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1967-07-12 第55回国会 衆議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十二日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 河本 敏夫君    理事 田中 武夫君 理事 麻生 良方君      稻村左近四郎君    小笠 公韶君       岡崎 英城君    岡本  茂君       神田  博君    黒金 泰美君      小宮山重四郎君    小山 省二君       齋藤 憲三君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    田中 六助君       丹羽 久章君    橋口  隆君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       佐野  進君    加藤 清二君       多賀谷真稔君    中谷 鉄也君       平岡忠次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    吉田 賢一君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         公正取引委員会         事務局長    竹中喜満太君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         大蔵省関税局長 谷川  宏君         通商産業政務次         官       宇野 宗佑君         通商産業省通商         局長      山崎 隆造君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省繊維         雑貨局長    乙竹 虔三君         中小企業庁長官 影山 衛司君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局参事官  宍戸 寿雄君         外務省経済局次         長       須磨未千秋君         外務省経済局ア         ジア課長事務心         得       藤田 公郎君         通商産業大臣官         房審議官    蒲谷 友芳君         通商産業省通商         局次長     原田  明君         通商産業省重工         業局産業機械課         長       和田 敏信君         運輸省自動車局         業務部長    蜂須賀国雄君         労働省職業安定         局雇用政策課長 細野  正君     ————————————— 七月十二日  委員武藤嘉文君、千葉佳男君及び吉田泰造君辞  任につき、その補欠として福永一臣君、加藤清  二君及び吉田賢一君が議長指名委員選任  された。 同日  委員福永一臣君、加藤清二君及び吉田賢一君辞  任につき、その補欠として武藤嘉文君、千葉佳  男君及び吉田泰造君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  貿易学校法案内閣提出第五六号)  小規模企業共済法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六六号)  中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一一五号)  特定繊維工業構造改善臨時措置法案内閣提出  第六五号)  商品取引所法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出貿易学校法案を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 あと法案審議も控えておりますので、できるだけ簡潔にしていきたいと思います。  まず第一点の問題でありますが、この貿易大学設立については、民間から非常に要望が多いという趣旨のもとに設立準備がなされてきた、私もそのように思っておったわけです。ところが、私がそれぞれの業者に当たった範囲では反対なんですね。要するに、貿易大学ができるなんということを全然知らない。あるいはまた、大きな商社になってくると、自分の社で研修機関というものを持っているわけです。中小企業業者というのは全然知らない。反対感じなんです。政府委員から、民間の非常に大きな要望のもとに今回の設立準備されておるというが、実情は違うわけです。この点について、どういうわけでそういうことになったのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この貿易大学校の内容をよく御説明申し上げれば、私は中小貿易業者の人もよく理解してもらえる、こう思うのです。まだこれが一般に公知されていません。したがって、内容も知らないからして賛成や反対意見を御発表にならない、こう思うのです。私の知った範囲内においては、中小貿易業者などの人は、こういうものをつくってもらうことは非常にけっこうだということを私は聞いております。でありますからして、内容さえもう少し公知さえすれば、私は皆さんから御賛同を受けることだ、こう確信しております。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 要するに、ほとんどの中小企業商社が、そういうものを知らないというような声は、研修自体がそうした大きな商社を対象として、中小企業はまあどうでもいいとは言いませんけれども、非常にウエートが軽い、そういう考え一つのあらわれではないかと思うのです。その点要するに民間からのそういった協力を仰いで今度の大学校ができるわけですから、そういう点におけるPRをどの程度なさっているのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  6. 山崎隆造

    山崎政府委員 昨年の十一月十日に準備協議会というものを正式に発足いたしましたが、その際には約二百社が現実に参集いたしました。それで、この準備協議会は、主として拠金の問題が中心でございましたので、やはり大手の方が多かったのであります。その後実際の運営その他の問題がございますので、各方面アンケートをとりましたところが、約六百社から回答がございまして、参加いたします——参加いたしますという意味は、学生を出しますという意味でございまして、拠金の問題ではございません。そのうちの約二分の一が中小企業という範囲に入っておりますので、われわれといたしましても、国会を通りましたら、十分なPRその他をやりたいと思いますが、何しろまだ法案が終了しない段階におきまして、あまり積極的なPRもいかがかと存じますので、その点の趣旨の徹底を欠いているかと思いますが、これは今後努力いたしたいと思っております。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 いま六百社ということをおっしゃったのですけれども、中小も全部入れて商社は幾つあるのですか。
  8. 山崎隆造

    山崎政府委員 貿易商社及びメーカーで兼貿易に携わっているものが約八千ございます。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 今後この法案が通ってからPRをする、そのあなたのお話はわかりました。だけれども、八千からあるところで回答は六百ですよ。そうすると、参加できない理由というのがあるわけですよ。この問題についてはまたあとで聞きますけれども、ほんとう業界のみんながそれを要望するだけの、内容等いろいろな点で、今後考えなければならない問題をやはりかかえているわけですよ。こういう点を相当これからも頭に入れて準備していかなければいけないと思うのです。これはこれでおいておきます。  それから大学校開校予定は四十三年十月ですね。そういう開校までの段取りを考えていきますと、私は非常におくれているように思う。学校敷地の問題にしても、あるいは校舎の建設にしても、あるいはそういった資金の問題にしても、いろいろな点において非常に私は立ちおくれている感じがするわけです。その設立基金についても、民間からも相当多額の資金を用意しているわけですね。音頭をとっていらっしゃるのは経団連石坂さんですね。要するに、非常に簡単にその資金が集まる、こちらで聞いておってそういうようなあなた方の感覚なんです。そんな安易なものでいいのかどうか。さらに多くの業者の参加を望むならば、代表者からの、一部だけのそうした基金でまかなっていっていいのかといった問題もあるわけです。設立資金の問題について非常に安易なように私は思うのです。これに対してあなたの御見解並びに今後のそうした見通しについてお聞きしたいと思います。
  10. 山崎隆造

    山崎政府委員 御指摘のとおり、この問題につきましては、資金を確保することが非常に重大な問題でございますので、昨年の春ごろから具体的な活動を実際的に始めまして、その当時はいわゆる準備会と申しまして、正式の会合ではなく、教科目あるいは基金関係等準備会をやっておったわけでございますが、ほぼ各方面の御賛同を得ましたので、昨年の十一月十日準備協議会というものを正式に発足いたしまして、石坂経団連会長会長に仰ぎまして、教科目部会中山伊知郎先生、それから経理部会、これは主として募金関係でございますが、これは安西昭和電工社長に、総務部会が当時の堀江東銀会長にお願いいたしまして、その下の各委員に各方面権威者あるいは有力者を網羅いたした次第でございます。特に経営部会につきましては一番問題でございますので、資金計画について十分な検討を加えました結果、約十五億を集めようということで経営部会は随時会合いたしております。それで経営部会に入っておりますのは一応大手どころの各社の常務あるいは専務、社長が参集いたしましていろいろ検討を加えまして、十五億の割り振りについても十分な検討を加えてほぼ見通しが出たわけでございます。この十五億の金も、実は本年度すぐ要るわけではございませんので、案に書いてありますように、土地及び設備に約八億円、そして二十二億円は基金として、この利子をもって運用いたしていきたい。財界からの希望では、その後たびたび寄付をつぎ込むことは困るということで、一気にやってそれでずっと経営ができるという状態にいたしたいというので、そういう見当から十五億円を約二年間にわたりまして半年ごとに区切りまして募金するという計画を立て、これの割り振りにつきましてはなお具体的に検討をいま進めている段階でございます。それで、とりあえずは本年度建設にかかりますので、主として最初スタート資金政府関係資金からこれを出しまして、実際の基金運用利子が要りますのは明年以降になりますので、この計画十分所期目的は達し得る、私はこう考えております。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 先ほどお聞きしますと、二百名を委員として委員会が発足した、こう聞いたわけですが、いままで何回開かれたのですか。またその中に総務部会経営部会教科目部会等いろいろ分かれておりますね。そうした各部会経過をひとつ聞かしてもらいたい。
  12. 山崎隆造

    山崎政府委員 いわゆる総会と申しますか、準備協議会は昨年の十一月十日は各方面から、総理も出席していただいたわけでございますが、そういう関係上そのとき一回だけで、以降は一応法案経過を見守るということで、総会はそのまま開かれておりませんが、合同部会と申しまして、総会にかわりますもの、この合同部会議長は大体石坂会長がやっておられまして、準備協議会発足後五回ほどやっております。  それから各部会のほうは、教科目部会中山先生の御都合で随時開いております。それから経営のほうも会長安西さんの御都合によって随時開いております。それから主として朝会合をその他の部会において随時行なってきております。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 いまお聞きしますと、四十一年の十一月十日に一回だけ開かれた。あなたのほうとしては今回の大学校設立については非常に力を入れていらっしゃるわけです。力を入れていらっしゃるわりにしては、法案提出の前にも委員会も開かれてない。口では積極的だと言っておるけれども、積極性に欠ける。積極性が欠け熱意がないまま大学校ができていって、はたしてうまくいくのかどうかを私は心配するわけです。こういう点、人まかせにせずに積極的に今後やらなければいけない、私はこのように思います。これは私の所感をここで述べておきます。  それから、基金三十億のうち八億で敷地なり学校の施設をつくる、二十二億は運営基金である。私いま考えるのですけれども、ちょっとした建物でも何億ですよ。これだけ土地が騰貴しているのに、それはなるほど借地とかそういう問題もあるでしょうが、八億ぐらいのお金でできるのですか。また敷地などはどのように予定されていますか。もう法案提出段階になれば、ある程度具体的に構想ができているはずなんです。この点についてひとつお聞かせください。
  14. 山崎隆造

    山崎政府委員 まず敷地の問題でございますが、こういう関係でございますので、あまり巨額な資金を投ずる余裕もございませんから、神奈川県、山梨県、静岡県の三県知事に、官有地ないしは公共の用地について便宜をはかってもらいたいということを私の名前で依頼いたしたわけでございます。各県からおのおの候補地相当多数出てまいりましたが、現地をたびたび調査いたしまして、設計につきましては設計事務所も大体きめておりますので、もちろんその専門家も参加いたしております。その結果、現在のところ約五カ所があらゆる条件から見まして適当であろう。条件と申しますのは、所有関係あるいは契約条件交通関係、それから自然の環境及び生活環境等の点について検討を加えました結果、静岡県に四カ所、山梨県に一カ所が最も有力な候補地であるということになっております。  それから建物関係で、私も詳細には存じませんが、現在のところ設計関係芦原設計事秘所に頼んでおるわけでございまして、先般も一応の設計内容をお伺いしましたけれども、大体その程度の金で——八億と申しましても、土地は大体われわれは買わないで借りたいという計画になっておりますので、土地代としてはほとんど支出いたしておりませんが、大体八億の建物はどの程度のものができますかということで、設計の結果を私ども拝見いたしたわけです。これによりますと、生徒の収容数が二百三十名くらいの宿舎、つまり二人一組の部屋で現在の公団住宅よりやや高いレベルのものを設計されております。そのほかに教員宿舎、これが約二十家屋、これも相当程度の高い水準のものであるということでございます。それからゲストハウス、つまり講師方々がお泊りになるというところで、八億で十分りっぱなものができると約束申し上げるわけにはいきませんが、その専門家方々の御意見によりますと、相当高い程度設備がなし得るというように私どもは聞いております。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 それではひとつ、でき上がってから何だと言われないように、りっぱにやってもらいたいと思います。  それからコース別内容ですけれども、これは確実にできておるわけですか、それについて聞かせてください。
  16. 山崎隆造

    山崎政府委員 現在A、B、C、Dの四コースがございまして、Aコース人数約百二十人、期間は一年間でございまして、その研修内容語学研修が第一項目でございまして、これは英語をベースといたしまして、英語は各自必修でございます。そのほかに、第二外国語選択によりまして、仏、独、露、支、スペイン語という五科目を一応選択によって選びます。それから二番目には地域研究、これは各自の選択いたしました地域につきまして、文化、宗教、土地の慣習その他につきまして集中的な教育を行なうという、新しい地域学というものをやります。それから第三番目には、国際企業活動に関しまして従来の実例をケーススタディでやるという方法をとりまして、これは実務、実学と称しておりますが、いわゆるLCがどうとかこうとかいう貿易実務とは違いまして、ケーススタディということで国際企業のあり方、合弁のやり方進出やり方等について検討していくわけでございます。  次に、Bコースというものは約百名、これは六ヵ月程度集中教育をいたしますが、このコースにおきましては、一番目には貿易実務、これは貿易の実際上の実務及び企業海外進出に必要な実際的な諸知識を教育するわけでございます。それから二番目には英語の完全なる修得ということを目的にいたしております。  Cコースは、これは語学だけをやります。これも英、独、仏、露、中国語スペイン語の六科目希望によって集中教育するコースで、選択する語学によって変わりますが、大体一月半ないし三カ月でやります。  Dコースは、これはむしろ企業幹部職員の再教育と申しますか、約五十名を二週間程度集中教育を行なう。これは国際企業活動に必要な管理能力判断力養成ということを目的にいたしております。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 それで、授業料は各コース幾らかかるのですか。
  18. 山崎隆造

    山崎政府委員 現在検討中でございますが、先ほど申しました二十二億を基金といたしますので、その金利は大体一億四千万円程度予定しております。それでいま申し上げました人数の四コースをやります場合には、約二億円年間所要といたしておりますので、その間の六千万円を授業料として徴収することになります。現在はっきり確定はいたしておりませんが、大体考えておりますのは、Aコースが三十万円程度Bコースが十万円程度Cコースが八万円程度Dコースがやはり八万円程度という計算でいきますと、約六千万円の収入があがりまして、予定通り業務が行なえるというふうに考えております。もちろんこれは、実際にはこの法案が通りました後に貿易大学校という法人が設立されますと、そこで正式に具体的に詳細が決定されるわけでございますので、現在のところはただもくろみの範囲だと考えております。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 特にそのAコースの三十万円ですけれども、この間からの答弁で、中小企業も漏れなく入れる、こういう答弁ですが、実際の内容からいきますと、大学を卒業して何年間か実務についてというなら第一線級ですよ。それを一年間すっぽり全寮制でしかも三十万円という負担ですが、この点について大企業中小企業もみんな、そういった金銭的な面あるいは一年間という点において非常に当惑しておるわけです。こういう点においてもっと業界のそういう声を聞いたのですか。
  20. 山崎隆造

    山崎政府委員 この点につきましては、いわゆるアンケート方式をとりまして各方面の意向もお伺いしましたし、また愛知県、静岡県、神奈川県には当方から出向きまして、土地業界方々及び関係当局も列席の上、いろいろ意見開陳、御希望あるいは示唆を伺ったわけでございますが、確かに御指摘のとおり、授業料の点というよりは、むしろ一年間という期間相当難色を示す向きが少なくなかったのは事実でございます。しかしながら、やはり最近の国際経済の変貌ということから、将来の幹部になるべき人に対しては十分な養成を行なわなければ取り残されるという危惧は、各方面で十分お持ちなので、やはり三カ月でも半年でも一年でもそういう人材を出すことは非常な苦痛であるけれども、先々のことを考えれば、ある程度そういう方面に犠牲を払わなければついていけないのかもしれぬという御意見も少なくないので、中小企業といいましても範囲が広うございますが、やはりAコースに対する相当強い希望もわれわれ十分お伺いしました。それで、昨日も委員会の御質問に応じまして、中小企業についてはある程度ワクを設けようということについて検討を進めていくということにいたしたわけでございます。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 中小企業のほうは一年間抜けるのは痛い、これは大企業も一緒です。そこで、この中小企業を幅広く入学させる、その答弁からいきますと、三十万円の授業料にかかってくるのです。これは当然会社が負担しなければならぬ、その間の給料も払わなければならぬ。こういう点に対する助成措置というものを政府として考えているかどうか、これが一点です。  もう一つ期間的に、全寮制で一年間やるということについて、半日制にするとかあるいは週のうち何日かにするとか、このようにしてくれたらなという意見もあるわけです。こういう点についてお考えがあるかどうか、これについてお聞きしたいと思います。
  22. 山崎隆造

    山崎政府委員 中小企業につきましてワクを設けるあるいは授業料の軽減ということは検討いたしていきたいと思います。もちろんそういう趣旨から政府が十五億円の金を拠出するわけでございますので、その操作の余裕も十分あると思います。  それから週何日間という授業内容でございますが、これは教科目委員会において検討しましたところ、やはり集中教育ということが現在きわめて必要であるし、むしろ期間を短くして集中してやったほうがより効果的であるというのが諸先生方の結論でございますので、われわれといたしましては、むしろ集中することによって期間を短縮して、しかも長期にわたってやる教育以上の効果をあげ得る、こう考えた次第でございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 それから全寮制になっていますが、この全寮制にした理由というのは何ですか。
  24. 山崎隆造

    山崎政府委員 これはいろいろの見解がございますが、教育目的から申しまして、全寮制と申しますか、都内で半日勤務、半日授業ということは、従来の経験からあまり効果がないということで、むしろ便利であるがやや都から離れたところで、勤務から一応解除してもらって、集中的にやったほうが効果的であるということで全寮制にいたした次第でございますし、また特に語学教育につきましては、こういう方法によりますと、短期間に非常な効果をあげるということが、各方面と申しますか、特に外国授業内容等を見ますと、その実績が十分うかがえるわけでございまして、従来日本の語学教育につきまして、いろいろ長年やりました結果あまり効果がないというのも、やはりその点に欠くるところがあったのではないか、こうわれわれは考えておる次第でございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 時間もありませんから、できるだけ早く終わります。  この教官講師選定上の問題になるわけですけれども、わが国の事情というものは、これは御承知のとおり海に囲まれておりますし、そうしたことばのハンディキャップとかいろいろな点があるわけです。そういう特殊事情から考えて、どのような構想をもって教官選定に当たられるか、それについてお聞きしたいと思います。
  26. 山崎隆造

    山崎政府委員 特に語学講師に関する御質問と思いますが、語学はやはりその国のマザーラングエージをしゃべる人から習うのが一番的確でございますので、ほとんど外人教師をもってこれに充てる。またその外人教師の確保ができるかどうかについて、外人関係その他各方面を調査いたしまして、十分これは可能性があるという判断をいたしたわけでございます。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 それから全寮制になりますと、非常にそうした教師の人格というものが反映するわけです。これは学校教育において、何も貿易大学校だけではありませんけれども、そういう点においてほんとうに厳格な選定をしなければいけないと思うのです。要するに、全体的に教師選定についてどのようにいろいろと注意を払っていらっしゃるか、それについての構想、また待遇条件等についてお聞きしたいと思います。
  28. 山崎隆造

    山崎政府委員 構想と申しましても、日本人側教師につきましては、中山先生中心とした教科目委員会で、主として東京大学でございますが、東京にございます大学、各方面教授が参加いたしておりますので、この教授陣中心となって選定いたすわけでございますが、何せ地域学及びケーススタディというのは新規の分野でございますので、現在大学で講座を持っているところはほとんどございませんので、特にその方面に関心がある教授を、さらに自分でも勉強していただいて、選定していくということになりますが、現在のところ、その教科目委員会教授陣中心として、特にその方面の、地域学あるいはケーススタディという方面について特に関心あり、またその方向で研究されている方々中心に集めたいと思っています。
  29. 近江巳記夫

    近江委員 貿易大学校はその辺で終わります。  この前に公取委員長においでを願いまして、私が質問したことについて、若干私も疑問もございますし、その後この問題についてどのような態度でやられたか、そういった点についてお聞きしたいと思うのです。  六月三十日の私の発言に対して、委員長は料金認可の申請までの段階業者団体が傘下の個々の業者に対し圧力を加える等、業者の機能または活動を不当に制限するような行為があれば、それは独禁法八条に違反する、このように答弁された。これは、いままでに申請された地区ごと一本の委任状つきの料金改定案の中には、いま述べた独禁法第八条に違反するケースもあり得るということを意味しておる、私はこのように思うのです。新聞にも特に大阪——私も大阪ですが、もう連日のごとくこの問題は取り上げられております。値上げに消極的な業者もやはり中にあるわけです。そういう点において、業者団体として申請一本化の線でこれらの消極的な業者に圧力を加えたと思われるケースがかなり広範にあるというようなことが推定されるわけです。これについて公取委員会はこの事実を早急に調査しなければならないと私は思うのです。その後私の質問に対してどのような活動をなさってきたか、それについてお聞きしたいと思うのです。
  30. 北島武雄

    ○北島政府委員 先般御答弁申し上げましたときに、多少段階を分けてお答えいたしたと考えております。従来は運輸省が一地域一料金という制度で行政指導をしておったわけであります。法のたてまえは、個々の業者の人が認可申請して、それに個々に対して認可するというようなたてまえになっておるものの、運輸省の方針としては一地域一料金ということでやっておる。そうなると、個々で申請すべきにかかわらず、業界が取りまとめて申請した場合においても、これがいまはあえて八条のほうの違反という問題はないかもしれない。しかしながら今後運輸省は一地域一料金は改めましたと、この間実は運輸大臣はそう仰せになったようであります。一地域一料金を改めると、今度は個々の業者自分でみずからの発意に基づいて認可申請をするのがたてまえである。それにもかかわらず、もし今後、自分は料金認可申請をしたくない、いままでの料金でがんばっていくという者があるにかかわらず、業者団体があえてそういう方々を無理に申請させるということになれば、これは独禁法第八条の「構成事業者の機能又は活動を不当に制限することと。」いう条文に該当するおそれが出てくる、こういうふうに申し上げたわけであります。
  31. 近江巳記夫

    近江委員 いまのお話からいきますと、要するに、そうした調査等の問題においても、運輸省一本に何か押しつけているような感じがするわけです。これは当然独禁法に抵触するわけですから、こういう点において公取委員会としてはもっと積極的に活動しなければいけないと私は思うのです。違反の事実があれば——これは完全な違反なんですから、第八条に違反するわけです。ですから、それについて公取委員会としてどのように調査活動をしているか、それを私はお聞きしておるわけなんです。
  32. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま御説明申しましたように、運輸省が一地域一料金制というのを厳守している間は、行政指導によってほかの料金を認めない、こう言っている間は、自分は上げたくないという業者があっても、それを申請さしても、これは八条の「構成事業者の機能又は活動を不当に制限する」ということで間擬するのは、あるいは私は無理かと考えております。ただし今後運輸省がこれを改めて、一地域一料金に固執しないで個々の業者に対して認可していくのだということになりますと、これは個々でみずから自分の発意でやればいいわけです。それにもかかわらず、今後運輸省がそういった行政指導を改めたにもかかわらず、そういうもとにおいて無理に値上げ申請したくない者を誘って値上げ申請させれば、これは八条の「構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること。」に該当するおそれがある、こう思うわけでありまして、いままでのところはやはり一地域一料金という行政指導がありますので、これはやはり私は無理かと考えております。
  33. 近江巳記夫

    近江委員 その問題について運輸省と話をされたのですか。要するに運輸省はそのようにおっしゃっておる。私のほうの見解では、そういった違反しているようなことが推定される。こういう点のかね合いを運輸省と話をされたのですか。
  34. 北島武雄

    ○北島政府委員 運輸省の事務当局とは話し合っておりませんが、先般の物価安定推進会議で運輸大臣が明らかに言明されましたので、それを私信じておるわけであります。今後は一地域一料金制度ではなく、個々の認可でいくと、こうおっしゃいましたので、そうなれば、今後においては、値上げを好まない者を無理に業者団体が値上げ申請させるということになれば、八条の問題になってくる、こう考えておるわけであります。
  35. 近江巳記夫

    近江委員 そういう発言を現実にしているわけですから、今後その点を明確に向こうと話し合いをされて、その結果公取委員会としてはそれに対して強力に動くのですか。
  36. 北島武雄

    ○北島政府委員 かしこまりました。今後もしそういうようなことがございますれば、これは八条違反の疑いによって私どもは活動しなければならぬ、こう考えております。この点については運輸省の事務当局とよく話し合いたいと思っております。
  37. 近江巳記夫

    近江委員 それから自動車局長にお伺いしますが、大阪では冷房料金をめぐって市民が非常にみな迷惑しているわけです。この点についてもう何回もいろいろな点で答弁なされておりますけれども、要するになぜこの値上げを認可なさったのか、その点について明快にひとつ御答弁願いたいと思います。
  38. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 大阪の冷房料金につきましては、先般の五月末に申請が出まして、大阪の陸運局から陸運局長権限でございますけれども、連絡がございまして、問題が重要な問題でございますので、経済企画庁とも協議いたしまして、二十七日の閣僚協議会に報告いたしまして、その結果了承を得まして、回答いたしました。それで陸運局が認可したわけでございます。  陸運局の認可の理由につきましては、ことに大阪につきましては、交通渋滞が非常に激しいわけでございまして、夜間等は非常に工事をしておりますけれども、昼間におきましてもその関係がございまして、非常に交通混雑しております。また全国的に見ましても、大阪は交通事故が多いわけでございます。それで大阪につきまして、事故防止の面から見ましても、また旅客の安全、快適な輸送という面から見ましても、また運転者の労働環境をよくするという点から見ましても、冷房があったほうがよろしいという結論になったわけでございます。  なお、大阪の業界におきましては、先般の昭和三十八年七月に現在の料金が認可になったわけでございますが、当時は冷房はありませんでしたので、もちろん冷房は原価に入っておりません。しかも業界の実情は、その後の大阪の交通混雑のために収入の増加は見込めない、しかも人件費その他の経費につきましては、特に人件費におきましては、当時から三〇%の上昇をしておりまして、そのために経営の苦しい業者が出てまいりまして、この地区の事業者の約半数が赤字になっておりますが、そういうような理由から、現在の状況におきまして冷房設備をいたしましてサービスをよくするには、経営面で苦しいために、したがって特別料金をいただきたいというような理由で申請が出たわけでございます。この理由につきまして陸運局として妥当と認めたわけでございまして、したがって認可したわけでございます。
  39. 近江巳記夫

    近江委員 いろいろ話しなさったわけですけれども、労働環境をよくするとか、あるいは安全、快適な運転とか、あるいは交通事故の問題とか、いろいろありました。私も大阪の車に乗りまして、運転手さんに何人か当たりました。特に冷房は運転手さんの左側についているのですよ。左半身が麻痺するようだ、このままでいったら、私は万年神経痛になってしまうかもわからない、からだの調子が全然おかしいという。これでは認可の条件のあなたがおっしゃったのと全然反対ですよ。この間も私は夜中の二時に乗った。そして寒かったから私も冷房をつけてもらおうなんて思っていませんでした。けれども冷房をつけてくれよと言ったら、どう言ったか。お客さん、こんな寒い日にこんなしたらかぜ引きますよ。君、冷房料金をとっているじゃないか。いや、それを言われたらつらいのです、わたしらもほんとうにこれは矛盾を感じているのです、つらいです、私たちのからだの調子も悪いし、深夜のお客さまには実際冷房なんかかけません——快適な運転なんて言っているけれども、深夜に冷房かけて何が快適ですか。冷蔵車の中に入れられて走っているみたいなものです。そうでしょう。交通事故が多いなんて言っていますけれども、東京だって多いじゃないですか。兵庫だって愛知だって、大阪にまさるとも劣らない混雑ぶりですよ。また、人件費の問題等をいまも触れられましたけれども、三割六分配当で、それに三十周年記念で一割プラスして四割六分配当している会社もある。人件費なんて言っていますけれども、そういうようなケースから見ていけば、該当しないじゃないですか。それを一律に上げていくというのはおかしいじゃないですか。これについてどうなんですか。
  40. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 最初の問題でございますが、冷房をつけるということは、車内を適温に保つということでございまして、年じゅう冷房をつけるというのじゃございません。もちろん、適温を保つためには、暑いときには冷房が要るわけでございまして、冷房施設の取りつけの費用とか、あるいはエンジンその他、車がいたむ費用、そういうものを換算いたしまして、したわけでございますが、その取りつけにつきましては、冷房をするしないにかかわらず要るわけでございますので、そういう意味で全体にしたわけでございまして、車内を適温に保つという意味でございます。  それから、ただいまお話がございましたように、現在大阪にはタクシー業者が法人で百七十七業者ございますが、その中には、確かにいまおっしゃるようにいい会社もあるわけでございますが、中小企業が多いわけでございまして、半数以上の会社は苦しいわけでございます。そういう意味で、現在、タクシー事業につきましては、お客のほうで流しタクシーを選択することもむずかしいわけでございますので、その地区において同一料金になっておりますが、そういう点から考えまして、全体から見てやったわけでございます。
  41. 近江巳記夫

    近江委員 それから、この七日に、閣議後の記者会見で運輸大臣は、世論の強い反対があり、タクシー運転手と乗客の間で混乱が続発するようであるならば、認可を取り消すことも考える、このように語って、結局大阪陸運局長を招いて実態を調査する、このように言っているのですが、その後調査したのですか。
  42. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 大臣は、たしか金曜日と思ったですが、七日に、実はさっそく大阪陸運局長を呼ばれまして、事情を聴取されております。その後大臣は、大阪陸運局長に対しまして、現在非常にトラブルが多いから、トラブルを解消するように業界を強く指導するように指示されております。陸運局長は、その後すぐ帰りまして、その日の夜、業界を招きまして、業界代表者にその旨を伝えたわけでございます。その後、業界としましては、最近、トラブル防止のためにいろいろ策を尽くすという方法をとっております。なおさらに推移を見守りまして、推移によりましてさらに陸運局長は手を打つことになっております。
  43. 近江巳記夫

    近江委員 それから、大阪の業者がいろいろな理由をあげておりますけれども、世間でいわれるほどトラブルがないとか、申請は正当で、いまさら取り下げるなど討論する必要を認めないとか、すでに冷房車は営業を始めており、設備費に十八億円もの巨費を投じている等々をあげて、反対の意を表明してきましたね。そうすると、業者のそうした声だけを聞いて、このまま料金を認めてしまう気ですか。それに対して、利用するのは一般大衆ですよ。タクシーはいまや特権階級のものじゃない、大衆の足ですよ。その大衆の声を聞いて、さらに業者の声を聞いて、その上で判断していくべきだ。ところが、何か一方的な感じがするのですよ。この点については、いまどういうように一般大衆の声を聞いているのですか。
  44. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 これに対しましては、もちろん一般の方々も局へ来られまして、いろいろと話を伺っておりますし、新聞あるいは放送等のマスコミ関係につきましては、十分注意してきているわけでございます。したがいまして、業界のお話を聞きましたけれども、さらに、そのままでなくて、今後の推移を見守りまして、それによって陸運局長は対処していくということでございます。
  45. 近江巳記夫

    近江委員 それから、大阪管区行政監察局が調査に乗り出したわけですよ。五名をもって編成して本格的に調査に乗り出した。なぜそういうようになったのか。そのきっかけは世論である。警察へ非常に多くトラブルが持ち込まれる。私の聞いている範囲でも、九十件ある。そんな、警察まで持ち込むトラブルというのは大きいものですよ。だから、それの何十倍、何百倍というような摩擦があるということは間違いない。トラブルが最近少なくなってきたなんて言っていますけれども、こういう声をもとにして行政監察局が動いている。要するに陸運局は業者サイドから今回の認可に踏み切った。なるほど、あなたの認可の条件業者サイドです。要するに、消費者サイド、これの調査を進めたい、このように監察局は言っているわけです。非常に前向きでよろしいと私は思います。これについて陸運局は今後どうしますか。
  46. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 行政監察局からも事情は昨日聴取されておりますが、おそらくこの調査が終われば行監のほうから意見が参ると思いますけれども、陸運局としましても、当然その意見を尊重しますし、また来なくても、現在陸運局としては警察等におきますところの話も聞いておりますし、このトラブル防止につきましては最大限の努力をしまして、なおかつトラブル等がなくならない場合にはいろいろ善処したいと考えておるわけでございます。
  47. 近江巳記夫

    近江委員 もうひとつはっきりしませんね。道路運送法の第三十三条の第一項に「運輸大臣は、自動車運送事業者の事業について公共の福祉を阻害している事実があると認めるときは、自動車運送事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。」「事業計画を変更すること。」「運賃、料金又は運送約款を変更すること。」「自動車その他の輸送施設を改善すること。」等、ずっと項目が並んでいるわけですよ。取り消すこともできるのですよ。いま大阪の市民はどれほどこのことで迷惑しているかわからない。大衆の福祉をこれは阻害していますよ。この条文に対して、あなたどう思いますか。
  48. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 これに対しましては、当然現地の実情の判断でございますので、現地の陸運局長が実情を、いま推移を見ておるわけでありまして、判断によってきまると思っております。
  49. 近江巳記夫

    近江委員 どうもあなたの答弁は通り一ぺんの答弁ですね。それじゃ大阪の陸運局に全部責任をあなたは押しつけるのですか。運輸省として、あくまでも——これだけの国家的な問題になっています、大阪だけの問題と違いますよなぜかなら、このままでいって、メーターを取りかえるだけでもばく大な金がかかっておる。一応九月十五日までだ。しかし、みながこのままいって、あと料金がそのままにまた二割アップするのではないか、そのようにも、いろいろな点を考えてきているわけですよ。これだけの大問題を、ただ陸運局長判断してそれでやります、そんな消極的なことでいいのですか。
  50. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 これは失礼しました。陸運局長と言いましたけれども、当然これは陸運局長事情を中央に報告に参りまして、中央で当然聞きまして、それによりまして双方でやるわけでございます。
  51. 近江巳記夫

    近江委員 六月二十七日の閣僚協議会で決定した、一地区統一料金の廃止の線に沿って処理するとなると——いままで出されている申請というのは、閣僚協議会の決定前の運輸省の指導方針に従って出された申請なんです。かつその中には、先ほど公取委員長がお答えになりましたが、独禁法違反の疑いもかなり含まれていることが推察されるわけです。とすると、この際新しい方針、すなわち個々の業者の申請に基づいて認可すべきである、いままで受理した申請は一応全部返却して、新たに個々の業者から申請を出し直すのが筋だと私は思う。したがって大阪の冷房料金も閣僚協議会の決定に反しておる、独禁法の疑いもある、どう考えたってそうなるわけです。これについて、あなたはどう思われますか。
  52. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 これは冷房をつける自動車だけでございます。全部ではございません。冷房をつける自動車につきましては全自動車でございます。現在の申請は委任状で申請してきておりますけれども、審査につきましては、現在の法律にございますように、能率的な経営のもとにおきまするところの適正原価云々とございますので、能率的経営という問題を中心にして個々の業者を審査して、そして全体に認可したわけでございます。
  53. 近江巳記夫

    近江委員 どうもあなたの答弁は抽象的ですね。運輸省は閣僚協議会の決定事項に基づいた新しい運用方針を通達したか、これ一点を聞きます。しないとするならば、いつするか。早急に通達すべきである。私は、いままで運輸省に出されておる一括の申請は返却すべきである、このように思うのです。どういう処置をしますか。
  54. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 二十七日の閣僚協議会の決定に対しまして、近日中に地方に落とすつもりで準備しております。近く出ると思いますが、なお従来の申請につきましては、この場合には、すでに出ておりますことであるし、時間的にも夏の問題でございますので、そのまま行なわれたわけでございます。
  55. 近江巳記夫

    近江委員 大臣ももう退場なさるそうでありますし、他の委員に迷惑もかかりますから、これで終わりたいと思いますが、要するに、あなたの答弁では私は全然納得できない。よろしいですか。きょうお帰りになったら、直ちに運輸大臣にこのことをよく報告なさって、そうして、ひとつどう運輸省として根本的にこれだけの大きな問題に対処していくか、その点について正式な回答を私にください。よろしゅうございますか。それだけ要望して、以上質問を終わります。      ————◇—————
  56. 島村一郎

