運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-01 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月一日(木曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 八木  昇君 理事 池田 禎治君       大村 襄治君    進藤 一馬君       菅波  茂君    田中 六助君       野田 武夫君    井手 以誠君       木原津與志君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君     ————————————— 六月一日  委員廣瀬正雄辞任につき、その補欠として大  村襄治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大村襄治辞任につき、その補欠として廣  瀬正雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号)      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 これより会議開きます。  内閣提出石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。木原津與志君
  3. 木原津與志

    木原(津)委員 現在の石炭危機の焦点が、将来の石炭需要がどの程度確保されるかということにかかっておるということは、これは有沢調査団あるいは石炭鉱業審議会の各委員も異口同音に国民に声明しておるところであります。そしてその際有沢調査団では、わが国で五千五百万トン体制出炭規模五千五百万トンを維持するためには、当時の計算では、昭和四十二年度において一般炭の約八割、二千五百五十万トン程度石炭火力発電用に使用されなければ、エネルギー石炭長期対策はとてもできないということであったと思うのであります。先般当委員会に示されました通産当局石炭需要長期見通しによりますと、大体四十二年度の電力用炭需要目標は、合計して大体二千五百四十四万トンという数字が出ておるのであります。当時のこの有澤調査団の五千五百万トン出炭規模において一般炭電力用に二千五百五十万トン近くの出炭が予想されるということになれば、出炭規模は大体五千万トンでなくて五千五百万トンが可能ではないかというふうに考えられるのでありますが、これが五千万トンの出炭規模というところで押えられている点については、何かその他の石炭需要目標の中で著しく減る、減炭する予想があってのことかどうか、これをまずお尋ねいたします。数字の問題でございますから、石炭局長から御答弁をいただいてけっこうです。
  4. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま石炭長期生産見通し並びに需要との関連についての御質問がありましたが、先生指摘がありましたように、かつて第一次調査団当時におきましては、将来の出炭見通しにつきましては、五千五百万トン程度いくんではないかというような見通しがあったことは事実でございます。そうなりますと、この五千五百万トンの出炭を維持するためには、どうしても需要をつける面におきましても、この五千五百万トンに見合う需要を確保しなければならぬというような考え方に立ちました。ところがやはりエネルギー革命影響を受けます。特に一般炭につきましては、需要が逐年減少する見通しがあったわけでございますので、それを補うためには電力鉄鋼業界政策上やはり要請せざるを得ないというような考え方から、先ほどおっしゃいました二千五百万トンというような電力業界に対する長期引き取り考えた時期があるわけでございます。しかし、実際問題として今度この抜本策を立てますときに、石炭鉱業審議会におきましても、それから同時に通産省の中に新設されましたエネルギー調査会、これは石炭鉱業審議会並行というか、もうちょっと総合的なエネルギー調査会というものができたわけでございますので、この石炭審議会エネルギー調査会並行審査をやったわけでございます。この並行審査の結果、これは特に石炭鉱業審議会からの意見主導性を持ったわけでございますが、今後の長期出炭見通しは五千万トン程度——今後の山の自然条件出炭力等を見て、五千万トン程度出炭力供給力という見方をするのが妥当ではないかというような意見がありまして、需要の面から五千万トンに減らしたわけでは必ずしもございません。むしろ出炭力、今日の販売炭価を横ばいという前提で、——価格をまた上げられるというような客観情勢があれば、これはまた物量としてのとり方の問題ですから、五千万トンをこえる掘り方も私個人的にできないとは思いません。しかし、今日の炭価前提にして考えていった場合に、今後の供給力は五千万トンであるというような一応の結論が出ました。そうなりますと、今度は需要確保につきましてもこれに見合う需要確保をしなければいかぬというようなことで、電力につきましては四十五年度までに二千三百万トン、鉄につきましては千二百五十万トン、答申では千百万トンになっておりますが、現実には千二百五十万トンまで取ろうという話にいまなっております。  それからもう一つ先生が何か変化があるかというようなお話がありましたが、変化の点で申し上げますと、電力会社や鉄のほうは政策需要ですから変化はないわけでございますけれども一般産業需要が当時は一千万トンを下らない、昭和四十五年では一般産業向け需要暖厨房用炭を含めてですが、それが今日の想定では七百万トン台程度というような見通しで、ここで三百万トン近い一般産業石炭需要の落ち込みが最近明らかになってまいっております。この点は確かに一般炭需要が減少しているという変化がございます。  以上のような事情でございます。
  5. 木原津與志

    木原(津)委員 そうしますと、出炭規模というのは五千万トンということで固定化されておるのですか、それとも五千五百万トン、できれば五千五百万トンを維持していこうという体制でおられるのか、その点を大臣からお聞きしたいと思います。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 約五千万トン程度という目標を立てておるのがありますが、これで固定したというわけではありませんが、まあ目標としては五千万トン程度というところでいきたいと考えております。
  7. 木原津與志

    木原(津)委員 この長期見通しによりますと、九電力で四十二年度二千百三十万トンということになります。四十三年度で二千二百万トン、四十四年度で二千二百五十万トン、そして四十五年度で二千三百万トン、累次需要が漸増しておるということになっておりますが、漸増をいたしましてもやはり出炭規模は五千万トンということになるのでありましようか。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 政策需要のほうは増加するような計画を立てておりますが、一般炭需要漸減するというように考えている次第であります。
  9. 木原津與志

    木原(津)委員 一般炭漸減といいますが、減じ方がこの見通し表によりますと非常に著しいものがある。特に四十二年度の千三百四十五万トンが四十五年度においては七百七十七万トンという見通しになっております。漸減の状況、下降のカーブが非常に大きいように思うが、この点どのような見通しでこういう数字を出しておられるか。
  10. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先生から御指摘がありましたように、昭和四十一年度には一般炭一般産業向け需要は千六百万トン程度、これは実績見込み考えておったわけでございますが、四十二年度は二百五十万トンくらい減少いたしまして、御指摘のありましたように千三百四十五万トンというような見通し考えておるわけでございます。ところが、ただいまおっしゃいましたように、逐年減少いたしまして四十五年度には七百万トン台というような激減ぶりでございます。これは結局電力鉄鋼——鉄については原料炭ですから別でございますが、電力については先ほどのように政策需要ということで人為的に政策的にこの需要をきめておりますので漸増いたしますが、一般産業につきましてはやはり無数の産業、大企業もありましょうし、中小企業もありましょう、各種産業需要でございますので、これについてまで政府が強制的な引き取りを要請するということはいかがかというようなことから、この一般産業につきましてはフリーチョイス自由選択の原則を認めざるを得ないというような立場から私ども考えておるわけでございます。なおこの一般産業の中には実は産業以外に暖厨房用炭も一応含めております。これはフリーチョイス以外に、自由選択以外にないというような考え方考えておるわけでございますが、御承知のように重油石炭価格差、これが今日でも相当な開きがございますし、それから今後の見通しからいたしましても石炭価格が据え置かれる、上がりもしない下がりもしないというふうに考えましても、重油価格は低落の傾向である。そういった見通しにございます。  それからまた一般産業自身の、何といいますか、企業経営方針が従来はまだ従来の惰性で石炭を使っていたという形もありますが、最近ではやはり一般産業近代化合理化国際競争に耐えるための努力をせざるを得ないというようなことから、重油に切りかえる傾向が最近特に顕著になってきておる。重油ボイラーというようなことから、私ども見通しでは大体この程度になるんではないか。これは各企業主要企業について積算見通し——積算といいますか、たとえばセメント工業はどういうふうにいままでの石炭だき重油だきに変える計画を持っているか、あるいは繊維工業はどうだといった調査研究をいたしまして、大体の見通しがこういう程度になるんではないかというふうに考えまして、この見通しをとった次第でございます。
  11. 木原津與志

    木原(津)委員 いまの説明によれば一般産業の分についてはフリーチョイスでいく。電力の場合においてはあなたのほうで介入をして、いわば政策需要でやっていくんだという説明のようですが、この電力関係におきましても、電気業界電力エネルギー低廉で供給するということは、これは電気業界に課せられた至上命令なんですね。そのために石炭発電よりも重油あるいは原油による発電のほうが経済性が非常に有利だというようなことから、いわゆる二千五百万トンの引き取りに難色を示したために、審議会だとか調査団長期政策見通しが非常に難航をしたという事情があったいうことを、われわれは仄聞しておる。  そこであなたは一般産業についてはフリーチョイスでいく。電力関係においては政策需要をある程度つくり出して、政府権力で介入していくんだというお話ですが、政策需要といいましてもこれは法律じゃないんですね。いわばあなた方の話し合いでやっていく。ところが石炭石油との今日の協業分野において、その価格差経済性にだんだん開きが出てくる。そういうことになれば、電力会社といえどもこれは営利企業なんだから、そういつまでも政府の言いなりにばかりはならない。何としてもエネルギー供給低廉性ということが電力会社に課せられた一つの大きな任務なんでありますから、ただ政策需要政策需要ということだけで電力会社、九電力石炭需要見込みが四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と漸増して需要があるというふうに考えられることは、少し石炭当局見方が、電力界のこのきびしい事情と照らし合わしてちと甘過ぎやせぬか。私はその点について危惧の念を持つわけなんですが、このあなた方の見通しのとおりに四十五年まで、あるいは四十五年から先、そういう漸増する数字に基づいて五千万トンの体勢を維持する、政策需要によって維持する確信がありますかどうか、その点を……。
  12. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御説のように電力につきましてはこれは政策需要ということでやっておりますが、法律で強制いたしておるわけでもありません。したがいまして先生おっしゃいますように政府権力をもってきめるというようなわけにはまいりません。御指摘のように話し合いで、電力業界の良識に訴えて、これだけの政策需要を要請しておるというのが実情でございます。したがいまして、こういった電力業界としては先生もおっしゃいましたようにやはり低廉安定という電力供給の使命にかんがみて、できるだけ安い電力を供給したいという電力業界の強い意思もあるわけですから、それに対して石炭増量せよということを言うわけですから、その折衝は先生もおっしゃいますようになまやさしいものでないということは事実であります。しかし一応私どもとしましては、これは大臣お話があり、最後の話し合い大臣電力業界との話し合いになりますが、少なくとも四十五年度までは二千三百万トンは九電力引き取りますという約束をいただいておるわけでございますから、これについては私ども一応電力業界を信頼しておるわけでございますし、電力業界もこの線に向かって逐年増量をしてくださっておりますから、まあ法律で強制しておるわけではありませんが、この数字に関する限りは私は間違いないというふう考えております。  なお四十六年度以降の問題になりますと、これはまた再び九電力業界との話し合い——四十五年度までの約束ですから、それ以降は再び政策需要についての話し合いを、四十五年度以降のものについては少なくとも四十四、五年ごろにはつけておかなければならぬ。もしその過程で電力業界がどうしても増量引き取りができないということになれば、電発火力とか共同火力とかいうような政府機関による発電あるいは政府がある程度入った企業としての開発ということを、やはり考えざるを得ないというふうに考えております。
  13. 木原津與志

