運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-18 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十八日(木曜日)     午後零時十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       菅波  茂君    世耕 政隆君       中野 四郎君    中山 マサ君       藤本 孝雄君    増岡 博之君       箕輪  登君    粟山  秀君       淡谷 悠藏君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       佐藤觀次郎君    島本 虎三君       西風  勲君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       和田 耕作君    浅井 美幸君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生大臣官房会         計課長     高木  玄君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    宮崎 隆夫君         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十七日  委員加藤万吉辞任につき、その補欠として渡  辺惣蔵君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺惣蔵辞任につき、その補欠として加  藤万吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十七日  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四三号)  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第五二号)  児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部  を改正する法律案内閣提出第五三号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第七六号)  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二九号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 まず委員長に要望いたしておきたいと思います。  きょうは、衆議院の社会労働委員会が開会せられることが、定例日でわかっておりました。特に厚生省関係審議をする予定の日であります。私も要求をいたしましたが、質問をする委員は、当然主管官庁大臣である厚生大臣に対する要求をすることは、もう火を見るよりも明らかであります。その場合に、他院一般質問でこのような審議が渋滞するようなことでは困ると思うのです。そういう点で、委員長政府側に対して厳重に注意をしていただきたいと思う。第一院の、しかも厚生省関係主管しているこの社会労働委員会出席を前提として、その問にすき問があったときに、他院委員会なりほかのところに行くことは許されるけれども、ほかのほうへ先に行って、こっちはあと回しにする、こっちは待ってもらいたいというようなことを政府にさせないように、委員長から厳重に政府側に申し入れをしていただきたいと思います。また、それを聞かないような政府側であれば、委員会として、そのような委員会審議に協力しない政府に対して、強い態度を各理事と御協議の上決定していただきたい。御要望申し上げておきます。
  4. 川野芳滿

    川野委員長 強く大臣八木委員の御要望を伝えておきます。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 まず坊厚生大臣に、これからいろいろな姿勢についてお伺いをいたしたいと思う。  坊さんは、昔から私——私の当選したのは昭和二十七年でありましたが、二十八年の和歌山県、奈良県の災害のときに、一緒に一生懸命仕事に取り組んだこともございまして、非常に尊敬する先輩でございます。しかしながら、それは別として、厚生大臣としては別な立場で御質問申し上げなければならないわけです。ことに一番根本的なことでお伺いしたのですが、厚生行政の問題ではありません。国務大臣としての話です。坊さんが、国会のほうで非常に信頼のある大臣になられるか、あるいはこれは早くやめてもらわなければならない大臣になられるかは、これからの審議なり、これからのことにかかっていると思う。非常に尊敬する坊さんが信頼される大臣になっていただきたいと思いますが、それはさておきまして、各国務大臣がいままでの悪い慣例で一年ごとにかわる傾向があります。これは、国会の重要問題を審議をするわれわれとしては、非常にぐあいの悪いことであります。また内閣自体姿勢としても最もけしからぬことと思う。いろいろな人にたくさん大臣という肩書きをつけて、それで選挙を有利にするような配慮から、吉田茂君のときからこういう間違った習慣が生まれました。その後、そのことで平均的に一年ごと大臣がかわられる。重要な所管事項について大体御理解になったころにはもうその席にいない。大臣としての職責を担当しておられるときには、あまり問題が多いので、非常に熱心な研究家がおられますけれども、十二分にそこまで研究が尽くせないという時代職責を担当しておられる。こういうことは非常に間違ったことだと思います。国務大臣として——これは厚生行政にも関係があるわけです。坊さんがわれわれの信頼できない大臣なら、あしたにでもこれはやめてもらいたいと思いますが、そういうことは抜きにして、そうでない大臣であれば、七月に首が飛ぶというようなことになってもらいたくないわけです。これは前の鈴木さんのときもそうですし、ほかのときもそうです。佐藤榮作さんに、閣僚を信頼して任命した以上、一年ごとにそれをかえるような不見識なことをするな、また、それをすることによって国政が渋滞することをわきまえているならば、そのように内閣改造みたいなごたごたすることは、国民に対する裏切りである、そういうことを閣議でこれは——佐藤榮作君にも直接に言うつもりでありますけれども、あなたからもおっしゃっていただきたい。特に、厚生行政になれた方がかわっては、一々説明しなくては問題が進まないということでは、ほんとうに困ったことだと思う。そういう厚生行政と一般的なことを兼ねた点で、閣議で、内閣改造というようなものはすべきものでないというようなことを主張をしていただきたいと思いますが、国務大臣の御見解をいただきたい。
  6. 坊秀男

    坊国務大臣 私は、一般論といたしましては、まさに八木委員のおっしゃられたことは、そのとおりだと思います。しょっちゅう閣僚がかわっておるというようなことでは、いまお述べになりましたように、私はまだ実は厚生行政につきましては門前の小僧というようなふうに思っておりますけれども、しかしながら、一年に足るか足らぬうちに交代していくということでは、なかなかまともな、事態を全部把握して——全部と言わぬまでも、相当把握いたしまして、そういった知識の上に政策を打ち立てていくということが非常に困難であろうと私は思います。政治一般論抽象論としてはまさにそのとおりでございますが、私自身が今日厚生大臣ということに相なっておりまして、この厚生大臣を私は一生懸命に勉強もしてきましたし、今後も勉強していくつもりでございますけれども、何にいたしましても、さしあたってきょうの八木さんの御質問等にも、一つのこれは大きな——私がテストせられるというようなことを先ほどもおっしゃいましたが、そういうようなこともございますし、私がはたしてこの重大なる責任を、懸命に努力はいたしてまいりますけれども、処理していけるかどうかということは、おのずから当社会労働委員会皆さん方の御批判を仰ぐことでありますし、また佐藤総理が、そういうことを通じましてどういうような心境にあられるかというようなことについては、私としては知る由もございません。ただ、私といたしましては、懸命の努力をささげて、そしてこの重大責任を果たしてまいりたい。そういう私自身決意と客観的にどうなるかということにつきましては、これは全く別のものでございます。ただ私は、できる限り努力をしてまいりたい、かように考えております。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 こういうような問題を論議する場が国会で少のうございますし、また予算委員会総括等で論議するのも、いまの状態ではそういうものであるということもわかりますけれども、予算委員会というような運営が非常にまずいので、国政の中枢について考えている意見を各議員が発表し、そしてそれを担当者の方に追及する場がなかなかないのです。非常に国会全体の運営の間違いで、予算委員会中心主義の間違いだと思いますが、それをあなたに申し上げてもあれですが、それでこういう場でちょっと申し上げた。あなたがわれわれから考えて非常に不適な大臣であれば、任期が途中でも辞表を出していただきたいと思います。適当な大臣であれば、辞表を取りまとめて内閣を改造するかというときになっても、断じて辞表を出さない、それぐらいの決意を持っていただきたい。ほかの国務大臣にもそういうことを言っていただきたい。(発言する者あり)委員長、よけいな不規則発言で特に常習犯の人がいますけれども、厳重に戒めてください。  それから、そういうことをなぜ特にきょう申し上げたかというと、去年から、おととしから、三年ほど前から、厚生大臣にずっと申し上げている。坊さんは非常にいい大臣ですが、昨年の年末に大臣になられたので、前の大臣に申し上げたことがここで言えなくなった。非常に都合が悪いわけです。都合が悪いといっても、私が都合が悪いわけでなしに、厚生行政全般についてそういうことがマイナスになる。それでそういうことを特に申し上げた。前から三代続けて大臣に申し上げたんですが、大蔵大臣が来ないで残念ですが、主計局から大蔵大臣に厳重にきょうのことを全部伝えておいていただきたい、この次に大蔵大臣に会ったときにそれを知らなかったら、あなたの責任です。  大体、大蔵省が数年前までは、第一次予算査定について、前年度の五割増しまでにとどめてほしいということを、閣議に提議する悪い習慣がありました。閣議があっさりと大蔵省の圧力をのんで、しかたがないと言ってしまうまずい傾向がある。それが非常にまずかったにもかかわらず、三年ほど前からもっとひどくなって、これを三割にとどめるという風習がある。こういうことに対しては、国務大臣としても、それから国民の大切なことを預かっておられる厚生省の長としても、断じて抵抗してもらわなければならない。鈴木君が抵抗しなかったことについては徹底的に追及しようと思っておったんですが、残念ながらかわったので、今後の問題もありますから、かわりに坊さんに申し上げておきたいと思います。大体、大蔵省が、前年度の五割にとどめてくれ、三割にとどめてくれと言うことが実にかってな話しで、最終的には予算ワクに入れなければならないことはわかっているけれども、概算で五割にとどめる、三割にとどめるというのはこれは計算しやすくする。査定化しやすくする。大蔵省主計局なり大蔵大臣仕事がやりやすいようにするために、政治アクセントがそこで消されてしまうわけだ。いままでに各省がいろいろな仕事をしておりますけれども、大体完成した仕事を新時代に備えて少しずつ充実をしなければなりませんが、完成をした仕事を持っておるところがある。それは飛躍的に予算の増大の要は少ない。これから取り組まなければならない問題がたくさんあるというところは、予算増額の要が多いわけです。それを一率に五割の第一次予算にとどめる。しかも値切って三割にとどめる。大蔵省はそれでいいでしょう。査定がやりやすい。大蔵省の一部の人が査定がやりやすいだけであって、国政の重大なアクセントがそこで消える。もちろん査定の過程においては、大事なものは残します、不要のものは削ります、大蔵大臣がいたらそういう答弁をするでしょう。それをしなかったら、大蔵大臣主計局も全然資格はありません。資格はないけれども、大ワクアクセントを消している。厚生省が大事な仕事を遂行するだけの予算要求をしても、そこで大ワクで押えられておる。今度も三割に押えられたはずです。それをまた値切られている。これは、最初のときに坊さんはおられなかったから、坊さん責任でないかもしれぬが、今後重大な問題でありますから、大臣としてずっとやられる決意を持っておられるならば、来年度から、大蔵大臣がそういう提案をする、総理大臣がそうしようかというときに、これは辞表をたたきつける覚悟で、そういうことはならぬ、大事な厚生省を預かっているんだ、社会保障を預かっておるし、国民の生活を預かっておる、それをそのようなイージーゴーイングなことでほんとうのことを進めるだけの予算ワクをかぶされ、押えられたら、ほんとう責任を持てない、なぜ最初からそういうワクをかぶせる必要であるのか、そういうことで、職を賭しても、そういうワクをきめさせる、アクセントをつぶさせるということについては、反対をしていただきたい。それにについての坊厚生大臣の、厚生大臣国務大臣としてのはっきりとした重大な決意を承っておきたいと思います。
  8. 坊秀男