    島村委員長 次に内閣提出小規模企業共済法の一部を改正する法律案、及び同じく中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案を議題として審議を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐野進君。
  57. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、小規模企業共済法の一部を改正する法律案と、中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案について、一括ひとつ質問をしたいと思います。  この両法案を通じていろいろ検討をしてみましたが、大臣が本年度において講じようとする中小企業の施策の中における一つの重要な項目としてこの二つの法案を提出しておるようです。そこで、この中で一番問題になるのは、中小企業を取り巻く諸情勢に対処する、こういうことで二つの法案をそれぞれ出しておるわけですが、大臣に冒頭お伺いしたいことは、四十二年度において、この二つの法案を通じて、特に団体のほうについて感ぜられることは、協業組合をつくるという形の中で新しい情勢に対応するという名のもとに、いままでの通産省における中小企業対策についてどのような変化を見込んでおるのか。いわゆる対策の根本的なあり方について、どのような変化をこの中から見出そうとしておるのか。この点について、非常に抽象的ですが、ひとつ、あと具体的に入りますので、基本的な姿勢について大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  58. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 中小企業の共同行為とかいうようなことにつきましては、いろいろの団体もいままでつくっておったのでありますが、最近の経済情勢からして考え出されてきたのがこの協業組合の問題であります。それはたびたびいままで申し上げておりますとおり、生産設備の装置の拡大ということ、それから労力の不足というような問題、資本力の不足というような問題、これらを解決するためには業者が協業組合をつくってやることがこれらの困難な問題を突破する道ではないかというように考えて、この協業組合という案を今度考えてこれを実施したい、こう考えておる次第であります。
  59. 佐野進

    ○佐野(進)委員 たびたびそういうことは聞いておるのです。私のお聞きしたいことは、現下の情勢、中小企業を取り巻く諸情勢の中で、協業組合をつくったり、振興事業団をつくったり、いろいろなことをやろうとしておりますね。そのやろうとしておる施策の根本的なあり方が、いままで過去においてやってきた施策と変わりがあるのかないのか、いわゆる基本的な姿勢について差があるのかないのかということをお伺いしたいのです。
  60. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 過去においての中小企業対策は、資金の融通とか税制とかいうことを主としておったと思うのであります。しかしそれだけでは中小企業の問題の解決はできないということで、ことに最近における経済情勢の変化からして、どうしても協業組合というものを設ける必要があるんじゃないかということで、こういうことを考えてきたのであります。
  61. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから、そこで中小企業対策の考え方の基本については変わりがあるのかないのか。いままで政府が講じてきた中小企業の施策という大綱について、四十二年度以降に行なおうとする施策は、特にこれらの団体法をはじめ一連の法律改正をしようとする根底にあるものが変わりがあるのかないのかということについてお聞きしたいのです。
  62. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いままでとってきたいろいろの中小企業対策は、これはもちろんそれとして値打ちがあり、価値があるものであります。それはそれでやります。しかしその上に今度新しくこの協業組合ということを考えてきたのであって、とにかく新しい情勢に応じての一つの新しい措置である、こう考えておる次第であります。
  63. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私ももちろんいままでの施策が価値のない施策だと考えておるのじゃないのです。ただ団体の組織に関する法律をはじめいろいろな法律が今度提案されているのは、大臣がわれわれに説明した基本政策をはじめ一連の方針の中で構造改善を進めるのだ、それから後進国のいわゆる追撃を受けたり先進国のいろいろな技術改善があったりして、日本の経済は非常に大きな変革期にきておる、したがってその中における中小企業対策というのは非常に重大なものがあるということを繰り返し言っておられるわけです。その一連の方策として今度の法律が出ておるわけでしょう。その法律を出した意図が、これは価値があるとかないとかいうことじゃなくて、政府の施策が、中小企業対策というものに対する取り組みが、いままでの中小企業対策とこれからことし以降新しい情勢に対応して、中小企業を取り巻く諸情勢に対処するため出ておるのだから、その中で基本的な姿勢に私は差があるように感ずるのだけれども、これはあとで具体的に質問しますが、大臣は中小企業対策について根本的にどう考えてこの法律を出したのかということを聞きたいと思っているのです。もしあれなら長官でいいです。
  64. 影山衛司

    ○影山政府委員 中小企業基本法におきましても、中小企業の近代化あるいは中小企業構造の高度化ということを指摘をいたしておるような次第でございまして、施策の基本的な考え方については、基本的には変化はないと申し上げていいわけでございますが、中小企業をめぐる環境のきびしさに対処いたしますために、さらにこの中小企業構造の高度化あるいは構造改善を進めていかなければいけないということで、その取り組み方についての一つの政策手段といたしまして協業組合という一つの進歩した形の協業化の体系を御提案申し上げておるような次第でございます。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣も明確に答弁しない、長官もその点については非常にぼかした答弁をしておるのですがね。私も文章上における表現をずっといろいろ研究してみたのだけれども、読んでみると、あなたの言うような形にとられるように書かれておるのですが、しかしほんとう考え方の筋は、現下の経済情勢に対応するためにはいままでの中小企業のあり方ではだめなんだ、したがって新しい経済情勢に対応する施策を、この際、抜本とまでは言わないけれども、勇気を持って取り組まなければならないんだ、こういう考え方が根底にあるのじゃないですか。これは大臣どうですか。
  66. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはもちろんそうです。新しい行き方で、中小企業の根本的な施策に対する一歩前進だ、こう考えておる次第であります。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういうような考え方でくると、おそらくそうだと思うのですよ。ということは、何も本を対象にして言うわけじゃないけれども、「中小企業」という本の中で組織課長という名で吉岡さんが書いている文章を見ると、現下の諸情勢に対応するための中小企業対策というものは、いわゆる弱い者は切って捨ててもやむを得ない、健全なる、いわゆる有力、優良なる企業を育てる形の中で日本の中小企業対策を進めていかざる限り中小企業対策の根本的な立て直しはないのだ、その基本的な考え方から一連の法律が生み出される、こういう構想が雑感という形で出ておるわけですね。したがって、いま経済界の一部機関で報道されておるように、政府の施策はこの際いままでの中小企業全体に対する対策、いわゆる温情的な対策でなくして、優良企業を残す、健全企業育成の方策に百八十度転換したのだ、そういうような形の中でこれら諸問題の取り組みを行なっておるのだ、こういうようにいわれておることとこれとは対応するということで、私としてはうなずける面と同時に危険性を感ずるのですが、それらの点について長官の見解を聞いておきたいのです。
  68. 影山衛司

    ○影山政府委員 組織課長の作文につきましては、私まだ読んでおりませんが、弱い者を切り捨てて優良企業だけを育成していくというような考えは、私どもは毛頭持っておりません。むしろ小規模零細企業者を商工会、商工会議所等の経営指導員等にも、金の借り方、帳簿のつけ方から指導をさせまして、そういう小規模零細の人たちの底上げをやりまして、経済的な経営が成り立っていくように、あるいはその他の助成の制度も行なっておるわけでございます。たとえばこの協業組合の制度につきましても、むしろそういう小規模零細層の人たちが経済環境のきびしさに対処する一つ方法といたしましてこれを持ち出しておるような次第でございます。先般関東ブロックにおきます商工会の連合会の総会がございましたのに私どものところの指導部長も出席いたしたわけでございますが、そのときもやはり小規模零細層の人たちも、小規模零細層対策として協業制度を推進しなければいけないというような意見も強く出ておったような次第でございまして、私どもといたしましては、むしろこの協業組合制度は小規模零細層対策の一環であるというぐらいに考えておるような次第でございます。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの長官の話になると、協業組合というものあるいは法律を改正しようとする意図というものがむしろごまかし的な感じをとって、非常に抽象的にぼやけてくる。この雑感に書かれておる考え方のほうが私には非常に率直な見解のように感ずるのです。特に、まあ何もあげ足をとるような質問ではないけれども、長官がこれを読んでないということは非常に全くもって、何もそうきょう追及する意味質問しているんじゃないから言わないけれども、ちょっとやはりおかしいんじゃないか、こう思います。そうすると、大臣にお聞きしておきたいことは、政府中小企業対策は、いわゆる一般に流布されておるように、あるいはまたこの雑感に書かれておるように、百八十度転換して、優良企業並びに健全企業を残す、そして弱小企業はこの際つぶれることもやむを得ない、そしてそのつぶれた場合は社会保障的な意味でこれの救済をするんだ、こういうような考えではない。これはあとの団体法だけでなく小規模のほうに関係するわけで、その中で出てくる文章と読み合わせると、私は全くこの雑感のいわれておることが非常に正直で、すなおで、しかもいまの日本の中小企業の現状を政府という立場から見たとき何か非常にそのものずばりにいっておるような感じがしておったわけです。しかしそれがいいと言うんじゃないですよ。いいと言うんじゃないが、そういう感じがしておったのですが、そうでないということになると、大臣がいままで言われておるように、既存の政策をこのまま踏襲していくんだ、こういうように理解していいかどうか、はっきりひとつここで、あとの具体的な質問に入る前に聞いておきたいと思います。
  70. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 弱いものを切り捨てるという意味だったら、中小企業の対策など何も要らぬことだと私は思うのです。弱いから、これを何とかして強くしたいという意味でこの協業組合というのを考えておるので、いままでの個々の独立の企業ではとてもやっていけないから、これ砧何とかしてひとつやっていけるようにしたいということで協業組合という案を考えたのでありまして、でありますからして、個々の企業でも優良なものであれば、そのままでけっこうやっていけるのであるから、それはそれでやってもらったらけっこうです。やっていけない弱い業者を何とかして強くしたいという意味でこの案を考えた次第でありますからして、その点はひとつ誤解のないようにお願いをしたいと思います。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうなりますと、中小企業者全般に対していわゆるあたたかみのある近代化を促進するために施策を講ずるんだ、こういうぐあいに考えられるわけですが、そうなると、協業化をはかる前に当面必然的に問題になってくるのは、いわゆる過当競争ないしは零細企業に対する対策、すなわち小さな資本と、一人でも二人でもそれをやりたいと思う人があれば企業を興すことができる、こういうような状況がいまあるわけです。したがって、こういうような企業が続出することによって過当な競争が起きる形——協業組合をつくるという形の中で整備する反面そういうような小規模が続生する事態に対して、政府はどのように取り組まんとするのか、この点をひとつ聞いておきたいと思います。
  72. 影山衛司

    ○影山政府委員 先生御指摘のように、中小企業のいま持っておりますところの特性といたしまして過小性、過多性があるわけでございます。私どもといたしましては、この過小性、過多性の中におけるところの中小企業をどういうふうにして近代化し、合理化していくかということが、実際申しまして私どもの悩みの種でございます。そこで、過当競争を避けながら近代化、合理化をやっていくという一つの方策といたしまして、共同化あるいは組織化、さらにそれの進んだ形として今回協業組合を御提案申し上げておるような次第でございますが、ただ、この協業化の方向、共同化の方向にもまだ乗り得ないような人たちに対しましては、これはまた別途の小規模零細企業対策といたしまして、先ほど申し上げましたように、この基本的な帳簿のつけ方あるいは金の借り方、税金の納め方というようなところから小規模零細層の人たちを指導をいたしまして、そういう私ども用意いたしておりますところの、たとえば協業組合の制度あるいはボランタリーチェーンの制度というようなものに沿って考えていただくというような努力をしていきたいと思うわけでございますが、ただ、その個別企業のままにおきましても、ある程度の、国民金融公庫でありますとか、あるいは設備近代化の補助金であるとかというようなものも用意いたしておりまして、この小規模零細層の人たちが近代化をはかっていこうというものに対しましても、いろいろな金融措置あるいは助成の措置も用意いたしておるというようなことをいたしておるわけでございまして、そういう方向で小規模事業者全体につきまして近代化をしてもらいたいというのが私どもの念願であるわけでございます。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、その小規模業者小規模よりむしろ零細業者というのは、意欲と適度の資本さえあれば、いつでも事業を始めることができるわけでしょう。したがって、そのいつでも事業を始めるということが景気の変動の中で行なわれてくると、それが景気の変動の中でまたやりきれなくなる場合があるわけでしょう。したがってそこに過当競争の原因が発生するわけでしょう。こういうことに対して政府は施策を講じない限り、既存の一部中小企業者、特に協業組合の問題については、あと内容について質問しますが、幾多の問題点を持っておる。そういうものを一部つくったとしても、万全な対策とは言い得ないのではないですか。そうしたいと思うだけでは、どうにもならないと思うんですね。この小規模企業共済法の一部改正案の中でも、非常にこれは加入者が少ないという問題がある。しかし問題があるということが、小規模企業者、特に零細業者は数が多いといいながら、ここまで頭を使っていないという、使うことができないというほど忙しい仕事の業者が多いと思うわけです。その加盟しておる中でも、この説明にあるように、一人ないし二人以下の企業者が相当多いというのです。だから協業組合をつくり、企業の健全な発展をさせ、そして中小企業者の経済の成長に対応する前進をはかるというならば、協業組合をつくり得ないという対象になる人たち、あるいはみずから求めてこれからそういう対象になろうという人たちに対して、政府の施策がなければならぬわけでしょう。それらについてどういうふうに考えておられるか。
  74. 影山衛司

    ○影山政府委員 小規模企業、零細企業の人たちの端々までそういう私どもが用意いたしておるところの施策に乗っていただくというためには、指導と同時にPR、啓蒙が必要であるかと思うわけでございます。私どもの中小企業庁といたしましても、施策普及室という課を一つつくりまして、施策の啓蒙、普及宣伝をやっておるわけでございますが、今度協業組合あるいは振興事業団の対象にもいたすわけでございますが、振興事業団自体につきましても、中小企業に対する啓蒙のための一つの組織をつくりまして、啓蒙普及を行なうというようなことで中小企業者の皆さん方に、協業組合の制度あるいは小規模共済の制度というようなものにつきましてもよく理解をしてもらいまして、こういう制度に乗ってもらうということはやっていきたいと思います。小規模企業共済事業団におきましても、PRの仕事というのは非常に大きなウエートを占めておるわけでございまして、従来あまりまだ効果が所期のごとくあがっておりませんけれども、一生懸命理事長以下PRをいたしておりますので、その効果が今後あらわれてくるのではないかということを私ども期待をいたしておる次第でございます。
  75. 佐野進

    ○佐野(進)委員 どうも質問のしかたが悪いのかどうか、ぴんとした答弁を得られないのですが、私の言わんとするところは、そういう努力は多とするのですが、結局協業組合をつくろうとするねらいは、既存の企業を健全に発展させていこう、新しい企業を発展させていこうということよりも、既存の企業をどのようにして維持し発展させていくかということにあろうと思う。既存の企業の発展をはばむのは金融、財政、税制その他いろいろあろうと思うのです。いろいろあろうと思うのですが、一番問題になるのは、いわゆる過当競争をそのまま許すということ、許すというか、政治的に政策的にそうならざるを得ないような形が現存しておるわけですね。したがって過当競争をどうやって防ぐかということと協業組合をつくろうとすることとどういう関係があるのか。全然関係がなくて、過当競争は野放しでということになるとすれば、協業組合をつくった人たちはそれぞれ恩典を受けられるからいいけれども、協業組合をつくり得ることのできなかった人たちは脱落し、整理され、必然的にはここにあるように社会保障省を設置しろ、こういうことの対象にならざるを得ないと思います。これらについて、この組織をつくるからには何らかの考えがあってしかるべきじゃなかったか、こう思うので、その点を大臣ひとつ……。
  76. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 佐野委員のお尋ねは、新しく中小企業を始めようという人が続出するじゃないか、一方では協業組合を設けても新しい人が出てくれば、それでおのずから過当競争があるじゃないかというお尋ねじゃないかと思うのです。そこで新しい人は、これはもうその人が自分で独立してやろうという人でありますから、おそらく本人は自信を持って営業してもやっていけるという考えで始められるのじゃないかと思うのです。しかし実際始められたら、おそらく過当競争や何かでとてもやっていけぬというようにまたお考えになるのじゃないか。そのときには協業組合に入ってもらうというようなことで、救う道があるのじゃないかと思うのであって、初め協業組合があるとかなんとかいうことを御存じない人で、たとえば退職金をもらった、何かする仕事はないかというようなことで中小の商業でも始めてみようかというような人は、これは出てくると思います。そういう人たちに対してこっちがああせい、こうせいと、御相談があれば御指導するけれども、かってに営業を始めた場合には、これはもうこっちとして御指導するチャンスがないのですから、したがってその人は何も世の中は知らぬのに、ただ退職金をもらったから何かこれで商売したいということでお始めになると思うのでありますからして、そういう人たちに対して初めからこういう商売を始めてはいかぬということは、ちょっといまの日本の制度ではできないと思うのです。でありますからして、そういう人たちが自分らの企業意欲、また自分らの将来の方針でお始めになる場合には、これはやむを得ないと思いますが、お話のとおり、勢いそこで過当競争というものが起こってくるという危険はあります。そういう場合には、御本人がそれでりっぱにやっていければけっこうですが、もしやはりやってみたらどうもうまくいかぬという場合には、協業組合にお入りになってやられたらどうですかというふうに指導をして、入ってもらうというように指導するのが親切じゃないか、こう私は考えております。
  77. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣の考えはまことにけっこうなんですが、現実はなかなかそうなり得ない条件が多々あろうと思います。これから協業組合をつくろうとする場合においても、はたして協業組合の対象になり得るかどうか非常に問題があろうと思います。したがって、それはしばらくおくといたしまして、考え方はわかりました。考え方はわかりましたが、そういう形で、現行の制度の中で過当競争やむなしという認定に大臣がお立ちになる、いわゆる自由競争の時代ですからそれはやむを得ないという形になるとしても、政治的に中小企業者のそれら新規事業開業者に対する、経済の動向というような、単なる抽象的な表現でなく、具体的にそれぞれの都道府県を通ずるなりあるいは業界を通ずるなり、こういうような形の中において過当競争を防ぐ具体的な措置を講じない限り、これは何も新しい企業をやってはいけないということではなくして、そういう措置を講ぜざる限り、この協業組合は単なる協業組合という形の中になり、幾ら否定しても優良企業温存のための組織になる、こういうように私は感ぜざるを得ないのですが、それらの施策を講ずる意思があるかどうか、ひとつ聞いておきたいと思います。
  78. 影山衛司

    ○影山政府委員 新規参入の制限につきましては、憲法上の問題等もございまして、なかなかむずかしいのでございますけれども、現在、先生御承知のように、中小企業団体法に基づきまして商工組合を設置いたしまして、その商工組合は同業団体といたしまして、お互いの間で生産制限でございますとかあるいは設備制限というようなものを調整行為で行なうことになっておりまして、そういう点によりまして過当競争を防止する措置も、一応中小企業団体法等によりましてできておるわけでありますが、なおさらそれ以上に、やはり業界におきますところの過当競争を今後とも防止をしていきまして、お互いに協調をし合って商売をやっていくという方向も、これからの中小企業の分野におきましても必要であると思うわけでございまして、今後ともこれは団体あるいは県を通じまして、そういう点についての指導、啓蒙というものは引き続きやっていきたいと思うわけでございます。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから引き続きやる、商工組合というものについては、またこれは議論が出てくるけれども、そうやっておると長くなるから私はやめたいと思いますが、指導をするという、中途はんぱといっては語弊がありますが、その程度の消極性であってはならないと思うのです。協業組合をつくるということが、現下の経済情勢に対応するために最もいいということを大臣がいつも言っているのですね。だから、そうであるとすれば、これをつくらなければならなくなった理由、同時につくったことによって起こるところの被害、犠牲、あるいはこれによって、できた上にもっと発展していくという展望、こういうものをもう少し肉づけを厚くして、ただ組織をつくった、他の組織ではだめなんだ、こういうだけでこういう組織をつくらしたということだけではいけない。そういう中における最も大きな問題点は、この過当競争という表現の中にいろいろな部面が含まれてくる、こういう点を私は心配するがゆえに、繰り返し申し上げておるわけです。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 そうなりますと、必然的に現在の中小企業対策はいままでと変わりがない、しかしいままでと変わりがない上に、新しい情勢に対応してこの組織をつくったんだ、こういうことになってくると、いまの情勢の中で、これはたびたび言われておるのですが、特にこの雑感をたびたび出して悪いのだけれども、非常に参考になるので、この雑感に関連して中小企業の今後の対策として聞いておきたいのですが、これは中小企業省設置を叫ぶ人よりも社会保障省をつくったほうがいいと叫ぶ人が少ないということは非常にふしぎだ、残念だというふうに書いてあるのですが、いわゆる中小企業省というものと社会保障省という、これは中小企業が脱落した場合これを救うということで書かれてあると思うのです。この省を設置し、中小企業全体をもっと専心に取り組むということは何回も社会党のほうから出ておるようですが、これらの点について大臣はいまの見解はどうか、お聞きしておきたいのです。
  80. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その論文を全部読まぬと私もわからぬのだが、社会保障省をつくったほうがいいというのですか。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうです。あなたも読んでいないのですか。
  82. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これは社会保障というのはいま厚生省がやっていることですから、厚生省のほうで社会保障のことをやっておりますが、通産省としては、あくまで中小商工業を生かすという立場で施策をやっておるわけでありますからして、それはだめだから厚生省にまかせいというような考えは全然持っておりませんから、さよう御承知願いたいと思います。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは中小企業省をつくるということについてはどうですか。
  84. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私もかって自民党の中小企業の議員連盟の代表委員をしておりまして、中小企業省をつくったらどうかということを考えたこともあったのですが、また、かつては通産行政というものは貿易省と中小企業省に分けたらどうかという考え方を持っておったのでありますが、きて通産省に入ってみると、われわれがいままで省外におって簡単に考えておったように、そう簡単にいかぬ。非常に複雑な政府全体の行政というものをひとつすべてばらばらにしてしまって、分解して再編成しなければならぬという大きな問題だと思うのでありまして、これはもう現在のところでは、私の力では、中小企業省をつくるという能力がないことをここでははっきりお答えいたしておきます。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通産大臣にこういうことを聞くのはちょっと無理かもしれません。しかし中小企業問題については、先ほど来の見解が通産省の基本的な形であるとするならば、いわゆる中小企業者全体を——特に日本の現状から見ると、中小企業者の占める位置と役割りというものが非常に大きいわけです。特に過当競争下にあえぐ零細なる企業者が非常に多いわけです。こういう人たちに更にあたたかみのある、協業化あるいは近代化の組織の中に入り切れない人たちに対しては、どうしても中小企業省という特別の省をつくって取り組まない限り、幾ら説明して、幾らこうです、ああですといっても、どうしてもあたたかみのある一貫した施策はとられないというふうに私は勉強してみて特に感じたわけです。したがって、大臣、私の力ではと、こういうことではなくて、努力する意思くらいはひとつここで言ってもらわないと、ちょっと中小企業対策が寂しいのではないかと思うのですが、どうですか。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 問題はやはり人の問題です。何ぼ中小企業省をつくっても、人を得なければ、同じことです。でありますからして、今度の中小企業振興事業団理事長を私いま物色しております。中小企業で苦労して、ほんとに中小企業に対する同情を持っておる人、そういう人で適任者がないかと思っておるわけです。月給だけもらえばいいというような人は今度の理事長には選任したくない、こう思っておるから、実はなかなか適任者がいないので苦労しておるのでありますが、皆さん方のほうで適任者があったら御推薦してもらいたいということをお願いしておるわけでありまして、そういう意味で、ほんとに同情を持って中小企業の振興に当たる人、こういう人でなければだめです。月給だけもらって、それで仕事をしていったらいいというような人は——問題は人です。省をつくるより、まず人を見出すということが先決だ、こう私は考えておる次第であります。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣の気持ちはわかるのですが、人だ人だと言うと、いまの長官はじめりっぱな人がたくさんおるのに、そういう人に対して気の毒な感じにもなるのです。しかし、少なくともこれから特に重要性を増してくる、大臣がいつも言っておるとおり、中小企業対策について、ほんとうに一省をつくって、新しい省をつくって取り組むのだ、人だけではないのだ。人はもちろん柱になりますけれども、そういう点について、大臣のほうでもっと前向きの答弁をしてもらって、それで次に進みたいと思うのですがね。
  88. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 前向きの答弁とおっしゃるけれど、総理大臣が中小企業省をつくる意思はないということをはっきり本会議答弁しておりますから、したがって、いまの政府としては中小企業省をつくる考えは全然ないということをお伝えしておきます。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それ以上言っても時間をとるだけですから、大臣の気持ちはわかっておりますから、その気持ちの上で、総理大臣がそう言ったからといって諦めないで努力して、中小企業者のために積極的に取り組んでいただきたいと要望いたします。  そこで、あと法案内容について若干御質問してみたいと思うわけです。協業組合をつくるということについては、答申案その他いろいろ出ておるわけですが、それを読んでみると、企業組合もだめだ、会社もだめだ、中小企業対策をするために、いまの既存のあらゆる組織がだめなんで、協業組合以外にないのだ、こういうような表現にとれる。そうしなければ提案する理由がなくなるからそうしたのでしょうが、そういうぐあいにとれるわけです。  そこで私は参考のために聞いておきたいのですが、日本特有の制度になるのか、諸外国におけるこれらの制度と類似したもので中小企業運営に対処していくところがあるのか、その点、一点だけ簡単に聞いておきたいと思います。
  90. 影山衛司

    ○影山政府委員 これは日本独自の中小企業者の企業感情に合った特有の制度であります。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私もいろいろ勉強したらそうだったのですが、念のために聞いておいたのです。そうすると、われわれはこの運用、この発足に対して慎重な配慮をしていかなければならない。私は現下の経済諸情勢の中で協業組合を持つということが悪いとは考えない。非常にいいことだと思う。いいことだと思うことは、先ほど言ったことを前提にして、それをやろうとする場合にはいいことだと思うので、心の中では賛成しておるのですが、賛成するかどうか、ここで言っちゃって、まだ党のほうできまったものでないと言われると困るので、そこまで言いませんけれども、私は心の中ではそう思っておるのです。  そこで聞いておきたいと思うのですが、この協業組合をつくるということになると、先ほど来心配しておるように、対象がばくぜんとして抽象的なんですね。どれを見ても、これこれの企業とか、その他近促法に指定された業種であるとか、あるいは改善法に指定するような業種であるとか、いろいろな業種が対象として出てこないわけですね。それから業種の幅としても、小は一人二人の、さっきの大臣の答弁ではないが、零細企業から大は大企業に至るまでこれに加盟できるというのですね。考え方は非常にいいとしても、運営を一歩誤れば非常に危険なものがその中に出てくるのじゃないかと思うのですが、対象事業についてとか、あるいは幅、これは上のほうはわかりましたから、下のほうについてちょっとお聞きしておきたいと思います。
  92. 影山衛司

    ○影山政府委員 対象事業につきましては、やはり中小企業、これは製造業であれあるいは運輸業であれ、あるいは小売り業であれ、あるいはクリーニング業、サービス業であれ、あらゆる業種の人たちが、自分たちの気の合った人たちが一緒になって仕事をやろうではないかという考え方に基づいておりますので、業種に関しての制限は、私どもはするつもりはございません。また現在協業組合の設立の研究を一生懸命してもらっておる業界、あるいは協同組合形態のもので協業に近いことをやっておる業界、これはあらゆる業種にわたってあるわけでございます。これは対象業種については制限をいたすつもりはございません。それから幅でございますが、下のほうの幅も、先ほど御説明申し上げましたように、中小企業の中でもむしろ小規模零細企業対策として私ども考えておりますので、下のほうの制限はございませんが、ただ設立要件といたしまして協同組合と同じように四人以上が集まるということになっておりますので、四人以上の集まっておられる人が中小企業者でありますならば、全部これはやれるということにしております。上のほうは、大企業もはいれるということにしてあるわけでございますけれども、むしろいろいろな事例を見ておりますと、うまくいっているところは中小企業者——零細企業、小規模の人が集まっておるのですが、指導者はみな中小企業のうちの中の人たちあるいはもう少し上のほうの人たちが集まっておる場合には、中小企業を卒業した人たちが中核になってやっておる例がございますので、むしろそういう人たちを頭に置いて、大企業というような表現も出ておるわけでございまして、大企業を積極的に参加きせるという意味でこの法案をつくっておるわけではございません。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 つくったわけでないことはよくわかるのですが、先ほど言っておるとおり、運用の面でたいへん危険性を持つということを心配して質問しておるわけです。たとえば零細企業といえば、企業である限りにおいては、御主人と奥さんと子供とやっても企業になる。そういう企業者が四人以上集まれば、協業組合ができるということになると、この法律でいう協業組合の対象たり得るかどうかということになると、これは指導の方法としてきわめて問題点があるのではないか。そういうような小さな企業が四人程度集まって、協業組合をつくる、片や何億という資本金を持つ企業で、たとえば同じような業種で協業組合がつくられたと仮定した場合、これは同じ協業組合という名称で呼ばれながら——私がなぜそういうことを心配するかというと、いまの協同組合なり同工組合なり企業組合なりと全然違った新しい団体としてできるわけです。したがって、運用の発足点からいって、それに対して取り組む役所としても困るのではないか。またつくるほうも、そういうばく然とした形の中でやられたのでは、かえって迷惑を感ずる場合があるのではないか、そういう心配があるので、お聞きするわけです。その点について、もう少し具体的に答弁願いたいと思います。
  94. 影山衛司

    ○影山政府委員 この協業組合を設立いたします場合には、一応主務大臣が認可をいたすことになっております。権限は下におろしますけれども、この認可をいたします際に、生産性の向上に設立が寄与するものというふうに書いてあるわけでございまして、それではこの協業組合の設立が生産性の向上に寄与するかどうかということの判断は、県あたりあるいは中央会あたりが診断、指導をいたしまして、その結果、生産性の向上に寄与するという方向にコンサルタントが指導をいたすわけであります。そういう点の指導体制も整えながらやっていくということになるわけでございます。  また、近代化促進法の指定業種あたりにつきましては、一応適正規模というようなものも定められるわけでございますが、こういうものはよく調べてみますと、案外中小企業の分野に適正規模があるものが多いわけでございます。そういう点から、やはり小規模の零細層の人たちもある程度集まりまして、近代化設備を入れて、それが一つのロットとして、合理的に動く。それによって生産性が向上するというような方向に診断、指導等を通じながら、あるいは認可の過程で指導しながら、これをもっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  95. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この小規模企業共済法の一部を改正する法律案の説明の中の二ページのところに「今回の改正は、小規模企業者がこのようなきびしい環境のもとで安んじて近代化、協業化等をはかるための努力ができますよう」本制度を発足していくということが書いてある。先ほど聞いているように、零細企業、いわゆるほんとうに小さな企業がその近代化あるいは協業化をはかる。しかし、実際上なかなかできないですよ。そういうことばの表現はあり得ても、できないような企業が幾つもあって、小規模といえども、三人から四人というような形からするならば、あるいは中小企業の中でも五十人、百人という形からするならば、三人や四人の人たちが集まって協業組合をつくろうといっても、どうにもならない。必然的に協業組合をつくったほうは税制、金融その他の面で優遇がある。受けないものはますますそこに格差ができる。したがって、格差ができたものは必然的につぶれていかざるを得ない、整理統合をしなければいけない。協業組合に入るということでなく、廃業しなければならない。その廃業するためにこれが必要なんだ。これはこじつけではない。ずっと読んでくると、この文章の内容法案内容、それからこの協業組合とたまたま一緒に出た小規模企業共済法の関連の中で、それをすなおに見た場合に、そういうものが印象づけられる、非常に危険な考え方です。協業組合をつくるのは、一部特定の人たちであって、あとの人たちは必然的に自然淘汰されざるを得ない。制度としてはできる——私は実質上できないと思うけれども、制度としてできるという長官の答弁ですから、そのとおり認めますが、事実上できない場合には小規模企業共済法で救済しますということでは、中小企業対策に対して、またさっきの本を出すようだけれども、本の精神からいうならば、基本の取り組み方からするならば、ちょっと心配があるわけです。  したがって、ほんとうに零細企業者に対して協業組合化による犠牲のしわ寄せがいかないよう、私は一方において過当競争を排除するための手段を講じなさいという。これは必ずしも整理をしろというわけではないけれども、既存の十年、十五年もやっている人たちがこの制度のために犠牲になるようなことであったとするならば、これは非常に気の毒だと思う。したがって、大臣は、もうすぐあちらへ行かなければならないということになっておるそうだから、大臣はこの法案の発足に対して、小規模、特に零細企業者に対する犠牲を生じないようにどのような決意を持っておるか、この際、ひとつ二法案に関連して聞いておきたいと思うのです。
  96. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 事業によっては協業組合に入らない事業もあろうと思うのです。そういうような事業は、零細企業としてその存続をはかるためにいろいろ救済制度を設けておるわけでありますけれども、同時に、あくまで協業組合に入ったほうがその事業主に対して将来いいという場合には、これはできるだけ勧誘する。しかし、お話しのとおり、これはそう簡単にはなかなかやれぬと思うのです。日本人は独立性の強い国民でありますから、これは非常に困難だと思います。しかし、これはできるだけ協業組合に入ったほうが得だということで指導しなければいかぬと思うのです。時間がかかりますけれども、たとえば明治初年に会社をつくる場合、会社という知識はだれも持っていない。外国人は会社をつくって大資本でくる、日本人は個人個人で小資本でやるから、いつも損をしている。そこでやむを得ずあのときは脅迫して、会社をつくらなかったら、お前たちはみな北海道へ移住さすぞというようなことを言ったり、会社に参加した者には名字帯刀を許してやるとかいって、おどしたりすかしたりしてすすめたが、いまごろはそんな当時とは違いますから、よくお話し申し上げれば、御理解していただけると思います。しかし、これはそう簡単にみなが参加するというわけにはいかぬと思いますから、よほど努力が要ると思います。そういう意味において、指導ということを今度やかましく言っておるのであって、協業組合におはいりになってやられたほうが得ですということをよく話をして、協業組合の内容をよく説明して、零細企業の方も喜んで入ってもらって、零細企業の存続と、人々が喜んでやっていけるようにしたいという考え方をしておるのでありまして、零細企業を切り捨てるとか、見捨てるとか、そんな考えは全然持っておりません。あらゆる方策を通じてやりたいと考えております。  なお、しかし、協業組合という新しい日本独自の案を考えておるのでありますが、先ほど佐野委員のほうから過当競争というお話がありましたが、この過当競争ということは、日本独特のものだと私は考えておるのです。外国では過当競争ということがないということは、国土の割合に人口が少ないということ、日本は国土の割合に人口が多いということ、それからもう一つは、日本にはいわゆる資源がないということ、そういう点から日本では過当競争という現象が起こっておるのでありますが、過当競争があればこそ、日本というものが発展してきたと私は考える。過当競争には利益もあるし弊害もあると考えておりますから、一がいに過当競争が全部いかぬという断定は下せないと思うのであります。しかし過当競争のために困るような場合には、これは何とかして救う道を考えていきたい、こう存じておる次第でございます。
  97. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの大臣の御答弁でたいへんよく理解できました。  最後に、大臣一言だけ言ってもらいたいのですが、いまのことでいいのですけれども、この両法案は、二つの法案を通じて弱小業者を整理するいわゆる零細企業切り捨ての法案ではないんだ、こういうことをひとつはっきり言っていただいて、あとは長官にひとつ……。
  98. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはいま申しましたとおり、決して切り捨てると言うたんではないので、弱い人を助けるという根本方針でやっておりますから、さよう御了承願いたいと思います。
  99. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あと若干長官に質問して終わります。  そうすると、一番問題になるのは、下のほうはわかったわけです。それから上のほうなんですが、この法案でいきますと、いわゆる大企業が五〇%以下の持ち分において協業組合に参加する道を開いた、こういうことになっているわけですね。そうすると、五〇%以下だから議決権には関係ないということですが、私は、中小企業者がここに参加して、その持ち分に応じて差をつけた議決権を行使するということは、この法案設立の精神でもありますから、否定するものではないのですけれども、大企業に道を開くということが、同じ部門とはいいながら、大企業は総合的に経営をしておる。そうしてその中へ入った場合、お互いに競争してはいけない、こういう制約を加えておったとしても、入るということによってみずからの企業を守ろうとする意欲が大企業にあるならば、あらゆる手段と方法でその協業組合を圧迫するような方法にみずからの持ち分の中においてする。それがマイナスにしても、たとえば他の部門でプラスが出るならばいいという考えで、協業組合をむしろマイナス化するような企業がないとは断言できないと思うのですが、そういう点についての配慮はどうなっておりますか聞いておきたいと思います。
  100. 影山衛司

