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松葉参考人 炭職協の
松葉でございます。しんがりでございますので、若干の重複はお許し願いたいと思いますが、私は、スエズ運河の封鎖というニュースのその日に、こういう場にお呼びいただいたということについて、何か感慨深いものを感ずるわけですが、あえてこの問題に関連をしまして、安全保障の見地からるる申し上げる意図は毛頭ございません。しかしながら、やはり日本のきわめて乏しい資源の中での貴重な
石炭資源というものについて、これらの問題ともあらためて関連を考えながら、より手厚い
施策というものを今後とも御努力をいただきたいということを冒頭に
お願い申し上げたいと思うのです。
まず最初に、今回の
施策全般について端的に
意見を申し上げたいと思うのです。
これまでの
炭鉱の
合理化の実績というものをあらためて振り返ってみまして、
一つの事例を申し上げますが、昭和三十二
年度の
石炭産業の
状態というのはどういうものであったかというふうに見てみますと、
炭鉱の数が八百二十、
労働者が二十九万八千人、
出炭規模が五千二百万
トン、能率が一四・六
トン、こういう
状態であったわけであります。それがその後の激しい
合理化の結果といたしまして、昭和四十二
年度の
合理化実施計画としては、
炭鉱数は二百を下回る
状態になりましたし、
労働者は約九万六千名、
出炭規模は当時とほぼ横ばいの五千三十万
トン、能率は四三・八
トンというふうに、
炭鉱数におきましては四分の一になり、人数におきましては三分の一に減り、能率は三倍になっておる、こういうような
状態であります。
一方収支の面では、昭和三十三
年度の対比で見ますと、当時は販売原価が五千円、それに対して手取りが四千七百円というような
状態であったようであります。それが四十二
年度の計画等を望見いたしますと、販売原価は四千三百円前後、手取りは四千円弱、こういうような
状態になっておるようであります。なぜ私がこういう事例を申し上げたかということを申し上げますと、わずかこの十年間にこのような激しい
合理化、そして結果としてはかなりの目標を達成しながら、なおかつ現在死活の問題が論議されておるということであります。
この間の過程におきまして、諸
先生方の御努力もありまして、いろいろ手厚い
施策がされたことも事実でございます。しかしなぜ今日なおかつ今回の
施策をもってしてすら安定ができるかどうかということが論議されるのかという点につきまして、私の感じで申し上げますと、
施策が常に一歩おくれておるということではないかと思うのです。ですから単に
施策の量的な問題を手厚いという表現をとるよりか、はたしてその時点における安定
施策としての実を伴った
施策であるかどうか、時期的な問題、質的な問題、そういう点ではたして適切であったかどうかという点になりますと、現在の事実が如実にその誤りというものを示していると思うのです。もちろん情勢の変化が非常にきびしかっただけに、一〇〇%の
施策の効果ということは
期待できないという面がございますけれ
ども、常に
施策そのものがきわめて
現実の問題としては舌足らずのかっこうで、あたかも
石炭産業に対する恩恵であるかのごとき形でなされたというところに致命的な欠陥があったのではないかという点を特に痛感をいたしておるわけであります。
今回の
施策におきましても、
答申以来いろいろ論議されてまいりまして、私といたしましても、はたしてこれで抜本
施策になり得るかどうかという疑念を呈してまいった一員でございますけれ
ども、
予算要求の段階においては若干の希望を持ちましたけれ
ども、落ちついた本
年度の
予算そのもので見てみますと、
経営者の
方々からもいろいろございましたけれ
ども、むしろわれわれの杞憂が的中をしつつあるのではないか、そしてその
実施の時期自体がすでに一年をずれようとしておるという
状態の中では、なおのことその問題があるのではないかというふうに強調せざるを得ないわけであります。
特に
一つの事例として申し上げますと、五百二十一億という
政策予算というものを非常に大きな
予算であるように言われておりますけれ
ども、われわれ
石炭当事者の
立場から見ますと、これまでの傷
あとをいやすための費用、あるいはこれまでの
石炭産業の過程から付帯的に発生してきている諸問題を解明するための費用、そういうものを除いて、今後
石炭産業を自立安定をさせるためのビルド費用としてみなされるものが幾らあるかというふうに見てみますと、
安定補給金を含めたにしてもわずか百二十五億ぐらいしかないわけです。これを四十一
年度の今回の
施策以前の
予算規模から見てみましても、ビルド
対策費用としてはわずか四十七億の
増加にしかすぎない、こういうことが指摘できると思うのです。ですから、私は、五百二十一億という
予算規模自体が小さいとは申しません。特に通産省内部における
