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1967-06-28 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十八日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 粟山 ひで君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君       天野 光晴君    大石 武一君       河野 洋平君    菅波  茂君       世耕 政隆君    田中 正巳君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       藤本 孝雄君    増岡 博之君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       後藤 俊男君    佐藤觀次郎君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       浅井 美幸君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月二十八日  理事竹内黎一君同日理事辞任につき、その補欠  として粟山ひで君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律案内閣提出第九八号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九九号)  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第五二号)  児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部  を改正する法律案内閣提出第五三号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第七六号)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事竹内黎一君から理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、理事補欠選任を行ないたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認めます。よって、理事粟山秀君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 川野芳滿

    川野委員長 内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  この際、坊厚生大臣より発言を求められております。これを許します。坊厚生大臣
  6. 坊秀男

    坊国務大臣 去る二十一日、健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案並びに船員保険法の一部を改正する法律案提案理由説明をいたしたのでありますが、お聞き取りにくい点もあったようでございますので、補足的にこれを説明いたします。  まず、健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案について申し上げます。  医療保険財政は、近年悪化の傾向をたどっておりますが、特に政府管掌健康保険及び船員保険は深刻な財政危機に直面しており、このまま推移すれば、制度の崩壊すらおそれられる事態にあるのであります。政府は両保険について当面の収支の均衡をはかり、何としても制度を維持するため、まず国が極力大幅な国庫負担を行なうこととし、同時に、この難局に対処するため、被保険者事業主及び実際に給付を受ける方にも御協力を願うこととして臨時応急対策を策定し、今回この法律案を提案いたしたのであります。  法律案の概要は次のとおりであります。  まず、健康保険については、第一に、初診時一部負担金現行百円を二百円に、入院時一部負担金現行三十円を六十円にするとともに、新たに被保険者外来診療投薬を受ける際、一剤一日分の額が十五円をこえる薬剤について十五円の定額負担をしていただくこととしております。  なお、被保険者資格喪失後の継続療養受給者については、外来投薬定額負担は免除し、入院時一部負担金現行の額に据え置くこととしております。  第二に、政府管掌健康保険保険料率現行千分の六十五を千分の七十二とすることとしております。  次に、船員保険については、第一に、初診時一部負担金及び外来投薬時の本人定額負担について健康保険と同様の取り扱いをいたすこととしております。  第二に、保険料率について現行千分の二百二を千分の二百六とすることといたしております。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案についてでありますが、その改正点は次の二つであります。  第一は、失業保険金支給日額社会経済情勢の推移に応じ迅速に改善を行ない得るようにするため、法律には金額算定の基準を規定するにとどめ、具体的な金額については、失業保険法における給付水準等を考慮して厚生大臣が定めることとしたことであります。  第二は、配偶者加給金日額現行二十円から三十円に引き上げることとしたことであります。  以上、健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案並びに船員保険法の一部を改正する法律案提案理由について補足説明を申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 川野芳滿

    川野委員長 ただいま議題となっております両案にあわせて、児童福祉法の一部を改正する法律案児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案、以上各案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。枝村要作君。
  8. 枝村要作

    枝村委員 児童福祉法の一部を改正する法律案が出されたのでありますが、従来これは法外でありましたのが、いわゆる重症施設が法定化されるのでありまして、これに対して関係の方が非常に喜んでおるのでありますが、しかし、その喜びというのは、単に施設整備を促進したり、入所児童の処遇をよくするとかいうこと、あるいは民間施設に対して新しくつくる場合にはこれを補助をする、こういうことに対する喜びと期待ではないのでありまして、いままで児童福祉対策の中でも非常に立ちおくれておりました、いわゆる重障児に政府あるいは国の関心が急速に向けられたということに対する、いわゆる将来に対する希望、こういうことについての喜びであるというように私ども考えております。そのことは同時に、国民の世論がそういう問題に向けられてきた、こういうことの一つの証明であるというように私ども考えております。この運動が正式に三十九年ごろから始まりましてから、わずか数年にしてこういうところまでこぎついたということ、これはほんとうに関係者やあるいは国民の歓迎するところであります。また、心身障害児の問題がこういうように脚光を浴びたということは、ただ同情とかあわれみということだけであってはならないと思うのでありまして、こういう底辺であえぐ人たち保障する、救うということは、結局は全体の社会保障国民福祉の問題に結びついてくるのでありますから、それだけに、そういう人たちに対する今後の政府のやり方に対する国民の見方というものは、逆にきわめて厳重になってくるのではなかろうかと思います。そうして、このことがよく行なわれることによって、憲法保障されております基本的人権保障というものが守られていくのでありますだけに、ひとつ政府厚生省は、いままでしばしばあるところで言明されておりますように、全力をあげてこの問題に取り組んでいただきたいということを、まず冒頭申し上げておきたいと思います。  そこで最初に、私は児童福祉に関する全般の問題について質問をしてみたいと思います。  児童福祉法を進めていく上での政府施策基本となるべきものは一体何か。もちろんこれは憲法児童憲章に基づいて行なわれるのでありましょうけれども、そのことについて、ひとつ厚生大臣からそういう政府の態度についての御説明を伺いたいと思います。
  9. 坊秀男

    坊国務大臣 児童福祉行政は、児童福祉法を軸といたしまして進めてまいりますが、その根本の考え方は、児童心身ともにすこやかに生まれ、生まれた児童がまた健全に育成される、こういうことであろうと思います。特に日本の近年の傾向といたしまして、年少の人口が非常に減少いたしまして、これまでにも増して児童の資質の向上に対する社会的な要請が強くなっているのにもかかわりませず、児童をめぐる諸条件は、児童の健全な育成考えていく上におきまして、これで十分であるという情勢ではないと思います。保護を必要とする児童の態様もまただんだんと変化をいたしてきております。今後のわが国の児童福祉行政は、そのような状況に対処して、科学的できめのこまかい施策を幅広く実施してまいる所存でありますが、これまでの施策もそのような方向で進めております。  なお、以上お答え申し上げましたが、こまかい具体的なことにつきましては、関係局長から御説明をいたします。
  10. 枝村要作

    枝村委員 そして、児童福祉の、先ほどちょっと言いましたように、社会保障あるいは国民福祉の中に占める意義とでも申しますか、それはどういうふうにお考えになっておるのか、示されるものならひとつ示してもらいたい。
  11. 坊秀男

    坊国務大臣 とにかく、一国の将来というものは、次代を背負って立つべき児童が健全に生まれて、健全に育っていくということによって左右されるということは、これはもう疑うことのできない原理でございまして、さような意味におきまして、社会福祉行政にいたしましても、社会保障行政にいたしましても、これはいずれも大事なことでございますけれども、この児童福祉ということは、これはとにかく一国の将来の運命がかかっておるということを考えましても、非常な重点中の重点である、かように考えております。
  12. 枝村要作

    枝村委員 たいへん心強い厚生大臣の決意でありまして、私も大いに歓迎します。ですから、最初に言いましたように、全力をあげて厚生大臣はこれに取り組んでもらうように再度申し上げておきます。  そこで、いまいろいろ児童福祉行政を進めていく上で制度があります。大きく分けて、健全育成施策に関する制度、それから要保護児童施策に関する制度なんかがあるのであります。そのほか、あとから審議されるでありましょう扶養手当制度の問題なんかもあるのですが、大きく分けましてこの二つ制度について、簡単にいまの現状をひとつ説明していただきたいと思います。
  13. 渥美節夫

    渥美政府委員 現状に関するお尋ねでございまするので、私から御答弁を申し上げます。  お話子供に対する施策は、大きく分けまして、何か問題のある子供に対する対策、それから、そういった問題がある子供たちはひっきょう家庭から生まれてくる、したがって、家庭に対して、その家庭を健全に維持していくという対策、つまり子供健全育成対策二つに分かれると思います。  そこで、一般の家庭に対しまする、あるいは地域社会に対しまする子供健全育成対策についてまず申し上げますと、まず、家庭に対しまして、現在児童福祉法におきましては、家庭にある子供に対する相談事業相談指導ということをいろいろとやっておるわけでございます。このために、たとえば福祉事務所家庭児童相談室というものが全国でいま三百九十カ所ばかり置かれておりますが、こうした家庭相談室を設置いたしまして、専門職員を配置していろいろと相談指導を実施しております。それから、民間の方々の非常に特殊な機能を活用いたしまして、民間家庭児童相談所というものも設けております。こういった民間家庭児童相談所を通じて、やや特殊な事項に属する相談事業をいろいろと行なっているわけでございます。  それから次に、健全育成の第二の問題といたしましては、子供地域社会において生活しているわけでございますので、小さな地域社会に対するいろいろな施策も講じております。その第一といたしましては、児童館を設置するとかあるいは児童遊園整備する、こういうふうな事業でございます。児童館につきましても、現在までに約五百カ所程度の整備をしているわけでございます。なおまた、児童遊園につきましても、国庫補助なりあるいは国民年金還元融資、こういうものをもちまして、その設置なり整備を推進しておるわけでございます。全国で約千四百カ所ばかり整備いたしておるわけでございます。  なお、そのほかに、地域社会におきましては、いわゆるそういった子供グループのリーダーとなるようなボランティア、有志者活動、こういうことが非常に重要でございますので、そういった有志指導者に対するいろいろな講習会等も開いておりますほかに、そういったいま申し上げました児童遊園なり児童館を通じまして、子供会でありますとか、あるいは母親グループ育成もはかっておるということでございます。  次に、問題のある子供たちに対するいわゆる要保護児童対策、かような問題について申し上げますと、こういった子供たち、要保護児童に対しましてのいわゆる第一線機関といたしましては、御承知のように、児童相談所なり、あるいは保健所なり、福祉事務所なり、こういうふうな機関がございまして、各種問題に対しまする相談とか調査とか、あるいは健康診断とか、あるいは身体障害のある子供たち登録管理とか、かようなことをやって、そういったような要保護児童がすみやかに発見される、いわゆる早期発見早期保護早期指導というような面を強化しておるわけでございます。それから、たとえば身体障害子供さんが見つかったというような場合におきましては、保健所におきます療育の指導でありますとか、あるいはその症状によりまして、指定医療機関におきまして育成医療給付いたしましたり、あるいは補装具を支給いたしましたり、あるいはそういった子供が結核の子供でありました場合には、やはり医療給付を行なうと同時に教育指導を行なうというふうなこともやっておるわけでございます。それからまた、そういった子供たち保育に欠ける子供であるというふうな場合におきましては、御承知のように、本年度より大馬力をかけまして保育所を増設するということもやっておりますし、また、そういった子供たち家庭において養護を受けられないといったような場合には、養護施設、あるいは精薄児の場合には精神薄弱児施設、あるいは肢体不自由児の場合には肢体不自由児施設、あるいは非行を犯した場合には教護院、こういった各種児童福祉施設入所いたさせまして、各種保護、訓練、指導、こういったようなことを行なってまいっておるわけでございます。  以上、健全育成対策あるいは要保護児童対策の大要について御説明申し上げた次第でございます。
  14. 枝村要作

    枝村委員 よくわかりました。  それから、第一線行政機関がそれぞれあります。先ほどちょっとお話がありましたように、児童相談所とか福祉事務所保健所児童委員、こういう活動状況説明してもらいたいのですが、時間もありませんので……。  ただ、児童相談所が、資料によりますと、年々増加傾向にあるといわれながら、四十年では二十七万二千件あるのですね。これは前年度に比してかどうか知りませんが、四千件減ったというようになっておるようです。そうしますと、増加ではなく減りつつあるということになりますと、これは一体何かそこに欠陥があるかということに考えが及んでいくわけなのでありますが、これは四十年の統計ですから、ことしは四十二年ですから、その後どうなっておるかということについて、これだけひとつお伺いしておきたいと思います。
  15. 渥美節夫

    渥美政府委員 御指摘のとおり、第一線児童福祉機関であります児童相談所全国で百三十六カ所、これは昨年末現在でございますが、本年度さらに数カ所ふえることに相なっておりますが、こういった児童相談所におきます相談件数は、四十年に比べますと四十一年が多少減ってはおります。しかしながら、先ほども説明申し上げましたように、児童福祉に関する第一線機関児童相談所だけではございませんで、福祉事務所でございますとか、あるいは福祉事務所の中に置かれております家庭児童相談室、あるいは民間家庭児童相談所、こういう幾つかの機関が相当ふえてまいっております。総体といたしましては、相談件数がふえてこない、あるいは減っておるということはわからないのではないかと思いますし、また相談の内容にいたしましても、最近におきましては、従来の傾向と違いまして、たとえば健全育成、あるいはしつけでありますとか性向とかいうことの適当な相談というものも相当ふえてまいっておりますし、そのほか精薄相談養護相談肢体不自由児相談と、内容的には相当問題の多い相談が参ってきております。しかしながら、一応相談件数はそういった横ばいの傾向もございますが、さらに、こういう児童相談所なり福祉事務所そのほかの相談指導機関を強化いたしまして、児童福祉第一線機関のつとめを発揮できるように進めてまいりたい、かように思っております。
  16. 枝村要作

    枝村委員 その次に進みますが、要保護児童対策について、厚生省のほうから現状についての説明がありましたが、これは述べられておりますように、児童福祉施設は、家庭の環境に恵まれない児童、それから精神身体性格等に何らかの障害というか、欠陥があるために、家庭に置いてはすこやかに育っていかぬという子供入所させ、適切な保護指導を行ない、将来社会に適応させ、社会生活を営むことができるようにさせるということが目的なんでありまして、そのために施設が相当あるようであります。今日十三ほどあるというように調査ではされておりますが、これが具体的に一つずつどのように運営されておるかということを求めたいのでございますが、そうもいきませんから、その中の若干の問題について説明を求めたいと思います。  これに対するいわゆる資料は、大体四十年度末に調査したものが今日発表されておりますが、その後新しく調査が行なわれたか。あるいは行なわれないとするならば、今後いつごろこういう関係についての調査を行なうかということなんですか。文部省は、先日どこかの新聞に出ておりましたように、学校教育の問題におけるそういう身体障害児の激増に対する調査が行なわれておるようでありますが、厚生省は一体どうしておられるのか、こういうことをひとつ聞きたい。
  17. 渥美節夫

    渥美政府委員 児童福祉法上の各種保護施設子供たち施設がございますが、それらの調査年月日につきましてお尋ねでございます。一般的に申しますと、やはり年度末でございますとかいう数字が非常にとりやすいのでございまして、現在四十一年の十二月の数字を持っておりますので、四十二年の三月、年度末の数字が一番正確だと思ってここらを集計しておるわけでございますが、三月三十一日現在でございますので、まだ私ども施設にわたりまして全般的な数字が得られないのは非常に残念でございますが、しかしもう六月の末になりましたので、四十二年度末の数字をいま全般的に集計しつつあるわけでございまして、そう遠くない時期にこれらの数字が全部集まる、かように考えております。
  18. 枝村要作

    枝村委員 いまの答弁はいわゆる施設の問題に対する調査であるようでありますが、それもけっこう、年々やってもらわなければならぬのですが、それと同時に、日本全国にあるこういう身体障害者障害児の実数とか、それがどういうふうに待遇されておるとかいう、そういうものに対する調査はどうなっておるのですか。
  19. 渥美節夫

    渥美政府委員 全般的な調査年月日についてのお答えを申したわけでございますが、たとえば保育所に通わなくてはいけないような子供たちの要保育児童調査、これは三十九年に実施しております。それからまた、心身障害者身体障害あるいは精神障害者調査につきましては四十年に行なっております。そういうふうな特別の目的を持っておりまする調査は、大体毎年一回、その目的に応じ、あるいはその需要に応じまして行なっておるところでございます。そういう意味でさらに保育所入所している子供さん方の調査を四十二年度においては実施したい、かように考えております。
  20. 枝村要作

    枝村委員 進めますが、これは四十年の調査ですから、四十一年度にはどうなったか私のほうはまだわかりませんが、いま要保護児童施設定員に対して在所者の割合が一〇%前後常に不足しておるという数字が出ておるわけです。その原因はいろいろありましょうが、一体この満床にならぬ理由というのは何かということなんですね。それはいろいろあるでしょうけれども、その中でも私ども一番関心を持つのは、あとからゆっくりお聞きするのですが、介護する人の不足、医師とか看護婦とか保母とかの不足、こういうのがやはりあるのじゃなかろうかとも考えますし、それからまた、母子寮乳児院養護施設などにそういう人たちで入り手がないということと、施設がきわめて老朽しておるということから、入所資格のある者も入所をいやがる、こういうこともあるんじゃないかというふうに考えますし、その他全体としてそういう施設不足しておるんだということが頭の中に先に入って、行ってもしようがないのじゃないかというような、こういうあきらめもあるかもしれません。そういう何かの事情があるかと思いますが、厚生省のほうから、満床にならないのは一体どこに理由が大きくあるかというのを簡単に説明してもらいたいと思います。
  21. 渥美節夫

    渥美政府委員 仰せのとおり、児童福祉法に定められております子供たち収容施設は十三ございまして、そのほかに里親という制度がございます。いずれもこの十三の施設は対象とする子供たちがそれぞれ違っております。したがいまして、各種類につきまして同じような理由で満床になっておらないということではないのであります。各児童福祉施設種類に応じましてそれぞれ理由があろう、かように考えております。医学的な管理のもとに子供たちを収容しているような施設、たとえば、重症心身障害児施設でございますとか、あるいは肢体不自由児施設、こういった施設が満床にならないというふうなことにつきましては、御指摘のように、その看護職員の確保が非常に困難であるという問題もあろうかと思います。それからまた、母子寮でありますれば、やはり非常に老朽した母子寮が多いので、なかなか定員だけ入れられないという問題もありましょう。それからまた、教護院なりあるいは養護施設というふうな施設になりますると、やはりこれはそういった児童を措置する際のいろいろな問題点もございまし七、それで少なくなっているということもございます。しかしながら、これは私ども調査によりますると、大体一番悪いところで一〇数%の定員減収容児童が定床に対しまして七八%といいますか、こういうふうなところでございまして、そのほかの、たとえば精薄施設でございますとか、あるいは肢体不自由児施設になりますると、九〇数%以上の入所の率を示しておるわけでございます。また、こういった施設でございますから、男女の別でございますとか、あるいは症状の別でございますとか、収容定員が百人あって百人完全に収容できないというような、いろいろ物理的な、あるいはまたそういった理由から、一〇〇%満床ということが初めから困難であるという施設もございます。いずれにいたしましても、先生からお話のありましたような各種理由によりまして、各種施設において多少定員を割っておるということも事実でございまして、もう少し個々の施設につきましての実態を府県等を通じまして確保いたしまして、措置の適正化をはかっていきたい、かように考えております。
  22. 枝村要作

    枝村委員 そうすると、そういうこともありましょうし、私どもから考えれば、児童福祉施設全般の質的な面から見た場合に、単にこれは法令で定めてあるからということで、最低基準ですか、そういうものをいつまでも守っていくということであってはならないと思います。それからまた、施設整備施設の運営、そういうものの合理化、それから優秀な職員を確保するということが同時に満たされていかなくては、いまあなたが言われたような今後の対策には合致していかぬのじゃないかというふうに考えるのでありますが、この入所基準の引き上げとか、いま言った労働条件を維持改善する、こういうことについての考え方というものを明らかにしてもらいたいと思います。
  23. 渥美節夫

