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1967-07-05 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月五日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 橋本龍太郎君    理事 粟山 ひで君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       青木 正久君    天野 光晴君       大石 武一君    熊谷 義雄君       菅波  茂君    世耕 政隆君       田中 正巳君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       中山 マサ君    藤本 孝雄君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    山口 敏夫君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       浅井 美幸君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 七月五日  委員井村重雄君及び渡辺肇辞任につき、その  補欠として青木正久君及び熊谷義雄君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員青木正久君及び熊谷義雄辞任につき、そ  の補欠として井村重雄君及び渡辺肇君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案内閣提出第九八号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九九号)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  3. 山本政弘

    山本(政)委員 きょうは時間を十分にいただいたそうで、少しゆっくりと御質問を申し上げたいと思います。それで、せんだっての淡谷委員質問を少し内容を深めて、もう一度お伺いをいたしてみたいと思います。  三十八年に赤字見込みが五億円、しかし実際の赤字は百三十一億円だ、そしてその原因制限診療撤廃にある、こう言われております。そこで私は、五億円の赤字見込み基礎というものをどこに置かれて算定されたか、その内容というものをひとつ具体的にお示しを願いたい。
  4. 加藤威二

    加藤政府委員 三十八年度の収支の問題でございますが、保険収支を算定いたします場合に、まず収入をどういうぐあいに見るか、それに応じて支出をどう見るかということが、これは当然問題となるわけであります。  最初に収入の見方でございますが、収入で一番問題になりますのは平均標準報酬でございます。保険料基礎となりますところの平均標準報酬をどういうぐあいに見るかということが、まず第一に問題になるわけでございます。三十八年度の予算におきましては、過去三年の平均標準報酬伸び率より推計いたしまして、一人当たり平均標準報酬を二万二百六円というぐあいに算定いたしたわけでございます。それに、当時千分の六十三でございましたが、保険料率をかけます。それから収納率というものがございます。保険料の賦課徴収したものが全部取れるわけではございません。中小企業では保険料を納める義務は事業主にあるわけでございますが、中小企業が途中で倒産するとかそういう事態もございまして、一〇〇%保険料が取れないということで、収納率というのがもう一つの問題になるわけでございます。収納率昭和三十八年度に九四%というぐあいに見たわけでございます。それで一人当たり保険料額を一万五千二十九円というぐあいに積算いたしたわけでございます。  他方、支出の面でございますが、今度は支出をどう見るかということがその次に問題になるわけでございます。  支出は、一番大きな問題は医療保険でございますので、医療給付費をどういうぐあいに見るかということが一番問題になるわけでございます。これも、先般淡谷先生の御質問お答えいたしましたように、過去三年の医療費伸びを平均いたしまして、一人当たり医療費を一万二千四百四十二円というぐあいに推計いたしました。  この推計の基礎は、詳しく申し上げますと、非常に時間がかかりますが、簡単に申し上げますと、被保険者と被扶養者それぞれ別に、入院入院外、歯科、それにつきまして一日当たり金額がどういうぐあいに伸びるか、病気の一件当たり日数がどういうぐあいに伸びるか、それから被保険者並びに家族が一年間に何回お医者さんにかかるかという受診率伸び、この三つをそれぞれ三年間を平均いたしまして、そしてそれぞれにつきまして前年に対する伸び率を推計いたしたわけでございます。その結果につきまして、三十八年度の一人当たり医療給付費は一万二千四百四十二円という数字を出したわけでございます。  それからもう一つ給付といたしまして現金給付というものがございます。これは、傷病手当金とかあるいは出産手当金とか、いろいろの現金給付がございますが、それを合わせて推計いたしたわけでございます。これも過去三年の実績に基づきまして推計いたしました。そして現金給付費は、三十八年度予算におきましては一人当たり千八百一円という金額をはじいたわけでございます。  被保険者の数が千百五十三万人でございますので、それぞれ、先ほど申しました一人当たり保険料額、それから一人当たり医療給付費現金給付費というものを被保険者の数にかけまして、トータルをいたしたわけでございます。その結果、三十八年度当初見込みにおきましては、端数は切り捨てさせていただきますが、収入が千七百四十三億円、支出が千七百四十八億円ということで、五億円という赤字が出る、こういう積算をいたしたわけでございます。
  5. 山本政弘

    山本(政)委員 その結果、百三十一億円という赤字現実には出たわけですね。それをせんだっての答弁では、制限診療撤廃によるのだ、こういうことだったですね。確かめますが、そうですね。
  6. 加藤威二

    加藤政府委員 それも一つ原因であろうと思います。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 原因であるというのは、主たる原因であるのですか、それともそのほかに原因がありますか、それをちょっとお伺いしたい。
  8. 加藤威二

    加藤政府委員 なぜそういうぐあいに赤字が違ったかということでございますが、それについて若干御説明申し上げたいと思いますが、まず収入の面につきましては、先ほど申し上げました平均標準報酬の二万二百六円というのは、決算のときには二万三百三円で九十七円ほど違いますが、大体見込みどおりだったわけでございます。収納率につきましても九四%は九四・九%で、〇・九%ほど収納率は上がりましたけれども、大体見込みとそうたいして違わなかったということが言えるわけでございます。問題は、その赤字原因は、医療給付費が非常に増大したということが原因でございます。医療給付費の何が伸びたか。先ほど申し上げましたように、医療給付費は一日当たり金額と一件当たり日数受診率とございますが、どれが伸びたのかということが問題になるわけでございます。結論を申し上げますと、非常に見込みと実際が食い違いましたのは一日当たり金額でございます。一件当たり日数はほとんど誤差がございません。たとえば被保険者入院外で一件当たり日数の対前年度の伸びは〇・九六九と言いましたが、実際には〇・九八五で、〇・〇一六の差でほとんど違っておりません。それから受診率につきましても、対前年の伸び見込みが一・〇四二、決算が一・〇四六で、ほとんど違っておりません。ところが一日当たり金額に大きな食い違いが出たわけでございます。数字で申し上げますと、被保険者外来の一日当たり金額——保険者外来というものは医療費のほとんど五〇%を占めますので、一番大きなウエートでございますが、被保険者外来の一日当たり金額の対前年の伸び率予算のときには九%と見たわけでございます。ところが実際に出ましたのは二五・一%でございます。ここで一六・一%も差が出たわけでございます。  一体、それではその一日当たり金額がこのように違ったのは、どういうことが原因なのか。これは、お医者さんの実態調査もなかなかできませんし、非常に客観的にはっきりした原因がここにあるということは、なかなか申し上げにくいのでございますが、一つの判断の材料といたしましては、薬の使用量といいますか、使用金額がこの三十八年度に非常にふえております。具体的に申し上げますと、被保険者外来につきまして、三十七年度には一回一日分の外来の薬代の前年に対する伸び率が二七・八%でございますが、三十八年にはそれが五一%に伸びている、薬の使用が非常に三十八年にはふえている、これが予想できなかったわけでございます。非常にふえているということが一日当たり金額が非常に開いた一つ原因じゃないか。その薬が非常に使われましたのは、先生、先ほど御指摘がありましたように、三十七年度の十月に、抗生物質使用基準とかあるいは副じん皮質ホルモン使用基準の緩和とか改正がございまして、比較的自由に使えるようになった。そういうことの影響が予想外に出まして、このように薬が大幅に伸びた、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 たいへん丁寧な答弁ですが、そうしますと、簡単にお答えいただいてけっこうでございますが、その伸び率による誤差ですね、見込み違い金額と、それから制限診療撤廃による金額というのは、おわかりでございますか。
  10. 加藤威二

    加藤政府委員 医療給付費のその見込み違いによる金額が百十三億円でございます。ただ、そのうちで、ただいま申し上げました、抗生物質使用基準改正とか、あるいは副腎皮質ホルモン使用基準改正による部分がどれくらいあるかということは、ちょっと数字がなかなか出にくいので、お答えいたしかねるのでございます。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、せんだっての答弁では、主たる原因制限診療撤廃によるということでありましたけれども、きょうは医薬品増高ということですね。そういうことで話がちょっと違っておりますね。
  12. 加藤威二

    加藤政府委員 前に御説明が若干不十分であったかもしれませんけれども、抗生物質使用基準改正あるいは副腎皮質ホルモン使用基準改正という問題は、これはなかなか数字ははっきり計算できませんけれども、そう大きいものじゃないと思うのです。ただ、これを契機といたしまして、お医者さんの間に薬を相当自由に使ってもいいのだ。それまで医療保険ではいろいろな制限があったということでございますけれども、これを契機といたしまして、薬に対して保険でも相当自由に使えるという空気がお医者さんのほうに相当行き渡りまして、その結果、この薬だけじゃございませんで、一般的に薬の使用が非常にふえてきたというぐあいに見ておるわけでございます。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、三十九年度に七十五億円が実際は三百六十三億になっておりますね。これも医薬品増高ということが原因ですか。
  14. 加藤威二

    加藤政府委員 三十九年度につきましても、先生いまの御質問どおりに、やはり医薬品伸びは、三十八年度ほどではございませんけれども、相当伸びておるわけでございます。その薬の伸びがやはり三十八年度について相当あったということが一つと、それからもう一つは、四十年の一月に緊急是正の九・五%というのがあったわけでございます。これは予算のときに予想しなかったものでございます。こういう医療費の思わぬアップがあったということが一つ原因でございます。  それからもう一つは、三十八年度と違いますのは、受診率が三十九年度には予想実績が相当違ったわけでございます。これはなぜかと申しますと、三十九年度にインフルエンザが相当はやったわけでございます。三十八年度にはインフルエンザが非常に少なかった。これは戦後最低でございます。三十九年度にインフルエンザがはやった。それで受診率がふえたのが一つ原因であろうと思います。  それから、医療費というものはいろいろな要素がかみ合って動くものでございまして、これが絶対的なものだということはなかなか申し上げかねますけれども、考えますと、そういうようないろいろなものがかみ合って、三十九年度も食い違った、こういうぐあいに見ておるわけでございます。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 淡谷委員質問をなされたときに御答弁なすった方はどなたでしょうか。
  16. 加藤威二

    加藤政府委員 私でございます。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、せんだっての淡谷委員質問に対するあなたの答弁ときょうの私に対する答弁が、私は若干違っておるような感じがいたします。  制限診療撤廃ということに対してちょっと御質問いたしたいと思います。五億円から百三十一億円の違いというものを、あなたは制限診療撤廃によってこれだけの見込み違いができたのだ、こうおっしゃったのです。そうおっしゃいましたね。
  18. 加藤威二

    加藤政府委員 この前は……。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 この前そうおっしゃいましたね。それで、私がちょっと疑問に感ずるのは、せんだっての質問ときょうの質問に対して、あなたのお答えが違う。私は、せんだってのお答えに対してもたいへん疑問に思うところがあるのですけれども、きょうのお答えに対してもまだ納得いきません。つまり、いろいろな条件がかみ合ってこういう状況になったという、きわめてあいまいなお答えをしている。せんだっての制限診療撤廃に関しては、これは予測されたことですよ。保険局では三十七年の末に健保全面改正について検討中でありました。それは次の国会を目途とするものであった。つまり三十八年十二月から三十九年六月にかけてに出される予定であったと思うのです。それが三十八年の七月までの通常国会改正されるようになったのは、財政当局が国保との調整を問題としたことからだと思うのです。そういう意味で、すでに三十七年末には、三十八年度の政府予算査定に際して、財政当局健保療養給付期間制限撤廃資格喪失後の転帰までの給付など、従来は保険財政上の事由と財政当局の反対からその実現がはばまれておったのが、三十八年度予算財政当局の要請に基づいて行なわれておるはずなんです。ですから、五億円の見込みが百三十一億円になったという理由について、制限診療撤廃ということはすでに予測されたことだから、現実にはそれだけのものが必要だったということが当然あなた方の頭に浮ぶはずなんだ。しかもそれを、唐突に制限診療撤廃があったというような理由——これは知らぬ人はそういう理由で納得しますよ。あなた方はそういう非常にあいまいな言い方でもってのがれておるわけです。三十九年度の予算がこれだけの開きがある。三十八年度に五億円から百三十一億円に違ってきた。そして三十九年度に七十五億円から三百六十三億円に違ってきた。しかも三十九年度は三十八年度に比較して非常に大幅な金額の上昇が見込まれておるわけですが、現実には出てきているわけですよ。それを、要するにもろもろの条件でこうなりましたということは、厚生省当局答弁として私は納得いかないと思います。もう一度答弁を願いたいと思います。
  20. 加藤威二

    加藤政府委員 先生の御指摘は一々まことにごもっともでございまして、私のこの前の答弁が非常に舌足らずであったということでございます。おっしゃるとおりに、制限診療撤廃というのは三十七年にやられたわけでございますから、これは当然予測されてしかるべきでございます。私がこの前申し上げたかったのは、制限診療撤廃契機とした自由診療ムードということを言いたかったわけでございます。要するに、あの三十七年の制限診療撤廃契機といたしまして、お医者さんが非常に自由に伸び伸びと診療されるという空気が出てまいったわけでございます。これは現実でございます。その一つ原因制限診療撤廃であったということを申し上げたかったわけでございます。非常に舌足らずで申しわけなかったのでございますが、意味はそういうことでございます。そのために予測のできない薬剤費増高が出た、こういうことにわれわれは解釈しておるわけでございます。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 私は医者伸び伸びと診療することは望ましいことだと思う。しかし、あなたのおっしゃるように、制限診療撤廃によって医者伸び伸びと診療できるようになったというならば、それもまた予測されたることだと私は思うんです。当然予測されたことだと思う。それについてあなた方が、そういう予測を立てられないで予算を立てられたということに問題があると思うのですよ。その点について私はもう一度あなたのお答えをお願いしたい。
  22. 加藤威二

