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1967-07-06 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月六日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 橋本龍太郎君    理事 粟山 ひで君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       青木 正久君    天野 光晴君       大石 武一君    菅波  茂君       世耕 政隆君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       中山 マサ君    藤本 孝雄君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    山口 敏夫君       山村新治郎君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         社会保障制度審         議会事務局長  福田 芳助君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         労働政務次官  海部 俊樹君  委員外出席者         厚生省保険局医         療課長     浦田 純一君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 七月六日  委員井村重雄君、福永一臣君及び淡谷悠藏君辞  任につき、その補欠として青木正久君、山村新  治郎君及び稻村隆一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員青木正久君、山村新治郎君及び稻村隆一君  辞任につき、その補欠として井村重雄君、福永  一臣君及び淡谷悠藏君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 七月五日  失業保険法の一部改正反対に関する陳情書外三  件  (第二一七号)  同外一件  (第二七二号)  健康保険法の一部改正反対に関する陳情書  (第二一  八号)  国民健康保険制度改善に関する陳情書  (第二一九号)  広島、長崎原爆被災白書作成に関する陳情書  (第二二〇号)  戦災死没者遺族援護措置に関する陳情書  (第二二一号)  原爆被爆者援護法早期制定に関する陳情書  (第二二二号)  国民健康保険事業における事務費等増額に関す  る陳情書  (第二四七号)  各種福祉年金併給限度緩和に関する陳情書外  二件  (第二六八号)  同外八件  (第三〇六号)  診療報酬是正に関する陳情書  (第二六  九号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第二七〇号)  失業保険法の一部改正に関する陳情書外一件  (第二  七一号)  同外三件  (第三〇七号)  全国全産業一律最低賃金制確立等に関する陳情  書  (第二七三号)  健康保険法改悪反対に関する陳情書外二十二件  (第二七四号)  健康保険法等改悪反対に関する陳情書  (第二七五号)  炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別  措置法案成立促進に関する陳情書  (第二九三号)  結核予防対策に関する陳情書  (  第三〇五号)  国民健康保険事業国庫負担に関する陳情書  (第三〇八号)  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案反対に関する陳情書外十件  (第三〇九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案内閣提出第九八号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九九号)      ――――◇―――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 ただいま議題になりましたものの中で、健康保険法臨時特例の問題で、おもに薬代の一部負担の問題を中心に質問をいたしたいと思います。  ただ、私の質問は、きょう一日だけではなしに、私の質問したいことを引き続き質問をさしていただきたいと思いますので、その点はあらかじめ御了承願いたいと思います。それとともに、委員長にひとつ不服を申し上げたいと思います。  ただいま総理大臣大蔵大臣出席ができないということを、委員長は私に御連絡になりました。私は数日前から総理大臣大蔵大臣出席を要求しておった。大蔵大臣総理大臣に対する質問を準備しておった。その間において、私としては、ほかに産業公害特別委員長というような任務もあり、その中で非常に疲労をしている中で準備をしておったわけです。それをきょう朝この場で、総理大臣が出られない、大蔵大臣が出られない、そういうことでは、委員長は院を非常に侮辱したことになるし、この委員会審議を非常にはばむことになろうと思うのです。委員長はなぜいまそういう御連絡を私にされたか。いままでに、総理大臣出席するか、大蔵大臣出席するか、それを確かめることは委員長はできなかったか。その点について御答弁を願いたいと思います。
  4. 川野芳滿

    川野委員長 厚生問題の権威者でございまする八木一男君の質問でございますので、できるだけ御要望にこたえたい、こういうことで、総理大臣並びに大蔵大臣出席を昨日から強く要求してまいったのでございますが、残念ながら八木さんの御要望にこたえることのできないことを、非常に遺憾に存じております。しかしその問題は、実は田邊理事を通じて八木さんにお伝え願いたいということで、昨日も申し出たと私は思っておったのですが、まあ行き違いがありまして、八木委員の耳に入らなかったかとも存じますが、しかしそういうわけでございます。どうかひとつ御了承を賜わりたいと存じます。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 総理大臣大蔵大臣は本日出席できなくても、私は総理大臣大蔵大臣に対してぜひとも質問をいたしたいと思いますので、ぜひ近日中に、後日出席実現するようにしていただきたいと思うのです。私だけでなしに、ここにおられる河野正先生はじめ野党先生方全部、おそらく齋藤先生はじめ与党先生方もその気持ちを持っておられると思うのです。そういう点で総理大臣は、今後社会労働委員会には、この健康保険法が大事だと考えられるならば、朝から晩まで出る決意で今後の日程を組むように、厳重に委員長から申し入れをしていただきたいと思います。それも、連日出るかどうか、私の質問についてはまた次の来週の水曜日に十二分に答えることができるかどうか、そういう点について総理大臣連絡をして、本日午後の理事会でその点を、わが党の理事をはじめ、各党の理事に明らかにしていただきたい。これは連日であります。全委員総理大臣に対する質疑に答えることであります。一回こっきりではありません。少なくとも数十時間は確保をして日程を組むように、総理大臣にそう申し入れをしていただきたい。
  6. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 その点について委員長決意のほどを伺います。
  8. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。努力いたします。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 申し入れだけではなくて、それを実現をしていただきたいと思います。
  10. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 実現をしますね。
  12. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 実現をするために、きょう総理大臣がどういう御用事で来られなかったか、委員長から明らかにしていただきたい。
  14. 川野芳滿

    川野委員長 総理大臣出席国対を通じて交渉する、こういうたてまえになっておりますので、国対を通じて出席要望した、こういうわけでございます。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 国対のほうでは、どういう用事で来られないという返事がありましたか。
  16. 川野芳滿

    川野委員長 それは、どういう用事というこまかしいことはわかりませんが、どうしても出席できない、こういう返事でありました。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 国会対策委員会というものは、国会の中の問題で自民党がつくっておられるものであります。野党も具体的に認めて国対委員長会談等を持っておられますから、私も尊重するにやぶさかではございませんけれども、しかしながら、自由民主党という一政党の中の機関であります。委員総理大臣を要求したということについて国対委員会が介在すること自体がおかしい。もし介在したならば、どういう理由総理大臣が来られないのか、そういう点について委員に明らかにする必要がある。それを委員長は、国対委員会からだめだと言われたら、そのまま黙ってまかり去る、それでもって社会労働委員長がつとまりますか。その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  18. 川野芳滿

    川野委員長 慣例として国対委員会を通じて交渉するということになっておりますので、その先例にならって交渉いたしたわけでございますが、残念ながら出席されるに至らなかったのでございますが、その理由は、国対委員長に私から尋ねまして、午後開かれる予定の社労理事懇談会に御報告する、こういうことにいたしたいと存じます。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、その理由についてきょう聞かれなかったことは、委員長の非常な失態でございますが、今後ともそういう国対委員会の話があったときは、事由をただし、事由国対委員会のかってな判断によるときに、また総理大臣の問題を理解しない判断によるときには、断じてそれを許さない、断じて出席をさせる、そういう勢いで委員長としてはやっていただかなければならないと思います。そういうことが数回やってできないならば、委員長はその職責にとどまることをいさぎよしとせずして、このような社会労働委員長川野芳滿さんのようなりっぱな人の言うことを聞かない自民党ないし総理大臣に対して、抗議の意味で徹底的に断固として辞表をたたきつける、そして衆議院委員会権威を保つようにすることが、川野芳滿委員長職責であろうと思いますが、その委員長職責に対する覚悟を伺いたいと思います。
  20. 川野芳滿

    川野委員長 先ほど申しましたように、慣例によって交渉ルートが大体きまっておりますので、その線で努力をいたしたわけでございますが、残念ながら出席できなかったことは遺憾に存じます。しかし、重ねての御要望がございましたから、機会を見て総理大臣出席するように交渉をいたしたいと存じております。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 その総理大臣出席について、委員長委員会議事運営責任者でありますから、はっきり申し上げておきたと思います。  いままでに政府の出してまいりました重要法案と称するものの中で、国民の非常に危惧をする、われわれの言う改悪法案というような場合には、総理大臣が出たときには、それは質疑打ち切りなりそういうことを強行する前提条件であるように間違った解釈が行なわれ、間違ったことが強行されてまいりました。このような重要法案審議するときには、審議の初めにおいて、総理大臣に対して国民代表である各衆議院議員質疑をする。そしてまたその中盤において質疑をする。連続的に質疑をして、総理大臣が、国民代表である衆議院議員あるいはまた参議院議員意見を聞いて、みずからが誤りであったときには、議会と相談をしてこれの撤回手続をとろうという決心をするときもあれば、あるいはまた、それを政府みずから大幅に修正をしようという手続をとることもあろう。それをいままで、議会運営の非常に大きな動脈硬化症の悪いやり方で、総理大臣が来たならばあとは質疑を打ち切るというような、とんでもないやり方がされている。これは自民党においてしばしば強行されているけれども、これは議会審議権の実質的な抹殺である。また、内閣総理大臣ほんとうにまじめな内閣の首長であるならば、その総理大臣に対しても侮辱だということだ。そういうことについて委員長は、総理大臣出席のもとに、このような重要法案審議する前段においてこれの質疑を展開し、また、引き続き前段から中段にも質疑を展開し、中段から後段にも質疑を展開し、総理大臣が、みずからの責任提出した法案について、国民のそれに対する批判、世論を聞き、これを撤回するなり修正するなりの彼の決心を固める、そういう機会を与えなければならないし、また、議会がそういうことをする機会をつくらなければならない。したがって、総理大臣出席以後、少なくとも大幅の日数の審議時間が必要であるということを、委員長は腹に据えて今後の委員会運営に当たらなければならないと思います。そういうことについて、そういう決心のもとに総理大臣の連日出席を要求するという決意をひとつ伺っておきたいと思います。
  22. 川野芳滿

    川野委員長 この法案撤回という問題は、これは委員長がやるべきものでないことは御承知のとおりであります。これは政府がやるかやらないかという問題でございますが、そういう問題は、総理が御出席にならなかった場合は、八木委員みずからがひとつ総理に伺ったらどうか、かように私は思います。  さらに、総理大臣出席したらすぐに質疑打ち切りをやるようなお話がございましたが、そういう例があったかどうかは私は知りませんが、たいていこういう問題は委員長がやるべき問題ではございません。多数の意見でそういう動議が出ましたならば、委員長としては取り上げざるを得ないという立場にあることは、お含みおきくださるようにお願い申し上げます。委員長みずからやる考えはございません。   〔「審議審議」「水なんか飲むな」と呼ぶ者あり〕
  23. 八木一男

    八木(一)委員 激励をするような、督励的な不規則発言は、私、歓迎しますけれども質問者のペースをくずすような、そういう不規則発言については、非常に迷惑でございますから、お取り締まりをいただきたいと思います。常習犯が二、三人おりますので、こういうことを今後二回、三回と繰り返したら、その者の退場を命じていただきたいと思います。  それでは本題に入らなければなりませんから委員長に申し上げておきますが、とにかく質疑打ち切りというのは、委員長も長年の国会をごらんになっておわかりのように、おもに自由民主党の手によって——おもにというか、全部そうです。そういう手によって、ほかの者の審議中にいきなりごちゃごちゃとやられる。そういうことばかり行なわれておるわけです。しかも委員会において、正規の委員全員質問を終了してから後にそのような動議が出るならば、これはまだ理解するにやぶさかではございませんけれども、そのような全員質疑が終わっていない、質疑の通告が全部出ておるのにかかわらず、一方的になまけものの議員が、自分はもう審議をするような熱意がないというようなことで質疑打ち切りをやる。そういうようなふまじめな質疑打ち切りについては、委員長は、動議が出てもこれを取り上げない、直ちに理事会にはかる、そういうことをやる。それが委員長職責であります。その点について委員長は、ほんとう議会民主主義を守る、そのような決意のもとに運営をしていただくことを強く要求するわけでございますが、委員長の考え方を伺っておきたいと思います。
  24. 川野芳滿

    川野委員長 八木さんの要望は、よく聞きおきます。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 では本題について伺います。  きょうは総理大臣のほかに大蔵大臣も御出席になりませんでした。実は国務大臣全員にお伺いしたいということがあるわけでございますが、その中で一部の方しかおいでにならなかったことを非常に残念に思います。  まず、坊さんと塚原さんと木村さんがおいでになっておられますけれども、御出席順序と逆になりますが、木村長官がいろいろと時間の都合がおありになるようでございますから、木村官房長官から伺いたいと思います。  実は官房長官おいでを願いましたことは、先ほど総理大臣の件について委員長に申し上げたことと関連があるわけでございます。この健康保険法臨時特例という法案閣法として提出をされますから、主管大臣厚生大臣でございますけれども総理大臣が最高の責任を持っておられるわけであります。それとともに、これ以外の閣法についても全部責任を持っておられるわけでございます。ところが当社会労働委員会においては、厚生省関係法律案労働省関係法律案、両方について審議をする委員会であります。いままで長年の慣例で、厚生省関係厚生省関係定例日、また労働省関係労働省関係定例日審議をされることになっておる。厚生省関係では、御承知のように、児童福祉法の一部を改正する法律案あるいは児童扶養手当法の一部を改正する法律案、また国民年金法の一部を改正する法律案が四月の初めに提出をされております。そうしてこの三法は、社会労働委員会に付託をされたのも先でございます。それで、これは委員会運営でございますが、委員会運営としては、そのような三法案を逐次審議をし、その結論が出てから次にかかるということが常道でございます。ところが、この委員会の中の委員方々、また理事会理事方々の中で、自由民主党方々が非常に健康保険法の先議を御主張になった。この前そういうことで非常にこの委員会混乱をし、審議が渋滞をいたしました。そういうことについて総理大臣はよく見ていかれなければならないと思います。総理大臣責任を持たれた閣法について、どれが大事であるか、どれが大事でないかということについて、ボリュームの大きさはありますけれども政府が確信を持たれた以上、おのおのが大切な法案であろうと思います。また、ボリュームの内容が大きくないものであれば、審議にかかっても、比較的審議時間が短くて何らかの結論を得るでありましょう。そうなれば、その順番に従って審議をするのがあたりまえでございますのに、何ゆえか、健康保険法臨時特例法というものを、与党方々の全部ではないかもしれませんが、主要な方が何か非常にいきり立って、先にやろうとしておるというような状況があります。総理大臣自民党総裁でもございますから、そういう点にも責任がおありになるわけであります。そういうような間違ったことをなさってはいけないと思います。そういうことについてまず総理大臣に申し上げたいと思いましたが、総理大臣は来週の水曜日には、いまの状況では必ず御出席になり、また木曜日にも御出席になり、また再来週の水曜日にも、その次の木曜日にも御出席になろうと思いますが、それまでに、この与党方々の、私どもから見れば非常に間違った一方偏向総裁として改めていただく、また内閣総理大臣としてそういう無理をなさらないでいただきたいということを自由民主党申し入れられる、そういう必要があろうと思います。いま国会では、厚生省保険局というのがあって、厚生省の中に年金局がない、児童局がない、環境衛生局がないというような状態であります。また厚生省があって労働省がないというような状態であります。厚生省保険局の一議案のために、ほかの省が全部迷惑をし、またほかの局が迷惑をする、そのようなことは許されない。そういうことについて木村官房長官から、総理大臣がもしほんとうによい総理大臣であり、聰明であり、熱意のある総理大臣であれば、それを理解されたら、そのような、内閣の中の厚生省の中の保険局のわがまま、独走、そういう点について戒める、また、それを受け入れてむちゃくちゃに順番を狂わせようとする自民党方々にも、総裁としてそれはよくないというようなことを言われるべきである。それで総理大臣に私はどうしても出席をしてもらいたかった。木村さんは誠実いちずで、ほんとうにその点で大ぜいの方々の信頼を得ておられる方でございます。私がほんとうにまじめに申し上げたことについて総理大臣にぜひ即時伝えていただきたいし、木村さんの誠実な性格で私の申し上げていることの真意ほんとうに説明してくださるならば、総理大臣はそのとおり承知をなさるべきものだと思います。承知をなさらなければ、総理大臣はよほどそのことに対する理解ができない人であり、内閣を背負って立つ資格のない人になろうかと思います。そういうことについて、木村さんは、私の申し上げたことを体せられまして、この委員会質問が終わったら直ちに総理大臣に面会されて、直ちに総理大臣が、政党なり政府のこの偏向を改めるように、総理総裁として行動をとられる、そのようにやっていただきたいと思います。これは木村官房長官職責をかけてやっていただきたいと思います。そうしてその点については、直ちにきょうじゅうに、たとえばわが社会党の委員なり、あるいは民社党の委員の方なり、あるいは公明党の理事の方なり、また場合によっては自民党理事の方なり、あるいはまた政府厚生大臣なりに、総理大臣のそのような指示ができたかどうか、できなければ何時間後にできるかということについて御連絡をいただきたいと思います。それについての木村長官の御答弁をいただきたい。
  26. 木村俊夫