    木原(津)委員 私はしろうとですから、その間のことをよく存じませんがね。火力発電の場合に石炭石油が競合する競合分野になっているわけですね。その場合に重油をたくのと石炭をたくのとでは経済性において一割五分から差がある。それから原油のなまだきをする場合においては二割五分、いうならば重油あるいは原油を使用すれば、石炭よりも一割五分ないし二割五分の経済性があるということがいわれておるのでありますが、その点は大体そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  14. 井上亮

    井上(亮)政府委員 常識的にはその程度数字がよくいわれておりますが、厳密にいいますと、関連する面までやや多目に入っておる点もあるのじゃないか。といいますのは、いろいろ建設コストの増とか、あるいは石炭を使います場合にはある程度石炭置き場が必要だとか、それから要するに燃えがらを処理するのがよけいにかかるとか、いろんな点が考慮されて、すべての要因を考慮されて、先生おっしゃる程度というふうに通常いわれておりますが、私、いま厳密な計算数字を持っておりませんので、そのとおりかと言われますと、そのとおりとも言い切れませんが、大体常識的にはそういうふうにいわれておるように聞いております。
  15. 木原津與志

    木原(津)委員 重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置昭和四十二年の三月で失効しておるのですね。これに対する影響、これはまだ失効したばかりですからはっきりしたものはつかめてないかと思いますが、あなた方の一応の見通しはどうなんですか。
  16. 井上亮

    井上(亮)政府委員 従来重油ボイラー規制法がありましたために、どの程度石炭がそれによって確保されておるだろうかというような議論を、私ども数年前から、第一次調査団当時から検討をいたしておったわけですが、いろんな角度で考えまして、大体二百万トン程度はこの重油ボイラー規制法のおかげで確保されているのじゃないかというのが一般的な通説でございます。  なお先ほど先生指摘がありました一般産業向け需要が減っていくということは、ただいまの重油ボイラー規制法の廃止ということも織り込んだ見通しに相なっております。
  17. 木原津與志

    木原(津)委員 そういたしますと、大体重油原油のなまだきの場合の発電石炭発電では石炭が一割五分ないし二割五分経済性が低いということになれば、これは政策需要というようなあなた方の言い方だけでは、まあ一応の見通し、四十五年度までの見通しの中では、九電力会社関係で、それだけ引き取るということをいうておっても、いまのような経済性に差がある場合、四十五年はともかくとして、四十六年以降、政策需要だけであなた方がこの五千万トン体制を維持するということについては、経済発展の法則からいうて、そういう非能率的な非合理的なことが資本主義社会でいつまでも完遂できるというようなことに対しては、私は非常に危倶を持つものであります。  それならば、四十五年までは、一応二千三百万トンの需要確保が九電力においてできるという約束をしてくれた、その見通しに立って需要の測定をしたが、四十六年以後においては私どもは大いに危倶があるのですが、四十六年以後に対する、具体的に五千万トン体制をほんとうに維持する腹か、あるいは維持できなければどうするかということを、ひとつこの際はっきり大臣から御言明をお願いしたい。
  18. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま木原委員の御質問の御趣旨については、私も実は同じような憂いを持つものでございまして、御承知のとおり石油の産出がだんだんふえてまいっております。したがって世界的に見て石油価格が下がるというような傾向にあります。そこで電力会社からすれば、重油をたいたほうが安くつくということは当然だと思います。電力会社立場、資本主義的な立場からいえば、石炭をたくよりも重油をたいたほうがいいという考えを持つと思いますけれども石炭を五千万トン確保するということは日本国策でございます。石炭産業はどうしても五千万トンは確保しなければならぬ。これは申すまでもなくいろいろの理由から、木原委員御存じのとおり、これは国策として五千万トン確保するという方針であるのでありますから、電力会社にはそれだけ高いものを買わせておる。したがって負担増価格差というものを政府が出してやるということで、電力会社としてもそれほどの損失を見ずしてやることができるようにしてやっておるのでございます。でありますから、もしも将来四十六年以降におきましてなお重油値段が安くなってくるということになれば、また負担増のことも考えてあげなければならぬということで、どうしても五千万トンというものは確保しなければいかぬと私は思います。これは日本国策として確保すべきだという考えで、この点において今後においてもいろいろ各方面から対策を講じていこう、こういう考えを私は持っております。
  19. 木原津與志

    木原(津)委員 五千万トン体勢国策というのは大いにわかる。わかるのだが、その国策たる経済性において一割五分から二割五分、あるいは現在の炭価をそのまま引き継ぐということになり、また重油価格が下がるということになれば二割五分から三割五分ということになってくる。そういう数字になるかどうかわからぬが、とにかく低廉の方向に向かっていくであろうということは考えられる。そういう場合に、いまの自由社会企業の中で、あなた方が国策国策というてその私企業にそこまで押えてやることがはたしてできるか、あるいはやることが国民経済上可能であるかどうかという点も考えなければならぬ。そうすると四十五年以降のものについてあなた方が五千万トン体勢国策として維持していくというならば、もう少し掘り下げた根本的な長期見通しというのをつくり上げられなければ、これは必ずこわれてきますよ。特に大臣は四十五年以降も石炭責任者になられるかどうか私はわからぬ。あるいはまだ引き続いて通産大臣、あるいは総理大臣をやられるかもしれぬから、あなたの御手腕に私は期待するのですが、もし大臣がかわって、そうして四十五年まではこうだったが、四十六年以降はもうとても、こういうような重油石炭値段関係で、経済性の問題でどうしても五千万トンの体勢を保持することができないからまたやり直しだということをやられるならば、今日この際あなたの手において、四十六年以降においてもしそういうような事態が来る場合においては、根本的にどういう見通しを立て、どういう基本政策を持ってやらなければならぬかということを考えて、そうして抜本的なこういう——現在提案されておる石炭鉱業再建整備臨時措置法を私は悪いと言うんじゃない。これでもけっこうなんだ。けっこうなんだが、このくらいの再建策ではもうどうにもこうにも手足が出ないような行き詰まった状態になるんじゃないかということを私どもは非常に心配しておる。そこで、石炭の国営、エネルギーの総合的な計画立案のために、国の大きな力を、この電力鉄鋼石炭というものを三位一体とした総合的な立場に立って、国がもう少し、政策需要だとかなんとか、そんななまぬるいことをいわないで、根本的にこれを法制化してやっていく、それが将来の日本エネルギー対策基本精神でなければならない。私どもが言うのはここなんですよ。だから、四十六年以降もほぼそういうようなことでいくという見通しをもっと具体的に大臣から説明してもらわなければ、私は先に進むわけにいかない。まだ質問はあとたくさん残っているのですから、その決意をここで具体的に示してもらいたい。
  20. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 木原委員御存じのとおり、石炭審議会答申は四十五年度までということで答申が出ておりますから、その答申に基づいて今度の予算なり法案を提出した次第でありまして、四十五年まではこの答申によって大体石炭産業が安定するという見通しのもとにおいてこの答申が出ておるのであります。  そこで木原委員が御心配になるのは、四十六年以降の問題を御心配になっておられることと思います。四十六年以降のことにつきましては、重油の問題、これは私も安くなるという見通しはしておりますけれども、どのくらい安くなるか。国際情勢関係どもありまして、あるいはもし戦争でもあったら重油が来なくなるというようなことも考えられるし、四十六年以降のこととしては、もう少し先で対策考えてまいりたい。いませっかく四十二年度からの答申案ができておるのですから、これをまず実施して、その結果によって、四十六年以降についてはもう一ぺん石炭審議会と申しますか、あるいは総合エネルギー審議会と申しますか、動力審議会と申しますか、もう少し広い、いまお話しのとおりの観点から石油——それから私は原子力の問題もこれから重要になってくると思います。それらすべてを総合して日本エネルギー資源をどうするかという根本問題を——しかし石油のことについては、もうすでにいろいろ石油審議会のほうから答申が出ておりますから、今度は石油公団というものを設けることにいたしましたし、原子力の問題につきましても、原子力事業団を設けることにしておるのでありますが、私は、四十五年までにはもっと世の中が変わってくると思っております。でありますからして、またそれに応じてひとついまから四十五年の後のことを考えろといったって、とてもエネルギーの問題を、科学者もおそらくそこまで考えられぬと私は思いますが、まあ四十五年以後世の中がすべて変わってくるから、そのときに根本的に考えるべきじゃないかというように、私はいまのところは考えております。
  21. 木原津與志