    加藤政府委員 その点につきましては、私どもは制限診療撤廃によって、そのように——自由診療ムードということばがいいかどうかわかりませんけれども、薬が大幅に使われるだろうという予測はしなかった、できなかったわけでございまして、それは結果的には、非常にけしからぬとおしかりを受けることは重々覚悟いたしますが、少なくとも当初におきまして、予算をつくりましたときにおきましては、それほど薬がこれを契機として伸びるということは予測できなかったわけでございます。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 当時の厚生省保険局長小山進次郎さんは、三十八年一月に健康保険について対談をやっておられるのです。そうして「転換期を迎えた健康保険」ということで、そのことについても触れられておる。現実には触れられておるにもかかわらず、予算上の措置が与えられなかった責任というものはどこにあるのです。あなた方にあるのじゃないですか。厚生省当局にあるのでしょう。予測されているのですよ。
  24. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私の前の局長の名前が出ましたので、保険局長として御答弁申し上げたいと思います。  当時の制限診療撤廃という表現でございますが、これはいろいろと当時のいきさつがございまして、御存じの方も多いと思いますけれども、古井厚生大臣のときに総辞退という問題が起こりまして、それで引き続き灘尾厚生大臣が御就任になりまして、当時の医療保険の混乱を収拾したいということで、医療懇談会という会談を約一月持ちまして、これには大臣みずから毎日御出席になりまして、保険問題を今後どのように収拾していくかということに努力をされたのであります。そのときに、医療担当者代表の方には、当時の医療界の長老の先生——学者の方でございますが、その方も直接出られまして、現在の医療保険につきまして、いろいろと治療方法あるいは薬の使用について制限が多過ぎる、保険制度につきまして全部の医療機関の方々が非常に協力しがたい理由もこれが大きくあるのだ、この点を考えていくためには、新しい治療方法なり新しい薬ができた場合には、直ちに採用できるような形態にすべきであるというふうな事項も、懇談会了解事項としてはっきりうたわれまして、保険というものについては明らかに制限があるという考え方を、その懇談会契機といたしまして、制限撤廃していこうというふうな話が当時としてはにわかに高まったわけでございます。その政治的なあるいは行政的な背景をもとにいたしまして、当時の保険局長といたしましては、やはり保険医療には、いままでの制限的なものはこの際やめていくほうが適当ではなかろうか、それが新しい医学、薬学の進歩に対応していく保険の歩むべき道であるというふうに考えられまして、それで制限診療撤廃していくというムードを打ち出したわけでございます。  ところが、そのムードに直接乗りまして、当時抗生物質使用基準あるいは副じん皮質ホルモン使用基準等につきましては改正をいたしておりませんでしたのを、抗生物質につきましても大幅に使用基準を変え、また副じん皮質ホルモン使用基準を制定いたしまして、それで制限診療撤廃ムードというものが一そうかき立てられた。ところが、これは抗生物質なりあるいは副じん皮質ホルモンだけのムードだけではないわけでありまして、一般的に保険の問題につきましては、医療機関支払い基準請求した場合に非常に点数削減が行なわれる、これがおかしいではないか、点数削減は行なうべきではないというふうな考え方が、全国にも大いにびまんしたのでございましょうか、それからあと、いろいろと各県の医師会においてお互いに相談をして、保険点数請求引き上げ運動と言ったら適当でないかもしれませんが、ある程度引き上げていこうというふうなムードが出てまいりまして、それで、ただいま医療保険部長が言いましたような医療費のはなはだしい増高を来たした、こういうことがいきさつでございます。  したがいまして、そういう個々のお医者さん、あるいは各県のお医者さんと言ってもいいかもしれませんが、そういうお医者さん方が、ひとつこの際、たとえば外来診療については、従来はその程度で請求はよかったのを、もう少しふやしていこうというふうな形になった場合には、これは支払い基金におきましてもなかなか査定はできません。また、そういう一つの機運に対しまして、これをあらかじめ予測するとかなんとかいうことは、現在出来高払い制度をとっておる限りにおいては、行政当局としては非常に把握しにくいということは御了解いただけるのじゃないか、こう思っておるわけであります。
  25. 山本政弘

    山本(政)委員 わかりました。現実の百三十一億円の赤字のうち、百十三億円は医薬品増高である、これはいま御説明になった。そうすると、単純に計算しますと、百三十一億円から百十三億円を引くと十八億円という金が残る。これは制限診療撤廃ということに理由が帰せられますか。
  26. 加藤威二

    加藤政府委員 先生のおっしゃいます制限診療撤廃という意味と、私が申し上げている意味と、あるいはちょっと違うのではないかと思います。私が申し上げておりますのは薬の問題であります。制度の問題は別でございます。
  27. 山本政弘

    山本(政)委員 私は制度の問題です。
  28. 加藤威二

    加藤政府委員 地域差撤廃とか、こういうのはあらかじめ見込んでおりますから、それは別問題でございます。
  29. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、三十七年度に見込みが二十五億円、現実が十六億円の赤字だ。私は、三十八年度の予算を算定するときには、少なくとも現実の十六億円の赤字というものを基礎にして考えるべきだと思うのですよ。そうでしょう。あなた方は予算をやられるときには、査定をされるときには、おそらく前年度の数字というものを基礎にしてやられると私は思う。しかもそこに、地域差撤廃といまあなたがおっしゃったようなことについて、あるいは医薬品増高ということについて、予想以上ではあったかもしれないけれども、いまの抗生物質とかあるいは副じん皮質ホルモンとかいう薬品の使用というものが考えられるならば、少なくとも三十八年度は、五億円というものよりかはるかに大きい数字が、見込み額としては常識的には算定されると私は思うんですよ。しかしそれが、三十七年度に十六億円の赤字が出ておるにもかかわらず、三十八年度には五億円という、はるかに三分の一を下回った数字というものを見込みとしてなぜあげられてきたのか、この辺が私はたいへん納得がいかない点です。
  30. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに、三十七年度との比較におきましては、先生おっしゃるとおりでございます。ただ私ども、非常に機械的なことになるかもしれませんけれども、医療費の動きというものはなかなか予断を許さないということで、過去三年の伸びといいますか、動きを平均して翌年度の医療費を計算する、こういう方式をとっておりますので、現に、三十七年度は十六億円の赤字でございますが、三十六年度は、若干ですが黒字を出しております。そういうようなことで、過去三年の平均をとりますと、必ずしも三十七年度の十六億円よりも大きい数字ということにはならないわけです。これは、そういう三年平均がおかしいじゃないかとおっしゃられれば、それは絶対正しいのかどうかということは、何人も、医療費見込みというものは、この前も申し上げましたように、出来高払い制度のもとにおきましては、非常に把握が困難でございます。したがいまして、私どもは過去三年の伸びということで計算をしておる。それで、盛り込める要素というものは、制度改正的なものはそれに盛り込んで、あとは過去三年の医療費伸び、こういう計算をしておるわけであります。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 関連。厚生大臣にお尋ねしておきますが、いまの質疑応答の中に聞かれたように、数字の違いだけじゃなくて、答弁の違いもやはり発見されたのであります。この数字の違いを生じた原因について答弁が非常に違ってきておる。しかも、ことしは七百四十五億円という大きな赤字見通しを根底にしておる。応急措置として国民に大きな負担を増すような法令改正が行われようとしておる。この基礎になる七百四十五億円という見込みが大きく違ってまいりますと、ただ見込み違いで済むだけじゃなくて、国民は仮想の根拠に立った不当なる負担の増を背負なければならぬのであります。これは私、厚生当局にお聞きしたいと思いますが、大臣その点で重要な関心を持って、大臣自身もこの質疑応答をしっかり受けとめていただきたい。  そこで、一つお聞きしますが、三十七年度は、いま山本委員から追及がありましたように、二十五億円の赤字見込みに対して十六億円と赤字が減っておる。三十八年度は、その減ったことに何か甘い予想があったのか、今度二十五億円の見込みを五億円に減らしておりますね。ところが、実際の赤字は百三十一億円という、全くもうこれは比較にも何にもならない大きな赤字を出してきておる。今度三十九年度は七十五億円に対して三百六十三億円。まだ赤字がどうもふえるというので、その次の四十年度には、三十九年度の七十五億円から六百五十九億円というばく大な赤字予想を組んだが、今度は四百九十七億円と、どんと落ちておるのであります。これでは全く赤字見込み基礎のとり方について信用が置けない。もし、本年の七百四十五億円というこの赤字見込みが、こんなずさんな、こんなでたらめな基礎に立っているならば、国民を侮辱すること限りないと思うのであります。私は、四十年度の六百五十九億円のこの赤字見込みについて、責任のある答弁をお願いしたい。まず大臣からお聞きします。
  32. 坊秀男

    ○坊国務大臣 四十二年度の七百四十五億というこの赤字の見積もりでございますが……。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちょっと、私は四十年度を聞きたいのです。それはあとで聞きますから……。
  34. 坊秀男

    ○坊国務大臣 政府委員から答弁させます。
  35. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに先生おっしゃいますように、三十七年度は二十五億円というのが十六億円に減った、それから三十八年度は五億円が百三十一億円にふえた、それから三十九年度が七十五億円から三百六十三億円にふえた、ところが四十年度は逆に今度は当初の赤字見込みのほうがはるかに大きい、非常におかしいじゃないかという御指摘でございました。まことにごもっともでございますが、ただ、これは結局四十年度の積算——また申し上げますけれども、一つ考え方といたしましては、過去の伸びを見ておりますから、三十八年度、三十九年度が非常に医療費伸びが顕著だったわけでございます。したがって、これはその過去をとりますと、四十年度も同じ傾斜で伸びるだろうということをわれわれは推測いたしたわけでございます。ところが、意外にそれが伸びなかったということが、四十年度の赤字の食い違いの大きな原因でございます。で、いままで確かに赤字の食い違いはございますけれども、いつも赤字を多目に見ておるということは、三十七年度に若干ございますが、四十年度だけでございます。四十年度は、ただいま申し上げましたように、三十八年度、三十九年度と異常な伸びでございましたので、それが伸びるということを見て予算を組みました。ところが伸びなかったために、当初の赤字見込みが多くなったわけでございますが、それ以外には当初の見込みのほうが赤字は小さいわけでございます。出る結果のほうが大きい。したがいまして、七百四十五億円も、あるいはもちろんぴたりとそのとおりの数字は出ないかもしれませんけれども、狂う場合には、むしろ多目に狂うという可能性のほうが、私どもは多いんじゃないかという感じがするわけであります。  四十年度の積算について申し上げますが……。
  36. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちょっと待ってください。どうもあなたの答弁は誠意がないと思うのです。傾斜と言いますが、赤字見込みが二十五億円から五億円、七十五億円、一挙に六百五十九億円の見込みなんですよ。過去の数字の傾斜と言いますが、これじゃ傾斜じゃなくて断崖ですよ。登れるような赤字じゃない。しかも、四十年度だけと言いますが、四十一年度もまたこれは逆な意味で大きく違ってきている。これじゃ、見込みなんというものじゃないのですね。七十五億円という赤字から、一挙に六百五十九億円に赤字見込みをふやした根拠について、はっきりした御説明を願いたい。
  37. 加藤威二

    加藤政府委員 単にその赤字の比較をいたしますれば、先生指摘のとおりでございますが、この六百五十九億円という数字を出します積算の基礎といたしましては、先ほど申し上げましたように、標準報酬についてどう見るか、それから医療費につきましては、それぞれ一人当たり医療費について、一日当たり金額、一件当たり日数受診率について過去の伸びを平均して積算する、こういうやり方をやっておるわけでございます。したがいまして、たとえば医療費についてでございますが、医療費は、昭和四十年度の見込みでは、二二・五%伸びるだろうという積算をしたわけでございます。ところが、現実にはそれが一九%しか伸びなかったということでございますが……(「それはなぜだ」と呼ぶ者あり)これは、二二・五%伸びるだろうという積算をいたしましたのは、過去の三十八年度、三十九年度がそれぞれ二〇%前後の伸びを示しておりますので、それの計算で二二・五%という数字が出たわけでございます。ところが、それが一九%しか伸びなかった。これはなぜかというと、率直に申し上げまして、これもなかなか原因ははっきりわかりません。結局、三十八年度、三十九年度のお医者さんの医療費の異常な伸び方が、四十年度には若干落ちついたということで、この原因につきましてはなかなかその把握が困難でございます。そういうことで、そういう個々の積み重ねの結果、六百五十九億円という積算になったわけでございまして、過去の赤字の平均ということではございません。
  38. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、あなたの答弁をお聞きしていると、たいへん納得のいかない点があるのですよ。たとえば三十八年度について私が御質問を申し上げたときに、あなたは制限診療撤廃ということについて、ただいま、制度上の問題か、あるいは医薬費の増高かということで、どちらか何か私とあなたの間で食い違いがあるようだ、こういう話でした。答弁を聞いていると、何か都合のいいときには制限診療のほう、あるいは医療費増高のほうを使い分けをされているようです。いま淡谷委員質問に対しても、私は同じような疑問を持つわけです。三十八年度の五億円ということについては、三十六年度に若干の黒字が見込まれた、そして三十八年度というのは前三カ年の平均をとってきているんだ、こうおっしゃる。  それじゃお伺いいたしますが、四十一年度は二百二十八億円ですよ。これは前三年の平均をとった。私は二百二十八億円を上回ると思う。そして、あなたはそういう答弁をなさりながら、冒頭には私に対しては、基礎計数については、被保険者数、あるいは平均標準報酬保険料収納率と一人当たり保険料額、こういうことをお答えになっている。もちろん私は、基礎計数というものは、それによって一応の計算というものがなされるということは理解ができます。理解ができますが、それじゃ、三カ年の平均も一つのファクターになるのだというならば、当然四十一年度というものは、もっと金額が上がるはずじゃありませんか。なぜ下がったかという理由が、大きな理由があるならともかく、それをひとつお示しを願いたいと思うのです。
  39. 加藤威二

    加藤政府委員 先生指摘のとおりに、三年の平均でいたしますと、四十一年度はもっと大きな赤字になるわけでございますが、それに対して制度改正をやったわけでございます。保険料を上げるとか、あるいは標準報酬の天井を上げる、五万二千円から十万四千円に上げる、そういう対策をやりました結果、赤字が二百二十八億円、こういうことになったわけでございます。何もやらない場合には、先生おっしゃいますように、こういう赤字ではなくて、もっと大きな赤字でございます。
  40. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもお話がたいへんに受け取りがたいのですが、いまの七十五億円という見込みから六百五十九億円、これくらいに赤字見込みがふえた原因として、あなたは医療費見込みが二二・五%から実際は一九%になったというのは、これは見込みのほうじゃないでしょう。実際の赤字の面でしょう。私の言うのは、七十五億円の見込みからどうして一挙に六百五十九億円という七百億円近い断崖ができたか、これを聞いておるのです。三年間の平均ならこう上がるはずはないじゃありませんか。どういう他の要素が入ったのですか。
  41. 加藤威二

    加藤政府委員 この六百五十九億円のうち二百二十七億円は、先ほど申しました四十年一月に緊急是正がございますが、それによって医療費がふえる、それがその中に含まれておるということでございます。
  42. 淡谷悠藏

    淡谷委員 緊急是正があったら予算を変えなければならないじゃありませんか。緊急是正があっても予算を変えないで出しておるのですか。私は、今度の法律案は、実際の赤字対策じゃなくて、赤字予想に対する応急の対策としてこの法案が出ておると思うのです。したがって、この非常にでたらめな赤字見込みということは、決定的なこの法案の運命を決するものだと思うのです。あなた方の赤字見込みについては、全然基礎もなければ、算定の基準もない、当たってもいないというずさんなものじゃないですか。  もう一ぺん聞きますが、一体、見込みが七十五億円から六百五十九億円になった、はっきりした算定の基礎を示していただきたい。実際の赤字というのじゃないのですよ。赤字見込みがどうしてこういうふうに変わったかという問題です。
  43. 加藤威二