    坊国務大臣 予算編成にあたりまして、概算要求を何割に減、本年度予算の何割増しということでワクをはめるということは、これは財政運営理想論から申しますれば、まさに八木さんのおっしゃったように、財政運営予算編成ということに相なりますと、これはその年の歳入の見積もりということにも関係があろうと思います。従来からの予算をながめてみますと、前年度よりも、あるいは一四%ふえるとか、あるいは一五%ふえるとか、こういうようなことになってまいっておるような傾向でございますが、そういったようなことから考えてまいりまして、大蔵省——私は厚生大臣でございますから、何も大蔵省の肩を持つつもりでも何でもございません。ただ国務大臣として、予算編成する態度はどういったようなことかということから考えてまいりますと、やはり歳入関係というものも考えなければならない。減税ということも考えなければならない。それからこの予算がそのときの日本の国の経済全般に対してどういう影響を及ぼしていくかということも考えてまいらなければならないと思います。各般の角度から考えてまいりまして、そこで一応予算編成当局といたしましては、相当ゆとりある——三割がいいか、五割がいいか、あるいは二割がいいか、これは別でございますけれども、一応のワクといったようなこともきめていくということも、これは絶対に邪道であるということは、私は必ずしも言えないと思います。  ただ、その五割なり三割なりというものの中には、三割でとどめていけないものもある。五割増しにしなければならないものもある。あるいはまたそれ以上の額にしなければならないのものある。レアケースかもしれませんが、前年度予算を来年から見れば、今年度予算をしさいに点検してみますと、皆減、全部減ってしまうといったようなものもないことはない。たとえばある仕事はもう完了したということになりますと、その費目については、これは皆減をしてしまうというようなものもあろうと思います。だから、これらの費目について、全部これは三割ということで押えなければならないというようなことになりますと、これはまさに邪道だと私は思います。しかしながら、一定費目については幾ら要求しろということでなしに、たとえば厚生省所管の全体の本年度予算、これに対しまして、三割がいいか、五割がいいか、そんなことはしばらく私は別にいたしますが、ある程度のワクをはめるということも、これも財政運営についての一つ方法であろう。全然もう青天井にしてしまえということも、実際予算編成していく上に一つの手段、方法といたしましては、一定概算要求に対しましてワクをはめていく。しかし、たとえ三割にはめても、重大なる費目については、これは五割増あるいは二倍増といったようなことを許して——許す、許さぬの問題じゃありません。そういうことを認めておるように私は思いますが、そこらの点につきましては、私は財政全般についていまつまびらかにいたしておりませんので、はっきりとお答えを申すことはできませんけれども、とにかく、各費目について網をかけてしまうということは私は邪道だと思いますけれども、所管予算全体についてある程度のワクをはめるということも、必ずしも予算編成の自由を全く束縛してしまうんだということには相ならないのじゃないかと私は思います。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 予算全体については、その年その年についてどのくらいのワクであるべきかということは、当然論議の結果定まらなければなりませんし、そのワクにおさめる努力をしなければなりません。おさめる努力をするときに、各省別に三割とか五割という基準をつくる必要がどこにあるか。それは楽でしょう。各省で締めてもらっておけば、大蔵省の人としては楽です。大蔵大臣としては楽です。しかし、楽であろうとなかろうと、大蔵省としては一番よい予算編成する責任があるわけですし、編成について、そのブレーキのかかった材料によって編成をするということであってはならない。閣議でそういうことがきまっても、大蔵省は、それは困るのだ——政治については、これは非常に急速にしなければならないものと、ゆっくりでいいものとある。非常に重大な問題と二の次のものがある。そのアクセントについて、全部アクセント財政の総ワクの中で——ワクもそのときのアクセントに従って変えるときもありますが、その年によってそういうものを配慮したワクの中におさめるという努力をするのが、主計局任務であり、大蔵省任務である。そのときに、最初にかぶせられた材料でやるのだったら、大蔵省任務は果たせない。良心的な大蔵省であるならは——良心的でない、仕事がめんどうくさいから簡単にやろうという大蔵省であれば、ワクがはまったほうがいいということになる。坊さん大蔵政務次官を前にやっておられた。幾ぶん大蔵省のほうに同情的であるようですが、同情はほんとうはいけない。大蔵省主計局の人は優秀な人がいるのですから、やれる能力はある。またほんとうに公務員の職務を忠実に果たせるような主計局にしていかなければならない。だれか主計局の中に、大蔵省の中に、イージーゴーイングに考えておる連中がおって、それが楽だといって閣議でも通って、そういうことになる。ほんとう大蔵省の人に仕事をさせなければいけない。あなたのおっしゃったように、その中で、あるものは三割のワクをこえなければいけない、あるものはそれでいいと言われたでしょう。確かに政治というものはそういうものだ。必要なものに力を入れなければならないし、必要じゃないものはあと回しにしなければいけない。厚生省の中で、三割のワクをかぶせられたら——厚生省の中の題目をあげなくてもおわかりでしょう。全部大事な問題ばかりなんです。これは五割必要だ、これは七割必要だといっても、そのくらい必要なものがある。厚生省が三割かぶせられたら、七割のものを三割にしなければならない。たまたま七割のものを五割に押えたら、ほかのものは三割五分であっても一割五分くらいに押えなければいけない。アクセントというのは国政全体で出さなければいけない。それを厚生省ワクをはめられるから厚生省——ほんとう厚生省については、迅速にやらなければならないし、金が相当たくさん要るし、すべてそういうものばかりです。そこでワクをはめられたら、厚生省全体のワクが下がる。ほんとう政治アクセントを出す意味からいったら、大臣としても、国務大臣としてそういうことはいけないという信念を持たなければならないし、特に、重大な問題が山積して、かかえておる厚生省主管大臣としては、断じてそういうことはならぬという立場にならなければいけないと思う。それをワクをある程度はめるのはいたし方ないというような弱腰であってはならない。特に厚生大臣はそれであってはいけない。厚生省仕事の中にあと回しにしていい仕事がありますか。いまの予算で十分な仕事がありますか。十分過ぎて、こんなものはあと回しでいい、予算がふえ過ぎたというのがあったらおっしゃっていただきたい。伺います。
  10. 坊秀男

    坊国務大臣 お説のとおり、厚生省所管予算というものは、総予算の中でも重大なる予算ばかりだと私は思っております。その中で、私は予算全体をいま見ておりませんが、これに対して何か減ってもいいのがあるかということを指摘しろ、こういうお話でございますが、それは今日ここで申し上げるだけの知識を私は持っておりませんけれども、厚生省予算というものは、各省予算に比べましても、私は厚生大臣でございますが、そういったような立場を離れましても、お説のとおり、非常に重大なる予算であるという認識を持っております。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 ですから、ほかの点も申し上げたいのでざっくばらんに申し上げますから、ざっくばらんに答えていただきたいと思うのですが、内閣をかばったり大蔵省をかばったりしないで、厚生省行政主管大臣であれば、厚生省予算要求は全部押えられて十分じゃない。これから出てくるすべての法案についても、これは与野党問わずどの委員も、予算の出し方が少ないことを徹底的に追及をされると思う。法案が出てこない問題についてもそうです。そういうもとになったのはワクをはめられておるからです。ほかの省で、予算を出さなくても、少なくてもいい省があります。それを全部三割にしたら、そこの主管大臣であり、主管担当官は、自分の省を守るために一生懸命やるでしょう。そうなればやはり似たようなことになってしまう。ところが厚生行政というのは、すべてやらなければならない問題が山積しておるのです。そのときに、大蔵省のイージーゴーイングなそういうやり方に徹底的に反発をしないということでは、厚生行政の将来は非常に暗たんたるものです。そういうお考えをまだ持っておるならば、あしたにでもやめていただきたい。総理大臣の首根っこをつかまえても、そういうことは許さぬというくらいの気魄を持ってやっていただかなくては、厚生行政は停滞してしまいます。そのような決意を持っていただけるかどうか。
  12. 坊秀男