    木原(津)委員 四十六年以降のこととおっしゃるが、私は、もう四十六年は、いよいよ見通しが暗いというだけで、四十二年、四十三年、四十四年とこの二、三年の見通しが、はたしてあなた方の見通しのようなぐあいにいくかどうかという情勢も、非常にきびしい情勢があると思うのです。そういう情勢考えれば、あなた方がいわれる抜本的な対策というものをこの際七月答申に基づいて策定をされるという大きな決意ならば、この策定の中に、けちをつけるわけじゃないが、異常債務肩がわりを一千億、坑道掘進に五十億、炭価補給金トン当たり百二十円、そういったような小手先細工といっては失礼に当たるか知れぬが、そういったようなものが抜本的な当面の対策だということで出されるということは、私に言わしむれば、あなた方のほうには、ただ当面を糊塗するだけで、長い将来にわたった日本石炭産業を、たとえ規模は小さくなっても繁栄する企業としてこれを維持していくということについての熱意というか、そういうようなものに何か欠けるものがあるのじゃないか。もう少しエネルギー——いま大臣のおっしゃった原子力の問題も、もうすでに商業ベースの上に乗っておるのでしょう。石炭から石油原子力というような形の中で大きくエネルギー革命が行なわれ、その中で石炭企業をどうして繁栄ある企業として維持していくかということについて、もう少し雄大な、先の見通しのきいた大臣の御説明をぜひともお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この四十五年までの計画は、御存じのとおり石炭審議会答申によってこの案を立てておるのでありまして、石炭審議会は、経営者また労務者、また学識経験者、あらゆる人の知恵を集めてあの審議会答申というものはできたと思うのであります。そこで皆さんが集まられて、四十五年まではこの案でいけば石炭産業が安定するという見通しで、あの答申案をつくられている。これはいままでの石炭対策としてはよほど思い切った対策だと思うのです。そこで政府もこれを閣議決定をして、四十二年度の予算もそれで計上しておるのであります。でありますからして、四十五年までは、この答申案方針によってやるということでいきたい、こう考えておるのでありまして、四十六年の先の問題については、これはおそらくこの答申案ではあらためて考えるということになっておる。四十四年ごろはだんだん様子もわかってまいりますから、そのときにもう一度皆さんの知恵をおかりして、あらためてまた対策をひとつ四十六年以降については考えていくべきじゃないか、こう考えておる次第であります。
  23. 木原津與志

    木原(津)委員 じゃこの点についての質問はこの程度にして次に移りますが、願わくはあなたが四十五年までひとつ責任ある大臣としておられることを希望しますよ。そうでないと、またかわった、またやり直し、今度はできぬのじゃというようなことじゃ、非常に問題が大きくなるのですよ。だから、あなたの在任中に、われわれはそういった構想を期待したいのだけれども、四十五年以降は、もう皆目見当がつかぬということになれば、これはもうしようがないから、もう一つ先に行って——原料炭数字についてお伺いお伺いします。  この原料炭鉄鋼需要が四十二年度において千五十万トン、漸次これも漸増して、四十三年度千百五十万トン、四十四年度千二百万トン、その次が千二百五十万トンと、需要が漸増しておるのでありますが、私がここで特にこの数字について聞いておきたいのは、先般、外務省の経済局監修の「経済と外交」という本の中に、豪州のフィナンシャル・レビューという雑誌があるそうですか、その雑誌が日本原料炭の将来の見通しについて記事を書いて、それがこの外務省の「経済と外交」という雑誌の中に載っておるのを私は読んだ。そうすると、このフィナンシャル・レビュー誌の日本原料炭見通しによれば、昭和四十四年度、いわゆる一九六九年度における日本石炭——これは原料炭らしいが、原料炭の総需要量は三千三百万トンである、そのうち一千万トンは国産でまかなわれる、差し引き二千三百万トンが輸入されるという見通しを、豪州のこのフィナンシャル・レビュー誌が立てておるわけなんです。これはおそらくエネルギー関係の雑誌だろうと思うが、そのフィナンシャル・レビュー誌によれば、日本の国内炭の原料炭需要は六九年度では一千万トンということに外国では見ているのですが、このあなた方の長期需要見通しでは四十四年度が、鉄鋼用の原料炭千二百万トンということになっておる。これは外国の雑誌の記載を真実だと言うわけじゃないが、外国ではこういった経済専門誌が日本原料炭需要は一千万トンだということをいっておるのに、あなたのほうでは千二百万トンとこの見通しに書いておられる。ここに二百万トンばかり差がありますが、この点はどうなんでしょうか。
  24. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま豪州の雑誌に出た点につきまして、国内の弱粘結炭は千百万トン程度ということが記事にあったということなんですが、それはあるいは真実の数字でございます。なぜかといいますと、答申を出しますときに今後の需給関係をいろいろ、昨年の上半期でございますかに検討いたしたわけでございますが、その当時の国内の原料炭の供給見込みは遺憾ながら千百万トン程度じゃないか、鉄鋼につきまして。そのほかにガス等がありますから、全体の出炭としては千四百万トン台というふうに考えておりますけれども、そのうち鉄鋼向けには千百万トン程度じゃないかという議論をしたことが、昨年の上半期にあるわけでございます。したがいまして、鉄鋼業界が豪州に行って、いろいろ国内の供給力というような話の中にあるいは千百万トンというような話が出たかと思います。
  25. 木原津與志

    木原(津)委員 一千万トンですよ。
  26. 井上亮

    井上(亮)政府委員 一千万トンというのは間違いですね。来年でございますか。
  27. 木原津與志

    木原(津)委員 昭和四十四年度です。四十四度の需要量が一千万トンとなっておる。
  28. 井上亮

    井上(亮)政府委員 それはラウンドでおそらく………。
  29. 木原津與志

    木原(津)委員 あなたのほうのものでは千二百万トンとなって、二百万トン、あなたのほうの見通しが多いから、どちらが正しいかということを言っておる。
  30. 井上亮

    井上(亮)政府委員 これは少しこまかくなりますけれども、昨年の上期における鉄鋼業界原料炭に対する見込みは非常に悲観的であったわけです。というのは、鉄鋼の景況が今日のような状況でなくて、鉄鋼の今後の伸びについて悲観的な時期であったわけです。それが、鉄鋼業界は昨年の秋以来非常に好況になりまして強気になってきたということですが、上期においてはきわめて悲観的な議論が多かった。そのために需要の将来性についても低目に考えており、かつはまた国内の需要につきましても、むしろガスが案外伸びるというふうに見ておった。出炭量全体についてはそう変わりないのです。ところが、ガスは今度負担増対策からもはずされておりますので、このガスの見通しが少し減ってきた。そうしますとガスに回すべきものを鉄鋼業界に振り向ける。たまたま鉄鋼業界は昨年の秋以来非常に好況でもあり、かつまた将来の見通しも明るいという見通しが出てまいりましたので、ガス業界に向けていた炭をこっちへ向けるというような計画が千二百万トン。四十四年度で鉄鋼には千二百万トンと私どもが申しておりますのは、そういった経緯がございます。ですから、その記事はいつの記事かということにも関連いたしますけれども鉄鋼業界がおそらく向こうに行って一千万トン程度とラウンドで話したのではないかというふうに考えます。しかし、今日鉄鋼業界と私ども政策需要として話し合っております考え方としては、この程度はとってもらえるという確信のある数字であります。
  31. 木原津與志

    木原(津)委員 この鉄鋼界においても溶鉱炉に——これは私、見たこともないし全くのしろうとなんだが、重油を高炉に吹き込むというようなことによって能率をあげる。したがって原料炭需要を減らすというようなことがいわれておる。実際上やっておるのかどうか知りませんけれども、やっておるということになれば、これは先ほどから何べんも言いますように、低廉ということはエネルギー供給の原則なんだ。そうすると、そういうような高炉に重油を吹き込むというような技術的な措置により原料炭需要が当然減る。そういう点を見越して、フィナンシャル・レビュー誌では鉄鋼業界需要は一千万トンだというふうに見たのではないかと思うのです。そうすると、あなたのほうの一千二百万トンという需要見込みはいささか過大ではなかろうか。もし過大だということになれば、またこの五千万トン体勢はすぐ、四十五年に至らないで来年、再来年からその根底がくずれてくるわけですが、その点についてどう考えておられるか。
  32. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ごもっともな御心配、御疑問だと思います。ただ、鉄の場合はむしろ高炉に対する重油の吹き込み、そういうことをやっていることは事実でございますが、そのことのために国内原料炭需要が減るというふうに直ちには考えません。もちろん、それも一つの要素にはなりますが、その点については最近、西独あたりの製鉄業では、むしろ今度は微粉炭を吹き込んだほうがより効率が高いというような研究成果がありまして、現に微粉炭の需要が増大しているというような外国の技術の革新の例も出てまいっております。ですから、その点は必ずしも私、決定的なものではないというふうに考えております。むしろ決定的な問題と申しますのは、高炉がだんだん大型化してきておるという現状でございます。いままで、何年か前の高炉は、千トン高炉が一番大きい時代があったのですが、今日では倍以上のものが普通であるというような、容量が非常に大きくなってきている。容量が大きくなりますと、いわゆる専門語では強弱比といっておりますが、強粘、弱粘の配合割合ですね、強粘の割合を多くしないと容量との関連で耐えられないというような強弱比問題で、強粘の割合が大きくなっているというような傾向は、世界的に技術革新とともにあるわけです。そうなりますと、強粘は国内ではほとんど産出しておりません。数年前までは五、六万トン程度産出しておりましたが、今日ではそれまでも至っていないと思います。ほとんど産出していない。強粘はほとんど輸入ということで割り切っておるわけでございまして、弱粘は国内でできますが、今日、鉄鋼業界では大体豪州からと、塔路炭、これを若干トン、長期契約で輸入しておりますが、これが全体の鉄鋼の使う石炭の使用量に比べて、弱粘の伸びの割合が少ないということはいえると思いますが、しかし鉄鋼業界長期見通しにつきましては、粗鋼の生産というのは相当着実に長期に伸びていく見通しでございます。そうなりますと、高炉銑の生産もそれに応じた伸びを示さざるを得ないというようなことからして、弱粘の伸びは、今日の見通しでは相当な量に上る。かりに千二百万トン——どもは千二百万トンという計画を立てておりますが、千二百万トンでも、むしろ輸入をふやさなければまかなえないというのが鉄鋼業界の実情でございます。というようなことで、むしろ原料炭の問題につきましては原料炭についての新鉱開発に政府も力を入れ、相当な増産をさしてもしかるべきだというような考え方を持っているわけでございまして、むしろ需要に対して供給が追いつかないというのが原料炭についての私どもの悩みでございます。原料炭がもっと増産されれば、石炭業界の経営ももっとはるかによくなる、それが思うようにならないというのが今日の私どもの悩みでございます。
  33. 木原津與志

