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1967-04-27 第55回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十七日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 齋藤 邦吉君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君       大石 八治君    熊谷 義雄君       佐々木秀世君    塩谷 一夫君       菅波  茂君    竹下  登君       中山 マサ君    橋口  隆君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       村上信二郎君    毛利 松平君       渡辺  肇君    山本 政弘君       浅井 美幸君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月二十六日  委員淡谷悠藏君及び大橋敏雄辞任につき、そ  の補欠として横路節雄君及び矢野絢也君議長  の指名委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として淡  谷悠藏君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員地崎宇三郎君、中野四郎君、西村直己君、  橋本龍太郎君、福永一臣君、藤本孝雄君、箕輪  登君、粟山秀君、山口敏夫君、淡谷悠藏君及び  矢野絢也君辞任につき、その補欠として毛利松  平君、村上信二郎君、大石八治君、熊谷義雄君、  三ツ林弥太郎君、佐々木秀世君、塩谷一夫君、  竹下登君、橋口隆君、大原亨君及び大橋敏雄君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員大石八治君、熊谷義雄君、佐々木秀世君、  塩谷一夫君、竹下登君、橋口隆君、三ツ林弥太  郎君、村上信二郎君、毛利松平君及び大原亨君  辞任につき、その補欠として西村直己君、橋本  龍太郎君、藤木孝雄君、箕輪登君、粟山秀君、  山口敏夫君、福永一臣君、中野四郎君、地崎宇  三郎君及び淡谷悠藏君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七九号)  戦没者父母等に対する特別給付金支給法案  (内閣提出第八〇号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者父母等に対する特別給付金支給法案の両案を議題として審査を進めます。     —————————————
  3. 川野芳滿

    川野委員長 提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣坊秀男君。
  4. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者等遺族、未帰還者留守家族及び戦傷病者の妻に対しては、戦傷病者戦没者遺族等援護法戦傷病者特別援護法、未帰還者留守家族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法等により各般にわたる援護措置が講ぜられてきたところでありますが、今般さらにこれらの援護措置の一段の改善をはかることとし、この法律案提案することといたした次第であります。  次に、この法律案概要について御説明いたします。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正についてであります。  その改正の第一点は、款症程度障害者に対して、障害年金または障害一時金を受給者選択により支給することとしたことであります。すなわち、款症程度障害者については、その不具廃疾程度が変動しないと認められる場合には障害一時金が支給され、それ以外の場合には障害年金が支給されることになっていたのを改めて、受給者選択により一時金または年金のいずれかを支給することとしたことであります。なお、この措置は、すでに一時金の裁定を受けた者についても適用することといたしました。  改正の第二点は、別途今国会提案されております恩給法の一部改正による戦病恩給及び公務扶助料増額に関連いたしまして、障害年金障害一時金、遺族年金及び遺族給与金並び特別項症から第二項症までの障害者に支給する障害年金についての加給金の額をそれぞれ増額することとしたものでありまして、増額程度については、恩給法のそれにならっております。  改正の第三点は、軍人軍属日華事変中いわゆるみなし公務傷病により不具廃疾となりまたは死亡した場合に支給する障害年金及び遺族年金の額は、従来本来の公務傷病によるものの六割とされておりましたのを改め、本来の公務傷病によるものと同額とすることとしたことであります。  改正の第四点は、祖父母等に対する遺族年金及び遺族給与金について、その支給条件のうち、当該祖父母等を扶養することができる直系血族がないことという条件を撤廃することとしたことであります。  改正の第五点は、準軍属の後順位遺族にも年額三千五百円の遺族給与金を支給することとしたことであります。すなわち、現行法では、軍人軍属遺族については、後順位者にも遺族年金が支給されていますが、準軍属遺族については先順位者に対してのみ遺族給与金が支給されているにすぎませんので、これを改めて、準軍属遺族処遇改善をはかったのであります。  改正の第六点は、事変または戦争に関する勤務に関連する傷病による死亡支給事由とする弔慰金について、在職期間経過後、一般傷病による場合は二年以内、結核精神病による場合は六年以内に死亡した場合に支給することとなっているのを、在職期間経過後、一般傷病による場合は四年以内、結核精神病による場合は十二年以内に死亡した場合にも支給することとしたことであります。  第二は、未帰還者留任家族等援護法の一部改正についてであります。  改正点は、戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族年金の額の引き上げに準じて、留守家族手当の額を引き上げることとしたことであります。  第三は、戦傷病者特別援護法の一部改正についてであります。  改正点は、長期入院患者に支給する療養手当月額現行三千円を三千四百円に引き上げることとしたことであります。  第四は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正についてであります。  改正点は、現在、恩給法による特別項症から第五項症までの障害を持つ戦傷病者の妻に対しまして支給することとしている特別給付金を、第六項症または第七項症程度障害を持つ戦傷病者の妻にも支給することとしたことであります。  以上のほか、各法につき、所要の条文の整理を行なうことといたしております。  以上がこの法律案提出いたしました理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、戦没者父母等に対する特別給付金支給法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  過ぐる大戦において、戦闘その他の公務によりなくなられた軍人軍属及び準軍属の御遺族に対しましては、恩給法戦傷病者戦没者遺族等援護法等により、公務扶助料または遺族年金を支給するなど、政府といたしましては、これまででき得る限りの措置を構じてきたところであります。  しかしながら、この大戦により、すべての子または最後に残された子をなくされた戦没者父母並びにこれらの父母と同様の立場にある孫をなくされた祖父母については、その最愛の子や孫を国にささげ、しかもそのために子孫が絶えたという言いしれぬ寂寥惑孤独感と戦って生きてこなければならなかったという特別の事情があるものと考えられます。したがって、この際、このような戦没者父母及び祖父母精神的痛苦に対して、国としても、何らかの形において慰謝する必要があるものと考え、これらの方々に特別給付金を支給するため、ここに、との法案提案する次第であります。  次にこの法案概要について、御説明いたします。  第一は、昭和十二年七月七日に勃発した日華事変以後に公務上負傷しまたは疾病にかかり、これにより死亡した軍人軍属、準軍属等父母または祖父母として、本年四月一日において、公務扶助料遺族年金遺族給与金等年金給付を受ける権利または資格を有する者であって、その戦没者死亡の当時他に子も孫もなく、その後本年三月三十一日までの間に子も孫も出生しなかった者に対し、十万円の特別給付金を支給することとしたことであります。  第二は、この特別給付金は、五年以内に償還すべき記名国債をもって交付いたしますとともに、この国債は無利子とし、昭和四十二年五月十六日をもって発行することとしたことであります。  なお、国債償還金の支払いについては、来年五月十五日に第一回分として二万円を、その後、毎年二万円ずつ、最終回は昭和四十七年五月十五日に二万円を支払うことといたしております。  第三は、特別給付金を受ける権利は、その譲渡を禁止しておりますが、相続についてはこれを無条件に認めますとともに、国債についての承継に関しても、民法の原則により相続人が受継することといたしております。  その他、特別給付金についての時効、差し押えの禁止、非課税、実施機関等所要事項を規定いたしております。  なお、この法案による特別給付金支給件数は約一万件と見込んでおります。  以上がこの法案提出いたしました理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  5. 川野芳滿

    川野委員長 次に、厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  6. 山本政弘

    山本(政)委員 厚生大臣所信表明が過日ありましたが、その中の第二項、生活環境の整備について、大気汚染等公害が大きな社会問題となっている、したがって、公害防止に関する国の総合的な施策を確立するために、公害対策基本法案を本国会提出する、こういう話がありました。けさ新聞によりますと、この公害対策基本法案に対して業界がこぞって反対をしている。厚生省の所管というけれども、これは産業面を軽視しておるということで、率直に申し上げますとざる法のおそれがある、こういうことが紙面に出ております。このことに対して、厚生省法案をきらんといつお出しになる予定か、ちょっとお伺いしたいのです。
  7. 坊秀男

    坊国務大臣 公害対策基本法に対しまして、業界がいろんな意見を申し述べておることは私もけさ新聞によって承知をいたしております。しかし、公害防止公害防除ということは、これは今日の日本の現状におきまして、最も大事な政策の中の一つであると考えなければなりません。かような意味におきまして、政府といたしましても、いずれにいたしましてもこの公害対策基本法というものを本国会提出いたしまして、そうして御審議を願うという方針をきめておるわけでございまして、いま厚生省が中心となりまして鋭意この法案作成の作業をやっておるところでございます。そこで、でき得ることならば連休明け、五月の中旬あたりを目途といたしまして法案化の上提出をいたしたい、かように考えております。
  8. 山本政弘

    山本(政)委員 公害対策基本法というのは、私は国民健康保護ということを条件抜き考えていくべきだ、こう思っておりますが、経済発展、そういうものとの見合いにおいてやるというようなことがしばしば言われておりますが、この点について厚生大臣はどうお思いになりますか。
  9. 坊秀男

    坊国務大臣 公害対策基本法におきましては、国民の健康とか生命とかいったようなものは何よりも大事なことでございまして、生命、健康にかかわるといったような公害は絶対に排除しなければならない。日本の国において北は北海道から南は九州までいろいろな地区がございますが、そういったような地区において生活環境を保持していく。生命、身体はこれはもうぎりぎりの絶対のものでございます。生活環境を保持していくという点に関しては、経済はどうなってもいいのだというようなわけにはまいりますまい。さような点において経済の健全なる発展と調和をさせつつ生活環境を保持していくということが今度の基本法の趣旨だと私は考えております。
  10. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃお伺いいたしますが、所信表明要旨の中で、環境衛生局公害部を設ける、こういうお話がございましたけれども、これはいつごろお設けになる予定になっておりますか。
  11. 坊秀男

