運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-04-20 第55回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十日(木曜日)    午前十時二十分開議  出席委員    委員長 多賀谷真稔君    理事 神田  博君 理事 西岡 武夫君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君       佐々木秀世君    篠田 弘作君       進藤 一馬君    菅波  茂君       田中 六助君    野田 武夫君      三ツ林弥太郎君    木原津與志君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         通商産業大臣  菅野和太郎君         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         厚生省年金局長 伊部 英男君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省鉱山         保安局長    中川理一郎君         通商産業省公益         事業局長    安達 次郎君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         通商産業省公益         事業局開発計画         課長      河村 捷郎君     ————————————— 四月二十日  委員倉成正辞任につき、その補欠として三ツ  林弥太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員三ツ林弥太郎辞任につき、その補欠とし  て倉成正君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十九日  石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提出第五  八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本施策)      ————◇—————
  2. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭対策基本施策について、昨日に引き続き質疑を行ないます。質疑通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭産業合理化が進められてまいりまして、特に今年度予算から考えましても、さらに三百三十万トンを上回る山の閉山が行なわれるわけです。特に政治的にも非常に注目をされました豊里鉱閉山もすでに決定をいたしておるわけであります。また三菱茶志内藤田炭鉱、さらに高根、住吉、三舟の租鉱炭鉱、こういう形で中小炭鉱では今年すでに閉山協定が終わった山もございますし、これからも閉山が進められてまいると思うわけです。そこで今日までの、これらの炭鉱離職者に対する再就職状況についてどうなっておるか。さらにまた緊急にいま閉山になっている各山の炭鉱離職者に対する再就職対策は、労働省としてどういう角度から進められているか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 早川崇

    早川国務大臣 昨年度までの閉山に伴う離職者に対しましては、約九割近くは再就職しておると聞いております。新たに今年度一万四百人程度閉山に伴う離職者が出る見込みでございますが、これに対しましては就職促進手当を支給しつつ就職指導職業訓練援護措置等を講じまして、再就職促進につとめたいと思っております。また前国会におきまして、求職手帳発給条件の緩和、移住資金支給対象拡大等所要改正をいたしまして、離職者就職促進に資してまいりました。今国会におきましてさらに百尺竿頭一歩を進めまして、自営業を営もうとする人々に対しましては、自営資金の五十万円までは無担保保証雇用促進事業団で行なう等、特別の措置を講じてまいりたいと考えております。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 再就職で一番問題になるのは、いわゆる高年齢層の再就職対策なわけです。これはいままでの政策では、一般炭鉱離職者の再就職対策ということで、行政指導の面で中高、特に高年齢層の再就職について指導もされ努力もされてきたことは認めるわけです。しかし従来の政策でも、やはり高年齢層の再就職はなかなか不可能であるという問題が出ておるわけです。今年も新たに自営業に対するところの施策が出てまいりましたけれども、極端なものの言い方をしますと、身体障害者就職させる、厚生省ではそういう方針もとっておるわけですね。ある一定の高年齢層に対しては、そういう身障者に準ずるような施策思い切ってとって、再就職をさせる、こういうような視野に立たないと高年齢層の再就職は困難じゃないか。現実に豊里高根あるいは藤田炭鉱等もきまっておりますが、こういう面でも高年齢層がやはり残っておるわけです。今年度予算はすでに議案として出されておりますけれども、もう一歩突っ込んで考えたらどうか。たとえば雇用促進手当とか、いろいろなそういう措置についても、身障者に準ずるようなことが施策として考えられないか。そのことを通じて高年齢層の再就職をできるだけ消化するというところまでいかなければ解決しないのではないか、かように考えるわけです。なかんずく、炭鉱離職者の中には、炭鉱災害のためにけがをして、身障者にまではいきませんけれども、ある程度欠陥を持っている者もありますし、あるいは炭鉱災害が激発をして、就職をしておった未亡人が、その山が閉山しますとほうり出されるわけですね。これはまさしく人道問題であり、社会問題であると思うわけです。従来は行政指導の面で未亡人の再就職についても努力はされておりますけれども、こういう面に一歩進めた、一般の再雇用対策と違った一段厚い手当をする、そういう政策を打ち出してこれらの問題を解決すべきではないか、こう考えるのでありますけれども、こういう点について労働省としてどうお考えになっておるか、またこういう問題について検討されたことがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  6. 早川崇

    早川国務大臣 中高年の再就職という問題は、単に炭鉱離職者のみならず、一般にも、若年層と違いましてなかなか困難な面があるわけでございます。炭鉱離職者に関しましては、従来、雇用奨励金というものは、年齢別事業主支給額を引き上げておる。三十五歳から四十歳未満は一年間月額六千円であります。五十歳以上は八千円、そういうふうにスライド的に支給して中高年雇用促進いたしておるわけでございます。しかし、御指摘のように、中高年層というものは相当家族をかかえておりますので、自由に移住といいますか、すぐあっちへ行けといっても行けないような事情もございます。こういう点につきましては、移住手当最高八万三千円というような制度もございますし、また移転、就職のための融資制度等もございますので、そういうものを総合的に考えまして中高年齢者の再就職を円滑にいたしたいと考えております。  なお、事務当局から中高年炭鉱離職者就職状況について実情を申し上げます。
  7. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、炭鉱離職者就職状況は、今日まで九〇%をこえるくらいの再就職の実績がございますけれども、結局最後に残る方々は、高年齢者あるいは身体障害者——未亡人あたり炭鉱離職者対象に入っておりませんが、もとをただせば炭鉱関係があった未亡人、こういう方々が残るわけでございます。私どもの再就職指導も、高年齢者層重点を置きまして現在やっているわけでございますが、何せいろいろな条件で再就職がむずかしい。現に筑豊に残っておる滞留者の七割以上は五十歳以上の年齢者、こういう方々でございます。したがいましてさらに一そう離職者対策重点を高年齢者身体障害者というものに置いてやりますけれども、なおかつ最後に残る者はこういう悪条件の者だという点で、さらに今後この法案改正によりまして、自営業援護対策も講じますので、それらとあわせてできるだけ高年齢者の再就職促進してまいりたい、かように考えております。
  8. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は、中高年齢層といいますけれども、特に高年齢層、五十歳以上の場合が非常に困難をきわめているわけです。しかし石炭政策が一応抜本政策であるという以上、いままでのこういうまだ未解決の高年齢層の再就職の問題はこれからも出てまいるわけでありますから、この点を一度総括的に解決するという意欲が、特に集中的に高年齢層に向けられなければならぬのじゃないか。そういう意味で、自営業で自分の生計を営むという希望者も出てまいると思いますけれども、もう一歩この点についてさらにくふうをする必要があるのではないか。特にこの面については具体的に非常に個々の地域あるいはケースの問題もございますから、めんどうかと思いますけれども、この点の特段の努力検討を私はこの機会に要望しておきたいと思います。  特に政治的な最大の焦点になりました豊里を抽出して、豊里の今日の再就職状況について報告を求めたいと思います。事務当局でけっこうですから。
  9. 有馬元治

    有馬政府委員 四月十三日現在で豊里離職者のうち求職を受理した者が五百四十五名でございます。そのうちすでに就職をした者が二百八十七名でございまして、その二百八十七名の内訳は二百一名が石炭鉱業に再就職いたしております。それから三十二名が道内の一般産業に再就職いたしております。五十四名が東京をはじめ道外の一般産業に再就職いたしております。現在の状況は、半分ちょっとが再就職した状態でございますが、これからさらに再就職のあっせんを積極的に進めてまいりたいと思っております。
  10. 岡田利春

    岡田(利)委員 この機会石炭局長にちょっとお伺いしますけれども、今度の予算の中に活性炭工場建設産炭地振興一環として予算化されておるわけです。私はおそらくこの工場は、いままでの経過から考えて、豊里の位置である赤平あたりに予定されておるのではないか、かように考えておるわけです。しかしこれから予算国会で成立をして、具体的にこの活性炭工場建設にかかり、その後操業開始、そのためのそれぞれの人員がこの仕事に就業する、こういうことになるわけですが、これは大体どういう構想と、時期はどういう時期を設定して考えられておるかお聞きしたいと思います。
  11. 井上亮

    井上(亮)政府委員 活性炭工場建設の問題につきましては、昨年来いろいろ私どものほうでも検討いたしておるわけですが、御承知のように活性炭製造技術につきましては、ただいま私ども工業技術院系統試験研究機関でいろいろ研究したり、あるいは民間側でも研究いたしておりますが、ようやく工業化見通しがついたというような段階でございまして、私どもとしましては、産炭地振興事業団出資業務として、この活性炭製造工場を取り上げたいということで、四十二年度予算に際しましても、この活性炭製造企業に対する出資ということを予定いたしまして、予算を計上しておるわけでございますが、なお、まだ工業化段階に入ったといいましても、どの企業にこの製造をやっていただくかという、企業主体が決定しませんと、産炭地振興事業団として出資という形でこれに国が協力するということができないわけでございますので、時期といたしましては、やはりどの企業がこの事業を担当するかというのがきまりますのは、おそらく秋ぐらいになるのではないかというふうに考えております。したがいまして、その企業主体がきまりまして、そこで具体的な今後の企業活動としての計画を立てるわけでございますので、実際問題としてこの活性炭製造工場が具体的に操業するというのは来年度に入るのではないかという見通しでございます。ただ私どもとしましては、本年度予算でこの活性炭製造工場に対する出資を予定しておりますので、企業主体につきましては年度内にはっきりさせたいというふうに考えております。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 豊里の場合、いま労働省から説明がありましたように、まだ未就職の者が滞留するわけです。特に中高年齢層がやはり滞留することは間違いございませんし、そうなりますと、失業保険は九カ月が一応あるわけですけれども、これを一応期待をしているということはあるわけです。したがってこれに対する関心も非常に高いわけですね。当然またそういう面でこれが具体的に移されれば、ある程度この工場消化をされるという面も出てくるのではないか、私いかように考えますので、特にそういう点で技術的に若干問題もあるようでございますけれども、そういう総体的な面を含めて、これらの問題の促進をひとつ要請をいたしておきたいと思うのです。  特に関連がございますから、これは安定局長でけっこうですが、天塩鉄道の問題です。御存じのように天塩炭礦鉄道は今度炭鉱部門閉山になり、炭鉱閉山になると同時に、この鉄道採算ベースに乗らないわけです。したがって炭鉱閉山とともに鉄道部門も閉鎖をしなければならない。きのう実は本委員会に地元から陳情がまいりまして、この面についての陳情が行なわれたわけです。一つには、炭鉱の場合には買い上げが行なわれて、大体炭鉱労働者退職金及び未払い賃金は七割程度買い上げ資金の中で保証される、こう実はなっておるわけです。ところが鉄道関係についてはこれは対象になりませんから、退職金も支給できない。また未払い賃金がございますが、この未払い賃金も支給できない。何らの措置なく炭鉱閉山とともに運命をともにする鉄道関係職員ちまたにほうり出されるということになるわけです。いままではこういう例というのは珍しいのではないか。私の記憶では、九州にあればそういうケースがあったかもしれませんけれども、北海道でも初めてのこれはケースなわけです。会社炭鉱鉄道でありますから、そういう意味でこれに対する対策というものが当然考えられてまいらなければなりませんし、これらの再就職の問題も、炭鉱離職者と同じようにやはり対処しなければならない私は問題だと思うわけです。しかし炭鉱離職者ではございませんから、炭鉱労働者ではございませんから、援護法できめておる恩恵に浴することはできないわけですね。しかしながら道の労働部あたりとのいままでの折衝過程では、ずいぶんいろいろ研究をされているようですが、私はやはりこの実情考える場合には炭鉱離職者に準じた弾力的な適用というものをはかって、措置をはかるべきではないか、こう考えるわけですが、これはすでに解雇通告をいたしておりますから、労働省のほうにも報告があると思いますので、この点についての見解を承りたいと思うわけです。
  13. 有馬元治

    有馬政府委員 天塩炭礦鉄道鉄道部門離職者に対する取り扱いの問題でございますが、これはこの会社の従来の経緯、特殊事情から申しまして、軌道部門に従事しております八十二名の者についても、できるだけ石炭離職者臨時措置法に基づいて石炭離職者並み扱いをしてほしいという各方面からの要請もございました。大臣の御指示もございますので、私どもとしましては御意見のとおり、炭鉱離職者に準じた扱いをするようにということで道庁に指示をいたしております。したがいまして、現地において具体的に対象者範囲をいま検討中でございますので、実情に即した措置がとれるもの、かように考えております。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、緊急就労の問題についてお伺いをしたいのですが、これはこの制度ができて以来当初若干いろいろな問題もあり、そういう経過をたどって今日緊急就労の今年度予算が計上されておるわけです。しかし御存じのように、緊急就労は今年度で一応打ち切りということに相なっているわけですが、今日の緊急就労実情を見れば、あるいはまた滞留している炭鉱離職者現状等からも考えて、これをさらにちまたにほうり出すということは非常に大きな社会問題にもなるのではないか、私どもはかように実は判断をしておるわけです。したがって、今年度予算は計上されておりますけれども、来年度以降に対して労働大臣としてこの緊急就労の問題を一体どう消化をされるお考えを持っているか、この点ぜひひとつ見解を承りたいと思うわけです。
  15. 早川崇

    早川国務大臣 この問題は非常に重要な問題でございますので、本年度は二千百円まで単価を上げまして、四十三年度以降の取り扱いにつきましては、よくその実情に即して慎重に検討してまいりたいと存じます。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 慎重に検討して処置をしていただくということになるでしょうけれども、この際特に、この問題については来年度の問題ですから、いまこの段階で明確な答弁を求めることは困難かもしれませんけれども、私ども緊急就労のいまの実情をいろいろ分析してみますと、どうしても石炭産業合理化計画そのものが延びてきたわけですね。一応昭和四十五年度を目途にして計画が再編成されたわけです。そういう意味合いから、それぞれの施策についても延長されてまいっておるわけです。この緊急就労は、やはり石炭産業合理化密接不可分関係の中から生まれてきた問題でございますし、また内容もそうでございますから、そういう意味でこの緊急就労対策については来年度に向けても相当ひとつ決意を固めて労働省として対処していただきたいということを、この際強く大臣に要望しておきたいと思う次第です。  基準局から参っていないと思うのですが、いま石炭産業の中でこういう問題が一つ起きてきておるわけです。地下労働における連続操業の問題が提起をされて、これが労使間の一応の協議事項になってきているわけです。この連続操業というのは、基準法では一週四十八時間、また時間外労働についても基準法上規制をされておるわけです。しかし、これを今度は四交代制度にして、言うなれば一週五日間働く、そのかわり一日の労働時間は九時間三十六分になるわけですね。ですから、一週四十八時間ということになるわけです。連続操業の問題についてはいろいろございますけれども地下労働が特に労働基準法で拘束八時間ときめられている、こういう前提に立ちます場合に、地下労働なるがゆえに、このことがもし実際に行なわれるとすれば、これがはたして今日の炭鉱労働実情からいって妥当なのかどうか。あるいはまた、一週確かに四十八時間でございますけれども基準法のたてまえからいってこれは法律上合法なのかどうか。こういう点について、すでに大きな話題にもなり地方紙にも報道されておる問題でございますので、この際こういう石炭合理化一環として、いま出されているこの労働態様についての見解をこの際承りたいと思うのですが、いかがですか。
  17. 有馬元治