    加藤政府委員 四十年度の六百五十九億円の赤字の積算をいたしますときには、三十九年度の赤字が三百六十三億円になっておるわけでございます。もちろんその四十年度の予算を組みますときには、三十九年度の決算が出ておりませんから、こういう数字はまだ確定はいたしておりませんけれども、しかし、七十五億円を相当上回った医療費の傾向であるという、三百六十三億円という、そういう動きが三十九年度にはあったわけでございます。それをもとにいたしまして、先ほど申し上げましたように、六百五十九億円の場合には、二百二十七億円という四十年一月の緊急是正分がやはり上積みされておりまして、その六百五十九億円という赤字が出るものですから、これは厚生省におきまして、総報酬制、薬の半額負担という対策を立てまして審議会にかけましたところが、混乱して結局国会提出には至らなかったわけでございますが、そういう対策をそのときに一応審議会段階までは持っていったわけでございます。
  44. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもあなたの答弁は少し食い違いますよ。どう勘定したって、二十五億円、五億円、七十五億円という過去三カ年間の赤字見込みですね。実際から言っても、十六億円、百三十一億円、三百六十三億円と、実際の赤字の趨勢が七十五億円から六百五十九億円に飛躍するような原因を持っていないじゃないですか。私はそこを言うのです。七十五億円から一挙に六百五十九億円に飛んだその理由がわからない。
  45. 加藤威二

    加藤政府委員 この当初の赤字見込みを比較していただきますとそういうことになると思いますが、結局、予算をつくりますときは、当初の、たとえば三十八年度の赤字見込みがどうであったかということじゃなくて、赤字は幾ら出たのか、結局百三十一億円が問題なんです。それから、三十九年度につきましては三百六十三億円が問題なのであって、七十五億円ではありません。(「そんなことはまだわかってない」と呼ぶ者あり)まだわかっておりませんけれども、少なくとも三十八年度につきましては、五億円じゃなくて百三十一億円でございます。それから三十九年度につきましては、七十五億円じゃなくて、相当これを上回りそうだという動きはわかっておるわけであります。そういう実態の上に六百五十九億円という積算をした、そのうち二百二十七億円は別の要素である、こういうことでございます。
  46. 淡谷悠藏

    淡谷委員 厚生大臣にお聞きします。いろいろな答弁をされておりますが、実際において、厚生省が今日までやってきた今年度の赤字見込みというものは、過去における誤った方法の上に立脚しているということは、大臣肯定されますか。何べんやっても、見込みと実際はしょっちゅう変わっているのですよ。その見込みと実際が著しく変わってくるその方法を全然変えないで、同じような方法でやっていることを厚生大臣お認めになりますか。
  47. 坊秀男

    ○坊国務大臣 赤字の見積もりと現実に生じてくる赤字の食い違いの問題でございますが、これがぴったりしておる——何も一銭一厘というわけではございませんけれども、ある程度これが符合しておるということは、たいへん形の上におきましては、私はそれが非常にいいことだと思います。だがしかし、今までの方法が誤っておるという御指摘でございますけれども、それなら、ほかに何かそれよりベターな方法があるかと申しますと、いまの段階におきましては、私どもといたしましては、ちょっとその発見に苦しむ、こういうような事態にございます。そういうようなわけでございますので、赤字はとにかく出てくる。しかし、その赤字の対策をやる場合には、どうしてもこの方法でもってやらなければならない。私は、今日の赤字はほうっておいてもいいんだというわけにはいかない、出てくる赤字というものは、あるいはそれはこの七百四十五億円というものは違ってくるかもしれませんけれども、いまといたしましては、最善の方法でもってこれを算出、積算いたしたものだ、かように考えております。
  48. 淡谷悠藏

    淡谷委員 非常にいまの答弁は私は大切だと思うのです。明らかに厚生大臣は、いまやっている方法は不完全であるということを認められておる。——認めないのですか。それじゃ、この大きな見込み額赤字が違ってきたこの方法は、こんなに違っても間違いじゃないというのですか。この方法に間違いありませんか。
  49. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この方法が間違っておるということを考えまするならば、何かこれよりほかに最も正確な別個の方法があって……(「出すべきですよ」と呼ぶ者あり)それは出すべきです。出すべきでございますけれども、いまの段階におきましてはこの方法でやるよりほかに出てこない、そういうようなわけで、私は、いまの段階におきましてはこの方法でやる以外にいたし方ない、かように考えておるわけであります。
  50. 山本政弘

    山本(政)委員 方法について、私はその基礎計数というものが、つまり先ほど説明があったように、被保険者数、標準報酬、保険料収入、一人当たり保険料額、あるいは給付額、医療費給付額、現金給付額といろいろありますけれども、こういう基礎計数というものをデータとしてとるということについては、私はそう異論はないと思うのですよ。ただ、この基礎計数のあなた方のとり方について、いろいろな状況というものはあるのですよ。大臣は税について造詣が深いと私はお伺いしているんですけれども、税についてでも、あなた方はいろいろ状況の動きというものについて弾力的にお考えになると思うのです。そういうことについて、これは、ただ単に、一日当たり金額とか、一日当たりの回数とか、そういうことだけの積算だけにとどまっておる。それについて弾力性というものを一つもお考えになっていない。そこに私は原因があると思うのですよ。そういうことについてはどうお考えなんですか。
  51. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ある行き方によりまして数字をはじき出す。はじき出した数字——その方法は、これは神さんがやったことじゃないから絶対ということは申しませんにしても、その事態におきまして相当程度正しいものであるという前提に立ちましても、これに対しまして、これを運用中にあるいは請求——決して私は、お医者さんが水増し請求をするとか、そんなことを申しておるのではございませんけれども、その正しい方法に従ってでも、請求する方には相当の自由と申しますか、決して脱法をやるとかなんとかいうことでなくして、社会の事象としてはそういうこともあり得るということもひとつ御理解を願いたいと思います。
  52. 山本政弘

    山本(政)委員 私は基礎計数というものは、そこに置いていいと思うのです。ただ、せんだってお示しになった三十七年度から四十一年度に至るまでの見込みと実際の金額の差異が、あまりにも片っ方においてはマイナスとして出てくる、あるいはプラスとして出てきている、そういうことについて一つの傾向というものが出てきやしないか。そういうことについて、あなた方がそれに対してどう対処していったのか。ただ単に、ここで言われているように一つだけ例をとりますと、受診率から一件当たりの日数、それから一日当たり金額をはじき出すというような計算だけで、要するに、数字というものをそのまま動かざるものとしてあなた方は計算されていると思うのですよ。経済の状況だって変わってきているわけでしょう。そういうことに対して一つの趨勢、大きな流れというものが働いていると思うのですよ。そういうことにはあなた方は目をおおって、単純に積算だけで数字だけをいじくっているというところに問題がありゃしないか。そういうことについてのお考えをひとつお伺いしたいと思うのです。
  53. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに先生おっしゃるような点があると思います。ただ問題は、こういう場合に食い違いましたのは、何度も繰り返して申し上げますように、三十八年度、三十九年度というものが、医療費といたしましては非常に異常なかっこうが出た、こういうことであります。具体的に申し上げますと、三十五年度あたりは一人当たり医療費は二・七%しかふえていないわけです。三十六年度は五・六%、三十七年度が一〇%、それが三十八年度、三十九年度には一八・七とか一八・二。これは修正でやったものでございます。いろいろな改正とかそういうものを除いて、要するに自然増の数字を申し上げたわけでございますが、そういうぐあいに三十八年度、三十九年度が異常な数字が出ているわけでございます。したがって、確かにこの時期におきましては、過去三年の医療費というものを見てやりますと食い違ってくる。しかし、こういう異常な状態というものは、私は漸次落ちついてきているというぐあいに考えます。たとえば四十年度は、自然増で見ますと医療費は一〇・九%に落ちてきております。ですから三十八年度、三十九年度は、先ほども申し上げましたように、制限診療撤廃のためということじゃなくて、あれを契機として起こった、お医者さんがいろいろな制約から解き放されて自由な診療をやる、そして医療費がばっとふえて、そのときに非常に大きなあれが出ましたけれども、それからまたそれでずっといく、こういう医療費の動きが出てくるのじゃないか。そういたしますと、この変わり目のときには、おっしゃいますように、たびたびおしかりを受けますように、非常に間違いましたけれども、今後は、やはりそれがまた落ちついてきておりますから、一たん広がったワクでまたずっといくということでございますので、またああいう変動が起きますとあるいは狂ってくるかもしれませんけれども、そういうことがない限りは、私はそう大きな狂いはないというぐあいに考えております。
  54. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもあなた方の御答弁を聞いていますと、ますます不安になってくるのです。これは、三十七年度から四十一年度までの見込み赤字と実際の赤字は、ことごとく狂っておることだけは御承認になるでしょう。大臣、これだけはやはりお考えになっていただきたい。しかも、この変わり方を見ますと、見込みのほうが二十五億円から五億円、七十五億円、六百五十九億円、二百二十八億円と、実際もう何ら関連性のない見込み数字が出てきているのです。実際のほうは、十六億円から百三十一億円と飛びはねましたけれども、三百六十三億円、四百九十七億円、三百三十四億円、どうにか実際の赤字みたいな数字が出てきている。これはいろいろ見通しをつける原因はたくさんあるでしょう。あるいは医療費がアップされたとか、料率が変わったとか、これがはっきりしたことであっても、また薬価の変わりもあるでしょう。標準報酬については経済の動向も非常に影響するでしょう。衛生状態もあるでしょう。伝染病もあるでしょう。しかし、これらを総合して、あまりにも違った結果が出ているのですね。これは無理かもしらぬけれども、無理なことはやらないほうがよろしい。一体、三十七年度の見込みは正しかったと思いますか。ひとつ聞いてみましょう。狂ったら狂ったで、一言でいいです。
  55. 加藤威二

    加藤政府委員 三十七年度では、二十五億円と見込んだ赤字が十六億円でございます。これは三十七年度の……。
  56. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いや、くどい説明は要りません。この見込みは失敗ですか、成功ですか。
  57. 加藤威二

    加藤政府委員 三十七年度の医療費が千二百十一億円でございますので……。
  58. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いや、そんなのは要りません。二十五億円の見込みが十六億円になったのは、これは見込み違いか、見込み違いじゃないかということです。
  59. 加藤威二

    加藤政府委員 ですから、この九億円の赤字というものは、全体の一%以下の誤差でございますので、間違いではございますけれども、(淡谷委員「及第点ですか」と呼ぶ)まあ及第点を与えていただきたいと思います。
  60. 淡谷悠藏

    淡谷委員 三十八年度はどうですか。五億円の見込みが百三十一億円になったのは、これは何といっても及第点じゃないでしょうな。これは明らかに落第ですね。三十九年度は、七十五億円が三百六十三億円、これも落第ですね。それから四十年度の六百五十九億円という過大赤字の見積もりに対して四百九十七億、これも落第です。四十一年度の二百二十八億円が三百三十四億円になったのは、これは大臣から点数をつけてもらいましょう。これは及第ですか、落第ですか。大臣、四十一年度を評価してもらいたい。
  61. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただ赤字だけのことを言っていきますと、私は相当の食い違いだと思います。しかし、約三千億円といったような保険財政全体から考えてみますと、私はそれほど、淡谷委員のおっしゃるように、これは落第だ、及第だというようなことを、これによって判定するのは少し無理だと思います。国の予算におきましても、たとえば五兆円の予算において一これも先ほど税の話が出ましたけれども、非常に大きな自然増収といったようなものも出てまいる。これは、予算実績というものとの間には、社会の流動といったようなこともございますので、ある程度の食い違いということのあるということは、そういうようなことに対して非常に造詣の深い淡谷委員におかれましても、これはひとつ全体からお考えいただきまして御理解を願いたい、かように考えます。
  62. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は関連ですからこれでやめますけれども、私の言うのは、七百四十五億円ということしの赤字見込み額も信用はできません。なぜならば、過去におけるこの見込み額の算定の基準がことごとく狂ってきた。不完全であった。これは大臣自体もさっきの御答弁で認めまして、もっといい方法があればこれでやるのだが、今日の場合これしかしかたがないということになってくれば、これは全く的確な赤字予想することは不可能という結論が出てきます。この不可能な、あやふやな赤字の負担を国民に向けるべきではない。こういう見込み額は非常に不安定ですが、実際の赤字ははっきりしているのです。ただ、この赤字の統計の操作がどっかで狂っている。その狂っていることを前提にしながら、この実際の赤字を、損失のつもりで国民からこれを吸い上げようという考え方は、非常な間違いです。こんな不安定な七百四十五億円を基礎にしたようなこの法案は、これは通すべきではない。むしろこれはもう一ぺん練り直して、あるいはこの見込み違いから大きな不当な負担を受けるだろうという国民の不安を救わなければならない。これは医療に関するものだけに事は重大です。こんな不安定な基礎の上に立った赤字解消の応急策としてのこの法案は、これは絶対に撤回することを強く希望しまして、私の関連は終わっておきます。
  63. 山本政弘

    山本(政)委員 四十二年の七百四十五億円の赤字見込みに対して御質問を申し上げたいと思います。  四十年度の平均標準報酬の確定額、これと四十一年度の見込み額の差額というのは、大まかに言って三千五百円ですね。四十一年度と四十二年度の差額は二千七百円。私が先ほどから、経済の動向とかそういう周囲の事情というものがあるだろうと言ったのは、こういう点を申し上げたのです。四十年度というのは不況のときです。四十一年度も前半は不況。そういうときに三千五百円という差があって、四十二年度の好況のときに二千七百円と金額は下がっているわけですよ。赤字については過大な見積もりをし、収入については過小に、支出については大きく見積もっているというあなた方の考え方というものが根底にありそうな気がする。春闘において、今度は三公社五現業も約一二%値上がり、民間は一三・一%。中小の企業ですら、五人から二十九人こそ少ないけれども、三十人から九十九人は一〇・六%、百人から四百九十九人は一一・九%、五百人以上が一二・八%という伸びをしているわけですよ。そういうものをあなた方は平均標準報酬の中に、算定として頭に入れておかれたのかどうか。そして七百四十五億円というものもお考えになったのか。こういうことをお伺いしたいのです。
  64. 加藤威二

    加藤政府委員 先生指摘の、この平均標準報酬数字の差を検討いたしますと、先生おっしゃるとおり、非常におかしなかっこうで出ておりますが、これは理由があるわけでございまして、標準報酬は四十年度までは五万二千円で頭を押えていたわけであります。その天井を四十一年度にはずしましたので、単にいわゆる春闘とかあるいはベースアップのアップ以外に、そういう制度改正によりまして、五万二千円から——いままで十万円の人も五万二千円の標準報酬だったのを、十万四千円まで頭を上げましたので、その影響があるわけでございます。それをはずして考えますと、四十一年度は前年に比べて二千百三十六円のアップになるわけです。それに比べて四十二年度は二千七百六十五円くらいのアップということでございまして、四十一年度と四十年度の差はそういう特別の要素があるということを御了承願います。
  65. 山本政弘