    ○影山政府委員 大企業も、これは一応参加できることになっておりますけれども、この大企業も協業組合に加入いたします場合には事業を廃止しなければならない。大企業でも、自分の事業をやめて、中小企業者と一緒になって、大同団結をして仕事をやろうという人たちだけがこれに入ってまいります。  それと、また議決権の問題におきましても、出資口数につきましては五〇%以下半分以下でなければならない、一人一票主義の議決を越えてはいけないというふうな制約もございますし、いろいろな点で大企業の参加についても制限をいたしておるわけであります。数についても制限をいたしております。そういう点で大企業によってこの協業組合が支配をされるということのないように、私どもは法案の構成上もそういうことをいたしておるわけでございます。根本といたしましては、大企業も事業を廃止してこれに参加するということでございます。
  101. 佐野進

    ○佐野(進)委員 じゃ聞きますが、たとえばお菓子屋の業者が協業組合をつくろうとするわけです。そうしたら、その大企業が、たとえばビスケットとかキャラメルとか、そういうものの一部を廃止して参加するということは可能でしょう。ビスケットならビスケットの部門だけで入るということは可能でしょう。だから大企業はそのほかの幾つかの業種があるから、それを残しておいていいわけでしょう。あるいは参加するためには全部の企業を廃止するということになるのか、それを簡単でいいですからひとつ聞かしてください。
  102. 影山衛司

    ○影山政府委員 先生御指摘の例は一部協業の例だと思いますから、そういう場合はビスケットだけで参加できると思います。
  103. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、もうだいぶ時間がたってきましたから、実はもっとこまかく聞きたいと思って資料を用意してきたのですが、やめますが、お菓子屋にしても何にしても、いわゆる中小企業は非常に多いわけですから、それが協業組合をつくるということでその活路を見出そうとして、そこに大企業の参加を、ただ法案の精神のように無制限にいいんだということだけでは、将来私は非常に危険性が出てくる。たとえば外資の自由化についてもそうだと思うのです。最初五〇%以下だといっても、現実の問題として、入ってきた資本がいろいろな手段と方法でその会社の企業運営を直接自己の掌中におきめようとすることは、いま一番心配されておることでしょう。いわんや、それよりももっと具体的な、国内における中小企業業界を支配しようとする企業がもしあるとするならば、その方法は幾らでもできるわけでしょう、この法案内容だけでは。これらの発足についてどう取り組むかということくらいは、はっきりしておいてもらいたい。
  104. 影山衛司

    ○影山政府委員 基本的には、協業組合設立趣旨がそういう趣旨ではございませんので、事業認可の際にそういう点のないように私どもは指導していきたいと思うわけでございます。チェックしていきたいと思うわけでございます。それと同時に、制度的にも大企業は総組合員数の四分の一以下であること、あるいは総出資口数は全体の二分の一未満であること、あるいは議決権についても各組合員に平等に配分される割合が二分の一以上であるというふうに、一部の大企業あるいは少数者の支配にゆだねられないように制度的にも保障をいたしておるような次第でございます。
  105. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから答申案の精神から、あるいはあなた方が考えている基本的な考え方からすれば、私は、そうしない、そうあってはいけないんだという気持ちはわかるんですが、法文のどこを見てもあなたがいま言われるようなことによって完全にそれが守られますよという保証にはならないですよね。だからしたがって、特に具体的にお菓子屋さんのごとき、一番中小企業でありかつ大企業がともにそれをやっている。これからいろいろな部面において、中小企業が主体でありながら大企業中小企業の分野にどんどん経済情勢の進展に伴って進出してくる可能性があるわけですね。それについては中小企業者の持つ事業分野というものと大企業の持つ事業分野というものが、厳格でなくてもそれぞれの範囲の中できまっておれば、そういう問題は別にないですよ。心配なく企業運営ができると思うのでありますが、そうでなくて、事業分野が不明確であって、資本の多寡だけで大企業中小企業という形に区分されて、その区分された中に発展性のある中小企業に対して、いや発展性がなくとも、協業組合をつくることによって何とかその企業の前進していくことが望める企業に対して、大企業がその部門の支配をすることが自己の企業にとって有利だと判断した場合、幾らでもこの法案の不備な点をついて取り組まれるとすると、せっかく形をつくって新しい制度としていいことをしてやろうと思いながら、結局マイナス点が多く出て、われわれが法律をつくった精神にそぐわないような、そういう形になる可能性がありますから、そういう点についていま少しく、ひとつ短かい表現でいいから、そういうことをしないでいいということをちょっと言ってもらいたいんですがね。
  106. 影山衛司

    ○影山政府委員 法案全体の趣旨からいきましても、大企業の支配にゆだねるようなことはこの協業組合制度の全体の趣旨に違反するわけでございますので、認可の際にその点をチェックいたします。また万一協業組合に大企業が加わりまして支配力をたくましくするような場合におきまして、不当な状態が出てまいりました場合には、業務改善命令の手段もございますので、そういう業務改善命令を発令いたしまして中小企業者の立場も守っていきたいと考えております。
  107. 佐野進

    ○佐野(進)委員 もう一つそれに関連して聞いておきたいと思うのですが、この協業組合ができると、あらゆる業種が対象になるという話でしたね。しかし現実の問題として、なかなかそう一ぺんに、あらゆる業種を対象にしてやるということになっても、それは税制上においても組織指導の面においても、実際上できないと思うのですよ。いま政府考えておる直接的な対象事業というものは、これが一番必要だと思われるような業種として幾つぐらいありますか。
  108. 影山衛司

    ○影山政府委員 現在のところ、熱心に私どものほうへ相談に来ておる業種を申し上げますと、パン、めん類、みそ、しょうゆ、それからあんこをつくる、製あん、とうふ、乳酸飲料、かまぼこというように、食料品で消費生活に非常に関係のある業種が多いわけであります。それから製材、家具、砂利採石、プロパン販売、たびのこはぜ、さらにクリーニング、港湾荷役というような業界も、私どものほうに相談に参っております。それからもう一つは、小売り商の人たちが、協業化してスーパーマーケットあるいは寄り合い百貨店を経営していくというような場合も、従来共同出資の形しかなかったわけでありますが、これは協業組合の形でやるというようになっております。
  109. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、これから繊維の問題で質問がされるようにもすでに準備しておられるようですが、繊維業法の今度の構造改善ですか、これと同じですね。結局協業組合の一種の変わったような形だと思うのですよ、あとの問題ですからあまり言いませんが。そうすると、繊維の中にも入らない、いまの対象の中にも入らないたとえばメリヤスというような業種や、その他それに関連する構造改善の最も必要な、特別法案を出すような業種ですね。いまの食品やその他クリーニングまで入って、メリヤスとかそういうところが対象になっていないというのはどういうわけですか。
  110. 影山衛司

    ○影山政府委員 こういう業種につきましても、たとえばメリヤスは、また織布の構造改善事業の対象になっておりませんが、織布等におきましても、産地の商工組合あたりで構造改善計画をつくりまして、その構造改善計画の中に、協業組合をつくることが必要だというふうな計画が出てまいりますならば、それを対象にいたしたいと思います。  それからメリヤス等につきまして、こういうものは近代化促進法の指定業種にもなっておるわけでありますので、これは今後とも協同化を、近代化促進法におきましても業種につきましては進めていかなければならないと思いますので、そういう点から、私どものほうといたしましては、近代化計画の業種別の分科会なりあるいは部会を通じましてそういう点を指導していきたいと思っておるわけでございます。
  111. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから対象は、抽象的に配慮だ、善処だとはいいながら、事実上の問題としては、当面近代化なりあるいは現経済に対応する中小企業の構造改善に資する業種を重点的に取り上げていく、取り上げるというか指導する、こういうことになってくるのですか。
  112. 影山衛司

    ○影山政府委員 近代化促進法の指定業種あるいは繊維の構造改善の対象となっておるような業種あるいは団体法の対象となっておるような業種につきましては、やはり私どものほうも、そういう制度がございますので、その制度を通じまして指導をいたしていきたい。しかしながら、その中に入っておるだけの業種でございません小売り商の関係あたりもあるわけでございます。あるいは業界のほうで自分たちで自主的にそういうものをつくっていきたいという希望のあるところ、こういうところも私どもは重点的に対象にいたしていくわけでございます。重点業種については、どの業種が重点であるというように私どものほうはただいまのところは考えておりません。
  113. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、いま協業組合をつくろうとする動きが非常に活発だ、したがってそれに対応するために云々と、こういう説明をたびたび聞いておるわけなんです。そうすると、メリヤス業という一つの業種をとったわけですが、幾つもありますが、いわゆる繊維の構造改善あるいは協同組合のいろいろないまの業種、こういうところに入っていない業種で、しかも協業化をすることが必要だ、当然しなければならないのだ、こういうような業種はあるわけですよ。それに対する指導が足りなかったか、宣伝が行き渡らなかったか、いずれかはわからないけれども、いまのような答弁では、ちょっと全体の中小企業の振興を策しようという考え方に基づくいまの取り組みについては不足しておるのじゃないか、こういうような気がするわけですよ。メリヤスというようなものは、実は繊維のほうの法案を見てもなかなか出てこないし、こっちの法案を見ても出てこない。近代化促進法の業種の中に出てきておる。こういうようなところから、たまたま一つの業種だけれども、そういうような点については十分配慮して取り組んでもらいたいと思う。  それからもう一つ問題になるのは、いわゆる協業化を促進するということは、協業組合をつくって協業化をするということは、必然的に機材を提供し、財産を提供し、人を提供する形になる。だが、しかし、十の組合、十の人たちが個々でやっていたときよりも、設備が近代化され、あるいはまたそのために人と資材が不必要になってくる場合が必然的に協業化することによって出てくるわけですね。いま人手不足、逼迫に対応して云々ということもあるわけだけれども、現実には、人がある中で協業化した場合、そういう資材と人が余ってくる。いわゆる一種の合理化がそこに行なわれる。これは当然のことだけれども行なわれる。その合理化が行なわれることによって生ずる混乱は何によって解消しようとする考えであるか。
  114. 影山衛司

    ○影山政府委員 現在協業組合をつくらなければいけないという人たちの話を聞いてみますと、設備の近代化等をやる必要性はあるのだけれども、それに対するところの人手不足で、むしろそういう点から設備の近代化ができないのだと言っておるような人が多いわけでございまして、そういう人たちが集まって、自分たちの工員さん、あるいは事務員等も一緒に出し合って、協業組合の企業体をつくろうではないかというところが多いわけでございまして、私どもは、現在の状況におきまして、人が余ってこれを整理しなければいけないような状態には立ち至らないのではないかというように考えておるわけでございますが、もしもそういう状態が起こりますような場合におきましても、そういう協業組合をつくる人たちとも相談をいたしまして、そういうことが起こらぬように十分善処していきたいと思っております。
  115. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから、十分善処をしていきたい、こういうことなんですが、大体協業組合をつくるという対象は中小企業者だ、こういっても、現実の問題として、中小企業者で一本立ちできるような中の上の部は、おそらく協業組合をつくってどうということにはなかなかならないだろうと思うのです、当面は必要ないことだから。そうすると、中の中から下だと思うのです、それはわかりませんけれども。そういう場合、合理化、設備の近代化、こういう中で、自分たちめんどうくさいからという形の中でここへ逃避しよう、積極的な意味でなくて消極的な意味において協業組合を利用しようとする人も出てこないとも限らないと思うのです。そうしたときに、協業組合は、いわゆる人員整理ないし経営の不手ぎわを解消するための隠れみのにならないとは断言できないと思うのです。それを指導するといっても、単なる指導だけでは終わらないと思うわけです。したがって、これが発足に際して、そういう点について十分なる配慮がなければ、協業組合をつくったことは世界で初めてだということですから、大きな問題を出す可能性を持っておる。いま少しく明確にその点についての答弁を聞いておきたいと思います。
  116. 影山衛司

    ○影山政府委員 協業組合は、小規模の人たちの同志的結合によりまして運命共同体をつくるわけでございますので、消極的なあるいは逃避的な意味で入ってくる人たちは、私はいないのじゃないかと思うわけでございます。それと同時に、加入につきましても、加入について協業組合の承諾を得るということにもなっておりますので、そういう点で、そういういいかげんな気持ちで入ってくる人は承諾をしないということになると思います。先生御心配の点は万々ないというように考えておるわけでございます。
  117. 佐野進

    ○佐野(進)委員 協業組合のほうはその程度で、最後に小規模企業共済法のほうを……。  さっきもここでいろいろ質問しましたから、大体質問は終わりましたけれども、説明の中に、各種保険制度上十分な恩典が受けられない、そのために小規模企業共済法を出すのだ、こういうぐあいに言っておるのですが、各種保険の恩典を受けられないという各種保険の恩典——ここに書いてあることは書いてあるけれども、ひとつ具体的に聞いておきたいと思うのです。
  118. 影山衛司

    ○影山政府委員 たとえば健康保険等につきましては、小規模企業者のうち個人事業者は加入できないことになっております。それから労災保険についても同様でございます。それから厚生年金につきましても個人企業主は加入できないというようなことになっておるわけであります。この個人企業主の人たちは、やはり自分でも額に汗して働いておるような人たちでございまして、ちょうど労働者と同じような状態にあるわけでございます。そういう点で、社会保険的な恩典も受けてない。そこで、小規模事業者の人たちが廃業のやむなきに至るとかいうようないろいろな場合におきまして、小規模な人たちが、それでは共済制度によって、自分たちが相互扶助のためにそういう制度をつくろうじゃないかというような場合におきましても、資力等がございませんので、これは自分だけではできないということで、今度小規模企業共済事業団という国の制度を介しまして、相互扶助によりまして、いわばこういう小規模事業者のための制度をつくったような次第でありまして、そういう点で、制度といたしましては、私どもは、従来の小規模事業対策でカバーし得なかったような点もここでカバーをする第一歩を踏み出したというように考えたわけでございます。
  119. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私の聞かんとし、言わんとするところは、小規模共済制度というものを今度新しいのをつくり、前のと二つつくる、いろいろ議論はありますけれども、大筋としていいことだと思うのです。したがって、この制度そのものを発展させていくために、この法律が通ればもっと努力することもたいへんけっこうだと思う。ただ、小規模の中でも特に零細の人たちが各種保険の恩典を受けられない、こういうことでは、だからこれだということにはならないのですよ。零細というのは、全く一人か二人の人で、自分のうちで仕事をやっておるのでしょう。それが一人人を使っておるからということでいま言われたような各種保険その他の優遇が受けられない、こういうことではならぬと私は思う。したがって、こういうことについて、中小企業庁あたりは、もっと積極的に受けられるように努力すべきではないですか、それだけを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  120. 影山衛司

    ○影山政府委員 先生御指摘の点、もっともな点でございまして、私どもも今後そういう方向で、個人事業主もひとつそういう社会保険制度の恩典に浴し得るように、われわれがつくっております制度に加えてひとつ充実をはかってまいりたいと思います。
  121. 佐野進

    ○佐野(進)委員 質問はまだありますけれども、時間がたっておりますので、これで終わりたいと思います。
  122. 島村一郎

    島村委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十九分開議
  123. 島村一郎

    島村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法案及び同じく商品取引所法の一部を改正する法律案を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。古川喜三君。
  124. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 私は、繊維産業が国際競争力をつけるために、あるいは国内の情勢の変化に対処するためにこの法案が提出されてきたことは理解できるのでありますが、大体日本の財界においても大の部に属する九大紡から家内労働をもってする機屋さんまでもひっくるめて、この法案だけではたして国際競争力を血化したり、あるいは近代化したりすることが可能なのかどうかということに対して大きい不安もありますし、多少の疑点もありますので、御質問申し上げたいと思うのであります。  最初に大臣にお願いしたいと思っていたのですが、大臣がまだ出てきておりませんから、次官でも局長でもけっこうですが、大体繊維産業の構造改善と近代化政策の推進が必要であるという論理を、繊維独占資本の国際競争力を強めるという論理にすりかえて、その結果、基本的な解決策も、経営規模の拡大によるコストの低下、独占化、寡占化による市場の安定に中心が置かれて、そのため過剰生産力の排除というものは、零細企業のスクラップ化によって排除していく、近代化は大資本のビルドの推進によって行なっていこうというふうな傾向が見受けられるように感ぜられるのであるが、そのことに対してはどのように考えておられるか、それを御質問申し上げたいと思います。
  125. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えを申し上げます。今回の繊維の構造改善対策は、紡績と織布、綿紡績、綿スフ紡績とそれから綿スフ織布及び絹合繊織布と三つのものを対象にしてさしあたり考えておるわけでございますが、この中心をなしまするのは、一言で申し上げますならば、国際競争力の強化ということばで説明できると思うのでございます。日本の紡績も織布もほとんどが中小企業者でございまして、織布はもちろんほとんど全部が中小企業でございまするけれども、紡績におきましては、世上いわれます九大紡のような大きなものもございまするが、これは全体の生産力の四割を占めるにすぎませず、それ以外は中堅企業ないしは非常に多数の綿紡績業三百五十社といわれておりまするが、その中の二百数十社は中小企業でございます。この中小企業がどのような地位に置かれておるかと申しますると、ただいま特異な事情で若干相場がよく、一息ついておりまするけれども、その構造改革対策を審議されました当初の不況時代におきましては、いわゆる新法不況といわれることばが出ておりまするけれども、非常に塗炭の苦しみに落ちておりまして、業界が崩壊の危機に瀕しておったのでございます。それはこの業種の持っております宿命的な過当競争が表面的に出てきておるわけでございまするけれども、中身は構造的な弱さ、すなわち企業が非常に多数あって、しかも規模が小さくて、過当競争の結果、収益力がなかったために設備の近代化が非常におくれておる、こういうふうなことでございまして、従来日本の繊維産業は、輸出産業の中の大宗として世界に雄飛したのでございますけれども、韓国でございますとか台湾、インド、パキスタン等々の後進国の追い上げの結果、競争力は日に増し衰えてきておった、こういうのが背景でございます。一面、国内の労働事情は、はなはだ繊維産業に非でございまして、かつての繊維産業は若年の豊富な女子労働力を中心に構成されておったのでございますけれども、これが労働需給が一変いたしまして、中小の紡績業におきましては、賃金の上昇のみならず、所要の労働力を獲得できなくなったというふうな事態に入っておったわけでございます。一言で申し上げまするならば、この構造改善対策を立案いたします当時、放置しておきますならば、織布業はもちろんのことでございますけれども、紡績業、その大宗をなす中小企業をもって構成される紡績業も崩壊しかかっておった、こういう事態に立ち至ったのでございます。その結果、今回の対策でねらっておりまするのは、何とかしてこの衰えかかった業種に国際競争力を回復させなければならないというところに中心を置きまして、当然これは設備の近代化、いわゆる労働集約産業から資本集約産業への脱皮でございますけれども、設備を近代化いたしまして、そして十分国際競争力もあるような産業に立て直そうというのが、今回の構想の骨子でございます。したがいまして、一見、過剰設備の処理の結果、零細紡績業が犠牲をこうむるというように見られる点があるかという点は、これは全くそうではないのでございまして、過剰設備を処理いたすことによりまして紡績業の収益力を高める、収益力を高めることによりまして、当然そうなりますと金融もついてまいりますし、資本の自己蓄積もできまするので、この金融及び資本の自己蓄積、特に政府の強力なる援助によりまして中小企業を非常に多数かかえる紡績業の設備の近代化をまず進めたいというのがねらいでございます。一括処理は、これは手段でございまして目的ではございませんので、ねらいは、いかにして労働集約産業から資本集約産業に脱皮をするか、それをねらったのが今度の構造改革の骨子でございます。
  126. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 局長はいま非常に詳しく繊維工業の置かれておる今日の状態からいろいろ御説明があったのでございますが、そうであればまことにけっこうでありますが、これからそのことについて条を追うて質問をしていきたいと思うわけであります。  いま内外情勢の変化に対処するためのいろいろの目的等も述べられたのでありますが、言われておりますように、国際競争力についての判断とこれを強化するという可能性について、はたしていまの構造改善でどの程度の競争力をつけ、それを強化していくことができるのかということを、第一条に書いてあることでありますが、御質問申し上げたいと思います。
  127. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 紡績業と織布業につきまして申し上げます。まず、ただいま国際競争力ということを申し上げましたので、当然諸外国、特にわれわれが現に直面いたしておりますのは発展途上国の国際競争力でございますけれども、われわれが調べたところによりますると、紡績の例をとってみますると、現在日本は、先ほど申し上げましたように、ほとんど大部分が五万錘以下の企業でございます。五万錘と申し上げますのは、われわれの試算では量産番手におきましては五万錘というのが経済規模として絶対に必要であるというふうに考えるのでございますけれども、この五万錘以下の企業が大部分でございます。しかもわが国の繊維産業、紡績業は女子労働を中心といたしますために、主として二部操業でございます。ところがこれに対しまして、発展途上国、たとえばインドのごとき、ないしはパキスタンのごとき、インドにおきましては五万錘以上が紡績の規模というふうになっておりまするし、またほとんど過半数がスリー・シフト、三交代制になっております。パキスタンにおきましても同様でございます。このような低賃金、御承知のように日本に比べますと非常な低賃金でございますが、低賃金に加えまするに経済規模を持ち、かつ三交代でやっておる。これに対処してまいらねばならないわけでございます。したがいまして、私たちのこれからのねらいは、紡績業につきましては急速なる近代化を行なう。現在千二百五十万錘、錘数がございますけれども、この中で、できるならば三百万錘程度の錘数を減らしまして、残りのものを全部近代化をいたします。関連施設も入れますと、二千億程度経費と申しますか投資を要するかと思うのでございますけれども、近代化をいたします。この生産性の向上の一つの指標を申し上げますると、現在一こうりつくりますのに六人弱の人がかかっておるわけでございますけれども、これを三人を割る数字まで持ってまいりたい、二人台の数字に持ってまいりたい、これが一つのメルクマールでございます。それから規模におきましては、先ほど申し上げましたように、量産番手につきましては五万錘程度にいたしたい。量産番手と申しますのは、御高承のとおり綿糸の中では二十番手、三十番手、四十番手、これが一番多く使われるものでございまして、全体の生産量の中の七割強を占めるものでございまするが、この量産番手におきましては理想としては、さしあたり一企業五万錘まで持ってまいりたいということをねらっております。さらに三交代及びいわゆるラージパッケージとかオートワインダーとか、こういう近代化設備をすみやかに導入をいたしまして、三百万錘弱のものは、この目標年次、すなわち四十六年度におきましては三交代まで持ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。  織布におきましては、現在これはもう紡績以上に非常に低収益に悩み、老朽化をしておるのでございますけれども、この現在の老朽化設備、耐用年数をオーバーしておる織機が現在三十万台にのぼるのでございますけれども、目標年次の終わりにおきましてはこれを半分にいたしたい、そうして単に老朽化設備をなくするだけではもちろんございません。中心設備の近代化でございますので、直接設備だけで千三百億程度の投資をいたしまして、そして現在の老朽化しておる織布産業を世界の一流の産業に持ってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  128. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 次に伺いますが、この法律において特定繊維工業といっておるのは、具体的には何をさしていっておるのか、質問したいと思います。
  129. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えを申し上げます。この法律におきまして特定繊維工業とは、この法案の第二条におきまして定義がございます。紡績におきましては、「別表第一号に掲げる紡績糸を製造する事業」ということでございまして、いわゆる綿糸、スフ糸等を中心にするものでございまして、現在新法において第一区分といわれているものと大体同様の範囲でございます。  それから第二は織布業でございまして、第二条の後段にございますように、「同表第二号に掲げる織物を製造する事業」ということでございまして、それによりますと、綿織物、スフ織物、合成繊維織物、人絹織物、絹織物ということで、その中で特定のものが除かれておりますが、大体いわゆる綿、スフ、合繊、絹、人絹織物を申します。
  130. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 繊維工業が国際競争力やあるいは国内における情勢変化に対処するためには最も必要であると思われる染色整理業やあるいは繊布業、縫製業、メリヤス業などを、どのように今後措置していかれる予定であるのか。むしろ染色業などはいまは非常に不況にあえいでいる業態であるが、このことは午前中の協業化、共同化の問題において、中小企業のほうでも問題にはなりましたが、繊維局としてはこのことに対してどのような見解を持っておられるのか、お伺いしておきます。
  131. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、繊維産業の中で染色整理業、メリヤス製造業は非常に重要な地位を占めております。紡績、これは従業員数で見ましても、紡績業、撚糸業が構成比で約二割、織物業が二割八分を占めておるのに対しまして、染色整理業は約一割、それからメリヤス製造業は一割弱というふうな非常な高承を占めており、御指摘のとおり重要産業でございます。特にこれからわが国の繊維産業は高級化してまいらなければならない。高品質のものになってまいらなければならない、これが発展途上国との競争に対処する重要なポイントであると思うのでございますが、その場合におきます染色整理業の地位は非常に重要でございまして、御指摘のとおりでございます。それからまたメリヤス業でございますが、これはわれわれが衣服、衣料にいたします場合に、織物にいたしますか、結局メリヤスにいたしますかということでございまして、特に近時メリヤスの部分がふえてきており、非常に大事なもので、織物だけをやりましたのではこれは非常に片手落ちと申しますか、未完成の対策であるということは重々考えておる次第でございます。ただ、今回の構造対策におきましては、まず業界の自発的な体制、責任体制、熱意と申しますか、これが十分なものをまず取り上げるということにせざるを得ない、国家の助成措置の効率的な運用からいたしましても、そういうやり方をせざるを得ないと思うのでございますが、そういう点とともに、染色整理業におきましては相当業界も熱意に燃えてきておるようでありますけれども、さらにまた重要なのは、いかなる手を用いまするならば構造改善対策としてきめ手になるであろうかという点でございます。織物業につきましては、この点についていわゆる産地主義、組合主義というような集落をなしております生産形態をつかまえて一つの対策を今回打ち出したのでございまするけれども、染色整理業、メリヤス業につきましては一体どういう対策がきくのか、最も有効な対策であろうか、この勉強をする必要があろうと思うのであります。通産省といたしましては、本年調査委託費といたしまして二千万円を計上いたしまして、染色整理業、メリヤス業を取り上げまして、真剣にこの業種の勉強に取りかかった次第であります。
  132. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 いま局長業界の自発的な要請に基づいてという答弁をしておられるわけでありますが、われわれのいろいろな調査では、必ずしも末端までこの業界の繊維の構造改善というものが徹底はしておらない。したがって、自発的な要請ということもどの部分から出ておるのかということについて疑問を持つわけですが、その点をもっと明快にしていただきたいと思います。
  133. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 自発的な熱意というふうなことばを私が申し上げたと思うのでございまするけれども、業界が要請してくるから取り上げるとか取り上げないとかいう問題ではもちろんないと思うのでございます。先生もおそらく、もうちょっと通産省としては業界に対して、政府はこういういいことをやるのだということを啓蒙すべきではないかという点を御指摘であろうかと思うのであります。実は私たちもほんとうに痛感をしておるのでございます。織物業はじめ他の繊維産業に対しまして、通産省といたしましては業種ごとに真剣に構造対策に突っ込んでまいりますそのまずモデルケースといたしまして、織物業の二つを取り上げましたということを申し上げておる次第でございますが、この織物業におきましては、先ほども申し上げましたように、現在の日本の繊維産業が各国の繊維産業、特に発展途上国の繊維産業とぎりぎりの競争関係に立っておって、一番最前線でさしあたりの問題としてあぶない地位に立っておるのがこの綿スフ織物業と絹合繊織物業であるというふうに考えまするし、また業界もそれをひしひしと身にしみて感じておると思います。こういうことが業界側のこり固まった熱意と申しますか、体制になってきたのではないかと思うわけであります。ただ綿スフ織物業及び絹合繊織物業におきましても、その業界全部を今回の構造改善対策の対象にしようという立て方には今回の施策はなっておりませんので、綿スフ織物業の中で特に体制の固まった産地、それから絹合繊織物業の中におきましても体制の固まった産地、この産地が対象として取り上げられるというふうに考えておる次第でございます。
  134. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 先ほど局長は、染色整理業やあるいはメリヤス業の構造改善を含めないということは未完成であるということばを使っておるわけでありますが、われわれもそう考えておるわけです。特に午前中問題になりました共同化につきましても、メリヤス業なんかは入っておらない。こういう点から見ましても、すみやかにその対策というものを講ずべきであると思うわけです。往々にしてこういう場合、二千万円の調査費がついてこれから調査しますということでありますが、局長は勉強ということばを使っておられるわけですが、この勉強というのはどういうことをさして言っておられるのですか。これらの繊維関係にも資本の装備とかあるいは加工の技術とか、近代化ということを進めていくための勉強ということなのか、この辺はっきりしていただきたいと思います。
  135. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ただいま勉強と申しましたのは、通産事務当局におきます勉強を申し上げたのでございますけれども、これはまず業界の実情をつかまえる必要がある。もっともこの実情につきましては、この両業界ともすでに近代化促進法の指定業種でございまして、一応の調査はできておるのでございますけれども、いよいよ構造改善対策の対象業種としてほんとうに突っ込んだ対策をこれから考えてまいります場合は、もっともっと立体的な勉強をわれわれいたさねばならない。設備の現状だけではございません。どのようにして原料を仕入れ、どのように製品をさばくかという、いわゆる原料なり製品なりの流通経路の勉強も必要でございますし、海外の販路の勉強もせねばならない。さらにまた設備におきましても、いかなる設備を入れたならば、また現在の設備をどの程度にしたならばこれが能率的な設備になるのか、またいかなる設備を入れるならばこれが海外との競争についていけるのかという目見当もつけなければならないと思います。またそれに所要の資金につきましても、単に客観的な資金量をつかまえるだけでなくて、業界がどの程度の負担力があるのか、また政府としてどの程度のお世話ができるのか、その見きわめもつけなければならないというふうに思うわけでございます。われわれといたしまして、まず役所側の勉強を一生懸命いたしまして、それとともに業界にも勉強をお願いをせねばならないと思います。先ほどもちょっと触れましたけれども、構造改善をいたします主体は、政府ではなくて業界でございますので、業界のほうの勉強もお願いをする、両々相まちまして相当程度の勉弧ができました暁におきましては、繊維工業の審議会がございますが、この審議会で審議をしていただくというふうに今後取り運んでまいりたいと思う次第でございます。
  136. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 次に、現在の需給状況はどうなっておるのか。いまの糸の相場から見て、過剰精紡機というものがあるのかないのか、この点について御質問申し上げます。
  137. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。繊維品はいろいろなかっこうに変わります。綿が糸になり、布になり、縫製品になるというふうに変わってまいりますので、私たち需給状況、特に設備関係の過剰を見ます場合、糸ベースの、糸に換算いたしまして考えておるのでございますけれども、私たちのそろばんでは四十二年度の糸需要は、これは糸は御高承のように、紡いだ糸と、それからフィラメントと申しておりますが、人絹とかナイロンのまっすぐの糸とか、こうあるわけでございますが、この糸需要全部で、四十二年度百七十万三千トンというふうに需要を置いております。この中で紡績の糸、先ほど申し上げましたように紡いだ糸でございます。これが百三十万三千トン。それからこの紡績の糸の中には毛糸でございますとか、麻の糸とか、いろいろあるわけでございますが、今回の対象にしております綿、スフ、合繊糸、これが百十万トンというふうに考えております。その中でさしあたり過剰設備の対象となりまする第一区分の糸、これが九十五万八千トンというふうに考えております。九十五万八千トンに対しまして、第一区分のこれを紡ぐに要します紡機錘数は千九十三万——えらいこまかい数字でございますが、千百万錘弱、千九十三万錘あればよろしいというふうに考えている次第でございます。
  138. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 ちょっと局長のお答えが丁寧過ぎてややピントがはずれているという感もするのですが、もっと端的にお答えを願いたいと思います。  では、昭和四十六年度で大体所期の目的を達するように言われているわけですが、昭和四十六年度における生産の数量、あるいは生産の能力、あるいは特定精紡機の錘の数、その他構造改善事業の目標をどの程度に置いておられるのか、御質問申します。
  139. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず、ただいま御質問の四十六年度の糸の需要数字、それから必要な紡機の錘数を申し上げます。四十六年度の糸の需要は百九十五万トン、そのうちに紡績糸は百四十一万八千トン、うち綿、スフ、合繊糸は百十八万八千トン。で、第一区分の糸といたしましては百四万一千トン、これに所要の紡機錘数は、国内の紡機錘数といたしましては千十万錘というふうに考えます。  次の御質問の、四十六年度にどういうふうな目標を掲げておるのかという構造改革の目標でございまするけれども、ただいま申し上げましたような数字の糸、紡績の錘数に持ってまいって、この場合の能率は現在平均一コリ当たり五・四人でございまするが、これを二・九人に持ってまいりたい。それから労働力の点でございまするけれども、現在紡績の従事人員十四万人でございまするけれども、これが省力化されまして、十万人程度でおさまる。それから先ほどもちょっと申し上げましたけれども、企業の規模が五万錘程度以上になるべく持ってまいる、それから三交代は二百五十万錘に持ってまいる、それからさらに近代化を進めまして、自動連続方式を百万錘、またラージパッケージ方式を百五十万錘という近代化設備を導入いたしたい。なお中小企業者が多数あるということを先ほど申し上げましたが、極力グルーピングをはかりまして、企業規模の適正化をはかってまいりたいというふうに四十六年度考えておる次第でございます。
  140. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 なぜこういう質問をするかと申しますと、四十六国会において繊維工業設備等臨時措置法の成立の際には、この法をもって繊維工業の合理化を促進し、繊維製品の正常な輸出の発展をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与するということをはっきり政府は明言しておられるわけであります。にもかかわらず今日こういう状態を来たしておるということを考えて、将来のことについての質問をしたわけですが、この過剰設備の処理と並行して、いまほど申されました近代化されていく紡績の自動化あるいは連続化、設備の更新などによって、また四十六年度の時点において再び設備の過剰というものを来たさないのかということが先ほど質問した本旨なんです。このことについてははっきり明確なお答えをしておいていただきたいと思うのです。
  141. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 新法制定当時、過剰紡機を格納したわけでございます。したがいまして、その格納数について適当であり、また格納をする前の前提条件の需給想定において適切でございますならば、不況の影響がかりに相当ございましても、今日のような過剰設備がなお存在するということにはならないはずでございます。その辺は私は率直にこの席でおわびを申し上げるのでございますけれども、実はこの前の新法のときの需給想定に非常に大きな誤算がございました。それは何かと申し上げますると、紡機の生産性でございます。一錘当たりの生産力がわれわれの推定をはるかにオーバーいたしまして、この数年生産力が増大をいたしたわけでございます。これは国民経済全部から考えますると、非常に合理化が進み、設備改善が進んでけっこうなことであったのでございまするけれども、その辺の見通しがわれわれに十二分につかまえられなかったということが、現在なお新法によってスクラップ・アンド・ビルドをいたしながら、相当数の過剰処理をしかも一括してやるというふうな強硬手段をとらざるを得なくなった原因でございます。  それならば四十六年度の目標はどうか、その辺について心配ないかという御質問でございまするけれども、過去の経験にかんがみまして、今回は十二分に慎重に勉強をいたしまして、推算をいたしておるつもりでございます。
  142. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 次に関連労働者に対する配慮の問題でございますが、過剰設備の廃棄及び労働集約的産業から資本集約的産業への移行によって、四十二年度における事業計画においてどの程度の失業者と配転業者が出るということを見込んでおられるのか、御質問申し上げます。
  143. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私ども全体の数字を申し上げましたように、現在十四万人が四十六年度には十万人弱——私たちの推算でございまして、こまかなことまでどうかと思うのでございますが、一応九万九千八百人という数字をはじいておりまして、四万二百人の省力化がはかられるというふうにわれわれは推算しておる次第でございます。もっともこれは、四十六年度ないしはその中間の各年次におきましていわゆる人員整理が行なわれて、四十六年度にこのような数字になるというふうには実は私たち考えておりません。御承知のとおり、この十四万人の内訳は、女子労働者が十一万六千名でございます。女子労働者の中の中高年齢層は五千七百人、その他が十一万三百ということで、三十五歳未満の若い人は十四万人の中の十一万人というふうに、大部分でございます。現在女子労働者につきましては、毎年三割程度の退社率になっております。四十年の例を見ますと、年中の退社数は三万三千三百八名、退社率が三八・三%、四十一年は年中の退社人員が三万四千四百二十八名、退社率三五%ということでございまして、毎年非常に多数の女子従業員がやめていく。この補充を毎年やっておるわけでございますけれども、充足率はだんだん下がってまいりまして、四十二年の三月の中卒の女子採用人員は二万二千五百名、四十一年は二万七千名採り、四十年は三万三千八百名採っておるのでございますけれども、四十二年は三万五千人やめて二万二千人しか採れないというふうな状況で、紡績会社は人手不足に毎年苦しんでおる、したがいましてやむを得ず臨時工を使っておるという状況でございます。私たちがこういう省力化対策というものを進めておりますのは、また業界のほうで必死になっておりますのは、人の整理をするのではなくして、人が採れないので何とか人手のかからない設備でやっていかなければならないというところに重点がございますので、おそらくほとんど整理はしないで行なわれていくのではなかろうか。ただ男子従業員がございまして、その中に若干の中高年齢層、三十五歳以上の方がおられます。四十二年の初めの調査によりますと、十四万の中で男子従業員が二万四千名、その中で中高年齢層が一万一千六百名、これが四十六年の目標年次におきましては大体一万名、したがって、五年間に千六百名の中高年齢層の減少が一応計画上できるわけでございます。これにつきましては、万全の措置を講ずる必要があり、また講じたいというふうに考えております。
  144. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 局長答弁しておられるのは、全国を一律にした場合の退社率あるいは充足率を言っておられるのであって、ここにやはりアンバランスがあると思います。特に転廃業者予定しておられることですし、当然部分的には失業者が出たり転廃業する人が出てくるはずなんです。いまの局長答弁だと、いや、年々足りないので、やめていくより充足率のほうが少ないかち心配ないのだというふうにしか受け取れないのですが、それだけじゃ答弁にならないのです。その点カタツムリじゃあるまいし、家をかついでどこそこへ行くというわけにはいきませんから、平均した場合にはそういうことになるでしょうけれども、部分的には失業者も出るし、転廃業者も出てくるだろうと思うのですが、それは全然ないのですか。
  145. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生御指摘のとおりでございます。全体の数字はいま申し上げましたようでございますけれども、これは計画でも五年間に三十万錘を見込んでおるのでございまして、個々の会社が転業し、廃業する、したがってそこに従事しておられる方の再就職の問題が当然起こるのでございます。実はいままでも、これだけ人手不足というときでございますけれども、起こっておるわけでございます。ただ幸いにして労働需給関係相当逼迫をしておりますので、この辺につきましては、通産省といたしましても十二分に業界と連絡をとり、また特に労働省とは密接に連絡をとっておるのでございますが、職業の再教育でございますとか、ないしは職業の広域あっせんでごさいますとか、このような現在ある制度を十二分に活用してくれるようにということを労働省にも頼んでおります。個々の事態につきましても、われわれは聞き知りますと、できるだけのことはやってきたつもりでございますし、また今後とも努力してまいりたいというふうに思います。
  146. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 局長は、最初の答弁にあったように、全国一律に見て退社率が多くて充足率が少ないという考え方に立っておられる。それで転廃業者に対する技能の再訓練とか、あるいは同じ職業につくにしても遠くへ居住地を変えなければならないので、住宅の問題などが出てくるはずでありますけれども、そういう考え方を持っておられるから非常に冷淡な考えのように聞こえるわけであります。そしてまた、この法案にも関連する労働者対策というものはわずか一行しか書かれておらない。具体的にはどうするのかということが全然書かれてもおらないし、また現実にそういうことを頭の中で考えてもおられないのじゃないか、そういうふうにしか受け取れないわけなんです。そうでしょう。何かそういうことのために具体的な対策というものはあるのですか。たとえば転廃業に対する再雇用の技術訓練をやるとか、あるいは同じ職業につくにしても居住地を変更しなければならないから、住宅対策はどうするとか、政府がそれをやらないにしても、業者とそういう話し合いがついているのかどうか。そういうことはやはり労働者に対して非常に不安を与える問題だと思うわけです。そのところをもっとはっきりお答え願いたいと思います。
  147. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私の説明がどうも足りなかったためだと思いますが、通産当局は労働問題に非常に冷淡ではないかという御注意といいますか、おしかりがあったわけでありますが、実はこの構造対策をやります場合にわれわれが一番一生懸命にならなければいけないのは労働問題だと思います。大きく見ますと、国民の所得を増すためにこういう構造対策をやるわけでございますけれども、それは結局従事しておる労働者の福祉になりますから、経営者も一生懸命になるわけでございまして、実はグルーピングをやる場合におきましても、労働者の適所適材の配置だとか、それから住宅の問題とか、これはわれわれも中に入りまして、経営者が注意をし、一生懸命考えておる問題でございます。私たちいままで幾つも実は例があったのでございますが、先ほど申し上げましたように、現実に転廃業、特に廃業が行なわれる。特に一番心配しておりますのは、経営不振のために廃業をするということであります。転業の場合におきましては、比較的経営者にもまだ余力があるのでありますけれども、経営不振によります廃業の場合をどうするかということが心配になるわけでございます。この辺につきましても、実は今回の構造対策で特に中小業者の転廃業設備は事業協会で一錘六千円で買いますというようなことをきめておりますのも、実は離職者と申しますか、従事労働者に対する対策がある程度、十分とは言えないまでも相当できるようにという点を考えたのでありますが、実は労働省とも十二分にこの辺は話し合いを進めておりまして、雇用促進事業団によります雇用促進の一般対策がございますが、これは繊維の場合、もしそういう事態が起こったら優先的に考えてもらうようにということとか、それから職業転換給付金を活用するとか、または職業あっせんの強化、この辺は労働事務当局とも十分連絡をとり、かつお願いをしておるわけでございます。
  148. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 相当時間もたっていますから、飛ばしていきますが、次に織布業の構造改善に触れてみたいと思うわけであります。  織布業の場合は、綿・スフで一万六千六百十六企業、織機台数は四十二万四千台、そのうち五十台以上は千三百八十五企業、五十台以下は一万五千二百三十一企業といわれているわけであります。また絹・人繊では二万七千二百四十三企業、織機台数で二万四千七百台、そのうち五十台以上は五百九十企業、五十台以下は二万六千六百五十三企業ということで、多くの零細企業が乱立しているわけであります。これを、各産地の特性に応じた構造改善を推進させる、あるいは商工組合はみずからの発意で事業計画を策定しておるということを言われておりますが、これだけの零細企業が乱立しておって、そこの産地の組合だけではたしてこれが自発的にみずからの発意で適正規模の協業化というものができるのかどうか、その見通しをどのように考えておられるのか伺いたいのであります。
  149. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでございまして、今回の織布の構造改革は、産地別に、しかも産地が自主的に計画をつくり、通産大臣が承認をする、役所が受けて立つというかっこうになっておるわけでございますが、御指摘のように産地はその点人的にもなかなかそろっておりません。通産省といたしましては、すでにもう何回にもわたりまして産地に対する指導を行ないまして、実は産地別の担当者まできめまして、そうしてこの計画作成に助力をしておるわけでございます。幸い、おそらく初年度の綿の二十数産地、絹紡繊の四産地につきましては、相当スムーズに進んでいってくれるのではないかというふうに期待をしておる次第であります。
  150. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 局長はいま、産地に対してはいろいろ指導もし、あるいは担当者をきめて取り組んでおるということを言われておりますが、そこにもわれわれの不安に思っておるところが出てくるわけなんです。というのは、零細な家内労働を主体とした機屋さんなんかは、いまだにこの構造改善事業というものはどういうふうになされていくのか、自分たちの将来はどうなるのかという不安を持っておるわけなんです。にもかかわらず、局長のほうでは、もうすでに産地と話し合いが進んでいる、あるいは担当者をきめて盛んにPRをやっておられるようにも聞こえますけれども、まだまだ徹底しておらないとなると、いわゆる零細企業というものは切り捨てられていくのじゃないかという不安が出てくるわけであります。たとえば、みずからの発意で適正規模になるようにいろいろな事業計画をつくるといっておりますけれども、現実に家内労働を主体として、おれはこれでもやれるのだ、これでやっていきたいのだと考えておる人たちはどうなるのか。そういう人たちは将来一切めんどうを見ないということなのか。いわゆる産地組合に全部吸収されないものは一切めんどう見ないというたてまえなのか。それはそれとしてやむを得ない、そういう零細企業はやむを得ないとすれば、そういう人たちのめんどうをどのように見ていこうとするのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  151. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 今回の織布の対策の特色は産地中心でございまして、産地で同種のものをつくっておる機屋さんは産地の計画の中に組み入れられて、有機的に構成された産地がここにでき上がるということが絶対に必要であるというふうに思います。零細であればあるほど、むしろ産地の組合を中心にして固まっていく必要があると思いますし、また各業者の各組合の中央の連合会、すなわち綿でございますと綿・スフ工連、絹・人繊は絹・人繊工連の組合の各リーダーの人たちも、とにかく趣旨の徹底をはかるという努力をいたしております。特に県も全力をあげて趣旨徹底をはかり、極力零細な方々を中に織り込んでいく、またそのことが零細な方々の生きる道であるというふうに、いま指導をやっておる次第でございます。
  152. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 零細であればあるほど、組合をつくって今後の事業の発展を期していくのは当然である、必要であるということだけの説明であったわけですが、現実にはなかなかそういうわけにもいかないとも思いますし、あるいは局長の言うとおりスムーズにうまくいくこともあるかもしれない。ただ、やはり家内労働を利用しながら細々とどうにか生活が確保できるとすれば、日本の国民はなかなか協業化というものは好まないし、あまり共同性にたけておる国民性ではないから、ややもすると一国一城のあるじとしてやっていこうとする者もあるかもしれない。局長の説明はそれで理解できますが、入らない場合の人はどうするのか。そういう者は今後一切めんどうを見ないということなのか、何が何でも入れという強制なのか、そこを簡単でいいですからお願いします。
  153. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 簡単に申し上げまして、製品に二種あると思います。零細というか、非常に小さい規模でもって十二分にやっていけるもの、極端な例は京都の西陣織り、これあたりはむしろ小さいほうがかえっていいものができる、こういうふうな製品の質で小さくていい方々に対しては、近代化資金制度を活用し極力御援助申し上げていく。しかし、いわゆる量産をしないとどうしてもいかぬというものがございます。ないしは輸出されているものは主としてそういうものでございまして、先ほど先生数字を御指摘になりましたが、インドにおきまして織機は三百台以上が八四%、それからパキスタンにおきましても三百台以上が五一%、台湾におきましても三百台以上が七二%というふうに集中してやっておるわけでございます。したがって、量産ものにつきましては、どうしてもやはり規模を大きくしていかないと生きていけないということに相なるので、構造改善計画の中に入っていただいて、そして計画の中で生きていく、繁栄していくというふうに指導してまいりたいと考えます。
  154. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 次は課税の特例でお尋ねしたいのですが、近代化に伴う合併、解散あるいは買収などによって生ずる譲渡所得だとかあるいは清算所得、合併差益に対して、非課税の措置あるいは一定期間の法人税の減免などを講ずべきだと思うが、この法案には租税特別措置法で定めるところによるとしか書かれておらないわけですが、このことに対してどのような見解を持っておられるか、承りたい。
  155. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この法案によります特別の制度としては、いま先生御指摘のような場合はございません。ただ、合併等規模の拡大の一般税制がございまするので、これの適用によってやってまいるというふうに考えております。
  156. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 わが党の繊維に関する専門の各位がまた御質問になると思いますから、私はごく簡単に打ち切りたいと思いますが、資金の問題について少し伺いたいと思うのです。協会は信用基金の制度を設けて、この制度は貸し付けが主体なのか、あるいは債務保証が主体なのか、それを簡単に承りたいと思います。
  157. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 結論を先に申し上げますと、債務保証が主体でございます。と申しますのは、産地の組合中心に構造改善をやっていくわけでございますが、産地の組合も別に担保をそう持っているわけでもない、融資能力もございませんので、近代化設備に対する三〇%の組合負担分とか、あるいは取引改善のための糸買い、布売り資金でございますとか、こういう組合が調達しなければならない資金、これについても信用力を補強いたしますために、この基金を使いまして保証をしてまいりたいと思っております。   〔委員長退席、小川(平)委員長代理着席〕
  158. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 これは中小企業の金融問題でよく論議をされるところでありますが、信用保証協会等が債務保証をして中小企業者は金を借りる制度になっておりますけれども、直接金を出すのは銀行であるということで、取引のない業者とか、あるいは銀行から見て不安と感ぜられるものには金を貸してくれないという非難が各地で起きているわけなんです。したがって、この協会でもこういう信用基金制度を設けて債務保証を主体にしても、はたして金融が円滑にいくのかどうか、金融の面からいろいろ不当な介入が行なわれてくる結果を生まないのかということが心配になってくるわけですが、その点はっきりしていただきたい。
  159. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりで、その点につきまして私たちいろいろ腐心をしておるところでございます。従来中小企業金融を政府がつけましても、まるまるこれは見るわけにもいきませんし、また担保力もない。今回におきましては政府サイドと申しますか、府県も入れまして、必要な近代化資金を七割融資するということで財政当局にも頼んだわけでございますが、残りの三割分の組合負担分はどうするかということから、この信用基金の制度、保証制度、これを考えたわけでございます。事業協会としても適当な担保もない、もちろん組合員と産地の組合の間におきましては、これは準備金制度に基づきます納付金等の裏打ちはあるわけでございますけれども、組合に信用をどうしても何か補強する手はないかということで、特に五億の出資を事業協会にいたしまして、そうして五億の出資を基金として産地の組合に信用補強をするということを考えたわけでございます。しかしさらに、これでもなかなかいま御指摘のように金が出てまいらないのではなかろうかということで、この産地の構造改善計画は産地ぐるみの振興をねらっておるわけでございますから、産地の金融機関としても当然ひとつここに助力をしてもらいたいということで、この産地の構造改善計画をつくります場合には、産地別に指導援助委員会というものが設けられることになりまして、この指導援助委員会のメンバーは府県、市町村の人、また関連業者方々もありますが、特に地方の金融機関の人に入っていただきまして、この構造改善計画を立案するときから一緒に産地ぐるみの振興をはかるという意味で相談に乗っていただくということ、したがいまして、この計画が実現される暁におきましては、産地の地元金融機関におきましても相当の援助をしていただけるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  160. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 その点はいままででも信用保証協会のあり方等でも非常に論議をされておる点でありまするし、局長がいまほど答えた点で十分納得しておるわけではございませんが、業者のほうの資金繰りについてのさらに強力なバックアップをお願いしておきたいと思います。  次に納付金の計算方法について伺いたいのですが、どのようになっているのか。
  161. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。法律案の第四十四条の第二項で納付金を事業協会に納める、一錘当たりの納付金の限度は千百円以内というふうに規定がございます。この千百円の算定根拠でございまするけれども、まず所要の金のほうでございますが、御承知のようにこの納付金は過剰設備二百万錘を一括処理するためでございます。まず政府といいますか、政府の信用をバックにいたしました興長銀から事業協会に対して所要の金が出るわけでございますけれども、この所要の金を返還いたしますために、すなわち買収に要する金でございますが、これが七十億要るのであります。この算出は、百万錘は三千円、それから残り百万錘は四千円ということで七十億、それからつなぎ資金を借り入れますための金利が十億二千三百万要ります。このほかに事務経費といたしまして五千五百万円、以上の経費に対しまして一割の安全率を見まして、そうして残存の紡績錘数で割りましたものが、千百円という数字になるわけでございます。
  162. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 四十六条に「納付金の納付義務者がその納期限までにその納付金を納付しないときは、」という強制徴収が書かれておるわけでありますが、この納付金の強制徴収というのは、これははたして妥当なのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  163. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 強制徴収の規定、国税滞納処分の例によります強制徴収の例、これは国または国に準じます公法人には例があるのでございますけれども、それ以外の例は少のうございます。しかし、例がないことはございません。それで、私たちがこの案をつくりましたときに、強制徴収を、これは憲法上の問題があるわけでございますが、その理由は、一つは、この今回の構造改善計画が非常に公益性が強いということでございます。それから第二に、この納付金は残存業者が出すことでございます。残存業者が受益するということでございます。第三に、この受益する残存業者からしたがって一括処理に要する所要経費を取り立てるのが筋ではあるけれども、これを普通の私法上の契約に放置いたしました場合は、大部分の人は納めるでありましょうけれども、中には納めない人があるということになれば、正直者がばかを見るということになりますので、その点を考えまして強制徴収の規定を置いたわけでございます。このような例は、公法人、国または国の別働隊の法人のほか強制徴収がございますのは、土地区画整理組合、それから公害復旧の事業団というところに例がございます。
  164. 古川喜一