    有馬政府委員 これは基準局の所管の問題でございますが、御指摘連勤の問題は労働省としても重大な関心を持っておりまして、基準局十分監督重点的に施行をいたしまして、坑内労働者の保護に万全を期する、こういう考え方で監督を行なっておるわけでございます。  詳しい状況は、私ちょっと担当でないものですから承知いたしておりませんが、そういう状態にあるということを御報告させていただきます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはまず石炭局長にお聞きいたしたいのですが、炭鉱労働者概念ですね。炭鉱労働者というのは、通産省石炭局の立場からいえばどの範疇でございますか。
  19. 井上亮

    井上(亮)政府委員 一言炭鉱労働者といいますと、いろいろ広義炭鉱労働者もありますし、あるいは狭義に見ます場合の炭鉱労働者もあろうかと思いますが、私どもその目的によりまして——政府としてのいろんな施策をしますときの目的と申しますか緊急性といいますか、それによりましてまたいろいろ概念を広く考えるという場合もありましょうし、あるいは直接石炭生産に従事している炭鉱労働者という場合もあろうかと思います。ですから一言でどうということは申せませんが、たとえばいまいろいろ問題になっておりますが、特に生産を確保するというような場合に考えますれば、これはやはり直接炭鉱生産に従事している労働者、これは坑内坑外両方あろうと思いますが、炭鉱はやはり付帯業務的な業務がいろいろございます。あるいは二次加工をやっておるような炭鉱労働者もありますが、その場合にはそういう者は含まないというふうに解釈いたしておりますし、あるいは炭鉱経営全体というような意味でいえば、二次加工まで入るというような、目的によりまして広義に解釈しなければいかぬ場合もありましょうし、あるいはもう少し狭義に解釈してもいい場合もあるというふうに考えております。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働省の場合は、普通一般労働行政対象として、日常の行政指導の場合には、どの範囲まで炭鉱労働者考えられておりますか。
  21. 有馬元治

    有馬政府委員 これはいま石炭局長から御答弁ございましたように、いろいろな角度から分類できるわけですが、私どもとしましては、常用実働労務者、いわゆる炭鉱労務者といわれている方々、これが約十万ございます。そのほかに臨時夫、これが四千二、三百ございます。それから問題になります組夫というのがやはり一万七、八千ございます。そのほかに職員と呼ばれる層が一万六千人ほどございます。これらすべての方々石炭鉱業に従事しているいわゆる従業員でございますが、労働関係から見ますと、それぞれに問題が違いますので、組夫の場合、あるいは臨時夫の場合、特にいろいろな問題が常用労働者の場合以上にあるということで、そういう分け方を一応いたしております。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 確かにいろいろ見解はございましょうけれども労働省安全衛生関係対象になるものは炭鉱労働者なのかどうか。一般鉱山保安法範疇に入らない労働者であるわけです。私はやはり普通一般炭鉱労働者という場合には、鉱山保安法鉱山労働者の規定の範囲、これが炭鉱労働者概念ではないか、かように考えるわけです。  そこで現在の炭鉱労働者実情でありますけれども、すでにこれは労働省でも把握をされておると思うのですが、たとえば十年間も合理化を進めてきた、むしろ、十年以前の問題もそうでありますが、炭鉱坑外人員合理化に伴って縮小する。おそらくいま坑内労働者は、直接雇用の場合には八一%が坑内労働であって、坑外はおそらく一九%ぐらいの比率に今日はなっていると思います。それは坑内に働いていたけれども、なかなか冷酷に解雇することはできませんから、そういう点で坑外から坑内転換をしてもらうということで、転換手当を出して募集をしてできるだけ合理化に協力してほしいということで、坑外夫方々坑内に入れるわけです。そういうことを長い経過をたどって行なってきて、今日は八一%が坑内夫である。こういう比率まで非常に高まってきたわけです。逆に今度は坑内労働というものは非常にきつうございますから、五十歳以上になってまいりますと、坑内の第一線で働くことが若干困難である。あるいはまた危険作業でもあるということで、これまた協力を求めて、極端なのは繰り上げ定年でやめてもらうという制度で、先に、五十歳過ぎたら二、三歳でやめてもらうということが合理化政策でとられてまいりました。しかしその次の段階としては、坑内労働者坑外にひとつ上がってもらう、こういう方向で、雇用はするけれども坑外転換をしてもらう。逆に高年齢層については坑外合理化政策一環として協力してもらう、こういう長い経過も実はあるわけです。あるいは坑内労働は非常に危険度も高くて災害が多うございますから、災害のために若干中程度身体障害を受ける、あるいはまた極端なのは手とか足が切断されて身体障害者になる、こういう方々坑内の職場はございませんから、そのことを通じて坑外に上がって、坑外の軽作業についてもらう、実はこういうことがずっと長い間繰り返されてきているわけです。そういたしますと、現時点では八一%が坑内夫で、一九%が直接雇用の場合には坑外夫ですけれども、それを現時点で八一%だけが坑内夫であり、あとは坑外夫であるという単純な割り切り方は非常にむずかしいのではないか、かように私は考えるわけです。したがって私のそういう見解について、労働省の場合、炭鉱労働者実情は、私が申し上げた実情であるとお思いになりますか、それとも全然実情は違うとお思いになるか、この点見解を承っておきたいと思います。
  23. 有馬元治

    有馬政府委員 坑内から坑外へ上がってくるという例は、御指摘のように普通行なわれているだろうと思います。したがってまあ今後坑内夫坑外夫概念の分け方をどうするかというのは、結局年金でどう扱うか、それぞれの目的によって概念規定をはっきりさせるということになろうかと思います。実態は先生御指摘のとおりだと思います。
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 それと同時に、石炭局長にお伺いしたいのですが、いま言ったように坑内夫は八一%の比率まで高まってきたわけですね。坑外が一九%。しかもこの残っている部門というのは炭鉱に直接関連のある部門が非常にこう残っているわけですね。たとえば坑口に石炭が出ると受炭場で石炭を受ける、受炭場から選炭をする、選炭からその石炭を運ぶ、出たズリは捨てる、こういう工程ですね。いわゆる炭鉱というのはどこまでいっても運搬なんで、消費者までの運搬なんですから。そういった工程の部分は切りかえるわけにはまいりませんから、直接雇用として残っているわけです。それと、それに付随する中枢的な管理部門、そういうものを残しては、いまの日本の炭鉱はほとんど第二会社に切りかえになり、炭鉱から分離させている。これがいまの各単位炭鉱の構造なわけです。そうなればなるほど、従来の福利厚生からあらゆるものまで大きく手を伸ばしていた炭鉱の場合と、合理化された今日、近代化されている炭鉱の姿というものは大きな違いがあるわけです。こういう面について、私は炭鉱労働者の場合には坑内夫坑外夫画一的に分けるということは非常に無理があるのではないか。もちろん坑内で働いている、坑外で働いているということでははっきりしているのですけれども、いろいろな扱いの場合には、そういう点で賃金とかそういう差はございますけれども、たとえば年金なんかの場合でも画一的に扱いを別にすることは相当困難があるのではないか、こう私は考えるわけです。したがってそうなってまいりますと、有澤答申はいろいろ実情も調査されて炭鉱特別年金制度を確立をするということで、坑内夫ということに限って、地下労働に限って雇用対策上年金制度をつくるということを示しておりますけれども、逆にこれが今後合理化を進める場合の障害になる面が出てくるのではないか。たとえば高年齢層に今度は坑外に上がってもらうという場合に、いやもう五年、五十歳だから五十五までつとめていれば年金をもらえるのに、いま会社合理化に協力して坑外に上がることによって年金がもらえない、そうすると断じて坑内に働いている、坑内の軽作業に働いているということになって、いままでの合理化の面というものが阻害をされてくる、こういう一つの問題があるわけです。あるいはこれからの炭鉱もいま非常に災害がやはり依然として高いわけですから、ヨーロッパの約二・七倍くらいの災害率が日本の炭鉱災害率でございますから、そうなってまいりますと、災害を受けた者が、中程度身障者坑外に上がらないということになりますと、これから非常に大きな問題になるのではないかと思うのです。そういう弊害が、実際私はこの年金制度が有澤答申、閣議決定の方向でいけば、逆にそういう弊害というものが生まれてくるのではないか、かように思うのですが、今日の合理化の趨勢ではそういう心配はないかどうか、石炭局長見解を聞いておきたいと思います。
  25. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御指摘のように、私も基本的には、石炭生産体制というような場合をとってみますと、坑内関係労働坑外関係労働とはやはり二種一体になって初めて体をなすわけでございます。基本的には私もそう思います。しかし労働の質の問題だとかいうような点になりますと、これはまあ坑内夫労働坑外夫労働ではおのずからやはり質的な違いがあるというふうに考えております。なお岡田先生御指摘になりましたように、まあ坑内労働をやっておったが、合理化の必要上坑外夫になってもらいたいというような場合も私はあろうと思いますし、今日までの経緯を見ましても、そういうケースもあったわけでございます。しかし、今日の段階では、むしろ坑内関係労働合理化するというよりも、人員整理をするというような必要性は、数年前に比べますと、全く事情が変化しておりまして、むしろいかに労働力を確保するかあるいは若年労働力を入れるかというようなことが問題でございまして、坑内夫が過剰であるから、過剰を切って坑外に出さなければいかぬという事情はほとんどない。これはもちろんまれなケースといたしましては、やはり一部の坑口を閉鎖する、それをまた転用するというような場合はありましょうけれども一般論としてはもう数年前とそういった労働状況は全く変わってきておる。いかにして労働力を確保するか。また坑内夫につきましても、坑内夫坑外夫との違いは、坑外夫についての離山ムードというのはあまり大きくない。離山ムードが非常に大きいのは坑内労働者であるというような点も考慮いたしますと、その点もやはり坑外坑内では違いがあるのではないかというふうに考えております。これはごく最近の傾向でございます。ただ、私はそう申しますけれども、基本的には坑内坑外との労働につきましては、特にこの坑外の現場業務については、これはやはり基本的には一体となって初めて生産体制が整備されるというような角度から見れば、そう考えます。しかし、付帯業務については、これは事情が全く違うのではないかというふうに考えております。
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 傾向としてはいまの話はわかるのですが、ただ、身障者災害を受けた者については、これはいかんともしがたいと思うのです。しかし日本の炭鉱災害率が高いわけですから、この点は私は非常に障害になっておるのではないかと思う。あるいは坑口といっても、主要坑道等では選炭機との間とどれだけの違いがあるかというと、これまた逆に隧道を通って選炭機に来るというものもあるわけですから、非常に微妙な問題があるわけです。こういう点、特に今後具体的に検討していただきたい。  そこで、厚生省から参っておりますので、今度の有沢答申に基づく閣議決定、そして今国会炭鉱労働者の特別年金が法案として出されるわけですが、その法案を出す時期が大体切迫してきているわけですから、相当作業も進められておると思うのですが、大体どういう状態にまで作業が進められておるか、お伺いしたいと思います。
  27. 菅野和太郎

    ○伊部政府委員 昨年七月の石炭鉱業審議会の答申及び同八月の閣議決定に基づきまして、厚生省といたしましては本年度中にこの制度を実施するために、石炭鉱業審議会の特別年金小委員会において引き続き関係方面の意見を聴取しつつ、制度の内容につき御審議願っておるところでございますが、近く小委員会としての結論がまとまると考えておりますので、その御意見に沿って法案を作成し、来月上旬を目途として今国会に提案をしたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 来月上旬に法案を提出するということになりますと、大体この小委員会でほぼ結論が出るのはもう来週早々といろ理解でよろしゅうございますか。
  29. 菅野和太郎

    ○伊部政府委員 岡田先生御承知のように、いろいろ問題は煮詰まってきております。その時点でございますが、努力目標といたしましては、来週中に関係方面の意見を取りまとめたい、かように考えておる次第でございます。
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 きのう本委員会答弁では、通産大臣から、年金の法案を出すために厚生省といろいろ折衝している、そうしてまた、その財源についてどうするかという点についても厚生省と折衝している、こう答弁が行なわれているわけですが、いまお話を聞きますと、小委員会でやっているということで、別に何も折衝しているのではないと思うのですけれども、この点はどうなんですか。
  31. 菅野和太郎

    ○伊部政府委員 石炭対策全体の動きは、石炭鉱業審議会の御審議と関係各省とがいわば並行的にやっているのでございますが、年金につきましても、小委員会の御審議と関係各省の意見の煮詰めと並行的にやっている、こういう意味で通産大臣は申し上げたと思います。
  32. 岡田利春

    岡田(利)委員 閣議決定、有沢答申には明確に数字は示されておりませんけれども、この有沢答申の説明事項として、大体炭鉱労働者に対しては特別年金は一万円年金を目途としてつくる、そういう考え方で答申に特別年金を含めたのである、こうわれわれは説明を受けているわけですが、いま年金当局としては、そういう趣旨については理解をしておりますか。
  33. 菅野和太郎

    ○伊部政府委員 全体的に、年金小委員会に実質的な内容の煮詰めというものをわれわれとしても期待いたしているわけでございますが、具体的に、たとえば一万円であるというようなことがいままできまっている段階ではございません。
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局、この年金は——法案というのは別に年金の事業者負担の額を明示するわけではございませんでしょうから、この法案ができたあとにできるのだと思いますけれども、しかし、この法案国会に提出する以上、この法案、法律が拘束をする事業主の負担というものは一体幾らなのか、こういうものをやはりはっきりきめられて、はっきりしためどをつけられて法案というものを出されるのだと私は思うわけです。その場合、伝えられるところによれば、トン当たり幾らとか、あるいは人数にもよるだろうし、いろいろ方法があるだろうと思うのですけれども、そういう点の詰めにはまだ入っておりませんか。
  35. 菅野和太郎