    木村国務大臣 ただいまの総理委員会出席に関する御要望、確かに私から即刻総理にお伝えをいたします。その他同時に、当委員会理事会あるいは国会対策委員会等連絡を通じまして、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。  なお、私どものほうから、政府から提案いたしまして国会にお出ししました法案審議順序につきましては、提出いたしました上は、これは国会審議におまかせするのでございますから、政府のほうからとやかく申し上げる限りではないと思います。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 木村さんは誠実な方で、また熱心な方だと伺っております。いまだにそう思いたいと思う。前半は非常にけっこうであります。後半は紋切り型であります。私は、自由民主党総裁としての総理大臣についても、申し上げていただきたいと言ったわけであります。国会政党政治でございますから、自由民主党が大きな力を持って、ときにはいいことをやられますけれども、ときには多数で非常に横暴なことをやられます。その多数政党が、横暴なことをやられないで、まともにやられることが、国会全体をよくすることであります。そのことについては、これは総裁として非常に責任がおありになろうと思います。しかもそれは、閣法として総理大臣の出された法律に関してそういうことが起こってきた。そういう点について佐藤榮作さんは、総理としても、総裁としても、このような間違った運行のしかたについて、自分影響力自由民主党総裁としての影響力、あるいは国会自体ではございませんけれども国会審議をお願いする内閣の首班としての影響力があるわけです。それを行使して、この間違った、ほかの法案を無視し、これだけに夢中になるというやり方、それによって混乱が起こっている、それによって十分ないろいろな法案審議ができないというやり方を改めていただきたいということであります。ですから、国会の問題でございまするからそれは伝えられませんということを一応おっしゃいましたけれども、そうではいけないと思います。いま言ったような意味で、総理大臣に先ほど申し上げたことを説明し、木村さんの熱意と誠意で総理大臣が翻意をされ、そして総理大臣真意じゃなしにそういうことが行なわれているなら、そういう下部がやったことについてあやまちを正す。もし総理大臣真意でやっておられるなら、そのあやまちを総理大臣が正すように、木村さんが職責をかけてその任務を全うされる、そして連絡を即時とられるというふうにお約束をいただきたい。木村さんの御答弁を求めます。
  28. 木村俊夫

    木村国務大臣 私の立場といたしましては、先ほどお答えしたとおりでございますが、総裁としての総理に対するいろいろの御要望、これは当然党の機関を通じて総裁に申し上げたいと思います。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、お待たせをいたしておりますから、総務長官や厚生大臣のほうに少し質疑を続けたいと思います。  社会保障制度審議会のことについてお伺いをしたいのですが、私の理解では、これは総理大臣おいでにならないときには総務長官がお答えになるべき問題だと思っております。そのことについて、昨日総務長官の御出席を御連絡をいたしましたところ、総務長官のほうの関係の事務局のほうから、これは官房長官のほうにお聞きを願いたいと言われました。私はどちらでもいいのですけれども、片一方逃げられてしまいますと困りますので、社会保障制度審議会についての御答弁をどちらからいただけるか。また両方でいただけるか。また、これは変な理由で言いましたら私はまた申し上げますけれども、それをちょっと総務長官から伺っておきたいと思います。その点について総務長官が全部お答えになるのでしたら、官房長官は御退席になってけっこうであります。
  30. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 どうぞ何なりと御質問いただきたいと思います。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 社会保障制度審議会の問題について伺いたいわけでございますが、総務長官は、それではその問題についてお答えいただけますね。  ところで、厚生大臣にお伺いをしたいと思いますが今度の健康保険の特例法案の内容が予算的に確定をしたのは、たしか二月二十八日だと思いますが、そのとおりでございますか。
  32. 坊秀男

    ○坊国務大臣 特例法案の予算が確定じゃない、予算の原案が二十八日でございます。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 私、間違いました。予算は国会できまるので、政府の予算原案が確定をした、予算に対する政府の計画が確定をしたのは、二月二十八日ですね。
  34. 坊秀男

    ○坊国務大臣 はい、さようでございます。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 それから次に、社会保険審議会に諮問をされたのはいつでございますか。
  36. 坊秀男

    ○坊国務大臣 三月二日でございます。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 社会保障制度審議会に諮問をされたのはいつでございますか。
  38. 坊秀男

    ○坊国務大臣 四月の八日でございます。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 予算原案が二月二十八日に確定されて、そのときに、国庫負担が二百二十五億円、行政努力が二十五億円、その他保険料の値上げについての財政効果の問題も、それから初診時の一部負担の百円から二百円の値上げの財政効果の問題も、それからもう一つは薬代の一部負担、入院時の一部負担の倍増の問題、そういうことが二月二十八日に政府の中で今度直すということを計画として確定をしたわけでございますね。
  40. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり二月二十八日にきまったわけでございます。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 総理府の長官と厚生大臣にお伺いしますが、社会保障制度審議会設置法の第二条第二項にどういうことが書いてあるか、御存じでございましょうか。厚生大臣、総務長官の順番でお答えを願いたいと思います。
  42. 坊秀男

    ○坊国務大臣 二条の二項、「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」
  43. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど、今回のこの改悪案の計画は、二月二十八日に政府としてきまったということをお答えになりました。社会保障制度審議会設置法第二条第二項では、企画の大綱についてあらかじめ審議会の意見を求めなければならないと書いてあります。この法律をよく読んでみますと、法律違反を政府がしておられるということであります。明らかな法律違反であります。法律違反の手続提出された法律は、これは政府国会におわびをして、国会にお願いをして撤回をしなければ、政府みずから法律違反ということになろうと思います。厚生大臣法律違反をしてはいけないと思う。これについてどうお考えになりますか。
  44. 坊秀男

    ○坊国務大臣 国のいろいろな仕事をやっていく上におきまして、予算の概算要求というものには、いつまでに要求しなければならない、こういうこともございます。そこで、予算といたしましては、概算でございますが、これを二月二十八日にきめたというわけでございますが、これに伴う法律案につきましては、審議会に対しましてこの法律案を御審議を願ってきめたわけでございます。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣法律違反であるかないかと聞いているわけです。法律違反であったならば、厚生大臣責任をとらなければならない。法律違反であるかないかということを答えてください。
  46. 坊秀男

    ○坊国務大臣 法律違反ではないと考えております。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 どういう意味法律違反じゃないと解釈をされるか。この条文を読んだら、日本語のわかる人だったら、法律違反ということはわかるはずです。あなたの言ったこと、もう一回言ってください。どういう理由法律違反ではないか。
  48. 坊秀男

    ○坊国務大臣 法案をきめるにあたりましては、審議会に御検討をお願い申しております。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 あなたはここで「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」というふうに書いてある中の二番目の立法について言っているわけですが、その前に企画というものがあるわけです。企画についてあらかじめ意見を求めなければならない。これは国会できまった法律ですよ。社会保障を主管している厚生大臣が、社会保障の非常な権威のある社会保障制度審議会、それに対する政府の義務、その権限について、このような間違った理解をしているのじゃ困る。間違ったのはしようがないとすれば、あなたは責任をとって、こういう誤った手続で出した法律案については、これは間違っておったのだから、政府としては撤回をしたいと国会にお願いをしてください。そしてあなたは即時責任をとって辞表を出す、それがあなたの責任だろうと思う。企画ですよ、立法ではない。企画についてあらかじめ意見を求めなければならない。この法律違反についてはどう思うのです。直ちに撤回の努力をしますか。直ちに辞表を提出しますか。
  50. 坊秀男

    ○坊国務大臣 厚生省は、行政府といたしましては、社会保険のみならず、いろいろな施策について絶えず企画をやっております。企画というものにつきましては、絶えずこれは行政府がやっていかなければならない一つの行政府の大きな仕事だと思います。そこで、三百六十五日とはあえて申しませんが、毎日企画をしておる。そして、その企画につきまして、ある程度、どの程度ということについては、これはいろいろな考え方もあろうと思いますけれども、その企画につきましては、私は社会保障制度審議会法案として御審議を願っておりますから、私は法律違反をあえて犯したというようなことは考えておりませんので、さような意味におきまして、この法律案撤回するというような考えは全然ございません。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 法律というものはかってな解釈はできないものなんです。成文法ですからね。企画についてあらかじめ意見を求めなければならないということは、それを違反したことは明らかでしょう。それとも、この健康保険法の特例法案は、これは、毎日毎日厚生省がどうやろうかという行政上の、社会保険庁でこれをどうしようかという、そういうような程度のものですか。法律で直さなければならないというようなものであれば、これは第一に企画でなければならない。その法律の中の、あなた方は一番重要法案だと言っているわけだ。厚生省の計画にいろいろなものがあるでしょう。何かの企画をするためにどこの視察をしよう、そういうのも企画の一つだ。そういうものでなしに、法律で直さなければならないものは、大きな企画です。しかも、あなたが一番重要法案と言って、ほかに迷惑をかけてもしゃにむにそれを通してもらいたい、ここでも何としてもこれを通してもらいたいと言っているような大きな企画じゃないですか。こんな大きな企画はどこにありますか。この企画についてあらかじめ意見を求めなかったのでしょう。これが法律違反じゃなくてどうなんです。
  52. 坊秀男

    ○坊国務大臣 審議会に御審議を願うというような場合にも、一応形と申しますか、フォルムと申しますか、そういったようなものを整えて、フォルム、これは企画でございますが、そういったものを御審議を願っておるということでございますから、私はこの第二条に違反するなどということは毛頭考えておりません。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 あなたは立法の問題について諮問をされたので、企画の問題について諮問をされたんじゃないんですよ。企画についてなぜ諮問しなかったのか。
  54. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほど来お答え申し上げておりましたとおりでございますが、この審議会におかけするということは、従来もこの方式でもってやってまいったことでございまして、私はこれにつきましては何らの疑点を抱いておりません。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 あなたは、ほかの人が法律違反をしたら、自分法律違反だとわかっておっても、してもかまわないという意見ですか。従来もということは、これは通りませんよ。条文にはっきり書いてあるんだ。従来の連中も法律違反をしている。あなたも法律違反をしている。法律違反をしたということが明らかになったときには、あなたは責任をとらなければならない。法律違反の手続順序をおいて出してこられたものについては、そういう法案についてはもとに戻さなければならない。これが法治国の重大な責任を持っておる大臣なんという職責のある人の責任ではないですか。
  56. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほどからも申し上げておりましたとおり、審議会に案をかけるという場合には、一応の形を整えてかけるということは、かけることが非常に支障があるということでもありませんし、これは法律違反であるなどということは考えておりません。その形を整えたものをかけるということで従来ともこれをやってきておる。これがもし法律違反ということならばおまえは責任をとれということ、これはもう私の責任などということより国家が大事でございますから、法律違反であるということならば、これは私が責任をとるということは当然のことでございましょうけれども、私は、先ほど来申し上げておりましたとおり、決してこれは法律違反になるということではないと考えておりますから、この案をさような理由でもって撤回するとか、あるいはさような理由でもって私が責任をとるとか、そういうことは考えておりません。   〔「了解、了解」と呼ぶ者あり〕
  57. 八木一男

    八木(一)委員 常習犯がそろそろ始め出しましたから、連続しましたら退場を命じてください。特にすぐそばにいる人が常習犯です。  厚生大臣、あなたは、立法の前に一応形を整えて出したからというようなことを言っておられるけれども、とにかく制度審議会の意見を求める、いわゆる普通のことばで諮問をするということは、非常に権威のある社会保障制度審議会に企画をするまでに聞いて、ほんとうの社会保障の権威者のいろいろの論議を聞いて、それをもとにして企画を立てる、それをもとにして立法するということのためにできた規定であります。あなたは、立法の前に出したんだ、形を出してやったのがなぜ悪いか、それは普通やっていると言われるけれども、形を出しても、これは昨年の十一月ごろに、いまの案を厚生省が固着する案としないで、素案の素案として、こういう案ではいかがでございましょうかといえば、厚生省保険局などおこがましいけれども法律違反とも言わないでがまんしてあげられる節もあるわけです。ところが二月二十八日に確定予算としてしまっておるわけです。二百二十五億円のそのような国庫負担ではこの問題は解決をしないということは、社会保障制度審議会委員なんかでも動かしのつかない状態にある。そこであなたは立法の前に諮問をしておる。それでは社会保障制度審議会はあってもなくても同じことであります。その前にあなた方は、二百二十五億円の国庫負担で、こういうことでどうでしょう、これはいかぬ、二百二十五億円ではなしに八百億円出せ、一部負担なんかをふやさない、前にあった百円も三十円も、これを撤廃をして、あるいはまた五人未満の事業所も労働省に負けないように適用すべしという答申が出せるわけです。二百二十五億円という国庫で出さなければならないものをきめておいて、あとのシステムもきめておいて、それで形式的に立法の前に出すということでは、社会保障制度審議会を無視をしておると言わざるを得ない。  総理府の総務長官来ておられますが、社会保障制度審議会の一番の政府責任者総理大臣です。社会保障制度審議会設置法第二条第二項に違反をしておる。社会保障制度審議会という総理大臣の諮問機関で非常に権威のあるものを有名無実にした、軽視をしたということについて、総務長官はどのようにお考えになりますか。
  58. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 私と社会保障制度審議会の関係というもの、これを言いますとまた問題になりますから、大家さんが家を貸しておるような形でございますけれども、私は国務大臣としてのお答えをすれば、坊厚生大臣が申しておることと私は同じ考えであります。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 同じ考えでありますというようなことでなくて、ちゃんと言ってください。そんな無責任答弁はない。坊厚生大臣と同じことばでいいからもう一回言ってください。言えなかったら、あなたはうそを言っておるのですよ。同じことばで答弁してください。あのときに暑いからぼんやりして聞えなかったというなら、それでけっこうです。だけれども、そういうことはめんどくさいから、坊君と同じである、そういう答弁のしかたはないですよ。あなたの考えを直接答弁してください。
  60. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 坊厚生大臣のことばをそのままと仰せられても無理でありますが、決して規定に違反したり法律を無視したりしておることはありません。したがって出された法案撤回する意思はないという坊厚生大臣の考え方と同じであります。   〔「やむを得ないと言っておる。」と呼ぶ者あり〕
  61. 八木一男

