運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-17 第55回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十七日(月曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 八木 一男君    理事 天野 公義君 理事 奧野 誠亮君    理事 小山 省二君 理事 和爾俊二郎君    理事 板川 正吾君 理事 島本 虎三君    理事 折小野良一君       坂本三十次君    塩川正十郎君       砂田 重民君    田村 良平君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君      三ツ林弥太郎君    三原 朝雄君       加藤 万吉君    河上 民雄君       工藤 良平君    中井徳次郎君       岡本 富夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         通商産業大臣  菅野和太郎君  出席政府委員         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君     ————————————— 七月十七日  委員伊藤宗一郎君、河本敏夫君及び藤波孝生君  辞任につき、その補欠として坂本三十次君、西  岡武夫君及び三ツ林弥太郎君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員坂本三十次君、西岡武夫君及び三ツ林弥太  郎君辞任につき、その補欠として伊藤宗一郎君、  河本敏夫君及び藤波孝生君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策基本法案内閣提出第一二八号)  公害対策基本法案角屋堅次郎君外六名提出、  衆法第一一号)  公害の顕著な地域等における公害防止特別措置  法案角屋堅次郎君外七名提出衆法第一二  号)  公害対策基本法案折小野良一君外一名提出、  衆法第一六号)  公害対策基本法案岡本富夫君外一名提出、衆  法第二四号)      ————◇—————
  2. 八木一男

    八木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害対策基本法案角屋堅次郎君外六名提出公害対策基本法案角屋堅次郎君外七名提出公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案折小野良一君外一名提出公害対策基本法案及び岡本冨夫君外一名提出公害対策基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 厚生大臣通産大臣、両大臣にひとつこの際確認をしておきたいと思います。特に通産大臣に聞いていただきたいと思うのですが、厚生大臣は本委員会においてしばしば本法一条の規定運用につきまして基本的態度というものを言明しております。それは、国民の健康を守るという点においては、これは絶対条件である。そして無条件国民の健康を確保するんだ。経済の健全な発展との調和をはかるということは、それよりもさらにきびしい環境基準をつくる場合に考慮されることである。要するに、国民の健康を守るという点においては経済調和というものは考慮されないのだ、絶対条件である。こういうことをしばしば言明いたしておりますが、この基本的な態度解釈について通産大臣として御異論はございませんか。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お答えします。厚生大臣が答弁されたと同じ意見を持っております。
  5. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、政府は、この基本法運用にあたっては健康を第一とする、国民の健康を守るということにこの第一義的目的を置く、こういう基本的な考え方を堅持されて今後の基本法運用にあたる、こういう考え方で御異議ありませんね。
  6. 坊秀男

    坊国務大臣 御意見のとおりでございまして、政府といたしましてはそういう方針でもってやってまいります。
  7. 板川正吾

    板川委員 そこで一言だけ確認をしておきたいのでありますが、国民の健康を確保する、これは絶対条件だということは具体的にはどういうことを意味するのか、ひとつこの点確認をしておきたいと思うのです。たとえば現に四日市市では、市の機関が認定した公害患者が三百六十二人おります。明らかに健康を害された、健康の障害を受けたと認定された者が三百六十二人おるのでありまます。本法が健康を守るということを絶対条件的に、第一義的な考え方運用されるというならば、当然この四日市市における少なくとも三百六十二人の認定された公害患者、こういう人の健康を確保するという意味においては、条件をつけることができない、経済的な調和をはかることはできないと思うのですが、この点はどういうふうにお考えでありますか。
  8. 坊秀男

    坊国務大臣 四日市現状は、現在におきましては人間の健康に障害があるということは認めざるを得ないと思います。したがいまして、この基本法を御審議の上通過を願いましたならば、これに対してこの基本法に基づきまして何らかの措置考え、さらにまた環境基準——さような病人が出てこないような環境基準を策定してまいらなければならない。そういったようなぜんそく病といったようなものをなからしめるということが今度の基本法趣旨であると解釈いたしております。
  9. 板川正吾

    板川委員 四日市で起こっております現在の公害を排除するために、経済的な調和を考慮することなく排除しようとするならば、第一は、企業に十分な排除施設をつくらせるということが必要だと思います。もう一つは、亜硫酸ガスの被害に対しましては、その地区内の企業に低いサルファ重油を使用させるということによって亜硫酸ガス公害というのが防止できょうと思います。しかし、そういう排除施設をつくらせたり、あるいは低サルファ重油を強制使用させるということになりますると、現在の法体系では不十分であります。また、それをしない場合に工場に差しとめ命令をするということについても、現行法体系では不十分であります。たとえば四日市のような場合に、市民の健康を絶対的に確保するというために諸般の法体系整備が私は必要だと思いますが、その点について両大臣見解はいかがでしょう。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 まず、公害を発生せしめた産業に対する対策通産省がするところでありまして、したがいまして、たとえば硫黄分を含む煙がたくさん出るというようなことにつきましては、いま脱硫研究をやっておりまして、それが完成すれば、将来はもうそういう心配がなくなるというようなことで、そういうことについていま通産省研究所においていろいろと研究いたしております。そういうように公害を起こさないような設備をするということが通産省の役目でありますからして、そういうことについては今後できるだけその実現努力するように考えておりますし、また、必要な経費はこれを計上して、そしてそういうような研究をやっておる次第であります。その他公害を未然に防ぎ、また、現に発しておる公害を漸次なくするということについては、今後できるだけの努力を払いたいと考えております。そこで、この公害基本法をこの際制定しまして、今後においての具体的な法律案というものは私は今後またつくるべきではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  11. 坊秀男

    坊国務大臣 たとえば四日市でございますが、現在亜硫酸ガスあるいはいろいろな排出されるちり、そういったようなもので大気が汚染されておる。この汚染されておるためにいろいろな弊害が、人体に対して障害が起こっておるということは、これは排除していかなければならない。そのためには、あるいは大気汚染について排出基準といったようなものをきびしくきめていくとか、あるいはまた、緩衝地帯といったようなものをつくっていくとか、いろいろの手だてがございましょうが、そういったような万全の手だてを行ないまして、主として大気が汚染されるということを除去し、防止していくということによりまして、人体に対する障害というものを防止していく、こういうことをやらなければならないと思います。
  12. 板川正吾

    板川委員 私が聞きたいのは、健康を第一義として確保するというたてまえを貫くためにはいまの法体系では十分ではない。だから、将来国民の健康を確保するという政府趣旨を貫くために法整備が必要ではないか。たとえば低サルファ重油を強制的に使用させるというようなことも一つでしょうし、あるいは公害を発生しておる企業に対してその操業の差しとめ命令をするということも考えられると思うのであります、現に公害を出しておるということであれば。そういったようないろいろの点において法律整備が必要じゃないか、こう思うのでありますが、その点だけ答えてください。
  13. 坊秀男

    坊国務大臣 たとえば現行ばい煙規制法といったようなものも、これはどうしても一ぺん再検討をいたしまして、そうして十分大気を浄化していかなければならぬ等の、そういった法体系といったようなものについても一応検討も要しましょうし、また、新しい制度といったようなものも考えてまいらなければならない、かように考えておるのでございます。
  14. 板川正吾

    板川委員 これは厚生大臣に伺いますが、政府案の第一条の目的の中に「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」とありますが、これは目的として規定したことでありますか。「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」というのは目的かどうか。
  15. 坊秀男

    坊国務大臣 第一条の「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということは目的として規定したのではございません。
  16. 板川正吾

    板川委員 通産大臣、簡単に答弁してください。ばい煙規制法の第一条の目的の中に「産業の健全な発展との調和を図り、」——「つつ」はありません。「図り、」という規定がございますが、これは目的事項ではございませんか。目的だと思いますが、いかがですか。
  17. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういう法律はすべて公害をなくするということが法律目的であって、その目的を達する際に健全な経済発展をはかるということをあわせてつけ加えておるのであって、やはり主要な目的公害防止する、排除するということであります。
  18. 板川正吾

    板川委員 大臣、よく聞いていなくちゃいけないのだ。ばい煙規制法目的にあります「産業の健全な発展との調和を図り、」ということは、目的規定であります。しかし、この公害基本法の「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」というのは、これは目的規定ではない、こういうふうに理解しなくちゃならぬと思います。  そこで、そうなりますると、ばい煙規制法というのは産業との調和をはかるということを目的といたしておりますが、今度の基本法経済との調和をはかるということは目的ではないというのでありますから、そこでばい煙規制法というものは根本的に再検討、抜本的な改正というのがなされなくちゃならぬと思う。目的からすでに違うことになりましたから、そういうばい煙規制法の抜本的な改正が必要じゃないかと思うのですが、これは厚生大臣、どう考えますか。
  19. 坊秀男

    坊国務大臣 ばい煙規制法においては、産業の健全な発展との調和をはかることが文理上目的ということに書かれておる。ところが、今度の公害基本法では、これは目的にあらずして、目的はあくまでも人間の健康を目的としておる。そこに矛盾があるじゃないか。したがって、ばい煙規制法については将来これを改正していかなきゃならぬじゃないか、こういうお話でございますが、まさに私は、そういうことは考えてまいらなければならない問題である。将来両者の調整ですね、経済の健全な発展との調和にあらずして、両法律調和調整ということが非常に必要なことでありまして、将来の重大なる検討事項といたしてまいりたい、さように考えております。
  20. 板川正吾

    板川委員 これは事務当局の答弁でもいいのですが、社会党案第二条には「農林水産資源等」ということばがありますが、政府案の第二条の定義の中では「動植物及びその生育環境を含むものとする。」、こういう表現になっております。この動植物という中に当然農林水産資源というものが含まれておると思いますが、いかがですか。
  21. 舘林宣夫

    舘林政府委員 政府案動植物等についての記述は、生活環境を構成する要素としての農林水産関係資源を含んでおります。
  22. 板川正吾

    板川委員 次に、年次報告必要性という問題について、これは厚生大臣に伺いますが、政府原案の中には年次報告規定がございません。これはいわば公害行政に対する政府消極的姿勢というものを一面物語っておると思います。年次報告というのは、それによって施策総合的検討をする機会であります。またその際に、過去にやったことを検討し、今後やろうとすることを明らかにする、あるいは予算的、施策的な検討を加えるということで、公害行政を前進させるためにぜひ必要な項目であろうと思うのであります。野党案には年次報告規定がありますが、政府案にその点がない。これはまことにいかぬのじゃないかと思うのです。年次報告事項というものを私ども政府案に加えるべきであると思うのですが、この点について厚生大臣見解を伺っておきます。
  23. 坊秀男

    坊国務大臣 現在の公害現状、またこれに対する施策等について国民によく理解もしてもらう、またこれに対して国民からの意見といったようなものも、これは一つの世論でございますから、そういったようなものも尊重する、お聞きするというようなたてまえから申しまして、私は年次報告というものがあるのがいいんじゃないか。ただし、今日までは各省の行政報告等におきましてそういったようなことも、それは総合的ではございませんが、行なわれておったり、国会でもそういうことが議論になっておったというようなことでございまして、特にこれを政府案の中にに取り入れてなかったのでございますが、総合的な立場から申しまして、私はこれがあることがいいことだ、かように考えております。
  24. 板川正吾

    板川委員 次に第八条の環境基準について伺いますが、本法が成立しますると、政府環境基準に関する法律を制定しないで環境基準をストレートに決定するのでありますか、しようとするのでありますか。要するにこの八条の規定というのは、もう法律の制定を待たずに環境基準が決定できるのかどうかということを一つ承っておきます。
  25. 舘林宣夫