    ○伊部政府委員 岡田先生御指摘のように、この法案を提出をいたしましても、この法案自体に給付の内容あるいは事業主の負担限度というものが直接出てくるわけではございませんけれども、しかしながら、提出するまでの過程におきましては、もちろん御指摘のように、給付のレベルあるいは負担限度等につきまして有沢委員会関係者の意見を煮詰めてまいりたい、その上で国会に提出いたしたい、かように考えている次第でございます。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問も歯切れが悪いから、局長答弁も歯切れがお互いに悪いのかわかりませんけれども、ちょうど大臣が参りましたから、大臣に質問いたします。  炭鉱労働者特別年金の問題について、私はせっかくこの年金をつくって、そのあとで労使の間で新たな問題が起きるような状態は好ましくないと思うわけです。いろいろ大臣陳情を受けて動向については把握されていると思うのですが、せっかく年金をつくりながら、これを中心にして新たな問題ができて、それが労使の一つの問題になってくる、たとえば先ほどから私この委員会で説明をしているのですが、非常に炭鉱労働者というのは坑内外画一に区別できない要素がありますから、その点について、もし年金がきまったあと、この問題について、新たな労使問題として、労使要求として出されて紛争が起きるというようなことになれば、せっかく年金をつくりながら、紛争事項をむしろ労使に残すというようなことになれば、遺憾じゃないか。まして調整年金の問題もあるわけでございますから、あるいはすでにきめられておる炭鉱の退職手当制度というものがあって、その変更の問題がいろいろ起きてまいるわけですから、との面では、特にこの法案国会に出して、われわれが本格的に審議するまでには、少なくとも労使のある程度の、完全な合意ということはむずかしいかもしれませんけれども、相当の理解の上に最終的に法案をきめられ、提出されることが望ましいのではないか、こう私は考えるわけですが、大臣見解をひとつ承りたいと思います。
  37. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この石炭年金につきましては、御承知のとおりただいま鉱業審議会の小委員会で慎重に検討をしていただいておるということでございまして、おっしゃるとおり、そういった制度をつくりながら、かえっていろいろな支障が出てくるというようなことは、私といたしましてもできるだけ避けるべきことだと思っておりますけれども、何しろいま小委員会で御検討を願って、各方面の御意見をお聞きをいたしまして、せっかくその小委員会で御審議を願っておるのでございますので、その小委員会なり審議会の御答申をちょうだいいたしまして、そうしてわれわれとしても審議会の御意見というものもやはり尊重してまいらねばなりませんし、そういうものを待って検討をしてまいりたい、かように考えております。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣、待てば海路のひよりありということがありますけれども、そうあまり待たないでも、これはいままでの経験があるわけですから、審議会の意見を尊重するのももちろんけっこうですけれども、それこそある程度勇断をもって指導的な立場でこれらの問題に対処していただきたいということを要望しておきたいと思うわけです。  最後に、せっかく炭鉱特別年金ができるわけですが、もちろん厚生年金をはじめ共済関係の年金でも、成立過程の歴史的な経過もございますし、また負担のいろいろな面もございましょうけれども地下労働労働者に対していわゆる年金制度をつくるわけなんですから、しかも魅力のあるものでなければならない、魅力を持たせるという前提でやるわけですから、そういたしますと、そう一般年金より飛び抜けて高いということはこれは若干問題でしょうけれども、ほぼ最高水準であるということが魅力のある年金ではないか。しかもそれは社会通念上通るのではないか、こう思うのですが、そういう点については大臣はどうお考えになりますか。
  39. 坊秀男

    ○坊国務大臣 できるだけそういうことであるべきものだと思いますけれども、この点につきましても、いま私からこうだということを御答弁申し上げるという段階ではなかろうかと思います。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 田畑金光君。
  42. 田畑金光

    ○田畑委員 私、いまの質問に関連しますので、先に労働大臣にお尋ねしておきたいと思うのです。  いま岡田委員の質問の中にも出ておりましたが、答弁がいささか抽象的な感じを受けましたのであらためてお尋ねしたいと思うのですが、緊急就労事業の問題です。これは申すまでもなく法律事項ではなくして、閣議決定によって今日事業が継続されておるわけです。すなわち昭和三十九年の一月二十一日の閣議決定で、昭和四十三年の三、月三十一日まで緊急就労事業を継続するということになっておるわけでありますが、今後どのようにこれを取り扱うかということについて、関係者はもちろん、地方自治体も当然非常に関心を持っておるわけでありますが、政府としては先ほどの御答弁では慎重に検討したいということです。なるほど四十二年度予算の中では事業規模が五千二百二名ということで出ておりますけれども、この国会が済めば次の臨時国会あるいは四十三年度予算審議をする通常国会ということになるわけであります。まだ時間はあると申しましても、時期から見ても、このあたりで政府の明確な方針が出てきても早いことはないと考えておりますが、この点についてもう一度政府の方針を承っておきたい、こう思っております。
  43. 早川崇

    早川国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、緊就事業の実態を検討しながら四十三年度以降の問題は慎重に検討いたしたいと思っております。
  44. 田畑金光

    ○田畑委員 緊就事業の実態を調査すると言っておりますが、もう調査なさっておるのではありませんか。今度の予算編成にあたっても、事業規模をどうするか、単価をどうするかというようなことでいろいろ大蔵省との折衝の中においてもこの問題は当然議論されているとわれわれは聞いているわけです。したがって、労働省といたしましては実態を把握された上で四十二年度予算編成をなされたものと見ているわけです。ことに今回の臨時措置法の一部改正を見ましても、法自体を石炭政策の関連もあって四十五年度一ぱい、すなわち四十六年三月末日まで延長する、こういうことにもなっておるわけで、当然これは実態を調査されておると思うのですが、どうなんですか。実態についてどういう実情であるかということもあわせて御説明願いたいと思うのです。
  45. 早川崇

    早川国務大臣 労働省としてはできる限り通年雇用の再就職ということに努力をしてまいっておりますし、非常な成績をあげてまいったことも御承知のとおりでございます。  そこで緊急就労対策事業というものの実態でございますが、すでに御承知のとおり五千二百名。そうしてやっておる事業は自治体が主体になりまして、請負事業として道路、土地、河川等の整備改良が主体でございまして、事業主体はその緊就事業に従事する八五%以上を炭鉱離職者で占めなければならないという性格を持っておる次第でございます。しこうしてこの事業に要する費用に対しましては、国庫補助率は五分の四と定めておりまして、単価は本年度予算におきまして二千百円まで引き上げることにいたしたわけでございます。これが実態であります。
  46. 田畑金光

    ○田畑委員 慎重に検討するということは、要するに、さらに政府としてはしかるべき時期に閣議決定によってこれを延ばす、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  47. 早川崇

    早川国務大臣 実際問題として二千名をこえる人をこの事業に当たらしておるわけでございまして、慎重に検討するというのは、こういう緊就につかないでほかの職場で通年雇用のように持っていけるものがあればそれは一番いいわけであります。またいたずらに緊就対策事業求職手帳の期限の切れた人を直ちにほうり込むということも雇用政策上好ましくありませんので、そういったことを検討しながら、まだ来年のことでございますから、慎重に再延長するように持っていくか、そういったものも含めて検討いたしたいというわけでございまして、もちろん五千二百名にのぼる人の職を失なわせるということは事実上できないことは先生御承知のとおりであります。
  48. 田畑金光

    ○田畑委員 私はいま大臣答弁の中にありましたように、元来、こういう人方を通年雇用に持っていくということ、また職業訓練その他のいろいろな援護手当をやっておるのも、結局はこのような職場というものをできるだけ通年雇用に、健全な方向に持っていこうという私はねらいだと思いますが、その点については同感なんです。しかし四十年度予算で五千二百名の事業規模を持っておるという現実、また緊就事業が始まって以来、昭和三十四年以降の事業規模の推移を見ましても、この一年でこれを全部通年雇用に持っていくなんということはとうてい不可能な実情でもあるわけでありますから、したがって、なるべく早い時期に閣議決定に基づいて延長措置を講じ、あわせてまたこの人方について本来あるべき雇用の方向に推進するということをやってもらいたい、こう考えておるわけです。労働大臣に対する質問はこれだけにしておきます。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 関連質問の通告が出ております。大橋敏雄君。
  50. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 質問に入ります前に一言ごあいさついたします。  私は公明党の大橋と申します。皆さまも御承知のとおり新兵でございますので、いろいろとお世話になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。  労働大臣にお尋ねするわけでございますが、先般の所信表明の中で「閉山合理化に伴う新たな離職者の発生が予想されております。」冒頭にこのように仰せでございました。これは昨年の七月石炭鉱業の抜本的安定対策に関する答申が行なわれたことによって、今後答申に基づく諸施策が講ぜられる過程において起こる問題である、これは当然であろうと思いますが、四十二年度における閉山合理化の規模ですね。それと離職者の予想総数またその対策、これが一点でございます。  もう一つついでにお尋ねしたいことは、たとえば一つの炭鉱閉山させるにあたりまして、それ相当の事前調査等があるやと思います。大体その事前調査等がどのくらいの期間持たれているものか、これもあわせて聞きたいと思います。
  51. 早川崇

    早川国務大臣 四十二年度におきましては閉山に伴なって約三百三十万トン整理するわけでございまして、人員にいたしますと一万四百名発生する見通しでございます。これらの人に対しましては従来就職促進手当を支給しておるわけでございますし、これもたしか今年度予算では日額五百七十円を六百十円に引き上げました。また就職指導職業訓練その他の援護措置を講じまして、これらの人々の再就職に資しているわけでございます。また前国会におきまして求職手帳発給要件を緩和いたしましたし、移住資金という、これはかなりの金額を出すわけでございますが、これの支給対象の拡大の法改正を実施いたしましたことは御承知のとおりでございます。さらに加うるに今国会御審議を願うことになっておりまするのは自営業を営む人々、たとえば小売り商店とかその他をも含めまして、これらに対しましては五十万円まで無担保の保証を雇用促進事業団で実施をいたすわけでございます。また炭鉱離職者臨時措置法の期限の延長等々手厚い方法を講じておるわけでございます。また受け入れる雇用主の側に対しましても従来雇用奨励金というものを出しておりますし、それから住宅確保奨励金、また移転就職者中宿舎というような特典を与えておりまして、受け入れる側にも特段の配慮をいたしておることは御承知のとおりでございます。こういった方策を講じておりまするので、先般申し上げましたように非常にたくさんな離職者も、すでに九〇%再就職をしておるという実績を見ておるわけでございます。  なお閉山に対するいろいろな事前調査、これは通産省の所管でございますので、そちらからお答えいたします。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 通産省関係はあとでやりますから……。
  53. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの説明で大体のアウトラインはつかめましたけれども、さらにお尋ねしたいことは、四十二年度離職者総数が一万四百人というお話でありましたけれども、四十一年度から四十二年度に繰り越された未就職者の数はどのぐらいであるのですか。
  54. 有馬元治

    有馬政府委員 四十一年度からの繰り越しは全体で九千名でございます。
  55. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そうしますと、一万四百人と九千人で合計一万九千四百人というものがいわゆる四十二年度における再就職促進目標といいますか、そのように理解してよろしいですか。
  56. 有馬元治

    有馬政府委員 そのとおりでございます。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一つお尋ねいたしますが、四十年度から四十一年度に繰り越された、いま言いました未就職者ですね、それがどれだけいたのか。また、四十一年から四十二年は、いま聞きましたように九千人ということでございます。さらに、これは見通しになりますけれども、四十二年度中、すなわち四十三年に繰り越されようと予想されている未就職者はどのくらいなのかということです。
  58. 有馬元治

    有馬政府委員 四十年度から四十一年度に繰り越したものが六千五百名でございます。なお四十一年度に新規に発生した求職者は一万一千二百名ございます。  それから第二点の、四十三年度に繰り越すであろう求職者の見込み数は六千五百名でございます。四十年から繰り越した求職者とたまたま数字が一致しているわけでございます。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 六千五百人というその数字が、四十年から四十一年度に繰り越される分と、四十二年から四十三年に繰り越される予想の分とが一致しているわけですね。  ではもう一つお尋ねいたしますが、一万九千四百人の再就職促進目標、その員数の内訳といいますか、それはどのようになっておるんですか。
  60. 有馬元治

    有馬政府委員 われわれの安定所によりまして就職をはかる見込み数が九千六百十名ございます。それから会社がみずからあっせんするという目標数が千五百名、それから自分で引退をする、あるいは農業へ帰る、まあいろいろございますが、こういったものが二千六百九十名、合計いたしますと一万二千九百名が今年度において再就職あるいは自活の道を講ずる、こういうことに予定されておりますので、残りが六千九百名、こういうことに相なるわけでございます。
  61. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 職安を通じて九千六百名ですか。
  62. 有馬元治

    有馬政府委員 九千六百十名です。
  63. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私の調べたところでもやはりそのようになっておったんですが、そのうち九州関係が五千八百七十名と聞いたんですけれども、そのとおりでしょうか。
  64. 有馬元治

    有馬政府委員 そのとおりでございます。
  65. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほどの六千五百名のふしぎと一致した数の問題でございますが、四十年から四十一年度に繰り越されましたものが六千五百名、今度また六千五百を見込んでいるというのですけれども、いまのお話のとおりでございますから、計画された上でのものとは思いますけれども、案外四十一年が六千五百名だったから四十三年に繰り越される分もその程度くらいは残っていいんじゃないかという大まかな考えもあるんじゃないかという疑いを差しはさむのですけれども、そういうことについてちょっとお願いします。
  66. 有馬元治

    有馬政府委員 これは本年度の見込み数を算定するにつきましては、従来からの経験に加うるに現地の事情を積み上げてこういった数字を出しておるのでございまして、まあ昨年の繰り越しと来年度への繰り越すのがたまたま一致したというだけでございますので、その辺は御理解いただきたいと思います。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、まためんどうでございますけれども、いまのは全国的な問題でありましたが、これが九州並びに福岡という立場で考えた場合、四十一年度末の離職者の総数ですね。と同時に四十一年度の再就職者数、これはいずれも福岡県と福岡県以外の九州関係炭鉱のことをちょっとお願いしたいのです。それから四十二年度離職者の予想数ですね。それから四十一年から四十二年度に繰り越されるところの未就職者の数、これをお願いしたいと思います。
  68. 有馬元治

    有馬政府委員 いままで申し上げたのは全国版でございますが、九州だけに限って申し上げますと、四十年度に繰り越したものが五千百四十名でございます。それから新規に発生したものが九千九百名、そして結局今年度に繰り越したものが七千九百八十名ございます。そして今年度新たに発生する者の見込みが三千八百八十名ございます。そして来年度に繰り越す者が三千九百八十名、こういう予想でございます。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 すみませんけれども、もう一度先ほどの四十一年度末の離職者の総数と再就職者の総数、ちょっとお願いします。
  70. 有馬元治

    有馬政府委員 四十年の三月末で前年度から繰り越した者が五千百四十名、それから四十年度に新規に発生した者が九千九百名、合計いたしますと一万五千四十名になるわけでございます。それでよろしゅうございますか。
  71. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これはあとで資料で福岡県とそれから福岡県以外の九州関係のものを出していただきたいと思います。資料要求をいたします。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 地域別にひとつ出してください。北海道、九州、常磐というように……。
  73. 有馬元治