石炭局の御努力というものに対しては
感謝を申し上げるわけでございますが、
予算編成の段階でわれわれが主張いたしましたように、二次的な費用、こういうような従来は
石炭対策予算の外で考えられておったものが全部持ち込まれてしまって、いま申し上げましたように、約半分のそういうような二次的な
対策費用が、あたかも
石炭産業の自立安定のための直接的な
対策であるかのごとく計上されているというところに問題があると思います。
したがいまして、本
年度の
予算はすでに通過をしている
状態でございますから、いまさらどうこういっても始まりませんわけですが、間もなく昭和四十三
年度の
予算が準備される時点に立ち至っております。したがいまして、論議を蒸し返すということにはなりましょうけれ
ども、やはり二次的な費用というものはまずさておいて、少なくとも五千万
トン程度の
生産規模というものを維持して、
石炭産業がほんとうに四十五
年度の時点において自立できるためのビルド費用というものをどう
処置すればいいかという点を、ぜひ諸
先生方の御努力によって明確にしていただき、当局の御努力とあわせまして、明
年度予算において、われわれが少なくとも納得できるような、そういう前向きの
施策というものが実現できるように、冒頭
お願い申し上げたいと思います。
次に
需要確保の問題でございますが、これも前者からいろいろ申し上げられましたが、私は具体的に触れてみますと、前回この特別
委員会に
参考人として呼ばれましたときに、私は電力用炭以外の一般炭の
需要見通しというものについての大きな疑問を提起したことを記憶をいたしておりますが、不幸にしてその疑問が適中してまいった。すなわち、四十
年度から四十一
年度にかけて、その他口の一般炭の
需要というものが二百四十六万
トン減少をいたしました。四十一
年度の実績対比で四十二
年度の
実施計画としては二百六十万
トンの減少を見込んでおります。合計いたしますと、この二年間で、五百六万
トンというその他口の一般炭の減少を見ておるという事実は、きわめて重大だと思います。このことは、さらに本格
答申の段階における背景になっておりました
需要見通しというものを見てみますと、その時点では、この二年間の減少は三百四十一万
トンというふうに見込んでおったわけでありますから、
答申時点における
調査団の見通しというものと
現実の事実というものとが、すでに百六十五万
トンの食い違いを示しておるということは、致命的な問題ではないかと思います。この
需要のズレというものがはたして
施策全体とどういう関連性を持つのか、私としてはつまびらかにできませんけれ
ども、この事実自体は、特に諸
先生方の御注意を
お願いを申し上げたい。
特にこの
需要減少の中でも、食料品、繊維、紙パルプとか化学工業
関係、これが二百三十七万
トンございます。それから暖厨房用炭が六十六万
トンというふうに減少しておりますが、暖厨房用炭につきましては、四十
年度ごろまでは若干なりとも上昇傾向をたどっておった
需要先でございますが、それが急激に年間三十万
トンないし四十万
トンの減少傾向を示し始めた。今後とも少なくともその
程度の減少を見込まざるを得ないという事実は、これはまさに致命的だと思います。それから、食料品、繊維、紙パルプとか化学工業
関係、これはどの
程度の影響があるかわかりませんけれ
ども、これまでの傾向は推移するであろうし、さらに重油ボイラー規制法の廃止という問題と関連をいたしまして、さらに拍車をかけられるということが当然予想されるのではないかと思います。
したがいまして、こういうような
需要減退に対しましての
対策として
お願い申し上げます点は、前数者と変わらないと思いますけれ
ども、やはり第一の問題としては、電力用炭にその減少の振りかえを
お願いする。その
お願いのしかたとしても、電発火力をつくるという問題は、もちろん諸
先生方の御決議もいただいておるところでございますから、早急にあの決議の実現を
お願いしますと同時に、私の仄聞するところでは、九電力の現有の火力設備についても、電力側の御協力が得られるならば、五十万
トンや百万
トンの消費増ということは決して不可能ではないということを伺っておりますので、かなり
経営的には余裕のあります電力業であり、公共的な性格も持っておるわけでございますので、そういうような現有設備を通しての電力用炭の消費増という問題についても、諸
先生方の御検討によりまして、若干なりともさらに一そうの拡大を
お願いできればというふうに考えるわけであります。
次に、暖房用炭
関係の問題であります。これは非常に深刻な問題でございますが、具体的にはやはり
石炭サイドとして、燃焼器具の改良等も通して、販路開拓、特に
北海道における暖房用炭の減少を歯どめするために、
業界一体となって取り組むということも必要だと思いますが、これも、伺うところによりますと、関東、東北、北陸
関係における暖房用炭の