    坊国務大臣 追って四十二年度の予算編成というものが当然行なわれなければならないわけでございますが、私はその四十三年度の予算編成にあたりましては、十分御趣旨を体しまして厚生省予算というものを増強していくという決意でございます。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 その決意は、ばく然としたことではなしに、ワクをはめることがいけないということを閣議ほんとうに熱心に主張していただけるかどうか、そのことが焦点です。さっきの御答弁でも、必ずしも、そういうワクを何とかかんとかということは、そう間違いでもない程度で、そっちがいいとは思ってはいられないと思うのです。大蔵省がおられるから遠慮しておられると思うけれども、これは断じていけないことです。ほんとうにいけないことです。最終的にワクにはめるのはいいんですよ。厚生省でやられて、こういうものがこの行政上は必要だという要求が出て、しかし、ほかの各省全部と対比して、予算の総ワクがない、こっちのほうが大事だからこれは待ってくれというのならいいんですが、厚生省の中で大事なものばかりそろっているところを三割に押えられたら、みんなが押えられるわけです。厚生省のある大事な予算と防衛庁のつまらぬ予算を比べたら、こっちのほうが大事だということはわかるはずです。厚生省自体で詰めているわけです。兵隊学校の飛行機に要る金と、厚生省——たとえば、今度少し予算をふやしたようですが、重度精神薄弱児の子を持つ親が、施設に入れることができないでどんなに苦労をしているかということを考えたときに、この程度の予算の増額では話になりません。施設に入れることが必要であれば、一年間で全部施設をつくって、全部そういう子供たちが入れる、そのくらいの勢いでやらなければならないのに、何でも年次計画というようなことでやる。その問の国民の不幸は絶えないのです。必要なものは一ぺんに来年全部やるというような覚悟で厚生省がやっても値切られるのです。それを自分のところから値切ってかかったら、そんなものはまともに進むものじゃない。値切るもとをつくっておる。大蔵省のやり方、しかも、ワクにおさめるのを最終的にしたらいいけれども、それを便宜にするためのイージーゴーイングなやり方を正さなければいけません。そういうことを閣議で極力主張していただけるかどうか、はっきり御答弁を願いたいと思います。主張していただけないようであれば、坊厚生大臣厚生行政に対する熱意は表面だけであって、内容はゼロであると私は考えたいと思います。
  14. 坊秀男

    坊国務大臣 国の予算の中で、私は厚生大臣として厚生省予算というものは、お説のとおり非常に大事なものであり、また厚生大臣でなくとも、ほかの各省予算に比べて重大なものであるという考えは持っております。しかし、また、私も国務大臣の末席を汚しております。そこで、厚生省予算だけが大事であって、今日の予算の中で何省の予算がつまらぬ予算だ、こういうことは私も考えられない。各省予算についてしさいに点検いたしてみますると、あるいはおっしゃるように、その中には必ずしも重要でないものがあるかもしれませんが、私は財政当局ではございませんし、しさいに点検をいたすような、そういったような機関でもございませんので、これはわかりかねます。わかりかねますが、厚生省予算は非常に大事なものであるという認識に終始立って、そうしていろいろな議論をしてまいりたい、かように考えております。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 具体的に閣議のことを申し上げておるわけです。私は坊さんより後輩ですが、先輩になまいきなことを言うようですが、一生懸命にこのことを考えておる。厚生省の諸政策で、急速に進めなければならない問題にブレーキをかける一つの要因は、第一次予算案を何%にとどめろという大蔵省の方針が非常な障害になっている。それをとどめなければ国政が動かないということはないのです。要求は全部出したらいいんです。各省、各局、各課、全部出したらいいんです。出して、そこの中でどれが大事であるかということを、各省なり大蔵省なりで相談して、それでワクをまとめたらいいんです。厚生省の中でみずから押えていたら、大事なものが一つも外へ出てこない。主計局がどんなに頭がよくても、各省全部のことはわからぬでしょう。かなり頭のいい、熱心な人がいますけれども、わからない。われわれ、これから、いろいろ具体的なことを言うけれども、それが出てこないのは、大部分、十のうち九までは予算関係で、大蔵省がすぐ承知しないということでとまっておる。一つ二つは御用学者の変な意見をつけて、変な厚生省だけの都合のいいようなへ理屈をつけて数字で出しておる。大部分は金に関係しておる。全部出したらいいのです。出してからそれはワクにはめなければならぬ。ほかのある省の第一番の政策よりは、厚生省の十五番目のほうの政策が大事だということがわかる。十五の政策の中で、これは十五番目だからあと回しだ、ところが十五番目のものとほかの省の第一番目のものを比べたら、十五番目のものがはるかに大事だということがある。特に厚生大臣はそういうことを考えていただかなければなりません。そのことについて、総ワク各省ごとにかぶせるということが重大な障害になっておる。総理大臣がどういう考えでそんなことを採択したか知りません。総理大臣に教えていただきたいと思う。佐藤榮作君の政治については、われわれずいぶん批判を持っておる。しかし、現に政権を担当しておる以上、現に国民のために行政を担当している以上、佐藤君があやまちをおかさないほうが国民のためにしあわせだ。直接に佐藤君にそれを言う努力をいたします。しかしながら、議会運営だとか官庁のほうの官僚的な点があって、佐藤君に一時間も二時間も時間をあけてくれと言ってもなかなかあけない。あなたはそれを言う閣議という場を持っておる。それで申し上げておるわけです。その予算の総ワクをきめるというような、形式的な、政治の大事なアクセントを消滅させるような、そんな間違った方法はやめようではないかと、ほかの閣僚にも話してください。総理大臣にもそういうふうに言ってください。佐藤君が政治にまじめでない人でない限り、よほど問題をわきまえない、あるいは理解できないような能力の少ない人でない限り、あなたが熱心に言われたらわかるはずです。閣議でそれを強力に主張してくださることをぜひ表明をしていただきたい。
  16. 坊秀男

    坊国務大臣 非常に御熱心なる御意見でございます。これにつきましては、予算編成一つの今日の方法でございますので、慎重に私も考えさしていただきます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 突発的にいままで申し上げておらないようなことを申し上げたので、聡明な厚生大臣も迷っておられると思いますが、次回私がここで質問に立ちますとき、あるいはまた同じ考えを持った同僚の委員が立たれますとき、それまでにあなたとしての決心を伺いたいと思う。そんなものはぼやぼや待てません。予算編成はすぐくる。あなたがもしかりに——留任していただくのがあたりまえだが、かわる場合も、そういうことについて次の大臣に厳重に申し送りしてもらわないと、またこのあやまちが来年繰り返されることになる。ですから、次回に私がこの委員会質問に立ったときに、あるいはほかの同じ意見を持った委員質問があったときに、それまでに決心を披瀝していただくように、ぜひ数日中に決心を固めておいていただきたいと思う。否定的な答弁は私どもはお断わりいたしたい。それを否定なさるようであれば、みずから厚生行政に十二分に熱心でないことを体し、辞表内閣に提出をしていただきたい。  次の質問に移ります。厚生大臣はいろいろの大切なことを所管をしておられますが、その中で非常に大きな大切な部分は、社会保障という部分になろうと思います。それについて全力を尽くして前進させるように決意をしておられるはずだと思いますが、簡単に御決意を伺いたい。
  18. 坊秀男

