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1967-05-24 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十四日(水曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 西岡 武夫君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    菅波  茂君       田中 六助君    野田 武夫君       井手 以誠君    中村 重光君       細谷 治嘉君    渡辺 惣蔵君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君  委員外出席者         通商産業省石炭         局調整課長   千頭 清之君     ————————————— 五月二十四日  委員細谷治嘉君及び田中昭二辞任につき、そ  の補欠として中村重光君及び大橋敏雄君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村重光辞任につき、その補欠として細  谷治嘉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号)      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 御存じのように石炭産業は、いま再建の第一歩を踏み出すわけですが、今年度のそれぞれ各産業労使賃金問題はほぼ終わったと見られるわけです。しかし石炭に限ってはまだその解決を見ていないわけですが、特に最近の交渉について大臣はどういう理解をされておるか、そういう点についてまずお伺いしたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 実はいまも炭労の人と話し合っておったのでおくれたわけであり貸すが、先般来皆さんからいろいろ御意見がありまして、とにかくほかのほうはみんな相当賃上げをしておりますが、炭労だけが七%ということについてはわれわれも少し酷なような気がするので、何とかできないかということについて、私自身も、炭労側の御意見経営者側のほうにも通じたらいいじゃないかということで、経営者側のほうにも私のほうから炭労はこう言うておるからひとつ考慮できる余地がないか、問題はやはり労使できめるべき問題でありますから、ひとつあなたのほうで考えられるのであれば考えてもらったらどうかということを、経営者側のほうにもお願いしておいたのでありますが、何か局長が知っておるでしょうが、私はいま初めて最近の情勢を聞いて、十分にはまだ聞いていないのですが、局長がよく詳しいことを聞いておるということで、こちらのほうの呼び出しが急なものだったので、十分聞かずにこっちに来たような次第でございます。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 きのう石炭協会炭労及び全炭鉱交渉が持たれて、いわゆる会社側協会は今年度の賃金について最終回答として一方八十一円の回答をいたしたわけです。これに対して炭労、全炭鉱ともに八十一円は七%で、昨年はこれよりも若干プラスされたものもございましたし、昨年よりも低いこの提案をのむわけにはいかないということで、交渉はすでに決裂をしたわけです。  そこで御存じのように、全炭鉱はあすから四十八時間のストライキをかまえておるわけです。炭労のほうはまだストライキの日程についてはおくれておるわけですが、全炭鉱の場合には明日一番方六時から四十八時間のストに入るということになっておりますので、せっかく今年度石炭特別会計をつくり、石炭企業再建をしていくという当初から、労使の間で紛争事項が起きるということは決して好ましいことではないのではないか。もちろん労使自主交渉ではありますけれども、今日の石炭の置かれておる現状から考えれば、自分自身財源で自主的に判断をして問題をまとめるということは、非常に困難な状態に置かれておることはまた御承知のとおりなわけです。要は、従来の民間ベース交渉というのは、これを平和的に解決する場合に、もちろん自主交渉でお互いに交渉が妥結することが一番いいのでありますけれども、特殊な状態に置かれておりますから、その場合平和的に解決をするというためには、今日中労委機関があるわけですから、そういう方向の中で平和的に解決することが一番望ましいのではないか、こう私は判断せざるを得ないわけです。したがって当然中労委関係になってまいりますと、政府としては労働省当局が直接の関係にございますし、もちろん経営者に対しても、いま大臣が言われたように、努力されることは非常にけっこうなことでございますけれども、通産省、労働省間においても、この問題を傍観することは許されない問題で、これだけ至上命令石炭企業再建ですから、そういう点では傍観することは許されないわけですから、せめて労働大臣通産大臣の間で平和解決方向について十分検討されるべきじゃないか。そうしてまたその点について労使ともに平和的に解決する方向について理解と協力をしてもらう、こういう中でおくれている炭鉱賃金の問題が平和裡解決されることが最も望ましいのではないか、かように私は考えるわけです。この点について大臣の所見を承っておきたい。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話のとおり、私もいまちょっと様子を聞きまして、これは捨てておけぬという感じがしたのですが、幸い労働大臣も一緒に来ておりましたので、いま委員会に呼ばれておるから、労働大臣あとでよく相談しようということで実は別れてきたのです。局長から経過もよく聞くし、そして労働大臣ともよく相談して善処したい、こういうふうに考えております。
  7. 多賀谷真稔

  8. 井手以誠

    井手委員 石炭対策の基本問題について二、三大臣にお伺いしたいのですが、その前に局長にお尋ねいたしますが、この三月末の石炭会社決算——あるいは一、二出ていないところもあるかもしれませんが、それは推計を加えて決算がどうなっておるか。かなり赤字であると思っておりますが、赤字の生じた理由もあわせて簡単にお伺いしたいと思います。
  9. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまお尋ねの石炭業界の四十二年度三月期の決算の概要でございますが、これは先生御承知のように大手十七社ございますが、その決算はまだ必ずしも全部終わっておりません。したがいまして、正確なものではございませんが、一応概括的に各社事情を調べましたところ、したがいまして推定がお説のように一部入っておりますが、十七社の決算公表損益関係は、四十一年——これは下期決算になりますが、下期決算といたしまして六十一億の赤でございます。正確には六十一億八千万円の赤でございます。内訳といたしましては、営業損益が八億二千万円の赤、営業外損益——営業外損益と申しますのは閉山等の費用の繰り延べ処理等の問題が入るわけでございますが、これが五十三億六千万円、合わせまして六十一億の公表損益という姿に相なります。なおさかのぼりまして、昨年の上期の九月期決算でございますが、これも参考までに申し上げますと、公表損益は下期の六十一億に対して四十一年上期は五十七億四千万円の公表損益でございます。営業損益は一応十七億の黒になっておりますが、営業外が七十四億という非常に大きな赤字になっております。こういう状況でございます。  ところで、最近非常に悪化してきている。これは上期におきましては出炭が比較的好調だった。一般に上期はあまり伸びない、下期は伸びるという姿になるわけですが、石炭の場合は下期に若干の生産の停滞と貯炭の増というような関係が生じまして、そこにさらにまた各社のそれぞれの事情から赤字要因がかさみまして、ただいまのような姿に相なっているわけです。  私ども決算はこのような姿でございますが、昨年抜本策作成に際しましていろいろ各社状況を調べました見通しともたいした違いはないわけでございますが、やはり何と申しましても手取りに対しましてコスト割り高であるということが一番大きな原因であろうかと思います。
  10. 井手以誠

