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平岡委員 では第二の
質問、すなわち
公害問題につきまして逐次御
質問をいたしたいと思います。
本日
公害基本法が
閣議決定をされたそうでありますが、その全文が本日の東京各紙に出ております。それを拝見いたしまして、率直に申して、
公害防止の重要性にもかかわらず、
提案された
公害対策基本法案は総花的で、
各省のセクショナリズムの奇形児的申し子たるの観があります。
私、第一に
政府当局に申し上げたいのは、健康優先が後退をしまして、産業振興との調和をはかるという点で取りまとめられたこと、これはたいへん遺憾なことだと思います。すなわち右の法案の冒頭の目的に「
国民の健康を
公害から保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図る」ということがうたってありますが、聞くところによりますと、これが
各省の、特に
通産省と厚生省との妥協の産物である、このように聞いておりますが、現時点における
公害の重要性に徴しまして、こうしたセクショナリズムはたいへん残念であります。
公害対策は失われつつある人間を取り戻しまして、人間を大切にしなければならない方向に政治の取りかじをとっていくということにあったと思うのです。池田内閣の経済成長政策以来、金が人間を支配し、物が人間を疎外する現代社会の悪弊というものが、住宅難、受験地獄、交通戦争、わけても都市並びにコンビナート地域をおおう
公害に端的にあらわれております。金もうけ本位の生産の増大は社会の健康と生活安定を犠牲にし、経済成長の中で人間の幸福は片すみに追いやられております。この主客転倒は急速に回復されなければならぬと思っております。
したがいまして、
公害対策は生産主義にぶつけるアンチテーゼとしての生活主張でなければならぬはずであります。今日の
公害急迫の
段階で、アンチテーゼを通り越してジンテーゼを装ったところの
対策が出てきたことはまことに残念でありまして、両者の調和は、私はとるべきではないと考えております。これが私の主張であり、野党の主張であり、
国民の良識の主張であると思っております。この視点から
質問を展開したいのであります。
私はその前に、
公害、すなわちパブリック・ニューサンスの翻訳語だろうと思うのですが、むしろこの用語は問題の所在を抽象化してしまっておりますので、直截に、一、大気汚染防止
対策、二、水質の汚濁防止
対策、三、騒音防止
対策、四悪臭の防止
対策等の各論的課題をそのまま掘り下げるような
提案をすべきだと私は思っております。そうでないと、
公害一般というようなことで何とか
各省のセクショナリズムを適当にあんばいしてまとめ上げたということで、
内容がなくなるのであります。その点が私は遺憾でありまして、法案が出てまいりますればそのときに大いに議論をしなければならぬということを思っておりますが、とりあえずきょう
閣議決定をされたというので、この
公害問題において当面の責任者の一人である通産大臣の御所見をお伺いしたいと思っております。私に与えられました時間が制約されておりますから、私の骨子とするところを申し述べまして、総じて一番重要な大気汚染の一点にしぼりまして
政府の所見をお伺いしたいのであります。そのためにもう少しく私の論述を進めます。
話が理に落ち過ぎましたので、私の見聞した外国例をあげてみることにいたします。
まず第一にロンドンにおける
公害問題の現状であります。水質の汚濁
対策はすでに完了している。テームズのタワーブリッジ付近にはマスの銀鱗が見られるようになったことはつとに報ぜられているとおりであります。私の調べによりますと、テームズの支流が七つありまして、この七つが本流と合流する地点にはそれぞれろ過装置が設けられており、本流への流入が最終的に浄化されておる、これが実情であります。これより先、支流への工場の廃液の流入等は厳格なる処理基準によって無害なものとされていることは論をまたないのであります。
大気汚染の防止につきましては、ロンドンが寒冷地にあるために、家庭用ストーブによる大気汚染は従来著しかったのでありますが、条例によりまして無煙炭以外の
禁止、それから住宅の高層化に伴う石油ストーブの普及化で、石炭スモッグはいまや皆無となりました。工場の煙突から吹き出るばい煙も、たとえばロンドンの都心にある火力発電所のもうもうたる煙が、実は煙ではなしに無害の水蒸気になっておりまして、すべて蒸気による沈下で大気汚染と無縁なものになっております。ただ
一つ残る問題は自動車の排気ガスであると聞きまして、さすがに英国
政府はこの問題では進んでいるというのが私の受けた
感じでもあり、調査結果であります。
米国について申しますと、水質の汚濁は解消済みであります。排気ガスの大気汚染などがやはり問題となっております。
米国の場合には、ニューヨーク・パターンとロサンゼルス・パターンとの二つに区分して、それぞれの
対策を研究中であるといわれております。ニューヨーク・パターンとは、工場排気ガスすなわち亜硫酸ガス
対策でありまして、ロサンゼルス・パターンとは自動車の排気ガス
対策を言うのであります。
ロサンゼルスの場合、
日本の場合の一酸化炭素の害悪及び不飽和炭化水素害悪とは違いまして、気候高燥という特殊な事情から、一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2の害悪となってあらわれている点が特色でありまして、まず目をやられる、また自動車のタイヤの亀裂を生じがちであること、視界が悪くなることにより、交通
公害を派生するという現象が生じておる。こういう実情であります。
二国の例に徴しまして、水質の汚濁
対策は
日本ではいまだきものとはいえ、そう奥行きの深いものではありません。
政府のやる気だけの問題であります。
結論的に、二国同様、自動車排ガスに徹底的に取り組まなければならないと思います。この法案に見られるセクショナリズムの集大成など、官僚のデスクワークにあらずんば遊びごとであって、この法案自身が羅列的であるという点を指摘したのはそういう点にあります。問題の焦点というものは、いまや排気ガスの対処のしかたということに合わされなければならぬと思っています。そこで
熊谷企業局長から、私の所論に対しまして御所見を伺いたい。
公害対策の基本は何であると心得ておられるか。この点についてのあなたの所見を伺っておきましょう。