    渥美政府委員 いまのお話は、要するに職員の処遇をもっと改善するならばこういった施設もその能力をフルに活用できるのではないかというふうな御指摘だと思うのでございますけれども、まさにその点も非常に大きな問題でございます。したがいまして、こういった施設に働いておる方々が受け持つ子供の数を順次少なくしていく、つまり受け持つ児童数を改善していくことによりまして、そういった児童指導員の方とかあるいは保母さんの方のロードが軽くなるという問題がございます。この点につきましては、やや古いのでございますが、昭和三十七年に中央児童福祉審議会におきまして、施設において働く方々が受け持つ児童数の改善についての意見の具申をいただいたわけでございます。したがいまして、その意見の具申に従いまして逐次毎年その改善をはかってまいりまして、たとえば本年度におきましては、教護院におきましては、教護の受け持つ子供の数を八人に一人を六人に一人に改善するとか、あるいは保育所におきましては、三歳未満児につきまして、保母の受け持つ児童数七人に一人の率を六人に一人、こういうように改善をはかるというふうなこともいたしておるわけでございます。  なお、職員の俸給の問題でございますけれども、これらにつきましては、毎年の保護措置費の単価を設定するにあたりまして、国家公務員の給与ベースに即応して職員の単価を上げるということをいたしておりまするほかに、大都会と農村におきまして単価の格差がございます。そういった格差も毎年少しずつ是正をしていくというふうなことで進めてまいっておるわけでございます。
  24. 枝村要作

    枝村委員 この際ここで質問をしておきたいのですが、乳幼児の養護施設でございますが、その場合基準はどうなっているんですか。いま、三歳までの児童に対しては、七人に一人を六人に一人保母をつけるとか言われたのですが、乳幼児の場合の施設におるそういう保母の基準は一体どうなっているんですか。
  25. 渥美節夫

    渥美政府委員 乳幼児が収容されあるいは通園をしている施設は、御承知のように保育所養護施設とございます。保育所につきましては、先ほど申し上げましたように、本年度から、三歳未満の子供さんにつきましては、子供さん六人につき一人というふうに改善されたわけでございます。二十四時間収容されている収容施設としての養護施設におきまする三歳未満の子供に対する保母の数でございますが、これは五人に一人という基準になっておりまして、この基準につきましては、先ほど申し上げました中央児童福祉審議会におきまして意見具申されました数と合致をしておるということになっております。
  26. 枝村要作

    枝村委員 三歳児までが乳幼児かもしれませんが、それ以上はどういうことになるのですか。
  27. 渥美節夫

    渥美政府委員 四歳以上につきましては、保育所に関しましては、つまり三歳以上でございますが、三歳以上につきましては、現在四歳、五歳を問わず三十人に一人ということになっております。これは一つ問題点として、中央児童福祉審議会におきましては、三歳児自体については二十人に一人にしたらどうか、こういう意見の具申をいただいておるところでございます。それから次に、養護施設におきましては、三歳以上の子供につきましては現在は八人に一人ということに相なっております。これは中央児童福祉審議会におきます意見具申も八人に一人ということになっておりまして、その点におきましては合致をしておるということでございます。
  28. 枝村要作

    枝村委員 それで、六月十二日の新聞によると、六月十一日に愛知県の旭町で養護施設に入っておる五つの坊ちゃんがパスにひき殺されたという事件が起きたのですが、これは御承知だろうと思う。これもバスの運転手が悪いとかなんとかということで世間はいろいろ騒ぐようでありますが、実際よく見ていくと、その養護施設では、先ほど言いましたような基準より下回った保母しかおらない。少なくとも三歳以上でしたら八人に一人というのに、この養護施設では十一人に一人という割合で保母さんを置いておる。しかも、そこに収容されておる人たちは、知能が非常に低い、こういう人ですから、常にめんどう見ていかなきゃならぬ。基準そのものでも、私どもから見れば、そういうところでは足らぬと思うのですけれども、足らぬにもかかわらず、なおこれは不足しておるということなんです。それが原因で結局国松誠ちゃんという人がひき殺された、こういうふうに関係者は見ておるようでありますし、私どもそういうふうに考えざるを得ないのです。こういう事件も起きておるのでありますから、あとからまたいろいろ質問はいたしますが、しっかりと少なくとも基準だけは守っていくというような指導を行政面でしていただきたいと思うわけであります。  それから次に、重症心身障害児のことでお尋ねしていきたいと思うのですが、この前当局の資料によれば、全国で一万九千何人かおるというようにいろいろ知らされておるわけであります。私どもから言わせれば、三万人おるというように見ておるわけなんですが、その一万九千を年齢別に調査されておれば、ちょっと発表してもらいたいと思います。
  29. 渥美節夫

    渥美政府委員 ただいまの重症心身障害児の実数の調査は昭和四十年の八月に行なったのでございます。その結果、お話のように一万九千三百人という総数が推定されるのでございますが、このうち十八歳未満の子供の数が一万七千三百人、十八歳以上の方々の数が二千名ということに相なっております。
  30. 枝村要作

    枝村委員 それで、重障児は最近増加傾向にあるのかどうかということです。これは四十年八月ですから、もう四十二年になっておるのですから、調べておればひとつ発表してもらいたいと思うのです。その中に、交通事故や医薬品による後天的な重障児がどのくらいあるのか、それは増加傾向にあるのかどうか、こういうことも同時にお尋ねしておきます。それからもう一つ、先天的重障児と後天的重障児の数別がわかれば、ひとつ発表していただきたいと思います。
  31. 渥美節夫

    渥美政府委員 いま一万七千三百名の子供の数を申し上げたのでございますが、この中で先天的障害によるというふうに思われる方々の数は一万一千百名、それから後天的な障害によるものであろうと推定されるものが六千二百名、合計いたしまして一万七千三百名ということでございますが、ただ、こういったものが、先天的障害であるものか、あるいは後天的障害であるものか、これは一応調査の過程におきまする判断でございまして、これらがまさにそうであるかどうかという点につきましては、さらにもっと慎重な調査が必要であろうかと思いますが、一応の推定でございます。  なお、重症心身障害児がふえるものかどうかというお尋ねでございましたが、この問題につきましても、非常にむずかしい判断が要ると思うのでございます。と申しますのは、重症心身障害児あるいは先天性の心身障害児等の発生の原因につきまして、いまなお学界におきましていろいろと追究をしているわけでございます。大きく分けまして、こういった子供さん方の原因はどうかと申し上げますと、第一点といたしましては、やはり遺伝子の関係、あるいは染色体の異常というふうな意味での遺伝的な原因、これが一つあげられるわけでございます。  それから、第二点といたしましては、遺伝的原因というふうなことではなしに、いわゆる環境的原因というふうなものでございまして、この環境的原因におきましても三つの要素がございます。第一の要素といたしましては、主として妊娠下の母体に何らかの影響があって、それが原因でこういった子供さんが生まれるということでございます。その原因におきましても、妊娠中のおかあさんのからだにおける原因によりましても、たとえば感染によるものとか、あるいは放射線によるものとか、あるいは薬物の副作用によるものとか、あるいは栄養とか代謝障害によるものとか、こういうふうにいろいろの原因があげられております。それから次に、環境的原因による第二の要素でございますが、これは分べん周辺期の障害によるものでございまして、よくいわれます妊娠中毒症の問題でございますとか、あるいは分べん期異常の問題でありますとか、あるいは未熟児の問題、あるいは血液型の不適合によりますところの重症黄だん児の問題、こういうのもあるわけでございます。それからさらに、この環境的原因によるものの第三といたしましては、これはもう分べんが終わり、生まれた後の原因によるものでございまして、御指摘のように、たとえば交通事故等によります頭部損傷、頭部の外傷でございますとか、あるいは日本脳炎とか、あるいは脊髄性小児麻痺であるとか、こういうふうないろいろな理由によって気の毒な子供さんがあらわれるわけでございます。  したがいまして、こういった重症心身障害児なるものが今後ふえていくのか減っていくのか、こういう問題につきましてのお答えはたいへんむずかしいのでございまして、いま申し上げましたような原因が単純な場合もございますし、あるいはそれが複合している問題もあります。したがいまして、これらにつきましては明確にここでお答えできないのが残念でございますが、ただ、交通事故等による頭部損傷におきましては、これは毎年の統計が示すように、だんだんふえていく、かように思います。また、環境的原因の中で、特に妊娠中の母体側に原因があるような場合におきましては、母性あるいは母子の健康管理等の施策を強化して、母子保健の充実によってある程度これは少なくなっていくということもいわれるわけでございまして、全般的にははっきりとふえるとか減るとかいうことが申し上げられないのがたいへん遺憾だ、かように存じております。
  32. 枝村要作

    枝村委員 いわゆるサリドマイド奇形児といわれる人ですね、これは大体いま何人ぐらいおるのですか。
  33. 渥美節夫

    渥美政府委員 サリドマイド奇形児は、先ほど御説明いたしました妊娠中の母体に対しまして薬物の副作用によってできたものではなかろうか、こういうふうにいわれておるわけでございますけれども、正確な調査を私ども公にはなかなか把握しがたいのでございますが、一般的には約二百名程度ではなかろうか、かように見られております。
  34. 田邊誠

    ○田邊委員 関連質問。私は、児童福祉のいろいろな根本原因をさぐるためには、非常に要素があると思うのですが、いま局長の御答弁にもありましたとおり、先天的ないろいろな障害、特に母体の保護が行き届かないというような点からくるようないろいろな障害というものを、当然これはまずもって除去しなければならぬと思うのですが、それと並んで、最近は、何としても環境からくるいろいろな後天的な障害というものが児童の健全な育成を阻害をしているという、この事実に目をおおうことはできないと思うのであります。そういった点で、その環境を改善をすることによって児童育成をさらに健全にするということのたてまえから見ますならば、いまお話の出ました交通事故によるところの児童のいろいろな障害というものが最近特に多いことは、御案内のとおりであります。つい最近でも、千葉県において、白バイの隊があるすぐそばに保育園があって、そこに通園中の児童が白バイの隊員によって交通事故にあっている、こういう事態もあるわけであります。したがって、私はこの際、児童のいろいろな健全育成のための施設を講ずる一環の中で、この交通事故をいかになくし児童の安全をはかるかということに対して、これはひとつ総合的に問題の処理と対策に当たらなければならぬ段階にきていると思う。これはただ単に厚生省児童家庭局だけでもって処理できる問題ではないのでありますけれども、これは緊急の要件であるだけに、この際ひとつこれに対するところの、特に児童——交通対策全般についての国の考え方は当然あろうと思いますが、その中でもって、当然保護すべき児童に限ってみて、この交通事故をなくするという、いわば国民運動的な要素も含めて、この際ひとつ対策を講ずる必要があるのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、これに対する何か具体的な対策が一、二ありましたら、お伺いをいたしたいと思います。
  35. 坊秀男

    坊国務大臣 児童を交通禍から守るということは、御指摘のとおりに、非常にこれは大事なことであり、かつまた喫緊の必要事項だと私は思っております。そのためには、非常に幅広く各般の角度から考えてまいらなければならないというので、御意見のとおり、これは厚生省だけでは十分なことができないということでございますけれども、しかし、厚生省といたしましては、児童福祉行政という責任を持たされておる役所でございますから、さような意味におきまして、関係各省にもこれを強く要請をいたしていかなければならないという立場にあるということは、私もよく自覚をいたしております。  そこで、いろいろございましょうけれども、特に児童に対してどうすればいいか、こういうことでございますが、いずれにいたしましても、一般的な立場から言えば、これはいまの日本の道路が非常に危険になっておりますので、その交通の安全を期するためには、どうしたって広く見まして道路というものを整備していかなければならない。安全施設といったようなものを道路に整備をしていかなければならない。それからまた、これは主として自動車、バス、トラックといったような交通機関でございますけれども、そういったような交通機関を運転する人間に対しましては、非常に厳重なる指導監督を行なう。自動車そのものに対しましては、これは十分整備をされた  時としてブレーキがきかなかったとかといったようなものでなしに、物的にそういうようなことに注意をしていかなければならない。人間的にも物的にもこれは大いに注意をしていかなければならないということ。さらには、今日非常に緊急性を増しておりますことは、町の児童の遊び場がだんだんなくなりまして、そして、児童が遊び場というものを侵食されていっておる。道路で遊ばなければならないといったようなことは、児童にとっては非常にふしあわせなことだと思います。さような意味におきまして、たとえば、いま建設省には児童公園というのもございますし、厚生省関係としては児童遊園といったような施設はあるのでございますけれども、そういったようなものをでき得る限りこれをふやしてまいりまして、そしていわゆるチビッコ広場といったようなものを、大都会はもちろんのこと、地方の都市といったようなところにもこれを整備していくといったようなことも、これは児童を交通禍から助けていく一つの手段としては相当効果のあるものだと思っておりますが、いずれにいたしましても、精神的、物的、各般の角度からこれは考えていかなければならないということでございまして、厚生省といたしましては、できるだけ各省と相談、連絡、要請をしてまいりたい、かように考えております。
  36. 田邊誠

    ○田邊委員 警察庁お見えですか。——それではあとで警察庁の交通関係にお聞きをいたしますけれども、特に厚生省といたしましては、いま大臣のおことばにもありましたとおり、児童の健全な発育を期するという意味合いから、その立場からする、交通禍から児童を守る運動の推進役を特にやっていただかなければならぬじゃないかと思うのです。具体的には、つい最近、保育園なりに通う子供の交通事故が非常に多いということから、その担当者からもかなりの要請が出ているようであります。  一つには、保育所、幼稚園の前の交通繁雑な道路に対しては、横断橋や地下道を設けてもらいたい。あるいは保育所や幼稚園の周辺に対しては速度の制限地域を設けてもらいたい。大型の自動車の乗り入れを禁止してもらいたい。それから、これは特に効果のある問題として、保育所、幼稚園の所在を明示する交通標識をつけてもらいたい。さらに保育所や幼稚園の配置等について、交通事故から守るという立場で十分推進して、その設置等を考えてもらいたいということがございます。  それと、私はこの際ちょっとお聞きしておきたいと思うのですが、やはり事故を防止するということを局長が年来言っておる。これは児童の治療なり、あるいはいろいろな施策を講ずる前の予防が一番大事だ、こういうことでございますけれども、不幸にして事故が起こった場合に、その児童なり家庭に対してなるべく手厚い手当てが講じられることが望ましいわけでありますけれども、お聞きをしますると、日本学校安全会が実施をしておる事故災害共済制度というものがあるそうでございますけれども、この給付内容を改善してもらいたいという要望があるのですが、これは一体いかがなものでしょう。  もう一つは、公費負担によるところの児童傷害保険制度というものを研究して、将来これを実施してもらいたい、こういう要望が出ておるそうでありますが、この二つの点に対していかようなお考えをお持ちでございますか。お聞きしたいと思います。
  37. 渥美節夫

    渥美政府委員 学童あるいは園児の交通事故防止に対しましては、御承知のように、交通対策本部の決定もありますし、交通関係閣僚協議会等におきましても決定されておりまして、その決定に従いまして——実は私ども被害者の立場でございます。そういうふうな意味で、こういったいろいろな会議等におきましても、特に保育園を中心といたしました子供たちの安全を守るように強く要望して、具体的な御意見等も出しておるわけでございます。こういった交通対策本部等の決定によりまして、現在におきましては、各市町村ごとに、市町村の学童園児交通事故防止対策協議会という協議会も設置されております。メンバーといたしましては、たとえば、市町村長なりあるいは教育委員会の委員長、それから小学校、幼稚園、保育所の長、警察署長、道路の管理者、こういった方々で町村ごとに協議会が設置されておりまして、いま先生が御指摘のような、たとえば交通安全施設整備でありますとか、あるいは交通規制の具体的な問題、あるいは子供たちの通園誘導の方法でございますとか、あるいは遊休地の利用の問題でありますとか、あるいは地域におきまする各団体についていろいろと子供の安全を守るようなPRをはかる、こういう具体的な問題につきまして、いま盛んに地域におきましては検討を進めておるところでございます。私ども、昨年の例の草加市松原の草加保育園以来、二十人近くの子供さんをなくして、まことに申しわけなく思いつつ、かつまた、何とかしなければならぬというふうな気持ちに燃えているところでございます。  いまお尋ねの学校安全会の給付内容改善の問題でございますけれども、これらにつきましても、学校安全会には保育所が加入をすることになっておりますので、給付内容につきまして、さらに文部省当局にその改善につきまして強くお願いしよう、かように考えております。  なお、第二の問題点の傷害保険制度の問題でございますが、実はたいへん恐縮でございますが、私、それ自体につきましてまだ正確な認識を持っておりませんので、これは調査いたしまして、善処の必要があればそれらの方向に検討してみたい、さように思っております。
  38. 枝村要作

    枝村委員 質問を続けます。  四十一年の五月二十六日の本委員会で、わが党の長谷川委員から質問したことがあります。それは大体障害児が五万一千五百人である。いわゆる介護の要す障害児がですね。しかし、そのうちか外かわかりませんが、介護を必要とするが介護する者のいない障害児が五百人おるというのです。これはその当時の「厚生」の四月号に発表されておるようでありますが、この五百人の障害児をどうするかという問題で質問をしておるのです。介護を必要とするけれども介護する者がいないということですから、これは最低のところであえいでおる障害児だということになるのですから、質問は、こういう障害児こそやはり国立の施設ができたら一番先に収容すべきだということを御質問したわけなんです。当時の鈴木大臣は、御指摘のとおり今度できたらそういう人たちを優先的にひとつ収容していこうという答弁をされておるのですが、去年国立ができたのですが、そういう人の取り扱いはどうなっておるかということを聞きたいわけです。
  39. 渥美節夫

    渥美政府委員 私ども児童福祉の仕事を担当していく者といたしましては、特にそういった家庭環境に恵まれない方々で、しかも心身に障害のあった方が一番悲惨であるということを考え、それを優先的に考えるのは、これは当然でございます。したがいまして、そういった子供さん方が重症心身障害児であった場合には、昨年から出発いたしました国立の施設等にも最優先で収容するような方法を講ずる必要は当然あると思います。また、そういった子供さん方が、精薄子供であるとか、あるいは肢体不自由の子供であった場合には、そういう精神薄弱児の施設あるいは肢体不自由児施設につきまして最優先で収容いたして訓練をさせる、この方針はもう当然でありまして、そのように運営していきたい。現在もそういった方針で運営しておると思っておりますけれども、なお、もし問題があるようであれば、さらにそういった問題は改正していかなければならない、かように考えております。
  40. 枝村要作

    枝村委員 この問題だけ特別に五百人を取り上げて言っているのですから、しかもそういう約束がされているのですから、その後どうなっておるくらいのことは、そういう答弁をした責任者として、やはりその状況というものはよく把握しておく必要があるのではないですか。そうせぬと、国会でこうやり取りをやってみましても、こっちは言うた、向こうは答えたということで、それで終わりで済んでおっては、こういうところで問題を取り扱う場合には、心の通わない結果になってしまうおそれがあるのですから質問したわけなんですが、わかりませんですか、五百人の内訳というのは。
  41. 渥美節夫