    舘林政府委員 環境基準公害対策行政方針でございます。したがいまして、法律によってそれを制定する手続その他が明確になった上で、そういうものが行政目的として施策の中に取り入れられることが一番行政の筋では、ございますけれども、しかし、ただいま申しましたように行政目標でございますので、明確に法規定がない場合でも、政府といたしまして一定目標を定めて、その目標に向かって各種の施策を集中してまいる、その目標実現に対して努力をしていくということによってそれが達成せられるわけであります。したがいまして、環境基準を法によって定めるか定めないかは、必ずしも今日これをきめる必要はないわけでございますが——また、そのきめ方も独特の環境基準法というような法律をつくるか、個々法律によってきめるかということもございますけれども、とりあえずはその法律をきめるよりは前に、行政目標としてそのようなものを目ざして施策を集中してまいる、かように考えております。
  26. 板川正吾

    板川委員 環境基準のごとき公害行政に重要な施策というものは、やはり法律をもって規定をして、他のこれを守るための法律との関係というのを明確にしておく必要があるだろう、こう思うのであります。政府解釈は、やればこの八条の解釈をもって環境基準というものが一応できるという解釈をとっておるそうでありますが、できれば他の法律との関係というのを明確にする意味におきまして、たとえば環境基準法というがごとき法律を明定する必要があるだろう、こう思います。  そこで次に伺いますが、これも事務当局でいいでしょう。環境基準を守るために大気汚染防止水質汚濁防止その他の公害防止法律との関係、たとえば九条から十一条との関係、これを一体どういうふうに理解したらいいのですか。
  27. 舘林宣夫

    舘林政府委員 例をあげて申し上げますと、たとえばばい煙規制につきましては、排出規制、あるいは個々施設装置規制、あるいは土地利用規制というようなことを総合的に勘案して、環境基準目標達成努力をいたすわけであります。また水質汚濁防止につきましては、排出規制個々施設規制というようなことを総合してその目的達成努力をいたしますし、騒音につきましては、個々施設規制というようなことによりまして目標とする環境を維持するようにつとめることとなります。
  28. 板川正吾

    板川委員 政府案第八条には環境基準が非常に固定的な規定になっております。すなわち社会党案のようにレベルアップ規定がないのであります。公害防止技術がいま非常な日進月歩の進歩を示しておると思うのですね。現在においては、たとえば脱硫装置にしましても、これ以上脱硫することができないという考え方に立っておりますが、しかし、これはやがて脱硫装置の完成が行なわれるという場合に、公害防止技術進歩があった場合には、環境基準というのは逐次改善をされ、レベルアップをされるべきじゃないか。一たんきめたことをいつまでも、その法律改正をするまではそのままいくというのではなくて、常に必要な検討が加えられて改善さるべきではないか。そういう点では社会党案の第九条第三項がその規定を持っておりますが、そういう点が政府原案に特に欠けておるのではないか、こう思うのでありますが、厚生大臣見解いかがですか。
  29. 坊秀男

    坊国務大臣 力説のとおりに、環境基準というものは科学技術発展、あるいはまた都市化の進展といったようなこと、一方においては公害防止技術が進んでいくということ、他方においては一定の場所において都市化が非常に進んでいく、こういったような環境が生じてくるといったように、絶えずその実情においても、これに対処する技術的な面においても動きがあるということは、常にこれは注視していかなければならない。さような動きの中におきまして、環境基準というものは絶えず二つのそういったような動きの中において適切なる環境基準というものをつくっていかなければならない、かような考えからいきまして、これは固定的であってはならない、絶えずこれを改定をしていく、こういう方向でなければならない。さりとてしょっちゅう変えておるということもどうかと思いますけれども、しかし方針といたしましては、これが固定的なものであるということはよろしくない、かように考えております。
  30. 板川正吾

    板川委員 次に、これは事務当局でもいいと思うが、第九条の「排出等に関する規制」、この関係環境基準との結びつきというものがどういうふうに規定されておるのか。たとえば第八条の三項で、「政府は、公害防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。」こういうことは、第一項の基準、すなわち、環境基準を守るために有効適切な手段を講ずるということは、これは排出基準をこれによって結びつける、環境基準を守るために排出基準というものとの関係、この点をひとつ明確にしておきたいと思います。  社会党案の場合には、十条の第一項で、「前条第  一項の許容限度をこえないようにするため、これらの原因となるばい煙、」云々といって、このいわゆる環境基準社会党案許容限度、こういうものと排出基準というものの結びつきがはっきりしておりますが、政府案はこの点はどういう見解に立っておりますか。
  31. 舘林宣夫

    舘林政府委員 水の例でご質問でございますが、水質汚濁に関する環境基準ができました場合に、それを守るのにどの程度の排出規制をかけたら守り切れるかということを、それに関連する事業体の実態を調べまして、それを守るような数値計算をした上で排出規制をするということになるわけでございまして、したがいまして、排出規制環境基準そのもの目標として定めるということになるわけでございます。
  32. 板川正吾

    板川委員 もう一つ政府案九条では、第一項で排出基準をきめるのですが、大気汚染水質汚濁、この二つを第一項の規制事項としております。社会党案では、この中に騒音というものを入れておるのであります。いま全国的に見た場合には、公害の中で騒音に対する苦情というものが一番多いだろうと思います。そういう意味で、第一項の排出規制の中に騒音を入れなかった理由はどこにあるのですか、この点。
  33. 舘林宣夫

    舘林政府委員 騒音につきましても、一般的には排出規制考え措置することが望ましいわけでございますが、騒音の中には航空機あるいは高速運輸機関というような特殊なものがございまして、これに一般的な施設と同じような排出規制を加えることは、実態的にそぐわない。航空機等については排出規制が非常にむずかしいという事態がございますので、これは個々措置によりまして処置することにいたしましたので、排出規制騒音につきましては、ばい煙あるいは水質汚濁防止に関するものに準ずるというようにして、二項に落としたわけでございます。
  34. 板川正吾

    板川委員 いずれにしましても、これは早急に基準を決定する必要があるだろう、私はこう思います。  そこで、次に公害防止に対する国の助成という点について伺いたいと思います。  社会党案の十七条の四項には、事業者または民間研究機関公害防止研究及び調査、技術開発等を行なう場合に、必要な指導、援助その他税制等助成措置を講ずる必要がある、こういう規定がございます。これはたとえば出光興産が千葉において脱硫開発をする、これは世界的にやらないことを六十億円の金額をかけて、とにかく公害防止をやろうということで踏み切っているわけであります。こういうような民間公害防止施設、それに対する資金的、税制的な助成、こういうものが私はやはり必要ではないか。社会党案十七条の四項では、そういう趣旨が盛られておりまするが、政府案にはございません。こういう考え方は一体どうなんですか、そういう趣旨は必要だと思うのでありますが、これは厚生大臣、簡単に答えてください。
  35. 坊秀男

    坊国務大臣 今後公害防止していくためには、いま言われましたような施設をつくるといったような場合に、金融上の突っかい棒と申しますか、そういうこともできるだけやっていくべきものであり、かつまた税制上は、そういったような諸設備をつくる際に、償却等についてすでに考えてもおるように、私ちょっと記憶をいたしておりますが、そういったようなことは将来の重大なる問題といたしまして、前向きに考えていくべき問題だ、かように考えております。
  36. 板川正吾

    板川委員 次に伺いますが、政府案十七条に、「地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、前節に定める国の施策に準ずる施策を講ずるほか、」こうあります。地方公共団体が、「法令に違反しない限り」と、あえてここで規定をせざるを得ないというのはどういう理由でありますか。地方自治体法令に違反してはいけないというのはあたりまえの話でありまして、また法律規定されたことを条例でくつがえすということもできないことは、憲法及び自治法で明らかになっておりますのに、十七条において、あえて「法令に違反しない限りにおいて、」と、わかり切ったことをだめ押し的に書いてあるのはどういう理由でありますか。
  37. 舘林宣夫

    舘林政府委員 公害に関しましては、今日までの段階は、むしろ地方のほうが進んでおる事態がございまして、地方それぞれ条例をつくり、ことに騒音等については独自の条例をつくっておるところが非常に多いわけであります。したがいまして、公害基本法をつくります場合に、地方のこれらの公害に関する諸条例等との関連ということが相当問題となったわけでございまして、お説のように、これは必ずしも必要な条項ではないかもしれませんが、国の法律地方条例との関連を明確化する意味合いにおいて、このような字句を挿入したわけでございます。
  38. 板川正吾

    板川委員 公害行政というのは、本来国から、上から押しつけるものではなくて、いわゆる地域住民生活防衛の戦いというものから、下から積み重なった問題であります。だから地方自治体で、国の全般的にゆるやかな規定よりも、地域的、部分的にはもっときつい措置をしなければ住民の健康も守れない、こういうことがあり得るわけであります。しかし、それをあえてこういう法律規定して、住民の健康を守るためにやることすら、これは法令に違反するぞと言わんばかりに書くことは、公害行政のたてまえからいっておかしいじゃないか、これは削除するのがあたりまえな話ではないでしょうか、どうでしょう、ひとつ厚生大臣
  39. 坊秀男

    坊国務大臣 お説のとおり、公害には、地方の状況によりまして、いろいろと画一的なものではないという面が一つあります。ところが、他方から申しますと、やはり公害対策というものは全国的、総括的にきめていかなければならない、こういう面も一つあろうかと思います。と申しますことは、非常に公害というものは広域、たとえば四日市等については、これはまあ四日市地区ということであろうと思いますけれども、非常にその都市が——たとえば阪神地方とかなんとかといいまして、非常に広域に考えていかなければならない。こういったようなこともありまして、両面から私は考えてまいらなければならないと思います。そういったようなおりから、特定のある小さい地区におきまして、今後もそういった地方が、国の総合的な考え、総合的な措置といったようなものと全然かけ離れてやっていくということは、当然国の法律に違背するような条例といったようなものは、おっしゃられたとおり全然国の法律に従わなければならないことでございますけれども、そういうこともありまして、ここにまあ、書いても書かぬでもいいということを私申すのじゃございませんが、一応そういう「違反しない限り」という文句を挿入したわけであります。
  40. 板川正吾

    板川委員 佐藤総理が出席されましたので、時間の関係上総理に三、四点ほど質問をいたしたいと思います。  佐藤総理に伺いたいことは、公害基本法制定の趣旨は、国民の健康の確保を第一義とするものであるかどうかということについて、総理の見解を確かめておきたいと思うのです。  総理は、去る六月二日私の質問に対して本会議で「この経済との調和をはかるというようなことばを使うと、いかにも企業の利益追求を何事にも優先する、かように考えられやすいのでありますが、私はさような考え方は持っておりません。人間尊重こそ、また健康を確保し生活環境を保持することこそ、私どもの政治の大目標だ、かように考えておりますので、この点では誤解のないように願います。」こういう答弁をされておりますが、このことは、この基本法を制定しようという趣旨が、公害防止し、国民の健康を確保することを第一義とするという政府基本的態度を表明したものと理解していいかどうか。なぜこういう点、だめ押し的なことを言うかといいますと、それは政府原案の第一条の目的事項に、厚生省試案の当時にはなかった経済との調和という字句が入りましたために、この公害基本法には国民の健康を確保するという大原則が失なわれているのではないかという不安がどうしても私ども解消できないのであります。  そこで、公害対策会議の会長でもあります総理に、この際あらためて公害基本法制定の趣旨及びこの公害基本法運用上について政府基本的態度を明らかにしていただきたい、こういう気持ちでございます。要するに、健康第一主義——国民の健康を守るという第一義的な目的を果たすためにこの法律を制定する、こういう趣旨であるかどうかをひとつ確認しておきたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 本会議でお答えいたしたとおりいまだに考えておりますが、私が申し上げるまでもなく、政治の要諦は人間尊重にあるということを申しております。経済開発も政治活動も全部人間、そこに帰一する、こういうことでなければならないと思います。ただいまいろいろ経済発展いたしまして思わない公害を生じておる。それが国民の健康をそこなう、したがって、国民の健康を保持する、あるいは国民の健康を守るためこういう必要もございます。また、社会環境そのものが乱れておる、こういうような点から公害対策をひとつ積極的にやろう、そうしてただいま御指摘になりましたように、経済開発もさることながら、国民の生命、健康、また生活環境整備すること、これがわれわれのつとめじゃないか、かように思っております。
  42. 板川正吾

