますから、しかも価格問題の検討その他まだやらなくちゃならぬ点もあるわけですが、とにかく、五千万トンというものを総合エネルギー調査会で認めましたから、それが石炭の特別措置法を出します基本になっておるわけでございます。ですからあそこできまったもので、具体的に国策と関連のあるものは、それぞれある程度は使われておると信じております。そんなふうなことで、私自身としては、ときどき防御体制をとらざれたりすることはありますが、そのときは十分に石炭の問題については主張するということをやっておりますけれども、これはなかなかそろばん片手の手がたいへん多いときになると、多勢に無勢で、そんなことを言ってもといってやられるととがありますが、できるだけのことはやっていきたいと思います。
  22. 中川俊思

    中川(俊)委員 確かに事業家とすれば、そろばんをはじいてやることは当然でございますから、高い石炭を買うよりは安い石油ということになると思います。したがって政府はそういうものに対してはいわゆる援助の対策を講じておるわけです。農業においてしかり、むろん石炭も私はその一環だと思います。ですからそういう点につきましても、ただ事業家だけでなく、高度な立場から経団連あたりはひとつそういう対策を、いままでもやっていただいておりますが、さらに推進していただきたいことをお願いします。  いま一つ、ちょっとお伺いしておきたいと思うのですけれども、きのうも私は経営者の方にもお尋ねしたのです。石炭産業に限らずいずれの業種でも同じでございますけれども、やはりそのものだけの、そのものずばりの経営では立ち行かない場合がしばしばございます。たとえば大きな電力事業でも何とか技術コンサルタントだといって土木事業のようなことをやっている、商事会社が建築会社をやり、繊維会社が化粧品を始めるというような、いわゆる多角経営と申しますか、サイドワークと申しますか、とにかくそういうことを大いにやっておるわけです。ところが、私は石炭もそういうことをやっておられる方もあるだろうと思いますけれどもが、まだほんとうに困っているのかどらかということを私は非常に疑わざるを得ないのです。と申しますのは、経営者はもう多くくの職工をかかえ、職員をかかえておりますと、どうしてもこれは給料を払わないわけにはいかない。銀行が貸さなくなれば、何とかしてこれを乗り越えていかなければならないというので、いろいろ四苦八苦するわけでございます。そういう点について石炭業界は私は案外のんきな安易な考えを持っておるのじゃないかという気持ちがするわけです。ですから、そういう点につきましても、まず第一にお尋ねしますが、そういうことを石炭業界がやるべきであるかどうか。私の言うのは、何も石炭だけではございません。すべての業種ですから、当然私はやってしかるべきだと思うのです。むしろ経団連等はそういうことを指導してなるべく政府のやっかいにならぬようにせよ、おまえらも努力せよ、おれらも努力して政府にできるだけの応援もさすけれどもが、おまえらの努力はまだ足りないぞというくらいな指導をしていただきたい、こういう考えを持っているのですが、植村さんのお考えはいかがですか。
  23. 植村甲午郎

    植村参考人 まあ、あれですな、ぐあいいいものがあって、ほんとうにやって、そうして両方で適当な会社状況をつくっていく、これは非常にいいことだと思います。いわゆる兼業農家についてかれこれ言われると同じ問題があるかもしれませんですが、ですから、これは具体問題としてそういうふうなことが起こるのはちっとも否定すべきでもないし、いいことだと思います。ただ石炭生産は責任持って大体この程度はやるのだというのですから、その責任が果たせないと、これはお金をこっちのほらに入れちゃって、こっちがぐあい悪いというふうなことは困りますけれども、大体の責任が果たせ、それで両方相持ちでうまくいくということであれば、これはもうちっとも差しつかえないのじゃないかと思います。それじゃそれをどういうふうにして進めるかというと、これはちょっとむずかしいと思います。
  24. 中川俊思

    中川(俊)委員 同僚の質問があるようで、委員長さっきからメモをよこしたりしておりますから、私はこれで打ち切りますが、そういう点は確かにおっしゃるようにいろいろケース・バイ・ケースで事情が違うと思いますが、できるだけそういうふうにして石炭産業を――私の申したいことは、日本における唯一無二のエネルギー資源でございますから、これを育成することにおいてさらにひとつお力をかしていただきたいとお願いしておきます。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 田畑金光君。
  26. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの質問にも関連しますが、特に経済界の指導的な地位にある植村さんに見解を承りたいと思いますが、中東危機が起きたということで、石油業界は非常なあわて方をしておるわけです。また政府も、御承知のように原油の輸入先の分散を考えておるし、業界もまた今後のいろんな施策を講じようとしておるわけです。あたかもどろぼうを見てなわをなう姿だと見ておるわけです。すでに御承知のように、毎年わが国のエネルギーは輸入エネルギーに依存する率がますますふえていっているという状況です。こういうようなことを考えてみましたときに、中東のこの危機の問題は、あたかも国内唯一の資源である石炭問題というものを別の角度から見直すべきだという感じを持つわけです。すなわち、これがエネルギー供給の安全保障という問題じゃなかろうか、こう思うのです。  それから、もう一つ感じさせられますことは、つい一両日前でありますか、最高輸出会議においてはことしの輸出目標を百十一億ドルに立てておりますが、この輸出を達成するについても、いろいろ動いていく国際経済の要素があるわけです。しかも、わが国の昨年の輸出の伸び方などの中には相当ベトナムなどが入っておるし、また、特に一番輸出相手国として大きな地位を占めるアメリカの経済の動向など考えてみたときに、毎年十数%の輸出の伸びの期待ということはなかなか至難だろう、こういわれておるわけです。そういうことを考えてみますと、今度の中東の問題が起きますと、特に貿易外収支の赤字がもっとふえるだろう、こういうふうにいわれておるわけです。やはり輸出入のバランス、経営収支がどうなるか、国際収支がどらなるかということがわが国の経済の将来を左右すると思いますが、一千億ドル経済といわれるように日本の経済規模も大きくなってきておりますが、なおかつ外貨の準備手持ちは二十億ドル前後、こういわれておるわけで、そういう点を考えてみたときに、国際収支の健全なあり方をつくるためにも、またわが国の外貨の準備を確保するためにも、できるだけエネルギーの輸入なども押えて国内資源の石炭を守っていくということ、これが国際収支の面からくる石炭産業安定の問題につながると思います。  こういうようなことについて、私は今度の中東の危機での教訓というのは、国内資源の石炭について新しい角度から見直すべき課題を提供しておる、このような感じで見ておるわけでありまするが、植村会長の御見解をひとつ承っておきたいと思います。
  27. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまのお話しの点は、まさしく審議会できめますときに五千万トン程度のものはほしいということをやった大きなところだと思いますが、まあ幸いにして中近東、どうなるかわかりませんが、どうやら火の手がおさまれば、一方からいうと、石炭に好影響が出るほどのことはない。同時に日本の貿易阻害あるいは原油関係というようなものについても、あまり影響がない程度で終わろうと思いますけれども、これがまあ一年なら一年続くことを考えますと、いよいよやはり国内資源である石炭というものが大切であることはわかるわけであります。平生からの消費分野をどんなふうにするかというようなことも安全の問題とは関連いたします。これは歴史があるからでありますが、イギリスがこの前のスエズ戦争のときに困りましたけれども、困ったのはガソリンに困ったので、重油に困った程度は少ないですね。あれは国内炭を相当使っておりましたから、そういうような点も勘案して、将来の需給計画のときは考えるべき問題はあるんじゃないか。ただ、どうも石炭は何か横っちょに置いておいたけれども、これだっていざとなれば大切だぞという一つの警鐘的な価値はあったんでしょうが、実質はあらわれてこないと思いますが、将来のいろいろな計画検討等については、そういうような点がいままでよりももうちょっと強く考え得るんじゃないか、これは皆さんどう考えるかという問題になるかと思います。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これにて参考人の御意見に対する質疑は終了いたしました。  植村参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず本委員会出席くだされ、貴重な御意見をお述べいただき非常に参考になりました。厚く御礼申し上げます。      ――――◇―――――
