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1967-06-29 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十九日(木曜日)     午前十一時二十二分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 橋本龍太郎君    理事 粟山 ひで君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       天野 光晴君    河野 洋平君       菅波  茂君    世耕 政隆君       田中 正巳君    竹内 黎一君       中野 四郎君    丹羽 久章君       藤本 孝雄君    増岡 博之君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       西風  勲君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         労 働 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         大蔵政務次官  小沢 辰男君         大蔵省主計局次         長       岩尾  一君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月二十九日  委員中山マサ辞任につき、その補欠として丹  羽久章君が議長指名委員に選任された。 同日  委員丹羽久章辞任につき、その補欠として中  山マサ君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十八日  心臓病の子供の育成医療助成拡充に関する請願  外八十一件(神田博紹介)(第一七三一号)  同(川上貫一紹介)(第一九三〇号)  心臓病専門病院増設に関する請願外八十一件  (神田博紹介)(第一七三二号)  同(川上貫一紹介)(第一九二九号)  心臓手術のため供血制度改善に関する請願外八  十一件(神田博紹介)(第一七三三号)  同(川上貫一紹介)(第一九三一号)  各種福祉年金併給限度緩和に関する請願(稻  村左近四郎紹介)(第一七三四号)  同外二十件(大久保武雄紹介)(第一七三五  号)  同(大竹太郎紹介)(第一七三六号)  同外五件(大坪保雄紹介)(第一七三七号)  同(大野市郎紹介)(第一七三八号)  同(金子一平紹介)(第一七三九号)  同(上林山榮吉君紹介)(第一七四〇号)  同外二件(小平久雄紹介)(第一七四一号)  同(河野洋平紹介)(第一七四二号)  同(坂田道太紹介)(第一七四三号)  同(坂本三十次君紹介)(第一七四四号)  同外二件(野田武夫紹介)(第一七四五号)  同外二件(船田中君紹介)(第一七四六号)  同外三件(森山欽司紹介)(第一七四七号)  同外六件(伊藤宗一郎紹介)(第一八五八  号)  同(稻村左近四郎紹介)(第一八五九号)  同外十二件(大坪保雄紹介)(第一八六〇  号)  同(北澤直吉紹介)(第一八六一号)  同(坂田英一紹介)(第一八六二号)  同(世耕政隆紹介)(第一八六三号)  同(谷垣專一君紹介)(第一八六四号)  同(渡海元三郎紹介)(第一八六五号)  同外六件(原健三郎紹介)(第一八六六号)  同外四件(羽田武嗣郎紹介)(第一八六七  号)  同外二件(保利茂紹介)(第一八六八号)  同外一件(森田重次郎紹介)(第一八六九  号)  同(森山欽司紹介)(第一八七〇号)  同外二件(愛知揆一君紹介)(第一九〇八号)  同(内海英男紹介)(第一九〇九号)  同外十九件(大坪保雄紹介)(第一九一〇  号)  同外四件(大橋武夫紹介)(第一九一一号)  同(熊谷義雄紹介)(第一九一二号)  同外五件(櫻内義雄紹介)(第一九一三号)  同外二件(野田武夫紹介)(第一九一四号)  同(山手滿男紹介)(第一九一五号)  同外六件(吉田重延紹介)(第一九一六号)  医療保険制度改悪反対に関する請願外七十六件  (阿部哉君紹介)(第一七四八号)  同(小川三男紹介)(第一七四九号)  同外二件(河野正紹介)(第一七五〇号)  同外二件(佐々木更三君紹介)(第一七五一  号)  同(田邊誠紹介)(第一七五二号)  同(中嶋英夫紹介)(第一七五二号)  同外二件(成田知巳紹介)(第一七五四号)  同(畑和紹介)(第一七五五号)  同(平林剛紹介)(第一七五六号)  同外九件(松本七郎紹介)(第一七五七号)  同(阿部哉君紹介)(第一七八一号)  同(淡谷悠藏紹介)(第一七八二号)  同(井手以誠君紹介)(第一七八三号)  同(石川次夫紹介)(第一七八四号)  同(石田宥全君紹介)(第一七八五号)  同(太田一夫紹介)(第一七八六号)  同(岡本隆一紹介)(第一七八七号)  同(神近市子紹介)(第一七八八号)  同(唐橋東紹介)(第一七八九号)  同(川村継義紹介)(第一七九〇号)  同(佐々栄三郎紹介)(第一七九一号)  同(田原春次紹介)(第一七九二号)  同(高田富之紹介)(第一七九三号)  同(中井徳次郎紹介)(第一七九四号)  同(浜田光人紹介)(第一七九五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一七九六号)  同(山口鶴男紹介)(第一七九七号)  同(山本幸一紹介)(第一七九八号)  同(山本政弘紹介)(第一七九九号)  同(米田東吾紹介)(第一八〇〇号)  同(八木一男紹介)(第一八〇一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一八一四号)  同(板川正吾紹介)(第一八一五号)  同(稻村隆一君紹介)(第一八一六号)  同(河野正紹介)(第一八一七号)  同(栗林三郎紹介)(第一八一八号)  同(東海林稔紹介)(第一八一九号)  同外一件(内藤良平紹介)(第一八二〇号)  同(森本靖紹介)(第一八二一号)  同(横山利秋紹介)(第一八二二号)  同外五件(川上貫一紹介)(第一九三二号)  同(田代文久紹介)(第一九三三号)  同外二件(谷口善太郎紹介)(第一九三四  号)  同外二件(林百郎君紹介)(第一九三五号)  同(松前重義紹介)(第一九三六号)  同外一件(松本善明紹介)(第一九三七号)  健康保険制度改悪反対に関する請願外一件(佐  藤觀次郎紹介)(第一七五八号)  同(田邊誠紹介)(第一七五九号)  同(平林剛紹介)(第一七六〇号)  同外三件(八木一男紹介)(第一七六一号)  同外一件(八木一男紹介)(第一八〇二号)  同(井上普方紹介)(第一八二三号)  同(佐々栄三郎紹介)(第一八二四号)  同(島本虎三紹介)(第一八二五号)  同外二件(八木一男紹介)(第一八二六号)  同(田代文久紹介)(第一九三八号)  同外二件(松本善明紹介)(第一九三九号)  原水爆被害者援護法制定に関する請願金丸徳  重君紹介)(第一七六二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一七八〇号)  全国産業一律最低賃金制確立等に関する請願  (平林剛紹介)(第一七六三号)  同(広沢賢一紹介)(第一七六四号)  同(山本政弘紹介)(第一七六五号)  同(木原実紹介)(第一八二七号)  同(田代文久紹介)(第一九四三号)  健康保険制度改善に関する請願加藤万吉君  紹介)(第一七六六号)  同外一件(松前重義紹介)(第一九四六号)  全国産業一律最低賃金制及び医療保障確立  等に関する請願内藤良平紹介)(第一八二  八号)  健康保険法改悪反対に関する請願古川喜一君  紹介)(第一八二九号)  同(谷口善太郎紹介)(第一九四五号)  失業保険労災保険制度改悪反対等に関する請  願(古川喜一紹介)(第一八三〇号)  原水爆被害者援護法制定等に関する請願外一件  (谷口善太郎紹介)(第一九四〇号)  季節労働者に対する失業保険改悪反対に関す  る請願(林百郎君紹介)(第一九四一号)  精神衛生思想普及等に関する請願松本善明  君紹介)(第一九四二号)  国立病院療養所医師等増員に関する請願(  谷口善太郎紹介)(第一九四四号)  授産事業法制定に関する請願上村千一郎君紹  介)(第一九四七号)  国民年金法の一部改正に関する請願谷口善太  郎君紹介)(第一九四八号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願(林百  郎君紹介)(第二〇〇六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案内閣提出第九八号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九九号)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題として、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。
  3. 淡谷悠藏

    淡谷委員 このたびの健康保険法案が非常に重大な意義を持っておることは、この間やり直しをされました厚生大臣提案理由説明を聞いて特にその感を深くしたのであります。この提案理由説明の中で、厚生大臣は、「特に政府管掌健康保険及び船員保険においては、深刻な財政危機に直面しており、このまま推移すれば、制度崩壊すらおそれられる事態に立ち至っております。」ということを前提にしまして、「医療保険制度については、将来にわたる安定と発展の基盤を築くため、各制度全般を通じた抜本的な対策を講ずることが必要であり、政府はつとにその検討を進めてまいったのでありますが、諸般事情により、いまだ成案を得るに至っていない現状にあります。」ということを言われている。相当早くから抜本的な対策を講ずることの必要を痛感しておったそうでありますが、これが諸般事情によってできない。「これ以上の赤字を出さぬよう臨時応急措置を講ずることが必要であります。」ということですが、この法案はあくまでも臨時応急措置であるというふうに受け取ってかまわないでしょうか。しかも、その臨時応急措置というのは、抜本的な回復をするまで待っておれないから、財政赤字のためにこの制度崩壊をおそれるあまり講じたのだと、こう受け取ってよろしいかどうか、厚生大臣からはっきりした御答弁をいただきたいのでございます。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 政府管掌健康保険船員保険の内容は、淡谷委員十分御存じのとおり、累積赤字がふえてきていることであります。四十二年度における単年度赤字も放置することはできないというような状態に相なっております。そこで、保険全体をながめてみますと、これはどうしてもいろいろな事情によりまして抜本的、根本的な改正をしなければならないということ、これはもう数年来そういうことが考えられてまいったことでございまして、この点についても淡谷委員はよく御了解いただけることだと思います。  そこで、厚生省におきましては、相当早くからこの問題を解決しなければならないということで検討を加えてまいったのでございますけれども、さていよいよ四十二年度に突入するという事態と、まあ政治の激流と申しますか、政治動きでございますか、その動きとが全く同時にやってまいるということに相なりまして、その政治動きの中におきまして抜本対策策定、立案するということは、事実上の問題といたしましてとうていむずかしい、こういう事態に逢着したのでございます。しかしながら、四十二年度予算というものは、そういうことにはおかまいなしにどうしても国としては組んでまいらなければならない。そこで、その四十二年度予算を組むにあたりましては、現実にできておりますところの四十二年度における健保の赤字というものを予算の上で処理しなければ相ならない、かようなわけでございまして、抜本的な改正はそのような事態の中においてはできない、しかし予算は組まなければならない、こういうような事態でございましたので、抜本的対策策定ということは望ましいことでございますけれども、事実上これを策定するという作業ができません。そこで、少なくともこの予算を要求するにあたりましては、この赤字をいかにして解消するかということで今度の臨時緊急対策というものをつくった次第でございます。
  5. 淡谷悠藏

    淡谷委員 念のためにもう一つ確かめておきたいのですが、この臨時措置法律案というのは、あくまでも財政上の必要からやった臨時措置なんですね。その点をもう一ぺん確認しておきたいのです。
  6. 坊秀男

    坊国務大臣 この保険制度が四十二年度におきまして非常に危殆に瀕して、あるいは支払い遅滞におちいるようなおそれもあるということから考えまして、その財政をいかに処理すべきかということでやっておりますけれども、要するに、四十三年度に遺憾なくこの保険を運営していくためにはということでございまして、その手段方法としましては、財政が非常に危殆に瀕しておりますから、そこで、保険を円満に遺憾なく運営していくためには、手段方法としての財政というものをしっかりさせなければならない、こういうことでございます。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、たいへん用心して答えておられるようですが、別段伏兵を持っておりませんから、もっと率直にお答え願いたいのですが、これは保険行政をうまくやっていくためには財政だけじゃないと思うのであります。したがって、今度の措置は、その運営の中でも一番大きな阻害をなしております財政の必要があっての臨時措置である、応急措置である、こう理解してよろしいのでしょう。これは率直にお答えを願いたいのです。説明はもう要りませんから。確認しておけばよろしい。
  8. 坊秀男