    坊国務大臣 社会保障国民の生活にまさに直結しておる制度でございまして、この社会保障によりまして、国民が健康で平和で文化的な生活をしていけるかいけないかという非常に大事な行政でございます。この社会保障につきましては、先ほど来も申し上げておるように、いろいろの政策がございますけれども、その中でも最もウエートの高い行政だと考えております。ことに佐藤内閣は、常に言明いたしておりますように、入間尊重というような理念から発想したところの政策を打ち出す、こう申しておるのでございまするから、特に佐藤内閣といたしましてはこの点を重大視しておる。したがいまして、その内閣の末席を汚しております私といたしましても、そういったようなことから考えまして、大きく見れば国民にとって非常に大事な、何よりも大事なことである。佐藤内閣の政策にとりましても、これは何よりも大事なことである、かような考え方に基づいて、私は厚生行政社会保障、その行政をやってまいりたい、こういう決意でございます。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 坊さんが熱心に御見解を述べて下さったあとで、すぐ続いて質問を申し上げるところなんですが、専門の省の長官じゃなしに、総務長官というかけ持ちの方に来ていただきましたので、ちょっと十五分ほど、大事な問題でございますから、総務長官にずばりそのもので申し上げたいと思います。  この前の四月六日の予算委員会で、内閣総理大臣、それから総務長官、あるいは厚生大臣もおられましたが、各大臣に同和問題について御質問を申し上げました。これは厚生行政とも関係があるのですが、時間の関係上、総務長官にずばり申し上げますが、同和対策特別措置法について、内閣総理大臣から、これを非常に急いで今国会に間に合うように出したい、そしてその内容を早くつくるために、関係各省庁、ことに総理府になりますが、それを厳重に督励をしたい。それからその内容については、非常におこがましい話でございますが、総理大臣の言によれば、八木一男の意見を聞いて、そしてよい成案をつくりたいという御答弁だった。これは速記録を持っておりますが、載っておりますので、これは総務長官御記憶だと思いますが、この点御記憶かどうかだけちょっと……。
  20. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 あの予算委員会における八木委員の非常に御熱心な御意見並びに政府とのやりとり、私、全部承知いたしております。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、その準備がどのくらい進んでおるか。今国会に問に合うようにりっぱな法案を提案するということであります。今国会が六月の末までであれば、少なくとも五月の末までに国会に提案がされないと、普通には成立がむずかしいのではないか。もちろん六月の上旬であっても、そういった根回しがよくなればぱっぱっと通ることもございますけれども、いろいろなことでおくれがちでありますから、少なくとも今月中には、いいかげんな成案ではなしに、りっぱな成案を得て国会に提出していただかないと間に合わない。それで、主管国務大臣であられる総務長官は——そこに宮崎君もおられますが、有能で熱心な担当官がおられますので、ぜひ急速に出していただきたいと思うわけです。  そこで、同和対策協議会というものがあります。同和対策協議会というところは、五カ年計画なり、あるいはまたその他の問題について建議権を持っておりますから、そこでこの同和対策特別措置法の問題について、積極的に熱心な内容のいい建議が時間的に間に合う状態において出されれば、これを尊重されてしかるべきだと思います。しかし、私の仄聞したところの同和対策協議会の審議過程では、これは時間的に間に合わない。大体一月に一回ずつしか開かれておりませんし、五カ年計画のための実態調査を主眼としておられるようであります。もちろん中間答申においては、特別措置法の提出と並行的に進めるようにという意思を表示しておりますし、堀木会長以下熱心な委員の方々も、そういう問題について、すぐできることを期待はいたしておられると思いますけれども、ほんとうの協議会という場でやや学者的に問題を審議する人たちと、すぐに政治を動かさなければならない、そういう状態との間には、少し感覚的なズレがある。佐藤榮作さんは、内閣総理大臣は、去年の二月の本会議で多賀谷真稔君の質問に対して、これを提出するという約束をしておられるわけです。多賀谷君の要求は、昨年の二月中に提出してくれということでありました。これに対して総理大臣は、二月中にという約束はできないけれども至急に出したいと言った。普通の概念では、昨年三月にこれが提出をされていなければ、この質問に対する答弁を実際に実行されたとは言えないわけであります。昨年、これを担当しておった総理府の安井総務長官はじめ、副長官あるいはまた担当の事務局の方は、熱心に取り組まれました。しかし、これは御承知だろうと思いますが、あるブレーキがかかって、その成案ができない。そうして最終的に、非常に熱心に関係者は努力をされましたけれども、努力の最中に、総理府にILO問題と祝日法という、いい悪いは別として、非常に与野党の焦点になった問題をかかえておられたことと時間的にぶつかった関係もあって、ついに成案提出が問に合わなかった。それについて総理大臣佐藤榮作さんは、おもに交渉に当たっておりました私のところに、みずから立ってこられて、この提出が今国会に間に合わなかったことは非常に残念で、申しわけない、次回の国会にはりっぱなものを至急に提出をするということを委員会の部屋の中でお約束をされたわけであります。これは委員会の討論じゃないです。向こうから来られた。そういう状態であります。総理大臣については、ほかの点についてはわれわれは批判を持っておりますが、内閣総理大臣はこの点について、早く出して早く成立させたいという非常な熱意を去年から持っておられるわけでございますが、総理府のたくさんの案件をかかえられた条件、その熱心な努力にかかわらず中途で少しじゃまが入った条件ということで、この前うまくできませんでした。こういうような条件を排除して、ことしどうしても成立をさせなければならない。成立をさせなければならない理由については、申し上げたら幾らでも申し上げられます。だけれども、総理府の長官は御存じだと思う。非常に時間がかかりますから、必要であれば申し上げますけれども、申し上げなくても必要な理由はおわかりだと思う。  そこで、ほんとうにお願いしたいのは、総理大臣がいかに決意を持っていても、総理大臣が提出の根回しをするわけではございません。塚原さんが熱意を持ってやられ、宮崎君が一生懸命原案を急速につくられる、その二つのことにかかっておる。塚原さんは、内閣の約束、しかも一時的な約束じゃありません。これは国会の論議でも十年間の歴史があります。日本の歴史というのは、四百年の歴史があるわけです。その問題を解決する一つの大きな推進力としての同和対策特別措置法を、あなたが今国会にちゃんとスムーズに提出させて、またそれが成立する根回しをされる、そうしていただく御責任がおありになる。またぜひそうしていただきたいと思うわけです。そういう点できょう特においでを願ったのですが、ことに熱心な国務大臣坊さんもおられます。閣議その他において、ほかの国務大臣の方々の御協力をぜひお願いしたいわけであります。厚生省は昔は、総理府がこの問題を担当されるまでは、実際的なこの問題についての窓口であり、事務局であったというような歴史を持っておられます。そういう点で厚生大臣の御協力もお願いしたいわけでございますが、まず第一に塚原総務長官の強い御決意を伺いたいと思うのです。  特に同和対策協議会の問題については、いま申し上げたこと、これはもうほんとうに厳重に考えていただきたいと思う。協議会の運行は一月やると次は翌月になります。ことしの五月二十四日に開催が予想されているようであります。しかしながら、いままでの旧習を脱却するのは、なかなかむずかしいと思う。急いで六月の上旬に開くのが関の山、またこの次七月に開くのが関の山、それではもう間に合わない。五月中に協議会が数日連続的に開いて、この問題に取り組んでいただければ——あの熱心な方々の御論議を参照されることは非常に喜ばしいと思いまするが、そうではなしに、慎重審議ということでこれを延ばされるということであれば、これはほんとうに問題推進のためにブレーキになる。その意味で、あれは、諮問をしなければならないというような、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会のような法律規定はございません。協議会が建議権を持っているだけであります。ですから、協議会が急速にそれをやっていただけばいいですが、そうでないときには総理府として、断じて責任を持って本月中に提出をする、その決意を固めていただきたいと思うのです。この問題については各党にお話しになるのはいいですが、各党でブレーキがかかったならば、それには一切顧慮をされずに提出をしていただきたいと思うのです。内閣総理大臣とのお約束でありますし、自由民主党総裁との約束であります。その部局のこの問題についてのごくわずかな知識、昔からの歴史を知らない人が無理解なために一言二言言ったようなことで、こういう問題についてブレーキが去年かかりました。わからず屋がちょっと言ったそのブレーキのために、何百万の人の問題を解決することがおくれているわけです。ですから、協力的な状態であれば、各政党にはかっていただいてけっこうであります。しかし、少しでも無理解で、まだ勉強しなければわからないとか、差別を受けてない人間が感覚で、そんなものはなくなったとか、そういったものを出せば眠った子を起こすというような——審議会では全部そういうことについては考えちゃいけないと書いてある。国会の論議でも総理大臣とわれわれとの間の約束になっている。そういうことを蒸し返しをするような、ほかのことでは練達の人であっても、この問題については知識が少ない人たちの心ない一言二言の発言でブレーキがかかるというようなことがこの前ありました。そういうような状態の場合には、内閣は提出権を持っているわけですし、それを与党、野党にはからなければならないという責任はありません。国会に提出してからこれは論議をしたらいいわけでございまするから、ブレーキがかかる要因は一切排除して、内閣責任で今月中にりっぱなものをぜひ提出をしていただきたいと思うわけです。この点についての塚原総務長官の前向きな御熱心な御決意をぜひ承らしていただきたいと思います。
  22. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 同和問題についての八木委員の非常に御熱意あるお話は、国会を通じ、またプライベートにもあなたから私はたびたび承っております。私の所管するところ、きわめて守備範囲が広いからこれをどうこうというような意味は全然ございません。私も非常に重要な問題であると考えて、至らない者ではありまするが、この問題の勉強をさせていただいてまいったわけであります。  ただいま同和対策協議会のお話が出ましたけれども、これは私は、御指摘のように決して怠慢であるとは考えておりません。非常に熱心にまじめにやっていただいていると私はむしろ感謝をいたしております。しかし、八木委員が御指摘のような点があれば、関係者に対して、私からもいろいろと御相談をいたすことは、これは間違いございません。  なお、この間の二月に出ました中間答申、前後五カ年ずつの例の長期計画の問題、それから各省に対するいろいろの協力の問題、あわせて立法措置の問題、これは八木委員すべて御承知であろうと思いまするからこまかくは申しません。これがあるから、その立法措置についての協議会の答申を待っているのではないかというようなことを言う方がおりまするが、私はそうではございません。しかし少なくとも、法的にどういう拘束力があるかないかは別として、そういうものを打ち出している以上、これも尊重しなければならないという気持ちも私は十分持っております。しかし、かといってそれのみにまかせておいて政府が何もしないという態度はとっておりません。八木委員がこの間の予算総会でも、各国務大臣一人一人から、あるいは石炭の問題について、あるいは社会保障の問題について、あるいは財政上の問題について、それぞれ注文をつけておられたことも私よく承知いたしております。それだけ、これは各省にまたがった、おそらく全省にまたがっている非常に大きな問題であり、当該地域の住民の福祉ということを未来永劫に決定しなければならない問題でありまするから、これはややオーバーなことばかもしれませんが、非常に重要な問題でありまするだけに、慎重を期していかなければならぬ。  そこで、協議会の動きとは別に、いわゆる総合調整にあたる総理府といたしましては、各省の御意見も聞き、もちろんその中には八木さんがいろいろ御注文された点もたくさんあることは、これは当然でありまするが、そういうものをまとめながら立法措置の準備をいたしておるところでございます。決して協議会のあれにおまかせするというわけではございません。並行しているというか、あるいはむしろこちらが先行しなければならぬ問題かもしれませんが、そういう態度では臨んでいるわけでございます。  なお、協議会につきましては、このところちょっと開かれていないという御批判もありまするが、私の知るところでは、二十四日からこれは開かれます。もちろんその法的措置についても議題になります。なお一般調査、精密調査の前から問題になっておる実態調査、あるいはそのテーマのきめ方、そういう問題もあわせまして議題になると思っております。この協議会も相当活発に動くと私は考えております。何せ非常に広範にわたっている問題でありまするので、これをどう総合調整してどういうものができ上がるかということについては、むずかしい問題もありましょうけれども、八木委員のいろいろ御要望の点もありましたので、私としてもできるだけの努力をしていきたいと考えております。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 たいへん前向きな御熱心な御答弁で、その点感謝を申し上げたいと思います。  協議会のことについては、協議会の方がこの問題全体について一生懸命取っ組んでおられることは、私も認めたいと思います。その努力についても感謝をいたしているわけです。ただ、政治に携わっている者と学者的な点でちょっと考え方がズレるといいますか、ちょっとぴんとこないところがある。たとえば協議会としては、五カ年計画について一生懸命やりたい、そのために実態調査を一生懸命やりたいということであります。それから、実態調査をやり、五カ年計画を定め、予算要求していくということ、それで必要があればそういう法律をそのときにつくったらいいんじゃないかというお考えの方が多いように、私、想像するわけです。間違っていれば幸いであります。ところが、総理府のほうで昨年用意された法律、それは内容が非常に不十分でありますが、しかし非常に努力された一つの案であります。それと、私どもがいろいろ申し上げたこと、これは実態調査とか五カ年計画とか、そういうものよりあとでなければならないという問題では断じてないわけです。むしろ、そういうような特別措置法のことがきまって、こういうような法制体制のもとで五カ年計画が早く進むという性質のものであります。その中に、具体的にそれに関連する具体法をつくらなきゃならない部分が後に出てくるかもしれません。それはその時点で考えたらいいと思う。いま政府が取っ組まれ、われわれも一生懸命考えて、こういうことがこの解決に必要であるという項目、わかったこと自体は、いま法律で制定をして、その背景のもとで五カ年計画が早く進む、その背景のもとで実際の行政が早く進む、予算についても措置ができるというようになっていかなきゃいけないと思う。これは塚原総務長官がさっきの御答弁中に、十分それを御理解の御答弁を伺っておりまして、二番せんじみたいになって恐縮でございますが、大事な問題でございますので、申し上げたわけでございます。  とにかく、同和対策特別措置法の内容のいいものを今国会に急速に提出をしていただいて、これは国会審議によりますけれども、とにかく成立のできる時間的な条件のもとに提出をしていただきたい。内容は一番重要なもので、私どもも、総理大臣の御了承を得ましたので、塚原さんなり宮崎君のところにいろいろ伺って、こういうふうにしていただいたらどうかということを申し上げに参りますけれども、そういうものをぜひつくっていただきたいと思います。協議会が時間的にそれに問に合うようにやっていただければ、これは大いに歓迎していい。ただ、協議会が時間的に間に合わない要素があるというときには、政府責任で、協議会がなおじっくり審議されても早く御提出を願いたい、そういうことであります。そういうことで時間を区切ると、なかなか御答弁はしにくいと思いますが、総務長官やその他の方々の御努力で今回お願いをしたいと思うのです。今月中によい成案が国会に提出されるというふうにあらゆる御努力を傾注していただいて、これが実現をしますようにお願いをいたしたいと思います。その点についてひとつ。
  24. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 同和対策協議会のメンバーについてのお考え方については、あまり学者ばかりであるということですが、私は八木委員とやや考えを異にする点がありますが、それはいいでしょう。同じ目標に向かって進んでいただけるならば一番しあわせなんです。そして、二月に出た答申、この中に立法措置ということもありますので、法的拘束力を云々するわけではございませんが、やはり私は、これに十分ウエートを置かなければならぬ、こういう気持ちは持っております。二十四日から開かれる会合におきましても法的な措置の問題が出ることは当然でございますけれども、八木委員御指摘のようなことは、委員の方々にも私申し上げたつもりでおります。日を区切ってということについては、それじゃ何月何日ということはできませんけれども、非常に広範にわたってむずかしい問題ではありますが、総合調整を急いではかって努力したい、このように考えております。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 何日と申し上げませんが、今国会に提出されて、それが今国会に間に合うように、最善の努力をひとつお願いをいたしておきます。お忙しいところどうもありがとうございました。  厚生大臣、どうも失礼いたしました。いま総務長官に申し上げたことについては、厚生大臣も非常に重大な関係のある省を預かっておられますし、国務大臣としてひとつ最善の御努力、御協力をいただきたいと思いますが、その点についてひとつ。
  26. 坊秀男