    ○古川(喜)委員 その強制徴収が適当かどうかということについては、わが党の委員から専門的にまた質問があると思いますので、その点を私は掘り起こすことだけにして質問をやめたいと思います。
  165. 小川平二

    ○小川(平)委員長代理 塚本三郎君。
  166. 塚本三郎

    ○塚本委員 お尋ねします。さっきから聞いておりますと、局長答弁が、だいぶ長いものだから、時間がだいぶ延びていくようでございますから、簡潔にひとつ……。私もまとめて御質問申し上げたいと思っております。  繊維産業は、わが国産業のうちにあって最も早く近代産業として確立した部門であり、わが国工業化の前衛であった。また、戦後三十年代の初めまでは輸出産業の第一としてわが国経済復興の最大のプロモーターであった。にもかかわらず、三十年代以降輸出の不振、生産の停滞、たび重なる不況によって斜陽化の一途をたどっているかに見える。他の諸工業は、近代的な技術革新の成果を不断に取り入れて、新商品の開発、新管理技術の展開に旺盛な成長力を示している。これに反し、繊維産業は旧態依然たる生産と経営に甘んじており、このままでは労働者も前途に希望を託し得ず、その地位に不安を感ぜざるを得ない。  この閥、発展途上国綿業は急速な開展を見せ、かつてのランカシアに対する日本の立場と同様になった。しかもこれらはわが国に負けない近代的な設備をもってわが国に迫ろうとしていると聞く。他方、わが国繊維産業がとうに追い抜いたはずの先進国においても、再び繊維産業が近代産業として復活した。すなわち、アメリカにおいては、紡績各社は生産設備の近代化はもとより、有力コンパーターを数多く吸収して流通部門を確保し、高度かつ個性的な製品と有力ブランドをもって、消費者に直結した近代経営をもって繁栄している。イギリスにおいても、五九年綿業法等、労働党政府の適切な施策のもとに、化合繊会社を中心として繊維産業の再編成と近代化が進み、繊維産業が再び英国経済の有力な一翼となりつつあると聞く。  このような諸国の繊維産業の展開を見た場合、わが国紡績業もまたその根本的な体質改善をもって斜陽から立ち直る可能性はなしとしない。しかしながら、繊維政策は昭和三十一年以降繊維旧法によって万年操短制をとり、かえって業界活動力をそいだかに見える。三十九年の繊維新法は、これに対する反省の一つの機会であった。しかし、その後事態の改善ははかばかしくなく、再びまたここに新たな法律の提出を見ている。この間政府判断の甘さ、対策の不徹底が責められるべきであろう。しかしながら、百数十万人の雇用を持ち、かつ、今後の発展になお多くの期待を持ち得る繊維産業の将来に対して、われわれは多大の関心と期待を持っておるわけでございます。  以上のような見解に立ちまして、私は、大体四点にわたって御質問申し上げてみたいと思っております。そこで、一つ一つ聞いておりますると時間が長くなりますから、第一の部分といたしまして四点ほどまとめて御質問申し上げますから、一括して御答弁をいただきたいと思います。  第一が、最近における国際的環境の急変のもとにおいて、政府は、わが国繊維産業の今後の姿をどう考え、また、これをどう導くつもりか。特に、構造改善対策と称する以上、これにふさわしい成果をあげるための総合的かつ有機的な政策が準備されておるかどうか、第一がこの点でございます。  それから第二が、目下提出中の法案に、いわゆる構造改善は従来の政策とどのような関係にあるのか、また、今後の繊維政策のうちにどう位置づけられるのか、これが第二の問題でございます。位置づけの問題です。  第三は、構造改善の期間経過した後、紡績業及び織布業ははたして発展途上国や先進国の競争に耐え得る近代的産業として自立できるのか、またもとの過剰過多の姿に返るおそれはないかどうか。  それから最後に、今回の構造改善対策が順調に実施され、国際競争力の強化がはかられたにしても、現在わが国繊維製品が多数の国から輸入制限などの措置をとられ、門戸が十分に開放されていないことを考えると、これらの措置が効果を発揮しないおそれがある。したがって、このような事態の解決がきわめて重要であると考えるが、これについて政府見解を伺いたい。これが他国の輸入制限の問題です。  以上、第一の問題として四点についてまとめて御質問申し上げるわけであります。
  167. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 旧法、新法並びに今回の構造改善法と申しますか、それを通じましての私たちの意図というものは、あくまでも国際競争力基盤の強化にあるということをひとつお考えいただきたいと思うのであります。並びに、新法におきましては、企業みずからの努力によるところの体質改善でございましたが、これでは国際競争力には間に合わないので、今回の法律提案に基づきまして、政府の強力なる助長政策なり、あるいはまた、そのほか財政投融資あるいは税制面の優遇措置、それらを含めまして、国家がてこ入れをしていこうということでございまして、これによって将来における国際競争力の基本を必ずつちかってみせるという強い決意を表明をいたしたものでございます。だから、今日までの繊維政策におきましては、いま塚本委員が申されましたとおり、確かに見通しの甘さというものがございましたので、いうならば、今回の法律は新法の補完的作用をなすものである、こういうふうにお考え賜わりたいと思うのであります。  なお、国際競争力の強化の面におきまして、いま現に方々において輸入制限等々の問題があるがどうかという最後の御質問でございますが、これに関しましては、御承知のとおり、われわれといたしましても、西欧諸国、特にアメリカ、ヨーロッパ等におきましては、確かに輸入制限を行なっておりまするし、また対日差別等も強化されております。しかし先般さような問題につきましては、ケネディラウンドの交渉の途中において、二国間の交渉におきまして、極力対日差別待遇なりあるいは非関税障壁という問題に関しましては、両国間で話し合いを進めておるのでございます。しかし率直に申し上げますと、ケネディラウンドによって関税が引き下げられるということ、ここからひとつ各国の考え方を申し上げまするのならば、やはり非関税障壁を何とか設けて、特に綿製品あるいはその他の繊維製品に関しましても何らかの措置を講じなくちゃならないのではないかというような動きが米国においてもあるやに私たちは承っております。したがいまして、そういう面におきましては、今後外交面を通じまして十二分に所期の目的を果たせるように、そういう非関税障壁等の撤廃を強く要請していくつもりでございます。  なおかつ、後進国等の追い上げがございますが、特に繊維業界が不況に至りましたのは、先ほど御指摘の低開発国の追い上げによることも重要な要素でございますので、この面におきましては、同じような品物をつくっておるようなことではとうてい国際競争力はつきませんので、日本といたしましては、この構造改善の推進に基づきまして、品質を高度化するなり、あるいは製品の多様化をはかる、そうして日本製品に限るじゃないかというようなものをひとつ取り入れていきたい、かように考えておるわけでございます。  なお低開発国問題では、その他に、西洋諸国における対日差別待遇なりあるいは非関税障壁と同じように今日強く要請されております問題には、片貿易の是正ということも一つのネックじゃないかと考えております。この面におきましても、通産省といたしましては、御承知のとおり、開発輸入体制をただいま整えておりまして、極力そういう面における協調政策をとりながら自国の製品の力を伸ばしたい、かように考えております。  なお答弁もれの点がございましたら、局長からお答えいたさせます。
  168. 塚本三郎

    ○塚本委員 期間が過ぎてから後に再び過剰設備に戻りはしないか、この点ちょっとお尋ねいたします。
  169. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 期間経過後の過剰設備でございますが、いま政務次官からお答えがございましたように、今回の法律は、新法を補完するということでございまして、新法によりますと、過剰設備の処理は、自主的にこれが行なわれることを期待しておるわけでございます。体力さえつくならば、必ず業界は自主的にこれをやるであろう、優秀設備を入れ、それとともに陳腐化設備を処理していくということになるかと思いますので、期間内のやむにやまれざるものの処分は政府が援助してやりますけれども、その後は自主的な設備の廃棄に期待している次第でございます。
  170. 塚本三郎

    ○塚本委員 それはいいのですけれども、しかし見通しとしまして、期間が過ぎたから再びいわゆる過剰の状態になってきた、また次の手を講じなければならぬ、こういうような心配がありはしないか、この点見通しはどうですか。
  171. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 現在のところ、どの程度に生産設備の近代化が急速に進むであろうか、現在私どもの見通しますところでは、当分そういう事態にはならないだろうと思うのでございますが、ただ将来、これは技術の進歩がなかなか予測できませんし、画期的な技術が将来できるかもしれませんが、そのときには当然といいますか、やむを得ず現有設備は陳腐化していくということにならざるを得ないと思います。
  172. 塚本三郎

    ○塚本委員 次に第二番目にお尋ねしますが、これまたまとめて御質問申し上げますので、局長でけっこうだと思います。  現代経済政策には、計画原理の導入が不可欠である。今回の対策において構造改善計画が定められることとなるのは一つの進歩であろう。しかし紡績業、織布業それぞれに別個の計画がつくられ、かつ紡績業の計画は、いわゆる第一区分紡績業の計画であり、織布業のそれは産地ごとの計画である。繊維工業としては、これ以外にいわゆる第二区分、第三区分の紡績業もあり、染色、メリヤス、二次加工等の業界もある。また原料供給者としての化合繊業界もある。そしてこれらについても、もろもろの対策が行なわれている。今回策定されることとなる紡績業、織布業の計画は、これらの分野との関連につきどう配慮するのか。たとえば協調懇談会の運営は、必ずしも満足すべきものではないと思うが、繊維工業全体についての総合計画を策定する必要はないか。これが第一点。  それから第二番目が、織布業の場合には、紡績業と手法を変えて、産地の商工組合がそれぞれ計画を作成し、通産大臣の承認を受けるという形をとっている。このような政策手法は、従来の政策手法とは異質のものと受け取れるが、そのような手法をとられる必然性はどこにあるのか。またこの考え方は、織布業固有のものであるかどうか。  それから第三点でございますが、個々の織布業産地計画を国が承認するにあたっては、国として織布業全体についての見通しがなければならないはずであり、また紡績の兼営織布部門と中小織布専業部門との円満な協調が確保される必要があるが、この点についてはどう考えておられるのか。  それから、今回の繊維の構造改善対策は、紡績業、織布業を対象としているものであるが、今後繊維産業が向かうべき方向を考えると、染色、メリヤス、二次加工部門、流通機構等についても、構造改善対策が必要であると思うが、この点についての見解をお伺いしたい。  それから最後に、これだけの画期的な事業を行なうにあたっては、消費者や関連労働者の利益との調整が問題となると思うが、これに対し具体的にどう配慮するつもりであるのか。  特に労働問題については、摩擦的に発生する離職者について、敏速的確に措置を講ずる必要があるとともに、近代化設備の導入に十分対処し得るよう労働力確保を講ずる必要があると考えるが、どうか。  以上五つの点について、まとめてお尋ねをいたします。
  173. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えを申し上げます。まず第一点でございますが、今回の対策は、繊維産業の中でも一番中心的な地位を占めており、また特に実施の急がれます第一区分の紡績業、それから綿・スフ、絹・人繊織布業を対象とするものでありますが、これは御指摘のように、繊維産業全般の総合的な計画と申しますか、見通しと申しますか、これが必要であるとわれわれも考えるわけでございます。現在私たちが持っております全般的な需給の見通し、それから将来の計画、これは先ほど御説明申し上げましたが、糸ベースにおきまして、四十二年度、それから将来の姿としては四十六年度の需要を算定いたしまして、その糸ベースを、紡績用の糸と、それ以外の糸というふうに分けまして、そのいま申し上げました見通しを基礎にいたしまして、先ほど御指摘の化合繊につきましては、協調懇談会がございますので、通産省側からこの糸ベースではじきました数字を協調懇談会に出して、新増設の場合のガイドラインにいたしているわけでございます。もちろんこの糸ベースの需要想定は、その裏に最終需要の想定がございまして、これにつきましては、内需、輸出、内需用につきましては、衣料用とその他の生産用資材に分け、衣料用については、国民の消費水準との相関式により、その他については積み上げ方式で算定したものでございます。  第二の御質問に対するお答えでございますが、今回の織布の対策につきまして、いわゆる産地主義をとり、組合主義をとることにつきましては、織布業が産地特性を有していること、すなわち同じ織布と申しましても、絹機、綿機では全然違いますし、絹機につきましても、北陸三県と秩父、つまり内需ものの秩父と輸出中心の北陸三県とでは違うわけでございます。織っているものも違いますし、そうなりますと、当然流通組織も違ってくる。今回の計画は、付加価値を増大することをまず大きな目標にしておりますが、当然流通機構の中にビルドインしていく必要があると思います。このような産地特性の問題、それから第二には、織布は主としてほとんどが中小企業者でございますので、個々の企業を相手にしておったのでは効果があがらない、産地の組合を中心にしてまいりたいということで、産地主義、組合主義を標榜いたしておりますが、このような産地の商工組合組織を活用できる業種がございますれば、他の業種におきましても、こういうやり方を活用してまいってはいかがかと思います。産地中心で思い切った産地組合に対する支援措置を行ないますと同時に、産地組合に完全に責任をとってもらうというかつこうができます業種がございますれば、このような対策を及ぼしてまいりたいというふうに考えます。  それから第三点でございますが、織布業は御指摘のように専業者と紡績兼営織布がございます。これは横の関係でございますが、さらに縦の関係では、特に化合繊綿メーカーと織布業者関係がございます。私たち、今回の構造改善対策で特に留意をいたしましたのは、紡績業者と専業者との関係、また合繊綿メーカーと絹人繊織布業者との関係でございまして、この縦横の関係は単なる売り買いの関係、すなわち一方がもうかれば一方が損するということではなくして、そこに長い目で見れば完全な協力関係をつくり上げることに努力を、私たちだけではなく業界あげてなさいまして、これが審議会の一つの大きな成果になったと思うのでございます。この審議会の席上におきまして、特に紡績兼営織布と専業者の間におきましては、お互いにお互いの立場を尊重し合い、お互いに協力し合っていこうということが約束されておる次第でございます。こういうふうないい関係を、われわれとしてはますます注意をし助長をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  それから第四点でございますが、他の部分の繊維業すなわちメリヤス、染色につきましては、先ほど御説明いたしましたように、すでに二千万円の経費をもちまして調査を進めておりますともに、業界に対しても、業界自身の熱意と自発的意思による改善対策の勉強を要請しておる次第でございます。特に御指摘の流通問題につきましては、今回の対策の主たるねらいの一つが付加価値の向上である、簡単に申しますと、つまりもうかる織物、もうかる織布業に再建するということ、それがためには当然流通段階の勉強と流通業者とのタイアップがなければなりませんので、この辺につきましては構造改善対策、産地別の計画の中で十分留意をいたしますとともに、またなお現在産業構造審議会に繊維部会がございますが、その繊維部会の重要テーマとして繊維の流通問題を目下検討中、勉強中でございます。他の業種につきましては、業種の現在持っております危機感と申しますか緊要度が非常に高いものであるかどうか、すなわち現在手を打たなければ間に合わないかどうか、それから第二に業界の受け入れ態勢、責任体制は整っておるかどうか、またさらに非常に有効な適切な対策が考えられるかどうか、この三点を主として判断基準として、他の繊維の業種にも構造改善対策を及ぼしてまいりたいというふうに考える次第でございます。  それから第五点でございますけれども、関連の部門すなわち消費者に対しましては、今回の対策は、付加価値の向上ということを先ほど申し上げましたけれども、究極的には繊維業の健全なる国際競争力強化ということでございますので、終局的には消費者の利益を大いに増進するものであるというふうに考えております。  それから労働関係でございますが、今回の対策は省力化がはかられる——これは御高承のとおり現在人が採れないという事態でございますので、主として今回の省力化は、人員整理というかっこうではなくして、現在補充がなかなかできないというかっこうで自然的に人員が減っていくと考える次第でございますけれども、一時的にいろいろ問題が起こると思います。起きます問題につきましては業界を十分指導いたしますとともに、労働省とも連絡をとりまして、公共職業安定所によります職業紹介の強化、雇用促進事業団によります雇用促進一般対策の活用等をはかって、適切なる措置を考えてまいりたい。特に必要なのはむしろ労働力の確保の面であるというふうに考えますが、この辺は公共職業安定所によります優先あっせんの実施、あるいは特に労働環境の整備、また福利厚生施設等の整備に努力をしてまいりたい。しかし何よりも一番大事な労働力確保のポイントは高収益、高賃金であると思います。織布業に対して高収益を確保してやる、それが高賃金にはね返り、それによって労働力を確保してまいることが大事であるというふうに考える次第でございます。
  174. 塚本三郎

    ○塚本委員 最後の点ですけれども、離職者対策と雇用対策につきましては六条の二項と十八条の二項によって裏づけされておる、そのように解釈してよろしいものですか。
  175. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでございます。
  176. 塚本三郎

    ○塚本委員 労働省はどうですか。ちょっと御答弁いただきたい。
  177. 細野正

    ○細野説明員 そのとおりでございます。
  178. 塚本三郎

    ○塚本委員 次に第三点、これまたまとめて御質問申し上げます。特に紡績部門についてお聞きしたいと思います。  第一は、主として紡績の問題についてお尋ねしたいと思いますが、今回政府提出の法案によれば、紡績業構造改善の中心は過剰設備の処理に置かれていると思われる。紡績業の積年の構造的欠陥が過剰設備の累積であり、これを処理しなければ設備近代化、企業の体質改善も進まないと考えられるが、過剰設備処理の問題はすでに繊維旧法、繊維新法を通じて十数年来の課題となっているが、この間現実に処理が進まなかった理由は何か、今一回の対策で確実に処理がなされるかどうか。以上が第一点。   〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕  第二番目は、過剰設備処理の手段として大量の精紡機の一括廃棄を、考えているが、一括処理は現在の市況で可能であるか。また処理後生産能力が不足し、または残った設備によって寡占的な価格形成がなされることの心配はないか。  三番目は、紡績業は必ずしも装置産業ではないから、その近代化の方向として設備の処理、設備近代化のような設備中心の政策も重要ではあるが、同時に加工技術、流通など、消費者に直結した部門の近代化を急ぐべきではないか。  最後に、中小紡績企業は、今後生産と経営の規模を積極的に拡大し、内外の大企業に拮抗する実力をつけていく必要があると思われるが、構造改善対策のうちにこのような政策を準備しているかどうか。特に開発銀行融資にあたっては、金利、貸し付け期間の延長等について現状では不十分であるが、改善の見通しについてはどんな状態になっておるのか。  以上の四点についてお尋ねします。
  179. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。まず第一の御質疑でございますが、繊維の旧法時代におきましては、設備の廃棄が企業の自主性にゆだねられておりましたために、またアウトサイダー命令もなかったということで、結果的に廃棄が進みませんでした。それからこの経験によりまして、新法のもとにおきましては、二対一のいわゆるスクラップ・アンド・ビルドあるいはオープンによりまして廃棄はなされましたが、この実施が企業判断に基づいて自主的にゆだねられた、いわゆる一斉廃棄ではなかったという点。それから第二に、これは完全に通産省側のミスと申しますか、至らない点でございますが、生産能力の算定、一錘当たりの能力算定につきまして、現在を予想できなかった。すなわち生産性が予想以上に上昇いたしました。以上のところで過剰設備が起こることになったわけでございます。今回の過剰設備の処理は、終局的目的は近代化投資を進めること、その前提条件といたしまして、収益力を阻害する過当競争を招来するようなこの過剰設備、これは主として老朽化設備でございますが、この過剰設備を処理する、終局的には近代化投資を進めたい、ここをねらっておるわけでございます。ただ、過去の経験にもかんがみまして、設備処理をいたします場合には、一斉に廃棄する必要があるということで、大臣の指示によるということ、さらにまた画一にやるという必要から、事業協会が買い取りまして、事業協会がこれを廃棄するという方式を採用いたしたものでございます。  それから第二点でございますけれども、過剰設備を処理いたしますこの対象は、構造的な過剰紡機というふうにわれわれは考えております。したがいましてこれを処理いたしましても生産能力に不足をするというようなことはないというふうに思います。特に今後三交代制も導入されますし、業界のほうでは非常にこの三交代制の導入に熱心でございます。設備近代化も促進いたしまして、設備の能力は相当増加してまいる、特に四十五年以降におきましては、新増設も自由になりますので、寡占的な価格ができ上がるというふうなことはないというふうに思っておりますけれども、ただ景気の非常に大きな変動でございますとか、われわれの想像もできないような能力不足、糸不足を招来しますというふうな場合におきましては、現在の新法におきまして、これを埋めますような規定もございますので、その運用を十分考えてまいりたいと思っております。  それから第三点でございますが、加工技術や流通部門、これは先ほど申し上げましたように、所要の対策を今後講じてまいりたいと思いますけれども、紡績業、繊布業は繊維産業の中核的な業態であります。今日その設備経営の近代化が喫緊の要務であります。したがいまして今回まずさしあたり一番必要なこの三業種につきまして、国際競争力を急速に高めますために今回の構造改革をつくり上げたわけでございます。  第四点でございますが、中小紡のあり方でございますけれども、これは中小紡の独自の特色を生かす、また生き得る面も十分あると思います。量産番手以外の特殊な番手につきましては、比較的規模が小さくて、その特色を生かし得るという点もございますし、また最低の経済規模までまいりますならば、経営者の能力と責任と自由な企業運営によりまして十分な経営が可能であるというふうに思いますけれども、経済規模までに量産番手はどうしても持っていく必要がある、そうでないと将来の国際競争にうちかっていくことができないというふうに考えますので、グループ化をはかる、それに対しましては所要の金融上の助成措置を行ないますとともに、行政指導もしてまいりたいというふうに思う次第でございます。ただ御指摘のように、開銀の金利が八分二厘、このごろの金融緩和の状況でございますと、必ずしも特に安い金利ではございませんので、私たち実はいままでも努力したのでございますけれども、やむを得ずこういうことになったわけでございますが、今後とも金利の低下、資金力の確保には努力をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  180. 塚本三郎

