運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-07 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月七日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 佐々木義武君 理事 齋藤 邦吉君    理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君       天野 光晴君    大石 武一君       亀岡 高夫君    塩川正十郎君       菅波  茂君    世耕 政隆君       田中 正巳君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    中野 四郎君       藤尾 正行君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    粟山 ひで君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    川崎 寛治君       佐藤觀次郎君    島本 虎三君       西風  勲君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       浅井 美幸君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁年金         保険部長    網野  智君  委員外出席者         総理府恩給局恩         給問題審議室長 大屋敷行雄君         文部省初等中等         局特殊教育課長 寒川 英希君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月七日  委員大石武一君、中山マサ君、福永一臣君及び  増岡博之辞任につき、その補欠として亀岡高  夫君中川一郎君、藤尾正行君及び塩川正十郎  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君塩川正十郎君、中川一郎君及  び藤尾正行辞任につき、その補欠として大石  武一君、増岡博之君、中山マサ及福永一臣君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月六日  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を  改正する法律案山田耻目君外四十一名提出、  衆法第一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七九号)  戦没者父母等に対する特別給付金支給法案(  内閣提出第八〇号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。浅井美幸君。
  3. 浅井美幸

    浅井委員 今回発生しました由良町の集団赤痢事件でありますけれども、この現況について、きょう現在の収容数あるいは患者数、その後の現況等について、まず最初にお伺いしたいと思います。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 和歌山県由良町に発生いたしました赤痢の今日までの経過を申し上げます。  五月二十日ころより、小中学生を中心に、発熱、下痢等胃腸疾患を訴える者が続出しまして、県衛生部調査によると、五月二十四日、二百六名に達しました。  県衛生部においては、五月二十二日、情報を入手するや直ちに患者の検便を実施、二十四日、赤痢菌を同定したので、赤痢集団発出としてその対策に着手いたしました。  赤痢菌D群ゾンネ菌で、薬剤耐性菌であるため、治療には感受性を持つウイントマイロン、メタコリンを使用することに決定いたしました。  患者発生状況から見て、単一曝露共通経路感染と推定され、その原因簡易水道が最も疑われたので、当初より水道の滅菌を強化して、飲料水の安全を確保するとともに、水道調査班を派遣し、その原因究明に当たり、これと並行して食品その他の原因調査も実施いたしました。したがって、患者発生は、当初より数百名より千名にのぼることが推定され、臨時隔離病舎建設収容人員約千名を目標に行ないました。  患者収容は五月二十四日より開始し、旧由良中学校のほか、プレハブ住宅を急造し臨時隔離病舎に充てるとともに、日高病院城南病院有田病院にも分散収容しております。なお、六月六日現在約七十名の自宅治療者が残っております。これは無菌でございます。  六月六日現在、患者発生状況は、有症患者四百九十二名、保菌者四百一名、計八百九十三名となっており、すでに退院者は五名となっており、今後数日中には半数が限院する予定でございます。  県衛生部は、五月二十四日、御坊保健所と県庁内に対策本部を設けましたが、六月一日には、さらに、知事を本部長現地部長旦岡地方事務所長とする由良赤痢総合対策本部を設置して、総合的な対策を行なっております。  厚生省は、五月三十日春日防疫課長現地に派遣し、さらに六月四日、田川政務次官並びに技官一人、事務官一人を派遣いたしまして、現地における指導を行なっております。  以上であります。
  5. 浅井美幸

    浅井委員 いまの大臣答弁でありますけれども、非常に形式的な答弁で、私も現地に三十一日に参りまして一日調査いたしました。現地由良町は死の町みたいな姿で、恐怖のどん底にたたき落とされておる。その状態の中で不安な毎日を送っておった町民人たちの姿、そして救急対策が、いまの答弁では何かうまくいっているような答弁でありましたけれども、現状は、県の対策と町の対策とが二元的になって、うまくいってない状態がたくさんあった。またいまでもある。ですからこの七十名がまだ自宅療養しておる。この自宅療養しておるのは、隔離の必要がないのか、あるのか、その点をはっきりと御答弁願いたいと思います。
  6. 中原龍之助

    中原政府委員 この現在の七十名の者につきましては、菌検査等を行ないましても菌が出てこないということで、これは自宅療養をさしておるという形になっております。
  7. 浅井美幸

    浅井委員 菌が出てこない者は七十名、菌が全然ない者が七十名、それは隔離の必要があるのかないのか、聞いているのです。
  8. 中原龍之助

    中原政府委員 これは赤痢の疑似として届けられたものでございます。検査を行ないましても出ませんでした。したがいまして、一応医師がそこを見守るという監視の状態におきまして自宅療養をさしております。
  9. 浅井美幸

    浅井委員 その発生の二十二日から隔離状態日にち別にはっきり言っていただけますか。
  10. 中原龍之助

    中原政府委員 申し上げます。隔離をいたしまして、隔離病舎に入れました分と病院に入れました分ですが、五月二十四日には病院のほうに十六名入れました。それから二十六日に隔離病舎に百五十九名収容いたしました。そして病院のほうに四名収容いたしております。それから二十七日になりますと、隔離病舎のほうに七十六名、病院のほうに三名、二十八日は隔離病舎に十五名、病院に一名、二十九日は隔離病舎に七名収容、三十日が七十二名、三十一日が九名収容、それからこの日には病院のほうに四名収容しております。なお五月三十日に三名が隔離病舎から退院をしております。六月一日には一名が隔離病舎から退院をしております。それから病院のほうからは六月一日に三名退院しております。それから二日には百十一名が隔離病舎に入り、それから病院のほうに四名入っている。三日には百七十名隔離病舎に入り、病院のほうには六名入っておる。そして四日には大体百六十名くらい入る予定になっておる、こういう状況であります。
  11. 浅井美幸

    浅井委員 六月一日現在で約八百九名です。その八百九名のうちの約半数収容されていない。その収容されなかったために、いわゆる保菌者あるいは病人が健康な者と普通の家で自宅療養ということで待機をしておった。その待機をしておった現況をつぶさに見ましたけれども衛生設備の整わないところの一般民家において同居の姿があったことについて、私たちは非常に第二次感染等のおそれを抱きました。その第二次感染のおそれを抱いた状態の中でそのまま何日も置いておる。そして隔離病舎がないためにプレハブ住宅をつくったけれども予定よりもずいぶん建設がおくれた。その辺の、いわゆる自宅療養について好ましいと思っていられるか、それともまたやむを得ない措置であったということでそれは黙認をしているのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 中原龍之助

    中原政府委員 これは集団発生の場合におきましては、私ども原則としてできるだけ収容するというようなたてまえをとっております。したがいまして、その観点から申しますならば、そのときに一時的に全部収容しなければおかしいじゃないかと言われても、これはまことにそのとおりでございます。そこに患者発生に見合った余裕のある設備があるということがありますれば、それは理想的でございますけれども最初中学校でしたか、そういうところへ収容し、それから次にプレハブ住宅を急造して収容したというような対策を立てておる、そういうことであります。
  13. 浅井美幸

    浅井委員 プレハブ隔離病舎を今度初めてつくったが、それを建設する間、たとえばその市町村にそういう適当な施設がなければ、隣の市町村まで応援を願って、適当な講堂あるいは体育館等にそういう患者をすみやかに収容するという措置をどうしておとりにならなかったかという疑問が起こるわけです。その点についてはどうでしょうか。
  14. 中原龍之助

    中原政府委員 実は、その隔離病舎ばかりでなくて、他に収容できる施設が近所にあれば収容するというようなやり方をとったのでございます。たとえて言えば、城南病院だとか有田病院だとか、そういうような措置を手を尽くして一生懸命やっておるわけでございます。
  15. 浅井美幸

    浅井委員 他の病院収容人員は非常に数が少ないわけです。今度のように大量に発生した場合に、これからわざわざ建物を建てるというような拙速なやり方ではなくて、もっとすみやかな適切な措置があったように思うのです。ところが、今度はわざわざプレハブを建てたという根拠はどういうことですか、それを聞いておるのです。
  16. 中原龍之助

    中原政府委員 プレハブ住宅を建てまして隔離病舎に使ったということにつきましては、別に今回のケースばかりではございません。ほかのケースでもございました。最近はプレハブ住宅がわりあい簡単に建てられるということで、これが応用されるようになりつつあります。従来、収容ができないというような場合におきましては、昔でありますと、天幕を張って収容するとかいうようなことも行なわれたのでありますが、患者のそこに収容されている状態ということを考えますと、できるだけ天幕でやるとかいうのではなくて、ちゃんとした建物の中に入れる。もちろん病院に全部収容できるというのができれば一番好ましい状態だということで、今回も、結局、収容された者の人道的な見地といいますか、そういう面から、県のほうとしてはプレハブ住宅を応用したものと思っております。
  17. 浅井美幸

    浅井委員 それは考え方はいろいろとできるわけでありますけれども患者さんを普通の一般民家に長い間在宅させておったということは、私は非難の一つにあげられると思います。時間がありませんから先を急ぎますけれども、今回の原因は一体明らかになったのでしょうか。それともまだ原因は明らかになっていないのですか。
  18. 中原龍之助

    中原政府委員 原因の問題につきましては、先ほど大臣答弁でも触れておりますが、今回の流行が相当多数の集団発生であるということから、まず常識的に疑われるのは、水の問題あるいは食品の問題、そういう問題であります。したがいまして、防疫対策としては、その両面を考慮して一切の技術上の対策は立てていっているわけであります。  原因究明につきましては、食品類につきましても、はっきりしたものは現在つかめておりませんけれども、徐々に解明されつつあるということで、いま残っているのは水の問題が一番疑わしいという考え方でおります。それに対して、ではどういうようなメカニズムスでもしも汚染が起きたなら汚染が起きたんだというような問題がまだはっきり確定はしてないという状態でございます。
  19. 浅井美幸

    浅井委員 その原因がはっきりしないという、いろいろな条件があるんでしょうけれども原因について、ほんとうにそれを追及し、再びかかることのないように、将来のためにもその原因を明らかにしようとする姿が弱いように思うのです。その点について、いつまでに原因をはっきりさせるのか、この点をしかとお答え願いたいと思います。
  20. 中原龍之助

    中原政府委員 私ども、この伝染病の問題については、できるだけすみやかに原因究明したいと考えて、努力は続けておるわけでございます。しかし、先ほどおっしゃいましたとおり、水の問題が疑われるということは、そういう想定のもとにいろいろ防疫対策をやっておる。事実上の問題として、防疫面には支障を来たさない。当然に将来の問題がそこに出てくる。では恒久的にどうするかという問題、これは当然行なわなければならないと考えております。
  21. 浅井美幸

    浅井委員 防疫のことについて支障を来たさないという話でありますけれども、私は、そういう集団発生病気原因をすみやかに究明することが、大きな防疫対策であると思うのです。今回のように、一過性の水であった、その水が一過性で過ぎてしまえばあと関係がない、そういう考え方から、水だからあとは処置してありますから、原因がないというふうに判断する。ところがそういう流行性病気は必ず水であるという断定はできない場合が多々ありますが、その原因を明らかにしようという姿勢がなかった場合、原因が継続したまま療養しているという姿であっては、ほんとう防疫はできないと思う。したがって、そのような考え方からいくならば、私は、いろいろな流行性伝染病についての原因究明は、発生と同時に行なわなければならないと思う。それが三週間たっても一カ月たってもまだ原因がわからない、そういうあいまいな考え方で事を済ましている厚生行政というものに対して私は疑問を抱きます。犯罪があった場合に、すみやかにこれを追及していこうという姿勢が法務省にはあるわけですが、厚生省がそのような弱腰であったならば、原因はいつまでたっても追及できない。昔ある有名な防疫官は、この原因についてあまりはっきりしないほうがいい、はっきりすると犠牲者が出る、そういうことを言ったそうであります。私は、そのような政治的な配慮はこの際無用にして、人命尊重の立場から、こういう原因についてはすみやかに調査団を設け、一日も早くその原因を発表して、もって町民の不安を除いて、そうして今後の体制を整えていく、そういう姿が望ましいと思う。ところがいまだに原因がはっきりしない。そうして、それが疑わしいというまま、いたずらに時日を経過していくという姿は、私は怠慢ではないかと思う。その点はどうでしょう。
  22. 中原龍之助

    中原政府委員 この原因の問題、これはメカニズムスの問題をどう解明していくかという問題でございます。細部にわたりましてはっきりさすべきであると思います。しかし問題は、水道なら水道にいたしましても、一応そういう伝染病発生するおそれがあるというようなところは、見つければ当然それを補修し、完備していく。そうして将来はここから再び万が一でも伝染病が起こらないように、こういうことは当然のことでありまして、そういう筋に沿いまして、単なる防疫ばかりでなく、一般の住民の生活環境というものを改善していくという措置をとることにつきましては、厚生省は当然努力しており、先生がただいまおっしゃいましたように、そういう原因をすみやかに究明していくということは防疫上最も大切であるということは、私ども常に心がけておるところでございます。
  23. 浅井美幸

    浅井委員 最後に、大臣にお伺いしたいのですが、今回もまた簡易水道事件はまだきめ手は出ておりませんが、いろいろ疑わしい。全国簡易水道は一万数千個所あります。その簡易水道の給水を受けているのは、約一千万人と推定されている。その人たち伝染病の危険にさらされておるわけです。いついかなる場合に伝染病が起こるかわからぬ、起こらないという確たる裏づけはないわけです。その危険にさらされておるというこの事実から、この簡易水道の改善、上水道にしようという積極的な姿勢並びに貧弱な由良町の町財政——年間税収入が二千数百万であります。いろいろなことで一億円を突破するであろうという今回の事故に対する補償、この二点について答弁をお願いしたいと思います。
  24. 坊秀男

    坊国務大臣 由良町の集団赤痢、その原因が、いまも非常に濃厚でございますが、簡易水道原因を発するというようなことでありますれば、お説のごとく、簡易水道というものが全国にたくさんございまして、そういう方々の不安もあることと思います。そこで、簡易水道につきましては、今後ともこれは警戒、指導をいたしまして、再びこういうことのないように厚生省としては万全の対策をとっていきたい、かように考えております。簡易水道のそういった指導監督といったようなことにつきましては、普通の上水道と同じような基準がございまして、そういう線に沿いまして今後の指導をやっていく、かように考えております。
  25. 浅井美幸