    板川委員 実際にどの程度行なわれたかは別としまして、総理が主張した人間尊重なり社会開発なりということは、こうした公害基本法のような法律を出して、そうして経済活動の行き過ぎといいますか、によって生じた社会のひずみを是正する、こういうところに公害基本法を出した政府の意思もあるだろうし、これを運用するについても、そういう意味において国民の健康を第一に守るんだ、こういう政治の原則をあらわしたものだ、こう私は思うのであります。  そこで総理に伺いたいのは、この基本法ができましても、実際は基本法だけでは、宣言的な規定でございますから、実際の効果というのは何もあがらないのであります。基本法はいわば頭であって、胴体や手足がなければ人間としての機能が果たせないと同じように、国民の健康を確保し、生活環境を保全するという基本法目的を果たすためには、私はこれに幾多のいわゆる実施法、付帯立法、こういうものが必要だと思うのであります。そういうものができてこそはじめて基本法の意図する国民の健康を守り、生活環境を保全するという目的か果たせる、こう思うのであります。したがって、この公害基本法を出しました政府としましては、来たるべき通常国会までにいかなる関連法、いわゆる公害基本法の実施法、こういうものをどの程度用意されておるのか、私はこれをひとつ公害対策会議の会長でもある総理から明確に約束をしていただきたいと思う。そうでないと幾ら基本法を通したといっても、実際は絵にかいたもち、政治としてうそを言うことになります。やはりこの基本法を通したからには、実施法としてこれこれをつくって、そうしてこの基本法の精神を政治の面で生かしていく、こういうふうにならなければならぬと思いますが、実施法はどういうものを用意されようとしておりますか、ひとつ総理から国民に約束をしていただきたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま御質問になりましたとおり、まず基本法はできた。しかしその実施法がなければだめだ。順次そういう具体的な法律整備してまいるわけでございます。厚生大臣から便宜お答えさせます。
  44. 坊秀男

    坊国務大臣 公害防止についてのまず費用の負担といったようなものは、これは法律にも書いておりますが、別個の法律においてこれをきめていかなければならない。  それから現在国会において御審議を願っておりまする船の油による海水の汚濁防止でございますか、そういったようなものであるとか、それから先ほど申し上げましたばい煙規制あるいは水質の保全といったような、これはすでに法律がございますけれども、これに対して再検討をしていかねばならない。  それからまた、騒音についてこれをどうしていくかといったような特別の立法が必要であろう。そういうふうに今後この基本法に基づきまして各般の特別の立法が必要であると考えまして、これを目下検討いたしておる次第であります。
  45. 板川正吾

    板川委員 これは次の通常国会に提出されるものと理解してよろしいですか。
  46. 坊秀男

    坊国務大臣 鋭意準備をいたしておりますので、でき得る限りさような方向でまいりたい、かように考えております。
  47. 板川正吾

    板川委員 私はまだ重要な法律が抜けておるのじゃないかと思う。たとえばこの八条の環境基準、これはやっぱり私は、政府行政措置でこの環境基準をきめるというのではなくて、環境基準法といわれるようなものを用意すべきではないかと思うのであります。  それから政府案二十条にあります公害の被害者を救済する法律、私はこれの整備も早急に取りかからなくちゃならないのじゃないかと思います。  さらに公害防止のためにやる工場の立地規制、こういう点もやらないと、公害というのが、一方において防止をしつつも、それより先に公害現象というのはますます進んでいくと思うのでありますが、たとえばいま指摘した諸点についてどうお考えですか。
  48. 坊秀男

    坊国務大臣 御意見のとおり、この救済をどうしていくかということについては、これは非常に大事な問題でございまして、これについても制度的なものを考えていかなければならないと思います。  それから工場立地ということにつきましては、これは通産大臣からお答えがあるかと思いますけれども、これも非常に大事なことでありまして、政府部内において研究をしておるという段階でございます。
  49. 板川正吾

    板川委員 次に総理に伺いますが、総理も御承知のように、公害行政の重要な柱というのは、第一が、公害を防ぐという予防です。第二は、現に起こっておる公害を排除するということ、第三が被害者の救済、こういう三つの柱というものが公害行政目標だ、こういわれておるのであります。政府案の二十条には「政府は、公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るために必要な制度の整備を行なうものとする。」とありますが、私は、政府が行なわんとする救済の円滑な実施をはかるために必要な制度、この内容について総理に伺いたいと思います。  公害の被害の救済を円滑に実施するためには、前提として無過失賠償責任の法理が確立されるべきだというのが私どもの強い主張であります。この点に関しまして厚生大臣あるいは法務大臣等の答弁は、必ずしも無過失責任の制度について否定的ではなかったのであります。しかし、いかなる行為者についてどのように無過失賠償責任を課するかということは、立法上なかなかむずかしいものがある、基本法は一般法だから、これで認めると一般的に無過失責任を認めることになるのでどうもむずかしい、ということは、ある意味では個々については考えられないこともない、こういうニュアンスを持った答弁がされております。そして、今後この問題を検討していきたいという答弁でありまして、私どもはこれだけでは不満なのであります。総理にひとつぜひ公害の実態を知ってもらいたいと思うのでありますが、たとえば四日市大気汚染、空気が非常に汚染して、市が認定した公害患者というのが三百六十二人も現在おります。これには市が医療費等を出しておるのでありますが、この大気汚染で健康をそこなわれた人がこのように現実にたくさんおるのであります。それからまたイギリスやアメリカでは、スモッグが発生して何千人という人が死んだという事例もあります。このことは日本でいまは起こっておりませんが、やがて起こるかもしれません。いつ起こるとも限らない状態であります。また川や海がよごれまして、その被害を受けている漁業者、こういう者もたくさんおります。たとえば阿賀野川では、この川の中で漁業していた人が、いま全部漁業ができないという状態になっていることも御承知と思います。また、ある工場地帯に行きますと、地下水を工場でくみ上げる、そのために地盤沈下が起こって、うちが曲がってしまうという被害を受けている人もたくさんあります。いまのこの法律、私法上の救済制度を考えてみますと、そういう場合は、被害者が加害者を訴えるについて因果関係を立証しなければなりません。どこの工場でどういうばい煙を出したからおれはこういう病気になったのだ、どこの工場でどういう汚水を川や海に流したからわれわれ漁民がこういう被害を受けたのだ、どこの工場で水をどういうふうにくみ上げたから地盤沈下が起こってわれわれは被害を受けたのだということを、被害者側がその関係を立証しなければ、それは損害賠償の話にもならないのです。大気汚染水質の汚濁や地盤沈下、こういった現象を被害者が証明をしなければ、加害者と思われるものは賠償する責任はない、科学的に証明しなければおれは賠償する責任はない、こういう制度になっておるのであります。ですから、そういう場合に、どうして問題を解決するかといえば、ごく少数の人は泣き寝入りであります。大ぜいの場合には、たとえばその生命の危険をおかして工場にあばれ込みます。暴力をふるう、あるいは工場を爆破するぞ、こういうふうにおどかすのです。そうやられてはかないませんから、会社側もそこでようやくそういう因果関係はわからない、したがって、賠償ではないがお見舞金を差し上げましょうというので、わずかなお見舞金で解決するというのが、従来の被害者が救済されるという何というのですか、方式というのですか、そういうことしか被害の解決というのはないのであります。被害者に因果関係を立証させるというのは無理なんであります。  そこで無過失賠償責任という法理をこういう場合に当てはめますならば、たとえば四日市の場合に、四日市の市民は、どこの工場が煙を出しておれは四日市ぜんそくにがかったかということは立証できません。しかし四日市にある工場群、この工場群によって大気が汚染されて四日市ぜんそくにかかっている、こういうことだけは明らかなんです。そういう意味の包括的な因果関係といいますか、これはだれが見ても明らかです。工場群がなければそういうことはなかったのでありますから、だから、そこでその工場に過失があるのだという証明、因果関係を明らかにしなくても、無過失賠償責任という法理が採用されるならば、その地域の工場群全体がその地域の公害病の患者に対して救済をするという制度が、無過失賠償責任を認めることによって生まれてくると思うのであります。ですから、こういう点を考えますと、この基本法の明文にたとえばうたうことができなくても、政府として無過失賠償の法理というものは、今後公害の救済を円滑に実施するために私は必要じゃないか、こう思うのでありますが、総理の見解はいかがでしょうか。
  50. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまの、これは具体的な問題ですが、まず第一に言われましたように、この紛争処理をする機関が、また制度が十分考えられていない、これは確かに一つの欠陥だと思います。これから先そういうものをつくらなければいけないと思います。そういうことで厚生省もいろいろくふうしておるようです。  もう一つの無過失損害賠償という問題ですが、これはもう私が申し上げるまでもなく、板川君御承知のように、いまの法体系のもとでは、これはもう過失責任、そういう制度で法律ができておりますから、いわゆる無過失責任は特殊の場合だと、こういうことになっておる。ところで、ただいまの公害を見ますると、いわゆる公害の態様というものは千差万別とでも申しますか、たいへん態様がそれぞれありますね。まず生活環境整備する、こういうような意味のものから、いわゆる無過失責任とまで追及はちょっとしにくいんじゃないか、しかしながら、事健康あるいは人命に関する、こういうような問題だと、やはり最近は、法体系がどうあろうと無過失責任、その方向で追及される新しい法秩序をつくろうという、そういう動きのあることは見のがせないんですね。ただいまの公害の処理については、私は後者に属するような問題じゃないかと思う。いわゆる法体系の理論の問題でなしに、具体的なその態様に沿った処理をする筋のものだろうと思います。そういう意味でいろいろ検討はいたしております。一しかし、何ぶんにも、ただいま言われる程度で無過失責任ありときめてしまうわけにもちょっといかないように思います、これは、いままでこの委員会を通じて、各大臣が十分検討すると申し上げたその方向ではないかと私は思います。ただいま、それだけでは不十分だと言われますが、私はやはりこの問題はもっと慎重に無過失責任の方向、そういう加害者、事業者の責任を追及する方向でものごとをきめるべきじゃない、だろうかと思っております。ただ、非常に個々の責任、原因者がそういう事故を発生させたというのが明確な場合は非常にけっこうですが、いまも言われたように、多数の集団において初めてこういう公害が発生した、こういう場合に、多数の集団群がどういうような責任で、個々の者がどういうような責任で救済処置をとるかということはなかなかむずかしいことだと思います。私は、そういう意味で、国や地方団体や、また、その事業者、三者の間で適当な責任の所在を見つけ、さらに紛争処理の制度が生まれてくる、こういうことが望ましいんじゃないだろうかと思います。これはただいま御指摘になりましたが、まだ研究しておる、まだこれは検討を要する問題でございますから、そういう意味で、私は十分御趣旨に沿ってさらに掘り下げるべきじゃないか、かように思っております。
  51. 板川正吾

    板川委員 実はこの無過失賠償責任制度というのは、与野党間の重大な政策上といいますか考え方の基本点であります。いま総理の答弁ではどうも無過失賠償責任制度をやはり検討していくということであって、従来の答弁を一歩も出ていないように思います。長くしゃべったためにあるいはわけがわからなくなったのかもしれませんが、とにかく私は、この無過失賠償法理を具体的に、やはり公害の救済を円滑にするためには実施できるところから逐次採用していく、こういうことでなければならないのじゃないか、検討するというだけじゃなくて逐次実施していくということでなければならぬと思いますが、その点、総理もう一ぺん答弁してください。
  52. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私、詳しく申し上げたつもりでしたが、板川君、どうも私のことばが不十分なようで、重ねてのお尋ねです。これはもちろん、いわゆる検討だということで過ごすというような考えではございません。前向きでこれは検討するという意味ですから、ただいま御指摘になりましたように、逐次これを整備していく、かような方向であるということを御了承いただきたいと思います。
  53. 板川正吾