    井手委員 次いで局長に、三月末の借り入れ残高は幾らであるか、前年度末に比べて幾らふえておるのか。また、その中で元本利子をどのくらい戻して、新たにどのくらい借り入れたか。総計だけでけっこうです。
  11. 井上亮

    井上(亮)政府委員 借り入れ残高現状でございますが、まず一番最近時点残高を申しますと四十二年三月末の借り入れ残高でありますが、これは財政資金、市中合わせまして大手十七社だけの合計で二千二百十六億という数字でございます。なお、一年前の四十一年三月末時点では、ちょうど二千億の残高でございます。
  12. 井手以誠

    井手委員 それの返済と借り入れたのと……。
  13. 井上亮

    井上(亮)政府委員 詳細な資料はただいまちょっと手持ちいたしておらないのですが、これは調べますとすぐわかるわけでございますから、すぐ資料を取り寄せまして後刻御報告申し上げます。
  14. 井手以誠

    井手委員 大臣、いまの数字で全般がわかるわけじゃございませんが、大体見当がつくと思います。下期と申しますと、昨年安定対策が発表された閣議決定あとでございます。したがって、企業は生死を賭して努力をすべきであるという答申があったあとでございますから、各企業は懸命の努力をした結果であると私は信じております。それにもかかわらずいまのような赤字を出し、しかも負債年間に二百十六億もふえていっておる。おそらく各社において違うでしょうけれども利子だけ払ったところもあるかもしれません。その利子に見合う分だけ新規に借り入れたものもあるかもしれません。それはもう多様だと思っておりますが、いずれにいたしましても二百十六億円は、かりに前向きの資金が若干あるといたしましても、負債がふえておることは事実です。しかも赤字原因コスト高であるということを局長は申しました。私は、いまの体制の中で安定対策を講ずるとするならば、銀行に金がいくということじゃなくて、炭鉱そのものを助けるために、炭価が安いためにやりきれないいまの企業ですから、安定補給金というものに重点を置くのが正しいと私は思っております。もう安定対策が出てから日にちもたちますから、あまりこの問題で論議しようとは考えておりませんが、ほんとう石炭企業を立て直そうとするならば、何と言っても安定補給金重点を置くべきである。むしろここに重点というよりも一本やりでやってもいいのじゃないか。あと企業がその範囲内でやるべしと言っても私は差しつかえないと思うぐらいに、これが大事だと思っております。いまの体制のもとでは。そうなってまいりますと、あなたのほうは自信があるか、腹の中はわかりませんが、安定対策というものでお出しになっておるから、一応言わざるを得ぬでしょうけれども、一千億円の債権のたな上げ、これはいまの石炭企業から申しますと、借金棒引きみたいなものですが、それをやってトン当たり百二十円程度補給金ではたして立ち直るかということについては、おそらく業界も世間もわれわれもだいじょうぶだと思う者はほとんどないと私は思っております。現にただいまは局長は、コストが上がっておるということが主要な原因である——年間資材の値上がりが一%で済む、と聞いておりますが、いまの賃金労働者が集まるとは考えておりません。どんどん離山していくのは私は自然の勢いであると考えております。そうなりますと、はたして十年ぐらいの見込みがあると言われる再建の山が安定ができるかどうかについては非常に危ういのであります。  もう一ぺん私は、先日三原委員なり中村委員に対しておことばがありましたが、コスト高で困っておる、炭価は上がらない、そういうものに対してほんとう自信があるのか、念のためにお聞きしておきたいと思います。大臣
  15. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御存じのとおり今度の皆さん方に御審議をお願いしておる石炭対策というものは、答申案に基づいて立てた案でございまして、答申案御存じのとおり各方面の方々が審議会員となっていただいて、長い間いろいろと調査研究されてその答申案が出ておるのであります。したがいまして、その答申案に基づいて今度の対策案を出しておる次第でありますけれども先ほどお話のとおり、昨年答申案が出たが、その後経営者自身あるいは労務者もみなそれぞれ自己鞭撻してやっておるにもかかわらず、赤字がふえておるじゃないかというお話がありました。なるほどそのとおりで、いまのままで何ぼ経営者が気ばっても労働者が気ばってもそれはとてもやっていけないので、それだからこそこの対策案というものを皆さんに御審議を願って一日でも早くこれが実施できるようにして、そういう方面からひとつ経営が安定していくようにお願いしたい、こう思っておるわけであります。しかし、昨年といまと、たとえば貯炭の問題その他の経済情勢も変わっておりますから、はたしてこれでやっていけるかどうかということを井手委員も御懸念になっておられると思うのでありますが、その点につきましては事情が変わっておることも私たちよくわかっておりますし、貯炭がふえておるというようなこと、いまの局長お話のとおりコストが上がってきたというようなことも、それもわかっておりますが、しかし、一応この対策でひとつ実施していただいて、そしてその上でなおこの対策が不十分であるということであれば、またひとつ考えていきたい、こう思うのであります。せっかく答申案ができて、そしてその答申どおり対策を立てておるのでありますが、それをまだ実施するまでにどうこうするというわけにもいかぬので、一応実施してみて、そして経過を見てまたとるべき処置はとらなければならないのじゃないか、こう考えております。  ことに井手委員御存じのとおり、今後の石炭対策石炭鉱業を安定さすということについては、非常な困難性があるということはわれわれも考えておるのでありまして、せっかく特別会計もできて、政府答申案どおりやった、これは一応抜本的な対策だから、石炭対策というものはこれで落ちつくのじゃないかというような期待もわれわれ持っておったのでありますけれども、その後の情勢というものは、決してわれわれが安心感を持つことを許さないような情勢になってきておるのであります。そこで、今度の予算の範囲内においてできるだけ経営がうまくいくように、安定のできるように行政処理をとってもいきたい、こう考えておる次第であります。
  16. 井手以誠