    浅井委員 財政措置のことを聞きたいのです。簡易水道上水道に切りかえるところの財政措置並びに町財政に対するところの財政措置、それをどうするか聞いておるのです。
  26. 坊秀男

    坊国務大臣 簡易水道施設新設事業につきましては、市町村財政に応じて、三分の一ないし四分の一の補助率をもって国庫補助を今日行なっておるわけでございます。また、同改良事業につきましては、七五%の起債を充当して行なっておるわけでございますが、これは財政上、予算等関係もございますが、今後ともこういった面につきまして厚生省努力をしてまいりたい、かように考えます。
  27. 浅井美幸

    浅井委員 以上で質問を終わります。      ————◇—————
  28. 川野芳滿

    川野委員長 次は、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法案の両案を議題として、審査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  29. 島本虎三

    島本委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、この審議に入っておりますが、私もこの内容にわたって十分聞いてまいりたいと思います。  その前に、前から申し入れて、もう準備されてあると思いますけれども厚生大臣に最近起こっておる事象について伺いたいと思います。  それは、東京をはじめとして、名古屋、大阪、その方面に発生し、現在北海道、札幌にまで蔓延しておる幼児自閉症、こういうようなものがあるようでございます。これは、ある日突然に子供がしゃべらなくなってしまって、名を呼ばれても返答もしなくなり、ほとんどのことに無関心を示すようになる、こういう病気だそうであります。そうして自分のからにこもって人間関係をまず断絶してしまうというようなふしぎな子供になってしまうわけです。これは自閉症児と呼ばれておるそうでありますけれども、いままでは精神薄弱と一緒に考えられておったけれども、最近そうではないということになって、これに対し新しい傾向が出されておるようでございます。厚生省のほうでも、中央児童福祉審議会心身障害児部会のほうを通じまして、十分これを検討しその成果をおさめておると聞いたのは二年前であります。現在までその結果的な発表もされないうちに、もうすでに北海道にまで自閉症児のこういうような症状が蔓延しておるという事態に対しては、厚生省のほうとして十分その対策を考えなければならない状態ではないかと思うが、厚生省は、こういうような事態に対してどういうふうにしておったか、こういうような事態はどういうことなのか、ひとつ御発表願いたいと思うのです。
  30. 坊秀男

    坊国務大臣 近ごろ、お話しのごとく、小児自閉症と称する一種病気が起こっておるということは、私も承知いたしております。そこで、これは精神薄弱ということでなしに、一種神経病ということに考えられておりますが、社会がだんだん複雑になってきて、われわれの生活も非常に多岐になっており、父兄も非常に複雑な生活をしなければならないというようなことになってきて、こういったような症状子供が呈することになったものだと思いますが、その自閉症を呈する児童につきましては、現在学問的な定説が確立しておるというところまでまだいっておりませんが、小児精神病院児童相談所等でその治療が試みられておりますが、これと並行して、その対策厚生省といたしましては鋭意検討をいたしておる段階でございます。
  31. 島本虎三

    島本委員 そういうような症状を呈する子供が順次ふえてきておるということは、大体新聞その他でわかり、いまの大臣答弁によって了解できるわけであります。しかし、それに対しても、どれほどの人員がいまいるのか、それに対する一つの特効薬と申しますか、完全な施策があるのか、こういうようなことも問題になろうかと思いますが、その自閉症児の数は幾らぐらいになっておりますか。
  32. 渥美節夫

    渥美政府委員 先生御指摘のような自閉症に関するいろいろな問題が世界各国において取り上げられたというのは、学問の領域におきましてはきわめて新しいことであるといわれております。したがいまして、一九四七年にアメリカなりオーストリアあたりでこういった自閉症に関する報告が出されております。そういうふうな意味で、病気といたしましては非常に新しい範疇に属するわけであります。わが国におきまして、自閉症についての学会に対する報告が行なわれましたのは一九五二年でございますから、十三、四年くらい前で、これも非常に新しいわけでございます。そういうふうな意味で、この自閉症に関する原因の追及でありますとか、あるいは療法の確立とかいう点は、なおまだ未開拓分野に属しております。したがいまして、先生質問のように、自閉症子供が何人おるかという点につきましては、まだ実態調査等もできておりません。ある都会におきまして一部調べてみたという報告がありますが、これにつきましても、ほんとうにそれが自閉症であったのか、あるいは自閉様症状子供であったのかはっきりしておりませんので、数の把握については目下のところ行なわれておりませんし、また、先ほど申し上げましたように、この自閉症に関して取り組んでいらっしゃる医者なり研究者なり、あるいは心理学者等も非常に限られておりますので、なかなか実態把握が困難であるという状態でございます。  さて、第二の御質問自閉症に対する療法はどうかということでございますが、一般精神障害者に行なわれております薬物療法でございますとか、あるいは刺激療法といった療法につきましては、自閉症子供たちに対してはほとんどきかないということが、いま一生懸命研究をされている学者からは報告されておるわけでございます。したがいまして、こういった子供に対する療法は、主として心理療法、たとえば集団療法でありますとか、あるいは遊戯療法でありますとか、こういった心理療法、特に重症の子供に対しましては、一対一の心理療法を行なっているというようなことでございます。したがって、まだ療法につきましても確立されたものはない、そういった程度のやり方が主としていま行なわれているということでございまして、私どもといたしましても、先生お触れになられましたように、中央児童福祉審議会のこういった心身障害児関係部会におきまして、この自閉症子供たちあるいは自閉様症状を呈する子供たちに対する対策検討をお願いをしておりますが、まだ結論は得られないという、いわばいままさに開拓中の分野である。したがって、それに応じまして施策検討していかなくちゃいけない、かように考えております。
  33. 島本虎三

    島本委員 これは、現在の複雑な社会構成からしてみると、それがすべて子供しわ寄せをされた上での現象でございますから、すでに十数年前、二十年前からこれが発生し、この対策には、もうすでに二年前から厚生省としても目をつけておったはずなんであります。しかしながら、いまにしてそういうような状態だとすれば、心細いきわみだと思う。しかし、十八歳未満の精薄児約九十万名の一〇%くらい、約九万名くらいおるというような調査もあるかと思えば、三千名ともまた三万名くらいともいわれておるわけであります。どうしてこれがつかめないのか。こういうようなことは厚生省だけの問題ではない。これは同時に文部省の問題にもなってくるのじゃないのか。もちろん学校にも行けなくなる。学校の義務教育なんかの面に対してはどうなっているのか。こういうふうな面に対しては重大な問題にもなると思うのですが、これは厚生省は文部省その他とも連携をとりながら対策を講じておりますかどうか、この点はひとつはっきりお聞かせを願いたいと思うのです。
  34. 渥美節夫

    渥美政府委員 先ほど申し上げましたように、自閉症及び自閉様の症状を呈する子供たちに対しましては、まことに残念でございますが、現在のところ、ある幾つかの精神病院でございますとか、あるいは民間の精神病院でございますとか、あるいは大学の付属病院でございますとか、あるいは特殊な心理学者、精神神経科の医学者、こういった方々が目下きわめて努力的に研究検討をされておるというふうな状況でございます。もちろんこういった子供たちが相当おるということも事実でございまして、現在のところ、たとえば私どもの所管におきましては、児童相談所の窓口をたたきに来られるわけでございますので、児童相談所におきまして、いろいろと面接しあるいは的確な治療等も行なっているわけでございます。しかしながら、体系的にこういった子供たちに対する対策をどうするかということについては、先ほど申し上げましたように、まだ検討中であるということでございます。もちろんこういった子供たちは、二、三歳あるいはおそくて五、六歳になりますとこういった症状を呈するわけでございまして、非常に重い子供については学校教育が困難でございます。したがいまして、大体学齢期におきましては、地方におきまして、児童相談所なりが地方の教育委員会等と十分連絡いたしまして適切な指導をするということは、私どもといたしましても言ってやっているわけでございます。
  35. 島本虎三

    島本委員 文部省のほうでは、こういうような特殊児童に対して、就学の問題とか教育上のいろいろな困難性の問題等があろうかと思うのですが、いままではどういうような対策を講じておりましたか。
  36. 寒川英希

    ○寒川説明員 自閉症児に対する教育の面におきます取り扱いあるいは教育の方法等につきましては、未解明の問題がなおたくさんございまして困難でございますから、そこで、一般にどうするかというようなことについては、まだ扱いは統一してございません。三重県の津市にございます重度の情緒障害児を収容しておりますあすなろ学園というのがございますが、そこを文部省指定の実験学校にいたしまして、この子供たちの教育の効果的な方法がないか、あるいは内容をどうするかというふうなことについて、研究を開始したわけでございます。それとともに、学齢児童、生徒の中にこういった子供たちが何人いるかといった実態をつかみたいということで、情緒障害児の問題とともに、この自閉症児も含めた実態調査を本年度いたすべく予算措置をし、その調査に取りかかっております。そういった実態を明らかにいたしまして、なお、何としてもその教育の基本となりますのは学問の力による研究の成果であろうと思いますから、そういった研究施設についても調査を進めまして、今後できる限りの努力をし、教育の道が開かれますようにいたしてまいりたいと考えております。
  37. 島本虎三

    島本委員 三重県のその重度の障害児を収容している施設、それは国立ですか。どこの建物ですか。
  38. 寒川英希

    ○寒川説明員 県立であります。
  39. 島本虎三

    島本委員 国立ではどういう建物があるのですか。国立ではこういうような研究機関や施設はないのですか。
  40. 寒川英希

    ○寒川説明員 東大、あるいはお茶の水女子大、あるいは慶応大学等その他の大学において、学者が個々の立場において研究に取り組んでいる状況でございます。
  41. 島本虎三

    島本委員 言っていることにもっと自信を持って言ってもらいたい。どうもそれではだめです。  大臣、ちょっとあなたに一つ聞きたいのです。それは昭和四十二年二月二十六日午後一時、東京都文京区小日向町の社会福祉会館に、自閉症親の会、これで約三百名ほどの都内の関係ある母親が集まって、そしてそこで、学齢期に達してもいわば学校から締め出される子の悩み、それから片時も目を離せないという親の悩み、専門の学校や病院もないという、こういうような実態を涙ながらに訴えていたその場所に、ちょうど常陸宮御夫妻も来ておったそうですが、その前で文部大臣厚生大臣がこれに対してはっきり祝辞を申し上げているのです。それは専門の学校、専門の病院をつくるようにつとめる、こういうように、代理ではございますが、大臣、あなたそこで祝辞を言っているのです。厚生省はこの問題に真剣に取っ組むと言明してから二年もたっているのに何にもやらないで、いま聞いたら県立のところで収容するような施設しかやってない。私はこんなことはあまり言いたくありませんけれども、これはどうですか。そこへ来て、これは常陸宮御夫妻もいるその前で、皆さんはっきり言っているではありませんか。文部大臣厚生大臣、いかに代理だとは言いながら、あなたの責任で言っているのです。それを何もしないで、施設もない。これだったらだめじゃありませんか。どうなんですか。けしからぬじゃありませんか。
  42. 渥美節夫

    渥美政府委員 私、先ほど来、その自閉症の問題に対しましては、未開拓分野があって、いま、きわめて数少ない医者なり、あるいは研究者なり、あるいは心理学者等が、一生懸命努力しているというふうなことを申し上げたのでございますが、現実問題といたしまして、こういった子供たちが相当おることも事実でございます。したがいまして、たとえば児童相談所の窓口におきまして、いろいろと週二回ぐらいの指導を継続的にする。あるいはまた、この自閉症とは異質といいますか、違う立場にありますが、情緒障害児短期治療施設という施設も、児童福祉法における制度として全国に五カ所ばかりありますが、こういった情緒障害児短期治療施設におきましても、数名の自閉症子供たちに対しての収容指導を行なっておりますとか、あるいはまた国立の精神療養所等におきましても、また県立の精神病院等におきましても、また民間のそういった児童の相談機関というのがございますが、そういったところにおきましても、事実問題といたしましては、こういった子供たちに対します通院あるいは入所の指導は行なっておるわけでございます。したがって、私が申し上げたのは、こういった自閉症子供に対しまして、法律制度といたしまして、あるいは行政施策といたしまして、全国統一的にどういうふうに対策を講じていくかという、そういった対策全般につきましては目下検討中である、こういうふうに申し上げたのでございます。  この二月でございましたか、自閉症を持つ親の会の方々からいろいろと御要望がございまして、私どもにおきましても、自閉症子供たちに対する制度的な対策をどうすればいいかということにつきましては、そういう意味で目下検討しておりまして、なるべく早くその学者方の研究成果もお聞きいたしまして、対策を講じなければならないという気持ちであることには全く変わりがないのでございまして、早く学者方の意見を取りまとめまして積極的な前向きの対策を講じたい、かように思っておるわけでございます。
  43. 島本虎三

    島本委員 いませっかくそういうふうにおっしゃっていただいたのですが、きのうもよく厚生省のあなたの部下にこの対策を聞いてみたのです。ところが、これはもう児童福祉法四十三条の四によって情緒障害児短期治療施設としてあるので、いま言っている自閉症の問題としてこれを使用しておりませんという答えであった。あなたの答弁は、これを使用しているという答弁ですね。これはおかしいじゃありませんか。全国に五カ所、長野、大阪、京都、岡山、静岡、こういうようなところであるということもあなたの部下から聞いて知っているのです。私のほうでは、いまこの自閉症児もこの中に入れてやってもらいたいということをあなたに言おうと思ったら、あなた先に言ってしまったから、それでいいのです。これはやってもらいたい。ところが、きのう現在、あなたの部下は入れていませんと言っているんです。考えていませんと言っているんです。けしからぬですよ、これは。あなただめですよ、その場当たりでいいことばかり言っても。
  44. 渥美節夫