    八木(一)委員 常習犯がやり出しましたから……。
  62. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 今度やったら退場を命じてください。じゃまになってしようがない。  塚原さん、企画についてあらかじめ審議会の意見を求めなければならないという条文に、どのようにして違反をしていないか、もう一回おっしゃってください。——けっこうです。いま塚原さんはほかの点でりっぱな政治家と思っている。非常にいい方だと思っているのですが、守備範囲が広いからものごとを忘れることもあるということで、その点、答弁が不十分な点については、いままでは了解しますけれども、しかし、この社会保障制度審議会というのは総理大臣に直属するのです。委員の委嘱やなんかは総理府でやっていられる。それから答申は総理大臣に行なう。ただし、答申を受け取るのは、いままで総理大臣がいないときにはおもに官房長官である。そういう意味で、先ほど官房長官と総務長官のどっちにお答え願うかということを、あらかじめ申し上げておいた。そこで、塚原さんにお答え願うということで、木村さんに御退席を願った。そういう経過でさっきから申し上げておる。だからこの問題については、守備範囲の広い塚原総務長官ですけれども、長官、少し研究をしておいていただかなければならない。  設置法第二条第二項については、総務長官も、それから坊厚生大臣も御存じなかったのじゃないかと思う。設置法第二条第二項については、こういうりっぱな法律があって、この社会保障に関するこれほどりっぱな審議会の権限に関する規定について、条文どおり覚えておらなくてもいいけれども、企画についてあらかじめ諮問をしなければならないということをあなた方は知らなかった。また、厚生省保険局、そういうようなけしからぬ連中が知らせなかった、そういうことになろうと思います。こういうことからこの健康保険の改悪案件が出ている。健康保険法の改悪なんというのは、ほんとうに悪い法律です。ところが坊厚生大臣は、保険局長の言うことばかり聞いて、とにかくそれをただ守備だけしておればいい、理屈がわかろうとわかるまいと、ここで、こじつけでも何でも、これでいいのですということを言えばいいという任務を帯びているように思います。ほかの国務大臣も、どんなに悪い法律であっても、政府提出をした法律だから、非常に親しい自民党に一生懸命やってもらって何でもしゃにむに通したい、そういう考え方を持っている閣僚が大部分ではないか。だからこういう問題についても知識が少ない。それであってはならない。総理大臣も、関係各大臣も、きょう出席要求をされれば、飛んでやってきて、そういう問題を一緒に考えよう、政府が確信を持っているなら、あらゆる点で確信を持っておることを説明しよう、そういう気持ちでおられねばならないのが、そういういいかげんな気持ちでやられている。  坊厚生大臣も、先ほど保険局長がよけいなことを耳打ちした。耳打ちしてなかったら、ああいう答弁はなかった。保険局長の言うままにされているわけです。こんなものは、日本人が読んだら法律違反であるということは明らかである。それを、厚生省保険局とか、あるいは労働省の職安局とか、そういう連中が、かってにへんてこりんな案を通すために、ほかの批判を受けたら困る、そういうことで、このような立法上明らかなものを、手続を無理に省略をしよう。省略をすることについて、法律違反でないというへ理屈を考えて、そしてその問題にあまり知識のない大臣にまで、法律違反の問題を法律違反の問題ではないというようなことを強弁させようとする、そういうような状態です。お二人とも、法律違反ではない、このような答弁は、これは許されません。日本語で書いてあり、日本語が読めれば、明らかに法律違反である。企画は二月二十八日にきまっておる。それから後にやったならば、あらかじめ意見を聞かなければならないという法律上の違反である、そういうことをまともに受け取った答弁をなさい。間違っても何でもそのままにしゃにむに押し通そう、そうは思いません、見解が違いますと言えば、それでまかり通るという予断を持ったような答弁では、ほんとう審議はできません。そういう意味でも総理大臣に来てほしかった。内閣総理大臣が同じような総理大臣だったらそのことを国民に知らして、総理大臣退陣の声が強くなるようにしなければならないけれども総理大臣がそうでないよい総理大臣であれば、閣僚が全部そのようになまけているようではいかぬ、それを直させるように総理大臣に指導してもらいたい、そういうことで総理大臣出席を要求をしたわけです。総理大臣がいないで残念ですが、あなた方はりっぱな国務大臣であるはずです。これが法律違反であるかないかということについて、法律違反でありますから、あしたにでも閣議を開いて、法律違反である、法律違反をしてしまった、政府みずからが法律違反をしたことについてどのように対処するのが、国務大臣としての、佐藤内閣としてのやる道であるかということを、坊厚生大臣塚原総務長官から閣議に提示をして、この問題をほんとうに真剣に討議をしてもらいたいと思う。この点について坊さんと塚原さんの御答弁を求めます。
  64. 坊秀男

    ○坊国務大臣 繰り返し申し上げておりますとおり、私は法律違反だとは考えておりません。そこで、これについての八木委員の御要望につきましては、閣議でどうするとかこうするとかいうようなことは考えておりません。
  65. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 守備範囲が広いというたいへん御同情あるおことばをちょうだいいたしました。前もってそういう点についての御質問があれば、なおよく勉強してまいるところでありまするが、やはり私にも限界がございますからいまのような答弁をしたのでございまするが、これを変更いたそうとは考えておりません。解釈の上で食い違いがあることは、これは人間としてやむを得ないことであると思いますが、私が先ほどやはり申し上げましたように、これが法律違反である、あるいは撤回すべきである、これは私は所管大臣ではございませんけれども、私はそういうふうに考えておりません。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣と総務長官がそういう御答弁をやりましたけれども厚生大臣は、自分判断が全部正しいと思うような、そういう独断的な人ではないと思う。自分判断と人の判断とどっちが正しいかということについて慎重に考えてみようという、人間としての自覚のある人間であるか、それとも、何でもかんでも自分判断が正しくてほかは間違いであるというような独断的な人間であるか、どちらの人間であるか明らかにしてもらいたい。
  67. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私もまだ非常に勉強を要する人間でございまして、私は諸般のことについては常に反省をしなければならないし、いろいろなことについて考えてまいらなければならないということは自覚いたしております。しかし、いまのこの八木さん御指摘の法律違反云々の問題につきましては、私は、これは法律違反ではないということを確信いたしております。   〔「名答弁」と呼び、その他発言する者あり〕
  68. 八木一男

    八木(一)委員 委員長齋藤君はほんとうにじゃまになりますから、今度不規則発言をしたら退場を命じてください。
  69. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 坊さん、与党の連中がぎゃあぎゃあ笑っておるけれども、そんな問題ではないのです。あなたはほんとうのところこの問題を知らなかったと思うのです。あなたの顔つきを見れば、さっき出るまでこの問題については知らなかった。知らなかったのを、保険局長が耳をごちゃごちゃやったりして、こう答えなさいと言われたのだ。知っておったとしても、ごく薄ぼんやりとしか知らなかったと思う。塚原さんもそうです。それは、知らない問題でいきなり出されたからといって、こっちの質問に違うというようなことを断定する、そういう独断的な人ではないと思う。また、あなたがそうであっても、佐藤榮作君はそうではないかもしれない。あるいはほかの国務大臣もそうではないかもしれない。したがって、あなたのいま独断的に言っている解釈が正しいかどうかを、総理大臣やほかの国務大臣がそうでないかもしれないのに、あなた一人できめることは非常に僭越です。したがって、こういう問題が出たら、法律違反という疑いがあるなら、それについて慎重に閣議で考えてみる必要がある。ことに内閣法律違反という問題になったら重大問題だ。私は知識が少ないけれども保険局長にこれこれの説明を聞いて、保険局長の意見を受けて、これは法律違反じゃないと思っても、総理大臣はじめほかの閣僚がどう思われるか、そういう提議をされる責任があると思う。至急に閣議で提議をしてください。塚原さんもそれについて提議をしてください。それについてお約束いただきたい。
  71. 坊秀男

    ○坊国務大臣 保険局長から耳打ち云々のお話がございましたが、何月何日にどうしたかということにつきましては、私は非常に記憶力がないものでございますから、それは私は保険局長に聞きました。しかし、この問題が法律違反であるかないかといったようなことについては、まことに不敏ではございますけれども、私もこれは法律違反ではないということははっきりと認識しておるわけでございます。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 そんなもので通ると思うのですが、あなた。刑法上の違反を犯して、だけれども私はそれをやっていません。現行犯がそういうことをやっていても、私は悪いことをしていません、私は人をけがさせておりません、そんなことで一体通ると思いますか。この条文はだれが読んでも、企画についてあらかじめ意見を求めなければならないと書いてある。それは政府は二月二十八日にきめた。諮問をしたのはもっとあとである。明らかに法律違反です。法律違反でないと言うのならば、ない理由を、ほんとうにみんながわかるように、たんねんに答えなければならない。そういう問題ですから、そういう問題について即時反省をされて、そしてそういう問題について閣議で提議をして協議をしてください。直ちに撤回するということはお約束ができなくても、法律違反であるかどうかということについて閣議ではかる、そういうことはできるでしょう。またしなきゃならないでしょう。それもできないのですか、あなたは。
  73. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この問題についての法律違反かどうかということを閣議ではかるつもりはございません。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 委員長、法制局長官を呼んで下さい。
  75. 川野芳滿

    川野委員長 八木さん、法制局長官が来るにしてもちょっと時間がかかりますから、質疑を続けてください。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 それでは質疑を続けますが、この問題は、法制局長官がすぐ来ないのならほかのベースになりますから、来週の木曜日にでもまた法制局長官と坊厚生大臣に対してやりますから、それについて委員長、そういうお取り計らいをひとつ約束をしてください。
  77. 川野芳滿

    川野委員長 発言の問題は理事会で御相談申し上げて善処したいと思います。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 それではほかの問題に移ります。(発言する者あり)自由民主党状態、おわかりでしょう。やじはやるわ、それから捨てぜりふを言って外へ出ていくわ、定数が足りないと言えばこれであると言うわ、委員長議事運営をちょっとちゃんとしてください。
  79. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣に伺います。いまの社会保障制度審議会に対する規定と同様の規定が社会保険審議会についてあることを御存じでしょうか。——よろしいです。一々こういうふうに言わなければわからないというようなことでは、ほんとうのところ困るのですよ。保険局長は、一部負担が必要だなんというつまらないことをコーチするよりは、こういう規定のあることを厚生大臣に教えておきなさい。もう内容については申しません。同じような規定がある。そういうことも勉強しないで健康保険の改悪案を通してくださいというようなことではいけません。不勉強についてどう思いますか、厚生大臣
  81. 坊秀男

    ○坊国務大臣 勉強がたりないとおっしゃっての御非難、これは十分私は私なりに勉強いたしておりますけれども、御指摘せられたように、第何条に何があるかということにつきましては、私ははっきりとこの席で覚えていなかったということにつきましては、もっと勉強しておけばよかった、かように思います。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 坊君、質問に少しまじめに答えなさい。私の質問ほんとうに聞いていたのか。第何条にあるかということを質問していない。あなたが研究不足であるとちゃんと初めから知っていて、同様の規定があることについて知っているかということを聞いたわけだ。それについてもあるかないか確信がないから、時間を浪費して、そのものをたぐって保険局長に聞かなければならない。私は何条にどういう規定があるかということを聞いていない。意地悪な質問をしていない。同様の規定があることを知っているかということを聞いている。そのことすら、同様の規定のあることすら知らないようでは、ほんとうにまことに不勉強、民主的にこの問題を進めようという気持ちがないということになろうと思う。にやにやぼやぼやして、考え方が違う、そう思いません、そういたしません、そういうことで審議が通ると思ったら大間違い。  保険局長に質問します。いまの条文とかさっきの条文について、厚生大臣に十分に進講したのかどうか。君たちの考えた改悪案を、何が何でもいいのだ、そういうことばかり進講して、国論で、また学識経験者によってこういう問題が批判されなければならないという問題について、厚生大臣にその重要点を十二分に説明をしたのかどうか。そういう形跡が一つも見えない。そういう点についてあなたの責任ほんとうに反省して答えてください。
  83. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 社会保障制度審議会及び社会保険審議会につきましてのこういう取り扱いに従来なっておる、ということにつきましては、大臣によく御説明を申し上げました。したがいまして、私どもとしましては、内容が予算の最終の案の決定の際にきまりまして、直ちに時を移さず二日に社会保険審議会に諮問をし、あと引き続き社会保障制度審議会に諮問をいたしたわけでございます。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 熊崎君に質問します。そこにあなたの独断性が出ている。閣議が決定したから直ちにやった、それでいいのだということを、正直で、ある点では人のいい厚生大臣に押しつけた。企画についてあらかじめ聞かなければならないというのは両方の条文にあることを十分に解明していない。厚生省の長が、これが法律案であるかどうかということを自分で熟慮する、そういうような状態をつくっておらない。歴代の保険局法律案を動かしている。それがいいことのように、人のいい——一年に一回かわるから、熊崎君よりも坊君のほうがずっと有能な士のようであるけれども、技術的にあなたのほうがよく知っている。その立場を悪用して、自分たちのまずい計画を、批判をなるたけ受けないようにして強行をしたいという考え方だ。自分たちの上司に、企画について諮問をしなければならないということを十分に説明をしておらない。これは歴代の保険局長の責任である。そういうことで、二月二十八日後、直ちに諮問をいたしました、そういうことでは通らない。厚生大臣を非常に誤らせた責任について熊崎君の自己反省をいただきたい。
  85. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 今回の法律の諮問いたしましたことだけに限らず、従来とも厚生省としましては、予算の内容を固めたあとで、要綱の形式でもって両審議会に諮問をいたしておったわけでございます。したがいまして、私ども法律違反を犯したつもりは毛頭持っておりませんし、また、従来の取り扱いといたしましては、企画の大綱等で、たとえば医療保障の総合計画とか、あるいは社会保障の長期計画等につきましては諮問をいたしておりますけれども、個々の法律の中身につきましては、要綱でもって諮問いたしまして、その答申を十分に尊重いたしまして国会提出をするという慣例に従ったまででございまして、法律違反を絶対に犯してはおらないというつもりで私どもは大臣を補佐申し上げておるわけでございます。
  86. 八木一男

    八木(一)委員 大臣は絶対にと言っていない。あなたたちは絶対にと言っている。そういったところに保険局のファッションがある。保険局の中では扱いが非常にむずかしいから、坊さんが……(発言する者あり)委員長齋藤君の退場を命じてください。——委員長齋藤君の退場を命じてください。
  87. 川野芳滿

    川野委員長 発言を続けてください。
  88. 八木一男

    八木(一)委員 齋藤君の退場を命じてください。
  89. 川野芳滿

    川野委員長 静粛じゃありませんか。どうぞ質問を続けてください。
  90. 八木一男

    八木(一)委員 齋藤君は委員質問を妨害することをしょっちゅうやっているわけです。きょうも五回ぐらいやった。退場を命じてください。
  91. 川野芳滿

    川野委員長 どうぞ発言を続けてください。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 齋藤君について、以後ああいう発言があったら退場を命じますか。齋藤君の発言は質問者の妨害をするものと私は認めておるのです。
  93. 川野芳滿