    井手委員 大臣わりに正直におっしゃったから私はこれ以上問い詰めようとは思いません。安定するかどうかについては私はかなり資料を持ってまいりましたけれども、あまり非観的なことばかりを申し上げてもよくないのですが、しかし下期で六十一億の赤字、この六十一億の赤字の中に安定補給金を二十五億突っ込んでもはたしてうまくいくかどうかはおわかりだと思う。資材が一%、これは半期ですよ。二十五億というのは一年分です。百十億の昨年の赤字にことし二十五億の安定補給金を投げ込んではたして安定するかどうか、また借り入れ金についてもおそらく元本はあまり支払っていないであろうと思いますが、そういう四苦八苦の金繰りの中に借り入れ金は二百十一億円ふえておるのです。それに対して百二十五億ですかたな上げをしようというやり方、これはだれが考えても、いまの情勢からいけばコストの面からいってなかなかできるものではございません。  そこで私は、大臣——大臣は経済問題についてはかなり正統的な見解を持っておられると私はかねがね承知しております。戦後派ではなくて、戦前派正統派見解を持っておられると思いますから、承っておきたいと思います。  いまさら申し上げるまでもなく、エネルギーの確保という問題は、安全保障国内資源の活用、外貨節約など、あるいは社会問題を加えてどこでも非常に重視しておりますし、同じ資本主義の国でもイギリス、フランスをはじめ国有化がだんだん進んでおります。イタリアは御承知のとおり国策会社を持っておる。資本主義の中でもなさねばならぬことはワクを踏み越えて、いわゆる修正資本主義と申しますか、イデオロギーにとらわれぬで、国家利益のためにそういう英断をやっておるのです。私どもはただいま申し上げた安全保障、特に資源の乏しい日本としては安全保障なり外貨節約なりあるいは重大な社会問題、こういったことを考えるならば、昭和四十五年ですか、石炭の比重というものは十何%に在ると承っておりますが、そうではなくてやはり石炭を守る。今日までばく大な国家資金石炭に投げ込んでまいりました。それも結論においては、残ったのは結局ボタ山鉱害産炭地の疲弊、そして労働強化だけが残っておるのであります。もちろん政府対策があったればこそ今日の山もある程度続けられておるけれども、私は決して前向きであったとは考えません。ある程度食いとめたというにすぎないのです。したがって、もうそろそろというよりも、いつまでもイデオロギーにとらわれないで、石炭企業というものが企業限界を越えておるということはみな承知しておりますから、石炭産業が大事であると思うならば、国有化方向なり、あるいはそれにかわる全国一社の案なり、どうしてもそんなのはイデオロギーではいやだとおっしゃるならば、全国石炭会社一社にして合理化を進めていく、近代化をはかっていくという考え方、何かやはり少し革新的な対策を持たなくてはほんとうの案というものは私はできないと思うのです。大手十七社の資本金は六百五十億程度だと称しておりますが、現在の株価から換算いたしますと、金額を申すことはどうかと思いますが、三十円そこそこではないでしょうか。株価で買う、あるいは資産から負債を差し引いたいわゆる経営権と申しますか、そういったものを政府が買収するとしても、四百億か千億程度で買収できるはずだと私ども思うのです。あと経営問題はあとで述べることにいたしまして、今日まで二千億円以上の金をつぎ込み、なお安定をしない。今度また直接じゃありませんが、企業を通じて金を貸し出した銀行に対して一千億円の安定補給金を出す。それだけの資金を投ずるというなら、思い切って国有化なり全国一社案なりというものを断行する時期に来ておるではないか、私はこういう考えを持っておるのでありまして、近く私どものほうから国有化についての提案をいたすつもりにいたしております。  この私ども考え方参考までにごく簡単にかいつまんで申しますと、こういうことです。  私ども考え方は、国はすべての鉱区及び石炭企業経営権を適正な価格で買収する。買収補償炭鉱ごとに評価し、資産合計から負債合計を差し引いた額とする。補償石炭債券交付によって行なう。すべての炭鉱債券債務は国が引き継ぎ、債務債権者と協議の上年次計画で返済する。その際、社内預金賃金退職金の未払い及び鉱害処理中小企業売り掛け代金などの債務を優先的に支払う。石炭生産、販売(小売りは除く)、貿易等を一体として運営するため石炭公社を設立する。石炭管理委員会を設けて民主的運営を行なう。そして大事なことは、エネルギー調整基金を設ける。石炭だけでは解決できません。国産エネルギー、すなわち石炭、原油、天然ガス輸入エネルギーとの価格調整をはかるため、輸入エネルギー価格の差の一部を調整金として賦課し、それによって得た財源国産エネルギー補給金として交付または国産、準国産エネルギー資源の開発の資金として支出する。こういうのが骨子であります。  やろうと思えばそうむずかしい仕事じゃございませんし、同じ資本主義の国でもやっておるのです。西ドイツは御承知のとおり幸いにも国有炭鉱があり、あるいは私企業といたしましても石油資本の中にも石炭会社資本が四分の一くらい入っておる、ほかの事業と兼営をやっておるというようなことで、石炭企業としてはかなり弾力性を持っておるわけです。イタリアは先刻申し上げたように国策会社を持っておる。これらを考えてまいりますと、いつまでもイデオロギーにとらわれ、資本主義体制の一角をくずされてはたいへんだという意見が財界の一部にあるかもしれませんが、やろうと思えばできるはずです。安定するかどうかわからないこの石炭対策、これはだれが見てもそのとおりですよ。ほんとう石炭産業を安定させようと思えば思い切った措置が必要であると考えておりますが、この際通産大臣から、右顧左べんしない卒直な気持ちを——私はきょうここで言質をとるつもりではありませんから、承っておきたいと思います。
  17. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 石炭問題についての基本的な御質問でありまして、なるほどお話のとおりこの石炭の問題で毎年五百億円以上の金を政府は出しております。それでも経営困難というような情勢にあることは事実であります。そこで思い切ってもうこれを国有にしたらどうか、あるいは国営化したらどうかというような御質問であったと思いますが、なるほどいまいろいろ赤字も出ておりますけれども、この答申案というものは、経営者もまた炭労の人も、それから中立委員学識経験者もみな寄ってつくられたのであります。したがってこの答申案でいけば大体いけるだろうという見通しのもとにこの答申案は出ておりますし、また政府もこの答申案閣議決定していま実施に移そうとしておるのであります。  そこで現在の情勢では、なるほど答申案をつくったときから事情は悪化しております。そこでいっそ国有化したらどうか、国営化したらどうかという御議論がありますが、その点についてはもう少しお互い慎重に考慮しなければならぬのじゃないかと思います。外国では国営化あるいは国策会社をつくってやっておりますが、もう一つこれは私自身の感想ですが、日本人西洋人とはものの考え方が違います。日本人公私差別というものがはっきりしない国民である、そこにものごとが合理化ができていない。また皆さん方からいろいろ御批判を仰いでおる公社、公団がうまくいかないというようなこと、このことはいろいろ原因がありますけれども公私差別がはっきりしないという国民には、むしろ国営化したら能率が下がるのではないかと考えております。とにかく経営は困難でありますけれども、まだ企業意欲がある間は——炭鉱経営者はもうお手上げだ、もうおれらではやれないから政府で何とかしてくれといえば別ですよ。この答申案炭鉱経営者も入ってやっておるのですから、まだ企業意欲がないとは私は考えてない。でありますから、企業意欲がある間はやはり私企業でやるべきだ、そのほうが能率があがるのじゃないかという考えを持っておるのでありまして、日本人は先ほど申しました根本的な公私差別をしないというところが日本人の欠陥であり、したがって政府のやる仕事能率が悪いと常に皆さん方から御批判を仰いでおるのは、そこがやはりあると思うのでありまして、でありますからして、やはり私企業でやらして、これは自分仕事である、自分が働いてもうかったら自分のものになるのだという考え方でやってもらったら、赤字炭鉱もあるいはうまくいくようなこともあるのじゃないか。これは政府がやったらますます赤字がふえるようになる、こう私は考えております。でありますからして、いまの国有の問題は、いま即座に賛成というわけにはいかないので、もう少し、ひとつ、せっかく答申案が出たのですから、これの推移を見て先の問題として研究さしてもらいたい、こう思います。
  18. 井手以誠