    ○塚本委員 最後に織布の問題についてお聞きしたいと思います。  企業数が四万をこえて、そうしてその資金の規模がきわめて零細であって、いわば典型的な中小企業構造を有している業種であり、中小企業業界の中で代表的な存在でもある。したがって従来の中小企業施策においても常にこの織布業が念頭に置かれ、これが中小企業一般のための新しい制度として実現するということもしばしばであった。しかしながら、このような努力にもかかわらず、織布業はいまだその構造上の脆弱性を克服することができず、加えて内外情勢の緊迫化はますます織布業を困窮におとしいれており、これに対する対策はまさに焦眉の急となるに至っている。しかしながら、今回の構造改善対策がこれほどに大々的に財政資金を投入しても、しょせんこれまでの施策のように、このような根強い中小企業問題を根本から解決し得ないのではないかとの不安を払拭する必要がある。また、この織布対策が新しい中小企業施策のモデルケースとして注目されていることからも、その成否はきわめて重大な意義を持っている。したがって、対策の実施にあたっては、いま一度慎重な検討をしておく必要がある、こういうふうに思うわけでございます。  以上のような観点から、これまた四つほどお尋ねをしてみたいと思っております。  中小企業業種である以上、通常ならば、一般の中小企業施策の活用によって実施すべきであるが、今度特別の新しい政策手法と助成の厚みをもって織布業に限って対策を実施することとした必要性はどこにあるか。また本対策は、中小企業施策体系の中でどのように位置づけられているのか、以上が第一。  二番目が、今回の構造改善対策においては零細企業対策はどう位置づけられているのか。零細企業切り捨ての声は心配ないのかどうか。  三番目に、今回織布業対策を進めるに際し、一方で合理化が進み、生産力の上昇が生ずる場合、各企業が合理化によるメリットを十分享受できるような配慮を加えないで放置するならば、生産力の上昇、コストの低減によって、逆に過当競争を誘発し、意図したところと逆に、一そうの不況事態を招く危険性すらある。このような合理化貧乏ともいうべき事態をもたらさないために、何らかの仕組みが必要であると考えるが、この点についての具体策を持ってみえるか。  最後に、中小企業は販売力が弱体なために、せっかく企業を合理化をしても、製品に十分な販路を見出し得ない場合もあると考えられる。織布業の販路開拓のためにどのような手段を考えられるか、以上の四点を最後にお尋ねいたします。
  181. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答えを申し上げます。織布業の構造改善対策でございますが、内外の環境が非常に悪くなっておりまして、海外の発展途上国の追い上げは先ほど申し上げたのでございますけれども、国内におきましては労働力の確保がほとんど困難になっております。織布業の平均賃金はここ数年間約二倍近くまで上昇をしてきておりますが、賃金を上げましても人がとれないというふうなことで、非常な危機に直面をしておる、何とか短期間にこの織布業に集中的に対策を講ずる必要があるというところの判断から、織布業を取り上げておるのでございます。ただ織布業の実態及び特性は十分考慮いたさなければなりませんので、織布業をべた一面に取り上げるということはむずかしい。先ほどから申し上げましたように産地の組合を中心にし、組合に責任を持ってもらって、責任をとるような、しかもりっぱな構造改善策を立てた組合に集中的に援助をする方式を考えたわけでございます。このようなやり方、これは織布業がほとんど全部中小企業でございますので、もちろん中小企業対策のうちの一部分として位置をするわけでございますけれども、従来の中小企業対策は、御指摘のように、全面的と申しますか総ぐるみと申しますか、一面逆に、若干国力にも限度がございますために、薄く広くというふうにならざるを得なかったわけでございますけれども、織布業におきましては、先ほど申し上げましたような緊要性、緊急性、事の重大性のために、集中的に国の施策を行なう、これが一つ。それからこの施策のあり方は、産地を中心にして総合的に考える——総合的と申しますのは、単なる個々の企業の合理化ではなくして、御指摘のように合理化貧乏になると、せっかく設備がよくなってもどうにもなりませんので、十分商品価値のある産地商品をつくり上げるということを、この産地の構造改善計画をつくり上げます場合に十分配慮をいたしまして、生産設備の台数におきましても、さらにまた流通部門との関係におきましても、さらに紡績やあるいは合繊、綿メーカー、いわゆる親企業との金融関係におきましても、有機的に立体的にこの計画をつくってまいるということが、今度の構造改善対策の一つの特徴かと思うわけでございます。したがいまして、このような対策は、中小企業対策では一つのテストケースになると思います。もしここで成功いたしますならば、そういう緊要度の高い他の中小企業にも次々に及ぼしていくことが可能であるというふうに思うわけでございます。  それから第二点でございますが、織布業は御指摘のように非常に広範に零細企業層が混在いたしております。この零細な企業層に対しましては、まず第一は、零細企業企業形態のままでこれから存続しないしは発展しようとするならば、零細企業にふさわしい特殊な品種、これの生産に従い、そういう新商品の開拓に努力する、こういう独自の分野を開拓する必要があると思います。それに対しまして、われわれとしては全力をあげて応援をしてまいりたいと思いますけれども、ある程度の量産をしなければ競争に負ける、国際競争力が出ないという商品をつくっております零細企業に対しましては、生産や取引の共同化等を指導いたしまして、そして必要な経済規模まで育成してまいりたいというふうに考えます。  それから第三点でございますが、これは先ほどもお答え申し上げましたけれども、今回の構造改善対策の一つのポイントにわれわれ考えておりますのは、いわゆる合理化貧乏、豊作貧乏にならないように、したがって産地をまとめて計画をつくり上げていくということを考えておるわけでございます。現在のところ、綿産地におきましては、六十三産地の中で二十五、六産地がおそらく初年度構造改善計画をおつくりになることができるのではなかろうか。絹、合繊、綿産地におきましては、二十四産地の中で四産地が可能ではなかろうかと思うのでありますけれども、この産地の数はまだ比較的少のうございますけれども、製品の生産数量におきましては、シェアにおきましてはおのおの七、八〇%に達するシェアになりますので、全般的な製品の需給関係を通産省は当然産地計画を承認いたします場合に考慮いたしまして、いやしくも過剰生産等にならないように、投資がむだにならないように、われわれとして最善の努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから第四点の織布業の販路の開拓でございますが、われわれとしては、産地の組合を中心にいたしまして、産地の総意を結集して、関係業界との調整協調をはかるということによります合理化が可能ではなかろうかというふうに思います。信用力をつけ、また自主性を確保するという見地からは、先ほど申し上げましたようなグループ化を進めてまいるというふうにしてまいりたい。何よりも大事なのは、新製品の開発なり市場開拓なりの努力による力でございますので、産地組合を中心にした今回の構造改善対策というのもその辺をねらったわけでございます。
  182. 島村一郎

  183. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 関連して少し御質問してみたいと思います。私もできるだけ簡潔にお尋ねするつもりであります。主として兵庫県の織布産業、とりわけ綿製品でギンガムを中心に全国で八割以上産しております西脇地域、ここが中心でございますが、遠州とともに日本の綿産地といたしましてこれは著名な業績を持ってきておるのであります。こういった織布業を中心にしてお尋ねしたいのです。  第一は、最近の情勢は五台−七台くらいでないと引き合わない。それから五十台以下が通常だ、百台以上になると全く採算がとれぬというのは常識化しつつある。こういうようなギンガム等の織布工場でございますので、これがずばっと構造改善のこの計画によって立ち直るであろうかということをやはり業者相当心配しつつ、しかし自信を持っていきたい、こういう意欲にも燃えながら計画を進めておるというのが現状でございます。そこで、そういう最悪の、最低の業種に対しまして相当思い切った、かゆいところに手の届くような施策がなされねばならない。こういう点につきましては十分に実地調査もせられて、また計画の審査もせられることでありますから、これは万遺憾ないかと思いますけれども、一応一般的なお考え方として伺っておきたい。
  184. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 織布に関しましては、先ほどから局長が申しておりますとおり、あくまでも産地の実情に即しまして産地主義、組合主義、これによって合理化並びに構造改善を推進していきたい、こういうふうに考えておるものでございます。なおかつ、いま先生が御指摘されましたとおりに、単なる機械設備等の更新ではなくして、生産並びに取引に関しましても、やはり総合的な判断のもとに私たちは指導していかなければならないと考えておる次第でございます。なお全国の各産地がたくさんあるわけでございますが、要は、構造改善の実効を伴うためには、どういたしましても、高い見地より各産地ごとの計画を綿密に検討する必要があると思いますので、この点におきましても、ただいまの御質問の御趣旨に沿いまして、緻密な計画を立てていただいて、それを承認していきたい、かように存じております。
  185. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 計画を実施する暁に、計画の実施、実行につきまして、そのつどあらゆる角度から指導する——干渉行政はこれはいまの時代に合わないけれども、しかしあらゆる角度から指導ないしは助言、援助する、こういうことが必要と思いますが、この点についてはどうですか。
  186. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 私も局長並びに事務当局に、いろいろとこの産地のことに関しましては私の見解を示しまして、その作業の進捗状況等をも、この法案を提出するまでに一応調査したわけでございますが、各産地別の相当綿密な調査をしておることは事実でございます。したがいまして、それぞれ産地には特色がございましょうから、いま先生御指摘のとおりに、十二分にあらゆる角度から産地の実態に即した指導をしてまいりたい、また当然その助成もしてまいりたいと考えております。
  187. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 都道府県に産地構造改善の指導援助委員会ができるそうでありますが、こういったところは具体的に絶えず接触をして指導するということでもあるのであろうか。あるいは事業協会などと協議しつつ、進行はどうか、効率はどうか、どのように計画が実現しつつあるかどうか、こういったことを絶えず綿密に診断する、助言する、こういうことでもやるような団体になるのですか。
  188. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 産地にすでに先生御指摘の指導援助委員会ができておりまするが、これは多くの場合に、府県が大いに力こぶを入れておる産地産業でございますので、われわれは府県及び地元の組合、さらに全国団体がいずれも織布はございます。その全国団体と密接に連絡をとりまして、数次にわたりまして府県との連絡会合を開いておりまするし、また常時府県とは担当者も往復いたしまして連絡をし、趣旨徹底をはかっております。
  189. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 織布工場の協業化あるいはグループ化というものと、単独に残っていくというもの、そういったものについての優劣等は、これは各般の条件が折り重なりますので一がいには言えませんけれども、この辺について、なるべく協業化する、なるべくグループ化する、あるいはまた自信があるものは残っていくように、こういったような一つワクにはめていくというのじゃない考え方があるのですか、その点はどうなんですか。
  190. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 問題は、その製造しておる商品の生産ないしは取引の適正規模と申しますか、経済競争力を持ちますための経済適正規模はどうかということによってきまると思います。ものによって、反物の種類によって非常に違うと思います。その辺はわれわれも勉強いたしておりますが、何をいっても一番よく知っておられるのは、現にその生産に携わっておられる方、ないしはその産地の組合の指導者の方々であるので、その適正規模によってわれわれは指導し援助してまいりたいというふうに思っております。
  191. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 財政関係について若干聞きたいのですが、資金の確保につきまして、地方の産地組合で三〇%の融資を受ける、こういう用意をすることになっているのでございますが、その中には、さきには開発銀行の金利のことも出ておりましたが、いま開発銀行の地域融資というものは必ずしも全国的にできていないようでございまするので、こういった零細な業者の集まりに対しまして、積極的に開発銀行が手を差し伸べる、こういったことが、これは開発銀行の使命としても、地域開発に対して必要なことでございますので、こういうのも金融機関のグループに入れてそして進んでこれは政府関係金融機関、あるいは民間金融機関等が連合しましてこれに協力する、こういった体制を準備する必要もあるかと思いますが、なかなか三〇%の用意といっても容易なことではないと思うのでありますが、この点はどうでありますか。
  192. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほど申し上げました開銀でございますが、これは紡績に対します合理化資金の供給について申し上げたわけでございます。ただいま先生の御指摘は、織布に対します合理化資金だと思うのでございます。これは政府の財政投融資は、今回できます中小企業振興事業団を通じまして六割、それから一割を府県に仰ぎまして、三割を手金と申しますか、組合が責任単位でございますので組合が自分でつくる。組合はもちろん金がない場合が多うございますので、地元の金融機関等から借りることになるかと思うのでございますが、これにつきましては、大蔵当局等にも要請をいたしておりまするけれども、さらに先ほど申し上げましたような地元の指導援助委員会に金融機関にも入ってもらうというふうなことで、改善計画計画段階から協力してもらう。さらに政府から五億の金を事業協会に出資をいたしまして、その五億の金を元金にして産地の組合に対する信用保証、信用保証でどうしてもいかない例外的な場合には転貸融資というふうに考えておる次第でございます。
  193. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 機屋に対しまして開銀の融資はこれは可能なんです。これは開銀総裁もこの間言っておりましたが、可能でありますので、これはまた地域開発との関連におきまして、輸出産業につながる立場もありますから、したがいまして、これは相当有力な資金源になるだろう、こう思うのです。積極的にこれは横の連絡をおとりになって、そして地元の金融機関と協力するようにあなたのほうからひとつ協力されたらどうか、こういうふうに申し上げたいのですが、これはどうですか。
  194. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでございまして、私の御説明が不十分でございましたが、開銀の持っております地域開発のワクを活用いたしますとともに、輸出産業ワクもございますので、この辺をさらに開銀当局とも十分連絡いたしまして、活用をはかってまいりたいと思います。
  195. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 地元の産地組合が三〇%用意するということは、口では簡単なようですけれども、容易でないと思うのです。といいますのは、零細な機屋になりますと、その機屋の手形なんかもいまはあぶながってとらぬ、こういう実情がないともいえない、こういうこともありまするので、借りた以上は返さなければならぬ、貸した以上はとらなければならぬ、こういうお互いの関係になりますので、これはやはり国策として進むのだということで、政府関係機関は積極的にこれに協力する、こういう体制にぜひなってもらわなければならぬと思いますので、この点御同感のようでありますから、やはり積極的な体制になるようにお進めをお願いしたい、これを御希望申し上げておきたいと思います。  それからいわゆる転廃者の織機買い上げの問題でありますが、これにつきましてもこの際若干論議しておかなくてはならぬと思うのです。転廃者の織機の買い上げにつきましては、これは転廃事情もさまざまです。進んで新しい事業に乗り出していく転廃者、行き詰まって転廃する業者もありましょう。けれども、いずれにしても零細企業の機屋の転廃は同情に値する場合が多い。やむを得ず転廃を決意して、十万円で織機一台買ってもらえるので、この機会に転廃に踏み切った人が多いと見るべきでしょう。これは広い大きな見地から見まして、一種の社会保障的な性格も添えて、たとえば開拓営農の成り立たないものが、これを捨てて町へ行くという場合に、五十万円以下の金をくれてやることになっております。これはそういう制度にもなっておるのですから、こういうような資金もあるくらいでありますので、これはやはり何らかの税制措置も考えてはどうか、こういうふうに思われます。なるほどこれは一部一般会計で補助金が出ておるようでありますから、あるいは困難な点もあるかもわかりませんけれども、これは大蔵当局との間にも十分ひとつ御連絡あって、転廃業に対しましては、十分にこの実情に即応して、一つの税制措置を、あたたかいものをとることが適当であろう、こういうように考えますので、この点はどうお思いになりますか。
  196. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘の転廃業の補助金につきましては、これを課税対象外にするという計画と申しますか希望を、実はわれわれ最初持ったのでございますけれども、大蔵当局と再三打ち合わせいたしました結果、実質的にはいま先生御指摘のように、転廃業者はだいぶ赤字経営と申しますか、債務を負っておられる方が多いということで、この辺はいま利益が出ない場合が多いというふうなことの実情もございますので、遺憾ながら特別の措置をこの制度の中に盛り込むことは、税制上はできなかったわけでございますけれども今後実情を見まして、せっかく努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  197. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なお、それに加えまして、転廃する際には新しい資金の需要もあろうと思いますので、こういった面につきましても、政府関係金融機関において適当に留意するという道も進んで開いてやる、こういうふうにすることが適当である。そうしますと、転廃がほんとうに円滑にいきますので、通産省の全体のお立場から見まして、これは相当必要な善政でないか、こう思うのですが、その点どうでしょうか。
  198. 宇野宗佑

    ○宇野政府委員 ただいま先生御指摘の面は、非常に貴重な点であり、また、当然なさなければならないと思いますので、今後通産省といたしましても、それらが実現できるように努力をいたしていきます。
  199. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから、労務対策の問題でごさいますが、労働省もおいでになっておりますので、あわせて両方から伺いたいんですが、やはり全体の法律の構成から見てみますと、労務対策の面が非常に弱い。影が薄い。たとえば六条の二項によりましても、これは紡績の場合でありますが、政府は、この構造改善の施策を講ずるにあたって、関連労働者の職業の安定につき配慮する。それから、十八条の二も同様の趣旨で織布業の関連労働者の職安について配慮する、こういう趣旨になっております。これは実にあいまいな規定でございまして、これは最近の立法上の、一種のごまかしのような感じがせぬでもないのであります。配慮というようなあいまいな規定になっておりますが、これはやはり財政資金等であるならば、十九条の予算の範囲内において適当にこれに向かって援助するとか、あるいは融資するとか何かする必要があるんではないだろうか。もっと広範な意味だから配慮にしたのだというふうにも考えるのでありますが、やはり労働の問題、労務の問題は、資金、それから構造自体の高度化、近代化と並びまして、非常に重要な柱であります。いうならば三本の柱であります。この労働者、労務者の確保あるいは技術ないしは安定、そういったことなくして構造改善の実現はいたしません。こういう角度から考えてみまして、労務対策につきまして財政的な配慮があるのかどうか、あるいはまたそうでなくして単に職安的なそれにとどまるのか、その辺についてひとつ基本的な考え方をはっきりしておいてもらいたい。
  200. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 労務対策は、六条と十八条の二項に、いま御指摘のように配慮という抽象的な規定があるだけでございまするが、この構造対策におきまする労働者に対する配慮、これは一番大事なことだと私は思っておるわけでございますけれども、この関連労働者に対しまして考えなければいけない点は二面ある。一つは、もし構造対策から、これを原因として労働者が転業しなければいかぬというふうな場合に、それに対する配慮、それから第二は、労働者を安定した環境、安定した立場で紡績業なり織布業なりに従事してもらうという、むしろ労働力の定着性のほうの問題、二つあると思うのでございますが、私たち、第一の問題につきましては、先ほど塚本先生から御指摘がございましたが、個別の問題としては、発生し得る、特に中高年齢層が、その職場が転廃業したりした場合に職を失うということが個別の場合には考えられるかと思うのでございますが、そういう場合におきましては、私たち全力をあげて業界も指導いたしまして、また労働省にもお願いをいたしまして、雇用促進事業団の事業を活用いたしましたり、また職業転換給付金を活用したり、あるいは公共職業安定所による公益事業紹介をするということを労働省にお願いし、密接に連絡をとっている次第であります。ただ、私たち、今回の構造対策はもともと人手不足が原因というか一つの大きな理由で構造対策、省力化を進めようということでございますので、重点は定着性と申しますか、労働者の方々が愉快に楽しく紡績なり織布なりの職場で働けるようにということだと思うのでございまして、それに対してまず一番大事なのは、高能率、高賃金と申しますか、収益力を確保することによりまして十分なる賃金が払えるようにすること、これが大きな一番のねらいだと思いますとともに、さらに福利厚生施設を設備いたしましたり、それから共同求人をいたしましたり、さらに共同教育をいたしましたり、各企業の力を結集いたしまして、それにわれわれも一緒に援助と申しますか、手をつなぎまして、そういう対策を講じてまいりたいと思う次第でございます。
  201. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 労働省の婦人少年局長に伺いたいのですけれども、この小さな織布の西脇地域における労働者の実情は、たとえば一万七千人のうち男性が三千四百人、一万四千人以上がこれは女性なんです。そうして女性は、十幾つから二十幾つまで、少女といいますか、妙齢の女性が大部分を占めております。この女性が、構造改善の結果、ある程度の労働者が減るということを前に伺いまして、相当やはり新しい魅力をもってするのでないと、私は、これはなかなか補充もそれから定着も困難じゃないかと思います。つきましては、そういう若い女性が九割も占めておるような、このような零細産業につきまして、今後どのような施策をとっていけばいいのであろうか、ひとつ具体的にあなたのお立場から、女性に魅力がある、定着し得る、ほんとうに安心してそこで働き得る諸般の施策、どうしたらいいのかということにつきましてひとつ要点をお述べ願いたい、こう思うのです。
  202. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 若い女子労働者の充足あるいは定着のために何か魅力あるような施策というお尋ねでございますが、実はたいへんむずかしい問題でございます。特に個別的に、いま先生の御指摘なさいましたその土地にふさわしい施策というのは、なかなか御提案できないかと思うのでございますが、私ども幾つかの調査の結果等から、年少者の希望などを申し上げて御参考にしていただければと思います。  まず、離職傾向の面から見まして、どのような場合に離職が多いかということでございますが、これは、残念でございますが、大体規模の小さな事業所のほうが大きな規模のものよりも離職率は高いということが出ております。それからまた、かなり労働条件と相関関係があるようでございまして、労働時間が長い、あるいは休日が少ないというような場合に、離職率が高いというような数字が出ております。したがいまして、労働条件の改善ということがやはり一番大きな定着のための要件として考えられるようでございます。また若い労働者たちの意識の面でございますが、意識調査の結果から申し上げますと、若い女子労働者たちの不満とする点として、やはり第一に労働条件の面があげられております。また仕事自体についての不満があるようでございます。これは、仕事が非常に単調である、単調な仕事の繰り返しということが非常につらい、あるいはまた自分の性格に合わないというような、仕事に即した不満が強くございます。それからまた人間関係の面で悩んでいるようでございます。これは一つには、友人とか相談相手がいないということでございますし、また特に住み込みの場合等は、住居が使用者と一緒であるためにプライバシーがないということなどが不満の種になっております。  それからまた、年少女子労働者が積極的に希望しております点でございますが、これはやはり、スポーツ、趣味等の機会と場所が持ちたいということ、それから友人との交際の機会、特に異性との交際の機会を持ちたい、このようなことがあがっております。あるいはまた、女子でございますが、やはり将来に備えて技術を身につけたい、このような希望が出ているのでございます。これは全国的な傾向でございますが、これらの傾向から申し上げられますこととしましては、年少女子労働者の定着のため、また魅力ある仕事とするためには、一つには労働条件の向上ということがございましょうし、そのほかに、いろいろな悩みに対して相談相手、指導者となるようなカウンセリングのような制度が職場にある、あるいは共同の団体等の内部にカウンセリング制度が持ち込まれるということ、あるいはまた職場の外でございますが、共同で、あるいは公のレクリエーション施設のようなものが設けられるというようなこと、あるいはまた彼らの向上意欲を満足させるような教育訓練の機会を共同で持つ、あるいは公の機関が持つ、そのようなことになると思います。  以上でございます。
  203. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえばいまの場合に、中卒の女性に高等学校の卒業資格を与えるためにかなり充実した定時制の高校の設備をするとか、あるいはまたいろいろな身につけるものにつきまして、できるだけ安く配給し得るような制度をつくるとか、そういったことになると、これは相当財政的な裏づけがないとできません。単に商業組合で持ち寄りで、借金で、というのではちょっと追いつかぬだろうと思うのであります。この辺につきましては、いまお述べになりましたようなことを一つ一つ取り上げまして、産地各般の事情に適応するような適切なものをつくっていく、そうしますと、なかなか経費もかかると思うのだが、その辺は繊維局長どんなものでしょうね。やはり何か繊維局といたしまして、政府は一体の関係で——労働省のいまの実情からくる施設のいろいろな案あるいは希望、それからこの構造改善を進めていかなければならぬ重要性、同時に国の財政を受け持つ大蔵省等が、一体の関係で横の連絡をとりながら財政の裏づけをしまして、相当な施設をそれぞれ各産地中心に全国的につくっていく必要があるのではないか、こう思うのですが、この点はいかがでしょう。もっともこれは労働省も関係しますが、どうでしょう。
  204. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 若干ながらこの連携協力はしておるのでございますけれども、まだ十分な成果をあげるまでには至っておりません。御指摘のように、問題は、これからどういうふうにして通産、労働、文部各省手を組み、そうして業界、特に関連の業界とも一緒に手を組んで、輸快な労働環境というものを各地につくり上げるかということだと存じます。構造改善計画の中に、われわれそういうものを産地として知恵をしぼってつくり上げてもらうということに非常に期待をしておるわけでございますが、同時にわれわれといたしましては、関係各省と十分に連絡をとりながら、まだ現在のところは非常に不十分でございますけれども、今後一そう特にそれらに重点を置いて考えていかねばならぬと思っております。
  205. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点はやはり労働省あるいは通産省、文部省等ばらばら行政ではとても成果はあがらぬだろうと思う。これこそ総合的な雇用施策といたしまして取り上げていく、これでほんとうに仏つくって魂を入れる結果になり得ると思うのです。この点につきましては、大臣が見えましたら、一言はっきり政府といたしましての所信を伺っておきたい、こう思います。  それから中高年齢の問題が当然起こってくるだろうと思うのです。中高年齢につきましては、定着のことも必要だと思いますが、まず当面します労働力が幾ら減少するかという場合に、その辺特に中高年齢者問題が危惧されるのでありますが、中高年齢の雇用の問題、あるいは定着の問題、また職業訓練の問題、あるいはまた次の職安的な仕事等々幾多の問題が中高年齢をめぐってあると思うのですが、これは妙齢の女子と今度は対照的な関係におきまして相当重要であると思いますが、その点全体といたしまして、中高年齢者は雇用過剰で求職過剰でございますね。そういう事態になっておりますから、離職しますと、なかなか就職困難ではないかと思っておりますが、中高年齢の雇用問題は、労働省の御意見どうですか。
  206. 細野正

    ○細野説明員 お答えいたします。  全般的に見まして、おっしゃいましたとおり、中高年齢層につきましての再就職、これはいろいろ問題があるわけでございますが、ただ、いま問題になっております織布関係等については、むしろ先ほど通産省からお話ございましたように、全体として労働力不足という問題、あるいは労働力確保ということが問題になっておるわけでございますので、極力同じ産業内で配置転換をしていただくような体制で、もちろん通産省をはじめ関係省とも御相談をしながら、そういう体制を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、同時に、私どものほうでやっております、たとえば休職中の中高年の方に対して手当を支給するとか、あるいは職業訓練を受ける場合の訓練手当、あるいは移転旅費が必要な場合には宿舎の貸与、あるいは融資、そういうものを全面的に活用しまして、再就職の道の確保につとめてまいりたいというふうに考えております。
  207. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 職業訓練は雇用促進事業団もやっておるようでありますが、中高年齢層につきましては、積極的にそれをする必要があるのではないだろうか。どうしてもやはり省力的な結果を期待するいまの構造改善計画におきまして、一般的に中高年齢層が離職する可能性が一番多い階層じゃないか、グループじゃないかと思うのであります。したがいまして、職業訓練は特に中高年齢層に対してやる必要があるのではないかと思うのでありますが、どうでしょう。
  208. 細野正