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 それでは次に、内閣提出石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。田畑金光君。
  30. 田畑金光

    ○田畑委員 いま資料をいただきました。この間私の申し入れた資料だと思いますが、いま手渡されたので内容をよく読む余裕もありません。この説明を受ければ、大体私のこの間質問したいと思った内容が明らかになると思いますので、これを簡単に説明してくれませんか。
  31. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいまお手元に参考資料といたしまして、石炭鉱業再建整備臨時措置法の政省令関係の大体の石炭局といたしましての考え方を配付いたしたわけでございます。ただ、現実に最終的にこの案を固めます場合には、なお、政府部内ではさらに検討を必要といたしますし、ざらに従来の経緯にかんがみまして、石炭鉱業審議会の政策懇談会等の検討を至急いたしたいというふうに思っておりますが、お手元に配付いたしましたのはいわば私ども石炭局の考え方でございます。ただ石炭局の考え方と申しましても、先生方御承知のように、昨年の七月に政府に出されました石炭鉱業審議会の答申は、相当具体的な内容について触れられております。その具体的な考え方がこの中に盛られておりまして、それをある程度数字であらわしておるというような関係でございます。  まず最初から申し上げますと、前回も問題になりました第二条の再建整備計画の対象会社基準につきましては、いわば対象会社たり得る資格要件でございますが、採掘可能鉱量につきまして過去三カ年間の平均年間生産量の十倍以上であるとすること、それから第二は、財務の状況につきましては、実質赤字があることというようなことを条件にいたしております。実質と申しますのは、会計法上いろいろな退職給与引き当て等については、当然積み立ててしかるべきものを、見かけをよくするために十分な引き当てをしてないというものを引き当てたというふうに仮定いたしますと、それだけ赤字がふえますから、つまりそういった健全経理をもう一ぺんやり直したあとの赤字というようなことにいたしております。そうなりますと、今日の石炭企業相当程度の赤字が出るわけでございます。それを条件にいたしております。  それから第二は金融機関の範囲でございますが、この金融機関の範囲につきましては第四条でございますが、ここに書きましたように、ほとんどすべてと言っていいような金融機関を一応網羅いたして、おります。ただ政府から無利子で融資している近代化資金等についてはとれを除いております。有利子の融資をいたしておるものは対象とする、そういうような考え方がこの背後にあります。  それから第三点は、同じく第四条の問題で、前回御質問がありました点でございますが、借り入れ残額に乗ずる比率の、率の問題でございますが、これはこの算式にもありますように、まず分子のほうですが、分子は当該会社の元本補給額です。元本補給額はどうして出すかという点につきましては、備考欄に一案と二案と出してありますが、一案につきましては前回私が答弁いたしました内容でございまして、これは、この法律によりまして千億相当の金を各会社に配付いたすわけでございますが、その計算方式としましては、全体の対象企業の借り入れ残高、これに実質赤字の累積額を加えまして、これを分母に置きまして、それから当該企業の借り入れ残高と当該企業の実質赤字というようなものできめたいというふうに考えております。第二案は、この実質赤字を一応考慮しない、昨日中小炭鉱のほうからお話のありましたのはこの第二案、全対象企業の借り入れ残高分の当該企業の借り入れ残高、こういうような考え方、この二案がいまあるわけでございまして、いまいずれとも決定いたしておりませんが、理論的にいいますと、数字からいいますと、第一案のほらが、本法の趣旨である会社経理の困窮を救う、それから過去の閉山合理化過程で生じました赤字を解消させたいというような趣旨からしますと、第一案のほうが理論的には正しいし、また公平であるということが言えるわけでございますが、ただ第二案のほうは簡明であるという点で長所がある、そういう点で第二案も一応私どもの考え方として関係方面と折衝中でございます。  それから第四は償還の方法、これは第六条の第二項でございますが、「元利補給金の交付を受けた会社は、最後に元利補給金の交付を受けた日の属する営業年度の直後の営業年度から、その日から起算して五年を経過した日の属する営業年度までの各営業年度に係る決算について通商産業省令で定めるところにより計算した利益の額が」云々ということがあります。これは利益を計上した場合に国に納付するという規定でございますが、そのときの利益を計算する納付のやり方につきましては、まず第一に、利益の計算方法につきましては、先ほども申し上げましたように、やはり適正な減価償却はきちっとやらしたという前提、それから退職給与引き当て金の引き当てもきちっと行なう。これは通常経理をしますときにこれをみんな繰り延べたり何かしておりまして、そうして見せかけ黒字を出しております。黒字といいますか、赤字を少なく見せかけておるのが通例でございますが、今度は、利益が出たときに国に納付するというような場合には、これを特に通常の公表損益というものでなしに、税法上認められる減価償却はやったという前提、それから同じく税法上許される退職給与引き当て金の引き当てはやった、そうした計算をしたあと、利益がある場合に対象とするという考え方でございます。  それからなお、同じく同条に利益率の問題が出ておりますが、これは年一割五分程度といたしたいというふうに考えております。  それからなおそのあとに、第七条でございますが、「通商産業大臣は、前条の規定による納付金を納付しない会社があるときは、期限を指定して、その納付を督促しなければならない。」というような、強制徴収の条項があるわけです。この際債権行使という問題があるわけですが、債権行使の費用の範囲につきましては、これはややこまかいことでございますが、通信費とか交通費とか、担保権保全実行費用、訴訟費用をこの中に入れて考えたいというような、これはいわゆる事務的な問題であります。そういうことも考えております。  それから第七番目としましては、利益金処分の認可の条件ということでございますが、これは経理規制の問題に関する問題でございます。第十二条の二項に、「その申請に係る営業年度において、政令で定めるところにより、減価償却その他の費用について必要な経理を行なった後に行なうものであること。」、これも先ほど申しましたように、現実のいわゆる公表損益というような形の経理内容ではなくて、もう一ぺんやるべき減価償却は行ない、退職給与引き当て等についても税法上認められる限度まではやるという前提で見て、しかる上で利益金がある場合にその処分をどうするというようなことで考えてまいりたいという趣旨でございます。  以上、簡単でございますが、おもな政省令の内容について御説明いたしたようなわけでございます。
  32. 田畑金光

    ○田畑委員 この間も私、指摘いたしましたが、また昨日の参考人の御意見などを聞いてみましても同じようなことが指摘されていたようでありますが、この法律の重要な点が、いま説明あった問題などもそうでありますが、政省令にゆだねられるわけです。したがって、その内容いかんによっては、適用を受けない炭鉱、特に中小炭鉱相当ありはしないか、こういうことを憂えるわけです。日本石炭鉱業連合会の植田さんの昨日の公述のプリントを拝見しますと、いまの点について、「従いましてこれら基準につきましては、答申にも『中小炭鉱については若干条件緩和を図る』旨明記」されております。したがって、できるだけひとつ中小炭鉱がこの対象になるように、政令、省令の内容二ついても考えてもらいたいということを希望しておりますが、この点はひとつ局長からも、このようなことに沿うように御努力願いたいと思いますが、あらためて見解を伺いたい。