    井手委員 先刻来申し上げるように、また答申にも盛られておるように、もう企業限界を越えておるのですよ。資金の大半は国に仰いでおるのです。本来企業が負担すべき鉱害についても、たとえば農地については八五%も国や府県の補助金でまかなっておるのですよ。一体これが私企業といえるのですか。もうすでに私企業限界を越えておるのですよ。私企業ならば自分でまかなうべきですよ、鉱害でも資金でも。そしてなおかつこれだけ自分が力を入れても安定をしないということ、第一次のときも第二次のときも、今度のいまのお答えと同じようなことが言われました。おそらくこれで安定すると言われても、何回おっしゃったってこれを信用するものはほとんどいないでしょう。ただそれだけしてもらえば助かるということだけです。石炭企業は助かる、銀行は助かるということだけですよ。それで企業が安定するとはだれも思いません。  あなたが能率の問題をおっしゃったけれども、これは私は一言言わなくちゃならぬです。公社公団については、いまの政府の佐藤内閣の、保守党内閣のやり方が悪いから、姿勢が悪いからそうなるのですよ。私ども労働者の生活を十分考えながら能率をあげるという体制を持っております。私が商工大臣なり通産大臣ならりっぱにやりますよ。それはやはり一つは上に立つものの姿勢だと思う。しかしいまのままでどんどん閉山しくずれていくという石炭企業、しかしこれは国家のために確保しなくちゃならぬ、そういう大前提があるなら、やはり革新的な措置をとることが大事ではないでしょうか。後日またあなたとはこの問題について大いに論議しなければならぬ。あなただから私は論議しようと思う。時間をかけてもいいと思う。そこでなお研究さしてくれということですから、イデオロギーが違うからそれはだめだということではないようですから、その点は私も含んで論争はきょうは避けたいと思います。  できるだけ私企業でやっていきたいというならば、いまのように大手ないし中小炭鉱ではやりきれない現状でございますから、全国一社あるいはもっと漸進的にというならばブロック別につくる、北海道、常磐、九州というふうに。このことは私はいつかの新聞で記憶がありますが、あなたの前の三木通産大臣のときには、やってみようかというので事務当局には指示されたことがあると私は思っております。私は少なくともそこまではいくべきだと思うのです。石炭局長はこれは聞いておるはずです。そこまでくらいはやらなくちゃならぬという気持ちがあるはずです。これは私はきょうは先刻来申し上げたように何も言質をとろうと思っておりません。ほんとう石炭をどうすれば守っていけるかという考えから申し上げておる。また石炭局長も、一年ほど前ですか、ブロック別に会社をつくってみたい、鉱区を統合してやってみたいという意欲もあったようです。少なくとも全国一社くらいの構想は、通産大臣として国務大臣としてあってもしかるべきだと私は思います。あなたのお考えを承っておきたい。
  19. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その地域別でやるというくらいなら全国一社でやるべきじゃないかと私は思います。地域別によってそれぞれみな違いますから、それならば全国的にやって、そこで平均化するというほうが、かえって会社経理上いいのじゃないかという気がします。地域別ということには私は賛成したくない。  全国一社にするということ、まあこれは一つの考え方だと思います。がしかし、これは先ほどから申し上げましたとおり、全国一社にしたところがやはりこれは公社なんというようなことになります。ほんとう私企業、純然たる私企業とは言いにくい。またおのずからここへ通産省の役人も入らなければならぬということにもなってくるし、いろいろそういうことで、非難を受けることが起こってきますから、私は企業者、日本人経営者企業意欲というものは活用すべきだという考えをしています。日本人というものは、困っておってもやはりまたひとつやり直そうというのが日本人のえらいところだと思うのです。まあ昔から起き上がり精神、七たびころげて八たび起きるというこの精神、これは日本人の特徴だと思っておるのであって、いまの情勢は非常に悪い情勢ですけれども政府でここで特別会計をつくって、これでやるというのだから、ひとつ奮起してください。労働者のほうも大いにこの際経営者と協力してやってくださいということで、一応やらしてみたらどうですか。その上で、経営者がもうおれはとてもこれはやり切れぬという場合はまたその場合に考えてみて、いまは一応ひとつここでこういうせっかくみんなが知恵をしぼって答申案をつくられたのですからして、それでひとつ皆さんこの際やってもらって、そしていかぬときはいかぬときのことでまた考える。とにかく石炭を確保しなければならぬということは国策ですからして、その五千万トンの石炭が確保できぬということで、これは経営者が意欲を失ってしまった、働く労働者がないということになってくると、これはまた政府としても考えなければならぬと思うのですが、いまのところではこの案でやろうと一応皆さんがそれに賛成されておるのですからして、せっかくの皆さんの熱意をこれで消しちゃいかぬと思うのです。それを生かすようにして、そしてひとつ日本人魂で困難なときでも切り抜けてやろうというように、われわれもそういう点で鞭撻したい。そういうことでひとつ時期、経過を待ってから諸問題を考えさせてもらいたい、こう存ずる次第であります。
  20. 井手以誠