    渥美政府委員 重症心身障害児施設が、四十一年度におきまして、国立といたしまして五百二十床できまして、これは出発しております。これは国立の療養所が十カ所で、整肢療護園、東京にございます重症心身障害児施設でありますが、これが一カ所でございますが、この地域も北海道から四国、中国までばらばらに分かれております各施設ごとに、四十床を一つのユニットといたしましてやっております。したがいまして、昨年五百人の全然介護をする者がない子供について、この五百二十床にどういうふうに入ったかということにつきましては、まだその調査が行き届いておりません。したがいまして、いまの御質問の点につきましては、よく調査いたしまして後刻お答えをいたしたい、かように考えております。
  42. 枝村要作

    枝村委員 いまの問題については、この次の機会に明らかにしていただくということで留保しておきます。  それから、全体の要保護児童に対するあれですが、十八歳以上の重障者はどういうふうにするものなのか、その対策がわれわれにはよくわからぬのでありますが、はっきり言えば、死ぬのを待つというようなことであってはならぬと思うのですが、一体これらをどういうふうな方法で救っていくかという対策があれば、ひとつお聞きしておきたい。
  43. 渥美節夫

    渥美政府委員 重症心身障害児対策の一環といたしまして、児童福祉法におきます児童は十八歳未満でございますけれども、今回の児童福祉法の改正に際しましては、十八歳以上のいわゆるおとなの方も、当分の間この重症心身障害児施設入所いたしまして治療、保護をはかるということに条文を定めることに相なっております。したがいまして、おとなの方も、つまり十八歳以上の重症心身障害者の方も、いま提案中の児童福祉施設である重症心身障害児施設に直接入所できるということに相なるわけでございます。
  44. 枝村要作

    枝村委員 それはまた後ほどということにいたしまして、法律改正の法案に入る前に一つ尋ねておきたいことがありますが、コロニーの問題なんです。コロニーと呼称されているのですが、コロニーとは一体どのようなものか、その定義ですね。なかなかむずかしいようでありますが、あなたのほうでいままで一般的に取り扱われておって出てくる結論としての定義、そういうことでもいいですから、これを述べてもらうと同時に、いまどういうふうな、現状にコロニーと呼称されておる施設があるか、あるいはどういう運営をされておるかということについて、まず説明を伺いたいと思います。
  45. 渥美節夫

    渥美政府委員 コロニーという外国のことばを日本語に直したようなことばでございますが、その定義づけとかあるいは概念づけにはいろいろ問題があろうと思うのでございますが、いま私どもが国の手によりまして設置をはかりつつありまするコロニーにつきましては、これから申し上げるような内容でございまして、そのような運営をしてまいりたい、かように思っております。  このコロニーというのは、要するに、心身に障害のある者が、公の援護のもとに比較的相当長期間居住いたしまして社会生活を営むための総合的な施設であるとともに、一つ地域社会をなす、こういうのが私ども考えているコロニーでございます。もう少しわかりやすく申し上げますと、現在の児童福祉施設なり、あるいは保護施設等、そういった施設におきまして、いろいろと生活訓練を受けたり、あるいは学習訓練、学習指導を受けたりいたしまして、結局は社会に復帰するというのが大きな目的になっておるわけでございます。ところが、コロニーという場合におきましては、もちろん社会復帰も一つの目標ではございますけれども、いろいろと問題のある心身障害の方でございますから、そういった地域社会におきまして全人格的な生活を営むことができるような施設地域社会、こういうふうに考えておるのでございます。  具体的に申し上げますると、国の手でいま建設に取りかかりました国立のコロニーは、群馬県にてその土地を選んでおりまして、約二百二十四ヘクタール、坪数で申し上げますと約六十七万坪でございますが、こういった広い地域におきまして、千五百名の心身の障害のある方、あるいは重症心身障害の方、こういった方を収容いたす地域社会ができるであろうと考えております。本年度におきましては、土地の取得と土地の造成に全力を傾けておりまして、来年度以降そういった土地、地域社会におきましていろいろな施設をつくるとともに、こういった関係の方々の養成施設なりあるいは研究施設といったところまで建設したい、かように考えておるところでございます。
  46. 枝村要作

    枝村委員 説明を求めても、国が建てたコロニー施設はいまのところないのですから、ほとんど民間あるいは財団法人ですか、そういう法人でつくっている施設だけだから、なかなか答えはないと思う。ただ、高崎で今度コロニーと称するものをつくるということに初めて国が乗り出したということなんです。それで、日本においては、結核患者あたりがなおらぬままに外にほうり出されておる、そうしてあすから生活ができぬ、だからそういう人たちが集まって集団生活をしようというところから出ておるようであります。これは大臣もよく知っていらっしゃると思う。特にこの周辺の大宮工場から客車をもらって、その中で集団でというのが最近まであったわけです。そういうのが始まりでありますが、しかし、これに対して国や地方公共団体は、生活保護法によって確かに生活の保護だけは与えておったようであります。しかし、そのほかの一切のめんどうは見ておらぬというのが、今日のいきさつの中の状態ではなかったかと思う。  そこで、私どもが一番関心を持つのは、国際的に進んだところを見てまいりますと、イギリスの例が非常にいいと思うのです。これはただ単に、先ほどあなたが言われたように、長期に居住し、そうして全人格的市民生活を行なうために、地域社会で、かつ生活共同体としての性格を有する総合的な施設ということではなくて、そういう世の中の見捨てられたということではありませんが、身体障害のある人たちが、自力ないしは政府補助によって、生産手段を持って、そうしてかたがた療養していく。療養が先か、生産手段が先か知りませんが、両者が一体となってこういう施設をつくっていく、地域社会をつくっていく、こういうコロニーでなければならぬ。ところが、日本の場合は、そういうのが確かにわずかはあるようで、授産場とかなんとかいってあるようですが、ほとんどがそういう生産手段を伴う施設になっていない。その大きな原因は一体何かということをわれわれ考えますと、やはり政府がめんどうを見ていないからだと思う。見れば、ただ単に生活保護法によるところのお金をちょっぴりやるというだけである。イギリスあたりでは最賃制が確立していますから、それでその人たちを守っていく、赤字が出るならば政府が大々的にそれを補助していく、こういう制度が確立しておる。それで初めてコロニーとしての存立の意義が生まれてくるように私どもは思うわけです。ですから、政府もいままでのようなことであってはもちろんなりませんが、そういう外国の先進国の最もすぐれた点を常に模範としながら、それを導入しながら、りっぱなコロニーをつくっていくように心がけていただきたいと思います。重症身心障害児も、コロニーという総合施設があるために、将来の明るい希望が持てることになるわけですから、しかも、先ほど言いましたような、そういう国の大きな力によっていくということになればたいへんいいことですから、そういう方向にひとついってもらいたいと思います。  ところが、いまの政府の方針に対して、コロニー関係者は非常に嘆きというようなものではありませんが、強い不満があるわけなんです。これが結局は、高崎でいまつくられるコロニーに対して、いろいろな意見が出てきておるのだというように思うのです。それを一つあげれば、先ほどちょっと言いましたように、生産的なコロニーをつくるという意欲は政府に全然ない。しかし、先ほど言いましたように、収容授産施設についてはだいぶん考えてきておるようだがという、こういうちょっぴりの希望は持っておるようであります。それとまた、福祉行政は厚生省関係するが、雇用の関係については労働省が関係しておる。その関係では、長野に一億円かけて大きな労災施設ができております。そういうことでありますが、しかし、総合的な対策がないために、その間の谷間におる人たちは非常に不遇な目に会わされておるとか言っております。また、そういう二つに分かれておるからいろいろなわ張り争いがありまして、先ほど言ったようなりっぱな方向に進んでいくということに、ちょっぴり足でも引っ張るような傾向が生まれてきているのではないか。だから一元化の必要があるということを関係者人たちは一生懸命言っておるようでありますから、これに対しても十分心をくんでいただきたいと思うのであります。  それから、高崎コロニーについては、最初は非常に期待を持っておったようであります。ところが、その後、それを提唱された秋山ちえ子さんあたりも、次第に冷淡な態度に——まあ冷淡なと言うと語弊がありますが、どうも冷ややかな態度で見詰められるようになったというふうに聞いておる。それは一体どういうことかということをわれわれやはり心配するわけですね。それで、いろいろ聞いてみますと、まず、言われるのは、つくる以上は全力をあげてその内容をよくしてもらわねばならぬが、いまのような官僚の取り扱うそういうサービスでは、ほんとうに心あたたまる、あたたかい施設の中での待遇やその他の問題がどうも期待できない、こういうことがあるようであります。しかも国立ですから、そこの所長とかその他の管理職に当たる人たちはみな官吏でありますから、これはそれがふえれば、何人かがそっちのほうにまた横すべりしてえらい人になるかしれません。そういう人たちの運営では、ほんとうに国民が期待しておるコロニーとして運営されるであろうかという心配がまず第一にあるようであります。  それから、こういうものは一カ所に集中してつくるよりも、六十億も予算を何カ年計画かで使うならば、これはやはりいま政府が方針を持っておりますように、各県に一つずつつくるというほうに使ってもらったほうが価値があるのではないか、こういう意見があるようですね。これは重症心身障害者人たちだけでなく、身障者の人たちが常に望んでおるようであります。そのことは常識です。一カ所に集中するとなれば、北海道から鹿児島までみな来なければならぬ。ところが、地域でこしらえれば、その周囲の人たちはすぐ入所もできようし、それから関係者、近親者が再々見舞いに行ったりなんかして、心の通ういろいろな日常生活が行なわれるし、それがささえになって患者もいい方向に進んでいく、全快の方向に進んでいくということも望まれるわけです。ですから、そういうことを考えて、やはり地域に密着したそういう運営をする。あるいは患者とのいろいろの対話あるいは取り扱い、こういうことができるから地方につくってもらいたい、こういう希望があるわけなんです。  そういうことから、全体として熱意が当初よりきわめて冷淡になってきておるように考えるわけなんです。ですから、厚生省当局は、そんなことはない、関係者はいまだに非常に熱意を持ってこれを見詰めておるというようにお考えになるかしれませんが、あなた方に対しては、面前で堂々とそういうことはちょっと言えぬ立場にあるようです。これはもともとそういう意見にこたえてっくろうとしたのでしょうからね。ですが、この面ではそういう非常に心配しておられるという関係者がたくさんある。特に、いままで民間のこのコロニーや保護施設を直接取り扱う人たちは、とりわけそういうことを考えておるようであります。それは単に、国立ができるから、民間のそういう施設を経営しておる人たちが取られるとか取られぬとか、そういうなわ張り争いで言っておるのではない。日本の将来のために心配されておるということをひとつ十分当局者も考えて、この高崎につくるコロニーの建設については配慮してもらわねばならぬ、こういうふうに思っておるのですが、当局はどういうふうにお考えになりますか。
  47. 坊秀男

    坊国務大臣 今度、高崎へつくるコロニーは、日本といたしましては初めての非常に新しい試みでございます。このコロニーに対しまして、各方面から、いろいろな御意見やあるいは御批判というものが、新しい試みであるだけに、私はおありのことと思います。私どもといたしましては、とにかくコロニーをつくるということに決定いたしまして、予算も御審議願ってきめていただいたところのコロニーでございますので、コロニーとしての目的をりっぱに果たしていけるように今後とも十分気をつけましてやっていきたい、かように考えております。
  48. 渥美節夫

    渥美政府委員 ただいま大臣から御答弁を申しましたとおりでございますが、先ほど申しましたように、コロニーということばは、当初結核対策の中で結核のコロニーというふうなことばでも使われたことがございます。しかしながら、私が御説明いたしましたのは、心身障害者コロニーということで、いま大臣からお話しのように、わが国では最初のモデルプランということでございます。したがいまして、このコロニーの建設につきましては、数年前から民間の各位の御協力を得まして、コロニー懇談会、あるいはそれを切りかえましたコロニー建設推進懇談会、こういうふうな会を持ちまして、その運営なりその内容なりの点につきまして十分御審議をわずらわした上で建設に着手しておるというのが現状でございます。  先ほど、私、このコロニーにおきましては、職業指導なりあるいは授産の点につきまして申し上げるのが足りなかったと思いますが、当然、六十七万坪という広大な地域でございますから、畜産でありますとか、林産であるとか、いろいろとそういうふうな職業指導あるいは授産、こういった点につきましては十分な配慮を払ってまいらなくてはならない、かように思っておるわけでございます。  なお、なぜ国がそれだけつくるんだという趣旨の御質問でございましたけれども、このコロニーは、先ほど申しましたように、モデルプランでございますと同時に、これからおそらく各地方におきまして続々できるコロニーの模範にならなくてはいけないし、同時にまた、そういった施設に働く職員の養成機関も持たなくちゃいかぬ。また先ほど来御質疑がございました、こういった子供たちがどうして発生するのか、どういうふうに治療したらいいのかというふうな研究施設も持たなくちゃいけない、かような意味で国としてのコロニーをつくったわけでございます。現在のところ、国立の高崎病院のほかに、たとえば愛知県でございますとか、大阪府とか、あるいは北海道でありますとか、長野の各地方におきまして、やはりいま私たちが建設いたしておりますコロニーにならって地方のコロニーの建設の計画もあると承っておりまして、こういった地方におきまするコロニーも、国のコロニーにならってひとつつくられるように指導もしてまいりたい、かように思っております。  なお、こういった国がやると非常に官僚的になるのじゃないか、こういうふうな問題も確かにあるわけでございます。したがいまして、こういった点につきましても、先ほども申し上げました建設懇談会等の意見を十分に拝聴いたしまして、運営の問題につきましては検討をしてまいりたい、かように思います。
  49. 枝村要作

    枝村委員 午前中の最後の締めくくりですが、いままでは法案の内容に入っての質問ではありませんで、総体的なものであります。締めくくりとして、やはりそういう関係者が望んでおるのは、戦後二十年、児童憲章及び児童福祉法子供の福祉政策は事足りたというようには思っていないと、大臣もお答えになりましたし、関係者答弁されましただけに、ここでもう一ぺん再検討していただいて、軽い者も重い者も、社会復帰の望める者も望めない者も、また教育が可能な者も、それができない者も、すべて包含した心身障害者福祉政策というものを確立していただきたいという声が非常に強いのです。今日の段階で、それは先ほどからずっと言いました総合対策の問題とか、いろいろの問題も含めてでありますが、そういうことでありますので、午前中の質問の締めくくりとして、厚生大臣からもう一度決意みたいなものをひとつ披瀝していただきたいと思います。
  50. 坊秀男

    坊国務大臣 御意見承りまして、総合的に十分これを検討してまいりたいと考えております。
  51. 川野芳滿

    川野委員長 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  52. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続けます。枝村要作君。
  53. 枝村要作

    枝村委員 今回の法改正についての問題点について質問してみたいと思います。  最初に言いましたように、今度法定化されるのですから、長い間の要望がかなえられたということを非常に関係者は喜んでおります。それに失望を与えないように、しかも、将来ほんとうに希望が持てるように、改正されたものを運営その他の面でしっかりしたものにするようにしてもらいたいと思うのです。しかし、内容の実情を見てまいりますと、確かに施設の促進あるいは児童入所時の処遇などについてよくするようになっておりますが、調べてみると、むしろ複雑な事情に追いやられるというような危険もなきにしもあらずという点があるわけなんです。  その第一は、国立の中にもあるかもしれませんが、主として民間のこういう施設の中に影響されるところが多いと思います。それは、入所の基準が今日定められておりますが、これが厳格に民間施設に適用されますと、現在入所しておる児童が相当数基準に当てはまらないからはみ出ていくという欠陥があるように見受けるのであります。この点については、厚生省は、運用の面でそのようなことはしないというような答弁をしておるようでありますけれども、しかし、一たん法定化されまして、法律が独立して歩くようになりますと、皆さん幹部はそうはせぬとしておりましても、将来は、基準が法定化されたことによって、非常に危惧しておることが現実の問題となってあらわれてきて、そうして非常に厳格なものになってきて、多くのそういう重症心身障害児を持つ人たちのいろいろおそれていたことが具体的にあらわれてくるんじゃないかということが考えられるわけであります。そういう点について質問していくわけでありますが、今日重障児を入れる場合の基準というものがあります。これについてひとつ説明をお願いいたしたいと思いますが、どういう基準が設けられておるかお伺いします。
  54. 渥美節夫

    渥美政府委員 今回法定されることに御審議をお願いいたしております重症心身障害児施設入所対象の問題でございます。すでに設けられております精神薄弱児施設の重度棟に入所される子供の対象なり、あるいは肢体不自由児施設の重度棟に入所される子供たちの対象との関係もございまして、今回は、重症心身障害児施設入所される子供を、重度の精神薄弱と重度の肢体不自由が重複した児童ということにいたしたい、かように考えておるわけでございます。それは、いま申し上げましたように、いろいろな児童福祉施設がございまして、そういった施設に入れる対象につきましては、交通整理といいますか、一応の区分けをして的確な指導ができるようにいたしたい、がように存ずるからでございます。
  55. 枝村要作

    枝村委員 そういうことらしいのですけれども、実際では、特に民間のことですが、民間のそういう施設にはどういう障害児が入っておるかということを、あなたのほうでは大体調べておられると思うのです。調べておられるならば、その収容状況、たとえばどういう種類の者がその施設に入っておるかということについて、全国的な数字はちょっと無理かもしれませんので、一例でいいですから、どこかの施設かおわかりになっておれば、私どもに報告してもらえるとたいへんいいと思います。
  56. 渥美節夫

    渥美政府委員 御承知のように、重症心身障害児施設は、今回法定される以前、すでに、こういった気の毒な子供たちのために、法律外の制度といたしまして、一応昭和三十八年から発足をいたしたのでございます。昭和三十八年から四十年にかけまして、全国で約三カ所ばかりこういった子供たちを収容、治療、保護をしております施設がございます。その施設の運営の問題につきましては、私どもといたしまして、肢体が不自由でありかつ重症な方で、しかも精神薄弱の度の重い方を入れていただくようにお願いをしてまいったのでございます。もちろんこの三つの施設におきましては、私どものの通牒の趣旨をよく理解していただきまして収容に当たっておられるわけでございますけれども、ただ、一、二の施設におきましては、どうしても子供たちあるいは保護者の方々の緊急の需要に応じまして、肢体不自由と精神薄弱の両方が必ずしもきわめて重度であるという方でない方も入っているようには承知しております。しかしながら、先ほど御質問がございましたように、なおこういった方々がどの程度の重度である、あるいは重症であるかということにつきましては、さらに判断をしなければいけないと思いますが、いずれにいたしましても、冒頭申し上げました肢体不自由児施設の重度棟におきましても、あるいは精神薄弱児施設の重度棟におきましても、その整備がいまだ不十分でございます。したがいまして、現在重症心身障害児施設に入っていらっしゃる子供さんにつきましては、こういった子供さんが基準に合ってないからといって、これを退所させるというようなことは全く考えておりませんので、その点は御了承いただきたいと思いますし、今後とも、そういった各精神薄弱児施設の重度棟におきましても、肢体不自由児施設の重度棟におきましても、その整備がなかなかむずかしいわけでございますので、医学的な管理のもとに置かなくちゃならないというような子供につきましては、重症心身障害児施設入所をさせたいと考えております。そういう意味におきましては、弾力的な運営をはかってまいりたい所存でございます。
  57. 枝村要作

    枝村委員 私の質問は、特に民間施設の問題に重点が移るわけでありますが、重障児を入れておるのは、それこそほんとうに基準に基づいてやられておると思いますが、それにしても、国立の中でも基準外の者を入れておるところがあるのですか。その実情を知らしてもらいたい。
  58. 渥美節夫