    板川委員 時間となりましたから、終わります。
  54. 八木一男

    八木委員長 島本虎三君。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 総理に二点だけ、短時間でございますから簡単直明にお答え願いたいと思います。  その一つは、公害関係金融機関調整と機能の充実の問題であります。御存じのようにこれは中小企業金融公庫並びに公害防止事業団、これは通産省と厚生省と共管でございまするけれども、公害関係は三年間六分五厘、四年以降は七分という利息でこれは融資することになっておるのであります。通産省専管の中小企業振興事業団ではこの事業費の八割までは無利子ということになっておるのであります。これは都道府県四割、振興事業団が四割、これが無利子、そして残りの二割はこれは公害防止事業団から融資するということになり、いわば足りないところを防止事業団で補完するというたてまえになっておるのが現状であります。直接公害関係防止事業をやるのは、これの例によりますと、中小企業振興事業団が防止施設は八割までも無利子でやれるというように現行法律ではなっておる。その補完を今度は公害防止事業団が行なうという、こういうような仕組みになっておるのでございます。しかしこの公害関係金融機関調整並びに機能の充実は、今後この産業公害対策がまあ基本法ができました以後においては、これは当然考えられなければなりませんし、いままでのようなまちまちの状態では、今後はこれはもう明確性を欠くのじゃないか、こう思うわけであります。この点は厚生、通産両省をやはり統轄して、総理のほうから、金融の関係のほうでも十分なる対策が必要だと思うわけでございまするけれども、この際総理の御意見を承りたいと思うわけであります。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 公害対策の金融について詳細にお尋ねございました。私はこれはもう最も大事なことだと思います。ことに中小事業者、これらが公害と取り組むためには政府が積極的に金融の面でいろいろお世話する、あるいは技術の面で協力、指導するとか、こういうようなことは大事だと思いますが、特に中小企業の場合、ただいまの御指摘の点が非常に問題だと思います。いま一応金利等できておりますが、私はこの体系でいいのだと思いますが、実施後においてさらにくふうを要するようなことがございますれば、実情に適した対策を立てる、かように御了承いただきたいと思います。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 実情によって対策考えるということであります。もうすでに対策は焦眉の急であるはずなんでございますから、その点あまりことばにおぼれないように、実質のほうを先にするように、これは心から要望しておきます。  次に、これは公害基本法ではございまするけれども、都市公害についての総理の具体的な意見を伺いたいと思います。  公害基本法ができ上がりまして、そしていろいろ融資の面をはかり、その万全なる対策考えるとしても、産業公害が中心であることは私が申し上げるまでもございません。しかしながら場所によりましては都市公害は、今後は抜きさしならないほど重要性があるわけであります。都市公害の最たる点は、総理もすでに御存じのように自動車の現在のような状態からして、十分この点は排気ガスの点等の規制からお考えがあろうかと思うのです。それだけじゃなく、私の場合は、寒冷地帯において住民が、冬になると、ことに個々の住民が、暖をとる必要上必ずこれはもう石炭並びにまた、重油、こういうようなものを一軒一軒、全部がたく、そうなりますと好むと好まざるとにかかわらず、北海道の場合では、これは都市公害という名前が適当かどうかわかりませんが、全道が全部十一月以降雪が消えるまでの間にばい煙公害におおわれるわけでございます。こうなりますと、そのばい煙そのものがタール性の油煙であります関係上、肺がんの発生率も高い。高いのみじゃなくて、今度は雪祭りでさえも、あの雪像を三日でこわさなければならないほどよごれて黒くなるのであります。まさに総理の顔より黒くなるのであります。  そういうような状態でありますから、そういうような状態のもとに、今度札幌に冬季オリンピックが計画される現状でありまするから、今度は集中暖房、そのほかこういうような方面の対策に対して、特に今度ははっきり国が協力するのでなければ、東京オリンピックの成功、今度は冬季のいわゆる札幌オリンピックの成功、この二つが成功してこそ、まさにオリンピックの日本の成功ということに相なろうかと思うのであります。その場合の冬期の一つの重大なるこのばい煙の被害を免れるために、集中暖房、こういうような点がいま考えられておるのでありまするけれども、これもなかなかたいへんなことであります。ぜひこれを成功させるように、厚生省も十分考えておりまするけれども、総理のほうでも、この点、万々行き違いのないように大いに強力に推進してもらいたい、こう思うわけなんですが、この際総理の意見を聞いておきたいと思うわけであります。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 島本君の御意見、ごもっともと私ただいま聞いたわけですが、しかしこれはなかなか簡単な問題じゃない、かように思います。先例、ロンドンあたりがやっぱり、ただいま言われるように、都市の住宅、そこで使われる石炭、そういうところからこれを征伐した、かように私も思いますが、札幌の場合、オリンピックがあるからやれということだけでも、これは望ましいことには違いありませんが、ただいまそこまで踏み切れるかどうか、もう少しよく実情を調べ、そして今後どうしてこれを片づけていくか、そこらの対策を積極的に十分立てていくことが必要だと思います。そういうことで、いわゆる環境整備する、住みいい都会づくり、そういうことにもっと積極的に取り組むべきだと私は思います。まあ、私のかねて言っている社会開発の大きな仕事の一つだ、かように思いますので、まして、ただいま言われますように国際的な行事も行なわれるという、そういう際でありますから、まあ取り組みやすいかと思いますが、そういう意味で一そう検討したいと思います。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 強力な推進を要望して、終わります。
  60. 八木一男

  61. 折小野良一

    ○折小野委員 時間がたいへん制限されておりますので、確認意味におきまして二、三総理の所信をお伺いいたしたいと存じております。  公害行政の推進のために公害に関する科学技術の振興、これはたいへん大切なことであり、また今日焦眉の急でございます。したがって、こういう面の科学技術の試験研究体制の整備をはかるとかあるいは技術開発の推進をはかる、あるいは民間のこれらに関する研究や調査あるいは技術開発、こういう面につきまして、政府といたしまして適切な援助指導を行なう、こういうことは公害行政の推進のために今日非常に大切なことである、かように考えております。  もちろん公害基本法の案におきましても、こういう面について触れておられるわけでございますが、実際問題としてこれは大いにやっていただかなくてはならない、現実にやらなければ効果があがらない、こういうことでございます。今後の公害行政の実効をおさめるためにこれをぜひやっていこう、こういう政府の強い、あるいは総理の強い御所信をこの際承っておきたいと存じております。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、公害問題はもう相当古い問題のはずであります。しかし今日ようやく公害基本法を出そう、政府もこれに積極的に取り組もう、そういうことでございますが、まだ、民間、一般にこの問題についての真剣さが不十分だと私は思います。そういう場合に、政府自身がその範を示すというか、指導的な立場に立ってこういう問題と積極的に取り組む、折小野君が言われるとおりに、そういうことでなければならぬ、かように思います。ことにその点が、いま言われますように、科学技術進歩に伴って、さらに公害防止の面で技術的な開発もひとつぜひともしたいし、そういう点ではやはり産業界の開眼とでも申しますか、その方面への関心を高めるということ、こういうことをやらないと、なかなか効果はあがらないと思います。しかし、何と申しましても、産業界にそういうことを頼むよりも政府自身が指導的な役割りを果たす、これでなければならぬと思います。ことに、政府と申しましても、関係するところの各省庁が非常に多いのでありますから、これはもう純政治的なたてまえで事務当局に指示する、こういうような形でこの仕事を進めていかないと成果はあがらないだろうと思います。ただいまのお尋ねはそういう意味のお尋ねかと思いますが、私は御意見の出た点については全面的に賛成でございます。
  63. 折小野良一

    ○折小野委員 公害対策といたしましていろいろな対策があるわけでございますし、ただいま申し上げました科学技術の振興も非常に大切な一つ対策であるというふうに考えております。それと同時に、今日、公害がいわゆる暴力というような形におきまして、いわれなき住民に対して大きな被害を与えておるのでございます。政府案におきましては、いわゆる救済という措置につきましては、今後法律制度を整備するということがうたわれておるだけでございますが、その救済の中におきまして、いわゆる紛争処理ということ、これは現実の問題として非常に大切なことでございます。公害そのものが暴力的な形において住民に対して大きな被害を与える。ところが現在の制度の中におきまして、いわゆる救済策として適切な施策がない。もちろんばい煙規制法とか水質保全法におきまして、それぞれ和解の仲介制度というものができてはおります。しかしながら、現実にこれらの制度を活用して紛争を処理した、解決をはかったという例はきわめて少ないのであります。と申しますことは、これらの制度というものが有効に働かない。こういうところに問題があるわけでございまして、結局そういう住民はそういう制度を利用することなくして、暴力に対して暴力をもって対抗する、こういうような現実の解決手段が講ぜられておることにつきましては、総理御自身御承知のとおりでございます。また、本州製紙江戸川工場における例とか、水俣病の例とか、それこそ枚挙にいとまがないというような状態でございます。こういうような現状は、法治国家の現状といたしましてまことに残念な、そして、まことに悲しむべき実態でございます。総理の言われます風格ある社会というのは、こういうような社会を意味しておるのでなしに、こういうようなことは一刻も早くなくしていく、こういうような意図であろうというふうに考えております。したがって公害の問題、その紛争処理制度をすみやかに確立をして、そうして合理的な、合法的な解決がはかられるように早急に実施していくべきである、かように考えるわけでございます。この点についての総理の御決意をお伺いいたしたいと思います。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 折小野君の言われるとおり、原因者の究明あるいは被害の認定の問題、これらができて初めて迅速に紛争の処理ができるわけでありますから、ぜひともそういう制度を確立していくことは必要でございます。また、政府も今回そういう方向で取り組もう、かように申しておるわけであります。
  65. 折小野良一

    ○折小野委員 その問題に関連いたしましてひとつ具体的にお伺いをいたしたいと思うのであります。  確かに総理のおっしゃるようなことで、なかなか現実には紛争の処理も、それから救済も行なわれない。そこに今日の公害関連いたしました一つの社会問題があるわけでございます。水俣病患者にいたしましても、あるいは阿賀野川関係の患者にいたしましても、四日市のぜんそくの患者にいたしましても、そういうような状態でございます。まず政府が、この基本法におきまして国民の健康保持ということを第一義的に考えますならば、原因の究明その他につきましては十分やらなければならない、また、現実には時間をかけなければならない。しかし、まず救済は何とかしてやっていく、そうしておいて原因の究明その他の対策を講じていく、こういうことを早急に制度化していただきたいと思うのでございますが、御所信を承りたいと思います。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは、先ほどの無過失責任にも実は関係を持つものでございます。私は、やはり迅速に紛争を処理しなければならない、このことは——紛争ばかりじゃありません。積極的に救済ができれば紛争も生じないのですから、そういう措置が望ましいと思います。しかし、原因者の究明というものがはっきりいたさないと救済者はだれなんだということがなかなかできないだろう。そういう場合に国がかわってどうこうという、そこまではちょっと考えかねるのじゃないだろうか。しかし事柄の性質によりましては、たとえば生命に関する問題だとかあるいは健康に重大なる影響があるというような場合、これはもうじんぜん日をむなしくするわけにまいりませんから、そういう場合には国あるいは地方公共団体がこれは当然の責任、責務としてそういう救済に積極的に乗り出すべきだ、かように思います。問題はやはり公害の態様によってきめるべきことじゃないだろうか、かように私は考えております。
  67. 折小野良一