  33. 井上亮

    ○井上政府委員 お説のように、石炭鉱業審議会から政府に提出されました答申案の中にそういうことばが入っておるわけでございます。私ども、この法律の運用にあたりましては、答申趣旨にも沿いまして、そういった弾力的配慮をいたしたいというふうに考えております。  ただ配慮のしかたといたしましては、私は率直に申しまして、この炭量はやはり十年ということでやっていただきたいというふうに考えております。実際問題といたしまして、今日中小炭鉱がこの再建整備計画の提出をして、肩がわりを受けたいという希望を出しておられる企業があるわけですが、私、予備審査でその内容を検討いたしておりますが、大多数の企業につきましては、十年というふうにいたしましても、一応、対象会社たり得る資格を持ち得るのではないかというふうに考えております。  むしろ中小炭鉱について問題になりますのは、この炭量ではなく、むしろしっかりした再建計画ができるか、二条の各項でうたっておりますような内容、さらには金融機関の今後の協力体制というようなものが受け得るかどうかという点がむしろ中小炭鉱の問題でございまして、したがいまして私どもとしましては、中小炭鉱に対する配慮といたしましては、この法案にもありますように、審議会におきましていろいろこの再建計画について意見を聞き検討するわけでございますが、そういった際、あるいは当該中小企業関係金融機関との関係調整といいますか、あるいは政府のあっせんというような点で十分の配慮をして、できるだけ多くの中小炭鉱が肩がわり措置を受け得るように努力してまいりたいというふうに考えております。
  34. 田畑金光

    ○田畑委員 肩がわり措置にあたって、借り入れ残高のみを基準にするか、あるいは先ほどもお話しのような実質累積赤字を加味するか、これによって、やはり相当個別の企業には影響が出てくると見るわけです。なるほど、先ほどの局長の御答弁のように、この法律の趣旨あるいは答申の内容などから見た場合に、理論的にしかも公平な措置としては、借り入れ残高と累積赤字を加味しながら肩がわり措置を行なうことが適切であるという感じがいたしますが、そこで問題になることは、  一つは次のことだと思います。先ほどの説明の中にもありましたように、またこの法律の中にも書いておりますように、合理化事業団から出た近代化資金は除外する、あるいは一年以内の市中銀行などから借りた運転資金は除外する、こうなっておりますが、この合理化事業団からの無利息の近代化資金は別としても、市中銀行から借り受けた一年未満の短期の運転資金というのは、決して短期じゃなくて、実質は長期の資金であるということ、これは昨日の参考人の公述の中にもはっきり出ているし、またいまの炭鉱企業市中銀行から壷を借りる場合は、結局短期資金として借りて払えないから、実質は長期の資金にせざるを得ないというのが実態だ、こう思うのです。  そういうことを考えてみますと、一つは、そういう短期運転資金も借り入れ残高に入れて顧慮することが必要でないかということ、それからもう一つは、私は今日、大手といわず中小といわず、企業経理が比較的いい山というのは、元来、過去十何年間の、あるいは特にこの合理化が始まって以来の山元における労使の協力というものが、やはりその山の健全な経営というものを維持してきたという面は否定できないと思うのです。そういう点から見た場合に、実績累積赤字を加味するということになれば、正直者がばかを見るという批判も出ないでもない、こう思うわけで、そういう点などから見るなら、私はこの借り入れ残高に応じて肩がわり処置をやるということが、むしろ実態的には公正であり、公平を期するんじゃないか、こういう感じを持つわけですが、その点どうでしょうか。
  35. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先ほども申しましたように、私はやはり石炭鉱業の今後の倒産、崩壊を防止していく。それから特にこういう措置が必要になってまいりました大きなゆえんは、やはり石炭鉱業の最近におきます大きな閉山、合理化過程で千二百円という問題もありましたが、そういった事情で膨大な赤字負債をかかえているというような点が問題であり、これを脱却するような施策をしなければ、私企業としての再建はなかなかむずかしいというようなところから考えました施策でございますので、単に借り入れ残高だけで考えるという考え方には――借り入れ残高といいましても、中には正常な借り入れもあるわけでございますし、異常なものもありますし、設備等の問題についても必要があって借りたというような考え方がありまして、これだけというのはちょっと抵抗を感ずるわけでございます。ただ、先ほども言いましたように、だからといって、この実行にあたっては、先生が御指摘のように、借り入れ残高だけで見るという見方も、これは簡明であり、事務的にもきわめて簡単であるというような意味で、私ども魅力感じております。その場合には、やはり借り入れ残高の中には、過去のそういった赤字要因その他のものがすべてそういう形の中で具象されているというような意味で、先生おっしゃるような見方もできないことはないと考えております。  そこで、私どもとしましては、ただいまこの問題については、さらに関係省とも最終的に練りたいと思っておりますし、同時に、先ほど言いましたように、石炭鉱業審議会といたしましても、この問題をさらに検討する予定になっておりますので、先生の御意見を体しまして、十分今後の折衝をいたしたいというふうに考えております。
  36. 田畑金光

    ○田畑委員 政府が再建整備会社として認定するについては、この法律によれば、その前提として、当該会社政府関係金融機関あるいは市中金融機関の間にこの法律に要請する基準に該当するような対策、借り入れ契約が条件変更されて、その上に立って政府に認定を求めた場合に、以下の基準に該当すれば政府はこれを再建会社として認定する、こういう手続きになるわけですね。
  37. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 そのとおりでございます。
  38. 田畑金光

    ○田畑委員 そこで、私はこの間も大臣並びに石炭局長に質問をし、そしてまた昨日参考人にもお尋ねをしたことですが、それは、特に市中銀行の場合に、債権のたな上げ期間を十年、さらに利息は五分にして、残余の利息は切り捨てるというこの措置が、今後市中銀行をして、石炭会社に対する継続的な融資の道をつないでくれるかどらか、私はこの問題に非常に不安を感じているわけです。すでに昨日の参考人意見の中にも、銀行によっては、それじゃ困る、すでに土地、建物その他の物件が担保にも入っているので、肩がわり措置をとる前に、ひとつ物件を処分して返済してくれ、こういうような強硬措置を言ってきておる銀行もある。また、かりに政府の肩がわり措置によって、財政資金の肩がわりということになった場合、なるほど炭鉱は身軽くなるかもしれぬが、銀行がおそらく今後貸してくれぬだろう。金融はかえって梗塞する不安が出てきておるというような答弁があったわけですね。そこで心配することは、せっかく中小炭鉱などで肩がわり措置をやろうと思っても、銀行がそういう態度で来ますと、結局銀行と会社との貸借契約の変更というものができない。したがって、認定を申請することはできぬ、こういうようなことも心配されるわけですが、こういうような点については、石炭局としてはどのように指導され、あるいは処置されようとするのか、お尋ねしたいと思います。