    ○細野説明員 お答えいたします。先ほどちょっと申し上げたのでありますが、同じ産業の中で非常に労働力不足がございますので、同じ産業の中で転換される場合には、職業訓練というものが必要な場合と必要でない場合があると思いますけれども、ほかの産業に転職せられるという場合につきましては、確かにおっしゃるとおり職業訓練の重要性が非常に大きくなってまいると思います。そういう点についても十分配慮して進めてまいりたいというふうに考えております。
  209. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはやはり産地の特殊事情というものを無視した一般論であろうと私は思うのです。産地の特殊事情ということになりますと、たとえば兵庫県のあの地域におきましても千数百の工場がございます。中高年齢層の人たちが去りまして、同じ業種の仲間が配置転換するということは簡単でございますが、やはりこれは新しく職を求めていくとか、もしくは自主的に何かをやるとか、資金的に、あるいは技術的に、職業的に、何かこれは協力をしてやらなければなるまい。これも大事な労働政策です。配置転換しなさいというのは、これは紡績なら別ですが、小さな機屋の寄り集まりでは不可能な状態である、私はそう思うのです、実際的じゃありませんから。私はそれで伺っておるのです。
  210. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 確かに御指摘の点は通産省としても非常に心配をしておる点でございますが、実はどういうかっこうで中高年齢層の離職問題が起こるか、現在のところはまだはっきりいたしておりません。しかし、これは起こるものは万全の用意をしておかなければいけないということもございまして、産地ごとに構造改善の指導援助委員会というものを設けておりまするけれども、この指導援助委員会には府県当局が大体リーダーシップをとってくれております。兵庫県においてもそう、大阪府においてもそうでございますが、府県当局の産業なり労働なりの関係の責任者にこの援助委員会に入ってもらう、それから関連産業にも入ってもらう、それから地方市町村にも入ってもらうということで、中高年齢層の労働問題が起きました場合には、どうしたら一番いいかということをまず現場のその指導援助委員会で取り上げてもらう、それですぐ本省として手を打つべきものは本省に連絡をしてもらう、で私のほうから、また労働省等関係省にもお願いをして、所要の手をとっていくというふうに準備をしております。
  211. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の申し上げるのは、やはりその場合に他の産業の業者代表者が集まって、寄って、そして何かと努力いたしましょうという委員会がかりにありとしましても、しかしそれではやはり何と言いまするか、おまえ能力があるから雇ってやろうというような立場に置かれるのであります。やはり自主的に職を求めていくとか、あるいは進んで技術を売りに行くとか、そういうような対等の立場を与えてやらなければ、余っているからこちらは引き受けましょうというのでは、少し年をとってよろよろしてくれば、みんなそれは解雇しちゃうのです。これが実情でございまするので、この激しい産業界におきまして、中高年齢層のうちの何割かは、やはり技術訓練をするとか、あるいは新しい労働能力を身につけるとかいうことをしなければいくまい、こう言うのです。現状におきまして、いまの時点において、この労働力をこちらに配置しましょう、こちらで引き受けましょうということはあるいは可能でしょう。それでいまの景気が続いておるのであります。しかし、そうじゃなしに、進んでこの職場を去っていくのだから、その去っていく人には新しい職を身につけて、技術を身につけて、新しい希望を持って進んでいくというふうにしむけてやらなければいけない、これを申し上げておるのです。これが大事な点じゃないだろうか、中高年齢層には一番大事な点だと私は考えております。それはまあ普通のニコヨン的な労働者にいくのならば、もっこをかついで何とかする、あるいはトロッコのうしろから押していくとか、そういったことはないではありませんけれども、それはあまりにみじめです。この構造改善の事業の労働者の立場としてあまりにみじめですから、積極的に指導なさる必要がないだろうかと思います。
  212. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでございます。わが国が、これから自由化を控え、相当各産業とも構造改善を進めていかなければならない場合に、非常に大きな問題は先生御指摘の点でございます。したがいまして、私たちとしては労働省、関係省に十分お願いをし、力を合わせましてそのような対策を今後努力してつくり上げてまいります。
  213. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 海外市場の開拓の問題でございますが、これは非常に繊維産業としまして全体的に重要であろう、こう考えております。特にアメリカであるとかあるいはヨーロッパであるとか、ないしはアフリカ等の開発途上国も計算に入れるべきでございましょう。そこで、これらの諸国に向かって市場開発の努力をする目安も必要でしょうけれども、その努力はどうしたらいいだろう。私はやはりこれは、政府の膨大な予算を出しておりまするジェトロ、これの活用ということが一番手近い問題ではないだろうか。一つ一つの産地組合によって自主的に市場の開拓をするということは事実上不可能であります。こういう点を考えましたときに、ジェトロの活用——きょうはジェトロは政府委員じゃありませんので見えておりませんけれども、この点はやはり進んで活用するということに指導なさる必要があるのじゃないか。一例をあげましたら、たとえばアメリカにおいて簡単な展小会なんかする場所をジェトロは持っております。ニューヨークその他に行きますと、自分で展示する場所を持っております。そういうところで簡単に、多くの経費がかからないで、ある種の繊維製品を並べて、そして小さな展示会、見本市的なものを催す、こういうような道も開けておりますし、またジェトロの予算を見ますると、そういう点につきましての予算も取っておるようでございます。それとかあるいは市場調査とか、あるいはいろいろな事故が起こりましたことに対する調査とか、あるいは未開発地域に対する調査とか、そういうものの積極的なジェトロの活用ということはこの際重要な問題でないだろうか、こういうふうに思うのですが、それはどうです。
  214. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでございます。私たちもジェトロと十分なる連絡をとりまして、いま御示唆がございましたような点、特にジェトロでは業種別のPR費、宣伝費を持っておりますが、これを活用するということ、それから特別展示会、これは政府の非常に大幅な補助でやれるようになっております。これの活用でございますとか、それから個別商品の市場調査でございますが、これもやりますとか、ただ、いずれにいたしましても相当業界負担があるわけでございますが、幸いにして産地別の組合が強化いたしますれば、その単位でもって十分ジェトロとタイアップいたしまして、海外マーケッティングが相当できるというふうに期待をする次第でございます。なお今後ジェトロの予算におきましても、そういうものも十分盛り込んでもらうようにせっかく努力をいたしたいと思います。
  215. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 海外市場の開拓につきましては、これは補助金とかその他資金的に政府援助があるのですか。
  216. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ございます。ジェトロ予算としてございます。
  217. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ジェトロ予算じゃなしに、ジェトロじゃなしに、業界からたとえば参りまして、これに協力してともに調査に当たるとか、あるいはともに参りまして、そしていろいろな経験を得るとか、展示会に参りますとか、そういうことについて援助の財政的な措置はあるのですか、それはないのですか。
  218. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 繊維雑貨局予算として計上されておりますのは、特別調査費として二千万円ございますが、これの活用をはかるということ以外にはございません。
  219. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 補助金はないのですか。この協会あるいは団体等に対しまして補助金はございませんか。もしくは補助金でなければほかの何か……。
  220. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 繊維雑貨局予算として、そういう海外マーケッティングの予算はございません。通産全省を通じますと、先ほど申し上げましたようにジェトロの予算の中に、特に繊維につきましては構造対策であるということで業種別のPR費を今度組み込んでもらっております。
  221. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私のお尋ねしたいのは、ジェトロの予算はわかっておりますし、本省の予算もわかっておりますが、そうではなしに、構造改善の主体のほうですね。協会とか事業団とか組合とか、そういったものに対する何らかの補助の手はありませんかと言っている。
  222. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま先生の御指摘になったのは、市場開拓のための補助金でございましょうか。
  223. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 市場開拓あり、個々の展示会あり、市場のいろいろなトラブル等に対する調査もあり、あるいは情勢判断の資料を得ることもありましょうが、海外市場開拓につきましては幾多の方法と目標、具体的な取り組み、対象はいろいろに分かれるだろうと思います。これは開発途上国と先進国とで全く違いましょうし、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ等はそれぞれ条件が違っておりますから、条件の違ったところにはそれぞれ打つ手も違いましょう。したがいまして、組合のほうで行くとか申しましても、なかなかこれは容易なことじゃないと思うのです。しかしジェトロのみにまかしておくこともできないだろうと思います。そこで、参りますときに何か補助の手がないかという点なんですが、なければないでいいですよ。
  224. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ジェトロの予算は、ジェトロ事業ということになっておりますけれども、実質は、組合が半額を持ちますと、組合の事業としてジェトロとタイアップしたというかっこうで海外の調査ができるような仕組みになっております。
  225. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 タイアップのPR費というのは、新聞の広告とかそれだけじゃないと思うのですね。そして調査というのは、たとえば市場開拓の調査にしましても、これはジェトロが別途予算を持っておるわけですね。——ジェトロ自身の問題でありますから、特別にたいしたことではございませんので、これはよろしゅうございます。  それから、新しい技術開発というものがこれまた非常に重要だと思うのです。ことに生地ものではございませんで、先染めの複雑なあらゆる種類のものを持っております。したがいまして、これを嗜好に適し、流行に適し、あるいは流行の開発その他等々、需要に応ずるような新しい技術開発、こういったものは非常に重要だと思うのです。技術者として身につける必要もありましょうし、またこれに即応する機械の問題もありましょうが、そういう技術開発につきましては政府としてどういうふうな財政的、人間的、設備的な援助もしくは用意をしておられるのでしょうか。その辺はどうですか。
  226. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 技術開発には各方面ございますが、特に大事なのは新製品、デザインとか色彩とかを入れてございますが、こういう面の開発と、それから設備関係の開発と、両面あろうかと思うのでございます。特に織布におきましては、高度化をはかっていかないと、開発途上国との競争にうちかっていけないということでございます。われわれとしては、産地の組合が技術開発をするために手当てをされる必要な金につきましては事業協会が保証いたしますというふうな手をまず一つ考えております。それ以外に来年度以降は大幅に拡充をせねばならない、またしたいと思っておるのでございますけれども、織機の技術開発につきましては、鉱工業の技術開発補助金のほうに若干のものを計上いたしておる次第でございます。
  227. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 技術に関連いたしまして機械の問題でありますが、新しく自動織機を入れます問題につきましても、これは将来膨大な数にのぼります。したがいまして、それはよほど注意しないと、日本のようなこの種の業界を当てにしましたメーカーがございますから、必ずしも一流メーカーとは限りませんが、売り手市場的な、振り回されるという結果になったらたいへんでございます。だから良質のものをできるだけ低廉に、価格の安定をはかりまして供給を潤沢にしていく、そしてその間における取引を適正に行なっていく、この辺が手落ちなく行なわれるべきではないかと思うのですが、ここらにつきまして十分な配慮もあろうかと思いますけれども、単に産地まかせにしてあるのかどうか、そしてまたこれはだいじょうぶであるかどうか。これらの見通しなり、あるいはお互いの取引の構造なり、その辺につきましてひとつ伺ってみたいと思います。
  228. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘の点は非常に大事な点でございまして、構造改善計画をわれわれが中央でチェックいたします場合に、どの程度織機の需要があるのか、それが年間どのくらい出ていくのか、どういう機種があるのかということは当然チェックをいたしまして、日本の繊維機械業界の能力との調和は私たち十分注意して計画に組み込むつもりでおります。しかしこれは単に中央の役人のそういう計画だけでは不十分でございまして、実は両業界、すなわち織布業界と繊維機械のメーカー業界とは密接なタイアップがすでにでき上がっております。懇談会を設けまして、数次にわたって、どういう機種を、いつ、どの程度というふうなこと、また値段につきましても、相当密接な懇談といいますか協力関係がすでにでき上がっておる次第でございます。さらに今度は、従来の合理化対策、すなわち個々の企業者が個々ばらばらに機械メーカーに発注をするのではございませんで、産地がまとめて発注をするということになっておりますし、また産地の組合の連合会も中央にございますので、機械業界との連携はその点十分に、従来よりも強くできるというふうに思っております。
  229. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは最終までには何台くらい新調することになるのですか。
  230. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織機におきましては十七万八千台でございます。
  231. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 かつて造船につきまして、造船資材に政府は補助したこともございます。あるいはまた外国におきましては、ドイツあたりにおきまして農業保護のために肥料に対して相当国が補助をしたこともあるのであります。したがいまして、このたびのこの問題につきましては、すぐれた織機が非常に大きな働きをすることは申すまでもございません。これに対してもっと積極的に、その資材面につきまして特別に優遇するとか、あるいは融資するとか、あるいは補助するとか、何かの方法はないものであろうか。この点につきましてはお考えはありますまいか。これは事務の問題じゃなしに、構造改善の政策の基本にひっかかる一つの問題点でございますので、どうかと思いますけれども、その辺は論議されたことがあるのでしょうか。重要な一つの問題点だろうと思うのです。
  232. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織機及び紡機の生産業界とのタイアップは先ほど申し上げましたようなことでございますけれども、行政的にも機械業界を監督いたしております重工業局と私ども繊維雑貨局と実は密接に連絡をとっておりまして、重工業局のほうから必要な指導、援助を機械メーカーに対しては与えるように依頼をし、重工業局も十分配慮をしておる次第でございます。
  233. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 農業の構造改善が、農業基本法ができまして以来相当進展すべきはずであったのだけれども、なかなか進まぬのです。そしてまた、あのころから、が然機械メーカーがふえてまいりました。いうならば、機械メーカーの競争のような感がないではないのであります。少しのサービス、少しの改良、少しの特徴等が売りものになりまして、そのために使う経費はばく大なものであります。こういうことを比較して考えてみましたときに、やはり国策的に、この種の重要な施策を推進する基幹をなす織機でありますので、この織機をつくるということについては、何か統一的な、そうして一番よいものをできるだけ安い価格で供給し得るような施策がどうしても必要ではないだろうか。たとえば、同じ鉄にいたしましても、よりよい材質のもの、そしてまた、よりよい組み立てができ得るように、あらゆる角度からほんとうにものをつくるということをひとつ模範的に打ち出してみてはどうか。私は絶好のチャンスであろうと思うのです。こういった小さな機械メーカーというものは、えてしていろいろな問題を起こし過ぎておりますので、メーカーは小さいとは言えませんが、小さい機械を製造するメーカーは、したがいまして自動車とかその他のものと比較しましたら全く劣っておるのじゃないかとさえ考えられますので、この機会は絶好のチャンスですから、メーカーを励ます意味で、あるいはまた構造改善を達成さす意味におきまして、あらゆる角度から総合的に援助もしくは指導、あるいはまた財政的に一つの補助とか保護とか、こういう手を打っていかれることが適当ではないかと思うのです。
  234. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘の点そのとおりでございまして、織布、織機だけでございましても千三百億の合理化投資、ということは、それだけの金が織機業界に入るということで、従来とかく日本の織機がおくれがちであったのは、織布業界が疲弊しておりまして、そのために注文も少なく、したがって技術開発もできなかった、こういうことでございましたので、今回のチャンスに、最もいい織機を、しかもできるだけ標準化いたしまして、そうして割り安につくろうということで両業界が一生懸命に協力しております。ことしの秋にバーゼルで非常に大規模な見本市が開かれますが、こういうものにもどんどん出ていって、ひとつ勉強してこようというふうな気組みになっておりますので、われわれもその方向で極力指導し、援助を申し上げたいと思います。
  235. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣が見えましたので、ごく簡単に二、三点だけ締めくくって終わりたいと思いますので、ひとつお答えを願いたいと思うのです。  ありきたりのしろうと論議になりますので失礼ですけれども、繊維構造改善の事業のうち織布関係です。織布関係については、特に労働力の問題が重要だと思います。労働対策の問題につきましては、これは御承知のとおり、小さな織布、特に兵庫県の北播地方の織布工場におきましては、七、三の割合で、七割が二十歳前後の若い女性であります。したがいまして、この女性、それからまた中高年齢がかなりないではないのでありますが、こういった辺に対して魅力と安定、さらに充足といろいろな意味における希望、こういうものは、やはり構造改善の推進のためには、労働省とも十分に御連絡になり、あるいはまた教養の面におきましては、定時制の高校充足の必要もありましょうから、文部省とも御連絡になり、健康面におきましても厚生省との御連絡もあり、あるいは給与面等もありまするから、実際面から考えてみましても、総合的な労務施策が必要ではないか。この法律をずっとながめてみますと、労務対策につきましては、六条の二項と十八条の二項に、政府は各々で労務者の職業安定のために配慮をするという以外に何もないのです。労働者の立場、労働者の問題、労働力の問題この問題は非常に大きな柱です。ところが、これには規定はないのです。これはあまりにも影が薄い。どこかに手落ちがあったのではないだろうか、こういうふうにも考えられますので、財政的に、また、いまのようなあらゆる角度から労務対策を、国務大臣として、もしくは通産大臣といたしまして、佐藤内閣の重要な施策を推進するという意味におきまして、各省とも相互連絡をおとりになりまして、労務対策に遺憾なきを期してもらいたいと思うのですが、この点についてひとつお考えを伺っておきたいと思います。
  236. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今回の繊維工業構造改善の特別措置につきましては、これはもちろん一つは労働力の不足ということが原因して今度の特別措置をとってきたのでありますが、しかし一般産業についても労働力の不足という問題が起こってきておると私は思うのであります。したがいまして、この際日本の産業を一段と発展せしめんがためには、労働体制の改善ということが重要な要素になってきておると思うのであります。そういう意味で、この労働体制をこの際再検討して、そうして労働力をもっとふやすということをやることが、日本の産業の発展のためになるのではないかということで、かねがねそういう問題につきましては労働大臣ともよく話し合っておるのでありまして、労働体制の改善ということについて労働省が主として配慮をしてほしいということをお願いしておるのでありますが、お話しのとおり、この問題につきましては文部省とも厚生省とも今後協議をして、労働体制の改善と同時に、日本の産業の発展ということで努力をしたいと考えております。
  237. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いま一点は財政の関係でありますが、やはり財政資金というものが相当大きな働きをすることは申し上げるまでもございませんですが、特に財政投融資の資金計画関係と、それから民間の金融の関係、これは産地組合、業者のほうを援護するという関係では、どうしてもこの方面からも積極的に手を差し伸べてもらわなければならぬ。結局この財政の裏づけといたしまして、一般会計からの補助金、また事業団からの資金、協会からの買い上げ資金等各種資金問題がございますけれども、同時に、業者の団体でありますそれの確保する資金の問題は、これは相当困難じゃないかと見ております。といいますのは、小さな業者になりますと、さっきも言うておりましたのですが、あまり小さな業者で信用力のないのはこのごろ四苦八苦なのです。四苦八苦のときに融資を受ければ返さなければならぬ、こういうことになって、資金につきましては民間の、もしくは政府関係金融機関の力強い相互協力がなされていかねばなるまいと考えるのですが、これも通産省だけのお仕事ではないので、大蔵省との関係あるいは政府関係の金融機関に直接の関係もありましょうから、よほど総合的な協力が必要であると思いますが、この点につきまして特に御配慮されてしかるべきじゃないかと思うのです。
  238. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この繊維の問題につきましては、一つは、やはり将来の資金の不自由度というような問題からも今度の特別措置を考えた次第であります。したがいまして、この織布の産地組合の問題につきましては、開銀の地方開発資金の積極的な活用をはかるとか、あるいはまた大蔵当局とも連絡の上で、市中の銀行の融資をはかるとかいうことで資金の点については十分に考慮したい、こう考えております。
  239. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 全体の構想はかなりまとまっておると私も考えております。また地方における産地組合の新しい計画を見てみましても、これならという自信も持ち得るように思います。  そこで、最後にこういう点はどうなんでしょう。あなたは経済学の専門家でありますので、なお特に伺っておきたいと思うのですが、もしベトナム戦争でも済むならば世界経済情勢は一変するのじゃないか。そういうようなときに、いまのような高次的な発展ということだけを考えるのでは半面じゃないか。悪い面も考えておかなくちゃならぬのじゃないか。そういうことにでくわしたときに、一体これでよいのか。それについてはどう考えておるか。それでもだいじょうぶなのか。そういうときには、ずいぶんと苦労して骨を折って、そして産地組合をつくって、協力して、ようけ借金をこしらえたけれども、結局投資貧乏になった、ようけ生産できるようになったけれども、百姓のように豊作貧乏になったということで末代まで恨まれる、こういうことになってはたいへんでありますので、その点についてはどうなんです。これは仮定がちょっと入りますけれども、経済変動もありますので、経済学者の通産大臣は特にこの辺は御配慮になっておると思いますので、伺っておかねばならぬ、こう思うのですが。
  240. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ベトナム戦争がかりに終わったらどうなるかというような御質問であったと思いますが、私はベトナム戦争が終わればかえって世界的の経済交流というものが盛んになるというように考えております。したがって、日本の産業全体を見ても、そう悲観すべきことではない、むしろかえって日本の産業の飛躍を生むものではないかというように考えております。また同時に、いま南北問題などの関係でいわゆる開発途上国に対しての経済援助というむのもだんだん盛んになってきますから、それに応じてことに繊維製品などは将来販売先がだんだんと拡大してくるというように考えられます。したがって、私はベトナム戦争がよし終わりましても、この繊維の問題についてはそう悲観する必要はないのじゃないかと考えております。
  241. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法人の性格をちょっと伺っておきたいのですが、例の協会ですね。何条でありましたか、協会の法人について伺って、これで終わりたいのです。繊維工業構造改善事業協会、この法人ですね。この法人につきまして、どういうふうにお考えになっておりましょうか。例の行政管理庁の設置法の二条の四号の二ですか、あれに該当するのかしないのか、そういうことについて、これは事務のほうでいいですから、どういうふうにお考えになっておるか、ちょっと見解を明らかにしておいてもらいたい、こう思うのです。やはり特殊法人であるのかないのかということです。
  242. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ただいま御指摘の事業協会でございますが、これは構造改善事業を実施いたします中核体として民間設立をいたしまして、これに対しまして政府が積極的な財政支援を行ないますとともに、さらに強制徴収権等を与えるという特殊な団体でございます。したがいまして、これに対しましては十分所要の監督を加える必要がございますので、現在の法律のようなかっこうになっております。  特殊法人に入るか入らないかという点でございますけれども、これは確かに民法や商法に規定しておりますのと同様の一般法人でございまして、特殊な法人ではございますけれども、行政管理庁が審査をいたします行政管理庁設置法二条の四号によります範囲にこの事業協会が入るか入らないかという点につきましては、民間設立の法人はこの審査の範囲内に入らないという解釈になっております。
  243. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 つまり民間人が主体的に設立した法人だから、こういう理由でございますね。
  244. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 さようでございます。
  245. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 終わります。
  246. 島村一郎

  247. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、ただいま上程されておりまする繊維関係法案につきまして質問を試みたいと存じます。時間がもうすでに五時でございます。ですから、私も質問の要点をかいつまんで、いわゆる時間的協力をしたいと思います。したがって、御答弁なさるほうもそのおつもりで、簡潔に要点をぴしゃりぴしゃりとお答えいただきますように。先ほど来の御答弁を聞いておって、乙竹さんがたいへんよく勉強なさって、よく知っていらっしゃるということはよくよくわかりましたから、簡潔にひとつお願いをいたします。  最初に大臣にお尋ねいたします。大臣はこの法案法律としたいと考えていらっしゃるのかいらっしゃらないのか、いずれでございますか。
  248. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 もちろんこれを成立させたいという熱望に燃えております。
  249. 加藤清二

    加藤(清)委員 待つこと久しです。ですから関連質問が一時間半にわたっておるのです。一体どこに行っておったのです。
  250. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 参議院の石炭特別委員会のほうに出席しておりました。
  251. 加藤清二

    加藤(清)委員 いずれが重要です。
  252. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 向こうでは採決がありますので、私がおしまいまでおったわけです。
  253. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。採決は大事であるけれども、質問は大事でないとおっしゃるのですか。
  254. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 採決も大事でありますが、質問も同時に大事であります。
  255. 加藤清二

    加藤(清)委員 それだったらなぜ時間どおりに来ないのです。
  256. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私のからだが一つでありますから、両方に行くというわけにいきません。
  257. 加藤清二

    加藤(清)委員 だからスケジュールを組んで——いつものことですが、まぎわになってからあわてだす。ざまをごらんなさい。何人いる。これで熱が入っていると言えますか。お通夜みたいなことをやっているじゃないですか。業界に向かっては、社会党が反対だ、社会党が反対だと言いふらしておきながら、一体これは何事です。さっきは理事一人しかいない。どっちが協力的なんです。はっきりしてもらいたい。
  258. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御質問趣旨がはっきりわかりませんが、この法律の成立をわれわれのほうでは熱望いたしておるのでありまして、したがいまして……。
  259. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかった。熱望はしておるけれども、それは心で祈っておるだけで、具体的にあらわれておるところはちっとも熱心じゃないじゃないか。たった一人、繊維局長一人が熱心じゃないか。どうなんです。
  260. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 石炭のほうがもう少し早く終わるつもりでありましたのですが、石炭の採決がおくれましたので、したがってこちらに来ることがおくれたわけであります。
  261. 加藤清二

    加藤(清)委員 全くこの法案は風前のともしびなんです。ろうそくは燃えよう燃えようとしておる。ところが、あちらからもこちらからもいろんな風が吹いてくる。もうあとどれだけ時間があるとお考えなんです。私はほんとうはあさってやるはずになっておった。それをきょうになって、きょうにしてくれというものだから、協力するために、時間はおくれてもいま立とうとしているわけなんです。  ところで問題は、本論に入る前に二つだけ質問をしておく。  第一は、あなたのこの法案に対する気持ちなんです。ほんとうに通すつもりがあるの。どうなんです、これは。
  262. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この法律の成立を熱望しておることは、繰り返し申し上げておるとおりでございます。
  263. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ態度で示していただきましょう。  第一番、いいですか、ろうそくが燃えよう燃えようとしていても、風が吹いてくると消えます。どこから風が吹くか。健康保険から吹いてくるのです。これであすあさって一つ間違えば全委員会ストップになります。おわかりでしょう、全委員会ストップです。しからばあなたは坊大臣に対して——ぼうとは何がしの某じゃなくて、固有名詞の坊なんです。坊大臣に対してあなたはどういう交渉をします。態度で示してもらいたい。
  264. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 石炭のほうもそういうような関係で、きょうぜひ採決したいということで私が最後までおったわけであります。きょうも幸い皆さん方が熱心にこの問題について御審議していただいておりますので、したがいまして、私どもとしては非常にその点感謝いたしております。
  265. 加藤清二

    加藤(清)委員 石炭のことを聞いているのじゃない。坊大臣に対してどういう態度をお示しなさるかと聞いている。
  266. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 坊大臣に対して私がどういう態度を示すか、これは要するに、健保の問題を早く解決してもらいたいということは、各大臣ともみな希望している点だと思います。
  267. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談じゃないですよ。この法案に関してはあなたは知るや知らず、私らはノイローゼなんです。夜討ち朝がけで、毎日のように、社会党が反対しているからこれが通らぬ通らぬといってわんさわんさ詰めかけられておる。そういうやさきに与党みずから、最高責任者であるあなたは、この法律を通さなければならぬというかたい信念を持っておるとするならば、風前のともしびの前へ立ちはだかって、その風を防ぐべきではないか。健康保険から風が吹いてくるのは明らかな事実じゃないか、どうなんです。これはわかっている事実じゃないか。
  268. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 健康保険の問題は、これは厚生省の問題でありますし、内閣全体の問題でありますので、私一人の力でこれをああするこうするということはできないと思います。
  269. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはどうすると聞いている。
  270. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は、もちろん健康保険が皆さんの御審議を得て、これが成立することを希望いたしております。
  271. 加藤清二

    加藤(清)委員 健康保険のことを聞いているのじゃないのだ。それのいかんによって、こちらへ風が吹いてきて消えるということを言っているのだ。何であなたそんなことで時間かけるの。早く通したかったら、おのれみずからもっとはっきり態度を示したらどうです。
  272. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は、石炭の問題のほうを早く採決していただいて早くこちらへ来たいと思っておったのでありますが、向こうの採決がおくれましたからして、その点においてこちらへ来るのがおそくなったことは申しわけないということを先ほどから申し上げておるわけであります。せっかく皆さん方が熱心にこの問題について御審議いただいていることは非常に感謝しておる。また皆さんがこの法律を早く通してやろうというお気持ちに対しても、私旬たちは非常に感謝しておるのであります。したがいまして、もう時間がおくれましたけれども、御審議をきょうしていただけば、この上ないありがたいことだと存ずる次第であります。
  273. 加藤清二

    加藤(清)委員 余分なことは言わぬでもいいから、質問に対して答えてください。坊大臣に対して——健康保険のぐあいが荒れると、暴風になって一斉ストップになりますよ。ようおわかりでしょう。おわかりになりませんか。したがって、健康保険の審議が荒れないように努力することが、まずもってこの法案を通す前提条件なんです。だからそれに対してあなたはどういう態度を示されるか聞いておる。
  274. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 坊大臣に対して、けさから私は会いませんからして、どういう態度をとったらいいかはっきりわかりませんが、もし私がいままでに会うておれば、早く法律を通してもらいたいということを、坊大臣に私からお願いするつもりであります。
  275. 加藤清二

    加藤(清)委員 会うておればじゃ、向こうの意思じゃないですか。自分に意思がないということをはしなくも示したじゃないか。これから会って、うちらのほうに大切な法案がかかっておる、おまえのほうの出方いかんでこれが消えてしまう、おまえのほうあんまり荒れるなと一言ぐらいあってしかるべきじゃないか。
  276. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 社会労働委員会のほうがいまどういう状態になっておるかという情報が私に入っておりませんからして、したがって坊大臣に対してそういうことを私が言うか、私自身もわからないのであります。
  277. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかったら、あなたの誠意を坊大臣に示しますか、示しませんか。そうやってこの場所だけ逃げたらそれでよろしいという考えだったら、これは通りませんぞ。
  278. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 社会労働委員会の状況を私が幸いにして知ることができ、坊大臣に対して私が言うたところが、坊大臣が言うことを聞くか聞かぬか、それはわかりません。しかしながら、ぜひ私から言えということであれば、それは私は伝えますけれども、しかしその私の言うことを坊大臣が聞くか聞かぬかということは、これはまた別問題だと思っております。
  279. 加藤清二

    加藤(清)委員 ことばの上に誠意あって、その誠意を態度で示すところの誠意がない、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  280. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その誠意というのはどういう……(加藤(清)委員「通したいという誠意」と呼ぶ)通したいという誠意なら、先ほども申し上げましたとおり、この法律案を成立さしてもらいたいという私は熱望に燃えておる。と同時に、したがって皆さん方の御審議を特にお願い申し上げたいということは先ほどからお願いしておるとおりであります。
  281. 加藤清二

    加藤(清)委員 こういうあほなことを言うておるから時間がかかる。坊大臣に対して交渉する誠意ありやいなや、これを聞いておるのです。たとえば、状態はわからないとか、会わぬからとか、まるきり受け身じゃないか。消極的じゃないか。どこに誠意があるか。事務当局は夜昼なしに夜討ち朝がけで苦労しておるじゃないか。当の責任者がそんなことでどうするのです。野党にばかり誠意を要求して、努力を要求して、本人みずからがそんなことでどうするのです。それでこれを通そうと思っておるのですか。他力本願で通そうと思っておるのか。
  282. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は委員会に出ておりましたからして、坊大臣と会う機会がなかったのであります。したがいまして、社会労働委員会がどういう状態にあるということも知ることができなかったのであります。でありますから、坊大臣に対して私が忠言するというチャンスがなかったわけでありますからして、その点御了承願いたいと思います。
  283. 加藤清二

    加藤(清)委員 今後どうするか聞いておるのです。同じことを繰り返すが、いたずらにあなたが時間を延ばしているのですよ。こうなると答弁のいかんによる。将来どうする、あるいはきょう終わったらどうする、あしたの朝どうするとか、夜討ち朝がけででも希望があったらやるべきじゃないか。
  284. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私が出なければ社労のほうが進行しないということであれば、それはもちろん私が乗り出しますけれども、それだけの力が私にあるかどうかということはまた別問題ということだけ申し上げておきたいと思います。
  285. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこから先親分の三木さんのところに行って頼んでいらっしゃいとまでは言いませんけれども、あなたの誠意を具体的に示すべきですよ。それを示されずに、業界に向かったときに、私らは通すつもりでおるけれども、社会党が反対しておるからそれで通りませんなどというような、そういうニュアンスのことばを軽々しく大臣はしゃべるものじゃないですよ。だからよけいもめるのです。そういう前提に立って、これを通してもなおもうひとつ効果が懸念される向きがある。したがって、そういうあまたのこの業界の不況を建て直そうという根回しをしてかからなければならぬと思う。あなたきょうこれを読みましたか。
  286. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 日本経済新聞ですね。読みました。
  287. 加藤清二

    加藤(清)委員 どう考えましたか。
  288. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これは、前から加藤委員からも私にお話があったことでありますし、そのときも申し上げたと思いますが、付加価値だけ課税するということは、いままでわれわれ反対しておりますし、日本の零細業者に対する保護という意味においても、反対しております。それからまた、韓国側からも、これに対してわれわれに要望しておりますけれども、私はそれは不可能だということを韓国側へも返事をしておる次第であります。
  289. 加藤清二

    加藤(清)委員 繊維業界は不況である。だから、大切な国民の血税を使ってもなおこの業界を立て直さなければならない。特に繊維業界のうちの零細中小の機場は、前の質問にも出ましたように、非常に不況である。倒産は歴史始まって以来の高度のレコードをつくり続けている。こういう状況ですね。これは認めますね。どうですか。
  290. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今日繊維業界に対して何らかの策を施さなければ、この繊維業界というものが立っていかないということについては、われわれ理解いたしております。
  291. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで、特に中小零細の倒産を救うにあたっての具体策、これはこの法案を通過させただけでは足りない。あまたあまたの諸情勢、これが完備しない限りにおいては、倒産は続くのです。あなたにお尋ねする。中小企業の三人や五人は倒産してもよろしいか。それはいけませんか。いずれです。
  292. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 中小企業者の倒産を防ぐべく、今回中小企業振興事業団を設けたり、またこの繊維の特別措置法を考えたのでありまして、何も倒産を喜んでおるわけでは決してございません。
  293. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほどからお尋ねしておるように、それはあなたの誠意ですか、気持ちだけですか。それとも、他の省に対してその誠意を披瀝して具体化していらっしゃるのですか。
  294. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この特別措置の問題は、大蔵省との折衝においていろいろ困難な問題がありましたけれども、幸い局長その他みな熱心に交渉するし、私も最後に大蔵大臣に交渉して、この法律案をつくったような次第であります。したがいまして、この際、日本の繊維産業に活を入れるためにはぜひ必要だという意味において、私はこの法律を通すことを非常に熱望しておる次第であります。
  295. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務省から来ておられますか。
  296. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 はい。
  297. 加藤清二

    加藤(清)委員 どなたですか。
  298. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 経済局次長須磨です。
  299. 加藤清二

    加藤(清)委員 お尋ねいたしますが、あすから日韓の貿易会議が行なわれますね。だれが出ておりますか。
  300. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 明日から十四日まで、韓国において貿易会議が行なわれます。鶴海経済局長、そのほか通産省から吉岡参事官、農林省から内村参事官、大蔵省から細見調査官、そのほか係官が行っております。
  301. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで、当然わが国との経済協力の関係上、もし経済協力をし、日本が援助をすれば、日本の中小企業、特に繊維産業と競合するところの問題があまた出てくると思います。これに対して、行かれました経済局長は、三木外務大臣からどのようなことを仰せつかって行かれたのですか。
  302. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 この会議の議題につきましては、まだ最終的に決定を見ておらないのですが、大きく分けまして、貿易問題と両国間の貿易促進に関するその他の問題、こういうことになっておりまして、貿易問題の中には、一次産品の貿易の自由化と保税加工の問題等がございます。これらにつきましては、何も韓国との交渉ばかりでございませんが、国内の中小企業に対する影響について十分考慮した上で交渉する、こういう一般的な訓令を持っております。
  303. 加藤清二

    加藤(清)委員 考慮の内容を承りたい。
  304. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 その具体的な訓令の内容につきましては、申しわけございませんが、これは公表のあれでございませんので申し上げられませんが、一般的に、たとえば特恵等の問題につきましては、先生御承知だと思いますが、先般の会議におきまして、後進国からの非常な強い要望がございましたが、三木大臣から、後進国の強い要望に対して慎重な考慮を払う、これは日本としても……。
  305. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかった。そこまででいい。  あなたの答弁いかんによっては、あすの予算委員会においてこれを大臣から承ります。そうして問題になることでございましょう。あなたは、訓令の内容について緘口令をしかれておれば、内容については答えられないでしょう。それは認めます。それが外務省のいままでの方針でございますね。交渉の最中にあるいは交渉が行なわれる以前に、交渉の内容についてのわが国の態度は、国会の議員の質問があってもなおこれは拒否をする、こういうのが前例でございますね。この点はいかがです。
  306. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 ただいま先生がおっしゃいました拒否をするというのは、あれだと思いますが、従来とも、たとえば先般の台湾との交渉の場合に、私も農林部会に呼ばれまして、同じような御質問を受けたのでございますが、大体の内容を申し上げまして、それ以上具体的なことは申し上げられないということをお答えいたしました。
  307. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ、大体の内容を言ってください。あなたは大体の内容は言えると言ったのだから。
  308. 藤田公郎

    ○藤田説明員 アジア課長代理でございますけれども、かわりに説明してもよろしゅうございますか。実は須磨次長は一昨日までアメリカに出張しておりましたので……。
  309. 加藤清二

    加藤(清)委員 いいですよ。
  310. 藤田公郎

    ○藤田説明員 先生の御質問は、全部の議題についての御質問でございますか。
  311. 加藤清二

    加藤(清)委員 答弁に出たければ質問をよく聞いておってくださいよ。  須磨次長が一交渉にあたっては経済関係のことが多い、特にそれは日本の中小企業と競合することが多い、その内容一つに保税加工のことがある、一次産品の問題がある、それを向こうが強く要望している。したがって、それについての訓令はいかんと尋ねておるわけです。その訓令の内容を聞いておるわけです。わかりましたか。
  312. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 それではお答え申し上げます。いまの保税加工の問題につきましては、韓国は一年前の会談のときにやはり同じようなことを希望しまして、これに対します共同コミュニケがあるのでございますが、これについてはいろいろ関税上の問題もあるし、それからKRとの関係もありますし、第三国との関係もあるというようなことをあげまして、韓国が従来主張していたあれは、わがほうとしてはこの際のむわけにいかない、こういうことでございます。
  313. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後のところをもう一度言ってください、大事なところですから。従来の申し入れについて、その次は……。大事なところは大きい声で……。
  314. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 韓国側の主張をそのままのむというについては非常な困難がある、こういうことでございます。
  315. 加藤清二

    加藤(清)委員 私もそう思います。必ずしも韓国の申し入れをそのままのまなければならないというほど隣と仲ようせぬでもいいと思う。このことは、佐藤総理が日韓条約を国会で批准された場合にちゃんと答弁していらっしゃる。すなわち、隣と仲よくすることについてなぜ社会党は反対をするのか、こういうことがスローガンになっている。で、私は尋ねた。うちの女房や子供を苦しめてまでも隣となぜ仲よくしなきゃならないのか、自分の妻を泣かせてまでも隣の女房と仲よくしたら、これはよろめきではないか。その結果、そのとおりでございます。決してうちの子供や女房をいじめてまでもさようなことはいたしません、と答えた。当然のことなんです。現在の総理がそう答えている。  ところで、軍事機密ほどではないけれども、外交交渉の内容を事前に国会で明らかにさせたいなどと、私はそんなやぼなことは言っておるんじゃございません。しかし、遺憾ながら、きょうの日本経済新聞にはでかでかとそのことが出ているんだ。これはスクープされたのかどうなったのか、そこは知りません。そこでお尋ねしますが、これは大蔵省と書いてある。そこで関税局長にお尋ねするが、これは関税局が公表したものでございますか、いかがですか。
  316. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 公表したものではございません。
  317. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからば、ニュースソースはどうなりました。
  318. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 関税局におきましては、関税の問題、いろいろございますが、研究課題の一つとして、韓国との保税加工貿易の問題も研究はしております。しかし、きょうの新聞紙上に出ておりまする内容一つ一つ吟味してみますると、私どもが研究しております内容とはだいぶ違っておる部分があるわけでございまして、また、私どもが研究はしておりますが、この問題は非常に重要な問題でありまするし、今後の国内の産業界に与える影響も非常に大きいわけでございますので、慎重に研究をしておる段階でございます。また、韓国との保税加工貿易に関連して、たとえばしぼりに対する日本の関税の扱いをどうするかという点につきましては、現在のところ、昨年来国会で答弁申し上げているとおり、また外務省からただいま答えられましたとおり、現在におきましては、付加価値部分だけに対して関税をかけるということはできない次第でございますので、そのような方針でやっておる次第でございます。
  319. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはきょうのこの新聞に出ていることは、大蔵省で検討を進めていることとだいぶ相違がある、開きがあるとおっしゃられた。この相違のある点をお示し願いたい。
  320. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 研究していくうちに業界意見等も聞きまして、また関係各省とも相談をしてだんだん結論を出すわけでございますが、新聞に書いてあることは、結論的なことが書かれてあるわけでございまして、結論的な部分はすべて違うわけでございます。
  321. 加藤清二

    加藤(清)委員 では、一つ一つお尋ねいたしましょう。  低開発国からの輸入品のうち、わが国の原材料を委託加工した製品については、輸入価額から原材料を差し引いた価額に課税する、すなわち、付加価値的な課税ですね。それを実現しようとしていらっしゃるのかいらっしゃらないのか。
  322. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 ただいまのところは、そういう方式を実現するつもりはないのであります。
  323. 加藤清二

    加藤(清)委員 やり玉に上げられているのがしぼり加工でございます。この点については、それを適用なさるおつもりであるのかないのか。
  324. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 現在のところは、しぼり加工品に対しまして関税定率法十一条を適用する考えはないわけでございます。
  325. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう一度念を押しておきます。  しぼり加工について、この特恵関税と思われる付加価値だけに課税する、かようなことを期近に行なう意思はありやいなや、ありますかありませんか。
  326. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 期近ということが最近ということでございますならば、最近の時点において実行するつもりはありません。
  327. 加藤清二

    加藤(清)委員 最近の期日はどの程度でございましょうか。
  328. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 この問題につきまして現在私ども研究はしております。また、関係各省と今後折衝する必要もございまするし、またその際に関係業界、特に中小企業が多い業界でございますから、その業界の実態を十分に調査をし、またその意向を十分に政策に反映させる必要があるわけでございます。関係各省との折衝あるいは関係業界の意向を打診するということにつきましては、相手のあることでございますかち、私の見るところでは、相当の日数を要するものと考える次第であります。
  329. 加藤清二