需要増というものは不可能ではないということをしばしば聞いておりますし、先日常磐炭礦の
調査で拝見いたしたのですが、長野県のある市の小、中学校のボイラーが、五百六十あるうち、
石炭をたいているのは四十であり、残りは全部まきをたいておる。ところがコスト的にはまきのほうが
石炭よりか一五%
程度値段は高い、さらに労働力不足から、まきの値段は逐次上昇傾向にある、こういう点がありまして、常磐炭礦としてはかなり積極的に市場開拓に乗り出すということがございました。これも私は単に常磐炭礦一社の問題としてではなく、
業界全体として集中的な
調査、それからできるならば機動的な開拓班等も
設置をいたしまして、大胆にこういうような面の
需要開拓というものに乗り出すべきではないかという
意見も持っておりますので、これらの点につきましても、諸
先生方の御協力をぜひ
お願い申し上げたいと思います。
次に、
貯炭の問題でございますが、これも御
承知のように、本年の三月末で千三百万
トンをこえておりますし、先ほど申し上げましたようなその他口の一般炭の
需要傾向という問題から考えますと、
生産規模が
現状のまま推移するとするならば、四十五
年度の時点においては千五百万
トンをこえる
貯炭になるのではないかというふうに危倶されますが、しかもこれらの
貯炭が、原料炭と一般炭という形では、ほとんどが一般炭でございますし、しかもその一般炭の中でも特定の
企業に片寄った過剰
貯炭という問題が出ておるという点が、
業界内部としては非常に処理しにくい要素がございますけれ
ども、しかしそのことは、
石炭産業全体としては、単に一社の過剰
貯炭という問題では処理しきれない問題でありますので、これらも今後の
貯炭対策という問題について、
特段の御
配慮をわずらわしたいというふうに考えるわけであります。
過剰
貯炭の
対策といたしましては、かねがねから私は
お願い申し上げているのですが、何か従来のいきさつがありまして、非常にむずかしいようでございますが、電力用炭販売会社等で
貯炭保有機能というものがどうしても考えられないものかどうか。それが考えられないとするならば、やはり
貯炭融資という問題については無利子の融資というものを
配慮するということが必要ではないか。
第二番目といたしましては、
石炭鉱業審議会の中でも、
需要業界の
方々がときには過剰過剰といって大騒ぎするが、不足をするとすぐ
石炭業者は供給責任がないと盛んに言われる、そういう点から、安定供給というたてまえから、むしろランニングストックのレベル
程度を考慮して
貯炭をする、こういうような
対策というものが考えられるかどうか、以上の点についての御
配慮をわずらわしたいと思います。
時間もございませんようでございますので、
あとは省略をいたしますが、私もあえてダブって申し上げたいのは、これまでの
施策の最大のウィークポイントであったのは
労働者対策であったと思います。これは
労働者の
賃金というものをあたかも特別なもののように考えられているようでございますが、私はやはり労働力という商品の価格だと思うのです。ですからこれまではむしろ癒着ということばが適当であるような定着をしておる
労働者というものは、なかなか逃げ出しにくい
事情もございました、しかし、新しい労働力というものはやはり社会的な商品価格というものに対応する
賃金というものが保障されない限りは、絶対に
確保できないということは言うまでもないわけでございますし、事実非常に大きな矛盾が出ております。たとえば百名
程度の人間を肩入れ金まで使って一生懸命集めてくる、半年もたたないうちにそのうちの九割
程度はやめてしまう。また新しく肩入れ金等をつくって雇ってこなければならぬというのが
大手の中でもたくさん発生をしておるという事実であります。そういう点から考えまして、やはり一挙にはいかないにしても、他産業レベルの
賃金というものが保障されるという前提に立って
政策というものが再度検討されますように、諸
先生方に
お願い申し上げたいと思います。
最後に
一つお願い申し上げたいのですが、
経理規制の問題に関連しまして、私、職員組合として重大な関心を持っておる点がございます。これは多角
経営という問題に関連をいたしましてかなりむずかしい問題が出てくるのではないかと思いますが、
施策の
対策費用を横流しをするという意味ではなくて、今後
石炭産業が
生産規模そのものを横すべりで維持するといたしましても、
労働者の数なりその他は販売面、
生産面を通して、さらに縮小を余儀なくされる。一面では
石炭産業それ自体が生々
発展をする可能性というものはまずないという点から、やはり
石炭産業としては多角
経営という問題についてかなり大きな比重をかけて今後の
経営というものを考えていなくちゃならないという実情にあると思うのです。そういう点も御
配慮の上ひとつ御検討願いたい。
以上、非常に取りとめなくなりましたけれ
ども、私の要望を申し上げまして終わりたいと思います。