    井手委員 せっかく答申が出たから尊重して、とにかく通してくれという気持ちはわからぬでもないのですよ。けれどもこの案でみんなが賛成しておるとは言えません。またこれでだいじょうぶ安定するとはほとんど思っておりませんよ。先刻言ったように幾らでも国からもらったほうが得だ、何とか生き延びようという考えですよ。あなたは日本人の魂をいまおっしゃったけれども、七ころび八起きということはわかりますけれども、希望のないところに意欲というものは出てまいりませんよ。最近の石炭界の役員の減少は大体おわかりでしょう。意欲があって役員をどんどん減らすものじゃないです。役員は第一線に立ってやるべきですよ。私はそれで時間をかけようとは思いませんけれども、希望がないようなことでは意欲も出てまいりませんし、労働者もつきません。  それじゃあなたはブロック別の私企業としてやる場合に、ブロック別の炭鉱、ブロック別の一企業にするよりも、全国一社のほうがむしろましだというお考えを表明なさった。そこで、もう一つレベルを下げて原料炭の問題です。この間国会に石油開発公団というものを出されました。同じような趣旨から今日原料炭の輸入は千六百万トンぐらいの輸入じゃないでしょうか。国内が千百万トンぐらいじゃないでしょうか。これはやはり民族資本と申しますか、安全保障と申しますか、原料炭の確保という意味からは、もっと考えていいんじゃないか。原料炭の国内生産、海外開発、輸入、こういったものについて石炭開発公社——公団と同じように、あるいはそれを一緒に含めてもけっこうですけれども、これを一体にして開発をするという考え方について、大臣はどういうようにお考えでございましょうか。
  21. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 石炭と石油とは一応私は別扱いにしたほうがかえっていいんじゃないかと思います。石炭の原料炭については、幸い製鉄業者が海外開発については非常に熱意を持っております。たとえば、豪州などもそうであります。でありますから、これはひとつ製鉄業者の企業心にうったえて、そして海外の開発ということをやらしたらいいんじゃないか、こう考えております。製鉄業者もそういう意欲がないということであれば、これはまた政府考えなければなりませんが、いま幸い製鉄業者はみずから原料炭を買い入れるということについてあちこち奔走しておるのでありまして、あるいは豪州もそうですし、あるいはポーランドからも輸入したいというようなことで、それぞれ製鉄業者自身がそういうことでいろいろとやっておるようでありますから、これはひとつ民間業者にまかして、政府がとやかくあまり干渉しないほうがいいんじゃないか、こう私は考えております。
  22. 井手以誠

    井手委員 原料炭の安定供給のためには、やはり私どもは一体として国内生産も海外の開発、輸入も考えることが必要であると思っております。大臣はそうではないようでありますが、私が一つ考えておりますのは、やはり輸入価格と国内価格との調整ということは、用途が同じですから、またエネルギー確保の意味においても一本化して、そのために調整をやるべきだという考えを持っております。  そこで、もう一つお尋ねいたしますが、炭価はどうでしょう。十年先まで据え置きなんでしょうか。
  23. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 四十五年までは大体据え置くという方針で計画を立てております。
  24. 井手以誠

    井手委員 その先の見通しはいかがでございますか。
  25. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま大臣お答えになりましたように、四十五年度までは炭価は一応横ばいというふうに考えておりますが、これは御承知のように、今回抜本対策につきまして、昭和四十五年度までを目途にして、石炭鉱業の安定をはかっていこうというような考え方でおりますが、その間の需給状況、いろいろな関係からいたしまして、やはり炭価につきましては、四十五年度までは据え置くというような考え方でいきたい。ただ、その間炭価を据え置くとなりますと、コストとの関係等、今度は石炭産業等の経営の問題が起こってまいりますので、そういった面のギャップにつきましては、大臣先ほど来お答えになりました抜本対策のいろいろな政府安定対策、これによってカバーしていくというような考え方でおるわけでございます。  なお、四十六年度以降につきましては、少なくとも今日まで石炭鉱業審議会で検討をし、あるいは政府の内部でも検討いたしておりますが、これらの考え方は、さらに四十五年度ごろにもう一ぺん——やはりエネルギー事情の変転は相当目まぐるしいわけでございます。もう一ぺん長期の見通しを立てまして、しっかりした基礎の上に方針をきめたいというような考え方になっておりますので、諸般の客観情勢が許すならば値上げということもありましょうし、あるいは値上げということがエネルギー事情見通しというような点からきわめて困難であれば、下げることはありませんが、据え置きということになるかもしれません。その辺のところは、さらに四十四、五年ごろにその時点エネルギー事情をもう一ぺん再検討して将来の方針をきめたいというような考え方でございます。
  26. 井手以誠

    井手委員 答えは結論だけでいいのですよ。  それでは重油関係を聞きたいのですが、関係部局は見えておりますか。——業務用の重油、C重油でございますが、これの価格の推移はどんなものでしょう。昨年と最近と将来の見通しです。
  27. 千頭清之

    ○千頭説明員 一般的なC重油の価格につきましては、ただいま資料を持っておりませんが、九電力が買っております重油の価格は、一キロリットル当たり三十三年度におきましては八千五百六十六円でございましたが、四十年度におきましては五千九百十三円でございまして、この間三一%値下がりしております。ちなみに三十九年度につきましては六千四十八円でございます。
  28. 井手以誠

    井手委員 専門家が見えぬからわからぬかもしれませんが、私が聞いたのは今後の見通しですよ。私の聞いたところでは、二月現在ではC重油は五千七百九十一円。今後の見通しはどうであるかということです。上がるか下がるのか。
  29. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は重油は今後は下がるという見通しに立ちます。というのは石油を採掘する場所がだんだんふえております。御承知の、いままで石油資源がないと称せられておった中国でも盛んに石油が出ておりますし、また、ソ連にも相当たくさん出ております。ソ連は日本に売りたいという考えを持っているのですが、そんなことで採掘量がふえます。それから、問題はやはり輸送です。大型タンカーが使用されてくると自然と輸送賃も安くなるということで、私は石油というものは将来安くなるというように一応考えていいのではないか、こう考えております。
  30. 井手以誠