    坊国務大臣 ただいま設置法提出いたしまして御審議をお願い申し上げておるところでございます。
  12. 山本政弘

    山本(政)委員 まれでは、その要旨の中に「水道水源開発水道広域化を強力に推進いたしたいと存じます。」こういうお話がございますが、この中で私は、大気汚染、それから水道水源、そのほか公害のもう一つ大きな原因として水質汚濁の問題があると思うのです。このことについてあまり触れられておらないのですけれども、このことに対するお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  13. 坊秀男

    坊国務大臣 現行法といたしまして、水質保全法、そういったような法律がございまして、これによって水質汚濁防止しておるというのでございますが、公害対策基本法が制定実施されますれば、この精神に基づきまして、またそこまで申し上げるのは少し行き過ぎかもしれませんけれども、その水質汚濁についてさらに防止と申しますか、防除と申しますか、予防と申しますか、そういうようなことを強化していくようなことになるのではないかと思います。
  14. 山本政弘

    山本(政)委員 今度、健康保険法改正暫定措置、これが出ると思いますけれども、このことについてちょっとお伺いをいたしたいのですが、昭和四十年十二月二十四日の予算委員会で、大原亨委員質問に答えて当時の鈴木厚生大臣は、総報酬制及び薬価の一部負担制度根本に触れる問題であるから今後の検討事項として考えていきたい、こういうような答弁をなされていると思います。今度の健康保険法改正案の中に薬価の一部負担ということがありますけれども、これは鈴木厚生大臣答弁と過日の坊厚生大臣答弁とを思い合わせてみますと、どうも意見がちぐはぐになっている感じがいたしますけれども、この点はどうお考えですか。
  15. 坊秀男

    坊国務大臣 前の鈴木厚生大臣のおやりになりましたことは、これは私があとの人間として全部承継をいたしておるわけでございます。しかし、今日その一言一句について——むろん私は責任は持ちます。持ちますが、私はその一言一句の事実を存じ上げておりませんので、いまおっしゃられた御意見でございますが、鈴木大胆の言われたことと私のこれから申し上げますこととは、そこに完全に連関するかどうか、私、ちょっとわかりかねるのでございますけれども、今度の薬価の一部負担と申しますことは、これは御承知のとおり、今度のこの健康保険改正は、健保の赤字をともかくも処理していきたいというようなことで何項目かの措置をとっておりますが、その赤字処理一つの手段といたしまして薬価の一部負担ということをきめたのでございまして、鈴木大臣が、根本的の立て直しのためにどういうようなことをする、こういうような御言明をされたことは、つまり今度の薬価の一部負担ということは、根本的な抜本的な立て直しとは関係のないように御理解を願ってけっこうだと思います。
  16. 山本政弘

    山本(政)委員 佐藤内閣のときの厚生大臣鈴木さんと、それから——今日も佐藤内閣ということでありますが、内閣というものが佐藤内閣である限り、その厚生大臣がたとえかわっても、私はその方針というものは一貫してあると思うのですけれども、その中で解せないのは、一部負担制度根本に触れる、こう鈴木厚生大臣が言われているわけですね。赤字負担ということは別問題としても。坊厚生大臣はこのことに対して、これは暫定措置である、こうおっしゃっておるわけだけれども、一体そのことに対して矛盾をお感じにならないかどうか、それだけでけっこうでございます。
  17. 坊秀男

    坊国務大臣 私どもの申し上げておりまする根本的な立て直し、 いわゆる抜本対策というものは、現在医療保険の大きなたてまえの中に、この負担の非常な不公平だとか、あるいはその給付率の格差だとか、それからその財政が非常に不安定であるといったような大きな骨組みの問題がございますが、そういったような骨組みをどういうふうに立て直していくかということ、これを抜本対策考えております。そこで、今度の薬価の一部負担と申しますことは、これはそういったようないろいろ御意見もおありになろうと思いますけれども、大きな骨組み立て直していくということではなかろうと思いまして、私は、これは抜本対策制度の根元に触れるものだというふうには考えていないのでございます。
  18. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、薬価の一部負担の新設というのは、これは保険医療費の四〇%、それ以上を占めると思いますけれども、これは医療保険の抜本的な改革に際して検討されるものだ、こう思っております。薬剤費をそのまま野放しにするということを言っておるわけじゃありませんが、患者に一部負担をかけてその赤字増高を押えるということは、少し上げ過ぎだという考えを持っておるのです。それはそれとして、中医協の部会でも、合理的な薬価調査をすべきだという意見が出されておるということがけさ新聞にありましたけれども、私はしろうとですから教えていただきたいのですけれども薬価基準価格改定が全面的に行なわれたのはいつかということです。一番最後に行なわれたのはいつでしょうか。
  19. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 四十年の十一月に全面改定を行ないました。
  20. 山本政弘

    山本(政)委員 それは基準価格改定ですね。そうすると、薬価調査というのは、これは毎年行なわれておるのでしょうか。
  21. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬価調査は実は薬務局のほうで毎年行なわれることになっておりまして、三十八年まで、二百品目につきましての毎年の薬価調査を行なっておったわけでございますが、三十九年以降、関係団体との話し合いが十分煮詰まらないままに調査が行なわれておらない状況でございましたのを、先ほど申し上げました四十年の十一月の全面改定の際には、その年の五月に販売サイドでの調査をやりまして、それに基づきまして三十八年から四十年までの時差の補正をやりまして、全面改定をやったわけでございますが、その後薬価調査状況は、本年の二月分の薬価につきまして、現在販売サイドでの薬価調査を実施いたしておりまして、本年は八月ころをめどに全面薬価改定をやる予定にいたしております。
  22. 山本政弘

    山本(政)委員 私はしろうとですからよくわかりませんが、医師収入のうちに、薬剤による潜在利益の占める割合が大きくなるに従って、薬価基準価格改定が少し政治的な色彩を帯びておる、こういうふうに私は聞いておるのでございます。本来なら、医師生活水準技術料との相関というのは、これは私は別に根本的に考えてもいいというふうに考えておるんですが、この点についての厚生省のお考えをちょっとお聞きしたいのです。
  23. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現在の保険での診療報酬点数表という形で告示をされておりまして、この点数表改定につきましては、御承知中央社会保険医療協議会審議をすることになっておるわけでございます。それで、御指摘のように、現在の医師収入といったものが、診療報酬点数表改定がなかなか円滑に行なわれないために、点数表自体点数が非常に低く押えられておる。したがいまして、薬の潜在技術料でもってある程度収入をカバーするというふうな実態にあることは、私どもいなめない事実ではないかと思います。したがって、薬価全面改定をした場合に、その価格が下がった場合に、その分の技術料が減ってしまうというふうな御意見が各方面で言われておるわけでございますが、この点は、御指摘のように、技術料を引き上げていくという形で診療報酬点数表改定を行なうことが最も必要だというふうに考えておりますので、その面も含めまして、現在、中央社会保険医療協議会診療報酬部会、それから調査部会の二つの部会を設けまして、診療報酬合理化をはかるということで鋭意御審議をいただいておるところでございます。
  24. 山本政弘

    山本(政)委員 薬価の算定について、どういうふうに薬価をきめておるかお伺いしたいのです。
  25. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 現在保険医療で使われております薬価基準登載品目は大体七千品目程度になっております。六千数百、七千品目程度になっておるわけでありますが、これは毎年薬価調査をやりまして、この薬価調査品目といたしましても、いわば独占品目といいますか、各メーカーが単独でつくっておる品物と、それから相場品目といって、これは各メーカーが全部競合してつくっておるもの、この独占品目相場品目につきまして抽出調査をやりまして、その抽出調査によりました品目につきまして、病院並びに診療所で購入しておる総数量の九〇%の数量が買える値段でもって薬価基準登載価格をきめる。これを九〇%バルクライン方式というふうに言っておりますが、九〇%の数量病院診療所が買える値段ということで価格をきめて、厚生大臣告示をいたしておるわけであります。
  26. 山本政弘

    山本(政)委員 バルクライン方式というのはよくわかりました。私の申し上げるのは、市販されているもの、あるいは医家に使われておるもの、そういうものを問わないで、薬そのものは一体どういうふうな方式によって——たとえばほかの機械とかなんとかというものになりますと、これは原価計算方式といいますか、材料費製造費あるいは管理費労務費、それにプラス利潤とかそういうものがありますね。そういう意味で薬というのは一体原価計算方式をとっているのかどうか、そのことでございます。
  27. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品一般について、医薬品メーカーがその価格をどのようにしてきめているかという御質問でございます。御案内のように、医薬品企業というものは現在自由企業になっているわけでございますので、政府がこの価格というものを一定のルールで統制をするというようなたてまえになっていないわけであります。したがいまして、医薬品価格というものは、いま御意見のありましたように、原価計算主義というようなものでなくして、自由な市場における需給関係に基づきまして、それぞれのメーカーがそれぞれの製品ごとにその販売価格なりなんなりの価格体系全体をきめている、こういうことになっているわけであります。したがいまして、医薬品の場合は、製造原価なりあるいは販売原価を含めまして、決してそういう工場原価だけで医薬品価格というものをきめているということにならないわけでございます。それ以外のもろもろ要素、たとえば私ども承知している範囲内におきましては、その製品の効能、効果とか、あるいは同種の製品価格とのバランス関係とか、あるいはまた投下された研究開発費等関係、あるいは市場競争状況とか、あるいは需給状況、そういうもろもろ要素を総合的に勘案して医薬品の個々の製品価格をきめている、こういうふうに私ども承知いたしておるわけでございます。
  28. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、主として需給関係ということになりますが、この開発費というものは私は原価計算方式の中にも入ると思うのです。開発費というものは、普通の商品に対しても、少なくとも原価計算の中には、原材料費とかあるいは製造費とかいうもののほかにこれが入るけれども薬価の場合には需給関係が主になるかどうか、そのことをちょっとお伺いしたいのです。
  29. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 需給関係が主になるというようなことではございません。やはりその製品の原価だけではきめられない、原価以外に、先ほど申し上げましたような製品の効能、効果とか、同種製品価格との関係とか、あるいはまた市場の需要供給の関係、あるいは競争関係、こういうようなもろもろ要素を勘案して価格というものが自然ときまっている、こういうふうに了解しているわけでございます。
  30. 山本政弘