    加藤(清)委員 念を押しておきます。  結論的に違う点が多いとおっしゃいましたが、いまのこの付加価値をしぼりをサンプルにして、しぼりをモデルケースにして、そこから他のものに波及させるということはここ当分の間、検討はするけれども、実現はしないと、この新聞の記事をくつがえしなさいますか。
  330. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 新聞の記事を私読みましたところ、そういう考え方もあるけれども、関係各省あるいは関係業界の反発が相当強いので、この実現は非常にむずかしいというような記事になっておるのでございます。この点は私は事実であろうと思います。それ以外の、大蔵省が研究をして、こういう事柄についてこういう結論に到達した、といったように誤解されるような表現の部分は、その点は違うということを申し上げたわけであります。
  331. 加藤清二

    加藤(清)委員 はい、わかりました。  それではお尋ねいたします。この新聞にもすでにそのことが解説されておりますけれども、付加価値の考え方というものは関税定率法の中にある。しかしそれは決して国内の業者をいじめたり国内の業者と競合するようなところに許された前例はない。日本国内で加工することができない、それは非常に困難性がある。つまりことばをかえていえば、絶対に競合しない、悪影響を及ぼさないという場合に特恵を与えていく、そうですね。そこはどうなんですか。
  332. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 関税定率法第十一条の解釈としては、いま仰せられたようなことに一応なっております。
  333. 加藤清二

    加藤(清)委員 ところで、今度検討を進められておりまするところの繊維に対する付加価値税の恩恵は、これは目的が違う。コストを引き下げるというところに目標がある、そうですね。コストを引き下げるというところに目的がある、これはお認めになりますか、なりませんか。ならなければ説明します。
  334. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 韓国の要望がそういう趣旨で出ておるということは推測されますけれども、コストを引き下げるということだけであるかどうか。そのほかに日韓両国の片貿易の是正の問題の解決法の一つとして、韓国として輸出するに適当な品物をかれこれ選択考慮した結果、これが一番いいというような配慮のもとに考えておるという趣旨もあるのじゃないか、こう考えます。
  335. 加藤清二

    加藤(清)委員 貿易のアンバランス是正の材料にこれを使うというあなたの説は私は初耳だ。それはしかしもはや通商局なり振興局で検討する問題でございます。もちろん外幕の場合は大蔵省ともいろいろ検討しなければならぬ問題でございますけれども、だから論点をそちらに発展させることはやめておきましょう。  問題は、日本の業者が何がゆえに、日本の中小企業が苦しむということを承知の上で——もっとはっきり言いましょうか、某有力大臣を勅員かけてこれを押し切ろうとしておるかといえば、それはコストが安いというところに魅力がある。もう一つは、そのまま持ってきてコスト高にして売ることが可能であるというところに問題がある。それは利潤が非常に多いということなんだ。そこに問題がある。これはノリと同じことなんだ。私どもコストの引き下がることを反対はいたしません。しかし引き下がったところの恩恵はだれが受けるかといえば、それを扱った商社とこれを世話した政治家だけが恩恵を受けるということについては賛成はできません。なぜかなれば、日本に持ち込まれたその製品は日本物として売られる。ノリと同じです。質の悪い、技術の悪いものが、日本へ輸入された場合に、純粋に日本でできた高級品と同じように売られておる。このことはさきの予算委員会において私が品物を持ってきて鑑定させたから、わかったでしょう。原田君おりませんか。通商局次長。わかっておるはずだ、そうですね。わからなかったら実物を持ってきて見せます。ここに問題がある。ほんとうにコストが安くなって、その恩恵を国民が受けるというなら話はわかる。ここに反対の最大原因があり、国民の納得できない問題があるわけです。それをあえて推し進めるだけでなくて、検討しておるというお答えでございますから、それを信頼して次に論を進めたいと思います。  もし原材料がよその国から輸入されたものであって、付加価値だけがプラスされたものである、そういうものに対しては恩恵を施すのが当然であるという考え方がもしあったとするならば、それはいまのような利潤分配のところまでいかぬ前におかしな話であると思う。なぜかなれば、その論が正しいとするならば、私は次に申し上げたい。しからばいま論議をいたしております日本の綿製品の材料はどこのものです。毛製品の材料はどこのものです。材料は、コットンはほとんどアメリカでしょう。もちろんエジプトも少々あります。ウールはほとんど豪州でしょう。それを今度日本で加工してアメリカに出すときにどうなっておる。特恵待遇を受けておりますか。これは七重八重、十重二十重の制限を受けておるのです。アメリカ自体がそうなんです。御存じでしょう。関税どころの騒ぎじゃない。二国間協定、四国間協定、綿製品輸出国協定、これはひどいものです。日本だけが特別過酷な措置を受けておる。その措置に対して、いまそこにおります蒲谷君たちが去年もジュネーブに行ってずいぶん努力しておるから、その努力については多としておる。しかし、長きにわたる努力がありながらも、なお日本の綿製品のアメリカ輸出については制限の歴史なんです。不平等の歴史なんです。いまの国際法の通念が、関税法の定率の通念がそれが正しい認識となさるならば、返すことばで直ちにアメリカと交渉しなさい。これすべてアメリカのコットン・ファーマーがつくったところの材料ではないか。わが国で加えたものは一体何か。わが国の加えたものは英知と技術だ。それが制限に制限を加えられておるではないか。いかがです。
  336. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 ただいまの問題は二つの面から考えることが私は適当だと思うわけであります。  一つは現在の日本の関税定率法の十一条の規定でございます。これは加工または修繕するために外国に物を出し、そしてその場合日本において加工または修繕することが困難な場合におきましては、付加価値だけに対して課税をすることができる、こういう規定になっておるわけであります。これは必ずしも後進国だけに適用すべき規定ではございませんし、またいまお話しのように、日本において加工、修繕ができない、すなわち、外国にその機械の修繕の特許があるとか、日本ではとても技術的にできないものであるとか、そういうものに限るというのが法律趣旨でございますが、明文はいま申したようなことになっておりますので、解釈の余地として、経済的な理由によって加工または修繕が困難なものについてどうするかということが一応議論の対象になることはなるわけでございますが、ただいまの政府考え方は、国内において技術的に加工または修繕ができない場合に限るのだ、したがいまして、ことに日本のしぼりのように、関係している方々中小企業が非常に多い、そういう中小企業方々を圧迫するような結果になるようなことについては、いまの段階でそうすべきじゃないという問題であります。  一方もう一つの問題は、先進国と後進国との関係の問題であります。日本はすでに先進国でございまするので、後進国から関税の問題についていろいろ要望が出ておるわけであります。後進国が先進国全体に対しまして、後進国の産品についての関税を特別扱いしてほしい、そして後進国の貿易をもう少し高めるようにしてもらいたい、この問題は、世界的な規模において最重要な問題としていま検討されておるわけであります。そういうような意味におきまして、今後この問題をどういうふうに解決するかということが、先進国全体として考えるべき問題であると思うわけであります。先ほど例に引かれましたアメリカとの関係、先進国同士でございますので、その点は別の問題であると思いますけれども、先生お話しのように、日本が不平等な扱いをされるということは断じて許すことができないわけでございますので、その点も十分考えて、この保税加工貿易の扱い方については、今後慎重に研究をしてまいりたいと考えております。
  337. 加藤清二

    加藤(清)委員 お説ごもっともでございます。前段はごもっともです。しかし後段にちょっとひっかかる問題があります。今後、後進国との経済外交の面が促進されることが多いから特に申し上げます。それはやがて日本の中小零細企業と競合するものであり、その内容は、やがて繊維廃業が一番数が多くなるからでございます。後段の問題で、アメリカと日本とでは、先進国同士の問題だから、あなたはおのずから別であるとの見解でございます。それは日本がガットの問題、IMFの問題、OECDの問題等々になるほど加盟した今日において通用することばでございます。しかし日本のアメリカへ輸出いたします繊維製品についても制限があり、八条国時代になってもずっと続いておるのでございます。外貨も少なければ、敗戦のどん底に突き落とされたその直後から始まっておるのでございます。すなわち相手は先進国であり、同時に戦勝国である、こちらは発展途上の国であり、敗戦国であったわけでございます。そのときから制限は進み、そのときから材料は一〇〇%買わされて、それからできたところの製品は、オールできた製品の二十五分の一も買ってくれなかったのでございます。それが出るとすぐに制限だったのでございます。ご存じでしょう。これはどうなんです。
  338. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 通産省からお答えするほうが適当かと思いますけれども、私の考え方を申し上げますと、繊維製品につきましては、確かにアメリカは輸入国であります。同じ先進国同士でありましても、輸入国と輸出国の立場が違うわけでございます。日本といたしましては、今後とも繊維製品の構造改革等をやりまして、できるだけ良質、廉価なものをつくりまして、アメリカに輸出をすべきだと思いますけれども、その際に、アメリカにおきまして輸入制限等の措置を一日も早く撤廃されるよう、これは経済外交として当然要求すべき問題であると考えております。
  339. 加藤清二

    加藤(清)委員 その答弁やけっこうでございます。  そこで、本件を締めくくるにあたって、もう一つだけ申し上げます。通産大臣、後進国からの商品の輸入、先進国からの資本の輸入、これは二つながら今後ますますふえると考えなければなりません。ふえてなおメリットだけならばよろしゅうございますが、デメリットがある。これは注意を要することでございます。いわんや、そのおかげで国内の同業者が困るということになれば、世界一のアメリカ自体でも、これは制限制限で大きなワクをつくっておるのでございます。決して日米友好通商航海条約は、日本商品に対してはアメリカ国内において適用されておりません。  さて、それでは後進国から敵前上陸してくる品物が、国民に対して安くて、物がよくて、それで国民が喜んでいるというのならばけっこうでございますけれども、表示は牛肉だったが、中を見たら鯨肉であった、こういうようなことは、国内の商品にも許されざることでございますが、後進国の商品にもそれなしとはいえない。これに対して、あなたはどういうお考えを持ちますか。
  340. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 後進国から入ってくる品物に悪いものがあるという意味であるか、その点は私はっきりいたしませんが、後進国から安い品物が入ってくることは事実であります。それに対して、どうするかというお考えかと思うのでありますが、それに対しては、たとえば繊維の関係でいえば、向こうは原料産地であるし、労賃も安い、したがってでき上がる品物が日本よりも安いということは当然考えられることであります。したがって、それに対抗するためには、どうしても日本の繊維工業というものの根本的な改造をはかって、より高級な品物をつくっていくということで対抗しなければならぬということで今回の特別措置法というものを考えた次第であります。
  341. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなた、私はここで時間があれば、御理解をよくいただくようにノリの問題を例をあげて説明したいけれども、そうすると時間がかかるから何ですが、これは大臣、あなたは十分理解していらっしゃらないようです。もっと端的に言いましょう。もう一度申し上げますが、韓国から輸入される品物の中でノリと保税加工をされたところのしぼりは品質が非常に悪い。したがって値段は安い。そこまではいいのです。しかし、波打ちぎわからこちらに入ると、とたんに両者とも日本品に化ける。そうして日本品にまじって売られていく。その結果はどうなるか。国民はにせものをつかまされている、こういうことです。その具体的な事実を示すために現物を持ってきて、ごらんに入れた、前に。そうしてあなたは、それを認めた。しかしそれは中に入ったインポーター、輸入商その他が厚い利益を得るということには効果があるわけです。同時に、そのおかげで政治資金が献金されるということも事実なんです。首を振るなら、具体的に言いましょうか。言うたらばれてきますよ。私はきょうはばらすのが目的ではない。その事実に対して、時の通産大臣三木さんは、もっともである、しからば対策を言えとおっしゃった。端的に申し上げましょう。品質表示をなさい。産地国の名前を入れなさい。たとえばウイスキーにしたって、イギリスのウイスキーだったら、ちゃんとスコットランドのそれぞれマークが入っている。銘柄が入っている。イギリス製の毛織物だったら、一着分ずつ耳マークが入っている。一着分ずつトレードマークが入っている。アメリカ製の万年筆、わずかなものですが、これでもちゃんとマークが入っている。しかし何十億、何百億と入ってくるノリにはマークがついていない。しぼりにもマークをつけさせない。これはおかしいではないか。だからつけさせなさい。品質表示をやらせなさい。日本国産のものでさえも品質表示せんければならぬというのが通産省の定説でしょう。なぜそれをつけさせないのか。それを検討しなさいと言ったら、検討して実行に移すと言われた。ときに昭和四十年十二月、臨時国会。古証文を持ってきましょうか。どれだけ進みました、作業は。
  342. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 二つ問題があるかと思うのでございますが、よその国でできましたものが、もしそれに日本製というふうな表示がかりにあるといたしますれば、それは不正競争防止法で取り締まることができます。それから第二は、何らの表示のないものにつきまして、それに何国製という表示をつけさせる規定は、これは先生御指摘のとおり現在はございません。私たちのほうにおきまして品質表示の適用を研究したのでございますが、これは現行法では品質表示は、御承知のとおり任意表示になっておりますので、表示を強制することはむずかしいのでございます。したがいまして、さしあたりできますことは、日本製のものにつきまして日本製、どこどこ製という表示をつけさせるということは、これは行政指導で可能でございますので、そういう方向でまず指導をいたしたい。それから、他国製のものにつきまして、その国の製品、そこの国でできたという表示をつけさせることにつきましては、これを強制いたしますには法律を要するわけでございますが、まだその成案は得ておりません。
  343. 加藤清二

    加藤(清)委員 これははっきりしてもらいたい。大臣が約束しておることなんです。しかも、予算委員会において、ごもっともだからさよう検討して御返事を申し上げると言われてから、あれから二年になる。もうおっつけ二年です。しかもこういう問題が出来してきておる。にもかかわらずそれについては検討は一歩も進んでいない。おかしいじゃないの、日本政府の態度は。朝鮮に利便を与えることだけ検討を進めて、日本国民が利便することについてはどんどんあと回しにする。おかしいじゃないか。大臣、どう思います。
  344. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまの事実、私初めて聞いたのでありますが、そういう問題については、八月に日米経済閣僚会議がありますからして、したがって私はそういう問題を問題にしたいと考えております。
  345. 加藤清二

    加藤(清)委員 初耳であるとおっしゃれば、しょうがない。それは親分から子分へのバトンタッチですから、やあやあ、まあまあということで終わったんでしょう。それは認めますよ、その程度のことはね。しかしあなたの親分がちゃんと確答しておる。国会の記録に載っていますからね。怠慢のそしりを免れることができなくなりますね。まああなたはおかげで寿命が延びておるのです。国会がもめて予算関係法案が半分も通らないんだから、延長するか、次の臨時国会だかで——臨時国会といえば大臣かわりっこないのです。だからあなたは安心して検討してくださいよ。首の座は全うできますから。いつごろまでにやられます。検討するとおっしゃったんだから、今度は時間を限らなければならぬ。
  346. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 法律論におきまして種々難点がございますが、一生懸命できるだけ短期間に成案を得たいというふうに検討いたしたいと思います。
  347. 加藤清二

    加藤(清)委員 次にもう一つ問題がある。なぜこんなことを言わなければならないかというたら、この法案はなぜ通さなければならないかというところに基因するわけです。日本の繊維産業が不景気だから、不況だからなんだ。倒産が多過ぎるからなんだ。だから政府資金まで入れて何とかして立て直してやろう、こういうことでしょう。しかし、片やそういうことをしておきながら、片や足元を引っぱるということが行なわれておるのは、これはさいの川原の石積みになる。なぜそういうことを言うか。十年前にこのことは発足したのです。にもかかわらず、今日また同じことが繰り返されておる。忘れもしない、小室繊維局長時代だ。十年前からうたわれておることですよ。どうしてか。片方が取り上げたけれども、片方が足元を引っぱっておるからだ。いつも足踏みなんだ、空転なんです。そこで今回はそういう歴史を知っている者たちが、二度と再びその轍を踏まないように、悪い原因、不況の原因を除去してかかってあげなければならぬ、かように思うからでございます。  第一番、インドネシアへの五千万ドルの借款、これはどうなっていますか、外務省。
  348. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 これは経済協力局の所管になっておりますので、ちょっと私きょう準備してきておりませんで、その詳しい内容はどうなっておりますか、お答えできかねます。
  349. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは機密事項ではありません。すでに行なわれたことです。で、至急本日中にその資料を提出してください。だからというて、この法案をストップかけようなどとは思っていないのだから。ただし、あすの予算委員会においては必ず出ますぞ。ですから、至急用意して私の手元までいただきたい。
  350. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 それでは、できるだけ早く連絡しまして、資料を取り寄せることにいたします。
  351. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、この間佐藤総理が朝鮮へ行かれましたね。向こうの副総理から二億ドルの借款を要求されたはずでございます。これはどうなりました、外務省。——私の質問をよう聞いておってもらわなければ、あなたのほうで時間かせぎをしてはいかぬです。こっちは早く済ましてやろう思って協力しているのだから、何べんも同じことを重複して言わせなさんな。この間の防衛庁のときみたいな、ああいうつもりじゃないのだから。きょうはそれに、協力して私も早う帰りたいのだ。帰心矢のごとしだ。新聞記者の諸君も早う帰りたいのだ。よう聞いておってくださいよ。  先日佐藤総理が朝鮮へ行かれましたね。そうしたら、副総理から二億ドルの借款を要求されておるはずです。これはどうなりましたか。  この点は、国会が終わると佐藤総理が後進国十一ヵ国回りますね。これはみなおみやげを要求される国ばかりなんです。その国々は、おみやげをもらうというとどういう結果が生ずるか。ほとんど軽工業だ。工業化したいのだから、軽工業にとりついてくる。その軽工業は何かというたら、繊維産業なんだ。その結果はどうなるかというと、輸出市場において日本品と競合するから、日本の輸出が削減されるという見通しがついておる。いわんやアメリカ市場においては、すでに朝鮮ものと日本ものとが競合しておる。そればかりじゃない。敵前上陸してくる。パキスタンの糸がこの間入ってさた。これで業界はてんやわんややっておる。そうでしょう。朝鮮のワイシャツが入ってきた。これで業界は脅威を受けておる。そういうやさきに、二億ドルの借款をやったら、内容は何かというたら、ドルというから青券持っていくかと思ったら大間違いだ。持っていくものの三〇%以上は繊維設備なんです。いまやこの法案において、うちにある設備までスクラップダウンしょうというやさなんです。そのときに、後進国にこれをやらせるべく援助をしておったらどういうことになる。後進国が飛びついてくるのは繊維だ。そこでできるものは四十番手以下の下級繊維ばかりなんです。四十番手以下をつくっている日本内地の繊維業者はと見れば、中小零細業者ばかりなんです。隣の国と仲ようするのがなぜ悪いというような単細胞的なスローガンに迷わされていてはいけません。そのために倒産のうき目を見て泣いている業者がずいぶんあるのですから。それを救うのが本法案なんですよ。こちらで制限制限といったって、お隣の国でどんどんつくって、販売シェアのところで競争をやられたらどうなる。二億ドルの内訳を聞きたい。日本の法律がここだけで事が足りると思っておったら大間違いですよ。
  352. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 これは先ほど先生に申し上げましたが、ちょうど私、その所管局が違いまして、非常にこまかい詳しいことは承知しなくて申しわけないのですけれども、いま第二次五カ年計画に対する協力を要望されまして、その結果韓国側が申し出をしてきたわけです。これの具体的な内容は、来月の九日と十日に閣僚会議が行なわれますので、その際に検討しようということになっておるはずでございます。  あと非常にこまかい点は、私お答え申し上げかねます。
  353. 加藤清二

    加藤(清)委員 佐藤総理に対して、韓国の総理から二億ドルの要求があったことは認めますね。それも知らないのですか。
  354. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 額については承知しておらないのですが、五カ年計画に対して協力をしてくれという要望があったということは承知しております。
  355. 加藤清二

    加藤(清)委員 それを集約しためどが大体二億ドルである。では、それもあわせてきょうじゅうに——資料と申しましょうか、向こうの申し入れと申しましょうか、申し入れがあった以上は、集約が二億ドルですから、その積算の基礎になる内訳ですね、それを聞かせてもらいたい。その内訳のいかんによっては、この法案をどれだけ一生懸命になって通してみたって、さいの川原の石積みになるのですから。おわかりになりましたか。提出できますか。
  356. 須磨未千秋

    ○須磨説明員 それではできるだけ早く関係局に連絡しまして、資料を提出することにいたしたいと思います。
  357. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に国内の経済関係についてお尋ねをいたします。  日本経済の発展と繊維の発展は、過去歴史的に大体並行線をたどっている。ただ、他の鉱工業の生産の伸び率と繊維産業の伸び率を比較すると、他は幾何級数的に伸びているけれども、繊維産業だけは高原状態にある。したがって、その格差が非常に広がってきている。マクロの経済から見るとそういうことになる。そこで経企庁にお尋ねしたいのですが、四十二年度予算審議のおりに、鉱工業生産の伸びは、当初見込みは一四%、オール産業にして一三・四%とお答えになったはずですが、これは間違いですか。再確認をします。
  358. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 昭和四十二年度の鉱工業生産の伸びは、先般予算委員会の際に提出いたしました経済見通しによりますと、一四%でございます。
  359. 加藤清二

    加藤(清)委員 目下の見通しはどうなんですか。調整しなければならぬでしょう。
  360. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 まだその後見通しを変えておりませんので、現段階におきましての見通しとすれば一四%という目標を持っておるわけでございますが、ことしに入りましてからの鉱工業生産の伸びは、われわれの想定よりもかなり高目に走っておりまして、いままでわかっておりますところでは、月の上昇率にしまして大体一・一%アップくらいのベースで走っております。それがこれから下期どういうふうになるかということによって年度全体の姿がきまってくるわけでございますけれども、いずれにいたしましてもそういうベースで走っておりますので、われわれの感じといたしましては、おそらく一四%を若干上回るということになるのではないかという感じを持っております。
  361. 加藤清二

    加藤(清)委員 三和銀行の報告、勧業銀行の報告、その他「エコノミスト」等々にもすでに出ておる問題でございますが、それによると、大体二〇%程度になるのではないかと見通しておるようでございますが、それは間違った見通しでしょうか。
  362. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 現在までのところ非常なテンポで動いておりますけれども、われわれの感じといたしましては、下期に入ってそのテンポがさらに強まるというふうにはいまのところ考えておりません。単純な計算でございますけれども、先ほど申しました一・一%くらいのテンポでそのまま進んだ場合には、一応数字としては一七%くらいの数字になるわけでございます。したがいまして、私のほうは二〇%にもなるということはいまのところ考えておりません。
  363. 加藤清二

    加藤(清)委員 一四%と当初見たけれども、現状の伸びる傾向からいって本年度は一七%くらいはいくであろう、こういう見通しでございますか。
  364. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 いま申しました一七%という数字は、ことしに入りましてからの伸び率をそのまま単純に伸ばした場合の一応の計算でございます。したがって、私たちのほうがいま一七%というふうに見通しを変えたとか、そういうことではないのでございます。ただ、先ほど申しましたように、どうもいまの趨勢から見ると、かりに下期に若干鈍化するといたしましても一四%というところにおさまりそうもない、こういう感じを持っております。
  365. 加藤清二

    加藤(清)委員 簡潔に、要点だけ聞きます。  公取来ておられますか。——委員長来ておられませんね。——では、それまでちょっと待ちましょう。  それではお尋ねいたしますが、この法案によりますと、繊維産業の近代化は三年ないし五年後に完了するということになっていますね。先ほど来お答えになりましたスクラップダウンの数量であるとか、あるいはそれが完成された後の錘数であるとかいうのは何年後の話ですか。
  366. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 目標年次は四十六年度でございます。
  367. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうすると五年先でございますね。
  368. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 さようでございます。
  369. 加藤清二

    加藤(清)委員 五年先の経済の伸び率を経企庁に伺いたい。
  370. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 御答弁申し上げます。四十六年度を目標年次といたします新しい経済社会発展計画におきましては、経済成長率は八・二%でございます。
  371. 加藤清二

    加藤(清)委員 いつを基準に。
  372. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 四十二年度を基準にいたしまして八・二%でございます。
  373. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう一度、はっきりわかるように。
  374. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 四十二年度を初年度といたします五カ年計画におきまして、平均的な経済成長率は八・二%でございます。
  375. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは毎年八・二%ずつ伸びるということか、それとも四十二年度を一〇〇とした場合に四十六年度は一〇八・二%ということか、いずれなんですか。はっきりしなさい。
  376. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 五年間の平均的な成長率が八二%であります。毎年毎年八・二%ずつ伸びるということではございません。
  377. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこらをもう一度はっきりしなければいかぬ。四十一年度をかりに一〇〇として、四十二年度八・二、四十三年度またそれに対する八・二と伸びていくのか、あるいは四十一年度を一〇〇とした場合に、四十六年度に至って初めてその差が一〇八・二%となるという試算なのか。こんなものはあくまでも試算ですから、そうびっくりせぬでもいいですよ。
  378. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 四十六年までの五カ年間を見ますと、昭和四十一年度の二十四兆円が、四十六年度で四十兆円になるということを平均複利で計算いたしますと、年々八・二%になる、こういうことでございます。
  379. 加藤清二

    加藤(清)委員 つまり、毎年の複利計算にして平均値をとってみると、毎年八・二%くらいずつ伸びるであろう、こういうことですね。
  380. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 はい。
  381. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこでお尋ねせんければならぬことは、弾性価をどのようにお考えでございましょうか。
  382. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 弾性値と申しますのは、鉱工業生産に対する弾性値でございますか。——四十六年度におきます鉱工業生産指数が三一〇ないし三二〇、若干幅を持たせて見通しております。それを同じように複利計耳で計算いたしますと、年々一〇%程度の鉱工業生産の伸びになるわけでございます。
  383. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃいつの間に変わったのです。いつの間にそんなふうに変えました。当初予算のときには一・二二だと言うていた。それはおかしいよ。
  384. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 一・二二というのは弾性値でございます。それですから、弾性値にいたしますと——いま申し上げましたのは年々の鉱工業生産の伸び率を複利で計算いたしますと一〇%……。
  385. 加藤清二

    加藤(清)委員 複利で計算すると毎年八・二%と言ったじゃないか。
  386. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 それは鉱工業生産ではございませんで、国民総生産が八・二%でございます。
  387. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は国民総生産は聞いていないじゃないか。もう一度清書してください。
  388. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 国民総生産の伸びが八・二%でございまして、鉱工業生産の伸びは一〇%程度になります。
  389. 加藤清二

    加藤(清)委員 毎年複利計算でね。そこで、最後に聞いたのは弾性値ですよ。
  390. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 一・二二でございます。
  391. 加藤清二

    加藤(清)委員 ところが、きのう、きょうの経済学者、ないしは学者のみならず現場の金融機関等々は、一・五%以上に見ていますね。これはうそですか。
  392. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 国民総生産の伸びと鉱工業生産指数の伸びとの間の弾性価は、年々非常に違っております。景気の悪いとき、景気のいいときによってかなり違っております。ここで計算しております経済計画におきます弾性値は、それを五年間ならしてみました場合にその程度になるであろうという計算でございます。
  393. 加藤清二

    加藤(清)委員 昭和四十二年度の弾性値はどうなんです。
  394. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 経済計画ではまだ計算はいたしておりませんので……。
  395. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣にお尋ねする。通産大臣はこの弾性値並びに鉱工業生産はどのように見ていますか。これによって五カ年計画を立てるんですよ。この基礎がしっかりしてないというと、またくずれますよ。だから田中理事などに朝令暮改だと言われなければならぬ。
  396. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 経済企画庁のいま言うた成長率によってこちらも計画を立てております。
  397. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうすると、経済企画庁のおっしゃったことと、数字はイコールですか。
  398. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そうです。
  399. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃ、独自的な試算はしたことがない。あなたのところには企業局とかなんとかいう局がありますね。そこではそういうことをやったことはございませんか。
  400. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お答え申し上げます。繊維の糸の需要推定を早急にやらなければならないということでわれわれが使いました数字を申し上げますと、繊維の総需要、これを内需と輸出に分けまして、内需は衣料用と産業用に分けまして、この衣料用の試算でございまするが、これは個人消費支出のうちの被服費との相関式によりまして出します。この内需衣料用の数字でございますけれども、個人消費支出実績を企画庁の資料によりまして、四十年度が十三兆円、四十六年度が二十兆円、年率七%で伸びるという数字をとっております。  被服費の実績は、ちなみに企画庁資料によりまして、四十年度は一・七兆円、それから見通しは、先ほど申し上げました……。
  401. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこでストップ。大臣、あなたは、いま私が数字をお尋ねしたら、企画庁のそのままだ、こうおっしゃったのですが、企画庁の数字というのは、何も通産省の産業だけからとっておるのじゃございませんですよ。どうしてイコールになる。年々の伸び率を、国民総生産において経企庁は八%と見ておると言ったでしょう。いま繊維局長は七%と言ったでしょう。私はそれが正しいと思う。当然です。そこにこの法律の必要性があるわけなんです。イコールだったら、なんで繊維だけ特別に手当てせんならぬのです。どう考えますか。
  402. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国民総生産の成長率については企画庁の基準に従っておるということを私は申し上げたのであります。
  403. 加藤清二

    加藤(清)委員 促進しましょう。そこで、七%と見ている。その際に考え及ばなければならぬ問題は、今日スクラップダウンをさせまする場合、一台幾らでございますか。スクラップダウンさせる場合の政府から補償される金額、織機にして、あるいは錘数にして、当初の予定は幾らになっておりますか。
  404. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 当初の予定は、紡績におきまして三百万錘をつぶしたい。その中で一括処理は二百万錘をつぶしたいという計画でございます。織機におきましては十二万六千台をつぶしたいという計画でございます。
  405. 加藤清二

    加藤(清)委員 その数字はわかっているが、一錘について幾らですかと聞いておるのです。
  406. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 一括処理の場合の金額は、一錘三千円を基礎にして財政投融資の金額をはじいております。織機におきましては、一台八万円を基礎にしてはじいております。
  407. 加藤清二

    加藤(清)委員 その数字は、三千円というところをもう一度言い直さぬでもいいかな。
  408. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 三千円という数字、これはこういう意味でございます。もう少し詳しく申し上げますると、財政投融資四十八億を見ておるわけでございまするが、これに対し見ております数字、政府がとっております数字は三千円でございまするけれども、業界が特に任意供出をするという場合も考えられますので、この場合には一応これは政府計画外にさらによけいなものを足すということで、一錘四千円程度に見込んでおります。
  409. 加藤清二

    加藤(清)委員 四千円ですか。ほんとうにそうなっておるのですか。
  410. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ただいま申し上げました数字は、答申の思想に従って考えますと、一括処理の場合二百万錘のうちの百万錘につきましては三千円という数字をはじきまして、さらに百万錘は動いておるもの、任意供出のものを見なければいけないというので四千円という数字をはじいております。なおさらに関連転廃業者の買い上げ価格は一錘六千円ということではじいております。
  411. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。それならそれでいい。最高の値段にして一錘六千円、最低の値段にして三千円、それから織機のほうは八万円、これは最高のほうですね。平均値ですか。
  412. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織機は、御高承のとおりいろいろのタイプがあるものでございますので、平均八万円ということでございます。
  413. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです。その論で進めましょう。  さて大臣にお尋ねいたします。一錘最高六千円、織機八万円、これは高いか安いか。
  414. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私はそういう市価は知りません。高いか安いか知りません。
  415. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは高いか安いか知らずに予算要求をしたのですか。
  416. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 紡績の場合は……。
  417. 加藤清二

    加藤(清)委員 簡単に高いか安いかを聞いておる。高いとか安いとか答えたらいい。
  418. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 相当の値段であるというふうに考えております。
  419. 加藤清二

    加藤(清)委員 さすが繊維局長、大臣以上の政治答弁をなさる。しかし、それじゃ承りましょう。今日業界で売買されている値段は幾らか。
  420. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 四十年中の売買事例は、いろいろ高い安いあるようでございまするが、調べましたところを平均いたしますと、一錘当たり六千五百円程度、現在はそれが上がりまして八千円という値段も聞いておりまするし、さらにそれ以上の値段も聞いております。
  421. 加藤清二

    加藤(清)委員 さて大臣、これからがたいへんなんです。いままでは簡単でしたがね。現在織機八万円、紡機一錘六千円、そのいずれを例にとってもよろしい。あなたの好きなほうをとりましょう。あなたはどっちをとります。
  422. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 どちらでもよろしいです。
  423. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃこっちで聞きましょう。格差のない紡機をとりましょう。いま紡機を六千円と見積もった。相当の値段だと局長は答えた。しかしいま売買されている値段は、すなわちこの法律が通る、そうするとスクラップダウンをしなければならぬ、提供しなければならぬ、そこでさあたいへんということでスクラップダウンするための材料の買いあさりが始まっておる。大臣、御存じですか。
  424. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は知りません。
  425. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのときの売買の値段を、いま六千円だの七千円だのというておられますが、実質はそんなことで売買されるものではございません。いまになってそういうことばが出ておりまするが、この法律がまだ海のものとも山のものともわからぬというたころには大体二万円としたものが、設備費も二万円かかる購入値段、しかし権利金は二万円余かかる、だから一錘について四万円余に相なってくる。これは認めますか認めませんか。
  426. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私はそういうことは存じません。
  427. 加藤清二

    加藤(清)委員 大ものですね。それじゃ繊維局長、簡単に答えてください。
  428. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 三十六、七年当時つまり需給調整を非常に厳重にやりましたときには、いま先生おっしゃいましたような一錘当たりの売買価格、個々の売買価格が二万円というふうな数字が出たそうでございます。ただ、この法律案を立案いたしました当時には、権利代はずっと下がりまして、われわれ聞いておるところによりますと、三、四千円ないしそれ以下という数字になったそうでございますが、またその後、ただいま先生御指摘になりましたような一括処理との関係もおそらくあり、また転廃業者の織機を六千円で買い上げるという予算措置もお認めいただきましたこともあったのかとも思うのでございますが、先ほど申し上げましたような値段になったと思います。
  429. 加藤清二

    加藤(清)委員 今日でさえもなお市場売買相場、いわゆる市価よりは安く見積もった値段が行なわれているようでございます。それはお認めになりますね、繊維局長
  430. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ただいまの売買時価よりも、この六千円という価格は安いと思います。
  431. 加藤清二

    加藤(清)委員 銀行はこの権利金をどの程度に見積もって融資しているとお考えでございましょうか。
  432. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 銀行はおそらく相当低く権利代は見積もっておると思います。ちなみに簿価でございまするけれども、われわれ調べたところによりますると、これはもちろん取得時によって違いますけれども、千四、五百円、非常に高いものにおきましても二千八百円というふうな簿価になっておるようでございます。
  433. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのデータは、この法案が通って五年先になると権利金がゼロになる、それでは信用補完上担保を多く試算するわけにはいかないということになってからの数字なんです。それはそれとして、私の言わんと欲するところは、問題は今日の売買値段、今日銀行が査定しているところの値段、それよりも安い値段を見積もって、今日出発点からですよ、そうしてそれから設備を召し上げ、権利を召し上げられる、そういうことがはたして実現可能であろうかというところに出発するのです。どう思われますか。大臣に聞きましょう。こんなのはわかっていますね。ここから先は大臣答弁です。
  434. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういうことについての不平不満というものを私聞いておりません。産地側からはこの原案でぜひひとつ成立するようにという希望は聞いておりますけれども、そういう不満不平は聞いておりません。
  435. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは大物ですよ。長生きしますよ。もうあなた正三位勲一等ですからね。長生きして正一位くらいになりますよ。のんびりしている、長生きするよ。しかし問題はいまでさえも売買よりも少ない。いわんや、いまも経済成長率を聞きましたね、それはやがて物価値上げに通じていきますね。これは権利金その他がますます高くなるということを想定しなければなりません。繊維機械も先ほど来繊維局長が答えておられますようにナスだとかキャスだとか、いまや一錘について二万五、六千円から三万円する値段になってきておる。おわかりでしょう。そういうやさきにダウンさせようとするのです。五年先に——いま現在でさえも安過ぎる。それを五年先に同じ予算でもっていまよりも数多くダウンさせなければならぬ。はたしてこれは実現可能でございましょうか。通産大臣、そこが問題なんです。通産大臣に聞く。
  436. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 五年先に安くなるか高くなるかという見通し、私もわかりません。
  437. 加藤清二