    有馬政府委員 後ほど提出いたします。
  74. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いままでの説明によりますと、未就職者のほとんどの者が何らかの形で就職されていく、多少閉山等の関係があってめんどうがあるところでは員数も残っているようだけれども、大体消化されていくのだという計算に成り立っていると、こう見るわけでございますが、実を言いますと、私はいわゆる筑豊地帯、嘉穂郡、また飯塚、山田、この三地区の関係で知ったことでございますけれども、四十一年度で手帳を持っている人が現在千二百名いるそうです。千二百名のうち、一年間のうちに職業安定所に仕事をよろしくと熱心に求職のお願いに出てきた者はわずかに十六名であった。これは現地で調査したわけでございますが、私これを見ると、いままでの書類上の計算と事実は相当に違うのじゃないか。ということは、他のほとんどの者は職業安定所から半強制的に仕事につかせられているんじゃないか、このような感じを受けるのであります。さあ仕事につけ、さあ仕事につけというわけで、無理やりに就職させられていく。実はこれに関連する実例でございますが、高尾炭鉱というのがありました。そこに荒谷伍一さんという労働者がいたわけでございますが、閉山以前に炭鉱災害にあって左足がねじれてしまったわけです。そういうことから炭鉱閉山になる前は優遇されまして、身体障害者としての手帳を受けていろいろと軽作業をやっていたそうですか、閉山になった後いわゆるその手帳を持っているというために毎週毎週職業安定所に行くわけです。ところが早く職業訓練を受けろ、また就職しなさい——まあ職業安定所の職員の熱心さはよくわかりますが、その病気の内容を見ますと、医者もはっきりとあれじゃとても仕事にならないという状態であるのです。そういう人に対してでも仕事につけ、職業訓練を受けろというくらいですので、他は推して知るべし。仕事の上から責任を果たすために熱心になさるのはわかるのですけれども、それが強制的になっちゃいかぬ。こういうことをひとつ指導していただきたいと思います。  それからこれは、私自身がそうした仕事につけない人の内容を調べてみたわけでございますが、積極的に仕事につけない理由の一つとしては、同僚が広域紹介で行った、ところが間もなく帰ってくるというわけです。労働条件等が違いまして話にならないということで戻ってくるそうですか、そういう姿を数多く見たためにおじけづいているということ。もう一つは、中高年齢層が多いということです。したがいまして、なかなかそういう人たちの適職が見当たらない。三番目に、多少なりとも、長い間住みついていた関係から個人財産を持っているわけです。そういうことから、なかなか広域紹介に踏み切れない。また四番目には、子供の教育と家族の関係等からどうしても踏み切れないというのが実情のようでございます。  そこで私が要望したいのは、特に労働関係の仕事に従事していらっしゃる人たちは、単なる机上のプランあるいは電話等の報告だけではなくて、実際に現地に行ってその様子をつまびらかにつかんでいただきたい、実態を把握していただきたいということです。私も選挙の前にそうした炭住街を一軒一軒歩いたことがあるのでございますが、それは想像以上にかわいそうな人が多いのです。それはほとんどが炭鉱離職者となっております。胸が痛くなるほどにかわいそうな人が多いのであります。労働大臣も九州の産炭地を視察なさったということで、たいへんうれしく思っておりますが、視察なさるときには、一日ぐらいは労働者の家庭に泊まり込んででもというぐらいの決意で今度は視察をしてもらいたい、こういう要望でございます。  それから私の感ずるところは、炭鉱のスクラップというのですけれども、それはそのまま人間のスクラップをつくっているようなものだ。まことに憂うべき現象であろう。そして中高年齢層というものは、いわゆる人生の総仕上げです。最終段階であります。あまりにも不安定であり、またかわいそうでなりません。こういう人たちを何としてでも救済してあげなければならない。  そこでもう一つ事実を取り上げますが、現在小さな飯塚市だけでも失業者が千二百五十名おります。これは島根県や三重県あるいは鳥取県と、一市が県と匹敵するほどの失業者の数でございます。ということは、筑豊地帯というものは産炭地の中でも特殊中の特殊な地帯である。これは当然御承知と思いますけれども、あらためて認識し直していただきたい。この問題が一つです。  そこで、私は、これからいよいよお願いでございますが、この筑豊一帯に強力なる対策を試みる必要があるのではなかろうか。政府直轄の、たとえば筑豊地帯鉱山開発機関とでもいいましょうか、そういうようなものを設けて行政の一本化をはかる、こういうようなことが必要ではないかと考えるのであります。その機関というものは、もちろん企業誘致もやる、あるいは職業訓練等もやる、または特失、緊就、公共事業、そして産炭地をほんとうに魅力ある地域に塗りかえていこうという内容を持ったものです。この中で特に大事なことは、政府がじきじきそれを担当する、直轄でやっていくということでございます。  こんな考えを持っているわけでございますが、労働大臣のこれに対する所感とでもいいますか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
  75. 早川崇

    早川国務大臣 ただいまの御意見まことに同感でございますが、実際、県を通じてすべて、職業紹介もやっておりますし、企業誘致もやっておる関係上、直轄のあれというのは私の一存ではもちろんいかぬ大きい問題でございます。なお、通産大臣もおられますから、御意見として承り、十分検討させていただきます。
  76. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 労働大臣の時間がなさそうでございますので、いまのは強い要望としてお願いしておきます。  もう一つ、これも直接大臣関係あることではございませんが、北海道のほうに話が飛びます。北海道でのできごとでございますが、昨年の五月、当時小学校四年生の一少女が、名前は香河菊枝ちゃんという方だそうですけれども、「拝啓総理大臣様」ということで、私のおとうさんが働いている山をつぶさないでくださいと訴えて大きな反響を呼んだことは周知のとおりだと思います。この北海道の豊里炭鉱が一日についに閉山してしまった。私がここで問題にしたことは、実は昨年の十一月の五日、札幌市内で開かれました一日内閣で、総理大臣がその一少女に対して答えているのですね。豊里炭鉱を不安におとしいれるようなことはいたしません、あるいは努力いたしますというような意味のことを総理大臣が答えているわけであります。これは当然、総理大臣のことでありますから、次回の委員会等に出席してもらってじきじきお尋ねしたいという考えを持っておるわけでございますが、ここでちょっと私が問題にしたいことは、十一月の五日から今月の一日の閉山までわずか五カ月足らずです。総理大臣はその逼迫した豊里炭鉱事情を知った上でこういうようなことばを吐いたのかどうかというところに疑問が起こるのです。もし知らないでそう話をしたというならば、これは所管大臣の総理大臣に対する連絡あるいは報告、そのようなことに大きな欠陥があるのじゃないか、このようにも考えるのであります。私はこれを単なる一少女の問題として軽視したくないのであります。ということは、少女に対する総理大臣の答えが、ひいては地域住民、特に炭鉱労務者にとっては非常に明るい希望となっておったと思います。したがいまして、私がここで言いたいことは、一日に閉山決定をしてから、その少女はもちろんのこと、その家族ないしは地域住民に時の事情を釈明されたかどうか、こういうことでございます。
  77. 早川崇

    早川国務大臣 察するに、総理大臣の札幌の御発言は、ひとつできるだけ閉山しないようにという善意の御発言であったかと存じます。しかし御承知のように自由民主主義の政治でございますから、企業がどうしても成り立たないという場合には、これまた閉山ということは、国有、国営でもございません関係上やむを得なかったことではなかろうかと存じます。  なお閉山につきましては、労使とも納得の上でということも聞いておりまするし、こういう事態に立ち至った以上、労働大臣として、豊里方々の再就職ということにつきまして、特に北海道庁に指示も出しまして、再就職に万遺憾なきを期してもらいたいということで、職業安定所からも労働部からもずいぶん参りまして、政府としてできるだけの善意と努力をいたしておる、こういう次第でございます。このことは豊里の現地の方も十分この誠意をお認め願っておるものだと、少なくとも労働大臣は思っておるわけでございます。
  78. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまこれは労働大臣を相手に話しても始まらない話でありますが、答えてもらいましたのでついでに申し上げますけれども、総理大臣が確かに善意としてそのような発言をしたのであろうということでございますが、相手が少女であるだけに、私はその純真な心に対してもっと真実を込めたお話をするべきではないか、あるいは近いうちに閉山になるかもしれないが、もし閉山になった場合はこうこうしかじかの手厚い手を打つ、安心なさい、このような発言であるべきだと私は思うのでございます。そこでいまも申し上げましたように、先ほどの発言については、誠意ということから、特に豊里炭鉱の皆さまに対しては十分なる手当てあるいは徹底的な援護措置をしてほしいということを要望しまして終わりたいと思います。  緊就事業等の質問もありますけれども、重複する面もありますので、これで終わります。
  79. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 田畑金光君。
  80. 田畑金光

    ○田畑委員 通産大臣にお尋ねしたいのですが、私はやはり今日の状況のもとにおいては、石炭政策の出発は需要の確保であり、また終着もどうすれば需要の確保をはかるかということだと思うのです。三十七年の第一次答申あるいは三十九年の第二次答申の段階までは五千五百万トンを目標にする、こういうことになっていたわけでありますが、昨年七月の答申では五千万程度、こういうことに落ちてきたわけです。また本年二月の総合エネルギー調査会の答申を見ましても、各種エネルギーの位置づけの中で、石炭の面については次のように述べているわけですね。すなわち、石炭政策は、石炭鉱業審議会及び石炭政策に関する閣議決定の趣旨に沿って需要の確保、経営基盤の確立、体制の整備等の諸対策重点として五千万程度の出炭規模を長期にわたって維持することを目標に推進されるべきであると言っているわけです。そういうような状況のもとで、今日五千万トンの需要を確保するということが、いわば、今回政府といたしましては各種石炭援護の施策を講じておりますが、その出発点になるわけで、五千万トンの需要を確保できなければ、政策自体がくずれるわけです。幸いに昨年七月の答申を受けまして、同年八月の閣議決定では、石炭の需要確保については長期的観点に立って五千万トン以上となるよう積極的に努力する——ここにわずかながら五千万トン以上、政府としては需要の確保に努力するということを天下に公約されておるわけですね。ところが昨日来のこの委員会における質疑応答を聞いてみましても、またけさほど配付されました「石炭需要長期見通し」を見ましても、四十一年度の需要見込みは四千八百八十九万トンとなっておるわけですね。四十一年度生産は大体五千三十万トンから五千九十九万トン、こう言われておりますが、それだけまた貯炭が持ち越しになる計算になろうと見ております。  そこで大臣といたしましては、この五千万トンの需要確保ということについては、あらためてここで見解を承っておきたいというのは、どういう角度で需要の確保をはかっていこうとされるのか、もう一度ひとつ大臣の所見を承っておきたい、こう思うのです。
  81. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話のとおり政府といたしましては、五千万トン以上の需要を確保するということを決定いたしたのであります。したがいまして、一般炭などは一般需要はだんだんと減っておりますから、どうしても五千万トンの需要を確保しなければ、今日の石炭産業というものは維持できないという見解で、積極的に何とかしてその需要を増したいということで、たとえば九電力あるいは電発などに火力発電所をつくってもらって、そうして石炭を使ってもらうというようなことで、それについては、その差額の金は政府から補給金を出してまで発電をやってもらうということで努力いたしておる次第でございます。いまの政府の見通しでは五千万トンは大体確保できるのじゃないかという見通しをしております。
  82. 田畑金光

    ○田畑委員 見通しは持っておられるにいたしましても、数字は事実関係を示しているわけですから、現実の問題といたしましては、先ほど指摘しましたように、四十一年度の見込みを見ましても、四千八百八十九万トン、五千万トンを切れるわけです。特に原料炭の需要は伸びていくというのが現在の状態でありますし、また電力については、政策需要として、政府の努力でだんだん引き取りをふやしていっているのも事実でありますが、一般産業からの著しい需要減ということから見ますと、全体的には五千万トンを割っているわけですね。これは石炭局長にお答え願ってけっこうでありますが、四十一年度末の貯炭というのがどれくらいになるのか、さらにまた私はいまも指摘しましたように、五千万トンの需要を確保できぬということになれば、政策の前提全部が狂ってくるわけです。したがってもう四十一年度の実績を見ても、そういう意味においては大きく狂ってきている、こういうことなんです。だからそれをどこに解決策を求めていこうとするのか、その重点と申しますか、今後の重点施策というか、需要の確保の面において特に何に求めていかれようとするのか、これをお聞きしたいと思います。
  83. 井上亮

    井上(亮)政府委員 四十一年度末におきます貯炭は約千二百万トン程度ございます。これはいわゆる需要部門とそれから山元貯炭の両方を合わせましての数字でございますが、大体双方半々、六百万トン程度ずつというような実態でございます。この貯炭約千二百万トンという数字は、私どもの立場から見ましてもやや過剰であるというように考えております。この過剰に対しましては、いろいろ金融措置等、今日電力用炭販売会社の機構を通じまして対処いたしておるというのが実情でございます。  それからなお、需要の問題につきまして、御指摘のように昨年度におきましては需要確保は五千万トンには達しませんで、やや下回る数字になっております。しかし本年度におきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、ほぼ五千万トン程度というところになるのではないか、特に今後の鉄鋼の伸び等を考えますと、五千万トン以上になる可能性も十分あるというふうに考えております。なお四十三年度以降につきましては、政策需要の増大ということを計画いたしておりますので、これはお手元に私どもの資料を配付いたしておりますが、五千万トン以上の体制がとれるのではないかというふうに私ども考えております。  なお、しかし貯炭は今後ともやはり相当の高水準を続けると思いますので、私どもこれで十分であるというふうには考えておりませんで、今後やはりこういった実情にかんがみまして、さらにその原料炭の需要増大に伴う供給の対策はもちろんでございますが、特に需要の減退が予想されます一般炭に対しましては、特に政策需要というような面で今後とも配慮してまいりたいというふうに考えております。
  84. 田畑金光

    ○田畑委員 石炭局長答弁で今後の施策の方向というものは大体了解できるわけでありますが、ただ、いまのお話の中で年度末の貯炭千二百万トンと、こういうお話でございました。しかもこれはやや過剰ということばで表現されておりますが、やや過剰という程度じゃないのじゃなかろうか、こう思うのです。さらにまたすでに政府は四月の五日ですか、石炭鉱業審議会の需給部会で四十二年度石炭需給の見通しや基準炭価についても相談された、こういうことを聞いておるわけでありますが、なるほどいま局長の御答弁のように、いまの景気の上から見た場合に、鉄鋼など原料炭の需要というものはもっともっとふえるのではないかという期待と希望を持たれるわけです。ただしかし、これはきのうも指摘されましたように、景気不況というものが端的にまた産業の基礎であるだけにあらわれてくる部門ですね。これも、やはり不況になった場合どうするかということも念頭に置きながら、長期の政策樹立ということが必要じゃなかろうか、こう思うのです。原料炭はふえていくというプラスの面が予想されますけれども、一番心配されておることは、一般産業用の一般炭の需要減というもの、たとえば四十一年度と四十二年度の政府の立てられた見通しを見ましても、もうすでに二百五十万トンは減るであろう、こう見ておるわけですね。したがって、この一般炭の需要減に対するいま御答弁のような政策需要をどうするかという対策をきちんと立てられる、そこが私は今後の石炭政策の一番大事な柱じゃなかろうか、こう思うのです。これは追ってそれに関連して御質問いたしますが、特に貯炭がこの四十一年度末に千二百万トンであるかもしれぬけれども、四十二年度末は御答弁のように五千万トンあるいはそれ以上の需要の確保ができれば貯炭はだんだん減ってくるかもしれぬが、やはり四、五百万トンくらいの貯炭の増加に結果としてなるであろう。しかしそういう場合に、これだけの貯炭をかかえておる、これが今日の各山に対する非常な圧力になっておるわけですね。これに対して通産大臣手当てはしておるのだというお話でございまして、通産大臣の顔を見るとしごく安心できるような感じもしますけれども、どうもしかし振り返ってうしろの山のほうをながめてみると、通産大臣の顔色とは違ったような要素がある。これに対してどんな手を打ってこられたのか。また心配ないといろお話だが、どんな心配のないような金融その他の措置をやってこられたのか、ひとつお話し願いたい、こう思うのです。
  85. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 貯炭で困っておる場合には、いま局長から申しましたとおりに、金融方面でできるだけ政府のあっせんで経営をうまくやってもらうようにしたい、こう考えております。問題は、やはり一般炭の需要を確保するという問題であって、これは先ほども申し上げましたとおり政策需要と申しますか、そういう方面で将来考えなければならないのじゃないか、こう考えております。一般炭の貯炭が毎年相当あるという見通しがはっきりすれば、政策需要のほうでひとつこの際もう一ぺん考えてみる必要があるのではないかというぐあいに考えております。
  86. 田畑金光