    井手委員 そうなりますと、四十五、四十六年度以降についても明るい見通しではないということです。数年の間に物価の値上がりはこれはもう当然の勢いですから、だれが何と言おうと上がってくる。  そこで観点を変えてもう一つお伺いしたいのは、これは石炭局長は畑違いですが、大臣にお伺いします。現在重油には公害予防のために脱硫装置が普及されております。通産当局の説明によりますと、硫黄分一%落とすのに五百円かかる、これが公表数字です。大体三%下げねばならぬであろうといわれております。それが昭和四十二年度、今年度一ぱいに通産省は指導体制を整えて四十三年度から装置を指導して、四十四年度から大部分について脱硫装置をやるというのがあなたのほうの指導体制です。国会の決議でもあるわけです。これはいままでの話と違って、石炭問題について明るい話です。これはどういうふうにお考えになっておりますか。私は石炭を取り扱う場合に非常に重大な関心を持っていい問題だと思っております。他人に迷惑を及ぼすものは、そういう重油は私は商品ではないと思っております。また硫黄分の多いものは海外から安く買っておるはずです。一%当たり多分六百円くらい安いはずです。そう考えますと、脱硫装置がC重油全部に行き渡った場合にどう考えるのか。これは石炭対策として当然局長も研究しているはずだと思っております。大臣、その見通しはどうなんです。
  31. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私もこの点はしろうとで、いまの脱硫の費用はどれだけかかるのか、いま初めてお教えいただいたのですが、その脱硫の費用がそれだけかかることになりますれば、やはり勢い重油の値段が高くならざるを得ないということで、これはやはり石炭の問題にいい影響をしてくる、こう思っております。
  32. 井手以誠

    井手委員 さいぜんまでの話とは逆な話ですが、大臣、そういうことは石炭委員会に臨むには知っておかなければいかぬですよ。あなたは両方の立場で三本足か五本足か知らぬけれども、ずいぶん部局が多いからなんですが、これは重大な問題ですよ。  そこで局長にお伺いしますが、合理化措置法ができた当時、あの前後から石炭大手十七社はどのくらい社外に投資したのか。私のあちらこちらから報告を受けた資料では、大体七百億円と見てもりますが、どうなんですか。
  33. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大体私どもの調査によりましても、先生のただいまおっしゃいました程度の金額と承知いたしております。
  34. 井手以誠

    井手委員 この一千億の旧債をたな上げするという再建の根本問題に触れる問題でありますが、石炭だけではやっていけない。何かもうかる事業はないかという社外投資もわれわれは理解できないわけではございません。また離職者対策考えないわけではございません。けれども、社外に投資するということは、それだけ石炭企業資産を持ち出すわけです。したがって石炭企業債務関係からは、これは再検討しなくてはならないのではないかと思います。あるいは黒字の山が、もうかった部分から投資をしたとしても、後日そのために赤字になった場合もあるでしょう。したがって社外投資のものは、やはりこれは今回のたな上げの場合には再検討すべきではないでしょうか。
  35. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 社外投資の内容については、私は詳しく存じませんが、おそらくみな炭鉱経営上において必要だ、利便を加えるという意味において社外投資をしたことと思います。しかし今後は、再建会社において社外投資をする場合には、こちらで検討して許可することにいたしたいと存じております。
  36. 井手以誠

    井手委員 私が申し上げておるのは、借り入れ金が三月末で二千二百十六億円あるといわれております。一千億円のたな上げをしようという再建対策、そこまで企業が追い込まれたということは、社外に七百億円も投資したということが一半の原因ではないでしょうか。今後のことも問題です。しかし私は、今日までの経理関係についても、現在はこれだけ赤字になりました、やっていけませんということでは済まされぬと思う。社外投資は差し引くべきではないでしょうか。たとえそれがどういう仕事であれ、石炭企業そのものの仕事ではないはずです。離職者対策は、これは理由はあっても、本来の仕事ではないはずです。たとえば観光事業、ホテルを経営して投資をした、あるいは土地開発会社をつくった、セメント会社をつくった、そういったものは石炭企業本来の、石炭鉱業安定のための対策にはなり得ないはずです。
  37. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この投資先についてもう少し詳しく調査せねばいかぬと思いますが、この社外投資が全部悪いということではなく、これでプラスしておるものもあるのでは互いかと思います。炭鉱経営にはそれだけ助けになったということも考えられますから、これがマイナスになっておるということになれば問題かもしれませんが、たとえば産炭地の振興のために金を出すとか、あるいは離職者のために金を出すとかいうような、そういうような社外投資であれば、それはまた炭鉱経営上これは必要だと思って経営者がやったことでありますからして、これが悪いとは言えない、こう思うのです。とにかくいずれにいたしましても、今日までのは別として、今後についてはやはりせっかく政府が金を出すことでありますからして、この社外投資については厳格に調査していきたい、こう存じております。
  38. 井手以誠

    井手委員 私企業が事業を継続するために、安定化するために多角的な経営をやるということのよしあしは申し上げていないのですよ。それはやはり石炭だけでは食っていけない、何かほかの事業でもうけてやろうという気持ちもあったことも事実ですが、やはりもち屋はもち屋であって、必ずしもそれらの企業のほとんどが、本来の石炭企業の中に利益をもたらしたものばかりではないのです。最近は、あまりよくないようです。しかし少なくとも会社のそのやり方が、よしあしは別にしても、七百億円というものは石炭企業の中から社外に出ているわけです、もうけは別ですよ。そうであるならば、全部が負債の中からとは申し上げませんが、黒字の会社から出した場合もあるでしょう。しかしその後、赤字に転落した会社もあるはずです。だから、負債を軽くしようという石炭企業の会計からは、その分は除くべきではないかと私は申し上げているのです。社外投資は別ですよ。石炭企業本来で困ったならば、それは考えなければいけないけれども——悪い意味で企業がやったとは、私は考えませんよ。それは何とかしたいという気持ちが善意であったことは、私は承知しておりますけれども、セメント会社に、養鶏会社に、あるいは土地開発会社に、あるいはホテルに投資した、それですでに七百億円投資したために、会社経営が悪くなって、今日二千百六十二億円の借り入れ残高があるということの中には、かなりそれは入っておると思うのです。それを差し引くべきだと私は申し上げたい。
  39. 井上亮