    坊国務大臣 結局は、財政というものの処理によって保険をうまくやっていこう、そういうことでございます。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 わかりました。そこで、政府管掌保険が一番大きな財政危機に見舞われておることば事実でありますが、あと各種保険状態はどうなっておりますか。これは船員保険はありますけれども、全般保険財政についてお答え願いたい。これは大臣ちょっと無理でしょうな。これは保険局長でよろしい。
  10. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 政府管掌健康保険のほうは御承知のとおりでございますが、全部四十年度決算でございますけれども、健康保険組合は百二十八億円の黒になっております。それから国家公務員共済組合は四億八千万円のやはり黒、公共企業体職員共済組合は三十二億円の黒、地方公務員共済組合は四十七億円の赤、私立学校共済組合は二千万円の赤、そういうことでございます。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、やり方によっては保険事業必ずしも赤字を出さないのだということがはっきりいたしましたが、ひとつ大臣にお聞きいたしたいのは、この提案説明にありますとおり、深刻な財政危機に直面しておるというのは現状でございますけれども、初めから深刻な財政危機には直面してなかったろうと思う。特にこの保険発足以来三年間くらいは、政府管掌保険も黒字を出しておったはずであります。この危機いつお感じになったのか。赤字がこのような状態になるということを、これはやはり厚生大臣として感じないでおれないのが常識なんでありますが、こういう重大な危機は突如として起こったものではない。必ずこういうきざしが見えておったに違いない。これは坊厚生大臣は新しい厚生大臣であることは知っておりますけれども、新しいからといって、厚生大臣である限りは、やはり前任の厚生大臣の責任も継承しなければならない。ですから、これはひとつ局長などに答弁をまかせないで、大臣から直接にこの赤字危機を感じた時期について御答弁を願いたいと思います。
  12. 坊秀男

    坊国務大臣 赤字を生じましたのは三十七年からでございます。三十七年、三十八年、以下ずっと本年まで赤字を生じておりますが、赤字数字を申し上げましょうか。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうぞ。
  14. 坊秀男

    坊国務大臣 それでは、三十七年に赤字が十六億円生じました。三十八年には百三十一億円生じました。三十九年には三百六十三億円生じました。そこで三十九年の過去二年からの累積赤字が百七十三億円でございます。四十年には単年度四百九十七億円生じました。累積が六百六十九億円でございます。四十一年は、まだ見込みでございますけれども、三百三十四億円でございます。そこで累積は千四十六億円と相なります。四十二年の見込みは、たびたび申し上げましたとおり七百四十五億円でございますが、それを累積いたしますと千八百八十三億円、こういう数字に相なります。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、四十二年度見込みが七百四十五億円見込まれておりますので、各年度ごと赤字見込みがあったはずでありますが、三十七年以来の赤字見込み額というものを御説明願いたい。
  16. 坊秀男

    坊国務大臣 もうちょっと……。ちょっと理解いたしかねますので……。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 四十二年度赤字見込みは七百四十五億円見込まれておりますが、これは実際はどうなるかまだわからないのです。この赤字見込みもいろいろあとで申し上げますけれども、非常に理屈に合わぬところがある。したがって、三十七年、三十八年、これまた、ばく然と赤字が出たのじゃなくて、当初においては、その年の財政がどうなるかというお見込みがあったろうと思うし、あるのが当然なのでありますから、三十七年から四十一年までの、当初の財政見込みというもの、赤字見込みというものをひとつお聞かせ願いたい。
  18. 加藤威二

    加藤政府委員 予算決算数字はございますが……。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちょっと議事進行上。私の質問の要旨をよくおのみ込みの上で、これはできるだけ審議を早めたいと思いますから、むだなことは言わないでお答え願いたいのです。私のいま必要とするのは、七百四十五億円という四十二年度赤字見込みに狂いがないかどうかを聞きたいのです。したがって、予算決算関係はどうでもよろしいから、結局、予算決算を見て、当初の赤字は幾らに見込まれておったかということをしぼってお答え願いたい。あまりごたごた言いますともう一ぺん質問しなければだめですから、お互いに時間の経済上困りますから、端的な御答弁を願いたいのです。
  20. 加藤威二

    加藤政府委員 ちょっと数字を整理してすぐ御報告申し上げます。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは待っていますから……。   〔「委員長休憩」と呼びその他発言する者あり〕
  22. 加藤威二

    加藤政府委員 三十七年度から申し上げますが、三十七年度におきましては、赤字を二十五億円見込んだわけでございますが、現実に出ました赤字は十六億円でございます。三十八年度は、当初見積もりました赤字が五億円でございますが、出ました実質的な赤字が百三十一億円でございます。それから三十九年度当初見込み赤字七十五億円でございますが、出ました赤字が三百六十三億円でございます。四十年度は、当初見込みが六百五十九億円でございますが、出ました赤字が四百九十七億円でございます。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 四十一年……。
  24. 加藤威二

    加藤政府委員 四十一年度は当初見込みが二百二十八億円でございます。それで現在のところ、出るであろうという四十一年の赤字が三百三十三億円でございます。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これ一億円狂っていますよ。四十一年度のさっきの報告では三百三十四億円と言った。いま三百三十三億円と言った。一億円どこにいきましたか。
  26. 加藤威二

    加藤政府委員 端数の切り下げと切り上げの関係でございます。正確に切り上げれば三百三十四億円でございます。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 おかしいと思いますね。正確に切り上げる場合と、正確に切り下げる場合同じなんですか。あなた軽く一億円と言いますが、庶民の生活にとっては一億円は大きいですよ。これを、正確に切り上げたら四億円、正確に切り上げないから三億円というのは、はなはだずさんな数字じゃないですか。これは三百三十四億円のほうが正しいんですか。
  28. 加藤威二

    加藤政府委員 四捨五入しますと三百三十四億円です。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 じゃ、どうなれば三百三十三億円になるのです。四捨五入しないで切り捨てる場合ですか。一億円になるかならないかを、四捨五入したりかってにできるんですか。原則があるんでしょう。
  30. 加藤威二

    加藤政府委員 現実に積算をいたしますときはもちろん最後の円まで出してありますが、一応億単位でまとめてお返事申し上げたわけでございまして、正確な数字を申し上げますと、三百三十三億五千三十三万円でございます。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 厚生大臣お聞きのとおり、三十七年度財政赤字は二十五億円という見込みに対して十六億円、三十八年度は五億円という見込みに対して百三十一億円出ているんですよ。三十九年度は七十五億円という見積もりに対して三百六十三億円、四十年度は六百五十九億円と見ているが四百九十七億円、四十一年度は二百二十八億円と見て三百三十三億円、全くこれは財政赤字の見通しというものは、あってもなくてもいいという事実じゃありませんか。四十二年度の七百四十五億円もあてになった赤字じゃない。過去数年間全然あてにならなくて、どうして四十二年度は七百四十五億円という赤字見積もりを出したのか。この間違いをどこへ直したのか。大臣から聞きたい。全然根拠のない赤字見込みじゃないですか。
  32. 加藤威二

    加藤政府委員 いま先生おっしゃいますように、当初の……。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣が、この赤字見込みが数年にわたって事実と合わないという事実を認めますか。一体どうお考えになりますか。大臣の所信をお伺いしたいのです。
  34. 坊秀男

    坊国務大臣 見積もりと実際の出てきた帳じりとが、いま申し上げたように食い違っておるという事実は、もう否定できない事実でございます。そこで、こういったようなことに相なってくるということにつきましては、でき得る限り見積もり現実の結果というものが合わなければならないものではございますけれども、いずれにいたしましても、非常に膨大なる額の中におきまして若干の見積もりと結果との食い違いがあるということは、予算経理関係からどうしても食い違いが出てくる。ぴたっと合うということはなかなか困難だと思いますけれども、しかし、そういったような見積もりと結果というものができるだけ合致するように考えていかなければならないものであろうと思います。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは私、大臣に質問しているんですから、ちょっと出しゃばった答弁はやめてください。  ぴたっと合うとは思いませんよ、どうせ予想なんだから。しかし、同じ合わないにしても、二十五億円の予想が十六億円になったという三十七年度は、まだがまんができるんです。このくらいならば。五億円の赤字が百三十一億円になったということは、どういう手違いだったんですか。これは少々じゃないでしょう、大臣。百三十一億円の赤字のうち百二十六億円が誤りであったというようなでたらめな予想実績はどうなんですか。三十八年の大きな違いはどこから出発したのですか。
  36. 坊秀男

    坊国務大臣 最初の見積もりをやってから、その後の実績に至るまでの間に、制限診療等についての変更等がございました。そういう事実がございますので、そこで……(「何年だ」と呼ぶ者あり)三十七年の十月にこれがあった、それから三十八年に響いてきておる、こういうわけでございます。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう少し一般にわかるように御説明願いたいと思うのです。大臣がおわかりにならなかったら、この説明局長でもけっこうです。よくわかるような御説明を願いたいと思う。
  38. 加藤威二

    加藤政府委員 三十八年、三十九年、これは淡谷先生御指摘のとおりに、当初の赤字見込みと実際に出ました赤字との間に非常に大きな見積もりの違いがございます。その原因は、結局医療費の推計と申しますか、保険の収支の見積もりは過去の実績から推計して出しておるわけでございます。医療費につきましては、過去三年の伸びを見て翌年の医療費を推計する。収入につきましては、平均標準報酬等は過去二年についてやっておりますが、そういうことに一つのルールを——それが絶対に正しいかどうかは別といたしまして、長い過去にわたりましてそういう積算のしかたをしておるわけであります。それが三十八年、三十九年になぜこういう食い違いを生じたかということは、結局三十八年、三十九年に医療費が異常な伸び方をしておるわけであります。その原因は、先ほど大臣からも申し上げましたように、制限診療の撤廃ということが行なわれまして、それが私どもが予想する以上に、その影響かどうかわかりませんが、三十八年、三十九年に異常な伸びを示した。ところが、その積算をいたしますときには、過去三年間の伸びを見てやりますから、あまりたいした大きな伸びはございません。そこで三十八年、三十九年が非常に大きな食い違いができたわけであります。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで大臣にお聞きしたいのですが、当初は制限診療が予定されなかったのですね。そうしますと、当初の見込みがどうであろうと、必要に応じて、すなわち予算その他にかかわりなく、診療費等の変化があっても差しつかえないのでしょうね。これは最初の構想と違ったような財政の結果が出ましても、時の勢いやむなく屈服することもあるでしょうね。厚生大臣どうですか。一たん厚生省がこうきめたものをあくまでもとって、これを変えないというようながんこな態度は、厚生大臣、このあともおとりにならないでしょうね。確かめておきます。
  40. 坊秀男

    坊国務大臣 その生じました事項によりまして、これは最初きめたものだからどうしてもその数字でなければならない、こういうことではございません。その事項等について、これは当然そうあるべきものであるということでありますれば、最初の見積もりあとに出てくる結果というものの間を、それによって引きずっていくということではないのでございます。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、四十年の見込み額と実際との相違、これも、三十九年までは大幅に変わったと申しますが、六百五十九億円という見込みが四百九十七億円で、逆に今度は赤字が減っているんですね。サルのはかりみたいなものですね。どうも前はあまりに赤字が大きくなったから今度は思い切って赤字をたくさん見積もっておいて、げっそり減った。百六十二億円の赤字の減というのは、これは小さな数字じゃないですよ。こうなると、赤字見込みというものは、当初の見込みが全然権威がないかのように思える。これは御答弁があるならば、四十年の赤字の減についての御説明を伺いたい。
  42. 加藤威二