    川野委員長 ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  94. 川野芳滿

    川野委員長 速記を始めてください。  どうぞ発言してください。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 とにかく齋藤君は意識的に非常にじゃまをしますので、質問の進行に非常にじゃまになりますので、厳重に注意してください。  保険局の中でこの問題が非常にむずかしいので、一年ごとに大臣がかわられるというような、吉田内閣以来の非常に間違ったやり方で、それがいけないのですが、そういうことで、聰明な熱心な大臣が来ても、一年間ではのみ込みにくい。勉強する大臣も、局長の言うとおり一生懸命聞いても、一年間で理解するのはむずかしいのです。これは、どんなに聰明な人であっても、熱心な人であっても、保険局のごちゃごちゃしたことを、あなた方は十数年取り組んでおられるのに、一年ではのみ込みにくい。そこで保険局としては、自分たちの企画したことを大臣がうのみにされる傾向があるから、自分たちのことについては十二分に反省をしなければいけない。反省自戒をしてやらなければいけない。大臣は絶対にと言われてないのに熊崎君は絶対にと言われた。法律の条文を読んで、企画についてあらかじめ諮問しなければならないということは、日本語で日本人が読んだならば、それをあらかじめしなかったならば法律違反だということになるわけだ。そこで企画とは何かという問題になろうと思う。そういう問題について、あなた方が、いままでやっていたから絶対にそうでないというような言い方をした。非常に不遜です。そういう問題があったら、それがほんとう法律違反であるか、制度審議会を軽視したことになるか、十分に反省をしなければいけない。大臣は絶対にと言ってないのに熊崎君は絶対にと言っている。反省は全然ない。いままでやり通してきたのだから悪いことを最後まで押し通そう、そうでなければ保険局のメンツが立たない、これからの保険局の、われわれから見たら悪い奸策がうまくいかない、そういう考え方でそういうことを処理している。そういうことについては十分反省しなければならぬし、坊さんは、そういうような保険局の悪い伝統があるので、そういうことに支配されないように注意しなければいけない。そういう反省がなくてただ棒読みで、私はそう思いません、私は法律違反ではありません、そんなことではほんとうの大臣じゃありません。勉強がむずかしいし、半年間ではなかなか理解できないことは同情はするけれども、しかし、そういう問題については、保険局の言っていることばかりが世の中の道理ではない。保険局が誤りをおかしているのではないかという考え方であなたは判断をしなければならない。局長が言ったら棒読みで言うような大臣では、国務大臣はつとまりませんよ。  次に、時間がだいぶたちましたから、本題のほうに移っていきます。  あなたが、社会労働委員会の最初の所信披瀝のときに、社会保障の問題に触れ、次に医療保障の問題に触れ、次に医療保険の赤字の問題に触れておられる。時間を省略して言いますが、説明の必要があれば速記録を読みますが、中段において医療保障ということばを使っておられた問題と、それからあとの医療保険の赤字その他の問題と、私の理解では同一の内容をさしておられるように見えますけれども、そうであるかどうか、伺っておきたいと思います。
  96. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御質問の趣旨に私のお答えはぴったりはまるかどうか、また何べんでもお答えを申し上げますが、いまの日本の社会保障の中の医療保障は、保険の方式でもって現行制度がやられておる、こういうことでございます。しかし国民の健康ということでございまするから、これは非常に大事な政策でございますので、その医療保険制度というものをだんだんと整備強化をしていかなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
  97. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は、社会保障の中の重要な部門として医療保障がある、医療保障の中の具体的な問題として政府のやる医療保険がある、そういう考え方で述べておられるように理解しておるのですが、時間を省略して読むのを差し控えますけれども、そういうお考えですね。
  98. 坊秀男

    ○坊国務大臣 そういうことです。
  99. 八木一男

    八木(一)委員 ところが御承知のとおり、憲法二十五条では社会保障についての規定があるわけです。社会保障は向上、改善をしなければならないという憲法二十五条の後段があるのですね。そうなれば、社会保障の中の医療保障、その中の医療保険についても、同様に憲法の精神に従ってそれを向上、改善をしなければいけない責任があるわけです。それを認めますね。
  100. 坊秀男

    ○坊国務大臣 漸次これを整備強化していくという必要のあることは当然でございます。
  101. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、今度のあなたの出された特例法案——きょうは船員保険のほうは別にして、健康保険のほうだけしますが、それについて憲法では向上、改善をしなければならない。ところがこの内容は改悪になる。あなたは憲法違反をしている。それについてどうお考えか。
  102. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の緊急措置でございますが、これは、このままで放置しておきますと、政管健保等が非常に危殆に瀕しまして、そして医療保障ということが崩壊に至るというようなことから考えまして、臨時緊急対策として今度の特例法案を出した次第でございます。
  103. 八木一男

    八木(一)委員 赤字で崩壊におちいるということからこういう法案を出したというのですね。赤字の問題に対処しなければならない。赤字の問題に対処するためには、いろいろな方法があるわけです。国の負担を入れて赤字を埋めればそれでいいし、またいろいろなほかの方法もある。ところが、憲法では向上と改善につとめなければならないということになれば、当然憲法の条章に従ってこの政府管掌健康保険を中心として健康保険の赤字の問題に対処するならば、これは国庫負担で全部埋めても改悪にはなっていないが、まだ改善ということにはならない。だから、そういうことをやらなければならないし、憲法の条章に従ったならば、さらに国庫負担を多くして、五人未満の事業所に適用するなり、あるいは傷病手当金をふやすなり、そういうことをやらなければ憲法の条章違反です。それにもかかわらずあなたは、保険料の値上げとか、あるいはまた入院時の一部負担を倍加する、初診時の一部負担を倍加する、薬代の十五円を新設するということをやられたということについて、憲法の条章との関係はどうなりますか。
  104. 坊秀男

    ○坊国務大臣 そこで、この緊急なる事態をどうして切り抜けていくかということにつきまして考えたわけでございますが、八木さんの御指摘のようにいろいろな方法がございましょう。しかし、その方法の中で、やはりこれは国民の健康、国民の生命等に影響する大事なことでございますから、まず第一に政府なり国なりがこれに対する負担をすべきものであるということを考えまして、前年に比べまして相当大幅な負担政府にしてもらうということを私は要望いたしまして、これが実現を見たわけでございます。
  105. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、あれで大幅だと思っておられるのですか。
  106. 坊秀男

    ○坊国務大臣 大幅、小幅ということはいろいろな標準がございましょうが、これは私の考えといたしましては、四十二年度の予算の関係におきましては、予算全体、財政全体の総合的な考えから申しますと大幅である、かように考えております。
  107. 八木一男

    八木(一)委員 健康保険の精神、社会保障の精神、それから国民負担、そういうことを比べて大幅だと思っておられるのですか。
  108. 坊秀男

    ○坊国務大臣 予算の中の経費でございますからして、これは非常に総合的に考えてまいらなければならないと私は思います。さような意味におきまして、いろいろなものと比較もしていかなければならない。事の重要性ももちろん大事なことでございます。財政の配分ということも、国民全体にとりましては非常に大事なことだと思います。そういったような各般の角度からこれをながめてみまして、今度の政府のこの負担というものは、これは相当大幅と私は考えております。
  109. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、いままで私、社会労働委員会で皆さんと一緒に席を連ねてまいりましたけれども、歴代の厚生大臣の中で、個人的に見れば、非常に人のいい、あるいはのんきないい方だと思いますが、ほんとに厚生大臣の資格がおありにならないように思います。いままでのあれでも、いまのたった少しの国庫負担しかとれなかったことについて、一生懸命やったけれどもとれなかった、残念でした、これでは十二分じゃないと思います。というのは、いままでの歴代の厚生大臣の中の、あんまり私ども尊敬できない人もあわせて、最低の人でもそのくらいのことはおっしゃった。あなたは大蔵政務次官を長いことやっておられまして、厚生大臣のほうが短いから、大蔵政務次官で何か財政の配分とかなんとかいうことばかりやっておられたくせがまだ抜け切っておらないのではないか。あなたは厚生大臣ですよ。健康保険についての問題についての主管大臣ですよ。そして社会保障の問題というものについて責任のある大臣ですよ。たとえば、社会保障制度審議会の昭和四十年九月十五日の答申とか、あるいは社会保険審議会のその同じ年の十月二十日の答申とか、そういうものを十分読んでおると思うのですが、この国庫負担の問題について、どう書いてあるか知っておると思うのですが、どう書いてあるか、知っておられたらおっしゃってください。文言どおりでなくてよいですから、どのくらいの国庫負担をしなければならないと書いてあるか、どう書いてあったか言ってください。
  110. 坊秀男

    ○坊国務大臣 一字一句覚えておるわけではございませんが、大幅な国庫負担ということは、確かに私の頭に残っております。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 大幅なということだけしか覚えてないのですか。保険審議会のはどう書いてありましたか。社会保障制度審議会のはどう書いてあったか。保険局長もそういうことを教えないのですか。国庫負担を要求する大臣がそういうことをわからないで要求ができるか。だらしがないぞ。
  112. 坊秀男

    ○坊国務大臣 「暫定対策実施期間につき平年度二〇〇億円に相当する国庫負担額を追加計上し残余は借入金で賄うべきである。また、昭和四一年度においても、これに準じて措置すべきである。」こう書いてございます。社会保障制度審議会では、「国庫はこの際、右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」ということを書いております。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 そうすると、少ないほうの保険審議会でいくと、保険審議会の意見は、去年幾ら出せと言ったのですか。
  114. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま申し上げましたのは、平年度二百億円でございます。去年でございます。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 こっちから言いますが、「追加計上し」と書いてあるのは、去年は三十億円計上されていたんですよ。二百億円追加計上しというのは、二百三十億円ということです。そんなことは坊さん知らないらしい。保険局長も教えていないらしい。去年の社会保険審議会の答申は、非常に微温的な程度の少ない答申だったのです。それでも三十億円プラス二百億円というものが昨年のものだった。昨年のまだ赤字の少ないときでそうだったのですよ。ですから、ことしは、あなた方は一部負担で保険料を値上げしようというような状態になっているのだから、それもそれだけふくらませなければならない。去年のベースでも二百三十億円なんですよ。ふくらませれば、ことしは、社会保険審議会の少ないほうでも、三百億円くらいに最低ならなければならない。それをあなたは、二百二十五億円で非常に多かったと言っている。そういうようなへっぴり腰で要求したのでは通らないでしょう。そして、薬代の一部負担というような残虐むざんなことを中に入れなければならないということになる。社会保障制度審議会の答申をもっと言ってごらんなさい。「右両者に比して」の「右両者」は何ですか。
  116. 坊秀男

    ○坊国務大臣 「赤字のよつてきたる原因および経過にかんがみ、その解消に必要な収入をうるため、一方では被保険者、事業主や患者においても負担の多少の増加はやむをえないところであり、他方では医療の担当者においてもその運営をより合理化して社会的サービスにあたるのは当然のことであるが、国庫はこの際、右両者に比して大幅の負担に任ずべきものと考える。」
  117. 八木一男

    八木(一)委員 保険局長、今度の改定案で国民負担になる分の数字を、知っておりましたら言ってください。
  118. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 保険料の値上げがございますので、その分は事業主と被保険者折半になりますので、三百二十五億円の半分で百六十二億円でございます。  それから、患者負担におきましては、一部負担の初診時、入院時の増合わせて四十四億円、それから薬剤の一部負担百二十六億円、合わせて百七十億円程度、患者、被保険者の増というものはそういう形になっております。
  119. 八木一男

    八木(一)委員 総計を言ってください。
  120. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 合わせますと三百三、四十億円になります。しかし、これは被保険者と患者ということの両者を含めてありますから、事業主については百六十二億円……。
  121. 八木一男

    八木(一)委員 その総計を言ってください。
  122. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 総計で四百九十五億円になります。
  123. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣社会保障制度審議会の答申は、国民負担よりもはるかに多くの国庫負担を出さなければいけないと書いてある。いま読みましたね。保険局長、国民負担の総額は四百九十五億円だな。それをずばり言ってくれればよかった。社会保障制度審議会の答申を読めば、四百九十五億円よりもはるかに大きな国庫負担をしなければならないと書いてある。——厚生大臣、わかりますか。こっちを向いてください。四百九十五億円よりもはるかに大きな金額というのはどのくらいになりますか。しろうとの判断では、どんなに値切っても八百億円ぐらいになる。約五百億円よりもはるかに大きな金額になります。そういうことです。保険審議会の非常に遠慮がちな答申でも、去年で二百三十億円、ことしは、この赤字の状態でふくれましたならば、三百九十億円の要求をしなければならぬ。それをあなたは二百二十五億円の要求をして、これで大幅だと言っている。あなたは財政上のバランスを考えておられるけれども、あなた自体、病人や被保険者、そういう人たちのバランスをくずして、金持ちの方にはいいような、そういう人たちには悪いような、そういう悪いバランスをつくっている。バランスをくずして、そういうような傾向をつくっている。二百二十五億円を大幅だと言うような厚生大臣は、これは厚生大臣の資格がないだけじゃなしに、社会保障の破壊者だ。そういうような考え方を即時に改めなければいけない。いま言ったように、そういうこともあなたは御研究になっていないのですか。そういう答申を腹に据えていったならば、大蔵大臣にもっと要求ができたでしょう。そういうことを腹に入れないで要求をしているから、二百二十五億円で非常に多くの国庫負担だということになる。そういうことについてのほんとう責任を痛感して、そういう間違った経過でこういうような案ができたということについての反省をなさらなければならない。それについての厚生大臣意見を伺いたいと思います。
  124. 坊秀男

    ○坊国務大臣 国庫負担の数字の問題でございまするから、数字は大きければ大きいほど、保険の民間負担と申しまするか、そういったものは、それは減少するわけでございますけれども、一方、これは何にいたしましても予算の問題であり、財政の問題である。先ほどからも申しましたとおり、非常に広い角度から、いろいろなファクターから考えてまいらなければならないことでございまして、私は、二百二十五億円が大幅だと申しましたのは、何もこれでもってほんとうに大幅だから、これで十分だというようなことではない。いろいろな角度から考えてみまして、たとえば昨年の百五十億円といったような数字と比べてみまして、四十一年度と四十二年度の予算を比較してみますと、これは各費目について考えてみますと、五割増しといったような費目というものは、これはほかにもあろうと思いますけれども、非常にそういったような費目も少ない。そういうような点から考えまして、二百二十五億円というものが、これは相当大幅に増額されておるのだ、こういうことを申し上げたのであります。しかしながら、それでもって、これで十分だ、もうこれで自分厚生大臣として大幅に十分とったのだというようなことを申しておるのではございません。さような意味において御理解を願いたいと思います。
  125. 八木一男