    渥美政府委員 たとえば、前から指導しておるところでございますが、肢体不自由児の重度の基準といたしまして、身体障害者福祉法の別表に定める一級、二級というふうなことを指導しておったわけでございますが、必ずしも一級、二級でなくとも、三級の状態にある子供さん、これもやはり体幹が非常に不自由である、動けないというふうな状況におきまして入所をさせておる場合もございます。
  59. 枝村要作

    枝村委員 そうすると、国立、民間を問わず、いまのところいいにしても、将来この基準が一人歩きをし出すとはみ出される——はみ出されるのじゃなくて、現在入っておる人はむしろいいかもしれませんが、いまから入ろうとする人たちには厳格にこれが規定されるわけですから、そうすると、その近親者あるいは両親あたりは、非常に将来希望が失われるということになるわけです。そういう問題もあとから含めて申し上げますが、民間、国立を問わずあるということがわかりました。  私は民間のこの近傍にあります島田療育園の状況を調べてみました。島田療育園は、御承知のように、非常にこの問題に関心を持っておられる園長がおりまして、それは、国立では見られないほどあたたかい気持ちでこういう人を見守って、あるいは育てるという、ほんとうに心からの気持ちで運営その他に当たっていらっしゃいます。そこでは大体現在百五十二人の重障児を入所させております。ところが、今度のこれが法定化されますと、そこでは、基準に照らし合わせていきますと、そのうちの六十六人は一級、二級に該当し、知能指数三五以下の者となりますが、これは適格になるわけです。そうすると、四三%が結局適格者である、基準に合った入所者であるということになり、あとの五七%、八十六名はこの基準からはずれるわけであります。こういうのが島田療育園の状況です。おそらく他の民間施設でも、大きい小さいはあるかもしれませんが、同様のケースがあるだろうというふうに考えております。だからこういう民間の経営者はこの問題は非常に真剣に考えておる。当面は確かに皆さんがはっきりお約束しているからいいのですが、将来は、先ほど言いましたようなことになれば、これはたいへんなことになるというふうに考えておる。その他いろいろな事情がございますが、そういう意味で、どうしてもこの問題については運営でそういう御心配をいただくようなことをしない、こういうふうに言われることは、今日の段階ではしかたがないと言えばしかたがございませんでしょうけれども、将来いろいろな方策というものを立てて、法的にも全然心配のないようにしてもらいたいことがあるわけなんです。ですからこういう質問をしたわけでありますが、とりわけ、その中で希望がありますのは、いまの基準の中でも、いまの身体障害者の等級表の基準に基いていわゆる一級、二級をきめる場合に、足の欠陥というやつは明確に出ておりますからわかりますが、これは常識的なやつですが、体幹に欠陥があるのを判断する場合に、それを取り扱うお医者がいないということはないでしょうけれども、どういうお医者が診察してそういう基準に当てはめるかどうかということをきめるかということになると、なかなかそういうお医者が見当たらない。ですから、体幹の問題についてきめる場合に非常に困難があって、それに基づく一級、二級という判断は出しておらないのがいまの状態ではないかというようなことをいわれておるわけであります。ですから、そういうことについて、もう少し明確な、だれが見てもすぐ判定できるような一つの基準というものをつくってもらいたいという要望がこの中から出てくるのです。そういたしますと、たとえば島田療育園のように、その幅が広がりますと、百五十二名の入所者のほとんどが基準に当てはまって、いわゆるはみ出てよそに行かなくてもいいということにたるというように説明されております。私はその点は専門家でないのでよくわかりませんけれども、そういうことをいわれております。それで、一番問題にされておるのは、現行の等級に対して、新しい基準による等級基準というものをつくるということが、ずっと以前から政府の間でも考えられて、三十九年一月に厚生大臣から障害等級の調整に関する問題が委嘱されております。委嘱された研究団体ですか、それが今日大体の案をまとめて厚生省に提出しておるということを聞いておるわけなんです。私はそれをいまここに持ってきておりますが、これが完全に実施されるならば、先ほどから言いましたように、とにかく重症心身障害児は、程度が全く軽いという人は別ですけれども、少なくとも、いまでは一、二級に当てはまらぬ人たちでも、ほとんどすべての人がこういう施設に入る資格を持つ、こういうことになってくるように聞いております。ですから、障害等級調整問題研究会の報告書がもう厚生省の手元に届いておりますし、それが今日いろいろな角度から作業が進められておりますが、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。それで、質問の順序は、こういう報告書が届いて、いまどういうところまでその報告書に基づいて作業がいっておるか、そしてこの報告書に基づく等級表というものがいつごろ完成して、これがいつごろ適用できていくという段取りになるか、こういうことを質問したいのでありますが、ひとつ知っているところまでお伺いしたいと思います。
  60. 伊部英男

    ○伊部政府委員 障害等級調整問題研究会につきましては、虎の門病院長の沖中先生を長といたしまして、医学界の各分野を代表する権威者二十名の方々によりまして、三十九年二月十三日から昭和四十一年八月二十九日まで研究をいたして、これに基づく報告をちょうだいをしておるわけでございます。これに基づきまして、厚生省内におきまして、省内関係局が寄りまして、これを行政的に実施する上におきましてのいろいろな研究をいたしておるという段階でございます。厚生省といたしましては、次の再計算期であります来年の国会を目途に各種の研究を重ねておるという状況でございます。
  61. 枝村要作

    枝村委員 来年の国会までには完全なものを作成して、それを直ちに実施できるというのですか。私、ちょっと聞き漏らしましたので……。
  62. 伊部英男

    ○伊部政府委員 それを目途といたしまして省内各局で研究をいたしておるという状況でございます。
  63. 枝村要作

    枝村委員 いまこの内容についてはあまりはっきりおっしゃっていないようですが、そうすると、これは年金局が取りかかっておられるでしょうけれども、これは、各種のそういう年金、保障制度がありますので、それがばらばらになっておるので、調整しておるということでしょうけれども、しかしわれわれの考え方は、身体障害者を取り扱う行政の面から見て、きわめてこれは重要なのです。いままでの等級表というのは、結局等級表をこしらえる基準は常識的なものであったということなのですね。それで、そういう行政機関はいろいろばらばらでありますから、あそこではちょっとした手足の動きがいい取り扱いがされるが、こちらのほうでは全然問題にされない、こういうことになるということらしいのですけれども、そういういままでの常識の域を脱していないような、いわゆる理論的にきわめて不十分であるきめ方を、今度は、いまあなたのおっしゃいましたように、日常生活活動における基本的なもの、たとえば摂食及び排せつ、それに次いで重要と思われる持つ、歩く、見る、聞く、話す、こういう日常の生活に介助を必要とするということを中心にいろいろな等級をきめていくということでありますから、これはたいへんにいいことだとわれわれは考えております。そういう意味でひとつこれが全体の統一したものとして早く完成されるようにお願いいたしたいと思います。  そうすると、先ほど言いましたように、親が、私の子はこういういまの基準があると入れてもらわれぬのじゃないか、こういうような心配があることも、これは完全に解消はできぬといたしましても、徐々に解消されていくということになりますと、非常に明るい希望を持たせることになるわけなんです。とりわけ、いま入っておる人たちに対しては、先ほど言いましたように、運用で追い出すようなことはしないと言われましたが、たとえば島田療育園には、今日現在で全国的にあそこに収容を希望する人がたくさんおるわけなのです。いまのところ六百三十三名が入所の希望をしておる。いわゆる待機患者ですが、これがおる。ところが、いまの基準のままでいきますと、二百十四名しかこの基準に当てはまらぬということになりますと、待機患者のうちの三三・七%しか当てはまらないということになって、あと人たちは全然希望を失うということになるわけです。そこで、待機患者までこの運用に照らし合わせて入れるというところまでお考えになるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  64. 渥美節夫

    渥美政府委員 先生から島田療育園の入所児童百五十二名につきましてのお話を承ったわけでございます。私どもも同じ資料を見ておりまして、いろいろ検討をしておるわけでございますが、この百五十二名につきまして、先ほどお話のありました、いまの基準でいくと四三%しか該当しないじゃないか、こういうふうな仰せでございますが、これはきわめて厳格に法を適用した場合にはそうなるかもしれませんが、私どもといたしましては、そこまでは考えておりません。この島田療育園に入っていらっしゃる子供さんは、いずれの方も肢体不自由と精薄が重複しておるわけでございます。ただ、その重複のしかたにおきまして、ある程度軽度の肢体不自由を持っておられる子供もいらっしゃるし、あるいは知能指数も非常に高い方もいらっしゃるというふうな事実がございまして、そういった方につきましては、本来ならば、精神薄弱児の重度棟なり、あるいは肢体不自由児の重度棟のほうに移られるほうが、実際いま困っていらっしゃる両方とも重度の方が入れるというふうなことにもなろうかと思われます。しかしながら、肢体不自由児の重度棟も、精神薄弱児施設の重度棟も、いまもって整備が足りません。したがいまして、当分の間はそういうふうな弾力的な運営でこれをしのいでいかなければならないかと思います。その間に重症心身障害児施設の病床を毎年ふやしていく。また、精神薄弱児の施設の重度棟も、肢体不自由児の重度棟も、毎年馬力をかけてふやしていく、そういうふうなことで、適切な指導なり訓練なりを適切な施設で適切な対象に与えるということがやはり必要かと思います。しかしながら、いま申し上げましたように、当分の間はそういうふうなことも困難かと思いますので、そこらは子供の福祉を十分考えまして運営をしていきたい、かように思っております。  なおまた、島田療育園におきまする待機患者の問題につきましては、先生が仰せでございましたけれども、実際問題としてどういうふうにその数がなっておるか、これは、整形外科のお医者さんなり、あるいは小児科、神経科、精神科、こういった方々の御判断をいただきまして、どの方がほんとうに待機患者であるかということも的確に把握して運営をしてまいらなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  65. 枝村要作

    枝村委員 もう一度尋ねるのですが、待機患者ですね、これを入れる場合の基準は、いまの政府が出した基準に基づいて民間施設の責任者がやるわけなんです。その場合も運用で認めるとか認めないとか言いましたが、それを運用の面で幅広くということをどういう形で指導していくかということになるわけですが、どうするのですか。
  66. 渥美節夫

    渥美政府委員 重症心身障害児施設が、今回児童福祉法上の法的な制度として確立いたされる場合におきましては、その施設に入れまする子供たちは、現実問題といたしましては、児童相談所長が施設の長、院長と十分相談した上で措置をする、つまり入所をきめるということに相なるわけでございます。したがいまして、私ども厚生省といたしましては、要するに、入所基準となる判断につきまして通牒を出すのであります。通牒を出しまして、その取り扱いについて、運営について弾力的な措置をするように、かようにいま指示をする予定にしておるわけでございます。
  67. 枝村要作

    枝村委員 それは文字どおりほんとうに弾力性のある通牒を出してもらうということをお答え願いまして、たいへん安心するわけでありますが、ひとつこれは間違いのないようにしてもらいたいと思います。  それから、看護婦や職員の対策についてでありますが、これは当然法定化されれば、その方面にもいろいろお金を注ぎ込んで真剣に対策を講ぜられると思うのですけれども、どうも日本の場合は、一番皆さん方承知されていらっしゃいますように、看護婦全国的に足りないということになっております。とりわけ、こういう重症児を取り扱う看護婦等は特に不足しておると同時に、その労働の条件というものが悪いのであります。ですからこれに対してはやはり特別な措置をすべきだと思います。しかも、国立と民間看護婦は、給与の面では差はないのでありますけれども、国立の場合、これは公務員でありますから年金制度その他もありますが、民間はそれはないということになりますと、これはひどく差別があると見て間違いないわけです。特別の何かの手当てをしてやらないと、これはどうにもならぬというところまできておるようですね。  これもやはり島田療育園の場合ですけれども、大体平均寿命は、正看が一・五年、准看が一・四年、それから助手が一・三年、これぐらいで交代をするということです。これはむしろ所長が、それ以上つとめるという人がおっても、かわったほうがいいじゃないかと懲悪するほど、その人たちの労働条件がひどい、こういう状態だそうであります。看護婦はもちろんやめるのじゃありませんが、そういう重障児を扱う職場から他の職場に移っていくという状態のようであります。しかも、いま言いましたように、非常に待遇が悪いということもありますが、看護婦自体が、そういう人たちを扱うのですから、将来にいわゆる看護婦としての職業的な希望というものがないというのですね。ただ、自分の精神が、そういう非常に底辺であえぐ、一番下積みにおる身動きのできぬ重障児を看護するという、その気持ちだけがささえになっておるということだけだそうでありまして、そうなれば、ますますそういうところで働く看護婦その他の職員のために、ひとつ本気になってやはり取り組む必要があるのではないか、このように考えておるわけであります。それからまた、看護婦がそういう非常につらい仕事をしますので、自分自身が病気になる。たとえばリューマチ、それから腰が痛くなるという病気があって、一年の間では五人も六人もそのためにまた職場を離れなければならぬという状況にもあるようでありますから、これらに対する特別の一つ対策を講じてやらなければならないのではないか、こういうふうに私ども考えております。  そのためにはどうしたらいいかということなんですが、ことしは確かに一般の公務員の看護婦には二〇%の賃上げを特別にしました。これはたいへんいいことだと思うのです。民間も、国立の連中が上がったのに民間の連中を上げぬというわけにいかぬから、二〇%賃上げをする。そうすると経営の中に非常に無理がくるわけです。そうなってきますと、何をするにしましても、まず先立つものは金だということになるわけなんです。それをやはり政府で見ていってやるということが一つの大きな対策の問題ではなかろうか、こういうふうに考えます。そのほか、こういう看護婦人たちをいろいろ養成する学院なんかを、ひとつ思い切って政府補助でつくってくれたらいいのではないかというような希望もあるわけなんです。  そういうふうに考えてまいりますと、何とかこのあたりで、せっかく重障児の施設法律で守られるようになったのですから、そこまで考えていくことが、やはり最初から言っておりますように、今日の世論にこたえ、あるいはそういう関係者のほんとうの喜びと期待にこたえることになるというように考えます。  それから、実際の問題として、民間施設はベッドが余っておりますね。たとえば島田療育園でも四つのむねがあるわけなんですが、一つのむねはがらあきなんです。これは一体何かといったら、職員、看護婦、お医者がいないということが原因しておるのです。ですから、そういうこともやはりそういう措置をすることで漸次解消していくのではないかというように考えておりますから、民間施設に対する特段の御努力をひとつお願いいたしたいと思います。  それから、赤字の問題についてどういうことになっておるかと言いますと、たとえば、島田療育園の例ばかり出して悪いのですけれども、大体年間一億一千四百万円の予算であるそうです。それでそれの収入は主として保険入院料でまかなっておる。保険の基金より出ておるのが全体の予算の中の二分の一だそうです。あとは大体自己負担であるわけですね。それと、国から指導費として一日患者一人に対して三百八十八円が支給され、その額は二千二百八十万円で、保険入院料のほかに国からこれだけいただくということなんです。それで大体まかなうわけなんですから、ふやしてもらうといえば、この指導費というのを大幅にぐっとふやしてもらえば、国のほんとうの気持ちというものがそういう人たちに直接感じられるということになるわけなんですが、こういうことに対して 政府は来年度はどういうふうに予算面で考えていらっしゃるか、こういうことをまず最初にお聞きしたいと思います。
  68. 渥美節夫

    渥美政府委員 重症心身障害児施設に働いていらっしゃる職員の方々の問題点につきまして御指摘いただきました。おおむねそのとおりだと思います。したがいまして、私どもといたしましても、その処遇の問題につきましては、非常に大きな問題といたしまして、予算の編成におきましても取り組んでまいってきましたし、今後も取り組んでまいるつもりでございます。  具体的に申し上げますと、重症心身障害児施設は、御承知のように医療法による病院でございます。と同時に、児童福祉法上の施設であるということでございます。したがいまして、そこに働く看護婦さんは、当然やはり四人の子供に対して一人ということになっておりますが、子供施設でございますから、当然、保母さんなり、あるいは児童指導員なり、あるいはその疾病の関係で理学療法士、こういうふうないろいろな、看護婦さん以外の職種の方も雇っていただくようにしております。そういう子供を直接介護をする職員は、子供二人につきまして一人という基準で私ども補助金等を算定しているわけでございますので、したがいまして、他の一般の病院に比べますと、それだけ多い介護をいたしておるわけでございます。  そこで、実は三十八年以来問題になっておりました、そういった施設に働きます職員に対する処遇が、本年度から相当改善されてきております。つまり、国立の施設におきましては、仰せのとおり最高二〇%の調整額を本年度から支給する、本俸の二〇%加算という制度が実現されたのでございまして、これと並行いたしまして、民間施設につきましては、いままで医療費のほかに先ほどお話しの三〇%の指導料というのを出しておったわけですが、これにさらに八%を加えまして、この八%を加えることによりまして、職員の方々に国立と同じような調整額をつけていただくように、そういった予算措置を本年から実現したのでございます。しかしながら、この八%というのはまだ足りないわけでございまして、さらにこういった処遇の改善につきましては努力してまいらなければならないと思うのでございます。そこで、こういうふうな問題がございますので、重症心身障害児施設の経営が非常にむずかしいということでございますが、いま申し上げましたような予算措置を講ずることによりまして、本年度から施設自体に差し上げるお金も相当ふえてまいったのでございます。  それを具体的に申し上げますと、いままでその施設におります子供一人につきましての単価が、医療費が三十六万六千四百九十七円というふうに積算されておったのでございますが、それを三十七万四千四百七円に改善いたしました。また、重障児の指導費、これは年額十万九千九百四十九円でありましたものを、十四万二千二百七十五円というふうに、相当のアップを実現いたしたのでございます。そういうふうなことで、本年度から、この児童福祉法上の施設といたしまして制度化するというふうなことに伴いまして、ある程度のといいますか、相当の予算を計上することによりまして、経営を少しでも楽にするということにいたしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  69. 枝村要作

    枝村委員 政府がやはり補助金を出しますけれども、これはいろいろひもをつけて出しておるのですね。しかも建物みたいにあとに残るものに対する使い方をさせろということなんですね。いわゆる病院の経営費ですね、これに対する補助費を使わせるということがきわめてないというように聞いております。あってもきわめてきびしい監査が行なわれる。ですから、どうせ来る金——来る金と言ってはおかしいのですけれども補助費なら、病院で考えてここに使うのがやはり一番適切だというふうに判断したら、自由に使わせるという、こういう形をとってもらいたい、こういうふうにわれわれは考えるし、民間の経営者も考えておる、そういうことはあるのでしょう。
  70. 渥美節夫

    渥美政府委員 私、先ほど申し上げました子供一人の単価が、本年度におきましては、医療費といたしまして三十七万四千四百円、それから指導費といたしまして十四万二千二百七十五円、合計いたしますと五十一万以上になるわけでございますが、これは、子供一人のいわば入院、それから指導費ということでございまして、建物に対する補助金ではございません。したがいまして、こういった一人五十一万程度のお金を使いまして、子供の治療あるいは指導をしていただくということになっておるわけでございますが、別に整備費につきましては、今度児童福祉法が改正されれば、国庫補助金なり、あるいは従来からのお年玉つき年賀郵便の募金であるとか、いろいろそういうものがありまして、建物のほうは整備をはかっておるというわけでございます。なお、五十一万の積算で施設に差し上げるお金の監査等につきましては、その他の児童福祉施設と同じような方法によりまして監査指導をするわけでございまして、特に重症心身障害児施設につきましてきびしくやるというふうなことは考えておりません。  なお、先ほどの御質問で私申しおくれましたが、看護婦養成所の設置につきましては、看護婦養成所は、その実習施設といたしましていろいろな病院を使わせる必要があろうかと思いますし、全体の看護婦の需給を考えますときには、特に重症心身障害児施設に付設した看護婦養成所でなければならないということについては、多少問題があるんじゃないか、かように考えます。
  71. 枝村要作