    ○田畑委員 これは三月二十八日の毎日新聞に出ていたので、山の名前をあげますが、この新聞の伝えるところによれば、高能率中堅炭鉱としての雄別炭礦が近来非常に経営難に追い込まれておるのだということが記事として出ておるわけです。これを読みますと、今日の炭鉱の苦悩の姿というものを象徴しておるような感じを受けたわけですが、なぜ雄別がこのようになったかというと、炭種が、一般炭だけを産出しておるということ、しかも先ほど指摘してまいりましたように、一般炭の伸びがないどころかぐっと減ってきておるということと、また炭価の値下がり、あるいは反面においては物価の値上がりで生産費がふえて、おまけに貯炭の増ではさみ打ちになっておる。これが雄別炭礦の最近の経営難をもたらした大きな原因である、こう書いております。これは一雄別炭礦だけでなくて、私たちの知る限りにおいては、大手炭鉱においても、こういう傾向が常磐地区などについても顕著にあらわれてきておるわけですね。しかもまた、自衛策として結局のところ自発的な出炭制限をやらなければ、いまの市場の需給アンバランスではやっていけぬ、こういうようなことになりまして、出炭制限をやらざるを得ない状況に追い込まれておる。それがまた労働者その他の福祉面に非常にはね返ってきておる。これが現在の状態であろう、こう思うのです。  したがってこの際、この問題の解決のためにこそ、政策需要という面になってまいりますと何があるかということになってくるわけですね。原料炭については先ほど来鉄鋼業の好況でだんだん明るい見通しが増すばかりだということはけっこうでありますし、また電力についても政府と電気事業連合会などの話し合いによって毎年の引き取り量もふえてきていることもけっこうだと思いますが、これだけでは防ぎ切れない、こういうことですね。そういうわけで、昨日は、たとえば岡田委員の質問の中でも釧路炭田の火力発電の問題なども取り上げられたと思うのです。私は特に常磐地域の問題に関連して常磐共同火力の問題もこれから取り上げていきたいと思いますが、ただ昨日、釧路炭田の火力発電建設の問題についてはまだ行き詰まっておる、まだ結論が出ていないような答弁であったと私は記憶しておるのです。ところが昨日この委員会で配付になった産炭地振興という事業団の新聞を見ますと、釧路の市長さんの山口哲夫さんという人がこれに随想を書いておりますが、この中に「火力発電所の建設も難行の末、本年度着工に決定した。」地元の市長さんがこう言っているんです。私はきのうの午後の質疑応答を聞いておりまして、昨日の御答弁のようにまだ未決定であるとすれば、しかもこれはむしろ困難な条件が未解決でたくさん残っているということなどをお聞きしますと、当の地元の市長さんがこういうことを述べておるということになれば、非常な混乱を巻き起こしやしませんか。これはどっちがほんとうなのか、もちろん通産大臣ならば一番よくおわかりだと思いますが、お答えください。
  87. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 きのうは、いろいろ事情でなかなか困難の事情があるけれども、ひとつ善処したいということをお答えしたのですが、いまの新聞の記事を私初めて拝見したのです。局長に聞きますと、その記事は事実を間違っておる。私のほうでは決定していないということです。もし、それが解決したということならこれほどけっこうなことはないと私は思うのでありますが、まだそこまでいっていないそうでありますから、さように御承知おき願いたい。
  88. 田畑金光

    ○田畑委員 これはしかるべく公益事業局なり石炭局のほうで市長ともよく連絡なさって、もし誤解があるならば誤解を正しておくことも必要じゃなかろうか、こう思います。  さて、これは石炭局長にお尋ねいたしますが、すでに石炭鉱業再建整備臨時措置法というものが国会に出されて、この法律に基づいて今後再建整備炭鉱として指定された企業については、個別企業としていろいろな措置が講じられるわけでありますが、私のお尋ねしたい趣旨は、この法律が通って、いま申し上げたように個別炭鉱と再建整備炭鉱と指定されて、通産省といろいろな契約あるいは文書の交換などをなさるわけでありますが、そのあと初めて債務の肩がわりとかあるいは安定補給金の支給——安定補給金の支給はどうか知りませんよ、あるいは各種補助金を支給するということになりますが、かりに法案がいつ成立したかということによってもその支給の時期が狂ってきやせんかと思うのです。予算はどっちみち今月一ぱいには衆議院は通って、そうしますと五月末までには参議院は通る、こう見るわけですが、予算は通った、同時に五月末この法律がかりに成立を見たと仮定した場合、予算は通った、再建整備法も通った、特別会計も国会の議決を経た、こういうことになった場合、個々の炭鉱に、たとえば債務の肩がわりをやる、どれくらいの期間がかかるのですか、何月ころになるのか、そのことをひとつ明確にしておいていただきたい。
  89. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまお話しのように、債務の肩がわりの問題はただいま当委員会にお願いしております石炭鉱業再建整備臨時措置法、この法律が通らなければ肩がわりの実施業務は私どもできないわけでございますので、この法案が通ることが、いつこの債務の肩がわりが実行できるかということにかかっておるわけでございます。この法案がいつ通るかということは私申せる立場ではございませんで、これからひとつ鋭意御議論いただきまして、一日も早くとの法案を通していただきたいというふうに考えるわけです。これが通りますれば私どもとしましては直ちに——直ちにと申しましてもやはり法律で定められております石炭鉱業審議会の議を経て、意見を聞いて実施するということにもなっておりますので、通りましたら直ちにこの審議会を開きまして、そこで再建整備計画としての確認をいただきまして、その上に立って通産大臣の認定を行なう。認定を行ないますれば直ちに肩がわりを実施するというふうに考えておりますが、この法案が通ってから再建整備計画をつくり始めるということをいたしますと、おそらく今年度の終わりになろうかと思います。来年の二、三月ごろになるおそれがある。こういうことになりますと、先生も御承知のように石炭対策につきましては昨年七月答申をいただきまして閣議決定は昨年の八月にいたしておりますが、この実施は四十二年度予算から実施するということでございますので、実は石炭鉱業の現状は長い間につなぎ対策でとにかくやってきたということで、率直に申しまして実は私ひそかにおそれておる実情は、常磐地区においても危険性がありますが、九州地方におきましても北海道地区におきましても、この助成策の実施を待たないで、炭量がありながら閉山のやむなきに至るような危険性も実はある。そういった意味合いで、私どもとしましては、ただ法案の上がるのを待ってその後再建整備計画検討するというゆうちょうなことはやっておられませんので、実はこの法案の趣旨に基づきまして、本年の一月ごろから各社を督励いたしまして再建整備計画の作成を指導しております。大体予算が五月一ぱいにかりに国会を上がっていただければ、直ちに個別の再建整備計画を審議会にはかり得るというような準備体制を、法案審議をお願いしておりますのと並行的に——六月一日からかりに本年度予算が施行できるという体制になれば、この再建整備計画はいま進めておる計画でございますから、これも予算の成立とあわせて成立させていただければ、直ちに実施するような手順でいま再建整備計画検討を急いでおる次第でございます。
  90. 田畑金光

    ○田畑委員 予算や法律がいつ成立するかということはもちろん国会の問題であるわけですが、ただわれわれとしては石炭政策のねらいを考えきたときに、あるいはそれを裏づける法案の成立の時期というのは、今日の石炭界、石炭企業の実態を無視しては考えられないという基本的な立場でおりますが、したがって必要なるがゆえにこの法案がこの特別会計を提案されたわけでありますから、これは国会努力によってできるだけ現実に即するようにしなければならぬ、こう思っております。いま局長のお話の中で、かりに予算と法律が五月一ぱいに成立を見たときには直ちにというお話がありましたが、直ちにという抽象的なことではわれわれ頭が悪いのでのみ込めないのです。直ちにというのは、大体七月ごろには各個別の企業に債務の肩がわりなども実際できるように契約その他の措置ができるのかどうか、八月に延びるのか。えてして行政当局のやる仕事というのは、国会では、なるべく早くとか直ちに、こう言われてもいつも延びていくのですね。残念ながらこれが通例なんです。そこを私は憂えておるから、ここで局長に、大体何月ごろには局長としては見通しがつける、こう判断されているのか、それを承りたいことが一つ。  それからまた、いま局長の御答弁の中で、私が質問したいということがすでに答えの中にも出ておりますが、なるほど昨年七月の石炭鉱業審議会の答申が出ましたが、そのときの大臣はいまの菅野大臣じゃなくて、三木通産大臣でしたね。これは三木通産大臣の談話でありましたか、異常債務一千億の財政資金による肩がわり、安定補給金の交付、閉山交付金の引き上げなどの抜本策は四十二年度を待たず実施したい、こういうことを時の三木通産大臣はお話しになったと記憶しております。ところが、その後四十一年度の財政上の理由とか、国会手続上のいろいろな問題からして延び延びになって、ようやくこの国会に提案をされた、こういうわけですね。しかもまた、四十二年度予算は暫定予算、そして本予算がようやくいま審議されておるというようなことですね。したがって、先ほど私の質問したことに関連いたしますが、予算がかりに五月末成立したとしても、その実施は七月とか八月——実施というよりも、実際に個別企業に具体的な措置が実施されるのが本年の七、八月ということになれば、もうすでにこの間一年もおくれているわけですね。この間の、夏場に向かって一番貯炭がふえだして、一般炭はますます需要が減退しているこの時期、これが一番大事な時期じゃないかと思うのですね。この過渡期について、石炭局なり通産大臣は一体何をやっておるのか、何をやろうとされるのかですね。これは金融措置、ときにつなぎ融資その他いろいろあると思いますが、とてもたいへんじゃないかと思うんですね、われわれが炭鉱に一歩入ったときに。このことについて、ひとつあわせて、まず、これは大きな問題は大臣、それから局長からお答え願いたい、こう思うのです。
  91. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまお話しのとおり、実はこの法律が早く国会で可決していただきますと、その実施の時期もそれだけ早くなるわけでございます。事務局のほうではすでにいろいろ準備をいたしておる次第です。私のほうとしては、一日でも早くこれを実施するようにしたいという念願を持っております。そうでないと、お話しのとおり、実際有望な炭鉱でありながら、この対策が実施されないために閉山しなければならぬというような危険な炭鉱もあるやに承っておりますので、せっかくそういう有望な炭鉱をつぶしてはならぬ、閉山さしてはならぬという考えをわれわれどももしておりますから、そこで、もしもこの法律の実施が間に合わぬという場合には、いわゆるつなぎ資金を政府のほうでできるだけお世話して、そうしてつないでもらって、法律を実施したときに、それによってひとつ従前どおり安全に金融してもらいたいという考えを持っておる次第です。
  92. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先ほど私申しました中に、予算国会を通り、あるいは法案国会を通りますれば直ちにと申しました。直ちにと申しましたのは、もう少しそこを手順を詳しく申し上げますと、法案が通りますれば、私どもとしましては、今日、並行的に再建整備計画の審査検討を実質上進めておるわけでございますから、したがいまして、大体五月一ぱいぐらいを目途にほぼ予備作業を終わりまして、法案が通りましたら、本格的に石炭鉱業審議会に御審議をいただくという段取りになろうと思います。ただ、私ども、今年の一月以来この再建整備計画の作成に取りかかっておりますし、しかも石炭鉱業審議会の経理審査会の幹事会の形をもって、つまり、通産省だけでなしに有識者、関係者を入れた経理審査会の幹事会の形でいま予備審査をずっと続けておりますので、したがいまして、法案が通りますれば審議会を開く。開きますときには、実質上その幹事会でほぼ内容が固まっておれば、審議会の議論はそう長い時間はかからぬだろう。もちろん一ぺんでは無理だろうと思いますが、やはり数回を要するかもしれませんが、それにしましても、時間はきわめて短縮できるというふうに考えております。審議会で大体再建整備計画の審査が終わりますれば、通産大臣としては認定できる態勢になります。しかし、その間に政府としては、やはりこの法案に基づく政令とか省令とかそういった事務がございます。したがいまして、実施の時期としましては、やはり夏以降になろうと思います。実際に金が出ますのは、非常に急ぎまして夏以降になるというふうに考えております。しかし、私が直ちにと申しましたこと、ちょっと舌足らずでございましたが、かりに五月一ぱいにこの法案が上がりまして、六月の上旬に——石炭鉱業審議会は、私ども従来の運用方針として、審議会は連日でもやっていただいております。連日でも連夜でもやっていただきますから、したがいまして、六月の上旬には審議会を終わることが可能になるんではないか。それで、審議会の大体の見通しがつけば、その瞬間、実際に金は出なくても——金が出ますのは、諸手続もありますから、夏以降になりましょうけれども、実際に政府の金が出なくても、市中金融機関はやはり認定が可能——法案が通った、しかもそれに基づく実質上の審査が終わったということになれば、そこで金融機関は肩がわり措置とほとんど同様な措置を実質上講じていただけるのではないかというふうに私ども考えております。しかし、法案も通らず、それから石炭鉱業審議会の審議も終わらないというようなことでは、金融機関としては、将来どうなるかわからぬ個別企業の再建計画について胸襟は開かないというような実情になるわけでございますので、実際に金の出るのは夏以降でございましょうけれども、六月初旬に審議会で内容を決定すれば、金融機関は実質上同じことをやっていただけるというふうに考えております。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 午後は一時二十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時二十七分開議
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策基本施策について質疑を続行いたします。田畑金光君。
  95. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほどの午前中の質問で、大臣も、石炭局長も、今後の需要確保については政策需要に解決のめどを置くほかはない、こういう御答弁があったわけであります。私も同感でありまして、それ以外にないと考えておるわけです。  そこで私、特にこの際、常磐炭田の問題について少しく実情を説明しながら、政府の見解を承ってまいりたいと考えておるわけです。  炭鉱の名前を出していいかどうかちゅうちょしますけれども、たとえば常磐炭鉱を一例にとりますと、常磐炭鉱はある時期にセメントに五十万トン以上の販売をしていたわけです。ところが今日これがゼロになっておるという状況ですね。これは一例でありますが、そのように一般炭の需要というものが激減しておるために、自発的な出炭制限をやらねばならぬという状況に追い込まれておるのは、一常磐炭鉱だけでなくて、その他の出鉱にも数多くあるわけですが、こういう状況のもとで救いの主というと、結局常磐共同火力ということに常磐炭田はなっておるわけです。たとえば、昭和四十年の常磐炭田の総出炭量は、これは雑炭を含んでですが、四百七十八万七千トン、これに対して、常磐共同火力一社だけの消費量が百三十四万一千五百トン、二八%消費しているわけですね。さらに昨年の十一月以降、御存じのように六号機ができまして、十七万五千キロが操業に入って今日に来ておるわけです。この六号機だけで年間、精炭にして五十一万トンの需要が確保されている、こういう状況に来まして、四十二年席は、これは見込みでありますが、雑炭を含んで四百七十万トンの出炭見込みだとしますると、常磐共同火力一社だけで百八十三万トン消費しまして、三八・九%、約四割というのが共同火力一社だけで消費するわけです。しからば、これで需給関係は安定するかと申しますと、先ほどの一般炭の売れ行きの不振で、貯炭がますます出てきて、今日六十四万五千トン前後の貯炭をかかえておるわけです。  そこで、いろんな角度でいろんな人が意見を述べておりますが、帰するところ、結局常磐炭田の生きる道は、二十五万キロワット一基増設ということが緊急の問題だ。しかも、今日政府の提案しておる諸施策というものが、昭和四十五年をめどにして安定をはかるということでありますが、二十五万キロワット、あと一基の増設もやはり三年計画ということになれば、ちょうど四十五年ということになるわけで、もしこれができたとすれば、年間にさらに精炭六十一万トンの需要が確保されるということになってまいりまして、昭和四十五年前後には、常磐炭田の出炭量の約五割が共同火力で消費できる、こういうことになってきまして、結局それに唯一の希望と期待を寄せているわけですね。そういうことを考えてみますと、この際石炭政策の一番大事な問題としては、個別の企業ごとに政府はそれぞれきめこまかな手を打つわけでありますが、また今後常磐炭田とかあるいは石狩炭田とか、特別な地域地域ごとに、やはり重点施策を何を置くかということで検討願わねばならぬ、こう考えておるわけであります。幸いに、私昨日速記録を拝見いたしましたところ、四月六日衆議院の予算委員会で、社会党の石川次夫委員の質問に対し、通産大臣は、同じような質問の趣旨でありますが、こう答えているわけです。通産大臣答弁を私、速記録で読ましてもらいますと、すなわち「常磐地区においてはすでに常磐共同火力発電会社があるのですが、これが非常な好成績をあげておりますので、またできれば常磐地方にももう一基、そういうことをひとつ考えてみたい、こういうようにいま思っておる次第であります。」と答えておいでですね。この際ひとつこの問題について通産大臣、あわせて石炭局長見解を承っておきたいと思うわけです。
  96. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 大体この石炭需要の問題につきましては、答申に基づいて政策需要を考えておるのでありまして、それによって御承知のとおり、電発火力の三基のうち二基がもうすでに稼働し、残る一基は来年度稼働する、なお二基は、一つは目下建設中でありますが、もう一基は間もなく建設にかかるというようなことで、それで需要を確保したいという考えでおるのでありますが、先ほどからのお話しのとおり、一般炭の需要がこの上ともふえない、あるいは減少するということになってくると、との一般炭を一体どう処理するかという問題です。これはやはり政策需要でいくよりほかに道がない、こう思うのです。一般需要家に石炭を使えといったって、とても使うめどもありませんから、そういう場合には産炭地で火力発電をつくるということはひとつ考えてみたい、こういうように考えておるのでありまして、そういう場合には当然常磐地区においてもそういうことは考えなければならないのじゃないか、こう考えておる次第であります。
  97. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま大臣から、御質問の点につきまして基本的な考え方を申し上げられたわけでございますから、私どもといたしましても、大臣のただいま言われました御趣旨に沿って努力してまいりたいというふうに考えております。
  98. 田畑金光