    木原(津)委員 石炭局長の言われるように、この豪州の、先ほど言いましたフィナンシャル・レビュー誌の例によれば、将来は国内炭は一千万トン、だから豪州からの輸入量はかえってふえる、ふえるために、豪州のほうでもふえる見込みで輸出対策をしなければならぬということをこの「経済と外交」に、これはことしの五月号なんですよ。最近の資料だと思うのですが、そういう状況にあるわけなんですね。いまあなたのおっしゃるように、原料炭をもっともっとふやさなければならぬのだ、ふやすべきだ、ふやす余地もあるんだということになれば、この点について、原料炭オンリーで、一体需要がふえる見込みならば、もう少し供給のほうをふやす方法について具体的にどういう構想を持っておられるか、明らかにしていただきたい。
  34. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私どもは、一般炭につきましては、先ほど先生からも御指摘がありましたように、この需要の確保、拡大ということについては相当負担増対策も講じまして、政策需要の強化、あるいは電源開発の火力の新設とか、そういった措置をとってやらざるを得ないと思っておりますが、原料炭につきましては、ただいま申しましたように、今日の鉄鋼業界の成長についての見通しというものが相当なテンポでございますので、これに国内炭では追いつかない。ほうっておけば輸入を逐年相当ふやしていかなければいかぬようなことすら考えられるというようなふうに思っておりますので、国内の原料炭の増産体制につきまして私ども政策の相当な重点として取り上げておるわけでございまして、かねてこの原料炭の新鉱開発については、九州におきましては日鉄鉱業の有明がいま年間百万トンの出炭体制ということで鋭意新鉱開発に努力をいたしております。これは海底炭田、三池の北側に当たる地域でございます。もう一つ、昨年から三菱鉱業の大夕張——北海道でございますが、これに着鉱させまして、これも完成時には年間百万トンあるいは百二十万トンぐらいになるかもしれません。一応百万トン体制というようなことで新鉱開発に着手をしていただいておる。これらにつきましては、予算措置としましては坑道掘進等についてはことしは遺憾ながらまだ補助金は出さない形になっておりますが、これは近代化資金の四割融資、二十年償還、相当長期の償還を見ております。新鉱開発ですから五年間ぐらい金が寝ますから、それから着炭ということになりますから、そういう長期延べ払いの形で近代化資金の融資をするというような制度をやりまして、いま助成策をやっておるわけです。なお、できますれば原料炭についてもう一ヵ所ぐらい新鉱開発に着手してもらったらどうかというふうに考えておりますが、これはまだボーリング等が必ずしも十分でありませんので、しばらくおくれるかと思いますれども、いまそんなような助成策を講じております。
  35. 木原津與志

    木原(津)委員 今度の石炭対策の抜本政策によれば、坑道掘進のために五十億の予算措置が講じてある。この五十億の予算措置の中に、いまあなたのおっしゃるような原料炭出炭を増強しなければならない炭鉱は対象になっておらないということですが、その対象にされなかった理由はどこにあるのか。
  36. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ごもっともな御質問でございます。一応本年度から実施いたしました坑道掘進補助というものは、既存のビルド山についての坑道掘進の補助というような考え方でいま事務を取り進めておるわけでございます。  新鉱開発の問題につきましては、原料炭の新鉱開発についての助成策は実は昨年度から実施したわけでございます。これにつきましては融資を主体にして助成をしていくというような方針を昨年度から実施いたしましたために、今度坑道掘進補助というのを助成策の一環として大きく取り上げたわけでございますが、とりあえず昨年から実施したものをもうしばらくその体制でとにかく助成を続けてみようというような——これは深い理由はございません。昨年度からやったものをすぐまた本年度から切りかえるというのもどうかというようなこと、それからもう一つの実質的理由は、二十年というような長期の延べ払いの体制でやれば、非常に炭層条件その他のいい地点、環境のいい原料炭の山の新鉱開発でございますから、何とかやれるのではないか、融資体制が十分であれば特に補助でなくてもやれるのではないかというような見通しがありましたために、本年度から補助にはにわかに切りかえられなかったというのが実情でございます。
  37. 木原津與志

    木原(津)委員 融資と補助では話がだいぶん違いますよ。  そこで、今年度は昨年度からのあれがあるからやらなかったと言われるが、それじゃ将来これを助成金に切りかえるような用意を持っておられるのですか。持っておるとすれば、いつからこれを助成金に切りかえるか。来年からやるか、再来年からやるか、あるいは四十五年以降の日程になるのか、その点の見通しはどうですか。これは急いでやらなければ——それだけ重要なことでしょう。国内の需要がまかなえぬで外国はほくほくしているじゃないですか。豪州あたりでは、おれのところの石炭をたくさん買ってくれるのだといって、レビュー誌で盛んに豪州の国内の石炭業者のしりをたたいておるというような現状です。しかも輸入をしなくても国内炭で供給ができる見通しが立つということになれば、それは石炭の五千万トン体制とかなんとかにかかわらず、もっとこれは、五千万トン体制が五千五百万トン、あるいは五千五百万トンにいかなくても、五千二、三百万トンのところまではすぐいく可能性が出てくるわけなんです。そういう見通しを持っておりながら、去年からやったので一応ことしも融資でやるというような考え方でなくて、こうしなけばならぬということだったら、政策転換は幾らやってもいいじゃありませんか。助成金の中にこれは当然含めて、石炭産業の危機を打開する一助としても早急にやらなければならぬ。ことしはやれなかった、じゃいつやるか、これが私は聞きたいのですが、何かその点についての目途がありますか。
  38. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私も先生の御意見に基本的に反対するものではもちろんございません。私は石炭産業を育成する立場にございます。したがいまして基本的に反対するわけではありませんが、ただ行政当局といたしまして、どうしても補助制度に切りかえないと長期に金を寝かす、いわば大起業といいますか、大きな仕事でございますので、その間相当コストも全体として割り高になります。炭は出ないで金だけかかりますから、企業として、融資体制ではいわば国策ともいえる原料炭の開発をやり通し得ないというような実情があれば、私は補助に切りかえなければいかぬというふうに考えております。ただ今日においては、その辺の検討をいたしておりますので、直ちに来年からということもただいまこの席では申し上げられませんけれども、どうしても補助がないとできないというような実情であれば、やはり原料炭の開発も国策でございますから、鉄鋼業界としても将来の長期安定供給に寄与する性質のものでありますので——私は石炭行政をやっておりまして、原料炭の輸入というのを極端に警戒しておる一人でございます。一ぺん輸入しますとあと打ち切れないわけであります。いかにあとで出炭が好調になっても輸入を切ることはできません。国際信義の関係から向こうの山がつぶれるという問題もあります。したがいまして、一たび輸入を認めますと簡単に打ち切れないという性質でございますから、輸入については極端に警戒をしております。鉄鋼業界と私どもの長年の申し合わせば、国内炭を優先使用するという原則を鉄鋼業界にも御確認いただいておるわけでございまして、国内炭さえ出ればそれを優先的に使ってくれる、こういう約束になっておりますので、何とか国内炭の確保をはかりたいというふうに考えております。しかし企業がそれでやれるという場合には従来の制度を変えるという積極的な理由がない。やれないということになれば私も先生のおっしゃるように考えざるを得ない、こういうふうに考えております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 速記を始めて。
  41. 木原津與志

    木原(津)委員 原料炭の新鉱開発ということが当面の急務だ。そうしなければ豪州から輸入をしなければならぬ。もう一ぺん輸入をしたらあと打ち切ることができない。これは当然なことなんですよ。国際信義その他の問題があるから実際上できないのです。そういうようなときに、先ほど事務当局からお話があったように、出炭を増加させるために有明、大夕張その他の有望な新鉱開発を急がなければならぬ。今度の予算の五十億の中に開発補助金が入ってないのですよ。それをどうするのかと言ったら、二十年の長期延べ払いで開銀の融資でまかなってもらうという御返答があったわけだ。しかし融資と補助金とは、それはてんで話になりませんよ。特に現在の石炭危機で、経営の状態も一千億以上債務の肩がわりをしなければならぬというような状態の中で、それが融資でやれないときにまた考えるというようなことでは、ちょっと答弁としてああそうですかと言うて私は引っ込むわけにはいかない。そこで、ことし切りかえることはもうどうしてもできない、予算が通ってしまっているからできないということになれば、この原料炭の問題は重大な問題だから来年からでも——いま委員長からも介入があったように、一般炭に対してさえそれをやっているのだから、原料炭でやらぬなんというのはおかしいですよ。だから来年度からでも助成金の予算のワクをとってそれをやるということを大臣どう考えておられるか、その点だけ答弁したら行かれていいですよ。そのかわり、いかぬということになればまだ帰さぬ。
  42. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 本年度は、いま局長から申し上げたようなことで、原料炭のことについては助成金を出さぬという計画でありますが、お話しのとおり国内炭の原料炭というものは一トンでも多く出したいという考えをしております。したがいまして、融資だけで間に合わぬということになれば、これは当然助成金を出すべきだと思いますので、来年度はひとつ来年度の予算のときにその点を十分考慮してやっていきたい、こう考えております。
  43. 木原津與志

    木原(津)委員 それではもう一ぺん念を押してお聞きしますが、来年からでもいよいよ必要だということになれば、来年度の予算の中でもこれを考慮する用意があるというふうに大臣の言明があったと承知していいですね。
  44. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 けっこうです。
  45. 木原津與志

    木原(津)委員 そうすると、また需要見通しなんですが、この四十四年度の需要見通しについては、私が言ったレビュー誌の一千万トンというようなものでなくて、千二百万トンの確保は易々たるものがある、あなたのほうで確信があるというふうに聞いておきます。それでいいですか。
  46. 井上亮

    井上(亮)政府委員 需要としては十分にございます。もっとございます。ただし供給力のほうに若干不安がある。したがってその供給力の不安をなくすために、いろいろだだいま助成策その他を講じております。そうしまして千二百万トン程度は何とか供給できるようにしたい、こういうふうに考えております。
  47. 木原津與志