    枝村委員 現地のそういう経営者は、そういうことを非常に身にしみて感じておると思うのですから、あなた方がないと言われましても、あなた方を信用するよりは、私どもは直接の民間の経営者の言っていることを信用したいと思いますが、いずれにしても、そういうひもつきの補助というようなことは、ひとつやめてもらいたいと思います。  それから、補助金の問題でも、共同募金に非常に頼っておるわけなんですね。NHKの歳末助け合い、あるいはお年玉つきの年賀郵便、あるいは寄付金、これが施設の収容者に——これは何年でしたか、去年かおととしですか、補助したのが約四億円なんですね。ところが、競輪であげた益金の補助というやつが、その倍以上の九億三千万にも及んでおるわけなんです。これは計画かもしれませんけれども、そういうふうに資料では一応見るわけです。そうすると、われわれがあまり感心せぬようなところから補助金が出され、それでいいなというようなことでほうっておくというようなことは、これはやはりあまりよろしくないというように考えておるのです。ですから、競輪は廃止せよという声がいま非常に出ておる中で、そういう補助金は、今日の段階ではいただくことを断わることもないのですけれども、やはり漸次なくしていくということにせねばならぬ。そのためにはどうしたらいいかということになると、やはり政府が直接補助をふやしていくということ、こういうこと以外にないように私ども思います。いずれにしても、このように赤字の予算の中で事業を遂行していこうと思って経営者は一生懸命になっておるのですから、これはぜに金ということは大事なことでありますけれども、それ以上にやはり真心の問題として、社会事業、そういう一つのあれを守るという、もう少し大きく言えば、基本的人権保障するという精神で重障児を扱っておるのですから、やはりそれにこたえるような措置をひとつ政府はしていただかなければならぬということを申し上げておきたいと思います。  まだたくさん質問する事柄があるのでありますが、規定の時間の制限がございますので、次回に回したいと思います。
  72. 川野芳滿

    川野委員長 箕輪登君。
  73. 箕輪登

    ○箕輪委員 健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律案について質問を申し上げます。  まず厚生大臣お尋ねをいたしたいのでございますが、大臣は、健康保険制度というものが社会福祉の一環とお考えになりますか、あるいはまた単なる保険制度とお考えであるか、この点を御答弁いただきたいと思います。
  74. 坊秀男

    坊国務大臣 健康保険は、社会福祉の一環であり、かつまた保険の一環であり、医療保障目的としておるわけであります。
  75. 箕輪登

    ○箕輪委員 大臣のただいまの答弁は、社会福祉でもあり、また保険制度でもある、こういうように受け取ったわけでありますが、私は、社会福祉、そしてまたこの保険制度というものは、これからの日本というものを考えてみて、私なりに一つ考えがあるのであります。大臣も御承知のとおり、また厚生当局も十分御承知のとおり、わが国の人口というものは、非常に老人階層というものが多くなってまいりましたし、二十年後、さらにまた二十一世紀の時代になりますと、逆三角形で老人層が非常に多くなって若年層が少なくなる、こういうようなことが予想されるわけであります。これは、老人が長生きできるということ、長命になったということで、医学、薬学の進歩であり、同時にこの保険制度の勝利であると私は考えておるのであります。ただ、そういうように命が長くなったというだけで手放しで喜んでいいかどうかということについて、はなはだ疑問を抱くものであります。なぜかというと、老人層が非常に広くなってしまって若年層が少なくなるということは、それ自体だけを考えてみても、わが国の国力というものが弱まるのだ、こういうふうに考えるわけであります。したがって、これからは、老人に対して、壮者をしのぐような健康、元気を与えるような制度考えなければいけないだろう、そしてまた、そうした老人階層に対して職を与えるような政策を考えなければいけないんだ、そうして日本全体の国力が弱まらない方向に政策というものを持っていかなければならないのだ、こういうような考え方を私は持っておるわけであります。そこで、単なる保険制度として保険財政の中で赤字をやり繰りしていこうとする、また、そういう考え方を持つということは、国家百年の大計を誤らせるものではなかろうか。こうした人口構造の改革あるいは体質の改革にあたって、どうしても国家保障というものを多額に導入しなければならないだろうと思うわけであります。  また、たとえば今日の健康保険というものは、いわゆる保険制度ではないと思う。生命保険あるいはまた火災保険のような、ああいう保険ではないと思う。これは自由加入でありまするが、今日の健康保険というものは、政府法律で規制して強制加入という形になっておるわけであります。そうすると、義務づけている保険制度でありまするから、いわゆる教育におけるところの教育投資と同じような考え方で、いま言ったような将来のロングポリシーと申しましょうか、そうした理念の中から、保健投資ということをもっと強力に考えなければならないのではなかろうかと思うわけであります。  このたびの改正案を見ますと、二百二十五億円の国庫補助が大体予想されておるわけでありまするけれども、さらに一部負担の新設だとか、あるいは料率のアップだとか、あるいは一部負担の増加だとか、こういうことがあるわけでありまして、これは明らかに給付の後退であると同時に社会福祉の精神に逆行するものであると考えるのであります。私流に申し上げてまことに恐縮でありますけれども、何か社会福祉の増進ということを政府は言いながら、すなわち、左手で国民の頭をなでながら、右手で国民のほっぺたをぶんなぐっている法案がこれであるような気がするわけであります。どうかこういう点につきまして厚生当局の明快なる御答弁をいただきたいと思います。
  76. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のとおり、日本の人口構成は老人の寿命が非常に伸びた。これは非常にけっこうなことでございます。そういったような関係で、この老人の人口がだんだんふえてきて、若年人口がこれに伴わないで、おっしゃるとおりの逆三角形の傾向にだんだん移っていっているということは、これはもう統計上予想される事実でございます。そういったような事態に即応いたしまして、社会保障と申しますか、医療保障と申しますか、そういったようなことも、これにマッチした方向に持っていかなければならぬのではないかという御意見は、まことにごもっともなことでございます。さような意味におきまして、国家保障という、だんだんそういった方向にこれを強化していく必要があるのではないかという御意見でございますが、非常に大きな問題でございまして、これにつきましては、各国の立法令その他いろいろございます。そういったようなことも勘案いたしまして、これは非常に大きな問題でございますので、将来の検討事項といたしまして、いずれこれはあまり遠からざるうちに抜本改正ということが行なわれるときの一つの大きな課題として考えていかなければならないものだと考えております。
  77. 菅波茂

    ○菅波委員 関連して。ただいま箕輪さんのほうから保険制度の根本的な問題について触れたわけであります。実は厚生省の監修である「厚生」という本の六月号の中に、特にこういうことばがあるわけであります。最近の医療給付現状から見て、実際に給付を受ける者と給付を受けない者との均衡からいっても、いわゆる一部負担を設けなければならぬ。つまり、病気の者が健康な者に対して一部負担をしなければならぬというようなことが書いてあるわけであります。これは厚生省保険課が出しておるわけでありまして、非常に重要な発言ではないかと思うのです。保険というものは、やはり相互扶助の精神の中でやられておるわけでありまして、まして、だれも好きこのんで病気になるはずはないわけであります。したがって、絶えず自分の身が健康であることを祈念して、相互扶助の中で保険というものに入っておるわけであります。特にまた、不健康になったという者だけがこの一部負担を納めるというような、そういう考え方は、ここに書いてありますけれども、どうも納得できない問題ではないかというふうに私は考えておるわけであります。そういうような基本的な精神が、やはり基本的に社会保険という問題を取り違えてお考えになっておるのではないか。そういう点について一体どういうふうにお考えになっておるか、基本的な保険という問題について大臣にひとつ伺いたいと思います。
  78. 坊秀男

    坊国務大臣 いま御指摘のように、保険というものは理論的にはおっしゃるとおりです。それで、今度の御審議をお願いいたしておりまする対策でございますが、これは、ばく大な赤字が出てきて、これをこのままに放置しておいたならば、保険制度そのものが崩壊し危殆に瀕する、これを何とかして救済しなければならない、こういったような緊急事態を救済するという意味におきまして、保険関係者、まず第一には政府管掌でございますから政府、それからその事業者、被保険者、それからその患者というものに一応応分の負担をしていただくということにしたのでございまして、これは臨時緊急の対策として御理解を願いたい、かように考える次第であります。
  79. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)委員 関連して。今回のこの政府案のねらいは、暫定的な当面の赤字の解消ということだと思うのですが、この赤字の問題はいまに始まったことではないと思うのです。特に数年前から大きな論議を呼んでおるわけでありまして、厚生省はなぜこれを放置していたか、特に社会保障制度審議会でも、厚生省の怠慢という強いことばを用いまして、この点を強く答申しておるわけです。なぜ抜本策をこれまで早く作成して遂行しなかったのか、どこに原因があったのか、御答弁願います。
  80. 坊秀男

    坊国務大臣 おっしゃるとおり、赤字は四十二年度になって卒然として出てきたものではございません。従来長い間にわたりまして出てきた累積赤字、それからまた、四十二年度の予想される単年度の赤字といったようなものを加えますと約二千億になる、こういったような非常な赤字財政になってきたわけでございますが、厚生省といたしましては、昨年も、その前も、これに対する対策というものを考えまして、いろいろと国会で御審議を願ったのでございますけれども、これが去年も厚生省考えておるとおりには相ならなかったということは、まことに遺憾に感ずる次第でございます。
  81. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)委員 しからば、いつを目標にしてその抜本策をやるか、また、現在考えておられる抜本策の構想がおありでしたら、この際明らかにしていただきたい。
  82. 坊秀男

    坊国務大臣 累年にわたりまして臨時緊急対策といったようなもののみをやっておるということは、保険の根本的な建て直しにならない。絶えず薄氷を踏むがごとき運営をやっていかなければならない、かようなことでございますから、厚生省政府といたしましては、できるだけすみやかにこの抜本対策をやってまいりたい。抜本対策は、少なくともいま御審議願っておりますこの臨時緊急対策をまず御決定をいただきまして、そして当面さしあたっては赤字のおそれがないということにしていただきまして、少なくとも四十三年度の予算を目途といたしまして抜本対策を打ち出していきたい、かように考えておりますが、その抜本対策の構想といたしましては、御承知のとおり、今日の保険全体につきましては、あるいは給付率が非常に不均衡であったり、あるいは負担がアンバランスであったりというようなことがございます。そういったようなことも解消しなければならない一つの問題でございますが、さらにまた、先ほどから申し上げましたとおり、保険財政がきわめて脆弱である、この財政を強化してしっかりしたものにしていくということも、一つ抜本対策の非常に大きな課題であろうと思います。さらにはまた、医療費体系が今日現在の時代にマッチしておるかどうかということを考えてみますと、これも、いろいろ不合理な点、いろいろのこういう欠陥といったようなものを露呈いたしておりますので、これも改定していかなければならない、かようなことを抜本対策の根本的組みかえの目標としてやってまいりたい、かように考えております。
  83. 渡辺肇

    ○渡辺(肇)委員 いまのお話で、抜本策に対する基本的な考え方は、大体私も了解いたしたわけですが、しかしその抜本策については、各種医療保険制度の一本化が最も必要ではないかと私は思うのですが、これについてはどうお考えですか。
  84. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のように、現在の医療保険制度は、いろいろと各種保険に分かれておりまして、被用者保険あるいは国民保険、その被用者保険の中にも、各種共済組合を含めましていろいろな形態があることは、御指摘のとおりでございます。ただ、このそれぞれの保険制度につきましては、歴史的沿革がございまして、ずっと古くからそれぞれの長い歴史のもとにつちかわれた制度でございまして、一口に統合というふうな御議論をなさる方もいらしゃいますけれども、統合すること自体については、非常にむずかしい問題があることは十分予測できるところでございます。統合がいいか、あるいはその間の調整をどのような形でするのがいいか、いろいろと問題点がふくそうしておりますので、そういった点は、抜本対策の際に十分慎重に各方面の御意見も聞きながら検討しなければならない問題で、私どもとしては、どのような方法でやるかということについては、なるべく早い機会に方針を打ち出したいと思っておりますけれども、十分関係団体の意見も聞かなければならない、こういうふうに思っております。
  85. 箕輪登

    ○箕輪委員 ただいま、抜本改正の内容の一部について、大臣、局長さんから御答弁がございましたけれども、大体厚生省のほうでは、これは長年の問題ですから、私は、どういうふうに抜本改正をやるんだというような具体的な方針がもうきまっているのではないか、これを発表する段階でないということであるいは発表を控えておられるのではなかろうかというような気がするわけであります。たとえば、ついこの間行なわれました全国保険課長会議で、熊崎局長は「すでにいわゆる牛丸委員会、省内の医療問題調査委員会で制度面の骨子についてのあらゆる問題点の検討を終っている。」こういうふうにおっしゃっておるわけであります。しかしながら、ただいま渡辺委員やあるいは菅波委員からの質問に対する御答弁は、単に、こういうところの問題だと思う、ああいうところの問題だと思うというような御答弁で、その内容についての構想というものが明らかにされていないということは、私はこれは誤りだと思うのです。たとえば、四十三年度からこうやってこうやるんだ、抜本対策の内容はこうなんだ、だから今年度だけはこうしてこの法案を通してくれ、こういうふうに言うならばまだわかるんだが、いままで抜本改正やるんだやるんだと言いながら、ずっとやっていないのです。おそらく四十三年度もやれるかやれないか私はわからないと思っておる。そういうことから考えてみて、こういうふうにやるんだということを、この段階ではもうその内容を国民厚生省としては明らかにされたほうが、かえって国民全体が考えるでしょうし、また政党各派の連中も考えるでしょうし、審議会の連中も考えるでしょうし、みんなでやはり考えて将来の抜本改正というものはやっていかなければいけないと思う。そういう意味で、その抜本改正の内容について、こういう内容なんだということをひとつ局長さんから御答弁いただきたいと思います。
  86. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御意見まことにごもっともだと思うわけでございますが、ただ、通称牛丸委員会、省内では医療対策基本問題委員会というものをつくりまして検討を完了いたしたことは事実でございます。しかし、その検討の中身といいますのは、何ぶんにも医療保険制度あるいは診療報酬、そういった広範にわたる問題でございまして、それの個々の問題につきまして、どういうふうな方法が考えられるかという考え方をまとめた——問題点がこういう点にあり、こういう考え方をとった場合にはこのようになるというふうな考え方を整理をした、いわばメニューみたいなものは検討が終わっておるということでございまして、それをどのように組み合わしていくかということにつきましては、これは私ども独断でできる仕事でないことは、もとより御承知のところだろうと思いますし、与党内におきましても、基本問題につきましてのいろいろと御意見を持っておられる先生方のお集まりもございますし、政府だけで独断できめるべき筋のものでもないということで、私どもは、まだ結論としてこの方法がベター、ベストであるということでこの問題を発表する段階ではない、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  87. 箕輪登

    ○箕輪委員 ただいまの局長答弁でございますが、政府だけできめる問題でないからといっても、厚生省はこれをやらなければならない責務があるのです。ですから、もう何年間もやるやると言っているのですから、検討は終わっていると思う。あなたの御答弁を聞いても、大体検討は終わっているのだけれどもまだ発表する段階でない、こうおっしゃるのですけれども、検討が終わったらその内容を教えてくれ。政府がやるとかやらないとかいう問題じゃない。厚生省がやるやらないの問題じゃない。来年からこうなるのだ、こういう構想でいくんだというような構想は、きっとあなた方知っておるはずなんだ。だから、今年度はこうしてくれというならまだ話はわかる。全く抜本改正の内容も示さないで、抜本改正の柱を来年から建てます。基礎打ちをやるのですというだけでは——これはあなた自身だって、抜本改正を来年からうまくやっていけるとは思っていないと私は思う。だから、頼みますよ、教えてくださいよ、局長さん。
  88. 坊秀男

    坊国務大臣 抜本改正の内容を発表しろ、こういうお話でございますが、これにつきましては、保険局長から、大体、この医療保険の中でこういった点はこういうふうにとか、こういう点はどう改正するかといったようなことについて、いわゆる牛丸委員会で一わたり検討はやっておることは御承知のとおりでございますけれども、これをどうアレンジしていくかということにつきましては、箕輪委員もよく御存じのとおりでございますけれども、とにかくいまは政党内閣でございまして、これは与党の方々にもいろいろと御相談を申し上げて、そうしてアレンジをしていかなければならない。私どもといたしましては、これは最後は厚生省の責任でございますけれども、そういったような各方面との御相談、御協議といったようなこともございまして、今日ただいまは、御承知のとおり、この暫定対策と申しますか、緊急対策の御審議を願うことにいま全力をあげておるというようなことでございますので、これはいずれ箕輪委員にも、与党の有力なるメンバーのお一人として、その御相談を申し上げることに相なろうと思いますけれども——うそを言っておるわけでも何でもございません。今日そのアレンジしたものを出せとおっしゃられましても、まだその段階には至っていないという実情でございます。
  89. 菅波茂

    ○菅波委員 ちょっと関連して。私、抜本改正についてお話を聞いていると、実は二つばかり出たわけであります。たとえば診療報酬の適正化という問題、それからもう一つ各種保険のあり方と言いましょうか、あるいは統合という問題、実は二つ出たわけでありますけれども、私どもちょっと考えましても、よく本会議でも、総理もあるいは厚生大臣も、抜本改正ということをやはり堂々と言っているわけでありますから、何にもなければ私はああいうことばは出ないと思います。したがって、そこでたとえば医療経済に関するところの調査をするとか、あるいはその他にまた薬価基準の適正化をやる、そういう問題は必ず厚生省は具体的に持っておると思うのです。そういう問題をいま箕輪さんのほうから提示してくれというのだが、やはりもう少し具体的に説明をしていただかないと納得できないという問題。特に五月の二十四日ですか、中央医療協のほうの、これまた抜本改正でありましょうが、診療報酬部会で出たように、やはり物価の上昇とか、あるいは労賃の上昇とか、あるいは医学の進歩によって当然いまの医療の体系を直さなければならぬ。おそらくこれまた近く直さなければならぬというのは必然の問題だと思うのです。そうしますと、これに関連する問題ですけれども、薬価などの切り下がりはあるでありましょうが、総体的に医学の進歩に見合ったようないわゆる診療報酬というのをつけてくるならば、当然またそこで私は大きな赤字ができてくるのじゃないかと思うのです。そういう赤字をまたどうしていくのか。これはまた暫定でいくのか。時限立法でいくのか。本質的にはこれは抜本的な改正でなくちゃならないと思うのですが、そういう意味で、あくまでも抜本改正の一応厚生省がまとめておるものがあるはずだから、実際に聞きたいと思うのですが、どうですか。
  90. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ちょうど診療報酬の抜本問題につきましての御意見も出ましたのであれでございますが、現在診療報酬の合理化の問題につきましては、中央社会保険医療協議会で東畑会長のもとで精力的に審議を進めております。ただ、この場合におきましても、医療関係者の団体のほうからの御要望は緊急是正ということで、現在の制度については現状のままの上で何%かそれぞれの項目について改正していくというふうな御要望になっておりまして、公益委員の方々は、緊急是正じゃなしに、今度の医療費の改定はあくまでも合理化の線に乗った改定であるというふうな考え方で、これを診療報酬部会と調査部会に分けて、それぞれ検討いたしたわけでございます。したがいまして、少なくとも中央社会保険医療協議会で精力的に検討いたしております段階におきまして、政府側のほうでこのような方針でやるということを発表するということについては、これは中央社会保険医療協議会が現在検討いたしておる段階でございますので、それとかみ合わないような形で私どもは発表できないということは御了解いただけると思います。  それからもう一つ、診療報酬だけの問題を取り上げましても、いま菅波先生御指摘のように、たとえば医療経済の実態調査をどのような方法でやっていくか。薬価の問題をどのようにきめていくか。それ以外に、現在の甲表、乙表の点数の仕組み方にどこに不合理な点があるかというようなことは、やはり抜本対策の大きな眼目の一つでございます。たまたま統合というふうなことを保険制度面だけでの考え方で論ずる論者もおるわけでございますが、これは制度だけではなしに、片一方で支払い自体の診療報酬の合理化をどのように進めるかという、いわば一方のほうを抜きにした解決方法はないわけでございますから、その辺の事情も判断の上、やはり抜本改正の着手の時期あるいは発表の時期というものは、私どもは十分慎重に考えなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  91. 菅波茂