    加藤政府委員 これも、先ほど御説明したところとちょっと重複いたしますけれども、先ほど申し上げましたように、医療費というのは、前の三年内の医療費の伸びを平均して推計すると申し上げましたけれども、結局、三十八年、三十九年が医療費の異常な伸びを示したわけでございます。したがって、四十年を推計いたしますときには、その伸びをそのまま取り入れて四十年の医療費を計算したわけでございます。しかも、四十年一月に例の九・五%という医療費のアップもあったわけでございますので、それで具体的に数字を申し上げますと、一人当たりの医療費の伸びを、四十年度におきましては、前年度よりも二二・五%伸びる、こういうぐあいに見たわけでございます。現実に三十九年は二一・六%伸びております。三十八年は二〇・六%伸びております。そういう異常な伸びを示しておりますので、四十年度は二二・五%伸びるだろう、こう見たわけでございます。ところが四十年度は、その伸びが思ったほど伸びなかった。これは結局、お医者さんのいまの支払い方式が出来高払いでございますので、その医療費がどうなるかということをはっきり見通すということは、これは何人もできないだろうと思います。お医者さまのある程度の自由にまかされているという支払い方式でございますので、そういうことで、過去の数字をもって推計するということになりまして、こういう見込み違いが出たわけでございます。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ところが四十一年は、また今度はサルのはかりで、赤字見積もりよりも百六億円出ているんです。ある場合は大幅に赤字がふえ、ある場合には大幅に落ちる。しかも、それがちゃんとした三年なら三年の過去における実績を考えてやった正確な見積もりであるというふうにとるならば、いかにあなた方の見積もりの立て方がずさんであるかということに驚かざるを得ない。前は赤字が減ったから今度はもっと赤字を減らそう、これじゃ計量の基礎はどこにあるのか全然わからないんです。四十一年度は一体どうなんです。百六億円赤字がふえています。見込みよりも。
  44. 加藤威二

    加藤政府委員 四十一年度も同様に、過去三年の医療費の伸びというものを見込んでやったわけでございますが、四十一年度では、当初、一人当たりの医療費が一〇・一%伸びるだろうというぐあいに見ておったのでございますが、それが一人当たりの伸びが一四%になった。これはどうしてかと言われますと、これは、一日当たり金額とかあるいは受診率が見込みよりも若干ふえたというようなことで、こういう誤差が出てまいるわけでございますが、その点は、正確に誤差を三億とか五億程度の誤差におさめるということは非常に困難でございまして、われわれ最大限の努力をいたしておりますけれども、ある程度の誤差は出てまいる、こういうことでございます。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 厚生大臣、これだけの赤字見込み額赤字の実際を誤差という観念で片づけるところに、今日の厚生行政の誤りが私はあると思う。ある場合には百六十二億円、ある場合には百六億円、このばく大な違いは、いかにこの赤字予想が立ちがたいものかということの実証じゃないですか。三十七年から四十一年までことごとく誤り、一つも当たっていない。それをどうして四十二年度の七百四十五億円は決定的な数字としてあなた方が臨時措置をされるのか。いままでの五年間極端な違いを示している。四十二年度の七百四十五億円の赤字が、これは実際に近いというところの理論的根拠はどこにあるのですか。これは、坊厚生大臣が就任されましたのでにわかにこの見込みが的確になったとは、われわれ残念ながら信じかねる。七百四十五億円というこの赤字見込みの積算の根拠について詳しく伺いたい。
  46. 加藤威二

    加藤政府委員 七百四十五億円の積算の基礎でございますが、七百四十五億円をどういうぐあいに出したかということは、まず収入の面がございます。収入の見積もりと、それから支出をどういうぐあいに見るかということによって、その差が七百四十五億円と出たわけでございます。  それで、収入の面につきましては、まず平均標準報酬がどうなるかということが一つ問題でございます。平均標準報酬につきましては、四十二年度は三万一千六百十五円というぐあいに算出いたしたわけでございます。その算出の基礎は、その数字はどうして出したかと申しますと、これは従来毎年やっておりますけれども、過去二年の平均標準報酬の伸びを見て推計するわけでございます。四十一年度の平均標準報酬は二万八千八百五十円でございまして、これに対して四十二年度の三万一千六百十五円は、九・五%の伸びと見たわけでございます。その推計は、先ほど申し上げましたように、過去二年の平均標準報酬の伸びを見て推計したということでございます。それで、それに料率の千分の六十五——これは何にもしなかった場合でございますので、従来の千分の六十五と、それから被保険者の数が一千二百四十九万二千人という数字を出しております。これも、過去二年間の被保険者の伸びによりまして、千二百四十九万人という数字を出しておるわけでございます。それで、被保険者は四十一年度に比べまして四十一万三千人の増ということでございます。三四%の増でございます。ちなみに四十一年度は三・二%の増ということになっております。それで、平均標準報酬と被保険者のほかに保険料の徴収の収納率がございます。これは四十二年度におきましては、ぎりぎり最大限の努力の上で九六・三という収納率をかけたわけでございます。そういうことで保険料の収入を算定いたしたわけでございます。  一方、支出のほうでございますが、支出のほうにつきましては、これは問題は、医療費はどういうぐあいにして算定するかということでございますが、その算定の方法は、被保険者と被扶養者、家族、それぞれ別々に入院と入院外、歯科、したがって六種類に分かれるわけでございますが、それの一日当たり金額、一件当たり日数、それから受診率、この三つにつきまして、それぞれ過去三年の伸びを見るわけでございます。たとえば被保険者の外来につきましては一日当たり金額が幾らになるか、これは過去三年の被保険者の入院外の伸びによって推計いたします。それから、一件当たり日数、一回お医者さんに行って何日かかるかという日数、それから年に何回お医者さんにかかるという受診率。この三つを、被保険者の入院、入院外、歯科、それから家族の入院、入院外、歯科、この三つにそれぞれ分けまして、そして過去三年の数字から推計して医療費を出した、こういう積算のしかたをいたしておるわけでございます。そういう計算の方法をやりまして、その結果が七百四十五億の赤字が出た、こういうことでございます。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう新しい方針でもおとりになったのかと思ったら、収入支出ともに全部過去二カ年の平均をとったのじゃないですか。過去二カ年の平均をとって大きな誤りをおかしたのでしょう。これまでとやり方が同じで結果が正確だと言う論理的な理由はどこにあるのですか。やることは同じだ。それとも、七百四十五億円もその後大幅に狂うかもしれないという杞憂があっての見込みなのかどうか。ぴしゃっと当たるかどうかということは知りませんが、億単位の数字ですから、いま新しく出されております措置法については、これは相当影響を持つ。政治は責任政治ですから、過去にこういうふうな見通しを立てましたけれども誤りでございました、申しわけありませんで済む段階ではないのです。新しい臨時措置法をやろうというのですから、臨時の法律をつくろうというのですから、見通しを誤ってつくったのであれば、これによって起こる影響というものは非常に困ったものになってくる。厚生大臣、この見通しに誤りがないということを、大臣として首をかけて保証できますか。
  48. 坊秀男

    坊国務大臣 七百四十五億円の赤字につきましては、これの出てくる積算につきましては、御説明申し上げたとおりでございますが、この七百四十五億円が淡谷委員もおっしゃっておるように、ぴたりとは御要求はなすっていらっしゃらない、こういうことでございますが、非常に大きく狂うというようなことは、その間に新しい何かをやれば別でございますけれども、このままで、いまの改正も何もせずに持っていきますならば、この七百四十五億円がそんなに大きく狂うということは——現時点においては、最善を尽くして積算をいたしたのでございまするから、これが非常にひっくり返るというようなことは考えておりません。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 厚生大臣、お聞きしますが、非常に狂うということは、どのくらいの狂いを言うのですか。さっきは百億台のものを誤差程度にかたづけようという考え方があった。大臣は、非常に狂うというのは、一体何億ぐらいのことをさすのですか。誤差の幅ですよ。どのくらいまでは誤差と認められるかどうかということです。これは今後の料率の問題、あるいは初診料の増加の問題に大きな影響を持つのですよ。国民一人一人が非常に深刻な生活の上からの憂慮を持っているのです。それに影響する数字ですから、漫然と過去二カ年こうなったから今度もこうなるだろうというような形でやられたのでは、この法律の根拠は怪しくなります。一体、大臣はどのくらいの程度までの誤差を許されるつもりか、伺っておきたい。
  50. 坊秀男

    坊国務大臣 その数字について、これは狂うということが予想されることは、淡谷委員も御理解のとおりであります。この狂いでございますが、この狂いの数字が一体幾らか、こうお聞きいただきましても、幾ら狂うということがわかっておりますれば、これはもう初めから七百四十五億円というものは出すわけではないのでありまして、数字の上で幾ら狂うかということをお聞きいただきましても、私としてはいま当面申し上げることができないのでございますが、とにかく大きな狂いというものがないということは確信いたしております。
  51. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ具体的に聞きますが、七百四十五億円の赤字見込みが七百四十四億円に狂ったら、これは大きい狂いですか。
  52. 坊秀男

    坊国務大臣 たいへん極端な例をお示しになりましたが、それはおっしゃるとおりでございます。
  53. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、七百四十五億円が十億円狂って七百三十五億円の場合は、これは大きな狂いですか。
  54. 坊秀男

    坊国務大臣 われわれといたしましては、十億円のお金というものは、これはたいへんなお金でございます。われわれの計算なりふところからいけば、これはもうお話にならぬ大きな金額でございますけれども、七百四十五億円の中で、先ほどからいたしましたような積算でもって十億円程度の狂いということは、私はさして大きな狂いであろうとは考えません。
  55. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、七百四十五億円が百億円狂って、七百四十五億円の見込みが六百四十五億円になった場合に、これは大きな狂いですか。これは一単位、十単位、百単位まで攻めたのです。計算すれば、このくらいの誤差は許せるという許容量があるわけですよ。ぴしっとこれは当たる数字とは考えません。大体このくらいの誤差はあるだろうという見込みがあるはずなんです。大臣は、一体それをどの辺に置かれているか、一億単位か、十億単位か。今度は百億単位です。
  56. 坊秀男

    坊国務大臣 ある数字の中で、一%狂ったらどうか、一〇%狂ったらどうか、こういう御質問でございますが、これは実際どういう性質の数字であるかというようなことから考えてみなければならないと思うのです。非常に不確定な事態の上に立っての数字か、確定したものの上に立っておる数字かといった、その背景というものも考えなければならないと私は考えておりますが、今日の保険財政というような——もちろんこれは政策としては、非常にしっかりと確定をしていかなければならぬ問題ではございますけれども、しかし、事態というものは絶えず動きを持っておる。経済にいたしましても、生活にいたしましても、あるいは病気にいたしましても、これは非常に固定的なものではないといったような背景の上に立っておるということから考えまして、いま、百億円狂ったらたいへん大きな狂いか、あるいは少ないのか、こういう御質問でございますけれども、これに対して、確かに、七百四十五分の百というのは、数字としては私は小さいものではないと思いますけれども、さような流動と申しますか、動きの上に立っての数字ということを考えてみますと、何も私は、これば小さいというようなことも申しませんけれども、そこいらのところは、これが大きいんだ、これが小さいんだということをはっきり申し上げることは、この段階においては、私としてはなかなか困難に感ずるのでございます。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは重大な御答弁ですよ、大臣。この法案は、赤字が基礎にでき上がる法案なんです。この赤字の基礎が、いまおっしゃったように、七百四十五億円のうち百億円狂っても、これは大きいか小さいかわからぬといったような態度で出されたのであれば、一体何が根拠で料率の引き上げを行なうのですか。何が根拠で初診料を倍にするのですか。何が根拠であの困っておる病人から薬代を取るのですか。百億円狂ったら大きな狂いがあるじゃないですか。この七百四十五億円というものも、これはどれだけ狂うかわからぬという数字をお出しなのかどうか。この見込みは一体どこまで誤差があると思っているのか。これが確認されない以上は話は進みません。
  58. 坊秀男

    坊国務大臣 ともかく四十二年度において膨大な赤字が出るということは、初めから予想されるわけです。そこで、この赤字が一体幾らあるか、幾ら出るかということは、先ほど係官から申し上げましたとおりのいわゆる積算をしたのでございまして、いま厚生省の積算のしかたといたしましては、この方式がとにかくでき得る最善の方式ということでやった、その積算に基づいて出た数字でございますので、ぴたりとそれは当たるとおっしゃられても、なかなかこれはむずかしいことでございます。そこで、とにかく積算といたしましては、最善の方法をとり、最善の努力によって積算したわけでございますので、今日ここで幾ら食い違いが出る、それが非常に大きいあるいは小さいということは申し上げかねるのでございます。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはたいへんなことになると思うのです。さっきの説明を聞いていますと、赤字見込みの積算の方法は過去と変わっておりません。すべて二年間の実績を条件にして、その伸び率を見て打ち出しているのであります。その従来の方針というのは、さっきから話したとおり、非常に大きな違いがあるのであります。したがって、従来の方針を踏襲するのであれば、従来に出たような間違いは、七百四十五億円のこの見込みにも出るのに違いない。そうしますと、この法案の基礎は全然くずれてしまう。七百四十五億円という、当たるか当たらないか、へたな八卦みたいな数字を出しておいて、それを根拠にして国民の実際生活に影響を及ぼすこの法案をつくろうというのは非常な冒険でありますが、七百四十五億円を、ぴたりとは言いませんが、この数字を正しいのだというならば正しいのだでよろしい。あくまでもこれは正しいと言って推進されますか。——いや、大臣に聞いております。大臣指名したのです。
  60. 坊秀男