  39. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 昨日もそういうような意見があったわけでして、そういうことがありますだけに、先ほど先生のおっしゃいましたような、一年以内の短期資金まで十年で払うというようなことをいたしますと、いよいよもって市中銀行は短期資金まで貸さなくなるということになるおそれがあると思います。  また、最初に御質問がありました、政府は十二年、市中は十年というような点で、でございますが、これはどちらかというと、市中銀行に有利に均等償還するという考え方を一応とっております。しかし、金利につきましては、御指摘がありましたように、市中銀行は大体八分以上の金利で石炭鉱業に貸し出しております。したがいまして、今度元利均等償還いたしますのは、五%、五分でございますから、その差額は市中銀行に泣いてもらうという考え方をとっておりますので、その点は、一見シビアーのように見えると思いますけれども、この点につきましては、私ども石炭鉱業審議会が答申を出します前後におきましても、関係金融機関とは十分に打ち合わせをいたしまして、確かに金融機関から、最初は五%に切られるのは困るというような意見が出たことも事実でございますが、しかしやはり、国が石炭鉱業のこういった異常な債務につきまして、これだけの措置をとるわけでございますから、市中銀行もやはりこれに対してこの程度の協力は願いたいというようなことで、全銀協、地銀協等も今日では了承いたしております。当初そういった反論があったことは事実でございます。そういう状況でございます。  それからなお、こういう金利等につきまして、金融機関に一部泣かせるというような措置をとりましたために、逆に今度石炭鉱業に対する金融機関の協力の熱意が非常に薄くなるのじゃないかというような御意見もございますが、これらの点に  つきましては、金融機関に対してこれだけの国の助成策をやるわけでございますから、私ども、当然中に入りまして、市中の協力体制をつくってまいりたいというふうに考えております。現に、私ども、昨年から、市中銀行を中心として、市中銀行関係官庁、それから審議会、三者一体になった金融懇談会をつくっておりますが、ここでも、この再建計画後の金融対策という点について何回か議論を重ねておりますが、この席上でも、市中銀行は、この措置をやっていただいた後における、また、再建計画ができた後における金融については協力するということを申しておりますから、私どもはそういった線で市中銀行指導してまいりたいというふうに考えております。
  40. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの点は、政府石炭局長お話を聞くと心配がないということだし、また、直接銀行と金の貸借関係を持つ企業経営者は心配がかえって出てきたというような答え方をしているし、その立場立場でいろいろな話になるわけでありますが、これはこの種の問題だからやむを得ない面もあろうと思います。ただ、私は、特にこの点を強く要望しておきたいのは、いまの局長の最後の答弁の中にもありましたように、政府、業者、業界、あるいは金融機関、三者の間に金融懇談会を持っておいでのようです。特にその中には、全国銀行協会連合会も、地方銀行の協会ども参加しているようでありますが、政府のほうから、全国銀行協会連合会や、全国地方銀行協会などにこの趣旨を強く徹底してもらって、各炭鉱会社との取引のある中央銀行、市中銀行にも、この趣旨に基づいて、この政府政策を了として協力ができるように、強く指導し、要請してもらわなくちゃ困ると思うのです。  ただ、私は、この間の質問でも申し上げましたように、市中銀行、地方銀行の貸し出し金利五分ということでは、資金コスト精一ぱいじゃないかという感じをするわけです。そういうことになってきますと、私企業に対して、しかも私企業である銀行がそれだけ犠牲を払うならば、その前に政府金融機関こそ犠牲を払うべきじゃないかという気持ちが市中銀行筋には強く出ていると思うのですね。だから、そういうことを考えてみると、むしろ、私は、政府関係金融機関の金利をもっと値切って、そして市中金融機関については、逆に六分五厘くらいを保証するような措置こそ金融機関として石炭の再建に協力させる道ではないかと考えておりますが、これはひとつ今後の参考として聞いておいてけっこうです。聞きおく程度にとどめてもけっこうでありますが、ただ、強く大臣にも要望したいのは、いま申し上げたように、銀行筋に、今後とも金融協力ができるような強力な申し入れあるいは呼びかけをしていただきたい、こら思っております。  それからもう一つ局長に。先ほどの資料の説明の中で、おおよそ私は理解できたわけでありますが、これも昨日の参考人意見の中で、こういうことを述べております。「元利補給契約をしたものが黒字を計上したら、将来にわたって契約は解除されることとなっていますが、過去の過重負担を軽減するという趣旨からすれば、納得できないこともございませんが、実際的に見た場合、元利補給があってやっと少し黒字になったものに対して、これを打ち切られましたら、再び赤字に転落することは明白であります。したがいまして、元利補給とあわせ、企業努力により黒字となって元利補給が解除される企業に対しましては、他の前向きの対策によって将来とも経営が安定するよう、特段の対策措置をお願いいたしたいのであります。」こういう希望が述べられておりますが、先ほどの局長の資料説明によりますと、利益の計算というのは税法上の適正な減価償却及び退職、給与引き当て金の引き当てを完全に行なったあとの利益を対象とし、しかも利益率は年一割五分とする、こういう基準になっておりますので、昨日のこの参考人の述べられた御心配もこれで解消する、こういうように見るわけでありますが、この点をもう一度局長から、ひとつ念のために伺っておきたいと思います。
  41. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先ほど資料として配付しました政省令の案につきましては、本日初めて全貌を明らかにしたわけでございまして、まだ関係業界等にはこういうお話は十分徹底していなかったわけでございます。したがいまして、この法案を見ましての誤解あるいは杞憂があったのではないかというふうに考えております。
  42. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今後の石炭産業に対する金融アフターケアのことについて、いろいろ御心配になっておられると思いますが、要は、この石炭産業が安定するということが先決問題なのでございます。その意味において、今度いろいろ石炭対策に対するこういう法律案を提出しておるので、石炭審議会答申によってこういういろいろな案を出しておるのでありますからして、幸いにこの本国会でこれらの法案の御審議を願い、また御決定願うことができれば、私は金融機関に対しても強くめんどらを見てもらうというような要望ができると思うのでございまして、そういう意味で、ひとつ皆さん方の御審議を十分していただいて、すみやかにこの法案すべてのことを御可決願えれば非常に幸いだ、こう存ずる次第であります。
  43. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣もおそらくお聞きのとおり、この法案の採決も、もうすぐ、目の前に来ているわけで、そのためにわれわれ一生懸命協力をして審議を早めているわけですから、その点はひとつ御安心をいただきたいと思います。  そこで、法案が成立したとしても心配されるのは、この法律に基づく手続というのは非常にややこしく、また複雑だ、こういうことですね。そこでこれも昨日の参考人の御意見の中に、「本法実施にあたり事務手続を極力簡素化していただきたいことであります。中小炭鉱は事務能力が一般的に十分でありませんので、この事務手続が複雑煩瑣でありますと、中小炭鉱はこれについていけず、せっかくの国の施策も受け入れられない結果」となるおそれがあります。これはすなおな御意見だと思うし、また実際そうだと思いますね。したがって法律が成立を見た、すぐ政令、省令に移るわけです。そうしてまたいろいろそれに基づく手続というものがとられるわけです。この間もらすでに何度も石炭局長から、法律が通ればすぐでもできるような態勢は、もう下準備は進めておるのだというお話がなされておりまするが、間違いないと思います。間違いないですね。その点をひとつ御答弁いただきます。
  44. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、この法律運用にあたりまして、あまり複雑、煩瑣な手続を要しないようにしていただきたいということでございますが、ごもっともな御意見でございますので、できる限り私どもそのような努力をいたしたいと思っております。  ただ一言付言さしていただきますと、そうは申しますものの、やはりこれだけの膨大な国の資金を支出するわけでございますので、この法律にもありますように、やはり経理規制は厳正にやってまいりたいというふうに考えておりますので、この点については大手、中小あまり手心を加えるわけにまいりません。その点だけはひとつ御了承をいただきたいと思います。
  45. 田畑金光