    渥美政府委員 先ほど私の答弁の中で申し上げましたように、自閉症と情緒障害児との質的な差があることは、学問的にも言われておるわけでございます。自閉症自体は精神障害の一つの型といわれております。しかしながら、情緒障害児につきましては、むしろそういった精神病のような疾病ではございませんで、家庭での養育関係でありますとかあるいは親子関係のあり方から、感情にむらが多くて社会の適応性に欠けるという子供たちを、私どもは情緒障害児と呼びまして、情緒障害児短期治療施設の中に収容してやっているわけでございます。しかし、この自閉症子供たちの中に、やはりどうしても早く治療しなければならないというような問題もございまして、この情緒障害児短期治療施設の中に自閉症子供も数名入れておるわけでございますが、その数は情緒障害児収容施設の定数二百五十名の中でほんの数名であるというようなことになっております。それは先ほど御説明申し上げましたように、情緒障害児に対しまする指導内容と自閉症に対する治療内容とが相当変わっておりまして、むしろ自閉症子供に対しましては、特に重症な方に対しては一対一の看護をしなくてはならない。これに対しまして情緒障害児の場合は、カウンセラー、セラピストが十人に一人という程度でこの治療指導に当たっているわけでございまして、したがって指導内容が違いますので、情緒障害児短期治療施設におきまして自閉症子供をなおすというようなことにはまだ相当困難がございまして、むしろ自閉症子供に対しましては、独特の施設なり独特の病院等を用意するというほうが、子供のためにはしあわせであろう、こういうのが学者方のいままでの考え方の一端であろう、かように考えております。
  45. 島本虎三

    島本委員 したがって私のほうでは、いまあなたおっしゃったような、パーセンテージは低いけれども、精薄児として来た者の中にそれほどおったということで、こういうような人たちは、さがしたならば全国でこれまたどれほどいるかまだわからない、数もつかめないという段階で、ほんの何人かいたこれだけの対策も不十分である。これで宮さまのいる前で、文部大臣はじめ厚生大臣は、ちゃんと施設をやって万全を期する、努力いたしますと言っているが、二年この方何もやらないでいた、こういうような実態が明らかになったわけです。これではやはりいけません。文部省のほうも、いま学童で義務教育を受けに行くこともできない子供をそのままに放置しておくなんてことは不見識ですよ。もっともっと研究して、こういう人がないようにしなければならないはずなんです。私どものほうでは、こういうような点からして大臣に特に期待しておきます。あなた、祝辞の中で言ったそのことを明確に実現してもらいたい。それから文部省のほうには、これもそのとき学校のほうではちゃんと施設を講じますと言っていますから、このとおりに完全に講ずるようにしてもらいたい、こう思うのです。これではやはりいけませんから、大臣、この点ははっきりしてもらいたいのですが、どうですか。
  46. 坊秀男

    坊国務大臣 新しく出てまいりましたこういうふしあわせな病気に対しましては、おっしゃられるとおりでございまして、これに対する対策というものは早急に考えてまいらなければならない、研究検討を鋭意急いでまいりたいと思います。
  47. 島本虎三

    島本委員 それでは、これはすぐやるということに了解して次に進めていきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  48. 坊秀男

    坊国務大臣 予算の関係等もございまするので、予算、財政等とも勘案いたしまして、できるだけのことをしたいと思います。
  49. 島本虎三

    島本委員 とりあえずやるのは、児童福祉法四十三条の四によるこの施設等にも、拡大してまずやる。いますぐでもできますから、これはすぐやらせるように配慮する。それともう一つは、児の就学については文部省と十分検討して万全を期する。教育施設はもちろん完備しなければならないことは申すまでもありません。完全受療体制の確立、これあたりはやはり皆さんもはっきり考えておかなければならないけれども、行政的な配慮、学問的な研究も十分する。この四つの問題を含めて今後万全を期さなければならないはずのものです。研究中であるとするならば、いつの日にかこれができるかわかり寸せんので、いまもう現実の問題としてこれは発生しているのですから、北はもう北海道まで蔓延しているのですから、こういうような問題は手をこまねいて漫然としているわけにいかない問題です。ですから、いま言った四つの問題について、これは予算を早く獲得して早急に実施すべきである、こういうように思うのですが、厚生大臣はじめ文部省のこれに対する意見をはっきり言っておいてもらいたい。これでいいというならばやめますけれども、だめならもう少しやります。
  50. 寒川英希

    ○寒川説明員 自閉症子供は、現在、小学校あるいは中学校に就学可能の者は就学しておるわけでございます。現に担当教師が、いろいろ困難ではありますが、そういった中において何とか教育の効果をあげたいということで、努力しておりますのが現状でございます。問題は、この子供たちに対する効果的な方法を研究し、できる限り手厚い教育の措置を講じたい、そういう方向に進めたいということについては、なおいろいろ努力を重ねなければいけないというふうに考えておる次第でございます。
  51. 坊秀男

    坊国務大臣 先ほどお答え申し上げましたが……(島本委員「常陸宮の前であなたはっきり言ったのだよ」と呼ぶ)私も申し上げましたが、この問題につきましては、重大なる問題と私も考えますので、いずれにいたしましても、財政予算等の伴う問題でございますので、そういった問題と勘案して前向きに私は考えたい、かように思っております。
  52. 島本虎三

    島本委員 それでは、前向きにやるということは、いま言った四条件を検討して早く予算措置を講ずることであるというふうに読みかえておきたいと思いますが、これでいいですね。その時期は来年度である……。
  53. 坊秀男

    坊国務大臣 予算の問題でございますので、予算編成という一つの問題がございますから、私は努力はいたします。予算編成に努力をいたします。こういうことでございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 文部大臣にもこういうことを言って——言ってといっては失礼ですが、閣議あたりでも、こういうように問題がきわめて重大な問題であるから、今後も善処するようにと、あなたからこの点ははっきり確約しておいていただきたいと思いますが、来ているのはその方面の課長でございますから、閣僚としてあなたこの点は十分万全を期してもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  55. 坊秀男

    坊国務大臣 予算の問題は、予算編成方針というものをつくりますから、その編成方針作成に際しまして私は発言をいたします。
  56. 島本虎三

    島本委員 それでは、この問題は、次の機会にその成果を見るまでは私は手をゆるめませんから、早く成果を見せるようにしてやってもらいたいと思います。  自閉症の問題はこの程度にして、今度は次に移らしていただきたいと思います。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の内容でございますけれども、このいろいろな援護の拡充の中に、項症、款症、目症といろいろあるのですが、これは会計用語の款項目と似ているのですが、これを款症、項症、目症、こういうようにしたのはどこにめどがあるのですか。
  57. 実本博次

    ○実本政府委員 いまお話しの障害につきましては、障害の重い軽いの度合いをきめます大きな目標といたしまして、現在恩給法の別表では項症と款症と目症、この三つに分けて規定いたしております。障害の重さによりますこういう部類分けというものは、やはり恩給法が一番古うございまして、その点恩給局からも御説明があるとは思いますが、これは時代の変遷とともに若干ずれておりますが、大観して大ざっぱにその特色を申し上げますと、項症と申しますのは、比較的障害程度の重いグループを一つのワクとして規定してございます。その次の程度の部類に属するものが款症、それから一番軽いグループに属しますものが目症というふうに、重いものから順番に項症、款症、目症、こういうふうに分かれておるわけでございます。  その目症と款症、項症というふうなものは、おおよそどういったところで区切りをつけているか、これが非常に専門的なこまかい部類にわたりますと、必ずしも一般的に当てはめることは非常にむずかしくて、例外があるわけでございますが、非常に大ざっぱに考えますと、労働能力の喪失度合いが約五〇%までのものを大体項症というふうにきめておるようでございます。それから款症はそれ以下約二〇%のところまでの労働能力喪失、それ以下が目症といったような、非常に大ざっぱな分け方でそういうふうな分け方をしております。  そういった分け方に対しまして、現実に、恩給法におきましても、あるいは援護法におきましても、その傷病の重さの度合いによりまして給付する年金額を違えておりまして、そのほかにこの重いものにつきましては、その人御本人ではなくて、扶養する家族がある場合に、扶養加給というものをつけることになっております。それで、やはり重い程度の人で一番上位に属します項症の方には扶養加給というものがついておるわけでございます。  それから大体年金を差し上げる人の部類としては、項症の方に増加恩給を差し上げる。それから款症の方には年金を差し上げる。増加恩給を差し上げる項症の方には普通恩給が併給される。普通恩給をもらいながら傷の部類に属する年金ももらえる。それから款症の方は傷病年金、傷病に見合う年金だけが出る。それから目症は一時金。こういうふうな分け方になっておるのでございます。
  58. 島本虎三

    島本委員 恩給に右へならえしてこういうような一つの呼び名があらわれたというのはわかりました。款、項、目あったら、節症というものはないのですか。
  59. 実本博次

    ○実本政府委員 大体目症までいきますと、ほとんど軽微でございまして、その下を設けることは、ほとんど常人と変わらない程度までいきますものですから、目症でとどまっておるわけでございます。
  60. 島本虎三

    島本委員 よくわかりました。それで、一時金をもらった人でも、款症程度の人には選択権があって、年金に移行できるようないい制度のようでございます。そうすると、恩給の面の特例を援護法にも適用した、こういうふうになろうかと思います。他の公的年金等においても、大臣、こういうような制度がございますか。
  61. 坊秀男

    坊国務大臣 恩給法にはいま申しましたとおりある。それが援護法にもあるということでございますが、公的年金の制度には、その款、項、目といったようなことはございません。
  62. 実本博次

    ○実本政府委員 補足して説明いたしますと、大臣が最後におっしゃいましたのは、他の制度にはそういう選択の制度がない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  63. 島本虎三

    島本委員 これはあとでちょっと言いますが、他のほうにないということになりますと、社会保障的な意味を含むということになりますと、あってしかるべきで、ないのはちょっと困るのじゃないか、こういうふうに思います。  もう一つ次に進めていって、この軍人軍属及び準軍属の障害年金及び障害一時金の問題ですけれども、この加給金の問題、症状の重い人には看護手当も考えられておる。これは軍人軍属で四万三千円、準軍属の場合は三万百円、こういうように今度改正しようとしておるわけですね。病気をなおすためにも、軍人軍属と一般の人の病気が違うという考えなんですか。軍人軍属がよけいで準軍属のほうは手当が少ないという意味は、病気のなおし方まで差をつけるのですか。ちょっと聞かせてもらいたい。
  64. 実本博次

    ○実本政府委員 これは先生御承知のように、むしろ病気治療そのものではございませんで、いわばそういう障害を持っている方の手足まといになると思われる扶養者一人について幾ら、あるいはそういう扶養加給のほかに、先生のいまお話しのような傷の重い方、第二項症までの方については、介護加給と申しますか、お世話をする人のための加給でございまして、病気そのものをなおすためにという給付でないわけでございます。軍人軍属と準軍属とはもともと身分が——軍人軍属は、国がいわば自分の使用人として、公務員として使ったわけでございます。準軍属といいますのは、国との身分関係はございません。たとえば動員学徒とか、あるいは総動員法による徴用工とかいったように、それは国ではなくして普通の企業でございますが、ある職場に強制配置したという、つまり権力関係をもってある企業との雇用関係を強制した、そういう部類の人でして、直接国との身分関係はございませんですから、補償をする場合に、国自身が使いました軍人軍属というものに対して出しますものに対して、直接国との身分関係はないが、ある一定の権力関係を用いてそういう職場につけたという方々に対しましては、それの七割というものを見込みまして処遇をしておる、こういう関係がございますから、それに伴いますいろいろな加給の額にまで七割というふうなものがついておる、こういうことでございます。
  65. 島本虎三

    島本委員 それは了解しているのです。ただ、重症の人でいままでに相当年月を経ている。これから改善するのは、それでもなおらない人に対する措置なんです。それだから、準軍属であろうと、軍人軍属であろうと、それまで相当長く苦しんでいたならば、それに対する手当なんかは差をつけてやるべきではない。むしろ下のほうが困っているのですから、準軍属なんかは、軍人以上にとは申し上げませんが、対等にしてやらなければならぬのです。そういうふうにしてやるのがほんとうじゃないですか。病気になってまで治療に階級差をつけられるのはどうも私はわからぬ。よく納得できるように簡単に説明してください。
  66. 実本博次

    ○実本政府委員 先生のおっしゃいます。軍人軍属あるいは準軍属の方で公務によりますための傷病を治療するという場合の経費といたしましては、これは戦傷病者特別援護法という別の法律がございまして、軍人の場合も軍属の場合も、あるいは先生のお説のような準軍属の方々に対しましても、その公務傷病の治療というものは全部同じ額で見てまいっておる。ただ、そういう傷病をなおすというのでございませんで、傷病が固定してしまいまして、たとえば、第三款症でありますといったような人に対する年金、あるいはそれに類するものを給付するという際には、先ほど申し上げましたように、もともと身分関係がある人と、身分関係はないが一定の権力による強制関係を持っていた、こういう人たちとの間には、十対七といったような差をつけて処遇をいたしておるわけでございまして、病気をなおす場合には、お説のように、あくまで一緒にしてまいるわけでございます。  なお、先生の御趣旨の線でお答え申し上げたいことは、援護法におきましては、階級差は、いま申し上げましたように、身分関係に基づきます公務員であったかどうかという差はございますが、大尉であったとか、大佐であったとか、下士官であったとかということでなく、傷病の場合は、障害の程度が重いか低いかによってその年金支給額をきめるのでございまして、身分が大将の人の第一項症と兵の人の第一項症に対して差別をしておるわけではございません。それから、扶助料に当たります遺族年金につきましても、単一給付でございまして、兵も何も全部一緒で年額幾らというふうに出しておるわけでございます。
  67. 島本虎三

    島本委員 この要綱の第三に、「軍人軍属が日華事変中いわゆるみなし公務傷病により不具廃疾となり又は死亡」云々というのがございます。そうすると、これは日華事変中のものがいままで十分の六で、大東亜戦争のものは今度は十分の十全額支給にするということですか。これは事変によっていろいろ支給額が違うのですか。何で違うのですか。
  68. 実本博次

    ○実本政府委員 全くの公務に基づく傷病であります場合は、これは全部大東亜戦争も支那事変も関係ございませんし、したがって給付の額に十対六といったような差をつけてございませんが、ここで今回改正しようといたしております御指摘のケースといたしましては、公務ではないけれども、しかし全く自分の重大な過失あるいは故意であったというふうなことがはっきりしない限りは、全部公務傷病と見よう、そういういわゆるみなし公務というものについては、これは支那事変中と、それから大東亜戦争となったときとは、戦争の激しさも違いますから、特に支那事変中の場合は、どちらかといいますとまだ余裕がございまして、傷病にかりになった場合にすぐ内地へ後送して厚い手当てが加えられましたが、もう大東亜戦争が末期になってまいりますと、そういったことができないような態勢になっていたというようなこともございまして、従来、大東亜戦争の場合の十に対して、支那事変の間のみなし公務であったら六割という差がついてございましたが、それは、この当委員会でも前々から先生のような御意見がございまして、四十六国会では本委員会で附帯決議がつきましたし、今回それにかんがみまして、お説のように全部十割にする。こういうふうに改めさしていただくわけであります。
  69. 島本虎三