    ○折小野委員 最後の御質問を申し上げます。今日まで、非常に公害に対する関心が高まってまいっておるわけでございますが、国の公害対策がなかなか実効をあげていない、これが現実の姿でございます。この点につきましては、先ほど総理もおっしゃいましたように、公害行政関係の担当が十五省庁にもわたっておる、こういうことが一つの原因でございましょう。しかもこれがただ単に十五省庁にわたっておるというだけでなしに、それらが相牽制しておる、こういうこともないではないと私どもは考えております。こういうような意味から、公害行政の統合、一元化をはかりまして、そうして公害対策の実効をぜひあげるべきである、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。  今回の政府提案の法案におきましては、十五省庁にもわたっておりますその上に公実対策会議というものを置きまして、そうして公害防止に関する基本的な企画を立てるあるいは総合的な施策の推進をはかる、こういうことを考えておられるわけでございますが、今後の公害行政が実効ある推進がはかられるということのためには、この公害対策会議がより熱意と意欲を持ってやっていただくということ以外にないと思うのであります。しかも、その公害対策会議の会長は総理御自身でございますから、公害対策に対する総理の責任というものはきわめて直接的であり、かつ、きわめて大きい、こういうふうに申さねばならないと考えております。私どもは国民とともに公害が一刻も早く少なくなっていくことを念願いたします。そういうような立場におきまして今後総理の特段の御配慮、特に公害対策会議の会長としての総理のリーダーシップに期待するところ非常に大きいというふうに考えるわけでございますが、この点に対する総理の決意を明らかにしていただきたいと思います。
  68. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私の責任、またいろいろ御鞭撻を受けましてありがとうございました。この公害問題、これは先ほどもお答えいたしましたように、政府が積極的に指導的な立場で取り組まないとなかなか実効があがらないだろう、かように私も考えておりますので、この上とも努力するつもりでございます。
  69. 折小野良一

    ○折小野委員 終わります。
  70. 八木一男

  71. 岡本富夫

    岡本(富)委員 総理に若干お聞きしたいのですがこの、たびの基本法案は、国民の世論が、どうしても公害を防除してみんな快適な生活をしたい、こういう願いでありますので、近年の公害に対する挑戦状であるように思うわけであります。そこで、第八条の中に、環境基準の設定にあたって経済の健全な発展との調和云々というのがありますが、総理は先ほどからも、人間尊重の立場から、国民の健康を犠牲にするような経済発展はあり得ない、こういうように言われておりますけれども、人の健康保持及び生活環境の保全、これが即国民経済発展である、しからばこの語句は不必要ではないか。そこで、厚生大臣の答弁にありましたのは、たとえば東京都内あるいはまた大阪市内あるいは神戸、そういうような工場が密集しているところは、富士山のすそ野のああいうきれいな空気とは一緒にはならないのだ、だからそれを考慮しなければならないのだ、こういうように話がありましたが、これはもちろんであります。したがいまして、今後、実体法、すなわちばい煙規制法あるいはまた水質保全法、こういう法律にはいままで必ず「産業の健全な発展」とか、あるいは「産業の相互協和」とか、こういうような語句が入っておりましたが、これはもう要らないのじゃないか、こういうように思うのですが、実体法について総理の見解を伺いたいと思います。
  72. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この点ではずいぶん御議論なすったと思います。公害の発生しないその事態考えると、昔に返れば公害が発生しない、産業というものは悪であって公害を発生するだけなのか、こういう疑問を持つのですが、私はそうじゃなくて、産業発展そのことが国民生活を向上させ、充実さす、かように思いますので、産業はやはりなければならないと思います。しかし、産業の必要なのは、国民生活を充実させ発展さすこと、いわゆる人間社会に役立つという、そういうところでこれが必要なのですね。だけども、どうも公害を発生しておる。また、都市化の傾向が最近は非常に激しい、そのために予想しないような公害が出てきておる。そこで、いまの公害の問題がやかましくなるのであります。国民生活を向上させ充実さすためにも産業は必要なんだ、それだけはぜひ役立ってほしいのだけれども、しかしこれが公害を発生するところに問題があるのだから、その公害をやはり征伐しようという考え方は、私は正しいのじゃないかと思います。したがって、ただいまのような御議論があって、この産業との調整云々がなくなりますと、いかにも産業は不要なんだ、こういう考え方を持たれるのじゃないだろうか。皆さん方もそうじゃないので、やはり産業産業としてりっぱな役割りを果たされるのだ、そういう意味でこれは必要なんだ。だから、そこに調和調整、そういう問題が起こるのじゃないかと私は思うのです。だから、やはり産業の悪、これは征伐しなければなりませんけれども、やはりこれを伸ばすことによってお互いが非常にしあわせになるんだ、その点に重点を置いて考えていただきたい、かように私はお願いをいたします。
  73. 岡本富夫

    岡本(富)委員 人間尊重、要するに、この法律人間の健康を保持する、これが第一義になっておる。そうしますと、経済発展産業発展によって大気が汚染される。そうすると、人間がそこに住むにはやはり若干しんぼうしなければならぬ。だから受忍限度というものがある。そこで今度は産業界の、たとえばばい煙なんかを押えてここで調和させるというのだと思うのです。これはもう都市に住む場合にはあたりまえなんです。あたりまえでありますけれども、人間尊重第一義、こういう面から考えますれば、やはり人間の生命の尊重を若干押えている。これはまあいいといたしまして、では、ほかの企業擁護の法律がたくさんありますが、それに対しても、今度は国民生活環境との調和をはかる、こういうように入れなければならぬと私は思うのです。そうじゃなかったら、産業だけどんどん発展したって、人間を害すれば何にもならないわけです。これは総理の考えにもとるわけです。  そこで今後の実体法、要するにばい煙規制法は、これは今度名前が変わって大気汚染防止法、こういうような法律に変わるそうですが、その場合、一方に産業との協和、こういう必要はたいと私は思うのです、これはしなければならぬのですから。ですから、許容限度をきめるにあたっては、一々産業との協和なんという語句を今後の実体法には必要ないんじゃないかと思うのですが、総理の御見解を伺いたい。
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これからの実体法をつくるのに、どういうふうに書いたら最も実情に合うか、そこらは今後の問題として、ただいまのような御意見も出ておりますから、十分立案する際に検討することにいたします。
  75. 岡本富夫

    岡本(富)委員 それは、今後の総理の会長としての御決意によってやっていただきたいと思います。  次に、中小企業に対する助成の問題ですが、私の調べたところでは、札幌あたりで非常に肺病が多い。ここには大工場がない。ところが小さな煙突から出るところのばい煙によってそういう状態になっている。そうしますと、実際に公害をほんとうに防止しようとすれば、中小企業のこの排出するところのばい煙ならばい煙規制しなければ、抜本的に公害は予防できない。ところが大企業の社長は——ぼくは芦屋におるのですが、芦屋あたりにおりますと、空気がよい、帰ってしまうと、そうやかましく言われてもあまりピンとこないわけです。ところが、中小企業のおやじというのは、そこに住んでいるわけです。近所からやかましく言われる。まして日本の企業の九九・四%、大企業をささえておるのは中小企業だと思うのです。これは金融だけではなかなか解決しない。したがいまして、補助金なんかを大幅に将来出して、先ほど総理は前向きにとおっしゃいましたが、補助金なんかを大幅に出す、こういうような考えがおありかどうか。これについてお聞きしたいと思うのです。
  76. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 公害の態様はいろいろございます。いま札幌のお話が出ましたが、これは島本君に聞けばよくわかるだろうが、私は、特別な病気があるというのは、長い冬季、それで運動が欠除している、家の中にいる、そういうこともあるだろうと思いますので、いわゆる公害問題としてよりも、保健衛生の見地から別途くふうすべきところもあるのじゃないか、かように思います。  それはともかくとして、ただいまの中小企業対策の問題、これはただいま、さらに補助金も出せというようなお話ですが、私ども、いまそこまでは考えていないのです。技術的な指導あるいは金融の面でそういうことがやれはしないだろうか、かように思っております。先ほど来いろいろ無過失責任の議論まで出ておりますし、当然産業に課せられる責任だ、どうもしかし中小企業はそういうことが弱いから、そういう点で中小企業の事業維持、そういう意味のもので何が考えられるか。金融だとか、あるいは税制だとか、また技術の問題、あるいは集団対策、そういうような問題がいろいろあるだろうから、その辺の指導をひとつしたらどうだろうか、かように思っております。しかし、これももう補助は一切しないのだ、かようなものじゃございません。よくその実態を見きわめて、そうして対策を立てていかなければならぬ、かように思っております。
  77. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この中小企業については、総理は、絶対補助を出さぬのじゃない、今後何とか考えていく、こういうことですから了承いたします。  それから、これは大牟田川の河口でとれたノリです。それからこれは普通のノリです。この大牟田川、これは三井三池あたりの会社が相当並んでおる、そこから流れる水によってこういうようになっている。どの会社が出したか、これはなかなかむずかしい。ですから、今後こういう救済について、水産物、水産資源、こういうものについては、ひとつ前向きな政府施策をしていただきたい、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  78. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりますように、なかなか公害の態様は簡単なものでございません。したがいまして、実情を把握することもなかなか困難ですが、しかし現に産業に与えておる影響、あるいはまた健康、保健等に与えている影響が出ておるのですから、政府も、むずかしいことには違いないが、原因者も究明し、またその被害の程度等の認定も急いで、迅速に処理する。これはやはり先ほど来お答えいたしましたように制度の整備もしなければならぬ、私、かように思います。  ただいま御指摘になりましたのは、それは九州ですか——これもひとつよく伺っておきます。
  79. 岡本富夫

    岡本(富)委員 終わります。
  80. 八木一男

  81. 板川正吾

    板川委員 引き続きまして、法案に関して若干の質疑を続けたいと思いますが、これは厚生大臣に伺います。  政府案の十八条ですが、これは「公害防止計画の作成」、こういうことで、内閣総理大臣公害防止に関する基本方針を示して、関係都道府県知事に対し当該計画の策定を指示する、こういうことになっておりますが、この当該計画、公害防止計画の策定を指示するという場合に、都道府県知事に対して指示し、そうして十八条の四項では、「内閣総理大臣は、第一項の指示を行なうにあたっては、あらかじめ、関係都道府県知事の意見をきかなければならない。」、こういうことになっておりますが、私は、公害行政の実情からしますると、この防止計画の策定に、都道府県知事の意見を聞くことはもう当然と思いますが、しかし県の中でも、たとえば政令市あるいは指定市、こういうような中で非常に公害のひどいところの意見も私は聞くべきじゃないかと思う。知事に意見を聞くというだけでなくて、必要に応じて政令市なり指定市なりの長、こういうところからも意見を聞くべきではないか、私はこう思うのでありますが、この点に関しまして、法律では知事ということになっておりますが、なぜ指定市または政令市、こういうことを考慮に入れなかったのか、この点を伺っておきたいと思います。
  82. 坊秀男

    坊国務大臣 公害の発生の現況を考えてみますると、一つの町村とかいうことでなしに、あるいは複数の町村に共通して起こっておるということや、さらにまた一府県でなくて複数の府県に共通して起こっておるというようなこともございまして、非常にこれの処理については広域的な観点から処理を考えていかなければならぬ、こういうことで都道府県知事の意見を聞く、こういうふうに書いたのでございますけれども、しかし、御指摘のように、指定都市その他非常に地方的な特色のある公害というものも、これは決して無視するわけにはまいりません。さような意味におきまして、市町村とかそういったようなところの意見をやはり都道府県知事がよく聞いて、そうして対処していくというふうに指導してまいりたいと考えております。
  83. 板川正吾

