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中川(理)
政府委員 武藤先生おっしゃいました
鍋山地区の
石灰石工場における
粉じんによる被害、これは非常に大きなものであるようでございます。私のほうが所轄をいたしております
東京の
鉱山保安監督部から、この五月以降相当熱心に精力的な
調査をいま進めておるところでございます。ただ率直に申しまして、従来の
監督はどうか、こういうことを顧みてみますと、私
どもの
鉱山保安法の
任務でございます第一の
保安面の
注意ということに
在来主力が置かれておったことは確かでございます。その後一般的な
公害予防という
任務も漸次その
重要度を加えてきたわけでございますが、
鉱山における鉱害の
予防という場合に、主として製錬所から出ます煙害でございますとか、あるいは
選鉱所その他から排出されます廃水の問題に私
どもが
主力を置いてきたということもまた否定のできない事実でございます。どちらかといいますと、
石灰工場のようなものは
企業の
形態が大体
中小企業形態であることもございますし、それからいま
衛生上の問題で
武藤先生御
指摘になりましたように、
石灰石は無害であるというような
感じで私
どもがおったこともまた確かでございます。そういう意味合いにおきまして、率直に申しまして、従来それほど力を入れてやってきた
行政分野であるということは申せないと思います。ただ、先ほどの
週刊誌は私も見ましたが、それ以前から多少問題が出かかっておるという
状況を私
ども把握いたしまして、五月以降数回にわたりまして
監督官を派遣すると同時に、五つの
鉱業権者を
監督部に呼びまして、具体的な
対策をいま進めておるわけでございます。
そこで、御
指摘の
従業員についての
じん肺防止の問題でございますが、これは私
どもの
調査でも数名の患者があるというふうに聞いております。この
対策は、まず本質的には
粉じんの
発生、
飛散を抑制するということでございますけれ
ども、御承知のように
石灰の
工程は、
石灰石を採掘しまして
焼成炉で焼いて
生石灰にいたしまして、それから
生石灰を注水攪拌して
消石灰を製造する。
消石灰に注水するときに
多量の熱を
発生して、同時に微細かつ
多量の
粉じんを
発生するというプロセスは、いってみればきわめて単純な
工程でございますし、原始的な
設備で行なわれているということを言っていいくらい単純な
状態でございますけれ
ども、ごく最近までは、いま
先生御
指摘の、外に出て一般に迷惑をかけることをどうしたらいいかということを
念頭に置いて
考えておったわけでございます。その
調査を進めております
段階で、
従業員自身にも問題があるということがわかってまいりました。これにつきましては、私
ども一般的に
じん肺の
防止のために、
従業員対策といたしましては、
マスクの備えつけの義務というものと、それからできるだけ
粉じんが飛び散らないような
散水の
実施というようなことをやらしておるわけでございますけれ
ども、ある
工程までは
マスクの取りつけを確実に励行しておるようでございますが、いま申し上げました
工程のあとのほうになりますと、非常に
温度が高うございますために、
マスクを装着して作業しますと、汗でただれると申しますか、そういう
状態があるということで、一般的には、その辺の
工程になりますと、手ぬぐいでほほかぶりして作業しておるというのが
実態のようでございます。私のほうとしましては、これはやむを得ないといえばやむを得ないのでございますが、今後の問題といたしましては、装着しました
マスクが顔面をただれさせるというようなことに対して、そういうことの起こらない
マスクというものをもう少し
考えなければいかぬのじゃなかろうか。一般的に
温度の高いところで
マスクを使用するんだという頭がございませんで、
マスクをつければよろしいんだと
考えておったことが、
石灰石の
工場などにつきましては問題があるということが、残念なことですが最近になってわかったというような
状況でございますので、今後そういった新しい、そういう着用することにおいて弊害のないような
マスクをくふうしていくということに少し努力をしてまいりたいと
考えております。
それから、一般に先ほどお示しになりました
写真にもありますような
粉じんが周囲に
飛散して、付近の民家に御迷惑をかけておるという
状態を、どうやって解消したらよろしいかということが一つでございます。通常の
状態におきましては、どちらかといいますと、
住宅地に遠ざかったところに
石灰石の山があるというのがいままでの
考え方でございました。先ほど申しましたように、取り立てて気にしていなかったということには、半分ほど理由がございまして、それほど問題がなかった。しかし、一般的に
市街化が進んでいって、そういうところにも宅地がふえていくという
状況になってまいりますと、やはり問題がある。
町寄りの、
先生さっき御
指摘になりました
葛生なんかの場合での
工場設備は、いまの
鍋山の
設備と比較して、
かなり注意をされておるように私
どもは承知しております。そこで
当該地区につきましても、ここ
数月以来、
権者を呼びまして、具体的にどういう
設備の
改善をやっていったらよろしいかということを相談いたしておりました。大体の私
どもの
考え方を、
東京の
監督部長から
権者に話をいたしますと、同時に、
権者のほうから具体的な
改善実施計画を提出してもらうように
指示書をすでに七月五日に渡しております。私
どもいま
考えておりますことといたしましては、か焼上の
消化設備を二重
注水式に改造するということが第一点でございます。ここで水洗いによって外に出るものを少なくする。さらに
消化設備以外の
粉じん発生個所につきましても
密閉集じん機の取りつけ等、
粉じんの
飛散防止のための
措置を講ずる、こういうことを
考えております。具体的なスケジュールといたしましては、二重
注水式の
消化設備につきましては、本年の八月中に各
鉱山一基ずつ
発生する。そうして十一月に試運転し、十二月に稼働する。残りの五基につきましても来年の八月までに取りつけし稼働させる。それから
粉じんの
飛散防止のための
機械装置の
密閉、これは多少金額も張りますし、工事も長くかかりますので、
段階的に分けまして、これはまず来年八月までに完成する。しかし、建屋全体の
密閉及び
集じん機の取りつけということになりますと、三カ年
計画の
最終年次である四十四年くらいに
実施するという、三年がかりくらいでやってみたらどうだろうかということを大体私
どもの意図といたしまして、
権者側に話をし、そういう私
どもの
考え方に基づいた具体的な
計画を出してもらうようにいま
指示をしておるところでございます。以上の
措置を講じますために、これはどうも見積もりでございますので、非常に幅があって申しわけないのでございますけれ
ども御
参考のために申しておきますと、一
工場当たり六百万円から九百万円くらいのことで何とかやれるのではなかろうか。この辺の経費であれば、いま申したような
企業形態の
当該五山につきましても
協力を得られるものという
考えのもとに、いませっかく話を詰めつつあるところでございます。