    坊国務大臣 私は、この積算をいたしました現段階におきましては、この数字が正しいものである、かように考えております。
  61. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ大臣、ただ答弁を言っただけで済むと思ったら大間違いなんで、正しいと思うなら正しいと思う基礎がなければならない。過去に誤った積算の基礎が、どこが違って今度は正しくなるというのですか。ただ過去と未来があるだけですよ。将来のことはわからないから今度は当たるだろうでは、全く模索状態の見通しじゃないですか。どうして、四十一年まで狂ったものが、四十二年から急に同じ方法を用いながら正しいという認定を大臣はされるのですか。正しいと思われる根拠をお示しください。
  62. 坊秀男

    坊国務大臣 数字の非常にこまかいところでございますから、政府委員答弁いたさせます。
  63. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私が特に坊大臣から御答弁を求めたのは、いままでやってきたのはお役所の諸君なんです。この人たちが、今度は当たる、今度は当たると言う八卦が全然当たらない。当たらない八卦から割り出した七百四十五億円の赤字の上にこの新しい措置をとろうというのですから、これはやはり政治責任の問題です。官僚はそれでいいかもしれませんが、大臣は、この国会の答弁ではっきり打ち出した場合には、言責をとらなければならないのです。だからあなたに答弁を求めているのです。わからないならわからないと言いなさい。七百四十五億円の基礎はどうもわかりませんと言えば、それでいいのです。いままでどおりの方法の積算の基礎であって、いままで一度も当たっていないものが今度は当たるという根拠はどこにあるのですか。
  64. 坊秀男

    坊国務大臣 いま七百四十五億円というものを積算いたしましたことは、過去何年間とその積算の方法について全然変わりがないじゃないか、しかも過去においては当たっていないじゃないか、こういうことのようでございますけれども、今日厚生省といたしましては、この積算のやり方というものにつきましては、これが最善の方法である、こういうような考えをもちましてこの積算をいたしましたので、これが絶対狂わないということは、私は申し上げることはできませんけれども、今日の段階においては、この過去の積算の根拠をもってやった数字、これよりほかにない、私はかように考えております。
  65. 淡谷悠藏

    淡谷委員 過去に誤りをおかした積算の方法、それ以外に処置がないとなってくれば、どだい積算の基礎が全然くずれてしまう。処置なしということでしょう。処置なしだから、過去は誤ったけれども、同じ誤りをおかすであろうという方法の上に立って七百四十五億円が打ち出された。これも来年度大きく狂わないという見込みは、いまの御答弁では立たないですよ。狂うかもしれないという赤字の基礎の上に立って、どうして措置が講じられるのですか。これは政治的な良心の問題です。しかも、いままで狂ったのは、どこかに積算の方法が誤っていたのではないかという、一片の反省もないじゃないですか。十年近い年月誤りを重ねて、この方法しかないのだからこれで押し通すのだとなってくると、少しも進歩がない。良心さえないのです。しかも、みずから少しも反省しないで、その上に新しい赤字解消の方法をとるというのは、どだい厚相の資格はない。何でこの正確性を主張なさるのか。  私、考えますのに、ただ数字的に過去の医療費を打ち出したり、あるいはその収入源を保険料に求めたりしてやっているからそうなんで、この大きな赤字の原因には政治的な、経済的なバックがあるでしょう。一体厚生大臣、来年度に至る経済の成長率を幾らに見ておりますか。これは厚生大臣からお聞きしたい。——これは厚生大臣よりは、むしろ企画庁の長官に責任のある答弁を求めたほうがよろしいと思いますので、企画庁長官の出席を求めます。
  66. 川野芳滿

    川野委員長 企画庁長官は午後見えるというお約束をいたしております。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 川野芳滿

    川野委員長 それでは速記をとって。  淡谷悠藏君。
  68. 淡谷悠藏

    淡谷委員 企画庁の長官に、ぜひこの際経済成長その他のお見込みを聞いておきたいと思ったのですが、いろいろ折衝いたしましたけれども、いますぐ出席できないといったようなお話もあり、本会議後ならばというお話もございましたので、質問を継続する上には非常に不便でございますけれども、しかたがございませんからそれを了承いたしまして、労働大臣見えておりますので——労働大臣の質問は実はあとのほうになっておったのですが、この際ちょうどいいあんばんに厚生大臣もいらっしゃいますから、お聞きしておきたいと思います。  最近における職業病の実態、特にこの数年目立ったものがあるかどうかお聞きしたい。これは事務関係のほうの御答弁でもけっこうですけれども、健康保険法をめぐって一つの大きな政治問題をかもしている問題でございますので、大臣自体の御答弁を承りたい。
  69. 早川崇

    ○早川国務大臣 職業病というものに対する定説はございませんけれども、たとえば、むち打ち病とかパンチャー病とか、新しい産業の職業病というようなものが出てきております。それ以外は特に新しく職業病として出てきているものはございません。ただ、東北、北海道その他でいわゆる農夫病と農村で一般的にいわれているものを職業病の中に入れますと、こういう問題もやはり相当重視しなければならない職業病の一つではないかと思います。
  70. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もう少し詳しくお聞きしたいのですが、これは別な方でもかまいませんけれども、私は、健康保険赤字を出してくる一つの原因として、やはり病気が多くなったことにも原因があるというふうに見ているわけです。特に経済の発展に伴ってさまざまな新しい事象が出てまいりますから、それに関連いたしまして、最近健康保険赤字を生まねばならないほど何か大きな変化があったかどうか。この一点を一つお聞きしたいのです。
  71. 早川崇

    ○早川国務大臣 業務上からくる疾病につきましては、最近の発生件数は二万件前後ということで推移いたしておるわけでありますから、雇用労働者の増加率に比べれば、停滞むしろ相対的には減っておる。ただし、これは御案内のように労災保険特別会計というものがございますが、労災保険のほうは現在赤字ではございません。
  72. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その二万件の三十七年以来の増減の傾向を聞きたいのですが、これは事務当局からでけっこうでございます。
  73. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 最近五カ年間の傾向を申し上げますと、昭和三十七年における業務上疾病の件数は二万一千六百八十四件、三十八年は一万九千八百五十七件、三十九年は二万二十八件、四十年は一万九千百八件、四十一年は二万五百六十三件、かように相なっておりまして、いわゆる発生率から見ますと、三十七年は〇・一〇%でありますが、その後は大体〇・七、八%ということでございます。
  74. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この病気の中で、いまお聞きしておりますのが例の職業病の問題なんですが、これは基準局長よくお調べだろうと思いますけれども、最近の職業病というもので特に目立ったものは何かありませんか。
  75. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先ほど大臣がお答え申し上げたのが大勢であると私ども承知いたしております。すなわち、職業病につきましては医学上も法律上も定義はございませんけれども、特定の職場に長く作業することによりまして発生する特有の疾病といったようなものを、一般に職業病と呼んでおります。しかしながら、その中には、たとえばむち打ち病のようにアクシデントによりましておかされる病気をも含めるといったような傾向もあるわけでございます。  そういった意味から、いわゆる職業病の増加傾向はどうか、こういう点について見ますと、一般的に申しますと、新しい原材料の使用、化学物質の使用等によりまして、問題提起を受けておるようなものが若干出てまいりましたけれども、数的に最近の傾向としてどうだというふうに大量に把握し得るような状態には至っておりませんで、量的に多いのはアクシデントによるものでありますけれども、むち打ち病であるとかあるいはキーパンチャーの病気といったような関係が量的には多い。大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。
  76. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのキーパンチャーの病気あるいはアクシデントによって起こってくる病気というのは、年度的にいって何年ごろから増してきておりますか。
  77. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先ほどそれらのものを約二万件前後と申し上げましたが、その二万件前後の中に、業務上疾病といたしまして、むち打ち病、それからキーパンチャー等の疾病、そういったものも全部包括されておるわけであります。
  78. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私の質問が少し不徹底だったかもしれませんが、そういうような最近目立ってきた病気が、何年ごろから発生を見ているかということを聞きたいのです。これは、現在の経済成長やさまざまな工業の発展に関係があるのかないのか、実は確かめたいのです。
  79. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 むち打ち病などは、交通災害の増加によってふえてまいっておりますことは、一般に周知されておるとおりでございます。ただ、統計的に見まして、傾向的にどの疾病が最近増加傾向が著しいかというのは、あまり明確につかめません。と申しますのは、たとえば一酸化炭素中毒にいたしましても、昭和三十八年の三井三池の大災害、あるいは四十年の北炭夕張、山野といったように連続して幾つかの大爆発がございますと、その年はCO中毒患者が急増するといったようなことで、業務上疾病の傾向を見ますと、いわゆる経済の進展とパラレルの関係において認めるべき職業病というのは、むち打ち病などがその一つの典型でありまして、その他はあまりはっきりした傾向ば出ておらないというふうに私ども承知いたしております。
  80. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは労働大臣にちょっとお聞きしておきたいのですが、いまの健康保険改正によっては、かなり労働者の階層が打撃を受けると思う。この病人が二万人の段階でどうにか足踏みをしておる現状、これはさまざまな保険もありましょうけれども、少なくとも社会保険の形があらわれてまいりましてから、労働者階級の健康管理上どういうふうな成果があったとお認めになっておりますか。つまり社会保険の健康上に及ぼした影響を労働大臣としてはどうお考えになっておりますか。
  81. 早川崇

    ○早川国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますが、たとえば、キーパンチャーとか、技術革新に伴って監視作業——ICの一つの作業なんかずっと見ておるわけです。それで目が悪くなる。それからキーパンチャーの場合には指の病気等、いわゆる繰り返し人間疎外労働がふえてまいりましたので、そういう特殊な精神病あるいはノイローゼにかかるというような特別な病気が出てまいっております。数としては少ないようでありますけれども、そういう問題は業務によって生じたもので、労災保険というものでやっておりますから、これは健康保険には関係ございません。  御指摘の点は、一般の勤労者の病気、これは業務に直接結びつかない問題による病気というものは健康保険関係するわけでございますが、大局的に申しますと、健康保険というものが普及いたしましたため、また生活形態がよくなってまいりましたために、雇用労働者の健康状態というものは非常によくなっておる、そのために寿命も延びてきておる、かように判断いたしております。
  82. 淡谷悠藏

    淡谷委員 労働災害については一体どういう傾向をとっていますか。最近は非常にふえていると聞いておりますし、その点をひとつ御説明願いたい。
  83. 早川崇

    ○早川国務大臣 先ほど局長からお答えいたしましたように、毎年二万件あるいは二万人というふうな、多少正確でございませんが、二万件前後の業務上の疾病というものが出ております。これは雇用労働者がふえておるのに相対的には減っているという理屈でございまして労働者に対する率が〇・〇八%程度。三十五、六年は〇・一〇%程度でございましたので、むしろ減っておる、かように思っておるわけでございます。  それからついででございますが、鉛とか水銀、有機溶剤等のいわゆる化学物質による中毒症状というものも、毎年大体千五百件程度出ておるというわけでございまして、これも横ばいで、ことにふえてきているというものではありません。ただ、新しい病気としてパンチャー病、特殊な技術による目の病気、こういうものは、技術が非常に高度化してくるために、新しい病気として出てきておるわけであります。
  84. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この二万件の中には、けがをした者と病気をした者を一緒に計算されているわけですね。分割した表はありませんか。
  85. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 業務上の疾病という観点から求めておるものでございまして、業務上の疾病には、たとえば、やけどであるとか日射病であるとか、そういったものも含みます。それからけがによる疾病、そういうものも入ってまいりますけれども、それ以外にいわゆる職業病もこれに包括されているということでございます。
  86. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これらの災害あるいは病気にあった人が社会保険を受ける種別ですね、政府管掌保険もあるだろうし、組合保険もありましょうし、あるいは労災もありましょうが、この保険の給付を受ける区別はわかりませんか。
  87. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私どもが預かっております範囲は、先生御承知のように公務員は含まれないわけでございますが、ある疾病がございましたときに、その疾病が業務上の疾病であるかいなか、その認定が必要でございまして、業務上の疾病でございますと、労災保険で療養補償、休業補償等を行なう、業務外のものであれば健康保険で処理する、こういうことになるわけであります。したがって、問題になりますのは、長い期間かかりましてだんだんおかされるような疾病、たとえばけい肺といったようなものにつきまして、どのような段階から業務上の疾病と認定し、労災保険で給付を行なうかどうかという医学技術的な問題があることは、先生御承知のとおりであります。これにつきましては、認定基準を明確にいたしまして、業務上、外の判断をいたしておるわけであります。
  88. 淡谷悠藏