    山本(政)委員 経済の状況が反映して、あなた方は、要するに春闘における賃上げ率というものがどの程度になるかという見込みというものは、お立てにならなかったのですか。初任給も上がる、それから標準報酬も上がるということはお考えにならなかったのですか。
  66. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに、本年度におきまする春闘の成果というものは、ここ数年来に比べまして非常に大きい数字が出ておるというぐあいに私ども承知いたしております。たとえば千人以上の大手で平均いたしますと、大体四千二百円くらいのアップになるというような数字を聞いております。ところが政府管掌健保は御承知のように中小企業でございます。中小企業の場合には大手ほど春闘の幅は大きくないということで、全国の統計を労働省に聞き合わせましたところ、全国の統計はまだ出ていないけれども、東京だけで見ると、三百人未満で春闘の結果が三千八百円という数字を労働省がくれたわけでございます。これは全国にいたしますと、通例からいって大体一割くらい下がる。東京だけだと三千八百円ですが、これを全国の中小企業に伸ばすと一割くらい下がるのが相場だとしますと、全国でまとめますと三千四百円くらいの数字が出るのじゃないか、そういう感じがするわけであります。  それに対しまして、今度の四十二年度の平均標準報酬のアップが二千七百六十五円でありますので、低いではないかという御指摘があろうと思いますが、問題は、これも非常に技術的な問題でございますが、健康保険では平均標準報酬を十月に改定するわけでございます。十月に定時改定というのをやりまして、五、六、七の三カ月の平均給与をとりまして、それで十月に新しい平均標準報酬をきめる、それから翌年の九月までそれを大体動かさない、こういうことなんでございます。したがって、春闘の結果が平均標準報酬に反映しますのは十月以降でございます。したがって、これは五ヵ月分しか反映しない。それで、五カ月分というと大体四割くらいでございますから、千四、五百円の反映ということになるわけでございまして、こちらの平均標準報酬のアップが二千七百六十五円でございますから、それと比べますと相当大幅な上げ率を見ているということで、おそらく、四十二年度の平均標準報酬、これは四十二年度が過ぎますれば決算が出るわけでございますけれども、あまり大きな食い違いはないだろうという感じを持つわけでございます。
  67. 山本政弘

    山本(政)委員 民間のほうが低いと言われるけれども、一一・九%あるいは一二・八%というのは、決して私は低い数字ではないと思う。これは私も全国の資料というものを労働省からいただきました。その労働省からいただいた資料がいま申し上げた数字でございます。その点一つ申し添えておきます。  もう一つは、十月の改定だ、こうおっしゃいましたけれども、十月には年度末のボーナスというものは最大のものになりはしないかという経済の予測が出ておりますよ。従来にない好景気だということがもうその当時出ております。そういうことから考えますと、どうも私はあなた方の算定の方法というものは、数字というものを機械的に積算をするだけで、周囲の経済的な事情というものを十分に勘案をして、そうして弾力的にそれを一つ計算の中に入れるという考えについて、私はまだ取り組みが足りないような気がいたします。その点をあわせて今後お考えを願いたい、こうお願いをいたしまして、午前の質問を終わらせていただきます。
  68. 川野芳滿

    川野委員長 午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  69. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引き続き質疑を続けます。山本政弘君。
  70. 山本政弘

    山本(政)委員 大臣がお見えになるまでに、若干薬価基準についてお伺いをいたしたいと思います。  これは、六月二十九日の厚生省告示二百八十二号によりました薬価基準の改定でございます。このことについて若干お伺いをいたしたいと思います。この一番初めの二ページのところに、キノドリンシロップ、これが削除されていますね。ところが、五ページの初めのところに、キノドリンシロップというのが、削除されてまたここに載っておる。この点についてお伺いしたいのは、こういう例が幾つかあるのかないのかということでございます。
  71. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬価基準に登載する場合に、成分、分量が変わったり、そして中身が変わったということで、新たに許可を取り直しておりますので、収載することはあります。
  72. 山本政弘

    山本(政)委員 これは、つまり組成というのですか、それが変わったということでございますね。
  73. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 さようでございます。
  74. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、削除されたキノドリンシロップというものの値段は幾らでしょう。新たに登載された値段というのは一円でございますね。前の削除されたキノドリンシロップというのは幾らでございましょう。
  75. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 前に登載されておりましたものは、一ミリリッターで一円四十銭でございます。
  76. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、この削除されたキノドリンシロップは、経過措置として十二月三十一日までは使われるわけですね。そうしますと、いまお話しになったように、前のは一円四十銭、新しく登載されたのは一円。そこでちょっとお伺いいたしますけれども、医者としては、この経過措置にあるキノドリンシロップと、それから新しく収載されたキノドリンシロップと、どちらの値段を使っても差しつかえないということですか。
  77. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、量が違っておりますので、したがいまして、古いものよりも新しいものをお医者さんとしては使うと思います。ただ、経過措置で約半年間これを延ばしておりますのは、お医者さんがすでに買い込んでおるといった場合に、その在庫保障をしなければならないということで、これは経過措置として、あらゆるものについて認めておるわけでございます。ただし六ヵ月過ぎれば新しいものに変わっていく、こういうふうに御理解いただければけっこうだと思います。
  78. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、お医者さんの在庫品が幾らあるかということを、あなた方は確認できますか。前のが一円四十銭で、新しく収載されたのが一円、この間には四十銭の違いがある。そうすると、かりに前のがなくなってしまっても、新しく収載されたキノドリンシロップを使った場合でも、一円四十銭という請求がやれるのでしょう。そういう場合の在庫の確認をあなた方はできますか。
  79. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 一般的な経過措置で必要なものを残す場合の考え方として私はいま説明申し上げたわけでございますが、実際に請求する場合に、落ちたものと、それから新しいものとの区分けというものは、これは実際には確認できません。したがいまして、あくまでもお医者さんの、請求する側の良識に待つよりほかにない、こういうように考えております。
  80. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、このキノドリンシロップのように、新しく削除し、また削除したかわりに新しく収載された例というようなものは、今度の改定によって、どのくらいありますか。
  81. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体四つか五つあります。非常に数は少のうございます。
  82. 山本政弘

    山本(政)委員 私も実はこれをいただいて、そしてきのうさらに厚生省のほうからしてもらったのですけれども、「シメロス顆粒の項」というのが削除されております。そして六ページの右のほうにシロメス顆粒というのがあります。シロメス散とあって、下のほうに顆粒と書いてある。これは同一のものですか。別のものですか。  もう一ぺん申し上げますと、削除されたのはシメロスなんです。収載されたのはシロメス。これは内容に変化があるのか、組成に変化があるのかということですね。同一か、変化があるのかということです。
  83. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 直接の担当者がただいまおりませんので、後ほど確かめてお答え申し上げますが、メーカーが違うのではないかと私どもも考えているわけですが、なお詳しいことは、担当者から直接聞きました上でお答え申し上げます。
  84. 山本政弘

    山本(政)委員 名前をシメロスからシロメスに変えただけなのか。あるいは、これは誤植ならば誤植でも私はかまわないのです。ただ、こういうあいまいなものが、要するに名前として片一方は削られて、片一方は入っている。それに対してあなた方が説明ができないというのは、私は納得ができないのですがね。内容が同じなのか、名前だけを変えたのか、そういうことをひとつ御説明願いたいわけです。
  85. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま問題になっておりますシロメスあるいはシメロスということについて、私はまだ具体的にこまかく承知いたしておりませんが、一般論だけを申し上げますと、私どものほうで製薬承認をやる際の態度でございますが、いま御指摘のように、従来あった名称と非常にまぎらわしいような名称を新しくつけてくるというような場合が、間々申請メーカーのほうからあるわけでございます。そういうような場合は、私どもも、できる限り名称のまぎらわしさを防止する意味においてメーカーを指導しまして、名称のまぎらわしさをできるだけなくしていくような方向でいま製薬許可をやっておるわけでございます。したがいまして、数多く医薬品の種類がございますので、そういう姿勢でいきましても、一挙にはなかなか改善ができない面もあるわけでございますが、逐次そういうような方向で、私どものほうは名称のまぎらわしさを防止するような考え方で指導をいたしておるわけであります。
  86. 山本政弘

    山本(政)委員 私はこれをきのう厚生省のほうから資料としていただいたのですけれども、薬価基準に医薬品を収載する形式には二つある。統一的名称による場合、つまり統一名と販売名とがある。「統一名による場合には、統一名に該当するものの範囲が明確ではないという問題があったので、最近は、すでに統一品名を用いているもの以外は、できるだけ販売名によることとしている。」こうあります。そうですね。そうすると、お伺いいたしたいのは、十ページのまん中から下のほうに、パントテン酸カルシウム・アスコルビン酸顆粒というのがありますね。これは統一名でしょう。その下に今度は販売名が書いてある。これは一体どういう理由なんです。
  87. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御説のように、アスコルビン酸顆粒につきましてのこれは統一名でございますが、区分けをいたしましたのは、この中にこういう品名のものをはっきりさせるということで、これは、名称をはっきりさせた、こういうことだけでございます。
  88. 山本政弘

    山本(政)委員 これは舌をかむようでたいへんむずかしいのですが、パントテン酸カルシウム・アスコルビン酸顆粒というのは、シナールとかハイシーとかパンシーとかいうものですね。それでは、いまおっしゃったように、あなた方のほうでこれだけのものを区分けするのに、なぜ販売名としてそういうものを記載されなかったのか、その理由をお伺いしたい。むしろそのほうが薬局でも非常に簡単にそういうことを処理できると思うのです。ことさらこういうむずかしいことばをお使いになった理由は一体どういうわけですか。
  89. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬価基準の表をごらんになっていただきますと、値段の入っておる部門と値段の入ってない部門がございます。このアスコルビン酸顆粒の部門は値段が入ってございません。これは一グラムについて七円七十銭というふうにしておりまして、以下十二種類ありましたのを、使用薬剤の範囲、つまりパントテン酸カルシウムが一グラム七円七十銭、その中で使用薬剤の範囲はこういう顆粒である、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  90. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、十一ページのまん中、上の方に、フィトナジオン錠というのがありますね。これは、あなたのように言われれば、同じように丁寧に、この範囲のものが含まれていいというものを明示されてもいいでしょう。これは化学名ですね。
  91. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 フィトナジオン錠といいますのは、これは従来とも販売名は書いておりませんで、このままで載っけておりましたのでそのままにした、こういうことでございます。
  92. 山本政弘

    山本(政)委員 初めのあなた方が私にくだすった資料の中で、「最近は、すでに統一品名を用いているもの以外は、できるだけ販売名によることとしている。」これにちょっと反するような気がするのです。ことさらむずかしいのを書いて——アスコルビンの場合には販売名を書かないで、同時に、フィトナジオンの場合にはヒメロンとかケーワンという薬品名をなぜ入れないのですか。そのほうが具体的でわかりいいでしょう。ことさらむずかしいことをあなた方が書いて、処理にむずかしいようなことをさせるよりは、販売名にしたほうがはっきりして、薬局でもずいぶん手軽だと思うのです。
  93. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 山本先生の御意見ごもっともだと私思うわけでございます。「できるだけ」というふうにいたしましたのも、そういう点も考えまして、そのような表現を使っております。いま御指摘のありましたフィトナジオン錠につきましては、販売名は書いてないわけでございまして、たとえばここに私ども持っておりますのでは、カチーフN錠・武田薬品、ヒメロンK錠・東亜栄養というようなものは、その中に含まれておるわけでございますけれども、今回そこまであげるということは——完全に販売品名で全部統一してしまうというときにはそれをやりたいと思いますけれども、まだまだそこまでいくまでの段階的な取り扱いだ、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  94. 山本政弘

    山本(政)委員 告示第二百八十二号というのは六月二十九日に出されました。実施は七月一日ですね。どうなんですか。
  95. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 さようでございます。
  96. 山本政弘

    山本(政)委員 なぜ私が先ほどことさらむずかしい名前をあげてお伺いしたかというと、六月二十九日に告示をされて七月一日実施ですよ。私が読んでも舌をかむような名前なんです。これがかなりな数になっておりますが、これをわずかの日にちに各医師あるいは病院、薬局に実施させるわけですね。そういうときに——それじゃ私は一つ例をあげましょう。七ページの一番上のほうに、スルファジメトキシン錠、スルメトジン、いろいろ名前が書いてあります。そのときに、たとえばこれをアイウエオ順に整理して配置しなければ、薬局だって整理に困るでしょう。そういうときに、デポキシン錠とかネオサルトンというものをアイウェオ順に整理して、二十九日に出して七月一日実施という段階で短時日の間に現実にやれますか。
  97. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 普通、薬価基準の改正をいたす場合には、薬価基準の全面改定をやる場合と、新薬だけを登載する場合と、二つあるわけでございます。それで薬価が変わってくるということは、これは全面薬価改定を薬価調査に基づいてやります場合に、既存の薬が九〇%バルクラインを引いたために上がったり下がったりするわけでございます。ところが新薬の場合にはそういうことはない。しかも新薬につきましては、それぞれのメーカーが製薬許可をすでにとっておって、各病院、診療所には、こういう新しい薬がもうすでに許可されて、近く薬価基準に登載される予定というふうなことで、いろいろとそれぞれ医家関係の薬についてPRをやっておるわけです。それで、薬価基準に登載されたその瞬間において——今回の場合は二日あとでございますが、七月一日からそれが使えるようになっておる。これは全部のお医者さんが必ずしも知らぬでもいいし、また全部の薬局が必ずしも知らぬでもいいわけで、たまたまその新しい薬を知っておったお医者さんが、それが使われるということがわかっておればいい。そういう意味も含めまして、やはり新しい薬については、なるべく早く、薬価基準に登載されたと同時に施行するというふうなたてまえのほうがよろしいというふうな取り扱いにしたわけでございます。
  98. 山本政弘