    山本(政)委員 三十七年の四月十七日に厚生省で、物価安定対策についての具体的措置ということで、薬価安定の対策に対する指示といいますか、指導といいますか、これをなされたことがありますね。その中で、灰薬品の価格はここ数年間漸次低下しているが、なお将来にわたっても価格の低下をたどるよう各種の行政指導を行なう。さしあたって流通機構の合理化、適正化、過度の広告競争の自粛乃び広告内容の適正化を指導して価格の安定化をはかる。そうして同時に、品質、内容量の適正化を確保する、こういうことが指導の内容として出されたと思います。そこで私がお伺いいたしたいのは、三十七年にそういう指導がなされて、三十八年に全面的に薬価調査がなされたと思うのですけれども、その後このことに対して指導がなされておるか、あるいは具体的に何かそういう通達でも出されておるのかどうか、それをお伺いしたいのです。
  31. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 三十八年当時のいわゆる市場安定価格対策というものは、いま御指摘のとおり、そのようなもろもろの対策を厚生省のほうで行政指導としてメーカーのほうに指導をしたということはございます。したがいまして、この考え方というものは、私ども現在もそのとおり基本方針として堅持いたしまして、メーカーのほうにいろいろの点で指導をいたしております。  そのおもな内容を申し上げますと、この対策要綱で書いてございます流通機構の合理化、適正化、これは確かにいろいろ問題があるわけでございます。医薬品の場合は、特にメーカーから卸、小売り、この流通機構というものが非常に複雑になっておることは、御存じのとおりだろうと思います。したがいまして、そういうような流通機構というものをできる限り適正化していくということが、われわれ医薬業界に対する指導の基本方針でございます。そういう面につきまして過去ずっと指導しておりますが、なかなかその点が一朝一夕で簡単に合理化ができるというような問題でもございませんので、逐次改善の方向に向きつつあるということが第一点でございます。  それから第二点に、いわゆる行き過ぎた過剰サービスと申しますか、そういうものをできる限り自粛してもらう、自粛させるべきだという点はやはり価格安定の大きな。ポイントでございますので、たとえば、添付とかあるいはリベート、あるいは行き過ぎた値引きとか、そういうようなものを含めまして、昨年も特に強力に私どもとしましては  医家向けの医薬品の場合、昨年特に、顕著になっておりますいわゆる添付、おまけ、こういうものについて、大手メーカー二十社の最高責任者を招集しまして、厚生省当局から厳重に添付廃止を申し入れまして、現在もその状況は続いているわけでございます。そのようなことによりまして、行き過ぎた過剰サービスというものをできる限り自粛してもらう。それからまたもう一つ、よく世上で問題になっておりますはでな海外招待旅行というようなものがございますが、これも過去数回通達を出し、またメーカーの会合等でも、そういうはでな行き過ぎた海外招待旅行等を医薬品メーカーがやらないようにということで、この点も現在ほぼ守られている、こういうふうに考えているわけでございます。  それから、その次には広告の問題でございますが、世上医薬品広告についてはいろいろの御意見があるわけでございまして、私どもも、このように消費者保護の行政がやかましいおりから、医薬品広告につきましては特段に配慮を加えまして、行き過ぎた広告なりあるいは虚偽、誇大にわたるような広告がないようにということで、もちろん法的規制を持っておりますけれども、それ以外に、行政指導としまして適正広告基準というようなものをつくりまして、それからまた業界自身にも広告の自粛要綱というようなものを作成させまして、広告についてのなお一そうの自粛なり適正化を促している、こういうようなことでございます。
  32. 山本政弘

    山本(政)委員 私が質問するのを先にお答えくださったようでありがたいのですが、昭和四十年度の医薬品を除いた化学工業製品の生産額は一兆六千九億円、医薬品の生産額は四千八百九十八億円、この比率は全化学工業製品の中の約二四%ぐらいだ、こう思うのですけれども、そうなると医薬品の生産額というものはたいへんな額になると思うのです。そこでお伺いしたいのは、再販売価格維持制度というのがありますね。これは昭和二十八年に独禁法の改正で二十四条の二でできたのだと思いますが、これは医薬品にも適用されておる。これは消費者の利益を害さない限りという条件でこの再販売価格維持制度というものができていると思うのですが、医薬品について見ますと、二十九年から三十七年には一社しかなかった。それが三十八年には三社になっております。これは私の調査ですから、あるいは間違っておるかもわかりませんが、三十九年には十四社になっておる。四十年には二十九社になっておるのですが、医薬品においてこういうふうに再販売価格維持契約というものが急激に増加している理由というのは、一体どういう理由によって増加しているのでしょう。
  33. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品の場合の再販売価格維持制度の趨勢でございますが、ただいま御指摘のとおりの大体の趨勢を経て、現在のところ、ごく最近におきましては、三十七社前後のものが再販売価格維持契約を結んでいるという状況でございます。  なぜこのようにふえたかということでござまいす。この点につきましては、御案内のように、医薬品メーカー数というのが全国に千五百ございます。非常に数が多いわけでございます。しかも、先ほど申し上げましたように、卸、小売りを含めましての流通機構というものが非常に複雑化しているというようなこと、それから医薬品製品の種類が非常に多種多様にわたっている、そういうようないろいろな事情によりまして、医薬品の産業全体が激しい過当競争をやっているわけでございます。価格競争なり品質競争なり、非常に激しい競争をやっているわけでございます。したがいまして、そういうような激しい販売競争なり価格競争の中におきまして、この再販契約制度というものは、当初一社だけでやっていたわけでございますが、末端におきます流通機構全体が複雑化しているというようなこともありまして、その一社なり数社でやっていた再販問題が、激しい競争の結果、ほかのメーカーにも自然と乗り移っていった、こういうような事情があるわけでございます。これは何と申しましても、医薬品産業、医薬品企業全体が非常に激しい国内の過当競争をやっているということから由来しているものだ、かように私ども承知しているわけでございます。
  34. 山本政弘

    山本(政)委員 医薬品で非常に過当競争が行なわれているということも私は十分了承できますけれども、それよりも食品のほうがむしろもっと数多く過当競争が行なわれておると思うのです。しかし、その食料品については、再販売価格維持の契約というものは、薬よりかはるかに少ないのですけれども、この辺は一体どうなっているのでしょうか。
  35. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 再販売価格維持契約の制度は、先ほど御意見がございましたように、現在のところ、独禁法に基づく制度ということで、公正取引委員会が所管をいたしているわけでございます。現在のところ再販売価格維持契約ができる業種というものは六種ぐらい指定をされているわけでありますが、その中には、もちろんただいま御指摘の食料品は入っていないわけでございます。医薬品、化粧品その他の六種だけに限定されて再販売契約制度が公正取引委員会のほうで指定されているわけでございます。  なぜ医薬品について再販売契約制度が必要であるかと申しますと、この再販売契約制度ができ上がった前後から、医薬品については、末端におきますいわゆる乱売というものが非常に激しかったわけでございます。極端な価格のダンピングというものを末端の一部小売り業者がやりまして、そうして当時の社会問題になったというようなこともありまして、事医薬品に関しましては、やはり国民生命なり健康にかかわる重大な商品でありまして、その点においては普通の商品と違うという、きわめて大きな特長を持っているわけでございます。したがいまして、そういう乱売等が末端において行なわれた結果、医薬品の品質等が粗悪化していくということになりますならば、これは国民生命なり健康上からいってまことにゆゆしい問題になるというような、そういう配慮がございまして、医薬品というものが再販売契約の中に当初から指定されている、こういう事情に相なっているわけでございます。
  36. 山本政弘

    山本(政)委員 過当競争が行なわれているということはよくわかるのです。過当競争が行なわれているに違いないのですけれども、それならば、昭和四十一年の一月から十月までの医薬品の生産額というものは、四千二百三億円になっておると思います。四十年の同期に比べまして、これは四百三十億、二%の増です。そうすると、過当競争だからということだけに問題が帰せられないのではないかということが一つ。  それからもう一つは、いまおっしゃった、ことばじりをとらえるわけではありませんけれども生命、健康に関するのだというならば、それならば私のほうでもう一つ質問がありますけれども、たとえば抗生物質に対しては、市販医薬品の中でも、医師の指示によって服用してほしいということを、ほとんど書いておると思います。だけれども、これは医師の指示によってでなくて、適当に体の悪いときにそれを買って飲んでおりますね。そういうことに対しては、あなた方は、生命あるいは健康ということをお考えになったら、もっと規制をしてもいいと思うのですけれども、その規制は一向なされておらないように感じますが、その点は一体どうなんでしょうか。
  37. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品の生産額は、先ほどおっしゃいましたように、昭和三十九年までがピークでございまして、三十九年までは確かに毎年大体二〇%から二七、八%程度の対前年の上昇率を示してきたわけでございますが、四十年から四十一年にかけまして、国内需要というものが非常に鈍化いたしまして、四十年、四十一年になりますと、医薬品の生産高というのは、従来のぺースに比べますと、非常に停滞化し鈍化して伸び悩みという状態を呈しているわけでございます。これはいろいろ理由があるわけでございますけれども、現在のところ、医薬品産業というものは、昭和三十九年までのような毎年の高率の成長率を遂げていない。やや鈍化形態にある。これはもちろん一般経済界の影響もあるわけでございまするが、ようやく最近になりまして、高度成長から安定成長というようなところまできているというのが医薬品産業の実態でございます。  それから第二点の抗生物質の点でございますが、抗生物質につきましては、確かに御指摘のように、表示が医師の処方せんなりあるいは指示によって販売するという、現在の法律上のたてまえになっているわけでございますが、残念ながら末端の小売り等におきまして、その点がややルーズになっているということも、私どもは認めているわけでございます。この点はできる限り法律の趣旨のように——この抗生物質は、私どもの用語ではいわゆる要指示薬、医者の指示を要する薬という制度になっているわけでございますから、この要指示薬の制度というものをできる限り順守させるようにいろいろ努力はいたしておるわけでありますけれども、なかなか完全に行なわれていない。したがいまして、もう少しこの抗生物質を含めた要指示薬について規制を強化すべきではないかという御意見が一部にあることも承知いたしておりますが、ただ現在のところ、医薬分業という制度が、御案内のように日本の場合はまだ完全に実施されていないというような背景もございまして、要指示薬というものを強化するという方向でいま現在ものを考えるということについては、若干の問題点がまだ残されている、こういう事情になっているわけでございます。
  38. 山本政弘