    坊国務大臣 同和対策の問題につきましては、塚原長官がただいま御答申弁し上げたことは、私も全くそのとおりだと思います。それにつきましても、厚生省といたしましては、福祉行政あるいは環境衛生、非常にこれに関係の深いものを持っておりますので、でき得る限り私も塚原長官に協力を申し上げよう、かように考えております。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 先ほどの問題に移りたいと思います。  社会保障について厚生大臣から御決意を伺いました。ところで、いまの厚生行政の中で一番困った問題は、社会保障が社会保険ということばにすりかえられている。厚生大臣のごあいさつの印刷物を拝見しました。よく読んでみましたが、今度はうまくつくってあって、前段に社会保障、医療保障とか所得保障と書いてあって、保険とごたごたに書かないで、具体的な問題としては医療保険の何とかかんとかというふうに分けて書いてある。ところが、この前までははなはだできが悪くて、社会保障と書いていきなり社会保険とすりかえて、よく文句を言ったところであります。文章がうまくつくってあっても、実態が同じだったら何もならないと思う。社会保障というのは、憲法二十五条の第一項を受けて、第二項で政府がこれをどんどんやらなければならないように規定をされておるわけです。二十五条のほうでは、国は社会保障の向上および増進につとめなければならないという点があるわけです。そういうことであって、社会保険を進めろなんということは、憲法には一つも書いてないのです。ところが厚生省は伝統的に社会保障を社会保険にすりかえてしまう。これは、伝統的に保険局も悪ければ、年金局も悪ければ、ありとあらゆるところでそういう弊害を起こしておる。この問題について厚生大臣はどうお考えになりますか。
  28. 坊秀男

    坊国務大臣 現行の社会保障制度、これは現行の制度としては保険方式をとっておる、こういうふうに考えております。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 いいと思うか悪いと思うかですね。わからなければ、まだ結論がつかなければ、結論がついていないでいいのです。いいと思うか悪いと思うか、あるいはまた、その問題については結論がつかなければつかない、どちらでもけっこうです。
  30. 坊秀男

    坊国務大臣 保険方式をとっておることについて、いいか悪いかという私の見解を述べろ、こういうことでございますか。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 ええ。
  32. 坊秀男

    坊国務大臣 実際、国民の健康を保障していく上におきまして、保障制度でいくか、保険制度でいくかということについては、この方式は非常に私は大事なことだと思いまして、いま私は直ちに保険方式が悪いという結論は、これは申し上げかねます。保険制度をとっていくことにつきましても、非常にいい点もあろうと思います。保障でいくというところについても、これはやはりその中に考慮を要しなければならぬというふうに思います。だから私は、現行の制度、保険制度というものについて、これはよろしくないんだというようなことを、今日ここで結論的に申し上げるわけにはまいらないと思います。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 坊さんはりっぱな政治家で、ほかの点についてはすべて大先輩であれですけれども、先ほども言ったことに返るのですが、ここでは社会保障論を与野党の委員がずっとやっておられまして、その問題については、概念は大体統一されたところぐらいまできているわけです。ところが、厚生大臣はほかの点ではりっぱな政治家でありますが、ここにおいでになると、社会保障と社会保険をごちゃごちゃにして、はっきり認識を持っておられない。それでは困るわけです。ですから、これは急速に考え方を正しい方向に向けていただきたい。すべて日本の国の政治は憲法から由来しているはずです。憲法には社会保障という字は書いてありません。社会保障という字が書いてある。憲法九十九条については、坊さんにおいては、国会議員としてだけではなしに、国務大臣としても重大な責任があるわけです。大蔵省のだれが言おうが、厚生省のどこが言おうが、社会保障と社会保険がどっちが大事だというときに、ずばり社会保障が大事だという答えが出なければいけないわけです。そうでなければ国務大臣としての資格はありません。憲法九十九条違反であります。資格がないわけです。それを腹に据えて厚生行政に当たっていただきたい。(「資格ある」と呼ぶ者あり)委員長質問をスムーズにする激励的な発言は私は歓迎しますが、茶々を入れるような発言をする。これは常習犯です。これは厳重に注意してください。
  34. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 さっき要請しましたから、今度言ったらどなりつけてください。  そしていま社会保険というものが行なわれている実態があります。ですから、厚生大臣がいきなり総理大臣になられても、これはあすからすぐ社会保障に全部変えるということが無理なことはわかっています。無理なことは申し上げませんけれども、その社会保険の中の悪い点を改めて、社会保障のほうに持っていく努力がなければ、これは厚生大臣としての資格がない。ところが、保険局や年金局は、特に保険局はこのごろ最もけしからぬけれども、社会保険というのはいいものだと思っている。こんな者は、公務員もやはり九十九条を尊重する責任があるのですから、資格がない。いろいろなあなた方が審議を委嘱される学者連にもそういうことがある。社会保険理念からこれはしょうがないということを言う。そんな者は厚生省の諮問機関の学者の資格がない。社会保障と社会保険と並べたら、社会保障のほうをとらなければならないという原則を腹の中に据えておいていただきたい。社会保障的に見ればこうであるけれども、社会保険的に見ればこうであるからしかたがないというようなことは、厚生大臣は舌が裂けても言えない立場にある。各局長もそれは言ってはいけないのです。社会保険理念というのは、社会とついておりますけれども、保険システムがもとになっている。保険システムというのは、保険料を払って、その割合において反対給付を受けるというのが原則であります。社会保障というものは、日本国民の必要な人に必要な給付が即時無条件でいくというのが原則でなければなりません。その問に具体的に非常な相克がありますけれども、その社会保障の理念のほうに、現在のひん曲がった社会保険を向けていかなければならない。ところが厚生省の原局では、悪いほうの社会保険の理屈のほうに向けていこうという傾向がある。保険局も年金局もみななべてそうです。幾分良心的な努力をするときもありますけれども、総体的に、特に保険局はけしからぬ。ところが、問題がむずかしいですから、坊さんが非常に熱心に努力されても、保険局でつくった保険理念、しかも自分の好きな学者を集めて、保険理念がいいというようなことを学者が言えば、何でもいいように思う日本の国情があります。どんなに厚生省の息がかかった学者でも、学者といえば正しいことを言う、公務員といえば正確なことを言う、議員といえば我田引水だというような、実に間違った世の中の風潮がある。そういうことに便乗して、そういう学者を集めて、自分たちの間違った考え方が正しいように、そういうような場面をつくっていく十数年来の悪い傾向、そういう悪い傾向を、厚生省を預かって半年の厚生大臣が断じて押えて正しい方向に持っていくことは、相当たいへんなことです。坊さんは一生懸命そういう努力をされていると思いますが、決意を固めていかなければならない。この社会労働委員会の論議のほうが、各局の厚生大臣に対する御進言よりは、はるかに進んでいるわけです。この論議の精神にしたがって各局を押える、各局の誤りを正す、そういう考え方に立たないと、厚生大臣ほんとう責任は全うできないと思う。そのような決意でこれから当たっていかれるかどうか、ひとつ決意を伺わせていただきたい。
  36. 坊秀男