    山本(政)委員 お医者さんは診断の結果でないと、どんな薬が要るかということは予測できませんよ。患者さんが来て診断の結果、どういう薬を処方して投薬するのか、普通の常識的なあり方から言えば、こういうことにしかならぬでしょう。そのときに、あなたは新薬と言われるけれども、これだけの数のものが整理をしないでできるとは、私は常識的に考えられません。私が申し上げたいのは、短時日の間に、こういう順序というものを、お医者さんとしてはやりやすいように、アイウエオかイロハか知りませんが、そういうふうに当然整理をして、そして処方するにも便利なように取り計らわなければならぬと思うのですけれども、そういう時期的なものをはずして、考えないで、ただ三、四日の間にこれを施行するというあなた方のお考えに対して、たいへん行政的に不親切なやり方だということを私は申し上げたいのですよ。
  99. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私、先ほど申し上げました御説明があるいは悪かったかとも思いますけれども、私が申し上げましたのは、ことばをかえて言えば、新しい薬が保険で使われるということは、一日も早くこれが施行されるということが、むしろ患者にとってもお医者さんにとっても親切じゃなかろうかという趣旨でやっておるわけでございまして、そういうつもりでやっておりますので、不親切じゃなしに、逆に親切で早くやったことがかえって御疑問をいただくというのはちょっと問題だと思うのですけれども……。(「名答弁」と呼び、その他発言する者あり)
  100. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、たいへん答弁としてはいい御答弁だと思います。ただそのときに、あなた方は、これだけのものについて、それじゃ、どれだけお医者さんたちに配慮をして、事前にきちんとこういうものがこういうふうになるということを周知徹底をさしたかということが問題なのです。私が、これが来たから、これだけのものをお医者さんに聞いてみましたが、この手間は実にたいへんですよと現実にお医者さんが言っている。あなた方がどれだけのことをしたか知りませんけれども、現実にお医者さんは、二日、三日の間ではなかなか整理ができません、こう言っているのですよ。答弁としては、あなたの答弁というものはなかなかりっぱだ。官僚としての答弁としてはりっぱだと思うが、現実に施策の上において、それだけりっぱなことがなされているかどうかということが問題なんです。それはどうなんですか。
  101. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 おそらく、薬価基準の登載の全体の品目なり販売名を含めまして、個々の病院、診療所、お医者さんの方々でも、全部知っている方はないと思います。膨大なものでございますから。したがいまして、この新しい薬が使えるようになったということをほんとうに知っていただいて考えなければならぬのは、むしろ医薬品のメーカーの方でございまして、メーカーの方は、当然いま先生がおっしゃられたようなPRにはこれつとめるというふうに考えておりますし、また私どもとしては、やはり日本医師会におきましても、新しい薬が登載されるというふうにきまったときには、直ちにその翌日官報を県の医師会のほうに送るという手続をやっておりまして、これは厚生省のほうも、PRの方法としては官報の告示以外にないわけでありますし、そしてまた各県の保険課長のほうに局長通達をもって知らせますけれども、その登載された瞬間におきましては、やはり製薬メーカーはプロパーを使ったりその他によって十分徹底していくということで、初めて新薬というものが次第に普及していく、こういう形になるのではなかろうか、こういうふうに私どもは考えております。
  102. 山本政弘

    山本(政)委員 どうも考え方といいますか、つまり指導のしかたにこうあるべきだという私どもの考えと、厚生省の方々の考えとが、若干食い違っておるようですけれども、先に進みたいと思うのです。  薬価基準制度については、まず基本的に購入価格の調査がどれほど当てになるかという問題があると思います。ことばをかえて申し上げますと、薬価基準と実際の薬価の間に大きな開きがある場合があり、その原因は、一つ医療機関の購入価格を調査される方式がいいか悪いか、妥当であるかどうかという問題である。医療機関は、薬価基準と実勢価格の差が大きければ大きいほど、率直に申し上げますが、経営が楽になる。基準算定の基礎になる購入価格の報告に手心が加えられないということは、私は断定できないと思う。だから時によって、価格の上限を報告するか、あるいは下限を報告するか。あなたが先ほど申されたように、そういう上限を報告するか、下限を報告するかによって、数値にはかなり差が出てくると私は思うのです。それで、その影響というものは私はわからないけれども、しかし、少なくともそういうような疑問が残るということは疑いないと思う。また同時に、薬業資本がこうしたことを意識的にやっておるという形跡もあります。そういう点についてのまず厚生省の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  103. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 お説のように、薬価基準の収載価格につきましては、最も近い時期の実勢価格に合わせることが適当だということは、私どもも当然そのようにすべきだと思っておりますが、ただ、何と申しましても、薬価調査の時点と実際に薬価基準の改定を行なわれます時点とに、相当時期的なズレもございます。それから調査自体が、その抽出方法その他につきまして、過去におきましては、いろいろと品目数が少ないとかその他の関係もございまして、必ずしも的確なものではないというふうな点もございました。それで、この薬価基準の登載の方法につきましては、現在のところ、中央医療協議会の診療報酬部会におきまして、昭和四十三年度以降の薬価基準の登載方法についてひとつ議論をしようという形で、現在審議をいたしておるところでございます。  ただ、購入価格の調査につきまして、山本先生指摘のように、いろいろと手心が加えられるという点につきましては、これは私どもは、実は調査対象につきまして、そのような国民を欺くようなことはないだろうということを考えて処理すべきものと思っておりまして、もしそういうふうな事態があるとすれば、まことに遺憾なことでございまして、そういうことの今後ないように私どもは十分配慮しなければならないと思います。
  104. 山本政弘

    山本(政)委員 これはある薬局が私のところに送ってくれたものであります。全部は省略しますけれども、「先日県を通して厚生省の薬価の調査表が参りましたので、私の家は全部実際に正直に、医家納入価格を記入して出しました。その前に某ビタミン剤をよく出す一流会社から、速達にて、医家納入薬品希望価格という秘の書類が参りまして、それを見ましたら、実際に医家に納入してる値段の四割、五割高の値段が書いてあってあきれてしまい、それによって薬価を不当に高くされては、医者はホクホクでしょうが、支払う国民が迷惑すると思い、その書類にかまわず実際に納入している値段を書いて出しました。」こう書いてあります。そしてそのあとに「こんなくだらない薬業界のばかさかげんにあきれ、十分にもうかっている保険をまた上げては、喜ぶのは製薬会社と医者のみで、国民の利益にはなりません。」こう書いてあります。あなた方は、そういうことがあったら——ないはずだが、あったらと言うけれども、現実にあるのです。マル秘の価格で出ているのです。言いましょうか。時価が一万二千円のものが一万五千円の納入希望価格として出されているのですよ。それが堂々とおそらく全国に出されている。一体この点どうあなた方としてはお考えになりますか。  もう一つ申し上げましょうか。時価が四万五千円のものが六万八千円の納入希望価格として出されているのです。これは一流会社から出されているのです。差額を考えてごらんなさい。二万三千円の差額がここに出てきている。これだけのものが出ているのですよ。あなた方の行政指導は、赤字に対しては非常に厳密に赤字を補てんする、こうおっしゃっているけれども、こういうものが堂堂と流されておるのですよ、薬屋にあるいは医家に。お医者さん、薬屋さんが何軒あるか知らぬが、これだけのものが堂々と流されたら、金額を加算してごらんなさいよ。一つの商品でありませんよ。たくさん出ている。全部出ている。この答弁は私は大臣に残しておきますけれども。
  105. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ただいま御指摘になりました文書につきましては、私ども全く存じておりませんし、また、もしそういうふうな事実があるとすれば、これは私はやはり究明しなければならない問題だと思います。ただ、今回の薬価調査の場合には、普通の従来やっておりました薬価調査と違いまして——従来は医療機関の購入価格でバルクライン九〇%で算出するという形になっておりましたのを、いろいろの事情によりまして、今年の二月の販売サイドだけの薬価調査という形で昭和四十二年の薬価基準をきめたいということで調査をいたしましたために、あるいは御指摘のような、私どもとしては非常に意外な秘密指令みたいなものが出ておるというふうなことにつきましては、非常に残念であると同時に、また、そのような指令を出したメーカーがおるとすれば、これはあとで私どもで究明をいたしまして、その事実を確かめた上でしかるべき処置をとらなければならない、こういうふうに私ども考えております。
  106. 山本政弘

    山本(政)委員 大臣がお見えになったら、あらためて私はもう少し詳しくこのことについてお話をして、お考えをお伺いいたしたいと思いますので、質問をあれします。   〔「休憩だ」「それを明らかにしなければ議事は進められぬじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  107. 川野芳滿

    川野委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  108. 川野芳滿

    川野委員長 速記を始めて。山本政弘君。
  109. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ再質問申し上げます。  これは私のところへある薬局から届けられたものです。「先日県を通して厚生省の薬価の調査表が参りましたので、私の家は全部実際に正直に、医家納入価格を記入して出しました。その前に某ビタミン剤をよく出す一流会社から、速達にて、医家納入薬品希望価格という秘の書類が参りまして、それを見ましたら、実際に医家に納入してる値段の四割、五割高の値段が書いてあってあきれてしまい、それによって薬価を不当に高くされては、医者はホクホクでせうが、支払う国民が迷惑すると思い、その書類にかまわず実際に納入している値段を書いて出しました。聞くところによると、その会社は、新潟県の卸業を集めて、その表により調査表に記入することと申し渡し、みな四〜五割高い値段で入れたそうです。」こういうことがあるのです。そして「医療保険赤字対策として、保険を値上げする必要は決してないのです。五百円で納入しているプレドニン100Tが、希望価格で千九百円になっているのには全くあきれてしまいます。」こう出ておるのです。そしてここに「「納入希望価格表」送付の件」とある。「弊社製品につきましては毎々格別の御勉売を賜わり厚く御礼申しあげます。さて、この度弊社医家向主要製品の「納入希望価格表」を別表の通りお届け致しますから、一月十六日以降はこの価格表にもとづき価格維持に御協力」をお願いしたい、こう書いてある。私はその中で時価を調べてみました。ある薬は時価一万二千円のものが希望価格という名のもとに一万五千円、九千円のものが一万三千六百円、四万五千円のものが六万八千円、二万三千円のものが二万六千六百円、四千三百円のものが五千七百円、九百九十円のものが千九百八十円、こういうのがずらっと並んでおる。赤字対策が必要だとあなた方おっしゃっておりながら、これだけのものが不当に高く売られているのですよ。これだけ規正したって赤字解消できるはずですよ。追加しますと、一万八百円のものが一万五千円です。こんなばかなことがありますか。いま局長は、私の、薬価を高めに操作する危険があるのではないかという質問に答えて、そういうことは万万ないと思いますと、こういう答弁をされておるのですよ。しかし現実にこういうことが公々然としてやられている。半ば公々然として。どれだけ薬局あるいは医価というものがあるか、そして薬が使用されているか、これだけを考えますと、非常にばく大なものが浪費されているじゃありませんか。大臣はこの点について一体どうお考えなのですか。
  110. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま御指摘のような事実につきましては、私はいま初めてお聞きした事実でございますが、もしそういったような事実があるとすれば、私はこれに対しまして、厚生大臣として厳重な警告を発するとともに、そういったようなつり上げと申しますか、そういったような価格というものは、これは直ちに改定しなければならない、かように考えております。
  111. 山本政弘

    山本(政)委員 これはいま初めて聞いたということはないはずですよ。厚生省の方々は、製薬企業懇談会の出しておる「製薬企業の現状と考察」という本をお持ちなはずです。その百三十二ページに「大手製薬企業が薬価調査の実施期間については、薬価を高めに操作することは容易に予想されることであろう。」こういう本が出ているのですよ。あなた方もお持ちのはずですよ。私にこの本をお持ちですかと尋ねられた人も現実におるのです。予想されていることですよ。しかもそれが現実になって出てきておる。予想されておるにもかかわらず、あなた方は手を打たないで、現実に私から指摘されたときに、それはたいへんです。処置します。警告しますということでは、行政指導というものは一体どうなりますか。再答弁をお願いします。
  112. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私はただいまここに参りましたので、いままでのいろいろな御質問答弁内容についてはまだお聞きしておりませんので、一応事務当局からお答えさせまして、その上で……。
  113. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほど来から問題になっておりますので、実は私のほうで製薬メーカーなりあるいは今回薬価調査を実施いたしました対象となった卸売り業者には、行政全般の指導監督をしております。実は私もただいまお述べになった事実は初めてでございますが、ただ今回は、先ほど保険局長が申し上げましたように、販売サイドの調査を初めて実施いたしたわけでございます。三十八年までは医療機関のサイドで、購入サイドの調査を実施したというわけでございます。今回初めて卸売り業者を対象にして、卸売り業者から医療機関等に納入しているその価格、販売価格を対象にして薬価調査を実施したわけでございます。私どもも、今回の実施は初めての経験でございますので、この薬価調査をできるだけ円滑にまた適正に実施をいたしたいということで、卸売り業者を含め、また医薬関係の製造メーカーを数回にわたりまして集めまして、この薬価調査を円滑、適正に実施をしてほしいという指導をやったわけでございます。したがいまして、ただいま山本先生お述べになった事実がかりにあるとしますならば、私どもも確かに初耳でございますので、この点は厳重に調査をいたしまして善処しなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  114. 山本政弘

    山本(政)委員 かりにあるとすればと言うが、現実にあるわけです。  それではお伺いしますが、三十七年の四月十七日に厚生省から「物価安定対策についての具体的措置について」という指示がなされております。これは三十七年三月九日に閣議の了解を得た「物価安定総合対策について」の趣旨に基づいてなされたものです。そこに指導方針というのがいろいろと出ておりますね。ここにはイの項に「流通機構の各段階において行なわれている過剰サービスを是正する等流通機構の合理化、適正化」をはかるということがうたわれておるじゃありませんか。三十七年ですよ。いま何年ですか。四十二年です。その間にあなたたちはこの具体的措置について実はどれだけ具体的に指導なされたのか、その点をお伺いしたいと思います。
  115. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 三十七年当時の市場安定対策要綱は、私もよく承知をいたしておるわけでございます。その中身に盛られております事柄につきましては、行政指導でできる事柄を逐次今日までやってきております。  そのおもなものを簡単に申し上げますと、いわゆる過剰サービスの是正でございます。過剰サービスが薬業界の慣習として従来非常に強かったわけでございますが、昨今医療保険赤字問題もこれあり、薬業界全体の姿勢を正す必要が非常に強まってまいりましたので、一昨年も特に大手の製薬メーカーを集めまして、たとえば具体的に添付等の全面自粛方を申し渡して、添付等については現在ほとんど行なわれていない。ただ、健全な商慣習の範囲内におけるサービス行為というのは、御案内のように独禁法においてもある程度認められておりますので、そういう法律上認められた健全な商慣習の限度にとどむべきである、いかにも世間の批判を受けるような行き過ぎた過剰サービスというのは自粛してもらうということで今日まで強力に指導してきております。  それから第二点は、たとえば医薬品の広告のあり方でございますが、この点につきましても、一昨年ぐらいからいろいろな批判が急激に高まってまいりましたので、広告の自粛方を強く呼びかけて、現在強力に指導をやっているわけでございます。それ以外のいろいろな流通機構等の合理化という問題につきましても、たとえば製薬メーカーは、大手は別としまして、大部分が中小メーカー、零細メーカーというものでございますので、そういう中小企業のメーカーに対します協業化の方策等も昨年以来指導してきている、かようなことがおもだった中身の事項でございます。
  116. 山本政弘

    山本(政)委員 赤字克服については異常なほど熱意を示している厚生省が、薬価についてはペーパーワークしかなされていない。あなた方で書類を出してここに記入しなさいというようなやり方でなくて、そうした疑惑を解くために、通産省あたりが小売り物価を調べるときのように、係員が自分でおもむいて、そうして実態を調べていくというようなお考えはありませんか。
  117. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬価ということになりまして、保険に関係があるとすれば、これは薬価基準の問題になりまして、薬価基準のきめ方につきましての御質問と拝承いたしますが、私どもとしましては薬価調査の厳正な執行ということにつきましては、御指摘のようなことの絶対にないように、おっしゃられたような調査方法等も含めまして、やはり中医協の調査部会あるいは診療報酬部会の結論を待って厳重な調査方法を実施したい、このように強く考えております。
  118. 山本政弘