    島本委員 そういうふうにやったということはいいことです。ただ、こういうふうに差をつけた考え方がおかしいということなんです。結果がいいですからこれでやめますけれども、どうもこの考え方はあなたと合わないのです。ぴんとしない。  それと、第四の祖父母の場合の遺族年金及び遺族給与金の支給条件のうちで、当該祖父母等を扶養する直系血族がないことという条件を撤廃する、これはあたりまえだと思っておりますが、まだあった。こういうようなことで、まことになんですけれども、これはどれほどの人員がこれに適用されますか。
  70. 実本博次

    ○実本政府委員 約五千のケースが見込まれております。
  71. 島本虎三

    島本委員 五千の人たちはいままで適用をまず受けなかった。そして今度から受けるようになる。そうすると、いままで受けなかったということに対しては、これは当然すべきであったのに受けていなかったということで、何かまた考えるところがありますか。
  72. 実本博次

    ○実本政府委員 これは法律が改正されました時点から適用さしていただく。従来、こういった改正を行ないます場合にも、原則としてそういうふうにやっておりますので、いままで非常に歯を食いしばっておられた方に対する敬意は表しますが、現実の措置といたしましては、改正されました以降そうして差し上げるということにいたしております。
  73. 島本虎三

    島本委員 これは未帰還者留守家族援護法による援護の改善も考えられているようですが、現在までの未帰還者はどれほどおるのですか。
  74. 実本博次

    ○実本政府委員 昭和四十二年、本年の五月一日現在の海外未帰還者の数でございますが、全部で四千八百七十五名となっております。
  75. 島本虎三

    島本委員 ちょっと私のデータと違うのでございまするけれども。いまの厚生省の発表では四十二年五月一日現在で四千八百七十五名という。それより前の昭和四十二年二月一日現在の調査によると四千九百六十五名。前のほうがよけいで、あとのほうが少ない。それが厚生省のほうが少なくて国会のほうの調査によるとよけいになっておるのですが、これはどちらのほうが正しゅうございますか。
  76. 実本博次

    ○実本政府委員 これは、ある一定の時点でとりました数字が減っておるというのは、それだけ未帰還者が帰ってきた、あるいはもう帰る意思がなくなったとかいうことが調査究明の結果わかりますから、数字が増減いたすわけであります。大体の方向といたしましては、毎年少しずつ、そういうような調査究明の結果、どちらかに決着がついて減っていくという方向にあるわけでございます。
  77. 島本虎三

    島本委員 減っていくというのはわかるのです。それであたりまえです。ところがいま言ったのは減っていないのです。おかしいのです。ただ、私のほうの調査によると、これは衆議院調査室の調査によっておるのですが、念のために、これは未帰還の各地区別のやつをひとつ出してもらいたい。
  78. 実本博次

    ○実本政府委員 やはり五月一日現在で地域別の夫帰還者の数を申し上げますと、ソ連地域が四百四十六名でございます。中共地域が三千九百二十五名、北鮮地域が百四十一名、南方その他の地域におきまして三百六十三名、合計四千八百七十五名、こういうふうになっております。
  79. 島本虎三

    島本委員 これは、やはりそういうふうに減っているということですけれども調査室の調査によると、もっと数がふえてますね。これは両方とも権威ある調査なんです。両方とも権威ある調査なんですけれども、こういうようになってくると、少し私どもとしては信憑性の点について疑わざるを得ないわけです。年代が古くて減っておるのです。それと調査室のほうは新しくてふえておるのです。どうもこの点では私合点しかねるんですがね。
  80. 実本博次

    ○実本政府委員 先ほど、原則として日がたつに従いまして減る、こう申し上げましたが……。先生のいまの三月の日をちょっとおっしゃっていただけませんか。
  81. 島本虎三

    島本委員 昭和四十二年二月一日。
  82. 実本博次

    ○実本政府委員 いま先生のおっしゃいました数字は、四千九百六十五、四十二年二月一日現在でございますね。われわれのほうでいま申し上げました五月一日の数字が四千八百七十五ということで、約九十名ばかり減っておりますので、先ほど申し上げましたように、調査究明の結果どちらかに処分をしていっておるということでございます。
  83. 島本虎三

    島本委員 私、聞きたいのは、こういう差ができたのは、ほんとうに帰ってきた具体的な事象によって削ったのか。それとも、何かいろいろな調査によって打ち切りにして、これはもう死んだことにして削ってしまったのか。こういうような点に対して、あまり具体的でないと困るから明らかにしてもらいたいために聞いたのです。この点ではっきり書いておるのですが、死んだのですか、抹消したのですか、どちらですか。
  84. 実本博次

    ○実本政府委員 これはごもっともなお話でございまして、未帰還者の方の御遺族のことを思いますと、一人の数字でも最後まで突き詰めて掲げるべき性質のものでございます。したがいまして、われわれのほうでは、そういった戦時死亡宣告をして処置した人とか、あるいはもう帰らないという意思がはっきりキャッチできたといったようなケースについての数字を、全部ここに掲げておるわけでございます。
  85. 川野芳滿

    川野委員長 午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後一時十七分開議
  86. 川野芳滿

    川野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。島本虎三君。
  87. 島本虎三

    島本委員 厚生大臣にまず伺いたいと思います。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の中の援護法の適用の問題なんですが、これは戦後処理か生活保障かというような議論はずいぶんなされております。しかし、まだそれははっきりしておらないわけでございますけれども、この旧軍人の遺家族の数等においては、それぞれはっきりした開陳がなかったように思うのです。旧軍人遺家族は合計幾らになっているのですか。
  88. 実本博次

    ○実本政府委員 恩給局が来ておりますので、まず数の関係は恩給局からやっていただきまして、援護法の関係で……。   〔河野(正)委員「議事進行。数が足りない。」と呼ぶ〕
  89. 川野芳滿

    川野委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  90. 川野芳滿

    川野委員長 速記を始めて。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  91. 島本虎三

    島本委員大臣 にちょっとお伺いしたいと思いますが、これは戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、現在審議中なんですが、この審議にかかっている援護法の問題で、この適用についてちょっと伺いたいわけです。その前に旧軍人の遺家族の数が現在何名ありますか。前からの質問に対して、まだこの問題だけは明確な答弁がないように思います。この旧軍人の遺家族数は現在どれほどなのか、これを御答弁願いたいと思います。
  92. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 旧軍人の遺家族につきましての給付は、おおむね恩給局でやっておりますので、恩給の裁定を受けました方の数を申し上げますと、遺家族の方に支給されておりまする恩給は、いわゆる公務扶助料、特例扶助料という、この二つございます。公務扶助料と申しますのは、いわゆる戦死とか本来公務によって死亡されました方の遺族に支給されるものでございます。これらの方々が百十四万四千名いらっしゃいます。それから特例扶助料、これは大東亜戦争中におきまして、内地発病されまして死亡された方で、この方の遺族に支給されておりますが、これらの方々が二万八千名いらっしゃいます。合計いたしまして百十七万二千名ということになります。ただしこれは恩給を受けておられる方だけでございます。
  93. 島本虎三

    島本委員 七十歳以上にわたるような老齢な人、こういうような遺家族の人は、そのうちのどれほどの数になりますか。
  94. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 ただいま調べてすぐ御返事申し上げます。
  95. 島本虎三

    島本委員 これは厚生省のほうの問題になろうかと思いますが、これら旧軍人の遺家族並びに老齢にわたるような人たち、こういうような人たちは、当然厚生省のほうの福祉年金、こういうようなものの併給を受けておられるのじゃないかと思います。福祉年金との併給は現在はどういうふうなたてまえになっておりますか。
  96. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 七十歳以上の老齢の方々に支給されております公務扶助料の件数でございますが、六十一万四千名の方々がございます。
  97. 網野智

    ○網野政府委員 福祉年金との併給の問題につきましては、公務扶助料等戦争公務によります関係につきましては、現在併給限度額が十万二千五百円ということになっております。
  98. 島本虎三

    島本委員 そうすると、戦争公務によるものは、今度の改正では十二万九千五百円、こういうことになるわけですね。そういうふうになると、やはり一応は併給というようなものも認められるたてまえであるようであります。私もそういう点について、徐々に社会保障の線を拡大していって、こういうような恵まれない立場にある人たちを手厚くめんどうを見ていくというこのやり方は賛成なのです。賛成の立場からして、私のほうで明確にこの点だけはお伺いしておきたいのは、現在のような状態で、この恩給やまたは公的年金、そういうような中にいろいろとアンバランスがあるようであります。このアンバランスの問題等については、これからの大きい宿題になるのではないか、こういうように思っております。この問題等につきましては、いろいろと前から私は答弁を承っているのです。しかし、承っていますけれども、あらたまって聞くのもどうかと思いますが、坊厚生大臣、今後社会保障的な立場から、こういうような恩給やまたは公的年金その他社会保険という、保障的なこういうような制度は総合的に考える意思がおありですか。
  99. 坊秀男

    坊国務大臣 恩給や援護法に基づくいろいろな措置、これと公的年金及び社会保険というものとは、この間もお答え申し上げましたが、その考えるベースに違いがある。そこで両者を考えて比較するということは、これはちょっと直接には比較はできないものである。ただ、恩給や援護法に基づく諸制度相互の中におけるいろいろなこと、また公的年金あるいは社会保険、そういったものの中におけるアンバランスといったようなものは、今後大いに考えていかなければならないものでございますけれども、いまおっしゃったような範疇に分けてこれを比較していくということは、少しこれは趣が違うんじゃないか、かように考えております。
  100. 島本虎三

    島本委員 いま答弁がありましたけれども、昭和四十二年五月二十二日の社会保障制度審議会、この総会での勧告があった。その中で厚生大臣には四つの点でいろいろと勧告があったかのように思います。一つは、公的年金は根底に社会保障的意味を持つものであるから、物価その他生活水準の向上、経済の成長、こういうような状態の中で、その調整は十分考えろというような点です。それとスライド制の確立が必要だとして、こういうような点が一つ要望されておったはずだと思います。それから、公的年金の種類、こういうようなのも所管が十以上の省庁に分かれているから、こういうような調整等についても、混乱をもたらさないように十分横の連絡をとって行ないなさい、こういうのが第二番目にあったようです。第三番目にも、やはりその財源の負担区分、こういうようなものについても、通算関係についての要望があったはずです。それと、人口が老齢化するから今度総合調整が必要である。そういうような立場からして、諸原則確立も必要であるから、もし一方的に恩給なら恩給、公的なこういう年金のみが独走することがあってはいけない、これは十分考えなさい、健康保険の二の舞いを繰り返すな、こういうようなことをいわれていると思うのです。これに対して大臣はどのように対処するつもりですか、この見解を伺ってすぐ次に移ります。
  101. 坊秀男

    坊国務大臣 社会保障制度審議会から答申を、これは政府がいただいたわけですが、その中にはいま島本委員がおあげになりましたような事項のあることは、私もよく承知をいたしております。だから公的年金あるいは社会保険といったようなものにつきましては、これは今後いろいろ抜本的な考え方もありますし、それからスライドというようなことにつきましては、これは賃金だ、あるいは物価だ、いろいろファクターがあろうと思うのです。そういったようなことともにらみ合わせなければならないというようなことで、今後の検討問題になってまいろうと思います。だから医療保険につきましては、申すまでもなく、しばしば申し上げておりますとおり、早急に抜本対策をやっていこう、それから年金の問題につきましては、厚生年金は、御承知のとおりこれを改定していこうという時期がすでに目睫に近づいておりますが、そういったような機会に、ひとつほかのものについても考えていこう、こういうふうに考えております。
  102. 島本虎三

    島本委員 次は恩給局関係考え方を聞いておきたいのです。  これは、やはり社会保障制度審議会で本、いま厚生大臣が御答弁になったような考え方を示しているわけです。恩給も、国家補償とするこれまでの考え方を廃して、今後は社会保障の体系の中で考えるべきではないかというのが、社会保障制度審議会の考え方の基本になっております。そして、それと同時に、恩給も年金の一種として扱って、その共通の部門に対しては、それはもう同じルールのもとに、平等に改正したらどうだ、たとえば物価上昇スライド分等に対しては、これは同じに見てやってもいいのじゃないか、こういうような点が第二番目であります。それから、恩給の特殊性はあるから、その分のプラスアルファは改正の際当然認めるべきである。それから第四点としては、今後恩給のみの独走は他の面にアンバランスをもたらすようなことになるから、との点は十分考えなければならないという社会保障制度審議会の考え方が示されているわけです。この四点について、皆さん方のほうではどう考えておりますか。
  103. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 恩給も広い意味の公的年金制度の一つということになっておるわけでございますが、ただ、各公的年金制度におきまして、その支給する目的とか、あるいは支給金額を計算する方法とか、あるいは資格要件、そういうものが一律になっておらないわけでございまして、これは各制度それぞれの目的があるわけでございますから、当然なことであると考えておるわけでございます。それで、恩給は社会保障制度の一つではないかという御意見は確かにあるわけでございますが、恩給は、御承知のように、公務員が長年勤務しまして、在職中に失いました所得能力、稼働能力と申しますか、こういうものを、退職後国が使用者の立場から補てんする、補ってやる、こういう趣旨で戦前から戦後ずっと通じて一貫してまいっておるわけでございます。したがいまして、  一般社会保障制度のごとく——社会保険と申しますと、労使負担で保険数理的な基礎に立って計算して支給する、あるいはそれ以外の社会保障のように、一般の国民を対象として国が支給する、こういう制度とは一線を画している、こういうぐあいに私どもは理解しているわけでございます。しかしながら、同じ国家公務員で、今度は共済組合制度ということになっておるわけでございますが、制度の組み立てそのものは違いますが、しかし、すでに退職しておる方の年金と、それから今後退職していく方の年金、こういう方の年金相互にはやはりつながりがある、こういうぐあいに脅えておりますので、その調整をどうするかということは問題であろうかと思います。幸い恩給審議会というものが現在ございますので、調整規定といった点にからみ合わせまして検討するということになっております。
  104. 島本虎三