    山本(政)委員 再販価格の維持契約というのは、いまのお話ですと、非常に乱売があった、それが一つの原因になっているとおっしゃるようですけれども、これができましたのは二十八年でしたね。いま四十二年です。十四年間の間には、メーカーとしては、そういう流通面に対しての確立されたものが、一つ企業であれば当然できていると思うのです。それがいまだ存続しているということのほうにかえって私は疑問があるのです。再販価格維持契約というのは、確かに当初はそういう考え方があったかしらぬが、しかしそれは逆にいえば、たての両面であると思うのです。いまはすでにそれが薬価に対してすら一つの桎梏になって、安定というよりか、むしろ薬価を下げることを妨げているというふうな方向にいっているのではないか、こういうふうに感ずるのですけれども、その点はどうでしょう。
  39. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 再販制度につきまして世上いろいろ論議があるということを、私どもは十分承知いたしております。昨年の経済企画庁に設けられました物価問題懇談会等におきましても、再販制度についての改善策を建議いたしているわけでございます。したがいまして、現在再販制度全般につきまして、主務官庁であります公取のほうで、再販制度についての合理化のための法案を準備しまして、今国会提案する手順になっているわけでございますが、いまお尋ねの再販制度によりますいい面と悪い面——確かに再販制度につきましては、先ほど申し上げましたように、末端等における乱売を防止して市場の安定をはかっていくというようないい面があるわけでございますが、悪い面としまして、いまお取り上げになりましたように、価格の硬直化を来たしているのじゃなかろうかという面が取り上げられているわけでございます。もし再販制度というものが、法律精神どおりに運用の実態が行なわれておりますならば、価格硬直化というような批判は出てまいらないはずでございますが、残念ながら現在のところは、再販制度によりましてメーカー価格というものが強制されまして、その価格を守らなければ一定の制裁を加えるというような仕組みになっておる関係上から、確かにそういう面はあるわけでございますので、私どもは、運用の面でもう少し法の精神どおり再販制度全般を適正に指導していくということを今後政府当局がやらなければいかぬ、かように考えているわけでございます。
  40. 山本政弘

    山本(政)委員 指定商品の中で再販価格維持契約をなしていないのが昭和四十年度に医薬品の会社で二社ありましたね。医薬品について二社届け出を出していないところがあったと思いますが、これはどことどこでしょうか。それを一つお伺いしたいのです。それからその製品名について。
  41. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 先ほど申し上げましたように、再販制度につきましての主務官庁は公正取引委員会でございますので、私どもただいまの御質問は十分承知いたしていないわけでございます。
  42. 山本政弘

    山本(政)委員 私はこれは厚生省からお出しになった書類の中から見たのだと記憶しているのですが、私の記憶に誤りがなければ、届け出を出していないメーカーが四十年度中に医薬品について三社あった、したがってそれについて届け出を命じた、こういうふうにあったというふうに記憶しておるのですけれども
  43. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 現在の再販制度法律によりますと、再販契約を実施する際は公正取引委員会のほうに届け出をするという法律上のたてまえになっておりますので、私どもとしましては、いまお尋ねの点につきましては私自身承知をいたしていないのでございます。
  44. 山本政弘

    山本(政)委員 もちろん私は、主務官庁が公取である、それは確かによくわかります。しかし少なくとも医薬品については、厚生省がそういうことについては一応監督指導をやっておられると思うのですけれども、それがわからぬということは、私はちょっと解せないのです。あなた方は、乱売とか、それから生命とか、健康にかかわる問題だとか、医薬品というものをそういうふうに重要視した立場をとっておられる。またそれは当然だと思うのですけれども、それについて、再販価格の維持契約をなしておらないのがどこで医薬品名は何だということがわからぬということは、私はそういう点では指導監督ということに対して非常に疑問に思うのですけれども、その点はひとつ今後十分注意していただきたいと思うのです。
  45. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 再販制度の運用の実態等につきましては、たびたび繰り返しますが、公正取引委員会のほうで主管しまして、法律に基く指導等も公正取引委員会のほうでやっておるわけでございます。詳細な運用の実態等につきましては、私どもとしましては、公正取引委員会のほうから通告をもらう法律上の義務も公正取引委員会のほうにはございませんので、むしろ積極的にこちらのほうから公正取引委員会のほうに、再販制度の実態、医薬品等についての実態をお聞きしているというような状況になっているわけでございますが、医薬品産業についての主務官庁でございます厚生省が運用の実態について詳細に承知していないという点は、確かに今後われわれも十分気をつけてまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  46. 山本政弘

    山本(政)委員 いまの薬価の問題ですけれども、再販価格維持契約ということは別としましても、いま私の手元にあるのは総合ビタミンと活性ビタミンのあれですけれども、三十九年以降ほとんどが薬価というものは下がっておりません。薬代というものは、たとえば強力パンビタン一つをとってみても、三十九年、四十年、四十一年、四十二年というのは、卸、小売りとも全部ほとんど変わっておらないのですね。これはむしろ、いま申し上げた再販価格維持契約というものが、これを押えておるのかというふうに私は考えるのですけれども、その点はどうなのでしょう。
  47. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品価格は、冒頭にも申し上げましたように、激しい競争によりまして価格というものは全般的に低下の傾向にあるわけでございます。これは卸売り物価あるいは消費者物価、両方を通じまして、日本銀行なり内閣の統計局等の資料を見ましてもはっきりいたしているわけでございます。  そこで、ただいま御指摘のような、強力パンビタンというようなものが三十九年あたり下がっていないじゃないかという御意見でございますが、確かに三十八年半ばごろから三十九年にかけては、この価格というものは下がっていないわけでございますが、強力バンビタンを再販制度に切りかえましたのは昭和四十年十一月でございます。この四十年十一月の際は、従来あった価格よりも再販価格というのは低くなっておるわけでございます。したがいまして、全般的に申し上げますと、再販制度自体によって価格が硬直化しているとかいうようなことは、必ずしも妥当でないと私どもは思っておるわけでございますが、個々の製品について見ますと、確かにきめられた価格が一年なり二年間ずっと据え置きのままになっているというものもままあるようでございます。
  48. 山本政弘

    山本(政)委員 活性ビタミンについては下がっております。これは自主的に下げたのかどうか知りませんが下がっております。しかし、少なくとも総合ビタミンについては、三十八年にたしか薬価の全面的な調査があったと思うのですけれども、そのせいか三十九年には下がっておる。しかし、三十九年から四十二年に至るまでは、私の調べた範囲ではこれは下がっておりません。しかも、この下がっておらないものについては、大体株式の市場においては信用銘柄とされておる大きなメーカーばかりでございますから、そういう点では、私は薬価については一つの独占価格というものが形成されているというふうに感じるのですけれども、その点はどうなのでしょうか。
  49. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 医薬品価格全般の問題としましては、先ほど申し上げましたように、逐次全体の傾向は下がっているわけでございますが、個々の製品をとってまいりますと、必ずしも下がるというような傾向がなく、むしろ据え置きというようなものも間々あるわけでございますが、そういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、できる限り、私どもとしましては、一般の消費者等の立場を考慮しながら、価格引き下げの指導をやっているわけでございます。大部分の製品については、ほとんどのものとしまして価格の引き下げが出てきているということでありますけれども、いまお尋ねの、独占価格になっているのじゃなかろうかという御意見でございますが、この点については、ことばの用い方は別としましても、医薬品価格というものは、先ほど保険局長が申し上げましたように、一社で一製品をつくっている、私どもの用語ではB価品目のB価というようなことばで申し上げておりますけれども、そういうものにつきましては、これを独占価格と見るかどうか、これは確かに問題があろうかと思いますけれども、当然、一社で一製品をつくっているわけでございますから、その製品価格についてメーカーが末端価格を指示しているという事情は確かにあるわけでございます。
  50. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ、先ほど広告の話がありましたから、私お伺いしますけれども、広告費というのは、秘密のとびらの奥にある花だとかなんとかいうことばがあるようですが、私は、いまの広告費というのは、不況だから広告が多い、こういうふうには理解していないのです。つまり、売り上げ高あるいは利益が減少したにもかかわらず広告費がふえたという理由はあるかというと、そうではなくて、逆に最近の傾向としては、利益があるから広告費が非常にふえているのだ、だからそういうふうにだんだんと概念が変わってきたのじゃないか、こう私は思うのです。広告費の中に占める比率は、本年は知りませんが、十二業種中の伸び率では、医薬品の広告費が二四・一%で一番最高なんですね。これは第二番目の広告費の食料品の一〇・三%から比べてみてもかなり高いのです。私は製薬メーカー企業努力というものは認めますよ。認めますが、それにしても、広告費から見ても、きわめて大きな利益をもたらしているような気がするのですが、その点はどうでしょうか。
  51. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 広告の問題につきましては、先ほどもちょっと触れましたように、医薬品広告全般の姿勢の問題としまして、いろいろ世上に批判なり問題意識を持っておられる方が多いわけでございます。私どもとしましては、医薬品の特性というものを念頭に置きまして、広告の姿勢をできる限り正すようにメーカー等に指導をいたしているわけでございます。  そこで、いまお尋ねの医薬品の広告費の伸び率というのは非常に大きかったわけでございます。ところが、四十年から四十一年、一昨年から昨年にかけますと、むしろ前年よりも減になっているわけでございます。たとえば四十一年の全体の傾向は、まだ数字は的確につかみませんけれども、全産業の広告費というのは、対前年に比べますと非常に総額がふえているわけでございますが、医薬品等の場合は、たとえば昭和三十九年は医薬品広告費が三百四十億、それから昭和四十年に三百三十八億ということで、三十九年よりも四十年は減っている。それから四十一年、昨年になりますと、大体三百億ぐらいというふうにわれわれは電通等からいま中間報告をもらっているわけであります。このようにしまして、医薬品広告というものは、三十九年までは、確かに御指摘のように、対前年に比べますと非常に大きな伸びを示していたわけでございますが、四十年、四十一年等にわたりまして、われわれ役所のほうも強力に医薬品広告の姿勢の問題について指導し、また業界自身も広告全般についての自粛をいたしておりますので、その結果がこういう数字としてあらわれてきたのであろう、かように私どもは思っているわけでございます。
  52. 山本政弘