    山本(政)委員 薬価基準についてですけれども薬の相場というのはきわめて複雑ですね。それとその実勢価格というものがつかみにくいといわれていました。たとえば薬価基準と購入価格との差について一つだけ例を申しましょう。副じん皮質ホルモンのプレドニゾロン、抗生物質のクロラムフェニコール、これはクロロマイセチンのことですが、それからストレプトマイシン、この三品目については、相場価格に適当な薬品卸業者のマージンを加えてきめるべき購入価格、つまりこれがあなた方のおっしゃる九〇%バルクだと思いますが、それがむしろ相場価格より低かったという事実がある。私の資料というのは四十年の十月五日の日付の資料ですが、そういう事実がある、そういうことを御存じですか。
  119. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 そういう事実は私ども聞いておりません。
  120. 山本政弘

    山本(政)委員 相場価格が必ずしも実勢価格ではない、これはあなた方はどうお考えですか。
  121. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもは、相場価格は即実勢価格というふうに考えておるわけでございますが、ただ、いわば薬価基準に登載される価格というものにつきましては、相場価格につきましても、その薬価調査の結果によりまして、九〇%バルクラインをかけた価格になるわけですから、したがって、薬価基準登載価格をいわば相場価格というふうに——先生は実勢価格と一緒であるというふうに思われていらっしゃると思いますけれども、その相場価格あるいは実勢価格とは必ずしも一緒ではない、いわば薬価基準登載価格というものは、全体の数量の九〇%が入る価格でございますから、下の安い価格から上の高い価格まで入るわけでございますので、それを九〇%バルクで価格をきめる、こういうことになりますから、その辺、どうも私どもとしては、相場価格と実勢価格が差があるという事態は考えられない、こういうふうに思っています。
  122. 山本政弘

    山本(政)委員 薬務局長にお伺いしますが、三十九年度の薬価調査に相場価格と実勢価格というものが合わないということで新しい方式を取り入れるという予定で予算を組んだはずですよ。覚えておいでですか。
  123. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いまお尋ねのもの自体については私承知しておりませんが、毎年、私どものほうとしましては、数年来薬価調査の予算は積算して計上しております。この薬価調査の予算というものは、本年度もそうでございますが、医療機関側のほうで、購入サイドでされる一定の方式による薬価調査の予算でございます。それ以外の予算は計上しておりません。
  124. 山本政弘

    山本(政)委員 薬価調査ということで予算が組まれているというお話ですね。私の言うのは、薬価調査に新しい方式を取り入れるという予定で組まれたことがあるかないかお伺いしているのです。あるかないかだけでけっこうです。
  125. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 薬価調査の予算の骨子は全然従来どおりでございますが、先ほど保険局長もちょっと申しましたように、対象品目数をふやしたり、そういうふうな予算は、たしか三十九年度か四十年度に要求して、対象品目を従来の二百品目から七百品目にふやしたような予算の計上はしたことがございます。
  126. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっと話がそれますけれども、厚生省が中医協に、薬価基準と実勢価格が違うということで資料を出したことがありますね。そのときに病院は八〇・九%、診療所は八五・五%だという資料を出したことがあると思うのですが、御記憶ございませんか。
  127. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 全体の資料の中の一部の数字だと思うのでございますが、全体がどういうものであるかということをおっしゃっていただければ中身はわかると思います。それを教えていただきたいと思います。
  128. 山本政弘

    山本(政)委員 三十八年の暮れですよ。
  129. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 九・五%の緊急是正をやります際の諮問事項として、薬価調査の結果に基づいた指数を一度出したことはございますが、おそらくその数字じゃないかと思います。  それで、その薬価調査といいますのは、これは、先ほど薬務局長が申し上げました、七百五十品目にわたる大々的な調査をやるという調査方法に基づいたものでなしに、三十六年から七年にかけましても、二百品目につきましての医療機関の購入価格によりますバルクで引いた数字の一部ではなかろうか、こういうふうに判断をいたします。
  130. 山本政弘

    山本(政)委員 申しわけないのですが、私ちょっと資料が見当たらないものですから……。  「薬価改定に伴う財政影響」ということで、厚生省保険局で中医協に出した資料がありますね。その中で、三十三年四月一日から四十年十一月一日にわたる中で、財政影響として、何%減、何%減というのが各品目について出されておりますね。
  131. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 全体の薬価改定をした場合の医療保険に対する影響がどのくらいかということは、パーセンテージで出しておりますが、品目別にはこれは出しておりません。
  132. 山本政弘

    山本(政)委員 改正内容として、全面改正のときに、あるいは一部改正のときに、薬価の変動主要品目というものをあげておるのですよ。そしてその中で、財政影響、つまり何%減ということを書いておるわけです。
  133. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 全体の薬価につきまして、どのくらい影響があるかという算出の基礎は出しておるわけでございますが、品目別には、これはわからないわけでございます。御承知のように、薬価基準に登載されております金額につきまして、どの品目がどの程度使われておるかということにつきましては、的確な数字がないわけでございます。しかし、当時の作業といたしまして、たとえば抗生物質その他重要品目につきましては、過去の一回限りの調査に基づきましてそれを推定をしたような作業をやった覚えはございます。しかし、全体といたしましては、とにかく過去五年間やっておらなかった薬価調査に基づきまして、医療費に対する値下がりの影響率が四・五%というふうな数字を出した記憶はございます。
  134. 山本政弘

    山本(政)委員 しかし、薬価調査を行なえば、つまり収載されれば、薬価というものはともかく下がる傾向があるということはお認めになるでしょう。
  135. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 新しい薬が開発されまして、それで薬価基準に新しく登載をされたということは、これから医機療関でその薬の使用が開始されるわけでございますので、使用の頻度が多いということになりますと、したがって値段は下がってくるということは、常識的に言えると思います。
  136. 山本政弘

    山本(政)委員 薬価基準の推移のモデルというので、タイプが五つ書いてあります。これもあなた方よく御存じの本で私は見たのですが、収載後二年ほど薬価の変動がなく、二、三年後急激に下落して、その数年後安定するものが一つある。それから、収載後三年の間に急激に下落して、その後は安定するもの。収載後二年ごとに段階的に下落して、四、五年後は安定するもの。収載時二年の間に急激に高騰して、その後高価格のまま安定するもの。収載時から薬価の変動なく長期に安定しているもの。この五つがあるわけです。問題は上のほうの三つですけれども、大方の薬品というものはこの中に入っておると思います。そうすると、私は、薬価基準というものを改定といいますか、調査をすれば必ずそういう傾向があるとすれば、薬価基準というものは毎年全面的に改正すべきだと思うのです。ある年まで毎年やられておったけれども、その後ほとんどなされておらない。三十八年でしたか、全面改正がなされて、そして今度やられておるわけです。一体、そういう事態がはっきりわかっておって、なぜ毎年おやりにならなかったか。その理由をお聞かせを願いたいと思います。
  137. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬価調査につきましては、先ほどから御説明申し上げておりますとおり、医療機関の購入価格でもって九〇%バルクラインの価格、こういうような中央医療協議会での申し合わせによって実施をいたしておるわけでございます。ところが、医療機関の購入価格でございますので、薬価調査につきまして医療機関側の御協力がなければ、薬価調査は行なわれないわけでございますが、過去におきましては、実施できなかった理由といたしましては、協力を得られなかったために、薬価調査が行なわれなかったということでございます。
  138. 山本政弘

    山本(政)委員 三十八年の十月一日、サイクロセリン、エチオナミドなど結核治療薬五品目の薬価基準の引き下げが告示されました。これは厚生省が推計しているんですが、これによって医療費が約二十億円浮くと言われた。こういうふうにあなた方は推計されているわけです。少なくとも薬価基準というものをもう少し毎年厳密にやっていって引き下げるという努力をしておけば、私はかなりな額が浮いてくると思います。いま申し上げた品目だけで約二十億円浮くんだというあなた方の推計があれば、なぜそうした努力というものをいままで払わなかったか。私はそういう面でも行政指導というものがたいへん不十分だという気がする。その理由をひとつ重ねてお伺いいたします。
  139. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 厚生省は薬価調査は実施をいたしたいわけでございます。また実施しなければならないと私どもは考えておりますけれども、しかし、そこに対象になります医療団体の御協力がない場合には、実施はできないわけでございますので、したがいまして、薬価改定を行なうということはできないということで続いていたのが過去の姿でございます。したがいまして、その間におきまして新しい薬が全然薬価基準に登載をされないということだけは防ごうということで、新しい薬の薬価基準の収載だけは数回にわたって行なってきました。ところが、薬価調査自体は、全面薬価改定をやる作業が物理的にできないためにおくれたわけでございますが、その辺を考えまして、鈴木前大臣のとき以来、毎年薬価調査を行なうということで中央医療協議会での話し合いもできましたために、四十二年度におきましては、医療機関の購入価格ではなしに、販売サイドの面での薬価調査もやりまして、それで薬価改定を行なうという方針で現在進んでおるところでございます。
  140. 山本政弘

    山本(政)委員 私はことばじりをつかまえるという意味ではございません。しかし、あなたのおっしゃる協力団体のといいますか、そうおっしゃったのですが、その協力が得られなければできないという意味について理解ができない。あなた方はほんとうは国民のために医療保障というものをお考えになっているのでしょう。その場合に、国民を忘れて協力団体というのは、私はどういう協力団体か知りませんが、私の質問のあとに、もう一ぺん協力団体というのはどういうものかお伺いしたいと思いますけれども、ほんとうに行政指導というものを国民のためにするのだということでなされるならば、私は協力団体の協力がないということは、少なくとも主務官庁としては、そういう無責任なことは言えないと思うのです。そういう点はいかがです。
  141. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 過去におきましてのいろいろ経緯につきましては、私はこの際申し上げることは適当ではないと考えております。ただ、現在におきましては、山本先生指摘のように、やはり毎年薬価調査はやって薬価改定はやるというルールに従って、中央医療協議会におきましても話し合いをつけた上でやっておるわけでございますので、過去におきまして薬価調査をやった、やらなかったという点の御指摘は、たいへん恐縮でございますけれども、いろいろとその間の医療問題をめぐる諸情勢がございまして、なかなか実施できなかったわけでございますので、私どもとしては、今後は前向きに必ず毎年薬価調査をやって、毎年薬価改定をやるというふうなルールでやっていきたい、また、現実にやっておる次第でございますので、その辺はひとつ御容赦をお願いしたいと思います。
  142. 山本政弘

    山本(政)委員 これも私は率直に申し上げますけれども、わが国の健康保険制度というのは、薬業資本の代弁をしておる人たちによって、医療担当者に対する正当な技術料の支払いが保障されておらない、そして医薬品の販売収益に依存せざるを得ない状態に追い込んでいるような気がするわけです。だから医療担当者としても、必然的にそこに防御措置といいますか、そういうことをやらなければならぬ。だから医療担当者の利益というものは、薬価基準の薬価マイナス現実の購入価格ということにならざるを得なくなってくる。これはお認めになりますね。どうでしょう。
  143. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いわば技術部面の医療費の改定が行なわれないために、薬の値段の利ざやによります潜在的なマージンといいますか、そういったものにたよらざるを得なかったという過去の事実は、私ども認めざるを得ないと思います。
  144. 山本政弘

    山本(政)委員 だから、あなたのお答えのようになるから、そこに政治的な非常に複雑な問題をめぐって、価格というものが高い方向に維持されていく。この点については、私は、厚生省当局としてもほんとうに勇断をもって処理していただきたい、こう思います。  そこでお伺いしたいのは、大体、昭和三十五年以降に医薬品の大量生産によって生産価格というものは低価格になり始めた、こう思うのですけれども、薬価基準は昭和四十年ですかまで据え置かれておった。だからビタミン司のようなものは、昭和三十五年以降の量産医薬品だと思いますけれども、その生産原価はたいへん低いと思うのです。そして市場価格もそのために低くされる。それだけこれは医療の担当者にとってもまた有利な医薬品になっておる。そういう意味で、薬価基準というものは、昭和四十年末にはかなり改定がされましたけれども、市場価格と薬価基準の差というものは依然として大きい。特に大量購入の場合には、私はその差は一段と大きくなっていると思うのです。  そこでお伺いいたしたいのは、アリナミンの大量療法というものがありますが、これはいろいろと宣伝もされたし、それから啓蒙もされておると私は思うのですけれども、このことについてはアメリカでも否定的な見解があると思うのですが、厚生省当局はどのようにお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  145. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 アリナミンを含めまして、いわゆる活性ビタミン町誘導体というものがわが国で開発されましてから、ビタミンの大量療法というものが出てまいったわけでございますが、私どもとしましては、昭和三十九年にアリナミンを含めた活性ビタミン耳の誘導体の大量療法というものに承認を与えたわけでございます。  承認の根拠としましては、諸外国においても、前から大量療法というものが一定の治療効果があるということがいろいろ学術論文等で発表されまして、わが国においても戦前から、大量療法というものの特定の疾患に対する治療効果というものがいろいろ学者等で発表されておりまして、昭和三十九年に、たとえば神経系の疾患とかあるいは筋肉疾患とかいうような特定疾患について、アリナミンを含めたビタミン司の大量療法というものの治療効果がはっきり出てきているという臨床データが私どものほうに出てまいりましたので、当時の中央薬事審議会でこの問題を慎重に検討いたしました結果、いま申しましたように、特定の内科系の疾患とかあるいは神経系の疾患等について、大量療法なるものの治療効果が学術的にはっきりしている以上は許可するということで、三十九年当時、活性ビタミンB1の大量療法というものを承認いたしたいということになっておるわけでございます。
  146. 山本政弘

