○島本
委員 私は、日本社会党を代表して、
内閣提出の
公害対策基本法案の修正部分には賛成、修正部分を除く原案に反対するものであります。
近年、わが国は、
産業経済の目ざましい
発展、人口の都市集中化、交通
機関の高度な発達等に伴い、
公害が逐年増大の傾向を示し、大きな社会問題、政治問題になってきているのでありますが、このためわが日本社会党は、すでに四十年二月に、
国民を
公害から守るための
公害対策基本法案を、また、本国会においては、新たな
公害対策基本法案及び
公害の顕著な
地域等における
公害防止特別措置法案を
提出しているのであります。
御承知のように、わが党案は、
国民の健康、静穏な日常生活、財産及び
農林水産資源等を
公害から守ることを大前提といたしておるのでありまして、わが党はこれらの
法案を提案することにより、
政府に対し強く善処を要望してまいったのでありました。このため、
政府もようやく本国会に
公害対策基本法を提案いたしたのであります。しかし、
政府案が発表されると同時にあらゆる報道
機関があげて批判したがごとく、その内容は、全く
経済界の圧力に屈したものになっており、当初の厚生省案よりも大幅に後退し、およそ
公害基本法にふさわしい基本的要件を満たしておらないのは、皆さん御存じのとおりであります。
たとえば、
基本法を制定するに際し、最も重大なことは、
公害の
防止並びに
公害による被害の救済等について、迅速、的確に具体的
対策が講じられなければならないと思うのであります。しかるに、
政府案は、全体として
公害防止の理念もしくは抽象的原則を定めるにとどまり、きわめて具体性がなく、実効性にははなはだ疑問であるといわざるを得ないのは残念であります。これらの疑問は、心ある
関係者が強く指摘したところであるのみならず、特に、本年六月二十一日
内閣総理大臣に行なった社会保障制度審議会の
公害対策についての申し入れでも、強く述べられているとおりであります。
政府案について、わが党がなお満足できない点も多いのでありますけれども、その一、二点のみを申し上げますと、
第一は、
公害対策会議についてでありますが、この
会議は当初
公害審議会の答申に基づいて作成されました厚生省試案の段階では、
公害防止委員会となっておったのであります。一見
公害対策会議も
公害防止委員会もさして違いはないようでありまするけれども、これには大きな相違があるのであります。すなわち、
公害防止委員会の場合は、国の
施策の企画決定権を持っているばかりでなく、
公害防止の指定地域における
企業の費用負担割合及び費用の強制徴収ができるなど、独立した
行政機関となっておるのに反し、
公害対策会議のほうは、わずかに
公害防止に関する企画を審議し、その
施策の推進等にとどまっているのであります。また、
政府案の
対策会議は、会長に
内閣総理大臣を当てるなど、もっともらしいのでありますが、幹事制をとっておりますので、いわば
関係各省庁の次官
会議にすぎないのでありまして、当初の厚生省案を大幅に後退させた大もとともいうべき
公害対策推進連絡
会議と少しも変わらないのであります。わが党は、かような各省庁間の
意見の
調整のみに終わり、しかも、
公害対策の推進を遅滞させるおそれのあるような
対策会議はもの足りないもので、直ちには賛成できないのであります。
第二に、
政府案は、
環境基準を定めるにあたって、
経済の健全な
発展との
調和をはかるといたしている点であります、すなわち、
公害対策の基本ともなるべき
環境基準を定めるにあたっては、一般的に可能な最も高い水準が定められなければならないことは当然のことでありますが、しかし、
政府案のように、
経済との
調和をはかりながら
環境基準を設定するとなりますと、最も低い
基準になってしまい、
国民の健康を保護することはとうてい困難となるおそれがありますので、私はこの際、
経済との
調和は削除すべきだと思い主張してまいったのであります。
第三には、
政府案が、無過失損害賠償責任制度をとっていない点であります。本来、
公害は発生者責任主義によって処理すべきものであり、
公害の発生源となる
事業者は、その社会的責任から見ても進んで
公害防止のために万全の
措置を講ずべきなのであります。このことはわが党ばかりでなく、過般の
公害審議会の答申や
国民生活向上
対策審議会の答申等の中でも一致しているところであります。また、先日行なわれた社会保障制度審議会の
意見具申の際も、この点については強く指摘されているところであり、
政府は、この際、財界の圧力に屈することなく、
国民のために勇断をもって無過失賠償責任制度を設けるべきであると思う次第であります。
第四に、
政府案は、
事業者、国、
地方公共団体の責務の中に、
公害にかかる被害の救済を取り入れていないばかりでなく、第二十条の被害の救済の点でもはなはだ具体性に乏しいものにいたしているのであります。これらの救済制度は、
公害によって被害を受けた
国民から見れば、最も重大な関心事でありますので、私は、
公害が発生することによって被害が生じた場合、
事業者等は当然その責任において早急なる救済を行なう必要があると思うのであります。しかし、従来の事例に徴しても
公害紛争は、被害者と加害者との間で短期間に処理されることは一般的に困難であり、特に加害者が不特定多数で見きわめがたい場合は、出そう困難であることは御承知のとおりであります。このような場合、被害者は、事件の解決を見ることなく、この間、公告によって生命を失ったり、あるいは病に倒れ、医療や生活面でも非常に難渋しているのであります。かような実情を見るにつけ、われわれは被害者が一日も早く救済されるような
措置を
政府に強く望むとともに、
政府は
事業者等の分担金による救済基金制度や
公害保険制度を設け、被害者の救済に万全を期すべきであると思う次第であります。
以上、
政府案のおもなる欠点について簡単に申し上げましたけれども、私は、
委員長提出の修正案につきましては、わが日本
社会党案に一歩近づいたという
意味で賛成し、修正部分を除く原案につきましては、まだ不十分であり、社会党原案のほうがより一そうりっぱでありますので、これに反対するものであります。