    山本(政)委員 四十年、四十一年は私も知りませんが、三十七年には日本の広告主のトップ十社の中へ三社の製薬会社が入っております。三十八年にも二社入っております。三十九年には三社入っております。おそらく四十年にも私は三社入っておると思います。そこで、今日の段階では利潤が上がれば上がるほど広告費がふえていく、こういう傾向にあると私は思うのですけれども、そうすると、四十年、四十一年は下がっておるといっても、あなたの話では、四十年は三百三十八億、あるいは四十一年は三百億、これはかなりの広告費だと私は思うのです。そういうことを考え合わせますと、どうも薬価との関連において、私はそこに非常に何か考えなければならぬ問題がありそうな気がするのですが、その点はどうなのでしょう。広告費を下げる、自粛するというだけじゃなしに、それと薬価との関連というものが大いにありそうな気がするのです。問題はその辺にですね。
  53. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 確かに、広告費の問題と薬価との関連につきましては、いろいろの見方が成り立つと私自身そのように思っております。しかしながら、医薬品の広告が非常に激しく行なわれるから、そのために価格のほうにそれがはね返っていくのだというような見方、その点については、私どもは相当疑問を持っているわけでございます。確かに一般の消費者の方に、医薬品広告が、俗っぽいことばで申しますと、はでだとか、あるいは過剰だとかいうような意見のあることも承知いたしておりますが、やはり企業活動におきます広告というものの比重あるいは考え方というものは、広告によりまして大衆需要というものを喚起していく、そうしてできるものなら大量出産というものに結びつけて、企業合理化等をはかりながら価格の引き下げに寄与していく、こういうねらいが広告の基本的な考え方としてあるわけでございますので、医薬品広告の場合におきましても、広告の費用をかりに極端に削減したら、医薬品価格製品価格というものが下がるかとなりますと、必ずしもそれはそうは言い切れないということがございます。したがいまして、そこらあたりの広告費と薬価との関係については、いろいろな見方が成り立つわけでありますけれども、私どもはできる限り、広告をすることによって価格がはね上がるというようなことのないように今後行政指導もしていくし、またメーカー自身もそのような観点から広告活動を続けていくべきじゃなかろうか、かように思っているわけでございます。
  54. 山本政弘

    山本(政)委員 いま、薬として生産額からいえば、ビタミン、それから抗生物質、こういうような順番になると思うのですが、何といってもビタミンが一番多いと思うのですけれども、第十七回の日本医学会総会で衛生関係の第六分科会の連合会がありました。そのときに、川崎近太郎氏が、「ビタミンの生産からみた栄養剤及び強化薬品の使用の実態」ということで、日本においてはビタミンというものはもはや過剰過ぎる、こういうふうなことを言っておられるのですよ。少なくとも一人当たりのビタミンの消費量からいえば非常に過剰過ぎるんだ、こう言っておるのです。にもかかわらず、ビタミンというものは市販においては非常にはんらんをしておる、こういう事態があるわけですね。その辺は十分に考えられなければいかぬと私は思うのですよ。売れるから売らんかな売らんかなで、広告費をそれだけ使って、ビタミンという商品を、結局日本人にこれ以上は過剰だ、過剰過ぎるというほど売っているという実態に対して、監督官庁というものはもう少しきちんとした態度をとるべきだと思うのですが、その点はひとつ政務次官に伺いたい。
  55. 田川誠一

    ○田川政府委員 御指摘の点は、一般にそういうふうに言われておりますし、私どもも、いわゆるビタミン剤、それが必要以上に使われているということをよく聞きますし、われわれもそういうような体験を得ておりますので、そういう一般の、いわゆる大衆薬と申しますか、そういうような問題については、さらに検討を加えていきたいと思っております。
  56. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ最後に、大臣所信表明の中で、「環境衛生関係営業の近代化、合理化をはかるとともに、国民の日常生活に密着したこれら営業に関する料金の安定に資する所存であります。」と、こううたってあります。これは環衛金庫のことだと思いますので、後ほど詳しく御質問申し上げたいと思いますが、これは近代化、合理化ということを言いながら、要するに環衛の組合における統制力をきかしていく、そうしてその結果、アウトサイダーというものに対して、統制下に入らないものは排除していく、私はこういう考え方が多いような気がするのです。と同時に、コインドライというようなものの出現に対する業者の圧迫、そういうことによって零細なものは切り捨てていくということに向かう不安があるのですが、この点についてひとつお考えをお伺いしたいと思うのです。
  57. 田川誠一

    ○田川政府委員 御質問の趣旨がよくのみ込めないのでございますけれども、今度の環衛の公庫をつくることに至りました動機と申しますのは、お湯屋さんであるとか、床屋さんであるとか、あるいはクリーニング屋さんであるとかいうような、弱小の企業の業態の近代化をはかるとか、衛生面の設備を充実するというようなことを主眼にしたわけでございます。
  58. 山本政弘

    山本(政)委員 中小企業につきましては、中小企業基本法があります。それから中小企業近代化促進法もあります。それから中小企業高度化資金融通特別会計法というのもあります。しかし、依然として中小企業の倒産というものは最高です。ずっと年を追って多くなるばかりですね。そうすると、あなた方のおっしゃるように、環衛関係企業といいますか、これを近代化、合理化をはかるといっても、一体実効としてそういうふうになるかどうかというのを、私は一つは疑問に思うんですよ。それからもう一つ、ずばり申し上げますと、これはどうも選挙対策のにおいが非常に強かった、こういう気がいたします。
  59. 田川誠一

    ○田川政府委員 従来の、いま山本委員のおっしゃったいろいろな機関がでございますけれども、ワクの問題であるとか技術の問題であるとかいうようなことがでございますので、今回環衛公庫ができることによりまして、相当小さな業態の方々がかなり恩恵に浴するのではないかということでございます。決して選挙のためのものではございません。
  60. 山本政弘

    山本(政)委員 「これら営業に関する料金の安定」という意味はどういう意味でしょう。
  61. 田川誠一

    ○田川政府委員 サービス業はずいぶん多うございますけれども、そういう優遇措置を講じて料金の引き上げというものをできるだけ押えていこうということも、その趣旨の大きな理由一つでございます。
  62. 山本政弘

    山本(政)委員 近代化、合理化をはかる場合には設備投資が要りますね。そうすると、その償却も要るわけだと思います。そこで私は、安定というのは、下げるという方向ではなくて、逆に上げるという安定というふうにどうもとられがちになると思うのですが、この点はどうなんでしょう。
  63. 田川誠一

    ○田川政府委員 そういうことにはならないと思います。
  64. 山本政弘

    山本(政)委員 サービスの向上、適正料金の維持ということが、設備の償却費にかかってきませんか。要するに、先ほどの環衛の協同組合ですか、そういう統制力の中に入っていった場合に、結局そういう人たちの意向というものがどうしても多く反映をしていく。そうすると、零細な人たちは切り捨てられて、そうして中小企業としても比較的大きいのだけが残っていく。そういう人たちは環衛のこの資金を借りて設備投資をやるから費用がかかる。したがって、サービスはよくいたしました、そのかわりに料金はひとつ上げさせていただきますから、こういうことになりませんか。それが料金の安定ということになれば、たいへん困ると思うのですよ。
  65. 田川誠一

    ○田川政府委員 サービスの内容の向上をすることはもちろんでございますけれども、近代化することによりまして、経営もかなり合理化されるようなことになるのであります。そういう意味で、料金の面も安定をはかることができる、こういうふうに私どもは思っております。
  66. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃとにかくそういう趣旨でぜひやっていただきたいと思います。あとは法案審議の際にまた意見を述べます。
  67. 川野芳滿

  68. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私が当委員会でこのように質問に立ちますのは初めてでございます。したがいまして、質問に入る前に一言ごあいさつさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、私は新兵さんでございます。今後ともいろいろと皆さまにお世話になるかと思いますが、何ぶんともよろしくお願いいたします。  それでは本題の質問に入るわけでございますが、きょう私がお尋ねしたいものは、第一番目には新潟県の阿賀野川の水銀中毒事件、もう一つは重症心身障害児の問題でございます。いま一つは十階建ての高層建築で落成いたしました中野病院に関連した問題でございます。いま一つは保育所行政の問題でございます。私がお尋ねしたいことは、もちろん厚生大臣じきじきにお答えを願いたいところであったのでございますが、先ほどから予算委員会関係がありまして席をはずされたようでございます。しかたない、残念だと思いますが、かわりまして等えられる関係者は、どうか大臣と同じような責任ある答弁をお願いしたい、それがお願いでございます。  それでは、第一点の、新潟県の阿賀野川で起こりました第二水俣病といわれておりますこの事件は、被害者はもちろんのこと、地域住民を極度に不安におとしいれております。この事件について、まず、厚生省としてどのように対処されたか、その経過と結果についてお伺いしたいと思います。
  69. 舘林宣夫