    ○菅波委員 いまの局長答弁の中に合理化ということばが出たわけであります。このたびの暫定的な改正というやつを合理化というふうにとることは、どうも私はできないのです。たとえば経済成長の伸び率が一〇%で医療費の伸びが二〇%、それをならさなくちゃならぬ、そういう問題は、一見合理的に見えて実際は不合理な問題だと私は考える。はたして局長は、これは合理的な考え方であるとそれを言っておるのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  92. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 中央社会保険医療協議会の審議の中身が実は非公開になっておりまして、これを公にするという機会がないために、一般の方々に審議の過程につきまして御承知いただくということがなかなかできないわけでございますけれども、いわば今回の診療報酬の医師会側から出ております緊急是正につきましては、中央医療協議会におきまして、これは合理化の一環である——合理化の一環としてやるのだということにつきましては、医療側も支払い側も一致した意見として議論は進めておりました。合理化の一環として緊急是正をやるということは確認された事項になっておるわけでございます。
  93. 箕輪登

    ○箕輪委員 なかなか教えてくれないので困るのでありますけれども、私は私なりに抜本改正の問題点というものはどこにあるかということを考えてみたわけでありますが、一つ一つ聞きますから、これについてのあなたの考えでもいいから、ひとつ考えてほしい、こう思うのであります。いいですか。  たとえば一部負担の問題であります。これは今度の改正で薬価の定額一部負担をさらに樹立しよう、そういう制度をつくろう、こういう考え方として私どもは受け取っておるのでありますが、これは抜本改正になってもこの制度は残すつもりかどうか、ひとつお考えをただしたいのであります。
  94. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いわば医療費の一部負担という考え方につきましては、いろいろな考え方があるわけでございます。たとえば定率で何割負担するという考え方、あるいは一昨年神田大臣のときに政府原案として考えました薬の半額一部負担——外来の場合のみ薬について半額一部負担をするというような考え方もございます。それからまた、考えようによっては、薬の一定のものについていろいろと負担のしかたを変えるというふうなことで、諸外国でやっておる制度もございまして、一部負担のやり方自体につきましてはいろいろな考え方があって、これをどれが適当かどうかということにつきましては、まさに抜本対策の一環として考えなければならない問題でございます。しかし、今回の私ども臨時特例でお願いをいたしております定額十五円程度の低い金額で、しかも一定の金額の一部負担というものにつきましては、これは抜本対策の際には根本的に考え直すつもりでございまして、今回の定額の一部負担は、かねて御説明申し上げましたように、初診時あるいは入院時の一部負担を現在の政府原案以上に上げることにつきましては、いろいろ受診の抑制その他弊害が出るということをおそれまして、それでいわば肩がわりとして、被保険者がお医者さんにがかった場合にまず八〇%以上共通にもらって帰る薬につきまして、きわめて少ない金額で、しかも一定額の十五円という金額を負担していただく。初診時、入院時の一部負担の肩がわりというようなつもりでございますから、これは抜本対策の際に取り上げるというような考え方は持っておりません。
  95. 箕輪登

    ○箕輪委員 それでは、いまの一部負担の問題については、あとで薬の問題を聞くときに一括してまた御質問いたしますので、一まず差しおきまして、給付率の問題について抜本改正でどういうふうにこれを取り上げていくか。たとえば本人、家族、各保険給付率、また今後の給付水準をどこまでという目標を置いてお考えになるか、この問題についてお答えいただきたいと思います。
  96. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 すでに過去におきまして、内閣の社会保障制度審議会で医療保障につきましての総合勧告が出たのでありまして、その際にも、あらゆる保険制度につきまして最終給付率は九割目標というふうな考え方が出ております。私ども給付率はいまここで何割に持っていくのが適当だということを御説明するわけにはまいりませんけれども、しかし、少なくとも現在のように、被用者保険におきましては本人十割、家族五割、国民健康保険においては家族も本人も七割というふうに非常にアンバランスになっておりますので、その点は給付率をそろえていくという方向で考えていかなければならないと思っておりまして、ばらばらにするというふうな現状のままの形というものはすみやかに是正する必要がある、こういうふうに思っております。
  97. 箕輪登

    ○箕輪委員 しからば、保険料の負担でありますけれども、総報酬制をとる考え方は持っているかどうか。また労使負担の比率は現行のままでやるお考えかどうか。保険料の賦課方法をどういうふうに抜本改正の中で取り扱っていこうと考えているか、その問題についてちょっとお尋ねいたします。
  98. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 きわめて具体的な御質問で、いま私どもとしては、この方法でやりますということを申し上げる時期ではないと思いますけれども、総報酬制につきましては、まさに基本的な問題でございまして、現在のような標準報酬制度がいいか、総報酬制がいいかということは、抜本対策の重要な項目の一つというふうに私ども考えております。  それから保険制度でございます。現在の労使折半の原則、これは諸外国では労使非折半にしておるところもございますけれども、私どもとしては、労使折半の原則はこの際よほどの事情がない限り守っていくべきではなかろうかというふうに考えております。これはむろん他の年金制度その他との関連も考えてという条件があります。  それから賦課方法につきましては、これは現在の国民健康保険、被用者保険との調整もやらなければなりませんし、標準報酬制あるいは総報酬制に切りかえるかどうかという問題との関連でございまして、その辺関連のもとに検討するというふうにお答えする以外にないと思います。
  99. 箕輪登

    ○箕輪委員 それでは、時間もあまりないようですから、もう一つお尋ねしたいと思います。  健康保険の中で、一番お医者さん方がお困りになり、また患者さん方がお困りになると言っている問題は、その一つは、甲乙のいわゆる一物二価だと思うのです。一つのものに対して政府二つの値段をつけてしまっている。これはやはり抜本改正の中で一本化をやらなければならない問題だと私は思います。それに伴って、技術料というものは欧米並みに評価するかどうか、そのお答えをお聞きいたしたいと考えます。
  100. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 甲乙は将来まさに一本化しなければならぬというふうに私どもは確信を持っております。それから技術料の評価につきましてもお説のとおりでございます。
  101. 箕輪登

    ○箕輪委員 それでは、これまた保険局長に聞いたほうがよろしいかと思いますが、今度の改正案は赤字に対するところの暫定特例法案だ、こういうふうに御説明されたわけでありますが、しからば、健保財政がなぜこんなに赤字になったのだろうか。これは国民全体が考えることだと思いますので、この赤字になった原因というものをひとつ御答弁いただきたいと思います。
  102. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 赤字の原因につきましては、私どもも過去審議会におきまして、いろいろとあらゆる機会に申し上げているわけでございまして、一がいにこれが原因だということにつきましては、なかなか断言がむずかしいわけでございます。ただ、私どもが申し上げられますことは、まず第一に医療内容が向上したということでございます。これはもちろん医学、薬学の水準が向上をし、また病院を含めまして医療機関整備をされてきたということでございます。  第二番目には、先ほど箕輪先生からもお話がございましたように、医療需要が変化をしてきておる。需要のほうから変化するということでございまして、これはたとえば人口の老齢化と疾病構造が変わってきたということ、あるいは老人がふえてきて、年齢による医療費の差というものが非常に格段に違ってきた、年寄りのほうが非常に医療費がふえているということでございます。それからまた、保険あるいは医療に関する国民関心が非常に強まっている。さらには国民の所得水準あるいは生活水準が向上した、こういうことでございますし、さらに医療機関の利用が非常に容易になってきた、したがって受診率が非常に上がってくるというふうなことがございます。  それから大きな三番目といたしましては、医療保険制度の改善を政府与党が行なったわけでございます。国会の先生方も含めまして、医療保険制度の改善が行なわれたということでございまして、これは御指摘のように、国民保険の実施によりまして医療が普及をしてきた。また二番目には、医療給付内容が改善をされ、また診療報酬改定があったということでございます。  それから最後に、これは現在の診療報酬支払い制度自体につきましても、やはり赤字の原因をなす多分の要素というふうに考えておりまして、ただいま申し上げましたこういうそれぞれの要素につきましては、私ども従来の審議会の審議過程におきましても公にいたしました中身でございます。
  103. 箕輪登

    ○箕輪委員 特に、健保財政の赤字というけれども、政管健保の赤字が大きな原因でこのたびの改正法案というものがつくられたものと考えますが、政管健保の被保険者の中に非常に零細所得層が多いということは、私もわかっておりますが、それが赤字の大きな原因になっていると私は考えますけれども、これに対する見解をひとつただしたいと思います。
  104. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これも赤字の原因の一つにはなると私は思いますが、すべてではないというふうに考えておりまして、現在の政府管掌健康保険はいわば中小企業を主体とした被用者保険でございますが、その他の保険につきましても、先生御指摘のように赤字でないという現象にはなっておらないわけでございます。たとえば代表的な点は、国民健康保険、被用者保険におきましても、やはりいろいろの要素によりまして赤字がふえておるわけでございますが、しかし中小企業という非常に零細な企業を主体としておりますがゆえに、保険料もなかなか上げにくいというような事情もございまして、赤字の一つの要因にはなっておるだろうというふうには考えられると思います。
  105. 箕輪登

    ○箕輪委員 もう一つ指摘申し上げなければならないことは、やはり先ほども渡辺委員が言われたように、私はこの社会保険制度欠陥ということを指摘しなければならないと思うわけであります。この健康保険制度の中で数多い矛盾をかかえていることは、これは大臣も局長さんもよく御承知だと思います。ですから、何年か前から抜本改正、抜本改正ということが言われてきたのでありますが、その抜本改正が、いかなる事情があったにせよ、今日まで行なわれておりません。これは明らかに制度欠陥というものがやはり今度の赤字累積の原因になったと私は考えるわけであります。そうであるならば、その赤字の責任というものは、やはり政府がもっと考えなければならない問題ではないかと思います。すなわち政府の責任において国庫で負担すべき性質のものではなかろうか。これを被保険者に、しかも零細所得者に多くの負担を課するということは、あまりうまい方法ではないと私は思います。制度欠陥があるというふうに考えるならば、制度の抜本的改正を行なうときにやるべきだ。一部負担なり、あるいはまた薬価の一部負担の新設なり、これは制度欠陥から生まれてきたのであるから、やはり抜本改正という制度の改正の中でやるべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけでありまするが、これに対する御答弁をお願いいたします。
  106. 坊秀男

    坊国務大臣 箕輪委員御承知のとおり、今度の臨時緊急対策というもののでき上がった経過をひとつお考え願いたいと思いますが、保険は累積赤字がだんだんふえてきておる。そこで、私が、その累積しておる赤字を処理するために、あるいはまた抜本改正をするために、厚生大臣に就任いたしましたのが昨年の十二月でございますが、昨年の十二月に就任をいたしましてすぐに解散がございまして、そして選挙。ところが、解散や選挙というのは、これは私ごとではないにいたしましても、国家の行政とかそういったことではございません。だから、ここで弁解にも何もなりませんけれども、事実上の問題といたしましては、予算の編成ということはどうしたって三月三十一日までにはやらなければならない。もっともことしは暫定予算を組みましたけれども、方針といたしましては三月三十一日までには予算を組まなければならない、そういったようなことがございまして、国事が停滞するから、そこで絶対に予算を組まずにはおれない。予算を組むためには、どうしたって健康保険、政管健保に現実に穴があいておるのですからそのままではいけない。しからば、その抜本対策をやろうかといいましても、これは短時日の間では抜本対策がやれないというようなことで、今度の臨時緊急対策というものを予算に組まなければならないといったようなことでこの臨時緊急対策ができ上がったのでございますが、さて、その予算を組むにあたりまして、この赤字をどうして埋めるべきかという難問に逢着したわけでございますが、昨年までは、この赤字に対しましては、百五十億といったような政府の負担を予算上やってもらっておったわけでありますけれども、しかしながら、去年の百五十億というものは、これは私のときではございませんけれども、去年一年限りの措置である、こういうことを財政当局から一つくぎをさされまして、そうしてやっておった。と申しますことは、抜本対策をやれというようなことで、百五十億は一年限りのものである、こういうことに相なっておったわけでございます。しかしながら、今年度の七百四十五億というものは、これは去年どおりの百五十億ではとうていいけない。そこで、政府にまず思い切って負担をしてもらいたいということを要求いたしまして、そして二百二十五億、前年度の五割増し——お説によれば、もっと政府が負担の額をふやすべきである。これは確かに負担の側から申しますと、多々ますます弁ずでございますけれども、財政上の関係から申しますと、この借り入れ金というものは、御承知のとおり財政投融資の金を借りておりますけれども、しかしこの金というものはたいへん無理して出していただいておるということで、四十二年度においては二百二十五億というのがもうぎりぎりであるということを、これは厚生大臣もむろん責任があることでございますけれども厚生大臣と与党の最高幹部においてこれを決定いたしたというような次第でございまして、国民負担の側から申しますと、それはもっと多いほうがいい、こういうことは私もわかりますけれども、そういったようないきさつでこういうことに相なったということをひとつ御了承願いたい。
  107. 箕輪登

    ○箕輪委員 いまの受益者負担のお話でありますけれども、私はこれはほかのときの受益者負担、負担の公平というものと本質的に違うような気がするのです。病気であすから命がどうなるだろうか、家族の生計はどうなるのだろうか、そういう人方が、この健康保険で病院に治療に通うわけであります。それに同じような受益者負担の考え方で負担をかけるということは、社会保障という冒頭の考えから参りますと、どうも私は合点がいかないのであります。  しかし、こうした問題をたくさんやっておりますと、まだまだ質問したいことがありますので、一応中止いたしまして、しからば、医療費の増加が今日の赤字の原因の一つであるというけれども、これは日本だけが医療費の増加があったのであろうか。あるいは先進諸国の例が出ましたけれども、先進諸国の医療費や薬剤費の推移はどうなっておるか、もし資料がございましたならば、お示しをいただきたいと思います。  それから、国民の健康ということから考えますと、いわゆる医療費、その中に占める薬剤費だけじゃなしに、売薬の推移というものが——薬屋の店頭から買う薬、その薬の最近の伸び縮み、その推移をあわせてお尋ねいたしたいと思います。
  108. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 アメリカは、御承知のように、医療保険という制度は、老人の疾病をケネディのとき始めただけでございますから、これは別といたしまして、欧州諸国におきましては、こういう保険制度をとっておる国と、イギリスのように、全部税金でやっておる、いわゆるナショナル・ヘルス・サービスでやっておる国と、あるいは社会主義国家のように、全部国で直接やっておる国といろいろございまして、赤字の原因その他につきましては、それぞれ理由があると思いますけれども、しかし、私どもの調べたところによりますと、イギリスにおきましても非常に赤字はふえておる。それからまた、フランスあるいはオーストリア等の国におきましても、やはり保険制度の運営自体につきましていろいろ苦慮いたしておりまして、これをどのようにやっていくかということにつきましては、いろいろ政府当局で方針を現在検討いたしまして、今後医療保険のバランスをどのようにとっていくかということにつきましては、政府部内において真剣に検討いたしておるというふうに私ども聞いております。  それから、その赤字を消す方法としては、欧州諸国では、やはり一部負担という方法でこれを何とかしなければならぬというふうに言っておられるようであります。  それから、売薬につきましては、現在日本の総医療費が大体一兆三千億ないし四千億、こういうように言っておりますが、売薬の推移につきましては、現在のところ、昭和四十一年度で六百四十億でございます。これが三十五年当時は二百四十三億ということで、大体三倍近い増産といいますか、そういう形になっております数字はございます。
  109. 箕輪登

    ○箕輪委員 いま局長さんおっしゃったように、医療費の中におけるところの薬剤費もふえてまいったかもしれないけれども国民の自由意思で店頭で買う売薬も、三十六年から五年間の間に三倍にふえた。これは、国民の健康に対する認識が深まり、そうして常に健康であろうとするその心がまえがこうなったのだと思います。同時に、やはり所得がふえたから買えたということも言えるかもしれないけれども、こうやって考えてみますと、今度の赤字の原因は、薬の使用量が非常に多いから、こういうふうに言われておるけれども国民的要求でもってふえたものと私は思うのです。そうであるならば、国民的な要求でふえたのであれば、単にこれが赤字の原因であるからといって——あなたのほうでは、薬剤の一部負担をつけることによって乱診乱療を防ぐのだという意思はないというお答えかもしらぬけれども、現に初診料、そうして入院料に一部負担をつけたときには、厚生省当局が、これによって乱診乱療を防ぐのだ、こういうことをはっきり言っている。そうすると、今度の薬剤費一部負担というものも、やはり国民的要求を踏みにじって、薬を制限して使わせない、こういうような考え国民は抱くであろうと私は思うのです。どうかその点について厚生省の見解を述べていただきたいと思います。
  110. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 私どもは、このたびの少額、定額の薬の一部負担で受診の抑制をはかるという考え方は、毛頭持っておりません。   〔発言する者あり〕
  111. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  112. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 といいますのは、赤字の原因につきまして、当委員会におきましても、すでに過去においてずいぶん御議論があったわけでございますけれども、神田厚生大臣のときに、薬の増高が非常にはなはだしい、したがってやはり薬の使用というものをある程度コントロールする必要があるという考え方のもとに、外来の本人につきまして薬の二分の一を負担していただくという考え方を発表いたしました。これは明らかに薬の抑制効果をねらった対策でございました。また、それだけに、その後の社会保険審議会におきまして、これは抜本対策に通ずる問題であるから見送れというふうな答申をいただきまして、これは見送ったわけでございます。ところが、今回の定額一部負担につきましては、私どもは薬の半額負担とは全然違った考え方でやっているわけでございまして、社会保障制度審議会、社会保険審議会におきましても、私どもの少額、定額の負担で、先ほど申し上げましたように、いわば初診時、入院時の負担をふやす肩がわりとしてやったという考え方につきまして反対はございました。しかし、当面臨時対策としてはやむを得ない方法ではなかろうかというような形で出しているというのが経緯でございます。
  113. 箕輪登