    山本(政)委員 資料をお持ちになっているかどうかわかりませんが、昭和四十年の国民総医療費は一兆一千七百七十一億円、医療保障関係の医療費は一兆九百七十四億円、そして医薬品使用額は四千三百九十億円。数字をちょっと控えておいていただきたいと思います。医師向けの医薬品生産額は二千五百十七億円。そこで私が申し上げたいのは、医薬品使用額と医師向けの医薬品生産額との間にかなりの差があるということであります。引き算をやってみますと千八百七十三億円という数字が出てくるのです。私はこの差が問題になってくるのではないかという気がするのです。つまり、この差というものはいわゆる潜在マージンではないのか、こう思うのですけれども、その点について厚生省の見解をお伺いしたいと思います。
  147. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 具体的な数字は別としまして、確かに医薬品の生産額というものが歴年ふえているわけでございます。そのうち、いまお述べになりました医家向けの生産額というものを何ぼ見込むかということについては、若干達観の要因が入らざるを得ないわけでございます。つまり、医家向け、大衆向け、小売り向けの比率というものは、私ども正確に調査したものがございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、達観で五十五対四十五くらいの比率になっておるということがいわれておるわけでございます。したがいまして、昭和四十年の場合は、たとえば、医薬品の生産額としましては四千五百七十六億円でございますが、それを、医家向けと小売り向けとに、かりに五十五対四十五の比率で案分いたしますと、医家向けの医薬品の生産額というものは二千五百十七億円、あるいは大衆向けの生産額というものは二千五十九億円、こういうかっこうになるわけでございます。  ここで、ただちょっと申し上げたい点は、この四千五百七十六億円という生産額はメーカーからの仕切り価格でございます。したがいまして、末端の小売り価格というものになりますと、この仕切り価格に、先生御存じのように若干の比率をかけなければならぬわけでございます。大体、私どもといたしましては、三割前後くらいの比率をかけていくというかっこうになるのじゃなかろうかと思いますが、四千五百七十六億円の生産額のかりに三〇%増にいたしますと、それの大体半分程度が医家向けのものになる、こういうかっこうになりまして、それにしましても、医療保険のほうで使用しました医薬品使用額というものの間に若干程度差額が出てくるということは、これは事実でございます。
  148. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっと確めてみたいのですけれども、医薬品使用額というのは、これは医師の請求分と見て差しつかえないわけですね。それから医師向けの医薬品生産額というのは、確かにあなたのおっしゃるように、これは推計額ですね。その推計の比率というのは五十五対四十五。これは薬をつくられておる日本製薬団体連合会の調査ですから、そんなに狂った数字ではない。なるほど、あなたのおっしゃるように、三割くらいかりにマージンをかけるとしても、なおかつかなりな額になっておる。千億円をこすのじゃないでしょうか。それだけのものが潜在マージンとして、単純に算術の計算になるかもわかりませんけれども、あるということについての厚生省考え方、この点についてお伺いしたいと思います。
  149. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先生いまお手持ちの資料は、「製薬企業の現状と考察」という形で出されております医薬品使用額四千三百九十億円、これであろうと思うのでございますが、これにつきましては、この数字自体、どういう計算によってやったかということにつきましては、私どもつまびらかにいたしておりませんので、この数字そのままを正しいと考えるかどうかということについては、いささか疑問を持っておるわけでございます。
  150. 山本政弘

    山本(政)委員 あなた方が疑問をお持ちになるならば、厚生省当局としては、医薬品使用額と、それから医家向け医薬品生産額と、これは推計でけっこうでございますから、幾らくらいに見られておるのか、お知らせ願いたいと思います。
  151. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私、薬務局長としまして、医薬品の生産額のほうだけを申し上げます。  私どもも、現在の医薬品の生産額の大衆向けと医家向けとの比率というものは、五十五対四十五あたりが大体一貫した妥当な線ではなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  152. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもの保険のほうで、総点数中に占める薬剤比率は、投薬、注射を含めまして、政府管掌健康保険で四十年で三八・二%、こういうことになっておりますが、これはあくまでも政府管掌健康保険だけの数字でございますので、他の保険、あるいは公的医療、結核、精神あるいは生活保護その他につきまして、この数字そのままで使っていいかどうかということについては非常に問題が多いわけでございます。政府管掌健康保険のほうでは大体三八%くらいが総点数中での比率であるというふうに御判断願いたいと思います。
  153. 山本政弘

    山本(政)委員 たいへんはぐらかされたようなお答えで困るのですけれども、いま薬務局長さんのほうは四千三百九十億円が妥当だ。私がお伺いしたいのは、ですから推計でけっこうなんです。推計でしかできないはずなんだから、医師向けの医薬品生産額というものが政管健保、組合合わせてどのくらいになっているか。つまりこの数字ですよ。二千五百十七億円という数字に見合う数字というものは、あなた方は一体どのくらいにお考えになっているのか、これをお伺いしているのです。はぐらかさないでほしいと思います。
  154. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いまあわてて計算を事務のほうでいたしましたので、あるいは間違っているかもしれませんが、私のほうのいまの計算によりますと、四千二百十五億円、これはもちろん政府管掌健康保険点数の比率三八・二を全部に同じと見て出した数字でございますから……。この製薬企業のほうの数字の一兆一千七百七十一億円の中には、あんま、はり、きゅうその他の経費も入っておると思いますので、これは戻さなければならぬということでございます。ただ、重ねて申し上げますけれども、政府管掌健康保険の率をそのまま使ったということですから、必ずしも正確ではないということであります。
  155. 山本政弘

    山本(政)委員 それにしても七十五億円という金が違っておりますね。これはたいへんな金額でしょうか。あるいはたいへんでない金額でしょうか。淡谷さんの質問のようになりますけれども、私はあとにやはり重大な問題があると思うので、お伺いしたいと思います。
  156. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いろいろと前提条件がございますので、何とも申し上げかねますけれども、しかし、生産額と、それから使用額とにつきまして、このように非常な開きがあるということ自体については、私どもは、これほどひどい開きがあるとは実は思っておりませんので、数字はなお検討する必要があると思います。
  157. 山本政弘

    山本(政)委員 指摘をされて、これほど大きな額があるとは思っておりませんと——多少の誤差があるかもしれません。と同時に、あなた方の掛けた比率についても、あるいは検討すべき点があるかもしれませんが、ともかくもわずかな金額ではないはずなのですよ。かなりな金額が出ているはずなのです。そういうことについてのあなた方の監督、それから、それが保険の額あるいは薬の額、そういうものに対してどう影響を及ぼしているのかということを、もっと真剣になって考えてもらわなければ実は困ると思うのです。こういうことのために、こういうあれこれの要件が積み重なった結果が赤字になっているのでしょう。遠因をずっとやってくれば、問題はそこまで行きつくのですよ。そういうことを検討されないで、ただ画一的に、基礎計数といいますか、そういうものだけを使って計算されて、そして、話は戻りますけれども、七百四十五億円の赤字でございますということについては、あなた方について、そういう面の努力といいますか、そういうものが私は非常に不十分だと思うのです。そういう点についてはひとつぜひ改めていただきたい、こう思います。
  158. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ただいま山本先生指摘数字をそのままといたしまして、確かに差があるということについてはいろいろ問題があることは、私ども事実と思います。ただ、その差額につきましては、先ほど薬務局長が申し上げましたように、メーカーのマージンといいますか、そういうものが入っておることは間違いありませんし、また片一方におきまして、いわば薬価基準価格と、それから御指摘のような実勢価格との差、そういうものが含まれておるということも、これは否定できないと思います。ただ、製薬会社のマージンの分は別といたしまして、医療保険のほうで負担しておりますその金額につきましては、これはいわば医療機関側の潜在マージンとして入っておる金額であって、仮定の話でございますが、もし全部吐き出すということになりますれば、これは医療機関にとっては、その瞬間においては経理面に非常に影響が出てくるわけでございますので、もし潜在マージンを吐き出すということであれば、それは技術料のほうに振りかえられてくる、振りかえざるを得ないという形になってまいりまして、過去におきましても全面薬価改定をやりまして、薬価基準の価格が非常に落ちた場合には、その分は技術料のほうに、たとえば初診料その他の技術料のほうにその分を点数でもって振りかえていくというような操作をいたしておるわけでございますので、ひいてはその問題はどういう取り扱いになるかと言いますと、中央医療協議会でやっております診療報酬部会の合理化の問題として処理していかなければならない問題だ、こういうことになるわけでございますので、その点は現在中医協のほうで真剣に検討されておるところでございます。
  159. 山本政弘

    山本(政)委員 私はお医者さんのマージンも、それはあると思います。これはいま概算と言っていいのか、あまり正確ではないと思いますけれども、それよりもむしろ薬剤資本のほうにもつと大きなマージンがあるはずです。  あなたのおっしゃるように、技術料に振りかえていくのだ、こういうのだけれども、それじゃお伺いいたしますよ。これも私の友人のお医者さんから聞いた。中風というのですかになって、からだが動かない。排尿、排便ができない。そこでお医者さんが患者のところに行って、カテーテルというのですか、これを挿入して排尿さした。しかしその前に、家族の人があまり見ておらないものだから、腰部が非常によごれておる、それをガーゼできれいに手当てをしてやって排尿さしてやって、うちに帰ってきて広げてみたら六十何円にしかならなかった、こういうことがあるのですよ。だから、医者はそういう点で薬剤のほうへ走っていくという、そういうケースは幾らでもあります。たとえば便の検査にしても、これは十五円か何ぼだという話です。正確なことは私は知りませんけれども。お医者さんはそれを嘆いておる。あなた方は、先ほど申し上げたように、お医者さんには潜在マージンというものがあるのだということをお認めになっておる反面に、技術料というものはお認めになっておらない。都合の悪いときには片一方に逃げる、都合のいいときにはあなた方はそれを押し通そうとする、私はどうもそういう気がしてならないのですよ。お医者さんにしたって、薬剤師にしたって、私は知識、経験、技術料というものはあるのだと思うのですよ。それは買うべきだと思うのです。そのことについては私は尊重すべきだと思うのです。何もそれを否定しているのじゃない。しかし、その反面に非常に不合理な作用が働いておって、それが結局はそういうあやまった方向に走らざるを得ないという問題を、あなた方はもう一ぺん考えるべきだと思うのです。どうもそういうことを考えないで、赤字の克服ということだけを頭の中に置いておられる。しかも、先ほど申し上げたように、七十五億円というものは概算だけれども、初めてでびっくりしたというようなことでは私は手ぬかりがあるような気がする。そういうことについて私はもっと真剣に考えていただきたいと思うのです。そのことについてのお考えをひとつ最後に——私が最後というのはこの項の最後ですよ。
  160. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 非常に重要なお話に移ってきたわけでございますが、御指摘のように、確かに、現在の診療報酬点数表は、お医者さんの技術が正当に報いられていない性質のものであるということを、私どもはこれは十分認めておるわけでありまして、それを改正していくという方向について私ども一存でやれるものではないことは、山本先生よく御存じのところだろうと思います。厚生省が、大臣を含めまして私どもがどんな改正をやろうとしても、やはりそこに関門があるわけでございまして、これは中央医療協議会というところで、被保険者保険者、それから医療機関側と公益が入ったところで話し合いの上でこれをきめていくわけでございます。したがいまして、その結果というものが点数表の改定という形になってあらわれるわけでございます。したがいまして、そのような不合理を是正していこう、これは現在の医療費の仕組みに不合理な点があるからこれを合理化していこうというのが、現在の中央医療協議会の公益委員先生方の強い希望でございまして、その合理的な線で技術を尊重していくという形で現在鋭意検討しておるところでございますので、その成果はいずれは出てくるというふうに私どもは考えております。
  161. 山本政弘

    山本(政)委員 私は坊厚生大臣を、そういう意味ではたいへん蛮勇をふるうことのできる大臣だと思います。  最後に、私のこの項における質問を終わるにあたって、さらに大臣のお考えを確認しておきたいと思うのです。
  162. 坊秀男

    ○坊国務大臣 医療費点数につきましては、私も就任以来、非常に不合理な点がある、これは否定できない事実だと思います。これにつきましては、これはどうしても改定をしなければならない、こういう決意をいたしておりますが、それにつきましても、ただいま担当局長が申し上げましたとおり、一つの機関を通じまして、そしてこれを検討調査をしていただきまして、それを基本といたしまして、私は蛮勇のある男でも何でもございませんけれども、できるだけ正しい方向にこれをきめてまいりたい、かように考えております。
  163. 山本政弘

    山本(政)委員 必要とするときには蛮勇をふるえるお人だというのですよ。  これは一ある新聞の広告部で薬局の店頭調査報告書というのをやりました。対象は大阪市内の百十四軒の薬局で一時から八時までの時間でやられております。資料は少しばかり古いのですけれども、このデータはそう変わっておらぬと私は思うのです。薬を買った理由として、理由がないという人が二七・六%、よくきくからというのが一九・四%、薬局ですすめられたというのが一二・八%、前から飲んでいるからというのが九・七%、広告に影響されているというのが八・四%、人にすすめられたというのが三・三%、体質に合っているというのが二・五%、その他が一六・二%。広告に影響されているというのが八・四%です。理由がないという二七・六%の中にも、テレビ、ラジオ、新聞、その他週刊誌をも含めて、これほど強烈な宣伝をやれば、理由がないという中に無意識的に頭にしみ込んだものがあると私は思う。ですから、理由がないというこの二七%の中にも、実際には広告に影響されたというパーセンテージがかなりあると思うのです。そういう点について、これはどなたに御質問したらいいのかわかりませんけれども、最近のそういう強烈な宣伝攻勢に対するお考え、そうしてそれに対する処置、このことについてお伺いしたい。
  164. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医薬品の広告のあり方につきましては、先ほども申し上げましたように、確かに医薬品の広告につきましては、ただいまお述べになったような趣旨の御批判をいただいているわけであります。ただ、私どもとしましては、医薬品の特殊性から申しまして、やはりある程度医薬品につきましては宣伝広告をしてよく内容をわからせるということが、当然必要であるわけでございます。したがいまして、そういう意味においては、一般の商品と若干違う特殊性を持っているわけでありますので、ある程度医薬品の広告というものは、一般の消費者の方に内容を正確に知らせるという役割りは、片一方において当然必要なわけであります。  しかしながら、最近の消費者保護の問題等も関連いたしまして、医薬品広告のあり方につきましては、いろいろ御批判なり御指摘をいただいております関係もありまして、そこに、昨年くらいを契機としまして、私どもも、医薬品の広告のうち、虚偽、誇大な広告等につきましては、各県当局を指導しまして、強力に取り締まりなり監督をやっているということが一つ。それからもう一つは、医薬品のメーカーのほうにおきましても、昨今の情勢を十分理解してもらうというようなことからしまして、自粛方策をいろいろ考えてもらっているわけでございます。したがいまして、ごく最近におきましては、数年前よりも、この虚偽、誇大の広告というものの違反件数も非常に減ってきておりますし、それからまた、内容的にも以前と異なった姿になっているわけでありますが、しかし、まだまだいろいろな面において十分とは言い切れない面がございますので、さらに今後医薬品の広告の姿勢を正していこうということで、本年も若干予算を計上しまして、テレビ広告の監視ということをやっていきたいということで現在計画を進めているということが一つでございます。  もう一つは、当然山本先生から御指摘があろうかと思いますが、医薬品の広告費というのが非常に多いんじゃないか、一般産業の中で医薬品の広告が非常に多いんじゃないか、こういう点があろうかと思いますが、これも、いま申しましたような趣旨からしまして、四十年をピークにしまして、四十一年あたりには、医薬品の広告費が全体的に相当下がってきております。したがいまして、私どもは、そういう広告全体の姿勢を正すというような方向で、今後とも十分気をつけてメーカーのほうにも指導していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  165. 山本政弘