    島本委員 そういうようにして、その制度審議会の意のあるところは十分くみ取って、特殊性は生かしてもいいけれども、アンバランス並びに弊害を来たさないように今度その改正等を進めていくというような考え方はいいと思うのです。  それと同時に、今度は、あとでまたその不合理はついてみたいと思うのですが、いま年金関係の中で戦傷病者会館というようなのが現在あるということを聞いているのですが、どこにその建物はあるのですか。
  105. 実本博次

    ○実本政府委員 戦傷病者会館と申しますのは、昭和四十年に二億円の国庫補助を出しまして、戦傷病者を中心といたしました身体障害者のための収容授産施設を母体としまして、その他補装具の製作研究とか、あるいは更生医療に関します集団指導などで、そういう身体障害者の生活指導を行なっていくということを目的にいたしまして、会館を運営するための社会福祉法人を設置いたしまして、去る三月に市谷に竣工いたしました建物の中で、いま申し上げましたような福祉事業を営めるように、目下その業務開始の準備をいたしておるところでございます。
  106. 島本虎三

    島本委員 そういうような施設、並びにいろいろと援護のための手段を拡大し、あたたかく手を差しのべるのはいいと思う。その中で、三月の二十八日に落成して、何で業務開始がいままでできないのか、この理由を明確にしておいてもらいたいと思うのです。
  107. 実本博次

    ○実本政府委員 建物が竣工いたしましたのが三月二十八日でございました。この建物を土台といたしまして、先ほど申し上げましたように、重度の身体障害者を中心としました収容授産施設を、百人の方々を収容して行なうということを目的といたしておりますので、そのために、身体障害者福祉法上のいろいろなそういう福祉事業なり福祉施設を開設する上についての条件を整えなければならないわけでございまして、しかるべき条件を整えて、身体障害者福祉法の中で規定されております許可をもらいまして、そしてそういう事業を開設する、こういう運びになりますので、三月二十八日は建物そのものが一応完成したわけでございますが、それを実際に身体障害者福祉施設として運営するための諸手続というものに時間がかかっておるわけでございます。
  108. 島本虎三

    島本委員 中に高度の機械を入れたり、それだけではなしに、他の方面とのいろいろな関連を持つような施設である、こういうようなことであるから、まだ他のほうが不十分であるから運用開始はできない、こういうことならわかるのです。そこだけで単独にやる仕事である、いわば収容授産施設、こういうようなのを収容するのですから、そこだけでやれるはずのものが、おそらくは建物ができてから現在三カ月もたっていても、まだこの使用が始まっておらない。こういうようなことになった場合、これは何が原因でその開始ができないのか、認可がなぜこないのか、こういうようなことについては、やはりこういうような法律案が提案されている現在、明確にしておかないと誤解を生むおそれがあるのです。これはもう認可も許可もないのに建物だけできてしまって、それも音度な施設ならいざ知らず、そこだけでできるような施設であるのにかかわらず、これがまだ認可がこないというのは、ちょっとわれわれ考えられないのです。どうも考えられないのです。それは、建物が三月二十八日にできても、三カ月なり四カ月なりの中の施設がかかるものであるほど高度の施設なのですか。その建物並びに使用の認可はどうなっているのですか。
  109. 実本博次

    ○実本政府委員 先ほど御説明申し上げますのに、ちょっと若干誤解を招くようなことを申し上げましたが、との施設を運営するためには、社会福祉法人が運営に当たるということが問題でございまして、その社会福祉法人の設立認可は出ておるわけでございます。その社会福祉法人が、今度は身体障害者の収容授産施設を現実に運営するためには、そういった対象に当たる人を現実にそこへ収容委託をしてもらわなければならないわけです。これは現実には各県の都道府県知事が収容委託をすることになるわけでございますが、そういった収容委託を受けますまでに、施設といたしましては、収容いたしまして、そして授産をやるわけでございますから、たとえばいろいろな印刷業をやらせるとか、あるいはその他身体障害者の授産に必要な科目の選定をやる、そうして、それに必要な材料とかあるいは指導員、訓練をする人たちをそろえる、そういうようなことがすべて取り進みまして、それから収容が開始される。そういうことになりますので、そういう収容が開始される準備の段階で、もうすぐそういった準備ができ上がると思いますが、いま鋭意準備をしておるところでございます。
  110. 島本虎三

    島本委員 どうもこの問題等については調べようもありませんから、私はこの程度にしておいて、あとは調べてもう一回聞きます。それまでの間に、この運営の構成、理事長はだれなのか、このメンバーはだれがやっているのか、こういうようなことももうわかっているだろうと思いますが、一応調べておいてほしい。それと同時に、この業務内容、宿泊、貸しホール並びに授産施設、こういうような点等もいろいろとあるかのようにも承っております。どの点が許可になっておらないのか、こういうような点等については、いまこの法律案のほうでは急いでやろうとしておるのに、その事業としてこういうようなのがマンマンデーに行なわれている、こういうようなことじゃどうも合わないのです。三月の二十八日にできたならば、せめて四月ごろから業務開始をしているならば——急いで建ててやる、また二億の国庫補助でこれはつくってやったということになって、りっぱなものですが、できてから三カ月もたってもまだ十分その手続も行なわれておらない、こういうようなことになりますと、急いで建ててやって国庫補助までいただいておきながら、こういうような点等においてなぜできないのだろうかということは当然考えられます。私はこの点についてはまだ保留しておいて、もう一回あとから質問申し上げますから、調べておいてほしいと思います。  それと、前にも戦傷病者の相談員の件がありました。戦傷病者の相談員の件は、これは今後拡大していきたいという意向があったようですが、どの辺まで拡大してお考えですか。
  111. 実本博次

    ○実本政府委員 戦傷病者の相談員が現在各都道府県を通じまして四百七十人設置されておりますが、少なくとも最終目標といたしましては各福祉事務所に一人、したがいまして、いま全国に福祉事務所が約千百ばかりだと思いますが、その福祉事務所に少なくとも一人は行き渡るように増員していきたい、とりあえず四十二年度におきましては四百七十人の半数の二百三十五名を増員してまいりたい、こういうふうに考えております。
  112. 島本虎三

    島本委員 そうしてこの仕事の範囲を拡大していきたい、こういうふうな答弁にも承っておったのです。というのは、現在の戦傷病者の相談員という範囲は限定してあります。これは要するに、前の山本委員のほうからの質問で、範囲を拡大してもいいという大臣答弁があったように思っておる。私どものほうではこれは一つの例で申し上げて質問の速度を早めたいと思うのです。戦争中だんなさんが行ってしまって、子供が腹の中におった。しかし行ってしまったあと戦死した。子供は生まれたけれども、そのまま自分の弟に届けておいた。しかしながら、それは弟であるがために、そういうような事態に対しての補償は全然受けられないままに現在までおった、こういうのはいわば戦傷病者特別援護法八条の二第三項によって、個人の人格を尊重し身上にかかわる秘密を守らなければならないという、この相談員のやり方に全く該当するような事例なんです。こういうような相談が、もし特別の人が行ってやるのでなければ、日の目を見ないじゃありませんか。こういうのは、いまのところはどういうふうにして救済していたのでしょうか。相談員はその辺まで拡大してやっていって、当然戦傷病者の相談相手のみでなく発掘まで、相談してやるべきじゃないかと思っておるのです。これはどういうふうにお考えでしょうか。
  113. 実本博次

    ○実本政府委員 戦傷病者相談員の活動範囲を、身体障害者である戦傷病者だけに限らずに一般の遺家族の方々にまで範囲を拡大したらどうかという御意見でございますが、いまのところ、戦傷病者相談員は、先ほど申し上げましたように、福祉事務所一カ所につきまして一人は置いていきたい、そう考えておりますので、そこに到達するまでの間は、なるべく戦傷病者の相談活動に重点を置いていきたい、ただ、その過程におきまして、戦傷病者の当該取り扱っているケースに密着してそういったほかのケースがおそらく二、三出てくるというようなこともございますので、そういう意味では、必ずしもそういうものを頭からはねのけてかかるというのではなしに、むしろ同じようなケースとして、同じような態度で処理していくというふうな指導はしてまいりたいと思います。なお、戦傷病者相談員が十分われわれが思っている程度に動員されるというふうなことが実現しました際に、どうしてもやはり一般の戦傷病者の遺家族についてそういった専門の相談員というものが必要であるということであれば、またそれはそれで別途考てもいいんじゃないかということを、たしかこの前大臣答弁されたと思いますが、いまの段階におきましては、まず戦傷病者の相談活動を中心にしてやっていきたい。いま先生のお話のようなケースは、一般的には、福祉事務所なり心配事相談所を中心とします民生委員その他の人たちに相談にまいる、あるいは社協活動の中で発見をしていくといったような、一般社会福祉ケースワーカーの分野で処理していってもらっているわけでございますが、行く行くそういった遺家族専門にケースワーカーが必要であるというふうなことが出てまいりますれば、またそれはそれで検討していきたい、かように考えております。
  114. 島本虎三

    島本委員 質問はまだまだずっとあります。あと社会保障との関連並びにこの調整等の問題について、各局長並びに大臣とゆっくり私も質疑応答をしたいと思っておりますが、いま淡谷委員のほうから緊急に質問があるようでございますので、私のほうはこれで若干質問を待つことにしますから、これをよろしくお願いしておきたいと思います。
  115. 川野芳滿

    川野委員長 淡谷悠藏君。
  116. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 たいへん小さなことのようですが、この法律が実際に適用されるまでの手続等について、若干質問申し上げたい。たとえば戦傷病者——戦没者も同じですが、まずとこかで調べてこの法律を適用するのか。本人の申請に基づいてやるのか。その最初の段階から法舞の適用を受けるまでの手続をお話し願いたいと思います。
  117. 実本博次

    ○実本政府委員 最初の手続といたしましては、まず、遺家族であるとか、あるいは戦傷病者であるとかといった人が、それぞれ自分の側から、恩給法なり援護法に定めます。おそらく自分に与えられるであろうと思えます請求事項について、規定の請求手続をしてもらわなければならない。現状は、たとえば援護法ができたときとか、あるいはそれがまた改正されましたときとか、あるいは戦没者の妻に対する特別給付金法が制定されましたときとかというときには、こういったことができ上がったのだという周知徹底は、国をはじめ関係地方公共団体の機関を通じまして、大いに周知徹底のPRをやるわけでございますが、それに基づきまして請求権者の側から申し出ていただく。申し出ていただく先は、いろいろな手続上必要な書類、その他法律上の請求権に伴います手続上のいろいろなむずかしい問題がございますが、これは、大体、各市町村の援護係、世話係、あるいは各都道府県の援護課、世話課といったところへ出向いていただきまして、御相談願うということになっております。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 はっきり公報が入って戦死をしたという人はわかっております。それからけがをした人も、戦場でけがをした者は戦傷者と見られるでしょうけれども、行くえ不明その他で戦死が確認できなかったケースだが、明らかに帰ってこない。戦争へ行ったことはわかっておる。しかも敗戦直前などは、非常に混乱の中に、軍自体が確認できないような行くえ不明者がたくさんあるだろうと思う。これに対してもし本人が、これはやはり戦争で死んだんだという形で申告したときに、一体取り扱いはどうなりますか。
  119. 実本博次

    ○実本政府委員 いまお話の件は、本人がといいますのは、行くえ不明になった遺族の方が、もう死んだんだろうということで御請求になられたケースだと思いますが、その際は、そういう請求に基づきまして、当該行くえ不明者であると言っておられる方の生死について、やはりできるだけの資料をととのえ、あるいは調査をいたしまして、それがはっきりいたしません限りにおきましては、未帰還者ということで処理していくというふうな事務処理のしかたをやっております。
  120. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 未帰還者というものは、むろんこの法律の適用は受けないのですね。その認定はどこでやりますか。
  121. 実本博次

    ○実本政府委員 これは国で、あるいは機関委任を受けました都道府県知事のもとにおきまして、未帰還者としての調査究明をやりまして、その生死を明らかにしますが、それにつきましては厚生省、国がいたします。最後の調査究明の結果をどうするかは、厚生省において行ないます。
  122. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 厚生省のどこでおやりになる。それから県庁でやる場合には県庁のどこが扱いますか。
  123. 実本博次

    ○実本政府委員 厚生省におきましては、援護局において行ないます。それから都道府県におきましては、それぞれの援護課あるいは世話課といったところで行ないます。
  124. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在未帰還者として処理した数はどれくらいあるのですか。
  125. 実本博次

    ○実本政府委員 昭和四十二年一月一日現在で、未帰還者のうち、戦時死亡宣告、審判確定者の数字が一万八千五十五名でございます。これは未帰還者のうちでも、未帰還者に関する特別措置法に基づきまして、失踪宣告をやった方々でございまして、未帰還者の中で、こういったはっきり死亡宣告をして、審判確定した人の数が一万八千五十五名でございます。
  126. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この失踪宣告を受けましたのは、この法律の適用を受けられるのですか。
  127. 実本博次

    ○実本政府委員 ここで処理いたしましたのは、援護法なりあるいは恩給法の適用を受けるということになるわけであります。
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そこで、いろいろな調査をされ、照会をすると言いますが、具体的に言ってできるのですか。たとえば、その部隊が全滅している、もう存在していない場合、どこでどう調査され、どう分析されるのです。もう一つ、失踪宣告を受けた人の数はわかりましたが、実際に未帰還者としてただ打ち捨てられている数はどのくらいあるのですか。
  129. 実本博次