    淡谷委員 労働大臣にお伺いしたいのですが、いま臨時措置健康保険保険料をかなり大幅に上げようとしておる。あるいは初診料その他のものも上がろうとしております。この結果労働者の受ける影響というものを労働大臣はどういうふうにお考えになっておるか。いま聞きますと、業務上の障害、これはかまいませんけれども、家族その他が相当おるのですが、健康保険の率が高くなり初診料も高くなり薬代も高くなったときに、その受ける影響を大臣はどうおとりになっておるか。
  89. 早川崇

    ○早川国務大臣 政府管掌健康保険料率あるいは初診料の引き上げ、あるいは薬代の一部負担、そういうものが負担増として支出に食い込んでくるということは申すまでもございません。
  90. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今度の改正というものは、あくまでも財政上の必要から改正するんだという厚生大臣の御答弁も出ておるのですけれども、もし他に方法があるならば、こうした料率の引き上げや初診料の引き上げは望ましくないということは、労働大臣としてはお考えになっておるのでしょうね。
  91. 早川崇

    ○早川国務大臣 他方賃金の上昇率も著しい、所得税の減税もされておる。総合的に考えればまた別個の観点も出てまいりますけれども、保険赤字というものを解消する意味では、好ましくないことかもしれませんが、やむを得ない措置だと考えております。
  92. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、私の質問をお聞き漏らしになったろうと思います。問題は、この改正財政赤字を軽くするための措置だということをさっき厚生大臣が確認されておるのです。ですから、他に方法があれば、労働者に負担がかかるような今回の改正は望ましくないというお考えかどうか。他に方法があってもこの方法しかないのだというふうにお考えになりますか。この点どうです。労働大臣として伺いたい。
  93. 早川崇

    ○早川国務大臣 他に方法があって保険財政が健全化するということになりますれば、もちろんこれは淡谷委員の御指摘のとおりに私も考えておる次第であります。
  94. 淡谷悠藏

    淡谷委員 たいへん明快な御答弁でありがとうございました。  そこで、労働者の賃金の上昇率は、こればたいへんありふれたことを聞くのですが、この問題に関係ございますので、三十七年度から御説明願いたいと思う。
  95. 早川崇

    ○早川国務大臣 毎勤統計によりますと、五人から二十九人までの零細企業に働く勤労者を例にとりますと、対前年比増加は三十七年度は二二・九%、三十八年度一一・六%、三十九年度一四・一%、四十年度一二・五%、四十一年度九・七%でございまして、対前年からいいますと、むしろ比率は非常に高くなっております。
  96. 淡谷悠藏

    淡谷委員 対前年比からいうと、上がっておる率は漸減しているのじゃないですか。
  97. 早川崇

    ○早川国務大臣 大企業の賃金の対前年の比率平均よりも、むしろ中小企業、零細企業というものは、もっと低かったのですから、対前年の上がる率がこの数年は高い。ただし、昭和四十一年度は非常に不況の時代でございました関係上、大企業の従業員の対前年の上昇率よりは低くなっております。
  98. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまの御答弁だと、三十七年度の二二・九%が四十一年度の九・七%まで上昇率としては下がったわけですね。これはやはり大企業と中小企業との間に大きな格差があったためですか。
  99. 早川崇

    ○早川国務大臣 むしろこれは、二二・九%という異常な伸びに比べますと非常に減っておりますが、やはり中小企業の経営内容等に関係して大企業並みの賃上げができなかった、それから急激に中小企業と大企業の労働者の賃金格差がここ数年来縮まってまいった、そういう関係で足踏みの要素も出てきておる、こう両面から理解されなければならぬのではないかと思います。
  100. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもその点はっきりしませんけれども、それじゃ個別にお聞きしますけれども、大企業の労働賃金のほうはどれぐらい上がっておりますか。中小企業は一体どういうふうになっておりますか。二つに分けてお答え願いたい。
  101. 早川崇

    ○早川国務大臣 対前年増加率を申しますと、大企業は三十七年は六・〇%、三十八年は九・二%三十九年は一〇・二%、四十年は七・五%、四十一年は一二・四%という比率でございます。
  102. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、この結論は、一般的な比率よりも大企業のほうの賃上げの比率は高いんですね。
  103. 早川崇

    ○早川国務大臣 三十七年——四十一年という間の長期で見ますと、大企業の賃上げ上昇率は、合計で六七・五%、百人から五百人のが八七・四%、三十人から九十九人の中小企業におきましては九七・一%、五人から二十九人までの零細企業におきましては一二〇・三%、こういう対前年の上昇率の比率になっております。
  104. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっきお示しになった二二・九とか一一・六という増加率は五人単位のですか。  それから、もう一つお聞きしたいのは、災害発生率は大企業と中小企業の間でどうですか。
  105. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私ども一応百人以上の規模の事業と百人未満の規模の事業を分けまして統計をとっておりますが、たとえば百人未満の死傷年千人率——年間における労働者千人当たりの死傷率ということでございますが、この死傷年千人率の推移を見ますと、昭和三十年では百人未満が四一・七という千人率、それが三十五年には四一・二、ほとんど変わっておりませんが、その後著しくこの率が減少してまいっておりまして、四十年は二六・七、かようになっております。しかし、この傾向は百人以上の大きな事業のほうがなお著しいのでありまして、昭和三十年は二六・一、三十五年は一八・七、それが四十年は一三・二、こうなっておりまして、概観いたしますれば、百人以上の規模の事業における災害発生率は、百人未満の事業における災害発生率の二分の一、逆に言いますと、零細のほうがやや倍である。四十年で申しますと、一三・二に対しまして二六・七でございますから、二対一ぐらいの発生率の差があるということでございます。
  106. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その原因は一体どこにあるのですか。やはり零細企業の設備その他のものが不完全であり、労務管理がよく行き届いていないというふうに認められるかどうか。
  107. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 災害の発生原因は非常に複雑でございますが、機械施設によるもの、安全管理組織の不備によるもの、それから労働者やそういった人的な原因によるもの、さまざまあろうかと存じます。先生いま御指摘のように、機械施設の不備だという点は、これは、大企業に比しましてそういう傾向があることは、争われない事実であろうと思います。それから、安全管理組織はどうかという点につきまして、安全管理者の設置その他いろいろ問題がございますが、これは一がいに申しますことはできませんが、安全管理組織も大企業のほうが一般に整っている。  それから人の問題でございますが、かつては中小零細企業におきましても、いわゆる職人という熟練者が仕事を担当しておったのが、必ずしもそうでなくなる、そうして労働市場の関係から、大企業よりも質の劣った労働者を採用せざるを得なくなるということになりますと、より適切なる職業訓練あるいは安全教育などを行ないまして労働させるといったような努力がなされなければ災害が発生する。こういった災害発生原因となるべき総要因は中小企業のほうにかなりあるわけでございまして、そういった点は私どもも承知いたしておりまして、災害防止対策の大きな重点といたしている次第でございます。
  108. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで、労働大臣にお聞きしたいのですが、こうした中小企業の災害を減少させるために、何か政府のほうで援助をしてでも災害発生をとめるような、施設の完備に対する御抱負はありませんか。
  109. 早川崇

    ○早川国務大臣 新たに災害防止五カ年計画を樹立いたしまして、各般にわたって災害防止につとめるとともに、特に中小企業に対しましては、安全装置の施設に対しまして特別の低利長期の融資の制度も設けることにいたしました。さらに、安全規則なんかは、土建業とか山林業とかいうようなところは十分理解されておりませんので、基準監督局、監督署を通じまして、十分そういう安全規則の周知徹底に努力してまいりたいと考えております。
  110. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっき労働大臣がお話しになった農夫病について、もっと詳しくひとつ御説明願いたいと思います。
  111. 早川崇

    ○早川国務大臣 これは労災保険の対象には入っておりませんが、農林省の東北地区の水田地区の男女農民に対してのレポートがございましたので、そういう報告を申し述べただけでございまして、労働省のいわゆる労災保険対象の職業病には、独立の企業者でございますので入っておりませんので、詳細については残念ながら労働省としては把握をいたしておりません。農林省のほうでよくお調べになっておられるかと思います。
  112. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは厚生大臣にお聞き願いたいのですが、労働大臣がさっき御心配しておられたように、農民の病気がかなり新しい形態を持ってきている。これは、水銀中毒による病気とか、あるいは燐剤による中毒、あるいは山林労働者の例の手が白くなる白ろう病ですね、非常にたくさん新しい機械や農薬の普及とともに病気がふえてきている。これは大体健康保険よりは国民健康保険のほうに入ると思いますが、こういう点について、いまの健康保険の料率引き上げが、直ちにまた国民健康保険にも影響するというふうにお考えになりませんか。農民病については、いずれ国民健康保険で見てやらなければどうにもならぬケースだと思う。この点はいかがですか。他の組合に対する影響ですね。
  113. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のとおり、農民の新しい病気は、これは国民健康保険でございます。国民健康保険につきましては、自己負担をすでに三割というものをやっていただいておるという関係上、今度の政管健保の改正、これの一部負担というものはそれには入らない、かように考えております。
  114. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私の聞きたいのは、入らないことはわかっていますけれども、これを引き上げることが、やがてまた国民健康保険の料率引き上げその他のほうに悪影響を及ぼすような心配はないかと聞いているのです。連鎖反応を起こさないかどうか。
  115. 坊秀男

    坊国務大臣 国民健康保険の料率に相当するものでございますが、これは御承知のとおり市町村でやっております。それに、これは実際問題として、政管健保に比べまして非常に高いものが課せられておるだろうと思います。だから、そういうものに波及をする、そこに今度の改正が影響を及ぼすというようなことば、考えておりまん。
  116. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣がそう思わなくても、これに便乗してまた料率の引き上げやその他のものの引き上げをどんどんやるような傾向を助長しませんか、その心配はありませんかと言うのです。大臣がやるわけではないでしょうけれども、その点はどうですか。
  117. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいまは、そういうようなことはないであろうと思います。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 なければけっこうですが、私たちはあるように考える。  そこで労働大臣、最後にお聞きしたいのは、労働災害などはまだやっていない。これはいまの農村における発病などにも関係がありますが、救急措置は一体どうとられておるのですか。救急措置に対して国が配慮した例はありますか。
  119. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 救急措置と申しましても、いろいろな場合があろうかと存じます。特に顕著な例といたしましては、一酸化炭素中毒患者が多数発生いたしました事例にかんがみまして、たとえば福岡地区、北海道地区などには高圧酸素室を特設いたしまして、またそういった付近の労災病院には小型の同様な特殊施設を設けるといったような配慮をいたしまして、近年急速に整備をいたしました。  なお、救急施設と申しましても、労働省の立場からは、労働者における特殊な疾病あるいは負傷といったものが対象になるわけでございますが、先生御承知のように、そういった需要に対応するために労災病院を設置いたしてまいりましたが、現在は三十四カ所設置いたしております。そのほか、全国主要な地区で、公共団体経営とかあるいは医師会経営の特殊な病院に対しましては、委託病棟を設置して無償提供し、管理運営をお願いするといったようなことで、厚生省においてとられております医療行政と関連づけまして、労働省といたしましても、救急措置、特にその必要な場合に病人を収容できるような施設の拡大といった面でいろいろ配慮をいたしておる次第でございます。
  120. 淡谷悠藏