    井上(亮)政府委員 大臣お話しになりましたように、社外投資については、私ども再建整備法の中で厳重な監督をするのだという方針にいたしております。しかし大臣同じくお話しになりましたように、社外投資全部が悪いというふうには断定できません。  なお肩がわりに際しまして、これは肩がわりの対象にいたしますのは、金融機関の借り入れ残高のうち一定額を肩がわりするわけでございまして、全額につきまして、企業が借りました資金について、それは社外投資を全部含めて全額肩がわりするとか何とかいう場合には、まさに先生おっしゃるように、もう少しきめのこまかな配慮をしなければいかぬことだと思っております。しかし私どもが、いま肩がわりしようと言いますのは、全体の二千二百億の借り入れ残高のうち一千億相当につきまして、これは炭鉱企業としての異常債務というものについて肩がわりするわけでございますから、直接に結びつけて考えるものというふうに考えておるわけでございます。全部なら、これはまさに先生のおっしゃるとおりの、私どもも配慮をしなければいけないというふうに考えております。
  40. 井手以誠

    井手委員 異常債務といわれる退職金の借り入れ、社外投資をしなかったならば、退職金も支払われたはずの会社もあるはずですよ。その点を私は申し上げているのです。社外投資したということが悪いとは、私は申しておりませんけれども、社外投資をしたため、退職金が払えなくなった会社かなりあるだろうと思う。だから、その分は差し引くべきではないか。理論上当然差し引くべきだと申し上げている。いままでの対象ではない、今度借りようとする借り入れ金残高のうちの一千億のたな上げについての検討を私は申し上げているのです。
  41. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまおっしゃったような事例がかなりあるとすれば、もちろん考慮すべきだと私も思います。
  42. 井手以誠

    井手委員 きょうは問題点だけ申し上げておきます。  それから負担増の問題をひとつ触れておきたいのですが、電力とか鉄鋼とか、四十二年度は四十億はかりだと思っております。鉄鋼なんかは——負担増という意味は私も理解しておりますが、半期に二百億円もばく大な利益をあげておる鉄鋼に対して、神武以来とか何とか言われる鉄鋼の景気に、何で負担増の対策費を出さなければならないのですか。そのくらいの政治力がないのですか、政府には、佐藤内閣には。電力会社の利益も私はみんな知っておりますよ。それは、いまの経済合理主義の立場に立てば、言い分はあるかしれません。けれども、国費を投入する場合には、国民の納得するものでなくてはならぬはずです。その相手が長者番付では、法人ではどこでも十位のうちに入っておるような、そういうかつてない好景気に恵まれている会社に対して、何で負担増の対策費を出していかなければならないのですか、国民の納得する説明を願いたい。
  43. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 電力にしましても、鉄鋼にしましても、今日はなるほど電力は御承知のとおりでありますが、鉄鋼にしても今日は利益をあげておりますけれども、鉄鋼の経営自体もよいときもあるし、悪いときもあるのであります。したがいまして、いいときには何する、悪いときには何するということではなしに、やはり安定した経営をさせることが必要だ、こう思うのであります。そういう意味で、この際負担増を減らすということはどうかと私は考えております。  電力につきましては、これは、やはり電力を低廉にして、かつ安定的に供給するというのが電力会社の目的であります。したがいまして、電力会社自体としては、安い重油を使いたいという気持ちを持っていることは重々わかるわけであります。それを高い石炭をとにかく使えというのでありますから、したがって、その差額だけは、これは国策上政府がやはり持って、そして電力会社としては安い、安定した低廉な電力を国民に供給するという対策をとるべきではないか、こう思っておるのであります。
  44. 井手以誠

    井手委員 その程度の御答弁ではみな納得はしません。電力料金は安くしますから、負担増対策費がほしいというのならわかるのです。ばく大な利益をあげているじゃございませんか。鉄鋼にしても 電力にしても——電力はもちろん独占企業ですが、これだけ国の保護を受けている会社に対して安定した保護政策ということは、私は理解できないと思います。悪いときなら悪いで出してもいいが、いいときは返上さすべきではないでしょうか。これは国の機関からかなりの金融措置があるはずですから、どちらにもそのくらいの説得ができないはずはないと思っております。二百八十名の与党を持っている政権にそれができないはずはないと私は思う。考えたことはないでしょう、大臣、そういうことは。
  45. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 電力を安くするということは、またいろいろほかの方面からも考究さるべき点があると思います。でありますから……。
  46. 井手以誠

    井手委員 利益をあげているじゃないか。
  47. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 利益をあげているといますけれども、しかし電力会社としては、また今後原子力の発電とかなんとかで相当金もかけますから、したがって、やはり政府としては長期的な観点から低廉な安定した電力を供給させるという方針をとるべきだ、こう思うのでございまして、なるほど重油と石炭との間の差額だけを補給しておるようでありますが、しかし電力会社としては、これで相当の犠牲を払っておるように私は聞いておるのでありまして、そこらは、私どもはまだはっきり数字はわかりませんが、電力会社としては、とにかくもうこれ以上の石炭を購入するということはむずかしい、私どもは相当の犠牲だ、こういうことを言うておるのであります。したがいまして、これでも相当の石炭を買わさせておるのでありますから、電力会社としても、せめてその差額だけはやはり政府が持ってもらいたいという要求も私は至当だと考えており、これを差額をやらないということになりますと、石炭が売れないという問題がまたあります。石炭の需要を確保するという意味でやっておる政策でありますから、その点はひとつお考え願いたい、鉄鋼もそういう意味でひとつお考え願いたい、こう思います。
  48. 井手以誠