    木原(津)委員 そういたしますと、一般炭の場合とは別にして、この原料炭鉄鋼に関する限り、四十五年度において千二百五十万トン、そうすると鉄鋼事情からいたしまして、現在鉄鋼の生産は上向きになっておる。生産そのものの需要が非常に大きいという点からして、四十六年度以降の需要見通しというものは、原料炭に関する限り大きな見通しが立てられるのじゃないか。大きなというのは語弊があるかもしらぬが、いわゆる四十五年の、現在の出炭見通し以上の見通し長期間の見通しがきくものと思うが、その点についてのあなたのほうの見通しはいかがですか。
  48. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お説のとおりでございますが、非常に残念なことですが、国内の原料炭供給力にいまのところ限界がございます。今日私が非常に心配しておりますのは、先ほど言いましたような新鉱開発については着々工事が進んでおりますが、しかし既存のビルド山の原料炭出炭が最近とみに伸び悩んでおります。ことしの上期におきましては計画を割っておるというような非常に憂慮すべき事態にある。したがいましてこれは労使の奮起を私は要請いたしておりますが、そういう事情でございます。ただ原料炭の山は他の一般炭の平均的な山よりもはるかに条件はいいわけです、山そのものとしては、いわゆるビルド山が多いわけですから。私はやってやれないことはないと思いますが、実情はそういうような経緯もあります。したがって長期計画は立てておりますが、少なくとも私どもの供給計画では、四十五年で千二百五十万トン、これは鉄だけです。全体で千五百十万トン、これはガスその他の需要もありますから千五百十万トン、少なくともこれだけの供給力はつけたい。もし出炭さえ可能ならばもう少し高く、もう百万トンくらいの増加は需要としては十分あるということでございます。
  49. 木原津與志

    木原(津)委員 それでは大臣がおられないし、また大臣に聞いても知らぬだろうからあなたにお聞きします。石炭政策需要という立場から、EECにおいては石炭の危機を救うために鉄鋼及び電力、この電力関係鉄鋼関係石炭、これを結びつけて、しかも超国家的な共同体というようなものをこしらえて、そうして石炭需要を確保していくというようなやり方をやっておるということを私は聞いておるのですが、あなたはもしそのEECの石炭鉄鋼電力、この共同体というものの概要を簡単に説明できるなら教えてください。
  50. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私はかつて重工業局の鉄鋼業務課長をいたしておりまして、その当時私はヨーロッパに行きまして、EECの本部を訪れたことがあるわけでございます。そのとき私は鉄鋼所管で石炭の担当でなかったわけですから、石炭問題はあまり深く研究したわけではございませんが、少なくとも今日のヨーロッパの共同体は、母体は炭鉄共同体、石炭鉄鋼共同体、ここから発足していることは、釈迦に説法になりますが、御承知のとおりでございます。結局、これは政治的ないろいろな理念もありましょうけれども、少なくともヨーロッパにつきましては、石炭鉄鋼については共同体をつくって、そうしてむだな競争を排除して合理的にやっていこう、これが根本理念だと思います。したがいまして、炭鉄共同体では石炭の輸入も共同行為で考える、ここで石炭を輸入をいたします。輸入につきましてもこの共同体が中心になって考える。それから、これはちょっと石炭と離れますが、鉄の原料になりますスクラップの輸入も炭鉄共同体で共同輸入をするというような、共同化をいたしておるわけでございます。なお、国内炭の配分等につきましても、炭鉄共同体が中心になって、各国の配分計画と流通計画といいますか、これを立てておるというのが実情でございます。  なお、電力お話がいま先生から出ましたが、電力につきましては、炭鉄共同体自身では、直接ではありませんけれども、たしか昨年の六月末だったと思いますが、特に西独におきまして石炭需要確保のために、既存の火力発電所については、重油使用は、それ以上使用する場合には許可制にするというような、いわば政策需要の確保の方法をとっております。それから、その時点以後新設いたします石炭火力発電については、重油火力発電との価格差、コスト差、これを国が負担増対策として補償する、その財源は重油消費税、日本は関税収入で特別会計を今度つくったわけですが、西独では重油消費税をその財源とするというような一連の措置が昨年の六月から講ぜられておる。なおフランスは、先生も御承知のように電力石炭は公社営、一種の国営でございますから、そういう問題はあまりない。西独はいずれも私企業でございますから、石炭政策上からいまのような負担増対策を講じております。こういうのが現状でございます。
  51. 木原津與志

    木原(津)委員 EECをまねるわけではありませんが、石炭需要を確保するために炭鉄の共同体あるいは炭と電力との共同体、そういったようなものを政策需要を強力に推進する意味においてつくり上げるという条件が日本の場合にあるかないか。これがあるということになれば非常に石炭見通しとして明るいわけなんだが、将来ともそういう共同体をつくっていく条件がないということになれば、これは政策需要一本ではなかなかわれわれは明るい見通しを持つわけにはいかないんだが、あなたのほうの見通しとして、日本にそういう共同体結成の条件があるかどうかという点について御説明願いたい。
  52. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、私も個人といたしまして、ヨーロッパの炭鉄共同体も訪れたわけでございまして、大臣の秘書官をしておりました林君が当時ベルギーに駐在しておりまして、これが私の案内をして炭鉄共同体についていろんな話を聞き、ディスカッションしたわけですが、非常にりっぱな制度組織であるというふうに私も痛切に感じたわけであります。私どもがいま日本石炭産業再建、需要確保というようなことを考えますときにも、やはりこの制度は参考になると私個人では考えております。実はほとんど実質上これに近いことをいまやっておる。  ちょっと口はばったくなるかもしれませんが、そういうことを考えながら私どもも今日石炭施策をやっているわけであります。たとえば例といたしまして、電力につきましては、先ほどの西独は発電所の今後の新設分についての負担増以前のものについては重油規制というような形でやっておりますが、私どものほうは、以前からやっておる火力発電所につきましても今後のものにつきましても同様でございますが、一定量以上の需要については負担増対策ということについて、電力業界に、先ほど先生から御指摘のように、単なる経済合理主義からだけの反対はさせないというような制度的裏づけのもとに、石炭引き取りを要請するというような制度をつくっております。  それから鉄につきましても国内炭優先使用原則、とにかく国内炭を優先使用するという原則をかねてから主張いたしております。鉄鋼業界もそれを心よく受け入れて今日やってくれておる。  なお原料炭を輸入いたしますときには、これは輸入の自由化をいたしておりませんで、政府の許可を必要とする割り当て制といいますか、そういうように自由化しておりません。これは通商局が窓口になって輸入の許可を与えますけども石炭局が一応関与しております。石炭局の了承なしには輸入できないというような制度的な仕組みにもなっておりますので、そういった意味では輸入炭それから国内炭の供給確保についての体制は一応できたというふうに考えておりますが、ただ電力についても鉄についてもこれを法律ではやってない。鉄は輸入の制限は法律でございます。というのが現状でありまして、まだ私自身が考えましていろいろ不十分な点も全然ないとは申せませんが、政策需要を確保するという意味の基本的なワクづくりは一応できたというふうに考えております。
  53. 木原津與志

    木原(津)委員 そうなるとEECのところまでいくかどうかわからぬが、日本においても共同体をつくることができるということには、ほんとうに一歩前進だろうと思う。そういうふうにならなければ抜本的な石炭対策にはならぬと私は思うのです。それをひとつあなた方のお力で、あなた方が音頭をとられて、炭鉄あるいは炭電の共同体を組織されるということになれば、石炭鉱業の整備計画についてのこの法案の内容もまた変わってきて、ほんとうにこれならばできるだろうという安心がわれわれにもできるのですが、遺憾ながら現在出ておる石炭鉱業再建整備臨時措置法では、まだ抜本的な対策には背中のほうを洋服の上からかいておるような感じがするのであります。ただいまこれを出したことを悪いとは言わないが、もっとこれを強力に具体化する意味において共同化の法律を出されるようにあなた方十分な考慮をして、そして考慮だけでなく、早急に実践に踏み込んでいただきたい。これが日本石炭産業を安定させ繁栄させる道であると思うのでありますから、特にあなたにその希望を申し上げて、これで質問を終わりたいと思います。  長い間、失礼いたしました。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 午後は零時五十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時三分開議
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  石炭鉱業再建整備臨時措置法案について質疑を続行いたします。田畑金光君。
  56. 田畑金光

    ○田畑委員 石炭鉱業再建整備臨時措置法の内容についてしばらく質問したいと思いますが、この法律によれば、再建整備計画通産大臣に提出し、その認定を求めることができる石炭企業は、同法第二条によりますと「財務の状況及び掘採可能鉱量が通商産業省令で定める基準に該当するもの」となっておるわけです。この通商産業省令というのは、この法律が通ってそのあとどれくらいすればできるのか。また内容などについては、およそ固まっておると考えておりますので、この際石炭局長からひとつそういう面について御説明を願いたいと思います。
  57. 井上亮

    井上(亮)政府委員 石炭鉱業再建整備臨時措置法の第二条の問題でございますが、第二条は「石炭鉱業を営む会社」でありまして、その肩がわりを受けます前提条件といたしまして、まずその対象企業たり得る基準は何かという点でございますが、それはまず財務の状況からひとつ検討いたしたい。第二は採掘可能鉱量がどの程度あるかというような点、この二つの条件に照らしてまず石炭鉱業を選びたいというふうに考えております。  財務の状況と申しますのは、一応私どもいま考えておりますのは、何といいましても、国がこれだけの助成措置をいたすわけでございますので、当該企業について実質累積損失があるということを条件にいたしたい。実質系積損失と申しますのは、公表損益の問題ではございません。公表損益でとりますと、いろいろ粉飾決算というような問題もありますので、そういうことではなくて、たとえば税法上繰り入れるべきものは繰り入れた形をとりまして、そういった実質的なものに引き直して損失があるということにいたしたい。つまり見せかけというようなことではなくて、実質の点で問題にするような、そういった基準をつくりたいというふうに考えております。  それからなぜそれでは実質累積損失があるかということをいうか、利益のあるものは対象にしないのかという御疑問もあろうかと思います。やはりこれだけの措置をいたしますのには、石炭鉱業が過去数年にわたって急激かつ大規模な閉山、合理化をやってまいりました。しかも、その間千二百円引きというような措置もやってまいったようなわけでございまして、こういった過程で大きな損失をかかえ、それがまた異常債務になり、それが重荷になって今日立ち行かない現状になっております。それを救済する手段でございますので、従来そういった閉山とかいうようなこともなしにやってきた企業とか、あるいは累積損失も何もないというようなところまで国がめんどうを見るのははたしてどうか。国が今回の措置をやりますのは、何といいましても、五千万トン体制維持のために、ほうっておけば崩壊する石炭企業石炭産業を守り、資源を確保するという見地からやるわけでございますので、そういった基準をとりたい。  それから第二は、ただいま申しましたようにエネルギー資源の確保、将来のエネルギー源としての石炭の安定供給に寄与するための助成策でございますから、一、二年先には閉山してしまうのだ、炭量もないのだというようなところにこの措置をやるのは、この助成策の趣旨からいって適当でない。むしろ、二、三年先には閉山するのだというような企業については、安定補給金とか別の制度でめんどうを見るべきだというふうに考えております。  この採掘可能鉱量につきましては、少なくとも十年以上の、ほんとうをいえば、この法律の体系からいえば、十二年の元利均等償還ということですから、十二年以上の炭量が必要になろうと思いますが、しかし、少なくとも十年程度の採掘可能鉱量があることをこの基準といたしたいというふうに考えております。
  58. 田畑金光