    八木(一)委員 ほんとうにあなたはのれんに腕押しみたいなあれですよ。国民の健康とか権利とかいう大事なものを守る厚生大臣が、そんなにぼうっとしておられちゃ困ると思うのですよ。ぼうっとして、ほんとうにのれんに腕押しですよ。個人的にはいい方ですけれどもほんとうにあなたは、これでは即時反省されて、きょうにでも辞表を出していただかないと困ると思う。大幅だと最初ああいうことを大だんびらで言って、言われてから今度は大幅について、諸般の事情とかなんとかかんとかと言われる。そういうふうにごまかされるのならば、憲法の条章からいかなければならない。あなたは憲法九十九条を知っておりますか。見ないで答えてください。——いいです。それじゃ。よろしい。知らないことが明らかになったから。憲法九十九条の国務大臣の憲法に対する責任ということについて知っていますか。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 憲法を尊重し擁護していかなければならないということでございます。
  127. 八木一男

    八木(一)委員 特別国務大臣とか国会議員はそういう責任があるわけです。憲法二十五条の第二項では、社会保障を向上し、改善しなければならぬという憲法の規定がある。その改善をしなければならないのを、あなたが改悪をしている。あなたは憲法違反をやっているわけだ。憲法違反をいまやろうとしているわけだ。やろうとしていることについて反省をして、それは間違っておった、この間違った法案が成立しないように、あなたの立場を生かして最善の努力をしなければならない。それができないなら、あやまちをおかした、国民に申しわけない、直ちに国務大臣だけではなしに国会議員の辞表も出して天下にその罪を謝さなければならない。いままでは九十九条をぼやっと解釈しておる。いま読んだから知っているでしょう。社会保障を向上し、改善をしなければいけないという法律をあなたは改悪をしているわけだ。社会保障というのは国民の権利ですよ。社会的な生存権です。  あなたは、また保険局長ぐらいから聞いて、その点で国庫負担が七十五億円ふえましたというようなことをきっとあとで言うだろうと思いますから、先回りしておきますが、国民のほうは、結局初診料をふやさない、入院料をふやさない、薬代など払わないで見てもらえる権利を持っているわけだ。その権利をあなたは侵害しようとしているわけだ。それはしてはならない。社会保障を向上し、改善しなければならないということを改悪をさせようとしておる。あなたみたいに、総合的になんとかかんとか、比較的にというような答弁ばかりする人であれば、こういうようなはっきりしたもので申し上げなければならない。あなたは憲法違反をしているのであるから、それについて、憲法違反であなたが計画をした問題がとまるように最善の努力をしなければならないし、その責任をとって天下にその罪を謝さなければならない。また、総理大臣にも憲法違反を犯させないようにあなたがさせなければならない。憲法違反の提議をして、国会議員の一部に、間違ってそのような改悪案、憲法違反法案に賛成をするような国会議員が出ないように、あなたがしなければならない。どう思いますか。ぼやっとしないで、はっきりした答弁をしてください。
  128. 坊秀男

    ○坊国務大臣 繰り返し申し上げておりますとおり、今度の対策というものは、このままで参りますと、社会保障が、医療保険が崩壊に瀕するというようなことでございますので、それを食いとめるために今度の措置をとったのでございまして、私は、これが憲法違反だとか、そういったようなことだとは考えておりません。
  129. 八木一男

    八木(一)委員 赤字を解消するというのは厚生大臣責任ですから、解消する方法としては、国庫負担でこれを埋める方法がある。それをあなたは、各審議会の答申も勧告も読まないで、保険局のペースに従って、大蔵大臣の折衝で二百二十五億円になった、大幅な国庫負担をとれたと、しっぽを振ってまかり下がった。そうして実際上の憲法違反の問題が進むような体制をつくった。向上と改善を憲法は規定しておるのですよ。停とんであればまだがまんしましょう。後退、改悪になるというのは、憲法をほんとうに守る憲法国家である日本の国民、日本の国会議員は許せるものではない。あなたも国会議員の一人であり、国務大臣の一人だ。そんなものを出して、ぬけぬけと、そういうようないいくらかげんな、のらりくらりな答弁で済ませる、そんな政治家は世の中にないですよ。また、あなたがそういったことをやっておるので、佐藤榮作君がどういう人か私は全部は知りませんけれども、一国の総理大臣にもその誤りをおかさせようとしておる。ほんとうの反省をして問題に対処してください。のらりくらり、そう思いません、総合的に言ってこうです。そういうようなほんとうにふまじめな答弁では困ります。憲法違反の問題についてどういう責任を感じておられるか、ちょっと伺っておきたい。
  130. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにかく崩壊を食いとめるということも、非常にマイナスになるであろうというものを、それを食いとめるということも、これは社会保障のためにやることでございまして、これは私は、今度とった措置というものは、さような意味におきまして憲法違反といったようなことではない、かように考えております。
  131. 八木一男

    八木(一)委員 国民のほうの給付が下がるという問題について、これは改悪じゃないのですか。憲法の改善の規定と逆になるのじゃないですか。また、あなたが心配しておる赤字の問題について、国庫負担で解決ができる問題ではないのですか。どう思いますか。
  132. 坊秀男

    ○坊国務大臣 もちろんそれは頭の観念上の問題といたしましては、赤字を全部国庫負担によって解消するということはできないことではございません。しかしながら、全額国庫負担でやっていくということについては、相当考えなければならぬ問題もありますし、また、当面の財政の対策、予算の内容といったようなものから考えてみまして、社会保障は非常に大事なことではございますけれども、その他のことにつきましても、国としてはやっていかなければならないいろいろな問題がある。そういったような点から考えまして、これはやはり予算のあんばいの問題も考えなければならない。ただ、私といたしましては、社会保障の問題を所管いたしておりまする厚生大臣でございまするから、厚生大臣といたしましては、その職責上、この社会保障の問題というものは最重点の政策と考えていかなければならない問題だと理解いたします。
  133. 八木一男

    八木(一)委員 前段の問題は厚生大臣の立場を離れて言われました。いろいろなものが大事だというのは、いろいろな人がいろいろな要望をしますから、その人は大事だと言いますよ。憲法に規定してある社会保障を向上、改善しなければならないという問題は、たとえば株式を持っている人が、大きな預貯金のある人が、その利子について税金があまりかからないようにしてもらいたいというような問題とは違うのですよ。そういう問題で政府は財源を少なくしている。そういう問題は憲法には規定がないわけです。この問題は憲法には規定がある。九十九条によって一番憲法を順守しなければならないあなたが、憲法上に規定が明確にある問題と、ほかの、ただこうしてもらいたいという国民の、しかも持てる階層の要望をごったまぜにして、同じような考え方をすることは、国務大臣としては許されない。ことに、厚生大臣大蔵大臣が発言するようなことを前段に発言する、そういうことでは厚生大臣の資格はありませんよ。そんなへっぴり腰だから二百二十五億円しか取れない。それをカムフラージュして、それが大幅であると言う。制度審議会の答申から見れば、少なくとも八百億円くらい今度は出さなければならない。保険審議会の答申でも三百五十億円くらい出さなければならない。そういうことが一つも腹に入ってない。憲法論はさておいても、厚生大臣としてほんとう責任を全うできなかったということについて、あなたはその責任を痛感しませんか。それでも責任を果たしたと言えますか。責任ほんとうに果たしたと思うか、不十分であったと思うか、全くなまけておったと思うか、はっきり言ってください。
  134. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は決してなまけておったとは思っておりません。全力をあげたと思っております。私個人といたしましては、まだ非常に勉強を要する人間でございまして、予算の折衝等についても、厚生省の予算がこれで十分だとは思っておりません。しかし、客観的に見て、日本の財政状態、日本の今日の収入事情、予算の総合的な観点からいたしまして、八木さんさっき申しておりますが、おまえ、そんなことでは厚生大臣はつとまらぬ、こう言われるかもしれませんけれども、おそらく言われるでしょうけれども、総合的な観点に立ちまして、今度の予算というものは全体的に見てバランスのとれたものである。ただし、厚生大臣として、しからば厚生省の予算が十分であったかということを追及されますと、これで十分だという考えは私は持っておりません。しかし、これは全体の中の一部として考えてみますと、それほど均衡のとれないものであるということは考えておりません。
  135. 八木一男

    八木(一)委員 ほんとうにあきれ返った厚生大臣で、質問をするのも不愉快になる厚生大臣です。しかし、厚生大臣でありますから質問しなければなりません。あなたはほんとうに感受性もなければ、理解力もなければ、責任感もなければ、坊さん、ぼくは前は非常に尊敬しておりましたけれども厚生大臣の坊さんはほんとうに最低の厚生大臣だと思う。一生懸命やったけれどもできなかった、残念だというようなことばが一言もないわけだ。何でもかんでもかなりやった、何でもかんでも総合的にこれがいい。反省が一つもないじゃないですか。  保険局長に伺いますが、昭和三十年から三十二年において、健康保険の赤字の問題で政府は改悪案を提出して、国会で三年間審議をした。その一番末年の三十二年のときに、厚生省の資料では、赤字見込みがたしか一番最終は四十八億円、最初は七十億ぐらいから始ってだんだん減ってきました。あなた方が運動をして国会で強行採決が行なわれたときには黒字転換しておったわけでございますが、そのときには四十八億円だったと思います。最終にあなた方が強弁しておったこと——それは時間がありませんからいいです。そのときに国庫負担は幾ら出しました。私、数を知っております。
  136. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 三十億円です。
  137. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、前の昭和三十年の赤字の見込みが四十八億円と厚生大臣が言っていた。実際は黒字になっていて、赤字がない時代に三十億円という国庫負担を計上しているわけです。厚生大臣、ちょっとこっちを見て聞いてください。私、非常に憤慨して不愉快なことを申し上げたから、私の顔を見るのもいやかもしれないけれども厚生大臣である以上見なければならない責任があります。私もほんとうはいまはあなたの顔を見るのはいやです。厚生大臣をやめられたらにこにこします。いやだけれどもしようがない。いやな厚生大臣でも質問しなければならない。  それで、四十八億円のときに三十億円その当時の政府は出しているわけです。六割をこえているわけです。そうしたら、今度の赤字見込みに対して六割をこえた額といえば、少なくとも四百数十億円ということになろうと思う。そういうことも御研究になったことがあるのですか。厚生大臣、そういうことも御研究になったことがありますか、事実を伺いたいと思います。
  138. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま御指摘になりました三十二年のことにつきましては、私は今日までに研究はいたしたのでございますけれども、つい失念をいたしておりました。
  139. 八木一男

    八木(一)委員 保険局長、それを厚生大臣によく進講申し上げたのですか。
  140. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お話を申し上げております。
  141. 八木一男

    八木(一)委員 だけれども失念しておられるくらいで、非常に乏しかったと思うのです。厚生大臣がいま忘れていられたくらいですから、その問題を大蔵大臣交渉のときに持ち出されなかったのでしょう。  その当時赤字の六割を出した。政府が非常に指弾を受けた改悪法案でしたけれども、そういうことがございます。それでいくと、とにかく五百億円近くの国庫負担を今度は要求しなければならない。制度審議会の答申によると八百億円ぐらいは最低で要求しなければならない、そういうことですから、厚生大臣、そういうことをあなたは大蔵大臣との交渉において、閣議において主張をされなかった。そういうことを反省されて、しからば、そういう素材をひっさげて熱心に要求をされればこういう問題が通るという状態があるが、そういうことをされなかったので、これからされることができるわけですから、この国庫負担を後にふやすということができるから、このような、一部負担をふやすあるいは保険料を上げるということを、それだけとめられるという状態になる。あなた方はそれを活用されなかったのですから、その立場で考え直して、この一部負担をふやす点を全部やめる、保険料をふやす点を全部やめる、そういうことを積極的に考えられなければならないと思う。その点について厚生大臣の御決心を伺っておきたいと思います。
  142. 坊秀男

    ○坊国務大臣 将来の問題といたしましては、私はその過去何年かといったようなものも勉強してまいらなければならないと思いますけれども、今度の場合につきましては、臨時緊急対策でございますので、ただいま御審議を願っておるものでもって御決定を願いたい、かように私は考えております。
  143. 八木一男

    八木(一)委員 抜本対策はさらに聞きたいと思うのですが、この臨時期間というものが非常に大事なわけです。そういう問題を援用されなかったので、そういう問題についてこれはあなたが怠慢であった、非常に不十分であったということを十分に反省されて、即時これも閣議に持ち出されて、大蔵大臣交渉されて、総理大臣に相談をなさって、そういうことでもってふやさなければならない。そうなれば、今度の法案についても、いま直ちにこのままで、そういうことをしなくてもいいことになる。その間、国のほうのいろいろな融資でつないでおいて、そして一番近い機会にそういうことを国庫負担を入れたものにしてこの問題を処理するということについて考えられなければならない。それをやはり即時閣議に提起をしていただきたい。提起をした問題についてできるだけ早く私どもに御連絡、お知らせをいただきたい。厚生大臣の御見解を……。
  144. 坊秀男

    ○坊国務大臣 近い将来に行なわれようとしております。また、行なおうと決意をいたしておりまする抜本対策につきましては、私は、各般のそういったようなデータを集めて、これを資料として、そして抜本対策をやりたい、かように考えております。
  145. 八木一男

    八木(一)委員 今度の臨時特例法案はいろいろの与党の方の御質問がありましたが、一年に限るべしという御意見があったけれども厚生大臣はそういう御意見じゃないようですね。
  146. 坊秀男

    ○坊国務大臣 しばしば申し上げておりますとおり、抜本対策は四十三年度をめどとしてやってまいりたい。つまり一年先でございます。この抜本対策までのつなぎの緊急対策でございます。そういうわけで、四十三年度までの問題でございますけれども八木さん十分御理解を願えると思いますけれども、抜本対策というものは、四十三年度単年度でもって完了できるような簡単なものではなかろうと私は思います。さような意味におきまして、私は、この抜本対策がその緒につくと申しますか、それが四十三年度でございますので、要するに抜本対策ができるまでのつなぎのものというふうに理解をしていただきたいと思います。
  147. 八木一男

    八木(一)委員 この問題については、他の委員から御質問があると思いますから深く申しませんけれども厚生大臣は非常に不当なことを言っておられます。とにかく、この臨時特例法というものがもし通ったならば、一年よりより長くこれがまだ適用する期間があるような含みで御答弁になっておられると思います。それはいけないことだと思いますが、そういうお考えですか。
  148. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにかく、今度の臨時緊急対策というものは臨時緊急のものでございまして、抜本対策ができ上がるまでということでございます。
  149. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、いま言った国庫負担の問題も抜本対策のとき考えるというけれども、あなたの非常な怠慢からそういう国庫負担の問題が主張できなかったのならば、それは抜本対策のときまで待つ必要はない。また待ってはいけない。いま即時に変えるのが至当であるけれども、あなたのベースでも、これが通った場合に、少なくとも臨時国会にそういう問題を出して、そして国庫負担を上げるということをされなければならない、あなたの間違った立場でも、間違いを少しでも改めるためにも。そういうことのお気持ちはありますか。
  150. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまの臨時緊急対策につきましては、そういう考えは持っておりません。
  151. 八木一男