    舘林政府委員 この事件が初めて発見されましたのは昭和四十年の五月であります。それまでは、患者は実はその前の年の八月から出ておったわけでありますが、水銀中毒とわからずに、ほかの病気として扱われて、一部は死亡し、一部は患者のままで治療を受けておった状況であるわけであります。昭和四十年の五月に至りまして、新潟大学の椿教授が、これは水銀中毒であろう、かような発表をされたわけであります。そのような御意見がございましたので、直ちに県はその実態の調査に乗り出し、国にも報告がございましたので、厚生省といたしましてもその実態の調査に取りかかったわけであります。ところが、だんだん調査をいたしてみますと、この問題はかなり広範な原因によるものの可能性がある、このようなことで、科学技術庁から特別研究費を出してもらうことになりました。その特別研究費によりまして、各省が集まって相談をし、厚生省ばかりでなくて、農林省もこの研究費を用いまして調査に取りかかったわけであります。その際、この科学技術庁の特別研究費に基づきます厚生省の受け持ちました分野は、三つの委員会といいますか、専門家の班にお願いいたしたわけでございまして、一つは臨床班と申しまして、患者の治療に当たる、患者の症状、治療、診断というような分野を担当する班でございます。いま一つは検査研究班、分析班でございまして、各種の物質の中における水銀の含有量あるいはその特性、性質、それを調査する班でございます。いま一つは疫学班でございまして、病気のもとになりました水銀のよってきたる原因を探求する班でございます。これらの三つの班がそれぞれ独立いたしまして、それぞれの分野の調査をやっておったわけでございますが、今月初めに至りましてようやくその調査が完了いたしまして、厚生省に報告があったわけでございます。これがこの原因、病状等に関する調査概要でございます。  他面、この水銀中毒によりまして二十六名の患者を生じ、そのうち五名が死亡をいたしておるわけでございますが、これの治療には新潟大学が当たってまいっております。また、患者の救済措置は、県並びに市が主体性をとりまして、今日まで各種の措置を講じてきたほかに、国といたしましても生活保護法に基づきまして援助をいたし、また治療は社会保険によりまして治療を行なう、このような措置を講じてまいっておるわけでございます。  以上が今日までの経緯でございます。
  70. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 調査結果の発表されたのはいつでしょうか。
  71. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省調査結果の報告がございましたのは今月の七日でございます。
  72. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いままでこまごまと経過報告がありましたが、この水銀中毒病であると発見されたのが四十年の五月と言われました。ところが、私が新聞で見ましたところでは、その発生は三十九年の八月となっております。いまの説明では、確かに発生は三十九年八月であろうが、発見がおくれたのである、こういうふうな言い分であろうと思いますが、このようなおそろしい水銀中毒が約一年もかかってようやく発見された。それも、椿教授のほうからその病気がおかしいんじゃないかということで初めて明るみに出て、その真相が明らかになったということであります。そしてまた、その調査が始められたのが、新聞によりますと、四十年の九月からである。そして調査結果は四十二年の四月の十八日だと、新聞ではこう報道されておりましたが、いずれにいたしましても、一年間も放置されたような状態にあったということと、それから現実に発生しました三十九年八月から調査結果が報告されるまで二年と九カ月もかかっております。私がここで問題に思うことは、こうした非常におそろしい病気が発生したこと自体が、中央に報告され、あるいはその内容がわかるということに、あまりにも日にちがかかり過ぎている。この一つの問題ですが、これは行政上の欠陥があるんじゃないかということに一つの問題を持っております。それについてあらためて答えていただきたいことが一つと、それからその調査結果、いわゆる報告の内容について、一体どこがその加害者になったのか、その二点答えていただきたいと思います。
  73. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お説のように、今回の中毒事件が始まり、最初の患者とも称すべき人が出始めたのが三十九年の八月からでございます。それが水銀中毒と思われるということが専門家の手で診断されたのが翌年の五月である、かようなことでございまして、その結果、水銀中毒とわからずにほかの病気の名前で処理されておるという問題があるわけでございます。この点は、この水銀中海が非常に特異な形態を持っておる、非常にまれなものであるということから、直ちにこの診断に当たった医師が、これはどうも水銀中毒が疑わしいという判定をなかなか下し得ない。実はこの椿教授は、この診断の当時はまだ東京大学の先生をしておりました。たまたま新潟県へ出張いたしておりまして、その患者が非常にむずかしい、従来見たこともないような種類の患者であるということで手がけられ、たまたまこの椿教授が水銀中毒の専門家でございましたので、どうもあるいは水銀中毒かもしれないということをお考えになって、漸次詳しい検査を始めて、ようやく五月に至りましてそのような診断がついた、こういうことでございまして、この病気そのものの診断が非常にむずかしい、まれにあるものであるという点が発見に手間どった点であるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、患者が発生してからこのように長い間放置されておったということは、結果的には非常に遺憾でございまして、もっと早く発見すればこのような多数の発生を防ぐことができたかもしれないという点がございます。これは、今後とも私どもとしても、こういう特異、特殊な中毒患者が発生するということに対しては、絶えず気を配っていく必要がある、かように思っておる次第でございます。  それから、この報告書の結論でございますが、三班それぞれ独立した形で報告されておりまして、診断の班のほうは、この阿賀野川の下流に発生した患者は低級アルキル水銀化合物の中毒である、このような判断でございまして、診断の上ではそれ以上の詳しいことは触れておりません。実質的には、その後の調査によりまして、これはメチル水銀——低級アルキル水銀の中でもメチルの形のものであろうということが判明はいたしましたけれども、診断の段階では、そのような詳しいことがわからなくて、まず低級アルキル水銀中毒であろう、このような判断を下しました。それから検査の班は人の髪の毛、魚から出てきたものの水銀はメチル水銀と思われる、そういう判断をいたしましたが、そのほかの水ゴケの中あたりから出てきたものにつきましては、アルキル水銀であろうということでございますが、きわめて微量でございますので、それ以上の詳しいことの断定はできない、このような報告でございます。それから疫学班は、この両班の結果を参考にし、また同時に疫学班の各種調査の資料を加えまして判断をして、この水銀中毒の水銀の由来は、まず患者が阿賀野川下流にある魚を食べて水銀中毒を起こした、その魚の水銀は阿賀野川のかなり上流にあります昭和電工鹿瀬工場の廃水の中に水銀があった、このように診断をする、こういう報告でございます。
  74. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまのお答えの中で、非常におくれた原因というのは医師の判断がおくれたためであるというふうに理解いたしましたが、それならば、私は望みたいところでございますが、特にこのような特殊な病気については判断もむずかしいかもしれませんが、それなりに特殊的な症状があると思います。したがいまして、医師会あたりを通じまして、特にその医者に対する教育といいますか、そういう内容の啓蒙、もしこのような症状が起こったならば、確かにこういうものなんだというふうに連絡が早く中央あるいは権威者にあるようなシステムをこしらえていただきたい。ということは、もしそのようにもっと早くその医者が他の権威ある医者等に相談したならば、あるいは五人も死亡するというような犠牲者を出さずに済んだかもしれませんということが一つでございます。これは私のあくまでも要望であります。  もう一つは、いま、調査結果については三者三様であってどうのこうのという答弁でございますが、はっきりとした加害者の名前、所在は明らかに言われませんでした。しかし、私がきょうここに持ってきております新聞は四月十九日の新聞でございますが、それをちょっと読んでみますと、「厚生省の研究班は十八日、その原因は昭和電工鹿瀬工場(現在は鹿瀬電工)の廃水であるとの最終報告を発表」したと、このように記事が載っておるわけでございますが、この記事についてはどのようにお考えなんでしょうか。
  75. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま申しました三班のうちの疫学班がその原因の探求をする任務を持った調査班でございましたが、この疫学班の報告によりますと、この中毒を起こしましたのは魚を食べたことによる、その魚は昭和電工の鹿瀬工場の廃水の中にその原因となる水銀が入っておったことによるものであると診断する、このような報告があったわけでございます。
  76. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは結論としては、昭和電工の鹿瀬工場が加害者だとみなしてもよろしいのでしょうか。
  77. 舘林宣夫

    舘林政府委員 この疫学班の疫学的判断によればそういう判定をする、このような報告があったわけでございます。
  78. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの新聞の続きになりますけれども、この鹿瀬工場の廃液が原因であるという断定のもとに、当工場の総務部長の安藤信夫さんという方が、「厚生省調査班は、当初から農薬を対象外においた感じで、われわれとしては新潟地震の直後に新潟ふ頭倉庫から流出した農薬が原因だと思っている。被害者側が当社を相手どって補償の訴訟を起こすというが、このズサンな調査班の報告書をよく検討すれば、責任が当社にないことは明らかなはずだ。」このようなことを言っておるわけでございます。いわゆる反論でございますが、これについては御承知だったでしょうか。また御承知ならば、この点についてどのようにお感じになっているかをお尋ねいたします。
  79. 舘林宣夫