    ○田畑委員 この法律をすなおに読みますと、省令ができないと、再建整備計画を出して通産大臣の認定を受ける手続もとれない、こういうことになっておりますね。したがって、いまお話のようなものが省令の内容だと思うのですけれども、それは固まっておるわけですか。それとも法律が通ればすぐ省令を書き上げられるところまで作業が進んでおるのかどうか。
  59. 井上亮

    井上(亮)政府委員 この法律案が通りましたら、直ちに政省令を出したいというふうに考えております。ただいまそういうような準備をいたしておりまして、もうほとんど煮詰まっておりまして、基本的な問題点は少ないわけでございますが、なおまだ政令の法文化まではいたしておりませんけれども、先ほど言いましたような実態的な内容につきましては、先ほど私が答弁しましたような方向でほとんど煮詰めております。
  60. 田畑金光

    ○田畑委員 答申の中身を見ますと、中小炭鉱については若干の条件の緩和をはかる、こう言っておりますね。いまのお話のように、かりに可採炭量十年あるいは十二年というのは、現在大手筋炭鉱を対象にして考えた場合はそういうことだと思いますが、中小炭鉱についてはその条件も若干緩和することを考るべきだと答申が言っておるわけですが、この点については、いわゆる省令の基準の中ではどういう構想を持っておられるわけですか。
  61. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまのところ、その辺が最後に残された検討問題だというふうに考えておりまして、ほかの点は基本的な考え方は全部きめておりますが、そういった点をもう少しこの法案が上がるまでの過程に検討をいたしたいというふうに考えております。しかし、私個人の今日の気持ちを言いますと、やはりこの採掘可能鉱量につきましては、石炭の今後採掘すべき鉱量が年間生産数量十倍以上であることということで、一応はっきりいたしたい。といいますのは、いろいろ関係方面とも検討いたしましたが、なるほど答申には先生のおっしゃったような若干緩和を考えてやったらどうかというような意見がありますけれども、やはり政省令でこれを明確にうたいますときに、適当な表現ができない。つまり十年以上あること、十倍以上あること、というようにいいました場合に、中小炭鉱にあっては七倍でいい、あるいは七年でいいということはこの法律の体系からしても矛盾があるのじゃないかということにもなりますし、事務的にはなかなかそういう矛盾をおかしてまで政省令をつくりがたいというふうに思いますので、やはり私は、そこは十年以上ということで書きたい。  では答申の精神はどう生かすかということになるわけでございますが、この点につきましては、この法律案にもありますように、再建整備計画をつくりますときには、石炭鉱業審議会意見を聞いて政府が認定をするということになっております。その意味では、いろいろ第二条でも、今後の長期計画、生産とか販売とか、財務の計画とか、その他今後のもろもろの再建整備計画の内容が法律的にも要請されておりますが、こういった内容の検討に際しまして、中小炭鉱についてはできるだけこの恩典措置が法律の趣旨に矛盾しない範囲で均てんできるようにという配慮をいたしたい。むしろ炭量だけを七年でもいいとかなんとかということを言わないで、全体として、何とか、中小炭鉱でも、この法の趣旨に照らして該当するものはできるだけ生かすような運用配慮をいたしたい、こういうように考えております。
  62. 田畑金光

    ○田畑委員 いわゆる中小炭鉱という場合の、その基準というものはどのように考えておられるのですか。
  63. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまの御質問は、中小炭鉱の定義の意味だと思いますが、一応私ども中小炭鉱の定義といたしましては、これは確定的な、何といいますか、ものさしは今日まで必ずしも明確ではなかったわけでございますが、一応いままで法令面で出ておりました中小炭鉱の定義としましては、例の加算離職金を中小炭鉱について考慮するということを考えましたときには、中小炭鉱とは年間五十万トン以下の生産をしているものという定義づけが一つございます。これが一つの、よりどころになろうと思います。しかし、これだけかといわれますと、たとえば安定補給金あたりについては、もう少し幅広く考えたいという配慮もいたしております。
  64. 田畑金光

    ○田畑委員 これは要望ということになりますが、石炭局長の答弁の中にもありましたように、答申の趣旨を尊重してやるということになれば、あくまでもやはり答申の趣旨というものをよく玩味されて、ひとつこの法律の適用にあたっては、できるだけ、大手も中小もこの政策措置によってやっていけるような体制をつくれるように援助願うことがこの法律の要請するものだ、こう思うのです。ことに石炭鉱業審議会にはかって認定を受ける場合、前提として、その意見を聞かねばならぬということになっておりますから、やはり石炭鉱業審議会という、ああいう機関の認定を受けるためには、その前提として石炭局、あるいは通産省自体がやはりこの法の解釈と運用、この政策のねらいというものを十分頭に入れて善処してもらわねば、せっかくりっぱな制度や政策や予算ができても、その目的から逸脱するという危険がないでもない、こういう感じを持つわけです。  そこで、それに関連して、第二条の第一項の二号、「鉱区の調整、石炭坑の近代化その他の生産の合理化のための措置」、これを認定、再建整備計画の中にあわせて乗せるということになっておりますが、たとえばその中で、鉱区の調整などということは、言うはやすくしてなかなか困難な問題ですね。答申の中にも、従来必ずしも十分に行なわれていたとは言いがたいので、今回の画期的施策の実施に際しては、これを極力推進するということを言っておるわけです。そういうことを考えたならば、この鉱区の調整というのが再建整備計画の中の一つの重要な生産体制確立の要件になっておるわけですが、これは、将来こういう鉱区の調整をやってほしいという期待と申しますか、そういう一つの希望的な計画というものが出てくるというにすぎないと思うのですが、この点についてやはり通産省としても、石炭局といたしましても、こういう問題については積極的にこれの調整に当たるということを前提としてこういうものが出てきておるのだ、こう見るわけですが、この点はどのような取り組み方でいくのか明らかにしてもらいたいと思います。
  65. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大体先生のお考えのようなことで考えているわけですが、たとえば鉱区の調整、この問題も、個々の企業それぞれが自分の会社について再建整備計画を立てますときに、こういった計画も持ってもらうという趣旨でございますが、御承知のように鉱区の調整は相手方があることですから、当該会社が隣の鉱区をもらいたいと思いましても、隣の会社ががえんじなければ鉱区調整は不調に終わるわけでございますので、したがいまして、これをどう扱うのかということだと思いますが、私どもは、通産大臣が再建整備計画を認定する事前行為として審議会意見を聞くわけでございますが、その段階においては、まず希望的な意見をこの計画の中に入れていただき、審議会でも鉱区調整についての仲介の労を十分とるような立場でこれを検討いたしまして、そして話をつけるべきだ、無理なくいけるはずだ、いますぐ話がつかないまでも、それはそうするのが妥当だというような見解に立てば、それをそのものとして一応確認をして、あと鉱区調整部会等が間に立って仲介の労をとって話し合いをまとめ上げるというような、いわば指導的なことも考慮しつつ計画に乗せていきたい。しかし、再建整備計画をつくりますときに同時に決定するケースもあろうと思います。通産大臣が認定するときに同時に決定することもありましょうし、同時に対価の問題、価格の問題もありますから、譲渡価格をどうするというような話がつかないまでも、方針として確認する場合もありましょうし、ケースとしていろいろあろうと思います。いずれにしても、この鉱区の調整については、この再建計画をつくりますときに十分織り込んだ形で検討いたしたいというふうに考えております。
  66. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの石炭局長の答弁のような態度で取り組んでもらわなければ、これはなかなか困難な問題だ、こう思いますね。そのことを希望しておきます。  同時に、この第三条の第一項ですか、「再建整備計画が次の各号に該当し、かつ、その実施が当該会社の経理的基礎及び技術的能力並びに当該会社に対する金融機関の協力の見通しに照して確実であると認めるときは、当該再建整備計画が適当である旨の認定をする」この中で、金融機関の協力の見通しが確実であるかどうかということも、今日の石炭企業を見れば、これは大手といわず、中小といわず、全部金融難であり、金融の風通しが悪いということは石炭局長御存じのとおりだと思うのです。金融機関の協力の見通しが確実であるかどうかということも、いまの石炭企業自体ではなかなかこれはむずかしいと思うのです。やはりこれも、残念だが、通産省当局の仲介なり協力がなければ、こういうようなことは条件として生まれてこないと思うのですが、この辺はどのように考えておられますか。
  67. 井上亮

    井上(亮)政府委員 この点も、御指摘がありましたとおり、そういった問題点があろうと思います。しかし、その半面、私どもは、この第三条にこのことばを入れることによりまして、逆に今後金融機関に対して協力要請を一緒にいたしたい。つまり、先生と逆な言い方でございますけれども、この十年間に千億の、いわば異常債務についての肩がわり政府はやるわけでございますから、金融機関に対しては、ある意味では相当な恩典でございます。しかし、それは、石炭鉱業救済のためではありますが、これだけの措置をするについては、金融機関についても、やはり今後石炭鉱業を見捨てることなく、強力な姿勢を要求したいというようなこともこの条文の背後にあるわけでございます。ただ表向き、先生がおっしゃったように、なかなか金融機関は協力しないという問題はあります。ありますが、しかし、その半面、協力しないということであれば、その当該企業は続かないわけでございますから、倒産というおそれもあるわけでございます。そういうことになれば、金融機関はこの肩がわりの恩典を受けられないというような不利な点もありますし、私どもは、これによって、むしろ今後の石炭に対する金融協力を強く条件づけ、要請したいという趣旨でこの表現をつくっているわけでございます。しかし、金融機関の石炭についての不信の念もなおなかなかありますから、そういった点についてはもちろん、先生がおっしゃいましたように、私ども間に立ちまして、金融機関に対して十分指導、協力の要請をしたいというふうに考えております。
  68. 田畑金光