    八木(一)委員 そういう考え方を持ちませんと言うだけで、あなたは、この法案がいい、これでもうよくても悪くても貫こうと決心をしておられるので、そういう紋切り型の答弁になるのですが、いま言ったように、あなたが非常に不十分な交渉をされて国庫負担が少なかったということについては、あなたは認めざるを得ないでしょう。そうしたら、そういう努力をおくればせでもやらなければならない。そのおくればせのことのおくれ方を少なくするためには、最善の機会をつかまなければいけない。一番いいのは、今度これを成立しないようにあなたが一生懸命に働きかけられる。その次には、臨時国会国庫負担をたとえば八百億円にするように、またそれを定率にするように、そういう法律を出すことにならなければならない。いまあなたは、前のことについて不十分だったことを明らかにせられたわけです。いま、これからすぐそれに対処をせられなければならない。その前に用意された答弁で、特例法はこのままだ、抜本対策はいつだかわからないけれどもそのままだ、そういうようなことでは委員会の論議の意味が全然ないわけです。あなたがそういう不十分なことをやられて、国庫負担を増加する機会を失なわれた。それを至急に取り返さなければならないという立場にいまあるわけです。今度もたとえば即時に働きかけて、大蔵大臣にも了解を得て、総理大臣もそういう気持ちになる、与党方々も、国庫負担をふやす、ほかの一部負担をやめる、保険料の値上げをやめる、そういう法案になるような状態をあなたがつくるのが責任でありますけれども、その次の臨時国会にでも出すというような考え方がなければいけないと思う。それについて、そのような気持ちもお持ちにならないで、もうとにかく間違いは十に一つでも直そうというお気持ちもない厚生大臣なのか。そこのところをちょっとお伺いしたい。
  152. 坊秀男

    ○坊国務大臣 三十一年に三十億円という国庫負担をしておるじゃないか、この四十二年度と違って、そんな赤字といったようなものではないおりに三十億円の国庫負担をしておるのじゃないか、そこで四十二年度においては、それからいけばもっと、二百二十五億円などというものではない、こういうお話でございますけれども、私は、その尺度というものを、ただファクターをそれだけにとってきめていかれるものではないと思います。そのときの諸般の情勢というようなものが、これだけのファクターでもってきめられるものではない。いろいろな経済の流動もありましょうし、そのときの日本の国における諸般の事情というもの、これも考慮いたしましてきめてまいらなければならない。ただ、三十一年に三十億円入れたじゃないか、そのときには赤字がなかったじゃないかということだけでもって、四十二年度の予算というものをそれの倍数でいかなければならぬということは、これは私、十分そろばんを持って考えてみたことではございませんけれども、それだけでもって私はきめつけていくという問題ではないのではなかろうかと思います。
  153. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど厚生大臣に申し上げたのは、憲法の精神からすると、不断に向上、改善をしなければならない。改悪をやるべきでない。向上、改善をする場合には、国庫負担でやるのがその筋であることはおわかりだと思う。ですからその線でいけば、もっともっと多くてもいいわけです。ただ、大蔵大臣という難物がいるから、あなたがやりにくいだろうと思って、そういう例があるということで最低の条件として申し上げているわけです。そのときに、四十八億円のときに三十億円やった例があるではないか。社会保障は不断に増進、向上しなければならない。しかも社会保障の問題の中で、この政管の健康保険を中心として、金をたくさん国庫負担で入れなければならない状況にある。そのころに、それほどの条件のないところに、これだけの比率で出した以上、今度はもっと多くの比率で出してもいいじゃないかということは言えると思う。少なくともその同じ比率で出すというようなことは最低の最低です。ところが、それを申し上げても、あなたは条件が違うかもしれないと言われる。あなたは社会保障を後退させるつもりで厚生大臣になったのですか。これだけ、あなたが社会保障を前進させるため、大蔵大臣交渉する素材を私なりに御説明申し上げて言っているのに、その一番の最低素材も大蔵省側の立場に立って答弁をされる。社会保障を後退させる任務であなたは厚生大臣になられたのですか。大蔵政務次官に何年もいたから大蔵省に因縁がついたのですか。それとも、大蔵省の勉強ばかりやって、それだけ頭に一ぱい入って厚生省の勉強は一つもできないのですか。あなたのいままでの答弁を聞きますと、大蔵省の答弁と同じような答弁をしておる。ただでさえ大蔵省が社会保障について理解が少ない、厚生行政について理解が少ないときに、大臣がこんな大蔵省並みの答弁をするようでは、日本の社会保障はとまってしまいますよ。後退しておるのです。ほんとうに反省してもらわなければ困ると思うのです。私は何も仲のいい坊さんに、こんな最低の厚生大臣、こんな無責任な、こんなにぼうっとした厚生大臣はないと、そんなことは言いたくないのです。言いたくないけれども、言わないつもりで来ても、あなたがほんとうに大蔵省のような立場でごまかしの無責任答弁をされるから、そういうように言わざるを得ないわけです。ほかの国務大臣自分のところの省のことで一生懸命だ。あなたがほんとうに一生懸命にやってもブレーキがかかる。あなた自体が大蔵省のような考えでやったら社会保障は後退しますよ。国務大臣はさっきの点で辞職しなければなりませんけれども国会議員も辞職しなければならない。これは別として、その点だけでも厚生大臣はいまからやめてください。いますぐ改心をするというなら別だけれどもほんとう国民が迷惑する。厚生省国民の生存権を守る省ですよ。その省が生存権をだんだん狭めていくつもりでそういう行動をやられている。もう少し積極的に、もう少しまじめに、もう少し真剣に、もう少し勇気を出して答えたらどうですか。大体、大蔵大臣交渉するときに、八百億円のいまの社会保障制度審議会の例を出して、憲法のことから言い出して、これが通らなかったら厚生行政はできないと、大蔵大臣となぐりあいをするような覚悟でなぜ交渉ができない。閣議で佐藤君が二百二十五億円でしかたがないと言ったら、それでは私は責任を持てませんと、なぜ辞表をたたきつけるような元気でやらないのか。あなたは長年の政治家で、一年や二年厚生大臣になったことが政治家の任務じゃないでしょう。そこで、たたきつけて、そのような社会保障に対する大蔵省の無理解、総理大臣の憲法の条章に対する無理解、そういうことを直してこそほんとう厚生大臣になった資格があるのです。期間は短かくてもりっぱな国務大臣としての資格を果たすことになる。そういうことを一回でも考えたことがあるのですか。もう少しほんとうに職務について責任を持って考えて、まじめな答弁をしてください。積極的な勇気のある答弁をしてください。ただいいかげんにごまかして、質問が終わって期間が過ぎれば悪法でも通ってしまう、そういうような考え方は困りますよ。もっとまじめに、真剣に反省した立場で決意を述べてください。
  154. 坊秀男

    ○坊国務大臣 たいへんおしかりを受けて恐縮でございますが、私は厚生大臣として今日まで微力は十分心得ておりますが、全力をあげて大蔵省との折衝もやってまいっておりますし、今後もまたそういったつもりでやっていくつもりであります。
  155. 八木一男

    八木(一)委員 今度は、一部負担の問題で薬代の負担の問題に、時間がちょっと迫りましたから入ってまいりたいと思います。  いまの社会保障の中で、いろいろな赤字の問題で、国庫負担と保険料と、それから一部負担の増大という問題が計画をされております。社会保障の考え方でいけば、一番悪いのはそのような一部負担の増大ということになると私どもは考えております。この点について厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  156. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の臨時緊急対策におきましては、保険の関係する保険者、被保険者、国、各関係の方々に、各部面の方々に、この保険が崩壊していくということを食いとめていただきたい、こういうような考えに出発したのでございますが、そこで一部負担ということもこの構想の中に入ってまいったわけでございます。一部負担と申しますと、これは従来は、保険財政に赤字が生じた場合に、収入の面でもってこれを処理してまいることができたのでございますけれども、今度は収入の面だけでは追っつかない。そこで、支出の面でも考えてもらいまして、ここでバランスをとっていかなければならないということで一部負担もお願いする。なお、その一部負担をしていただくのは、実際に給付を受ける方、給付を受けない方というのが被保険者の中にありますが、実際に給付を受けるという方にもこれはひとつ負担をしていただきたい、こういったような考え方から一部負担というものを取り入れた次第でございます。
  157. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと私ほかの話をしておりましたから、まん中の辺で聞き取れないところがありましたので、間違っておりましたら、その点は御了解いただきたいと思います。  一部負担という問題は、社会保障、医療保障、この中で具体的な制度として実行される医療保険、そういうものを否定する精神につながるわけですね。そう私どもは思うのですが、厚生大臣どう思いますか。社会保障、医療保障、医療保険でもいい、そういう問題を否定する思想に通ずると思うのです。一部負担をふやす、あるいはそれを新設するというのは。そのようにはお考えになりませんか。
  158. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は、一部負担というものが非常に大きな幅であるということでございますれば、八木さんの言われるように、否定といったようなところまで考えなければならないと思います。しかしながら、それがやはり質と量——それほど大きくない程度の低い額であるということでありますならば、これは量の問題となります。私は、こういったような保険が危殆に瀕しておるときにそういったような措置をとるということが、これは社会保険を否定するというところまでは考えるべきものではない、かように考えております。
  159. 八木一男

    八木(一)委員 否定するところまでは考えるべきでないと言われたら、それは非常に私不満な答弁だと思いますが、少なくとも社会保障、医療保障、医療保険の精神と逆行する考え方だということはお認めになりますか。
  160. 坊秀男

    ○坊国務大臣 繰り返すようでございますけれども、非常に大きな額、それを一部負担に帰せしめるということだと、これは社会保険につきまして私は否定というところまでいくだろうと思います。しかし、今回とりました一部負担、この程度のものでありますならば、これは否定とか否定しないとかいうような問題ではないと思います。
  161. 八木一男

    八木(一)委員 それでは好ましくないとお考えになりますか。
  162. 坊秀男

    ○坊国務大臣 一がいに私はこれを申すわけにもまいらないと思います。たとえば、被保険者の中で給付を受ける方、給付を受けない方、この間の権衡をとるといったようなことから考えますと、これは私は必ずしも好ましくないことであるというふうには割り切れないと考えております。
  163. 八木一男

    八木(一)委員 ほんとうにはっきりしないことですけれども、社会保障、社会保険、医療保険でもいいです。医療保険でも、またその他の社会保険制度でも、そういう必要が起こらなかったら給付がない、必要が起こったら給付がある、そういうことが社会保険のシステムです。初めからそういうものなのです。たとえば、これは所得保障のほうの関係の社会保険の関係でも、老齢にならなければ、退職しなければ、あるいはまたなくなって遺族という立場にならなければ、あるいは失業ということをしなければもらえない、そういうものなのです。病気をしたときのために、あるいは失業をしたときのために、あるいは老齢になった、あるいは退職をしたときのために、そういうために備えるものであって、元来がそういう状態にならなかった人にはそういう給付がない。そういう状態になった人の健康や生活が保たれるためにそういう給付がある。元来がそういうものなのです。ですから、そういう本来の性質を曲げるということは、これは逆行であり、好ましくないと思います。それは厚生大臣、お認めになれませんか。それはおわかりになると思うのですが、どうでしょう。
  164. 坊秀男

    ○坊国務大臣 純然たる保険という理論からいきますと、まさに八木委員の言われたように、保険事故の起こった人間にみんな保険によって、給付していくということ、こういうことだと私は思います。いまやっております医療保険でございますが、これは国民皆保険というようなことで全部の人が保険に入る。しかも、それが政府が管掌しておって、保険のシステムでもってやっておる。いろいろな純然たる保険の制度に対しまして、いろいろな純然たる自由なる保険の制度でない。こういったようなシステムをとっておりまするから、私は、いまおっしゃったような、これは全然保険なんだからみんな事故が起こったものに給付していくのだということに若干の修正が加えられるということもあるべきものではなかろうかと思います。
  165. 八木一男

    八木(一)委員 どうもかみ合わないのですが、社会保険——保険ということで言わなかったですがね。民間の保険は、そういう事故があるとき、契約でそういうことになる。社会保険はそういうシステムを社会保障の実行方法として取り入れておやりになっている。社会保障になれば、必要な人に必要な給付がいくというのが社会保障の理念だ。必要な人に必要な給付が、無条件で必要な期間だけ完全にいくというのが、社会保障の健全な理念でなければならない。それから保険のほうは、契約に従って、そういう事故が起こったときに、そういうものが給付される。とにかく医療保険であっても、所得保障であっても、どっちについても、そういう状態に完全な給付がいくという方向であって、その給付あるいはそういうものが減ってくる、自己負担というものがふえてくるという方向にあるべきものではないと思う。特に保険でもそうであり、保障でもそうである。社会保険ということで社会保障の方向で国庫負担が入っていくということになれば、たとえば病気にならない人が初めから保険料が高くて困るということについては国庫負担でカバーするということの要素もあるでしょう。しかし、どっちの考え方にしても、給付が完全になっていく、病気のときにお金の心配なしに病気が完全になおしてもらえる、そういう方向であるべき問題だと思う。そういうことについて今度のは逆になってきているわけです。あなたは、ごくわずかな金額であればそうじゃないと言うけれども、これは精神の問題で、金額の問題じゃありません。ごくわずかということも、あなたが考えてごくわずかと思われても、病気になられた家庭の経済状態というものは非常に貧困になる。あらゆる点で困るわけです。あなたが思っておられるごくわずかということが非常に影響するわけです。非常に大きな悪影響を及ぼすわけです。そういうことをなぜしようとするのか。そういうことはいいことだとお思いになりますか。
  166. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は一部負担についてごくわずかだと申し上げましたのは、とにかく初診料の一部負担にしましても、入院時の一部負担にいたしましても、御案内のとおりこれは十年前にきめられたものだ、こういう金額でございます。その後十年間には、ずいぶん日本の経済社会というものが流動、発展をしてまいっておる。いろいろな給与とかあるいは物価とかいったようなもの、あるいは医療費といったようなもの、これが流動してきておる。そしてそういうような十年前にすでにあったといったようなものについて、今日絶対的にわずかだとか多いとかいうことは、たとえ一銭のお金でも、これはたいへん大金の場合もございます。また二万円のお金でも、これはそう大金でないといったような場合もございましょう。そういったようなことでございますので、十年前にそういったような負担があった。そこに、今日、四十二年度におきまして政管健保が危殆に瀕しておる。そのときにひとつ患者さんにも、十年前にこれがあったのだから、これをやっていただきたい、こういうことで今度の一部負担及び入院時の負担というものをきめたわけでございますけれども、それならそれだけでいきますと、これも八木さん十分御案内のとおりでございますが、これが三倍にも四倍にもしなければいけないというようなことで、そこで外来投薬時の一部負担というものを、その代替と申しますか、そのためにこういうものもきめてまいった、こういうような次第でございます。
  167. 八木一男

    八木(一)委員 医療保険の精神としてそういうものをやるのがいい方向だと思ってやろうとするのですか、やむを得ずやろうとするのですか、どっちなんですか。
  168. 坊秀男

    ○坊国務大臣 しばしば申し上げておりますとおり赤字ができた。この赤字を切り抜けなければならないという臨時緊急対策としてきめたわけでございます。
  169. 八木一男

    八木(一)委員 それは緊時緊急対策としてきめたと言われるけれども、一部負担の増大がいいと思って、積極的にそういうことをやろうと思ってやられたのか。それとも、しかたがなしに赤字に対処するためにやろうとされたのか、どっちなんですか。
  170. 坊秀男