    淡谷委員 救急車の準備なども大体できておるのですか。どのくらいできておりますか。
  121. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいま申し上げました労災病院の三十四の施設、これは当然相当性能の高い救急車を配置いたしておるわけです。
  122. 淡谷悠藏

    淡谷委員 厚生大臣、お聞きしますが、一般市民の救急措置について厚生省はどういうふうな施設をされていますか。
  123. 坊秀男

    坊国務大臣 一般市民の救急につきましては、救急医療センターというもの、それから国立の病院に対しまして救急の施設といったようなものを整備、充実してまいっておりますが、それと、さらに救急医療につきましては、このごろ交通事故が非常に多く、交通事故等で傷害を受けた人については、脳機能がおかされるといったようなことが非常に多いのでありまして、そういったような場合に処していくために、研究あるいは医師等につきましてその陣容を整えていくということをやっておりまして、四十二年度におきましても、予算においてこれを相当整備をいたしておるということになっております。
  124. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういうふうな救急措置は一体どこでやるのですか。市町村独自にやるのか。あるいは厚生省がじかにやるのか。
  125. 坊秀男

    坊国務大臣 これは、国、公立の病院、さらにまた私立の病院等も、その病院に委嘱いたしまして救急病院ということでやっておりますので、国、公、私立を通じましてそういったような施設をやっております。
  126. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まだ厚生大臣に対する質問はございますけれども、企画庁の長官が午後でなければ出られないというので、企画庁の長官がお見えになるまで私の質問はここで保留しておきます。
  127. 川野芳滿

    川野委員長 本会議散会まで休憩いたします。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後三時四十一分開議
  128. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。淡谷悠藏君。
  129. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いろいろ午前中厚生大臣健康保険赤字の問題を聞いておったのですが、要は、今度の法律の改正案は、赤字が非常に大きいので、これ以上増してはとてもだめだというような形でいろいろなことを考えておるようですが、企画庁としては、一体保険財政がどれくらいの赤字ならば、いまの日本の財政はこれに耐え得るというお考えであるか、長官にお聞きしたい。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは数量的にどれくらいといって申し上げることは困難であろうと思います。現在政府が提案を申し上げておるような諸施策について、現状において私どもはやはりやむを得ないものである、こういうふうに考えておりますので、数量的にどこまでが国民経済の耐え得る限度であるかというようなことは、本来お答えできない種類のものではないかと思います。
  131. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤字の額というのは数量的にしかとらえられないものだと私は思っております。赤字の大きさというものを数量以外の線でとらえる方法がございましたら、それもあわせてお聞かせを願いたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねの御趣旨としましては、現在の国民経済の規模においてこの程度の赤字をこえることが困るかどうか、そういうお尋ねでございましょうから、その点は、国民経済全体の規模で、どの程度まで耐え得て、どの程度までが耐え得ないかといったようなことを数量的にお答えすることは、本来困難なことであろう、こう申し上げておるのでございます。
  133. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ、現在現実に出ておりますこの健康保険累積赤字には、どうですか、耐えますか、耐えませんか。私はあえて累積赤字のほうを申します。新しい赤字の発生、これは非常に基礎が薄弱なもので不安定なものでございますから、いままで累積しました赤字、これで一体耐えられるかどうか、その点をお聞きしたい。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、健康保険に限らず、たとえば食糧管理特別会計などについても同じようなことが言えるわけでございます。つまり、これ以上の赤字に国民経済が耐えられるか耐えられないかということと同時に、それが適当であるか適当でないかという政策上の判断もあると存じますので、私は両方合わせまして、現段階においてこの際政府が御提案しておりますことは妥当である、適当な提案であるというふうに考えております。それならば、もしこの提案を認めなければ国民経済上直ちに何かが起こるか起こらないかとか、そういうことは計数的にとらえて申し上げることは困難であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  135. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、重ねてお尋ねしますが、向こう一年間この赤字を何とか借り入れ金その他で持ちこたえるような力が、日本経済にございますか。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日本経済の中で問題になっておるのは医療保険だけではございませんから、それだけを取り出してみて、それに耐え得る力が日本経済にあるかないかと仰せられましても、それは一種の学問的な議論にすぎないのではないだろうか。国全体としては、やはりこういう大きな赤字を持っておるものは、ある段階で処置をするのが本来の財政経済政策としては適当であろうというふうに考えます。
  137. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いささか押し問答になりますが、ある段階というのは、いまの段階をさすのですか。もうこれ以上は、この段階を越したらだめだという御答弁と受け取れますが、いかがです。
  138. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府としては、この段階で処置することが適当であろうと考えまして、御審議をお願いしておるわけでございます。
  139. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それではお伺いしますが、あなたは経済企画庁ですから、経済に関した企画は全部おやりになるのだろうと思いますが、一体健康保険赤字がこれぐらいいつの間にやら大きくなったということの原因を、企画庁としてはどこにおとりになりますか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 企画庁としてはどう考えるかと言われましても、特に企画庁的な独特な観点があるわけでございませんで、やはり収入と支出とのアンバランスがここまでふえてきた、こうごく常識的に考えるしかないのではないかと思います。
  141. 淡谷悠藏

    淡谷委員 収支のバランスが狂ったから赤字が出るのは、これは別に非常に英邁な企画庁長官の御答弁をまつまでもありませんが、私たちは、少なくとも財政の逼迫からくるこの改正案ということを確かめているのです。したがって、あとのことはともかく、いま当面の財政を何とか切り抜ける方法があれば、多くの国民の療養に非常な不安をもたらす心配がない。そこでお聞きしているわけなんです。たとえば、赤字を解消する方法として、保険料率を上げるとか初診料を上げるとかいうこと以外に、この保険料を払う側の収入が増すことによって赤字が解消し得るかどうかというような問題。したがって、いまの日本の経済は一体どれぐらいの率で伸びているのか、国民所得はどれぐらいの率で伸びているのか、特に政府管掌保険の対象となる人たちのレベルでは、どれぐらいの率で所得が伸びているか、この点をひとつお聞きしたいのであります。
  142. 宮沢鉄蔵

    ○宮澤政府委員 きわめて大まかなことを申し上げれば、この数年間、国民の所得そのものは、八%ないし一一%ぐらいの度合い、平均して大まかに一割と申し上げておきますけれども、そのような成長を毎年平均していたしております。しかし、もし淡谷委員のような御推量に立つといたしますと、所得がそれだけ伸びているがゆえに国民の支出は可能であって、したがって、保険財政赤字はこの数年間大きくなっていないはずでありますが、実際は赤字が大きくなっているのでございますから、所得が伸びるがゆえに今後赤字は小さくなるであろうと考える理由はないと思います。
  143. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも企画庁長官はあまり頭がいいものですから、私の考えていることまで御推量になっておりますが、そういうことは要らないのです。私はそんなことは考えていませんから。私の言うのは、午前中もいろいろ労働大臣と話をしたのですが、大体、低所得労働者の収入というのは、伸び率が高いというのが労働大臣答弁です。そうしますと、政府管掌保険の対象になる人たちは低所得者が多い。少なくとも、企画庁としては、この低所得者の収入というものを、経済の伸びに関連しまして、もっと所得を伸ばしたいという意欲はおありだろうと思うのです。いまの伸び率に従っていけば、この所得は一体どの辺まで伸びるか、その見通しをお聞きしたい。これは、抜本的な改正を前に置いておりますから、ことさらにあなたの見通しは重大だと思うのです。ときどき、はずれますが、ばずれることは第二段として、一応見通しをお聞きしておきたい。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ここ数年の傾向は、確かに、五分位階層で見ますと、低所得者の所得の伸びが高所得者よりも何がしかずつ大きい。そのことは、経済政策としても、社会現象としても、きわめて好ましいことであると考えております。おそらく、今後、労働の需給状況等を考え、またわが国全体の労働条件の改善ということを考えますと、もっとこの格差が縮まっていくとういことは望ましいことでありますし、また私どもそのように努力をいたしたいと考えております。
  145. 淡谷悠藏

    淡谷委員 企画庁が問題にしております——問題にしてないかもしれませんが、しかたがないというふうな判定をしております保険赤字ですが、これは現在の赤字では困るというのですか。これより将来にわたって伸びては困るというのですか。御見解はどうなんです。現在よりも伸びたんでは困るからというようなことでこの健保改正案に賛成のお立場なのか。いままでの赤字でもこれは困ったものだと思っていらっしゃるか。その点はいかがです。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 相当の累積赤字があり、また本年度でも七百億円ぐらいの赤字が見込まれるわけでございますが、このような会計の運営というものはやはり健全なものではない。できれば、毎年の赤字幅が縮まり、かつ過去における累積赤字についても少しずつでも改善をしていくことが望ましい、この両方の立場で考えております。
  147. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ついでにお聞きしておきますが、ことしの予算編成当初における税の自然増と申しますか、予算上考えた税よりも増した収入というのですか、自然増と言っておりますが、これは現在ではどうなっておりますか。その予想を上回っておりますか。下回っておりますか。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 予算編成時に立てました経済見通しに徴して現状を見ておりますと、おそらくは、設備投資、民間の企業活動、いずれも当初の見通しよりも何がしかは高いであろう、ただいまのところそう考えております。したがって、税収の自然減を考えるよりは、自然増を期待する公算のほうが高い、こう私は考えております。しかし、実質的に本年度予算が施行されましてから、まだまだ一月足らずでございます。これからの経済の変動など考えてまいりますと、はたして何がしの自然増があるかということは、申し上げるまでもなく推定が困難でございます。また、もし相当の自然増がかなり確定的に見込まれるに至りましたような段階では、私どもは、第一に国債発行の減額をいたすことが財政経済政策の本筋の考え方であろう、そう考えておりますが、しかし、その時期ばまだ参っておらない、計数的に予測をすることがただいまの段階では困難である、こういうふうに考えております。
  149. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも長官の御答弁は先走りしますね。私は、何も保険財政を言うておるのじゃないですよ。使い道まで御心配になって御答弁なさっている。自然増は現在の段階ではどれくらいになっていますか。これは予想は聞きません、現在の段階では。この予算編成当時設定しました見込みよりも、具体的にどのくらい増しておりますか。これは数字じゃないとは言えないでしょう。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは現在の段階で申し上げることは困難でございます。そういう計数は、御承知のようにございませんので、申し上げることができません。ただ、自然増がありそうか、なさそうかと、たいへんざっくばらんにおっしゃれば、私は、どうも何がしかあるんじゃないかという感じがいたしますけれども、いまではどうかとおっしゃれば、申し上げることはできません。
  151. 淡谷悠藏

    淡谷委員 健康保険赤字に対する考え方は、当初の予算編成の場合の財政的な状態によってお考えになったのか——賛成のお考えですがね。将来、税の自然増が見込まれた場合の立場に立ってお考えになったのか、これだけをお答え願いたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、どう申し上げましても、財政的な観点からは、本年度予算の当初見込みました税収その他の歳入を基本にして考えた、こう申し上げるよりほかはございません。ただ、このたび御提案いたしておりますことは、ただ財政的な観点だけから申し上げておるのではない、と申せば、また先走った答弁だとおっしゃるかもしれませんけれども、その点もどうぞお含みいただきたいと思います。
  153. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは重大な発言ですよ。けさ私は劈頭に厚生大臣に対して、これはあくまでも財政上の問題の改正案でしょうと、二へんも三べんも念を押した。はっきり厚生大臣はそうでございますと答えている。企画庁長官は、所管が違うといえども、閣僚の一員として、財政上の問題じゃなく出しているという、この食い違いはどうしてくれるのです。厚生大臣は、財政上の赤字を何とか応急措置をとるためにやったんだと言う。企画庁長官は、それだけじゃないと言う。この閣僚間における意見の不一致はどうなさいますか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 主管の大臣は、あるいはそう考えておられるのかもしれないと思います。私は主管ではございませんけれども、もちろん、ここにある大きな部分は財政上の見地でございましょうけれども、やはり制度上の問題もあるのだ、私としてはそういう理解をしておるわけでございます。
  155. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは企画庁長官は、財政上以外にどういう原因があるか、お示しを願いたい。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほどから申し上げておりますとおり、かりに国の財政にたっぷり余裕があるとしても、国の各種の特別会計が、それなるがゆえに幾らでも赤字を抱えておってもいいものだというふうにはならないという、ごく普通の常識から申し上げておるわけでございます。
  157. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それが財政上の理由じゃないですか、結局赤字の問題だけならば。つまり、健康保険というものの抜本的な改革が目の前に迫ってきている、その抜本的な改革がまだできないので、やむなくこれは応急の処置として財政上の観点から出した法案だ、こう厚生大臣は答えているのですよ。それとも違うんですか。
  158. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう意味ではそのとおりでございます。
  159. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは先の答弁をお取り消しになりますか。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは前々から申し上げておりますとおり、医療保険の問題については抜本的な問題がございますから、それで、ただ財政だけが考慮の対象になっておるのではないという意味で申し上げておったのでありまして、いまお手元にある具体的な提案そのものは当面の緊急策であるということは、それは仰せのとおりであります。
  161. 淡谷悠藏

