○
菅野国務大臣 ただいま議題になりました
特定繊維工業構造改善臨時措置法案につきまして、その提案
理由及び要旨を御
説明申し上げます。
わが国の繊維工業は、国民の衣料及び生産用資材を供給するとともに、多額の
輸出を行なうことにより国民経済全体の発展に大きな役割りを果たしてきた重要産業であります。
しかるに、最近、
わが国の繊維工業を取り巻く内外の経済的環境は、一段ときびしさを加えるに至っているのであります。すなわち、国内におきましては、若年労働者を中心とする労働力需給の逼迫と、これによる賃金の急上昇によって労働集約的産業である繊維工業の存立の基盤に重大な影響を与えかねない情勢になっており、また、複合繊維化の進展は、従来の繊維工業の供給構造に変革をもたらそうとしております。
外国に眼を転じますると、発展途上国における繊維工業の目ざましい発達によって、従来、海外市場において圧倒的地位を誇っていた
わが国の繊維製品が次第に後退を余儀なくされつつあります。この間にあって、先進諸国によるその繊維工業の構造改善策が相当の効果をおさめつつあることは、一方では、
わが国にとって楽観が許されないできごとでありますとともに、他方、
わが国繊維工業の構造改善の早期実施に対する教訓を与えるものと申せましょう。
ひるがえって、
わが国の繊維工業は、過去十数年にわたって公的規制のもとに置かれてきたのでありまするが、この間において、企業数の過多、企業規模の過小と設備過剰の事態は改善されず、依然として過当競争を繰り返し、このため収益力の低下により近代化投資の著しい遅延をもたらし、これが国際競争力を低下させるという悪循環におちいっています。
繊維工業に見られるかような事態は、国民経済全体の
立場から見て放置し得ないものであり、早急にその国際競争力の強化をはかるため、その構造改善対策を早急に樹立すべく、一昨年十二月に
通商産業大臣の諮問機関である繊維工業審議会及び産業構造審議会に対し、「織維工業の構造改善対策はいかにあるべきか。」との諮問をし、その後両審議会において鋭意審議が行なわれた結果、昨年九月には、特に対策実施の必要性が大きく、業界のこれに対する熱意が旺盛であり、かつ、対策についての準備の整いつつある紡績業及び織布業についての答申を得ることができたのであります。
その後、
政府といたしましては、この答申の趣旨を尊重し、必要な施策の内容及びこれに対する助成措置について鋭意検討を加えました結果、
昭和四十二年度を初年度として、ほぼ答申の趣旨を体した施策を実施するのに必要な予算等の措置を講ずることとなりました。これに合わせ、この施策を実施するために必要な
法律的裏づけを得るため、
特定繊維工業構造改善臨時措置法案を作成し、提案することとなった次第でございます。
次に、この
法律案の要旨について御
説明申し上げます。
第一は、その
対象業種としては、繊維工業の中心的業種である特定紡績業、すなわち綿糸、スフ糸、合繊糸及び混紡糸を製造する紡績業と特定織布業、すなわち綿スフ織布業及び絹人絹織布業としていることであります。
第二は、特定紡績業の構造改善について、
通商産業大臣が設備の近代化、生産または経営の規模の適正化、過剰設備の計画的な処理その他構造改善に関する事項について特定紡績業構造改善基本計画及び毎年の実施計画を定めるものとしているのであります。そして、
政府は、この実施計画に定める設備の近代化等の事項に関し資金の確保につとめ、また、基本的計画に定める過剰設備の処理に関し課税の特例を認めることとし、一方、その施策を講ずるにあたり関連労働者の職業の安定につき配慮するものといたしております。
第三は、特定紡績業の構造改善に関する措置のうち、過剰設備の計画的な処理に関しましては、
通商産業大臣が特定紡績事
業者に対し・その特定精紡機の繊維工業構造改善事業協会への一括売り渡し等に関する共同行為を指示することとし、さらに、共同行為の指示の後、特に必要ある場合には、特定精紡機の処理に関する命令をすることができるものとしているのであります。
第四は、特定織布業の構造改善について、特定織布業商工組合がその地区内の組合員の設備の近代化及びこれに伴う設備の処理、生産または経営の規模の適正化等の構造改善に関する事業の実施のため特定織布業構造改善事業計画を作成し、
通商産業大臣の承認を受けることができるものとしているのであります。そして、
政府は、承認を受けた計画に従って実施する事業について資金の確保につとめ、設備処理の事業につき繊維工業構造改善事業協会を通じて補助金を交付することができるものとし、また、特定繊布業商工組合の構造改善準備金への積み立てに関し課税の特例を認めることとし、一方、その施策を講ずるにあたり関連労働者の職業の安定につき配慮するものといたしております。
第五は、繊維工業構造改善事業協会についての規定であります。協会は、この
法律に基づき、業界
関係者、
関係都道府県知事及び学識経験者が発起人となって定款を作成し、
通商産業大臣の認可を受けて、一を限って設立されるものであり、協会の資本金は、設立の際等に
政府が出資する金額をもって構成するものとしているのであります。
次に、業務に関しては、協会は、特定紡績業における過剰設備の処理のための特定精紡機の買い取り及び廃棄、特定紡績業及び特定織布業の事業廃止者からの設備の買い取り及び廃棄、特定紡績業にかかる納付金の徴収、特定織布業構造改善事業に必要な資金調達をはかるための保証及び融資その他構造改善に関する業務を行なうものとしているのであります。