    板川委員 公害というのが非常に広域化してきておりますから、野党案のように横浜市と川崎市を別建てにするということになると、あるいは多少問題もあろうかと思いますが、しかし、知事だけにしぼっていくということも十分ではないような感じがします。この意見を聞く場合には、ぜひ知事から指定市、すなわち横浜、名古屋、神戸、京都、大阪、北九州、こういった指定市の長の意見も十分に知事が吸い上げるように、さらに、政令市の中で四日市のように公害状況のひどいところも、そういった意見を吸い上げて、知事が中央に意見を具申するような措置をしてもらいたいと思います。  次に、第二章第五節の「公害に係る被害の救済」でありますが、この政府案は、第二章の「公害防止」、こういう表現の中に、救済も紛争の処理も一切入っておるという法の立て方になっておるかと思うのでありますが、これは私はまことに不十分な立て方じゃないかと思うのであります。先ほども言いましたように、公害防止と排除——は防止の中に入っていいかもしれませんが、少なくとも救済という柱あるいは紛争の処理、こういうのは防止の中に入るべきじゃないと思っておるのでありますが、政府案の立て方は、第二章「公害防止」という中に、公害の救済、しかも救済の中に紛争処理ということまで含めるというのは、考え方としてあまりにも抽象的じゃないか。もっとわかりやすく具体的に表現すべきではなかったかと思うが、この点に関しては事務当局からの御答弁でもいいです。
  84. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お説のとおり救済制度は、公害が起こってしまってからの措置でございますので、これが予防的な意味合いを含みます防止というようなカテゴリーで整理をすることは、必ずしも適当でないということは御指摘のとおりかと思います。私どもは、防止等その他の広範な公害施策という範囲へ入れるという意味合いでそのような整理をいたしたわけでございますが、狭義の防止の中では読みにくい部分でございます。
  85. 板川正吾

    板川委員 それから、政府案の五節で、被害の救済の中に紛争処理まで含めるのは妥当じゃない。この場合には「公害に係る紛争の処理及び被害の救済」というふうに、紛争の処理ということをやはり打ち出したほうがいいと思うのですが、この点いかがですか。
  86. 舘林宣夫

    舘林政府委員 お説のとおりでございまして、紛争の処理は救済の前提であるわけでございまして、その意味合いからそういう表現でございますけれども、明確にすればお説のとおりでございます。
  87. 板川正吾

    板川委員 政府案の二十条に関連しまして、被害の救済という中に紛争の処理まで読ませるというのは十分じゃないし、この点は所要の改正をなさるべきだと思うのであります。また、二十条でなお不足のものは、紛争の処理についての考え方が明確じゃない。私はこの際公害にかかる紛争の処理について、早急に所要の法律を制度化すべきだ、こう思うのであります。先ほども言いましたように、いまの公害紛争が、たとえばばい煙規制法あるいは水質保全法にはそれぞれ和解の仲介という制度があります。しかし、この和解の仲介制度というのはほとんど活用されていないのであります。十年間でわずかばい煙で二件、水質で三十二件、この程度しか問題が上がっておらない。全国で何千何万というばい煙の紛争というのがあっていいはずでありますが、しかし、これがばい煙規制法の和解の仲介という制度の中で解決を見ないし、あるいは水質保全法の中で解決を見ない。これはなぜかというと、私は被害者が、いわゆる紛争処理制度に信頼を持っていない、こういうところにその制度が生きない原因があるだろうと思うのであります。将来は和解の仲介以上にさらに労働委員会のような調停、さらには野党案にありましたように、損害賠償の裁定、差しとめ命令、原状回復命令、こういった紛争処理機関考えらるべきではないか。和解の仲介という程度では、これからの紛争というものは円滑な処理ができない、こう思うのでありますが、この点に関しまして大臣の御見解はいかがですか。
  88. 坊秀男

    坊国務大臣 紛争の処理は、これはもうできるだけ正確、迅速にやらなければならないということは当然のことでございます。しかるに、今日ばい煙規制法あるいは水質の保全法等における和解の仲介といったような制度がございますけれども、それはなかなか十分なる実効を得ていないということも御指摘のとおりであります。さような意味におきまして、どうしてもこの紛争の処理ということについては何らかの措置考えてまいらなければならない、これを鋭意検討してまいる、こういう方針でございます。
  89. 板川正吾

    板川委員 その場合には、和解の仲介以上の調停という問題も取り上げるべきだと思うのです。しかし調停制度を考える場合に、公害現状からして、差しとめ命令あるいは原状回復命令、損害賠償の裁定など、あるいは仲裁制度等、準司法的なそういうこともその際にひとつ検討してもらいたい、こう思うのであります。社会党案にそういう趣旨が盛られておりまするので、ひとつ今後御検討を願いたいと思います。  それから、二十三条で実はわれわれ修正を予定しておるのでありますが、中小企業者に対する特別な配慮がなされなければならぬという考え方を実は持っておるのであります。この場合に中小企業者に対する特別な配慮がされるということになりますと、実はこの中小企業の定義でありますが、たとえば農家が養豚をやっており、また大型な養鶏事業をやっておる、こういうのが中小企業者でないやに解釈されては困るのでありまして、私どもは中小企業者に対する特別な配慮というのは、小規模事業者という中小規模の事業者、こういう意味に理解しておりますが、修正がなった場合に、政府解釈はいかがでしょうか。
  90. 舘林宣夫

    舘林政府委員 公害対策上必要な中小企業に対する施策でございますので、当然にお説のような対象も対象として考えていくこととなると思います。
  91. 板川正吾

    板川委員 これは厚生大臣に伺いますが、いま島本君が総理に聞いたときに、厚生省所管のいわゆる公害防止事業団、それから通産省所管の中小企業振興事業団、この二つの事業団が、一方においては中小企業者、通産省のほうは協同組合、これに対する共同の公害防止施設に対して八〇%まで金を貸します、こういう法律がお互いにできておるわけであります。ところが、厚生省所管の公害防止事業団では、中小企業者に対する利息が六分五厘、三年間、四年から七分ということになる。一方通産省所管の中小企業施設に対する融資は無利子であります。総理は、いまはこれで出発したが、これは将来調整すると言っておりますが、調整するということは、無利子の通産省の振興事業団を有利子にするのではなくて、当然厚生省の公害防止事業団のほうを無利子にすることに調整するという考え方をとっていると思います。総理の考え方はそういう点にあるだろうと思いますが、まさか無利子を有利子にするのではなくて、有利子を無利子にするほうに調整するのでしょうな。この点を念のために伺っておきます。
  92. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま公害防止事業団の事業団の事業は厚生、通産両省が共管でございますが、このほうの利子が格段に高いことはお説のとおりでございます。このほうを順次引き下げまして、中小企業のほうへ近づけていくような努力を、今後とも続けていくつもりでございます。
  93. 板川正吾

    板川委員 最後に、公害対策審議会でありますが、政府原案では、「総理府に、附属機関として、公害対策審議会を置く。」こういうことになっております。地方公害対策審議会を持っておる県が十六、七あるといわれておりますが、私は、この公害行政の統一化をはかるために、地方にも、地方公害対策審議会を置くように規定をしまして、そうして中央に対して地方の審議会からの意見が十分に反映するようにいたしたい。すなわち、地方審議会も必要ではないか、この規定も必要ではないか、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  94. 坊秀男

    坊国務大臣 御意見のとおり必要だと考えますので、そういう方向でまいりたいと思います。
  95. 板川正吾

    板川委員 社会党の提案者に一言だけ、せっかくですから伺いますが、政府原案と社会党提案とが根本的に違う点、時間が実はないのでありますが、これをひとつ簡単に御説明を願いたいと思います。
  96. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 政府のほうには答弁の時間がございまして、議員立法の提案者の私に時間がないと言われるのは、かえって恐縮でございますが、しかし、御要望でもございますので、簡潔にお答えをいたしたいと思います。  政府公害対策基本法案が提案をされ、社会党、民社党、公明党からそれぞれ議員立法として野党の提案もなされまして、今日まで四案を中心に公害対策基本法案の論議がなされてまいりました。さらに、きょうは総理の出席を求めて、野党それぞれの代表からの論議が展開されたわけでございます。それらの審議並びにきょうの総理の出席を求めての質疑を通じてでも明らかなように、政府案社会党案との基本的な差のまず第一は、政府案の第一条目的、第八条環境基準、この二つの点において、「経済の健全な発展との調和」という文言が明記されております。これは詳細に申し上げるまでもなく、国民の健康、生命を守るということを絶対条件とする公害対策という立場から見て、まさに異質的なものであり、しかも、事業者経済活動あるいは利潤追求に優先して公害対策というものが考えられなければならぬということは、公害審議会の意見でもあり、それを取り入れた厚生省試案の基本的な骨格をなした点でもございます。私どもの社会党案からいくならば、もちろん政府案のようなこういう文言はないのみならず、第三条の事業者の責務のところでは、事業者は、公害の発生につき第一義的責任を有することを自覚すべきであるという文言の中に、企業責任という考え方を明記しておるわけでございます。民社党、公明党の場合でいえば、公害対策の優先という条項の中に、やはり国民の健康や生命を守るためには、公害対策上、事業活動や利益追求に優先をして公害防止というものが考えられなければならぬとある。いずれにしても野党側の考えておる公害防止上の基本的理念というものと、与党の政府考えておる公害対策に対する基本理念には、質的に大きな相違があるということが非常に問題であります。したがいまして、この点について明確に修正をなされなければ、公害対策上の万全を期することはできないのではないか、いついつまでも関連立法の過程においてもこの問題が尾を引くのではないか、という点がまず第一の問題でございます。  第二の問題は、まずそういう基本的な問題の前提に立って企業の責任に関することを法律上明記していくことが明らかになっているかどうかという点でありまして、詳細については法律上明らかでありますから、これは避けます。  また、先ほど来の質問の中にもありましたように、企業者責任というものを明確にしていくためには、やはり無過失賠償責任の法理というものを導入するという前提に立たなければ、現在及び将来の公害防止の万全を期する、いわゆる企業者の公害発生責任主義というものを貫いていくということができないのではないか、こういうふうに考えております。  なおまた、公害行政の一元的運営という問題については、御承知のように、環境基準あるいは排出等基準をきめていく場合にも、相当多くの省にまたがって、それぞれの権限の中できめるというよりも、われわれが考えておりますように、中央公害対策委員会あるいはそれを受けて地方公害対策委員会というものが責任を持って、われわれでいえば許容限度でございますけれども、政府案でいえば環境基準あるいは排出等基準をきめていく、あるいはまたそういうもののレベルアップを責任を持ってやっていく、あるいはまたいずれ法案が出てまいりますれば費用負担等の問題がございますが、これらの問題あるいは公害防止事業、いろいろな問題について一元的な取り扱いをやっていく、先ほど板川委員御指摘の救済制度あるいは紛争処理制度というものを考えていく場合に、それをどういう機構で取り扱うか、絶えずやはり機構の問題が出てまいります。そういうものについて公害に関する総合的、一元的運営のためには、この際やはり中央、地方公害対策委員会を設けて、これがいわゆる環境基準排出等基準をはじめ、救済、紛争あるいは費用負担、公害防止事業等、それらの全体的な問題について一元的運営をやっていくということが、真に国民から見た場合の公害行政の万全を期する機構のあり方ではないか、かように考えておるわけでございまして、政府案とわが党案との基本的な差異は、個々にわたれば多くあろうと思いますけれども、公害防止に関する質的な考え方の問題、企業責任の明確化の問題等々をはじめといたしまして、最終的な締めくくりとしては、これらを実施する場合の公害行政のあり方という問題について相違のあることは、御承知のとおりでございます。
  97. 八木一男

  98. 中井徳次郎

    ○中井委員 私は、この法案の審議に際しまして、通産大臣に三十分ばかり質問をしたいと二週間も前から言っておりますのに、とうとうきょうまでほうっておいてあと五分しかない、そういう扱いにつきましては、委員長は私の親友ではありますが、あまり愉快に考えておりません。そのことだけを申し上げて、最後に——少し長くやらねばどうも理解しにくいのですが、しようございませんから、個条書きに一、二点だけ伺っておきます。  通産大臣、工業立地適正化法案とかいう、仮称ですが、これをお出しになるとかいう話でしたが、おやめになったのですか、そのいきさつ等まず伺っておきたい。
  99. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 通産省のほうでは、この公害対策基本法の補完法あるいは実施法として、工業立地適正化法というものを立案いたしまして、できれば本国会に出したいと考えておったのであります。この法案考えましたのは、たとえばある都市に工場がたくさんできて、そこで公害が起こってきて公害に対するいろいろな対策を講ずるより前に、そのある都市においては、公害の起こらない範囲内において工場を設けさすということにすれば、公害問題がおのずから起こらないというようなことになりますし、現に起こっておる公害のはなはだしい都市においては、その工場を地方に分散せしめるとかというような方法をとれば、根本的に公害が起こらないようなことになると思いますので、こういう法律を出すことが公害対策の基本的な考え方と存じまして、実は成案を得べく努力してきたのでありましたが、各省とのいろいろな関係調整ができず、また会期も迫ってまいりましたので、今国会に提案を見合わせまして、次の国会までに各省との打ち合わせをよくして提案したい、こう存じておる次第であります。
  100. 中井徳次郎