    淡谷委員 結局、健康保険法改正というのは財政上の問題から来ている。いまこのままであっても、国の財政がまさか倒れるようなあぶない財政じゃないことはわかっています。しかし、全般的な問題から見てこれは改正する必要がある、こういう御答弁だと思う。しかし、健康保険というものは、——これは厚生大臣はそうは思っていないでしょう。企画庁長官の頭からすれば、健康保険というものは、赤字のつじつまさえ合えば、健康管理はどうなってもいいというふうには、まさかお考えにならないでしょう。赤字を解消した場合に、逆に健康管理の上で大きな穴があくとすれば、これは財政赤字以上におそろしいことだとお思いになりませんか。その点はいかがですか。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もとよりそのとおりでございますから、冒頭に、計数的にこれが限度であるということを申し上げることは困難だと申し上げましたわけであります。
  163. 淡谷悠藏

    淡谷委員 宮澤長官は、将来の抜本的な改革を前にしまして、社会保険が、一体社会保障に上がっていくのか、私保険に下がっていくのか——まあ厚生大臣ははっきりその態度はきまりましょうけれども、国の財政を預かり、さまざまな企画を預かっております企画庁の長官としては、このどっちの方向に保険を向けていこうと思っていらっしゃるのか。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過般、経済社会発展計画を閣議決定いたしましたが、その中にございますことが私どもの基本的な考え方だと考えておりますので、やはり福祉国家において社会保険というものが社会保障の一環として発展をしていく、展開をしていくということは、これは当然なことではないかと考えます。
  165. 淡谷悠藏

    淡谷委員 したがって、今度の抜本的な改革に対しても、後退するのでなくて、社会保障の面に前進すべきが正しい方針だということは確認されるでしょうな。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようでございますが、ただその際、社会保障ということばで表現されるものは、あるいは淡谷委員の御理解と違ったいろいろな意味での理解のしかたがあるかもしれませんが、おことばでおっしゃる限りは、私はそのとおりだと思います。
  167. 淡谷悠藏

    淡谷委員 妙にからんだものの言い方ですが、私の考えている社会保障と、企画庁の長官の考えている社会保障の概念が違う。それじゃ一体あなたはどういうように考えていますか。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しろうとでございますから、社会保障についての哲学を申し上げるほどの知識はございませんけれども、(淡谷委員「常識でいいです」と呼ぶ)常識で申すならば、すべてのことを政府なりあるいは自分以外の納税者なりにたよろうというようなケースというものは、国の政策としては、どうしても万やむを得ない人はやむを得ませんけれども、できるだけそういう人の数は少ないほうがいい、やはり自分の力で自分の生活をしていくのだという基本の哲学は一人一人が持っているべきものだと考えております。
  169. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはますますわからなくなりますが、あなたの答弁を聞いてもしようがないから大体集約しておきますが、大体いまの赤字現実というものは、将来非常に心配になるが、現在のところ国の財政を倒すような赤字じゃないことだけは、わかりました。あとはよろしゅうございます。  あと厚生大臣にお聞きしますが、いまお聞きのとおりのような状態なので、あなたも、社会保険の理想というものは、いまの宮澤長官のような常識をちょっとはずれたような態度でなく、常識的に言って、社会保障の概念で持っていくべきものだという基本的な方針、これはお持ちでございましょうね、承っっておきます。
  170. 坊秀男

    坊国務大臣 いまの社会保険制度を社会保障——完全なる厳密なる意味の社会保障という、いま宮澤長官が言われたようなところに持っていくかということは、これは結局は抜本対策の問題でございますけれども、ただいまといたしましては、政府はそういうふうには考えておりません。
  171. 淡谷悠藏

    淡谷委員 政府管掌健康保険赤字が一番大きいというのは、この基礎をなす保険料を払う人たちの収入が非常に少ないというところに原因があるのじゃないですか。(「被保険者だ」と呼ぶ者あり)被保険者と言わなければおわかりにならないのだそうでありますが、私はわかりやすく、保険料を払う人と言ってもいいと思いますが、この点いかがでしょうか。
  172. 坊秀男

    坊国務大臣 これは非常に相対的な問題でございまして、被保険者の収入が非常に少ないからということも、それは一つの理由でございましょうけれども、保険の支出というものが最近非常にふえてきておる。ただ、これは一面から見まして、非常に被保険者の収入が少ないからときめつけてしまうということではない。非常に公式論でございますけれども、支出に対して収入が追いついていかない、こういう事態にあることが赤字がふえてきた、こういうことだと思います。
  173. 淡谷悠藏

    淡谷委員 政府管掌保険の平均標準報酬は、月額どのぐらいに押えておりますか。
  174. 坊秀男

    坊国務大臣 下限が三千円、上限が十万四千円、それで平均が三万一千六百円です。
  175. 淡谷悠藏

    淡谷委員 組合健保の場合はどうなっていますか。
  176. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 三万八千円ちょっとオーバーしております。大体八千円の開きがございます。
  177. 淡谷悠藏

    淡谷委員 もしも政管の報酬月額が組合健保の月額まで高まった場合に、現在予想されております単年度赤字関係はどうなりますか。おやりになったことはありますか。
  178. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 ちょっと計算いたしますから、後ほど説明いたします。
  179. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それではこっちで申し上げましょうか。これは概算ですが、いまの政府管掌保険の報酬を別なほうに直してみますと、赤字が大体解消できるのです。ちょうどその額になっているのです。したがって、私はこういうことを申し上げるのです。大臣赤字のできた原因というものを、ただ保険会計の中だけで考えているということは、相当窮屈になるだろう。国民所得の問題もありますよ。医療の問題もあるでしょう。これは非常に複雑な、いろいろな関係を持った原因が入りまじっておりますから、いまこの抜本改革ということが提案されているのでしょう。この抜本改革ができないので、臨時応急的に料率の引き上げやらあるいは初診料の改革をあなたは考えておられる。応急対策ならば、もっと応急対策らしい手が打てないものですか。借り入れ金をすることは、必要がなくなればやめられるのです。いま初診料を変えたり、あるいは入院料を変えたり、薬価の負担を変えたり、あるいは料率を上げたり、こうしたら、かりにさっきの見通しの赤字の総額が狂った場合に、あるいは国の財政状態が変わった場合に、またしてもいじらなければならないのじゃないですか。この点はどうです。もう名前は明らかに財政上の応急対策のためにこの改正案をつくったと言っておりますけれども、実質を見ますと、抜本対策に一足踏み込んだ形がある。その点はいかです。
  180. 坊秀男

    坊国務大臣 今度の緊急対策は抜本策に一歩足を踏み込んだのじゃないかとおっしゃられますけれども、これは現行の制度の中において改正をやったのでありまして、抜本策と申しますと、基本の骨格、仕組み、そういったようなものに触れることを私は抜本策と考えておりますが、さような意味におきまして、今度の対策は抜本策に足を踏み込んだものではない、かように考えております。
  181. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはいろいろな見方もございましょうけれども、それならば、この赤字の原因の検討をした場合に、現在の経済の成長とか、あるいは所得の不均衡とか、こういうものが原因になっておることはお認めになりますか。
  182. 坊秀男

    坊国務大臣 もちろん、大きく見ますれば、私は経済の動向というものがこれに影響がないということは言えないと思います。しかし、保険対策として考えますと、やはり保険の内部における支出と収入の面のバランスがくずれてきた、こういうことであろうと思います。もちろん、大きく考えますれば、おっしゃるようなことが影響していないとは言えません。日本経済の中における一つの制度であり、その制度の運用でございますから、そのおっしゃることをそうでないという理由はないと思います。
  183. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いままで長い間赤字の傾向が見え、しかも、午前中追及しましたとおり、この赤字予想も絶えず狂っておった。これをもっと早く何とか抜本的な改革に手をつけなければならないのを今日まで延ばしてきたというのは、何といっても政府の怠慢だと思います。その責任は政府みずから負わなければならない。同時に、政府みずからが負わなければならないのであれば、これを全部保険のワクの中だけで、しかも、抜本策じゃない応急策をきめていこうという方向に誤りがあるのじゃないですか。いかがですか。政府がもう少し別な方法応急策を立てておいて、その間に抜本的な改革を急ぐのでなければ、いたずらに制度が混乱するのじゃないでしょうか。あなたは抜本策でないと申しますが、料率の大きな改定、特に従来なかったさまざまな負担、これは実際保険をつけたほうに言わせますと、たいへんな影響を受けることになる。その点をもう少し政府自体として責任をとるようなお考えはないのかどうか。
  184. 坊秀男

    坊国務大臣 基本論にまた返るかもしれませんけれども、日本の今日の医療保障制度保険方式をとっております。保険方式でやっておりますから、じゃ、これを抜本的にやってしまうということになれば、それはまた考え方がございますけれども、抜本的な考え方ではない保険方式をとってやっておる現在の医療保障、政管健保の問題を、抜本的ではない臨時応急的な措置として考えていこうというような場合には、私は、この赤字を埋めるにあたりまして、幾つも方法があろうと思います。たとえば、保険料率というもののみを考えてやっていくということになれば、現在千分の七十二でお願いしておるのでございますけれども、これは千分の八十以上になるというようなことでございまして、どういたしましても適当でない。そこで、この赤字をどうして解消していこうかということに、ここにいろいろあんばいをいたしまして、現在御審議をお願いしておる各部面における一部負担その他の増額というようなことで、いろいろな負担をあんばいいたしまして、そうしてここにこういったような一つの法制化をした次第でございます。
  185. 淡谷悠藏

    淡谷委員 特に低所得者に対する初診料を倍額に引き上げたということは、昨日も箕輪委員から非常に適切な質問がありましたけれども、これは大衆の受診に対して非常に大きな影響を与えるということをお考えになりませんか。
  186. 坊秀男

    坊国務大臣 初診時の一部負担を倍額に上げたということでございますが、この百円というものができましたのはすでに十年も前になります。それから今日に至るまでのいろいろな経済の動向といったようなものを考えてみまして、私は、倍額に上げたということがさして大きな——もちろん厚生省といたしましては、受診抑制などということを考えておりませんし、さようなことには相なるまい、かように考えております。
  187. 淡谷悠藏

    淡谷委員 初診料の二百円というものは、きのうもたびたび質問があったわけなんですが、大臣がお考えになっておるような簡単なものじゃないと私は思う。初診料を倍額に上げたことによって具体的にはどれくらいの収入増を見込んでおりますか。
  188. 坊秀男

    坊国務大臣 三十九億円でございます。
  189. 淡谷悠藏

    淡谷委員 薬価の負担によって増す分はどれくらいですか。
  190. 坊秀男

    坊国務大臣 百二十六億円でございます。
  191. 淡谷悠藏

    淡谷委員 入院料はどうですか。
  192. 坊秀男

    坊国務大臣 五億円でございます。
  193. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、料率改正が一番大きな収入になる。料率改正によってはどれくらいになりますか。
  194. 坊秀男