    ○田畑委員 次にお伺いしたいのは第四条ですね。肩がわりの対象となる借り入れ金、この第四条によれば、「昭和四十一年三月三十一日以前において借り入れ、昭和四十二年四月一日現在において借入残高のある借入金」ということになっておりますが、これに該当する借り入れ残高というのは、大手や中小を別々に見た場合にそれぞれどのくらいあるのか。さらに、政府関係金融機関あるいは市中銀行からの借り入れ別に見た場合に、借り入れ残高はどうなっておるのか、これを御説明いただきます。
  69. 井上亮

    井上(亮)政府委員 借り入れ残高の問題でございますが、今日、いま、私の手元にあります資料では、実はこれは四十二年三月末の資料があるわけですが、四十一年九月末現在で二千百十一億、これが大手十八社の残高でございます。この内訳といたしましては、合理化事業団、開発銀行その他の政府関係としまして千二百四十四億、それから市中銀行だけで八百六十六億ございます。  それからなお、中小炭鉱につきましては、現在中小炭鉱が肩がわりを要望している企業があるわけでございますが、これが十五、六社現在ございますが、これについて、四十二年三月末で調べてみますと、銀行借り入れ残高は、中小計で八十二億ございます。
  70. 田畑金光

    ○田畑委員 大手は、二千百十一億というのは四十二年三月末ですか。
  71. 井上亮

    井上(亮)政府委員 四十一年九月末です。
  72. 田畑金光

    ○田畑委員 いわゆる一千億の肩がわりという場合、その肩がわりの対象になる借り入れ残高ですが、それは、いまお話しの中の大手は昨年の九月末現在二千百十一億の借り入れ残がある。中小は四十二年三月末で八十二億、これは全部肩がわりの対象になり得る金だと思いますが、そうしますと、いわゆる一千億の肩がわりというような場合、大手の二千百十一億の中で政府機関から千二百二十二億、市中金融機関から八百六十六億となっておりますが、どういう比率になるわけですか。
  73. 井上亮

    井上(亮)政府委員 結局この法律によります配分といたしましては、実際の肩がわり額の算定に際しましても、ただいま申しましたように、ただいま四十一年九月末の数字で申しましたが、四十二年三月末現在の残高につきまして、これは大手、中小その考え方はみな同じでありますが、この残高をもとにいたしまして、これは御承知のように中小も合わせれば二千二百何十億と二千三百億近い残高になると思います、残高そのものの総計は。そのうち千億相当を肩がわりする。これは大手、中小込めまして千億相当を肩がわりするということですから、その割合をどうとるかというのは一つの問題点でございまして、今日私ども考え方といたしましては、ただいま申しました全体として千二百数十億、この四十二年三月末現在の残高に対しまして、それぞれ各企業別に千億の案分をするわけでございますから、各企業ごとの残高比例という考え方一つあるわけでございますが、残高比例ということになりますと、必ずしも正確に当該企業の困窮度の公正さが期しがたい。困窮度という点からいけば累積赤字の多いほうが困窮度が高いわけです。だからといって、その困窮度は、借り入れ残高の増大という面にもあらわれておりますし、それから、借り入れ残高自体については、いままでの異常な借り入れ、異常な債務の姿も表明いたします。たとえば閉山、合理化をやってきましたその過程において、銀行からの借入金でいろいろまかなってきたというものも入るわけでございますから、残高を中心にして、この異常債務の額も一部加味いたしまして、そういった一つの算式をつくりまして、各社別に展開する。つまり全体の二千二百数十億を残高比例でやれば、それは一本の比例で千億に落とせるわけですが、単に残高比例だけでなしに、この法第二条の、残存します実質累積赤字という要素も一部加えまして、案分比例をして各社の肩がわり額をきめていく、こういうふうに考えております。
  74. 田畑金光

    ○田畑委員 なかなかどうもややこしくてたいへんわかりにくいんですが、二千二、三百億のとにかく借り入れ残高がありますね、大手、中小総計しますと。各社別の比例配分ということは、第一がその一千億肩がわりの比率だとすれば、大手も中小もすべての炭鉱が借り入れ残高を持っておる限りにおいては、比例配分である程度肩がわりは受け得るんだ、こういうことですね。そうすると、さらにそれに加味するのに、いわゆる累積赤字のウエートによって、また第二の配分をそれぞれの各社ごとにつける、こういうことになるわけですね。
  75. 井上亮

    井上(亮)政府委員 少し体系的に入口の点から申し上げますと、入口というのは第二条ということでございますが、第二条は入口といいますか、石炭鉱業がこの肩がわりを受けるための条件といいますか、受け得る資格要件としては、累積赤字が何にもない企業は対象にいたしません、こういうことを申しておるわけでございます。ただ累積実質赤字でございますから、公表用ではございません。粉飾ではありません。先ほど言いましたように、引き当て金を引き当てないなどという場合に、それを引き当てるとすればどの程度赤字があるはずであるというような、実質の計算をいたしまして、つまりできるだけ多くの石炭企業にこの恩典をあずからせたいという配慮からやっておることであります。それが入口。  それから実際の肩がわりにつきましては、この法律の四条にありますように、金融機関の残高が全体として中小まで入れまして二千二百数十億ある。この二千二百数十億には単なる運転資金も入っておりますので、そのうちの一千億相当、これを肩がわりする。つまり三井鉱山がたとえば何百億か残高がある、三菱も百何十億か残高がある、各社別にみないろいろな残高がありますね。それを中小までトータルしたのが二千何百億ですから、それを千億に落とさないと——その落とし方としては、残高の額による案分比例で千億に落とすという計算方式が一応一般的にあるわけでございます。ところがこの方式だけでやりますと、企業の困窮度が入らない、つまり今後当該苦しい企業について再建整備をやっていくわけですから、困窮度もやはり加味する必要があるのではないかということで、残高による案分比例というのを基本には置きますけれども、同時にそれプラスウエートとして、入口の累積赤字の額、これを加味いたします。これでございます。
  76. 田畑金光

    ○田畑委員 局長、これわかったようでまだ正確に私は理解しておるのかどうか私みずから疑わしく思っておるので、そこでやはりひとつ出せるなら、いま言ったようなことを資料として、これについての配分はこう考えるのだということをひとつこの委員会に資料として出してくれませんか。
  77. 井上亮

    井上(亮)政府委員 これはどうも各会社別の累積実質赤字のとり方等についてもいろいろ意見がございましょうし、各会社別の相当恥部に類する内容も入っておりますし、この点は実施の責任を負っております私どもにおまかせいただくとして、ただ、算式についての考え方、これが妥当であるかどうかということについては、私は十分御意見を承ってけっこうだ、またそうしなければならぬというふうに考えておりますが、しかしこの会社別というのは……。(田畑委員「そんなことではない」と呼ぶ)ですから、算式の考え方についてでしたら、これはいつでも書きもので差し上げてもけっこうですが、それはいま私が申し上げたとおりでございます。
  78. 田畑金光

    ○田畑委員 いや、私の言っておるのは、各社別の経理の実態をここで資料要求すること自体がこれは行き過ぎだと思うし、また当を得ていないと思う。そうではなくして、先ほど局長のお答えになった配分の算出の方式についての一般論をひとつここに資料として出していただきたい、このことを言っておるわけです。  そうしますと、累積赤字のない会社は適用しないというわけですか。これは大体何社くらい累積赤字のない会社があるのか。それからもう一つ、いわゆる累積赤字のないということは、たとえば、法人ですからいろいろな内部留保がありますが、法定準備金であるとかいろいろな名目の積み立て金がありますね。そういうような積立金なんかも全部取りくずして、なおかつ赤字が出なければ今回のこの適用は受けられないという趣旨なのかどうか、このあたりをもう少し説明いただきたいと思うのです。
  79. 井上亮

    井上(亮)政府委員 累積赤字の問題ですが、累積赤字の問題につきましては、まず私どもとしましては公表損益、これがありますが、この公表損益を、先ほど来言いましたように、粉飾を排除する意味で——粉飾というのは無理してよく見せているということですが、これが一般でございますが、これをそうではなくて、実質であらわさせなければいかぬという意味で、まず第一点は、減価償却等については、償却不足がありましたときには、償却不足を正常にやるとすればどの程度なお赤字の要因がプラスされるかというような点、あるいは未払い等のいろいろな問題がありましたときに、たとえば終閉山やなんかをやっています山についての償却不足等もございますから、単に設備だけの償却不足じゃない。そういうものもやはり考慮するとか、あるいは退職給与の引き当て等について、金繰りが苦しいために十分な引き当てをしていないという事情にあります場合に、その引き当てを考慮する、こういった実質的なことにいたしたいというふうに考えております。  それからなお、配分に際しましては、先ほど言った残高と累積赤字とを足して、そしてウエートをとるというような考え方が妥当ではないかという考え方でいまおるわけでございます。  積み立て金の問題については、非常に大きな積み立て金があるときには累積赤字の中に配慮せざるを得ない、そういうふうに考えております。
  80. 田畑金光

    ○田畑委員 要するに、各種の積み立て金なども全部食ってしまって、なおかつ先ほど局長が答弁なされたいろいろな引き当て金を引き当てた前提に立って損益を算出してみると、そこに赤字が出てきた、そういう意味ですね。
  81. 井上亮

    井上(亮)政府委員 いずれにしましても引き当ては、当然引き当てるべきものは引き当てるけれども、しかし非常に大きな内部留保等が別にあればこれは考慮するということを申し上げたわけで、税法上当然積み立てるべきものの積み立てば、これは当然のこととして累積赤字から差し引くというようなことはいたしません。税法上当然積み立てるべきものは、それが幾ら実質上の資産であろうと、これを差し引くものではございません。そうじゃなくて、それ以外の何か別途積み立てという式の、何か資産を隠匿しておるようなものでもあれば、税法上の引き当て以外という場合は考慮するということを申し上げたので、税法上当然積み立てるべきものは何も関係ないということでございます。
  82. 田畑金光