    ○坊国務大臣 逆に考えまして、政管健保が危殆に瀕しておる、これが崩壊するというようなことを食いとめるためには、私は、この方法でもってやることが適当である、こういうふうに考えたわけであります。
  171. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、そういう一部負担をふやすことが、いいと思ってやっておられるか、悪いけれども赤字のためにしかたがなしにやったのか、それを聞いているのですが、その点についてひとつはっきりおっしゃっていただきたい。
  172. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ものごとのいいとか悪いとかいうことでございますが、一がいにいいとか悪いとかいうことは——諸般の環境や情勢やその時というようなことできめていかなければならない問題でございますので、これがいいとか悪いとか——現時点においてこの対策として考えますときには、これは悪い措置ではない、適当なことである、かように考えた次第であります。
  173. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、医療保険、医療保障というものは国民の健康を守るためにつくられたと思うのです。健康を守るためにつくられたのに、一部負担ということがふえて、そのために早く診断を受けることが減ってくるということで、病気が重くなるということ、あるいはまた完全になおるまで治療をしなければならないのに、そういう薬代の負担なんか非常に痛いので、ある程度なおったと思って診療を患者が中断してしまって、また病気が重くなって再発をする、命にかかわる、そういう問題がいいことだと思われるのですか。
  174. 坊秀男

    ○坊国務大臣 病気は、やはり早期診断を受けて、すみやかになおすということが一番いいことであるので、手おくれになるということは、これはよろしくないことだと思います。
  175. 八木一男

    八木(一)委員 よくないことですね。よくないことだったら、それが一部負担がふえて金がふえるから、生活の状態で早く診断を受けられず病気が重くなる、あるいは完全に治療を受けられなくてもっと悪くなるということは悪いことだということを認められておりますね。そうすると、あなたはのれんに腕押しで、ほんとう質問しにくい人ですが、とにかく初診時の一部負担がふえれば、そういう経済的に困った人が、そういうことがあって、それじゃ金の点も心配があるから少しあと回しにしようということになって、病気が重くなってから来るということもあれば、また途中で診断をやめて病気が重くなって、あるいは命にかかわることもある。そういうことは悪いことだと認められている。そうなれば、薬代の一部負担や、あるいは初診料の一部負担の増や入院時の一部負担の増ということは、医療保障のほんとうに健康を守る点では悪いことだということは、いまは認められているわけですね。それを、今度そういうことになることを入れられたということはよくないことだと思うのですが、よくないことだとは思われませんか。
  176. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は、病気になれば早期診断ということはしなければならぬことであり、非常にいいことである、それに逆行することはよいことではない、こういうことを申し上げたわけです。しかし、その前から繰り返し申し上げておりますとおり、今度の一部負担の増というもの、これは量の問題でございまして、今度きめました程度のものでは、私はそれほど早期診断を抑制するというものではない、かように考えておるのでございます。
  177. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は非常に裕福に運よく暮らしておられたから、またあまり病気にもなられないからそういうことをおっしゃるのでしょうけれども、世の中はそうではないのです。私の貧乏した時代の話を申し上げたいけれども、時間がないから申し上げませんけれどもほんとうに十円、二十円の金に困って診断を受けられないことはあるんですよ。そういう人に限って、長年苦労しているから非常に重い病気にかかるのです。早くしなければ事命に関するのですよ。  それであなた、この程度のとおっしゃる程度であれば、赤字のほうに対処する効果も少ないでしょう。あなた方の一人合点で、このように受診率が減らないとか、それから早期診断に坊げがないとかというような独断的なことで、なぜそういうことをやられるのですか。もう少し医療保障というものを大事に考えたらどうですか。紋切り型ではなしに、もっと考える気持ちを持っていただきたいと思います。それについてひとつ……。
  178. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私はこの程度でもってと申しましたが、一人一人の患者なり被保険者にとっては、社会的に見ましてそれほど大きな金額ではない。この量では早期診断を抑制するというものではないと考えますが、しかし、それが何しろ数が相当あるものでございますから、赤字解消に寄与する数字は、先ほど局長から申し上げましたとおり、百七十億円という数字になるわけでございます。
  179. 八木一男

    八木(一)委員 非常にあきれ返ってものが言えませんので、もう少し具体的な問題に入ろうと思います。  健康保険法法律案の第二条の一項二号、「一剤一日分(厚生大臣の定める薬剤にあっては、一単位分とする。以下この号において同じ。)の額が十五円をこえる薬剤につき一剤一日分ごとに十五円」ということになっておりますが、この十五円という金額をきめるときに、その次に第二項で、「前項第二号の薬剤の単位は、健康保険法第四十三条ノ九第二項の規定による調剤料の算定の基礎となる薬剤の単位とし、同号の薬剤の額の算定は、同項の規定による薬剤料の算定の例による。」ということになっております。非常に技術的にむずかしい問題でございますが、甲表と乙表がございますが、甲表のほうでは、三十円以下のものを平均薬価十二円、六十円以下のものを平均薬価四十三円。乙表では、十五円以下のものを七円、三十円以下のものを二十一円、四十五円以下のものを三十六円、六十円以下のものを五十二円という平均薬価になっておりますが、それで間違いありませんか。
  180. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 そのとおりでございます。
  181. 八木一男

    八木(一)委員 そうなりますと、実は甲表では十六円から三十円までの薬は、結局三十円以下ということで十二円の平均単価になりますね。そうすると、今度の薬剤の一部負担という点の十五円というものの範疇には入らないと思いますが、どうですか。
  182. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 そのとおりでございます。
  183. 八木一男

    八木(一)委員 それが乙表になるとどういうことになりますか。
  184. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 乙表は、三十円以下が平均薬価二十一円ということになっておりますので、これは十五円以上の薬ということで、徴収の対象になります。
  185. 八木一男

    八木(一)委員 同じ薬剤で、甲表のほうではお金が要らない、乙表のほうではお金が要るということになるが、非常に不合理だと思いますが、この点について厚生大臣どうですか。
  186. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御承知のとおり、この点については不合理だと思います。
  187. 八木一男

    八木(一)委員 不合理だと思ってそのままにしておくのですか。
  188. 坊秀男

    ○坊国務大臣 現在この方針をとっておるのは、甲表、乙表というものがございまして、それで、そういった上にできた根っ子に甲表、乙表というものがありますので、こういうふうになったのでございますけれども、この甲表、乙表というような根っ子の制度につきましては、これはできるだけすみやかにこれを改定してまいらなければならない、かように考えております。
  189. 八木一男

    八木(一)委員 薬代の一部負担というようなとんでもない制度をきめようとしておられるのですが、ところでこういう不合理のあることを考えたら、その点だけでも思いとどまらなければならないと思いますが、それについてどうでしょう。
  190. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ともかく今日甲表、乙表というものでもってやっておる、徴収いたしておるというようなことでございますので、この根っこをできるだけすみやかに私は改定していくべきだと思います。
  191. 八木一男

    八木(一)委員 患者が医者にかかるときに、こんな甲表病院、乙表病院なんてむずかしいことはわかりませんよ。それで非常に痛い薬代を取られるときに、片方の病院に行ったら取られない、片方の診療所に行ったら取られる、そんなことも処理できないでこういう法律をつくったのですか。まことに怠慢じゃないですか。そんな配意もしないで大急ぎでこういうものを計画したのですか。
  192. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 確かに八木先生御指摘のように、やはり薬をいまの十五円という刻みにいたしますとそのような差が出てまいります。しかし、これはこの前もちょっと御説明申し上げましたけれども、いまの甲表、乙表という二本立てがある限りにおいては避けられない矛盾でございまして、すぐ直ちにお気づきのように、たとえば国民健康保険は三割負担でございます。それから家族の場合には五割負担でございます。その場合に甲表病院と乙表病院においては明らかに窓口で納める金額が違うわけでございます。もともと被保険者本人についてはいままでなかったのだから、そういうことを言うのは、いままで負担があったものと比べるとおかしいじゃないかということを先生おっしゃられるでしょうけれども、しかしこういう一部負担という制度が新しくできると考える場合には、現行の点数表の矛盾を解決しない限りこれはやむを得ないものであるというふうに私どもは考えております。
  193. 八木一男

    八木(一)委員 そういう矛盾の拡大ですが、いまお話にあったように、こういうような改定案をつくるときに、なぜ甲表と乙表の問題を解決しようとしなかったのですか。いままでそういう問題に関係のなかった被保険者にそういう実際上の不利を与えるようなことについて、そういう方法じゃないやり方で赤字対策をなぜ考えられなかったか。
  194. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 実は薬の負担を考えましたのは、前々から御説明申し上げておりますように、初診時の負担を考えるほうがいいか、あるいは再診時の負担を考えるほうがいいかいろいろあると思います。ただ一般的に、被保険者本人がお医者さんのところに行った場合に、注射も受けます。処置も受けます。しかし大部分はやはり薬をもらって帰る。つまり被保険者の負担になる場合に、被保険者である患者の方が最も納得されやすいような負担ということになりますと、薬以外にないわけでございます。したがいまして薬を取り上げましたわけでございます。ただ、どういう負担のしかたをしていただくかということを考えた場合に、それは場合によっては、薬をもらったときに十円あるいは二十円あるいは場合によっては五円というような単一なきめ方もあると思います。しかし、私どもが考えましたのは、この被保険者本人からの窓口徴収という問題はたいへん医療機関に時間的な手間をおかけするわけでございますので、医療機関のほうの手間を簡単にするというようなことも考えなければならないということになりますと、大体、甲表病院につきましても、あるいは乙表診療所におきましても、点数表自体の仕組みが十五円単位の刻みでつくられておりますから、この十五円単位の刻みといいますものは、お医者さんが支払基金のほうに請求する請求書の中ですぐ簡単にわかる筋合いのものでございますので、この十五円というものを考えたのでございます。
  195. 八木一男

    八木(一)委員 これは甲表、乙表の矛盾を拡大する内容になっておるわけです。被保険者にとっては非常な迷惑です。そういうことについて配慮もしないでこういうような薬代の一部負担を計画した。これは非常に怠慢であって、非常に不適切だと思います。  時間がだんだん迫ってきましたが、その次に坐薬の問題では、乙表は一個一剤として、甲表は三個一単位として、甲表では一個十五円十銭の坐薬三個で十五円という負担の対象になるが、乙表では負担の対象にならないという事実があると思いますが、そういう事実があるかどうか。
  196. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 甲表、乙表の仕組みがそういうことになっておりますので、そのような結果になると思います。といいますのは、坐薬、かん腸薬におきましては、甲表におきましては三回分を一単位としております。乙表におきまして一回分を一単位としておりますので、そのようなあれが出てまいります。これは頓服薬等につきましても同じでございます。
  197. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、これは非常に不合理だとお認めになるだろうと思います。こういうような不合理なことを無理やりやろうとすることについて、厚生大臣はそれでもまだよい方法であるとお考えになりますか。非常に不適切だとお考えになるのが当然だと思いますが……。
  198. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この点については、先ほどから申し上げておりますとおり、私は不合理な点があることは認めます。しかし、現在甲表、乙表というものがございまして、その上に立って今度の一部負担というものをつくったのでございますから、この不合理と申しますか、これはやむを得ないことでございますけれども、甲表、乙表といったようなものはできるだけすみやかに改めていかなければならないものだ、かように考えております。
  199. 八木一男

    八木(一)委員 甲表、乙表の問題は長年の問題ですよ。こういう問題こそ保険局が解決しなければならない。そういう問題を解決することを完全になまけておいて薬代の一部負担というのは言語道断です。保険局の人たちは、ほかの点ではりっぱな人かもしれませんけれども責任を全然果たしていないだけではなしに、任務と反対のことをやる。そういう点について、厚生大臣保険局の仕事は、ぼくらもわかりにくいように、非常にわかりにくいのです。厚生大臣保険局にだまされて、甲表、乙表の問題を解決しないでこんなものを出してきた。いま厚生大臣が不合理だと答えなければならないこういう問題を一体どうしたか。そういう問題こそ先に解決しなければならないのに、それをあとにしてこういう計画は一体何だ。  いま出ましたけれども、このような十五円の負担という問題で被保険者は非常に困ります。これは入院者でなくて通院者の負担がふえるわけでございますが、この通院者も十五円負担の影響を受ける人は、おもに年をとった人、五十五歳くらいから六十五歳くらいの被保険者、かなり給料の高いところをやめて給料の安いところへかわったというふうな人、老人病といわれる糖尿病とか、心臓関係の疾患とか、動脈関係の疾患であるとか、あるいはガンであるとかいうようなことで長く通院しなければならない人です。そのたびごとに薬代十五円、それを四つも五つも受けなければならない病例が多いわけです。そういう人たちが長いこと薬剤の一部負担で苦しみ、そのために治療を中断をする。そのために心臓病がなおらない、動脈硬化がなおらない、あるいは糖尿病が悪化をするということで、どんどん命を詰めていくということになるわけです。非常にこの問題は、十五円とおっしゃいますけれども、薬剤を併用しなければならないときがあるので、十五円が三十円になる、六十円になる。六十円になれば月千八百円になる。しかも、だいぶ年をとってきて、収入が減ってきて、家計が非常に苦しいという状態の本人の場合に、この負担にたえ切れないで、病状が一時好転をしたときに、しろうと判断で、金も要ることだし、もうこのくらいで診断をやめておいてよかろうといってやめたあとで、心臓病が再発をし、動脈硬化が悪化し、糖尿病が悪化をして、もっと長らえられる命がここでつづめられるということになろうと思います。いま、糖尿病や心臓病や、それから高血圧の薬、いろいろ多分にあって、私もきょう用意してきましたけれども、時間が少し迫っておりまするから一つ一つ申し上げませんけれども、非常に多分な薬が、私の調べたところでは、この大部分が十五円の負担にあうことになります。非常に大きな影響をそういう人たちに与えると思うわけでございますが、厚生大臣はこういうことについてつぶさにお調べになって、そういう老人病、そういう老齢の被保険者、特に中小企業に転業をして、給料は下がって、そうして家計が非常にかさむ状態の時期に、こういう一部負担が非常にこたえるということについて、十二分にお考えになってこれを承認し推進をしておるのかどうか、厚生大臣のお答えをいただきたいと思います。
  200. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のように、今日の日本の人口構成が、老人が非常に比率においてふえてまいっております。したがいまして、あるいは脳卒中であるとか心臓病、いろいろそういったような老人の病気というものもふえてまいっておる、こういうことでございまするので、老人に対する対策ということは、これは私は慎重に考えていかなければならない重大問題である、かように考えております。  そこで、この老人の保健福祉等につきましてどういうふうに考えていきますか、社会保険の制度において考えていきますか、また、その他の福祉制度、これを非常に充実していくかといったような問題が、これはわれわれの目の先に逢着しておりまする重大問題であると私は考えます。そこで、老人のこの対策をかりに社会保険、医療保障という制度でとっていくとしますれば、これはひとつ抜本対策の上において考えてまいるべきものだ、かように考えております。
  201. 八木一男