    山本(政)委員 私は薬というのは本来的には毒だと思うのです。病気をなおすための治療効果と、薬が持つ副作用といいますか、そういうもの、あるいはその他の害というものを比較しながら、その薬を使用するかしないかということをきめるのがお医者さんの正しいあり方だと思うのです。しかし、先ほどから繰り返し申し上げているように、希望納入価格とかあるいは医療投与とかいうものを考え合わせますと、もっと厚生省当局としても監督を厳にして、誤った薬の使用というものをやめるように指導していただきたいと思います。  そこでお尋ねしたいのは、先ほど受診率かける一件当たりの日数かける一日当たり金額ですか、これが医療費だということで、受診率、一件当たりの日数というものはほとんど変わりがない。ふえたのは一日当たり金額である、こう申されておりました。そして、その中心になるのが薬剤だと思いますけれども、私の手元には、医療費中に占める薬剤費の比率の伸びというものが三十八年までありますけれども、三十九年、四十年、四十一年、そして四十二年の見込み等を含めて、一体どれくらいかお聞かせ願いたいと思います。
  166. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 これは社会医療調査というもので毎年やっておるわけでございますが、総数だけを申し上げてみますと、三十八年までは御存じと思いますが、三十九年が三六・八でございます。四十年が先ほど申し上げましたように三八・二で、四十一年は、まだ社会医療調査の集計ができておりませんのでわかりませんけれども、傾向としては伸びるというふうに御判断いただいてけっこうだと思います。  なお、つけ足しでございますが、この伸び率の分を入院外来に分けた場合に、外来のほうが非常に伸びが高い。外来におきましては、総数において四十年度で四六・七というふうになっております。
  167. 山本政弘

    山本(政)委員 ではお伺いいたしますけれども、薬剤費伸びておる原因というのは、一体どういう点にあるのかということですが、それをお聞かせ願いたい。
  168. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 これはやはり基本的には、医学、薬学の進歩によりまして新しい薬が開発されまして、いい薬でしかも高価な薬がたくさん使われておるということが、まず何といっても大きな原因ではなかろうかと思います。
  169. 山本政弘

    山本(政)委員 主たる原因は、医学、薬学の進歩に伴う、特に薬剤の進歩だと思うのですけれども、そのほかにございませんか。原因があれば、ぜひそういう点についてもお聞かせを願いたいと思います。
  170. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 一般的に一日当たり医療費、先ほど御指摘のような積算の基礎となります医療費の増加という点が著しいわけでございまして、これにつきましては、前回にも御説明申し上げたと思いますけれども、やはり疾病構造等が変わってきておりますし、人口構造も変化をしてきておるということでございまして、そのために、五年前の数字とははなはだしく医療費の中身から数量から変わってきておるということが言えるわけでございます。  ただもう一つ医療費の中に占める薬品、注射代が非常にふえておるということにつきましては、これはやはり何と申しましても、その需要が高いというふうなことも一つ原因ではなかろうかと思います。
  171. 山本政弘

    山本(政)委員 疾病構造の変化の中で、成人病というのがありますね。これもふえておりますね。これは薬剤の使用の比率が高い疾患だと思うのです。同時に、これは老人の罹病率というのですか、高いと思うのですけれども、この比率というものは、大体青年層に比べて二倍ぐらいになるのじゃないか、こう私は理解をしております。そうしますと、この辺について、これは生活保護層ということももちろんありますけれども、大体そういう人たちというのは、これは就業能力のだんだんなくなってきた人だと考えてもいいかどうか。それをひとつお聞かせ願いたいのです。
  172. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 老人の一人当たり医療費が高いということは事実でございますが、それが端的にあらわれておりますのは、何と申しましても国民健康保険のほうでございます。政府管掌健康保険のほうは、実は国民健康保険と全然違いまして、非常に若い層が多い。しかも被扶養者が少ないということで、これは各種の保険の中で、扶養率から言いますと、政府管掌健康保険が非常に少ない扶養率になっておるわけでございます。しかし、概括的に申し上げまして、やはり老人の方々は病気にかかる度合いも高く、またその医療内容もいろいろと疾患が複雑な形になっておるということは言えると思います。ただ、就業につきましては、政府管掌健康保険をやめられた場合には国民健康保険にいきますけれども、中小企業の場合には、申し上げましたように、非常に若年層にかたまっておるといいますか、層別に見ますと、若年層のほうに比率が高くなっておるということは申し上げてよかろうかと思います。
  173. 山本政弘

    山本(政)委員 薬剤需要の伸びというものは、そうすると、医学、学薬の進歩あるいは疾病構造の変化というのですけれども、絶対額ということから考えると、人口の増加、こういうことに基因するのじゃないか。適用人口の増加、こういうことになるのじゃないですか。
  174. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 これは絶対額ということではございませんので、やはり私どもの、いま申し上げましたのは、一日当たり金額の中に占める薬剤費の増加で申し上げましたから、ひいては一人当たり医療費についてやはり薬剤の占めるウエートが非常に多いということでございますから、人口の多寡とは関係はないというふうに御判断をいただきたいと思います。
  175. 山本政弘

    山本(政)委員 あと三十分だそうですから、それじゃ一応最後の質問に入ります。  新薬の許可、認可についてちょっとお伺いをいたしたいと思うのですけれども、薬の場合には、特許というのは物質特許と製法特許がありますけれども、これは製法特許になっておるわけですね。
  176. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医薬品の製造につきましても、特許法上の取り扱いは、いま御指摘のように、わが国におきます特許法の考え方としまして、いわゆる製法特許というものを現在とっておるわけでございます。
  177. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、先ほどの話と関連するのですけれども、たとえば先発メーカーが一つの薬をつくる、そうして収益があがるとこれに多くのメーカーがついていく、こういうケースがたくさんあると思うのです。ビタミンの場合をとってみても、二十何社というケースがあると思うのですけれども、そういうものについて、あなた方は、佐賀の事件ではありませんけれども、規制をするというお考えがあるかないか、この辺についてひとつお伺いをしたい。
  178. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 特許法がただいま申しましたようなたてまえをとっております以上は、先発メーカーと後発メーカーとの関係をうまく行政指導で調整をする点には、なかなか限界があるわけでございます。いま政府部内においても、あるいは業界方面におきましても、このような制度というものを根本的に改めたほうがいいんじゃないか、つまり特許制度というものを改めたほうがいいんじゃないかということで、いろいろ過去議論をいたしておりますが、なかなかまだ結論が出ないという状況にございます。  それから、制度はそのような、かりに現在のような制度をとっているとしましても、われわれのほうの行政運用と申しますか、行政指導面で、先発メーカーと後発メーカーとの関係、つまり類似品目の医薬品が次から次に出てくるというような、このような体制を何らか規制をする必要があるのじゃなかろうかという意見は、私どもも前から痛感をしているわけでございまして、特に、今後わが国の医薬品が資本自由化等の問題をかかえている現在でございますので、そのような類似品目の過当競争というような形で製薬メーカーが激しい競争をやることは、将来の方向として非常に問題が残るのじゃなかろうかというような観点からしまして、この類似品目の生産等、あるいは先発メーカー、後発メーカー等の問題を含めまして、ただいま私どものほうで検討を加えている段階でございます。
  179. 山本政弘

    山本(政)委員 検討を加えるというのは、一体どういう方向で検討を加えておるのですか。
  180. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 特許制度が現在のままの制度である限りは、なかなかすっきりした形の解決策というのはできにくいということは、先生もおわかりだろうと思います。したがいまして、私どものほうの行政運用といいますか、たとえば製造承認をする際に、現在は、先発メーカーが申請を持ってまいりまして、それが一定の基準に合致した場合は製造承認というものを与えるわけでありますが、その製造承認を与えましてから大体六カ月間くらいは、後発メーカーの申請があっても、現在自主的に承認を押えているわけでございます。この六カ月間の期間を今後一年なり何年なりに延ばしていくかどうか、この問題を現在当面の解決策として検討を加えている、こういう問題でございます。
  181. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、新薬の許可というのですか、これは定期的にやっているのですか、不定期にやっているのでしょうか。
  182. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医薬品の申請は、毎日毎日実は全国のメーカーからあるわけでございます。したがいまして、私どものほうとしましては、それを申請のあったもの——形式的に書類は完備しているかどうかは別としまして、内容審査を始めているわけでありますが、内容審査の結果、大体一応の結論に近いものが出ますと、それを中央薬事審議会という学識経験者、専門学者の集まった審議会でございますが、ここに諮問をいたしまして、その諮問に基づく答申をもらいまして厚生大臣が許可をする、こういうたてまえになっているわけでございます。一応薬事審議会のそれぞれの部会なり調査会がございますが、これは申請のなされた当該医薬品についていろいろな角度から検討いたしますので、大体現在年に二回か三回ぐらいしか会合が開けないということでございますので、大体申請があってからどんなに早くても一年はかかる。大体普通のケースでございましたら二年、三年、長いものは五年ぐらいかかっている、こういうようなことであります。
  183. 山本政弘

    山本(政)委員 新薬の許可の場合に、一つ先発メーカーとして新薬が開発されると、これは製法の特許というようなことで、次々と多くの後発メーカーがこれにならって同じような類似薬品というものをつくっていく、それが売らんかな主義で大衆のほうに過大広告とかなんとかという形で普及していく、こういう事実があると思うのです。お断わりしておきますけれども、私は創業者というか、開発者というか、そういう先発メーカーの利潤を認めるというのではありませんよ。しかし、それはそれとして、類似薬品というものが、続々と二十何社もここにあるように出てくることについては、たいへん疑問を持つし、それがある場合には薬禍を招くこともあると思うのです。そういう点について、制度的に製法特許あるいは物質特許とこういうものがあるのですけれども、一体どの方法をとったらいいのかということをぜひひとつ積極的に前向きにやってもらいたい、こう思うのです。それと一緒に、ビタミンB1をとってみても、これほど大量のものが出ているということについて、薬価基準からビタミンをはずすというような考えがあるかどうか、この点についてひとつお伺いをしたい。
  184. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ビタミン剤を薬価基準からはずすかどうかという問題は、一時新聞紙上にも出たことがあるわけでございますが、これは、現在のビタミン剤の使用につきまして、学問的にもいろいろと臨床データその他を集めた上での薬価基準の登載になっておりますし、やはり薬価基準から一定の薬をはずすかどうかということについては、慎重に検討しなければならぬ事項も多いわけでございますので、現在の段階では、まだどうこうするという私どもの結論を持っておるわけではございません。
  185. 山本政弘

    山本(政)委員 最後に、薬の輸出額、それから輸入額、それから輸入は主としてどちらのほうから入ってきているのか、それから輸出はどういう方面に出されておるか、これについてひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  186. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医薬品の輸出及び輸入の問題でございますが、まず最初医薬品の輸出のほうの問題としまして、これははなはだ残念なわけでございますが、わが国の医薬品の輸出額というのは、例年非常に微々たる輸出額になっているわけでございます。大体生産額に対しまして三%前後の輸出額を出しているということで、これは今後の製薬メーカーのあり方として非常に大きな一つの問題だろうと思って、従来からたびたび輸出振興策を何らかの形で打ち出すように指導はいたしておるわけでございますが、簡単な解決策がないというのが状況でございます。  輸出の相手国でございますが、バルクにつきましては欧米の先進国に行っている。それから、完成品、完全な製品としては東南アジア方面に大体行っている。この比率は大体輸出額のうちで半々くらいだろう。つまりフィフティー・フィフティーぐらいの程度で、欧米先進国と東南アジア方面とにバルクあるいは製品として行っている、こういうようなかっこうに大体なっておるわけであります。  それから、片一方輸入の実績でございますが、輸入の実績は、輸出と違いまして毎年少しずつふえてきておりますが、それにしても大体生産額の五%程度の輸入額になっているわけであります。この輸入の相手国、つまりどこの国から輸入しているかということは、大体欧米の先進国からの輸入が大部分であるわけでございます。  それから品目別に申し上げますと、輸出、輸入ともに大体ビタミン剤——ビタミン剤といいますのは、ビタミンの中にビタミンAだとかビタミンBだとかあるいはKとかLとかいろいろございますが、そういうビタミン剤、それから抗生物質、ホルモン剤、こういうようなものが輸出輸入を通じてのおもな品目でございます。
  187. 山本政弘

    山本(政)委員 輸出の三%というのが、私は、みごとにいまの日本の薬業資本というもののあり方を端的に表現していると思うのです。それはなぜかと言ったら、これは健康保険に便乗しているということです。これは私は考えなくてはいかぬと思うのです。同時に、それでは輸入が若干輸出よりも高い、こういうことについても、企業の努力が足らないと思うのです。これはやはり製法の特許と関連をすると思うのですけれども、一つの製薬会社が何か開発すればそれに便乗するという、きわめて安易な考え方がそこにあるからです。けさの新聞に、お読みになったかと思いますが、住友化学がメルク社へ非ステロイド系の抗炎症剤を輸出することになっている。これは特許ですね。しかもこの金額はかなり大きな金額ですよ。私はそういう点についても、厚生省は、輸出が三%、輸入が五%というパーセンテージの陰に何かあるか、そして何をしなければならないのかということを、ひとつぜひお考えを願いたいと思うのです。  と同時に、最後ですから一言だけ申し上げたいと思うのは、生化剤といえばおわかりになるかと思いますけれども、これは西ドイツ一社で、その会社だけです。そして三十六年かに開発されている。しかも、医薬の雑誌を見ても、コスト・ダウンがすでになされておるにもかかわらず、依然として高い価格が維持されている。こういうことも私はぜひお考えになっていただきたいと思うのです。これは赤字克服ということも必要ですけれども、国民の健康というものを考えれば、たとえ保険というものがあっても、もし薬剤の一部負担ということが——厚生省は強い意向を持っておられるかもわからぬけれども、実施されるようになると、かかれないという患者さんがたくさん出てくるという現実も、私は十分お考えになっていただきたいと思う。そういうことを申し上げて、私は本日の質問を終わりたいと思います。
  188. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 ただいま御指摘になりましたわが国の医薬品産業のあり方というものは、私どもも全く同感でございます。これまでの医薬品の企業のあり方としましては、国内市場の獲得にきゅうきゅうとしていたというのが偽らざる実情だろうと思います。しかしながら、やはり今後のあり方としましては、新しい独創的な医薬品を開発しまして国際市場に乗り出していくということが、今後の医薬品メーカーの基本的な課題だろうと思います。したがいまして、そういうような観点から、現在資本自由化問題も控えまして、医薬品メーカーもだんだん基本的な考え方を変えていきつつあります。また、われわれ当局の者も、そういう基本線に沿いまして、今後医薬品のメーカーの行政指導なり何なりをやっていくということで、かねがね大臣からも強くその点の指示ももらっておりますので、そういう方向で今後われわれぜひ努力をしていきたい、かように考えているわけでございます。
  189. 川野芳滿

    川野委員長 次会は、明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後四時四十五分散会