協会の業務のうち特定織布業構造改善事業に必要な債務保証及び融資の業務に関しましては、
政府からの出資金及び特定織布業商工組合からの出指金によって構成される信用基金を設けることとしております。
また、協会は、特定紡績業における過剰設備の買い取り及び廃棄または特定紡績業の事業廃止者からの買い取り及び廃棄の費用に充てるため特定紡績事
業者から納付金を徴収することができるものとし、その徴収につきましては、強制徴収ができるものとしているのであります。
さらに協会の監督につきましては、その業務の公共的性格から
通商産業大臣が監督するものとしているのであります。
第六は、この
法律の廃止につきましては、構造改善対策が五年間にわたって実施されることと関連して、
昭和四十七年六月三十日までに廃止することとしているのであります。
第七は、本
法律の附則により繊維工業設備等臨時措置法の一部改正を行なおうとすることであります。
繊維工業設備等臨時措置法は、繊維工業の合理化等をはかるため、過剰設備の廃棄の促進等に必要な措置を講ずることを
目的として
昭和三十九年に制定、施行されたものでありますが、今回、繊維工業の構造改善の円滑な実施を確保するため、
昭和四十三年九月限りで失効する同法の期間を
昭和四十五年六月まで延長すること、
昭和四十二年九月限りで統合される精紡機の区分制を従来どおり維持すること、第四号の区分に登録された精紡機の一定比率の廃棄を
条件としての第一号の区分への変更登録を認めること、過剰精紡機の格納の延長等の改正を加えることとしているのであります。
以上御
説明申し上げましたように、繊維工業の経済的諸
条件の著しい変化にかんがみまして、特定繊維工業の構造改善をはかるため、特定繊維工業につきまして、設備の近代化及び生産または経営の規模の適正化の促進、過剰設備の計画的な処理等のための措置を講じようとすることが、本
法律案をここに提出する
理由であります。
何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
次に、
中小企業振興事業団法案につきまして、その提案
理由及び要旨を御
説明いたします。
申し上げるまでもなく、中小企業は、
わが国経済においてきわめて重要な役割りを果たしておりますが、最近の中小企業をめぐる経済環境は一段ときびしさを増しており、外にあっては資本
取引自由化の要請、発展途上国の進出等による国際競争の激化、内にあっては労働需給の逼迫や産業再編成の影響等激動する内外の経済情勢に対処するため、
わが国の中小企業は画期的な構造改善を迫られております。
政府といたしましては、中小企業の構造改善を促進するため、従来から各種の施策を実施してまいりましたが、このような最近の経済情勢の変化に対処して
わが国の中小企業をより一そう振興するためには、中小企業の構造改善を推進するための指導と助成を有機的かつ総合的に実施する専門的な機関が必要であると
考えられます。
中小企業振興事業団は、このような要請にこたえるため、現行の中小企業高度化資金融通特別会計と特殊法人
日本中小企業指導センターを発展的に解消し、両者を統合して
一つの総合的な機関とするものであります。
次に本法案が規定する中小企業振興事業団の概要を御
説明申し上げます。
まず事業団の資本金としましては、一般会計からの出資金約百四億円のほか、中小企業高度化資金融通特別会計の貸し付け金債権等約百四十億円と、
日本中小企業指導センターへの出資金約六億円を引き継いで、合計で約二百五十億円を予定しており、役員は、
理事長以下七名を予定しております。
次に事業団の業務といたしましては、中小企業の構造改善を促進するために必要な事業を総合的に行なうこととしておりますが、これを法案に即して御
説明いたしますと、まず第一は、指導事業であります。中小企業の構造改善を促進するためには、大企業の場合と異なり、何よりも親身になって
相談に応じ、適切な助言を行なうことが大切であります。事業団は、都道府県と協力して中小企
業者の依頼に応じて必要な指導を行なうこととしております。
第二は、資金の貸し付けあるいは施設の譲渡事業であります。事業団は、都道府県の助成を前提に、都道府県と協力して中小企
業者の事業の共同化、協業化を中心とする構造改善事業あるいは織布業が産地組合を中核として行なう設備の近代化、企業の集約化等の構造改革事業に対して長期、低利の資金の貸し付けを行なうとともに、さらに中小企
業者の依頼に応じてこれらの事業に必要な施設の分割譲渡を行なうこととしております。
第三の事業は研修事業であります。企業の発展をささえるものは、何よりも人でありまして、本事業団は、中小企業の経営管理の合理化や
技術の向上をはかるため都道府県の指導担当者を養成するとともに、中小企
業者またはその従業員に対する研修にも力を注ぐこととしております。
事業団は、以上の業務のほか、これらの各業務を行なうための基礎となる中小企業に関する情報の収集や調査研究を行ない、その成果を広く中小企
業者に普及する事業も行なうこととしております。
本法案は、さらに事業団の借り入れ金や債券の発行等の会計に関する規定を置くとともに、附則におきまして、中小企業近代化資金等助成法、中小企業指導法その他の関連
法律につきまして所要の改正を行なうこととしております。
なお、
最後に、本事業団の監督は、
通商産業大臣が責任を持って当たることとしております。
これが、この法案の提案
理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。