    ○田畑委員 それではもうあと一、二点だけお尋ねしておきたいと思うのですが、これはいつか大蔵委員会とこの石炭特別委員会の連合審査のときにお尋ねした件でありますが、周囲の中小炭鉱が閉山したことにより、その坑内水が残存炭鉱に浸透していって、それが非常に保安上も、また排水の経費の面にも大きな負担となって、これで困っておる炭鉱相当あると聞いておりますが、その事例をひとつ御説明願いたいと思います。
  46. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま私どものほうでそういった実態についていろいろ各企業から御意見を承っておりますが、その中で代表的なものを申し上げますと、まず東のほうから申し上げますと、常磐炭鉱地区でございます。これは特にこの常磐地区につきましては、これは全国各地似たような傾向はありますが、周辺炭鉱が閉山しまして、たとえば磐城炭鉱を例にとってみますれば、あそこは非常に水の多いところでございますが、それがさらに周辺の山が閉山しましたために、さらにこの水が非常に増加してきておる。そのために電力費の負担等相当増高してきておるというような実例がございます。それからさらに九州へ参りますと、筑豊地域におきましては、やはり同様な傾向があります。山の名前を代表的に申し上げますれば、三井の山野炭鉱、それから同じく田川炭鉱等におきましては、これが数年前と今日では格段の違いになっておるわけであります。水の量が逐年ふえてきておる、周辺の閉山に応じて増加してきておるというような実例が見られるわけでございます。
  47. 田畑金光

    ○田畑委員 いま石炭局長お話しのとおり、私の調べた資料によれば、たとえば常磐炭鉱の場合を見ますと、これは御承知のごとく元来が水、温泉の多いところです。この山を一例にとりますと、昭和三十二年当時隣接炭鉱より揚水していた水量が毎分二十八・二トンであったが、その後隣接炭鉱は終掘、事業団買い上げにより現在の揚水はわずかに毎分五・三トンにすぎなくなり、したがって毎分二十二・九トンの水が深部を稼行している常磐炭鉱に浸透し、これが温泉となり、同炭鉱の排水の負担増、あるいは採掘作業の阻害となって現実にあらわれているわけです。このように非常な負担というものを当該炭鉱は受けておるわけで、これが保安上ゆゆしき問題であるだけでなく、排水費の高騰によって企業体の経営が非常に苦しくなってきておる。これがためにたとえば常磐炭鉱がどの程度の必要な設備をやっておるかというと、六億排水設備その他にかけておるわけです。そして年間の経費が二億九千万円になっておる、こういうことです。電力費だけでも一億七千万にのぼっておるということ。常磐炭鉱だけかと思ってみますると、先ほどの局長の答弁にもありましたように、山野炭鉱の場合などはどうなっておるかと申しますと、これは流入水というのが昭和三十八年から毎年ふえてきて、そして揚水経費が昭和四十年度にはトン当たり三百十六円にのぼっておるわけです。あるいはまた田川地区にある新田川炭鉱の例を見ましても、揚水経費というものが毎年ふえてきて、四十年にはトン当たり百七十一円、四十一年には百八十八円、四十二年には二百八十九円、四十三年以降には三百七十六円になるであろう、こういうことがいわれておりますが、この問題については、特にこの間の連合審査のときにも、大蔵大臣からも答弁がありましたし、大臣からも御答弁がありましたが、やはりこれは政府石炭政策に基づいて発生してきた被害であるとするならば、この際何らかの形でこの問題の解決をはかっていただきたい、こう考えておるのですが、あらためて大臣と局長見解を承っておきたいと思います。
  48. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 周辺炭鉱の閉山によって排水費が増加してきたということにつきましては、これは財政資金による融資等の資金援助によって、これを何とかして救済したい、こう存じております。
  49. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま大臣お答えになりましたが、結局この問題につきましては、周辺の炭鉱の閉山、それと坑内水の増加、その因果関係が科学的に明確になれば、これは鉱害ということになるわけでございますが、この周辺の炭鉱の閉山というものと坑内水の増加というものの因果関係、これはもう少し科学的に調査してみる必要があるんじゃないかというふうに考えております。しかしこれが鉱害になるかならないか、これはなかなか議論のあるところだと思いますが、しかしいずれにしましても、何といいますか、私どもの見た目からいたしましても、歴史的、経過的に見ましても、とにかくやはり周辺炭鉱が閉山されれば、水はおのずから低きに流れるわけでございますから、残った山に集まるというのは常識でもございますので、こういうことのために非常に困窮しておられる山につきましては、私どもも何らかの方途を講ずる必要があるというふうな考え方を持っておるわけでございまして、具体的にどうするかということにつきましては、さらに先ほど申しましたような周辺の閉山と坑内水増加との因果関係等ともからめまして、ひとつ検討いたして前向きに対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 速記を続けてください。
  52. 田畑金光

    ○田畑委員 局長は同じ答弁ばかりしてさっぱり解決してないということですが、私は衆議院の特別委員会では、この国会で初めて、この問題に関する限り大臣並びに局長に質問しておるわけで、大臣並びに局長の答弁は、国会で約束したことは必ず来年の予算措置などについては具体化されるものと、こう期待しておるわけです。  いまの局長の答弁の中で因果関係云々というわけでありますが、実際そのような該当炭鉱の坑内の水の増量を見るならば、あるいはこれがためにかけている排水費や電力費のふえ方を見るならば、因果関係があるということは、この数字の中からも明確に言えると私は思うのですよ。今日まで、いま局長お話のように、因果関係があるかないかということで、その観点に立って何か科学的な調査でもなされたことがあるのですか、ないのですか。
  53. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 私の知っている範囲では科学的調査はしていないと思います。ただやはりいろいろ当該炭鉱が自分の山の水のふえ方等につきまして統計をとっていることは事実でございます。しかし、それがほんとうに因果関係が明確にあるかどうかということにつきましては、やはり地下水の流動する姿等につきましての相当科学的な立証がないと、この辺は明確にはならないというふうに考えております。  ただ、私どもそういうことはさておきまして、いずれにしましても相当炭量のあるビルド山がこらいったことのために、つまり、排水費の増加、そのことは言いかえれば、コストの増加要因あるいは赤字の増加要因にもつながるわけでございまして、そのことのために苦しんでいるという実態はあるわけでございます。そういった実態に対して、このビルド山をどのように維持していくかというような面からの助成策については、同時に検討しなければいかぬという趣旨で御答弁申し上げたわけでございます。
  54. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、こういう事例というのは今後ふえこそすれ減るということがない、こう思うのです。また当該炭鉱においては常に計数的にもその因果関係を立証し得るような調査あるいは統計資料を持っておるわけでありまするから、やはりそのようなものを十分顧慮されて――この問題について、この間、菅野通産大臣はもうお忘れになったかもしれませんが、あの連合審査のときには、私、速記録を持っておりますが、鉱害の一種として前向きに解決のために努力するということを明確にお話しなさっておりますね。きょうはまたちょっとその辺がふらふらと後退したような答弁で、大臣、それじゃ困りますよ。大臣という最高の責任ある人のお話だから、われわれはそれを信用して、そうして審議にも協力するし、早くこの法案を上げなければならぬという気持ちで、質問したいのもできるだけこれをセーブしながら質問を控えておるのですから……。  そうしますと、この問題については大臣並びに局長としては、鉱害の一つという前提に立ってこの問題を解決するというような方針は動かしがたい、これは正直なととろなんだ、こういうように私は理解しようと思っておりますが、それでよろしいかどらか。これはぜひひとつ来年の石炭政策一つとして取り上げて、何らかの解決の方向を確立していただきたい、こう思っておりますが、この点ひとつあらためて大臣の見解、所信、石炭局長の考え方を承っておきたいと思います。