    ○中井委員 時間がありませんから、意見と質問をもう一つ言いますが、私はそういうものをおつくりになることに、原則的にあまり賛成いたしかねます。しかし、これは議論になりますからやめますが、むしろそれよりも、今日公害がこれだけ大きな問題になっておりながら、実はどういう産業がどういう公害を出すのかということが案外明らかでないのであります。公害、公告と言うから、工場が来てくれるのはみんなお断わりだと言ってみたり、公害といってもたいしたことはない、じゃんじゃん来てもらわなければならぬというような、非常に単純な形における公害論争が、いま世論的には起こっておるように思うのです。専門家の皆さんはそういうことについてはお詳しいのでありましょうけれども、実際は案外そういうものではない。たとえば、電気産業につきましては、私はあまり公害がなかろうかと思います。しかしながら鉄鋼や造船、それから、これは農林省の関連でありましょうけれども、やはり通産省関係でおまとめいただきたいと思うの、だが、でん粉の関係はどうだ、肥料はどうだということになりますと、その肥料の種類その他におきましてどういう公害が起こるか、これが実は明らかでない。あるいはいま石油産業が急速に発展した新興産業でありますから、現在非常な公害を及ぼしておりますが、これが将来どうなるのかというふうなことについても明らかでない。したがって、通産省とされましては、はっきり言えば加害者の側の行政監督をなすっておるような形の中におきましては、やはり一々の企業について、採算から見る、あるいは従業員が得られるかどうかというふうな面から見る、あるいは能率から見ていかれる、あるいは輸出産業その他の関連で見ていかれる、こういういろいろな観点もありましょうけれども、同時にまた公害から見ていかれる、こういうことが、あなた方の工業立地適正化法案のおもな目的だろうと思うのです。その場合には、その公害はどういうふうなものがどう出るかという公害に関する一覧表のようなもの、公害に対する字引きのようなもの、そういうものは絶えず修正されるものだと思いますけれども、現状においてはこういう形のものがこうだ、これが実は案外ないのです。業者としては発表しにくいものですからなるべく隠しておる。それを押えていくところがあなたのところだと思うのですが、それが一般的に知られておらぬ。したがって、私はこれは強力に希望したいのですが、こういう土地を規制するということは、やはり地方自治といろいろな関連を起こしてきますから、それよりもいま日本で最も重要なことは、どういう工場がどういう公害を出して、それは将来どうなるかというようなことについての字引き的なものを、これはぜひ通産省の指導監督のもとに早急に編成してもらいたいというふうな感じを持つのであります。非常にむずかしい表現で何%のどうだとか、そういうこまかい特殊なものまではどうかと思いますが、一般的に受け入れられる程度におけるそういうものの指導こそ、いまの通産省としては最重点の仕事ではなかろうか。これを厚生省にやらすったって私はやれないと思う。やはりあなたのところでおやりになるのが一番だと思うのです。ここに重点を置かれて通産省がこの公害基本法に取り組んでいただきたいぜひそういうふうにしてい、ただきたい、私はこういう希望があります。それについてひとつ大臣の所感を伺っておきたい。
  101. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 公害の発生また公害の性質などを調査するのは、これは厚生省の役目であります。そこで、われわれのほうでは公害というものの発生、公害の性質というものがわかりますれば、その公害の発生を防止しあるいは公害をできるだけ少なくするということの施策をするのが、通産省の役目であります。そこで、ただいま私どもで特にやっておりますのは、たとえば自動車の排気ガスの研究をやっておりますが、これがもし完成すれば、もう自動車の排気ガスの問題が消えてしまいますからして、公害というものが起こらぬとか、あるいは脱硫研究をいまやっておりますが、これがもし成功すれば亜硫酸ガスの問題が消えてしまうとか、大気汚染の問題が消えてしまうということになりますので、その公害の発生しないことについて通産省がいまそれぞれ研究をいたしておりますので、そこでいまお話のとおり、どういう産業がどういう公害を発するかということについては、これは厚生省のほうでよくその点については調査していただいて、その指示を受けて通産省では、その公害の発生しないような方法を講じていきたい、こう考えておって、厚生省とその点においてはあくまでタイアップしてやっていきたい、こう存じておる次第であります。
  102. 中井徳次郎

    ○中井委員 これでやめようと思ったが、いまのような大臣のお答えではちょっとやめるわけにいかないのですが、それは厚生省の所管でないと私は思うのです。産業がある、その産業はどういう製品を出してどういう廃棄物を出すか、汚染はどうであるか。廃棄物の中の化学的な分子はどういうふうになっているか、工業技術院をあなたのほうはお持ちなんですから、それが基本にないといけない。あなたは改善のことばかりいまおっしゃったが、現状把握はやはり通産省でないとできない。それは人々に及ぼす影響は厚生省ですが、その点は通産省が把握しておる、こういう形でないと私どもは回答にはならぬと思うのですが、この一覧表をつくってください。これをお願いします。非常にむずかしいことじゃありません。
  103. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私が言うのは、それが公害であるという定義を下すのは厚生省であって、したがって、その産業においてどれだけ公害を出すかということは、これは通産省の役目でありますから、それを私は言っておるのであります。そこで、これだけの公害が出るから、それじゃその公害を出さぬようにしようというのは通産省の役目でありますから、それを私が言っておる次第であります。
  104. 中井徳次郎

    ○中井委員 ぼくが言っているのは、現状においておもな産業のそういう一覧表をつくるかどうか、それを聞いておるのです。どうです。
  105. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういう必要は私もあると思います。しかし、先ほど申し上げましたとおり、技術の開発によりましてその一覧表が毎年変わってくると思いますが、その変わることがいいことだと私は考えております。
  106. 中井徳次郎

    ○中井委員 ぜひこれをつくってもらいたい。きょうはもう時間もないからやめるが、こんな工業立地適正化法なんかをつくるよりもそれをつくってもらいたい。そうして現状はどうだということの把握からでないと、こういう基本法ができましても前進いたしませんから、それを強く私は要望して、いまの大臣の答弁では大体つくるというふうな気持ちのようだから、つくるというふうに了承しまして、私の質問を終わります。
  107. 八木一男

    八木委員長 これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  108. 八木一男

    八木委員長 この際、本日まで委員各位と十分協議し、私の手元で起草いたしました内閣提出公害対策基本法案に対する修正案を提出いたします。     —————————————
  109. 八木一男

    八木委員長 修正案は、お手元に配付してございます。  その趣旨について御説明申し上げます。  修正の第一点は、本法目的についてでありまして、政府原案の表現が必ずしも適切でなく、無用の誤解と不安感を与えてきたのを是正するため、第一条を二項に分け、第一項におきまして、まず、国民の健康の保護と生活環境の保全が本法の基本目的であることを明らかにし、次いで第二項におきまして、生活環境の保全については経済の健全な発展との調和をはかる旨を規定しようとするものであります。  なお、この修正に伴い、第八条環境基準規定につきましても、「考慮しなければならない。」を「考慮するものとする。」に改める字句修正を行なっております。  第二点は、国会に対する年次報告等について新たに規定しようとするものであります。これは、既存の他の基本法にならい、公害の状況と政府施策を、毎年、国会に報告または提示すべきことを政府に義務づけたものであります。  第三点は、環境基準の常時検討でありまして、環境基準について常に科学的判断が加えられ、必要な改定がなされるべき旨を規定したものであります。  第四点は、政府原案公害にかかわる被害の救済の規定のほか、公害にかかわる紛争の処理について明定しようとするものであります。すなわち、第一項におきまして、紛争が生じた場合の和解の仲介、調停その他諸般の紛争処理を確立すること、第二項におきまして、被害の救済の円滑な実施をはかるための制度を確立することをそれぞれ規定しております。  なお、第二項につきましては、被害の救済に関する最も重要な制度として、事業者の無過失損害賠償責任の制度が逐次確立されるべきものと考えます。  第五点は、国または地方公共団体事業者公害防止施設整備について金融上、税制上等の助成をする際に、中小企業者に対しては特別の配慮がなされるべき旨を規定しようとするものであります。  第六点は、公害対策審議会を地方公共団体も置くことができることを明定しようとするものであります。今後、この規定によりまして、自主的な市民行政が活発化することを期待いたします。  以上が本修正案を提出した趣旨と内容でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)  以上をもちまして修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  110. 八木一男

    八木委員長 次に、内閣提出公害対策基本法案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。小山省二君。
  111. 小山省二

    ○小山(省)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、内閣提出公害対策基本法案に関し、ただいま提案されました修正案並びに修正部分を除く原案に対し、賛成の意を表明するものであります。  近時、わが国の経済は目ざましい発展を続けておりますが、この経済発展の全部がそのまま国民の福祉に通ずるものではありません。その端的なあらわれが公害問題であります。  公害の歴史は古く、すでに明治の初期から見られておりますが、戦後の急速な経済復興に伴い、次第に広域化し、深刻化して大きな社会問題となってまいりました。国会におきましても、この問題に取り組むべく本特別委員会を設け、鋭意審議を続けてまいりましたが、特に今国会におきましては、政府並びに各野党が公害対策に関する基本政策を決定の上、それぞれ公害対策基本法案提出されましたことはまことに画期的であり、きわめて意義深いものがございます。  また、当委員会が各基本法案等に対し積極的な審議を行ない、提案者代表及び政府当局との間に熱心な質疑応答を続け、あるいは公聴会を開いて広く国民の声を聞き、最後には佐藤総理に内閣の姿勢についてただし、ここにようやく採決の運びとなりましたことは、委員の一人としてまことに喜びにたえないところであります。  私が、各野党案に敬意を表しつつ、公害対策基本法案政府案並びにこれを補強する意味委員長から提出された修正案に賛成するゆえんのものは、まず第一に、この基本法公害対策の原理とメカニズムを明確に打ち出していることであります。すなわち、今日まであまりにも多くの角度から論議されてまいりました公害問題に対し、国全体として公法上何を取り上げ、それをどのように措置すべきかを明らかにし、しかも、究極の目的国民の健康の保護と生活環境の保全にあると定めて、公害対策のあり方について原則を確立した点であります。  第二には、事業者、国、地方公共団体及び住民の四者おのおのの責務を明らかにし、それぞれどのように公害問題に取り組むべきかの大原則を示したことであります。  第三には、全く新しい考え方として環境基準の設定を規定したことであります。従来、公害の範囲については定説がなく、当事者間あるいは局部的に論争が繰り返されているにすぎなかったのでありますが、この環境基準の設定によりまして客観的指標が明示されたことは、きわめて大きな意味を持つものと存ずるのであります。  第四には、公害に関する政府施策を基本事項別に整理して示した点であります。これによりまして、今後は各省庁がみずから所管する行政の中で、基本法に示された諸要素をいかに抜き出し、いかにからみ合わせるべきかを的確に判断できることになり、公害対策が格段に推進されるものと考えるのであります。  第五には、特定地域における公害防止につきまして、政府全体として取り組む姿勢を示した点でありまして、これにより、問題地域の公害対策は必然的に推進されるのであります。  第六には、事業者の費用負担の規定を新設したことであります。これは、従来の受益者負担等の考え方と異なり、事業者の社会的責務としての費用負担につきまして、全く新しい原則を立てたものであり、特筆さるべきものであります。  第七には、公害対策会議の設置であります。御承知のごとく、公害問題ははなはだ複雑多岐にわたり、各省庁間の事務ベースの連絡によって決着をつけることはきわめて困難でありますが、総理を長とする対策会議の設置によりまして、公害に関する政策が一元的に早期に樹立されることが期待できるのであります。  さらに、修正案につきましては、先ほどの委員長の御説明に全く同感でありまして、目的の字句修正、年次報告等、環境基準に対する常時検討、紛争処理制度、中小企業者への配慮、地方公害対策審議会、いずれも基本法を一段と整備し、前進させるものとして、全面的に賛成をいたします。  以上、賛成理由の大要を申し上げましたが、もちろん、基本法の制定をもって事足れりとするものではございません。世界で初めての公害対策基本法が制定を見るのでありますが、国民の健康と生活環境公害から守るために、私どもは将来に向かってもさらに責任を負わなければならないのであります。  基本法に示された諸施策を一挙に完備することは困難であり、ことに、被害の救済制度等のように、これから根本的に検討をしなければならない問題も多いのであります。今後とも委員各位とともに公害対策の樹立のために努力を続ける決意でありますことを特に申し上げ、賛成討論といたします。(拍手)
  112. 八木一男