    ○田畑委員 この一両年内の現地の動きを見ておりますと、特にいま大臣の御答弁の中にもありましたように、電発の石炭専焼火力の問題、その一基を常磐炭田に誘致したい、こういうわけで、たとえば福島、茨城両県当局あるいは知事が中央に要請するというようなこともあったわけです。また、これは当然でありまするが、地元の業界あるいは働く労働団体なども同様にしばしば政府に要請してまいったわけです。しかし、もういよいよ具体化するという段階になってまいりますると、これが建設の費用とか、あるいはコストの問題とか一キロワットアワー当たりの単価の問題など、いろいろなこまかな検討がすでになされてきておるわけです。これは権威ある筋の意見等も徴して私は申し上げるわけでありまするが、電発が新しく常磐地域に一基増設するということになってまいりますと、これは初めて出発するわけでありまするから、土地の取得だの、いろいろな建設その他の面において相当な資金を要するだろうということです。ところが、一方現存の常磐共同火力増設ということになってきますと、土地はそのまま利用される。ただ貯炭場が狭いから、若干これをふやさなければならぬというようなことを聞いております。あるいは冷却用水などももうすでに完備しておるわけで、しかもここに二十五万キロワットというユニットの大きなものをつくるとすれば、種々経費の節約もできる、こう言われておるわけです。常磐共同火力の経営内容なども、私最近現地へ行っていろいろ調べてきたわけでありまするが、昭和四十二年、すなわち今年今月一日以降一キロワットアワー当たり、従来は三円九十三銭であったが、三円七十九銭に下がっておるわけです。また昨年十一月以降運転を始めた、先ほどお話した十七万五千キロワットの六号機は、一キロワットアワー当たり二円九十九銭で売っているわけです。いま取り上げておる二十五万キロワットの発電設備をここに新しく建設するとした場合に、予想原価というものは一キロワットアワー当たり二円七十五銭内外、ところが先ほど申し上げたように、電発がここで新しく建設するとすればおそらく三円五十銭前後になるであろう、こう言われておるわけですが、こういうことをかれこれ見ましたときに、国家資金の効率的な運用という面から見ましても、結局どういう形でつくるかということになれば、やはり既存の常磐共同火力に増設して政策需要をまかなうということが、大きく言えば国民経済的な立場から見ても妥当適切なりと、このように判断しておるわけでありまするが、こういう面について通産大臣はどのようにお考えになっておられるか。あるいはまた公益事業局の人はだれもおいでになっていませんか。でなければ、石炭局長はよく御存じでありましょうし、この際局長の意見もちょっと聞いておきたい、こう思います。
  99. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま常磐地区にもう一基設けるか設けないかということはまだ未定の問題であります。したがいまして、電発にやらすか、あるいは常磐共同火力にやらすかということについては、これは私としては御返事申し上げる時期ではないと思います。しかし、かりに一基設けるとすれば、やはり電力が安くなるような方法で設けるというのはこれは当然のことである、こう私自身は考えております。
  100. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今後の石炭の需要確保対策といたしましては、まず九電力に昭和四十五年度までに年間二千三百万トン程度の引き取りをお願いしておるわけでございまして、九電力もこの点は了承いたしておるわけですが、しかし不幸にして最近の一般産業向けの一般炭の需要が予想以上に減少する傾向になっておりますので、お説のようにやはり何らかこの穴埋め対策、需要確保対策についてのそういった措置を講ぜざるを得ないというふうに考えておるわけでありまして、そうなりますと、九電力にこれ以上取ってくれと言うことは、今日の段階では、四十五年度二千三百万トン引き取るという約束もある関係もありまして、なかなかむずかしいというふうに考えております。そうなりますと、やはり電発火力のほうをどうするかという問題、それから地域によりましては、特に常磐のような地域につきましては、共同火力ということを歴史的にやってきておるわけでございますから、電発火力でいくのがいいのか、あるいは常磐地区のような場合は共同火力でいくほうがよりいいのか、そういった点につきましては、今後私どもこれは公益事業局とも緊密に連絡をとって検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  101. 田畑金光

    ○田畑委員 通産大臣の御答弁のように、方向としては賛成であるがまだ決定した段階ではないので、それ以上の内容にわたる発言はこれは無理であるかもしれません。ただここで特に大臣の気持ちを聞いておきたいことは、政策需要によって一般炭の売れ行きの不振を何とか切り抜けていこう、こういうことを約束されておるわけで、一つの重要な、いわば唯一のといってもいいくらいの解決のめどが、いま申し上げたような常磐地域にあと一基の増設であるとするならば、それは電発になるか地元の共同火力かどちらにするかは別といたしまして、そのような方向がよろしいとするならば、ひとつ大臣はそういう角度で今後努力を願いたい、こう思っておるのです。ことに、御承知のごとく、常磐共同火力というのは、炭鉱と電気とが半々の出資なんですね。しかも東京電力と東北電力の二社が出資者になっているわけです。したがって、これは両電力会社の協力がなければできぬし、ことに発電の多くを買う立場にある東京電力などの理解と協力がなければ、今後この仕事はうまく進まないではなかろうかと心配されるわけで、そういう面について、大臣といたしましては、今後政府の政策がきまってまいるとすれば、それに応じてそのような面についても御努力を願えるものだ、こう私は期待しておるのですが、その辺の事情についてひとつ大臣の決意のほどを伺っておきたい、こう思います。  なお、いま委員部からの連絡によりますと、公益事業局の開発計画課長がお見えのようでありますが、何か加える御発言があるならばひとつ御発言願っておきたいと思うし、私としてはおよそもうわかりましたから、まあ、あればひとつ発言してください。
  102. 河村捷郎

    ○河村説明員 今後十分この問題につきましても慎重に検討いたしたいと思っております。
  103. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま田畑委員のお話で、とにかく常磐地区に将来一基発電所を設けるかどうかということでありますが、これは繰り返し申し上げますとおり、国家としては五千万トンの産炭というものを確保したいと考えております。したがってそれにはやはり需要を確保しなければならぬということ。この需要を確保するについては、一般炭が売れないということであれば、したがってその一般炭の処理を考えなければならぬということで、その場合には政策需要ということをもう一度考え直さなければならぬという考えをわれわれはいたしておるのであります。いまのところは、四十二年度につきましては、答申に従って、大体答申どおりの予算なり法律案を提出しておりますが、いよいよ、その答申をつくったときと事情が異なるようなことがあれば、当然われわれとしても、五千万トンを確保するというたてまえからこれが対策考えなければならぬ。そういう意味において政策需要を確保するということで、一基火力発電を考えたいということで、その点につきましては、先ほどから申し上げましたとおり、これは必ず常磐地区に設けるということは、いま私は確言はできません。しかし、常磐地区あたりに貯炭がだんだんふえてくるということであれば、当然これは考慮に入れるべき問題であるということは先ほどから申し上げたとおりであります。したがってまた、それをどこにやらすかということについても、これもまたここでいま私が申し上げる時期ではまだないと思うのでありますが、先ほどから申し上げましたとおり、われわれといたしましては、安い電力を一般に供給のできるような方法で火力発電所をつくるべきだ、こういうたてまえにしておりますから、いよいよになれば常磐火力の能力なりいろいろの事情あるいは電発のいろいろの事情を考慮して、そうして決定したい、こう考えております。
  104. 田畑金光

    ○田畑委員 ひとつこの問題については、通産当局、特に石炭局あるいは公益事業局のほうで、私がるる申し上げた点を考慮されて、早急に検討されますことを強く要請しておきたいと思っております。  そこでこれは一般論としてお尋ねするわけですが、たとえば電発の火力建設については電発への投融資というものが毎年相当額出されているわけです。三十九年度出資十億、融資二十二億、四十年度出資十五億、融資百一億、四十一年度出資十五億、融資百二十四億、こういうことですね。今度の四十二年度予算を見ますと、電発の出資二十億、融資は幾らになるかお答え願いたいと思うのですが、とにかくこれだけの財政融資をやって、電発をして国家的な要請に協力してもらっておるわけですね。でありますから、かりに常磐共同火力で増設するというようなことになってきますと、これは当然やはり開銀資金などに依存しなければ資金の調達ということは困難だ、こう思うのでありますが、今後このような場合は、政府の政策に協力する事業でありますがゆえに、当然政府といたしましても財政資金について特段の考慮が払われるものと考えておりますが、その点どうでしょうか。
  105. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま田畑委員の御希望の点は、十分にひとつ尊重して、その場合には考えていきたい、こう存じております。
  106. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先ほど四十二年度の財政投融資の額のお尋ねがありましたが、御承知のように出資金は二十億でございまして、ほかに財投関係として百九億予定いたしております。
  107. 田畑金光

    ○田畑委員 私はこの問題はこの程度でおさめておきまして、今後また情勢の推移に応じて大臣なり局長なり関係各位の御意見を承るということにしたいと思います。  それから次に質問したいことは、これも岡田委員からるる質問がありましてお答えがありましたので、問題はわかったわけでありますが、炭鉱労働者年金制度確立の問題ですね。先ほど、年金小委員会で煮詰めておる、その答申を持って処理したい、こういう答えであったわけです。年金小委員会の構成ですね。どんな人たちが加わっているのか。特にそういうような場合に、石炭局長や年金局長はどういうような立場で加わっているのか。年金小委員会の結論というのが大体いつごろ出る予想なのか、こういう点をまず承っておきたいと思うのです。
  108. 井上亮

    井上(亮)政府委員 年金小委員会は、石炭鉱業審議会の中に年金小委員会というものを置いたわけでございまして、小委員長は有沢広巳先生にお願いいたしております。ほかに小委員といたしましては、円城寺先生、開銀の石原副総裁、産経の社長の稲葉さん、それから公労委の委員であります兼子さん、以上の方々になっていただいておるわけであります。それから結論といたしましては、この小委員会は先般来ずっと引き続いて検討いたしておりまして、時に経営者との懇談をやり、時に労働組合との懇談も重ねまして、今日最後の結論を出す段階に近づいてきておるわけでありまして、来週の終わりぐらいまでには小委員会としての結論がまとまるのではないかというふうに考えております。
  109. 田畑金光

    ○田畑委員 そこで、私のお聞きしたいのは小委員会の中でいま取り上げている問題は何かということです。ということは端的に承りますと、坑内労働者については答申にもあるので、厚生省は年金局を中心に作業してきたものと見ているわけです。ところが坑外夫についてはこれを除外する、こういうようなことがありますので、御承知のごとく三月十八日には全炭鉱や炭労あるいは炭職協という労働組合の三団体が経営者に対して、坑外夫についても同じようにひとつ年金制度確立に協力してもういたい、こういう目的でストライキ宣言をやり、ストライキに入るのかという事情にもあったわけですが、そのとき年金小委員会が急遽開かれ、あるいは石炭局長や年金局長ども参加されて、年金小委員会預かりという形になって今日まできていると私は聞いているし、記憶しているわけです。したがって年金小委員会で取り上げられておる検討のテーマというものは、一番大きな問題は坑外夫についてもどうするか、こういう問題であろうと考えておるわけです。来週一ぱいには年金小委員会で一つのまとまった案を出せるであろうというお話でありますが、それは私がいま質問したような趣旨に基づいて、そのような方向で結論が出てくるだろう、こう理解してよろしいわけですか。この点、ひとつ局長から端的にお答え願いたいと思うのです。
  110. 井上亮