  55. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 これが鉱害ということがはっきりわかれば、もちろんその鉱害としての対策を考えるわけですが、いま局長から申しましたとおり、まだそこらの科学的な証明がつかないので、その点が鉱害として処置するかどうかということはまあ未決定にいたしましても、とにかくこの排水のための費用が増加したということに対しては、これは来年度から前向きに考えていきたい、こう存じておる次第でございます。
  56. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 大臣の御答弁を体しまして努力いたします。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 関連質問の通告があります。これを許します。岡田利春君。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 田畑委員の質問の中で局から石炭鉱業再建整備臨時措置法政省令石炭局案というものを出されたわけです。ここで特に問題なのは、3の「借入残高に乗ずる率について」、そして第一案、第二案が出されているわけですが、少なくとも昭和四十一年下期決算がそれぞれ株主総会が開かれてすでに終わっているわけです。しかもこの法案は早急に衆議院を通過させなければならないということで審議も大詰めに来ているわけですが、この衆議院通過にあたって、算出の方式が確定しないでこの法案を衆議院を通過させるということは、院の権威においてこれは問題だと思うのですね。おそらくこれが参議院に行って、参議院でも同様の問題が出てまいると思うわけです。したがって、明白総理が本委員会出席をするわけですが、第一案、第二案について早急にまとめて、いずれの案をとるのか明らかにしなければ、あらためて理事会を開いて法案審議について再検討しなければならぬのではないか、こう私は考えざるを得ないわけです。この点について明日までに一応通産省として、局としてこの方向がまとめられるものかどらか、この点が第一点であります。  それから第二点は、それぞれ当該会社の昭和四十二年四月一日現在の借り入れ残高ということは、結局三月三十一日で決算が終わり、今年の四月一日の借り入れ残高になるわけです。従来はこの政策が出た年度で一応打ち切るというのが答申趣旨でもあり受けとめ方でもあったことは間違いがない。悪くいえば、今度五月に行なわれた株主総会において、いわゆる四十一年の下期決算において赤字にしてしまう、そうすると、これは適用を受けるという案なわけです。しかも大手では当然従来黒字の山が今度の決算で赤字になっている企業があることも事実なわけです。悪く勘ぐれば、何かそういう点で当初の受けとめ方とずいぶんとの案は違うのではないか。そういう中で何かこの案を見ますと、工作的にいわゆる赤字決算をする、それが適用になる、こういうことに私はなるのではないかと思うわけです。そういう点について、いつごろからこの四月一日残高という方針が立てられたのか。これはごく最近でなければおかしいはずなんですよ。
  59. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 おことばを返すようではなはだ申しわけありませんが、きわめて心外なる質問でございますので御答弁させていただきたいと思います。  この法案にもありますように、四十二年三月末ということで一応残高を押えておるわけでございます。昭和四十二年四月一日現在において借り入れ残高のある借り入れ金を対象にして肩がわりする、こういうふうに書いてあります。この点につきましては当初からこういう考え方でございます。  それからもう一つ石炭政策を実施する、しかもそれを効果ある実施をするという場合には、一番至近年次をとらえてやるのが正当でございます。赤字の累積等を解消いたしますときに、一年も前にあった赤字、その後累積された赤字は考えないというような助成策は現実的でございませんので、やはり一番至近年次、本来でいえばこの法案が通った現在における赤字でも私は差しつかえないというふうに考えるぐらいでございます。ただ、しかしそれは、岡田先生おっしゃるように、そこまで言うのは少し常識に反するかと思いますので、できるだけとらえ得る最近至近年次というのが石炭政策、特に助成策を実施するときの態度ではないかというふうに考えておりますので、この点については何ら作為あるものではなく、政策の常道に従って考えたわけであります。  それから第一案、第二案の点でございますが、これはいわば技術的な、行政にまかされてしかるべき案ではないかというふうに考えております。私はそう考えますけれども、しかし先生方そうおっしゃられますならば、私は一案をとりたいということを申し上げます。ただ、行政というのはそう簡単にもいきませんで、これは私の案ということで出しておるわけでございますが、なお関係省あるいは石炭鉱業審議会の政策懇談会等においてももら少し慎重に配慮しようということでございますので、国会の先生方の御意見、田畑先生からも先ほど御意見がありましたが、諸先生の意見もいろいろ参考にいたしまして、しかもそれをできるだけ尊重するような形で審議会等においても努力いたしたいというふうに考えておりますので、この点はひとつ御容赦いただきたいと思います。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 この問題は重要です。実際に個々に適用を考えますとやはりいろいろ問題があるのです。私はここで具体的にあまり議論したくないわけです。これは非常に重要な問題ですから、この点若干打ち合わせをしてもらって、ある程度の方向づけをするなり、一応資料がこういう形で出たわけですから、出た以上この方向づけをしないでこの法案を通過させるということは私は非常に重大だ、こう思うわけです。この点について、特に大臣も来ておるわけですから、あらためて意思統一をしてもらいたい、こう思うのです。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 速記を始めて。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は概略明らかにしなければならぬと思うのですが、この法律の適用を受ける山ですね、私の判断では大手では適用を受けないのは三社くらいで、中小では適用を受けるのは十五社くらいではないか、こう判断をいたしておるのですが、大体そういう理解でよろしいのですか。
  64. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 大体そのとおりでございます。大手はもう少し受けない会社があるかもしれません。
  65. 田畑金光

    ○田畑委員 私はこれで質問を終わりますが、特に希望しておきたいのは、さきの質問に関連してですが、私の質問の中で、坑内水の問題について前向きで検討願うということで大臣並びに局長は御了承されたので、その行くえをこれから見ていきたい、こう思っておりますが、特に念のために申し上げておきたいことは、鉱害の一種として云々という質問の答えがありましたが、ただそれがいわゆる鉱害理論で、周囲の鉱業権者がいないから賠償も何もとれないのだというようなところで片づけるというような意味の答えとすれば、これはまた全く逃げる結果になるわけで、政府の答弁もそういう気持ちで答えたものと私は見ていないわけです。不可抗力で政策上の被害としてこれが出たとすれば、かりに安定補給金の中で見るわけにいかぬかどうかというようなことも十分検討の余地があろうと思っております。そういうような角度でこの問題を検討願うものと私は期待しておりますので、ひとつ今後十分検討の上、次の予算措置においてはできるだけこれが善処されることを強く希望しておきます。  質問を終わります。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 大橋敏雄君。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 席をはずしておりましたので、先輩議員の質問と重複する点もあるかと思いますが、その点御了解願います。  再建整備法はいまや全炭鉱の注目の的だと思います。中でも何が一番心配されているかといえば、何といいましてもどういう条件で一千億円の肩がわりがなされるのか、これは最大の関心事だと思うのですが、きょう配付されている資料を見ましても、大体その内容を見ただけであまりよくわかりませんけれども、問題は財務の状況と堀採可能鉱量、この点に一番大きな問題が寄せられると思います。  この資料の点についてはまたあとの時間でゆっくりお尋ねしますが、私がこれを見て直感するところは、ほとんどこれは大手炭鉱の恩典施策である、このように感ずるわけです。先般のこの委員会で先輩議員が同じ心配から次のようなことを質問しておりました。中小炭鉱を再建整備からはずすことはあり得ないことはわかるが、実質的には対象にはならないのではないか、この質問に対して答弁が、累積赤字がない山は対象にならない、また炭量の点でも四、五年しかないようなところも対象になりません、このように答弁がなされておりました。そこで私はこの中でも特にあいまいに思うのは、この累積赤字あるいは異常債務といわれるこの問題です。一体累積赤字をどういう方向でとらえているのか、この点についてお尋ねいたします。