    ○実本政府委員 先ほど島本先生の御質問にもございましたが、昭和四十二年五月一日現在で四千八百七十五名がわれわれの手元で未帰還者ということになっております。もちろん、こういう方々については、いろいろな方法でその生死についての調査を続けておるわけでございます。その調査の方法でございますが、これはまず国内的な調査と、それから外国に対しまして調査をする方法と二つのルートで調査を進めておるわけでございます。従来、未帰還者がいなくなったと思われる相手国とのやり取りでやっておるわけでございますが、国交のない国などにおきましては、政府同士の外交交渉ということのルートに乗りませんので、たとえば赤十字を通じるルートによって未帰還者の調査を依頼して報告をいただくというふうなことで調査を進めておるわけでございます。  それから、国交のある国につきましては、もちろん在外公館等を通じまして、そういった調査を行なっておるわけでございますが、国内的には、これは帰ってこられた方、あるいはその他未帰還者の本籍地とか出生地とかいった地元のいろいろな関係者というものに、やはりある一定の時期に毎年毎年集まっていただいて、そしていろいろなデータがあれば持ち寄って、そこで当該未帰還者の生死についての調査の結果を持ち寄って、いろいろ次の手だてを考えていくというようなことを繰り返し繰り返しやっております。もう戦後二十数年にもなりますので、だんだんとそういった手だても非常に効果が薄れてまいっておりますが、しかし、これはそれ以外にやる方法がございませんので、たとえ効果が薄くても、できる限りそういった方法を続けてまいる。それから、積極的に未帰還者のほうからいろいろ個人的な通信が国内の家族のもとにくるといったようなことも、最近は少しずつ出てまいっておりまして、そういうかすかなクモの糸のようなルートをたどって、一つ一つの未帰還者についてのけりをつけていきたい、また今後ともそういう方法でもってやっていこうと考えております。
  130. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣、ちょっとお伺いしたいのですが、いまお聞きのとおり、あの混乱した敗戦の状態の中では、実際現地で死亡したことを調べるのに非常に苦労している案件が相当あることはお聞きのとおりでございます。しかもそれを、おっしゃるとおり、クモの糸のようなまことにかほそいルートで、その消息をさがしておるのが現状なんです。これは実態を明らかにすることはほとんど不可能だろうと私は思う。これはわかればしあわせですけれども、ほとんど明瞭にされることはないだろうと思われるのです。これは御苦心のほどはわかりますけれども、一体わからないままに戦没者としての恩典に浴し得ない遺族の身になってみてはどうか。もうあてにしておりませんよ。戦後二十年たってまだ帰ってこない者は、たとえ生きていたとしても、遺族にとっては少しも境遇に変わりがない。これは非常に不公平な取り扱いになると思う。ですから、かりに帰ってこないで消息が不明だという者は、これはやはりさっきの未帰還者のうちの失踪宣告した者と同じように取り扱う。その後に幸いにもし消息がわかった場合にこれを差しとめるとか、あるいは別な方法によるとかいうふうな処置をとらなければ、大体四分の一がまだ宙ぶらりんなんです。遺族にしては、もう死のうが生きようが、死んだと同じような苦しみをなめている。何とかこれをしてやるようなお考えは、大臣、ございませんか。
  131. 坊秀男

    坊国務大臣 おっしゃるようなケースが非常にたくさんあって、お説のとおり、これをほんとうに、これは事実どうなったのかということをキャッチするということは非常に困難である。すでに二十年もたった今日、なおさら困難の度が加わってきておると私は思います。そういったような場合に、家族の方々から、これを戦死なら戦死というように戦時死亡宣告をしてもらいたい、そういったような御希望がもたらされましたならば、そういうことにいたすということをこの法律で規定をいたしておる、こういうわけでございまするから、この法律を適用してそういった問題を解決をしていく、こういうことでございます。
  132. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その場合に、一つやはり事務的な点で確かめておきたいのですが、戦地で死亡し、もしくは死亡したらしく信じられるといったような証拠を出せという要求があるらしいのです。これはもう、政府でも出せない証拠を、一般の遺族に出せるはずがない。そういう手続上の隘路が取り去られませんと、法律にそう定めておきましても、実際においては不可能だという線が出てくるのです。ですから、もう二十年も暮らしているのですから、そういうふうな手続上の問題は、なるべく簡素に、あまり遺族を苦しめないような方法でやるような手はないものでしょうか。
  133. 実本博次

    ○実本政府委員 お話のようなケースの例にたりますかどうですか、たとえば死亡の日にちが大東亜戦争開始前だとかあるいは支那事変開始前だったか、あとだったか。それから、なくなられた場所がちょうどその戦地であったのか、事変地であったのか。そういった近くの場所、あるいは近くの日時には戦死になられたのだけれども、事変になってからなのか、あるいは戦地であったか、事変地であったかということがぴたりとわからなければ援護法の対象にしないとか、あるいは恩給法の対象にしないとか、こういうケースだろうと思いますが、そういった死亡の日時や場所が明らかでないといった方々でも、大体消息を絶った時期や場所というものは、いろいろなそれ以外の要素を総合してみれば、大体いつ幾日に死亡しただろうというような判断が出てまいるわけでございますので、そういった判断の材料になるのは、戦友から聞くとか、あるいはその当時の上司の部隊長の人から聞くとか、そういうことはやって、きわめるだけはきわめていきたいと思っております。そういう意味では、御本人に証明しろというふうなケースもあるかもしれませんが、むしろ、戦友だとか、あるいはその他役所の側のいろいろな機関からの情報を求めたり協力を求めるということが多いわけでございまして、御本人なり御遺族から、何が何でも出してくれというふうなケースは、もういままで残っているものの中ではあまりないと思うのですが、そういうほかのファクターで判断してしまって処理していくというふうな取り扱いをいまそういう方針で指導をいたしておるわけでございます。中には、やはり御遺族のほうからいろいろなものを持ってこいとかというふうなケースが、たまにはあるかもしれませんのですが、われわれのほうの指導としましては、先に申し上げたような方法で、なるべくそういった判定をこちらでつけていくというふうにいたしておるわけでございます。
  134. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣、ひとつ御考慮願いたいと思いますのは、ごく少数であっても、この法の精神というのは、一人も余さないというところに私はたっといところがあるだろうと思う。大臣が読まれました法文に基づきましても、趣旨は、明らかに現実の場面ではなくなっている、そしてまたあの戦争の状態では死んだと思われるような者について一つの道を開いてあげたいと思うので、事務的な段階でこの法の精神がそこなわれないように、ひとつ御配慮を願いたい。あの軍の行動というものは非常に秘密をたっとびます。いる場所も行動の日時も明らかにされていないことが多い。異国におっては、本人自身がどこにいるか全然わからないことがしばしばある。こういう状態の中であの敗戦におちいったのですから、現在の状況をということに重点を置きまして、そういう気の毒な人がたくさん残っておるようでございますから、中には、あきらめ切れないで、生きている者として探してもらいたい人もあるでしょうけれども、少なくとも本人からそういう申請が出ましたときは、あまりわずらわしい手続上の問題にかかずらわないで、遺族のために法の適用をしてやってほしいと思うのですが、大臣のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  135. 坊秀男

    坊国務大臣 この法律は、戦死されたりした方々に対して、戦死したのにこれが漏れ落ちになるというようなことは、決してこの法律の趣旨じゃなかろう、さような意味におきまして、そういったような場合には、いまおっしゃったような御趣旨をできるだけ尊重いたしまして実際問題に処していきたい、かように思います。
  136. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 次に戦傷病者の問題ですが、これは戦没者ほどむずかしくはないだろうと思っているのです。しかし、戦地から帰ったあとに発病した場合の問題が、相当問題を残します。いま言ったような、戦没者の場合と同じようなさまざまなケースが出てきていると思うのです。一体この法の適用を受けます戦傷者は別といたしまして、戦病者のほうは病名で制限しておりますか。何々の病気には適用するが、何々には適用しないといったような制限はございますか。それとも、戦場でその病気のもとがつくられたというものに対しては、同じく取り扱うのか、その点の御説明をひとつ願いたいと思います。
  137. 実本博次

    ○実本政府委員 あと先生がおっしゃられました、公務に基因するものであれば、その病気の種類は問わないのが原則でございます。
  138. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 公務に関して発病したものですか。公務とは一体どういうことをさすのですか。その場合、戦病者ですからね。この公務は戦争に限るのか。戦争ではなくとも、戦地におった者は、そうして公務についておった者は全部戦傷者の取り扱いをするのか。確かにことばでは、公務に携わって発病した者と簡単につきますが、これを実務上処理する場合には、さまざまな問題が具体的に起こっておることは御承知のとおりです。一体、この公務についた者というのは、どういう範囲のものをさすか、お知らせ願いたいと思う。
  139. 実本博次

    ○実本政府委員 援護法に関して申し上げますと、援護法の第四条に「公務傷病の範囲」というのがございます。「軍人が負傷し、又は疾病にかかった場合において、恩給法の規定により当該負傷又は疾病を公務によるものとみなすとき、及び軍人たる特別の事情に関連して不慮の災難により負傷し、又は疾病にかかり、援護審査会において公務による負傷又は疾病と同視すべきものと議決したときは、この法律の適用については、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。」という規定がございまして、ここで恩給法の規定により当該負傷又は疾病を公務によるものとみなしている規定がございます。それはもちろん公務でございますが、それ以外に「軍人たる特別の事情に関連して不慮の災難により負傷し、又は疾病にかかり、援護審査会において公務による負傷又は疾病と同視すべきものと議決したときは、この法律の適用については、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。」こう言っておりますのは、たとえば永田鉄山事件というのがございまして、いわば軍人たる特別の責務を遂行する上についてああいうふうな災難にあったというふうなケース、あるいは責任自殺というようなこと、そういったものは公務とみなす、こう言っておるわけであります。ここで公務、公務と言いますのは、やはり恩給法においてもその公務の範囲が一応規定されておりますが、いわゆる国家公務ということでございまして、さらに公務の規定を詳しくするとなりますと、国家公務の中にもいろいろございますが、ここでは一応そういった抽象的なことしか申し上げられないわけでございまして、あとケースケースで判断する、こういうことになるわけでございます。
  140. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 いま永田鉄山事件の例をお引きになりましたが、これはたいへん興味のある例だと思います。そうしますと、戦争中に起こり、あるいは軍人として受けた傷なり、あるいは永田鉄山の場合はああいうふうに殺されたわけなんですが、そういうふうなものは公務という点もありますけれども、軍人であった者は、戦いによって直接でなくとも、やはり戦傷病者と見るという考えもあるわけですね。そうしますと、これはこの間この委員会で加藤万吉君から質問があったわけですが、これはぜひ厚生省の方にお聞き願いたいのですが、いま東京の周辺の基地に、ベトナムの戦地から戦車その他の武器を修繕のために運び込んできている。それには肉がくっついたり、血がついたり、特に病菌の付着しているようなおそれが非常にある。この修繕に携わった駐留軍の労務者が発病した場合、いまは戦争状態でないから、あるいはこういう例は実際ないかもしれませんけれども、かりにベトナム戦争に日本も参加しているという状態を仮定するならば、これはやはり戦病者になりますが、どうです。それは、永田鉄山さえ戦病者、戦没者になるとすれば、戦争状態になった場合には、これはどうなんです。いまは平和時だからこれは何ともない。これはやはり戦争行為の一環ではないですか。
  141. 実本博次

    ○実本政府委員 非常にむずかしい問題でございますが、ただ援護法から考えますと、そういう方の身分が国家公務員であるかどうか、つまり軍人とか軍属とかいう国の雇用人であるかどうか、これがまず問題になるわけですが、そういう方がいわゆる公務上負傷し疾病にかかるということが要件でございまして、いまのベトナム戦争のケースにこれを当てはめるのは、非常にむずかしいケースだと思いますが、ちょっといますぐここでは判断がつきかねます。
  142. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはむずかしい問題ですし、半ば仮定の事実ですからね。しかし、戦場から病菌のついた武器を運んできて、これを修繕さしているという事態は、ほんとうは戦場の事態なんです。野戦病院を置き、武器の修繕をさせる。そのために疫病の感染さえおそれがあるとするならば、これは明らかに戦場の一層の姿だろうと思うのです。これはやはり厚生省としても、この援護法によるというのじゃありませんけれども、何らかの措置を講じて、この労務者は保護してやらなければならぬと思う。おまけに駐留軍労務者というのは、国が雇用する労務者でしょう。施設庁がこれをやはり労務者として雇い入れて、国の責任で米軍に提供している労務者なんです。それが戦争に直接つながる病菌の感染の危険にさらされているとしたならば、私は厚生省としては黙って見てもいられない事態ではないかと思うのですが、大臣いかがでございますか。
  143. 坊秀男

    坊国務大臣 非常にむずかしい問題を御提起になったわけでございますが、一つには、いまの援護法というものは、これは御指摘のとおり、日本が戦争に参加しておったときのそういったような犠牲者に対するものでありまして、ベトナム戦争というものにつきましては、まだ——じゃない、未来永遠にそんなものに参加するつもりも何もない。これは別個の国と国との戦いなんでございまして、日本は戦争中ではない。そこで、かりに日本がそれに参加しておったら、こういうことでございますが、これはベトナムを例示なさらなくとも、去る大東亜戦争におきましても、まさに戦争に参加しておったそのときに、戦争を行なった各地から、たとえば戦車でも大砲でも、あるいは病菌がついておるかもしれないといったようなものを日本へ持ってきて修繕なんかした場合に、その仕事に従事した工員にいたしましても何にいたしましても、これは危険にさらされる。そういったようなときに、一体それに従事したところの工員が、国家の要請、国家の権限によって、おまえはどうしてもこれに従事しなければならない——たとえば軍の中に工場等もありましただろうし、そういったような場合にどうなっておるか私は存じませんけれども、国家の強権によってもう逃げられないといったようなときにその仕事をした、そして病菌におかされたといったような場合に、援護法はどうなっておるか私は知りません。これはあと局長から説明させますが、筋としては、絶対におまえの仕事はこれだというのであるのと、そうでない場合とによって、非常に扱いが違ってくるのではなかろうかと思うのです。
  144. 実本博次