    ○箕輪委員 ただいまの保険局長さんの御答弁は、薬価に対する一部負担を課しても、乱受診をセーブするというような考え方は決してない、こういうふうに受け取るわけでありますけれども、購入価格が上がった場合に需要が制限されるということは、これは経済の原則だと私は思うのです。いままでは、保険証さえ持っていけば、何も金をかけずに薬をもらってこられたが、今度は購入価格ができて、水散薬で十日分もらえば三百円取られるのです。そういうふうに購入価格が新設され、しかも三百円取られるのだ。こういうことで参りますというと、少なくとも初診料二百円と、それから薬の十日分ぐらいの金を持っていかなければ、医者のところへ行けないのだ。局長さんや先生方はどうか知りませんけれども、五百円の金も用意できない階層があるということを忘れてはいけないと私は思うのであります。(拍手)これは購入価格が上がることによって需要というものが制限されるのだ。この経済原則を局長さんはどのように解釈されるか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  114. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いま箕輪先生がおっしゃられましたのは、購入価格が上がるということで需要が抑制されるのは経済原則だ、こういうふうにおっしゃられましたが、これは経済原則としてはそのとおりだと私は思いますけれども、ただしかし、医療といった場合に、はたしてそのような経済原則が成り立つかどうかということにつきましては、やはり医療需要といいますのは、病気になって、その必要に迫られてお医者さんにかかるわけでございまして、必ずしも経済原則で律しがたいものがあるというふうに私ども考えておりまして、このような形で経済原則を医療の需要について適用すること自体、非常に問題があるのじゃないかという考え方を私どもとしては持っておるわけでございます。
  115. 箕輪登

    ○箕輪委員 経済原則では必ずしもそうならないというような御答弁でありますけれども、現にどうもからだの調子が悪い、お医者さんに行こうという場合、いままでならば保険証一枚持っていけば行けたのです。さて今度行くのにあたって、何百円かの金を支度しなければ行けない、そういうふうになったならば……(「一日三十円じゃないか」と呼ぶ者あり)いま、一日三十円とおっしゃいますけれども、お医者さんのほうで薬を何日分出すかわからないじゃありませんか。三十円で済むか。私は済まないと思う。少なくとも支度するときは、若干の金を用意していかなければ医者にかかれないのだという観念を必ず患者さん方は持つ。そうであった場合に、それがもし不可能でできないような人があったならばどうするか。これはひとつ医者に行くのをがまんしよう、それによって症状が進んでいくとかあるいは悪化していくということも私は考えられると思うのです。特に、わずか一日三十円だとおっしゃるけれども、もしも薬が切れることによって必ず発作が起きる、薬が切れることによって症状が進むような慢性病を持っているところの低所得者の方々は、一生この薬を飲んでいかなければならないのです。この方々は一生三十円ずつ払うのです。それを考えるときに、それに対する配慮がなくて社会保障の一環だということは言えないのじゃないかと思う。もう一度御答弁願います。
  116. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ちょっと私から……   〔発言する者あり〕
  117. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  118. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 事務的なお話だけに終わらせていただきます。  今回の薬剤一部負担の金額につきましては、一日一剤について十五円以上の場合に十五円を負担していただき、十五円以下の場合にはこれは全然負担はないという考え方になっておりまして、たとえば結核等の長期療養を要する患者にパス等を投与した場合には、これは十五円以下でございますので、負担は全然ないという形になっております。それからまた、私どものほうでの調査によりますと、月四百五十円以下の負担で済む方々が、大体被保険者本人の場合に九〇%程度ということでございますので、確かに国民の、特に患者の方に御負担をかけるということで、たいへん御迷惑をかけるということにはなると思いますが、しかし、この程度の金額であるならば、片一方で多額の赤字をかかえておる場合には、まずこの際がまんをしていただかなければならないぎりぎりの金額ではなかろうかということで私ども考えておるわけでございます。
  119. 箕輪登

    ○箕輪委員 いま局長が御答弁されましたけれども、私の聞いているのは別なところにあるのです。零細低所得者で慢性の疾患を持っている、薬が切れれば——いま、十五円という金、あるいは三十円という金が小さい金だ、九〇%は大体四百五十円程度だ、こうおっしゃいますけれども、慢性の疾患で、薬が切れたならば発作が起きるとか症状が起きるという疾患があるはずだ。これは一生なんですよ。しかも、慢性の疾患にかかっていると、中程度の収入を持っておった人でも、やがてだんだん低所得者になってしまうのです。こうした階層に社会福祉のあたたかい手を差し伸べることこそ、私は今日の健康保険法考えなければいかぬ問題だと思う。それに対する配慮が一つもないように思うのです。しからば、慢性疾患に対して、低所得者に対して配慮があるというならば、ひとつこの健康保険法の改正法案の中でどういう配慮があるか、御答弁を願いたいと思います。
  120. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 今回の臨時特例法の中身につきましては、内閣の社会保障制度審議会で、低所得対策として、たとえば継続給付を受けておる者については対象にしないような方法を考えろというふうな答申をいただきました。継続給付を受ける者といいますのは、会社等をやめられた方でございまして、国民健康保険に直ちに移行いたしますので三割の負担がある。これはやはり元の会社の健康保険のほうで見るべきだということで、継続給付を受ける者につきましては、今回の対策は、薬剤の一部負担も、また入院料の六十円負担も、これは免除という形に法律案の中に入れておるわけでございます。  そのほかに、やはり箕輪先生御指摘のような低所得対策考えなければならないのじゃないかという御意見は、私どもごもっともだと思います。ただ、保険制度につきまして、どのような形で低所得対策を入れるかという問題につきましては、実は新しい問題でございまして、厚生省におきましては、この保険制度の負担にたえられない方につきましては、他の児童福祉なりあるいは社会福祉の対策でやっていくわけでございまして、保険制度にどのような形で低所得対策を盛り込むかということにつきましては、私どもとしては、抜本対策の際に慎重に検討すべき問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  121. 箕輪登

    ○箕輪委員 抜本改正で考えるというお話でありますけれども、しからば、抜本改正の内容を示せ、こう言っても答えられないと言う。しかも、さっき厚生大臣からは、いろいろと法案を出す、予算の問題が伴ってきます。その予算を片づけるためには三月三十一日という制限がある、こういうふうなお話もございました。そうやって大蔵省からもらう予算のことも考えてみますと、いまもう予算編成まではされてなくても、来年度予算要求資料というものをつくりつつある過程にあると思う。しかも十二月までには予算編成を終わらなければいけないでしょう。こういうときに、こんな大きな問題の構想もきまらないで、しかも、いま言ったような一部負担の問題も、これを抜本改正のときに考えますと言ったって、これは国民が納得するだろうか。私は、国民の代表として、代弁者として、あなたに聞いておるのです。何も示されないじゃありませんか。私はおかしいと思う。  そこで私は、ひとつ角度を変えてお聞きしたいと思いますが、今度の健康保険法の一部を改正する法律案、これがもし通るということになりますと、各種健康保険の間にいろいろな不均衡がさらに拡大されると思うわけであります。私は、今度の累積赤字の原因の一つも、政府がしきりにかつて健康保険組合をつくれということで奨励した時代があった。ですから、そういう標準報酬の平均値の高い会社ではみんな組合をつくった。あとに残ったのはいわゆる零細企業の連中ばかり。それでもって同じ給付を行ない、ほとんど料率も同じである。こういうことでやったなら赤字になるのはあたりまえなんです。そういうふうに考えてみますと、健保と共済組合の実態をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  122. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 健保組合の実態につきましては、どうも御質問の趣旨が的確にわかりにくいので、あるいは間違った御答弁になるかもしれませんが、健保組合は現在千三百三十一ございまして、平均標準報酬月額は三万八千七百四十四円になっております。これは四十一年の九月の現状でございます。ただ、健保組合のほうも、財政状況はもちろん個々の組合によっては異なってくるわけでございますけれども、組合全数のうち二割相当の組合が財政的には苦しい状況になっておりまして、ちょっと料率の関係を申し上げてみますると、平均標準報酬は、健保組合がただいま申し上げましたように三万八千七百四十四円、それから政府管掌健康保険のほうは、これは四十一年の九月でございますが、二万九千円、大体八千円ぐらいの開きがあります。それから料率につきましては、健保組合のほうが千分の六十八・四三、政府管掌のほうは千分の六十五でございまして、これは御承知のように付加給付があるわけでございます。それから、負担割合につきましては、大体六、四ぐらいで、健保組合のほうは事業主のほうが六ぐらい負担しておる、このような関係に相なっております。  それから、共済組合のほうにつきましては、各省それぞればらばらになっておるわけでございますが、標準報酬の分は、共済組合は御承知のように本俸になっておりますので、これは標準報酬制度に組みかえて計算をいたしたわけでございますが、国家公務員の共済組合で料率は千分の五十六、地方公務員共済組合で千分の七十・五、私学共済で千分の七十でございます。国家共済を除きまして、共済組合のほうは、地方公務員、私学共済ともに非常に料率は引き上げておりまして、それでも財政的には非常に苦しい状況にある、こういうことでございます。
  123. 箕輪登

    ○箕輪委員 今度の改正法案がもし通っても、大かたの健保組合あるいは共済組合は付加給付を行なう、そして返還措置をとるということを言っておるところがたくさんあるわけであります。これは熊崎局長さんもお聞きになっておると思います。しかし、このようなことが行なわれるとするならば、ただでさえ不平等な国民保険下にあって、さらに一そう各制度間の格差というものがその幅を広げていくだろう。あなた方のほうでは、各制度間の格差是正というものをやらなければならないということを考えていると思うのでありますが、各制度間の格差是正は行なわれないばかりでなしに、ますます格差が大きく開いてまいる、かように考えるわけでありますが、御答弁をいただきたいと思います。
  124. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 現在も実は政府管掌健康保険制度でとられております初診時の一部負担百円、それから入院時の一部負担三十円、これは共済組合、健康保険組合にはそのまま適用されるようになっております。ただ、共済組合におきましては、組合の規約でその分は償還することができるということで、償還を法律で認めておるわけでございますが、現在のところ償還されておる組合は数は非常に少のうございます。それで、今回の臨時特例の場合には、やはり従来とも、一部負担につきまして政府管掌健康保険と同じような例で右へならえしておったものを、はずしてしまえということはきわめてむずかしい問題でございまして、現行法ではすでに右へならえということになっておりますので、同じように右へならえをせざるを得なかったということでございます。しかし、償還をしております組合はきわめて数も少のうございますし、また、先ほど申し上げましたように、共済組合におきましても、また健保組合の中におきましても、財政状態がいいところはあるとしても、相当悪いところがふえてきておるということでございますので、現在以上に格差が隔たっていくという考え方は私どもは持っておりませんけれども、現在程度の格差はやむを得ない。しかし、この格差解消につきましては、御指摘のように、抜本対策の際にぜひとも検討しなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。
  125. 箕輪登

    ○箕輪委員 そこで、薬価の一部負担でありますが、先ほどもちょっと触れましたように、今日は甲表、乙表というので、一つのものに対して二つの値段をつけております。これは甲表における薬価と乙表における薬価のきめ方が違うわけであります。そこで、今度の改正法で十五円以上の薬に対して十五円の定額一部負担をつける、こういうことでありますが、十五円から三十円までの平均薬価を甲乙で見ますと、甲表においては平均薬価は、購入価格が十五円から三十円までではあるけれども、十二円であります。乙表では二十一円であります。そうすると、乙表の病院にかかると薬価の一部負担は取られる、甲表の病院に行くと同じ薬をもらってもお金は一銭も取られない、この矛盾をどういうふうにお考えか、ひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。
  126. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のように、甲表と乙表の薬価のきめ方に差がございますので、そのような矛盾ができることは、私どもやむを得ないというふうに考えておるわけでございまして、これは基本的には、やはり現在甲表と乙表という両方の点数表ができておりますために、そのような矛盾が出てくるわけでございまして、この矛盾を解決する方法は、甲表、乙表を一本化する以外にないわけでございます。たまたま今回の場合に薬の負担につきまして差が出るということは、現在の点数表の仕組みから出た必然な欠陥でございまして、これは今回新しい制度を入れたということでその欠陥指摘されるまでもなく、すでに現在においてもその矛盾は進行いたしておりますのは、これは家族なりあるいは国保なり、それぞれ一部負担の率でもって一部負担をしておる場合に、甲表、乙表の病院で差額の一部負担をしておられる金額がそれぞれ違う。家族の場合には、被用者保険においても、甲表と乙表の病院によってそれぞれ違うという現実の姿になっております。これを解決する方法は一本化以外にないわけでございます。これはやむを得ない矛盾てあるというふうに私ども考えざるを得ないと思います。
  127. 箕輪登

    ○箕輪委員 どうもやむを得ない矛盾であるという御答弁でありますが、私は、少なくとも、いまおっしゃったように、たとえば国民健康保険においても、また家族の半額負担のときにおいても、甲乙二表において矛盾があったんだ、だから今度も矛盾があってもしかたないじゃないかというような考え方は間違いだと思います。矛盾なら矛盾を直すような考え方にならなければおかしい。過去においてこういう矛盾があったから同じことじゃないかというようなことは、矛盾がさらに矛盾を生んで今日のような保険制度の混乱が起きたんだと私は思う。  しからば、甲表をとっている病院というものはいまどのくらいありますか。また、その全体の医療施設の中で幾らあるか、パーセンテージも教えていただきたいと思います。
  128. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ことしの四月一日でございますが、医療機関の全体の総数が六万九千九百、そのうち甲表の採用病院二千百十五、診療所が二千六百八十八、計四千八百三でございます。それから率で言いますと、これが全体の六・八七ということでございますが、病院のほうは全体の病院の数の二九・八九、大体三割。診療所のほうは四・二九、診療所のほうは非常に少ない、こういうこと  であります。
  129. 箕輪登

    ○箕輪委員 そこで、私どもも覚えているのでありますが、当初甲表、乙表の二本をつくったときに、厚生省は、その息のかかった医療機関に対しては、甲表をとるようにということをたいへんすすめました。これは御存じだろうと思います。そこで甲表をとってみたけれども、どうも甲表はおもしろくないということで、いろいろな理由もあるのだろうと思いますけれども、最近は甲表の病院が——これは最近の数字だと思いますが、だいぶ減った数字だと思います。いま残っている病院は、少しもののわかった者から言わせると、やはり厚生省の息のかかった病院が多いのではなかろうか、こういうような、ひねくれた考え方かもしれませんけれども、持つわけであります。厚生省の息のかかった病院へ行ったならば薬の一部負担は取られない、一般の開業医へ行ったならば、十五円以上の薬は必ず取られるのだ、というふうに国民各層の者がおそらく迷うだろうと私は思うのです。どうも病院のほうへ行くと取られない。あるいは国立病院へ行くと取られない。国立療養所へ行くと取られない。しかしながら、一般開業医のところへ行ったら、乙表のところは取られるのです。どうも一般開業医のほうは何か悪いことをしているのじゃないか、同じ薬じゃないか、こんなような疑問も私は持つと思うのです。したがって、いままでならば、たとえ甲表、乙表の中でも、平均薬価というものは患者さんにはわからなくて済んだ。今度は、開業医のところへ行ったら取られるけれども、国立病院へ行ったら取られないのだ、これが歴然としてくるのです。これで受診率が減らないというのもおかしい。かぜ引いたなら向こうへ行ったほうがいい、病気になったら向こうへ行ったほうがいい、こういうことも私は考えられる。この健保法の改正でいろいろなこういう矛盾点も出てくるということを御指摘申し上げたわけでございます。これについてどうのこうのということで、あなたの答弁を求める気持ちはないのだけれども、もししてくださるなら、してもらってもよろしい。しますか。
  130. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これは箕輪先生のおっしゃられるのは、三十円以下の薬についての御議論でございまして、確かに、乙表のほうの病院なり診療所は十五円刻みがもう一つありますために、十五円以下の安い薬をいただいた場合、あるいは甲表においては三十円以下の薬をいただいた場合に負担がゼロということでございますけれども、しかし、これは私ども国立病院の実態を見ておりますけれども、現在国立病院等におきましては、三十円以下の薬を投与するという例はもう非常に少なくなっておりまして、ほとんどみんな三十円以上。全体で言いますと、乙表のほうについては、二割くらいはまだ十五円以下のものがございますけれども、しかし、大体の国立病院等におきましては、もうすでに三十円以上の薬を投与しておる例が非常に多いということでございまして、確かに負担が違うということは矛盾であることは、私ども十分認めますけれども、ただ、先生のおっしゃられるような、そういうふうな意図でもって私ども考えたわけではございませんので、今回の十五円刻みというふうにきめましたこと自体は、お医者さんの請求の単位自体を、いまの点数表の構成になっております単位自体を取り上げて、お医者さんがこれは患者から窓口で取っていただくわけでございますから、お医者さんが手数はかかるにしても、なるべく手数のかからないような、わかりやすいような単位にしたいということで考えた以外の何ものでもない考え方でございますので、その点はひとつ御了解をいただきたいと思います。
  131. 箕輪登

    ○箕輪委員 とにかく甲乙二表あることは、これは現実の問題であります。しかし、私は、甲乙二表の間で公平の原則を欠くような法の改正のしかたはなさらないほうが、なさるよりもずっといいことだ、やはり公平の原則というものを順守するという考え方でいっていただきたいと思います。  そこで、薬剤費の一部負担というものを実施することによって、医療機関の窓口事務というものが非常に繁雑になってくると考えます。こうした請求事務に関するところの犠牲というものが医療担当者に課せられることは、これはもう間違いないと思いますが、この一部負担を実施することによって事務量がどのくらい増加されるか、計算されたことがあると思いますけれども、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  132. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 確かに、今回の措置は、事務の簡便さはできるだけ考慮したつもりではございます。つまり、十五円刻みの分を十五円ということで線を引きまして、十五円以下の分はこれは免除にするというふうな形をとりまして、事務の簡便さをできるだけ考慮したつもりではございますが、事務量がふえるということはいなめないと思います。しかし、全体として見た場合には、そんなにたいへんな事務量になるかといいますと、私ども必ずしもそう大幅にふえるというふうな感じにはならないということで、調査をいたしてみました。病院への影響といたしましては、これは関東地区の五カ所の国立病院で調査をいたしたわけでございますが、患者一人当たりの事務量の増加は三十五秒でござます。三十五秒ふえる。それで窓口事務員の一人当たりの作業時間増は二十五分。これは一日当たり約千人の外来患者で窓口を四つつくりまして、事務員をそれぞれ一人ずつ配置しておるといった場合には、窓口事務一人当たりの作業時間の増は二十五分ふえるという計算になる。これは社会保険審議会並びに社会保障制度審議会でも申し上げております数字でございますが、実際に一人当たりについては三十五秒ふえる。それで窓口事務員の一人当たりの増加は二十五分。  それから診療所への影響でございますが、これは患者一人当たりの事務量の増加は一分半ないし二分ということで、窓口事務員一人当たりの作業時間増は四十数分になるという実態調査数字を明らかにいたしたのであります。それは、一般の診療所で四十分以上ふえるだろう、病院のほうでは一人当たりが二十五分程度という計算をいたしておるわけでございます。
  133. 箕輪登