  68. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 累積赤字につきましては、これは実質累積赤字という考え方でおります。といいますのは、このことばはいわゆる公表赤字、公表損益に対応いたしまして、公表損益だけで経理の実態を見てまいりますと、石炭鉱業は、過去数年非常に苦しい事態にあったわけでございますから、どうしても金融機関から金を借ります等のために、見せかけをよくするのが普通であったわけでございます。それで見てはこれはたいしたことないじゃないかというようなことになるわけですけれども、実態は非常に悪いというのが実情でございまして、そこでこの法律で助成策をきめますときにも、むしろ実質面の赤字、実質的には赤字になるわけですが、そういう角度でとらえたいというような考え方から実質赤字を見ることにしております。  実質とは何ぞやということになるわけでございますが、これは公表に対する実質でございまして、実質という場合には、先ほども一部答弁いたしましたが、たとえば退職金給与の引き当て、これもほとんど行なっていない企業すら中小炭鉱等についてはございます。大手についてはある程度やっておりますが、それでも金繰りが苦しい場合あるいは公表損益をよく見せるためにこれを十分積み立てていないというのが実態でございます。そのほか減価償却等につきましても、税法で定められた一ぱいまでは当然みんなほとんどやらないというような繰り延べ経理というような形をとって、その期の損益をよく見せるというようなやり方を従来やっていたわけでございまして、こういったような点につきましては税法で許されている限り、やはりそれは退職金についても全部見る。それから償却等についても十分やる、適正な減価償却をやるというように各企業それぞれ公表損益を直させまして、それを見まして、実質赤字の額をきめたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの説明で大体の線はわかりました。しかしこの前の答弁の中に、累積赤字がない山は対象外だと簡単に言われておったのですけれども、こういうことは、中小炭鉱にしてみれば、非常に冷たいことばのように受け取れるわけです。  御承知のとおり、合理化政策の中で特に中小炭鉱はもちろん、大手でもそうですか、一社一山といわれるところは、合理化過程において企業それ自体が消滅してしまった。いわゆる現在の生き残り組の中小炭鉱というものは、そのような荒波の中を特に人員整理をやってみたりあるいは低賃金労働過重をしいていろいろな面で無理押しをしてきたわけです。しかも中小は、今日までの施策の中では、投融資その他大手に比べて非常に不利な条件のもとに置かれてきておった。そのために市中銀行に借り増しをしてみたりあるいは未払い金の増大を来たしたり、支払い手形、買い掛け金の増加、ざらには高利の金融に手をつけたり、こういうことを考えればたいへんな苦労だと思います。やっと生きているのではないか、これが実情だと私は思う。この中小炭鉱こそこの再建整備法の中で助けてやらなければ、ほんとうの意味石炭産業の再建にはならぬのじゃないか。ちなみに福岡県の例をとりますと、中小炭鉱が大手の二分の一にあたる生産量を有しているということを聞いております。この中小炭鉱の取り扱いについては、今後の大きな課題であろうと思います。そういう点について、もう少し中小炭鉱が喜べるような内容を盛り込むべきではないか、このように思うのですが、どうでしょうか。
  70. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 お説のように、私ども中小炭鉱については、特に大手と差別する考え方は一つもございません。たとえばただいま御審議いただいております再建整備法等におきましても、全くそういう考え方をいたしております。ただ炭量の点等で、二、三年先あるいは四、五年先に閉山することが明白な山につきましては、やはりこの制度性格から見ましても、この制度の適用がふさわしいとは思いません。したがいましてその反面、今度は中小炭鉱については安定補給金の交付というような措置とかあるいは機械貸与制度、こういうようなものにつきましては、むしろ中小中心にできるだけ重点的に考えていく、そういうような政策をとっておるわけでございます。  それからさらに中小炭鉱等につきましては、金融問題が非常に大きい問題でございます。これらの点につきましては、毎年中小公庫につきまして越盆資金とか越年資金等につきまして特別の措置を講じて、中小公庫等から融資していただくというような措置を講じておるわけでございまして、今後ともに中小炭鉱については私どもとしましても十分な配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  71. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先日の答弁の中で、中小炭鉱の数十社から適用を申し出ている、その企業について検討中だということがありました。先ほどのお話の中で、この申請、また該当するものは大手で十五、中小は十五程度ですか、その中に鉱区調整を前提としての申請があったかどうかということを聞きたいのです。
  72. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 中小炭鉱については、そういう山がやはりある程度あると思います。一、二ではなくて、もう少しあるかもしれません。私の記憶ではそのように考えております。
  73. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 鉱区調整の問題は、審議会答申の中でも、これが再建のポイントになるんじゃないかというようなことがはっきり明示されておりました。私はまだしろうとですのでよくわかりませんが、何だか鉱区調整について現在すでに買い上げられている鉱区が、いわゆる粘土採掘権、いわゆるシャモットですか、シャモットの採掘権の先願を認めているために、実際に鉱区調整がむずかしいのだ、こういう話を聞いたのですけれども、これはどうなんでしょうか。
  74. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 その点につきましては、ただいま国会に上程しております石炭鉱業合理化臨時措置法の改正の中で、その問題の改正をお願いいたしております。内容といたしましては、結局先生御指摘のように、シャモットと申しますより、耐火粘土の粘土を掘りたいというような出願が、いわゆる終閉山炭鉱の上にありますために、せっかく隣接の生きておる山が、隣接の終閉山の鉱区鉱区調整してもらいたくても、その業者がおるために石炭の採掘ができないというような事態が往々にして筑豊にあるわけでございます。これはやはり耐火レンガ業者が粘土だけ掘るなら、これは差しつかえないと思いますが、そのかたわら石炭まで掘るというのはこれは行き過ぎだと思いますので、そういった意味合理化法の改正をただいまお願いしているわけでございます。