    坊国務大臣 料率の改正では三百二十五億円でございますから、被保険者と事業主がこれを折半されますから、これは申し上げるまでもございませんが、百六十二億円ずつでございます。
  195. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総計して被保険者が全体的に負担すべき今度の増加分はどれくらいになっておりますか。
  196. 坊秀男

    坊国務大臣 結局、百六十二億円が被保険者でございまして、あとの一部負担というものは患者でございます。患者も被保険者のうちではございますけれども、観念上は被保険者と患者、こういう立場と申しますか、地位と申しますか、そういうものを持っておるわけでございます。
  197. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、被保険者全体で総額の場合におけるものは百六十二億円。患者が直接受ける増加はどれくらいでございますか。見込みでよろしい。
  198. 坊秀男

    坊国務大臣 いまの御質問でございますが、被保険者の中には、直接お医者さんにかからぬ者もかかった人もある。そのお医者さんにかかる人もかからぬ人も入れまして、被保険者は百六十二億円。現実にお医者さんにがかったり、入院したりする人があるわけなんでございます。その中の一部と申しますか、あるいは何部と申しますか、これが百七十億円、こういうことになりますので、この百六十二億円という被保険者の中で、お医者さんにかかるのとかからないのとを分けてませんと、一体お医者さんにかかる人がどれだけ負担をするかということは、いま私ここに数字は持ち合わせございませんので、そこのところを分けてお答えすることはできかねる次第でございます。
  199. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私がこんなことでくどくど言うのは、大臣、これは抜本的な改革の踏み出しじゃなくて、あくまでも財政上の応急措置だとおっしゃるのでしょう。そうすると、予定されておりますはなはだ不確かな赤字を消すたあの改正じゃないですか。したがって、こうすれば消えるのだというならば、あらかじめの予算が立っていていいじゃないですか。料率を上げても、初診料を上げても、薬価を負担しても、この赤字が消されないのであれば、法律としての目的の達成はできないでしょう。抜本的な改革の一環ならまた別だ。どうでも赤字が消えればいいのですからね、この法律というのは。したがって、この料率や初診料、入院料、薬価などの改正でこの法律の目標が達成できるのかどうかと私は聞いておるのです。これはやはり数字を詰めなければ何ともしょうがない。それで伺っているのです。
  200. 坊秀男

    坊国務大臣 今度の措置は、ただもうどうしても赤字さえ消えればいいのだ、こういうことではございません。もちろん、その赤字を消して、そして健全なる保険財政にしていかなければなりませんけれども、その赤字を消していくために、料率でやってもいいじゃないか、全部国庫負担でやってもいいじゃないか、全部一部負担でやってもいいじゃないか、そういうようなことでなくして、この生じました七百四十五億円というものを、どういう方法をあんばいして赤字を消していこうか、こういうことを考えまして、こういつた制度のやり方を採用いたした次第でございます。
  201. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこが大事な点なんです。ちょうど大蔵大臣が見えられましたから、一緒にお聞き願いたいと思うのですが、財政上の必要からいまの一健康保険改正案を出したというのですから、この財政上の赤字を消すことがこの改正案ではまず第一の目標になっておる。その改正案によって赤字を消す場合でも、できるだけ健康保険の本旨にそむかないようにという配慮のうちになされているのがいまの案でしょう。そうじゃないですか。その中には、すでに法案に載っておるように、第一には料率改正がある。初診料の改革がある。入院料がある。薬価がある。これによってこの赤字がどれくらい消せるのかという一つの計画があってもいいはずです。それが出てきませんか。もしそれでなお赤字が消せないような計画であれば、別にしなければならないと思う。国民から非常に恨まれるような改正案、困ったことの予想されるような改正案、これも赤字を消したいという第一の要件があるからなんです。したがって、数字的にそれが可能であるかどうか、これはやはりお考えになっておかなければ、法の精神にそむいてしまうじゃないですか。
  202. 坊秀男

    坊国務大臣 赤字が七百四十五億円生じた、その赤字をどうして埋めるか。ここに大蔵大臣見えましたけれども、たとえば、七百四十五億円の赤字というものをかりにこれを全部政府負担でやっちまえ——そういうことはおっしゃっておいでにならぬようですけれども、というようなことを考えましても、先ほど経済企画庁長官が見えて言われたごとく、とにかく政府が金がかかるということは、この健康保険だけの問題ではない、いろいろな面において財政支出を必要とする。そういったような支出の中において、でき得る限り七百四十五億円を埋めるための財政負担をまずしよう、まずしてもらいたい、こういうことで、前年度に比べまして五割増の政府の負担というものを要求し、これを予算に計上したわけでございますが、それをもっと多くやったならば、国民の負担も被保険者の負担も少なくなるじゃないか、こういう御議論はあろうと思います。あろうと思いますけれども、国の全体の財政運営におきましていろいろなものがございますので、これがぎりぎりであるということで二百二十五億円というものを政府負担として予算に計上したわけでございますが、その残りの赤字に対しましてこれをどういうふうに埋めていこうかということを考えまして、そこで先ほど来申し上げておるとおり、保険料率だけでやっていけばこれは千分の八十にもなる。それなら、今日まで制度としてあるところの初診時の一部負担あるいは入院時の一部負担といったようなものにたよろうかといたしますれば、これまたどえらい数字に倍率を上げていかなければならない。いろいろな方面から勘案いたしまして、そして今日御審議をお願いしておるようなあんばいのしかたをいたしまして、御審議を願っておる次第であります。
  203. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は健康保険決算は別に金の決算だけじゃないと思うのです。健康保険制度というものば国民の健康管理にどれくらい役立っているか、これが大きな決算だと思う。さっきの労働大臣答弁でも、明らかにこの保険制度ができてから国民の健康はよくなったと言っている。その赤字観念ということだけ中心に置きますと必ずこんな矛盾が来ますよ。財政の上では幾ら黒字になりましても、健康管理の面で赤字になったらこれは本末転倒なのです。これだけはひとつ厚生大臣も同じお考えだろうと思いますが、いかがでございますか。
  204. 坊秀男

    坊国務大臣 おっしゃるとおりでございます。国民の健康が保たれないというようなことになることは避けるべきことでございます。そこで、今度の政管健保の臨時緊急対策といたしまして、医療保険の運営が支障を来たさないように、国民の健康が支障を来たさないようにしたいために考えましたのが、今度の暫定対策でございます。
  205. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣御承知のとおり、この健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案というものは、「深刻な財政危機に直面しており、このまま推移すれば、制度崩壊すらおそれられる事態に立ち至っております。」ということを言っております。これは私、午前からずっとしつこく質問しているわけなのですが、いろいろ赤字が生まれた原因はまだ納得のいかない面がたくさんあります。これは同僚議員がまた引き続いておやりになるだろうと思います。しかし、この健康保険赤字というものは、いまの国の財政では耐えられないような大きなものであるかどうかということをさっきも企画庁の長官に聞きましたけれども、企画庁の長官は、これだけ考えれば国の財政がつぶれるほどのものでもないのだが、いろいろな他の出費がありますからという答弁だった。しかし、何をおいても病人を療治するということは至上命令だと思う。福祉国家の至上命令だと思います。したがって、国がほんとうに健康保険の存続を危ぶまなければならないほどの弱い財政力だとは私は思いませんが、これはその衝に当たっておられます大蔵大臣どうお思いでございますか。
  206. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は、こういうことを国の費用で全部やるという制度にするのか、保険制度をもってこれを解決するかということでございまして、各種の社会保障制度保険制度で一応保障されるという体制をいまとっておりますので、そうなりますと、この保険制度そのものを維持するためには、制度崩壊するような財政事情を許しておくというわけにはまいりません。そこから問題がきているのでございまして、国の金があるかないかの問題じゃなくて、保険制度としてこの医療制度を維持していくかどうかということが問題になると思います。そこで問題は、たとえば外国の例など見ますと、外国はほとんどこれが保険制度によって運営されるために、国民負担というものは非常に多い。日本では、税の負担とこういう社会保険の負担が、国民負担ではいま二一%かそこらだと思います。こういう制度をもっと普及させている先進国は、国民負担が四十何%となっておりますが、これはやはり国民所得の水準が違うために、この四〇%以上の負担に各国が耐えておるということでございます。日本も保険制度で出発してはおりますが、まだ国民の負担というものが楽になるような国民所得の水準じゃない。そのために、その間国家が財政支出をもってこれを助けるというのがいまの制度でございますので、これは必要があれば、国も財政の助けを、今度のような緊急のときにいたしますが、原則としては、各国とも、これは保険制度でやっている以上、掛け金でこれが運営されるというのが本則でございますので、この制度の本質を忘れた対策ということは、保険制度——この社会保障制度自身をもうつぶしてしまうことだというふうに私は考えております。
  207. 淡谷悠藏

    淡谷委員 各国の例を申し上げますと長くなりますから言いませんけれども、やはり大蔵大臣厚生大臣との間には、健康保険の見方に相当な開きがある。根本的な開きがある。さっき企画庁の長官もやはりそう言うている。抜本的な改革をしなければならないんだ——しなければならないことはわかっていますよ。わかっていますが、抜本改革の問題は別として、当面財政的の必要のためにこの法案はつくるのだということを厚生大臣ははっきり確言しているのです。したがって、財政的な措置さえつけば、抜本改革ができるまで、これは何年でもないでしょう。きのうの答弁だと大体一年という線を出しているじゃないですか。一年間非常な混乱を巻き起こすような、こんな改革案をなぜやらなければならないかというのが問題です。ここに問題があるのです。  さっきも聞きましたけれども、ことしの税の自然増というのは、見通しは、大蔵大臣はどうお考えになっていますか。予算編成当時から見ましてどのくらい伸びるつもりです。
  208. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだその見通しはいまのところ未定でございます。
  209. 淡谷悠藏

    淡谷委員 結論を急ぎますが、これは大蔵大臣厚生大臣も真剣にお聞き願いたい。けさから追及していますと、今年度の単年度赤字見込みというものは非常に不安定なものです。不確かなものです。しかも、過去における七カ年間の健康保険赤字見込み額というものは、年々ばく大に違っておる。この不安定な基礎の上に立って、その赤字を補てんするために、まさに抜本的なと言ってもいいくらいの料率の改正、初診料の倍加、こんなことをやるということは、常識を持った者はみんな反対をしております。あの医界の天皇だといわれます武見太郎氏が、この間三師会の大会で何と演説したか。時間がありませんから読み上げませんが、一ぺん静かにこの速記録をお読みになったらよろしい。小川半次君が何と言っておるか。自民党自体でも、これは非常に乱暴な改革案だと言っておる。不安定な基礎の上に立ったものでなぜ国民の不安を安定させるのか。これすなわち私はやはり健康保険の圧殺だと思う。制度の危険なのは財政だけではない。国民の診療の上にこういう大きな害悪を与えるようなことであれば、財政崩壊する前に制度自体が崩壊してしまう。財政赤字よりもさらに考えなければならないのは国民の健康です。しかも、政府管掌保険という低所得者の健康に大きな不安を与えるような法案は、すみやかに撤回すべきだと思う。第一、基礎をなすこの赤字の部分が非常に不安定、これはけさから厚生大臣よくおわかりだろうと思う。こうした無理をかかえておる法改正をあえて強行するつもりはないだろうと思うのですが、すみやかにこれを撤回するような御意思があるかないか、厚生大臣にお聞きをして、私は質問を終わります。
  210. 坊秀男

    坊国務大臣 赤字が非常に不安定だとおっしゃいますが、赤字の出てくるということだけは間違いない。今日までの積算によりまして、その赤字を大体七百四十五億円と見積もったわけであります。これをそのままにいたしておきますと、先ほどからも申し上げましたとおり、これから一年間の健康保険というものがその運営に支障を来たす。かような意味から、どうしてもこれは支障を来たしてはいけない、こういうふうな観点に立ちまして、私は今日この案を撤回するということは、国民に非常にふしあわせをあえて来たすものだと思いまして、これを撤回する意思はございません。
  211. 川野芳滿

    川野委員長 次会は、来たる七月四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会