    ○箕輪委員 いまの病院のものは、請求事務になれているところの事務員をたくさんかかえている国立病院をお調べになったようでありますが、診療所はどういうところをお調べになりましたか。
  134. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これは名前を申し上げるわけにはまいりませんけれども、都内のプライベートの診療所と、それから公といいますか、国保の直診でやっておりますところを調べたということでございます。
  135. 箕輪登

    ○箕輪委員 いまの国保の診療所だとか、あるいは国立病院だとか、そういうところは事務のエキスパートが一ぱいそろっている。一般の開業医というものは、その程度の事務量の増加だとは考えないのであります。いまなかなか人手不足でありまして、一般の診療所に来る事務屋さんは、新制中学を出たばかりの者だとか、計算能力もあまりないような方々が、先生や奥さん方に教えられて、そして請求事務をとっておる。私は、事務量というものは、もっともっとこれらの人たちには非常に大きな負担になる、犠牲になると実は考えているのです。しかし、それはさておいて、私は計算したわけじゃありませんからわかりませんけれども、いま言ったように、エキスパートのおる病院でも、それだけ事務量がふえるということになる。やはりそれを国が制度でもって、法律でもってしいることになるのでありますから、ただで犠牲になれというのはおかしいのです。この事務量に対して事務費というものをあなた方はお考えにならなかったのかということについて、お考えになるべきだと私は思うのですが、御答弁をいただきます。
  136. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 確かに、私ども事務がふえないとは申し上げておりませんで、ふえますと言っておりますが、それが非常なふえ方かどうかということについて、そう非常なふえ方にはならないというふうに申し上げておるわけでございます。この点はこの際申し上げておきますけれども、お医者さんのところに来られる患者は、被保険者本人以外に、家族の方あるいは国民健康保険の三割ないし五割の負担を窓口でやられる方が来られます。この方々の費用の計算というのは、毎日毎日窓口におきましてお医者さんが計算をした上でとっていただいておるわけでございます。したがいまして、薬の十五円刻みの分につきましてどの程度の費用がかかるかということにつきましては、私どもは、全くしろうとの方は別といたしまして、診療所なり病院をやっておられる方なら、ある程度は習熟されておるというふうに思った上での判断でございます。  それから、事務屋がふえることにつきましての措置をどうするのだということにつきましては、たいへんごめんどうなお願いをすることになりまして、私ども実は、医療機関の方々には、お手数をわずらわすということにつきましては、たいへん恐縮いたしておるわけでございますけれども、この際何とかしのんでいただきたいという気持ちでございます。ただ、片一方におきまして、先ほど申し上げました中央社会保険医療協議会におきましては、医師会のほうから請求件数一件について五点、この際ひとつ緊急是正として要求をしたいという数字が出ておることを御披露申し上げたいと思います。
  137. 箕輪登

    ○箕輪委員 もし患者さんが手持ち金を持っていない、一部負担を持つことができない、いろいろな理由によってそういうことが考えられるわけでありますが、その一部負担金の支払いができなかった場合に、究極の支払い責任者はだれになるのでしょうか。国民健康保険法第四十二条にならって、保険者責務というものを明確にすべきだと思いますが、第九十七回の社会保険審議会におきまして、政府答弁は、資料がないということでこれを明確にいたしておりません。私は、やはりその負担が事務量の負担となり、あるいはまた支払いができない、泣き寝入りをお医者さんがしなければならないというようなことは法律上おかしいのじゃないか、かように考えますが、局長さんの明快な御答弁を賜わりたいと思います。
  138. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 確かに、一部負担金の未収金については保険者が措置すべきではないかという御意見があることは、私ども十分承知をいたしております。国保におきましては、「療養取扱機関が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることにつとめたにもかかわらず、なお被保険者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該療養取扱機関の請求に基き、」被保険者から一部負担金を徴収するという規定があります。しかし、この国民健康保険の規定が実際に実施された例はほとんどないわけでございまして、ゼロというふうに申し上げてもいいわけでございます。しかし、そのような御意見は私どもは十分承知はいたしておりますけれども、一部負担金の額が非常な高額のものであるなら別といたしまして、今回の改定は、先ほど来申し上げておりますように、きわめて少額のものでありまして、未納となるような事態はほとんど考えられないというふうに私ども考えておりますので、保険者責務をこの際明確にするということにつきましては、ただいまのところ考えておりません。
  139. 箕輪登

    ○箕輪委員 請求された事実がいままでほとんど皆無だ、そういう資料がない、こういう御答弁でありますが、さなきだに事務量が増加した上さらにそういう請求をやるということは、お医者さんとしては耐えられないことだ。だから泣き寝入りをする場合が多いわけであります。持っていき場所がない。患者さんは低所得者だ。行ってみると、食べるものも食べないで、ほんとうに貧困な環境で生活をしている。どうしてそこからとれますか。泣く子と地頭には勝てない。政府を相手にしても金がとれない。そういうことがわかりながら、政府を相手にして、あるいは保険者を相手にしてむずかしい書類をつくって、そんなわずらわしいことをしたくないから泣き寝入りをするのでしょう。いままでそうであったから今度も影響はないと思うというのは、さらにまた泣き寝入りをしなさいということとイコールなんだ。こういう考え方は私は非常にけしからぬと思うのです。いままでそれだけ負担をかけたのだから、あなたは知っているはずなんだ。今度は負担をかけないようにするというふうに考えるのが改正でしょう。矛盾は矛盾のままにしておいて、さらに矛盾をつくり、お医者さんにいまのような犠牲を払わしておきながら、しかも、いままでは全然請求がなかった、そういう資料がない、だからまた泣き寝入りをしたらいいじゃないか、こういうことであっては、改正じゃなくて改悪になってしまうのではないか。大体そういう精神がよくないですよ、私に言わしたら。そういう精神でもって改正なんというのでは、私どもはなかなかこれは賛成しづらくなっちゃうのです。何とかして賛成したいと思っているのですよ、正直な話。あなた、根本精神に間違いがあるからなんです。もう一回答弁してください。
  140. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先ほど来大臣にも御答弁いただいておりますように、今回のはあくまでも特例措置でございまして、従来も御承知のように初診時、入院時の一部負担という形はあったわけでございます。今度薬のほうが問題になっておるわけでございますけれども、私ども考え方としては、従来の一部負担の肩がわりというふうな考え方に対しては、先ほど来るる申し上げたとおりでありまして、このような今回の特例措置の際に、従来も一部負担の制度はやはりあったわけでございますから、なぜ薬の負担について突然国保と同じような規定を入れなければならないかということにつきましては、どうしてもそこに私どもとしてはひっかかる点があったわけでございます。  なお、保険者徴収にした場合に非常に困難な事情があるということは、箕輪先生もお気づきだと思います。少なくとも現在の支払い制度から言いますと、相当の期間を経てから納めるわけでございますので、被保険者にとっては、実際に受けた給付と一部負担との関係が非常に認識しにくい、そごを来たすおそれがあるわけでございます。したがって、納付事務の手間などで被保険者に不便が生ずるという問題や、あるいは被保険者は必ずしも社会保険庁の保険官署の管内だけに層住しておるわけではございませんで、相当遠方から通っておるという場合に、徴収について相当困難を伴うとか、あるいは徴収のための事務量や費用等がかえって多くなるという、きわめて事務的な理由ではございますが、そういう問題もございまして、この際、金額が多額のものなら別といたしまして、きわめて少額である、それから過去にも一部負担制度はあったというふうないろいろな事情を考えまして、しかも今回の臨時特例限りの措置だということで、私ども考えなかったわけでございます。
  141. 箕輪登

    ○箕輪委員 ただいま答弁の中に、今回の措置は臨時特例措置だ、こういうことを二、三回おっしゃいました。しからば、当面の赤字対策のための臨時特例法案だとおっしゃるならば、当然暫定的なものであって、期間を限って実施すべきだと思います。しかるに、この法案の法文上、期間ということが全く明記されていない。期間を明記しないで臨時特例法案だとおっしゃるわけです。しかも、抜本改正の内容はどうかと聞いても、さっぱりその内容については教えていただけない。これはおかしいじゃないですか。そういう臨時特例法案であるならば、なぜ期間を法文上明記しないか。これについて御答弁をいただきたいと思います。
  142. 坊秀男

    坊国務大臣 期限を明示してないじゃないかというお話でございますけれども、何月幾日ということは明示してございませんけれども、今回の対策は、政管健保及び船員保険保険財政の極度に窮迫した現状にかんがみまして、臨時応急対策として講ずるものであり、社会保障制度審議会の御意見もあったので、暫定措置であるということを明確にした臨時特例法として提案しておるのでございます。政府は、四十三年度から抜本対策が実施の緒につくよう最善の努力を行ない、いずれ関係法案を提出する所存でありますが、臨時特例法は、この抜本対策関係法案について国会の御審議をいただき、その結論を得て実施に至るまでの問の暫定措置として、当分の間の措置と規定いたしたわけでございます。
  143. 箕輪登

    ○箕輪委員 私が聞いたのは、いまの法文は知っているのです。二度も三度も読んでもらわなくてもわかるのです。実施までの期間、その暫定措置だ、こういうのですから、その実施までの期間というのはいつか、これは法文で明記すべきだと思うわけです。ほんとうに抜本改正はいつからおやりになるのだ。それまでの暫定措置だとするならば、一年なら一年、二年なら二年の特例法律だ、こういうことでなぜ明記をしないのか、それを聞いているのです。
  144. 坊秀男

    坊国務大臣 実施期限を何月幾日ということにしろ、こういうお話でございますけれども、これは厚生省だけできめられる問題じゃございません。たとえば皆さんの御審議——将来の抜本改正でございますから、この抜本改正については、いずれにいたしましても、一番大事なことは国会で御審議を願う、こういうことでなければならない。それで、国会におきましてこの抜本改正の法案というものを御審議を願って、これが実施されるということになるわけでございますので、そこで私どもといたしましては、何月幾日ということは、いま出しておる法律案なら、これは何月幾日ということがきめられますけれども、来年の四十三年度を期して行なう、そのためには、将来において国会で御審議を願ってきめていただかなければならぬ問題でございますので、そこで、何月幾日と、こういう期限はきめられないのでございます。
  145. 箕輪登

    ○箕輪委員 四十三年度を期してこれを実施したいというお考えがあるならば、そのお考えがこの法案の中に入ってこなければおかしい。そうじゃないでしょうか。大臣の御答弁では、四十三年に実施するつもりだ、だからその間の暫定措置としてこれをやってくれ。そうすると、たった一年じゃありませんか。それなら一年と書いていいのじゃないですか。(「半年でもいいでしょう」と呼ぶ者あり)一年とか半年とかときめるのは、国会できめるわけです。だからなぜそれを法文上明記しないのか。大臣よりも局長に聞きたい。
  146. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 四十三年を目途に抜本対策をスタートさせるということになるわけでございますけれども、大臣がただいま言われましたのは、国会に提出をいたしまして結論が出て実施に至るまでの間の暫定措置、こういうふうにおっしゃられたわけでございまして、それが国会の審議でどのようになるかということにつきましては、私どもは現在のところ予測はつかないわけでございます。それは、過去におきまして健康保険法の大改正をやりましたときに、国会において二回審議未了になって、三回目に改正案がやっと成立した事態もございます。抜本対策の内容いかんによっては、国会におきましての結論が延びる、審議が延びるという場合も考えられまして、私どもは審議が終わるまでというふうに考えて、暫定措置といたした、こういうことでございます。
  147. 箕輪登

    ○箕輪委員 私はきょう三十分までの約束ですから、この原則を守らないと、また野党の連中が質問して原則を守らなくなると困るから、時間的な制限があります。いずれまた委員長にお願いいたしまして、私の質問の機会を与えていただきたい。そのときにもう一回質問させていただくことにしまして、私は三十分までの時間でございますから、この辺で私の質問を終わります。
  148. 河野正

    河野(正)委員 議事進行。先ほど来行なわれてまいりました健保法の審議の状態を見ておりますと、まことに奇々怪々な感じを覚えるのでございます。と申し上げますのは、今日の政治というものは責任政治、政党政治でございます。ところが、与党議員の中にも、この健保改正特例法について多くの疑問がございますし、また、質疑の過程の中でも、その疑問というものが必ずしも解明をされておらないのでございます。私は、そういう点から申し上げまして、この健保改正の審議につきましては、非常に大きな疑義を持つものでございます。  特に私は、いろいろ疑義を持つという立場から、申し上げたいことはたくさんございますけれども、まず一つの例を取り上げて、ひとつ政府の見解を承りたいと思うのでございますが、それは、自民党の国会におきまするきわめて重責にある立場の方で、「健保廃案気配きわめて濃厚、ますます勇気百倍必ず御期待に沿わんとす」こういうような電報を全国各地に発信をされた方があるのであります。私は、少なくとも責任政治、政党政治の中で、しかも国会におきます重要な職責をになっておられる方が、健保は廃案である、また、その廃案を実行させるために勇気百倍をして必ず御期待に沿うようがんばるのだ、こういう意味の電報が全国各地に発信されておりまする事態を見るときに、私は、このような事態の中で、政党政治、責任政治というかっこうの中でこの審議を行なうことにつきましては、非常に大きな疑問を持つものでございます。そこで私は、与党のきわめて責任ある国会対策の地位の方がこのような考え方を申し述べられておる現状でございますし、また、ここの質疑の中でも多くの疑問があり、また、与党議員の質問の中でも、その見解というものが明らかにされない、こういうような事態でございますから、私はやはりこういう奇々怪々な悪法につきましては、すみやかに撤回されるのがしかるべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点について大臣の見解をひとつ承ってまいりたい、かように考えます。
  149. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘の電報につきましては、私が与党執行部に私自身で確かめたのでございますが、これは全く個人的なものでありまして、与党の関知するところではないことを確認いたした次第でございます。本法律案は、政府、与党それぞれ正式の機関の決定を経て提出いたしたものでありますので、私どもといたしましては、原案のとおり御可決あらんことを心からお願い申し上げる次第でございます。
  150. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣は個人的見解というようにおっしゃいますけれども、少なくとも私事に関する発言ではない。いやしくも、国会の中で重要法案と言われておる法案の、しかも党内におきまする国会対策の重要な役職にある方がそういう発言をなされておるわけでありますから、それは、佐藤総理がそういう食言をして、それは個人の発言だと言うことと同じ性格のものであって、私は、いま大臣がおっしゃるように、個人的な発言としてこれを見のがすわけにまいらぬ、こういうふうに考えます。同時に、議事進行でございますから多くを申し上げることはできませんが、重ねて大臣の発言に基づいて私は反論をいたしたい、かように考えます。  それは、党の正式機関にかけてこの法案の処理に当たったんだという御発言でございましたけれども、五月二十五日、東京の日比谷の公会堂におきまして、三師会の会合、大会が開催をされました。その公開の席上において、これまた自民党側の国会におきまする責任ある地位の方が、次のような発言を行なっておられるわけでございます。その一文を、速記録でございますから、そのままここで朗読いたしまして、皆さん方の御批判をいただきたいと思うわけでございますが、この健保特例法の取り扱いについて、「これらの担当部会あるいは党内の医療問題関係の議員懇談会にこれをはかることなくして直ちに予算編成に取りかかりましたことが、今日の皆さま方の憤激を招いた最大の原因であることも御承知のとおりでございます。」要するに、党内の政策の審議を行なう部会においてもこの議をはかっておらぬ、こういうことを党内の責任ある人がこの公開の席上でおっしゃっておる。ところが、いま大臣は、党の正式機関にかけてこの問題の取り扱いをした、こういうように言われるわけでございますけれども、私は、こういう事態では、いまの答弁につきましては、全く納得するわけにはまいりません。これはあるいは個人的な発言とおっしゃるかもしれないけれども、いやしくも党内の部会においてと言っている。個人的見解ではない。(「奇々怪々だ」と呼ぶ者あり)全く、いま発言ございますように、奇々怪々である。私は、健保特例法については、このことばがぴったりだと思うのでございます。この点についていかがお考えですか、ひとつ明快にお答え願いたいと思います。
  151. 坊秀男

    坊国務大臣 これは、以下申し上げますことは自由民主党内のことでございますが、この案をきめるにあたりましては、ただいま河野委員お読みになりました部会云々ということがございましたが、これは政務調査会にかけて、それから総務会におきまして、これは党の執行部及び大蔵大臣、厚生大臣、これに一任するということに決定いたしまして、そこででき上がりましたのがこの案でございまして、この案のこまかいところまでやったのではございませんが、それを予算化いたしまして、その予算の伴う法律案は、これは党の各正式機関を通じてきめた、こういう経過でございまして、何ら一部においてきめたものではございません。
  152. 河野正

    河野(正)委員 そういうことになりますと、こういうふうな、部会で十分審議せずにこの問題の取り扱いが行なわれたというふうな発言は、全く外部向けの選挙対策と申しますか、そういう意味での発言だというふうに理解してけっこうですね。
  153. 坊秀男

    坊国務大臣 私は、そのことばをどなたが述べたか、あるいはどこで述べたか、つまびらかにいたしておりませんが、それをこういうふうに解釈していいというような判定をいたす権限は、厚生大臣としてはございません。
  154. 河野正

    河野(正)委員 これは同じ同僚議員ですから、武士の情けの気持ちで、事をあばこうとは思わない。しかし、あなたがいつまでもしらを切るなら、こういう雑誌に速記録がちゃんと載ったのですから、どこで何月何日の何時にだれだれが発表したということを明らかにしても差しつかえない。しかし、私どもはそういうことを申し上げるのが目的じゃございませんから、きょうは武士の情けで猶予しておるわけです。ところが、あなたのほうがいつまでもしらを切っておるなら、われわれはこの点も明らかにしておかなければならぬ。  もう一つは、これも速記録でございますが、「衆議院の社会労働委員会に付議される手続を踏むわけでございますが、いまだその段階になっておりません。その段階に至りますまでに、必ず皆さま方の御承認をいただける案をつくるべく私ども最大の努力を重ねます」こういうのです。これは個人でなくて、少なくとも党の責任者として登壇を願って、ごあいさつなさった内容なんです。ですから、いま申し上げますように、速記録で明らかに、社会労働委員会に付託されるまでに修正をいたします。そして皆さんの御期待に沿うんだ、こういうことをおっしゃっておる。そうじゃないとおっしゃれば、これまた対外向けの選挙対策のための発言だというふうに私どもは理解せざるを得ない。全くそういうような奇々怪々な法案でございまして、私ども、この法案の審議に入るということにつきましては、非常に大きな問題がある。少なくとも国民が非常に大きな疑問を持っておるわけでございます。特に与党内においても、いまの発言でいろいろお聞き取り願ったように、非常に大きな疑問があって、その疑問というものが解明されないまま終始したということは、御承知のとおりでございます。私はそういうたてまえから、この法案というものはすみやかに撤回さるべきだ、こういうふうに考えるわけでございますが、重ねてこれについての御見解を承っておきたい。
  155. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほど来申し上げましたとおり、この案は、党において正式機関にかけて決定いたしました案でございますので、私は原案どおりひとつ御可決をお願いしたいと思います。
  156. 河野正

    河野(正)委員 そこで、議事進行にかっての発言でございますから、これ以上ここで追及しようとは思いませんが、しかし、この点は、私どもは重ねて機会を見つけて徹底的に追及をして、そしてあなた方の奇々怪々の実態というものを暴露するということをここで明らかにして、きょうの発言を終わっておきたいと思います。
  157. 川野芳滿

    川野委員長 次会は、明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会