    井上(亮)政府委員 先ほど私の答弁の中で、御質問ちょっと落とした点がありますが、年金小委員会の構成につきましては先ほどお話ししたとおりのメンバーでございますが、これに対しましてさらに政府側から、通産省から私、厚生省から年金局長労働省から職安局長というのが一応加わりまして、いろいろ検討を加えておるというような事情でございます。  それから検討の内容につきましては、大体田畑先生おっしゃったとおりでございますが、年金小委員会といたしましては、御承知のように昨年石炭鉱業審議会から抜本策の答申が出ましたときに、それまでの間に年金小委員会としては相当検討を加えられたわけでございまして、その結論として一応抗内夫に限定するというような方針を出しておられるわけでございます。したがって今日の段階では、年金小委員会としましてもこの線を基本的にはまだくずしておりません。そういう態度でおります。しかし、先生からただいま御指摘がありましたように、先般各労働団体がいろいろ経営者に対しまして問題を提起した際に、この年金小委員会が一応預かりの形をとっております。——預かりといいますと正確でありませんが、年金小委員会においてなおもう少し事情を聴取して、よく内容を調べてみようというような態度をとったことは事実でございまして、今日年金小委員会検討いたしておりますのも、したがってその線を引き継いでおるわけでございます。基本的態度は坑内夫に限るという方針を変えてはおりません。おりませんが、そういった経緯がありますので、さらに坑外夫についても、坑内夫だけに限定しないで坑外夫まで見る必要があるかどうか、それから現行年金制度等との関連、現行年金におきましては、御承知のように、坑内夫に特別の措置を講じておるというような年金体系との関連の問題、そういうような点からさらに事務的な内容にまでわたりまして検討していただいておるというのが実情でございます。率直に言って、まだ年金小委員会の思想も固まる段階にはいってないわけでございます。ただしかし時間的な制約もございますし、私どもといたしましては、鋭意連日でも詰めて、おそくも来週中には何とか結論を出していただくように努力しておるような事情でございます。
  111. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、この点は特に大臣にひとつ念頭に置かれて御努力を願いたいと思うのですよ。なるほど答申は雇用安定をはかるために炭鉱年金制度の創設をうたって、しかもそれが坑内労働者だけに限るというような趣旨になっておりますけれども、しかし炭鉱労働者坑内外に区別して、地下産業労働者としての特殊性を単に坑内労働者だけに限定して考えるということは、これはいろいろな矛盾にぶつかってくる。けさほど来の質疑応答の中に出ておるわけです。やはり今日どの山を見ましても、合理化ということになってきますと、必ず配置転換を伴っておりまするが、その内容というものは常に坑外から坑内にということをやっておるわけですね。またやはり坑内のきびしい作業条件から見て、肉体的な要件その他から坑外に移るような場合もしばしば見受けることだし、また職種によっては坑内外の区別もないような職種もあるわけですから、そういうようなことを考えてみたら、坑内労働者だけに限ってやるということになってきますと、今後の炭鉱の経営上幾多の障害が出てこようと思う。ましてや御承知のごとく炭鉱の環境というのは同じような住宅環境で、常に隣合って生活しているという人間関係から見ましても、これは答申がこうであるからこうだということ、またいま局長の御答弁の中にもありましたが、厚生年金などにおいては坑内労働者には特別の措置があるが、坑外一般産業並みであるからして、これを坑外夫まで広げるということになれば、年金体系についてどうとかこうとかという議論もあることを聞いておりますが、私は石炭の安定のためには、需要の確保と労務者の確保ということが一番大きな問題であるとするならば、この際年金制度についてはせっかく小委員会坑外夫を含めて検討しておるとすれば、あくまでもそれはひとつ実現できるように、大臣としても特別の御配慮をいただきたい、こう思うのです。  今日の炭鉱労働者の平均年齢というのは幾らになっておりましょうか、三十九歳か四十歳近くではなかろうかと思っておりますが、それはあとからひとつお答え願いたいと思うのです。また御承知のごとく、炭鉱の経理というのは経理計算によれば毎年の賃上げというのは、ベースアップというのは七%予定されておるだけですね。その七%というのが一昨年は七十円、去年は七十六円ですか。ことしは七%というと幾らになるか知りませんが、聞くところによれば一方八十円か八十二円だ、こういうわけですね。二十三稼働平均とすると大体二千円足らずでしょう。千八百円や二千円足らずですよ。今日好景気の波に乗って地上産業一般産業においては四千円から四千五百円、五千円、一〇%から一五%の賃上げができて景気の上昇を非常に満喫しておるというのが一般産業労働者の今日の実情、これに対して石炭産業はどうかというと、石炭のきびしさを今日一番もろに受けているのはそこに働く労働者の諸君ですよ。まことに惨たんたるものです。そういうことを考えてみたならば、ことにまたその中でも坑内労働者の賃金のベースを見ますると、元来坑外労働者の賃金というのは坑内に比べて、正確な数字は持ち合わせておりませんが、三分の二強くらいの賃金水準でしんぼうさせられているわけですね。こういうことを考えてみたとき、私は年金制度の確立という問題については、年金体系がどうであるとかこうであるとか、答申に入っているとかいないとか、これはもちろん権威のある一つの尺度であるかもしれぬが、より以上にこの際政府がこれだけの石炭政策をあげて何とか守っていこうとするのであるならば、私はやはり喜んで働く——喜んででなくても、まあしぶしぶでもいいが、まあしかたがないからここで働いていこうという、そういう労働者の気持ちを呼び起こすくらいの施策というものが当然とられてしかるべきだと思うわけで、そういう面では特に私は坑外労働者に対して炭鉱年金制度をあわせて実施することが、現時点における欠くべからざる施策だ、こう考えているので、特にこの点は通産大臣の政治力と御努力に私は期待するものが大きいわけで、ひとつ通産大臣見解を承っておきたい、こう考えているわけです。
  112. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 年金の坑内外の差別についての事情については、もう皆さんから私どもずいぶん承っておりますので、その点においては私自身は同感であります。したがいまして、できれば坑内夫に限らず坑外の人も年金をもらえるようにしてあげたいというのは私の希望でありますが、御承知のとおりただもう元来が厚生省の所管でありまして、まあ私といたしましてはよくこの実情を皆に知っていただいて、そしてひとつ解決してもらいたい、こう存ずる次第であります。
  113. 田畑金光

    ○田畑委員 厚生省もいないところでの質問であり御答弁でありますが、しかし私は厚生省局長が出席しようとしないとにかかわらず、通産大臣のその所信で私は了承いたしますので、また所管はそこであっても、やはりこの際石炭政策という大きな面から見れば、通産大臣の政治力と御努力いかんだ、こう思っておりますので、そういう面でひとつこの点はぜひ実現方御努力を切に希望したい、こう思っております。  それからこれは局長でけっこうでございまするが、三月九日に、これはやはり炭労、全炭鉱、炭職協の代表が大手筋炭鉱の首脳と年金制度について話し合った結果、経営者のほうから次のような答えが出た。すなわちこの場合経営者の負担の限度は石炭鉱業の窮迫した経営の現状及び今後の見通しにかんがみ、将来もトン当たり三十円としたいというような発言がなされた、こういうことを私は、これは石炭時報で読んだわけですが、石炭時報というのは石炭協会で出しているこの雑誌で、見たわけでありまするが、坑内外を対象にした場合に、一体トン当たりどのくらいの負担でいけるのか、もちろんその前提として先ほど質問もいたしました一万円年金にするのかどうかといういろいろな議論も出てきましょうが、その辺をどのように年金局ではじいているかも、これは聞きたいところでありますけれども、まあそういうことはいいと思います。どのように見ておられるわけですか。
  114. 井上亮

    井上(亮)政府委員 今度の炭鉱の特別年金制度は、これはすべて経営者の負担という方針で検討いたしておるわけでございますが、御承知のように、石炭鉱業の今日の現状は、景気が非常に窮迫しておりますので、年金制度はつくりたい、この意見には変わりはないわけでございますが、しかし、何ぶんにもその負担には限界があるというのが実情でございまして、そういった立場から、私どもも、石炭の経営者には、最大限の拠出を考えたらどうかというような示唆も、あるいはそういう指導もいたしておるわけでございますが、それに対しまして、石炭の経営者といたしましては、トン当たり三十円が限度であるというのが今日の経営者の回答でございます。これに対しまして、いろいろ関係方面、経営者以外の方面から、これでは足りないというような意見も出ておるわけでございますが、この三十円の問題につきましては、私も、経営の今日の現状から見ますと、まあこれが最大限に近い姿ではないかというふうに考えております。と申しますのは、この年金制度は当然、特にこの負担金につきましては、強制徴収制度をとって、強制加入というような制度をとることになろうと思います。そうなりますと、大手炭鉱だけでなしに、中小炭鉱もすべて加えまして、全炭鉱についての適用ということになろうと思います。それから、大手につきましても、経営状態がいい企業だけが対象になるんではなくて、経営状態の悪い企業もすべて対象になるということを考えますと、やはりすべてが耐え得る最大限度ということになりますと、きわめて苦しい事情でございますので、そういった意味では、経営者が申しておりますこの三十円というのは、私のほうの目から見ましても、最大限度に近い姿ではないか、こういうふうに考えております。
  115. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長答弁も、石炭の今日の窮状ということを見ると、そうであろうな、こういう感じもするわけでありますが、ただ、私が申したいことは、にもかかわらず、坑内労働者だけでなくして坑外労働者も年金制度対象にするためには、いろいろ今後の財源の捻出などについて種々検討されておることであろうし、検討してもらわなくちゃならぬと思いますが、今日の石炭企業が万事政府の施策におぶさっておるというときだけに、そこはひとつ通産大臣局長の御努力でうまく調整して、いい結論を出してもらいたい、こういうことを私は希望しておきたい、こう思っております。  これに関連しまして、これは私、昨年の七月の答申と閣議決定の内容をちょっと読んだわけでありますが、炭鉱住宅の整備、医療体制の充実等による生活環境の改善、地下作業という特殊な作業環境の整備を強く政府は方針の中に出しておるわけですね。さらに、それをくだいて、政府関係金融機関による融資制度の活用とか、厚生年金還元融資制度、産業労務者用住宅資金融資制度及び住宅公団の分譲住宅制度の運用にあたっては、石炭鉱業を優先的に配慮せよ、非常にいいことがたくさん書かれておるわけですね。ところが、炭鉱を歩いてみたら、どれに該当するような場所はどこにもこれは見当たらぬので、これは何かどっかで実施なさっておるのですか、あるいはこうありたいのだという閣議決定に終わっているのか、この辺はどうなっておるのか。予算を見ましても、これに該当するような予算はどこにもないわけで、何か特別なことをやっておられるわけでしょうか。
  116. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまおっしゃいました年金関係の例の余裕金を使ってのいろいろ融資の制度があるわけですが、こういったものからやはり炭鉱住宅を建設いたします際にも融資を仰ぐというようなことも現にやっておるわけでございまして、いま数字的には資料をまだちょっと見ておりませんけれども、やっておるのかというお話がありましたが、これは相当程度活用しております。これは九州も北海道も各地区相当程度住宅金融等につきましては、こういう政府関係の金融機関、これからの融資を受けて相当程度進めております。
  117. 田畑金光

    ○田畑委員 私、浪人しておりましたから歩いていないので、九州や北海道でそういうところがあれば、まことにけっこうだとこう思うし、常磐地域に見る限りにおいては、そんなところは見当たらないので、これは作文があるとこう思ったのです。その作文であるだけに私は特に強調したいのは、労務者確保、雇用安定の唯一の施策というのは結局、答申の中から出てくるのは、年金制度しかないということ、それを言いたいだけなんです。だからして、ひとつ先ほど来るる申し上げたことを念頭に置かれて、大臣の善処を切に願いたいと思うわけです。  次に、これは簡単な質問になってまいりますが、保安センターの設置、これは予算を見ますと、一億五千万というのが出ておりますね。これは九州、北海道地区について鉱山保安センターをつくる、こういうわけですね。これも、昨年の閣議決定で、保安教育訓練の徹底を期するため、主要地域に中核施設を設置する、これでまず初年度予算としてこれだけとられたものだとこう思いますが、主要地域というのはこれはどことどこをさしておるわけですか。
  118. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま御質問の保安センターの設置につきましては、端的に申しまして、主要個所というので私ども考えておりますのは三カ所でございます。九州に一カ所、北海道に一カ所、常磐地区に一カ所、これを二カ年の計画でやろうという構想でございまして、四十二年度、いま御審議願っております予算の中には、第一年度として北海道と九州の保安センター、四十三年度に、その二センターの現在御審議していただいております予算でなお完全に完備できません若干の器具類の増加と、運営費を含めた予算、それと、常磐地区に新しくセンターを設置する予算というものを四十三年度計画として考えまして、明年度をもちまして、大体当初の主要地区のセンターの計画ということを完了するというのが私ども考えでございます。
  119. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、ことしの予算では九北地区の二カ所に設置していく。さらにそれを四十二年度予算で完成する。そうして四十三年度予算で常磐地域にも設置する。それは、そのときは、常磐地域のそれは四十三年度予算で完備するのですか、また、四十四年度にまたがるわけですか。
  120. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 当初の計画におきましては、大体財源を考えまして、二カ年に分けて大体金額的に均等になる、かように考えております。今年四十二年度分の若干の残りと四十三年度で、常磐にこれは完成するという形で、大体金額的には均衡する、かように考えております。御質問の趣旨に率直に答えますと、常磐地区については四十三年度で完成させたいというのが当初の考えであります。
  121. 田畑金光