    八木(一)委員 老人の問題を大事にされるということは非常にいいですが、老人の問題で一番大事な問題は老人の病気の問題なんです。いままでは、そういう薬の一部負担など取られずに、糖尿病や心臓病や、それから高血圧のときに通院をして、長い目でこの病気をなおすということでやってきたんです。それを逆に金は取られるようにしたならば、経済的に困っている人には大問題です。それに長い病気で、おまけに一剤では済まないで、いろいろ薬をたくさん使わなければならない場合が多い。この病気の中には、高血圧と心臓病と、それから糖尿が一緒にまざった病気が起こるのです。この間なくなった同僚の横路さんの場合もその三つの病気がありました。いま入院中の福永さんの場合もそういう病気が併発しておる。そういうふうに、老人になるといろいろな病気が併発をするわけなんです。そのおのおのが長い病気で、おのおのがたくさんの薬を併用しなければならぬということです。その大部分がこの十五円以上の負担をしなければならない薬剤を使わなければならない。そこで政府管掌の健康保険ですから中小企業の労働者です。しかも、その中で五十五歳から六十歳くらいになると一回定年みたいなかっこうでやめて、それから条件の悪いところで安い給料で働く。五十五歳から六十歳は、厚生省の統計でも、役所の統計でも、そういう収入が少ないという統計が出ておる。そういう人たちが、こういう長い期間の毎日の負担にたえられるか。たえられなければ、そういう人たちは、ある程度しろうと判断でちょっとよくなったときに、金も要ることだからということで、治療をやめられる。そうなれば、有名な方々がぽっくり死ぬように、しろうとにはわからないけれども、お医者さんから見たら、これは完全になおしておかなければならないという症状がたくさんあるのに、しろうと判断で金の負担が要るためにやめるということで、いわゆる人生に熟練してまだまだ働ける、そしてまた子供や孫に対して責任を持っている、そういう人々の命が十年、二十年続くのに、そこで中断されて死んでしまうということがこういうことで起こる。たった十五円とあなたは思っていられるかもしれませんが、そういうことでこういうことが起こる。非常に大きな国民の生存権に対する侵犯であります。国民の中で苦しい目をして働いておられる高年齢層の働く人たちに対する非常に思いやりのない制度であります。そういうことについて、厚生大臣ほんとうに思い直して、こういうことはやめなければならない、そういう気持ちになっていただかなければならないと思いますが、厚生大臣、そういう御質問をお受けになった立場で、ひとつ気持ちを新しくして、まじめにお考えになって御答弁を願いたいと思います。
  202. 坊秀男

    ○坊国務大臣 このものごとの考え方でございますね。私の考え方でございますが、このままでいきますと、先ほどからも申し上げておりますとおり、この制度がいま非常に危殆に瀕しておる、もしもこの制度が崩壊するというようなことに相なりますと、これはさらにさらに大きなふしあわせを招来する、そういったような立場に立ちますと、今度の一部負担ということによりまして百七十億円という寄与をしていただくということは、この制度が崩壊して招くふしあわせということを考えてみますと、私は、この行き方でもってひとつやらなければならない、かように考えております。
  203. 八木一男

    八木(一)委員 去年も赤字で一昨年も赤字だったが、崩壊はしてないのです。崩壊はさせない政府責任があってやられてきたのです。ことしもそういう方法がどうしてとれないのですか。しかも抜本対策というものをあなたが来年度に考えておられる。その間の一年間をどうしていままでどおりの方法でやっていけないのですか。どうしてその間の一年間、老人だけが負担なしに老人病を安心してなおせる方法を残しておけないのですか。制度はいままで赤字のままでもつぶれていないのです。鈴木さんのときでもつぶれていない。坊さんだって一生懸命やったら、いまこんな薬代の負担をやらなくても、制度をつぶさずにいけるはずだ。しかも抜本的改正が来年に迫っているじゃないか。一年間のためになぜこういうことをやらなければならないか。しかも、あなた方はこれは赤字対策だと言っているけれどもほんとうに制度の根幹に触れる問題です。抜本対策の内容に触れる問題ですよ。これはあらゆる審議会でそういうことが指摘されている。社会労働委員会のいままでの論議を見ても明らかであります。なぜこういう抜本対策に触れるような問題をいま臨時特例法に入れなければならないか。なぜ、いままで赤字があっても崩壊させないでやってきた政府の方針が、この一両年とれないのですか。なぜことしから——これが通ったとすれば、ことしからあとの一年か二年間、そういうような時点に、病気を持った人が、そういうお金の心配で診療を中断するような結果になって、命をつづめなければならないようなことにならなければならないのか。あなたは、しあわせな世の中を送ってこられて、医療費なんか問題じゃないと思っていられるかもしれない。しかし世の中の大ぜいの人たちは苦しんでいるのです。病気になったらまた、苦しんでいる生活がもっともっと苦しくなるのです。医療保険があるからというけれども、病気になったら、それだけの費用じゃありません。やはりおいしいものも食べさせなければなりません。その人のする仕事をほかの者がしなければならない。いろいろなことで時間もひまも金も要るわけです。そこにこれに追い打ちをかけてそういうものをやらなければならないという理由がどこにあるのですか。老人対策を一生懸命やると言うけれども、この一年間にそういう人たちの病気が診断を中断して重くなる、なおらぬ病気になる。死んでしまってからそういうことをやってもあとの祭りですよ。去年まではそういう人たちは、前の人がこういうことをやらなかったから、こういう改悪案は出さなかったから、金なしで診断が受けられた。あなたの時代にそういうイージーゴーイングなやり方をする、変なやり方をするから、これからの人はそういうことになる。なぜ鈴木君のときに、その前のときに、赤字でもこういうことをやらないで制度を崩壊させないでやってきたような方法がとれないのか。しかも永久ではない。抜本対策までの間なぜそれがとれないのか。しかも国庫負担を増大してこれを埋める方法がある。あなた方の予算の見積もりについては非常にあいまいなところがある。同僚の淡谷さんがいろいろ御質問になった。ベースアップがいま少ないけれども、去年よりはふえた。あなた方の見積もりのときには、それを算定の基礎に入れておられない。あなた方の算定の基礎には保険料収入がふえる要素が十分にある。そうなれば、あなたのベースでこのようなものを抹消してやる余地が十分にある。いろいろなことが考えられる。こういうものを出さないでも、抜本対策までの間置いておくことができる。そういう方法があるのに、そういうことを一つもしないで、ただ老人対策は一生懸命にやらなければならないと言う。そういう国民に対する冷たい態度ではいけないと思う。この薬代の一部負担をぜひやめるようにこれから努力をしなければならないと思いますが、いかがでございましょう。
  204. 坊秀男

    ○坊国務大臣 過去数年来赤字があったがやってきたじゃないか、四十二年度に至って赤字対策をやるのはどういうことだ、過去数年来のようにやっていったらどうだ、こういう御意見でございます。赤字とか借金とかいうものには、その根幹の制度なり基本をそれによってくつがえすというような性質のあることは、八木さん御承知のとおりだと思いますけれども、これにもおのずから限度がございまして、ある程度のものならば、これは赤字のまま、借金のままやっていくことができる。しかしながら、その限度を越えますと、これはなかなか困難である。そういう限界があろうと私は思うのです。さような意味におきまして、四十二年度における累積赤字が二千億にまでなってくるというようになった場合、これは過去に赤字のままで何とかしてやってきたじゃないかということでございますけれども、これは限度がございますので、何とかしてこれを健全なものにしていかなければならない、こういうような着想から今度の案を出したのでございます。  なお、抜本対策を近い将来にやるのだから、この赤字対策をいま急いでやらなくてもいいじゃないかという御意見でございますけれども、抜本対策を考えていくためにも、そういったような案を策定していくためにも、せめてこの赤字だけは解消をしておかなければならない。また、抜本対策と申しますといろいろな制度に触れてくる問題でございますので、赤字は赤字でそのままにしておいて、抜本対策の中に赤字も制度も何もかも一緒にしてこれをやっていくということは非常に困難である。そこで四十二年度におきましては、この臨時緊急対策をぜひともひとつ御決定を願いたい。こういうわけで今度の構想をつくったわけでございます。
  205. 八木一男

    八木(一)委員 この薬代の一部負担によって診療担当者の事務量がふえると思います。その事務量がふえるという問題について厚生省のほうで試算をされたようですから、それについてごく簡単に十秒ほどでお答え願いたい。
  206. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 患者一人当たりの事務量の増加は、病院では三十五秒、診療所では一分半ないし二分というふうに考えております。それから、窓口事務一人当たりの作業時間量は、病院の場合には二十五分……(八木(一)委員「それは四人でしょう」と呼ぶ)一人当たりの時間量が二十五分です。大体千人の場合は四つの窓口機関があるわけでありますから、一人当たり二十五分です。それから診療所の場合には四十分程度、こういうことでございます。
  207. 八木一男

    八木(一)委員 その試算表は時間をどういうふうに分けてつくられましたか。
  208. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 実際に調査に当たりました医療課長がおりますので、医療課長からお答え申し上げます。
  209. 浦田純一

    ○浦田説明員 診療所におきましては、まず算定業務として、A診療所では四十三秒、収入業務では七十三秒ということで、合計いたしまして百十六秒、それから……。
  210. 八木一男

    八木(一)委員 いいです。時間がないから私が聞きます。それは時間を八時間なり十時間に分けて同じように勘定したのでしょう。
  211. 浦田純一

    ○浦田説明員 そうではございませんで、一日ついておりまして患者さんの流れをずっと追っていったわけでございます。病院におきましては、やはり患者さんの総数を調査いたしまして、それの時間の流れというものをとらえましてやったわけでございます。
  212. 八木一男

    八木(一)委員 それで厚生大臣、病院においては四つの窓口で二十五分、診療所は四十分ですか、非常な時間がかかると思います。いま開業医のお医者さんの場合には全国平均従業員一人です。そうすると、平均値以下のところだと、従業員がいないというところがあるわけです。そういうところで開業のお医者さまのところに健康保険の診療者の方が来られるときは——働いておると思われますから、働いてから来るので、五時とか六時とかいうような時間に集中して診療に来られるわけです。その統計についてはまた後の機会に伺いますけれども、とにかく平均的に出しておられますが、集中的に五時、六時、七時というような時間に、つとめが終わってから来られるわけです。そういうところで事務をする人がない。あるいは一人ぐらいのところで、通常の人が晩めしを食べる時間に、開業のお医者さまは国民の健康を守るために必死の努力をしておられるわけです。そこでこの十五円という記載をすれば事務が非常に煩瑣になる。  ここで、実は私も拝見しましたけれども、これを各委員の方に見ていただきたいと思います。ここでごらんになるように、全部読みませんけれども、短い時間では読み切れないくらいの薬剤が書いてあります。たとえば四番目のところを見ていただきたいと思いますが、冠不全、高血圧症、脳出血という場合に非常にたくさんの薬剤が要るわけです。その薬剤が十五円以上であるかどうかということの認定は非常にむずかしいわけですから、ほんとうにこれは気も使えば、時間もかかります。しかも夕方に大ぜい殺到するときにかかる問題が出てくるわけです。それをやりますと、ほんとうに診療担当者の方や従事員の人は、一番気持ちを集中して診断をしなければならないときに、そういうような事務が加重されるわけです。この表にざっと見えるように、非常にむずかしいものを書かなければならないし、それが十五円以上であるかどうかということについて間違ったらたいへんであるし、そういうことをしなければならない。事務が非常な繁雑になるわけです。担当者が国民の健康を守ってくださるときに、その方々が時間的な余裕を持って、十二分の注意を持って診断をし、治療をしなければならないときに、このような事務的な量をふやすという問題については、医療の質の問題で、また、国民の健康や命を守ってくださる診療担当者の方々が、疲れが残らず明快な頭でほんとうに診断をしてくださるということには、非常なマイナスになるわけです。あなた方は赤字と金のことばかり言っておられますけれども、そういうような薬代の一部負担という問題で大ぜいの人が診療中断をして命があぶなくなる。また初診料の一部負担のために早期診断のチャンスを失う。そこで、そういう国民の健康を守ってくださる診療担当者の人たちの事務量がふえたり、早期診断が金の負担のためにできなくて病気が重くなる人もあれば、薬代の一部負担で診療が中断して重くなる人も出て、非常にまずい効果、非常に間違った影響を与えるわけです。非常にけしからぬ影響を与えるわけです。しかも、診療担当者の方々が非常に熱心に国民の健康と命を守ってくださるときに、このように事務量がふえては、後顧の憂いなしに、疲れが残らずに、変なところに神経を使わないで、ほんとうに診療、診断、療養に十二分の力を入れていただくために非常にマイナスなんです。質的に非常にマイナスの点がこの薬代の一部負担ということで起こるわけです。あなた方は金の問題だけで問題を考えているけれども国民の命と健康の問題ははるかに重大な問題であります。命と健康を守るためには、この医療給付というものは完全でなければならない。少なくとも憲法の条章に従って、後退は許されない。一時的な赤字対策のためにこういうことをやる。しかも、抜本対策で論ずべき問題を、そこで考えるべき問題を、この中に火事場どろぼうみたいに入れている。そうしてそういうような問題について間違った方向、間違った基礎をつくろうとしている。非常に国民の健康、生命を守るために反動的な意見、反動的な立場である。こういうことについて、皆さん方の金だけをおもにする、厚生省と大蔵省のメンツだけを大事にするというような態度でやってこられましたけれどもほんとう国民の医療を守るためにはこういう問題は絶対にいけないし、特に薬代の一部負担というものは、国民にとっても、診療担当者にとっても非常に迷惑であり、健康を守るために非常にマイナスであるということを深くここで認識をされて、こういう問題を推進することをおやめになる、こういう問題が実現をしないように、いまから反省をしてやらなければならないと思います。  厚生大臣紋切り型の答弁で、きまったことは何でもやるのだ、赤字である制度のために総合的に見てやるのだと言うが、この制度のほんとうの趣旨は、国民の健康と命を守ることです。それと逆行した改悪案に対していま国会の論議が一生懸命行なわれている。のれんに腕押しのような答弁で、時間が経過すればこれはあがるのだというような考え方でやっていられる気持ちは断じて改めて、ほんとう国民の命と健康を守るために責任のある厚生省の大臣としての立場を取り戻さなければならないと思います。そうして国民に対する責任を果たされなければならないと思います。  きょう私は体調が不十分だったので、あまりりっぱな質問でありませんでしたけれども、私以外の委員方々の御質問にも非常にりっぱな点がございました。そういう点を取り入れられて、自分として出したものを悪いと思えば、それをとめる努力をされる。総理大臣にも大蔵大臣にも報告をしてとめる努力をされる、そういうことをすることが厚生大臣任務であります。どんなに間違っても、出したものはほおかむりで通してもらいたい、与党の、人のよ過ぎるか、人の悪過ぎるか、そういう先生方にただおがみ倒して、何でも通してくださいというようなことであってはいけない。与党先生方に社会保障に対するりっぱな経験を持っておられる方々もおります。厚生大臣が、閣議できまったから何とかしてくださいというようなことについて、幾ぶん影響を受けておられる方々もおられる。そういう方々についてもそういうわがままな頼みをすることは間違いであります。悪ければこれはつぶれてもかまいません。悪ければ直してください。そういうことについて与党先生方にお願いをするのはあなた方の立場であります。野党のわれわれが一生懸命に国民の気持ちをくんで言っていた問題についてまともに理解をして、あやまちを改める、この法律撤回をする、審議未了にする、そうなっても悪いのだからしかたがない、そういうような気持ちでまともにこの論議を受けとめていただかなければならないと思う。そういう線でこの悪法を強行するような考え方、強行してもらいたいというような考え方を絶対に取りやめて、国民の健康と命を守るために、厚生大臣としての立場を取り戻していただくことを強く要求をいたしまして、ただいまの質問を一応中断をいたします。後日私はまたあらゆる点で十二分に質問をさせていただきたいと思います。
  213. 川野芳滿

    川野委員長 暫時休憩いたします。    午後二時七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