    ○実本政府委員 持ち込まれた兵器と、それを扱われた方との関係において、それが公務傷病であるかどうか。身分関係は別にあるといたしまして、その方がそういう病気にかかったことについて、公務との間に相当因果関係があるかという問題に限定されてくるのではないか。つまり、そういう病原菌のついたままのものを持ち込まれて、それを扱わなければならぬ立場であって、故意または重大な過失もなくて扱ったというようなことになってまいりますと、そこに相当因果関係が出てくるかどうか。あるいは、向こうには大きな悪疫が流行しておるというようなことがわかっておる汚染地区から持ってきたまま、消壷も何もしないで扱ったとかいうようなことが故意または重大な過失になるかならぬかとか、いろいろ具体的な条件を見きわめて考えなければならぬわけですが、要は、そこに相当因果関係があるかどうか、あるいはそのかかったかかり方に故意または重大な過失がないか、そういったようなことを、やはり具体的にいろいろな条件を積み重ねて、ケース・バイ・ケースで判定していかなければ、なかなか結論が出ない問題じゃないかと考えます。
  145. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員大臣 これは仮定の事実のように見えますけれども、満州事変も、いわゆる支那事変も、初めは戦争じゃなかったのです。しかしいまでは援護法ではほとんど戦争と同じ扱いをしておる。宣戦布告のない戦いなんです。ですから、それは日本がベトナム戦争に参加していないといっても、実際の行為上は直接、間接の戦闘行為だという場合もあり得ます。私はきょうはこのことを深くは追及するつもりはありませんが、ただ、援護法を適用するかしないかは別として、現実、大臣の目の前で、米軍の使役によってそういう危険な作業に従事しておる政府が雇用した労務者がいるということだけは、はっきり頭に刻みつけておいていただきたい。これは現実の問題です。仮定じゃありません。これはこの前の当委員会でやった加藤君の質問をごらんになれば十分わかると思う。そういう点について、目をつぶらないではっきり見定めて、何らかの措置をとらないと、一つの不幸が生まれてくるだろうと思いますから、その点ひとつ大臣の御決意を聞かしていただきたいと思います。
  146. 坊秀男

    坊国務大臣 政府が雇用してそういう危険なる仕事に従事しておるという事実については、それはあるのかもしれませんが、私は不敏にしてそれをつまびらかにいたしておりません。その雇用ということと、昔の総動員法といったようなものに基づいて、国家の強権でもって、おまえはこの仕事をやらなければならないという命令に基礎を置くものとは——いまのこの時代にそんな強権でもってさような仕事に従事させるといったような法律とか制度とかいうものは、私はあるべきでもないし、おそらくそういうことは行なわれていないのではなかろうかと思いますが、そこに少しニュアンスの違いがある。おれはそういう危険な仕事はしない、こう言う自由があるんじゃないか。ただしかし、経済上その仕事をしなければめしを食っていけないから、これは賃金もいいし収入もいいからというようなことがあるかもしれません。強制じゃありませんけれども、経済的にこれを強く要請することがあるかもしれませんけれども、法制上これはどうしてもおまえやらなければならぬといったものではないんじゃなかろうかと私は思いますが、しかし、いまのお話でございますので、雇用によってそういったようなものがあるのだとおっしゃることは、よく私は耳にとめておきます。
  147. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これはこの次のこの委員会で、労働省に対しても、雇用の実態、米軍が雇用した労務者をどのようにそういう使役に使っているかということを究明したいと思っておりますから、きょうはこれ以上深くは質問いたしませんけれども、もう一つお聞きしたいのは、戦傷病の中でも精神病と潜伏期の長い病気が一番問題になっていると思う。端的に言えばハンセン氏病です。これなどは私この前からしばしば聞いておりますが、まだ依然として解決していない。明らかに援護局と恩給局との間に見解の相違がある。ですから、これを援護局で戦傷病者として指定しましても、最終的には恩給は恩給局でおきめになる。その間に意見の一致したものと一致しなかったものの数を具体的にお聞きしたい。
  148. 実本博次

    ○実本政府委員 援護法に基づきますものは、あくまで私たちのほうで有権的に決定してまいっておりますし、恩給法は恩給局で有権的に決定しておられますので、同じケースを両方の判断でもってやっている——らいなららいの病気についての態度というものは別といたしまして、同一ケースにつきましては、恩給法の公務扶助料がいくのか、傷病増加恩給がいくのか、あるいは援護法の障害年金がいくのか、どちらかにきまりますものでございますから、同じケースについて意見が分かれておるというのはいままでないわけでございます。
  149. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 一番具体的に残っているのは、この精神病といまのハンセン氏病の問題なんです。しかし、あなたのおっしゃる援護法に基づく場合、明らかに長い潜伏期で、軍隊へ入るときは十分検査もしているわけなんですから、明らかに戦場感染ということがわかっておるハンセン氏病は、援護法では戦病死の扱いをしますか。
  150. 実本博次

    ○実本政府委員 らいの潜伏期間についてはいろいろ学説なり取り扱い上の態度が違っておりますが、大体定説と申しますか、短いのは五、六年から長いのは十数年というふうな幅で潜伏期間が取り扱われている関係上、ケースケースで非常にむずかしい問題かと思うのでございますけれども、大体われわれのほうは、潜伏期間も含めまして、要するに戦地で、あるいは事変地で発病したと判定がつくものにつきましては、当然公務症として扱っておるわけであります。
  151. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 恩給局のほうにお聞きしますが、いまの場合に、恩給法からいうとどうなりますか。
  152. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 いま援護局長がお答えになりましたように、恩給法におきましても、潜伏期間を含めまして戦地で発病したということを要件にしてきめておりますので、違いはないと私ども考えておるわけでございます。
  153. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私がさっきから言っていますのはそこなんです。戦地で発病したといっても、潜伏期の長い病気は戦地で感染して帰還してから発病することがあり得るでしょう。援護局では戦地で発病したというところに重点を置いているが、戦地で感染したということはどう考えていますか。だから当初から、潜伏期の長い病気は非常にその点さまざまな論点があると言っているのです。いま援護局のほうでは、はっきり適用すべきだと言っていらっしゃるが、恩給局はその点はどうかとお聞きしているのです。
  154. 大屋敷行雄

    ○大屋敷説明員 この問題につきましては、昨年の当委員会先生からいろいろお話を承っております。幸いに私のほうで昨年の五月に傷病恩給症状等差調査会というのが設けられまして、十二名の斯界の著名な先生方にお集まりいただきまして、主題は症状等差の問題でございますが、当委員会でそういうような問題もございましたので、ハンセン氏病その他精神病というようなものを一応審議の対象にしていただいたわけでございます。その場合におきましても、このハンセン氏病と申しますのは、そういう先生方の間におきましても、公務の認定が非常にむずかしいのだというお話でございましたが、ただ発病を中心にして考えるという考え方も間違いでない、こういうようなお話もございました。しかしながら、それを実際行政面に移すかどうか、どのように移すかということは、こういう結果をもちまして恩給局でも今後も検討しなければならぬ、こういうように考えております。
  155. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣、お聞きのような始末であります。同じ厚生大臣の管轄下にある援護局と恩給局が、明らかに違ったニュアンスの答弁であります。これは一体どうなりますか。援護局のほうは、はっきりハンセン氏病に対しては援護法の適用をすると言い、恩給局は考慮中でありますと言う。考慮中とこれを適用するとでは、受けるほうにとってはたいへんな違いですよ。役所の中では字句の違いかもしれませんけれども、受けるほうにとってはたいへんな違いなんです。大臣、どう調整されますか。これは私、現実にぶつかってみて感じたことなので、強く申し上げます。
  156. 坊秀男

    坊国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございまして、大体戦争中という期間——期間という一つのものさしがあるわけであります。その期間に発病するとか。あるいは感染するとか、期間ともう一つはその病気の性質と申しますか、実態と申しますか、その病気実態が、なるほど戦争中に、その期間に発病したという病気であっても、いま例にあげられましたハンセン氏病あるいは精神病といったようなものは、あるいは戦争に行っていなくとも、戦争中に、その期間に発病するといったような場合もあろうと思います。  そういうように、これは期間と、それから病気の性質の両方から、二つの角度と申しますか、そういった方向から考えまして、決定をすべき問題かと思いますが、その恩給につきましては、これは私ではない、総理府のほうの問題でございますので、そこいらの点につきましては、私は総理府総務長官ともよく意見交換、打ち合わせ、相談をやらなければ、ここで何ともお答えのしようがない次第でございますが、その点で御了承願いたいと思います。
  157. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、恩給局を大臣の管轄だと言ったのは、明らかに誤りでありますから取り消しますが、しかしいずれにしても閣僚仲間ですね。厚生省内の部局の意見の違いから、さらに総理府と厚生省の意見の相違に今度は発展したわけですね。どうもこの大事な援護法など審議している中で、政府自体がそういうふうな気の毒なことに対して見解が違うということは非常に私は残念です。それは幾らりっぱな法律をつくりましても、さっきから言っていますが、取り扱いの手続上で隘路が出まして、せっかくの法の恩典に浴しない人がたくさん出てくるのです。特にハンセン氏病の潜伏期の問題は非常にむずかしい。むずかしいですが、戦没者の取り扱いに対して、できるだけ広い道を開くという法の精神があるならば、そうしたものは多少疑わしい点がありましても、だれも好きこのんでハンセン氏病なんて言いはしませんから、その病気の潜伏期間がはっきりしないだけに、やはり受けたほうでは戦場で受けたんだという感じを持つ。しかも、日本のハンセン氏病の状態と、戦争の行なわれた区域におけるハンセン氏病の状態では全然違っています。そういったような大局的な立場に立ってやっていただきたい。特に精神病と戦争との関係などは、この際思い切って割り切らなければならない関係があると私は思う。大体大臣のお考えもわかりましたけれども、少なくとも援護法その他の法律を適用する場合は、末端の手続上の不親切のために、この法が死ぬようなことがないように万全の策をおとりになる御誠意があると思いますから、ひとつこの席上ではっきり大臣からその旨お答え願いたいと思います。
  158. 坊秀男

    坊国務大臣 恩給にいたしましても——恩給は私じゃありませんけれども、援護にいたしましても、これは国家のために犠牲になられた方々に対する国家補償というか、賠償というか、そういったような考え方によって打ち立てられておるのでございまするから、その国家の精神というものを、できるだけ途中でこれが阻害されるというようなことのないように運営をしていくのが、この立法の趣旨かと思いますので、私は御趣旨を尊重したいと思います。
  159. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 終わります。
  160. 川野芳滿

  161. 島本虎三

    島本委員 いま前段で問題になりました戦争公務の問題で併給される限度は幾らになっていますか。
  162. 実本博次

    ○実本政府委員 先生のいまのお尋ねの趣旨は、おそらく国民年金の福祉年金と公務扶助料との併給限度の話でございますね。——現在、現行法では併給限度が十万二千五百円になっております。これを、今回恩給なり援護法のベースアップに伴いまして、十二万九千五百円に改正するという案が年金局のほうから出されております。
  163. 島本虎三

    島本委員 いいと思います。それと同時に、一般の公的年金のいまと同じようないわゆる併給される限度額は何ぼになっていますか。
  164. 実本博次

    ○実本政府委員 二万四千円になっているわけでございます。
  165. 島本虎三

    島本委員 厚生省が行なっている生活保護法のあれは、水田大蔵大臣に言わしむると、最大の社会保障だということになっておりましたけれども生活保護法の中で、他の福祉年金そのほか何か所得に対して併給される限度というか、恩典というものはありますか。
  166. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 七十歳以上の老齢者につきましては、老齢のゆえをもって、それだけの生活費が要るというふうな老齢加算というのがございまして、これは級地によって若干違いますが、千五百円というふうなものを特別につけています。
  167. 島本虎三

    島本委員 同じようにして、社会保障の意味を加味し、社会保障制度審議会からも、アンバランスにならないように、こういうようないろいろな勧告さえもちょうだいしている。この中で、戦争公務によるものは、現在改正されようとする十二万九千五百円、それから一般公的年金の場合には二万四千円、それから生活保護の場合は、七十歳以上の場合に老齢加算が千五百円、こういうようにして、社会保障的な意味を持っている制度の中でもこれだけの違いがあるということは、制度的にやはり矛盾していると思いませんか。
  168. 坊秀男

    坊国務大臣 社会保障の場合のいまの加算というものと、恩給、援護といったようなものとは、これは考え方のベースが違っておりますので、社会保障でもこうしてあるんだということとは、比較して同時に論ずるということは、私は必ずしも適当ではない、かように考えます。
  169. 島本虎三

    島本委員 そうすると、七十歳以上の普通の人の場合には、いわゆる老齢加算される限度千五百円ですか、これくらい生活保護法の適用を受けている人でも認めるんだ。最低の生活でしょう。同じような状態の中で片や十二万九千五百円になろうとするし、現在のところで、一般の公的年金受給者は、年額ですけれども、二万四千円までのいわば併給される限度額を認められている。一番因っている生活保護法の適用を受けている人たちは、それ以上幾らあってもいいはずなのに、千五百円くらいしかない。これじゃ少し人間ということを中心にして考えて、また生活ということを考えてみて、当然社会保障という見地から見ても、この制度のすべてはそれに関係している制度なんですが、その中でありながらもこれだけの差があるということは矛盾していませんかというのです。厚生大臣は矛盾してないと考えるのですか。
  170. 実本博次

    ○実本政府委員 援護法の立場からばかり申し上げて恐縮ですが、援護法におきます遺族年金とかあるいは障害年金とかにつきましては、社会保障ということでそういう給付が行なわれるという趣旨のものではございませんで、国家公務に殉じて、国事に殉じてなくなった公務員なり、あるいはそれに準ずるような人たちに対する国家補償ということを趣旨といたしておりますので、最低生活を保障しようとかなんとかいう社会保障の趣旨で運営されている制度でございませんものでございますから、そういう国家補償の目的を大いに盛った制度の中の給付と、それから社会保障制度として最低生活を保障しようということで考えられている生活保護、あるいは保険方式によって行なわれておる国民年金なりその他の公的年金制度というものとの給付額の比較を直ちにするということにつきましては、制度の趣旨からして、そういった意味での比較検討ということが、援護法の立場から言いますと、あまり適当ではないのじゃないか。ただ、先生の御指摘のように、国家補償のほうはずいぶん手厚くなっていく、しかし社会保障なり公的扶助のほうはそれほど進まないじゃないか。制度の趣旨を抜きにして、そういう給付の金額なり特別の加算の金額なりをそのものずばりで比較いたしますと、確かにそういう差が出てまいりますが、それは制度の趣旨という観点から考えてまいりますと、直ちにそれを、どちらが伸び過ぎるとか、どちらがもっと早く追いつかなくてはいかぬという観点がやはり問題になる、こう考えられるわけです。これは援護法の立場で申し上げますと、そういうふうな理屈があるわけでございます。
  171. 島本虎三