    坊国務大臣 八木さんの非常に御熱心なる御議論をお聞きしたのでありますが、実際に国民の健康を保全していくというためには、保険の方式がいいか、保障の方式がいいかということは、私はここではっきりとこのほうがいいのだということを申し上げるだけの用意もございません。これもまた、私は先ほども申し上げましたとおりに、まだ去年十二月に就任いたしまして、勉強の過程にあります。このことについてはこれから熱心に研究、勉強をしていきたい、かように思っています。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 それは歴代の厚生大臣が同じように熱心であり、あるいは同じように不十分であったわけです。坊さんばかりにぶつかっては悪いですけれども、厚生大臣でいらっしゃるのですから、あなたがほんとうに熱心に、急速に取り組まれるかどうかで国民のしあわせが変わってくる。個人としての坊さんだったら、坊さんがおいやじゃなかったら、一緒に酒もくみかわしたいし、お茶も飲んで話もしたい。非常にりっぱな親しい先輩ですけれども、大臣となればそういうことでは許されないと思う。厚生行政を預かっておるわけですからね。そういう点で、警戒をしないでお答え願いたいと思う。私の言うことで正しいことがあったら、そういうようにやったほうが国政のためにいいのです。私の言うことが間違っておれば、それはやらなくていい。しかし、何か言えば言質をとられてやらなければならないようになる。大蔵大臣主計局のうるさ方じゃないけれども、そこにいる、何かごちゃごちゃ言ってあとで文句が出ては厚生省の人が困るというまでは考えられないかもしれないけれども、もし一万分の一でもそういう考え方があったら非常に困る。そういうことはないと思いますけれども、とにかく、ずばり憲法の条章にきまったら、社会保障をやらなければならない責任はあなたが持っておられる。それと、社会保険というイージーゴーイングにできたものと、どっちがいいかということは、社会保障のほうがいいと言下に御答弁をなさらなければならない。ただ、それに向けるためには、社会保険が現に具体的にやっている膨大な組織を一ぺんに向けられないから、それをどうしようということをお考えになる、相談する、それはいい。社会保障のほうがいいということについては、憲法の条文をお読みになったら、あなたの任務だし、即時にそういう御答弁が出るような気魄がほしいと思う。ぼくだって無理なことは言いません。あなたが総理大臣になられたって、いまの社会保険システムを一年間で全部社会保障システムに変えることはできない。それはわかります。厚生大臣だからといって、言ってもできないことはしようがない。しかし理念としては、あなたは社会保障をやらなければならない責任を憲法上持っている。社会保険というものは別種のものだ。憲法の理念にしたがってやはりそっちに近づける努力決意が即座にほしい。  具体的な問題に移ります。禅問答みたいなことを繰り返してもしようがないけれども、一応はこれを申し上げておけば、聡明な坊厚生大臣決意を強めていただく要因になると思いますので、申し上げておきます。局長が、議会で論議されてもそんなことは困りますと言ったときに、その理念が、各局のいままでの間違った伝統にしたがった考え方で困りますということならば、一喝してください。局長に支配される大臣であってはいけない。課長に支配される大臣であってはいけないと思う。そういう傾向が非常にあるのです。問題が複雑なだけに、聡明な大臣でものみ込めないから、局長の言うとおりになってしまう。これから論議の過程で、そういうことにならないようにしていただきたい。  そこで一つ例をあげます。たとえば十八歳で全盲になった人——昨日、質問はどういう内容ですかという方に御連絡申し上げておきましたから、突然のことじゃありません。答弁要旨をそのまま読まれるのではなくて、こちらを聞いてください。そんな紋切り型の局長や課長の書いたものを読まれたのでは、何にもならない。十八歳の人が全盲になった。このときに、いまの制度では障害福祉年金——今度わずかの金額が上がる案が出るそうですが、それしか受けられません。ところが二十二歳——二十一歳でもそうですが、二十二歳の人が全盲になると、いまの国民年金法では、年間七万二千円、月に六千円の支給が受けられることになります。十八歳の人は、今度上がれば二千五百円ですか、いま二千三百円というものしか受けられない。しかも片一方の月六千円のほうは所得制限がありません。片一方のほうには世帯の所得制限もあります。なぜそういうことになるか。これが非常に欠陥だと思う。それはいいことではないと思う。十八歳の人は気の毒だ、なぜ二十二歳の人と同じように七万二千円がもらえないか、なぜ所得制限なしにもらえないか、そういう制度の欠陥はどこから来ているかということはおわかりでしょうか。
  38. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘のような事実のあることは私も承知いたしております。これは、先ほど伏線をと言うとはなはだ失礼でありますけれども、保険方式をとっておるということから、そういったような結果が生じておるということは、私も承知しております。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 たくさんそういう例がありますけれども、時間がないから一つにしておきますが、それはいいと思われますか。悪いと思われますか。
  40. 坊秀男

    坊国務大臣 そういったような事実のあらわれてまいっておることは、これは必ずしもいいことではない、かように考えております。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 もっとはっきり言ってください。必ずしもじゃなくて、絶対に悪いと思うのですか。そうお思いになりませんか。必ずしもというのは、どういう意味でそういうものをつけられたのですか。
  42. 坊秀男

    坊国務大臣 ものごとの局所だけをながめてみましたならば、確かに私は十八歳の障害者というものはたいへんにお気の毒だと思いますが、全体のものごとを考えてみますと、先ほども申し上げましたとおり、一がいに私は保険制度をとっておるということが全面的に悪いのだというふうには考えない。社会保障を実際運営していく上におきましては、いま御指摘になりました点は、確かに一つの欠陥であろうと私は思いますけれども、全体的のことを考えてみますと、必ずしもそこの局所だけをいま改めるというようなことでなしに、全体的に、総合的に判断をいたしまして、そして保障、保険というようなことについての考えをまとめていかねばなるまい、かように考えております。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 よけいなことをおっしゃるものじゃないですよ。いま私の質問したのは、十八歳の全盲の人が所得制限を受けて、そして二千三百円しかもらえないで、二十二歳で全盲になった人は所得制限なしに六千円もらえる、そういうことがいいことか悪いことかということを伺っただけです。こんな問題です。社会保険全体はあまりよくわからないと言っておって、社会保険をいいもののように言う。そんなばかなことがありますか。わからないならわからないなりで、ざっくばらんに言ったらいいですよ。どうして社会保険がいいという理由をばちばちと言えるのですか。社会保険の悪い点を社会保障に直すために一つ一つ例をあげている。その例だけお答えになったらいいのです。社会保険がいいというなら、私は社会保障はいたしません、社会保険がいいです、憲法第九十九条は問題ではありません、国務大臣なんというのはいたしませんとおっしゃっていただけば、それでもいいのです。法律に従ったり、社会保障の理念に従ったり、そういうことで政策を進めていかなければ、ものの発展がありませんよ。十八歳と二十二歳の人の、片一方が月六千円を無条件で支給を受ける、片一方が月二千三百円の条件つきの支給しか受けられない。同じ国民でありながらこういう不公平があっていいのかどうか。これは変な冠詞をつけないで、絶対に悪いことだ——特にこういうことは厚生行政のあれですからね。これは悪いことかどうかはっきり言ってください。絶対に悪いことです。
  44. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘の点は、これは確かにいいことではないと思います。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 まあけっこうですけれども、もっと正面から、いいことではないという言い方、悪いことだとなぜ言えないのですか。ざっくばらんに言わなければ問題は進みませんよ。(「いろいろ仕組みはあるからね」と呼ぶ者あり)委員長、約束のとおり言ってください。茶々を入れるのは不規則発言で断じて禁止をして、禁止をしなければ退場を命じてください。
  46. 川野芳滿

    川野委員長 どうぞ発言を続けてください。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 委員長、注意しなさい。約束を守らなければ、委員長資格はないじゃないか。さっき約束したじゃないか。委員長、注意。
  48. 川野芳滿

    川野委員長 発言を続けてください。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 注意したまえ。
  50. 川野芳滿

    川野委員長 静粛に願います。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 そうなりますと、厚生大臣、それがどういう理屈でそういうふうになっていないかおわかりでございましょうか、ちょっと伺います。
  52. 坊秀男