    ○田畑委員 答申によれば一年未満の短期借り入れ金及び石炭鉱業合理化事業団からの借り入れた近代化資金は除くということになっておりまして、本法の中にも答申をそのまま取り入れておるわけですね。ところが借り入れの残高で肩がわり措置の第一の基準を考えるとすれば、短期資金であるからといってこれを除くということはどうも筋が通らぬような感じがするのですが、借り入れ残高によって千億の肩がわり措置をまず第一に考えるのでしょう。そういうことになれば、短期の借り入れ資金だからこれは除くというようなことはどうもおかしいのじゃないかと私は思うのです。やはり困っておるから借りているのであって、なるほど短期の資金というのは運転資金だ。合理化事業団の資金は近代化資金だ、あるいは無利子の金だ。近代化資金を借りる前提が、この企業をやっていけるのだという前提で借りているのだから、それは当然返済能力がある、返済すべきではないかという考え方でこういうものは除く。こうなったのかどうか知りませんけれども、借り入れという趣旨からいうならば、この二つを除いたというのもどうも私は解せないわけなんですが、どうなんですか。
  83. 井上亮

    井上(亮)政府委員 短期資金につきましては、これは一年以内に返すという、いわば運転資金でございまして、運転資金を不正常、異常な債務だというふうに考えることを、どうも私ども立場からは異常性ということに言い切るわけにはまいらないのじゃないか。すぐ半年あとには返す、一年以内に返すという約束の運転資金でございますから、運転資金を借りますときには、当然、石炭その他の裏づけがあっての短期の運転資金ですから、これを異常性があるというふうに見るのはちょっと行き過ぎではあるまいかというような意味で、短期運転資金はもうどの企業にもある運転資金でございますから、これを肩がわりの対象にするというのは行き過ぎではないかという解釈であります。
  84. 田畑金光

    ○田畑委員 私がそのような疑問を持つのは、どの山も、短期の運転資金だとか、あるいは近代化資金だとか、これは一年以内に返すとか、半年後には返しますといって借りてきた金がだんだん重なり、積もり積もって、四十二年三月末にはそれが二千二百数十億にのぼっておる。こうなっておるのじゃないかと思うのです。三月末の二千二百数十億円の金と申しますのは、そうしますと、全部異常借り入れ資金という性格のものが積もり積もってその額になっておるのかどうか、それはどうなんですか。
  85. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先ほど言いました二千二百数十億の中には、もちろん短期も入っております。したがいまして、私ども、そのうち千億相当ということで考えておりますので、その案分をするときに、先ほど言ったような案分比例でやっておる。そういう意味では、短期も一応入っておるということでございます。
  86. 田畑金光

    ○田畑委員 異常借り入れという場合の、異常が何かということですね。答申全般を見て、要するに閉山する、合理化する場合の整備資金あるいは閉山のための借り入れ資金、こういうものでしょう。それからまた別の面では、累積赤字に相当する額云々ということになっておりますね。そういう累積赤字の額と、それからもう一つは閉山合理化に伴ういわゆる整備資金、こういうものがいわば異常な借り入れ資金というように理解してよろしいのかどうか。
  87. 井上亮

    井上(亮)政府委員 私ども答申をつくりますときにはいろいろ討論をいたしまして、いずれにしましても、結論的には借り入れ残高をもとにして肩がわりの金額を出す以外にないというのが答申の結論でございました。ところが、実際問題として今度はその借り入れ残高——この法律によって異常債務肩がわり肩がわりするということばをよく使われますけれども、この法律はまず累積赤字という問題を第二条で出しているわけです。つまり累積赤字の問題は、答申でも一部触れて、累積赤字と異常債務というような表現になっておりますけれども、まず入り口において累積赤字、それから卒業しますとき、これはあとに条文に出ております肩がわりを終えるときですね、これも累積赤字がなくなったときというふうになっておりまして、その手段として要するにどういう肩がわりの方法をやるかというときに、借り入れ残高のうち千億相当を肩がわりする、こういう方法論をとったわけです。したがいまして考え方としては、答申のあの考え方でいえば、二千二百億ないし二千三百億の借り入れ残高すべてが異常債務とは思ってないわけです。そのうち千億相当が異常債務と認定して正しいであろう。その理由は、これはいままでもずいぶん諸先生と御議論したことでありますけれども、各社のいままで費やしました閉山合理化費用だけでも千四百億くらいになっておる、そのうち退職金だけでも大手だけでも千億にのぼるというようなことであります。それから今度は別のサイドから見て、累積赤字というような見地から見ても千億にのぼるというような意味で、それらをすべてやはり軌を一にして千億程度は累積赤字の総額であり、かつ異常債務もその程度と認定してしかるべきであろうというようなことから、千億を出したわけであります。肩がわりの千億というのをそういうことから出したわけであります。千億というのがきまりますと、それを肩がわりいたしますときに、先ほど来言っておりますように、二千二百億のうち千億相当を肩がわりする、こういう手段をとったわけでございます。
  88. 田畑金光

    ○田畑委員 まだ質問はたくさんありますけれども、本会議の予鈴が鳴りましたから、いまの質問は先ほど要求しました石炭局長から資料などをいただいて、もう少し頭を整理してから、また質問したいと思います。  それからもう一つこの際聞いておきたいことは、肩がわりするにあたって政府関係金融機関は十二年で償還する、それから市中銀行は十年で償還する。それから金利については、市中銀行は年五分、それ以上のものは切り捨てる、政府関係金融機関は六分五厘、これは大体全部利息も保証するということですね。これは条件が非常に違うわけですね。  そこで私ここで通産大臣にお尋ねしたいと思いますが、先ほどの石炭局長の答弁にもありましたように、市中銀行などに対しては元本を保証してあげる、金利も五分までは保証してあげる、だから今後ともひとつ石炭産業企業には金を貸してくれろというのがこの法律のみそだと思いますね。ただその場合私たちが、それで協力しくれるかなという疑問を持つのは、大体政策的な金融措置を講ずるのだから、むしろ政府関係金融機関に対して年五分の利息を保証する、市中金融機関には六分五厘程度見てあげますよということにならなければ、市中銀行というのは今後も継続して石炭産業に金を貸すなんということはなかなか期待できないのじゃないかということ、それからもう一つは、何といっても政府関係金融機関の原資というものが政府出資であり、財投というコストの安い金ですね。ところが一般市中銀行の資金というのは御承知のように大衆の預金によって資金を集めてくる、それが主である。したがって元来これは資金コストが高いということ、資金コストが高いから市中銀行の貸し出し金利は平均九分から一割、こうなっておる。こういうことを考えたときに、ここで五分で利息を打ち切ってあとはまけてくれろよということになってきますと、私は市中金融機関などではコスト割れするところが出てきはせぬかという感じを持つわけです。そういうことを考えてみたときに、このような市中銀行に対して、政府がこれだけの措置をやったから、今後それを恩に着て、企業に対し、炭鉱に対して継続して金を貸すかどうかということは非常に疑問がある、私はこういう感じを持っておるわけです。この辺はどういう考え方でおいででしょうか。
  89. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 田畑委員の御心配になることもわれわれも考えますが、問題はやはり石炭鉱業が安定するということが前提なので、そこでこの債権の肩がわりということも石炭鉱業を安定さすという目的のためにやるのでありますからして、市中銀行は五分でありますからこれは利息を切捨てそれだけまけさせるわけですがそれによって石炭鉱業が安定するのだということで、市中銀行も五分ぐらいで、利息だけはひとついままでのはそれでかんべんしてやるという気持ちで、今後については正常な利子でやってもらうということで、要は石炭鉱業の安定という前提のもとで考えておるのでありますからして、まあ私はこれをやっていただけば、市中銀行ももうこれで石炭が安定するのだということで金を貸してくれる、現状のままでは金を貸すということは無理ですが、これによって安定していけば市中銀行も今後貸していただけるのではないか、こう私は考えておるわけであります。
  90. 田畑金光

    ○田畑委員 まあ石炭産業を安定させるための措置ですから、そのためのやはり金融をつけていくためには、むしろほんとうに石炭産業の安定ということからいうと、市中銀行が今後とも協力してやっていただけるような、やはりそこに重点を置いた金融措置でなければ、私は、いま大臣お話のような石炭の安定にはつながらぬのじゃないか。むしろ、これ自体がやはり政策的な措置なんだから、政策的な措置ならば、政策金融を中心の政府関係金融機関がこの際よりひとつ多くの負担と犠牲を払ってもらうという思想でなければ、金融ベースという純粋な考え方からいうと、私はこれはさか立ちしておるような感じを受けるのです。これがいいか悪いかいろいろな評価なり見方はありますが、しかし私の質問に対する先ほどの石炭局長の答弁を聞きましても、市中金融機関に協力させるためにこの措置をやったのだというお話がありましたから、なるほどその趣旨を徹底させるためには、私のような考え方でなければなかなか——市中金融機関が、これだけの肩がわりをしたのだからといってそれではまた今後も貸してくれるかというと、これもまた金を貸したら同じようなことになるかもしれない、政府がまたそれを肩がわりしてくれるだろうか、こういう不安が先に立てばなかなかこれもむずかしいと思います。
  91. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これからも不安定であるということであれば、根本的にこの石炭対策というものは不安定になるということです。まあとにかく石炭産業を安定させるということでいろいろなことを考えておるのでありますから、それでまあ安定さすために市中銀行も利子ぐらいはかんべんしてやるという気持ちになって、今後ひとつ安定させるから、また必要な金を貸してやるということにやってもらいたいと思うのです。これは石炭産業に限らずほかの取引でも、会社が破産しそうなときには金利だけはまけてやる、あるいは元金はまけてやるということもありますし、今後これによってそれ以上産業が生きていくと思うから金をかけたり何かするので、そういう意味でまあひとつ安定させるという大きな目標のもとにおいて、市中銀行に御協力をお願いしたい、こう思っておるわけであります。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十九分散会