    島本委員 援護法の審議ですから、そういうような答弁は当然出るでしょう。しかし、いま厚生大臣のもとに厚生省自身が取っ組んでおる社会保障という大きい観点から見ると、それはもうこれだけやればいいのだというような考え方でセクト的に考えるべきじゃ当然ない。ことにこれは社会保障制度審議会からもいろいろ四点に分けて出されている。こういうようないわば勧告案、大臣から答弁があったような、この特殊性は認める、しかしながら、共通している部面についてはやはり全部共通させなければならない、これはオーケーだと言ったじゃありませんか。物価の値上げ分だとか、こういうような共通している面です。しかしながら、この中で、いわゆる併給される限度額というようなものになると、これを許すと、無制限になるのと全然いかないのが出てくる可能性さえあるのです。いまの場合は、上のほうがいいから縮めろと言うのじゃない。下のほうが悪いから上げてやれということなんです。それは厚生省の行政の一つじゃありませんか。それに対して何も遠慮は要らない。そんな答弁ばかりしているから厚生官僚だと言われちゃうのです。ほんとうに誇りを持ってはっきりこの程度までやるということでないと、いまのように、市大な社会保障を担当する厚生省がいたずらに右顧左べんしているような状態じゃいけない。私は上のほうを縮めろと言うのじゃない、下のほうを上げてやれと言うのだから、いいじゃありませんか。そこまであなたは考えることはできないというわけですか。大臣、これはどうなんです。
  172. 坊秀男

    坊国務大臣 社会保障の立場に立ちまして、やれ年金だ、やれ所得保障だ、医療保障だ、こういったようなものが実際具体的に行なわれておるわけでございますが、そういったようなものにつきましては、いまの恩給とか援護とかいうことと比較するとかなんとかいうことではなしにいたしましても、これは充実していかなければならない。社会保障制度審議会からの要請と申しますか、答申と申しますか、それもありますし、厚生省といたしましては、これはでき得る限り充実をしていきたい。先ほどお答え申し上げましたとおり、鋭意努力してまいるつもりでございます。
  173. 島本虎三

    島本委員 きょうの朝日新聞にも、具体的に生活保護者の一つの悲しむべき事例が報道されていましたね。御存じでしょう。千葉県の成田市で、二歳の坊やが車にはねられてけがした。市の交通災害共済制度から一万円の見舞い金が出た。そうすると、その家庭では父親が病気生活保護の適用を受けていたので、臨時収入とみなされて生活扶助費からその分が引かれた。そのあまりにも無慈悲なことに対して、これは相当世間の批判も受けている、こういうことのようなんです。これはきょうの朝日なんです。大臣、こういうようにして、食うや食わずにやって、傷害を受けた子供の一万円のそれでさえもちゃんと引かれて、ほんとう生活の足しにもならない程度のものにして支給されているのです。片や、やはりこういうようにして認められる支給併合の限度もあるのですから、もっともっとこの点等に対してはあたたかく見てやるのでなければ、ほんとう社会保障の中に血を通わせることができないのではないか、こういうようなことです。きょうの朝日新聞の、千葉県の商橋新二郎さんという方の二歳の坊や、五月十九日に起きたこの事件に関する報道に対して、大臣はどういうふうに考えているのですか。これはやむを得ないという考えですか。
  174. 坊秀男

    坊国務大臣 生活保護についての具体的なそういったようなケースを考えてまいりますと、その事件に関する限りは非常に涙なくしては見られないといったような事例が間々あることは、私もよくわかります。そういった場合に、末端の第一線に携わる行政官、ケースワーカーが、そういった者に対して、むろん血もあり、涙もある態度で接しなければなりませんけれども、そこで、具体的に法律にきまっておるが、その法律と離れて、さじかげんと言うとことばはおかしゅうございますけれども、そこに弾力性のある取り扱いをしてまいるということは、これは必ずしも適当なことではない。私はそういった事態があることについて深く思いをいたしまして、こういったような事態があるが、どうだ、法律に欠陥があるのじゃないかといったようなことを、一つの材料として中央なりわれわれに提供をしてもらうということが、制度の欠陥を是正していく一つの大きな材料になろうと思いますけれども、末端におきまして、その第一線の人がこれを緩和していくというようなことがかりにありといたしまするならば、これは結局制度自体を非常に弱体化していく結果がもたらされるということも考えられます。そういったようなことについては、今後制度を考えていく上におきましては、十分それを検討いたしまして、そしてその材料に持っていかなければならぬと思いますけれども、その具体的事例に第一線が、これをかってにと言うとおかしいですけれども、あまり緩和するとか、さじかげんをするとかいったようなことは非常にデリケートな問題でございますから、これは慎重な態度をとってもらわなければならないものである。制度自体を強化し、充実していくためには、どうしたって、法律や制度そのものについては、具体的な場合にはひとつ守ってもらわなければならないことだと私は思っております。
  175. 島本虎三

    島本委員 結局、制度の欠陥があるからこそ、こういうふうになったのに相違ない。そういうようなことをすべて責任を持って実施させ、また今後そういうようなものに対して完全にしなければならない閣僚は厚生大臣なんで、こういう実例があって、一方ではこれを通そうとする法律案が現在あるわけです。それと同時に、いろいろな点で関連している社会保障の面から見て、不完全なものがまだあるんだ。その責任はあなたなんだ。したがって、今後制度的な欠陥があるならば、これを直して完全にしていくには、この機会にあなた自身がはっきり決意を表明して、今後社会保障の一環として生活保護法の改正案なりを出して、こういうような点をひとつ大いに改革していったらいいじゃありませんか。そのことなんです。これだけを切り離していま聞いてみたんだが、猪突に出た問題ではなくて、関連性をもって出てきた問題であります。これはやむを得ないというような考えでもないけれども、こういうようないろいろな点を考えて是正すべきじゃありませんか。そういうような点で、この前の健保の本会議質問の際に、水田大蔵大臣は、国が一番社会保障として重点を置いて責任を持ってやらなければならないのは生活保護法だとはっきり言ったんですよ。保険は保険だから、それぞれ三者なり四者なりでやればいいんだ、もちろん国も若干補助します。こういうふうに言っているんです。国が全責任を持ってやらなければならないのは生活保護法だと言ったんです。言う以上、大蔵省だって相当な決意を持っているんじゃありませんか。あなたも本会議で聞いたとおりです。こういうみじめな立場に置かれているから、その責任者であるあなたが、緊褌一番、大いにがんばって改革をやりなさいということなんです。これはいい激励じゃありませんか。それをあなた、やらないというんですか。
  176. 坊秀男

    坊国務大臣 そういったような事例というものが非常に大事なことでございまして、いま御激励を受けましたが、そういったようないろいろな事例があるということによりまして、生活保護法というものはできる限り改善し、さらに充実していかなければならない、かように考えております。
  177. 島本虎三

    島本委員 したがって、そういうような場合、いま事例を申し上げましたけれども、この点だけは大臣も考えてやってもらいたい。この生活保護の扶助基準をきめる際には、一切非科学的にわたらぬようにして、政治的な恣意にあまり左右されないようにして、き然とした態度でやってほしいと思う。あなたのほうはいつもふらふらしているじゃないかと私は思っているのです。そんなばかなことを言うなと言うから、疑問ですからこれを解明して聞かせてください。  いま成人の男子で、生活保護法による食費は一日一人幾らですか。
  178. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 級地によって違いますけれども、先に一般的なことを申し上げますと、四人平均で、三十五歳の夫、三十歳の妻、九歳の男、四歳の女というので、一級地、たとえば東京のようなところでありますと、これは四歳から三十五歳までの平均でございますが、一人一日百二十二円九十四銭、大体百二十三円をちょっと切れるというようなことで、カロリーは千九百カロリーであります。それからたとえば成人の三十五歳の男で計算いたしますと、一日二千二百二十カロリー。これは年齢別でみな違いますので、そういうようなことによりまして、三十五歳の児だけでいきますと、一日百四十三円五十九銭というふうに非常にこまかくなっております。
  179. 島本虎三

    島本委員 それでちょっと省略して具体的に聞きます。  これは科学的にやってほしいということと、あくまでも政治的にあまり左右されないで、厳然としてやってほしい。その点疑問であるということを私は解明してもらいたい。大蔵省で三月二十五日にこの基準生計費をきめた。一人二百五円二十四銭です。その場合は二千五百カロリーだった。そうすると、厚生省が基準にしていた千九百カロリーとすると、七六%。百二十三円とすると、これも六〇%じゃございませんか。同じようなやり方から見ても、何かちぐはぐな、政治的に左右されておるような結果が皆さんの場合には厳然としてあらわれているじゃありませんか。こういうような点は、そうじやないんだ、これはパーセンテージからでも、大蔵省で基準を示したものにばっちりはまるんだ、こういうふうに解明してもらいたい。これはどうも合わない。たとえば、そのとおりいけば、七六%、片や六〇%になる。こんな厚生省の基準である。千葉県のような例じゃありませんが、ほんとうに苦しむ人の救済さえもできないような生活保護法では困る、こういうようなことが主なんです。この私の考え方は間違いですか。
  180. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 大蔵省のイカさしということで二、三年前によく問題になっておりましたが、あれは課税最低限度をきめる世帯構成ということでございまして、いま仰せになりました二千数百カロリー、二百五竹というものは、四十歳から四十二歳の現に稼働している人間だったと思います。私がいま申し上げた三十五歳の二千二百二十カロリー、百四十三円というのは、これは生活保護法の場合には、非稼働の場合をまず前提にして、働いてないでうちにいる、せいぜいうちの中で若干動くという者が二千二百二十カロリーでありますが、うちの中で内職をする、いわゆる家内の軽い労働という場合には、それに加算というのがつきまして二千五百四十カロリー、日雇いのようになりますと三千六十カロリーというふうに、カロリーを出していきまして、内職の場合は百六十四円、日雇いさんの場合には百九十八円、こういうふうな計算で、千差万別の稼働形態があるものですから、まず非稼働の場合を出して、稼働状況からそういうふうに加算していく、こういうことでございます。課税最低限度の場合、大蔵省の場合には、一家の主人で四十歳あるいは四十二歳であって、現実に社会的に活動しておって、これこれの生計費以上の人は税金を払ってもらうというような稼働の状態の世帯主を出しております。したがって、こっちの場合の出し方は違うのでありますが、現実に日雇いのような場合におきましては約三千六十カロリー、百九十八円、二百円になんなんとするというような積算でありますので、ちょっと算式が違うわけです。実態的には、生活保護法で日雇いで働いております場合、二百五円をオーバーするということになりますと、オーバーした部分はすでに税金を払ってもらう人であります。それからこちらの場合には、最低生活の保障というので、まだ百九十八円と二百五円という差があります。その間がボーダーラインというふうなかっこうでいわゆる非課税世帯の部分ということになると思います。
  181. 島本虎三

    島本委員 日雇いの場合はそういうふうなことかもしれません。しかし日雇いの場合でも働いておりますから、働いている人の場合は、−私、百二十三円のパーセンテージを調べてきて言いましたが、あれは間違いでした。百三十七円の日雇いで働いている、いわば安いほうの人のパーセンテージなんです。これで六〇%くらいなんです。こういうような状態だから、働ける人、非課税の最低、その辺に社会保障を持っていったって何でもないんです。それなのにかかわらずまだ皆さんのほうで遠慮なさっている。これがほうぼうに出てくるのです。私もこういうようなことを出ないようにしてもらいたいのです。  いま軍人遺家族の点を見ましても、一番困るのは老人で年とった人です。あれはやはり社会保障で完全に救済してやらないから、いつまでもむすこのことを思い、昔のことを思いながら楽な暮らしを自分でこいねがっておるのです。それをなぜ社会保障によって、昔のことを忘れさせながら一般に安心立命を与えてやらぬか、それなんですよ。母子の問題でもそれはあるでしょう。この母子の対策を考えてみましても、私どものほうは勉強不足かもしれませんよ。勉強不足かもしれませんが、残された人は昔のだんなさんをこいねがいながら、昔の生活を思いながら、いまの苦しい生活の中で最低さえも保障されない、それで悩んでいるんです。苦しんでいるんです。いままで厚生省のやっているのは、母子栄養強化費、こういうようなものを出したはずです。それだって一昨年は金を余しているんでしょう。余しているだけではなくて、住民税非課税世帯に限る、こういうような厳重なおふれを出しているものですから、自治体のほうでは、自分のほうから持ち出しや超過負担というようなことをおもんぱかって、あまりこれを適用させないようとしない。いままで十五円くらい。今度は十六円にした。しかしながら、もう牛乳のほうは上がってしまっている。せっかく母子関係のやつをやっても、ほんとうに血も通わないようなことになって、すでに現行に合っていない。一つの福祉対策として厚生省はそれくらいしかやっていない。残念じゃありませんか。いかに社会保障的でないといっても、恩給関係なんかちゃんと見ておるのですから、やはり社会保障関係としても、上のほうを見習いながら下のほうをぐっと上げていく、これくらいの努力は払うべきですよ。母子福祉関係なんかもっともっとやるべきであると思うのです。これはこれでいいものですか、大臣
  182. 坊秀男

    坊国務大臣 母子福祉対策につきましては、年金だとか、そういったようなものをいろいろやっておりますけれども、もちろんおっしゃるとおり、これでもって十分だというようなことは考えておりません。できる限りそういったようなものを漸次整備改善していかなければならない問題だと考えております。
  183. 島本虎三

    島本委員 もうあと若干で終わりますけれども、ひとつこの点なんかでも、大臣今後は十分考えてやってほしいと思います。障害者福祉の問題なんかもあるのです。やはり戦争に行ってきたからというようなことでいろいろやるなら、それと関係なしに、日本で同じような戦争の被害を受けたり、また、そうでない、それに類するような被害にあった人はどうなんです。これを考えてみても、障害者福祉の点なんかも、相当考えてやらなければならないような谷間が多いのです。大臣のほうでは、障害者福祉の問題として、相談員なんかも新設されてやっておるようなんです。しかし、それより先に一番必要なのは、社会復帰に必要な指導と完全な職業訓練、こういう施設じゃないか。ところが、こういうものに対してほんとうに手厚いやり方をしたということは、私、考えられないわけです。こういうような点も忘れられていますから、大いに今後大臣としてがんばってほしいのです。そういうような点を私は強力に要望して、もうやめておきたいと思うのです。大臣どうですか。
  184. 坊秀男

    坊国務大臣 御趣旨は尊重いたしまして、これからそういったようなものについての充実強化をはかってまいりたい、かように思います。
  185. 島本虎三

    島本委員 終わります。
  186. 川野芳滿

    川野委員長 次会は、明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十七分散会