    坊国務大臣 障害年金でございますが、障害年金の掛け金というものは、二十歳から始まってこの年金に加入するということでございまして、加入以前から障害者であるということがわかっておるということは、これが保険方式をとっておりますれば、初めからの保険事故ということではないから、そこで二十歳以後の障害というものについては障害年金がもらえる、こういうことであろうと思います。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 それは非常に不当なことであるというのはおわかりであろうと思うのです。民間の保険会社なら、そういう事故が起こりやすい人、また事故が起こった人を入れて、それに保険のよけいな給付をしたら会社の会計がひっくり返ってしまうから、そういう病気の人はなかなか入れないとか、すでに死にかかっている人は入れないとか、そういうことはあたりまえでしょう。国の社会保障はそういうことであってはならない。国の社会保障というのは、そういうことに対処して、必要な人に無条件でいくようにしなければならない。それを保険事故というような名前を使ってそれができないというところに保険の冷酷性がある。保険では保険料を払わなければ反対給付が受けられない、その原則というものは、保険料を払える人はたくさんの給付を受けられる。何にも社会保障にならないのですね。いまの民間の生命保険では、生死混合保険では、百倍の保険料を払えば百倍の契約ができて、死んだときも生きたときも百倍の保険金が入る。貧しい人が病気になったり、障害を受けたり、その人がなくなって遺族が困ったときに助けるという制度は、そういうものではだめなんですね。一番貧しい人が保険料が払えない、払えなければ一番給付を受ける必要性があるのに給付が受けられないということになるわけです。民間の保険とはそういう冷酷なものです。金を持って、ある程度の余裕があって、そう心配ない人がさらに心配をなくするための制度です。国の社会保障というものはそういうものではありません。保険料の払えない人でも、ほんとうにそういう給付が必要なときには給付ができるようにならなければいけません。しかもこの場合は少し違ったもっと特別な事情です。十八歳の人が保険料を払うから入れてくれと言っても入れてくれない。十五歳から払うから国民年金制度に入れてくれと言っても入れてくれない。本人がどんなに努力しても全盲の障害に対する国の給付を受け取れない。そんな冷酷な制度がありますか。その制度のもとは保険思想です。国民年金制度をつくるときに、民間の協栄生命の重役などを迎えて保険理論を組み立てた。何たる失態ですか。そんなことを年金局がやったんです。民間の保険と国の社会保障というものは全然性質が違う。年金のもとをつくったその協栄生命の重役かなんかは、それはその人なりにまじめに言ったかもしれません。民間の経営理念を持つ人を入れて国の社会保障のもとをつくる、大間違いだ。その大間違いについてここで十年間も何回も何回も言っておる。一回目の間違いはいいですよ。何回も言っておるのを一つも直さない。そんなことで厚生省が成り立つものか。関係の公務員が職務を果たしていると言えるかどうか。ほかに大きな金の問題もたくさんありますが、これはそんなに大きな金ではありません。金の問題もあるでしょうが、保険事故という考え方をそこでのけると保険思想がくずれてくる——妙な意地です。憲法に違反した変な立て方をして、その間違った立て方を絶対に守りたい。国民がどうなろうと、役人のメンツさえ立てばよいということで、保険思想を守りたい、そういうことばかり言っている学者を集めて、それを正当化する。大臣が来ても、絶対にこれは正しいんです、そんなことを国会でどう言っても、そんなことは直さないというようなことを言う。総理大臣以下幾ら言うたってうわのそらで、人間尊重とか社会開発とかいうのは表題を言っておるだけで、ほんとうのことを考えていない。不幸なのは国民ですよ。そういうことがあります。これは一例です。社会保険というものはそういう非常に冷酷なものである。保険料を払った割合によって反対給付をする。社会保険というのは、それに社会というのを冠しておるから、それを幾ぶんブレーキをかけて、底上げしたり、定額部分をつくったり、医療保障についてはある程度同じ給付をしたりして、直ってはおります。ですからそれを不完全です。その不完全なものを、保険局あたりがまたもっと不完全なほうに直すというような意向です。今後の赤字対策にそういうことを考えておる。極悪非道です。そういうものを改めて、ほんとう国民のための社会保障をやるために考えていかれる。保険局が何を言おうと、年金局が何を言おうと、官房が何を言おうと、一番最高機関の国会の論議を支点にして、その面で行政官庁を指導する、その問題で厚生省の意見をまとめて、大蔵省が何と言おうとこれを貫く、そのくらいの思想になっていただきたいと思う。決意のほどを伺っておきたい。
  54. 坊秀男

    坊国務大臣 御指摘の点についての八木委員のお気持ちなりその理論は、私もよく理解できます。そこで、今後国民年金の給付をどういうふうにやっていくかということは、それは検討してまいらなければならない問題だと思います。さような意味におきまして、今後ともこの問題についてできるだけ研究をしてまいりたい、かように存じます。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 時間の関係上一例で申し上げたのですよ。国民年金でも附帯決議がたくさんついているのに、これを一つ一つ全部読まれたら、今度出してきた法案がいかになまけ者であるかということがおわかりだと思う。厚生年金の問題もある。医療保障の問題もある。さっき言った保険局の問題も、医療保険は一番けしからぬですよ。大臣以下全部やめてもらいたいくらいです。今度の健康保険改悪案については、これはまた後に論議をする必要があるから触れませんけれども、そういう点がある。そういう点についていまからでも——こんなことを言っても、ばかみたいなことを言うなと言われるけれども、ほんとう厚生行政を預かっておられるなら、閣議できまった案でも、国会に出したあとでも、悪いと思ったら撤回する、あとで出し直す、このくらいの気持ちを持たないといかぬ。悪いのですから。健康保険法など撤回をしていただきたい。改悪案はありとあらゆる点で悪い。いいところは一つもない。実に厚生省というのはなまけておる。そういうことばかりに血道をあげておる。赤字対策ということに血道をあげておる。労働省は五人未満の事業所の適用をやっている。厚生省はそういうことをなまけておる。保険制度はあっても、無医地区には医者がいなくて、実際には何も役に立たないという場合がある。少しくらい予算をふやしただけではそういうものは間に合わない。そういう問題にしっかり取り組んでいない。ありとあらゆるところで欠陥が出てくる。これをほんとうに思い直してやっていただかなければならぬ。  ところで具体的な問題に移ります。生活保護法の基準について伺います。ことしの要求額、ことしの決定額、基準の引き上げ、それから昨年の七月からの要求額、それがだんだん減ってきた。この経過についてごく簡単でけっこうです。一分間で事実だけぱっぱっとおっしゃってください。
  56. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 生活保護法の一番最初、結論だけ申し上げますと、三割のいわゆるワク要求ということを大蔵省に八月三十一日に出しまして、その時点においてつかめますケースが、大体一月、二月、よくて三月ということで、被保険者の実数その他CPSというものはなかなかつかめません。三割で出しておりまして、予算折衝になるまでにいろいろケースを——たとえは最終的に経企庁の経済見通しというものが出まして、来年度の物価がどう、国民の消費水準がどうということでありますが、そこまでできない範囲においても、近い範囲においていろいろ計算をいたしまして、こういう計算方式ならばたとえば一八になるとか、一九になるとか、あるいは一五になるとか、いろいろなものについて大蔵と詰める、こういう段取りでございます。そういう点で一番最後に閣僚折衝という段階になるのであります。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 時間が迫っていますから、おもに問題点指摘のような意味で厚生大臣にお聞きをいただきたいと思う。また別な機会に関連して申し上げたいと思いますが……。  大体、生活保護法の基準というのは、生活保護法第一条及び第三条を受けますと、健康で文化的な最低の生活の基準にならなければならない。健康で文化的な最低生活の基準というものは、社会の経済発展、生活水準、そういうことで流動的でなければならないけれども、一定の時点、一定の地域におけるものは客観的なものがなければなりません。その問題について、厚生省がそういう客観的な基準として要求したものを大蔵省査定をする、そういうことはもちろん許されない問題であります。そこで値切られたならば、厚生省は健康で文化的な最低基準を下回るものを計画したということになる。ほかの問題に関する限りはいろいろな折衝がありますでしょうが、憲法できまった健康で文化的な最低生活という客観的なものについては、財政事情その他でこれを値切ることは許されない、そういうものでなければならないと思う。それについての厚生大臣あるいは社会局長の決意だけひとつ伺わせていただきたい。
  58. 坊秀男

    坊国務大臣 健康で文化的な生活の最低限度というものは、これは憲法で規定されておりますとおり、おっしゃられるとおり、ある時点において、ある地域において、これは不動のものだと私は思います。その内容を前年度に比してどれだけ増額していけばこれがそれに該当するのかということにつきましては、先ほど局長が申し上げましたとおり、データのとり方といったようなもので、これをその数字に持っていくことにつきましては、いろいろの考え方が出てくるであろうと考えます。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 理念として申し上げておるのです。厚生省としては確信を持って要求をされたら、ほかの問題はとにかく、健康で文化的な最低生活というものですから、確信を持って要求されたことは、この問題だけは、びた一文も、〇・〇○一のものでも値切られたら、その生活保護の精神に合わないと思う。今後、大蔵省のほうに厚生省が原案を出したならば、実際の金額が一銭になろうと一円になろうと、びた一文も値切らせないという覚悟でやっていただかなければならないし、厚生大臣は特にその覚悟でやっていただかなければならない理念の問題であります。健康で文化的な最低生活という問題について、それを主管官庁が確信を持って提出したものを財政上の事情から値切られるということは、憲法に保障されたわれわれの権利を財政上の理由で値切るということになる。道路をどこまで舗装するとかいうほかの問題とは違う。これは大蔵省もがっちり聞いておいていただきたいと思うのですが、こういう生活保護の最低基準の要求についてはびた一文も値切らない値切らせないという態度でなければ、憲法の精神をじゅうりんすることになる。この点について厚生大臣しっかりと腹に据えておいていただきたい。  生活保護法の第一条のすみやかに「自立を助長する」という点があります。これについて、生活保護の中で実際に自立を助長する法制上のものとしては、生業扶助というものがあるだけで、あと厚生省がこの鬼のごとき法律の第四条の条文を厚生省の中でできるだけ行政解釈でやっているだけであって、法律そのものが非常なブレーキになっている。第一条と第四条は背反をしているのです。こういうような法律は直されなければならないと思いますが、そういうことについて御研究になったことがあるかどうか、ひとつ伺っておきたい。
  60. 坊秀男