    加藤(清)委員 高くなるということは、あなたは経企庁の試算を認めたのですよ。イコールだと言ったでしょう。そうすると高くなるにきまっている。高くなるか安くなるかわからぬではなくて、高くなるにきまっている。いま現在の相場でさえも、予算と現実とを比べてみると、予算のほうが少なきに失している。五年先に同じ予算でやったらなお開きが多くなる。その結果は、これは空文に終わるではないか、こういうことを申し上げております。
  438. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほど経済企画庁が申し上げたのは成長率を申し上げたのであります。成長率が高くなりましても、価格が上がるか上がらぬかということは言うてないのであります。したがいまして、五年先にその紡機が上がるか上がらぬかということの見通しは私はできません。
  439. 加藤清二

    加藤(清)委員 そういう妙な言いのがれはおやめなさい。知らぬなら知らぬと言うほうが大物に見える。上がるか上がらぬかわからぬ、それじゃ物価の上昇率から聞いてみましょうか。だからちゃんと根回しして聞いておいたのです、答えがしやすいように。物価は、四十一年度基準で四十六年度ととんとんですか。
  440. 宍戸寿雄

    ○宍戸説明員 計画の中では物価につきましては、卸売り物価については安定横ばいと見ておりまして、消費者物価については、最終年度の四十六年度において三%の上界を見込んでおる。個別の物価についてはわかりません。
  441. 加藤清二

    加藤(清)委員 ことしの当初予算の一年間の物価の上昇率でも三%も四%も上がっているのですよ。五年先ですよ。上がるか上がらぬかわからぬなんて、そういう、逃げ口上ならまだいいけれども、幼稚園の子供みたいなことを言ったら何ぞこれは腹があるなと見られる。そうでしょう。あなた博士じゃないか。プロフェッサーでしょう。その人がそういうことを言うもんじゃないですよ。  まあ次に進めましょう。なぜこういうことを言わなければならないか。これからが問題なのです。それではお尋ねします。こういう本件に関する制限、ダウン、格納、封緘、このようなことは何回繰り返されてまいりましたか。何回要請されましたか。
  442. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 繊維につきまして、まず旧法と申します制限法律ができましたのが先生御承知のとおり昭和三十一年でございます。それが三十四年に改正をいたしまして、その際にやり直しをし、さらに三十五年に改正をいたしました。これで旧法時代が終わりまして、三十九年にただいま施行されておりますいわゆる繊維新法ができました。このときには、従来のような凍結方式と違いまして、スクラップ・アンド・ビルドの方式を初めて採用し、過剰紡機について格納をいたした次第でございます。
  443. 加藤清二

    加藤(清)委員 つまり、簡単にいうと何回か行なわれましたということです。簡単に言いましょう、急げ急げの矢の催促ですから。しかし大臣、問題はあなたのおくれたことにも原因があるのですよ。私は五時から始めた。そこで、今後私は、急げ急げの催促で、腹減らかして気の毒だから、協力いたしますので、答弁を迷わぬように、すなおに答えてください。  次に行きましょう。いま、やみ紡、やみ織機と称せられるものがどれだけありますか、大臣。
  444. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いわゆるやみ紡という、全然無登録の紡機は、われわれはないと思うのでございますが、いわゆる第四区分といいまして、自由糸しかひけない紡機で事実上制限糸をひいておる紡機が相当数ある、いわゆる第四区分といわれておりますのが百五十万錘ございますが、その中で、綿スフタイプで綿の制限糸をひき得る、それからまた、ときによればひく危険性のあるというものは三十万錘程度ではないかというふうに考えております。
  445. 加藤清二

    加藤(清)委員 通り相場で、泉南だけでも八十万錘もある、これはだれでも知っていることなんです。それを知らぬといったらよっぽどどうかしているのです。行ってみればすぐにわかる。第四村が百五十万錘の余ある、それは一致しています。そこで制限品をひいているというのが八十万錘の余あるというのは昔からの通り相場ですね。機もまたしかり、毛機もまたしかりです。なぜそうなったか。このままの法律でこのままいけば、またそうなるというおそれが出てくる。これは識者ならみんな知っていることです。現にこの答申をなさったところの稻葉秀三さんがはっきり言っているでしょう。だから再びそれを繰り返してはいけない。金融界におけるところの不正常化、歩積み・両建てと同じことなんです。それがやがて全体をこわしていくということなんです。だから、この際それをなからしめなければならない。最初、外国からの問題を申し上げました。今度は内輪の問題で除去しなければならぬことを申し上げている。それをなからしめなければならぬ。しかし、彼らは権利を持っているのだから、権利は売買できるのですから、同時に、紡機にしても織機にいたしましても、だんだん値上がりしてきておる。その証拠に、大蔵省はもう帰ったようですが、資産再評価をやらせると言っているのでしょう。それを、値上がりは知らぬと言っているけれども、それだったら大蔵省の資産再評価はどうなる、大蔵大臣を連れてきて聞いたらどうなる、資産再評価はしろと言うておる。つまり値上がりしておるという証拠である。今後五年先に、同じ予算でやるとすれば、いま初年度でさえも逃げて逃げて逃げまくる。いわんや五年先にそんなことではできない。政府は大英断でもって五〇%出したと言っているけれども、イギリスの例は七割の余なんです。アメリカの例はオール・コットン消費の二割強の補助を政府が出しておる。そのおかげで対外競争力もできた。ランカシアは再び息を吹き返したのです。ただひとり日本の繊維産業のみよその諸外国、後進国だけをかわいがって、無償のただで贈ってやったり、低賃金でつくってきたり——敵前上陸するのはあたりまえじゃございませんか。それを、だから内輪は制限しなければならぬという。制限するのだったら制限できるように権利義務を与えたらどうです。なぜ与えなければならぬか。それで銀行から金を借りているからです。殺せ殺せと言っても銀行のほうが承知しませんよ、抵当物件にとってあるのだから。それを殺せ殺せと言うのでしょう。どうやって殺すのです。どうやって殺すのです。文章の上でつくることは楽なんです。通産大臣が知らぬ顔の平左をきめ込んでおることもけっこうなことなんです。しかしあなたの選挙区にこれで苦しんでいる人が幾らでもあるのですよ。どうです。なお五年先には上がっていく。ますます格差は広くなる、不足分で。それを五年先にどうしてダウンができますか。
  446. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 お尋ねの六千円の金額ないし三千円の金額が十分なものであるというふうにはわれわれも実は決して思わないのでございますが、ただ何しろイギリスの例のように政府が三分の二を過剰紡織機の廃棄補助に出すという国なら別でございますけれども、わが国におきましては、今回の制度において結局終局的には残存業者自分で負担をせねばならないというふうなことでもございます。そういうふうな点も考え、またこの過剰設備の処理は業界の共同行為——通産大臣の指示には基づきますが、共同行為でやる。その共同行為の可能性の限度も考えまして一応はじいた数字でございます。  なお、一括処理はこの法律の施行当初一年内に行なうということになります。三年たちますと、制限登録制もなくなるような案になっておりますので、それ以後におきましてはいわゆる紡機の権利代というものは解消できる。老朽設備業界の自主的な更新と申しますか、自主的な努力に待つというような絵を描いておる次第でございます。
  447. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたが研究して一生懸命になっていらっしゃることはようわかっているから、質問に答えてください。大臣、この法律は過去は何べんつくっても、仏つくって魂入れずでした。今回はひとつしっかりやりましょうと、業界がその気になってきているのです。ただ惜しむらくは、八万円とか六千円とかいうけれども、実際の政府の補助はそうじゃないでしょう。五〇%とか六〇%——地方自治体が一割持ちです。自己負担三〇%持ちです。自己が負担しなければならない。どうして自分で金を出して自分の権利を捨てる人があるのです。そんなことを一ぺんタクシー業界にやらしてごらんなさい。さっきタクシーの話も出ておったけれども、タクシーの権利金はご存じのとおり、東京都内でトヨタは八十万円で買えるけれども、権利金は二百万円の余ですよ。それを多過ぎるからカットしょうというときに、手前持ちで権利はただにして八十万円のあれをダウンさせるときに、それに対しては半分しか持たぬというようなことをやっておってどうしてダウンができる。できっこないじゃないですか。またやみをやれということです。あなたは大蔵大臣にどういう交渉をしました。あなたの要求どおり大蔵大臣はのみましたか。  主計局長は来ているはずでしょう。——おかしいじゃないか。呼んでいると言ったじゃないですか。何やっておるのです。——ではその点はチェックして、これは必ずあとでやります。  私の言わんと欲するところは、つけられたせっかくの予算は、時価相場から比べても、担保物件にとられているところの銀行査定からいっても、どちらからどう考えてみても少なきに失する。したがって、ダウンということは口には言えるけれどもなかなかにいたさない、こういうことになるでしょう。だから、答申を書いた稲葉秀三さんもNHKの福良俊之氏もみんな言っておるけれども、ほんとうにダウンさせるポイントは何です。こういうやさきにも、なおほんとう法律の精神どおりダウンさせるところのポイントは何です、大臣。
  448. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ダウンさせるポイントというとどういう意味か、そこがはっきりわかりませんが、要するに、この法律案というものは民間の非常な熱心な希望によってできたのでありますから、したがって、民間もこの法律ができれば、これについては全力を注いでこの法律の実績をあげるようにやるということを、二度も三度も私のほうに来て申し出ておりますから、いままでやったことについてはあるいは失敗したかもしれません。しかし今度私は念を押して、いままでは民間が協力しなかったという点において非難があるから、今度はそういう非難が起こらぬように、民間側においては協力してほんとうにやってもらいたいということを私はお願いしておるのであります。もともとこれは民間側から出てきた案でありますから、したがって私は、この法律ができ上がったときには必ずその実績をあげることができる、こう考えておる次第であります。
  449. 加藤清二

    加藤(清)委員 小室繊維局長時代に、時の通産大臣が本件に関して同じ答弁をなさった。ところが翌日参考人を呼びまして、業界の代表に私が直接聞きました。何と答えたか。結論だけ申し上げましょう。設備が多過ぎて全体が不況であるからダウンをせんければなりません、ダウンをいたします。ではあなたのところはどれだけダウンする余裕がありますかと言ったら、私のところはいやでござんすと答えました。あした聞いてごらんなさい。私のところはいやでござんすと言った。むしろこの際大急ぎでふやしたいと言われた。八十万錘のかけ込み増設が出た。機械業界はそれで困った。しかも法律が通るまでにこの注文量を納品せい、法律が通った後だったらキャンセルだと言われた。その結果どうなっているか。業界はダウンさせたいのはさせたいけれども、全体の中からさせたいのであって、自分のところのものじゃないということなんです。すなわち、よその設備をダウンさせたい。結果はどうなるか。かけ込み増設は全部認めなければその法律は通らぬという結果が出てきてしまった、言ったとおり。じゃ、あした参考人出てこられるでしょう。わが社のものをこれだけダウンするという人が何人あります。それじゃあなたの選挙区でそれを絶対的にやらせますか。一番正直にダウンしたものがばかを見て、一番こすく回ってそのときにふやしたのは大阪です。あなたの地元に関係があります。そのときに代議士がそっちへ回ったんだよ。皆さん、聞いておいてください。保守党の代議士がないしょでふやすほうに回ったのです。そのことがやがて通産省の後々の人事にまで影響したのです。私はいいかげんなことを言っているのじゃないんだ。たいへんな人事にまで影響した。やみ紡に影響した。それが今日この問題を発足するにあたって、十大紡の中で意見の相違まで出てきた。御存じでしょう。知らぬ存ぜぬと言うているけれども、だから聞いている。仏つくって魂入れず。香典が少ないから、みんな火葬場まで行って生きて帰ってくる。そのときに私は火葬場論を言った。これはダウンさせるなら、ほんとうに機械屋へ持っていって溶鉱炉へ入れてしまわなければいかぬ、その証明書をつけたら初めて予算をつけるようにしなさい、むしろこの予算は機械屋へつけてあげなさいという論を出した、火葬場論。私はその問題をこの間書いたら、こんなに大きく出した。私ども反対じゃないのです。ちゃんと賛成と出ておる。修正して賛成、成立させる。しかし設備廃棄については、確認をとって、ほんとうにダウンさせるというきめ手を置いておかぬことには、仏つくって魂入れず、火葬場から生きて帰ってくる。そこに幽霊織機、やみ紡というものが生まれた。大臣どうします。
  450. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういうことを私も聞いておりますので、したがって、この法律案をつくるときには、私も十大業者に会うて念を押しておるのでありまして、いままではせっかく法律をつくっても、法律を守らずして、かえって逆な結果になったということを聞いておる、それではこの新しい法律をつくっても何にも効果がないのだから、その点はひとつこの法律を十分守るようにしてもらいたいということを二度も三度も念を押しております。でありますからして、私は一応民間人を信用しておるのでありますが、今度はほんとうに協力してやれるのじゃないか、また今度こそ彼らがやらなければ二度ともう浮かばれないのじゃないかというふうに私ども考えております。したがって、その点については、いま加藤さんの御注意がありましたとおり、今度はひとつ失敗せぬようにやりたい、こう考えております。
  451. 加藤清二

    加藤(清)委員 初めて意見が一致しました。だから結論にいたします。初めて意見が一致した。このときにやらなければ、二度と再び制限をするとか、あるいは自粛をするとか、ダウンをするなどということは、もう言えた義理ではありません。それならばそのように政府みずからも相呼応せんければならぬ。ところが、政府みずからが大事なことを忘れておる。第一番がいままで言ったところの資金、香典なしで葬式の費用なしで火葬をやれというのですから、できっこない。第二番目、内輪の設備が多過ぎるから、それで削っていきましょうということなんですよ、これは。不景気だ、不景気な原因は設備が多過ぎるから、だから削っていきましょうということなんですよ。そういうやさきになぜ一〇〇%自由化をしなければならぬか。一〇〇%自由化とはどういうことです。外国資本でこの設備をつくらせるということですよ。日本内地の設備は制限制限、政府予算とってまでも制限しなければならぬ。そのときにどういうわけで一〇〇%自由化をしなければならぬか。こういうまるきり間違った大矛盾を政府みずからがやっておる。これはどうなんです、大臣。
  452. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 第一の香典が少ないというお話、この点につきましては、業界ともよく話し合うて、そして自分らのほうも負担をいたしますということで話し合うたのでありますからして、彼らはそれだけの覚悟はしておると思うのであります。  それから自由化の問題でありますが、これは一〇〇%の自由化ということは認めましたけれども、大体一〇〇%の自由化を認めたのは、おそらく外国資本がこないというわれわれ見通しをいたしております。それでまた紡績業界自身もだいじょうぶということを言っておるのでありますから、したがいまして、この点についての御心配は私はないのじゃないか、こう考えておる次第でございます。
  453. 加藤清二

    加藤(清)委員 来ないなんという想定、大臣がそういう答弁をするから追及しなければならなくなってくる。いや、来る材料がたくさんあるということを言わなければならぬ。  それではお尋ねします。絶対来ない、敵前上陸してこない、そういうデータを示してください、私は来るというデータを出しますから。
  454. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私のほうは、業者とよく話し合って、そしてきめたことでありますからして、業者は来ないという確信を持ってわれわれのほうに進言してきたわけであります。
  455. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは業者のだれとお話しになったか知らぬけれども、それは一部の人の言うことなんです。現にすでに染色整理の関係では共同出資を申し入れてきておる。その事実を私は外務省やら大蔵省やら実例を出してここで並べてみたいけれども、そうするとなるほど、あらまあここも気がつかなかったということになる、あなたが。だけれども、時間を急げ急げという話だから次に進みますが、敵前上陸してきたらどうします、あなた。
  456. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御承知のように、一〇〇%自由化は紡績の糸の部分だけでございますが、実はわれわれ心配しておりますのは、現在の紡績の製造技術は非常に高度化、近代化されましたけれども、原理原則は百年前と同じということで、もしここに新しい革命的な技術が先進国等で生まれ、これが資本進出条件にして入ってくるという場合には、相当憂うべきことになり得るという心配を実はいたしておったわけでございます。したがいまして、もしそういうふうなことがございますれば、この一〇〇%自由化につきましては再考慮せねばいけないというふうなことを考えておるわけでございます。
  457. 加藤清二

    加藤(清)委員 この法律が通った場合を想定して、アメリカ資本日本国法人、これには日本の法律が適用されるかされないか。
  458. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 適用されます。
  459. 加藤清二

    加藤(清)委員 適用されるのですね。
  460. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 はい。
  461. 加藤清二

    加藤(清)委員 敵前上陸してきた場合、日本国内において同業を営もうとしたらどうしますか。
  462. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 適用されます。したがいまして、現在の紡績業は制限登録制をしいておりますので、既存業者から登録を譲り受けることでなければ開業ができないということになっております。
  463. 加藤清二

    加藤(清)委員 五年先にはどうなります。
  464. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 五年先にはと申しますより、この法律案によりますと、三年後には制限登録制は廃止ということになっておりまするので、それからは営業自由の原則に戻ります。
  465. 加藤清二

    加藤(清)委員 たとえば、ケネディという会社が敵前上陸してきた、ニューヨーク市長のリンゼーという会社が上陸してきた。たとえばという固有名詞を拝借いたしましょう。それが上陸してきた。そうすると、今日では株の取得は二〇%までですね、既存会社の。個人では七%までですね。ところで、それはすでにソニーで始まっておる。三ツ桃にきばをむかぬとは保証できない、世界じゅうに知られている銘柄だから。そこでケネディという会社が敵前上陸してきた。自己資本で行なえば一〇〇%自己資本出資ができますね。そこで仕事を始めた。いまあなたの答弁によりますというと、三年間は権利を買わなければならぬとおっしゃられました。はしなくも、いま権利が有価値的物件として売買されているということをあなたは認めたわけですね、そうですね。外国人でも買おうとすれば買える、そうですね。そうなってまいりますと、いろいろな問題がそこから発生してまいりますが、アメリカ人は日米友好通商航海条約によって内国人と同等の待遇を与えられますね。権利を買いさえすればよろしい。しからざればこれはできない。第一番目に考えられることは、それでは一〇〇%自由化じゃないじゃないか、こういうことでございますね。土地建物を買うことは、取得しなければならぬことはあたりまえ、株ならば取得しなければならぬこともあたりまえ、権利も買わなければ許可がおりないということになると、これはあくまでも許可制ですね。そうすると一〇〇%自由じゃないですね。この点どうですか。
  466. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 許可制というお話がございましたが、行政官庁が外国人の営業開始につきまして、自由裁量権を持っておるような意味の許可制ではないと思うのでございます。日本に出てまいりました外国人が、設備の登録を受けておる既存の紡績業者からその登録を譲り受けるということが可能である、そういう場合に、われわれとしてはチェックの手を持っておらないということを申し上げる次第でございます。
  467. 加藤清二

    加藤(清)委員 三年先に、ほんとうに権利を買わなくても自由企業が営めるということになりますと、日本の地位、日本の技術、低賃金と、東南アジアの市場を席巻するところの条件、アメリカのコットンを使えるという条件と、もう一つはアメリカ市場においては日本製品は三億二千万スクエアで頭打ちになっているという問題、この頭打ちは日本人に課せられておるのですから、アメリカ人なるがゆえに、これは自由にするという手がある、そうでしょう。三億二千万スクエア、縦割り六十四品目、横割りというのは、これは日本人にのみ課せられておる、香港人には課せられておりませんね、香港商品には……。そうですね。したがって、日本において政策上の好条件と、そこでつくって後進国に高級品を売り込むという好条件と、それから自国へ持って帰ったときには制限なしで売れるという、この条件は、やがて敵前上陸をしてくるにあたっては、全く上陸してくる側の好条件といわざるを得ない。こんなことは経済学者にまかせずとも、業界が心ひそかに心配していることなんです。機場のおやじさんたちまでが心配していることなんです。それについて、うちのものを制限しながらも、よそのものは自由化させる、こういうことは明らかに矛盾といわなければならない。したがって、この問題は参議院の予算委員会において論議の対象となりまするから、それまでにしっかりした答弁を用意しておいてください。そういうことで次へ行きましょう。どうせ答弁を要求したってできないのだから、最後に要望と申しましょうか、先の見通しだけをつけておきましょう。  そういう状態になった場合には、どうしても機場の近代化をはからなければならぬということになってくる。大資本に対抗するには、こちらも大資本が行なうと同じような設備をせぬければならぬということになる。紡績工場もさることながら、機場も同じことなんです。しかし今日紡機は、世界的に二十七も特許を持っている紡機が日本にございます。しかし機場のほうは、設備の近代化というても、機械の研究も、紡機から比較すると、ずっとおくれているわけでございます。同時にまた、これが散在している平均三十台以下のほうが、全体の中に占める。パーセンテージからいったら、はるかに多いのです。これは零細企業だ。三十台を一カ所へ集めてグループ化せよとおっしゃるけれども、それは材料購入とか、製品販売とか、あるいは製品の仕分けということならできるでしょうけれども、工場を一カ所に集めて、三十台ずつを、それを千五百台とか二千台集めてなんということはできっこない。そうなれば、三十台でもなお近代化するということが必要になる。これは織機改善以外に手はない。そうでしょう。しかるに先回行なわれました法律審議のときには、付属する機械、これに対してしっかりがんばれというので、ときの高碕経企庁長官は機械業界に対しても特別な資金手当てをなさった。今日どうなっています。
  468. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 特に機械業界に対しての、この繊維の構造対策のための資金手当てはいたしておりません。しかし繊維業界、特に織機の業界がいままで疲弊しておりまして、発注ができなかったということは、織機の開発もおくらしたことでございます。今回の措置によりまして、織機メーカーと織布業界との協力関係も十分できる、これによりまして新しい織機の開発も十分できてまいるということを期待しておる次第でございます。
  469. 加藤清二

    加藤(清)委員 さすが高碕先生はりっぱな人でしたよ。主体だけでなくて、それに付属する、付随するところまでちゃんと目が届いて、機械のほうからということで行なわれた結果、今日紡機はナス、キャスという世界に類のないようなりっぱな紡機の設備ができるようになった。ところが機まで至っていなかった。あなたも同じ大阪出で、高碕先生よりもりっぱな博士号まで持ってみえる方なんです。知らぬ存ぜぬで通れるなんと思ったら大間違い。重工業局長、呼んでおったがどうした。これについてどうなんです。
  470. 和田敏信

    ○和田説明員 ただいま先生から御指摘がありましたように、織機に関しましては、量産機種におきましてはかなりの開発が進んでおりますが、そうでないものに関しましては、若干問題点があることは事実でございます。しかしながら、この繊維構造改善問題に際しましては、繊維関係業界と繊維機械関係業界とが十分話し合いを行ないまして、機械工業といたしましても、構造改善事業に全面的に協力する、そうして、繊維サイドの、繊維側からの要望に従いまして、必要な機械の種類、数量あるいは製法等につきまして現在業者の間で何回か話し合いが行なわれておる次第であります。(加藤(清)委員「余分なことは言わぬでもいい、そんなことはみんなわかっておるから。研究費を出すか、出さないかということです。」と呼ぶ)現在までのところ、技術問題に関しましては、鉱工業技術試験研究補助金をもってこの技術の改善に必要な資金は従来どおり与えていきたいというふうに考えております。
  471. 加藤清二

    加藤(清)委員 必要な資金が与えられたことがありますか。必要な資金を与えたとあなたはおっしゃったですが、そんな抽象語や修飾語で事が足りる問題じゃございません。必要なだけ渡した例がありますか、たとえば、内地で売れなくなったから、いまの機械は七〇%が輸出なんです。輸出するときに何ぞ手当てをしたことがありますか。みんな転向せい、転向せいでよそへ転向させられておるじゃありませんか。その転向資金まで出してないじゃないか。何を言うか。
  472. 和田敏信

    ○和田説明員 私いま申し上げましたのは、鉱工業技術試験研究補助金といたしまして、三十九年、四十年、四十一年度とこの補助金の対象になった、この補助金の制度によりまして、資金が機械業界に出ておるということでございます。
  473. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣お聞き及びのとおりです。——はい、どうぞおかけください、けっこうです。これはもう課長さんではお気の毒ですよ。課長さんにそんなことを答弁させるほうが大体間違っておるのですからね。ですから、大臣、これはどうなんです。研究費は出せますか、出せませんか。高碕先生のときは出ましたよ。その結果はナスやキャスができましたよと言っておる。今度は出ますか、出ませんかと言っておる。そこまで思い至らずですか。
  474. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この織布業と繊維製造業界との共同機械開発体制密促進しまして、政府としましても、必要があれば鉱工業技術研究補助金などの助成によって重点的に配慮したい、こう考えております。
  475. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいつ行なわれますか、何年度予算で。
  476. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 本年度の予算です。
  477. 加藤清二

    加藤(清)委員 本年度予算ですか。幾ら組んである。
  478. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生も御高承のとおり、鉱工業技術研究補助金の中で重点項目がございます。その重点項目に、ただいま大臣の申しました織機の開発をあげまして、重点的に研究費を投入いたしたい、こういうことでございます。
  479. 加藤清二

    加藤(清)委員 幾らありますか。
  480. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織機関係で本年二百六十万円程度見込んでございます。
  481. 加藤清二

    加藤(清)委員 それで何の研究ができますか。
  482. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 非常に少額でございますけれども、業界の努力と相まちまして、今後増額をしてまいりたいというふうに考えております。
  483. 加藤清二

    加藤(清)委員 二階から目薬ってこのことだ。スズメの涙ってこのことです。そんなことでどうして研究ができますか。もとより日本の研究費が少な過ぎるものですから、パテントを買わなければならぬ。パテントを買うその支払い代金のほうがはるかに上回っておる。そういうばかげたことをやっておるからいけない。大臣、いま繊維局長がいみじくも言いました。足りない、少ない、今後業界と相はかって出すようにしたい、こうおっしゃったから、問題は大蔵省なんだ、大蔵大臣とはかって出すようにすればいいわけだ。はね返り財源だけでも八千億の余ある。どこへどう使うのか。製鉄にばかり協力をしたって、その鉄を使って機械をつくることのほうがより大事なんです。大臣、どうなされますか。
  484. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、日本の技術開発がおくれておることは事実です。政府のそれに対する補助が少ないことも事実です。したがいまして、佐藤内閣としては、今後技術開発に全力を注ぎたいということを考えておりますから、したがいまして、日本の織機が外国に比べて劣っておるようであれば、その織機の改善について、今後十分な研究資金、開発資金を得たいと、考えております。
  485. 加藤清二

    加藤(清)委員 まだ申し述べたいことがたくさんありますが、これで最後の結論にいたしますので、大臣、一言で答えるように、次から追求されぬように答弁してください。そうしないと、まだまだ延びますから。  いま、この法案は、繊維業界が不況だから、その不況を救うために行なわれようとしている法案でございます。不況の原因は、できた糸値が安かったからでございます。八万円前後しなければならないものが、一ころ六万円を割っていた。ここに是が非でもこの法案を通してもらいたいという業界希望が出てきたのだ。ところが今日は八万円台を上回るようになりました。きょうの糸相場は幾らですか。大臣の認識を聞きたい。
  486. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は相場など見ておりません。
  487. 加藤清二

    加藤(清)委員 はい、わかりました。はい、どうぞ。
  488. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 定期相場は二百一円でございまして、実勢相場は一コリ約八万円でございます。
  489. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです。きのうきょうの相場が大体八万一千円ばかりですね、四十番手を基準にして。それで十二月限でもって七万五千円程度です。半年先の納期のものでも七万五千円、それならば採算とれますね。
  490. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 とれます。
  491. 加藤清二

    加藤(清)委員 公取さん、いま設備制限はどうなっています。
  492. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 設備制限は、ことし初めに不況自体が解消しましたので、廃止になっております。
  493. 加藤清二

    加藤(清)委員 いま格納とか封緘はどれだけございます。
  494. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 新法によります格納がなお八十万錘残っております。
  495. 加藤清二

    加藤(清)委員 だから大蔵省筋にも業界の一部にも、いまさらこんなことをしてもらわぬでもよろしいという声があることは御存じですね。しかし、さっき通産大臣がいみじくもおっしゃったように、完全に意見が一致した。いまやらなければ再び問題が起きるということを私は申し上げた。  そこで、賢明な繊維局長のところでお答え願いたい。この相場は一体いつまで続くかということなんです。ほんとうは通産大臣の一声であすの相場は変わるのです。現に高碕さんがここでものを言われるというと相場が変わりよったのです。きょうはいいけれども、きょうの糸相場の高値の原因は自主的な原因ではない、外的原因なんです。第一は紅衛兵である。第二はインドの不作である。第三は逆に需要が伸びているところのベトナムの問題、インドネシアに提供したという問題、つまり生産国が生産は遅々として伸びない状況が出来した、需要の国に多量の需要ができた、こういうことが原因なんです。したがって、これが、永続するなどとはだれも考えていない。しかし業界の一部の人たちでは、長きにわたって冷たい中にいたからほっとしているというのが現状なんです。ほっとしたときにはなかなか手術ができるものじゃございません。盲腸の手術も、痛くてきりきりしているときは切る気になりますけれども、痛みが去ってからはこれを切るという人はなかなかないのです。それをあえてしなければならぬのが現状なんです。  ところで逆に国民に声があるのです。これは業界を助ける法律である、物価を高くする法律である。特に繊維の消費の主体は女性に多い。そちらのほうの関係の団体で、これを通すことはやがて国内繊維相場を上げることである、だからこれは困ったものだ、こういうことになっている。しかし私どもはそうは思わぬ。いわゆる繊維の消費価格の上げ下げは決して原料が高い安いではない。それが証拠に——私は一人でしゃべっちゃう、大臣に聞いておったってだめだからね。それが証拠に、六万円以下で出血生産であるというておったときにゆかたは一体幾らしていたか。三越のゆかた相場は幾らしておったか。原価計算、染め仕上げまでやって二百円から二百五十円のものが、千円で売られておる。ここに問題がある。いまデパートに売られているゆかたは糸の安かったときにつくられたものなんだ。それでさえも原価計算で三倍五倍もする値なんです。安く売ってしかるべき証拠は、一枚のワイシャツが内地で千円に売られておるにもかかわらず、輸出の相場はワンダラーである。内地のツーピースが仕立て代だけでも二万円もして、三越でつくろうものなら生地代だけでも三万円も五万円もするときに、アメリカへ輸出される相場は何か、テンダラー、ここに矛盾を感じないというたらおかしいのです。そんなことは婦人といえども今日の識者はみな知っているのです。したがって、本法を通すだけでは国民はしあわせになれない。本法案を通すだけでは輸出振興にならない。なぜかならば、内地で高く売っておきながらなぜアメリカにだけ安く売りつけてくるかという、いわゆるチープレーバー、レーバーダンピングというのがアメリカの日本繊維製品の制限の最大最高の原因になっておる、口実になっておる。そうでしょう。だから生産部門も整理すると同時に、流通機構の段階において整理をし、改善をしなければならぬ。いわゆる国民生活を守るところの消費行政が通産省の中にあるはずなんです。経企庁の中にもあるはずなんです。それは一体どうしようとしているのか、承りたい。
  496. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず第一点は、この相場が続くのかという御指摘でございますが、私は続かないと思います。その理由は、現にきょうの新聞にも出ておりましたが、中共の糸が千コリ、二十番手でございますが、入ってまいっておるのが六万三千円から五千円で入るということで、今日定期相場では二十番手が七万円をこえておるということでございますので、糸が自由化されております以上、当然中共なりパキスタンの糸が入ってくるということは覚悟しなければならぬ。本年三万入るというふうな話も聞いております。したがいまして、こういう低開発発展途上国に当然対抗できるよう早急に構造改善をやりまして国際競争力をつけ、コストダウンをいたさなければ、日本の紡績業、繊維産業は崩壊をするという危機にい衣あると思うわけでございます。もしそういう暁におきましては、日本の消費者層はいままでは世界で一番安い衣料品を着ておったともいわれるわけでございますけれども、国内産業崩壊の暁においては、これはたいへんなことになるというふうに思うわけであります。むしろこの法案が通り、そして紡績業界、織布業界の構造改善ができ、コストがダウンされ、発展途上国とも競争し得るような繊維製品が豊富に提供されるということが、長い目で見まして日本の国民大衆のプラスといいますか、利益になることは間違いのない点であるとわれわれは信じておる次第でございます。
  497. 加藤清二

    加藤(清)委員 本件に関して大臣の総括的な所見を承りたい。
  498. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま局長からも申し上げましたが、先ほどから加藤委員からもお話がありましたように、日本の繊維産業が不況におちいっておるがために、この繊維産業に対する特別措置を考えなければならない危機にいまきておると思うのであります。でありますからして、少々糸が高くなったからというて、目先のことでこの根本的な特別措置をやらないようなことになっては、日本の繊維産業の復活はできない、私はこう考えております。したがいまして、その点につきましていろいろデマもありましたので、実は先般も紡績業界、織布業界の人を呼んで、糸の値が高くなったので、あなた方が、この繊維工業の今度の措置についていや気がさしておるというようなうわさを聞いておるがということで私は話したのでありますが、決してそんなことはありません、ぜひあの法律を通してください、日本の繊維産業もこの際根本的な改革をやらなければ将来発展しませんということで、そういうはっきりした宣言がございましたので、それではわれわれもこの繊維産業の特別措置法をぜひ通すようになおこの上とも努力いたしますということを申したのであります。  日本の繊維産業というものは、今日まで日本の産業の基礎であった。また私は、これは滅びるとは決して聞えていないのでありまして、やはり輸出額も今日二割も占めておりますし、また繊維産業というものは、日本人には向いておる産業だというように考えておりますから、日本の繊維産業の維持発展はぜひはからなければならぬ、そういう意味において、今度のこの法律というものは絶対必要である、こう感じておりますから、どうか皆さん方も、その意味においてこの法律案に御賛同いただいて、そうしてやっていきたい。  なお、先ほど加藤委員からお話がありましたとおり、流通機構の面において改善すべき点があるんじゃないか、これはお説のとおりであります。この日本の流通機構を根本的に改善しなければならない時期に来ておると思います。したがいまして、こういう点もあわせて今後考えまして——それから消費者行政ということも今後において重要性を帯びてまいりますので、そういうことも考えて、安くていい品物、しかも国民の必要とするものをつくるという方針で、今後産業政策を進めていきたいというふうに考えております。したがいまして、繊維産業につきましては、特にこの法律がこのときにおいてぜひ必要であるということを感じておりますから、この上ともの御審議また御賛同をお願い申し上げたいと思います。
  499. 加藤清二

    加藤(清)委員 長時間にわたりまして私のつたない質問をしんぼうして聞いていただきました委員諸公に厚く感謝いたします。  祖国日本の繊維産業を愛するがゆえのことばでございまして、ほんとうに長時間皆さんに御苦労をわずらわしましたことについておわびを申し上げたいと存じまするが、問題は、日本の繊維産業を愛するということは、これは与党、野党の別はございません。与党自民党の方も、民社党の方もよくしんぼうしていただきました。感謝にたえないところでございます。  私自身は、日本の国民性の特徴といたしまして、この繊維産業は最も適したものであると存じております。それからまた日本の地理的環境が、よりよき繊維製品をつくるにあたってきわめて適当な地理的環境を持っていると思うのでございます。しかもこれは、平和産業だ。斜陽斜陽とは申しまするけれども、決して繊維は滅びるということはないと思います。なぜかなれば、生きとし生けるもの、人間が生きておる間、繊維が不必要になるということはないからでございます。繊維をかりに少なく使うことが女性の美を表現することであるという思想が横行いたしましたとしても、しかしなお彼女らもその数の多さをもってしあわせとしているわけでございます。七色のパンティーに例をとるまでもなく、数の多いことがしあわせでございます。それは消費需要が大きいということなんです。消費需要が大きいということが、やがてしあわせに通ずるのです。特に女性においてしかりでございます。したがって、この産業に対して、国家が、過去もそうでございましたが、国家が援助をしてまいりました。しかし繊維産業界もまたそれにこたえて、国家の基幹産業として、他の産業の基礎として長きにわたって貢献してきたわけでございます。それに報いるのがわれらの任務である、かように存じているものでございます。その任務が今国会において一つでもいいから、マイルストーンでもいいから達成できるよう、私は、一そう政府当局の研究、努力を要請いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  500. 島村一郎

    島村委員長 次会は、明十三日木曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十五分散会