    八木委員長 島本虎三君。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 私は、日本社会党を代表して、内閣提出公害対策基本法案の修正部分には賛成、修正部分を除く原案に反対するものであります。  近年、わが国は、産業経済の目ざましい発展、人口の都市集中化、交通機関の高度な発達等に伴い、公害が逐年増大の傾向を示し、大きな社会問題、政治問題になってきているのでありますが、このためわが日本社会党は、すでに四十年二月に、国民公害から守るための公害対策基本法案を、また、本国会においては、新たな公害対策基本法案及び公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案提出しているのであります。  御承知のように、わが党案は、国民の健康、静穏な日常生活、財産及び農林水産資源等公害から守ることを大前提といたしておるのでありまして、わが党はこれらの法案を提案することにより、政府に対し強く善処を要望してまいったのでありました。このため、政府もようやく本国会に公害対策基本法を提案いたしたのであります。しかし、政府案が発表されると同時にあらゆる報道機関があげて批判したがごとく、その内容は、全く経済界の圧力に屈したものになっており、当初の厚生省案よりも大幅に後退し、およそ公害基本法にふさわしい基本的要件を満たしておらないのは、皆さん御存じのとおりであります。  たとえば、基本法を制定するに際し、最も重大なことは、公害防止並びに公害による被害の救済等について、迅速、的確に具体的対策が講じられなければならないと思うのであります。しかるに、政府案は、全体として公害防止の理念もしくは抽象的原則を定めるにとどまり、きわめて具体性がなく、実効性にははなはだ疑問であるといわざるを得ないのは残念であります。これらの疑問は、心ある関係者が強く指摘したところであるのみならず、特に、本年六月二十一日内閣総理大臣に行なった社会保障制度審議会の公害対策についての申し入れでも、強く述べられているとおりであります。  政府案について、わが党がなお満足できない点も多いのでありますけれども、その一、二点のみを申し上げますと、  第一は、公害対策会議についてでありますが、この会議は当初公害審議会の答申に基づいて作成されました厚生省試案の段階では、公害防止委員会となっておったのであります。一見公害対策会議公害防止委員会もさして違いはないようでありまするけれども、これには大きな相違があるのであります。すなわち、公害防止委員会の場合は、国の施策の企画決定権を持っているばかりでなく、公害防止の指定地域における企業の費用負担割合及び費用の強制徴収ができるなど、独立した行政機関となっておるのに反し、公害対策会議のほうは、わずかに公害防止に関する企画を審議し、その施策の推進等にとどまっているのであります。また、政府案対策会議は、会長に内閣総理大臣を当てるなど、もっともらしいのでありますが、幹事制をとっておりますので、いわば関係各省庁の次官会議にすぎないのでありまして、当初の厚生省案を大幅に後退させた大もとともいうべき公害対策推進連絡会議と少しも変わらないのであります。わが党は、かような各省庁間の意見調整のみに終わり、しかも、公害対策の推進を遅滞させるおそれのあるような対策会議はもの足りないもので、直ちには賛成できないのであります。  第二に、政府案は、環境基準を定めるにあたって、経済の健全な発展との調和をはかるといたしている点であります、すなわち、公害対策の基本ともなるべき環境基準を定めるにあたっては、一般的に可能な最も高い水準が定められなければならないことは当然のことでありますが、しかし、政府案のように、経済との調和をはかりながら環境基準を設定するとなりますと、最も低い基準になってしまい、国民の健康を保護することはとうてい困難となるおそれがありますので、私はこの際、経済との調和は削除すべきだと思い主張してまいったのであります。  第三には、政府案が、無過失損害賠償責任制度をとっていない点であります。本来、公害は発生者責任主義によって処理すべきものであり、公害の発生源となる事業者は、その社会的責任から見ても進んで公害防止のために万全の措置を講ずべきなのであります。このことはわが党ばかりでなく、過般の公害審議会の答申や国民生活向上対策審議会の答申等の中でも一致しているところであります。また、先日行なわれた社会保障制度審議会の意見具申の際も、この点については強く指摘されているところであり、政府は、この際、財界の圧力に屈することなく、国民のために勇断をもって無過失賠償責任制度を設けるべきであると思う次第であります。  第四に、政府案は、事業者、国、地方公共団体の責務の中に、公害にかかる被害の救済を取り入れていないばかりでなく、第二十条の被害の救済の点でもはなはだ具体性に乏しいものにいたしているのであります。これらの救済制度は、公害によって被害を受けた国民から見れば、最も重大な関心事でありますので、私は、公害が発生することによって被害が生じた場合、事業者等は当然その責任において早急なる救済を行なう必要があると思うのであります。しかし、従来の事例に徴しても公害紛争は、被害者と加害者との間で短期間に処理されることは一般的に困難であり、特に加害者が不特定多数で見きわめがたい場合は、出そう困難であることは御承知のとおりであります。このような場合、被害者は、事件の解決を見ることなく、この間、公告によって生命を失ったり、あるいは病に倒れ、医療や生活面でも非常に難渋しているのであります。かような実情を見るにつけ、われわれは被害者が一日も早く救済されるような措置政府に強く望むとともに、政府事業者等の分担金による救済基金制度や公害保険制度を設け、被害者の救済に万全を期すべきであると思う次第であります。  以上、政府案のおもなる欠点について簡単に申し上げましたけれども、私は、委員長提出の修正案につきましては、わが日本社会党案に一歩近づいたという意味で賛成し、修正部分を除く原案につきましては、まだ不十分であり、社会党原案のほうがより一そうりっぱでありますので、これに反対するものであります。
  114. 八木一男

    八木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  115. 八木一男

    八木委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  116. 八木一男

    八木委員長 起立多数。よって、内閣提出公害対策基本法案は修正議決いたしました。     —————————————
  117. 八木一男

    八木委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、板川正吾君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することといたします。板川正吾君。
  118. 板川正吾

    板川委員 ただいま議決されました内閣提出公害対策基本法案に対し附帯決議案を提出いたしましたが、この際、私から、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  まず案文を朗読いたします。    公害対策基本法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、次の事項につき遺憾なきを期すべきである。  一、本法に基づく施策を講ずるにあたっては、本法制定の趣旨国民の健康の確保を第一議とするものであることに常に留意すること。  二、本法に基づく施策の具体化については、可及的速やかにその整備を完了するように努めること。  三、公害を発生させた事業者についての無過失損害賠償責任についても、逐次その制度が整備されるよう努めること。  四、内閣総理大臣の指示を受けて公害防止計画を作成する都道府県知事に対し、あらかじめ関係のある指定市の長等の意見を求めさせるようにすること。  五、事業者又は民間研究機関等が公害に関する研究及び調査並びに公害防止施設等の技術開発を行なう場合においては、必要な助成措置を講ずるように努めるとともに、地方公共団体に対し、同様の助成措置を講ずるよう指導すること。  六、公害行政の一元的運営については、さらに検討を加え、改善を図ること。 以上でございます。  附帯決議の第一点は、本法運用の基本理念についてであります。公害対策基本法政府案が発表されて以来、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」の字句をめぐって、国民の間に、国会の中に、幾多の論争が繰り返されましたことは、御承知のとおりであります。この点、本法目的につきましては、先ほど修正が行なわれたのでありますが、なお本法の根幹をなすところの環境基準の設定におきまして、どこに基準の線を引くべきかを決定する際には、経済とり調和が考慮されることになっております。その他、本法の各条項にわたり、政府に対する義務づけに弱い点が多く、これらの諸点から見まして、産業側の事情により、本法に基づく施策にブレーキがかかるのではないかという危惧の念は依然として去らないのであります。したがいまして、本法制定にあたり、まず基本理念として、本法趣旨国民の健康の確保を第一義とするものであることを明らかにし、本法に基づく施策は、すべてこの趣旨に従って講ずべきことを強く政府に要請する必要があると存ずるのであります。  第二点は、本法に基づく諸施策の早期具体化であります。基本法の制定は公害対策の画期的前進を意味するものではありますが、それ自体が直ちに効果を発揮する面は少ないのでありまして、基本法に基づく実施法等が具体化されてはじめて実効をあげ得ることは言うまでもありません。特に環境基準の設定、公害防止計画の策定、紛争処理制度及び被害の救済制度の確立、事業者の費用負担の制度の確立等は焦眉の急でありまして、直ちに立案を進め、早急に整備を完了すべきであります。  第三点は、事業者の無過失損害賠償責任制度の整備であります。公害に関する事業者の無過失責任制度は、被害者の救済のためにぜひとも必要な基本原則であります。本法におきましても、条文に明定こそされておりませんが、被害の救済制度の中で無過失責任制度は最も重要であることは、総理の答弁によって明確に認められ、政府努力が約束されたところであります。今後各実体法等におきまして、事業者の無過失責任制度が法制化され、確立されるべきことを強く要請するものであります。  第四点は、公害防止計画作成にあたっての指定市の長等の意見尊重であります。都道府県知事が公害防止計画を作成する場合に、関係の深い市町村と緊密な連絡をとり、その意見を尊重すべきことは当然でありますが、特に指定市等、たとえば神奈川県では横浜市、川崎市等、大阪府では大阪市、堺市等の場合は、あらかじめ相互連絡を密にし、実効のあがる計画を樹立する必要があると存じます。  第五点は、民間における公害関係研究に対する助成であります。現在公害対策が遅々として進まない一つの大きな原因は、生産技術進歩に対して公害防止技術があまりにもおくれていることにあります。今後は事業者が社会的責任の自覚のもとに、積極的に技術開発を進めることを強く期待するものでありまして、この意味におきまして、政府及び地方公共団体は必要な指導と援助を強力に行なう必要があると存ずるのであります。  第六点は、公害行政の一元的運営についてであります。本法におきまして、公害対策会議及び審議会を設置することとしておりますが、一つの前進であるとしましても、内容的にはまだ問題があります。従来から公害行政があまりにも多岐にわたり、対策の進捗を妨げていることは、国民の声として指摘されてきたところでありまして、今後公害行政の一元的運営のための機構の整備充実につきましては、特段の検討を加え、早急に改善をはかるべきものと考えるのであります。  以上が附帯決議案の提出趣旨であります。基本法制定にあたり、これが国民の健康確保のために誤りなく運用されるように念願し、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  119. 八木一男

    八木委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。  本動議のごとく決するに御異議ありませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  120. 八木一男

    八木委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。坊厚生大臣
  121. 坊秀男

    坊国務大臣 御決議の趣旨につきましては、政府は十分尊重いたしてまいる所存でございます。     —————————————
  122. 八木一男

    八木委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  123. 八木一男

    八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  124. 八木一男

    八木委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後一時散会