    舘林政府委員 昭和電工側はかなり前からこの原因にかなり農薬が影響しておるというような発表をしておられまして、この記事にございますように、新潟地震の際に信濃川の河口付近にございました農薬倉庫が水浸しになりまして、その倉庫の中にありました水銀農薬が流れ出して阿賀野川に入った、こういうようなことが原因であるというような主張を終始いたしております。これらの点は、疫学班もその調査の過程においてその反論を承知いたしておりまして、それらの点も配慮した上で、先ほど申し上げましたような結論を出しておるわけでございまして、疫学班としては、そういう調査の結果を、昭和電工側の意見を考慮した上での判断を下したもの、かように承知をいたしております。
  80. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまのお説では、結局昭和電工鹿瀬工場にその問題がある、責任がある、このように理解されるわけでございますが、私がなぜこのようにその問題をくどく念を押すかというと、ふしぎなことが二つあるわけでございます。その前に、要するに国の結論、このような段階でまたもやあいまいになるのではないか、このように懸念している被害者はずいぶん多いと思うのであります。そこで私は、その点で二つの事柄をあげてみたいと思います。  その一つは、昭和四十一年の二月二十五日に、参議院の農林水産委員会で、私たち公明党の北條雋八氏が水銀中毒の対策の問題で質問をしております。その当時のことが私どもの資料にございますので、その一部を申し上げてみたいと思います。「偶発的な農薬事故による水銀中毒か。工場廃液からきた水銀中毒か。——の論争と、共同研究のすえ、工場廃液説が有力視されるにいたった。水銀中海にかかった患者は、最初、手足の先や口のまわりのしびれを訴えた。つぎに、目に異常が現われ、視野は紙筒から外をながめるように狭くなった。言語障害、運動失調におちいるのに長くはかからなかった。被害は動物にもおよんだ。阿賀野川下流に大量に浮き上がったニゴイを食べたネコは、気が狂った。よだれをたらし、千鳥足でふらついているかと思うと、とつじょ、飛びはね、暴れ回り、壁に体当たりをくわせて、悶死した。部落の人たちは、漁村にネコの姿が見られなくなったことに気がついた。犬も気が狂い、カラスや豚も死んだ。」さらに続きまして、「阿賀野川異変から一年半。四十一年二月二十五日。参議院農林水産委員会に臨んだ公明党の北條雋八氏は、農薬による水銀中毒禍対策を政府にただしたのである。」そして、「長野県佐久総合病院が十三部落を調査した結果、農薬使用者の一七・二%が中毒症を起こしている。」ということについて農林大臣等に質問をしているわけでございますが、その内容をずっと読み上げていけばたいへん長くなりますので、この辺でその披露はやめますけれども、私がふしぎに思うことは、そのときに問題にされているのは、化学の廃液ではなくてあくまでも農業用水というのが中心となった議論でございます。そしてそのあとで科学者を参考人として招いて意見を聴取した中にも、ほとんどの意見が農薬中心になっております。こういうところに、今回の判定が自信ある判定であるかどうか、これをひとつ心配しております。というのは、おそらくはこの調査結果による判定によって、地元の被害者は確かに訴訟を起こすであろうと思うのです。もしこの判定が間違っておるならば敗訴になると思います。たいへんな問題がこれにからむわけでございますので、私はこのようにくどいように聞いているわけでございます。  それからいま一つふしぎに思うことは、昭和二十八年ごろから三十九年にかけまして起こった熊本県の水俣病の事件の際には、熊本大学の医学部が水俣病研究班を組織いたしまして、そして研究に当たった結果は、新日本窒素水俣工場の廃水に有機水銀化合物が含まれ、それが原因であったと草間的には立証された、そしてその成果が世間には高く評価されたのである、こういうふうに聞いておりますが、しかしながら工場側では、そうじゃないんだ、旧日本の海軍が湾内に捨てた爆薬類によるものではないかと主張いたしまして、これまたそのとき対立したわけでございます。そのためか、このときも厚生省はこの原因について断定を避けた、こうあります。そのために、その会社となくなられた方の遺族、あるいは患者の間の補償問題がうやむやに終わっておるという事実があるのであります。この点についてもう一度先ほどの調査の結果の自信の程度、これについてはっきりした表明をしていただきたい。
  81. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お尋ねの熊本県の水俣に起きました水銀中難事件の際の調査も特別研究班にゆだねられたわけでございますが、遺憾ながらその特別研究班全体としての報告書において、取りまとめた一つの断定した意見が出ないままに終わっておるわけでございます。  今回はその場合とやや違いまして、最初の調査におきまして疫学班が判定を下しております。ただ、食品衛生調査会にかけまして各般の分野の方々の意見を聞いた上で総合判断をするということをいたしたいと思いますが、その上にこの問題は工場の化学変化の過程並びに水産物における毒物の変異というような問題もございますので、今回の調査は、科学技術庁におきまして、厚生省のみならず農林省の調査も共同調査に加えていたしておりますので、それらを加えた総合判定は科学技術庁が司会をいたしまして、関係各省寄りまして総合判断を下すことになる一わけでございますので、その結果がどうなるかということは想像できませんけれども、この前と違うことは、第一次の調査班の答えが今回は非常に明快に出されておる、かような点でございます。
  82. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまのお答えに関連しまして、国としてはいつごろその判定を下して発表するのか、大体の推測でけっこうでございますが……。
  83. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省といたしましては、一昨日食品衛生調査会を開きましてこれに正式に諮問をいたしました。これに基づきまして、食品衛生調査会の判断はあまり時日をかけないでちょうだいできる、かような期待をいたしております。あらためて新しく調査をし直すというようなことでなくて、既存の調査資料をもとにいたしまして判断を下されるもの、かように期待をいたしておりますので、あまり長期間を要することにはならない。その結果を持ち寄りまして科学技術庁で判断を下すわけでございますが、これもそう長い日時を要するとは思われませんが、この点は私どもの立場では必ずしも的確には判断できませんけれども、そう長い時日を要するとは思っておりません。
  84. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ただですら官庁行政は手間がかかる、このような批判をこうむっておるときでもございます。このような大事な問題をそう簡単に結論づけられるということも考えものではありますけれども、よくよく考えてみれば、この調査に当たったメンバーの方々というものは、いわゆる最高のスタッフが私は当たったものと思うのであります。したがいまして、他のものの意見というものはそんなに得られるものではない、かように思うのでありますが、いずれにいたしましても、被害者の身の上に立ちまして一日も早くその結論を急いでほしいというのが要望でございます。  それでは、次にお尋ねいたしたいことは、被害者に対しまして現にどのような援護措置がとられているかということであります。よろしくお願いいたします。
  85. 舘林宣夫

    舘林政府委員 五名の死亡者を除きまして、現在患者状況は入院しておる者はゼロ、通院中の者が十八名、自宅療養者が三名、仕事についておる者が十名あります。この患者の所属いたしております世帯の数は十八世帯でございますが、この十八世帯のうち生活困窮者として生活保護法で保護いたしております世帯が五世帯ございます。したがいまして、これらの家族には国としても生活保護を通じて援護をいたしております。  それから死亡いたしました五名に対しましては、見舞い金として県が一人当たり十万円、市あるいは町が一人当たり三万円の見舞い金を支出いたしております。そのほか、患者の治療費のうち保険負担しておるもののほかの自己負担分につきましては、市と県が折半して持っておりまして、患者に払わせないということにいたしておりますし、入院あるいは通院患者に対しまして、通院費、日用品費といたしまして生活保護適用者の六名には月千五百円、その他の者には月に千円というものを与えております。これもやはり県と市が折半をして持っておる。それから胎児性水俣病の危険のある新生児が一名ございますが、その一名に対して一年間ミルク代をやはり県と市が折半して持っております。そのほか県から患者世帯へ生業資金の貸し付けをいたしておりまして、その総額は二十五万円に達しております。また、さらに県から漁業協同組合に見舞い金としまして五十万円、以上のような援護が行なわれております。
  86. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大体わかりましたが、いまの見舞い金のうちに十万円と三万円というようなお話がございましたが、生活保護費でまかなわれている方々に対してこれらの見舞い金は収入認定にならないのかどうかということです。
  87. 舘林宣夫

    舘林政府委員 まことに申しわけございませんが、その点の詳細な調査はいたしておりません。
  88. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  個々の家庭につきましてどういうことということは、資料を持っておりませんが、原則としましては、その見舞い金を、たとえばあとに残された人が新しい家族の生業に使うというふうな場合には、たとえばそれが小さい店を開くとかあるいは何か新しい商売をするために十万円とか十五万円とかいうものが要るという場合には、その家族の生業のために使うものであって、生活費に使うものではないということで収入認定はしない、一般論としてはそういうことでございます。
  89. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 その点はそれでよろしいとしまして、先ほど話された内容と関連いたしますが、また新聞の一カ所を読ましていただきますと、「生存者二十一人は、週に一度新潟大医学部付属病院で治療、二人は後遺症のためのリハビリテーションをうけ、七人はしびれを訴えて仕事にもっけず、毎日ぶらぶらの生活をつづけているという。」こういうような記事を見まして、私は非常に胸が痛い思いでございますが、この水銀中毒にかかった方というのは大体病院に行って治療を受ければなおるものなんでしょうか。その点について……。
  90. 舘林宣夫