    ○田畑委員 最後に、私は産炭地域振興の問題について若干お尋ねしたいと思うのです。  これは相当に予算を取っておるわけですが、特に産炭地域振興事業団などの土地造成などについては、昨年の予算も相当余裕があって、むしろ仕事が追いつかない、金はある、こういう状況ではなかったか、こう思うのです。特に、やはり次から次に閉山していったあとの炭鉱地域の疲弊の姿というものは、まことに目に余る惨たんたるものがあるだけに、もっと私は積極的に産炭地域の土地造成だの、その他御努力願わねばならぬ、こう痛感しておるわけです。特に今度の予算措置の中でも、中核企業の誘致など予算もついておるわけですが、中核企業ということば自体が少しのみ込めないことばで、何を意味しているのか。こういう中核企業でも来れば、直ちにその地域は繁栄して、炭鉱はなやかなりしころの地域社会のような生き生きとした活気ある地域経済ができるような感じを受けるわけでございますが、どうも国会へ出てきて予算書を開いてみると、産炭地域はもうすでに昔のような活気を取り戻したような感じを受けるわけでございまするが、相も変わらずつぶれたあとは、先ほどからお話があったような惨たんたる光景が現存しておるということですね。私は、この際企業の誘致などについても、もっと積極的に進められたらどうかと思うのです。資料によりますると、いろいろ仕事を持ってこられたやに書いておりますけれども、どうも私たちが現地を歩いて見たところでは、この資料のとおりになっていないですね、だからこういう点について、大臣としては、せっかく産炭地域振興として相当の予算も取り、また財政上の措置もかれこれ地方自治体などに対してもやっておられるわけであれますが、もっと企業の誘致なりそういう面についてお考えになったらどうだろうか、こう思うのですが、この点、ひとつ聞かせていただきたいと思うのであります。
  122. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 産炭地の振興の問題については、われわれも苦心をいたしておるところでございまして、ことに中核産業といろと、成長産業を持ってきたい、こういう考えをしておるのですが、それについては、やはりその地域の交通関係などを整備するとかというようなことをしないと、なかなか大きな産業はそこへ持ってくるというわけにはいかない。また、そのほか水の問題等いろいろ問題がありますので、これはやはり地方当局とよく相談してやっていきたい、こういうように考えております。お話のとおり、ぜひ産炭地の振興については、せっかく事業団をつくっておりますから、これによってひとつもっと活躍させたいという希望を持っております。
  123. 田畑金光

    ○田畑委員 私はこれで質問は終わりますが、特にひとついま大臣のお答えになったことはここだけの答弁に終わらないで、ほんとうに地域の実情に応じて、産炭地域の振興についてはきめこまかく行政上の指導なり措置なりをやっていただきたい、こう考えております。  厚生省の年金局長がおいでになったようですが、もうあなたに対して聞きたいことは、通産大臣石炭局長に聞いたわけです。ここであらためてあなたにやり直すなんということは、とてもそんな意欲も出てきませんから、私の質問した内容については、ひとつあとで速記録を読まれて、いかに炭鉱労働者の年金制度について私たちが熱心であるかということを——あなたとも個別にお話をしておるわけですから、坑内労働者だけでなく、坑外労働者についても、特に同時にこれは考えてもらいたいという私たちの切実なる主張というものが、速記のほうに載っておるはずでありますから、それをお読みになって善処願いたい、こう思うのです。  以上です。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 大橋敏雄君。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは通産大臣にお聞きいたしますが、問題をしぼりまして、炭鉱の鉱害問題に入りたいと思います。  先般の大臣の所信表明の中に、第四、第五と関連をしておりますが、第四には、「鉱害について、その総合的かつ計画的な処理を促進するとともに、鉱害復旧事業に伴う地方公共団体の財政負担の軽減をはかることとしております。」第五には、「産炭地域の振興については、新長期計画を早急に策定し、産業基盤の整備、及び中核企業の誘致を強力に推進することとしております。」このように発言があったわけでございますが、炭鉱の鉱害問題というものは、これは最大の課題だと思っております。そこで炭鉱鉱害の長期計画がもうすでに立てられておるかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  126. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話しのとおり、現在全国でも多量の鉱害が累積残存しておりまして、政府も予算措置を講じてこの復旧を急いでおる次第でございます。また先般の答申を見ましても、この残存鉱害を計画的に復旧するために、国が長期の復旧計画を策定せよという答申が出ておりますので、いま政府はこの答申の線に沿うて鉱害復旧を計画的に処理するように配意いたしておりますが、なお具体的なことについては政府委員から答弁させます。
  127. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいま御質問がありましたとおり、現在残存しております鉱害量は相当な量にのぼっております。私どもは先般も調査いたしましたが、大体既採掘の残存鉱害といたしましては六百億以上にのぼるのではないか、既採掘、そのうち安定鉱害——これは復旧するには、やはり安定しませんと復旧できませんので、安定鉱害としては約五百億程度にのぼるのではないかというふうに考えておりますので、さしあたりこの安定鉱害を対象にして、今後できるだけ計画的に復旧が完了するようにという配慮で、いまそういった検討をいたしております。  四十二年度予算額につきましては、大体年間七十七億程度の復旧が可能になるようにというような意味合いから、政府の負担といたしましては、大体復旧に六十億程度予算計画しておりますが、この六十億というのは、実際の復旧規模にいたしますと、八十億近い七十七億程度になるのではないか、こういうふうに考えております。
  128. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いろいろな錯綜した問題があるので、なかなか具体的な計画が立てにくいというお話でございますけれども大臣のおっしゃったように、答申の中にもはっきりとうたってあります。まず昭和四十二年から昭和四十六年までの五カ年間として、はっきりと五カ年計画をうたい出してあるわけでございます。たまたま私は、福岡県のほうでこの計画案ができておりましたのを手に入れました。それによりますと、いま予算の説明もありましたけれども、六百十二億三千百万円というところで、ぎりぎりの線をそこに押えて、四十二年、四十三年と逐年その予算額を立てて計画がすでにできておりました。そういうところから考えますと、やはり大臣ないしは政府関係当局の皆さまは、じきじきはだで感じられるそのつらさがないので、こうした計画案がおくれているのじゃないか、このようにも思うのですけれども、いかがなものでしょうか。
  129. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私自身は、いままで鉱害の実見をしなかったのでありますが、先般筑豊炭田に行ってみて、なるほど鉱害というものがきびしいものであるということを知りまして、これはぜひ鉱害対策というものは至急やるべきだという考えをいたしておるのであります。したがいまして、答申案に従ってひとつ長期的な計画を至急に立てさせたい、こう存じております。
  130. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま大臣のお答えのとおりだと思います。実際、鉱害の姿にじかに触れますとたいへんなものでございます。  そこで、さきに石炭鉱業審議会から鉱害対策についての最終答申がなされました。そして長年その鉱害によって辛苦を味わってきた地元の住民一同も、今度こそは本格的な解決策が実施されるものだと大いに期待しているわけでございます。しかしながら現実の鉱害対策の成否というものは、何といいましてもその法制面、また予算面からそれが具体的に肉づけがされてこなければ話にならないのであります。そういう意味からいきまして、もう一度お尋ねするわけでございますけれども、先ほどの五カ年計画での復旧予算総額は、私の調べたところでは、六百十二億三千百万円でございます。それから今年度年度の復旧予算は七十七億三千六百七十四万二千円、このように記憶したのでございますが、これでよろしいでしょうか。
  131. 井上亮

    井上(亮)政府委員 ただいまあとでおっしゃいました本年度予算につきましては正しいと思います。しかし前段でおっしゃいました五カ年計画の金額の数字、これにつきましては、現在私ども検討中でございまして、まだ結論を出しておりません。しかし先ほど冒頭でお答え申し上げましたように、残存鉱害量が大体六百億余りというふうに考えておりまして、そのうち安定鉱害は五百億程度というふうに承知いたしておりますので、今後復旧計画を長期にわたって立てますときに、どのようにやるかということにつきましては、いま地域別に相当精緻に検討いたしておりますので、これができますまでまだ金額は決定いたしていないというような事情でございます。
  132. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 本年度年度予算額は大体間違いない、私の言ったとおりだ、しかしながら五カ年計画としての金額は、まだ多少はっきりしていないので、間違いとは言わないけれども、その金額ではない、こういうことですね。ところが福岡案によりますと——というのは、鉱害の九割は九州だ、またその八割は福岡県にあるということでございますので、福岡県で当然急いで計画を立てると思います。その計画の内容を見てみますと、昭和四十二年度において百五十五億二千四百万円というものを計画しているようであります。それに比べますと、初年度の七十七億三千六百七十四万円というものは、これはもうあまりにも少ない、このような感じがするのでございますが、この点について、比較的なものでございますけれども、お答え願いたいと思います。
  133. 井上亮

    井上(亮)政府委員 県のほうでどんな計画を持っているかというような点については、私もかつて県の希望意見を聞いたことがございます。しかし実際問題としては、やはり安定鉱害のものについてやる、まだ鉱害が進行中のものについては、これをいきなり復旧工事をやりましてもむだに終わりますので、そんな点も考慮しながら、現実的な緻密な計画を立てていきたいというのが私どもの今後のかまえでございます。しかしこの本年度の復旧規模の七十七億余りというような金額は、これは私の口から言うのは、ほんとうはおかしいのですが、これは相当の予算の伸びでございまして、前年に対して四割程度予算の伸びになっているわけでございます。鉱害につきましては、私ども石炭予算を、全体的に相当大きく獲得をしておりますが、その中で鉱害については私ども相当な重点を置きまして取ったわけでございます。この伸びをお考えになりましても、相当な金額であることがおわかりいただけると思います。  なお、事務体制の整備、つまり復旧いたしますのには、やはり復旧の工事能力というような点、あるいは設計能力というような点も充実していかなければならぬと思っております。したがいまして、今後の復旧計画については七十七億の横ばいとは考えておりません。これは、やはり逐年段階的に伸ばして長期的に残存鉱害は復旧を完了したい、こういうふうに考えております。私ども全体として遺憾のないように今後配慮していきたいというように考えております。
  134. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま大先輩の石炭局長のお話にさからうわけではございませんが、不安定鉱害の分についてはまだまだ考えられていないのである、確かにそうだと思います。答申案の中にもそれははっきりうたってございます。「不安定鉱害の安定をまって処理すべき一部の有資力安定鉱害を除き、」このようにありますから、不安定鉱害とまた有資力である一部については、これを除外しているのだ、その上での六百何十億という予算が一応上がってきたと思います。その点から、五カ年に均等割りをいたしましても、七十七億くらいではとても仕事にならぬのじゃないか。従前から比べれば相当の伸びであるかもしれません。だけれども、五カ年のその金額の上で見ると、これは話にならぬほどの少ない予算額である。これを横ばいするのではなくて、逐年だんだんと増額していきますのでということで、多少安心をいたしましたけれども、その具体案が一日も早くできますように、またできましたならば、その資料を確実に手渡していただきたい、これは一つの要望です。  そこで不安定鉱害、それから一部の有資力鉱害も除かれているわけでございますので、これがもし含まれるのであれば、いまの予算ではいよいよ足りないということになるわけでございます。したがいまして、私がここで一段と声を大きくしてお願いしたいことは、四十二年度の鉱害復旧事業費の予算の大幅な拡大をお願いする。七十七億ではなくて、もう少しぐっとふやしてもらいたい、この要望を入れられたらたいへんうれしいことだと思っております。
  135. 井上亮

    井上(亮)政府委員 御趣旨に沿って懸命に努力いたします。
  136. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 次に、国と県、いわゆる公共団体の負担割合の件についてお願いがございます。現在決定している分はたしか、もちろん対象物件は農地でございますけれども、国が八五%、公共団体、県が一五%と聞いておりますが、そのとおりでしょうか。
  137. 井上亮

    井上(亮)政府委員 農地につきましては御説のとおりでございます。  有資力の問題につきましては、国と道県、それから賠償義務者、この割合は、国の補助が七二・二五%、道県の関係は一二・七五%、それから賠償義務者が一五%というような割合で負担をいたします。  それからなお無資力につきましては、従来は国が八三%の負担、道県につきまして一七%の負担、これを、大臣の趣旨説明がありましたように、四十二年度から、地方公共団体の負担の軽減という趣旨から、国の負担金は八三を八五に引き上げ、道県は一七を一五%に引き下げるというような措置を実施したわけでございます。これは農地及び農業用施設についての例でございます。
  138. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 よくわかりました。聞くところによりますと、通産省のほうでは無資力についてはむしろ八七%国が持って、県は一三%だ、この程度がいいのではないかという話まで聞いたのでございますが、できれば私も通産省が提案しておりますこの線までぜひとも上げてもらいたい、このように考えるのでございます。つまり地方公共団体の負担の軽減という意味から、これはもう必ずその線に沿っていただきたい。むしろ九〇対一〇とか九二対八とか、ぐんぐん、地方公共団体の負担軽減という意味から、そのように上昇していってもらいたいと思うのですが、これは通産大臣からひとつお願いします。
  139. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私はその間の事情を、八七%だということの事情まで私は聞いておりませんが、お話のとおり地方団体の負担を軽減するという趣旨は私も賛成でありますので、できれば国がより多く負担してあげたいという気持ちです。
  140. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は通産省の案だとして確かな証拠を持っておるのですが、通産大臣がそのことをまだ知らなかったとおっしゃるのは非常に残念でなりません。もう少し関係者とよく鉱害の点については打ち合わせを願いたいと思います。そしてもっと真剣にこの割合等も考えていただいて、地方公共団体を助けていただきたいと思うのであります。  それでは話を次に移したいと思いますが、鉱害復旧事業団の件でございます。これは全国で四カ所と聞いておるのですけれども、そのとおりかどうかということが一つ。しかも、この鉱害復旧事業団というものは四カ所あるけれども全部独立的に運営されている、横の連絡等はほとんどとれないということを聞いております。ところが東京には一応の連絡事務所があるのだ、しかしながらこれはあくまでも単なる連絡事務所であって、指導権あるいは運営、そうしたものについての支配権は全くないのであるということを聞いておるのですけれども、そのとおりでしょうか。
  141. 井上亮

    井上(亮)政府委員 お説のように鉱害復旧事難団は全国四カ所にございます。四つの事業団はそれぞれ別個の理事長がおって指導監督しておるというような体制になっております。  それから連絡事務所の点も、東京にありますけれども、しかしこれはむしろ国がみずからこの四事業団に対して統一的な指導を行なっているというのが実情でございます。
  142. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまのお話でまだはっきり理解できませんけれども、とにかく四カ所の事業団が独立して運営しているということだけははっきりわかりましたので、これは私はやはりむしろ統一的な事業団の事務所といいますか、そういうものをこしらえるべきではないかと思う。答申を読み込ますとそういうことがうたってあるようでございます。  読んでみますが、「鉱害復旧事業団の全国統一、鉱害復旧事業団の機能を強化するため、鉱害復旧事業団の全国統一を行ない、」と、事業団の統一のことがうたってございます。したがいまして、私は、これを統一して、むしろ福岡にそれを置くべきではないか、このように思うのです。いうことは、先ほども申し上げましたように、鉱害の九割は九州であり、その八割は福岡であるということでございますので、ぜひとも福岡に、統一された鉱害復旧事業団を設置していただきたいということですが、この点について大臣あるいは局長さんお願いします。
  143. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまお話しのとおり、そういう答申が出ておりますので、現在この答申の線に沿うて鉱害復旧事業団統一を具体的に研究中であります。  さてそれをどこへ置くかという問題でありますが、お話のとおり福岡が最も鉱害の多いととろでありますから、福岡へ設けるということも一つの案だというようにも考えております。
  144. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 地元の要望でございますが、もし他にそういうのができると少々めんどうなことが起こりそうですよなんていうことを言っておりました。それがどういうことかはわかりませんけれども、ぜひともそれをその案の一つに入っている福岡に設置されるようにお願いをいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十八分散会