    井手委員 政策需要の問題であることは私も承知しておりますよ。しかし、電力にしろ鉄鋼にしろ、国の保護を受けておることは、これは間違いないのですよ。独占的な電力についても鉄鋼についても相当な国家資金が融通されておる。会社の立場からいくならば、それは合理主義でしょうから、安いものを買いたい。しかし、国民の税金でやろうとする場合には、やはり国民の納得されるものでなくてはならぬと私は思うのです。これほどもうけておる、ばく大な利益をあげておるものならば、何とかそこに説得の方法はなかったか、私はあなたに聞いておるのですよ。理屈じゃないのです。私は日本の企業というものはわがままだと思う。身がってだと思うのですよ。少し困れば政府に泣きついて減税を求める。景気になっても、その恩典を続けさせようとする戦後の日本の企業というものは身がってですよ。通産大臣はそのくらいのことは——二、三日前経団連の会長、石坂さんですか、なかなかうまいことを言っておったのだが、少しは身がってな財界に対して警告を発するくらいの勇気があってよろしいと私は思う。あらねばならぬと思うのです。自分努力によってうんともうけることは資本主義においてけっこうですけれども、国の権力と保護にすがってもうけを維持していこうといういまの態度、企業としてはそれはもうかることが本意でしょう。けれども、そこにはけじめがあってしかるべきです。鉄鋼が半年の間に二百億ももうかるときに、負担増対策を唯々として出すような政府は、私はかいしょうがないと思う。  次に、この一千億の借金棒引きに類する対策について、閉山をした場合には、なお回収できなかった分についての二分の一を国は補償するそうであります。これは少し行き過ぎではございませんか。私は何もきょうは、今度の対策銀行救済にすぎないということを申し上げようとは思っておりませんが、これはあまりひどくはございませんか。閉山したならぱ、整理交付金が会社の給付金として渡るはずです。税金の未払いについても、資材の未払い代金についても、失業保険の未払い金についても、銀行借り入れ金についても支払いが行なわれるわけです。そういう対策が講ぜられておるのに、銀行だけさらに、交付金を受けてもなお足りない分の二分の一を政府補償をしよう、あんまりこれは欲ばり過ぎてますよ。ほかの場合の二分の一の補償はそれでけっこう。しかし、閉山をしたときに整理交付金はいくのですよ。そしてそれは、それの割合に応じてもらえるのですよ。それが少ないから、二千二百円を二千四百円に引き上げた、そして銀行借り入れ金もなるべく戻るようにという処置をとっておるのに、税金は半分しか政府からもらえなかった、売り掛け代金は十分の一しかもらえなかった、銀行だけは、また二分の一はもらえるというような、そんな都合のいい話はございませんよ。ちょっとこれはミスのようですね。
  49. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 なるほど、閉山した場合には政府から交付金がいきますが、その交付金の大部分が賃金の未払いに対する支払いに充てます。だからして、経営者として取得する金額というものはごくわずかだと思います。  そこで、なるほど閉山したのだから、ほうっておいていいじゃないか、二分の一もやらないでもいいじゃないかという御意見でありますが、やはり閉山してもあとは金融機関に対しては二分の一を払ってやるということによって、今日また他の炭鉱経営者も、資金の融通の点について銀行から安心して貸してもらえるということになると思いますから、これは炭鉱全体の安定の意味において二分の一を渡すということは必要じゃないか、私はこう考えておる次第でございます。
  50. 井手以誠

    井手委員 それは銀行資金を融通する保証はございますか。口じゃだめですよ。保証する肩がわりならば、そういうことも場合によっては考えてもいいけれども、常識的には、今度の旧債たな上げによってこれ幸い銀行は手を引こうという動きが強い。強いから、あなたのほうは何か水を向けよう、恩典を与えようという気持ちも私どもはわかる。わかるけれども、少し行き過ぎですよ、これは。整理交付金がなければ、ある程度私なんかもがまんしてもいいんだけれども、大体石炭企業銀行、これは私契約ではございませんか。私契約なものに国が補償するということは英断ですよ。従来にない措置です。海運に対しては現に出世払いになっております。しかしいまの石炭企業については、それはだれも考えておりません。借金棒引きに類するもの、それは銀行石炭企業とが自分たちの都合で貸し借りしたのじゃないですか。それじゃ困るからというので、あなたのほうでは、それじゃ千億円だけ退職金等特別の異常債務だけに見てやろうという。そこまでは私ども理解できる、私ども石炭対策としてはこれに対してはにわかに賛成することはできませんが。しかし、閉山をした場合に整理交付金をもらって、なお不足するものに二分の一払うという私契約に対する補償は行き過ぎですよ。それは貸してあげますという保証がなければできませんよ。そんな甘い話はないですよ。こうしておけばたぶん石炭会社に金を貸してくれそうなものだという、そんな甘いものじゃないですよ、銀行の金貸しというものは。本来ならば一千億円の金は、いまの石炭事情からは取れないかもしれないのを、政府はそれを生かして払ってやる。その上にまた閉山したものの残りの二分の一を補償するなんて行き過ぎです。
  51. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この石炭対策としては、とにかく金融機関にこれに協力してもらうということがやはり前提条件になるのであります。井手委員も御承知のとおり、金融機関が石炭業に金を貸したがらぬというのは事実であります。事実でありますが、しかし何とかして貸してもらわなければならぬということで、金融機関も協力してもらうという前提のもとで今度の対策を講ずるのでありますから、したがって炭鉱の金融を円滑にするためには、また再建計画を達成するためには、もしかりに閉山した場合には、とにかく半分は銀行へ返してやるのだというようなことを保証することによって、銀行業者も、それじゃしかたなしに貸そうかという気持ちが起こるのじゃないか、こう思うのであります。これはなかなかそう簡単には貸さないかもしれませんけれども、その点においては金融業者に対しては、日本全体の石炭産業を安定せしめるという意味において金融機関もやはり協力してもらいたいし、また今日まで石炭業者があれだけ金を借りられたということも、やはり斜陽産業であるけれども、しかし国のためだからやむを得ず貸さざるを得ないということで、金融機関から融資してもろうたものもあると私は思うのです。でありますからして、そういう意味でひとつ国全体の産業、経済という立場から、金融機関も大いに協力してもらうということをぜひわれわれもお願いしたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  52. 井手以誠

    井手委員 これで終わりますが、あなたが銀行の頭取ならば、そんなことは考えないですよ。だれが考えますか。銀行がどんどん次々に貸しておるのは、前に貸した元金が惜しいから貸しておるのです。何とかこれで政府が保護政策をとっておるから生きはしないだろうか、これでストップしたら死んでしまうから、何とか生き返らせたいという欲から出たのですよ。何も銀行は慈善事業じゃありませんよ。これくらい合理主義はございませんよ。たとえば整理交付金の中で、税金は半分しかもらえなかった、市町村住民税は半分しか取れなかった、失業保険も半分しか取れなかったという整理の場合に、金融機関だけは、担保を取っておるから大部分が回収できた、そんなことが私は許されるかと思うのです。許されません。  これだけ申し上げて私はきょうの質問を一応打ち切ります。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長 次会は明二十五日午前十時三十分から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時二分散会