    舘林政府委員 この種の水銀中毒の治療は、熊本県の水俣の中毒患者の際にすでに治療の経験がありまして、今回もそれの改善をはかって、専門家がずいぶん苦心をいたして治療に当たっておるわけであります。実は熊本の場合にはほとんど治療効果はない状況でございましたが、今回はやや治療効果があらわれておりますけれども、一般的に申しますと改善は非常にむずかしいものでございます。
  91. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私もその点を心配いたしまして、新潟の現地の医科大学の研究室のほうにその見解をただしてみました。そうしますと、その答えは、おそらくはこの病気にかかった人は、発病前のからだには回復しないのじゃないか、こういうことでありました。したがいまして、相当の見舞い金等をもらってみても、治療費等でほとんどなくなってみたりして、かわいそうなことですよ、こういうことでございましたので、どうかこういう点、よくよく理解された上で、強力な援護措置をとっていただきたい、これは要望でございます。  次に、補足的にお尋ねしたいのでございますが、熊本県の水俣病患者、まだそのまま続いていると思いますが、その後の状態についてと、厚生省が断定を下さなかったばっかりに、被害者は見舞い金ということのみで片づけられてしまっているのですが、その当時の見舞い金というのは最低、最高幾らぐらいもらったものでしょうか。——ここでお答えができなければ、あとで資料で報告願いたいと思います。  次に、お尋ねいたしますが、このようなおそろしい水銀中毒事件が二度まで起こったということは、私は、企業の責任もさることながら、監督指導に当たる当局の姿勢にも大きな問題があると私は思うのであります。水質保全法やあるいは工場排水規制法などがあったといたしましても、法規それ自身が、ざる法である。指定河川は少ないしあるいは基準もゆるいから大っぴらに汚染した廃水を河川に流したりして、付近の住民に深刻な損害を加えております。したがいまして、住民の健康や環境を守る立場にある厚生省は、通産省に対しても、もっと強腰でいっていただきたい。現在の姿を見ると、非常に弱腰のように感じるのであります。先ほどの質問の中にもありましたように、近く上程されようという公等基本法の問題についても、その目的の条文に至っても、厚生省としては産業の発展よりもまず人間尊重を優先にした条文を考案していたように承っております。ところが、現実には通産省の考えの、「経済の健全な発展との調和を図りつつ」というような、その精神にすりかえられているという、この一つの事実から見てみても、今度のような事件につながるのではないか、私がざらに言いたいことは、厚生省の、大臣はもちろんのことでございますが、その関係する皆さまには、ほんとうに国民のためにもつともっと強腰で行政に当たっていただきたいということであります。  次は、話は変わりますが、重症心身障害児についての質問に移ります。  最近に至りまして、徐々にではありますが、社会福祉施設の整備拡充が進んでまいりました。特に、このたび児童福祉法を一部改正して、そのワク内にいわゆる重症心身障害児施設が加えられるという方向にあるということは、まことに喜ばしい限りでありますが、しかしながら、国民の要望を満たすのにはその実態はまだまだの感を深くするものであります。そこで私がお尋ねしたいことは、重症心身障害児または障害者について、その数と施設の設置数について説明願いたい、これが一点でございます。
  92. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいま御質問いただきました重症心身障害児の実態と、現在までに建設いたしました施設の概略について申し上げますと、昭和三十九年に、私ども身体障害者の実態調査を実施したわけでございます。その中で、重症心身障害児及び重症心身障害者、この内容は御承知のとおり重度の精神薄弱、重度の肢体不自由を伴う、症状が重複しているという方々でございますが、十八歳未満の重症心身障害児につきましては、全国で一万七千三百名、重症心身障害者につきましては全国で二千名、合計一万九千三百名と推定されております。このうち、家族におきましても施設収容を希望し、かつまた関係者のほうで見ましても施設に収容することが必要であろう、かように考えられます方々は、子供の分につきましては一万四千五百名、おとなにつきましては二千名、一万六千五百名、かように推定される−わけでございます。これに対しまして、現在まで整備いたしておりまする施設数でございますが、四十一年度末、つまりこの四十二年の三月末現在でございますが、国立療養所に併設されておりまする重症心身障害児のベッド数が五百二十、このうちには整肢療護園の四十床を含みます。それから福祉法人等の公法人立の施設のベッド数が一千百十一床、合計いたしまして一千六百三十一床、かような数になっております。
  93. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの報告を聞いておりますと、昨日厚生省のほうからいただきました資料と合致しておりました。これで安心いたしましたが、まず重症心身障害児及び者、これを合計しまして一万九千三百人、そしてそのうち収容必要と見込まれる数が、一万六千五百人。この現状に対して、受け入れる施設というものは昭和四十一年末現在で、先ほど申されました二十三カ所、一千六百三十一床、こういう報告でございましたが、これから判断しますと、いわゆる収容に必要な数一万六千五百人のわずか一割にも満たない、実にあわれな数であろうと思うのです。最近、このような身体障害者に対する関心の度は深まってきたとはいうものの、これはまだたいへんなことだという感じがするのであります。さらに私は、このようなある関係者に聞いた話でありますが、厚生省の調べによれば、一万九千三百人という総数が出ているけれども、これはまだまだ未掌握分があるのだ、現実にはおそらく三万人くらいの数に及ぶのではないか、このような話も聞いております。したがいまして、そのようなことを勘案していきますと、実質的には要収容人員の員数というものは一万六千五百人をさらに上回る数になるわけでございますので、したがいまして、これに対して厚生省としてはどのような考えで施設をつくっていこうと計画されているのか、このような質問でございます。
  94. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、私ども調査によりましても、一万六千五百人の子供なりおとなの方々を収容しなければならない。非常にこれは事を急ぐわけでございます。しかしながら、こういった施設の運営等につきましても、非常に御苦労の多いことでございますので、そういった職員の確保等の問題もございます。また、設備の拡充という点につきましても相当の問題がございます。  したがいまして、私のほうといたしましては、とりあえず昭和四十五年度末までにおきまして、この要収容者の半数を収容するような設備を持ちたいという計画を持っておるわけでございます。昭和四十五年度末までに約七千九百床程度のベッドをどうしても用意したい、かように考えて計画を立てておるわけでございます。このために、設備費の関係におきましても、また施設職員の確保等につきましても、重要な、非常に大きな問題、困難があろうかと思いますが、特にこの中には国立療養所におきまするベッドの確保ということも含めまして進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  95. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまのお話では七千九百床くらいの目標で、しかも四十五年を目標に計画を立てているということでございますが、七千九百床などということは、現在の要収容者の、必要と思われる人の約半分だ、これはたいへんなことだと思います。しかも五年がかりだという話でございます。  おそらくいま説明なさったのは私が持っている資料と同一のものでお話しなさったと思いますので、私の資料に基づいてお話をしますが、昭和四十二年の計画といたしまして国立は六百床、公法人立は五百床、合計一千百床、これだと思いますけれども、これではもうほんとうに話にならない。これはもっと予算を獲得して早急にこの対策に当たるべきではないか。聞くところによりますと、大蔵省のほうでも、この五カ年計画というのは長過ぎるのじゃないか、もっと積極的に強引にというような大蔵省からの話だと聞いておりますが、そういう点についてはどうでしょうか。
  96. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御指摘のように、早急のうちにこういった施設を拡充するということが必要である、緊急の問題であるということも私ども十分承知をしておるわけでございますが、この建設自体につきましての経費よりも、むしろこの施設を運営していきまするに必要な医師でありますとか、看護婦でありますとか、あるいは理学療法士、作業療法士あるいは保母、児童指導員、こういうふうな施設職員の確保という問題も大きな問題になってきております。したがいまして、建物をつくる一方そういった施設職員の確保の計画ということも、施設を運営するにおきましては車の両輪のごとく重要な問題でございまして、そういった点も十分考慮いたして現実に即した計画を立てなくてはならない、かように考えております。先ほど申し上げましたように、国立の療養所のほうのベッドの確保をするとともに、やはり県なり、あるいは社会福祉法人なりにも十分な手当てをいたしましてつくっていただかなくてはならないわけでございますが、やはり仕事がきわめて重要かつ困難な問題でございますので、実現性のある計画を立てて、それに従って進みたい、かように考えておるわけでございます。
  97. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの説明ではほんとうは了解できませんけれども、それではまず四十二年の計画案に一応譲ったといたしましても、それは一体どの方面に設置される予定なのか、そのことをお尋ねいたします。
  98. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 計画といたしましては、四十二年度におきまして一千百ベッドを確保したい、かように考えております。このうち六百床につきましては、国立の療養所にベッドを付設するという計画でございます。残りの五百床につきましては、県の施設なり、あるいはまた社会福祉法人等の行ないまする施設の新設あるいは増床という方向で進んでまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  99. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私が聞いているのは、その数じゃなくて、予定地域ですね。今度設置される国立が六百と公法人立が五百と、合計一千百という設置の案が出ているけれども、大体どのような地域に持っていかれるのか、これを聞いているのです。その案を聞いているのです。
  100. 若松栄一

    ○若松政府委員 数は非常に制限されておりますし、要望もかなりたくさんございますので、実際の選定にはかなり困難をいたしております。昨年度に十カ所設置しておりますが、十カ所の設置を行ないます場合にも、各ブロック、たとえば北海道、東北、関東、中部、中国、九州というような、ブロック別の配置ということを考え、また国立療養所に併置いたしますために、受け入れ側の態勢が問題になります。たとえば、中部地方なら中部地方のどこに置きたいといいましても、その地方に受け入れ側の適当な国立療養所がないという場合には、やむを得ず場所を変えなければならぬ。また地元の要望も強いここら辺に設置したいと申しましても、受け入れ側がとうていそういう施設は引き受けられないというようなこともございまして、現在なお最終的にはきまっておりませんが、既存のものと新しいものとをできるだけ全国的な立場で平等な配分になるようにということで、現在なお計画を検討中でございます。
  101. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 何だかずいぶん時間がないようでございますので、あと一、二問で終わりたいと思います。  いまのお答えでは、ブロック的に考えられている。去年建てたところ以外のところに四十二年は持っていきたいというふうに聞こえたのですが、それにすれば、あと近畿と九州地方が残っておるようにも聞いております。できましたならば、その方面に全力をあげてそういう施設を建てていただきたい。これは希望でございます。  ではもう一間だけ、医療を必要とする重度精神薄弱児に対する救済措置についてお伺いします。ダブル障害児は今度の法改正によりまして施設に入所することができますが、単に精神薄弱児であって医療を要する児童というものは取り残されるような立場になるのじゃないかというふうに私は心配しているのであります。その点についてお願いします。
  102. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 精神薄弱児のうち特に重度の者、たとえば知能指数が三五以下であるとか、またいろいろなときに発作を起こすというような方々につきましては、精神薄弱児施設の中に重度の方を収容する重度棟というものを設けてございます。それによりまして、医師等の看護のもとに収容をするという制度、方策をとっておりまして、こういう重度棟も毎年相当数ふえてまいっております。したがいまして、今後もそういう重度棟を充実していくという方向で進んでまいりたい、かように思うわけでございます。
  103. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 かような重症障害児をかかえたおとうさん、おかあさんの苦悩を思うとき、極力運用面に御配慮願って、弾力的な施設運営を要望しておきます。  それではきょうの質問は一応これで打ち切りたいと思いますが、実はまだ質問の内容は続きますので、この次の委員会まで保留させていただきたいと思います。
  104. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる五月九日火曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会