    坊国務大臣 生活保護を受けておる方々、これができ得る限り自力更生というふうに転換していかなければならない。またそういうふうに促進していくことが厚生行政の主意だと考えます。さような意味におきまして、いろいろの生活保護を受ける場合には、収入があったり何かいたしますと、これを原則としては差し引きをいたしておりますけれども、これについていろいろ控除といったような制度をつくりまして、漸次そういったようなことを増強してまいっておる次第でございます。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 控除があるといっても、基本的なものではないですよ。それは生活保護を受ける人の中で特別な人たちに対する控除であって、生活保護自体の控除について考えたことはないのです。残念ながら考えられないようにこの法律はできています。加算の問題についても、老齢だから加算をする、障害者だから加算をする、そういう問題はあります。控除についてもあります、それは、第四条の苦しい規定を何とかしてやろうというので、行政上でやっておられるだけであって、根本的に直そうとしたことにはならない。これは時間がないので残念です。  第四条については別な機会に引き続いてやりますけれども、第四条というのはほんとうに過酷な規定であります。例をあげますと二つの点がありますけれども、一つ国民の通常の社会生活上の理念の問題、一つは自立助長の問題です。たとえば、法律を規定どおりに見ますと、病人の生活扶助を受けている人がいる。これはいまはそうじゃないでしょう。しかし、法律の規定を理解していただくために言いますけれども、死にかかっているお年寄りです。その人に昔から配偶者か子供が残してくれた古いラジオがあった。動けないし、生きている限りの楽しみというものはラジオの放送だけであるけれども、この法律の規定どおりでいけば、この古ラジオ、二十円か三十円にしかならないものを売り飛ばして、その人から取り上げないと、生活扶助の適用はできない。この規定はそうなっておる。もちろん厚生省は鬼ばかりじゃありません。仏さんもいます。坊さんという、そういう人もいますが、そうじゃなくて、いまはラジオなんか問題にならなくて、テレビの問題になり、電気冷蔵庫の問題になっている。電気冷蔵庫を持っているということで打ち切るということで、去年一家心中をした人の話を御存じだろうと思うのです。世の中は進んでいますから、そうなってまいります。規定自体がそうなんです。たとえば、女の人が生涯生きがいにした御主人の形見のかまぼこの金の指輪があると、それをしっかり握りしめておる手から、無理にひったくって売り飛ばして、それを使ってからでなければ生活保護は適用できない。運用はそんなかっこうのことはしていないと思いますけれども、法律ではそうなっています。それを厚生省が頭をひねっていかにやっても限界がある。法律自体を直さなければならぬ。それは社会生活上の問題であります。坊さん——坊さんじゃなくて私にしましょう。私がここで尾羽打ち枯らしまして、偶然私が二十五年か何かの表彰をもし受けたとする。額か何かもらったとする。それだけが生きがいで、あと何もないというときになっても、それに値打ちがあれば、無理やりにひったくって、三十円くらいでたたき売って、それで米を食って、それがなくなってからでないと受け取れません。(「恩給があるじゃないか」と呼ぶ者あり)恩給の点はありますけれども、これは一つの例ですから、カップでも何でもいい。そういう規定になっているのです。それは社会生活上の問題です。  それから自立助長の問題がもう一つ厚生省運営でかなり緩和されておりますけれども、何か小さな店を持って、それを経済上活用するということは、その権利を売る、そういうことをしなければ、ほかの条件が悪くなっても適用できないようになっている。それを今度は、その要因が直った、病気で動けなかったのが直った、それで自立をしたいと思っても、そういうような処分をしたあとだと、ささやかな商売がそこで中断してしまうわけです。屋台の店の場合もあります。運用で緩和していますよ。そういうような運用でカバーされていますけれども、根本的にはそうなんです。時代は変遷しますから、ラジオを取り上げたことが過酷であった時代もあったが、いまはテレビを取り上げたら過酷であるし、また電気冷蔵庫を取り上げられたために自殺した人もある。そういうものは第四条の鬼の法律があるからであります。第四条を変えなければならぬ時代だ。第四条はそのほかに扶養義務者に対する追及もあります。いまの親子でも世帯が分離しているようなときに、遠い親戚にその扶養義務を追及するということは、実際に合わない。そういう問題なことを書いてあるわけです。追及してからでないとできない。緊急のときは例外規定はあるけれども、厳重に締めているわけであります。それから、いまの運用は世帯単位で、個人単位ではありません。生活保護世帯で、十八歳で元気な人が一生懸命働いて幾ら賃金が上がっても、その世帯の生活の基準以上にならなければ働き損になるわけであります。若い者の将来の自立に対してぐあいが悪い。そんなものは分離しなければならない。その人は自分の収入で食う。残りの者が生活保護を受ける。実際的には親子、兄弟の仲ですから、自分で働いて、上がった賃金の中からおいしいものを買っていくこともありましょう。そこまでそれを追及するような冷酷な政治ではないはずだと思いますけれども、そういう人たちが働けば、自分の生活が成り立つし、希望も持つし、しかも親孝行、兄弟孝行もできるということになるわけであります。それを、こういったひっくるめて同じ世帯で生活保護を適用しているから、若いその中の孝行むすこが幾ら働いても、親孝行しようと思って働いても、それ以上の賃金にならなければ実際に役に立たない。それ以上の賃金になってもその効果は少ない。これは世帯単位の運用であるからです。それから地域差であります。担当の人だったらいろいろ何か言いますけれども、地域差の中で、都会といなかと比べて十対七ぐらいの差がある。それは実態がそうだとおっしゃる人もあるかもしれませんけれども、この基準の低い最低生活で都会といなかに十対七の差があるということは、これはどうしても解せないと私は思う。地方的に野菜が安いとかなんとかいうことがあっても、それは説明材料であって、都会ではたまに肉を食う、たまに魚を食うけれども、なかでは食わない。やはりそれだけからだが衰弱する。健康で文化的でなくて、不健康で死ぬ方向をたどっているということになる。そういうようなことであります。  そこで、この生活保護基準の食料費を見ますと、十歳の辺で一食三十円になっている。犬の食事に関する基準は五十円です。人間の食費が三十円では、これは健康で文化的ではなしに、そのときは死にませんけれども、そういう食事をずっと続けていけば、発育過程の子供は発育しません。中年以上の人は、七十まで生きる人が五十で死んでしまいます。自分で命を縮めていくことになる。それを政府は健康で文化的という。社会保障制度審議会から、昭和四十五年までに実質三倍にするという強硬な勧告が出ている。これは、少なくともという前段がある。少なくとも昭和三十六年の基準に比して昭和四十五年には実質三倍にしなければならない。一三%ふえたかもしれませんけれども、これも大蔵省が値切ったから三〇%の要求が一八%になって、それがまた一三・五%です。これは実質三倍が社会保障制度審議会の勧告ですから、物価を勘案すると何にもならないわけです。物価が安定しているとすると、一二・八の年率をかけて、それでようやく四十五年に三倍になる。これは少なくともという最低基準です。それ以上にしてはいけないということは一つも書いてない。それ以上にしなければならないように書いてある。その最低の最低の基準に達していないわけです。いまの率でいったら、昭和四十五年に実質二倍になればいい。三倍にはなりません。昭和三十五年ごろが一番ひどい状態でしたけれども、それから年々、そういうような制度審議会の答申なりいろいろ論議のために、少しずつふえてきている。大蔵省はそれでもずいぶん改善なさった気持ちでいるらしいが、勧告は一つも読んでいない。物価の変動は考えていない。現在一般の勤労者に対し五〇%前後になったということで、大蔵省はずいぶんよくなったと思うかもしれないが、日本の生活水準は諸外国より低い。それよりも生活保護世帯が低いということは、非常に生活が困難なことになるわけです。低い程度は、五〇%どころではどうにもならない。五〇%を七〇%、八〇%のところまで上げなければ、国民ほんとうの権利は守られません。五〇%ぐらいまでになったからずいぶんいいだろうということをもし大蔵省主計局が言うとしたならば、憲法の国民の権利は全くじゅうりんされた話になります。また、そういうことを説得しないで、値切られて平気でいるようなことであれば、厚生省はその任務を忘れたことになる。生活保護だけでもこれだけたくさん問題がある。まだまだ言い足りないわけです。よほど真剣に取っ組んでいただかなければなりません。真剣に取っ組んでいただくならば、この次にお会いしたときに、生活保護法の内容については、憲法第二十五条の精神を実現するだけの法律にはなっていないから、生活保護法を断じて来年は改正して提案をするというくらいの決心を披瀝していただきたいと思う。これはほんとうにまとめる有能な人がおりますから、三日か四日ぐらいで成案ができるはずです。この次には、そのような決心ができるように十分に考えて、十分に検討して前向きの見解を発表していただきたいと思います。それだけ要望しておきます。決意だけ承っておきます。
  62. 坊秀男

    坊国務大臣 だんだんの御意見拝聴いたしました。御趣旨をよく私も胸に置きまして今後の研究をやってまいりたい、かように考えております。      ————◇—————
  63. 川野芳滿

    川野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  フジ製糖株式会社における労働問題についての調査のため、来たる五月二十三日、フジ製糖株式会社社長榊原正三君に参考人として御出席いただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次会は、来たる二十三日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会