  75. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実はいまから聞くのはきのうもちょっと質問したのですけれども、一千億円を限度とする肩がわり措置について、最近日本石炭協会が発表いたしました大手十七社の累積赤字を見たのですけれども、借り入れ残高が財政投融資で千三百四十一億六千七百万円、市中金融機関から八百七十四億四千万円、合わせて二千二百十六億七百万円に達したと、こういうふうに出ておりました。私、これを見まして、私なりに感ずるわけですけれども、一千億円の肩がわりというのは、こういう立場からいっても、大手のほうにほとんどいくんじゃないか。実際問題として配分の点についてどのような考慮が払われているのか、ここをお尋ねいたします。
  76. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先生御指摘ありましたように、二千二百億、これに中小炭鉱等を加えますと二千三百億くらいが今日の残高でございます。そのうち、先ほども御質問がありましたように、一年以内の短期の運転資金、これは通常ランニングな金融でございますから、これは当然除くべきことだというような考え方から除きますと、大体千五百億台くらいの金額が一応この対象になる。そのうち千億相当の肩がわりをいたしたいというような計算方式をとりまして、配分をいたしたいというふうに考えております。
  77. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 結論的な意見になりますけれども、これも業者のほうから直接聞いたのですけれども、今度の肩がわり措置について、炭鉱業者、特に中小企業ですが、少なくともその債務の対象を、総額をまず見て、その中で過重な点を取り上げて、その何%かを無条件で肩がわりするような、あるいはたな上げずるような措置でなければこれは生きた政策とは言えない、こういうふうなことも言っておりましたが、これについて……。
  78. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 肩がわりの額の決定につきましては、まあ理論的に言って一番いい方法とか、いろいろ問題があるのです。あるいは考え方からして閉山合理化費用を加えたらどうかというような意見もありますし、いろいろ意見があるのですが、石炭鉱業審議会はこういった点に一番時間をかけて、先ほど私、資料で報告しましたような内容を政府といたしましては御答申いただいておるわけです。ただその場合に考えなければいかぬと思いますのは、やはり行政事務能力の限界という問題もあるわけで、客観的的確に把握できる数値をとらえなければいかぬというような関係がありますために、先ほど言いましたいろいろな要素を加えたらどらかというふうにも考えますけれども、私ども、あるいは石炭鉱業審議会としましても、まだ審議会として正式にきめたわけではありませんけれども、大多数の意見が先ほど第一案として出しましたような、借り入れ残高、これはもう明確に把握できるわけですが、それに先ほど私が申しました実質赤字の額を加えて、つまりこの要素を加味して、残高が主体になりますけれども、実質赤字を加味して見る見方、実質赤字は先ほど言いましたように、公表損益をもとにして税法上許されるもので未償却のやつを償却に繰り入れるとか、あるいは積み立てるべき退職金で積み立ててない毛のを積み立てるとかいうような形ですね、そうしますと、見せかけの黒字よりも赤字要因がふえてくるというような形、実質があらわれるわけですから、こういうのを行政事務能力で公正にできる範囲でやらしていきたいというようなことです。これのほかにまだしいて意見を言えば、閉山合理化費用なんというのもどらだというような意見もないわけではなかったわけですが、これまたとらえますのが正確性に問題があるというような点から――しかし閉山合理化等につきましても、そのことが結局累積実質赤字の要因になっております。実質赤字ということの結論の背後には、そういう閉山合理化費用があったというようなことがやはりその中に含まれております。だからそれが残高にもあらわれておるというようなことから、残高と赤字を中心に考えれば大体公正にいけるのじゃないかというようなところから、先ほどの算式の考え方をとっているわけであります。
  79. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 話はちょっと変わりますが、石炭再建整備に基づきまして今後も五千万トン以上の出炭を目ざして進んでいく、こういうことでありますが、従業員の維持確保がいま問題になっております。きのうもちょっと話したのですけれども、五千万トンを確保するためには十万人の労務者現状維持がまず第一だ。かりに一人、四十トンが五十二トンまでアップされたとしても、ぎりぎり八万人は要るだろう、こういうことを新聞で見たんですけれども労務者確保に対して政府としてどのような考えを持っておられるか、お答え願いたいと思います。
  80. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 御指摘になりましたように、労働者の定着性を確保するという問題は今日石炭政策の上で大きな問題でございます。そういうような意味合いから、私ども先般来厚生省等とも打ち合わせいたしまして、炭鉱について現行厚生年金の上積みとして特別年金制度をつくるというような話し合いを進めておるわけでございます。それからなお、定着性の問題につきましては、炭鉱賃金の問題あるいは労働環境の改善等の問題、いろいろたくさんあるわけでございますが、これらの点については私どもそれなりの、今日の炭鉱として許される範囲の最大限の努力をするように業界にも申し、かつ指導しておる次第でございます。  なお定着性の問題につきましては、やはり根本的には石炭鉱業というものについての不安をできるだけ払拭するということが私は根本的に一番大事なことではないかというふうに考えております。したがいまして、政府といたしましては、先ほど植村参考人もるるお話しになりましたが、エネルギー調査会、石炭鉱業審議会等におきましても、そういった点も考慮して、特に石炭の今後の長期の位置づけ、五千万トン程度は確保するという方針も、これは同時に石炭鉱業の経営の安定という見地だけでなしに、炭鉱労務者の定着政策、やはり将来に対する炭鉱労務者の希望と不安を抱かせないための政策にもなるというふうにも考えております。やはり石炭鉱業を今後しっかり確立していくということが基本的には一番大事なことではないかというふうに考えております。
  81. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私も、要するに石炭増産については、労務者と技術をいかに確保するか、ここにやはり大きな問題があろうと思いますので、その点については、二重、三重の対策を持っていただきたい。これは要望でございます。  最後に一つお尋ねいたしますが、実はこれも新聞で見たのですけれども、米国のほうで発電用の燃料は、コストの安い石炭でほとんどまかなわれており、また石炭化学の進展に伴い、石炭からガソリンの新抽出法に成功した。そこで石油会社炭鉱を買収するなど、石炭ブームの再来が伝えられておる。こういう記事を見たのですけれども石炭からガソリンを抽出するという、そういう研究が現在政府のほらでなされておるかどうか、その点についてお聞きします。
  82. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先生が御指摘になりましたような研究は、諸外国でも御指摘のようにやっておるようでございます。日本におきましても、これは通産省の資源技術試験所があるわけですが、ここで小規模ではございますけれども石炭に水素添加をいたしまして、ジェット燃料の合成をするというような研究を現在やっておるわけでございます。まだ十分な成果を得るまでには至っておりませんけれども、こういった努力はいたしております。
  83. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 この中で、日本の石炭業界もこのようなことが将来必ず活濃化してくるだろうし、そうなれば明かるい見通しがある、こういう希望的なことが書いてありますので、外国はもうすでにここまでやっておるわけですから、もっと本腰を入れて、これも研究に乗り出してもらいたい。  以上でもって終わります。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次回は、明九日午前十時三十分から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時六分散会